運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-18 第19回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十八日(木曜日)     午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 高橋 禎一君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    猪俣 浩三君       神近 市子君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         法務事務官         (保護局長)  齋藤 三郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      長島  敦君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月十七日  岡山地方法務局広戸出張所存続に関する陳情書  (第  二〇〇一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  執行猶予者保護観察法案内閣提出第五二号)
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案、及び執行猶予者保護観察法案、以上三案を一括議題とし質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。林信雄君。
  3. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいま議題となりました政府提出刑法の一部を改正する法律案について若干の質疑を許します。おおむね法案の順序に従うことといたします。その一「刑法第一条第二項中「日本船舶」の下に「又ハ日本航空機」を加える。」このことが現在の事態において必要になつて来たことは異論がない。従いましてさような根本的なものではないのですが、この改正をなされまする上においての政府措置、あるいはその後成文になりました場合の法の解釈等についてお尋ねしておきたいと思うのです。おそらくこのことは、船舶と同様に航空機内の犯罪についても、その航空機の所属いたしまする国の法律適用せられる、そのことは属地法観念よりいたしまして、領土延長として考えられますることにおいて適切であろうと思うのですが、また自然そのことは国際刑事法上すでに原則的に認められたものであるとは存じまするけれども、かような国際的な法律改正にあたりましては、やはり少くとも具体的に密接な関係を持ちまする、たとえば定期航空路関係を有する諸外国等の間には適当な折衝が事前において行われなければならないと推察いたすのであります。さようなことは必要のないのが慣例でありましようが、実際は必要があり、今度のような場合はそれらのことも行われてスムーズに行った次第なのでありますか、お伺いしておきたいと思います。
  4. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 今回の改正は申し上げるまでもなく、日本航空機がニューヨークなりサンフランシスコなりに参ることになりましたので、現行法では特殊の犯罪しかそのような場合刑法適用はございませんので、その不都合を避けようとするために、属地法原則にのつとり、日本船舶日本領土延長考えると同様の観念から、日本航空機日本領土延長と見て、日本航空機内の行為につきましてわが国刑罰法規適用すると、かようにいたしたのであります。すでにわが国におきまして刑法改正起草案亜びに改正刑法仮案も同様のことをなすべきものといたしておりますし、外国立法例においても同様の明文を持つものが多くございまして、国際刑法上の原則に反するものと考えておったのでございます。またこの改正をいたしまして日本航空機向うに着陸した場合に、向う犯罪にわたるというような場合には向う裁判が伴うべきものでありまして、その際にも日本で必要がある場合には、日米犯罪人引渡し条約というもの等によりまして、適切な処置を取り得ると考えております。
  5. 林信雄

    ○林(信)委員 これは刑法適用区域に関する規定でありますから、国外に着陸した航空機内の犯罪はまず原則として考えられておると思うのです。今の説明の中に何だか犯罪人引渡し云々というので外国日本人が引渡されるような場合の説明ちよつと聞きとれなかつたのでありますが、そういうことは全然この規定のらち外のものじゃないかと思います。
  6. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 御説明が不十分でまことに恐縮でありますが、この改正によりまして日本飛行機外国との間を往復する、そして向うからこちらに参る際に、飛行機内で外国の空の上で犯罪があうたというような場合にはこの改正によってただちに刑法適用がある、そうして附則の刑事訴訟法改正によりまして管轄裁判所がわかる、こういうことに相なろうと思います。また日本飛行機向うに行く途中において犯罪のあった場合においても、本改正によつて同様に犯罪が成立する、かように考えておりますが、実際の問題として向うに着陸したというような場合に、向う刑罰法規適用を受けるというような場合もあり得る。さような場合に先ほど申し述べましたような措置が行われるのではないが、かような意味で申し上げました。
  7. 林信雄

    ○林(信)委員 今御説明のことは場合にわけてお尋ねしようと思つてつたのですが、まず第一問としてお尋ねしたいのは、いわばこういう立法をする場合の外交的な慣例としまして、こういうことにいたしますと――これは国際慣例として全然そういう慣例がなければ別ですが、ちよつと丁寧にしておきます方が、後にお伺いしますようなまぎらわしいような場合が起った際に、外交的に何らか一つのいい材料になると思いますので、そういうことが行われておりますものか。今度の場合も具体的になされたかいなかをお尋ねしておるわけですか、少くとも刑法かあるいはその他でその規定の必要であることは、これは前提といたしましたように、私も意見はないのでありますが、何だか心配過ぎるようですけれども、将来のために遠くおもんぱかつておきますことも、必ずしも悪いことではない。少くとも法務当局とせられましては、直接外交折衝外交儀礼は必要といたさなくても、外務当局とは御折衝になって立案せられたものでありましようか。そんなことも今まで例がないということで来たものなんでしょうか。しからば今日どうお考えになるか。そういったような、立法せられますについて関係国との対外関係をどう考え、どう処置せられたものか、あるいは必要なかったという点です。
  8. 長島敦

    長島説明員 実はこの問題は、運輸省の航空局の方から御要望がございまして取上げることになったわけでございます。その際に、外国立法例その他をいろいろ調査いたしましたところ、一九五二年に国際連合各国のこういう制度を集めておりまして、それを見ますると、大体船舶航空機もみな同じようにこういうような規定をつくるのが世界的な傾向になつておりまして、それが国連から出ておりますような関係で、このような規定を置きましても、国際的に全然問題がないというふうに一応考えて参りまして、航空局も同意見でございました関係から、今まで外務省筆を通じてアメリカ連絡をとつたというような事実はございませんが、御趣旨の点もございますのでなお上司に申しまして、連絡を要するものといたしますれば適当な措置をとるようにいたしたいと存じております。
  9. 林信雄

    ○林(信)委員 しからば、続いて具体的の場合の疑問、あるいは疑問らしいものについてお伺いしますか、申すまでもなく刑法日本国内、及びこの法案成文化することによりまして、日本国外にある日本航空機並びに従前の規定にありますところの日本船舶内における犯罪は、自国民であると他国民であるとを問わず、適用されることになるのでありますか、その日本航空機とは、読んで字のごとく解してこれはもう問題かないとしまして、問題は、国外にあるかいなかという点か、具体的な場合にはまぎらわしいものがあるのではないかと思うのです。先刻から御説明の中に出ておりましたが着陸しておつても、まだ航空機のドアーがあかずにおりたばかりの場合、これはそのままに読めば、日本航空機内のわけです。それから着陸しないまでも、領海の上空、少くとも領土上空に達すますと、これは国外にはあるのだが、飛翔を説けております、ような場合は、具体的に言いますると、犯罪かその間に起つたならば、やはり日本刑法がそのまま適用される、文字通り考えますればそう思うので、そのままでいいのではないかと思つておりましたところが、先刻の御説明では、着陸したものはもうすでに外国領土における犯罪であつて日本航空機内といつたようなものではないような御意見でもありましたが、御説明を願いたい。
  10. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 着陸した場合にあつても、航空機内の場合にはやはりこの適用がある。それから日本の国を離れておつて、海の上、向う外国の空の上であつても、この適用によつて日本刑罰法規延長されて適用される、こういうふうに解釈いたしております。
  11. 林信雄

    ○林(信)委員 それは人のいかんを問わないのですから、日本航空機に、たとえばアメリカ外国人が乗り込んで、出航前、すなわち離陸前でありますれば、その航空機内の犯罪はどこの国の裁判管轄になるのですか。
  12. 長島敦

    長島説明員 この問題は、刑法適用のことを直接規定してありまして、裁判権のことには直接は関係がない規定でございます。従いまして、日本航空機の中において犯罪がございました場合には、すべて日本刑罰法規適用になるという建前になるわけでございますが、日本がすぐ裁判権を行使し得るかどうかという問題は、もう一つ別の問題がございまして、ちようど日本裁判権が及びます範囲内にその犯人がおります場合にはわが国裁判権が行使できることになるのでありまするけれども、その犯人わが国裁判権を行使し得る領域外におります場合には、刑法適用はございますが、ただちには裁判権は行使できない、こういう関係になるのでございます。従いまして、アメリカにその犯人が現におりますような場合には、刑法適用はございますけれども、日本ではただちには裁判権が行使できないことになりますので、先ほど齋藤局長から御説明がございましたように、犯人引渡しとか、あるいは犯人日本へ参りますとかいうようなことで、こちらの領域内に入りましたときに、これについて裁判ができるというふうに考えているのであります。
  13. 林信雄

    ○林(信)委員 なるほどこれは刑法の問題ですから、日本刑法適用される、日本刑法適用するということは、適用して裁判することである、その裁判をするのは、これは日本裁判をやらなければ、日本刑法適用できない。たとえばアメリカの場合は、アメリカ日本刑法適用した裁判というものはできない。ただお話のように、やはり引渡しを受けなければならなくなるので、私が前提といたしましたように、単なる国際刑法原則とか、あるいは慣例といつたようなものだけでスムーズに行くべきものなんだが、行かないとか、あるいは国民感情相当違つたような感情が出て来るというようなことで、まずい場合がある。設例として申しましたように、離陸しない以前に、日本航空機内でアメリカ人日本人に危害を加えたとか、あるいはアメリカ人同士殺傷行為等があつた、それでまだ難陸前であつたから、ただちにそれが犯人発覚あるいは逮捕する機会があつて逮捕せられて、そのまま外国土地におりて、すなわちアメリカ裁判を受けるというような事態が起つたということになりますと、これはアメリカ人、すなわち外国人をこちらに引渡しを受けなければならぬ、それが正しいということになると、これはやはり国際的の問題でありまして、国民感情等も入つて来ますし、やつかいな問題が起るのであります。きわめてまれな場合をわざわざつくつて、そう心配しなくてもといえばそれきりですけれども、観念的にはそういうことが考えられるわけです。実際に起つたら、やはりそういうことも心配になるわけです。私が思つておるような、そんなふうなことになるのでありましようか。外国人といえども、その引渡しを受けて日本裁判をやる。日本刑法適用するということは、そうならなければ適用できない。そういうことなんでしようか。
  14. 長島敦

    長島説明員 わが国刑法適用がございますということは、わが国裁判をいたします場合に、わが国刑法で処罰ができるという意味でございまして、アメリカアメリカ人離陸前に犯罪をやりましたというような場合に、この刑法規定がございますから、全部そのアメリカ人引渡し日本に受けまして、日本刑法適用しなければならないという結論にはただちになつて参らないというふうに考えるわけでございまして、ただいまの御設例のような場合でございますと、同時にその行為アメリカ領域内で行われておりますので、もちろんアメリカ刑罰法規適用になりますし、向う裁判所裁判できるわけでございまして、そういう場合に、こちらに引渡しを受けるかどうかいいます問題は、その具体的な場合に応じまして、こちらで裁判するのが至当であるというような場合に、外交的なルートを通しまして、御承知のように引渡しを要求するわけでございまして、アメリカ人同士がやつた離陸前に日本航空機内で何か事故があつたというような場合に、こちらから引渡しを要求するというようなことは、実際問題としてないことであろうというふうに考えられます。  なお詳しいことは存じませんが、引渡し条約の中には、場合によりますと、自国民を引渡さないような原則もございますように聞いておりますので、御設例のような場合は起らないのではないかというふうに一応考えられるわけであります。
  15. 林信雄

    ○林(信)委員 刑法適用関係から、日本航空機、ただいま設例の場合では、アメリカ領土内にある日本航空機内の犯罪日本刑法適用されるわけです。どうもやはり適用されるということになれば、日本裁判でなければならぬのではないか。ただいま私が申しましたのは、外国人同士がけんかしたとか、あるいは外国人外国人を殺傷したというような場合を申し上げましたが、そのうちの一人が日本人であるということになつて来ると、またもつと深刻に考えられると思います。犯罪人引渡し云々お話が出ましたが、それは佐瀬さんがいらつしやるから、佐瀬さんに聞いた方がよかつたかもしれませんけれども、私はわからないからお聞きしておるのですが、さつき齋藤さんのように言われて、とにかくその犯罪には日本刑法適用されるということであれば、なるほど外国内でばあるけれども、また日本領土内でもあると解釈するわけですから、どつちか一つに固まらなければ法の適用という関係から裁判管轄もそうすつきり行かぬのではないか。それがたまたまそこにおりてしまつたから、犯罪後にそこで逮捕され、収容されたら、その国の裁判に服するという、そういう便宜主義だけでは、法の建前としてはどうかと思う。日本航空機内の事件日本刑法適用される。刑法適用されるというのは、日本裁判所裁判する。こういうふうに観念さるべきものではないかと思うので、先ほどの齋藤さんの御意見から考えると、裁判管轄がダブルという関係が私にはよくわからないのですが、どういうようにお考えになりますか。
  16. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 長島参事官から申し上げた通りに、やはり日本裁判所裁判をする場合に適用する法律、それが今の刑法土地に関する法律であります。実際どちらがそれを裁判するかということは、必ずしも一致しないということになるのではないかと私は思うつております。
  17. 林信雄

    ○林(信)委員 先刻から言つておりますように、被害者日本人加害者アメリカ人だ。たまたま加害者はそこで航空機内から逮捕されてそのまま外国にとどまってしまった。やはり国民感情からいいまして被害者に対する同情その他から、日本航空機内における事件じゃないか、当然引渡しを受けて日本でやれ、日本刑法もこういう場合適用されることに原則的にきまっておるじゃないか、こうなりますので、繰返しますが、その犯罪人引渡し関係は、佐瀬さんおわかりだろうと思いますけれども、これははつきりしておるのですか。もう一ぺんお伺いいたします。それでいいのですか。
  18. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 質問の形でお答え申し上げたいと思いますが、刑法土地に関する効力の問題と裁判管轄の問題は、国際刑法上まつたく別個の問題とされております。しかして刑法土地的効力に関しては四つの原則があって、属地主義属人主義保護主義世界主義、こうなつております。日本刑法建前はいわゆる折衷主義でありますから、属人主義属地主義それから保護主義の三者が混合されておるわけだと私は考えております。そこで政府の本改正案に対するお考えは、察するところその属地主義建前として、日本航空機内にある犯罪は、それが外地であってもなお日本領土における犯罪と同様にこれを刑法適用を認みるという趣旨考えるのでありますが、政府もそういう方針で立案されなのかどうか、この点を念を押しておきたいと同時に、もう一つ問題として林委員が指摘されたことは、これはきはめてもつともなことでありまして、刑法適用をするのは、同時に日本裁判管轄権があつた場合でなければ現実には発動しないわけであります。であるからせつかく刑法土地に関する効力外地にある日本飛行俵内の犯罪に及ぼすといたしましても、刑事管轄権がそれに伴わなければ無意味ではないかという御意向と考えるのでありますが、これをしからばいかに調節するかということに関しては、犯罪には引渡し法と同時に、国際司法共助法というものを制定して関係国家刑事管轄権の調節をするということでなければ全きを期することはできてないのであります。そこで政府に次にお伺いしたいのは、日米間には幸い犯罪人引渡し法ができまして、若干その間の手当はできておりますけれども、これはまだ十分ではありません。いわんや他の無条約国との関係においては、私は犯罪人引渡し法と同時に、司法共助法というものをこの際制定する必要があるのではないか、こう考えるのであります。ことに先ほども政府委員から説明があつたようでありますが、国連司法部門におきまして、五十二年かに国際刑事法の統一を計画され、刑法土地的効力に関する一つの方向をきめたのでありますけれども、いまだ各国の間には、私が今申し上げましたような立法措置は、国内法としてもできておりません。そこで日本文化国家であり、そういう点においても、国際刑事立法において先進国としてそういう措置をなすべき世界的な使命があるのではないかと考えるのでありますが、この点に対する政府方針はいかに相なつているか、 この二点を確かめておきたいと思います。
  19. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 非常に重要な、しかも該博な御知識をもつての御質問でございましたが、私案は所管がちよつと違いまして、私から責任のあることを申し上げかねますので、刑事局長島参事官から一応申し上げて、さらに刑事当局責任者から御答弁をいたすことにいたします。
  20. 長島敦

    長島説明員 ただいま佐瀬会員からお話がございました最初の点は、仰せの通り考えておつた次第でございます。  第二の、犯罪人引渡し及び司法共助の問題につきましては、だだいま私どもの刑事局の方で専門の係をきめてなお研究をいたしておるわけでございまして、詳細なことが御必要でございますれば、責任ある局長から御答弁申し上げることといたしたいと思います。
  21. 林信雄

    ○林(信)委員 あえて日本政府のそ司法当局とは申しませんが、御出席になりました御当局のお方では、われわれも倫理整然と承りました佐瀬委員質問に対するお答えが本日十分にできない。その専門的知識を持たない私が、これ以上議論がましくいろいろな質問を並べましてもどうかと思いますから、一応この問題はこの程度にいたします。続いて法案の第二は「第二十五条第二項但書中「第二十五条二ノ保護観察ニ付セラレ」を「第二十五条ノエ第一項ノ規定ニ佐リ保護観察ニ付セラレ」に改める。」このこと自体問顯はありません。実は以前の国会におきましてこの通り立法がそのまま成立することを期待いたしたのでありますが、この裏づけであります保護観察制度が不完備の関係よりかようになつたのでありますから、その時期の今日に至つたことについての若干の恨みを残すのみであります。  従いまして続いて第二十五条ノ二に移るのでありますが、これも第一項であります「前条第一項ノ場合ニ於テハ猶予期間保護観察ニ付スルコトヲ得」すなわち初度の執行猶予に対しまして任意の保護観察制度をもつてするということ、並びに第三項の場合においては、猶予期間必要的観察制度とするということ、この点についても異論はございません。  従いまして次の第二項でありますが、これは申すまでもなく「保護観察ハ行政官庁処分以テ之ヲ仮ニ解除スルコトヲ得」とありますこと自体は、そのままわかるし、その制度は適当であろうと私は思います。  なお続いて第三項でありますが、「保護観察ヲ仮ニ解除セラレタルトキハ云々規定も、結論においておおむね必要ではないか。ただ第三項の場合におきましては、一応保護観察に付されたというものは、初度の執行猶予の場合におきましては、保護観察に付されざるものに比較いたしますれば、やや悪質の犯罪者と一応言えるんじやないか。それがかりに解除せられたからといつて、ここに規定せられますような特典を与えることがはたして適当であるかどうかに、これは一考せられた問題であろうと思うです。私も一考し再考してみましたが、結論として大体いいだろう、こう思つたのでありまして、この結論に達します間において何か参考的に承ることがありましたら、この第三項について御説明願いたいと思います。  続いて申し上げます。実は私がやや問題といたしますのは、この二項、三項のいわゆる保護観察処分の仮解除あるいはその効力に関する規出定を、刑法成文としてここに掲げますことがどんなものであるか。もつとも第三項は、刑法規定適用上影響のある問題でありますから、まずこれはよろしいといたしましても、少くとも「行政官庁処分」と明らかに言つてあります行政官庁処分をここにわざわざわざ掲げて置かなければならぬという考え方はどこから来ているのでありますか。第一に思いますのは、この三項を持ち出すためには、これがあるとたいへん見やすくなるのであります。その意味においては非常に直接の関係を持つておりますから、わかりますが、刑法の方の性格からいたしまして、保護観察制度の中の一項の関係のものをここにわざわざあげることは適当でないと考えますから、あわせてお伺いいたします。
  22. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答えを申し上げます。第一に御指摘になりました仮解除せられたときということで、これまでの特点を与える必要がないのではないかという点でございまするが、保護観察ということは、裁判所が必要ありとしてきめたことでございまするから、これを根本からなくするということになりますとやはり裁判所がこれを仮解除するということが必要ではないか。まずこの仮解除制度考えまするについて、裁判所執行猶予期間保護観察に付するというようなことにした場合、実際問題として保護観察の遂行の過程において、本人の環境かよくなり、また本人の態度がよくなり、あえて指導監督あるいは補導援護を加える必要がなくなつたというときには解除することが必要ではないかということから、何かこれを考えた方がいいのではないかと考えて参りまして、これを根本的になくするということ、裁判を変更するというようなこと、終局的には解除するというようなことにまでなるならば、あるいは裁判所がやるべきがほんとうではないか。ところが保護観察というのは御承知のように、本人社会にとどまつてつて、いろいろと社会生活を営みながら保護を受け、指導を受けるということでありますから、住所が変転する場合が非常に多い。それを元の裁判所に持つて行くということになりますと、その解除ということが円滑に行かない。そして解除してもいいようなものが解除できないというようなことになつた場合、非常にぐあいが悪いではなかろうかというようなことから、結局仮出獄と同じように、判決の執行の態様をかえるというようなことにして、実際にはこの保護観察関係のある機関がやることが、必要に応じて一番適切にできるのではないかというような考えから仮解除というようなことにいたした次第でございます。  それから、やはり裁判所が必要ありとしてつけたものでございまするから、その後の状況の変化によつて解除を取消すということが必要ではないかということで、その後の環境が悪くなつて、どうしても保護を加える必要がある、あるいは本人の行動が思わしくなくなつて、やはり指導を必要とする場合に取消すということにするならは、あまりに緩に過ぎるではないかというとろからかような制度考えた次第でございます。  それから第二項は第三項を起すためにここに書いたのではないかというふうにごらんいただきましたが、やはり保護観察ということで、保護観察の内容についてはすべて別個の単行法によつて全部を規定するということも考えてみたのでございますが、ここにありまするような仮解除という制度は、刑法適用に影響がある規定でございまするし、またその仮解除をどこがやるかということも、実際問題として非常に必要な点でございます。ちようど仮出獄につきまして、犯罪者の仮出獄の許可までのいろいろな手続を書いておりながら、刑法の二十八条、三十九九条三十条におきまして、行政官庁がやるのだというようなことを書いており、また仮出獄の効果等について基本の点が刑法に書いてあるので、それに習うのが適切ではないか、かような考えで、二項、三項の最も重要な点は刑法による。そうしてその実際の手続等につきましては、別個の執行猶予保護観察法において規定する、かように考えてこのような体裁をとつた次第でございます。
  23. 林信雄

    ○林(信)委員 前半のお答えは、何だか保護観察中の者に対する行政官庁処分の、仮解除規定の必要である理由を御説明なつたようでございます。前提として申し上げておきますが、それに異論はない。ただ三項について、その効力があまりに恩恵的であるという点は一考を要するけれども、そのこと自体には異論がないということを申し上げております。ただ後半の御説明は、私の問いにお答えなつたようでありますが、仮解除は仮出獄と同視せられるものだというような御観念でおられること、これも大体そう思うのでありますけれども、御説明にありましたように、しからば仮解除の一切の規定刑法に盛られるかというと、これまた不適当であります。すでに御提案になつておりまする保護観察法案におきましても、仮解除の取消しの規定、及びそれに不服のある者には、その不服申立てに関する規定等が第八条、加州十二条筆に見えるのであります。こういう点も考えあわせまして、むしろこれは関係のありまする保護観察法に一切をゆだねておけば足りるのではないだろうか。繰返しますが、第三項は別といたしましても、第二項は保護観察法にゆだねる方が適切でないか。これは私の観念が固まり過ぎているかもしれませんか、そう思われてならないわけなんであります。が、立法例としてさしつかえないと言われれば、結局は考え方の違い、意見の違いになつて来るかもしれない。こう規定いたさなくても、もちろんこれはたいへん錯雑した立法関係になるのではなくて、それぞれの関係条文にその旨を書き添えれば足りるであろうと思うのであります。またそれの方がそれぞれの場合にあたりまして見やすい条文になつて来ると思うのです。これは意見の相違になるかもしれませんが、私のような考え方はまつたく間違つているものなんでしようか、それともそういう考え方があり得るのでありましようか。
  24. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 決して間違とは存じません。ただ重要な点でございまするから、一応刑法にこういう程度のものをやるのだということを書いておくのは、これも間違いではなかろう、その方がまたわかりよいではない、かかように考えた次第でございます。  それから先ほど説明不十分でまことに恐縮でありますが、仮解除というのは、保護観察に付したものであるから、無条件のものよりは反社会性が多いではないか、あるいは危険があるのではないか、それに対して仮解除の場合には、重ねて執行猶予とか、あるいは遵守事項違反がないとかいうようなことで、無条件執行猶予と間じようにするのは少し緩に過ぎやしないかという御指摘の点、これもまことに重要な点でありまして、私ども考えたのでございますが、ただ取消しということがございまして、取消しになればその後はこの但書、あるいは前条第二項の但書、及び二十六条第二号の適用があることになりまするので、この仕事を預かる者が十分注意してやるならば、緩に過ぎないでやれるのではないか、かように考えた次第であります。
  25. 林信雄

    ○林(信)委員 次いで次の法文に移ります。すなわち「第二十六条ノニ第二号を次のように改める。」というのでありますが「二第二十五条ノ二第一項ノ規定ニ依リ保護観察ニ付セラレタル者遵守ス可キ事項ヲ遵守セズ其情状重キトキ」これは適当なる措置ではあると存じますが、その解釈について抽象的には読んで字のごとくわかると思うのでありますが、法律的にはどう考えておくべきか。というのは、この末文であります。「遵守スベキ事項ヲ遵守セズ其情状重キトキ」これを文言だけでなくて、もう少し御説明を承る必要があると思います。
  26. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 遵守事項につきましては、前回の御審議の経過も逐一拝承いたしており、それについて十分考えまして、今回の執行猶予者保護観察法案におきましても、従来のしきたり等をさらに根本的に考え合せまして遵守事項を考えたわけであります。そして最後に善行を保持するという規定だけを遵守事項にいたし、その他観察所に連絡をとるという点と、連絡を十分保つておくことと、それから本人は善行を保持する、善行を保持しない場合に遵守事項違反ということになりまして、結局善行を保持するということが非常に抽象的で、これはこの前の御審議の際にもいろいろと御指摘のございました通りでございます。ただこれを遵守すべき事項を遵守せずとかいうふうにすることは、適用の仕方によつては、形式的なものをとらえて遵守事項違反のゆえをもつて執行猶予を取消すべしということにありましては困りますので、「共情状重キトキ」とせられた次第でありまして、その解釈につきましては、これはやはり健全なる社会通念と申しますか、良識をもつて裁判所が判断をされるのであります。ただ私ども立案に際して考えましたのは、片々たる区々の形式的なことによつてこの取消しをすべきものではないという考え方で、実際どういう事案が「情状重キトキ」となるかということは、裁判所が良識をもつて御判断を願う、かように考えている次第であります。
  27. 林信雄

    ○林(信)委員 お答えは大体そういうことであろうと思うのですが、私が申し上げるまでもなく、この改正せられます条項を含みます刑法第二十六条ノニ第」項によつて示されておりますように、刑の執行猶予の取消しの任意性の規定で、かようにして「其情状重キトキ」として問題がそこに持ち出されましても、裁判官は執行猶予を取消すこともできれば、取消さないでもよろしいというのですから、問題として出されますにはあまりに漠然たるものを持ち出されるという考えがするのです。たとえば第一号は、その期間内に罰金に処せられたるときとはつきり言つており、第三号は禁錮以上の刑と書いてある。全部は読みませんが、要は、執行猶予中にその前の比較的重い事件が発覚したような場合、そのこと自体はもう裁判所は審判には値しない程度の大前提であるわけなんです。しかるに第二号の今回の改正は、言葉は悪いのですが、やや抽象的なものです。その内容を調べなければならぬ。それでいいのかもしれませんが、どうも他の各号に比較しまして、毛色がかわつておる。そういう抽象的なものでなくても、法文の建前としましては、保護観察所において刑の執行猶予の言い渡しを取消すことを相当と考え結論を出した申告といいますか、申達といいますか、何かそのこと自体をむしろ書き上げておつて、それに対して裁判所がその内容を検討すると同じようなことになるかもしれませんが、どうも法山文の建前としてこういう抽象論的なものをここに掲げることが適当であるかどうかという私の疑念なんですが、どういうようにお考えですか。
  28. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答え申します。確かに御指摘の通りに、執行猶予の取消し事由としまして、他の条項はいずれも判決があつたというようなときで、すでに確定判決があつたということで、争いのないということであります。ただこの執行猶予保護観察を結びつけた制度をやります際には、どうしても遵守事項を守らないという場合には取消すということが必要であろうかと存じまして、前国会で成立しました現行法におきましても、遵守すべき事項を遵守せざることを理由として取消すことができるといたしております。たださような他の確定判決によつて取消す場合と違つて、事柄やむを得ざるところから来るのではございますが、抽象的なる理由を掲げておりますので、特に抽象的といいますか、そういつた漠然とした理由によつて取消すときの手続につきましては、慎重を期しまして、そして現行法におきましても、本人の請求があれば口頭弁論を開く、口頭弁論を開くときには弁護人を選任することができる、こういうようにいたしまして、やむを得ず抽象的な理由で取消すことを可能とし、一面においてその手続について慎重を期して、そして適正なる運用をはかる、こういう建別になつておりますので、今回の改正においてもそれを踏襲いたし、さらに「其情状重キトキ」ということを入れまして、特に慎重を期したい、こういう考え方からかような改正考えた次第であります。
  29. 林信雄

    ○林(信)委員 繰返すようでありますが、できればこれは保護観察法の範囲においてもつと権威のある機関によつて結論を出して、その結論を基礎にして検察官がこの執行猶予の取消しを諸求して来るというようなことにします方が、実際の裁判所裁判においても少くとも迅速になるのじやないか、また他の条項との振合いからいたしましても均衡がとれて来るように思うのです。それにはそのためのどの機関にしますか。適当な機関を指定するか、しからざれば新たにつくるか。裁判所をして納得せしめ得る機関を経適して、その結論を得たものについて裁判所がこれを判断するという建前が、何となく望ましいような感じがするのでありますが、私も御当局意見を承りましたから研究をいたします。時間の関係もありますし、刑法の一部を改正する法律の案文として提出されました附則以外の点についてはこの程度にとどめます。  直接に関連いたしませんが、これは前にも私の意見を申し上げて、少くとも御考慮を願つておる心持でいたのでありますが、今日どういうようにお考えになりますか。再度の執行猶予をいたす場合、すなわちその後も含むのでありますが、刑法第二十五条第二項の執行猶予に付せられようとします言渡し刑は一年以下の懲役または禁錮のものである。そのほかの条件は情状、特に憫諒すべきことは同様でございます。この一年以下の刑は、この前伺いましたところでは理論的なものではないのだ、何分にも執行猶予中の者がさらに事件を起した、あるいはその後のものである、どうも長期のものはできないという御説明は一応わかるのです。しかしそれだけであつて、しからば一年にとどめなければならぬという原則的なもの、理論的なものはないと思われるというお話です。そこでいろいろ申し上げてみたいのは、やはりこれは情状において執行猶予にした方がいいと思われるもので、この刑期では救われない、二年かせめて一年半でもいい、気の毒な、あるいは悲惨な、同情に値します殺人関係、あるいに貧困によるあるいは精神状態云々で、責任は認められるけれども非常に同情に値するような事件が多い殺人犯の関係等におきましては、いろいろな関係よりしてあるいは一年半程度の事件も現われて来ると思う。以前の事件も比較的軽く、事情がある事件、今度も非常に事情のある事件というものにつきましては、もうちよつと幅をつけてもらいますと非常に生きて来る。画竜点睛のきき目があるのではないかと思うので御研究願つてつた心持でありますが、何かそのことについてお調べがあり、結論が得られましたものがありますれば――もつとも結論といいましても、必要ないという結論ならそれまででありますが、御研究中であるか、あるいはそうでないのか、この点をこの際承りたい。
  30. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。前回の御審議の際の一年が一年半とか二年がいいのではないかという点は、私どもも現在でも一年でなければならぬという理由もないし、的確に一年でなければならないというふうにも考えておりません。また一年という点も十分なる資料等もありません。ただ二面において現在の治安関係もあるし、犯罪者な更正させたいという気持から、またこの制度外国立法例から見まして、その変遷等から見ましても、あまりこまかい制限をつけるということは、実はだんだんなくなつてつておるのであります。私も同様にこの制度が進歩し、かつ爾後の手当が十分にできるということでありますれば、ますますその条件を緩和して行くべきではないか、かように存じております。ただ前回成立いたしました二度目の執行猶予を可能にする無律は、いろいろ、最高裁判所においてルールをつくる、その他の準備がありまして、昨年の十二月十日に実施になりました。私どもの方におきましても、できるだけかような事案についての報告を求め研究いたしておりますが、現在まだ結論を得るに至つておりません。
  31. 林信雄

    ○林(信)委員 ルールその他の関係で実施が遅れたということはわかりますから、統計的なところまではよいですが、大体裁判所等における受入れというか、人気としてはいい方でしようか、どんなものでしようか。
  32. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 本年一月末私どものところに参りました報告によりますと二度目の執行猶予を可能とする法律によつて、刑務所に行かないで、執行猶予になり、保護観察にまわつた者の数が、全国で百数十件と相なつております。ただ保護観察側からの報告で、まだ裁判所からの連絡その他において不十分な点もありまして、現在も各地において裁判所、検察庁と連絡協議会を開いて、実施の万全を期しておるような次第であります。裁判所がどうかという点は、相当御活用になつておるのではないかと思います。場所によつてはこの制度ができることを予期して、実刑の言い渡し等をなさらないで、実施を待つてつたというふうに見られる地方もございます。
  33. 林信雄

    ○林(信)委員 次にこの刑法の一部改正の裏づけともみなすべき執行猶予者の保護観察法であります。前の刑法の一部改正の際にこの部分が改正を見まして、それにはその裏づけになる適正妥当な法案をお出しになるように、これは十分御研究になり、十分効果の上るものを出されるものと思つていたのであります。必ずしも形の違つたもの、新しいもののみがよいとは申しませんけれども、感じとしてかなり目新しい、かなりエポックメーキングなものを漠然とながら私は予定しておつた。実は法案を拝見いたしますと、犯罪者予防更生法の中からさしつかえのない条文を除外しただけで、もつともこれは性質の許す限り適用されることを認容されておりますが、いわば題名をとりかえられた程度で、少くとも三大法案として、適切妥当だ、これはいい制度であるというほどのものは残念ながら見出されない感じがするのであります。私は結論を言つてしまいましたが、そういう感じがいたしますので、この程度というと語弊があるかもしれませんが、この程度の法案をお出しになる間においては、こういうことだけをねらつておつくりになつたものなのでしょうか、もうこの程度ということは初めからきめてかかつたのでしようか、それともいろいろなものを、言葉の上でなく、実際にいろいろ周到な材料を集めて御研究になつて、比較検討した結果やはりこの程度が一番適切だ、こういうことになつたのでしようか。心配いたしますのは何分にも初度の執行猶予は野放しではいけない。それにはどうしても裏づけがいる。何でも早くやれといつても、少年し同じようなかつこうそのままの法律ではいけないことは、だれが指摘しなくてもわかつている。いわば拙速主義でこうやつた、そういうふうに見られる危険がある。御答弁はおそらく周到とおつしやるでしようけれども、実際にどういうふうに御苦心になりましたか、その辺までお伺いいたします。
  34. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 私ども前回の御審議の経過もございまして、十分御意見も承り、またそれについて十分考慮もし、また各方面にわたつていろいろ意見も聞きました。また実際に実はかような制度を――制度と言つてはおかしいのですが、かような運用を実際にやつてつた人もございました。これは裁判所との連絡によりまして、法律上の制度ではございませんが、ある程度この制度に近いようなことを実際やつた人がございましたので、さような経験も伺いました。その他昨年の十二月二度目の執行猶予保護観察が行われました後においてのその結果等も伺いまして報告を求めました。それらによむまして万全を期して法案を準備した次第でございます。不敏なためにいろいろ御批判を受けて、まことに申訳ないと存じます。
  35. 林信雄

    ○林(信)委員 お話を聞いておりましても、何となくお急ぎになつたようなことがたいへん影響しているように思うのであります。かような法案を軽々にお出しにならないことはよくわかるのでありますが、かなり手取り早くおつくりになつた感は、犯罪者予防更生法の法文と比較対照いたしておりますので、どうしてもそれから抜き書ききれた程度の感じしかないのでありますが、特にこの法案と比較してどこがどれだけ違うと強調し得るものなんでしようか。とりまとめてお答え願います。
  36. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。不十分であつても、拙速に早く出したい、かような考えは決して、ございませんでこれまでの御審議の御意見等もいろいろと承り、また実は昭和二十三年の暮れでございましたかの国会におきまして、犯罪者予防更生法中にもこれと同趣旨の、初度の場合にもつけ得るという規定を入れて犯罪者予防更生法を出し、そうして法務委員会において御議論の結果採択になりました。その瞬時の御意見を私拝承いたしておりましたので、いろいろとそれらの点を考慮いたしまして本案を準備いたした次第でございます。どういう点という点につきましては、一々申し上げると相当時間がかかりますが、たとえば遵守事項という問題についても、この前の国会においても非常な御意見がございました。私ども謙虚にそれらを考慮いたしまして、たとえば素行不良の者あるいは共犯性のある者と交際するなというような点について御議論がございました。それらの点をさらに研究いたして考えてみますと、仮出獄者というような場合には、元の仲間とつき合うというようなことが再犯を犯す非常に大きな原因になるという点において犯罪者予防更生法の取扱う仮出獄者を、遵守事項として適切だろうが、しかし刑務所に入らない執行猶予者についてさような規定を入れる。それから今度の初度の執行猶予者の対象者の社会的立場というものを考えますとおおむね一家の主人として、一家の経済的な中心になり、相当手広く社会的な活動をするというような人を考えた場合に、さような条件を入れることも不適当ではないかというような点も考えまして、さような点を除外いたした次第でございます。それから昨年の十二月から現在の二度目の保護観察を実施いたしました経験によりましても、執行猶予になりますと、申し上げるまでもなく、身柄を拘束されているものは、その判決を受けた後ただちに釈放を受ける。ところが、実際において行きどころのないというために非常に困難な場合が起るという点もございましたので、今回の執行猶予者の保護観察におきましては、犯罪予防更生法においては考えていなかつた保護観察に付する旨の判決があつて、確定前においても、その環境の調整を本人の申出によつて保護観察所の所長がなし得るというような点を考慮しております。その他、遵守事項においては、従来「住居を転じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」ということになつておりましたが、その点を改正して、二項につきましては一箇月という期間を明確にし、さらに許可を要するというのを、届出を要するというふうにして、対象者の異なることによつて保護観察を受けることによつて不当にその自由を侵されるというようなことのないように、その点も改めだのでございます。その他、私どもとして今日までの経験によりましてできるだけ周到を期して立案をした次第でございます。
  37. 林信雄

    ○林(信)委員 執行猶予の言い渡しを受けます者の環境におきましても、これはいろいろあると思う。その環境よろしきを得まして、その教養におきましてもかなり高度でありますものは、これは法のら外ではございませんにいたしましても、少くともその多くを法に頼らなくてもいいわけです。そういう法の対象になりますものは、どうしてもその環境よろしからず、その教養等におきましても劣つたもので、これらのものの環境の調整であり、あるいは指導援護ということであろうと思う。そういたしますと、この予定せられております程度ではどうかと思う。もう少しく立ち入つてよろしい面がある。いな、立入らなければ、せつかくの執行猶予もその効果を発揮することができないものがあるのではないか、こう考えます場合において、遵守事項のごときにいたしましても、善行を保持するということは、これもおおよそわかるのでありますが、やはり法文として言葉が適当かどうか、これは一応考えなければなりません。これはこの法案だけに限つた、問題ではないと思いますけれども、言うまでもなく、善行というのは、何か積極的に善行美談の、その善行に匹敵するような感じがする。この法案の遵守すべき事項として考えられておりますことは、少くとも身を持することが固くて、世の指弾を受けない程度ならよいのであつて、いわゆる消極的な自律態勢でよろしいと思う。これは言葉が少し強過ぎるんじやないかという感じもするのでありますが、いずれにいたしましても、これを主体にいたしまして、その前提といたしましては一定の住居を定めて届けろなんというようなことは、第五条によつて掲げられております。これなんかも実際問題になりますと、その住居を定めることの力を持たない環境にある者は、非常に多いとは申しませんが、比較的に多いのじやないか。その辺の指導からしてかからなければ、住居をきめて来い、そこで初めて保護観察の対象になるかのような建前でかかつておりますようでは、まだ力のない者を力のある者として考えて行きまするところに、ほんとうに徹底した保護観察がなされないのじやないか。法のねらつておりまするところが、まだ少しはずれているのじやないか、こういう感じがするのであります。たとえば執行猶予をしまする場合に、実際に裁判所に呼んでみますと、被害弁償が済んでおるために、執行猶予になる場合が多いのであります。その被害弁償をするために、実は無理をして、執行猶予期間中にさらに事件を起すといつたような事例かしばしば繰返されましたことも、御当局は御存じだろうと思う。そういうような場合には、むしろ保護観察中において、その被害弁償を働き出すごとに協力をし、適当にその環境をつくり出し、その問に被害弁償をなせばよろしいというような事態をつくつてやりますならば、これは執行猶予の言い渡しも安心してできまするし、その率もふえて来、その結果についても無理もなくなると思われるのです。その他住居以外の問題にしましても働き先の問題にしましても、今までの親族関係の者がどういうふうに処遇しておつたかということについての立ち入つた世話等のことも、あれこれ一通り法文化しておかなければならぬのであります。あるいはその本人の習癖として、モヒの中毒、あるいはヒロポンの中毒、これらの者に対してその矯正をするために、適切な処置を命ずることかできるなどのことも、やはり何とか法文化する建前をとらなければならぬのであります。そういうところがこの法案自体ではまたぴんと来ない感じかする。かような点について、私の思いつきといつた程度でなくて、御調査なりますれば、いろいろな問題があつたのじやないかと思われるのでありますが、さようなものは特に執行猶予裁判制度と非常に密接に考えられて保護観察制度をお立てになるというふうにお場考えなつたものなのでありましようか。また繰返すようでありまするが、ややお急ぎになつて、一応この辺で、今までは野放しだつたんだから、ないよりはいいということでおつくりになつたとはお答えにならないでしようが、私はそういう気がするのであります。私のあげつらいましたようなことについての御研究もなさつたのでありましようか。これらの点を伺つておきます。
  38. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。最初に御指摘になりました、善行を保持するという言葉が不適当ではないか、この点につきましては、遷守事項ということか、本人が更生しようとする努力目標を掲げるということでどざいますので、悪いことをするな、非行をするなということもいかがかと存じまして、従来からあります善行を保持するという字句でございます。が、いろいろと検討いたしましたが、やはり努力目標として掲げる点においは適当ではないか。但し、かような点を考えまして、特に刑法の遵守事項違反による取消しの事由の中に、その情状というものを入れまして、努力目標としては善行を保持すると言つておるのだが、保護観察の目標としては、やはり正常な、健全な、社会人として更正するということが目標であるので、一日一善を怠つたというようなことで取消すというものではないという趣旨から、努力目標は善行を保持するとして、それの取消し事由の方に慎重を期するということで調整をはかつて行く、それか適当ではないか、かように考えておる次第でございます。  それから観察中の者が住居を定めると書いてあつても、住居のない場合もあるのではないかということですかそういう場合も相当あろうかと存じております。さような点につきましては、特に第四条におきまして、本人からの申出かあれば、本人がどうしても居所がないという場合には、保護施設を観察所の方で定めまして、そこに依託するというようなことも必要であろう、一応どこに住んでおるかいうことをきめて、そうして届け出てもらうということが、やはり保護観察をする上においてはぜひとも必要なことでございますから、かような規定考えた次第でございます。  その他保護観察中に、家庭の環境については十分適切に必要に応じてやるということはもちろんでございます。ただ環境の調整という問題になりますと、どうしても本人以外の親御さんであるとか、あるいは奥さんであるとかいうようなことになると、そう調整ということはもちろんできませんし、やはり話合いで納得の上でやることが必要ではないかというふうに考えまして、そのような点についても考慮いたじましたか、やはりそこまで強力に意に反してやるというふうなことは書けないというふうに考えた次第でございます。  その他被害の弁償のために、職業の補導をすることは、これはもちろんでございまして、むしろ執行猶予者の保護観察にあたつては、まず正しい職にまじめにおちついてつかせるということになれば、ほとんど保護観察の目的は峠を越しておるということになりますので、これらについては十分この規定でございましても実際にやる意味で、この規定考えた次第でございます。
  39. 林信雄

    ○林(信)委員 執行猶予の場合に予定される被害弁償の問題は、これは言い渡しの前に考えられる。あなたのお答えのように、被害弁償は保護観察中に働いて払うように指導するといつても、もうそれは判決があつたあとです。判決のときにはないのです。保護観察所へ行けば保護観察所で被害弁償をせしめる制度があるということになると、裁利所は保護観察に付せられる。そうすれば当然損害賠償が予定せられるということから、裁判所は安心して執行猶予を付せられるわけだ。あなたの言われるように、判決後被害弁償をすることか適当だと言つても、保護観察者とならない者は対象にならない。なつた者は多くは被害弁償が済んでおることが多いのでありましよう。しからざる者も被害弁償をせしめられることはけつこうでありましようが、私の言うのは、被害弁償をやれば執行猶予にしてやりたい場合でも、どうにも被害弁償のできない者かある。これらの者については助けたい場合もされない。しかしこれは保護観察関係制度におい、それは大体三年なり三年なり五年なりの間にできるという見通しがつけば、裁判所は裏づけがありとして、そういう制度が活用せられるという点を考えて、これは制度として考慮されていいのじやないか、こう思うのです。同時にもう一点伺つておきますか、善行保持の問題です。これは程度の低いものからいよいよ高いものをねらつておる、それはわかるのですけれども、せつかく法文に書きますならば、第六条あるいは七条の、つづめた言葉で申しますれば補導援護規定あるいは指導監督規定この裏づけでありまする。これに従う義務、いわゆる遵守事項、これは条理から行けばむしろこの第五条に少くとも明らかにされておるべきではないか。保護観察法はさようなことをしてもらう、またすることを規定した法律なんですから、当然といえば当然なんですけれども、いやしくも保観察に付された者の一つの義務を明らかにするという場合には、  こういう具体的にはつきりしたもの適当にこれを掲げるべきです。「善行を保持すること。」というのは、程度が高いから一切その中へ入るのだというようなことでなくて、もつと親切な法文の掲げ方がほんとうじやないかと思うのでありますが、先刻の執行猶予の言い渡しをなす前提として考えられまする保護観察制度の中に、少くとも被害弁償を確約できるような制度もおつくりになる気持はありませんか、この点とあわせて伺います。
  40. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 私ども考えておつたのでございますが、お考えのようなことをやるとするならば、保護観察に対する際に、裁判所が特別遵守事項として被害余何万円を本人に弁償しろというふうなことを判決として言い渡す、そうして保護観察に付することが一番的確に行われることでありまして、また実際にアメリカ等にそういうような制度を行つておるところもあるということを聞いております。しかし、そこまで行くことはどうも行き過ぎではないか。はたして幾らの被害があるかわからぬものを、それについて刑事裁判で民事上の損害の有無なり高をきめて、それを払えということ、それを保護観察に結びつけて、その加害を払わなければ執行猶予か、遵守事項違反ということに粗なつて取消されるということはどうも行き過ぎではないかと考えまして、アメリカの例はありまするが、その制度をとるのはまだ早い、現在においてはとるべきではない、こういうふうに考えた次第であります。  それから善行保持が漠然としておる。これはまことに御指摘の通りでございまして、何かいい知恵かあればよろしいと思つていろいろ考えたのでございまして、この指導監督指導援護の措置に従うというようなことを一つの条件とするということならば的確でございます。しかし、保護観察なつたからといつて指導監督指導援護を行う人の指示ならば何でも全部従わなければならぬ、それに従わなければ遵守事項違反となつて執行猶予なつた者も刑務所に行かなければならぬのだ、これも行き過ぎではないか。そういたしますと、やはりだれが見ても正しい目標を掲げて、その目標に向つて保護観察を行う者も、また保護観察を受ける者も相ともに進んで行くようにするのがより適切ではないか、かように考えて、私自身といたしましても、何かほかに的確な善行保持にかわる目標があることならばと考えたのでございまするが、どうも現行法にかえるべき適切な考えは浮びませんので、先ほど申し上げましたように「義行を保持する」というふうに書きました。しかし私どもの考えは、保護観察を今後かりにやる場合には、必ずしも聖人君子になれ、ならなければ遵守事項違反だというつもりはもうとうございませんので、健全なる社会人として更生するということを目標として、保護観察を行つて更生さして行きたいと考えております。かように漠然として規定を入れた関係上、「遵守ス可キ事項ヲ遵守セズ其情状重キトキ」という言葉を入れまして、そこで調整をとつたならばいいのではないかと考えた次第でございます。
  41. 林信雄

    ○林(信)委員 お話を聞いておりますと、どうも矛盾があるように思われますので私ども納得が行きませんが、遵守事項をあげておけば、それが少しでも無理があると保護観察者に非常に不利益になるような御説明かあつたのでありますけれども、後に述べられたように、「其情状重キトキ」ということで、そこに調節がとられておる、必ずしも、それは、違反だからいかにわずかなものでもただちに執行猶予の取消しになるというほど重大な問題ではない、制裁を伴うものもあり、しからざるものもありというようなことなんですから、やはりこの程度の遵守事項はある程度法文に明らかに示しておいた方が親切ではないかと私は思うわけであります。  それから、執行猶予の言い渡しの場合に、その後の損害賠償を予定してそういうような執行猶予の言い渡しができれば、これは適用の実際において非常に利用度が高いと思つておりますが、実際に裁判所において執行猶予にしたいけれども、何といつて被害者の満足感がなければ――満足とまで行かないでも、あきらめ感かなければどうにもしにくい、曲りなりにでもその被害がその後に弁償されるということはあればという場合か多いのであります。あなたは、言い渡しをしておいて、それが一銭一厘正確に入らなければというようなことを言われますけれども、刑事裁判というものはそんなものではない精神面もあると思うのです。一生懸命になつてできるだけの金をつくつて払えと言えば被害者は満足するので、総被害額を幾らと言い渡して、数額がはつきりしなければならぬという問題でもなかろうと思う。はつきりしなければならぬというならば、刑事関係の被害額というものは比戦的はつきりするものか多いのでありますが、そんなところまで御心配になる必要はないので、私は、これは研究する余地かあるのではないかと思われてしかたかないのであります。この問題は、保護観察関係を、裁判所自体責任を持つて将来ともやるのだ、執行猶予にした責任の継続としてそこまで見て行くのだという建前まて持つて行きますれば、これはもうこまかい規定はいらないかもしれませんけれども、行政措置としての保護観察制度におきましては、やはりその場合々々を掲げなければしかたかないと思うわけであります。これに関する御意見があれば承りますが、最後に私はひつくるめて伺いたいが、こういうふうに執行猶予の言い渡しをいたしまする場合に、この保護観察制度かどうなつておるかということが裁判官の知らなければならぬことであり、十分理解してもらわなければならぬことである。そこでこれは実際面になりますが、法だけでなくて、実際に保観観察制度がどう運用されるかということを裁判所の判事さん全部に理解してもらうために、視察ですか、調査ですか、適当な方法でこれは十分やつていただきたいと思うのです。これが執行猶予裁判をいたします場合広く判決の魂になる。これは非常に重要なことではないかと思いますので、もう少しお考えつて御励行願いたいと思うのでありますが、これらに対する御意見を政務次官より承りたいと思います。
  42. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 非常にごもつともな御意見だと思うのですが、ただいま林さんの申されまする通り、初度目の保護観察に付するというような言い渡しをする場合におきまして、たいてい執行猶予にする場合においては、現在の取扱いでは普通財産事件等におきましては、林さん御指摘の通り、損害賠償とか示談とかいうことか非常に用いられるのでありますが、ところがその被告の事情によりましては誠心誠意賠償しようと思つて努力しても、なお被害者が言うことを聞かない場合かありますし、またしようと思いましても家庭の事情等によつてどうしても賠償ができない、あるいは賠償すれば当然執行猶予にしなければならぬ、また場合によつては誠意が認められれば当然執行猶予にしなければならぬというような事案がたくさんあるだろうと思いますが、この賠償のできないために執行猶予にできない事案が確かに多いと思います。そのために無理をして弁償するために、結局執行猶予になりましても、その無理が執行猶予中において取返しのつかない結果になるということもあるのであります。そういうような点から考えましても、少くとも初度目の執行猶予の場合において保護観察に付するという際におきましては、むしろそういう賠償というような問題を取上げてみますならば、私は被告の家庭の事情、また賠償に対する誠意、あるいは保護司の方が保護観察に付することによつて十分にその人の援護なり協力をするというふうな見通しがつきまして、被害の弁償も保護観察中においてなし得るというような見通しのついた場合において初めてこの初度目の執行猶予というものを活用されることか非常に多いし、また活用すべきものじやなかろうか。そうすることによつて初度目の執行猶予に対する保護観察というものが非常に活用できると私には考えられるのであります。同時にまたそのためには裁判所においてもこの保護観察制度というものに対して十分に認識し研究しなければ、保護観察制度の活用は非常にむずかしいし、また結果がおもしろくないと思うのであります。むしろこれは当局としても裁判所といろいろ協力して、保護観察に付する制度の活用、あるいは保護観察制度の実際の運用等につき」ましても十分に認識すると同時に、裁判所もその点を十分に認識していただいて、初度目の執行猶予に対する保護観察によつて本人が更生し、同時にりつぱな社会人として活躍するようにしたいと思うのであります。そういう液用の面においてはただいまの御意見のようなことで、いろいろ裁判所の方も徹底するようなことになすべきだと考えております。
  43. 林信雄

    ○林(信)委員 この制度があります以上、それか無意味でなく、私の言つておりますような点にも好影響を与えますことは、お話通りわかるのですけれども、やはり被害弁償という金の問題にまでなつて来ますと、規定があるなしでは大分違うと思いますので、御検討撒いたいと存じます。最後は一口にいつて予算関係――これは前の委員会でも田嶋委員から意見が出ておりましたが、法案の実施にあたりましての予算の裏づけがないと、これは詳しく申し上げませんか、まずいと思います。当然のことですが、この点どれくらいの経費でどの程度大蔵省と交渉がなされておるか、安心してしかるべきでありましようか、これはもう前国会のときから大体いい安な話であつたかとは思いますが、念のために伺つておきたい。
  44. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 予算につきましては、私どもも前国会の附帯決議の趣旨もございますので、できるだけの努力を払いまして、予算上いろいろなきゆうくつな面もございまして心ずしも十分でないとは存じますが、ある程度の増強をはかることができたと思つております。保護関係の予算でございます。が二十九年度は二十八年度に比して四割幾らというような金額が出ております。その中で保護観察所が対象者を直接保護をする費用でございますが、医者にかける費用、あるいは帰住するのに旅費がないという場合に、本人に帰住の旅費を与えるというような予算、あるいは本人か住むところかない、めんどう見てくれる人かないという場合に保護施設に委託をする費用、その内容としましても、着物がない、夏入つて冬出獄したというような――これは執行猶予の場合にも若干そんな場合があるかと思いますが、そんな関係で着物を与えるという予算でありまして、それらの費用等も増額に相なつております。前回いろいろと御鞭撻をいただきまして、大蔵省の御意見を伺いまして、保護観察というこの保護の面について私どもとしては相当認識を新たにしていただきまして、従来からの保護観察の費用も増強されましたし、それから今度のこの法案に対応する執行猶予者の保護観察の費用につきましては、昨年度が二百六十万円、今年は二千百万円というように増強されております。全額で申し上げますと、官庁の職員の費用を除きまして八千五百万円ほど昨年度、いろいろ御審議をいただき、また大蔵省に対していろいろと御鞭撻をいただきまして予算が増額いたしております。
  45. 林信雄

    ○林(信)委員 今保護司の費用が四割幾らと言われましたか、あれは前から承りますように、一箇月百何十円が二百何十円になつたということで、きわめて微弱なものでしたが、そんなものも今度増せるのですか。
  46. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 その通りでございます。保護司は給与を支払わないということになつておりまして、要した実費の全部または一部を国が支給するということになつております。さような保護司の活動の実費に対しまして、これは成人執行猶予、従来からの一般の保護観察と合せてでありますが、昨年度約一億一千万円でございましたが、それが二十九年度の予算案では一億五千八百万円ということになつておりまして、四割三分か四分くらいの増額になつております。なお私ども非常に喜んでおりますのは、本年度までは保護司の定員に対して幾らということであつたのでございます。それを来年度予算案では事件一件について幾らということにしてくれましたので、今後事件が増加するならばそれに比例して簡単に大蔵省が認めてくれるということになつておることを非常に喜びます。
  47. 林信雄

    ○林(信)委員 私の質問はこれで終ります。
  48. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこの程度にとどめておきまして明日は午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十一分散会