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1954-03-26 第19回国会 衆議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十六日(金曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       本多 市郎君    牧野 寛索君       木原津與志君    木下  郁君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月二十五日  刑法の一部を改正する法律案八百板正君外百  三十四名提出衆法第一三号) 同日  宮崎地方法務局日南支局存置に関する請願(持  永義夫紹介)(第三九二二号)  同(伊東岩男紹介)(第三九八七号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  利息制限法案内閣提出第一〇六号)  民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第一一六号)  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  去る二十四日付託されました民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。三浦政府委員
  3. 三浦寅之助

    三浦(寅)政府委員 民事訴訟用印紙法等の一部を改正する法律案について、提案理由説明いたします。  民事訴訟用印紙法は、昭和二十三年七月に改正が行われたまま爾来五年半の間重要な改正を経ることなく今日に及んでおります。御承知通り、その間の物価上昇はなお著しいものがありまして、これを東京小売物価指数によつて見ますに、本年一月の指数昭和二十三年の改正案を立案いたしました当時と比較しまして約三倍、同じく卸売物価指数によりますと約四倍となつております。これに前回の改正が当時の物価事情のもとにおきましてもきわめて控え目であつたこと等の関係も加わりまして、現行印紙額算定基準現下物価事情に照してあまりに小刻みにすぎるきらいがあり、また印紙の額もあまりに低廉であつて現下物価事情に適しないものがあります。この法律案は、以上のような見地から、現在の経済事情の実際に即するように現行印紙額算定基準及び印紙の額に適当な改正を加えることを目的とするものであります。  以下民事訴訟用印紙法改正の要点を申し上げますと、第一は、訴状に貼用すべき印紙の額は訴額に応じて定めることとなつておるのでありますが、現在その基準となるべき訴願があまりに少額をもつて区分されており、これがため現下経済事情に沿わないうらみがありますので、訴額五百円まで、二千円まで、五千円までという三段階を廃し、訴額一万円までの訴訟につきましては印紙の額は一率に百円とし、また訴額が一万円を越えるものにつきましても、現行法超過額千円ごと一定額を加算することとしているのを改め、一万円ごと一定額を加算することとしたことであります。  第二は、非財産権上の請求にかかる訴状に貼用すべき印紙の額につきまして、物価上昇率等考慮して、現行法訴額を三万一千円とみなして定めることとしておりますのを、訴願を五万円とみなして定めることに改めたことであります。  第三は、現行法期日指定等の申立て、その他申出、申請につきまして、訴額または請求額五千円を限界として貼用印紙額に差等を設けておりますが、さきに提案いたしました裁判所法の一部改正案趣旨考慮に入れてこの限界額を二十万円に引上げることとし、また印紙の額につきましても物価上昇率、右の限界額大幅引上げ及び十円未満の端数の整理等考慮して、三倍から六倍程度に増額することとしたことであります。  なお、この法律案におきましては、民事訴訟用印紙法改正に伴いまして、これと同様の趣旨のもとに、商事非訟事件印紙法及び民事調停法につきましても所要の改正を加えることといたしました。  以上がこの法律案提出いたしました理由であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて提案理由説明は終りました。本案に対する質疑は後日に譲り、本日はこの程度にとどめておきます。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 次に人権擁護に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。木下郁君。
  6. 木下郁

    木下委員 人権擁護局長ちよつと伺つておきたい。栃木県の那須郡の小川町というところで、いわゆる町のボスがおつてせつかく憲法で発足した民主主義が昔の姿で圧迫されているということにつきまして、小川町に青壮年愛同志会というものが見るに見かねてつくられ、その方の人たちから陳情書が来たのであります。それを見ますと、相当事実らしく思われる節があるのであります。人権擁護の面を担当されている擁護局としては、当然こういう問題はすでにお取上げになり、調査もされておるのではないかと思いますが、御存じであるかどうか、御存じてあつたこれに対してどういうふうにお取扱いになつておるか、その点を伺いたいと思います。
  7. 戸田正直

    戸田政府委員 お尋ねの点につきましては、ただいま宇都宮地方法務局におきまして事件を受理いたしまして調査をいたしておりますし、また人権擁護局から事務官を派遣いたしましてただいま調査をいたしておる次第であります。本件申告者鶴蒔清、二十五歳外二十九名から申告されておりまして、被申告者増子富壽太外五名――土建業でありますが――を相手といたしまして、宇都宮地方法務局事件申告されたのであります。  事実の要旨は、「栃木那須小川町は、宇都宮市より東北に約三十キロ、那珂川の上流に位し、町制をしいてはいるが、住民の大半は農業を営んでいる町であつて、本来ならば平和な農村であるべきはずであるのに、数年前より暴力と奸智にたけたるボスの一群が陰然たる勢力を張るようになり、町政の上に、町民継済生活の上に大きな支配力を有するに至り、町民の中には被申告者等の不法なる圧迫と権利の侵害を受くる者が多いのであるが、いずれも後難を恐れてその不当を糺弾せんとする者もなく、まつた町民自身民主的手段によつて憲法の保障する基本的人権を守るすべを知らず、ただ恐怖におののいて日常生活を送つている状況である。かような状況下にあつたため、さすがに正義感よりして黙止することができないとして、心ある有志が期せずして集まり、まず実情関係方面陳情せんことを決定し、また青年団長である申告者鶴蒔清は、昭和二十九年一月十五日の成人式に列席し、小川町におけるボスの不法な暴力権力を排して、町の民主化必要性を強調したところ、被申告者等の憤激を買い、同人等より宇都宮地方裁判所大田原支部謝罪広告文掲載及び金六十万円の慰藉料請求訴訟を提起された。  よつて申告者等昭和二十九年一月十九日ごろ小川青壮年愛同志会なるものを結成し、その会員も約四百名に及び、明朗なる民主的町民生活がなし得るよう努力しているが、小川町民自身の力によつては、とうていボスの不法な圧力を排除して、日常生活の平和と安全をはかることはきわめて困難な実情にあるから、すみやかに調査の上対策を樹立せられたい。」こういう申告であります。ただいま申し上げましたように、本件関係者が多数でありますし、また内容自体もきわめて抽象的でありますので、人権擁護局といたしましても、慎重に具体的事件調査等にただいま努力をいたしている次第でございます。
  8. 木下郁

    木下委員 この陳情書というのは私のところへも来ましたからさらにお聞きしたわけですが、陳情書だけを見ても、事実は相当深刻であるし、そういう運動が片いなかで自然発生的に起つたという点でも、やはりたまりかねて起つたんだろうと思う節もあるわけであります。こういう問題こそ、人権擁護の面においていろいろ問題がありましよう。人権擁護局が消極的な態度だけであると、人権擁護局を廃止するとか、せぬとかいう問題も起つているようですが、積極的に問題を取上げてやるということができれば、国の財政がどうだごうだというような問題はあつても、これだけは残してもらいたいということが世間に出て来るわけであります。人権擁護の点についていろいろな陳情なんかを受けますけれども、陳情なんかよりも、実績の面においてほんとうに真剣にやつているというところに積極的な活動がありさえすれば、そこにおのずから道は開くというふうに考えているわけであります。さような意味で、これはもうことしのお正月からの問題でもありますし、十分事実の真相を確かめて、ただすべきはただすということをやつていただきたいと思う次第であります。
  9. 戸田正直

    戸田政府委員 御趣旨ごもつともでありますので、十分調査いたしまして、事件の処理をいたしたいと思います。     ―――――――――――――
  10. 小林錡

    小林委員長 次に利息制限法案議題とし、質疑を行います。質疑通告がありますから、これを許します。木下郁君。
  11. 木下郁

    木下委員 前の利息制限法をやめて今度これをおつくりなつたことについて、その趣旨は大体わかるのであつて、そんなに内容を議論するところはありませんけれども、この利息については、一般金融業者間で行われている利息監督の面と、それから銀行とか、その他の金融業者利息に対する大蔵省監督の面との間に非常なギヤツプがある、そのギヤツプがやはり問題になつている。これが保全経済会というようなものができて来た原因だと思います。これはだれしも気のついていることと思います。そういう点について、私はそういう方面のことはまつたく門外漢ですが、聞くところでは、銀行なんかの場合はそうでないらしいですが、一般金融業者に対する大蔵省監督の面では、日歩五十銭まではよろしいというふうにしているということを聞いておりますが、一体どの程度暴利だとしているか、それから市中の金融業者に認めている金利の相場、こういうふうなものは、これだけの立案をされればそういう実際の御調査もなさつたことと思いますので、そういう点も伺いたいし、また金融業者は相当高い金利もとつているが、これまでのところは、千円以上は年一割を越えてはいけないというようなことになつているけれども、これを今度おつくりなつた基礎、実際の実情を、あらましでよろしゆうございますから伺いたいと思います。
  12. 村上朝一

    村上政府委員 現行利息制限法は、ただいま御指摘になりましたように、千円以上の元本につきましては年一割を限度としておるわけで、これを越える部分については裁判上無効ということになつております。現に裁判所あるいは執行機関等におきましては、この法律を厳格に適用しておるわけであります。ところが御承知のように、現実には相当法外な高い金利が横行しておるのであります。この関係を少し御説明申し上げますと、まず銀行その他の正規金融機関につきましては、臨時金利調整法という法律によりまして、行政上取締りが行われておるわけであります。ところが正規金融機関以外の貸金業につきましては、貸金業等取締に関する法律というものがございまして、これによつて一応の監督が行われておるわけでございます。これはきわめて程度の弱い監督でございまして、貸金業者が営業を始めます前に、業務方法書というものにどのくらいの金利で金を貸すかということを書いて大蔵省へ届け出るわけでございます。その限度を越えることはできないということになつておりますけれども、従来大蔵省では日歩五十銭見当までの金利であれば、業務方法書の届出を受理しておつたと思います。これは日歩五十銭を越えますと暴利行為という判断のもとに、日歩五十銭というところに線を引いておつたようであります。利息制限法との関係はどうなるかと申しますと、日歩五十銭という金利を約束いたしましても、これを債務者支払わないという場合に裁判所へ持ち出しますと、裁判所では利息制限法限度しか見てもらえない。従いまして、国家機関の力を借りて強制的に取立て得る限度というものは、年一割という利息に押えられておるようなわけであります。ところがそれ以上は事実放任されたような状態になつておりまして、今利息制限法解釈といたしましても、裁判上無効ということは、裁判所では無効と見るというだけのことで、任意支払つたものはそれをあとでとりもどすことはできないという解釈になつております。事実利息制限法限度を越える金利というものは放任された実情になつておるわけであります。日歩五十銭という限度は、これは数年前はともかくといたしまして、少くとも現在においては非常に高過ぎるというので、ただいま大蔵委員会で審議されております出資の受入、預り金及び金利等取締に関する法律案というのが少し前に提案になりまして、その方では日歩三十銭を越しますと、罰則がかかるということになつておるわけであります。この法律案によりまして極端な暴利は反社会的なものとして罰則を持つて取締る。半面におきまして現行利息制限法元本百円以下一割五分、百円ないし千円が一割二分、千円以上が一割というこの元本の刻み方が、現在の貨幣価値から申しましてかなり不合理になつておりますし、また金利の面でも現在の経済情勢から見まして、もう少し引上げた方が妥当ではないか、つまり裁判上保護せられる限度をいくらか引上げて、そのかわり極端な高利罰則取締る、その中間の金利が従来通り放任されるという三段構えになるわけであります。この法案で十万円以下年二割とございますが、年二割と申しますと日歩五銭五厘に当りますが、五銭五厘までは裁判上保護される、五銭五厘から日歩三十銭までは放任される、三十銭を越えると罰則がかかる、こういう三段構えになるわけであります。
  13. 木下郁

    木下委員 私は常識的に考えてみるときに、近ごろ話に聞けば銀行家は元気を出しておる。新聞でも日本銀行総裁はローマ法王と言つており、地方には戦争中に統合された一県一行というものが残つてつて豆法王というようなかつこうでなかなか元気がいいということであります。考えてみると、日本銀行は別としまして、銀行みたいなものは、自分の資金ではなくて、一般の国民から預金を集めておる、その預金に対しては、高いところで年六分ということでちよん切つておる。それでは銀行は何をするかというと、何も生産というものはない、生産には直接何も寄与してない、集まつたものを預かつてそれを貸すというので、ほかの経済的な面から見れば、金融の面を調整するとか何とかいうことは、それはまつたく役に立たぬというものではないけれども、何ら生産というものに対しては大きな寄与は、ほかの荷物を運ぶとかあるいは百姓が作物をつくるとか、その他の物をつくるという面からいうと、これはつけたりのものであると私は考えるわけであります。ところがそのつけたりの、生産の面に寄与する度合いの一番少い面銀行が、今の社会実情においては一番元気を出しており、各方面権力を事実上、手にしているという姿になつている。こういう姿についても、今までは日歩五十銭までは認める、裁判を起せばその点は無効ということになるかもしれないけれども、実際上そういうものが、大蔵省監督の面でとほうもない月一割以上に当るようなものが、認められて来ているというような政治の筋の通らぬやり方のところに原因があると思う。実際社会的な要求はそこまであるからそこまでやらなければ行かれぬのだということもあるかもしれませんけれども、せつかく利息制限法というものを、現在の実情に沿う意味で今度の改正案を出されて、高金利ということは――文化の低い経済力の弱い国が高金利だということは、これは常識的にうなずけることであります。そういうことについて、せつかく利息制限法を改めるというならば、その前に今お話金利の面、金融業者に対する金利の面をもう少し厳格にやるという方面に対しての立法ということが考えられなければならぬ。私はその点において考えて、何かそういうことをする気持がおありかどうかも伺つておきたい。今のお話で、大蔵委員会の方にかかつている問題もあるそうでありますが、そういう点があまりにつり合いがとれない。この利息制限法最高が年一割五分までにされているときに、片一方では月一制五分近くも認められ、それが暴利というところまでなるまでは、実質上監督の面で許されているというようなことがわかり切つていると思うわけであります。そういう点についてはなお積極的におやりになる気持を持つているかどうか伺いたい。
  14. 村上朝一

    村上政府委員 金融機関のうち、銀行その他の正規金融機関金利につきましては、先ほど申し上げました臨時金利調整法適用があるわけでありまして、正規金融機関日歩三十銭とか五十銭とかいう高利をとつているようには聞いておりません。よくいわれる日歩五十銭とか月一割何分というような金利は、正規金融機関でない貸金業者が主としてそういう高利をとつているようであります。この面につきましても、先ほど申し上げましたように、別の法案日歩三十銭を越えると刑罰に付するということで、今後厳重に取締られることになるわけであります。その点もこの利息制限法改正とあわせて考慮をいたしたわけであります。
  15. 木下郁

    木下委員 実際堂々たる銀行世間から見ればAクラス、少くともBクラスに当るような銀行でも、実際面で裏金利というものを銀行理事者がとつているという事実がある。また現に日本銀行総裁銀行業者に対して裏金利というようなものをとつてはならぬというようなことを言つているということが伝えられております。そういう面でこれは保全経済会なんかのような好ましからぬものが出て来て世間にたいへんな迷惑をかけるというようなことができると思うのですが、そういう点について裏金利をとるとかいうようなもの及びその金融業者の今の日歩三十銭ぐらいまでならば大目に見るというようなところが、峻厳さが欠けておると私は思う。そういう点についてもう少し厳格にやつてもらいたい。最初に申しましたように、金融業者というものが、これは早く言うならふところ手をしておつて、何ら自分は勤労という面において寄与しないでおるもの、日本の国が今一番大きく要請されておる生産の面に対しては、経済界の一つの分子ではあるけれども、その働き自体に対してはほかの部面よりもあまり敬意を払わぬでもいいもの、あまり大事に取扱わなくてもいいものだというふうに私は考える。それは金融というものは、経済界の血の循環みたいなものだから大事なものだということもいいますけれども、しかしその元は何であるかといいますと、みなから自分の家に置いておつたのでは不安だからと言われるので、残つておる金を預けておくという、預金の面では非常に安い金利で押えておるというのが、世間で言われておる通りに、金融資本家というものが擁護されておつて金融資本が国政を左右するというようなことが言われるゆえんもそこにあると思う。そういう点についてこの改正自体をどうこう言うわけではありませんが、その方面取締りをひとつ考えなければ、いくらたつても実際社会高金利というものが直らぬ。それは年越しの金利の高い金を借りるというのは、それは金利の面だけではない。実際高金利でも何でもそれを払つて借りなければ、首くくりをしたり、監獄入りをするという状態の者がたくさんおるという事実も起るかと思いますが、そういう点は十分考えていただきたいと思います。  なおこまかい点について聞きたいと思いますが、一点だけ今度のこの法案の最後に、「この法律施行前になされた契約については、なお従前の例による。」この従前の例というものは、早くここで一例をあげると、二百万円なら二百万円を借りておつて、年二割でやつてつたとすれば、昔の例だと一割しか利息がとれない。今度の場合には一割五分まではとれる。その従前の例によるというのは、契約はこの法律施行前にしたのだけれども、金利は今度施行後にずつととつて行くという場合よりも、どつこいその分だけはこの施行後までとれないというところにまでするのかというようなふうに解釈されるべきものか。あるいはまたそれは過去の分については、それは旧法で行くのだ。その契約自体施行前にしたのですけれども、しかしその利息支払い義務というものは、これから先に来る。施行後に来る。そういう適用の面をどういう程度までこの従前の例というのが考えられておるか、伺つておきたいと思います。
  16. 村上朝一

    村上政府委員 この附則の第四項におきまして「従前の例による。」といたしました趣旨は、契約のときが施行前でありますれば、契約のなされた後に発生する利息につきましても、従来通りというつもりで立案いたしたのであります。こういう実体法関係におきましては、さかのぼつて過去の法律関係に修正を加えるということは原則として好ましくないというところから、かような案をつくつたわけであります。
  17. 木下郁

    木下委員 それが筋から言うと、契約自体を有効無効とするということなら別なんでして、過去に年一割五分と約束しておる、その五分だけが過去の分は切られたけれども、現にこれから先、時が経過するというもの、それに対しての損害というようなものまで約束上せつかく五分だけ払うことになつておるのに、その五分だけいかないというのも多少のつり合いがとれないのではないかというふうに考える。その契約自体をさかのぼつて効力変更を来すという、間接の意味では効力変更を来すことでありましようけれども、それほど厳格な法の遡及性を認めないという意味は、そういうところまで一体不遡及原則というものを要求しておるかどうか疑問があると思う。御解釈は今伺つた通りでありますが、これは相当はつきりさせておかないと、これが施行されるとすぐ具体的な問題としてかかるケースが起りはしないかと思いますので伺うわけであります。なお少しくこの利息制限決の問題については伺いたいと思いますが、今日はこの程度で終つておきます。
  18. 林信雄

    ○林(信)委員 利息制限法案について今木下委員より、私の考えます根本的なものと存じます点については質疑が試みられましたので、それらの点には重ねて触れないつもりであります。  この法案は言うまでもなく、これ自体によつて金融界利息制限するということではなくて、むしろ公平の観念よりいたしまして裁判制限以上の利息請求することを規制するにあると存じます。従いまして裁判上間々問題になりまするもの、すなわち利息の天引き問題あるいは諸種の名目を付しました金融業者の金銭の収受、そういう点が特に親切に規定せられんとするのでありまして、おおむね賛同するにやぶさかではないのでありますが、それにいたしましても、その巨細の点についてはなお若干の疑いを持つのであります。まずこれは今回初めて現われました規定ではないのでありますけれども、ここに利息最高限をきめられまして、それが必ずしも絶対に保持せられるものでなくて、借主が任意支払いました場合は、たといそれが定められまする制限額を超過いたしましても、その返還を請求することができない旨の規定であります。こういたしますと、先刻御説明のありました金融業者、これは正規金融業者でないと言われますが、その他の金融業者といたしましても、必ずしも脱法的とは言えないのでありますが、いずれにいたしましても、正規金融業者以外の貸金業者は、大方はこの法案のねらつております利息最高限以上の利率をもつて金融いたしておると思われる。従いまして御説明のように大蔵省関係でその最高限日歩三十銭にとどめ、それ以上は罰則をもつてこれに相対する、こういうことであるというのですが、処罰までせられる程度のものも、これを任意支払つてしまいますれば、やはり裁判上その返還を請求することができない。元本の入金にも利息の過払いにもならないという点が、観念上私にはぴつたり来ないのであります。言いかえますれば、ある限度のものにつきましては、これは考える余地もあるかとも存じますが、御説明のように、この法案のねらつております最高限日歩五銭五厘です。しかるに大蔵省は三十銭、しかしそれを越えた利息すらあるのでありますが、それを越えましたものも、この法案の一条二項は、言葉は適切でないかもしれませんが、一種の有効と見まして、その支払いは何ら後日の問題とすることはできない。ということは、その他の取締り規定が全然考えられない事態ならばまた別でありますけれども、かように他の措置といたしまして明瞭になつて参りまする以上、それ以上のものは何とか考える余地があるのではないか、こう思われるのでございますが、いかがでしようか。
  19. 村上朝一

    村上政府委員 利息制限法という法律は、金融の面における経済的弱者を保護するための社会政策的立法だと一般にいわれておるのであります。その趣旨を徹底いたしますならば、一定の限度を越えた利息は絶対的に無効とする。任意支払つた場合でも、その限度を越えるものはあとでとりもどしができるということが徹底した考え方でありまして、現行法解釈といたしましても、そういうふうに解釈する学説もあるのでありますが、「裁判上無効」という現行法の用語を、裁判所の長い間の判例におきましては無効であるが、任意支払つたものはとりもどしの請求ができないというように解釈いたしております。この案は、現行法の判例の解釈を、言葉は違いますが、そのまま条文に表わした趣旨でございまして、もし超過部分を任意支払つたときにも返還の請求ができるという建前をとりますと、債務者の保護はその面では一層完全になるのでありますけれども、一面金融を拘束するという結果を招来するのではないかということも考えられますので、従来現行法について判例のとつておりましたような解釈、それをそのまま内容として取入れたわけであります。日歩三十銭を越えるような暴利とつた場合にも、返還の請求ができないかというお尋ねでございましたが、場合によりましては、公の秩序、善良の風俗に反するという理由で無効とされる場合もあるかと考えます。その理由で無効となりますと、これは民法の不当利得の一般原則に従うことになるかと思います。
  20. 林信雄

    ○林(信)委員 公序良俗に反するという趣旨で問題の場合が処理できないこともないでしよう。しかしながら、先刻も申し上げましたように、他の立法において処罰規定まで設けて厳然たるものがあります以上、その裁判の実際において、その複雑性といいますか、何かめんどうさのありますようなことで実際の裁判が行われますよりも、この場合は、他の立法があるのだから、別に定められる金融のための法律における制限を越えるものはまた別であるとかいうようなことにはつきり建前としてやつても、いな、そうすることがほんとうじやないかと思うのですが、絶対に違法だといつているものを、そういう抽象的な法律解釈からこれを取扱わなければならぬというようなめんどうさよりは、これはきめてもさしつかえがないんじやないかと私には思われるのであります。それ以上にお答えがなければそれまででありますけれども、私にはそういうふうに思われてたらぬのです。元来この一条二項の規律は、すでに利息制限をしながら、それ以上払つたものを、今までの解釈といたしましては、不法原因の給付だからというような解釈で、これは本質的な解釈ですから、法案解釈とはまた別でありましようが、法案は明らかにしておるのであります。その解釈の言葉であるのですけれども、不法原因の給付といつたようなことで考えなければならないほど、それほどあいまいとでも申しますか、結論はわかるのですけれども、考え方としては私はかなり無理な解釈でこういう規定がなされているように思うのです。不法原因の給付と言うと、何だかすでに違法性のあるものの給付のように考えられますが、元来借りたものを払つた、約束のものを払つたのですから、それ自体を不法というのもおかしいし、といつて、そこに一定の限度をきめました法律があります以上、それを越えて払いたくはないのでしようけれども、これは払わなければ何度も請求もされましようし、あるいは金融の実際としては、あとまた貸してくれないということもありましようし、何だかだで余儀なく支払わさせられている。債務者側では法を犯してまで払う、いわゆる不法の認識をもつて利息を払うなんというようなことは、これは心理的には全然考えられない。それが不法原因の給付といつたよう説明で言わなければならないほど、この規定自体の本質には私はかなりの問題があると思うのです。しかしながら裁判上あまりにこれらの関係、取引に立ち入り過ぎないということも、すでに一応そごにおちついており、ある限度を納得の上のことでありますから、そこまで立ち入ることもどうかというねらいではないかと思うのであります。さような意味で理論的、観念的にはどこで線を引くかは、従来はやや不明確であつたかと思うのです。繰返すようでありますが、今回はその他の立法においてその最高限が明らかに示されて、しかもそれを越えるものは処罰規定があると出て来た。こういう業者の間の消費貸借関係においては、この裁判上の取扱いにおきましても、これはあまりにその額の多いものにつきましては、やはり裁判上問題にして、これを適当に扱つてつてよろしいのではないか。従いましてその旨の規定がなされてよろしいのではないか、こう考えるわけであります。もしこの点について重ねて御意見が承れれば仕合せだと思います。
  21. 村上朝一

    村上政府委員 ただいまのお話の中にございました、元本残つている間に約束だからといつて限度を越える高利支払つた場合の効果でございますが、これは従来の現行法のもとにおける判例の解釈にもよるのでありますが、限度内の利息支払いに充てて、なおそれ以上に支払つてもよろしいが、それは法定レートによつて元本に入つて行くということになりますので、この二項が実際に問題になりますのは、元利金で支払つてしまつたあとになつて、実はあの支払い願は限度を越えた率を支払つたものであるということを理由として、債務者の方から返還の請求をすることができるかという場合に、実益のある規定なんでありまして、途中で債権者の方から限度超過の利息支払いを元本に入れないで、元本支払いを請求することは、やはり現行法同様できない、かように解釈しておるのであります。
  22. 林信雄

    ○林(信)委員 それはその程度にいたしまして、一条の一項関係とでも申しましようか、直接には第四条の関係でありますが、これはいわゆる債務不履行による賠償額の予定に対する規定であります。従いまして期間内における利息――もちろん賠償額の予定がない場合においては、期限後も利息はそのまま継続いたすのでありますが、この賠償額の予定というものは、ややともしますと利息制限を無効ならしめる趣旨のものであります。従つてそれをこの規定によつて一定限度に規制をしたということはわかるのでありますが、実際面から参りますと、金銭の消費貸借は金融業者のみがやるのではないのでありますけれども、金融業者であればもちろん、あるいは個人間の消費貸借にいたしましても、少しくなれて参りましたものは、一条の制限においてはこの程度である、しかしながら賠償額の予定で行けばその二倍まで行けるのだ。しかも賠償額の予定ということになりますと、いわゆる特殊の損害を前提としなければならない。そこでそれを言わずに違約金だときめてしまう。法案を見ますとそれも容認いたしまして、違約金と一口に言つておきますれば、これは賠償額の予定とみなしてくれるということは、一条で非常に締めながら、四条に至りますと非常にゆるくされておる感じがするのでありますが、先刻来御説明のありますように、一般業者の最高限度の利息制限は、これは厳格に実行すべく処罰規定まで設け、しこうして裁判所に現われましたものについてはそれ以下にしぼりまして、そして債務者を保護する、味方になつてやる、よほど債務者的の立法の感じを見せながら、どうも首尾一貫しないものか第四条のように思われるのであります。少くとも私は前提として、この規定関係よりして、利息制限の一種の脱法的なものとして使われる点が多分にあると思うのでありますが、これらの点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  23. 村上朝一

    村上政府委員 御指摘になりました違約金とか賠償額の予定というものは、現在までのところ非常に脱法的に行われておりますことは、裁判所等におきましてもしばしば現われておるところであります。現行利息制限法の第五条におきましては違約金は賠償額の予定とみなして、これが不相当であるときは裁判所が相当の限度まで減額することができるという規定がございますが、これは商事には適用しないということになつております。貸金業者なとはほとんど大部分が株式会社の形をとつております関係上、商事債権という推定をしております。従つて利息制限法第五条の適用は大部分の場合に排除されておるような次第であります。そこで弁済期までの利息としては利息制限内の利息を一応掲げまして、弁済期以後の賠償額の予定あるいは違約金として日歩三十銭、五十銭という約束をする場合がしばしばあります。これを裁判所で、そういう事件が参りますと、ある限度以上越えますと、公序良俗に反するということで線を引いておるわけでありますが、裁判所によりまして、日歩二十銭くらいで、これ以上の違約金の定めは公序良俗に反するという取扱いをするところもあります。また一面、日歩五十銭であつても、ただちに公序良俗に反するとは言えないというような判決例もしばしばあるのであります。まつたく御指摘の通りに、賠償額の予定あるいは違約金という形が、利息制限法をくぐる手段として用いられておる状態であろうと思うのであります。そこで改正案におきましては、一率にこれを第一条の利率の二倍で抑えたわけであります。二倍と申しますと最高日歩十一銭、これで押えたわけでありますが、一つの考え方としては、期限後の賠償額の予定も本来制限と同じ制限を加えていいのじやないかという考え方もあるわけであります。これは賠償額の予定と申しますけれども、その末項ですべての違約金を賠償額の予定とみなしておりますように、これを裁判所あるいは執行吏のところに持つてつて手数をかけて取立てるのは困る、弁済期までに支払わなければ非常な不利益を受けるということで、間接に任意弁済を強制したいという意味から、弁済期までの利息よりも高い違約金なり賠償額の予定をするということも、あながちこれは排斥することじやない、かように考えまして今までの利率の二倍帳では裁判上有効のものとして取扱うというのがこの原案の考え方なのであります。
  24. 林信雄

    ○林(信)委員 二倍というところにたいへんぴりつときいたところがありますのは私も感じておつたのでありますが、元来は制限以上の利息を処理する法律でありますから―― 制限というものは何といつても基本なので、その基本的なものを堅持させるということもこれはいいのじやないか。まあそういうことは慣例として、賠償額の予定の違約金だつてあることもわかるのですけれども、何といつたつて基本的には一応の経済事情を勘案した制限なのですから、もうひとつ腹をきめてといいますか、なるべく制度を単調にしまして、やはり制限を堅持して行くという建前で行く考えになれないものか。元来債務者というのは金がないから借りるので私も借金はいたしますし経験も多いのですが、おそらく借りても払うのは困難です。ですから払わせるという意味で期限が過ぎたら少々そこに損の行く場合をつくる、弁済を慫慂するようなこともいいかもしれませんけれども、元来なかなか払えないものなのですから、その払えない者に期限が来たからといつてまた今度はさらに荷物を重くする、たとえば馬に十貫目の荷物を背負わして行くのがせいぜいだと思いますのに、ある一定限度に来たときに峠にかかろうとするときに――荷物を二十貫目にしてしまつた、それではその後ますます道は進まなくなると思う。これは原則的なものを堅持いたしまして、ここでやつていいじやないか。先刻から申しておりまするように、金融業者になりますとなかなか抜からないのでありますから、利息はこのくらいで期限が過ぎればこのくらいとれるとなると、期限まではあまりやかましく言わずに、期限が来たならば今度は厳重に請求するといいますか、期限の来るのを待つような事態もないとはいえませんし、また当初において期限内のゆるやかな利息関係の場合を非常に短かくして、要するに対価のとれる時期を早く招来せしめるということは、心得のある者は決して忘れないと思う。ですからここに制限というものを現在の経済事情に即してかえまする以上、これまた二、三にするような考えはひとつ捨ててお考えを願えないものか、私はこれを思うのです。  もう一つは経済事情に即してどうもぴつたり来ないからといわれますけれども、借りるという状態のときは、いよいよ悪いときです、それに持つて行一て実情として利息はだんだん高くなつてつておりますから、これにマツチして利息制限法によつて比率を上げて行くということは、これは考え方によつては逆もまた真なりで、逆に行かなければ借りる者の保護にならないと思う。しかしあまり締め過ぎて貸す者がなくなつて、角をためて牛を殺すところまで行つては何にもなりませんが、実情として利息が高いからだんだん法律関係においても高くしなければならぬということはどうかと思うのであります。さような関係から裁判上対価がとられるというような場合は、この制限を一律的なものにしてある程度にとどめておくようにすることは必要であるが、いろいろな事情を考えてあまり簡単に過ぎることはどうかと思う。あらためてお伺いいたします。
  25. 村上朝一

    村上政府委員 利息の方だけを締めますと、賠償額の予定あるいは遅延損害金という形で高利をむさぼる例が生ずるということは、まさに御指摘の通りであります。ところが現行法におきましては、先ほどもちよつと申し上げましたように、利息につきましては厳重な制限があるわけでありますけれども、賠償額の予定につきましては事実上ほとんど野放しといつてもよい結果になつております。第五条の規定はございますけれども、これは商事に適用しないということで、実際にはほとんど適用されておらない状況でありまして、ただわずかに公序良俗に反すると認められたときだけ裁判所で無効とされるのでありますけれども、その限度日歩二十銭なり五十銭、五十銭を越えても公序良俗に反しないというふうに認めておる判例があるわけであります。これか野放しになつておる状態なんであります、これを引締める必要がある。しかしながら一面今お話のありましたように、角をためて牛を殺すと申しますか、あまり厳格に過ぎてそのために金融の梗塞を来すということも考えなければなりませんので、その両者を勘案したちようどいい線がこれくらいのところではないかというので考えましたのが、この原案の第四条なんであります。
  26. 林信雄

    ○林(信)委員 次に第二条――これは法案というものは案の建前をどこに置くかということでいろいろ規定の立て方あるいは文字の使い方が出て来るわけなんですが、これだけを端的に見ますと、これは利息を天引きされた場合の規定なんですが、制限法以上のものを天引きされた場合は、元本支払いに充てたものとみなす、こうあるのでありまして、どうも率直に見まして、天引きという言葉と元本支払いに充てたものとみなす、この言葉は私には通俗的でないように受取れるが、どうしてもこう書かなければならぬものでしようか。説明の必要はないと思いますが、天引きというのは言うまでもなく、こつちで受取らずに向うでくれなかつた、くれなかつたものをこつちが払つたものというふうに言わなければならぬものか。この意味は心持もわかるのですけれども、どういう関係からこういう言葉を用いなければならぬのでしようか。もう少しわかり切つたことを言えば、天引きされたものは、天引きされた場合にそれが制限額以上のものであれば、まあ一箇月になり二箇月なり制限額以上の利息支払いに充てられるというようなものは問題じやないのですけれども、超過部分ですから、それはその限度においては元金より差引かれる、天引きですが、元金としないというふうにいうべきじやないかと思うのですが、どんなものですか。
  27. 村上朝一

    村上政府委員 御意見の通りでありまして、これはある限度以上は元本債権が成立しないということと同じことを言い表わそうとしたのであります。技術的にこの第二条のような表現を用いる方が正確に表現しやすい面がございまして、こういう表現を用いたのでございます。むろん趣旨はただいまの御意見の通りでございます。
  28. 小林錡

    小林委員長 古屋貞雄君。
  29. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 大体林委員のお尋ねになつた質問の趣旨と同じでございますから、ダブリますが、お尋ねしたいと思います。私は第一条の第二項と第四条の第二項でありますが、第一条の第二項はこれを削除いたしまするならば、先刻の御答弁では金融が梗塞されるおそれがある――私はむしろ金融の梗塞されるおそれがあつても、社会保障制度的な国民金融公庫であるとか、あるいは中小企業金融公庫というものの窓口をもう少し改正をいたしまするならば――やはりこういう方面の弱者が金を借りまする場合には、いろいろの方法を債権者から指示されて、心もとない気持契約が成立する場合が多いわけであります。本件のこの立法化の趣旨は、やはりそこに目的がおありになるので、一歩進めてかような点を削除されると、多少一方においては不自由を感ずる場合がございまするけれども、しかし不自由を感じても、結論においてはやはりその人を保護されるここになる、こういうような状況が非常に多いわけであります。つい急に金に困つて無理な債務をして、それがためにかえつて、ただいま林委員から御説明があつたように払えなくなる、従つてその結果か裁判ざたになり、あるいは他の思わしからざる問題を引起す原因なつたり動機になる。かような場合を考えておりまするから、せつかく立法の趣旨から申しまするならば、任意に払いましても、やはり裁判所に来て、任意に払つたというのが――この任意の問題が非常に問題になるわけでございます。大体われわれの方では、任意じやない、あのときは困つたのだけれども、まあしかたがないからというような実例が社会に多く行われておるわけであります。これはその点を何とか救つてやろうというような御趣旨の立法だと私は思いますので、多少の不自由がございましても、金融の梗塞がございましても、おとりになつていただけたら、ここに積極的に規定された弊害よりも少いではないか。また本件の立法の趣旨にその方が合うのじやないか、こういうように思うのでございますが、どんなものでしようか。
  30. 村上朝一

    村上政府委員 第一条の第二項を削除して第一項だけにしておくということも、私どもは立案の経過において考えたのでございますが、そういたしますと、それでは超過した部分の返還の請求かできるかどうかということになりますと、非常にいろいろな異論が出るかと思うのであります。まず非債弁済の規定によつて、債務のないことを知つて支払つた場合には返還の請求ができないということが一つ考えられなければならぬし、もう一つは現行法で一部の学者が言つておりますように、他面不法原因給付で、不法の原因が債権者だけにあるので、債務者は全額の返還の請求ができるのだという考え方もできる。しかし少くともいろいろ説がわかれるところでもありますので、超過部分を任意支払つた場合の効果について、何らかの規定を置く方がいいのではないか。そこで規定を置くといたしまして、請求することができるというのかいいか、できないというのがいいかという点でございますが、金融上の取引が終つてしまつた後になりまして、たとえば去年の貸借の場合に、計算関係をむし返して、幾ら幾ら過払いになつてつたから返せということが、債務者の側から何時でも言えるという状態にありますことは、債権者としてはそういう債務者には金融することを躊躇する一つの原因になるのじやないか。一面において債務者の保護になるわけでありますけれども、他面金融を受けるときにおける債務者に不利な条件の一つになるのではないか。言いかえますれば、金融梗塞という結果を来すおそれがあるのではないかということも考えまして、たまたま現行法裁判上無効」という言葉か長い間の判例によりまして、ちようどこの第二項にありますのと同じような趣旨解釈され運用されて来ておりますので、それをそのまま表現をかえて新法に取入れるという態度をとつたわけであります。
  31. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その御趣旨もよくわかるのですけれども、これを削除いたしまして、具体的な事実の、現在の法律契約自由の原則のもとに、弱者が自由な契約のもとに自由に行われておりまするものを、一項でここにある程度規制する。そうして第二項で、債務者任意に超過部分を払つたというような場合には返還の請求かできないというように規定づけてしまうと、何かしらん、一項で相当保護を受けておるにかかわらず、二項では今度はつつぱなされるようなことか考えられるように思うのです。従つてこれは削除していただき、あとは事実に即する、個々の場合の裁判にまかしたらどうか、かように考えておるわけなんでございますが、その点も御考慮なつたのでございましようか。
  32. 村上朝一

    村上政府委員 ただいまのような御意見も、私ども立案に際していろいろ検討してみたのでございますが、なるほど御指摘になりますように、特に「その返還を請求することができない」と書いてありますと、何か目立つような感じもするのであります。現行法にありますように、「裁判上無効」とするという表現を用いましたならば、あるいは現行法と同じ解釈になるかと思いますけれども、裁判上無効という言葉につきましては、これは学者の多くは法律上無効という意味であるというふうに解釈しておりまして、裁判上無効という言葉自体に非常に疑義がございますので、この法案におきましては、その言葉を用いることを避けました結果、こういう表現になつたわけであります。
  33. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それはそのくらいにいたしまして、さつきの第二条の問題なんですが、私どもにはこの条文を見て大分理論的に矛盾か考えられる。これは林委員からも申されたのですが、利息を天引きした場合においては、受領額をもつて債務とするというようなことに、簡単にした方が筋が通ると思うわけです。非常に御考慮されてかような原案か出たのだということはよくわかるのですけれども、むしろ簡にして明に、「債務者の受領額」というのを、最初に受取つた額ということにすれは簡単なんたと思うのですが何だかいかにも現在行われております高利貸し的な観念をそのままここで承認いたしまして、それをここで規定づけておるというような気持になるのです。どうもそういう点は立法の考え方としは私はあまりおもしろくない、簡単にはつきり言つた方かいいと思いますが、その点どうですか。
  34. 村上朝一

    村上政府委員 天引きの場合に、天引額については全然債権が成立しない。受領額についてだけ債権が成立するという考え方は、最も簡明で徹底したものであると思いますが、現在までの一般に行われております解釈によりますと、天引額の限度内の利息に当るものは経済上現金の授受と同一の利益を与えたものであるということで、天引額の一部についても元本の成立を認めておるわけであります。しかしその計算のやり方が現在普通に行われておりますのは、元本受領額に限度内の利息を加えたものに制限利率、乗じて増した額を、その期間における限度内の利息といたしまして、そうしてその元本を算出するわけでありまして、その一般に行われております算出額によりますと、三年とか五年とかいう長い期間の利息を天引きした場合にはほとんど受領額が元本の半額以下になつてしまつても、元本全部について債権が成立する。もし天引額の限度内の利息でありますと相当部分を差引きましても全額について元本が成立するという結果になりますので、あまりに長期間の金利を天引きした場合に、また別の理論でもつてその結果をしんしやくしなければならぬという結果になるのであります。従つてこの原案の第二条は限度内の利息の授受は経済上現金の授受と同様な経済的の利益の授受があつたものと考えるという従来の解釈を維持しながら、結果においては長い期間の利息を天引きした場合にもさほど債務者が不利にならないような天引計算の方法を選んたわけであります。「元本支払に充てたものとみなす。」という表現を用いたのは、先ほど林委員の御質問にお答え申し上げたのでございますが、要するに受領額に対する限度内の利息においては経済上現金の授受と同一の利益が与えられたものとして元本債権の成立を認める。それを越えた部分については元本債権の成立は認めないという趣旨でございます。
  35. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 従来の金貸しの悪弊を一掃するというお考えのもとに一歩進めていただいたらというようなことで、私どもはそう考えておつたのでありますが、ただいまの御説明を承れば、従来の実際に即する観点においての規制づけらしいのですけれども、なお一歩進んで債務者の保護にまで進められることは、金を借りる人は金を借りたいのみならず、金を借りる必要があつて借りておるので、先に利息を天引きされるということは非常に苦痛なんでありますが、その点も実情に沿うようにやりたいと思つておりましたが、私そのように考えていたのであのますが、いかがでしようか。  それから第四条でございますが、この点につきましては先刻林委員からやはり二倍を越えるときにはという二倍の点についてのお尋ねがございましたが、かような場合もございますが、かような点の御考慮はいただかなかつたのでございましようか。今多く金貸しに苦しめられております債務者たちは、担保物権を差入れる場合に代物弁済契約をいつもつけて来る。代物弁済契約をいたさない場合にも白紙委任状をとつておりまして、代物弁済としてこれを使つてしまうということがございまして、債務者といたしましてはその点が非常に苦痛なのです。またさようにしなければ金を借りられない。大体担保を入れます場合には金額か多い場合が多いのでありまして、法の盲点と申しましようか、違約金あるいは賠償その他の元利金の回収にあたつて、担保物の代物弁済契約がいつも付随されるわけです。これを何とか禁じていただくことがこの立法の趣旨においても大事なことだと思つておりましたが、そういうことも立法の際にお考え願つたのでございましようか、この点をお伺いいたします。
  36. 村上朝一

    村上政府委員 代物弁済契約の形で債務者が苦しめられている実情は、私ども聞いております。代物弁済契約についての何らかの制限規定を置こうということも考えたのでありますが、そうなりますと、代物弁済全部を無効とするわけには行かない。限度外の利息元本限度を越える超過額の部分だけを債務者が債権者に対して別に金銭で返還を請求するという形になるわけであります。そういたしますと、長期貸借の場合の代物弁済だけの問題ではなくなります。むしろ動産につきまして流質契約が禁止されておりますが、不動産についての流抵当は禁止されていないのであります。この民法の考え方にさかのぼつて検討を要するものがあるのではなかろうか、かように考えまして、この法律におきましては代物弁済契約のことは規定いたさなかつたのであります。
  37. 小林錡

    小林委員長 田嶋君。
  38. 田嶋好文

    ○田嶋委員 私は法案内容についてよりもむしろこの取扱いの問題について少しただしておきたいと思うのでありますが、この法案を成立させる意味におきましての発言でありますから、御了承を願いたいと思います。  今大蔵委員会貸金業法か審議されておりますが、この法案との調整をいかに勘案するかということが一つ。それからそれに関連して当然これは大蔵省と法務省の話合いがなければならないと思うが、この話はどういうことになつておるのか、また話をしたことがあるのかどうか。それからいま一つは相互銀行が相当の利潤をとつております。相互銀行の公の利潤というものはわかりますが、手数料とかなんとか相当払つておるという実情を聞くのです。きようお答え願わなくてもいいのですが、この実情を取調べてお答え願いたい。それから資料として全国の貸金業者、質屋業者の数、これを提出していただきたい。
  39. 村上朝一

    村上政府委員 ただいま大蔵委員会で審議されております出資の受入、預り金及び金利等取締に関する法律案、この中に高金利処罰の規定がございまして、日歩三十銭を越える利息、これは賠償額の予定に含まれておりますが、授受いたしますと三年以下の懲役または三十万円以下の罰金ということになつております。この法案の附則におきまして、貸金業等取締に関する法律を廃止することになつておるのでありますが、この法案における高金利処罰と利息制限法との関係につきましては、最初に御説明申し上げましたように、利息制限法限度内の利息の計上は、裁判上有効なものとして完全に保護される一方、極端な高金利でありますところの日歩三十銭を越える利息でありますと、これは反社会的なものとして処罰される。この日歩三十銭とそれから利息制限法最高限度、この案によりますと、一番高いところで日歩五銭五厘、この中間は債務者が払わないからといつて、債権者が裁判所に訴えて強制的に取立てることは許さない。しかしながら日歩三十銭までは罰則はかからないということになるわけであります。この出資の受入、預り金及び金利等取締に関する法律案も、それからまた利息制限法案も、いずれも大蔵省と法務省との緊密な連絡のもとに立案されたわけでございまして、ことに金利等取締に関する法律案罰則の部分は、大蔵省銀行局と法務省刑事局とが、ほとんど共同して立案したような関係になつております。  それから先ほどの貸金業者の数、質屋の数、これは次の機会までにできるだけ調べて参ります。
  40. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この改正の根本ですが、現行利息制限法、いわゆる大正八年四月十一日法律第五十九号を見ますと、百円以下は一箇年につき百分の二十となつております。これがかわつて元本が十万円未満のものは利率は同様でありますが、要するにこの百円が十万円にかわつたという点にあるわけであります。これはいかなる標準で大正八年の百円が今日十万円とすることを至当と認められたかという点を、ひとつつておきたいと思います。
  41. 村上朝一

    村上政府委員 大正八年の法律による百円の制限を、この法案によりまして十万、百万といたしましたのは、貨幣価値物価指数等から、正確にこれは何倍という数字をはじぎ出してやつたものではない。大体におきまして、現在の行われております銀行その他金融機関の貸付の実情が百万円以下と百万円を越えるものとについて、利子、利率その他についての取扱いをかえております。百万円をもつて一線を画しておるという実情、従つていわゆる庶民金融と称せられます金融の額がどの程度であるかという点等を勘案いたしまして、現在の経済事情のもとにおきましては、百万と十万というくらいの線が妥当ではなかろうか。五十万と五万という線を考えてみたことがあるのでありますが、どうも百万、十万の方が妥当なように思いまして、このような案になつたわけでございます。
  42. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ちようど千倍になつておるようでありますが、何かそこに数字的の基礎があるかと思つて聞いたのです。そこで千倍、それはそれとして、百円のものは千倍で十万円未満であつたが、これは元の通りと見てよろしい。その次は前の方で千円以下の場合は一割五分であつたものが一割八分になつております。その次は千円以上のもの、これも千倍と見て百万円以上のものは一割二分であつたものが一割五分と書いてある。これはたいへんな上り方ですが、これを上げられた基礎はどこにあるのでありますか、
  43. 村上朝一

    村上政府委員 金利状況と申しましても、正規金融機関とそうでないものとは非常に違うわけであります。いわゆる高利貸しといわれる者の持つております金利の水準というものは、この利息制限法における水準としては利用できないということは申すまでもございません。一面におきまして、この利息制限法の第一条の限度と申しますのは、貸金の利息全般を通ずる問題として、裁判上保護を受け得る最高限度を引くわけであります。現在正規金融機関によつて行われております金利政府によつて公認されております正規金融機関金利というものは、この貸金の利息全般を通ずる最高限度としてこれを参照すべきものではないか、かように考えましたので、特殊なものは除きまして、大体において現在公認されておりまする正規金融機関金利がカバーでき得る程度のものという趣旨におきまして、この原案の利率を出したわけであります。
  44. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、これは一般は大正八年から経済事情がいろいろかわつておるから額が多くなつたことのように思うが、利率もこの通りつておるというような確証が何かありますか。
  45. 村上朝一

    村上政府委員 お手元にお配りしました参考資料の中に金利のグラフが載つておりますので、それをごらんいただきたいと思いますが、これは正規銀行の貸付金の金利の趨勢を示す図表でございます。昭和二十六、七、八年、つまり二十三年以後の金利、これは相当高くなつしおるわけでありまして、一方大正八年の改正当時の金利は、これは月別表にございますように日歩二銭余りでありまして、その直後に相当上つておりますけれども、大正八年この法律制定当時の金利情勢と比較いたしますと、現在かなり上つておる状況がうかがわれるのであります。
  46. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは経済事情とよほど関係の深いものでありまして、われわれが最も気にするところは、今日の経済事情をもつてかりによしとしまして、今後の経済上の変遷によつて大なる異動がある場合に、これは法律ですから固定しますから、非常なギヤツプが出て来る。それらをよほど考えてやつてもらわなければならぬが、これを見ますと、大正八年この現行法改正のできたときは、いわゆる第一次世界大戦後における最好景気時代、そのときにこういうものをつくつた。よほど一般の利率か上つたから、こういうふうに改正されたのだろうと思う。その後昭和二十年、二十一年にはたいへんな下り方をしております。従つてほんとうを言えば、昭和二十年、二十一年にもう一ぺん下げておかなければならなかつた。今度はまたずいぶんインフレになりましたから、こういうふうに上つて来えおるのですが、われわれは今日のこのインフレをもつて正常なるものと認めていいか悪いかということが大問題だと思つております。今日いろいろの議論もありますが、日本経済の建直しで最も大きな問題となつているのは、金利が高いということ、これは識者が口をそろえて、金利の引下げをしなければならぬと叫ばれておる。われわれはあまりそういうことに詳しくないからわかりませんが、われわれもそうじやないかと思つております。そういう時代に、今の実情がこうだからといつて幾らなりとも上げられるしいうことは、将来に対してさしつかえないものかどうか、この点に対する何か見通しをつけられたことがございますか。
  47. 村上朝一

    村上政府委員 利息制限法は、申し上げるまでもなく、裁判上における最高限度をきめたわけでございまして、この中で、金融機関による金融についてどういう金利政策をとるかということは、金融行政の面から別途に臨時金利調整法等によつて考えられるのではないか。この利息制限法限度が上つたから、ただちに一般金利が上つて来るというふうには考えておりません。このわく内において金融行政上必要な金利は認められて来るのではなかろうかと考えます。一面、現在の年一割という制限は、元本の千円、百円という区分が、現在におきましてはきわめて不合理なものとなつておりますことと、利率が必ずしも実情に適しないということと、それからこの法律が大体におきまして明治十年の太政官布告以後の体裁をそのまま維持しておりまして、きわめて古めかしい体裁を持つておるというようなことが相まちまして、正規金融機関によりましても、この利息制限法というものかあまり尊重されていない実情にあるのであります。大蔵省が公認しております正規金融機関金利でも、現在の利息制限法を越えるものもかなりあるわけであります。そういう点におきまして現行法の不合理なり、あるいは妥当を欠く点を是正しようというのが、この法案の一つのねらいでございまして、この利率の限度をきめるにつきましてもこの点を考えたわけであります。
  48. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それからさつき田嶋君の言つておられた、今大蔵委員会に出ておりますあれは、私はいつも考えるのですが、なるほどあの法律のねらいは、これまでは黙つておるが、これ以上とつたら罰してやるぞ、こういうところにある。ところが金貸しは、公認の利率でございます、こう言つて、あとで文句を言われるといかぬというので、日歩三十銭以上と言われれば、二十九銭九厘までとつてしまう、そうしてすべて天引きをやる。そういうことで、私らはいつも考えるのですが、今第二条があるから、そういうふうに渡して天引きせられてみなとられる。そこで今度元本を払うときに訴訟を起して、この規定によつて計算してくれ、こう言つたら、それはやはり裁判所としては、これで計算して、天引きの方は年二割以下のことで計算することになりますか。
  49. 村上朝一

    村上政府委員 この利息制限法案が成立いたしますと、債権者の方から元本残つているといつて請求して来た場合、裁判所は、この法律の第二条によつて天引き額及び元本残つておる額を計算することになります。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 黙つてつてしまつて、あとから、あれはよけいだつたといつて訴訟を起したらいかがでしよう。もどしてもらえますか。
  51. 村上朝一

    村上政府委員 黙つてつた場合に、限度内の利息にまず充当いたしまして、残りがあれば元本に充当されるわけです。元本残つてないという場合に、過払いがあるということで返還の請求ができるかという問題ですと、これは第一条の第二項で、返還の請求はできないということにいたしたのであります。これは現在の利息制限法解釈上もそうなるわけです。それと同じ、内容を持つているわけです。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも考えなければならぬ、それはだれも払いたくないのだが、高利貸などというものはたいへんなものなんで、私はいつも言うのですが、われわれが高利貸の事件をかりて頼まれても、われわれのようお気に入らないものは二度と続かぬ。無理にみずから払つたんじやない。脅迫してとられたのですが、そういう場合もとりもどすとする方がいいんじやないかと思う。  それからこの二条は先ほどから問題になつているが、どうも読みにくい。これはもう少し考えてみる余地はなかろうかと思う。それだけです。  次に、先ほど林君からも言われた第四条ですが、いやしくも第一条で利率はこれだけにすべきものたときめておりながら、賠償額の予定をしている場合は二倍まではとつてよいのだということは、理論上どうも筋が通らぬのじやないかと思う。そこで問題は、いわゆる損害賠償額の予定、こういうのですが、期日に払つてもらわれなかつたために実際にそれだけの損害があるという場合は請求できる、こういうのなら筋が通る。あろうがなかろうが、きめてあるから二倍を払う、こういうことは、第一条の制限をしたことと理論上一致して来ないように思うか、この点はどうですか。
  53. 村上朝一

    村上政府委員 第四条の賠償額の予定、及び第四条の末項で賠償額の予定とみなされております違約金、これがすべてもし債権者の受ける実際の損害の愼補という意味でありますならば、まさにただいまの鍛冶委員の御意見の通りでありまして、本来第一条で認められております限度以上の利益を受けるわけはない、損害額もこれ以上に達するわけはないのであります。しかしながら、そういたしますと、損害賠償の予定でない違約罰その他の違約金の定めにつきましては、第四条の適用をはずさなければならぬ。違約罰は、税金その他の法律にも例がございますように、なるべく弁済期に履行させるために、弁済期に支払いを怠つたということに対して相当の苦痛を与え、相当の苦痛を与えることによつて弁済期における弁済を心理的に強制するという作用を所むものであります。この違約罰までも排除するということはどうであろうか、それでは違約罰は述約罰の規定に従い、賠償額の予定は第一条の限度内にとどめるということになりますと、これは先ほど鍛冶委員もおつしやいましたように、貸金業者はどんな手段をとつても、これをとろうといたします。それで債務者の保護ということを総合的に考えますと、いかなる名義を用いておりましても、すべて違約金は賠償額の予定とみなすことにいたしまして、一面において違約罰的な機能を賠償額の予定から営むという面も認めまして、本来の利息の二倍まではよろしいということにしたのであります。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも違約金ということと、賠償額予定ということと、どこが違うのか、私は同じではないかと思うのですが、第二項で、前項の超過分を任意支払つた場合第一条第二項を準用する、これらはやはり不当利得になるというようになつておる。こんなことはきめなくてもよさそうに思うのですが、こんなことをきめなければならない理由を承りたい。
  55. 村上朝一

    村上政府委員 第四条の二項及び第一条の二項は、もしこの規定がございませんならば、御承知通り不当利得になるわけであります。不法原因給付として返還の請求ができないのではないかという問題が一つ。これは不法原因か債権者のみに存する場合でありますから、返還の請求ができるという解釈になろうかと思います。もう一つ、非債弁済になるのではないかという問題がある。つまり債務がないことを知つて弁済したときは、その返還の請求ができないという規定に該当するのではないかと思う。いろいろ解釈上疑義か出て参ると思うのです。この際返還請求かできるかできないかということを法律でもつて明らかにする方が運用上いいのではないかということでこれを書いたわけですが、御意見のように返還請求かできないという建前をとることも十分考えられるのであります。現行利息制限法は長い間裁判上、無効であるが、任意支払つた場合は返還請求することができないというように解釈されて来ておりますので、その解釈をもしくつがえしまして、すでに取引の終つたあとにおいても請求できる。たとえば質屋なんかの場合を考えますと、質屋が月七分とか八分あるいは一割に近い利息をとつて金を貸しておる。これは利息制限法を超過する分が大分あるわけです。それが質屋の質ぐさを受け出したあとになつて、あのときの計算はどうも利息制限法を越えておつたから返してくれというようなことになりますと、質屋が困る困らないは別として、かえつて債務者金融の梗塞を来すおそれがあるのではないか。さしあたり現状におきましては社会政策的意味における立法としては、やや不徹底なきらいはありますけれども、現行法の判例が解釈しておりますのと同じ結果を維持することが妥当ではなかろうか、かように考えまして、こういう規定を置いたわけでございます。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 任意支払つたと言われるが、私はどうも任意支払うものはないと思うのですが、そんな高いものは脅迫で……。
  57. 村上朝一

    村上政府委員 たとえば強制執行を免れるためにやむを得ず一時払つてつた。その他脅迫によつて支払つたというようなときには任意支払つたというのに当らないのでありまして、民法の非債弁済規定適用についても同様に考えられる。従つて脅迫によつて支払つたということは、二項の規定によらず一般不当利得の返還請求、こういうように考えます。
  58. 林信雄

    ○林(信)委員 賠償額の予定というものは、契約自由の原則から認めなければならないというような基本的な考え方から一応考えられて、といつて制限にそれをやられるのでは債務者がかわいそうだ。だからこの法案のように金利最高限度の二倍とする。これは債務者の保護だ。こういうふうに御説明になつておりますが、しからばそこまでお考えになるならば、それをオーバーしたもの、これは任意支払いと言われる支払い済みのものでありますけれども、それまで債権者に有利なように扱わなくても、これはすでに大蔵省関係提案になつております法案関係で、最高限以上のものはかなり重い刑罰が規定されておるのですが、これを越えたくらいのものは、少くとも届出をした金融業者くらいでしたら、行政罰か何かで罰するというようなことで、もつとしぼつた限度でひとつ励行するというような建前をとられたならばどうかと思います。しぼつてみたけれども、払つたものを受取つたものはそれでよろしいのだ、これは別の面から考えられた規定ではもちろんあるのですが、結論としてはそうなつて来るので、どうもせつかく債務者の保護をねらつてここに最高限をきめながら、結局けつが抜けちやつたという感が深いのであります。  それから債務の不履行という言葉で表わしておりますが、その弁済方法ですが、現金で持つて行かなければならないとか、貸金業者なら貸金業者へ持つて行かなければならないとか、郵便で送つてはいけないとか何とか、へんな実際上においては価値のないようなこまかい規定をつくつておいても、何でもかでも債務の不履行、だからただちに違約金契約に移るのだ、第四条の三項によりまして、結局賠償額の予定とみなす。そういうふうに持つて行く危険もある。従いまして履行、不履行というこの字句は、どういう内容になるのですか。これをお聞きしておきます。
  59. 村上朝一

    村上政府委員 債務不履行とされております一切の事項がこれに該当するわけであります。いかなる債務不履行であろうとも、その債務不履行賠償額というものをこの辺で押えておる。一方民法におきましては、金銭債務の不履行による賠償額というものを一応法定率で押えられておる。特約でもつて賠償額の予定をした場合のほかは、法定率でやる。それから違約金との関係でありますが、民法では違約金は損害賠償額の予定に推定するということになつております。違約金の中には損害賠償額の予定と推定するということになつております。違約金の中には賠償額の予定の性質を持つたものと、そうでない債務不履行による制裁の意味で罰するものとがあるわけであります。民法におきましてはこの賠償額の予定と推定いたしておりますので、反証をあげてこれが違約罰であるということになりますと、賠償額の予定の規定適用を受けない。それでこの法律におきましては、違約金は賠償額の予定とみなすということにいたしまして、脱法的に、たとえば違約罰として日歩五十銭というような高利をとろうとするのを防止しようとしたわけであります。
  60. 林信雄

    ○林(信)委員 重ねて問いたださなくてもよいのでありますけれども、明らかにしておきたい。第一条でわざわざ利息制限額を引き上げ、なお依然として、いわば脱法的な利息の収受を容認する規定つくり、きわめて容易に債権者が要求できるような建前がとられておること、ただいま申しましたような債務不履行関係も、期限の経過といつたような重要なものではなくして、微々たる条項違反でもそれが原因となるというようなこと、実情から申しますと、原則として掲げました制限はずつと下の方になつてしまつて、ほとんど制限のない、賠償額の予定の名において、あるいは違約金の名において無制限にこれが約定せられ、取引される傾向になることには、もう全然この法律はタッチすることのできない限界になつてしまう。こういうものを立法いたします以上、かような機会にもう少し権威あるものにしたいと思うのでありますから、なおいろいろ研究してみたいと存じますが、本日はこの程度で打切ります。
  61. 小林錡

    小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。明日は午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十三分散会