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1954-03-24 第19回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十四日(木曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 花村 四郎君 理事 高橋 禎一君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    本多 市郎君       牧野 寛索君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席政府委員         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         法務事務官         (保護局長)  斎藤 三郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      長島  敦君         判     事         (最高裁判所事         務総局事務次         長)      石田 和外君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第五一  号)  執行猶予者保護観察法案内閣提出第五二号)  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第九三号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案議題といたします。質疑の通告がありますからこれを許します。古屋貞雄君。
  3. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 裁判所定員数に対して、今回の改正に基く減員の率はどのくらいでありますか。これに伴い予算がどのくらい減りますか。その点をお尋ねいたします。
  4. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 率は大体三%弱ということになつております。予算の点はちよつと資料を整えておりませんのでお答えいたしかねます。
  5. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもの長い経験から申しますと、裁判所職員は他の行政庁職員に比較いたしますと、いろいろと経験が非常に重要なように考えられますし、その人となりについても、特別に他の師表になるというようなことが必要な条件のように考えられますので、現在勤めております職員は、特殊な法規に違反するとか、その他職務に耐えられない事情があるという以外には、こういうような経験者にやめていただくというふうなことについては、かけがえのないという関係もありますので、多少の余裕がありましても、努めて働いていただきたいというのが、現在の司法部に対する国民の要望ではないか、こう考えるのであります。従いましてやめていただく方たちは相当御経験を積まれた方たちのようにも考えられますので、司法部におきましてはそういうような経験者必要性については根本的にどんなお考えを持つておるか、この点をひとつお尋ねしたいと思います。
  6. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 ただいまのお尋ねの通り事情もございますので、今回の人員縮減の案に対しましては、裁判所といたしましてはいろいろな裁判部門関係しております書記官書記官補、あるいは調査官、さような職員については極力その必要性を述べまして、これは一名も減員しないという方針にいたしておりますから、その点は御安心をいただいてよいと思います。
  7. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで改正原案附則第三の点でございます。前会の当委員会における裁判所側の御答弁によりますと、井伊委員の御質問に対して、今回減員される職員の数は、みずからの希望、で臨時待命を申し出た員数が、減員される員数をオーバーするだろうという御答弁があつたように記憶するのでありますが、さような実情にありますか。さような実情に置かれますならば、あえてこの第三の職員にその意思に反して臨時特命を命ずるという規定は必要がないように考えられますので、その御答弁とこの規定は矛盾をいたすと思うのでありますが、この点はいかがなものでありましようか。
  8. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 この前はいささか申し上げ方が不十分だつたかとも思いますが、実は裁判所といたしましては、この法律の、この規定によつていわゆる首切りというふうなことを行うという考えは毛頭ないということをまず申し上げておきたいと思います。ただ人員縮減に伴いまして定員配置をかえなければなりませんことは申し上げるまでもありませんが、さような結果配置転換ということを行わなければならないことになります。それで「配置転換が困難な事情にあるものについては、」云々ということになつておりますが、実はその対象になるべき人員を申し上げますと、大体三百九十三名のうち、百四十一名はすでに特別待命ということで落ちておりますので、結局差引二百五十二名がその対象になるわけでございますが、一方において欠員が四百六十七名ございますので、現状といたしましては、この欠員をもつて処理できますので、おそらくさような意思に反して臨時待命を命ずるというような場合は起きて来ないかとは思いますが、一応万一のことを考えまして、この規定があるわけでございます。要するに行政機関職員定員法規定と合せた規定になつておるというにすぎないことだと思います。
  9. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 この臨時待命待命を命ずる目的は、やめていただくための予備的な一つの段階であるというお考えでございましようか。それとも職員配置転換のような場合にも、やはり臨時待命を一度さしておいて、そうしてどこかにこれを配置する、こういうようなお考えですか。
  10. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 それはもちろん予算の節約という点から来ておりますので、やめてもらうというところに主眼があろうと思います。
  11. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 さような目的のための条項であるとするならば、ただいまの御説明のように欠員が四百六十七名もあるということになれば、これは必要がないように私ども考えておりますので、これを必要がなければ削つていただきたい。ただいまのような御説明であれば、この条文がなくとも、今回の定員法改正目的である減員が、御本人の意志に反しないで、本人意思に沿うてできると考えますので、これは必要がないんじやないか、蛇足である。かような規定があるために、かえつて職員に不安を与える、あるいは下手をして無理をいたしますならば、相当な経験を持つておる人たちも上司のお考えによつて自由にされるというようなおそれがあるので、弊害はあるけれども何ら積極的に必要性がない、かように考えますので、これを削つていただく意思はないかということをお尋ねしておきます。
  12. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 先刻欠員との関係でいろいろ申し上げた次第でありますが、裁判所といたしましては、この法案に対しまして、結局この法案行政官庁職員定員法規定に合せて、裁判所職員についてもこういう規定ができておるのだろうと思いますが、職員に関します問題は、これまでも大体行政賞庁に合せた規定になつておりますので、そのことだけは申し上げておきたいと思います。
  13. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 実は私どもは、大事な司法職員として働いていただきます場合には、いつも安心してその職に忠実に努力、精励恪勤をしていただくような姿に置くことが一番大事なことだと思うのであります。かような条文があることによつて、不安な気持職員に与える、この点を私どもは憂慮するわけであります。ただほかの行政職員に対する関係上、そちらの方にもございますから、その体裁上ここに入れておるという程度のものでございますならば、思い切つてつていただきたい。なお最近の世情というものは、裁判所に対する、日本司法部に対する信頼が非常に高めらたると同時に、非常な信頼を持つておりますので、司法職員としての構成要員である方たちは長い経験りつぱな方がほしい、こういう建前から、現在まで御陶冶、訓練をされ、経験を持たれる方たちについては、将来増員されることあるであろうということも考慮されて、今回の行政整理に対する同調はされていただきたくない、さような態度がほしい、かような考えを持つております。さような立場から考えますならば、さほど必要でなければ消していただいて、職員が安心して喜んで働き得るような状況に置いていただきたいと考えておるのでありますが、いかがでございましよう。
  14. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 ちよつと政府側から考えを申し上げておきたいと思います。御心配の点はまことにありがたい次第でありますが、本来臨時待命という制度は、職員をやめさせる場合に、それについてやや恩典を与えるというふうな趣旨のものであると考えております。と申しますのは、普通行政官庁定員が削られました場合には、国家公務員法規定でいきなり退職を命じ得る、意に反しても命じ得るということになるわけでありますが、それをもう少しスムーズにさせる意味で、今度の場合にはいきなり退職を命じないで、しばらく余裕を置いて、その間は勤めないでも給料を与えるというふうなことにして、できるだけその整理を円滑にいたしたいという趣旨でできたものと考えております。今度の裁判職員減員につきましても、全然意に反して退職をしてもらうことはあり得ないということであれば必要ないわけでありますが、万一そういう場合があり得るかもしれない、そういう場合にはやはりいきなり退職をしてもらうよりは、臨時待命として退職してもらう方がよいのではなかろうかというふうなことが考えられますので、これは念のため置いたのであります。裁判所側も言われましたように、おそらく働かせないで済むと考えられるのでありますが、置いておいた方がよいのじやないかというふうに考えております。
  15. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 裁判所側としては、この規定はここに掲げられても、実行に移すような場合はないだろうというようなお気持でやられておるらしいのですが、私どもはその点を非常に懸念するわけであります。これは意見の相違になりますので一応打切りますが、私どもこの点は納得できない。かように申し上げて質問を打切ります。
  16. 鍛冶良作

    鍛冶委員 関連して、今聞いておりますと、特別待命ですか、百七十名やる。この特別待命というのはどういうことですか。
  17. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 特別待命と申しますのは、昨年人事院規則で設けられた規則でありまして、今回の人員整理とは関係なく以前に設けられた規則であります。これはやはり今度の臨時待命と似ておりまして、いきなり退職させるのではなく、一定の期間給料をもらつて勤めないで済む、そのかわりそれが済めば当然退職になるというふうな制度でありまして、これも職員減員整理を促進するために設けられたものである。今度の特別待命を命ぜられたものにつきましては、その後欠員が補充されないということになつて定員が減ることになるので、すでに減つた分も今度の減員の中でまかない得る、今度の減員の中にそれでやめた人も算入するということになつているのであります。
  18. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると特別待命は、この前の人事院規則でその意に反して待命を命じた。今度はまたその上に、余裕がなければいいのだが、余裕があれば臨時待命としてこの法律でまた別個にやる、こういう考え方ですか。
  19. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 特別待命は、先ほどちよつと申し落しましたが、すべて申出によつてやることになつております。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それから四百何十名欠員があると言われたのですが、そんなに欠員があつて仕事にさしつかえないのですか。これは私どもの方から申しますと重大なのです。
  21. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 大体二万幾らあるのですが、そのうち大体四百何名と申しますのは雇員用員、このうちにあるいは書記官等を含めまして四百何名、全体の比率にしますと六分で、わずかな欠員です。全部で二万幾らですから、それに対してそう多い欠員ではないから仕事にはさしつかえないと思います。
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 仕事にさしつかえないということになれば、こんなことをやらなくてもそれだけ減らしてしまつたらいいという議論が出やせぬかと思うから私は言うのです。そんなものがなくても仕事ができるのだつたら、こんな法律が出てそれを適用するよりも、定員を切つてしまつたらいいではないかという議論が出る憂いがあるから、もつとはつきり言つてもらいたい。
  23. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 四百六十七名の内容を実は詳しく覚えておりませんが、このうち半数くらいが書記官、あとの半数くらいが雇員傭員ですが、それだけの欠員があつても何らさしつかえないと言うのではございません。どうにか無理をしてやつて行けるという程度であります。
  24. 林信雄

    ○林(信)委員 私も実は疑問にしながらじつと考えておつたのですが、これは事実そういうことで行けるようになつたのじやないかと思うのです。その一面は、終戦後事務的なものが非常に目新しくなり、煩雑になつたりいたしまして、何だか急に人を要求した。それが次第に納まつて来たという時代の一面がある。それと同時に、それらの職員諸君事務に習熟して参つた。またこれを指導監督する諸君も、その事態に処しましてやはり自己の職務にまた習熟して来たのだろうと思います。そういう関係からじつと見ておりますと、正直に申しまして判事さんはなかなかお忙しく、負担においても過重な感がいたしますけれども事務系統諸君は、ただいま言つたようなことはないかもしれませんが、大分余裕を持つて来たように思う。私は古いころのこれらの諸君執務態様をながめてみまして、今の方は率直に言つて大分楽にやつておられる。非常に素質がかわつて来て、非常に新手なテクニックを覚えられたというなら別でありまするが、しいては言いませんけれども、少くともそれほどでもないのに大分ゆつくりしておられるように私は見る。そこでもう少し指導監督地位にあられまする人が適当におやりになれば、今の欠員はなくてももう少しでもこれはやり方によればできないことはないのじやないかという感じがしております。これはその数が減りましてそんなに困つておられないというのは、そういう関係からやつて行かれているのじやないかと私は思うが、むしろこれは一段と御努力願いまして、減らし得る定員はお減らしになるという傾向で、決してこれは事務的にうまくさえ行けば何も心配するものはない。私の考えておりまするようなことは非常に誤つた考え方、見方なのでしようか。どういうふうに、こらんになつておりますか。伺つておきたいと思います。
  25. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 お説の通りでございます。だんだん職員が習熟して行く、ことに書記官研修所等もできまして再教育もいたしておりますので、だんだん能率が上つて行くということは事実でございます。ただ戦後訴訟手続がかわりまし交互尋問というふうなことがせられるとか、その他いろいろなことのために戦前に比べますと裁判官以外の職員も、する仕事が相当多くなつているということはお認め願えるだろうと思います。とにかく傾向としましては裁判所職員は漸次能率を高めると同時に、数はある程度まではだんだん減らして行つていいのじやないかというふうに私ども考えておるわけでございます。ただ今の四百六十七名という数が出ますのは、実は人員縮減の議がかなり前から起きておりましたので、昨年の秋あたりから新規採用をとめまして、いわゆる無用の出血を避けるという意味において、ある程度準備しておいたということも一因になつております。
  26. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 これまでに明らかになつたことかもしれませんが、私ちよつと承知していないのでお尋ねします。裁判所職員で、国家公務員法によつて本人意思に反して休職だとか免職だとか、そういつた処置をとられたものは相当たくさんあるのですか、ちよつとそれを伺いたい。
  27. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 国家公務員法規定によつて、その意に反して離職せしめたという例は、今のところほとんどないはずであります。
  28. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこで本人意思に反して離職するというようなやむを得ない事態に立ち至つたというような事例は、今まではないとおつしやるわけですが、任意本人の申出によつて待命なつた者は相当あるわけですか。
  29. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 先刻申しましたように、いわゆる前の特別待命制度によつて本人の申出に基いて退職せしめた者が百四十一名ございます。
  30. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうすると、今度職員意思に反して臨時待命を命ずるという新しい制度がここにできるとすれば、裁判所の方の見通しとしては、任意に申出はしないであろうが、その意思に反してでも待命を命じなければならぬという必要があるものか、あるいは現在はないかもしれないけれども、将来は起るかもしれないというふうなお考えはあるわけですね。
  31. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 配置転換をいたす場合に、どうしても配置転換をがえんじないというようなことになれば、やはりその場合はやむを得ない場合があるだろうと思います。しかしこの法律手段に使って、首切りをやるというふうな意思は、全然持つておりません。
  32. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 首切りはやらぬとおつしやるのですが、配置転換に応じない者は首切るぞ、せんじ詰めればこういうことになるのでしよう。そういうふうに伺つていいですか。
  33. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 その意に反して離職せしめなければならないという場合があれば、それは国家公務員法の七十八条ですか、国家公務員たるにふさわしくないとか、あるいは事務能率がまつたく上らない、そういつたものについては、国家公務員法の七十八条を発動して、適当の措置を講ずる覚悟は持つておるわけでありますけれども裁判所にいてほしくない職員をこの法律で処理することはしないということを申し上げておきます。
  34. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そこがはつきりしないのですが、国家公務員法の七十八条に該当しないものであつて、しかも裁判所の方の事務その他の都合で、配置転換をしたい、しかしそれでもその配置転換に応じないというときには、これはやはり人間の社会ですから、感情も加わるし、また配置転換を円滑にやるために、他の者に対する見せしめというようなこともあるので、ひとつ臨時待命を命じようというようなことが起る危険は相当あるわけじやないですか。
  35. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 結局仰せ通りでありまして、国家公務員法七十八条の第三号の規定によるよりは、この規定によつた方が本人のためにも有利でありますから、そういつた場合にはもちろんこの規定の適用があろうかと思います。
  36. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 配置転換をされる場合のいろいろ事情というものは、あそこに配置すれば相当の成績も上るし、その地位にとどまらして適当である、しかしその裁判所側考えておられる地位配置することをがえんじないというときには、どうも勤務の実績も上らないし、適材適所の立場から相当でない、こういうふうに考えられるときに、臨時待命を命じなければならぬ場合も私はあり得ると思うのです。しかし実際の人事行政を担当してそれを運営される場合に、一体そういうふうな事態がそう起るものではないというような考え方もあり得るでしようし、またあるいはこういう制度ができたんだから、それを大いに活用してびしびしとやつて人事行政用滑化というか、当局所期目的を達するようにやるというやり方と、いろいろあるのですが一体どういうふうにそこのところはお考えになつておるのですか。人事行政やり方に関して、この問題を中心にお伺いいたしておきたいと思うのです。
  37. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 仰せのように、各職員をして十分に能率を発揮できるように、いろいろな点から進めて行きたいということはもちろんでありますけれども、この法律をを手段使つてさようなことをやろうという考えは持つておりません。
  38. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いま一つ……。私は人事行政についてあまり詳しい知識を持たないのですが、こういうことはあり得るわけですか。現在の地位にとどまつてつたのでは、国家公務員法の七十八条によつてこれは本人意思に反してその職を去らしめなけれ、ばならない。ところが配置がえをすればそういうことはないということは、言い得いる場合があるのでしようか、ないのでしよう。そこをちよつと……。
  39. 石田和外

    石田最高裁判所説明員 それはあろうかと思います。
  40. 小林錡

    小林委員長 それでは本件についてはこの程度にとどめます。
  41. 小林錡

    小林委員長 刑法の一部を改正する法律案及び執行猶予者保護観察法案、以上両案を一括して議題とし、質疑を続けることにいたしますが、この際両法案の審議の都合上、政府当局より逐条説明を一応聴取することにしたいと思います。斎藤政府委員
  42. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 刑法の一部を改正する法律案並び執行猶予者保護観察法案逐条にわたりまして、御説明を申し上げ、あわせて昨年十二月一日から二度目の執行猶予に伴う保護観察が実施に相なりましたので、その結果等について、御報告申し上げて御参考に供したいと考えます。  刑法の一部を改正する法律案でございますが、「第一条第二項中「日本船舶」の下に「又ハ日本航空機」を加える。」この点でございます。現行刑法によりますと、国外にある日本航空機内外国人犯罪を犯した場合には、内乱、外患及びある種の偽造罪等を除いてはこれを罰し得ないこととなつており、また日本人が罪を犯した場合にも、暴行、脅迫、略取、誘拐、賭博、阿片、麻薬に関する罪等は処罰ができないことと相なつております。しかるに先般日本航空国外航空を開始いたしましたので、日本航空機日本船舶と同様に取扱つて、以上のような不都合を避けようとするのがこの改正目的でございます。この改正属地主義原則によつた改正でございまして、日本船舶日本領土延長考えておりまする現行建前と同じ観点から、日本航空機日本領土延長と見て、日本航空機内の行為について全面的にわが国刑罰法規を適用するものといたしておるのでございます。わが国におきましては、刑法改正予備草案及び刑法改正仮案がすでに刑法の第一条第二項に「航空機」を追加すべきものといたしており、外国の立法の中にも同様の明文規定を置いておるものが少くなく、この改正国際刑法原則に反するものではないと存じております。「日本航空機」と申しておりますのは、航空法によりましてわが国で登録された航空機をさしておるのでございまして、航空機の機長であるとかあるいは乗組員等の国籍とは関係がないと考えております。この改正に伴いまして附則の第三項で、この改正によりまする日本航空機内犯罪についての土地管轄についても、日本船舶の場合と同様の特例を設けることとして刑事訴訟法の一部改正案が出されておるのでございます。  次に第二十五条以下の点でございますが、これは初度目の執行猶予者にも必要のある場合、裁判所保護観察をつけることができるようにしようという考えによる一連の改正でございます。まず第二十五条第二項但書中「第二十五条ノ二ノ保護観察付セラレ」とございますのを「第二十五条ノ二第一項ノ規定ニ依リ保護観察付セラレ」に改める点でございますが、今回の改正案では第二十五条ノニに第二項及び第三項として保護観察の仮解除に関する規定が設けられておりますので、条文体裁整理上かような改正考えたのでございます。  次に第二十五条ノ三、すなわち「前条第一項ノ場合ニ於テハ猶予期間保護観察ニ付スルコトヲ得前条第二項ノ場合ニ於テハ猶予期間保護観察ニ付ス」とございます。本項は第十六国会に提案いたしました政府原案と形式上はまつたく同一でございます。すなわち、本項の前段を追加し、初度目の執行猶予についても裁判所の裁量により保護観察を付し得るものとしようとしているのでございます。しかしながら後に述べますように、保護観察内容、その遵守事項及びその違背を理由とする執行猶予取消し等についていろいろな改正を加えているほか、観察の仮解除制度を導入いたしまして、実質的には第十六国会政府原案とまつたく面目を異にしていると考えております。なお第十六国会で問題になりました「保護観察ニ付テハ別ニ法律以テ之ヲ定ム」という規定は、今回単行法執行猶予者保護観察を提案いたしておりますので、これは剛つております。  次に「保護観察ハ行政官庁ノ処分ヲ以テ之ヲ仮二解除スルコトヲ得」というのが第二項に明らかになつております。これは前回非常に貴重な御意見を伺いまして、いろいろと研究いたしました結果、保護観察の性格からいいまして、保護観察に付された後、保護観察を行う必要がないと認められるような状況になつた場合は、この仮解除を行い得るようにするのが妥当である、こういうふうに考えましたので、新たにこれを入れた次第でございます。保護観察の仮解除は、あたかも仮出獄の場合に刑の執行をとめるのと同様に、保護観察におきまする指導監督、補導援護の措置を行わないということにするものでございまして、保護観察に付するという裁判所の言い渡しの効果を消減させようとするのではありません。従いまして仮解除を仮出獄と同じように行政官庁の処分によるものということにいたした次第でございます。行政官庁といたしましては、地方更生保護委員会が現在仮出獄の権限を持つております。しかも地方更生保護委員会が実際に保護観察を担当する保護観察所を監督いたしまする立場にございますので、地方更生保護委員会が最も適当である、かように考えて、後に述べます執行猶予者保護観察法案において、このことを明らかにいたしておるのでございます。  次に第三項でございますが、保護観察をかりに解除された場合の効果を規定いたしております。保護観察の仮解除は、保護観察の実際の実施面をかりに解除するのでございますが、観察におきまする指導監督及び補導援護の措置を行わない以上、その期間中に犯した行為につきまして、現に保護観察の措置を受けておる者と不利益の点を同様にすることは妥当でない、かように考えまして、かような不利益を除去しようとしたわけでございます。この項の規定の結果、保護観察の仮解除を受けました者は、その仮解除の処分を受けた日から仮解除の取消しの処分があるまで、処分がなくして執行猶予期間が終れば、これはすでに執行猶予期間が経過いたしまして、まつたくこの判決を受けなかつたと同様のことになることは申すまでもございませんが、その期間中は再犯を犯しましても重ねて執行猶予を受けることが可能になります。またその期間遵守事項に違背いたしましても、その遵守事項に違背のゆえをもつて執行猶予は取消すことができないという結果に、なります。なおこの規定を置きますると、現在の二度目の執行猶予に伴いまして必要的保護観審を受けられる者も同様の規定になりまするので、現在二度目の執行猶予に伴つて保護観察を受けている人々の成績が良好でありまして、その必要がなくなつて本法の適用を受けますと、三度目の執行猶予も可能だ、かような結果に相なるものと考えております。  次は第二十六条ノ二第二号でございますが、これは「第二十五条ノ二第一項ノ規定二依リ」すなわち執行猶予に伴つて保護観察に付せられている者が、遵守事項の違背による取消しになる場合、現行法では「遵守事項ヲ遵守セザリシトキ」と相なつておりますものに附加いたしまして「其情状重キトキ」ということにいたしまして、片々たる形式的な違背では法律上も適用できない、かようにいたした次第であります。なお遵守事項につきましては執行猶予保護観察法案について申し上げたいと存じます。  次は附則でございまするが、附則の第一項は施行期日に関する規定でございまして、保護観察に関する改正規定の施行につきましては若干の準備を要しまするので、八月三十一日までの間に実施をするということにいたし、航空機内の犯罪の処罰に関しましては公布の日から施行する、かようにいたしたのでございます。  次に第二項は、執行猶予保護観察を結びつけることは、刑の変更ではなくて執行猶予の態様に変更を加えるものにすぎないのでありまして、このような規定がありませんと、本法施行後に犯された罪につきましては、初度目の場合の執行猶予についても保護観察を付し得ることに相なります。保護観察本人の更正をはかるのが目的でございますが、部分的には本人の自由を制限する場合がございますので、この規定を置きまして、そして本法施行前は初度目の場合は保護観察を付し得ないということにいたし、なお例外といたしまして、この法律の施行前と施行後とに罪を犯し、併合罪として一個の刑で処断される場合は、刑の分割ができませんので、この場合には保護観察を付し得る、かように例外規定を置いたわけであります。  次は、刑事訴訟法改正点でありますが、先ほど申しましたように、これは日本航空機内犯罪についての特例を設けた次第であります。  次に、執行猶予者保護観察法案について申し上げます。この法案につきましては、犯罪者予防変更等法施行の際の御議論も拝聴いたしておりますし、また第十六国会の御議論も拝聴いたしておりますので、十分と検討いたしまして立案をいたしたつもりでございます。  第一条におきましてはこの法律目的趣旨を明らかにし、この法律刑法第二十五条の二の第一項によつて保護観察に付せられるその保護観察内容規定する法律であるということと、この保護観察目的が決して懲罰的に本人の自由を制限するものではなくして、本人の更生を助長するためのものであるということを明らかにいたした次第であります。  第二条は、保護観察の方法と運用の基準でございまして、犯罪者予防更生法におきましてもほぼ同種の規定がございますが、この条文におきましては、執行猶予に伴う保護観察対象者は、すでに矯正施設に収容された仮出獄者や問題少年と違うものであつて、多くの場合、一家の経済的な支柱となつて社会的生活を営む者が多いと考えられますので、職業等についても十分留意をして、みだりにその社会的活動を制肘することのないようなふうに附加いたしてあります。  第三条は保護観察をつかさどる機関でございまして、各府県に設けられておる保護観察所所在地に住んでおる人はその観察所の管轄下にある、こういう管轄に関する規定であります。  次に第四条は、保護観察開始前の環境調整に関する件でございまして、昨年十二月以来二度目の執行猶予に伴う保護観察の実施の経験に徴しましても、保護観察に付する言い渡しがございまして、ただちに身柄が釈放になりますが、しかしながら確定までに相当期間がございますので、その間ほんとうに行きどころのないという人は、保護観察対象にもなりませんし、保護観察が円滑に行われないというような事例もございますので、その間本人の申出があつた場合には、保護観察所において所要の環境調整をはかり得る、こういう規定でございます。結局未確定のブランクの間を埋めたい、かような考えであります。  次に第五条でありまして、これは保護観察の目標となるような遵守事項規定いたした点でございます。この遵守事項につきましては、現在の犯罪者予防更生法によりまする二度目の執行猶予の場合と同じように、一般的な法定遵守事項だけに限りまして、特別な遵守事項は定めないということにいたしてございます。これは特別な遵守事項裁判所が定めるということが考えられておりますが、現行刑事訴訟法の手続のもとにおいては種々の困難が予想されますのと、従来の保護観察経験からいたしまして、保護観察を行う者の指導監督やり方によりましては、さような一般的遵守事項だけでも効果を収め得るではない、かように考えた次第であります。その内容につきましては、これまでいろいろと御覧を拝聴いたした点も考慮いたしまして、またその他いろいろな点を考慮たしまして、現在の二度目の場合と相当変更いたしております。大体考えましたのは、保護観察を実施するためにどうしてもはからなければならない本人観察を行うものの機関の連絡を断たないようにするという点が一点、それから本人が更生に向つて進むために目標を与えるという点で、善行を保持するという点に限つて、従来ありました生業に従事すること、あるいは犯罪性がある者または素行不良の者と交際しないことという点を廃止いたし、なお住居を移転し、または長期の旅行をするときはあらかじめ許可を得ることになつておりましたが、その点を改めまして、長期の旅行という漠然としたことを廃止いたしまして、一箇月以上の旅行というふうに、期間を明確にし、従来のあらかじめ許可を得ることとなつておりましたのを、届け出ることに改めたのでございます。犯罪性のある者または素行不良の者と交際しないということにつきましては、仮出獄者の場合、あるいは問題少年の場合、元の不良仲間あるいは刑務所で一緒になつた者と交際しないということを遵守事項につけることが必要であると存じまして、犯罪者予防更生法の方は改正いたしませんで、この法案だけにおいてかような改正をいたした次第でございます。  次に、補導援護に関する第六条の規定でございます。保観観察目的は、本人の更生をはかることにあるのでありまして、決して警察監視であつてはならないと存じております。保観観察を大別いたしますと、消極面と積極面との両面が考えられます。消極面といたしましては、本人が自分の自由を無分別に用いて犯罪に陥るということを防ぐというふうな制限的な手段でありますが、保観観察の本来の目的は、さような消極面でなくして、積極面において本人に必要な補導と援護を与え、そして本人の更正をはかるということが重点であろうと存じまして、第六条においてそれについての規定を書いた次第でございます。その内容といたしましては、本人の置かれている条件によりましていろいろと違うことは当然でございますが、主として考えられてます点を例示としてあげまして、就職を援助すること、職業を補導すること、医療、宿所等を得ることを援助すること、還境を調整すること、その他所要の助言、連絡を規定いたした次第でございます。そしてその方法としては、まず第一段階においては、生活保護法あるいは職業安定法等がございまして、国民が無産別平等にかような社会保障の恩恵を受ける建前になつておりますので、対象者の同様に、まずさような方面の援助を得るということに、保護観察をつかさどる者が行うように努力する、それから第二項において、さような公共の衛生福祉施設で援助が得られない、しかも本人の置かれている立場が悪いために本人のが生更妨げられる、あるいは再犯を犯すおそれがある場合には、観察所がみずからの予算において保護観察盲あるいは保護司をもつて本人の日用品あるいは着物を与える、あるいは食事を与える、あるいは医者にかける、こういうことを第二項において規定いたしているのでございます。これは犯罪者予防更生法の第四十条の第一項、第二項とほぼ同様の規定でございます。  第七条は指導監督でありまして、保護観察におきます消極面を第七条において規定しているのであります。しかしながらこの消極面でございまするが、官憲の一方的な監視というのとはまつたく異なりまして、保護観察を行う者と保護観察を受ける者、本人との相互間の人的信頼関係に成り立つものであるということを規定して、さような考え方からこの規定ができておるのでございます。この第七条においては、本人にまず真人間になつて更生しようという気持を起させる、それを高めるということに努める、そうして本人とよく話し合つて本人が善行を保持するという遵守事項のわくの中で、その性格なり環境なり、あるいは問題となつ犯罪の原因、動機等から見て、違反のおそれが最も多いということを観察を行う者はよく選び出して、そしてこれを本人に納得させ、本人に自覚させて、そして本人もそれを守るという気持にさせて、その気持からはずれることのないように適切な指示を与える、こういうことにいたすべきであると考えまして、かような規定を置いた次第であります。なおその指示事項はもちろん遵守事項でございませんので、その指示事項に反したからといつて執行猶予を取消されることはないわけであります。  第八条は保護観察の仮解除であります。仮解除につきましては、先ほど申し上げましたように、刑法の一部を改正する法律案におきまして、行政官庁がするものであるということ、それからその仮解除なつた場合の法律上の効果等の最も重要な点を刑法において規定し、本条においてはその行う期間や手続を時らかにした次第であります。なおこの仮解除を取消すというような決定に対しましては、関係者から不服のある場合には、中央更生保護審査会に審査を請求することができる、かような規定を設けまして、この慎重を期しておる次第でございます。  第九条は、遵守事項違反による取消しの場合に検察官に観察所長が申し出る、その申出に基いて検察官から裁判所に請求するという現行犯罪者予防更生法の四十六条の規定をこちらに移した次第であります。  第十条は呼出、引致に関する規定でありまして、これも現行法の規定趣旨によつてつくられておるのであります。  第十一条は留置の規定でありまして、これも現行法において遵守事項違反による取消しの場合には、身柄が社会にありますので、身柄を拘束する必要がある場合もございますので、それについての規定がございます。それをこちらに移した次第であります。  第十二条は、先ほど申し上げましたような保護観察の仮解除の取消しということについて不服のある者が中央更生保護審査会に審査を請求する、それについての規定でございます。  第十三条はその他の権限でございまして、第一項は地方委員会保護観察所がこの保護観察を行うについてのいろいろな手続上、犯罪者予防更生法と同じような権限を行う必要がある場合がございますので、それらについてその権限を与えようとしたものでございます。第二項は、これは再度の呼び出しに正当な理由がなくて応じない場合、そういう場合に過料に処せられる規定でございます。それから六十条の費用徴収に関する現行規定をここに移した次第でございます。第三項は審査会、地方委員会保護観察所の職員または職員たりし者が、この保護観察に関する法律によつて職務行つて他人の秘密を知つた、その秘密の保持についての規定でございます。  附則の第一項は施行の期日でございまして、刑法保護観察に関する規定の施行の期日と同じ日から施行するというふうにいたしております。第二項は経過規定でございまして、現在二度目の執行猶予犯罪者予防更生法によつて昨年十二月一日から保護観察を受けておりますが、この法律が施行に相なりますと、この法律によつて保護観察を受けることになりますので、元の法律つてなされたいろいろの手続、処分等それぞれこの法律の相当規定によつて行われたものとみなす必要がございますので、かような規定を置いた次第でございます。第三項は犯罪者予防更生法の改正点でございまして、以上のような手続上所要の改正をいたそうとするものでございます。次に第四項は更生緊急保護法の改正でございまして、更生緊急保護法は、保護観察対象にならないような満期で釈放になつた人、あるいは無条件の執行猶予で釈放された人、これが他の刑事上の手続で身柄を拘束されておつて、釈放された直後本人からの申出があれば、国がその更生について保護を与えることができる法律でございまして、実際満期で出た人が観察所に参りまして、それで行くところがなければ保護会にこれを収容してやるとか、あるいは帰る汽車賃がない場合には帰りの汽車賃を与えるとか、こういうことをいたしておりますが、その更生緊急保護法を改正して、そうして執行猶予の言い渡しを受けて、確定前の人についてさような保護を与えるようなことのできるような改正をいたそうとするものでございます。第五項、刑事補償法の規定も、この法律案によつて身柄の拘束を受けた者に対して、現行法と同じように刑事補償の請求ができるようにいたそうとするものでございます。  以上、はなはだ簡単でございましたが、両法案についての逐条説明をいたした次第でございます。  なお昨年十二月一日から二度目の執行猶予に伴う保護観察を実施いたしておりますが、その結果を概略御報告申し上げます。十二月中に二度目の執行猶予になり、保護観察に付されたものが五十四件ございます。罪名は窃盗が一番多くて四十一件、詐欺罪が二件、横領が四件、傷害が一件、臓物罪が三件、覚せい剤取締法違反が一件、麻薬取締法違反が一件、その他一件、かようになつております。一月はお手元に差上げました資料がちよつと誤りがあるようでございまして、百三十一件となつておりますが、百二十九件が正しい思います。これは先ほど原本が参つて見まして気がつきましたのですが、ちよつと間違つておりました。もし差上げてないとすればさつそく差上げます。一月が百二十九件、二月が昨日事務の間で一応できたようでありまして百五十件ぐらいで、だんだんふえて参つております。なお私どもこの法案の立案につきましても責任がございますので、実は各庁から毎月事件についての報告を聴取いたしておりまして、その点どういうふうに行われておるか、二、三御報告を申し上げたいと存じます。  この報告は当初保護観察の開始が円滑に行われたかどうか、すなわちそのために裁判所との打合せで、裁判所から言い渡しがありますとすぐに通知をいただくことにしております。それから確定をいたしますると、検察庁から確定の通知をいただくことにいたしております。なお最高裁判所規則等におきまして、裁判所が言い渡しをする際には保護観察趣旨等について説示をいたしていただくことにしております。さらにこちら側からは、裁判官から御要求があれば保護観察の成績について報告を差上げるということにいたしておりまするが、さような裁判所からの通知なり検察庁からの確定の通知なり、あるいは裁判所の説示がどのように行われておるかというような点、それから保護観察を開始するについて観察所がどういうふうな注意をいたしたかというような点について、各事件について報告を求めております。この通知や説示等については裁判所もいろいろと御苦心くださいまして、各ブロックごとに会同を開いて、そうして中央から出かけて今度の新しい制度趣旨についていろいろと御説明を願い、また全国会同においては私どもも席にまかり出まして御説を伺つておるのでありますが、何しろ各簡易裁判所まで行われるのでありまして、必ずしも通知や説示等が当初は十分でなかつた点もございますが、各観察所におきましては、つとめて裁判所、検察庁とこの事件の取扱いについて事務連絡会を開きまして漸次改善されております。この報告はさような点について報告を徴しておるのでございますが、観察所におきましてさらにつつ込んだ詳細な報告を寄せておりますので、私どもこの機会に、御報告をさせていただきたい数件を申し上げて御参考に供したいと思います。  第一の例は、これは本年の一月東京の簡易裁判所の事件でございまして、二十五才の男でございます。氏名は省略させていただきます。窃盗罪で懲役一年、執行猶予五年の言い渡しを受けて、そうして確定後ただちに両親が付添いで観察所に出頭をいたしました。観察官が本人なり両親と会つていろいろ事情を聴取いたしてみますると、相当の家庭でございまして本人も法政大学まで入つたのでございますが、戦時中、学徒動員で工場に行つている際に爆風のために転倒いたしまして、その後酒を飲むと手近なものを何でもとるというようなことが起つて二度犯罪を犯した。そうして二度目に保護観察に付されて観察所に参つた、こういうことがわかりましたので、観察所においては千葉県国府台にありまする国立の精神衛生研究所と緊密な連絡をとつておりますので、そこに依頼をして現在診断を受けておる次第であります。  第二の例は静岡県の清水の簡易裁判所の事件でございまして、本年一月十二日に二十一才の男の工員でございますが、窃盗一年、四年間刑の執行猶予でございます。確定の前の日に母親と一緒に観察所に出頭いたしております。そうしてその取調べの事情調査の結果は、母親は助産婦さんでいられまして、実兄三人は生業について、それぞれの職についておりました。弟一人も中学一年生でございまして、生活は富裕というほどではございませんが、生活の保護を受けるということはございませんでしたと言うておるのでございます。いろいろ事情を聞いてみますると、本人はもともと非常に温良な青年であつたのでありますし、母親も正しい人でありまして保護能力においても欠けるところはないと思われますが、昨年の九月窃盗罪で執行予猶の判決を受けて、その二箇月後にさらに窃盗罪を犯した、そうして今度の二度目の執行猶予にあつた、こういう事案でありまして、だんだん聞いてみまするとヒロポンを好んで打つておる、その関係で悪友もあり、仲間もあつて、そうしてかような犯罪を犯したということがわかりましたので、その近隣のしつかりした保護司さんを指名いたしまして、そうして母親とよく話し合つて一緒にその青年を善導しようということにして、本人にもヒロポンを中止させ、それからその仲間と接触を避けるように話をして、本人もそれを承諾して現在就職をあつせん中で、これもうまく行くのではないか、こういうふうに思つております。  第三の例は宇都宮の簡易裁判所で窃盗一年、執行猶予四年の二十六歳の保険外交員の事件でございます。検察庁からの確定通知が遅れまして一月九日に確定いたしたのでございますが、一月二十六日母親と一緒に宇都宮の保護観察所に出頭いたしました。事情を聞いてみますと、父親は古物商のかたわら保険会社に出ておる。おそらくこれは保険の代理店をいたしておるのではないかと思いますというようなことでございますが、資産は数百万円あり、経済的には不自由はない。犯罪は二度とも、今回の二度目の執行猶予も最初の執行猶予もやはり酒を飲んで酩酊の上やつたのだということであります。裁判所からも参考意見として酒を飲まないように指導してくれということでございました。本人にも母親にもよく事情を話し、そうして適当な保護司をつけてその方向に指導しておる、こういう問題でございます。  最後の例は非常に詳細な報告でございまして、一月六日に京都の簡易裁判所で確定した事件でありましたが、確定前に裁判所から通知がございましたので、適当と思われる保護司をあらかじめ指定しておきましたので、確定の日の午前十一時ごろに、保護司と一緒に参つたそうでございます。やせ型の、風采も粗野な人で、最初伺つたときは非常に警戒的な面持であつた。それから所長が、そういう趣旨のものではないということをよく話し、さらに別室で保護司と本人観察官といろいろと事情を聞いたり話をしたりしているうちに一本人もだんだんと安心をしてやわらぎが見られ、先生々々、こういうようなことを言うようになつた。保護司もこれなら自分も保護しがいがいがあるということで、保護司がその後非常に熱心にやつたのでございます。その最初の調査によりまして、本人は本来ガラスふきの職工なんでございますが、前回執行猶予なつたために職を失い、それから本人も友だちもたくさんあつたのだけれども、非常に萎縮しちやいまして、友だちともつき合わないということで経済的にも因つておる。それから奥さんが肋膜で弱つておる。子供は四人ある。それで急いで適当な援護をやる必要があるというので、保護司とよく打合せて保護観察を開始いたしましたのでございます。保護司がその翌日参つてみますると、倉庫の一部分を仕切つた、火の気のない寒々としたところに、病人の奥さんと子供四人おつたということで、いろいろ話をし、保護観察が決して本人の不ためのものでないということをこんくとよく話をしたところ、奥さんが自分は実は先夫が戦争のために死んで、そうして子供一人残された。そのため連れ子をして現在の夫のところに来た。現在の夫と二人子供ができたのであるが、最近主人が酒を飲んで酔つぱらうと、かわいい四つになる子供の首を締めるというようなこともあつて、自分もほんとうにこれではからだもよくならないし、いつそのこともう別れようか、四人の子供を二人ずつわけて別れようかと思うけれども、保護司の先生どうしたらようかろうかと相談をして来た。それで保護司は自分はこのうちを建て直するという仕事でもつて来ている、あなたがそういう思い切つたことをしても、結果は決してよくならないのではないか、むしろあなたがいて、一緒になつて主人を助けてくれて初めて主人も更生できるのじやないか、ひとつ思い返してくれ。それから主人に対しても、見ず知らずの人の前で奥さんがああ言うのだから、おそらくはんどうでしよう、あなたもひとつ酒をあまり飲まないようにして、まじめにひとつ職についてくれということで、村役場の厚生課の主任に生活扶助の手続をとつてもらうようにいたしまして、幸いにその後一万二千円くらいの、ガラス工場で収入を得るようになつて、どうにかこの事件も片づきそうだ、こういうような御報告をいたして参りました。その他報告はまだ詳細な点はございますが、開始以来まだ三箇月でございまして、的確な結果は申し上げることはできませんが、できるだけ所期の目的に沿うように努力して行くという気持でおります。
  43. 小林錡

    小林委員長 これにて政府の説明聴取は終りました。木下郁君。
  44. 木下郁

    ○木下委員 ちよつと一点だけ。この執行猶予の範囲が広められたことは、社会的に、在野法曹の面なんかでも全体として評判がいいようであります。今のお話のようなこともありますが、これは刑罰を甘くしたという意味じやないのですけれども、今現に服役している連中の仮出獄の面についても、やはりこの執行猶予の面が広げられたのですから、やはり仮出獄の取扱いの面でも、保護更生という面を広げるという意味で、やはり従来の取扱いよりも寛大といいますか、そういう取扱いがなされてしかるべきものではないかというふうに考えておりますが、そういう点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  45. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 個々の事案につきましては、一概に申し上げることはできませんが、あの厳格に四六時中監督を受けておる刑務所からいきなり完全な社会に返すということは非常に危険なことであります。本人のために不ためである。できるだけ本人の更生の気持を起させることに努めつつ、できるだけ適当な時期を選んで、ある期間保護観察をする、原則としてもその方がよろしい。刑期満了まで置かないで、早く出して、本人が社会に適応する期間手伝いをしてあげるということが必要であると存じます。大体そのような方針で運営をいたしております。犯罪者予防更生法ができる前、仮釈放が、私から言いますると少し無鉄砲に行われておつたのじやないかと思う。その結果仮出獄の取消しも非常に多うございましたが、この制度ができましてから、同じ程度の数を出しておりますが、仮出獄の期間中に取消しになるという人の数が、絶対数においても、比率においても減少して参つて来ております。
  46. 木下郁

    ○木下委員 それは大体前の説明でわかつていたのですが、五条の善行を保持するという遵守事項、これは善行という言葉は、法律の面で言うとこういうふうに伺つていいのじやないかと思いますが、あやまちをまた繰返さないような生活態度をとらせる。善行を保持すると言うと、普通人以上の生活態度を要求しておるかのように聞えますが、実際はお取扱いの面でも、また繰返さぬような生活態度ならよろしいのであるというふうに伺つてよろしゆうございますか。
  47. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 その通りでございます。現在までの仮出獄を統計した例で見ましても、ヒロポンを打つてうちの物を持ち出す、反対すればうちの者に手を加える、うちの者もこのままにして置いてもらわれちや困るというような者も出しております。善行を保持するという文字を使いましたのは、本人の指導目標という点もございますので、非行をするなということでは指革目標ではありませんので、善行を保持するという規定を入れたのであります。決して聖人君子にしようというのでなくして、非常に条件の悪い人を一般の普通の条件に持つて行こう、それがわれわれの使命である、かように存じております。もちろんよくなればよくなるほどけつこうでございますが、それはまた別の問題でございまして、御説の通りでございます。
  48. 小林錡

    小林委員長 鍛冶良作君。
  49. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはこの前からも問題になつたのですが、初犯の際にそれを観察に付さなくてもいいじやないかというわれわれは考えつておるのですが、やはり付さなければいかぬという理由をもう一ぺんあらためてお聞きしたいと思います。
  50. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 再度犯罪を犯せば取消されるという心理的な強制によつて無条件の執行猶予で効果のある場合も、人によつてはあろうと思います。しかし本人の条件や環境が悪いとか、いろいろな事情で、そのままやつてはやはり再犯のおそれがあるという人が相当いるのではないか。また実際の裁判面におきましても、しつかりした保護者があるならば執行猶予できるけれども、現在責任を持つて本人の世話をし、指導するという人がなければ、今までもたびたび微罪が繰返されたという者については、やはり実刑をやらなければならぬという面もあろうと思う。さような者を、私どもは刑務所へ入れないで社会へ更生させたい、そのためにはやはり初度目の場合にも保護観察に付することが必要な場合もあると考えた次第であります。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうしてみると、執行猶予をつけた場合は保護観察に付する方がいいという考え方からこれを考えられたものではなくて、保護観察に付した方が執行猶予をしやすくなる、そういう目的であるのだとわれわれは解釈してよろしゆうございますか。
  52. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 ちよとお答えにならないかも存じませんが、執行猶予になる人のうち、保護観察を必要とする人がある。また実際の運用において、この制度をとれば、従来実刑でやつたかもしれない人のうち、相当数保護観察を付して執行猶予にするという事例が必ずあるだろう、かように考えておる次第でございます。外国の例を出してまことに恐縮でございますが、アメリカなどでも、この制度をやつてから刑務所を増設しなくても済んだということを申している例も開いております。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはよほど大事なんで、これは将来にとつてこの点が明確でないと非常に困ると思いますが、そういうことがあるけれども、あなた方のねらいは、執行猶予にした以上は保護観察に付しておいた方がいいのだというのか、それとも保護観察というものは執行猶予ができるのだからできるだけ保護観察をやろうというのか、これを明瞭にしておいてもらいたい。いろいろな場合がありましようが、あなた方のほんとうのねらいはどこにあるか。
  54. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 執行猶予になればできるだけ保護観察をつけた方がよろしいとは考えておりません。これは事案々々によりまして、保護観察をつけないでいいという事案も、現在執行猶予になつている例の中に相当あるので、それに不必要な保護観察をつける必要はない、かように考えております。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ聞きたいのは、よく検事の論告の際、執行猶予を付してよろしいという意見がついているのであります。その際執行猶予を付してよろしいが保護観察に付してもらいたい、こういうことをつけ加えて言つてもさしつかえないものかどうか。
  56. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 それはさしつかえないものと考えております。
  57. 鍛冶良作

    鍛冶委員 執行猶予なつたが、執行猶予が不服で検察官が上訴をすることが多々あります。それと同様に被告人が無条件の執行猶予でなくて保護観察に付された、これははなはだ不都合だ、こういうことで上訴ができますか、いかがですか。
  58. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 私ども考えは、検察官も保護観察をつけるべきだということで上訴ができると同様に、被告となつた人も、無条件で当然だ、それに保護観察がついた、だから争うということも可能だと考えます。
  59. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうするとやはり、この保護観察というものは刑の一部だということにならなければそういう理論は出て来ないようであります。そうでなかつたらそんな上訴の目的にはならないように思いますが、これはどうも刑の一部ではないのじやないかと思いますが、この点は重大だと思いますので、はつきり伺いたい。
  60. 長島敦

    ○長島説明員 ただいまの点でありますが、刑事訴訟法によります上訴の場合の、量刑不当を理由といたします上訴に当るのであろうというふうに存じます。刑事訴訟法によりまして、前回の改正の際に、の点の改正がございまして、執行猶予の言い渡しをする場合には、刑の言い渡しと同時にその言い渡しをいたすわけでありますが、保護観察に付する旨の言い渡しも、その際に同時に主文でいたすことになつておりまして、結局主文中のに、刑と、執行猶予と、保護観察と三つの言い渡しが入つておりまして、これらを包括いたしましてその量刑が不当であるという場合には、量刑不当で上訴ができる、かように考えます。
  61. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうするとやはり保護観察というものは刑の一部だということに解釈してよろしいですか。
  62. 長島敦

    ○長島説明員 その点は、刑という言葉の使い方でございまして、刑法に申しますところの刑ではございません。刑法に申します刑は、第九条に列記してありますのがそうでございまして、執行猶予及び保護観察は御承知のように刑法の二十五条に規定しております刑の執行の一つの態様を定めたものというように考えておりまして、刑法の面から論じますと刑ではございません。ただ刑事訴訟法の面から申しまして、いわゆる量刑不当という意味の量刑という広い概念のときの刑と申しますか、そういうものの中には入つておるわけでございまして、そういう意味で訴訟法上はそういうふうに不服が申し立てられますが、刑法の解釈といたしましては、これは刑ではないと解釈するのが正しいのではないかというように考えております。
  63. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ、保護観察の取消しというのはありますかどうか。これには仮解除の取消しの場合はもう一ぺん保護観察に付するということになつております。保護観察遵守事項を守らなかつたという場合にはどういう処分になるか。
  64. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 保護観察の仮解除になりました者は、仮解除中は遵守事項違反をしても執行猶予の取消しの理由には相なりません。ただ仮解除目的は、保護観察というようなことをせぬでも、実際の保護観察指導監督なんかせぬでも、ちやんとやつて行けるということになつたときは、仮解除をし、その後になつてまた本人の環境が非常に悪くなつた、あるいは本人の態度が悪くなつたという場合には、仮解除をいたしますと裁判所の言い渡した保護観察に付するという決定が潜在的でありましたのが、顕在的になつて来る、その仮解除の取消しのときから保護観察をしなければならないという関係になるかと存じます。
  65. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の言うのはそうじやないのです。遵守事項というものがありますから、遵守事項を守らなかつたらどういう処分があるのか、こういうことであります。
  66. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 仮解除の処分があつてから取消しまでの間に遵守事項の違反がございましても、これは執行猶予の取消し事由にはなりません。ただその後、仮解除が取消しになつた後において遵守事項の違反がございますると執行猶了の取消し事由になる、かように考えます。
  67. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私が一番聞きたいのは、遵守事項を守らぬからといつて観察官がいろいろなことをせられること問題が起きないかと思うから聞くのです。そこで遵守事項を守らなかつた、指導監督に従わぬ、こういうことになつたらどのようなことをする。ただ訓戒をして、やむを得ぬ、これはどうもしようもないものだということなのですか、その点なのですが。
  68. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 個人的な指導に従わないということだけでは何らこの執行猶了の取消し事由になりませんで、客観的に見て本人が善行を保持しない、しかもその情状が重いというときには執行猶了の取消しの事由になりまして、その場合の実際上の取扱いとしましては留置して取調べるということもあり得るわけであります。
  69. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点を聞きたいのだが、そうするとこれはどうしても守らぬ、どうしようもない、こうなつたら執行猶了を取消してくれというのはどういう手続で取消してもらうのですか。
  70. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 保護観察所長から遵守事項を具体的に書いて検察官に申出をしまして、検察官がその取調べをして、なるほどもつともだというときには検察官から裁判所に請求をして、裁判所がそれに基いて取調べをいたしまして、さらに本人からの請求がございますると口頭弁論を開かなければならない。口頭弁論になりますと本人は弁護人を頼むこともできる、こういうふうに相なります。
  71. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはこの九条ですか。
  72. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 今の執行猶予者保護観察法案の第九条によりまして申出があつた場合、検察官がそれはもつともだ、そうすべきだということになりますると、刑事訴訟法の三百四十九条に規定がございまして、裁判所にその請求をすることに相なります。ただいま申し上げましたそれについての手続は三百四十九条の二に規定いたしております。
  73. 鍛冶良作

    鍛冶委員 刑事訴訟法でそういうことが書いてあるのですか。検察官へ申出ることができる、それから呼出し、引致ができる、留置ができるということがあるのだが……。
  74. 長島敦

    ○長島説明員 それはただいまの執行猶予者保護観察法案の第九条の末項のところに「刑事訴訟法第三百四十九条第二項に規定する申出をしなければならない。」とございまして、刑事訴訟法の三百四十九条の方にそれを受けておりまして、三百四十九条の一項は検察官は執行猶予の取消しを請求しなければならないという規定がございまして、その二項に「刑法第二十六条ノ二第二号の規定により刑の執行猶予の言渡を取り消すべき場合には、前項の請求は、保護観察所の長の申出に基いてこれをしなければならない。」という規定がございして、それが今の九条を受けておる関係になつております。
  75. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうするとこの点は今まであるのと別にかわりがないが、ただ保護観察官が検察官に申し出ることができるという点だけがかわつて来た、こう解釈してよろしゆうございますね。
  76. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 現在も保護観察所の長になつておりまして、ただ執行猶予関係が全部犯罪者予防更生法でなくなりますので、その同じ規定をこちらに持つて来て、刑訴とは従来と同じように連繋を持つておる、こういうことになつております。現在も保護観察官ができるのではございませんで、保護観察所の長が……。
  77. 鍛冶良作

    鍛冶委員 さつきの問題をもう一ぺん聞きます。が、検察官が、保護観察に付さなかつたといつて上訴ができると言われたが、それはどうですか。人にとつてはさしつかないでしようか。不利益変更禁止の方がいいのじやないですか。
  78. 長島敦

    ○長島説明員 その点は量刑不当でやはり上訴ができると考えます。検察官から上訴いたしました場合には、御承知のように不利益変更禁止の適用がございませんので、控訴審で必要と思えば保護観察に付し得ることになろうかと思います。
  79. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ、第四条の保護観察開始前の環境調整、これはどうも具体的にわからぬのですが、どういうことです。
  80. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 環境調整につきまして実例を申し上げてよろしゆうございますか。これは仮出獄を許可するかしないかに際しまして、環境を調整いたす実例でございますが、仮出獄の場合には適当な保護者があるかどうかということが、仮出獄を許してよいかどうかということの一つの資料に相なりまして、さような意味から環境調整いたしておるのでございますが、この例はある私鉄会社の小さい駅の駅長さんの奥さんの弟が実父と兄さんの世話になつてつたのでありますが、戦時中でありますが、食糧のことで虐待されたというようなことを考えまして、尊属殺をはかつた。こういう事案で刑務所に入つておる。それを仮出獄するかしないかの環境ができておるかどうか、そこでこれを調整するということの事例でございますが、まずその家庭の大きさとかいうようなことを考えて、やはり実父の元にすぐに行かせることはまずいだろうというので、その義兄の人とよく話合いをした、そうして義兄がそれでは自分が引受けましよう、しかしいつまでも自分のところに置くわけにも行かないということで、実父やその兄さん夫婦によく話をして、兄さん夫婦にもつと寛容に弟を引取つてもらう、しかしいつまでもでは困るというので、それでは暫時義兄のところで引受ける、こういうふうにして環境が調整された。こういうふうに家庭上のいろいろなもめ事があつて本人が家に帰ろうと思つても敷居が高くて行けないというような際に保護司あるいは観察官がうちまでついて行つて本人を両親なり保護者にスムーズに引受けてもらうようにいろいろ話合いをする、こういうことが環境調整の大きな場合であると考えております。
  81. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もう一つ、刑法のところで、説明の第一に、「現行刑法によれば、国外にある日本航空機内外国人犯罪を犯した場合には、内乱、外患及びある種の偽造罪等を除いては、これを罰しえないものとされており」、云云。これはどういうわけでこういうことになつておるのでありますか。
  82. 長島敦

    ○長島説明員 その点は実は昭和二十二年に刑法の一部改正がございまして、それまでは現行刑法の第三条に第二項という規定がございまして、外国人日本人に対してやりましたような場合には、放火とか傷害とか殺人とか、ここに掲げてございますような種類の犯罪はすべて処罰することができることとなつてつたのでございます。ところが刑法改正がございまして、その第二項が落ちてしまつたわけでございます。その結果といたしまして、今日におきましては外国人日本国外犯罪をやりました場合には、現行刑法の第二条に規定がございます場合にのみこれを罰し得ることになつておりまして、第二条に列記してございます罪がこの説明書にございます内乱、外患及びある種の偽造罪等ということになつておりますので、かように範囲が非常に狭くなつた次第でございます。  昭和二十二年にさような改正がなされました理由の一つは、この従来の規定は、日本人が被害者である場合には、これを保護するという建前から、国外における外国人の重罪を罰することにしておつたのでございます。そういう保護主義の原則をとりますことが、世界的に見まして日本の利益ばかりを保護するような印象を与えるので、好ましくない、世界協調というような思想からその際に削除されたということになつておるのでございます。
  83. 小林錡

    小林委員長 林信雄君。
  84. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいま詳細な御説明もありましたし、またいろいろ質疑も試みられたのでありますが、私も先般全般に対するいろいろな質疑をやつておりますし、さらに関係の事柄についていろいろ検討も試みておりますが、かような折からに感じますことは、むしろ逆な面も考えられる。犯罪が起りまして、その後の処置という問題が重要でありますことは、こういう機会に十分感じられるのであります。犯罪が起つた後に非常な苦心をいたします反面に、犯罪を起さない面でまた非常な努力をしなければならぬ。このことは単なる司法当局だけのよくするところではないと思います。広く政治面よりいたしまして、民生安定に重点を置かなければなりませんし、広く教育の面において勘案せられなければならぬと思いますが、司法当局として、従来いわゆる遵法精神の涵養といつたような運動が芽ばえ及び続けられておつたのでありますが、最近においては何となくそれがしゆんとしてしまつたような感じであります。その実際の運動を見ておりますと、なかなか困難な問題のために、率直に言つて、実績が上つておらないと思います。第一に考えられます講演会といつたようなものも、定期的というより、むしろ司法記念日といつたような日にほとんうにざつとやるようでありますが、その聴取者たるや裁判所職員か何かがようやくお義理で集まるようなぐあいで、ねらつております大衆はほとんど集まつて来ない状態です。こういうことでは実効は上らないのであります。しかしそのねらつております方法面はまことにいいのであります。これもひとつもつと新手を考えましたら、この方法もある程度の実効を上げるのではないか。たとえば人を集めるのでなしに、集まつたところへ行つてやる。宗教講演会がある、学術講演会があるといつたようなところでやるということであれば、いいのではないか。しかしそういうところへ集まる諸君は、実は遵法精神をわざわざ高揚しなくとも、必要のないような諸君が多いかもしれぬので、さらに方面をかえて行かなければならぬと思います。私は今適当な案を持つているわけではないのでありますが、これは考えてみなければならない問題だろうと思うのであります。  先刻私は教育の面から申しましたけれども、教育の面にしても、一般国民としての常識人、知識人をつくるという以外に、特にその知識を盛り込むようなことを普通教育の面にまでこちらから進んで持ち込んで行く。罪が起つた後にその贖罪をする、あるいは洗い清めるという努力も必要でありますけれども、またその刑というものは非常に恥ずべきもの、非常に恐るべきものだという観念も、ある意味においては入れて行かなければならないので、今のようにあとの処置について非常に熱心に、丁寧になさいますと、刑に対する遺憾の観念も薄らいで来るという一面もあることを考えなければならぬ。これはやはり恐るべきもの、恥ずべきものという観念もどこかでしつかり植えつけておかなければならぬ、こう思うのであります。この点は当局だけの問題でないと思いますが、やはりあなたの方でしつかりお力を入れなければならぬことだろうと思います。今審議いたしておりますことと逆の面のようでありますが、このことから痛切に感ぜられてなりませんので、この際御意見がございましたら、承つておきたい。
  85. 斎藤三郎

    斎藤(三)政府委員 まことにごもつともでございまして、犯罪は恥ずべきものである、またこれをなくするようにする、さらにまた犯罪の後の贖罪よりも、犯罪が起らないようにするということも重要なことだと存じます。従来は司法記念日がございまして、毎年いたしておりましたが、裁判所が何するやら、いろいろ機構の改革でただいまは行われておりませんが、今後さようなことについてはいろいろ研究をいたし、御意見に沿うように十分いたしたいと存じます。
  86. 小林錡

    小林委員長 本日は午後は部屋がふさがつてつてできませんので、本日はこの程度にとどめておきます。明日は午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することにいたし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時散会