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1954-02-26 第19回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十六日(金曜日)     午後二時二十四分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       牧野 寛索君    高橋 禎一君       神近 市子君    木下  郁君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         法務事務官         (入国管理局         長)      鈴木  一君  委員外出席者         国家地方警察本         部警視正         (警備部警ら交         通課長)    後藤田正晴君         検     事         (刑事局参事         官)      下牧  武君         法務事務官         (入国管理局次         長)      宮下 明義君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      江里口清雄君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  交通事件即決裁判手続法案内閣提出第二七  号)(予)  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出第四三号)(予)    ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  外国人登録法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑の通告がありますからこれを許します。木下郁君。
  3. 木下郁

    木下委員 まずお聞きしたいのは外国人登録法改正についてでありますが、今までの御方針について大体の趣旨を伺つておきたいと思います。  そのおもな点は、外国人に対して指紋を強制するという問題、その点について一体どういうふうにおやりになるつもりか、それを伺いたい。
  4. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 外国人登録法の十四条に、外国人に対しまして指紋をとる規定がございますが、この趣旨は、御承知と思いますが、外国人であることを証明させますのに、常時外国人外国人登録証明書を携帯きせるのでございます。また本人に対しましては、そこの町村に原簿を設けまして、写真その他一切の記入をいたしまして、その人が確実にここにおるという原簿を設けておるのでございます。問題は、原簿があり、外国人登録証明書がございますが、本人とその書類との同一性ということを何によつてはつきりさせるかということが問題でございますので、それをはつきりいたさせます方法は、指紋をとりますのが一番確実なのでございます。現在世界各国でやつております方法も、特にアメリカにおきましては、指紋制度を全面的に採用しておりまして、一番完備しているわけであります。ただ欧州方面におきましては、指紋制度が必ずしも普及されておらないと申してよろしいと思いますが、外国人登録法を立法いたします際に、これらの点からも考えまして、実際問題としては指紋が一番有効である。しかしながらいろいろの慣習もございまして、指紋をとります際に、特にわが国におきましては、指紋にあまり理解のない東洋民族がその大部分を占めるということになりますので、これをやります際には、相当慎重な考慮をもつてやりたいということで、立法当時にただちにやるということはやめまして、しばらく延期をいたして、その間に十分啓蒙宣伝をしてやる、かように考えておつたのでありますが、いよいよ二十九年度からぜひやりたいということで、実は法務省といたしましては、十分な検討予算その他をもちまして一応態勢を整えたのでありますが、残念ながら一兆予算という緊縮予算関係で、新規事業はやらないという政府閣議決定によりまして、外国人指紋につきましては二十九年度はやらないということになつたのでございます。この点につきまして、しからば三十年度からはどうかというお話が出ようと思うのでございますが、この点につきましては、実は二十九年度は外国人登録の一斉切りかえの年に当つておるのでございます。外国人登録法によりますれば、二年ごとに登録証明書を全部切りかえるということに相なつております。従いまして、二十九年度がちようどその外国人全部に対しまして登録の切りかえをいたす年になつておりまして、その年にあわせまして指紋実施いたしますことは、現在外国人が内地に、六十二万でございましたか、おるわけでございますが、その全部に対してただちに指紋制度実施するということになりますと、この施行には相当な予算がかかるということで、この予算は、二十九年度は緊縮予算のために割愛しようということになりまして、三十年度からはぜひやりたい。しからば三十年度には予算がどのくらいかかるかと申しますれば、三十年度はちようど切りかえをしない年でございますので、新たに登録をする者、あるいは登録証明書をなくしたとか申しまして、再交付を願い出る者、そういうようなごくわずかなものに対しまして、ぼつぼつ登録をして行くということになりますので、予算関係から申しますれば、そう大した額でなしに実施し得るということで、いかなる理由がございましても、三十年度からはぜひやる。再びこの改正を国会にお願いをしまして、こういう事情であるから、もう一ぺん延ばしてほしいということは、もう申せない立場にわれわれは立つておるのでございまして、今回が最後お願いであります。
  5. 木下郁

    木下委員 外国人の中にはたくさんの国の人がありますけれども、日本の問題としては、比重の飛切り多いのは朝鮮人、その次は中国人ということでありますが、やはり政府がぐずぐずひまどつておるのは、日韓会談がまだはつきり話がつかない、延び延びになつておる、そういうようなことで、両国の間に外交関係はつきりすれば、ぐあいのいいことはわかり切つておりますが、この問題とそれとは、性質から言えば違う問題です。こういう問題が片づかぬからというようなことも、一つの原因になつておるのじやないかというふうに思われます。そういう点はいかがでしよう。
  6. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 日韓問題の関係上、指紋制度実施を延期するという点につきましては、昨年度はまさにその理由お願いをいたしたのでありますが、この二十九年度につきましては、今政府といたしましては、日韓会談関係なしに進んでよろしいという見解をとつております。この日韓会談が現在再開される段階に至つていない、あるいはしばらく停頓状態であるということだけでなしに、われわれの方といたしまして、指紋とり方というようなことにつきましても、非常に研究を積みまして、この程度であれば、そう異常なる衝撃を与えないで済むのではないか。端的に申しますれば、特に朝鮮人たちでありますが、指紋をとればこれを警察で利用するのだろうということが、一番の反対理由です。われわれはそういう気持はないのでありますので、登録証明書偽造なり濫用をおそれるという意味で、その範囲指紋をとればよろしい。従いまして、指紋をとると言いますと、今警察でやつているような十本の指の指紋をとるというふうにすぐ即断されるのでありますが、必ずしも指紋というものは十本でなくてもよろしいのでありまして、われわれの二十九年度に一旦やろうと決意しましたその内容を申し上げますれば、一本の指紋でございます。従いましてそれをただちに警察の方に通報して、どうとかこうとかいうことをわれわれとして考えておるのではない。こういうようなことを啓蒙宣伝いたしますれば、日韓会談がたとい再開になり、あるいは会談途中であつても、日韓会談とは関係なしに、指紋制度実施することができるという確信を持つております。
  7. 木下郁

    木下委員 指紋とり方について、一指だけでやる予定だつたというお話でありますが、実現はしなかつたのですけれども、昭和三十九年度にこのために計上された費用は大体どれくらいでありましたか。
  8. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 指紋制度を再開しますために、二十九年度に要求しようと存じました予算は、約二億でございます。
  9. 木下郁

    木下委員 なお今年の三月末で外国人登録の切りかえをやる。その経費またはそのやり方について、手数料をとるというようになつておるのでありますか。そういう方面の収入を計画されたかどうか、その点をお伺いいたします。
  10. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 二十九年度の登録の一斉切りかえは、大体十月二十八日が一斉切りかえの期限になつておりますが、そのときに手数料をとるということは考えておりません。
  11. 木下郁

    木下委員 なお米国では指紋をやつておる。ほかの外国ではやつておる国はありませんかどうか。そういう点をお調べになつておれば、参考に伺つておきたいのであります。なお指紋というのは、慣習的になれば何でもないことでありますけれども、日本人自身指紋をまだやつていない。これは日本人がやつておれば、朝鮮人誤解というようなことは毛頭持たないということも考えられるわけです。そういう点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  12. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 アメリカ以外の国の諸外国で、指紋制度を採用しておる国はカナダがございます。そのほかにつきましては、あまりやつておりません。それから指紋と申しましても、先ほど申しましたように、十本の指紋をとりますと、いかにも犯罪人扱いをするという感じを深めますので、登録関係指紋につきましては、原則として一指指紋でよろしいということになりますれば、これは東洋にもやはり拇印という制度がございまして、いろいろな証文に判がないときに、親指の印を押しまして、これを同一性の確認という方法使つておるわけでございますので、一指指紋ということでございますれば、東洋民族に対しましても十分納得が行き得ると思います。
  13. 木下郁

    木下委員 出入国管理令で入つてきた者に対しては、指紋をとつておる。その点が誤解されておるようです。そういう点については、今お話のあつたように、われわれは拇印で――また拇印自体法律的にもはつきり有効であると認められておる。日本の現在の法制下でそんなに誤解を招くようなことがあることは、やはり役所の取扱いの面に欠けておるところがある。相手が誤解するからといつて誤解した側が責任を全部負うべきものでなくて、衝に当る官庁の取扱い方が犯罪の捜査のように誤解されるようなやり方がこちら側にもあるのではないか。誤解する側だけが誤解責任を負うべきものじやなくて、こちら側の取扱いにも責任があるのじやないかということが多分に考えられます。かような点については十分配意されておりますかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
  14. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 御承知のように出入国管理令扱います範囲司法処分とは関係ございませんで、行政処分でありますので、端的に申しますれば犯罪人を扱うものではない。従いまして外国人としての人権を十分に尊重し、民主的な扱いをせよということにつきまして、入国管理局をあげて部下指導に当つておるのでございます。万々ないとは思いますが、若い警備官その他におきましては自分たちが一種の権限を持つておるわけでございますので、そういうものをちらつかせて取調べに当るようなことがもしありといたしますれば、はなはだ遺憾なことでございまして、この点は所長会議警備課長会議等会議のありますたび、並びにわれわれが出張をいたしまして警備官に直接会いますたびに、私は第一にその点を説いておりますので、入国管理局といたしましては、その点について十分な配意をいたしておるものでございます。
  15. 木下郁

    木下委員 これは早晩実施するという考えでおいでになるのですが、大蔵省の方は本年度は緊縮予算で、予算がとれなかつたということであります。しかしこのやり方については、そうむずかしい道具がいるわけでも何でもない。簡単な器具で済むことと思う。衝に当る者のやり方等訓練については多少考えなければならぬ。そういうことについては、実施するからすぐやるのだということでなくして、今からでも予備的に訓練をしておつてもいいように思う。さような点については準備をされておりますかどうか、ちよつと伺つておきます。
  16. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 この登録法によつて指紋をとることになりますと、これを実施いたしますのは各市町村の窓口におります吏員の方々でございまして、今外国人登録証明書を実際交付しておる人たちがその任に当るわけでございます。その人たちにあらかじめ教育をすることが指紋制度を確立して参りますのに一番大事なことでございまして、これはできるだけ早くやりたいと思つております。もつとも全部に講習をするとか、そういう大がかりのことは予算がとれないとできませんが、指紋がどういうものであるか、どういう程度のことをするのであるかというようなことにつきましては、もうすでに二十九度からやろうといつて、実は登録の係の人たちを一斉切りかえの準備その他に呼んでいろいろ話をいたします際に、実際問題としてはぼつぼつ始めておるわけでございます。予算がとれますればもつと徹底した教育をやりたいと思つております。
  17. 木下郁

    木下委員 最後に、これは直接この登録法関係したことでもありませんし、また先日ちよつと伺つた点でありますが、出入国管理令の中で、特別の事情のあるものについては、滞在許可を法務大臣が与える。その標準について伺つておきたいと思うのですが、原則として日本平和憲法を持つて、平和な文化的な国家として再建して行こうという一つ国是があるわけであります。その国是から考えても、また話は少し大きくなりますが、世界の歴史の進んでおる方向から考えても、人種の区別、あるいは国の違いというようなものが自然々々と薄らいで行つて人間、人類というようなものの団体政治的な制度が自然々々とはつきりして来て、今までのような国際社会というようなものでなくして、それがもつと具体的に固まつて来る方向に動くものである。またそれは望ましいことであると考えられますが、さような意味で今の日本は外地から引揚げた人もたくさんあつて、人口過剰に悩んでおる。日本政治のいろいろな問題も、最後の突き詰めた問題は人口問題である。それは考えられますけれども、しかし世界人間の住む世界全体としての領域はお互いにこれを開き、そしてお互いにこれを使つて行くという方向に行かなければならぬ。さような意味から考えますときに、やはり外国人日本における滞在許可するという差迫つた出入国管理令取扱いの問題としては、やはり基本方針としては特にその人が今の日本滞在することが好ましからずという理由がある、言いかえれば何度も刑事責任に問われるとか、あるいはまたその人が特に強力なるイデオロギーを持つてつて日本の国内において団体をつくつて政治行動をするようなことがあれば格別でありますが、そういうことがなければ、やはり原則として平和な一市民として――国籍を持つとか、持たぬとかいう意味市民ではありません。一市民としてやつておるならば、それはやはり原則として滞在は許すべきものであつて、われわれ日本人外国におる人も、その人が帰国を望まないでそこでやりたい、暮したいということであれば、やはりその人の希望は達するようにやつてもらいたいと同様に、やはり原則としてそこに特別に帰つてもらわなければならぬという理由がない限りは許す方向にあるべきものだと私は考えますが、そういう点について基本的にはどういう御方針でありますか。その点を伺つておきたいと思います。
  18. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお気持はわれわれも非常に同感するところでございますが、われわれの一番はつきりお答え申し上げ得ることは、わが国密入国をして参ります人たち波打ちぎわで全部上陸させない、これが第一であると存じます。そうしますれば、成規手続によらずして日本に入つて来るということに対しては、法律をもつて禁ぜられておるわけでありまして、まず入れない。たまたま入りましても、入つた人たちを、現行犯逮捕と申しますか、上つてすぐつかまえて、そしてそれをまたすぐ帰すということが、密航者に対しては第一のねらいであると思いまして、第一には入れないということがわれわれの主眼でなければならないと思います。ただお話のように、たまたま日本にいつの間にか入つて来てしまつた、そうしてわが国にすでに根をおろしておる、そういう人たちに対しまして退去を強制すべきかどうかというときに、ただいまお話のございましたような、一つには人道的の見地から、一つには国際的な国と国との続き柄というような点から考えまして、許すか許さないかということが問題になつて来ると思うのでありますが、ただ現場を扱つておりますわれわれといたしまして、こういう人は、要するに今のお言葉をそのまま申し上げますれば、悪いことをしない、別に害はない、そういう人は在留が認められるということが原則になりますと、朝鮮半島からそれに当るべき人が、おそらく百万を越えて来るということが予想されますので、その際に、海の線において一人も入れないで済むというわが方に十分な警備力がございますれば、これは問題なしに、そういう鉄壁の境を越えて来た者はある程度大目に見てやつてもいいということにもなろうと思うのでありますが、現在の段階におきましては、海岸線は非常に長い、それを守ります海上保安庁の船も非常に少い、しかも夜航行して来ればほとんどつかまえられないというような現在におきまして、半島から日本に参ります密入国というものは想像以上に楽にできるのではないかというふうに、われわれ心配しておるのであります。海の上でつかまえます人数はそう多くはないのであります。やはり上りまして、上陸地その付近においてつかまえられる数の方が、海でつかまえられます数の何倍か多いのであります。従いまして、そういうことを考えますと、人道的な標準を早く打出すことが、よけい密入国を奨励するような関係になることをおそれまして、われわれの方といたしましては、原則ということを申しますと、波打ちぎわ密入国者は全部帰すのであるということを、それのみを強調しておるのであります。あとで特に大臣の特別許可によりまして、ぜひとも許可すべきであるという者は、その中からすでに長く日本にいるとかいうことをしんしやくしまして、ごく例外として認めざるを得ないという者について特別な許可が与えられるというふうに考えております。
  19. 木下郁

    木下委員 最後に伺つておきたいと思うのは、今お話のような情勢ではてしがないということでありますれば、これはまた考えられることであります。しかしながら敗戦前の日本においては、朝鮮人日本国民として一緒にやつて来た。またその間には、本人は希望しないのにこつちに労働力の資源として連れられて来たというような人たちも数あるわけであります。だから特別に許可する場合には、その人が終戦後やつて来たのかどうか、あるいはその他の身辺の事情等も十分くまれておやりになるべきものだと思うし、またおやりになつていることと思いますけれども、今お話密入国した者は原則として向うに帰すのだという、その取締りの原則取扱いがあまりに強くなり過ぎますと、実際問題としては、やはり人道的に見てどうしても納得が行きかねるというようなケースもたくさんあると思います。そういう点の取扱いについては、十分今後も御配慮をしていただかなければ、冒頭に私が申しましたように、日本の長い目で見た将来の国の発展、信用というような点について、さしつかえが生じる節が後刻出て来はしないかという点が、心配されるわけであります。そういう点については十分御配慮をしていただきたいということを希望いたして、私の質問を終ります。
  20. 小林錡

  21. 林信雄

    ○林(信)委員 私は引続いて外国人登録法関係で二、三お尋ねしたい。外国人登録法は私が申し上げるまでもなく、法律第百二十五号として昭和二十七年四月二十八日にでき上り、先刻鈴木局長お話のように、十四条に指紋押なつ関係規定ができたが、これの実施が諸種の事情から遅延している、やむを得ない、こうお考えになつているわけですが、その点について少し伺つておきたい。  この規定は、それによつて登録の当初よりその登録証を携帯いたします。言いかえますれば、登録関係においてその人を的確に区別する、その意味だろうと思うのであります。これは指紋の価値からいたしまして効果のあることはもちろんであります。しかしそれが効果があるからといつて、非常に弊害があり、あるいは経費の面においてあまりに多額を要するような場合は、これは法律ではありますけれども、再検討をする余地はないものか。私はよく存じませんが、これが喜ばれない一面のあることは一通りわかる。指紋というと、普通の場合には用いられることではなくて、犯罪者の前科の調べあるいは将来再犯に備えた場合の措置としてなされる以外にほとんどないのではないか、いわば犯罪者類似扱いをされるというようなことは、人情上からおもしろくなくて喜ばれていないのじやないか。ひいては国際間の感情問題ともなろうというところにあるのじやないか。そこへ持つて行つて、人の喜ばないことをやるのにたいへんな金がかかる。今ちよつと伺いましても一応の経費として二億はかかる。どうしてもやらなければならぬことであれば、二億の金必ずしも惜しむべきではないのでありますが、何とか余地のあるものならば、これはもつたいない金になるわけである。そこで当局においてはこの方法以外に、その登録証を携帯する者を的確に甄別することの方法はないのでありますか。ないと一応お考えなつたというのでありましようが、少くともこれにかわるような方法を御研究になつたのか。これが一番いいのだけれども、これに非常に近い効果をあげるものにこういう方法がある、非常に遠い効果方法ではあるけれどもこういう方法もあるというような方法をお考えなつたことがあるのでございましようか。たいへんみみつちい考えのようでありますが、経費考えてみますと、私は一応ここで考えてみたくなる。ことにこの経費は一応実施いたします場合の経費であるのだが、将来ともにこれは切りかえであるとか、あるいは紛失による書きかえ、あるいは汚損その他による書きかえの経費等を見ますと、従来よりは暦年やはり経費がふえて来るのではないか。そんなこともございます場合において、根本的な問題を、確定的な法律を土台といたしまして、軽々に改正いたすというようなことを主張いたすわけではありませんが、考えます参考に資したいと思いますので、方法についてどういうことをお考えになつておるか、予定されたものがどの程度のものでありましようか、あらためてお伺いいたしたい。
  22. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 われわれの方も指紋制度にかわるいい方法がないだろうかということにつきまして、いろいろ研究いたしてみました。特にヨーロツパ方面におきましては写真が発達しておりまして、正面からとるだけではなしに横からとる。そうすると耳の形が出て参りますので、そういう立体的な観点で、その人の同一性を立証し得るというようなこともやつておるようであります。この点は非常にいい方法ではないかというので研究いたしてみたのでございますが、実際に当りまして、外国人登録証明書にどういう偽造並びに変造が行われておるかということを見ますと、人の外国人登録証明書を持つて来て写真をはがし、自分のを張つてそれを使うというケースが非常に多いのであります。そうなりますと、せつかく耳の写真でその人であるということはわかるのでありますが、また同じように写真をはがして使うということが現われるのでございまして、必ずしもこの写真制度が完全なものではない。一番安全なのは指紋をとるということが、その本人窓口まで出て行かなければならないそのときに、たとえば偽造の、人のを使つてつた場合も、照合をしますれば本人であるかどうかもすぐわかります。一番数の多いわれわれの心配は、最近再交付という例が非常にふえておるのであります。たとえば外回人登録証明書をなくしましたというので、なくした証明を持つて参りますれば、新しいのを交付します。そのときにはたしてなくしたのかどうか。前になくしたと称するものが他に転売されておる。それを写真を張りかえて自分写真をそこへ張つて、名前だけは違いますが、それを使つておる。あるいはそれが密入国のブローカーの方に参りまして、一つが一万円で売られておるというような例がたくさんございます。そういう点を本人であるかどうかというのを見わけますのには、どうしてもこの指紋以外には方法はないという結論になつたのであります。まあいろいろ方法その他研究はいたしましたが、どうも指紋にしくはない。しかも一本を押しておくだけでも十分効果がございますので、その程度であれば、そうみんなにいやな思いをさせないでやり得るのではないかというふうに考えております。  それから予算の面につきまして、先ほど一億ということを申し上げたのですが、これは最初の年に大勢の人を教育して、そこまで持つて行くというために相当な費用がいるわけであります。あるいはまた指紋の機械とかそういうものが、簡単ではありますけれども、各市町村に配りますと、これがまた莫大な数になるのでありますが、そういう初年度の費用のために二億という金がかかるのでございますが、これが二年、三年先になりますれば、そういう費用は相当省けるということになりまして、将来の問題としましては、いくら緊縮予算でありましても、これは削られるというような経費ではないと確信をいたしております。
  23. 林信雄

    ○林(信)委員 やるとしますれば、一指法でやるのか、十指法でやるのか。これは何といつても的確な点からすれば、指一本よりは十本並べた方がいよいよ的確だろうと思う。大分これは経費が違うのでございましよう。何でも聞くところによりますと、入国管理局ではずつと前まではやはり十指でなくちやいかぬというので十指法論者であられたらしいのだが、最近一指にかわられたというような、デマかもしれませんが話を聞く。犯罪の捜査関係における各国の鑑識課等では、これはみんな十指法でやつておるそうですが、的確な点ではこれが一番いいだろう。おそらく方法は、事務的にもまた経費の面からも一指でやれば安いので、まあまあということではないかと思うのですが、そうでなくて、もう一指で十分だという何か学問的というか、科学的な説明があるのでございましようか。デマかもしれませんが、以前には十指法を主張せられながら今お答えになつた点にかわつたとしますれば、どういう理由でございましようか。これが一点。  あと一括して申し上げますが、先刻から言つておられますぜひやりたい、こういふ指紋方法があればと言われる点から見ると、あまり御研究になつておられないように思うのですが、これはもう一ぺん研究されたらどうだろうかと思うのです。なるほどお話のように、写真をいかにうまくとつても、写真をはぎとつて張りかえるのですから、これの多いことは私も知つております。多いというのは、あなたの力からお示しになつた資料によれば、二十七年から二十八年にかけて一年間に合計百十件、その他紛失による再交付その他のものが五千二百六十七件に達しておる。この偽造関係は、これは写真ならすぐはぎとつてやれますが、しかしこれも市町村で写真を張りましたものをそのままやるのでなくて、検の打出印ですか、型のつくもので、再検査をされてやるのですから、そう簡単にはげないだけの方法はとつてある。その打出しまで偽造するということだけですでに困難ですから、かなり簡単にやれそうな方法が、この程度の百十件くらいしかないのじやないかと思う。これをやるならどうしてもやはり直接町村の係の者を買収して、汚職の結果によらなければ、そう簡単にやれない。これだけの方法ですから、この程度に不正を押え得るのです。写真つたら簡単に行くのだから、今写真を張りつけておる登録証のようなものを、もう少し考えて、今度は台紙みたいなものに張つてというようなことになると、自分の顔の写真を張るには、型を打つようなわけには行かない。外のバックがいる。何かバックのうるさい――私も正直なところ思いつきで簡単に言えば場当りの意見を今言つておるのですが、そこのところをもう少しうるさくしたらできるのじやないか。そうしますと、そういう何かの方法でやりますれば、指紋をとるよりは経費が少くて済むのじやないかと思う。初年度そのくらいで、あとは大したことはないと言われる。私も大したことはないだろうと思つているのですが、それにしたつて現存の方法よりはいくらかよけいかかるだろう。ことに先刻から申し上げておりますように、いやがられる面がある。それをだれかが臆測して、警察方面で思想の取締か何かをやられるのじやないかと言うが、そういう目的がありますれば、これとタイアップして、堂々とその面でやるならこれはまた別でありますけれども、とにかく目的は何もないのだ、ただ日本在住を証明するための登録証一本の目的でこれをやつているんで、人定別ができればいいということであれば、これにかわる方法か何かあれば――何をやつたとこで絶対に不正をなす者はないということはないのじやないかと思う。もつとも指紋となりますれば、それはやはりよほど確実な方法であります。係の者に不正をさせるということになれば、同じ登録証を二通、三通出させることは、できないことじやないのですから、絶対に不正を免れるということは困難だ。これはもう少し考えてもいいのじやないか。できるだけやつて、そして出て来るものならばこれはやむを得ないのじやないか。それがただちに国の存在の根本をゆすぶるような重大な問題であるといえば格別なのです。これはそこらにおつて取締りに都合があつたりとか、あるいは税金をとる面においての都合があつたりとか、いろいろ不都合はあるにしても、そう根本的のものじやないし、この際、財政の窮乏しております折から経費の面ともあわせまして、再検討をいま一度お願いすべき問題じやないかと思うままに、これをお尋ねしているわけなのですが、いやもう絶対にそんな余地はないと言われるのか、そこら辺を伺いたいのであります。
  24. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 われわれの方も、外国人登録法ができました当時から、指紋ということにつきまして、一体どうしたら一番有効であるかということを考えたわけでございますが、特にこの二十九年度からは、法務省としてはやろうという決意を固めまして、そのために半年前から準備をしておつたのでありますが、不幸予算の都合でできなかつたのでございます。一指か十指かということにつきましても、当初からわれわれとしては研究しておつたのであります。これは登録関係同一性を確かめるという観点から申しますれば、一指で十分なのです。十指をとる必要はない、また十指をなぜとらないかということになりますと、たとえば一斉切りかえというようなことを考えますと、窓口へ一人々々出て参りまして、十本の指をとるということは、一人につきまして非常に時間をとるのでございます。そういう時間的の関係から一挙に六十万の人をやらせるということは、普通の、昨年やりました登録の切りかえだけでも、えらい混乱を起したところもございます。その際に十指をやるということは、市町村の場合においてはとうてい引受けないというような事態もありまして、登録自体としては、一指で十分であるという確信を持つております。一向十指の必要はないということになり、十指でない方が施行上便利であるということで、一指指紋ということに法務省としては省議を決定していただいて、予算を作成するところまで来ておつたのでございます。その他の方法につきましても、三年前に登録法をつくりまして、指紋ということを入れたから、それでもうあとは研究しないでいい、指紋に一路邁進すればいいという簡単な考え方でなしに、その他の方法につきましても、いろいろ研究をいたしたのでありますが、この一指指紋を二十九年度にやるという決心をしますまでに、十分な検討の結果ここに至つたのでありまして、われわれとしましては一指は必要にして十分である、これ以外に方法はない、しかも予算につきましても、一斉切りかえの年を避けて実施すれば、そう大した経費はかからない、将来は費用は漸減して行くであろうということで、これ以外に方法がないという結論になつて、確固たる確信をもつて今日提出しておるわけであります。
  25. 林信雄

    ○林(信)委員 そういうことで御研究願いたいと思います。  最後にいま一点伺つておきますが、なるほど指紋をもつてしますれば、十指でなくても一指によりましても、登録を受けたものの登録証偽造、これは困難になつて参ります。激減することはおよそわかるのですが、すみやかに届出をいたしまして、すなおにこれを交付を受けるものはよろしいとして、全然届出をしなくて、やみの居住者として居住しておる外国人といいましても、比較的少い外国人の中にはあるかもしれませんが、それが東京であつたり関西方面であつたり北九州ということになりますと、かなりの数に達しておるやにうわさされております。正式に許可の申請をいたして参りますものは、非常に厳格に取扱われてさばかれておりますけれども、全然やみからやみに生活いたしておりますものには手がつけられないのじやないかと思います。外国人登録法関係によつて外国人の居住をここに明確にしようといたしますならば、これらやみのものを処置をしなければいけないと思うのであります。しかるにこれは入国管理局あるいはその他の政府機関によつて、すでにやらなければならなかつた問題であると存じますが、これはすでにやられたことがあるのでございましようか、ないといたしますならば、今後どういうふうにこれを取扱われるのでしようか。一体密入国あるいはその他の方法によつて入国している者の数はどのくらいと予定されるのでしようか。なかなか調べられることは困難だろうと思いまするが、的確に現われて参りますのは、事件か何か起した場合でなければ調べはつかないのではないかと思いまするけれども、できる程度において御調査があつたのでしようか。将来どうされるのでしようか。この点をお伺いいたします。
  26. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 登録を受けないでわが国に在住しております外国人の数はわれわれも実は知りたいのでございますが、ある人は二十万も三十万もいるだろうと言う方もありますが、われわれの考えておりますこの程度ではなかろうかという数字を申し上げますれば、私は十万にはなつていないだろうと思います。今六十万の外国人がおりますので、せいぜいその一割程度ではなかろうかというふうに見ております。これは別に深い根拠があるわけでないのでありますが、たとえば大阪であるとかその他特に朝鮮人たちの密集しております部落において戸口調査というようなことで調べて参りますうちに、どうも十人に一人くらいは不法入国者、登録を受けない人がおるというような見当からいたしまして、大体その程度のことではないだろうかというように考えております。一昨年登録の切りかえをやりまして、新しい登録証明書を発行いたしたのでありますが、その際一挙に四万幾らという数字でございますが、登録の人数が急に減つたのであります。これなどは二重登録をしておつたということがはつきり言えると思うのでありますが、以前の外国人登録証明書と一昨年渡しました外国人登録証明書とを比べますと、品物が少し複雑になり、紙も上等になり、はがしてもすぐわかるというようなことで、前ほどには偽造が簡単には行かないというふうになつてつた関係もございましようか、あるいは二年目ごとに登録証明書は交付を受ける、こういう制度はつきり確立したということの結果でございましようか、地方におきましては、かつて外国人登録証明書を持つておらない、いわゆる登録をしておらない人々が相当大きな顔をして集会その他において発言をしたり、いろいろ必ずしも好ましくない行動を大ぴらにとつてつたのでございますが、最近におきましては、登録切りかえ後におきましての一つの現象としましては、外国人登録証明書を持つていない人、いわゆる登録をしていない人は表向きそういうことをやらない傾向にございます。陰に隠れて、表向きに出て来ない。この点はよほど登録制度というものが普及しまして、一つ効果を現わして来た結果であると思つて非常に喜んでおるのでございますが、さらに指紋制度をこれに合せますれば、相当この登録制度というものが確立いたしまして、不法入国者かどうかということが非常にはつきりしまして、その人が日本の国で生活をいたしますのに、どうしても登録しなければならないようになつて来るのではないか。ただもぐつてつてはなかなか生活面からむずかしくなるというふうに考えておるのでございます。不法入国者、登録をしない人々に対してどういうような取締りをやつておるかということでございますが、この点は今までも治安当局と密接な連絡をとつておるのでございますが、先ほど申しましたように登録の切りかえということが一つの大きな方法でありまして、切りかえごとに何万という二重登録人口が減つて行くというようなことも一つ方法でございますし、またそういう際に登録証明書を持つているかどうかということがはつきり現われて参りますので、持つておらない、いわゆる登録してない人は、この法によりまして処置をいたす。治安当局ともいつでも緊密な連絡のもとにやつておりますので、来年度の切りかえを経ましてだんだん参りますうちには、密入国あるいは不法滞在者、未登録者というような数もだんだん狭まつて参ろうと存じております。
  27. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ただ私当局に承つておきたいのは、もうすでに三年になるのですが、ほんとうにやる意思があるのかどうか。また延期々々として、そのまま中止してしまうのであるか。この点をひとつお尋ねしたいのです。本年度一年だけということについては、何か特別にめどがあるのか。一年だけでいいというめどがあつて、おやりになつておられるのか、この点を伺いたいと思います。
  28. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点はめどがあるというふうに確信を持つております。これが最後の延期の願いである。三十年度からは万難を排してやる。たとい緊縮予算であつても、二十九年度に要求した一億というような金は、三十年度においてはかからないのでありますから、十分実現し得ると確信を持つております。
  29. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 当局の御苦心はよくわかるのでありますが、この点はいろいろ治安の関係、ひいては経済関係にも及びますので、ぜひおやりを願いたいと私どもも希望しておるのですが、ただ一部の方面から反対をされておるためにやれないというならば、その障害を打破ると申しましようか、とりのける努力を御当局がなさらなければ、いつまでたつても私は延び延びになると思うのです。それに対して御努力をなさつておるのかどうか。この点は単に予算だけに障害があるのか、それともただいまの御説明ではよく思つていない連中がたくさんおるということですが、これに対する措置をやられておるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  30. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今回もう一年延ばしていただくようにお願いしておりますのは、予算の面だけでございまして、実はこの半年前から十指指紋実施するということで、われわれ当局は各府県に対しましては、よりより会議をいたしまして、準備をしておつて、出発したといつてよろしいのであります。法務省といたしましては、省議決定をいたしまして、大蔵省に予算を持ち込むということになつてつたのでありまして、これを実施するということについては確固たる確信を持つておるわけであります。これが延びましたのは、別にほかの団体から圧力があるとかいうようなことは絶対にないのでありまして、もつぱら新しい緊縮予算で、閣議におきまして、新規事業はしないのだという大前提を置かれた関係で、もう一年やむを得ず延ばすということでございます。
  31. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ぜひ早く御準備なされまして、御実施なさるよう予算の獲得に御努力願いたい。私はこれだけ御希望申し上げておきます。  さらに進んで先刻同僚委員木下委員からもお尋ねがありましたが、特殊な事情に基いて、たとえば旅行目的で日本に入国したが、家族とかいろんな関係でどうしてもこちらに登録をしなければならないという特殊事情によりまする場合にも登録ができるように、管理令並びに登録令の改正をするような御意思があるかどうか。御当局ではこれでもう大体万全なものであると思うかどうか。これは事情の変化その他のいろいろの社会情勢の推移に伴いまして改正をなさる御意思もあるのであるかを承りたい。
  32. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 登録法出入国管理令と同時に法律として効果を与えられたのでございますが、外国人登録法出入国管理令とは、ちようどたての両面のごとく、うらはらに相なつておりまして、相関連する問題でございます。出入国管理令につきましては、この制度日本制度としてわずか三年の歴史しかございませんで、新しい制度として施行いたしました関係で、三年の経験を積みますと、種々改正を要する点があることを発見いたしております。ただいま、この改正のことにつきましては、部内におきまして鋭意研究をいたしておりますが、お話のような点にもし必要があれば、そういう点につきましても十分改正をする用意はあるのでございます。
  33. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 最後に一点だけ……。外務大臣の許可を経て登録を許されるような場合、大体これには何かめどがありますのでしようか。基本方針とか要綱とかいうものがあつて、それで外務大臣が許可をすることになつておるのでしようか、それとも、さようなものはないけれども、外務大臣が必要と認めた場合に許可するのか。何か基本的な方針と申しましようか、条件と申しましようか、要綱みたいなものがおありになれば御説明を願いたいと思います。
  34. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、正当な方途をもつて日本に入りまして、日本での在留期間が経過しまして日本に居残つたというものについて、これはやはり法務大臣が特別許可をいたしまして在留を認めるという制度になつておりますが、その基準といたしまして公にいたしておるものは別にございませんが、その個々のケースによりましていろいろ差があるかと思います。原則的にはできるだけ法の命ずるようにいたしたいと考えておりますが、常識的に申しまして、こういう人は日本のためになる、あるいは亡命のような人は、たとい在留資格のとり方が間違つておりましてもやむを得ない、日本に置かすべきであるという結論が出ますれば、在留を許可いたしております。
  35. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今の問題は国際関係であるとか諸般の事情を考慮されるのでしようが、本人の家庭の関係、身分関係などについても、たとえば旅行で日本に入国を許されたのですが、期間は経過した、しかしながらその本人自身がおらなければ、すでに長い間日本登録されておる外国人人間的な立場と申しましようか、いろいろな関係に支障を生ずるような場合、先刻木下委員からお尋ねになつたような諸般の事情をも考慮されておやりになつておるというように承つておいてよろしいのでしようか。要するに、国際関係とかなんとかいう関係もありましようし、あるいは政治的な意味もありましよう。しかしそれに加うるに、個人の人間的な生活の面をも考慮されておきめを願つておるようなことになつておる、さように承つてつていいのでございますればけつこうだと思います。
  36. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 個々のケースにあたりまして十分諸般の事情を考慮いたしますが、ただいまお話がございました家族関係というようなこともその一つの要素に考えております。
  37. 井伊誠一

    ○井伊委員 関連しまして一、三お尋ねをしたいと思います。この登録法の中の十四条や十六条の実施だけが延期をされてあつたわけでありますが、そのうち去年延期になつ事情は、予算や何かの関係ではなくて、もつぱら日韓会談の調整のために役立たないというようなことで延期してあつたというお話であります。そういう際に各種の団体から何かこれに対する故障をなしたということで制肘を受けて延期をしたということでないかという面もあるのでありますが、しかし大体においてこれを実施することは三年前に明らかになつておるのであります。韓国との関係もその一例でありますけれども、これを実施するということになると、指紋をとるということによつて、韓国人がこれを喜ばない、韓国また実際上喜ばないというふうに見えるから、国交調整の上にやはり考慮を払つたのではないか、こういうようなことも考えられる。それで中国であるとか、そういう方面も、登録法そのものには別に異議はないけれども、指紋をとるということが多少故障になるという考え方が各国にあるのではなかろうか。そこでアメリカであるとか、カナダであるとか、この指紋制度実施しておる国においては、これははなはだ了解がたやすいけれども、他の欧米諸国その他の国々などにおいても、あるいはこの実施に対してあまり協力的でない、むしろ不賛成である。これはどういうことになるか、実施してみなければあらかじめわからないかもしれませんけれども、しかしこれを実施したあかつきにおいては、やはりこれがスムーズに行われるということをこちらの方は期待しておるわけだと思う。そういうことについては、諸外国指紋をとるというこの制度に対して何か反対の意向というか、そういうことがないのでありますか、その点をお聞きしておきたい。
  38. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 かつてのヨーロツパのある大国から、日本では指紋制度登録法によつて採用しておるようであるが、ヨーロッパでは指紋制度はあまりやつていないので、実際何か特別な扱いはできないかというようなことを、公式ではございませんけれども、内々私に直接に話に参られた人もおります。それから東洋関係におきまして、特に朝鮮関係におきましては、現存のところ韓国政府から表向きにこれに対して日本に反省を求めるとか、そういうようなことは一切ございません。ありといたしますならば、いわゆる民戦と申しまして、北鮮側の人たちが非常に活発な政治活動をやつておりますが、そのうちの一つのスローガンに反対のスローガンを掲げておるのを見たことがございます。その点につきましては、当局としましてはさして問題にいたしておりません。従いまして現在考えております十指指紋という点につきましては、各国にもわれわれの方の説明によりまして十分納得せしめ得るものと確信いたしております。
  39. 井伊誠一

    ○井伊委員 そういうお見通しであれば、ただもつぱら予算関係ということで、たいへん法務省の方ではがんばつておられるように見えますが、それは予算の方が余裕があれば、おそらくこの制度に国内としては反対すべきものはない、そう思うのであります。問題は、今実施しないのでありますけれども、実施したあかつきにおいて実際は故障が起きて来るのではないか。一国の国内法をつくるのに何も遠慮はないといえばそれまででありますけれども、実際は外国人登録をするのでありまして、ことにそれはたくさんの国に関係があり、その中には必ずしもこちらの思う通りに協力してくれるとのみは予測ができないので、すぐ大丈夫というお見通しというのは、これは前に実際当つてみられたようなことがあるのでしようか、ただいま伺つた程度のことで、大体そうお考えになつておるというのでありますか。
  40. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 指紋と申しますと、すぐに十指指紋で、犯罪人捜査に使いますのと同じ方法でとるというふうに前提を置きますと、はなはだ各国方面においては心配をする向きがあるのではないかと思いますが、ただいま日本に来ておりますアメリカ軍あるいは極東軍などみな自分のカードを持つておりますが、それには必ず指紋が一本押してある。その程度でございますれば、むしろ私は国際的な慣例にそむかない方法であるというふうに考えますので、各国に対して十分納得せしめ得る自信があるということを申し上げたわけであります。
  41. 井伊誠一

    ○井伊委員 この登録申請をする場合に、「指紋原紙に指紋を押なつしなければならない。」と規定しております。これは私ちよつと実際の状況がわかりませんけれども、これはただ一つのものをとるのでありますか、それとも申請者の写しというものが府県知事のところ、あるいは法務大臣のところへ送られることになつておるのでありますか、それに付属したものとしては、指紋の方もやはり三通とるということになるのですか、そこのところをひとつ伺いたい。
  42. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 外国人登録を申請します場合に、市町村の役場の窓口へ行きまして、外国人登録申請書をくださいということを申し出るわけです。そのときに役場自身に一つ原簿を持つておりまして、それにも一つ押してもらう。それを写しまして、今度は外国人登録証明書という各個人の持つておりますカードを渡します。そのカードには本人写真張つてありますし、いろいろ内容が書いてありますが、そこにも一つ押すわけでございます。従いまして、ただ一つ押せばいいというわけではないのであります。
  43. 井伊誠一

    ○井伊委員 そういたしますと、市町村にとつておる指紋原簿と申しますか、それから府県知事のところに行つておるのと、法務大臣に行つておるのは写しということでありますが、写しというのはどういうことでありますか。
  44. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 説明が足りませんでしたが、いわゆる原紙というものを二枚とるわけでありまして、一つが役場に残り、一つが知事を通して法務省の方へ参ります。
  45. 井伊誠一

    ○井伊委員 これらの原票というものが市役所、町村役場に備えられるというのでありますが、これに対する保管の方法、それからその責任というか、こういうものは内地人の戸籍の関係とはよほど違うのであります。ことに指紋をとつておくというようなことになりますと、その保管方法についてかなり厳重に考えなければならぬのではないかという気もいたします。単に戸籍の場合において裁判所の方にそれと同様な複本が保存されておるという程度のこととはよほど通うのではないかと考えますが、この保管方法責任の点について伺いたい。
  46. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 この外国人登録と申しますことは、日本における住民登録、あるいは元の言葉で申しますと寄留とか戸籍というものに当るわけでありますので、戸籍吏員が戸籍簿を保管すると同じような扱いをいたすのであります。
  47. 井伊誠一

    ○井伊委員 実際におきましては日本人の戸籍の台帳というようなものの保存の仕方はきわめて平易なものでありまして、あえてそれほど金をかけるというものでもなければ、その原簿を箱の中へつつ込んでおくという程度のことであります。けれども、たまたまその身分証明の基本を失わしめるような変造が行われるということに備えるための厳重な制度である、その基本になる申請書のみでなく指紋の原紙もともにあわせてこれを保管されるという場合は、どうも普通の戸籍の台帳を市町村役場が備えておくという程度のことであつては、おそらく危険なことになるのではないかということを考えるのでありますが、これに対する特別のお考えはないのでありましようか。
  48. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 お話のように戸籍も私は同じと思うのでございますが、その人の日本における居住の根拠になるものでございますので、その保管につきましては十分各市町村において配慮をいたしております。登録原票と指紋原紙はあるのでありますが、市町村役場において保管はいたしますが、現在におきましてもやはりかぎのかかりました金庫とは申しませんが、かぎのかかつたキャビネットに保管をいたすことになつております。
  49. 井伊誠一

    ○井伊委員 これを実施するに当つて二十九年度の予算で請求されますところの予想しておられた額は二億ということでございますが、実際におきまして、今お考えになりましたようなそういう保管のための御考慮などは、この一億という金額の中にはどうも含まれていないのではないかというふうに考えられるのであります。今金庫とまでは言われないが、かぎのかかつたものというようなお話でございますが、これはやはり相当責任が重くなると思うのです。原票が紛失するというようなことは考えられないと思うけれども、市町村役場などは火災等も起きるというようなことも考えると、一挙に原票をなくしてしまつて――証明そのものは法務省の方にあるのではありましようけれども、しかし責任の点から言えば、やはり普通の戸籍の場合よりももつともつと償いがたいところのめんどうが起きて来る。だから責任はやはり重くなると思います。そうするとその保管にはやはり普通の戸籍の台帳を保存するような程度のものではなく、もつと厳重なものが必要になると考えられるのであります。そういたしますと今の三億円というようなところでも、はたしてそういうものを完全に保管し得るような設備をも考慮に入れておられるのであるかどうか。それをお聞きいたします。
  50. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 予算の面におきましては備品費を設けまして、そういう点につきましても考慮いたしておるようなわけであります。
  51. 井伊誠一

    ○井伊委員 これで終ります。
  52. 小林錡

    小林委員長 次に交通事件即決裁判手続法案を議題とし、質疑を続けます。質疑の通告がありますからこれを許します。林信雄君。
  53. 林信雄

    ○林(信)委員 私はこの際法案の各条について若干の疑義をただしたいと存じますが、便宜法案の法文の順序に従つて参ります。従いまして第一条、この法律趣旨「この法律は、交通に関する刑事事件の迅速適正な処理を図るため、その即決裁判に関する手続を定めるものとする。」字義は明瞭でありまして、この趣旨自体につきましては、前段、交通に関する刑事事件であること、及びそれが迅速適正な処理をなされる等、即決裁判をされることについての大体の趣旨は異論がないのでありますが、「交通に関する刑事事件」という点については第二条に特に関係が深いのでありますから、この際質問をいたしますが、即決裁判という文言については先日これが適切であるかどうかについて申し上げたような次第で、私はこの即決の文字は必ずしも適当でないという考えを持つておるのであります。その点は先日の質疑応答にゆだねましてこの際省きますが、ここで私の申し上げるのは、「迅速適正な処理を図る」という「迅速適正」の字句なんです。このことは裁判が迅速適正であらねばならないことは、この交通事件独得のものではないのであります。憲法第三十七条には言葉は違いますけれども、この趣旨は現われておるのであります。すなわち「公平な裁判所の迅速な公開裁判」こう言つているところに裁判の適正であることはおのずから出ておりますし、迅速の文字はそのまま現われている。しかしながらこの法文が公開裁判に主力を置いたといたしますならば、刑事訴訟法の第一条には、すなわちこの交通事件即決裁判手続の母法となるところの刑事訴訟法第一条にはまた同じことが載つている。「適正且つ迅速に適用」云々という文字となつて現われている。同じような趣旨ですから、同じような趣旨を書いてもかまわないし、場合によればこの法律の建前として、まずその趣旨を書く場合にはこれまで書く方がいいんだ、こう言えばそうも考えられますけれども、あまりにも当然のことを書きますと、当然のことの中にさらに交通事件は迅速適正なりとの印象を――迅速はよろしいとして、非常に適正の中の適正を企図している法律のごとく考える。しかるにその方法たるや、きわめて簡易に、きわめて即決を目的としてやつている。何だか相いれない感じもするのであります。しからばこの迅速適正を除外してこの法律趣旨を表わし得ないかといえば、これは表わし得るのであります。すなわち目的とするところは交通に関する刑事事件であり、その手続を特別簡易なものにするという趣旨が何といつてもこの裁判手続の特異のものであるのですから、あまりにも原則的なものを入れると、考え方によつてはその特異性というものを表わすことが稀薄になつて来るとも考えられる。これはかような場合の立法的な措置でありますから、私は以上の観点よりこれは一考すべき問題ではないか、かように考えますので、その点どういうふうにお考えになりますか、なお将来どうお考えになりますか伺つておきたいのであります。
  54. 下牧武

    ○下牧説明員 この「迅速適正な処理を図るため、」ということを入れましたがために、ほかの事件は迅速適正じやなくてもよろしいということには決してならない、またそのつもりでもございません。ただ特に交通に関する事件は早くやらなければいけない。しかしながら早くやるだけじやいけませんので、やはりここに適正を期せなければならない。普通の略式命令手続でございますれば単なる書面審理でやつているのを、本人を一度前に呼んで裁判官が確めた上で裁判をするという点でその面の適正化を考慮したという意味で、交通に関する刑事事件について特に迅速を期するとともに、半面適正な面も考慮いたして即決裁判に関する手続を定めた、こういう気持を出す意味でかような用語例に従つたのであります。当然のこととおつしやれば当然のことでありますが、一般にこういう当然のことを書いた用語例の法律もたくさんございますので、その例にならつたというわけでございます。
  55. 林信雄

    ○林(信)委員 およそそういう考え方があることももとよりわかるのでありますが、少くともその法律の実体的なことを表わそうといたしますには、私が申し上げたように特異なものを特異なものとしてなお表わすことが適当でないかと思うのであります。ことにこれに加えて取扱い事件が交通に関する刑事事件であるということと、裁判が迅速になされるという点をここに表わしておくのはよろしいとして、いわゆる即決ということは早くなされるという意味だと思うのでありますが、その間の手続として、勢いこれが簡易な手続になるのだということだけは表わしておくことが、この手続をきめておる法律をスムーズに施行する方法ではないか。第一条にまず簡易の手続によるということを書いておく方が――お話のように迅速適正というわかり切つたことでも書いておくというならば、簡易な手続は法文全体をながめれば自然にわかることでありますが、わかることをここに書くのでありますから、これは非常に重要なことであつて表わしておくべきではないかと思うのであります。これが特に表わされなかつたのはどういうお考えに基いたものでありましようか。表わさない方がいいとお考えになつたのでありましようか、あるいは考えてはみなかつたとおつしやられるのでありましようか、この点はいかがでありますか。
  56. 下牧武

    ○下牧説明員 その気持は即決裁判という言葉で表わしたつもりでございます。この言葉が適切かどうか、これは御批判の余地のあることと存じますが、最初の考え方では、これをずつと簡易裁判という言葉で表わして参つたのであります。しかし簡易公判手続と混同されるおそれがあるということで、即決裁判という言葉から簡易にしてかつ迅速にやるという気持が出るのではなかろうかということで、こういう言葉を使つたわけでございます。
  57. 林信雄

    ○林(信)委員 一応順を追つて行きたいと思いますから、一条はその程度にして二条に移ります。これはこの法律の定義であります。いわゆる交通に関する刑事事件の定義を明らかにする。従いまして第一条との関連において、本法の対象となるべき刑事事件が表示せられておるのであります。その対象となりますものは、ここに掲げております道路交通取締法またはこれに基く命令に違反する罪に当る事件である点について異論はありません。私がここで思いますことは、ひとしく交通関係事件であつて道路交通取締法関係以外の交通事件も、この際この法律の対象にするということが適当ではないかと考えるのであります。その一は、これはたいへんやつかいな問題だろうと思うのでありますが、同じく交通の一種でありまする、陸の通路交通の関係に対しまして海の船舶関係の規則違反がある。これらの関係をこれに含められないのは、おそらく船の性質上たいへんやつかいになるからだということであろうと思うのでありますが、将来はなおかつこれは考えられる余地があるのであります。陸の交通に加えて海の交通関係を、これによつて簡易な手続で処理するということも必要な面があるのじやなかろうか。なかんずく船員関係の住所はやはり転々する傾向を持ちます。住所がかわらないまでも、事件を起した後に他の船に乗りますると、航海の関係上検察庁及び裁判所へ出頭することがなかなか困難な場合が多い。すなわち検察庁及び裁判所からいたしますと、事件を進行することにはなはだ不都合な場合が多いのであります。これらのものも通常の事件に先だちまして、簡易な手続で早く処理し得る事件は処理するのが適当ではないかと思うのであります。しかししかくさように簡単なことではないと考えるのでありますが、これについてはどうお考えになりますか。  それから同じく陸の交通事犯関係において考えられますことは、刑法第二百九条過失傷害の罪、同じく三百十条過失致死の罪、この関係のうち交通事故関係のものはひとしくこの法律の対象にしてよろしいのではないか。続いては同法百二十四条の往来妨害罪――といつても体刑を求刑するようなものは別なのです。罰金刑に相当する事件といつたようなもの、同じく百二十九条過失往来危険の罪、同じく同条二項、いずれも罰金刑に相当する事件程度であります。これらのものは、やはり事件が起りましてその現場の新しい場合に、関係者は大方は道路交通関係の諸君であります。これらの者の交通事故関係事件だけを対象としましてこのうちに入れておきますれば、事件処理の上において非常に便宜じやないかと思うわけであります。区別をつけまするには、道路交通取締法関係としますれば範囲が非常にはつきりします。といつて、今私のあげましたようなものを法文に明瞭にいたしておきますれば――もちろんこれは不明瞭なわけではありません。実益上から行きますれば、必ずこれは実益があると思うのであります。かような事件は略式でやつておる程度のものがどのくらいあるか知りませんが、多くは港湾関係事件であるとは思うのでありますけれども、拙速主義でやります方が巧遅をねらいまするよりはむしろ正確に行くのじやないかと思う事件関係でありますから、幸いにこの種の法律をつくりますれば、むしろその対象にすることが適当ではないか、かように考えますが、いかがなものでありましようか、御意見を承つておきたいのであります。
  58. 下牧武

    ○下牧説明員 この法律の対象となります事件は、逐条説明にも述べておきました通り、道路交通取締法、同法施行令、それから昭和二十四年の総理府、運輸省の共同省令の第一号、この三つだけでございます。このほかに、ただいま仰せになりました船舶関係のもの、それから業務上過失致死傷に当る刑法関係のもの、また道路運送法、道路運送車輌法、それから各地方自治団体で出しております条例の交通関係のもの、こういうものが予想されたわけでございます。そのうち、まず刑法関係の交通事故を伴う過失致死傷の問題でございますが、これは捜査といたしましてはなかなかむずかしい事件でございまして、新しい捜査官ではなかなかこなせない性質のもので、私どもよく言われておつたのですが、失火とか、交通事故とかいう過失犯をちやんと捜査できるようになつたらとにかく一応一人前だと言われるくらいのもので、この過失事件調べるということはそう簡単なものではございません。それでこれをこういう定型化したものの手続に乗せるのはどうも不適当ではだかろうかというので、刑法犯は一切省くことにいたしました。それから船舶関係でございますが、船舶関係事件というのも、これは特に特殊の専門的知識を要しまして、普通の捜査とはちよつと骨が折れる事件で、場合によつて、それを検証いたすにいたしましても非常に手数がかかるような事件でありまして、簡易に処理するということ自体が、現在のところ沿わない事件であります。それから事件数にいたしましても、これが非常に多くて、その処理に忙殺されるというほどの性質のものではございませんので、無理をしてこの手続に乗せる必要はなかろうというので、その分も除きました。それからそのほかの条例における交通関係事件とか、あるいは道路運送法あるいは道路運送車輛法なんかの違反の事件は、あるいはこの手続に乗せてもいいかと存じましたけれども、数が比較的少うございます。それでとにかく今度の手続は新しい試みでございますので、一番事件として多い事件で、その処理に忙殺されておるもののみを取上げて、一応この手続実施してみてその実績をよく見たいという気持から、その範囲をうんと局限したわけで、陸運関係におきましても、ただいま申し上げたような道路運送法それから道路運送車輌法というものを省きまして、ほんとうに今事件の処理に悩まされておる、中心となる事件のみにこの対象を限つた、こういうわけであります。
  59. 林信雄

    ○林(信)委員 御説明の趣旨はある程度わかるのでありますが、ただ説明によりますと、この手続関係の裁判官は、かなりなまの人が当るような印象を受けるのですが、裁判のことですから、なまの人でいけないことはよくわかりますので、いかなる裁判も練達堪能の士が当らなければならぬ、これが理想ですが、練達堪能と言えないまでも、少くとも特殊の事件関係ですから、交通関係の特殊の知識を持たざる者には特にこれを持たせまして、そうしてこれに当らせるということが適当ではないかと思うのです。そうなりますと、一種の交通事件の専門屋さんになるのです。私が先刻あげましたようなものの全部ではありませんけれども、少くとも交通に従事するものの過失関係事件等はこれに含めましても、専門屋さんならば、過失事件というものは特にその審判に困難を感ずるようなことはないんじやないか。繰返しますようですが、実際必要があると私は思うのでありまして、むしろ早い手続によつてそういう審理がなされますと、実は被害者と被害を与えたものとの別の意味のトラブル、民事関係等のこともいい影響を与えて早くおちつくのじやないかと思つているのですが、刑事の処罰関係がきまらないと、とかくその面の解決がつかなかつたりするような例が多いのであります。全体として現われました刑事政策の面から思いましても、裁判の衝に当る裁判官の不便は大してないことを思いましても、これはある程度のものを入れるべきじやないか。ことに法の体系から行きますと、すでに御研究になりました道路運送法関係ですか、そういつたような数の少いものも、とにかく少いから、むしろこういうものの中に入れておいてよろしいんじやないでしようか。数が非常にたくさんあつて、性質は同じだけれども、非常に範囲が広くなつて云々といつたような別な面からなら格別ですが、それでも別にこの制度を脅かすものでないのですから、これは法の建前から行きまして、だれも考えて入りそうなものは一応入れるという考え方の方がよろしいんじやないかと思うのですが、御考慮の余地がありますかどうかをもう一度お伺いいたします。
  60. 下牧武

    ○下牧説明員 この過失事件を早く片づけて、そうして被害者の救済とか、そういう面について十分役立たせるという運用は、これは非常に望ましいことで、またそれこそ迅速適正に行わなければならぬことだと存じます。しからばその事件をすぐこの手続に乗せるのが適当かどうかと申しますと、非常に問題があると存じます。私どもも昔交通事件をずいぶん取扱つたことがあります。一月に二百件、三百件と片づけたことがございますが、それでも過失事件ということになりますと、毎日同じことをやつておりましてすつかりなれたつもりでおりましても、三十分、四十分、ちよつと長くなりますと一時間くらいどうしても調べなければ、ほんとうの事実というものは出て来ない。それだけ調べて固めませんと、事件というものは判断できない。それでちよつと不なれのものがやりますと、ずいぶん時間を食います。警察官の講習のときですが、ある警察官に事件をやらせましたところが、午前十一時から晩の八時までかかつても示談がまとまらない。一つこれが食い違いますと、技術的にもポイントのつかみ方にも、調べ方にもよりますが、非常に骨の折れる事件でございまして、こういう事件をすぐこの即決裁判の手続に乗せましてぱつぱつとさばいて行こうといたしますと、どうしても事実関係自体が犯罪の成否を判定する上におろそかになつて参ります。その事件の取調べというものは、あくまでほんとうに老練でなれたものが慎重にやらなければいけない。ただいつまでも処理せずにほつておくということはいけないので、それを早くやることは必要でございますが、この調べ方はあくまで慎重にやるべき性質のものでございますから、これをただちにこの手続に乗せるということは、私といしたましてはむしろ弊害が多く、しかもとうてい乗り得ない性質のものではないか、かように考えるわけでございます。
  61. 林信雄

    ○林(信)委員 その点は意見の相違というところに帰着すると思いますからこの程度でやめておきます。  続いて第三条に移ります。これは言うまでもなく、第二条に掲げられます交通に関する刑事事件のうちにおいても、五万円以下の罰金または科料を科する程度事件がその対象である旨を表わしてあると思うのであります。それはわかるのですけれども、この表わし方は、裁判所が裁判をするときの姿で表現をしてある。もちろん裁判のときそういうことになるのは当然でありますが、検察官は、この程度事件はこの手続によることができるという法文がない限りは、どうも裁判の面だけが表わされておつて、ぴつたり来ない感じがするのです。このままこの位置でもよろしいのですが、検察官は、交通に関する刑事事件のうち、五万円以下の罰金または科料を科することが相当である事件は、本法の手続により裁判を求めることができるとかいつたようなふうにされることが相当ではないかと思うのであります。何だか飛躍して、一気に裁判するときの姿でこの法律の対象になる事件を表わされておるのは、いかがなものでありましようか。わからないとは言いませんですけれども、どうも通常でない気がするのであります。もちろんその他の「被告人に異議あるときは、することができない。」等のことは自然必要であります。その前にありまする、その他付随の処分関係のことも、これに限定して表わさなければならない明文であることはわかるのですけれども、どうも表現の方法が、ちよつとわれわれの観念から行きましてすなおでないように思われますが、どんなものですか。
  62. 下牧武

    ○下牧説明員 厳密におつしやられますとお説のようなことになるかと存じますが、現在の略式命令の手続はこういう形でできております。これは刑事訴訟法の四百六十一条でございますか、この用語例にそのままならつたわけでございます。それでどういうふうに略式手続が動いておるかと申しますと、検察官が五万円以下の罰金に処すべきものとして、大体裁判所でもそういう認定を受けるであろうというところの見通しをつけまして略式手続を請求している。実際の動きはお説の通り動いておるわけでございます。そこで裁判所が、もし非常に悪質な事件で、五万円以上やらなければいかぬのだということになりますれば、これは略式不相当ということで正式裁判にまわしておるわけであります。そういう場合で、この手続におきましても、これはもつと重くやらなければいかぬのだということになりますれば、同じように六条によつて正式裁判にまわすごとになるわけで、厳密に二段構えにすれば非常にはつきりいたしますが、現在略式でこの程度規定で動いておりますので、こういうふうに規定いたしますれば即決裁判のときにおいても同様に動くであろうというわけで略式通りいたした、こういうわけであります。
  63. 林信雄

    ○林(信)委員 なるほど略式手続の四百六十一条の表現はそういうふうになつておりますが、この略式手続の場合についても私は考えてみたいと思うのです。しかしこれは当初から申しておりますように、わからないわけではないのですから一応この程度にいたしておきますが、私が申しますように、検察官の手続の場合、求刑する限度がこの程度だと、起訴をいたします場合の考え方がこの程度のものであるということに持つてつた方がいいんじやないかと思うのです。こうして裁判所がこれこれできるとありますと、検察官の請求は五万円以上のものでもよいように、これはひねた考え方かもしれませんけれども見えるのですが、そうは見られないでございましようか。あるいは裁判所はこれこれの言渡ししかできないのだが、検事はそれ以上の請求、意見が述べられるのでありましようか。どうですか。
  64. 下牧武

    ○下牧説明員 法律的には、今検察官がつけております求刑意見というのは要件になつておりません。ただ裁判所の参考に資する意味で、付随の意見として書いて置くだけですが、今度ルールがかわりまして、意見をはつきり書面で書くようになつた。その関係で求刑をつけることになりましたけれども、従来は単なる付随意見ということであつたわけであります。検察官といたしまして、たとえば十万円の求刑をいたしましても、裁判所がその事件を見て五万円でよいということになれば、五万円の略式命令を出してもそれは決して違法ではございません。ただ事件としてやはり五万円以上にしなければならぬものでありますれば、裁判所としてはできませんから、それで正式裁判にまわすということになるわけで、理論的にはそういうことになりますけれども、検察官としては、裁判所ができない五万円以上の求刑をつけること自体ちよつとわれわれとしては想像できませんので、そういうことはあり得ないわけであります。たとえば普通に処理されている事件はせいぜい罰金二千円か三千円のところで済んでおりまして、そういう事件が全部ここへ乗つて来ることになつて参ります。理論的な問題としてそういうこともあり得ないことはないというだけにおちつくことだろうと存じます。
  65. 林信雄

    ○林(信)委員 そうすると、実際の手続はどうなるのですか。現在は略式の場合のように、一応は求刑の意見をつけて出すことになりますか、それともそうではなくて、その後に普通の公判手続のように、事実調べその他の調べが済んで最後に意見を述べるようになりますか。かと思うと、必ずしも列席しなくてもいいような規定もあるようですから、そうすると、あらかじめ意見をつけておくことが便利なようでもありますし、あるいはおそらく適用をまたなくても済むのかもしれませんが、実際はどういうことが予定されているのですか。
  66. 下牧武

    ○下牧説明員 実際の運用におきましては、求刑意見は全部つけることになると思います。これもりくつだけの問題でございますが、検察官は、この事件だけは自分は法廷に出てみようと思えば、求刑意見をつけずに法廷に出てその場で意見を述べることも理論的には許されることになると思いますが、そういう運用にはならない、全部初めから求刑意見をつけて請求することになると思います。
  67. 林信雄

    ○林(信)委員 この条文の中で特にだれもが最初にぶつかる疑問は、公判前の問題であろうと思うのであります。すなわち、この手続は通常の公判手続ではなくて――通常の公判手続にもよることはできるが、その以前の簡易なる裁判手続であることを表わしておると思うのですが、これは憲法三十七条違反になるかならないかといつたことは、これは略式手続の場合において論議せられるべきところであると思うのです。けれども、それは書面の手続考えてみれば、極端にその手続方法を異にしておりますから、一層問題になるとも考えますが、今度の場合はよほど公判手続に似て来ているのだから、その心持から行けば少くともよさそうに見える。けれども、また似ておりますものがどうも本質的には非常に違つておるということになりますと、これは憲法論を離れまして、実際面で、国民の間において、とかく正式の裁判手続とこれらの手続とを混同する。どうも誤れる憲法解釈ではあるけれども、憲法の条章に反した、きわめて臨機応変的な便宜の裁判手続がなされるような誤解を受けないとも限らないと思うのであります。しいてこれを公判前の手続といたさなくても、やはり正式の手続といたしても、なおねらいまする簡易なる方法は多分に考え余地はあつたと思うのでありますが、そうは行かなかつたものでありましようか。どのようにお考えになつてこれを公判前の手続とせられたのでありましようか。あるいは、これを説明すれば全部説明しなければならぬと言われるかもしれませんけれども、要領のお答えを願えますればけつこうであります。
  68. 下牧武

    ○下牧説明員 憲法問題の点は略式裁判と同じように考えまして、むしろそれを実体関係においては丁重にしておく、形式面において書類の作成を簡易化するかわりに、実体関係本人直接に弁解をする機会を与えるという意味において、丁重にする意味におきまして、これは憲法に即したものであろうというふうに考えたわけでございます。これをただちに第一審の手続の簡易化によつて行うということにするかどうかというのは、これは政策問題になろうかと存じますけれども、一応われわれといたしましては、略式で措置されて、しかも即常に簡易にやりますから、本人に第一審から第三審に至るまでの三審の利益を奪わないようにして、そうして簡易にやる方法考えたらどうであろうかという考え方のもとに、略式手続に合せながら、その書面でやる分を口頭によつて簡易化し、それと同時に、あわせてそのことによつて本人の保護をはかるというふうに考えたわけでございます。
  69. 林信雄

    ○林(信)委員 実際になりますとどうなりますか。略式の今までの事件が大部分この手続によることになりますか、それとも略式は従来の略式で同じようにやるのだ、そうして今まで正式に公判請求をしておつたものをこの手続で、五万円以下のものはこれでやる、これが大部分のねらいになると思いますが、件数までは別として、大体のところはどれが対象になるのですか。
  70. 下牧武

    ○下牧説明員 第三条第一項のこの事件範囲は、これは略式とまつたく同範囲でございます。それで現在略式手続で処理されているものの一部が、この簡易公判手続に乗つかつて来る、略式以上に出ることはございません。言いかえますれば、略式で処理されている事件のうちで、この交通に関する刑事事件に当るものだけ、しかも実際の運用におきましては、裁判所の人員、設備とのにらみ合せでいたさなければいけません。裁判所に処理能力がないのにどんどん事件を送りましても、裁判所でこなせないということではうまく行きませんから、その処理能力とも合せて、そうしてこの手続に乗せる分、それと略式で行ける分とあんばいして行きたい。最初のうちはどうしても裁判所の処理能力が上りませんから、どうしてもある程度かげんしなければならないと思います。だんだん裁判所の処理能力が上るにつれて即決裁判手続に載せる分を多くして軌道に乗せて行きたいというふうに考えておるわけでありますから、今までの略式事件以上には決して出ません。そのうちの一部がこの手続に乗る、言いかえますれば、略式のうちの一部を非常に早く簡便に、書類などもつくらずにやるかわりに、直接審理の考え方を持つて来たというだけの程度でございます。
  71. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をやめて……。   〔速記中止〕
  72. 小林錡

    小林委員長 では速記を始めてください。
  73. 林信雄

    ○林(信)委員 次は第四条の手続規定に入るのでありますが、即決裁判の請求は、公訴の提起と同時に、書面でしなければならぬ、このことです。これはいわゆる起訴状とは別の書面をつくらなければならぬということを表わしておるのでありますか。とにかく書面であるということであれば、和訴状等の末尾に書き添えてもよろしいというのですか。どつちですか。
  74. 下牧武

    ○下牧説明員 これも現在の略式手続と同じように考えたわけでございます。現在の略式手続は、公訴の提起と同時に書面でしなければならないということであります。それはどういうことになるかと申しますと、たとえば、この被告事件について公訴を提起するから略式命令を相なりたい、こういうふうな考え方になる。これも同じように一本の何で、これこれの事件について公訴を提起するから即決裁判相なりたい、こういう請求書になるわけであります。別の書面を二つくつつけるというのではございませんで、一本の書面でやるというわけでございます。
  75. 林信雄

    ○林(信)委員 その第二項は、被疑者が本法の手続によることについて異議ないかどうかを検察官は確かめなければならない旨の規定であるのですが、説明書にも見えますように、これは特に被疑者の同意の書面を徴する必要がないように解せられるのであります。その解釈はこの字句よりして正しいと思うのでありますが、その同意の書面を必要なしとした点について、わかる面もありまするが、特に必要としない理由はないのじやないかと思うのです。むしろ大した手続でないのだから、この場合はやはり同意の書面をとつておいてしかるべきではないか。考え方は、とつておいたつていやだと言えば、それつきりのものだから、何もならぬじやないか、こういうことであるのですが、しかしそれもわかりますけれども、実際手続を始めた場合に、その前には同意しておりながら、簡易な手続をいやだと言い出した場合に、検事は何だか被告人の意思を無視してやつたかのようで、そこに争いの起る余地がある。これは珍しい例ではあるだろうと思います。多くの事件の中で占める比率の高いものとは思いませんが、中にはよくわからずに、いや、私はそういう手続には同意しておりませんでした、あるいは記憶を喪失して、異論をはさむ者もあるかもわからない。一札もらつてさえおけば何でもないものを、ないために検察当局がばかな目を見ることもなきにしもあらずと思う。略式手続ではそれをもらうことになつていると思いますし、これは、似たような手続でもありますから、むしろもらつておく方が便利じやないか。理論じやなしに、実際に便利ではないか。むしろこういうふうに予定されておりますものは、理論に走つて、実際の面のことが取残されておるのではないかと思うのですが、いかがでございましようか。
  76. 下牧武

    ○下牧説明員 ごもつともな点でございまして、その点もわれわれは考えたのでございますが、とにかく簡易な手続行つて本人が裁判所へ行つておれはいやだと言う場合は、たとえ検察官にその当時は同意しておつても、いやだと言う者は、通したらどうだろうか、しかし本人が文句を言わなければ、これはもうそのままで裁判所は手続を進めてよろしい、異議があつたときは、することができない。第三条の第二項で、「被告人に異議があるときは、することができない。」というのは、そういう趣旨でこういう書き方にしたわけでございます。そこで検察官が同意書をとつておきますれば、裁判所へ行つてから、本人の気がかわつても、検察官に同意しているじやないかということで、その意向を無視してでもやれることはやれることになりますが、そこまで押し切る必要はないのではないかということで、その点をゆるめたというのが、われわれとしての大まかな考え方です。  それからもう一点は、同意書をとるということになりますと、手数がかかります。といつて裁判所において、本人と同意があるかどうか押し問答させるのも、こういう早くやろうという手続には当を得ません。それでこれは本人がいやだと言えば、すぐ正式にまわしてしまうという考え方でよかろう。実際の運用を見ておりますと、ほんとうに納得をいたしておりますれば、その点でぐずぐず言うようなことはないと存じます。この点でうまく動けるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  77. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 今の点でございますが、被告人の方から異議がないという書面を出させて、それを記録につけさせて起訴するというようなことでなく、被告人が異議がない旨検事に述べたという検事の書面を、起訴に際して、つけてもらうというようなルールに進む予定でおります。そういう書面が出ておりましても、法廷で判事の前で即決裁判は異議があるということであれば、いつでも正式の公判手続をやる、こういうこともあります。
  78. 林信雄

    ○林(信)委員 今お話の、一応同意しておつても、異議があれば、正式の公判手続にかえるということはわかります。しかし一応同意をしたものがむげにひつくり返されるということはおもしろくないと思う。検察官の書面をとるということは、その書面をとらないでも、うそは言わぬだろうと思いますが、訴訟になれない者は違法する場合もあるし、初めから異議をとなえるものであつても、初めは同意しているような顔をしているような者もいないとも限らない。そんなつまらないことで、検察官がたとい寸言でもいいかげんなことを言われるということはばかばかしいのではないか。また一面から言いますと、どつちにしようかと迷う場合も多いと思う。そういう場合には一応簡易な手続によることもけつこうです。だから被告人が意思を決定するには、やはり書面にはつきり書いてしまうと、腹がそこにきまつてしまうのじやないか。先刻から繰返しておりますように、これは理論じやないのですから、実際の面として略式手続でそういうことをやつているのだから、そういう場合、そのくらいやつてしまう方が切りがつくのじやないか、こういう実際問題であるのです。なお私はそう思つておりますから、そう申し上げておきます。
  79. 下牧武

    ○下牧説明員 今の点を理論的に申しますと、法律の建前は、私が先ほどお答えいたしました通りだと思います。ただ実際の運用といたしましては裁判官の方で何もなしでもぐあいが悪いだろうというので、起訴状のところに同意の有無の判を押す欄くらいをつくりまして、そこに同意するという判を押して、検察官が認証するという程度で裁判官の参考に資したいというようなことで最高裁判所と話合つております。そういう状況で実際の運用はある程度その点を何か書面で明らかにして行こうというふうに考えております。  それからちよつと数字を申し上げますと、全体の略式命令事件が司法統計によりますと、昭和二十八年一月から九月までが全部で三十七万件余りあります。そのうち道路交通取締法と同取締令違反が二十五万件、約六八・七五%という数字が出ております。それで大部分のうちのある程度のものが即決裁判手続に乗つて来る、こういうことに相なると思います。
  80. 小林錡

    小林委員長 本日はこの程度にとどめておきます。  なお来週には衆議院が先議することになつておる刑法の一部を改正する法律案及び執行猶予者保護観察法案の質疑にも入りたいと存じますから、その旨お含みおき願います。     ―――――――――――――
  81. 小林錡

    小林委員長 この際小委員補欠選任についてお諮りいたします。すなわち外国人の出入国に関する小委員木下郁君は去る二十四日法務委員を辞任せられ、昨二十五日再び議長により本委員に選任せられましたので、その異動により当該小委員が一名欠員となつておるのであります。この補欠選任につきましては、先例に従い委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、外国人の出入国に関する小委員の補欠には、従前通り木下郁君を御指名いたします。  次会の開会日時はいずれ公報をもつてお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会