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1954-10-21 第19回国会 衆議院 農林委員会 第77号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月二十一日(木曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 芳賀  貢君 理事 吉川 久衛君    理事 川俣 清音君       田子 一民君    松岡 俊三君       松山 義雄君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       片島  港君    伊東 岩男君       中澤 茂一君    久保田 豊君       安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君  委員外出席者         大蔵政務次官  山本 米治君         農林政務次官  羽田武嗣郎君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         林野庁長官   柴田  栄君         運輸事務官         (中央気象台総         務部長)    北村 純一君         建設事務官         (河川局水政課         長)      美馬 郁夫君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月二十一日  委員本名武君及び片島港君辞任につき、その補  欠として伊東岩男君及び井手以誠君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農林災害対策に関する小委員会の小委員及び小  委員長の選任  昭和二十九年農林災害対策に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  本年の冷害風水害等による農林災害対策について議事を進めます。佐藤洋之助君。
  3. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 今回の北海道災害に対しまして、大臣がたいへん政務多端のところ遠路おいでくださいまして、つぶさに御視察を願いましたことは、われわれ委員会といたしましても感謝いたしますとともに、おそらく北海道農民は、暗夜にともし火と申しますか、非常な喜びと想像いたします。つきましては、北海道における大臣視察なさいました状況について、この際承ることができればたいへん仕合せと思います。
  4. 保利茂

    保利国務大臣 北海道冷害並びに春以来相次いで襲いました台風災害、特に十五号台風のこれら一連の災害に関しまして、去る十一日当委員会から派遣せられました調査団長佐藤委員調査報告を承つて、私としましては、飛行機に乗る前に一応の予備知識をいただいておりましたことをたいへんありがたく思つております。私はその翌日十二日に北海道におもむきまして、その日余市を経て岩内町に至る沿道一帯を拝見いたし、また岩内町の大火復興のその後の状況視察いたしましたところ、復興はきわめて足取りが悪い。特に住宅関係が非常に切迫しているという実情から、たまたま田中知事も同行をいたしてくれましたので、田中知事と御相談をいたしまして、すみやかに学校の一つの教室に数十世帯が足も延ばせないで雑居しているというような、状況を改善するために、道庁においても緊急の措置をさらに大急ぎで講ずるというような措置を講じまして、札幌に引返しました。翌日は石狩地方特に長沼地域を経まして岩見沢、滝川、砂川方面を経まして旭川旭川から北上しまして名寄、下川を経ましてオホーツク沿岸紋別に第二日はおそく到着をいたしました。第三日は紋別から網走北見に向いまして湧別川辺中心としまして視察をいたし、北見から遠まわりをして阿寒地帯を経まして十勝に入り帯広まで到着をいたしました。翌日は十勝一帯視察いたしまして富良野に至り、富良野でまたその地方お話等伺つて、その夜千歳から帰京いたしたようなわけで、きわめて大ざつぱではございましたけれども、できるだけ広い地域視察し、およそ当委員会調査団のあとを拝見いたした。従いまして、十五号台風の直接与えておりまする外観的な損害を見ますると、果樹におきましては、おもしろいように感じますけれども余市を初め旭川富良野方面網走方面あるいは北見湧別方面は、風の強弱はあつたかと存ぜられますけれども、りんごの被害が一律に行つておるということは、非常に顕著な災害状況ではないかと存ぜられました。なお住家等に対する被害状況は、私どもが拝見いたしましたところは、札幌から旭川に至る沿道に最も風当りが強かつたのではないかという印象を受けております。  十五号台風の直接もたらしました一番大きい災害は、金額的に見ましても、資源的に見ましても、国有林の受けております立木にいたしまして約五千万石という風倒木を生じ、これは年間伐採のおよそ三年分以上に相当する、ために今後これがいかなる影響をもたらすかということにつきましては、融雪時等相当慎重な対策を要するものがあるというよう感じました。もう一点は、広汎な冷温から来ておりますところの農作物災害、この難を免れて成熟稔実をいたしましたものが、折から十五号台風によつて相当風害を受け、せつかくあの凶作の中に収穫を期せられるというような状態に入つてつたものが、脱粒被害が相当甚大に及んでおるということは、農作物から見ましてきわめて残念な現象に見ました。  全体の農作物状況は、調査団からの御報告もそうであつたと存じますが、この凶作の中で比較的作況に恵まれたものは、砂糖大根ビート、それにばれいしよがややよかつたのではないか、麦はまあまあというところで、ただこのばれいしよについては、北見地区においては約一万町歩の冠水を受けたために、北見地区のばれいしよはやはり相当被害があつた。よかつたと申しますのはとにかくビートを数えるにすぎないのじやないか。従いましてビートを主として作付をせられておつた農家は、比較的この災害被害程度が少かつたのじやないかというように今日も考えておるわけであります。ただ農作物全体につきましては、札幌から旭川に至りまする上川、後志、石狩、この水田地帯が、実は出かけます前は、御報告を承つております中にも、いま少しくいいのじやないかという気持を率直なところ私は持つて出ましたけれども、これはかなり想像以上の悪い状態で、農地の八割を占めまする畑作が、ビート、ばれいしよを除きましては、大体雑穀飼料作物ということに相なるわけでありましようが、全体の様子を見ますれば、十月の五日に全国的な非常な冷え込みがあつたことを私も記憶いたしておりますが、北海道十勝方面は、六日、七日に、燻煙等による防除がきかない冷温が来たために、それまでは七分作なり八分作なり、相当行くのじやないかと期待をいたしておつた雑穀類が、ほとんど全滅の状況に入つておる。これは非常に顕著な事実ではなかろうか。北見はつか等も、大体六分くらいのところじやないか。飼料作物におきましても、デント・コーンという作物にしましても、北見地方沿道をずつと見て参りますと、気候のいいときは三メートルくらいに伸びるのが、せいぜい一メートル半くらいのところが目について、北海道凶作の様相を如実に物語つておる。十勝方面に入りますと、このデント・コーンは少くも北見地方の倍以上には伸びておるように見受けました。いずれにいたしましても、五月以来の苗しろどきからの北海道災害、しかも六月の霜害によつて、芽を出しかかつたところを押えられ、そして六、七、八月まで続きました冷温の中で辛うじて生育しかかつたものが、九月に至りやや天候回復によつてある程度の作が期待せられておつたところが、作が非常に遅れて来ているところへもつて来て高度の冷温が早く襲来をしたというところに、北海道農作物の決定的な凶作をもたらしているということが私の受けました全般的な印象でございます。  これに対する救済措置として特に強く考えなければならぬのは、やはり開拓地帯農家です。これはほとんどが畑作である。しかもさらに高冷地でありますために、その打撃はきわめて深刻で、しかも住居等も失われている人が非常に多いというこの惨状は、率直に認め、かつその対策を誤らないようにいたさなければならぬと考えておるわけであります。私どもといたしましては、昨日政府委員から申し上げておりますように、冬将軍も迫つておることでありますから、できるだけ早くこの対策を取急ぎたい、かように考えております。この点につきましては、大体以上申し上げましたような報告をそのまま閣議にも報告いたし、災害連絡本部長にもこの状況をお伝えいたし、適切な政府全体としての施策を誤らないようにという要請を私からもいたしております。  右御報告を申し上げます。
  5. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 ただいま大臣から詳細な報告を承り、まことに御熱心に御視察を願いまして、被害を目のあたりよくごらんになりましたので、今後の対策上におきましても裨益するところが非常に多いのではないかとわれわれは期待しております。お話のように、北海道は十五号台風が重ねて来たために、農作物被害が、合せますと約三百九十八億くらいになるわけでございます。そこで九月十五日の作況では水稲が七〇%、陸稲が二二%ですか、これらはよほど是正しなればならぬと思うのですが、日本全体の冷害暴風雨害、こういうようなものを総合いたしまして今回こうむりました被害はまことに大きい。五号、十三号、十二号、それから十五号、こういうふうな幾多の台風による被害、ことに十五号の与えました北海道方面の特殊な被害はきわめて甚大でありまして、今、大臣が御報告の中にありましたように、林野に関する風倒木でさえも五千万石以上ということでございますから、これはまことに甚大なものでございます。この間の官房長官の御説明によりましても、農業施設に対する被害が三百八十二億余万円、水陸稲で三百十三億という厖大な数字であります。従つていろいろな災害を合せますと八百億、こういうことであります。この救済に対しては、農林委員会としてはまことに頭を痛めているのでありますが、数日にわたるいろいろな研究論議の結果、対策に関する結論が大体出て参りましたので、きようあたり何か意思表示をしたいと思うのですが、それは追つて委員長からもお話があると思いますが、要するにただいまの御報告の中にあつた、一例をあげますと開拓の問題ですが、開拓のごときはきわめて底の浅いものでありまして、そこは畑作専門であります。従つてこれらの立法措置あるいは再生産に対する営農資金をまとめます前提としても、やはりその間のつなぎ資金でも考えてやりませんと、これはなかなか重大だと思うのでございます。これらの問題に対する詳細は北海道の方々からいろいろ実感をもつてお話があるだろうと思うのでありますが、関東においても群馬あるいは埼玉、山梨、長野の四県あたりの高冷地帯開拓地におりますのは、やはり同様な冷害を受けておりますから、これらに対しても特段の御考慮を願いたいと思うのでありまして、当委員会としてはほんとうに政党政派を超越して、ひとつ四千万農民を何とか救わなければならぬ、こういう熱意のもとに今後いろいろ対策を講じ参るのでございまして、この点も大臣は了とせられて、十分なる施策を願いたいと思う。なお山本大蔵政務次官もお見えになつておりますから——問題はやはり大蔵省の財政問題です。これはことしだけは山本さん、ひとつ腹を締めておやり願いたい。いずれわれわれ交渉に参りますが、特にこの機会にあらかじめお願いをしておきたいと思います。
  6. 柴田栄

    柴田説明員 十五号台風によります北海道中心といたします風害と申しますか、風倒実情を申し上げ、これが処理に関します一応の計画を申し上げまして、いろいろ御審議あるいはこれが実施に対します御支援をちようだいいたしたいと存じます。  今回の十五号台風によります風倒実情は、林野といたしましては現在記録にないほどの大被害でございまして、北海道だけについて見ましても、概査でございますが、現在立木被害が総額で約五千五百二十三万九千石程度になつております。御承知の通り北海道国有林が半分以上でございまして、従いまして被害もほとんど国有林に集中しておると申し上げ得るのでございますが、これを所有別に申しますと、国有林におきまして四千九百三十六万石程度大学演習林におきまして百二十一万石、鉄道防雪林約十六万石、道有林におきまして三百八万六千石、それから民有林が百四十二万三千石程度というのが、ただいままで報告の参つております概査でございます。  なおこの際申し上げておきたいのは、今回の風害はさらに東北にも多少の影響を持つておりまして、青森営林局管内、主として青森県でございますが、青森県の国有林におきまして四十七万七千石程度風倒を見ております。秋田県の国有林におきまして三十二万石程度風倒を見ております。これは地域的に集中いたしておりますので、大体国有林五千万石近い風倒木対象面積は、二十万町歩余になつておりますが、最もはげしいのは、ここに図面がありますが、これは旭川上流大雪山系層雲峡上流地域でございますが、この流域だけで千三百万石近い風倒を見ております。ちようどここに色わけいたしております。大雪山の一番高いところはこの辺になるわけです。ここが層雲峡の温泉のあるところでございます。これは大体高嶺の地帯でありまして、矮性の林木あるいは草生地でございまして、ちようどこの赤い線で区画いたしております所が、大体林業対象普通施業地域と申し上げ得ると思うのであります。この面積が四万四千余町歩ございますが、実際に利用可能の地域は三万町歩余でございます。その中の一万三千町歩近いものが今回の風倒でやられている、大体この地域の半分近いものが、風倒被害をこうむつている、こういう状況になつておりまして、この緑で示しております地域は、ほとんど全林風倒地域でございます。それから紫で示しておりますのは集団で倒木いたしている地域、その他は転々とこの地域がほとんど倒れておりますが、非常な特色といたしまして、この高地から多分こうわかれて入つたのじやないかと思いますが、西南方向から猛烈な風速で吹きおろして参つたというふうに見られるわけであります。これがちようど川になるわけでありまして、この風下の方の斜面は、ほとんど被害が少いのでございますが、風に直面いたしました部面は、ほとんど一木もないような所もございますが、完全にはだかになつております。これが層雲峡景勝地、ここが大函の付近でございます。ここはもうほとんど全部木がなくなつて、木はだが露出しているという状況になつております。  そこでこの問題の処理に関しましては、第一段として手取り早く最大利用する、こういう問題でございますが、何と申しましても実は現在口が一つしかないわけでございます。あるいはこの道路をごらんいただいた方もあると思いますが、私どもの方の専用線がもう一本通つておりまして、ちようど往復できるようになつておりますが、これを年間最大に活用いたしまして——一応運べる最大能力年間二百日操業いたしまして、常時この区間に五百メートルに一台ぐらいトラツクが走つているという程度まで高めることによりまして、二百万石くらいを丸太で輸送できる。これでやりまして三年で少し残る。そこで、今計画いたしておりますのは、開発局において抜かれておりますものが、わずかここで七キロ残つております。これを御相談して促進して、北見川へ行く線を一両年に完成いたしまして、これで五十万石程度とれる。これを両方いたしまして、極力千三百万石近いものを、まず一応むだなく処理したい。その他の地域といたしましては、ちようどこの裏側の温根湯の方に向つております滝上の地区で、やはり四百万石近いものが出ております。それから音更の地域に二百万石、さらに非常に固まつてあります地域上士別地域、あるいは上士幌の地域、あるいはさらに南に下りましては、支笏湖周辺地域等が大体中心になつておりますが、これを一応の目標といたしましては、私どもは三箇年間部分処理いたしたい、かような考え方計画をいたしまして、二十九年度におきまして、ただちに一部着手することにいたしまして、二十九年度においては約六百七十万石程度処理する、三十年度におきまして千七百万石程度、三十一年度において二千五百万石程度、こういうことで一応の利用計画を立てまして、現在二十九年度の仕事には、直接伐採に着手いたしておるという実情でございますが、これを処理する方法といたしましては、従来の既定計画に基きまする立木処分未済の分につきましては、切りかえ可能な限りにおきまして風倒木に切りかえまして民間協力を求める、大集団地域につきましては、生産混乱を来す危険がありますので、極力直営伐採によつて処理いたす。かような考え方で進めておりますが、この処理に関しまして非常に問題になりまするのは、何と申しましても相当増産に相なるのでございまして、二十九年度におきましても約五百万石の実際の増に相なる。これを一時に民間に放出いたしますれば、需給のアンバランスから、ひいては価格の混乱を生ずる。あるいは内地との需給調整等をも考える必要があるという観点等からいたしましても、この面から直営伐採を主体として考えなければならないという問題があるのでございます。さらに処理途中におきまして、従来の経験からいたしますると、風倒には必ず虫害が伴う、しかも実はしようけつをきわめるというような実例が多々あるのでございまして、大正年間に樺太に起りました風害の際には、私どもの記憶では約一千万石の風倒に対しまして、生立木虫害をこうむつたのが千七百万石と言われておるのでございまして、処理を誤りまするとかえつて虫害による被害の方が大きくなると考えられまするので、これは何といたしましてもすみやかに利用除去いたしますと同時に、虫害防除徹底をはからなければならない、こういう問題が一つあるのでございます。さらに一時に大面積の枯枝あるいは末木等が堆積いたしますので、北海道は従来とも山火事によりまする被害が非常に大きいのでございますが、最も燃えやすいものは一箇所に集積するということになりまするので、山火事の予防あるいは対策徹底を期せなければ、さらに災害を異常に拡大する危険があるのでございまして、これに対しまする科学的な防除対策徹底いたさなければならないという問題があるのであります。  さらに非常に恐れられますのは、従来特に上川地区のごときは、伐採の入つたことのない天然の密林、原生林が急激に一流域におきまして半分程度まで破壊されて、地面が露出される。そこで出水変化は極端な状況を現わすであろうということが想像できるのでありますが、特に今回の風害の非常な特色は、風の方向西南地域でございましたので、南面の地域がほとんどまる裸になる。そこに積雪いたしまするので、融雪期におきましてはきわめて短期間に融雪出水の危険があるのでございまして、たださえ旭川地区は非常に水害の危険の多い地域でございますが、これが上流地域の急激な変化をプラスいたしますると、来春の融雪時期においても非常に大きな水害の危険があり、その後における河水の調整上も重大な問題をはらむということでございまして、これが対策に関しましては、建設関係とも十分な連絡をとりまして、地元の御協力を得て万全を期さなければならないというふうに考えられるのでありまして、非常にたくさんの問題を含んでおるのでございます。  さらに北海道は、冷害等による農家の悲境、十五号台風による被害等救済対策等も十分考えなければならないということで、風倒木処理にあたりましては、あるいは公共施設応急復旧あるいは住宅復旧等への活用により、できるだけこれが救済を考慮する必要がありはしないか。さらに冬季間の事業といたしましての薪炭生産に対する薪炭林処理等も、風倒木対象として考えなければならぬ問題が多数あるような気がいたしますが、私どもといたしましては、利用を促進することによりまして、できる限りこの風倒木をむだなくすると同時に、これによりまして救済のために処置できる最大限度においては、救済の用にも充てて参りたい。また末木枝条等につきましては、形式的にはあるいは従来とも払下げの必要があると存じますが、考え方によりましては、今後の火災あるいは水害虫害等被害の根源になる危険のある末木枝条は協力を求めて除去するような手段等もあわせて考えて参る必要がありはしないかと考えておりますので、現行の制度においてできる最大限度においては、ただちに相談を進めて協力を求めておりますが、さらに必要によりましては、特別の措置等についても考慮いたす必要がありはしないかと考えている次第でございます。一応二十九年度の風倒木処理可能の限度におきましては、大蔵省とも御相談を申し上げておりますが、予備金の流用あるいは節約分のもどし等を御配慮いただきまして、ほぼ予算的には事業の実行可能という見通しを立てておるのであります。これによりますと、事業といたしましても相当量計画を持つことができるのでございまして、これにより風倒木処理、伐出あるいはそれに伴う林道事業等をあわせて、北海道に対しましては、労賃として現在の計画ではプラスのできるものが四億二千万程度可能に相なるのでございます。これによりまして就労可能の労務は延約八十万人という見通しを立てております。大体風倒木実情処理の概況は以上の通りでございます。
  7. 井出一太郎

    井出委員長 質疑通告がございますので、午前中を主として質疑に充てたいと考えております。とりあえず通告順に従いまして、井手以誠君
  8. 井手以誠

    井手委員 一、二点お伺いしたいと思います。官房長にお尋ねいたします。公共事業被害、本年度の農林水産業施設被害について三百八十六億と出ておりますが、連絡本部の発表したものによりますと二百九十五億になつております。その間の事情を御説明願いたい。
  9. 渡部伍良

    渡部説明員 先ほど申し上げたのは一部府県報告等があつたのでありまして、その後おいおい査定が進んで来ております。査定が済んだものは査定が済んだ金額査定が済まないものは今のような府県報告あるいは農地事務局概算で分計しますと、二百九十五億になつたのであります。なおこの数字は、査定済むまでははつきりした数字になりませんから、今後多少変動することを御了承おき願いたいと思います。
  10. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、二百九十五億のほかに、査定の済まないものもあるというわけでございますか。
  11. 渡部伍良

    渡部説明員 私どもが今までに計算すると、一応この程度になつたのであります。三百八十億というのは、府県報告をそのままとつている部分が相当あつたから、非常に大きい数字になつたのであります。
  12. 井手以誠

    井手委員 ただいまの御説明で、なお不満足の点はありますが、一応査定したものが概算三百億、こういうふうに前提いたしまして、保利大臣にお伺いをいたします。  二十九年災害対策要綱によりますと、三・五・二で復旧を実施するということがはつきり示されておるのであります。ところがただいま官房長説明によりますと、査定が済んだもの大体三百億、それから国庫負担、それを三・五・二で割りますと、大体五十億前後の金額が出て来ると考えるのであります。政府は七十億の予備費をもつてまかない得ると繰返し繰返し御答弁なさつておりますが、はたして予備費をもつてこの三・五・二の公約のごとく実行できるかどうか、私はこの点非常に疑問を持つのであります。二十八年災害については、三・五・二の公約があるにかかわらず、地方に対する補助事業に対しては、二十八年が一割二分、本年が一割六分ぐらいしか相当いたしていないのであります。再びそういうことを繰返しては困りますので、私はここで念を押しておきたいと思いますが、予備費をもつて、この示された要綱によるごとく、三・五・二で完全に実施なさる確信がおありであるかどうか、この点を念のために確かめておきたいと存ずる次第でございます。
  13. 保利茂

    保利国務大臣 二十八年災害以来とられておりまする特別措置等のために、国の財政状態とにらみ合せますと、実際問題としてかなり無理が立つておる。どの点につきましても、この悩みを悩んでおるわけであります。私どもとしましては、絵に描いたようなぐあいに行かないにしましても、とにかく災害復旧はできるだけ急がなければならぬ。しかしこういう状態で、何しろ財政の実情からいいますと、まさに災害亡国というような感じがするくらいでございまして、この処理には非常に苦慮いたしておるわけでございます。とにかく災害地の実情も考えて、できるだけ早く復旧ができるようにいたさなければならぬ、誠意をもつて努力いたしたいと考えておるわけでございます。
  14. 井手以誠

    井手委員 大臣の答弁による誠意についてはわかりますけれども、どうしても金額についてふに落ちないのであります。三百億が大体査定済みのものであるとするならば、かりに現行の補助率をもつていたしましても、三・五・二でありますれば、五十四億円です。そのほかにもつと大口の建設関係もございます。それらを考えますると、七十億の予備費をもつてはとうてい三・五・二はまかない切れないのであります。財政の面もあるけれども、できるだけ災害地の実情に沿うように努力したいという大臣のお言葉はわかりましたが、それだけで私どもは承認ができないのであります。はたして三・五・二でおやりになる確信がおありになるか、この点を大臣大蔵省の政務次官より、この際この席上で御確言をいただきたいと存じます。ほんとうにこの要綱通り三・五・二で実施なさる御用意があるかどうか。責任ある御言明をいただきたい。
  15. 保利茂

    保利国務大臣 今お話対策要綱なるものは、私ども農林省としての希望でございますから、できるだけ政府全体の御協力を得るように努力いたさなければならぬと思つておるわけでございますけれども、まず金の問題にかかつて来るわけでございますから、私どもの方でどんなに努力いたしましても、一存でどうこうという言明的なことを申し上げるわけに参らぬことは御了承いただきたいと思います。私どもといたしましては、従来の方針からいたしましても、対策要綱に示しておりますような線において努力して行きたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  16. 山本米治

    山本説明員 最も新しい数字によりますと、被害総額は農林、建設等合せてございますが、八百四十三億でございまして、そのうち大体七割程度国庫負担といたしますと四百三十四億でございます。これは直轄と補助事業といろいろございまして一概に言えませんが、大ざつぱに七割程度といたしまして四百三十四億でございますが、そのうち二十九年度の所要額は大体九十億前後と今考えておる次第でございます。  それでただいまお尋ねの三・五・二の問題でございますが、これは項目により区々でございますが、全体として三・五・二の原則を守つて行くことは、ここでは言明をいたしかねる次第でございます。ついでにお尋ねの今残つておりまする予備費七十億弱、これでまかない得るかどうかというお話でございますが、被害が当初考えたよりも、だんだん報告従つて多くなつて参りまして、現在の七十億ではまかない切れないと思つております。まだ補正予算の問題ははつきりしておりません。これは臨時国会がいつ開かれるかというようなことにも関連いたしますが、機会あらばやはり補正予算を組むことが必要になるのじやないかと考えております。その場合にはほかの財源等も組みかえて処理するつもりでございます。
  17. 井手以誠

    井手委員 補正予算をお出しになるとすれば、大体大蔵省が現在計上されておる金額はどのくらいでございますか。それと率とをお伺いいたします。
  18. 山本米治

    山本説明員 ただいま申しました通りに、補正予算はいつ提出するかということはまだきまつておりません。内容は検討中でございますので、まだ申し上げる段階に至つておりません。
  19. 井手以誠

    井手委員 私は補正予算を組む時期ではなくして、金額並びに補助率の年度割をお尋ねしておるわけでございますから、その点についのお答えを願いたい。
  20. 山本米治

    山本説明員 それはやはり補正予算を組みます場合に、全体のにらみ合せで参りますので、ただいま申し上げました通りに、この三箇年間復旧について三・五・二ということをすべての項目について守つて行くことは、とうていできかねるということを申し上げておきますが、なおかりに補正予算が出ましても、政府の当初の計画たる一兆のわくというものは絶対に越えないつもりでございます。
  21. 井手以誠

    井手委員 次いで私は、対策の内容ではなくして、ほかのことで大臣大蔵省の政務次官にお願いかたがた意見を申し上げておきたいと存じます。それは災害復旧について、主務省である農林省が十分なる査定をいたしたにもかかわらず、二十八年の災害の実績を見ますと、大体同じような被害地に対して、主務省の農林省のほかに大蔵省の財務局、会計検査院、行政監察委員会等において、その後半箇年以上にわたつて四回、五回の査定を行われている。主務省以外のものについては、あれは参考のためとかなんとか言いのがれをされておりますが、実際はその場で金額をはじいてきびしく、——大蔵省側から申しますれば水増しということでございましようが、そういつたことで責め立てられておる。それで災害地は非常に迷惑をいたしております。もし最初の査定が甘かつたならば、それは一緒になつて厳格な査定をしてもらつてもいいが、一旦きまつたものを工事半ばに何回も見えられて査定をされ、だんだんと金額が引下げられるようでは迷惑千万だ、ということを私は災害地で非常に聞いておるのであります。私はそういうような苦い体験をいたしておりますので、この二十九年度の災害については、再びかかることのないように、政府災害査定にあたつては、もしも関係省が主務省以外に必要であるとするならば、それらが一緒になつて査定をされて、二度も三度も四度も五度も迷惑のかかることのないように、ひとつ二十九年度の災害復旧については、格別の御配慮を願いたいと私は存じております。これは保利農林大臣も十分事情を御承知のことと思いますので、この災害復旧についてはどういう御方針でありますか、その点を大臣と政務次官にお尋ねを申し上げます。
  22. 保利茂

    保利国務大臣 ただいまの御意見は私どもも全然同感に思つております。農林省の査定が甘いということで大分非難を受けるわけですけれども、農林省の査定といいますのは、現に今年の十五号台風査定にしましても、終つてしまわなければその対策がとれない。災害直後に現地へ参りまして見ました者の目と、ある期間過ぎて見た者の目とは、第一に第一印象から違つて来る。それにここはつつたものだ、そうではなかつたろうとかいうようにやられることは、災害地域に対しての心証を実に損しておると私は思つております。しかしまた農林省の査定にしましても、この災害が一箇所や二箇所でございますれば、比較的そういうことが起らないように査定もできますけれども、何千何万という所を一々その現地へ行つて見るというわけにも参りませんものですから、どうしてもそこに甘いとか辛いとかいう手抜かりが生じて参る。またあとから行かれて、見る目を異にして見れば、ずいぶん甘つたるいというような非難が出て来ることも実情やむを得ないものがあると思いますが、私は、これはかなり地方の人心をゆがめる一つの大きな事実になつていると思いますから、できるだけ関係当局の御協力をいただいて、見てもらうならばなるべく早いところ一緒に見てもらいたいということを、強く要請いたしたいと考えております。
  23. 山本米治

    山本説明員 お話の点はまつたく同感でございますので、御趣旨にできるだけ沿うようにいたします。
  24. 井手以誠

    井手委員 同感だとおつしやいましたが、まことにありがとうございます。それではどういうふうにその同感の意を具体化されるか。一緒に視察に参られるというふうなことができるものか。せつかくの今の御答弁でございますから申し上げますが、昨年は、七箇月も八箇月も過ぎてから懐中電燈で夜中に見てまわつては、これではもうできておるからいいとか、麦ができておるからいいとか、そんなことで査定から落してしまう、こういうようなことが非常に多かつたのであります。せつかく同感の御意思であるならば、それをどのように具体的になさつて行く御用意がおありになるのか。せつかくの機会でございますので承つておきたいと存じます。
  25. 山本米治

    山本説明員 私実は現地査定の場合、現地へ参る手続等もよく承知しないのでございますが、これは共同で行くと申しましても、さしあたりの責任官庁は、まずとりあえずともかく行かれるということもございましようし、また大蔵省の立場はどちらかといいますと、この問題に対しましては後方の立場でございますし、また人員等の関係もございますので、全部行きかねるような場合もあると思いますが、できるだけ回数が重複しないように、ほかの官庁が行かれればその場合に一緒に行かれるようにということを抽象的に申したわけでございまして、具体的に今後どうするかということは、私は今お答えできません。
  26. 井手以誠

    井手委員 あなたはあまり実情を御存じないようでございますから、これ以上は追究いたしませんが、せつかく国会がきめたものについても、主務省以外の官庁が出向いてこれをこわすような実例が非常に多いのであります。この点は非常に重大な問題でございますので、後日またあなたにお伺いする機会もあろうかと思いますが、責任官庁はあくまでも農林省であり、建設省である。これを信用してもらわなくては困ると思う。もう全天下と申しますか、災害地では農林省の面目が失墜いたしております。そういうことのないように、十分また具体的の方針を立ててくださいますように、特にお願いを申し上げます。  いろいろ災害についてお尋ねしたいこともありますが、重複するかもしれませんから、本日はこの程度で終らしていただきます。
  27. 伊東岩男

    伊東委員 簡単に農林大臣にお伺いし、かつお願いしたいと考えております。  北海道災害状況を御視察なつた感想については、ただいまよく承知いたしましたので、むろん徹底した対策ができ得ると考えておるのであります。今回の災害は、局部的には非常にひどいところが各県とも多いのでありますが、そのうちでも南方九州では、宮崎県が全県的に非常に甚大な災害を受けていることは、大臣も大体御承知だと考えております。御参考までに申し上げますと、県の報告によると、全県下の損害が三百四十億と称しておりますが、ここは北海道に比較いたしますと、六分の一くらいの場所であります。そうすると、北海道は、七、八百億と申しておりますから、大体その半分であるということになるので、地積、人口から申しまして、倍以上の損害を受けているという勘定になるのであります。でありますから、北における北海道、南における宮崎県は、今回の災害における最も甚大なる災害地とあえて申し上げてさしつかえないと考えます。これは昨日も話があつたのでありますが、大臣ちようど九州の災害の直後に御郷里の佐賀県にお帰りになつていたのであります。むろん政務上御出張になつてつただろうと思いますが、そのとき同じ九州の宮崎がかようにひどい目にあつておるのに、佐賀県は別に災害を受けておらぬのであります。なぜちよつとでもおいで願えなかつたかというので、地方では非常なる不満を申しているのであります。しかし私は今ごろになつて大臣に不満を申し上げません。先ほども大臣お話のように、災害直後に見た感想と時日がたつた後の感想は非常に違うのであるから、早く見なければならぬという御感想、その通りであります。大臣政務多端でありますから九州にはおいで願えないかもしれませんけれども、できるならばぜひおいで願いたいと思います。宮崎もちようど十月から、大阪から不定期ではありますが、飛行機が直行するようになりまして、たくさんな時間はとりませんので、いつか二日、三日の予定でおいで願い、大体大分、宮崎、鹿児島を一巡していただけぬものかと考えますが、お繰合せができるかできないか、この点についてお願いかたがた大臣のお考えをお伺いしたいと思うのであります。
  28. 保利茂

    保利国務大臣 ただいま伊東委員からお話がございましたように、私も九州におりますにつきましては、せめて宮崎、大分だけは見なければいかぬと思いまして、日程をいろいろ繰合せてみましたけれども、前から予定しておりましたところと日程がどうしてもかち合いまして、もう一度出直すかというようなことも考えておりましたら、ちようど建設大臣政府を代表して九州災害地においでいただくということになりましたから、私はそれでとりやめたわけでございます。今回の宮崎県下の災害の事情につきましては、選出の議員の方々や知事さんのお話、陳情に来られた方々のお話——私もしばしば宮崎県におじやましておりますから、大よそのことはお話を聞けばわかるつもりでいるわけでございます。近く災害連絡の内閣の担当大臣として加藤大臣が、北海道から帰られたらすぐ大分、宮崎の方へおいでいただくという予定になつております。せつかくのお話でございますから、私としましても、できるだけさし繰りがつきますればお伺いするようにいたしますけれども、一応内閣としましては、加藤大臣がもう一度建設大臣のあとをごらんになるということになつておりますから、私としても災害実情把握につきましては、できるだけお話等も伺いまして、さらに間違いのないようにいたしたいと考えております。今日はそういうところでひとつ御了解をいただきたいと思います。
  29. 伊東岩男

    伊東委員 九州は御承知のように第十号、第十二号、第十三号、第十五号と四回の災害を受けまして、特に農林関係がひどい目にあつておるのでありますから、できるならば農林大臣の御出張を希望するのでありますけれども、ただいまお話のように国務大臣である加藤災害対策連絡本部長が、御出張になるという御言明でありますから、かわつていただけばよろしいと思いますが、しかし本部長も遅れると、さつきお話のように役に立ちませんから、あなたからぜひ、北海道からお帰りになつたら早急に御出張願うようにひとつ連絡をとつていただくようにお願いいたします。
  30. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿覺君。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣北海道視察の真摯な御報告を聞きまして、敬意を表する次第でありますが、問題は、速急に大臣の現地視察のいろいろな御体験が基本的な対策となつて現われることを私どもは期待しておるわけであります。先日大臣北海道視察中に、すなわち十月十六日付による二十九年度災害対策要綱が、私どもに配付され、一応政府のあらましの意向はこれによつて察知することができたのであります。しかし最終的な態度については、大臣の帰京を待つてさらに十分検討して行きたいという政務次官の御答弁がございました。そこでただいまは視察の御報告を拝聴いたしたわけでありますが、意外にその被害の大なることを御認識になつたようでありますが、お帰りになつて、この農林省の十月十六日付の要綱に基いて、いかように予算措置を講じ、またこれでは不十分だと思われる点等について、お気づきの点がございましたならばその大要についてこの際承りたいと存じます。
  32. 保利茂

    保利国務大臣 出かけます前にも、当委員会お話等伺つて、事務当局としましてもまた私としましても、大体あらましの考え方は先ほどお話通りであつたわけであります。けれども御承知のように、ゆうべまで実はほかの問題でえらい苦労をしましたもんですから、一方においてこの話が心配ではありますけれども、事務当局から、手落ちなくやつてくれておるかどうか報告を聞く程度で、まあ大体そんなところでよかろうじやないかというふうな考えを持つて、実は当委員会に出て来たわけでございます。いろいろ御相談もいただかなければならないわけでございますが、大体はただいままで申し上げているようなことの考えが十分にできますればよかろうか、私はこういうふうに思つております。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 あまり御多忙のようで十分な御方針も承ることができないようでありますが、先般御出発になる前に、大臣が当委員会で述べられた、まず被害農家にともあれ食わすことだ、続いて現金収入の道を開くことが一番大きな問題であり、続いて営農資金の問題等、経営の維持に当り、再生産を保障しなければならない、この対策が続いて必要であるという御趣旨の答弁がありました。私どもつたくそれと同感であります。そこで先日来当委員会においてもいろいろと検討を加えました結果、この農林省の案について政治的に大臣の考慮をぜひ必要とする点が二、三あることを私どもは認めたのであります。それは大臣が御出張の前に述べられた、まず食わすことと、現金収入の道を開いてやるということについて、もう少しその内容について大臣の政治的な立場からの御判断に基く積極的対策が必要と私どもは認めたわけであります。一つ事例を申し上げますならば、この対策要綱の第六項「農業災害の甚大なる地域については、実情に応じて救農土木事業、開墾作業等を実施すること。」とありまして、その内容としては、開拓あるいは小規模土地改良、災害復旧、こういつたようなものがあるようであります。しかるところこの救農関係の土木事業におきましては、何が一番被害農家救済になるかといえば、労銀収入でございます。ところがその労銀の単価を見ますと、これが非常に安い。ニコヨン程度のものが昨年以来続いておるように私ども聞いておるのでありますが、これについては、少くとも北海道等におきましては四百円ないし四百四、五十円程度を必要とするのではないか、内地は若干これよりも下まわるといたしましても、現在の三百五十円程度のものでは、真に救農土木事業の趣旨に合致し、現金所得のない農家に対して救援の手を伸べるという趣旨に合致しないのではないかという点を、私ども痛感をいたすのであります。この点について大臣は、現状においておやりになるのでありますか。さらにまた、続く災害によつて打ちのめされた本年度の場合においては、さらにこれを考慮すべきであると私ども思いますが、この点について大臣の御所見を、一つの事例として承りたいと思います。
  34. 保利茂

    保利国務大臣 率直に申しまして、救農土木事業北海道でどういう形で一体積雪期間にできるかということに、私はどうも自信を持ち得なかつたわけでございます。それで先ほど林野庁長官も申しますように、とにかく稀有の国有林の大災害を受けた。これは国の資源であると同時に、北海道の大事な資源であるわけであります。これがこういう災害を受けておるわけですが、この災害は道民多数の罹災者の方方に、使い方によつては相当寄与し得るのではないか、その点は林野当局は慣例上多少やりにくいこともひとつやつてもらいたいというようなことで、やり方によつては最も適切な措置ができるのじやないかというふうに考えます。今簡易なる暗渠排水でありますとかいうようなものは、十分実施できるのじやないかというような考えをいたして来ております。その他土木関係として実施し得るものが相当あるということは確認をいたして参つておりますから、できるだけ進めたいと存じますが、何さま大蔵当局がここではつきり言明されるように——これは政府全体として言明せざるを得ないのは、一兆のわくをくずさないという、一つの大きなわくの中にはめられているわけです。ある程度どもの考えておりますところを実施いたしますためには、相当既定の関係にも食い込まざるを得ないことになるのじやないか。それらもあえて忍びつつ災害地の救済に当らなければならぬという考えは持つておるわけでありますが、お話北海道の方が内地よりも暮しがかかるということは、これはその通りでございます。どの程度に見込むか。事務当局で見込んでおりますのは、内地が二百八十五円ぐらいであれば、北海道は三百五十円以上というようなところで計算を立てて行こうというような考えで——そんなところで十分だと私は申しませんけれども、まあまあその辺がねらいどころじやなかろうかという感じを持つております。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 二十八億を救農土木として一応お考えになつているようでありますが、これはその土木事業の種類によつて資材費等も相当かわりますが、大体その七、八十パーセントが労銀収入として罹災者のふところに入るものだろうと思う。そういたしますと、さらにこれが二十億内外に減じて参りまして、これを今度の罹災地全般に振りまわすということになりますと、その分量はきわめて少いものにならざるを得ないと思います。特に今度の災害は、水田地帯というよりも、むしろ畑作地帯にその惨害を非常にほしいままにしている。しかもこの畑作地帯におきましては、内地においては、入植者についても農業災害補償法の適用を受けておらない。加入の道は開かれているが、事実共済組合等で、災害の頻発度があまりにも大きいために、現地で御存じのようにこれには入つておらない。北海道等の場合におきましては、第一その作物自体が大豆あるいは小豆というようなものについては、任意共済すら行われておらない。ために水稲の場合とはまつたく別に、現実に金らしいものを受取る機会というものは、救農土木事業以外には得られない現状であろうと思います。従つてこの水稲災害の場合より農家の困窮の度合いというものは著しく深刻であるということは、これはお認めになろうと思うのであります。そういつた趣旨からも、当然この救農土木事業についてはその単価を御考慮になりまして、一面においては開拓なり小規模土地改良なり、災害復旧が進むと同時に、農家の現金収入の道を大きく開いて、生活の安定に寄与されることが私は必要であろうと思います。これはただちに大臣も御答弁が御困難と思いますが、少くともそういう趣旨において、この経費は相当額増額すべき性質のものである。今度の対策の中で、この救農土木事業そのものが一番大きな内容の一つであろうと思いますので、十分農林、大蔵両当局においては大きい立場から、この点について今述べたような趣旨で御検討を願いたい、かように思います。そこでこれは現地の声でありますが、水温の上昇施設についてでありますが、これは三十年度の通常予算に計上する予定であると言われて、緊急施策としては割愛してあるようであります。ところが実際に意向を調べてみますると、現在あるいは雪解け直前等において畦畔を粘土によつてこれを固め、現在の毎年くずれてしまう畦畔を半恒久的に築いて、そのことによつて冷害等を察知した場合には、深水を実施してその冷害を未然に防止することが可能であるという試験場方面の先日の報告もあり、また現地の農民もそういうことを言つております。しかしながらこれが北海道の現状から、その畦畔等を築造する用土がない。その用土を求める、もちろん災害地においては金もないというところに、いいこととは知りながらこれが実施できない事情にあるようでございます。これについては事務当局には申し上げておきましたが、これは一つの今ただちに政府がこれを取上げられるということになりまするならば、緊急土木事業としての意味を持つと同時に、水温上昇施設としての半恒久的な施設にも相通ずるわけでありまして、その得る成果は非常に大きいものがあろうと思います。そういう点等についても十分大臣も現地を御調査になりましたから、御認識のこととは存じますが、この救農土木事業の単価あるいはその事業の種目等については、新たなる角度から慎重御検討を私は煩わしたい、かように存ずる次第でございます。大蔵当局もおいでになつておるようでありますが、一兆円予算はこれは平常時の場合の目安でありまして、年々引続いて災害が頻発をいたし、まつたく現地の罹災者は路頭に迷い、罹災地救済法が大部分発動するというような異常な事態に直面した場合におきましては、あえて一兆円予算に拘泥すべき性質のものではない。これはいかような法律でありましても、法律自体でも修正すべき事態であるのでありますから、そういう点について、あまりこまかく一兆円予算を題目として、今次の緊急あるいは恒久対策等に制約を加えるがごときことを排されて対処していただきたいと私は考えますが、この際大蔵次官にこの緊急対策等に臨まれる大蔵省の御所信を承り、今私から述べましたような、特に救農土木事業等については、その内容と労賃単価等について十分検討してもらいたいと思いますが、それらを中心に御所信をこの際承りたい。
  36. 山本米治

    山本説明員 ただいま北海道の罹災地の農民等に対する現金収入のために、救農土木事業というようなものをやつてもらいたいというお話中心でございましたが、これは農林省の方からも御要望がございまして、目下検討中でございます。  なお北海道は寒冷に入るのが早いので、これらの点も考慮いたしまして、北海道につきましては何らか特別措置をしたいということからいろいろ考えておりますが、今さしあたり申し上げ得ることは、この災害者が現金収入を得るような意味で、先ほども農林大臣からもお話がありましたが、国有林災害復旧費というようなものを使いまして、これは北海道に四、五億円と思いますが、事業をやつて行きたいということが一つ、それからなお小規模の土地改良等の事業もやりますことが一つ、さらに北海道につきましては、先ほど申しました時候が早いということに関連いたしまして、ことしは御承知のごとく各予算費目一割の節約を実行しておるのでございますが、北海道につきまして三%の節約解除を実行して公共土木事業等を進めたい、こういうことを考えておる次第であります。なおこういう事態だから一兆円予算に拘泥する必要はないじやないかというお話がありましたが、ことしの災害はもとより非常に大きいのでございますが、去年と比べますとまた被害額にいたしましても半分以下というようなことでございます。三分の一程度でございますので、一面一兆円予算の堅持ということをも国家経済全体からの非常に強い要請でございますので、ただいま申しましたような事業もできる限りやりますが、なおかつそれがために一兆円予算はくずれてよいというようなことは毛頭考えておりません。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 ちよつと今の次官の御答弁に関連いたしますが、この節約額の三%解除という方針で臨むということでありますが、これは罹災地のみに限定し、あるいは北海道なら北海道のみに限定してという趣旨でありますか。
  38. 山本米治

    山本説明員 ただいまのところ、さしあたり北海道について考えておるわけでございまして、その金額は大体四億円ぐらいでございますが、そのうち農林関係は一億あまりと考えております。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 三%というものに限定して解除される、それは一つの冷災害対策の一環としてそういう措置をとられた、こういうことでありますか。
  40. 山本米治

    山本説明員 御承知のごとく、ことしは予算が国会において著しく修正いたされまして九千九百九十五億、大体一兆でございますけれども、一兆の緊縮予算を国会に提出いたしたのでございますが、一面歳入の方面におきましては、繊維消費税が八十五億の予定でございましたが、これがつぶれたということが一つ、その他歳入欠陥が百四億円に及んだわけでございます。一方歳出の方が当初百三十億を計上いたしました予備費を七十億に、すなわちこれを五十億三派協定で削つたのでございまして、それを種々の歳出に充てたわけでございます。これらを中心といたしまして九十五億歳出がふえました、すなわち歳入において百四億の欠陥、歳出において九十五億の増加でありますので、合せて百九十九億、これを実行予算で節約したわけでございます。このうち百億は絶対に節約を堅持しない限りは一兆のわくを越えるわけでございます。すなわち歳出は予算のままですと一兆百億になるわけでございますから、百億は絶対に節約は必要でございますが、他の百億につきましては、解除してこれを他の財源に充てても一兆円予算はくずれないということになりますので、先ほど一言いたしました補正予算の問題、これはまだ方針がきまつておりません。臨時国会の開会もきまつておらないような状態でございまして、まだはつきりいたしておりませんが、そういう場合に節約解除も財源になり得る要素になるわけでございます。さしあたり北海道につきまして、先ほど申しましたように冬が早いので、節約を解除してももう仕事ができないというようなことでは困りますので、北海道だけにつきさしあたり三%の解除ということを考えた次第でございます。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、この一兆予算というものにさようにこだわることはなかろうと思う。先ほど井手委員から農業施設災害復旧の進行度について御質問がありました。今回また三・五でおやりになるということはけつこうでありますが、大分県等の事例によりますと、昭和二十八年三、昭和二十九年五とするならば、八〇%すでに実施されなければならないものが、二六%しか実施されておらない。これは初年度の二十八年度分にすらも達しておらない。要するに政府の財政支出という面は、実際上の自然的障害やいろいろな事情によつて遅れがちであることはあつても、進むようなことは、今の官僚機構のもとにあつてはなかなかできないのであります。従つて予算は組んでも——われわれはその予算がさらに有効適切に使われることを希望しますが、残念ながら現在の判こ行政ではそれができないために、今述べたように八〇%施行しなければならないものが、二六%しか行われておらないという実情でありますから、実際において私どもは一兆円予算を肯定するものではない。そのわくを厳守するということを肯定するものではありませんが、実際においてはこの予算は低目に低目にとついてまわるということはおわかりであろうと思います。従つて今次官がおつしやつたように、北海道は冬が早いから三%の節約解除をしたというようなことをもつて冷害対策一つ数字にされることは、悪いことではありませんが、決して本旨のものではない。それをやつているから一兆円の予算はあくまで守らねばならないのだというお考えは、私はこういう異常なときには是正をされなければならない。たとえば地方自治体はどういたしますか。こういう冷害に直面いたしました地方の自治体におきましては、住民税はもちろんのこと、固定資産税その他いろいろな地方税はほとんど収入皆無の実情になるでありましよう。とろうといつたつて地方におきましてはとれません。そういう地方財政をあなた方は見殺しにすることもできますまい。国だけが予算をきめましても、地方自治体においてある程度の財政余力を持たない限り、この復興対策は進みません。または匡救対策も進まないのであります。そういう点を考えて参りますと、中央財政だけを一兆円にしぼつても、地方財政との関係において——地方財政の規模は本年度も去年よりはるかに膨脹していることは御存じの通りであります。そういう実情から考えてみますならば、今次官のおつしやる一兆円予算というものは、平常の場合は、国の方針としてきまつたものでありますからこれはいたし方がないとかりにしましても、こういう異常の場合においては、地方自治体の困窮等いろいろな角度から見て、当然思い切つた措置が講ぜられるべきものであろうと私は考えます。同時に北海道のみに三%を認める、これは冬が早く来るからということでありますが、これは青森にしてみても岩手にしてみても、あるいはその他の災害地にしてみましても、冬の早く来る来ないは別として、やはり解除をされるのでありますか。節約額の解除をされて、対策事業分量の増大、従つて匡救工事等の事業分量がふえて、農家の労銀所得がふえて行く、こういう趣旨で向われるのでありますか。北海道は冬が早いから今とりあえずやるとしても、ほかの方は一体どうされるか。私は当然ほかの冷災害地帯に対してもこれは適用されなければならないと思うが、三%の適否は別として、その点について次官はいかようにお考えになりますか。  最後に、これは現金収入の面について関連がありますので伺いますが、第十二項の農業災害補償法及び漁船損害補償法による保険金の本払いまたは概算払いについてでありますが、七割以上のものについて概算払いまたは本払いをするやに聞いておりますけれども、これではその該当がきわめて少いと思います。これを少くとも五割以上のものについて本払いまたは概算払いの措置を講ずべきものと私は確信いたしますが、農林当局はいかようにお考えになりますか。冷害が再々続いて、農家の困窮は、非常に部分的ではあるが、深くなつておる。これをただ単に従来の事例を踏襲するだけでは、私は為政者としての心づかいが足りないと思う。もつとその年その年における実情をよく判断をし、そして特に冷災害が二年も続き、農家の生活の非常に困窮した本年の場合のごときは、思い切つた措置を講ずべきものであると考えますが、この現金所得の問題と関連しまして、災害補償法に基く本払い、概算払いを五割以上のものに適用する意思ありやいなや、この二点を伺います。
  42. 山本米治

    山本説明員 三%解除のお尋ねでございますが、北海道につきましては大体そういう方針をきめましたが、まだ実行しておりません。近いうちにやろうと思つております。その他の地域についても同様ではないかというお話がございましたが、この節約解除は一種の財源になるわけでございます。先ほど申しました補正予算は、まだいつ出すともきまつておりませんが、これらに対しましても、各方面のいろいろな要望が殺到しておりますので、全体を見まわした上で、それらについても適宜実行したいと考えておる次第であります。
  43. 渡部伍良

    渡部説明員 共済保険の概算払いあるいは本払いの問題でありますが、五割以上のものまでにそれを広げることは、実際の事務の進行として、昨年の例にかんがみましてとてもできない。やはり七割以上が最大限であるというふうに考えまして、そのかわり早場米地方ことに北海道などについては年内に本払いをやりたいというので、道の共済の連合会の方に事務の計算を進めていただいております。その方がかえつてあとで問題が起らないでいいというふうな考えで、今のところ五割以上まで下げることは、どうしても私の方で事務的に結論が出ないと思います。
  44. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連して、ただいま大蔵政務次官足鹿委員に答えられたことについて、私非常にふしぎに思うことがありますので、お伺いをいたします。その節約の趣旨はどういうことでございますか。それは事業の進捗状況からして、これは年度内にできそうもないから節約をするというのか。それとも、これは繰延べてもさしつかえないのだ、緊急性がないのだ、従つて予算のやりくりから、むしろ延ばすことが妥当であつて、そこで節約をして最も有効の方面に使うことが経済効果があるのだというのか。それとも、一兆予算のわくを堅持しなければならないために節約をしなければならないというのか。どういうところに重点があるのか、その点を伺いたいと思います。
  45. 山本米治

    山本説明員 先ほどちよつと数字を申し上げました通りに、今年は九千九百九十五億の均衡予算で予算案が国会に提出されましたが、歳出側においては九十五億ふえましたし、歳入側においては百四億の欠陥でございます。合せて百九十九億の節約を実行したわけでございまして、均衡予算という建前で節約を各省にお願いしておるわけでございますが、なおもしこの節約通りに行きますれば、一兆円予算にまだ大分わくがあることになります。またまた補正予算の問題でございますが、これにも要望がいろいろありますので、それらをやりくりしたい、こういうふうに考えております。中には実際上仕事がそこまで進まないという内容のものもありましようし、また進むけれども今の一兆のわくという建前から節約を余儀なくされるという場合もあろうかと思います。
  46. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 どうも私に了解ができないのですが、御説明を伺いますと、事業の進みぐあいで節約の必要が出て来たということよりは、むしろ一兆予算を堅持したいということ、それから歳入源が思うにまかせなかつたということ、この二点であるように伺いましたが、一体今のようなやり方をしていれば、歳入減になることは当然なんです。これは大蔵省は猛省をしなければいけません。私はそれをくどくど説明することは避けますけれども、とにかく北海道についても三%の節約は見送るということでございますが、北海道は寒さが早く来るから、早くやらなければならないから節約を見送るんだ、これは通常の場合でも節約を見送らなければならない。しかも大災害をこうむつているのであるから、その上に相当のプラスの面を積極的に考えて行かなければならないというときに、そういう消極的な措置では、おそらく北海道民も、われわれの立場からいたしましても、どうしても納得ができないのです。そういうこともございますけれども、とにかく一兆円をなぜ堅持しなければならないか。私たちが、こういう災害地に対してもう少し大蔵省は一兆のわくにとらわれないで、もつと積極的な施策をとらなければならないということを強調するゆえんのものは、もつと農業生産を拡充しなければ、むしろ大蔵省の心配をしているところのデフレ政策もとれなければ、逆に恐るべきインフレの徴候さえもこの反動として現われて来ることを考えなければならないのです。それなのに物の生産を押えるようなそういう考え方は、私どもには納得できないのです。なぜ一兆円で押えなければならないかということです。足鹿委員もこの問題に触れられて、通常の場合はなるほど一兆円を堅持されるという建前をとられることもある程度うなずける。しかしこういう非常な災害のときに、どうしてそれを堅持しなければならないかということがわれわれには理解に苦しむのですが、その辺をひとつはつきりお答えを願いたい。
  47. 山本米治

    山本説明員 一兆円をなぜ堅持しなければならないかということでございますが、これはおそらくいわゆる科学的根拠はないだろうと思います。むしろ今まで予算が過去数年にわたつてだんだん膨脹して来ましたが、最近一兆というところに届いた。その一兆のわくを一円越しても悪いかどうかという問題になるかと思いますが、そういう性質のものではなくて、むしろ一兆ということは心理的要素だろうと思います。そしてそういうふうに圧縮した予算を組む必要がどこにあるか。それがために生産が減退すればむしろインフレになるんではないかというお話でございますが、これは財政金融の全般にわたる問題でありまして、私いささか得意でありますが、ここでは長い議論になるからその論議は展開いたしませんが、われわれは一兆円の予算を一円越しても、あるいは十円越しても悪いとは思つておりません。しかしながら今まで、いわばだらだらインフレで参つたのでございまして、予算が毎年膨脹していることは御承知の通りでございますが、それがために国際収支が去年から非常に悪化して来たということも、これまた御承知の通りでございます。この日本の物価がいわゆる国際的割高になつて、日本の輸出が振わない。昨年のことを申しますれば、輸出は十二億七千万ドル、輸入が二十三、四億ドルもあつた。この大きなギヤツプ、その間には特需というものが八億ドルもありまして、それほど大きな赤字になりませんでしたが、この情勢を直さなければ、日本は経済自立はできないという前提のもとに、デフレ政策を出発したことは御承知の通りでございます。そこで先ほど申しましたように、一兆にしいて科学的根拠はない。国民所得その他からするいろいろな裏づけはありましようけれども、そういうのに科学的根拠があるとは私は思いませんが、一兆円というわくを打立てたので、これをできるだけ堅持して行くことが、今までのだらだらインフレを停止させ、日本の生産品を輸出できるような方向に持つて行く方策だとわれわれはかたく信じいるわけであります。
  48. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連で長くやることは、本質的に御迷惑をかけますから、簡単にいたしますが、昨年の臨時国会において、一兆を越えるとなぜインフレになるかということを私が予算委員会で質問をいたしましたら、それは理論の問題ではなくて気分の問題だ、一兆を越えれば国民はああインフレになるんだということで、その気分がインフレを醸成する危険性がある、大蔵大臣もこういう答弁をされましたが、昨年の臨時国会において九千九百九十九億七百五十五万九千円の予算と一兆円とどれだけの差がございましたか。そんな気分的な問題ではない。もつと科学的な根拠の上に立つて、かくかくの理由でインフレになるんだ、そのために一兆を堅持しなければならないんだというあなたの学のあるところを解明してもらいたい。何時間かかつても、本委員会はけつこうでございますから、それを承らなければ私は承知できません。
  49. 山本米治

    山本説明員 私がこの問題はいささか得意であると言うたのは、多少ユーモアを交えた意味でございまして、私がこの方面の非常な大家だとは思つておらぬのであります。一兆円を十円越しても悪いという筋合いの問題でない。一兆という一に零を十五、六つけるような数字の問題でございますから、千万円違う、あるいは二千万円違うということが、すぐにインフレになるとは私は考えておりませんが、やはり心理的要素が非常に大きなものだと考えております。
  50. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 二点だけ大蔵当局にお伺いをいたします。それは農業災害に対する予算を、農林省としてはどういうウエイトをつけて扱うかということであります。というのは、政府の今お話のありました得意のデフレ政策によりまして、どうしても緊急やむを得ないしりぬぐいの経費が各方面に出ているわけであります。当面第一に必要な問題は失業対策であります。これはどうしたつて政府が金を出さなければ置けない問題であります。実状を申し上げますと、私の地区だけで言つても、沼津というところは、大体失対のわくが七十五あります。それに対して失業保険をもらつているのが千八百くらい、そのうちの半分はこの年末にはほとんど全部失対に届けるよりほかはない。現在二百八十通くらい出ております。こういう状況で苦しみ抜いているが、これが九州の災害地、炭鉱地帯や企業地帯においてはもつとひどい。これにはどうしたつて金を出さなければならないと思う。そのほかに地方財政の赤字という問題、特に今度の災害地帯についてはどうしたつて出さなければならぬ金があると思う。ほかにもあげればたくさんあると思う。こういうふうな金は、政府の一兆円のデフレ政策の当然のしりぬぐいです。しりぬぐいもやらぬでほおかむりで通すのだというばかなことはないはずである。従つてどうしてもある程度金を出さなければならぬ。これは相当な金になると思う。これをほつておけないと思う。さつきのお話では、今度の災害による施設災害の今年度の負担分だけでも九十億かかるというお話です。おそらくこの農林省の要綱に盛つてあることを予算化する場合には、もう少しこれはあらゆる面でふえようと思う。こういう際に二点私ははつきりお伺いしたいのは、それらの全般的な、つまりデフレ政策のしりぬぐい的な補正予算を組む腹が、政府、特に大蔵省にあるのかないのかという点と、そういう全体の中で農林関係の災害予算を最も優先的に扱う腹があるのかないのか。この点を明確にしなければ、ここで幾ら言つても、あつちも緊急だ、こつちも緊急だ、緊急、緊急でもつて金は出さない。——今のお話では、お得意の一兆円より出さないというのですから、そうなると、これはざつくばらんに言つてやりようがない。私どもは昨年度の災害でも、なるほど救農国会を開いてその意図を多少いれてやりましたけれども、きわめて不十分です。その結果が、また今年の災害を大きくした根本の原因です。しかもその災害地の大部分は連続災害、こういう状況の中で施設災害とか経営災害、あるいは生活の保障というものは、農林関係においてはすべてのもののうちで最も優先的に扱うべきものと確信しておる。そこで今申しましたように、あらゆるデフレ政策の、一兆円予算のしりぬぐいをどういうふうに全体として御措置になるのか。それらのたくさんの中で、特に農林関係予算を優先して扱うだけの御決意があるかどうか。この点についての大蔵当局のお話を、ひとつはつきり聞かしていただきたいと思います。
  51. 山本米治

    山本説明員 デフレがだんだん浸透して参りまして、いわゆる社会保障関係の経費の支出が多くなつて来たということはお話通りでありまして、今年度一ぱいをながめますと、これは足りないのじやないかというふうに考えております。これに関しましては、補正予算の機会があればどうしても補正をしなければならぬというように考えております。  それからいろいろな災害関係がございますが、そのうちで農林を最優先するかどうかというお話でございますが、やはり大蔵当局といたしましては、農林省関係ばかりでなく、建設関係もございますし運輸省との関係もございます。これらを見渡して、やはり緊急度の高いものからやるということになると思いますので、農林関係の項目は一切最優先にするという言明はしかねます。
  52. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 農林関係の一切を最優先にしろとは申し上げていない。しかしながら全体の比重の上からウエイトを——もちろん農林、建設いろいろありましようが、これは全般として農林に関係する面が多いわけであります。施設災害にしましても、治山治水にしましてもそうであります。その中にいろいろの順序がありましようが、全体として、つまり農林関係というものをどういうふうに扱われるか。これを一切何でもかんでもやれと言うわけじやないのです。どの程度のお考えを持つておるかという点を、もう一度お伺いしたい。
  53. 山本米治

    山本説明員 各項目につきまして慎重に検討いたしまして、最優先にすべきものは最優先させるという方針で行きたいと思います。
  54. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そういうことになると、あらゆる要素を入れ、特にそのうちでも建設省関係も含め、農林省関係も含めた農林関係の災害あるいは凶作対策費というものは、私は一番大事なものだと思う。これはあらゆる意味において大事だと思います。そういうことを含めた場合において、とうてい予備費や節約額の解除くらいのことでは納まらないと思う。そういう場合、大体において大蔵省としては、補正予算を組むという前提で、今度の、たとえば緊急のつなぎ融資にしましてもあるいは何にしましても出される考えで進んでおられるのか。あるいは補正予算を組まないという考えで進まれるのか。これは今までわれわれがお伺いした範囲では、どうも政府考え方というものは、補正予算を組まないのだ、今までの予備費の七十億近い残り、それから節約分のある程度の解除で何とかやり繰りをしよう。こういうようなお考えのように聞いたが、その点はその後の大蔵省の検討でどうなつたか。  もう一つ、一兆円予算というものは、なるほど今いろいろお話がございましたけれども、財源的にはまだ余裕があるのではないか。なるほど繊維課税も政府の見込み通りにはとれなかつた。二百億近くのずれができたということもございましようが、その後のいろいろな状況から見れば、必ずしも財源に余裕が全然ないというわけではないと思う。財源に余裕があつても補正予算というものは組まないのか。この二点をはつきりお伺いしたいと思う。
  55. 山本米治

    山本説明員 先ほども申し上げましたように、社会保障費の関係などは、項目によりましては三月一ぱい続かないかもしれないわけでございまして、どうしてもこれは補正を要すると思います。それから財源の問題でございますが、いろいろ税の方で多少自然増収があると思いますから、こういう災害もあつたことでありますから、できる限り各方面の御要望に沿つて財源を求めて、補正予算を組む場合にはこれを国会へ提出したいと思つております。その時期等については、まだ臨時国会の見通しもつかないわけでありますから、はつきり申し上げかねますが、補正はやらなければならないと思つております。それにいたしましても、予算の成立した以後の各種の事情の変化によりまして非常に御要望が多いのでありまして、これを全部盛るといたしますとやはり一兆を大分突破いたしますので、その点を今苦慮しておりますが、一兆は越えさせたくないと深く思つております。
  56. 足鹿覺

    足鹿委員 私は最後に一点、今までの質疑応答について政務次官に申し上げておきたいのですが、一兆円予算というものは一つの信仰のようなものだという御趣旨でありますが、それならそれでよろしい。いたし方がありません。政府はあまりに財源規模についてのみ拘泥しておりますから、直接統制をやつておる米のごときものについては、国の財政負担が伴うからその値上げを渋る。ところが電力のごとく国の財政負担を要せざるものは、その企業家の自由意思をある程度尊重してこれを値上げをする。その結果はただちに肥料にはね返り、一般の諸物価にはね返つて、あなた方の言うデフレーシヨン政策に背馳した結果を招来せんとして物議をかもしている。現在のデフレ政策の遂行は、政府の財政規模のみについて、一兆円を何か神様のお守りのようにおつしやいますが、それのみでは現下喫緊の問題であるデフレーシヨン政策の遂行はできない。一方においてはコスト主義によつて、基本産業を左右する電力料金の値上げすらもこれをいれようとしている政府が、何十年来まれに見るこのような大災害の連続した二年目に際して、その補正すらも渋るというがごとき態度をもつては、私はとうてい農民の期待に沿うことはできないと思う。今までの御答弁を聞いておりますと、お気持のほどはわかりますが、少くとも政務次官としては、議会と政府との間に立つて議会の意思をよく御伝達になり、御考慮になるのがその使命であり、責任であろうと私は思う。今まで聞いておりますと、ほとんど事務当局の代弁に終始しておられるような感を私は深くいたします。私ども農林委員会の運営につきましては、いろいろ意見もありますが、事異常災害については最大公約数をもつて今日に来つております。今次災害につきましても与野党ともに総力をあげて、本日論議しておるような点については真摯に検討を加えておるのであります。従つて政務次官におかれましても、事務当局の代弁の感を持つがごとき御意見をこの際十分御反省願いまして、本委員会がやがて出すであろうわれわれの対策の大綱については、十分誠意と熱意を持つてその趣旨の実現のために御努力を願いたいと思いますが、御所見がありましたならばこれを承りまして、本日の私の質疑を打切ります。
  57. 山本米治

    山本説明員 御趣旨のほどは十分了承いたしました、先ほど一兆円のわくを信仰のごとく守つておるとおつしやいましたが、インフレ、デフレの問題は財政ばかりではございません。金融というもう一つの大きな柱がありまして、これと合せてデフレーシヨン政策が遂行されるわけでございますが、ただいまの農林委員会の方々の御趣旨を決して軽視するわけではございません。できる限りこれを入れたいのはやまやまでございます。ただしかし一方に、先ほど繰返し申しますところの一兆円予算を、そのために突破してもいいというふうには、私は考えておりません。
  58. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 足鹿君がせつかく結論を出しましたので、私蛇足になると思いますが、ここで一点明らかにいたしておきたいと思います。  何と言いましても、新しい憲法におきましては、国会が最高の権威であります。その権威の一部を政務次官が負つておるはずであります。そういたしますると、今までの答弁から考えまして、みずから国会の権威を失墜するような言動のありましたことは、われわれ非常に遺憾とするものであります。特に予算編成のうちにおきましても、これは旧憲法と違いまして、国会が定めたる範囲内における政府の責任政治であります。国会の意思を蹂躪するような内閣は、いかなる内閣といえども許されないものであります。しかもあなたは、国会構成の一員です。いかに国会の権威を高めて行くかということについて、政務次官にもなつておられなければならぬはずだと思う。国会から逸脱した政務次官ではない。従つて、予算の編成を行いました国会の意思を十分尊重する建前を、みずから放棄せられておるわけはないと思う。そこで大蔵当局が考えましたいわゆる三分節減の問題につきまして、一体画一的に三分節減をするということは、国会の予算の決定権を蹂躙するものなのです。実行ができなかつたための節減は、これは別でありますが、画一的な節減なんというものは、国会の予算の審議権を蹂躙するものだとお考えにならなければならぬ。おそらくそういう場合の説明はされないと思いますが、中でも一兆億予算のためには三分節減はやむを得ないのだというようなことを言われますことは、国会の予算の編成権を蹂躙した、憲法違反の言動であると見なければならないと思うのです。そういう意味で、この委員会が真剣に取組んでおりますことが国会の総体の意思になりましたならば、総体の意思として政務次官はその実行の任に当らなければならないと思いますけれども、この点いかがですか。
  60. 山本米治

    山本説明員 国会が国権の最高機関であることは申すまでもないことでございまして、国会の御決議があればその通りに従いますが、ただその各決議といいますのは正式の決議でありまして、委員会等において御要望がある、御要望という趣旨の決議等を全部総合いたしますと、たとえばこの財政の問題にいたしましても実に厖大なものになりまして、ときにそういう御趣旨通りに沿えないことがあるのはやむを得ないということは、御了承いただけると思うのでございます。
  61. 川俣清音

    ○川俣委員 農林委員会も国会を構成する一委員会でありますから、従つてこの意思ができ、これが総体の国会の意思になつた場合は、当然あなたはその責任を持つ国会の構成の一員であり、国会構成委員としての政務次官でありますために、逸脱してはならないということをお考えになつておるかどうか、この点をお聞きしておるのです。
  62. 山本米治

    山本説明員 ただいまお話通りに考えております。
  63. 井出一太郎

    井出委員長 井手以誠君。簡潔に締めくくりをお願いいたします。
  64. 井手以誠

    井手委員 私はデフレ論ではございません。先刻政務次官が御説明なつ数字についてちよつと疑義がありますので、念を押しておきたいと思います。大蔵省でまとめた公共施設被害の総額は八百四十三億、これを大体七割査定して九十億くらいを補正予算として計上したい——補正予算からどうか知りませんが、とにかく本年度計上したいというお言葉でございますが、八百四十三億の七割は五百九十億であります。その二割は大体百二十億。もしこれが九十億ということになりますと、率の高い直轄工事を含めて一割五分にしか当らないのであります。もしこれが補助事業ということになりますれば、一割二分くらいにしか当らないかもしれません。そこで九十億はどういう根拠で出されたものか、また大蔵省はその程度しか、一割何分くらいしかお考えになつておらないのか、この点を確かめておきたいと思います。
  65. 山本米治

    山本説明員 先ほどは途中の経過を省略して大体の数字を申し上げたわけでございます。被害総額は先ほど申し上げた通りでありますが、そのうちどれくらい査定になるかというのは、直轄事業補助事業と違うわけでありまして、大体補助事業は七〇%、直轄は九〇%くらい見ておるわけであります。そういうふうにいたしまして、そのうち国庫の負担分というのがその全額ではないわけでありまして、大よそ七〇%と見まして四百三、四十億のものになるわけであります。その中で今年度にどれだけいるかということで、また直轄と補助と違うわけでありまして、直轄については大体三割見当を考え、補助については大体二割見当を考えまして、先ほどのような数字が出たわけであります。
  66. 井手以誠

    井手委員 それで、二割、三割の是非は別にいたしまして、大体根拠がわかつたわけでありますが、そうしますと、そのほかに大蔵省としては救農土木事業その他のこともお考えになつておるということに解釈してよろしいのでありますか、九十億のほかにお考えになつておるということでよろしゆうございますか。
  67. 山本米治

    山本説明員 先ほど申しました通り、救農土木事業というものは、農林省からの御要望もありまして、目下慎重に検討中で、できる限りやりたいと思つております。これはおそらく予備費等で参りますので、この範囲外と考えております。
  68. 井手以誠

    井手委員 先刻の足鹿委員の質問から疑義を生じた問題でありますが、北海道で非常に多くの被害を受けられておりますが、ほかの府県に対して、三%の解除をなさるお考えがあるかどうか。先ほど足鹿委員が尋ねましたけれども、お答えがなかつたようでありますが、被害について甲乙はなかろうと考えております。おそらく政府としては、各府県とも同様なお考えで臨まれることを私は確信はいたしておりますけれども、あまり念を押すようですが、その点をお伺いいたしたいと考えております。
  69. 山本米治

    山本説明員 先ほどもすでに一言いたしました通り、今後さらに事情を検討いたしまして、善処して行きたいと考えております。
  70. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の会議はこの程度にいたし、暫時休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  71. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。加藤災害連絡本部長がお見えになつておりますので、この際前回御出席の際の御発言に補足されましての御見解を伺うことにいたします。加藤国務大臣
  72. 加藤鐐五郎

    ○加藤国務大臣 先回の委員会でその当時判明いたしました被害額を申し述べましたが、その後去る十八日までに各省庁からの報告が集まりましたのでこれを御報告いたしたいと思います。  被害額は総計約千百五十余億円と相なつております。この中には農作物被害は含まれておらぬのでございまして、右のうち公共事業関係の被害額は約八百二十余億円であります。なお政府は特に緊急復旧を要するものについて関係道県にいわゆるつなぎ融資を出しておりまして、その額は先回申したのでございまして、重複いたすようでございまするが、さらに申し述べますれば、第一次に四千万円、第二次に二億六千五百万円、第三次に二億五千万円を出しまして、合計五億五千五百万円となつております。さらに本部発足以来去る十四日に北海道と二十県に第四次といたしまして七億一千万円、去る十五日に岩内火災復興のため北海道に第五次として一千万円の融資を決定いたした次第でございます。これは先回大略申し上げたのでございますが、以上第一次から第五次まで合計十二億七千五百万円のつなぎ融資を出したわけでありますが、なお今後計数整理の結果をまつて、相当額のつなぎ融資をする必要があると考えております。  なおつなぎ融資とは別に災害救助法による救助費の国庫負担額の概算払いといたしまして、北海道に約一億三千万円予備費から支出を決定したほか、近く災害甚大の府県に対しましても同様の処置をとりたいと考えている次第でございます。被害のあつた農林、漁葉者、中小企業者の立ち上りのための対策は当然必要であるのでございまして、これについてはただいま政府部内におきまして急ぎ検討中でございまするが、なお私も本部長の職責上明日出発いたしまして、まず北海道の現地を視察いたして来たいと存じておる次第でございます。
  73. 井出一太郎

    井出委員長 この際安藤委員より発言を求められました。これを許します。安藤覺君。
  74. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいま加藤国務大臣災害対策連絡本部長としてのお立場から北海道を御視察いただくとの御発表を拝聴いたしまして、私はこの際一言加藤国務大臣のみずから現地に乗り込んで事実を認識したいという御熱情、並びにこの災害に打ちのめされた当地方の人々を鼓舞激励していただくということにつきましては、まことに当を得たものであり、われわれさきに八日間にわたりまして北海道災害冷害状況をつぶさに視察して参りました者といたしまして、まことに感謝するところでございます。ただこの際一言、御出発にあたりましてはなむけといたしまして二、三の要望並びにたいへん失礼ではございますが、お心づけらるべき点について申し上げてはなむけといたしたいと存じます。と申しますのは、本年は政府に設置せられましたる災害対策連絡本部という名称が昨年の災害対策本部という名称に比較して、連絡という文字が加わりましただけに、災害地の人々に与える印象が、昨年に比して本年ははなはだ災害を軽く見られているのじやないかという懸念を持たれておるのであります。これは昨年の災害対策本部長官が、緒方さんが副総理という名前を持つておられたという印象もあるかもしれません。しかしわれわれどもが過日の当委員会におきまして、この点を懸念いたしまして政府当局にお尋ねいたしますれば、何ら名称のかわつたことによつて軽視しているものではない。ただ本年は単に冷害とかいうようなことだけでなしに、台風害も幾たびかの続発によつてこれらのものをすべて総称する意味においてこういう名前をつけたのだということであられまして、われわれはそれを信じ、安心いたしておるものなのでありますが、たまたまここに加藤国務大臣がその本部長として御就任相なりましたことによつて、層一層われわれどもは気を強くいたしたわけでございます。この意味においてはあるいは北海道にお渡りに相なりまして、道民の人々から昨年に比して軽く見られておるのじやないかという懸念の御質問等も出るであろうかと存ぜられますので、加藤国務大臣はその点について特に強調せられ、願わくば、この加藤が本部長を勤めている以上はと、ここまでひとつあなたの政治責任を張り込んで道民の各位をして安心せしめ、再生産へ勇躍立ち上れるようにおはからいを願いたいのであります。私加藤国務大臣にはお若いころから接しておりまして、その御性格がまことに外柔内剛であられ、まことに外面温情であられますが、ひとたびこうとおきめになりましては一歩も譲られない性格であるところに、願わくば私も何とかしてあやかりたいものと常日ごろ考え、修養に努めておるものでありますが、あなたは本来の業を医家としておられるのでありますが、医家としての御手腕はあまり多くは知りませんけれども、その医家として欠くことのできない根本の精神、仁術についてはあなたは一番体得しておられることはもちろんよく存じておるのであります。どうかこのあなたの本来の御人格をもたれまして、このたびの災害対策に善処せられ、ことに現地のあの惨状を深く御認識くださいまして、あるいは台風害等につきましては、すでに時日も経過いたしておることでありますので、若干の外形だけは回復した形を見せておるかもしれません。そういつたことに捉われずに、どうぞその真意を把握願いたいと存じます。  また同時に、この地方には開拓団の入植者が非常に多うございます。こうしてこの開拓団の人たちは条件の悪いところへのみ多く入らざるを得ないのでありますから、元来が非常な困難な経済状況にあるのであります。かくて加うるに入植後日も浅く、打続く災害にほんとうにいためつけられております。思えばこの方々は、その多くがかつては国策だ々々々、民族の先駆としてといつて満州へ、その他の地域へ、家をあげて新たなる天地を開拓しておられたのであります。ようやく腰がすわり、やや経済力もつき、生活も安定を見たかと思う瞬間敗戦ということになつてかの地を追われてまた再び内地に帰つて来て、また新たなる天地を開拓しなければならぬ。そこにはすでに既存の農家によつて、より有利なる地位が占められており、劣悪な条件のもとにおいて営々として立ち働いて行かなければならぬ、こういうことでありますので、その経済力等においても非常に脆弱でもあります。特にこの点について目をお注ぎくださつて視察を願い、適切なる対策をお立てくださるようお願い申し上げてやまないのであります。いつにかかつてこのたびの災害復旧があなたの肩にかかり、この被災害者たちが勇気を奮つて再び来年の再生産に邁進することができるかいなかということに相なるのでありますから、特にこの点をお願い申し上げてやまない次第であります。われわれどもまことに微力ではございまするが、国務大臣において真実勇気を奮つてこの対策をお立てくださいまするならば、勢子として背後からあらゆる声援をなすことを惜しまないものであります。北海道もようやく寒冷を加えて来ておるようであります。われわれどもの経験に徴しましても、一日に二百五十キロ、三百キロの長途の自動車旅行にも相なろうかと存ぜられるのであります。どうかおからだに御注意くださいまして目的を達成くださるようにお願いいたしておきます。
  75. 加藤鐐五郎

    ○加藤国務大臣 ただいま安藤君よりいろいろ御親切なる御注意を与えられましてまことにありがたく存じます。対策本部と申しまするか、連絡本部でありまするが、さきのときには西日本災害総合対策中央本部という長い名称でございまして、さらに福岡に西日本水害対策本部というものを置きました。しかるに今回は連絡本部という名になりましたがゆえに、先回もここでお答えいたしたように、いかにも今回の災害を軽く見ておるような感じが名の上から来るではないかということでございましたが、その実質におきまして、その内部に参加しておる人員及びそれらの人によりましても、前と何ら相違はないのでございますので、この点はある方々がもし名によつて軽視されておるというような懸念を持つ者がありましたならば、よく説明をいたしたいと存じます。私はただいま御注意の点につきましてとくと実地について見て参りますれば、一層感覚を新たにいたすことであろうと思います。よく調査して来るつもりでございます。
  76. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと速記を止めて。     〔速記中止〕
  77. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めてください。  それではこれより、保留されておりました林野に関する問題、農地に関する問題ないし農業気象に関する問題、これらを順次取扱いたいと思います。まず通告順従つて質疑を願うことにいたします。芳賀貢君。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 午前中の委員会林野庁長官から、主として北海道における国有林風倒被害状況に対しての説明を聞いたのでありますが、ここで問題になる点は、五千万石に及ぶような厖大な蓄積が、十五号台風によつて甚大な被害を受けたということになりますと、これは国の財産の面における大いなる損失であるということが言い得るわけであります。この大被害に対して、今後国有林野の経営面に対して、今までと観念をかえた運営が要請されることになると私は考えます。今日まで北海道における国有林の経営というものは、まつた原生林を択伐するというような形式をたどつて来ておつたわけでありますけれども、このようにして一朝に蓄積が五千万石余も失われることになると、その被害跡地を中心とした、林野の経営をいかにするかということが問題になつて来ると思うわけであります。そういう場合において、たとえば全国的な分布における営林局、営林署等の配置状態を見ましても、北海道地区における局あるいは営林署の担当しておる面積は非常に大きいのであります。でありますから、そういうような経営単位の面に対しましても、新たなる検討を加える必要がこれによつて生じて来ると考えられますが、まず前段においては、その被害を受けた林野復旧に対する基本的な対策を、今後長官はどのようになさろうとするか、大綱的な点だけをお伺いしたいと思います。
  79. 柴田栄

    柴田説明員 御指摘の通り地域によりましては、従来の施業計画を根本的に立て直さなければならない地域が出て参つておりますので、まず風倒木処理を極力急ぎまして、集約な跡始末をすると同時に、明年度から更新に対しまする年次計画を立て直しまして、極力人工植栽を加味して復旧に努めるという考え方でおります。御案内の通り、従来北海道国有林は九四%までは天然林でありまして、人工植栽林はわずかに六%しかなかつたのでございますが、天然林の取扱い地帯も、地域によりましては更新がきわめて困難な地域もあるわけで、すでに人工植栽によります更新を相当加味する方向に進んで参つてはおりまするが、この際は従来の経験と技術を最高度に発揮いたしまして、人工植栽に切りかえるという考えでおります。従つて風倒木被害地域につきましては、従来の計画を一応全部臨時編成に組みかえるという考えでおりますので、それに伴いまして、集中的な事業整理という必要から、機構の点にも当然検討を要するというふうに考えておりますが、御指摘の通り北海道国有林管理は、内地と比較いたしますと、従来といえどもまだまだ相当程度手薄になつております。従つて全体を通覧いたしまして、この際公正な単位に早く切りかえたいということで検討いたしておりましたが、この計画にさらに風倒木の臨時処理を加味して、臨時の非常体制をとらなければならぬではないか、こういうふうに考えております。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 順序といたしましては、今長官の言われたような段階を経ると思いますが、緊急を要する問題は被害木の処理で、これはおよそ三箇年計画で行われるということを午前中に了承したわけであります。この処理を行う場合においても、もつぱら直営事業の形でこれを行うということになりますと、この厖大な事業を運営する場合においては、当然現地における営林局あるいは営林署等における機構の充実あるいは陣容の整備等の問題が随伴して来るわけであります。今年度におきましても内地における七署の整理を行われて、それをただちに北海道に移したということではありませんけれども、漸進的に北海道における営林署等の増設をはかるという既定方針は、さらに具体的に積極的に推進されて行かなければならぬというふうに考えられるわけであります。これらの機構の充実等の問題は、これと並行して臨時的な意味も含んで、またそれが恒常的な性格をもつて充実されるということになるのでないかと私は推察するわけでありますが、そのような方向で進まれるお考えですか。
  81. 柴田栄

    柴田説明員 従来は全体を通覧いたしまして総合的に、先般行いましたように内地の整理縮小と北海道の増置とのバランスをとつてつたのでございますが、臨時措置を実施するためにはその調整を行ういとまなく、あるいは北海道において臨時的な機構整備をある程度行わなければならぬのではないかというふうに考えまして、現在検討をいたしておる次第でございます。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に北海道における冷害あるいは十五号台風災害対策との相関性の上において、農林大臣もできるだけ被害農家の現金収入の道を講ずるために、林野被害木の処理に重点的に遊休労力を吸収したいというような意見でありましたが、こういう点に対しまして、おそらく風倒、雪損木の処理の場合においては、積雪が多量にならない時期を選ぶということが前提条件となると考えますので、ごく短期間に被害農家の労力を吸収するという場合においては、おそらく集団的な、町村を単位としたような、一つの組織化された労力の移動とか配分ということが計画されねばならぬと思うわけであります。各町村ごとに被害風倒木等がどこにも散在しておるということでなくて、地域的に、たとえば層雲峡地区等が中心になるということになると、結局労働力の移動ということが非常に大事になつて来る。こういう点に対しても相当具体的な配慮がなされておると思いますが、その点はいかがでございますか。
  83. 柴田栄

    柴田説明員 御指摘の通り地域に集中して風倒被害が起つておりまするので、これを急速に処理いたすといたしますれば、従来の地元町村だけで処理し切れないのでございます。とりわけ大雪山系地域におきましては、御指摘のような手段をとらなければならぬ、かように考えております。それらにはまず冬季間にも作業の可能なような準備を進めなければならぬ。それには何と申しましても、第一段に技術的な労務を要します伐木造材、丸太に生産処理をすることが第一段だと存じますので、これを現在早急に進めておりますと同時に、これを集積搬出するための労務収容の施設を現在計画いたしております。極力その流域地方の町村と連絡いたしまして、現在具体的に申しますと、上川町が層雲峡地域については中心になりまして、あの地方の町村に呼びかけていただきまして、労務の組織的な導入、それから食糧の確保等々を御相談を願つておるわけでございます。各地域ともさような組織によりまして、形式を直営伐採といたしまして、それぞれの町村単位あるいは部落単位等の組によります下請作業のようなかつこうで実はお進め願うよりしかたがないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この処理計画は三箇年ということになつておりますが、二年次三年次と日を経るに従つて倒木の利用価値といいますか、経済的な価値というものがずつと減退して行くわけであります。ただ問題は、一時に大量にこういう製品が市場に対して影響を与えるということに対する配慮が必要であると思いますが、これをできるだけすみやかに処理するための一つの方法としては、全道的に被害を受けておるところの、たとえば台風による住宅の破損、あるいは開拓関係あるいは農家の非住家の損傷、こういうものの復旧というものは、平年時における木材あるいは製品の需要の要素にはなつておらぬわけでありますが、これらの復旧等に対しては、当然この損傷木を向けることは賢明の策であるというふうに考えられますが、おそらくそれをなさる場合においても、町村を単位とした公共団体が主体にならなければならぬというふうに考えられるわけでありますが、表面はそういうことであつても、実質的には、たとえばその町村における経済団体であるところの農業協同組合というような団体もこれに加わるような形のもとに、この損傷木の特売等を迅速に行う必要もあると考えますが、こういう点に対しては、この五月の暴風災害等に対しても適宜な措置が講ぜられたことに対して、自分たちは敬意を表しておるわけでありますが、今度の場合には非常に範囲が広大であります。ですからこういう点に対しても、一段と積極的な対策が必要になつて来ると思いますが、その点に対する所見はいかがですか。
  85. 柴田栄

    柴田説明員 国有林風倒被害処理に関連いたしまして、北海道の特異な冷害、あるいは風害等に対します市町村の復旧救済等には、できる限り処理を急ぐと同時にお役に立ちたいという考え方をもつて、それぞれ計画をし、指令いたしておりますが、その際にやはり町村にいたしましてもあるいは個々の農家にいたしましても、復旧のための資金という問題が最も大きな問題ではないかと思われるのでございます。その際に資金の手当を願うということも非常に困難ではないか。そこで延納措置を考えなければならぬ、こう思つておりますが、さような際に最も確実であり、筋の通つた方法としては、やはり市町村長が責任者になつていただき、市町村長を対象に払下げをするということが最も妥当だと存じますので、大体そういう方向で御相談をいたしております。内部の処理に関しましては、農協その他の団体が御協力を願うということでさしつかえないのじやないかと思つておりますが、一応の責任をやはり市町村長が負つていただくということが、一番処理しやすいというふうに私どもは考えております。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合、法律によるところの災害救助法が発動された地域というものが非常に多いわけであります。かかる地域においては、もちろん公共の建物等が被害を受けた場合においては無償譲与の形もできると思いますが、これに類するような建物等の損傷の場合においても、損傷木を払い下げるという場合においては、自然単価も低廉であるというふうに考えられますが、できるだけ実質的には無償に近いような合法的な単価でこれは処理されることになるでありましようが、長官がそうお考えになつても、末端の方が非常に緊張してやる場合においては、十分に行かぬ場合がありますから、あくまでも合法の線に沿つて、実質的にはそれに近いような指示を、もう与えられておるかもしれませんが、もう一度御配慮を願つておきたいというふうに考えるのであります。こういう手続はそれほどむずかしくなくとれるようになつておるかどうか、その点はどうでしようか。
  87. 柴田栄

    柴田説明員 これはなかなかともするとむずかしい問題でございまして、無償譲与ということはちよつととりにくいと思いますが、風倒木でございますから品質が非常に低下いたしておる。そこで多少品質の悪いのはしんぼうしてお使い願わなければならぬと思いますが、品質引きで実際には相当お役に立つ、こういうふうに考えておりますが、実質的な処理にひとつ御注意いただきまして、実情に沿わぬような点があればどしどしひとつ御注意いただく、こういうことにいたしたいと思つております。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に災害対策の一環として昨年もとられた措置でありますが、薪炭林の特売、これが今年も行われると思いますが、従来の例を見ますと、立木薪炭林の払下げを受けた場合においても、まき材として短かく切断しなければ山から出せぬということに一応規定はなつておるわけでありますが、こういう場合にも法律的な処置を一応認めることにして、たとえば長いままで搬出する方が地形上からいつても能率が上る、作業の能率とかそういうものも考えて適切な指導を行われる必要があると思いますが、こういう点に対しましてはいかがでしようか。
  89. 柴田栄

    柴田説明員 薪炭林としての評価をいたしておりますので、薪炭に使いたいということならば搬出費を極力軽減するような方法は当然だと思いますので、もしそういうことで支障があることでしたら、十分対策を立てさせたいと存じます。
  90. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に災害に伴う復旧事業として、たとえば林道の開鑿の問題、あるいは治山事業等も付随して生ずるわけでありますが、これは林野事業体が相当に経済的な力を持つておるというところに強味があるわけでありますが、こういう点に対しましても、災害地の労力を吸収するということは非常に可能であると思いますが、従来も北海道の全体の林野の経営から、多い年には四十五億円も上げておりますし、それ以後においても二十五、六億くらいの益金の繰入れがあるように考えております。こういう事業費の中から現地に還元するような必要性というものは、災害復旧対策を通じて明らかになつて来るというふうに考えられますが、この点に対しましては、大蔵省当局とも十分強力な折衝をされて、かかる林道の開鑿、あるいは治山事業等に対しても、緊急に対処されたいと考えますが、この計画はどの程度まで具体的に行つておりますか。
  91. 柴田栄

    柴田説明員 今回の風倒木に対しまする処理に関しましては、全体を処理いたしますれば、実は相当の赤になるわけでありますが、それらの点をほとんど度外視いたしまして、使い得るものは極力むだなく使うということを主体といたしまして、それを通じて非常な冷害あるいは風害等の地元の災害に対します救済に役立てたいということで計画いたしておりまするので、特に風倒木処理を通じまして、林道事業等は画期的に明年度早々増加いたさなければならぬと思われます。またそれが一時に大面積を露呈いたしました今日といたしましては、治山事業等の施設も当然相当急速に処理しなければならぬというふうに思つておりますので、従来天然林を利用いたしておりました関係上、収支の上においてややプラスというようなかつこうにもなつておりましたが、おそらく今回はほとんど全部をお返しして、さらに持ち出さなければならぬだろう、かように考えております。
  92. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  93. 川俣清音

    ○川俣委員 林野当局に二、三点お尋ねしたいと思います。今度襲いました十五号台風によつて国有林野が非常に大きな被害を受けたわけでありますが、これに対しては根本対策と応急対策とにわけられて、おそらく対策が立てられておるかと考えます。この根本対策につきましても、また応急対策につきましても、この国有林の所在地でありまする北海道青森、秋田等における風倒木の処分と地元民との関係を、どのように処理して行くかということが、大きな対象になると思うのです。不幸にして北海道は、国有林野に被害を受けたと同時に農作物及び公共施設もともども被害を受けたわけでありまして、国として何らかの対策を立てなければならないときに、禍を福に転ずるということは容易ではありませんでしようけれども、幾分でも地元民の救済に役立つように、林野庁が手早く対策を立てられたようでありまして、これは大いに私どもは敬意を表するに足ると思うのであります。しかしながらそれだけでは満足されるものではないのでありまして、特に国有林野のあり方から申しまして、独立会計だとは言いながら、日本の治山治水の基本をになつておるのでありまして、そこに国有林野の存在価値があるわけであります。ところが今度の風倒木によりまして五千万石というような被害を受けたことは、国有林財産自体としての損害ばかりでなくして、治山治水の上の大きな被害であると私は思うのです。これは単に一独立会計の中の損失だというだけでなくて、国の治山治水の上に受けた大きな被害だから、独立会計だけでこれを切り抜けるということは、林野庁が非常に過重な負担を負い過ぎるのじやないかと思うのです。もしも負うということになりますと、内地の方の処分をどうするかというようなことまで責任を負わされて参りまして、将来独立会計自体が林政の上に非常に大きな支障を来すようなことにまでなるのじやないか。独立会計全体がこれらの責任と犠牲を負うということになりますればまた他の面で大きな犠牲を出して来るということになると思いますので、これらについては、おそらく一般会計から援助を仰がなければならないとは思いますけれども、この点に関して長官の御意見をこの際承つておきたい。
  94. 柴田栄

    柴田説明員 その点に関しましては、今後緊急に風倒木五千万石、対象面積二十一万町歩近い地域の即急復旧という問題の総額を一応計算いたしまして、対策を立てなければならぬと思うわけでございますが、当面といたしましては、二十九年度の処理を急いでおりましたので、実はまだそこまで計算いたしておりません。特別会計で完全に修復をいたすということができればそれに越したことはないと思うのでございますが、さしあたり幸いに木材価格の上昇等からいたしまして、決算上の益が百数十億ございますので、この際これを基金といたしまして復旧を急ぎたいということで、計算をいたして、この点は大蔵省にも概念的に交渉を進めておる次第でございます。お説の通り内地を破壊してまでもこれを処理するということはとうてい許されないところでございますので、その結果においてさような事態になりますれば、やはり一般会計からの補給を仰いでも万全の処置をとらなければならぬと考えております。
  95. 川俣清音

    ○川俣委員 これが私は基本だと考えるのです。こうした天災を受けた場合に、一独立会計だけが全部その中で対応策を講ずるというようなことは、第一段としては必要であろうと思うのですが、これは大きな治山治水対策になりますので、これを独立会計だけでまかなうということになると、他に影響するところ甚大であると思いますので、この基本については、治山治水の画からいたしまして、一般会計からできるだけやはりこれを援助するという考え方を御考慮にならなければならないと思うのです。そこで、この三年間にこれを処分するというのですが、北海道は、私が説明するまでもなく密生原始林であります。一体密生原始林のままにこれを放任しておつたということが、私はこの風倒木処理の上に大きな支障が来ておると思うのです。これを国有林として持つておるというその安易な考え方で、これに対して将来の伐採方法あるいは造林計画というようなものを立てておられますならば、そこに運搬道路あるいは作業道路というものがすでにできていなければならなかつたと思うのです。それを持つておるままに、その上にあぐらをかいておつた形において対策がなかつたことが、こういう緊急の場合に処置することを不可能ならしめていると思うのです。おそらくこれが内地のように——内地といえども林道というようなものは必ずしも充実はいたしておりませんけれども風倒木ができましても、北海道ほど処分には困難を来さないだろうと思うのです。これを密生原始林のままに放任しておつたことに、私はやはり責任があると思いますので、再びこういうことが起るとは考えませんが、この際は治山治水の上と、これらの天然資源を有効適切に需要を満たすというという計画需給の上、計画造林の上から、作業道路あるいは運搬道路を急速に整備する必要があるのではないかということが痛感されたのでありますが、この点はいかがですか。
  96. 柴田栄

    柴田説明員 その点はまことに御指摘の通りでございまして、先ほども申し上げましたように、国有林につきましては九十数パーセントまで天然林である。しかも従来は天然更新を主体として更新を進めて参りまして、伐採その他も大部分雪溶け水を利用いたします流材にたよるということのために、搬出施設がきわめて不十分で、極端に申しますれば略奪林業に近い経過をたどつて来ていることは、率直に認めざるを得ないのでございます。御指摘のような計画施業をいたしますためには、ぜひとも林道網の整備が必要であるということで、国有林統一以来は極力林道網の整備に集中いたして参つたのでございますが、なかなか今日まで時間的に、資金的に思うように参つておらぬ。そこで二十八年度以降は、特に北海道国有林の整備のために、特別に数億ずつを毎年余分に経費を計上いたしまして実施を進めている次第でございます。幸いに上川層雲峡地域がようやく計画的な開発の緒につきまして、林道の整備に着手いたしておりました関係上、まだ相当処理ができるということでございますが、従来のままにありますれば、まつたくこれをながめつつ腐蝕喪失するという結果に陥る危険があるのでございます。かような災害はまことに望ましくない問題ではございますが、合理的な施業のために御指摘の点は一層早急に整備いたす必要がある、かように考えておりまして、来年度においては、この問題を強力に持ち出して行くつもりでございます。
  97. 川俣清音

    ○川俣委員 これを北海道の救農土木と結びつけまして、一石二鳥という考え方で林道網の整備あるいは作業道路の整備強化、新道開設というものが急速に立てられるべきだろうと思うのであります。もちろん降雪地帯とは言いながら、これらの道路準備のためのものも必要になつて来ると思うのです。春になつてから準備することは、北海道のような融雪時期の非常に遅れるところでは、作業がさらに遅れて参ることも考えられますので、これは臨時国会等をまたなければならぬ点があるかとは思いますけれども、幸い独立会計の建前をとつておられます林野庁の許す範囲におきまして、林道網の新設、改修、復旧等の救農施設とあわせて事業内容の強化が考慮されるべきだと思うのであります。それと相まつて留萠地方などは、今度の冷害等から見まして、防風林、または本州に参りますと防潮林というような基本的なことも考慮されなければならないと思うのですが、こういうことも、海岸地帯におきましてはまだ作業能力を欠くわけでもありませんので、速急にこれら対策が立てられ得る可能性があると思う。ところがこの造林をする場合の種苗でございますが、この苗木を養成しております長野県の状態を見ますと、先般の風雨をかねた初霜によつて非常な被害を受けている。私どもも実際に見まして、驚くほどの被害を受けている、一年生、二年生が相当の被害を受けているようでありまして、北海道の造林のから松、北海道で言う落葉松の苗圃に対して何らかの手を打つてやらなければならない。私どもは深刻にこの状態を見て来たのでありますが、これらに対して何かお考えがございましたならば、この際明らかにしていただきたい。
  98. 柴田栄

    柴田説明員 から松は北海道の今回の風害によりまして、従来北海道のから松苗木は、わずかに長野あたりから入れましてほぼ自給できるところまで参つておりましたが、苗圃で相当ひどい被害を受けまして、来年度は長野地区から相当量の苗木の輸入を仰がなければならぬ実情にある際でございますから、私どもとしてもこれが計画的な供給のためには、あるいは融資の方法であるとか、あるいは技術的な指導の方法であるとか等を講じまして、極力計画的な確保をいたすつもりで連絡をいたしております。道南地区はほとんどから松の苗を喪失したという実情にありまして、非常に苦慮いたしております。
  99. 川俣清音

    ○川俣委員 長官よく御存じのような被害状態でありますし、この供給源である長野県もまた相当の被害を受けているのでありまして、単に林野庁の計画に支障を来すばかりではなくして、一般の北海道方面の寒地地帯民有林造林関係者、森林組合等も相当の痛手を受けるわけでございまして、この樹苗関係者の救済をどのようにするかということを、この委員会も相当苦慮いたして、樹勢回復のために肥料等の補助をいたさなければならないだろうと考えておりますが、この点に関して長官の御見解を承りたいと思います。
  100. 柴田栄

    柴田説明員 従来とも被害に対して希望は相当あつたのでございますが、今まで十分な処置はとれなかつたのでございますが、今回は計画造林に相当大きな支障を生ずる危険がございますので、これらの措置をできるだけ講じなければならぬと実は考えている次第であります。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 それから北海道の処分につきまして、道内だけでこれを処分することになると、初年度においても、やや供給増になるために値段の低下が起るんじやないかと思いますし、また二年度計画が一千七百万石などということになりますと、さらに価格の上に大きな混雑が来ると思うのであります。これはおそらく道内だけの消費でなくして、本土にも持つて来なければならないと思いますが、これらについての処分は、もちろん救農施設と関連しての処分と営業処分にわかれて参りましようし、また営業処分と救農処分との間の処分も起きて来ると思うのでありまして、そういう場合に森林組合等を活用することも必要ではないかと思うのですが、この点に関してどのようにお考えになつておりますか。民有林も相当の被害を受けておる。ことに北海道民有林は、必ずしも民有林所有者の基礎が固まつていない。民有林の所有者も、パルプを資源として持つておる所有者は別でございますが、単なる民有林所有者はそれほど経済的基礎も固まつていないのでありまして、これらの森林組合の育成の上からもこの森林組合を活用することが必要であろうと思いますが、この点に関して見解を承りたいと思います。
  102. 柴田栄

    柴田説明員 民有林処理はほとんど全部森林組合系統機関で処理せられることと存じまするが、これとあわせまして、一部はこれらの系統機関を通じまして、国内との調整をとるという方法は考えられるわけでございますが、その他内地の特定用途、たとえば幼齢林伐採対象となりまするパルプの原木等に関しましては、内地需要等とも十分調整をいたしまして、場合によりますれば割当等で買つていただくという措置も講じ、あるいは輸出包装等にはきわめて適材でございまするので、それらの面との連絡をいたすためにも、大部分直営伐採によりまして、現物を一応国で集積いたしまして配分することが、それらの混乱を除去する手段ではないかと考えておりまするので、これらを並行いたしまして、ただちに個々の業者に大量を手渡しまして、暴騰あるいは暴落等の思惑の対象にはいたさないという方向処理いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 川俣清音

    ○川俣委員 森林組合が行うところの薪炭林等についても、森林組合育成の上からもまた経済的基礎の強化の上からも、これらに対してやはり町村同様な延納の処置が講ぜられてしかるべきだと思いますが、これについてはおそらく相当御考慮のうちにあると思いまするので、次に質問を転じまして、この森林組合の系統団体を有効に活用することによつて、もちろん直営が本体でありましようけれども、これらの森林組合をも活用して、資材の価格の低落等に備える意味におきましても、やはり森林組合を活用することの方が目的達成の上に寄与する面が非常に多いのではないかと思いますが、この点に関して御答弁を願いたい。
  104. 柴田栄

    柴田説明員 直接森林組合に御担当願う場合におきまする森林に対する延納措置その他と、町村長を通じまする場合とは、おそらく町村長を通ずる場合の方がきわめて明文的にはつきりいたすと存じまするので、形式的にはやはり市町村長の名義において処理さしていただくということにいたしまして、系統機関が実質的お扱いを願うということに進めたらどうかというふうに実は考えておる次第でございます。  いま一つ、これは払下げという形にはならぬと思いますが、相当箇所におきまする末木技条の処理は、産物の処分というよりも、火災防除のため、あるいは虫害防除のため、あるいは水災防除のために、速急除去整備をいたさねばならぬ対象に相なる分が相当出ると思うのであります。これらの処理に関しましては森林組合にお願いいたしましてこれを除去する、そうして除去いたしたものを御利用願うというような方法について、十分実は御協力をいただきたいと考えておるわけでございます。
  105. 井出一太郎

    井出委員長 松岡俊三君。
  106. 松岡俊三

    ○松岡委員 私は農業に対する気象の問題についてお尋ねいたしたいと思うのであります。洞爺丸の遭難事件によつて、全国民が気象の不備を指摘するかのごとく、全国の県会議長会においてもこの問題を取上げて、全国的に気象の方面の完璧を期したいという声が起つておる次第でございます。私どもかような遭難事件が起つたということに対しては、衷心から痛惜にたえない次第でありますが、私の聞くところによりますれば、この遭難事件によつて、どうしても北方に定点が必要であるということが叫ばれて、莫大なる予算をもつてこれに対応する施策をなそうとしておるやに聞いておるのであります。ところがこの北方定点は、洞爺丸の遭難があるとないにかかわらず、何ら問題じやないという説をなす者も気象界の方面にあるやに聞いております。もちろんこの北方定点のあることは、日本とカナダの航空関係、あるいはカムチヤツカの漁業の方面には至大な貢献をされるであろうことはわかるのでありまして、喜ばしいことでもあります。この北方定点の問題に莫大なる予算をもつて施設をしようとすることについて、私は異議を唱えるとかなんとかいう問題ではありません。ただこのために、はたして北方定点によつて東北方面、北海道方面冷害対策上に影響するかしないかということをお尋ねいたしたいのであります。一昨年来関西の大水害によつて国有林の収入からほとんどあげてこの治水方面にも使われておるのであります。その国有林の大部分が東北にあるということも、これまた明らかな事実であります。ところが二十八、二十九年度において、水害対策に気象関係の予算がどういうように配置され、設施されたかということを検討しますと、二十八年度の補正予算においては、九州、近畿の約十県、昭和二十九年度においては四国、中国、関東この十一県、その中に岩手県がほんのわずか出ております。それ以外には一つも出ておらない。この気象観測の万全を期するために、四年計画でやろうとせられておる今中途にあるのであります。私の手にしておりますところを見ると、無線ロボツト雨量計が鹿児島には三、宮崎に五、熊本に五、大分に三、福岡に四、高知に四、愛媛に二、香川に二、徳島に二、山口県には三、島根県に三、広島県に四、和歌山県に三、奈良県に二、京都に二、滋賀県に二、三重県に二、群馬県に五、栃木県に二、茨城県に三、そうして岩手県にたつた二、その以外には福島県にある。これだけで冷害対策上にどういう考えを持つていらつしやるか。昨年の冷害に続いて本年またあるいは冷害が起るであろうというように気象台方面においては観測されておつた。ことに明三十年においては、天明の飢饉にもひとしいような冷害が起るのじやないかというようにさえも気象台においては申されておる。私どもはそういうお話さえも承つておるのです。こういう危険なる気象方面において、特に冷害をこうむるところの東北に、今のようなぐあいにない。関西においてはまことに惨害がありましたから、これに対応するために今のように施設をなされた。私の手にしているこの地図にはこの通りある。東北にまつたくない。無線ロボツト雨量計が東北方面になくとも心配はないと思われるのですか、どうです。私はこれを承りたい。今の洞爺丸事件に愕然として、北方定点を莫大な予算をもつてやられるということは、国家のためにまことに喜ばしいことである。が、このために東北方面の冷害上に、あなた方の方ではさしつかえないと思つていらつしやるかどうか。この計画を見ますと、二十八年、二十九年においては関西方面にこれだけのことをつけて、そうして東北はこれから第三年目にやろうという計画のように承つておるのであります。そのときに突然として洞爺丸の遭難事件が起つて、予算がどんなふうになるかもしれないというときにおいて、今の議論——洞爺丸の問題は、北方の定点があるとないにかかわらず、何の関係はないという断定をほとんど下しておるところの気象学者がおられる。日本とカナダとの航空関係、カムチヤツカ関係には非常に貢献するところがあろうが、この北方定点によつて東北の冷害にはほとんど関係がない。東北の冷害に最も至大な関係のあるものは今申し上げた無線ロボツト雨量計で、関西方面にあるがごとくに東北方面になければならない。これこそが先決問題であつて、東北方面の冷害には絶対にこれが必要だと申しておるところの気象学者もあるのです。これに対して気象台長としては——きようは台長はお見えでありませんで、予報部長がおられるのですが、この御見解を承りたい。
  107. 北村純一

    ○北村説明員 ただいま洞爺丸に関しまして御意見がございましたが、北方定点を現在要求しております理由は、実は洞爺丸事件とは直接の関係はございません。洞爺丸事件につきましては、気象台の出しました予報に、実情から見まして若干の相違があるというふうなそしりは、私も免れないのではないかと思うのでございますが、その点の主要なる原因は、中央気象台と北海道にあります二十二箇所の測候所との通信連絡が切断されまして、そのために十分な情報の収集ができないというところへ、中央におきましてもまた北海道におきましても、情報が十分に入らないために麻痺状態なつた、その中でいわばつんぼさじきで非常に苦労をして予報をやつたというような結果になつておりますので、この点は非常に遺憾な点でございまして、通信施設の改善につきまして早急に何らかの手を打たなければならぬということで計画を進めておるわけでございますが、この点は現在北方定点を要求しようとしておる事柄とは直接の関係はないわけでございまして、北方定点を要求いたしておりますのは、従前からやつておりました南北両定点が、米軍の協力打切りに伴いまして、日本の財政問題もからみまして昨年度から打切りになりましたけれども、東方の広い洋上に一点の観測点もないような状況におきましては、日本の気象業務を円滑に遂行することは困難であるという点を主張いたしまして、北方定点の復活を要求しておるわけでございます。もちろん、ただいまお話のございましたように、東北、北海道、その他これは全国一般の問題だと思うのでございますが、農業に気象が非常に大きい影響を持つておるということは申すまでもないことでございまして、農業の災害対策といたしましての気象業務の拡充ということを考えなければならないと私どもも思つております。しかし北方定点の問題は、もちろんある時期におきましては、北方定点が存在いたしますことは、農業災害の、特に北海道、東北の冷害の予報の上に貢献するところ非常に大きいと思うのでございますが、この農業災害防除対策といたしまして北方定点を主張しているわけではないのでございます。北方定点は一般に台風、農業災害対策、その池北洋上における漁船の遭難防止、そういつたいろいろ季節的にかわつて行きます多種多様の目的を含めまして、この点の必要を主張している次第であります。  それで農業災害対策といたしましては、本年度から三箇年計画をもちまして、中央気象台において従前の短期予報に非常に重点を置きました予報制度を拡充いたしまして、農業に十分利用され得るような長期予報の業務を整備強化いたしたいと思います。その第一年度といたしまして昭和三十年度に約一億一千万円ほどの予算を計上いたしまして、さしあたり東北、北海道を目標といたします長期予報制度の整備拡充をはかりたいと思います。それ以外に先ほど水害に関連しましてのお話もございましたが、もちろん気象台の仕事は水害のために施設いたしました施設から集めますところの情報も、農業災害のために施設いたします機関から集めますところの情報もそれぞれ統合されまして、それを適当に運用することによつて初めて目的を達するわけでございますから、水害のために設ける施設も農業災害には非常に有効なわけでございますが、この昨年度の水害に伴いますところの制度は農業災害を直接目標といたしましたものとは一応別個の計画といたしまして、この二十八年の補正予算から三箇年計画でもつて考えて来た次第でございます。  地域の選択につきまして、西の方に寄つているではないかというふうなあるいは御非難があるのかもしれませんけれども、私ども日本の災害の起る地域というものを考えて行きますのに、必ずしも西から起るとばかりも考えませんけれども、また東から起るということもわかりませんので、非常に大きい災害を受けられたところに、まず第一段階の着手が進められたということで、前後の順序に別段軽重の差はございません。ただ財政の都合も勘案いたしまして、三箇年にわけまして、その結果ただいま御指摘のように、東北地方が最後の年度の計画に入りましたことはまことに遺憾には存じておりますが、ぜひ来年度におきましてはこれを実現いたしまして、農業災害対策のために特別に施設いたしますところの観測施設を合せまして、十分に東北、北海道の方々への気象サービスができるように考えたいと思つております。なお先ほど岩手県に二箇所の雨量ロボツト計しかないというお話でございましたが、実は岩手県の北上川の流域は、総合開発の関係で多目的ダムが非常にたくさん進捗しておりますので、そのダムの管理を主眼といたしますところの水利気象業務というものの計画を進めております。そのために昭和二十九年度で、北上川流域の水利気象業務の計画が予算に認められましたので、それと同じつり合いをとるために岩手県だけの水害を取上げまして、年次を繰上げるというふうな措置をいたしたものでございます。岩手県には、北上川の水利気象として考えましたところの無線ロボツト計が相当たくさん設置されておりますので、水害として考えたものは二個でございますが、約七、八個の無線ロボツトが現在ついております。三十年度におきましても、引続きロボツトの増設を考えておるわけでございまして、決して一個、二個のロボツトでもつて東北の水害ないしは農業災害が防げるものだというふうな考えを持つておるわけじやありません。今後いろいろお力添えをいただきまして、農業災害の点、水害対策の点、それから総合開発のために必要な水資源の利用に活用されなければならぬところの水利気象業務の点、いろいろ計画が重複しておりまして非常におわかりにくいと思うのでございますが、いろいろな角度から見まして気象業務を整備いたしたいと思つておりますので、何分とも御援助をお願いしたいと思います。
  108. 松岡俊三

    ○松岡委員 ただいま東北方面の冷害には、決して片寄りをしないというような弁解の言葉がありましたけれども、事実がこれを物語つている。二十八年度の補正、二十九年度において、多分あなたの手元にもあると思うのですが、こういうあんばいに関西方面にのみ無線ロボツトをこしらえておるが、東北にはどこにあるか。たつた上川一点だけしかない。これは明らかな事実でしよう。こういうぐあいにして、これが東北方面において閑却されておるということは、私はどうしても承服できない。ただいま北上川の総合開発によつてこうだという岩手県のお話でございましたが、今度は第二の総合開発として最上総合開発が本年から着手されるようなことになつております。その最上総合開発で国営として畑地の土地改良をやる。あそこら一帯の土地は、そもそも雪害という二字の問題を起したところである。すなわち山形県でありながら、山形の測候所もさらにでき上つた酒田の測候所も及ばない。今回の最上総合開発の国営畑地の土地改良を始めて、もしこれが失敗したならば、将来畑地の土地改良上に重大なる影響を及ぼすのである。その辺の気象問題はどうなつておるか。今まであなた方の方でここの気象を無視したればこそ雪害問題が起り、遂に日本で初めて雪害という二字が法律に入るようになり、それが引伸ばされて今日積寒法の問題となつておるのである。そもそもこの問題は気象から起つておる。この元の起りの所が、今度農林省が力を入れて畑地の土地改良をやろうとする所である。そこら一帯の所は、ここに林野庁長官がおられるが、かつて長官が営林署長としておられたから一番よく知つていらつしやる。その林野庁が管轄している林野庁内の予算から三十二億を分割して一般会計に出してやつたその金が、東北に少しも来ないで、みな関西の方面にばかり使われる。そうしていよいよあなた方の方で、第三年目から今年はひとつ東北の冷害のために使おうと思つているところに洞爺丸の問題が起つて、またまたこれがどうなるかわからないということになる。最上総合開発の畑地土地改良が今回初めて着手されるが、この成功の有無は東北全体の将来の土地改良に影響を及ぼす。そうしてそこの所の気象は、山形県庁所在地の測候所の方の観測も酒田測候所の観測も及ばない一種独特の所である。その一種独特な所の施設をあなた方の方ではどうなすつておるか。あそこら一帯のものは、最上総合開発の中にある町村が自費で負担し、県費と相まつて気象観測をしているが、あれをどうなさるか。一方においては、東北の畑地改良が成功するといなとは将来東北地方に非常な影響を及ぼす。あなた方は、東北の方はなおざりにしないとおつしやつておるが、私はするのではないかと思う。その辺いかがですか。
  109. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと松岡委員に申し上げますが、まだ林野の問題、農地の問題がございますので、気象の問題は一応この答弁の程度にお願いいたします。
  110. 北村純一

    ○北村説明員 ただいまいろいろと御指摘を受けましたが、昨年までのやりました水害対策が、西の力から順次というふうな、大体そういうふうな結論に近いようなかつこうになりましたことは、東北の方から見れば非常に残念なことであつたと思いますけれども、その点につきましては東北の方には非常に申訳なかつたわけでございますが、三十年度におきましては、ぜひともこれを実現いたしたいと思います。しかしこれは現在起つておりますところの洞爺丸の対策というものとはおのずから別個のものでございますので、こういうものとは一切関係なしに新しい農業災害対策としての計画とともに、強く推進して行きたいと考えております。  それから最上川の総合開発に関連いたしましてのお話につきましては、実は昭和三十年度の大蔵省への要求書の中にも、最上川の総合開発に伴いましてその水資源の活用といいますか、あるいはダムができましたための大きなダムの効率的な活用、あるいはダムができるために起るところの災害の防止というふうなものを主眼にいたしました水利体系を組み上げまして、これを予算の中に要求しております。  それからただいま特殊な山形県の新庄方面の雪害につきましても強い御発言がございましたが、この点につきましてもあの地点に測候所の必要があることを認めまして、昭和三十年度におきましてぜひ実現いたしたいと思つて、ただいま強く折衝しておる次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  111. 松岡俊三

    ○松岡委員 時間の制約もありますから簡単にいたしますが、遅れたる東北が土地改良に主力を注ごうというときであります。農林当局としても、これは農地局長としても非常な御決心を願いたい。われわれの心配は、単なるあそこの国営の土地改良の問題じやない、非常な影響があるのです。東北全体の遅れたるものを、ここで奮い起すかどうかという問題であります。それで今申し上げたところが、あなたは必ず新庄には測候所をつくらなければならぬという御決心を持つていらつしやるようであるから、私はこれを必ず実現されるものと期待します。今申し上げたようなぐあいにあまりにも東北が遅れている。その遅れている理由は測候所の方の片手落ちだつたと思うんです。これは事実が物語つておるんです。しかし洞爺丸の事件によつて世論のごうごうたるに押されて、今の東北の冷害が万一閑却されるというようなことがあつたならば、東北人としてはこれはどうしても承服できないことなんです。水害はひんぴんとして起りますけれども、今年なども最初の冷害があとにはそうでなくなつたというぐあいになりまするから、ぶつかつたときにちよつとその考えを新たにしてくれるけれども、すぐ忘れるようなぐあいになるおそれがある。私はこれを強く要望して、遅れたる東北全体の農業開発のために、今の国営の最上総合開発の土地改良が失敗するかしないかは、この測候所をまつよりほかにない。農林当局と相まつてぜひともこれを万全にして、東北の畑地改良の将来に希望を持たしむるように遺憾ない御決心を、農林当局と気象台方面に私は強く要望する次第であります。ただいまの御言明は三年越しでありまして、気象台長においても一ぺんは決心された問題であります。それが中途においてまた問題になつておる。今度こそが初めて実現されて、国営の畑地改良に瑕瑾の起らないように、東北全体のために特に平川局長の御決心を要望して、私の質問を終ります。
  112. 井出一太郎

    井出委員長 伊東岩男君、先ほど林野庁に残された質疑を願います。
  113. 伊東岩男

    伊東委員 質問打切りの申合せもあるようでありまするから、ごく簡単に林野庁長官にお尋ねをいたします。昨年の北九州の非常なる洪水、また本年九州山脈を中心にして宮崎県におけるかつてない大洪水が起つたのであります。宮崎県では千五百ミリの降雨量があつた所があるのであります。よつてこれが原因になつて、非常な山くずれもありますし、たくさんの山林も崩壊いたしましたので、応急手当としてはいろいろの対策をやつてもらはなければなりませんが、これは治山治水等が根本問題でありますので、治山からいいますと造林であります。これに対して林野庁もかなり力を入れていただくことに対しては敬意を表しております。民有林の造林についてかなりの助成対策もあるようであります。苗木の補助とかいろいろあるようでありますが、現在農林省が意図しておるような民有地の造林の目的は、今の施策で達し得られるのであるか。また三十年度において他の施策について相当の予算要求のお見込みが立つておるのでありますか、まずこの点をお伺いいたします。
  114. 柴田栄

    柴田説明員 計画といたしましては、私ども昨年内閣において策定されました治山治水基本対策要綱に基きまする年次計画の総合的な実現をぜひとも企図しておる次第でありますが、財政規模等の関係から、実は二十九年はきわめて不十分な措置しかとれなかつたのでございますが、造林関係につきましては、ほぼあの計画に近い数量の計画が、二十九年度においても見られておりますし、三十年度におきましては、当然あの計画のフルな実施を目標といたしまして実は要求をいたしております。さらにあの措置は何といたしましても台風圏といたしまして、毎年いずれかの地域におきましての台風被害を免れることが不可能な地域でございますので、脊梁山脈地域対象といたしましては、徹底的な保安林整備を一日も早く完了いたしたいということで、ただいま整備復旧を進めております。これは予定通り三箇年をもつて整備を完了いたすつもりであります。整備いたしますれば、保安林の施業に関しましては地域までも指定いたしまして、これが実施を監視いたし、それとあわせて造林等に関しましてはある程度高率補助等も考えて、民有林所有者に実施をお願いするつもりでございます。なお非常に金のかかる保安林については、ただいまも相談をいたしておりますが、買上げ計画を進めておりますので、すでに本年度におきましても、宮崎県の水源地域におきましては五千町歩以上の買上げを実施する見込みで事務を進めておりますから、続いてこれが整備と、国におきまする水源地域の確保、実行を期して進めておりますが、特に九州地帯は全体を通じましてかような対策を進めて参りたい、かように考えでおります。
  115. 伊東岩男

    伊東委員 水源涵養林、保安林等の設定は非常に必要でありますが、あの地帯から申しましても、民有林の多いところほど今度の災害は非常に大きいのであります。官有林地帯はほとんど少いのでありまして、そこに初めてこの国有林の存在価値というものを地方でも発見しておるようなぐあいであります。ところで金のいらない方法でなければ造林というものがうまく行かない。その方法としては、私はやはり部分林をうんと造林せしむるということが一番いいのじやないかと思つておるのであります。私の郷里は有名な飫肥杉の地帯でありまして、ほとんど全山部分林であります。もともとは土地を払い下げてもらつて民有林にしたいという思想であつたのであります。ところで私どももそれはいけない、土地は国が持つてつていいのじやないか、そして民有林化すると幼樹林のときに切つてしまうから、治山治水の上に非常な影響があるので、やはり伐採期を抑制しなければならない。少くとも四十年くらい押えるということになると、そこで治山の効果が非常にあるのであります。ところでこれならば指導さえよければうまく行くのでありますけれども、ただ問題は分権歩合の問題であります。部分林は、以前は五官五民、四官六民、二官八民、今はおおよそ三官七民でありますが、これではどうも国の小作料が多いので国がもうかり過ぎる。ただ土地を貸して三分の一も小作料をとるというような大きな小作料はないと私は考えております。もし二官八民くらいになるならば、もう土地の払下げは民間では要求いたしません。この分収歩合をうんと下げるということになれば、期せずしてどんどん造林はできるのであります。現に耕作地の田畑のごときは、民有地においては小作料は安いのであります。それを官有地がかくのごとき高い小作料をとつておるということはどうしても合点が行かないのでありますが、これをうんとお下げになるお見込みはないのでありますか。下げるということになれば期せずしてどんどん造林はできるのであります。いま一つ民有林には苗木の補助がありますが、部分林に対する苗木の補助はないのであります。しかしこの補助だけはおやりにならぬとなかなか造林する人は承知いたさぬのでありますが、この二点について御見解を伺いたいと思います。
  116. 柴田栄

    柴田説明員 お話の点は私どももまつたくそういう考えをもつて実は最近部分林の設定に関しまして積極的に御相談をいたしておりますが、御指摘のように実は三官七民が従来非常に多かつたのであります。今からいたしますと少し分収率が官において高いというような御指摘があると存じますが、最近におきましては学校部分林については全部二官八民に切りかえておりますし、最近御相談しております分につきましては、大体二官八民で御相談するという基本方針を流してそれで御相談をいたしておる、こう存じております。なお苗木の補助の問題に関しましても関連いたしまして、大蔵省との折衝を要する問題も残つておりますので、優良な苗を国有林から供給するという手段等でいろいろ御相談を申し上げて参りたいということで実は計画をいたしておりますが、まだ無償とまでは踏み切り得ないでおりますが、この問題も部分林に対します造林補助等の問題とあわせましてただいま検討いたしておる次第でございまして、町村合併促進に伴います固有財産造成のための部分林造成につきましては造林補助の対象にする、これは法律でも定められておりますので、三十年度予算には新規に要求しております。一部解決の方向に進んでおるというふうに御了承願いたいと思います。
  117. 伊東岩男

    伊東委員 もう一つ。苗木の補助は民有林にはやるけれども部分林の方には大蔵省が承知せぬからやれない。しかしこれはちよつとがんばられればできぬことはないと思います。これだけ洪水が起る今日においては、災害のために大蔵省はどれだけ金を出すか、その根本問題を退治する一つの方法として、それくらいのことのできない理由は私は全然ないと考えておりますので、がんばつていただきたいと思います。  それからもう一つ。九州の私の方面では、穂を切つて山にさしさえすれば苗でなくても育つのであります。ところでさす穂が民有林にはなくなつたのであります。そこで付近の国有林には苗木をとるのにちようどいいものがたくさんあるが、これはなかなかとることができないのでありますが、これを何とか分与する道を開かれることはできないかと思います。それを分与する道を開かれなければ、盗んでとるのでありますからやはり同じことでありますので、そこはもう公開されて、あつさり出られた方がいいと思います。  もう一つ。同じ国有地を部分林造林にするならば払下げせぬでもいいが、今畜産が盛んになつて、酪農地帯どもたくさんできるので、どうしても採草地だけは思い切つて民有地化していただかぬと、完全な採草地にはなり得ない。もう一つひどいところになると、ある村のごときは九五%くらいの国有地のあるところがあるのであります。宅地の腰元から官有林でたきぎ一本もないといつたような、あの山奥に住まう人たちに非常に気の毒でありますので、これらに対してはたきぎの払下げのごときは積極的にやつていただきたいということを要望いたしておきますが、これに対する見解だけを承つて、私の質問を打切ります。
  118. 柴田栄

    柴田説明員 御指摘の通り飫肥地方のみならず九州地方はほとんどさし木だけで苗木の養成も非常に容易でございますが、最近の虫害等のために民間のさし穂の採取等も十分でございませんので、本件に関しましてはさつそく手配をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  なおいわゆる軒先国有林といいますか、あとからその辺にまで住居を移された地域等もございますが、さような地域に対しましては自家用あるいは河川用の一部をも含めまして、計画的に供給するための共用林制度を設置いたしておりまして、具体的にはもちろん生活におさしつかえのあるような払下げをいたしておりませんし、河川用に関しても計画的に民有林とあわせまして、総合的に充足できるような地域を確定して特殊権益を認めておりますので、もしさような事情で支障がまだあるところが残つておるとすれば、速急具体的に御相談申し上げるということにいたしたいと思います。
  119. 伊東岩男

    伊東委員 長官のお話で思いつきましたが、九州地方はたいへん松の害虫が出たのでありますけれども、最近は杉に至るところに害虫が出ておるのであります。あの害虫を現行法の中に入れてもらつて救済してもらうことはできませんか、その点だけをお尋ねいたします。
  120. 柴田栄

    柴田説明員 ぜひ指定いたしたいと存じておりますが、さしあたりましては予備費の支出もなかなか困難でございますので、新しく予算を要求いたしております。予算と並行いたしまして指定を進める見込みでございます。
  121. 井出一太郎

    井出委員長 それでは林野庁に対する質疑はこの程度で打切ります。川俣清音君。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 中央気象台にちよつと伺いたいのですが、中国地帯を襲いました十五号台風の農林の被害から見ますと、この統計調査部で出して参りました経過と実際とが違うように思われますので、気象台の正しい見解を伺いたいと思います。
  123. 北村純一

    ○北村説明員 十五号台風と申しますのは、九月十八日にカロリン諸島の東部に発生しました弱い熱帯性低気圧が発達したものでございますが、この台風は台湾の南東海上に達するころから非常に強いものになつて参りまして、二十五日の八時頃には石垣島の西を通りまして十八時に沖縄の北西海上に達しました。中心付近の最大風速四十五メートル、中心から半径三百キロ以内の南東側が風速二十五メートル以上の強いものになりまして、速度も毎時六十キロとだんだん加速されて参りました台風が、二十六日の二時に鹿児島湾に入りまして、九州南東部、中国地方通りまして、二十六日の八時に鳥取県の海上に出まして、毎時百キロ以上の非常に早いスピードで北東に進みまして、十五時には青森県の西方海上に達しました。中心示度は九百六十ミリバールとさらに発達したようでございますが、速度は五十キロに落ちまして、十八時、奥尻島の付近を通過して二十一日に岩内西方海上を通過、二十七日の朝オホーツク海に抜けたわけでございまして、大体そこに書いてあります黄色い線でひつぱつてあるところのコースを通つてオホーツク海に抜けたものと思います。大体私の手元に書いてありますところの図面と同じような図面になつておりますので、こまかい位置の点はよくわかりませんが、大体あのくらいの距離で、そうして通過した陸上の地点もああいうふうな地点ではないかと思います。ただ申し上げておきますが、あれはおそらく中心が通つたところでございますから、その半径は相当大きい半径を持つておりますので、被害のありましたところは中心の線をひつぱつたところより外側に相当大きな被害を及ぼしておるということは考えられるわけでございますから、海上を通りましても、陸上に被害が相当あるということは当然でございます。
  124. 井出一太郎

    井出委員長 残余の質疑農地局長並びに建設省河川局長水政課長を煩わす質疑に相なつております。それでは芳賀貢君。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 災害対策に関係のある問題でありますが、建設省の水政課長が出席になつたので先にお尋ねいたします。建設当局の主管になつておりますところの河川の堤防敷地を一部農業者等に、あるいは採草地あるいは畑地というような名目で貸付しておるわけでありますが、この使用料の徴収の問題であります。御承知のように本年度は北海道等においては、十五号台風災害あるいはまた北海道地区にわたつて冷害被害が甚大であります。そういう場合においては、この敷地を借受けて使用しておるその採草地あるいは畑地等においても収穫が激減しておるということは、これは言うまでもないことでありまして、これらの使用料の徴収等に対しましては当然減免の措置をすでに講じておられると考えるのでありますが、被害農家等に対しましての使用料の減免等の処置はどのような状態で講じておられるか、その点をお伺いします。
  126. 美馬郁夫

    ○美馬説明員 河川敷地の占用使用料の問題でございますが、御承知のようにこれは現在河川法によりまして府県知事の権限になつておりまして、府県知事が各県ごとに規則をつくりまして、その規則によりましていろいろ使用料等を徴収することになつております。問題は北海道の問題のようでございましたが、北海道におきましても道の管理規則をつくりまして、牧草等につきましては一貫匁五十銭という基準で現在とつております。で、この基準でございますが、ただ特別の事情のある場合にはこれを減免することができるという規定になつておりまして、災害等の場合あるいはその他いろいろ特別の事情がある場合には、この規定によりまして、私ども、河川管理者の道知事として適当の処置をやつているというふうに考えます。まだ具体的に、やつておるかどうかということについては詳細存じませんが、地元と道との交渉によりまして十分目的を達成できるんじやないかというふうに考えております。もし道との交渉におきまして解決ができないようでありましたら、建設省といたしましてもいろいろごあつせんに乗つてもいいということに考えておりますが、とりあえずはこの規則の運用によりまして、特に災害等の場合には十分に趣旨が達成できるんじやないか、こういうふうに考えております。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、結局使用料の料率の設定あるいは徴収は都道府県知事に権限を委譲してあるということになると、その使用料等の収益は地方の公共団体の収益ということになるのですか、あるいはまた徴収を委託しておるという形で、結局それは国の収益になるのか、その点が分明しないので、もう一度御説明願いたい。
  128. 美馬郁夫

    ○美馬説明員 これは河川法によりまして、河川より生ずる収入は都道府県知事の収入となるということで、府県の収入になつております。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで内容が明白になりました。将来において紛争等が生じた場合においては、当然あつせんの労を依頼するようになるかもしれませんが——そういう事態は万々ないと思いますが、水政課長に対する質問はこれで終ることといたします。  次に農地局長にお尋ねいたします。今年度の災害対策の中で、農林省が示された対策要綱を検討しても、その主要なる点は救農土木工事に重点が置かれておるようであります。この問題に対しましては、先刻も当委員会において同僚の足鹿委員から具体的な質問が行われたわけでありますが、この際、開拓者の住宅あるいは施設が、十五号台風によつて倒壊あるいは損傷しておるわけでありまして、この復旧に対する助成措置の問題であります。今年の五月の暴風のときには、開拓者の住宅に対しましては単価を二十万円と定めまして、これに対する二分の一の補助を行つたように記憶しておるわけでありますが、今度の十五号台風の場合の開拓関係の建物の復旧に対しましては、官房長説明によると補助額二分の一ということでありましたが、問題はこの単価ですね。これを従来通りの単価で試算して行われる考えであるか、あるいはまた実情に即して、あるいは暴風等があるたびにこの不完全な開拓者の住宅がいつも甚大な被害を受けるということを考慮した場合においては、もう少し災害に耐え得るような開拓者の住宅を建てさせることが要請されて来ると思いますが、こういう点に対する分析はどのように行つておるか、その点をお尋ねいたします。
  130. 平川守

    ○平川説明員 これは実際問題といたしましては、被害を受けました各家屋はいろいろの費用がかかつておることと思うわけであります。しかし予算の要求といたしましては、一定の基準を設けないわけに行きませんので、われわれの要求といたしましては、お話の二十万円というようなところを一応めどに置きまして要求をいたしたようなわけであります。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういたしますと、今次の災害の場合においてもその基準を適用するということになると、実質的には結局十万円程度しか助成金をもらえないというようなことになるわけであります。これは実際雪空を控えて家屋が倒壊して、それを復旧する場合においても、わずかに十万円程度の国の助成があつても、なかなかこれによつて原形に復することさえできないわけであります。これは昨年度の災害のときの特別立法の前例があるわけでありますが、今年の五月暴風の場合には二分の一の助成でありましたけれども、昨年の災害の場合においてはいわゆる高率補助の適用の道を講じまして九割助成ということになつてつたわけでありますが、この単価の引上げがどうしてもできないというような場合においては、別途立法措置を講じて高額補助適用を行うということになると、実質的には所期の目的を達することが可能であると考えますが、当局においてはそのような積極的な意図があるかないか、いかがでしよう。
  132. 平川守

    ○平川説明員 高率の九割補助の問題につきましては、大蔵当局もかねて非常に難色を示しておるわけでありまして、実際問題として、お話のように十万円程度のもので新しいものが完全にできるとは思いませんけれども、いわゆる高率適用の法律をつくるということは、本年度の災害については非常に困難ではないかと存じております。これは実際問題としまして、大蔵省の方は内々当つてみておりますけれども、非常にその点はかたいような状況にあるわけであります。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 局長はすでに非常に弱気になつておりますが、将来入植者住宅の建築等に対しては、たとえば東北の高冷地あるいは北海道等に入植させる場合には、やはり現地の気候条件等に適応した、あるいは耐寒的なブロツク住宅等を当初から考慮してやる必要があると思うわけです。今週岩手県等の入植地の調査を行つて来たわけでありますが、その地帯においてはすでに一部、たとえば酪農地帯においては、サイロあるいは畜舎のブロツク建築をやつておる。そして人間の住居は牛小屋の片隅に、わずかは何坪かの居をかまえておるというような状態で、むしろ牛馬が優位な住居に入つてつて、人間がそれ以下であるというような現象も見て来たわけでありますが、常に暴風等に対する抵抗が弱いというような程度の建物では、災害があるたびに被害を受けて、そのたびに復旧のために国が配慮しなければならぬということになるので、この際やはり思い切つた適応性のあるような方途を講ずる必要があると思うのでありますが、その道を開く機会というものは、やはりこういうような大災害があつたような時期にその前進をはかる必要がどうしてもあるとわれわれは考えるわけであります。それからまた特別立法の高率適用の場合においては、大蔵当局は難色を示しておるということであれば、これは局長がもしそういう必要があるというお考えで御希望があれば、議員立法等によつてそういうようなものを成立させることも可能であります。これは局長のこの点に対する所見をもう一度明確にしておいてもらいたいと思います。
  134. 平川守

    ○平川説明員 北海道等の特に寒冷地帯における開拓者の家屋の問題につきましては、一般問題としてかねてからその建設費が不十分である、ある程度恒久的な建物をつくるべく、補助に全部たよれないにしても、資金その他の関係を考えたらどうかという議論もあるわけであります。これにつきましては私どももいろいろ検討いたしておるわけでありますが、何分にもこれは予算上大きな金額になる可能性がありますので、軽々に単価を動かし得ないというような実情にもあります。これは災害の機会にというお話もございますが、やはり全体問題として恒久的な問題は考えて参りたい。補助で足りなければ資金という関係も考えるということにして、将来の問題として考えて参りたいと思います。  なお災害に対する対策として、特別の高率の補助という問題についてどう考えるかということでございましたが、これはやはり全体の復旧対策救済策全体における立場を考えざるを得ないと思うのであります。予算もやはりおのずから制約を受けるわけでありますから、やはり救農土木とかあるいは資金とかいうようなことに重点を置きまして、これはすべての被害者に関係があるわけであります。家屋の問題は非常にお気の毒でもあり、重要な問題でありますけれども、現在でも結局全壊に対してのみしか補助が行かないというような状態でありますので、特別のところだけに九割というような補助を考えるということよりも、むしろ全被害者に対して救農土木で金が入るとか、あるいは営農資金が事を欠かないとかいうことに重点を置きまして、家屋の方は不十分ではありまするけれども、半額補助の程度で、前のようなりつぱなものは建たぬにしても、とりあえず寒をしのぐという程度になることの方がいいのではなかろうか、予算が十分にありますればもちろんそこまで手を伸ばしたいわけでありますが、いずれに重点を置くかといえば、やはり救農土木あるいは営農資金というような方面に重点を置くことの方がいいのではなかろうかというふうに考えております。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま救農土木の関係の説が出ましたが、この際開拓関係は、建設工事の完了地区がだんだん出て来るわけでありますが、表面は完了地区になつておるけれども、実際には、たとえば農道にしても、それから改良事業等にしても、実質的には未完了であるというようなずれが多分にあるということを局長も御承知と思いますが、今回の救農土木工事をやるような場合においても、表面一応建設工事が完了地区ということになつておりましても、その地区内における実質的には未完了の農道であるとは、あるいは営農地域等、こういう土地改良あるいは開墾作業等に対しては、でき得るだけ高率補助の適用が可能であるような配慮は、どうしても講ぜられる必要があると思いますが、その点に対しましてはどのようにお考えになつておられますか。
  136. 平川守

    ○平川説明員 いわゆる高率というお話でございますが、開拓の基本施設に対しましては全額国庫負担で今やつております。こまかい水路であるとか、道路であるとかいうものになりますと、これは付帯工事ということで補助でやつております。災害対策の救農土工事業といたしましては、補助工事でありましてもできる限り労賃収入の得られるように、また各村の被害者の数、被害程度に応じまして適当なる仕事の分量があるようにということで分配をいたすつもりであります。工事そのものが、基本工事でありますれば当然全額の仕事になりますがしかし救農関係といたしましては、なるべくまんべんなく被害地に渡るようにということを考えておりまするので、おそらく比較的こまかい道路あるいは水路、あるいは開墾作業というような仕事が多くなると思います。従いまして補助そのものは全額ではありませんけれども、ただいまお話の、一応終つたような地区にもその工事が行くという意味においては、これは十分まわすようにいたしたいというふうに考えております。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、臨時救農土木をやる場合の賃金コストの問題ですが、聞くところによると、内地府県の場合においては二百八十五円、北海道の場合においてはおおむね三百五十円程度を単位として、そして賃金収入の道を講ずるということになつておりますが、この一日二百八十五円ないし三百五十円というものは、今の経済情勢から考えますと、これは安過ぎるわけです。ニコヨンにちよつと毛のはえたようなものです。この程度被害農家の、しかも冬季間における労働報酬というようなことになると、これは非常に当を得ないじやないかというふうに考えるのです。これは少くともそれぞれもう百円ずつぐらい単価の引上げということは、この際どうしても思い切つてつてもらわないと、表面は救農土木工事をやつて、一戸当りどれだけの収入になるじやないかというようなことになるけれども、その一日の報酬が安ければ安いほど、延べ日数をうんと用いなければ、所要の収益がないということになる。特に局長においても、この賃金収入の場合における一日の単価の改訂を、ぜひやつておく必要があるというふうに考えるわけであります。このことは必ず可能であると思いますが、局長の考えはいかがですか。
  138. 平川守

    ○平川説明員 この単価は、労働省の方の定めるところに従いまして要求いたすことになつております関係上、三百五十円という数字が出ているわけであります。私どもとしては、昨年もその点を実施したのでありますが、なるべく現金収入がすべて地元に落ちるようにという意味におきまして、簡単な仕事については、工事そのものを開拓者の組合なりなんなりに請負わせるというような形で、できるだけよけいな部分がこれらの人々に落ちるようにはからつているわけであります。単価につきましては、先ほど申しましたようなわけで、一応こういうことで大蔵省には要求せざるを得ないのでありますが、実施の点につきましては、なおよく研究いたしまして、でき得る限り御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今局長が言われたのですが、これは開拓者関係というように考えられましたが、ただいま申し上げた点は、これは開拓関係の救農土木に限らず、一般罹災農家の救農土木の場合においても、労賃の単価、これは改善する必要がある。今言われた労働省の一つの基準単価でやるということになると、これは何か失業救済的な感じが非常に強いのですが、とにかく一年中努力して収穫が皆無であつたというような場合の救済措置であるので、もちろん農家の場合においては失業保険の措置も講じられておらないし、収穫が皆無であつてもそれを理由にして生活保護法の適用を受けるということもなかなかできぬわけです。生活保護法の場合においても、農村等においては三級地になると思いますが、これは七人家族構成を単位とする場合、一人千五百円で一万五百円が生活保護法による支給額になつている。被害農家が救農土木事業に出て、一月二十五日稼働いたしましても、一日の賃金単価が三百円そこそこであれば結局月、七千五百円の収入で生活保護による給与額にも及ばないというようなことにもなるのです。ですからそういう点は、農村の中に置かれたかかる社会制度の矛盾というようなものを十分考えの中に入れて、賃金単価の計算をするような場合においても、別個な観点の上に立つてやられる必要があるというふうに考えるのであります。この点はぜひ農地局長においても推進されたいと思うわけでありますが、それに対する御所見を伺つておきます。
  140. 平川守

    ○平川説明員 先ほど申しましたように、予算としてはこういう要求をいたしておるわけでありますが、実施の場合につきましては、なおよく研究いたしまして、なるべく御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  141. 井出一太郎

    井出委員長 暫時休憩いたします。     午後四時五十六分休憩      ————◇—————     午後七時八分開議
  142. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際佐藤洋之助君より発言を求められておりますのでこれを許します。佐藤洋之助君。
  143. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 本委員会におきましては、二十九年度の災害に対して、それぞれ実地を調査いたし、かつ連日にわたりまして政府当局と質疑応答を熱心に重ね、政府対策要綱等につきましても、かなり掘り上げていろいろ質疑応答いたしました結果、それを補足し、かつなおさらにいろいろなものを加えまして、ここに一つ対策に関する案件ができました。これを朗読いたします。   昭和二十九年農林災害冷害を含む)対策に関する件  本年における冷害及び台風による被害は、その深刻さにおいて近年その例を見ざるものであり、しかもその災害地の大部分は、昨年に引き続き本年再び災害を蒙り、被害農民の困苦は想像に絶するものがある。現在政府は、これら災害対策につき要綱を決定し、これに要する財政並に金融上の措置につき計数整理を行いつつあるが、これら対策並に措置については、左記各項を急速に実施すべきである。 一、公共施設災害復旧は、三、五、二の復旧率により速かに着手し、災害常習地帯においては超過改良工事をも大幅に認めることとし、早急にこれに必要なつなぎ融資の予備費の支出をすること。右に対する国庫補助に付ては、昭和二十八年災害の特例法に準ずる特別措置を講ずること。なお、開拓者住宅等入植施設の復旧については基準単価の引上げに努むること。 二、農林業施設の被害に対する農林漁業金融公庫の融資枠の拡大につき、特段の措置を講ずること。なお非住家施設の災害についても融資するものとすること。  水産業施設(漁船、漁具を含む)被害に対する融資は別枠とすること。 三、被害農林業者の必要とする経営資金の確保については、取敢えず組合系統金融機関の資金をもつて充てることとするも、将来の資金繰りについては、資金運用部資金等政府資金をもつて賄うように努めること。前年に引き続き被害甚大な地域の一般農家に対する融資についても少くも二ケ年以上の据置期間を設けること。なお、被害甚大の地域に対しては、農手借換えの融資措置を講ずること、及び昨年の例に鑑み、経営資金が真にこれを必要とする被災者に行き渡るよう格段の考慮を払うこと。 四、零細農対策の万全を期するため、自作農創設維持資金の大幅増額を行うこと。 五、被害農家の食糧不足するものに対しては、政府手持主要食糧の生産者価格による払下代金延納等の措置を講じ、又昨年災害により払下げを受けたものについても、更に延納の措置を講ずることとし、これによる食管特別会計の損失を一般会計より繰り入れること。 六、被害農家水陸稲、馬鈴薯、雑穀種子等不足のため再生産に支障を来たすものについては、その対価の水陸稲、馬鈴薯二分の一、雑穀三分の二の助成を行うこと。 七、農業災害の甚大なる地域につき実施する救農土木事業、開墾作業等につき所要経費を計上すること、この場合労賃の単価は、概ね内地三百八十円、北海道四百五十円程度とすること。なおこの際、開拓地については優先的に考慮すると共に、積寒法の延長の改正を行い、且つ、山間高冷地における二十町歩以下の小団地土地改良を急速に促進するよう助成措置を講ずること。 八、災害に伴う病害虫防除費については、二十九年度農薬使用額の四分の一を補助するよう所要経費を計上すること。 九、水稲健苗育成及び耕土培養事業の実施に対し、助成措置を強化すること。 十、果樹、樹苗、特用作物等の災害対策として、樹勢回復用肥料代補助金を計上すること。 十一、農業災害補償法による保険金については速かに本払又は概算払を行うこと。概算払を行う場合においては、五〇%以上の被害につきその半額を支払うこと。なお、建物共済の支払保険金不足分につき、融資並に利子補給措置を講ずること。 十二、炭がま設置に対する国庫補助額は概ね千五百基を目途として計上すること。 十三、災害常習地帯の営農形態の転換を促進するため、有畜農家創設資金の増強に努めるとともに、飼料確保のため、飼料種子の対価の三分の二の助成をすることとし、その額は六の中に含むものとする。 十四、被災地の麦類の緊急増産を図るため、石灰硫黄合剤、噴霧器等の助成を含む特別措置を講ずること。 十五、末端農家に対する供出の割当の適正と公平を期すると共に、被害激甚なる地域に対しては、検査規格を緩和し、六等米を設定すること。 本決議中第三項の農林業者に対する経営資金の融資額は百億円を、第二項の農林漁業金融公庫の融資枠は八十億円を夫々下らざるものとし、第五項から第十項まで及び第十二項から第十四項迄の各項の実施に要する財政支出額は八十億円を下らざるよう確保すべきである。 右決議する。  昭和二十九年十月二十一日        衆議院農林委員会  どうぞ御賛成を願います。(拍手)
  144. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま佐藤委員より御提案にかかる、二十九年災害対策に関する件につきまして、何か御発言はありませんか。——別に御発言もないようでありますから、ただいま佐藤君提案の昭和二十九年農林災害冷害を含む)対策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお本件を政府に対し参考送付する一切の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  147. 井出一太郎

    井出委員長 なおこの際小委員会の設置についてお諮りいたします。本年の農林災害対策について、ただいまの本委員会の決議の趣旨を貫徹し、もつて災害対策の万全を期するため、特に小委員十四名よりなる小委員会を設け、その推進をはかりたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  つきましては、小委員及び小委員長の選任の件についてお諮りいたします。これは委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、   足立 篤郎君  小枝 一雄君   田子 一民君  綱島 正興君   佐藤洋之助君  福田 喜東君   松岡 俊三君  伊東 岩男君   吉川 久衛君  井谷 正吉君   芳賀  貢君  川俣 清音君   中村 時雄君  安藤  覺君 を小委員に指名いたします。  なお小委員長には佐藤洋之助君を指名いたします。(拍手)  この際羽田農林政務次官より政府を代表して発言を求められております。これを許します。
  150. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 ただいまの御決議に対して、十分検討し、かつ尊重いたしまして、最善を期してその実現をはかりたいと存じております。(拍手)
  151. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後七時十八分散会