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1954-03-19 第19回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)     午後二時十分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 高橋 禎一君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       本多 市郎君    牧野 寛索君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木原津與志君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから順次これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 斎藤長官に対しまして、警察官訓練、ことに警察大学における訓練に関連いたしまして、お尋ねしたいと思うのであります。その前に、警察大学においてはどういうところに主眼を置いて訓練なさつておるのであるか。大学訓練の大綱について御説明いただきたいと思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察大学におきましては警察幹部訓練を主にいたしております。そして訓練目的は、幹部たるにふさわしい一般的教養を、それから各種警察技術的な教養、この両者をいたしておるのでございます。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問の要旨は、警察大学幹部訓練につきまして、実際の具体的な技術訓練、これはもちろんやつておいでになるだろうと思いますが、この警察法精神にのつとる訓育をどういうふうにおやりになつておるか。今警察法の改正問題も出ておりますが、私がお尋ねいたしますことは、現行警察法精神に対してこの警察大学において、いかなる訓練をなさつているか。なお具体的に言いますならば、この現行警察法を流れておりますところの民主精神警察官民主的精神訓練、これをどういうふうにやつておられるか、その点について御説明願いたいと思います。
  6. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私ども警察官教養の一番の主眼点は、警察法に示しております通り、また憲法にも規定されておりますように、人権を尊重するという根本観念に立ちました民主警察官としてりつぱな警察官ということを、すべての教養訓練の根幹にいたしておるのでございます。従いまして、学校教養におきましてもこの点をいかにして把握をして行くかということに重点を置きまして一般訓育の時間においてはもちろんでありますが、また他の専門的な術科におきましてもこの観点に絶えず目を注ぎながら訓練をいたしておるのであります。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 今警察法の改正問題が出ておりまして、当委員会におきましても地方行政委員会連合審査になるように相なつております。新しい警察法につきしましてまたその際いろいろお尋ねしたいと思いますが、これに対しまして、斎藤国警長官も御存じのように、今猛烈な反対運動が起つておる。おとといも東京都のたくさんの団体、その中に母の会なんというまつたく政治的に中立な婦人の会までが加わりまして、今度政府の企図いたしております警察法に対しまして反対集会をやつております。十数人の人たちともども反対意見を述べておるのを見ますと、結局においてまた昔の警察のようになるのではないかという危惧の念があります。申すまでもなく、日本をして敗戦せしめた、あるいは太平洋戦争を勃発せしめた原因は、科学的にいろいろございましようが、その原因一つとして日本警察特高化言論抑圧人権抑圧、反民主的なる官僚軍閥の権力によるところの国政の運用というものが、この破滅の原因をなし、無謀なる戦争に追い込んだということがいわれておるのでありまして、されば連合軍の管理に移りました際、時の総理大臣に対する連合軍のメツセージの中に、いたくその点を指摘せられましてそうして日本警察のあり方につき、地方分権自治体警察民主警察に運営すべきことを示されましたが、時の政府もそれに順応いたしまして、この警察法ができたことは私が申し上げるまでもないのであります。そうして東条内閣時代に見ましたところの特高警察的な存在、これに憲兵まで加わりました、われわれのすべての自由を抑圧するようなこういう警察の運営に対しまして徹底的な革命が行われたはずであります。ところが最近世の反動的趨勢が進展するとともに、あらゆる部面に反動的な徴候が現われまして、私どもの憂慮いたしますことは、この警察がまた中央集権的なると同時に、昔の特高警察がそろそろ復活して来るのではないかという疑いを持つておるのであります。その一つ徴候といたしまして、警察大学において特高訓練をしておるということがわれわれの情報に現われておる。ごく秘密裡に昔の特高のような技術訓練をやつておる。そうしてすでにその修習を終えた者が活躍して来ておる。これが個人の思想動向につき昔の特高警察のように調査に乗り出して、その成果の現われが、教育に関する二法案と称せられるものが文部委員会で審議せられるに際して。国警側調査報告内容として、日本教職員組合の中には相当の共産党があるということが先般報告されて来ておる。そのような報告をつくり上げた人たちは、この警察大学において特高的訓練を受けた人たちで、そのような活動をしておるのだということも承るのであります。そこで警察大学においてかような昔の特高警察思想警察秘密警察のような訓練を一体なされておるかどうか、その点について明確なる御答弁を願いたい。私どもの方にも相当の資料があつて御質問申し上げておるのでありますから、具体的なる、赤裸々なる訓練の模様を御説明願いたいと思います。
  8. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 このたびの警察法の問題は、御意見にございましたように、いずれ地方行政委員会との合同委員会大臣からも御説明があるだろうと存じますのでその点は申し述べませんが、戦前特高警察として非難されました点の大部分は、私は当時ございました各種法律、いわゆる言論集会、結社といつたようなものを規制する治安警察法、あういは治安維持法、あるいは行政検束等によつて人権蹂躙が行われたのでありますが、そういつた行政執行法のようなものによりまして、あげられましたような言論思想抑圧といわれる事柄が行われたと思うのであります。今日におきましてはそういう法律は一切ございません。警察はもつぱら新刑事訴訟法なり、新しい警察職務執行法なり、それらの命ずるところによつて職務を執行しておるのであります。今度の警察法の改正によりましても、それらの点につきましてはまつたくかわりがないと私は考えておるのでございます。警察大学におきまして何か思想抑圧のような訓練をしておるという御意見のようでございますが、さような教育なり訓練は毛頭いたしておりません。先ほど例にあげられました共産党地下活動隠密活動等に対しましては警察といたしましては治安維持責任上その状態を知つておくことがきわめて肝要でありますので、従つてこれらの隠密活動がはたして共産党考えている暴力革命というものとどういう関係を持つのか、破防法違反のおそれはないかといつた事柄に関連をして、必要な限度の捜査、内偵と申しますか調査をいたしますることはこれは警察責任であると私は考えておるのでございます。自治体警察におかれましてもその点につきましては何ら考えの食い違いはございません。従いましてそういうきわめて隠密の間において行われる地下活動をどうして探知するかということにつきましては、これはやはりこれが知るのに必要な、技術的ないろいろな事柄があるわけであります。御承知のようにアメリカのFBIような組織日本にはございませんけれども、しかしFBIのやつておるような活動の中には、われわれ警察治安維持責任を果すという意味から必要な点も相当あるのであります。われわれがこういつたきわめて隠密地下活動をどうして探知するか、しかもそれが人権侵害なつたり法律に触れないで、許された範囲内においてこれを察知するかということにつきましてはやはりただ漫然としておつては知られないのであります。従いましてわれわれ必要であろうと考えられるような事柄につきまして、それぞれの警察官の今までの経験その他照しまして必要な講習と申しますか、訓練と申しますか、かようなことはいたしておるのであります。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしますと私が最初に質問いたしました警察大学において、いわゆる昔の特高警察のような訓練をしておるのではないかということをあなたは肯定せられたことになるのですか。それは否定されたことになるわけですか。
  10. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 前の特高警察のような訓練ということはどういうことを意味されるのか、私はよく存じませんが、以前の特高警察のやつておりました事柄はいろいろございましたが、一番の問題は治安維持法の施行の任務治安維持法による取締り任務を果すということであつたと思います。今日は治安維持法はないのでありますから、従いまして当時治安維持法によつて取締り責任を持つておりましたような警察職務内容はございませんし、前の特高がどんな訓練をやつてつたか、私は詳しくは存じませんけれども治安維持法によつて検挙をする、そのために必要ないろいろな知識、技能というものは、今日は必要がございません。従つてそういう意味における特高訓練はございません。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 なるほど治安維持法はないのであります。われわれが特攻警察なるものを非難いたしますことは人の思想行動隠密調査する。そういう秘密警察的な存在、そうしてこれに伴ういろいろの弊害、これは私がここにるる申さぬでも、戦争以前の日本におきまして幾多犠牲者が出ておるのであります。また今日活動せられておる方々の中にも、非常なる人権蹂躙によつて犠牲を出しておる人がたくさんある。これは隠密なるスパイ政策、実に隠欝なるやり方で、こういうのが警察の性格なんであります。なるほど治安維持法そのものはなくなつた。しかし破壊活動防止法なるものができております。今あなたの説明によつても、この破壊活動防止法のために共産党地下活動なんかを調べるというようなことをおつしやる。そこで昔の特高警察のような訓練、すなわちスパイ戦術あるいは尾行戦術、あるいは張込み戦術、あらゆる戦術がございましよう。そういう戦術によつて人思想動向その他を調査し、これを摘発する、こういうやり方です。警察ゲー・ベー・ウー的色彩、今度の警察法は、その全精神が極力こういう隠欝なる警察存在を否定している。朗らかな民衆のための警察、されば自治体警察というものを中核にいたしまして、やむを得ざる範囲においての国家警察、それも国家地方警察となつておる。ここに警察が明朗化され、民主化されたということに相なつておるのであるが、これは府県単位の一種の国家警察です。提案者がこれを自治体警察云々というのは欺瞞であります。こういう国家警察案が出るとともに、この幹部養成機関であります警察大学において、非常に熱心に昔の特高警察的な、すなわち秘密警察、人の思想その他の行動隠密調査する人権蹂躙に最も関係のあるこういう特高的な訓練を非常に熱心にやつておられるということを承るのであります。あなたは治安維持法がないから特高警察はなくなつたというような御説明でありますが、破壊活動防止法ができ、今また軍機保護法みたいな防衛機密保護法というようなものができ、だんだん特高警察活動には遺憾のない法律が出て参ります。そうしてこの法律を実行するために、また昔のような人権保護に欠けるような警察活動が始まるのではないかとわれわれが憂慮しているときに、警察大学においては熱心にそういう訓練をしているということを承るので、これは日本の将来のために、民主政治完成のために、容易ならざることである。ものすべてが戦争前にまた復帰せんとしている。そうい憂慮をもつてわれわれがながめますときに、警察大学においての訓育に対して、ほんとうに心配でならぬのです。そこで、あなたはただいま破壊活動防止法、その他共産党地下活動などを調査するための何か訓育をしているというようなことをおつしやいましたが、警察大学ではどういうふうな方法でやつておられるか、御説明を願いたい。
  12. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 過去において特高警察人権蹂躙をやつた幾多の事例があるとおつしやいましたが、われわれといたしましては、さような人権蹂躙は絶対にないことを期したい、そういうようなことのないように職責を果したい、かような考えでやつておるのでありまして、われわれが、国会の要求によつて提出いたしました、たとえば日教組内のグループ活動であるとか、あるいは共産党地下活動とかいうものに対する資料に関しましても、先般地方行政委員会において、参考人として名古屋市の警察局長が、特にそれらの点について、国警から発表しておられるああいう資料はほとんどわれわれの手でつくつたものである、われわれの方においても、そういつた面治安維持責任を果すべく十分努力をしている、国警と何ら劣つている点はない、かように言つておられるところに徴しましても、私は警察大学における訓育は、決して間違つていない、かように考えておるのでございます。またわれわれ何か祕密の訓練をしているようにおつしやられますが、自治体警察警察職員もこの講習には参加をしておられるのであります。もちろん警察の内部にはいろいろ機密な事項もございましょう。しかしわれわれといたしましましては、国警組織でなければどうしても習得できないというような、そんな危険なものは何一つつておりません。普通犯罪捜査におきましても、あるいは張込みとか、尾行とか、聞込みとかいろ事柄は必要なのであります。これらが上手であるか下手であるかということは、犯罪捜査に直接関係をいたすのであります。尾行張込み聞込み等やり方が、法律憲法違反をしたやり方であるならば、これはまことに許さるべきことではございません。しかしそのやり方法律違反をしていない、人権侵害にもならないというやり方があるならば、われわれはそういう方法につきまして、できるだけ慎重に、そして目的を達するようにそういつた技術を励むことは、警察職責である、かように私は考えているのでございます。しからばその張込みの仕方をどういう張込みをするか、どういう尾行の仕方をするか、そのこまかい技術的な方法につきましては、私は専門家でございませんからここで申し上げるわけにも参りませんし、こういうことはできるだけ公開は御容赦願いたいと思います。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 われわれの調査するところによれば、警察大学における訓練が、終戦後の訓練と最近非常に違つて来てしまつて民主警察精神などというものはほとんど訓練せずして、特高的な活動のことばかりを訓練しているやに聞いております。そうじやないならば仕合せのことでありますが、私は次回に資料を出してあなたになお確かめたいと存じます。そこで一応あなたの弁明を聞いておくことにいたしますが、日本の運命にかかわります重大なことだと考えるのでありまして、これは最も良心的に御考慮願いたいのであります。  そこでなおお尋ねいたしますが、警察大学訓練についての直接の責任者及び最高責任者何人であり、いかなる機関でありますか、御説明願いたい。
  14. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察大学の直接の責任者は、警察大学校長でございます。それから最高責任者と申しましようか、これは国家公安委員会でございます。またそれを補佐をいたしております私、並びにその関係職員というものが補佐をしているわけであります。事務部局といたしましては、私が責任者でございます。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお一点、そうすると警察大学における訓練についての私の心配は、昔の特高警察のような訓練重点を置きかえて来ているんじやないかという心配なのでありますが、もちろん治安維持法はありませんけれども破壊活動防止法その他の、ややもすれば人権蹂躙に当る法律があるのであります。そこにまた特高精神が復活しては困ると思つて質問しておる。そこで私はこの警察大学が当初のような警察民主化ということに訓練の中心を置くのかどうか、あるいは思想調査というような特高警察的な訓線重点を置いたかどうか、あなたの説明は、それは警察法精神にのつとつて訓育をしておるのだという説明でありますからそれは承つてはおきますが、そうすると警察大学においては人の思想調査、そういう訓練をなさつたことがありますか、ありませんか。
  16. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察大学訓育目的根本方針というものは、当初と何ら変更を加えておりません。民主警察確立、これに対してなお不十分ではないか、これをいかに掘り下げて行くかということに日夜心を用いておるのであります。このような意味におきましてむしろ私は新制度ができてから、いろいろな訓育の結果その他にかんがみまして、民主警察確立民主警察官を育て上げて行くということにますます一歩々々改善を加えつつあるのであります。どういうことから警察大学がまるで特高教育方針を切りかえたようにおつしやるのか、私はその点はまことお答えをいたす言葉を知らないのでございますが、大学の中には本科生各種専科教育がございます。しかしどの専科教育あるいは本科教育項目におきましても、思想調査というようなものを項目にして教授をしておりますあるいは訓練をしておりますものは一つもございません。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は刑事局長義務教育、諸学校における教育政治的中立確保に関する法律案、この問題についてお尋ねしたいと思つたのでありますが、この第三条・特定政党支持させる等の教育教唆及び扇動の禁止、これが非常に難解でありますので、このしさいなる説明を承りたいと思つておるのであります。実はこういう刑罰を伴いまする法律犯罪構成要件を規定すべき条文というものはあらゆる方面から研究しておきませんと後日いろいろの問題を起す、不当に人権侵害を起す、かように考えまするので、私は教育法案文部委員会で通る前に、当法務委員会におきまして専門的にこの犯罪構成要件なんかにつきまして、政府から十二分なる説明を伺いたいと思うのであります。きようは法務大臣刑事局長もお見えになりません。そこで私もこの一点についてだけ御説明を聞いてなお明日にいたしたいと思うのでありますが、この第三条の犯罪構成要件を分析してどういうこととどういうことが犯罪構成要件に予定せられるのであるかを御説明願いたいと思います。
  18. 桃沢全司

    桃沢説明員 義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律第三条、この構成要件を大体御説明申し上げますと、この処罰対象になりますものは、最初に掲げておりますように「何人も」となつております。しかしながらこれには目的が規定してあります。「教育を利用し、特定政党その他の政治的団体」これを特定政党と略称しておりますが、その政治的団体の「政治的勢力の伸張又は減退に資する目的」こういう目的を持つことが第一の要件であります。この中の特定政党その他の政治的団体とは何を申すかということを説明申し上げますと、大体国家公務員法に基きまする人事院規則十四の七でありますか、その中に規定してあります政治的目的、この政治的目的の中に同じような言葉が使つてあるわけであります。これと大体同じ解釈をとつたつもりでございます。人事院規則の中にあります「特定政党その他の政治的団体」とは何をいうかと申しますと、政治資金規正法特定政党それから協会その他の団体とございます。それと大体同じ解釈で参つておるわけでございます。なお政治資金規正法ではそれらの政党それから協会その他の団体、これは登録を要することになつておるのでありまするが、人事院規則及び本条につきましては、その実質がそういう政党もしくはその他の政治団体であれば足りるのでありまして、登録の有無は問うていない趣旨でございます。  次に要件になつておりまするのは、「学校教育法に規定する学校職員を主たる構成員とする団体(その団体を主たる構成員とする団体を含む。)」となつております。その組織または活動を利用することであります。すなわち何人もこの処罰対象になるのでありますが、先ほど申し上げました目的を必要とすること、次にはただいま申し上げましたような組織または活動を利用する。この組織または活動を利用しない形態で行われます教唆扇動、は、処罰対象とならないのでございます。「学校職員を、主たる構成員とする団体、」これは字の通りでございますが、「その団体を主たる構成員とする団体を含む。」と申しますのは、これはいわゆる連合体考えたのです。またその連合体連合体も含ませる趣旨でございます。  次に要件となつておりまするのは、これらの教唆扇動義務教育学校に勤務する教育職員に対して行われることでございます。その教唆扇動内容は、「義務教育学校児童又は生徒に対して、特定して政党等支持させ、又はこれに反対させる教育を行う」、これが実体になるわけでございます。ここに申します特定政党等支持または反対という言葉も、教育基本法の第八条の第二項に規定してあるものでございます。と同時に人事院規則十四の七の政治的行為、そこに規定してあります政治的目的の中に、やはり特定政党等支持反対が規定してあります。これと大体解釈を一にすることになつております。  概略、構成要件一つずつ申し上げましたが、義務教育学校に勤務する教育職員に対しまして、特定政党支持させまたは反対させるような教育を行えということを教唆扇動することが、この処罰対象になるのでありまするが、先ほど申し上げましたように、学校職員を主たる構成員とする団体組織または活動を通じないものは、その処罰対象にならない。またそのような目的を持つていないものは、この処罰対象になりません。これがこの第三条の特徴かと存ずるのであります。  なお引続き御質疑を賜わりますれば、その点についてお答え申し上げます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 普通の犯罪構成要件説明として、主体客体行為範囲というようにわけまして、範囲ということになるとどれが範囲になるわけですか。
  20. 桃沢全司

    桃沢説明員 目的の方は別といたしまして、「学校職員を主たる構成員とする団体」の組織または活動を利用すること、これについてももちろん範囲でございます。次に、義務教育学校に勤務する教職員に対すること、これも必要でございます。それから教職員が「義務教育学校児童又は生徒に対して、特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆」する、これもすべて範囲が必要でございます。客体と申しますか、「特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育」を内容とする、これが客体になるものと存ずるのであります。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると主体は「何人も、」ということになつておりますが、何人のいたします行為をもう一ぺん言つていただきたい。犯罪行為ですからいかなる行為があつた犯罪条件に当てはまることになるのか。
  22. 桃沢全司

    桃沢説明員 以下団体と申しますが、この第三条に規定する団体組織活動を利用すること、それから義務教育学校に勤務する教職員に対する教唆扇動であり、その内容義務教育学校児童または生徒に対して、特定政党等支持させまたはこれに反対する教育を行うことを教唆扇動することが、その行為になると思います。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで教育を利用するという言葉がありますが、教育を利用するというのは、どうということなのです。
  24. 桃沢全司

    桃沢説明員 これは「目的」にかかつて来る言葉でございまして特定政党等の「政治的勢力の伸張又は減退に資する」、そのために教育を利用する、こういう意味でございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると特定政党または団体政治的勢力の伸張または減退に資する目的をもつて教育を利用する、その教育というのは、社会教育学校教育いろいろありますが、これは児童または生徒に対するというのですから、学校教育のことを意味するのですか。相手が児童または生徒であるならば、そうしてその教える人が先生であるならば、学校における教育でなくてもいいわけなのですか、どういうわけなんです。
  26. 桃沢全司

    桃沢説明員 ここに申します教育は、猪俣委員の仰せられますように、学校教育法に基く学校教育意味しておるつもりでございます。従つて家庭教師その他の学校教育に該当しないものは、含まないつもりでございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、教職員組合に属しておりますある教師が、家庭に数十人の児童を集めて、塾のようなものを開いて、学校の入学試験の準備というようなことをやつておることは、たくさんあるのでありますが、そういうところにその児童にいわゆる政治的勢力の伸張または減退に資する目的をもつて教育作業をやつた場合には、この第三条ではないということになるわけですか。
  28. 桃沢全司

    桃沢説明員 仰せの通りと存じます。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからいま一つ、予備校というのがあります。東京都の神田あたりの予備校には、数千人の生徒がおる。ここで三条の行為をした者は教育を利用したことになるか、しないことになるか。
  30. 桃沢全司

    桃沢説明員 この第三条に規定しております教育は、義務教育学校における教育考えておるのでございまして、そうでないものは第三条の対象にならないと思います。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかしあなたのおつしやるようなことは、この法文の中へ出ておらぬのです。教える者が義務教育学校に勤務する教職員であり、その対象義務教育学校における児童または生徒であつて、その目的があり、行為があれば、この第三条の正面解釈からすれば違反になると思う。学校における、教室における教育活動だけを意味するのだということは法文のどこかへ出ていますか。
  32. 桃沢全司

    桃沢説明員 この立法の趣旨がさようでございまして、たとえばこの法律目的第一条に、「この法律は、教育基本法精神に基き、義務教育学校における教育を党派的勢力の不当な影響又は支配から守り」云々とありまして、ここにおきましては義務教育学校における教育、これはただいま仰せられましたような予備学校とか私的塾とかあるいは家庭教師のようなものは含まない、こういう精神で立法いたしておる次第であります。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとこの教育を利用するというのは、義務教育学校において生徒にさような特定政党の勢力の伸張または減退に資するような言動をすること、さような言動をすることを何人教唆するとこの第三条に当てはまる。そうすると義務教育学校の教室内におけるという意味になるのですか。あるいは教室内における担当のあるいは主任の教員ということになるのですか。あるいは他の学校あるいは他の受持の先生がやつてもこの第三条に該当するのですか。つまり利用するという意味は、ある教室内における教室活動のみを言うのであるか。そしてある教室内における教育活動ということになると、その児童または生徒の受持教師と、その生徒間のいろいろの教育作業、それが教育を利用するということになるように見えるのですが、他の担任教師、他の学校の教師というもののいろいろの働きかけは、この教育を利用したということに入るのですか入らぬのですか。
  34. 桃沢全司

    桃沢説明員 私ども考えておりますのは、義務教育学校における教育考えております。それでただいまのお話のその担任の先生がその担任の生徒をどう教えるかということが非常に多い場合と存じますが、教唆内容は、そこまで特定しなくてもいいと考えております。すなわち義務教育学校に勤務する教育職員に対する教唆であればよろしいということと、それからその先生たちが、義務教育学校における教育の場において、そういう教育をさせるということがその内容になつておればよろしい、こう考えるわけであります。従つて学校における教育は、その教室における教育ばかりでなくて、それよりはもう少し広い概念であると理解しておる次第であります。なおただいまお話の、ほかの学校に行つて教えた場合、あるいはほかの学校の先生が来て教えた場合、これが入るかということでございましたが、それも学校における教育として行われる場合、すなわち兼任あるいは何と申しますか、人の入れかえというようなことで、その学校教育として行われるという場合は入りますが、そうでなくて、そのときかつてにほかの先生がほかの学校から来て教えた、これは教育には当らないと考えております。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員  そういたしますと、高等学校の教員は、義務教育学校の教員ではないと想う。高等学校の教員が義務教育の中等学校なり小学校なりの生徒を講堂に集めまして、第三条に規定せられておるような目的を持ち、そういう行動をやつた。それは高等学校の教員組合に属する人であり、そういう行動を起させることが、何人かを教唆したということになると、これは第三条に入るのですか、入らないのですか。
  36. 桃沢全司

    桃沢説明員 ただいまの御質問の趣旨をとり違えたかしりませんが、高等学校の教員に対して、そういう教唆扇動をいたしましても、たまたまその高等学校の先生が中学校なり小学校に行きまして、特定政党等支持させる・あるいは反対させるようなことをいたしましても、この第三条准反にはならないと解釈いたしております。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると高等学校の先生が中学校へ行つて、いわゆるアジ演説をやつても、それは何らこの法律とは関係がないというふうに承つてよろしいか。
  38. 桃沢全司

    桃沢説明員 その通り考えております。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとそれ自体が、この第三条にひつかからないとするならば、そういう高等学校の教員を招聘し、その教員に児童をアジるような講演を頼んだ義務教育学校教職員は、何らかの法律にかかりますか、違反になるかなりませんか。
  40. 桃沢全司

    桃沢説明員 その内容があるいは破防法その他に該当するような場合は、あり得ると思いますが、ちよつとただいまの御質問に対して、適切な例が浮び上りません。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 今私の質問に対してあなたが言うのは、場所は義務教育学校、教室に限らないのでありましよう、そうしてその相手は児童生徒、そしてその行為をする者は、義務教育学校に勤務する教職員という御説明があつた。そこで私の質問にあつた場所は、あなたの指定した通り義務教育学校学校であつたといたしましても、扇動いたしました者、すなわちこの法律において禁止するような行為をいたしました者が高等学校の先生である、その先生が何とかに扇動されてやつて来たという場合において、それはこの第三条にかかるか、かからぬか、あなたの説明はかからないという。そこでそれが違反にならぬならば、元来はこの第三条にかかる可能性のある身分を持つております義務教育の諸学校に勤務する先生が、その高等学校の先生を招聘し、あるいはかようなことを説明してもらいたいと依頼し、あるいはその学校の先生の講演を黙認し、あるいはこれに協力するというような形をとつた場合に、この義務教育学校職員破壊活動防止法、その他別な法律ならいざ知らず、この教育活動制限法の第三条にはかからない、こういうふうに承つてよろしいか。
  42. 桃沢全司

    桃沢説明員 その通りと存じます。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、教育を利用する利用者はわかりました。そこで利用という言葉ですが、これはどういう具体的の内容を持つことですか。
  44. 桃沢全司

    桃沢説明員 教育という手段を用いてという意味でもけつこうかと存じます。そういう趣旨でございます。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、教育を利用するというのは、教育という手段を用いてと、いう音加味だとお聞きいたします。そこでしからば教育を手段にするその教育というのは、どの範囲をいうのであるか、たとえば先生と生徒学校の中でお茶を飲んで雑談をやつているようなのも教育になるのか、あるいは一定の秩序に従つて振鈴とともに教室に入つて、そこに授業が始まるというような意味をいうのであるか。つまり教育を、利用するというその教育なるものは、どの範囲をいうのであるか。運動場で子供とたわむれておつたときにしやべりましたようなことでも教育を利用したということになるのであるか、その辺を御説明願いたいと思います。
  46. 桃沢全司

    桃沢説明員 大体目的の方は別といたしまして、そのあとで取締り対象になりますのが、「特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育を行うことを教唆」この教育でございます。それゆえに運動場でたまたま特定政党等支持させるような、あるいは反対させるような言葉を用いましても、それが先ほど申し上げました学校における教育に該当しない以上は、第三条には該当しない、かように考えております。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 子供をどこかへ遠足に連れて歩いたその際に、先生がたとえば社会党万歳とか、自由党万歳とか、あるいは自由党じやなくちやならぬとか、社会党じやなくちやならぬというようなことを、その遠足の途中に話し合うということは、教育を利用したことになるのですか、ならないのですか。
  48. 桃沢全司

    桃沢説明員 ただいまのお話で二つの点を明らかにしたいと存じます。一つはこれは本犯を処罰いたしませんで、教唆扇動犯だけが処罰対象になりますので、その教唆内容に遠足の途中でもつてこういうことをやれということがないと、この第三条違反にはならないわけでございます。それともう一つは、遠足むやはり学校における教育に入ると存じます。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 すると先ほどの運動場で運動をやつている最中に、社会党万歳、自由党万歳、社会党じやなくちや世の中は明るくならぬというようなことを遊びながら言つている、そうやれということをもし教唆する者があるならば第三条違反になるのですか。
  50. 桃沢全司

    桃沢説明員 その運動場で遊ぶというのがちよつと問題でございますが、それが教育内容としてなされている場合、学校における教育に該当する場合には、やはり教育を利用したということになると存じます。しかしたまたま休みの時間でございまして、教育ということを離れて、そういうことが行われたといたしましても、ここにいう教育には該当しないと考えております。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはあなた小学校における教育の細事を御存じないからそういうことを言うのです。運動場で遊ぶのも、これは当番がありまして、そしてその当番の人間が子供の運動場における監視あるいはその運動に対する補助をしておるような意味で運動場へ出ておるのであります。そうすると、こういう当番に当つたような人が運動場へ出てこういうことをやつたならば、教育を利用したということになるのですか、あるいはまたそういう当番じやない、漫然として運動場に出て、そうしてアジをやつてつたという場合は、それはならぬということになるのですか、はなはだややこしいことになつてしまつて、これは見わけがつかないことになるのですが、どういうことになるのですか。
  52. 桃沢全司

    桃沢説明員 実情をつまびらかにいたしませんので、あるいは十分御了承賜われなかつたのかもしれませんが、私が申し上げましたのは、それも、学校における教育に該当するならば、これは入るし、そうでなければ入らないと思います。抽象的なお答えを申し上げたつもりでございます。それからなおその点は、先ほど申し上げましたように、教唆内容の点とは少し隔たりがございまして、教唆内容では、学校の休憩時間にこういうことを言えというような教唆は、ちよつと想像いたしかねるのでありまして、その義務教育学校児童または生徒に対してこういうことを教育しろ、この内容でございますから、それが限られた学校教職員がどういう教育をしたということと、この第三条とは無関係であろうと存ずる次第であります。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお先ほどちよつと話が出たのですが、乙の義務教育学校職員が甲の義務教育学校へ来て、第三条にあるような行為をやつた場合には第三条の、違反にならぬのですかもう一ぺんお確かめいたします。
  54. 桃沢全司

    桃沢説明員 その点も教唆内容になつて来るのでありますが、そういう教育を現実にしたということは、第三条では要件としていないわけであります。すなわちその教唆義務教育学校に勤務する、教育職員に到達すれば、そこで既遂になるのでございまして、それまでの点を見ていただけばいいんではなかろうかと考えるわけでございます。
  55. 猪俣浩三

    猪俣委員 教唆した人は、乙の学校の-小学校のあるいは中学校の先生を教唆した。その先生が甲の学校へ行つて第三条の違反行為をやつたという場合はどうなるかということです。
  56. 桃沢全司

    桃沢説明員 ちよつとお伺いいたしますが、乙の先生に対して教唆した者が処罰対象になるわけでありますが、乙の先生が甲の学校に行つたらこういう教育をしろ、こういう教唆をしたということを想定されておられるのでありましようか。
  57. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が言いますのは、ある人が教唆したのは乙の学校の先生だつた、その先生がぶらりと甲の学校に行つて、たとえば屋内運動場あるいは外の運動場で生徒に演説をやつたというような場合です。先ほどあなたの説明に、何か教師の入れかえを正式にやるとか補充をやるとかいうことがあつてつた場合には、第三条に違反するような説明があつたかと思いますので、はこの、質問をするのです。たとえば乙の学校の先生に対して教唆する人は、お前、受持の生徒にひとつやつてくれと言うたとかりにいたしまして、その人は自分の学校じやぐあいが悪いのでやらないで、甲の学校へ行つて、たまたま運動場に生徒がたくさん集まつてつたから、そこで一席ぶつたという場合にどうなるかということです。
  58. 桃沢全司

    桃沢説明員 少し私の説明が足りないので、誤解を生ずるようなことになつたかもしれませんが、ただいまの設例の場合、その教唆者がここに規定する団体組織または活動を利用いたしまして、乙の先生にこういう教育をしろという教唆をいたしました場合には、それが乙の先生に到達したときにすでに既遂になるのでございます。乙の先生がそういう教育をしなくても、そのときに教唆者は処罰されるのでありまして、乙の先生が乙の学校でそういう教育をしたときも、甲の学校に行つて教育したときもそれは問わないのでございます。
  59. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、これはその教唆を受けた――教唆が独立罪とされておりますから、そこに問題があるのでありますが、教唆を受けたその乙の学校の先生が高等学校へ行つてつた場合には、それはどうなるのでありますか。
  60. 桃沢全司

    桃沢説明員 乙の先生にその教唆なり扇動が到達いたしましたときに教唆者が既き罪になります。その後乙の先生がどういう行動をしようとしまいとそれはこの第三条とは関係がないということになります。それからもう一つ先ほど兼務の点が問題になつたのですが、それは教唆者がこの団体組織活動を利用いたしまして、乙の先生に対して甲の学校に行つてこういうことを教えろ、こういう教唆をするということが仮定されます。その場合には甲の学校と乙とが何ら関係がない場合には第三条違反が成立しない、そういう意味で先ほど申し上げた次第であります。
  61. 猪俣浩三

    猪俣委員 教唆の相手は義務教育学校に勤務する職員なんですが、教唆した人の意思は、その人に高等学校生徒に演説なら演説をしてもらいたいというのでやつたとするならば、これはどうなりますか。教唆の相手が義務教育職員であればそれで既遂になるのですか。しかし教唆内容は、中学校ではあぶない、この法律にひつかかるかもしれぬから高等学校に行つてつてもらいたい、つまりこの法律にかかりたくないので、こう頼んだとする場合に、これはどういうことになりますか。
  62. 桃沢全司

    桃沢説明員 高等学校生徒に対してこういう教育をしろということを内容とする教唆をいたしましても、第三条の問題にはならないと存じます。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、被教唆者がたとい義務教育学校に勤務する先生であつても、教唆内容義務教育学校を避けた場所を指示したとするならば、この第三条の違反にならぬこう聞いてよろしゆうございますか。
  64. 桃沢全司

    桃沢説明員 仰せの通りと存じます。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば、教唆者はどこの学校――あるいは義務教育学校とか高等学校というような教唆はしなかつた。ただ義務教育学校に勤めている先生の集会においてアジ演説をやつた、そうするとその集会に出た人たちが、ある者は高等学校でやつた、ある者は交兄会でやつた、ところがある者は自分の受持児童にその先生の話のようなことを伝えたという場合においてはどういう処置になりますか。
  66. 桃沢全司

    桃沢説明員 先ほど申しましたように、義務教育学校に勤務する教育職員に対してその教唆内容が到達いたしましたときに既遂になるのでございまして、その後その教唆を受けた先生がそういうような教育をした場合でもしない場合でも、これはこの法条の構成要件には関係ないのでございます。
  67. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはさつき私の質問に対して、相手が義務教育職員であつてもその行為が高等学校に行われた場合にはこの第三条違反にならぬ、教唆者がそういう内容教唆をした場合にはこれは違反にならぬと言う。私の今の質問は、これは目的にも関係するかもしれませんが、たいへん普通にあることですから確かめるのですけれども、教員大会や何かで演説をやる、これは何も小学校や中学校の教室の中でそういう演説をしてもらおうというのでアジつたんじやない、しかし、実際はその中のある部分の人がその受持ち児童に対してその先生の話のようなものを伝えたという場合においても、それは犯罪の既きということになる。教唆の中には含んでおらないのですが、日本を救うのは社会党でなければならぬというような話を聞いて、その先生がその教室の中でかつてにその話をしたという場合に、その人は教唆内容に入れておかなかつた。こういう場合に一体どうなるかということです。
  68. 桃沢全司

    桃沢説明員 先ほど私が、高等学校生徒に対する教育は含まないと申し上げましたのは、教唆者が義務教育学校に勤務する教育職員に対して、高等学校でこういう話をしろということを教唆した場合には、第三条違反に該当しない、かように申し上げたつもりでございます。  次に、ただ教育職員に対して、社会党左派を支持せよ、あるいは自由党を支持せよ、こう申しただけでは、ここに申します義務教育学校児童または生徒に対して特定政党支持させ、またはこれに反対させる教育を行うことを教唆扇動したということにはならないと存じます。
  69. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかし実際の場合になりますと、いや、そんな目的はなかつた、第三条犯意がないのだと言いましても調べる側はなかなか許さないのです。しかし君、そこに集まつたのは中学校、小学校の先生方じやないか。君、そういう話をするならば、教室で生徒に言うに違いないということを君は予期して言つているんじやないか、そうすれば犯意があるんじやないか、こういうふうにやつて来られた際に、今からあなた方にお尋ねしておくのでありますが、どういう弁解をすれば無罪になるのですか。(笑声)
  70. 桃沢全司

    桃沢説明員 たいへんむずかしいお尋ねでございますが、私ども考えておりますのは、この児童または生徒に対してこういう教育を行え、そこまで行かなければ、第三条違反にはならないと解しているわけでございます。
  71. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、私はただ教員組合の連中にどの政党がいいかを話しただけであつて、その先生方が教室で自分の受売りするか何かということは考えておらぬのだと言つた場合においては、そうじやない、第三条に該当するというようなことについては、調べる方で証拠をあげなければならぬ、こう承つてよろしいか。
  72. 桃沢全司

    桃沢説明員 大体お説の通りだと存じます。
  73. 猪俣浩三

    猪俣委員 はなはだしつこいような質問で恐縮でありますけれども、一旦法律となつて出現いたしますと、捜査官その他の取調官は、どうも職業意識と申しますか、なるべくひつかけたい、これは無罪にしてやろうと思つて調べる人はないわけです。つかまえた以上は、何とかひつくくりたいというふうに考える。そこで法律解釈を立法当時十二分にしておきませんと、問題が起るのであります。この法律自体がむちやな法律でありますがゆえに、非常に乱暴な法律だと私は思うのであります。そこで一々徹底的に皆さんの説明を聞いておかぬと、法案の賛否を決せられない。そこで実はしつこいように私は質問をしたのでありますが、きようは教育を利用するという点だけを質問いたしまして、また明日その他の質問に移ります。
  74. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 今の質疑応答の中でちよつと疑問を持ちましたので、若干第三条を明らかにしておきたいと思うのです。  この第三条は、言うまでもなく、教唆犯の独立性を認めて、被教唆者の実行行為、いわゆる実行正犯はこれを問わないというのが、この条文の建前であります。そこで教唆犯の独立性を認めるからには、それを厳格にしぼらなければならないということで、この目的と、しこうしてその方法について、組織活動を利用するというふうに、目的方法の点において教唆の態様を限定したわけです。従つてそれ以後の被教唆者の実行行為はこれを問わないので、これは非常に広く解釈される余地がある。たとえば教唆された内容と、実行を必要としませんけれども、かりに実行された場合の事実の食い違い、いわゆる錯誤の問題というものは、この場合には起らないことになるわけであります。従つてAの義務教育学校児童等に対する実行の教唆をしたのにかかわらず、Bの学校で行われたとしても、本件においては何らそれは教唆犯自体の成立には消長を来さないということがこの建前であろうと思います。またもう一つ角度をかえて言えば、義務教育学校に勤務する教育職員に対し、これらの者が義務教育学校児童または生徒に対してという場合の意味も、これはその義務教育学校児童云々と言わないのですから、その勤務する学校以外の義務教育学校児童等に対するさような教育をも含むというふうに、非常に広く解されるのではないかと私は思うのであります。これは文理解釈からいつても、「その」ということをここに限定的に冠詞をつけてないのですから、さように広く解釈するのがこの行為ではなかろうかと思うのであります。以上の点について政府委員説明を伺つておきたい。
  75. 桃沢全司

    桃沢説明員 まことにごもつともなお尋ねと存じます。これは立案の過程におきましても、最初これらのものが勤務する義務教育学校児童または生徒に対してということも考えられておつたのでございます。しかしながら、ただいま御指摘のように、これは教唆内容でございますから、そういたしますと、お前の学校でこういう教育をしろというところまで特定しておりませんと教唆犯が成立しない、かような心配が出て来たわけでございます。一番簡単な例を申し上げますと、文書である団体組織を通じてこうこうこういう教育児童生徒に対してしろという扇動があつたといたします。その場合に、その文書に、お前の学校でと書いていないと、この法律からはずれるという心配も生ずるのではなかろうかという点で、そうしぼつた書き方をいたさなかつたわけであります。  次に、それではほかの学校ではどうかという問題でございますが、ここに申します教育というのは、前にも申し上げますように、義務教育学校における教育、そういうものを意味しておるということで、入らない、かように申し上げることができると思うのであります。
  76. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 もう一点。被教唆者の実行行為は問わない、またかりにあつたところで、それはさような意味で、客体的には広く解釈すべきであるという点はわかつたのでありますが、なお同時に、被教唆者の実行行為がかりにあつた場合に、その方法についてはどの程度に考えるべきか、また教唆者の認識したその実行行為としての教育というものは、どの程度の範疇に押えるかということ、やはりこれは教唆行為自体とは違うのでありますから、相当広く解釈されべきものと思います。そこで「教育を行うことを教唆し、」というこの「教育を行う」というのは、そういう意味学校団体組織活動を利用することは必要でない。教唆の方はそれが必要であるけれども教唆されたことを実行する方の側においては、そういう組織活動を利用することは必要でない。従つてこれは相当広く解釈されべきものと思うのでありますが、これを政府はどの程度の広さにおいて理解されておるか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  77. 桃沢全司

    桃沢説明員 ちよつと私御趣旨をつかみそこなつたのでありますが、もちろん、いわゆる本犯と申しますか、教育を行う者は、その教育には何も団体組織または活動ということを必要としない。自分の担任しております学校における教育において、ここに掲げてあります「特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育を行う」ということだけでございます。教唆者の目的も必要でございますし、組織または活動を利用してすることが必要でございますが、教えられる、いわゆる学校における教育の場合には、そういう目的も必要としない。ここに掲げておりまする、教育を利用し、特定政党等政治的勢力の伸長または減退に資する目的をその先生が持つていなくてもよろしい、こういうことになると思います。
  78. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 従つて学校教唆されたところを実行する場合には、その方法は、学校の施設を利用せぬでもよろしい、室内でなくてもよろしい、校庭でもよろしい、たとえば国会の参観の際に国会の庭でやつてもよろしいというふうに、きわめて広くなると思うのでありますが、具体的に言つて、どういうように解釈されるかお伺いいたしたいと思います。
  79. 桃沢全司

    桃沢説明員 それで御質問の趣旨がわかつたのでありまするが、この学校における教育と申しますのは、学校の教室ばかりには限りません。もちろん遠足も入りましようし、あるいは国会参観あるいは裁判所の見学、これらも、学校教育の課程として定められておりまするのは、すべてこの教育に入ると考えております。
  80. 木原津與志

    ○木原委員 今の第三条第一項の質疑につきましては重複いたしますから、第二項の点についてちよつとお尋ねいたします。「前項の特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育には、良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度」云々となつております。それを「こえて特定政党等支持し、又は反対するに至らしめるに足りる教育を含むものとする。」という構成になつておる。私は頭の悪いせいか、このどこまでが許された行為か、どの範囲が禁止せられるのか、その範囲がはつきりしないのでお尋ねしたいと思うのです。御承知のように教育基本法の第八条にも「良識ある公民に必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」ということがはつきりうたつてある。そうすると、その「公民たるに必要な政治的教養」という場合、たとえば特定政党支持するとか支持しないとか、あるいは特定政府の政策を説明するというような場合は、当然その政策あるいは政党についての批判が前提とならなければならぬと思う。それでお尋ねするのですが、批判をするということは許されておるのかどうかそれからまずお答え願いたい。
  81. 桃沢全司

    桃沢説明員 単なる批判は支持または反対には入らない、かように考えております。
  82. 木原津與志

    ○木原委員 批判も、単なる批判は含まない、こういうことになるのですね。そこで抽象的に議論してもしようがありませんから、具体的に、私が疑問を持つておりますところをお尋ねいたします。たとえば吉田さんが、保安隊は戦力じやない、戦力なき軍隊というようなことを議会で言われた。また再軍備のために憲法を改正するとかしないとかいうようなことがいろいろ議論されておるが、こういうような問題に対して、それをどこまで批判する自由を持つておるのか。言いかえれば「良識ある公民たるに必要な政治的教養」ということは、当然教育基本法で尊重されておるのでありますから、この具体的な、今の戦力なき軍隊とか、あるいは再軍備のための憲法改正というような問題を、どこまでつつ込んで批判すればいいところと悪いところのけじめがつくのか。ちよつとあなた方の御見解をお尋ねしたい。
  83. 桃沢全司

    桃沢説明員 むずかしい問題でございますが、第三条の一項と三項との関係についても概略の御説明を申し上げておいた方がその点を明確にすることができると思うのであります。第一項で「特定政党等支持させ又はこれに反対させる教育」、ということを内容とする教唆扇動処罰対象になつているわけでございます。ある政党児童支持するようになる、あるいは反対するようになる、そこまでの教育が一項の教育考えておるわけであります。この第二項では「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」、その点がやや広くなつているわけであります。これはただちに特定政党児童支持するようになり、あるいは反対するようにならなくても、そういう教育を施しますと、そのときでなくて、ある日時を隔てて、ひとりでに、ほかの知識あるいは刺激を借りずにある政党の方に行つてしまう、あるいはある政党反対になつてしまう、こういうような教育が二項で規定してある。すなわち、一項の脱法行為というふうなものを二項で拾つているわけであります。この「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」というので、どうも少し広く読まれ過ぎはしないだろうかということで、そういうのでも、良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度を越えていなければ、それも許される、それ以上のものを取締ろうとするのではない、これがただいまの第二項になるわけでございます。すなわち御設例の場合、そういう批判であります限りにおいては、児童あるいは生徒特定政党をほつとけば支持してしまう、あるいは反対してしまうという点には至らないだろうと思いますが、もしそれだけであと何も教育をしない、何も刺激を与えないということならば、ある特定政党に達するであろう、あるいは反対するであろうというふうなものはやはり二項でその取締りを受ける、かようなことになるかと存ずるわけであります。
  84. 木原津與志

    ○木原委員 私はこういうような具体的な政策の問題を批判する場合に、良識ある公民たるに必要な政治的教養の限度というようなことが、はたしてどこまでが良識ある教養に必要なものか、あるいはどの程度までつつ込めばそれを逸脱するかということの判断は、これはおそらく何人にもできぬと思う。戦後の学校の子供というのは、非常にこういう問題に早熟とでも申しますか、賢いとでも申しますか、再軍備の問題にしましても、あるいは現在のいろいろな汚職の問題にしたところで、その他時局の問題にしても、これはもう実に緻密な質問をして来る、ほとんど学校の先生たちが知らぬようなことまで知つて、そうしてぐんぐん教えてくれというので要求して来る。これに対して、一体どこまで教えることがこの禁止規定に該当するのか、あるいは許される、かというその限界は、ひとり学校の先生のみならず、何人にもおそらく私どもにもあなた方にもわからない。その実際問題についての具体的な限界というのはわからぬと思う。法律的に言えば、何が禁止されておるか、何が許容されておるかというような点の限界が、私はつかぬと思う。そういうつかないことを特に処罰規定――先ほど佐瀬先生からも御指摘になつたが、教唆の独立という特別な処罰規定、犯罪体係を設けて処罰対象にする以上、少くともその限界だけははつきりさせてないと、この法律は大きな問題をひき起す。それで私がくどく、その限界点を政府当局が明らかにせよということを言うわけなんです。ただ単に公民の良識だけでは問題は解決しない。
  85. 桃沢全司

    桃沢説明員 この第二項の「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度」とは一体何を言うのかと言われますと、仰せの通り問題は確かにあると存じます。しかしながら、私ども考えておりまするのは、「前項の特定の政、党等を支持させ、又はこれに反対させる教育には、」「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育を含むものとする。」大体こう読んでいただいても間違いじやないと思います。こういたしまするならば仰せのような線の不明確という点はないのではないかと私は存じます。すなわち、「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」というものは、多くの場合、この「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度」を越えているものと存じます。すなわち、この一項の「特定政党等支持させ、又はこれに反対させる教育」は、これはもちろん必、要な限度を越えたものという前提のもとに書いてあるのでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、「支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」というのがあまりにも広く読まれては困るの、で、それをチェックする意味で「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度」というチェックをつけたので、すなわち、これは念のために挿入されたものである、と御理解賜わつていいのではないかと存じます。
  86. 木原津與志

    ○木原委員 それでは、学校の先生が生徒に対して、現在の時局を論じて、再軍備はしてはいけない、日本の現政府がやつている憲法改正というのは誤つている、そういうことではいけないのだという趣旨のことを言つた場合には、これは、良識の限度を越えたと解釈されますか。
  87. 桃沢全司

    桃沢説明員 この「良識ある公民たるに必要な政、治的教養を与えるに必要な限度」が仰せのように必ずしも尺度にならないのではないかとも私は考えますが、そのあとの「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」であるかどうか、そこを主眼点にして判定をして行きたいと存ずる次第であります。  なお、先ほどから木原先生も非常に心配をしておられましたところの、学校の教室で先生が児童に対していろいろ教える場合ですがこの場合には、その先生の持たれるニュアンスもございましようが、はたしてこの法律に該当するかどうかという点についてはいろいろの面でいろいろ問題もあろうかと存じます。しかしながら、この第三条で取締り対象といたしておりまするのは、そういう教育そのものではございません。そういう教育をやれという教唆あるいは扇動内容取締り対象になるわけでございます。多くの場合は、「団体組織又は活動を利用し、」とありますように文書になつて、あるいは指令になつてそういうようなものが行くのではなかろうか、その内容にそういうことがあるかないかという判断は割にできやすいのではなかろうか、かように考えております。
  88. 木原津與志

    ○木原委員 その判断をする者が、地方の警察官、特に捜査の下級警察官が独断的な判断によつてやるであろう、また今日までやつて来たという実例に基いてこの法律が実施されたならば、まさに恐怖的な結果になるということをわれわれはおそれておる。今、政府委員の方ですら、また私どもでも、この限界を明らかに具体的に説明することができないものを、取締りの下級官憲が適正にこれを判断するということはとうていで遂ないと断言してもはばからぬと私は思う。それをなおかつこの法律によつて処罰対象にされるということは、その結果が非常に恐ろしいとわれわれは危惧するのです。それに対してあなた方はどんな取締りの構想を持つておられますか。
  89. 桃沢全司

    桃沢説明員 この法律は第五条に請求罪の規定を設けております。それで最初から警察官が、こういう教育が行われている、それを教唆している者が転るというので、ただちに捜査を開始するという建前をとらずに、教育をつかさどつております主として教育委員会、これが判断いたしまして、自分の管下の学校教職員に対してこのような生常に片寄つた特定政党支持また片反対のための教育をやるように教唆扇動する者がある、これはおそらく多くの場合文書が多かろうと思いますが、これはこのままにゆるがせにできないというと遂に、初めて主として教育委員会が検察官に対して請求をする、その請求を待つて初めて検事が取調べる、起訴、不起訴を決定する、かような二段構えに考えておりますのも、そういう御心配の、ないようにということを考えたことが一つ原因でございます。なおこの請求の制度は、たとえば労調法の三十七条でございましたか、緊急調整の場合、違反の場合には労働委員会の請求を待つて処理することになつております。現実におきましても私どもの取扱つた範囲においては、半働委員会の請求があるまでは全然捜査に乗り出しておりません。その請求を待つて初めて捜査に当り、割に冷静な立場でこの法律解釈もできると存じますし、また処分も誤らない、かように思つております。またこの法の精神につきましては、会同その他の機会に十分その解釈を明らかにいたしまして誤りなきを期したいと考えておる次第でございます。
  90. 木原津與志

    ○木原委員 請求を待つてから捜査官が動くからそういう心配はないとおつしやるけれども、この五条の請求を待つて論ずるというのは、これはそういう意味じやなくて、訴訟条件という意味なんでしょう。検事が公訴を提起する場合において委員会の請求がなければならぬといういわゆる待請求罪で、何も捜査の条件じやないでしよう。検事が調べて訴えを提起する場合に、本人を教唆罪で起訴する場合には、委員会からの請求がなければ起訴ができないというだけの問題だから、請求がなくとも捜査はどんどんやつて行ける、これが第五条の法律解釈だと思うのです。あなたはその委員会が請求しなければ警察官が動かぬのだ、だからむちややたらなことはされぬとおつしやるけれども、これは訴訟条件だとわれわれは考えるのですが、訴訟条件じやないですか。
  91. 桃沢全司

    桃沢説明員 法的には確かに木原委員の仰せられる通りでございますが、私ども考えましたこの請求罪にしましたゆえんは、運用の面においてただちに捜査権が発動しないようにということを考えておる次第でございます。それでただいま労働委員会の請求罪の場合に申し上げましたように、如上の扱いが、請求の前に捜査をすることをしてないということを申し上げましたのは、その運用の面において請求罪というものはいかにわれわれの間で扱われておるかということを御説明申し上げたわけであります。なおそれはもちろん警察官がやろうと思えばやれるでありましよう。しかし捜査いたしましても請求がなければ起訴できないのであります。起訴を前提としないような捜査というものはナンセンスでございまして、この請求罪というしぼり方によつてほしいままに強制捜査権が出ないというのが私どもの常識でございます。
  92. 木原津與志

    ○木原委員 今労働法の委員会の請求のお話がありましたが、労働法の緊急調整の請求とこれとは全然性質が違うので、あれとこれを一緒にして理解されておるというのであれば、それこそナンセンスですよ。あなたは何を言つておられるか、これは刑事法上の訴訟条件としての請求を待つて論ずといういわゆる待請求罪、労働法上のあの請求とは全然性質も違うし、法理もどだい違う。これを一緒にして、あれの例を引いて、ああいうふうだからこれも捜査を開始せぬのだというような説明をあなた方からされ、そういうふうな気持でこの法律解釈運用されるならば、それこそ言語道断といわなければならぬと私は考える。また今お話の、この請求がなければ検事が起訴しない、捜査はどんどんするかもしれぬが起訴に制限を受けておる。起訴に制限を受けておるのだから捜査するのはナンセンスだ、起訴を条件としない捜査意味がない。あなたは簡単に割切られましたが、実際はそんなものじやない。私ども心配するのは、警察官が土足で教室の中を荒す。そこに教育上もあるいは権力の濫用というような点重大な問題がが起る。われわれは学園の自由ということを言つておる。学園の自由というのは、これはすべての民主制度の根本なんです。この学園をみだりに踏みにじるということになれば、もう学問もくそもない。そこに私ども心配がある。学問の自由ということから考えてこれをたつとんで行く、これを守つて行く。もしそこにほんとうの犯罪があるならば、踏み込まれるのもしかたがない。しかし犯罪があるのかどうかわからぬのに、めちやくちやな解釈をして警察官がでたらめに教室に踏み込む。そうして教えた学校の先生をどんどん検束し、あるいは任意同行し、そうしてああだこうだと言つて子供を介して調べる。こういうことがみだりに行われることが権力の濫用になる。そこに学問の自由というものの大きな障害になる。起訴を前提としない捜査だから、そんなものは意味がないじやないか、あなたは簡単に言われるけれども捜査権発動というところに重要な意味があるのですよ。これをどうするかというのです。もしあなた方が今言われるように、実際の取扱いにおいて請求があつてから捜査をするんだというふうに持つて行くというのであれば、それはこの法律の中にその明文がきちつとない限り、この条文をそのまま通したのでは、われわれの心配はまつたく現実の心配となつてとんでもないことになる、そこのところをどういうふうにされるかということをお伺いしたい。
  93. 井本臺吉

    ○井本政府委員 まことにごもつともな心配と思うのでございます。私ども警察官がみだりに学園に入つてこれを荒すというようなことがあつてはならないということを心配いたしまして、この法律がもし成立いたしましたような場合には、ただちに関係の検察官を集めましてこの法律趣旨を十分徹底せしめると同時に、警察官自身が請求のない前に捜査を開始しないというような点については、十分検察官自身も注意すると同時に、検察官の指揮、指示を受けます警察官に対しましても同様の措置に出るように私どもの検察官を通じましてかような趣旨を徹底させたい、かように考えておる次第でございます。法律的には確かに請求のある前に捜査をやつてできないことはないと思いますけれども、運用の面におきましてそのようなことが絶対にないようにいたしたい、かように考えております。
  94. 猪俣浩三

    猪俣委員 関連して……。第五条、これは処罰の請求を義務教育学校の先生方の監督機関にやらせる、こういう法文になつております。これは非常に私は問題があると思う。教育委員会というような教職員の監督機関が、刑事事件の請求をやるということに非常に問題があります。そうしてその問題の第一点は・今あなたは警察官にいろいろそういう教育をするぐらいのことを言つていられたのであるが、一体教育委員会なんていういわゆる専門家ならざるもの、おもに各地の教育委員会の多数は教員上りの人が多いのですけれども、こういう法律なんか専門家にあらざる教育委員会が請求をやる。今私が言つた第三条の何人教育を利用するというその点だけでもまだたくさんの疑義がある。私は今までこの点だけ質問しておつた。あなたこの犯罪構成要件考えてごらんなさい。実に奇怪しごく、複雑怪奇なる法文なんです。これを一体教育委員会がもし犯罪の嫌疑ありとして請求する場合にはどうするか。その材料をとらなければならぬのです。教職員組合に対してある者が教唆をやつた、その教唆の結果がその教育活動に利用されたかどうかという因果関係だけでもたくさんの材料を集めなければ、これを請求していいかどうか判定できますまい。そういう材料を一体教育委員会はどうして集めるのです。これは当然警察活動になることは火を見るより明かであります。これはできない道理です。それだから、教育委員会が請求するというようなことをもつて、このように警察の手に渡さぬことをもつてあなた方はいかにも得々としておられるようであるが、そうでない、逆なんです。教育委員会がこれを請求するには、この煩雑なる、しかも疑義百出するこの法律か理解して、その上に立つて犯罪事実ふりとしてこれを請求しなければならぬが、その材料をだれが集めるか。教育委員会なんというものはそんな材料を集める能力はありません。これは警察が当然やることは火を見るよりも明らかであります。だから請求を待つて警察活動するのじやありません。する材料を警察が提供する、そこに私どもは非常に疑念を持つ。それが先任どの国警長官に対する私の質問になつて来ておるのです。警察大学におけるところの具体的事実を明日持つて来て国警長官の答弁を要求する。きようは忘れてしまつてつて来なかつたが、思想調査訓練をやつておる。特高訓練をやつております。現にこれはもう本国会において立証されておるではありませんか。文部委員会に対して国警が相当ずさんなるところの思想調査の材料を出しておる。そうして各地において警察思想調査をやつたという事例がたくさん報告されておる。まだとの法律ができないうちにこのしまつではありませんか。いわんやできて、教育委員会が請求するかしないかという場合になつたら、警察に頼むより他に法はない。警察はフルに活動するでありましようし、必ずや教室に踏み込んで来る。先生を取調べる。ひきだしの中をかきまわす。これはもう明らかにやる。そうしなければ、この複雑なる事犯の請求なんかできません。そこでお伺いしますが、教育委員会が、かような第三条違反のような犯罪行為ありとする認定の資料を集める能力機能ありとしてあなた方はこれを立案されたか。その請求する前には警察活動は絶対にないと言う、どうしてさような自信がおありになるのか、御説明願いたい。
  95. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私ども教育に関する限り教育委員会が最も民主的な制度であるということを確信しております。なおこの請求者は、学長もおり知事も特別な場合おるのでありますから、かようなところにおいてこの請求に必要な資料が十分集め得るものと私は考えております。少くとも先ほど申し上げましたように、警察官が第一線に立ちまして、いきなり警察活動を始めるというような制度よりも、さような方々の意思にまかすということが私は最も合理的な制度ではないかと考える次第でございます。
  96. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから、実際問題はこれは政治的中立を保つというようなことで、事は非常に反対に行きます。たとえば教育委員会が請求するかしないかということになりますと、委員の中には自由党の支持者もおれば、あるいは社会党の党員で出て来た者もいる。そうするとこの委員会の中でたいへんな論争になります。請求すべきやいなやということに対して、すべしという者とすべからずという者とが非常な論争と相なりまして、教育委員会教育行政に対して今相当超党派的に運営しておりますが、教育委員会が、こんな妙ちきりんな法律をつくられて、しかも請求権を与えられたために、これが政争の具になります。教育を監督すべき、超党派的な活動をする教育委員会を政争のちまたに陥れるものです。あなた方は、そういう事実関係をさつぱり考えないで、机上の空論ばかりやつているからだめなんです。だから、そういう結果になる。そういう結果にならないという自信があつたら言つてください。
  97. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私はそういう結果にならないと考えておるのでありまして、またつけ加えるようでございますが、請求があれば、すぐにそれが刑事事件になり、起訴されるというのではありませんで、さらにその上に検察官が十分検討をするという建前になつておりますので、さような御心配のよう考えております。
  98. 猪俣浩三

    猪俣委員 井本刑事局長のそんな説明はさつぱり信用できない。われわれは地方の情勢を知つておるから言うのだ。地方の警察官というものは一体どういう連中が多いか。今でももう各村において駐在の巡査が、教員の思想調査をするのだ、これからおれらは教員を取締る立場にあるのだということを揚言いたしまして、教室に入つて来ておる。もう現にそういう状態です。そういうふうに村の小学校と駐在とがある場合に、駐在の巡査が教員を取締るというような観念がこの法律から生じます。また教育委員会といたしましても、それはいろいろの政党の人が入つていましようが、取締りたい、どうも教員組合というものは小づらにくいと思うような政党は、おまわりさんを扇動して、あれをしろこれをしろと、公にかひそかにか言うに違いない。それが一つと、そうしておまわりさんとその村における学校の先生との間、これが非常にまずいことになる。一つは今度は村の教育委員会、これがまた分裂します。一つは今度は学校の内部にも勢力争い等がある。反校長派、反教頭派などと、いろいろの争いがある。そうして自分が陥れたいと思う者があれば、この法律を奇貨といたしまして、これによつて密告、投書が行われて、内部の争いをもたらす。その憂いが十二分にある。かようにしてこの教育法案というものは、静かなる村のほんとうにまじめなる学校教育というものを根本的に破壊します。それに対してあなた方は保障できますか。そういう事態が起つたらどういうふうにいたします。そういう心配が絶対にないということが、この法律のどこに保障せられておりますか。どこを見れば、いやそんな心配はない、それはお前の杞憂であるということがこの法案それ自体の中にあるかないか、お示し願いたい。
  99. 井本臺吉

    ○井本政府委員 法案の全体の建前は、さようなことはごうも考えていないのでありまして、巡査が学校の先生との間に非常に仲たがいを生ずるとか、思想調査したとかいうようなことは、私どもの手元にはさような報告が参つておりません。各地の検察官にある程度情報の提供を求めたのでございますが、さような報告は来ておりません。私どもはこの法律が通ることによつて学校の中に仲たがいが生じたり勢力争いが生ずるというようなことは、この法律の成立によつてさようなことになるというようなことは考えられないのでございます。
  100. 猪俣浩三

    猪俣委員 それはいずれ文部大臣あるいは法務大臣の政治的見解を聞くことにいたします。ただ一言申したいことは、法務省と内閣法制局で、文部省の粗雑なこんな原案に対しまして、相当厳重なしぼり方をなさつて、この法案ができ上つた、その労に対しては感謝いたしております。ただなおこれでも人権擁護という、あるいは教育行政を円滑にやるという意味から見ますと、実に恐るべき法案である。しかし政府委員である皆さんにこれ以上のことを言えといえば、首になつてしまうかもしれませんから、質問いたしません。なお井本さんに一言念を押しておきますが、先ほど私は斎藤国警長官に質問いたしました。それは、どうも近時警察官教育方法が、何か反動的になつて来て、ことに幹部養成機関である警察大学において特高的な訓育をしているのじやないか、思想調査なんということに重点を置いての調査方法訓育しているのじやないかという質問をいたしました。さような思想調査なんという訓練はしていないという答弁でありました。これは法務大臣関係があることだと存じますが、その点について、あなたはこの警察大学における訓育の実態を御存じあるかないか、知つておるとすれば、思想調査というような特高警察的な訓育に非常に重きを置いたことをやつているという巷間のうわさがわれわれの耳に伝わつているが、さようなことがあるかないか、それを御答弁願います。
  101. 井本臺吉

    ○井本政府委員 私の所管の外でございますので、私のお答えする範囲ではないと思いますけれども、少くとも私が聞いております範囲においては、さような特高的な教育をしているということは存じておりません。
  102. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 ちよつと簡単に第三条二項の問題を伺つておきたいのでありますが、先ほどの説明の中で、あるいは聞き違いであつたかもしれませんから伺つておきたいのですが、二項は第一項の拡張になるのか、制限になるのかという問題です。先ほどの言葉の中には一項で漏れたものを二項ですくい取るという言葉があつたようだが、そうだとこれは拡張になる、拡張犯罪が三項で認められることになる、ところがまた一方では、チエソクしたものだというような言葉があつたようですが、チェックというと制限、限定して行くので、これは一項自体が縮小されるようになる。ですから二項は二項の拡張か制限かという問題です。  それからもう一つ、第三条が、政党支持とかあるいは反対とかいつて、政策の支持あるいは反対ということには触れておりません。そこで先ほど木原委員からも批判の問題が出たのですが、政党に対する批判というものは、これは人の問題と、政策綱領の問題が批判になるのであつて政党自体は憲法で結社の自由を認められているから、これは政党自体については解説であります。そこで政策を第三条が除外しているというところに、また二項の意味が非常に出て来るのではないかというその関連性も考えられるのですが、この二点について伺つておきたい。
  103. 桃沢全司

    桃沢説明員 先ほど申し上げますように、二項は第一項のわく外のものを考えております。すなわち拡張といいますか、一項をチエツクしたものとは考えておりません。私がチェックと申し上げましたのは、「良識ある公民たるに必要な政治的教養を与えるに必要な限度をこえて」というのが、二項の内部におけるチェックの規定だ、かように申したのでありまして、一項をチエツクするという趣旨ではありません。それから二項の「特定政党等支持し、又はこれに反対するに至らしめるに足りる教育」これは先ほど木原委員からの御質問で政策という問題が出ましたが、単なる政策ではこの二項には入りません。しかしながら政策が、その内容説明が非常に豊富でありまして、ある特定政党を推知せしめるような場合にはこれは入り得る場合があるかと存じます。
  104. 小林錡

    小林委員長 特定は複数でもいいでしような。
  105. 桃沢全司

    桃沢説明員 複数の場合もあり得ると思います。
  106. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめ、明日は午前十時半より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会