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1954-02-18 第19回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十八日(木曜日)    午前十一時四十一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 古屋 貞雄君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    牧野 寛索君       高橋 禎一君    猪俣 浩三君       木原津與志君    木下  郁君       佐竹 晴記君    黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         検     事         (法制局第二部         長)      野木 新一君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      金丸 三郎君         検     事         (刑事部長)  井本 台吉君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    忠  佐市君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月十八日  委員三浦一雄君辞任につき、その補欠として高  橋禎一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十七日  戦争受刑者釈放等に関する陳情書  (第七四三号)  同(第七四四号)  同(  第七四五号)  同(  第七四六号)  同(第  七四七号)  同  (第七四八号)  同  (第七四九号)  同(第  七五〇号)  同外一件  (第七五一号)  同  (第七五二号)  同  (第七五三号)  同  (第七五四号)  同(  第七五五号)  同胞の引揚完了促進に関する陳情書  (第七五六号)  同  (第七五七号)  同  (第七五八号)  同(  第七五九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を進めます。発言通告がありますから、順次これを許します。佐瀬昌三君。
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 本日は他の議題もあり、時間の関係もありますので、福永官房長官に二点について質疑をいたしておきたいと思います。  保全経済会あるいは殖産金融会社等いわゆる類似金融機関に関連する問題が今や世論の批判の対象となり、世間の注目を引いておることは御承知通りであります。わが法務委員会も先年来この問題を取上げ、特に私は保全経済会等に対する国民の血税による保護立法は、断じてこれを許すべきでない、むしろこれらの類似金融機関被害者を救済する立法こそ最も緊要である、政府もこれに善処すべきであるということを要望して参つた一人であります。今やこの被害者の中には、自殺する者あるいは発狂する者等、まことに同情にたえないものが多々あるのであります。ここに至つた過去を振り返つて見ますれば、私どもはむしろ現在の対策より以前において、ここに至らしめた政策上の貧困と申しましようか、政府における金融対策あるいは庶民金融における措置そのよろしきを得なかつた政治的、行政的、根本的な責任を痛感せなければならぬのではないかということすら思われるのでありますが、過去の根本対策はさておきまして、当面の問題として、これらの被害者をいかに救済すべきかということも、今後に残された大きな問題であります。そこでいずれ主務大臣がそれぞれこの問題に善処せんとしつつあることと思いますけれども内閣全体として一体これに対する対策はどうなつておるか、官房長官から概括的に承つておきたいのであります。
  4. 福永健司

    福永政府委員 ただいま佐瀬さんの御指摘のような事態が生じておりますことは遺憾な次第でございますが、対策等につきまして、私がただいま具体的にいろいろ申し上げるというようなことは、ちよつと私の仕事の上から申しましてもいかがかと思います。なおいずれこれを主管いたします大臣等がお答えすることになりましようから差控えたいと思いますが、いずれにいたしましても、政府といたしましてはこれらの事務を主管いたす担当省においてただいまいろいろ検討中でございます。決してなおざりにはいたしておるわけではございませんが、相当複雑なものでもございます。詳細については主管大臣からいずれお答えすることにいたします。
  5. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 すみやかに対策を推進せられんことを切に希望いたします。  次にもう一点承つておきたいのであります。事個人に関することではありますけれどもお互い国会議員の品位と見識に関する問題でもありますので、この機会に簡単に承つておきたいのであります。それは去る十一日かと思いますが、読売新聞紙上において官房長官東邦住宅株式会社とかなんとかいう会社顧問になつておるのではないかということが問題にされました際に、官房長官談として、それは佐瀬昌三の紹介にかかわるものではないかという意味のことが、記事となつて述べられておるのであります。私はこれを見て愕然といたしたのであります。お互いにおそらくこの会社がどんなものであるかへその名前すら知らなかつたと思うのでありますが、私もさきに申し上げましたような立場において、年来この類似金融機関に対する政府取締り対策を要望して来た者でありまして、みずからこの種の金融機関に関与することをいたさないことはもちろんのこと、われわれ同僚として福永氏を私がまた顧問として推薦するというようなことも絶対にあり得ないことは、なお私の性格を知る官房長官としても十分その点はおわかりになつておることだと思うのでありますが、たまたまさような記事が出、幸い他の有力新聞紙にはさような記事がなかつたのでありますが、非常に世間誤解を招くおそれもありますので、この点に対して、官房長官について一言ただしておきたい。かように考えてお尋ねする次第であります。
  6. 福永健司

    福永政府委員 ただいま佐瀬さんの仰せのような記事がありましたことは、当時私も見たのであります。佐瀬さんにはたいへん御迷惑なことであつたと存じておる次第であります。実はそのときの事情を申し上げますと、予算委員会でああした私の名前を書いた印刷物があるというようなことの話が出たそうでありまして、そのあと記者会見の際に、記者団諸君から私に質問がございました。私も何のことだか全然わかりませんししますので。そのときによくわれわれ経験することだで、自分の耳に入つていなくて、知つた人からそのうち話しておいてもやろうというようなことから、そういう間違いが生ずることもあり得る、しかしあの越ケ谷という町は自分選挙区でもないしするが、ことによるとあの越ケ谷の町に私の非常に懇意な県会議員がおりますので、あるいはそれでも事情承知しておるかもしれないから、さつそくそれに聞きにやつてみたいと思います、その県会議員でもあるいは福永に話でもしてやるというようなことでも話したのかしらんと想像もできますが、これもわからないというような話をしましたときに、だれの選挙区ですかという話がありまして、そのときに、実は私わが党では佐瀬さんたち選挙区で、あの辺の事情佐瀬さん等がよく御存じなのだがという話をいたしました。それが誤つて県会議員でなくて佐瀬さんがあるいは私なんかにお話しになつたかのごとくに記事に出たんじやないかと思います。そういうような意味で、私は佐瀬さんに非常に恐縮に存じております次第でございます。さような事情につきましては、今私が申しました県会議員からあとで詳細な手紙が参りまして、実は自分ちよつと言われておつたが、私の耳には入れずにいた、ほかの県会議員で私の友人で県会議長をしていたのがおりますが、そのうちに行つたときに私に紹介した男がこの仕事をやつてつて、これは三年ほど前のことなのでありますが、その後私に紹介した当時の仕事とは今違う仕事になつておるのだそうであります。会社名前はあるいは同じかもしれません。そんなことでたいへん御迷惑をかけて申訳ないというわびは私の方にも参つております。いずれにいたしましても、私のことはともかくといたしまして、ああした記事が出ましたことによつておそらくある程度の誤解佐瀬さんについてあつたと思うわけでございます。私といたしましては非常に御迷惑なことであつたと恐縮に存じておる次第であります。
  7. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 ただいまの御答弁了承いたしました。私ども新聞報道の自由とか、またはその権威を守るためにはそれぞれ顧慮しておる点もあるのでありますが、たとえば新聞記者のニュースのソースの問題とか、新聞紙法あるいはその他の関係法の上で問題になり、すでに判例も若干それに触れたものもあるくらいであります。私どもは今後も新聞記事におきましても責任を持つた報道を要望するとともに、官房長官という地位にある福永氏のさらに一層の慎重な将来の処置を望みまして、私の質疑はこれで終了いたします。
  8. 猪俣浩三

    猪俣委員 官房長官がお見えになりましたから、ちよつとお尋ねいたしたい。国会に対する総理大臣出欠席のごときは官房長官女房役としてやるべきものだと私は承知しておる。今重大問題が国会で審議せられて、内閣進退さえうわさせられる今日、総理大臣はどうもお見えにならぬようである。そこで総理大臣国会出席なさらぬ理由及びもし出席するとすれば、いつから出席されるのであるか、その点をひとつ承りたいと思う。  それからついでにお尋ねいたしますが、官房長官保全経済会並び造船汚職事件について総理大臣と打合せをなさつて来たことが新聞見えておりました。この綱紀粛正問題について吉田総理大臣はいかようなる決意と覚悟をお持ちであるか、あなたお聞きのところをお述べになつていただきたいと思います。
  9. 福永健司

    福永政府委員 吉田総理大臣国会に参つておりませんことは、猪俣先生も御承知通り病気によるものでございますが、大体その容態はせきがひどく出る状況でございます。本人といたしましては前回の閣議には出たいと言つてつたのでございますが、その朝私のところに電話をよこしまして、まだせきがあるものでというようなことを言つてつたわけでございます。タバコ等もずつとやめて、できるだけ早くなおさなければならないというので、療養にこれ努めておるわけでございます。さような次第で、おそらく閣議等もございますので、明日は出て来るかと思うわけでございます。いずれにいたしましても重大な時期に病気をいたしておりますことは非常に残念でございますが、一刻も早くなおしまして出て来たいというように強く本人も念願をしておる次第でございますので、その点につきましては御了承をいただきたいと存じます。おそらくは明日は出て来るかと思います。  なお第二の点につきましては、先刻参りましたときは行政監察委員会経過等を私申しておいたのでありますが、いわゆる造船汚職云々の点につきましては、当時までの経過を申したわけでございまして、その後いかに進展するであろうかというようなことについては、別段の話もありませんし、私といたしましてもそういうようなことについては深く知るところもありませんでしたので、従つてただいまおつしやいましたようなことにつきましては、吉田総理大臣綱紀粛正については常に強い決意をもつて、そうでなければならぬということを主張しておることは、十分承知しておりますので、今度のことと関連いたしまして具体的にどうこうという話は、私が先般参りましたときには格別には出ておらない次第でございます。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 何分総理大臣は御老齢のことでありますがゆえに、そのからだを十分に摂養されることは、われわれも十分首肯できることであります。但し、どうも吉田総理大臣の今までの態度には、何が国会自分の気に入らないことがあると、国会をサボるような習癖がある。これは天下公知の事実であります。そこで、造船汚職あるいは保全経済会関係者として列記せられる人は、どうも自由党諸君に多い。そういうようなことからあまり気持がよくないことは想像されますが、さればというて、自分のごきげんによつて国会出席するという民主国家において最も重大なる総理大臣の責務を怠つておられたのでは、はなはだ感心いたしかねる。あなたの今の説明によると、せきが出るということであります。そうするとかぜか何かお引きしになつておるのだろうと思いますが、どうぞでき得る限りすみやかに出席して、そうして現下の問題について総理大臣としての責任を明らかにするよう、官房長官から切に出席を要望していただきたい。これを私ども希望として申し上げておきます。
  11. 福永健司

    福永政府委員 ただいまの御趣旨に沿うようにいたします。なおかぜにつきましては、医者のもう少し自重するようにというたつて勧め等もありましたわけでございます。別段そうそのときの気分でどうこうというようなことではございません。御了承をいただきたいと思います。
  12. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 長官に承りたいのですが、私ども総理大臣の今日までのお気持、それからわれわれに示しました御声明によりますと、綱紀粛正問題は総理大臣政治生命のごとく承知しております。今回のような汚職がだんだんと拡大されておる実情にかんがみまして、官房長官総理大臣としよつちゆう御接触遊ばされておる、不幸にいたしましてこの汚職が拡大され、相当責任のある人たちの辺までも拡大された場合には、それに対して総理が御決意されるようなお気持官房長官お話なつたような事実があるか。どうかはつきり申しますならば、相当大物に関係して参りますならば内閣を投げ出すというようなお気持があるかどうか、さような気持お話なつたかどうか、この点をお聞かせ願いたい。
  13. 福永健司

    福永政府委員 ただいま古屋先生お話の点は、将来拡大云々ということを引いてのお話なのでございますが、私どもはさような事態に至るということは毛頭考えておりませんし、従いましてそういうことを前提といたしまして、総理大臣といろいろ話したこともいまだないわけでございます。さような次第でございますので、内閣進退云々というようなことにつきましては、私といたしましてただいままでに総理から何も聞いていないわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  14. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その気持はよくわかるのですが、総理心情官房長官よく御存じのはずなんです。そういうような事実があれば、総理性格心情といたしましてはどのような態度をとるか、さようなことについてお考えなつたことはないでしようか。もしお考えになつていらつしやればこの際承つておきたいと思います。私どもは、この事件はどろ沼に足をつつ込んだようなかつこうでぞろぞろ出て来るというふうな確信を持つておるのであります。さようなわけでありますので、一応承つておきます。
  15. 福永健司

    福永政府委員 将来どういうことがということは、もとより完全に予測することは困難ではございますが、私どもといたしましては、古屋さんのお話のようなことが、政府に関して起つて来るということは考えていないわけでございます。ただ吉田総理性格云々と関連してのお話もございましたが、吉田総理は、綱紀粛正とか、そういうようなことにつきましては、一面潔癖なくらい強く言つておりまする性格でございますから、このことによつて吉田はどういうものであるということについての大体の御見当を古屋先生みずからにおいておつけいただきたいと存ずる次第であります。
  16. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私の質問はこれで終ります。
  17. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をとめてください。   〔速記中止
  18. 小林錡

    小林委員長 それでは速記を始めてください。古屋貞雄君。
  19. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私がお尋ねいたしたいのは、最近問題になつております汚職事件その他の思わしからざる事件が起きまして、特に取締り官庁取締り願つておりますならば、ある程度までその弊害を食いとめることができたであろうということを考えておりますので、特に政党汚職事件関係の事実を明らかにいたすために、その基礎となるべきことをお尋ねするのでございますが、自治庁から私どもが取寄せました政治資金規正法に基く政党献金明細表を見ますると、この中に相当大きな金が個人名前政党に寄付されておりまするが、この個人名前において寄付された大きな金については、国税庁におかれましてはこれを所得と認めて所得税を賦課しておる事実があるかどうか、かような点、あるいは贈与に基く贈与税をおとりになつておるかどうかということをお尋ねしたいのでございます。原則としてお取調べを願つておとりになつておるかどうか、まずこの点をお伺いしておきたいと思います。
  20. 忠佐市

    忠説明員 ただいま御質問のありました政党献金として届出のございます分についての課税の問題、実はまだ手元に課税の結果の資料その他をとつておりませんので、この席ではお答えいたしかねる次第でございますが、大体において政治資金規正法に基いて届出のありますものにつきましては、従来まであまり調査が行き届いておらなかつたか、こういう感じがいたしております。
  21. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 非常に無責任な御答弁をいただいて驚くのでありますが、一般のわれわれ国民にいたしますと、わずかばかりの所得でもやかましくこれを調査いたしまして、納められない者については競売をし、あるいはあしたの生活にも困るような方たちが、苦しんで税金を納めなければならぬような税金の取立てをなさつておるのに、何百万円あるいは何千万円という大きな金が、明確に個人から寄付されておるものについて御調査を願わぬ、あるいはとつていないということになりますと、われわれはどうも納得ができないのであります。御調査ができておらないというならば、御調査をしていただいて御答弁願つてけつこうでございますが、私どもから申しますならば、当然にこれは自治庁とも御関連をなされて、そうして現実に寄付されたことは事実でありまするし、しかも選挙の前後に莫大な金が寄付されておりますから、個人の問題その他の会社、銀行につきましても十分御調査願つて、これに対して課税をされなければならない筋合いだと私ども考える。さような義務国税庁におありになると考えておるのでありますが、今まであなた方の方の実際に行われました事実関係におきましては、いかがでございましようか。国税庁の係の方が自治庁と御連絡を願つて表をいただいて、それに基いて御課税願うような御処置をとつたかとらぬかということはどうでしよう。
  22. 忠佐市

    忠説明員 御指摘の分は、自治庁届出がございましたものは官報に掲載されますので、官報に出ました資料をそれぞれ個人ごとに整理いたしまして、個別的な事件調査の計画の中に組み入れておるわけでございますが、特にあの届出のありました分を、特別の報告義務を課して国税局なり税務署で調査しておるということは、実は今までいたしておりませんでしたので、ただいまの問題になりますところは、これから相当早い機会において明らかにするように調査を進めたいと考えておりました次第でございます。
  23. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そういたしますと、こう承つていいんですか、今まではやつてなかつたということに承つてよろしいですか。
  24. 忠佐市

    忠説明員 個別的に特にその点を重視しておつたということはございませんです。
  25. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その点を重視してというのではありませんが、私どもから申しますならば、政治家が何千万円なんという収益のあるはずがない。私ども常識でそう思うのです。その方たちが寄付した金が五百万円、一千万円あるわけです。でありますので私どもは、こういう点に一体汚職事件がはぐくまれておるのではないかということを、私ども今回の汚職事件を目下調査を申し上げております過程におきまして考えるわけですが、相当の金であります。そうしてその相当の金が、もしも御自分の金でない金だということになれば、また問題になるし、御自分の金だということになるならば、所得関係税金の問題になるし、いずれにいたしましても、国税庁が厳重におやりになつていただかなければならぬのでありますが、ただいま御答弁が出なければけつこうでございますが、昭和二十七年の一月一日から昭和二十八年十二月末日までの政治資金規正法に基き届出されております、自治庁にございますこの個々の問題について御調査願つてたとえば甲という方が五百万円あるいは一千万円の政治献金をしておりますけれども、これについてそのおもだつたものでよろしゆうございますから御調査を願いまして、課税されておるかどうか、あるいは課税されていないかどうか、この点を明確にしていただきたいと思うのです。それは、今この法務委員会調査されております選挙違反政治資金規正法違反という問題の基礎になるのでありまして、すみやかに今、明日くらいにお出し願えませんでしようか。
  26. 忠佐市

    忠説明員 ちよつと時期的にお引受けいたしかねるかと思いますが、できるだけ急速にある程度の調査を進めて御報告申し上げたいと考えております。時間の点は多少御猶予を願いたいと思います。
  27. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 大分お手間がとれるということでございますれば、たとえば百万円以上なら百万円以上くらいの寄付についての御調査を願えればあすり手間がかからないと思いますが……。
  28. 忠佐市

    忠説明員 できるだけすみやかにそういうような重点的な調査をいたしまして、御報告申し上げたいと思います。
  29. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 やかましく時間を切つておるわけではありませんから、どうかできますならば二、三日の間に出していただきたいと思います。
  30. 小林錡

    小林委員長 ほかに関連して御質疑はございませんか。――それではこの程度にとどめ、午後一時半から再開することにして、休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十三分開議
  31. 小林錡

    小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  法務行政に関する件について調査を続けます。発言通告がありますから、順次これを許します。猪俣浩三君。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 政治資金規正法並びに公職選挙法の規定につきまして法制局長局にお尋ねしたいと思います。法制局長官内閣法律顧問という地位にあると存じますので、その意味において御答弁を願いたいと思います。  政治資金規正法の第二十二条、これは結局公職選挙法の百九十九条を準用することに相なつておりますが、その政治資金献金を禁止せられておりまするものにつきましての各条文の解釈について、第一にお尋ねいたしたいことは、この公職選挙法百九十九条にありまする選挙に関して、これこれのものは政治献金してはならないということになつておりますが、この選挙に関するという意義は、法制局長官はどういうふうに解釈されておるか、その意義を第一点としてお尋ねいたします。
  33. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 「選挙に関し、」の意味としては、一応二つの基準がここにあると考えております。一つは選挙に際してという条件、それから第二として実質的にいつて選挙関係のある事項についてという、二つを含めた意味言葉考えております。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 しからば、その選挙に際しということ、これは実際上時期的に見て、どういう場合が選挙に際するということになりましようか。
  35. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもは、時期的に選挙の前でなければならないとか、あとはいかぬ、というようなことは考えておらないのでありまして、選挙の前後を問わないということははつきり申し上げられると思います。ただその場合に、ただ十日前、二十日前、一月前、二月前というふうにして、どこではつきり線が引けるかということになりますと、これは言葉から申しましてもわからないことであつて、そこは合理的な限界線というものを社会通念従つて引かなければならぬというふうに考えております。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると長官の意思には、選挙に際しとは、選挙期日の前後を問わぬが、選挙期日を中心とした合理的に考えた時期というふうに御解釈のようでありますが、それが選挙に際しという言葉になる。そうすると、それは今どのくらいの期間ということは言えないということになりますが、結局それは常識上選挙に際するという言葉に含まれる意味においての選挙期日に近接した前後ということに相なりますか。
  37. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 まあ近接というのはまたどの程度かということになりますが、近接をしておれば大体これに入る場合が多いだろうということは申し上げられると思います。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 いま一つの場合、選挙関係ある事項、これは一体具体的にいつてどういうことになりますか。
  39. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これもなかなかむずかしい文句でございまして、大体選挙運動の資金としてというようなことがこの中心概念になつておることはわかります。しかしそういう中心概念をもとにしてその及ぶ広さというものがどこで線が引けるか。これも具体的の事実をつかまえて、それについてやはり社会通念による合理的判断を加えなければ結論は出ないというふうに考えます。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 この選挙に関したか関しないか、ことに選挙関係ある事項の献金であるかどうかということを解釈いたしますについては、もちろん寄付した人の意思あるいは受けた者の意思が判断の根底になりましようが、とにかく選挙関係者がその寄付された金を選挙に使つたという報告があるといたしますならば、これは選挙に関する献金とみなしてよろしゆうございますか。
  41. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういう推定をするに十分役立つ根拠になるということは言えると思います。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 寄付を受けたその政党ないし団体が、この金はかようかような選挙運動に使つたという報告を選挙管理委員会等へしておるとするならば、それはまさに選挙に関する寄付だとわれわれは解釈していいと思うのですが、あなたの言葉は少し弱過ぎるのですが、それともまた選挙に関する費用じやない場合があるのですか。
  43. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 正確に言うためには、寄付をした人が選挙に関するつもりで寄付したということ、あるいは受けた方の側で、選挙に関するものとして受けたという、当事者の意思がそこにあつたかどうかということが突き詰めらるべきことでありますからして、従つてただ客観的にその金が選挙の費用に使われたということは、ただ事実であつて、その当事者の本人の意思は実は違うものなんです。ただしかし、先ほど申しましたように、その金が明らかに選挙の費用に使われたということであるならば、推して推定をするというような根拠にはなるだろう、そういうことだろうと思います。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、なおお尋ねいたしますが、結局一応寄付を受けた人たちがこれを選挙に使つたといつて選挙管理委員会に報告をしておるとするならば、一応それは選挙に関する寄付金だと見てさしつかえない。言いかえれば、そうじやない、自分はそんな選挙に関する費用として寄付をしたのじやないかという方で証拠をあげて立証しなければならない、こういう関係に立つ、こう理解してよろしゆうございますか。
  45. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 結局は証拠の問題になると考えます。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからいま一つ、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、国とこういう関係に立つ者は政党に寄付してはならないという規定に相なつております。そこで請負その他特別の利益を伴う契約の当事者、この契約と称するのは公の契約あるいは民法の私の契約どちらをさすのでありましようか。
  47. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一応は公法上の契約、私法上の契約というようなはつきりした限界はない事柄であると思います。実質をつかまえて論ずるのが、この条文の解釈としてはその趣旨に沿うことだと思いますけれども、ただ公法上の契約の場合は、おそらくこれに当る場合が少いという――これも推定ですが、そういうことが言えましよう。あるいは逆にでは私法上の契約であれば全部かかるかといえば、その中でもやはりこれに当るものも当らぬものもあるというようなことで、あまりはつきりした限界ということにはならぬのじやないかと思つております。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうもあなたが答えておるのは、みんなはつきりしない。法制局というものはもつとはつきりした線を出してもらわないと、われわれ適従に迷つてしまう。あなたの今の解釈からいうと、公法上の契約は少いのじやないかと思われるというのでありますが、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の規定から生れましたる開発銀行その他の市中銀行と国との間の契約は、これは公法上の契約でありますか、私法上の契約でありますか。
  49. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この公法上の契約、私法上の契約について、非常にあいまいなお答えを先ほどいたしましたが、実は旧憲法時代のわれわれの教わつた法律学とは、最近は大分立法がかわつて来ておりまして、何が公法的のものであり、私法的のものであるか、たとえば官吏の任命関係にしたところで、この契約の本質というものをそうはつきり分析できるかどうかという点に、私自身疑いを持つておりますから、あいまいなお答えをしたわけです。ですから、公法上であるからかからぬとか、私法上であるからかかるということは言えないということを申し上げたのであります。今端的に例におあげになりました銀行と国との間の契約というものは、一体この条文に該当するかどうかというお尋ねを前提としまして、それについて端的にお答えするならば、これはここにいう特別の利益を与えるというような契約というものには該当しないだろうと考えております。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、あなたのお考えでは、名前が長つたらしいから略しますが、外航船舶に関する法律に基きまして、開発銀行その他と国との間に契約をしているのであるが、それはこの中に含まない、これはどうも私ども受取りかねるのだが、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法施行令その他を見ましても、ちやんと契約という文字が使つておる。この施行令の第二条、「政府と法第二条の契約又は法第十九条の契約を結ぼうとする金融機関は、運輸省令で定めるところにより、融資の予定額その他の事項を記載した契約申込書を運輸大臣に提出しなければならない。」こういうふうになつておりますが、これもやはり契約じやないわけなんですか。
  51. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはもう仰せの通り、りつぱな契約であると思います。但し特別の利益を伴う契約というのが法文でございますから、特別の利益を伴う契約というところを一口に読んで、その契約に入るかどうかといえば、それは入らぬと申したのであります。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、特別の利益を伴う契約じやないというのは、どういう意味になりますか。
  53. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもこの法律を見ておりますと、普通なら銀行が損になるから貸さないという場合を前提にしておると見るほかはないと思います。そこである程度の利子の補給をするということによつて、それでは貸してもよかろうという気持になる、もうけさせるというようなところまでとうてい行つておるとは考えられませんから、そういう平たく考えての結論でございます。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 法制局長官はそこでストップしてもらつて、私は自治庁長官にお尋ねいたします。今のような解釈をおとりになるかもしれぬと存じて、昨日私はこの特別の利益を伴う契約の当事者は、会社じやないかということを質問した、そうじやないのだ、銀行は当るかもしれぬが、会社は当らぬのだ、こうおつしやつた。ところがきよう法制局長官に聞いてみると、銀行もまた入らない、特別の利益がないから。こういう解釈です。これを三百代言的解釈と申すのです。あることに対する責任をのがれんとして、きようは午前中から急遽額を集めて研究なさつたそうです。そうして結論はこういう三百代言的解釈をなさる、そういうことで一体世の中が通りますか。そうすると一体百九十九条なり、政治資金規正法二十二条に一つもはまるものがなくなる、現内閣や自由党には便利な解釈である、しかし法制局長官というものは、ぼくは中立的立場で冷静に合理的に判断をするべきものだと考えておりますが、やはり同じようなこういう三百代言的のことをおつしやる。結局そうするとあなた方の解釈は外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法、これから利益を受けておる者が、あるいはこういう法律をつくつてもらいたいために運動した者が、政党献金しても何らこれは公職選挙法並びに政治資金規正法にはかからない。こんなばかなことで、こんな法律がどうしてできたんです。あなた方は政府責任でこういう答弁をしてよろしいか、自治庁長官決意を伺います。
  55. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 昨日その点に関しまして古屋委員からのお尋ねに私がお答えいたしました点は若干違つておりますので、この機会にこれを訂正させていただきたいと思います。ただいま法制局長官から申し上げました通り政府のこの条項の解釈はその通りであると自分もよく説明を聞いて了解をいたしました。政府といたしましては少くともこの法を行政府として公正に判断をする限り、こう解せざるを得ない、こういうような結論に到達しております。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 開発銀行その他なるものは、いわゆるトンネル会社みたいなもので、国民税金である政府の金はこの銀行の管を通つて会社に行つておる。市中銀行が七分五厘の利息のものを三分五厘の利息で金が使われるという絶大なる利益を得ている。一つの船会社でこれによつて何億という利益を得ておる。そういうものが一体政党献金してはいかぬということが、この政治資金規正法の規定の存在するゆえんであります。もし政府の解釈するがごときことであるならば、政治資金規正法なんてものは、まつたく死文に相なつてしまう。そういう仕組みであるならば、国といろいろな利益を伴う法律をつくる連中が全部免れてしまう。私は綱紀粛正をもし念願するならば、さような解釈を政府はとるべきではないと考えますが、あなた方はもし今政府の解釈するような意味に解釈するとするならば、この政治資金規正法はもつと明確に今の船会社をみな縛ることのできるように改正する意思がありますかありませんか。
  57. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この点は今度の問題が起きまして、いろいろと問題になりましたので、今後よく検討いたしてみたいと思うのでありますが、元来これは議員立法でできておりますのでありまして、むしろ国会側の御意向に指導的なものの考え方があるのではないか。しかし政府といたしましても十分今後検討いたしてみたいと考えております。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお重ねて質問しますが、今の外航船舶の法律の適用を受けるところの銀行は、まつたく特別の利益が伴わぬものであるか。寸毫も利益が伴わぬものであるかどうか。それを御答弁願います。
  59. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この点はもう先ほど法制局長官からお答えしているところで尽きておると思いますけれども、私はこの政治資金規正法の精神は、昨日猪俣委員も法の精神ということを非常に強調されたのでありますが、普通あるものが、個人もしくは法人にいたしましても、政党献金をするという場合は、これは何がしかは献金することについての利害関係というものがあつてされるであろうということは常識的に想像されます。そういうものまでもこの法律が規正しておるとは思われませんのでありまして、従つてこの百九十九条の場合には特別なる利益というところに非常に意味があると私は考えております。きわめて通俗な場合にいたしますならば、国がその相手方と自由な契約を結べる。そういう状態。従つてそこに何か利益がある。その利益というものを頭に置きながらある政党に寄付をする、そういうところがこの法の趣旨から押えられるようになつていると考えるのであります。そういうように考えて参りますときに、この当該の問題をみますと、この場合はこれは本来ならばおそらく利子補給を受ける市中銀行というものは、その程度の利子では別に融資先がないという状態ではありませんのですから融資をしないだろう。しかし、一方国家的な政策の上から見てそれでは困る。そこで法律を御制定になつて、こういうぐあいに利子補給をしてもらいたい。その場合に起きて来る当然得らるべき利益の喪失をカバーするという意味であるのがこの法律でありますので、別に金融機関が特別な利益を得られるという規定になつておるとは私ども考えないのでありましてことに外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法というものは、私が今申し上げるように、ある民間人に特別な利益を与えるということが目的になつておるならば、おそらくこういう法律は国会の御賛成を得て通過しないだろう。従つて特別の利益という概念には当らないのではないだろうかという考え方をいたしておるわけであります。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 法制局長官にお伺いいたします。あなたの先ほどの答弁からいうと、船会社は契約の当事者ではないという御見解でありますかどうか、もう一ぺんそこをお尋ねいたします。
  61. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど船会社のことはお尋ねがありませんでしたが、私どもはこの法律の条文から見ましても、船会社は契約の当事者ではないというふうに考えております。
  62. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしますと、この外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法の十二条以下に国と船会社との関係が規定されておりますが、これはいかなる根拠に基いて、かような船会社が国に対して義務を負うように相なつておるのであるか。何ら契約の当事者でないものに、どうしてこういう義務が発生して来るのであるか、そこをお尋ねいたします。
  63. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この法律によつて会社はある意味の反射的利益を得ておることは、これはもう御承知通りであります。そういう反射的な利益を受けておる船会社がだんだんもうかつて来て、こういう反射的利益を続けてやる必要はないという場合に、実質的には利子の補給の恩恵を打ち切ろうというような意味で、この条文ができておると思います。
  64. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは銀行対の契約でしよう。銀行に対して補給を打ち切ればいいではないですか。船会社はあなた方の解釈からすれば、何らの契約当事者ではない。もし利子の補給をやりたくないならば、銀行との契約に基いて、銀行に対してそういう措置をとればいい。船会社義務を負わせるというのはどういう意味です。何らの契約の当事者でないものに責任を負わせることは、憲法の原則に反すると思う。どういう根拠で責任を負わせるのであるか。
  65. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは白紙に立つて考えれば、今お話のような方法を法律に書くのも一つの方法であると思います。これはどつち書いても、法律の立法政策の問題であります。ただ現在の法律は、私先ほど申しましたような建前にできておる。反射的利益を受けておる。それがもうすでに相当もうかつて来たという場合には、これは正義公平の原則から十二条以下の条文を適用する。おそらく建前はいずれにしても同じであろうと思います。
  66. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは先ほど公法上、私法上の区別が近代法は非常にできなくなつたと言われた。私も同感であります。そこに法の進歩があると考えます。そこで近ごろの法律は経済的、社会的な生きた事実にのつとる法律ができ、また解釈もそこから来なければならない。いたずらに概念法、三百代言的なりくつをこねまわしているのではない。法律が何のためにできたか、その法律が律せんとする社会現象は何であるか。それを両者交合するならば、法の解釈はそこから生れて来る。これが生きた法律の解釈、近代的解釈であります。この経済関係、社会関係はどうであるか。国の予算の百何十億という多額の金が結局船会社へころがり込む、これは文書の契約はないにしても、私は一種の無名契約があると考える。それでなければ第十二条以下の国と直接のこういう義務が発生しません。こういう国の金を使わせてもらつておるということは、一種の契約である。近代は契約観念というものが進んで参りまして、契約的に物事を考えることが民主政治の根本義であります。国家と、船会社という私の会社との権利義務というものが、直接法律から発生することにあらずして、そこに契約という民主的な方法を通じて権利義務が国との間にできるということが、民主政治のあり方であり、また民主的法律の解釈のあり方でなければならない。でありまするから、この十二条以下の船会社義務というものは、結局国家との間に開発銀行を介し、あるいは市中銀行を介するか、とにかく国家との間にかようなる文書によらざるものであつても、契約関係が発生していると見なければならない。そうしてこの公職選挙法なり、あるいは政治資金規正法なりの立法の目的からいたしまして、これはまさに特別の利益を受ける契約の当事者であると解釈しなければ、立法の目的を達しられないのです。私どもはその意味において政府答弁にはなはだ不満を感ずる。契約は必ずしも文書である必要はありません。一体どうして船の割当ができるかという過程を現実的に見て、そうしてこの法律解釈をしなければならぬ。船舶の割当の最高の決定権は運輸大臣でございましようけれども、この開発銀行あたりが多額の融資をしますことから、開発銀行の連中はこの船会社の割当について発言権が強大である。運輸省と開発銀行の当局者が慎重審議して、また慎重審議せず、いろいろのお金か何かをもらうことによつて、割当をやつたのじやないかという疑いもある。いずれにしても開発銀行とあるいは運輸省の係官とがこの船会社の選択をする。だからどの会社にどのくらい融資をするというようなことは、開発銀行と運輸省の両方で考えていることなんです。そうするならば、それによつて融資が出るならば、これは船会社を契約の当事者とすることは当然であります。開発銀行なんというものは国と不離一体をなしている公法人なんです。これが一方の相手で、一方の相手は船会社であります。開発銀行は公法人でありませんか。開発銀行の職員はいわゆる刑法上の公務員。そこで法制局長官にお尋ねいたしますが、この開発銀行の職員が船会社の運動なんかによりまして饗応を受けたような事実があつたら、刑法上の涜職罪が適用されるかどうか。
  67. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 たしか今のお話にありましたように、刑法上は公務員に扱つてつたと記憶しておりますから、さようなことになれば今お話通りになると思います。
  68. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは記憶しておるなんておつしやらないで、はつきり開発銀行法の第十七条にちやんと明記してあるじやありませんか。はつきりしていますよ。ここに明文が書かれてある。これは公法人であり、そうしてその職員は公務員であると明確にされております。それが一体刑法の涜職罪の相手であるかどうか疑問のような、そうだと思うというようなあいまいな御返答であるからして、この開発銀行の職員などに対しての態度がわれわれはなはだ不可解であります。これは世間公知の事実であります。船会社の連中が徹底的にこの開発銀行の職員どもに饗応をしたりいろいろなことをやつておるということは、種々の公刊物に出ております。私どもも事実をつかんでわけではありませんが、ありそうなことであります。開発銀行の職員がこの船舶割当にいかに発言権が大であつたかということを察しますならば、必ずやこの間に運動が行われたと思う。ところが法制局長官があいまいな答弁をするようなことだから、検察庁もあまり動かないのじやないか。これは私は開発銀行法にあると思いますが、何条ですか、そこに事務官もいらつしやるからあなた方自身で指摘してください。できないならば私が指摘いたします。
  69. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもの持つております六法全書は安物でありまして、一部のものしか載つておりませんから、今法令集をとりにやりますけれども、しかし猪俣さん御承知のようでありますから、ここで教えていただいた方が早いかもしれないと存じます。
  70. 猪俣浩三

    猪俣委員 いや、私はあなた方から条文を出してもらいます。(笑声)これは政府の威信にも関係すると思いますから、あなた方から出していただきたい。  そこで自治庁長官にお尋ねいたしますが、政治資金規正法二十二条あるいは公職選挙法百九十九条の違反であるかどうか、すなわち国との間に特別の利益を伴う契約の当事者であるかどうかなどということは、あなた方きよう御研究になつて答弁ですが、この自治庁の報告によります寄付金の一覧表を見ますと、銀行から相当献金が自由党その他の政党に出ております。一体こういう場合におきまして自治庁長官はこれに対して何らかの調査をなさつたかどうか。それから昨日古屋委員質問によりまして銀行関係者政党献金をしたものの報告をあなたは後刻調べて答弁するとおつしやつたのですが、その御答弁をひとつお願いいたします。
  71. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 昨日は資料を持ち合せておりませんでしたのでたいへん失礼いたしました。本日資料をとりそろえて参りましたので、御報告申し上げます。ことに非常に問題になつておりますのは選挙に関してということでありますので、時期的にそれに近寄つておるものだけを申し上げたらよいかと思います。最初に自由党に対しまして、二十八年三月二十日に日本相互銀行協会という名義で四百万円、それから四月六日に全国相互金融協会理事長大西静雄という名前で百五十万……。
  72. 猪俣浩三

    猪俣委員 それは御答弁いただいてもいいが、私は相互金融なんかというよりも、二十二条あるいは公職選挙法百九十九条違反だと思われまする市中銀行、信託銀行、そういうものの献金だけお伺いしたいと思います。
  73. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 それではそういうものだけを拾い上げて申し上げます。四月十一日に都市銀行地方銀行信託銀行有志代表水田直昌という名前で七百万円が自由党に寄付になつております。それから同じ名前の者から同じ四月十一日の日付で改進党に三百五十万円、社会党の右派に対しましては百八十万円出ております。おそらく問題になりますものはそれだけではないかと存じます。
  74. 猪俣浩三

    猪俣委員 昭和二十七年九月十六日、都市地方信託銀行団有志として一千百万円が自由党に出ていますが、これはあなたの方にありませんか。
  75. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 その通りございます、二十七年の九月十六日、都市地方信託銀行団として一千百万円が自由党に出ております。
  76. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、さつきあなたは落しなすつたというわけですか。――金額も大きいのです。一千万円ですから、落されちやちよつとぐあいが悪い。  重ねてお聞きいたしますが、これらの銀行の献金は、長官の御解釈によれば、政治資金規正法二十二条ないし公職選挙法百十九条の国と特別の利益ある契約の当事者じやないのだということに相なりますか。
  77. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 そのように解釈をいたしております。
  78. 猪俣浩三

    猪俣委員 非常な御苦心の跡、同情に値いしますが、私どもははなはだ奇怪な解釈だと存じます。  次に刑事局長にお尋ねします。これはさつき法制局長官にお尋ねしたのですが、日本開発銀行の職員は公務員だと考えるのでありますが、刑事局長はどう理解いたしますか。
  79. 井本台吉

    ○井本政府委員 私もそう思いますが、ちようど六法全書が安物で、(笑声)条文が載つておりませんので、条文を見ましてさらに明確にお答えいたしたいと思います。
  80. 猪俣浩三

    猪俣委員 もし公務員だといたしますと、私はこの船会社と開発銀行の職員との間に相当汚職があるのではないかと考えるのですが、今安物の六法でその規定が見つからぬということですから、おそらく以下の私の質問意味がなくなる。私はあなた方にこの関係を……。
  81. 井本台吉

    ○井本政府委員 今条文を持つて参りましたのでお答えいたしたいと思います。  日本開発銀行法の第十七条によりますと、「日本開発銀行の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」こうなつておりまして、御指摘通りでございます。
  82. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると政府より私の方が早くわかつたということになりますね。(笑声)そういう始末では、これからの質問意味ないことになるのですが、開発銀行の職員は公務員でありますし、この公務員に対しては船会社相当の運動をやつておる。そこで私は、検察庁はこの方面に何か調査をしておるかどうかお聞きしたいと思つたのであるが、公務員で刑法の適用があることを今発見されたようなことでは、これは質問してもとても意味がないと思いますので撤回いたします。こういう国家的の問題につきましては、もう少し法務省は毅然として、あらゆる方面に研究を進められて、この醜吏どもを一掃していただきたいと思うのです。これはあなたに言うてもしようがない、法務大臣に言わなければならぬ。  そこでこれは法務大臣にお聞きすることですが、なおあなたからこういう質問があつたということを法務大臣にことずけ願いまして、明日でも明確な御答弁をいただきたいのであります。それは検察庁法の第十四条の解釈であります。この検察庁法の十四条の解釈によると、法務大臣と検事総長の関係が規定されております。これがなかなかわかつたようなわからぬような法律でありますが、これはこの検察庁法に規定しております取調べまたは処分について検事総長が法務大臣の指揮を受けるという規定になつております。そうすると結局検事総長がある人間を起訴すべきものだと思つても、法務大臣は、してはいけないというふうにとめる権利が検察庁法の第十四条から出て来るのであるかどうか。それをお伺いいたします。
  83. 井本台吉

    ○井本政府委員 規則の上ではそういうこともなし得る規定になつております。
  84. 猪俣浩三

    猪俣委員 規則の上からいえばなし得ることになつておるわけですね。  なおもう一ぺんお尋ねいたしますが、有田二郎氏の国会に対する逮捕請求問題については、法務大臣の指揮を受けたものであるか、受けざるものであるか。
  85. 井本台吉

    ○井本政府委員 もちろん指揮を受けております。
  86. 猪俣浩三

    猪俣委員 巷間伝うるところによると、法務大臣は法務省から浮き上つてしまつていて、有田二郎氏の逮捕の問題も事後承諾になつたような評があるのでございますが、さようなことはデマでございますか。あなたは内部に通じておられますからひとつお答え願いたい。
  87. 井本台吉

    ○井本政府委員 お話通りでございます。
  88. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこでそういうような問題について、あす当の法務大臣自身になお詳細なる質問をしたいと思いますから、あらかじめお伝えおき願いたいと思います。
  89. 小林錡

  90. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 長官にお尋ねいたしますが、政治資金規正法の二十二条はどういうことをおきめになつておるのでしようか。何を規正しておるのか。その法の精神と、中心になるべきものを御説明願いたい。どうも猪俣委員に対する御答弁を拝聴いたしますと、何だか知らないけれども政府の擁護みたいなことを承るような感じがするのです。  それからきのうの塚田長官の私に対する答弁政府は周章狼狽いたしまして、一生懸命のがれるような法解釈を御研究なさつておるといううわさを私は聞いておるので、あらためて明確に承りたいと思う。なおさらにこまかく進みまして私は御説明を願いたいと思うのでございますが、まず第一に、この基本の法の精神、それからねらいはどこにあるか、これだけをお伺いいたしたい。
  91. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 申すまでもなく選挙法の第百九十九条と対応しておるものと思いますが、いずれにいたしましても、その両者の趣旨は、独占的な利益を伴う地位というものに関連して、選挙の結果に好ましからざる影響を及ぼすことをおそれてできておる条文だろうと思います。
  92. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その以外にはございませんか。選挙を公正にするということは、すなわち今回のような涜職事件政党あるいは政党員と政府との間に行われるということを目的とするのではないでしようか。その点はいかがですか。
  93. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは選挙法の百九十九条の方も、あるいは規正法の二十二条の方も「選挙に関し」ということをはつきりうたつておりますから、選挙の公正をはかるということを大目標にしておることは明らかである、かように考えます。
  94. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで百九十九条の猪俣委員に対する御答弁関係ですが、一体法制局長官は、どういう具体的事実であるからこの利益を伴わないと解釈なさつておるのか。一体運輸省の利子補給の実態、それから補給する実情、事務の取扱い方法を御存じならばひとつ明細に教えていただきたいと思う。私どもは利益が伴う契約の当事者だとかたく信じておりますので、もし法制局長官が、こういう事実をやつておるのだから利益を伴わないのだ、この解釈に入らないのだというのならば、もう少し具体的な事例をあげての御説明を願いたいと思う。
  95. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもは具体的なこまかい実際の動きは全然存じません。また存じませんからして厳正公平な解釈ができるのだろうとうぬぼれておるわけでございますが、そういうことを知らないという立場で、この法律だけに即して考えますと、先ほど来猪俣委員にお答え申しましたように、大体問題の主眼点は、選挙に関しということもありますけれども、それをかりにのけて考えてみれば、特別の利益を伴う契約というものが問題の本体になると考えます。そういたしますと、まず第一に契約関係がどことどことにあるか、これは法律的にながめてみなければならぬ。そうすると契約関係はこの補償の法律から申しまして、国と銀行との関係しか見当らないということははつきり断言できるわけであります。そこで今度はその契約が特別の利益を伴う契約かどうかという第二段の審査をしなければなりませんが、特別の利益ということにこれが該当するかどうかということについては、先ほど申しましたように、普通ならほつておいたら損するからどうせ返しはしない。ある程度見てやらなければ返すという気持にさえならない。そこを補つてやろうということでありますから、やはり損をしないということはあるいは言えるかもしれませんが、もうけさせるということには絶対にならないのではないか。どうも法律的にはそういう結論しか出ないのじやないかと考えてお答えしたわけであります。
  96. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 どうも私は納得行かないのです。独断の解釈をされておるのですが、事実がわからずに、特別の利益を伴う契約であるかどうかの御判断はできないはずだと思うのです。そこで私お尋ねしますが、国が融資銀行との契約を結ぶ。融資銀行からは進んでこの契約を結びたいという申出がある。一体利益がないのに銀行がそういう契約を進んで結ぶということはどうも私どもには考えられないことが一つ、それからこの融資そのものを扱うことによつて他の銀行よりもすぐれた信用を一般国民に与えるということはあり得ると私は思う。一体これを特別な利益と言えぬかどうか。私どもはそれは入ると考えておる。それからもう一つは、実際上の関係から申しまするならば、銀行が船会社に金を貸す前に利子補給金をプールしておるという事実がある。これは利益だ。こういうことをお考えの上で、こういう事実を現実に前提としてただいまのような御解釈をしておるのかどうか。その点はいかがですか。まず第一に、他の銀行より特別な信用が高まるということが特別の利益であるかどうか。私どもは利益と信ずる。この点をまず承りたい。
  97. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 あるいはそういうような結果になるかもしれませんが、ここに言う「特別の」という言葉にはほど遠いものではないかと考えております。
  98. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ほど遠いという程度は一体何でおきめになつておるのですか。法制局長官の独断であると私は考えますが、一体ほど遠いとは――近いと遠いの区別の限界はどこにあるのでしようか、承りたい。
  99. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは結局「特別の」と、わざわざどうしてこんな言葉をその立法の際にお入れになつたかという問題になると思います。ただ利益を伴うとあるならば、これはあるいはおつしやる通りの結論になり得る可能性があるかと思います。「特別の」と特に力んでお書きになつておることは、これは少くとも刑罰法令でございますから、これをいかに拡張解釈する――これは破防法の際にここでさんざんおしかりを受けたのでありますが、刑罰法令である以上は、拡張解釈はよほどの理由がないと私はできないというふうに考えますから、その建前からいつて、お示しの場合は「特別の利益」という場合には入らぬのじやないかというふうに確信しておるわけです。
  100. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますと、もう一つ伺いたいのですが、その前提となつております請負契約その他と同列に考えられておる請負契約という場合、請負契約は損をする場合もある危険負担をしておる。こういう場合と、銀行が国民に対する信頼を受けるということは絶対に損はないということをわれわれが経済観念から比較するならば、むしろ請負契約の方がこうした場合に――ここに前提として請負契約その他と同列に考えておる請負契約の場合には危険を伴つておる、今の場合は危険が伴わない、どうもその点の法解釈が私は不公平に考えられるのですが、そういう関係はいかがでしようか。
  101. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 危険が伴うか伴わないかということになると、たとえば請負契約の当事者にしたところで大体採算をとつて、損をする場合には契約を結ばない、もうけがあるという場合を考えるのが普通の社会通念だろうと思います。従いましてここに大体私ども考えたのですが、よけいなことになるかもしれませんが、この趣旨をずつと貫いて行きますと、たまたま契約ということでなしに、たとえば税法の場合におきまして、当然免税の特典を受けるという場合でも、やはり同じ趣旨で縛らなければならない場合も立法論的にはあると思います。それには全然お触れになつておらないわけであります。そういうつり合いをも考えてここだけを、「特別の」というのを特に広く読んでしまうということは、解釈としては行き過ぎだろうという気持を下心に持ちながらお答えをしておるわけであります。
  102. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 もう一つ、国家から融資銀行に対して利子補給をいたしますその金をプールして預けて置く、こういうことになるので、私は非常に利益があると思う。莫大な金を銀行が一日でも三日でも四日でも自分のところで握つておるということは非常な利益になると私は思う。これは特別の利益だと思う。というのは、運輸大臣、国家と融資することの契約をする銀行だけに制限されて、その金が何がしかの時間は、あるいは日時はこれを保管して使える、こういう利益がある。現実にやつておりますのは、相当長い期間この金がプールされて、銀行で握つておるという事案があるのです。これをしも法制局長官はこの現実を前にして特別の利益と解釈しないのかどうか、いかがでしようか。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういうことをだんだん考えますと、先ほど私が例に引きましたように、税法上当然に免税の特典を受けてしまう、これは契約も何もなしに税法上免税の特典を受けてしまう、これの方が弊害じやないかという批判が出て来る。そうするとこれは憲法の平等の原則に反した憲法違反じやないか、この場合には法律にそういうことも勘案してやはり「特別の」という合理的な限界をお考えになつて立法になつておるというふうに言わざるを得ない、そう考えるわけです。
  104. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 先刻猪俣委員から具体的にこの融資を取扱う銀行が政党献金をした場合には、こういうことを申されてお尋ねをしておるのですが、ただいま私が申し上げたように、相当の期間プールされてその金を握つておられるという利益を前提として、そういう事実がある銀行は、一体政府との契約の当事者、特別の利益という中に入るのか入らぬのか、この点はどうでしようか。
  105. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうも同じことになつて申訳ありませんが、特別の利益を伴う契約、これはどうもこの文字には入らないと思つております。
  106. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 なお利益の伴うという解釈は一体限界をどこに置くかということが私にはわからないから聞かしてもらいたい。一体どういう事例の場合は利益が伴うという範囲に入り、どの程度のものは特別の利益を伴う契約の範囲に入らないのか、その限界をどこに置くのか、その基準がございましたら、ひとつどもの納得の行くような御説明を願いたい。
  107. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは先ほどの選挙に関してという言葉と同じことで、これは率直に言つて、あいまいで、不明瞭だと思います。それはやはりあの註釈書に書いてある通りでありますが、社会通念従つて平たく言えば、ある特別の人に特別のもうけを与えぬようにということを意味する、その限界というものは、結局やはり社会通念で判断されなければならないというふうに思います。
  108. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますと、この融資を取扱う銀行が政党献金した場合にはこれに当てはまらぬということは断定できないのですね。社会通念できめるべきものである、社会通念で解釈をするのだ、特別な利益を伴う契約というものの判定は社会通念できめるべきものであつて、具体的にこのものが入るとか入らぬとかいうことは、ここで法制局長官は確信をもつては言えないということですね。さつきは入らないとおつしやつてつたから、私は聞いておるのです。
  109. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 神様のような僭越な気持で申し上げることはできません。しかしながら私どもの法律常識から考えて、社会通念に照してみた場合に、先ほど来のお尋ねにありますような関係のことは、この特別の利益を伴う契約には入らない、これは社会通念上さようになると考えてお答えしたわけであります。
  110. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 どうも私ども納得が行かないのですが、法制局長官のお持ちになつておる社会通念は、どういう基準に基くのでしようか。社会通念とは、経済的社会通念でしようか、政治的社会通念でしようか、それとも法律的社会通念でしようか。どちらを言うのでしようか。
  111. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私は法律屋でございますから、法律的に考えてはおりますけれども、これは先ほど猪俣先生のお教えにもありました通りに、やはり経済的、社会的の部面を加えて法律というものは判断しなければならぬ、かように考えておりますから、それらの総合の結果から出た結論であります。
  112. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私ども選挙の公正を取締るこの二十二条の規定及び百九十九条の関係相当厳格に適用すべきものであると思う。従いまして、この「特別の利益を伴う契約」というものについての解釈は、その時代々々の動きによつておそらくかわつて来ましよう。現在のような社会状況に置かれる関係においては、法制局長官のその御解釈は、現代における社会通念、現代における経済通念から参りますならば、当然に私どもは入らなければならないと思う。と申し上げますのは、この規定の厳格な文理解釈だけでまつすぐに参りますならば、その立法の精神、目的を達することは私は不可能だと思う。あらゆる社会の事象というものを総合判断して行かなければならぬ時代になつておると思う。この政治資金規正法によるところの政党献金の表をごらん願いますならば、はつきりとここに言えることは、大体現在問題になつております外航船舶建造融資利子補給法並びに損害補償法というものがどうして生れたかということの歴史から考えましても、それから今問題になつておりますように、一方におきましては、国民は親子心中をしなければ税金が納まらない、税金を納めるために苦しんで、悲痛な思いをして税金を納めている。相当賢明なる長官におかれましては、日本の津々浦々に税金が納まらないために犯罪を犯し、あるいは生命を失つているというような重大な、恐るべき結果が生れておりますことを御承知かと思うが、こういう現在において、私がただいま申し上げました利子補給法、損害補償法によりますと、ただで十億円以上の船がつくれる、船会社は一文も税を納めなくて船がつくれるという法律ができている、しかもこれは議員立法である。その議員立法を主張した政党に、これと前後して、ただいま申し上げましたような銀行並びに船会社からたくさんの献金が出ている。これが問題になつている。こういう事実、こういう社会事情を前提として法律の解釈をしていただきたいと思う。今の法制局長官のような御答弁を願うならば、何も二日も三日も前から研究する必要はなかつたと思う。文理上こういう概念には入らないのだというならば、何もそんなに研究する必要はないじやありませんか。とにかく私ども同僚議員の横路君がもう四日も前に政府質問通告している、それから二日も答弁されないで、今日になつてようやく答弁した。こういうようなことから考えますならば、どうも国民として納得が行きません。いかにも法の解釈をこういう事象からそらせようというような気持で研究されたようなことも、ひねくれた考えかもしれませんが、考えられるのでありますから、もう少し私どもの納得の行くような解釈をしていただきたい。私どもは特別な利益を伴う契約であると、ただいま申し上げましたような理由で考えているわけです。要するに、なんぼ言いましても水かけ論になるかもしれませんが、法制局長官がさような考え立法をする枢要な地位を占めておられるということになりますと、どうもわれわれは安心しておまかせをすることができないが、いかがでございましようか。  なおさらに申し上げたいことは、この融資を取扱う銀行が、相当やかましい契約、制約に縛られながらも、進んで契約をしているという事実、なお猪俣委員からも申されましたけれども、この外航船舶建造利子補給法並びに損害補償法の十二条、十三条、十四条の関係を見て参りますと、直接船会社に対して運輸大臣からいろいろの指揮監督、経営改善の勧告ができることになつている。そしておしまいにはこの融資を中止させるところの権限も持つている。こういうような利害関係を持つておりまする国とこの融資を取扱う銀行との関係は、単なる文理上の解釈のみで契約ということを解釈すべきものでなくして、やはりこれはただいま申し上げましたような利益の伴う事実がありますので、現実から申しましても、利害を伴うものである、だから、利益を伴うものであるという御解釈をされてお進め願いたい。もしそれができないとするならば、一体こういうようなことで、現在のこの事象をどう収拾し、どう国民に安心させ、信頼されるような処置をとるかという問題が起きて来る。これは自治庁長官にお尋ねすることになるかもしらぬが、この点につきまして、そういうような解釈以外には法制局長官といたしましては考えられないでしようか。それとも今までおつしやる通りでしようか。
  113. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おつしやることはよくわかります。わかりますが、われわれの立場としては、およそ刑罰法令を拡張解釈するということは最も避くべきだと考えておりますから、誠実に法の示すところ――もちろん文理のみとは申しませんけれども、法の示すところをそのままに解釈をして打出さなければならないというのがわれわれの本分だと思います。その意味で、先ほど来の結論を申し上げたのであります。あとは見解の相違ということになりますが、少くとも今まで申し上げたことは、私一存で申しているのではありませんで、関係当局者が打合せの上で結論を申し上げているのであります。政府が聞違つた法の解釈をしているというように国会の方で判断されるなら、それはむしろ立法府の処置によつてどうするという問題になるのではないか、かように考えております。
  114. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 しからば今一点お尋ねいたしますが、私どもはさらに研究調査をいたしまして、銀行そのものに対して相当利益が与えられる仕組みになつておる、そういう事務的取扱いをされておるということになりますならば、おのずから法制局長官の解釈はかわつて来ると思うのですが、この点いかがでしようか。
  115. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもの申しておるのは、この利子補給の法律に書いてある通りの契約がなされた場合を前提にして考えているわけです。ところが、きわめて極端な想像でありますけれども、国の当局者と銀行当事者との間に法律で予想しないような特別の、また特権利益を与えるようなことをかりにしておつたという場合を想像すれば、これは法律解釈の問題ではないわけです。私どもの方は、法律に示す通りの契約がなされた場合にはこれに該当いたします、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  116. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますと、この法に示されている通りのルールによる場合はそうだということですね。
  117. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 その通りです。
  118. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 法制局長官にはこれ以上はもう見解の相違でございますからやめまして、塚田長官にお願いしたいのですが……。   〔「まだ質問がある」と呼ぶ者あり〕
  119. 小林錡

    小林委員長 法制局長官は予算の方へ行かなければならない、予算できのうの横路君の質問に回答しなければならぬそうで、先ほどからしきりに言つて来ておりますから、またの機会にひとつ……。
  120. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それでは塚田長官にお尋ねいたしますが、どうも塚田長官は昨日は私にはひつかかると言うし、さようはひつかからぬというお答えをされているのですが、しかし昨日長官がおつしやつたのが率直な気持じやないでしようか。これは私何も長官をいじめるのではないのですが、長官も弁護士で、相当な法律家ですから、よもやきのうは間違つてつたということは私は言わせない、責任ある長官の言明として。それで、猪俣委員のおつしやられたように、われわれから行くと、これはどうもひねくれているかもしれませんが、どう言いのがれたらこれは問題にならぬように解決がつくだろうかというので、法制局長官と大分研究なされたような気がいたしますが、いかがでしようか。昨日言われたのが長官の真意であつて、きようは研究して言いのがれの答弁をするためにやつたというふうに承つていいかどうか。
  121. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 昨日は何にいたしましても、どんな事柄をお尋ねになるのか、十分承知しないでひよつこり出て参りましたのと、それから実のところを申しますと、あまりふだんたくさん問題が出ておらなかつたものでありますから、十分この二つの法律を検討しておらないために、ごく常識的にあつさりした感じで不用意に申し上げたのでありまして、先ほど法制局長官から繰返して御説明申し上げましたように、やはりこれは法律的な判断の問題なのでありまして、いろいろと検討いたした結果この解釈の方が正しいということで、私もそのように了承して、私が昨日お答え申し上げたのを取消さしていただきたい、こういうふうに最初に申し上げたので、言いのがれるためにというような気持では毛頭ございませんので、よろしくお願いいたします。
  122. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもはどうもそう信用したいのでございますけれども、おそらく国民はきのうの新聞でもう長官はあれはひつかかるということに確信を持つていると思う。  もう一つ進んでお尋ねしたいことは、ただいま長官から御説明を願いました自由党、改進党に対する銀行関係政党献金でございまするが、これは実は私の方で東京都の選挙管理委員会へ行つて調べますると、自由党にいたしましても、改進党にいたしましても、昨年の四月の選挙のとき、あるいは一昨年の十一月の選挙のときにこの金が全部選挙に使われて、そうして使われた報告が選挙管理委員会に出ておるのですが、こういうことを考慮されて、銀行から莫大な金、一千八百万円あるいは別にわからずに、届出せずに何億円か知りませんが、大体当時の選挙のときの自由党の届出が二億何千万円かになつておりますが、こういう関係から押し進めまして、一体選挙の粛正については長官も非常に御熱心な御努力を遊ばされておると私どもは敬服しておるのでありますが、こういう問題を根絶するために、思い切つて自治庁といたしましては選挙法改正に対する強い御主張をなさる御意思があるかどうかをひとつ伺いたい。
  123. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは今日の選挙法がいろいろな選挙の上に不明瞭なことを起しておるという一つの原因になつておるということは、私どももそのような感じがするのであります。しかし必ずしもそれだけがそういう原因であるとも考えられませんので、選挙法自体というものについては私どもももう少し検討する余地があると考えておるのでありますけれども、しかしどういうぐあいにやつたらばいいかということにつきまして、なかなかこうしたらばこういう問題は根絶できるというようなすばらしい構想が思いつかないので、慎重に検討いたしておる段階であります。
  124. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 なお自治庁で、届出が済んでおりまする政党献金の内容などにつきましては、特に長官といたしましてはその内容の調査あるいは献金をされた方たちと、あるいはその会社政党との関係についての実情あるいは因縁関係などについては、これは自治庁といたしましてはお調べをさせるでしようか、それとも単に届出をさしておけばいいのでしようか、その点をひとつ……。
  125. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この点はやはり届出を受けまして、届出自治庁に報告されましたときに疑問の節があるということであれば、当然調査をいたしておかなければならないという規定になつております。ただ具体的な問題につきましては、昨日もお答え申し上げたように調査をいたしておるような事情はなかつたのでありますが、まあこれは疑わなかつたということであります。しかし今後こういう問題の扱いといたしましてはやはり十分慎重に、そういういささかも疑いのあるというようなものについては、その背後のいろいろな事情というものは十分法の命ずる通り調査をいたしておかなければならない、こういうように考えておる次第であります。
  126. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それから選挙費用の届出に対する届出書に基く厳重な調査と申しましようか、これは昨日猪俣委員からも御質問があつたのですが、私ども常識的に今までの選挙の結果の選挙費用届出の内容から実際の選挙費用に扱いました金額との状況から勘案いたしまして、まことにでたらめなものが出されておる。これを自治庁において厳重に調査し、実情に沿つた報告書であるか、でないかということにおいてこの報告書が虚偽なものであるということになりまするならば、これに対して選挙法による制裁が加えられるということになるのでありまするが、さような面を厳重にやることによつて、私ども選挙費用が厖大にかかるあるいは買収をする費用そのものに対するところの選挙界の腐敗というものをある程度まで是正することができると思うのですが、厳重にこれを調査いたしまして、事実と相違するような場合においては法律の適用をして処置をする御決意があるかどうか、この点を伺いたい。
  127. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように疑わしいということであれば調査をいたす、報告をとる、また資料の提出を求めるというような処置をいたさなければならない。それをいたしました結果、法に反するということであれば、もちろん厳重に法の命ずるところによつて処置をしなければならないと思うのでございますけれども、法律の規定の通りにいたしましても、古屋委員の御希望のような点までの調査はおそらくできにくいのじやないか、こういうふうにこの法律が読まれるわけであります。そういう点はおそらく立法論としてなお問題がおありだろうと思うのでありますが、これは国会にもお考え願い、私どももまた検討してみたいと考えております。
  128. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 どうも私は答弁に満足が行かないのですが、非常に真剣さが足りないと思う。この法律は届け出た選挙費用と実際使いました費用とを調査いたしまして、相違いたした場合には、これは処罰することになつておるはずです。でありますからこれを厳格にやつたらどうか。一選挙で四十四、五万円で選挙ができることは、われわれ常識では考えられない。従つてこの法律を厳格にやるならば、いかなる代議士も立候補できないゆえをもつて、このまま放任するということはあり得ないと私は思います。私どもが厳格にと長官に御要求申し上げるのは、私自身もそうでありますけれども、われわれの選挙費用の報告が実際に合わない場合においては、厳格な調査と処罰を受けるということになれば、今の選挙法の関係におきましても相当これを取締ることができると思う。おそらく長官選挙をなさつておられますけれども、四十四万や五万で選挙ができるできないということは、経済的社会通念はつきりわかる。うその書面が提出されても、それを厳格に調査する、さようなことを命令しないということになれば今日のような状況になるのでございまして、どこまでもこれを厳格に履行されるならば、選挙法の改正をいたさなくても、ある程度まで選挙界の粛正ができることを確信するのであります。厳格に御調査になりまして、実際に沿つた報告書を提出させるように仕向けることが御当局にできるかできないか、その点を承りたい。
  129. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 政府委員からかわつてお答えいたします。
  130. 金丸三郎

    ○金丸政府委員 お尋ねが政党関係届出の問題と、それから候補者の選挙運動費用が、法定額が少な過ぎて実際に合わないのではないか、この二つの御質問の御趣旨のように存じます。候補者の選挙運動の費用が法定額を超過いたします場合には、私どもなり、あるいは都道府県、市町村の選挙管理委員会には何ら調査の権限はございません。従いましてむしろ実情に合いまするように、現在の法定の基準額を改訂していただく方がよろしいのではないか。またかねがね私ども事務的に考えましてもそのように国会の方にお願いをいたしておるのであります。  第二の政党その他の政治団体が、選挙その他の際に実際に使われました費用と、政治資金規正法に基きまして届け出ました費用とが違つていやしないかというお尋ねでございますが、私どもの方には虚偽の記載があるとかいう感じがいたします場合に、資料の提出を求め得るという規定はあるのでございます。あるのでございますが、実際問題といたしまして、なかなかそういうような認定が困難でございます。また政治資金規正法の根本の趣旨といたしますところは、むしろその報告を公表いたしまして、世論の批判に仰ぐということが、この政治資金規正法国会で審議されました際の根本の趣旨であつたのではないか。従いましてもし届出の金額と実際と――たとえば一千万円の寄付を受けたという届出になつておるけれども、二千万円受けたのではないかというようなことを実体的に調査いたしますならば、むしろそういう実体的な調査権を持てるような規定が必要なのではないか。但し現在も選挙管理委員会が主としてそのような資料または報告を求めることになつておりますけれども、はたして選挙管理委員会がふだん選挙事務を執行する機関として、そのような調査をいたしますことは適当かどうかということは、私個人としては非常に疑問を持つております。やはりそれにはそのような捜査なり、調査なりを兼ねて、他の権限をもつて自分たちがした経験があり、また組織を持つておるようなところでなければならないのではないか、かように考えておる次第であります。
  131. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 今の点は私納得できないのです。捜査をすることでなくて調査というのは別の問題で、できると思うのです。材料の提供を要求をするということは、私はあの規定でできると思う。材料の提供をこまかく厳密にいたされるならば、ある程度まで是正することができると思うのですが、さようなことをおやりになつておるか。どうも私ども承知しておる関係では、ほとんどいかなる選挙管理委員会もあまりそういうことをやつていない。ことに衆議院選挙選挙費用に対する問題、あるいは政党資金に対する規正法に基くこまかい報告は、現実にやつてないように思うのです。この点、私どもの希望といたしましては厳重に関係書類の提出を命じて、相当監督してもらいたい、かように考えておるのでありましてさようなことをおやりになつていただくように要望申し上げておきます。
  132. 小林錡

    小林委員長 明日午前十時半から開会することとして本日はこれにて散会いたします。    午後四時八分散会