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1954-05-10 第19回国会 衆議院 文部委員会厚生委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十日(月曜日)    午前十時四十六分開議  文部委員会  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 竹尾  弌君 理事 長谷川 峻君    理事 田中 久雄君 理事 野原  覺君       伊藤 郷一君    坂田 道太君       原田  憲君    山中 貞則君       辻原 弘市君    山崎 始男君       前田榮之助君    小林 信一君  厚生委員会  出席委員    理事 青柳 一郎君 理事 松永 佛骨君    理事 長谷川 保君       越智  茂君    降旗 徳弥君       安井 大吉君    亘  四郎君       山下 春江君    滝井 義高君       柳田 秀一君    岡  良一君       杉山元治郎君    三宅 正一君  出席政府委員         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君         厚生事務官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君  委員外出席者         厚生事務官         (児童局保育課         長)      吉見 静江君         農林事務官   下條菊次郎君         文部委員会専門         員       石井つとむ君         文部委員会専門         員      横田重左衛門君         厚生委員会専門         員       川井 章知君         厚生委員会専門         員       引地亮太郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  学校給食法案内閣提出第一四〇号)     —————————————   〔辻文部委員長委員長席に着く〕
  2. 辻寛一

    辻委員長 ただいまより文部委員会厚生委員会委員会連合審査会を開会いたします。  学校給食法案内閣提出第一四〇号を議題といたします。
  3. 辻寛一

    辻委員長 本案に対する質疑を通告順に許します。松永佛骨君。
  4. 松永佛骨

    松永(佛)委員 今回の学校給食法法案として生れましたことは、私どもにとりましてまことに喜ぶべきことであると存じますが、私ども厚生委員会に所属しておりまして、常に国民保健衛生とかあるいはいろいろな食生活改善その他の問題について検討いたしておるわけでございます。この学校給食法案りつぱなものではありますが、さらに画竜点睛の意味をもちまして、よりよき法案をつくつて行くという上から、私ども意見を二、三お聞きを願い、かつ質問に対してお答えを願い、また後ほど両委員協議会をお開き願えれば、その際に忌憚なく申し上げて、この法案をよりよきものにしていただきたい、かように存じておるわけでございます。  それで、この法案を拝見いたしますと、原則学校給食法であり、法律の目的、学校給食目標、この点はよくわかるのでございまして、この学校給食目標の第一、第二は当然でございますが、第三の「食生活合理化栄養改善と健康及び増進を図ること。」第四の「食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導くこと。」これが目標にうたわれておるわけでございます。この食生活合理化栄養改善ということは、特に学校児童のみならず、現在の日本食糧事情から申しましてもきわめて重大なことでございまして、従来の日本人の持つていた満腹感から、カロリー本位栄養本位食糧改善すべきことは当然であると存じますが、せつかくこの学校給食法案ができるのでございますから、この食生活合理化栄養改善、健康の増進、こういつたことにさらに百尺竿頭一歩を進めて、現在厚生行政の中にございます栄養士その他の関係を織り込んで、食生活改善あるいはこの給食法を生かして、給食病あるいは伝染病予防という方面にも資さなければならぬと思うのでございますが、現在当局におかれては、この栄養士その他の関係はどういうふうに調理専門従事員を置かれるおつもりでありますか伺いたいと存じます。
  5. 近藤直人

    近藤政府委員 現在学校で実行いたしております学校給食に際しまして、給食のための調理その他栄養基準配分等につきましては、それぞれ専門栄養士指導によつてつておるわけでございます。ただいま栄養士資格を持つております者が全国に相当多数配置されております。学校のみならず学校給食会あるいは市町村教育委員会にもそれぞれ配置されておりまして、それらの指導によりまして給食の際の栄養基準量あるいは食生活合理化あるいは施設整備というようなことにつきまして指導を受けておるわけでございます。ところでこの栄養士を全部学校に配置することは、これはまことに好ましいことでございますので、私どもといたしましてもそういう方向指導考えたいと思つておりますが、何分目下その過程にございまして、ただいまのところでは学校の全部に栄養士が配置されておるというよう状況に参つておりません。一部は学校給食会とか市町村教育委員会とかあるいは府県の教育委員会にあるとかいうことになつておりますので、まだその過程にあるわけでございます。しかしながらこの学校給食の上におきまして栄養改善とかあるいは調理室整備というようなことはきわめて重要な点でございますので、これらの問題につきましては、指導といたしましては栄養士指導を受けるということを、私どもといたしましてはたえず指導をいたしておるわけでございます。そこでこの栄養士をどういうふうに今後配置するよう指導するかという問題でございますが、これは栄養士は漸次ふえて参つております。またそれらが漸次学校に配置いたされておりますことはまことに喜ばしい現象であると考えておりますが、まだこれを強制的に各学校に全部配置するというとこまでは参つておりません。これはやはり時間をかけまして、漸次学校専門栄養士を置くという方向に持つて行きたいと思つております。ただいま学校におきましては学校教員がこの資格を持つておる者もございますし、またあるいは講習等を受けましてその方面専門的な知識を持つておる者がございますので、そういつた方々指導も十分活用して参つておるような次第でございます。将来につきましてはこの栄養士の活用ということにつきましては、私どもといたしまして大いに意を用いたい、かよう考えております。
  6. 松永佛骨

    松永(佛)委員 ただいまのお答えまことにその通りけつこうでございますが、この学校給食法の第五条の中に「国及び地方公共団体は、学校給食普及と健全な発達を図るように努めなければならない。」ここにすべて包含されるのだと思いますが、これはきわめて広義の解釈でありますし、また漠然としておるきらいもございますが、私ども昭和二十七年、一昨年の七月ごろであつたかと思いますが、当時やはり厚生委員をいたしておりました時分に、栄養士法という法律が制定いたされたのであります。大体この法律によりますと、医療法におきましては収容患者百名に対して栄養士を一名置かなければならない、また労働基準法労働安全衛生規則においては一回三百食、一日五百食以上の給食を行う工場その他においては栄養士を置かなければならないということを、原則的に法律として制定をされておるわけでございますが、学校におきましても予算関係その他においてこれを急激にすべてに実施することは困難であるといたしましても、少くとも五百食以上給食を行うところには栄養士を置かなければならないという規定を設けていただいて、順次これに準用して行く、それには予算関係上、専任の栄養士を置くよりは先生を一人ふやしたい、こういつた学校側希望もあることでありますから、かつて衛生教官学校に置く場合に、学校先生があるいは講習を受け、あるいは特に勉強されて衛生保健士その他の資格をとつて、そうして衛生教官名乗つて、それに対する手当を得ておられるという例もありますので、今後そういうことが法律の面においてうたわれまするならば、学校先生も努めて栄養士適格者たることを急ぐであろうということも考えられます。またそういつた法律もありますのに、医療法においては百名あるいは工場会社は三百名以上という原則がございますのが、一回五百ないし一千食以上を供給する学校にして何ら栄養士に触れていないという学校給食法も、これもちよつと法の不備と申しますか、そういつた感なきにしもあらずだと思いますが、これはひとつ第五条の地方公共団体の任務、こういつた面に、少くとも学校給食においては主務大臣の定める基準に適応する栄養量、乳、乳製品、清浄な野菜その他の栄養的な食品からなる合理的な食形態で健康を確保することができるように努めなければならないとともに、小学校等設置者学校給食実施する場合においては必要な衛生施設を設け、かつ栄養士を置くように努めなければならない、こういつたよう法文を加えていただいて、この学校給食法をより有終美果を収められるようにとわれわれは希望するのでございますが、それに対する当局の御意見はいかがでございましようか。
  7. 近藤直人

    近藤政府委員 栄養改善法との関係でございますが、この法律ができましても、栄養改善法との関係におきましては従来と同じように私ども考えております。学校給食に対する従来の栄養改善法の適用につきましては、栄養改善法規定されておりまする栄養管理、これは第十条でございますが、それと調査指導、これは第十一条の報告徴収などは、学校給食の場合に限りまして、都道府県知事所管行政から離れまして教育委員会を通じて行われることが規定されておるのでございます。従いまして学校に対する栄養指導教育委員会の依頼に基くのでありまして、または教育委員会が了承したときに限りまして栄養改善法による栄養指導員が実地に直接指導を行う、また報告徴収につきましても教育委員会を通じて行われるということに理解をしておるのでございます。この点につきましては、この法律ができましても栄養改善法との関係におきましては従来と同じように私ども理解しておるのでございます。また学校給食衛生管理の場合におきましても、教育委員会法施行令規定しておりまする基準に基きまして教育委員会保健所の協力を求めるということになつておりますが、この点につきましてもさよう考えておりますので、栄養改善法との関係におきましては従来と同様に密接な連絡を持ちまして事を進めて行くよう理解しております。その際に栄養改善法趣旨にもとるようなことをするとか、あるいは栄養改善法とはまるで違つたことをするというようなことは毛頭考えておりませんので、その立法の趣旨から申しましても、従来法律がなかつたときにいたしておりましたと同じようなことで、厚生当局とは密接に連絡を持つて参るというふうに考えております。
  8. 松永佛骨

    松永(佛)委員 指導の面に当てられる御当局としてはもちろんさようであろうと存じますが、実際末端の学校へ参りますと、実際はそうでなくして、ただ給食を食わせればいいんだというような状態が、現在の状況化においては大半ではないか。現に学校給食の方を専門にやつてつた教員で、少し呼器吸が悪いからといつて退職をしました人を私の方で現在女中に雇い入れておりますが、これの栄養調理法を見ますると、われわれ専門外の者が見ても実に戦慄するような非常識なやり方をして、ほうれん草を煮出したおしるをそのまま使うと、おしようゆがたくさんいるから、しるを捨てておるというよう状況を見るのであります。われわれは専門家でございませんから、詳細な数字はわからないのでありまするが、たとえば百グラムの大根の中には、約二十ミリグラムのビタミンが含まれておる。ところがそれを大根おろしにしてすぐに食えば、二十ミリグラムが、百グラムでそのまま吸収されますが、大根おろしにしても、約十五分経過すると、その二、三十パーセントが消耗されておる。しかもこれをたき出した場合には、半分以上消耗して、たき出したしるを捨てると、ビタミンCは残らないということが、たしかおとといか、二、三日前の読売か、大毎の家庭欄に書いてあつたのですが、現在の家庭状況もまつたくこれに近い状況下に置かれておる。日本人の多年の習慣である満腹感を、こういう学校給食法というものができて、学校児童給食の時代からこれを栄養本位食生活改善しなければならないということを痛感いたしたのであります。そこで現在の状況下ですぐに栄養士を一人置くことは、教員不足の折から、各学校においても教育委員会においてもそれは無理だと言うかもわかりませんから、保健所指導を受けて栄養調理を行うて行くという方針は、今のところはやむを得ないと思いますが、しかし将来はやはり栄養士を置かなければならない、置くべきであるということを私は義務づけておいていただく必要があるということをまず考えるのであります。  なお最近給食病集団中毒が相当数起つておるようであります。現にこの間の新聞に発表されました上目黒小学校集団欠席赤痢型の給食病ということで、二百二十三名の集団中毒が先月の十三日に起つておるというようなことを見るのでありますが、こういう点を勘案しますと、どうしても給食調理専従員に対して健康診断その他の方法を行わなければならないということをやはり法文の上にもうたつておく必要があると思うのでありますが、現在給食病あるいは給食による集団中毒状況はどういうふうになつておりますか、一応お聞かせにあずかりたいと思います。
  9. 楠本正康

    楠本政府委員 お答えを申し上げます。現在まで学校給食に起因いたしまして、食中毒として発生いたしましたものは、昭和二十四年から二十九年まで件数にして十九件、患者約六千名に達しております。一方不明熱性疾患あるいは赤痢その他の伝染病、かようなものは現在まで合計二十八件、患者の総数は約八千名に達しております。そのうち死亡者は本年四名を出しております。以上が大体の概要でございます。
  10. 松永佛骨

    松永(佛)委員 そうしますと、そういう給食病とか集団中毒が発生すると、その都度保健所その他からあわてふためいて専従員身体検査をやつたりしておられるという現状なんですか。
  11. 楠本正康

    楠本政府委員 現在教育委員会法におきまして厚生文部両省共同政令が出ておりまして、これによりまして、この学校給食に従事しておる職員関係者等は、保健所が協力して随時健康診断を行う仕組みに相なつております。それから一方これらの内容改善と申しましようか、施設あるいは調理改善等につきましても、同じく施行令によりましてお互いに協力して実施することに相なつております。ただ患者が発生した、あるいは中毒事件が起きたというようなことになりますと、これはそれぞれ保健所疾病予防対策あるいは中毒対策一環として、こちらで処置をとる。厚生省側保健所側が独自の立場処置をとるということもやむを得ないことだと存じております。
  12. 松永佛骨

    松永(佛)委員 これはもう教育委員会法によつて定期的に身体検査その他はやつていらつしやるのですか。
  13. 楠本正康

    楠本政府委員 その通りでございます。
  14. 松永佛骨

    松永(佛)委員 そこでこれは今日の衛生思想保健思想普及した文化国家としての日本として、そういうことは当然だと思いますが、やはり法文には一応そういつたことも織り込んでおかれてはいかがかと考えるのでございますが、これは文部委員方々とも、あとでひとつ懇談会機会でもございましたら、適当に御相談申し上げたいと存じます。  なお、この学校給食法第三条に、「この法律で「学校給食」とは、前条各号に掲げる目標を達成するために、学校教育法昭和二十二年法律第二十六号)に定める小学校盲学校ろう学校又は養護学校において、その児童に対し実施される給食をいう。」、かようにあるのでございますが、これは現在の段階におきましては、これ以上予算措置その他について無理だと存じますが、これは国民大多数の希望でもあり、これをしいて中学校高等学校に及ぼそうという計画がおありになるのでございましようか、その点も伺いたいと思います。
  15. 近藤直人

    近藤政府委員 この第三条には御指摘ように、「小学校盲学校ろう学校又は養護学校(以下「小学校等」と総称する。)において、」とありまして、大体小学校等児童中心にして行うという規定でございます。と申しますのは、ただいま私ども学校給食を行つておりまする対象小学校児童でございますので、従いましてそれを基礎にいたしまして立法いたします場合には、どういたしましてもかよう規定にならざるを得ないのでございますが、しかしながら学校給食がただ単に小学校等児童のみを対象とする性質のものではなしに、やはりこれは発育時期にありまする中学校生徒もこの対策の中に加えるということが理想ではないかと考えておりますので、私ども研究過程におきましては、中学校生徒もこの中に加えることが適当ではないかというような検討はいたしております。
  16. 松永佛骨

    松永(佛)委員 ただいまの御答弁まことにわが意を得たものでございまして、けつこうでございますが、義務教育として六・三・三がうたわれておる以上、いずれは中学校高等学校に及ぼすべきものであるということを原則的にお考えになつておるものと見て満足の意を表するものであります。ただここに一つども立場からお願いといいますか、卸相談したい点は、保育所でありますが、この保育所は、現在児童福祉法によりまして、児童福祉施設、いわゆる措置児童施設余剰金をもつて現に給食を終戦以後行つておるわけでございますが、これを何かの機会にやはりこの学校給食法といつたようなものの中へ織り込んでおいてもらつた方がいいのじやないかということも考えられる場合があるのでございます。現在の段階において、小学校中心にして保育所を加えるということになるとでは幼稚園も入れろということになりますが、予算裏づけ面から見て、保育所を加えることは児童福祉法によつて現在施行されておりますので、これを別則として加えることは何らかまわないと思うのです。文部当局はどういうふうにお考えになりますか。
  17. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘保育所給食でございますが、戦後学校給食がアメリカからの援助物資によりまして再開されて以来、保育所につきまして私どもの方で一括いたしましてミルクをお世話申し上げておるのでございます。私ども気持といたしましては保育所につきましても学童と同様に考えておりますので、今後もお世話を申し上げる気持にはかわりはないのでございます。しかしながらこの法律児童の心身の健全な発進に資し、かつ国民食生活改善に寄与するということ、並びにこれが学校教育一環として給食法を制定するという建前からいたしますると、ここに保育所ということをあげますることは、やはりこの給食法の本来の趣旨から申しましていかがかという議論もいろいろございまして、実は保育所をこの面から除いたのでございますが、将来とも保育所につきましては、私どもといたしまして従来とかわりなく物資その他につきまして御援助申し上げることはちつとも苦労ではございませんので、さよう方針を持つております。先ほど申し上げましたよう学校教育一環というよう意味から申しまして、保育所を入れまする場合にさらに問題がいろいろ出て参ります。たとえて申しますればこれには幼稚園の問題もあります。あるいはまた高等学校給食の問題などもこれに関連いたしまして出て参りますので、いろいろ検討いたしました結果、この法律案といたしましては保育所を除きまして、学童だけに限定したような次第であります。
  18. 松永佛骨

    松永(佛)委員 これは学校生徒児童教育一環としての学校給食法という建前から保育所を除かれたということにつきましてはごもつともだと存じますが、ただ学校給食一環とするところに「食生活合理化栄養改善と健康及び増進を図ること。」という一つ条項がうたわれてあります以上、私どもの常識的な考え方から見まして、小学校入学をする満六才までの間に大体あらゆる言語を覚え、あらゆる教育基礎をつくる、いわゆる基礎工事でありまして、そうして小中校入学後の六年間におきまして、生後六年間の約倍足らずのものを発育して、あとは一生かかつてそれだけの知恵がついて行かない、あるいは身長その他も伸びて行かないということが大体人生記録原則ように思います。そういう観点から見まして、やがて小学校へ入るその基本的な児童という意味からこの保育所で——将来予算措置ができますればもちろん幼稚園も加えていただくということを大きな自的として、ただちにはできないが保育所現行法によつてつて行く、追つてこの実施の域を幼稚園中学校等に進めるということをひとつこの給食法に織り込んでいただくことがよりよき法案になるのではないか、こういうふうにも考えるのでございますが、さしあたつてそういうふうにやることにどういう障害があるのでございましようか、ひとつお話を願いたいと思います。
  19. 近藤直人

    近藤政府委員 保育所をさしあたつて現行通りやることにつきましては、私どももさよう考えております。ただ保育所ということをこの法律規定することがいかがかというだけでございまして、しからば法律規定したためにこの法律がどういうことになるかということにつきましてはまだ私ども検討しておりません。かりに附則等におきまして保育所を入れるということにいたしましても、どうも学校給食法の本来の趣旨から考えましてまずいのじやないかというふうにただいまは考えておりますが、保育所につきましてはすでに予算的措置もできておることでありますし、これはなお研究の余地があるのではないかというふうに自分は考えております。保育所を絶対に排斥するというよう気持は毛頭ございません。ただ法建前からいたしまして、保育所規定いたしますことはいかがというふうに考えております。
  20. 松永佛骨

    松永(佛)委員 実は私どもは今御答弁のごとく大体考えておつたのでありますが、御当局にとつて幸であるか不幸であるか知りませんが、参議院の方の両派社会党から学校給食法案というものが昭和二十九年二月十六日付で議員提案として出ております。もちろん予算措置その他について多少無理な点はありますが、これには相当飛躍的な条項が出ておりまして、これを見て大いに食欲をそそられたというようなことにもなるわけであります。われわれは現行予算の範囲において、よりよき法案をつくつて後に残したいという希望からこういうことを申し上げるのでありますが、特に私は各学校において栄養士を置かなければならないということを食生活改善の第一歩としてまず法案の上にうたつて行くということと、第二は一定の基準を設ける衛生施設、それから給食専従職員に対する絶えざる健康診断並びに保育所等をひとつこの学校給食法に加えていただいて、この学校給食法案をよりよきものにして有終美果を得るという基本的な建前から御考慮を願いたい、こういうふうに考えておるのありますが、いずれあと委員長にお願いしまして両委員会懇談会等移つて文部委員方々忌憚なき御意見も承り、われわれの希望も申し上げて御賛同を得たいと思います。一応私の質問は打切りますが、あとでまたさしていただきます。
  21. 辻寛一

    辻委員長 岡良一君君。
  22. 岡良一

    岡委員 昨年の暮に、衆議院の方で食生活改善とそして食糧自給増産に関する決議案が院議で通過しておりまするが、この内容は御存じのように粉食を普及せしめる、そのことを中核として国民栄養改善、同時にまた酪農の普及農村経済の振興、ひいては国際収支改善、いろいろないわば一石三鳥、四鳥の効果をねらつての意思を表示し、政府にその実施方を強く要望いたしたわけなので、そのときにも当然常識的に考えられるのは、おとなの場合はなかなか食生活改善は言うにやすくして行うにかたいが、小さい子供たち学校で集団的にこのよう指導して行くとするならば、これがまず実践の具体的な糸口であろうということを強くその当時われわれも思い合わせておつたわけなので、政府の方でもこの決議案に応じて食糧に対する協議会を設置されておられるのであります、そこでわれわれのこの決議案趣旨を実践する突破口としての学校給食の立案の過程にあたつて文部当局の方では食糧に対する協議会との間に何らかの連絡があつたのか。またその趣旨をいかようにそこに生かそうとしておられたか。その点について具体的な折衝の過程があり、また内容的に具体的な問題があるならば、まずお伺いしたい。
  23. 近藤直人

    近藤政府委員 内閣に食糧対策協議会が設けられまして、関係委員が任命され、また関係大臣といたしまして文部大臣もこれに参加しております。その際に主として検討されました議題は、食糧管理特別会計の機構の問題並びに食生活確保のための方法あるいは米価の問題等であつたと記憶しておりますが、その際の御意見といたしまして、国民食生活改善するためには、まずその突破口として学童給食からこれを開始することが一声近道であるというような御意見が出たことも記憶しております。そこでそういう線に沿いまして、私ども学校給食を大いに推進し、かつ普及させねばならぬという考えを持つておるのでございますが、ただいまのところは具体的に結論がまだ出ておりませんので、それを実施面にどう盛るかということにつきましては、まだ結論ははつきり出ておりません。
  24. 岡良一

    岡委員 政府の御提出の給食法案を見ましても、私どもの衆議院における院議をもつて決定した意思にこたえるところが非常に乏しいという点を私どもは非常に遺憾に思つておるわけであります。いうまでもなく四面海に囲まれたわが国であつてみれば、いざまさかのときには食糧事情の逼迫というものが致命的な事情を起すことは、これまた当然常識上からも考えられるところであるとすれば、食糧の自給とそれをねらつての突破口としての学校給食というものは、もつともつと整備した責任ある態勢において実施すべきものであろうと思うのであります。しかしその点について実は先ほど来私は重ねて希望いたしておるのでありますが、やはりそういう観点から見るならば、学校給食の問題はひとりこの目的にうたわれておる学童の日常生活における食事の理解とか、学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うとかいうことだけでなくて、やはり国の経済事情、農村の経済振興、あるいはまた国の今日の赤字に追われておる国際収支改善、そうした経済的背景あるいはまたそうしたわが国における大きな経済的なロスをささえる支柱としての重要な役割を持つておる。こういう認識の上に給食法案が出されていないのではないかという点を非常に遺憾にも思い、またそういう点については農林大臣その他関係の担当の方々に御出席を願つてこの給食法案の背景をなす諸般の事情を究明して、これらの究明の上に打出された学校給食法案というものを総合的に検討することがこの法案に対するわれわれの正しい態度ではなかろうかと思つておるのでありますが、関係の方もおいでにならないような事情でもありますし、また厚生委員会は直接担当していないという事情もありますので、その点非常に遺憾に思うのであります。  そこで具体的にお伺いをいたしまするが、この法律案によれば単に小麦ないし小麦粉等の売渡しについて——そういう言葉は好ましくないのでありますが、いわば主食の部分についてのルート、また操作についての規定しかありません。これのみをもつてしてはもちろん学校給食は完全になるものでもないし、現在行われておる学童給食もそれ以外のものによつて栄養の補給が行われておるのでありますが、こうしたいわゆる従来の観念における主食の操作、そのルート以外のものは今後何によつてつて十分なカロリーを子供たちに供給しようとしておられるのか、こういう点についての御方針があつたら承りたいと思います。
  25. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま学童給食実施しておりまする物質でございまするが、御指摘ようにパンの材料になりまする小麦がまず第一でございます。これにつきましては、この法律案の上にも小麦の売渡しについて規定を設けておりますが、これ以外に学童給食といたしまして、脱脂粉乳、脱脂ミルクを利用いたしております。これは動物蛋白質において非常に豊富な量を持つており、しかも低廉という面から学童給食にはこの脱脂粉乳を必ずつけるという方向指導しております。大体政府といたしまして、直接指導しておりまするのは、小麦と脱脂粉乳の二つでございます。この脱脂粉乳につきましては、これは財団法人学校給食会という団体がございまして。これが全国的に仕事をしておりますが、これが直接脱脂粉乳を輸入いたしまして、これを各地区の教育委員会に配付するという仕事をいたしております。そして教育委員会がそれぞれ各学校に配付するということになつております。そのほかに学校給食といたしましては、副食がこれに伴うわけであります。この副食の物資につきましては、政府といたしましては全然関与いたしておりませんが、この副食に対する栄養基準その他につきましては、もちろん厚生当局の協力を得まして指導をいたしております。従いまして繰返しますが、小麦とそのほかには脱脂ミルクにつきましてのみ政府がいろいろお世話を申し上げておる次第であります。
  26. 岡良一

    岡委員 多少専門的な話合いにもなると思いますが、楠本君もおられますので、あわせて御答弁を願いたいと思う。この給食法案によりますと、結局国が事実上操作に対しある程度の責任を持つて関与するのは、小麦粉あるいはその原料となる小麦である。そしてまた脱脂ミルク、脱脂粉乳等につきましては、当該教育委員会等がお世話をすることにして多少の予算は見てある。ただ問題は発育盛りの子供にしてみれば、そのほかにどうしても必要なのは各種のビタミンとかカルシウムである。そこで学齢に達した子供から規定小学校六年を終了するまでの年ごろの子供にとつて栄養上特に重点を置かなければならないものは、こうした澱粉的な小麦、パンというふうなものであるのか。それとも蛋白源としての脱脂ミルクあるいは粉乳あるいはカルシウムとかビタミン等がおもに見るべきものであるのか。もちろんこれは総合的に栄養として見なければならないと思いますが、その点この法案では非常に重要な蛋白あるいはカルシウム、ビタミン等についての顧慮が足らないのではないか、こういうふうに考えられるのであるが、こういう点についてわれわれとしては、親として納得の行くような御説明また今後の御方針を承りたいと思います。
  27. 近藤直人

    近藤政府委員 この法律の面におきましては、ただいま御指摘ようなことを規定してございませんが、これは実際は指導をもつて通牒いたしておるのでございます。たとえばカロリーは六百カロリー、それに熱量の源としては主としてパンを充当する。パンは一回大体百グラム、それから動物蛋白につきましてはミルクをもつて充当する。ミルクは大体一回二十二グラムという基準、そのほか所要の脂肪あるいはビタミン等につきまして、一定の基準があります。これは厚生当局の御協力によりまして基準をつくりまして、その基準を流して、その基準に当てはまるよう指導をしておるのでございます。従つてそういつた点につきましては、十分配慮しておるのでございますが、法律にそれを規定するかどうかという問題になりますと、これはいろいろな事情がございまして、法律規定するよりもむしろやはり指導で行つた方がいいという観点からでございます。何も物資につきまして、脱脂ミルクが全部ではございません。脱脂ミルクだけが、たとえば動物蛋白を最もよけいとるものだというようなことではございませんが、ただいまのところにおきましては、脱脂ミルクが最も理想的な食品であるという視点から、さように指定しておるのでございまして、将来あるいは脱脂ミルクにかわるよい品物ができて参りますれば、これにかわることも考えられますし、いろいろな事情がございますので、実際の指導の面でこれを通牒しておるのでございまして、法律規定するということはいかがかというような配慮から、さような取扱いをしておるのでございます。
  28. 岡良一

    岡委員 それでは将来この学校給食が漸次各地区に普及して行くということに相なりますと、やはりその土地土地の食習慣もあり、またいろいろと食糧材料の供給に関する立地条件も異なつて来る。従つてそういう場合には、やはりそれぞれの立地条件に応じたような総合的な栄養の供給というものが、現実の課題になつて来るわけなんです。そういう場合には、これは指導をすると言われるのでありますが、具体的にどういうふうな指導をなさるわけなんでありますか。たとえば酪農地域において小学校給食をやるという場合は、何もわざわざ輸入した粉乳をもらわなくとも、生乳でやつて行けるわけです。こういうような具体的な場合、融通性を——いわば立地条件を十分生かして指導するというような御方針なのでありますか。
  29. 近藤直人

    近藤政府委員 お話の通りでございます。何も輸入した脱脂ミルクだけを飲まなければならぬということはございませんで、指導といたしましては生乳でさしつかえございません。ただ私ども指導しておりますゆえんのものは、所要の成分のみで規定できませんので、やはり結局負担にかかつて参りますので、その面からもいろいろ勘案いたしまして、ただいまのところ脱脂粉乳を指導しておるわけでございますが、酪農地帯におきまして、牛乳がふんだんに入手できるというような場合、あるいは脱脂乳がどしどし入るというような場合におきましては、それにかえて一向さしつかえございません。かよう指導をしております。
  30. 岡良一

    岡委員 もちろんミルクと生乳では、価格の問題などいろいろ実施上の難点もあろうかと思いますが、とにもかくにもやはり広く普及せしめて行こうとするならば、学校の所在地におけるそうした立地条件を十分考慮に入れて、融通無礙にあらゆる栄養物資を総合的に活用するという顧慮が必要だろうと思うので、お伺いしたわけなんです。  もう一つお伺いいたしたいことは、特にビタミンの供給はやはり発育盛りの子供たちには非常に必要なものであります。ところがビタミンの供給というものは、日がたつに従つて非常に急激にビタミンが減少する、あるいは加工調理過程において熱を加える、塩を加えるというようなことで、そういう技術によつて、せつかくのものが非常に大きなロスを出して来るものです。そういう非常に微妙なものなので、しかもこれは不可欠なものなので、単に六百カロリーを必要とするからそれでいいというカロリーの計算以外に、不可欠な条件として、こうした無機塩類なりビタミンというものがある。こういうものを総合的に遺憾なく子供たちに供給し得るという、それだけのレベルに現在の学校給食施設が達しておるのかどうか、レベルに達しておつてわれわれの納得し得るよう指導がなされておるかどうかという点に、私どもは一抹の危惧なきを得ないのでありますが、そういう点についてこれまでいかが取扱つておられるか、また今後どういうふうに御指導なさるおつもりでありますか。
  31. 近藤直人

    近藤政府委員 先ほどの地域によつて栄養基準等につき適当な配慮をするという問題につきましては、これは私どももさよう考えております。ただ全国一律に考えます場合には、やはり経済的負担ということも考慮いたしまして、ただいまのところはカロリー源になりますパン、それから動物蛋白の源になります脱脂粉乳ということを基本に考えまして、それに副食を加え、その他の脂肪分とかあるいはビタミンとかいうようなものをとるよう考えております。なおビタミンにつきましては、ただいま学校給食用の小麦粉を配給する際に、ビタミンを加味いたしました小麦粉を配給するようにいたしております。これは農林次官と文部次官の共同通牒によりまして、学校給食用小麦粉配給実施要領というものが出ておりますが、これによりますと、当該小麦粉は栄養素の強化を施したものとするということになつておりまして、いわゆるインリッチされたものでおります。ただいまの学校給食用の小麦粉につきましてはビタミンが加えられた、いわゆる強化された小麦粉になつておりますので、こういう点につきましても厚生省の御協力を得まして十分な配慮をしておるつもりでありますが、なお将来ともそういうよう栄養価を高めるという点につきましては、研究を進めて参りたいと思つております。  それから、こういう栄養基準を引上げることについて、各学校にその受入れ態勢ができておるかどうかという問題でありますが、この点につきましては、何と申しましてもやはり給食の沿革からいたしまして、都会地においてこれが先に進んで参つた関係上、都会地の学校につきましてはきわめて進歩した組織を持つておるのでございます。従いましてそういうところにつきましては、相当普及されておるのでございますが、また栄養基準の引上げにつきましても、私ども以上にいろいろな配属をしており、きわめて好ましい状況にあるわけございます。一方これが町村に入りますと、どういたしましても、まだそういう面について私ども指導が足りないせいか、あるいはまた経済条件の変化によりまして、まだ十分給食普及徹底するというところまで行つておりませんので、今後私どもの主として力を入れなければならぬのは、そういう農村の方面じやないかというよう考えております。今後そういうような地域に対しましては、漸次普及するように検討を進めたいと考えております。
  32. 岡良一

    岡委員 そういうよう学校給養をするとすれば、各地域の立地条件に応じて、政府が支給する小麦粉、ミルク等のほかに、やはり生鮮食料品なり、その他必要とするものを供給して行く、そういうことを広く調査し、そして適正な基準を設けて行くというような仕事は、文部省では今たとえば何課が担当しておられるのですか、厚生省では、国民栄養の実態調査については相当な予算をさいてやつておられるが、こういう調査というものは、学校給食実施に際して、その重要な参考のデータとして活用されておるのかどうか。こういう点について今後のお取扱いの面をひとつ伺いたい。
  33. 近藤直人

    近藤政府委員 私どもの管理局に給養課というのがございまして、そこが中心になりまして学校給食の仕事をしております。なおこれに対しまして、諮問機関として学校給食分科審議会という機関がございます。これには関係省からも御参加を願いまして、ここでいろいろ学校給食に関する基準栄養基準、その他につきまして検討をいたし、御審議願いまして、成案を得ました上でこれを各地方の教育委員会に流すという取扱いをいたしておりますが、この学校給食分科審議会と申しますのは、そのものは、文部大臣の諮問機関でございます保健体育審議会がございますが、この保険体育審議会の一分科会なのでございまして、ただいまきわめて有効に、また効果をあげて運営されております。
  34. 岡良一

    岡委員 しかし私は、そうあなたが自画自讃されるほど効果をあげた運営じやないような気がするわけなんです。元来厚生省が相当なエキスパートを集めて、そして国民栄養の実態については専門的な調査を進めておる。その調査に基いて、国民栄養はそれぞれの生活環境なり年齢層において考えらるべきだ、それには何をもつて補給すべきだという結論さえも出しておる。厚生省がそういうことをやつておるかと思えば、一方文部省の方ではこれをあまり重要視しないで、学校給食法。ここでは、どちらかというとあまり専門的でない諸君が、いろいろ意見を総合してやろうとする。農林省にもまた生活改善課というものがあつて予算を持つて、農村の生活改善並びに食生活改善をうたつておる。国民栄養行政などというものは、これこそほんとうに一本にしなければならぬのじやないか。せつかく国民の税金で相当な予算を持つて厚生省が調査をし、一つ基準を出しておるのだから、この基準実施させる責任をやはり厚生省が持つような体系に持つて行かなくては、ほんとうの意味での国民栄養の向上はあり得ないし、食生活改善もあり得ないのじやないか。せつかく学校給食法ができて、結局この法律に基いて今後は新しいスタートをするのである以上、栄養基準についてはもつと総合的に、六百カロリーなどという機械的な水準を考えないで、カロリーは、ビタミンは何で供給するのだ、カルシウムは何で供給するのだ、それぞれの地域の立地条件に応じてこういう手があるのだというようなこと、またそれの加工についても、先ほど申しましたように、ビタミンなんて日がたてばすぐ飛んで行く——日本人の体質上、脚気という各国にない病気があるが、これにしても最近の研究によれば、何も年ごろになるから脚気になるのじやない。もう小さいときからのビタミン不足が積り積つてつておる。といつて、それでは小麦紛の中に多少そういうものを入れておるから、それでビタミンBが確保されるなどということは、これは古い学問なんです。そんなことをしたつて、それでビタミンBは尽されるものではない。玄米でも、一年放置しておけば、ビタミンBは八〇%出てしまう。だからそういう具体的な、栄養に関する専門的な知見を中心として、せつかく子供たち栄養を高めてやろうというならば、やはりこれを総合的に、ほんとうに子供たち栄養を高めてやるように具体的にやる。それにはどうも現在の機構がばらばらなんです。そういう点では、この法律にうたわれた目的の一半もなかなか達し得ないのではないかということを私は非常に心配するのです。  いま一つは、ロスがある。非常に大きなロスがある。これは費用に換算して出してみたら何百億に達するものであろう。その資料もあるが、相当なロスです。それは単にしろうとが加工する、あるいは一片の通牒でもつてそのようにやるという形だけのものであるから、実際問題としてやはりその地域の実情に応じた取扱いができないというところから、大きなロスが出て来る。せつかくの資源の活用という観点からも、子供たち栄養のためにも、やはりこういうものもちやんとロスのないようにやつて行く。こういうことについては、何も一学校に一人の栄養士がおるというようなことでなくて、やはり保健所なり、あるいは教育委員会なり、また数校に一人の栄養士なりを置いて、栄養士指導のもとにロスのないように、しかもわずかのものをより活用しながら、総合的に子供たち栄養を補給してやる、こういう手段が講じられなくてはなるまいと思うわけです。そういう点については当局へお願いするだけでなくて、文部委員の皆さんにもお願いをしたいと思う。ぜひともそうしていただかないと、ほんとうの意味学校給食の実があがらないのではないかと思うのです。これまでの経験から見てわれわれはその点が心配になるので、こういう点を十分御勘案願いたいと思うのであります。  それからもう一つお伺いいたしたいのは、私ども多少人間の体を取扱つておる立場の者から考えてみますと、何といつてもこの学齢児童よりも大切なのは、もつとそれ以下の、零才から六才くらいまでの子供たちである。これは脳の重量をはかつてみても、体重のふえ方を見ても、この時代が一番カロリーを必要とする。この時代が一番合理的なカロリーなり、栄養素を必要とする発育年齢なんです。そういうことから、保育所の方でも、学校給食になぞらつたよう給食がこれまで実施されておつた。今度の予算を見ましても、やはり脱脂粉乳なり、あるいはまた小麦粉等についても、予算面では一括してそういう措置がとられておる。ところが一方学校給食は、今度の学校給食法案によつて新しくスタートする。言つてみれば、これまで二人三脚で歩んでおつたものが、一方何かしら切り離された学校給食法というスタート・ラインに立つて来るというようなかつこうになるわけであります。これはやはり国民栄養という観点から見ると、保育所に収容し得る子供の時代に十分な栄養を供給しなければならぬ。またここに収容されておる子供たちが、学齢児童よりももつと栄養を要求する実情に生理的にあるわけです。ここで補給をし、さらに学校給食で今度はそれをコンクリートするというような形に持つて行くのが、この法案の目的にうたわれた趣旨にほんとうにかなうゆえんではないかと思う。先ほどの松永さんの御質問に対する御答弁を聞いておると、何か法律の体裁上、ちよつと保育所に関しての規定を入れることがどうかと思うという御答弁であったかのように思いますが、問題は何も法律の体系を形式的に整備するということではない。実質的にこの給食法案にうたわれておる目的を大きく果し、充実させるということからすれば、やはり保育所子供たちに対してもこの程度の措置は一括とる。法律をもつて国が責任を持つてやるという体制に持つて行くのがほんとうではないかと思うのです。そういう点で、これはいずれまた文部委員方々にもいろいろお願いいたしたいと思いますが、これまでせつかく二人三脚で来て、予算の中でも本年度は込みになつておる。これを一方だけ学校給食のわくの中に入れて、ここで新しいスタート・ラインを引いて出発をするということになると、何もびつこを引くわけではありませんが、やはりそこで何となく保育所子供たちがバスに乗り遅れるという心配を私ども感じるわけで、しかも実質上の問題しては、今繰返して申しますように、保育所子供たちこそ個々人の健康の一番の根本がここにある。あらゆる栄養を要求しつつある生理的状況に置かれておる。これが何かしら除外をされるような取扱いを受けるということは、これは実質上国民栄養の起点としての学齢児童というならば、ここまで範囲を広めて行くのが当然のことだと思うので、この点は十分お考えおきを願いたいと思う。私はこのことを心から希望いたしまして、あと関係の方がお見えにならないようでありますから、一応私の質問はこの程度で打切つておきます。
  35. 辻寛一

    辻委員長 降旗徳弥君。
  36. 降旗徳弥

    ○降旗委員 この学校給食を拡充するということ、ひいては国民食生活改善するということ、これはまさに重大な問題でありまして、各党においても非常な熱意をもつて臨んでおる問題であります。従つてただいま岡委員の申されましたごとくに、昨年の暮れは本会議にこの決議案を上程し、満場一致の賛成を得ておる。そこで私は、学校給食の問題について、各条章についてのいろいろのお考えのあることは当然でありましようが、私は根本的に言うと、現在数百万の学童を相手にして、しかもこれほど世間で騒がれておる学校給食に費されておるところの国費はわずかに十七億円である。もしこれを逆説的に言つて、この十七億の国の予算が二倍の三十四億になつたとするならば、学校給食の現在の事情というものは面目を一新するだろうと私は思う。すなわちその条項整備するということ、法律整備するということは、もとより当然でありまするけれども、その実体をなすところの予算をいかに獲得するかという熱意が、各政党と当該所管省になかつたならば、なかなか推進することのできない問題でありまして、いわんや今日国家の財政経済の現況から申しますると、緊縮予算で行かなければならぬ、こういう立場からいうと、何とかしてわれわれが官民ともにその財源を捻出するという方法もあわせて考えなければならぬじやないか、こう思わざるを得ないのであります。そういう意味から申しますると、昨年の冬の本会議で各党の共同提案したところによりますると、いわゆる外米にかえるに外麦をもつてすれば、そこに数百億円の余剰金が生ずるじやないか、この金を学校給食のために、国民食生活改善のために使うとするならば、まさに一挙両得ということができるのだ、なぜしないか、こういう意味であつたのであります。そこでこの点につきましては、自由党におきましてももとよりでありますが、社会党におきましても非常に熱意を示されまして、岡委員あるいは三宅、杉山両委員のごとき、改進党においても中村委員のごとき非常に熱意を示されたのであります。それでこれを一つの計算から申しますと、もし外米五十万トンの輸入をそれに当るところの小麦によつて代位しようといたしまするならば、小麦を六十四万トン輸入いたしますと、大体外米と対等の食糧を得ることができるのであります。しかもこれによつて外貨の支払いは三十八百万ドル節約される。製粉の際に生ずるところのふすまは十四万トン分の飼料輸入に相当するのでありますから、これに該当するところの約七百万ドル、合計四千五百万ドルの節約となり、さらにその上に政府の補給金は五十億円浮く、合計いたしまして二百億円の余裕金を生ずることになるのであります。すなわち十七億円とこの二百億円というものを比べますと、学校給食の問題、国民食生活改善の問題にいかに処し得るかという道がわかるはずである。元来、議員立法が今日とかくの批判を浴びておりますゆえんのものも、議員立法は予算が伴う、こういうことでありまして、従つてわれわれがいかに法案整備いたしましても、その整備の結果予算がいるものであるといたしまするならば、政府でその予算を支出することができぬとするならば机上のプランたらざるを得ない。でありまするから、私どもはこの学校給食国民食生活改善のためには、今日ほど急なものはないと思う。何となればわが国の産業経済というものは今日非常に逼迫しておる。手打ち外貨はまさにその最低線の五億ドルを割ろうとしておる。一体この日本の産業経済の危局をいかに切り抜けるか、今日の政治の重大問題と言わざるを得ない。そういう問題から言いまして、いろいろの政策が考えられるでありましよう。しかしながらこれらの政策を遂行するという熱意が、強き決意が政府にも政党にもあるというところに、初めてこれらの政策が実行を期し得るのでありまして、この国民食生活改善する、学校給食を拡充する、こういう国民一般のいわば国民運動すらなしあたわずしては、いかに日本の産業経済を振興しようとするよい政策があつても、これまたその全きを期することはできないと私は思う。国家の革命もそうでありますけれども、一国の運命の消長というものは、国民全体がこの陋習を捨て去つて新しい生命に生きる、こういう気持国民全体にわき起つて来、政府自体が、あるいは政党そのものが、その国民運動の先頭に立つてこれを導く、こういうことでなければほんとうに国の運命を切り開いて行くということはできないと思うのであります。従つてそういう意味から申しますと、私はこの学校給食をさらに推進し拡充強化せしむるということについては満幅の賛意を表せざるを得ないのでありまして、これがさらに国民食生活改善の問題にまで及ぶとするならば、まさに私が今あげましたところの、外米にかえるに外麦をもつてする、その余裕金をいかにこの大国民運動のために使うかということがあわせて考えられなければならない、こう考えるのでありまして、この問題は単に文部省及び厚生省の問題だけでないのでありますけれども、しかしながらこの学校給食を推進しようとする厚生省においても、文部省においても、かくのごとき問題を閣議の重大問題とし、国策の問題として取上げしむるということができなかつたならば、やはりこの学校給食の問題もその実現に刮目して見るべきことを期することができない、私はこう思うのでありますから、特にこの点を要望いたしまして私の発言を終りたいと思います。
  37. 辻寛一

    辻委員長 滝井義高君。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 ちよつと文部省にお伺いいたしたいのですが、先般、日本の結核が最近は非常に減つて来た。なぜ減つて来たろうかといろいろ専門家の間で論議がされた。ところがまず第一に戦後——戦争中もそうでありましたが、ツベルクリン反応実施、BCGをやり、あるいは三十才以下の青年に対してレントゲン検査をやつて早期発見に努めた、同時に抗生物質、パス、マイシンというようなものが非常に急速な進展を遂げて、これが結核の防止に非常に役立つておる、こういういろいろの観点、あるいは医師、看護婦等の技術が進歩したということも論議されました。しかしその中で見落してはならぬことは、三百万という論議もありましたが、三百万の学童に対して、蛋白質、脂肪等をとる上に学校給食が行われたという点であります。この給食というものは、国民栄養改善ということとともに、日本の重要な国民医療の一つである結核対策の上においても非常に大きな役割を果して来たと思う。ところが現実の日本の客観的な情勢は、文部大臣の提案理由の説明の中でも、世間の給食に対する関心が非常に高まつた、今や給食は拡充強化されなければならぬ、こう謳歌されているわけで。しかしそういうように大臣は謳歌をされておるが、今度出て来ておるこの法案を見ると、この法案によつて現状の給食からどういう進歩がもたらされるかということなんです。しいて言えば、おそらくこれは現状の給食について法律がなかつたのを、ただ法律をつくつたというだけの進歩であつて、そのほかに何か進歩があるかということなんです。この点をひとつお伺いいたしたい。
  39. 近藤直人

    近藤政府委員 この法律案でございますが、これは学校給食の目的並びに目標、あるいは小麦粉の売渡し、経費の負担等について規定をいたしておるのでありまして、大体現状の線に即しまして立案されております。と申しますのは、立案の過程におきまして関係省と十分打合せました結果、このよう法律案なつたのでございます。現状の線を出ておるか、出ていないかということの御質問に対しましては、大体現状の線を維持して将来の発展を期待しておるというふうにお答え申し上げるほかないと思つております。特に学校給食目標等につきましては、従来きわめて不明瞭な点がございましたものを、はつきりとここに明示いたしました点につきましては、この法律案におきまして最も特筆していい問題じやないか、かよう考えております。しからば、この法律が現状にとどまるものであるならば、この法律をつくる意味がないじやないかという御質問にあるいはなろうかと思いますが、私はさようには考えませんので、やはり今まで数年間学校給食関係者が期待をしておりました線に一歩前進したという意味におきまして、私はこの法律ができますことが最も望ましいというふうに考えております。法律全体が現状のわくをかりに出ないとしましても、やはり立法化ということが、将来学校給食が発展する一つの基盤をなすというふうに考えまして、この法律をぜひとも実現いたしたい、かよう考えております。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 今後学校給食進展の一つの基盤をなすということでございますが、私はその基盤をなすということを一応認めたいのです。しからば現実において大体どの程度の学童が完全給食を受けておるか、同時に、不完全給食というものはどの程度の者にやられておるか、全然らやれてない者はどの程度のものであるか。この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  41. 近藤直人

    近藤政府委員 これは本年の二月の調査でございますが、パンとミルクと副食をとつておる者を完全給食と申しますが、完全給食実施しておるのが四百五十五万九十人、これは学童でございます。それからミルク給食と申しますか、ミルクだけを受けておりまして、その他自分の弁当等を持つて来ておる者が百八十三万七千人でありまして、合計いたしまして六百三十九万六十人というのが、本年の二月の統計でございます。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 学童総数に対するパーセンテージは……。
  43. 近藤直人

    近藤政府委員 学童総数は、教員まで入れまして約千百五十万と考えますと、約五割ちよつとになろうかと思います。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 今御説明いただきましたのは完全給食が大体四百五十五万でございますが、問題は、この完全給食をこういうぐあいにやつてはおりますが、その給食費が集まらないという現況が非常に多でいのございます。これは私が現実に長くPTAの会長をやつて給食問題と取組んだ経験を持つておりますのでこれははつきりいたしておりますが、たとえば千人の学童がおりますと、実際に給食費を持つて来るのは七百人か八百人で、二割か三割の学童給食費を持つて来ない。従つてさいぜん岡委員からもその議論がありましたが、たとえば一回を六百カロリーなら六百カロリーにしようといたします。ところが、たとえば二百五十円のお金で一箇月二十五日、一日六百カロリーでまかなつて行きたいという計画は、十人の学童がみなお金を持つて来たときにそういう計画が成り立つ、ところが実際には七百人か八百人しか持つて来ないために、六百カロリーが四百五十カロリーとか五百カロリーに落ちて行われる。しかし金を持つて来ない学童に食わせないというわけには行かない。そう考えますと、給食というものはいろいろのしつけを直すとか、偏食を直すとか、今私が申しました結核に対する対策とか、いろいろ肉体的、精神的、教育的な効果をねらつてやるものでありますが、そのためにむしろ学内の貧しい子供に対してへんぱな偏見を抱かしめる状態がわれわれのところに非常に出て来た。従つていろいろ論議をした結果、完全給食をやめて、副養だけをやつて、弁当にパンだけを持つ行く、そして副表を供給しよう、こういうことになつた。おそらくあなたの今御説明になつた百八十三万というのは、そういうことが原因になつてつて来ていると思うのです。われわれのところもそういう状況になつて来た。ところが副食の段階になつて来ると、やはり未納という問題が起つて来た。私福岡でございますが、現在石炭界は不況で、賃金も支払えないという状態が出て来ている。そうしますと、これは経済的に考えると、一食だけでも弁当を持つて行かずに、家で食わすよりか給食の方が安くつく、ところがこれは一人くらいならばいいでが、二人、三人と学校にやつていると、給食の費用が、四人だと千円になる、これを月々現金では払えないということになれば、これはどうしても何とかしなければならぬという状態が出て来るわけです。そこでわれわれは一町村に向つてこの給食の費用を、当時占領軍の小麦粉やミルクがありましたので、それの半額を市町村予算の中に計上せしめたのでありますが、一年目は七百五十万円くらい私の市では計上しました。ところが二年目から地方財政が窮迫の状態を呈して来たことは御承知の通りであります。従つて栄養士を雇うどころではない。PTAの費用の中から炊事費を出してどうにか細細と給食を続けて来たけれども、次々と七百五十万円の半額補助が打切られて、もはやどうにもならない状態が出て来た。そうしますと、この原案をよく見ますと、人件費は市町村が持て、給食費は保護者が持ちなさい。しかも給食の中の小麦粉の売渡しにつきましては、農林大臣が文部大臣と協議して、給食の上から食生活改善のため必要があれば国が安く売りましよう施設に要する経費は国が一部補助するが、その予算はわからないというようなことでは、これは義務教育は無償であるといつていたのに、今年一年の教科書さえも断ち切つて、わずか四億四、五十万円の予算も断ち切つた政府ですから、そういうどうでもいいよう法律ならば、これを断ち切ることはやさしいことです。だから、文部当局において、ほんとうに給食を推進して食生活改善をするという基盤をつくり、これを給食の大前提としてのステツプを踏む礎石たらしめようとするなら、政府が断ち切れぬよう法律として閣議決定をして出してもらわなければならぬ。現実に参議院においてこれに比べてはるかにいい法律が出ておる。その法律についても、われわれは一応提案者になつておりますが、なおこれは満足でない点もあるわけです。それよりもはるかにこの法案というものは、進歩ということ一言だつて現状からは言えない。むしろこれは現状にとどまるという法律なんです。それをあなたの説明ではこれが一つのステツプになるというなら、どういう点から、具体的に今私の申し上げたような隘路が現実に出ておるが、それをいかに切り開いて行くか。現実にわれわれのところではみんな給食をやめております。私の学校も副食でやりましたけれども生徒から金が集まらないから昨年からやめて、今年はやつておりません。こういう客観情勢がある中で、文部当局がこれを基礎にしてどういうぐあいに切り開いて行くか、その具体案を御説明願いたいと思います。
  45. 近藤直人

    近藤政府委員 学校給食は御指摘ように、パンにつきましては国が二分の一の補助をしております。その金額は約十七億円計上されております。その他脱脂粉乳の補給金といたしまして、約五千八百万計上されております。また学校給食施設設備の補助金といたしまして、これは五千万計上されております。金額から申しますと、御指摘ようにきわめて僅少な額でありまして、これによつて学校給食を推進することはできないじやないかという御意見もあるいはあろうかと思いますが、いろいろ財政の都合等によりまして、その限度にとどまらざるを得なかつたのでございます。将来学校給食予算を増額することにつきましては、さらに努力を重ねるつもりでおります。しかしながらただいままで行われております学校給食につきましては、政府の助成がございましたほかに、都道府県、市町村においても相当これは補助をいたしておりますので、それらによりまして今日まで漸次普及して参つておりますが、将来も都道府県の助成を期待いたしまして、これを普及させたいというふうに考えております。  それから学校給食費を払えない児童につきましては、御承知と思いますが、これは厚生省所管に生活保護法がありまして、この生活保護法によつて給食費の払えない児童に対して給食費を負担するということを現に実施しております。ただいまそれによつて相当数の児童が救済されております。なおその生活保護法の適用を受ける者以外に給食費の払えないという児童が、これは御指摘ように確かにございます。それらにつきましては、ただいまのところは市町村教育委員会あるいはPTAあるいは市町村の負担においてこれを支弁しておる実情でございまして、これらの点については、私どもとして決してこれを等閑視しておるわけではございませんが、何とかできるだけ多くの児童にこれを普及させるということにつきましてはいろいろ検討しておりますが、遺憾ながらただいまのところにおいてはどうしてもそこまで手がまわりかねまして、若干の者は市町村の負担において給食を受けておるというような実情にございます。それらの点については将来も漸次改善する方向に持つて行きたいと考えております。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 生活保護対象児童については、これは大して問題はない。問題はボーダー・ラインの学童だと思うのです。ところが今局長さんの御説明では、市町村教育委員会あるいはPTA、こうおつしやいました。御存じのように、市町村教育委員会というものは予算権を持たない。一切が市町村長の予算の編成の上にかかつて来ておるわけです。従つて現在教員の給料さえも払えようか、払えまいか、こういう事態。市くらいになると一つ学校じやないのですから、何百人という給食費を持つて来ない学童がある。現実に学校の教師が年度初めの教科書の代金を立てかえておる。われわれのところではそれも払えないで困つている。これはPTAで何とかしてくれという相談さえもあるのが実情なんです。また給食の子供に行く給食費を市町村が持つ、その前の給食をやる施設、それから給食の炊事婦、栄養士調理士等の人件費をPTAに持つて来るという実情です。こうなつて来ると、これはもう給食というものは国家がやるのじやなくてPTAがやるという実情になつてしまう。金は保護者が出す、現実に施設なんかPTAの寄付でやつておる。  しからばお尋ねしますが、二十九年の二月に四百五十五万の完全給食がありましたが、その前の二十八年の二月にはどうだつたのですか、それが現実にどんどん増加の傾向にあるのですか、だんだん縮小の傾向にあるのですか、これがはつきりすれば今後の給食の状態はある程度めどがつくと思うのです。
  47. 近藤直人

    近藤政府委員 これはただいま統計を持つておりませんが、概数として、二十八年七月現在でございますが、これが完全給食とミルク給食と両方合せまして五百四十万、それから二十八年の十一月でございますが、これが完全給食が四百二十二万七千、ミルク給食が百四十二万八千、合計いたしまして、五百六十五万六十でございます。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 そういたしますと、統計の上では非常にけつこうなことだと思うのです。今年の方が六百三十九万ですから、五百六十五万より六、七十万増加をしておるということになつて、これは傾向としては非常にいいことだと思います。その原因がどこにあるか私は知りませんが、むしろ私の方の地区においてはもうどんどんやめておる、減少傾向にある。しかしなおほかのところでそういう子供の持つて来ない給食費まで市町村でどんどん出すところがあつてこれが普及をしておれば、これは傾向として非常にいい傾向だと思うので、この法律基礎としてぜひこれはやつていただきたいと思うのでございます。問題はこの栄養士や炊事婦等の人件費を一切市町村の負担にしておるのですが、こういう形でだんだんやつて行くと、義務教育の半額国庫負担の例にならつて、当然これは学校教育一環をあずかるものですから、そういうものも半額負担の中へ入れてくれという要望が必ず出て来ると思いますが、文部省はどうしてこれだけを市町村におまかせしてそういうものの対象にしなかつたのですか、この点を明らかにしていただきたい。
  49. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま学校給食の場合に経費の負担区分は実情がどうなつておりますか、それを検討いたしました結果、大よそ給食費用につきましては、いわゆる物資の費用その他多少の光熱費も附加されるところもございますが、大体物資の費用につきましては保護者がこれを負担するということになつております。それから人件費その他につきましては、これは大体町村の教育委員会あるいは市町村自体がこれを負担するというような形になつておりますので、その現状からにらみまして大体そういう方向が適切ではないかというふうに考えまして規定したのでございます。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、それはよくわかつておるわけです。ところがこれはやはり教育一環に携わる者で、私はこれはやはり一種の教育者でなければならぬと思うのです。これはただ給食調理をするだけだから教育者じやありませんということでは、やはり一つ学校という教育の場において教師と同じ立場で——これはおそらく栄養士とか炊事婦に対しても学童先生々々と呼ぶだろうと思うのです。そうしますと、その人たちの人件費だけを切り離して市町村で負担しなさいといつたつて、すでに市町村の財政は現在非常に苦しいことは、これはもう局長さんも御存じの通りです。ことしでもすでに三百六十億の赤字がある。今度のいろいろな地方税法の改正その他で百二十七億の財政上措置されざる赤字が出て来るということも、これは地方行政委員会等ではつきりして来ているわけです。そうしますと、そういう苦しい地方財政の中からなお昨年よりか今年は給食費が五、六十万も人員がふえておるというこういう情勢があるならば、ここをひとつ緊褌一番、こういう法律をつくつたついでに人件費だけでも見てやろう、十七億が降旗委員の言うように二倍にならなくても、その人件費の半額だけでも見てやる。こういうことならば、百尺竿頭一歩を進めた法案として一つの進歩を見出すことができると思うのです。そういう点でひとつどうですか、何とか考えて文部省の予備費の中からでも何からでも、あるいは政府には現在予備費があるわけですから、そういうものから出してやるという御決意がありますか、それとも依然としてそれはだめだという考えで行かれるわけですか、その点をひとつ局長さんの決心のほどをお伺いしたいと思います。
  51. 近藤直人

    近藤政府委員 学校給食の人件費と申しましても、これは主として調理人でございますが、パンを焼く者あるいは調理をする者でございまして、これは大体現状におきましては教育委員会がこれを雇つてつて、その雇つておる際の身分は、大体役所で申しますれば雇員というよう資格におきましてやつておるのが現状であります。現に東京都においては大体そういうことでやつております。その中で、学校教員栄養士資格を持つておる教員がこれを指導する、あるいは特別に栄養士がおつてそれを指導するというような形になつております。大体専門栄養士が一人とその下で働く者が二人、三人、これはまあ学校児童数によりまして変動がございますが、大体そういうような形になつておりますので、もしかりにその人件費を国が一部持つ、持たぬという問題になりますれば、これはやはりその栄養士の人件費という問題になります。またその雇員の人件費の問題でございますが、その点もいろいろ私は研究の問題があろうと思いますが、ただいまのところでは国といたしまして予算の措置もしておりませんので、一応これは地方団体の負担においてやらざるを得ないのでございます。これは御指摘ように、あるいは地方財政の問題にも関連いたしまして、将来やはり問題になるのではないか、かよう考えておりますが、現状におきましては、やはり地方の負担においてこれをまかなつていただくよりほか方法はない、かよう考えております。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 これだけでやめますが、今国が補助するとすれば栄養士がその対象になるだろうというお話でありましたが、たとえば現在、これはまあ詳しく言うと長くなりますからやめますが、おそらく人口十万ぐらいの市は教育委員会栄養士を雇つておるところは私は非常に少いと思います。栄養士は割合高級の学問も受けているので女性としては給料が高いのです。従つてこれは私の市なんかでもおそらく一名ぐらいしかいません。各学校に、少くとも二校や三校に一名ぐらいの栄養士を置きたいと思つても、これはことに十万そこそこの市なんかでは給料が安くて来手はないのです。そうしますと、これは相当高給をもつて抱えなければならぬ。ところが、現在われわれの市にも一名栄養士がおりますけれども、実際にはこれは一名くらいでは事務臓になつてしまう。これは日本の通弊なんです。たとえば農業委員会で農業の技師を雇いますと、これはいわゆる農業の生産技術を指導する技師として働かない、事務屋になつてしまう。私はこの前も予算総会で、厚生省でも同じであつて厚生省で医者は医師としての技術よりも事務屋となつておるところに現在の日本の医術の進展を妨げておる原因があるということを指摘しておいたのですが、その通りです。地方自治体のいわゆる技術屋さんが自分の技術をもつて指導していない。栄養士も、現在われわれの市の教育委員会における栄養士はせいぜい公民館における婦人学級の栄養の講師であつて、現実に学校の現場に行き、いわゆる栄養の、蛋白を何カロリーにするとか、あるいはどういうものを使つてどういうぐあいに調理すればビタミンがこわれないかというような具体的な指導をやつていない。これは教育委員会における机の前にすわつた事務屋になつておる。せいぜい今言つたように公民館の婦人学級の講師くらいが落ちです。これはなぜかと申しますと、教育委員会の人員が足りないから、だから事務屋になつてしまつて、外に向つては体裁上栄養士の一名くらいは置いておかなければならぬというので飾り物になつておるのが実情なんです。これを私は指摘しておきましたが、集団中毒やその他がいろいろ学校で起るということは、栄養に関する専門家がいないところにその原因がある。雇員の水準で満足しておるところにいわゆる学校給食における中毒事件が起る根本的な原因がある。従つてこれは百歩を譲つて厚生省が今年の予算にこういうものを出すのならば、やはり何らかの形でこれは栄養士だけの経費でも補助するだけの努力をしなければ、こういう法案を出した価値はほとんどないといつてもいいのではないか、ただ法律をつくつてつたということだけだと思います。この点くどいようですが、栄養士の点にだけ限つてもう一回御答弁を願いたいと思います。
  53. 近藤直人

    近藤政府委員 御指摘ように、栄養士の問題は確かに大きな問題で、学格給食をやる以上は、各学校に少くとも一人づつ栄養士は置いて、栄養の面について十分指導を受けさせなければならないということは、これは一つの問題であろうと思います。現状におきましては、さよう学校もございますが、そうでないところもあるというよう状況でございますので、将来の指導の面といたしましては、少くとも各学校に一名の専門栄養士を置くということは、これは理想でございますが、私どももさよう方向に向つて今後努力を続けたいと思つております。現状は、遺憾ながらそこまで参つておりません。そこでしからばこの栄養士の問題を推進するのにはどうすればいいかということになりますと、これはあるいは御指摘ように、栄養士の人件費を国が持つということになりますれば、これは推進されるというふうなあるいは御意見もあろうかと思いますが、そういつた面につきましても今後とも私ども検討を続けるよりほか方法がないのでありまして、現状におきましては、これは学校におきますることは市町村教育委員会の負担においてやつておるような実情でございますが、将来これを推進するために人件費を出すか、あるいはまた別途ほかの方法でこれを推進するように考慮するか、この点につきましては将来とも研究を進めたい、かよう考えております。
  54. 田中久雄

    ○田中(久)委員 先年来非常にやかましい問題でありました学校給食法が、文部当局の非常なお骨折でようやく日の目を見るに至りましたが、予算の制約を受けてまことに残念な法律案なつたことは一面やむを得ぬことと思いますけれども、私は法律としてつくる上においては、やはりもう少しまじめなものにしなければ、政府学校給食をいやいやながらやむを得ずやつておるのだ、あるいは将来の小国民の体育とかあるいは食生活改善とかあるいは教室に貧富の懸隔を持ち込で子供を悲します、そういうようなことのないようにするとか、いろいろ大事な点について一体本気でやる気があるのかどうかということを疑わしめるような感を持つのであります。学校給食は私ども考えております点は少くとも義務教育全部に及ぼしたい、託児所とか幼稚園もこれはまことにけつこうなことでありますが、法律として学校給食法と銘打つて来れば、義務教育全体に及ぼしたいというのがまず第一の希望であります。それから委員各位からもまた局長からも申された通り、国はおかずにまでは及びませんけれども、少くとも子供の滋養の点から見まして、パンの粉とそれから脱脂粉乳、この二つが大きな基本になつておる。現状は原麦の半額だけを国が補助をして、脱脂粉乳に対しては利子を補給する程度にとどまつておる。何とかこれも小麦同様にある一部を国が持つて、そうして奨励するということに行きたいというのが第二の学校給食法の骨組みであると考えております。第三には準要保護の家庭、しばしば問題になつている問題でありますが、生活保護を受けない家庭の子供であつて、しかも金が納められない、先生が自分の教え子に対して給食費を持つて来なさいと言うことは教員としては非常につらいことである。それて二百円の給食費を小さくわけて、二十円出させまた十円出さすというような出させ方ででもとつておるようでありますが、たえかねて教員の中には自分の小づかいの中から黙つて子供が出した形にして納めておる先生方も相当あるやに聞いております。またPTAの方々が、同じ自方の子供の友達が給食費が納められない、非常にさびしい思いをするということをさせないようにという深い配慮から、子供には知らせないでPTAの経費の中から出しておることも実は長年続いておる問題でありますが、この点は何としても国として市町村、府県の協力を得まして解決をしなければならぬと思います。このことが非常に重要な問題でありまして、もしこれが法律的に解決せられなければ学校給食というものの意義は半減せられるものと考えます。こういうふうにこの学校給食の柱となるべき義務教育全体に及ぼすべきものであるということが一つと、それから小麦同様に脱脂粉乳も扱われるべきものであるということが一つと、生活保護を受けていない家庭の子供であつて払えない、準要保護家庭児童に対する問題が一つ、しかしこれは扱い方がありまして、何でもかでも国が出すということになれば、給食費を出せる家庭でもあるいは出さないものがないとも限りませんから、これは学校設置者において、すなわちその市町村において出せない子供の給食費を負担しておく、そうしてこれをあるいは学期末あるいは年に二回とか三回とかの決算において、その三分の二程度のものを国が補助するということをどうしてもこの法律で明示しなければ、私は学校給食の成果は得られないと考えるのであります。もとよりこれは予算の問題でありまして、かつて本会議におきましても、当時大蔵大臣は米の輸入を大幅に減らして小麦にかえたい、まことにけつこうな御意見でありました。先ほど降旗委員が述べられたようなことを昨年の六月に大蔵大臣が言われたので、その通りひとつ思い切つてつてもらいたいということを要望したものでありましたが、米の配給量を減らすということが政治的に非常に問題であるという点から、これは当時の大蔵大臣の演説だけに終つて実現を見なかつたのであります。これはそういうことによつてでも何としても大幅に国の経費を動かすことによつて、この準要保護家庭の子供の分だけはこの法律でしていただきたいと思うのであります。一兆円の予算に押えられておりますので、ただいまただちにこの法律をさように訂正するということはよほど困難であろうかとは考えますけれども、しかし学校給食法を、少くともせつかく基本をここにつくる場合において、あるいは施行期日を先にするもよろしいし、別途にまた方法を政府当局において勘案せられることもよろしいが、いずれにしてもこの学校給食法の基本だけはこの法律にうたいたいというのが、私どもの、おそらく文部委員のほとんど全部の考えであろうと存ずるのであります。  そこで問題が少し重要になりますので、私は次会に大蔵大臣と農林大臣と文部大臣の御出席を得まして、この点についてひとつ十分な御答弁を願いたいと思います。本日は私の希望を述べるにとどめまして、私の発言を終ります。
  55. 辻寛一

  56. 杉山元治郎

    ○杉山委員 もうすでに同僚委員諸君の質問で大体私の聞かんとするところも尽きて来たのでありますが、なお少しばかり条文に従いましていろいろと伺つてみたいと思うのでおります。  今田中委員、また降旗委員もお話になつておりましたように、昨年の暮れに食生活改善決議案を出しまして、満場一致通過いたしました。ちようど今日の食糧事情から見ますと、御承知のように二十八年度産米がようやく三千万石ちよつと越したぐらいしか買い入れられておりません。こういうようなわけで、どうしてこの食生活を維持して行くか、こういうことに当面いたしておりまして、十五日の配給を維持するためにいろいろと政府は苦心をしているようでありますが、こういう際こそあの決議案を生かし、また食生活改善のために努力すべき非常な好機であると思うのであります。遺憾ながらきようは農林省関係の方がおいでになつておらぬということでありますから、それに対する質問はやめておきたいと思いますけれども、農林省が熱海構想なんというものを考えておりまするあの様子を見ても、相かわらず米食偏重の考え方を捨てておらないという状態でございますが、私どもはこういうときにこそ食生活改善し、米食偏重を直して行かなければならない、こういう考えを強く持つておりますので、この考えのもとにつくられました学校給食法に対して、私は非常な敬意を表したいと思うのであります。  そこで第一条に国民生活の改善に寄与するもの、こういうことを目的のうちにうたつておりますが、文部省はこの国民生活に寄与するというのについてどういう意図を持つているか。また何によつてこれを改善ようとするのか。大体今までのお話によつて様子はうかがわれますが、はつきりとその点をうかがつておきたいと思うのであります。
  57. 近藤直人

    近藤政府委員 ただいま問題になつております国民食生活改善ということにつきましては、これは食糧問題の面からも一つの問題でありますが、なおそのほかに国民栄養の見地からも当然食生活改善して行くということが起つて来ると思うのであります。今考えられておりますことは、食糧問題の見地から食生活改善ということが唱えられていることと考えられますが、これがためにはやはり国民に対しまして粉食を奨励するということが一つの方法であろうと思つております。政府におきましても、食生活改善協議会というものを内閣につくりまして御検討を願つておりますのもやはりその線があるのではないかと推察いたしているのでございますが、粉食を奨励するという見地から申しまして、この学校給食が相当な役割を占めるということは、これは多言を要しないことと考えております。今ただちに成人に対しましてうどんを食え、パンを食えということを申しましても、これはなかなか長い間、いわゆる粒食の習慣がついておりますので、一朝にしては改善は困難であろうと考えられますが、それにしてもやはりそういう方向に向つて改善を進めて行くということも一つのこれは方針でなければならぬと考えますが、特にこの児童生徒のうちから粉食を奨励するということがきわめて有効であり、かつ適切な方法であろうと考えられます。児童はまだこれは年令から申しまして白くも赤くもなる時代でありますので、この児童の時代から紛食にならさせますことは、将来におきましていわゆる食生活改善という面に大きな寄与をなすものというふうに考えられます。この学校給食法におきまして、国民食生活改善に寄与するということをうたつておりますのもさよう趣旨でございます。
  58. 杉山元治郎

    ○杉山委員 それではおもに紛食あるいはパン食ということとともに栄養の点、たとえば、先ほどお話のように脂肪、蛋白質あるいはビタミン、こういうものをもつて栄養改善する、こういうように解してよろしいですか。
  59. 近藤直人

    近藤政府委員 さようでございます。
  60. 杉山元治郎

    ○杉山委員 次に第三条の給食の範囲のところでありますが、これを見ますと、「小学校盲学校ろう学校又は養護学校」こういうように相なつているのですが、私どもが以前に食生活改善の場合には、少くとも義務教育中学校、一歩進んでは高等学校までこういう希望を持つてつたのであります。特に食生活改善をし心身の健全をはかつて行く、こういうことにつきましては、さきに岡委員もお話になりましたように、小学校以前の子供にこの点を進めて行かなければならぬのではないか。なぜこの第三条に幼稚園というものを省いたのであるかという点が一つの点と、それから義務教育の方の中学校まで及ばなかつたのかという点、その次に盲学校、聾学校というのはやはり小学校程度の盲学校か聾学校か。この点についてちよつと伺いたいと思います。
  61. 近藤直人

    近藤政府委員 お答え申し上げます。まず盲学校、差学校につきましては、これは小学部でございますから、小学校児童と同じくお考えになつてよろしいかと思つております。それから保育所でございますが、これにつきましては従来から私どもでお世話申し上げまして、脱脂ミルクを輸入した際に保育所の分も一括輸入いたしまして、これを厚生省の方におわけして参つております。その面につきましては今後ともさよう方針考えております。それから中学校につきましては、これは理想に考えますれば、やはり発育期といたしまして小、中を考えるのが私は筋だろうと思つております。しかしながらただいま現状におきましては小学校児童のみを対象にして実施しておりますので、さよう意味からこれを省いたのでございますが、考え方といたしましては、やはり中学校もこれに加えるのがあるいは理想ではないかというふうに考えております。これは漸次そういう方向に持つて行きたいと考えております。それから幼稚園でございますが、これにつきましては私まだ明確には理解しておりませんが、終戦直後アメリカから物資をいただきまして学校給食を始めた際になぜ幼稚園をはずしたのか、あるいは幼稚園をやつてつたのですか、その点ちよつとはつきりいたしませんので、なお調べました上で御返事申し上げたいと思います。
  62. 杉山元治郎

    ○杉山委員 終戦直後にはやはり幼稚園にも脱脂粉乳などは配給されておつたようにも私どもは外から見て記憶いたしております。これはあるいは幼稚園でなくして保育所であつたかもわかりませんが、見受けたところ幼稚園ような部分もあつたように見受けるのであります。それはそれといたしまして、この法案建前、目的から申しますと、どうしてみても先ほどから申しましよう幼稚園を入れなければ私はうそだと思うのであります。これは予算関係というなら、これはわずかな数ではないかとも思います。この法案建前からいうと、ぜひ幼稚園を入れること。それから保育所の問題は、今お話のよう法律建前でたいへんめんどうになるからいけない、しかし従来通りいろいろの世話、関係はある。こういう点は一応考えられるのでありますが、それらの点についていろいろとあとで相談のございますときにお話も申し上げたいと思いますが、法律建前でそうするというならば私どももこれは一応やむを得ないと考えますが、できるならば私は先ほど申し上げたように、幼稚園並びに保育所というものを少くとも法案の中に入れて行かなければ学校給食建前から非常に欠けるところがあるのじやないか。こういうことを強く考えますので、その点を一応当局の方でお考えおきを願いたいと思うのであります。  その次に伺いたい問題は、さきにお話の第六条のいわゆる学校給食を受ける児童の保護者の負担という問題でございますが、在現生活保護を受けている人たちの子供でそういう学校給食をやつている数はどのくらいになつているか。あるいは今滝井さんのお話になつておりましたボーダーラインの子供たちで、出すことのできないこういう人たちは現在どのくらいの数になつているか。こういう点もわかればお知らせいただきたいと思うのでありますが、お話のように自分が給食費を持つて行くことができないということは子供の自尊心というものを非常に傷つけますとともに、それを見る親もじつとしていることのできない状態であろうと思うのであります。せつかくよい学校給食というものがかえつて児童のそういう心理状態を傷つけること、また児童憲章によつて子供は平等に保護されて行かなければならぬのにかかわらず、そういうことによつてかえつてじやまになつているというような問題などを見受けますときに、これはじつとしていることのできない問題だと思う。ただ学校先生たちに貧しいポケツト・マネーから出してもらうとか、あるいは非常に貧弱な財政に困つている町村の負担にするというようなことは、どうしてみても耐えがたい問題だと思うのでありまして、こういう問題については政府は十分に注意をして、これらの人たちがほんとうに一様に給食をするならば給食を受けられるという制度に持つて行かなければ、かえつてよいわざが悪い結果に及ぶということを私はおそれますので、その点についての政府の御所見をいただきたいと思います。  それからその前の六条の第一の方の学校給食の運営に要する費用のうち「政令で定めるものは、」と書いてありますが、施設の方ははつきりいたしますが、政令で定めるものの方はどういうものが学校の費用に入りますのか、先ほどもお話のあつた栄養士どもつておるのかどうかという点を伺つておきたいと思うのであります。
  63. 近藤直人

    近藤政府委員 まず先の方からお答え申し上げます。学校給食を受けております児童のうちで生活保護法の適用者でございますが、この調査は昨年の六月末現在でございますが、給食対象人員約五百三十万のうち、生活保護法の適用を受けておりますのが約十九万、パーセンテージにして三・六%でございます。それから生活保護法の適用を受けておらぬけれども市町村から援助を受けておるもの、いわゆる準要保護児童でございますが、これが十四万九千、約十五万、率で申しまして二・八%であります。そのほかこれと同等と考えられるものも相当ございますが、現実に援助を受けておるものは、先ほど申し上げました数字でございます。この準要保護児童につきましては、先ほどもお答え申し上げました通り、私どもとしては何とかこれを国から補助をするよう方向考えたいというので、実は毎年予算措置をいたすべく要求をしておるのでございますが、遺憾ながらまだ予算はついておりません。ただ問題になりますのは、準要保護児童と申しますと、一体どの範囲が準要保護児童であるのか、その範囲についてかなり問題があろうと思つております。生活保護を受けておる児童につきましては、その家庭が生活保護法の対象になるというので、例の福祉委員と申しますか方面委員と申しますか、そういつた者の認定によりまして、市町村がこれに対して援助をするということになるわけでございますが、準要保護児童になりますと、その児童だけの問題になりますか、あるいは家庭までの問題になりますか、その点きわめて困難な即題があろうと考えております。予算要求をしながらも、そういつた点につきましては実は毎年頭を悩ましておるのでございますが、明確な線をどこに引くかという点につきましては、私どもまだ結論を得ておりません。さような問題がありますことを関連して申し上げておきます。  それから学校給食の運営に要する経費の政令はどういう範囲を入れるかという御質問かと思つておりますが、小学校などの設置者の負担とする経費の範囲ということがまず考えられるのでございます。その際に人件費または人に伴う経費その他給食費として児童保護者の負担とすることが不適当な経費というふうに一応考えております。これははなはだ漠然たる考え方でございますが、ただいまのところにおきましては、まだ政令の内容についてはしつかりした検討をしておりませんので、一応保護者の負担とすることが不適当なものというふうに考えております。もちろんこの中には人件費も含めて考えておりますが、その範囲をどうするかということについては、まだ明確な結論を得ておりません。一応お答え申し上げます。
  64. 杉山元治郎

    ○杉山委員 どうも当局もわからぬということでありますからやむを得ません。保護者の負担とするに不適当なものと漠然といたしておりますか、人件費の中には、先ほどお話の栄養士が含まれておるのかという問題でございますが、いかがでございますか。
  65. 近藤直人

    近藤政府委員 もちろん入れて考えております。
  66. 杉山元治郎

    ○杉山委員 ところが、先ほどお伺いしますと、栄養士を置いてある学校は非常に少いということでありますが、栄養士はどうして見ても私どもいろいろな関係からして置く必要があると思います。しかし経済の関係で置くことができないといたしまするならば、先ほど松永委員もお尋ねになつたと思うのでありますが、先生の中で何箇月か講習をして栄養士の免状をとつてもらう、こういうことは可能だと思うのであります。そうすると教務のかたわら栄養のこともやつてもらえる、こういうことができるかと思うのでありますが、そういう点について文部省は考えておるのか、またやろうとしておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  67. 近藤直人

    近藤政府委員 栄養士についてお答え申し上げる前に、ちよつと数字を申し上げますと、これは二十七年の九月の調べでございますが、学校に付属しておる栄養士は三百四十四名、都道府県の教育委員会に付置されておる栄養士が四十五名、市の教育委員会に付置されておる栄養士が百二十九名、それから学校給食会におりますのが五名、その他でございます。  そこで栄養士がきわめて少いということは、まことに御指摘通り遺憾なことでございますが、ちよつと御案内がありました通り学校職員に対して講習をいたしまして、これをかえるというような案でございますが、実は私どもといたしましても、とにかく急場を間に合わせるということで、学校の教職員に対して短期間の講習をいたしまして、それを配属させたいということは考えております。なおその具体的なことについては今後研究を進めたい。一応構想としては先生のお話の通り考えております。
  68. 杉山元治郎

    ○杉山委員 ただ簡単な講習だけに終らないで、やはり厚生者の試験を受けた正規の栄養士を置いていただくようにならないと問題にならぬと思うのでありますが、そういう場合にはぜひひとつ正規の試験を受けた栄養士を置いていただくことをお願いしておきたいと思うのであります。  それから、先ほど集団疾病の話がありまして、楠本局長から数が示されました。これは厚生省の数だろうと思いますが、文部省が御調査になりました集団疾病の調査はどのようになつておるか、あればひとつお知らせ願いたいと思います。
  69. 近藤直人

    近藤政府委員 私どもの資料は全部厚生省の方からちようだいしておりますので、厚生省の御発表の数字とまつたく同じでございます。
  70. 杉山元治郎

    ○杉山委員 給食を扱う場合には、厚生省も必要だろうと思いますが、主管が文部省にあるのなら、そういうものの正確な調査をぜひ持つてつて知らしてほしいと思う。それでないと、そういう問題が不十分になつて来るのでないかと思いますので、厚生省の調査もけつこうでございますけれども、文部省は文部省としてのそういう統計を十分に持つてつて、今後お示しをしていただきたいと思うのでございます。  それから給食の衛生状態を調査監督をしておるであろうと思いますが、今言うよう栄養士のごく微量な状態ではおそらくはできておらないのじやないかという感じを持つのでありますが、一体月に何回とかあるいは実地にそういう調査をしておるのか、また先ほど松永委員も触れておりました、食事に携わる人たち、この人たちの健康状態は、健康調査を月々やつておるのか、普通の飲食店のようなものでも御承知のような定期的な検査をいたしておりますが、一体学校給食にはそういう手続はどういうようになされておりますか、その点をお示し願いたいと思うのであります。
  71. 近藤直人

    近藤政府委員 先ほど申し上げましたように、栄養改善法との関連におきましても、教育委員会法によりまして学校給食の際におきまする栄養指導あるいは衛生管理その他につきましては、教育委員会が主としてやることになつておりますので、私どもの方の指導によりまして学校給食の従事者に対しましては教育委員会から随時検査その他を行つておるのでございます。定期的に何回やつておりますかどうか、その点につきましては最近の資料がございませんが、教育委員会でそういう指導を行つておると考えております。
  72. 杉山元治郎

    ○杉山委員 教育委員会委員の中にはお医者さんもおるようによく見受けておりますが、そういうところはそういう点には非常に注意なされるだろうが、どうもそうでない、われわれと同じよう教育委員会も仕事の型はずいぶん多いと思います。それでそれほどまで注意が届いておるかどうかという点についてはなはだ疑問に思うのであります。教育委員会にまかしておるということならばやむを得ませんが、そういう点を厳重に監督していただいて誤りのないようにしていただきたい、こういうよう希望するのであります。  それから最後に先ほど滝井委員も仰せになつておりましたように、私どもの方から同じ題目の法案を出しております。この法案の方がこの法案より数等まさつておると思うけれども、先ほどお話のよう予算の点が今日の場合多少考慮されますが、政府は御比較になつたと思うのですが、この両派社会党の出しておる学校給食法とこれは正直どちらがいいのか、今日はやむを得ぬからこの政府提案のものを出しておるのだ、もしお金が許すならばわれわれが出しておる法案がいい、こういうことについてひとつ政府忌憚のない御意見を伺つておきたいと思うのであります。
  73. 近藤直人

    近藤政府委員 参議院で御提案の学校給食法案を拝見いたしております。根本的に相違いたしておりますのは給食用の物資を無償で支給するようになつております点が根本的に違うのではないかと思います。その他ございますけれども大きな問題はその点だろうと思います。そこで学校給食実施する場合に無償でやることがはたしていいか悪いか、これは私は相当議論があるのではないかと思う。そこで今優劣につきましてお話申し上げることはちよつとお許し願いたいと思いますが……。これはなかなか議論のあることだろうと思います。
  74. 杉山元治郎

    ○杉山委員 議論になりますと何ですから私の方はよしておきましよう。少くとも小学校義務教育という範囲においては、これは義務教育でありますから、教科書を切るなんということは非常な間違いでありますとともに、少くとも子供の心身を守つて行くという、第二の国民をつくる、また知育を守つて行くという点から考えれば、給食の費用くらいは国家が持つても当然の話だろうと私は考えておるのであります。そういう点についてのいろいろ経済上の論議はございましようけれども、ここでは議論になり意見がわかれるところになりましよう、また政府の方もそれをはつきり言うのにはたいへんむずかしい点もありましようから、私は遠慮しましてこれで私の質問を打切つておきます。
  75. 松永佛骨

    松永(佛)委員 この学校給食法案につきましては、いずれ文部委員会におかれまして総論あるいは逐条審議が慎重になされることと存じますが、この法案の審議に並行いたしまして私ども希望もおいれくださいますように、懇談会等のものを委員長におかれて適当にお開きを賜つて、われわれの希望もおいれ願いたいと存じます。なお先ほど来の当局の御答弁を承つておりまして、この法案につきましてはおつしやる通り学校教育一環としての考慮は十分に払われておる、しかしただそれが重点であつて、われわれが希望いたしておりまする人生における最も旺盛な発育期にある児童の心身の発育を十分ならしめるための栄養補給を本旨として考える、あるいは日本国民が多年にわたりまして続けて来たいわゆる粒食というものに対する郷愁感を小さいときから取除いて、国策としての国民食生活改善に重点を置くべきであるという二点が、ややゆるがせにせられておる点はさらにひとつ御考慮を賜わりまして、最終案としてこの法案がよりよきものになりますように、本日はわれわれ厚生委員会の申出をおいれくださいまして連合審査の機会をお与えくださいました、われわれ厚生委員はこの法案につきまして、さきに申し上げましたような要旨について検討いたしまするために、食生活改善委員会を設置してこれに当つておりますが、本日はこの委員会の全委員が出席をいたしまして本連合審査会に臨ましていただきましたが、このわれわれの熱意も十分おくみとりくださいまして、どうかこの法案の審査とともに並行して、われわれの希望のための懇談会もぜひひとつ取上げていただきたい、かように申上げます。ありがとうございました。
  76. 辻寛一

    辻委員長 御熱心に御審議をいただきまして厚生委員の各位にお礼を申し上げます。ただいま松永委員からの御提案につきましては、よく了承いたしまして善処をすることにいたします。  これにて散会をいたします。    午後一時八分散会