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1954-03-13 第19回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十三日(土曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 高橋 禎一君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       牧野 寛索君    神近 市子君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室参事         官)      佐藤  薫君         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         検     事 石井 春水君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 三月十二日  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第九六号) 同日  広島法務局新市出張所存置に関する請願高橋  禎一紹介)(第三三九一号)  関簡易裁判所家庭裁判所出張所設置請願(  野田卯一紹介)(第三四三〇号)  同(大橋忠一紹介)(第三四三一号) の審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した事件  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(  内閣提出第九三号)  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案及び下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、以上二案を一括議題とし、それぞれその趣旨説明を聴取いたします。三浦法務政務次官
  3. 三浦寅之助

    三浦政府委員 ただいま議題となりました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案提案理由を説明いたします。  この法律案は、さき奄美群島に設けられました裁判所職員定員裁判所職員定員法中に組み入れることといたしますとともに、今次の各行政機関における職員定員の縮減に応じまして裁判所職員についても、司法行政事務簡素化等によりその定員を減少いたしますため、裁判所職員定員法等に所要の改正を加えようとするものであります。  御承知通り奄美群島における裁判所職員定員は、奄美群島復帰に伴う法令適用暫定措置に関する法律に基き、最高裁判所規則によつて暫定的に定められているのでありますが、今回これを他の裁判所職員定員と同じく裁判所職員定員法中に組み入れることといたしました。ただこの組入れにあたりましては、次に申し上げます司法行政事務簡素化等趣旨をしんしやくして現在よりは幾分減員いたしました結果、奄美群島における裁判所設置に伴う裁判所職員の増員は判事及び簡易裁判所判事それぞれ二人、裁判官以外の裁判所職員二十七人となつております。  次に、裁判官以外の裁判所職員の減員の点について申し上げます。このたび政府におきましては、行政費を節約するとともに、行政事務能率化をはかるため、各行政機関事務を簡素化し、その人員を相当数縮減することといたし、そのために必要な法律案を今国会に別途提出いたしたことは御承知通りでありますが、本法律案は、裁判所につきましても、これに対応して司法行政等事務を極力簡易化し、能率化して人員整理を行おうとするものでありまして、裁判官以外の裁判所職員員数を、奄美群島に置かれた裁判所職員増加分を差引き、三百九十三人だけ減少するとともに、裁判所事務官の中から命ぜられることとなつている検察審査会事務官員数を、三十人減少することといたしたのであります。  最後に、この法律案の附則でありますが、このたびの裁判所職員人員整理につきましては一般公務員人員整理の場合に準じ、一定の猶予期間を設け、その間は新定員を越える員数裁判所職員定員のほかに置くことができるものとするとともに新定員またはこれに基き定められる配置定数を越えることとなる員数職員配置転換が困難な事情にあるものについては、最高裁判所規則で定めるところにより、本年六月三十日までの間において、その職員について、臨時待命を命じまたはこれを承認することができることにいたしたのであります。  以上、この法律案内容の概略について説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。  次に、ただいま議題になりました下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由を説明いたします。今回の改正の要点は次の通りであります。  第一は、簡易裁判所名称変更であります。すなわち、岡山県英田郡美作町の設置に伴い、林野簡易裁判所名称美作簡易裁判所に改めようとするものであります。  第二は、簡易裁判所管轄区域変更であります。すなわち、茨城新治郡千代田村の設置に伴い、土浦簡易裁判所管内茨城新治郡七会村の区域石岡簡易裁判所管轄に、富山県西礪波戸出町の設置に伴い、高岡簡易裁判所管内富山県東礪波郡旧北般若村、同県西礪波郡旧戸出町及び同県同郡旧醍醐村の区域礪波簡易裁判所管轄に、因島市の設置に伴い、竹原簡易裁判所管内広島県豊田郡旧東生口村の区域因島簡易裁判所管轄に、井原市の設置に伴い、笠岡簡易裁判所管内岡山県小田郡旧稲倉村及び旧大江村の区域井原簡易裁判所管轄に、鳥取八頭郡郡家町の設置に伴い、鳥取簡易裁判所管内鳥取八頭郡旧下私都村及び若桜簡易裁判所管内鳥取八頭郡旧大御門村の区域をそれぞれ河原簡易裁判所管轄に、また、土地の状況等にかんがみ、森簡易裁判所管内北海道茅部郡落部村の区域八雲簡易裁判所管轄にそれぞれ変更しようとするものであります。  第三は、市町村廃置分合による行政区画変更市町村名称変更等伴つて下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の別表に当然必要とされる整理を加えようとするものであります。  第四は、さきに、奄美群島復帰に伴う法令適用暫定措置等に関する法律昭和二十八年法律第百六十七号)第五条の規定により、昭和二十八年十二月二十五日設立されました名瀬簡易裁判所及び徳之島簡易裁判所を、この際、他の簡易裁判所と同じく下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律により設立される裁判所としようとするものであります。  なお、以上説明いたしました裁判所名称及び管轄区域変更につきましては、いずれも、地元市町村関係官公署弁護士会等意見を十分しんしやくし、最高裁判所とも協議して決定したものであります。  以上簡単にこの法律案提案理由を申し上げました。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  4. 小林錡

    小林委員長 これにて趣旨説明は終りました。  なお両案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 法務行政に関する件について調査を進めます。発言通告がありますから、順次これを許します。神近市子君。
  6. 神近市子

    神近委員 私はきようは二項目ちよつとお尋ねしたいのでございます。  最初の問題は婦人参政権に関する条約のことでございます。これは刑事局長外務省から何か御通告があつたことを御存じでいらつしやるでしようか。
  7. 井本台吉

    井本政府委員 何か通告があつたということをぼんやり記憶しておるのですが、今正確な点は調べてみないとわからないのでございます。
  8. 神近市子

    神近委員 婦人参政権に関する条約というものは、男子選挙権に関する条約がないのに、たいへんおかしいとお考えになるかもしれないのですけれども、やはりこれは一昨年の国連総会で決定した条約でございまして、日本国連に加盟はしておりませんけれども、準加入国として扱われているという事実の上に立つて、この条約加入を勧誘されているらしいのでございます。それでこれは相当前から日本にも外務省にそれが来ているらしいのでございます。これは法務省と厚生省に対する手続が必要だというのでございますけれども、どういう点で法務省手続が必要なのでございましようか、ちよつとわかるように話していただきたいと思います。
  9. 井本台吉

    井本政府委員 法務省関係選挙関係があるので、さようなことに関与するということになると思うのでございますが、先ほど申し上げました通り外務省通告を私たちはまだはつきち見ておりませんので、調べにやりましたから、わかり次第御答弁いたしたいと思います。
  10. 神近市子

    神近委員 このことを私がここに問題にいたしますのは、この条約日本婦人の今までの劣弱な地位を保護するという意味で、たいへん私どもは関心を持つておる問題ございます。国際的に今われわれが与えられております権利が確認されるということを意味しますので、外務省手続を進めたいと思つても、ほかの省でただいま承りますようにまだ御審議にもなつていないというようなことでしたら、どうか事務的の問題でございますから、別に論議はないと思いますので、早く法務省だけでも手続きをお済ましになつて、外務省仕事がスムーズに進められ、なるべく早くこの条約が調印されますように私どもからお願いいたすわけでございます。これは御質問というよりは、多分そういう状態だろうということが推測されましたので、持ち出したわけでございます。よろしくお願いいたします。
  11. 井本台吉

    井本政府委員 ただいまの点は、至急に取調べまして善処いたしたいと存じます。
  12. 神近市子

    神近委員 今大臣が間もなくおいでになるということでございますので、大臣に対する御質問は留保いたしますけれども、昨日委員の方には少しばかりおまわしいたしておきましたけれども、この前の十八国会で、参議院の方で犬養大臣はいろいろ婦人方質問に御返事になつているのでございます。今私の方でちよつとその書類が見つかりませんが、売春対策協議会をつくるということ、それから一本になつた国法というものが売春の今日の状態に対する処置としては必要であることを繰返しおつしやつているのでございます。それで法務省といたしましては、この売春問題を大臣意思に沿つて推進させようという気持がおありになるのでございましようかどうかということを私は冒頭に伺つておきたいと思います。
  13. 井本台吉

    井本政府委員 たびたびの大臣の御言明もございましたし、私どもといたしましても大臣から御下命がございまして至急売春対策協議会をつくつて立案を進めるようにということでありまして、昨年十二月八日、十二月十八日、それから本年一月二十二日の閣議了解のもとに売春対策協議会を設けまして二月六日以降すでに三回の会議を重ねた次第でございます。この協議会結論をもちましてなるべく早く売春立法をいたしたいということで努力をいたしておる次第でございます。
  14. 小林錡

  15. 神近市子

    神近委員 売春問題協議会大臣の数回の言明によりまして、この法案をつくるための審議機関としておつくりになつたということでございますね。そして法務省からはどういうような方を委員にお願いになつておりますでしようか。
  16. 井本台吉

    井本政府委員 法務省からは清原事務次官委員なつております。
  17. 神近市子

    神近委員 全体の委員方々ちよつとあげていただきた元いのでございますけれども……。
  18. 井本台吉

    井本政府委員 名前と職業を書いたものを差上げたいと思いますが、全体で十五人、官庁が七人と民間の方が八人でございます。後ほど印刷したものを差上げます。
  19. 神近市子

    神近委員 法務大臣がお見えになりましたから、大臣にお伺いいたします。第十八回国会深川さん、加藤さんがいろいろ御質問になりましたときに、大臣は、日本売春問題は今のままではおけない、もう限度に来ている、何らかの処置をとらなければならないというふうに御発言なつておるようでございますが、そのお考え方は今日でも同様にお考えなつているのでございましようか。ちよつと先にそれを承つておきたい。
  20. 犬養健

    犬養国務大臣 御質問の点は、今でもその考えにかわりございません。従来大体世間の考え方というのが、あまりいいことではないが、必要な悪で、ああいうことを議論するのはやぼだというような空気の方が多かつたように思いますけれども、ことに占領政策が行われまして以来、私自分でも見聞しておりまして日本人の、ことに若い時代の純潔感というものを、もつと若い年代の人にしみ込ませる必要がある。これは民族の運命に関係するという考え方をしておりまして、従来のようなほおかむりの時期は過ぎた、こういうふうに考えております。従つて質問の御趣旨通り気持でおります。
  21. 神近市子

    神近委員 それを伺つてたいへん心丈夫に思います。第二国会のこの売春法の前文にも、民族の子孫のことを考えなくちやならないということが書いてございます。これはいろいろな議論があると思うのですけれども、私どもが今一番問題にしなくちやならないことは、あのすさまじい性病の蔓延に対して今のままでほうつておいて、日本民族がここ二十年か二十五年先には、劣弱で精神耗弱症だとかあるいは精神分裂症だとかあるいは痴呆だとか、そういう人たちが十人に一人とか十五人に二人というような数になつたならば、われわれはどうしたらいいかということであります。それで、大臣がその点で同じようにお感じになつているということは、これは婦人たちは非常に感謝するだろうと思います。これはたいへん悪いことですけれども大臣に対する御質問というより以上に、ここで毎日このように汚職に関する御審議伺つておりまして、私が気づきますことの一つは、待合政治ということがここで何度も問題になりますけれども、この待合状態売春の問題からはどなたも一度も発言なさらないということが、私にはふしぎでたまらないのでございます。これは、御存じ通りにルソーがあれだけの人権に対する論文を書いていて婦人問題を忘れていたということもございますので、私は御無理はないと思うのですけれども婦人から見る場合と男子の方が見る場合とは、こうも違うものかということがふしぎでならないのでございます。これは私御非難申し上げる意味でなくて、浅酌低唱ということがしばしば繰返されまして、それで待合飲食をすることが何が悪いかということも言われたようで、私どももその点ではどこで何を食べようがちつともかまわないと思います。しかしいくらごちそうを召し上つても、ねずみが大川に出ても腹一ぱい飲めないというくらいですから、そのお金の使われる分量は大したことはない。だけれども、そこにいつでも女の人がからむ。サービスというものがどういうものであるか私は存じませんけれども、そのために金高が非常にかさんで行く。そのことが直接に売春の問題とからまつて来ているということを、私どもはしばしば聞いているのでございます。それで、ああいう場合のことを大臣がどういうふうにお考えなつているか。たとえば、飲食というものは非難されなくても、売春というものはその中にからまれてはならないというお考えなつているか、あの状態でいいとお考えなつているか。そしてもし売春禁止法一般の御支持ででき上れば、あそこらにもやはりこれは適用されるべきもはないかというようなことを考えますけれども、その点男性としてのお考えの上からでけつこうでございます。これは一般男性のお気持を代表すると思いますから、ひとつ私どもに聞かせていただきたいと思います。
  22. 犬養健

    犬養国務大臣 私の答弁一般男性を代表するかどうかは、ちよつと責任過重でございますから、これは御了解願うとしまして大きい料理屋交際のために飯を食うことそれ自体は、さして非難すべきことではないと思いますが、よく私ども感じますのは、私たちを待つている車の係の人間が、一皿か二皿、あるいはすいとん一ぱいで済むのに、うちで十皿も十五皿も食うことはどうかという疑念を持ちます。交際のためにああいうところで飯を食つて話をすること自体は、外国でも行われておることですから一向かまいませんが、必要以上のぜいたくということは、ことに今の日本の国情から言つて避けるべきだと思います。従つてども政治の責任あるものは、必要以上のぜいたくな宴会は避ける必要があると思います。また宴会自体がすぐ売春と結びつくとは思いませんが、そういううちもあると思います。ですからそういう問題については、やはり調査研究の対象になると思います。ただ、これはきわめて率直なお話ですけれども、そういう議論をすることによつて当面の売春問題をぼやけさせる意図の議論がある。これは神近さんお気づきだと思います。それはそれとして別に扱いませんと、当面の一番の問題――街頭にあふれている散娼、それから非常に強烈な刺激を与えるネオンの町、そういうものに対するわれわれの早急な措置というものを――今の神近さんのような非常な純正な議論からおつしやる議論に対しては敬意を表しますけれども、そういう議論はとかく従来街娼、集娼の問題の論点をぼやかす議論にもなつておりますので、これは当局としてはきちんとわけて行きたいと思います。もちろんほつておいていいとは思いませんけれども、今の日本の一番重大事についてはあくまでも焦点を合せて行きたいというふうに考えております。
  23. 神近市子

    神近委員 この前の深川さん、加藤さんに対する御答弁の中に、この国会で立法化したいというお話があつたのでありますが、その方はどういうふうに進捗しておりますか。
  24. 犬養健

    犬養国務大臣 これはしばしば各方面から御催促といいますか、御激励といいますか受けております。すでに十分御承知のように、売春問題は法務省だけがやつて済む問題ではございません。各省の形式的でない、おつき合いでない心からなる協力を必要といたします。法務省だけでさつさとつくつてあとで賛成してくれというのでは、結局問題の後半に至つて円満を欠きますので、各省の人も一緒に相談に乗つていただき、かつ今刑事局長から申し上げましたように、外部の方でいろいろこの問題について研究していらつしやる方、あるいは庶民の声を代表していらつしやる方などにも入つていただきまして、審議会をやつております。この審議会というのが、実は会合会合の間が私の常識では非常に長い。第一回の会合の次の会合日を聞きまして、それは長すぎるじやないかということで、私自身督促をしたことがあるのであります。打明けて申し上げますと、婦人議員の方はあまりお仕事がないのでいつでもお出になれるが、男子のことに学識の委員の方は弁護士であつたり、お医者さんであつたりしてなかなか次の週すぐおひまがないというようなわけで、大体二週間目ぐらいに一回ということになつておるわけであります。この点いろいろおしかりも受け、督促も受けるのですが、どうもこれは引延ばし作戦という意味では全然なく、ほんとうにお忙しい方なのでありまし一、また各方面仕事をして社会人としての良識を得ているという方でないと、やはり外部から来ていただくいい意味の資格も薄くなる。そこがなかなかむずかしい点でございますが、できる限り早く結論を得たいということは、もとより法務省根本方針でございます。審議会審議会の問でも始終問題をほうつておきませんで、絶えず調査研究し、次の議題をどういうところへ集中するか、促進する意味議題を限定しながら進めて行きたい、こういうふうに考えております。
  25. 神近市子

    神近委員 その点で私どももまことに不満でございます。これは私一個の考えでございませんで、先日も小林委員長にお会い願いましたけれども神奈川県、静岡県、北陸三県、長野県あるいは埼玉県というように、私どもは矢もたてもたまらないほど地方の婦人団体に一体何をしておるのだというふうにつつかれるのでございます。それでこの間、審議会の性格がいろいろ伝えられておりまして、これは政治戦術だ、あるいは大臣意思とは違つていろいろ画策されているんだということを言われますので、実は傍聴がお願いできるかということで行つたわけでございますけれども、私つまみ出されたということについては、どういう理由であつたか了承しております。よく御事情はわかりましたから、そのことで私は問題を申し上げようというのでは決してございません。だけれども法務省で御依頼になつ方々は、なぜ特別に非常にお忙しい方をあそこに選び出しておいでなつたか。この問題は二十七年でございましたか、多分保利労働大臣から婦人少年局に御諮問がございまして、そうして約八箇月の間調査研究、いろいろなことをいたしまして、ちようど私が審議会長をしておりましたので、私の部会ではございませんでしたけれども、ほかの方々がずいぶんお骨をお折りになつたことはよくわかつおります。そうしていろいろな方に御意見を伺つたりしましたら、どこにそういう適任者の方がおいでになるかということがわかつたのですけれども、そんなに忙しい方を、これほど私ども民族の百年のために考えなければならない立場に来てどうして御任命になつたか、そういうことが私どもには実はわからないのでございます。それで二週間に一回とか、そして一番初めの会では何をおつしやつたかといえば、国会というものはことしに限つたものではない、来年も再来年もあるんだから、あわてて決定する必要はないというような御発信があつたということが言われておるのでございます。それであの委員の中には、一体法律をつくるんだかつくらぬのだかそれがはつきりしていないのだから、私は発言しないのだというようなことをおつしやつている方がある。婦人たちはやつきとなつて審議の進行というふうなことを考えていられるようですけれども、初めからそういうごあいさつでは審議が進まないのは当然のことだと思うので、これは大臣の御意思とはたいへん離れておるのでないかということを考えておるわけでございます。審議会がせつかくつくられながらいつまでも足踏みの状態にいられるということ、そしてなかなか審議が進まないだろうということ、その辺を私どもに納得の行くように御説明いただきたいと思います。これはどなたでもけつこうでございます。
  26. 犬養健

    犬養国務大臣 私からお答えいたします。これは審議引延ばしのために、なるべく忙しい人からまるをつけて選んだというようなことは全然ありません。ただ私の主観であつて言葉が過ぎれば喜んでおしかりを受けますが、ひまでしようがなくて、売春のことぐらいしなくちや日が暮せないという人ではあまり社会良識の代表と言えないので、いろいろな実質社会に触れて、お忙しい中を来ていただくぐらいの人でないと、どうも話を聞いてもあまりためにならないような面もあると思います。あの審議会の顔ぶれは私も自分が見まして、少し問題をうやむやにしそうな方は、実は付いたこともあるのです。相当意見を持つている方だけを選んだわけでございます。  第二の御質疑でございますが、最初の店開きのときはどういうことを言つたか知りません。しかし先日の審議会においては非常に問題がはつきりして参りました。私は、予期よりもよくこんなにはつきりしたものだ、こう思つているくらいなんであります。第二回目から、雑談でなく、問題を狭めてあるのです。秘密会内容をどんどん申し上げることもいかがかと考えますので遠慮いたしますが、要するに昭和二十一年の次官会議のあの内容はよくないということは、この前の審議会で、おそらく例外が一つもなく圧倒的多数で承認したと思います。これだけでもずいぶん長年の懸案が解決いたしたと思います。また売笑婦人たちのその場合の処理は、主として保安処分保護観察というのを重点に置くというような議論もほとんど決定的に行われたようでございます。またこの次の審議も、ただ漫談をされては因るので、非常にむずかしい、この問題の中心である点を議題とすることにきめてあります。そういうふうに間隔をかなり置いてあることは私自身も残念に思つておりますが、今後の審議会というものは、その日はそれだけ論ずるというごうにしてございます。御懸念をお持ちになることはありがたいのですが、そういうようなだらだらした審議会には、私の方針としていたしません。どうぞ御安心を願います。
  27. 神近市子

    神近委員 大体それで大臣の方か会のお答えはよくわかりました。それ外問題は、この前の国会での御発言では、粗雑なものでも法律案を持ち出して、そうしてその部分々々に対して批判して行く、そうしてそれをその次までには整理して、また再び批判を受けるというふうな意図で、こういう船頭の多い会ではやりにくいから、だらだらとなつて延ばされては困るから、そういうふうにやつて行くということをおつしやつておられるわけですけれども、その粗雑な法案でも、こういうものというのをお手持ちになつているわけでございますか。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私の発言の仕方が大ざつぱなせいで、そういうふうにお感じになつたと思います。法案をつくるに至る当局の態度、どこのすみずみまでも非常にこまかい彫刻のように仕上げなければいけないというのでなく、大げつぱでもいいからまず大筋をつくつて、これは穴だらけでもいいからあとから穴を埋めて行く方が早くでき上るということは、ここにおります長戸課長に私自身考え方を申したことがあります。当該課長もそのつもりでやりますという話をしたことは記憶に残つておりますから、今のお話は全然うそではありません。ただ粗雑で穴だらけの法案でもいいから出して、委員会で直してもらうということは、実際上非常に慎重を欠いた法案を出すという非難を一方で受けますので、国会の御審議を受ける法案というものは、あまり穴だらけではいけないと思います。しかし法案を出す当局の心構え――いわゆる従来の官庁組織ですと、どこからつかれてもありの出るすきもないような完全無欠なものにするような、そういう方法でやつて行くのですが、まず穴だらけでもいいから大筋をつくつて、それからあと穴を探して埋めて行くという方針でやつていることは事実でございます。ただこれは他省との関係がございますので、穴だらけでも出そうじやないかということは、実際問題としてはそこにいろいろ議論が起ることと思います。法案をつくる心構えとしては、御指摘の通りの心構えでやるように、当該刑事局に命じております。
  29. 神近市子

    神近委員 今あの審議会がたなざらしのように――その間がおつしやる通りに一気呵成というわけに行かないものですから、業者の運動の余地が非常にある。目の前に見えるものですから、相当運動が行われているといううわさがあつて、新聞記事なんかにも出ているわけでございます。今あまりにも汚職ばやりでありますから、これはすぐだれにもぴんと来ることでございまして私どもは、その点からもあまり引延ばしをなされないで――これは第二国会にも第十国会にも出ておりますし、法案については、一応何年かの審議の後につくられたものがあるわけですから、研究調査というようなことも、文書もいろいろたくさんできておりますから、何とか早く根本の原則に立つて、そこからスタートしていただけないものか。これも時期が延びれば延びるほどあの手この手と運動の手が延びると私ども見ておるわけですが、その点について、法案がどの程度のところでできそうとか、あるいはできるだろうかというお見込みはまだございませんでしようか。
  30. 犬養健

    犬養国務大臣 できるだけ促進をいたす覚悟でやつておりますから、今御指摘の、お忙しい委員でも年中忙しいわけではないので、この次の会にはもつと早く出られるという場合には、何も二週間置く必要はちつともございませんから、その点は私も厳格に当局と打合せをしたいと思つております。私のところには、どうも不敏にしてまだ業者の訪問の栄を受けておりませんが、今の法務当局が業者の影響を受けるというような感じの顔ぶれはございません。もちろん業者にも、今現実に業をやつておる人の跡始末とか、いろいろな問題がありますから、十分御意見を伺わなければならぬと思いますが、いわゆる神近さんの言われる顰蹙すべき裏の運動というものは、少くとも私どもの方では一度も体験いたしておりません。この点は御了承願いたいと思います。今申し上げましたように、問題を集中してやつております。最もむずかしいのは、おそらく日本に貨幣制度ができますと同時に、売春を金でもつてするということが行われた、これは何百年と行われておるのでありますから、国会売春禁止に関する法律を出したら、あくる日から日本中に売春婦がいなくなるかというと、そうではないのであつて、その場合のことも考えなければならない。一番潔癖にやれば、往来を二人で歩いておる者を、少し疑わしければどんどんほうり込む、あとでそれがいいなずけとわかつたら当局があやまるというやり方が一番早いのでありますが、これはまた人権蹂躪問題も起りますので、実際どういうふうにやるかということで、売春はいけないと思つても、その点については非常に熱心な御議論があつたわけであります。すでに売春というものがよくないということは、各委員の決定的な表現でしよう。私はその席におりませんでしたから存じませんが、ほとんど全員と存じます。それだけでも昭和二十一年の次官会議の通牒というものはここでくつがえされるわけであります。これだけでも相当意義が深いと思います。それから売春をした人をただ罰したらよいのじやなくて、もつとよい職業で一生行けるように職業補導する。あるいはまた前のボスが誘惑するとかいうようないろいろな問題がありますから、保護観察というようなこともありますし、そういう問題は前回の委員会で相当周密に実際的に論じられたわけであります。残る問題は集娼というものをどう扱うか、これが実際問題としてはなかなか議論が出ると思います。そういうふうに問題を集中して行つております。私こういうことを非常に心にかけていて、一部ではやぼつたいように言われますけれども、私の一番懸念しておりますのは、昔も売春婦はおりましたけれども、大体大都会や中都会の片すみで運命を大いに嘆きながら、生きる道がなくて控え目にしていた。今はりつぱな女学校を出たような人が、いい洋服を着て堂々といい洋服をつくる手段はここにあるという顔をして歩いておる。この純潔観の喪失というものを、日本民族のために私は心から嘆いておるわけであります。また植民地化すような風景が、かえつて外国との良好な親善関係を害しておる、こう思うのであります。そういう若い年代に必ず一度持たなければならぬ純潔観というものを、日本人の誇りのためにとりもどしたい、これが私の念願なんでありましてそのためにはできるだけこの問題は真剣に取組もう、これは民族の問題になりますから……。あとは実際問題でありまして、つまりかりに集娼というものを否定した場合、病毒を持つた人がどういうところに散るかというような実際問題も当局としては考えなければなりません。法律ができたら一人もいなくなるとは私は思つておりませんが、この法律をもつてしても残る社会の裏側のこういう下商売を、実際的にどう扱つて行くか、これは実際問題として真剣に論じなければならぬと思います。またきびしくして、ただ若い男と女が歩いていたら売春婦だと思えというのも、実にこれはまた人権尊重の足りない国になりますので、その辺の中庸を得たことと考えますと、問題の早急な解決を心から願いますが、私はよほど真剣に考えるべき問題ではないかと思う。ことに街頭で外国人と歩いておると、すぐお前は売春婦だろうというわけにも行きません。また男女がネオンのけばけばしいところへ入つて行つたらすぐ売春だというわけに行かず、そこへ警察官がそのまま入つて行くということもまた人権尊重の上から参りません。ですから根本方針はありましても、実際の措置となりますと、十分の議論をしないとかえつてあとで問題が起るのではないか、私はこう考えております。しかしさりとて漫談的にただ時を過す審議会には断じてしたくない。従つて先ほど申し上げましたように、その都度審議会の主要点というものを限定して論じていただく、こういうふうにいたしておるわけでございます。
  31. 神近市子

    神近委員 戦争前の売笑婦のあり方と、今の売笑婦がもう大ぴらにどこがお嬢さんか、どこがそういう人であるか区別がつかなくなつた。そうして心理的にも同じような状態があるということは、私は、ごもつともだと思います。いろいろむずかしい問題がございますけれど、この点一度お役所の方のお考えを伺いたいと思います。今業者の運動というものは、二通りございます。売春法というものを出させまいとする運動――婦人議員の中で二人か三人買収されたなんというデマが飛んでいるのも、これは婦人議員団を内部崩壊させようというデマだろうと思います。いろいろ行われおりますけれど、反対には二通りあると思うのです。売春禁止法そのものを出させまいという運動と、それから赤線地区だけを残しておこうという考え方と二通りあると思うのです。これは臆測で私が判断したのではなくて、巷間で伝わつているのですけれど、私が協議会委員の方でちよつと気になりましたのは、民間の委員方々は別といたしまして、役所側の方々には、赤線地区を残そうというようなお考えの方が多いというように伺つているのですけれど、その赤線地区というものを残すということは私は公娼廃止の趣旨に反すると思うのです。さつき三十一年十二月の次官通達を行政措置によつて廃止しなければならないということが委員会で決定されたということは承つたのですけれど、まだその委員の中に、赤線地区は残しておくということであれば、そこの矛盾がどういうふうに感ぜられているか。それは実際面からはいろいろそういう方々のご発言はごもつともな点があると思うのです。だけれどもオハラ委員会におきましての国防長官の発言だとか、あるいは昨年のルーズヴェルト夫人の御返事、こういう売笑問題に対するお考え方から、もうどんな困難があつても、日本の文明国家としての国際的な立場、国家的体面からしても、赤線地区、昔の公娼制度というものを残してはならないということが一つ、それから頭の古い方々は性病予防の点でよくこの赤線区域を残す必要を主張されるのですけれども婦人の人権擁護の上からも、性病蔓延を云々する上からも、あすこが一番最悪の場所だというふうに考えているのですけれど、その点は今度の委員会ではつきちとした結論は出ているわけでしようか、あるいはまだ審議の過程にあるのでしようか。この点は大臣よりはあるいは河井検事の御意見を承つた方がいいのではないかと私は思うのですけれど……。
  32. 犬養健

    犬養国務大臣 売春問題は私が一切指揮いたしておりますので、私からお答えいたします。神近さんの御指摘になつた問題が一番論議の中心になると思います。その主題は最近の審議会にそれだけの議題かけたいと思つております。ここにおります長戸課長が実際の立案をしております。目立ちやすい街娼を体よくおつぱらつて、赤線区域は保護するという方針はとつておりません。ただ赤線区域をどういうふうに処置するかということが実際上の問題として相当議論があると思います。私は外国の場合のことなども実はいろいろ考えておるのでございます。また赤線区域に関する労働省の婦人少年局の報告によれば、独身者よりも家庭を持つておる人がネオンなどに刺激されて行く場合の率われわれの予想よりもパーセンテージが多いようであります。そういうことも十分頭に置いて考えてみたいと思つております。つまり集娼制度というものをどういうふうに処置して行くか、これが今度の問題の中心点になると思います。しかし少くもただいま申し上げることは、街娼を体よくおつぱらつて問題を解決するような形で、公娼制度は事実上保護して行くとか保持して行くとかいうような態度はとつておりません。ただ問題は、たびたび申し上げますようにこの法律が幸いに国会を通過したら翌日から売笑婦が一人も日本からいなくなるかというと、なかなかいると思うのであります。そのなかなか残る問題をどうしようか。一つには、もういやになつた人が借金のためにいやになつても抜けられない。つまり何といいますか搾取制度に対する厳密なメスの入れ方というものが必要だと思います。この方から解決することも非常に有効だと思います。いろいろ問題を各方面から考えておるのでありますが、要するに私どもが一番心配し、頭に置いているのは、法律が通つたらあくる日から日本中が売笑婦のいない国になるか、なかなかならぬ。ならぬ場合の法の盲点というものができちやいけない、こういう考え方を一方にしているわけであります。
  33. 神近市子

    神近委員 私その点これは委員の方にも、ほかの方にもよく聞いていただきたいと思うのです。この法律をつくつたから翌日からきれいさつぱりと売笑婦が絶滅されるということは絶対にありません。私どもはこれはよほど長期にわたる社会的な清掃事業といいますか、道徳の再建といいますか、これはそういうものの旗じるしになるものであつて、かなり長期戦を闘うつもりで、婦人団体には私どもはその覚悟はよいのかということをいつも話をして来ているのですけれども、それは私は御心配に及ばないと思う。豊臣時代から売笑制度というものはあるのだそうですけれども、五百何十年の歴史を一ぺんにわれわれが今日くつがえすことは、それはできないということはわかり切つている。ただ国際的な立場からと、それからこのまま放置しておいては日本民族が一時代前の蒙古人種のような劣弱な状態になるということを国民によく認識していただいて、そうしてこの絶滅を期さなくちやならないというように私ども考えているわけでございまして、大臣の御心配はごもつともですけれども、あしたからこれがきれいに守られ得るとは、そういうことを期待してはあまりに現実を知らない政治だということになると思います。それで今集娼と散娼の問題でございますけれども、さつき大臣がおつしやつた言葉がございましたのも、戦争前にはみんな肩身が狭くて隠れてそういう生活をしていた。今日の若い人はこれ見上がしに、りつぱな外套やりつぱな宝石をつくるためにはこうしなくちやならないのだと言わんばかりにして歩いている。これは今禁止法がないからこういう状態に陥りましたので、国法が売春というものはよくないことだ、そして法律でこれを禁止しているのだということになつて――私はこの間から学校を警官が荒すというようなことは、もちろんいけないと思いますけれども、今日無数にございますあの連れ込み宿というようなものを何か取締る――そうして私は法律のろうとでございますから伺つていると、犯罪の事前捜査というようなことも行われ得るという御意見がこの間出たようですけれども、今の連れ込み宿とかあるいはパンパン宿というものはどこの都会に行きましてもないところはないのでございます。今までのりつぱなしにせの宿屋が、そういう形は少しカムフラージュしても、パンパンあるいは連れ込み宿になつている。もうこの状態はどんなことをしても、これは民族の将来のことを考えれば、少し行き過ぎでも私はしかたがない。きのうのいろいろ御問答を伺つていると、犯罪の事前捜査ということがしきりに行われ得るという御意見のようでしたけれども、私はこの売春の問題は、民族の将来の生理的状態考えれば、少しぐらいの行き過ぎをやらなければ、今のこういう。パンパン宿がもう住宅街にも――今代々木のどこかで問題が起つておりますが、住宅地区がどんどんそういう宿屋に荒されて行く。そうして、都会の住民は、子供を大事に育てようと思う者は子供をかかえてあつちうろうろ、こつちうろうろ移転して行かなくちやならないというところまで追い詰められて来ている。それを考えると、早く性のモラルを立てるということが必要でして、集娼を取締る。私の記憶では、独身者と既婚者とは大体三と七の割合だつたと思います。そのことと、それから性病の絶滅に、どうかして手をつけるというなら、やつぱり赤線が一番問題になると思いますけれども、その点をどうかはつきりと――これは検診制度に対する認識の程度でございますから、検診制度というものが信用できるものであるとお考えなつているか、あるいは検診制度というものは今日信頼するに足りないというようにお考えなつているか、委員の中に検診制度に対する百パーセントの信頼をお持ちにならぬという方を伺つたので、私どもはその点でも心配しているわけでございます。
  34. 犬養健

    犬養国務大臣 検診制度などの問題は、今まで二回開いた審議会ではまだ議題なつておりません。当然議題として取上げなければならぬ問題だと思います。もちろん、検診制度というものがありとすれば、診断がいいかげんであつては問題の根底がくずれると思います。ただいまいろいろ御指摘がありましたが、お言葉にもありましたように、モラルのある国だ、モラルのある都会だという建前はくずしたくございません。これは基本問題だと思います。私あまり学識経験者でないのですが、外国でこういう問題について市の当局者と話したことがあります。私が知つてて一番清潔な感じがするのはニューヨーク市でありますが、しかしいろいろ物知りに聞きますと、ニユーヨークにもなかなかいるのだそうですが、先ほどの言葉のように非常に遠慮して隠れたようなことになつている。過渡期はそういう状態がまず日本でも望ましいと思つております。赤線区域ですが、どうもこれ見よがしにネオンがついたり、あるいはだれも温泉があると思つていないのに温泉のマークがあつたり、ああいうことがつまり何というか必要悪だというような考え方の表象になると思います。従つてそうでなく、この法律が幸いに通過しましてもやはりどこかに残るけれども、非常に社会でいけないことだと言われたあと肩身が狭いのだというような感じの国にしたい。過渡期としてはそういうところをねらつているわけでございます。従つて赤線区域の問題も、街娼はおつぱらうけれども、手をつけるとなかなかめんどうな赤線区域はそのままにするという考えは決して持つておりませんが、どう処理するかということは、われわれ当局だけの考えでも狭いですから、審議会でも真剣な御審議を願いまして、十分お考えを聞いてみたいと思います。しかし大ざつぱに申し上げますと、少くもこれ見よがしなような施設その他は、モラルというものが大事だという政治の現われとして、できるだけ禁止いたしたいと思つております。あとの、早くいえば玄関から中のこと、これは警官が踏み込んでいいかどうか、なかなか問題がありますので、どういうふうにしたらいいか、あるいは婦人のそういう係がいいのか、実際の問題で私も頭を悩ましております。そうしてすぐそこで刑法上の対象としないで、先ほど申し上げましたように、保安処分保護観察として職業紹介の方へまわしたり、あるいは病院の方へまわしたり、いろいろな手間はかかるけれども、更生し得るように、再びりつぱな女性になるようにということの方が大切なことじやないか、こう思つております。赤線区域とか検診とかいうことは、多分この次の審議会の問題になると思いますが、できるだけ議論の焦点を合せて、漫談的な審議会にならないように、幹事の方で配慮いたす予定にしております。
  35. 神近市子

    神近委員 その検診制度のことでございますけれど、これは婦人少年局調査のときもしよつちゆう問題になりまして、赤線区域の中で行われている吉原の病院のことが出ておりましたけれど、あれは吉原自身がつくつた病院でして、そして自分たちでやることになつているそうです。だけれど、朝病院に行つて夜客をとるというような状態でして、それでは何にもならないのじやないかということが、どこに行つても何度も繰返し考えられております。今日やめたから明日からなくなるというのではございませんが、ニューヨークが一番清潔だつたと大臣はおつしやつていますけれど、私はそういうところを知らないものですから、凱旋門のラヴイツクがもぐりで検診に行つているぐらいのところしか知らないのですけれど、大体あれは何の役にも立たないということが世界の輿論で、検診制度はもうナンセンスだということになつて、英米があの制度をやめたということも私どもは聞いております。日本では、検診制度があるということは、今までさんざん婦人を使用して来た男の方々と業者との利害が一致するわけです。それで検診すれば大丈夫だというような考え方に陥つていると思うのですけれど、この点はやはりもう少しお若い方々委員会にお入れになるということが必要じやないか、私どもそばからたいへん心配しております。大体人権の点も、性病予防の点も、婦人に対するいろいろな弊害、犯罪の点ももとはあそこにある。そして前借制度と高度の搾取と、それからある程度の人身の拘束という昔の公娼制度とちつともかわらないものが復活して来ているのですから、前の勅令第九号で禁止されたという趣旨からいつても、独立後も相当復活しているということから考えましても、あそこをどういう形でも残すということが弊害のもとだというふうに私どもは感じているわけであります。その点で、これからの御審議を私どもは注意深く伺いたいと思いますけれど、そういう点について役人の委員方々が相当偏見を持つていらつしやるということを委員会の――これは秘密会議とおつしやるようですけれど、この間私が長戸さんに伺いましたところでは、話は委員から漏れてもよい、委員から話はしていただきたいということで、これを秘密会議でなさるということはちよつと私受取れない、委員長発表だけに制限するということはないのでございましよう、ちよつと伺いたいのでございます。
  36. 長戸寛美

    ○長戸説明員 ただいまお尋ねの協議会のことでございますが、これは非公開ということになつておりまして秘密ということには実はいたしておらない、委員からお話するということであります。  それからただいまお話のありました検診制度の問題でございますが、この点につきましてはやはり大臣のおつしやいましたように、次回の協議会売春管理者及び娼家経営者の問題が根本的に討議されるときに話に出るだろうと思うのでありますが、私個人から申しますれば、売笑の点について見ますと、性病予防法の十一条によつて、いわゆる性病の点から規正をして行くわけでございますが、街娼の点では今の法制のもとではそれほど強制的になし得ないうらみがございまして結局本人がある程度望む者あるいは任意に出て来る者、そういう者についてはやれますけれども、実際悪質な者については逃げられておるという点があろうかと思われます。それからまた集娼の点につきましては、ただいまお話のように、検診がございましても、これが十全であるということにはただちに考えられないと思います。ああいうふうな場所に職業紹介をいたしました関係についての判決例におきましても、検診を施しておるから公衆衛生に害がある職業ではないのだというふうな考え方に対して、裁判所は反対の見解をとつております。要するにやはりそれは公衆衛生に害のある職業に紹介したのである、こういう見解をとつておるわけでございます。いずれにいたしましても、ただちにそれで十全であるというふうには考えられない。またこの問題は、今も先生からお話のございましたように、性病予防の見地からだけ考えるべき問題ではなくて、売春行為それ自体やはり悪であるということからも考えなければならない。ただいま役人の方で云々というようなお話がありましたが、私個人としてはそういうふうに考えております。
  37. 神近市子

    神近委員 それではちよつとお伺いしますけれど、第二国会に出ました売春等処罰法案と第十五国会に出ました法案との比較研究は行われましてございますか。私どもこの二つの法案の性格が違つているというふうに感じているわけですけれど、どういうふうに御研究になつてどちらが今日の考え方に近いというふうにお考えなつておりますか、このことについて伺わせていただきたい。
  38. 長戸寛美

    ○長戸説明員 第二国会提案いたしまして、第三国会審議未了になりましたものと、それから第十五国会に伊藤修先生らのお出しになつたものとの検討の問題でございます。私どもももちろんこれを検討いたしております。形の上では、後に出た方が網羅的に整つておる感じはいたします。ただそれが実施のときの問題等におきまして実際上それらの行為を黙認するのではないかという点が、非常にわれわれとして疑問に思つております。そういう点については反対いたしております。
  39. 神近市子

    神近委員 もう一ぺん後半をはつきりしていただきたい。
  40. 長戸寛美

    ○長戸説明員 第十五国会に出ました案の施行期日の問題に関連いたしまして、これが三十年まで延びるというふうなことになつ法律は公布された、施行期日は延びたということになつて参りますと、その間売春条例がございましても、ちよつと動きにくくなつてしまうわけです。つまり国としては、その間それだけ延ばしてよいという考え方を持つておる。ところが市町村には条例がある。しかし国の意思としては延ばす考えだということになりますれば、これはちよつと動かない。そういうふうなところに根本的な疑念を私ども持つのであります。そういうふうに申し上げたのであります。
  41. 神近市子

    神近委員 私どもも同じ意見でございました。あれにいろいろ協力した団体がありまして、あの黙認期間がついているのなら協力しないとまで、極端に言われたことがあつたのですが、この点は今度は御考慮を願うことになつているらしくて、私はたいへんけつこうだと思います。第二国会の方が罰則が強いように私は感じました。金高は大差ないように思いましたけれども、懲役が相当多い。第二国会の方が終戦直後でございましたから、まだ革新の気が強かつたのかというふうな感じで私は見ているのでございますけれど、この前の第十五国会の方は、政府側での御提案というものが望めないというふうに考えられていたもののように思われます。それでなるべく通したいということから、こういうことがあつたのだろうと思います。犬養法務大臣に伺いますけれど、これは私一人の個人の興味で申し上げるのではなく、婦人方に答えなければならないからお聞きしているのですけれど、大体いつごろまでに提案されれば今国会審議を受けられることができるとお考えなつているか、ちよつと伺わせていただきます。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 これはお体裁に答弁することはわけないのです。問題は、今神近さんが一番あとでおつしやつた集娼の問題その他について実際上の案ができれば峠を越す。だからいつまでというより、峠はどこだ、これは私は集娼問題だと思う。たとえば二十一年の次官通牒、当時はやむを得ないとしても、あれは不当であつた、こういうことはわけなく取消せます。それから売春をした人を主として保安処分にする、更生するようにする、これもわけないと思う。実際今ある赤線区域その他の事実上の公娼制度、そういうものをどうするかということに実際上の案ができれば峠を越す、あとは割合早いんじやないか、こう見ております。ですから、いつということは私今ちよつと見当つきません。つかないだけに、この問題の議題なつている協議会はなるべくひんぴんとやりたい、間を狭めたいと思つております。
  43. 神近市子

    神近委員 これはなるべく早く法案化の必要があると思うのです。広島県の問題でございますけれども広島の駅の付近に赤線区域をつくるという企てがございまして、これは婦人団体が猛烈に運動いたしまして、多分東京からもいろいろな方がおいでになりまして、婦人団体、文化団体、教育団体の反対でこれは一度とりやめになつた。これがどういうわけでございますか、また再建が始まりまして、今度は何でもかでもここにそういうものをつくるのだというように放言いたしまして、もう地ならしが始まつている。これを何とかできないかというので、きのうも私どもの方に愁訴が参つておりまして、婦人議員団の方で御協議願つて、だれか行つていただくことになるかというふうに考えております。私は黙認制度でもぐり稼業で今までやつて来た人たちに賠償問題は起らないと思いますけれど、そういうこれから始まるところを一日も早くやめさせなければ、その人たちにも損害をかけるということを考えますと、なるべくたなざらしの状態にならないように、そうして今度の国会でどうしてもこれを成立させないと、日本婦人が失望してもうどうにもわれわれの手には負えないのだ、あれだけ全国から出て来て決議をし、陳情しても、どうにもならないのだという絶望感にとらわれてしまつて、そうしてほうり出すと私は思います。今日私がこうやつてお尋ねしているのも、あまり審議引延ばしが長過ぎる。その間反対の人たちの運動がまた起つて、こうやつて汚職が起りそうな――政務次官なんてちやんと金高まで書いてある。こういう世の中ですから、やはりあり得ないことでもないなあというような感じをだれでも持つのでございます。どうか協議会の方を促進していただいて、そうして早く法案化して、私ども喜んで審議に入るというようなことにやつていただきたい。大体御意向はよくわかりまして私ども考え方とあまり違つていない立場でお考えなつていることが伺えて私はたいへんありがたかつたと思います。できるだけ早くこれを法案化してこの国会に出していただきたい。この希望をもつて私の質問を終ることにいたします。
  44. 小林錡

    小林委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。次会の期日はいずれ公報をもつてお知らせいたします。    午後零時三十一分散会