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1954-02-08 第19回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月八日(月曜日)     午後二時二十五分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 吉田  安君 理事 井伊 誠一君       林  信雄君    星島 二郎君       本多 市郎君    山中 貞則君       高橋 禎一君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君    黒田 寿男君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (保護局長)  齋藤 三郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         検     事         (大臣官房調査         課長)     位野木益雄君         検     事         (大臣官房経理         部長)     竹内 寿平君         検     事         (大臣官房経理         部主計課長)  羽山 忠弘君         主  計  官 鳩山威一郎君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 二月六日  委員三木武夫辞任につき、その補欠として三浦  一雄君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員野田卯一君及び三浦一雄辞任につき、そ  の補欠として星島二郎君及び三木武夫君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月三日  福岡高等裁判所及び高等検察庁支部を鹿児島市  に設置請願山中貞則紹介)(第五五四  号)  戦犯者釈放に関する請願山中貞則君紹  介)(第五五五号)  山口拘置所船木支所拡張に関する請願細迫兼  光君紹介)(第五九三号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  戦犯受刑者釈放等に関する陳情書  (第三二四号)  同(第三二五号)  同外一件  (第三二六号)  同(第三二七号)  同  (第三二八号)  同(  第三二九号)  同(第三三〇号)  同(第三三一号)  同(第三三二号)  同  (第三三三号)  同(  第三三四号)  同  (第三三五号)  同  (第三三六号)  同  (第三三七号)  同  (第三三八号)  戦争受刑者釈放並びに戦犯刑死者及び獄死者  遺族の公的援護に関する陳情書  (第三三九号)  同(第三四〇号)  同(第三  四一号)  同  (第三四二号)  同(第三  四三号)  同  (第三四四号)  戦犯受刑者今井政夫釈放に関する陳情書  (第三四五号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員会設置に関する件  法務行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。すなわち違憲訴訟手続に関する件並びに法務行政に関する件中外国人出入国に関する件の調査並びに研究のためそれぞれ違憲訴訟に関する小委員会並びに外国人出入国に関する小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林錡

    小林委員長 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  なお、これら各小委員会の小委員の員数及び小委員の選任につきましては、いずれ理事並びに委員諸君の御意向伺つた上で委員長において決定いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小林錡

    小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからうことにいたします。     ―――――――――――――
  5. 小林錡

    小林委員長 法務行政に関して調査を進めます。まず法務省大蔵省より昭和二十九年度法務省予算について説明を聴取いたすことにいたします。法務省主計課長羽山説明員
  6. 羽山忠弘

    羽山説明員 昭和二十九年度法務省所管一般会計歳出予算内容につきまして概略を御説明申し上げます。  お手元に差上げました資料最初に書いてございますが、昭和二十九年度法務省所管予定経費要求額は百九十九億一千四百五十六万七千円でございまして、これを前年度予算額百八十四億四千三百八十一万五千円に比較いたしますると、十四億七千七十五万二千円の増加なつております。この内容でございますが、お手元資料の四枚目をあけていただきますると、日別比較表というのがございます。この日別比較表ただいま申し上げました約百九十九億の予定経費要求額内容が全部書いてあるのでございますが、これによりますると、人件費関係増加が十五億六千八百三十七万六千円となつております。これは前年度比較いたしますると、総体で約十四億七千万円の増加と申し上げましたが、人件費関係――これは給与ベースの改訂に伴う増額でございますが、他の事務費が多少へこみまして、人件費関係が十五億ふえておるということになるのでございます。事務費は全体に減つたのではございませんで、かなり需要なる点でふえたところもございます。ただ総体において多少前年度よりも減つておると申し上げることができるのでございます。その事務費増減内容が、ただいま申し上げました四枚目の日別比較表に出ておるのでございます。その一つ一につきまして概略を申し上げます。  まず二の旅費関係、これは合計額で七百四十八万八千円の減少ということになつております。一の職員旅費は、原則として一割見当を減少するという予算編成方針によりまして減少となります。二の赴任旅費は、昨年中法務省所管各組織の赴任旅費が非常に足りませんで、人事の異動に非常に支障を来しました状況にかんがみまして、新たに二千四百七十六万七千円の増額が認められたのであります。その他の旅費のうち、原則を適用されまして一割程度減少を見ましたものが、マルイの委員旅費それからマルホの、その他の特別旅費であります。訟務旅費検察旅費登記登録旅費は、過去数箇年にわたりまして事件が年々増加いたしておりますので、この状況によりまして、それぞれここに書いてございますだけの増額なつております。  次に庁費関係、(1)のただ庁費と書いてございますのは、これは一人当り幾らとして入つて参ります分頭の庁費と申すものが昨年の当初の政府予算案通り単価で計上されましたために、約八千五百万円の増加なつております。それから図書購入費は前年度通りでございまして、通信専用料は、これは御承知の昨年一月よりの値上り経費でございます。各所修繕費、これは年々建物の坪数が増加いたしておりますので、その増加に対応する修繕費でございます。(5)の庁舎借料値上りでございます。それから(6)の看手等被服費、これも昨年の当初の単価に帰していただいたということでございます。(7)の収容諸費減少なつておりますが、これは一番大きな原因は、刑務所収容者明年度は約二万人減少するということが見込まれておりますので、約二千万円の減額なつたわけでございます。収容者被服費が逆にふえておりますが、これは、ただいま各刑務所におきましては、収容者被服が非常に悪くて作業に影響を及ぼしておるという状況を承認されまして増額となつたのでございます。収容者食糧費値上りになりましたのは、これは米の値上りに基くものでございます。その次は公安調査官調査活動費、これは昨年当初の単価にのつとつたのでございます。その他の庁費は、原則従つて減額となりました。  その次は、四の委託費関係でございます。委託費関係につきましても、一律に一割程度減少という方針がとられまして(1)から(4)までの経費が前年度に比べて減額となりました。ただ更生保護委託費は、事件数増加いたしておりますので、増額が承認されました。(7)の地方公共団体委託費は、本年十月に外国人登録の一斉切りかえがございますので、ここでこれが四千二百九十六万一千円増額が承認されました。これは本年度限りの経費でございます。  次に営繕施設費ですが、営繕施設費は最も削減をひどく受けたのでございまして、ここに書いてございますように、法務省所管の分といたしまして、前年度に比べまして約五億の削減なつております。このほかに建設省計画分が計上されておりまするが、これも前年度比較して半額以下となつております。わかりやすく申し上げれば、前年度法務省関係営繕費は、建設省計画分をも含めまして約十億でございましたが、明年度は約四億六千万となつているというふうに申し上げられるのでございます。  その次は、あとこまかい増減でございますが、一番大きいのは一番下の賠償金及び実費弁償金でございます。この中に人権擁護委員関係実費弁償金保護司実費弁償金とがあるのでございますが、人権擁護委員の方は今年度通りのすえ置きとなつております。保護司実費弁償金は、これは逆算いたしました単価でございますが、従来一人年間約千六百円の単価が来年は約三千円、約二倍近い経費に引上げられまして、その結果ここに書きましたように七千六百九十二万一千円の増加なつております。以上差引いたしまして、冒頭申し上げましたように約十四億の増加となるわけでございます。
  7. 小林錡

    小林委員長 質疑の通告がありますから、順次これを許します。佐竹晴記君。
  8. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいま二十九年度予算関係を承つたのでありますが、この際行政整理に伴う予算実情はどういうぐあいになつているのか、すなわち、行政整理に伴う法務当局予算に現われる影響はどういうぐあいになつておるのか、その内容を承りたいと思います。
  9. 羽山忠弘

    羽山説明員 行政整理は、法務省におきましては、二年にわたりまして千六十六人を減ずることになつております。初年度といたしまして、本年度は七百四十五人を減じまして、その七百四十五人減の定員ですでに国会に提出になつておりまする予算書は書いてございますが、御承知のように、行政整理がございますと、その減りまする職員の俸給が浮くわけでございますが、この七百四十五人に対しましては、また別途に退官退職手当等を支払わなければなりませんので、大体本年度におきましては、この減員による経費の上の増減はあまりないのではないかと考えております。但しこの退官退職手当は、後日退官者がきまりましてから計算をいたさないと正確なことを申し上げるわけには参らないのでございます。
  10. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私の承りたいのは、人数が減つたということだけではございませず、それがどういう局に、どういう部に、どういう係にどういう影響を持つているか、この点を聞きたいのであります。もし大蔵省がおわかりでないといたします、今度の行革の結果法務省行革にどのような影響を受けたか。この千六十六人を減ずるというのは一体どの局で、どの部で、どういう係でどういうぐあいに減らされておるのか。これをひとつ承りたいと思います。
  11. 羽山忠弘

    羽山説明員 各部局別減員一覧表ただいま持参しておりませんのでいずれあとでお手元に差上げることにいたします。各部局において減員がどの程度影響を持ちましたかと申しますことは、非常に問題が広範囲にわたりますので、もし具体的な点がございましたならば、こちらに各原局局長が見えておりますので、御質問くだされば幸いだと存じます。
  12. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 しからば問題を少し掘り下げまして、局限せられた具体的問題についてお尋ねをいたしてみたいと思いますが、今度の行政整理伴つて法務省の各地方法務局出張所つまり登記所関係でありますが、大体二%の減員をする、閉鎖はこれを行わないという方針にきめたように承りますが、その実情はどうなつておりましようか。
  13. 村上朝一

    村上政府委員 法務局関係行政整理内容について申し上げますが、法務局事務登記、供託その他窓口事務を中心とするものでありまして、国民一般と直接結びついております役所である関係から、法務局につきましては行政整理を極力避けるのが至当と考えましたので、その方針で進んで参つたのであります。その結果法務局につきましては全国法務局本局支局出張所を通じまして定員合計八千三百三十八名に対しまして、二百三十名というきわめて低い率で整理されることになつたのでありますが、これを二年計画整理いたしますと、初年度におきまして特に低率の八十九名を整理することになつたのでございます。  法務局現状を申し上げますと、事務職員一人当り負担量本局支局出張所の順序によつて負担量が多くなつております。近年大都市における登記事件が年々相当な率をもつて激増しております関係上、大都市、中都市にあります本局支局事務は相当激増しております。一人当り負担量出張所とは比較にならぬほど多くなつておるのであります。こういう際でありますので、法務局全体の定員を大量に削減することになりますと、比較事務の閑散な出張所から職員引揚げるということも避けられないのではないかというふうに考えたのでございますが、一方出張所はその性質上、交通不便なところにあります出張所ほど事件数が少いのであります。こういうところから引揚げますと、勢い出張所事務を停止するというようなことにもなりますので、これを極力避けようといたしまして、先ほど申し上げましたようなきわめて低率の整理人員となつたのであります。最初行政管理庁から示されました整理人員が七百数十名であつたのでありますが、これがかように減りまして、特に初年度八十九名ということになりますと、本局支局における事務の極力簡素化をはかり、執務を強化いたしますならば、出張所現状のままで維持することができようかと考えております。
  14. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それではこの際念を押しておきますが、出張所としてはこれを廃止しない、人員を減すにとどめるという方針であると承つてよろしゆうございますか。
  15. 村上朝一

    村上政府委員 出張所比較的閑散なところは事務官一名、雇い一名というきわめて少数職員でありまして、これから人員を減らすということもほとんど見込みがないわけであります。従いまして出張所から人を減らさないということは、出張所を廃止せずに、この八十九名の整理人員本局あるいは支局職員の中から捻出する、そういう趣旨でございます。
  16. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 そうするとその少数職員などを減らせると、結局出張所をやめなければならぬような事態が起るので、出張所は全体として閉鎖しない方針のもとに減員を立案した、こう承つてよろしゆうございますか。
  17. 村上朝一

    村上政府委員 さようでございます。
  18. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 進んでお尋ねいたしますが、そういう片いなかの不便な登記所の一人や二人を減して、それがためにその地方の不便をかもしてはならぬというのでそれは置いておく。このことはわかります。しからばその他の方面から一体減すだけのここに余裕というものを今まで持つておられたかどうか。実はこの前に行政整理のあつた時分に、この法務委員会において重大なる問題として論議された当時、出された資料等によれば、たとえば中野登記所のごときは登記抄本一通を請求して三十日ないし四十日しなければ一通の抄本をくれない状態に追い込まれておつたことをこの法務委員会において明らかにされた。そうして日本橋登記所等においても二十日ないし三十日しなければ一通の抄本が下らないということも事実上にあることも明らかにされた。よつてただの一人といえどもこれを減すことは重大なる影響を及ぼすものなりとしてこの委員会はたいへん緊張した状態のもとに論議されて、これ以上はただの一人ももはや切ることができないという最後の案を得て前回行政整理が行われた。しかるに今回またこれを減そうとする。それならば前にこれ以上減らすことができぬとおつしやつたのは、その時分でも余裕があるにもかかわらずうそをおつきになつておつたんだ。今承るところによりますと、まだ相当数減員余裕があつたかに聞える。しかもただいまの局長の御答弁によれば、事務負担量はそれ以後ふえておるという。おそらく法務当局といたしましては、何が何でもこれを減らされたならばたちまち困るということは十分わかつておるけれども大蔵当局がこれを理解しないためにやむなくこういう結果になつたというのではなかろうかと考える。法務当局といたしましては、その当時にも余裕があつたのに、余裕がないように言うて、この前には最後案としてあの程度整理で済んだ、ところがその後だんだんと事件がふえおるのに、また今度減るだけの余裕がある。これは余裕があるとはおつしやりますまい。結局この問題は、大蔵当局が聞かないからこういう結果になつたのではなかろうかと思う。といたしますと、このことは、法務当局といたしましても、説明が足りなかつた、その熱意において欠けておつたところの責任を負わなければならぬと同時に、かくのごとき問題に対する大蔵当局認識不足の結果によるものといわなければならぬと私は思います。登記所におけるところの事務ただ一通の登記抄本でございますけれども、われわれの苦い経験によれば、年末に借金をしたい、抵当権を設定したい、一通の抄本を得ようといたしましたが、翌年一月にもくれないで、二月になつてようやくその抄本を得た、登記は三月になつたという、年末の借金払いには間に合いません。一通の抄本だから何でもないかのごとく思われておりましたならばたいへんでございます。商業登記の謄本のごとく、増資その他にも関係があるところの問題であつて、これがたとえばきようただちにほしいものを、明日また明後日にせられても困るほど登記については急ぐものなのであります。しかも二年前に中野日本橋のあのまん中の――先ほど片いなかのことをお話になつたが、片いなかのことではない、東京まん中において相当たくさんの人員を使われておるところにおいてさえ、かようにその事務がなかなか円滑に運営されていない。それをも減さして、一体将来うまいぐあいに行くのかどうか。私はこれに対する法務当局の御意向責任を十分ひとつこの際明らかに願いますと同時に、大蔵当局といたしましても、わずかなこういつたものを削つて登記簿抄本さえも数日の後でなければもらえない、そうして急激に月末に金を借りようと思つても、翌月でなければ借りられないといつたような実情にあるのに、そんなものまでも減員して行改整理をやろうというがごときは、これは行政整理をしようとするところの目標を誤つておるのではないか。他に整理をすべきものはたくさんあります。ないとおつしやるならば、私はあとから申し上げましよう。幾らでもまだほかに余裕があるではありませんか。飲んだり食つたり盛んにやつているではありませんか。自動車でもあれほどゆうゆうとやつておるではありませんか。こんなところを整理しなければ国家事務が運営できぬなどとは、とんでもないことであります。私はこれに対するところの法務当局、並びに大蔵当局は何でこんなことまでやらなければならないか、その実情を承りたい。
  19. 村上朝一

    村上政府委員 法務局職員余裕があつて整理をいたすというわけでないことは、ただいま佐竹委員の御指摘になりました通りでありまして、私ども法務局所管事務関係しております者の立場といたしましては、減員どころでない、むしろ増員が必要であるという考えで大蔵省と折衝いたしたのであります。なお行政整理の数字の方は、これは大蔵省でなく、行政管理庁の方で立案して参つたものでありますが、行政管理庁に対しましても、極力実情説明いたしまして、法務局については行政整理を避けてもらうように努力いたしたのでありますが、私どもの努力が足りませんでした結果、他の官庁あるいは部局に比べますと、きわめて低率ではございますけれども、二十九年度八十九名という整理人員なつた次第でございます。  なお登記所、ことに東京法務局出張所登記事務が非常に遅れているという点でございますが、これはたしか昭和二十六年でございましたか、非常に遅れたことがございまして、その後他からの応援を出す等の緊急措置を講じまして、二十六年中には常態に復するようになりました。その後極力職員の訓練にも努めまして、また事務簡素化等もはかりまして、現在では渋滞なく登記事務が行われている状況でございます。
  20. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それなら観点をかえて、いま一つ承つてみましよう。  一体登記所国家所有建物であるか、それともどこかから借り受けてやらなければならぬのか。これはわずかな賃料を出して、人のお家を借りてやつているような実情でないのか、しかもその登記所雨漏りがして、国民権利を預かつているところの登記簿、あるいは税務関係土地台帳その他がくつついて参りましたから、図面にしても、あるいは税務署関係で前に扱つておりました土地台帳関係にいたしましても、これら国民財産関係に関する重要にして唯一の証明力を持つているところの大事な大事な書類がそこに保存されているのにかかわらず、それが雨漏りがし、あるいはねずみの害のためにそこなわれるような実情にある箇所が相当たくさんにある、にもかかわらず、なお費用を減して、もつて完全に国民権利を保護する将来の見通しがはつきりといたしていると、法務当局といたしましてもここにおつしやることができるであろうか。登記所が御自分の建物であつて、完全なものであるか、あるいは借上げなどをしている箇所がたくさんあるのではないか、それに対する雨漏りねずみ害等について何のおそれもないとおつしやれるであろうか、またそれに対する予算関係一体これ以上にどうにもならぬものであるのか、これをひとつ承つておきたい。
  21. 村上朝一

    村上政府委員 登記出張所全国で千七百九十箇所ございます。このうち国有の建物が三百六十二、その他の千四百二十八箇所は、市町村あるいは個人から借り上げている庁舎でございます。ただいま佐竹委員から御質疑になりました通り出張所庁舎はきわめて不備でございまして、私どもはなはだ遺憾に存じているのですが、出張所ができましてからの経過年数をかりに申し上げますと、できてから五十年以上たちますほとんど朽廃に近いようなものが四百六十三もある、この状態をまことに遺憾に存じまして、年々出張所庁舎営繕費用経理部の方に申し出まして、経理部から大蔵省に要求してもらうわけでありますが、特に昭和二十九年度におきましては官庁営繕費が非常に削減されました結果、私ども計画しておりました出張所建物の整備ということもほとんど実行できないようなことになつたので、非常に遺憾に存じております。なお朽廃程度のはなはだしいもの、あるいは立ちのきの要求を受けておりますもの等につきましては、補修費その他によりまして、できるだけこれを整備いたしたいと考えておる次第であります。  なお営繕関係予算につきましては、経理部の方から御説明いたした方が適当かと存じます。
  22. 羽山忠弘

    羽山説明員 昭和二十九年度予算編成にあたりましては、先ほども申し上げましたように、建設省計画分を含めまして法務省所管が本年度約十億でございましたのが、明年度は約四億六千万円になつております。このように削減を受けましたのは、結局官庁営繕というものが予算の中で御承知のように非常に大きな金額を占めておりますので、これが今回の予算編成に際して各省一律に削減を受けたのではないかというふうに考えております。その結果、私どもといたしましては非常に遺憾に存ずるのでありますが、たとえば今度の法務局予算につきましても、原則として新営はゼロということになつておりますが、ただ青森と福岡出張所が二箇所火災で焼失をいたしておりますので、その復旧費と、島原の支局経費、それだけが新常費として認められた、こういう状況なつております。なおそのほかに神戸に検察庁、公安調査庁の合同庁舎が認められておる、これだけであります。
  23. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 具体的にいま一つ聞いておきますが、私が調べたところによると、渋谷の登記所はだれかから借りておるようでありますが、これは三千件も事件のあるたいへん大きな、しかも東京都内の目抜きの場所にある大事な登記所です。それを確かに借り受けておる。それから板橋の登記所のごときもそれ以上に件数のあるところに大切な登記所であると聞いておる。ところがこの板橋の登記所は――これは私の調査が誤りかもわかりませんが、司法書士から借り受けておるということを聞いておる。一体こんなことがあつていいものでございましようか。しこうして私の聞くところによれば、その渡切り経費としてわずかに一千円を渡しておるようなべらぼうなことがどこにありましようか。そこで光熱費もとれないから、事務をとるのに必要なところの電燈も光熱も、そういつたものもろくにない。畳なんかも腐つてしまつて臭気を発しておる、しかも雨漏りがしておる、こういつたような状態であるから、ここらあたりに勤めておるところのお役人も、やがて自分自身で何とかしなければならぬということで、それらの人々が司法書士あたりから寄付金を募つて仕事をいたしております。ここにおいて司法書士との間に、切つても切れないところの腐れ縁ができておる。よつて民衆が登記簿の謄本を求めて書ましても、なかなかくれないが、その特定の司法書士の手を通ずると即時にとれる。よつて登記所は、ある種の利害の厚薄によつて登記謄本一通を得るのにも、抵当の設定にも、これらの情実因縁のために動かされて、善良にしておとなしく最初からまつ正面から窓口にお願いに参りますところの民衆はほとんどあとまわしにせられるのみならず、一通の登記簿謄本をとるのにも十数日を要するというようなことが出て来ると国民はこぼしておる。そこでこれらの関係がだんだんからまつて参りまして、そこに勤めておるお役人の人々は、あるいは二日間新聞をにぎわしました、これはたしか通産省関係であつたと思いますが、古い書類に張つてあるところの印紙をもぎとつて、それをべたつと張つてつて来る。そうしてそれが司法書士と通じておる。それが登記所の役人とつながつておる。一網打尽にこの間やられた。こういつたような事件が起つて来るということは、登記所自体に自主独立ができておらぬからであります。日本の国家の自主独立をわれわれが叫んでおるときに、国の法務省に直属しておる、しかも国民権利をちやんと登録しておる登記簿、あるいは図面、あるいは台帳、そういうようなものの保存さえも自主独立ができていないようなことで、一体日本の自主独立はどこにあるか。司法書士の家を借りて渡り切り経費わずかに一千円ばかり渡す、あるいは司法書士のお情を請うにあらずんば光熱費、一俵の炭も買えないような状態、こんなことをしておいてどうしてほんとうにわれわれの権利を確保するところのそういつた書類を保存をしてもらうだけの安心感と信頼が国民として得られましようか。私は少くともこういつたものについては、司法書士の家を借りてみたり、渡切り経費をわずかにやつてみたり、先ほど言つた明け渡しを請求せられて非常に困つておるなど、この法務委員会において答弁しなければならぬような状態にあること、これは一体何たる状態であるか。もし大蔵当局がここにおいでになれば、そういう実情をもくまないで、そうして必要やむを得ないところのそういつたような費用まで削つて国民に迷惑を及ぼすことが一体今回の行革の目的であるかどうか、大蔵当局の意見を聞きたいと同時に、法務当局といたしまして一体こんなことでいいのかどうか、それでほんとうに国民権利書をわれわれの安心の行くように守つてもらえるものと思われるのであろうか、政府の御意見を承つておきたいと思います。
  24. 村上朝一

    村上政府委員 出張所建物を個人から借り上げるということは、好ましくないことは申すまでもないことであります。本来国有で建てるべきであつたのであります。また個人から借りておりますものはできるだけすみやかに買収いたすべきだと思うのでありますが、先ほど申し上げましたような予算実情からいたしまして、遺憾ながらまだ個人からの借上げが相当数つておるというふうな実情なつております。  それから一部の出張所において特定の司法書士のために特に便宜をはかつておるというようなうわさ、これは私どももそういううわさを耳にすることもございますので、その都度調査もいたしますし、また会議等の際にも厳重に注意を与えておるのでございますが、ただいま御指摘になりました板橋の出張所、これは司法書士から建物を借りている関係上、その家主である司法書士のために特に便宜をはかつているというような事実がありますれば、適当な処分をいたしたいと考えます。ただいまのところ板橋の登記所についてそういう調査をいたしておりませんので、申し上げられないのでありますが、東京法務局長から常時報告を聞いているところによりますと、東京管内の出張所ではそういうことはないというように聞いております。ただいまの御注意の点は調査の上お答えいたすことにいたします。
  25. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私のただいま質問いたしましたのは総汎的な問題であつて、そのうちの一つ二つの借り受けておる事例として渋谷と板橋をあげたのであります。そうしてそういうような状態にあると、やがてその間に情実関係等ができはしないかという懸念を、これは総汎的に聞いたのでありまして、板橋の出張所において不正が行われておるということは私も聞いておりません。そのことは板橋の出張所の、しかも家を貸している司法書士の方がお聞きになつたら憤慨することでありましようから、私は板橋の司法書士の方が何か特定の便宜を受け、ないしはそれを利用して民衆から利益を受けるなどといつたことのあることを予想いたしたものではありません。こういうふうに借受けなどいたしておきますと、やがてその間に何とは言えないところの一つの私情が起つて参りまして、どうも公のお役所としても、また出張所といたしましても適当でないということを十分に当局といたしましては念頭に置いていただきたいと同時に、大蔵当局といたしましても、こういつたようなことを一掃するためには、すみやかに予算を与えてこういつたような――私が先ほど申しましたところのいろいろな事例が起つて参りますことは、こういつたような欠陥があるために起つて来る、そのことを十分に御考慮願いましていかに緊縮政策の時代であるといえども必要やむを得ないものは計上して綱紀を粛正し、しこうして国民権利を完全に擁護してあげる。まず自分たち自身、官庁官庁自身の自立のできて行くように持つて行くことが必要であると考えますがゆえに、大蔵当局においても、法務法局が持つてつたならば、何でもあそこはじみな役所で少々いじめたつて何も反駁はできはせぬといつたようなまま子扱いをするような態度をとられないように私は切望せざるを得ないのであります。この際私の望んでおきたいことは、ややともすると法務省関係はまま子扱いをせられておる感じを深うせざるを得ないのであります。このことは私ども法務当局の怠慢でもあると思う。法務当局がもつと大蔵省に熱意を持つてこれらのことを説明し、実情を訴えるならば、いかにがんこな大蔵省といえども必要やむを得ないものはこれを出すでありましよう。ところが私どもの聞くところによれば、法務当局なんかもまつたく一日の仕事を一日で完全にやつているかといえば、そうでないところの部、係などがよくある。居残りなどしないで、さつさと引揚げてその日のことはその日にできないで、あくる日に残して行くということなど、事務渋滞も相当一部にあるやに私どもも承つている。これは法務当局の人々に対する待遇について非常に欠けるところがあるからであると私は思うのであります。ややもすると法務当局は何というか、ちよつと語弊がありますが、差別せられたかのごとき感を深うせざるを得ないような予算の編成ぶりであります。従つてこのことについては大蔵当局においても十分に念頭にお置き願いまして、登記所のごとき借家住まいでありまして、しかも先ほどの村上局長の御答弁にありますように、立ちのきを受けて困つておるような実情にありますことなど、もつてのほかでありますから、法務当局は非常に直実なこつこつとやつているまじめな省でございますので、むしろこれについてはさらに減額などでなしにもつとふやしてやつてしかるべきではないか、それくらいの情は加えてやつてしかるべきだと思うのであります。私がなぜこういうことを言うかといえば、私どもが数年前法務省の一室に事務をとつてつた時分に、あの当時は次官級でなければ自動車なんかなかつた。だがその後どんどん自動車がふえている。最近は農林省にしても大蔵省においてもどんどんとんどん自動車がふえて、もう課長も係長も乗りまわしているような実情であります。そうしてかつて新聞に取上げられたように夕方になつて料理屋街に行くと官庁のナンバーのついた自動車がずらつと並ぶから、四万台といえばみなお役人の乗りまわして来ている車だといつてラジオでたたかれて、その後番号もかわつてしまつてどういう番号を用いているか知りませんが、とにかく国民から指弾されていることは間違いない。どんどんそういう費用をおふやしになつている。しかして私どもこの予算を通じて痛切に感ずることは、食糧費というものが多額になつている。これは私どもの郷里、吉田総理と一緒の高知についてこれを考えてみても、高知市におけるところのまかない費中食糧費というものがどう計上せられているか。ああいう小さな都市でも五百万円計上されている。その食糧費というものは一体何に使われているか。中央からいらつしやるところのお役人の接待のために約その七割ないし八割を用いている。この食糧費というものはほとんど宴会費です。本省その他におけるところの食糧費の厖大であることは申すまでもありません。これは何十何億になるでありましよう。そういつたような費用はおいて、この際何ぼでもけつこうです、ひとつこの法務委員会においても宴会など、これは通常会において一回ぐらいはあるいは懇親かたがたやつてもいいかもわかりませんけれども登記所が今言つたような実情にあつてつているという国家財政であるとするならば、われわれが安閑といたしまして料理なんて食つておられるときではありません。削るべきものは削つてこういう方面にまわすという方法が幾らでもある。従いましてこれはほんの一例でありまして、宴会費と自動車をついたところでこんなところではございません。いわゆる週末の保養のために出されるところの寄付金とか、あるいは保全会とか利子補給とかいうものに至つては実に驚くべきもののあることは申し上げるまでもありません。私はこういつたようなものについてそんなに掘り下げて申し上げようとは思いませんが、この法務省関係登記所までも明け渡しを受けて困つているような実情であり、人の家を借りなければならぬような実情で、光熱費すらもなくて、しかもわずかに一千円くらいの渡切り経費でごまかしているといつたようなことで、どうして国民権利を預かつているところの登記あるいは図面、台帳などをほんとうに安心して国民が預けておられるのであろうか。こういつたようなことを考え合せますならば、まずもつて何をおいてもこういつたような費用はふやしても、食糧費や自動車の一部は削つてもけつこうである、やる方法はあると思う。私はこの意味において、この面については別に法務当局並びに大蔵当局の御意向は聞かぬでもよろしいのでございますが、弁解があるならば承つておきたい。  進んで承りたいのは人権擁護局を廃止なさつて部になされようといたしておるようでありますが、これに関するところの説明を承りたい。
  26. 戸田正直

    ○戸田政府委員 人権擁護局を部にするという案があるということでございまして、まだ政府の案として確定いたしておらないのであります。
  27. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 その案というのは、今回の行革案の内容なつておるのでありましようか。もし案として出ておるとすれば、その案の内容を承りたいと思います。
  28. 戸田正直

    ○戸田政府委員 詳細のことはわかりませんが、自由党の特別行革委員会におきまして、人権擁護局を官房の部にするという案が考えられておるようでありまして、その案が行政管理庁の案になつておるように承つております。
  29. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 官房の部にいたしまして、一体どういうようにしようとするのでございましようか。現在の局といたしましてはどれだけのもので、それを自由党の行革案にいたしまして、官房の部とすることによつてどれだけに減つて予算がどれほど違うものでございましようか。
  30. 戸田正直

    ○戸田政府委員 私の考えまするところでは、官房の部にいたしましても予算には影響がないと考えております。それから、人員等につきましても従来通りでありまして、これも変更がないと思います。
  31. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それほどばかげたことはないと思います。行革にも何も影響がない、予算にも影響がない、何で部にしなければならぬというのでございましようか。局を部に格下げいたしまして、人権擁護を無視しようとするところの思想の現われとしか見られないのでありますが、一体局長は何と考えられておるのでありましようか。
  32. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいま佐竹先生のお説の通りでありまして、私といたしましても人権擁護局を部にする必要はないと存じております。また法務省としましても、この部にする案に対しては反対の意見を持つておる次第であります。
  33. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 法務省としては、全体としてそれに反対せられておるというのでありましたならば、それに対する適当な対策を練られなければならぬと思いますが、一体それに対するところの用意は十分であるかどうか。ことにこれはかつて破防法が提案されました時分に、一面ではその破防法を審議しながら、一面では局を部にしようという運動がその時分からすでに起つており、矛盾したところのものであつて、人権擁護を無視するところの立法運動が行われておるというがごときは、実にこれはふかしぎ千万であると私どもは思うておるのであります。破防法時代に考えたことが今やここに実を結ぼうとしておるのではないかと思いますが、これは一つの系統立つた流れであると思います。私はこれに対抗いたしまして、どこまでも人権擁護のためにもつとより強く人権擁護局のごときはふやして行くべきものであると思う。先ほど私はわずかに登記所の問題をとらえて申しましたが、法務省関係は、そういつた一つの登記所の問題を通じて考えても、今申し上げまするようにまるきりまま子扱いせられて、ばかげたことであります。いわんや今度の人権擁護局のごときは、人数にもまた予算にも影響しないのに、ことさらに格下げをしなければならぬなどということは、これは一体何ということであるのか。私は、これに対して法務当局が、せられるならばしかたがないというようなことではなしに、断固立つて法務当局といたしましての意見を押し通す、これは格下げ絶対相ならぬということを確信を持つて押し通さなければならぬと存じますが、これに対する確信と御用意はいかがでございましようか。
  34. 戸田正直

    ○戸田政府委員 この前の国会におきまして人権擁護局を課にするという案が政府案として出されたのですが、このときは衆議院をこの案が通過いたしまして、参議院において格下げはいかぬということに修正されたのであります。その当時の政府の考えとしては、人権擁護の仕事は本来は民間の団体ですべきものであるから、人権擁護局を課にしてもさしつかえないのだということでありました。民間の団体としては、日本弁護士連合会がこれをやるべきであるというような考えであつたのでありますが、日本弁護士連合会におきましては、この人権擁護局を縮小することはまかりならぬ、役所と民間とが協力して行くべきであつて人権擁護局を縮小することはいかぬという介護士会の強い決議がありまして、いろいろの運動等もあつたのです。そうした関係から、前の国会におきましては人権擁護局を縮小しないということになつたのですが、今度の縮小しようという考え方は、人権擁護局ただいま十四名の職員、従つて十四名の職員では局としての体裁をなしておらないのではないかというのが、どうも根本の理由のようでございまして、こういう考え方に対しては私たちも反対いたしております。量の問題ではなくして、質の問題であるのだ、この重大な人権擁護という仕事をするのに、局員が少いから局はいらないというような考え方は絶対間違つた考えである、かように考えておりまして、ただいま佐竹先生の御注意のように、この人権擁護局を縮小するという考え方には、私自身も絶対に反対の気持を持つております。さようなことのないように極力努力いたしたい、かように考えております。
  35. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 十四名の職員で体裁をなしておらなければ、これは体裁をなすようにおふやしになつてしかるべきであると思います。私も日本弁護士連合会の今常務理事をやつておりますが、ただいま局長のおつしやる通り強い熱意を示しております。今日人権擁護は非常に重要な問題であるにかかわらず、ややともすると当局がこれをなおざりにし、反動に傾く気配を見るということは、非常に遺憾のきわみであります。日本弁護士連合会といたしましても、民間の団体として猛烈にやりますとともに、政府当局といたしましても人権擁護に関して万全を期すべきである。またこれは民間でやるべきであるとおつしやいますけれども、民間がやるのに政府が予算を出すというわけには参らぬでしよう。やはり政府は政府として、みずからの予算でもつて人権を擁護するだけのことはしてやらなければならぬ。一方において行き過ぎがあれば、一方においては助けるところの態勢を整えてこそ、これこそりつぱな国家機構であります。承るところによれば、局長も民間から出られた優秀の士として局長におつきになつておるのでありますが、もし課長に格下げなさるということになれば、それは一日もそういうところにはとどまることができないで、その優秀の士を失わなければならぬことになるでありましよう。これはとんでもないことである。単に局長課長にする程度だから何でもないなどといつたような、そんな問題ではありません。この問題は人権擁護という、しかも平和憲法を守ろうといつたような、そういつた大きな問題へつながるところの重大問題であることにかんがみまして、当局といたしましてもひとつふんどしを締めて、ぜひこの人権擁護局を縮小するようなことなしに、もつとこれを拡大いたしましてそうして完全に国民の人権を守り抜くことのできるような態勢をむしろ拡充せられんことを切望いたしまして、私はこの程度で本日の質問を打切ります。
  36. 林信雄

    ○林(信)委員 佐竹委員より質疑が行われた範囲にとどまるかと思いますが、私の考えております立場というものも全然佐竹委員と同じところにあるのでありますが、なおこれに牽連いたしまして二、三の点を伺つておきたいと思うのであります。  まず法務局関係人員削減の問題なのですが、八千三百二十八名から二百三十名という数字は決して少い数字ではないと思う。これをその数においては多い登記事務関係法務局出張所関係人員に触れることはできないことは当然であるとしましても、その他の法務局関係のものよりするというならば、明年度の八十九名にしろ、明後年度の百四十一名にしろ、大体どういうふうにおやりになるのでございましようか。天引的なのでしようか、あるいはひもつきで何々関係事務方面の者を削減しろというふうなものになるのか。減員の具体性はどういうところにあるのでございましようか。これを一応承つておきたいと思います。
  37. 村上朝一

    村上政府委員 この二年度を通じて二百三十名という数字が出ますまでに、いろいろないきさつあつたのでありますが、この数字になります前に三百十三名という数字が出たことがございます。この数字の内訳を申し上げますと、まず本局登記、戸籍等の職員が四%減、本局の訟務、人権擁護関係職員が八%減、支局出張所職員の二%減、なおその他に内部管理と申しますか、会計とか、人事とかいう事務をやつております職員の一四%減、こういう割合で算出いたしました結果が三百十三名になつておりますが、登記事務がこれではやつて行けない。ことによると出張所の一部から職員を引上げなければならぬことになるということで、最後の段階になりまして、三百十三名から登記関係職員約六十名を復活しようということになり、さらにその後この六十名が二十名ふえまして八十名ということで、約二百三十名という数字におちついたわけであります。従いまして行政管理庁で立案いたしましたこの法務局関係職員整理の重点は内部管理職員の一四%減というところに一番置かれているわけでございますが、各本省は大体二〇%という率で削減されたのに対しまして、法務局本局の人事、会計等の職員については一四%という数字を占めておるわけであります。
  38. 林信雄

    ○林(信)委員 内部管理事務という言葉だけでは、われわれは直接職務にタッチしておりませんのでよくわかりませんが、最も危惧せられますのは、ただいま佐竹委員からも述べておられました本局関係事務の中で、いわゆる管理事務という言葉に当るか当らないか――むしろ当らないと思われるような、言いかえれば法務局関係の本務としては登記関係事務、あるいは人権擁護の事務、あるいは国を代表する訴訟関係事務、こういつたものを大ざつぱに取上げて、おそらくこれが全部ではないかと思うのですが、その中で特に減を考えることなく、むしろ増を望まなければならないのは、時代的な感覚からいつても、人権擁護関係事務であろうと思う。局を課にするとか、部にするのはもつてのほかであるが、本省関係においてはどうにか形だけは残つておるけれども、末端においてそれが人員の面で減らされて行くということになれば、一種の外ぼりが埋まり、内ぼりが埋まつて行くということも思わなければならないし、いなそれ自体人権擁護の面において欠くるところがただちに出て来るものだ。そういうものが含まれておらないことをわれわれは庶幾するわけなんですが、もし万ーそういうことが考えられるならば、これはたいへんな問題だと思うので、特にこの点を伺いたいと思うのですが、その方面の職員についてはいささかも削減することがないということであるのか、あるいは差繰りによつて削減のさ中ではあるけれどもむしろ増がなされておるというのであるか、これを伺つておきたいと思うのです。
  39. 村上朝一

    村上政府委員 先ほど管理事務と申しましたのは、本局でやつております事務のうち、登記、戸籍、供託、公証、訟務、人権擁護、これだけの仕事を除いたものでありまして、これが一四%、人権擁護事務と、訟務事務、これは八%減ということに相なつております。ただ人権擁護事務に従事しております職員が現在全国法務局に合計百五十五名おります。この八%を二年間に整理するという案になつております。
  40. 林信雄

    ○林(信)委員 それですから、先刻言つておりますように、人権擁護に対する法務省の熱意というものは、単に局を保持するというのみで、末端においてその人員が減らされるということは、それだけその活動が表に現われて来ないわけです。それはりくつとしては、人が減つたところで特段の熱意を持つて削減せられた人員にまさるだけの仕事をやるのだ、こう言えば言えないとことはない。しかしそんな精神面だけではたして仕事の実績が上るものかどうか、上るということは言えるのです。しかし実際面になるとなかなかそうは行かないのです。と同時に対外的に考えました場合、そういうことが国民の間に、形の上から見られませんと、やはり法務省というものは人権擁護に対して熱意を欠いておるのではないか、こういうふうに思われる危険は多分にあると思う。その辺からいつて本省関係のことばかりを大きな問題として、世間が見ておるからというふうな観念でそつちを気をつけておるということ、これも悪いことではない、重要なことなんだが、末端においてそういうものがしつぽを出して来るならば、これはやはり国民が疑つて来る。そういうことでは法務省がせつかくこれまでやつて来た人権擁護の熱意が大いに価値を削減して来るわけです。いないな人権擁護の根本的な問題からこれは考えなければならぬ問題であると思うのですが、その点に対して、その部分の人員削減に対して、人権擁護の面からその実績をどう上げようというお考え方であるのでございましようか。これはおそらく戸田さんも御承知の上でこういうところにおちついておるのではないかと思うのですが、これは戸田局長の御意見を承つておきえいと思います。
  41. 戸田正直

    ○戸田政府委員 人権擁護局予算人員等につきましては、決して満足できるものではございません。かようなことでほんとうの国民の人権擁護ができるかどうか、私自身も実は疑つておるわけであります。この前の機構改革のときにも人権擁護局はむしろ拡充しなければならぬというので努力いたしたのでありますが、拡充どころか局をなくすかどうかというところで、辛うじて残つたという程度で、拡充することができないでとめられてしまつたのであります。今度の場合にいたしましても、御承知の警察法が改正されようといたしておりますので、むしろ人権擁護局というものは拡充強化されなければならぬものだというふうに考えておるのでありますが、そうした時期にまた機構改革が出て来ておるというようなことで、機構の拡充強化ということをやろうとする時期に必ず機構改革等によつて押えられてしまうというようなことで、これは私たちの力も足りませんでたいへん申訳ないと思つておりますが、さようないきさつで今申し上げたような貧弱な局として参つておるのであります。率直に申し上げますと、実は先ほど民事局長から全国で百五十五名の職員であるということを申しましたが、大蔵省から認められております予算定員というものは、五十六人半しか予算上認められておらないのであります。それを法務局のいろいろ人員をやり繰つて、百五十五名まで辛うじてふやしておる、従つて四十九でございますから平均いたしますれば三人くらい、大体法務局で七、八人から、地方法務局で二、三人というようなことで、国民の人権侵犯事件調査処理と、自由人権思想の普及高揚の活動、それから人権擁護委員全国に四千三百名ただいま置いておりますが、この人権擁護委員の運営というものを、このわずかな職員で辛うじてやつております。人員が減らされてこれでまだ大丈夫だというようなことは、私としては申し上げられないのでありますが、いつも人員整理が天引きというようなことで一律に削られますために、徐々に減つて参りまして、昭和二十三年に二十五人ございました職員が、二十四年、二十五年、二十六年、二十八年、毎年のように天引き整理されまして、ただいまは十四名というものになつております。こうした貧弱な予算人員等において十分なことをしろというようなことはとうていできないと思います。ただこの予算人員でできるだけの努力をして、やれるだけやつて行くという心構えでいたしておる次第でございます。
  42. 林信雄

    ○林(信)委員 内容をいろいろと聞いておりますると、その根源は、経理の根源である大蔵省に結局は源を発しておるようであります。従つて法務省関係の諸君をこれ以上追究いたしてもどうかと思うのですが、ただその点についていつでも考えられることは、大蔵省に対する予算要求の熱意の問題、これは詳しく申し上げるまでもないが、今後ともさらに一段の御熱意を示していただきたいと思う。大蔵省の考え方がそんなに後退してしまつて年々人員が減らされて来たということで甘んじておつたとは、おそらく言われないだろうと思いますけれども、とにかく事実がそうなつて来てしまつたということに対しては、これは言葉での熱意は受取ります。別に人柄に対する疑いも持たないのですけれども、形の上からいつて残念ながらその熱意をただちにこれを受取れと言われても、これはちよつと受取りにくいのじやないか、失礼ながら一段の努力を願いたいということを附言して私らにおいてもこの問題はもう少し再検討を試みてみたいと存じておる。  時間の関係もありますので、先刻来質疑のありました関連として、法務局出張所の問題なのですが、これは行政改革に牽連して人員を減らす関係よりして、その出張所が廃止されるといううわさであつたのであるが、それはやつてはいかぬという正しい考えのもとに――村上民事局長の言いよれば、それがここに確立したようであります。まことにこれは同慶にたえない。今さら申し上げるまでもないが、地方出張所等に至りますると、地元民の利益関係よりではあるけれども、その設置に当つては非常に地元の協力を求めて、また地元も進んで協力をしてつくつておるものが多いと思う。それをただ当局の都合次第、経理の都合次第で簡単にやめてしまう、これは一面から見ればやむを得ないという考え方にもなりましようけれども、それではどうも義理が済まないわけです。もちろんその結果は地方民の非常な不便になるわけなのです。また外側から見ておりますと、つくつたは、やめたは、またそのうちには必ずつくらなければならぬときが来るのだ、当局のやり方もずいぶん朝令暮改だというふうに見られる危険も、これは多分でなくて明瞭にあるのです。そういう義理を欠いて、悪評を買つて一部地方関係者の利益を蹂躪してまでやらなければならぬほどの、それほどの問題であるかどうか。よつて国家が利益するというか、全体的にながめられば損失でございましようけれども、一時的にも若干の経費の融通を得るというその事柄と差引するほどの事柄であるかと考えますときにおいて、これを思いとどまらせたことについては敬意を表する。しかしそれほど明瞭な問題であることを、そういうことが実現しそうなことによつて世間に非常に危惧の念を抱かしめたのはこれはどういうわけだろう。言いかえまするならば、今はそういう決意がはつきりしたのだけれども、ある時期においては、このある部分のものを廃止しようということを声明、あるいは少くともお考えになつたので、ございましようか。どういうところからこういうことが、いわば今日の問題になつたわけなのでございましようか、経緯をひとつ参考までに伺つておきたい。
  43. 村上朝一

    村上政府委員 先ほども申し上げましたように、私どもとしては、当初から出張所を廃止すべきでないという考えを持つておるのでありまして、行政管理庁から七言数十名の整理人員を示されたときも、出張所を廃止すべきものでないという前提で、その整理人員削減を主張したわけでございます。もつとも行政管理庁の方は、当初はあるいは一部出張所の廃止はやむを得ないという考えがあつたかとも思いますが、私どもとしては当初からそういうことは考えておりません。また声明を出し、あるいは地方へそういうことを言つてやるというようなことも全然なかつたのであります。ただ一割近い人員削減するということになりますと、都会地の法務局本局支局は非常に事務がふえておりまして、一人当り負担量が多い。一割近い人員を捻出するためには、勢い事件数の少い、おそらく、本局に比べますと何分の一にも当るようなところがあるわけでありますから、そういうところの人員引揚げられるのではないかということを現地の地方法務局職員なり、あるいは現地の関係市町村の方がお考えになつたのじやないかと推測はするわけであります。私どもとしては、そういうことを考え、または計画したことは全然ございません。
  44. 林信雄

    ○林(信)委員 これも聞いてみますと、法務省をこれ以上やかましく責むべきものでないようであります。推して行けば源は結局大蔵省関係、憎むべきは大蔵省であるということになつてしまうので、これ以上申し上げませんが、こういうことを大蔵省あたりで考えたり、意見が出たら、これをひとつ輿論化するというと事は大きくなるのだが、まあ聞かしてみてやつた方がいいじやないかという者には、ちよつと言つてもらつた方がいいと思う。われわれうかつにしておりまして、あなたの言う地方民の諸君からむしろ聞いたような程度でありまして、今後ひとつそういうこともお考えおき願つて、われわれの耳にもさしつかえない範囲において入れていただきたいということを要望申し上げておきます。  もう一つ、ひつくるめて、出張所関係について人の面からも、物的な面からも、廃止どころではなくて充実しなければならぬという点です。これは私も若干の事例を知つておるのでありますが、人の面におきましてはなるほど都市の登記事務は非常に激増して来たでしよう。しかしそれと同じように、やはり農村関係、都市以外の土地においても必ずしも逆に減少したとは言えないのではないか。同じ件数のものがたらいの水のようにどつちかに片寄るから、他の面が減るというのではなくて、やはり都市が増加する場合は農村関係増加する、こういうことじやないかと思うのです。そうなると先刻来話が出ておつたように、やはり僻陬の地の出張所関係の者も待遇の面において、あるいは物的な設備においていろいろ考えてやらなければならぬものができて来るだろうと思うのです。今取上げられて一番問題になつておりますのは、どうしてもやはり僻陬の地の出張所建物であつたりその他の施設であつたり、あるいは待遇の問題のようです。渡切費の問題のごときは、往年においては、金の価値があつたわけでありますから、わずかでもたいへん喜ばれておつた。金額においてはたいへん増加されて来たかもしれませんが、今日においてはまことに足らないものになつておるらしい。寒いときに暖房がとれなくて、能率が上らないということも考えられるし、日が暮れて電気をつけるとあるいはメーターが上るということも考えられるし、いろいろなことでこれは不自由をしておると思うのです。ことに直接待遇問題等には関係がないけれども登記簿という重要な書類の保存について、一体僻陬の地の出張所なんかにおいて火災のための予防、いわゆる不燃性の倉庫等がどれだけ準備されておるか。これは非常に要望されておるのではないかと思いますが、まあめつたにないからいいと言えばそれまでですが、その辺から火が出たらおそらく焼けてしまうような保管方法ではないかと思うのです。また人員の面から考えますと、先刻も話が出ておつたのですが、事務簡素化されていない。世はあげて民主化時代と言つておるのに、一々下付申請を出さなければ登記簿の謄本も抄本ももらえないというようなことではどうかと思うのでありまして、そんなものは人間が充実しておればわけなく行くかもしれませんが、実際に行つておらぬとすれば、これはまた別の面から考えて、もつと簡素化して、そうして言つて来たならば、土地だつたら地名、番地を言えばそこで受付簿か何かに書いて、判こか拇印でも押させるというようなことを考えたらよろしいのではないかと思う。とにかく地味な役所として、ことに僻陬の地にある登記所のごときはずいぶん見落しになつておるのではないかと思うのです。これは検討を試みますればいろいろ改革すべき問題があると思う。また新しく施設しなければならぬたくさんなことがあろうと思うのです。ことに人と物とをごつちやにしておりますから、いろいろ申しますが、人が足りないために、登記所をつくるときに協力を得た人にさらに継続して御迷惑をかけておる。登記事務が渋滞して来ると、村役場から人を頼んで応援を得てその登記事務を済ませる。これは登記事務の重要性から言つてどうかと思う。経験のない者にそういう事務の応援を求めるというと、なるほどそれは監督はしてやるのでございましようけれども、やはりなれない者は、たとえば簡単な数字の一、二、三をやかましい文字の壱、弐、参に書かなければならぬ、それを間違つて見るというようなことは朝飯前であろうと存じますし、間違いがあろうと思います。こういうことはあつてはいかぬと私は思うのですが、そういう話を聞いておる。これはひとつそういう事実があるかどうか、あるとすればどうだ、事実はわからないけれども、仮定としてあるならばどうだというようなことの意見を伺つておきたいと思うのです。要はひつくるめまして、登記所に関する設備、あるいは人員の面において、待遇の面においていいろ考えられる村上局長の一般的にして根本的な御意見をこの際承つておきたい。かように思うのであります。
  45. 村上朝一

    村上政府委員 いろいろの点に触れて御注意をいただいたのでありますが、まず登記所の渡切費の問題、これは東京その他大都市出張所では、庁員五名以上の登記所がかなりあります。そういうところは渡切費でなく、庁費で支弁するということに本年度からなつております。庁員四名以下の登記所に対しましては――これは数の上において大部分でございますが、一庁平均六千円として予算が計上されております。むろんこれでは十分でないことは申し上げるまでもないのでありますが、今後も極力これを増額して、実情に即するようにいたしたい、かように考えております。  それから出張所における地元の町村からの応援の問題であります。これは大都市ばかりでなく、農村地帯の出張所におきましても、事件が減つてつたわけではなくて、事件はやはり漸増いたしております。特にいわゆる耕地整理――現在は土地改良法による土地改良でありますが、交換分合とか耕地整理等が行われますというと、一時に大量の登記事務を処理しなければならぬことになるわけであります。そういう場合に対処するために、相当数人員を常時置いておくわけには参りませんので、そういう事件が出て参りますというと、近傍の出張所からできるだけ多数の人員を応援に出すのであります。しかしもともと出張所はそれぞれ事務官一名、雇一名程度職員でありまして、さほど応援を出す余裕を持つておらない。また本局からも応援を出しますけれども、これもさほど余裕がないということで、勢い耕地整理登記事務等が渋滞するおそれがある。そういう場合に町村からそれを見かねて応援を出すということは、ときどき行われているように私聞いております。しかしこれは御指摘になりました通り法務局職員としての職責を持つていない人が登記事務に応援をするということは、決して好ましいことではないのであります。私どもとしては、できるだけそういう場合の人員余裕も見て、法務局職員を全般に充実すべきものとかように考えて極力そういう方向で努力したいと思つております。
  46. 林信雄

    ○林(信)委員 結局は一段の熱意と努力を願つておくほかはないと思います。  この際大蔵御当局、ここに鳩山主計官がお見えのようでありますから伺いますが、これはいつのときでありましたか、特にあなたに要望を申し上げておつたのですが、それを取引として今日結論を求めようとしておるわけではないのですが、あなたは法務省関係の主計官として、法務省関係予算あるいは裁判所関係予算に対して理解のあるお取扱いを願つておるとわれわれは承知しており、なお一段の御尽力を御期待申し上げておつたのであります。おそらく御尽力願つたのだろうと思うのでありますが、本日もこの委員会でたまたま法務局関係経費削減の問題、ことに出張所が廃止されるかどうかというような点、あるいは人権擁護局が格下げになるのじやないか、あるいは出先の法務局関係において、人権擁護関係人員経費削減されるんじやないかというようなことで論議が行われたわけでありますが、幸いにして、人員削減はするけれども出張所それ自体を削減するところまでは行かなくて済むだろう、あるいは人権擁護局は格下げにならなくて済むだろうというような程度のことはあつたのでありますが、法務局関係において相当人員数が削減されるという事実は間違いがない。そうしてその一部として地方の出先の人権擁護関係職員がかなりの数削減せられる、こういうことのようであります。それは根本としまして、現在のきゆうくつな国家財政において、これらの経費削減し得るものならば削減しなければならないということも、これは一応考えられる。ただその削減することをあまりにも画一的に、一律的に、ただ人を減らすことによつて財政支出を減らせばいいというのでは、これは簡単に過ぎるのであります。言いかえますれば、行政が一つの政治でありますれば、政治を離れたビジネスに過ぎないことになつてしまう、それであつてはならぬということが、思いを深くいたします者の考え方であります。その点において、ただいま申しておりますような人権擁護のことは、今さららしく憲法を取上げなくても、これは人の尊厳の問題よりいたしまして、きわめて重大な問題であることは、ここに呶々を要しないのであります。もつともそれを民間の事業に移して民間においてやるのが適当であろう、これも一つの考え方ではあります。しかし民間においては、それに適切な弁護士なり、ことに東京においては日弁連等においてこれに努力していることは、これは政府当局も認めておられるところであろうと思います。それらのものが、民間においては民間のものとしてこれに努力する。協力というよりはその使命をもつて努力するということは、これは当然であります。民間においてやつているから、将来とも民間にまかせてしまえばいいのだ、これでは一体政府自体として人権擁護のことをどう考えているか。どこまで行きましても、民間にどれだけの熱意を持ちどれだけの努力が行われましても、政府は政府として熱意を持ち努力しなければならぬ問題である。従いまして、その熱意と努力を実現するということが形に表われます場合は、自然に人を要し、経費を要することは、これはもう理の当然であります。時代的にながめましても、特に人権擁護のことが叫ばれております今日、いささかでも増になつて参りますならば考えられもしますけれども、それが人の面において、経費の面において、いささかでも減じて行くということは、これはどうかと思う。そういう点について、一体大蔵当局としてはどういうようにお考えになつているのか、ただ財政支出を減らしたいのだから、前年度あるいは平均年度の支出においておよそこれくらいだから、天引き的に、あるいは割当て的にこれだけ減らすという考えだ。そうじやないといわれるかもしれないけれども、どうもそんなふうに思われるふしがある。法務省関係予算というものは、大方は地味なんだ。言いかえますれば、輿論の支持といつたようなものはたいへん少いのではないか、地味だから声が少い。それだからといつてそまつにはしないということも言われるかもしれませんが、そういう杞憂を法務省に対する予算関係に心をいたしている者はいずれも持つているのであります。これを大蔵省当局がほんとうに理解して、声なき声を聞く、特に法務省関係においては、三権分立の面におきましても、あるいはその行政の実際において最後の正義を守るきわめて重要な行政面が多いということを痛感されて、格段の御留意があつてほしい。最近の人員削減等の問題とも牽連いたしまして、根本的に、あなた自身もしくは大蔵省一まとめにしまして、何か法務省予算関係についての考え方に特異なものがありはしないか、よかれあしかれ特異な面がありはしないか、もしありとしますれば、そういうことを交えてこの際伯山主計官の御意見を承つておきたいと存ずるのであります。
  47. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 この前この席でやはり林委員からいろいろ御注意がございました。私といたしまして、その後二十九年度予算編成にあたりまして、十分御趣旨を体しまして仕事をいたしたつもりでございます。何分にも、最近の予算全体に対する考え方が非常にシビヤーなものになつているわけであります。私といたしましては、法務省、裁判所、こういつた基礎的なほんとうの行政をやつておるところは、そうそのときどきの政策によりまして経費をふやしたり、減らしたりという――特に減らすということが非常にきつく響くところであります。その結果非常な支障を来しては困るということを常に念願におきまして努力いたしたつもりでございます。ただ二十八年度予算が、国会修正などによりまして非常に事務費の大削減を受けまして、これを二十九年度予算におきましてはなるべく元の正常な姿にもどしたいという考え方に立ちまして、特にいろいろな事務費については、極力元の姿に復活するように努力をいたしたのであります。ただ全体といたしまして前年度予算に対してさほどかわりばえがしないという御非難はあろうと存じますが、これはどうも全般的な財政方針のために万やむを得なかつたと考えております。  なお職員定員の問題につきましては、大蔵省といたしましては、主管の行政官庁の方にお願いいたしまして、閣議できまつた線をそのまま予算に盛り込んだということでございまして、大蔵省が積極的に法務局職員の数を減らすというようなことを考えたことはございません。法務局のごとき、明治からずつと営んで参りました仕事につきまして、最近の事情に照してなお改善する余地が多々あると思いますが、その人間とか役所の数とかいうようなものは急に減らせるものでないということをよく考えて、私どもは仕事をして参つたつもりであります。
  48. 林信雄

    ○林(信)委員 私もなお検討してみたい点もありますが、私の質疑はこの程度にしておきます。
  49. 小林錡

    小林委員長 私からちよつと聞きたいのですが、ただいま村上政府委員から伺つてみましても、法務局出張所ですか、いわゆる登記事務所が千七百九十箇所ある。そのうち三百六十二が国の所有で、あとはその他の者の所有しておるもの、あるいは個人の所有の家屋を賃貸したりして事務所ができている。ほとんど大部分が固有の建物を持つておらぬようであります。聞くところによると、司法書士の持家を賃貸借をしているというような関係から、その家賃の関係やいろいろなことから電燈すらこのごろつけられないというので、大分困つておるようです。そういうようなことから司法書士との間に私情がまじつて、いろいろの不正が行われる。ことに昨年のごときは、一ぺん使つた印紙を上手に消して使うとか、いわゆる偽造印紙の使用というものが何億という、全国に大きな事件が起つたのですが、これなども大体そんなものから火がついているらしい。実際そういう家を借りているというようなことから起つて来ているらしいのです。ことに東京に近いところになおかつそういうものが大分あるということでありまして、登記所というものをもう少し何とかしなければならぬ。不動産の権利関係、ことにこのごろは会社設立が非常に多く、会社関係の仕事も多い。こういう非常に仕事の多いところに持つてつて、人数が少い。しかも建物が非常に不十分なものである。私もでき得るだけ見てまわつておりますが、ずいぶんひどい建物が多いのであります。まるで犬かねこのいるようなところで仕事をしてしかも大事な登記原簿が、ややもすれば雨の漏るようなところに入れてある。ことに私が見たところでは、雨が降ると庁舎の中で雨がさをさしておらなければ書類も出せぬというようなところがある。これは鳩山主計官に一ペん見ていただきたいと思う。ずいぶんひどいところがある。先ほど村上政府委員に聞きますと、設備の方は非常に不十分だが、人員の方は大体何とか調整ができそうだというお話でありましたが、事実はそうでないので、税務署が扱つてつたような仕事を、そのままわずかの人数でやつておるのでありまして、自分の郷里のことを言つては悪いのですが、私の郷里の方の挙母市の登記役場のごときは、雇が一人ついているか知りませんが、ほとんど一人、そこで登記の仕事ができないというので、近いところの町村から役場の吏員が一月くらいずつかわるがわる手伝いに行く。その弁当代を出してもらうわけに行かぬから、みな役場から自分の弁当を持つて一月くらいずつ手伝いに行つて、ようやく登記の原簿の記入ができるというようなぐあいで、非常に泣くように言つているのです。これは地方法務局長がもう少し注意をして仕事の多いところには臨時に手伝いをやるなり何なりすれば、あるいはできるかもしれませんが、何にしても私の経験したと同じようなことを委員諸君もずいぶん経験をされているようでありますから、村上局長の言われるように、人の上では十分なりと言うわけには行つておらぬと私は思います。この登記所の役人なんというものは弱い役人で、何か法務局長にでも苦情を言えばすぐ首にでもなりそうなような、非常に弱い考えを持つている連中が多いのですから、この点はひとつ上の方から同情して、仕事が完全に行くようにしてやらなければならぬと思う。要するに登記原簿の間違いなどから影響を受けるのは国民一般でありまして、不動産に関する権利を証明する登記なんというものは非常に重要なものだと私は思う。どうか民事局長もまのあたりよく実際をごらんいただき、また大蔵省の鳩山主計官にわれわれ非常に重きを置いてお願いしているわけでありますから、あわれなる登記役場の連中の設備並びに人員というものにつきましては、もう一ぺん認識を新たにしていただきたいと思います。  ほかに御質疑ありませんか。
  50. 山中貞則

    山中(貞)委員 奄美大島復帰が実現いたしました後の所管事項について二、三お尋ねをいたします。  大島復帰に伴いましては諸種の関係法令等が施行されておりまして、最大限の混乱を防止する方法は、一応とつたのでありまするが、実際の帰還が実現いたしましたときにおきまして、その処理がスムースに行われたかどうか、さらにまた切離されて沖縄に残つておる人々との法務省関係のいろいろな処理については、これも順調に行つているかどうか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  51. 位野木益雄

    ○位野木説明員 必ずしも十分な調査をした結果お答えすることではございませんが、概括的の私の今存じておることを申し上げて責めを果したいと思いますが、国会に提案いたしまして成立いたしました法律及びその後法律から委任されました政令でその措置等もいろいろ定めたのでありますけれども、大体において、スムースに引継ぎ等も行われまして、たとえば国会で御心配いただきました在監中の囚人の取扱いあるいは刑事事件の引継ぎ、そういうことも順調に行つたように聞いております。それから、沖縄の関係でありますが、これは裁判所に係属中の事件が少し向うの上訴裁判所にあつたのでありますが、この引継ぎにつきましては、裁判所からまだ具体的に聞いておりませんが、それ以外に法務省といたしましては、人員の引継ぎがございました。沖縄に奉職いたしておりました奄美出身の公務員でありますが、これは向うの方でまだ必ずしも具体化していないようでありますが、場合によつて退職させられるというふうなことになるかもしれないということでありますが、これは全部こちらで引受けるというような処置になつておりまして、大体において引継ぎは順調に行われております。
  52. 山中貞則

    山中(貞)委員 復帰後まず考えられなければならないことは、すみやかに鹿児島の裁判所の出張所を向うに設けて、そうしてそれらのスムースに行つてると本省では感じておるものの、その間におきまして具体的に発生しておる諸種の処理困難な事情を、鹿児島からでも二十時間離れておるところでありまするから、迅速に処理できるような手続が当然ふまれなければならぬと思うのでありますが、そういう裁判所の支所の開設の意思があるか、あるいは行われるとすれば、具体的にいつころの見通しをもつて手続をとつておられるか、お知らせ願いたいと思います。
  53. 位野木益雄

    ○位野木説明員 裁判所の支部の関係でございますが、すでに名瀬市に地方裁判所の甲号支部が設置せられております。裁判官も三名すでに任命されて赴任しております。ほかに簡易裁判所も二箇所設けられております。現在の日本の財政事情その他から考えまして相当の処置はとられておるというふうに考えます。
  54. 山中貞則

    山中(貞)委員 それは復帰後とられた措置ですか、それとも今まで琉球軍政府下に置かれておつたその機構を、便宜上今あなたが話されたような形において引継いだ形になつておりますか。
  55. 位野木益雄

    ○位野木説明員 復帰後、御承知のように、簡易裁判所の方は、例の奄美大島復帰に伴う法律に基きまして設置されたのであります。それから、支部も復帰後制定された裁判所の規則で設置せられたのであります。事実上におきましては、建物あるいは職員の大部分等は、沖縄政府の職員を引継いでおりますが、法制上はまつたく新しく設置したことになります。
  56. 山中貞則

    山中(貞)委員 政務次官にお尋ねをいたしますが、今までお話を申し上げました奄美大島は、住民が二十二万、新しく日本に帰属をして参つたことになるわけであります。そういたしますると、元来純朴なところでありまするから、別段他の場所に比べまして特殊な犯罪が多いところとか、あるいは今後ふえる見込みのあるところとかという点は、南方密貿易との関係等を除いては、そう考えなくてもよろしいと思うのでありますけれども、それだけの人口増加が直接に機構の上に考えられなければならない問題というものは、私は無視できないものがあると思うのであります。次官も御承知だろうと思うのでありますが、奄美大島復帰に先立つ数年前から、数年前と申し上げますれば誇張になりまするが、二年ほど前から、鹿児島県の官公署あるいは関係者たちが一丸となりまして、高裁支部を鹿児島に設置してもらいたい、こういう陳情を行つておるはずであります。本来この問題はお耳に入つておるかもしれませんが、福岡の高裁におきまして、場所決定についての判事の意思表明が行われましたところ、圧倒的に鹿児島にきめていただいたのが初まりでありますが、しかし遺憾ながら戦後におきまして、九五%の戦災をこうむつておりました鹿児島県もしくは鹿児島市としては、受入れに伴う庁舎あるいは付属する官舎等の受入れが見通しが立ちませんために、一応お断り申し上げた。幸いにいたしまして、隣県宮崎がそれに必要な庁舎が残つており、あるいはまた受入れに必要な官舎等も、転用できるという見通しがありましたために、私どもも喜んで宮崎市に設置をお依頼したというようないきさつがあつたのであります。ところがその後犯罪の処理件数、あるいは高裁に関係のある犯罪の処理状況等を見まするに、宮崎にあのような戦後早々の間に設けられたことは、今後恒久的なものとしては少しく早計ではなかつたろうかといういろいろの資料が実はできておるわけであります。判事の構成の問題あるいはまた犯罪の処理件数が、宮崎に置かれた場合と、福岡と鹿児島と、いわゆる九州の南北に二分いたしました場合の処理のされ方、予想でき得る数字というもの、いろいろの観点から、やはりどうしても鹿児島というものは切り離せない、こういうことに大体結論がなりまして、運動を続けておつたわけであります。ところが今回奄美大島が帰つて参りまして、冒頭申し上げましたごとく、二十数万の人々が新たに日本の法治体制の中に入つて参りました。そうすると奄美大島からは、船の便から申しましても、鹿児島に直接しかございません。その時間も二十時間を要するところでございます。そういたしますると、今後奄美大島というものの新しい帰属後の状態を基盤にして考えてみますると、その状況と、現在宮崎に置かれておる状況との現実上の矛盾がさらに増大いたしまして、どうしても鹿児島に置かれなければならないということが打出されて参つて来るのであります。従つてそれを私どもは実現を期待いたしておるわけでありますが、しかしこういうものはりくつでは割切れませんので、たとえば宮崎県側として受取るならば、これは持つて行かれてしまうという表現にもなるわけであります。従つて微妙な問題となりましようが、やはり専門員や関係責任者のところには、あるいは次官のお手元にも、詳しいデータが差上げてございますので、この際奄美大島復帰を契機といたしまして、鹿児島に支部を設置せられるようにされたいと私は考えるのでありますが、次官はどういうようにお考えか、お伺いをいたしたいと思います。
  57. 三浦寅之助

    三浦政府委員 ただいまの御意見の趣旨はごもつともだと思うわけですが、申し上げるまでもなく、裁判所の支部設置は最高裁判所の関係であります。それに関係する検察庁は、もちろん法務省関係にもなるのですが、御指示の点につきましては、裁判所側ともいろいろ相談をいたしましてまた役所におきましてもいろいろ検討をいたしまして、適当に考えたいと思います。
  58. 山中貞則

    山中(貞)委員 政務次官は、もう少し政治的な答弁をしてもらいたいと思うわけでございます。そういう関係裁判所の直接の話の実態、今日までの推移とか、あるいはまた、当委員会の意思がある程度方向づけられれば、裁判所関係官はどういう受取り方をするとか、そういうことは私はここで申し上げたくないのであります。そこで、事務次官でない、政務次官にお尋ねをいたしておるのでありまして、政治的答弁を再度お願いいたします。
  59. 三浦寅之助

    三浦政府委員 御趣旨の点はごもつともだと思いますから、私のでき得るだけ御趣旨に沿うように努力いたします。
  60. 山中貞則

    山中(貞)委員 その答弁でありますると、次官の方には非常に都合がよろしいのであります。しかしながら今国会は、二十九年度予算を審議し、二十九年度に行われるべき行政あるいはまた行政機構上の諸種の問題を決定して歩み出す国会でありますから、次官が慎重に善処されましても、その結果が本国会中に現われなければ、これは御破算になるわけであります。しかもこの際努力してそういう方向に意思を決定してもらいませんと、いくら善処していただきましても、二十九年度に実現の見通しは、今後立ち得ないわけであります。小笠原大蔵大臣も絶対に補正予算は組まぬと言つておられまするし、従つて中途において行政上のいろんな新しい状態の起つて来る可能性はないと考えます。時期的にもさらに奄美大島が加えられた現実の上に立つて、この際はつきりとお答えを願いたいと思うのであります。
  61. 三浦寅之助

    三浦政府委員 どうも御趣旨の点ははよくわかるのですが、私の立場からそれ以上のことはちよつと申し上げかねると思うのであります。また申し上げてみたところで、もちろん私の力ではそう自由になるものではないのであります。ただ御趣旨の点はよくわかるので、関係の方面とこれを協議して、できるだけ善処するというところでごかんべん願います。
  62. 山中貞則

    山中(貞)委員 政治力抜群なる政務次官に、大臣もしくは直接の所管方面にしかるべき御努力をお願いすることにいたしまして、私の質問を打切ることにいたします。
  63. 小林錡

    小林委員長 他に御質疑はございませんか。――なければ本日はこの程度にとどめます。次会は公報をもつてお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会