運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-25 第19回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十五日(木曜日)    午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    高橋 禎一君       猪俣 浩三君    神近 市子君       木下  郁君    佐竹 晴記君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         検     事        (刑事局長)   井本 台吉君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         国家地方警察本         部警視正         (警ら交通課         長)      後藤田正晴君         検     事         (刑事局参事         官)      下牧  武君         大蔵事務官         (主計官)   広瀬 駿二君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      江里口清雄君         参  考  人         (警視庁警邏交         通部長)    津田 忠太君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月二十五日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として木  下郁君が議長の指名で委員に選任された。    ――――――――――――― 二月二十四日  湯野村に岡山地方法務局出張所新設に関する陳  情書  (第一〇八八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  交通事件即決裁判手続法案内閣提出第二七  号)(予)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  交通事件即決裁判手続法案を議題とし、質疑を行います。  この際お諮りいたします。本案について警視庁警邏交通部長津田忠太君に参考人として発言を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからいます。  それでは質疑の通告がありますから、これを許します。林信雄君。
  4. 林信雄

    ○林(信)委員 交通事件即決裁判手続法案内容について、各条または二、三の疑点を順次お尋ねしてみたいと思います。それにつきましては、便宜その実体の早わかりの方法としまして、その手続による具体的な場合の設例をもつて事件が起きたときの、たとえば無謀操縦というような――事例は何でもよろしいのですが、例を一つとらえて、ことが起つたの警察がまずこれを捕えまして、およそどういう手続をして検察庁事件が現われて、検察庁はこれをどのように扱つて裁判所へ持つて行く、裁判所はこういうようにやるというように、これをひとつ設例をもつてお話願うと、あとの質疑にぐあいがいいし、あるいはわかる部分が多いと思いますから、こういうことをお願いいたします。
  5. 下牧武

    下牧説明員 それでは具体的に、現に行つております手続を申し上げながら、それをどう改めるかというような趣旨で、この経過を御説明いたしたいと思います。現在違反を発見いたしますと、たとえば信号無視だといたします。それが自動車と仮定いたしますと、それを発見した巡査は、その現場自動車をとめまして、それが非常に軽微なものでありますれば、その現場において説諭のみにとどめ、それで済ませるわけてあります。それからこれは少し調べなければいけないというようなものでありますれば、現在は東京なんかでは出頭通知状というものを出しまして、いつ幾日自分の属する警察に出て来い、こういう簡単な紙きれを渡すわけであります。それに応じて本人はその指定された日に出て参ります。それからその違反を発見した巡査は、署に帰りましてから現認報告書というものをつくるわけであります。それで現場自分が現認したものは、いつ何日何時ごろ、どこで、この自動車が来たときの信号が赤が出ておつたのにそれをつつ切つたというような現認の事実を書きまして、しかも東京なんかでやつておりますのは、大体の場合それに見取図をつけております。そうしてそのときの信号機はどことどこにあつて、その信号はどういうふうになつてつたというような見取図一緒に、現認報告書というのをつくるわけであります。それを上司に差出すわけであります。上司は、今度その本人警察に出て参りますと、その現認報告書を見ながら、本人からもいろいろ弁解を聞く。そこで弁解を聞いて、このままで済ませるということになりますれば、訓戒にとどめる。訓戒にとどめることができないような、ちよつと実のある事件ですと、これは検察庁に送る、こういうことになるわけです。そこで、出頭通知状によつて署に出て来る割合を見ますと、大体のところ最初に出て参りますのが五〇%、半分しか出て参らないわけです。その後二回、三回と呼出しを重ねて、最後にやはり一六、七%が残るという現状になつております。そこでこの附則の方で、免許証を一時預かつておいて、保管証を渡すというような形でもつてその点を手当いたしたいというのが、一のつねらいになつておるわけでございます。それから警察の取調べが終えまして、訓戒事件送致にわかれる。送致された記録によつて検察庁の方でまた呼出しをいたします。その場合に、最初呼出しで出て参りますのが、統計によりますと六割から七割で、三割ないし四割は二回、三回と呼出しを重ねなければ出て来ない。それでもなおある程度のものは、最後に残るという形になつております。そこで検察庁でいろいろ調べをいたします。本人弁解も聞きまして、これは起訴猶予で、起訴する必要はないということでありますれば、不起訴処分にいたしますし、それを起訴するということに決定いたしますれば、大部分いわゆる略式手続によつて起訴するわけでございます。起訴、不起訴をどういうふうにしてきめておるかと申しますと、私どもちよつと簡単に調べてみたのですが、信号無視の場合ですと、普通の信号無視で、停止線すれすれの地点で青信号から中止信号にかわつた、それをそのままぐつとつつ切つたというようなものは、酌量の余地があるということで、起訴猶予にいたしております。それから無免許運転にいたしましても、朝の五時三十分ごろ青山通り神宮外苑内道路において、無免許運転をした、それは早朝で、交通量がほとんどないような時刻であつて、危険が非常に少かつたというような場合は、やはり起訴猶余にいたしております。それから練習のために無免許運転をやりまして、運転免許を持つている者が同乗しておつて、見ておつたというようなものは、やはり酌量いたしまして、起訴猶余にいたしております。それから速度違反にいたしましても、五キロぐらい越える、しかも人通りの少い場所で五キロぐらい越えておるというようなものは、実害なしということで、事案軽微で猶予いたしております。それから酩酊運転にいたしましても、酒を飲んでいる酩酊度を検査する機械がございます。酩酊度が非常に軽微であつて、正常な運転ができないというようなおそれのない場合は、起訴猶余にいたしております。一応私どもが見ておるところでは、検察庁で相当実質的に事情を聞いて、振りわけをしているというように見ておるわけでございます。その結果略式手続裁判を求めるわけでございますが、その交通事件に関して略式命令を求める割合は、二十八年度の統計によりますと、全略式事件の六八%――約七割というふうに、略式事件で処理される部分が非常に大きいウエートを持つております。それにはやはりちやんと、被告人はいつどこで、たとえば無免許運転ならば、運転免許証を有しないにかかわらず、こういう自動車運転したという犯罪事実を書きまして、それに求刑意見として罰金なら罰金、二千円なら二千円、三千円なら三千円というふうに求刑意見をつけて、それに現認報告書をつける。その他、検察庁調書をとる場合もございますし、参考人を調べる場合もございますが、そういう場合には、そういう調べたものをつけて裁判所に請求するわけであります。なおそのときに略式というものはこういう手続で行くのだ、本人弁解もこれ以上聞かれずにすぐ裁判所がその検事の請求を正当と認めれば、すぐ命令罰金通知が来る、それから通知が来てそれに不服ならば正式に裁判所に申立ができるといつたような略式手続の概略を説明いたしまして、本人がそれに異議のない場合にはその旨の書面をとる。俗に同意書と申しておりますが、それを添付して略式命令を請求するわけです。裁判所はそういう本人同意書がついてないような場合には、法律略式命令を出すことができない。そこでそれは正式裁判にまわしてしまいます。それからそういう書類が完備しておつて、事実一件記録を見まして、これならば大体間違いなかろうという心証を得ますれば略式命令を出す、略式命令を出す場合にはやはり検察官起訴状に書いてあつたとほとんど同じような文句でもつて略式命令を書きまして、本人に送達するわけでございます。そうすると、送達にまた手数がかかりまして、大分その間に期間がたつておりますから、所在転々としたり何かいたしまして、なかなか送達しにくい面ができるわけです。そこにも大分こぼれて落ちる部面ができて来るわけです。それから今度送達いたしまして、本人に特に不服がないと、十四日間たてばこれが確定いたします。確定いたしますと、その一件記録検察庁にもどつて参りまして、今度はいよいよ刑の執行という段階になるわけであります。刑の執行の場合には、検察官のお考えによつて納付命令を出しております。その納付命令最初にすなおに罰金を納めて来るのが半分くらい、その後なかなかまた所在転々としておつたり、なかなか執行の徴収という面がうまく行かない、こういうような実情にあるわけでございます。  その中で今度の法律では最初違反を発見したときに一応免許証を預かつておいてそのかわり保管証を渡す、その保管証を持つておれば、運転をするには無免許運転にはならないので、それにはさしつかえない。それでまた現在の道路交通取締法免許証呈示を求められる場合がございます。その呈示の義務に違反いたしますと、処罰されることになつておりますが、その保管証を持つておればそういう場合も処罰はされない、それで間に合せることができるというふうに手当をいたしまして、運転手が業務を遂行する上においてはさしつかえないようにいたしました。そのかわり免許証は一週間なら一週間の有効期間を限つて預かつておいて、本人が出て来れば返してやるということにいたしますれば、出頭確保の面で延びておる分がぐつと縮まつて参ります。それで本人が出て来たところを警察の方に呼び出す。これは理想的には検察官も同じ建物にいて裁判所もすぐ近くにあるという形がいい、できれば同一の構内ぐらいのところに呼び出しまして、そして流れ作業式にずつと今の手続を進めて行く、そのかわり現在の略式手続で行きますと、裁判所手続においては書類を非常にたくさんつくらなければいけません。そういう面は一切省いてしまう。しかしそれじやまた実際の上の審理が簡略になるといけないというので、今度は裁判官が現実に本人を目の前に呼んで、お前こういうふうな起訴があつたけれども、事実どうだろうかと言つて弁解を聞くわけです。本人がその通り相違ありませんと言つて、間違いないということでありますれば、それと現託報告書なんかを照し合せて間違いないという心証を得れば、今度は口頭で即決裁判でお前は罰金幾らということを言い渡す。それから執行の面は、執行のために非常に時間を要しておりますので、その場合にもし本人が金でも用意して来ておりますれば、それじや罰金を納められるかと聞いて、納められますと言えば、それじや二千円かりに納めて行けというので、仮納付判決を言い渡す。そこで二千円なら二千円を納めて行くということにすれば、その執行の面も流れ作業で一日で片づいてしまうということを実は考えたわけでございます。  それで全体の日数を見て参りますと、これは統計諸表にも載せてございますが、これは大体の計算でございますが、全体で百九日、事犯の発生から刑の執行まで一件処理するのに百九日かかるという統計になつております。その部面をどこにそんなに長くかかる原因があるのだろうかとたどつて行きますと、本人出頭がうまく行かない、そして出願を確保する措置を講じて行く。それから裁判所書類なんかをつくつて出す。そういう書数を簡易化して行く。それと事件実体の判断がおろそかになつちやいけないというので、本人を目の前に呼んで直接調べて行く。その上で書数を出すということになれば手続は非常に簡便になりますが、事件実体をきわめる上においてはむしろ現存よりも丁重になるのじやなかろうかというので、その面を考えたのです。それからもう一つ執行の面で非常に手間取りますから、そこの面で、今度仮納付という制度要件を、現在訴訟法にございます仮納付制度要件を緩和いたしまして、裁判所の相当と認めるとき、言いかえますならば、本人がその当時大体金を持つていそうな場合には、それで本人異議のない場合には仮納付裁判を言い渡してそうしてそれで事件を片づけて行く、かように考えたわけでございます。
  6. 林信雄

    ○林(信)委員 そうしますと、違反事実を発見した当時の点でちよつと伺いますと、法案でいいますと附則だからおしまいの方なんですけれども、一ペん免許証を預かるので、これを持たなければ運転ができないから、これほしさにつられてやつて来る。これはもちろんねらいだと思うのですが、その保管証というのは、名前の示します通り書面だけだろうと思うので、あまり詳しいことは書いてないのじやないか。しかるにそれが一時的に運転免許証にかわるということになりますと、あまり明瞭でないものがはつきりしたものの代用になるので、いわば一時的にしろ悪用されるおそれがある。といいましてもそれをすぐ翌日やつて来いといつてもどうかと思いますし、あるいは一週間ぐらいのねらいではないかと思われますが一週間でそれが無効だとなつてしまうのやら、あるいは事情やむを得ないということで、一週間が十日になつておる場合、期間経過後にそれが使用されるものか、あるいはできないものでも、こういう事情だということになりますと、取締りのものに対しましてしかるべく事情を訴えて、そういうものを彼らは適当に利用する。正しい意味から行けば悪用なんですが、これは本人都合という意味においてはあるいは悪用とはいえないけれども練習したいものに対してこれを貸与いたしましても、この間これを利用して運転練習をするというようなことも起らないとは限らないので、この手続の面から行くとたいへん名案のようだが、そういう面に変に悪用される危険も多分にある。こういう点はあなたの方及び国警の方面はどういうふうにお考えになつておるか。これは十分御研究の上でしようが、これはこれから先の手当でもいろいろ考えて十分やつて行ける問題ではあると思うのですが、すでに研究され、現在お考えになつておるところをひとつつておきたいと思います。
  7. 下牧武

    下牧説明員 ごもつともな質問でございまして、その点私どもも相当考えたわけでございます。現在考えております保管証には交付の年月日とか、それを交付した警察官官氏名、その他運転免許証番号、それから運転免許証をいつ交付したか、検査の期限、どこの公安委員会でもらつたか、それから運転免許証を受けた本籍氏名、そういうものを全部記載いたします。それから運転免許の種別も記載いたします。いつそれを受けたか、年月日も記載いたします。それから保管証有効期間、これを大体今七日と考えておりますが、七日ということでしぼりまして、それでそれに写真が張られれば一番濫用防止になると思いますけれども、それに写真を張るということは、かえつて非常に手数がこみましてめんどうにもなりますので、その点をどう防ぐかというので、できるだけ有効期間を短かくする。しかしながら大体今の流しのタクシーの運転手なんか、二十四時間勤務で一日置きに働いておる状況であります。それで本人都合を聞いて、そしてこの日非番だから、この日がぐあいがいいといつた日に、大体指定するようにしたらどうか。しかしその有効期間は七日にいたしますが、その指定は実際二日目か三日目というぐあいに、ごくわずかの期間にいたしたい、かように考えておるわけであります。その期間保管証を持つておれば、運転免許証にかわりますけれども、今度出て参りますれば必ず免許証は返して、保管証ともちろんこれは引きかえでありますが、運転免許証を返すわけであります。それで三日か四日の問の措置とすれば、まあまあこれで何とか濫用の方は防止できるのじやなかろうか。それからこれを交付する警察官が、かつてに私的に頼まれて、ちよつと融通してやるようなことがあつても困りますので、そういう場合には複写にとつておきまして、一連番号をつけて複写保管用紙をつけておきまして、複写で書いた保管証一つ相手方に渡します。その控えが残つておりますから、それを上司が検査することと、現認報告書のこの関係でにらみ合せて行けば、かつてに融通ができないというようなことで、そちらの方も防止できるのじやないか、大体そのように考えております。
  8. 林信雄

    ○林(信)委員 先ほども申しますように、これはいろいろ考え余地の十分ある、具体的な扱い方の問題ですから、御注意を願つておきます。  そこで端的に箇条的に伺いますが、警察では調書をつくりますか、つくりませんか。検察庁のように、一応聞取書等調書をつくりますか。あるいは現場の何をつくりますか。公判といいましても即決裁判手続で、裁判所ではやはりこれは調書はできるだろうと思うのですが、証拠決定をすれば、証拠決定をしたような、それぞれの調書、この辺の書類関係を中心にしましたどの程度のものができ上りますか、順次でき上つて行くのでありますか。
  9. 下牧武

    下牧説明員 現在は先ほど申し上げましたように、現認報告書は必ずつくつております。それから警察へ呼び出した場合に、警察調書をとる事件ととらない事件とございます。現認報告書の何が非常に不十分のような場合には、それを補充いたしまして、そして警察調書をとつております。検察庁事件が送致されまして、検察庁では、大部分警察調書に間違いがなければそのままで調書をとつておりません。しかしながら調書をとるのもございますので、これは統計諸表には載つてございません。別の資料によりますと、これは昨年調べた統計でございますが、調書を全然作成いたさないもの、これは東京では八四%というような数字が出ております。八割余りは調書を作成せずにやつておりますが、全国平均で申しますと、二五・三%という数字が出ております。全国的には調書は作成せずにいたしたというのは非常に少いわけですが、東京なんかのように非常に事件が輻湊しているものは、そこの手数を省いて、できるだけ検察庁調書を作成せずにそのまま処理しているのが多い、こういうことになつております。それから被疑者供述調書だけを作成するものが東京では一二%という数字が出ておりますが、全国平均ですと、六六・六%という数字が出ておりますので、いなかの方では相当調書を取直して丁重にやつている。東京のように非常に事件の輻湊しているところはできるだけ調書をとらずに簡便にやつております。  それから参考人のほかに被疑者調書をつくつておるというのは、これは全国平均で約八%くらいのものでございます。東京で申しますれば、両方合せまして約四%程度のもので、参考人調書までとるということになりますと、相当全国的にも少くなつております。大体被疑者弁解を聞いて調書をとるというのが大部分でございます。それが現状であります。  それから略式手続で行う場合の手続でございます。今度の場合は、警察から検察官起訴するまでの手続従前通り裁判所に行きましてから裁判官略式命令を出す場合に、今までは本人事情も聞かず、やみで出しておつたのを一応本人に確かめてやるということにいたしましたので、裁判所におきましては調書は全然つくらないというのを原則とするという頭でわれわれども考えております。と申しますのは、しかしながら本人の自白一本だけでやるというのじやないので、やはり現認報告書、そのほか警察官のつくつた調書検察官調書を提出しなければならないことになつておりますから、そういうものは一応検察官一緒にくつつけて出すわけであります。そういうものと合せてちよつと本人に確かめてみた上で、間違いがないというものだけをやる。しかもそれはなぜそういたしたかといいますと、簡易公判手続をやることについて本人異議がある場合には、この手続でもできないのであります。ですから検察官の方では本人異議があるかどうか確かめなければなりません。ただその場合に略式手続におけるがごとく書面同意書をとる必要はない。と申しますのは、当然本人裁判官の面前に参りますから、文句があれば裁判官に言うはずですから、書面で出す必要はない。裁判官文句が出れば、審理がいかなる過程にあるを問わず即決裁判にできないで正式にまわさなければならないということになつておりますので、裁判所における調書は全然つくらない。ただ裁判を宣告した場合に、その宣告の内容記録にとどめておかなければいけないという点だけを抑えておる、こういうわけであります。
  10. 林信雄

    ○林(信)委員 裁判所書類関係手続についてはたいへん違つて来るというお話でありますが、そうすると、証人を呼んでも参考人を呼んでも、メモくらいはおとりになるかしらないが、いわゆる法廷の書類はできない。及び続行関係のこと等もあるが、これは後によくお尋ねしてみようと思うのですが、その期日における経過についても調書はない。しこうして最後審判はなされる。それは判決なんでしよう。前に申し上げるように調書ができないで審判書類だけはできるというのは、それは判決書なんでしようか。つけ加えて申しますと、これは裁判所の判事さんはたいへん忙しくなるかしらないが、書記さんは一向――一向じやないがあまり用事がなくなるということになるようですが、それはそれでかまわないわけだけれども、そうなるのでしようか。
  11. 下牧武

    下牧説明員 即決裁判性質がどういう性格を持つた裁判であるかというのは、これは問題のあるところでございまして、私ども略式命令と同様に考えております。今も略式命令は、決定であるか命令であるか、これは学説上いろいろ議論のあるところでございますが、大体決定性質帯びるものじやないかというのが通説であろうと思います。今度この略式命令即決裁判という名称に改めましたが、その即決裁判性質は、やはり決定命令――いずれにいたしましても決定に近い裁判である。この手続は、いわゆる公判手続とは違いまして、あくまで公判前の手続として私ども考えておるわけでございます。公判前の手続として考えればこそ初めてこういう制度が許されるので、公判手続を簡易化したということになると問題があるだろうと思います。本人異議がある。それからまた事件がもめて来てちよつと複雑化して来るような場合は、裁判官はこれでやるのは相当でないのでございまして、そういう場合は正式にまわす。正式にまわせば初めから公判手続で始まつて行くという形に考えておるわけでございます。それでその場合は宣告した裁判の結果を記録に明らかにしておくというのも、判決書きとか裁判書きというような、そういう格式張つたものを考えておるのじやございませんので、ただどういう裁判を宣告したかがわからないのじや困るので、その点だけを記録する。これはカード式でもよろしいのですが、何かそういうものにはつきりとどめて置くということになればそれで十分じやなかろうか、あとの書数は一切不要じやなかろうか。もしそれが正式にまわりますれば、今度は検察官から起訴状だけは出してございますから、それに基いて審理が始まる。その証拠の方は別途検察官が出さなければならぬということになる。その場合は検察官があらためてやり直してもいいんじやないか、こういうふうに考えております。その結果裁判官が直接被告人に当ることになりますから、裁判官は不足すると思いますが、書記官の方は、お説の通り今よりはうんと楽になるんじやないか、かように考えております。
  12. 林信雄

    ○林(信)委員 裁判所は今の審判のときの書類はどういうふうにお考えになつておりますか。私の想像では、左記の通り審判したといいますか、左記の通り言い渡したといいますか、そういう表題もないようなものでは何でしようから、何か表題らしき確定的なものが予定されているのでございましようか。
  13. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 裁判所の方の調書の点を申し上げますと、この法律には判決内容だけを明らかにするというふうになつておりますが、取調べ期日における取調べにつきましては、別にルール、裁判所の規則によりまして、ごく簡単な記録をカード式のものでとどめておく。そうしてそれには何月何日にどういう裁判官、書記官が列席して審理を行つたか、それからまた参考人等を調べれば、どういう参考人を調べたか、どういう証拠物を調べたかということくらいを明らかにしておく。参考人なり、証人の証言内容というものは調書に記載しないというようなことにルールできめる予定でおるのであります。証言内容なり、あるいは参考人の供述内容というようなものは明らかにしなくていい。と申しますのは、正式の請求がありましたら、これは全然第一審の手続に引直して、公判でまた新たにやる、前の調書に基いて取調べをするというような関係、控訴審的な関係に立たないので、その内容を明らかにする必要はないのじやなかろうか、こういうふうに考えております。
  14. 林信雄

    ○林(信)委員 その調書関係等はわかりましたが、審判の結果を明らかにしておくという点については、判決というお言葉もありましたが、判決というお言葉をお用いになるのですか。それとも何か別な言葉なんですか。どうなんですか。
  15. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 ただいま判決という言葉を申しましたのは間違いであります。即決裁判という名前でありまして、決定性質を帯びるものというふうに解釈いたしております。
  16. 小林錡

    小林委員長 ルールの案はまだできておりませんか。
  17. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 できておりません。
  18. 林信雄

    ○林(信)委員 そこで昨日の佐瀬委員からの質疑でも、略式手続は残るんだ、というと検事は略式請求をするものと、即決裁判を請求するものと、この二様を使いわけなければならないと思う。そこで考えられますことは、昨日の御説明でも不服の申立ては千人に一人ですか、こういうようなことでありますが、略式はたいへんとつつきがいい、これは略式命令が非常に適当であるということで納得しておるかどうかということは御当局でもわからないようですが、昨日言葉があつたように、これは金がかかるし、ひまもかかるし、めんどうだということで、実際問題からそういう不服の申立てはないのだというふうな場合もある。これはそうだと思う。略式でそのくらい行つてしまうのだつたら、事件関係略式と同じ程度のものが今度の場合予定されておるので、同じだから略式でやつちやえ、即決裁判つたら、出なくてもいいのが出たりしなければならぬし、これはとにかく少しめんどうだ、略式でやつてしまえ、こういう風潮が起つて来やしないか。せつかく略式よりは少し丁寧にしたものを予定しておるのに、簡単に言えばはやらないのじやないか。しかしそうでなくて、今まで公判請求をしておるもののうちからむしろひつこ抜く、こういう考え方でいられるのかもしれない。それも一理あるかもしれません。そういうものまでひつこ抜いて略式の方へ持つて行かれればそれきりなんで、これはやはり正式の公判手続略式の中間のものだから、この手続に当るものはこの程度のものとか、何か一つの範囲をつくることの方が適切じやないかと思われるのですが、それについて伺いたい。
  19. 下牧武

    下牧説明員 この略式手続と申しますのは、非常に沿革の深い手続でございまして、これを一挙に改めるということになると非常に大きな問題になります。それで私どもは、まずとにかくこの交通事件がだらだらと三月も四月もかかつてつておる、それでは非常に困るのじやないかというので、何とか早くやり、しかも被告人の権利を害しない程度においてやる方法はないかということに重点を置いたわけでございます。そこで検察庁方面の意見もいろいろ尋ねてみましたところが、検察庁方面も非常に強くこの手続を希望いたしたのでございます。やはり検察官といたしましては、事件が定型化いたしまして、そうして間違いない事件ならしやしやつと片づく性質のものですから、そういう事件略式でやつたら確定率が多くて、そうしてどうもこの手続でやつたらそうではないということにはならないのじやないか。それでむしろ検察官としても早く事件が済むことを希望いたしますので、これの運用について、むしろ大部分略式によつてこの手続が動かないというおそれはなくて、逆にかえつてこの手続をやり過ぎて、昨日裁判所の方からもお話がありましたように、裁判官があつぷあつぷ言つているところにどんどん送り込むのをおそれているような状況でございます。そういう面は裁判官の処理能力というものとにらみ合せて、略式とこの手続を、われわれとしてはむしろ最初のうちは調整をしなければならぬのじやないかということまで考えておるくらいでございまして、御心配の点はむしろ逆の方に働くように私ども考えております。  それから公判請求をする事件を引抜いてこちらへやるというお話でございますが、そういうことはございません。今でも公判を請求する事件はよほどの事件でございまして、ほとんど体刑を予想されるような事件しかやれない。罰金にいたしましても相当高額のものでなければできないわけです。今度の手続も範囲は略式手続と同じにいたしまして、五万円以下の罰金、それから拘留、科料、こういうものに処する場合だけに限定いたしておりますから、その範囲は従来通りの略式の範囲と一致して来るだろう、こういうふうに考えております。
  20. 林信雄

    ○林(信)委員 昨日来の話を聞いておりますと、被疑者関係被告人関係略式はあまり喜んでおらないのじやないかと言えるような面がある。正式裁判を申し立てようと考えても、費用や時間がかかるし、ふなれだし、何だかんだでやらないという傾向があるということは、仰せまでもなくあり得ることです。われわれもそう思うのです。運輸省関係のお話を聞いてみてもかような手続を希望されておる。別にまた略式は非常にいい手続で、これはなかなか簡単にはずせない、これもわかるのですよ。交通事件のこの関係は、内容を見れば道路交通関係を対象としておるものです。要するに、交通事件即決裁判手続なんですから、略式の中でどのくらいのパーセンテージを占めているか知りませんが、とにかく交通事件ではこの手続は非常に喜ばれるという傾向にお考えになつているのだし、この分だけはもう略式をはずしてしまつて、訴訟関係者、原告側も被告側も希望されているのだし、ただ希望しないのは裁判所が少し人員がよけいになつて来て、今までやらない仕事をやらなければならない、これは予算措置なんかも講じられているのだろうと思いますが、そういうことや行政的な手間もあるのだろうと思いますけれども、そこは政治なんですから、いいことは少しぐらい――財政の許さないことはだめですけれども、ある程度のことは費用がかかつても、ひまがかかつてもやむを得ないし、人の手配もしてやらなければならぬ。だから手もぬらさず骨も折らず、みんな喜ぶようにといつたようなうま過ぎることを考えずに、少しは犠牲になつてでもいいことはやらなければいけない。少くともこの関係だけは、略式をはずしてしまつて、これ一本にすることがいいと思う。それがどこかいけないところがあるのでしようか。いけないところはないけれども、いやだというのですが。そこのところを承りたい。
  21. 下牧武

    下牧説明員 私どもこの手続考えますときも、お税のようなことも考えたわけでございます。ところがやはり初めての試みで、うまく行くだろうとは思いながら、最初の試みなものですから、特に一応処理に困つている輻湊している事件だけを取上げて、それで実績をひとつよく見てみようじやないか。実績で、これが略式よりうまく行くということであれば、さらにその範囲を拡張することも考えられないことはないじやないか。それを確かめず、ぱつと略式と切りかえるというのは踏切りがつかない点があつた。それが一番大きな理由で併存せしめたのであります。その趣旨は、交通に関する事件と申しましても、第二条に掲げました事件のほかに、道路運送法とか、道路運送車両法というようなものもいろいろ入つて参るのでございますが、そういうあまりたくさんない、年に二百件かそこらの事件は、特にこういう手続に乗せずに、一番中心になる事件だけを一応乗せて見て、やつてみた上でもしそれがなるほどいいやり方だということになりますれば、ほかの面も考えてみたらいいじやないか。それから先ほど申し上げましたように、裁判所の設備と人員の問題、これとのかね合いの問題もございますので、その点を考えまして今のところ併存せしめるのが無難じやなかろうかというのが、こういうふうにいたしました真意でございます。
  22. 林信雄

    ○林(信)委員 真意と仰せられる心持ちはわかりますが、また裁判所関係の施設ですか、人の準備というようなこともわからないのじやないのですが、大体制度という面から考えますと、お話のようなことはそうむずかしいことではなくて、制度に応じて容易にやれることだ。そこでやはり問題は制度として考えなければならぬのです。その制度の点から参りますと、初めてだ初めてだと言われますが、下牧さん、私はあなたはその道のエキスパートだと思う。国内だけながめてわからないからといつて、そういう懸念をなさる必要はないじやないか。各国の立法例なんかも非常によく御研究になつているのですから、もうすでにお手本はあるじやないか。いわば試験済みじやないか。日本においてはないんだから、民情風俗が違うのだ、こう言われますればそれつきりですけれども、人間は同じようなかつこうをし、大体同じような生酒内容をしているんだから、そういうところから、もう手本は珍しくない。そういう手本をはつきり把握しておられますれば、もう思い切つて踏み出してよかつたのじやないかと思うのですが、一体こういうことについて結論を出されたのは、各国のどういうようなところで、特にこれがいいと思われたか。似たような国、あるいはそうでなくて、そいつがまずいので、これはやはりよかつたとか何とか、ここにおちつかれました各国の立法例を、特に今までのところに関係のあります程度においてお話を承りたいと思います。
  23. 下牧武

    下牧説明員 あまりこまかくは調べておりませんが、その手続考えました動機と申しますか、きつかけはとにかく、交通事件が多くて長くて困るということから、たまたまアメリカでキヤフテリア・コートというのがございます。これは正式の司法機関じやなく、警察の行政裁判的な性格を帯びるものじやないかと存じますが、それが非常に安直に事件を処理しているわけでございます。それで違反者がありますと、そこへ警察官が連れて行きまして、すぐその前で裁判官にこういう事実を犯したと申告するわけです。裁判官はそれを聞いて、お前は何ドルということで、それを納めて帰つて来るという手続があるわけであります。それでああいうふうに簡便にやれたらどうだろうかというので、アメリカの交通事件の処理のなにを研究してみますと、そのやり方についてはアメリカ自身においてもある程度の批判はあるわけであります。と申しますのは、一番大きな批判は、そういうふうにして手続を簡易化して行くことにいたしますと、裁判の権威がなくなつて行く。ただ違反をしても金を納めればそれでしまいなんだというので、遵法精神の面に大きな影響を及ぼして来る。それからまたその処理が非常に機械的に流れ過ぎて、真相が無視されて来るという面も出て来るというような非難があつたわけであります。そういう非難を何とか補つて考えられないものだろうかというので、実はこの手続考え出したわけであります。それでアメリカのキヤフテリア・コート式に安直にやるということは考えませずに、法廷を開く場所にいたしましても、あくまでも私どもは法廷と名のつく場所で調べをすることを堅持しよう。それから本人が調べてもらいたいものがあれば、その目すぐ調べられるような用意をして来れば、いつでも一調べられるような態勢をとつておく。証拠の関係におきましても、憲件に定めている原則はくずさないようにして、できるだけやり方だけをやわらかくやる。言いかえれば、審理をいたします場合でも、普通の公判廷におけるような高い壇でかみしもを着てやるようなことはせずに、普通のお互いの相対で話すような調子でその事実を確かめる。一言で言いますれば、円卓を囲んでやるというような形で審理をいたしますれば、非常にすべてにスムーズに行く面もある。また裁判の権威を落さずに、裁判所のあり方を民衆に理解してもらう上においてもいろいろとつかかりになるいい面があるのではないかというようなことから、この程度のことを考え出したわけであります。その他の各国のこまかい立法例を一々参酌いたしたわけじやございませんが、交通事件の処理のために特別の手続をつくつているというところはあまりないようでございます。キヤフテリア・コートにおいては、何か特別の手続があるようで、大きな文献もございますが、まだ十分内容的には検討いたしておりません。
  24. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 関連質問。今の点でありますが、これはいろいろ見方がございます。私ども裁判という名前を用いた場合においては、いとも丁重に、いとも厳粛に行われなければならないというふうに考える。そこで非常に軽微な事件、輻湊しているような事件は、なるべく裁判という形を用いない方がいいんじやないかというふうな考え方もできるわけです。ロスアンゼルスでしたかに、公園に自動車を置くと罰金をとる市の条例かなんかありますが、そうすると、置場が非常にないために、罰金払うつもりでみんな公園に置きつばなしにしておくと、おまわりか何か来て紙きれを渡しておく。翌日その紙きれとお金を持つて行けば、事は済んでしまうというようなやり方をやつている。これは市の財源になるらしい。それも罰としてあれする以上はどうかと思いますけれども裁判という名前を用いて、それを非常に簡略にやつてしまうということは、これは裁判の民主化というても似て非なる民主化になつてしまつて裁判というものが安つぽくなつてしまうおそれがあるのではないかと思う。正式裁判と普通の裁判といつたつて受ける者はやつぱりみんな裁判考えるのです。そこでそういう懸念はないものでしようか。私はこの法案に反対じやありません。けつこうだと思うのですけれども略式というようなものではなくて、今度は即決裁判といつて裁判という名前を用いていながら、何かちやかちやかと、一日十件も二十件もぱつぱとやつてしまうことは、裁判全体を――裁判という言葉に含みまする厳粛な感情と申しますか、現在日本の国民が抱いております裁判所及び裁判というものに対して、非常に何か軽い、場合によつてはばかにするような気風が出やしないか、それが私は心配なんであります。その点はどういかふうな御考慮をなさつたのでありますか。
  25. 下牧武

    下牧説明員 おつしやる通り、それは私ども非常におそれた点ではございますが、まず第一番に規定いたしましたのは公開の法廷であるというように、法廷という名のつく場所でなければやらせない。安直に警察のところに持つて行くとか、あるいは一斉取締りの場合に街頭でいたしますとか、出張裁判式な形をとるとかいうことはやめて、とにかく裁判所と名のつくところに呼ぶということで、まずその点を確保いたしたいというのが第一点であります。法廷というものは、御存じの通り最高裁判所の指定がございませんと、みだりによそで開けないものでございます。最高裁判所の事務当局に尋ねてみますと、裁判官会議で他に法廷を指定するということは、とても少いことで、よほど特別の事情がなければできないというように承つておるわけでございます。その関係で今度の事件も全部が裁判所と名のつくところに一応呼ばれる。そのためには今度は警察検察官がむしろ裁判所の方に出かけて行く。あるいは検察庁裁判所が同一構内にございますれば、少くとも警察検察庁検察庁に固まつてやるようにいたしませんと、この法律通りに動かない。少くとも本人裁判所の門をくぐつて行くというのが筋一点でございます。それから、審理するにいたしましても、やはり被疑事実の要旨は裁判官から告げております。それから供述拒否権に類したこともやはり告げることになつておりまして、ただかたくやらないというだけで、そのやり方というものは、本人にこういうことがあつたが何か言いたいことはないか、弁解はないかというようにして、弁解を聞く方法として現われて来るわけであります。しかも私どもは、こういう事件について、あまりちやんちやんばらばらやるというのは、この法廷では予想していないことなんです。ちやんちやんばらばらで原、被告が攻撃防禦の方法を尽すということになりますれば、どうしても正式にまわすべき事件で、こういうもので処理すべきものでなかろうと考えますので、むしろ略式で今までやみくもにやつてつたものを、裁判官本人に一応確かめてやる。お前は罰金幾らということで、裁判官の宣告ということになりますれば、これは考え方の相違でございますが、書面で紙きれをもらうのと、どちらがいいかというと、その面もある程度ぴしやつと言われるので、裁判らしい形であるとも言えると思います。そういう面でおつしやるようなおそれが全然ないかといいますと、普通の裁判に比べればそのおそれは多分にございますけれども、その辺のところで大体いいところにおちつくのではなかろうかと考えておるのでございます。
  26. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実は今略式命令の実情を聞いてみますと、とにかく物資不足の時分に何か品物を買いに行つたような調子で、行列をして並んでおりまして、一分ぐらいで、おい、次というようにやつておる。あまり事件が多いから結局そういうようなことも考えられるように相なつたと思います。そこでけつこうだと思いますけれども私の憂うることは、簡易裁判もいいけれども、今言つたように、はい、お次はだれというようなことで、ちやつちやつちやつとやるようなことが、法廷内で行われますと、何だ裁判というものはちやちなものだという印象を、大して裁判なんか受けないような一般の大衆が受けることが、私は多少心配である。裁判があまりに事務を簡単にするという方面に走り過ぎてしまいまして、裁判の威信が軽くなるような傾向が出ないか。これを実施するとすればその点を十二分に御注意になつていただかぬといけないのではないかと思うのでありますが、それに対しまして、裁判所側はどういうお覚悟で臨みなさるかを承りたいと思うのであります。  なお立つたついでに一点お尋ねいたしますが、この第二条の「「交通に関する刑事事件」とは、道路交通取締法(昭和二十二年法律第百三十号)又はこれに基く命令違反する罪にあたる事件をいう。」というのが、この交通事件即決裁判手続法の中に入ることになるのでありましようが、警視庁で騒音を抑制する一つの考え方から、自動車の警笛を取締る警視庁令か何かをつくつたとか、つくるとか聞いておりました。欧米あたりでは、自動車の警笛を鳴らすことが非常に少くて静かであつて、田中警視総監もアメリカへ行つて非常に感心されたようでありますが、帰られてそういうことを警視庁令か何かでおつくりになつたというようにも聞きますが、そうするとそういう警笛なんかに対する取締りの法令は、この第二条の中に入るのでありますか、入らぬのでありましようか。入るといたしますと、非常に事件が多くなり、それがまた即決裁判にかかるということになると、裁判というものに対するさつき言つたような心配が、ますます出て来るような気もいたしますが、ただいまの警笛を取締るような法令はこの二条に入りますかどうか、それもひとつお答えを願いたいと思います。
  27. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 裁判所の方からお答え申し上げますが、この即決裁判手続事件は、現在すべて略式命令でやつておるのでありますが、裁判所にこの略式命令として起訴されますと、裁判所の方では略式命令の原本を作成し、さらに、被告人検察官に送付するために、少くとも謄本を二通こしらえる。これには被告人の住所、職業、氏名、年令、被疑事実等、それから二週間以内に正式裁判の申立てができるというような詳細な書面をこしらえた上で送達に付する。送達も内容証明、配達証明で、執達吏の送達に付する、それが、送達報告書の記録裁判所に返送されまして、これを一々わけて記録に返戻し、その記録を整理した上で検察庁記録を返戻するというようなことになるのでありますが、この手続裁判所の職員である書記官、書記官補、それから雇いの手数は非常なものなのであります。昨年の十二月の略式命令交通事件起訴は一万六十件、十二月だけで一万六千件になつておるのでありまして、年末の三十一日まで書記官や裁判官が仕事をしてもなおかつ六十件ほど持ち越したというようなことで、裁判事務の面が非常な煩瑣を来しておるのであります。昨日取調べたところによりますと、昨日の東京における略式命令手続は十一月の十日に起訴された事件を現にやつでおるというような状態で、裁判所としてもちよつと手をあげた形になつておるのであります。昨年、判事の一日に略式命令を処理したのは一人で八十九件ということになつておるのであります。この即決裁判手続によりますと、そういう略式命令のような書面を書く必要もありませんし、送達の手数もありませんし、送達報告書を処理する手数もありません。記録の整理も非常に簡単に済むので、書記官や雇いの手数は相当省けるのでありますが、裁判官が一々面接をして即決裁判をするということになりますので、裁判官手数は非常に過重になるのでありまして、私たちの方で現在考えておるのは、大体この事件は一件で十分くらいはかかるだろう。そういたしますと、一人で一日に四十件くらいしか処理できないのでありまして、現在の裁判官ではとうていまかない切れないのです。大都市の、この事件の多いところでは、どうしても裁判官の増員が必要である。私たちの方で計算をしたところによりますと、東京では十五人、それから京都、大阪等で二人、大体十七人の裁判官が現在よりも必要になつて来る。それから現在は略式命令で公開の法廷ではやつていないのでありますが、これを公開の法廷でやるといたしますと、どうしても専門の法廷が三十くらいはいる。それも裁判の権威のために公開の法廷でやるいうことが必要になつて来るわけでありまして、いたずらに裁判所外でやるというようなことは考えていないのであります。法廷も三十くらいは増設して行かなくちやいかぬ。現在これは大蔵省に折衝中でありまして、こういう手続ができなければ、裁判所としてはちよつとこの手続を引受けかねるようであります。そういう現状になつておるようであります。当委員会におかれましても、このいい法律を通されるにつきましては、ひとつ予算的な方面も応援していただきたい、かように思うものであります。
  28. 下牧武

    下牧説明員 警笛のお尋ねでございますが、これは道路交通取締法施行令の第十七条第一号に、「安全な運転のために必要な場合を除き、警音器を鳴らさないこと。」これに当ります。そのほかに都の条例ができておりまして、制限する規定があるようでございますが、都条例の方はこの法事には乗つて参りません。この違反だけが乗つて参る、こういう関係になると思うのであります。
  29. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 一問だけ関連して……。今最高裁判所の方からお答えになつた中に、裁判官の増員とか法廷の増設の必要があるというお話であつたわけです。私もこの法律が実施されるということになりますと、そういうこともやむを得ないということを考えるのですが、そこで一体法学をつくつたのがいいのか悪いのか非常な疑問があるわけです。前にすでに説明があつたかもしれませんが、略式命令制度だけで行つたのがいいのか、この交通事件即決裁判手続法の方法も、そこに新しくひとつ設けて、両方の制度を生かして行くという方法がいいのか。これはまだまだ大きな疑問があると思うのです。この裁判の本質的な問題に関連して……。ところがそのほかに私の非常に憂えますのは、こういう制度がかえつて訴訟の遅延を来すというようなことになるのじやないか。略式命令制度であると先ほどおつしやつたように、たくさんの書類をつくる等の煩瑣な点は認められるのですが、しかしその略式命令によらないで、これを即決裁判手続に持つて参るということになりますと、これはまたまた、書類はつくらないけれども相当の時間と、係官の労力というものも――これは私の今この法案を見て感じたことなんでありますけれども、よほどのものを必要とするという感じがするのです。略式命令の方がむしろ簡単で能率的に行くんじやないか。この制度を設けることによつて、むしろ交通事件の処理が遅延するようなことになるのではなかろうかということをおそれます。そういうふうになるところに、結局費用、人的、物的の設備ということが出て来るのですが、今御存じのように予算をふやすということは、これは日本のいろいろな面から考えまして、できるだけ差控えなければならぬところであると思うわけであります。今までよりは新しい制度を設けて、そして裁判を受ける側には、私はそう特別な利益というものはないと思います。それにもかかわらず裁判官をふやし、法廷をふやす等の費用が必要になつて、予算の増加ということになると、結局は国民の負担ということになるわけでありますから、そういう面からもよほどこれは検討しなければならない。  そこで私のお尋ねいたしたいのは、これは本日用意していらつしやれば別ですけれども、そうでないとなかなかむずかしい問題だと思われますので、略式命令制度でやるだけで考えられる費用と、この裁判手続の方法をとることによつて必要な費用と、この経費の関係、それに結局は経費ということになるのですが、人員の増加、物的設備というようなものについて詳細に調査した結果を明らかにしていただければいいと思うのですが、これは非常に重大な問題であると私は考えますから、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  30. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 ただいまのお話ごもつともなところであります。裁判所といたしましては、書記官、それから雇いの手は非常に省けますが、裁判官は非常な負担になる。しかし裁判所の全体といたしましては、この手続の方を希望しておるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、裁判官の人員の増加それから法廷の増設がどうしても必要である。これは昨年のこの事件統計から出ました数を、裁判官が一日に一件十分といたしまして四十件できる。毎日開廷で一年に三百日といたしますと一万二千件、一人の裁判官が専門の一つの法廷を使つて処理をするという計数から勘案いたしてみますと、東京の地方管内の大きい簡易裁判所でどうしても二十二、その内訳は、東京の簡易裁判所で十、新宿、台東、隅田、大森、渋谷いずれも非常に交通量の多いところを控えておる簡易裁判所でありますが、ここでそれぞれ二つ、それから中野の簡易裁判所と葛飾の簡易裁判所でそれぞれ一つ、それから大阪の簡易裁判所で二つ、大阪の都島の簡易裁判所、阿倍野簡易裁判所でそれぞれ一つ、それから京都の簡易裁判所で一つ、それから神戸、福岡の簡易裁判所でそれぞれ一つの専門の法廷が必要だ。これだけは現在は略式命令でやつておりますので、法廷がございません。三十の法廷はどうしても必要であります。  それから現在この交通事件専従職員をただいまの三十から見まして、どうしても裁判官が十五人、その内訳は東京の簡易裁判所で一人、新宿、台東、隅田でそれぞれ一人ずつ、大森と渋谷で二人ずつ、中野簡裁で一人、京都の簡易裁判所で一人、大阪の都島の簡易裁判所で一人、都合十七人はどうしても増員をお願いいたさなければならぬ、こういうふうに思つておるのであります。  法廷の増設につきましては、この法案が非常に立案される時期がおそかつたせいもありまして、来年度の予算ができ上つて後にこの法廷の増設、それから人員の増加が必要であるということでただいま大蔵省と折衝中でありますが、ただ法廷の増設につきましては、現在の簡易裁判所にいかなる敷地の余裕があるのかどうか、あるいはそれに付随して判事室やその他の付属の設備があるかどうかという点はただいま調査中でありまして、詳細な計数がまだ出ないのでありますが、これは至急に詳細な計数を明らかにして本委員会の方に提出いたしたい、かように用つておるのであります。先ほどちよつと書記官は何もやることがないじやないかというようなお話が出たように思うのでありますが、なるほど書記官の手は省けるのでありますが、やはりそれぞれ一人ずつ公開の法廷に立ち会うということになりますので、従つて書記官の増員ということも必要になつて来るわけではありますが、この点は私の方では、現在のような時期でありますので、何とか法廷と裁判官だけ、書記官の方は繰合して処理したい、こういうふうに考えております。
  31. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今お尋ねしたのは大体国の方の側の費用等についてでありますが、今度は裁判を受ける側、いわゆる国民の立場から考えてみる必要があると思うのです。略式命令ですと裁判所に出願する必要がないわけでありますが、この即決裁判手続によると裁判所出頭しなければならぬ。裁判所出頭するということになりますと、都会のこういう方面に知識のある人はそうでもないでしようけれども、そうでないこういう事件に経験のない人は、まあこれは裁判所に出るんだからひとつ弁護人にでも相談しなければならぬだろう、こういうことになつて来る。さて裁判所へ出て参りますと、よく裁判所の控室では、裁判所は待つところなりというようなことを言いながら相当の時間待つておるのです。弁護人でも、弁護人は待つ仕事なりなんと言いながら相当長い時間待つておるわけで、結局出れば一日つぶれると考えなきやならぬのです。そうしますと、今の日本の国民の生活の実情等から見ますと、これは実はたいへんなことなんです。月給をもらつておる人はいいのですけれども、日当をもらつてかせいでおるような人にとつては大打撃であります。そうして会社等に勤めておる人たちは、一日休むことによつて皆勤手当なんか、奨励金なんかもらえなくなるのです。一月皆勤すれば千円なら千円の皆勤手当がもらえるものを、一日休むことによつてその千円を棒に振つてしまわなければならぬということがあるわけです。そういうことも私は新しい制度を打立てる場合にはよほど考えなきやならぬと考えますから、国の方としても予算を増額しなければならぬ、こういうお考えであるところへもつて参りまして、裁判を受ける国民側の方でも、これはまた非常な時間、労力、費用というものを必要とするということになつて参るわけであります。裁判所出頭しろと言われることは、日本の国民の現在の知識をもつてすれば決して愉快なことではないのです。本人が一人出頭するということによつて、一家が非常に憂欝な気持になつて取越し苦労をし、必要以上の心配をする、こういうことになるわけであります。私ども実際事件を担当して経験したところでありますが、略式命令に関することですが、略式命令が来た。それには異議がある。被告人自身は裁判所に正式の裁判をしてもらつて、そうして正当な判決を得たいと思うにもかかわらず、その母親とかあるいは妻のごときは、裁判所へ出るなんということは、どうも世間体もはずかしいし、またどういうことになるかわからぬというような不安から、もし正式裁判の申立てでもして裁判所へ出るようなことがあれば、私はもう離婚するなんというような妻があつたことを経験しますが、そういうふうな裁判所へ出るということも、役所側から見れば実に簡単なことですけれども被告人として法廷に立つために呼出しを受けるということ自体は、精神的にもたいへんな打撃になるわけですから、被告人側すなわち国民側のそれに要する経費とか、あるいはそれに関連して起る精神的な打撃というようなことも、これは十分考えなければならぬと思うのであります。国民が犠牲を払い、また国家も相当の犠牲を払つて新しい制度を打立てて、しかもこれがかえつて訴訟を遅延せしめるというような結果になつたら実にばかばかしい制度だということになりますから、これらを総合してこの制度を検討して行かなければならぬと思つておるのでありますが、この国民側の立場に関してどういうふうに御研究になつておるか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  32. 下牧武

    下牧説明員 現在の略式命令手続によります場合も、原則としては一応検察庁に呼び出しまして、そうして検察庁で調べた上で同意書というのをとりまして起訴しているわけであります。それで特殊の例外といたしまして、雪が非常に降つて呼び出すのにたいへんだというような場合には書面で照会しておることもないとは言えませんが、原則はそういうふうなことになつております。その機会に本人簡易公判手続というものはこういうものだ、略式というものはこういうものだ、正式でやればこういうことになるということを検察官から告げまして、そうして簡易公判手続によることについて本人異議がない場合に限つて簡易公判手続にまわすわけです。まわしたらその出て来たついでに今度は裁判所へ行つて罰金の宣告を受けて来る、場合によつては仮納付として罰金を納めて来てもいい、こういうことになるわけであります。むしろ刑の罰金を納めるためにまた出て来るとか、あるいはそれから警察にも一回呼び出され、また検察庁にも呼び出される、そういうように何回も出頭させられるのを大体一回の出頭でもつてまかなえるようにいたしたいというのがこの法案のねらいであります。その意味におきまして本人の負担はむしろある程度緩和されるのじやなかろうか、こういうように考えておる次第であります。  それからもう一つ、人員と設備の点でございますが、裁判所からお話のございましたのはごもつともな点で、理想的にこの法律を動かすためには、裁判所のおつしやるようなことに相なるかと存じます。ただこの略式手続検察官警察へ出張したりして非常なスピードをかけて処理いたしておりますその経験によりますと、最初検察官がふなれなときには大体日に六十件ぐらいの処理能力しかない。普通になりますと百件ぐらいの処理能力を持つて参りまして、それから相当老練になつて参りますと百二十件ぐらいの処理ができるわけでございます。そこで今度のこの手続によりまして事件裁判所にまわした場合に、検察官検察官の取調べのときから争いがある事件裁判所にまわすということでありますれば、これは非常に裁判所手数が込むことになるだろうと思いますが、そういう事件は元来まわせない、この即決裁判手続には親しまない事件でございます。検察官がまわす事件というのは、ほんとうに争いのない事件だけをまわして行く、またそのねらいでできておる法律でございます。そういたしますと、とにかく即決裁判手続はどういうものだというような説明、また略式手続はどういうものだという説明を検察官がする。そういうことは裁判官がする必要はございません。それからほんとうの通常の裁判のやり方を説明して、お前さん、どれを選ぶのかというような手続の説明の必要もございませんし、それから特に検察官起訴いたします場合の略式命令手続として起訴状を書かなければなりませんが、そういう手続もいりませんし、それから事件は大体検察官が調べて、そうして実体を確かめておる場合が多いのでございます。割合にスムーズに行く事件さえまわせばその事件検察官がやるよりもスムーズに行くのではなかろうか、かように考えます。最初のふなれの間は一挙に一日に百件も二百件もという大きな数字は期待することはできないので、四十件とか、おつしやるようなところから始めなければならぬと思いますが、だんだんになれるに従いましてその処理能力は向上して行くのではなかろうか、かように考えております。そこで検察官としては何でもかんでもこの手続裁判所に送つて裁判所が手を上げるというようなことをいたしましては、せつかくの手続が死んで参りますから、その点を実情を勘案して、そうして裁判所の処理能力とあわせて徐々にこの手続に乗せて行くように運営して行くというふうにわれわれとしては心がけたい、かように考えるわけであります。
  33. 林信雄

    ○林(信)委員 ただいまも制度に関する問題がいろいろ出て来たようですが、私も今まで制度に関する質問を試み、なお伺つてみたい点が残つておるのです。  この制度については十分考えなければならぬことは当然であります。また数が多いのですが、ちよつと考えましても、いやしくも裁判の名を持ち、法案によりましても公開の法廷でやるというようないわゆる通常の裁判手続を思わせるものがあるかと思いますと、検事は特に立ち会わなくてもよろしい、弁護人も選任しなければしなくてもいい、また選任することを告知しなくてもよろしい、あるいは出ておつても出て来なくても、あるいは意見を述べなくてもよろしいということで、形の上で通常の裁判らしいものを持つておるかと思えば、またそういう面ではそうでないことになつております。当局はこれは公判前のもので通常の裁判とは全然違うのだ、こう言われておるのであります。しかるにこれだけのことをやればやはり相当の人を要し、費用を要するのだと言つておられまして、なかなか困つてもおるが、やりたい、しかし制度からいえば憲法違反ではない、憲法違反という言葉を用いるのなら、略式手続は憲法に違反するのじやないかという議論もあつたが、これはそれよりももつとまがいの手続になつておりますから、はたしてそういうまがいの手続が、憲法の趣旨から参りまして、憲法の本旨とするところに照して容認し得るかどうかという問題もあるかと思うのですが、それでも押してやろうとする実益を思いますれば、これは私は必ずしも反対はいたしませんけれども、そこでおよそ裁判所として関与する限界をどの程度に置くか、略式で行けるようなものは略式でやるといいますけれども略式でなくてこれでやることも必ずしも悪くないようなものはやつたらどうかということは、先刻私も意見を申し述べてみたのですが、そういうように裁判所が非常に重荷を血つて何もかにもやらなければならぬというようなことを考えずに、これも他の委員からの牽連質問で出ましたように、もつと簡単なものは簡単なところで取扱つたらどうか。この道路交通法による刑事罰としての罰則の中には、行政罰に持つてつてしまつて足るものがあるのじやないか。そういう方も考えて、そつちの方を整理しちやつて、そつちの方から除外をしますと、大分負担が軽くなつて来るのじやないか。しかしこれはアメリカの実例等も言われて、なかなか弊害もありましよう。非常な弊害のあるものはまた別にしなければならぬが、少くともまあまあと思うようなものは行政罰でやることが適当じやないか。ことに道路交通関係は、その制裁を受けることは罰金程度のものが多くて、その受ける刑罰的な気持から参りますと大したものじやない。むしろその処罰を受けることによつて運転免許証の停止あるいは取消しというような、行政的な別の面の影響を及ぼし、あるいはただもにその処分をされるということが、大きな刑罰価値を伴つて来ることが多いと思う。そういたしますと、直接の処罰はむしろある程度行政罰にまかせてしまう。警察官がただちに現金の授受まではできないでしようが、そこである程度の申渡しをして、それを承認するならばこれを警察署へ納めるというような方法で足るものが、ある程度あるのじやないか。そういうものをのけて参りますと、御懸念のような裁判所の負担も軽くなつて参りまして、裁判の本質的なものに触れる面も少くなつて来ると思うのです。  これに牽連いたしまして、即決裁判という名称、これは今鍛冶君から座談的に意見があつて私もそう思うのですが、初めて出て来る名前である。簡易手続といつたようなものは刑訴法等にもありますし、その程度の言葉はよろしいとしましても、即決裁判とまで言わずに、特別裁判という程度で表現したらどうであろうか。先刻江里口さんのお話によりますと、これはスピード裁判として一件十分ぐらいと言われた。おそらく裁判官はそれに拘束されることはないと思いますけれども、そういう気持でやつておりますと、いやしくも裁判と名のつきますものが、きわめて軽くなつて来やしないか。これは他の委員からも同様な発言がありましたが、私もそう思われる。どうも適当でないように思う。裁判官の御苦心もいろいろあると思いますが、裁判官は、即決裁判というのは、通常の手続の刑事裁判では、なかなかお好みにならない。これはいやなことだそうです。はやり時間を置いて――通常一週間ぐらいですが、大事件は別ですけれども……。即日その場でというやつは、どうもあとで考えるとあつということが間々あるという経験談を開くのです。私は裁判のことをやつた経験は全然持ちませんが、そういうことを思うと、即決ということ自体もうすでに問題であると思うのです。そういうことが真理があるとしますと、そういうことで裁判を受けることは、訴訟関係人の決して敬服することではないだろう。そこのところは十分で、その場でというようなことでなくて、書類をつくらぬというよりは、やはり即決裁判は特別裁判と直して、審判書でも何でもそういうものの要領を書いて、理由までは除いても、ある点までそういうものを書いて、あとから送つてつてもいいんじやないか。何だか聞いたばかりではたよりなくて、間違つていやしないかという杞憂がある。書いたものは何かたよりになるのです。そこで言い渡すまでには若干の日時時間を置いて結論を出されて、それを書面で送る。これも審理が済んでしまつてそこから先だつたら、このために延びる日にちは限られたものです。そのために訴訟遅延とまでは言えない。これはひとつ考えなければならぬことじやないかと思うのですが、そういうことをお考えなつたことはありますか。なお今日の御心境を伺いたい。  これについて行政罰をもつて行きます場合に関連いたしますから、この際国警の警邏交通関係の方がお見えですから、お伺いいたします。最も多いのは速度違反だと思います。実数的にはもちろん私はわかりませんが、ちよつと見ておりますと、ストツプ・ウオツチかなんかで追つかけて行つてとめておいて、ごたごたやつて、そこで認められた方にやつているようです。そこで認めればいいですが、認めない場合はどうされているのですか。ストップ・ウオツチが証拠で、それを持つて検事さんのところへ行つて調書をとつてもらえば、それで事件は進んで行くものなんでしようか。あるいはスピード違反ですから、本法案は対象にしておらぬかもしれませんが、ひき逃げをしてしまつたというような場合に、自動車のナンバーだけを覚えているだけで足りるのか。何か写真版でこういうものをとるような的確な方法が行われておりますか。これはこういう手続の起る前の一種の検挙の際の問題なんですが、牽連して国警関係の方にお尋ねいたします。以上制度に関する問題についてお伺いいたします。
  34. 下牧武

    下牧説明員 行政罰の問題でございますが、こまかく整理いたしますと、ある程度過料に落してもいいものもあるのじやないかと存じます。ただすべてを行政罰に諮るかどうかということは、非常に大きな問題で、ただちにそうは参らないかと存じますが、これらの点は道交法の改正とかそういつた際にもつとよく考慮すべき点だと思います。  それから即決裁判という名称でございますが、私どももこれは何とかこの手続の性格が出るような簡単ないい言葉がないかと思つて苦心いたしたのであります。ずつと最初は簡易裁判という言葉を考えておつたのでございます。ところがどうも先般御審議いただきました簡易公判手続と混同しそうなので、今度の手続はあくまでも手続を簡易化するというのじやございませんので、現在ある略式手続書面でやるのを廃するかわりに、本人ちよつと確かめてみる機会を与えて実体を確保して行こう、こういう頭でつくつております。すぐその日にずつと流れ作業式にやる、そういう性格を出すためには、即決裁判という言葉がまあまあいいんじやなかろうかというので、これを選んだわけであります。もつといい言葉がございますれば、あえてこれは固執するわけじやございません。  それから即日判決を言い渡すのはどうかというお尋ねでございますが、一般の裁判につきましては、おつしやる通りの議論が正しいかと存じます。ただ交通事件の特殊性といたしまして、大体事件が定型化している、信号無視にいたしますれば、ただ赤信号のところを通つたか通らぬか、通行禁止区域のところを通つたか通らぬか、スピードだつたら、制限速度を越えているか越えていないかということについて、それから駐車違反にいたしますれば、駐車禁止区域に車をとめたかとめないかというふうなもので、内容的には普通のいろいろニュアンスのある事件とは違いまして、単純化されておる性質のものでございます。その意味でこういう手続が合うのじやなかろうか、そのためにこの手続を乗せる範囲も、大部分の定型化されたものの、しかも非常に事件数の多いものに限つて乗せるというふうにいたしたので、その他のことを一般的に申しますればおつしやる通りになると思いますが、交通事件の特殊性にかんがみてこの手続が適当じやなかろうか、かように考えるわけでございます。
  35. 江里口清雄

    ○江里口最高裁判所説明員 裁判の即決はやらない方がいいじやないかという御意見まことにごもつともでありまして、普通の事件については即決はほとんど行われておりません。裁判官審理を尽した上で十分考えてから言い渡す。従いまして普通であれば一週間、重要な事件であれば半年も先に言い渡すというようなことになつておるのでありますが、この事件はただいま下牧説明員から説明のありました通りに事案が大体軽微であります。定刑化された形式犯というのが普通でありますし、大体私は現行犯じやないかと思うのであります。争いがあまりないというのが普通じやないか、十分は短か過ぎてちやつちやつちやつとやられて裁判はおろそかになるとお考えになるのもまことにごもつともでありますが、これは大体平均が十分くらいでいいだろうという私たちの考えでありまして、あるいは十分かからないものもありましようし、また一日で済まなくて翌日もまた続行して、現実に参考人に来てもらつて調べる、普通の公判手続にするほどではないが、参考人に聞いておきたいというような場合には、期日をまた続けるというようなこともあつて、決して十分で簡単にやつてしまうというわけではないのであります。なお略式命令であれば不服があつても、――先ほど高橋委員のお言葉にありました通りに、不服があつても、正式の裁判に持つて行かれちや困るというようなことから不服を申し立てたくともそのまま泣寝入りをするというようなこともあるいはあるかもしれませんが、この手続によりますと、一々裁判官が面接した上でその弁解を聞くという方法で、この手続はむしろ弁解を聞くというのが主になると思うのでありまして、被告人のためにも丁重な手続になる、しかも即決でやらなければならないというわけではないのでありまして、慎重に考慮する必要がある事件は、また期日を改めて言い渡すこともできると解しておるのであります。おろそかに取扱うというつもりは決してないのであります。  それから即決が必要であるというのは、こういう事件の被告は大体運転手がおもで、運転手は毎日運転しておるのでありまして、場合によつて出頭したその日の帰りにも、あるいはその日にも運転することがあろうかと思いますので、違反を起した四箇月もあるいは五箇月も先に罰金なり科料を納めるというようなことでは、その犯罪に対する刑罰による効果というものが薄れて来まして、やはり即時あるいは早急に刑罰の執行をして警告を与え、また将来注意をしてもらうというような刑の効果からいいましても、即時に裁判をして、即時に仮納付によつて納めてもらうということが必要になつて来るわけであります。また被告人の方も納めるために出頭するという手数も省けて、そのことに異議がなく、裁判に対して不服がないということであれば納める、その方が手数がかからないでむしろ被告が希望するというような面も考えられるのじやないか、被告人の側から見ても、どうせ検察庁に一度は出頭して起訴前に取調べを受けなければならない。即日裁判官の前に出頭して、公開の法廷で弁解を聞いてもらつて裁判を受けて、そのままただちに納付をして行くということがこの裁判のねらいでありまして、おろそかにやるというようなことは少しも考えていない、むしろ被告人のために丁重にやるようなことになるのじやないか、かように考えておるのであります。
  36. 後藤田正晴

    ○後藤田説明員 スピード違反の取締りのやり方についてお話申し上げます。現在はストップ・ウオッチによつてやるのと、それからストップ・ウオッチは使つてはおりますが、機械が実はできておりまして、その機械を使用しております。それから白バイで追いかける、この三つがあるわけです。ストップ・ウオッチの場合は、要するに一定の距離を何秒で走ればそのときの速度が何キロであつたという表を実は取締り警察官すべてが持つておるわけです。それによつてあなたの車は今何キロで走つたということで違反を取締つておるわけであります。それから白バイで追いかける場合には、白バイみずからが正確なメーターを持つておりまして、それで追いかけて行きますから、前を走る当該自動車のスピードは当然わかるのであります。そういうもので取締つておるわけですが、お尋ねのように、運転手としては、おれは今のはそういうスピードじやないのだと言つて争いのある場合が当然あるわけであります。ただ実際問題としまして、警察の方の取締りも二キロ、三キロといつたきわどいボーダー・ラインのものをすべて取締つて送致をするというような処置は実はやつてないわけでありまして、十キロとかあるいは二十キロとかきわめて明瞭な速度違反について送致をする、こういう処置をやつておるわけであります。そうなりますと、運転手としましては、業務上当然メーターを絶えず見るだけの義務がありますし、またそれを見なくとも、運転手であれば、走つておるときに大体今のスピードは何キロくらいだということはおのずから経験上わかるわけでありまして、故意にいやおれはそういうスピードじやないのだというときは別としまして、そうでない限りは、そういうボーダー・ラインの場合でない限りはそういう争いはないものと思います。警察としてもはつきりしたものを送致する。それ以外はその場の注意でとどめる、こういうことでやつております。  それからいま一つのひき逃げ事件でありますが、これはきわめて重要な事件になるわけでありまして、これは交通違反と申します上りは、一般の刑事事件として当然送致をするわけでありますが、従つてこの送致は普通の犯罪の捜査と同じように、目撃者やいろいろな関係の叩き込みをやつて、車の番号が何番だつた、あるいは車の色がどういう色でどういう型の車であつたというようなところから逐次入つて行きまして、これらしいということになれば、最後のきめ手としては、ひき逃げであれば血液の検査であるとか、いろいろなことをやつて、確実な証拠をつかんだ上で摘発する、こういう処置をとつておるわけであります。これは申訳ない事件でありますが、現実に先般九州で警察官のひき逃げ事件があつたのであります。これは深夜の事件でありまして、当該警察官最後まで否認をしておりましたけれども、車体についております血液の検査、それから当該時間に確かにこの車は勤務の上でそこを走つてつたはずであるというような勤務記録その他の証拠で送致をしたというようなこともございます。そういうように刑事事件で非常に慎重な捜査の上で送致をしておるのが事実であります。
  37. 林信雄

    ○林(信)委員 今の制度の問題ですが、話を聞いておりますとちよつとかわつて来たように思うのです。即決即決というので、原則として即決をやられるのだ、こう思つておりましたら、これは場合によつてまたかえてもいい、こういうお話であつた。これもいいかと思うのですが、そうなると、書面審判書なんかの送達はやらないというのですから、またいらないことになるということで考えてみなければならぬ点があるのではないか。まず即決の点ですが、あなた方はしきりに罪体を中心にしまして、簡単にいえば、わかり切つた事件だからすぐ結論は出るのだ、白か黒だ、イエスかノーだ、こう言われるのですけれども、いやしくも裁判であつて、刑罰に処するということになれば、罪体のみだけでは量刑は出て来ない。量刑ということになると、運転者が会社のどういう地位にあるのか、収入関係はどうあるのか、家庭関係がどうあるのか、元来そういうふうな前科的なものがあるかどうか。即決々々といいましても、事件が起つてその日に連れて来てその日に済んでしまうのじやないのだろうと思う。やはり前科関係なんかを調べてみると、そうは行かないのじやないかと思うのですが、こういう点は、これは国警関係もありますが、国警において免許証なんかに、刑罰の関係を書いて――掲示するのじやないからかまわないと思いますが、何か書いておきますと、裁判する上においてたいへん促進になるのではないか。そういう前科の調べ、身元照会して完全なことまでやつていると、なかなか即決々々といつて簡単にやるといつても、一日で済むというわけには行かない場合が多いだろうと思います。いずれにしましたところで、いろいろなことを総合勘案しなければ量刑までは行かないと思う。今承つておるような考え方では、罪体を主体にしてまあこれでやれるのだ。それじやいやしくも裁判と名がつくものはおもしろくない。略式の場合だつていろいろ参考にするものは参考にしてやられる。さつきのお話のように、なるほど請求の事実そのままが明記されるようなことになつておるかもしれませんが、そうばかりも言つておられないようですし、考え方としてはそうであつてもいけないと思う。即決々々といつたふうに持つて行きますよりは、やはり審理が簡易化されるのがよろしい。大体の審理が終つたならば、最後の断を下すときにはやはり一息入れる。そういう場合には画龍点睛を落すということがちよつとあつていいのじやないかと私は思う。江里口さんのお話のようだつたらもう言渡しだけ考えて言い渡す。これは書面でもよろしいという制度をつけておくことがよろしいと思うのですが、そういうことをお考えなつたことはあるのですか。今日どういうふうにお考えになつておるか。そこだけ伺つておきたいと思います。
  38. 下牧武

    下牧説明員 今の即決裁判の点は法律上第七条でございますが、「即日期日を開いて審判するものとする。」こういうふうな表現にいたしてございます。それはどうしてもその日にしなければならないというのじやございませんで、場合によつては翌日に続行することもこれはやむを得ない場合もあるであろう。しかし原則としては即日裁判するんだ、こういう原則を掲げたわけであります。でありますから大部分の争いのない事件をすらすらと処理して行きます場合には、これはもうその日審判する。そこえ行つて即日審判することになるだろうと思います。  それから情状の点でありますが、事件が定型化されて、また同時に交通事件の特質は、事件違反の態様に伴う情状というのが主でありまして、そのほか主観的な家庭の状況、あるいはその他の環境といつたようなものでございます。そういうものは本質的な要素をなさないわけです。それで実際問題としては、そういう問題がどういうぐあいに考慮されるかといいますと、どれくらいの一体罰金になるかわかりませんが、略式でどれくらいの罰金になりましようかということをいろいろ尋ねる場合がございます。お前これこれだぞ、それではうちはたいへんだから、何とか少しと、値切ると申しますか、それじや夜店の商売じやないかという笑い話で済ますことがよくございます。そういう場合になるほどちよつと考えてやろうかという場合もあるのです。そういう程度で考慮されるので、いわゆる情状としてはその犯罪事実に伴うところの情状、言いかえれば、信号無視にいたしましても、ほんとうに赤が出ておるのにわつと突き切つた場合と、青が出てだいだい色にかわつたところを行つた場合、そういう情状は検察庁においても、先ほど申し上げましたような事情で相当考慮して振り向けをいたしておるわけであります。その振り向けをした後で裁判所に行く事件でありますから、ある程度定型的に形式化して処理していい性質のものだろう、かように考えるわけであります。  それから前科の点でございますが、これは免許証に大体そういう違反がある場合には書き込むことにいたしておりますので、免許証を見ればよくわかると思います。
  39. 小林錡

    小林委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時より再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時八分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十二分開議
  40. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
  41. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 簡単にお尋ねいたします。一つはもう済んでしまつたことでありますけれども、法務大臣の御心境を承りたいことは、有田二郎君の逮捕請求の問題に関しまして、法務大臣は棄権をなされたそうであります。法務大臣は検察庁の最高責任者であられるのであるし、そしてその検察庁が逮捕の請求をしたのでありますから、法務大臣としては、逮捕許諾に対して賛成の一票を衆議院議員としてもお入れになることが、正義というか、責任の立場からも当然なことではないかと存じますが、棄権なされた理由はどこにあるか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 御趣旨の御質問はまことにごもつともでございます。もしただ許諾を与えるということならば、もちろん院内におりましたことですから、進んで議場に入つて投票をいたすことであります。期限付の許諾というのは前例のないことでありまして、こういうことが専門的に見てどういう意味をなすのか、期限と条件が同じなのか、民法土の解釈が違うのか、あるいは期限付の期限のところだけ無効であつて、あと有効になるのか、御承知のように浅学でありますから、そのことを十分に腹に置いて出なければ、ただ与党の議員として投票することは、いささか一方においては検察庁を指揮監督しておる者として責任が果せませんので、十分専門家の意見を開いて出よう、こう考えまして、そのことが期限付の許諾になりそうだと聞きまして、ただちにここにおります刑事局長、事務次官、あるいは最高検の方の意見も間接に聞きたいということでありましたが、前例のない許諾条件ということは法務当局も知らずにおりましたので、すぐ見つからない。本省へ行つている人が最高検と連絡をとつているうちに、投票時間どころではなくて、その晩もとうとう解釈がきまらなかつたわけであります。かたがた議場閉鎖になりましたときもまだ相談をしておつて、議員としての職責が尽せなかつたことはまことに遺憾に存じている次第でございます。そういうわけで、私の念頭に全然ない許諾の仕方だというので、専門的知識も浅いことでございますから、非常に真剣に問いただし、討議をしておつた次第でございます。さよう御了承願います。
  43. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 大臣の所属される自由党とわれわれ野党は青票と白票で違つたわけでありまして、しかもわずかの差で破れたのでありますが、大臣がああいうような期限付の許諾ということは初めから想像されておらなかつたとするならば、とにかくわずかの差で勝敗が決する立場であるから、検察庁は本来無条件の許諾を求められたはずでありますがゆえに、野党側の青票にくみせられることが理の当然じやないかと存じます。それを条件あるいは期限の性格がよくわからなかつたからと申しますけれども、それは与党の案であつて、野党はさような条件を付したわけではないのでありますから、大臣はその際は検察庁の最高責任者として率直に投票できるはずです。別に研究する必要も何もないのじやないか。ことに今与党の汚職問題がやかましくなつておる際で、大臣としては、努めて中立的な立場、公平な立場でおらなければならぬ場合に、僅少の差で勝敗が決するというようなときにわざわざ棄権されたことに対し、間接的にこの期限付の逮捕許諾の勢いを助けたような行動をとられたことに対して私どもは遺憾に思うのであります。研究する必要のないことで、検察庁が本来の逮捕請求をしたことはもちろん無条件でありましよう。期限付の逮捕請求なんということはあり得ざることであるから、本来の態度でもつて投票なされば、何も迷うところはなかつたかと存ずるのですが、何がゆえにさようなことを研究なされなければならなかつたのであるかを承りたいと思います。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 だんだんの御注意なりおしかりなりは十分拝聴いたしますが、実は簡単ではなかつたので、法務当局の中にも院議できまつた以上どうであろうかといろいろな議論がありまして、その晩の十一時半でも実はきまらなかつたのであります。あくる日の夕方まで議論が続いておりまして、今でもきれいさつぱり結論が出たというふうでもない、まことにむずかしい課題を突然受取つたものでございますから、ましてとつさにそのことを情報として聞きまして、もともとあなた方のような専門家でない私は、法務大臣として、検察庁の指揮監督者として、十分厳正な知識を持つて議場に臨まなければならぬ。むしろ与党のきめたことであるから、ただちに与党と同じ投票をするという前に、法務大臣として冷静に考えようという気を起したのでありまして結果としてはおしかりを受けますが、その心理の部分はむしろほめていただいてもいい部分があるのじやないかくらいに私は思つている次第であります。しかし結果として、議員として投票ができなかつたということは、いかようにも遺憾の至りに存じております。
  45. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 有田二郎氏の逮捕は、われわれ同僚議員として決してこれを快しとするものでありませんが、すでに検察庁の逮捕請求が出たという場合、国会はそれをノーとするかイエスとするか、その二道であつただろうと思うのですが、ああいうように前代未聞なる期限付の逮捕許諾というようなことに相なりました。これに対して大臣は相当研究なされたということでありますが、検察庁の御意見としては、ただいまではああいう院議に対しまして、これを有効なものとしてこの院議は守るという結論でございますか。あるいはこの期限の部分は納得が行かないという結論に到達されたのでありますか。またあとにもかようなことが起らぬとも限りませんので、もちろん検察庁考えだけでどうにもならぬ場合もあり得ることでありますけれども、これだけの社会を騒がせましたる大きな事件でありまするがゆえに、検察庁としては検察庁としての一定の見解をお持ちであろうと存じますが、いかようにお考えになつておりますかをお聞かせ願いたいのであります。
  46. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。もし詳しい問題になりましたら刑事局長がおりますので、刑事局長からお答えをしたいと存じますが、昨日の午後一時に、御承知のように裁判所から逮捕状が発せられましたので、これから見ましても院の許諾が有効であつた。いろいろ御議論もありますが、最小限度、全部無効ではなかつたと思います。三月三日までの許諾が有効であるかどうかは、大体来る二十六日夕刻に発せられるであろうと予想しております。裁判所から出る勾留状の内容を見てから、具体的な態度をきめたいと考えております。しかし院議というものに尊重の念を持つているということは、議運でも本会議でも申し上げたのでありまして、勾留状の発せられるその内容のわくの中において、院議を尊重する念をどう具現するかということは、来る二十六日の夕方以後にさらに会議を開いて態度をきめたいと存じております。おととい十一時半まで相談したと申し上げましたが、この十一時半ごろ、結局これは勾留状の内容を見てから態度をきめようというので、いろいろな議論がありましたが、結論はそういうことでわかれました次第でございます。きのうはこちらに夜十二時近くまでおりましたので、とうとう法務省に行くひまがございませんでした。きよう行くひまがありましたら、さらにこの問題について真剣に討議してみたいと存じます。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 三十六日の勾留状の内容について御検討なさるということでありますが、そこで、これは私は法律問題として二つのことをお尋ねいたしたいのであります。法務大臣でも法制局長官でもいいのですが、あるいは法制局長官が適当かも存じませんが、憲法には逮捕という言葉を使つております。しかし刑事訴訟法には、逮捕、勾引、勾留という言葉を使つています。そこで院の許諾を得るのは、いわゆる刑事訴訟法の逮捕ということだけであるのであるか、憲法の逮捕という言葉の中には、勾引、勾留も含むものであるか、いかようなる御解釈であるかを伺いたい。
  48. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おつしやるように訴訟法上の言葉と第五十条の逮捕という言葉との関係は問題になると存じますが、私どもといたしましては、この五十条そのものの内容から見まして、たとえばこの「会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」というような文言もございますので、ここにいつております逮捕は、狭い意味での逮捕、それに引続く拘禁をも含めた意味での逮捕、かように存じております。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはまた法務大臣にお尋ねいたしますが、院が許諾をいたしましたのは三月三日まで、そこでかりにこの通り三月四日になりまして右田三郎氏を釈放するというようなことが起つた際に、検察庁としては再逮捕の必要がある場合において、再逮捕の手続法律上なし得るか、あるいはまたさような再逮捕して調べなければならぬ事情がある限り再逮捕の手続をする決心があるのか。その際に、やはり院の許諾の手続をとるかどうか、さようなことについて承りたいと思います。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 これは、ただいま申し上げました、一昨日の夜十一時半までかかつた省内の会議におきましても、いろいろ御指摘のような議論が当然予想なさいますように出たのでありますが、結論は、結局二十六日夕方発せられる勾留状の内容を見てから考えよう、それまではいろいろな試みの意見は出ましたけれども、最終決定はつかないのです。何しろ先例のないことでありまして、非常に慎重に考えれば考えるほどむずかしい問題でありまして、今晩にでもまた相談してみたいと思つております。なお、もつと詳しいことがございましたら、刑事局長から申させたいと思います。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 刑事局長からもう少しその問題の点を明らかにしていただきたいと思います。
  52. 井本台吉

    ○井本政府委員 再逮捕の問題につきましては、今大臣の答弁されました通り、二十六日の勾留状の性質によることがまず第一でございますが、全然別個の容疑事実について、さらに許諾の御審議を願うということはあり得ると存じます。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、あなたの今の答弁では、別個の事実があるならば再逮捕ということもあり得るが、ただ三月三日までの間に、今逮捕の原因になりました事実について審理、捜査未審の点があつたとしても、それは再逮捕の原因にならぬという御意見でございましようか。
  54. 井本台吉

    ○井本政府委員 明日夕方発せられるであろうと予想される勾留状の内容を検討いたしませんと、明確な御答弁は今のところいたしかねます。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおこれは一度刑事局長か、どなたかにお尋ねしたかもしれませんが、念のためにもう一度お尋ねしたいことは、法務大臣の捜査指揮権、検察庁法の第十四条であります。これは明確のようであつて、はなはだ明確ではないのであります。法務大臣は個個の事件については検事を指揮することはできない、これは検事総長のみを指揮することができる、こういうような検察庁法の規定に相なつております。そこでこれは一体具体的な場合においてはどういうことになるのかはつきりいたしませんが、ある検事からあることを調べてもらいたいと思う際には、必ず検事総長を通じてやるという意味なのであるか、またある検事のある取調べについて、その取調べを求める、あるいは変更を求めることは、法務大臣はじかにその検事を指揮するのじやなくて、検事総長を通じてやるということになるように思われるのでありますが、実際のお取扱いとしては、これはどういうふうに運用されておるのでありますか、いわゆる政治家であります法務大臣と、純然たる捜査機関でありまする司法機関の一部をなしております検察職員との関係でありまして、これを具体的にもつと明確に御説明いただきたいと思うのであります。検事総長がある事件を捜査あるいはある事件起訴したいと思つても、法務大臣がそれはいけない、やめろと言えば検事総長は起訴ができないのであるかどうか、あるいは検事総長独自の見解に基いて、あるいは検事独自の見解に基いて、起訴なり逮捕なりそういうことができるのであるかどうか、そういうことについて承りたいと思います。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題は、私が昨年就任に際しまして、一番心を使つた問題でございます。御指摘のように検察庁法におきましては、個々のケースは検事総長を通じて指揮ができると書いてあります。指揮と申しますと、何だかあごで使つておる、命令する、これはやめとけと個々のケースに言えるような印象を与える語意でもございます。実際の運用としましては、私はそういうことをいたして参らなかつたのであります。大体実情を申し上げますと、検事総長が私に報告すべき問題だと思うことは、向うから面会を申し込んで来まして、私の部屋で会います。私の方から個々の事情について、検事総長に特に急いで部屋へ来てくれと言つたことは、私の記憶に存する限り一度もございません。大体検事総長が法務大臣との関係考えまして、良識においてこれは大臣に言つておいた方がいいというので、このケースはこうだから起訴もやむを得ない事情であるというような話をいたしまして、それは再考してくれというような問題にぶつかつたことは一度もございません。検事総長と私との間では指揮という法的根拠のもとに会談するのでありますが、実際はお互いの良識と検察権の独立ということを常時念頭に置きまして、平たく言うと、話合いをいたします。その結果私も私の良識に基いて意見も言い、検事総長も検事総長のみならず、背後に第一線の検事が精魂を尽して調べて来た問題についてそれをまとめて、おそらく検事総長のところで、かりに行き過ぎがあれば是正し、足りないところがあれば埋め合して、私のところへ持つて来ると思います。従来、一年三、四箇月にもなりましようか、大体においてほとんど全部の例において検事総長の報告が中庸を得て正しいと思つております。なお必要があれば事務次官またはここにおります刑事局長などにも同時にこの話を聞くわけですが、おそらく検察庁を、猪俣さんのような専門家がお調べになればすぐ空気がわかると思いますが、法務大臣が就任して以来かつて不当な指揮権を行使したということを言う者は一人もないのではないか、それだけは私は職を果しておると、こうみずから考えておる次第でございます。
  57. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 造船汚職事件も飯野海運の関係者の逮捕を見るように相なりまして、検察庁は相当の決意を持つてこの事件の中心に向つて歩を進められておることに対しましては、私ども大体のアウト・ラインを知つておる者は、検察庁の決意のほどがわかるのでありまして、いろいろの圧迫に屈せず、いろいろの勢力に屈せずして、どこまでも政界浄化のために奮闘していただきたいと存ずるのであります。そうして一体国会のわれわれの態度といたしましては、今検察庁が手をつけておることに対して、あまりに具体的なことを掘り下げてこれを一般に発表するようなことは、検察当局の捜査権にプラスにならぬことではないかと思つて、私どもはなるべく遠慮するつもりで、ただ検察庁がどこまでも所信に向つて進むことのできるような輿論をつくつておかなければならぬというふうに考えておるのでありますが、ただ大体のアウト・ラインをつくつておりまして、検察当局はある程度われわれは監視しなければならない。政治問題に相なりますといろいろの勢力が働いて参りますので、十分に監視しなければならぬと思つてどもも研究はしておるのであります。  そこで先般私はこの日本開発銀行の銀行員が外航船舶の割当に対して、相当の発言権があることを利用いたしまして、相当の饗応を受けたり、あるいは物資を得ておるというようなうわさが耳に入るのであります。そこで日本開発銀行なるものの職員の地位を調べますと、これは日本開発銀行法第十七条によりまして、刑法上は公務員であり、これがもしその利害関係人から饗応または物資を得たとしますならば、これはまさに収賄罪、やつた者は贈賄罪という関係に相なると思うのであります。先般法務省その他の関係の方に私はお尋ねしたけれども、どうもあまり公務員であるというようなことを深く頭にお置きにならないような傾向に見えたのであります。  そこで私は大臣にお尋ねいたしますが、一体今度の割当につきましては、運輸大臣が最後決定権がありましても、実際どの船会社に何そう割当てるかといつたようなことの発言権は、この開発銀行の連中は非常に大きかつたことは大臣も御存じだと思う。そこでそれに対する相当の犯罪行為が行われているのではないかと思われるのでありますが、そういう方向に何か捜査を進めておられるのであるか、まつたく放任しておられるのであるか、それをお尋ねいたしたいのであります。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。開発銀行の銀行員は開発銀行法によりまして、公務員と見なされておることは御指摘の通りでございます。また割当についても重要な役目をしていたことは新聞にも出ておりますし、周知の事実でございますが、問題の物品、金品のやりとり――金は問題になると思いますが、物品は社交上の儀礼の範囲に属するのかどうか、そういう微妙な点もありますので、物品をもらつたからすぐに違法になるかどうか、これは個々のケースで研究するほかないと思うのであります。ただ総括しまして、開発銀行の問題について捜査に着手したとか、着手しようとしているというような報告は、まだ受けておりません。実情を申し上げますと、今手一ぱいでありまして、つまり昔は手を一時にうんと広げるような方針をとつたこともありますけれども、今は新刑事訴訟法の精神に基きまして、できるだけ手がたくステップ・バイ・ステップにやつておるようでありまして、人手も手一ぱいにやつておるようでございますし、そんな関係があるのかもしれません。手不足だから手をつけなかつたという報告も聞いておりませんので、ただいまのは私の個人の想像と御解釈願いたいと思います。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおこれははなはだデリケートな質問になりまして、法務大臣御迷惑かも存じませんけれども、先ほどから衆議院の決算委員会等にいわゆる森脇メモというものが出、なおまた当法務委員会の佐竹氏から佐竹メモが出て、赤坂あたりの料亭におきます政治家やあるいは船会社関係の人たちの集会の模様が報道されておるのであります。もちろんそれだけで、これが涜職と直接どういうふうな関係があるのであるかは、検察庁の調査にまたなければ判然といたしませんけれども、どうもこういう造船疑獄のやかましい際には、少くともあれが事実であるといたしますならば、李下に冠を正し、瓜田にくつを入れた疑いはまぬがれないと存ずるのであります。そこで犬飼大臣は、あのメモによりますと四回中川なる料亭へ出入りしたごとになつておりまして、それに対する釈明はなされておるのであります。私ども一応了としておるのでありますけれども、きよう相当問題になりました飯野海運の重役のごときは、実に驚くべくしばしば料亭に遊んでおる。そこで私はお尋ねいたしたいことは、今日生活難に際して親子心中している社会現象のもとにおきまして、かような中川の料亭において芸妓何十名というような常識をはずれた行動をいたしておる、それ自体これは社会的に批判さるべきものであると思いますが、これが森脇メモと称し、佐竹メモとして公表されたのでありますけれども、いやしくも捜査の立場にある検察庁としては、かように異常なる遊興関係があるといたしますならば、徹底的に調査しなければならないはずだと考えますが、こういうことにつきまして御調査になつたことがあるのであるかどうか、それをお尋ねいたします。
  60. 犬養健

    犬養国務大臣 李下に冠を正さずという例を引いてお話になりましたことは、よく私も服膺いたしたいと存じております。森脇メモというのは、捜査当局でも調べておりますが、中には大分違つたのもあります。しかし正しいのもあるのでありますから、違つた部分だけ強調して、猪俣さんの御質問に言いのがれをするという心持ちは持ちません。またそういう態度では問題は解決しないと思います。十分心得て捜査当局の報告を待つておる次第でございます。
  61. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると森脇メモと称せられたものの中には、検察庁がすでに調査せられた事実と符合する部分もあるが、違う部分もあるというような御答弁を承つておりますが、佐竹メモと称するものは、やはり森脇メモと同じであるかどうか私どもわかりませんが、やはり幾分かは検察庁でも御調査済みでありましようか、その点を承りたいと思います。
  62. 犬養健

    犬養国務大臣 詳しく存じませんが、要すればその方の政府委員に答弁さしてもよろしゆうございますが、何でもいわゆる佐竹メモと――敬称を省きますが、森脇メモとは違つておるところがあるということは、決算委員会でしやべつたのか、何かで私は読んだ覚えがございます。私は違つているというような報告を受けているように思います。
  63. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その点は今非常に問題になつております。もし事務官で詳しく調べた方がありましたならばその詳細を御発表いただけませんでしようか。
  64. 井本台吉

    ○井本政府委員 私どもも森脇メモ、佐竹メモというメモそのものを拝見したわけではございませんが、佐竹メモは詳細に新聞に載つております。森脇メモは、決算委員会を傍聴いたしました私どもの下僚の報告によると、発表にはならなかつたように聞いております。佐竹メモの概要につきましては東京地方検察庁におきましてある程度調査いたしまして、事実と合つているものもあるが、違つているところもあるというような簡単な報告を受けております。以上申し上げます。
  65. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、あのメモが発表されてから数日たつておりますが、そのメモ発表の前にかあとにかあの事実をお調べになつたか。これは社会にはなはだしい衝動を与えたものでありますがゆえに、私は、いくら多忙でも検察庁は放任されておらなかつたと存ずるのでありますが、お聞きしますと、捜査されておる、そうして符合しておるものもあれば違つておるところもあるということでありますが、どういうところが符合し、どういうところが違つておるかということの具体的発表はしていただけませんか。
  66. 井本台吉

    ○井本政府委員 佐竹メモと題する料亭の人名簿でございますが、合つておるものも単なる社交土の儀礼と思われるような飲食関係のものもありますし、何かそうでないようなものもあるようではございますけれども、さようなことで直接これが今回問題になつておる事案と関係があるということではないので、単なる状況参考のために必要なので東京地方検察庁で調べたということでございます。今申し上げました通り全部がみな犯罪に関係があるということではないので、その点は御了承願います。
  67. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 この森脇メモなるものは円山決算委員長が公表いたしません。けれどもその内容を公表すれば現内閣は当然瓦解するということを彼は公言しております。もしかような重大な事実があつて、森脇なる者が知つておることで検察庁が知らない道理はない。もし知らないとするならばうかつ千万な話だ。そこであなた方は森脇メモの内容を知つておるのか知らぬのか。知つてつて捜査した結果大したことじやないんだという結論でありますか。その辺を承りたい。
  68. 犬養健

    犬養国務大臣 ちよつとその前にお断り申し上げます。私さつきの御質問に対して、森脇メモと佐竹メモと混同してお話申し上げておりました。森脇メモというのが事実と少し違うということは、よく考えますと国会の雑談で聞いたのでありまして、佐竹メモが事実と違う部分があるということは責任ある当局から中間報告として聞いたのでありまして、これはおわびかたがた訂正いたします。それから森脇メモをわれわれがのぞき得る事情にあるにかかわらず回避しておるということはないのでありまして、全然まだ内容を存じておりません。その点おしかりを受ければ、これは甘受いたしたいと存じます。
  69. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実はわれわれのところの情報でありますが、もちろんその情報がわれわれ個人のものでありますので、あるいはまつたく真実ならざる点も多いのじやないかと思いますが、それによりますると、森脇メモと称せられるものは、もう検察庁が知つていることなんだ、検察庁と森脇とが知つている事実を、あれが書きとめて出したものであるというのである。私どもは日本の検察庁はそううかつなものだと思いません。これだけの大問題でありまするがゆえに、森脇ごときが知つていることを全然知らぬでおるということはないと思う。また森脇自身といたしましても、そんな自分に大した関係もない重大な内容を捏造することもないと思う。そこであの森脇メモと称し、佐竹メモと称するものの中には相当の真実があるのじやないか。しかもその森脇メモは、これを発表すると内閣は瓦壊するんだというふうなことを、与党の委員長が公の席上で言つておるのでありますから、相当重要な内容があるのじやないか。それに対して法務省は御存じないのであるか。私ども、知らないということに対しまして疑問がある。そこで森脇メモは公表されておりませんので、今大臣は佐竹メモは間違いであると申された。実は森脇から直接聞いて書いて来たと称しまする人のメモを、私はあの佐竹メモが発表になりまする二日前に入手いたしました。当犬養法務大臣に関しますることも書いてありました。しかし私はこれをむやみに公表してもと思つて、そのまま握つておりましたが、後に佐竹メモが発表されまして、これと照し合せますると、私がメモいたしておりまするのと一致いたしております。そこで私としては出所は一つじやないかと実は思つておる。犬養大臣の赤坂における四回の行動のごときは、すつかり芸者の数から日から時間まで一致いたしておるのであります。それですから、今公表せられざる森脇メモなるものが、佐竹メモとどれだけ違うかわかりませんが、私の見た範囲においては同じなのであります。そこでただ聞くところによれば、どういう話が行われたかということまでしるされておることが、佐竹メモの発表と違うところじやないかとも言う人があるのであります。しかもそれを見た与党の委員長が、内閣の崩壊になる大きな事実を含んでいると言う以上は、これはそこに重大な事実があるのじやないか。それに対して真に法務省では御存じないのであるかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  70. 井本台吉

    ○井本政府委員 何々メモと称する文書は、私ども過去の経験によりますると、一種の怪文書でありまして、怪文書は一旦発生いたしますと、その孫子が短時日のうちにできて広がります。従つて私、森脇メモは拝見しておりませんが、お話を承りますると、何か佐竹メモと関連のある文書と拝察するのでございます。もちろん検察庁におきましても、かようなメモ全体を信用するわけではございませんが、捜査のある程度の端緒にはなるということで、さようなものも検討しておると存じますが、いまだ正式な報告は私ども受けておりません。
  71. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは捜査に関することでありますがゆえに、私どもそう無理にとは申し上げませんが、とにかく非常に一大センセーシヨンを起した事実でありまするがゆえに、捜査当局はもしできるならば、その知り得る範囲においての状態を当委員会でも発表していただきたいと私は思うのです。今すぐにでなくてもよろしいが、たとえば森脇メモが今あなたの答えたように一種の怪文書であるならば、こういうところは怪文書だ、検察庁の調査によればこういう事実はないのだといつて、早くそれを私は国民に訴えなければならぬと思います。怪文書であるものが存在し、これを打消しもせずにおくと、あなたのおつしやるように怪文書がまた怪文書を生んで来ます。それでありまするがゆえに、もしあの森脇メモ、佐竹メモが怪文書でありますならば、その怪文書であるゆえんを明らかにしていただきたいと思いますが、今の御答弁によると、ある程度調査して、事実のこともあれば事実でないこともあるというのでありますがゆえに、どこが事実であつて、どういう点が事実でないのであるか、その点だけでも明らかにしていただきたいと私は思うのですが、いかがでございましようか。
  72. 井本台吉

    ○井本政府委員 これは猪俣委員にお願い申し上げるわけでございますが、何分地検では非常に忙しゆうございまして怪文書が出るたびに、――このメモを言うのではございませんが、怪文書の内容そのものについて全部検討して、その結果を発表する、それに越したことはございませんですが、現在の非常に多忙な状況をお察しくださいまして、手のすく状況になるまで、しばらく何とか御猶予が願えるならば御猶予願いたい、こう考える次第でございます。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その事情はよくわかりました。そこでなおあなたに確かめますが、この森脇メモあるいは佐竹メモの内容については、先ほどの御答弁で、検察当局でも相当調査なさつた、そして合つている部分もあれば、間違つている部分もあるという御答弁だと思うのですが、そうすると全部が怪文書と片づけちやいけないのじやないですか。その価値判断の問題ですが、全然根も葉もない怪文書というものもあるのです。あなた方の考えは、これは怪文書といつて片づけられるのであるか、今言つたように真実の部分もあるということなのか。一概に怪文書という価値判断をしてもいけないのじやないかと思いますが、それをお尋ねいたします。
  74. 井本台吉

    ○井本政府委員 怪文書と称しまするものは、全然虚構のものであれば、世人に訴える影響力もないのでございまするが、少し合つて部分が違つておる。しかもつくつた責任者の名前もわからぬ、何かしらほんとうらしく書いてある、というところが怪文書の特質でありまして、これが全然事実に合つてないというようなものであれば、ちり紙同様に捨て去られるのでありますが、先ほど申し上げました通り、多少符合している点もあるというようなところに怪文書の特質がある、というところをひとつおくみとり願いたいと考えるのでございます。
  75. 小林錡

    小林委員長 鍛冶君より関連質問の申出がありますので、これを許します。鍛冶君。
  76. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 聞いておつて、たいへん重大だと思うのであります。今の御答弁を聞いておりますと、検察庁で怪文書――もちろん怪文書でしようが、あれに載つておるようなことをお調べになつた事実はあるものと拝聴いたしました。そこで私もいわゆる佐竹メモというものを見たのですが、あれだけに詳細なるものがかりに本物であるとするならば、記憶や何かで出るものではありません。これは何といつても中川と長谷川を主として書いてあるようですが、帳簿をもとにして出て来ているものと思われるのであります。そこで私は、検察庁において中川なり長谷川なりの帳簿をお調べになつた事実があるかどうかを承りたいと思います。
  77. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろん帳簿等を調べましてあの事実についての簡単な報告が私どもの方に参つたもの、こう考えております。
  78. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで私はあれを見たときに、もちろん怪文書だろうとは思つたが、かりに今刑事局長のお答えのように幾分なりとも事実があれに載つておるといたしましたならば、かようなことはよそから出るものじやありません。また中川にしようがどこにしようがこんな問題があるからといつて、おれのところにこういう帳簿があつて、こういうお客が来たと公表するものとは、常識上考えられません。どこからか調べてあれを見て、そうしてああいう臭いと思うものだけをピック・アップした人があるに違いない、こう思うのであります。そこでどういうことが想像できるか考えてみますと、税務署ならばああいうことは調べるかもわかりません。けれども私たちは税務署がそんなことを発表するとは思わない。そうしてみると、どうも事件をもとにしていわゆる捜査当局が調べられた事実があるのじやないか、こう考えられるのでありまして、してみるとどうも私は捜査当局以外にこういうものを調べたことはないものだ。そこで今あなたから聞けば、捜査当局で調べた事実がある、こうおつしやる。その事実があつて、幾分であろうともその事実に照合するものが現われて、それが怪文書になつたということになりますと、これはゆゆしき問題だと考えます。これはどうも私らにすれば、事件の捜査の参考にせられるのにも必要かもしれませんが、私だつて長谷川にも行つております。それを一々いつ何日行つた、そんなことを天下にふらされてたまるものじやありません。われわれにだつていろんな会合がありますから、そういうことを世間に発表するということになると、たいへんなことになるが、検察当局が帳簿を調べた。その事実がある。しこうしてそれをもとにして怪文書かは知らぬが、それが怪文書の基礎になつて出た事実がある。そうするとわれわれは検察当局が調べたそのものが何者かに漏れたのではなかろうかという疑い濃厚なるものが出て来るのであります。あなた方にもそのような疑いは出て来ないのかどうか、承りたいと思います。
  79. 井本台吉

    ○井本政府委員 森脇は数千万円の金を使つて料亭における遊興状況を調べたということなどが新聞紙上などに伝えられております。私立探偵もおりますし、いろいろな方法で調べれば調べられないこともないのであります。私ども検察庁からさようなものが出たということは全然考えておりません。このことだけははつきり申し上げます。
  80. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それ以上お調べ願えないのならばよろしようございますが、今猪俣さんの言われるように、もしそういう事実を発表せられるものならば、いかにして彼らの手に入つたかもひとつあなた方の御責任において十分お調べを願つて、さしつかえない程度において聞かしてもらいたいと思います。この点希望として申し上げておきます。
  81. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 鍛冶委員は長谷川へ行つて遊んだなんて言われる。私どもは長谷川なんてどこにあるのかわかりませんが、まあそれは自由党と社会党の違いかもしれぬ。しかしあの佐竹メモなり、それと大同小異のものではないかと想像されまする森脇メモなりが事実であるといたしますならば、許すべからざることだと思う。耐乏生活を説く吉田内閣の閣僚が、あるいは自由党員がそういうことを簡単に考えておるということは重大問題だ、それこそ重大問題である。鍛冶君はさような軽い意味にとつておられるが、われわれはさように考えない。重大問題である。これからいろんな思想が発生して来ましようし、いろいろな動きが動いて来ましよう。これは現内閣におきまする重大なる問題であるとして、検察当局は徹底的に御調査なすつていただきたい。いわゆる造船疑獄と称するものが、底なしの沼のように、――もうわれわれの貧弱な調査だけにおきましても、実に日本の資本主義機構のあらゆる悪弊が、この断層面となつて現われております。これをそのまま大したことだと考えないような政治感覚ならば、日本は滅びます。私どもはいやしくも国会議員である佐竹氏が天下に公表いたしましたものであります以上、そんなに簡単に片づけられるもんじやない。これを公表した以上はあれはうそである。あれはほんとうであるが、そんな意図はないのであつて、単に遊んだにすぎないのだというならば、検察庁はその点を明らかにする義務があると思う。私はある程度調べたとおつしやるからさもありなんと思います。しかし調べたならば、天下の疑惑を晴らすために、それを公表していただきたいと思うのでありますけれども、今刑事局長の申されたように、今検察庁が非常に多忙をきわめておられることも想像にあまりがありまするので、私は時期を待つことは待たねばならぬと考えるのであります。しかしこれは決して不問に付すべき問題じやない。この待合政治なるものがいかに日本の政治を茶毒しておるか、われわれはほんとうに心からなる怒りを感じます。そして国家の多額の費用が濫費せられ、その形相がここに現われて来た。これがいわゆる正義感を強く持つて世の腐敗を矯正すべき大いなる任務を持つておりまする司法官が、これをそのまま単なる簡単な社会現象として決して見のがしてはいけない。これはその事実の有無につきましてあらゆる方法をもつて調査していただきたい。そうしてここに登場している人物も、大体みそつけられた人物ばかりが登場して、しかもこれが造船汚職に関係ないなどということは絶対言い切れない。もちろん犬養さんの御答弁は、ある程度まで犬養さんの平素の主義というか、ああいう花柳のちまたに趣味を(笑声)感じておられる方であるから、何気なしに遊びに行つたということを想像するのでありまするが、私はあえてそれは追究いたしません。わが党の古屋議員が私と見解を異にしてまたお尋ねするかもしれませんが、しかしまあ犬養さんも、さつき私が申しましたように、李下に冠を正し、瓜田にくつを入れたそしりを免れない。その身の潔白を証するためには、この中川なり長谷川なりあるいは新橋における蜂龍その他におきまする、このいわゆる利子補給法案の通過いたしまする前後におきまする、ここらにおける狂態につきまして、徹底的に調査してこれを公表していただきたい。私はこれを強く要望いたします。私どもも相当調査はしております。しかし検察庁に妨害になると思つて遠慮しておるのでありますが、あなた方が発表しなければ、どんどんわれわれは発表します。新橋の蜂龍あるいは金田中、こんなところにも相当あるのではないか。私どもはこういうところを調べていただきたい。検察庁の権力をもつてするならば、幾らでも調べられるはずである。これを不問に付さずやつていただきたい。私はこの佐竹メモが世の中に投げつけた大いなる反響に対しまして、現政府、ことに検察庁は重大な決意をもつてこれが収拾に当つていただきたい。これはあなた方がいいかげんな、鼻であしらうような態度でやつておりますと、容易ならぬことに発展いたします。ことに犬養法務大臣は非常に苦境に立たされておりまして、ある程度同情もする点があるのでありますが、私はあなたの生涯における危機だと存じます。これをあなたが切り抜けられれば、あなたの先代の名をはずかしめざるりつぱな政治家となりまするし、つまらぬ因縁にひつかかりまして大所を誤りますると、犬養二代にわたる優秀な政治家としての家名を汚すことになることを、私は老婆心として――私とあまり年が違わないから友情として忠告申し上げます。これはどこまでも徹底してやつていただきたいことを強く要望して私の質問を終ります。
  82. 小林錡

    小林委員長 犬養法務大臣は、参議院の本会議から呼びに来ておりますから、法務大臣に対する質疑は次の機会にお願いいたします。古屋貞雄君。
  83. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 昨年の七月七日に、外航船舶建造融資利子補給法の原案を、石井大臣が説明されておるのでありますが、与党である自由党外三派の修正が、根本から原案をくつがえすような修正になつておるのでございます。その修正案が七月二十四日に提案され、その説明が行われておる。かような関係に置かれておるのでありますが、その間における運輸省の行動、所信、それから運輸省原案を提案した理由等については、私運輸大臣から詳しく本日承りたいと存じておりますが、ここで海運局長に承りたいのは、最初は単なる利子補給法の改正であつたのかどうか。この点は海運局長おわかりになると思いますが、どうでしようか。
  84. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 運輸省が提案いたしましたのは、すでに成立しておりました利子補給法に対しまして、損失補償を加える改正案を提案した次第でございます。
  85. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 その損失補償の点につきましては、ただいまの法律が制定されまする当時に、業者から、相当な強い要望があつたけれども、それがその当時は受入れられずに、遂に損失補償の点だけは切り離されて、損失補償をしないことになつた、かように私どもは承知しておるのでありますが、そのいきさつが局長におわかりになれば御説明願いたいと思います。
  86. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 利子補給、損失補償制度は戦争前にありました制度でございまして、御説の通り最初の利子補給法が成立いたします場合に、運輸省としては損失補償制度を加えた案をもつて大蔵省に相談したのです。ところが大蔵省としては、海運については戦争前にもそういう制度があつたから、そういう制度を設けるのはわかる、しかし海運に設けた場合に、ほかの産業がついて来るおそれがあるから、その辺を考慮してもらいたいということで、最初の利子補給法の折には損失補償がつかなかつた。その後さらに大蔵省と折衝いたしまして、大蔵省も了解して、昨年の夏臨時国会に、損失補償を加える改正案を提案した次第でございます。
  87. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで今度は具体的な事実に入つて承りたいと思います。計数のことはまた別に承りますが、損失補償をいたしたはかりでなく、別に固定資産税に対する特別な取扱いをする方途を訓じようということが一つ。もう一つは船をつくる材料の値下げの方途もはかろう、こういうことで行われておるらしいのであります。それもやはり運輸省自身のお考えで、最初からそういう方針で、たとえば利子補給もしよう、損失補償もやろう、船をつくる材料の値下げもしよう、税金の面においても、固定資産税その他の援助をしようという四本建の考えから、一部改正の御主張をされておつたのでありますか。その点はどうでしようか。
  88. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 御承知の通り、海運は国際競争をいたすものでございます。ところが外国には固定資産税のように、船舶に対する重税を課するものがないわけです。ところが日本は船価は高い、金利は高い。その上に千分の十六、これは十億の船ですと千六百万円の税金がかかる。こういう税は国際競争力上非常に負担が重い。従つて固定資産税の軽減をするということは、日本の海運助長上絶対に必要であるという確信を持つて、運輸省としてはそういう要望で自治庁ともかねて折衝しておつた次第でございます。  それから鋼材の価格が高いために日本で使う船も高いし、また外国へ船を輸出する場合も、鋼材が高いということは非常な障害であります。従つて鋼材の価格を下げるということは、日本船の国際競争力強化の上を、外国に船舶を輸出する上からいいまして、これまたぜひ必要であるという考えをもつて、かねてから政府間で折衝をしておつたものでございます。
  89. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 一方では利子の補給をし、損害補償をしておるということ、それから一方ではただいま御答弁になりましたような方法を請ずるということになりますと、造船計画の許可を受けた船の造船に対する関係は、相当長い間ほかの船より税金も下げられて来る、ほかの船の材料よりもこれによつて材料代金も下げてもらえる、そういうような――もちろん外国との関係考えて日本の海運についての援助をいたすということの趣旨はよくわかるのでありますけれども、そういう特段なる援助をするということになりますから、従つていかなることを犠牲にいたしましても、あるいは法律の線を乗り越えても、この造船計画に対する割込みをしよう、あるいはその許可を受ける運動をしよう、当然こういうことになつて来ることは、いかにもののわからぬ人でも、初めからわかつておることだと私は思うのでありますが、さような点についての考慮をなさつたのかどうか。言いかえますならば、一本建の援助をいたしますならば、それで競争はなし得ると思う。それを材料の点において、また国民の公平に負担すべき納税の義務までも特別扱いを上ておる。そういう特段な四本建の援助をするというふうなところに本件のような疑獄が起ることは当然でございます。これは現実に、この計画の融資許可を受けることになつた船会社は存立しておるけれども、これからはねられた船会社は倒産したものが多いのであります。こういうように援助を受ける船会社あるいは造船業者と、援助を受けられない一般の船会社、造船会社とは画然と区別されるということは、はつきりわかるはずなのでありますが、そういうことを十分御勘考の上でこういう原案をお立てになつたのであるかどうか、その点を伺いたい。
  90. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 先生の申される一本の助成策ということですが、戦争前には航路補助という制度がございました。これは郵船とか商船とか、特定の会社だけにやつておりました。しかもその補助は定期航路にやつておりました。ところが御承知のように、海運というものは国際的なものでありまして日本がそういう航路補助のごとき直接助成制度をいたしますと、これに対する外国の反撃は非常に強いわけでございます。そこで私どもは助成をいたしますにしましても、外国の反撃の少い方法を講じてやらなければならない。たとえば利子につきましては、御承知の通り日本の金利と外国の金利は非常に違う。この差額を補給する。こういうことはやはりアメリカで海運に対する非常に手厚い補助をやつておるのですが、その補助の方法は、アメリカは御承知の通り労銀が非常に高い。一方外国の労銀は非常に安いので、その労銀の差額を助成するというような制度をとつておるわけです。そこでこの利子補給という制度は、先ほども申しましたように戦争前にやつていた制度で、国際的にも反撃の少い制度ですが、こういう方法が一番いいのではないかと考えたのであります。それから税金のことですが、これも外国になくて日本だけにある。船会社の方から言うとむしろ悪税と言われる税金です。これを外国並とは言いませんが、できるだけ負担の少いようにするということも外国の反撃の少い方法である。また鋼材の価格引下げについても同様であります。従いまして海運についての助成を考えます場合に、まず第一にこの助成策に対して外国がどういうふうに考えるか、こういうことを念頭に置いて考える必要があると思うのであります。
  91. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 さように重大な基本産業の一つの基礎をなすべき船であるならば、さような外国との競争に対するいろいろな配慮をする、あるいはかつて戦争中やつてつたからこれを引継ぐというようなことをなさらずに、むしろそういう問題については国営でおやりになりますならば、そういう弊害が出て来ないだろう。こういうことは、同時に他の会社に対する特別な扱いである。結局あの通過いたしました法律によりますと、先日も当委員会で猪俣同僚からも申されたように、ただで船をつくらしてそれを私有に帰せしめるというようなことになる。こういうことは私どもはまことに重大だと思う。でありますから、さように補助をしなければならないのであるならば、国営にしたらどうだ。さような外国との競争において反撃を受けるようなことがあつたら、日本の海運界は立ち上らない。これは日本の自立経済を立ち上らせる、経済の基礎をなすべき重大な問題だというならば、よろしく政府は進んで国労にし、そしてタンカーなり貨物船なりは、それだけでも国営を考慮したかどうか。なぜ私がかような質問を申し上げるかというと、造船疑獄の問題はきのうきよう始まつた問題ではありません。一方においては船の議員連盟ができ、一方においては業者が、あらゆる面においてこの国会を取巻いて運動を続けた。ただいま赤坂の中川あるいは長谷川という料亭の問題がここにクローズ・アップされておりますけれども、およそ東京におきますところの花柳界の遊びの最も花形は、造船業者であり、あるいは船会社の方々であつたということは、私どもも承知しておる顕著な事実であります。一昨々年ごろからこういうことをわれわれしろうとさえ知つておるのに、その方面の本職であります運輸省の海運局あたりが――それはりくつはつくでしよう、どろぼうにも一りくつありますから、なんぼでもりくつはつきますが、国民の納得の行くように問題を考えていただきたい。こう申しますのは、戦争の犠牲になつております同胞何百万、子供をかかえた未亡人は生活ができない、実に悲惨な生活をしております。単に船会社だけではない。しかも日本の産業面に重要なる役割を果します官公労の諸君が、生活が困るから給与ベースを上げてもらいたいという要求をして、両者の意見が合わないため仲裁裁定委員会に提訴する。仲裁裁定委員会が裁定をする。当然国家は債務を負担することになるにかかわらず、予算措置ができないからということですつぽかしておる。こういう日本の国情の中において、金を出さなくても船がつくれる。しかもそれは何億という船である。一千万や二千万の船ではない。そういうことが現在行われております原案をおつくりになつた御心境と、そうしてそういうふうに参りました経過において、ただいまのような外国との競争あるいは日本の海運界が非常に苦況にあるからというようなことだけでは国民は納得しないと思うのですが、さようなことも考慮に入れてやられたかどうか、むしろ国営でされるような計画はなさらなかつたかどうか。それとも業者からの非常な運動によつて、やむなくああいうことになつたのか、この点を承りたい。
  92. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 国営の問題でございますが、国家が船をつくりましてそれを海運業者に動かさせる、こういうことで国際海運に伍しました場合に、これまた非常な反撃があるであろうと思います。先ほど申しましたように、国が直接補助をやるということに対しましても、相当の反撃があつたのでありますから、国が直接つくつてそれを海運業者に動かさせるという場合に、日本の海運というのは純粋のコマーシャル・ベースでないじやないか、純粋のコマーシャル・ベースに乗つてない海運を、われわれの鶴として手をつないでやつて行くわけに行かない、こういうふうな反撃に出るおそれがあるわけであります。従いまして、これにつきましてはよほど慎重に臨まなければいけない。それからもう一つ、国が船をつくつてそれを業者に動かさせるという場合に、いわゆる不定期船ならば画一の船でもけつこうでございます。戦争中につくりました戦時標準型の船などはそれでありますが、今つくつておりますのは、ほとんど全部が定期航路に使う船です。定期航路に使います場合には、一応その定期航路に適した船型、速力、構造を持つたもの、こういうものを一々国家がつくりました場合には非常に不経済です。それを民間につくらせればいろいろな弊害もありましようが、その弊害以上の損失が国家的に見て出て来る。もう一つはできるだけ国家の金を少くして多くの船をつくりたい、こういうことでございます。従いまして今までの財政資金の率をごらんくださいましてもわかりますように、船舶公団時分は七割、ところが見返り資金になりましてから五割をつける。しかしその五割も実際五割でなしに五割以下です。それで二十七年度の船に関しましては、財政資金を四割というところまで落して来ている。あとの六割の金は船会社自身で市中銀行から借りてくれ、できるだけ市中銀行をたくさんかき集めて、財政資金を少くしようというのが今までとつて来た方針です。ところが二十八年度になりましてから、船会社の不況が非常に深刻になりまして、そういう方法では絶対金が集まらない、市中銀行の方も財政資金七割でないとどうしても金を出さない。それに損失補償と利子補給がつかないと計画造船というものは見通しが立たぬというところで、その財政資金を七割に持つてつたわけでございます。従いましてもし国家造船ということになり、全額国の金を使いますと、どうもそれによつてできる船は、ごく少数で国の金をかえつてたくさん使う、こういう結果になるのでございまして、私どもは今までの方法がもし続け得るならば続けるべきじやないか、市中の金を少しでもたくさん使つて船をつくるという方法が、国家的に見て適当ではないか、かように考えておる次第であります。
  93. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私はどうも納得が行かないのです。国家資金がたくさんいるのでつくれない。そういたしますと、今のような七割の融資をする、それから今問題になつております一割のリベートがある。しかも実際の取扱いの方法はこういうことになつておるのじやないでしようか。まず三割なら三割の自己資金がある。従つてあと七割の融資を受けるならば船ができ上る、こういう書類を作成いたしまして運輸省に申し出る。従つてどこどこの銀行から融資をすることについての契約をしてもらいたい、そういうような順序になつて、計画造船の許可を運輸省でする、こういうことになつているのじやないかと私は思うのですが、その点はいかがでしよう。そうなつておるとすれば、三割の自己資金、これだけが今の御説で国家資金がいらないことになるのでしようか。  なお市中銀行の問題でありますが、今の御説明で私が納得行かぬのは、政府が船をつくる場合に、民間から資金を借り入れる、こういうことも国債によつてできると私は思う。何も持ち金をすぐ全部使うということではないと思うのですが、そういう点はどういうことになつておるのでしようか。
  94. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 船の建造の申込みを受けつけます場合には、二十八年度の船につきましては七割は財政資金、あとの三割はお前たちの方で銀行の金を借りて来い、自己資金でもけつこうですが、銀行から借りて来た金につきましては五分になるように利子補給をする、こういう要領を示しまして、それによつて船会社は開発銀行に対して財政資金の融資の申込みをし、運輸省に対しましては利子補給の対象船として認めてもらいたいという申込みをするわけであります。
  95. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで進んで承りたいのは、現在まで開発銀行から融資をいたしておりまする総額と、それから市中銀行が融資しておりまする総額は大体おわかりになると思うのですが、どのくらいになつておりますか。
  96. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 開発銀行から出しておりまするのは、これは新造船だけでなしに改造船も含みまして、大体九百五億でございます。それから市中銀行から出しておりまするのは、保険会社から融資しておりまするものをも含めまして七百三十六億余でございます。
  97. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それからこの点は何回承つてもはつきりいたしませんが、固定資産税は普通の税金よりもどれだけの特別扱いができておるのか、これが一つ。  それから製鉄会社に対する運転資金の利率の引下げ――開発銀行並びに日本銀行から貸し付けておりまする引下げの率と総額がどれくらいになつておりますか。
  98. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 固定資産税でございますが、これは普通ならば千分の十六のものが、利子補給の対象船だけにつきまして、それが千分の四にされておるわけであります。今度地方自治庁の方で一般的に固定資産税の率を改正する案が考えられておるようでございますから多少かわつて来るかと思いますけれども、昨年の夏の特別措置では千分の四というように軽減されております。もつともこれは昨年の夏の特別措置以前に私どもと地方自治庁の間の話合いにおきまして、大体千分の十六を千分の六まで下げてもらつてつたわけであります。これがさらに千分の二だけ軽減されまして千分の四になつた。それから開発銀行並びに日本銀行の別口外貨の金利引下げでございますが、日本銀行の別口外貨、これは製鉄業者が日本銀行から借りておる別口外貨の金利でございますが、これは五分が二分五厘。それから同様に開発銀行から借りておりまするものは一割が七分五厘で、二分五厘引下げられておる、かように聞いておりまして、それによる利子負担の軽減の総額は、後ほど船舶局長を呼びまして御答弁させていただきます。
  99. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで、今の別口外貨の貸付金の金利が一割が七分五厘になり、五分が二分五厘になつたのでありますが、かような取扱いをいたしまする法律的な根拠は何によつたのでしようか。
  100. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 その金利を何分にするかということは、それぞれ日本銀行、開発銀行にまかせられておる問題でございまして、おそらく三党の協定でそういう話合いができ、それを政府が了承し、大蔵省から日銀、開銀にそういう旨を申し入れて、そして日銀、開銀で自主的にそういう措置をとつたものとかように考えております。
  101. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと政党三派の協定に基いて、行政庁が開銀並びに日本銀行に申出をしたのでやられた、こう承つてよろしいのでしようか。
  102. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 その点は大蔵省にお確かめを願いたいと存じます。私の方ではございません。先ほど申しましたのは私の推定でございます。
  103. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それからなおお尋ねいたしたいのは、改正された規定によりますと、船会社から一応運輸大臣のところに造船をいたしたい、ついては了承していただきたいという一つの書類が出る、その書類の中には将来一定の利益がございますれば、補給をしていただいた利息を政令で定められた一定の規定に基いて政府にお返しいたします、こういうような申込みが行われ、これを了承しての上で船をつくることの許可を運輸省ではなされておるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  104. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 一定の利益が出ました場合に、その期に受けた利子補給金を政府に返還し、また一定の率以上の利益が出た場合に既往の利子補給金についても政府に返還する、こういうことは昨年の夏成立をいたしました修正の利子補給法の中に条文がございます。従いまして船会社が建造を申し込みます場合には、当然そういうことを前提として申し込むわけでございます。
  105. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますとその申込みに基いてやられるということになるのですが、船会社の方から考えますと、そういうことを約束されるということになるのでしようか。これは法律の規定で合法的に当然にそうなるのでしようか。その点のことはどうなんですか。
  106. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 法律の規定で当然そういうことに相なります。そうしてもし一定の利益が出て国家に納付しなければならないという義務が出まして、しかもそれを船会社が納めない場合には国税滞納処分の例によつて取立てる、こういうことでございます。
  107. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと法律の規定で義務づけられていることははつきりわかつたのでありますが、もしも船会社の経理の面がよく整つておらない、あるいは船をつくることについて、船を動かすことについての経営面についての運営か非常によくない、こういうような場合に対しましては、規定によりまして経理の勧告、監査ということができることになつておるようでございますが、その程度の問題は具体的に言えばどういうことができるのか、その点がおわかりでありましたならば承りたいと思います。
  108. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 私ども船会社の経理につきましては、毎期の決算報告その他の何をとりますと同時に、船会社の増資あるいは合併とか、その他経理上相当大きい問題は、事前に私どもの方の了解を求めて措置させるという方法をとつておりまして、船会社の不当な経理を極力事前に防止するという措置をとつておるわけであります。それから利益金の処分にいたしましても、たとえば十分償却しないで株主対策上配当をしようという場合には、償却が十分でないということで配当を抑制するというような措置をとつておるわけであります。昨年法律が成立してそういつた監査権限が私どもに与えられましたので、その以後におきましては厳重にそういう措置をとつております。
  109. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 具体的にはどういうことをなさつたか知りませんが、私どもの承知しておりますところでは単なる形式にすぎないものであつて、実際にはその会社の経理面に対する十分なる監査あるいは経営に対する勧告、指導というようなことは、今の規定ではできないと思うのでございますが、実際にお取扱いになつておる運輸省におきましては、あれで十分だと思いますか、それともさらに改めて厳重にやらなければならぬとお考えになつておるか、その点はいかがでしようか。
  110. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 規定としてはあれで十分と存じておりまして、実は船会社の方から文句が出るほど詳細な調査をいたしておるわけでございます。また最近は会計検査院におきましては、利子補給を受けておる船会社の会計の実地検査をするという方針を持つておるわけでありますので、私どもももとより実地検査の権能を持つており、そういうふうに準備をいたしておりましたが、会計検査院とも協力いたしまして、船会社の経理の是正に努めたい、かように考えております。
  111. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今度は許可の関係でございます。これは先日の局長の御説明によりますと、第一次から第九次の今日までの間の過程においては、造船計画に対する許可の方法あるいは許可を決定するについての過程が非常にかわつて来たという御説明があつたのでありますが、第九次前後の計画の分について私どもつております事実は、結論から申しますと、結果においては運輸省が許可の可否をきめるんだ、その過程においては、開発銀行なり融資いたします市中銀行なりから、その会社の能力なり信用なり、あらゆる方面の調査をされた調査書が運輸省に報告され、そうして運輸省において決定をされる、言いかえますならば、許可決定いたします重要な資料というものは、融資をいたします市中銀行なり開発銀行そのものが実際の調査に当り、その報告を貴重な基礎として、その他の勘案もいたしましようけれども、結論においては許可の可否を決定する、こういうふうに承つていいでしようか、それとも、もし間違つておりますれば、こまかい御説明を願いたいと思います。
  112. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 二十七年度の建造船、いわゆる八次船までは運輸省だけでやつております。二十八年度になりましてから、財政資金は開発銀行が融資するということになりましたので、実際の調査は、資産、信用につきましては開発銀行が責任を持つて調査する、それから私どもは航路計画並びに造船政策、こういう面から見て船会社の状況を調査する、その両方の調査を持ち寄りまして、両方協議の上で事実上決定する、その決定したものを開発銀行は自分の資金の融資先として決定する、私どもは利子補給法の対象になる船会社として決定をし、かつ船舶建造調整法による許可をする、こういうことになつております。両々相寄つて決定をするという措置をとつております。
  113. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、今の御説明によりますと、両者が協議した結果で決定をする、こう承つてよろしゆうございますか。
  114. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 さようでございます。
  115. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、財政資金については開発銀行が取扱つているので、開発銀行なり融資する銀行は相当決定には重要な役割を果しておることになりますが、この市中銀行に関する融資については、市中銀行は公務員でございませんから相当な饗応を受けたというような事実がございましても、この点については刑事上の責任は負わないことになるわけなのです。開発銀行は特に開発銀行法に基いて公務員とみなされるので、これは刑事責任の問題になる、こういうことになるのですが、市中銀行の方面でも、やはりさように、ただいま承つたような協議、決定をする一つの役割を相当果されておられるのですか。
  116. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 実は九次造船の後期につきまして運輸省と市中銀行の間に意見の相違がありましてごたごたいたしました。その理由は、九次造船については船会社として非常にたくさん申し込んで来るであろう、その場合に私どもとしては一応これをあらぶるいする方法といたしまして、船会社が申し込みまする場合に、まず三割分について市中銀行から融資を受け得られますという融資確約書をつけて来い、こういうことを条件にしたい、そういたしますと資産信用のない船会社は融資確約書がとれないわけであります。従いまして申込みが自然制限されるわけであります。私どもそういうことを主張して市中銀行等にお話したのでございますが、市中銀行は、それは絶対困る、自分たちの営業政策上お得意である船会社をいいとか悪いとかいうことは困るということで、市中銀行の方でお聞き入れにならなかつたのです。それからさらに、運輸大臣がいつか御説明申し上げたかと思いますが、それでは市中銀行と開発銀行と私ども三者寄つて資産信用のあまりにもひどいところを落そうじやないか、こういうことを提案したのであります。それも市中銀行は営業上困るからそれは避けたい、そのかわりに運輸省、開発銀行で船主を決定されれば、その決定した船主について大きい銀行の間で責任を持つて市中の融資がつくように努力をいたしましよう、こういうお話があつたのであります。従いまして先ほど申し上げましたように、開発銀行と運輸省で船主を決定する、その決定したのに市中銀行が融資をしてくれる、こういうふうな結果になつたわけであります。けれどもどもで選考いたします場合に、開発銀行で資産信用を十分調査いたしますので、そこで決定された船主は市中銀行から見ても資産信用は十分である、こういうふうに見られた結果融資されたものと考えまするが、滞りなく融資がついた次第でございます。
  117. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで一応市中銀行といたしましては、船会社に融資をする場合には、運輸省と契約を結ばなければならぬことになつておるので、外航船舶の建造融資に対する代案を当銀行が引受けますというような契約を運輸省といたすことになるのでしようが、その利子補給をしてもらえるという契約ですね。これに対しまして市中銀行そのものは、さような契約をすることによつて融資をすることになるのでしようが、なお損害補償の点もその中に含まれておるのでしようか。これはどういうような経過でこの契約が結ばれるのでございましようか。たとえば政府は利子補給をいたしましよう、あるいは損害補償もいたしましよう、こういうことを計画造船の許可になりました船についてはいたしましようということを契約をするのですが、市中銀行はみずから申し出て来るものでございましようか、それとも船会社の方から、こういう市中銀行から融資をしてもらおうと思うのであるから契約をしてくれということになるのでしようか。この具体的な動き方はどういうふうに運ばれておつたのでしようか。
  118. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 計画造船の適格船主として決定いたしますると、その船主は運輸省に対しまして、私はこれこれの銀行から何千万円あるいは何億円融資を受けることになりましたので、この銀行と政府との間に利子補給契約を結ぶようにお願いします、こういう申請を船会社がいたします。同時に銀行は、これこれの船会社の建造するこういう船に私のところはこれこれ融資いたしまするので、この融資に対して利子補給法第何条によつて利子補給の契約を結んでいただきたい、こういうことを申し出ます。それに対して運輸省は利子補給契約を結ぶという何を出すわけであります。船会社に対しては、そういう契約を結んだぞということを通知する、そういう手続であります。
  119. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それは許可する前にそういう手続をするのでございましようか、許可されてからするのでしようか、どういうことになるのでしようか。
  120. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 許可する前でございます。許可する前には、先ほど申しあげましたように、船会社から開発銀行に対しては、これこれの船を建造したいが、これに対する財政資金これこれを融資願いたいという何を出しますし、運輸省に対しましては、これこれの船を建造するについては市中銀行からこれこれの何を借りなければならぬが、これが許可になつた場合には利子補給の契約を結ぶようにしてもらいたい、こういう申請をするわけでございます。
  121. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、この条件付で最初に規定されたような手続を進めて行く、そうして許可になつた場合には実際にその契約が行われる、こういうような過程を経るわけでありますか。
  122. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 さようでございます。
  123. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 なお最後に一言承りたいのは、もしも船会社がその契約を履行しないという場合には、利子補給に対する関係、融資に対する関係を途中から許可を取消されるということになるのでしようか。それとも注意を数回いたしまして、しかもこれを聞き入れなかつた場合には――一方では融資はされてしまう、しかし経理面についての注意あるいは勧告に従わない、こういうことになつて参りまする場合には、規定によりますると、利子補給をしないようにするということだけは運輸省ではできるのですが、貸した金までも取上げるとか、これからの融資はしないぞというようなことになるのでしようか。そのところのいきさつはどうなるのでしようか。たとえばただいま御説明を願つたような過程において、甲という、あるいはAという船会社が造船の許可を受ける。そうして開発銀行とか市中銀行から金を借りる。ところがその経理的において、今御説明のような厳重な検査なり経理をいたしたけれども、これを聞き入れなくて、これに反しておる、こういうような場合にはどういう御処置をなさるか。ただ利子補給契約をやめるのか、補償をやめるのか、利子補給契約を履行しないということに役所はなるのか、その点はどうなんでしよう。損害補償はしないということだけで済むのか、あとの処置はどうなるのでしようか。
  124. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 利子補給法の十五条に、運輸大臣が勧告をいたしまして、その勧告に従わなかつた場合には、今まで補給いたしました利子の全部または一部を国庫に納付を命ずることができるように相なつております。
  125. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 離そうしますと、した銀行の方では非常にまずいことになつて来るのでございまして、その点を承りたかつたのです。そうすると融資をした銀行では、融資はしてしまつた、政府からは利子補給をされない、利子補給した金もとりもどされてしまう、こういうようになつた場合に、一体その危険負担はやはり市中銀行なり開発銀行がすることになると思うのですが、その点どうでしようか。
  126. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 銀行の方では利子補給をしたままでございまして、取立てるのは船会社から取立てるわけでございます。
  127. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、銀行の方にはそのまま政府は契約通りの履行はする、しかし本人の方からこれを取立てる。銀行の方では金を貸す場合には、おそらく船を担保にとつてしまう。船会社自身がその補給された利子の金額を返還できないような場合には、やはり政府の赤字ということになるのでございましようか。能力ある場合にはよろしゆうございますけれども、船はおそらく担保になつておる、経理面は左前になつて来ておる。そうすると結局、最後においては危険負担は政府がすることになるのでございましようか。
  128. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 この利子補給を受けてから十五箇年間、今のような不景気が続きまして、船会社が利益をちつとも出せないというふうなことになりますと、国から補給したものは出たままになるわけです。しかし十五年以内に船会社に景気が出るという場合には、今まで補給を受けた金額を返して行くわけでございます。
  129. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、市中銀行などでは政府との契約に基いて、利子補給の契約、損害補償の契約に基いて、ただいま申し上げたような政府の受ける危険というものの負担は、やはり銀行の方が普通なら持たなくちやならないのにもかかわらず、市中銀行なり開発銀行は危険負担をしなくても済む、こういうことになるのじやないでしようか。言いかえますと、政府が利子補給をいたしまする場合に、それによつて補填される一つの銀行は、船会社そのものに対して、経理のやり方が悪い、そして利子補給の返還をする能力がない、こういうような場合でも、そういう危険負担は市中銀行はせずに、政府だけがしておるんだ、こういうことの結論に伺つてもよいでしようか。
  130. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 実際的にはそういうことかと存じます。その分だけの利子は確実に入つて行くということになります。
  131. 木下郁

    ○木下委員 関連して……。損失補償というのは、今まで補償したことはありますか。
  132. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 戦争前にこういう制度がございましたが、一件もないと記憶いたしております。それから今度の終戦による損失補償契約でございますが、締結の準備中でございまして、まだ締結いたしておりません。
  133. 木下郁

    ○木下委員 それから、その損失というのはどういう損失があるのですか。まだ実際現われておらない、予定されておる損失というのは……。
  134. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 銀行が新造船に融資いたしまして、その金が期限が来ても返らない、そこで銀行がその担保のある場合について、担保権を実行する。それから保証人があるときは、その保証人に対して債務の履行を請求する、そういう一切の手続をとつた後における損失ですね。その損失が最初に貸し出した額の百分の三十以上になつた場合にはその百分の三十で打切り、それから損失の百分の三十以内でありまする場合には、その損失額だけを補償するということに相なつております。
  135. 木下郁

    ○木下委員 それは銀行が貸すときに保証人をとろうととるまいと、それから船を担保にしようとか、あるいは担保があろうとあるまいと、やはりそれはやることにしておるのですか。
  136. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 この法律に基く政令によりまして、政令で銀行がそういう金を融資する場合にはその船を第一担保にとれということ、それからその船の価格以上の、融資額以上の保険をつけろ、こういうことを条件にいたしております。従いまして必ずその船には担保がついております。御承知の通り船はほかの不動産と違いまして、日本で売れなくてもロンドンへ持つてつて売るとか、あるいはニューヨークで売るとか、非常に処分の容易なものでございます。従いまして担保権の実行というものが非常にやさしいのでございます。それから事故が起りました場合には、今申しましたように保険をつけておりますので、大体それで貸した金はカバーされるというふうなものでございまして、処分をしました場合に損害の出る場合というのは割に少いのじやないか、かように考えます。
  137. 木下郁

    ○木下委員 それから利子補給の問題で、利子補給について、遡及して補償したということを聞いておるのですが、そういうことがあるのですか。
  138. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 遡及と申しますか、当初の利子補給は、これから建造する船に適用するということでございましたが、昨年の修正案では、二十五年度につくりました貨物船、昭和二十五年の十二月一日以降につくりました船、油送船につきましては、昭和二十六年十二月一日以降につくりましたものについて、これから払うべき金利について政府が利子を補給する、こういうふうにいたしたものでございまして、過去に払うべき利子に対して補給するのではございません。これからの金利に対して補給するというものでございます。
  139. 木下郁

    ○木下委員 その場合には、もうすでに船主と銀行との間には契約はあつたわけですね。船主と銀行との間にはもう契約があつて、現に船を担保にして金は借りている。それで船ができておる。それに対して、新たに改正された法律に基いて、政府と銀行との間に契約ができたというふうになりはしませんか。その関係は……。
  140. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 金利につきましては、船をつくるときに金を借りるわけでございますから、利率についてもそのときに契約ができておるわけでございます。しかしその利率が、今日の市況では全然払えない。従つて外国船と競争する上におきましても、金利も払えないということでは運転資金にも事欠くということでございますし、さらに一面そういうふうな船会社の経理状況でございますと、これからつくるべき船に、一銭も市中銀行から金が出せない。従つて新造船は一隻もできないという大きな問題が起りますので、さような修正を見たものと考えております。
  141. 木下郁

    ○木下委員 なぜ私がそこを聞くかと申しますと、先般も法制局長官が、市中銀行が金融するにあたつて、利子補給の政府との契約ができなければ、そんなばかな金融の契約は造船業者にしないのだ、そこでそれが特別の利益に当らないのだという解釈の、唯一の根拠であつたと私は聞いておる。ところが今伺うのは、もう現にあつたもの、現に契約はできておつて法律的には造船業者は銀行に対してそれたけの債務を持ち、銀行は造船業者にすでに法律的には確定した債権債務の関係を持つておる。それに対して銀行が契約するということになると、法制局長官の話と少し違うからお聞きしたのです。なおそれに関連しまして、一割の割もどしがあつたということを聞いておりますが、そういうことの方面のしろうとである私なんかは、それは非常に珍しいことだと思つておるのですが、あなたはその方の相当の地位の役人だから、そういうことが行われておつたということを御存じでありますか、ちよつとそれを伺いたい。
  142. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 リベートといいますか、割もどしがあるということは、私ども今まで信じておりませんでした。これは私ども財政資金で船をつくるようになりましてから、戦前一部にそんなものがあつたのではないかということを聞いておりましたので、財政資金を使う以上、絶対そういうことをしてはならぬということをたびたび警告を発しておりますし、業者にも時折確かめましたが、そういうことは絶対しておらぬ、こういうことでありましたので、私どもも今日までそういうものがないということを信じて参つた次第でございます。  それから先ほどの私の答弁にちよつと誤解があるかと存じますが、おそらく法制局長官の話では、なるほど銀行と海運業者の間の融資契約はずつと前に行われておるのですが、政府と銀行との利子補給契約は、去年の三月三十一日に契約いたしましたのが七隻でございます。それから五月の二十八日に五隻契約いたしましただけであります。その後の分につきましては、昨年夏のあの修正に基く契約でありますが、これはまだ契約をいたしておりませんで、準備を急いでおる途中でございます。従いまして利子補給契約ということが、まだ存在していないということであつたかと存じます。
  143. 木下郁

    ○木下委員 そのリベートのことについて今まで御存じなかつたということは、私はどうかと思うのですが、口頭で話したとか、警告を与えたと言うが、その警告を与えた日時等は、今からでもお調べになればわかりますか。
  144. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 その日時等は記憶はございませんが、何回かそういう警告を与えたことを記憶いたしております。
  145. 木下郁

    ○木下委員 このリベートの問題について、それを隠しておつたということになると、請負金額の上で一割は低いわけです。それに対して七割までの補助を受け、あと三割の金融に対して利子補給を受けておるということになると、法律的に相当責任の性質も違つて来はしないかと思うのですが、その点について今まで関係者の言うところでは、リベートというものは商慣習なんだということで、その点言いのがれをいたしておると私は承知しております。しかしながらそれが商慣習であるかないかということは、今あなたの答弁で大体商慣習にあらずして、陰でこつそりやつたものだというふうに私は伺うわけであります。あなた自身もまたそのリベートの問題については、商慣習にあらずして、こつそりそでとそでとの間で取引されたものだというふうにお考えになるであろうと思いますが、その点についてあなたはどういうふうにお考えになつておりますか。
  146. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 戦前におきましても、主として個人的に、船会社が造船所と新造契約を結んだ場合に、一部そういうことがあつたということを聞いているのでございまして、一般的にそういうものがあつたとは聞いておりません。従つてそれが商慣習になるのかならないのか私は存じませんが、一般的には行われていなかつた、あつたにしてもごく一部であつた、こういうことを申し上げておきます。それから、一割々々と言われておりますが、戦前自分の金で全部船をつくつておりました場合でも、そんな一割というべらぼうなリベートは絶対になかつたのでございまして、まあ一分か多くて二分程度というふうに戦前でも聞いております。
  147. 木下郁

    ○木下委員 二分程度としても、戦争後につくつた船の総請負金額に当てると、概略でよろしゆうございますが、どのくらいになりますか。
  148. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 これは私ども、船会社がそういうことをやつているということを信じておりませんから、従つて私が今そういう数字を申し上げることは、かえつて誤解を招くかと存じます。
  149. 木下郁

    ○木下委員 それではこういうふうに伺いましよう。戦争後に新たにつくつた船の総費用は幾らになつておりますか。大体でよろしゆうございます。
  150. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 開発銀行の当初の融資額――これはその後返した金もございますが、新造船に対する貸出額は、当初に貸したのが八百六十六億、それから市中銀行の貸出額が九百九十八億であります。この中には、これから貸すべき予定の額も入つておりますけれども、一応新造船に対する予定はその通りです。融資残高はまた違うので、これから相当返したものもございます。
  151. 木下郁

    ○木下委員 その開発銀行と市中銀行から融資を受けた以外に、やはり自己資金も大分出ているのではないかと想像しますが、そういうものはわかりましようか。大体でよろしゆうございます。
  152. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 今手元に、自己資金の正確な数字は持つておりませんが、おそらく船会社は、増資等によつて得ました金は、市中から借りた金の返済に充てていると思います。従つて増資、社債その他で得ました自己資金は、それがすぐに新造に出ませんで、既往の新造のために市中から借り入れた分の返済に充てる、従つて新造はほとんど開発銀行並びに市中銀行の借入金でまかなう、かように考えていただいていいかと思います。
  153. 木下郁

    ○木下委員 くどいようですが、最近問題になつておるリベートの問題ですが、そのことを初めてお聞きになつたのはいつでありますか。多分あなたもびつくりされたことだろうと思いますが……。
  154. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 検察庁に山下汽船の社長以下重役がひつぱられ、家宅捜査を受けた折にそういうリベートの金があつたらしいということを聞いております。しかしそれは私としてはまだそれがどの程度に確実であるかどうかということを確かめておるわけではございません。風聞として聞いておるわけでございます。
  155. 木下郁

    ○木下委員 最後に……。それで今のようにそれが事実かどうかあなたに伺つてもわかることでありませんが、それをお聞きになつたときはびつくりされた。そうしてこんな商慣習みたいなものがあるというようなことはあなたとしては夢にも想像されていなかつたのかどうか、その点を確かめておきたい。
  156. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 お説の通り、私どもといたしましては驚愕いたした次第でございます。
  157. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ちよつと局長に質問したい。今のお話では二十五年度のタンカー、それから二十六年度の貨物船、これに対しては、昨年の八月三日に本院を通過しました、現在行われておる利子補給及び損害補償法によりますると、遡及してこの当時の船に対しましても今後からは利子を安くする。というのは、結局市中銀行の七分五厘が三分五厘になり、別口貸付の五分が二分五厘になる、こういうような利子補給があの法律を適用されてから以後行われることになつた。と申しますると、その前の市中銀行なり開発銀行と政府との契約に基く利率が今後それだけ安くなつて来る、こういうことになるのでしようか。これは念のために伺つておきたい。
  158. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 ただいまのお話の二十五年十二月一日以降のものはタンカーでございません、貨物船でございます。それから二十六年十二月一日以降が油送船、タンカーでございます。それから金利が安くなりますのは開発銀行の方は実際上払いますのは三分五厘、市中の方は五分になるわけであります。それから別口外貨貸しの方は、製鉄業者が日本銀行の別品外貨を利用しておる、これを二分五厘にするわけであります。
  159. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうすると、二十五年十二月以降とそれから二十六年の造船についての関係ですが、今回の法律改正になりまする前は、ただ利子補給だけの問題であつて、損害補償の問題は法律に規定されていないのでありますが、形式的な契約のとりかわしであるとかいうような手続は、その前も今回もかわらないわけですか。
  160. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 損失補償は、ただいま申しましたような、過去につくりました船にさかのぼつては適用しないのでございまして、二十八年度につくりました船から損失補償契約をする。利子の補給だけが、先ほど申しました船についての八月十五日以降の金利について政府が補給してやる、こういうことでございます。
  161. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 くどいようでございますけれども、そうすると損害補償については二十八年度以降のものについての損害補償、それからその他のものについては二十五年、二十六年度以降を昨年の八月十五日以降の利子支払いの場合にそれだけ下げて支払えばいい、こういうことですね。
  162. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 さようでございます。
  163. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それでわかりました。  そこで今度は広瀬さんに伺いたいのですが、時間がありませんから簡単に伺いますが、昨年の八月十五日から施行されております現行の外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法に基いて利子補給をいたします場合に、現在利子補給されておると思うのでございますが、その実際の取扱います過程はどういう方法によつて行われておるか、その利子補給の方法ですね。たとえば日本銀行なら日本銀行からプールして市中銀行なり開発銀行に利子補給すべき金額を渡しておくのか。造船計画が行われて融資をしたという現実の事実の報告があつてからこれに対する補給をされるのか。この利子補給方法の具体的事実はいかん、こういうことになるのですが、どういう取扱いをなさつておるのですか。
  164. 広瀬駿二

    ○広瀬説明員 ただいまのお尋ねの利子補給を具体的にどう運んでおるか、現在までのところ、利子補給契約を締結しておりませんので、全然知悉しておりません。  なおこまかくどういうふうに予算が使われるかということは、海運局長から御答弁いたします。
  165. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 実は先ほど申しましたように、利子補給契約を結んでおりますのは前の低い率の利子補給契約でございますが、これは十二件結んでおりますが、まだ実際に金を払つていないのでございます。今締結を急いでおりますのと一緒に払うべくやつておりまして、大部分のものはまだ結んでおりません。その支払い方法は、これは大蔵省から二十八年度の予算として運輸省がもらつておりまして、従つて運輸省の会計課から各銀行にそれぞれの利子補給額を払つてやるわけでございます。
  166. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、昨年の八月十五日以降の分は別といたしまして、その前の分はお払いになつたことがありますか。
  167. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 これもまだ払つてないのでございます。今度一緒に払おうとしておるのでございます。これは年度内に払うようになつております。
  168. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと、今の御説明によりますと、一応運輸省は先に受取つてつて、そうして市中銀行なり開発銀行が実際の融資をいたしましたときに、それに対する補給をその都度やるということになるのでしようか、こう承つてよろしいのでしようか。
  169. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 本年度に払いますのは、前の利子補給契約のものにつきましては四月の一日から八月の十四日まで、それから今度の利子補給によりますものは八月の十五日から九月の三十日までの分を本年度内に払う。それから十月一日から三月三十一日までの分は次の年度に払うわけでございます。その間の金利を計算いたしまして、六分なら六分に相当するものをその銀行に払つてやるわけでございます。
  170. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それは運輸省がプールして自分のところに受取つておいてから今の取扱いをするのですか。
  171. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 これは運輸省が取扱うといいますか、予算でそういうふうに運輸省の予算として成立しておるわけでございます。その予算は運輸省が支払いの手続をとるわけでございます。
  172. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そこで今回の固定資産税の減税でございますが、これはもうすでに行われておるのでしようか、行われておりませんか。千分の四になりました減税の面ですね、それが行われておるのかどうか、行われておれば、今までに許可したトン数に割当てて、一年にどのくらいの金額になるか。減税になつた金額がおわかりになつたら、御説明願いたいと思います。
  173. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 これは二十八年度の地方税から減らされておるわけでございまして、今正確な数字を持つておりませんが、約二億程度ではなかつたかと存じます。正確に調べまして、先ほどの鋼材の分と一緒にあとでお知らせいたします。
  174. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 今度は別の関係でありますが、鉄材の値下げに対する補助の実現方法といたしまして、先ほど岡田局長から承つたところによると、別口貸付については五分であつたものが二分五厘になり、その他の開発銀行の貸付が七分五厘が五分になる、かようになつております。それを製鉄会社にそれだけの利息を安くして支払うようにきめられたとおつしやつておりますが、それは実際どういう方法で実現されておるのか。その取扱い方法を御存じならば御説明願いたいと思います。
  175. 広瀬駿二

    ○広瀬説明員 私は予算の関係でありまして、この点はむしろ金融の問題で大蔵省銀行局及び大蔵省の為替局の方でやつておりますので、私存じません。
  176. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうしますと銀行局でないとおわかりにならないのですか。
  177. 広瀬駿二

    ○広瀬説明員 さようでございます。
  178. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 私は実はその点を承りたいと思つておりましたが、銀行内部の操作でやつておるのか、それとも何らかの法律的根拠に基いてやつておられるのか、その点はおわかりになりませんか。
  179. 広瀬駿二

    ○広瀬説明員 その点は先ほど海運局長から御答弁がありましたように、法的な根拠はないはずでございます。
  180. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 そうすると、銀行が内部的操作でやつておるということのように承れるのですが、これについては、利息を下げることですから、政府なりあるいは関係方面から、何らかの法制がなければやれないと思うのです。この関係については、おわかりにならなければけつこうなのですが、承つておりますると、閣議決定か何かがされて、それに基いて政府の方から銀行に申入れがあつたようなことを承つておるのですが、さような事実になつておるのでしようか。その点どうでしようか。
  181. 広瀬駿二

    ○広瀬説明員 私もしつかり記憶しておりません。たしか運輸省、大蔵省共同で打合せをいたしまして、閣議決定を経たのじやなかつたかと思いますが、よく調べて後ほど御返事申します。
  182. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それでは調べてから承りたいと思います。これ以上おわかりにならぬようですから、私はこまかいことはこれで打切ります。
  183. 木下郁

    ○木下委員 岡田局長に伺いたいと思いますが、この補償の契約は、法律の面では、政府が銀行とそういう契約をすることを得となつておるから、政府としてはこの法律があるからといつて義務づけられてはいないのですね。
  184. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 さようでございます。但し新造船計画を立てて船主を募集いたします折に、その計画に乗つた船について市中銀行が融資をした場合には補償をしてあげますよということを、要領に掲げておるわけです。従つて市中銀行は、補償契約が結ばれることを前提として船会社に金を貸すわけでございます。従つて政府がそのときの約束を破れば何でございますが、そのときに申し出た約束を守るとすれば、補償契約を結ばなければならないかと存じます。
  185. 木下郁

    ○木下委員 しかし政府としては、その船会社が言語道断なリベートをこつそりやつておるとか、あるいはまた金はないといいながら、何億円という金を浮貸しをしておるというような、これは小さいことのようでもありますが、一箇所の待合で何百万円というような招待をしているというような、今問題になつているような事実が出れば、あなた方としては当然この立法の趣旨からいつてもそんなものはすべきではないというふうに私は考えるのですが、あなた方はその点どういうふうにお考えになりますか。
  186. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 一応結びましたものを、船会社が不当な行動があつたがために、銀行との間に結んだ補償契約を破棄してしまうということになりますと、銀行としては痛手を受けるわけでございます。そういう場合に船会社に対する措置としては、先ほど御答弁申し上げましたように、船会社が不当な経理をして、それを運輸大臣が勧告をする。それを聞かない場合には、今までやつた利子補給を全部もしくは一部を取上げる、こういう手痛い措置があるわけでございます。それで船会社の処罰はできるもの、かように考えます。
  187. 木下郁

    ○木下委員 今伺うところによれば、銀行に対しては、こういうことをしようという契約の予約までは行つていない、そのくらいのところまで行つておるわけなのです。しかしながら国民の金を預かつておる政府としては、今問題となつているような船会社の過去の契約のものについては、初めから銀行が十分危険を負担してそこに融資をしておるわけだ。そういうものに対してまであらためて利子補給をして、銀行を救つてやる、これは間接になるか面接になるか、法律論として法制局長官に聞きたいのですが、さしあたり銀行との契約で、当事者は銀行だけだと言つておりますが、そういう契約が今できていないものを、ただ募集するときに、できれば大体こういうふうにするということを言うくらいのことでおやりになるということは、相当考慮すべきものだと思います。今のお話ではその点が不明確なように思います。もう一度はつきり伺つておきたいと思います。
  188. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 船会社の不届きなものの処罰に対しましては、先ほど申しました措置で十分とられるのじやないかと思うのでございますが、もしそれを銀行まで及ぼすようにいたしますと、銀行といたしましては、実は造船に対する融資は非常に迷惑がつておるわけでございまして、その迷惑がつている銀行を何とか安心させて、そうして新造の融資をさせる財政資金を少しでも少くして、市中を少しでも多くつけて船をつくりたい、こういうのが私どもの所存でございます。従いまして銀行に対しては、安心して融資のできるようにする。船会社が不届きな処置をとりました場合には、船会社に対して十分なる処置をとる、こういうふうにいたした方がよろしいのではないかと私は考えておる次第でございます。
  189. 木下郁

    ○木下委員 さしあたりこれからやる新造船に対する関係では、その御議論も多少の根拠はあると思います。しかしながらすでに銀行が船会社と融資契約をしておる。その金利を下げてやる、こつちが見てやるという――銀行としてはそれか焦げつくということは、将来の見通しが間違つたのであつて、銀行の商売上の失敗である。これほどにふしだらなことをしている船会社のために、直接には銀行のために、あらためて契約をしてやるというようなばかなことは、これは国民が承知しません。そういう点については十分御考慮を願いたい。これ以上議論する必要もないと思います。
  190. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 一点だけ伺います。さつきの油送船と貨物船の二十五年度、二十六年度の利子の引下げを、昨年の八月十五日からすることになつた、こうおつしやつておりますが、その船の明細はわかりませんか。
  191. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 資料がございますから、そういう一船別の資料をこしらえておりますので、後ほどお届けいたします。
  192. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 それではそれでけつこうですが、船と船主と融資銀行、これだけの明細を委員長の方へお出し願いたいと思います。
  193. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 融資銀行まで入れますと、たいへんな資料になるのです。実はその船ごとに口をかけますと、口数が千七百ほどありまして、それを一々列挙しなければなりませんが、とりあえず船会社、船名、それをお届けいたします。船会社は市中から融資を受けまする額が非常に多いのでございます。九次船は三割でございますが、それまでは五割あるいは六割の金を、と申しますと、七億くらいの金を市中銀行から借りなければならぬ、そうすると一行だけではだめでございまして、ずつと地方銀行までもあさりまして、ものによりましては、一つの船で十行以上あるいは十四、五行にもなるようなものがあるわけであります。
  194. 古屋貞雄

    ○古屋(貞)委員 ほか何行でけつこうです。
  195. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 承知しました。
  196. 小林錡

    小林委員長 明日は午後一時より理事会、午後一時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会