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1954-03-05 第19回国会 衆議院 文部委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月五日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 相川 勝六君 理事 伊藤 郷一君    理事 坂田 道太君 理事 田中 久雄君    理事 野原  覺君 刑事 松平 忠久君       岸田 正記君    熊谷 憲一君       世耕 弘一君    竹尾  弌君       長谷川 峻君    原田  憲君       山中 貞則君    亘  四郎君       喜多壮一郎君    町村 金五君       高津 正道君    辻原 弘市君       山崎 始男君    前田榮之助君       小林  進君    小林 信一君       松田竹千代君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学事術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (調査局長)  小林 行雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衛門君     ――――――――――――― 三月三日  公立学校事務職員教育公務員特例法適用の請  願(橋本龍伍紹介)(第二八八〇号)  学校給食法制定請願外二件(黒田寿男君紹  介)(第二九四五号)  学校給食法制定等に関する請願黒田寿男君紹  介)(第二九四六号)  石部小学校改築費用庫補助に関する請願堤ツ  ルヨ君外一名紹介)(第二九四七号) の審査を本委員会に付託された。 同 日  教育行政制度改正に関する陳情書  (第一三八一号)  教職員定数確保に関する陳情書  (第一三八二  号)  教育委員会制度改正に関する陳情書  (第一三八三号)  町村教育委員会の廃止に関する陳情書外一件  (第一  三八四号)  現行地方教育委員会堅持等に関する陳情書  (第一三八五号)  定時制教育及び通信教育振興に関する陳情書  (第一三八六  号)  文教施設整備に関する陳情書  (第一三八七号)  同  (第一三八八号)  同外六件  (第一三八九号)  危険校舎改築に関する陳情書  (第一三九〇号)  高等学校危険校舎改築に関する陳情書  (第一三九  一号)  ユニセフ給食用小麦粉全額補助に関する陳情  書  (第一三九二号)  婦人教育振興費増額に関する陳情書  (第一三九三号)  同  (第一三九四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  教育委員会法の一部を改正する法律案野原覺  君外百三十二名提出衆法第四号)  教育委員会法の一部を改正する法律の施行に伴  う関係法令整理等に関する法律案野原覺君  外百三十二名提出衆法第五号)  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案野原覺君外百三十二名提出衆法第六  号)  義務教育学校における教育政治的中立の確  保に関する法律案内閣提出第四〇号)  教育公務員特例法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)     ―――――――――――――
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより会議を開きます。  学校教育法の一部を改正する法律案国立学校設置法の一部を改正する法律案公立学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案義務教育学校における教育政治的中立確保に関する法律案教育公務員特例法の一部を改正する法律案の五案を一括して議題とし、前会に引続いて質疑を行います。町村金五君。
  3. 町村金五

    町村委員 私は文部大臣に二、三の点についてお尋ねをいたし、御所見伺いたいと思うのであります。  このたび文部省が御提案になりましたいわゆる教育政治的中立性に関しまする二法案というものを審議いたさなければならないということは、私はわが国教育界のためにまことに悲しむべき事態であると存ずるのであります。もちろんかような重大な法案国会に提案しなければならないというような事態を招来しているという事態は、私どももこれを認識するにやぶさかなものではないのでありますけれども、今日のような重大な段階に到達せざるを得なくなったということについての責任は、一体だれにあるのであるか。もちろん戦後におきまするわが混乱した状態がこの事態を招いたものであるということは言い得るのでありますけれども、長きにわたつてかような情勢をそのままに放置をいたし、今に至りましてこれに法をもつて臨まなければならないということは、まさに私は従来の政府の非常な政治的貧困を物語るものでなければならないと思います。従いまして私どもはその意味合いからいたしまして、かかる法案を出されたことについては、歴代の文部当局責任を私は深く追究いたしたいと存ずるのであります。まずこの点につきまして、今日の文部大臣といたしましての御心境を伺つておきたいと思うのであります。
  4. 大達茂雄

    大達国務大臣 教育基本法に、教育政治的中立に関することかはっきりとうたわれておるのでありまして、それがわが国の教壇において守られてさえおれば、かような法律を出す必要はないのであります。私は町村君と同じように、この法律を出さなければ基本法の八条の精神が守り得ないという認識にまで到達せざるを得なかったというわが国教育現状に対しては、まことに痛嘆にたえない、こう思っております。その責任一体だれにあるかということでありますが、これは文部省といわず、あるいは教育委員会といわず、教育諸君といわず、いやしくもわが国教育関係を持つ人々は共同してその責任を痛感しなければならぬ、かように考えるのであります。なるほどそれぞれに言い分けはありましよう。あるいは文部省としましても、さような行政手段をもちましてこれを是正するほか道がないとか、いろいろ言い分はあろうけれども、これは結局直接には教育関係するすべての面の、帰するところは町村君の言われたようなわが国の戦後の思想の混乱ということが大きな基盤になつておると思いますが、いかにもその責任は、すべて教育関係する者がひとしく痛感して、自粛しなければならぬ問題である、かように思います。
  5. 町村金五

    町村委員 私どももこの法案を審査して参りまする上におきましては、この法案が将来の日本教育界にきわめて重大な影響を及ぼすであろうということを深く考慮に入れまして、きわめて真剣な気持をもつてこの法案に対しておるのであります。私はただいま文部大臣が言われました通り、あえてだれの責任ということを追究することは必ずしも妥当でないと思います。要するに戦後の日本人全体がこの問題を深く反省し、考えなければならないという点におきまして、私どもも深くその責任の一端を痛感いたしておるのであります。そこで、この法案を審査するにあたりまして、いろいろな角度から検討を加えて参らなければならないと思うのでありまするが、一昨日の委員会におきましても、日教組というものが今回の法案において最も重要な要素として浮び上つておるのであります。すなわち中立法の第三条によりまするところの扇動あるいは教唆というような事態を、日教組を通じて問議することに相なつておるのでありまするから、まず日教組実態というものが深く究明せられ、明らかにされる必要があると思うのであります。世上ややもいたしますると、日教組というものが非常な偏向状態であるというような批判もあり、また必ずしもしからずという両面の批判があることは御承知の湿りであります。従いまして私どもといたしましても、まず日教組実態がこういうものであるかということを深く究明して参りますることが、本法案審議の上におきましてきわめて重要な要点をなすものであると考えるのであります。従いまして、私はまずこの日教組実態というものにつきましての文部大臣の御所見を伺つておきたいのであります。  去る二月二十四日の衆議院本会議におきまして、同僚田中久雄議員の御質問に対しまして、大臣は、「日教組は今日はほとんど政治団体である」あるいは「日教組は、いわゆる勤務条件向上改善目的とする労働団体、あるいは教育研究を志すところの教育者団体という面はもちろんあるのであるけれども、同時にまた強い政治的偏向を持つ政治的団体である、かように言つてもさしつかえないと思う。日教組掲ぐる主張、そのスローガンは、これを裏書きしておるものが非常に多い。」というふうに答弁をせられておるのであります。私はこれについてお伺いをいたしたいのでありますが、大臣日教組をもつて政治的な偏向を持つ政治的な団体であるというふうにお考えになるその根拠について、さらに具体的なお示しを願いたいと思うのであります。
  6. 大達茂雄

    大達国務大臣 この法律案は、私は別にわが国教育の上に悪影響をもたらし、あるいは禍根を残すものとは考えておりません。基本法八条の精神かややともすると破壊されて行くおそれがあるから、それを破壊されないようにする、こういう趣旨のものであるから、これを破壊しようと志すものにとつては、まことに都合の悪い法律であるかもしれない。しかしそうでないものにとつては、何にも迷惑のかかる法律ではないと私は思つております。  そこで、日教組はこの法律案と非常に関係をしておる、従つて日教組実態を見きわめなければならぬ、こう言われることは、私はまことにごもつともであると思うのであります。この法律案は必ずしも建前において日教組を対象にしておるものではありません。しかしながらこの法律案が施行される場合に、従来のごとき日教組活動が制約を受けるということは、これは当然あり得ることと私は思つております。現に今日この法律案に対して、まだ案ができないうちから騒ぎ立てて、反対運動を全国的に展開しておる、そうして莫大なる資金カンパまでやつて、この反対運動の中心になつておるのが日教組であります。であるから、この法律日教組に非常に関係をしておるということは、この日教組のこの法案をめぐつて動きに徴しても、これはきわめて明瞭である、かように私も考えます。従つて日教組がいかなる実態を持つておるかということについてはとくと御研究を願いたい。これはこの法案審議の上に重大な関係のあるものである、私もさように考えるのでのります。ただしかしながら、過日申し上げましたように、私どもとしては日教組実態をつかむことは必ずしも容易でないのであります。たとえば予予算を一部見せてもらいたい、こういうことを申し入れても、これを日教組は断つたのであります。従つて、必ずしもこれを秘密団体であるとか、あるいは秘密主義であるとか、さようなことは私は申しませんけれども、どうもはつきりしない。本来文部省日本教職員の全部を網羅する一体というもりは、密接な連絡をもつて、密接な話合いをすべきものであろうと思うのであります。しかるにもかかわらず、文部省としてその実体はつきりつかめないということは、まことに私は遺憾に存じておるのであります。過日本会議場において、田中議員質問に答えたうちで、日教組実質的に――法律的にはどうか知りませんが、実質的には、政治的偏向というよりも、むしろ一種政治団体だということを私は申しました。私はさように思つております。日教組の揚げているところの、主義、綱領といいますか、スローガンを見ても、いわゆる平和三原則であるとか、その他たとえば反動内閣打倒民主主義政権樹立、こういうようなことを述べている。これは明らかに政治的な主張であります。これは勤務条件改善とか、そういう問題じやありません。これは政治的主張、最もはげしい政治的主張であります。そうして日教組は、選挙のたびに公認候補者をつくつておるのであります。これもきわめて明瞭な事実であつて、これは日教組文書によつてはつきり立証し得ることであります。選挙のときに公認候補者を立て、それに選手資金を応援をする、そういうものは、政治団体といりよりもむしろ政党であります。(「それは日政連だ。日政連届出をしているじやないか」と呼ぶ者あり)届出をしてもしなくても、実質において政党である、常識的には政党であることは、これははつきりした事実であると思う。日教組書類によつて見ると、いわゆる平和闘争というものをしている。平和教育というものは、その平和闘争の一環として取上げられておるのであります。これは自分の政治的の主張、いわゆる政策、これを推進して行くところの、日教組の言葉をかりていえば闘争であります。政治的な主張を掲げて、それを推進するところの活動をして、そうして国会議員選挙のある場合にはその公認候補者を立てる。また教育委員選挙のときには、これまた公認候補者を立てる。これは縦から見ても横から見ても、政治的団体である、かように私は考えておるのであります。
  7. 町村金五

    町村委員 ただいま大臣の御答弁によりますると、日教組政治団体であると自分考える、という御所見を御発表に相なつたのでありまするが、私なども、従来日教組実体というものをつまびらかにいたしまする機会をほとんど持たなかつた人間の一人であり、ただ選挙等を通じまして、多少日教組というものが選挙に関与をしているという点において、一種政治的団体ではなかろうかというような感じを、私も従来持つてつたのでありまするが、ただいまの大臣のお考えは、私として一応伺つておくのであります。私もこの間から、一体日教組の基本的な活動方針というようなものは、どういうようなところにあるかということで、実は日教組が出しておられまする文書に基きましていささか検討を加えてみたのでございます。これによりますると、第十回大会運動方針書というものによりまする今日の世界情勢というものに対しまする分析を見圧すると、アメリカを戦争勢力であり、ソ連、中共を平和勢力であるというような考え方現状分析に立つており、われわれは日本独裁政治独占資本の擁護、向米一辺倒政治体制を打破して、勤労大衆の生活と平和を守り抜く政権樹立のために闘う、こういうことをこの運動方針書に書いておるのであります。これはまさに一つの大きな政治方針というものをここに表明せられたものでありまして、大臣政治的国体であると申されたその根底の中には、かような点もおそらく私は御指摘に相なつたことかと思うのであります。いずれにいたしましても、今日の日教組動きというものが、もし大臣の言われるがごとく政治団体であり、また世間にも一種政治的団体であるという印象を与えつつあるような状態であるといたしますならば、この政治団体に対しまする政府としての従来の態度というものについて、私はお伺いをしたいのであります。ただいまも、日教組日政連というものとは別個のものであるという声がかかつておるのでありますが、私はこの日政連日教組関係というものはよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、もしこれが政治団体であるといたしますれば、私は少くとも政治資金規正法その他によりまして、この日教組というものは届出をするというような措置も必要であり、また国家公務員法その他に対しましてもあるいは抵触する部分が私は出て参るのではないか、こう思うのでありますが、それらのことが今日までほとんど放置されて来ているということは、必ずしも政府として日教組政治団体考えていなかつたというふうにも解釈できる節があるのであります。それらの点についてまず伺つておきたいと思います。
  8. 大達茂雄

    大達国務大臣 従来別に政府側におきまして、日教組政治的団体考えて、そうして法制上の規制をすべきである、あるいはまたその政治団体に所属する教職員国家公務員法あるいは地方公務員法に違反をするとかいうことについて、確たる見解を定めたものはありません。ただいま申し上げましたのは、私は、現在の文部大臣としては、日教組を、少くとも政治団体である――御承知のように政党政策を推進することを本来の目的とする、こういうことに規定してあります。日教組がその本来の目的としてこれをやつているのかどうか、これは日教組に聞いてみなければよくわかりません。本来の目的としてやつているのではないかというような点もうかがわれる節はありますが、しかしこれは日教組に聞いてみないとわからぬ。ただ実質において政治的の団体であることは、これは一点疑いの余地はないと私は考えております。現に日教組大会とかあるいは中央委員会等における日教組のその期間中の行動経過報告というものを見ると、その中には選挙闘争という一つ題目を掲げて、そうして選挙についての経過を報告しておるのであります。日政連はこれは政治団体として届出のある団体であります。しかしながら日教組も、日政連日教組がもし別のものであるというならば、日教組経過報告の中に選挙闘争という題目を掲げて、これだけの候補者を公認したとかなんとかいうことは、いらぬことじやないか。(「日教組のことは知らないと言つているが、よく知つているな」と呼ぶ者あり)それは経過報告というものをようやく手に入れたのです。これもくれない。これを見ると、日政連というものはただ日教組がお面をかぶつた、その面であります。その関係はまつたく異名同体と私は認めております。だから日政連政治団体であるということを認めるならば、日教組自身政治的団体であるということをみずから認めたものと同じであると私は考えております。
  9. 町村金五

    町村委員 私はただいまお話の出ました日政連というものと日教組との関係というものについて、実はもう少し深く伺つておきたいのであります。あるいは日教組とは全然別個の性格を持ち、また別個の主体を持つた日政連というものがあるのか、それともただいまの大臣の御答弁を伺つておりますと、ただ日政連日教組というものは、単に異名同身のものでおるというような感じを受けるような御答弁であつたのでありますが、はたしてそういうものであるか。全然別個のものとして承知すべきものか、それともこれはただ看板が違つておるだけのものであつて異名同身のものであるか、その点についての御所見を伺つておきたい。
  10. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組日政連がどういう関係であるか、あるいはその間のそういう具体的なとりきめがあるのか、そういうことは遺憾ながらわかりません。しかしながら日政連日教組関係につきまして、日教組文書によつて見れば、これがどつちがどつちかわからぬようなふうに思われる点は随所に現われております。たとえばこれは第三十回中央委員会経過報告書第六十三ぺージにはこれは――片言でありますが、「日教組は九月四日、日政連事務局長を派遣し事実を調査し、告発準備を進め」云々こうあります。日政連事務局長日教組が派遣しておるのであります。それから同様なことは他にもあります。たとえば、「愛媛県教組連絡に接して、ただちに市岡日政連事務局長を現地に派遣、交渉に当らしめた経過」これは日教組事務員であるかのごとく考えられます。それから四十五ぺージには、「われわれは勤労青年教育振興法を立案……、日政連議員により参議院に提案して闘いを進めた」われわれは闘いを進めた。この書類によつて見ますと、社会党左派という名前が出て来ません。そういう平和闘争とかあるいは選挙闘争とかいう場合には、全部日政連議員団という名前で出ておる。そうしてこの日政連議員団というものは、日教組公認候補として推薦した人々であります。これは選挙当時の日教組機関新聞を見ると、大きな字で、大きな写真を入れて日教組公認候補としてこれを機関紙上紹介をして、そうしてその人の経歴と、その人の日教組主張に対する支持の点を明らかにして、そうしてこの諸君選挙に当選させなければいかぬ、こういうことが日教組機関新聞に書いてある。大きな字で日教組公認候補……。だから日政連日教組というものはどう見たつて異体同心というのですか、どういうのですか、その辺の関係日教組に聞いてみなければとりきめはわかりません。しかしながらわれわれが日教組文書だけお見てみると、別な団体であるはずの日政連動きはみなわかるのであります。
  11. 町村金五

    町村委員 私どもはその日政連日教組関係を今後法的にどういうふうに考えて行くべきものかということについては、いずれまた他日伺う機会があると思いますので、本日はこの程度にいたしておきまして、さらに次に先日国警本部から私ども資料として御配付をいただいた「日教組内のグループ活動について」というこの文書について、文部省としての御見解を多少伺つておきたいと思うのであります。この文書はまだ私もよく拝見をいたすいとまがないのでありますが、いずれにいたしましてもこの文書を拝見いたしましての私ども感じは、日本共産党日教組工作というものをやつております状態が、かなり明らかに示されているように思われるのであります。きわめて巧妙に日本共産党日教組の中に浸透しているということを、私どもはこれによつてうかがい知ることができるのであります。本日の新聞によりますと、日教組はその事実なしとして、あるいは国警長官を告発するというような記事が出ているのでありまして、その事態は今後あるいは司直の手によつてその真否がさらに明らかにされる時代があると思うのでありますが、一応私としては、政府責任をもつて配付に相なりましたこの資料に基きまして、多少私の所見を交えて御意見を伺つておきたいと思うのであります。すなわち第十回の日教組定期大会に対する運動方針書というものの中には、彼らの運動方針、すなわち共産党運動方針というものが、かなり広い範囲にわたつて入り込んでいるように私どもは見受けるのであります。すなわち「グループ指針日教組第十回定期大会闘いとるために」というところによりますと、「全グループは、各級機関の指導と援助のもとに、大会への闘いを強力に進め、「日教組」を下から上まで民主化することによつて、それを戦闘的な労組に育て、……それを平和、独立民主、自由を求める国民統一戦線の側に立たせ、労農同盟結成への組織者としての自覚を持つた実践行動に入らせねばならない。」ということをうたつているのであります。そのために当面私は次の諸点について留意してみなければならないと思うのであります。たとえばこの中にこういうようなことも書いてありす。「国民政府樹立への方針を打ちこむこと」「「政治活動の自由」 「政党支持の自由」の原則を確立することは、国民政府樹立への基礎的条件である、」「平和と独立をかちとるための教育文化活動の理論と実践昂めねばならない、」あるいは「中ソとの貿易、文化交流国交調整について、日教組をこの運動に参加させ、この運動を強め、拡げるために立たねばならない。」と、かように共産党言つているのであります。従いましてこの共産党考え方というものは、あるいは日教組の幹部の諸公は知らないうちに自然に浸透されているのかもしれません、あるいはまた悪戯してこれを導入している者も必ずしもなきにしもあらずではないかというふうに私ども考えさせられるのであります。いずれにいたしましても全国五十数万の教員を網羅いたしておりますところのこの日教組に、共産党のかかる考えが浸透して参りますことは、私はまことにゆゆしい問題であると思うのであります。かような点については、国警当局が常に暴力革命を企図いたしておりまする共産党の動向を常に視察をいたしておるのでありますから、これはかなり信憑性のあるものと一応考えるのであります。この点については、全国五十数万の教員を守る立場にあられます文部大臣といたしましても、かかる共産党の勢力を日教組内に浸透させないということについては、私は深くお考えにならなければならないと思うのでありますが、まずこの点について御意見を伺つておきたい。
  12. 大達茂雄

    大達国務大臣 日教組の内部に共産党がどれだけ浸透し、どれだけ根を張つておるか、またそれが日教組の現実の動きに対してどういう影響を与えておるかということは、私どもは非常に関心を持つておることであります。しかし私どもとしましては、ただ教育の場に現われた影響というものを対象として考ておるのでありまして、実際日共がどれだけ日教組の中に入り込んでおるかということは、私どもとしては調査をする手段もなし、またそこまで立ち入る考えもありません。従つて、私どもも同様に、今回の法律案に関連をして議員の方から要求されて出た資料によつて、初めてその実態をほぼ把握することができておるような次第であります。ただ、日共と日教組活動との間にどういう関連があるかということは、これは重大な点でありますが、国警本部からの資料に基きまして、日教組のいわゆる中央グループ指導、それの日教組に対して働きかけておる状態がある程度わかつたのであります。これによると――これはすでにお手元に資料があることで、私もその資料に基いて申し上げるのでありますが、目標としては、反米、反吉田政府、反再軍備。その内容としては、基地の取払い、米軍撤退要求、対中ソ貿易、文化交流、それから日の丸、君が代教育に抵抗する、それから軍事予算を削除し平和的緊急政策に振り向ける、それから松川事件の無罪判決を要求する。その方法として、労農同盟の結成、それから学校の自主化、実力闘争、ストライキ、ゼネスト、統一団結、こういうふうに働きかけているように確かに見られるのであります。そこで、日教組方針等を日教組の出しておる文書によつて検討いたしますと、これとまつたく合致しておる面が非常に多いのであります。日教組文書によれば、ほとんどこれと表裏をなすかのごとくに日教組方針が掲げられておるのであります。これは日教組自身の独自の考えでそういうものができたので、共産党の働きかけとは無関係であるかもしれません。まつたく偶然の符合であるかもしれぬ。その辺は私どもにはわからない。ただ、符節を合するがごとき状態であります。それで、私どもの一番の関心事は、末端の学校教育の面において、この掲げられた方針がどういうふうに教育の上に現われておるかということであります。一昨日差上げました諸種の資料は、別に私どもが特別の方法をもつて集めた資料ではありますん。黙つてつてつて来た資料でございます。それによつてみましても、この末端における学校教育実態というものが、これまたまことによく日教組の掲げておる方針に合つておるのであります。この間何らの連絡はないということはちよつと常識上考えられない、私どもとしてはこういうふうに思つております。従つて、私はこれはわかりません。私は日教組の内部におりませんからわかりませんが、外から見れば、日教組内部における共産党考え方が、日教組そのものの主義方針の上に影響を持ち、反映し、そうしてそれがまた末端の学校教育に影響を与えておるのではないか、こういうふうに深く感ずるのであります。
  13. 町村金五

    町村委員 ただいまの大臣の御答弁によりますると、とにかく、日共というものが日教組に対してかなりの影響を持つているかのごとき様相を呈しているという御見解を承つたのでありますが、私どももその点はかねてから非常に心配をいたしておる一点なのであります。もちろん、今日のわが国の憲法のもとにおきまして、日本共産党もまた合法政党として認められておるということはもとより当然でありまするけれども、しかしながら、いかに合法政党でございましようとも、日本共産党というものは、その思想の根底において、あるいは政治理念の根底において、われわれ民主主義の立場に立つ者とはまつたく違つた世界観を持つておる、あるいはまつたく違った社会観を持つているというところから、実は私ども日本共産党の存在というものを重要に考えざるを得ないのであります。すなわち、もし日本共産党が、彼らがいわゆる民主主義でありまするならば、私どもは、その個々の政策がどういうものであるといたしましても、何らこれを懸念する必要もなければ、またこれを忌避する必要もないのでありまするけれども、彼らの考え民主主義にあらずして独裁主義であるということを根底とし、社会の改良のためには暴力革命をもつてこれを断行しようという点におきまして、私どもとは、ものの考え、世界観におきまして、あるいは政治観において、根本的に考えを異にするのであります。かかる共産党考え方にもし日本がなつて参るといたしまするならば、日本民族の不幸というものはこれ以上のことはないと私は考える。従いまして、今日、日本教職員組合の中に日本共産産党の影響が少しでも入ることを私どもはおそれておるのであります。いわんや、今日の日教組運動方針汁その他を見ますると、相当の影響ありというに至りましては、私どもはこれを黙過して行くわけには参りかねると存ずるのであります。従いまして、今後日本共産党日教組との間をいかにして遮断するかということは、今後の最も重要な問題であると存ずるのであります。これは、今ただちにここで文部大臣から御答弁を願いましても、御明答を得るわけには行かないと存じますけれども、いずれにいたしましても、これは社会党の諸君といえども、もちろん共産党とは明確に一線を画するということを常に宣明せられておりまする以上、この日本共産の問題は超党派的に考慮いたすべき段階に来ているのではないかということを私は考えるでありますが、文部大臣の御意見を伺いたいと思います。
  14. 大達茂雄

    大達国務大臣 りくつの上から言いますると、共産党日教組の中にどれだけの人数いるかというようなことは、自由党がどれだけ、社会党左派が何人ということと同じでありまして、それはわれわれが直接関心を持つべきことではないかもしれません。しかしながら共産党のいう民主主義といわゆるわれわれの考え民主主義と、これは言葉は同じでありましても、中身が違うことは、私も御指摘の通りに考えます。それから平和という言葉も、これも共産党のいう平和という言葉と、常識でわれわれに考えている平和ということは内容が違うようであります。日教組の常に旗じるしとしておるいわゆる平和教育あるいは平和闘争、この掲げておる平和という言葉意味が、一体どつちの意味の平和であるかは、これは非常な問題であると私は思う。日教組もしくは日教組関係文書によると、その平和という言葉は、ややもすればいわゆる共産党のいう平和という言葉に当るのではないかと思われる節があります。これは一、二指摘し得る点があるのであります。しかしそれはともかくといたしまして、私はこの法律案の立場を離れて、共産党というものがもし、日本に強い影響を与えたならば、日本の運命は暗黒になると思つております。(「忌避すればいいじやないか」と呼ぶ者あり)それは別の問題です。   〔「非合法にすればいいじやないか」「人のことは言わぬでもいい」「共産党にかたくて、自由党にゆるいようなことをするから」と呼び、その他発言する者多し〕
  15. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  16. 大達茂雄

    大達国務大臣 その点は町村君と全然私は同感であります。私個人の考えとしては、とにかく日本教育、ひいては日本の子供が教壇を通じて共産党の影響を受けるというようなことが絶無であることを希望しておるのであります。
  17. 町村金五

    町村委員 ただいま日本共産党に関しまする大臣の御所見の一端を伺つたわけでありますが、この問題は、ただいまもいろいろ御議論が出まする通り、将来の日本のきわめて重大な問題に相なることかと思いまするが、これはこの程度で、私は論議を進めることを避けたいと思うのであります。  さらに私がもう一点伺いたいと思いますることは、先般国警長官に対しまして、どなたからか、日本教職員組合の中に一体どのくらい明確な共産党員がいるかという御質問がございましたが、これに対しまして、ある程度抽象的な御答弁を長官はしておられたのであります。私どもも数は必ずしも多いとは思いませんけれども、しかしこれらの方々の影響力がきわめて大きいという点において、私は非常な憂いを深くいたしたのであります。私は、今日の日本の五十数万の教員の大部分の方は方、みないわゆる政治的な中立性、教育基本法精神というものをりつぱに守ろうという考えをもつて日夜教務に精励しておられるということを私はかたく信ずるのでありまするけれども、ただ遺憾ながら、先ほど来お話も出ておりました通り、日教組の中央の指導部の中に共産党の影響を受けた方が多少おられるといたしますれば、その日教組の指導方針というものが自然末端の教員に流れて参る。その影響がまつたくなければ、日教組がどういう指令を出されようとも私は少しもおそれるものではないのでありまするけれども文部省から御配付をいただきました各地における偏向教育の事例というようなものを拝見いたしますると、どうも日教組の中央からの指令なり方針というものが、最近に至つて各末端の先生方にもいろいろと多少の影響を及ぼして来たものがだんだんと現われて参つたのではないか。今日これを放置しておくことはできない。放置しておけば、ゆゆしいことになるという御見解のもとに、今度政府はこの法案を提案しようという決意をおそらくされたものと私は思うのであります。この日教組が本来のあるべき姿に立ちもどるということについて、文部省としても真剣にお考えになる必要があるのじやないか。私は文部大臣日教組関係を冷やかに拝見しておりますと、どちらに罪があるかわかりませんけれども大臣と先生との関係というよりも、何か労使のはげしい対立関係に立つているように感ぜられてならないのであります。こういうような事態にならざるを得ないというところに、今日の大きな問題があると実は考えるのであります。いずれにいたしましても、この日教組文部大臣関係というものから考えますと、これは何とか日教組共産党からの影響というものをもつとなくすということについての御苦心がなければならぬはずだと私は思うのであります。  私は先ほどからいろいろ資料を拝見して、調べておるのでありまするが、たとえば世界労連の中の世界教員組合連盟が主催いたしましたいわゆる世界教員会議が開かれました際に、世界各国から四十八箇国の代表が集まつたそうであります。日本からも十数名の代表が参加され、その大部分は日教組の方が行つておられるのであります。この会議における日本の代表の発言は、世界的にもきわめて重要な影響のあるものだと考えるのであります。その報告書を拝見してみますると、私どもにはふに落ちないことがかなり出ているような感じがいたすのであります。従いましてこれは見様によりましては、日本実態というものを世界に対して誤つた方向に認識せしめるような事態も起つて参りますることは、日本教育界のためにもはなはだ遺憾としなければならない問題であるばかりでなく、さらにかような考えを持つて行かれることになりますれば、国内におりまする多数の日本教職員諸君としましても、私ははなはだ不満ではないかというような感じがいたすのであります。従いましてこれらの世界教員会議に行かれました方々は、いわゆる日教組の幹部といわれる方々が大部分であつたように承知をいたすのであります。しかもそれらにおきまするところの発言というものは、少くとも私どもから見ますれば、やはり共産党の影響をかなり受けたような発言をしていらつしやる。たとえばメーデーの事件というようなものに対しましても、これを私どもから見ますれば、非常に歪曲された形においてメーデー事件というようなものの報告をしているような一節もあるのでありまして、かようなことは私ははなはだどうも残念に考えるのであります。いずれにいたしましても、日教組というものは、よく世間では丹頂鶴といわれているのであつて、さような点を裏書しまするような事態を相当うかがい知ることができるのであります。私は今後文部当局といたしましては、日教組から共産党の影響というものを何らかの形において払拭することができるなら、あるいは今回の法案というようなものは提案せずとも実は済んだのではないかということを考えまするときに、私はかような法的措置のみをもつてしては、かようなことはできるものではないと思います。そういう点について私は文部当局として、もつと積極的に日教組と日共との関係を遮断するという点について、この立法措置以外に何らの方法がないのかという点についてひとつ伺つておきたいと思います。
  18. 大達茂雄

    大達国務大臣 私も町村君同じように、大部分の先生たちは教育の上において中立を守つて、そしてすなおな子供を育てることを希望しておられると思つているのであります。しかるにもかかわらず、それが現実の教育の場においては必ずしもそうなつておらぬ。これは私も同様に、外から邪悪な働きかけをするようになつている、そのためにそうなつている、かように考えるのであります。従つてこの法律を提案いたしましたのも、かくのごとき日本教育を歪曲して子供をゆがめようとする不都合な働きかけを阻止したい。こういうことは逆に申せば、それぞれの先生方、自分のりつぱな考え方に基いてりっぱな教育をしたい、そういつておられる先生方に、その通りの教育をするように環境をつくりたい。これは法律の第一条にもありますように、教員の自主性を擁護したい、こういう意味でございます。  それから共産党日教組に及ぼしている影響、これを何とか断ち切ることは考えられないか。これは日共の動き、かくのごとき暴力を打ち出しているようなそういう政党動き方、これは学校教育というだけでありますまいが、しかしそういう動き方をしている、それが不都合であるということに結局帰着すると思います。私はなぜ日共がそれほど力こぶを入れて日教組に働きかけているかというと、これは結局次の国民をつくる子供相手の教育の面に影響を及ぼそうと企てているからであると思うのであります。従つてどもの立場では、教育に及ぼして来る悪影響、この教育に影響しようとする邪悪な働きかけ、これを阻止することは、もし完全にこれが阻止し得るとするならば、日共はそれほど力こぶを日教組にそそぐ理由はなくなると思うのであります。  ただいま世界教員会議ですか、そこにおける日本側の代表としての日本教育事情についての報告を引用されましたが、実は私もこの報告を見て、日教組の代表者の中には、やはり共産党と同じ考えとは言わぬまでも、少くともその影響を受けている人がいるのではないか、こういうように実は強く感じたのであります。これはこの報告によつて指摘し得るのであります。一例を申し上げると、これは朝鮮人の教師でありますが、朝鮮人教師は一九四八年朝鮮民主主義人民共和国、北鮮が誕生して以来、その教育の方向を確認して、統一朝鮮の忠実なる愛国者を養成するために勇敢に闘つた。これは朝鮮人の先生のことでありますが、そこでその次に、日本の良心的教師もまた朝鮮人教師と手をとつて、朝鮮人教育改善のために闘つた。これを良心的教師と言つている。   〔発言する者あり〕
  19. 辻寛一

    辻委員長 委員外の発育はお差控え願います。
  20. 大達茂雄

    大達国務大臣 朝鮮人民共和国の誕生以来、その方向を確認してその方向における教育を進めている。そうして日本人の先生の中で良心的な者はこれと手をつなげてやつている。こういうことは共産党の影響なしには考えられない。そうした例はまだ言えば幾らでもあります。   〔「合法政党の影響があるのがなぜ悪い」「共産党の影響はあたりまえじやないか」「ばかなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 辻寛一

    辻委員長 委員外の発言を封じます。委員外の発言を封じます。お静かに願います。町村君。
  22. 町村金五

    町村委員 なお私は最後に日教組実態についてもう一点お伺いしておきたいと思うのでありますが、日本教職員組合の組合規約等を拝見いたしてみますと、こういうような節があるのであります。すなわちその第五条によりますと、「この組合の組合員は如何なる場合に於ても人種、宗教、信条、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われない。」あるいは第六条には「この組合は組合員の経済的地位の向上をはかり、教育並に研究民主化につとめ文化国家建設を期することを目的とす。」こういうふうに書いてあるのであります。私はこの教職員組合の規約というものは、まことにりつぱなものであると思うのであります。従いまして日本教職員組合がこの組合規約の通りの活動をしておられるということであるならば、われわれはこの教職員組合の存在というものを最も高く評価もし、さらに多くの期待をかけなければならないと存ずるのでありますけれども、事実上この日教組というものは、かかる規約とは必ずしも同じような方向に進んでないというところに私は問題があると思うのであります。すなわち日教組が発行いたしております教師の倫理綱領というものを見ますと、その中に「教師は正しい政治を求める」という一項がありまして、その解説を見ますと、これまでの日本の教師は政治的中立の美名のもとに長い間その自由を奪われ、時の政治権力に一方的に奉仕させられて来たということを言つており、さらに教師にしいて政治的中立を求めるというのは、結局教師に政治に関心を持たないではしいということであり、政治的には何にもするなということにひとしいというように断定をいたしておるのであります。さらに、われわれは教育再建のためならば政治的には何でもやるという積極的な立場に立つて団結をしなければならない、かように申しておるのでありまして、結局教師に政治的中立性を求めるということは無理であるということを、この項において申しておるのであります。すなわち今日の日教組の倫理綱領に現われた考え方によりますると、結局教師というものは労働者である、学校を職場として働くところの労働者である。従つてこの労働者という一種の階級的立場に立つて進むべしということを、この倫理綱領においては明確にいたしておるのであります。私どもはこのように日教組が階級的な意識で組合活動を続けて参りまする限りは、おそらく教育の中立性というものはそこに非常な障害が現われて参る。すなわち今日の私ども考えから申しまするならば、教員というものはいわゆる一部の階級に偏在しておるというような考え方は持つべきものではない、教員は全国民的な立場に立つて児童の教育に当るべき立場であると思うのであります。従いまして、そういつたような見解に立つて考えて参りますると、今日の日教組がとなえておりまする階級的立場に立つて行くという考え方と、この教育の中立性というものは当然にそこに衝突して参る。従いまして、今回政府はかような法律をお出しになるにいたしましても、一片の法律ではなかなかこの問題は解決できない。やはり教師自体がいわゆる階級的な立場に立つところの労働者だという考え方からさらに飛躍をいたしまして、ほんとうに全国民的な立場に立つて全国民の児童を預かるのだ、この考え方に立つて参らない限りは、この問題の解決というものは容易でない。従いまして私どもは、やはり教員というものはそういつた全国民的な立場に立つべきものであるという信念に立つて考えて参りまするときに、どうもこの根本が解決されない限りは、事態の解決が不可能であると存ずるのでありまするが、さような点について大臣はいかに善処されるおつもりであるか、その点をひとつ伺つておきたいのであります。
  23. 大達茂雄

    大達国務大臣 日本教職員組合がその規約第五条、第六条等に掲げてあるような、そのりつぱな目的に沿うように行動しておられれば、何も日本教職組合員というものは今日いろいろな面から批判を受けるはずもないのであります。私は教職員組合の諸君に対しては、この点は関係のある文部省といたしまして、強くそのあるべき姿に立つて健全な組合の発達を期せられることを希望せざるを得ないのであります。  それから倫理綱領についてのお話であります。これも私は町村君がお読みになつて感じになつたとまつたく同様な感じを受けたのであります。この中には自由党が現在日本教育を片寄つた立場で左右している、こういうことを述べて、しかしそれは実は当然である、教育というものはもともとそういうものなんであると、いわゆる教育の中立性を否定する言葉があるのであります。これが日教組が発行した教員の倫理綱領というものであります。日教組考え方には教育を政争の具に供することはむしろ当然であるというような印象を少くとも与える文句が、この倫理綱領として非常に自慢をしているパンフレツトの中にあります。これは私は一度よく日教組諸君にもその真意を尋ねてみたいと思つております。  次には、教員というものを労働者として規定しておつて、そうしてその階級的な立場に立つて教職員組合として行動しているというような意味に伺いましたが、私どもといたしましては、教員が労働者であるかないか、かりにあるといたしましても、それについて直接にはどうこうというわけではありません。ただ労働者であるからといつて、その階級的な立場に立つて日本学校教育を左右しようというならば、これはいけない。これは明瞭であります。これは倫理綱領の、中立というものは元来ないのだという考え方とはまことに符節を合しているのであります。教員は、ことに公務員たる教員は、明らかに全体に対する奉仕者としてその公務である教育を行わなければならぬ、これはきわめてはつきりしたことであります。これが一部の階級のみの立場に立つて教育を行うということであれば、これは明らかに建前に反する不当な行動であると私は思う。この点につきましては、私どもとして法律をもつてこれを強制して云々をいうことはなかなかできません。これらの点につきましてはやはり教職員諸君自分で反省をせられるべきである。世の中の輿論、良識というものはそれを促してやまないのであります。
  24. 町村金五

    町村委員 私はさらにこの法案の内容等につきまして、いろいろお伺いしたい点もございますが、それは日をあらためてお伺いすることにいたしまして、本日は大体日教組というものの実態について文部大臣の御所見を伺うことにとどめたいと思うのであります。  最後に私一言だけお伺いしておきたいと思うのでありますが、私どもこの法案が提案をせられまして以来、たまたま文部委員であるというような関係から、いろいろ各地の方面の方々からの御陳情にも接し、あるいはお手紙をちようだいするというようなことが実は非常に多いのであります。ただそれらの方々のお話を伺つておりますと、今回の法案というものの内容を十分に正解せられた上でのいろいろ御意見なり御批判というものもあるのでありますが、私の接した範囲におきましては、どうも法の目的とするところ、法の内容というものが十分に把握されていないで、ただ教員の自由というものが完全になくなつてしまうというような印象を持つて、われわれのところに真剣に心配しておいでになる方がたくさんあるのであります。もしこの法がそういうようなものであるとするならば、もとよりわれわれはこれに対して徹底的な反対をせざるを得ないのであります。しかしながらこの法を私が拝見したところでは、そういつた極端な内容を持つておるものとは、一応私どもには受取れなかつたのでありますけれども事実世間に及ぼしております影響というものは非常にはげしいものであります。この点は文部省といたしましても、この法案の内容をもつと端的に国民の前にはつきりと露呈をして、そうして良識ある国民の批判をもつと強く求められるということが必要であると思うにもかかわりませず、今日まで文部省のとつておられた態度は、さような点においては非常に消極的じやないか、それがために法案に対する国民の正しい批判が起つて来てないというような感じがいたすのであります。かような点についての文部大臣の御所見を伺つて、本日は私の質疑はこれで終ることにいたします。
  25. 大達茂雄

    大達国務大臣 お話の通り、この法案の内容がまだきまらぬうちから、いろいろな反対運動が起つたのであります。従つてこの法案の内容とはまつたく違つたことを前提として、それが世間に非常に言いふらされた、これは日教組がビラとかパンフレットを出して言いふらしたのであります。これははつきりしておる。その関係で多数の教職員諸君に非常な不安と動揺を与え、同時に父兄大衆を通じて一般国民の間にもこの法案に対する強い批判の声が起つたのであります。批判をするにもせぬにも、まだ中身のないものに対して批判が起つたのであります。これは私としてはまことに遺憾であります。日本教職員組合はうそつぱちを並べて宣伝をする、かくのごとき態度をとられることは非常によろしくない。これは国民全体に不安を与えるものであります。一体この法律のどこをさして――教員の全部に対して、善良なる教職員に対しても非常なる圧力を加えるのであるとか、そういうでたらめな宣伝が行われたということはまことに遺憾に思います。私は町村君の言われるように、一般にこの法律案そのものについて、その内容を前提としての批判が行われることを希望しているのでありますが、すでに先だつて――これらはたいへんな宣伝力でありましよう、とにかく全国末端津々浦々に至るまで、五十万の教職員を動員しての宣伝でありますから、こういう事態になつてつて、これがために国民がもし正確な判断を誤るということであれば、これはまことに遺憾に存じます。どうぞ国会におかれましては、この法律案国会提出されてあるのでありますから、この法律案の内容について慎重に御審議をいただきたい、かように考えております。
  26. 辻寛一

    辻委員長 長谷川委員より関連質問の申入れがあります。長谷川委員、簡単に願います。
  27. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 この法案について心配しているのは何もひもつきの連中だけではないのでありまして、そういう意味から簡単ながら具体的に一問一答の形式をもつて質問したいと思います。    〔「そんな関連質問があるか」、「関連なら自席でやれ」と呼び、その他発言する者多し〕  まず第一に、教育基本法第八条に「法律に定める学校は、特定の政党支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」こうありますが、なぜこのたびのような法律案が出るようになつたか、その経緯を伺いたい。    〔「それが関連か」「内容に関連があれば関連質問だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  28. 辻寛一

    辻委員長 ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  29. 辻寛一

    辻委員長 速記を始めて。  長谷川君に申し上げますが、ただいまの町村君の御質問に直接関連の分だけにお願いをいたします。どうかその限度を越えないように……。
  30. 大達茂雄

    大達国務大臣 基本法の八条の二項というものが規定されてあるのであるが、それで一応十分なはずである。それをさらにこの法律案を出す必要があるか。それは、基本法の八条は直接に特定の人を対象にして行為、不行為を拘束しておるものではございません。教育の基本に関する原則を掲げた規定でございます。これが守られていれば問題はないのであります。現状はこれが破壊される、もしくは破壊されんとしておると考えますから、この法律案提出してこの法律の趣旨を堅持して行きたい。先ほど町村君に答弁した通りであります。
  31. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 この法律案が通ると、教員全体の政治的な発言の封じあるいは首切りが行われるというふうなビラ、パンフレットが、日教組を通じて、すでに法案提出されない前から全国的に宣伝されておる。おそらく最近はやつている飛行機を使う以外の宣伝方法が行われているようにわれわれは聞いている。そこでこの法案が過つたあとにおいて、はたして政治的発言というものは封じられると思うかどうか。さらにまた教員の大量首切りが行われるかどうか。これらについての不安はわれわれとしてもひとしく考えられると思うのであります。たとえば私どもの手元に全国からたくさんちらしビラが来ておりますが、その一つのある県の教職員組合連合会が出しておるのを見ますと、今度法案がきまつてしまえば、私たちが子供たちにどんなことを教えておるか、おまわりさんや刑事さんが教室に入つて来たり、子供たちをつかまえてノートを調べたりします。こういうことがはたして法案が通つたあとで行われるかどうかということを、ひとつ御解明願いたいと思います。
  32. 大達茂雄

    大達国務大臣 ビラについては、大体においてうそを並べてあるということは、しばしば本会議場においても申し上げた通りであります。この法律が成立した場合に、警官が教室の中へ入つて始終教室を監視するとか、あるいはまた子供のノートまでも調べるというようなことも書いてあります。この法律が通つても、通らなくても、犯罪というものはどこで行われるかわからぬのでありますから、その必要のある場合に警官が教室に入るということが絶無であるとは言えません。これは当然であります。家庭の中にも入って来ることがあるのであります。この法律が通つたからといつて、しよつちゆう景観が教室のまわりをうろうろするとか、あるいは子供のノートまでみな調べるようになるということはうそと言わなくても、非常に誇大な青い方であって、当然そうなるということは私はないと思うのであります。
  33. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 最近いろいろ署名運動が行われておりますが、その署名運動の場合に、PTAなどの自発的なものはわれわれも了承するのでありますが、内容がわからずして――現に私きのう杉並区の自分学校の先生に会つたところが、あの法案には反対です。内容は読んだか。いや、反対という指令が来ておるから反対ですというようなことを言つておる。さらにまた署名運動についての一つの例として、従来教員が子供を通じての政治活動はけしからぬといわれておるのでありますが、最近は職員自体が戸別訪問をして、この反対署名運動をとつておる、現に東京品川の高松中学においては、その通りやつておる、こういうふうなことは許されないと私は思うのでありますが、今まで大臣のもとに反対の陳情あるいは激励の手紙が来ておるような話が先ほどから出ておりましたが、一体反対の種類と、今まで大臣に直接に来ておる激励の内容などがどういうものか、それをお伺いしたいと思います。
  34. 大達茂雄

    大達国務大臣 署名運動のことでありますが、学校の先生が父兄のところをまわつて歩いて署名運動をしておる。これは私はおもしろくないことであると思います。法律に触れることはないと思いますが、教員がそういうことをされることは常識上好ましからざることであると思います。ことに自分の受持の子供を使つて署名運動をする、あるいは署名をとらせる。子供を使うなどということはまことにけしからぬ、これはおもしろくないじやない、けしからぬと思います。それから激励の手紙のことですが、私のところには反対のはがき、電報、手紙、これは数知れず来ております。それから激励の、賛成という意味のものも相当に来ております。数としては圧倒的に反対のものが多うございます。これはほとんど全部が教職員諸君あるいは日教組名前で来るものであります。ただおもしろいことが一つあるのは、反対の方の多数の手紙は、大体地方々々で文句が一定しております。それからこの反対の手紙はみな私の自宅に来るものでございます。これは私は私の住所がこれほど全国津々浦々の先生方に知られておる、どこに住んでおるかということがよくわかつておるというので感心しておるのでありますが、(「あたりまえじやないか」と呼ぶ者あり)そういう状況を言えということであるから答弁をしておるのでありますが、とにかく自宅に来るものは、ほとんど全部反対であります。非常にたくさんございます。それから文部省気付とか参議院内というようなことで来る手紙、はがき――これは手紙が多いのでありますが、大体これは賛成と激励の手紙であります。
  35. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 日教組がいろいろな運動をする、その中に政治活動については今まで政府当局からいろいろ述べられたので大体了承しますが、運動方針一つ二つを見てみますと、基地反対闘争をやつておる、あるいはまた映画ひろしま等によるところの文化闘争をやつておる、ところが映画ひろしまの問題一つを見ましても、最近どこの学校の先生でも、生徒を引率してあつちこつちへ行つて映画を見せておりますが、(発言する者多し)その映画を文部省が認定する運動委員会、審査会などに対して行われたと聞いておりますが、これを文部大臣がけられたようにも聞いております。それは日教組がそれほどまでに賛成し、彼らが資金を動員して、学校の先生を通じて生徒に見せたあの映画が、なぜ文部大臣において認定を取消されたか、あるいは拒否されたか、それらの点について御説明をいただきたいと思います。
  36. 大達茂雄

    大達国務大臣 この映画ひろしまというものは、御承知の通り、日教組が非常に金をかけて、いわゆる平和教育の一環としてつくられた大作であります。これを文部省に認定を申請して参つたのであります。これは教育上優秀あるいは有益な映画としての認定を申請して参つたのであります。その場合に文部省にありますところの忍定委員会におきましては、これを認定すべきものなりと一応委員会としては決定をいたしたのであります。これはそのまま決定権を持つものではありませんので――実は私もこの映画は当時見たのであります。私の判断におきましては、これを教育上優秀あるいは有益な映画なりとすることはもつてのほかなりと考えましたので、これは認定をしなかつたのであります。
  37. 辻寛一

    辻委員長 長谷川君、また機会を与えますから直接関連だけにして、通告者の質問がございますから、きわめて簡単にお願いいたします。
  38. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 私は、今日こういう法律案が出るようになつたゆえんのものは、先ほど町村委員も、最後において触れられておりましたように、学校の先生方、全国五十五万の諸君が、ほんとうに自主的な行動を終戦以来の教育活動においてやつて来たならば、こういうことはなかつたのじやないか、私はこの法律案によつて中立性を保つといいますけれども、もう少し学校の先生方の自主的にものをやるような行動とその責任感といいますか、そういう方法がなぜできないものだろうか。かつて、少し古い話になりますが、尾崎咢堂先生――われわれ議会政治家として大先輩でありますが、この人が文部大臣をしておつたときに、全国の中学校、小学校の先生方を集めて演説をした。そのときに、もし金の力というものが非常に大きなものであるならば、アメリカは共和国であるが、日本に共和制がしかれた場合には三井、三菱の力によつて、そういう諸君が大統領になるだろうという演説をした。これをその当時の反対党の諸君が大きく取上げまして、尾崎文部大臣日本を共和国にすると言つたといつて、これに反対して、とうとう失脚せしめた。そのときに会議に出席をして演説を聞いた校長先生が、実はあのときの大臣の演説は、日本の場合には三井、三菱のような金持ちが全部支配した場合には、共和国になるという危険性を言うたので、大臣の演説が攻撃されたゆえんと大分違つておるというふうに話した。それに対して私が今でも尾崎先生の本を読みながら非常に胸を打たれるのは、尾崎先生が、そのあとで、もしこれが諸外国であつたならば、自分の話は、尾崎文部大臣の話はそんなものじやなかつたと言つて、聞いた先生の一人か二人か三人かが、ある者は新聞に投書し、ある者は堂々とそういう論敵に向つて闘いを交えてくれたであろう。しかるに日本学校の先生方は、何と自主的なものがないのであろうか、それを自分は、文部大臣はやめたけれども、非常に将来の教育の前途を憂えるという話をしておつたのを、私は非常にいい教訓だと思つておるのでありますが、終戦以来の今日、もし日教組政治活動――大臣は先ほど、まさにこれは政治団体であるとさえも言われたのでありますが、こういうふうな面が出て来るに至つたゆえんを考えますと、もう少し今から先、先生方の自主的なる行動を呼びもどすような、もつともつと私は方法を、道を教えていただきたいと思いますが、これに対するところの大臣所見をひとつお伺いいたします。
  39. 大達茂雄

    大達国務大臣 これはひとり教職員だけではないと思いますが、私は戦後日本人が一般に自主的な精神を失つて来ていると思うのであります。これはまことに遺憾にたえぬ。この日本人の間に自主的精神が作興しない限り、私は日本の真の意味の独立をかちとることはできない、かように思つております。私は日本教職員諸君、ことに次の時代の国民を育成するその聖職に当つておられる諸君というものが、自主的に自分の良識に訴え、良心に基いて自主的な教育をされるということが非常に必要なことであり、今後国の礎を築く上の重大な要素であると考えておるのであります。しかるに今日ややもすると、これが一部の人々の影響を受けて、自主的な教育が行われておらぬ、私はその通りに思うのであります。これはぜひとも教員諸君が反省自覚をせられて、さような一部の不当な影響のもとに支配されることのないようにありたい、これを常に念願しておるのであります。世間でよく日教組のことを丹頂鶴と申しております。これは私が名づけたのではない、世間がいつとはなしに常識的にそういうことを言いふらしておるのであります。その場合に私はこの丹頂部分の人――かりにそれをほんとうであるとしますと、丹頂といわれる、赤いといわれる人が腹を立てる必要はない。むしろ赤い以外の人々こそ、その世間でいう丹頂鶴という言葉だけからも反省をくみとつてもらいたいと思うのであります。わずかに一部の人々によつてからだ全体が左右されておるかのごとく世間で育つておるのであります。これは多数の善良な教員諸君が自主性がないということを世間が言つておる。私はまつ赤でもまつ白でも、自主性の点からいえばいいと思う。ただ白とか黒とかいうものが、少しくらいの赤で左右せられておるやに世間で見ておる。それは明らかに日本教職員諸君に自主性がないということを言つておるのである。この法律を出すことも、この一部から来る不当な影響から解放して、教職員の自主性を回復したい、かように念願するからであります。
  40. 長谷川峻

    ○長谷川(峻)委員 国警長官に最後にお伺いいたします。  先日私奄美大島へ行つて来たのであります。というのは、従来日教組選挙運動をやつて来たというのが日教組に対する一番関心の強い点であまりす。その奄美大島においてせんだつて日本に復帰して以来最初の選挙が行われたのであります。その選挙の際において、私は投票日に資料調査の意味において、わざわざ国警の署長のところへ行つた。それは日本内地で終戦当時に行われたようなことが今日月遅れのレコードのように奄美大島において行われておる。これは明らかに許されないことだと思つて、よく資料を調査の上で本部の方に提供してもらいたいということを私は言つた。私自身がこの目で見、この耳で聞いたのでありますけれども学校の先生諸君がトラツク五台、六台に、しかもトラツクの横には戦争に再び子供をやるなと書いて、メガホンで十五人、二十人ずつ乗つて社会党公認候補者名前を叫んで歩いた。私はこれは非常に月遅れで、奄美大島の諸君が時代的にずれている面をかわいそうに思いましたけれども、こうした処女地帯において、なお今こんなことを指導的に行わせる者があること非常に遺憾だと思つて、警察署に投票日に飛び込んで行つた。そうすると署長がいわく、実は共産党のこの辺のオルグからも攻撃を受けた。というのは、ある学校の校庭に先生と生徒を集めて、候補者をかつぐところの社会党の婦人部長といいましたが、それが来て演説をしているのを共産党の者が聞いておつて、これではあまりひどいといつて共産党の者さえも攻撃したのであります。あなたは調査を要求したし、片方の方も攻撃をする、こう言つておりましたが、その後私のところに来た資料によりますと、この二月二十二日に奄美大島において町会を開き、中立であるべき教職員がかかる状態にあつては、現在の先生方に安心して子弟を教育させることはできない。よつて町議会としては県当局に対し、教員の入れかえを早急に実施してもらいたいということを要望するという決議書までつくつているのであります。私は一部あやまつた指導者によつて、その町全体の町議会にさえも問題になつて、その先生方の人事の異動が県当局にまで申請されるようなことになると、すなわちあやまれる指導者による学校の先生方の迷惑はこの通りである。しこうしてそのあとはPTAと学校の先生方と対決しておるのであります。対決した模様も私の手元に入つているのでありますが、私は一部あやまつた指導者による政治運動というものが、こういうふうに大きく父兄と生徒と町全体の有志家にまで及び、しこうして最後に心にもなく学校の先生方の身分にまで及ぼしておるという実例をここで見るのでありますが、かかる情報なり資料なりが、本部なりに入つておりますかどうか、これを一つ質問したいと思います。
  41. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 政府におきましてもただいま長谷川委員のお述べになりましたような事情につきましては、私の方も大体似たように報告を受けております。選挙の際にトラツクに乗つて、いわゆる公職選挙法違反の形式犯になるようなことがひんぴんとありましたので、署長は再三警告をしたという報告は前に受取りました。その後の情勢としてただいまおつしやいますような報告を受けております。
  42. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの長谷川君の質問の冒頭の発言の中に、非常に不穏当な言葉があつたかと私は記憶しておりますので、その点委員長の方で速記録をお調べの上、適当に善処されたいと思います。
  43. 辻寛一

    辻委員長 承知いたしました。速記録を調査いたしました上しかるべく委員長におきまして処置をいたします。
  44. 小林信一

    小林(信)委員 今の町村委員文部大臣との質疑応答に関連いたしまして多少お尋ねいたしますが、お二人のお話を聞いておりますと、今度の法案提出が、主として教職員教育活動に多大な影響を与える。しかもそれが政治的な影響を与えるものが日教組であつて、これを何とかしなければ正しい教育が保たれない。しかもその日教組の主体というものが、共産党の多分な支配を受けるということを非常に大臣が強調されておるわけでございます。それで実態というものを大臣が相当に把握されておるようにお話の中からお伺いするわけです。国警長官もいろいろな資料提出されて、日教組の中に確かに共産党のあることを支持されておる。合法政党である以上、共産党員が日教組の中にあることもあるでありましよう。しかし日教組がはたしてその共産党の指示に基いて指示を下部に流すとか、それによつて日本の教員全体が影響を受けるとかいうようなことだけに断定することは、もしこれが事実でない場合には、非常に教職員に与えるものをわれわれは憂慮しなければならぬし、またもしそれが事実とするならば、これは非常に重大な問題でありまして、われわれ国会というようなものは、もつと大きな見地からこの問題を考えて行かなければならぬと思うわけであります。従つて私はもう少し大臣に真実というものを実際把握しておるかどうかお尋ねしなければならぬのでありますが、国警長官等の国会における報告等を伺いますと、静岡県に行われました教研大会といいものを主として取上げられておるのでございます。私たち教員自身から――私は教研大会に行つておりません。しかしそこへ行つた教員諸君からいろいろお伺いするところによると共産党諸君があそこでオルグ活動をやられるということは、やはり共産党として自分たちの主義主張をあらゆる機会に、あらゆる活動を通じてしようということは、合法政党の当然のことなんです。それをやはりあそこの教研大会の場においても行われただけであつて、それがすぐに日教組一体の形になつて教師大会活動の中へ溶け込んで行くということでなくて、いかにしてか教研大会の中に――とにかく教員自体というものはまだそういうことには非常にふなれでございますか、しかも共産主義というような一党一派に偏した支配によつてこの教研大会がなされてはならないという良心的な教員諸君活動もあるわけなんです。それにいいかに食い込むかというようなことで、共産党諸君活動されるわけです。そういうふうに現在の教育活動の中には、これに抵抗しよう、そういうものから脱しようという諸君活動もあるわけです。ところが国警長官の把握するものも、あるいは大臣の把握するものも、しかしてこういう場所において公表されるものは、そういうような教員諸君の抵抗しようとするもの、あるいはそういう不当な一党一派に偏しておるものによつて支配されないようにするという純真な動きというものを、いささかも大臣は発表しない、国警長官もそういう点を披瀝しないということは事実と反したことである。そういうことをよく説明しないことは事実と反するわけです。そうすると教職員諸君は、この法律というものは、単に日教組あるいは教員諸君あるいは教育全体を共産主義の不当なものから守るのだという名目だけにこだわつて出そうとしているが、陰には何かあるのだという誤解を多分に持つわけです。事実そういう誤解が生ずるのは私たちも当然だとは思つております。そういう点で、大臣あるいは国警長官は、今まで国会においてあるいはこの委員会において発表された以外に、もつと教員自体においても、あるいは教組自体の中でも、そういう一党一派に偏したものの食いることを阻止しようという活動のあることを御存じならば、ここで私は発表していただきたいと思います。
  45. 大達茂雄

    大達国務大臣 しばしば申し上げるように、日教組関係の会合の内部の状態というものは私どもにはよくわからないのです。先ほど申し上げたように、教研大会というものにおいていろいろ議論がありましよう。その場合に、共産党的な考え方を結論づけようとする議論もあろうし、それに対して反対する考え方でいろいろ論争が行われておるだろうということは、想像できます。けれども実際それがどういうふうになつているかはわからない。われわれの方でわかるものは、出て来た結論だけです。それはある程度はわかる。今度の静岡の教研大会については、まだ私の方ではわかりません。しかし先ほど申し上げたときにも話したように、国警の方の調査によるいわゆる日共の教育に関する考え方というものと、それから日教組の従来はつきり打出しておる考え方というものとを並べてみると、この間に因果関係があるということは私どもにもわからない、あるという資料はないのですから、しかし偶然の暗合であるかもしれないが、とにかくこれは表裏一体をなしておるかのごとくになつている。そして次に、教育の現場における諸般の事実というものが、またその線に沿うた偏向した教育が行われておるように見受けられる。こういうことを話したのでありまして、内部でどういうことを、どういう人が支持する議論をして、どういう人が反対をしたということはわからないのであります。私は表に出て来た結果について、暗合であるかもしれぬが、実に同じような近接した関係がある、そこで常識をもつて判断すれば、日共というものがやはり日教組にも相当影響を与えておるのではないかと思われる、こういうことを申し上げたのであります。
  46. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 お答えいたします。ただいまお尋ねになりましたように、共産党グループ活動に対して相当な反撃をしておる者があるじやないか、それを隠して一方的なことばかりを説明するというようなことをおつしやいますが、私はすべて御質問に応じて受身でお答えをしておるだけでありまして、たとえば日教組内のグループ活動方針と、日教組のきめられた活動方針とは 一体似ておるかおらないか、近接しておるかどうかというような御質問があれば、これは非常に近接しておりますと、こうお答えをいたすだけであります。ただいまの点につきましては、日教組の全国大会あるいは中央委員会、その部会等において、相当激論が闘わされたことも聞いております。いわゆる激論が闘わされたということは、グループのきめた方針に対して反対だということで激論があつたものと私は思うのであります。その結果、当初の案が修正されたり、その激論にもかかわらず、当初の案か何か知りませんが、グループ活動方針がそのまま織り込まれたというような結果が出た場合もあると思います。
  47. 辻寛一

    辻委員長 ちよつと申し上げますが、国警長官は一時に所用があつて行かなければなりませんから、国警長官に対する質問を先にお願いいたします。
  48. 小林信一

    小林(信)委員 国警長官は、質問に応じてその所要なものだけをお答えをするのだ、こういう御答弁でございますが、それは当然のことで私も了承しております。しかし今この法律には非常な反対があり、問題になつておるときなんですから、政府並びに自由党においては、あなた方の立場というものを利用して、そうしてこれに裏づけをしようとすることは多分にあるわけです。従つて国警長官は単にそういうふうにお答えをするかもしれませんが、しかしそれには今私が申しましたような一方的な影響があるわけです。国警長官質問に応じて答えただけだ言うけれども、あなたの答弁のいかんによつては、端的に申し上げれば、教育者全体が侮辱されておるということすらいわれておるのです。だからあなたは、そういう点につきましては慎重な態度をとらなければならぬと思うのであります。従つて、今回この委員会に対してあなたの提出した資料というものは、やはり委員会でもつて要望したものが、共産党日教組内における活動というようなものについての資料だけでございましたので、それに限られたわけかもしれませんが、やはり各政党とも、社会党左派、社会党右派、あるいは自由党にも改進党にもそういうグループ的な活動は必ずあるはずです。そういうものに対しましても調査をしておるかどうか、お伺いいたします。
  49. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 自由党、改進党等の党内における共産党グループ活動というようなものは、私の方ではまだ探知しておりません。  それから、日教組内におけるグールプとしての共産党員の数を私数百名と申し上げておきましたが、正確な数字を調べて答えるようにということでございましたから、この機会にお答えをいたしておきますが、ただいまのところ、判明いたしておりますのは六百五十九名であります。
  50. 小林信一

    小林(信)委員 私の質問しますグループ活動というものは、はつきり共産党のように明白でないかもしらぬけれども、私はやはりそういうふうなものがあると思う。それから国警長官は、教員の側々の行動の中に共産党的なものがあるということを列挙されておるわけなんですが、やはりほかの政党の、それと同じような政治的な意図を持つた教育活動というふうなものもあなたは御調査をなさつておりますかどうか。
  51. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は、しばしば申し上げておりまするように、教育活動とか、教育方針とか、そういうものは全然調べておりません。共産党のいわゆる非合法の組織、あるいは非合法の活動というものを、われわれ治安の見地から調査をいたしておるのであります。従いまして、それに関係のない点、またそれらの共産党員の人がどういう教育をしているか、どういう政治活動をしているか、そういうことは私の方の関係しないところであります。共産党活動の中には、その大部分と申してよろしいと思うのでありますが、きわめて秘匿された方法、秘匿された組織によつて、まつたく隠密活動によつて、いわゆる軍事組織あるいは軍事の行動、その準備というものもやつておるのでありまするから、われわれはそういう意味でこの秘匿されている面をどうしても知つておかなければ、治安の責任が果せない、そういう点からその地下の動きを見ておるのでございます。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 国警長官の御答弁は、私もよく存じております。しかしこれがたまたま教育政治的中立性、あらゆる政党の支配に属さないという立場からして、こういう問題があなたに要望されておるのであつて、やはりそういう見地からすれば、あなたの国会における答弁等によつて、何か一方的なものから国警の活動が支配されるのではないかという教職員の方たちの疑惑も生れて来るのでございまして、そういう点から私は申し上げたのであります。  さらに大臣に、先ほどの答弁に関連してお尋ねいたします。共産党諸君の意図というものが日教組に浸潤して、今それが下部にも影響しつつあるというふうな場合に、この法律を制定することは最も必要なことであるということを申されたわけなんです。これに関連してまだいろいろ質問もございますが、先ほどの話合いからして、最も私の聞かなければならぬ点は、教組の中央における者だけでなくて、個々の学校あるいは個々の教員に対しましても、そういうものが必ず働きかけると思います。これは、単に共産党ばかりじやない。あらゆる政党がそういう意図に出ると思います。大臣が非常に心配されるのは、教育ということが、そういうふうなものに最も利用され、これを通してそういう意識をつぎ込むことが非常に有利であるからでございます。従つて教組を守るということでなくて、教員諸君あるいは学校というふうなところを守る点からしましても、私は政治上重大な関心を持たなければならぬと思うのでありますが、そういう場合に、法律によつて遮断したからそれでもつて済むというものではないと思う。あくまでも教員自体が常に正しい批判力を持つてつて、そういうふうなものの行動をよく見守つて自分たちの職場を守らなければならぬと思うのです。これがただ法律をつくつて拘束することによつてできるかどうか。先ほどの質問からは、教組を守れば当然できるのだというような話合いに終つてつたのですが、教組活動行動を、この法律によつて守りさえすればできるというのですが、個々の学校、個々の教員の立場を考えますと、これは絶対できないと思う。やはり教員が自由な立場に置かれて初めていろいろなものを研究し、相互規制というふうなことが行われるのである。ところが法律でもつてしばつてしまえばそれでもつてよいというようなお考えでおれば、教員諸君は勉強することも研究することも一切去勢された形になるわけでありまして、あなたのおつしやる点は教育全体というものを考えておらぬような感がするのでざいますが、大臣、その点はいかがでございますか。
  53. 大達茂雄

    大達国務大臣 先生一方が自主性というものを回復せらるることが一番大切なことであると思います。他の影響を受けない、自分の判断とか良心に基いて教育を行うことが大切であるというとは、先ほど長谷川君の質問に対して答弁した通りであります。それを考えずに、この法律さえ出ればもうよいのだというようなことを私は申したのでは決してございません。この法律は、教職員が自主的な立場に立たれるための一つの有力な方法として、この教職員に対して外から働きかけて来る邪悪な働きかけを阻止する、それによつて教職員自分の判断と良識と良心に従つて教育を行うことを期待したい、こういうことを申しておるのであります。
  54. 辻寛一

    辻委員長 小林君、国警長官はよろしゆうございますか。
  55. 小林信一

    小林(信)委員 いいです。
  56. 小林進

    小林(進)委員 長官は一時にお帰りになるそでございますから……。これは質問ではありませんが、この前の水曜日の文部委員会のときに、日教組の中に共産党員が数百名おりシンパが二、三千名いるということで、それはこの法案審議する上の重大なるポイントであるから資料をちようだいしたいと言うつたら、長官は心よく了承してお帰りになり、委員長もそれを了承された。おそらくその資料を本日いただけるものと思つて期待したわけでありますが、まだ配付になつておりませんので、具体的に府県別、郡別、できれば学校別に共産党員の名簿をちようだいしたい。なおそのほかに、わが党の前田榮之助委員から、郡別あるいは月別の他の資料もお願いして、これも速記に載つております。これはいずれもこの法案審議に重大な資料でございますから、お忙しいこととは存じますが、早急に御提出をお願い申し上げる次第であります。
  57. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は水曜日の当委員会で、党員の数をはつきりさして知らせいたしますと、それだけを申し上げたわけであります。従いまして、これの府県別、郡別というものは約束いたしておりません。氏名は私は申し上げませんということを申し上げております。
  58. 小林進

    小林(進)委員 数は。
  59. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 数はただいま申しました六百五十九名。それから後の党員の増減様相はどうあるかというお尋ねがございましたが、それはその際に、私の方は日教組内の党員の増減の模様というものはまだわかりません、これは昨年中にわかつたものでありまして、その以前はどういう状況であつたかはつきりしておりません、従つて増減の傾向はわかりません、共産党員全体ということであるとわかりますけれども、この教員組合のうちで何ぼ、あるいは他の労働組合で何ぼという区わけはわからない、こう申し上げたわけでございます。
  60. 小林進

    小林(進)委員 私どもはトータルをお聞きしているのではないのです。われわれは水曜日に、論説を尽して質問応答したのです。その結果の資料としては、これは実にずさんきわまるものである。トータルだけぽうつと言つただけで一体どこに信憑性がありますか。もし長官が水曜日のわれわれの資料提出の要求をこんな形で報告するならば、私はあらためて委員長を通じてお願い申し上げたい。どうか府県別、郡別それから学校別に、この六百五十九名の数字を裏書する資料をちようだいいたしたい。これをどうぞお願いいたします。氏名までは要求いたしません。
  61. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 あるいはそういう資料を出した方がこの文部委員会審議の御進行に御参考となつていいかもしれませんが、氏名をお断りいたしましたのと同じ理由で、私は総体の数字だけ提出して、私の方はそれによつてここでどう御判断になられようとこれはやむを得ないと思います。
  62. 小林進

    小林(進)委員 私はこの前も申し上げましたように、こういう日本教育に革命を起すような反動立法を、この反動の文部大臣が追放解除とともにおつくりになつた。このおつくりになつた根底は、いやしくも日教組の中に共産党のフラクがいて、これが五十万日教組に重大なる影響を及ぼしている。だからこの法律をつくるのだという。これがこの法律をつくられるポイントなのです。だからこの日教組五十万の中に何人共産党員がおるかということは、この法案の賛否、価値、無価値を判断する重大なる資料なのです。この資料がなくてはわれわれは実際に審議ができないにもかかわらず、国警長官はトータルを出して六百五十九名だという、何だ、こんな数字は。もしこんな数字が言えるのならば、われわれは千名といつても許せる、三百名といつても許せる、どこに信用できる数字があるか。国警長官の斎藤何がしが言うことだから信用せよ、あなた方はそういう腹かもしれませんけれども、聞く者から言つたらこんな数字だけでは信用できない。(「そんなことは君の自由だ」と呼びその他発言する者あり)どうかひとつこの問題は国警長官責任を持つて……。(発言する者あり)いやしくも共産党の指導に日教組動きが近接しているのなら――聞いていればあなたは実に重大なる発言をしておる。その発言の根底をなす資料提出を要求せられて、それをできないといつてトータルだけ申されて逃げるような卑怯なことが、今日の民主的なる国会において一体許されていいと思つているのか、どうしても出してもらいたい。了承できない。それはだめだ。
  63. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私の立場といたしましては、共産党活動がこの程度伸びておるから、この法案をつくつてくださいといつて私から提案しておるのではありません。従いまして、私の方といたしましては、共産党日教組内におけるグループ活動はどういう状況かと聞かれました場合に、私の方でさしつかえのない限度で申し上げるよりほかにやむを得ない、こう申し上げるのであります。
  64. 小林進

    小林(進)委員 私は決してあなたが法律をつくつてくれと言つたなどと言つているのじやない。けれども、反対派の有利になるこの法案をつくつて人を抑えようとする、そういう連中が、有利な日教組内のグループ活動というようなこういう具体的な資料を出すならば……(「社会党が出すと言つたから出したのじやないか」と呼び、その他発言する者あり)そんなことはどつちでもよろしい。資料を出すならば、やはりそれと対応するような数字を出すのがあたりまえだ。だれが要求しようとも、それほどまでに具体的な資料提出し得る国警長官が、一体なぜこの資料が出せないのか。いいですか、この数字をどうしても明らかにできないならできない理由をまず聞きましよう。府県別、郡別、学校別、この資料によつてわれわれは初めここの法案審議の重大なる足場ができ上るのでありますから、この日教組内のグループ活動についてと同時に、数字を知るということは必要だ。どうしてあなたは出せないのだ。しかもあなたは、今の政府によつて警察法ができれば首になる。最近お払い箱になる。最後のおみやげだと思つてどうかお出しなさい。
  65. 辻寛一

    辻委員長 答弁はないようであります。前田君。
  66. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 国警長官答弁をされぬのですが、職務上出せないとこうおつしやる、これを無理に強要するわけには参りません。それで物は相談ですが、府県別くらいは出されてもよいのじやないか。あなたが出されぬとするなら、われわれはほかの方法で調査をしなければならぬと思うのです。ここでわれわれはほかの方法で調査をするということになると、この法案審議に影響があると思う。できるだけこの法案審議をスムーズにする点にも御協力を願いたい。なぜ府県別くらいでもやつてほしいかという点は……。(「提出したらお前たちは賛成するのか」と呼び、その他発言する者あり)日教組動きについていろいろ政府当局から御説明があつて、これに対して与党の方からも質問の中に、日教組の内部事情を明らかにしろというような動きがある。それでわれわれの方としましては、各府県別の状態がどうなつておるかということがこの法案審議する価値判断の非常なポイントと思つておる。その点からせめて府県別くらいはほしいのでありますが、それをもあなたはできないと御拒否なさるのでありますか。
  67. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 府県別を出しましてこの法案の御審議にという御意図はよくわかりますが、私の方は六百五十九名でこれで全部でございますと言い切る自信はまだないのであります。従いましてまだわからないものが相当ある、こう考えますので、従つて府県別をお出しいたしますことは、私の方の調査に支障を来す面が相当ありますので、この点は御容赦を願います。
  68. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 どうもこつけい千万なお話だと思うのですが、全部でない、不確定な数字だから府県別は知らさないとおつしやるのでありますが、あなたの今のお話では全体の六百五十九名という数字もこれも不確定であろうと思うのです。なぜ府県別が不確定であるから発表できないのですか。あなたの方で不確定であるというなら、不確定だという数字で発表されたら、われわれの方は不確定だということで受取るだけであります。今あなたがおつしやるのは、これは全体の数字も不確定だというのだから、たいへん掛値もあるのだなと私らは思つて聞いておる。だからそういう意味で聞くのだから、何もあなたはそういうように御遠慮なさらずともいいと思うのでありますが、われわれの審議の非常な重大な点であることを少しはお考えになつてくださつたらいかがかと思うのです。
  69. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 不確定と申しますのは、私の方ではつきりキヤツチをしておる、はつきりわかつておるのはこの点だけです、まだわからない点が相当あります、それは県によつて相当違うわけであります、そこでそういうものを出すと、どの県ではまだ捜査能力があまりないとか、どの県は非常に捜査能力があるとかいうようなことが暴露されますから、ひとつごかんべんを願いたいと思います。
  70. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つだけお伺いいたします。この教育法案と警察法改正の問題とは、今回の重大法案で両者の間では非常に緊密な連絡をとられて、この重要法案を何とか早くあげようということから共同戦線を張られておるのではないかと思う点も多々あるのです。だから国警長官の方でもなるべく一辺倒にならないような公平な措置をおとりになる必要があると思うのです。またそれを文部大臣の方もあまり利用して、自分法案審議に有利なような協力を求めるということも妥当性を欠くわけなんですから、御用心願いたいと思うのです。これは大臣でなくてかえつて与党の諸君に注文しなければならぬ点かもしれませんが……。そこで先ほどの学校とかあるいは個々の教員が自主性を保つ点から、そういう研究あるいは討議することは自由であるというふうなお話なんですが、しかしこれをやればやはり今度の二法案に該当してやられるのではないかと思うのですが、大臣はその点はどうお考えになりますか。
  71. 大達茂雄

    大達国務大臣 個々の学術上の研究をするということがこの法律に何も関係がないことは、これは法案に書いてある通りであります。これは学校の外から団体を通じて働きかけて来るということを対象としておるのですから、先生がどういう研究をされようとも、それは何もこの法律に触れるところはないのであります。
  72. 小林信一

    小林(信)委員 大臣のこの法案審議の仕方が、私この前も申し上げたのですが、二つの法律があるということを大臣はよく区別してお考え願いたいとお話したのですが、特例法の改正の方は人事院規則によるとあるのです。ここら辺も今後非常に聞きたいところがたくさんあるのですが、この人事院規則を読むと、お互いの間でもつて話合いをする場合に、政治的な問題を話し合つたりしますと、これがやはり法によつて制約される点がたくさんに出て来るわけなんで、そういう点も憂慮しますと、これはやはり絶対に政治的な検討研究もできないことになる。従つてそういうすきに先ほど大臣町村さんとの話合いのような問題がたくさんに出て来るのではないか、私こういうように心配するのですが、決してこれはさしつかえないとお考えになるのですか。
  73. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは小林さん一人の御心配じやなくて、そういうことは一切できなくなるというようなことを、しきりと宣伝されております。しかし小林さんがただいま申されましたようなそんなことはないのでありまして、これは特例法の関係にいたしましても、現に国立大学の先生方が非常に研究もされており、また意見の発表もされておる国の政治の問題についてもずいぶん活発な意見を発表されておる、この国立大学の先生が今やつておられるのと少くとも同じなんですから、この法律ができたために、公立学校の教員諸君研究の自由を失つたり、発表の自由を失う、そういうことはあり得ないのであります。
  74. 小林信一

    小林(信)委員 たとえば汚職とか贈賄とかいろいろな問題が出て政治が混乱しておるというようなときに、先生方の教育活動というようなものも、多分にこういう問題に教材等も触れて来るし、社会科等の授業の中でも問題は多々出て来ると思います。そういう場合に、これは自由党の今までのやり方が悪いのだとかいうような話がたまたま教員室内で出るようなことがあります。それが教唆扇動の方に触れるか。これはやはり今後検討をしなければならぬところなんですがそこから派生して、授業等におきましても、多分にそういう点が出て来はしないかと思うのですけれども、そういう教育活動というものが全然なくなつてしまうという点があると思うのです。やはりそこは教員諸君あたりが日本の将来というふうなことを考えたときに、現在経済的な問題、あるいは政治的な問題、そういうふうなものがほんとうに糾弾されなければならないような状態にある場合、そこに教師の情熱というものが加わつた場合には、当然政党に対する批判とか、あるいは政党のこれに食い入るものに対する抵抗とかいうふうなものが行われて、やはり先ほどお二人の話合いの中にありました政党のこれに対する不当な干渉というようなことが行われると私は思うのです。こういうことは教師の情熱というものをなくすとか、研究的な意欲というものをなくすということで、かえつてその間隙に乗じてあなたの憂慮するような政党の侵入ということがあると思うのですが、これは絶対にないというわけですか。
  75. 大達茂雄

    大達国務大臣 主力がいろいろお互いに議論をされ、その間政治的の活発な批判が行われる、こういうことはもちろんあるだろうと思います。これは何もさしつかえないことでありまして、先ほど申し上げましたように、国家公務員と同じ制限に服するのであります。具体的な場合々々についてこれはその法律に照して判断せらるべきであつて、政治上の意見を交換し合うとかいうようなことが何らさしつかえないことは、ただいま申し上がましたように、国家公務員の場合と同様でございます。
  76. 辻寛一

    辻委員長 暫時休憩をいたしまして午後二時半から再開をいたします。    午後一時十八分休憩      ――――◇―――――    午後三時十四分開議
  77. 辻寛一

    辻委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  教育委員会法の一部を改正する法律案教育委員会法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法令整理等に関する法律案市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案学校教育法等の一部を改正する法律案教育公務員特例法の一部を改正する法律案の五案を一括議題とし、質疑を行います。前田榮之助君
  78. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 まず第一に教育委員会法の一部を改正する法律案並びにその施行法の改正案についてお尋ねする次第であります。  わが党は、地方教育委員会については大都市には委員会設置をすべきであつて、行政規模の小さい町村はある一定限度の規模を設定いたしまして、そこに民主的な委員会を設置することが適当なりという考えを持つておるのでありますが、本改正案の提案者は任意設置である、こういうお考えのようでありますが、その任意設置というのは、すなわち国民を信頼されて、国民みずからが教育委員会を置くべき事情にあるかどうかということを判断して、自主的に決定すべきことが民主的な委員会を健全に発達させるゆえんである。こういう考えのもとにやられておるのではないかと思うのでありますが、そのほかにどうしても任意設置でなければならぬという事情が何かあるかどうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  79. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの質問は、昨日坂田委員から御質問のあつた点と内容は似ているのでありますが、任意設置であるとわれわれがいたしました理由は、昨日も申し上げましたように、将来にわたつては地方教育委員会の制度というものは、やはりできる限り広域性を持つということが望ましい。しかしながら現在の段階におきましては、すでに教育委員が選任せられて、現在中には財政負担の問題や、あるいは人事その他の面においても、努力によつて克服して相当の実績を上げている、そうした教育委員会も認められるのでありまして、これをただちに法律でもつて全部を廃止いたしますることは、そうした教育委員会、あるいは当該町村の住民の期待する意思にも反する措置であるとも考えられまするし、また一面法的に申しましても、公選によつて選ばれたその委員をただちに法律でもつて廃止するということは、若干疑問な点もあると存じますので、そうした点を考慮いたしまして、やはりそれぞれの当該教育委員会の存廃については、最も教育委員会についての内容なり、その地域の教育に理解を持つておる地方住民の感恩、具体的にはこの住民の感想を代表しておるそれぞれの議会の議決によつて、住民の意向というものを明らかにして、その決定に従うべきである。こういうような方針をここに出しておるのであります。先般も申し上げましたように、基本的な方向といたしましては、ただいま前田委員が御指摘になりましたように、やはり教育委員会の制度といたしましては、規模は現在の市町村の区域、あるいは財政の規模、こういつたものが不適当であるという考えを持つておりますので、少くとも五大都市、これ以下の町村におきましては、それぞれの実情を勘案いたしまして、当面は任意設置といたしまするし、将来はやはりこれらも廃止をする方向にわれわれとしては考えております。
  80. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 町村の財政規模が小さいことから、現在の町村に全部教育委員会を置くことは、提案者のお考えでは反対のようでありまして、今政府がとつておる全部の町村に置くという進め方について異論があるから、かかる改正案とお出しになつたのだと思うのであります。そこで町村財政規模の点でございますが、現在露骨に現われておる点は、主として教育長の有資格者が適当に求められないということで、これはすでに問題になつておりまして、前の国会においても臨時措置をとつたようなわけなのでありますが、これは文部省の方でもよろしいのでありますが、現在教育長で助役の兼任は幾人おるか、有資格者で教育長を求めておる町村は幾らあるか、数がわかればお知らせを願いたいと思います。、委員長にお願い申し上げておきたいのでありまするが、議員提出案だから提案者だけおればいいというお考えであろうと思います。もちろん提案者はそれらのことも研究し、責任を持つて出されておることだと思うのでありますが、議員提出案にいたしましても、大体文部省関係法律案でありますから、その法律案が通る通らぬにかかわらず、もし通れば議員提出案でも文部省が取扱うのでありますから、その関係資料や、いろいろな関係がありますので、ひとつ出席をさすようにお願いを申し上げておきます。
  81. 辻寛一

    辻委員長 とりはからいます。
  82. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 それでは地方教育委員会の問題はあとまわしにいたしまして、市町村立学校職員給与負担法の一部改正案についての御質問を申し上げます。  市町村関係で、幼稚園の職員の問題でありますが、幼稚園の職員の重要性と申しますか、今日の幼稚園教育義務教育、小学校教育との関連性から申しましてきわめて重要な問題であり、その重要な問題を、取扱つておるところの幼稚園の職員給与というものの取扱いが、きわめて貧弱な予算で取扱われるために、実際地方で困つておる点は御承知の通りでありますが、これら公立の幼稚園について現在国庫からどの程度の国費が補助金等において出されておるか、その点おわかりになつたらお知らせ願いたいと思うのであります。
  83. 辻原弘市

    ○辻原委員 現在公立幼稚園について国庫からどの程度補助金が出ておるかという問題でありますが、これは政府の説明員から御説明いたした方が的確であると思いますが、私の調査いたした範囲で御説明申し上げますると、大体ケースが三つにわかれておるようであります。一つは、従来の昨年までの平衡交付金、この中に主として、これはもちろんひもつきではございませんけれども、市町村に対する財政交付金として、給与その他の経費が見込まれておる。いま一つは施設に対する補助金であります。いま一つは設備に対する補助金で、二十八年度の予算を例にとつて申し上げますると、設備において約四百七十万円、施設の面においては五百万円、合計約一千万と御理解をいただけばいいと思うのであります。この施設というのは校舎その他の建物に対するものでありまして、設備は内容の設備のための援助費でありますが、その程度しか出されておりません。交付金につきましては、これは算定の基礎その他が非常に複雑でありますので、明確に幾らということは、ただちに御回答申し上げることができませんが、追つて資料によつてでもお知らせいたしたいと思います。
  84. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 全国的に見まして、公立の幼稚園あるいは私立の幼稚園等の振興を阻害しておるものが、給与にあるのか、あるいは幼稚園の施設にあるのか。こういう点はきわめて重要だと思うのでありますが、その点について何かお考えがあつたらお聞かせ願いたいと思うのであります。
  85. 辻原弘市

    ○辻原委員 どちらにその原因があるのかという点のお尋ねでありますが、私の考えでは、やはり経費の最も大きな部分は、職員に対する給与費その他の人件費でございます。この点が小さな町村の財政によつてまかなわなければならぬ、かように現行が相なつております関係で、この点に対する教員の待遇が、義務教育学校教職員の待遇と比較して見た場合には、非常に大きな差があるのであります。従いまして、せつかく教職員の免許法その他においては同じような取扱いと同じような資格を打たなければ、幼稚園の教員としてその教育に携わることができないといたしておりながら、資格に対する待遇の面においては非常に劣つている関係で、幼稚園の教職員確保あるいは質的内容の向上、こういつた面に非常に阻害を与えておる。もちろん施設あるいは設備、こういつた点におきましても非常に不足をいたしておりますけれども、そのことよりもさらに給与負担の面が非常に大きな隘路となつておるのではないか、かように考えておるのであります。
  86. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 そういたしますると、給与の改善を行わなければならぬことに相なるのでありますが、現在公立の幼稚園はどのくらいあるのか知りませんが、公立の幼稚園はどの程度ありまして、そうして公立の幼稚園としてこれはどこにどのくらい優秀なる幼稚園があるかというようなことは、主として文部省の方でなければ無理だと思うのでありますが、文部省の方でおわかりの方がここにおいでになれば、お知らせを願いたいと思うのであります。
  87. 辻原弘市

    ○辻原委員 詳細な点につきましては、先ほど御要望のありましたように、文部省政府委員の方からあとでお答えいたしますが、大体概観を申し上げますると、私の調査いたしておりまする範囲では、非常に公立幼稚園の制度が、一般に忍識を持たれ発達をしているのは、主として大ざつぱに申しますると、関東以北よりも関西の方にその認識の度合が深い。特に県別にこれを考えてみました場合には、もちろん都市は一応別でありますが、普通の府県におましては、あるいは四国における徳島県であるとか、あるいは愛媛県であるとか、こういつた地方におきましては、他に見られないようないわゆる町村立の幼稚園が発達をしておりますので、その辺のところには、非常に一般が持つている幼稚園というものの考え方とは異なつた、幼稚園に対する新しい認識が生れておるということを申し上げておきます。
  88. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 町村立幼稚園については非常に貧弱なのもあつて、われわれ議員もずいぶん陳情を受けるのでありますが、この公立の幼稚園とそれから案外私立の幼稚園で非常に成績のいいものもあることは、私の郷里の方でもいろいろ調査をいたしてみまして、非常に感心いたしておる点なのでありますが、これらの給与は、前に御説明になつたように、小学校職員との比較において現在おそらく問題にならぬ程度であるようでありますが、現在の予算をどの程度か増額したならば私立は補助金が増額され、あるいは町村立の幼稚園は平衡交付金の増額等が要求されることと思うのでありますが、現在のこれらの予算をどの程度まで引上げたならば大体小学校職員と似たり寄つたりの程度まで行くとお考えになつておるのでありましようか。
  89. 辻原弘市

    ○辻原委員 予算のトータルで申しましても、この点御理解が行きがたいと存じますので、先ほど申し上げました義務教育教職員との剛にどの程度の差があるかということ、これは私どもの調査でありますので、あるいはその他の調査と比べて若干食い違う面があるかもしれませんが現行のベースにおきましてもそれとの落差が平均約五千円程度となつておるのではないか。従いましてその程度の個人当りのいわゆる平均単価をカバーいたしてやりませんと、その間の均衡がとり得ませんので、さつき申し上げましたように、資格におきましては、これは教職員の免許法においては一応小学校教職員とほとんど同等の研修と基礎資格を要求せられておりますので、資格とそれに対する待遇というものとがマツチいたしておりません点が非常に問題なのであります。そのときは予算的には単価においてその程度をカバーすればほぼ均衡がとれる、かように考えておるのであります。
  90. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 これは文部省の緒方局長にお答えを願つたらいいと思うのですが、義務教育は御承知の通りに半額国庫負担給与をやつておるのでありますが、現在給与の点で、この義務教育職員と町村立の幼稚園職員との国庫負担率というものはどうなつておりますか。それは額ではちよつとむずかしいと思いますが、大体半額程度になつておるかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  91. 緒方信一

    ○緒方政府委員 幼稚園の職員に対しましては義務教育国庫負担法の対象にはなりませんので、もちろん半額国庫負担というものはございません。ただ先ほどお話があつたのでありますが、特別平衡交付金というものを算定の中に入れております。それによりまして中央の財政としては考えて行きたいと思つております。  それからちようどここへ出て参りましたので、先ほどお尋ねがあつたそうでありますが、教育長の数につきまして申し上げます。これは昭和二十八年十月十五日の調べでありますが、専任教育長の数は三千五十七名、それから兼任の教育長が三千八百十八名、合計いたしまして六千八百七十五名になります。それからそのほか事務取扱い、これが二千七十二名でございまして、合計八千九百四十七名ということに相なつております。さらに詳しく申しますと、専任の中のいわゆる専業でありますが、これは一町村だけに専業をしておりますのが二千五百九十名、兼業が四百六十七名であります。それから兼任の中の専業が三千七百八十七名、兼業が三十一名、こういう内訳には相なつております。
  92. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 地方教育委員会についてはあとにいたしますが、現在幼稚園の園児の取扱いが、教師一人当り大体四四・六くらいになつておるように私は聞いておるのでありますが、どのくらいであるか。それから四十四・六という数は、私の感覚からいたしますると、非常に過重な数だと思います。これはおそらく文化国家として、列国のこうした実例等によりますと、多くて三十人程度ではないかと思うのでありますが、一人の教師が四十何人も取扱うというようなことで、はたして適当な園児の教育ができるかどうか。この点提案者はいかにお考えになつておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  93. 辻原弘市

    ○辻原委員 一学級当りの収容平均定員がどのくらいになつているかというお尋ねでありますが、この点はお手元に文書にして差上げております提案理由の説明の中にも述べております通り、今御指摘のあつた数字、これが平均でございますが、最高はそこにも述べておりますように、六十四名というような、ちよつと想像のつかない非常に多数を収容している、そういうクラス編成もあるのであります。そこで理想としては、どの程度の収容定員が望ましいかという問題でありますが、もちろんただその学級定員の理想の問題だけを取上げますと、これはできるだけ少い方がよいというふうに申し上げなければならぬかと思いまするが、制度というものとマツチして考えますならば、現在の段階においてはやはり三十名から四十名程度、おそらく従来文部省が指導をして来ております学級定員の基準も、その辺にあると私は承知いたしておりますが、大体この程度が最も妥当ではないか、こういうふうに考えます。
  94. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 提案者は、幼稚園教員の給与等の改善を目途されて、おるようでありすすが、かりにそうだといたしますと、この一学級定員というものがかような、仰せのように六十幾人とか五十人とかいうような、過重な労働をしいるといいますか、劇務をさせておるということでは、この幼稚園教育というものの成果のためにも非常な障害であると同時に、これによつて給与の改善等も、実質的に考えなければならぬ点でありまして、大体今少い方がよろしい、まあ三十名ないし四十名程度の方がよろしい、こういうお説のようでありまするが、そうだといたしますならば、なお一層そういう点に重点を置いて、本案を改正する場合においても考慮を払わなければならぬと思うのであります。それはいかに考慮を払われておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  95. 辻原弘市

    ○辻原委員 この法律改正は、もつぱら給与費にあるのでありまして、給与費の負担を従来の市町村から、これを義務教育学校と同じように、都道府県の支弁に切りかえるための改正措置でありまするが、もちろん提案趣旨にも述べました通りそういつた幼稚園全般の教育振興という面からも考慮をいたしました結果、まず第一に着手すべき問題がこの点にあるのじやなかろうか。平たく申しまして、町村ではこの公立幼稚園を持ちましても、なかなか財政負担にたえない。そこで、俸給は何とかの形において支払わなければなりませんが、一応特別平衡交付金において従来見られておりましたので、ともかくとしてそれが手一ぱいでありまして、施設、設備の内容の充実ということは、どうしてもこの給与の負担から圧迫を受けて、おろそかになりがちであります。そこでこの町村の重い負担から、まず給与費をとりのけて、これを都道府県支弁とし、さらにこのことによつて義務教育学校と同じように、給与費は国庫負担の形において、国からの援助を与える、こういうようにすれば、勢いこの財政負担の軽くなつて来た町村状態は施設、設備の面に力が入れやすいのではなかろうか、そういうことで、この収容定員等も無理をしないでできる学校の校舎の施設というものも拡充して行く。もちろんそれだけではだめでありますので、将来への考えといたしましては、公立の義務教育学校ないしは高等学校に対する援助と同じような形で、これに対する国庫なり県なりの援助の方法を考慮して行く、こういうことも、これは次の段階の問題として考えておるのであります。
  96. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 町村給与では非常に低いために、教員が過重な労働をしいられ、低賃金で待遇を受けているという点を改善するというお話でありますが、そういうことであるといたしますれば、現在この町村公立の幼稚園で全国的に見て低いところはどの程度だと御調査が行き届いて、さようなことをおつしやるのか、私立の幼稚園も相当発達いたしておりますが、私立ではどの程度であるか、あるいは公立の幼稚園の給与は実際には全国で一番低いのは、どこにどの程度のものがあるのか、こういうこと等も調査ができて、その確実な調査に基いて、こういう計画を立てられたのかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  97. 辻原弘市

    ○辻原委員 最も低い例をあげろというお話でありますが、御指摘のように、そういう点につきましても調査をいたしまして、その結果提案をいたしておるのでありまするが、ただいま確実な数字を申し上げかねますので、これは資料によりまして後刻おわかりをいただけるような方法をとりたい、かように考えます。
  98. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 大体われわれも幼稚園の給与の改善はもちろんのこと、できるだけ幼稚園の健全な発達を願うものでありまして、本案についてもその点はわれわれ非常な敬意を払つているわけであります。  それで私は元にもどりまして、この地方教育委員会については遺憾ながら提案者とは私は意見が迷う点があるのであります。地方教育委員会は、現状において町村委員会が非常に規模が小さいために、今文部省政府委員からの回答に接したように、兼務の教育委員を置かなければならない、あるいはまた教育長の資格についても、助役に兼務をさせなければならぬ点、これらはただ単に財政の規模の小さいためばかりでなしに、そういう人物を得られない地方があるということに、非常な現状にそぐわないところがあると思う。その点は現在そういう点に重点を置かれて、かような任意設置を考えられたのかどうか、この点明確な御答弁を願いたいと思うのであります。
  99. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの点も昨日坂田委員の御質問にお答えいたしておりますが、もちろん非常に小規模の範囲で教育委員を選ばれ、ないしは教育長を選任いたすのでありまするから、勢いそこに人物難――これは教育長の場合とはもちろんケースが違いますし、同列には参りませんけれども、特に教育長の場合には一定の資格を免許法によつて要求されておりますので、この点はすでに各地で従来問題が出ましたように、その資格保持者かいない、たまたまいましても、人物的に教育長としての職務に携わることが非常に不適当であるといつたような形で、いたし方なく、先ほど政府委員の方から説明のありましたように、町村助役と兼務をしている、そういう姿が実情でございまするので、もちろんこの点も考慮いたしまして、少くとも教育長という非常に重要な職責を遂行している人が、兼任ないしは十分その資格について遺憾のない人が得られないというようなことは、これはまことに教育行政の上において支障を来たして参りますので、この点も重大な改正の理由といたしたのであることは申すまでもございません。ただそれのみが本改正案の理由ではなくして、そういうものを含みまして改正をいたしたということでございます。
  100. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 もちろんそれのみでないという点の一つといたしましては、学校職員の採用、交流の点というような点は、非常な重要な点だと思うのであります。それが現在の町村教育委員会で、町村の地域的な関係から現在支障を来しておるとお考えになつておるかどうか。そうだといたしますならば、大体人口の数といたしましては、現在の市は三万以上をもつてとなつておりますが、将来市町村制の改正の上に国会等で論議されておるのは、市は五万以上、こういうことも、相当有力に主張されておるのでありますが、大体五方くらいの都市の学校数、教員数というようなものから経営規模を考えたときには、かなり人事の交流等も町村単位の現在から見ると、非常にやりよくなるのじやないかと思うのでありますが、こういう程度に、ひとつ全面的に任意ということでなしに、――そういうことで、もし全国を五万の単位の市ということは、もちろん現在の行政上行きませんから、郡単位にするとか、あるいは地方事務所単位にするとか、行政区域そのままでやるということに行きませんから、教育区域としてそれを設定し、そこに教育委員会を設置する、こういうことが最も望ましい方法ではないかと思うのでありますが、提案者はいかにお考えになつておりましようか。
  101. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの、一体どの程度の規模がはたして適正であるかどうかという点につきましては、これは委員会が設置されまして以来、町村教育委員会の問題が延期されて、やがて町村教育委員会を設置をするという段階になるならば、現行のような形でおることは、ほぼ当時の経過から見ましても、大多数はやはり不適当であるという考え方で、それ以上の規模という一応の最大公約数的な考え方をもつて、それを前提にいたしまして、ではそれから上の規模ならばどの程度が適当であろうかという点は、あるいは教育委員会制度協議会でありますとか、あるいは地方制度調査会でありますか、こういうところでも論議があつたことを聞いておりますしいろいろな、説、いろいろな論が今日なされております。今お話のように、少くとも人口五万程度の都市、これが一つはその設置する単位になるのじやないか、あるいはそれよりももつと大きい十五万以上くらいのものが適当じやなかろうかというような形で論議が交されておりますが、いまだにこれに対する明確な統一された意見というものがどこからも出ておりませんし、また私たちも必ずしもその程度で適当であるとはにわかに判断できかねる点もあるのであります。もちろんたとえば財政負担、こういつた面から考えてみますならば、一応人口五万程度の都市であります場合は、比較的その面においては緩和され、容易であると思うのでありますけれども、一歩人事行政、人事配置というような面におきましては、やはりただいまのような町村の規模、人口五万に切りました町村規模におきましても、その間における人事交流というものが依然としてしこりが残る、この点の改正はどうしてもやはりいま少し広域性を持たしめる必要があるのではなかろうか、こういう点から私は先ほども将来にわたる人事行政の円滑化という面を考えました場合においては、都道府県単位くらいの人事行政が最も適当ではなかろうか、それに自治法におきまして拮抗をしておるところの五大都市こういう所においては、これは都道府県と同じような一応規模を持つておると考えられますので、これはやはりそれと同様の取扱いが可能ではなかろうか、こういうことでありますので、御指摘の御意見はわれわれも十分考慮いたした点でありますけれども、それでいいというふうには私どもにはちよつと判断がつきかねる点がありますので、この点はさように申し土ける以外にないことを御了承願いたいと思います。
  102. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 提案者は国民を信頼して、国民の設置の意思に従うという方針のもとに、任意設置というお考えでできておるのではないかと思うのでありますが、そのことは民主主義の建前から最も正しいといわれておるのでありますが、現行のやり方では現実に、財政面から、人事の交流面から、または教育長等の人物採用難等の点から、非常な弊害を現実に起こしておるのでありまして、この点はむしろ提案者の任意設置論というものは、一つの現実に即した適当な方法だとも言われるのであります。ただここで提案者にお尋ね申し上げておきたいのは、そうだといたしまするならば、一応現行の選挙によつて行われておるところの委員会等もあるし、いろいろなことに考慮を払つて任意によつて行うことになりまして、この任意に行う結果、この地域では不適当だ、この範囲の規模の小さいところではやめた方がよろしい、こういうところもあるでしようが、そういうことで、実際においては半数残るか、あるいは三分の二残るか、三分の一になるか、そういうことは神ならぬ身のわからないことでありますが、かりにこれが多数残るということになりまして、任意に設置をさして、それの運営がうまく行くという現象が現われたときには、府県単位等でこれをやつたがよろしいというあなたの理想とは反する結果になろうと思うのでありますが、そういうことになつた場合にはどうお考えになりますか。その点も今のうちにお聞かせを願いたいと思うのであります。
  103. 辻原弘市

    ○辻原委員 将来の問題でありまするので、そのときにどうするかという点については考えておりませんが、少くとも任意設置という方針でこの制度が実施されて、そうして大多数の地域住民の意向によつて、なおかつこれを置いた方がいいということになりました場合は、これはやはりおのずから違うのではないか。われわれの考え方は、ただいま当該の地域住民の意見、あるいは市町村長等の意見、またはその他の輿論に徴してみましても、やはり申し上げておりますようないろいろな理由から、これを廃止ないしは任意設置としてもらいたいというような意見が非常にありまするし、また教育委員会の制度といたしましても、それらの輿論がまことに的確であるとも考えて、かような改正をいたしておるのでありますから、法律がもし施行されて実行に移された場合には、その逆の結果が出るとは私たちは考えておりませんので、やはりこれらの住民の意志にのつとつて、適当な規模でないところにおいてはこれを廃止して、その行政の権限を別の形において行うようなことに相なるのではないか、かように考えておりますので、もしそれと逆の結果が出た場合においてはどうするのかというお尋ねについては、ただいま明確にお答えすることができません。しかしながらもしそういうことに相なりましたならば、やはり私はそれらの住民の意向というものを尊重して行かなければならぬ、かように考えておるのであります。いま少し申し上げますると、ここで任意設置という限り、これは廃止する場合にも、住民の意向によつて、議会の議決で廃止して行く。同時にまたさらにその後、いろいろな条件がそろつてやろうという場合におきましては、再びこれを設置する、いわゆる再設置をするということも、議会の議決で可能でありますので、その点はあくまで住民の意向、意思というものに即してこれを行う、こういう形にいたしておりまするので、それらの点については、さらに意思に反して強制をするというような考え方は持つておらないのであります。
  104. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 最後にただ一点だけお尋ね申し上げておきますが、提案者は要するに、金幅的に国民の意思に従うという謙譲な態度でありまして、私はその点はまつたく敬服するに値するものだと思うのであります。ただ問題は、これが現在の市町村議会の議決に基いてということになりまして、はたしてその市町村議会の議決が市町村民全般の意思を円満に表現するかどうか、こういうことは大体そうなけらねばならぬ、そうあるべきことであることは間違いないのでありますが、御承知の通りに、その市町村の工大な利害関係においては、全般投票に問うという形式等が採用されておるのであります。かような重要な存置をすべきか、廃止をすべきかというような点は、たとえば市町村警察を廃止する場合においても一般投票によつたわけでありますが。かようなことをただ市町村議会の議決によつてということで、はたして今日の民情に即したことで行くかどうか。こういう点について十分御研究になつたことだろうと思うのでありますが、むしろ一歩進んで一般投票によつてはいかがかと思うのであります。これに関して提案者のお考えを承つておきたいと思うのであります。
  105. 辻原弘市

    ○辻原委員 これについては二つの問題がある思います。一つ法律的な問題、一つ考え方の問題、と申しますのは、さきにも申し上げましたように、公選で選ばれておる人の身分に関することと申しますか、いわばその身分を剥奪するのでありますから、そういつたことを、直接選挙で行われた公選制の形をとらない、いわゆる代表の姿である議会で、はたしてこれをやり得るのかどうか、こういつた問題が一つあると思います。いま一つは、法律問題はかりにどうであろうと、一般住民が直接の責任選挙したものを、今度はいわば間接の形で取消すというようなことが、はたしてそれが民主的なやり方であろうかという問題であります。第一の法律的な問題は、いろいろ立案の過程において研究いたしました結果、これは前例もあることでありまして、必ずしも法律上の、あるいは憲法上の問題にはならないという結論が出ておるのであります。第二の点は、これはいろいろ論議もいたしましたし、あるいは直接選挙によつたのであるから、住民投票に移して、自治体警察のごとくその存廃を講ずるが適当であろう、こういうふうなことも考えたのでありますけれども、しかしながら再設置の問題も含んでおりますので、これはやはり一応議会という建前が、住民の意向を代表して重要な案件が決定されるということであります限りにおいて、やはりそこで、これを取扱うということが、実態的に見まして、――住民投票であるならば、形式的に非常にいいのでありますけれども、内容的には非常にこれは煩雑な問題も起きますし、かえつて混乱を生ずるような醜態も予想されまするので、これは議会の議決に移して、しかしながら一般議決の方法とは違つて、厳格な議決の方法を採用する、こういうことにおいてその点をカバーし得るのではないかということで、普通決議の過半数を、三分の二以上の多数ということにいたしたような次第でございます。
  106. 辻寛一

  107. 小林信一

    小林(信)委員 私は本日は時間もありませんし、しかもあとに質問をしたい方があるようでございますから、ごく基本的な問題についてだけ二、三御質問を申し上げます。  教育委員会の中でも、ことに地教委の問題について私は非常に心配しておるものでございますが、元来この地教委の生れた経緯が、たびたび論議されますように、何ゆえその必要があるかということがはつきりせずに設置されたものでございまして、その当時に設置しなければならぬという地方の立場からしますと、はたしてこれが恒久的に存在するものか非常に疑問でございました。従いまして暫定的な気持でこれを設置し、しかもこれを充実するというような意図を持たずに今日まで来ておる傾向が多分にあるのでございます。しかし設置した以上は、これが及ぼすところの教育上の影響というものは非常に大きいものがあるのでございますから、廃止するなり、あるいはこれを存続するならば育成強化すべきであるということにつきましては、たびたび大臣との問答等によつてなされたことでございますが、大臣はその都度育成強化する、こういうふうにこの委員会でもたびたび申しておられるのであります。しかしその育成強化なる事実というものが、昨日衆議院を通りました来年度予算の中にも見られないという事実を考えますときに、地教委の前途というものに対しましては、まことに憂慮しなければならぬものがあるのでございます。たまたま政府から提案されました今回の重要法案であります教育法案考えますときに、財政的な措置をして、あるいは制度の改革を行つて、地教委の実質的な育成強化をするというような態度よりは、むしろこの二つの法律が持つておりますものは、いよいよ地教委によつてこれ監視、監督させるというような、そういう方面の権利を与えて、地教委を強化するというような方面に文部大臣は力を注いでおつて、われわれの希望するような面の育成強化をはからぬではないか、こういう誤解さえ生れるような状態でございまして、当然教育委員会実体考えたときに、何らかこれに対する適切なる法的改正を行つて、その育成をはかる、あるいはこれが処置をはからなければならぬというところでありますので、こういう法案があなたたちから提案されたことはまことに妥当と私は考えるのでございます。そこで現在の地教委の実態についてどういうふうな御検討をなされておるかということを、この際お聞きしたいのでございます。先ほど申しましたように、これはやがては廃止されるのであろう、しかも今回のように、選挙が当然本年行われなければならぬのを二年延ばすというような意向が政府にあるやに聞くわけでありますが、こういうことではいよいよもつて地教委の充実強化に対しては、町村当局等は熱意を欠くわけでございまして、従つてこれに対するところの財源措置あるいはこれを構成するところの人間の選択等にも熱意が欠けておつて、最近とかく聞くのでありますが、こういう財政的にむだなものをいつまでも存続するよりも、かえつて町村当局にこの教育権を移管して、こういうものは廃止してしまえという意向さえ出ているのでございますが、こういう点につきましてはどういうふうな御検討をなさつておるか。  それから教育委員会自体におきましてはやはり同じような、確たる信念のない立場に立つておられるのでございますが、しかし何とかして自分たちの存在価値をつくらなければならぬということで、この人たちが最初に考えたことは、地教委の使命は学校教育もさることながら、今まで教育行政で最も欠点とされておつたところは社会教育である。社会教育は、これはいまさら私が申し上げるまでもなく地教委の諸君も、非常に社会の道義が頽廃しておるとか、あるいはその他青少年の犯罪等の問題で非常な心配をしておるものでございます。そこでこういう人たちが社会教育を行おうとしましても、実際当局がそういう考えを持ち、あるいはこれを生んだ責任を持つ国会がまたそういう態度でございますので、考えようとしてもそれが実行に移すことができないというような点から、非常にこの人たちは困つておられる。従つてそれがいろいろな人事等の面において、その存在価値を発揮しようとして、昨年の暮れあたり全国的にいろいろな問題が起きたことも聞いておるのでございますが、教育委員会全体におきましても非常な不満を持つておる。また教職員の立場からしましても、この教育委員会に対しまてはいろいろな意見があるやに聞いておるのでございますが、こういう三者の立場からして、教育委員会に対するところの見解というものはさまざまであり、その中に今運営されておるのでございまして、おそらくこういう点をつぶさに御検討の上で法案提出になつたと思いますが、御見解をなるべく詳細にお伺いしたいと思うのであります。
  108. 辻原弘市

    ○辻原委員 地方教育委員会実体についてどういうふうに検討して本改正案を提出したのか、詳細にその説明をせよということでありますので、若干時間をとりまして申し上げますが、まず御指摘のありましたように、この地方教育委員会をつくつたものの、実際の運営におきましては、第一番に財政がそれに伴なわなかつた、これは昨日も申し上げましたが、御説明申し上げるまでもなく、できました当初は国庫の平衡交付金がわずかに十億程度の援助しか組まれておらなかつたというようなことから、その後のこの財政に対する市町村の要望というものはまことに熾烈なものがあつたのでありますけれども、今日に至るも、ただ当時予算に計上いたしましたものを平年化して計上しておるにすぎませんので、町村に対して、この教育委員会教育委員会たるだけの財政措置を与えているということには相なつておらないのであります。その証拠には、各地の教育委員会の実情を、都市を除きまして見ました場合、町村に行きまして、あるいは事務局の問題あるいは指導主事その他に対する取扱いの問題、これらを検討いたしてみましても、まず事務局には教育長がおりますけれども、さきにも申し上げましたように、これは助役との兼任という姿が多いのでありまして、現在教育行政を専任してやるという姿は、小さな町村に参りました場合には非常に少い。さらにこれを補佐する指導主事その他事務関係を扱いますいわゆる事務職員は、村に参りますると大体一、二名程度くらいしか専任しておらない。こういう姿でありまするので、それらの当該教育委員会は、何とかしてその予算を獲得したい、あるいはもう少し事務局等の整備もいたしたいということで、いろいろ村と折衝をやつておるようであります。ところが村の方は、それらの要望をいれる場合には、村役場が二つできるだろうというような形で、とても財政の負担に耐えられないということで、その教育委員会の予算要求を拒否して、そこに一つの摩擦が生じており、いまだにそうした点が解決せられないということに相なつております。そういつた予算の面から、当該市町村長あたりは、結局置けば必ず予算がだんだんと膨張して来るし、また置いた以上何とか内容を充実しなければいかぬ。しかしながらそれに足るだけのいわば行政が存在するか、平たく言えば、それだけの価値があるかというふうな点で、結局金を出しても、町村でそれだけのことをやらなければ、必ずしも教育行政が成り立つて行かないということではないのだから、いつそそれよりもこの教育委員会というものを廃止して、従来町村が負担をしておつた、あるいは建築その他の問題だけに限定して、一般教育行政というものは別な形でやつた方がいいんじやなかろうか、その方がむしろ村全体の行政としても、円滑に行くし、教育行政としてもスムーズだ、こういうふうに非常に強く地方の市町村長あたりの意見が集約されておる、かように考えておるのであります。ところがそれらの意見の中にはいろいろありまして、結局廃止をして、ではどうするかというときに、一つの意見といたしましては、これをもう少し広域性のあるものとしてやつたがよろしい、いわゆる教育委員会制度をもう少し改めてやるという意見と、いま一つは、教育委員会というものはもういらない、そうして、その権限は町村長に譲つてもらいたい、こういう意見の二つがあるようであります。ところがこうした権限問題というのは、われわれが判断をする場合に、教育行政としてそれによつて云々するということは必ずしも適当ではありませんので、それらの点につきましての意見はいろいろ聞いても見ましたし、調査もいたしておりまするけれども、われわれの考えといたしましては、やはり教育行政を最も円滑に、しかもその目的である民主的な運営という立場から考えました場合に、町村長の中の一部が言われておりまするように、その権限を町村長にすべてゆだねるということには必ずしも同調いたしがたい点があるのであります。この点についての心理状態はわかりますけれども、これによつて教育行政が現在よりもよりスムーズに、より民主的に行けるとは考えられない点もありますので、やはり依然として教育委員会そのものはこれを存続して行くという基本に立たざるを得ないと思うのであります。  ただいまは主として財政問題について申し上げましたが、次に人事行政の面でございます。ただいまはすでに人事配置を行う段階に入つておりますが、各地での様子を聞いてみますとどういうことに相なつておるか。これは昨日も申し上げましたが、やはりそれぞれの町村で任命をいたしておりまするので、結局地域の便利なところ、あるいは文化的なところには比較的に希望者もありますし専任が得やすい。ところが不便な土地やあるいは文化程度の比較的進んでいないようなところ、あるいは端的に言つて、山間僻地のような住むのにも非常に不便が伴う地域、こういうところにはどうしても志願者が少い。またその土地で教員を充足することも不可能である。これを従来の広い範囲の地域で行う場合におきましては、その調整が比較的スムーズに参りました。しかしながら、個々独立をいたしてそれぞれ任命発令をいたしておりまするから、結局当該委員会同士の話合いによらなければその人事の配置が進まない。その場合に、都市の教育委員会が農村あるいは山村に対する人事配置について協力をしないと、なかなかその間の折衝が円滑に行かない。結局都市の方は教員を得やすいけれども、山間の方においては資格その他において比較的低い教職員確保しかできない、こういうような不便が起つておるのであります。これらの点、人事行政としては非常に困つた問題でありますから、その解決をつけるためにも、どうしても早くこの小さな範囲での人事行政を改めて行く必要があるのではないか、かように考えておる次第であります。その他いろいろな理由がありまするが、大体大きくは財政面、それからこの人事行政の問題が最も難点であることを申し上げまして、お答えといたしたいと思います。
  109. 小林信一

    小林(信)委員 そこで問題になりますのは、任意設置のことであります。今の財政的な面から考えますときに、地方財政必ずしもゆたかでない。どつちかと申しますと破綻の危機にあるような状態のときに、一方において、相当年限は経ておりますけれども、希望するように今学校は施設が充実しておらない状態にあるのでございます。この教育委員会を置くために相当な経費がかかつて、しかも役場が二つあるというような感まで抱かせる状態であり、国家財政も困難な状態であるししますときには、任意設置ではなくて、財政的な面からすれば、やはり私は従来の県教委に一切権限をゆだねて廃止したらどうか、こういう考えも私だけでなくて、地方では相当に持つておるのでございます。  さらにただいまのお話の人事交流の問題につきましても、提案者は重大な関心を持つておられるのでございますが、この人を得るということは教育の要点でございまして、これが一つの県内において巧みに調整され、そしてそのために教職員に不安を起させないということが大事なことでございますが、そういう人事交流というような面から考えて参りますと、やはり地教委をこのままおきましても、任意設置になれ、設置しないところは当然のこと、やはり協議会のようなものをつくるとか、あるいは県教委に実権をゆだねて人事交流をしなければならぬ。こういう重大な面を取上げてみましても、地教委の存置は、どつちかと申しますと意味がないような感がするわけでございまして、任意設置よりも、かえつて廃止して県教委にこれを移してしまう方がいいような感じを私は持つのでございますが、この際任意設置にされた理由を一応お聞かせ願いたいと思います。
  110. 辻原弘市

    ○辻原委員 先ほども前田委員の御質問に対してお答えをいたしましたが、いろいろな例をあげて考えますと、教育委員会とは限らず、ずつと従来の日本教育行政制度をながめて参りました場合に、大体都道府果の範囲くらいの、特にこれは人事行政とかその他研修でありますとか、あるいは指導の面、こういつた点について、義務教育においては、一応その程度の規模においてやることの方が、人事も円滑に行くし、しかも指導内容等におきましても一応のレベル維持ができますので、これは適当であろう。従来の何から見ましても、その点に関する限りはあまり一般の批判もなければ、それに対する欠点というものも、教育行政については大きくは見出せなかつた。従つて、都道府県教育委員会にそれを移すということもこれは当然考えられるわけであります。しかしながら、現在すでに制度が実施されておりまして、しかもこれが教育委員という形で公選により選任されておるという点を考えまする場合に、ただちにそれらを全部廃止をして都道府県に一挙に移すということは、やや現実の面において無理が生ずるのじやなかろうかと考えまして、その点についてはやはり任意に設置した方がいいのじやないかということを考えた点が一点でございます。  いま一つは、先ほども規模の点につきまして前田委員にお答えいたしましたが、結局それぞれの教育委員会をずつとながめてみますと、市町村教育委員会と申しましても、規模は千差万別であります。人口七、八万から十万ないし二十万程度を持つ都市における教育委員会、あるいは人口一万程度の町の教育委員会、あるいは人口二、三千程度の村の教育委員会といろいろございます。従つてその中にはかつて義務設置でなかつた当時におきましても、教育振興のためだという考え方で、義務設置に先立つて設置いたしたところが岐阜県その他の各県に見られておりますが、そうした教育に対して非常に熱心な町村、あるいはいろいろな町村教育委員会の欠陥というものをある程度住民の努力によつて克服して、将来にわたつてなお存置して行きたいという強い希望を持つておる町村、またかなりの実績もあげているというようなところ、この教育に対する関心、教育に対する協力というものは無視できないと私は存じますので、こういう点も考慮いたしまして、そうした人々にさらに大きく教育行政の全般的な円滑化に協力をしていただけるというふうな段階になつて参りますまで、一応やはり任意設置にして、住民の期待に沿うべきじやないかというふうに考えた点が第二の点であります。従つてここに任意設置として、あくまで無理押しをしない。無理やりにこれを義務設置にしたり、無理やりにこれを廃止してしまつたりするということは、教育は住民の意向によつてやらなければならぬという建前から見ますると、どうしてもそういうことは避けなければならぬ問題である、かように考えまするので、ここに任意設置として、また、先ほど申し上げましたように、再設置も可能となるような形にいたしたのでございます。
  111. 小林信一

    小林(信)委員 もう一つだけお伺いして、逐条的なものにつきましてはまたいずれお伺いいたしますが、第五条の第二項を加える個所におきまして、その経費は当該都道府県の負担とするということがあります。つまり、先ほど提案者が申されましたように、教育委員会のこの法案を履行するには経費の問題を最も重視されているようでございますが、この二項にもその点がやや明らかになつてはおりまするが、そういう意味かどうかをお尋ねするわけでございまして、「第六条中「及びその所掌」を「その他の地方公共団体教育に関する事務」に改める。」とありますが、そうしますると、この法案改正によりまして町村の負担というものを相当軽減して、国あるいは県の負担にその運営の費用をまかせよう、こういうふうなお考えがあるのかどうか、それだけお伺いいたします。
  112. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間も非常に切迫いたしておりますから簡単に御説明申し上げます。  ただいまの御質問にありました第五条の二項をつけ加えました趣旨は、御指摘のありましたように、市町村負担という形におきましては、やはり教育行政が非常に金がかかり過ぎるといつたような一つの悪い傾向をも生ずる危険がありまするし、また現在の町村の財政状態から考えましても、これらの経費をそのままの形で町村に負担せしめておくということは、きわめて不適当であるということを考えましたので、教育事務執行に要する経費はこれを都道府県の負担にするというふうに、特にこの一項をつけ加えまして、町村の財政負担の非常に過重せられておる現在の状態から少しでもそういう点について軽減せしめたい、こういうような趣旨でございます。
  113. 辻寛一

    辻委員長 松平忠久君。
  114. 松平忠久

    ○松平委員 この地教委の任意設置の法律案に関して若干御質問申し上げます。  現在、県教委と地教委のこの二つの機関を比べてみると、県教委の方は割合にうまく行つているが、地教委の方はまことにうまく行つておらぬ、こういうのがどこの地方を見てもわかる通りの現象なんであります。この地教委がうまく行つておらぬということの原因は、おそらく、だれもが考えるように、財政の問題ということもありますけれども、もう一つは、自分の管轄するところの学校が少な過ぎるということが一つの大きな不満となつており、これがまたこの地教委がどういうことをしていいかということについて困つておるような状況でないか、と言いますのは、この前の地教委の選挙が行われたときにおいて、ほとんどがみな出し抜けでびつくりしてしまつたというようなことでもあつたわけですが、いよいよ地方教育委員会というものを成立させてみると、自分の方の管轄の学校というものが各村において少い。ほとんど一校か二校というような小さいものであつて、しかもその権限は法律上明確であるけれども、唐突な選挙であつたために、大体協議会において県教委の方へその権限を委任しておるというような地方も相当多いのです。従つて月一回の会合というときにおいても、与えられた権限内において、しかも委任してあと残された権限内においていろいろ学校行政をやつて行くという場合において仕事が少い。そういうところに今日地教委が非常に不満を持つているのじやないか、こういうふうに私は思うのです。従つてその不満を緩和するためにどういうことをやつているかというと、不満を緩和するために、ある者はきわめて不熱心、言いかえれば、せつかく選挙によつて出て来たけれども自分の任務を全うするのにきわめて不熱心になるという一つの傾向がある。同時にある一部の者は、逆に不熱心ではなくて、事務干渉をして来る。つまり教育長のやるべきことあるいは管理主事、指導主事のやるべきことを教育委員会が出て来まして、そうしてかつてに事務をやつて行くという弊害があるわけです。従つて一部においては非常に不熱心になるという教育委員があるかと思うと、一部においては極端に熱心になつて、そうして事務当局のやることを自分でやつて行く、その結果そこに教育ボスというボス化が出て来る。従つてそこに、人事の異動にしてもあるいは研修の問題にしても、彼らが越権的な行為をして来る。これが今日地方に見る一般の地方教育委員会の実情ではないか。もちろんいいのもありますけれども、小さいところへ行くほどそういう現象があるわけであります。従つてこれを除去して行かなければならぬ、こういうふうに思われるわけであつて従つて法律案に私は賛成なんですけれども、提案者は、教育委員会のボス化についてきのう若干触れられましたけれども、地方教育委員会の弊害というか、むろん任意設置でありますからいいところもあれば、悪いところもあるわけですが、今日これが弊害ということについて、教育行政にどういうような影響を及ぼしておるか、それについて御調査があつたかどうかということを、あつたとすればどういうような具体的な弊害があつたかということについて知つておられるなら御答弁願いたいと思うのです。
  115. 辻原弘市

    ○辻原委員 教育委員の職務権限から、これがボス化する傾向があるということは昨日も私は申し上げたのですが、確かにその点はいろいろな実例からうかがえるのでありまして、そういう点についての実例の一、二を申し上げますと、たとえば今松平さんの方から御指摘のありましたように、教育委員がなまけてやらない、その反対に非常に熱心になり過ぎて越権ざたをやつておる。私が調査した範囲で、非常に困つた問題だと特に教職員あたりから訴えられた問題は、連日教育委員がともかく学校にやつて来て、そうして職員室に居すわつて、女の先生なりあるいは若い先生あたりをあごで使つたり、あるいは茶くみをさせたり、そうやつてともかくあたかも教職員に対しては絶対権限を持つているかのごときふるまいをして、そのために非常に学校教育の運営にもさしつかえが起るというふうな苦情を聞いたことがありますが、そういつた点は確かに私は一つの例であろうと思います。もちろんそういつたことは全般とは申しませんけれども、総体的にいいまして、このことは今日の地教委制度とかつての視学制度とを考えてみますると、いわゆる非常に強大な権限を教職員の最も近い立場に置かしますると、その点が一面においてはそういう人たちのボス化のために圧迫を受け、同時にそのことが教員をして非常に卑屈な立場をとらしめ、そうでなければ自分の地位というものが安定して行かないというふうなことで、非常に学校の運営にさしつかえる。あるいはいま一つのそうした例を申し上げますると、すべての事柄についてことごとく校長に干渉をする。これは私は教育委員全制度をはき違えた理解の行き届かない教育委員がおつた例であろうと思いますが、少くとも教育委員会がやる学校に対する権限は教育委員会として成り立つておるのでありまして、教育委員個人については人事権限をどうすることも、何も本質的には持つていないのであります。しかしながらそのことをはき違えまして、たまたまそういうような誤つた教育委員が、あたかも自分教育委員会を代表するかのごとき考え方を持つて、そうしてたとえば正当な機会における教員の人事、配置異動というような問題に限らず、平常においてこの教員は不適格であるから何とかしろというふうないろいろな意見を持ち込んで来たり、きようのだれだれの授業はいけなかつたからこれはけしからぬということで絶えず干渉する。そのことはもちろん一つ批判として聞くべき点がありといたしましても、これが教育委員という立場においてやられる限りにおきましては、非常に学校運営としては困る問題である。一種の権力による干渉というふうに理解せざるを得ない。そういう例が一、二にとどまらないのでありまして、このことは、やはり現行の町村教育委員会一つの傾向として、また当然今後も予想されるべき傾向としてわれわれに重大な関心を持つておるのであります。その他極端ないろいろな思想的な弾圧の問題とかありまするけれども、それらはまた別の際にご説明申し上げるといたしまして、そういつたようなきわめて卑近な例がたくさん続出いたしておるのであります。
  116. 松平忠久

    ○松平委員 私どもも地方におりましてそういうような事例をときどきき見聞するわけであります。これはひつきようするのに、その教育委員の人格というか、能力というか、そういうものにもよると思います。思いますけれども一つにはとにかく教育委員の仕事が少な過ぎる、管轄するところの行政があまりに小さ過ぎるということが一番大きな原因ではなかろうか、その結果ある者は非常に怠慢になるし、ある者は極端に熱心になつて事務干渉をするというふうに考えられるわけであります。そこでお尋ねしたいと思うのですが、今日地方における一つの傾向としては、町村合併ということもありますけれども町村合併に先がけて行われておる現象は、組合立中学あるいは小学、組合立の学校に移行して行く傾向が非常に濃厚になつて来ておるわけであります。交通の発達等のためから、もう一つは財政、もう一つ学校教育の向上というような意味からして、組合立というものがどこにも非常に出て来ておる。従つてこの組合立をしたところにおいては組合立中学ができるわけでありますから、今度は一部組合立の教育委員会というものまでつくらなければならぬというようなことになつておるのであります。そこでお尋ねしたいと思うのは、これは文部省の方にお尋ねしたいのですが、組合立の中学とか、組合立の小学校とか、こういうものは一体現在どの程度できておるかということと、それから文部省方針というものは、組合立の学校を助長させて行く、そういう方針をおとりになつておるかどうか。これはおそらく各都道府県におきましては、町村の合併に伴つて、あるいは町村の合併に先がけて、町村の合併が非常に困難であるという場合には、せめて学校だけでも組合立にして行きたい、こういう傾向が顕著であります。従つて各都道府県においても、町村合併促進法に関連して、組合立の学校を助長して行くという方針を大体とつておるが、これに対して文部省側はどういうような方針をとつておるのか。これはこの教育委員会の任意設置の法案に非常に関係が深いと思いますので、この点について御答弁をお願いしたいと思うのであります。   〔「文部省はどうした、おらぬじやないか」と呼ぶ者あり〕
  117. 辻寛一

    辻委員長 文部省はおりませんから、後刻御答弁願うことにいたします。
  118. 松平忠久

    ○松平委員 それでは今のはあとでお答えを願うことにいたしますが、これももし提案者が知つておればお答え願いたいのですが、知らなければ文部省当局からお答え願いたいと思います。それは地方教育委員会の専務を県教委に対して委任してやつておるところが非常に多い。これは現行法によりまして、協議会等をつくつて話合いの上でそういうことをやつておる。そこで大体の傾向としまして、地方教育委員会の権限の一部を県教委にかわつてつてもらうという話合いでやつている傾向が非常に多いわけでありますけれども、それらのことについて、大体の各府県等の実情等がおわかりになるならば教えていただきたい。これは任意設置ときわめて重大な関係があるのではないか。今まで持つておる自分の権限そのものを県教委に委任してやつてもらう、こういう傾向にあるわけでありまして、非常に関係が深いので、この点もし提案者において、それらのこともある程度御調査に相なつたとするならばこれを伺いたい。
  119. 辻原弘市

    ○辻原委員 お答えいたします前に、先ほどの小林委員の御質問について若干訂正をいたしておきます。それは小林委員の御質問が、改正法案の第五条についてというふうに私受取つたのでありましたが、第六条の改正であつたというふうにあとで聞きましたので、これは教育委員会を廃止いたしました場合に、その当該町村には教育委員会がございませんから、その管理する職務権限は都道府県の教育委員会に移管せられる、こういうことになりますから、従つてその経費は都道府県に移管をする、こういうふうに改正をいたしておるのであります。  次にただいまの松平委員の御質問でございますが、確かに各地におきましては、いろいろの方法でもつてここの人事の隘路を打開する努力をいたしております。今どの県が、またどの地方が、どの村がどういうふうなやり方をやつているかということは、申し上げるわけには行きませんので、後刻この点は資料をもつてお答えいたしたいと思いますが、総体的に申しまして、都道府県に話合いの上で移管しておる、こういうところが相当数ございます。どことどこであるかといつたようなことにつきましての一応の参考になる資料は、今申し上げましたように、ただいま持つておりませんので、後刻お答えをいたしたいと思います。
  120. 松平忠久

    ○松平委員 先ほど申しましたように、今日の傾向として、組合立の学校に移行して行くということと、それから現在ある地教委の、現行法に基く権限の一部というか、ことに人事に関して、県教委に事実上これを委任しているような傾向が相当多いわけであります。従つてそういう傾向こそは、これは結局今日の教育行政というものを概観するのに、小さな地方にこれをまかせておくというようなことではなくて、さらにこれを大きな範囲に拡大して行かなければならぬということが、教育行政もまたほかの行政とともに、そういうあり方になるべきだ、こういうふうに見られるわけであります。ところがきのうどなたの質問でしたか、この法案を出した場合においては、著しく地方分権、ことに教育の地方分権を破壊する。そして教育の中央集権とまでは行かなくても、県への集権ということであつて民主主義教育制度を逆行させるものだというような御意見があつたわけであります。提案者は一体この地方分権を破壊するというような、そういう懸念をお持ちになつているかどうか、あるいは全然地方分権を破壊するというような懸念はないという確信をお持ちになつているかどうか、もし地方分権を破壊するのではないということであるならば、その理由をはつきりさせていただきたいと思います。
  121. 辻原弘市

    ○辻原委員 再三申し上げておりますように、結論的に申しまして、地方分権の制度なり精神を破壊もしくは否定するということは、絶対あり得ないということを確信いたしております。むしろこの改正によりまして、日本現状というものと地方分権の本来の精神というものが、完全にマツチするものであるから、なおこの地方分権の精神が、よりよく生かされるというふうに私たちは考えておるのであります。その理由は、地方分権を否定するという考え方で申される人々の意見は、町村より広くなれば、これはだんだん大きくなつて国に近づく、だから地方分権の制度を否定しているものじやないか、こういうふうに申されるのでありますが、少くともわれわれは、国と地方の関係というものは、これは都道府県を単位といたしまして、これを総称して一つの地方、地方行政というふうに考え、またその地方行政の末端が町村であることは当然でありますけれども、その範囲における行政というものは、これはあくまで地方分権の精神によつてやられておりますし、また法的にもその通りでございますので、その範囲において、とり行う行政というものは、何らこれは地方分権の制度に反するものでもなければ、それを否定するものでもあり得ないと思います。しかもまた御承知のごとく、先ほど御指摘のありました、分権制度に名をかりまして、形式的なシステムをあてがいます場合においては、逆に――地方分権ということと民主主義ということは、少くともいいことでなけばばならぬと思うのでありますが、その場合にボス的な傾向がその制度の中に、またその制度の根源に存在するとするならば、これは民主主義に反するものであつて、それは形式的に分権制度でありましても、決して本来の意味における分権制度ではないというふうにも考えられますから、ただいまの町村教育委員会等につきまして、今申しましたようないろいろな欠陥、民主主義に反するような傾向が、一つの根源として存在いたしておりますのを認める場合、やはりそれを除去するための方策として、これを広域性に持つて行くための、本提案のごとき措置がとられるならば、さらにそうした弊害が除去せられて完全な民主主義が施行され、その上に乗つかつた地方分権制度が促進されて行くということになつて参りますから、われわれとして、これ決して分権の制度に反するものではないことを確信いたしておるのであります。
  122. 松平忠久

    ○松平委員 文部省の方にもう一つ調査事項があります。それはこの地方教育委員会の一部事務組合をやつている町村が、全国で相当数に上つていやせぬかと思うのです。この一部事務組合をやつている数を文部省において握つておられるならば、それもあわせて御報告いただきたいと思います。  そこでお尋ねしたいのは、すでに各都道府県――おそらくこれは政府方針もそうであろうと思うのですが、その地域に即した教育を行うのに、地域の範囲を拡大するという傾向は、今日どこにも見られるわけであります。従つてこの教育委員会自体も、任意設置ではあるけれども、これを一部組合の方に漸次移行して行くことを奨励して行くべきではないか、こういう私個人の意見を持つておるわけであります。あるいはこの提案の趣旨とは、その理想において若干違うかもしれませんが、そこに行く一つの過程として、教育委員会の一部組合を奨励して行く、そういうような趣旨を本案の中にもあるいは盛つた方がいいのではないかという感をいたしておるわけでありますけれども、この一部事務組合の奨励ということについて、提案者はどういうふうにお考えになつているか、お伺いしたいと思います。
  123. 辻原弘市

    ○辻原委員 それらの点につきましても、いろいろ検討いたしましたが、一部事務組合というのは、教育委員会の構成にかかわらず、従来いろいろな形で、たとえば学校で申し上げますると、特に新制中学の設立にあたつて、一部事務組合をつくつて運営して行くというような心組みもありましたし、かつて青年学校が設けられました場合にもそういつた心組みでやられました。しかしそれらはいずれも結果的に見まして、好成績であつたとは言われないのであります。と申しますのは、一部事務組合と申しましても、結局町村――町村と申しますよりも、ずつと一つのそれぞれの長い間の伝統から育つております地域的感情というものが、この専務組合にも反映している、平たく申しますと、学校の校舎の問題一つつてみても、この事務組合の中では、なかなかきめかねる。特に公選制度によつてその一部事務組合の範囲内で委員を選任いたすということになりますと、当然ここに委員の争奪戦が町村から巻き起されて、あるいは予算の支出がそれぞれの当刻町村の負担にかかつて、事務組合に醵出されるというようなことになり、こういう点についてのいわゆる分配、配分、分担というふうな点においてスムーズに行くかどうかということを考えましたならば、過去の例、経験に徴します場合には、必ずしもこれは良策ではない。もちろんお話のように、一つの単位として広域性を持たせるという面においては、確かに利点があるわけでありますが、それとは別な観点における今申しましたような欠陥が、この事務組合制度の中に生れるということを私たちは考えております。これは単に教育委員会のみならず、あるいはただいま問題になつておる警察法等のいわゆる自治体警察をどう設置するかというふうな問題の中におきましても、ある意見としましては、そうした町村を若干統合した形における組合をつくつてはどうだといつたような議論が起つておつたことを私ども承知いたしておりますが、それらも同様、やはり運営上非常に困る点が出て来るんじやなかろうか、こういう点において、事務組合の設置ということはやはり難点があるんじやなかろうか、かように考えておるのであります。
  124. 松平忠久

    ○松平委員 最後に一つお尋ねしたいと思うのですが、本案の提案が何か党利党略に出ておるというようなことがきのう問題になつたわけであります。私自身としてはそういう気持は持つておらぬわけですが、言いかえれば、この法案で任意設置ということになれば、組合活動が有利になつて共産党のフラク活動従つて有利になる。従つてそれを除去するというか、抑えるためには、むしろ地教委を強化して行かなければならぬということを言われておつた。自由党の諸君は、地教委を強化して行くということの方針であるようでありますが、地教委を強化するということ、すなわちフラク活動を阻害し、組合の活動を制限していくということを、通説的に言えば、そういうことをみずから認められて、ああいう御発言をなさつたんじやないかと思うのでありますが、提案者は、これを一体どういうふうに考えておるか、少くとも社会党の、あるいは日教組活動を便利にするというようなお考えで、こういうものを提案しておるのかどうか。その点きわめて重大な問題だと思うのです。教育自体は国民の教育であるわけであつて従つてこれは党利党略ということからかかる法案提出の意図が若干でもあるとするならば、その点きわめて問題だと思うのですが、その点について明確なる見解をお述べになつていただきたいと思います。
  125. 辻原弘市

    ○辻原委員 いろいろの問題について現職にある教職員の方々が、いろいろ希望を述べられております。私たちもそういう希望を直接受けておりますが、特に教育委員会の制度につきましては、これらの教職員の方々あるいは町村の方々は非常に具体的に問題を指摘されまして、これの改正を要望いたしております。こういう点でありまして、決して一、二の政党の利害がどうであるとかこうであるとかいうふうな問題とは、全然かかわりがない、かようにはつきり断言をいたしたいのであります。同時にこの経過を今日まで見て参りますと、つくつた結果からいろいろなことがとりさたされるのでありますけれども、この問題を本質的にどうするかか、どうしないかの議論の過程におきましては、それぞれこれは政党政派を越えた問題として論議せられましたことは御承知の通りでありまして、先般の十五国会においては、同様の考え方で改進党の提出もあつたことを考えみますと、決してさような趣旨に出たものではないのであります。あるいはさらにこの改正案に対して、異論を唱えられる方々の御意見の中に、こうしておいた方が、今松平委員のお話のありましたように、共産党のフラク活動に対処するいい方法じやないかというふうなことで、町村教育委員会の存在価値があるというようなことを若干申されておつたようでありまするが、個人的見解にわたりますけれども、私はそれはまつたく逆ではないかと思います。と申しますのは、共産党の戦略、戦術をいろいろ見てみますと、結局最も近い権力に対する権力闘争というものが基点になつて出発しておる。それを考えました場合に、いわゆる町村教育委員会に主たる権限が存在するとなれば、その地域活動と申しますか、地域における闘争と申しますか、そうした点がよりよよく効果的に行い得るということが、この町村教育委員会の存在によつて、非常に価値づけられて参ると私は考えるのであります。現実にそういう問題が起らなければよろしいけれども、そういう問題がかりに起つたといたしましたならば、それはかえつて町村教育委員会がしかれたために、権力がその地域に固着されたためである。かように判断せざるを得ないのであります。
  126. 辻寛一

    辻委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後九時十二分散会