○下牧
説明員 名前を即決裁判手続といたしましたが、この即決裁判という言葉は必ずしも最善なものであるとはわれわれは考えておりませんが、その即決という意味は、事故が起きたその日にすぐ本人を出頭させてすぐ調べるというのじやございませんで、事故が起きますと、そのときの現場の巡査が、大体自動車の違反が大部分でございますから、それでその違反した運転手に対しましていつ幾日警察なら警察、検察庁なら検察庁に出て来るようにというふうに申して、免許証と引きかえに保管証を渡すわけなのであります。その場合には、大体運用といたしましては、いつお前さん都合がいいというふうなことを聞きまして、そうしてタクシーの運転手でございますれば非番の日がございますから、そういう日に出て来る。
〔
委員長退席、佐瀬
委員長代理着席〕
それを三日目か四日目に
指定して、そうしてその日に出て来ますれば、そこに警察官も検察官も
裁判所も近くにお
つて、ずつと流れ作業式に手続を済まそう、こういう
趣旨でございます。それで、その場で起きたものをそのまま
裁判所にひつぱ
つて行くという
趣旨にはな
つておりませんし、またそういうことも考えておりません。と申しますのは、この法案の附則において、保管証の有効
期間というようなものを命令で定めることにいたしておるのでございます。その有効
期間は大体七日ぐらいに考えておりますが、その
趣旨は、大体七日ぐらいの
期間を見ておいて、しかもその間で都合のよい日、大体三日目か四日目に都合を聞いて呼び出すように運用して参りたい、こういう気持があるわけであります。
それから次に、
被疑者または被告の弁明の機会でございますが、これは私どもといたしましては十分考えたつもりでおるのでございます。
法律上の担保といたしましては、検察官が
簡易公判手続、起訴いたします場合に即決裁判手続でやるか、あるいは正式の通常の手続に乗せるか、あるいは略式命令で処罰するか、その
内容を
説明いたしまして、そうしてどれを希望するかということを聞くわけでございます。それで本人が即決裁判手続でやることについて異議がないときに限
つてこの手続で起訴をすることになるわけであります。と申しますのは、この
法律の第三条第二項の「即決裁判は、即決裁判手続によることについて、
被告人に異議があるときは、することができない。」この根本的な精神を受けて、第四条の二項によりまして、その異議がないかどうかを検察官が確かめるというふうにいたしておるところから来るわけでございます。しかもこの法案の第二条第二項の「
被告人に異議があるときは」、というのは、最初に異議があるときに限りません。手続のいかなる段階におけるを問わず、本人がこれでは困るということになりますれば、いつでも
裁判官に対して異議を申し述べることができることになるわけであります。そういうことでございますから、
裁判官としますれば、本人を調べておりましてあとから異議を申し立てるようなことがあ
つても困りますから、運用といたしましては、最初に検察官が確かめた上に、
裁判官といたしましても、この手続によることについて異議がないかどうかということは当然聞くことにな
つて参る、そういう面で担保されて来ておるわけでございます。それから略式命令ということにな
つて参りますと、これは略式手続によることにな
つてしまえばそれまでで本人に裁判書きが送達されて来るわけでございますが、この手続では、本人が呼出しを受けるまでに、たとえば弁護士に相談して、それじや一緒に行こうということになれば弁護人をつけることも自由でありますし、本人が法廷において
意見を開陳することも自由になる、そういうことで略式命令よりは実体的には非常に
被告人の
保護ということを考えておるわけてあります。それから
裁判官が即決裁判の宣告をいたします場合には、これは正式裁判の
申立てができるということを告知いたす。これは略式命令と同様でございます。そうして正式裁判の請求権の放棄ということも認めておらないようなわけで、本人に無理がかからないようにしてやるという点は、あくまで私どもこの
法律をつくる上で考えた点でございます。
それから運用の面でございますが、運用の面といたしましては、これは
最高裁判所の
事務局とも話し合
つておるのでございますが、こういう手続をいたしました以上、従来の法廷におけるがごとく格式ばつた取調べというような、ああいう形式ではこの手続に沿わないので、あくまで砕けた、とい
つても、何も妥協するという意味ではなくして、やわらかい態度でも
つてお互いに言いたいことを言い合うというような、ちようど壇に上
つてしやべりますのと、円いテーブルを囲んで話し合うというのとの差で、非常に砕けたやり方というものを考えておるわけでございます。そこで
被告人といたしましても、言いたいことがあれば十分言える仕組みで運用する大体の予定でございます。それから検察官に対しましては、
裁判官の面前でもめるような
事件はこの手続に乗せないように、私どもこれは厳密に守らせたい、かように考えているわけでありまして、
法律上の担保、それから運用上、それやこれやをかみ合せて参りますと、この手続をいたしましたがために従来以上に人権が尊重されぬということにはなりませんで、むしろ私どもとしては
事件の実体を調べる上においては慎重に相なる、かように考えておるわけでございます。