○村上政府
委員 憲法七十七条におきましては、
訴訟手続に関する事項について、最高
裁判所の規則制定権を認めておりますが、まず
訴訟当事者の実体法上の権利義務に直接
関係ありますものは、たとい同時に
訴訟手続に関するものでございましても、本来
法律をも
つて規定すべき事項でありまして、規則をも
つて制定すべき範囲に属しないと考えるのであります。元来
憲法が
訴訟手続に関する事項について規則制定権を認めておりますのは、
訴訟手続に関する事項は
裁判所がみずから処理する事項で、その実際に最もよく通じておりますので、最高
裁判所の規則で定めさせることが合理的であろうという考慮に基くものと考えられます。
訴訟手続に関する限り、規則制定権をも
つて裁判所の司法権固有の傾城に属するものであり、
法律をも
つても侵すべからざる領域であるというふうな考え方も一部にあるのでありますけれども、わが
憲法の解釈といたしましては、さような
国会の
立法権を制限する
趣旨ではないと考えている次第であります。従いましてただいま申し上げましたような、実体法上の権利義務に面接
関係あるような、
法律で
規定すべき事項は別といたしまして、その他の
訴訟手続に関する事項のうち、どういう範囲のものを
法律で定め、また最高
裁判所規則で定めるかということは、どちらがより実際に適するかという
立法政策上の妥当性の問題ではないか。一定の限界を設けて、これ以上は
法律をも
つて規定すべき範囲でないというような、規則の制定権固有の限界というものはない、かように考えているのであります。また
法律で定めました事項につきましては、規則をも
つてこれに牴触する定めをすることができないのは申すまでもないのであります。要するに
訴訟手続に関する法規は、
国会がみずから
法律をも
つて制定するのが妥当であるとお考えになりました範囲内においては、
法律をも
つて規定せられる。規則にゆだねるのが適当とお考えになります点におきましては、
法律をも
つて規定せずに、規則の定めるところにゆだねるという
関係になる、かように考にるのであります。