○猪俣
委員 私は大臣の心持はよくわかる。おそらく
犬養大臣はさようなお心持であろうと存じます。そうして
犬養大臣の耳にまでは到達しないようにやられたと思うのでありますが、これはおそらくずつと下の事務官連中の直近の監督者が穏密裏に勧誘したのじやないかと思われます。しかし大臣はこれは御存じないかも存じませんが、どうも私の調査いたしました
範囲におきましては組合なんかやめてしまえ、そうしないと号俸調整はむずかしぞという説明をされたらしいのであります。
〔
委員長退席、鍛冶
委員長代理着席〕
しかしこれは大臣の御方針から出たのではないと思われますので、これ以上大臣を責めましてもいたし方ないと存じますが、ただもし大臣が今おつしやたように、こんな薄給の下積みの連中に多少の給料を出してやることをも
つて彼らの憲法に許されたる団結権を蹂躙するような考え方というものは毛頭ない、また私はしかあるべきものだと考えるのであります。どうぞさような疑いがありまするので、大臣として調査していただきたい。これは一職員組合の問題でありましても、これが
裁判所の職員組合に移
つて参りまして、検察事務官はちやんとそれを承知してや
つたじやないか、お前たちはどうしてがんばるのだ、お前たちだけは号俸調整をしないぞとやられておるので、その波及するところ重大であります。
近来憲法は飾り物みたいになりました。審法をそのままにしておいて、その実質的内容を変改することがはや
つて来た。私はこれは憲法の崩壊と考えておる。改廃ではない。修正でもない。そのままの姿で立腐れにするのであります。これは大臣の属しておる自由党とわれわれ見解が違うかもしれませんが、憲法九条も立腐れにな
つておる。そのままの姿において実質はみな違
つて再軍備をや
つてしま
つておる。一体かようなことが各派に起
つたとするならば、私どもの基本法というものはいかなる権威を持つものであるか、ここに重大なる国家基本法に対しまする権威の問題が起
つて参ります。これは民主政治の原理、原則を破壊します危険なる思想だと考える。立腐れであります。外かけがそつとそのままの形であ
つて中はみな腐
つてしま
つておる。憲法には御存じの
通り団結権が許されておる。国家公務員といえどもストライキ権はありませんが、団結権があるはずであります。この憲法が存在する限り号俸調整してやる、月給を上げてやるから組合をやめろ、これはゆゆしい憲法破壊の思想であります。私はこういうものを全部破壊活動防止法違反として告発すべきものだと思う。こういうことをして小さいところから憲法をなしくずしにくずしてしま
つておる。ですからこれは重大なる問題であると私は思う。せつかく軌道に乗りました日本の民主主義を逆転せしめ、また昔の東条内閣時代のような一君万民の政治体制が順次出て来るのではないか。今度の教育二
法案におきましても多大の疑惑があるし、逐条審議も十分尽されずしてこれは参議院に送られてしま
つた。当法務
委員会において私及び私たちの同僚が犯罪構成要件に対して多少の
質問をしただけであ
つて、ほとんど逐条審議を文部
委員会でしなか
つたそうでありまして、かようにして思想の自由、言論の自由がだんだん圧迫されるおそれが出て来る、そこへ持
つて来て今度は官庁の職員組合なんかを食らわすに利をも
つてこれを解散せしめるというようなことがもし許されるということに相なりまするならば、憲法は立腐れとなり、日本の民主政治は根本的に破壊される、事小なりといえども重大な問題を内包しておると存じます。そこでこれは法務大臣が責任をも
つてかような事情があ
つたかないか御調査の上御報告を願いたい。ただくれぐれも大臣の意思でないことは、私どもは十分わかりますから、そういう下つぱの連中が親の心子知らずで、さような妙なことをや
つたかどうか御調査願いたいと存じます。
それからもう一点、今度はま
つたく趣旨の違うことに相なりますが、立
つたついでに
質問させていただきます。それはこの政界の粛正をはかりまする責任が国会におると私は存じます。国家の
最高機関としてその実質を備えまするには、みずから清める働きをしなければならない。しかるに近来の国会というものは
相当その権威を疑われまして、これは日本の民主政治のためにゆゆしき問題だと存じまするが、それにはいろいろの方法がございましよう。第一に民衆の啓蒙、訓練、これは重大なことでございましようが、これを一面
法律的に規制して行くということもまたわれわれの責務でなければならない、こう考えます。それには政治資金規正法の
改正、公職選挙法の
改正あるいは大臣が私の企業に従事してはならぬというような
法律案等みなその対策であろうと存じますが ここに私どもはあつせん収賄の行為を罪として処罰するということによりまして、世にいろいろ揣摩臆測をされておりまする行為について、国会みずからが発議してこの根絶を期するという
意味におきまして、あつせん収賄罪の議員提案を行
つたのであります。当法務
委員会にこれが付託せられ、来週から提案理由の説明その他の審議に移していただきたいと考えておるものでありますが、なおかような綱紀粛正の大本でありまする法務省におきましては――この
原案は法務省にも差上げてあるはずでありますが、かようなあつせん収賄処罰に関する
法律に対しましていかなる御見解をお持ちでありますか、政府の御意思を承りたいと存じます。