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1954-02-19 第19回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十九日(金曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 花村 四郎君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       猪俣 浩三君    木原津與志君       木下  郁君    佐竹 晴記君       黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局参事         (官第二部長) 野木 新一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      平賀 健太君         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      関根 小郷君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月十九日  委員高橋禎一君辞任につき、その補欠として三  浦一雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十八日  福岡法務局深江出張所存置に関する請願(熊谷  憲一君紹介)(第一八二四号)宮崎地方法務局  本城出張所存置に関する請願伊東岩男君紹  介)(第一八二五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一四号)  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから順次これを許します。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 昨日銀行政党に対する献金の問題が取上げられましたときに、献金者の氏名を長官から承りましたけれども、そのときに承りましただけでは内容が非常に漠然としているように思うのですが、たとえば自由党に対し二十七年九月十六日に寄付されました一千百万円、寄付者都市地方信託銀行団となつております。この内容自治庁に詳しくおわかりになつておりますか。
  4. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 実はこの寄付者名義の表示が、今の御指摘有志都市地方信託銀行団というのがあり、また昨日ちよつと申し上げました同じような表現代表者名前をそれにつけたものというようなものもあるわけであります。今までの扱いといたしましては、こういうものを一応その名義でもつて扱つて、それ以上詳しくは調査をしないという考え方でずつと取扱つて参つたのでありますけれども、今度この問題が出ましてから、実はやはりこういうものは少くともその内容を確かめておく必要があるというので調べておるのでありますが、その有志銀行がどういう銀行であるかという調査がまだできておりませんので、さつそく結果がわかり次第お答え申し上げたいと存じます。
  5. 黒田寿男

    黒田委員 公職選挙法の第二百一条の趣旨から申しましてもきわめて漠然たる内容の、捕捉しがたいような寄付者名義献金するということは非常に不当であると考えます、それでもし自治庁においてお調べ願えませんければ、実は私どもこの銀行代表者とか、あるいは有志代表という人をここへ呼んで聞こうと思つてつたのでありますけれども自治庁でお調べくだされば何もそういうことをしなくてもよろしい。本人名義以外の名義を用いて寄付、あるいは匿名寄付をしてはならぬという趣旨は、このような漠然たる寄付者名であつてはならないことだと思います。この有志都市地方信託銀行団と申しますものは、私は一種匿名寄付に該当するのじやないかと思います。私は金融界のことはよくわかりませんが、かりにそういう都市銀行あるは地方銀行を通じまして一つの何らかの団体ができておりまして、その団体一個として寄付したというようなものでもこれはないように思います。何となれば有志というように上に限定がついておりますから、かりにそういう団体ができておつたとしましてもそれ自身ではないと思います。だからこれは一種匿名だと私は解釈できると思います。それからそのあとの七百万円の都市銀行地方銀行信託銀行有志代表永田直昌という者も、これも私は一種の偽名じやないかと思いますが、自治庁はそういう疑問を提起されたことはございませんか。これが匿名であるかどうかという疑問、従つて法律に触れるかどうかという疑問を今日までお起しになつたことはございませんか。私はどうも匿名のような感じがするのですが。
  6. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 厳格に言いますれば、やはりこういうものを受付けるときに、その代表というごときものであれば、内訳がわかつておるということが必要ではないかと考えておるのであります。しかし今までの考え方はどちらの案件にいたしましても、とにかくこれだけの表現があれば、その裏にあるものの見当はみなつく、調べようとすればすぐわかる、こういう状態になつておりますので、そこまでは調べておらないという扱いをしておりました。しかし今度この問題が指摘されましてから、やはりこの点は調べておくべきであつたというので、さつそく取調べをいたしておりますので、近く回答が来ると思いますが、その上でお答え申し上げます。
  7. 黒田寿男

    黒田委員 ちよつと私の質問したことに正確にお答えくださつていないと思うのです。私の質問いたしましたのは、有志何々団とか、あるいは何々銀行有志というような漠然たる寄付者名を用いることは、一種匿名方法ではないかという疑問を自治庁としてお持ちになつたことはございませんでしようかという質問を申し上げたのです。今まで自治庁では何ら二百一条に触れるものではないというように見過しておいでになつたことは、私ども非常に不可解なことだと考えますが、そういうようにお疑いになつたことはございませんでしようか。
  8. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点は先ほど申し上げましたように、今まではこの表現で当然うしろにあるものがすぐに想像がつくという考え方で、うしろまでは調査をいたさないで受付けておくという慣例にいたしておりました。従つて今までは御指摘のように扱つておらなかつたのであります。
  9. 黒田寿男

    黒田委員 そう言われますならば、今ここで想像がつくものをお話願いたい。想像がついておるから、匿名とは思わないとお考えになつたとおつしやるならば、それではどういうものが想像されるかということをここで御説明願えますか。
  10. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 それは個々銀行信託会社名前は私も全部はできませんけれども、とにかく日本の都市銀行地方銀行信託会社というものは、もはや世間で十分知れているものとしてあるのでありますから、その中の幾つかのものであるという、限定せられた中から必ず名前が出るというように想像されますので、調べようと思えばすぐに調べられる、こういう考え方をしているわけであります。
  11. 黒田寿男

    黒田委員 そういうようにずさんにお考えになるべきものではないと思うのであります。有志と書いてあるところに私は問題があると思うのです。ただそこに銀行団とか、何とかいうことなら、それは範囲が限定されているのですから、それこそ銀行名簿を見ればすぐに私どもでもわかる。有志というのは一定の範囲だけはわかりましようが、その中の具体的に特定のだれだれであるかということがわからない。そういう具体的に名前はつきりさせないということを匿名というのであると思いますが、そういう意味で実はお尋ねしてみたのです。ですから、私は自治庁長官の御説明では納得できませんが、そういう漠然たることで疑問を起さなかつたとおつしやるならば、自治庁においては相当物事を厳密にお考えになる公務員の方もおいでになるのに、はなはだふしぎなことだと実は考えるわけです。しかしこれは今までそう考えおいでになりましたにすぎないとおつしやいますれば、そう伺つておきますが、そうしますと至急明確にしていただけますか。
  12. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 私が先ほど申し上げましたように調べておりますし、調べれば当然すぐわかる状態になつておる。この場合だけでなしに、実はどの党に参りますのでも何人かがあれをされた場合には、届出――ことに自治庁に出て来ます届出はだれだれ外何名というような表現のものもありまして、その個々名前の載つてないものも一応扱つて行くというしきたりになつております。たとえば左派社会党などに参つておりますのは、たいてい鈴木委員長外何名という表現になつている。こういう場合には当然調べればすぐわかるという考え方で、その内容は一々来ないでも、そこまでは調べてないというふうな扱いにしておつた。しかしやはり問題になつてみると、そこまで調べておくべき性質のものであるなという感じを実は持つておるわけで、今後はそういう扱いにしたい、こう考えております。
  13. 黒田寿男

    黒田委員 ただいま申しました有志都市地方信託銀行団、それからいま一つ都市銀行地方銀行信託銀行有志代表水田直昌、この二つのうちで最初の分については、有志銀行ないし信託とは具体的には何ぞや、それからあとの分については、個人としての有志とはだれかということをひとつ至急お調べになつて報告願いたいと思います。
  14. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 関連して……。今の点はこれに当りやしませんか。すなわち二百一条の一項に本人名義以外の名義を用いてはいかぬという規定があるのですが、これにはつきりひつかかるのじやありませんか。本人名義以外のものは絶対にいかぬ。匿名組合じやないし、本人名義でない点ははつきりしている。これは違反になると思うのですが、どうですか。
  15. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは代表という名前で出ております場合にはやはり本人名義で、その人が代表で、その背後に何人かがあるという考え方本人名義であると考えられますけれども、もう一つ代表名の出ておりませんのは何ですけれども、おそらく扱つているものの当事者があるはずでありますから、代表という字が表現されていないにかかわらず、現実にその人間が、本人であるものが扱つておる、本人以外のものの形で扱われておらない、こういうふうに解しておつたわけであります。
  16. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 どうも納得できませんが、その有志というやつは代表じやないのでしよう、本人以外の名義じやないのですか、違いますか。この点を私は伺つておる。その代表の場合は、何といたしましても有志というやつは、本人名義以外のものだということは明らかです。だから本人名義以外の名義を用いたということに、はつきり当てはまると私は考えております。
  17. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 有志というのは、私どもこう解しておつたのであります。たとえば地方銀行なら地方銀行幾つかある。その中から幾つかの銀行が結局金を出しておる。その表現は、ここではどういう銀行であつたかという調査はできておりません、それは調査いたしますが、その銀行代表としての人間が出したものですから、だれだれ外何名という表現で出したものと同じように扱つてしかるべきだ、こういうふうに考えます。
  18. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 この点は、有志ということになると、きのうの佐藤法制局長官解釈から参りまして、厳格に処罰規定解釈すべきだとおつしやいますれば、今の答案とは矛盾して来る。この文理上から言いますと、本人以外の名義ということは間違いない。これは有志だ。だからこれにひつかかる。この条文の立法精神は、いわゆるいろいろの関係のあるものの名義を伏せて、そうしてほかの名義寄付をしてはいけない、それは弊害が多いということだと私は信じます。従いまして有志ということになれば、あとの人は全部伏せておるわけだ。だから本人名義以外のものに明確にひつかかると私どもは思う。それをきのう佐藤法制局長官は非常に厳格に、罰則規定であるから拡張解釈あるいは広義解釈はいけないと言われた。狭義であるとするならば、きようのを狭義解釈してまつすぐにすなおに参りますと、どうも私ども長官言つたようなことでは納得できないのですが、これはひつかかるのではないでしようか。ひつかかるのを自治庁の方で今まで放任して来られたことに対して、責任を問うているのではない。この法理解釈からいつて、どうなるかということを承つておるのです。その点はどうでしよう。これは黒田委員からも匿名組合についての御説明をしきりにやられたのですが、私どもの方は、この本人名義以外の名義有志というものであるならばこれに絶対当てはまる、こう解釈するのが法理解釈基礎理念に合うと思いますが、重ねてこの点を承りたいと思います。
  19. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点は、要するにどの銀行が出したかということがまだここでは明らかにされておりませんが、すぐ明らかにできるのです。そういうものが、たとえば都市銀行が十ある場合にそのうち八つ銀行であつたという表現の場合、その八つを現わす意味において有志という言葉を使つておる。地方銀行有志都市銀行有志。ですから本人以外のものを表現しておると私ども考えておりません。本人表現をこういう形で出しておつて、それを代表して水田なるものが出して来た、こういうふうに解釈しておるので、本人以外の名義であるとはどうも考えられないのではないかと思います。
  20. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それでは具体的に伺いますが、自由党に対する寄付昭和二十八年四月十一日になされておるのがあるのですが、都市銀行地方銀行信託銀行ということになつておる。これでも自治庁の方では、その銀行は大体想像がつくとおつしやるのですか。何百かある銀行関係でございますから明確にはならない、かように考えますが、こういう場合でもやはり本人以外の名義ということになりませんか、この点を伺います。
  21. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは先ほど黒田委員にもお等え申し上げたのですが、すぐに調査ができるそうであります。どの銀行からどれだけ出したということは、この水田というものに間合せをしてすぐに調査できる。従つて調査が今まで十分できていなかつた。今まではこういうものでいいという解釈をいたしておつたのでありますが、もう少し厳格に調べておくべきであつたかなという感じを持つているわけですが、調べればすぐできるという状態になつております。たとえば信託銀行幾つある中の幾つか、地方銀行幾つある中の幾つか、都市銀行幾つある中の幾つか、そういうものが都市銀行地方銀行信託銀行有志ということで表現されて、その代表として水田なるものが名前を出して来た、こういうふうに解釈していいと思います。
  22. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもが承知しているところでは、選管ではこういう名前では受付けないのです。この明細書をつけさせる。私ども選管取扱いました実例といたしましては明細書をつける。そうしないとこれに当てはまるという解釈をして、選管ではやつて来た。私どもそう承知しております。自治庁ではそういう広義の、ルーズなことでいいのでしようかどうか。この点がいろいろな問題を起す基本になる点だと思う。ルーズなことをやつているから問題になる。むしろ選管の方では、第二百一条にかかるので本人名義以外になるからはつきり明細書を出せ、そうして届出代表はこれが代表ということになる、こういう取扱いをしているのですが、その点はいかがでしようか。ことに東京都の選管をお調べになれば明細がわかるはずです。
  23. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは東京都の選管を通して今調べておるので、東京都の選管もまだ調べができておらぬそうであります。東京都の選管に私の方から連絡しまして、やはり代表調べさせております。選管によつては御指摘のような解釈でやつてつたところがあるかもしれませんが、都の選管から参つております自治庁への報告は、先ほども申しましたように、そのほかのどういうものも代表者名義で外何名というような形で出て参つておるので、それで扱つてしかるべしという今までの解釈であつた。単にこの場合だけでなく、先ほど申し上げました左派社会党の場合に一番そういう事例が多いのでありますが、いつの場合にも鈴木茂三郎外何十名というような表現報告して参つて、それですぐ調べればわかるようになつているので、匿名という考え方ではない。本人以外の名義ではないというような考え方扱つております。
  24. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 政党関係は、それは政党ですからはつきりわかるのですが、今のような事業関係の問題は全国的に選管では扱つているのですよ。自治庁の、御監督なさるところがそんなお考えを持たれて、選管でやかましくやつているところを無理に脱法行為をやらせるということになるので私ども非常に不愉快です。むしろ第一線選管がルーズであるのを、自治庁がやかましく言うのならりくつに合いますが、しかし第一線ではやかましく言つているのに、自治庁長官がさような解釈でいるということになれば、ますますこの問題の立法趣旨というものは蹂躪されて来る。さようなことも考えられるのですが、さような御解釈でいいのか悪いのか、これを聞きたいと思います。
  25. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点は先ほどから申し上げているように、今まではそのように扱つて、そういうような報告なるものも、これは調べればすぐわかるという意味においてさしつかえないというようにしておりましたが、やはり今度のような問題が出て参りますと、やはりこういうものの内容調べておくべきであつたというので、ここに届出になつておりますものも全部調査をするようにということ、もちろん選管でわかつておるものはすぐ報告をしておりますが、選管でわからないものは調査をするように命じてある。従つて今後はこういう形のものは内容をつける、こういう扱いにしたいと考えます。
  26. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 こういう問題は真剣におやりになる意思があればこれ以上私ども申し上げませんが、この点はさようにお気づきであつて、真剣にやらなければならぬというお考えでございましようかどうでしようか。
  27. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 そのように今後扱いたいと存じます。
  28. 木原津與志

    木原委員 きのうから質問を続けられておりますが、公職選挙法第百九十九条、政治資金規正法の、国と「請負その他特別の利益を伴う契約当事者」の問題についてきのうの法制局長官並びに自治庁長官の御答弁に対しまして、どうもわれわれとしてはまだ十分納得の行かぬ点が多々ありますので、一応あるいは重複する点があるかもしれませんけれどもお尋ね申し上げたいと思うのであります。政府のお考え趣旨は、政治献金が禁ぜられておるものの国の相手方当事者は、造船融資の場合は開発銀行その他市中銀行当事者になる。しかしてその場合においてもこの規正法で禁じておるようなものに当らない。その理由は利益を伴う契約当事者、それが特別な利益を受けるものではないから当事者にならないのだ、こういうような御答弁つたと理解しておるのであります。そうすると利益を伴う契約の当覇者という場合、特別の利益というのは、特別に特に意味があるというように私聞いたのでありますが、そうなれば請負契約の場合はどうなりますか。普通の請負でいいのですか。何か特別の請負というような場合になるのでありましようか、その点ちよつとお聞きしておきます。
  29. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 請負の場合には、請負契約自体が、その契約性質からして、相手方に特別の利益を与えることが普通であるという考え方でありますから、普通いわゆる請負というものは、特別の利益を与える契約という概念に入つておるのであります。
  30. 木原津與志

    木原委員 そうするとこの請負普通民法上その他の法律関係における請負ですね。――これは全部当然特別の利益を伴つておる、こういう見解に立たれるわけなんですか。
  31. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これはもう普通の場合には、請負契約ならば、特別の利益を伴うということになると思うのですが、しかしよく考えてみれば、やはり特殊のもので、契約の形式は民法上の請負契約ということになつてつても、特別の利益を伴わないということはあり得る場合もあるかと思います。どんな場合があるかしれませんが、そういう場合があり得るとすれば、やはりこの規定から除外されるということになる。一般的には請負契約であれば、大体特別の利益を伴うものと考えられるというように解釈しております。
  32. 木原津與志

    木原委員 そうすると請負契約があつた場合には、特別の利益を伴うか伴わないかによつて取扱いがかわるわけなんですか。
  33. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これはこの規定立法精神からいたしますと、国との契約によつて契約相手方が特別の利益を受ける。その特別の利益を受けることを頭に置き、もしくはその受けた代償として政党献金をすることが選挙の公正を害するから、そういうものを禁止するという考え方であると思いますから、請負契約であつても、特別の利益を伴わないような場合がありとすれば、やはりそれはこの規定の外になるというように考えております。
  34. 木原津與志

    木原委員 そうすると、この契約の中で特別の利益を伴うということですが、これは具体的にはどういうものがあるのでしようか、具体的な例をあげて説明していただきたいと思う。そうしないと、抽象的に話を進めても、ピントをはずすように感じますから、こういうものを禁じておるのだというひな型をあげてみてください。
  35. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これも顕著な事例で申しますならば、たとえば国が何か営繕をいたします場合にその工事を請負うもの、また国が何か物品を購入いたします場合――購入は請負契約ではありませんが、そういうのは特別の利益を伴う契約であると想像されるわけであります。ただ、そういう一般的に想像されるものの中から特殊にボーダー・ライン・ケースとしてかからないものもあり得るかもしれないということが抽象的には考えられるので申し上げておるのであります。一般的に利益を伴う契約というものは、きわめて通俗的に考えられる契約がみなそう考えられる、こういうわけであります。
  36. 木原津與志

    木原委員 どうもはつきりしません。この特別の利益を伴う契約というものは、それでは利益大小を基準とするのですか。特に大きい利益を受けるとか、あるいはさしてあまり大きくない利益を受けるとか、そういうような関係で、利益大小によつてこの特別な利益という概念をつくるのでしようか。
  37. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは必ずしも利益大小、ことに金額的な大小――契約が小さければ利益も金額的には少い場合もあり得ると思うのですが、そういう場合は昨日も佐藤法制局長官言つたように、社会通念従つて、このくらいの契約であれば、このくらいの利益が出る、金額が出るという想像がつく場合は、この特別の利益を伴う契約、こういうような考え方であります。
  38. 木原津與志

    木原委員 われわれは特別な利益を伴う契約というのは、これは立法趣旨にかんがみまして、国家が特別な関係に立つて、そうして国家との契約で何らかの利益を受けるというような関係にあるものが、選挙に関して政治献金をする、政治資金寄附するというようなことになれば、そこにおのずから政界の腐敗、汚職というような問題もからむというようなところで、そういうものを寄附範囲から除くというのが本条の趣旨だと思う。従つてこの特別な利益を伴う契約というのは、国家と特殊な関係があつて法律規定あるいはその他の状態においてそういう立場に立つたものとの間の契約を特別な利益を伴う契約だ、こういうふうに解釈しなければならぬ。これが立法趣旨にのつとつた筋通つた解釈だと私ども考えておるのですが、自治庁ではそういう見解はおとりになりませんか。
  39. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点は繰返して申し上げておりますように、ただ国と特別な関係にあるというだけでは、そこのところに、実際問題としても政党なりに寄附をしようという経済的な要因というものはおそらく出て来ない。また出て来た場合にも、そういう特別な利益関係を伴つていない場合が出て来ても一向さしつかえないのであつて、やはり特別な関係、ことにこの表現から行けば、契約という関係で、しかも利益が出て来る。従つて利益があるからしてこういうものを出してもいいという判断が出て来る。またこれを出してこういう利益を得ようという期待を持つというところに、この法が禁じなければならないねらいを持つておると思うのですが、やはり特別の利益というところと、それが契約の形式によるというところに、この条文は重点を置いて考えておる、こう見なければならないと思います。
  40. 木原津與志

    木原委員 それならば、この船舶建造利子補給法に基いて、利子の補給を国家から受ける。開発銀行以下の信託その他保険等の市中銀行、金融団体、こういうものが国家から一定の範囲にわたつて利子の補給を受けるということになれば、これらのものを特別な利益を伴う契約当事者解釈するのは、当然のことじやないでしようか。
  41. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この利子補給を受けるという面だけを抽出してお考えになると、それは確かに特別の利益であるのでありますが、しかし利子補給を受ける前提は、こういうものにこういう条件での融資をしてもらつた場合にその不足分をという、こういう関係です。ですから作目も申し上げましたように、おそらくこの利子補給法のねらつておりますのは、普通の状態ではこういうところへ資金が流れて行かないだろう。しかし国策上ぜひこちらへ流してやつてもらいたい、利子もこの程度にしておいてもらいたいというところに、このねらいがあるのでありますから、そのために出て来る銀行が当然受けなければならない損失をカバーしてやろう。不足分をカバーして、そして国策の線に沿うて資金が流れて行くようにということをねらつているものでありますから、これによつて行われたそういう契約が特別の利益を与えるということには、とうていならぬのじやないか。従つてそういう国の国策に従つて融資をして、不足分の利子を補給してもらつたから、従つてひとつ政党献金をしようという考え方は、経済常識としては出て来るわけはないから、そこまではこの法律は禁止はしておるとは考えられないのじやないか。従つてそれは特別な利益とは言えないのじやないか、こういう解釈をいたしておるわけであります。
  42. 木原津與志

    木原委員 これは私が申し上げるまでもなく、自治庁長官はもうすでに御承知のことと思いまするが、当時の造船界あるいは海運界の状況というのは、とにかく敗戦によつて日本の船舶が受けた打撃というのは、保有船舶の八割以上をつぶされてしまつて、そうして敗戦後どうしてこれを戦前並に復活するか、船をつくるかということは、これはもう至上命令だつた。そのために二千億近くの融資が海運会社、造船方面に今日までに流れて来ておる。にもかかわらず計画造船は遅々として進まない。また船価を切下げるため何とかしなければならぬが、海運会社の現在の状況では利子さえ払うことができないというような悲境に立ち至つておる。従つて開発銀行やその他一般銀行が海運に金を貸し付けても、その利子さえ払つてもらえないというのが実情だつたでございましよう。従つて今国策とおつしやいましたが、国策に沿うて銀行あるいは開発銀行が造船会社に至上命令によつて融資をするのだけれども、融資をしても利子さえ入つて来ないという状態であるから、その利子に対して政府が三分五厘の負担を見よう、そうして船会社に船をつくらせようというのが、この利子補給制度の趣旨であるというふうに考えるならば、本来融資しても利子は一文ももらえないのだが、それを三分五厘でも国家が補償して払つてやるということになれば、それだけで融資銀行は特別な利益を受けるんだということになりはしませんか。
  43. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 そこのところは、経済界ことに金融界の実情がどうなつているかということとの相関判断だと私は思うのでありまして、銀行の営業をやりまして集める金が、ほかに貸す場所がない。造船界に貸せば利子が早く入らぬかもしらぬし、かりに入つても非常に低率の利子しかとれない。しかしそれでもなお金を貸さなければならないという状態にある場合には、御指摘のような考え方というものは出て来るかもしれないと思う。しかしおそらく今の金融界状態からすれば、この法律がなく、また国策がなくてあれしたらば、造船界には市中銀行の金は出て行かないと想像されます。それでは困るので、こういう法律を国会がおつくりになつて、そつちに金が流れて行くようにという措置になつているのでありますから、それに協力して行つた場合に特別の利益があるという判断には、私どもとしてはどうしても行かれない、こういう考えであります。
  44. 木原津與志

    木原委員 金を貸してもその金利がもどつて来るという状態にもどるように、国家が利子を補給してやるというならば、銀行がそれによつて受ける利益は特別な利益ということになりはしませんか。そう考えるのが法の筋道じやないでしようか。
  45. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは繰返して申し上げますように、本来ならば利子も返つて来ぬというところへは、おそらく銀行は金を貸さないであろう。しかし貸してやつてもらいたい、貸してやつてもらえばこうしてやるというのでありますから、これが特別の利益というわけには私どもはどうしても言えない、こういう考え方であります。
  46. 木原津與志

    木原委員 銀行が金を貸さなければ船ができない。船ができなければ日本の経済が立つて行かないのだという建前に立つているのがこの利子補給法の趣旨なんですから、その意味によつて融資銀行への利子補給は特別の利益にならないというのは、どうしても納得が行きません。しかしこれはいつまで言つても水かけ論になりますから、私どもといたしましては、この献金者を今明日中に検察庁に告発いたしまして、司法当局の見解にまちたいと思つておるので、この点についての質問は終りますが、さらに一つだけ自治庁長官にお尋ねしたい。
  47. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちよつと関連質問。昨日からの長官説明によれば、いわゆる利子補給法――長つたらしい名前ですから略しますが、利子補給法によつて利子の補給を受ける銀行は何ら利益がない。そうして利益のないものは政党献金なんかしないのであるから、そこでこれは政治資金規正法の対象になつておらぬのだという説明でありますが、ふしぎなことには現実には、ただいま質問しましたように、銀行団が多額の何千万円という金を各党へ献金しておる。これはあなたの説明から行くとちよつと説明がつかない。利益がないところへ彼らが献金したということに相なりまして、あなたの前提とこれは矛盾して来る。そこでなぜこういう献金があるかといえば、利益があることはある。あなたは法律的にはどうかと思うが、経済のことはよくお詳しいであろうと思うから、その辺はちやんと了解なさつておると思うのであるが、責任ある地位であつて答弁はむずかしいかもしれないが、銀行は国の金を扱うということだけでも莫大な信用を得るのであります。でありますから非常に競争なんであります。だから各党へ献金してこの取引銀行にしてもらおうと思つて一生懸命やるのは明らかなことなんだ。なおまた実際船会社に金を貸してやつたその利子の補給金が一体いつ銀行へ来るのであるかということが問題だと思う。あなたはその実際を御存じかどうか。われわれの聞くところによれば、貸さぬうちにちやんと一定の金額が銀行へ来ておる。そしてなおちやんとそこへためてあつて、プールしておいて、おいおい船ができる割合に応じて貸し付けてやる。補給金の方は先に来ておるという実情であると聞いておる。そうすると相当の金額であるから、たとい一週間か十日それがプールされておりましても、前もつて渡されておるのであるから銀行利益というものは莫大であります。さようなことを一体精密に計算されたのかどうか、これを一つ承りましよう。一体この補給金というものは、いつ各銀行べ渡るのであるか。その点について詳細なる御検討をなさつての御答弁であるかどうか、それを承ります。
  48. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 この点も昨日法制局長官からお答えしたと思うのでありまするが、これは金融事務の運行上、いよいよ補給金が船会社に行く、銀行が必要とする時期にそれが出るという操作はなかなかむずかしいでしようから、何日間かは銀行の手元にあるということも実際問題としてあり得ると思うので、私はその点におそらくこの法の趣旨からすれば、この法律は一体どれだけ利子補給をするのかというと、第五条によりまして「当該金融機関が通常それと同種類の融資を行う場合における利率と年五分との差の範囲内で」ということになつておるので、おそらくこの法の精神からすれば、そういうプールしておる間にかなりの利益があるとすれば、当然そういうものを考慮してきめるという考え方にこの法律はなつておるのであつて、そう解釈するのでなければ――この法律自体が、国がそれだけの恩恵、便宜を銀行に与えるということによつてそれが特殊の利益がうんとふえるという考え方であると、この法律自体考え方がおかしくなるので、むしろその面で操作さるべきものである。従つてこの法律を前提としてどんなぐあいに利子補給がされるかということを考えておる場合には、それは御指摘になりましたような特別の利益銀行に与えられるというような形では利子補給はされない、こういうように解しておるわけであります。
  49. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの答弁は実際に即しておりませんが、これは自治庁長官であつて実際はわからぬかもしれませんから、大蔵大臣なり運輸大臣なりから一体いつ補給金が銀行に渡されて、その金がどんなふうに実際船会社へ給付され、その間どの程度の期間銀行がそれを扱つてつて、その利益が普通の利息からすればどのくらいのものになるかという詳細なる報告をわれわれは受けなければ、あなたが利益はない、利益はないと言つてもわかりません。なぜなら、おかしいのだ、利益の何もない銀行が各政党に何千万円という献金をしておるではありませんか。こういう生活現象、経済現象が起つておる、一体これから考えて行かなければならない。ただ何もないないといつたような説明だけでは、この社会現象、経済現象を説明することはできません。なおまた金を造船会社なんかには貸す銀行がないので、わざわざ国家がこれを特別に保護する意味において、外航船舶の奨励の意味において利子補給をやるのだというような御説明でありますが、この利子補給は今に始まつたことじやない。第六次以後、七次、八次、いわゆる朝鮮事変で造船会社が何割という利益配当をやつてつた時分もやつてつた。そんな時分は銀行なんかは、それこそわれもわれもで造船会社に金を貸したがつたに違いない。銀行も営業であります。借り手がなければ倒れてしまう。適当なところには貸したいに違いないのであつて、貸したくなくてしかたがないのに、利子補給をやつて貸したなどという立場じやない。いやしくも朝鮮ブームのときはそうじやないのです。しからばいかにこれを解釈しますか。
  50. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点の議論になりますと、私は外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法というものの立法精神が問題になると思うのでありまして、こちらには関係はないので、私はこの法律は国会が御審議になつて御制定になつておる以上、そういうような特殊な利益を与えるというようなものの考え方をおそらく前提に置いておられるはずはない、そういうようなものの考え方法律ができるはずはないのでありますから、この法律通りに行われる限りは、銀行には、今の規正法及び公職選挙法がいうような特別の利益というものは考えられない、こういう解釈をいたしておるわけであります。
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすれば法律の精神はそういう精神でできておつても、実際行われておる場合において、国家の補給を受ける銀行というものに選定せられたことにおいて、つまり国家とその銀行とにおいて契約が結ばれたことにおいて、実際においてはこの銀行が非常にもうけておる。有形無形のもうけがあるということになるならば、この政治資金規正法二十二条にいう国家から特別の利益を得る契約当事者と見なしていいか。現実にそういう利益があつたということが調査の結果わかるならば、二十二条の特別の利益を上げる契約当事者ということに銀行がなるかどうか。
  52. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点は実は昨日法制局長官からお答えになつたように、これはここにいう特別の利益とははるかにほど遠いものであるという解釈で御了承願いたいと思います。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それですから先ほどからの木原君の説明もできていない。そういうのが特別じやないというなら、どういう場合が特別な利益になるのかという質問が出る。現実に利益が上つて相当の利益があるはずであります。有形無形の相当の利益があつても特別の利益じやないとおつしやる。だから特別の利益とあなた方が言うのはどういう利益なんですか。請負は特別な利益だとおつしやるけれども請負というものは危険負担が大なるものだ。利益がある場合があれば損する場合もある。請負契約は当然ある特殊な利益を伴う契約だと言い切れない場合がある。しかし概して請負契約利益を伴うという社会通念からお考えになつている。それはそれでいいのです。ところが現実に銀行利益を上げている。これはこれから調査すればわかる。そういう場合は特別じやないとおつしやるならば、特別の利益というものはどういうことを言うのであるかという質問に実はなるのであります。どういうことになるのですか。そういうものはないんだというのなら、どれが特別の利益になるのですか。そこで木原君のもうけが大きい小さいによつて決定するのかという質問が出て来るのです。あなた方の言うような特別な利益というのは一体どういうものを言うのです。それを具体的にお示し願いたい。
  54. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 特別の利益がいろいろに問題になる場合、ことに非常にボーダーライン・ケースになつていて判断が困難な問題については、こういうものが特別の利益ですとなかなか御説明することができないと思うのでありますが、特別の利益というのは、先ほど木原委員からの御質問に対してお答え申し上げましたように、きわめてはつきりした例でいえば、やは請負契約なんかで普通に言えば五分もうかるとか三分もうかるとか、それが特別の利益である、こういうように解釈しているわけであります。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとあなたのおつしやる場合においては、今般の銀行とそれから国家との間の契約に基く利子補給、この当事者とされた銀行は、具体的に相当の利益があることがわかれば、特別の利益の中に入るのですか、入らないのですか。何億の利益があつても何千万円の利益があつても、絶対この特別の利益の中に入らないということになれば、どういうのが特別の利益になるかという質問が出ることは当然じやありませんか。何千万円も各政党銀行寄附しているのですよ。そうすれば相当の利益が上つておるはずなんだ。ここに相当の何千万円あるいは何億という利益があることがわかつたら、二十二条に該当する当事者になるのかならぬのか。それでもなおそれは特別の利益だと言わぬのか。それをお聞きしたのです。それでも言わぬということになるならば、どういう場合が特別の利益になるのだという質問が出るのは当然じやないのですか。
  56. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 これは銀行協会その他銀行有志献金をしているから利益があるだろう、しかもこの契約から利益があるだろうというように推論されて行くのは、これはちよつと論理の飛躍があると思います。昨日もちよつと申し上げましたように、これは政党献金をする場合には、献金者の側に何がしかその政党を支持することによつて利益があるはずであります。全然利益のないところに献金というものはあり得ないのであります。そこまでは政治資金規正法公職選挙法もおとめになつているとは思わないのであります。やはりここでおとめになつているものは、契約に基いて特別の利益を受ける、そういう相手方献金することをおとめになつているのであると思う。従つてそういう考え方からすれば、この利子補給法に基く契約というものは、私どもは特別の利益を生ずるものでない、こういうように判断をしているわけであります。
  57. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 何べん言うても焦点が合わない。法律解釈はそうでありましようが、何千万円という利益がかりに銀行にあつたとすれば、これはこの中に入るのかどうか、そういうことを私はお尋ねしているんです。法の建前はそうかもしれませんが、現実に国家の予算が銀行にプールされて、造船会社、船主に渡る場合にはそれがおいおいに渡されるような形で、そこに相当の期間プールという状態になつて、相当そこに利益というものが現実にあつたならば、それは特別の利益当事者にならぬかということを聞いている。仮定の質問かもしれませんが、そういう場合はどうかという解釈をあなたに聞いているのです。そういう現象があつた場合に、この法律に当てはまるかどうか。この特別の利益に当てはまるかどうかの法律解釈をあなたに聞いているのであります。あなたはただ立法の精神を言うている。立法の精神はそうかもしれませんが、現実の経済現象はそういう状態になつている。ここにかりに相当の利益が取引銀行にあるということがわかつたら、二十二条の特別の利益のある当事者ということになるのかならぬのか。この質問なんです。それをお答えください。
  58. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点は昨日法制局長官もお答えいたしましたように、やはりこの法律を前提に置いて判断をしてお答えを申し上げているのであつて、この外船舶建造融資利子補給法の表面に出ているこの考え方によつて銀行と国との間に契約が行われる場合には、そういう特別の利益というものは出るはずがない。また非常に早く金をやつて銀行に長い間プールしておくということになれば、これは現実の契約の運営の仕方に問題があるのでありまして、そういうやり方をすることは、この法律は予期をしているはずはないのでありますから、私どもはこの法律を基礎にしてものを考える限りは、ここからは特別の利益というものが出て来るはずがない。こういう判断をしているわけであります。
  59. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私はまつた答弁に承服しませんが、何べん言うても長官は的をそらした答弁であるから、私はここはこれで打切ります。
  60. 木原津與志

    木原委員 先ほど規正法関係のは打切りまして、一つだけ御質問いたしますが、最近右翼団体の動きが非常に活発になつて来ていることは長官も御承知のことと思います。そこで右翼団体、現在日本にあつて活発に動いている右翼団体は、政治資金規正法によつて届出をする団体だというように考えておられますか。
  61. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 政治資金規正法に定義されておりますような活動をいたしますれば、当然に政治団体と見なされて参ると考えます。
  62. 木原津與志

    木原委員 しからば今日まで右翼団体から規正法に基いて献金届出を受けておりますか。
  63. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 私どもの方に参ります届出は、団体自体の届出、いわば組織とか目的とか活動、そういう活動をするということの届出ではございませんで、その収支を明らかにするための届出だけでございます。私どもの方ではまた右翼団体であるかあるいは左翼団体であるか、どういう団体であるか、団体の性格を調べようということを政治資金規正法の目的として、届出を受けているわけではないのでございます。従いましてまた右翼団体であるかどうかということを調べる義務もございませんし、調べる必要も実は自治庁としてはないわけでございます。ただどういうような活動の資金がどういう方面から出ているか、どういうような支出をしているかということを報告を受けまして、一般に広く公表するというのが規正法の目的でございますので、そういう趣旨からかねがね何ら注意をいたしておりませんので、また突然の御質問でございます関係もありまして、ただいまどういうような団体がそれに該当して、どういう届出があるか、ここに資料を持つておりませんので、お答えができかねる次第でございます。
  64. 木原津與志

    木原委員 われわれは当委員会で一昨日公安調査庁の長官初め関係者から、右翼団体の活動の状況について報告を受けたのでございます。その際これらの団体の動きの中に、資金はどういう方面から来ておるかということを尋ねもし、また説明もあつたのですが、その説明の中に、主として経営者、資本家団体から資金が出ておるというような趣旨の答えがあつたのです。私どもも、右翼と日本の資本家との間の結びつきについては、密接なものがあると思つておりますから、多分この右翼の動きというものは、資本家団体から資金が出ておるということは特ににらんでおります。でありますから、特に資金について当然規正法の適用を受けるものとすれば、あなた方の方に届出があるものと思うのです。もし届出がないということになれば、これは大きなミスだと思うのであります。だからその点について届出がしてあるかどうか、もし届出がしてないとすれば、どういう資本家もしくは資本家団体から資金が寄附されておるか、その点を明らかにしていただきたいと思うのですが、本日できなければ、近い機会にこの点を詳細に御報告願いたいと思います。
  65. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 政治資金規正法におきましては第六条に、そのような政治団体ができましたならば、代表者または主幹者及び会計責任者を選任しまして一週間以内に届け出るようになつておるのでございます。ところがこの規定自体には罰則と申しましようか届出を強制する規定が欠けております。それを間接的に第八条で、寄附を受けましたり、支出をいたしました場合に届出をしていなければ処罰をするということになつていて、この規定から間接的に届出が強制される、実はそのようになつておるのでござといます。従いまして事実そのような団体が組織され、活動されておりましても、私どもの方で職権でそういう団体を捕捉して届出た強制させるという道が講ぜられていないのでございます。たしかそのような団体の結成の関係は、公安調査庁の所管になつておろうかと存じますが、そちらの方と連絡いたしまして、そのような実際上政治団体として規正法に該当する団体が存在し、活動して、かつ届出があるかないか、それによりまして、私どもの方にすでに届け出てありますものについては、できるだけ早く御報告を申し上げるようにいたします。ただそのような制度になつておることだけ御了承をいただいておきたいと思います。
  66. 木原津與志

    木原委員 今の届出の点でありますが届け出られておるものがたくさんあるのですよ。ここに並べられてあるものだけでも五十に近い数字があげられておるのです。しかもこれらの団体が世間でいわゆる右翼フアッシヨと言われておる団体なんですが、これらのものが活発に動いておる。この動きはあなた方も御承知のように戦前、戦後を通じて、その及ぼす影響というものは社会の治安上も非常に大きく、特に過去の事例に徴すれば政治的テロに出ておる事実が枚挙にいとまないというような状態である。こういう団体が活発に動く背後には、資金がなくて動くはずがない。だからわれわれとしても、また自活庁としても、あなた方の方でも、その資金源、その資金がどこから流れて来て、どういう方向に動いておるかということについては、十分な関心を持つておられなければならないと思うのです。今日までこれらの五十数団体から資金についての届出が一件もないということはまことにおかしい。そういう事実はあり得ない。もしその届け出たものがないということになれば、これは明らかに脱法だと思う。その点について自治庁において処置をとつていただくよう要望いたしまして、質問を終ります。
  67. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 よく調べまして、なるべくすみやかに御報告申し上げるようにいたします。
  68. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 法制局長官ちよつとお尋ねしておきたい。昨日来問題になつております政治資金規正法第二十二条の解釈です。国と特別な利益関係に立つ契約当事者というものの解釈でありますが、今現実の問題として、この利子補給を受けております銀行が、各党に相当額の献金をやつておる。自治庁長官説明によれば、この外航船舶建造融資利子補給法に基く融資利子の補給というものは、銀行に対しては何も利益のないものだ。利益のないところのものは献金などするものではないのだから、政治資金規正法にはそういうものは対象になつておらぬのだ、こういう説明をなさつておるのですが、現実の問題として、この銀行どもは各党に対して相当の金額を献金しておる。社会現象、経済現象と見るならば、何にも利益のないものだという説明は矛盾しています。そこで法の精神はそういう建前でしたかもしれませんが、現実の問題として、この利子補給法の対象になりました契約当事者になりました各銀行は、相当の利益がある。今何ぼの利益があるかという計算は、私ども今しておりませんが、調査すればわかることです。そこで仮定の質問になるかもしれませんが、現実の問題として、相当の利益が各銀行にあることがわかつた。これは私どももあまり金融方面には詳しくないのでありますが、専門家に聞きますと、この利子補給というものは、まず前もつてまとまつて銀行へ下付される。そうしてそれが船主に渡るのは、船の出来高に従つておいおいに渡される。その間相当の期間銀行で暖めておるんだ。これが相当の利益になるんだという説明を承つております。今何ぼその利益が上つておるかという計算は、私どもまだしておりませんが、相当の利益が上つたとかりにいたしますならば、これは政治資金規正法第二十二条、公職選挙法百九十九条の「特別の利益を伴う契約当事者」ということになるか、なりませんか。
  69. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうも私も法律専門――専門というのにも至らないかもしれませんが、経済的のことはよく存じませんから、詳しく立ち入つた説明はできないと思いますけれども、しかしやはりこの法律趣旨は、この契約そのものによつて、必然的に特別の利益がそこに出て来るということが条件になつておると思います。ただいまお示しのありましたようなところから、ただちにこの特別の利益ということに結びつくかどうか、これはおそらく私はこの特別の利益という法律趣旨からいいますと、予定していないことであろうというふうに考えます。
  70. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなた方はそういうことを言うんでは、ここに何千万円という利益が確かに上つたということを仮定しても、なおそれは特別の利益ある契約当事者ではないと思われるというような答弁になる。そこでしからば、あなたの頭で考えておる特別の利益ある契約当事者というのはどういうことになるのであるか。請負というのが出ておりますが、請負というものは、実は危険負担が大なるもので、もうかるときも損するときもある。それでもこれは一応特別の利益ある契約当事者と見られておる。現実に銀行なんかがいろいろの意味で、有形無形の相当の利益を得ておつても、これはこの特別の利益ある契約当事者じやないんだ。その利益は結局契約から起つて来る。つまり取引銀行として国に指定され、この利子補給法の対象とされて、国とこういう契約を結んだことからそういう利益が出て来る。それは特別な利益じやないんだということになると、あなた方の頭で想定されておる特別の利益というものは、実例として一体どういう場合なんだと、私どもお尋ねしなければならぬ。それではどういう場合が特別の利益のある契約、その当事者ということに相なるのでありますか。
  71. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今例にお示しになりました請負の中で、かりに考えますと、大きな土木工事について、随意契約契約したという場合などはこれに該当する可能性のある場合だと思いますが、これはそういうふうに比べてみますと、むしろ税金の免除を受けたその利益というものと性質が近い。しかもそういうものは契約も何もありませんからして、相当大きな利益があつても、この法律としては取上げておらないわけであります。そういう点から銀行考えてみましても、私ども考えております少くともこの利子補給の法律によるこれは、とてもこれには当るまいと考えておるのであります。
  72. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとこの利子補給法によりまして、銀行から運輸省に向つて契約の申込みをして、そうしてそこに契約ができ上る。その契約に基いて相当の金額がある銀行へ渡される。その銀行から今度船会社へ渡されるのはずつとあとであつて、その間銀行でそれは預かつておる。この間の利益というものは莫大であるということを、われわれは金融事業に従事しておる人々に聞かされておるのですが、それでもあなた方は、その利益というものはこの利子補給法並びに銀行と運輸省との間に締結せられたるこの契約に基く利益じやないのだ。これはどこからわいて来たか、天から降つて来たか、地からわいて来たか、それとはまるで無関係な特別なもうけなんだ、役得というものだ、こういうことに相なるのですか。
  73. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その契約そのものに必然的に伴う特別の利益とはどうも考えられないというふうに思います。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それではいくらやつたつてあなた方の頭とわれわれの頭とは違う。ぼくらはこの契約なかりせばかような利益は生れないのだから、いわゆる因果関係が相当あると思います。あなたの因果関係解釈がはなはだルーズにでき上つておる。これはこの法の精神に照すならば相当厳格にこの因果関係というものを考えなければならぬ。この契約なかりせば、国家の予算がそんな銀行に預けられる道理もなし、国家の予算がその銀行に預けられなければそういう利益は生れないというならば、これは風が吹けばおけ屋が喜ぶような論理ではありません。相当因果関係があると見なければならぬ。この契約、この法律とその銀行のもうけというものは相当因果関係に立つ。それをあなた方は否認されるとするならば、いかなる因果関係に立つたものを特別の利益とみなされるのか、それをお尋ねします。
  75. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは先ほど請負の例を申し上げたのがそれだと思いますが、要するにこの社会的、経済的にわいて来る利益というものを考えに入れますと、限界の引きようがないと私思います。先ほども触れましたように、免税の特権というものは大きな特権だと思います。それによつてどれだけの利益があるかどうか、これは社会的、経済的に相当の利益があると思いますが、それはこの公職選挙法なり政治資金規正法でお取上げになつておらぬというような点を総合して考えますと、お話のような点はむしろ法律上きちつとはまるようにお直し願うよりほかないのではないか、結論はそこに行くような気がいたします。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 われわれとまるで逆だ。われわれはこの法律で十分因果関係ありと見ておる。あなた方は政府に便利な御解釈をなさるから法律を直せと開き直られるが、法律なんか直さぬでも、ここに相当りつぱな因果関係がある。しかしこれは水かけ論になりますから、やめましよう。  そこで今度は全然別なことでありますが、これは法務大臣にお尋ねすればいいのだが、ちよつとぐあいが悪いので、あなたにお尋ねいたします。検察関係の人たちが、ある人間の家宅捜索あるいは逮捕というような事実につきまして、前もつてそれを何らか外部に発表したといたしますならば、これはどういう責任がわいて来るのでしよう。
  77. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私にとつてはますますぐあいが悪いのでありましてどうも直接の関係でもございませんし、公式論でお答えするほかない。それは公務員の服務紀律の問題じやございませんかと言つてしまえばそれつきりなんであります。でありますから、むしろその任ではございませんと、ここであやまつておいた方がりこうじやないかと考えております。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 わかりました。
  79. 小林錡

    小林委員長 古屋君、簡単に願います。
  80. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 長官にお尋ねいたしたいのでありますが、公職選挙法二百一条に、「何人も、選挙に関し、本人名義以外の名義を用いた寄付」ということになつておりますが、この解釈はやはり昨日百九十九条の御解釈のように、文理解釈は、これは処罰規定であるから、拡張解釈などはできないという御趣旨だと思うのですが、こういうような場合は、本人名前以外であれば、いかなる場合でもこの規定に当てはまる、違反する、こういうことに御解釈になるのでしようか。
  81. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 法文を見ますと、「本人名義以外の名義を用いた寄附及び匿名寄附をしてはならない。」と、お言葉通りの文字が出ているわけであります。法文の解釈問題としては、この文字を一応たてにとつて読むほかはないと思います。
  82. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで、何々有志団あるいは外有志というようなことで寄付をされた場合は、これが当てはまりませんでしようか。たとえば甲ほか三人とか四人有志、しかもそれが何々業界の有志というようなことで不確定の場合はいかがでございましようか。
  83. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 問題は、匿名であるかどうかという問題の方に近いのではないかと考えますが、実はきのう予算委員会で御質問がありまして、法務大臣から答えたのですが、今の何々外とあつて、裏におる人が全然見当がつかない、素姓も全然わからないというのではあるいは困るかもしらぬが、何とか銀行というふうに大体わくが出ておつてその有志水田それがしということになれば、匿名に入らぬということをきのうお答えしておきました。
  84. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それでは現実の問題で承りますが、自由党に一千一百万円の寄付をしております有志都市地方信託銀行団、こういう人格はないと思うのですが、こういう場合はどのように御解釈になるのでしようか。これでもいいのか、それが今の二百一条に違反することになるかどうか、その点いかがですか。
  85. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 匿名とは言い切れないということであります。
  86. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうすると、匿名でないとするならば、その前の方の「本人名義以外」ということに入りませんでしようか。
  87. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは古屋先生の方が専門家だと思いますか、むしろ問題はやはり匿名の方の問題でございませんでしようか。
  88. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこのところが私よくわかりませんが、法制局長官は、こういう処罰規定は厳格に解釈せられる。きのうも文理解釈の問題で私どもの議論と行き違いをやつたりする。この点について私は御本人以外の名前であることは間違いないと思うのです。寄付者名義は出ていない。そうすると、こういうことを選管が受付けてこのままで放任するところに問題があると思うのですが、これは本法の立法趣旨に反することになる。本法の趣旨は、だれが一体寄付したのかということを明確にしろということだと私は考えますが、こういうような場合には何かわからない。いわゆる都市銀行地方銀行信託銀行というものは日本には何百もある。その団という名前が何かわからない。そうすると、これは人格がわからない。寄付者もわからない。不明確なものである。こういう場合は、やはり二百一条の一番最初の方に掲げてあるこれに当てはまるものと私ども考えるのですが、その点はいかがでしようか。
  89. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 他人名義ということには当りませんから、本人名義以外の名義ということの問題ではなしに、むしろ御指摘の点は、匿名であるかいなかの問題であろうということを先に申し上げたわけであります。そこで匿名ということになるかならないかについては、有志代表ですか、水田氏の名前が出ている。その有志が、全然わくのない有志であるかどうかと申しますと、これは何々銀行何々銀行有志、こういうふうにかぶつてつたと思います。私はそのもの自体を見ておりませんから、はつきり申し上げられませんが、そういうことであれば、素姓の知れぬ人のものであるということにはなりませんから、ここにいう匿名には当らないのであるということを、きのうも法務大臣が申し上げましたし、きようは私が申し上げます。
  90. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今私が伺つたのは、名前が何もないのです。読み上げましようか。一千一百万円を有志都市地方信託銀行団としかない。こういう場合はどうなんですか。
  91. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 何とか銀行団とあれば、わくがきまつておりますから、私の申し上げた趣旨匿名にはならないだろうということになるわけです。
  92. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 わくはほとんどきまつておらない。有志都市地方信託銀行団、何だかわからない。わくというものはきまつていない。こういうでたらめな名前寄附をすることが、今長官のおつしやる匿名だということになれば、これははつきり匿名に入るんじやないでしようか。私はさように考えるわけです。こういう場合は匿名に入らないということになれば、それではもうこの条文というものは死んでしまう。これを活用して、実際に選挙の公正を維持するための目的のための条文とするならば、これこそただいま申し上げたように何もわからないのです、有志都市地方信託銀行団、はたしてこういう団があるのかどうかわかりませんが、おそらくこういう団はないと私は思う。ないとすれば、匿名になりはしないかと私どもは固く信ずるのですが、これでも長官はやはりわくがあるとおつしやるのですか。
  93. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 銀行関係者であるという意味で、何とか団、何とか団というものが列挙されておりますから、これは一つのわくだというふうに考えます。ただそれを受付けるときに、もう少し立ち入つて調べればよかつたんじやないかというような運用上の問題は別問題です。
  94. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私の申し上げているのは、それじや、やたらかつて名前をつけて何々団、何々団というようなことで、これは銀行があるからと言うけれども、それじやほかのいろいろな中小企業何々団、何々団というて不明確になつてしまう。それでもわくだと言う。そういうわくだとおつしやられること自体が、私は初めから長官の御解釈の頭がどうも変であると思う。私どもにははつきりわからぬ。これはどなたか寄附した人を明確にしろということが立法趣旨だと思う。明確でないものを、わくわくとおつしやるなら、いいかげんな人がこういう名前を使つてやりましても何でもできる。これは長官のおつしやるようにはたして水田という人がやつたのか、銀行関係の人がやつたのか、あるいは他人がこういう名義を使つてつているのか、私はよくわからない。こういう場合こそ匿名ということに御解釈にならなければ、この条文は死んでしまうのですが、いかがでしよう。
  95. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうもこれは立法技術の批判の問題にもなると思いますけれども、その寄附者の名前を個別に明らかに列挙しなければならないとなぜここにお書きにならなかつたか。裏から、第三者の匿名のものはいかぬとか、こういう書き方になつておりますから、今のような問題が出るのは当然だと思います。しかし先ほど申し上げたように、匿名に入るかと申しますと、いや匿名に入らないと申し上げるほかはありません。
  96. 小林錡

    小林委員長 議論だから、この辺でどうですか。
  97. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 これはもつと明確に承りたいのですが、むろん見方が議論になりましよう。しかし銀行とか会社という一つのわくがあるというようなことをおつしやるけれども銀行とか会社という名前は不確定なんです。これはわくだとおつしやるから、私は言うのです。それは長官の頭に銀行協会とか銀行とかいうことを前提にお考えになつているからで、フリーの立場から、国民の側から考えると、今のこんなものは不明確なものである。不明確なものであるというなら、これは匿名です。そうすると長官は、これはどこでおやりになつたか明確に判断できますか。私どもは明確でないという方が常識だ。一千も二千も三千もあるような信託銀行、会社、そういうものの有志といつている。これではわくというものは、どういうわくかわからぬ。有志というものは、一人でも有志、二人でも有志である。こういう名前を使つてやることを収締るのが二百一条であると私どもは信ずる。これがわくだとおつしやるけれども、明確に認定できるならよろしいが、私は常識上できないと思う。長官はこれはどなたかということが認定できますか。別に水田何がしとあるものなら、これは議論の余地がない。これには何も書いてない。ただ有志団、こう書いてある。これが匿名でないとおつしやるなら、匿名にひつかかるものはないと思う。いかがでしよう。
  98. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の申し上げたのは、個人の思いつきを申し上げているのではありませんで、自治庁、法務省、われわれの方と、関係当局者が研究の結果を申し上げているわけであります。でありますから、これ以上申し上げても、おそらく見解の相違と申しますか、議論になるように思いますので繰返しませんが、あるいはまた先ほど猪俣先生に申し上げたように、今のような見解がとにかく横行しているというふうにお考えになりますならば、法律の改正についての御参考になるということかもしれないという気持を持つております。
  99. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 これ以上私はやめますが、こういうものを放任しておくところに今回の汚職事件が出て来ておる。こういう問題があつて寄附をした関係銀行の連中がいろいろな問題の温床になつているということをわれわれは考えて心配するわけです。従いましてこれ以上は私申し上げません。
  100. 黒田寿男

    黒田委員 ちよつとこれに関連しまして……。二百一条の「何人も」というのは自然人としての、われわれ個人ですね。それだけでなくもとより法人格を持つているものも含んでおることだと解釈されておられるのだと思いますがそれはいかがでございましよう。
  101. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それはおつしやる通りじやないかと思います。
  102. 黒田寿男

    黒田委員 それでは今銀行団の問題が起りましたが、その有志銀行団なるものが正式に法人として成立しておるというようなものでありますならば、これはまた個人ということに当ると思うのですけれども選挙の場合に便宜上何々団というような名前を用いた場合には、個人が変名を用いたと同じことになるのではありませんでしようか。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御趣旨はよくわかりますが、私の気持は、むしろ感じといいますか、そういう意味でなしに、漠然たる名前、むしろそつちの方に近いのではないかと思います。
  104. 黒田寿男

    黒田委員 漠然たる名前というのは、かりに法人として登録してあるとか、登録してあるということはないにしても平素から何々協会というような民法上の法人格は持つておりませんでも、一応業界なり世間に通用する何らかの団体があるというような意味のものをも何人の中には含むというように御解釈になりますか。
  105. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それは団体として寄附する能力があるかどうかという問題になりましようから、深く立ち入つて検討しなければならぬと思いますけれども、それはそれとして要するにその自己の名において寄附ができるということではございませんか。
  106. 黒田寿男

    黒田委員 それは古屋君が先ほどからいろいろお尋ねになりましたように、匿名とか変名とか他人の名義とかでやつてはならないということに関連してお尋ねしておるのですが、個人が、自然人としてのわれわれが、たとえば他人名義寄付してはならぬのですから、そうしてまた匿名寄附してもならぬのですから、そうして匿名の場合はただ〇〇とか何とか、匿名か変名かそこの限界がなかなかむずかしいと思うのですが、要するにそういう変名でやつてはならぬということが個人の場合で言えるならば、私が今申しました団体の場合にもその問題が起るのではないかという意味で実はお尋ねしておるのです。そこで正式に何々会社とかいうようなことで、あるいは民法上でも商法上でもその他の特別の法律上でも法人として認められておるものがその名前を子のまま出すのならそれは問題ありません。それからそうでなくても何々協会というようなことで法律上では人格を認められてはいないけれども、世間的にああいう協会ならあるという、だれも疑わないような、業界の通念などによつて正式に団体として認められておる、そういうものならばその名前寄附することは匿名でも変名でもない。しかし選挙に際して平素は何もない団体名を有志何々団、これは銀行団であろうが、信託団であろうが、農民団であろうが、労働団であろうが、そういう平素存在していない団体選挙に際して寄附の便宜上用いるというようなことは、私は他人の名義ないしは匿名ということに当るのではないかと思うのです。そうしてその銀行有志銀行団なるものがそういうものに概当するのではないかと思うのですが……。
  107. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今の世間に通用しておるような組織としての通称と申しますか、そういうものがあるかないか、私不幸にして存じませんけれども、しかし先ほど来の気持を申し上げますと、そういうグループというものを押えて、その名前といいますか、その中の有心、その有志という意味で出して来ておるわけですから、いわゆる言葉をかえていえば、漠然たる名前で出して来たという方向に結びつくのではないかという気持でございます。
  108. 黒田寿男

    黒田委員 私が申しましたのは、平素から法人格を持つておるといないとにかかわらず、対世間的に一応の団体として認められておるものが、その名前をもつてやるのならば問題はないが、今申しましたように選挙に際してだけ特別に名前を用いてやるということになれば、銀行団信託団というものがはたしてあるかないか調べてみなければわかりませんが、かりに平素はそういうものがないのに選挙のときだけに有志銀行団とか信託団とかいう名前を用いることは、個人の場合に変名ないし匿名を用いると同じく犯罪行為なるのではないかということをお尋ねしておるわけです。
  109. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういうものは私は知りませんが、ほかの関係の場合に銀行団とか何とか、そういうことでやつたケースがあるかないかということが、おそらく判定の大きな基準になると思う。そういうことがあれば、おつしやる通り問題はないわけです。かりにそれがあるかないか別にして考えてみましても、何にしてもそういうグループというものはここで客観的の表現が出ておるわけでありますから、そこの仲間という名義で出して来たということになれば、匿名ということにはならないのではないか、そういうふうな考え方をしております。
  110. 黒田寿男

    黒田委員 そうしますと平常用いられていないで選挙のときだけにそういう名前を用いても、全然今までは存在しなかつたものが、選挙寄附ということだけに用いられておる名前であつても、これは公職選挙法二百一条に照してさしつかえない、こう御解釈になるのでしようか。そんなことになるとちよつと問題になると思うのです。
  111. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 選挙のときだけに寄附するに当つて、そういう名義で出して来たというこが匿名にならないかというお尋ねであれば、それは匿名に当りますまいということであります。
  112. 黒田寿男

    黒田委員 そうすると私が今申しましたような場合は、匿名か変名かは別です。どちらでもよろしい。匿名に当るかいなか、名前が書いてあるから匿名でないかもしれない。しかし名前が出ておれば変名かもしれない。要するに今までない実体の名前を用いて、そういう実体は寄附する以前にはなかつた寄附した後にもなかつた。そうしてまたその目的は寄附する以外には何らその名称を使われたことがない、そういうように単に寄附する目的のために臨時的に、一時的に便宜上ある団体名を使つたということは、私は変名になるのではないかと思うのですが、どうでしようか。
  113. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私はどうも先ほど古屋委員にもお答えしておるのですが、変名の方にはならないと思うのです。むしろ匿名の限界ではないかと思い込んでいるせいから、そういう気がしているのかもしれませんが、そうすると今申しますように隠れた裏におる人に限界がある。限定されておるというわけで、匿名にはなり切れないというふうに考えております。
  114. 黒田寿男

    黒田委員 これ以上は議論になりますからやめます。
  115. 小林錡

    小林委員長 それでは午後二時から再開することにいたしまして、しばらく休想いたします。    午後一時十分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十九分開議
  116. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。林信雄君。
  117. 林信雄

    ○林(信)委員 付議されております訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、直接あるいはこれに関連いたします若干の質疑を試みたいと存ずるのであります。  まず提案せられました法案の理由説明によりますと、昭和二十七年十月三十一日以前に給与事由の生じた執行吏について国庫補助基準額は増加されないことになつているというのであるが、あらためて申すまでもなく、二十七年十月三十一日といえば、一年有余箇月を経過いたしておるのであります。この措置が今日まですえ置かれてここに初めて措置されんとするのは、何か事情のあることであろうと思います。この点の御説明をまず伺いたい。
  118. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 昭和二十七年十月三十一日に公務員の給与のベース・アップがあつたのでございますから、そのときに遅滞なく恩給の基礎になる俸給金額も値上げすればということが言えるのでありますが、御承知のように最近は財政事情がきゆうくつになつておりますので、公務員の給与がベース・アツプされたからといつて、恩給の方のベース・アップも同時にやるというふうな措置が、必ずしもとれていないのであります。一般公務員の方も、この昭和二十七年の十月三十一日から実施されました給与ベースに合せて、恩給の方の俸給のベースを上げるというのは、昨年の十月からになつたのであります。そしてその立法は、昨年の夏の第十六回の国会で行われたのであります。その後遅滞なく、執行吏につきましても立法措置を講ずべきであつたのでありますが、その十六国会では後半に、こういうベース・アップの立案が急になされました関係上、同時に執行吏については提案ができなかつたのであります。その後臨時国会もありましたが、これも短期の国会でありまして、提出法案等が限定されましたので、提案ができなくて結局今度の通常国会にお願いすることになつた次第であります。ただ実施は昨年の十月ころからでありましてしかも執行吏につきましてもさかのぼつて十月から実施するということにいたしておりますので、その点は実質的にはやや時期が遅れましたけれども、それほどの不都合はないのではないかというふうに考えております。
  119. 林信雄

    ○林(信)委員 今度の場合がそうであるように、従前からこういうふうにゆつくりやつて来たのでありますか。たびたびかような同じような措置がなされておるようでありますが、いわば慣例でありますか。だから慣例に従つてゆつくりおちついてというのですか。
  120. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その点でございますが、慣例ということではございません。今までは大体ベース・アップのあつた場合には、遅滞なく恩給の方のベース・アップもございましたので、そういうような事情はなかつたのであります。
  121. 林信雄

    ○林(信)委員 そうであるとしますと、幾らか考えてみたくなると思うのです。その間国会が開かれておらないというならば別ですけれども、特別国会に続いて臨時国会が二回、ある場合は救農国会とか銘打つたりしましても、それだけに法務委員会等はそれほど忙しいわけじやないんだから、役所関係で努めて出してもらえば、特別の研究、特別の技術を要する法案ではないと思うのです。言葉じりをとるようでありますが、さかのぼつて適用するのであるから大したことはないじやないか。これは確かにそうでありましよう。利害の関係から見ますればこのことは示されております。政令案の中に附則として、施行は公布の日からであり、その適用は二十七年十一月一日にさかのぼるという意味が出ておりまして、その措置はわかるのでありますが、これはさかのぼつて計算するからそれでよいのだといつても、これは利益関係から参りますとやはり時期のずれというものがある。全然同じというわけに行かない。それと人間に関する問題は感じの問題がもちろんある。そうなつたのであるから、少し遅れたつてよいじやないか。しかし前から例があるのであるから、どうかしてくれると思つておるけれども関係者としてはそううれしいことでもない。というと、一応やはり怠慢ということが出て来るのではないかということを思うのですが、私の思うようなことでしようか。これもあなたが軽く扱われますように、私もしいてこれを取立つてやかましく言うほどの問題ではないと思いますが、事態に対する考え方も、私どものような考え方も許されるのでしようか、それは非常に妄断なのでありましようか。
  122. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 さかのぼつて支給されるから、提案が遅れてもよいということは、決してそのまま受取ることのできない考え方であります。われわれも提案が遅れましたことについては非常に申訳なく思つておるのであります。ただ事務的に考えましては、今までも提案の準備は常にそのころからいたしておりまして、臨時国会が始まる前からいつも法案を提出したいという申出をいたしておつたのであります。それがやはり法案の提出の調整ということから制限されまして、どうせそういうようなことがあるからいいじやないか、それほど急がなくてもいいのじやないかという考え方からだと思いますが、そういうような内部の調整で、今日のような結果になつたということであります。しかしながらそれでわれわれ責任が全然ないというようには考えておりません。事務的なものとしては一応のことはやつて来たということであります。その点どうぞ御了承を願います。
  123. 林信雄

    ○林(信)委員 それはその程度でよろしいのですが、欲をいえば、やはり早くできるものなら早くこういうものは片づけておく方が感じがいいように思います。そこで結局さかのぼつてということになるとどうなるのでございますか。何箇月分の差額というものが、執行吏の収入関係調べ上げてこの際支給されるというような政令が正式に公布されますと、そのときにその金額がすぐ支払われることになるのですか。
  124. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 この法案にもございますが、第十二項といたしまして「第四項の規定は、前項の規定による恩給年額の改定について準用する。」とあります。この第四項とありますのは、参考資料の対照条文のところを見ますと、「前項の規定によつて恩給年額を改定する場合においては、裁定庁は、受給者の請求を待たずに、これを行う。」ということになつておりまして、普通なれば恩給が改定される場合には裁定を要するのだと思いますが、この場合には裁定を要しないということになつております。従いましてこの法案が通過いたしますれば、今度最近の機会にこれを定期的にもらうことになると思うのですが、それをもらうときに不足分を払うことになると思います。
  125. 林信雄

    ○林(信)委員 わずかな予算関係ですからこれはあらためて……。予算は法務省関係じやないんですか。恩給関係か何かになりますか。
  126. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 恩給関係として必要な予算はすでに二十八年度においても計上されておりますし、二十九年度についてもすでに提出されてあります。
  127. 林信雄

    ○林(信)委員 だれもがちよつと考えついてときどき話が出るのですが、執行吏だけをこういう臨時措置で扱つて、一般の恩給法に繰込んで行かない、こういう特別扱いをしなければならない理由、一応は一般公務員と違つた性格を持つた立場及び恩給の基準になる収入関係がひとしく定額収入とは違つておるというような面も見られるのだが、こういう措置をすることによつて結局収入というものは一定して来るのであるから、これはやはりそういう一種の措置的な規定を入れておけば、一般恩給法でまかなえるんじやないかと思われるのですが、いつまでもこういうふうな姿で押し進んで行つておりますのは、どういうのでございましようか。今後またどういうふうにされるのでしようか。このままの姿で行くことがほんとうであつて、どうにもほかにやり方がないというのでございましようか。あわせて将来の考えを承つておきたいと思います。
  128. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 その点でございますが、御承知のように現在の執行吏の制度は、明治二十三年に制定されました執達吏規則というものによつて規定されておるわけであります。その第二十一条によりますと、執達吏は恩給法の直接の適用を受けないで、官吏恩給法に照して恩給を受けるということになつております。それで別建として恩給を受けるという態勢になつて現在に至つておるのですが、これはおそらくその立法精神が今林委員が仰せになつたように執達吏は手数料を受けておる。一般の公務員と違つて定額給与を受けることになつていない点で、恩給法を直接適用することはおもしろくないということで当時そうなつたと思います。しかしながら考えようによつては、これに一般の恩給法の適用を受けさせるということは可能とも考えられますし、のみならずさらに今度は執行吏にたとえば定額の給与をやるということも十分考え得ることでありますので、それらの点につきましては、それは今申し上げましたようにすでに古い法律によつて規定されておることでもありますし、十分根本的に検討する必要があろうと考えまして、政府としましては昨年実は執行吏制度の根本的な改正をする必要があるかどうかということの研究に着手しまして、学界、裁判所、弁護士会等の関係団体に対しまして、その改正の意見を求めたのであります。その意見が大体集まつておりますので、それを整理して、早急に改革の立案に着手したいと考えております。
  129. 林信雄

    ○林(信)委員 執行吏の恩給に関する規定関係をどうするかという問題について、執行吏自体の身分保障なり職務関係なり、制度それ自体の根本的な改正について考えられておるという答えのありましたほどこれは密接な関係を持つと思うのですが、執行吏制度の改革の問題もたやすいようでなかなかうるさいのであります。もうその声の出たのは非常に古くて、いつのころであつたろうかと思うほどなんであります。改正調査会というようなものを設けられたのはあまり遠くないかもしれませんが、そういう声の出たのはかなり古い時代であると思うのであります。それでいて実は世論が帰結しておるかというと、そうでもない。元を求めましても漠然としておりますし、流れの行く末をながめましてもさらに帰結するところを見ないような問題なんです。これはどうしても当局が英断――といつては言葉が適当じやないのですが、とにかく早急に何とかするということで一応線を打出して、具体的な素材としてここに提供されて、そして料理することにならなければ、あたかも、世論の帰一するがごとき考え方でごらんなすつても、いつまでたつてもだめだと思う。申すまでもなくこれはきわめて大衆的でない、じみな、だれも考えることだけでも不愉快な面の仕事なんですから、思い切つて自分の思つた通りの考えで案をつくつて出す。そうすれば、それは最善のものにはならないかもしれないが、少くとも現在の制度についてたいへん非難されたり、たいへん非能率であつたりといつた問題は一応解消されると思うのです。すなわちこの際思い切つて取急いで、とにかく一応の改革の法案を出される意思があるかどうか。  それについてあわせてお伺いしておきたいと思いますことは、今お話のあつた執達吏規則、これは読みかえの法律か何かできておるのでしようか。世間では執行吏といわれておる。現にただいま提案になつております執行吏国庫補助基準額令の一部を改正する政令関係のいわゆる訴訟費用等臨時措置法においては、いずれも執行吏と呼びならわされておるのですが、執達吏規則は依然として執達吏という名前で置いてある。これはどうなつているのでしようか、お教えを願いたい。
  130. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 政府といたしましても、執行吏の制度を何とかいたしたいということは常に念頭に置いて考えておるのでありまして、御承知のように戦前一応強制執行、競売などに関連して改革のための審議会を持ちまして、ある程度結論が出たことがありますが、その後の戦争の勃発等によりまして中断されたのであります。  戦後ももちろんそのことを再びやるように考えておつたのでありますが、御承知のように法律が非常に根本的にかわつて来たことから、ほかの方の立案に追われて、取残されておつたという感じはおおい切れないものがあるかと思います。しかしその必要については常に念頭に置いておつたのであります。すでに各界の意見も大体まとまつたことでありますから、法制審議会あたりに諮問をしてもらいまして、早急に立案に着手したいというふうに考えておる次第であります。実は問題点等の意見を求めるにつきましては、一応摘出いたして、すでに意見を求めておるような次第でありますが、やはり実態に即した制度の改正をしようと思えば、そう急にいい考えも出て来ない面もありますので、できる限り早くよいものにするよう今後も努力したいということで御了承願いたいと思うのであります。  なおこの法律自体はかえませんでも、運用を改めれば、現行の制度のもとでももつと何とか能率的に行けないかということは十分考えられるのでありまして、昨年最高裁判所ではその点も十分研究せられまして、御承知のように昨年の十二月五日の官報に載つておりますが、執行吏事務処理規則、執行吏執行等手続規則、執行吏任命規則というようなものを全面的に改正して新しい規則をつくり、運用の面で画期的な改善をはかられたのでありまして、その施行後まだ日が浅いのでありますが、その成果はかなり見るべきものがあるというふうに考えておるのであります。ただこれのみでは十分とはいえないかとも思いますので、立法的改革を加えたいと思つておる次第でございます。  それから執達吏という言葉の読みかえ規定がなされておるかということでありましたが、これは裁判所法の改正によりまして執行吏という言葉が新しくできましたので、その際に読みかえの措置がなされたのであります。
  131. 林信雄

    ○林(信)委員 その制度の改正の問題は、できないからその間運営の妙をもつて何とかやつて行きたい――これは考えなければならぬ問題だし、考えれば若干の知恵はあるはずだと思うのですが、しからば実際にどういうふうに運営の妙を発揮しておられますか。非常に名案でもあつて、うまく行つておるのでありましようか、お伺いいたします。
  132. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 今申し上げましたように、規則で全面的に改正をされて、その実施がまだ始まつたばかりでありますから、十分な効果はあがつておりませんが、いろいろ現行法の許す範囲で改善のくふうはなされておるようであります。けれども、何といいましても法律のわく内でございますから、必ずしもこれによつてある程度の期待ができる妙手はこれだというふうにお示しするほどのものはございませんが、この効果もある程度期待し得るというふうに考えております。
  133. 林信雄

    ○林(信)委員 知らないからお聞きするのですが、どんなことでうまい規則ができておるのですか、その内容を……。
  134. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 特にこの合同役場の規定を整備して、たとえば独占的に執務が行われるために弊害が生ずるというふうな場合には、二つの合同役場をつくるというふうなことで規正する、あるいは立会人についての規定をある程度整備するというふうなことが考えられておるようであります。
  135. 林信雄

    ○林(信)委員 今伺いましても、大した妙案はないようでありますし、だれが考えてみても、これはこまかくいろいろな場合を想像すれば複雑なものですけれども考えてみると、差押えをするとか、仮処分の執行をするというような単純なものなんですから、そう大した妙案があろうはずはない。今お話のようなことでも、事務所を二つのものを、あるいは三つのものを合同したからといつて、それらの諸君の経費の節約になるようなことはあるでしようけれども、しからばその関係者がどれだけの利益を得るかというと大したことじやないのじやないか。立会人という言葉も出ましたが、これはしばしば世間の批判を仰いでおりますように、立会人というものは、職業的になつて、しかもボス的になつて執行吏と意思を通じて競落等を容易にして債務者にさらに売りつけるとかなんとかいうことで利益をはかるような諸君が多い。それらに対する一種の予防的な見地から参りましても、本質的なものはやはり執行吏の人の問題であつて、あるいは制度上から来る地位の問題である。制度の中で一番大きいのは今みたいの関係からの手数料制度で、そういうような自由職業的なものにしておくのか、身分だけは公務員だと言つておるけれども、大体従前通りの自由職業的なものとしておるのか、それを純粋なる裁判所の執行機関の一部とするかという、裁判所の執行機関に包含してしまつて、裁判所の執行機関の補助機関として現在の執行吏を使う、いわゆる執行吏制度の一元化、こういうところまで行かなければ、そういう場合のしつかりした人材が得られないのではないか。でなければ何か根本的なものに触れぬ気がするのです。また立会人制度にからみまして、その他のブローカーが暗躍しましたり、競落屋といつたようなものがいろいろ関係する話はわれわれいろいろ耳にするのであります。そういう実際面からばかりでは、あるいは説明のし切れないものがあるかもしれませんが、本来この執行行為というものの民事訴訟にからみました本質的な立場から考えまして、単に裁判というものはそういう事柄の是非をここに結論づけるというだけじやなくて、その最後の始末までしてやることがやはり親切であり、訴訟の本質的なものに入つて来るのであるというようなところから出て来ると思うのでありますが、今御説明を聞いておりましても、現在のような手数料制度で何十年やつて来ましたそのままの姿では、とうてい訴訟関係者の信用も博せませんし、満足もされないようで、弊害は依然として跡を絶たないようでありますから、やはり先刻来申しておりますように、根本的なものをひとつお考え願いたい。そうしてこう言つてはどうかと思いますが、要は裁判所関係あるいは検察庁関係の古手、そういう姥捨山的な人の採用でなく、将来有為の人材をこの面においても任命される――役所関係ならば任命ですが、そうでなくてもあるいは任命かもしれないというようなことは早急に考えられなければならぬ問題じやないかと思う。従いまして今一言触れましたが、大体これはどつちの方向に世論といいますか、調査が向つておるのでございましようか。あなた方の御意見はどこにあるのでございましようか。従来のままの制度がよろしいとお考えになりますか、あるいは裁判所の執行機関の補助機関になるとでもいいますか、あるいはそういうものを全然のけてしまつて裁判所の中の執行部の一員としての係でやればいいということになるのか。私は決して詳しくないのでございますが、どういうふうな方向に向つていてあなたの方はどういうふうにお考えになつておるのか、お伺いしたい。
  136. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 政府としてまだお答え申し上げるほどの意見はまとまつておらないのであります。しかしながら今林委員が仰せられましたようなことは、執行吏をもつとはつきりと国家の執行機関とする、正式の俸給をもらうような公務員にするというふうな御趣旨かと思いますが、そういうふうな考え方も非常に有力な意見であると考えます。そういうような御意見も十分参酌いたしまして研究させていただきとたいと思います。
  137. 林信雄

    ○林(信)委員 結局熱心にやつていただいて結論を出すということになれば必ずある程度のいいものはでき上ると思うのであります。早急にやつていただかないと、何だか欝血したような感じで――裁判所はなかなか進んで行つたといいますか、従来から決して悪いとは存じませんが、常に新しく研究されて非常によくなつてつておると思うのですが、どうもしつぽの方の一部、盲腸みたいなところがあると思うのですが、盲腸が発展するわけはありませんが、機構の一部ではあるのですけれども、あまりに旧態依然としてほろ馬車のこわれかかつたようなものがすばらしく新しい自動車に引かれて来るような、比喩として考えられるような姿なんで、何とかしていただくことがほんとうだと思いますけれども、特にそれをお願いしておきます。と言いながらも、若干の間がかかるならば、その間の運営の妙なんですが、今のところ執行吏の諸君は相当の収入になつておるのでございましようか。どこでもありますように一種の汚職なんでしようが、汚職の起るところは収入、待遇の問題とからんで来る。執行吏にしましたところで、金を持つて行くとすぐに前のものはほつたらかしても行つてしまうとか、あるいは出かけるのに自動車を持つて来ぬとああだこうだでなかなか出かけないとかいうような不平を聞くのも、これはやはり収入がそれに伴わなくて、何とかして少しでもそういう機会があれば収入を得ようと考えておる、あるいは出るべき経費を節約しようと考えておるというようなことが問題になつて来ると思うのですが、どんな収入状況で、どんな生活状態ですか。
  138. 位野木益雄

    ○位野木政府委員 ちようど最高裁判所の関根民事局長が見えておりますから、そちらからお答え願うことにいたします。
  139. 小林錡

    小林委員長 この際お諮りいたします。本案審議中、最高裁判所当局より発言の要求があります場合には、国会法第七十二条第二項の規定により、これを承認することといたしたいと思いますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。最高裁判所民事局長関根説明員。
  141. 関根小郷

    ○関根最高裁判所説明員 今、林委員からお尋ねの点でありますが、現在執行吏の全体の数が約二百八十名ちよつと越えておりますが、そのうち年額にいたしまして十万八千円の報酬を得られませんと、国から補助をやることになつておるわけであります。二百八十二人ばかりおりますが、そのうち年額十万八千円に達しないで、国庫の補助を受ける者が昨年度約八十名ばかりおります。従いまして全体の執行吏の報酬につきましては、十分なものを得ていないということが、ここからおわかりかと思いますが、今の八十名を除きましたそのほかの執行吏の全体の平均数をとりますと、大体一人当り一年十六万円くらいということになつております。ただ御承知の通り執行吏は非常に仕事がにくまれ役、きらわれ役でございますので、なかなか人を得るにもめんどうでございまして、人を得たにいたしましても、仕事の性質上非常に困難を伴う、そういう関係から、監督面その他につきましても非常に困難を伴いますけれども、御承知の通り本年度から特に最高裁判所の規則におきまして、かなり詳しい監督規程を設けまして、監督の面に非常に力を入れつつあるわけでございます。
  142. 林信雄

    ○林(信)委員 十万八千円を下る者は――十万八千円はあくまで十万八千円なんですが、それをオーバーする者も十六万という、この収入は何でございますか、一応いわゆる水揚げ――言葉は悪いのでありますが、鮮魚の方で申します水揚げ――人件費、消耗品あるいは税金といつたようなものを差引かない一応の収入なんでございますか。それとも筆墨費も事務員費も出し、あるいは家賃も出してのことで、役所式に計算をした純手取収入金がこれだけであるのかどつちなんですか。
  143. 関根小郷

    ○関根最高裁判所説明員 ただいま申し上げましたのは手数料収入でございますので、まあ言葉をかえて申し上げるならば、純収入ということになろうかと思います。
  144. 林信雄

    ○林(信)委員 手取収入と純収入というのは言葉の通りに受取りますと、少し違うように思うのですが、手数料は一応入つて来たもの、純というのは純粋な意味で、純収得のような意味にも聞えますが、純収入といわれましたのはやはり手数料、入つて来た金の意味の言葉になるのでございましようか。そうすると私の言つた言葉は適当でないかもしれませんが、水揚げ高であつて、これがいわゆる収益ですか、収得ですか。いわゆる税金や何か経費を一切引いた身につく金だとはならないということになると、一体どのくらいのものがこの諸君の収得、ただちに生活費に持つて行ける金になるのか。
  145. 関根小郷

    ○関根最高裁判所説明員 ただいま申し上げましたのは手数料――御承知の通りこれは報酬でございますので、結局それが純然たる手取りということになるわけでございます。
  146. 林信雄

    ○林(信)委員 御承知のように、執行吏はいろいろな書類をつくらなければならぬ。その書類は白紙に一々書くわけには行きませんから、印刷質も出さなければならぬ。帳簿も備えなければならぬ。合同事務所のごときに至りますと、やはり事務員を雇つてやらなければならぬ。少していねいのやつはおそらく電話もあるのじやないかと思いますが、そうすると相当のパーセンテージの経費が出て行くと思うのです。いずれにしましても、そのままの生の収入がそのまま身につくとしたところで、年間十六万円でございます。年間十六万円ではなかなか生計は楽じやないと思うのでありますが、手数料規則の改正によつて収入をもつとふやしてほしいというような声はこれらの諸君からは出ないのでございましようか。出ても大した声じやないのでしようか。非常な熱心な声でもあるのでしようか。あるいは表はこれだけだけれども、昔のお殿様じやないが、表高と裏高というようなものがあるのでございましようか。そんなものがあつてはけしからぬのですが、実情をひとつ……。私最近よく存じませんので……。
  147. 関根小郷

    ○関根最高裁判所説明員 今、林委員の仰せられました点でありますが、白紙に書くといつたものは、立てかえ金で実費をとるわけであります。それ以外の手数料としてこういうものが入る。そうしてこの手数料の中から人件費を出すということになろうかと思いますが、なお今陰の収入でもあるのじやないかというようなお言葉のように拝聴したのですが、この十六万円というのは全国の平均でございますので、東京、大阪等におきましては、事件のあり高と申しますか、非常に事件が多いわけでございます。従つて東京、大阪等の大都市におきましては、収入はやはりこれ以上に上まわつておるのじやないかと思います。詳細な点は調べればわかると思いますが、全国の平均でございますので、東京、大阪から比較いたしますと、平均額が下まわつておるわけでございます。それからそのほかに何か収入があるのじやないかということは、これはもうそういうことはないと申し上げるほかないかと思います。なお手数料の増額の問題につきましては、たしか一昨年こちらにお願いいたしまして、法律をかえていただいておりますので、その後は手数料の増額の声はわれわれとしては聞いておらないのでございます。
  148. 林信雄

    ○林(信)委員 平均収入が十六万円といわれるのですから、そうすると、十六万円以上もあるでしようが、十六万円以下もあるので、いくらいなかでも、もう物の値段は、いなかで安いというようなものはどれだけのものがあるかという時代なんですから、これを百平均してこれだということで、上まわつているところがあることをもつて、下まわつた面を考えますと、非常に生活がきゆうくつじやないかと思う。といつてまあ一昨年あたりに何とかしてもらつたのだからというので、どんどん他の万両はベース・アップもやつているのに、なかなかそうもいえない。今までの関係者を見ておると、裁判所の監督書記――昔は監督書記で、今は庶務課長ですか、古い役所の禄をはんだ者、そんなだから、人柄としてもおとなしいし、何となく昔のお主筋に対して金のことばかりも言えない、何も役所からもらうのじやない、関係者からもらうのだけれども、言えないような気もするので、遠慮しているのじやないでしようか。具体的に考えると、どうもそういうことを言つて来なければならぬ。この数字から見ると、これではちよつとやつて行きにくいように思うのですが、あるいはもつと役所関係の恩給や何かあつて、しのいでいるという面もあるかもしれません。しかしながらそういうものを加えても、これは非常に受けるところは少い。といつても、これを輿論化してやろうには、二百八十名の非常に少い者では、いくら大きな声を出したところで、どうも最高裁判所も法務省もぴんと来そうもないので、その辺は声なき声として少し気をつけて見てあげなければいけないんじやないかと思います。これは予算の関係のある問題ではなし、大体物の高くなつておるときに、裁判所関係の費用あるいは執行関係の費用が安いことは常識なんですから、御調査になりまして、もし私の考えておるようなことでありまするならば、適当にひとつ是正してやつていただきたい、こう思つております。その他こまごましたことを言つておりますと何ですから、私の質問は一応これで打切ります。
  149. 小林錡

    小林委員長 質疑はこの程度にとどめまして、明日午前十時半より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後三時五十六分散会