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1954-03-27 第19回国会 衆議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十七日(土曜日)     午前十一時三十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       猪俣 浩三君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月二十六日  外国人登録事務費全額国庫負担に関する陳情  書(第二三八七  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関す  る法律案内閣提出第七〇号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  利息制限法案内閣提出第一〇六号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  刑事訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、これにて本案に対する質疑は終局いたします。  この際お諮りいたします。本案はこれを討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議がないものと認め、討論はこれを省略し、ただちに採決いたします。  刑導訴訟法第百九十四条に基く懲戒処分に関する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔総員起立
  4. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案原案通り可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、これにて質疑は終局いたします。  これより本案に対する討論採決を行いたいと存じますが、討論はこれを省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小林錡

    小林委員長 御異議なければ、これより、討論を省略し、ただちに採決いたします。下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案賛成諸君起立を願います。   〔総員起立
  7. 小林錡

    小林委員長 起立総員。よつて本案原案通り可決すべきものと決しました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  9. 小林錡

    小林委員長 利息制限法案議題とし、質疑を行います。質疑の通告がありますから、これを許します。佐竹晴記君。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それでは利息制限法改正について若干お尋ねをいたしてみたいと考えます。まずこの法案のねらいとするところはどこにあるのでありますか。
  11. 村上朝一

    村上政府委員 現在行われております利息制限法は、限度を越える高利契約につきまして超過部分裁判上無効とすることによつて現実に行われております高金利につきましても、少くともこれを裁判所に持ち出して強制的に取立てることを許さないという意味におきまして、経済的弱者保護という、いわゆる社会政策的立法としての使命の一端を不十分ながら果しておるわけであります。しかしながら一面におきまして、戦前の貨幣価値を基礎といたしました元本百円、千円という区分が現状においては不合理なものとなつておることは明白であります。また利率も、現在の金利の情勢に照しまして、銀行その他正規金融機関によるいわゆる公認された金利さえもこの限度に近い、あるいは中には幾らか限度を越えているものもあるという点からいたしましても、すべての貸金の場合に通ずる金利最高限度としては不相当てはないかと考えられるのであります、かように、現状におきまして不合理あるいは妥当を欠くと認められる点がありますことが、この法律全体がはなはだしく古めかしい体裁を持つておりますことと相まつて、とかくこの法律による利息制限が軽視される傾向な生じた一つの原因となつているものと考えられるのであります。この法案のねらいの一つは、これらの点を是正するところにあるのであります。他面におきまして、現行法では利息制限しておりますけれども、賠償額予定その他違約金につきましてはほとんど制限がないといつてもいい状態であります。第五条の規定がありますけれども、これは商事には適用がないということになつておりますので、会社組織による貸金業の場合におきましては多くは商事債権の推定を受けます結果、第五条の適用が排除されております。また第五条の内容自体債務者保護として十分でないというのであります。そのために、現行法のもとにおきましては利息としては限度内に利率をきめてありましても、しばしば賠償額予定という名をもつて、あるいは日歩三十銭あるいは日歩五十銭というような高い金利が行われている実情であります。もつとも裁判所においては、あまり高い賠償額予定は、公序良俗に反するものとしてこれを無効としておりますけれども、公序良俗というような抽象的な基準では具体的の場合における裁判所の判断も区々にわたつております。現に日歩二十銭を越えるものを公序良俗に反するものという取扱いをした場合もあります。また日歩五十銭の賠償額予定を有効としている判決例もあるのであります。公正証書作成等につきましても同様な問題があるわけであります。そこで賠償額予定あるいは違約金等名義による高利をも制限する具体的の基準を設ける必要があるということが、この法案のもう一つのねらいでございます。しかしながら、高金利制限による経済的弱者保護と申しますか、社会政策的な立法の機能は、この利息制限法改正のみによつては十分に期待できないことであります。別に本国会に、出資受入預り金及び金利等取締に関する法律案が提案されまして、ただいま大蔵委員会で審議されておるわけでありますが、この法律案におきましては、日歩三十銭を越える高利につきましては、罰則をもつで臨むことにいたしております。従いましてこの両法案相まちまして、一面において日歩三十銭を越える高金利は反社会的のものとして罰則をもつて臨み、他面において、この法案で認められております十万円以下の場合最高二割という限度内におきましては、裁判上これを請求できるということにいたしました。日歩にいたしますと、年二割は五銭五厘に当るわけでありますが、そこまでは裁判上の保護を与え、その限度を越えて三十銭までの間は事実上放任される状態になるわけでありまして、三十銭を越える高金利につきましては処罰されるという三段構えになるわけであります。
  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 そうすると、一番のねらいは賠償額予定というものを具体化すること、それから商事取引については、この法律適用を除外することになつてつたものを、商事にも適用することにしたのと、それから公正証書をつくるのにぐあいが悪かつたのを一定の限度を定めて、その範囲内で公正証書を自由につくり得るようにする、そうしてそのわくを少々広げたという点が主たるねらいであると見てよろしゆうございますか。
  13. 村上朝一

    村上政府委員 大体そういうことでございますが、第一のねらいは、先ほど申し上げましたように、現行法第二条の利息制限を現在の経済事情に適応するように改めるという点であります。それと、ただいまおつしやいましたような違約金あるいは賠償額予定というようなものについての具体的基準を設けるというように、大別いたしましてこの二つに帰着すると思います。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 現在の状態においてはむしろインフレを防止するために低金利でもつて行かなければならぬ状況であると考えますが、今度の改正案では実際扱われておるよりも高金利を認めたという結果が生れておりますが、それはいかがでございましようか。たとえば信用金庫等については日歩四銭五厘――普通は日歩四銭くらいのようでありますが、日歩四銭五厘といたしまして年一割六分四厘になります。それが一割八分まで許されるということになる。大体信用金庫等においては、私どもの聞くところによると百万円以上のものはわずかに四%程度であつて、件数の九六%までは百万円未満貸借である。百万円未満が今度は一割八分ということになつておりますが、現在実際に扱われておるものは四銭五厘で年一割六分四厘である、それが一割八分に上げられておるが、むしろ下げて、そうして経済的弱者を擁護するというならば筋が立つのでありまますが、逆にもつ高いわくを許しておるということは矛盾ではないかと思います。いかがでございましよう。
  15. 村上朝一

    村上政府委員 いわゆる低金利政策は、正規金融機関による貸金金利を引下げるという意味に了解いたしますならば、これは臨時金利調整法によりまして行政的にこの金利を押える手段が講ぜられておるわけであります。現状におきましては、ただいま佐竹委員が御指摘になりましたように、現在千円以上年一割という利息制限法わくがありますにもかかわらず、正規金融機関でそのあわくを越えておるものもあるのでありますが、これは一面におきまして現行法の千円以上年一割という制限に不自然な、無理なところがあるというところから、金融行政の面におきまして必ずしもこのわくにとらわれずに金利の統制か行われておるのであります。こういうことはむろん好ましいことではないわけでありまして、現在におきましても年一割を越える金利につきましては、金融機関でありましても裁判所へ訴えて取立てるということは許されておらぬのであります。さような利息制限法超過利率を公認するということは好ましくないのであります。従いまして現在の経済実情がさようなものを放任せざるを得ない実想にあるといたしますならば、この現行法の千円以上一割というわくをもう少し実情に即して引上げるのが適当であろう。一方金融行政の面からも、金融機関による金利を新しい利息制限法わく内にとどめるように運用すべきではないか、かように考える次第でございます。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は今までの事際のやり方に多大の疑問を持つて来たのであります。ただいま民事局長のお話にもございまする通り判例等では日歩三十銭か公序良俗に反するものとして裁判上無効だといつたような裁判も出ておるようでありますが、貸金業法の第三条第二項の三によります大蔵大臣の定めた業務方法書作成し届出をいたしますと、これによつて法根拠のあるところの五十銭というものが認められている。しこうしてさらに質屋業法について見るならば、月一割を見ているわけであります。かように法令上の根拠かあつて日歩五十銭とか月一割とかいつたものが認められて、その範囲内において実際上の取引が行われて参つたのであります。そういう面に対しましては今度の日歩三十銭に下げようといたしておりますところの出資受入預り金及び金利等取締りに関する法律は、これは相当制限を加えたものとなりますが、その出資受入預り金及び金利等取締に関する法律罰則をつけて制約をいたしますと、それはある程度その面を押えることはできるでしよう。しかし今度の利息制限法などというのには何らの罰則もついておりませず、ただ裁判上無効になるというだけであるようでありますが、さりとて一旦払つたものはこれを返還を要求することができないというのがただいまの判例のようであります。一体こういう罰則もつけないで、弱者が一旦払つたならば返還も要求することができないといつたような法律をつくつておいて、一体どれほどの効果を上げることができるものであるか。ただいま申しましたように、貸金業法では日歩五十銭を認め、質屋業法では一割を認め、それと今度の出資受入預り金及び金利等取締に関する法律等罰則をつけてそれを押えようといたしますそのことは、あるいはたいへんな効力を生ずるでありましようが、しかしそういつた非常に高い金利の面が行われておるのを、罰則によつてある程度制約しようといつたような面においては、それは法律効果を百パーセント発揮することができるかわかりませんが、罰則もつけないで、しかもそれよりもずつと下で、しかも正規金融機関として堂々と認められておるところの金融機関の、堂々と定められておるところのそういつた金利による取引を押えようといたしましても、とてもこれはできることではないでなかろうか。こういつたような法律をつくることによつてどれだけの効果を発揮し得るものであるか、またどういうところが一体ねらいであろうか。一旦払つたならば、その返還請求することもできないような法律で一体何の効果を発揮するのか。一歩進んでお尋ねをするならば、一体裁判上に現われた事件が年どれだけあつて、それによつていわゆる経済上の弱者というものがどれほど今日まで保護されたものであろうか。さらに進んでまた考えるならば、もし経済的弱者なるものが法律上の手段に訴えて、払わない、無効にするといつたようなことになるならば、おそらくそういう人には次からは何人――もいわゆる高利貸は貸さぬであろう、その結果それらの人々は逆にまつたく最後に行き詰まつてしまうではなかろうかといつたようなことも考えられるのでありますが、いろいろと錯綜いたしましたこれらの関係について、当局はどのようなお考えを持つておられるでありましようか。
  17. 村上朝一

    村上政府委員 罰則もつかないこの法案でどれだけの効果が期待されるかというお尋ねでございますが、理想といたしましては、単一の限度を定めまして、その限度内のものは適法のものとしてすべて裁判保護される、その限度を越えるものは違法なものとして、裁判保護を受けないのみならず、罰則をもつて臨まれるということが、あるいは理想であるかと考えるのでありますが、債務者保護するために、少くとも、裁判国家機関の力をかりて強制的に取立てるということを拒否すべき線と現実に行われております金利とがあまりにもかけ離れている現状におきましては、一方において国家機関の力をかりて強制的に取立て得る限度というものを考え、また罰則をもつて臨むべき限度というものを刑に線を引きまして、三段構えとなることも、あるいはやむを得ないのではないかと考えた次第であります。  なお任意支払つたものの返還請求ができないという点でございますが、これも債務者保護の立場を徹底いたしますならば、すべて返還請求ができるというところまで行くのか理想であろうかと思いまするけれども、そういうことになりますと、一面において債務者金融を梗塞するおそれがあるのではないかということも考えられまして、現在の利息制限法の解釈として長い間認められております裁判上強制的に取立てることはできないが、任意支払つた場合は返還請求ができないというところあたりが、少くとも現状に即して考えますならば、妥当ではないか、かように考えた次第であります。
  18. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 あとでけつこうでございますが、実際その裁判になつて出て来るものはどれだけあるか。それで実際経済上の弱者というものが、裁判上この法律を利用することによつてどれだけ助かつて来たかということを、現実裁判上の統計によつて私は知りたいと思いますので、あとで資料として提出をお願いいたしたいと思います。  この際さらに承つておきたいのでありますが、臨時金利調整法による正常な金融機関金利というものは、日銀の政策委員会できめられて、当座の最高日歩二銭七厘になつておるようであります。これは大蔵大臣告示となつて出ておるようであります。ところが今日実際に扱われておるところの金融機関におきましては、必ずしもこういつた低いものではありません。たとえば信用協同組合のごときは、最高年一割八分二厘、水産業協同組合は一割九分五厘、農業協同組合等も一割九分五厘というところになつております。それでこれらのものはそのほとんど大部分が百万円未満のもので、ありますので、最高一割八分ということになります。そうすると、信用協同組合もこの利息制限法制限を越えるということになり、水産業協同組合農業協同組合もちろん越えるということになります。こういつたような合法的機関合法的融資を認めながら、一面この法をもつてその制限を越えるものであるというふうにいたしますことは、これは国民が法にすがり、法にたよろうとすることに対して、たいへんな危惧の念を持たざるを得ないと思います。先ほど申し上げましたように、もし徹底的低金利でやると言われるならば、それでひとつ押し通されたらよろしい、今度わくを上げるということになるならば、信用協同組合あるいは水産業協同組合農業協同組合もその線まで広げて、これらの合法的金融機関の実際上の取引をこの法律範囲内において保護してやるということになぜなさらなかつたのであるか、こういつたはみ出た分をも違法祝いたしまして、裁判上無効とするということになさいました根拠はどこにあるでございましようか。
  19. 村上朝一

    村上政府委員 一部の金融機関金利が現在すでに利息制限法制限を越えておりますことは、先ほど申し上げました通りでありますが、これを全部カバーするようなわくに広げる、利息制限法限度を広げるということになりますと相当高利になりますのと、これは金融行政を担当しております大蔵省とも協議いたしました結果、この新しい利息制限法案わくであれば、少くともこのわく内に正規金融機関金利を押えて行く方針であるということでありますので、一部にこれを越えるものが現在ありますけれども、この限度にとどめた次第でございます。
  20. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私はただいまの御答弁ではどうも理解いたしかねるのでありますが、この法案を検討いたしておりますとき非常にいろいろな矛盾を感じます。従いまして、私の質問自体もまた矛盾した質問になるかと思いますが、これは法案自体に含まれている矛盾性質問者をしておのずから矛盾した質問を発せざるを得ない状態にあることをもお認め願わなければならぬと存じます。  私がさらにお尋ねいたしたいのは、前の法律では、いわゆる償金、罰金、違約金、科料その他いかなる名義をもつてするを問わず、こういつたものは「損害ノ補償ト看做シ裁判官ニ於テ該債主ノ事実受ケタル損害補償ニ不当ナリト思量スルトキは之レニ相当ノ減少ヲ為スコトヲ得」という規定になつております。今度の基本的規定は、これは第四条である程度の額は制約はされておりますけれども、基本的問題は、違約金の約束をしたときには損害賠償予定と推定するということに相なつておるのでありますが、この条文の表わし方は、結局結果においては同一でございますか、またたいへんな差異を来しますか、どうでございましようか。
  21. 村上朝一

    村上政府委員 この違約金賠償金予定とみなしております点は、現行法の第五条と同一のことになるのでありますが、現行法におきましては、これが裁判上問題になつたときに裁判官の裁量によつて減額できるというのに反しまして、この改正案におきましては、当然限度が第一条の利息の二倍以内ということに押えられておりますから、これは実際上の差異から申しますと、たとえば支払い命令を申請するとか、あるいは公正証書等債務命令をつくる場合におきまして、これは訴訟で争われる前に、あらかじめ債務命令をつくるときに第四条の制限内に押えられるわけでありますから、争いになつてから減額を受けるというよりは、債務者の方に適しているのではないか、かように考えるわけであります。また実際の運用の面から申しますと、貸金業者、それはほとんど全部と申してもいいぐらいに大部分のものは会社組織その他の形式をとりまして、商事債権ということで第五条の適用をまぬがれておるのであります。その結果日歩五十銭というような高い金利賠償額予定の名のもとに横行しておるというのが実情であります。でありますから、この現行法第五条を改正案の第四条のように改めることによりまして、実際の運用相当債務者の方に効果を期待し得るのではないか、かように考えておる次第であります。
  22. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 立法上筋を通すということならば、違約金の約定は損害賠償予定とみなすということになるならば、これはどこまでも損害賠償である、損害賠償の額をここに決定することはよほど困難であるから、違約金契約をすれば、その契約をもつて損害賠償の額を予定いたしましたときは、それをもつて損害賠償の額とする、こういうことです。損害賠償というものは私が申し上げるまでもなく、実際上現実に生じた損害を償うという意味であります。損害賠償の原則をこちらへ確立しておきながら、他面においてその賠償額元本に対する割合が規定せられた率の二倍以上を越えることができぬなどという規定を設けることは、それ自体非常な矛盾ではないかと思うのであります。この規定は単なる貸金業者やあるいは金融業者やあるいは特別の関係の人を取締ろうというのみではございません。一般の、たとえば個人個人との友人関係消費貸借等についてもこの規定適用されます。そこで私がたとえば金がほしい、友人のところへ行つたが、友人の申しますのに、今月一ぱいは遊んでいる金がある、しかし来月になれば、ぼくが手付を入れておる土地家屋を買おうとしておるが、来月になつたらその代金を支払わなければいけない、もし支払わなかつたならばぼくはたいへんなことに賠償支払わなければならない、それまでにあなたは確実に返済ができますか、こう念を押されますので、私は大丈夫だ、間違いがない、必ずそれまでにお払いをするから、万一お払いができぬときには、それでは十万円の賠償金払つてもよろしい、こう言つて約束して金を借りて来たといたします。ところが期日になつても私が返さない。ところがちやんと私を信頼し、そうして私と確約をいたしまして、その賠償予定を信じて、これなら大丈夫と思つて貸してくれた、ところが私が裏切つた、ところがこれを今度訴えたならば、そういつたことは無効だ、ここに定めておるところの第四条の第一項の金利の二倍以上はとらない、こういうことになるならば、そもそも損害賠償違約金予定というものは、損害賠償数額をそこに確定したものであるとして有効なものと見られなければならない、その損害賠償という基本的観念を、打ち砕いてしまうものではなかろうか。私は少くとも損害賠償予定とここに名乗る以上は、これに対して金利の二倍でもつて、それ以上はいかに現実的に損害が生じようとも一切それは請求ならぬというようなことは、これは法律上、立法上非常な矛盾ではないかと思うのでございますが、いかがでありましようか。
  23. 村上朝一

    村上政府委員 いわゆる違約金と言われますもののうちに、損害賠償額予定に当るものと、ただいま佐竹委員が御指摘になりましたような違約罰に当るものと、大別してこの二種類のものがあるかと思うのでありまするが、民法におきましては、違約金賠償額予定と推定するということになつております。この法案におきましては、違約金はこれを前二項の適用については賠償額予定とみなすといたしましたのは、もしこの民法規定のままにいたしておきますと、あるいは実際損害がある場合には、損害額だけ請求ができるというような措置を考えるといたしますならば、この利息制限をくぐる目的をもつて違約罰という名目のもとに不当なる高利をむさぼられる可能性が非常に多いのでありまして、貸金業者以外の当事者間の消費貸借についてもこの法案適用になります結果、あるいはただいま佐竹委員の御指摘になりましたような事案も出て来るかと思いますけれども、一般的に申しまして、かような高金利をつけますところは貸金業者が多いわけであります。貸金業者債務者との関係を調整いたしますためには、この原案にある程度違約罰なり賠償額予定というものを認めることが相当ではないか、かように考えた次第でございます。
  24. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は何として筋が通らぬと思う。損害賠償予定といたしました以上は、これは損害賠償の観念ですから、損害賠償現実に生ぜる損害を補うということであります。そうすれば現行法の第五条の「裁判官ニ於ナ該債主ノ事実受ケタル損害補償ニ不当ナリト思量スルトキハ之レニ相当ノ減少ヲ為スコトヲ得」というのは、これは筋が通つております。けれども、現実損害がどうあろうともおかまいなしに、これくらいのものしかとられぬ、請求できない、それ以上のものは無効であるということならば、これはもう損賠償などとはおつしやらない方がいいであろう。損害賠償予定であるとみなされる以上は、これはやはり損害賠償たるところの素質を持つておるし、またこれを貫いて行かなければならぬと思います。むしろ現行法の方が筋が通つておるではなかろうか。それでただいま民事局長の御説明で、貸金業者の不当なる違約金名義により金利相当のものをとろうとする、その不当なる取引を押えようとするにあるということであるといたしまするならば、今度の出資受入預り金及び金利等取締に関する法律というものが出て参りまして、この法律によつて貸金業法が廃止されることになりますから、そこで本来ならば民事局長の今憂えられておるところのものは貸金業法において規定すべきものである。そしてその貸金業法は今度の出資受入預り金及び金利等取締に関する法律を施行することによつて廃止することになりますので、その御心配のような点は、今度の出資受入預り金及び金利等取締に関する法律中に規定さるべきものではなかろうか。むしろ利息制限法といたしまして旧来行われておるようなこういう趣旨の法律であるとするならば、現行法の第五条というものが最も普通であり、これが筋が通つておるものではなかろうかと思うのでありますが、いま一度承つて、おきたいと思います。
  25. 村上朝一

    村上政府委員 損害賠償という以上は、一切の損害基準とすべきであるという点でありますが、なるほど現行法の第五条はそういう趣旨にできておるわけであります。しかしその後にできました民法の四百十九条におきましては、およそ金銭債務の不履行による損害賠償につきましては、損害額の立証、あるいは故意過失の立証等がきわめて困難であるというところから、金銭債務の不履行による損害賠償は、法定利率によつて賠償額が定められております。もし約定利率があります場合には、約定利率によつて賠償額が定まるわけであります。一方におきまして、債務者は不可抗力をもつて抗弁とすることができない、債務者の故意過失、債務者の責に帰すべき事由があるかどうかを問わずに、一律に損害賠償の責任及びその額を定めておるわけであります。金銭債務につきましては、実際受けた損害の額を基準とすべきであるということは、理論としては正しいと思いますけれども、実際上の便宜から申しますと、必ずしも当事者双方の立場を公平に処理するゆえんではないというふうに考えたわけであります。
  26. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまのその御説の民法でございますが、民法には損害賠償予定と推定するとあつて、推定でありますから、もしも実際生じたところの損害は、立証が困難である場合にはその推定された額であるが、立証のできる場合においては実際上の損害の額による。これであつてこそ初めて筋が通るのです。ところがいきなりみなしてしまつて、そうして今度の法律のようにちやんと一定の額でくぎづけしてしまつて、動きのとれないようなことになりますならば、実際上生ずるところの損害賠償という性質が、これはなくなつてしまうではないか。と同時に、ただいまお尋ねいたしましたそういうようなことについては、この貸金業者の不当な行為を取締るというのにあるといたしますならば、今度の出資の受人、預り金及び金利等取締に関する法律中に適当にあんばいすることによつて目的を達し得られるのではないか。この利息制限法中にそういう規定を設けることは矛盾ではないかという点、今一度お尋ねいたします。
  27. 村上朝一

    村上政府委員 先ほど貸金業者の例をもつて御説明申し上げましたが、このたびのこの法律案は、貸金業者だけを対象とする趣旨ではございません。また面におきまして損害賠償額予定あるいは違約金の私法上の効力に関することでございますので、罰則を中心といたしました出資受入れ等に関する法律案中に規定いたしますよりは、利息制限法規定する方が適当であろう、かように考えた次第であります。
  28. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 承つておりまして、どうも納得の行きかねる点が多いのでありますが、一体金利政策というものに対して法務当局はどうお考えになるのか。つまり金利政策の総般的説明と申しますか、金利体系に関するはつきりした説明を――これは元の何でございます各協同組合その他に関するわくを、一面においてはわく内に持つてつているが、今度はわく外にはみ出るものもあるし、その他貸金業者、一般の個人間における貸借等についても、いわゆる金利政策というものに対する法務当局といたしましての筋の立つた一貫したところの考え方というものはないではないかという気持がしてなりません。先ほどからの説明を承つているうちにそういう気持が非常に濃厚にならざるを得ないのであります。私は法務当局の持つているところの金利政策の総般的な説明、金利体系に関するところの十分なる説明をいただきたいと思います。
  29. 村上朝一

    村上政府委員 金利はできるだけ低いことが望ましいのは申すまでもないことでございますが、一面におきまして経済界の実情に沿わないような立法をもつてこれを引下げるということは、かえつてその目的を達し得られないことになるのでありまして、この法案を立案いたしました趣旨は、先ほども申し上げましたように、ある限度までは裁判保護を与えて、その限度を越える金利につきましては裁判上の保護を与えない、極端なものについては罰則をもつて臨むということが現情に適すると考えたわけであります。一方金融機関による金利政策ですが、これは金融行政を担当しております大蔵省の方で考えておりますことで、別の機会に大蔵省当局から御説明申し上げるのがいいかと思うのでありますが、私どもといたしましては、正規金融機関による金利が、この利息制限法わくを越えることは好ましくない、かように考えておるわけであります。その点につきましては、大蔵省事務当局も私どもとまつたく同意見だつたのであります。
  30. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私は金利政策に関します一貫した総合的説明を御要望いたしましたが、その程度では遺憾ながら納得ができません、他日また適当な機会にいま少し掘り下げてお尋ねをすることにいたします。  私はさらにこの際聞いておきたいと考えますことは、こういつたような法律で、経済関係にまであまり深く入り込んで来ることはよくはないではないか、つまりこの利息制限法などというものは、一種の金利道徳といいますか、一つ基準を示したにすぎないのであつて罰則が別にあるのでなし、ひとつこの辺でという金利道徳の基準を定めたといつていい程度のものではないか、かように思うのであります。さらに進んで経済関係にまで立ち入つて来るということは、いかがなものでございましよう。ことに商法施行法の適用を排除いたしますということなどについては、よほど考えなければならぬ事態が起つて来はしないか、実際上行つておる今日の金融状態というものは、正規の公立の銀行あるいは市中銀行、その他のいろいろな庶民金融機関、あるいは高利貸しあるいは個人間の貸借等、複雑多岐にわたるところのいろいろな経済関係が輻湊いたしております。それを、こういつたような一片の簡単な法律でもつて経済関係にまで立ち入つてこれな押えよりとするがごときは、その及ぼす影響は知るべからざるものが出て来るのではないかと思う。従つて金利道徳の基準を示すといつた程度のものならばいいかもわかりませんが、あまり立ち入つて参るということになると、これは非常に重大なる結果を生ずるのではなかろうか、ことに商法施行法の適用をこの際排除するというよりなことは、実際の現実の面においていろいろな経済的利害関係が出て参りますので、相当御考慮いただくべき性質のものではなかろうかと思うのございますが、いかがでございましよう。村上政府委員 利息につきまして司法上どういう立法政策をもつて臨むかという点につきましては、いろいろな考え方があるわけであります。まず第一には、この利息契約をまつたく当事者の任意にまかせまして、極端な暴利を刑事上の制裁によつて防止するという方法であります。第二の方法といたしましては、利息制限法によりますような制限利率を定めることをやめまして、裁判所において具体的な事件ごとに、たとえば債務者の窮迫無知に乗じた高利契約を無効とする、あるいは、さらに一定限度以上のものについて刑事上の制裁を併用するというように、個々のケースごとに具体的な判断によつて債務者の救済をするという考え方であります。第三の方法は、司法上もある限度を設けまして、この限度を越えたものについてはこれを無効とし、あるいは裁判上の保護を与えないものとすることによつて債務者保護の機能を営ませる、この三つの方法が考えられるのであります。この改正案は、現行法のとつております第三のやり方をそのまま踏襲いたしまして、時勢に沿わないと思われる点を是正するというにとどめたのであります。第一の全然当事者の自由にまかせる、あるいは次に申しました具体的な事件ごとに裁判所の判断によつて救済をするというやり方、これは外国にも例があるようでありますが、少くともわが国の現状におきまして、これでは現に横行しております非常に法外な金利がそのまま裁判上も保護されるような結果を招来するおそれがないか、債務者が応訴して、これを裁判によつて減額するというやり方では、少くとも現状に比較して債務者保護に不適当じやないか、かように考えまして、この第一、第二の方法をとることをやめまして、従前の利息制限法のやり方を踏襲したわけであります。
  31. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 大分長くなりましたから、もう一点だけお尋ねいたしまして本日の私の質問は打切ることにいたします。  冒頭の民事局長のお話によれば、経済的弱者保護のための規定をここに設けようというにあるというのが、今回の法律制定の御趣旨であるようであります。ところが、経済関係についてあまり深入りをしていろいろ干渉することになりますと、かえつてとんでもないいろいろな事態が生れまして、経済的弱者がそのためにいかんともすることのできないような状態に陥ることがないとも限らぬと思います。たとえばここに日かせぎをいたしております者が、非常に困つておる、ところが一日一割だとか月一割だとかいつたような高利を借りて来る、借りて来ても、その金で何か青果物を買い、魚を買い、それを売ればたちまちにして何倍にもなつてつて来る、あるいは料理屋をやる、たちまちにして何倍、何十倍の利益になつてつて来る、いわゆる高利貸しなんかを利用いたしまして、日歩の非常に高い金を借りて生活を常んでおります人々は、多くそういう事態をねらつております。従いますして、それらの人々が、もしこういう制限によつて強く取締りを受けるということになると、今度は貸金業者の方においても、借りた方がたいへんもうかつているのに、おれの方では一向もうからぬ、そんなばかばかしいことはないといつたようなことで、貸さないようになる。あるいはそれらの人々に貸すについてはたいがい無担保でございます。それでとれなたつたらそれつきりでございます。いわゆる損害の率というのも非常に多いのでありまして、貸したものが全部回収されるならば非常に低い金利でもよろしいでありましよう。大きな銀行のように、確実な担保をとつてきちんきちん回収ができるならば、それはいいかもわからぬが、多くはそういう人々に貸すについては無担保で、金が返つて来るやら返つて来ないやらわからないような非常に危険を伴うところの貸金をいたします。またそういう借主は、どれほど高くてもその金を借りなければその日生きて行かれない、たちまち死ななければならぬといつたような人が、多くそういう金を利用するのであります。そういつたような経済状態をあまり法律でもつて押えて経済関係に深入りをいたしますということは、ときにはこれらの緊急避難的な、正当防衛的な、どれだけ高い金でも利用しなければ立つて行けない、生きて行かれないような人々に対して非常な打撃を与えるといつたような結果をも、私はある程度考えなければならぬと思いますが、その辺に対しましては、民事局長何かお考えになつたでございましようか。
  32. 村上朝一

    村上政府委員 この改正案利息制限現行法よりもきびしくするという趣旨ではないのであります。ただいま佐竹委員のお述べになりましたような場合もあると存じますけれども、現行法のもとにおきましても、裁判所に訴えて強制執行して取立てるというようなことでなければ、相当高利で引合う場合には、その高利をとることは何ら制限されておらぬのであります。現行法利息制限をその意味におきましては緩和いたしておりますこの改正案のもとにおきまして、現在以上に不都合を生ずるということは考え得なかつたのであります。
  33. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私の申し上げ方がまずかつたかもわかりませんが、経済関係にあまり深入りしないようにした方がいいのじやないかという観点に立つてお尋ねをいたしたのであります。それも今回の改正案において一番重大な関係を持つておるものは、「商法施行法の一部を次のように改正する。第九十五条から第百十七条までを次のように改める。第九十五条乃至第百十七条削除」というこの改正であります。先ほど局長もるる申しておられた通り、多く貸金業者商事会社をつくつているが、商事会社にはこの規定適用がなかつたのが、今度はそれを縛ろうという。そこでただいま私が申し上げておつたように、何が何でも金がなければその日生きて行かれないといつたような人々は、その商事行為に当るところの商事会社ないし貸金業者から金を借りる場合が一番多いのであります。個人友人関係における貸借などといつたようなものでは、とてもそういつたようなものはまかない切れませんので、多く高利貸を利用してそういう取引が行われておる。そうするとそれらの人々は、たいがいこの違約金の面においても、もし不履行になつたときにはたいへん高い金額の違約金をとるという契約をいたします。ところが今度は金利の額二倍にこれを制限いたしました。つまりこの第四条の金利の二倍に相当する額を越えた分は全部無効とするといつたようなことになつたならば、そしてこれが励行されるということになると、これはもうおそらくそういう貸金業者は貸さない。また借りる人も、利用しようといたしましても貸してくれないで困り、また貸金業者も、貸して訴えられて、この規定で一切二倍以上のものは無効であるといつたようなことになると、これはもうこんなに危険を冒して貸すばかはないといつたことになつて、非常に苦しんでおる階級に対して重大なる打撃を与えるような結果になりはしないかというのでございます。
  34. 村上朝一

    村上政府委員 商法施行法の第百十七条は、御承知のように「利息制限法第五条ノ規定商事ニハ之ヲ適用セス」といつておるのでありまして、五条以外の条文、第一条ないし第二条は商事にも現に適用されておるわけでございます。商人が非常に高い利息を支払つても十分利益のある場合、高い利息の約束をいたしましたときに、現行法のもとにおきましては、その場合すら年一割の利率で押えられているのでございます。従いまして現行法をもとにして考えます限り、この改正案によつて利息制限がありますことが、商取引に現在以上に障害を来すということは考えられないと思います。また違約金につきまして、現行法の第五条に当る規定商事にも適用することになります理由は先ほど申し上げた通りでありますが、佐竹委員の今御引用になりましたような事案でありますならば、おそらく利息そのものが高いのでありまして、賠償の額の予定だけについて商事にこれを自由としなければならぬという事案はあまり考えられないのじやないか、かように考えられます。
  35. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 繰返して恐れ入りますがもう一点。高利貸はたいがい金利の高いというのもそれでありますが、実際は違約金が問題なんです。そして折返しにとるとか、違約をするとべらぼうに高い違約金をとる。それで恐れをなして、それがためにきちんきちんと返す、これがそういう方面におけるいわゆる金利道徳です。相当多額の違約金がとれることによつて、その社会においては金利道徳が保たれておつた。ところが今度商法施行法第百十七条を削除するということになつてこの規定を排除するということになりますと、ここに商事についてもすべての取引と同様に一般原則によつて取締りをするということになると、そういう経済関係者に重大なる影響を及ぼして、それらの面からたいへんなできごとが起るのではないか。私はあまり経済関係に深く立入りをしない、ある程度金利道徳を確立する程度においておいた方がいいのではなかろうか、私はその面を言うのでございますから、ひとつその面について、もし御意見があるならば承りたい。
  36. 村上朝一

    村上政府委員 私法上の利息制限というようなことは、あまり取引、ことに商事取引関係などに深入りしない方がいいというお考えは、実は私どもも先ほど申し上げましたように、いつそこういう立法をやめてしまつて、個々の事案について、極端に不当なものだけを裁判所の判断によつて無効とするというのがよいのではないかということを実は長い間案を考えて来たのであります。しかしながら、主としてこれは金融業者を念願に置いて考えたのでありますけれども、従来の金融取引というものの実情から見まして、これを現実的に放任してしまう、窮迫無知に乗じた高利契約だけを裁判所の判断によりまして、具体的な事案ごとに無効とするという措置では、現在以上に高利が横行するおそれがあるのではないかというふうに考えまして、現行法のとつております政策を踏襲したわけであります。ただ違約金の点につきまして、個々に事案に当つて行きますと、あるいはかような一律の制限では当を得ないという場合もあるかと存じますけれども、さらばといつて、これを全然商事には違約金の定めは自由にするというところまで踏み切りがつかなかつたわけであります。     ―――――――――――――
  37. 小林錡

    小林委員長 それでは法務行政に関する件について、調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
  38. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 犬養大臣にお尋ねする第一点は、実は一週間ぐらい前に、犬養大臣が辞表を出されたというもつぱらのうわさが出たわけであります。さようなことを大臣は耳にせられたか、あるいはさようなうわさが出るについては、何か多少誤解なら誤解があつて、そういううわさが出たのじやないかと思われるところがあるのか、全然荒唐無稽のうわさであるのか、あるいは火のないところに煙は立たざるような程度のものであるか、それをお聞きいたします。
  39. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。私もそういううわさを聞きましたものでございますが、私の知つている範囲の原因としては、この病中記者クラブの諸君が見舞に来てくれまして、そのときに意外にやつれて痛がつてつた。あれじや職に耐えられないのじやないかと見た記者諸君が申されたのではなさそうですが、それを又聞きされた人たちが、そういう想像をされて、そういう筋からうわさが立つたというふうに聞いております。そのほかの原因については、私寝ておつたものですから、存じておらない次第であります。
  40. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういたしますと、それは事実でない、大臣は今日も辞職するような意思はないのでありますか、あるいはさような意思をお持ちでありますか。
  41. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知のように不敏のものでございますが、全力をあげて職を尽したいと考えております。従つて辞職の意思はございません。
  42. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 どうもはなはだ失礼な質問をいたしましたけれども、やはり法務大臣というものは現在非常に重要な地位にありますので、さようなうわさが出ることだけでも相当な影響力を持ちますので、公の席上であなたの弁明をお聞きした次第であります。  第二点といたしましては、これは実は質問の通告をしてありませんので、あるいは答弁について即座の御答弁が困難な点があるかも存じませんが、御答弁できましたらしていただきたい点があるのであります。それはどうも世上のうわさばかりお尋ねして恐縮ですけれども、自由党の池田勇人氏に対しましては、実はいろいろのうわさがあるのであります。保全経済会にも関係がある、あるいは造船汚職にも関係がある、あるいはやみドルの事件にも関係がある、あるいは名古屋精糖の事件にも関係があるというふうに伝えられておりまして、なお新聞面に出ましたところによれば、少くともこれだけ顕著な事実として現われましたのは、第一には、日立造船から五百万円の金が出て、これが西郷吉之助の手にわたり、しかもその指向するところは池田さんにやつてくれということだつた。しかもこの事実は、日立迫船の金子という東京支社長が、赤坂の田町で大野という料理屋で、四元義隆なる者の立会いのもとで、西郷吉之助にさような趣旨で金を渡したということまで明らかになつておる。しかるにこの金が池田氏のところへ渡つたかどうかということについては、はなはだあいまいであり、新聞の伝うる池田氏の答弁と、西郷吉之助その他の人の言うこととに食い違いもある。ここに相当の疑点があるのでありますが、どうもこの点に対しまして検察庁の活動が鈍つておるやにうわさする者があるのみならず、どうも池田のところに累が行かぬように相当の配慮が当局においてなされておるやに伝える者もある。それは西郷吉之助に対します取締り方がどうも私は普通じやないと思う。この人は、金を渡されたことさえはつきりしているならばある程度の刑事上の嫌疑がかけられてしかるべきものであるのに、何ゆえかまつたく極秘裡に調べられ、また伝うるところによれば、池田氏も極秘に調べられたということである。そうして西郷氏のいとことかなんとかに当る西郷隆秀という人がみな自分で使つてしまつたやになつている。新聞の伝うるところによれば、池田氏のところに持つて来たけれども断つたというようになつている。その点に対する事情はまことに不明瞭である。私は西郷吉之助氏に対する調べ方と他の人たちに対する調べ方とが違っているような気がいたしまして、多少の疑問が残るのであります。そこで法務大臣から、この点に対して私どもの疑問を解きほごすような点がありましたならば御説明をいただきたい。何かどうも割切れない点がある。これは捜査の秘密と言われればそれまでであるけれども、もうすでに西郷吉之助の五百万円の金、それから赤坂田町の大野というようなことまでが明らかになつておる。四元義隆なる者が立ち会つたと称しますが、この人間をどういうふうに調べたのか。すべてがこの点については極秘裡に相なつておる。捜査の都合からか、あるいは累を池田氏に及ぼさぬように隠密裡にさような捜査がされたのであるか、私どもは多少の疑問があるのであります。この点について御釈明を願いたい。  いま一点は、同じ池田氏に関するものでありますが、池田氏の親友である関東電気という会社の専務の所という人が、二百万円の金を池田氏に渡すべく預かつた点までははつきりしているようでありますが、これもその関係者の答弁が非常にちぐはぐであつて、疑問が多々ある。池田氏の秘書が百万円使つたと称したり、あるいは全部所のところにそれがしまわれてしまつたやに伝えられている。これも池田氏に渡つたのか、渡らぬのか、この間の取調べがどうもはつきりいたしておりません。かような点がありますので、巷間においては、あれは自由党の吉田総理の側近に対してはなるべく手をつけないような方針でやつているので、それが手がつきそうになれば何とかそうならぬようにいろいろ検察庁自身が考えておるのだというふうな――これは検察庁に対しますまつたくいわれのない疑いかも存じませんが、うわさがある。池田氏の身辺に関する問題につきましては、保全経済会の問題につきましても池田氏自身が行政監察委員会へ今日まで出ない。どうも相当の疑惑があると思いますけれども、この点についてはさつぱり要領を得ないような状態出、多大の疑惑がとりまざつております。これは事実そのものが明確を欠くならば、しいて犯人をつくる必要はないことでありますけれども、池田氏に関する問題につきましては、検察庁それ自体の活動について相当の疑惑があるやに私には思えるのであります。こういういきさつにつきまして、法務大臣はいかなる指示を検察当局になされておるのであるか、またいかなる報告を受けられておるか、それをお尋ねいたします。
  43. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。池田勇人氏に関する具体的の御報告は、検察庁より聴取しまして私に報告しております当人の刑自局長がここにおりますことでありますから、刑事局長より御報告いたさせますが、私の承知しておる範囲におきましても、池田勇人氏であるからかげんするというような空気は少しも見ておりません。これは他日御了解を得られると思うのでございますが、私はさように確信をいたし、今でもそれを信じて疑わない気持をかえずにおります。また猪俣委員その他綱紀粛正の問題に御熱心な方がたびたび検察庁を訪問しておられるようでございますが、もし不当な圧迫があれば、ああいう正義観念の強い役所は必ずそれに対する反駁な空気も出るものでございまして、これは御経験の深くかつ鋭敏な感覚を持つておる皆さんは看取せられるであろうと思います。私が直接刑事局長から聴取いたしました点についても、いまの御質疑のような空気は全然看取できないことであります。詳細につきましては、あるいは捜査中で十分申し上げられないかもしれませんが、刑事局長より答弁といいますか、報告といいますか、させたいと存じます。
  44. 井本臺吉

    ○井本政府委員 お答えいたします。西郷吉之助氏の関係につきましては、西郷隆秀氏を三月三日に逮捕いたしまして三月二十四日まで取調べをしておりました。それから所氏の関係は二月二十三日に逮捕いたしまして、三月十四日まで取調べを続けて参つたのでございます。いずれもある程度金の授受があつたという点で取調べを続けたのでございますが、御承知の通り刑事事件はいろいろ取調べも困難でありまして、与えられた二日間の勾留期間で取調べが遂に完了しなかつたので、一応身柄の釈放をしたのでございますけれども、なお引続きこの関係につきましては取調べを続けております。ただいま大臣からも言明されました通り、検察庁といたしましては、いやしくも犯罪容疑があります以上、いかような関係の方でございましようとも、不偏不党厳正公平な態度でやつておりますので、その点については、たとい御質問のようにある党派の幹部に関係があるとかいうようなことでも、捜査を打切るということは絶対ございません。ただいろいろの事情で調べの結論が出ませんので、ただいま御報告申し上げましたように身柄を釈放しておりますが、引続き捜査を続けておりますので、いま少しく御猶予をいただきますと必ずある程度の結論が出ることを確信いたしております。こまかい内容につきましては捜査の途中でもございますし、いろいろ関係者の社会的な名誉にも関係がありますので、捜査の便宜の点も御考慮くださいまして、いま少しくご報告の時期を遅らせるようにしていただきたいと考える次第でございます。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その点については捜査の妨害にならぬように気をつけるために、あまり具体的なことはお尋ねしないことにいたします。  ただちよつと御調査いただいて御報告をいただきたことは、二月の二十八日か三月の一日に、東京地検の次席検事の田中氏が、当夜自宅へお帰りにならなかつた。しかもそのお出かけになる際には、検察庁から自動車にお乗りにならぬで、内幸町までお歩きになつて自動車にお乗りになつた。その日池田勇人氏も御帰宅にならなかつた。さような事実があるという報告を私は受けておるのであります。もちろん検察活動の厳正公平なる方であるから、いろいろと要務多端のためにさような、他に宿泊されるようなことも起ろうかと存じますけれども、どうも池田氏のことにつきましていろいろのうわさのあります際に、この次席検事と池田氏が同じくその日その夜御帰宅にならぬということは、その間に何か関係があるかどうか。第一そういう事実があつたのであろうかどうか。田中次席は家をお明けになるようなことはめつたにない方だそうでありますが、その日は御帰宅にならなかつたという報告がある。池田氏は翌日のあかつきになつてお帰りになつたという報告があるのであります。私は自分が目撃したのじやないのでありますから、その真否のところはわかりません。但しそれが荒唐無稽のことでないことは、そこへ張り込んでおつた人からの報告でありますがゆえに、事実だと思います。ただそれがどういう関係に立つのか私にはわかりませんが、田中次席検事が何事かを吉田総理大臣に復命したとか、池田氏と連絡しておるとかいううわさか実はある際でありますので、二十八日か一日の田中検事の行動について――もしさようなことが全然なかつたならばよろしいのでありますが、あつたとするならばどういう理由によるのであるか、世の疑惑を解くように御釈明いただければけつこうだと思うのであります。これは今ただちに答弁を要求するのではありませんから、御調査の上で知らせていただけれはけつこうだと思うのです。ただいま御答弁いただけますか。
  46. 井本臺吉

    ○井本政府委員 具体的な日時の御指摘がありましたので、調べて御報告申し上げたいと思います。  概活的に申しますと、田中次席は検察官の中でも特に謹厳な方でありまして、世に言われておるような疑惑を受けることは、私どもとしては全然考えられない人であります。詳しいことは日時の御指摘がありましたので、さつそく調べまして御報告申し上げます。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それではここに大臣も刑事局長もおいでになりますので申し上げますが、かような質問をいたしましても、私ども検察庁の活動に対して疑念を持つておるわけでは毛頭ございません。非常に固い決意を持つて、この困難な捜査をなさつておることは十二分に了承いたしております。ただ私どもはかえつてそういう疑惑を打消したいための質問でありますので、さような趣旨に御理解いただきたいと思います。  今法務大臣のおつしやつたように、たびたび検事総長にお目にかかつてその決意のほどを聞いておりますし、またいろいろな人たちの話を総合いたしましても、相当の決意を持つて日夜精励されておるということは私ども十分承知いたしておりますが、少しでも世の疑惑のないように、相ともに協力して、検察庁をして政界の粛正を遂げさせたいという老婆心からの質問でありますので、その旨御了承願いたいと思います。  第三点は、小さな問題でございますが、今検察官、検察事務官及び裁判所の書記官たちの給料の改正、号俸調整と申すことが行われておるのでありすす。そして六級の一号という書記官が四号調整されまして六級の五号という俸給になるのであります。これは非常に薄給な彼らのために喜ぶべきことだと存ずるのであります。ところがこの号俸調整をやるに際しまして、ここに妙な条件が附加されておるということを私どもは訴えられておるのであります。この事実の有無、もしありとするならばどういう理由であるかを承りたいと思うのであります。これは裁判所にも検察庁にもありますが、法務大臣でありますから検察庁の関係についてお尋ねいたします。その三つの条件と申しますのは、一つは超過勤務手当を廃止するということであります。いま一つは、一週五十二時間勤務を遵守せよということであります。三番目は職員組合を解散せよ、あるいは職員組合に入つておる者はこれから脱退せよ、これを実行しなければ号俸調整はやらないということで、検察庁の職員組合はすでに解散したと聞いております。そこでほかのことはさておきましても、この検察庁の職員組合を、号俸調整をやることを理由に解散させたような事実があるのかないのか、この点についてお尋ねいたします。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。検察事務官はその職務の性質上、御承知の通り公安職として一般の職員とは違つた持別な性質を持つておりますので、数年前からこれに関して待遇改善をしてくれという熱望が非常に熾烈でありました。私就任後間もなく検察事務官の代表に会いまして、実は非常に心を動かされましたので、爾来何か用があつたら遠慮なく私の部屋に入つて来るように言つておりますし、その待遇についてはまことにお気の毒だと思いまして、実は自分自身もしばしば人事院に出かけたわけでございます。今御指摘のように本年三月一日から一部のほんとうの事務的なもの、つまりいわゆる検察事務官でない普通の事務的な仕事をしている、肩書は検察事務官となつておる人々を除いて、いわゆる四号調整が実現いたしまして、実に互いに喜び合つた次第でございます。それについて今御指摘のような条件は全然ないのでございます。  まず第一に超過勤務のことを申し上げたいと思います。今申し上げましたように、人事院と大蔵省が直接事務官の特殊性を認めてくれましたのは、警察官等に準ずる公安職であるということを認めた結果でございますので、勤務時間を八時間延ばして一週五十二時間にすると公にきめるということは、いろいろ相談しましてやむを得ないのではないか、と申しますのは、事実上今そのくらいやつておりますのでこれはやむを得ないのではないか、それよりも検察事務官自身も号俸調整の行われることを熱望をいたしましたので、これはやむを得ないと考えた次第でございます。  超過勤務当も全廃したのではないのでありまして、五十二時間以上勤めますればやはり超過勤務とみなすということにいたした次第でございます。これも事前に検察事務官の代表者によく了解を求めた次第でございます。  最後の相当重要な点、すなわち組合をやめたら月給を上げてやるというようなことは全然ないのでありまして、私はそういうことはあるいは御了解願えるかと思いますが、ああいう薄給の、いわゆる下積みになつて縁の下の力持ちになつている人たちの号俸を上げる条件として、法務大臣がそういうことを言うことは実に忍びないことでありまして、私はそういう気分に、もしたれかが言つてもなれません。ところが事実としましては、三月一三日組合を知り人たちは解散したのであります。私が知りましたのは、あまり近来の朗報でありますので――ちよつと全国から検察事務官の代表が上京しておりましたので、異例であるそうですが本省でお祝いをやつたのです。検事総長以下そろつてもらいましご乾杯をいたしましたときに、代長者があとでちよつとあいさつがあるといつて読み上げたのは、つまり警察官などと同等の公安職としての待遇を認めてもらうために主として組合を結成したので、主要目的が達したから自発的にやめるということを紙に書いて朗読しいたました。私はどうもその心持がお気の毒になりましたので、すぐ全部列席しておられる人の前で、組合がなくなつたからもううるさいものがなくなつたという態度はぼくはとりたくない、だから今まで組合を結成していたと同様に何でも要求を言いに来てください、こういうあいさつをいたした次第でございます。従つてこれは引きかえ条件になつておりませんし、また引きかえ条件にすべきものでもない、それは不当なことだと存じておりますから、どうぞ御了解を願いたいと思います。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は大臣の心持はよくわかる。おそらく犬養大臣はさようなお心持であろうと存じます。そうして犬養大臣の耳にまでは到達しないようにやられたと思うのでありますが、これはおそらくずつと下の事務官連中の直近の監督者が穏密裏に勧誘したのじやないかと思われます。しかし大臣はこれは御存じないかも存じませんが、どうも私の調査いたしました範囲におきましては組合なんかやめてしまえ、そうしないと号俸調整はむずかしぞという説明をされたらしいのであります。   〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 しかしこれは大臣の御方針から出たのではないと思われますので、これ以上大臣を責めましてもいたし方ないと存じますが、ただもし大臣が今おつしやたように、こんな薄給の下積みの連中に多少の給料を出してやることをもつて彼らの憲法に許されたる団結権を蹂躙するような考え方というものは毛頭ない、また私はしかあるべきものだと考えるのであります。どうぞさような疑いがありまするので、大臣として調査していただきたい。これは一職員組合の問題でありましても、これが裁判所の職員組合に移つて参りまして、検察事務官はちやんとそれを承知してやつたじやないか、お前たちはどうしてがんばるのだ、お前たちだけは号俸調整をしないぞとやられておるので、その波及するところ重大であります。  近来憲法は飾り物みたいになりました。審法をそのままにしておいて、その実質的内容を変改することがはやつて来た。私はこれは憲法の崩壊と考えておる。改廃ではない。修正でもない。そのままの姿で立腐れにするのであります。これは大臣の属しておる自由党とわれわれ見解が違うかもしれませんが、憲法九条も立腐れになつておる。そのままの姿において実質はみな違つて再軍備をやつてしまつておる。一体かようなことが各派に起つたとするならば、私どもの基本法というものはいかなる権威を持つものであるか、ここに重大なる国家基本法に対しまする権威の問題が起つて参ります。これは民主政治の原理、原則を破壊します危険なる思想だと考える。立腐れであります。外かけがそつとそのままの形であつて中はみな腐つてしまつておる。憲法には御存じの通り団結権が許されておる。国家公務員といえどもストライキ権はありませんが、団結権があるはずであります。この憲法が存在する限り号俸調整してやる、月給を上げてやるから組合をやめろ、これはゆゆしい憲法破壊の思想であります。私はこういうものを全部破壊活動防止法違反として告発すべきものだと思う。こういうことをして小さいところから憲法をなしくずしにくずしてしまつておる。ですからこれは重大なる問題であると私は思う。せつかく軌道に乗りました日本の民主主義を逆転せしめ、また昔の東条内閣時代のような一君万民の政治体制が順次出て来るのではないか。今度の教育二法案におきましても多大の疑惑があるし、逐条審議も十分尽されずしてこれは参議院に送られてしまつた。当法務委員会において私及び私たちの同僚が犯罪構成要件に対して多少の質問をしただけであつて、ほとんど逐条審議を文部委員会でしなかつたそうでありまして、かようにして思想の自由、言論の自由がだんだん圧迫されるおそれが出て来る、そこへ持つて来て今度は官庁の職員組合なんかを食らわすに利をもつてこれを解散せしめるというようなことがもし許されるということに相なりまするならば、憲法は立腐れとなり、日本の民主政治は根本的に破壊される、事小なりといえども重大な問題を内包しておると存じます。そこでこれは法務大臣が責任をもつてかような事情があつたかないか御調査の上御報告を願いたい。ただくれぐれも大臣の意思でないことは、私どもは十分わかりますから、そういう下つぱの連中が親の心子知らずで、さような妙なことをやつたかどうか御調査願いたいと存じます。  それからもう一点、今度はまつたく趣旨の違うことに相なりますが、立つたついでに質問させていただきます。それはこの政界の粛正をはかりまする責任が国会におると私は存じます。国家の最高機関としてその実質を備えまするには、みずから清める働きをしなければならない。しかるに近来の国会というものは相当その権威を疑われまして、これは日本の民主政治のためにゆゆしき問題だと存じまするが、それにはいろいろの方法がございましよう。第一に民衆の啓蒙、訓練、これは重大なことでございましようが、これを一面法律的に規制して行くということもまたわれわれの責務でなければならない、こう考えます。それには政治資金規正法の改正、公職選挙法の改正あるいは大臣が私の企業に従事してはならぬというような法律案等みなその対策であろうと存じますが ここに私どもはあつせん収賄の行為を罪として処罰するということによりまして、世にいろいろ揣摩臆測をされておりまする行為について、国会みずからが発議してこの根絶を期するという意味におきまして、あつせん収賄罪の議員提案を行つたのであります。当法務委員会にこれが付託せられ、来週から提案理由の説明その他の審議に移していただきたいと考えておるものでありますが、なおかような綱紀粛正の大本でありまする法務省におきましては――この原案は法務省にも差上げてあるはずでありますが、かようなあつせん収賄処罰に関する法律に対しましていかなる御見解をお持ちでありますか、政府の御意思を承りたいと存じます。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申しあげます。御質疑の第一点については、国務大臣としてお答え申し上げますが、今検察当局においていろいろ陸上あるいは海運に関する不正事件の捜査をやつております。これはきわめて大切なことでありますが、捜査そのものだけでは建設の意味も持ちません。従つて指摘のように選挙のやり方あるいは造船割当のやり方とかすべて今後再び議会政治が国民の信頼を得るだけの建設的な努力を他面しなければならぬということは、心に深く銘記しておるつもりでございます。その意味から一つの試案としてあつせん収賄の御議論が、猪俣委員のみならず相当各方面から出ておることは事実でございます。すでに十分御承知のようにあつせん収賄を罰すべしという思想は、戦時刑法にもあるいは刑法試案にも出て来たものでございます。法務省の考えを申し上げまするならば、このあつせん収賄に対する今の世間の輿論の趨向から考えまして、これをほうつておくということはいかがかと考えております。従つてまじめにこれを取上げるということが世間の法務省に期待するところであると存じまして、すでに調査研究を開始いたしております。これについて実は省内にも異論があるわけでございまして、あるいは各政党、与党のみならず野党の各個人間にも多少御異論があるように伺つておるのでありますが、その一つの危惧は、すべて主として政府の提案いたします法律案について、いつも議員間において反対論の一つ根拠となりますのは、運用がどうか――ことに日本の官吏は法の運用について欧米各国よりも円滑を欠く、とかく行き過ぎがあるという御議論が、必ず新しい法律案のたびに出るのでありますが、このあつせん収賄につきましても、運用についての危惧という御議論がありまして、三日ぐらい前の東京の某新聞の論説にも、このようなことが掲げられておりました。そのような同じ意味の危惧が実は法務省の中にもあるわけでございます。それからもう一つは非常に適用範囲が広がつてしまうので、あつせん収賄を罰すべしという議を取上げるにしても、何かそこで中庸を得た締めくくりのわくというものがありそうなものだというのが、目下法務省の調査の一つの重点になつております。これについて猪俣委員の御試案として、不当な利益という文字のかわりに賄賂としたら引締るのではないかというふうに仰せられた――これは直接伺つたわけではございませんで、間接に法務省の方から承つたのでありますが、これについても省内に多少議論がございまして、と申すのは賄賂というと実費もまざる場合が多い、不当な利益といえばそうでないというので、かえつて賄賂の方が広くなつてしまうのではないかという議論がありまして――つまりそういう議論で今いろいろ研究をやつておる次第でございます。これを要するに調査研究はまだ途上でございます。むしろ入口であると申し上げてもいいかと思いますが、あつせん収賄というものは、世間で言つても、これはやぼな議論であると言つてほうり出しておるという状態では少くもないということだけは、言明できる段階にある次第でございます。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いま一点お尋ねいたしますが、当法務委員会におきましても、国政調査といたしまして違憲立法に対して違憲訴訟を起しまする手続法の制定ということを、今小委員会をつくつて研究中であります。ドイツあたりの実例を見ますと、相当詳密な憲法違反の訴訟を起しますについての手続法が規定されておりますが、日本にはそれがない。私どもの党で先般警察予備隊の違憲訴訟を起しましたところが、実体に入らずして手続がないという理由で却下に相なつた。こういう憲法という基本法をどこまでも持ち続けて行く――もちろん正式な手続で改正せられればそれは合法的でありますが、憲法があるにかかわらず、その憲法の論理解釈あるいは条理解釈、文理解釈、精神解釈、あらゆる解釈から見て違憲だと思われるような法律がなきにしもあらず、行政行為がなきにしもあらずであります。そこで憲法第八十条一の趣旨に従いまして、憲法を守らんがために訴訟をするということがあるのですが、どうも手続法がない。そこでお尋ねいたしますることは、一体憲法に、最高裁判所がすべての法律、命令その他の行政処分の合憲なりやいなやを判断する最終の権限を与えているように規定されておるにかかわらず、その訴訟手続法がないということは、私は不備じやないかと考えるのであります。そこで政府といたしまして、かような手続法を別につくるか、あるいは現在の裁判所法を改正して、かような違憲訴訟ができるような道を開くか、さようなことについて留意せられ、あるいは研究せられ、あるいはまた申し合せられている点があるのかないのか、その点をお尋ねいたします。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 最高裁判所について憲法裁判所としての性格をいかにすべきやという問題は、論議したことがございます。しかしお尋ねのような違憲訴訟に関する手続法の問題では、法務省内におきましてもまだ意見がまとまつておりません。従つてただいまの御議論は、十分一理あるものと尊重申し上げますが、まだ法務省の意見はこれであると申し上げる段階に至つておりません。しかし十分重大なこととして研究をいたしたいと考えます。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ただいま私が申し上げました質問のうち御回答いただきますことは、号俸調整という問題にちなんで検察事務官らの職員組合を解散せよというような請求が、事務官の上級の人たちによつて行われたことがあるかないか。まつたくこれは事務官たちが自発的に、何らの示唆、それこそ教唆扇動を受けずして解散したものであるかどうか。その点につきまして、要するに教唆扇動をした者があるのかないのか。教唆扇動といえばいつでも進歩的分子の方面ばかりに向けられるようでありますが、こういう憲法に逆行するようなことに対し、教唆扇動をした者があるのかないのか。刑法上の教唆扇動ではなくて、実際上そういう俸給を上すというようなことでもつて組合の解散を促進させるような言動をした者があるかないか。これは調査して御報告いただきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 さつそく調査いたして御報告申し上げたいと思います。
  55. 木下郁

    ○木下委員 関連しまして御質問いたします。これは猪俣委員の言われた通り、西郷氏の事件については、相当に新聞なんかに出ている筋にも信ぜられる節がたくさんある。これにつきましては党の方から検事総長に汚職事件を徹底的にやつてもらいたいという申入れをした際に、私は個人的な意味で私の感じを率直に申しておるわけであります。それは新聞に出ている通りであつても、西郷氏が賄賂を、池田氏がそれを返したとか返さぬとかいうことは別問題としましても、提供したことは、大方見当がつくのじやないかと思われる。あれほどの嫌疑がある人であれば、有田君の逮捕の許諾の申請があつたときに何ゆえに西郷氏に対してそれがなかつたかということについては、世間にも非常な疑惑を持つておる人がたくさんあります。かく申す私自身が、その点については西郷氏は西郷南州の直系の孫である、あるいは侯爵であつて、貴族院に籍があつたというような、その面でしんしやくされたのじやないかという疑いを持つ方が無理からぬ事情があるように思つております。さような点について十分国民の納得行くようにしてもらわなければならぬ。それから新聞に伝えるところでは、政界の相当の人たちが極秘の間に被疑者としてかあるいは参考人としてかわかりませんが、調べられておるということであります。かようなことも本人の名誉とか何とかいうことでしんしやくするのか知りませんが、ありのままに、調べたら調べたということは国民の前に発表すべきものである、私はさような意味で人によつて参考人で調べたとか調べぬとかいうことを、こつそり調べてそのままにしておくというような取扱いをすることは、大きな面から見ますと、国民の司法府に対する信頼をそこなう結果になると思う。どんな地位の人であろうと、それが被疑者でなくて参考人として調べたなら参考人でよろしい、ありのままに世間に発表すべきものであるというふうに考えておるのであります。一々の具体的な問題についてこれは捜賓の上にさしつかえがあることもありはせぬかと思いますが、われわれもまた法務委員としてその点については実は十分考慮して聞いて来ておるのでありますが、さような点については法務大臣はどういうようにお考えになつておりますか。私自身はありのままに国民にその日その日あつたことを知らせるべきだと思います。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 具体的なことについて答弁をお求めになるならば刑事局長から申し上げますけれども、私の知つている限りでは、元侯爵であるとかあるいは偉人の孫であるとかいうことでしんしやくしているかどは少しもないように報告を受けております。また参考人として事情聴取した人については、一々私に報告がありません。被疑者の場合だけあるわけでございまして、その点についてもし御疑問がございますならば、刑事局長をして答弁をいたさせたいと思います。
  57. 木下郁

    ○木下委員 私はだれを調べたか調べぬかということを今ここで聞こうというわけではありません。そういうことをその人の地位によつてこつそりやるというようなことの取扱いが、捜査の面で必要であればそれもいいけれども、世間はそういうふうにとらない。やはり人によつて司法権、捜査権の活動か甲乙にせられておるのだという感じを国民が持つたのでは、やはりそれは司法の威信を傷つくることになるというふうに考えておるから、そういう点、捜査の上で調べたけれども、その人を調べたことを世間に出すことは世間のうわさを高めるとか、あるいはその人の名誉にならぬからというようなよけいなしんしやくをしておるのかどうか、しておるならそれは私自身としてはやむべきものであるし、やめてもらいたいというふうに考えております。その点を申し上げた次第であります。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 御質疑のお気持はよくわかりますが、私の報告を受けている限りにおいては、人の地位によつて上下はしておらないようであります。ただ参考人という場合は、日本の社会の参考人からの事情聴取に対する常識の水準から申しまして、あるいは御当人の非常に迷惑になるような場合は、十分気をつけてやつておる、それはむしろ検察庁が自発的に進んでやつておるような場合があるのではないかと思います。ただ申し上げましたように、参考人として呼んだ場合は一々私に報告がございません。従つて御注意の点は十分検察当局に申し伝えたいと思います。
  59. 木下郁

    ○木下委員 これは刑事局長に伺いたいのでありますが、教育二法案が修正されて衆議院を通過いたします前に、あの修正案の質疑応答を私も文部委員会で傍聴したのです。そこにおいては、あの修正案における「当分の間」ということが大分論議の焦点になつていた。そのときのそれに対する解釈について、刑事局長の御答弁がちよつと私ふに落ちない点があつたのです。あの法律はまだ成立はしておりませんが、成立したと仮定いたしまして、当分の間あの法律が効力を持つということになれば、やはりそれは法律通り当分の間なのであつて、その期間というものはやはり社会通念上考えられる当分の間である。国会があの法律を廃止するまでだというが、やはりこういう文句がつくとつかぬとでは意味が違つて参ると思います。これは常識的にはつきりしている。大体あれはあなたがおつくりになつたわけでありませんけれども、その「当分の間」というものを、あなたの解釈としてはどの程度くらいにお考えになつているか。あるいはまたその点まで行かなければ「当分の間」というのはやはり当分の間として、その有効期間は裁判所で社会通念に基いて判断すべきものだというふうに御解釈になつているかどうか。その点を一ぺん伺つておきたいと思います。
  60. 井本臺吉

    ○井本政府委員 臨時措置法とかあるいは当分の間とかいうような立法はありますが、とにかく立法の趣旨が臨時とかあるいは当分の間なのだということだけでございまして、一年が当分の間であるとか二年が当分の間であるとかそういうような期間は、この文字から出て参らぬと思います。従つて国会で廃止にならなければ臨時立法でも「当分の間」でもそのまま続くということになると私は考えます。ただそれではなぜ「臨時」とか「当分の間」というふうなことをつけて、ほかの法律との区別はどうなるのかというお尋ねになりますと、当時の法律の趣旨が「当分の間」の法律であるという意味において、確かにある程度は違いますけれども、効果の上においてはほとんど違わないというふうに私は考えております。
  61. 木下郁

    ○木下委員 それは、法文の表題に臨時措置法というように「臨時」という文字がついておるからという問題と、それからこの施行規則とか附則の中に当分の間効力を持つという趣旨とにおいては、これは法律的に十分違わなければならぬし、最終的には最高裁判所で判断すべきことと思いまするけれども、どうもあの修正案というものは三派が妥協することに気をとられておつて立法技術の面で、そういう点についての検討が足らないでああいうものができたのじやないかというふうに私ちよつと感じておるわけであります。さような点については、今のお話の通りに附則で当分の間これこれというものがあるのを、臨時措置法なり臨時何何というような法律の題目にある「臨時」というものと同じように解釈することは――これは議論になりますが、私としては、それは今の刑事局長のお話が全然間違つておると考えております。いずれこれはあの法律がもし参議院を通つて具体的問題をさばくときになりますと、必ずやこれは最高裁判所の判断を仰いで、「当分の間」というものが今刑事局長のお話のような筋の意味を持つか、それとも「当分の間」というものが社会通念上当分の期間か過ぎて、自動的に失効するものかということが問題になると思います。そういう点については今の御見解に私は承服することができないということを申し上げておきます。
  62. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連して。そうするとこの「当分の間」というのは、政府でお出しになつたのじやないからどうも政府に質問をしても政府も当惑なさると思いますが、法律としてもし制定いたしましたならば、やはり行政解釈の第一陣は法務省でありますがゆえに、今の「当分の間」という文句のついておる法律は、あなたはそういう文句のつかない法律と大して違わないという御解釈ですが、それも一つの見解かと存じます。そのつけた連中は、今日教組がどうも偏向教育をやるような態勢にある間は、あれは存置してよろしい、そういうことが直つたならば廃してもいい、こういう含みであの法律全体が日教組に対する一つの脅迫なんであるが、それはそれといたしまして、そうすると、いわゆる法学上唱えられております限時法の問題は起らぬという御見解ですか。
  63. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私は「当分り間」と書いてありましても、国会で廃止にならなければ続く法律でありますから、いわゆる限時法の問題は起きない、こう考えます。
  64. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会の開会日時は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時七分散会      ――――◇―――――