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1954-03-22 第19回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十二日(月曜日)     午後二時九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 花村 四郎君 理事 高橋 禎一君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    牧野 寛索君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木原津與志君    川上 貫一君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     齋藤  昇君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (大臣官房調査         課長      位野木益男君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃澤 全司君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月二十二日  委員岡田春夫君辞任につき、その補欠として川  上貫一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十日  名古屋法務局新城支局存置に関する請願(福井  勇君紹介)(第三七五一号)の審査を本委員会  に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第九三号)  利息制限法案内閣提出第一〇六号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  去る十九日付託になりました利息制限法案を議案とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。三浦法務政務次官
  3. 三浦寅之助

    三浦(寅)政府委員 利息制限法案について提案理由説明いたします。  現行利息制限法は、明治十年の公布にかかり、その後明治三十一年及び大正八年の二回にわたり改正され、今日に至つているものでありますが、この間におきましてわが国の経済情勢は著しく変遷し、ことに戦後においてはその旧態を一変したのでありまして、その結果、利息制限法は、今日の国民経済生活に適合しないものとなつたのであります。そこで、政府は、現下の経済情勢にかんがみ、金融機関一般の金利の実情及び動向を参酌いたしまして、新時代の国民経済生活に適合するように利息限度を改め、その他これに関連する規定を新たにするため、現行利息制限法を廃止し、これにかえて新たな利息制限法を制定するのを適当と考えまして、この法律案を立案したのであります。  この法律案の要点は、次に述べる四点であります。  先づ、第一は、金銭を目的とする消費貸借上の利息最高限を改めたことであります。  現行法におきましては、大正八年の改正以来金銭消費貸借上の利息は、元金百円未満は年一割五分、元金百円以上千円未満は年一割二分、元金千円以上は年一割をもつて制限され、この限度を越えては裁判上請求できないことになつておりますが、この制限は今日の経済生活実情に適しないものでありますので、元本十万円未満の場合には年二割、元本十万円以上百万円未満の場合には年一割八分、元本百万円以上の場合には、年一割五分をもつて制限することにいたしたのであります。  改正の第二は、利息を天引した場合に関し新たに規定を設けたことであります。  従来、利息制限法制限を越える利息を天引した場合の効果につきましては、利息制限法の適用上疑義心つたのでありますが、この際この疑義を一掃するため、天引額のうち、債務者受領額元本として正規の利率により計算した金額を越える部分は、元本の支払いに充てたものとみなすことといたしました。  改正の第三は、金銭消費貸借に関し債権者が受けた元本以外の金銭は、原則として利息とみなしたことであります。  巷間往々にして金銭消費貸借に関し、貸主が元利金のほかに、礼金、割引金、手数料、調査料等名義金銭を徴するものがあるのでありますが、これらの金銭は、一面におきまして、実質上利息とみられる点があり、他面、このような名義で、多額の金銭を徴し、利息制限を潜脱する手段ともなつているのであります。従つて契約締結費用とか弁済の費用とか、利息に該当しないことの明かな費用は別とし、債権者消費貸借に関し債務者から受けた元本以外の金銭は、利息とみなすこととしたのであります。  改正の第四は、金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額予定についての制限を設け、違約金定めについてはこれを賠償額予定とみなしたことであります。  金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額予定及び違約金定めについては、現行法におきましては、その額が債権者の事実受けた損害に比し不当であると裁判所が思料したときに、相当の減額をすることができることとなつており、これは商事には適用されないことになつているのでありますが、賠償額予定または違約金に名をかりて利息制限を免れることが容易に行われる弊害があり、債務者の保護に欠けるところがありますので、これをも制限するこことしたのであります。  以上がこの法律案提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて政府説明は終りました。本案に対する質疑は後日に譲り、本日は説明聴取にとどめておきます。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について審議を進めます。発言申出がありますから、これを許します。井伊誠一君。
  6. 井伊誠一

    井伊委員 この法律の実施によりまして裁判所職員において五百九十三名が減員され、検察審査会において三十名の減員になるのであります。この定員は二万百二十六人になるために本年六月三十日までの間において臨時待命を命じたり、またはその職員申出に基いて臨時待命承認するということで、この減員を調整することになつておるのでございますが、現在のところでは職員の意に反して臨時待命を命ずるというものと、申出に基いて臨時待命承認をするものが予想されておるのであるが、その内容、数というものをお聞かせ願いたい。
  7. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 臨時待命について職員申出によるものと、それから職員の意に反して命ずるものとの数の見込みでございますが、これは具体的に案がきまりましてから個別に折衝してみないと確実なことがわからないのでありますが、今のところでは比較的整理人員少数でもありますし、期間の余裕も少しはありますから、大体意に反して待命を命ずるというものは、あつても少いという見込みのようであります。
  8. 井伊誠一

    井伊委員 それで今のところでは予想が非常にむずかしくなるというようなことではなくて、大体は数もあまり多くないことであるから、このくらいの四百名内外というものは、大体本人希望に基いてそれだけの者は出て来るだろう、そういうお考えなんでありますか。
  9. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 そういうふうな見込みを立てておるわけであります。今までにすでに御承知のように特別待命という制度が去年設けられまして、その運用があつたのでありますが、何といいますか、待命希望する者が案外多いというような実績もございますので、円満に承認によつて処理できるという見込み相当多いというように考えております。
  10. 井伊誠一

    井伊委員 そこで大体定数というものがこれで定まつて来ると、三百九十三人、またそのほかに三十人というものが減つて来るのでありますが、その減つて来るというのは、数字の上では減つて来るのでありますが、具体的には四百名くらいどういう人が待命というところに当るのか。それはその際に自分で申出をするというのは、全体二万五百十九人という中から希望者を求めればおのずから出て来る、こういう意味なのでありますか、それとも大体においてはその四百名くらいの人が予想されておつてあまり成績がよくないというような人あるいは病人だとかいう者が今のうちから予想されておるのではないかとも実は思われる。というのは数が非常にはつきりしておるので、そういうところからこういう定員減というものが出て来ているのではないか、こうも思われるのでありますが、どうでございますか。今のところでは四百名くらいの人は、希望を正式にとつたのでなくても、大体このくらいある、こういうようなところか、あるいはそれではまだ満たないものがあれば、成績の悪い人とかあるいは単に健康でないとかいうような人をも含めて、四百名くらいの人はこれらの人だという具体的なものを持つておるのでありましようか、その辺をお聞きいたしたいと思います。
  11. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 具体的にこれこれの人ということも大体予想がついておるかということでありますが、これは全然ついでおらないと思います。このはつきり数字が出ておるという点も、そういうところから出ておるのではございませんので、大体今度の整理につきましては裁判所職員のうち、官を除きまして、その他の者については行政機関の各省の整理率なんかと比較しまして、この程度に減らしたらどうかというようなことが、裁判所行政整理当局との間に折衝がなされました結果、七百人という数が出たのです。その七百人というのは別にそういう具体的な基礎ではなくて、抽象的にそういうふうなものをきめまして、そのうちの四百二十名ですが、それを本年度から減らす、あとは来年度分から引くというような話合いになつて、そのうち本年度分からは奄美の増員分を差引いたものは三百九十三人というようなことになつてそれの具体的な人選は今後の運用によつてきまる、その希望も、おそらく相当広く希望を係りまして、そうして配置転換等によつてまかなえるものはできるだけそういうふうな措置でまかなつて、出血はできるだけ避けるというような方針で行かれるものと考えております。
  12. 井伊誠一

    井伊委員 職員がその意に反して臨時待命を命ぜられるような人もあるいは若干できるかもしれない。そういうことはあまり希望はされないのでありますけれども、しかし全体のうちから待命希望して出るところのその数が、この四百名内外の数に満たない部分は、あとは全部待命希望しないところの者ということになりますから、そのうちからどうしても特にある人を特定しなければならぬことが起ると思います。そうするとその特定をするのはどういう基準でこれに待命を命ずるか、その基準を伺いたい。
  13. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 裁判当局が見えましたから、そちらから御答弁いただいた方がこまかいと思いますから…。
  14. 小林錡

    小林委員長 この際お諮りいたします。本案審査最高裁判所当局より発言の要求があります場合には、国会法第七十二条第二項の規定により、これを承認いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。鈴木最高裁判所説明員
  16. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 減員予定している数の中で強制待命をする者があるかないか、これがまず第一に問題でございますが、強制的に待命にする者がないように配置転換その他の点で考慮をして、強制的にやるという一とはできるだけ避けたいと思つております。そういう方針でありますけれども、ただ新定員配置定員等関係から、りくつの上では強制待命の者が出ないということは保証しがたいわけであります。そういう場合に、きわめてこれは少数だろうと思いますけれども、かりに強制待命の者が出た場合に、どういう標準でやるかと申しますと、これはやはり日ごろの勤務成績というようなものを考慮に入れ、さらには年齢等でいわゆる老朽者であるかどうかというような点も考慮に入れ、結局裁判所職員として残しておくプラスの量が多いか少いかということによつて判定をする以外に方法はないだろう、大体そういうように考えております。
  17. 井伊誠一

    井伊委員 常識上その通りだと思うのであります。ただ実際の問題になつて来ますと、これはやはり深刻な――待命を勧められてもなるべく応じないといつらような人は、やはり…州三といつたような人は、やはり相当意見のあるむずかしいという人がおもになると思う。そういつたところで、それは一つ裁判所とか、あるいは地方裁判所関係一つのものであれば別でありますけれども、全国的なものでありますから、その幾つかの裁判所のもとにおいての勤惰成績、あるいは勤務年限これはすぐわかることでありますけれども、勤惰関係のごときは、やはり監督者である人が見るところによつて違うであろう。でありますからこれはなかなかむずかしいと思うのであります。これを全国的に見て一体どの人を当てるかということは非常にむずかしい問題になつて来ると私は思う。それも数は、ごくわずかであるかもしれませんけれども、その数の人を多くの数の中から選ぶのでありますから、非常にむずかしい問題になつて来ると思う。でありますから、常識的に考えれば何でもないようだけれども、事は、その場合になると特定の人は非常にやかましい人が出て来るのではないか。やかましい人といつたところで、当てられなければやかましくも何ともないのです。一体だれが当てられるのかということがわかると、そのときになつて非常にやかましくなると思う。これは他の行政庁の方面とも何か御相談になつてその基準でもつくられておるということなんでありましようか、そこはどうなんですか。
  18. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 確かに常識の問題としては問題がないように考えられますけれども、今おつしやられたように、最後残つた十名なら十名、五名なら五名を、全国的に特定人として一体だれを選ぶかということになりますと、理論の問題としては、確かにおつしやられたように個人にとつては非常に重大な問題でありますし、それから、抽象的に申しても、そういうものを全国から引き抜いてきめるということが一体可能であるかどうか。確かにそれは問題になろうかと存じます。しかし今までの経験によりますと――この整理の人数が、ことに裁判所はいろいろ折衝の結果少くなつたものでありますから、多くの場合希望者の方がむしろ整理人員をオーバーするような事態に今まではなつておるのです。ですから具体的の場合に、今おつしやられたような理論的に非常に困つたというようなことはないので、実は今度の整理も、開き直つて聞かれますと、強制待命をする者が絶対にないとは言えないと思いますけれども、まあ気持の上で、は強制待命をする者はおそらくないのではないだろうかというように考えておるわけです。かりにあつた場合には、これは結局本人が納得行くかどうかは別としてとにかく客観的にある程度理由づけは、できるだけの正確さを持つて特定の人を選ばなければならないという点は、十分考えております。
  19. 井伊誠一

    井伊委員 これは、これから定められる最高裁判所の規則の中にその基準でも示されるわけでありますか。
  20. 鈴木忠一

    鈴木最高裁判所説明員 これは一般行政職員の方とにらみ合して、そうして最高裁判所ルールできめるべきものはきめると思いますけれども、今言つたような場合の、最後強制待命に付すべきものをどういうようにして定めるかということまでも、ルールではおそらくきめられぬのではないかと思います。
  21. 小林錡

    小林委員長 他に御質疑はありませんか。他に御質疑がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめで、おきます。     ―――――――――――――
  22. 小林錡

    小林委員長 それでは法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますからこれを許します。川上貫一君。
  23. 川上貫一

    川上委員 国警長官が見えておられるので一、二お伺いしたいと思います。  先日参議院議員調査のために青森に行つたときに、青森国警隊長共産党ならば何でも徹底的にこれを調べるのだということを言われたという報告になつておるのでありまして、この点では、長官には一度御注意を促したことがあるのでありますが、この問題についてあらためてはつきりと国警長官考えを承つておきたいと思います。こういう方針ですべてをやつておられるかどうかということをお答え願いたい。つけ加えて聞いておきますが、その際に参議議員の高田君に対して、法律もくそもない、共産党は調べるのである、こう言うておることが明らかになり、これは録音にもとられておるはずなのであります。国警長官方針について承つておきたい。これが第一点であります。
  24. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 共産党ならば何でもかんでも徹底的に取調べるかどうか、そしてそれを取調べるについては、法律もくそもないという考え方をとつているかという御質問お答えを申し上げます。日本共産党暴力革命を肯定をしで、おられるという限りにおきまして、あるいは破防法違反疑いあるいはいわゆる暴力的な集団行為疑いというものにつきまして、治安機関といたしましては関心、調査の対象にせざるを得ない、かように私は考えております。警察もその方針でございます。しかしながらそういつた法律に触れる行為があるか、あるいはあるおそれがあるという場合を除きましては、いやしくも共産党員という名がつくならば、あるいは共産党という名がつくならば何でもかんでも取調べるというような趣旨ではございません。法律を犯すであろう疑いが濃厚である場合について調査をいたすのでございます。それからまたその調査の仕方につきましても、法律もくそもないというようなことは、これは全然あつていいはずはございません。おそらく青森隊長がそういつた意味のことを申したといたしまするならば、そういう意味共産党を一体調べるという法律があるのかということに対するお答えではなかつたかと思うのでありますが、われわれの調査あるいは捜査のやり方は法律で許された範囲でなければなりません。法律もくそもないという意味法律を違反してもさしつかえないのだという意味であるならば、これはまつたくさような考えではないので、あります。法律で許された範囲内、法律を守りながら捜査あるいは調査に当らなければならないことはもちろんであります。その点は明瞭に申し上げます。
  25. 川上貫一

    川上委員 そういたしますと、これは一つの例でありますが、青森県の松本隊長国会調査団に対して言つた言葉が、国警長官の方ではこういう意味であろうというようにはからつておられるのでありますが、そういう機械的なはからいをするのではなくて、国警隊長が言うた通り、この言葉録音に残つているのでありますから、もしそれであれば国警隊長はみずから法を無視して不法な発言をしているということをお認めになりますかどうでしようか、その点が第二点。
  26. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先般川上委員お話で、近く法務委員会でこれを取上げられるであろう、あるいはまた録音も取寄せられるだろうというお話でございました。当時調査に行かれました各党派委員方々から、当時の状況をその委員会においてお伺いができるであろうと私はお待ちいたしておるのであります。私は隊長がそういつたように聞きとれるような意味のことをあるいは言つたのじやないだろうかと川上さんがおつしやいまするからさようにも考えますが、またすべての委員が必ずしもそういうように思つておられないというのであれば、あるいは若干了解の違いという点もあるのじやなかろうか。少くとも私は青森隊長がさような乱暴な事柄をほんとうに腹から考えていたのではなくて、あるいは言葉が不十分であつたのではないかというようなことから、さような誤解を生むようなおそれがあつたのではなかろうかと考えているのであります。いずれにいたしましても、もしそういうことが明瞭でありまするならば、私は、隊長といたしましては、そういう言動をすることはきわめて不適当だと思います。しかし私はどこまでも隊長はさようなつもりで申したのではないと現在のところでは信じておるのであります。
  27. 川上貫一

    川上委員 その通りであつた長官はどういう処置をとられますか。ほかの委員がそう言つておらぬと言うが、ほかの委員行つた委員はその通り述べたと言つておるのであります。もしその通りであつたら、監督の地位にある長官としてどういう処置をおとりになるでしようかということを第三点として伺います。
  28. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 その通り心底から思い込んでそう言つてつたということがもし明瞭になりますれば、私は本人に対して十分訓戒を与えなければならぬと思つております。しかし先ほども申しましたように、私はさように非常識ではないと考えておりますので、おそらくさような印象が与えられたといたしましても、本人言葉の言い方が不十分であつたため、さような印象を与えたのではなかろうか。さようであるならば今後さらにさような誤解を与えないように、こういう場合には言葉の意を尽して表現をいたしまするように十分注意いたしたいと思います。
  29. 川上貫一

    川上委員 この問題だけにとらわれているわけには行きませんが、私は長官の御答弁としては非常にどうもふに落ちない。国会議員がわざわざその問題について調査に行つておる。茶話に出たのではない。その問題を中心にして調査にわざわざ行つておるのであるが、そこに青森隊長が来て、その調査をしておる議員に対して言うた言葉なんです。これが茶話とか、つい言葉の先へ出たとかいう問題ではない。言葉はどうであろうとも考えていることがさようでなかつたらそれでよろしいというような問題じやないと思う。長官答弁はもしそういうことを言うたにしても、そう考えておらなかつたら一向さしつかえないという御答弁だと思う。それでは私は長官答弁としてはまことに責任のがれであつて、非常に不合理だと思う。この答弁責任のある答弁である。公の席において国会調査団に対して公式に述べた言葉であると解釈せざるを得ない。その言葉に対して考え方がそうじやなかつたのだということをあとから言えば、何を言つてもいい、こういうことはあり得ない。この点を正確にひとつ調べてもらいたいことと、私は先日長官に会うて即時これを調べてくださいということを頼んである。どういうことをお調べになつたか、その点もあわせてお聞かせ願いたい。
  30. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は、隊長共産党非合法活動地下活動につきましては法律にそういうものを調べてよろしいということは書いてないけれども、治安機関責任上調べるのだ、かように申したと聞いておるのでございます。また一緒に行かれた他のある一委員の方に非公式に伺つてみたのでありますが、ただいま川上委員のおつしやる通り印象にはその委員の方は聞いておられないようでございますので、いずれ参議院文部委員会でこれをお取上げいただくということでございますから、そのときにお見えになりました委員方々の御意向を伺わせていただきまするごと炉、一番私は的確な当時の表現がわかり得るのではないかと考えておるのでございます。一委員の方の御意見といいますか、印象は、必ずしもただいま川上委員の御質問通りでなかつたように私は承知をいたしておりますので、従つてさような答弁をいたした次第であります。
  31. 川上貫一

    川上委員 これは押問答しても、これ以上はいかぬと思うのですが、いずれ録音も取寄せることになつておるそうですから、だんだん明らかになると思います。そこでこういうことをひとつ聞いておきたい。これは青森国警隊長だけではない。ほかのところでも共産党員なるがゆえに当然われわれは調べるのだというような考え方は、相当警察隊には普及しておると思うのです。そこで聞いておきたいが、先の答弁によつて共産党員なるがゆえに当然われわれは調べるのだということは間違いであり、これは違法であるという答弁つたと思うのですが、そう理解してけつこうでありますか。
  32. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 共産党員ということでありましても、先ほど申しまするように共産党のいわゆる非合法による、すなわち暴力革命を推進しようという考えを持つて活動しておらない、またそういう心配はないという面に対しましては、私は調査する必要はないと考えております。
  33. 川上貫一

    川上委員 あなたに調査をする必要があるかないか、そんなことを聞いておるのではない。そういう調査ができ得るかということを聞いておるのです。公産党員なるがゆえに警察調査してもよろしい、こういうことが言い得るかどうかということを聞いておるのです。
  34. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 共産党員なるがゆえに調査をしてよろしいというわけではありません。党員であろうとなかろうと、非合法活動をするおそれがあるという面から調査をするわけであります。
  35. 川上貫一

    川上委員 あなたのいう非合法活動というのは、どういうことですか。
  36. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 社会の革命は平和革命ではできない、議会主義ではできない、最後は暴力による革命によらなければわれわれの政治目的は達成できないという綱領によつて、何と言いいますか、普通言われております軍事組織あるいは武器活動というもの整え、推進して行くというような考え方に基く活動、こういうものは、いわゆる非合法のおそれがあるのではないか、そういう意味で申し上げておるのであります。
  37. 川上貫一

    川上委員 その法律の根拠は、どういう法律でありますか。
  38. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 法律の根拠といたしましては、一番広い意味におきましては、治安責任者、いわゆる警察は犯罪を予防し、鎮圧するという責任を持つております。従いましてそういつたおそれがある活動という場合には、たとえばだれだれが寄つて、そしてどうも暗に暗殺を考えておるらしいという状態があれば、はたして暗殺をやるのかどうか、その事前の状況を、治安機関としてはやはり察知する責任があるわけであります。またもつと進みまして、あるいは破防法違反の容疑が現にあるということになつて参りますれば、これは破防法それ自身はもちろんでありますが、手続といたしましては刑事訴訟法その他いろんな法律によりまして、強制力を持つて調査をいたすことができるのであります。しかし明確な容疑がありますまでは、そういつた強制力を持つて調査をすることができませんから、憲法、法律その他の法令に触れない範囲内において視察を密にするということでございます。
  39. 川上貫一

    川上委員 だんだんと明らかになつて来ましたが、治安々々といつても、治安ということを考えるのには法律の根拠がなければならぬ。あなたは破壊活動防止法にかかるおそれがあるということを根拠にしておられるわけですが、ほかに何かありますか。
  40. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 破壊活動防止法とか刑法とか、各種の法令に違反する疑いがある場合には、刑事訴訟法等に基きまして捜査を進めるわけで、あります。しかし先ほどから申しておりますように、相当具体的に破壊活動防止法に触れるという現実の行為がある――たとえば殺人罪という現実の行為があつたという場合でなしに、そういうことを犯すであろうおそれがある場合には、これは法律に禁じられておりません限りは、いろいろ人から聞いたりあるいは目で見たりすることは禁止をされておらない、わけであります。強制力を持つて調査に臨む場合は、これは刑事訴訟法その他の法律がありませんければ人の自由は制限ができません。強制捜査はできません。任意の聞込みというような事柄は、そういう意味においては私は法律の根拠は必要ないと思います。どうしてそれをしなければならぬかというと、治安の責任上知らぬ顔はしておれない。われわれ目がさめてみて初めて国会の周囲が取囲まれておつた、要人がみな暗殺されてしまつてつた、それからでなければ捜査ができないということでありましては、治安の責任は果せない、かように考えておるのでございます。
  41. 川上貫一

    川上委員 人殺しだ、何だという問題とは違うのです。思想調査をしておる。これを私は聞いておるのです。日本の憲法で思想、言論、信仰の自由は認められてある。法律的の根拠がなくしてこれを調べることはできない。国警長官はただ治安というようなことを言うけれども、治安によつて調べる必要がかりにあるとしても、法的な根拠が必要である。それならば何ゆえに共産党員の思想調査をやつておるのか。どういう法律を根拠にしてやるか。憲法によつて保障された合法政党の党員の思想の調査をすること、これが適当だと思うのですが、どうですか。
  42. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 思想調査をやつておるとおつしやいますが、一体どういう調査をやつておるとおつしやるのかわかりかねますが、だれがどういう思想を持つておる――そうして思想調査のやり方というものは私はよくわからない。われわれがどうしても調査の目を向けなければならぬと考えておりますのは、何も共産党ばかりではありません。右翼の中にもそういうおそれがある場合があります。つまりきわめて隠密の方法で文書をまわし、あるいはその他隠密の方法で会合をされる、そういつた場合にはたしてどういう会合であるか――先ほど申しますように、共産党は議会主義を否定されないというのであるならばさような必要はない。議会主義によつては社会革命は達成できない、しかるがゆえに軍事組織も整えなければならない、武器活動も進めなければならないという秘密文書を出され、それに基いて活動をして、おる面があるわけであります。さような面をわれわれが看過しておるということは、治安の責任の面から申しますと曠職のそしりを免れない…。
  43. 川上貫一

    川上委員 話が違うのです。そういうことを聞いておるのじやない。共産党員であるかないかということを隠密な形で調べておるのであります。またその思想状況を調べておるのであります。そこでこれを私は聞いておるのです。公然と憲法に保障された政党の党員に、治安というような言葉でこういうことをしでもいいのかどうか。どういう法的な根拠によつてこういうことを警察はやるのかということを聞いておるのであります。治安々々と言いますけれども、治安によつて警察が、あることを調べなければならぬというのには、法の根拠がある。治安を乱すおそれという問題があるとすれば、それにはこれをしてはならぬという法律がなければならぬ。この根拠があるかどうか、この根拠なくして、ただ治安というような形でそうして公然たる政党の党員であるかないかとか、どういう考えを持つておるとか、こういうことを調べることには法の根拠があるかないかということを私は聞いておる。重大なる憲法違反ではないかということを聞いておる。
  44. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 一体どんな思想を持つておるかということについての調査というのですか、詮索と申しますか、さようなことはやる必要はない。私はかように考えております。また従つてつてはおらない……。   〔川上委員「必要なんか聞いておるのではない。やる法的な根拠を聞いておる。あなたは知らぬではないか」と呼ぶ〕
  45. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 やつておりません。あの人はどういう思想を持つておるか、そんな思想調査はやつておりません。   〔川上委員「やつてつたら違法ですな」と呼ぶ〕
  46. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 違法と申しますか、その方法が違法の方法であれば、それは違法になりましよう。
  47. 川上貫一

    川上委員 その方法じやない。そのこと自体を違法と認めるか、違法と認めぬのか、それを聞いておる。
  48. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 それは憲法で思想の自由が保障されておるわけであります。従いまして、保障されておりますその自由を制限するようなやり方は、これは憲法違反となるからいけないと思います。ただ書かれた文章で、そういう文章を読んで、あの人はこういう思想の持主だな、こう考えることは、これは私は法でも何でもないと思います。しかしさようなことは警察では必要がありませんから、そういう調査はだれもやつておりません。
  49. 川上貫一

    川上委員 必要の有無から問題が出発するのではない。法的の根拠を私は聞いておるのだ。そうすれば私聞きますが、もしも警察共産党員の思想の調査をしておる事実があり、共産党員であるかないかを隠密な方法で調べておる事実があり、その人がどういう考えを持つて、どういうことを言うておりますかというようなことを調べた事実がある。こういう場合には、国警長官の今までの答弁では、憲法違反であり、何ら法律の基礎がなくしてやつておるのであつて、間違いである、こういう結論になつてよろしいと思うのでありますが、はつきりこれをひとつ答弁願いたい。
  50. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は先ほども申しますように思想調査というその内容が、よくわからないのでありますが、警察が仰らかの必要に基いて、本への迷惑にもならないというような方法で聞くということは、私はこれは憲法違反ではなかろう、かように考えます。ただしかしそのやり方が非常に度を越して、本人に非常な迷惑を与えるというようなことがあれば、これは私は不適当だと思います。本人の思想を制限するようなそういう行動をすれば、これは憲法違反だと私は考えます。そうでない限りは、これは私は憲法違反とは考えません。
  51. 川上貫一

    川上委員 本人がきらうか喜ぶかということが問題じやない。そういう人情論じやない。本人の思想、政党の所属、本人考えたことを他人にどう言うたか、というような問題を隠密の形で調べておるというのです。私は具体的事実を出せと言えば出すというのです。そういうこと自体が迷惑になるとかならぬとか、警察に必要があるとかないとかという問題じやなくて、そういう法的の根拠を何に置いて警察はやるのか、そういう法律的根拠がないというのか、あるというのか、これを聞いておるのです。なければ完全に憲法違反だ。治安ということを言いますが、治安という抽象的なことででは、警察はその基礎がなければ何もやれない。法律の基礎があると、この法律の基礎によつて、これに抵触する、すなわちこれは治安に審がある、こういうことがあるかもわからぬ。その場合にはそれは国警長官としては、警察として調べなければならぬしと、こう言うだろうと思う。ところが何ら法的根拠がない。ただ治安の上に警察が必要がある。警察が必要があるという根拠に上つて、他人の党籍とかその思想傾向とか、そういうものを調べることが憲法であると思うのか思わぬのか、これを聞いておるのです。これはどうなんですか。
  52. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は思想そのものを調査の対象にするという考え方はいい考え方ではないと思います。ただこれが憲法違反になるかならないか、私はなるとは思いませんが、ただ先ほども申しますように、犯罪を犯すおそれが相当ある。治安上看過しておくわけにいかないという場合には、法律上そういう場合にはとしていい、こうしていいということがなければやれぬというのではなくて、こういうことをやつてはいかぬうといこと以外はやり得るのだ、私はかように考えております。強制捜査は一々法律命令によつて、権限を与えられておりませんければ、これをかつてに逮捕するわけにも行きますまい。しかしそうでないような場合に、いわゆる任意の内偵というものは、これはその内偵のやり方について、法律には何も根拠がございません。私はさように考えております。
  53. 川上貫一

    川上委員 そうすると共産党の党員の党籍を調べたことはないのであるか。何らかの形によつて、隠密な形によつて、あるかないか。
  54. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 党籍そのものを調べる目的ではありませんが、調べておる間にそれがわかつて来るという場合はあるわけであります。今日は届出制度がありませんが、以前は届出制度がありましたから、届け出られた人たちは党員であろうと一応は推定ができるわけであります。私どもといたしましては、先ほど申  するような共産党の中央指導部から出ておる地下活動、隠密活動をやつておられると思われる人たちは共産党の人であるという判断はいたします。それ以外におきまして、特に政党の党籍そのものを自的にして調べるということはないのでございます。
  55. 川上貫一

    川上委員 党籍を調べずして、あなたは文部委員会において日教組の中における共産党員の数を発表しておる。あれは何によつたのですか。もう少し聞いておくが、あれはいいくらいな推定であるか。党員だと思うたというのか。何十何人まで言うておる。これは調べずして言えるはずがない。もしそうでなかつたら、いいくらいなことを、国警がこういうものであろうと推測した数を述べた、少くとも国会委員会において、日教組の中における共産党員の数を明らかにしておるのです。それではこの基礎を聞いてみます。
  56. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほど申しますように、今日は届出制度が、ございません。また共産党員方々の中にも公然と自分は党員であるということを言つておれる方もあります。またその党員であることを厳に秘匿しておられる方もあると聞いておるのであります。私どもといたしましては、先ほど申しまするような共産党のきわめて隠密な組織に参施しておれる人とか、その隠密な組織の出される指令を受取つておられる人とか、あるいはそういつた人たちのきわめて隠密な会合、たとえば信任状がなければ中に入れないというような非常に厳格なそういう隠密な会合というようなところに参加せられる人たち、こういつた人たちを私どもは一応実質上の共産党員である、かように推定をいたしておるのでございます。
  57. 川上貫一

    川上委員 そうすれば、先日の委員会国警責任を持つて発表した共産党員の数というのは、あてずつぽうであつて国警がそうだとかつてにきめたそのくらいの数でありますか。いやしくも国警がこう推定しますという数ではなかつた共産党員の数は何百何十何人ありますと国警長官はつきり言うておる。これはどこから調べたのですか。
  58. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいま申しますような状態にある人の数を申し上げたのであります。私はあの際にも、届出をしておられるとあるいはそうでないとを問わない、かように申し上げておるわけであります。
  59. 川上貫一

    川上委員 そうすれば、国警が推測した数でありますか。そこをはつきりしたい。根拠があるのではない。調べてない。調べておらなければその数は国警の主観の数字である。そのことを明らかにしておらぬ。共産党員は何人おりますとはつきり言つておる。これはどういうことなんですか。
  60. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 秘密党員の方々につきまして、おれは秘密党員であるということがはつきりしている者もございますが――と申しますのは、私とも一々共産党の秘密組織において備えておられる帳簿を見ておるわけではありませんから、さような意味からこれは推定をしておる、こうおとりになられても私はやむを得ないと考えます。
  61. 川上貫一

    川上委員 どうも国警長官答弁はなつておらぬです。そうとられてもしかたがないなんということを問いているのと違うのです。どういう根拠であの数を言うたかということを聞いておる。どう受取られてもしかたがないなんということではない。あれは推定であつていいくらいなことかどうかということをさつきから聞いておる。聞違いがないかどうかということを聞いておる。それを明らかにしておらぬ。
  62. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は間違いがないと考えます。
  63. 川上貫一

    川上委員 調査せずしてどうして間違いがないと言い切るか。いいくらいなことを言わぬ方がいい。どうして間違いがないと言い切る根拠があるか。問題は主観できめるわけには行かぬと思う。われわれは数を言われようが言われまいが、そんなことを問題にしているのではない。どういう根拠によつてこの数を出し、それを国警国会で発表したか。その基礎がわからぬということになつたら困るのではないか、数の調査はできない。しない。党籍は調べられない。単なる推定のあてずつぽうか、これは明らかにしなさい。はかのことを言うてはいかぬ。国警長官は私の質問よりほかのことばかり言う。ここをはつきり言う方がよろしい。また言わなければならぬ義務がある。
  64. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほどから申しておりますように、共産党員あるいは秘密党員でなければ渡らないというような極秘文書を絶えず受取つている、あるいはそういつた極秘の会合に入つてやっておられる、特に共産党のそういつた地下活動をやるような人でなければどうしてもやれない、そういう会合や行動に入つておられるという人たちを党員とわれわれはかよう推定をしておるわけであります。
  65. 川上貫一

    川上委員 推定をしておるというのならあてずつぽじやないかということを言つているのだ。こういう答弁を聞いているとだんだん腹が立つて来る。聞いておらぬことばかり言つておる。はつきり言つたらどうか。国警長官ともあろう者はもつとはつきり言えるでしよう。推定ならあてずつぽうだ、あなたの主観だ、警察の主観だ。そうすれば、あの数字は正確なものではありませんと言えるのですな。警察の主観だから。はつきりなさい。一口いえばいいのだ。ほかのことを覆う必要はない。そうか、そうでないか、これだけ言えばいい。同僚の議員諸君も時間は非常に貴重なんだ。私もそう長い時間をとりたくない。だから返事だけ言いなさい。
  66. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 はつきりいたしております。私の申し上げている通りです。
  67. 川上貫一

    川上委員 一つはつきりしない。そんなら推定です。これははつきりしている。
  68. 小林錡

    小林委員長 まああとは議論でしような。
  69. 川上貫一

    川上委員 国警の主観ですか。もう一ぺん聞きますが、そうしますと法律的な基礎はないのですな。調査したことないのですな。党員を調べたことはないのですな。調べることは違法だと言うておる。そうすればあの数字の根拠がない。主観だけだ。これを明らかにしたい。
  70. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 先ほど出しておりますように、それは届出党員かあるいは秘密党員か、その辺はわかりませんが、これは共産党の中核をなしておられる方々でありますから、そのまた相当数はかつて届出をしておられた方方で、最近そうでない人もありますが、そういう意味で、これは共産党の党員名簿に載つている人間かどうか、それはのぞいて見なければわかりませんけれども、名簿に書いてあるかないか知らぬけれども、これはおそらく間違いない。
  71. 川上貫一

    川上委員 だんだん明らかになつて来た。そうするとあの発表の数はこれはおそらくだ。警察の推定だ。何らの根拠もない。これは明らかだ。  私はもう時間も相当ちようだいしたので、そう長い時間をいただいては相済まぬと思いますが、もう一つ国警長官に聞いておきたい。第一に憲法に保障された合法政党の党員を法律の根拠がなくて、調査することはないということを国警長官はいうている。これはあたりまえだと思う。もしこういうことが事実あつたとした場合、長官はこれに対して責任をとるかどうか。これはあとの問題だ。
  72. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 党員であるから当然調べるというわけでもない。しかしまた政党の党員になられたから、これは全然調査をしてはいけないというものでは私はないと思う。党員であろうとなかろうと、治安を乱すおそれがあるという場合には、これは内偵をせざるを得ない。前からはつきり申し上げている。
  73. 川上貫一

    川上委員 治安を乱すおそれがあるというのは破防法かと聞いているのだ。ほかに法律があるかということを聞いている。
  74. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 破防法もあれば、内乱もあれば、いろいろなものがある。
  75. 川上貫一

    川上委員 もう一点聞いておきたい。法律的の根拠がなくて調べることはできない。共産党員なるがゆえに調べるということはやつておらぬし、そんなことをしてはいけない。最後に聞きたいことは共産党員であるらしいというような形で、本人の思想傾向、党籍というようなことを隠密の形で調べる時分には憲法違反であることは明らかであるが、これについて国警長官はどう考えているか。これだけ最後に私は聞いておきたい。
  76. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は共産党員であるから調べるというのではなくて、先ほど申しますように、将来暴力革命をやろうという考え方で、暴力革命をやるべくいろいろ、努力をしている、そういう人たちを対象として内偵をいたすのであります。
  77. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 関連して。これは川上さんのしり馬に乗つて聞くわけではないのですが、しかし問題は相当深いかつ広いものがあると思うのであります。国警長官警察法の犯罪の予防及び鎮圧ということについては警察活動の対象になるのだ、こういうお考えであり、法律もそういうふうに規定しておるのですが、犯罪の予防ということを対象としての警察活動というのは、これは一定の限界があるものなのか、全然限界のない、警察当局においてこれは犯罪の予防になるのだと思えば何でもできるというふうに考えておられるのか、そこをはつきりしておきたい。そこで質問するのは、国警長官はこの犯罪予防に関して警察官が活動し得る限界はどこにあると考えておられるか、そうして現在実際にどういう見解のもとに活動しておられるかということと、いま一つ警察官の指導、教養、訓練について、その点についてどういうふうになさつておられるか、この二つをお答え願いたいと思います。
  78. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 犯罪の予防の範囲でありますが、これは犯罪の予防という観念は非常に広うございまして、たとえば盗犯の予防というためには戸締りをよくしてくださいとか何とかいうようなことも一つの予防でありまして、こういうものについてはおそらく私はどこまで合理的なのかとおつしやる点はなかろうと思います。しかしそれにいたしましてもあまりにそれと縁が遠いところまで警察が予防活動をやるということは、これは無用であるのみならず、場合によればまた御迷惑をかけることもあるだろうと思いますから、従つてその予防をすべき対象になるもの、そうして予防のために講ずる手段方法というものは、おのずから合理的な限界というものがあると思います。先ほど申しておりますような警備事案につきましては、現実の警察の予防活動ということ、たとえば総理の暗殺について最近非常に空気がおかしい、こういう情報もある、こういう活動も裏面にあるという場合には、直接総理自身を警察官で守るというところまで予防をいたさなければなりません。その前にそういつた状態があるかどうかという聞込み、内偵というものはどこまでできるか、あまりに範囲を広めでいたしますればこれは行き過ぎになり、また自然にどうしても迷惑がかかることでありますから、その範囲はできるだけ狭めて考えなければなりません。抽象的にその限界というものは、これは非常にむずかしゆうございまして、まあ社会通念上妥当とせられる範囲、かように申し上げるしかないのではないかと思います。
  79. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 御存じのように刑罰法規は、大きなリユツクサックにでも入れて持ち切れるか持ち切れぬかわからぬほどたくさんあるわけであります。すなわち犯罪予防だというのでそれらについて非常に範囲を広く考えたら警察は何でもできるという、国民の生活について非常に広い範囲について調査もでき石ということになるわけなのですが、私はそんなものじやないと思うのです。警察の行動にはおのずから限界があるべきものだ、そこで一番問題になるのがこの犯罪の予防なのです。犯罪の予防ということについて警察がしつかりとした標準を持つており、ものさしを持つておらなければ、警察は何をしでかすかわからぬということになり、国民はその点については非常に不安を持つことになると思うのです。警察のその活動についての標準がはつきりしておらないと、私は刑罰法規全体の性格というものをかえるようなことになる危険があると思うのです。そこで先ほどのお答えでは社会の通念なんておつしやるのですけれども、社会の通念というより、警察は一体警察自身のことですから、こういうふうな標準で現在やつておる、あるいは指導教養もこういうふうにするようにしておるという具体的な説明があつてしかるべきだと思うのです。それは法律を第三者として解釈するときにはそういうこともいえるでしようけれども、実際その仕事をやつておられる人は、われわれはこういう標準もこういう仕事をしておるということの説明がつかないはずはないし、もしもそれがはつきりしておらぬのならば、その点を確立しなければならないと思うのです。たとえば先ほど共産党員の例が出ましたが、あれなんかも、共産党というのは、これは警察長官説明にもあつたが、何だか暴力革命ということを目標にしておるのであつて非合法活動をする危険が党員すべてにあるのだというふうに見ておられるのなら、そうしてそれをひとつ予防するために調査しなければならぬというのなら、これは話ははつきりわかる。ところがそうでないならばこれはまた調査してはならぬということになるのでしようから、そこのところは将来非常に問題になるわけですから、はつきりしておいて、警察官だけが何もそう苦しむ必要はないのです。法律にあることを警察官は法律従つて実行すればいいのですから、法律が不備ならば警察官はそれを補いつつ適当に処置して行くなんというのでは、これは警察が間違いを犯すことになる。そうまで心配される必要はないので、われわれは現存の法律をこう解釈してこういう考えで仕事を現にこういうふうにやつているのだ、こういうことをひとつはつきりお伺いするということと、第二は、刑罰法規もたくさんあるのですからすべての犯罪について予防のためにというので調査するなどといつてもそれはできつこないと思うのです。だから現存警察当局では、犯罪が起こる危険がある、それを予防するために、あるいは治安維持上これは予防の立場から調査しなければならぬということについて、何かこういうところに重点を置いて現在はやつておりますということがあれば、それをひとつ説明願いたいと思います。
  80. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 治安の維持上の犯罪の予防あるいは事前の警備という意味から、その情勢で知つておらなければならぬという意味の重点は、普通言われておりまする極左の両方でございます。それらにつきまして、しからばその範囲はどうかというわけであります。これはどういうように御説明申し上げたらよろしいでしようか。ある交友団体で、どうも今申しますような暴力行為をなすであろうという疑いが非常に濃化して来たというようなデータが入つて参りますれば、それに基いて、さらにそれが事実であるかどうか、どの程度進展して行くかということを内偵をして行くわけであります。その調査の仕方も、できるだけ警察調査をしているということがわからないような方法でやつた方が、御迷惑もかからないであろうというような考え方から、この調査のやり方も、できるだけ人権をそこなわないように、迷惑のかからないような方法で自的を達成するようにという努力をいたしておるわけであります。お尋ねには十分お答えをしておらぬかもしれませんが、非常にむずかしい内容でございまして、一応お答えいたします。
  81. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 警察官等職務執行法の第二条には「警察官等は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当理由のある者」こういうふうなことを規定しておる。ここに犯罪予防に関係して警察官の活動し得る限界というものがはつきりしてあると私は思うのです。この二条に定めてあるのは、質問をする場合のことですが、大体標準はこの辺になければならぬと思うのです。先はどの国警長官答弁中に出たのですが、強制捜査とか、強制力を用いて相手の自由を束縛するというような方法では、これは厳格にやらなければならぬけれども、そうでなければ何をやつてもいいとまでは言えない。相当広い範囲のことをやつてもいいのだというように思つていられるようですが、それは警察の方の立場でそういう考えが出て来るのではないかと思うのですが、しかしそういう行動が積り積れば、これはたいへんなことになるのです。実際問題として、国民は、警察があれにも関係し、これにも調査をしているということは、その調査方法が相当相手の自由を尊重したような、決して強制力を用いるものでない場合においても、相当の精神的な圧迫ということになる。そこに警察のあり方というものが非常に問題になつて来るわけですから、相手の自由の拘束等の強制力を用いない場合においても、この警察官等職務執行法第二条に掲げていることは、すなわち犯罪予防に関して警察活動をなし得る限界だというふうに考えるべきではないかと思うのです。しかしこの程度ではまだまだ警察官の職務の執行はできない、犯罪予防に関しては不十分であるというならば、また法律改正ということも一つの問題になつて来るわけでありまして、そういうところを警察ひとりが苦しまないで、ここのところは自分たちはこの標準でやつでいるが、これでは十分職責は果されないのだというような考えがあれば、ひとつ率直にお述べを願いたい。
  82. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいまあげられましたのは、職務の質問の場合の規定でございます。これは警察官が公衆の面前で、ちよつとと言つて聞ける場合の規定ですが、こういう場合はやはりこの程度の具体的な理由がなければいけない。警察官に呼びとめられて、公衆の面前で、ちよつとお伺いしますと言つて聞かれると、どうもぐあいが悪いという一般常識から考えましても、必要だろうと思うのです。しかし先ほども申しますように、治安情勢の判定というものは、たとえば二・二六のような場合に、警察は何も事前に知らなかつた。あれを事前に知るためにはどうしなければならなかつたかと言うと、二・二六を計画しようという、そういう計画があるということを警察が聞き込み、そのあとはその聞込みに応じてだんだん調査をするわけです。これについては、強制力を用いてではないが、何か知らぬが、こそこそ調べているらしい。これは何だと言われれば、これは聞込があつてこうですからということが言えるわけです。その場合に、その聞込みを一体どうするのだ。これは警察が何にもしていなければその聞込みが出つこないわけです。事件がパツと起つてしまうまで知らないわけです。聞込みをするためには、耳をそばだて、目を光らす。その目の光らし方というものは人さまには御迷惑もかからないわけで、ある人と話している間に、こういうことがあるということを聞いて来るわけです。しかし話をしている間に、そういうことはないかと思つて話をするということが警察職員一つ責任で、ただぼんやり茶飲み話をしているのではないというところまで入つて行けば、先ほどおつしやいました二条の考え方よりも、もう少し幅を広めて警察は神経を働かしていなければならぬ、こういうことであります。
  83. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 別な機会にはつきりさせたいと思うのですが、今おつしやつたような、聞込みで目を光らすとかなんとか、いろいろ言われたのですが、それで得られた材料が正確なら問題はないのです。ところが法律定めてある標準だけでは、どうも十分の警察職務の遂行ができないというので、何だか不徹底なことでそうして調査をして結論を出される。ところが国家機関としてほかに調合するものがいないわけですから、そうすると、おのずから警察のそういつたような不徹底な調べによつて得た結論というものが、いかにも正確で、動かすことのできないものであるというような資料となつて出て来たのでは、これはときに国政を非常に誤るというようなことにもなるのですから、私が率直にお尋ねするのは、現在の警察官等職務執行法という法律で、警察法に定めてある警察の職務の遂行が十分にできるかどうか、それをどうお考えになつているか、これだけひとつこの際お尋ねしておきたいと思います。
  84. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この警察官等職務執行法の規定は、以前の治安警察法及び行政執行法等の中から、特に人権を尊重するという趣旨から、おむを得ない最小限度規定だけを、さらに新しい角度から見直してつくつたわけであります。従いまして、警察といたしましては、もう少しここまで権限を認めてもらつた方がよろしいという場合もありますけれども、しかし私は今日の人権尊重、基本人権の尊厳という点から考えまして、この程度警察はやつて行かなければならない。これでやられるように努力し、これ以上の権限を使わない、やれるようでなければならぬ、そういう見地からいろいろ教養その他を積んで、法律といたしましては、現在としては私はこの程度でよかろう、これよりも強くなればやはり人権をそこなう、あるいは直接ではありませんが、言論集会といつたようなものの間接的な侵害になるおそれがありはしないか、この程度でまず満足して、そうして警察の職務におろそかでないように教養、技術、訓練を積んで行くべきだ、こういうふうに考えております。
  85. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちよつと一点だけお尋ねいたします。私は二、三日前に齋藤国警長官に、どうも昔の特攻警察のような訓練をしているじやないかと質問したら、齋藤さんは否認されました。そこで私は否認されたので、さようなことがないなら実にけつこうだと思つているのですが、今どうもそうじやないような感じがいたしました。今そういう証拠を集めているので、いずれそろいましてからあなたの御意見を承りたいと思いますが、今一つお尋ねすることは、今度の涜職罪に関係して、造船疑獄とかあるいは保全経済会の問題とか、ああいう問題の捜査のために、検察庁では一億数百万予算の請求をやつたが、これは半額になつて五千万円ばかりになつてしまつた。ところがこれと前後して国警では三千万円予算を承認させたということを承るのですが、一体どういう事情のためにさような多額の金が急に要求され、それが承認されたのか、どうも造船汚職も保全経済会も国警はあまりやつておらない。保全経済会は自警ですし、造船汚職は検察庁自身がやつておる、日殖の問題もそうです。そういう特別の捜査費が、どういうわけでいるのか、私ども不解決ですが、さような事実があるかないか、あるとすればいかなる理由でそういう特別な費用を要求されたのであるか、御説明願いたい。
  86. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 本年度は御承知のように捜査費が当初予算においても非常に節減をされましたので、捜査費といたしましては、非常にきゆうくつになつてつてつたのでございます。そこへもつて参りまして、なるほど造船関係警察はただいま関係いたしておりません。しかし保全経済会あるいは日本殖産、こういつた金融事案に関しましては、これは全国に支店等があります。また被害者等も国警の地域内にも非常に多いのであります。さような関係から国警、自警緊密な連絡のもとに捜査をいたしておるのであります。それらの費用にも非常に事欠いて参りましたので、ただいま御指摘のように三千九百万円ですか、約三千万円、先般要求して予備金から支出を願つたのであります。
  87. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると保全経済会だの日本殖産の捜査を全国的にやつたために、捜査費用が足りなくなつて三千万円要求したんだ、こういうふうに承つてよろしいのですか。
  88. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 保全経済会や日本殖産だけでありませんけれども、主として経費の不足はそういう面から来して参りましたから、主たる原因はそういうことであります。
  89. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 よろしゆございます。
  90. 小林錡

    小林委員長 猪俣君、よろしゆうございますか。
  91. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 保全経済会や日殖を主たる目的として、三千万円急に予算をとつたということだけ承わればよろしゆうございます。
  92. 小林錡

    小林委員長 それから教育関係については……。
  93. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それはやります。
  94. 小林錡

    小林委員長 それじや発言を許します。猪俣浩三君。
  95. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今共産党の話が相当出ましたので、これを例に一応確かめておきます。義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案の第三条に特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆とある。そこで学校の職員組合の会合に際しまして、共産党なるものは日本に内乱を起させるものであるがゆえに、これを排撃しなければならないという演説をやりました際には、この三条の違反に相なるのか、どうか。
  96. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまのお話程度ではこの三条違反にはならないのでございますが、そういう観点から合法政党である共産党に反対させる、そういうような教育であれば該当することになります。
  97. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は言葉を略して言うているのです。もちろんその以外に三条の犯罪構成要件が備わるものであることはもちろんである。もちろん共産党の勢力を減退させる目的をもつて言うのです。ある右翼的な傾向のある大学の先生なりその他の人間が教員組合の大会に際しまして、ソ連の共産勢力が非常に伸びて来ている、国民の経済生活が不安になるとともに容共的気分が横溢し、日本共産党は勢力を拡張するおそれがある、かような共産党がもし勢力がだんだん伸びて行つたならば、日本はその国を亡ぼすようなことに相なる、こういうような演説をした場合に、これは第三条違反になるかどうかというのです。
  98. 桃澤全司

    桃澤説明員 そういう演説だけではこの第三条違反にならないわけでございます。そういう内容の教育を行えということがなければ……。
  99. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 きまつているじやないか。さつきから断つている。そんなことはきまつている。ほかの要件はきまつているのです。今言つたような言葉をもつて、教育者が大いに重大責任があるがゆえに、さような日本共産党のごときものが勢力を伸張できないように、子供の教育を十二分に注意してもらいたいというようなことを演説した場合、あるいはそれを文筆に書いた場合、これが第三条違反になるかどうか、こういう意味です。
  100. 桃澤全司

    桃澤説明員 それはそういう教育を行うことを教唆あるいは扇動したことになりますと、該当する余地があろうと考えます。
  101. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私の言うのは、そういう具体的な場合にこれが第三条の教唆になるかどうか、こういう意味なんです。教唆になれば第三条違反だというならば、それはまるで答えにならない。今言つたように具体的に、あるいは雑誌の論文、あるいは新聞、あるいはラジオによつて、学校職員に対してかような宣伝をし、もつて教育者の自覚を出しその奮起を願うものであるというふうに結んだ場合において、これが第三条違反になるかならぬか、こういう意味です。
  102. 桃澤全司

    桃澤説明員 そのときの状況によりますが、あるいは該当する場合もあろうかと存じます。
  103. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その反面、自由党という政党は腐敗堕落しておる、この政党を打倒して新しい政治勢力を樹立しなければ日本はだんだん衰退に向う、それだから学校の教員はこの自由党の唱える主義、政策を催せず、これに協力せず、自由党の再軍備の方面に対しては児童、父兄らとともに教育の上で憲法の改正を食いとめ、日本の再軍備を食いとめなければならない、そうしてその中心勢力である自由党を打倒しなければならぬというような演説をしました際には、やはり第三条違反になりますか。
  104. 桃澤全司

    桃澤説明員 具体的に条件を検討しなければなりませんが、ただいまの御設例は入る場合が多かろうと存じます。
  105. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると自由党という名前をあげずしで、MSA協定には反対である、憲法改正には反対だ、MSA協定をのんだり憲法を改正して再軍備したりすることは、これは国民を滅亡の淵に陥れるのである、学校の先生諸君はそういう意味において生徒を指導してもらいたいというような演説をやつた、政党の名前はあげないのです。ただ政策だけを言つて、そういう働きをやるべきことを申しましたら、これは第三条違反になますか。さつきの場合と違うことは、政党の名前を言わぬことです。
  106. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまお話のことだけでは、この条文には該当しないと思います。ただMSA反対の根拠あるいは憲法改正反対の根拠、これはいろいろな理由をあげてるる述べた場合、あるいは特定の政党にそれがつながる場合も出て来るかと存じます。さような場合にのみ第三条違反が成立する余地があるのでありますが、ただいまお話程度ではこの特定の政党の支持または反対には該当しないと思います。
  107. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆」するということは、大体特定の政党の名前をあげなければ――特定の政党の名前をあげずしてただ政策だけ言う場合においては、それがはつきり特定の政党であるなと思うような場合でも第三条違反にならぬことになるのですか。
  108. 桃澤全司

    桃澤説明員 第三条のこの「特定の政党」は、名前を明示した場合のみに限りません。明示していなくても客観的にその特定の政党との結びつきがわかる場合には、該当する場合があるわけであります。
  109. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとそれは保守政党に限らず社会党、共産党についても、暴力革命を企図するがごとき政党は徹底的に打倒しなければならない、さようなことを生徒に徹底せしめなければならない、かようなことを言うた場合、今暴力革命を企図しておるがごとく思われておる政党は共産党だけでありますが、これは第三条違反になりますか。
  110. 桃澤全司

    桃澤説明員 暴力革命を企図しておる政党と申すだけでは、ただちに日本共産党に結びつかないと考えます。
  111. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それはおかしいじやないですか。無力革命を企図しておる政党といえば共産党ということは三つの子供でも言うようになつておる。それは共産党という名前を言わぬでも――とにかく自由党、改進党、左右の社会党、共産党と、合法政党として今国会に議席がある五つの政党の中で、無力革命を企図する政党というふうに言うたとするならば、これは日本共産党をさすものであるということは、大体小学校や中学校の生徒でもわかることだと思うのだが、それでもそれは第三条違反になりませんか。
  112. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまの御設例だけでは第三条に入らないと考えます。
  113. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると吉田内閣を打倒しなければならないという言葉もちろんそれを教育すべきことを宣伝したのですが、自由党という名前を言わない場合でも、これは特定の政党を支持させる、あるいはこれに反対させるということになりますか。   〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕
  114. 桃澤全司

    桃澤説明員 吉田内閣を打倒しなければならないということで、ただちに特定の政党の反対に該当するかどうかは疑問でありまして、その具体的な内容がもつと明確にされ、そして自由党との結びつきがわかる、その段階に至りますと三条違反の問題を生ずると存ずるのであります。
  115. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからこの教員組合の委員長というような人が、組合員を集めて吉田内閣あるいはそれを支持する自由党を打倒せよ、その他いろいろのことを言うて、結局あなたが今言つた第三条の教唆に該当するというふうに認められた場合に、そういう演説を下ることをあらかじめ打合せました執行委員というようなものはやはり共犯に相なるのですか、どうですか。
  116. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまの委員長がそういう教育を行うことを先生に教唆扇動した場合でありますが、これも委員長個人としてやつた場合には三条違反にはならない。しかしそれがこの当該団体の組織活動を利用した意味でやつておりますると、この三条違反になることはもちろんでございますが、それと共謀してそういうことを話させた執行委員というものも、やはり共犯関係になつて来ると存じます。
  117. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今のあなたの説明によると、この組織または活動を利用するということが少しはつきりいたしかねるのでありますが、日本教職員組合あるいは新潟県教職員組合、北海道教職員組合、こういう教員組合の大会がある際に、委員長たる人物が要するに自由党を非難し、これを打倒すべく、学校教育においても、社会教育においても、教職員は大いに努力しなければならぬというような話をした場合におきまして、あなたの御説明は個人として言つたならばというような但書の説明がありましたが、こういう大会にそういう演説をすることは、それ自体が組織または活動を利用したことになるのですか、ならぬのですか。
  118. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまお示しの場合は組織または活動を利用したことになると存じます。私が先ほど申し上げましたのは、個人的な会合と申しますか、こういうふうな組織活動と関係ない場合に、個人的に話をしたという場合を申し上げたのであります。
  119. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると執行委員が十人ある、執行委員会を開いた席上で、委員長がさような、発言をした場合には、これは組織または活動を利用したことになるのですか、ならぬのですか。
  120. 桃澤全司

    桃澤説明員 執行委員の間でそういう教唆扇動をしようじやないかということが議題に上つた場合といたしますと、その委員長発言に基きまして、その執行委員でそういう教育方針を下部に流すということがきまり、それが組織を通じまして構成員であるところの義務教育諸学校に勤務する教職員に到達した場合に教唆扇動が成り立つ、こういう関係になるかと思います。
  121. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 いや私の質問が悪かつたかもしれぬが、十人の執行委員会というものが、ここにいう学校教育法に規定する学校の職員を主たる構成員とする団体の中に入るか入らぬかということで、その執行委員会それ自体がその団体になるかならぬかという意味質問なんです。
  122. 桃澤全司

    桃澤説明員 その場合には、三条の規定する団体ではなくて、団体の機関と理解いたします。
  123. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますとその団体の機関で、そういうようなつまり教唆をするような演説をすることを決定し、そうしてそれを実行したということになれば、その十名の執行委員全体が教唆の正犯ということになるわけですか。
  124. 桃澤全司

    桃澤説明員 非常に重要な御質問考えます。私どもこの立案にあたりまして考えましたところを申し上げますと、その執行委員会の議題にかかりましてそれに反対をした者は、三条違反の責任を問われない、かように理解いたしました。
  125. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、十人あつたうち六人は、そのいわゆる教唆するような演説をすることに同意したが、四人は反対した、しかし多数決によつて執行委員会を通過したという場合においては、その四人は第三条違反にならぬという解釈、つまり執行委員会という一つの団体行動あるいは一種の会議というものを一つと見ないで、それの中に賛成者と反対者を区分して、そうして賛成者だけが第三条違反だ、こういうことに相なるわけですか。
  126. 桃澤全司

    桃澤説明員 この法律は個人の刑事責任を問うているのでありまして、ただいま猪俣委員の仰せられた通りの結論になると存じます。
  127. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはりくつになるかもしれませんし、具体的の場合でないとわかりませんが、そうすると結局その執行委員会の構成員を個人的に請求なり起訴なりする場合においては、だれがどういう発言をしたかを調査した上でなければ、ただちに一律にこれを処罰することができないということはわかりましたが、調査の結果賛成とも反対とも言わぬ者があつたとするならば、これはどういうことになりますか。
  128. 桃澤全司

    桃澤説明員 これは証拠の問題でございまして、御設例の場合には証拠がないということになるのではなかろうかと存じます。
  129. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからこれはあなたに御質問するのは不適当かとも思いまするけれども、この第三条の二項の「特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」これは新しい言葉であり、新しい犯罪構成要件であることは刑事局長もお認めになつておるのですが、あなたは立案に当られた方だと思いますので、どういうわけで刑罰法規に、しかも教職員を対象にするような、どちらかといえば思想、言論の抑圧になるようなこういう法案――これは慎重の上にも慎重にして、最も民主政治に大切な言論の自由というものを優脅しないように、社会公共の福祉とマッチさせるにいたしましても、やむを得ざる線において処罰するということでなければならぬと思うのでありますが、しかるに普通の刑法犯にもその他の取締り規定にもないような、こういう珍妙な漠とした規定を置いたという何か理由がありますか。
  130. 桃澤全司

    桃澤説明員 第三条の第一項は「児童又は生徒に対して、特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育を行う」と、こういうことになつておりますので、児童または生徒がもしそういう教育を受けますと、ただちに政党を支持するような気になり、あるいは反対するような気になる行動に出るであろう、こういうものが第一項に該当するということになるわけであります。しかしながら相手が児童あるいは生徒でございますから、そういう教育を受けたときの効果が一般人とは幾分違つて来るのではなかろうか、内容はほとんど同じようなことを教育いたしまして、支持させまたは反対させるに至らない、しかし同機の効果を生ずるであろうというものが二項に拾い上げられて来たわけであります。すなわち一項の脱法を防ぐという意味が主たるものでございます。二項の場合は、これは具体的な場合に応じて考えられなければならないことかもしれませんが、そのときは児童あるいは生徒は特定の政党を支持または反対するに至らなくても、そのままの状態に置くならばしばらく後には特定の政党の支持または反対に至るであろう、こういうことが客観的にうかがわれる場合を第二項にきめているわけでございます。猪俣先生のお話のように二項の概念が明確でないではないかという御非難はあろうかと存ずるのでありますが、私どもは一項の「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育」よりきわめて広いものを第二項で捕捉したとは考えていないのでありまして、もつぱら第一項の脱法的なものを第二項で拾つた、かように理解し、かつ運用して行くつもりでございます。
  131. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 どうもあなた方の説明に矛盾があると思う。第三条の一項において「特定の政党等を支持させ、又はこれに反対させる教育」これは今までの質疑応答でも、はつきりと特定の政党の名前をあげなければ、政策なんかを言うてもただちにこれに当てはまらぬ。特別の場合に名前をあげなくても、その説明の内容において、これは自由党だ、共産党だということがはつきりするような場合は、あるいは触れるかもしれませんけれども、大体において名前をあげないで政策だけ言つたような場合には、第三条には触れない。MSA反対、憲法改正反対というような政策問題をあげても触れないというふうに理解するのでありますが、そのように原則であります第一項にしましても、要するに言論の自由の圧迫にならぬように相当しぼられておつてそして特定の政党の支持あるいは反対というような言葉でもはつきりと特定の政党というものが浮び出なければならない。ただ暴力を是認する政党というだけではいけないというふうな御説明を今なさつておるのにかかわらず、第二項におきましては、今それがはつきりしなくても、後ほどはつきりするようなことが客観的にわかるものという説明をされることは、特定の政党を支持させ、また反対させる教育という第一項についての説明と、ちよつと矛盾するのではないか。第一項においては相当しぼつておるのに、第二項で野放図もない解放をしてしまつて、いわゆる第三条は、項と二項に区別されて第三条というものができ上つておりますが、この一項と二項におきまして、言論の自由に対する心構えというものがまつたく違つてしまつている。第一項においては相当用意をして立案されたと思われるのに、第二項においてはまるでこれをぶちこわしてしまつている。「特定の政党を支持し又はこれに反対するに至らしめるに足りる」というようなことは、取締り官吏の解釈いかんで、どんな嫌疑でもかけられるものであります。これはほとんど罪刑法主義を捨て去つてしまつた専制政治の取締り規則だと私は考え、どうしても納得が行かないのです。そこでそれは今あなたにお聞きをしてもしようがないかもしれませんが、一体これで第一項の用意をみなぶちこわしたというふうにあなたはごらんになりませんか。反対するに至らしめるに足るというようなことは、今市での刑法規定にはないのだ。こういう規定を置いて、いろいろこれを目的罪にしたり、いろいろなしぼり方をしておる三条の用意自体を全部ぶちこわしておる。めちやくちやです。私どもは立案者が第三条項を中心として考えられているのか、二項を中心として考えられているのかわからぬような錯覚に陥るのであります。あなたは一体立案者として、ここに非常に危険な状態を招いた。すなわち罪刑法定主義そのものの真髄を、従つて人権保護の真髄を二項においてぶちこわしてしまつておるというふうな判断ができませんか、これをお尋ねいたします。
  132. 桃澤全司

    桃澤説明員 私どもは第三条一項がどこまでも中心でありまして、これから漏れるところの脱法的なものを二項で拾つたという程度に理解しておるのでございます。御心配の点は私どもさようには考えないのでありまして、あらゆる運用の面におきましても十分この意義を明確にいたし、間違いのないようにいたすつもりであります。
  133. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 やはりあなたの説明の中にわれわれの心配するようなところが現われて来ておる。体刑罰法規というものは、その重要な点だけにほこ先を向けるべきで、それ以外のあまり明瞭ならざるものまでも、水を漏らさないようにこれを網にかけるという刑罰法規というものは、いい刑罰法規でないと私は考える。そこで第一項が中心であるか、第二項が中心であるかを質問したのもそこにある。いやしくも何か教唆したというような状態が現われたら、水も漏らさないように、全部網をかけてしまえということで、せつかく一項でしぼつて相当顕著なものだけを処罰するようにしておるにかかわらず、そこから逃げたものをみなここで今度はすくい上げてしまう、こういうやり方なんです。そうして説明には第一項をぎようぎようしく持ち出してやれ目的罪であり、これでしぼる、あれでしぼるというふうに説明の中心を第一項に置かれるのです。だから法文をよく尾ないと相当しぼつているなと思われる。ところが第二項というものが、これは重点なんです。「特定の政党等を支持し、文はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」などということになつたら、おまわりでも検事でもみなその嫌疑ありとして活動するのに事を欠きません。ちようど今川上氏が質問されたように、何の法的根拠があつてつた質問されたときに、答弁に非常に都合がいい、何もぼくは現実にこの政党の支持あるいはこれに反対させるというような意味を言つたんじやないがと言つた際に、それだのになぜこんな捜査をやるのかと言つた際に、いやこれは今そうであつても時日の経過によつて特定の政党を支持しまたはこれに反対するに至らしめるに足りるおそれがあるからやつているんだということで、これによつて法的根拠を求めて逃げ去ることができるのであります。私は相当人権蹂躪があることを予想されて、そのときの言いのがれとして検察当局に口実を与えるためにこの二項というものを用意されたのだろうと考えるのであります。そういうことはあなたはここでおつしやられないかもしれませんが、おそらく法務省では項を置いたに違いない、文部省の圧力に屈して二項というものを立案されたと考えられるが、実際はどうなんです。
  134. 桃澤全司

    桃澤説明員 たいへん御心配をおかけしましたけれども、私どもは「特定の政党等を支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」これを気に読みまして、「至らしめるに足りる教育」というので広くなつたようにも見えますけれども、しかし必ず特定の政党との結びつきがなければならぬ、かように考えておるのでございます。その面から御心配の点は少いのではなからうかと考えます。第一項の場合に先ほど吉田内閣反対ということが出ましたが、これは吉田内閣がちようど自由党内閣であり、その自由党支持、反対の意味で申しておる場合に、自由党の名前を出さなかつたが、しかしその内容が自由党を物語つておるというときには項になります。ところが二項の場合を考えますと、いろいろの政策をあげる、あるいはその政策のよしあしをいいます場合に、その理由づけとしてある特定の政党の理論をそのまま述べている、かような場合には名前が出ませんでもおとなにはすぐわかりますが、子供にはわからぬ場合もあろうかと思うのであります。そういうものも特定の政党との結びつきがあるならば二項で処罰の対象にする、そういうだけの話でありまして、私どもといたしましても取締り上非常にその線が不明確になつたとは考えていないのでございます。
  135. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それが一つ矛盾していると思うのです。この第三条は今までの法体系を二つ無視した規定を置いてある。一つは教唆罪であります。教唆しただけで被教唆者が実行に移さなくても教唆罪を独立犯として処罰することは破壊活動防止法に現われて来ておつて、われわれから見れば刑法の体系をくずす、いわゆる人権蹂躪に端緒を開くものだと考えるのでありますが、しかし刑法の教唆の原則は、結局教唆者はただしやべるだけなのだ、それが実行されては困るような内容のものを教唆するから教唆罪を処罰するのです。実行されては困る、だからほんとうは実行することが中心である。だから刑法はそうなつている。実行しなければ言つただけでは実害はそこに現われない、ゆえに実行者が実行に着手したことをもつて教唆の罪の有無を問うておる、これは当然のことです。してはならぬことをさせたというところに責任が発生するわけです。この法律は被教唆者のやることは合法的なのです。しかるにその合法的なことをやらせたという者が処罰される。およそ教唆の本質とはなはだしくかけ違つてつて、ゆえに実行行為にあらずして、思想そのものを処罰するのだということが出て来るのであります。これは実にほかには例がない、刑事局長なんというのは、国税犯則取締法というのがどうという、あれは税法であります。刑罰のほんとうの体系からは論ぜられない税法でありまして、行政犯だ。だから第三者の行為によつて本人責任を負うという規定が多々ある。刑法にはそういうことがありません。国税反則取締法というような税法関係だけにあるもので、これは刑罰の体系から見るならば便宜的なものであつて本質的なものじやありません。刑法の責任論がやかましい今日におきまして、かような被教唆者のやることが合法であつて、教唆者だけが不法である、しかもそれが懲役以上の刑罰に処せられるというようなことは、実に今までの刑罰体系責任論を超越したものであります。かようなことが一ついま一つは、今の問題である至らしめるに足りるなんという刑罪法規、実に不完全きわまる文句を持つて来ておりまして、これもおそらく既存の法律でないことであろうと考えます。かような状態でこの法律は実に罪刑法定主義を破るものである、こう考えられるのです。御存じのように英米協仏におきましても、普通の地方公務以上に教員に対しての政治活動を制限するなんという法律はないはずである。ことにイギリスのごときは教員自身が政治に興味を持つことが非常に民主教育のためによろしいということで、教員が候補に立つことを非常に奨励し、立候補しただけでは教職を退いたことにならず、その間の給料は支払つて落選した場合にはまた元の職場に教員の地位を確保してそこへつけてやるというように、教員の政治活動というものを保護すらしておるのです。さような状況であるにかかわらず、かようなとほうもない法律をつくつて教員の政治活動を制限する――これは内閣の方針であるので、あなたにこれを申し上げてもしかたがないが、文部大臣も出て来ないし刑事局長も出て来ないし、法務大臣も出て来ない。われわれは不満やる方ないのであるから一席ぶたせてもらつておるのであります。そこでかようなはなはだ人の思想弾圧に用いられるような法律に対して、まつたく取調べ官憲が違法に事実を認定して弾圧の道具に使つた、すなわち職権を濫用したというような場合に、私は厳にそれを制裁する規定を置いてもらいたいと思うのでありますが、その規定を欠いたのはどういうわけですか。
  136. 桃澤全司

    桃澤説明員 もしも御心配のようなことがございますと、刑法の職権濫用罪の発動があるのであります。  それから最初の方で猪俣委員の仰せになりました、本犯は合法であつて、教唆だけが違法だといつて処罪されるのはおかしいではないか、こういうお話がございましたが、ここに書いてありますような教育を行つた者は、これは明らかに教育基本法第八条に違反した行為でございまして、同時にそれは公務員法等によりまして懲戒処分の対象にもなる違法の行為であると私どもは考えております。この違法の行為に対してなぜ刑罰をもつて臨まないのか、教唆扇動だけを処罰して、そういう教育を行つた本犯をなぜ処罰しないのかという問題になると思うのでありますが、その点はもしもそのような先生を処罰の対象にいたしますと、これは生徒児童に対する影響も非常に大きい。教育の内容自体が取締りの対象になるということになりますと、学園を非常に暗くいたしまして、結局本来の目的をはずれて、かえつて教育のためにならない。そういうものはもつぱら行政上の監督にゆだねたならばよかろう、こういう趣旨から本犯の処罰規定を置かなかつたのでございます。
  137. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、第五条に処罰の請求ということがある。そうしてそれを「当該教育職員が勤務する義務教育諸学校の設置者の区別に応じ」と称し、大学の学長、あるいは知事とか、最も普遍的なのは町や村の教育委員会、こういうものに請求権を持たしておるのであります。学校の先生が生徒相手の教育活動においてそれを対象としたものならば、この監督機関であります教育委員会に請求権を持たせるということも筋が通る。しかるに今あなたの説明によつても、法案を見ても、それは不問に付して、「何人も」ですから、第三者があり得る。全然教員でないものがあり得るわけだが、そういう何ら教育委員会関係のない第王者がやつた行為を、それが教唆になるかならないかという点を、教育委員会とか、大学の学長とかに請求権を持たせたということとは、一体どういう説明に相なるのか。
  138. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまのお話の点は、大体二つの理由があるかと存じます。その一つは、たとえば教育委員会に例をとつてみますと、その教育委員会は、自分の管内の教育が非常によく行われることについての責任を持つているのでございます。ところが自分の管理している先先の責任ではなくして、外部からそういうものに対して働きかけがある、曲つた指令が来る、こういうことになりますと、教育委員会の立場からいえば、教育委員会が自己の所掌するところの教育についての不当な害悪をこうむる。その意味からは教育委員会炉被害者になる、かように考えられるのであります。その教育委員会は、自己の権限では外部よりの働きかけをとめることができませんから、その被害者の立場から取締り機関に訴え出る。こういう性質を一つつているかと思うのであります。  もう一つは、この前の委員会で不十分ながら御説明申し上げましたように、もしもこれを普通の刑事法規のようにいつでも捜査官の前にさらけ出されているものであるということにいたしますと、これまた捜査権の濫用と申しますか、あるいは学園を暗くすると申しますか、そういう心配もございますので、それもこの法文の趣旨である程度チエツクし、元来教育委員会の請求があつたときに動き出すというような態勢をとつた方がいいのではなかろうか。この二つが大体五条の設けられた理由と理解しているのでございます。この前も木原委員から、そうは読めないのではないか、この五条の請求は、ただ起訴条件であつて捜査はいつでもできるじやないか。だから心配だ、こう仰せられるのでございますが、まさに法律上はその通りと存じます。しかしながら、この請求を待つて論ずるものと、そうでないものとの間にはやはり相当の差がございまして、この五条のあります限り、御心配の点は相当程度私は防げる、かように考えておる次第であります。
  139. 木原津與志

    ○木原委員 今私の質問を引用になりましたから、ちよつとその点についてお伺いするのですが、請求を待つて論ずるというのは、これは法律上明らかなように、検事が公訴を提起するとき、請求がなければならぬ。請求なくして公訴の提起はできないというだけで、捜査はいつでも自由にできるのでしよう。この規定があれば捜査の制約を実際上は受けるのだということをあなたは言われましたが、刑法の刑事罰の中で請求を待つて論ずるというのは、たしか外国の使臣に対する罪について起訴するときは、外国の政府からの請求がなければならぬということになつておる。そうでしよう。たとえば外国の公使、アメリカの大使なら大使が日本人から傷害を受けた、こういう場合、捜査しないかと言うと、犯人を逮捕して一切の逮捕手続をする規定は、何ら普通の場合とかわりはない。ただ相手方の国に対して特殊の理由から処罰の請求を求めて起訴するというだけで、捜査をするのは一向さしつかえない。また現に相手方の請求があろうがなかろうが、あるまで待とうといつて、現に被害を受けておるのに、黙つて捜査を差控えておくというようなことは実際上ないのです。だからこの場合も、この規定があれば警察官は遠慮して、学校に踏み込んで行つたり、捜査もしないだろう、そういう保証を意味するのだと言うけれども、決してそれは保証にはならない。あつてもなくても、ここに偏向教育があるというふうに、警察官なりその他の捜査官が考えれば、どしどし学校に踏み込んで行つて調べもする。私どもが心配して、学園の自由を荒すぞ、これによつて重大な結果が起るぞということを難儀する理由はここにあるのです。
  140. 桃澤全司

    桃澤説明員 これは御信頼を得なければ、法的にはそういうことは絶対ないとは申し上げられませんけれども、私ども立案にあたりましては、そういううことは予想していなかつたのでございます。なお「請求ヲ待テ其罪ヲ論ス」と書いてあるのはただいまお示しのように刑法第九十三条でございますが、刑法ではそれだけでございますが、先日も問題になりました労調法にも同様の規定がございます。しかしまつたく同じ関係でございます。そのほかに国税犯則の場合にもやはり告発が訴訟条件になつている場合もあるので、ございます。これらの一連の関係におきまして、大体の運用は、一応告発を待つてやるという建前になつておるのでありまして、この法案がもしも通過いたしましたならば、その趣旨をよく下の方にも、一線の方にも徹底させ、あるいは一線から警察官の方にもその趣旨を徹底させるようにいたすつもりでおるのでございます。それからなお、ただちに学園が捜査の対象になるのではないかという御心配でございますが、私どもはその点をおそれて、その教育をした学校の先生を取締りの対象からはずしているわけでございます。これで問題になりますのは、学校外の、その組織の外か、あるいは組織の中の人で、学校外の人が問題になつているのでございますから、捜査の第一段階で警察官の土足で教室が荒されるということは、ほとんどないのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  141. 木原津與志

    ○木原委員 学校外の者から捜査をするので、その段階で学校に踏み込むようなことはなかろうというお話なんですが、見当違いですよ。それは学校の内部でどういうふうなことをやつたかということが、証拠の裏づけになつて来る。この証拠なしにはただ単に外部の教唆扇動というようなことは決定できない。だからこれを決定するには、どうしたつて、その教唆を受けた先生が学校でどういうことを言つたか、偏向教育をしたかということが、捜査する者の証拠集上の原則なんです。これをはずして外部の教唆だけを問題にすることは、捜査の実際にわいてはあり得ないことです。実際の捜査をやるとすればそこから始めなければならない。まず第一番に、学校ではたしてその教育を教唆された学校の先生がどういう教育を児童に対してやつたかということを問題にし、その捜査から始まつて、そうして外部の人がなるほどそういう教唆をしたのだということに帰着して、捜査が初めて完結する。あなたは外から始まつて学校に行くのだというようなことをおつしやいましたが、それはまつた捜査の実際を知らぬからあなたはそんなことを言う。まず学校の中から始まつてそうして外は一番最後の証拠固めの段階になる。それだから、請求を待つてというような規定があつたつて実際上は何ら意味をなさぬじやないかと言うのはそこなんです。またあなたは先ほど、実際の運用について下部の警察官にも徹底するように指針を示すということを言われましたが、捜査官に対するそういつた実際の運用上の取扱いというのは、単なる行政官庁あるいは司法官庁の訓令なんでしよう。取扱い上の訓令というものをかりにやられても、法律そのものができるということになつておるならば、これはどんどんやるのですよ。訓令なんか無視される。だからどうしても法律そのものでできぬようにして、そうして訓令でこれはできぬようになつているのだからお前たちも注意しろという訓令ならば、相まつて実際の効果がある。ところが法律の上では捜査できるようになつておるのを、お前たちは実際上はこうこうしろということを訓令してみたところで、それはへのかつぱにもならぬ、何の役にも立たぬ。そういうようなことであなた方がこれをごまかそうとするからいけないと言うのです。ごまかしでないとは言わせない。そうでしよう。
  142. 桃澤全司

    桃澤説明員 私どもはその点心配をせずに、この法案の第五条を考えておつたのでございます。
  143. 木原津與志

    ○木原委員 それがとんでもないことなんです。そういうことについては何ら心配がなかつたと言うが、法律をつくる人はそういうところを心配してやつてもらわなければ、この法律が民主主義をはばみ、教育の自由、教育の中止性をはばむ大きな弾圧法になるのです。特に先ほどから猪俣委員も指摘されましたか、こういうような法律はまず考えられぬ。本犯を処罰すると同時に、教唆犯も処罰するというのが法の態様なんです。それを本犯を処罰しないでそのまま刑罰の対象外に置いて、教唆者だけを取上げて刑罰の対象にするというような変則的な規定においては――こういうような特殊のものについては、何が犯罪であるかという犯罪構成要件を特に厳格に規定して、何人にもはつきりわかるような構成要件をつくらなければいけない。それは今言うように、教育の中立性がどこにあるか、あるいはこれを支持しあるいは反対するに至らしめるに足りる教育というのはどういう範囲のものであるかというような点について、どこまでが違法行為であり、どこまでが許された行為であるかということのけじめがまつたくついておらない。そのけじめのつかないものを取上げて教唆扇動という独立罪で処罰するということは、明らかに憲法第三十一条の罪刑法定主義に反した違憲立法だと指摘して私ははばからないと思う。そういう違憲立法の疑いのある法律を、なおこの第五条のような漠然たる捜査に関するブレーキぐらいであなた方が完全にこれを実施することを担保できるのだというようなことは、どうしてもあなた方の真意が私にはわからない。この違憲についてのあなたの御見解をもう一回お聞きいたします。
  144. 桃澤全司

    桃澤説明員 私どもは、この構成要件ができるだけ明確になるように努力したわけでありますが、刑事局といたしましては、第三条の一項、二項を通じてその点は明確になつたものと考えておる次第でございます。従つて罪刑法定主義にも反しない、かように考えておる次第でございます。
  145. 木原津與志

    ○木原委員 それでは最後に伺つておきますが、あなた方は、この構成要件がこの法律はつきりしておるということを言われましたが、前会にもくどく質問しましたが、その応答の中ではつきりしなかつたじやありませんか。特にまた、あなたはお読みになつたかどうか知りませんが、今月初めごろの朝日新聞の「天声人語」の中でこういうことを言うております。近ごろの法律の文句のわかりにくいことは特にひどいが、その中でも義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する法律案くらい悪文なのは見たことがない、日本一の悪文だということを言うておる。これは日本一の悪法だという意味じやないんですよ。内容がいいとか悪いとかいうのじやない。これくらい下手な文章を書いた法律は日本一だ、近ごろの役人は頭がどうかしていはせぬか、こういうことを「天声人語」で指摘しておりますよ。お読みになりましたか。「天声人語」のあの日本の最高の知識水準の人が、この文章を見て悪文であり、内容が何を言うているのかさつぱり見当がつかぬということを言つているのですよ。まして一般国民においておやであります。これを読んでごらんなさい。日本で、この法律の何が処罰か何が非処罰かということの限界がわかる人はいない。この下手な悪文じやわからない。こういう日本一の悪法をつくつておいて、そしてこれでわからぬものはどうかしている、これで処罰しても違憲じやないのだ、そういうことをあなたが言われるのは、それこそもつてのほかだ。「天声人語」を一ぺん読んでごらんなさい。ほんとうにこのくらいの悪文は最近に見たことがない、おそらく日本一の悪文章だろうと言つておりますよ。
  146. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私もう二つだけお聞きして終りにいたしますが、一つは、これも政府委員質問して適当かどうかわかりませんけれども、この処罰の請求を地方の教育委員会にまかせたこと、しかもこれが請求がなければ起訴できないことになつている。そうすると、これは日本全国で非常にまちまちなことになると思うのです。御承知のように、教育委員会は選挙でなるので、その中には自由党もあれば改進党も社会党もある。だから普通の教育問題ならそういうことはないが、こういう特定の政党を支持させたとか、反対させる教育をやつたとかやらぬとかいうことになると、非常に政党意識が出て来ることになる。そこで十人の教育委員のうち六人が社会党のような教育委員会の場合にわいては、どうも自由党のちようちん持ちをしたようなものは請求しやすいけれども、同じことを今度は他の自由党の多い教育委員会でやつた場合には、そんなものはみんな不問に付されてしまう。今度は逆に社会党の場合も同じことです。そこで同じ内容の言葉が、あるところへ行つてつた場合には、処罰、起訴されるおそれがあるし、あるところではそうではない。この点からいつても、罪刑法廷主義に何か違つているような気がする。こういうことを言つたら処罰されるという予定ができない。そうするとこれは奇妙なことが起る。ある一人の人がずつと全国遊説に行つた場合、同じことを言うているのが、各地方によつて起訴したりしなかつたり、ばらばらになつて来る。これはどういうふうに統一するのです。それでいいということになれば、昔の藩制みたいになつてしまつて、甲の土地では犯罪になつて乙の土地ではけろりとしているような、まるで処罰上の封建制度みたいになつてしまうのですが、それは一体どういうふうに統一するのです。
  147. 桃澤全司

    桃澤説明員 私どもが考えておりましたのは、たとえば扇動の場合を考えてみますと、中央からこういう教育をしろという文書が全国にまわる、あるいは県の中央から各市町村の学校に対してまわる、こういうことが一応想定できるわけでございます。この場合に、全国的に、あるいはまたその県内において、地方教育委員会というものはたくさんございます。ある村では自由党の議員が多いために握りつぶしになるというものも、他の村ではしごく公平にこれを判断するということもございましよう。そこいらを総合いたしますと、自然つぶそうと思つてもつぶせない、あるいは不当に請求をいたす者がございましても、同じような内容のものについて他の多くの者が問題にしないということも、公訴権を運用する上についての大きな資料になるかとも存ずるのであります。ただ、教育委員会の偏向ということはあり得ると思いますけれども、これをもう少し大きな立場から見ますると、ある程度これは補えるのではなかろうか、かように考えておつたのでございます。  なお教唆の場合が問題になるかと思いますが、御設例のように、全国を遊説して歩いて、ある地方においてはそれを起訴する検察庁も出て来るだろう、ある地検ではこれを不起訴にするということもあるだろう、こういう御心配の点でございますが、実は、運用の面について一説明員から申し上げるのは適当でないかと存じますが、おそらくこの法案が通過いたしましたあかつきには、稟請というような手続もございますので、全国的に統一して、さようなでこぼこのないように措置がとられることと考えておる次第でございます。
  148. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、あなたはさつき教育委員会が被害者のようなことをおつしやつたが、それは非常に矛盾するのであります。これは全国的に統一する場合には、甲の地方委員会では請求したいと想つても請求しないことが起る。乙の委員会ではこんなものは請求したくないといつても、全国的に統一する意味において請求しなければならぬというようなことになつて来る。そんな統一なんかに従わないということになれば、さつき私が言つた通り、全国まちまちになる。しいてこれを統一するということになると、その地方の教育委員会が被害者だということと矛盾する。被害なんかないといつて請求しないものを、しなければいかぬ、人並にやつてもらわなければ向うの方で困るということになる。したいと思つても、それはしては困るということになる。だから、教育委員会が被害者なんていう説明と、全国的に統一するという説明とは矛盾するのです。第一、各村の教育委員会が被害者だなんてあなた方があとから考え出したことで、だからそういう矛盾が起つて来る。教育といえば、日本の教育全体の上からかような規定ができたものだと思うが、それを今度請求ということを教育委員会に背負わして、もつて民主的なやり方を装おうとしたところに矛盾が出て来るのであります。あなたに今ここでこれをやかましく言つてもしようがないと思うけれども、参議院に行く前に、もう一段そういう矛盾を超克する論理をお考えにないと変なことになる。しかしそれは御答弁なさらないでもいい。ただ私は老婆心として、あなたの説明に対してどうも矛盾上やせぬかと思うのです。しかし矛盾しないという御自信があるならば答弁していただいてもよろしい。  それからいま一点は、これ念のためにお聞きするのですが、共産主義なるものを説明して、現代の世界の矛盾を解決上、あるいは恒久平和を樹立するには、この共産主義を信奉する勢力が伸びなければならない。共産主義の科学的、学問的な説明の後にこの共産主義を謳歌するような説明をやつた場合共産党なんてことは一向言わない、共産主義の学説、共産主義の歴史、そうして共産主義の将来の見通し、こういうものをある学者が説明した――もちろんそのはかの第三条の構成要件がくつついた場合ですが、さつきあなたの「反対するに至らしめるに足りる教育」というところの説明にちよつと出たと思う。こういう共産主義自身の説明を先生が請売りして、生徒に言うても、そのときはぴんと来ないけれども、生徒が時間の経過によつて、ああこれが共産主義で、これでなければならぬと思わしめるような場合においては、これは教唆になるという説明になるので、私は今質問するのですが、共産党の名前は言わないで、ただ共産主義そのものを是認し、そのものの発展によつて世界が救われるというようなことを言う、またこの反対の場合で、フアツシヨンでもいいのです。やはり民主主義なんというものはだめだ、国会が国権の最高機関であるなんというのはいけない、やはり天皇が上におつて、この天皇御親政でなければ日本は救われない、だからそういう方向に国民は働いて行かなければならないというような説明をした場合に、これは第三条の一項か二項か、どちらかに当るか当らないか。
  149. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまのあとの方のお話でございますが、フアッシヨを謳歌した教育、この場合にもやはり特定政党との結びつきがどうもはつきりしないのではなかろうかと考えるのであります。そういう意味で三条違反には該当しない。共産主義の場合には、共産主義を信奉して立つている政党というものが日本でどうなつておりますか、あるいは日本共産党だけであるかどうか、その点が問題だと思いますが、その主義を説明したというだけでは三条違反には該当しない。それを信奉する勢力を支持し、この信奉する勢力にもし特定の政党が結びつきがつくならば、三条違反に該当する場合もあろうかと存じますが、もしこれが特定の政党との結びつきがつかなければ、やはり三条違反にはならない、かような関係になるかと思います。
  150. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 ちよつと私から聞きますが、右翼の場合で、すね、今政党との結びつきはないと言われるが、何何会とかあるいは建国会とか、そういう団体があつたらどうです。このあとの、政党にはならないけれどもその他の政治的団体に含まれはせぬかと思うのですが。
  151. 桃澤全司

    桃澤説明員 それに当る場合もあるかとは存じますが、どの政党というその政党が特定しないと、この三条の場合には該当しないと思います。
  152. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 「政党その他の政治的団体」というのは、それでは政党にあらざる政治団体は入らないのですか。
  153. 桃澤全司

    桃澤説明員 いやそれでもけつこうでありますが、たとえばそういう天皇親政を掲げておる政党が一つであつて、それとの結びつきがつく場合は入る場合があると思います。しかしながら天皇親政を標榜しておる政党が多数あるという場合には、この特定ということにならない、こういう意味であります。
  154. 川上貫一

    川上委員 関連……。私のは簡単なんですが、具体的にいろいろお話を聞いておると非常にひどいことになるのじやないか。たとえば大学総長が日教組の会に行つて、社会主義というものは非常にいいものだという講演をする、そうしてそれがあとで支持せしめるに足るものになるかもわからない、これは猪俣委員質問された通りだ。そうすると第一点は、社会主義がなかなかよろしいということを大学総長が、教員の組合に行つて話をした時分に、第二項ですか、支持せしむるに足りる、これに当るか当らぬか。これが一つ。第二は、これに当るか当らぬかを調べるために、学校に行つて調べないでも、それでわかるのかどうか。その後に教員がどういうポイントによつて教育したかということを調べないでも、その至らしめるに足るということがわかるのか。これが第一点。第三点は、右翼の方は団体がないのだから、一向かからぬといつたのですが、これは非常に重大だと思う。
  155. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 政党だ。
  156. 川上貫一

    川上委員 政党だ。ところが団体というのでしよう。もし政党というなら、天皇主義という政党はないはずだ。あるいは二・二六事件主義という政党はない。そうすればそういうことは幾ら言つてつてもいいか。これが第三点。第四点は、その集会があるときに、たとえば矢内原総長がそこに来ておられて、教員の中で、共産党はいいものですか、悪いと思いますかという質問をしたら、どう答えたらいいか。これは答え方によつては必ず至らしめるに足る部分になる。何も言わないのかどうか。この点を四つですが、一つ一つ簡単でけつこうですから……。これはおそらくひどいことになるのじやないか。これを明らかにできぬじやないかと思う。
  157. 桃澤全司

    桃澤説明員 ただいまの御設例の一は、該当しないと思います。それから二の問題でございますが、私ども大体モデルケースとして考えておりますのは、学校でそういう教唆扇動を受けた先生が講義をする、それがおそらく父兄の間で問題になつて来て社会問題となつて来る。それを教育委員会が取上げる、こういう形がとられるのが一番普通ではないかと思います。で、これは一地方に限らず、先ほどもちよつと問題になりましたが、あちらこちらで問題になるであろうと思います。一応輿論にさらされて、その輿論の帰趨をよく見定めて教育委員会が動き出すというのが、大体私どもの予想しておる成行きでございます。ただ教唆扇動は、この義務教育諸学校の教職員に到達したときに既遂になりますから、あるいは文書などでその先生のところに届いたときに、こういうけしからぬことを言つて来たといつて、校長に申し出ることもありましようし、あるいは教育委員会に申し出ることもあろう、そうするとそこでまだ教えられない前に、これが教育委員会に取上げられて請求される、こういう場合もあろうかと存じます。  第三番目のお話でございますが、この法律は偏向教育を取締るということになつております。でありますから、ただいま川上委員の申されましたように、非常に片寄つた右翼の言動、右翼的教育、これもいけないことはもつともでございます。しかしながらそういう標準から犯罪になるかならないかをきめるということは、この尺度が非常にむずかしいのでございまして、教育基本法の第八条二項に書いてあります特定の政党の支持または反対ということをこの中立性の判断の基準にいたしておるのを、この法文が借りて来ておるのであります。従つてこの三条で規定しておるより以外に、いろいろ悪い教育というものもあり得ると思いますが、そういうものは特定の政党の支持または反対という尺度から判断して、その尺度以外のものは、この法律はおよそ予定していないのであります。極右政党があつてその極右政党はこういうことを言つておるので非常によろしいといつて名前を出した場合には当然これは三条違反、こういう問題になるのでありまして、右の方を全然問題にしていないという考えは毛頭ないのでございます。  四番目の共産主義のよしあしの問題でございますが、ただそれが共産主義にとどまつていて、特定の政党の支持または反対という問題ではないならばこれはやはりこの三条の対象としているところではない、かように申し上げられると思うのであります。
  158. 川上貫一

    川上委員 それはわかつているのです。そうではないのです。猪俣委員がしきりに言われたように、それが至らしめるに足りるということです。たとえば具体的にまさに総選挙になろうという前に、大学の先生が行つて社会主義はたいへんけつこうなものだという話をする。社会主義を唱えておられるのはやはり社会党左右両派であります。これはもうはつきりしておるわけです。そうすれば、そのこと自体は何もならぬと言いますけれども、将来至らしめるに足りるというのがある。そうしたらそれは、その話を先生が教室へ行つてつてそうして社会党の票がふえたら、至らしめるに足りるじやないか。だから、それはどこに境をつけるか。場合によつたら半年前に言つたのが半年たつてそれが至らしめるに足りるようになつたから、それは半年前に言つたあれをひとつ行こうといつたらこれは行けるのです。これは法律的解釈としたら行けるのです。これを言つているのです。  それから第二の点は右翼の方は、たとえば二・二六事件はたいへんよろしい、非常にけつこうなものであるということを演説したのは一向さしつかえない。ところが社会党がよろしいと言つたらさつぱりどうもならぬ。こういう法律なんです。こんなものが一体どんなことになるか。これは普通常識考えてもきわめて悪い法律なんですが、この点はどう考えられますか。たとえば二二六事件、あるいは特攻隊に行つたのはまことにけつこうだ、今後戦争でもあれば必ず諸君は特攻隊に行きなさい、こう言つたのはどうにもならぬ。ところが社会主義はよろしいと言つて、それが支持せしめるに至るようなことになつたらそれは懲役だ、こういうことになると思うが、こうなるといういうことを認められますかどうか。それから法の精神から言えば、半年前の演説であろうが、一年前の演説であろうが、それが至らしめるに足りたというようなことがあとから現われた時分には犯罪を構成するという法理論にならなければならぬ、これは時効がないのだから、そうなるのだが、そういうことになつてよろしいかどうか、こういうことであります。
  159. 桃澤全司

    桃澤説明員 最初に、二・二六事件を謳歌するようなごとが処罰の対象にならないで、特定の政党と結びつきがあれは、それが処罰の対象になるのはおかしいではないか。これは確かにお話のように、非常に片寄つた教育だけを処罰の対象にするという条文ができまするならば、おそらくそういうものは処罰の対象になると存じます。しかしながらこれも、非常に片寄つたとは何をいうのかという基準はつきりいたしません。結局この基準として教育基本法の八条の特定の政党との結びつき、特定の政党の支持または反対、こういう教育は、少くとも義務教育の過程においては好ましい教育ではないからそれだけを取締ろう、こういう観点から立案されているのでございます。  それから次に「至らしめるに足りる」というのは、半年先、一年先でそこで至れば、そのときに初めて既遂になるのかというような御質問でございましたが、私どもこの法律考えておりますのは、至らしめるに至りるかどうかということは、この教唆扇動の到達したとき、すなわち既遂になつたときを標準にして、その教唆扇動の内容で判断する事項と考えておるのであります。従いまして、その後どういう教育が行われたか、それからその教育を受けた子供が半年先、一年先にどう考えたかということは関係なく、教唆扇動の到達したときのその教唆扇動の内容から、それが至らしめる教育であるか、しからざるものであるかを判断すべきである、かように解釈いたしているのでございます。
  160. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 他に御質問がなければ本日はこの程度にいたします。次会は明日午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十七分散