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1954-09-22 第19回国会 衆議院 農林委員会 第71号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月二十二日(水曜日)     午後二時八分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 金子與重郎君    理事 芳賀  貢君 理事 川俣 清音君       田子 一民君    佐藤善一郎君       松岡 俊三君    松野 頼三君       松山 義雄君    吉川 久衛君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       中澤 茂一君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         防衛庁課長         (経理局施設管         理課長)    高田 賢造君         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         農林事務官         (農地局入植課         長)      和栗  博君         農林事務官         (蚕糸局長)  原田  伝君         食糧庁長官   前谷 重夫君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一八二号)  生繭売買契約並びに団体協約に関する件  昭和二十九年産米価に関する件  自衛隊演習用地としての農地買上げに関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議開きます。  まず繭糸価格安定法の一部を改正する法律案を議題といたします。蚕糸に関する小委員長より本案について小委員会における審査の中間報告をされたいとの申出があります。これを許します。佐藤委員長
  3. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 私はこの際蚕糸に関する小委員会中間報告をいたしたいと存じます。  蚕糸に関する小委員会は七月二十日、同二十一日、九月十六日及び本二十二日の四回にわたり、継続審議中の繭糸価格安定法の一部を改正する法律案並びにその関連する事項につき審議をいたしましたので、ここにその経過の大要を御報告申し上げます。  七月二十日の小委員会におきましては、繭糸価格安定法一部改正案の要点でありまする繭取引に関する協定等の問題、公正取引委員会との関係繭価維持のための特別措置等の諸点を中心政府側との間に質疑を行い、翌二十一日の委員会におきましては参考人より意見聴取を行うことといたし、養蚕農民代表として全養連常務理事森山善治郎君、日本生糸販売農業協同組合連合会会長北原金平君、大製糸家代表として日本製糸協会会長代理中島覚衛君、小中製糸家代表として同協会理事小山邦太郎君、また玉糸協会より会長大林正志君学識経験者立場から中央蚕糸協会会長吉田清二君、以上六君の御出席願つて、それぞれの立場より本改正案に対する意見の陳述を聴取いたしました。これら参考人意見につきましては、すでに会議録が御手元へ配付されておりますので、それについてごらんを願いたいと存じます。  さらに去る本月十六日の小委員会におきましては、特に懇談会に移しまして、政府側より昭和三十年度蚕糸局関係予算とりまとめの状況について説明聴取を行い、また蚕糸価格安定資金の運用、生糸並びに玉糸生産価格輸出等について質疑あるいは意見の交換を行いました。  以上三回までの小委員会審議におきまして特に問題となりました点は、次のごとくでございます。  一、現在の価格安定資金三十二億円をもつて、はたして十分に価格安定の目的を達し得るやいなや、はなはだ疑問である。この資金はむしろ少きに失するので、将来繭糸価格安定法を発動して、価格の安定を期するためには、資金をさらに増額すべきであるということ。  二、生糸外貨獲得上重要な輸出品として、その重要性がますます認識せられつつあるが、そのためには養蚕農民が安んじて、かつ喜んで増産できるような積極的な対策を講ずべきであるということ。  三、現在繭の取引については統制はなく、自由取引建前とつているが、実際には検定を受けなければ取引ができないので、完全な自由取引とは言い得ない。また本改正案における団体協約について製糸業者共同行為は、独禁法に抵触するのではないかとの疑義もあり、これらいずれも問題点として検討を要する。またかりに団体協約によつて取引をする場合には、繭代金の支払いについて、製糸家側連帯責任を負うべきであるということ。  四、団体協約による繭共同販売契約内容である水引きの問題、理論掛目根拠となる加工費の分析、理論掛目算出方法代金清算検定並びに供用繭の問題については、種々疑点があり、農民の間にもこれに対する不満が多いので、速急にこれらに対する指導規準を作成して、これが是正をはかるべきであること。  五、かつて製糸家の中には、蚕具肥料等農家経済的不如意につけ込んで、半ば強制的に前渡しをし、価格協定あるいは取引のときに、自己を有利に導くような特約取引とつたことがあつたが、かような特約取引の弊害が再び起らぬよう万全の対策を講ずべきこと。  六、本改正案による農民共同保管に対する乾繭担保資金貸付について、農民自体が組織している乾繭設備だけに限定したのでは、農民自身乾繭設備は僅少なので、その助成の目的を十分に達することはできない。従つて現在の製糸業者設備を利用して、これを合理的に運用せしめる等の具体的方策について検討を行うべきである。  七、繭の販売取引、特に選除繭の問題について検討を加え、全量正量取引の新方式を研究し、その結論を見出すように努力すべきこと。  八、玉糸についても価格安定をはかるべきこと。 等でございます。  次いで本日午前中の小委員会におきましてこれらの問題点につき、引続き慎重なる審議をいたしました。その際金子委員から、これらの問題中速急に解決を要する生繭売買契約並びに団体協約に関する件を本委員会決議といたしたい旨の提案がございました。出席の各委員にお諮りいたしましたるところ、各委員とも異議がございませんでした。委員長においてよろしくおとりはかりをお願い申します。  なお決議案文はお手元にお配りいたしてあります。  以上をもちまして私の報告を終ります。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの佐藤委員長報告にあります生繭売買契約並びに団体協約に関する件は、蚕糸小委員会の案でございます。お手元案文が配付されておりますが、この際これを本委員会決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。  なお本件の取扱いについては、委員長に御一任を願いたいと思いますので、御了承願います。  ちよつと速記をとめて。     〔速記中止
  6. 井出一太郎

  7. 井出一太郎

    井出委員長 引続きこれより米価問題について調査を進めます。昨日の委員会におきまして、本年産米価に関する政府案について説明聴取いたしましたが、本日は農林大臣も見えましたし、なおまた大蔵当局食糧庁長官も引続き出席のはずでありますから、本問題について質疑を行います。川俣清音君。
  8. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんので概要の質問をいたしたいと思います。米価問題については農林省も相当真剣に取組まれたことは一応了承するのでございますが、しかし何といいましても、将来の農業政策の上に大きな影響をもたらすものであることは論をまちません。そこで閣議決定せられましたような、しかもこれを米価審議会に諮問されるような決定で満足できない点が多々ありますので、この観点からお尋ねいたしたいと思うのであります。  第一に、今日のような農業生産が堅持せられて、とにかく今年のような冷害あるいは天候の異変を克服してこれまでの収量を上げつつあるということは、これはもちろん天候の回復にもよりますけれども農民の多大の努力と、この指導の任に当られました人々の熱意の結果であろうと思うのです。それと同時に多大の物量投下せられております。農薬にいたしましても、肥料にいたしましても、またその他の農機具にいたしましても、近年激増いたしております物量投下が、これらの努力と相まつて生産量を維持いたしておると見なければなりませんでしよう。そこで農家経済の大体の動きを見ますと、二十五年から二十六年にかけまして、農業経済は確かに一応好転した傾向を示しておりますが、これが動乱の影響を受けて、農業部門では生産費の値上り、農外部門では労賃の収入がおもな原因であつたのでありますが、農家経済調査の結果によつて全国平均を見ますと、農業所得がふえたとはいいながら、二十七年を頂点といたしまして、農家の好景気は一転機をもたらしているという調査報告が出ております。しかも一戸当りの農家現金支出差引額は前年よりもさらに四百八十一円も少くなり、しかも二十八年の差引額は地域によりまして非常な激減をいたしているわけでございます。しかも一方、農家現金農業支出は、肥料とつてみますと、二十五年一万三千二百六十六円で二十八年には二万四千六十円とはね上つておりますし、また飼料の方も三千二百九十七円から一万八百九十六円、農薬のごときは二十五年が八百六十四円から二千三百三十五円と異常な物量投下量が現われて来ております。これはもちろん価格でありますから物価変動影響もありますけれども、これを除去いたしまして実質額を比較いたしてみましても、年年一割五分ないし一割六、七分の物量増加をいたしているわけであります。これらのものが十分米価において吸収できないといたしますならば、これは再生産確保することができない結果になると思う。ところが一方大蔵省あたりは、農村購買力がある購買力があると言いながら、米価決定するところになりますと、これらの物量が入つているということを見落すおそれがあるのじやないか。私通産省機械課調べてみましても、農業用機械あるいは動力をも含めて、これは年々上昇いたしております。これらはみな農村に吸収されて来ておるはずなんです。従つてこれは消費力が増大したと言うかもしれませんが、主として生産資材が吸収せられておる、つまり消費されておるわけであります。この点を見落すようなことがありますならば、日本農業の再生産はここで停滞をするばかりでなくして、減少するのではないかと見るのであります。また農業用電力利用統計を、同じ農林省の中の改良局経営課調べたところによりましても、異常な消費増大傾向を示しております。脱穀機にいたしましてもあるいはその他の電動機にいたしましても、異常な進歩と申しますか発展を遂げております。これらのものを吸収できる米価でなければならないと思うのでありますが、この点に関して農林大臣の所見を伺いたい。
  9. 保利茂

    保利国務大臣 米価決定の諸要素等についての御意見でございますが、一一ごもつともであろうと存じます。私どもといたしましても、今日全面管理をいたしております米価決定するにあたりましては、まず根本的に考えなければならぬことは、真の経済自立を達成して国家の存立を確保して参りますのは、一にかかかつて食糧増産食糧自給度を向上して参るということが達成されなければ、実際問題として経済自立ということもなかなか困難である。しからばその食糧増産は一体どうして期せられるか。国の財政投融資等による生産手段の改善ということはもとより基本的なことでございますけれども、同時に実際一反歩の収量をより高くしていただくのは、農民各位の汗と力にまつほかはないわけでございますから、従つてその農村各位が、全面管理をいたしている米価に対して、少くとも理解を持つていただかなければ、私は食糧自給度の向上、食糧増生というようなものは事実期待できないというような考え方に立ちまして、それは同時に、ただいまお話のように重要な農産物価格決定にあたりまして、来るべき増産熱意を持つていただけるかどうかというところをねらいとしてきめなければならぬ。それにはとにかく来年の生産にいそしんでいただくという気持を持つてもらうように——言葉をかえて言えば、すなわち再生産確保ということになるわけでありましようが、そういう考え方でとにかく米価決定しなければならぬというような考えで、一応米価審議会に対します諮問原案を作成いたしたような次第であります。
  10. 川俣清音

    川俣委員 実はもう少し具体的にお尋ねしておきたいのですが、大蔵省の側に言わせますと、農村購買力が依然として存続しておる、従つて米価はこの程度でいい、こうも言われまするし、またそうかと思いますると、農家資本投下量現金農業支出の方があまりふえていないと言う。この矛盾した表現が行われておる。はたして今日本でつくつておる農機具を消化できないほど農村購買力がなければないで、またそういう計算もしなければならぬ。購買力が旺盛だということになりますと、現金農業支出認めるということになりまして、それを当然生産費に織り込まなければならないではないか。これは通産省統計を見てごらんなさい。またあなたの方の所管でありますところの改良局経営課統計を見ましても、これは機械化促進のためにいろいろ努力しておる経過をみな説明しておりますが、そういう努力の結果が現われて異常な計数を示しております。これがほんとうだとすれば、これは生産費に当然織り込んで行かなければならぬ。こうした物量確保せられて、投資せられて初めて今日の生産が上つておると見なければならぬ。そうすると、今決定せられようとしておるような米価でこれらのものを償うに足らないという結果になるでありましよう。またそれだけつぎ込んでいないとお認めになるならば、農村においては購買力がない、こう見なければならない。購買力があるんだということになると、現金支出のおもなるものは肥料飼料農薬農機具で約七〇%以上を占めておるのです。むしろ農業被服のようなもの、家計費のようなものは、割合から言うと下つて来ておる。生産資材に重点が置かれて来て、いわゆる家計費の方は切り詰めて来て、今日の生産が上つて来ておるわけであります。これは統計を見れば明らかですよ。だからそれを一体お認めになるのかならないのか。依然として購買力が強いということになると、おもに現金支出というものは生産資材確保のために使われているということになる。それらの資材物量努力が加わつて、今日の生産量が維持されておると見れば、今日の生産量を維持しようとすれば、それらの物量は見て行かなければならないということは何人も肯定せざるを得ない。しかしそれだけの資材投下せられていないと見れば、今日の農村はそれらの物量を使うだけの余力もないということになつて来るであろうと思いますが、大臣はどちらだと思いますか。
  11. 保利茂

    保利国務大臣 米価問題をいろいろ個々の統計をもつて論ずることも、きわめて有益であろうと思います。しかし私は、根本の建前として米価はいかにして立て行くべきであるか、これは過去数年とり来つておりますところのいわゆるパリテイ方式、すなわち農家の売るものと、農家の買い入れるものとの開きを絶えず統計をとりつつ、その変動に応じて価格決定して行くという今日のパリテイ方が、完全だとは申しませんけれども、今日考え得るところでは一番合理的な方法である。人によれば、これは農産物価を押える一つの手段として、こういうことをやつているという、いわばインフレ過程におけるやり口であるというような意見を立てられる方もありますれども、これはそうではなくて、農家経済を保つて行くために農家が買い入れる品物の値段が上れば、農家の売り出す農産物価も上げて行く、下ればそれに応じて下げて行く。この立て方は私は合理的であろうと思います。これはひとり日本がそういう建前とつているわけではなく、特に他の国々においてもこの方式をとられているところから見ましても、最も困難な農産物価格決定方式として、今日まで考えられたところとしては最も合理性の高いものではないかと思うのでございます。しかしながら米の問題につきましては、そのパリテイ指数だけで計算いたしますと、今日の実際の米の需給事情からいたしまして、一面においては相当自由価格をもつて自由取引が行われているという実情を考慮いたし、どうしても消費者のある程度食糧確保をいたしますためにパリテイプラス・アルフアーをつけなければならないのみならず、生産費主義の近来は特に強くなつて来ておりますが、パリテイ主義を是正して参りますために、あるいは物量投下の情勢を把握してこれを補正するとか、あるいは都市と農村消費水準のでこぼこをにらみ合つてこれに補正をいたすとか、いわゆる生産費主義で要請せられるところのパリテイ主義の持つている欠点を是正して、特別加算措置とつている。ただいまお話のような点につきましても、当然その中にそういう意味が含まれていると私は了解をいたすわけであります。そのパリテイ指数からはじき出したパリテイ価格に、特別加算の方はまだ統計的の根拠もあるわけであります。あるいは資本投下の量の増加であるとか、消費水準ギヤツプ差であるとか、これはまだ統計的な基礎があつて、その上にまたプラス・アルフアーとして、これは前国会の御意思により、あるいは奨励金といい、あるいは基本価格といたしましたけれども、ともかくプラス・アルフアを全部今回基本価格に入れまして、一応の基本価格を設定しようといたしているわけでございます。川俣さんが言われるように、どれがどう、どれがこうと言われて来ると、今の八百円なんというものは説明のしようがないんじやないかというものも含まれているわけで、決してお返しをするわけではございませんけれども、そういうことで、大体今回の米価決定しようとするに際しまして考えておりますことはで、きるだけ各種方面——委員会もそうでございますが、各方面の要請にこたえて、できるだけ各種奨励金基本価格の中に織り込んで米価を単純化する方向でやりましたところがせいぜいこの程度でございまして、基本的な考えとしては私どもはそういうふうに考えております。
  12. 川俣清音

    川俣委員 時間がないので私はできるだけ省略いたしますが、今日まで新パリテイ農業パリテイ方式とつて参りましたのは、食管法の三条にいう再生産を償うに足る方式としてパリテイ方式をとりましても、これらの物量投下量から見て行つたものも、あえてそう大した相違がない。相違がないならばこういう計算基礎を持つて行つても一向さしつかえないじやないか、こういうことでわれわれもかつては了承して参つたことは事実です。しかし二十八年の段階から見ますると、これらのものが十分補いがつかないために、いろいろな方便を使われたことも私は認めます。しかしそれではそういう計算方式によらない、いわめるパリテイ方式によつた場合の価格は一体幾らが妥当か、こういう問題にあると思うのです。今硫安価格をきめる場合におきましても、あるいは国鉄料金改訂にいたしましても、あるいは電車料金改訂にいたしましても、電力料金改訂にいたしましても、政府が出します物価指数は最近では日本銀行調べによる——戦前基準としますれば、昭和九年、十年、十一年を基準として一応出しております。これによりますと、いろいろな食糧農産物、あるいは繊維製品化学製品等もありますが、結局生産財あるいは消費財とわけて、私の手元には二十八年の十一月までよりありませんが、この総平均を見ますと、二十八年の九月が三五七・四といたしております。これを今の電力の問題でも、あるいは硫安価格の問題にいたしましても、基準を見る場合にはすべてこれを基準といたしております。政府物価指数をとるときには、一般にこれを基準としている。この基準といわゆる農業パリテイ方式によるものとあまり相違がなければ、私はパリテイ方式をとりましてもあえて異議は言わない。すべての物価はこれをとつていながら、農業パリテイと大きな開きが出て来たときに、これが問題になるわけなんです。この方式によりますと、普通政府が出しておりますほかの物価調べるときにこの数字を使いまして、今年の九月はありませんから、去年の九月の、二十七円十六銭の基準に三五七・四をかけますと、九千七百円を越えます。今年度を見ますと、これが約三七一ばかりになるようでありますから、これで約一万円を突破するのです。また別な方式によりまして、たとえば戦後を基準にいたしまして、二十二年の総平均が五六・六一、二十八年の八月が四一七・〇です。これをかつてきめました二十二年の基本米価は千七百円です。千八百円のときに五六・六一でありまして、それが四一七・〇になりますから、倍率は七・三七になる。千七百円が妥当な数字だといたしますれば、七・三七をかけますと、一万二千五百二十円とあるのであります。これを数字魔術でそうなるということになりますれば、今お使いになつているパリテイもまた数字魔術だということになつて来る。おもに政府物価を推定するのにどつちを使つておるかというと、日銀指数中心にして使つておるようであります。これは大蔵省大臣官房調査課調べによるものでございまするから、私は一応これを信用いたします。これを基準にしてやるとそういう価格が出て来るんです。そろばん違いでないと思いますが——そろばん違いであれば別ですが、私はこれを信用して計算しまするとそういう数字になります。だから物価指数から言うと約一万台だということになるんです。世間に使われておりまする日銀物価指数農業パリテイ指数の大体の方向合つておりますれば、これに近いものでありまするならば、私はあえて異議を言いません。ほかの物価基準にするときにはみんなこれを使つておる。この指数から非常に下つておるから電力料金は上げなければならぬとか、あるいは鉄道運賃はどうだとか、みなこれを基準にしておるじやないですか。どうして米だけはこれを基準にできないんですか。この点をお尋ねしたい。
  13. 前谷重夫

    前谷説明員 お答え申し上げます。物価には御承知のように卸売物価もございますれば、小売物価もございます。消費者の場合におきましては、主として小売物価といたしましてCPIを使つておりますし、農村物価といたしましては御承知のようにパリテイ指数農村小売物価として使用いたしておりまして、価格の形成といたしましては、いろいろ物価の見方と申しますか、それぞれの価格算定方式としていろいろございますが、現在のパリテイ方式小売物価基礎にいたしましております。特に卸と小売との関係においては、承知のようにタイム・ラツグがございまするし、上る場合におきましては卸の方が上りやすく、下る場合は下りやすい。ただいまお話の二十八年の八月と現在とでは、卸売物価も大分違つておるだろうと思います。年初からいたしましても九%程度は落ちておりまするし、卸売物価をもつて判断するという場合と、それから具体的に価格算定方式といたしまして小売物価を使うということが、これは川俣さんも御承知のような従来の方式なつておりまして、卸売物価をもつてただちに米価算定に用いるという考え方は現在いたしておりませんで、小売物価で現実の農家収支関係からいたしまして現金収支考える、こういう意味におきましてパリテイ指数使つておるわけであります。
  14. 川俣清音

    川俣委員 今小売物価でやつていることはわかつているんです。千七百円ときめた旧パリテイ卸売物価指数使つてつたでしよう。前のそろばんはみな間違いだからやめる、払い直しをするというなら別ですよ。今まではこれを使つてつたじやないか。それをただ基準にして見ればこうだというお話なんです。千七百円ときめたときに卸売物価指数使つているんでしよう。新パリテイから小売価格にかわつたんです。そこで比較する上には卸売物価指数を使わなければならないのであえて使つておる。これはあまり差異がなければ私は今問題にしないんです。あなたの調べによると、今年の八月は去年の八月よりも却売物価指数が下つておるというけれども、そんなことはありませんよ。七月までしかありませんけれども、七月は四一七・五で去年の八月より五上つていますよ。ですから私は四一七・五があるかないか、四一一か四一三か、その点についてはあまり問題にしていないんです。大勢はどうなつておるかというと、これらの大勢は実際無視できないんじやないか。無視できないために政府もあえてほかの物価の場合にはこれをお使いになつているんじやないか、こう言つておるんです。この大勢にのつとつておれば、今私はこまかいことを議論しようとは思わないのですが、この大勢と隔たりのできた結果におきましては、どちらをとるべきかという議論が起つて来るのです。今硫安の場合でも、あるいは電力料金の場合でも、農業パリテイのようなパリテイ方式で今出して行つたら、これはおそらく一般が満足しないでしよう、承服しないでしよう。計数の説明が大体これを基準にして説明しておるじやないですか。物価指数はこうなつておるのに、電力料金はこれこれだからもう少し上げる余地があるというようなことを言つておる。あるいは運賃の値上げにつきましても、郵便料金にいたしましても、物価指数はこうなつておるのに、これよりも安いからここまで上げる必要があるといつて、これをみな基準使つております。一般にはこれが使われておるのだから、この方向を大体たどつておりますならば、それより少くてもあえて私は今問題とはいたしません。米以外のときにはこの指数使つていながら——米とこれとが大体似ておるならば、新農業パリテイ方式をお使いになることもあえて異議は言わない。これはその総平均ですからね。消費財生産財の総平均として使われておるのです。一般に最も妥当性のあるものとして政府みずからがお使いになつておるのであるから、これを基準として判定するとそういう結果になる。そういう結果になるとすれば、いまさら八百円を加えました、五百四十何円を加えましたといつてようやく持つて来ても、これのところに行くか行かないかという点なのです。それを加えました加えましたと言つたつて、一般の物価指数からいえばようやくそこの近くまで歩み寄つたという結果でありまして、物量の増大というようなものは、これからいうと見ていないということになる。物価指数から見てようやく九千七百円とかいうところに届いたというだけです。今度は物量投下量の増大、いわゆる現金支出量の増大、肥料投下量の増大、農機具の発展に伴うところの農機具の使用の増大、電力量の使用の増大、電動機の使用の増大が加わつて来なければならないのではないか、こういうのです。それを無視するといわゆる食糧管理法の三条の再生産をまかなうに足る価格決定ではないという判定が下されるのではないか。この点をお尋ねいたします。これは大臣にお尋ねしたい。
  15. 前谷重夫

    前谷説明員 この価格決定方式につきましては、物価指数経済全体として見まする場合に卸をとり、また消費者価格の場合において小売をとり、それぞれの特定の場合におきましては特定のしようがあると思います。ただ御指摘の旧パリテイと新パリテイの問題につきましては、大体過去におきましても新パリテイと旧パリテイとの動きは大体並行して進んでおるように考えております。従いましてある場合に卸売物価をとり、ある場合にパリテイ物価をとる、こういうことはおかしいじやないかというお話でございますが、電力その他の場合におきましては、パリテイ指数のような特定の算定方式をいたしておりません。一般的な物価の趨勢を見る場合におきまして卸売物価使つておる、こういうことなのでございます。それぞれの部面におきまして、その実態に応じました小売物価をとることが妥当じやないかと考えております。
  16. 川俣清音

    川俣委員 私は今小売物価指数をとる方がいいとか、卸売物価指数をとる方がいいとかいうことを言つておるのではないのです。政府生産費計算する場合においては、おもに卸売物価指数をお使いになつておるじやないか。そういう観点から、これを使つて一応算出してみるとこういう結果になる。これとはあまりに隔たりがあるのじやないか、こういうのです。それだけなんですよ。絶対に使えと言つておるのじやないのですよ。政府はすべての生産費を見るときに、往々にしてこれを使つておられるのじやないか。物価の大勢というものはここに出て来ておるのです。小売物価指数の大勢は違うけれども生産費計算する場合においては、おもに卸売物価指数政府がみずからお使いになつておる。その例をとつ計算すると、概略この見当になるのじやないか、こう言つておるのです。この通りになるからといつて、私はこの通りにきめろと言うのじやないのです。物価の大勢はここに来ておる。こういうことを示しておるのじやないか。これはやはり無視できないのじやないか。ここまで来ておるのだから、何を加えた加えたと言つても、ようやくここへ近いところへ来ておるものだから、これは加えたということにはならないで、物価の趨勢からいつてちようどそこへ来ておる。従つてプラスしたとおつしやるけれどもプラスしたのじやなくて、これから物量投下というものをプラスしなければならないのじやないか、こう言うのです。現に閣議だつて、電力料金を上げなければならぬとか、あるいは問題があつた場合に説明するときには、たいていこの統計使つて、これと比較してみてまだ達しない。そこでもう少し値上げの余地があると、政府は必ずこれを基準に使われておるはずです。大臣が首を振つておつても、今経審の説明はみなそうです。そのほかに電力料金の問題については、この投下量の問題がもちろんありますよ。二つの方面から説明されておりまして、コストというものを説明されますけれども、コストを計算すると同時に、この程度の料金値上げをしても、この物価の趨勢から見てまだここに達しないのだから上げる余地がある、こういう説明がなされております。これはあなたが首を振りましても経審長官は大体そういう説明をしております。おそらく閣議でもそういう説明をされておると思う。コスト計算をして、コストではこういう価格になるけれども物価大勢から見ましてもまだここまでに至つていないから、これよりもつと低いから上げる余地があるのだ、こういうことなんです。しかしながら電力料金の場合においては、これは消費者に与える影響が大きいから、できるだけ金利やあるいは税金において上らないようにするという説明はありますけれども物価の趨勢を見る場合には必ずこれをお使いになつておる。ここまで上げなければならぬということにはならぬけれども、こういう価格をきめてもなお物価大勢から見るとまだ達しないからということが、必ず理由についております。どうです。
  17. 保利茂

    保利国務大臣 物価指数のはじき方を卸売物価指数から出して来るか小売物価指数から出して来るかという御議論のようでありますが、むろん卸売物価指数物価の趨勢を把握して参る、経済施策の基本にいたすべきものあることは、またこれは統計も早く集まりますし、その方が便益であることは言うまでもなかろうと私は思います。同時に、しかし農村の実情に合して、農村は何も卸売物価で物を買つておるわけじやありませんから、小売物価で買つておるわけですから、その小売物価で買つている趨勢がどう変じて来ておるかということをとる方が、より実際的ではなかろうかと思います。それはどうでございますか。
  18. 川俣清音

    川俣委員 その通りです。今小売物価指数計算してみましようか、大体同じくなる。これは日本銀行調べ東京小売物価指数です。昭和二十二年の平均が五〇・九、二十八年の九月が三一一・〇です。そうするとこれは約六倍です。千七百円を六倍すると一万二百円となります。だからこれで計算しても一万二百円になる。私は九千七百円がいいか一万二百円がいいか、そういうことを論じておるのじやないのです。一般物価の趨勢がそこへ来ておる。この例に私は出しておるのです。生産財にはおもに卸売物価指数使つており、消費財計算するときにはおもに小売物価指数を使いますから、あえて卸売物価指数を使つただけでありまして、小売物価指数がいいとか卸売物価指数がいいとか、そういうことを今論じておるのじやない。物価の大勢がここに来ておるということを説明しただけです。そういうところから、やはりやみ価格にいたしましても、すべての物価がそこに生れて来るのであるから、これを何としても否定はできないであろうということだけなんです。そこでこの上の物量投下というものをもう一度見るということになりますと、少くとも今政府考えておる以上にやらなければ、再生産をまかなうに足る価格にならないのじやないか。そこで生産が頭打ちするのじやないか。これは統計の方の一面から見ますと、稲作用の農機具がほかの農作物のものよりもむしろ減つて来ておる、こういう説をなす人もあるくらいなんです。そうすると、いよいよもつてこれはほかの農作物の農機具の方に使われ、肥料もまた稲作よりも他の農作物に使われる率が高くなつて参りますと、米の生産が頭打ちするのじやないかということも憂うるために、私はあえてこれを問題にしておる。おわかりだと思うから、御答弁願いたい。
  19. 保利茂

    保利国務大臣 物価の趨勢を把握するにはいろいろの統計がありますが、卸売物価指数をもつて物価の趨勢を把握するという手段も有力な手段として用いられておることはその通りでございます。ただ農産物価をきめます指数をどこでとるか、これは早い話が農村に全然関係のない物価とつてみたところで意味をなさぬことであろうと思います。従つて農村でその日その日買つております農村小売物価がどういうふうな変遷をしておるかということを正確に把握して、そしてそれにマツチする農産物価を設定して行くというところから行きますと、この方が私は妥当だと思います。
  20. 川俣清音

    川俣委員 大臣、ちよつと誤解しておられるのですよ。私は小売物価指数を使うよりも卸売物価指数を使つた方がいいということを言つているのじやないのです。小売物価指数でも大体こういう傾向が出るし、卸売物価指数でもこういう傾向が出る、このことを指摘しておるのです。ではもつと農村関係のあるものということになると、この中に食糧農産物というので出ております。あるいは食料品で出ております。東京の小売物価指数で食料品ということになりますと、むしろ平均の三一一と申し上げたよりもさらに大きくて、五五六・一であります。食料品の物価指数平均よりも高いのです。あるいは卸売物価指数を見ましても、生産財消費財全体の総平均よりも食糧農産物指数はずつと高いです。先ほど二十八年の八月、四一七と申し上げましたが、食糧農産物は四六三・八です。だから私はそういう農産物ではこうなつているからというようなことをとるとあまり大きなものになるから、それをあえてとつてないのです。これはおそらくやみ価格もいくらか入つているのだと思いますけれども、こういう指数が出ておるのです。そこで私は別に大きいのをとろうとかなんとかいうのじやない。最も妥当だという生産財消費財の総平均をとりましたものですらここに来ておる。これが物価の大勢だ。これとあまり隔たる価格をきめると生産が頭打ちするのじやないか、こういうことなんです。様械を買う購買力もなくなる。電力購買力もなくなる。脱穀機の購売力もなくなる。こういうことで生産が頭打ちをするおそれがあるから、これだけのものは大体見て行かないというと、結局生産用材を買い得ないものでありますから、生産の頭打ちになつて、あるいは転作になつて現われたならば、再生産確保できないというおそれが出て来るのではないか、こういうことなんです。われわれは別にここで物価指数論をやつているのではない。大勢がここへ来ているので、これを無視するというと、生産が頭打ちをするのではないかということです。これは憂慮すべき事態だというように大臣考えなければならぬというので、あなたに質問しておるのです。物価の大勢はここへ来ておる。これ以上であれば別ですが、平均物価がそこまで来ておるから、それを無視してそれ以下できめるということになりますと、これらの生産財を使え得ないということになつて、生産の頭打ちをする、生産が伸びない、減産になる、このことを憂慮するのでありますが、大臣どうお考えなつておるか、これなんです。
  21. 保利茂

    保利国務大臣 農村で買い入れます物品の価格趨勢に応じて、米価決定の要素も動かしておるわけで、その点においてはそのおそれはなかろうかと思います。おつしやることは、物価がかなり高いところへ来ておるではないか、それを米価は低いところできめようとしておる、こういうところへ質問を持つて来ようとせられておることであろうと思いますが、私は日本経済全体の中におきまして、決してそういうふうにはなつていないと考えております。
  22. 前谷重夫

    前谷説明員 ちよつと補足して申し上げますが、年間をとつて申し上げますと、たとえば卸売物価は、二十六年を一〇〇といたしますと、二十八年一年で見ますと、一〇一・七になつております。二十五年は二十六年を一〇〇といたしますと、七六・四となつております。パリテイ指数は、二十六年を一〇〇といたしますと、二十八年は一〇五・八ということになつております。それからまたパリテイ指数は二十五年を見ますと、八一・三ということで、卸売物価の期間的なタイムラグはございましようが、年間を通じますと、卸売物価と二十八年一年と二十六年を比べまして変りはないと考えております。
  23. 川俣清音

    川俣委員 これは農業パリテイもまた物価の上りだけを見ておりますことは異論のないところであります。しかしそれだけでは足りないということで、あなた方は物量や八百円を加えてやつたのだけれども、このパリテイは、旧パリテイから新パリテイにかわつたけれども、この新パリテイは一般の物価大勢と見合つていない結果になつて来たので、そういうものを加えなければならない結果になつて来た、こういうことです。あなた方は首を振られたつてそうですよ。一般の物価開きがあるのです。ここに資料がありますが、二十二年千七百円、二十三年三千五百九十五円、二十四年四千二百五十円、二十五年五千四百二十円、この趨勢とこれと大体合つて来ておるのです。二十八年は異常凶作という例外を除きますと、この大勢で行きますと、そこへ来る、こういうことです。これは計算上明らかです。そこで大臣は首を振つておられますが、もし大臣が首を振つておられるとすれば、下僚の説明が悪かつたからそういうことになつたのだ。これを認めない、これは間違つておつたので、ことしのが確かなんだというのであれば別ですが、二十二年も二十三年も幾らか問題はあつたであろうが、ここで大体妥当なものと見れば基本米価です。これはプラス奨励金が加わつておりますが、基本米価を見ますと、大本妥当な——妥当というか、価格が妥当だというのではなくて、物価大勢から見れば大体並行しておるのに、今年になりまして、この大勢と大いに隔たりがあることを問題にしておる。これを否定されるなら別です。ちようど原さんが来られたので、大臣に御勉強を願う意味で原さんに質問をかえます。
  24. 保利茂

    保利国務大臣 パリテイ方式とつておりますのは、全体の農家が買い込む物資の価格変動と、農家が売り出す生産物の売出し価格との調和をはかるという点において拾てがたい合理性があると思うのであります。ところが、それでいろいろパリテイのとり方、扱い方についてはまだ意見が相当あると思います。けれども農家の買入れ価格、売出し価格従つて農家のその経済というものは、それによつて一応再生産確保されるというねらいでこの方式がとられておるわけであります。それでなおかつ足りない、プラスアルフアがついておるのはパリテイ方式が根本的にくずれておるではないかということは何を意味しておるか、それはパリテイだけではいわゆる再生産確保できないからではないか、こういう点には私は少し疑問があると思つております。むしろ私は、この強度の統制をいたしておる関係から、しかも統制を十二分に円滑に運営する状態になつていない、その矛盾がここに現われておるわけでございまして、生産費関係あるいは物価の面からのみこの問題を見ることは必ずしも妥当ではない。要するにこれは食糧管理の悩みが端的にここに現われておるというふうに見ていただくことが妥当ではなかろうかと私は考えておるわけであります。
  25. 川俣清音

    川俣委員 一定の条件が満された上の考慮ということになりまするならば十分大臣説明を了承するのです。あなたは大いに満されておると言いましても、今言つた通り卸売物価指数から見て満されても、この卸売物価指数から見ても同じくらいになるから、満されてもそういう意味の満されたということには必ずしもならないということをるるあなたに説明したのです。それが満されておつて、その上のいろいろの集荷対策やあるいは物量増加ということを別個に幾らか見たということであれば、これはまた別なんですが、そこで私は原さんにちよつとお尋ねするのです。大蔵省は盛んに農村に購売力があると言われております。その購売力というものにはおそらく二つあると思うのです。農業外所得と農業所得と二つあると思いますが、これを合せて購売力があるとおつしやつておられるのであろうと思います。そこで農機具生産量等を大蔵省は把握しておられるでしようし、また農業用電力がどの程度消費されておるかということも把握されておるでしようし、また電力量の基本になりまする電動機の数量が近年非常に増大したということも、これまた電力の問題について非常に関心を持つておる大蔵省が知らざるわけはないと思います。これはおわかりにならなければ、農事用電気需要統計というのが農林省の改良局から出ております。これは各会社別、各府県別に出ております。従いましてこれらの物量が近年とみに増加しておるということは、お認めなつておられると思いますが、この点ひとつ御答弁願いたいと思います。
  26. 原純夫

    ○原説明員 農村の購売力の問題についてお尋ねでございますが、米価決定についてのお話であろうと思いますが、米価決定いたします場合に、購売力があるから押えるという論理を簡単にそのままやつたわけではないのであります。もちろん決定いたします場合に、いろいろな事情の一つとしてそういうことは考えますが、本来農村に一定の購売力を与えればよろしいというような命題は決して正しくないので、それだけで結論を出したのではございません。そういうことを御了解願つておいて、そうして農村購買力、特に緊縮下、いろいろと国民経済全般として悩みの多い現状におきまして、農村と都市というような関係におきましては、何といつても農村の方は、最近の都市における中小企業等の倒産と対比いたしますならば、そういうシヨツクが来ておることは少いというようなことは、これはいろいろな見方がありましようが、まず多くの人がそういうふうに見るのではなかろうかと思うのであります。そういうふうな感じは持つておりますが、今特にそのうちで電力消費あるいは農機具の購買というようなお話がございまうたが、その一々を私調べてどうこう申しておるのではございません。それについては私どもそこまで勉強はいたしておりません。
  27. 川俣清音

    川俣委員 これは都市の購買力農村購買力と比べます場合に、生産資材として使つた購買力と、家計費購買力と二つにわけてみなければ妥当じやないのですよ。これは大きな手違いが来るのです。私はこれは決して議論するために言うのではないのです。御承知でしようが、農業被服というものは、現金支出の比率が二十五年のころは四・六を占めておつたものが、二十八年では三・〇になつておる、それほど家計費といいますか、生計費の方は詰めて行つております。それと同時にいわゆる生産資材であります肥料であるとか、飼料農薬、あるいは大農機具、小農機具、そういうものの比率がかなり増大して来ておるのです。これは一面、通産省の方の農機具生産高をお調べになればおわかりになることです。あるいは農薬の異常な生産量についても、あなた方は税金をとつておられましようから、それからいたしましても、異常な増産なつておりますことも十分おわかりのはずです。それではストツクがあるかというと、ストツクはない。農村の手持ちにストツクがあるかもしれない、あるいは農協の手持ちにストツクがあるかもしれないが、メーカーからは出払つておるものです。これらのものが購買力なつたといいましても、これは生産手段、いわゆる今日の生産を維持するために、あるいは増産するために使われた経費なんです。今年の異常な天候にかかわらず、今日までこれを回復したことは、もちろん天候にもよりますけれども指導者の、あるいは農民自身の克服力によつて保たれておるものです。これらの物量と労働力と勤勉力と相加わつて今日の生産量が保たれておるわけです。これを購買力だとすぐ見ることがはたして妥当であるかどうか。今日の生産を維持するためには、これだけの物量が加わつてようやく保たれておるということなのです。これをお認めになるとしますれば、これからこの購買力を抑えることになりますれば、生産を押えるという結果になる。消費経済を押えるならこれはわかりますけれども、消費経済の比率はだんだん低下して来ている。生産資材が上昇して来て、家計費が下つて来ておるときに、もしも購買力があるからということでこれ以上押えて行くということになりまするならば、生産を押えると同じ結果になると、あなた方は一ぺんでもお考えなつたことがあるかないか、この点をお伺いしたい。
  28. 原純夫

    ○原説明員 ただいまの点は、先ほど申しましたように、購買力がどうであるから米価をどうするというのは直接の議論には入らない。諸般の関連条件として考えるべきことの一つであろうと思いますが、同時にただいま申されたことは、米価決定方式におきましては特別加算の一つになつております。物材投入量の増を見るか見ないかということと関連するように思われるのでありますが、その見地でありますならば、今回の部内で考えました案には入れてございます。ただなお申し上げるのは蛇足であるかどうかはわかりませんが、私どもそこまで至ります前には、相当部内で議論いたしまして、私どもとしては、現在の加算方式には相当問題があるというふうに考えておりますが、今回のところは一応そういうふうにいたしております。
  29. 川俣清音

    川俣委員 問題があるというのはどういう意味ですか。私が今お尋ねしたような、物量投下量と勤勉力と相まつて今日の生産が維持されているということを、一度でもお考えなつたことがあるかないか。そういうことを一度も考慮しないであなた方のいろいろのお考えを出しておられるかどうか、そういうことを一ぺんでも頭のどこかで考えられたことがあるかないか、こういうことを聞いている。
  30. 原純夫

    ○原説明員 非常に考えました。考えて入れてあります。ただそこに問題があると考えましたのは、物材の投入量をふやす、だからふやしただけ経費がよけいかかるというのでよけい払うのならば、物材投入量の増加によつて生じた収獲量の増というものをどう考えるか、それで割らなければいかぬじやないかということが実は部内で議論いたしました場合のわれわれの論理であります。これは一応従来の方式でやりましたことでありますから、ことこまかには申しませんが、ただいま問題と申しました意味は、そういうことももちろんそこは大事なポイントであるとして、抜かしてはならないというポイントとして考えております。
  31. 川俣清音

    川俣委員 一応そこまで考えたことは一年生にまで達したと思うが、ことしのような異常な天候を克服して、現状を維持するということが生産増なんです。あなた方はふえなければ生産増と言わない。災害が起きていよいよもつてだめにならなければ認めない。これを予防したのでそれが減らなかつたのだ、こう見るのは予防のために努力していることを無視することなんです。伝染病が流行して初めて、それならば金を出すというのが今までの大蔵省のやり方なんです。予防した割合に経費をかけないで、労力をかけないで伝染病が発生しなかつたんだから経費を見ないのだというやり方が、往々にして大蔵省考える頭なんです。今年の異常なて天候に対して異常な努力が払われ、官民協力一致して、あらゆる農業団体も力を合せ、政府全体が力を合せて、ようやくこれをここへたどりつかせたものです。もちろん天候の回復にもよりますけれども、もしもこれが今から二十年も前、三十年も前であつたならば、今日のような確保は困難であつたでしよう。これは政府の施策よろしきを得た点ももちろんありましようが、勤勉な農民努力指導者の努力と、全部の力が相まつてようやく今日のようなところにとどめているのです。とどめたんだから、増産なつていない、それだけ資金をつぎ込んだものが増産なつていないじやないかというのですが、これは五十年前、百年前だつたら飢饉です。これを今日まで保つたということは、増産だとお考えにならなければならぬはずだと思う。それからもう一つ、あなたはいろいろなものを見たと言われますが、大蔵省大臣官房調査課で出しておられる日銀の東京卸売物価指数から見まして、二十二年、二十三年の米価に今日の上昇率をかけて参りますと、九千七百円になつたり一万二千円になつたりします。総平均物価指数を見ますというと、そういうことになります。あるいは戦前を基準にいたしましても、小売物価指数を見てやはり同様な結果になります。だから私は、すぐそれで米価算定せいとは言わないけれども物価の趨勢はそこに来ておるんだ。今も農林大臣が話している。大体そこに来ておるのに、新パリテイ方式がそこに来なかつたということで加えたものが、すべて物量投下量を見たり、あるいは八百円を見て、それで十分だという計算はできない。それでは一般の物価態勢にようやく追いついただけだということになつて参りますと、物量投下量の総体というものが、結局において見たと言いながら物価態勢から見れば見ない結果になる。そうなるというと、生産の頭打ちになりはせぬか。この際頭打ちしてもよろしいというなら別でありますが、やみ価格がだんだん下つて来る。やみ価格が下つて参るということは、これは生産の頭打ちと見なければなりません。耕地の転作ということになつて来る。耕地の他の利用ということになつて来る。耕地から宅地の利用になる。あるいは他の作物の利用になるということで、米の生産らか見ると頭打ちになるということになるのではないか。他にその土地を高度に利用するというふうに向いて参りまして、価格を一般の物価態勢よりもさらに押えて参りますというと、その土地を利用して利益を上げるという方向に向かしめる結果になつて、生産が頭打ちになり減産になるのではないか。このことを一ぺんでもお考えなつたことがございますかどうか、この点について……。
  32. 原純夫

    ○原説明員 前段でお話のありました物価のいろんな趨勢によつて、過去のある時期に比率をかけて出すと九千七百円になる。また他の価があるというお話、これは実は先生も御存じの通り、数字というものは基準のとり方、それから伸ばす係数のとり方でいろいろになりますので、たとえば二十五年、二十六年の平均パリテイベースになつておりますものを、パリテイで伸ばしたそのままのもので行けば、はるかに安いものが出るということになりますので、その辺は御議論としておつしやつたのだろうと思うのであります。そして後段を大きくお尋ねのことと思うのでありますが、後段の問題は非常にむずかしい問題で、私ども農林関係の仕事、特に主食関係の問題は、まだまだ勉強しなければいかぬと思つておるのでありますが、確かに主食の確保ということは重要なことでありますから、相当の対価を与えて主食の供給を確保するという線はくずしてはいかぬということは考えます。同時に、ただいまの議論を極端にまで推し進めて、幾ら高くなつてもいいということになりますと、いつも申しますように、いわば国際的には非常に高い主食を食べるというようなことになりますので、その辺はまずまず第一段には米よりも安い主食、たとえば麦とか何とかいうようなものに転換するということが、経済的な論理の向うところであろうと思いますし、なおそれでもあまり国内の食糧生産が外国と比べて高い、一方食糧生産でない用途に土地を使うことが非常に収益が多い、経済的に価値が多いということになりますと、それがあまり圧倒的に違うというとになれば、やはり経済価値の多い方に使つて食糧は輸入するなり何かほかの方法考えるというような力がだんだん強くなるということから、これまたあまり極端になりますとそういうことになりはせぬか、その辺の兼合いは実に大きな政策問題であろうと思つていたので、そこを歯切れよくどつちだとは申しませんが、両面の考慮を加えながら善処して行かなければならないのではないかと考えているわけであります。
  33. 川俣清音

    川俣委員 原次長はいつも考えは全く近いようなことを言うけれども、実際に金を出すというときになると、その考えの六掛とか七掛とかいうことで、かなりしぼつて来るのです。考え通りに行くならば、もう少し、けちなことを言わないで、了解が与えられたかと私は思うのです。あなたの今の説明の通りだとすれば、私はもう少し農業生産について——個々の農実でなく、農業生産について理解のある決定がなされたのではないか、その決定について非常なブレーキをかけておられたのではないか、こう思うのです。時間がありませんから、これで省略しますけれども、これはよほど大蔵当局が全体的に生産をどうしてあげるかということを考えて参らなければならぬと思う。ただ農村購買力があるあるというが、この購買力日本の根底の基礎なつている購買力です。これは消費経済なら別です。家計費で上昇して行くなら別ですが、家計費を切り詰めて行つて生産用材に向いている。今日の農薬にいたしましてもそうです。日本機械工業が行き詰まつてるときの打開策は、農機具だけにたよつているじやないですか。日本機械工業は、今では農機具に依存している。これを消費しているのが農村であり、しかもこれが米の生産に寄与している。これを押えて行くということになると、単に農民を押えたばかりでなくして、結果的には日本機械工業をも押えるという結果になるのではないか。もう一つは、これは農産物の国際競争をさせるということになつたならば、外国には安い硫安を出さないことです。安い硫安を出して、そうして安くつくらしたものと、国内で高い肥料を使わせて、それを競争さすということは、これは無理です。国内の原料を安くして、そうして、競争させるならいいけれども、国内では高い肥料を買わしておいて、出血輸出をして、そうして安くできたらそれと競争せいということは、これは大きな矛盾です。このことも考慮されまして、今日の大蔵省農林省決定米価については不服であるということを申し上げて、私の質問は大体終つておきます。また別な機会に譲りますから、そのときまでに御勉強置き願いたい。
  34. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿覺君。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に、最初本年度産米価格問題との関連において、二十八年産米の、バツク・ペイの問題についてお伺いいたしたい。先日の農林、大蔵両省の折衝によつて、伝えられるところによると、昨年産米については二百五円を決定し、追払いをするということでありますが、事実であるかどうか、事実とすれば、その二百五円の決定根拠は何であるのか、また二百五円はいつどのようにして支払いをするのか、具体的にまず伺いたい。
  36. 保利茂

    保利国務大臣 バツク・ペイを二十八年産米について、石当り二百五円支払うということは決定をいたしております。従いまして事務手続が完了次第支払えることと存じております。できるだけ早く支払うように、事務当局に御勉強願うつもりであります。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 私ども計算によると、二百三十二円になるように存ずるのであります。今までのバツク・ペイの大蔵対農林省の折衝を見ておりますと、大蔵省は義務供出量についてのみ支払うべしという主張をとられ、農林省は供出全量にこれを適用すべきであるということを主張せられて、相当折衝があつたやに私ども聞いておりますが、二百三十二円は、当初農林省もその主張であつたように私どもは見ております。これが二百五円に切下げられたその根拠は一体何であるか。また義務供出量全量についてのみ支払われるのであるか、あるいは昨年の供出全数量に対して支払われるのであるか、もう少し具体的にお知らせを願いたい。
  38. 保利茂

    保利国務大臣 このバツク・ペイの問題が取上げられるようになりまして、内部的に議論がありましたことは事実であります。と申しますことは、今日の米価パリテイ・オンリーできまつておれば、これはもう機械的に問題ないわけでございますけれどもパリテイプラス何々、プラス何々というアルフアーがずいぶん重なり合つて来ておるわけですから、従つてそのパリテイだけで決定しておる場合に考えられない議論がいろいろ出るのは当然だと思うわけでございます。しかしながら、昨年の米価決定にあたりまして、このパリテイ指数変動いたした場合にはその措置を講ずるというお約束になつておるわけでございますから、そのお約束に基いて全量にお支払いをする、大蔵省が何も義務供出だけにと初めから主張しておつたというようなことは私は聞いておりません。つまり問題は、米価の構成がパリテイだけでないから、いろいろそこから議論が出ておるということでありまして、支払う分は、義務供出のみでなく全量についてお支払いをするということでございます。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点、来月の中旬に本年産米の割当会議が開かれるように仄聞しておりまするが、割当前にこのバツク・ペイはお支払いになりますかどうか。できるだけ速急にということでありますが、従来からもそういうことを聞いておりますが、その点もう少し——諸般の準備が完了次第というのはどういうことでしようか、別に疑うわけではありませんが、いつごろになるかということを、もう少し事務的に御答弁願いたい。
  40. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいま大臣が申し上げましたように、できるだけ早くいたしたい。これは現在政府の支出予算の関係もございますので、それによりまして、末端の方に対しまして個人別の超過供出、義務供出、この全体の供出数量をまとめさせております。いつでも支払われるような態勢になりますれば、ただちに払いたい。特に割当会議を控えて、割当会議の後に払う、そういう気持は毛頭ございません。これはもう事務のでき次第ただちに支払いたい、かように考えております。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 割当会議前に支払うということでありますが、供出全量というのは幾らになりますか。
  42. 前谷重夫

    前谷説明員 正確に記憶いたしておりませんが、大体二千五十六万石でしたか、四万石でしたか、そういう数字になろうと思います。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員 三百五円の決定根拠は何でありますか。今大臣は、パリテイパリテイであるが、複雑な特別加算とか奨励金というようなものが加わつておるのでこういう数字になる、というようなあいまいな御答弁でありますが、専門家として長官から、二百五円というものはどういう数字から出ておるという根拠を……。
  44. 前谷重夫

    前谷説明員 七千七百円をパリテイ指数でやりますと二百三十二円になるということは御了承の通りであります。七千七百円にいたします場合に、パリテイ指数にいたしますと二十五円の切上げをいたしておりますパリテイ指数そのものと、特別加算をいたしますと七千六百七十五円ということになりますので、この二十五円の切上げがございますし、減収加算の場合におきましても、五百五十五円の計算をいたしますと、五百五十三円になりまして、それを五円と切上げましたので、二十七円の切上げました分を差引いた、こういうことであります。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは大臣が今どこかへお出かけのようですから、大蔵省の原主計局次長に伺いたい。大蔵省が本年の産米価決定に当つてとられた方針は、消費者米価は上げない、財政負担の増額は認めない、これを基本原則としてデフレ政策堅持の緊縮財政の建前に立たれたと私ども承知しておるのでありますが、昨年の米価は本年同様パリテイを基本として、諸般の事情を勘案されて決定されている。また本年の麦につきましても大蔵省は、最後には自由党政調会の折衝によつて決が下されたのでありますが、その際においてもパリテイによつて行われておる。他の要素はいろいろありますが、少くとも今の政府の米麦価決定中心パリテイ方式であるということだけは間違いないようであります。そういう点から昨年のパリテイと本年八月のパリテイを比較にとつてみまするならば、六・〇四は確かに数字の上において上つております。これは御承知の通りでありますが、一般の農業用生産財並びに経済用品の値上りがこのパリテイの上昇になつておることはもういなめない事実であろうと思います。にもかかわらず、昨年産米についてただいまお話のありました二百五円の追加払いを加えますならば、昨年産米の凶作加算五百五十五円を差引きましても、なお農家の手取りが、先ほどの追加払いを加えた場合は石当り五百五十八円、追加払いを加えないときは三百五十三円と大幅に値下げをされるということは、一体どういう計算から出るものでありますか。あなた方の最も良心的でなけらねばならないパリテイを、麦価のときにあそこまで主張された農林、大蔵両省も、その点において本年産麦価の決定に当られたことはもう周知の事実であります。それに若干のプラス・アルフアーを加えられただけであつて、大裸麦を、去年の公約からいえば当然上げなければならないものをこれを下げて、小麦を逆に上げられた。これは主としてパリテイをお考えなつたことからで、価格政策としては実にまずい最悪の価格決定をなされたことは御承知の通りである。ところが今年の米価に限つて、パリテイが明らかに六・〇四上つておるということを基本にして認めておきながら、凶作加算は特殊なものでありますから、私どもこれをしも出せということは今の場合申しませんが、それを除いたものでも三百五十三円、追払いを二百五円パリテイ中心にして認められたということは、今農林大臣食糧庁長官も言明されたゆえんでありますが、それを加えて五百五十八円も下げられたということは、一体どういうことでありますか。これはまつた意味もなさない価格決定といわなければならないと思いますが、大蔵省の理論的根拠は一体何でありますか、原さんに伺いたい。
  46. 原純夫

    ○原説明員 実はいろいろ部内で、御承知の通りはげしい議論をいたしまして、相当の時間がかかつたことは事実であります。その間われわれの意見が新聞紙上に出たというところからのお尋ねだろうと思いますが、政府は先般これを部内調整いたしまして結論を得たわけでありますので、ただいまの御質問は本委員会の御質問としては政府全般にしていただく、そしてこれは農林大臣からお答えいただくのが筋であろうと思います。従いまして実はお答えを御遠慮したいのでありますけれども、せつかくのお尋ねでありますから、まとまる前にいろいろ議論をした事柄が、どういうような考え方であつたかという意味において、簡単に申し上げたいと思います。パリテイ米価を支配する非常に大きなポイントである、いわばもう一番大事なポイントであるというのは全然同感であります。そうしてこの点は十分尊重して、基本米価は昨年に比べて相当上つております。八百円という額も基本米価に組み入れるというようなことで、形式的に申し上げますれば驚くべき上昇です。それから八百円をのけましても相当上つておる。それに加わつたいろいろなものにつきましては、減収加算については足鹿先生のお話の通り去年の暮に組み入れておる。そうしますと残りは早場及び超過供出の奨励金の問題になるわけでございますが、これにつきましてもわれわれは、昨年のまれに見るああいう非常なる凶作状態において、食糧管理というものが往年の強い形では行われ得ない、やはり価格といわば見合いで供出が決定されるという事態においては、昨年の各種奨励金の出方は平常の出方ではないとわれわれは考えております。これは当初考えました超過供出の割合が、供出の会議農林省が苦心さんたんの末おまとめになつたところでは、率直にわれわれ実に驚いたような義務供出の減少、超過供出の増加ということになりまして、従いまして超過供出の総平均の石当り額なども相当ふえております。こういうようなものを通常のノーマルなものとして、本年度米価決定基礎にするのはよろしくないということをいろいろ申し上げたわけであります。そういうようなわけで、基本米価においてはパリテイは十分尊重してある。奨励金の段階では、やはり昨年と今年との昨柄の大きな違いというような基本的な条件の差違によつていろいろ力が働くというのは、考えていただかなくちやいかぬのじやないかというようなことが、当時ありました議論においてわれわれが申したことでありまするが、いろいろはげしく議論しました結果、政府としてはまとまつてこういう結論を出しておりますので、お答え申すわけであります。
  47. 足鹿覺

    足鹿委員 私の聞いておりますのは、パリテイのいい悪いということについてここで別に賛否を計つておるわけではない。要するにパリテイというのは、しばしば申し上げておりますように、均衡価格を出す一つの方式にすぎない。要するにパリテイ計算によつては豊凶の差も出て来ない。生産力の増大あるいは減退ということについても何らパリテイは答えを出さない。そこに生産者団体なりあるいは純学識経験者である人々の間にも、パリテイが真に農産物価格決定の最上の方法とは言えない、再生産を保障し得る真の価格を算出することはむずかしいという議論が起きており、米価審議会においても三つの算式が出されておるのです。ですからパリテイ自体を純粋な意味から言いますならば、パリテイ方式自体は生産費方式にもとつておりますから、私どもは反対であります。反対でありますが、現にあなた方が一つの国の方針としてとつておいでになるのでありますから、それはそれとして今ここで私は議論をいたしておるのであります。要するに物価の均衡を得る、農産物と他物価との均衡をはかつて行くというのが今の政府価格決定の基本なんでしよう。とするならば、農業用生産資材農家家計費が六・〇四%も上つており、農家の支出が増大しておるにもかかわらず、昨年よりも農家の手取りが相対的に石当り五百五十八円も減るということは均衡を得ていない証拠じやないですか。純粋のパリテイ議論じやないのです。パリテイの本質は何か、これは均衡にある。五百五十八円も著しく均衡を割るような米価の算式自体が農民を愚弄するものじやないかということを私は承りたいのです。この点について大蔵省はどういう御所見を持つておいでになりますか。パリテイというのは一体どういうものでありますか。私の今言つたことは間違いでありますか。物価の均衡をはかることがパリテイの本質とするならば、少くともその指数が六・〇四も上つているならば、相対的に農家経済支出、家計費支出は増加しておる。従つてこれに見合うべきところの米価というものがきめられて行かなければならぬ。これは当然じやないですか。だから私は昨年の異常なものを根拠にしてやりなさいとは言つておりません。昨年の異常な状態に即応するためには、米価審議会の要請をいれられて、十分ではなかつたが五百五十五円というものを加えられておる。だから私はそれを今論外に置いておる、それを入れたのではとても今論になりませんから。それを差引いたものでも石当り三百五十三円減る。今パリテイに基いて追払いを政府がやることを御決意になつたのを加えるならば五百五十八円も減じておるということは、均衡を非常に破つていることになりはしませんか。しかも一方において独占価格が横行して、最近における生乳の状態、あるいは今難航しておる肥料の問題、あるいは電力料金の問題等、ほとんど一つの自由競争の段階を隔てて、私益追求の立場から一つの独占的な企業の協定の傾向が横行しておるときに、そしてその利益が保障されておるときに、農民のみが何ゆえにこの均衡の原理を破られて、少々ならこれはまだがまんしろということも言えますが、石当り五百五十八円も大きく均衡が破られるということに対してどう回答されますか。これは学問的にも財政的にも——あなた方は財政で常に御苦労になつておるわけなんであります。金銭についてはごまかしを許さないのです。そういう厳密な仕事をしておられる財務当局として、一方においてそういう独占的な傾向によつて価格が構成されつつあるときに、この比較的正直に出ておるパリテイすらも破つて行かなければならぬというその趣旨が、私どもには了解がつかないのです。これを何と解明されるか、それを私は承りたい。政府全体と言われますが、これは大蔵省農林省が妥協によつて米価審議会諮問原案をおつくりになり、その基本は大蔵省の主張に農林省が屈服しているのでありますから、大蔵省の実権者である原さんから聞くのは、私はあえて筋が違つておらないと思うのです。あなたから聞きたい。
  48. 原純夫

    ○原説明員 ただいまお話のありました点、昨年の米価減収加算金は別でよろしいが、それをのけたものよりも下るのはどうだという御気分としての御意見としては、そういう感じを持たれる方もいろいろ多数おありになるだろうと思いますが(足鹿委員「気分とは何ですか、現実です。」と呼ぶ)私が申し上げておりますのは、今ちようどその減収加算は別に置くとおつしやつたのと同じ論理がそこに働くのだということを申し上げてるわけでございます。と言いますのは、この早場米、超過供出、こういうものは、先ほど申したように、昨年の凶作という条件の上に、率直に申せば、もう当初の予想をはるかにたがう巨額な支出になつたわけであります。これは正常でないのであります。そして減収加算は正常でない、凶作だつたんだから、これは別にしようという論理は、やはり凶作の上に供出していただくというわけでああいう奨励金が非常に出たという点が特殊な事情であつた、これは別に置こうというところまで来られなければおかしいのではないかという考えであります。そういう考えで、基本米価についてはわれわれはちやんと延ばしてあるわけであります。しかし、それに乗つかる各種奨励金はもつと締めていただきたいというふうにお願いし、そしてそういうことを農林省側もお考えなつて、話が最終案のところにまとまつて来たということなんであります。
  49. 足鹿覺

    足鹿委員 これは水かけ論みたいになりますけれども、私の今言つておることは、私は間違いないと思うのです。凶作加算については私は一応論外に置くということは、良心的に議論をしようと思うからなんです。今あなたは、異常な早場米供出奨励金が百四十四億になつた、あるいは超過供出奨励金が予定よりも倍になつたということを言われますが、そのこと自体は、昨年のような凶作の際にも国民が安んじて食糧の点については不安なしに食べて行けたという大きな収穫があるのです、それは当然なんです。国が統制を続けておる限りにおきましては、農民が大きな犠牲を受けておる場合に、国がその程度の犠牲を払わずして統制が強行できるなんという考えは、私は間違いだと申すのです。これは当然なことなんです。であるがゆえに、きよういただいたこの数字によりましても、一応早場米供出奨励金においては、九月二十日までの分だけが二千円で、事実上あとにおいては大幅に期間を短縮し、その金額の幅も縮めておられます。また超過供出奨励金は結局千四百六十円と一応見ておられるようでありますが、これは単価に超過供出量をかけたものを総供出量で除したものを一つの目標にしておられますから、二百数十円という少額のものに縮まつております。昨年よりも著しく削つてあるのです。ですから、あなた方の言われる以上にことしの米価の上において出ておるのです。今あなたの言われることは、私の質問に対する答弁にはならない、そういうふうに思うのです。要するに、麦の場合でもパリテイ、米の場合でもパリテイパリテイがかくのごとく上昇しておるときに、農民の総体的な受取金額がかくのごとく減るということは、結局農民が今までデフレの圏外にあつたのだ、この農民がデフレの圏外におつたことについては、今まで農民がもうけ過ぎておつた、これを今度から少し削つて行かなければならないという大蔵省の基本の考え方に立つておられるものだ、私どもは大体そういうふうに感じております。そういう考え方自体が、先ほどから同僚委員からも言われましたが、非常に間違いだと私は思う。物の統制をしておきながら、国が一文の負担もしないで統制なんかできつこありません。統制をするということは、国が責任を持つて農民にも消費者にも食糧の問題を解決するということでありますから、国の負担なしに統制ができるはずはない。今の大蔵省考え方から行けば、一文も国の負担は受けたくないということでありますならば、今年の米価決定の背景というものは、少くとも統制撤廃を来年度からするという前提に立つておやりになつているのであるかどうか。これは大蔵省並びに農林大臣からそれぞれひとつこの際御所見を承つておきたい。今日の米価決定を見ておりますと、何か、やみ価格を一万四千円と一応見る、年間平均やみ価格を一万四千円と見て、そうして本年の農家手取額との差額を超過供出奨励金と見て、ここにやみ価格農家手取額との接近をはかつて、いわゆる統制撤廃の条件を整備して行くような考え方の上に米価決定されたというような印象を多分に私どもは受けるのでありますが、統制は来年度も堅持して行く所存であるかどうか、本年の米価決定は統制撤廃の一つの前提として考えられておるのかどうか、換言すればそういうことでありますが、御答弁願いたい。
  50. 保利茂

    保利国務大臣 足鹿さんのだんだんの御意見、御質問を伺つておりまして、私として一応了解をいただきたい点は、去年の農家の手取額よりもかなり下まわつて来るのじやないか。これは数字の問題でございますから、いかなる陳弁をいたしましても無用であろうかと思いますが、ただ、昨年の米価決定いたしまするときに想定いたしました事情は——これは、今日供出一本価格なつておりませんために、もろもろの奨励金がついておりますために、義務供出、超過供出の割合を度外視しては想定ができないわけなんです。昨年の米価決定にあたりまして供出の一応想定いたしましたのは、二千五百五十万石総量として集荷をいたしたい、そのうち二千百万石を義務供出で出してもらいたい、四百五十万石を超過供出で集荷をするという想定に立つて米価決定つたわけであります。これはむろん私どもの大きな見込み違いが結果においてできたわけですから、その点につきましては私どもとしてまことに恐縮には存じますけれども、しかしながら、異常の相次いで起りました災害、特に冷害の深刻さと十三号台風の徹底的な打撃によりまして異常な凶作様相を呈しまして、この集荷目標を訂正せざるを得ない状態に陥つたわけであります。まさに昨年の今ごろから食糧危機という状態に追い込まれたわけであります。従いましていかにかしてこの国民食糧確保して行こうという上からいたしまして、凶作下の農村に供出を強く要請して参りますためには、まずいろいろ早場とか早期とか言いますけれども、これも困難な農家から供出を願うわけですし、しかも食糧事情は刻々悪化をして来ておる際でありますから、早場奨励におきましても、各期三割増の奨励金を付するというような、しかも供出割合も義務供出が千四百万石、超過供出が七百万石というような状態に変更をせざるを得ない。供出集荷の上に混乱を起しましたと同時に、価格上の大混乱を引起しておるわけでございますが、当初二千五百五十万石の集荷目標を出して想定しました手取りは、九千三百九十円ぐらいになつておろうかと思います。それに見合います本年の集荷目標を大体二千六百万石といたし、二千百万石を義務供出、五百万石を超過供出と想定いたしまして立てておりまする一応の諮問案は、九千五百円弱になろうかと思うわけであります。この点は全般の昨年の日本経済の実際の状況からいたしまして、また一年を経過いたしました今日の日本経済全体の情勢から見ましても、全農家の方々の御理解をいただける価格ではないか、少くも昨年の異常の状態をそののまま続けることが困難であるということ、また妥当を欠くということは、農民諸君も十分了解をしていただけるところではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。なお今年の米価決定するにあたりまして、統制をはずすということを前提としてこういう案を考えておるか。お話のように一万四百円云々ということでございますけれども、一万四百円がやみの平均価格だというようなそんな見通しは、私は立て得ないと思つております。ただ早場奨励といい、超過奨励といい、これはよつて計算する基準というものはないと存じます。従いまして、これはおよその腰だめでつけるわけでありますが、超過の分としましては、一昨年以来大体一万四百円、政府がとにかく買い入れる最高の支払うものとしては一万四百円というわけでございますから、これがやみ価格と合致するか合致しないかは、全然別個の問題だろうと存じます。従つてそこに持つて行きましたからといつて、統制撤廃を前提としてこの価格をつくつておるという考えは私にはございません。そういうふうに御了承願いたいと思います。
  51. 原純夫

    ○原説明員 私からこの問題は答弁を差控えさしていただいた方がいいと思います。あまりにも大きな問題でありまするし、ただいま農林大臣から御意見があつたところでありますから……。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員 次に伺いたいのは、およそ農産物価格、特に日本の場合には、その大宗である米価を下げるという重大事を決行せんとするときには、下げるにふさわしい条件がなければならない、合理的な条件というものがなければならないと思います。大蔵省の今までとつておりますことは、農業を私企業と見て、生産費の一部を補助するというようなことはおもしろくないというので、ことしは温床紙の補助金もあなた方は予算の中から切り落しておる。農薬の補助金も大幅に切り落しておる。あるいは食糧増産の基本ともいうべき土地改良の公共事業費も大幅にこれを切り落しておる。災害復旧も、その補助率その他について大幅の削減をしておる。こういう一連の施策を見ておりますと、コスト引下げの点について、国は何ら本年の予算の上においては積極的な意思を持たず、具体的な施策を講じておらないはずなんです。これは予算の上における事実でありますから、これはお認めにならざるを得ないと思う。そして一方においてそういう施策を講じておきながら、ただ農民努力と、天候が比較的恵まれておつたという理由によつて、去年よりも相当上まわつた生産が行われると、今度は価格を減じて、総体の農村所得が減じないという政治的米価をつくつて行くということは、合理的な価格の引下げではないじやないですか。物価の合理的価格の引下げということは、前提としてコストが下つて行かなければならないのです。今肥料審議会等で問題になつております生産者の最高販売価格は、これもコストの問題なんです。現在電力料金の値上げが企画されんとしておりますが、これもコストが中心にはじき出されんとしておる。こういうものに対して大蔵省は何ら対策をとらないで、独占資本やこういう強力な資本に対しては何ら抵抗を加えずして、むしろこれを助長しておきながら、微力な団結することを知らない農民の零細な農産物については、冷酷無残な措置をとるということは、まつたく私どもは理解できない。今年の米価を下げるに足るコスト引下げの条件は、一体どういう条件がありますか。それを私は大蔵当局に伺いたい。
  53. 原純夫

    ○原説明員 まず農業生産の増強につきましてのわれわれの熱意について、疑問を投げかけられましたが、われわれは生産増強に関して熱意を持たないのではございません。これはただいまお話のありましたもののうち、土地改良につきましては、昨年に比べてむしろ増加いたしております。減少とおつしやつたのは間違いであります。それから災害につきましては、非常にしぼつたということは事実でありますが、そのしぼつた元は、査定が実地におやりになれば減つて来るであろうということを前提としてしぼつたのであります。しぼつた割合は、農業関係は約四割をしぼつて、六割にいたしたつもりでおりますが、これはその後の実績においては、われわれの見当がおおむね正しかつたというふうに考えております。温床苗しろ及び農薬関係においては、これはいろいろと意見の対立があるところで、ただいま言われましたようなわれわれの意見で削るという考えでおりますが、われわれといたしましても、これらのもの等でも奨励の段階においては出すというような線は捨てておらないが、全部といいますか、非常に普及して参るというような事態、もう農薬などは農業の当然の営みとしてかけるというような色彩にだんだんなつて来ておるというようなことから、ああいう態度をとつておるということを申し上げておきたいと思います。そこでコストを下げる方法はどうかというお話でありますが、これも私からお私えするのは非常におこがましいわけで、農林行政の一番根幹的な問題であり、農林省が毎年予算を使い、その他あらゆる苦心をしておられるのも、一にコストを下げて増産をするということにあるものと考えております。そうしてそれにわれわれが予算の裏打ちをいたすということで、政府があらゆる力を尽してやつておるというふうに私は考えておりますので、コストを下げるについて何もやつておらぬということはないと思うのであります。大いにやつておるつもりなのであります。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員 そんな今のあなたの答弁では、話にならないと私は思うのです。私は何も努力しておらぬとは言つておらない。それは政府もそのくらいのことは何かしているでしよう。しているけれども、今言つたような物価を引下げて行くという建前に立つておることは国民ひとしく何人も異存はないでしよう。私といえども別にそれに対しては異存はない。ただ物価を引下げて行くことのためには、いわゆる生産費が下つて行く、その条件が整備されて来て、初めてコストが下るということになるのです。農業の場合は、年間に十回も二十回も資本の回転をして行くような他の鉱工業と違つて、年間一ぺんの資本回転というのろい原始産業なんです。従つて今あなた方はデフレデフレ、緊縮々々と言つておりますが、あなた方がデフレ政策をやつてその効果が緒につこうというときに今米価がきまろうとしておるが、投下した物量生産財というものは、まだデフレ政策の出発にもならないときにすでに仕込んでおるのです。生産財投下しておるのです。労力といい費用といいすべてのものが投下されておる。そこに、普通の鉱工業の場合と生産の状況というものが著しく相違しておるというのが、農業の場合の特殊事情の一つであろうと思う。そういう点についてあなた方は十分の理解を持つておらない。ただデフレーシヨン政策だ、緊縮政策だという立場に立つて物事を一律に判断して行かれようとする傾向が非常に強い。そこに私ども大蔵省の犯しておる大きなあやまちを見るのです。それを今私は指摘しておるわけなんです。そこで政府は、今この後進産業に対して補助金政策あるいは奨励金政策、あるいは助成政策というものを大幅に取上げて今日までやつて来た。それがすなわち言葉をかえて言うならば食糧増産の基本方策であり、食糧増産をして行くということは、一定の地域から絶対量がふえて行くことでありますから、結局コストが下るということになる。その基本的な条件には大きな斧鉞を加えておきながら、しかもさらにまた金でこれを締めて行くということは、結局農村はどうなつてもいい、要するにMSAで小麦も入つて来る、外国の米もその他の食料品も安くなつて、だんだん過剰傾向なつて来るから、最後の場合には外国の食糧に依存してもさしつかえない、別に国内の米多に依存しなくてもいい。こういう何か漠然とした、あなた方に外国食糧依存の傾向が強いから、こういうようは去年よりも一千円近い大幅値下げというような大それたことがやられたのだろうと私は思う。事実今あなたが言つているように、農薬の補助金は生産費の一部だから、こういうものまで補助することは当らない、こう言つたでしよう。もしそれがほんとうならば、そのために今年は反当一人役の投下労働量がふえておるのです。これは権威ある農業団体の調べたものでありますが、平均二十一人役のものが今年は二十二人役かかつておる。それは農家が夜を日に継いで農薬その他の散布に投じたところの労働の投下量がふえていることを意味しておる。それがやはり一面においてはパリテイ関係等にも影響して物財の投下量農薬等の投下の増大に反映してそういう数字が出て来ている、パリテイというものに反映して来ている、それをも無視する。一体どうすれば日本農村というものは今後やつて行けるのか。自由党の政調会が先般発表した食糧自給計画案なるものを見ると、もう昭和三十二年までに輸入食糧を半減すると言つておる。半減どころか、今のような政策で行くならば、半減なんかできやしません。何ができるものですか。ますます外麦あるいは外米に対する依存を強化して行く以外に私はあり得ないと思います。農民増産意欲というものをまつたく無視し、抹殺したむちやな価格政策といわなければなりません。これは価格政策のみならず、増産の基本的な諸条件というものをまつたく無視した暴挙であると私どもは言いたい。要するに、これ以上は議論になりますから多くは申しませんが、ことしの場合、何らコストを下げるだけの基礎的諸条件なしに、農村にデフレの一つのおつき合いをさせて行かなければならないという考え方から大幅に米価を引下げた根拠というものは、農民も一般の農業団体も生産者もその他の人も、まつたく了解しておらない。現に大蔵、農林両省の折衝の発表を新聞で見たときに、日本の財界だけが今度の米価決定に対して双手をあげて賛成しておる。またそれを代弁する一部の言論機関のみが賛成して、真に心ある言論人や識者は、こういう暴挙について憂えております。このことだけは申し上げておきたい。まつたく理論も根拠もない腰だめ米価である。しかもその中心は、財政上の実権を握つておることをいい気になつておる大蔵官僚の専横から、こういう事態が起きておる、農林省も真に職を賭して闘うだけの信念を持つておらないことも一つの原因でありましようが、いわゆる予算の編成権というものをたてにとつて、このような暴挙をやつた大蔵官僚の上に乗つかつた大蔵大臣の無定見から、こういうことが来ておると私は断定したい。それについてこれ以上は申し上げませんが、このような米価に対して衆議院農林委員会は満足いたしておりません。去る九月十五日の本委員会は、全員をもつて具体的には本年産米について数字をあげておりませんが、私どもとしては、この政府決定には反対を意味する内容の決議を長文にわたつて行つておる。そのわれわれの意思とはまつたく違うことである。今後私どもは、他の与党諸君にもよくこの事実を御認識願つて、来るべき米価審議会等に際しては、十分衆議院農林委員会決議の実現のために協力を願いたいということをあわせて申し上げて、これ以上は議論になりますから、質疑を打切ります。
  55. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員長代理 久保田豊君。
  56. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ことしの米価決定については農林、大蔵ともに非常にお骨折りのようですが、ただいま同僚足鹿委員からお話がありました通り、おそらく全国の農民もこれには満足いたしておりません、大きな不満を持つております。おそらくその結果は、はつきりここで申し上げておきますが、ことしのいわゆる農林省の集荷計画というものは、根本からくつがえるということをはつきり御認識の上でもつてかかつていただきたいと思う。これをまず第一に申し上げたい。こんなべらぼうな米価決定のやり方はないと思うのです。そこでことしのうちに特に私どもが重要視しなければならぬ点を一、二お伺いしたいと思う。大体大蔵省は当初から、いわゆる消費米価は上げない——これは低賃金政策の裏打ちをしようという観点から、消費米価は絶対に上げないということ、財政支出をやらないということ、この二点を中心にして、しかもこれはざつくばらんに言つて、農林省が押し切られた感じがいたします。はつきりこれは押し切られている。大体最初から農林当局といたしましても、九千九百幾らというふうな、前年度の米価から減収加算、凶作加算だけを除いた価格でもつて交渉に乗り出したという点に根本の間偉いがありはせぬか。これは農林当局として根本に御反省をいただきたいと思う。特にさつきからいろいろお話がありましたが、パリテイ方式については、大臣もこれは今日の段階においでは最も合理性のあるものだ、こうおつしやつている。しかしそれだけではいけないから生産コスト主義を加味して、それにプラス・アルフアーということになつている。こういうふうな説明をされておりますが、パリテイ方式そのものは、政府方式がもう根本からくつがえつていると思うのです。ことしの米価につきましても、パリテイだけの価格であつたら、これにもあります通りごくわずかな価格にしかならない。七千五百五十六円でございますか、この価格で今米が一石できると思われますか。価格の均衡ということも大事ですが、日本のようなところでは、生産が成り立たなければ価格の均衡は意味がありません。このパリテイだけでもつて生産が維持できないことは、農林省としては御承知のはずであります。     〔吉川(久)委員長代理退席、委員長着席〕 これを基本にするというところに問題がある。もしこのパリテイ価格で行くならば、物量投下が非常にふえているという点は別にいたしましても、働く農民の手取りが一日幾らになりますか。二百二、三十円じやありませんか、今のこの段階で、ニコヨン以下の賃金でしかも家族が非常に多い日本農民にどうして増産ができますか。できるはずがないことぐらいは皆さん御承知でしよう。これは大蔵省の原さんにしたつてそうだろうと思う。政府が統制していないのなら別ですが、統制をしておつて、しかももしこの七千幾らということになつ計算してごらんなさい。おそらく一日の農民の手取りは、実際には二百二、三十円、二十二人ぐらいで正確に計算してみましたところがこれだけで、それに対して二十六人ぐらいの計算にしましても二百六十円ぐらいです。これで、今日の段階で生産に励むはずがない。こんなことは私が説明するまでもなくおわかりのことだと思う。それだからこそ全体の価格の中から言いましても、実価の中から言えば毎年パリテイ価格は大体七〇%から八〇%しかないのです。そして三〇%、二〇%がいわゆる政治的にくつけられている。それが全部腰だめだというところにパリテイ価格が基本からくつがえつていることはもうはつきりしている。ですから保利さんがおつしやるように、片方において食糧自給度を高め、生産を高めることは、当然生産費方式中心にして、その上に物価の均衡を考えるほかはない。それが逆じやないですか。そして片方の均衡でも何でもない。いわゆる生産費に何とか押つつけようというごまかしの腰だめでもつて出している。こういうところに私は根本の問題があると思う。しかも本年度の特徴は、従来は二〇%なり三〇%なりのパリテイ以外のプラス・アルフアーの分をどう処理して来たかということについて、ことしは非常に相違が出て来ている。これは私どもが新聞等で漏れ聞くところによりますと、大蔵省としては、一般会計からは一文も——そのほかのいろいろの場合、非常に価格を下げたという点については、すでに今までお話がありましたから言いませんが、その下げた、たとえば早場米の奨励金にいたしましても、超過供出の奨励金にいたしましても、そのほかのものについては一般の財政の方から一つも出さない。そればかりではなく、九十億の輸入補給金、あるいはその余裕についても、こういうことの調整には使わせない。そうして過去の外国から安い麦を入れました利益金、そういうものはむしろ減収加算の財源に引当てにするということが新聞に出ている。そうして新聞の伝えるところによりますと、あつちをひつぱつたりこつちをひつぱつたりして、非常に無理してやりくりをして、その中から大体において予算米価の九千二百円の超過をした三百五十七円分、それから、バツク・ペイの二百五円分を両方合せて百三十五億くらいになります。これを全部食管会計の中で扱う。その中から特別に輸入補給金は全然これに流用することを許さない、こういうことのように伝えられておりますが、事実はそうでありますか、この点をひとつはつきりお伺いしたい。こういうことになると、将来においては一般会計から、こういう政府の集荷政策の間違い、あるいはまずさ、あるいはそのときどきの減収その他に対する諸事情について、パリテイプラス・アルフアのアルフア分だけまつたく財政事情だけに左右される。この財政事情が基本になつて、さらに食管会計の中でだけこれがまかなわれるということになりましたら、日本のこれからの米価の立て方について非常に大きな影響をもたらして来ると思うのですが、この点についてはそういう建前農林省としては今後やつて行かれるつもりかどうか。大蔵省はそういう建前において今後やつて行くつもりかどうか。この点を第一にお伺いしたいと思います。
  57. 保利茂

    保利国務大臣 私は食糧管理は相当経費を要するということは考えますけれども、しかし基本的には財政負担と申しますか、一般会計の負担において二重価格的な扱い方をして行くという考えは、私は持ちません。少くとも生産価格が上れば、それは消費者で御負担を願つて行くということが正常健全なあり方ではないか、そういう考え方を今後とつて参るつもりでおります。今後の予定しております価格につきましては、先ほど来も私の考え方は十分申し上げているわけでございまして、ただいま申し上げました点が御質問の要点じやなかつたかと思いますから、それだけお答えいたします。
  58. 原純夫

    ○原説明員 米価をきめます方式論については、いろいろ複雑なむずかしい点が多いので、私ども一生懸命勉強しながら、もちろん私どもは財政を扱う立場でありますから、そういう立場が私どもの原案としては強くなつておりますけれども農民の利益というものもできるだけ考えてというつもりで、今回の折衝なども、決してけれんやなんかのない態度でやつたつもりでありまして、財政事情で押しまくつたとかいうふうに言われますと、私ども非常に悲しい気持がいたします。実際問題といたしましても、農林省にずいぶんがんばられたわけであります。そこでこの補給金の問題でございますが、われわれはただいま農林大臣の言われました通り、財政負担による二重価格はよろしくないので、これは過去幾多の歴史を見ましても、その二重価格をいたしますことは、本質的に貧富を問わず国民全部に補助が出るというようなことになるという公平論の問題もありまするし、それよりも、財政的な方式として一度そういう制度をとつて固定いたしますと、次第にこの負担が大きくなつて、非常に大きながんになるということは、既往の歴史で皆さん御存じでありますから、それはいたしたくない。そこで補給金を使うという問題も、補給金がいらなくなつたということは当然不用に立てていただくということであつて、それを使うということはまさに財政による二重価格になるのであります。これは別の例を引いて、たとえばかつて石炭なり鉄鋼なりというようなものについて統制をいたし、そして価格補給金というものをとつておりました。それが当初わずかなものでありましたが、遂には千億を越える大支出なつて財政上のがんになつた。残念ながら遂にドツジさんという人を迎えて大きな手術をしなければそれがなおらないという状態になつたことは、御記憶の通りであります。これは二重価格がいけないということにもなりますが、それでは、たとえばあれを出しておつたのだから、今石炭が苦しんでおるから出したらどうだという議論と本質的には同じになるのであります。今年たまたま九十億の予算が組んであつたといいましても、これはいらなくなつたから当然いらなくなるというものであるとわれわれは考えますので、補給金については、財政負担を二重価格の財源として使うことはよろしくないとわれわれは考えております。
  59. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それに関連してもう二点お伺いいたしますが、今のお話だと消費者の方にぶつかけるということでありますが、そうしますと、大体パリテイ米価があります。それにいわゆる特別加算が加わり、それから完遂奨励金基本米価に繰入れられておる。あとは超過供出の奨励金並びに早場米の奨励金、これは農林省なり大蔵省はどういうふうにお考えなつておるんですか。これは要するに集荷をするために今一時出しておるものであつて、将来はパリテイ一本に行こうというお考えですか。それともこれは財政負担はしない、消費者の方にぶつかける——消費者にぶつかけられれば非常に迷惑だと思う。しかし解釈の問題だと思う。パリテイでは生産費が償えないから、その間にいろいろ食管精米価等の問題もありますけれども、いずれにせよパリテイでは生産の均衡がとれない。そこでこういういろいろの名義のプラス・アルフアをつけて、いわゆる生産費の不足を補つておるものです。これならばどんなことがあつても将来においてとれないはずです。むしろ増して行つてもおそらくさつき足鹿さんからお話がありました通り、コストを下げるだけの施策を政府は何もしていない。だんだんやせて来るばかりで、そうしておいてパリテイパリテイだといつても、私はそうは行かないと思う。これは生産費を償う要素としてお取上げになつておるのか。あるいは供出が下手に行つた、あるいは集荷が下手に行つた、集荷の事務費としてお考えなつておるか。これならば集荷がだんだんよけいになれば、これは財政上の負担がなくなるから下げることはいいでしよう。集荷が下手に行つた、集荷のために特別な行政費として早場米の奨励金なりあるいは超過供出の奨励金なりが出ておるとするならば、これは当然政府が財政負担をすべきであります。この点はどういうふうに——今日の問題、将来にわたつて基本的にはどのような方向でこの二つの点を解決されて行くつもりか。これは財政上の大きな制約が来る問題です。同時に消費者米価に大きく響いて来る問題、生産米価の問題、生産費の問題に大きく響いて参りますから、その点をこの際はつきりしておいていただきたいと思います。
  60. 保利茂

    保利国務大臣 これは先ほども申しておりますが、農家経済を全国民的経済の中において均衡を保つて維持して行くためには、すなわち農家が全体経済の中において食糧増産をさらに推進して行くためにも、合理的な価格決定方式としては、一応パリテイ主義によることが今日の研究段階では妥当である、こういう結論でパリテイ方式とつておるわけでございます。極端な例をとつてみますれば、麦の場合におきまして、これは大体パリテイ・オンリーでやつております。もちろん支持価格の性格を持つておりますから米の場合とは違いますけれども、それによつて大体麦の再生産確保せられるという見解をとつておるわけであります。従つてパリテイを割つて価格をきめますれば、これは農家の再生産確保できないという有力な議論が私は成り立つて来ると思うわけです。従つて先ほど足鹿委員からかなり痛烈な御批判がございましたけれども、麦価の決定に当りまして。パリテイ方式から出て来た額を引下げるということには、私としては、どうしても賛成ができなかつたために、小麦の価格だけが引上つたという形になつておるわけであります。その他のものはすなわち生産費を補うためのものであるか。それはいかようにも御解釈はできますれども、根本的には食糧管理上集荷の困難性が生み出しているという要素が非常に大きいと考えております。しかしながら将来パリテイだけで米価をやつて行くという考えはもとより持ちません。ただ全体としましては、できるだけ基本米価一本で行くような方向に持つて行くべきである。これは御異存のないところであろうと思いますが、それが実際上基本米価だけで行くということは、集荷上相当の困難があるのじやないか。そこで早場奨励も超過奨励も今回の程度に残つておるという考え方でこれを立案いたしたわけでございます。
  61. 井出一太郎

    井出委員長 久保田君に申し上げますが、原次長お急ぎですから、なるべく原さんに限定した質問を先にどうぞ……。
  62. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは今のお答えにつきまして簡単に私どもの見解を申し上げておきます。今の大臣の御答弁は非常に大事であります。将来は多少の改善は加えるけれども米価パリテイ方向に持つて行く、あとのくつつけたものはいわゆる集荷上の困難を調整するための臨時措置だという見解を私どもは聞いた。こういうことであればこれは根本的に私どもは反対であります。この点については首を振つておられますから何かほかに御意見もあるようでありますが、またあとで伺いたいと思います。私どもは今そう聞いた。  そこで原さんがおいでになりますからお聞きしますが、今年は大体百三十五億ばかり足りないものが今のところ出ておる。おそらくこれはもつと大きくなるのではないかと思う。今年は農林省のお考えなつておるような二千百万石の義務供出は、こういう政策をおとりになる限りすらすら出るはずはない。何らかの別個の措置をとらない限り、お考えなつておるような二千六百万石の米はなかなか簡単には入らないと思う。そういう点でいろいろの狂いが来ると思いますが、それは別といたしまして、百三十五億ばかりの今のところ予算米価より足りないもの、これを要するに食管会計のやり繰りで出す、こういうことのように伺いますが、それは事実かどうか。そうしてそういうことをすれば、新聞等で見る範囲におきましては、この食管会計のやり繰りの根拠は非常に困難なようですが、はたしてこれがうまくできるかどうか。できるというならば、私どもの見方にしますと、食管会計というものは融通無礙なものだというふうに考える。そういう観点からいえば、もう少し食管会計の内容を明確にしないことには、こういうふうなものがどんどん出て来るということの根拠が私どもにはよくわからない。これをよく御説明いただきたい。  もう一つは、将来こういう問題が一番大きな問題として出て来ると思う。外麦が内麦よりだんだん安くなつておることは皆さん御承知の通り、おそらくこの傾向は当分かわらないと思う。安い麦を買つて来た場合に、これを基準にして内麦のいわゆる価格調整をされるのか、さらに米にいたしましても、今の大勢からいえば輸入米の価格はだんだん落ちて参ろう、そしておそらく内地米の価格との差はだんだん小さくなることは明らかだ、あるいは近い機会においてこれを下まわるということになろうかと思う。こういう場合にこの食糧会計を一つの軸とする政府——大蔵省も含めてですが、内地の麦なり——麦については先例が出ておりますから何ですが、米についてはその先例が出かかつておる。この先例の出かかつておるような国内の生産米価を食管会計のわくを通して来るこの中で、どういうような方針でやりくりをするつもりか、この点を明確にお答えを額いたい。今私どもが一番心配しておるのは、今の大蔵省的な考え方からいえば、外国から安い麦が来ればこれをどんどん買えばいいじやないか、そうすれば要するに内麦より安いものが出て来る。内麦はもつと落せるということになろうと私は思う。そしてさらに今のような買手市場で、だんだん前よりも安くなる段階においては、また安くなつた場合においては、日本の国内のものについては、この外麦を標準にしてもつと米価を落せということになつて来ると思う。もつと具体的に言えば、いろいろの今の世界の経済情勢と結びついた外国の農業恐慌がこの線を通じてそのまま、どういう形において日本生産者の立場を非常に危険にする要素が出ているように思う。そこで今年のつまり外麦の利益差——これは差益というものがあるはずです。これをどうしようとするつもりか。私どもは新聞等に出ておる範囲では、いわゆるバツク・ペイの財源にこれをお使いになるというようなことはそこらの実際がわからない。そこで農林省としては、こういう点を基本的にどうお考えなつているか、また大蔵省としてはどういうふうにお考えなつているかを明確に御説明いただきたい。
  63. 保利茂

    保利国務大臣 きわめて重要な点でございますから、私から私の考えを申し上げたいと思います。  なるほど世界的な農産物の過剰傾向に入つておると存じます。従つて外国食糧価格が漸次低下いたしつつあるということは、輸入補給金がいらなくなつて来ているということからも明瞭であるわけです。しかし安くなつて来たからその安いものを買つて行くというそのたやすい道には、日本経済はつけないと私は考えております。と申しますのは、世界共通の外貨を使用するということは外貨事情がこれを許しません。外貨の節約はいやが上にもしなければならないという経済の実情になつております。また日本農家は高いものを買つてつくらなければならない。そのつくり出す米やその他の農産物を、外国のものが安くなつたからといつて外国のものを使つて米や麦の生産をするわけには行かぬのです。これはかつて国内物価がどういうふうに農村経済影響するかということに関連して来ると思います。私は基本的には国際的な農産物の過剰時代に入る、一方国内の生産費は安くならない、従つて相当高いものである。しかし外国からある程度の輸入食糧を輸入せざるを得ない。この差益を国内食糧とプールいたしまして、消費者にもできるだけ国際レベルの安いところで消費していただくということはできないにしましても、国内産と輸入食糧とのプールで、その限界まではできるだけ安いところで消費を願うということに持つて行くほかはなかろうと思います。そうでなければ日本農業を守る、あるいは今後ますます増産をやつて行くというようなことは実際上でき得ることではない。これはまた国の実際の事情からいたしましても、私はそうすることが一番妥当であろう、こういうふうに考えております。
  64. 原純夫

    ○原説明員 私は農林大臣のおつしやいましたことの通りに考えております。
  65. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいまいろいろ御説明を聞いたわけですが、私どもにはどうしても納得が行かない。私どもはこれにはどうしても賛成ができません。私は最後にお聞きしておきますが、いろいろうまい御説明をされますけれども、これは日本農業を、少くとも米の増産をはかる米価ではございません。農民はこれでは納得いたしません。それと同時に、これでは今年の集荷もうまく行かないということを申し上げたいと思う。それは必ずお覚悟の上だと思います。そこでこういう無理な、財政上に押された、いわゆるデフレ政策——政府物価を下げる下げると言いますが、ほかの物価は下つておりません。農村で買うものはむしろ上つておる。ちつとも下つておりません。さつきからいろいろお話がありましたが、下げる政策を一つもいたしておりません。そういう状況の中で、こういう無理な、生産費を全然無視し、生産事情を全然無視した、しかもいびつなパリテイ、そのパリテイも財政事情と政府の低賃金政策に押されたような政策をもつて対処されても、私は今年の集荷さえうまく行かないのだから、その結果は、せつかくお考えのように、消費者に対して米価のすえ置きをして十分に米の配給をすることもうまく行かないと思う。結果においては、麦をよけい食わして金のある者だけは米を食えということになると思う。私はこの機会に大臣にお伺いいたしますが、こういう無理ないびつな原案を御決定になり、これを米価審議会におかけになるようですが、米価審議会におかけになる前に、もう一度根本的に考え直される気持を持つておるかどうか。米価審議会の答申も、およそ私ども政府のこの原案を承認することにはならないと思う。その前にそういう米価審議会の答申が出ても、これを実行するおつもりか。政府はもう一度考え直して、ほんとうに日本——農林大臣が常々おつしやるような、日本の米や麦の増産ができるように、農民が安心してつくれるように、また集荷も十分にして国内の食糧自給度を高め得るように、今年の米価決定をもう一度あらためてお考えになるお気持があるかどうか、この点を最後にお伺いして私の質問を終ります。
  66. 保利茂

    保利国務大臣 米価審議会に諮問いたします原案はすでに閣議で決定をいたしておるものでございます。明後日から米価審議会が開かれるわけでございますから、この段階においてはこれを再検討する余裕はもうございません。これははつきり申し上げておきます。米価審議会の御審議の結果は、もとよりこれは政府として尊重いたさなければならない制度上の制約がございますから、あとう限り尊重いたすことは当然でございます。しかしながら私は、昨年の特に九月に入りましてからの凶作減収の深刻なる進行、それからして供出の面におきましても、価格の面におきましても、奨励金等の面におきましても、相当の混乱を来しておることは、先ほど申した通りでございます。従いまして去年の異常の凶作におきましてとられましたところのものが、今年はとられないからといつて、ただちにもつて農村にデフレのしわ寄せをするというふうには私は考えていないわけでございます。大体妥当なところといたしましては、二千五百五十万石の集荷ができるような作況のもとにおきましては——昨年といえどもあの凶作を招いた結果、支払つておりますのは相当大きな幅があつたということは、これは繰返し申し上げますけれども、深い御了解をいただきたいと私は思います。従つて昨年八月、九月の日本経済の状態と、今年の八、九月における日本経済全体の中に立つて、どういう米価が妥当であるかという観点から御検討、御批判をいただくことが願わしいと、私は考えております。
  67. 綱島正興

    ○綱島委員 実は昨ほどから委員方と政府当局のお話を伺つておつて、私はどうもちよつとわからぬようになつたことがあるのであります。実はパリテイシステムのことであります。政府お話によると、パリテイ・システムというものが——実際政府お話でなくとも、考えなければならぬことは、パリテイというものがある以上は、特別加算なんていうものがあろうはずのものではない。特別加算をしなければ実情は沿わぬというようなパリテイが間違つておるに違いないのです。ここで実は議論が出て参る。というのは、日本の一番基本になるものは、最初パリテイをきめる時分に基本年次のとり方に非常に間違いがあつた。御承知の通りアメリカがきめましたときには、一九〇三年から七年を基準年度とした。その意味はどういうことであるかというと、大体アメリカが工業化しましたのは第一次戦争の半ばからであります。少くとも一九一四、五年ごろから大体工業国化して参つた。その前の一九〇九年や七年ごろは、いわゆる西部劇時代である。いわゆる農民の時代の国であります。その当時の年代にしなければならぬということで、一九三〇年に思いついて、基準年度を一九〇七年から九年にきめたのは、農民の生活状態がすなわち都会の生活状態を支配する時代、日本で言うなら米一升の値段が労働賃金をすべて決定した時代ならば実はこれでよろしいのです。そのために実は一九〇七年、九年というものを特にきめて基準年度にした。農村の労働者の労働力、それから都会の労働者の労働力を均等にする、いわゆるパリテイとは労働力を均等にする、労働力の均等性を期するシステムであります。その労働力の値を、貨幣価値を均等にするというためにつくつたパリテイでございますけれども、やはり今でも七分の一くらいの差がアメリカにおいてさえもあるといわれておる。御承知の通りアメリカではどういうことをしておるかというと、剰余農産物資がございます。大体おもなものは二年分くらいできております。小麦でもとうもろこしでも二年分くらいできておりますので、これで行きますると、どうして農村が立ち行かぬでありますから、パリテイ・システムというものをこしらえて、御承知の通り小麦協定で一ブツシエル一ドルで売る小麦をば、政府は昨年は二ドル四十五セントで買い上げた。こういうことは、全部そうしなければ農業労働力というものが社会的に見て低下しなければならぬ実情に実は経済上あるのであります。これを実は捕捉するためにパリテイ・システムというものをこしらえた。黙つておけば農民労働力というものは半分以下に落ちてしまうから、これを捕捉するためにパリテイ・システムというものをアメリカは初年度、いわゆる農民労働力がすべての労働力の価格の大体基準であつた時代の年代をもつていたした。しかるに日本は、最初このパリテイをきむるときに、何ぞ間違つたことは、昭和五年、六年という年度を基準年度にいたしたのであります。これは実は御承知の通り農村が全面的に倒れまして、満州国に分村をいたした年でありまして、これは日本の記録の上でも農村没落の年であります。そのときをとつて来て基本年度にいたした。これでは実際農村考えパリテイをこしらえたということはまつかなうそである。従つて日本パリテイは科学性があるという考え方は非科学的です。これはお考えにならなければならない。これは大蔵省の方がおつたらよくお話しようと思つたのですが、帰られたので、いつかのときによくお話しようと思います。とにかく基本に間違いがある。とりあえずこんにやくの値段が幾らであるとか、さらし木綿が幾らであるとか、そういうものをこしらえていろいろいたしましたけれどもパリテイの基本は農民の労働力の貨幣価値と都会の労働者の労働力の貨幣価値とを均等であらしむるということが実はパリテイ・シスムの基本目的である。これがなければ、いわゆるパリテイといつてもうそパリテイです。パリテイというのは均等価格ということであります。ただいま行われておるパリテイは均等価格でないのであつて、うそパリテイであつて、学問的価値は何もないと思う。従つて農民の間に生産価格というものが唱えられて参りますことも、実は科学的の妥当性を持つておると私はひそかに思つております。米価審議会でも特別加算額をしなければならないという必然的事情が生れて来ることは、パリテイが実は非科学的であるからであります。そこでパリテイ一本でお考えくださることは、日本農村が倒れることだと思うのであります。実はアメリカで、たとえば余剰農産物の処理をいたしておりますのは、アメリカで大体一ポンド二百二十円くらいかかるバターでも、一ポンド五円くらいで輸出をいたしておるのである。現にエレサレムに対しては一千万ポンドをポンド一セントで輸出いたしております。というのは、要するに農産物価格補償のために政府は昨年度年額六十億ドルを支出しておる。政府の余剰農産物処理に使いました予算は六十億ドルであります。これはアメリカ政府が対外のために使いました、たとえば未開発地域の開発補助資金でございますとか、あるいは軍事援助資金等の総額七十億ドルとわずかに十億ドルしか差はございません。それほどの額を国家で計上いたしまして、農村生産を保障いたさなければ立つて行かない。アメリカの農村というものは、立地条件がいかなるものであるかは御承知の通りであります。アメリカの農村日本農村とを立地条件からいえば、アメリカと比較になりません。立地条件からいうとアメリカの何分の一という不利益な条件にある。従つてアメリカのシステムほどのなパリテイ・システムを用いては日本は立ち行かないのでございますが、そのアメリカのシステムにも及ばない。まず第一基準年度が変更されて来て、だんだん農村が没落しつつある時代に基準年度をとつて来つつある。そういうようなことからあらゆる点で不利益が出ておる。パリテイで最も注意をしていただかなければならないことは、労働力の数字計算であります。由来農村省は、富農が持つておる統計というものを持つておる。それを基準にして、実は石当り生産に要する労働力の時間を日にちで計算しておるのでありますが、実は農民が農繁期に消費する労働力の時間当りの数字というものは、日にちで計算しては工業労働者との間のパリテイは必ずしも出て参らないのであります。何となれば、農民は農繁期においてはほとんど十八時間くらい働く、こういうことで非常にこれは違うのであるから、この点も考え直していただかなければならぬので、実はパリテイというものは根本的に間違つておるのだから、ほんとうに実態に合うようなパリテイをこしらうか、しからざればその他の方法によるのでなければ、農産物価格の保障ということには絶対にならない。この点は重大な問題でありますから、農林省においては、これは即答願わんでもいいが、とくと御研究願つて考えていただかなければならぬ。単にパリテイというこういうシステムがきまつておるから、それでいいのだというようなお考え方では、農政の実態に合わないと私は思いますので、この点は特にお考えおきを願いたいと思います。  そこで、これは必ずしも今お答え願わぬでもよろしいが、今お答えを願いたいことをお尋ねいたします。  昨年の超過供出の数字を見ますると、今年は早期供出というものを非常に価格を上げて二千円にされた、これはなるほど黄変米等の問題がございますのでやむを得ぬかと存ずるのでございますが、このしわ寄せをみんな期限の遅れたものにやつておいでになりまして、最後の第四期分は昨年四百円であつたやつを二百円に減じられておる。しかも昨年十二月十日のやつを十一月三十日に打切られておる。これらのために特に暖国地九州地方は非常に不利益で、私が目の予算をいたしますと、約二十億円の不利益があろうと考えております。従来なるほど終戦後、畑作が非常に高くて、単作地帯の単作物が非常に安かつた時代はやむを得ないが、今のようになつてからこういうシステムをとられることはどうだろうか、この点に対する御説明をひとつ聞さたい、これは食糧庁長官でけつこうです。
  68. 前谷重夫

    前谷説明員 早場米の奨励金の問題でございますが、御指摘のように、本年度の端境期の需給を切り抜けますために、本年の四月に新しく特期を設けまして、九月二十日ということにいたしました。これは端境期を切り抜けるために必要やむを得なかつたわけであります。早場米全体につきましては、お話のように昨年度は末期におきますと四百円でございました。これはその前年よりも三割増しに、昨年度の凶作に関します関係上単価を上げまして、同時に期間も十日ほど繰下げたのであります。期間におきましても、一昨年の平常作の場合におきましては、やはり十一月末ということにいたしておつたのであります。これはその年の作柄の状態によりまして単価等も考慮をいたして参つておるわけでございまして、これは集荷上この程度でもつてやつて行きたい、かように考えておるわけでございます。ただ御指摘のように、期間を繰上げました関係上、地域的に見ますると、昨年度とは異なつた状況が出て参るかというふうに考えるのでありますが、昨年度の期間の切り上げを一昨年度よりも十日延ばしたということは、昨年の特殊事情によるもの、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  69. 綱島正興

    ○綱島委員 去年は凶作といいましても、必ずしもでき方が遅れるということは、ございませんので、大体の事情からいえば、から立ちが不十分なときに限つて早くできる。豊作のときは遅れるのです。去年から見ますと今年はどうしても二十日くらいは、九州地方は上りが遅れております。そこへ持つて来て期限を去年より高くして、そしてこの奨励金を半減なさるということは、どうも片手落ちで、九州ばかりをいじめなすつたような感じがいたしますために、九州地方はどうも納まらないような空気が非常に濃厚に出て参りまして、昨年までは、いつでも農民というものは一緒にやつておりましたが、今年だけは九州は別にするという動きが出て、私ども応待に非常に困つておるような状態でありますが、この御処置はどうも私は少し受取りにくいような事情がございます。米は遅れてできるのに期日は昨年より早くする、そして価格は半分にする、こうなりますと、実はこの点は非常に目に見えたことであるので、パリテイだ何だというような非常にりくつを言わないとわからぬようなことはまだいいということもないけれども、これは端的に見えておりますので、これはどういう事情であつたか、お考え直される余地があるかどうか。この点はなるべく公平にしてもらわぬと、一方ばかりにしわ寄せが参りますと、どうしても納まらぬのです。私の考えるところでは、やはり第三期分を四百五十円くらいにして、第四期を四百円くらいにして、そして期日は昨年のように十二月十日ということにしていただく、そのかわり五日の余裕だ何だというものを置かぬことにしていただけば、大体ここらでおちつくじやないかと思う。これは保利さんも自分の地方だから、御自身では言いにくかつたろうと思うけれども、これはちよつと困るのです。どうですか食糧庁長官
  70. 前谷重夫

    前谷説明員 実は米価審議会において審議をいたします原案といたしまして、昨日閣議で決定いたしたわけでありますが、いろいろお話がございましたが、われわれ現在八月十五日までの作況を聞いておりますところでは、東北の一部、北海道は作遅れが生じているというように聞いておりますが、その他の地方は漸次平年作の状態にかえつている、作遅れはほとんどないというように聞いております。ただ昨年度の状態は、これは御了承願わなければいけませんが、従来は早場米奨励金というものは十月末ということでございまして、この点につきまして御指摘のように西と東と非常に意見が違つておりまして、これを基本価格に算入すべしという意見と、やはり早場米奨励金は残すべしという意見と、これは従来から意見が非常に違つておつたのであります。そういう事情がございまして、一昨年から十一月末ということにいたしたわけでございまして、昨年度の期間というのは実は昨年の特殊な事情であるということを御了承願いたいと思います。
  71. 綱島正興

    ○綱島委員 かつて戦争直後ころ割合に米が安くて畑作が非常に高かつた。畑作が統制撤廃になつたころは、九州あたりは田よりずつと収穫が多かつた。その当時は東北に非常に利益な米価のきめ方、早場米奨励金の差額をつけることもそう不平もなかつたのでございますが、大体東北地方は米一本でございますのに九州地方は畑六割、田四割くらい、こういう地方でございますために、畑が全面的にだめになりまして、畑の収穫は戦後からするとほとんど三分の一くらいになつてしまいました。わずかにタバコが、いくらかいいくらいで、あとのものは全部だめになりました。そこでそうなつて参りますと非常に困つて参りますことは、この畑が全面的にやられておる地方の田が非常に差額がつけられる。米の値段が下げられるということになると、実質上はこれは非常な価格差ですから、九州はやつて行けません。こうなると、しかたがないから九州も早場米をつくらなければならないということになる。早生をつくれば東北より早くできます。二千円近くも違うということになれば早生をつくつた方が得ですからつくりますが、そうなると実は収穫が減るのであります。現に今年遅れておるとの証拠は、大体九月十日前後が九州は開花期です。ところが今年は九月二十日が開花期だつた。大体二十日になりますと相当実が入つております。そのために十四号ですか十三号ですか、宮崎県等を荒した風が、実は非常にあだをした。宮崎の方はちようどそれが開花期だつた。そこでこの点をひとつ考えくださつて——これは日にちが遅れないということじやない。今年は少くとも十日、多いところは二十日の日遅れがしておるということは事実で、それは実は食糧庁長官のお調べが少し違つておりはしますまいか。その点は間違いないのですか。私は全部情報を得ておるのですが、その点さらに御一考を煩わしたい。いかがでありますか。
  72. 前谷重夫

    前谷説明員 これはわれわれの方の調査ではなく、統計調査部の方の作況でありますが、八月十五日現在ではその状態は見えておらないのであります。この早場米の奨励金の問題は、従来からいろいろ御意見があつたことでございまして、むしろ方向といたしましてはだんだんに、——本来早場米のスタートは十月末までの端境期を切り抜けるために出て参つたものでありますが、だんだん習慣上延ばして参つたものであります。これは本来の正常な形にだんだんもどつて行くべきものであろうというふうに考えておをるわけであります。     —————————————
  73. 井出一太郎

    井出委員長 次にこれより耕地問題について調査を進めます。  自衛隊の演習用地として開拓地等農地の買上げ問題について質疑の通告があります。これを許します。淡谷悠藏君。
  74. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大分時間も立つておりますので、簡潔に要点だけをお伺いいたします。まず和栗課長にお尋ねいたしたいのでございます。現在自衛隊が演習地として、農林省のやつております開拓地を大分たくさん要求して来ておる事実はおわかりであろうと思うのであります。その一つである愛媛県の温泉都小野村の開拓地に、私この間行つて参りましたが、自衛隊の買収官と称します薦田という二等陸佐の方が、現地に防衛庁の出張所の看板を新しく掲げまして、常駐してこの土地の買収にむしろ狂奔しております。前には買収事務所という名前であつたそうでありますが、現在では出張所となつております。この人に会つたとき、劈頭私に対して、あなたは演習地に対してイデオロギーで反対するのか、農民の利益によつて反対するのかとくつてかかりました。まつたく挑戦的態度でありました。私はおそらくこれは、防衛庁の本部の御指示ではないだろうと思います。かつてアメリカの演習地の問題がたいへんに紛糾いたしました場合、いろいろ伺つてみますと、この演習地をつくり、基地をつくる手続の上にたいへんな手落ちがありました。防衛庁がやつておられますこの手続などにも、非常な誤まりがあるように私は見て参りました。これは私、党の基本性から申しまして、アメリカの基地や演習地、あるいは自衛隊の演習地にも反対しておりますが、これとはまた別個に具体的な問題として、目の前に迫つておる開墾地と演習地の関係を、根本的にひとつお答えを願いたいと思うのであります。  まず第一に自衛隊の演習地、特に耕地に対して買収をなさんとする場合には、事務的にどういうふうな手続をするのが順当な御処置であるか。これは防衛庁なり農林省の方なり、どちらでもけつこうですがお答えを願いたいと思います。
  75. 和栗博

    ○和栗説明員 むしろ防衛庁の方からお答えになるのが適当かと思いますが、今まで防衛庁と農林省の方の話合いをいたしておつたところによりますと、耕地を防衛庁の方でいわゆる用地として必要な場合は、事前に農林省の方に協議をしていただく、こういう打合せになつておる次第であります。
  76. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 協議をして農林省が承諾を与えた場合には、これを現地で買収されるということに承つておりましたが、長野県の有明ケ原という二百何十町歩の開拓地、それから今の愛媛県——ここには水田もございます、完全な耕地をほとんど農林省が手を入れませんで、防衛庁の買収官が単独に盛んに買い集めて、愛媛県のごときは、最近本庁に行きまして、値段まで具申して、買つてもよろしいかという許可を得るというふうに、私、本人から聞いて来たのでございますが、こういう事実はございましようか。防衛庁にひとつお尋ねしたい。
  77. 高田賢造

    ○高田説明員 防衛庁で自衛隊の用地として耕地を使用いたします場合には、ただいま入植課長から御説明が承りましたように、農林省と御協議を申し上げることにいたしております。ただ農林省の方は行政上の法規の関係等からいたしまして、行政上いろいろ御相談申し上げるということになるのでありますが、やはり農地の所有者の方の意向というものを尊重するのは当然でございます。ことに現在自衛隊の必要な土地の取得につきましては、任意買収、任意の交渉によりまして合意のもとに取得いたしたい、かように思つております。申し遅れましたが、耕地等を取得いたしますのは、なるべく避けて、既存の国有地であるとか、あるいは山林、原野、採草地、こういうような土地をまず先に物色いたすわけでございますが、それが場合によりまして若干の農地がかかつて参りますようなときにおきましては、やはりある程度地元の方、所有者の方の意向をよく確かめまして、その上で事を進める、かようなことにいたしております関係で、もちろん農林省の御当局と御相談も申し上げてはおりまするけれども、同時に並行いたしまして農地の所有者なりあるいは関係者の方とよく御相談を申し上げることにいたしておるような次第であります。先ほど御質問の中に愛媛県でございましたか、価格の問題等を云々というようなお話がございましたが、これはままあることでございまして、相当の値段を出せばむしろ売りたいというような希望のあるところもございます。いきおいこれは強制処理ではございませんので、任意の話合いの交渉売買ということになりますと、売る方の側では値段の問題について相当関心があるわけであります。自衛隊といたしましては、予算の関係もございまするし、また他との権衡等もございまして、そうむやみに法外な値段を出すわけにも参らぬような場合もございまするので、さようなことからその辺いろいろと相談に来る場合もあるわけでございます。建前といたしましては、やはり今申し上げた通り、農林省の方と御協議申し上げた上で取得するということにおきましては、少しもかわらぬようにいたしておるのでございます。
  78. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいま御答弁のうちで、まず耕地については、農林省と十分打合せをして任意に個人と交渉を始める、価格等につきましても、最後の段階ではなくて、いわば交渉の前提として話を持出す、このことは私は前から伺つておりました。これは私想像で申し上げるのではございません、現地で実際見て参り、本人からも聞いて参つて言うのですが、これは明らかに買収官と称するものの行き過ぎた行為であろうと思いますので、はつきり申し上げておきますが、一例は長野県の有明ケ原の問題であります。これは演習地を招致するときからお聞き願いたいのでありますが、旧軍人がその演習地の山に入植したところがたくさんございます。長野県のごときもまさにその適例でございまして、これは戦争中どういう関係であつたかわかりませんが、開拓組合長というのは今もつて軍人勅諭を毎朝朗読しているという人であります。この人たちが農業をやつておりますとうまく行かない。うまく行つていないので農業をやめるために、合理的に演習地をひつぱつて来ようという中からの運動がございます。この運動費などある金融機関から借りまして、借金で首がまわらぬくらいかけているのです。麦でも豆でも演習地を招致しようという開拓者のものと反対する人のものとまつたく作柄が違う。作柄を見たばかりで反対する人と賛成する人とわかるのです。この間たしか農林省で成功検査をやつたはずでありますが、成功検査の結果は、演習地をひつぱつて来ようという人は、ほとんど資格を失うくらい悪い。まじめにやつている人の方がずつとよい。そうして陣内という防衛庁の人が毎日ジープに乗つて現地に参りまして、半ば脅迫、半ば金をもつてするという形で盛んにやつておるのでございます。私この事実を見ましたので、すぐに木村保安庁長官にその事実を話しましたが、そういう行過ぎはさせぬといつて警告を与えたはずであります。保利農林大臣もそのことは知つておりまして、やはり注意をしたらしい。その結果有明ケ原ではやめました。ところが愛媛県へ行つて見ますともつとひどい。薦田という人、私も会いましたが、これは戦争中の軍人と同じ気持でありまして、われわれが演習地に使うのになぜつべこべ言うのだという態度が露骨に出て来て、悪かつたならば私の首を切りなさいと言つている。そのやり方はどうかというと、六法全書を持つていて、あなた方が聞かなければ土地収用法というものがある、これをもつてすぐにとつてしまうのだ、もしもおとなしく聞くならば——畑は二十六万円、田圃は十五万円という価格まではつきり明示しまして持つて来ているのであります。中には開墾地以外の水田もございますが、これなどもう私にじかに言つたのですが、九月から工事にかかるのだから移転しなさいと言つて移転さしている。稲があつても青田のうちに、賠償を出せばよいからといつて刈つてしまう。そのうちの軒はとうとう無理やりに借金をして移転しております。こういうこちらにおつては想像もつかないような暴状が行われておる。そして私ふに落ちないのは、愛媛県の県庁に農林水産部というのがございますが、ここの開拓課の態度であります。前に小作官をやつておりました由井という人、これが課長補佐をやつておりまして、薦田という二等陸佐と一緒に六法全書と金を両てんびんにかけて、現地の農民をこらしつけている張本人になつております。何も現地にはトラブルがなくてみんな賛成しておりますと言つておりましたが、この間陳情に行きましたときに、激昂した農民がその農林水産部長にいすをぶつつけまして、これは刑事問題さえ起しておるような形になつておる。この間におきまして、私、この防衛庁の買収官というものは、ただいまお話を伺いますと、本部では全部そういう司令も何も出していないにかかわらず、かなり行き過ぎに行動をしておるということがはつきり出て来ている。特に重大な点は、これははつきりじかに聞いたのですが、価格は一体どういう基準でつけましたかと言つたら、私も人間ですから、賛成した者の土地は高く買つてやるし、反対した者の土地は安く買つてやりますと言つておりました。それは一体上司の命令ですかと言つたら、上司の命令ではありません、私はどうしても農地をとりさえすればよいのだからとりますと、稟然と言い放つておる。私はこういうことはおそらく防衛庁本庁の意向ではないと思います。こういう点も十分にお調べ願いたいと思う。そこで私は、もう話を簡潔に終りたいと思いますが、一体価格基準は本庁において呈示されておるものがあるかどうかということが一つ、大体において基準があるかないかということが一つ、もう一つは、小野村及び有明ケ原、岩手県の一本木原、青森市の浪館、こういつたところの演習地について、現在本庁にはどういう報告が入つておるか、これはもしきよう御準備がなければ追つてでもかまいませんから、ひとつお出し願いたい。私は青森県でありますので具体的に聞いております、調査もしておりますが、非常に行き過ぎた行動が出て参つております。金さえ友払えばよいというのですが、その金額さえもあるいは合わないじやないかと思われる節がしばしばございます。私はこういう点をお答え願いたい。  それから農林省に対しましては、有明ケ原と愛媛県の温泉郡の小野村の開拓地、これについて農林省は、演習地として、今までの開墾をやめてしまつてもよいという御返答をされたかどうか、これを御回答願いたいと思います。
  79. 和栗博

    ○和栗説明員 農林省に対する御質問に対してお答えいたします。小野村の方も有明ケ原の方も、まだ県の方から農林省の照会に対する回答がございません。農林省としてはまだ態度をきめていないわけでございますので、御了承を願います。
  80. 高田賢造

    ○高田説明員 自衛隊が農地を買収いたします際の価格基準はどうかということでございますが、先ほど申し上げましたように、建前は一応自由取引、任意の交渉で買うことにいたしております。むろん自衛隊といたしましては、相手方との話合いでございますから、それによつてきまるわけでございますけれども、一般の場合と同様に、その土地の持つております力、どの程度生産力を持つておるか、また近傍類似の値段からいたしましてどの程度だという事柄をもとにいたしまして、いわばその持つておる客観的な力を評価いたしまして、それによつて値段を算定するということにいたしておるのでございます。それが建前でございます。そのほか離作料とかいろいろな問題がございますが、それらはいずれも一般の補償の場合と同様でございます。なお波館と岩手県の問題につきましてお尋ねがございましたが、波館の方の土地の買収は契約を一応終つております。それから岩手県の方の問題でございますが、これはいまだ契約が締結ということになつておりません。関係の県の当局なり地元の方々なり、あるいは持つておられる関係代表者の方々と始終相談を申し上げておる次第でございます。ただいまのところそういう段階でございます。
  81. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もう一点お尋ねしたいのですが、波館の契約ができたとしますと、価格ども決定しておると思いますが、価格はどのくらいにきまつておりますか。一反当りでよろしゆうございます。
  82. 高田賢造

    ○高田説明員 今手元にあります資料でお尋ねがございました波館の土地の値段を申しますと、これは目の子算でございますが、大体反当り平均三万五千円見当になるわけでございます。
  83. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 若干私ども手元にあります資料とは違つておりますが、あらためてまたお伺いいたします。  そこで今当面の問題は、農林省と防衛庁に特にお願いしたいと思います。小野村の問題と有明ケ原の問題でございます。買収官と称せられます人は、仕事熱心のあまりかなり行き過ぎた行動をやつておりますことは、ただいま私から申し上げた通りであります。特に一方では六法全書でおどかしておいて、一方では金でつつておる。もう一つはブローカーなどを使つて盛んに饗応をやつております。私はじかに聞いたのですが、料理屋を本拠にして酒を飲ませ、ごちそうして、その金は一体どこから出ておりますかと言うと、だれが払つたかわからぬ、こう言うのです。農民は払つておりません。それは県が払つておるか、防衛庁が払つておるか知りませんが、少くともそういう金を払つた人がわからぬというような形で、饗応を受けて土地の買収をする。特に地元では、長野県の場合もそうですし、愛媛県でもそうですが、特殊な飲食店とか商店の人たちは、むしろ演習地になるのを欲しておるという形です。まじめに働く、成功検査にも十分パスし得るような非常にまじめな開墾者は、このために非常な迷惑を受けておる。おそらくは買収官などというのは、そういう反対のまじめな熱意は伝えないで、ただ地元では賛成したと言つて来るに違いない。もしもこのことが薦田氏あたりから参りましたならば、これははつきり真実を私はお調べを願いたい。次第によつては薦田という人に当委員会に出てもらつて、私は現に現地で本人とも会つておりますし、質疑もしておりますから、その上で真相をお明らめになつて、非常にこの重大な食糧増産の必要性のある場合、せつかく終戦後苦しんで来たあの善良なる開拓者の意思が踏みにじみられないように、ひとつおとりはからい願いたい。特に私は農林省にお願いしたいのは、現在青田になつております水田は、たとい買収になりましも一方的にこれを刈り取つてしまつていいかどうかという問題です。これは管理配給の面にも入ると思いますが、買収官あたりは、金を払つているのだから、青田のものを青刈りにしてしまつて、九月から工事に着手するのだというので、工事着手の承認書をとつております。委任状は白紙です。私はここまで来ますと、工事に対する農林省の権威は完全に踏みにじられているのではないかと思うが、こういうことがあり得るかどうか、はつきりお答えを願いたい。
  84. 和栗博

    ○和栗説明員 お話のようなことがございますればそれは行き過ぎだと思います。先ほど申し上げましたように、まだ現地から回答もございませんし、私の方から防衛庁の方へ回答をいたしたこともまだございませんので、防衛庁の本庁の方はまだ御存じないのではないかというふうに考えております。
  85. 高田賢造

    ○高田説明員 ただいまお話の中にございました、現地で自衛隊の制服を着たおそらく隊員じやないかと思いますが、非常に職務に熱心のためとはいいながら、きわめて不適当な言辞を弄したように伺います。さようなことは実は土地を円満に取得するという建前からいたしましてもきわめてまずいことでございまして、この点はこの上とも私どもといたしまして十分注意させまして、行き過ぎのないようにいたしたいと思つております。お話がございましたものにつきましては、なお私どものところで調べまして、注意すべき点がおそらくあるのではないかと思いますので、厳重な注意をいたしたいと思つております。
  86. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 たいへんざつくばらんな御回答をいただきましてはなはだ感謝いたしますが、ただ薦田二等陸佐というのは、そういうふうな現地の反対を押し切つて、買収にある程度まで前進を見せたというのかどうか知りませんが、昇進しておりまして近く転任する。これはあなたに何と言われましても、この通り演習地獲得には成功したので、昇進して転任するということを公然と言つているのです。こういう形でございますから、ひとつ農林省におきましても、この終戦後まじめにやつて来た開拓地などがつぶれないように、十分な御調査の上に善処していただくように返す返すもお願いいたしまして、私の質問を打切ります。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこれにて散会いたします。次会の日程は公報をもつて御通知申し上げます。     午後五時四十九分散会