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1954-09-01 第19回国会 衆議院 農林委員会 第67号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月一日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 金子與重郎君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    田子 一民君       松岡 俊三君    松野 頼三君       並木 芳雄君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       稲富 稜人君    中澤 茂一君       久保田 豊君    安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         長)      坂根 哲夫君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局経済部         調査課長)   岸川 忠嘉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部乳肉衛         生課長)    阿曾村千春君         農林政務次官  羽田武嗣郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君         食糧庁長官   前谷 重夫君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  林業に関する小委員及び小委員長補欠選任  肥料に関する件酪農振興及び乳価に関する件  食糧の需給及び輸入に関する件  米価に関する件  稲作病虫害対策に関する件  肥料審議会に則する件  酪農振興法の実施に関する件  農事用電力料金及び肥料製造用電力料金の値上  げに関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  昨日に引続き、食糧問題について質疑を行います。質疑の通告は川俣委員芳賀委員の御両名残つておりますので、この際委員長の希望といたしましては、御両君合せて一時間くらいの範囲で御進行を願いたいと思います。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 まず第一に議事進行について委員長にお願いしておきます。きのうの時間の割振りから見まして、一人三十分という制約を受けることははなはだもつて苦痛に耐えませんから、その点御了解のもとに適宜おとりはからい願いたいと思います。  実は食糧庁長官ばかりでなく、農林大臣にも出席を求めておるのであります。特に農林大臣出席できない場合においては、食糧庁長官事務当局と同時に政府を代表する政務次官出席しなければならないと思いますが、これは前谷食糧庁長官に苦言を呈しましても、事務当局でありますからお答えできないと思いますから、改めて農林大臣が見えたときにこの点をただしたいと思います。  そこで第一に、事務的な答弁できる問題からお尋ねしたいと思います。出来秋を前にいたしまして、早場米供出期を控えまして、新米価決定をせがまれておると思うのであります。従いまして当委員会が決議をいたしましたような、米穀管理に関する制度の樹立が必要であろうと思います。この点に関して食対協議会並びに本委員会から具体的な問題を開陳いたしておるのでありますが、実はいまだ政府から明確な答弁がないのであります。間接的には、昨日の委員会において、今年は十月ごろ割当を行うつもりであるというような発言がありましたが、はたしてそれでは予約制度割当制度とを併行してやるのかどうかという基本的な問題については、積極的には触れていないのです。八月十五日の作況を見た上で割当を行うつもりであるという御発言がありましたけれども、根本的な、本年の集荷制度についてどのような方針をとるのかということについての意思表示はないのです。これは供出後に予約制度が行われるのだ、あるいは供出後の予約制度ということになりますれば、超過供出と同じ制度よりとれないということが常識的に考えられますけれども、その点も実はあいまいになつております。もうすでに八月も最後の日に来ておるのでありますから、まだ検討中だということは許されないと思うのですが、この点について明快な方針がございましたならば、この際明らかにしていただきたいし、もしもまだ方針が立つておりませんならば、一体いつごろ対策を立てられるつもりなのか。あるいは政府が今動揺しているので、新しい内閣ができなければわからない、こういう意味であるのか。この点もあわせて御答弁願わなければならぬと思うのです。
  4. 前谷重夫

    前谷説明員 この予約制度供出制度併用の問題につきましては、ただいま御指摘ございましたように目下検討中でありますが、これは供出割当をいたします際までには明確にいたしたい、かように考えております。と申しますのは、実は予約制度の採用につきましては、併用いたします場合におきましては、割当をいたしました余剰部分について、これを従来通り超過供出として政府が買入れをするか、予約的な方法によつて買入れをするかということになるわけでありますが、義務供出割合等も、八月十五日の作況が昨日明確になつたわけでございまして、それに基きまして検討をいたしておりますので、現在まだ最終的方針決定いたしませんことは遺憾でございますが、割当をいたしまする時期までにはその点は明確にいたしたい、かように考えております。割当をいたしましてから末端までの間におきましては、従来の例に徴しますと一月以上の時間がかかるわけでございまして、そういう事情もございますので、割当決定いたしまする際にこの点は明確にいたしたい、かように考えております。
  5. 川俣清音

    川俣委員 割当を第一にして、その後予約制度によるのか、超過供出によるのかまだきめていない、こういうような御答弁ですが、しかし割当を行う、義務供出をさせるという食糧管理法建前を堅持せられまするならば、またそれらの政令をそのまま存置されまするならば、現在の段階におきましては、言葉予約制度とかなんとか言いましようけれども、超過供出方法よりほかないということ、今の法律政令上から行けばそれより考えられないのじやないですか。これは食糧管理法でも改正する、あるいは政令その他を改正するという意図をお持ちになつておるならば別問題ですが、持つていないとすれば、言葉だけの予約制度なんというものは意味をなさないのでありまして、言葉予約だといいましても実際は超過供出——内容的には、具体的には超過供出方法よりほかに道はないのではないですか。それがいまだきまらないというのはどういう点にあるのですか。あるいは自由党のいうような、供出後における自由販売というようなものが一応打出されて、これが今日の段階では打切りということになつておるのだが、そういうことをも加味せられておるのかどうか、この点を明確にしなければ、これは義務供出にも非常に影響して来るのです。これをきめないで義務供出なんと言つたつて、あなたの頭では義務供出というものは割切つておりましても、受ける方から言えばなかなか割切つた義務供出なんということは実行に移せないと思うのです。そこでお尋ねしておるのです。
  6. 前谷重夫

    前谷説明員 供出後の自由販売等の問題につきましては、実はわれわれも正式にその点は承知いたしておりませんし、またきのうの綱島委員お話で、そういう考え方はないということを承つておるわけでございまして、われわれといたしましては、そういうことのないようにという考え方で進めておるわけでございます。予約制度本来の性質から申しますと、ただいま川俣委員お話のように、これを全面的に実施いたしまする場合には法令の改正その他の措置が必要であろうと思います。ただ義務供出予約制度併用いたします場合におきましては、義務供出をいたしまして、その余剰、いわゆる義務供出以上に供出し得るものについて、あらかじめこれを予約の形で超過供出を契約して参るか、あるいは従来通り方法をとるか、こういう点が残された問題かと思います。それはあるいはお話のように、実質は超過供出であるけれども名前予約制度にすぎないじやないか、予約という名前を使うにすぎないじやないかというふうな点も、見方によつてはあろうかと思います。ただ予約制度の問題につきましては、一般超過供出の場合におきましては、義務供出以上を状況に応じて政府超過供出として出すわけでございますが、その数量をあらかじめ予約して参るということも一部分予約方法であるとも考えられるわけでございます。これは本来的な意味での完全な予約ということにはならないかと思います。この併用という趣旨は、将来の予約制度というものに対する一つ準備期間と申しますか、訓練期間と申しますか、そういう意味で行うことに意味があるのではないか、かように考えておる次第であります。
  7. 川俣清音

    川俣委員 今食糧庁が厖大な組織を持つて、いろいろな問題について検討せられ得る陣容を持つておられながら、今のような答弁になるとは私は考えないのです。なぜかというと、超過供出集荷方法の事務的な取扱いとして予約制度をとるか、あるいは特集制度をとるか、あるいはその個々の申込みを随時受けるかということについては、これは超過供出集荷方法なのですよ。これを予約とかいう並列した二本建だなどとお考えになつておるのはどうもおかしいのです。だからむしろ混乱をするのじやないかというのです。結果的には同じようなことを改めた名前でやることによつて、むしろ混乱を来して、義務供出に大きな影響を与えやしないかという点を憂慮して、この際明確にすべきではないか、こういうことなのです。実際同じようなものなら、誤解を生むような言葉を避けたらどうか。誤解を生んだために義務供出に大きな悪影響を与えたならば、最も大きなマイナスを招来するのではないか、この憂いからお尋ねしているのですよ。それをどこまでもあいまいなことなのですね。内容的にはちつともかわつていない超過供出一つ方法なのです。去年は特集制度をとつた、ことしは同じ超過供出だけれども予約供出をやるのだ。こうなればこれはだれにもわかることなのです。一般農民にも理解されることなのです。そうでなくて、前から持つておりまする食対が立てた予約制度と今度の義務供出併用するのだなどというから、そこに混乱を生じ、義動供出についての信頼感あるいはそれに対する義務観念が喪失するおそれがあるのではないか、この点を指摘しているのです。この点はどうですか。
  8. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいまの御指摘のように、本来の予約制度でございますと、まず相当の時間的余裕のもとに予約をいたしまして、そうして予約の場合におきましては、予約する者が優先的な取扱いを受ける、こういうことが予約制度本来の建前であろうと思います。しかしこれを義務供出併用する場合におきましては、そういう本来の予約制度というものはとり得ないということは明らかであります。本来の予約性質をそのまま認めて参るというわけには参らないわけであります。御指摘のように、われわれ非常に苦慮いたしておりますのは、各府県のいろいろな意見を承りましたが、やはり義務供出とそういう制度との混乱というものにつきましては、府県当局におきましても相当危惧の念があるわけでありまして、われわれも実は三日間にわたりまして府県当局意見を承り、そういう意味におきまして、われわれとしてはその点を慎重に検討いたしているわけでございますが、ただいまのお話のように、予約制度ということのその本来のものをそのままとり得るということは困難であります。ただ超過分を予約するかどうか、こういう形においてそういう制度は可能であろうかどうかということを検討しているわけであります。
  9. 川俣清音

    川俣委員 これは県は供出の大綱によつてつておるものでありますから、県の意向を聞かなければならぬことはもちろんでありますが、最も末端事務に当つている者にすなおに、たやすく、もつともだと理解できるような方法でなければ一俵、二俵、五俵と集めるものでありますから、これはごく少数の者が理解すればすぐできるというものと違いまして、大衆に理解させなければ実際の成績は上つて来ないものでありますから、わかりにくい表現や、非常に誤解を受けるような形で打出すことは、決して策を得たものではないと思う。ことに併用というようなことになりますと、一体義務供出を主にした方がいいのか、あるいは予約に重点を置くのかという問題も現実の姿としては出て来ましよう。そこであなたの方では割切つて巧みにやろうと思うのですが、巧みにやろうという方法をとりますると、巧みに裏をかかれるという方法がまた生れて来るのです。だからこれはやはり最もすなおに、妥当だと思われるものならば、信頼のできる方法表現されなければ、いよいよもつて不信を買う結果になると思う。ところが食糧管理法という大きなたてを持つておられるのにかかわらず、今日集荷状態が困難な状態に陥つておるのであります。法律権威をもつてすらその権威を疑われるような実績になつて来ておるのでありますから、この際は最もすなおに農民理解をいたしまして、それに応じなければならないんだという観念が生じて来て、その理解の上に初めて集荷が成り立つのであつて、机上で考えたことによつてすぐに集荷が成り立つのではないのであります。理解なしに集荷の困難であるということが今日の基本問題になつて来ているのです。どんな強制的な法律をつくりましても困難な状態であることは、あなた自身もお認めになつている点なんです。しからばどういう方法理解させ、協力させるかということを、本来の基本的な考え方としなければならぬ。それが複雑多岐にわたるような、非常に混乱を生ずるような、理解しがたいようなものを打出すことが誤りではないか、この点を強く本委員会指摘をいたしておる。それなのにまだきまらないということでは、いよいよもつて誤解を招くのじやないですか。あなたの立場、答弁から申しますると、もうすでにわかりきつたことなのです。もう表現ができることなのです。何を躊躇されておるのか。この点非常に理解に苦しむのです。一体どういう点を検討しなければならないのか。どういう点に疑問があるのか。検討しなければならないというのはどこにあるのですこの点だけお伺いいたしたい。
  10. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいまの御指摘のように、政府食糧管理法に基きまする権力集荷ということによりまして、従来供出割当をして来たわけでございますが、この権力集荷が非常に困難な状態になつておることは御了承通りであります。予約制度と申しますのも、そのねらいは、集荷団体協力、全面的な活動を促進するということに一つのポイントがあると思いますので、われわれとしましても、現在の食管制度のもとにおいて、集荷団体のより以上の協力を得られる方法がないものかどうかというふうな点について、検討をいたしておつたわけでございます。単なる制度名前の問題ではなくして、いかにすれば集荷団体協力がより以上得られるかというふうな点について検討をいたしておる次第でございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 それで大体方向が築かれたと思う。それをわざわざ予約制度併用するかどうかということで検討中だという答弁をするから混乱するのです。そこで第二問に移りますが、新米の出まわり期も近づいて参りまして、すみやかに米価決定しなければならぬ時期であることは、私が申し上げるまでもないことです。本来でありますならば、九月早々新米価決定して早場米供出態勢に備えることが、政府として当然の責務だと思うのです。一体どういう集荷をするかということの基本を、何よりも先に政府としてきめなければならないことは、今の食糧管理法によりますならば、米価であることは申すまでもないことです。先に自分の方が態勢をととのえなければならないのに、いまだに態勢がととのつていない、しかもその基本であるところの新米価がどの辺におちつくかということの見通しもつかないというのが現実の姿のようです。作況を見なければならないということなんですが、これは縁日商人です。人の顔色を見て物の値段をきめることも、大体縁日商人考え方です。今日食糧管理法では、縁日商人的な米価決定は許されない形になつておる。百姓の顔色を見たり、稲の顔色を見たりして米価決定すべきではない。稲の収穫によるところの豊凶係数あとで追加してもよろしい。去年あなた方はそういう態度とつたんでしよう。基本米価をきめておく、豊凶係数が明らかになつてからでなければ加算はできないということで、十二月になつてからあなたは加算したのではないですか。それなのに、ことしは、豊凶の度合いを見なければわからないということを言つておりますが、どうもおかしい。去年の態度と今年の態度とは違うのではないですか。去年は豊凶係数が明らかにならなければできないということで、早く決定せよと迫られておるにかかわらず、十二月になつて初めて実収高調査が完了してから豊凶係数が出されておる。その前は概算払いです。精算払いあとになつてきまつておる。従つて基本米価だけは豊凶係数にかかわりなく出さなければならないのが食糧管理法建前であると私は理解するけれども、このような理解は間違つておるかどうか。この点食糧庁長官から承りたい。
  12. 前谷重夫

    前谷説明員 御指摘のように、基本米価については作況によつて基本米価を云々するというふうにはわれわれも考えておりません。ただ基本米価の問題につきましては、できる限り早急に決定することが望ましいわけでございます。昨日も申し上げましたように、昨年度においては約三百億近くの財政負担をいたしておつたのでございますが、この財政負担の問題とか、また基本米価におきまするパリテイ指数の問題とか、いろいろ基本的な問題もございますので、現在米価がまだ決定に至らないということは、私ども非常に遺憾に思うのであります。現在におきましては、いろいろ政府のとつております。低物価政策との問題、それは同時に財政負担の問題とも関連いたしますが、そういう点についていろいろ協議をいたしておる次第であります。
  13. 川俣清音

    川俣委員 これは長官からの非常に重大なる御発言だと思うのです。長官のただいまの御答弁は、大蔵省との折衝の苦衷がたまたま表現されたのだと思いますから、その点は割引して重大さを減らしてもよろしゆうございますが、あなたの御答弁によりますと、決して言葉じりをとらえるわけではありませんが、農業パリテイ指数がまだ正確でないから基本米価をきめられないと言われる、この点は一応了承いたします。しかし財政負担の問題があるからきまらない、こういうことでありますならば、いやしくも食糧庁長官として政府委員の責を持つておられます人といたしますれば、そうすると、臨時国会でも早く開かれなければ財政負担がきまらないのだという建前になる。しかし財政負担の問題になると、これは大蔵省の問題じやない、いやしくも財政負担については、大蔵省権限があるのでなくして、国会にあることは異論のないところであります。これは憲法を正確に解釈すれば、どんなへりくつの憲法学者が言いましても、財政負担については国会に最高の権限があることは明らかです。そうすると、財政負担に問題があるということになると、臨時国会を開かなければきまらない、こういうふうに理解をさせるような御答弁でございまするが、この点非常に重大でありますので、もう一度お尋ねいたします。
  14. 前谷重夫

    前谷説明員 あるいは御指摘のように言葉が足らなかつたかもしれませんが、財政負担という意味は、食糧管理特別会計範囲内におきまする赤字の問題でございます。正式に申しますれば、一般会計から財政繰入れをするというふうなことになりますと、もちろん国会の御承認を得なければならないことは当然でございます。ただ従来は、食糧管理特別会計範囲内におきまして、糧券それによつて増発するかどうかというふうな問題が財政金融面に非常な影響がございますので、そういう問題を申し上げたわけでございます。
  15. 川俣清音

    川俣委員 そういたしましても、臨時国会がすみやかに開かれて財政的なものが正確にきまることが望ましい、こういうふうに理解してよろしゆうございまか。
  16. 前谷重夫

    前谷説明員 臨時国会の問題は、これは私たちの事務当局から申し上げる事柄ではないと思います。ただ米価の問題は、食管の資金繰りと申しますか、糧券の問題、同時にその場合におきまする糧券の増発によりまする一般物価に対する影響、またそれは半面におきまして、米価の問題は御了承のように、生産者価格消費者価格の両面に関係する問題でございます。そういう面からいたしまして検討いたしておるというのでございまして、臨時国会の問題は私からちよつと御答弁申し上げかねます。
  17. 川俣清音

    川俣委員 これ以上臨時国会の問題に触れますと、長官を窮地に陥れるおそれがありますので質問を転じます。あらためて大臣の見えたときにお尋ねすることにして留保いたしておきます。そこで新米価決定するにあたりまして、今年はいろいろな障害が続出いたしておると私どもは理解をいたしております。その一つは、何と申しましても、自由党統制廃止または供出後の自由販売というふうな声が、発表以上に非常に大きな影響を与えておるという点なんです。これを取消すとかあるいは一時打切りなつたとかいう影響よりも、こういう方向に現在の情勢があるのだという、これはぬぐいがたい影響を与えておると思うのです。これは一片の取消しによつて治まるものではないと思う。というのは、いわゆる強権による供出というものが非常に困難になつて来たという情勢、あるいは配給も年々減少しておるというような情勢の中において、これでいいのかどうかという疑問を持つた中に投ぜられた政策でありますために、大きな影響を与えたのであります。何らの素地のないところに与えたのであれば、これは遠ぼえとかあるいは一つ自由党の宣伝ではないかということになるのでありますけれども、あるいは無視されがちになるのでありますけれども、これが大きく取上げられ、また大きな影響を与えたというのは、それぞれの素地があるからであります。従いまして、その素地の上に書かれたところのものは、なかなか消えがたいのです。これが一点です。第二の点は、この食対の出しました予約制度影響であります。供出制度というものはもう行き詰つたのだ、そこでそれの代替物として、予約制度でなければ集荷が困難になつたのだ、これが情勢だ。この影響であります。ことしはもうおそいのであるからして、予約制度なんというものは使わないのだという声明をいくら出しましても、あの打出されたものの陰には、もう義務供出制度というものは行き詰つたという印象の中に予約制度というものが打出されましたために、これもまた一片声明や何かによつてはなかなかぬぐい去れない強い印象農民に与えておるという点なんです。第三は電力料金値上げであります。きようもまた 午後からこの電力料金の問題に本委員会が触れるわけでありますけれども、電力料金値上げ影響は、これは何といいましても基本の原動力でありますために、硫安に及ぼす影響、あるいは灌漑排水に及ぼす影響、または早場米供出に及ぼす影響、脱穀に与える影響等、おびただしい力を持つておると思うのであります。そういう悪条件が重なつて来ております。それにもう一つは所得の地域差です。これは今まではあまり問題にはならなかつたと思いますが、ことしあたりからそろそろ問題になりかけて来ておるのです。これは外国産はそれぞれの地域から地域差をもつてつて来ております。地域差という表現が悪ければ、その国々の買い付け得られる最低の値段と申しますか、その国の適当価格で輸入しなければならないという条件の中で、あえて外米を買いつけておりますために、相当国々における差が出ておりますことはあまりにも明らかです。今まではやむにやまれぬ不足からして買わねばならないという絶対条件のもとに買いつけたのでありますから、これらの国々の差ということもあえて意にはとめていなかつたのでありますけれども、今日においては、すでに売方市場から買方市場にかわつて来たという段階、並びに外米の値段が値下りしつつあるという段階に至りますると、なぜ一体高いところから買つて来るのかという問題があらためて起つて来ると同時に、国内におきましても、義務供出の割合に楽な地方と非常に困難な地方、並びに消費地に近いところと遠いところ、こういうふうに非常な差が出て参つております。また肥料の投資量あるいは農薬の投資量等につきましても、地域的に非常な差が出て来ておることであります。今年の作柄も統計調査部からの発表によりますと、これまた地域的に非常に恵まれないところと、比較的順調なところとが出て来ております。こうした中に国内において一本価格で買い取ることについても、疑問が相当強く持たれる年であるという点であります。こういう悪条件が折り重なつておるときにおける米価というものは、昨年よりも、一昨年よりもさらに困難な情勢であるわけであります。これに国内の政治力がこんとんといたしておりますために、政府の威信が失墜いたしておりますときにおける集荷というものは、非常な困難さを加えるわけであります。一体政局がどこへおちつくかという不安を与えておるときに、その政策というものが来年の春まで持続できるのかどうか、内閣がかわるのではないかという疑問——疑問よりもかわるというきざしがはつきり出て来ております。内閣がかわるというとまた米価もかわるのではないかというような懸念というよりも期待が、過大に出て来ておるという点なんです。その中にことしの米価をきめなければならぬのでありまして、その米価というものは、結局は集荷を目標にした米価にならざるを得ないのではないかと思うのです。従いまして、世間的に言いますならば、米価というものはパリテイ一本によつてやるべきだ、あるいは農村に購買力が偏重して来ておるという誤解がありますし、または宣伝も行われておりまするけれども、何といいましても今年は、去年の凶作のあとを受けた今年でありますので、これらの悪条件を克服して集荷しなければならないといたしますれば、かなり集荷に重点を置いた米価決定しなければ、予定の数量が集まらないという危険をはらんでおるということを、あなたは理解されておるかどうか、この点について御答弁を願いたい。
  18. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいまのいろいろな御指摘、特に所得の地域差等の点につきまして、これは川俣先生御承知のように、早場の奨励金の問題、あるいは超過供出の奨励金の問題、これが義務供出との割合の問題、この点が政府集荷におきます地域差を生じている、こういうことは御指摘通りでございます。この点については、われわれも割当をいたします場合におきましては、非常に注意をいたしておるわけでございますが、その後におきます作況の変動等によりまして、超過供出の割合が違つて参るということも生じまするし、また御指摘のように、消費地に近いところにおきましては、いわゆる自由価格というものが差があつて、これによつて超過供出の数量が左右せられる。こういう点もあろうと思いまして、実は本年度の米価が、そういういろいろな環境のもとにつくられなければならないということで、われわれも非常に苦慮いたしておるわけでございます。ただ食糧管理の面からいたしますと、もちろん一定量の集荷ということが前提になるわけでございます。従来のわれわれの米を集めるための考え方といたしましては、早場奨励金とか、あるいは超過供出奨励金あるいは昨年とりました完遂奨励金等、いわゆる奨励金の制度によりまして集荷の面を促進して参る行き方をとり、基本米価につきましては、これが生産者、消費者の関連におきまして、均衡のとれた妥当な点において米価がきめられる、こういう考え方をとつておるわけでありますが、最初に御指摘のありましたように、全体的な政府の行政力による集荷が困難になつて参りました場合におきまして、やはり集荷基本的な条件として、米価がその重要な要素であるということは、われわれも認識をいたしておる次第でございます。
  19. 川俣清音

    川俣委員 そういう認識に立つて去年の一万四百六十五円を下らない価格できめたいというのが食糧庁当局の考え方である、こういうふうに私どもは理解をいたしております。もちろんこの中には五百五十円という豊凶係数が含まれておるのでありますから、これは除外されるというふうにお考えのように昨日承つてつたのですが、しかし先ほど私があげましたような悪条件が折り重なつておるほかに、まだやみルートといいますか、ルート以外の流通量が相当増大をいたしておる。このルート以外の流通量の増大が、たまたまやみ価格の高騰をある程度押えておる原因の一部をなしておる、こう見てもよろしいと思うのです。それから黄変米というような最も国民にきらわれるようなものもあえて買つて来るということになりますと、内地米に対する執着がより非常に強くなつて来るという悪条件がさらに加わつて来るのでありまして、これらの悪条件が加わつて参りますと、去年の手取りよりも少くしないというようなことでは、なかなか集荷が困難ではないか。去年私どもが二千百万石はとうてい達成できるものじやないと指摘をいたしましたら、あなた方は、いや少くとも二千百万石以上は集荷できるということを、この委員会におきましても米価審議会におきましても、意気揚々として公言せられた。あの態度を見ると非常に自信たつぷりでありました。ところが実際いろいろな手を尽し、最後にカンフル注射もやつてみましたけれども、とうとう二千五十万石程度よりもよく集め得なかつたという失敗の歴史を持つておられるわけであります。この失敗の歴史に懲りて、今年はよほどお考えにならなければならないと思つておりますが、やはり去年の手取り以上には考えられないというお考えですか、この点をもう一度伺いたい。
  20. 前谷重夫

    前谷説明員 集荷の問題につきましては、配給量とも結びつくわけでありますが、実はこの集荷の問題は、昨年度におきます作柄の問題と本年度の作柄との問題、同時にやみ価格の問題が最も影響するところであろうと思います。現在のやみ価格の動向を見て参りますと、普通でございますと、六、七月ごろから上昇傾向に入るわけでございますが、本年はその傾向はございません。横ばいあるいは地域によりますと多少下りぎみのところもある。傾向的に見ますと、本来端境期に参りますと漸騰いたしますものが、横ばいしておるということは、やみ価格の昨年度以前とはかわつたその動向ではないかと考えております。同時に本年は、昨日の発表によりますと、昨年度よりはより多き収穫を予想されております。この点がわれわれといたしましては、集荷について好条件と申しますと言い過ぎかもしれませんが、昨年度よりはその面においては条件かよくなつておるのではなかろうか。昨年度の状態は、御承知のように十月までは、消費地において非常に高い米価が実現いたしておりましたが、本年度は昨年度の状態よりは非常に下まわつておる。しかも端境期におきましてこれが横ばい状態を続けておるということは、集荷に対して昨年度よりはより好転しておる点があるわけです。もちろん他の悪条件がございます。この両者の関係をいかに見るかということが問題でございますが、われわれといたしましては、そういう状態を見、またデフレの進行もあるということを考えて参りますと、昨年度の水準を維持して参ることが必要である、同時に食糧特別会計の経理の問題等もあわせて考えておる次第でございます。
  21. 川俣清音

    川俣委員 私の問うた去年の手取りだけでは集荷が困難でないかという基本の問題については、あまり答弁が詳しくなかつた。むしろ去年失敗したということについての弁明の方が多いのですが、その弁明の中にまた非常に大きなあなたのミスがあると思うのです。今年のやみ価格があまり上つていない、横ばいだということは好条件だというふうに見ておられますが、私はこれは非常な悪条件だと見ておるのです。ということは、先ほども申し上げた通り、今年でも作況が非常に不安な状態なつたときには、やみ屋がなかなか買付困難な状態が一週間か十日間起つたのです。生産地においてすら消費者の手になかなか入りがたい状態が二週間くらい続いておるわけです。この間のやみの一時的な高騰はおびただしかつた。これは、幸いに天候が回復したので相当量また出まわるようになりましたために、価格が横ばいまたは下つたという傾向にありますが、このやみルートに流すという慣習、この量が増大しておるということがやみ価格を上げていないのだという点をあなたが見落とすとすれば、これはたいへんな間違いになると思う。これほどまでに大量にやみ米が流れておるということを否定してかかるわけには行かないと思うのです。そういたしますと、これは食糧管理法権威の失墜、国民の政府に対する信頼の失墜が幸いにしてやみ価格を上げてないのだ、政府の施策のよろしきを得ないためにたまたまやみ価格が上つていないのだという結果になつているだけでありまして、これが好転をしておる結果であるなんということを言われることは、とんでもない間違いだと私は思います。次の問題に入る前にこれだけを申し上げて注意を喚起しておきます。そこで問題としてお尋ねいたしたいのは、大蔵省の主張でありますところの、農村に購買力があり過ぎる、あるいは高過ぎるという表現に、非常に食糧庁当局が脅かされておるという点なんです。一体何で農村の購買力が高過ぎるというふうに表現しておるのか、これに対してあなたの方はどのような説明を加えて反駁をいたしておるのか、この点をまず第一に伺いたい。おそらく最近農業政策を失つた食糧庁としては、反駁の材料を十分持つておらないために押されているのではないかという、これは私の危惧ですが、私の危惧を氷解できれば仕合せだと思いますので、御答弁願いたい。
  22. 前谷重夫

    前谷説明員 農村の購買力が都市に比べて相当ふえておる、こういうことを一般的にいわれております。農村地帯と接着いたしております中小都市の商品の売れ行きその他をよくいわれておるわけでありますが、この一般的にいわれておる根拠は、実は川俣さんの御指摘のように、われわれとしても具体的、実証的にそういう事実があるかどうか、いろいろ検討いたしますが、具体的な実証の形として、現実には農村にそれ以上の購買力があるというようなことは、数字的には出て参つておりません。むしろ私たちとしては、単なる感じじやなくして、どういう資料でもつて、こういうことが言われるのか。どうも私たちの感じから言いますと、それは一つの感じじやないかと思う。と申しますのは、まず第一に都市におきまする昨年度の購買力は農村よりも非常に上つております。非常に上昇した購買力が停頓するとか、あるいは、やや下降するとか、それに対して、昨年度の農村の購買力というものが都市と比べて上り方が低い。これがかわらないというものと、非常に上つたものが停滞する、あるいはまた多少下降して行くという場合と、その感じの問題じやないかと、われわれは考えております。また都市の昨年度のにおきまする所得の上り方と米価の上り方と、比べて参りますと、所得の上り方が非常に上つておるという点を指摘いたしております。また都市の労賃の問題と、農村労賃の問題、この単位の上り方の比較をいたしてみましても、そういう状態を示しております。そういう状態からいたしまして、この点を議論しているわけであります。
  23. 川俣清音

    川俣委員 大蔵省の主張に対する一応の反駁をお聞きいたしましたが、ある程度反駁されたという努力は認めますが、これをもしも試験官の前で採点したとしますれば、これは五十点であります。五十点までもあるいは行かないかもしれませんが、おそらく不合格だと思うのです。私は購買力は上つておるという抽象的なことに対して、これをすぐ反駁する材料がないとも言えないわけではありませんが、そのことは一応おきまして、購買力が高過ぎるのだ、特に超過供出奨励金とか、あるいは早場米奨励金とか、そういうものを附帯することによつて、購買力が高過ぎるのだというところまで行きますると、これには多くの反駁材料を食糧庁はお持ちになつていければならないはずだと私は思うのです。一般的に言われる場合においては、反駁の材料は今長官が言われた程度よりも言えないとも言えまするし、また言えるとも言えますが、そのことは第二といたしまして、米価の問題から、米価を上げても、購買力がさらについて来るというだけの購買力の上昇ということになりますると、あなたが十分材料をお持ちになつておるはずなんです。というのは、一体はたして超過供出奨励金、あるいは早場米奨励金、または完遂奨励金の比較的多く行つた地帯が、購買力が上つておるかどうか、またはむしろ行かないところの方の購買力が上昇しておるかどうかということは、たやすくデータの上に出て来るはずなんです。私はそういう意味から、きのうから、各府県米価の石当り一体どの程度所得が行つたかという点を明確にしたいということで資料を要求しておるのです。あなた方は、確かにその資料をもつて大蔵省に反駁をいたしたであろうと思われるから、すでに資料ができておるということで資料を要求したのですが、まだ私のところに出ないところを見ますると、それをもつて反駁の材料に使つていないことが、あまりにも明らかなわけなんです。この点はどうですか。
  24. 前谷重夫

    前谷説明員 購買力の問題は、一つ米価によつてどの程度に購買力が影響されたかという問題かございます。同時にもう一つの問題は、購買力のいわゆる物価金融政策と財政と申しますか、食糧特別会計も含めました財政等の問題でありまして、問題は回収されない、つまり財政の負担における払い超という問題が本年度としては相当購買力の今後の問題として出て来るわけであります。これが生産者に支払われ、同時に消費者から引上げられるということになりますれば、そこには講買力の問題はないわけでありますが、財政でもつてその分を埋めて行くということになりますと、そこに財政の払い超が出て来るわけであります。そこで新しく払い超になつた分だけは少くとも新しい購買力が生じて来る、こういう議論が一つあるわけであります。地域的な問題は、今御指摘のありました資料は印刷するように手配をいたしておりますが、これは地域的に見ますると、量の問題等もございまするが、平均単価とすればそう大きな違いは出ておらないわけでありまして、むしろ本年度で問題になつておりますのは、結局支払う額と受取る額とに差がある。その差が結局払い超になり、そこに新しい購買力が出て来るということになるわけであります。
  25. 川俣清音

    川俣委員 私は時間がありませんので、注意を喚起しておくだけにとどめますが、今日銀等において地方の購買力をかなり精密な度合いをもつてすでに調査完了しておるわけであります。これは銀行を通じて見た問題でございます。従いましてこれは地域によつて相当の差が出ておることはあまりにも明瞭であります。ことに保険金の掛金などの趨勢というものもある程度出て来ております。これらを見て参りまして、米価によつて購買力が出ておるかどうかということが、単作地帯とその他を比較してみるとあまりにも明らかになつておる。そうすると米価影響はないということが、これらのデータによつて十分説明できる材料が今日においては整つておると見なければなりません。あなた方はそういう点まで首をかしげて、そんな材料があるのかなという考え方をしておるから、対抗できないのだということを申し上げておきます。次に移りますが、昨日統計調査部から、八月十五日の詳しい作況調査が出て参りました。これによりますと、あなたも大体見られたと思いますが、ことに主なるところの供出県であります米作地帯の稲の品種は非常に移動しております。大体の傾向としては、わせ種に移行しておるわけでございます。去年の冷害に懲りまして、かなりわせ種に移行いたしておりますことは、統計の示すところであります。そういたしますと、作柄が九八であるとか九六であるとか、あるいは九〇にいたしましてもよろしゆうございますが、これがすぐに昨年の一〇〇に対して九八なり九六の収量があるのだという断定が困難な事情が生れて来ておるということを、御認識になられたかどうかという点なんです。御承知のように、わせはなかてと比べまして一割なり一割五分なり粒数の減つておりますこと、結果において収量は、気候条件なり地理的条件が同じである場合におきましては、わせ種が何と言いましても一割か一割五分の収量減でありますことは、これは私が説明するまでもない。従つて多収穫々々々といいますと、おくておくてへと進行いたしまして、去年のような冷害にぶつかりかけたわけであります。そういうところから収量の少いわせ種にあえて移行いたしております点を十分見られますならば、去年と比較してみまして何万石だというような計算を——これは食糧庁が出されたらしいけれども、これには大きな誤りがあるというふうにお考えになつておるはずであります。宣伝のためにああいう発表をされたのかどうか、確信を持つて発表されたのかどうか、この点なんです。
  26. 前谷重夫

    前谷説明員 八月十五日の作況はあくまで作況でございます。従いまして収穫予想高としての問題は、専門的な統計調査部において九月十五日において発表されると思います。われわれの方としては、その作況をいただいておりますが、数量はこれくらいであるというふうな発表は、われわれの方ではいたしておりません。ただ御指摘のように、地域的に見ますと、わせ種の増加は東北においては、これは表と裏でその割合は違つておりますが、増加いたしております。北陸等におきましては、きのうも御説明があつたと思いますが、あまりかわつておらない。その他はあまりかわつておらない。東北におきましてはわせ種の増加があるということは承知いたしております。
  27. 川俣清音

    川俣委員 あなたはけさ新聞を見て来られましたか。先ほどもちよつと非公式にあなたの写真を前にして——ことしの八月十五日現在の予想収穫高を発表されておるわけです。これはきのうも統計の方で収量を出せるかということを聞いたところが、収量は出せないのだと言つておるのです。だがら収量というものは、統計としては八月十五日現在では出て来ないことは明らかなんです。予想収量もです。ところがそれはあなたの方なんです。首をふつたつてだめだ。あなたの写真が読売の一番トツプに出ておる。吉田以上の権威を持つて写真が出ている以上、あれを取消されれば別であります。あの写真もわしのじやないし、あの発表もわしのじやないということでお取消しになれば別でありますが、やはり世間はそうは見ない。食糧庁としてはこのくらいのものをつかんでおる、こういうことなんです。これは農林大臣食糧庁意見を加えて、ことしの予想収穫高というものを閣議に報告しておるのです。事務当局が出さないものを大臣が知つておるわけはありません。稲の種類もよくわからない農林大臣が、その収穫高なんかわかるもんじやありませんから、事務当局が出されたものを信用して閣議に報告するより方法はないのです。そういう点の動きというものを十分検討して発表しなければならないのを、軽率に出しておるというそしりは免かれないのじやないかと思いますが、もしもあなたが発表しないとすれば、今後注意をして修正をして発表するというお考え方がありますかどうか、その点だけを質問いたしまして、時間が来ておるようでありますから、あらためてあとはまた別の機会に質問いたしたいと思います。
  28. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいまの今朝の新聞でございますが、われわれといたしましては、生産高の問題については全然発表いたしておりません。これははつきり申し上げます。生産高の問題はやはり統計調査部として作況を発表されます。これは例年のことでございます。新聞社の方におきましては過去の状態、今年の基準反収がわかりますから、それを目安にしていろいろの収量を計算されておりますので、おそらく統計調査部とされましてもその数字を発表したわけではないと思いますが、もちろん統計調査部で発表しないものを、われわれの方でこういう収量であるということで発表するようなことはございません。
  29. 井出一太郎

    井出委員長 芳賀貢君。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長にお尋ねしますが、本日農林大臣出席になるかならぬか、その点であります。
  31. 井出一太郎

    井出委員長 農林大臣は午後の二時半ないし三時ごろここへ出席をするという明言がございました。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の制約がありますから、順序を追つてまず追加払いの件、それから黄変米の問題、第三点は、農産物価格安定法に基く重要農産物の買上げ、この三件についてお尋ねをいたします。追加払いの問題は、農林大臣出席された席でないと明確にならぬかもしれませんが、本日の出席も危ぶまれるので、食糧庁長官にお尋ねしておきますが、保利農林大臣は八月の二十四日に新潟県に参つて、今年度の産米の集荷目標を一応二千七百万石程度にしたいということとあわせて、二十八年度産米に対する追加払いをするということを公表しておられます。もうすでにその時期を逸したような感はありますが、大臣が発表された追加払いを行うという内容等に対して、長官から責任のある御説明をお願いします。
  33. 前谷重夫

    前谷説明員 これは芳賀さんも御承知のように、追加払いはわれわれといたしましては、当然すべきであるということで、今その具体的な数字等について折衝をいたしております。従来の状態から申しますと、追加払いの問題は、例年追加払をいたします場合には、次の消費者米価に織り込むということが従来の建前であつたわけであります。しかし今年度の物価政策とかあるいは消費者の家計の関係からいたしまして、そういうことができるかどうか。できない場合におきましては、これがやはり食糧特別会計の負担としてまかなえるかどうかというふうな点を議論いたしておりますが、われわれといたしましては既定方針通りに追加払いをやるべきものだということで、強力に折衝いたしております。これはできるだけ早くきめたいと思つております。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 既定方針の内容、昨日の長官の御説明によると、九月十五日現在の作況によつて早期の割当を行いたい、しかも一括割当をやるというような御意思のようでありますが、割当をする場合においては、その前提となるのは、当然二十九年度産米の買上げ価格の問題等が明確にならぬとならぬわけです。ですから時間的に見ても、もうすでにこの追加払の問題も、具体的な検討が終つておると考えられるわけです。ですからきようお伺いするのは、単に抽象的な問題に対する説明ではなくて、政府当局の腹、どのくらいの追加払いをしなければならぬかという、意のあるところを御発表願いたいわけであります。
  35. 前谷重夫

    前谷説明員 昨日十月上旬において割当をいたしたいという、その十月上旬の基礎といたしまして、九月十五日の作況によりたい。御承知のように九月十五日の作況が、大体判明いたしますのが九月末か十月初めでございます。その割当までに額も決定いたしたい、こういう私の希望と申しますか、考え方を申し上げたわけでありまして、追加払いにつきましては、今具体的には、食糧特別会計の内容を両者で検討いたしておるという段階でありますので、これは早急にきめたいと思つておりますが、最終的な決定にはまだ至つておりません。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 このバツクペイの問題は、七月の農林委員会においても、長官が今言つたように、可急的すみやかにきめるというようなことを言つておられます。ですからもうそのすみやかなる時期というものは、あの当時から見ると終つておるのです。この機会にもう少し具体的に、責任のある発表ができないでしようか。
  37. 前谷重夫

    前谷説明員 すみやかにということでわれわれとしては努力いたしておるわけであります。これは私どもとしては、ぜひ払わなければいかぬ。またそうしなければ今年の割当というものもスムーズに行かないことは十分承知いたしております。ただいろいろと検討と申しますか、議論する過程におきまして検討しなければならない、たとえば食管会計がどういう現状にあり、どれだけの繰越益があるというふうな点についても検討いたしておりますので、今明確な点は申し上げられないのでありますが、ぜひ実現いたしたいということで、御了承願いたいと思います。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 バツク・ペイの問題は、政府が当初生産農民と約束したことなんです。政府が当時から義務を持つておるのです。だからこれを支払いしたいなんということは、何もとやかく言う必要はないんです。ですから適切な時期に支払いをするということが当然なことなんです。それが食管会計の状態がどうであるとか、消費者価格に転嫁した場合にはどうなるとか、そういうことは追加払いの場合は全然相関関係がないといつてもさしつかえないんです。この点はもう少し明確に、可分なものとしてこれは処置できるというくらいの言明はできるんじやないですか。
  39. 前谷重夫

    前谷説明員 私たちといたしましては、食管会計で追加払いをまかない得るだけの益は出るというふうに考えております。それとその内容につきまして今財政当局と検討いたしております。できるだけすみやかにいたしたいと思いますが、もうしばらく御猶予願いたいと思います。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 それではこの件は 午後に農林大臣出席された場合に質問することとして、留保しておきます。次は黄変米の問題でありますが、国会においても、衆議院の決算委員会あるいは厚生委員会においては、八万トンの黄変米というものは配給すべきでないという意思決定が行われておる。さらに参議院等においても、かかる決定が当該委員会等において行われると思うわけなんです。しかるに一昨日の長官の御説明を聞くと、この八万トンをもう一度つきなおして、そうしてなるたけ消費者に食わせたい、これはまつた国会の意思と逆なことを政府当局は試みようとしておるわけですが、これは非常に重大な問題であると考えるわけなんです。しかも再搗精した場合においても、この毒素の含有がはたして完全に除去されるという確信はまつたくないと考えるわけなんです。ですからこの有毒米に対する配給の措置というものは、これを行わないということを国民の前に政府の責任において表明する時期であるというふうに考えるわけですが、先日の御発言によると、何とかして、無理にでも国民の口を開いてこの有毒米を押し込もうというような意図のように考えるわけですが、この点はいかがでありますか。
  41. 前谷重夫

    前谷説明員 実はこの黄変米につきましてはいろいろ御意見があるわけでございます。当委員会におきましても、一定基準以上の黄変米については配給しないが、その基準については十分学者の協力を得てこれを決定することが妥当だという、非常に専門的な立場におきまして御意見があるわけでございまして、実はわれわれはこういう考え方に基きまして、現実にありまする黄変米につきまして、それを従来の純粋培養をいたしました、特にそのためにつくつた病変菌の付着いたしておりまする米で実験いたしました実験方法を、現実に滞貨いたしておりまするそのものをもつて実験し、しかもその実験の結果につきましては十分学者間の納得の行く方法をとるように厚生当局と協議をいたしておるわけでありますが、厚生省はそういう考え方でもつてこの実験を進めておるわけであります。これの結果をまつて処置いたしたい。ただわれわれといたしましては、この事前においても手をこまねいておるというわけではございませんが、再搗精をする場合において今後どういう変化が起きるか。また現在滞貨いたしておりまするものにつきましてもウエートが違いまするから、それを仕訳するというようないろいろな準備行為をいたしておる、こういうことでございます。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 私の申しておるのは、国会一つ意思表示は、かかる有毒米を国民に、しかも政府の責任において配給することは中止すべきであるということが明確になつておるわけです。そういう場合においては、当然その有しておる意義というものは、ただ単に有毒米を食わすか食わさぬかということではなくて、たとえば再搗精して若干の毒素の含有が減少したとしても、そういう米を消費者に配給する場合において、消費大衆に対する心理的な影響あるいは政府に対する信頼感というようなものはどうなるかということも、やはり行政に携わる者の考え方の中には当然持たなければならぬ事態であるというふうに考えるわけです。しもか長官の先日の御発言の中には、これはわが党の井手委員の質問に対して、この有毒米を輸入するということに対する食糧庁の責任の分野なんですが、これは買付をするというその行為に対しては何ら責任を感じておらぬ。それからまた持つて来たものに対しても、これを食品衛生の見地から、たとえば厚生省等が分析して有毒であるという判断をするのはかつてであるが、ただ有毒米であろうと何であろうと、これは米の範疇に入るから、食糧としては米という品目の中においてこの有毒米が輸入されても何ら責任を感ずる必要がないということをあなたは言つておるわけです。これは非常に大きな問題であるというふうに考えるわけです。問題は、昭和二十八年度から黄変米の問題は取上げられておつて、最初は非常に少量のようでありましたが、二十六年度は約七千トン程度、二十七年度が一万三千トンですか、二十八年度においては約七万トン、今年はすでに十一万トンということになると、年々累増しておるという形が出て来ておるわけです。しかもそれ以前においては終戦後の混乱で、黄変米が来ておつてもそれはみんな気がつかないで食わされておつたということも言えると思うのです。ですから今後の措置としては、タイとかビルマとか南方米を買いつける場合において、毒素の含有がどうであるかということの分析と確認は、どうしても今後事前措置として必要になつて来るというふうに考えるわけであります。現在の買付方式というものは、政府が特定の商社を指定して、それに買いつけさせておる。しかも一等級、二等級という優良の米質のものは買いつけておらぬような状態であります。特に準内地米以外の外米に対しては、三割もの砕け米の混入を認めるというような契約をやつておる場合において、どうしてこの問題になつておる有毒米を完全に除去する態勢がとられるかということであります。この点に対してはいかなる見解をもつて対処しようとしておられますか。
  43. 前谷重夫

    前谷説明員 ただいま芳賀委員からお話がございましたが、私といたしまして有毒米が、外形が米であれば有毒米であつても輸入してさしつかえない、こういう気持は毛頭ございません。ただ御承知のように、従来は変色いたしました場合においては、これを黄変米として取扱うということになつておりましたので、この交渉にも相当の努力をいたしまして、一%以上の黄色粒については協定をつくりまして、それを輸入しないということで昨年度から努力いたして来たわけでございます。従いましてその黄色したものにつきましては、一%以上のものは昨年度は入つておらないわけであります。ただ昨年の暮から、全然肉眼では見えないというものが出て参りまして、基準がかわつて参りましたから、これを事前においてどういうふうにするかということは、御指摘のように今後の非常な問題であるわけであります。ただ現在の状態におきましては、これを細菌培養いたしまして、培養して顕微鏡で見なければわからないという状態でございますので、これに対して、何かの簡易な方法で検定し得る方法をまず発見しなければならない。それによつて事前の検査をしなければならない、こういうことを考えておりまして、それの方法がまだ研究段階でございまして、なかなか的確な方法が見つからないということを苦慮いたしておるのでございます。本年度におきましては、すでにほとんど買付を了しておりますので、来年度の買付方法につきましては、そういう点を今検討いたしておるし、また外務省を通じまして、現地側に対しましてもその意向を伝達いたしておる次第であります。
  44. 芳賀貢

    芳賀委員 非常にあいまいな御答弁ですが、これは井手委員の質問に対して長官は、外米の中に毒性があるということと、それが人体に及ぼす許容の限度というものはおのずから区分して取扱うというようなことをはつきり言つておるわけです。ですからそれは、結局有毒米ということはある程度是認の上に立つて、これを輸入しておるといわれてもやむを得ないのじやないですか。ですから買付する場合における最善の措置というものはあくまでも必要なわけです。それと同時に。契約条項の中においても、かかる有毒米が取引された場合においては、相手方に対し損害を要求するというような条件というものは、当然締結してさしつかえないと思うのです。しかし正常な相手方との対政府的な間に立つた契約ができるような、状態の中に置かれた場合においては、そういうものは対等の外交とか交渉の中において、総合的に明確にできると思うわけですが、この点はどうなんでしようか。どんなものを押しつけられてもやむを得ぬという形で、国内の損失であきらめるかどうか。
  45. 前谷重夫

    前谷説明員 外米を買付します場合におきまして、こういう病変菌をいかに排除するか、こういう問題と、それから配給の場合にあたりまして、先般も申し上げましたように、どの程度の基準が人体に影響がないか、こういう問題と二つあると思います。私が申し上げましたのは、配給の場合において、当委員会でも出ましたように、一定基準というものをどう見つけるか。先般われわれとしては、厚生省と一定の基準を、これが妥当であるし、また人体にも影響がない、こういうことで決定いたしたわけでございますが、消費者の方にも非常に不安を与えておりますので、この不安を解消するためにさらにその点を明確ならしめるということが必要であろうと考えておりますので、外米は病変菌のついておる毒のあるものは当然それを入れるのだ、こういう趣旨ではないわけであります。ただ御指摘のように、外米の買入れにつきましてこれを協定の中に入れたいということは、すでに黄変粒一%以上というものは日本限りでございまして、ほかの国には全然そういう協定はないわけであります。日本だけで特別の協定をいたしておるわけであります。その黄変粒一%以上では現在基準にならないということになりますと、どういう基準でもつて相手国と交渉するか。相手国と交渉する場合におきましても、それはどういう方法でもつてこれを鑑定するのであるか、こういう点が問題になろうと思います。すでに今までの交渉におきましても、ほかの国が全然問題にしてないものをなぜ日本において問題にするのか、現に来朝中のビルマ使節団が、これは日本側がビルマ米をたたくためにそういうことをしておるのじやないかということをすら漏らしておるわけでありまして、いかに相手方にその状態を納得せしめ、しかもその上において、こういう方法でこれは検査をするのだ、その基準はこういう基準であるということを交渉しなければならない。われわれといたしましては、現地調査もやりたいということもすでにある程度先方に通じておりますので、その場合にタイ等におきましては、それでは共同調査をやつてもよろしい、その具体的方法その他についていかなる方法があるか、あるいはそれを見わけるのにどういう方法があるか、これは御承知のように、大量の取引の農産物におきましては、あらゆる面においてその取引に応じた見わける基準というものがなければならない。そういう点を今検討いたしておるわけであります。
  46. 芳賀貢

    芳賀委員 ビルマ、タイの政府から、黄変米に対する逆に抗議があつたとかいう問題、これは明らかに吉田内閣の弱腰外交がそれを証左しておるだけであつて、これは決して正常な形における外交の中において現われる現象であるとは言えないということは、長官自身も承知しておられるわけであります。たとえば決算委員会において指摘した数字だけでも、約八億数千万円の実損害があるということを指摘されております。そういう損害というものが毎年のように累増して行くという場合においては、当然現地における買付の形、あるいは契約のとりきめに対する条項等は、十分厳密に、自主的な日本の立場の上に立つてとりきめができると思うのです。しかも現在においては、世界的に食糧が過剰の傾向を帯びて来ておる。だから無理に毒性のある、あるいはタイ米であるとかビルマ米であるとか、そういう有毒米をどうしても買いつけなければならぬというような時期とは状態が非常に違つて来ておることは、昨日足鹿委員の質問に対する長官答弁の中にも、はつきりそれは表現されておるわけであります。ですから、正常な貿易をやる場合においては、選択の自由というものはこつちにあると思うわけです。その点に対して確固たる自信がないというのはどういうわけなのですか。さらにきのうの足鹿委員に対する御説明の中には、契約関係があるので簡単にこれを改変することはできないということを言つておられましたが、たとえば私の承知しておる範囲におきましては、タイとの契約は一九五三年の九月に結んで、五四年八月に終ることになつておる。それからイタリアとの関係は、一九五三年一月から十二月で終つて、現在約半年くらいこれを暫定的に延長しておるという形です。台湾との関係は。五三年四月に始まつて十二月に終つて、現在はこれも暫定的に二箇月くらいずつ、少しずつ延長しておるような形じやないですか。ただビルマの場合だけは、今年の一月協定を結んで、五七年の十二月末までという比較的長い協定が結ばれておるように考えるわけですが、すでに契約期限が切れて更新しなければならぬような段階に幸いに立つておるわけです。ですからこの段階において、今後の外米の輸入方針を、もう一応広い視野の上に立つて考える時期でないかと思いますが、この点に対しどう思つておられますか。
  47. 前谷重夫

    前谷説明員 御指摘のようにそれぞれ貿易協定がございまして、貿易協定は、たとえばタイの場合におきますると、本年の九月で一応は期限が切れております。ただ従来から、双方に異議がなければ暫定的にある程度延びることになつております。このタイとの貿易におきましては——ほかの国も同様でございますが、米穀年度が日本には十一月からございますから、できる限りそれと合う期間に買いたいということを申しておるわけでございまして、こういう協定の時期が大体終りますものにつきましては、これをどういうふうな方式にかえるかということは、先ほど申し上げましたように検討いたしておるわけであります。ただこれを相手方に対して協定をする場合におきまして、こちらの申し分はもちろん十分申すわけでございますが、その場合に協定が成立しなければ買わないということになるわけでございます。つまりこの協定を延ばすことを相手方が了承すればけつこうでございますが、了承しない場合には買わないということになるわけでございまして、われわれといたしましては、従来黄色粒一%ということにつきましては、相当の期間かかつて相手方の納得を得て協定に入つたのであります。今度の場合におきましては、やはりその病変菌の内容、それの検定方法、またその限度というふうなものを、こういうふうにやるのだということをもつて相手方と折衝しなければ、ただ困るということでは具体的な問題になりません。そういう問題として検討いたしております。
  48. 芳賀貢

    芳賀委員 今長官の言われた点は、客観情勢は、わが国の主張は通りやすいような情勢になつておることはお考えになつておると思うわけです。ですから、たとえば国民がそういう毒のある米は食べたくないという場合においては、当然政府の責任においても、有毒米を輸入しないということに行くのが当然じやないですか。しかもその国から有毒米を買わない限り他に求めることができないという情勢の中においては、これは一考を要するかもしれませんけれども、今日においてはそうじやないのです。昨日も長官は言われたけれども、今日若干ではあるが輸入されておるところの、たとえば北支米あるいは中支米のごときは、加州米よりも米質も上質であるし、また買付価格の点においても非常に低廉である。ただ対政府的な関係というものが正常な形に回復されておらないので、将来の見通し等に対してその点が危惧されたということに触れられておつただけで、原則的には、かかる市場がある場合においては、積極的にその地方から買付をしたいという意図があるように私は察知したわけでありますが、その点はいかがでありますか。
  49. 前谷重夫

    前谷説明員 先ほどの足鹿さんの御質問に対して、計画的に輸入をするということは、まだ輸入量その他の関係、決済方法が明確でないから、年間何万トンということを当初予定することは困難であろうということを申し上げたのであります。ただ良質のものでしかも安いという場合においてはぜひ買いたい、こういう趣旨を申し上げたのでありますが、この黄変米の問題は、御承知のように先般も朝日に出ておりましたが、セイロン米にも黄変米が出ておるということになつております。このセイロン米は、結局ゴムとのバーターによる中共米でございます。これは品質等の関係また地域の関係もございましようが、黄変米の問題はわれわれとしては全地域の問題としてやはり考えざるを得ない、こういう事情がございますので、これとは別に良質のもので安いものは当然買うべき筋合いであるし、われわれも買いたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  50. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し具体的に、そういうような市場を開拓するという考えが食糧庁当局においてもあるということであれば、積極的に動くということがまた必要になつて来るのではないかと思うわけです。たとえば正常貿易ができないような場合においても、これは民間貿易によつて推進するとか、いろいろな形はあるのじやないかと思うのです。きのう長官の言われた点も、わが国から向うへ移した品種によつて栽培されたものが非常に質がいい、たとえば小站米であるとか常熟米であるとか、そういうものは信頼がおけるということを言われておるわけです。しかも買付の価格にしても、一トン五十二ポンドくらいということになれば、これは大体百五十ドル程度で入るわけであります。それから台湾米のごときは二百十二ドルもしておるわけですね。そうなると、船賃からいつてもそうかわりはないと思うのに、一トンで五十ドルも六十ドルも違うということで、これは財政的な面から見ても非常に違うのではないですか。たとえば一トン五十ドル違うとすると、百万トンの場合においては、これは厖大な額になると思う。百八十億ぐらいそこで較差が出て来るのではないか、ですから、これは国内の産米の価格を維持する場合においても、今のように非常に質の悪い、しかも食えるか食えぬかわからぬというような米を百万トン以上も買付をしなければならぬというようなことでは、米価問題に対する大きな障害があるわけです。ですからでき得り限る安い良質の米を買付するような状態を醸成して、そうして国内の米価問題等の調節をはかるということも、これは非常に大きな仕事であるというふうに考えるわけです。ですから今後契約を改訂する場合においては、強硬な方針で、南方米の買付等に対してはこちらの方針を打出すべきである。それがいれられない場合においては、これこれの市場をわれわれは開拓してここで解決するというようなはつきりした態度がとり得ると思いますが、それはどうですか。
  51. 前谷重夫

    前谷説明員 われわれ外米の買付につきましては、もちろん良質なもの、それから安いものということを食糧庁としては考えてやつておるわけであります。御指摘の台湾米の問題がありましたが、これは時期が違うわけでございます。台湾米は、その価格は二期作の場合でございまして、一期作の場合は今後の問題になるわけであります。もちろん、そういう場合には世界的な市価の低落状況を考えまして交渉いたしたいと考えております。ただ黄変米の問題につきましては、これは地域の問題も、もちろんその量あるいは発生する可能性ということはありますけれども、やはり全地域として考えて参らなければならないというのが、実はわれわれの当面している非常に困難な実情であります。それをいかに解決するか、またそのためにはどういうふうな形で発生の可能性の少い、あるいはま、たそれを防止する方法のとれるということを、いかなる方法でそれをやるかということを検討しておる次第であります。
  52. 井手以誠

    ○井手委員 ちよつと関連して。
  53. 井出一太郎

    井出委員長 井手君に申し上げますが、きようはスケジユールが非常に逼迫しておることは御承知の通りであります。その辺をお含みの上で、井手以誠君。
  54. 井手以誠

    ○井手委員 長官にちよつとお尋ねいたしますが、黄変米の輸入については、問題は今始まつたことではないと私は考えております。決算委員会で取上げられたように、食糧にならぬので加工の方にまわされておる、そういうことを考えますと、商社の買付に不注意があつたことはいなめない事実であります。その買付に対して監督が足りなかつたことも私は否定できないと考えております。そこでお尋ねいたしまするのは、そういう場合、商社に対して損害についてのどういうとりきめがあるのか。この際ついでに農林省食糧庁と商社とのとりきめについても御説明を願いたい。
  55. 前谷重夫

    前谷説明員 これは一般の民貿の場合とGG貿易と多少違いますけれども、方針といたしましては、やはり規格をきめまして、そうしてその規格に違反した場合におきましては賠償をとるという形にいたしておるわけであります。その規格は、従来におきましては黄色粒一%以上は規格に合わないということでやつてつたのでございます。つまり従来の黄変米の場合においては、これは変色いたして肉眼でも鑑別し得るということでございましたので、その基準に従つて一%以上——従来は黄色いたしておりますもの一%以上は配給してはいかぬということが基準になつてつたわけでございます。その基準に従つてそれを契約の中に入れておつたのであります。ところが今度の場合におきましては、それは外見的には全然わからないわけでありまして、これを細菌培養しまして顕微鏡検査しなければ、それが入つているか入つていないかということがわからない、こういう状態に立ち至りましたので、これをどういう形において規格に入れ、また検査をするかということで、従来の二十六年、七年におきます場合と現在の場合とは、その状態が非常にかわつたということを御了承願いたいと思います。
  56. 井手以誠

    ○井手委員 その契約の内容を、ひとつ文書で写しを本日中にお配り願いたいと思います。それから今までに契約に反した、いわゆる一%以上のものがあつたかなかつたか、その点だけをお尋ねいたします。
  57. 前谷重夫

    前谷説明員 その契約文書を印刷しますから差上げますが、印刷でありますから、きよう中になりますかどうか、その点御了承願いたい。それからわれわれは昨年度におきましては、一%以上というものにつきましては極力防止いたしておりますから、これも現在においては入つておりません。
  58. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連して。この前商社を呼び出したときに、二十七年度までは損害賠償を払つていない、しかし二十八年度から払うことになつた、こうはつきり言つておりますね。あなたも二十八年度からとることになつた、これは決算委員会の方へ私の方で話をしておきましたが、二十八年度で黄変米の国家に対する損害を一体幾ら商社が払いましたか。その金額をはつきりしていただきたい。それから商社別に、どこの商社が幾ら払つたか、そういうこともはつきりしていただきたい。
  59. 前谷重夫

    前谷説明員 二十八年度中におきまするものでありますが、これは御指摘のように二十七年度までは黄色粒一%という規格がなかつたわけでございますので、二十八年度からこの規格を入れたのであります。現実にこれに反する規格のものは輸入しておりません。なお詳細調べたいと思います。この規格の問題は、先ほど申し上げましたように二十七年度までは相手国の了承が得られないために、黄色粒一%というこの規格が入らなかつた。二十八年度から入つた。それで今度の問題は二十八年度の黄色粒一%という問題と基準が違つてつた。つまり黄色してないということでございまして、先ほども申し上げましたように、これを鑑定するのには細菌培養、顕微鏡検査ということが必要になつて参ります。この場合において、どういう買付をするかということを新年度としては検討いたしている次第でございます。なお二十八年度の御指摘の点は、調べまして詳細報告いたします。
  60. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それに連関してひとつ長官にお伺いしますが、今黄変米を入れる方の点についてのいろいろ問題が出ておるわけであります。しかしこれはもう二十七年あるいは二十六年から黄変米というものは入つておる。その黄変米が相当国民にも大きな不安を与え——大きなどころではない、非常な不安を与える。と同時に国家にも大きな損失を与えておることは明らかだ。今までのところでは、黄変米がかりにたとえば六万五千円で入れても、二万円なり三万円で払い下げておる。これをどの方面へどのように払い下げておるか。われわれが聞いたところではみそ、しようゆとか、あるいは酒の材料に払い下げられておるということである。そうなると、普通の場合には、砕け米なりあるいは普通の米を払い下げて酒の価格なり何なりをきめておる。それよりずつと安い価格で払い下げた場合に、われわれはみそや酒の価格が黄変米を使つたから安くなつたということは聞いたことがない。その処置はどうなつておるかという点。安いものを高く国家が買つて来て、そうしてそれを二分の一ないし三分の一で払い下げておつて、それを使つた製品が半分以上は、少くとも国家の息のかかつた商品として市場に出ておる。これに対してどのような措置を食糧庁としてはとつておるか。また二十六年以来幾らでどこへ払い下げて、それはどのように使われておるか。その場合における毒性の点については、どのような処置をとつておるかということをお答えをいただきたいのと、今申し上げました二十六年以来払い下げた先、払い下げた価格、使途等についての資料を出していただきたい。
  61. 前谷重夫

    前谷説明員 二十六年度に入りましたものが九千トンでございますが、これは二十七年度に処分いたしたわけであります。それから二十七年度に入りましたものが一万三千トンでございますが、これが二十八年度に処分をいたしたわけでございます。現在問題になつておりまする滞貨につきましては、処分をいたしておらないわけでございます。御承知のように黄変米と申しましても、二十八年度の暮れから、つまり現在のものと従来のものとの間においては基準がかわつたわけでございます。基準と申しますか、内容がかわつてつておりますので、その点は了承願いたいと思います。つまり従来は変色すればそこに毒素が生ずるという見解でございました。変色しているかいないかということが黄変米の鑑定なり、病変であるかどうかということの基準であつたわけであります。今度はそういう基準ではなくして、細菌培養、顕微鏡検査ということによつて基準がきまつて来るということで、従来の変色ということとは別の基準になつて参りましたので、それについて今どうするかという問題を検討いたしているわけでございます。二十六年、七年のものの処分につきましては、書面をもつて申し上げますが、ただいま御指摘のございました基準の毒性の問題につきましては、その当時厚生省と協議いたしまして一%以上一〇%までのものは菓子、みそ、しようゆにまわしてさしつかえない、それ以上のものはアルコールにまわすという基準がございましたので、その基準に従つて処分をいたしたわけであります。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の制約がありますから、黄変米の問題は今後の輸入方針等に対する先ほどの長官の御答弁で、大体それに対して今後の期待を持つという程度で、われわれは厳重に監視をして行きたいという考えであります。次に現在八万トンあるものは、各府県にもう一応配分の計画は終つておると思う。これは大よそ八月、九月分の配給に充てるような手順になつてつたと思いますが、それを現在再搗精するとかいうようなことで流用されておるわけですが、特に北海道について言えば、一万トンの有毒米が小樽にある。それを現在再搗精して、二四%くらい減じた七六%くらいの歩どまりにするぐらいについているそうですが、もしこれでも毒素があると、北海道の道民は、そういうものは食えないといつて配給を辞退した場合、九月と十月の配給に大きな穴があいて来るのです。こういうことに対しては最善の措置が講ぜられておると思いますが、端境期になつておるし重大な問題になつて来ると思いますが、この点に対する細心の配慮が払われておるかどうか、いかがですか。
  63. 前谷重夫

    前谷説明員 この問題につきましては、われわれといたしましても、現在問題になつておりますものには配給停止として手をつけておりません。それででき得る限りいろいろ需給操作をいたしまして、そうして遅配、欠配のないように努力をいたしたいと思つております。従いまして問題になつておりまするものの配給計画は、これは別途として、ほかのもので配給する計画であります。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は北海道知事も道民に対して言明しておる。かかる有毒米は皆さんに食べさすわけに行きませんと言うておる。ですからこれを無理に食わすわけに行かぬとなると、自衛隊を五万五千人北海道に連れて行つただけでも、北海道民の精神的影響は非常に甚大なものであるということをひとつ考慮に入れておいていただきたいと思います。その次に農産物の価格安定法の問題であります。これは先日資料の要求をいたしておいたわけでありますが、その資料はいまだにできておりませんか。
  65. 前谷重夫

    前谷説明員 印刷が間に合いませんので口頭で申し上げたいと思います。御指摘の原料価格は、昨年度におきまして、かんしよは裸一貫当り二十八円であります。ばれいしよは裸一貫当り二十二円でございます。それから加工費の点でありますが、これはたとえばばれいしよ澱粉の微粉を例にとつて参りますと、歩どまりを一四・五%と考えております。それから製品原料代が——これは十貫といたしておりますが、この場合におきまして千五百十七円十四銭、加工経費が四百三十四円六十四銭、副産物収入を差引きまして千八百七十五円二十三銭となります。これを十二貫に換算いたしますと二千二百五十円で、この二千二百五十円をもつて十二貫当りのかんしよ、ばれいしよ澱粉の微粉といたしております。製粉につきましてはこの千八百七十五円の微粉を原料といたしまして、運賃を十七円七十五銭と見ます、それから歩どまりを九九・五%と見まして、原料代が千九百二円二十六銭に相なります。それに加工賃が八十三円三十五銭と相なりまして、副産物収入二十七円九十七銭を差引きますると千九百五十七円六十四銭と相なるわけであります。これを十二貫に直しますると二千三百四十九円十七銭となりますから、昨年度の製粉の買入れ価格は二千三百五十円というふうにラウンドにしたわけであります。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 かかる簡単な資料ができないというのはどういうわけなのですか。
  67. 前谷重夫

    前谷説明員 実は昨日午前中にお話がございまして、午後印刷するように手配をいたしたわけでございますが、きよう私こちらへ参りましてそのものを持つて参ることができなかつたのであります。後刻お届けいたします。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 これは一昨日の夕刻、委員長を通じて私は申入れをしておつた。資料としてはもう少し明細なものができると思いますが、こういうような資料の提出を怠るがごときことは、これはやはり委員会を軽視したことになると思いますが、いかがですか。
  69. 前谷重夫

    前谷説明員 どうも申訳ございません。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 それでお尋ねしたい点は、二十九年度予算の中においても重要農産物の買入れの費目があるわけでございますが、これは澱粉あるいは菜種、かんしよ、切りぼし等が一括されておるので、その内容等は明確になつておりませんが、今年度においても、二十九年度産で安定法に基くところの一定量の買入れをするということの方針にはかわりないかどうか、その点はどうです。
  71. 前谷重夫

    前谷説明員 安定法の趣旨に基きまして、自主的調整と相まちまして、当然予算に計上いたしたわけでございます。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 それで安定法によりますと、澱粉の買入れ価格の発表の時期は十二月の三十日に公示するということになつておりますが、これを生産地の実情に照してみると、かんしよ澱粉の場合においてはその時期でもさしつかえないかもしれませんが、ばれいしよ澱粉の場合においては、すでに早い地帯においては澱粉の生産が始まつておるわけです。それで九月は生産の最盛期になるような関係上、原料生産者であるところの農家は、ほとんどばれいしよを地方の澱粉工場に原料として売却する場合が非常に多いわけです。そういうことになりますと、今年度の澱粉の価格、特にそれに対する一番大きな影響を持つておるところの政府の買上げの基準価格というのはどのくらいのことになるのかという発表は、これはばれいしよの原料価格に甚大な影響があるわけです。今までのようにあるいは十月末、あるいは十一月等に発表せられる場合においては、生産農家に対しては非常に大きな損失になる。たとえば農協等においても、こういう政府価格が一応はつきりして、それから全販連等を通じて自主的な調節をする場合においても、その計画が早期に立てやすいわけです。それで今年は、何とかしてばれいしよ澱粉の価格の発表の時期を一箇月繰り上げて、九月下旬ごろに発表することが妥当であるというふうに私は考えるわけですが、この点に対しては当委員会においても数次発言したこともあるのですが、長官のお考えはどうですか。
  73. 前谷重夫

    前谷説明員 御指摘のように、農産物価格安定法の場合におきまする澱粉の買上げ価格を決定するのは、十月末になつております。これは成り立ちからいたしまして、かんしよ澱粉を主としております関係上、その時期を選んだわけでございます。御指摘のように、北海道のばれいしよ澱粉につきましては、出まわり時期が多少早まつておりますので、これをできるだけ早くいたしたい、かように考えております。ただここで御了承願わなければいけませんのは、昨年の価格は、かんしよ澱粉とばれいしよ澱粉とやはり一つの格差があります。本来ならば、これを別々にするということはどうもおかしいので、できるだけ両者を早くするという方向でなければならないのではないか。ばれいしよ澱粉の場合におきまする出まわりの事情も十分私にはわかります。同時にこれは、ばれいしよ澱粉とかんしよ澱粉双方のものでございますので、その間の格差の問題というものはやはり同時に、一方を別々に考えるということより、両者をあわせて考えらければならない、こういう点がございますので、ばれいしよの出まわりの状況とも合せて、できるだけ早くつくりたい、かように考えております。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 なおその点でありますが、従来はかんしよの澱粉の価格を主体にしてきめて、それに若干のばれいしよ澱粉の格差をつけたということなんですが、安定法ができてからの場合においては、やはり別々に算定することが可能になつて来ていると思うのです。特に含有の点においても、ばれいしよの場合においては一五%以内ぐらいが含有量になるとしても、かんしよ澱粉の場合においては二四%ぐらいある。それから加工賃においても、乾燥の条件が非常に違う。北海道の場合においては、石炭であるとか、まきを用いて熱乾燥をしなければ乾燥できない。内地においては大体自然乾燥の形ででき上るというような、非常に特殊な条件があるので、かかる条件は別々に勘案して考えなければ、その正しい算定はできないと思う。これはどうしても法の趣旨に従つてつていただきたいと考えるわけであります。それからもう一つは、この価格決定をするような場合において、これは正式な機関ではないと思いますが、やはり農産物に対する審議委員というようなものが一応あるわけです。これに対しましては、昨年から国会の代表のような形で、自由党、改進党側から委員が出ている、どういうわけかわかりませんけれども、社会党両派は、この重要農産物の場合においても何ら相談にあずからない。これは社会党両派が農政に対して非常にうといということから、長官信頼を寄せておらぬためだろうと思いますが、こういうへんぱな措置というものは、これは非常にけしからぬじやないか。あすの日でも政権担当の用意がある政党に対して相談をしないというようなことは、非常に当を得ないと思いますが、本年度の場合においては、もう少し反省されて、政党から委員を出す場合においては、全体に均霑するような形で相談をかけるという御意思があるかどうか、その点もこの際明確にしていただきたいと思います。
  75. 前谷重夫

    前谷説明員 農産物価格安定法の場合におきましては、それを審議するために正式委員会を設けているわけではございません。ただわれわれといたしましても、当初の安定法ができました第一回の出発でございましたので、慎重を期しまして専門家の御意見を伺つた、こういう過程でございますので、われわれといたしましても、正式な形ではなく、専門家の御意見はだんだん伺つて参りたい、かように考えております。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 あと重要な点は、肥料問題が一応終つてから、大臣出席をまつて継続したいと思いますが、ただいまの点は、これはじようだんやなんかじやありませんから、はつきりした言明をしておいてもらわぬと、たとえば肥料審議会国会から出す委員の選定の場合にも重要な関連があると思うので、特にこの点をこの機会に強調しておくのです。もう一度確認しておきたいと思います。
  77. 前谷重夫

    前谷説明員 これは肥料の場合、米価の場合と異りまして、われわれとしても、正式の形において委員会を開いて、そうしてこの価格を諮問するという形でないことは御了承通りでございます。ただこの価格決定につきましては、慎重を期するために、しかも昨千度は安定法を実施する初年度でございましたので、そういう意味で御意見を伺つたわけでございます。われわれといたしましては、委員会と申しますか、そういう形は現在考えておりません。しかしこれの価格決定にあたつては、法的律には生産者団体の意見を聞くということになつているわけでありまして、生産者団体の意見を十分聞いて参ることは法律の命ずる通りでございますが、さらに専門家の意見もこれを広く聴取いたしたいという気持は、もちろん持つております。
  78. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの芳賀委員のばれいしよの価格決定の時期、これは市場価格としても、ばれいしよ澱粉とかんしよ澱粉と、一定の自然に出て来る品質上の差がありますし、それから栽培の条件、加工条件としてもかわつておりますし、なお推し進めて行きますと、産地の区分というものもかわつておりますので、あなたのおつしやるように価格として関連性があるということは、製品となつたときに市場にこのくらいの開きがあるということが今は出ておりますけれども、前もつて申し上げるように、生産の要素、それから時期、地域というものも違うのでありますから、これはどうですか、本年度はばれいしよ、かんしよ関連してということになると、非常におそくなりがちですから、思い切つて九月末までにやろうということを一応腹をおきめになつて、その上にどういう支障が来るかということをすぐ検討させるということで、きようはひとつその腹でお進め願いたいと思いますが、どうですか。
  79. 前谷重夫

    前谷説明員 先般からもお話がございましたように、私も地域制ということは十分わかつておりますので、できるだけ早くやりたいということを考えておるわけであります。ただ私申し上げましたのは、政府の現在に買い入れますものは澱粉でございますので、その原料価格の点において早く考えて決定すればいいのじやなかろうかというふうな気持を持つておりますので、なお検討したいと思います。
  80. 井出一太郎

    井出委員長 引続きこれより肥料問題について調査を進めます。御承知の通り国会におきまして、多年の懸案でありました肥料需給安定のための法的措置を講じたのでありますが、政府は本法に基いて最高価格の決定その他について検討を加えられているようでありますので、この際法制定以来の経緯についてまず説明を求めたいと思います。小倉農林経済局長。
  81. 小倉武一

    ○小倉説明員 ただいま肥料に関する両法案が成立いたしまして以来今日までの経過につきまして、委員長からのお尋ねでございますので、概略御参考に申し上げます。まず法案が成立いたしまして、必要な施行政令を制定いたしますとともに、だんだん新しい肥料年度も迫つて参りましたので、第一段といたしまして、二十九肥料年度の需給計画につきまして決定を見たのであります。この需給計画につきましても、肥料審議会の議を経て決定をいたしたのでありますけれども、その内容を申し上げますと、供給は前年度からの繰越しと生産見込み数量を合せまして二百四十九万四千トン、約二百五十万トンであります。     〔委員長退席、金子委員長代理着席〕 これに対しまして消費見込み数量でございますが、それは百七十五万トン、この点につきましては、審議会でさらに三万トンの追加の意見決定を見ましたので、その旨を取入れまして百七十八万トン、かようにいたしたのであります。次は調整用の保留でございますが、これは十七万五千トン、消費見込みの約一割を計上いたしておるのであります。輸出見込み数量は、当初五十万トンと見込んだのでございますが、審議会の議の結果、これを三万トン減じまして四十七万トン翌年度への繰越は六万九千トン、かように決定を見たのであります。なお審議会のこの需給計画に対しまする御意見といたしまして、二、三附帯条件ないし希望条件といつたようなものがございましたので、それを御紹介申し上げます。一つは生産見込みについて二百四十万トンというのは少な過ぎやしないかということが、主として農業団体関係の委員、消費者の側の委員の方から出たのでございますが、それとも関連いたしまして、二百四十万トンということに対してさらに生産増強に努めるようにこれはもちろん政府においてもそういう趣旨で適切な措置を講ずるというふうな附帯条件がついたのであります。なお増産分は当然輸出に振り向けるということではなくて、そのときの国内の需給状況も適宜考慮して決定をいたすために、適宜保留して行く、この点は在庫数量が月生産の三分の一という見込み方が少な過ぎやしないかということも関連いたしまして、増産に努めるとともに、その増産分はただちに輸出に振り向けないように、輸出に振り向けるかどうかは国内の需給状況を勘案するように、こういう趣旨であつたのであります。それから調整保留の十七万五千トンの操作の問題でございますが、これは法律にございまするように、原則といたしまして一々審議会の議を経て放出することになつておるのでありまするけれども、具体的な個々の放出についてあらかじめ審議会の議を経るということでは、需給調整に欠くるところがあるやもしれないということで、これが機動的に行われるように適宜の措置を講ずるということであります。その次の第三点は、年間の需給計画といいましても、一年間のことを予測するのでございまするので、実施の経過によつて生産ないし消費の両方面から所要の改訂を行う必要が生ずるということがあり得るということは法律でも予想をしておりまするので、附帯条件といたしまして、四半期ごとに検討を加える、そうして実施の経過によつて、必要があれば所要の改訂を加える、かような三つの附帯条件がついたのであります。私ども政府関係者といたしましても、その附帯条件の趣旨はごもつともでございまするので、こういう趣旨で今後この生産計画、需給計画を運用して参りたい、かように思つております。なお最後に希望条件といたしまして、御承知の通り電力料金の引上げであるいは割当制の廃止の問題が論議になつておるのでございますが、この点について審議会といたされましては、この電力料金の問題は需給計画の実施に重大な関係があるから、料金の引上げないし割当の廃止ということは行わないようにという希望が付せられてあります。次は価格の問題でございますが、価格も新しい肥料年度から、当然法律に基きます公定価格として決定をする筋合いでございます。いろいろ準備の都合で遅れて参つたのでありますが、先般価格につきましても、諮問第二号といたしまして審議会に諮問をいたしたのであります。価格につきましては法律の示しまするように、各工場会社から原価計算を徴しまして、それにつきまして各工場会社の実情を聴取し、さらに実地に見聞いたしまして、この会社提出の実績の原価計算について審査を加えまするとともに、それを基礎といたしまして、二十九肥料年度における肥料の生産費を想定いたしたのであります。それからこの利潤と申しまするか、配当ないし社内留保という点につきましては、一般の経済事情あるいは農家の経済事情等をしんしやくいたしまして、諮問案といたしましては、かます当り八百二十八円ということでただいま諮問をいたしまして、すでに両度の会議を経て、御承知のように本日、さらに明日審議を重ねることに相なつております。原価計算のいたし方の大筋といたしましては、先般の国会でも御議論がございまして、いろいろ申し上げた点に含まれておるのでございますが、国内需要量の百七十八万トン、これを基礎といたしまして、それに見合う合成硫安、それに国内保留数量を加えました限度を加重平均をいたしまして、それを基準といたしたものを採用いたしたのであります。ごく概略でありますが、以上のようなのが今日までの経過であります。     〔金子委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 井出一太郎

    井出委員長 これより質疑に入りますが、本日肥料審議会がございまして、政府当局関係者は一時よりそちらへ出る都合があるそうであります。それをお含みの上で御質疑を願います。足鹿君。
  83. 足鹿覺

    足鹿委員 私は大体五つないし六つの点について、政府にお尋ねをいたしたいのであります。まず第一に肥料審議会についてであります。ただいまいただきました資料によりますと、肥料審議会委員名簿として十名の委員が名を連ねておられます、この一番最後の学識経験のある者として二名ありますが、これは肥料需給安定法審議の経過並びに結果から見まして、まだ五名不足しておると私どもは思います。この選任の問題については一体どのようになつておるのか、大体委員の一名二名の欠員しかも発足後に欠員した場合には、これは慣例としてやむを得ないと思うが、このような重大な、当初から五名からの欠員を知つておりながら、会長の互選をするはもちろん、その会長名によつて答申を発しておるということは、僭越しごくではなかろうかと思う。第一、経済局長も肥料部長も、よくこの肥料需給安定法の成立の経過については御存じだろうと思う。三越しの難航に難航を重ねたこの法案が、去る第十九国会において成立し、しかもいろいろな問題はあつたが、本委員会は満場一致この法案に賛成をしておるのだ。にもかかわらず、その法の運営に重大な関連を有する肥料審議会委員の選任にあたつて国会を代表する五名を全然無視して発足せしめたその理由、根拠いかん、一体どういうお考えでありますか。国会議員は学識経験のある者として当然上つて行くべきものと、われわれは法律の審議の経過及び結果から想像しておつたのであるが、何ゆえにこれを農林委員会においても一言の了解もせしめることなく、このように五名からの大量欠員のまま会議を成立せしめたのか。このような重大な構成要素の欠除しておる答申は、有効であるのか無効であるのか。私どもはこういうものを承認するわけには参りません。第一、法律の審議の経過なり結果をあなた方は少し無視しておりはしませんか。もう少し慎重を要すると私は思う。この点について御所見を承りたい。
  84. 小倉武一

    ○小倉説明員 審議会の委員の構成の問題についてでございますが、御質疑のように、学識経験ある者五人なお欠員がございます。欠員のあるまま発足するのは、御指摘のように必ずしも適当でないと私どもも存じます。この欠員も、御指摘のように、この両院の農林委員会におきまする審議の経過から見まして、国会議員の方もお願いをしたい、こういうつもりでございました。そういうつもりで今日もおります。先般の国会が終了いたしますまでに国会の御承認を得て、委員を御委嘱できればよかつたのでございますが、その機を失したまま今日に至りましたので、残念ながら委員の任命を見るに至つていないのであります。この欠員は御指摘のように、このようなことで欠員にしてありますので、主として国会議員の方からお願いをするつもりであることは、今日もかわるところはないわけであります。
  85. 足鹿覺

    足鹿委員 この問題であまり時間をとると、あとの問題の時間がありませんので多くを申し上げませんが、そこに肥料審議会の運営上私は欠くるところがあると思う。御存じのように、国会法の示すところによつて国会から出て行く委員国会の議決を経なければならないことになつておる。従つて、すみやかに臨時国会が招集せられ得るならば、今あなたがおつしやつたように、委員の選考が内定しておればただちにできるでしようが、臨時国会はあなた方の政府はやらぬと言つておる。十一月末、吉田が帰るまでやらないと言つておる。そうでしよう、そうすればあなた方はこのまま手ぶらでこの審議会を運営するつもりですか。そんなばかなことはわれわれは許しません。そんなむちやな話がありますか。今経済局長は、日ごろのお言葉にも似合わず内定しておると言うが、どうしますか。臨時国会が開かれるまでは、国会の承認を経なければ出られないですよ。これに対する機宜の措置というものは当然あるべきはずじやないですか。それについてどういうふうにお考えになつておりますか。
  86. 小倉武一

    ○小倉説明員 機宜の措置、適宜の措置としていろいろお考えもおありかと存じますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げたようなことで正式の委員の発令をもつて御参加願うということにいたしたいと存じておるのであります。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員 正式の委員がきまらなければ国会の関係の者はきめない、いわゆる成規の手続を経なければきめないということであるならば、われわれはきよう 午後一時から開かれるであろう肥料審議会に対して重大な決意を表明しなければならぬと思う。そういうものをわれわれは承認するわけに行かない。どの一つが欠けても委員会の構成上、これはいわゆる適格の条件を備えておらないとわれわれは断定しなければならない。しかも内外の注目を浴びておる肥料の需給計画なりあるいはその生産者価格決定、三年越しの長い難航を重ねたこの問題は、ほかの問題とは異なつております。特に事実上のマル公をきめるような価格問題を決定せんとしておることは、われわれは見のがすことはできません。もしきよう肥料審議会を、機宜の措置を講じないで継続して行くということであるならば、われわれは委員長にお諮り願つて従来の農林委員会の審議の経過から見て、政府がこのような一方的な、独善的な行動に出るならば、われわれ農林委員会としても、態度決定して政府に申入れをすべきである、反省を促すべきである、かように私は考えます。経済局長の者え方に御反省があるかどうか。当然審議会等は諮問機関の性格を持つものであります。従つて政府の諮問に答申をすれば事足りるであります。ですから、米価審議会その他の重要な審議会の運営等も懇談会という形式をとつて、各委員意見を交換、調整する運用がなされておることは御存じの通りであります。正規の委員会国会代表がオブザーヴアーというような形で出ることが適当であるかどうかという点について御所定はどうであるか。もし正規の審議会に国会からオブザーヴアーで出て行くことが適当でないという場合は、非公式な懇談会に国会代表五人を出席せしめることをも妥当でないと考えておるかどうか。その二つについて経済局長に御答弁願いたい。委員長答弁によつてはひとつただいまの私の動議をあとで処理していただきたい。
  88. 小倉武一

    ○小倉説明員 正式の委員ということに適宜の措置ではちよつとしにくいことは足鹿先生も御了承の上での御質問でございますので、その点については繰返しませんが、オブザーヴアーなりあるいた懇談会ということになりますと、話は多少趣が違つて来ると思います。もつとも現在審議会は、いろいろ適当、不適当の問題はございますが、すでに構成されております。オブザーヴアーを認めるかどうかということは会長の権限になつておりますので、国会議員の方ばかりでなくて、その他の関係の方あるいは関心を持つておる方でもオブザーヴアーとして意見をお述べになる、あるいは審議会として必要があると考えられて意見をお聞きするということは、おそらく会長が諮つておきめになるということになろうかと思いますが、御趣旨のあるところは会長にもお伝えをいたしたい、かように存じております。
  89. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもは、こういう構成上重大な欠陥のある審議会を正規に発足せしめ、その代表者を互選し、あるいは政府の諮問に答申させること自体が適当でないと思う。今会長々々というが、会長もやはりある程度政府の意図を受けて互選されたのでしよう、今までの経緯から見て、諮問機関というものはみなそうだ。ですから、今になつてあなたが会長々々なんということを言つて、奉つて逃げようというたつてそれはだめだ。今のあなたの正規の委員としての参加は困るが、オブザーヴアーとして正規の会議出席をし発言をし、いろいろと意見の交換を行うことは適当だと思う、こういう御答弁ならば、大臣にも相談をして、本日 午後一時からでも、開会されるならばただちにオブザーヴアーとして行くことにさしつかえありませんか。
  90. 小倉武一

    ○小倉説明員 私は必ずしも適当だというふうに申し上げたつもりはないのでございます。そういう御趣旨のあるところをお伝えするというふうに申し上げたのであります。もちろん大臣は上司でありますから、大臣にも本委員会の御真意のあるところをお話いたしまして、よく御趣旨はお伝えするつもりであります。それからもう一つ、これは私ちよつと潜越ながら答弁を実はやつておるものでありまして、今になつて逃げるということではないのでありますが、審議会の所管は農林省でございませんので、経済審議庁になつております。従つて有権的な答弁は経済審議庁の政府委員でないとまずいのでございますけれども、今見えておらぬようでございますから、便宜主として農林省の考え方ということでお聞き取り願いたい、かように存じます。
  91. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは、大臣と相談をして速急にはからうということでありますから、この問題は一応この程度で打切ります。次に、中共米輸入とその見返り物資としての硫安輸出の問題につきまして、過般通産委員会においていろいろと御議論がなされておるようでございますが、この点について、九月以降現在契約可能のものとして五万トン程度のものがあるように私ども聞いておるのであります。良質廉価なる米を輸入するということについて、従来米の需給計画にも全然乗つておらなかつた中共米が本年から姿を現わすことになつた、これは将来性最も多いものでありますが、これには大事な見返り物資としての硫安を先方が求めておることは御存じの通りであります。この点につきまして、来年度からの問題はしばらく別として、中共側が本年内に必要としておる五万トンの硫安の中共向け輸出によつて、現在日本が必要としておる良質の輸入米を得ることについて、農林、通産両当局は、具体的に輸出を認め、出荷せしめることについて協議をしたかどうか、その点について、今までの経過と現在の段階について、農林通産両当局の御所見を承りたい。
  92. 柿手操六

    柿手説明員 すでに中共米として六月の末か七月の初めであつたと思いますが、五千五百トンの輸入に対しまして、それの見返りの硫安として約一万四千トン弱のものがあつたのでありますが、これは年内に硫安を積み出せばよいという契約であつたのでありますけれども、中共側のたつての御要望がございまして、私どもの方でも農林省と相談いたしまして、過般決定いたしました需給計画の範囲内において、早急に積出すことが可能であるという数字が出ましたので、八月末から九月の初めに積出しをいたしました。その他の中共向けの硫安につきまして、米とのバーターの話は寄り寄りございますが、三万五千トンといい、あるいは五万トンといい、いろいろな数字を承つておりますけれども、この年内十二月末までの硫安の輸出余力は、もうすでにきまつておりますものを考慮に入れまして、さらに十七万五千トンの調整保留分の買入れ等をいたしますと、非常にきゆうくつになつて参りますので、何とか中共米も入れたいし、それに見合う硫安の出荷の時期が延べられないものであろうかということについて、いろいろ話を伺つてみますと、大体米の輸入は、九箇月ないし十箇月後で出しても可能であるという話でありますし、閣議決定をやつた需給計画から見ましても、その程度の時期になれば、国内の最盛期も過ぎて参りますので、余力はあるだろうというふうに見通しをいたしております。
  93. 小倉武一

    ○小倉説明員 輸出力の問題に関連いたしまして、中共に対しまする硫安の輸出につきましては、私どもも、特に関心を持つておるのでありますが、ただいま柿手部長から申し上げた通り、できるだけ出したいと考えております。
  94. 足鹿覺

    足鹿委員 中共側が年内に求めております五万トンというものが、内需を著しく圧迫するということは、大体において私ども、農林委員会の立場からしましても、その憂いはないと思います。問題は、どこからこの物を求めるかという点につきまして、ただいま柿手部長から、十七万五千トンの調整保留分を、今後保留すると、ますますきゆうくつになる、こういうような御趣旨の御答弁がありましたが、この本日いただいた資料によりましても、需給計画の上から昨年の肥料年度の残高が大体九万四千トン、硫安に換算してある。これを二十九年度においては、来年度への繰越し在庫見込みを六万九千トンに削つておられる。これは数字の上で、実情においては、いろいろと差繰りのつくものであろうと私は存じます。たとえば、この九万四千トンの前年度の繰越し数量をもととして、中共側に本年間における五万トンの輸出を具体的に認めて行くという方法はとれないものかどうか、去年の繰越し数量と比べて、著しくこれが減じておつて、来肥料年度に著しく支障が起きるとお考えになつておるかどうか。その点、もう少し具体的に御答弁をお聞かせ願いたいと思います。
  95. 柿手操六

    柿手説明員 ことしの七月末の繰越しは、九万四千トンでありまして、その前の二十八年の七月末は、九万九千トン、大体年度末に繰越された量は、よく似ております。そこで私が十七万五千トンの調整保留分ということを言つたのは、従来はそういう制度がなかつたので、そういうことをやらなかつたということは、新しい事態でありますので、それお申し上げたのであります。そのときに、当時すでにきまつております輸出契約を除いてということは、私申し上げたのでありますが、その輸出契約を詳しく申し上げなかつたので、よくおわかりにならなかつたのだろうと思いますから、それを申し上げますと、今の一万四千トンも積み出しました中共米とのバーターの問題、それから八月の終りでありましたか、九月積みとして、FOA資金による、朝鮮の特需の国際入札がございましたが、それが日本に落札いたしまして、それを出しつつあります。それから、二十八肥料年度から始まつた例の台湾との硫安の長期輸出契約、二十八肥料年度は、御存じのように二十五万トンでありましたのを、二十九肥料年度におきましては、その契約が大体二十七万トンときまつておりまして、それの八月から十二月までの積出し予定数量は、十万八千トンであります。それからその他に尿素であるとか、硫安以外のア系製品が少量、これは東南アジアと言わず、南米、ハワイ等の各地に少しずつ進出いたしておるのであります。相当有利な条件でありますので、将来の輸出の楽しみに、そういうのも、ある程度の数量を見込んでおります。さらに需要の増加等を勘案いたしますと、大体来年の内地の最盛需要期を過ぎる辺までには、大した余力はなくなる、今の生産計画なり、あるいは需要の想定がその通りでありますれば、目下のところでは、そういうふうに相なるのであります。なお中共米の日本への輸入の方におきましても、先ほど申しましたような七月に入りました五千五百トンにつきましても、初めの契約では大体年内ぐらいでということでありましたが、これだけは特にすぐくれないかというようなことがありまして、すぐ積んだというわけでありますが、今相当長期にわたる多量の中共米の日本への輸出の問題につきましては、硫安の日本における需要も考えて、相当先——初め九箇月というようなお話でありましたが、最近では十箇月ぐらい先でもいいというようなお話でありますので、私ども先ほど御説明申し上げましたような構想でやろうと考えております。
  96. 足鹿覺

    足鹿委員 あまり時間がありませんし、もつとこまかく伺いたいのでありますが、要はこの昭和二十九肥料年度における輸出見込み数量四十七万トンのうちには、今柿手さんが言われた台湾向けの二十七万トンというものがはつきりしておる。あとはごく少量のものが若干あるというような御答弁つたと思いますが、そうしますと、このものの中へ中共向けのものをどの程度見込まれる御用意がありますか。これは取引のことでありますから、今からどうということはわかりませんが、とにかく今はつきりしておることは、中共側が本年内に五万トンを非常に求めておるということだけは農林、通産両省ともよく御承知の通りです。きのうも食糧庁長官は、米はいい、運賃も安い、準内地米以上だ、とにかく何とか買いたいが、今のところ国交調整がうまく行つていないからなかなか計画に乗せることはできないのだ、こういうことです。米の需給計画の中にも幾ら幾ら中共米を入れる、その見返りとしての硫安幾ら幾らを大体肥料年度において輸出用の中に見込んで行く、こういうことに大体の日本政府の腹がきまりますならば、おそらく向うも希望しておることでありますから、この問題はとんとん拍子で進んで行くに相違ない。現在日本国と向うとの正式の国交調整のない間においては、昨年の国会の満場一致の議決によつて可決いたしました中日貿易促進会が現在日本における一番権威ある、向う側からも信頼を受けておる機関とみなさなければならない。それが年内の五万トンの問題、引続いて新肥料年度における三十万トン程度のものを見込むことを一つの含みとして正式に向うへ行われるように私ども仄聞いたしておるのであります。そこまでだんだん話が進んでおるのに、政府自体としては、まだ農林省も年間計画に見込むことができない。通産省としても、台湾の二十七万トンだけは長期協約で持つておるが、あとのものは見込みがないというように非常に漠然としております。もう少し政府として、これに対してよく打合せをされて、本年内における五万トンの問題と、新肥料年度における輸出見込み数量についての中共分がどの程度確保できるかどうかということについて、いま一歩進めて具体化される御用意がないものでありましようか。これは農林、通産両省で御答弁があれば承つておきたい。
  97. 柿手操六

    柿手説明員 私どもといたしましては、通産省全体としては通商局というものがありまして、通商政策の面からいろいろ議論があろうと思うのでありますが、少くとも私の所管に関する限りにおきましては、国内の生産と内需との関係、さらにこの法律によつて需給計画をそれぞれ策定いたしまして、その計画に基いて輸出余力というものを策定されて設定するのでありますから、その輸出余力の範囲におきましては、私どもはどこへ出そうとよろしい。もつとも通商政策からいえば、国際収支の関係その他からいろいろ議論はありましようが、少くとも私どもとしては、そういうふうにきめられました輸出計画の範囲においては、どういうふうにやられてもむろん異論はない。ただ先ほど御説明申し上げましたのは、四十七万トンのうち、今内定しておるものが総数量でこういうふうになつておるということを申し上げまして、さらに国内の内需との関係で、時期別にはこの暮れまでにはそう余力がない。中共米とのバーターで必要であるという数量は、私どもは八万トンくらいに承つておるのでありますが、その程度の数量は、今の需給計画で時期を遅らせば可能であろうというふうに考えます。
  98. 小倉武一

    ○小倉説明員 趣旨は柿手部長からお答えした通りでございまして、中共米の見返りの硫安につきましては、ただいまのところ、需給計画から見ますと時期の問題が多少ありますけれども、まかないはしなければならない。ただこれを優先的に確保しておけばいいじやないか——はつきり特定しまして他には出さないで、それだけは特定分にしておくというようなことになりますと、これはちよつと協約の交渉の進みぐあいがどうなつておるか、私ども詳しく存じておりません。そこまではお約束はできませんけれども、ただいまの状況からいえば、時期の問題は別として、余力があるのではないか、かように思うのであります。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 中共に対する硫安輸出に関連して御質問しますが、最近の報告によると、台湾の中央信託局から外務省を通じて一つの抗議が来ております。それは中共向けの硫安輸出を担当することにきまつた昭和電工と新日本窒素、それから日産化学に対して、中共へ硫安を送り出すような場合においては、爾今台湾との取引に対して重大な考慮をしなければならぬ、かかる意味の抗議が来ておるというふうに新聞は発表しております。これはわが国の貿易の主体的な立場から考えても、非常に奇異な感じを持つたわけです。しかも今日の段階においては、すでに肥料二法案が通つて、硫安等の輸出業務というものは一応輸出会社が担当するということになるわけであります。しかるに中共向けの硫安を出すという商社に対して、威圧的な抗議が来るというようなことは、今日中共米を多量に必要とする段階において、これは国際的な関係から見ても検討を加える必要があるのではないかというふうに考えますが、この影響という点について、これは外務当局が来なければ明確にならないかもしれませんけれども、関連を持つておる農林、通産当局等においては、いかなる御見解を持つておられるかという点について伺いたい。その次は輸出余力の問題でありますが、台湾に対しては二十七万トンの長期協約が一応締結されておるわけでありますが、台湾との貿易の上において、こういう現象が現われておる。台湾に輸出する物資は非常に安過ぎるのです、一番安い。一方向うから入つて来るのは一番高いということが、日本と台湾のバーター貿易の一つの現象なんです。たとえば米に一例をとつても、台湾米は一トン二百十ドル、中共米の場合は百五十ドルぐらいで入るわけであります。硫安の場合には、たとえば昨年の二十五万トン契約の場合においても一トンが五十六ドル八十セントという低廉な価格なんです。その次が朝鮮の五十八ドル程度、中共の場合においては大体六十ドルから六十二ドルくらいの引合いになる。さらに砂糖に例をとれば、ニユーヨーク市場の場合に六十九ドル八十八セントぐらいのものが、台湾では百九ドルぐらいしておるわけであります。こつちから送り出すものはすべて一番安く、買うものはべらぼうに高いというような情勢の中において、長期協約を結ばなければならぬというようなことは、非常に考え直さなければならぬと思うのです。輸出の順位の場合においても、台湾の長期協約はこれは一応おくとして、朝鮮の場合においては、先ほど柿手さんが言つたように、FOAの落札をしたから、中共の方へ出す余力があまりないのだというようなことになるわけですが、これはやはり今日の日本の食糧情勢等から考えて有毒米を除去する場合においては、どうしても中共の良質米を、しかも低廉な米を輸入しなければならぬということなんです。最初のうちは、余つた硫安をどこに有利に処分するかということであつたわけですが、今日の段階では、食糧問題の上から行つて、この中共の良質な低廉な米を輸入する場合においては、そのバーターとして何を出すかというようなことを配慮しなければならぬようなことになつて来ておるのです。ですからこういうような情勢の中に立つて、輸出余力の問題もあるかもしれませんけれども、今小倉さんのお話によると、大体そのくらいの見通しは、足鹿委員の質問に沿えるような意向でありますが、こういうような見解等に対して、両当局から御答弁を願いたいと思います。
  100. 小倉武一

    ○小倉説明員 単価の問題につきましては、求償貿易それからオープン・アカウント、いろいろやり方によりまして、若干違いがありますので、そのまま比較をすることはなかなかむずかしいかと思いますけれども、中共の輸出が比較的有利にできるということも否定できないことだと思います。従いまして、私どもといたしましては、特に農林省だから申し上げるわけでございませんけれども、どこへ輸出するかということについては、直接責任ある部局ではございませんので、行先についてはむしろ主として通商関係からの意向に従う。もちろん農産物、米等とのバーターといつたようなことがありますれば、そういう観点からいろいろ意見を述べることもございますが、肥料だけの問題といたしますれば、行先については、あまりとやかく申すことはいたさないで、主として通商関係の御意向にできるだけ従うということにいたしております。それから中共と台湾との関係等につきましては、御指摘のような点が、去年中共輸出の問題が起きましたときにもいろいろ御指摘がありまして、そういう心配をいたしたのでございますけれども、政府政府との間でそういうことがあるのではないのでありまして、おそらく商取引上の問題として、台湾の方から日本のメーカーあるいは輸出業者の方にそういつたことがあつたのかとも存じます。しかしこれは私どもの役所といたしましては、中共にやるかどうかということについてはあまり関係がない部局である、かよに思うのであります。
  101. 柿手操六

    柿手説明員 小倉局長のお答えで尽きていると思いますが、CPCの方から日本の政府に対して申入れがあつたかどうかということにつきましては、少くとも通商産業省につきましてはそういう事実はありませんし、新聞等にはそういうことが出ておりますので、外務省の方の係りに聞きましたけれども、そういう事実はないようでありました。おそらく商社同士であるいはそういうことのいやがらせがあつた程度じやないかというふうに思います。それから硫安の輸出に関して、一般的な通商政策について御意見を拝聴したのでありますが、私ども一般的な御意見としては別に異存はないのでありますけれども、それについていろいろ御議論を申し上げるのはおこがましいのでありますが、ただ結果から見ましていま少し高く売れるんじやなかつたろうか。こんなよい取引があつたならあの輸出はちよつと急いで安く売り過ぎたなというような結果からいろいろ御批判はあろうかと思いますが、これは長い目で日本の輸出についての問題を考えなければならないということだけは御了解を願いたい、こういうふうに考えております。
  102. 芳賀貢

    芳賀委員 簡単にとどめますが、今の通商政策の点、これはかつてのドル地域だけに局限された場合の考え方です。現在自由党においてさえも新政策を考えて、東西貿易を容認しなければならぬという打出しをしておる。視野が非常に違つて来ておる。そういう場合においては、やはり立脚点を新たにして考える時期が来ておるんじやないかということを、私は先ほどの発言の中へ含めて申し上げたわけなんです。そのような立場に立つた場合の見解はどうであるかということもお答え願いたい。
  103. 柿手操六

    柿手説明員 それはまつたくその通りでありまして、現に先ほども御説明申し上げましたように、五千五百トンの中共米の日本への輸入に対して、契約上は年内に硫安を積み出すという契約でありましたけれども、急に中共の方から、何とか至急に積んでもらえぬだろうかという申入れがありました。ある程度需給関係では問題があるのじやないかというふうに思いましたけれども、農林省ともいろいろ相談しまして、特に至急にするということもやつたくらいでありまするから、仰せの通りに考えておると御了解願えると思います。
  104. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま芳賀委員から私のたださんとした点はただしていただきましたので、省略をいたしますが、要するに市場選択の自由をあくまでも擁護し、これを守つて行かなければならぬ。何らの根拠のないことが権威ある新聞に、しかも内容も具体的に出るはずはないのであります。ただいまの柿手部長の御答弁では全然存知しない、こういうことでありますと、新聞は重大な誤報をしたことになる、また台湾政府の名誉にも関することに発展して行くと思う。こういう国際関係のものについては、そう簡単に新聞も割切つて出すとは思いません。間接であるが、こういう方法はえてして非常に巧妙に、間接的に婉曲ではあるが、しかし実質的には市場選択の自由を拘束して行くような方向へややもすれば行きたがることは、これは永年の御体験で柿手さんも御存じでしよう。その程度で知らぬ存ぜぬということではなしに、もう少しそういうことについてはよく御検討になつて、あくまでも市場選択の自由を持たして行かなければならぬ。台湾から一体何が来ます。バナナやパイナツプルやそういうものを日本の勤労大衆は欲していない。現在黄変米をやめて良質で安い米を食べたい、この要求にこたえて行くということは、目下の一番緊急の問題である。そういう点からも、不当な圧迫、干渉等には毅然たる態度で臨んでいただきたい。そこで最後に、これは強く要望をいたしまして、私の質疑を終りたいと思うのでありますが、中国における化学肥料の現状というものは非常に微々たるものであるようでございます。しかも需要は急激に十倍以上にもふえて行くような情勢にあるようであります。これらの点について、私は内需を圧迫してまでも、いかに相手が中共さんであろうと出しなさいというのではありません。しかしこういう手近いところに、今バーターの問題を通じて具体化して行くお得意ができようとしておる、またわれわれもそれによつて大きな国民食糧の確保に遺憾なきを期するという大きな転機に来ておると私は思う。今までの経緯は経緯として、ここに中共貿易は大きな転機に、この見返りの硫安は向うからの米の問題を通じて大きな転機に来ておると思う。その認識の上に立つて中共米の輸入につきまして、わが国が必要とする数量等の具体案をすみやかに作成公表して、関係業者をしてその実績によつて、現在硫安の輸出の衝に当り、あるいは中共米輸入の経験を有する人々、あるいはそれに最も関連の深い公正な商社をして、即時輸入の交渉を開始せしめる、政府もまた積極的にこれに協力する態勢をとつていただきたい。そういうことを私は強く要望したい。一番残念なことは、本日経済審議庁がお見えになつておらないようでありますが、こういうことは、農林省といつても、一方においては小倉さんは農林経済局関係を担当しておる。食糧庁食糧庁食糧を部外庁として担当しておる。今後の肥料審議会の主管は経済審議庁だ。しかも生産方面は通産関係の柿手さんあたりが中心になつてこれを握つておる。こういう非常に関係方面が多岐にわたつて、しかも複雑で深い問題であります。これはあくまでも総合調整をすみやかにいたしまして進めないと、機を逸してしまうおそれなしといたしません。そういう点で、当面の時期の問題はあるが、輸出余力はあるし、十分期待に沿いたいという御答弁でありますから、その点はそれといたしまして、次に来る段階を十分この際把握されるように——これは先般の委員会におきまして、保利農林大臣は私の質問に答えて、思想であるとか国交調整の問題を越えて、中共の良質廉価な米を輸入することについては何ら異存はない、何ら含むところはない。この問題に関する限りは自分たちは決してとらわれるものではないという言明をしておりますし、また昨日も前谷食糧庁長官は、品質が非常にまい米であることを数字的に、産地別にこれを本委員会に報告されまして、この輸入の多からんことを期待しておる、こういう旨の御答弁もあつたわけでありますが、残念ながらここ一堂に会していただいて、これを調整総合して御質問申し上げ、御答弁願うことができない。従つて今申しましたような趣旨から、すみやかに本日の委員会を通じて経済審議庁に、こういう強い要求のあつたことを農林、通産両省からも御伝達を願つて当面の問題と今後における問題については十分御善処あらんことを強く要望いたしまして、私の質問を打切ります。
  105. 井出一太郎

  106. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんので、ごく要点だけ三点お尋ねいたしたいと思います。あまり議論はいたしませんから、お答えしにくい点があろうかと思いますが、率直にお答え願いたいと思います。今同僚足鹿委員及び芳賀委員から、通商政策についていろいろ御意見がありましたが、その通商政策についてはまつたく私どもは同じ意見であります。しかしながら世間で往々にして中共輸出を急ぐのあまり、国内の需給バランスを度外視するようなおそれのあることを憂慮いたしておるのであります。そこでお尋ねしなければならぬのは、今度硫安輸出会社法の政令ができましたが、これによりますると、附則に、硫安会社が取扱う硫安を承認品目から除外いたしたようでございます。これは非常に重大な関心を持たざるを得ないのでありますが、需給計画を見ますと、ア系肥料全体を需給計画に入れておりながら、硫安だけを承認品目から除いた理由がどうしても解せない。ことに持越し量の問題になりますと、これは化学製品の本質でありまして、機械製品のように一定の持越し量を持とうといたしましても、とかく誤算が起るものであります。従いまして理想持越し量というものは十分の配慮をしなければならぬわけであります。この配慮が足りないために硫安需給安定法において保留分を確保しなければならぬという問題も起きたのでありまして、こういう総合的な観点から、輸出承認品目から除かれた理由を両当局からお伺いいたしたいのです。
  107. 小倉武一

    ○小倉説明員 硫安について輸出承認品目から除きましたことにつきましての私どもの立場からの事情でございますが、硫安につきましては需給計画が立てられまして、そのうちどれくらい輸出ができるかということについて計画ができます。その計画に従つて輸出会社が買い取る。その買い取るときに通産大臣が承認をする。その場合に農林省にも御相談があるだろう。そうすれば個々の輸出につきまして農林省がタツチする必要はなかろう、こういう意味ではずしてあるのであります。
  108. 柿手操六

    柿手説明員 ただいま小倉局長が申します通り、この法律ができます前は、輸出貿易管理令で、硫安を輸出する場合には通産大臣の承認を受ける。その場合には、通産大臣が承認しようと思うときには、消費官庁である農林大臣のところを経てやる、こういうことになつてつたのでありますが、今度こういう法律ができまして、需給安定法によつて需給計画をきめまして、この需給計画の中で輸出計画がきまります。その輸出計画に基きまして輸出会社が輸出用肥料の買入れ計画を立てましてその承認を申請いたします。その承認が来ました場合に、通産大臣農林大臣の同意を得てその輸出会社の輸出用肥料の買入れ計画の承認をする、こういうことになりますので、その範囲におきましては、輸出会社が自由に輸出してよろしいというかつこうになるのであります。
  109. 川俣清音

    川俣委員 非常に不十分なのです。私が問いただそうと思つておるのは、硫安の需給計画というものは立つていないのですよ。あなた方の立てておるのは硫安換算で立てておるのです。硫安だけの需給計画はないじやないですか。今までどこにも示しておられない。常に示されるときは硫安換算ということで、ア系肥料全体の需給計画は確かに立つておりますよ。今硫安の需給計画があると言いましたが、お示しできるのですか。硫安だけの需給計画は非常に不安定なものなのです。これは私が申し上げるまでもなく、硫安単味の需給計画はなかなか立て得られない情勢なのであります。それでア系肥料全体として需給バランスをとつておられる。それは決して否定しない。硫安だけの需給計画はないのですよ。ア系全体の肥料としての需給計画というものは立つておる。従いまして国内における需給も、需給計画によればア系窒素肥料全体として見れば確かに立つておるということは、私は必ずしも否認しない。また持越し量につきましても、ア系窒素肥料全体としての持越し量はやや安定線をとつておりまするけれども、これですら不安定じやないかという疑問を持つておる。そこにこの硫安だけの承認を——これは硫安の輸出会社であるから硫安より取扱わないものでありますから、そのことはよく理解しますし、承認を与えたものであるからこの範囲ならば逸脱のおそれはないということも、簡単にしろうとだましには言えますよ。しかしながら基本になつております硫安の需給計画は立つていないので、この合理化が進むに従つて、年度内におきましても他のア系窒素肥料に移行するような傾向が出ておるときに、これだけ切り離して承認を与えるについては不安があるんではないか、この観点で聞いておるのでありまして、あまり私はしつこく聞くんでないから変な答弁をしないでください。
  110. 柿手操六

    柿手説明員 お説の通り、審議会にかけましたのは合成硫安、副生硫安、尿素にしても、硝安にしても、全部硫安に換算した数量で審議会の御答申を得ております、諮問もしておるのでありますが、その内容は公定価格をつくります場合とかいろいろ硫安の輸出の場合においても、合成硫安と副生硫安と尿素その他のア系肥料もやはり三つ区別して需給計画を立てる必要がありますので、両省の間におきましては、輸出会社が申請をした場合においてはどういうふうな承認をすべきだろうという内訳はつくつております。
  111. 川俣清音

    川俣委員 内訳をつくつておられましても、非常に移動性のあるものなのです。従いまして私は次に質問いたしたいのは、それじや全体の価格をきめなければならぬはずです。硫安が強くきめられまするならば、ほかの肥料に移行する度合いが強くなつて来る、こういうときに一度買取りの承認を与えたからすぐ輸出の承認を与えたと持つて行くことは危険じやないか、こういうことなんです。その当時においては買取りの承認を与える。これは確かに計画だ。しかしながら、輸出という時期までに至る間に時間的な経過がある。一方において硫安の減産の傾向が出て来た場合においては、これをさしとめなければならぬような事情が発生することはこれは私よりも柿手さんが一番よく知つておられるのです。一つだけの価格が押えられておるから不利にきまることによつて、あるいは有利に輸出ができることによつて相当需要が満されるということで、中共とかあるいは新しい通商政策ということで、かなり輸出促進の傾向が出て来るのです。今日のいろいろな世界情勢からいつて輸出の増大の傾向をとつておるのです。そこに押されていつて国内の硫安需給事情が非常に不均衡になりはせぬか。国内におきましても将来硫安から尿素にかわるという傾向が漸次出て参るでありましようから、大きな目で見ればそう大したことはないと思いますけれども、今ここで急にはずすことについては多大の危険がある。もしもこれだけの冒険をするならば、全体のバランスのとれる価格構成、硫安だけでなく他の価格をも構成して行かなければ危険である、こういうことです。他の価格の方は今の時代にまだちよつと早い、こう考えるならば、硫安の承認もまだ早い、こういう考え方なんです。これについてお聞きしたい。
  112. 柿手操六

    柿手説明員 まことにごもつともな御意見でございますが、私どもは、需給計画を年度の当初に一箇年間まとめて立てますけれども、輸出会社に対する輸出肥料の買入れ承認をしこれは一応建前としては調整保留分を持つのでありますから、やつてやれぬことはないと思いますけれども、大事をとりまして小わけに、今までみたいなその時その時ではありはせんけれども、時期を区切つて危険のないように、いやしくも内需に支障のないように、適当に区切つて承認をいたしたい、こういうふうに考えております。
  113. 川俣清音

    川俣委員 簡単に申します。一体なぜメーカーがこの硫安の承認を除外を願つておるか、その要望にこたえたか、こういうことをよくお考えになれば、今まだちよつと時期が早いのではないか、こういう点なんです。買い取れたから——買取りということは、結局承認のことを目ざしておるのだ、こういうことが言えないことはない。硫安会社が、これは輸出会社でありますから、輸出会社が買うということは大体承認の方向である。これは現実においていなめないことだと思う。それよりも、これをはずしてほしいというからにはどこにねらいがあるかということは、あなた方十分わかつておられるはずなんです。従つてまだちよつと時期が早いのではないか。もしもこういうことをやるとするならば、他のア系肥料、窒素肥料全体の価格についてもやはりマル公をきめて行かなければ危険である。もしもこれに承認を与えるならば、われわれは、各尿素からア系肥料全体にわたつての公定価格というものをきめて行かなければならないようにあなた方がわれわれに強要する、こういう感じを持つ。一体どつちをあなたはとるか、あなたはどつちをとる方がいいと思うか。
  114. 小倉武一

    ○小倉説明員 ただいまの御指摘の問題は、これはなかなかごもつともな点を御指摘になつておるのでありますけれども、輸出会社の承認と申しまするか、あるいは個々の輸出をやめて輸出会社に包括的な承認を与えるということは、実は今回の両法案が成立しますまでの途中でも、できるだけ輸出を機動的に行いまして、たださえいわゆる出血輸出ということが起りますのは、できるだけ防止したい。有利な商機をつかむというような趣旨もあつたように思いますので、できるだけそのときになつてからの承認ということによつて、輸出の機を失することのないように、できるだけ強力性をつけたい、かようなつもりでおるのであります。しかし御指摘のような点もございますので、輸出会社の買取り計画の承認は年間一本にやるというようなことでなくて、ただいまのところ四半期ぐらいにわけて承認をいたしまして、次の計画を承認いたします場合には、硫安とその他のア系との生産実績等も十分考慮して次の承認をいたしたい。必要があれば需給計画を期別に改訂するという審議会での御注文もありましたことは先ほど申し上げましたのですが、そういう趣旨でやつて参りたい。それから硫安以外のア系の公定価格でございますが、これは窒素質肥料全体として適正な価格でやつて参るということでありますれば、硫安と同じように公定価格をつくるということも当然考えられまするし、また需要形態の転換といつたようなことを考えれば、御指摘の点も十分われわれ了解できるのでございまして、これは時期の問題として私ども研究したい、かように思います。
  115. 川俣清音

    川俣委員 時期の問題として考慮するというのでありますが、硫安の輸出を承認から除外するというようなことになりますと、その方向へ急速に進むおそれを、おそらく柿手さんは感じなければならぬであろう、こういうことだけを申し上げる。私も今即座にきめようとは思つていなかつた。ところがこういうことが出て来ると、急速に進まざるを得ないであろうということを警告しておきます。次に資料の配付を受けたのですが、マル秘でありますから、ここで読み上げることを控えますが、これはしろうとにはこれでよろしゆうございますかもしれませんが、農林委員会に出されるからには、操業率がついておりませんというと、こんなものは無意味です。判定の基礎がないのです。一体どの程度の——Aはどの程度の操業率としてのデータであるかということが出て来なければ、判断ができないのです。五〇%の操業率でAの原価が出たのか、九〇%で出たのか、甲と乙とこれだけ開きがあるというけれども、一体操業率はどの程度の開きがあつて出ておるのかこの点がわからなければ、これはくろうとであればあるほどわからない資料だ、こうなる。これをどうせお出しになるならば、操業率を下に加えるわけに行きませんか。この操業率を知らないで——おそらくこれは知らないというわけはないと思う。故意に落したと見ざるを得ない。これで生産費が出て来るのだというようなことは、これはしろうとにこのくらいに計算しましたというなら別、少くとも権威ある農林委員会に来て操業率も出さないで、生産費はこの通りでございますというようなことを出された義理合いではないと思いますが、操業率を出す御用意がありますか。
  116. 柿手操六

    柿手説明員 きようはとりあえず結論を出したのでありますが、そういう計算をいたしたのであります。すぐ後刻委員会に御報告いたします。
  117. 川俣清音

    川俣委員 もう一点だけ。生産費計算になる場合に、この前委員会で極秘で出されたものと今度のとでは、大分開きがある、というよりも、あのときの方がむしろ幾分正直に出ておる。これになりますと非常に不正直に出ておる、と申しますことはどういうことかというと、この前のが出ましたときには、ちよつと見てすぐどの会社であるかということがわかるだけに正直に出ておつた。これは相当わかりにくく出ております。というのは、いろいろな細工が加わつておる、こう見なければならない、わかりにくいということは、一般の常識をもつてしては判断できないほど修正されておる、こういうことです。そういうふうにお考えになりませんかどうか、これを小倉局長と柿手さんにお伺いいたします。
  118. 小倉武一

    ○小倉説明員 別段そういう悪意と申しまするか、故意にわかりにくくしたようなかつこうで出したということでは毛頭ございません。会社の名前をあげても一向さしつかえないようにも思われるかもしれませんが、特定の会社、工場名を列挙することはいかがか、かように存じましてあげないだけでございまして、別段他意は全然ないのであります。
  119. 柿手操六

    柿手説明員 この前お出しいたしましたのは、これは実は会社から資料をとつて、それを御報告したのではなくて、私どもの方でいろいろ推定してつくつたものでありますので、今度初めて有権的な方法で、農林省と通産省と両方で共同調査をしたわけであります。いろいろな批評はあろうかと思いますが、これは最も適正なものであるというふうに考えております。
  120. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんから議論はやめますが、しかしながらこれよりもこの前の方が実は正直に出ておつた。これはやはり肥料審議会に出すために、幾分でも手心を加えられてあるために、会社の特質が非常に失われておる、こういうふうに見なければならない。または操業率を平均されたかあるいは相当平年次としての理想生産状態というようなものを加味せられておるのではないかと思いますから、そういう点について、詳しいことは議論したいのですけれども、時間がありませんから申し上げません。いずれにいたしましてもこういうことを通覧いたしますると、最近の肥料業界から見まして、日本では年々土地に対する肥料の投下量がふえて来つつあります。これは窒素分の減耗に基くものであるとは思いますけれども、農民の生産意欲が上るに従いまして、肥料に依存する度合が強くなつて来ておるようです。しかし何肥料に移行して行くかということについては、これは長い目で見なければならないと思いまするけれども、窒素肥料全体として見まして、相当やはり増大の傾向がある、こういうこを織り込んで行かなければならぬことが一点と、現に合理化の方向がいろいろな条件で遅々として進まない面もありまするけれども、会社によつて相当進んでおるところもあります。そういたしますると、進んだところと遅れておるところにおいては相当な開きが出て来る。これは合理化の過程において当然出ることでありまするけれども、この場合の価格形成をどうするか。合理化が進行した方向で価格を形成するか、また遅れた方に足並をそろえて価格を形成するかということは、大きな政策であります。合理化促進を建前にしておるとすれば、それを助長して行くような形においての価格形成でなければならないと思います。合理化というものが遅々として進まないのだということで、遅れておるものを基準にして進むか、これが価格構成上の大きな要素でなければならないと思うのですが、この点どうお考えになつておるか、この点だけ聞いて私の質問は打切りたいと思います。
  121. 柿手操六

    柿手説明員 私どもも川俣さんと同じような気分でありまして、相当合理化の進んだところと申しますか、優秀な工場を標準的に見るような計算方法をいたしております。今度肥料審議会に諮問いたしました八百二十八円という標準価格の算定につきましても、十七工場のうち一番コストの安い方からずつと積み重ねて行きまして、内需分とプラス調整保留分との数量に達するまで——それが実硫安としまして約百四十八万七千トンでありますが、そこまで下から積み重ねて行きまして、そこまでの会社が十一工場、それの加重平均をいたしまして八百二十八円十八銭という価格をきめたのであります。その価格が一割五分配当というところで想定してあるのでありますが、その一割五分配当という標準で一体どの辺まで行けるかということについて見ますと、大体E工場からF工場程度のところしかペイしないというくらいなのが八百二十八円という決定の事情でありますので、あなたのお気持と大体合致したようなのです。一番悪いもののバルク・ライン、その辺というところでなしにバルク・ラインをさらに平均してみますと、その値段は、バルク・ライン内の半分くらいしかその中に入らないというような価格をきめようといたしておるのでありまして、私どもの考え方は御趣旨と大体合致しておると思います。
  122. 川俣清音

    川俣委員 実際に絶対的に生産のコストの安いというものは五工場くらいしかないのです。あなたが十一と言われたうちのあとの六くらいは、年々非常に生産費については浮動のある会社です。というのは、石炭のガス法にいたしましても、ときどき石炭の質に悪いのが入つて操業度が下りましたり、あるいは電力事情が相当悪いために非常に影響の及ぶ工場が十一のうち六くらいある。絶対的に諸条件が整つているのは五工場くらいしかない。これは私よりはあなたの方がよく知つておられる。よく知つておられてへんなことを言うから、こういう質問をしなければならぬ。絶対安いところから十一やつて来たというようなことは、よそでは言つていいのかもしれないが、ここでは言わない方がいいのじやないかと思う。そこで、できるだけ基本方針は今あなたの述べられたような方向で行く。十一で行つたのだからこれは基本方針従つているのだと言うと文句が出るということを申し上げておいて、これで質問を終つておきます。
  123. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の審議はこの程度にいたします。暫時休憩いたします。  午後は二時半かつきりに始めます。さよう御了承を願います。     午後一時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時五十六分開議
  124. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。 午後はまず酪農振興及び乳価問題について先回の委員会に引続き質疑を行います。ただいま政府側におきましては大坪畜産局長公正取引委員会の坂根経済部長、岸川調査課長、以上お三方が見えております。中澤茂一君。
  125. 中澤茂一

    ○中澤委員 公正取引委員会に先にお尋ねいたしますが、実は乳業価格、生乳価格の問題でありますが、これについて独禁法違反の疑いが多分にあるのでございますが、何かこれについて御調査なりなさつたものがございましたら、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  126. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 お答えいたします。ただいまのお話につきましては、私どもの方にごく最近酪農組合の方から陳情がございまして、その陳情をどう取扱うかということにつきまして、まだ委員会の方には話しておりませんが、事務局の中でこれをどう取扱うかということを今考えておる段階でございます。
  127. 中澤茂一

    ○中澤委員 実は大乳業資本家が協定価格をつくつて、まず第一回の値下げは八月以降、大体八月の十四日から始まりまして、八月の二十日までの間に全国の生産者団体に申入れがあるのであります。これは第一回の値下げであります。ところが九月一日をもつて第二回の値下げをやるという申入れを明治、森永が各県の酪農協に対していたしておるのであります。本日をもつて値下げをする。こういう申入れをしておるのであります。私はこれは明らかにおもなる乳業資本である明治、森永この両者の話合いによるところの協定価格の値下げであると断定してさしつかえないと思うのであります。それはなぜそう言うかと申しますと、神奈川県におけるところの横浜酪農協に対しては明治、森永が共同でこの九月一日から乳業価格を下げるという申入れをしておるのであります。これについて部長はいかにお考えですか。
  128. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 ただいまのお話でございますが、私どもの方には、お話のように森永乳業と明治乳業が東京近郊の酪農協同組合の組合長に対しまして、乳価の値下げを申し入れたということについての陳情がございまして、そのときの陳情文をわれわれが拝見いたしますと、一応最近の原乳の増加に伴つて供給がふえておる、あるいはまた需要の方が、製品あるいは市乳にいたしましても頭打ちであるから値下げをしたいが、この点についてひとつ酪農組合の方の御了解を得たいという申入れをしたように拝見しておりまして、これが今お話のように乳業資本と申しますか、明治、森永が共同してこの話合いをしたかどうかという点は、私どもただちにその証拠があるというぐあいに受取れないかと思つておりますが、一応申入れの期日を数日ずらしまして、明治乳業と森永乳業が東京酪農協同組合に対しましてそういう申入れをしたという事実は存じておりまして、これが今御質問のように、はたしてただちにわれわれの問題といたしますような話合いのもとに申入れをしたかどうかということについては、研究を要する問題じやないか、私はそう考えております。
  129. 中澤茂一

    ○中澤委員 それはもちろん部長のおつしやるように、その証拠が上らなければ、これを公正取引委員会の問題にすることはできないということは、われわれも承知しておるのでありますが、しかし少くとも公正取引委員会の本質は、法的にはそうであつても、こういう値下げをしながらなおかつわれわれ一般大衆の消費する市乳に対しては一銭も値下げをしていない。現在なお十五円、十七円という一合価格で部長もお飲みになつておる。しからば当然昨年の二月一日の現在から比べるならば、八月の価格をとつてみると、軒並に大体十円前後の値下げをやつておる。これが大衆に対しては、ちつとも飲料牛乳に対しての値下げが行われていないということは、間違いなく国民の公正を害している、こう私は認める。それについて第一回の乳価協定というものは、大体八月十日にやつたという。これは明治、森永ばかりでなしに、ほかの中小酪農業者も入つて八月十日にやられた、こういう情報が実は入つておるのですが、これはまだ私の方で、どこでやつて、だれが集まつたということまでは実は確認していないのです。しかし八月十日にやつたその証拠には、八月十四日から全国一斉に申入れが始まつて、八月二十日をもつて終了しておるわけです。それをもつて推察するならば、八月十日に協定をやつて、十四日から各社が酪農協に対して申入れを始めたということは首肯できると思う。そういう建前から考えるならば、第一回の乳価がここまで値下げをされた以上、当然公正取引委員会はここで徹底的な調査をなすべきであるのが正しいと私は思う。部長はいかにお考えでしようか。
  130. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 ただいまの御質問のような事実がもしありといたしますれば、もちろん私どもといたしましては調査に乗り出して、その申合せの事実がはたして独禁法に違反するかどうかということを研究したいと存じております。まずそれを申し上げておきますが、ただ私どもといたしましては、はなはだちよつとおそいようで恐れ入りますが、八月十二日でございましたか、申入れを受けられました酪農組合からの陳情を受けまして、そして九月一日からしからば市乳がいかなる程度に下るかというような点もあわせてひとつ研究して、そして一応問題を独禁法上の問題といたしまして、乗る乗らぬは別として、一応の調査はしたいという心組みでは今日のところおる次第でございまして、市乳がはたして今の御質問のように全然下らぬものであるか、あるいは九月一日から全面的にある程度下げて行こうとしておるのか、そういう点も調査の——調査と申しますか、私ども今から研究する一つの問題点であろうか、こう存じております。
  131. 中澤茂一

    ○中澤委員 なるほどその話し合つた現場がなければ、法的にこれを問題にすることができないということはわかるが、しかし全国の酪農協に対してはつきりと申入れをしておる。岩手県においては岩泉町酪農協に対して、明治は二十円の値下げをして四十円にするという申入れをしておるし、宮城県の蔵王の有畜農業協同組合にも五円を値下げして五十円にする、山形県においても明らかに十円値下げをして四十円にするということを、山形県酪農協に同じく明治が申入れをしておる。福島県においても十円値下げの四十二円を森永福島工場が白河酪農協に対して申入れをしております。千葉においても……、神奈川においては、先ほど申したように明治、森永が共同で申入れをしておる。事実をもつてして、公正取引委員会が発動できないということは、私はあり得ないと思う。ほかにまだ九州まで、申入れ日付まで全部出ております。この事実をもつてしても、公正取引委員会はただちにこの調査に着手し、委員会が発動すべきである、私はこう確信するが、部長はいかがですか。
  132. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 ただいまのお話のように、全国的にそういう動きがあり、しかもその背後に大手の原乳購入者の協定の疑いが十分存するといお話であれば、これはもちろん私どもとしては調査の対象になり得ると存じておるのであります。今も申し上げましたように、ただ昨年の議会の御改正によりまして、独禁法は旧法におきます四条というものがなくなりまして、三条という非常に自主的判断を要する条文が残るだけになつておりまして、調査の結果を今から云為するわけではございませんが、そういうきめ手になると、旧法におきましては、形式的にただちにとらえ得る条文が残つておりましたが、そういう点がなくなりましたものでございますから……。今御質問のような事情が全部存在しておるとすれば、私どもといたしましてはこれを調査することは当然であろうかと存じております。
  133. 中澤茂一

    ○中澤委員 最後に申し上げておきますが、これは鹿児島酪農協へ森永の申入れがあり、今申したほかに全国的にここに申入れの日付から全部あるのです。これはあなたが必要とあればお上げしてもよろしいが、さつそく発動をして調査をする意思があるかどうか、それをひとつはつきりしていただきたい。
  134. 坂根哲夫

    ○坂根説明員 さいぜんからの御質問の要旨で伺いますと、一応これは調査の対象としてやりたいと私は考えております。今日委員長がここに参りまして御説明するはずでございましたが、ちよつとほかに用がありまして参れませんから、さつそく帰りまして委員長に御報告申しまして、その件十分ただいまの御質問の趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  135. 井出一太郎

    井出委員長 公正取引委員会の関係はよろしゆうございますか。——そうしましたら厚生省から楠本環境衛生部長、阿曽村乳肉衛生課長が見えております。中澤君。
  136. 中澤茂一

    ○中澤委員 厚生省にお伺いします。厚生省へ来ておるところの脱脂粉乳の学校用配給は、一体どういうふうになつておるか、御説明願いたいと思います。
  137. 楠本正康

    ○楠本説明員 学校給食関係の脱脂粉乳は文部省が実施をしいたております。私どもの方といたしましては、単に——あれは輸入品でございますので、輸入港におきまして、かなり従来粗悪なのもがありましたので、これらの点を検査いたしておるにすぎないのでございます。
  138. 中澤茂一

    ○中澤委員 その不良品というのは、一体どういうものを不良品と申すのですか。
  139. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは腐敗、変敗というような全体的の不良品もまれに出ております。私どもが検査をいたしまして最もしばしば見つかります例は、細菌数が規定以上に多いということでございます。
  140. 中澤茂一

    ○中澤委員 その不良品は大体総額の何パーセントぐらい出るものですか。
  141. 楠本正康

    ○楠本説明員 こまかい数字はあとで資料でお答えをいたしますが、大体一〇%前後と記憶をいたしております。
  142. 中澤茂一

    ○中澤委員 その一〇%をどうするかということは、厚生省の所管ではなくして、畜産局の所管になるわけですか。
  143. 楠本正康

    ○楠本説明員 輸入検査をいたしまして、その結果不良品として判定いたしましたものにつきましては、文部省の方にその使用方法、あるいは廃棄処分等を連絡いたしております。なおこれは食品衛生法に基いて実施をいたしておりますので、官庁同士ではありますが、半ば強制的と申しましようか、厚生省が優先的にさようなことを指示する建前になつております。
  144. 中澤茂一

    ○中澤委員 その不良品というのは、ただちに学童に飲ましては悪いが、ほかの加熱処理なり、そういうことをすればさしつかえない不良品でございますか。
  145. 楠本正康

    ○楠本説明員 これらのものはむろん段階的にいろいろのものがございます。従つて加熱処理すれば支障のないものもございますし、また製菓用等にまわさなければならぬものもございます。さらに最も悪いものにつきましては、動物の飼料等にまわすものは最悪の場合でございます。
  146. 中澤茂一

    ○中澤委員 専門的なことでどうもわからないのですが、検査というものをいま少し具体的に、どういうふうな毒物がどういうふうにあるのか、それから検査の結果不良品と烙印を押するのは、どのくらいの菌があるものとか、いま少し御説明できたらひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  147. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは最も端的な例を申し上げますと、一番また具体的に私どもが重視いたしておりますのは、細菌数でありまして、一応私どもは一グラム中に細菌数五万以下を学校給食用として、あるいは粉乳の規格として認めておるわけであります。五万以上のものにつきましては、これはいろいろな条件にもよりますが、他に転用をいたしておるわけであります。なお具体的になりますと、大分専門的になりますが、たとえば乳固形成分が何パーセントあるとか、あるいは水分がどのくらいあるとか、こういつたような実にいろいろな面から考えて実施をいたしておるわけでございます。
  148. 中澤茂一

    ○中澤委員 どうもあまり専門的なことをお聞きしてもこつちもわからないですが、黄変米のように食べたら死ぬというようなこともなさそうですね。厚生省にはそのぐらいにいたしまして、一部を、どうしても食えないものを動物に食わす、おそらく牛や馬の飼料にするということだろうと思いますが、これについて畜産局長どうなつておるかおわかりですか。
  149. 大坪藤市

    ○大坪説明員 文部省で学童給食用として輸入いたしましたものにつきまして、最後に食用としてどうしてもできないという場合に、文部省その他厚生省から連絡がありました場合に、これは人間として食えないものでありますから、動物にまわします場合には、税関の関係がありまして保税倉庫等におきまして、食用にできないように魚粉その他をまぜて輸入をする、こういうふうなかつこうになります。
  150. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういう魚粉をまぜて子牛の育成用に使つておるところの粉乳というものは、一体どういう配給ルートでまわしておりますか。
  151. 大坪藤市

    ○大坪説明員 私どもの方で飼料用として輸入いたしますものにつきましては、約二千トンほど実施いたしたのでありますが、これは保税倉庫等におきまして、ただいま申し上げました通り、食用にたえないように魚粉等を混入いたしまして、その上取扱い業者並びに各酪農組合、主としてこれは連合会でありますが、全購連、全酪連その他の団体を通して配給する、こういうふうなかつこうになつております。
  152. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういうものの配給を、乳製品協会というものへ過半数を渡しているという事実はないですか。
  153. 大坪藤市

    ○大坪説明員 この点につきましては、各団体間で、私どもその中に入りまして、おのおのその取扱いの過去の実績と申しますか、その力に応じまして配給するというようなことに相なつておるわけであります。
  154. 中澤茂一

    ○中澤委員 乳製品協会というのには、大体どのくらい割当てておるのですか。
  155. 大坪藤市

    ○大坪説明員 現在はつきりした数字は記憶しておりませんので、後刻資料をもつて申し上げます。
  156. 中澤茂一

    ○中澤委員 われわれは、いろいろな協会全体の問題を問題にしなければならぬ。問題がどこの協会にもあるのだが、一体この乳製品協会というものの本質は何ですか。これは事業者団体ですか。
  157. 大坪藤市

    ○大坪説明員 乳製品の製造業者と申しますか、それらのものをもつて組織されております法人ということになつております。
  158. 中澤茂一

    ○中澤委員 この乳製品協会というものは製造業者の集まりだと言うが、一体この協会そのものは事業者団体であるかどうか、その点をはつきりしてもらいたい。協会は事業者団体だから配給するのか、どういう理由で一体配給するのか。
  159. 大坪藤市

    ○大坪説明員 これは何と申しますか、一応行い得るというようなかつこうになつておりますので、過去の実績等によりまして、それらのこともにらみ合せて配給の対象にいたしておるのであります。法人の性格といたしましては、民法上の社団法人であります。
  160. 中澤茂一

    ○中澤委員 社団法人だから事業者団体じやないでしよう。そのこと自体がおかしいですよ。大体、協会についは委員諸君も、どうもあの協会もけしからぬ、この協会もけしからぬと言われる。中には補助金のピンはね協会というのがある。うまい名前がついておる。私は協会には徹底的にメスを入れなければならぬと思う。典型的にいけないのは土地改良協会だ。補助金をピンはね、国の助成をピンはね、県の助成から頭をピンとはねている。この乳製品協会というのも、私はうわさに聞くのですから、あまりはつきりしたことはわからない。あなたはその道の専門家だから、どういう人をもつて構成され、どういう性格があるのか、事業者団体でないものに何の理由をもつて大半を払い下げしておるのか、この事実をああたからわれわれの納得行くように説明してもらいたい。
  161. 大坪藤市

    ○大坪説明員 団体といたしましては、乳業者の大半を網羅いたしました団体であるのであります。この団体を通して配給いたしましたのは、私の記憶いたします限りにおきましては、配給したとしてもごくわずかな数量と記憶いたしております。
  162. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたはごくわずかだというが、私どもは過半数だという。食い違いがあるから、資料として、今まで飼料としてどこへどれだけ配給したという実績を、この次の委員会——九月の末になるそうですから、それまでに出してもらいたい。しかしこれは本質的に私は違うと思う。一体乳製品協会に配給すれば子牛がどうやつて食べるかということを、あなた考えたことがありますか。ここへ配給すれば間違いなく子牛の育成用になるんだという自信があるなら、それを説明していただきたい。
  163. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは横流れがあると私どもの処置も何もなりませんので、従来かような飼料用となるものは、農林並びに厚生両当局が立ち会いまして、ふすまをまぜたり魚粉をまぜたりして、その場で飼料用に調整をいたしまして出しておるというのが現状でございます。
  164. 川俣清音

    川俣委員 関連して。今楠本部長の説明によりますと、横流れするおそれがあるという前提のもとに立つて、ふすまを入れたり魚かすを入れて配給さしておる。こうなりますと、これはあなたの問題じやなくなつて来ますが、少くとも乳製品協会というようなものに渡すべき性質のものではないということだけは言えるのじやないでしようか。さつき局長の説明によりますと、酪農団体あるいは農協団体にこれらを配給して乳牛の育成に努める、こういう説明だつた。ところが乳製品協会と、およそ牛乳をつくる協会とは違う。牛を飼つておるのではなくして、牛から出た乳を加工しておる協会なんです。加工しておる協会にわざわざ魚かすを入れたものとか、ふすまを入れたものを渡すことはおかしいと厚生省もお考えになるだろうと思いますが、どうですか、これだけ聞いこだけで常識的にお考えになつておかしくございませんか。
  165. 楠本正康

    ○楠本説明員 これは先ほど畜産局長が申し上げましたように、あとで資料でお答えを申し上げますが、私の記憶では乳製品協会にはやつていないように記憶いたしております。これはしかし私の記憶でございます。今資料の持合せがございませんから、後ほど農林省とよく相談をいたしまして、資料でお答えをさしていただきたいと思います。
  166. 川俣清音

    川俣委員 資料はあとでお出しになりましても、いずれにしても出すことはおかしい、こういう観点で今御答弁なつた。もしも出ておつたら、おかしいことが実際に行われた、こういうふうにお認めになるのでしようね。
  167. 大坪藤市

    ○大坪説明員 その点はもう少し詳細に調べてお答え申し上げたいと思います。ただ私の記憶しておる範囲におきましては、乳製品協会のメンバーであります各製造業者の中に、家畜飼育用の飼料を配給いたしておる会社があるのであります。そういうような関係で、特に子牛の育成のために、ほかの飼料と同様に乳製品協会のメンバー工場が配給をしておるから、そのために配給を多少いたしたいと思いますが、その点は記憶にございません。事の性質としまして、メンバーの工場でありますので、それに流していけないというりくつはないのじやないか、かように考えるわけであります。
  168. 川俣清音

    川俣委員 私のお尋ねしておるのは、おかしいという考え方で楠本部長も話されたと思いますが、そうたくさんは出ない、出ればおかしい、こういうことだけ伺つておけばよろしいのです。そのおかしいことが実際にあつたかなかつたかということは、いずれあとで資料でお知らせ願うということで、おかしいというだけの言質を得ればそれでけつこうです。
  169. 中澤茂一

    ○中澤委員 そこで畜産局長に聞くのですが、これは大体おかしいですよ、だれが考えても。あなたはおかしくないと思うかしらぬが、ここに問題があるのです。この乳製品協会へやること自体が私はおかしいと思うし、これにふすまをまぜてやつたら確かに子牛の口に入るのだという証明ができるかといえば、これはできないのです。われわれが酪農振興法を通したとき、あの大修正をしたというのは、生産者団体へやるべきだというわれわれ委員会の満場一致の考え方つたと思うのです。これは、乳製品協会そのものが事業者団体であれば、別に私は文句は言いません。ところがあなたのさつき言つたような社団法人で、なんだかそこいらからマージンをとつたりピンはねをしたりしている団体です。そういうものにやることは、かえつて生産費コストを高めることなんです。酪農振興法の本旨にもあるように、これは直接生産者団体に配給すべきである。それには、酪農協というものもあるが、やはり総合農協が配給すべきが筋である、こう思うのですが、あなたは乳製品協会がおかしくなくて、今後も大半は乳製品協会へやるつもりかどうか、ひとつ明らかにしていただきたい。
  170. 大坪藤市

    ○大坪説明員 もちろんただいまの御意見通り、全購連その他の生産者団体に大部分は行くようにやるのが当然だと思います。
  171. 中澤茂一

    ○中澤委員 先日も申し上げたように、まず基本的な問題から考えなければならない。これは蚕糸の問題とまつたく同じケースになつて来ている。蚕糸の問題は、御承知のようなああいう方式で御用団体があつて、集繭を一生懸命やつている。牛乳の問題は、何々酪農協というものが一ぱいできて来た。今度の値下げによつて酪農協は公正取引委員会に陳情しているそうですが、これは彼らのマージンが少くなるからおそらく陳情していると私は思う。そういう方式で行けば、これは農民の生産する、簡単な加工生産で製品になるものが、再びまつたく特殊の乳業資本のえじきになつてしまう。それではどうにもならない。だから基本的な問題として、あなたはそういう製糸のような轍をふまないで、これはどこまでも生産者団体を中心に、なおかつ生産者農民を中心にして乳価維持をやつて行くという基本的な信念を持つていらつしやるのかどうか、これをはつきりしていただきたい。
  172. 大坪藤市

    ○大坪説明員 ただいまの御意見通り酪農振興法の精神におきましても、牛乳の集荷はすべての場合、ほとんど原則として生産者団体を通して集荷する、こういう方針であるのであります。同時に今後の問題といたしましては、できるだけ生産者団体の処理加工という問題につきましても、大いにそれが発達しますように、融資の面、その他の面を考えて、その指導に当らなければならぬ、かように考えておるのであります。
  173. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの中澤委員の質問に対して、局長は、生産者団体を主体にしてということでありますが、生産者団体ということは、非常に意味が広いのです。なぜかというと、生産者団体として今あるものは、生産者をもつて構成する特殊協同組合、たとえば酪農協のようなもの、あるいは酪農組合のようなもの、それから広範囲に、信用事業等四種の経営をやつている大体において地域的な総合組合と、二つあるわけです。それであなたの方は生産者団体であるという以上に言質をとられたくない、それ以上は進めたくないというので、常にそういう答弁をしていることは、よくわかるのです。しかし、これはあなたがもう一歩掘り下げてみたときに、最後の購買なり販売という事業面に入つたときに、経済的な基礎を持たないところの特殊農協のやり得る範囲であるかどうか。たとえば、指導、啓蒙のようなものは、もちはもち屋の流儀で行けるだろう。しかしながら、取引という段階に行つたら、はたしてそう行けるか。現に乳の代金を乳業資本の人たちが、六十日だつたか、相当長い手形払いをしている。それを今は、総合組合なり、信連の系統が割つているからよろしい。もし割らなかつたらどうします。割らなかつたならば、それはただちに乳代の滞りとなつて来る。現在でも、その経済行為の基礎を持たないものがやつておる。また先ほど生産者団体というもの、あるいはもつと言えば、乳製品協会のようなものも、構成分子が乳をとるためには、牛の貸付なり、育成、指導をしておると、こう言うけれども、そういうふうにして、単なる酪農なら酪農、えさならえさ、乳なら乳という、非常に狭いセクシヨンのもとに、あなたがそれだけで考えると、そういうような問題は、どれも妥当な問題のように思うけれども、農村経済全体の機構から行つて、どの線で一番強力に、一本化の方向に指導すべきかという目標がないと、ただ牛を育てるために、あれもこれもやつておるんだ。だから、そういうふうに公平にやるのだというような考え方、あるいは経済行為の取引の対象として、これも生産者団体、あれも生産者団体というような形で行きますると、農村のさなきだに弱い経済力というものが、常に分散されて、まつたくいつになつても、これは資本主義の隷属下に置かれている、こういう方向に行くのであります。これは一つの指導方針を持つたときに、相当摩擦もできるだろうし、ことに特殊な産業を扱つている畜産局のごときは、えてして、もちはもち屋式の団体を重視したがる気づかいがあるのでありますけれども、これは農業経済全体から言うならば、私は間違いだと思う。ことにえさの問題なんか、この前の飼料需給安定法のとき、なぜあれだけの大きな修正をしたか、えさを払い下げた結果について、私は相当強いひもをつけたわけです。というのは、えさを払い下げた結果が、どういう価格で、どういうふうに配給されたかということを報告する義務を負わした。しかもその義務に従わぬものは、次の入札に入れさせぬというところまで、法令をきゆうくつにした。その目的はどこにあるかというと、それは、できるだけ公正な機関で、そうしてできるだけ国家の施策が、直接飼料の需要者に均霑して、この恩典にあずかれるようにという心づかいから、ああいうふうに修正しておるわけであります。しかしながら、今あなたの方で扱つている、あれも実績があります、これも実績がありますというやり方から行くと、あれは飼料需給安定法の趣旨にはのつとつておらない面がたくさんあるようであります。この点は、私どもは、単に生産者団体というけれども、その生産者団体の——大きな団体がたくさんあるけれども、その経済行為というものは、主としてどういう点に集中して行うべきかということに対して、あなたはこの際、はつきりひとつ見解を述べておいてもらいたい。
  174. 大坪藤市

    ○大坪説明員 牛乳の集荷なり処理加工の施設なりの主体は生産者団体であります。この点につきましては先ほど申し上げた通りでありますが、先般法律が制定になりました場合におきましてから、ずつとただいまの金子先生の御意見は、生産者団体いわゆる総合農協であるべきであるという御意見であるようであります。このことは私といたしましてもまつたく先生の御意見通りなのであります。理論的に見ましても、経済的に見ましても生産者団体中総合的な事業を行ういわゆる総合農協でこれを行わしめた方がよろしい。この点につきましてはまつたく異論のないところであるのであります。ただ実際問題といたしまして、ただちに全部そういうふうに指導できるかどうかという問題になつて来ますと、おのずからそこには限界があるかと思いますが、そういう方向に向つて進むべく、今後のいろいろな、牛乳取引の問題その他につきましても、各府県を督励いたしましてそういう方向に向うべく努力する、かように存じております。
  175. 中澤茂一

    ○中澤委員 いろいろ申入れがあつたし、この問題はまだまだ当分続く問題でありますが、とにかく私の生産者団体と言つたのは、あの振興法を修正するときの生産者団体、すなわちほんとうに牛を飼つて乳をとるところの農民、総合農協という線でわれわれもあの修正をやつたつもりであります。それについてもそういう方針を局長が言明する以上、総合農協に実績がないからということで拒否することはごうもないと思う。あるいは量をしぼる必要はごうもないと思う。これがどういうふうに今使われておるかというと、これはまさに明治、森永の今までの地盤確保のためにえさでつつておるのが実際なんです。これは農民に聞けば、いや総合農協でやりたいのだ、しかし総合農協ではえさの配給が少いのだ、明治や森永の方へやればえさをたくさんくれるのだ。だから明治や森永の方へわれわれはやるんだ。しかも乳価の値下りによつてますます生産の合理化、コストをしぼつて行かなければならない段階においては、えさということは地盤確保の唯一のものなんです。だから今後——あなたは今はつきりと金子委員の質問に対して、総合農協を生産者団体として育成強化して行くということを言明されておるのだから、今後こういう飼料の配給について、実績云云というようなことを御破算にして、ほんとうに牛を飼つておる農民を育成して行くのだ、その意味で生産者団体の総合農協によつてやらせるのだという態度をとるならば、この裏から、飼料配給に対して総合農協は実績がないからということで拒否するというか、減量するというようなことのないようにするということをはつきり言明しておいてもらいたい。
  176. 大坪藤市

    ○大坪説明員 実績がないから減量するというようなことは絶対にありません。いわゆる飼料需給安定法のうちでも、これはあるいは私の記憶が間違いかもしれませんが、ほかのものは全然いわゆる乳製品協会とは関係いたしておりません。脱脂粉乳の飼料用の場合には関係しておつたと私は考えておりましたが、その点も明確でありませんので、後刻よく調査をいたしまして、御報告申し上げます。
  177. 井出一太郎

    井出委員長 厚生省関係に何かお尋ねありませんか。——それではこの際ちよつと委員長から楠本部長にお尋ねいたします。乳価の問題をめぐつて、生産者からは非常に安く買い取つておる。しかしながら都市の消費者というものは比較的高いミルクを飲んでおるのが現状であります。そしておそらく他の商品には見られないような中間的なマージンが多い、こう言われております。これは運賃その他の中間経費であるとか、あるいは鮮度の問題だとかいう特殊性もございましようが、その一つの理由は、従来高温殺菌でよかつたものを低温殺菌に切りかえた、こういうことにあるやのように見えるのであります。これは占領政策の指導によるものであると思いますが、一部食品衛生法等の改正があつたのですかどうか、私はつまびらかでありませんが、若干高温のものでもいいというふうな特例も認められたやに聞くのですが、その辺の消息を伺いたいのと、それから厚生省のお立場で、どうしてもこれは低温殺菌でなければいかんのか、こういうふうな点をこの際ひとつつておきたいと思います。
  178. 楠本正康

    ○楠本説明員 お答え申し上げます。最初に市販価格の問題について一言触れさしていただきたいと存じます。これはもちろん第二点でお答えをする点に触れては参りますが、しかしそれは高温殺菌、低温殺菌の問題と離れまして、一つには私どもが一番不合理と考えております点は、牛乳販売業者、取次販売業者の利潤が案外多過ぎるのではなかろうかという感じがいたします。たとえば現在東京都内におきましては、卸価格が十円三十銭、それであとは牛乳販売業者のマージンで約十六円になつておる。この辺に若干の問題があるのじやなかろうかと私は考えております。従つてこれらの点につきましては、きわめて重大な問題でもありますので、根本的な問題を解決することはもちろん必要でありますが、同時に私どもといたしましては、できるだけ簡易な施設で牛乳の販売ができるような店頭販売、パン屋でも魚屋でも牛乳を売らしたらどうかというようなことを考えてみたいと存じておりますが、いずれにいたしましても、価格問題はかようなところに一つの問題が横たわつておるのじやなかろうかと私は存じます。第二の御指摘の高温殺菌、低温殺菌の問題でございますが、酪農本位に考えますれば、もつと積極的に高温殺菌を認めた方がいいんだろうと考えております。しかしながら現在牛乳の需要を満さなければならぬ点は、むしろ都市に多くあるのでありまして、もちろん農村においても食生活改善その他の面から牛乳の消費を促進することは理想ではありますが、現在何としても牛乳の大消費地は都市であります。従つて都市にある程度集乳ができるということを前提にしてものを考えなければならぬと存じます。しかしながら私は個人的な考えをもつてすれば、これは低温殺菌、高温殺菌二本建が当然かと存じております。ところがこれはただいま委員長から御指摘がありましたように、昭和二十七年当初までは低温殺菌一本建で進んでおりました。これが酪農振興あるいは乳量の増加等にある程度ブレーキがかかる結果ともなりますので、昭和二十七年以降におきましては、一部法令を緩和いたしまして、新興酪農地帯等におきましては、知事の指定によりまして、高温殺菌を認め得る措置をとつたのであります。しかしその後さらに農山村の食生活の改善あるいは乳牛のそれに伴います増加等にかんがみまして、さらに昨年の暮れに、私どもはもう一度方針をかえまして、新しい市乳地帯を形成するような地方があれば、積極的に以上の緩和規定を適用いたしまして、高温殺菌地帯を形成するように地方を指導いたしておる次第であります。その場合には、もちろんバツグ消毒その他きわめて簡単な消毒方法によりまして処理し得られる道を開いているのであります。しかしながら実際問題として、そんならば一体農村地帯でどしどし高温殺菌が行われておるかというと、必ずしもそうではございません。それはつまり知事に私どもがかような方針で今後やつてくれといつておりますが、しかしそこには先ほどちよつと金子先生のおつしやいましたように思想に出発した、いろいろな複雑な関係もございまして、なかなか一挙には行かない問題だと思つております。そこで逐次かような方向に向つて進んで行く。同時に乳牛のふえるのを待つているというようなことによつて、逐次酪農地帯あるいは農山村地帯等の牛乳消費を促進するまた一方ではさようなことによつて、金子先生のお話のように、酪農が大ききな経済資本に隷属する姿から致却するような方向に進むべきものだろうと考えておる次第であります。従つて今後も厚生省といたしては、混乱を来さない範囲で、できるだけさような方針で進みたい所存でございます。さらに第三の御指摘の低温殺菌是が、高温殺菌是かという問題になりますが、これは多分に一長一短のところもございますが、しかし全体的に見まして、都市等においては大量の市乳を処理する場合には、経済的に申しましてもあるいは処理の簡素化から申しましても、低温殺菌がむしろ有利ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  179. 金子與重郎

    ○金子委員 この問題につきましては、もう私どもが厚生委員をやつているころから楠本部長は、非常な理解をもつてここまで進んで来た。そのために高温殺菌の問題も、一応目的のところまで来たのでありますが、しかし高温殺菌を許したというだけのことでは、今日の市販牛乳の価格と生産者価格との値幅解決の上に大した力を持たなかつた。一歩前進しただけであるということはあなたもお認めになつておるのでありますが、そこで今後、今日四十円台の生産者価格が、都市に参りまして百四、五十円になつて行くということには、その間にたくさんの手数をかけておりますので、そういう点もやむを得なかつた面も見えますが、とにかく実際面としては、一方においては、牛乳の消費を奨励していながら、なかなか消費が伸びない。生産者はその価格が合わないということで、酪農振興の面に非常な行き詰まりが来たわけであります。この打解策としては、あなたが先ほどちよつと触れましたが、一番大きい消費はやはり都市であります。その都市の消費を二つにわけることができるのでありまして、集団的に乳を使う場所とそれから今の家庭配給の場合と、二つあるのでありますが、家庭配給の場合を、一合びんに詰めて配給をしておる昔からの習慣をすぐ直すことはできませんが、食堂なりあるいはその他の牛乳を売ることを業とするもので、一定以上の販売量を持つものに対しては——今日は昔と違いましてきわめて簡単な電気冷蔵装置も、小さな肉屋小さな魚屋にも徹底しておるのでありますから、これに対して牛乳の一斗カン取引ないしははかり売りをする、これがこの次に進むべき一つ段階だと思います。これをどこまで徹底させて行くかということによつて、乳の生産者の手取りが大きくなるかどうかというところに初めて影響力があるのじやないかというふうに考えますので、この点について摩擦のないとか、いろいろ四囲の情勢というものもありまするけれども、むしろこの問題は勇敢に実現させていただきたい。これはもう今行き詰まりつつある乳の生産者に対して、一つの明るい譲歩でありますので、これに対して、あなたも考えてみるという段階から実施する覚悟で方法を考えるという段階までお進み願いたいと思うことが一つであります。それからもう一つは、この際あなたの食品衛生の立場からでありますが、私こう考えるのであります。日本は昔から四つ足のものを食わなかつたというので、この四つ足の、いわゆる肉なり乳というものを食べることは、歴史が浅いだけに、同じ食品の中でも、乳や肉というものに対してあまりに神経過敏にこしらえた法律がそのまま踏襲されているきらいがありはせぬか。たとえば魚屋があのはえにつつかれたさしみを裸のまま配達をして、それでありがとうございますでお客さんのところへ配つて来るさしみも、細菌検査してみれば相当多くの細菌があると思う。それが乳や肉になると目のかたきにして、環境衛生の立場からものを言う。在来から食つていたさしみや何かだと平気で配達しておる。この点はあなたに公衆衛生を緩和して危険を冒せとは言わないけれども、畜産品のみに対して神経過敏に過ぎやしないか、こういう感じがいたしますが、あなたはそれに対してどういうお考えを持つて進んでおりますか。
  180. 楠本正康

    ○楠本説明員 第一点の御指摘のことに関しましては、私もまことに同感でございます。従来牛乳を販売する場合には、一合びんに詰めなければ売れない仕組みになつておりますので、これらの点につきましては今後さらに研究いたしまして、すみやかにその大わけの販売というものを考えてみたいと存じます。こういたしますれば、少くとも学校給食あるいは病院あるいは団体等に非常に利益するところが多いだろう、かように考えております。これは農林省とも相談いたして研究してみたいと思います。まつたく同感でございます。第二の点は、これも私としては同感でございます。つまりさしみを食べる人間が肉や乳ばかりあまりむずかしいことを言う、これは確かに行政に一つの不調和な点がございます。ただ私どもといたしましては、もちろんこの辺の正反対の両反面の調和点をどこに求めるかというところに行政のむずかしさがあるわけであります。しかし実際につきましては、私としては、若干他の行政と比べて不調和な点がある点については率直に認めます。しかしどういうところに調和させて行くかということがその行政の一つのむずかしさだろうと思います。しかし私はただいまお話のあつた点にかんがみまして、ちよつと意見を述べさせていただきたいと存じますが、たとえばこれは国民の皆さんの声はむしろ逆じやないかと思つておる。たとえば黄変米問題なんというものは、白い米が食えなくなつたから、米を絶対食つちやならないという話ならわかりますが、米を食つてもいいが、米を食う場合には、そこでちよつとかびがついていてもいけない、何も食う気もせぬということは、この点はここで御決議をいただいて非常に恐縮しておりますが、御決議をいただいた手前それだけ一つ私としては弁解させていただきたいと思います。
  181. 中澤茂一

    ○中澤委員 肥料審議会が終つてしまうから、まだ牛乳の質問も相当つておるようですが、至急先ほどの理事会の申合せによるところのものをやつて、代表が政府並びに肥料審議会に申入れをやつていただきたいと思います。
  182. 井出一太郎

    井出委員長 中澤君に申し上げますが、実はまだ理事会という段取りにもなつておりません。そこで明日も引続き肥料審議会がございますから、その問題は後刻理事会を開きまして処理をいたしたい、こう考えます。お待ちかねの農林大臣が見えましたので、とりあえず大臣に対する御質問に移つていただきたいと思います。
  183. 中澤茂一

    ○中澤委員 それなら乳の問題をいま一つだけやつてあとそうしてください。今楠本さんの話を聞くと、十円三十銭の卸売業者への渡しだ、九月一日から独禁法違反をやつて大体全国四十四円二十銭という乳価協定をやつておるわけです。そうすると十円三十銭で卸売にやると、ここに工場のもうけが五円十銭あるわけです。あんな原始的な生産加工事業が、ただ集乳して低温殺菌して出すだけで五円十銭のもうけは、まさに暴利である。生産者の四円二十銭からいえば、最終価格が、現在市乳は、一合われわれが飲んでおるのは十五円ないし高いところは十七円しています。生産者価格の四倍の値段を上まわつておる。四円とすれば四倍で十六円、こういうべらぼうな中間不当利潤はわれわれは許せないと思う。これに対して楠本部長は、どうも卸売の方は六円ばかりある、これはちつと高くないか、ここの中間経費を何か削除して、安い牛乳を食生活の改善の一環として飲ませる必要があるんじやないかとおつしやいましたが、私は工場自体の五円十銭のマージンもでたらめの利潤であると思うのですが、楠本部長はどうお考えですか。
  184. 楠本正康

    ○楠本説明員 四円は、——市乳地帯においては今では五円くらいじやなかろうかと存じております、原料乳は別といたしまして。なおこれらの点につきましては、私どもかねていろいろ注意もいたしておりますが、先ほどもお話がありましたように、おそらく来月、再来月にわたりまして逐次市乳の卸価格も下つて行くのではなかろうかと存じます。しかし工場の設備あるいは運搬過程の非常な困難、さような点から考えまして、大体外国の例等をとりますと、確かに高いというような感じがいたす次第であります。
  185. 中澤茂一

    ○中澤委員 さつき畜産局長に申しておいたのですが、大体生産者の原価が幾らであるかということは、農産物価格全体の基本にならなきやならぬ。しかるに生産原価要求というものを、私が過日資料要求したのに出して来ない。基本的な問題を畜産局長は回避しておる。これはなるほど濃厚飼料並びに草資源をどう使うかということで、生産原価は非常に複雑であるということはわかるのです。しかしその基本線を回避しておることは、われわれが要求しておるどころの生産原価に対して、それほど畜産局長は重視していないと、私はこうとらざるを得ない。これに対して畜産局長はどうお考えですか。
  186. 大坪藤市

    ○大坪説明員 ただいま御意見のように、生産原価を重視していないということは絶対にありません。ただ生産費調査の方は、所管によりまして統計調査部の方で調査いたしております。昭和二十七年、二十八年と調査いたしておりまするが、調査の対象がきわめて数が少うございます。しかもとりました対象がごく地域的に限られておりまして、これを全体の生産費として見るということについて、調査当局自身におきましても自信を持てないというような数字に相なつておるのであります。概括的な言葉で結論を申し上げますと、昭和二十八年度におきましてはごく少い事例で、しかもいろいろ検討を要しまする各種の材料を前提にいたしまして、一応仮の数字といたしまして五四見当のものが出ておるのであります。しかしこれは今ただちにその数字をもつて、いわゆる全国的な原価なりというふうに判定するわけには参らないというような数字に相なつておりますので、今後調査当局と打合せまして、大いにこの調査につきまして努力をして参りたい、かように考えておるわけであります。
  187. 中澤茂一

    ○中澤委員 大臣も来たようで大臣に質問が山積しておるし、新政務次官の抱負も承らなければならぬので、いずれ牛乳の問題は、これから肥料の問題と同じくわれわれは国民食生活全体の改善、それについての乳価の引下げ、この問題について徹底的に検討し、対策を立てて行かなければいかぬと考えます。それについて最後に畜産局長に資料の要求をしておきます。これはこの次の農林委員会、大体九月末になると思いますが、それまでに出してもらいたい。各県が行つておるところの牛乳生産費の調査、各県でこれは酪農協でもよろしいし、総合農協でもよろしい、あなたの方でひとつ責任を持つて、一体どれだけ各県がかかつておるかという生産費原価の資料を、各県ごとに出してもらいたい。それが一つ。それから牛乳の今私の言つた五円、六円近いマージンをとつておるところの、これを処理するのに一体どれだけの処理加工費がいるか、並びにその流通の経過、これが二点。それだけのものを、あとまだございますが、その二点を、生産費調査に重点を置いて、この次の委員会までに提出を要求しておきます。
  188. 井出一太郎

    井出委員長 この際新任の羽田農林政務次官が見えましたので、ごあいさつがあるそうであります。羽田農林政務次官
  189. 羽田武嗣郎

    ○羽田説明員 私羽田武嗣郎であります。本日発令になりまして政務次官になることになりました。ただいま中澤さんのお話で、抱負というお話ではありますけれども、抱負というよりも皆様の専門的なお知識を十分教えていただいて、そうして政務次官の私も大臣を助け、省の皆さんと御一緒にやりたいと存じております。何分新米でありますので、よろしく御指導と御鞭撻をいただきたいと存じます。(拍手)
  190. 井出一太郎

    井出委員長 それではこれより農林大臣に対する質疑を願うことにいたします。井手以誠君。
  191. 井手以誠

    ○井手委員 大臣がお見えになりましたので、二、三点お尋ねいたしたいと思います。まず第一には、農薬の補助の点でございます。これは去る二十七日の閣議において、さきにきめられたうんかの農薬補助同様の方法をもつて補助をする。それは異常被害に対して二回以上のものに対して一回分だけ補助する、その合計は事務当局の推算によりますると、八億円といわれておるのであります。ところが、昨の病虫害農薬の補助総額は二十二億円と承つておるのであります。昨日いろいろ作況について御報告を受けましたが、激甚なる今年の虫害に対して、あまりにも僅少過ぎるという感がいたすのであります。大臣もよく御存じのように関西、特に九州方面では二化螟虫の発生がひどいのありまして、これを駆除するために、農民は生命の危険を冒してやつておるのであります。ここに新聞にもありますが大臣の郷里の鬼塚村にも一名死亡、重軽症四十名、四月以来二十八名も死亡しているという新聞報道もあります。これほどの危険を冒して増産に努めておる農民に対して、あまりにもこの病虫害農薬に対する補助が僅少過ぎる、冷淡過ぎるという感がいたすのであります。昨日また作況の報告の中に、昨年よりも二化螟虫については三倍の発生がある、しかし減収については昨年とほど同様である、こういう説明がありましたが、これは裏を返して申しますれば、これほどの危険を顧みず防除に当つておるからこそ、減収を最小限度に食いとめているということも言えるのであります。この農民に対しまして、ただ一回だけの補助金、その一回分の半額だけでは、とうてい私どもは納得しがたいのであります。異常災害であれば二回以上、二回以上であれば四回、多くのところが四回やつておりますので、少くとも一回を差引いた三回分あるいは二回分の補助が、私どもは絶対に必要であると考えておりますから、大臣はどんなふうにお考えになつておるか、さらに閣議に対して、最近特に激甚をきわめておる二化螟虫を初めとする虫害に対して、さらに補助を増額されるという御意思がおありになるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  192. 保利茂

    ○保利国務大臣 病虫害に対する農薬補助の問題につきましては、当委員会及び参議院の農林委員会でも非常な御心配を煩わしまして、私としましては、前回の委員会でも申し上げましたように、政府部内の病虫害に対する農薬補助の問題について、必ずしも原則的に意見がまとまつているとは申し得ない状態にあります。すなわち一面すでに御承知のような、財務当局の補助に対する強い反対の意見もあるわけでございます。これはわれわれの努力がまだ十分でないということを私自身としては考えておるわけでございますが、そうは言つても、とにかく当面して、すでに植付を終つた、植付後において天候その他の自然現象による影響は、これは免れ得ないとしましても、病虫害等に対して免れ得るあらゆる手段は講じて減産を防止する、すなわち食糧生産を確保するということは、単に農家経済にとりまして大事なことであるのみならず、食糧確保の面から行きましても国家的に等閑視できないという考え方を持ちまして、異常発生に関しましては、議論は抜きにして、とにかくそういう考えで農楽の処置を講ずべきである、こういうことで今回の措置をとつておるわけでございます。しからば、昨年度におきまして農楽関係に投じております二十二億余に比べいかにも僅少に過ぎる、金額からいえばまことにその通りでございます。しかし昨年度は稲以外の分につきましてもこの補助対象といたしておるわけであります。今年は稲作に対する病虫害の処置として講じておるわけでございまして、むろん今日の財政事情からいたしまして、できるだけ節約をはかつて行かなければならぬという、一方の強い要請にわれわれとしてもこたえなければならぬ。そういう上からいたしますれば、私の承知いたしておりますところでは、稲に費しておりますのは昨年は十億そこそこじやなかつたかと思つております。まあ今度どの程度にこの補助を支出して参るかということは、今後の発生状況と見合つて考えなければならぬことでございますから、今日八億だとか九億だとかいうことを断定的に申し上げることはむろんできません。今後の発生状況によつて額が移動して参ることは当然でございます。しかし同時に私ども、特に農政当局者として責任を感じておりますことは、ささいなこの農薬補助金が本来の病虫害防除の用に供せられずして、あるいは他の用途に供せられたとか、あるいは農協の預金になつておるとかいうようなきわめて例外的な事例をとらえられて、さもこの農薬補助金というものかルーズに、でたらめに用いられておるのじやないかということに対しましては、これは私どもの責任でございますけれども、私どもとしましては、できるだけそういうことの起らぬように、たとい一つの例外的にもそういう指摘でも受けることのないようにいたさなければならぬという考えで、処置しようと考えておるわけでございます。金額の大小あるいは今後のことにつきましても、いろいろ御注文はよくわかるわけでございますけれども、しかし当委員会及び参議院農林委員会等の御支援、御協力によつてこの成果が出て来ておる。しかしありていに申し上げまして、私はこれは良心的に最善を尽しておりますと申し上げざるを得ないという気持で、私自身はおるわけであります。御不満は十分わかります。今後の発生状況等によりまして、総額がどのくらいになりますか、今日の方針を変更するということは、少し先走つたお答えになるかもしれませんけれども、私としては、方針としてこれ以上のことをやるということはちよつと自信を持つておりません。
  193. 井手以誠

    ○井手委員 大臣の最後のお言葉方針についてはこれ以上の自信はないとおつしやいましたので、いたし方ないのであまり追究いたしません。異常災害があれば二回、三回、多くて四回散布いたしておりますから、二回分、三回分は補助は半額でございますから、当然努力されてしかるべきだと考えます。また当委員会では、昨年よりも下らない補助金を交付されたいという決議がありますが、それができないといたしますればいたし方ございません。しかし地方にあつては、この点について非常に要望も強いし、われわれも痛感いたしておりますので、努力されますことを要望いたしておきます。
  194. 稲富稜人

    ○稲富委員 今の井手委員のお尋ねに関連してお尋ねしたいと思います。ただいま農林大臣の御答弁を聞いておりますと、将来の異常発生に対してはまた何とか方法をとらなくちやいけないというような熱意のあるように承つたのであります。ところが現在の農薬の支出に対しては自分としては最善を尽したので、もうこれ以上できないものだというようなおお言葉もあつたようであります。将来異常災害等がありました場合には、さらにこれに対して何とか方法を講ぜられるだけの御用意があるかどうか。この点、私は今の御答弁に食い違いがあるような気がいたしましたので、重ねて承りたいと思います。
  195. 保利茂

    ○保利国務大臣 どうもそういうふうにとられるのではないかと思つて実は心配したのです。井手さんの言われる八億というものは、今後の発生状況が出て来なければ八億になるか九億になるかそれはわからぬ、こういう意味を申し上げたわけであります。しかし実際この農薬の問題は、いきさつはよく御承知のように、今年度の方針としてこれを動かすということは——私が先ほど申し上げた通り了承を願いたいと思います。
  196. 稲富稜人

    ○稲富委員 関連しましてもう一つお伺いしたいと思いますのは、今度の農薬に対しましてただいま井手委員から御質問がありましたように、農民が非常な危険を冒して薬を使用しておることは御承知の通りであります。将来この薬品に対しましても、もつと危険ならざるような、しかも効力のあるような薬品を発明するような方法を、積極的にこの際農林省としてもやる必要があるのではないか、こういうことを考えるのであります。これは将来のことでありますので、これに対してこの機会に、農林省として危険のない、しかも効果のある農薬をつくり出すことに最善の努力をさらにしていただきたい、こういう意思表示をひとつ農林省にお願いしたいと思います。
  197. 保利茂

    ○保利国務大臣 そのお考えは私もまつたく同様に考えております。いかに効能があるからといつて、生命を失わしめるというようなことでは、それはもうどれだけの利益がありましても人道的に私は用うべきものでない、かように考えるわけでございます。しかしまたその点につきましても、昨日も私厚生大臣と話をしたわけでありますけれども、薬務当局の方では、その扱いさえ気をつけてくれれば絶対に心配ないと申しているわけであります。むろん忙しい、しかも炎天下非常な激務でございますから、どれだけ注意しても、やはり注意上の齟齬というものは起りがちなのでございます。だから学理的に、理論的にそういうふうにのがれ得ると言われても、実際問題としてはそう行かない場合があろうかと存じます。同様の考えを私は強く持つておりますから、そういう趣意で善処したいと考えております。
  198. 井手以誠

    ○井手委員 私もホリドールの危険性については、危険のないように農林省でも御研究くださるようにお願いいたしまして次に進みます。あと二、三点でございますから、大臣はできるかできないか、努力するかあるいは確信を持つてやるかという簡単な御答弁でけつこうでございます。私は二十分しか与えられておりませんからお願いたします。次に例の有毒米の問題でございます。有毒米の本質の問題についてはきようは多くを申しませんが、生産地に対しては外米を配給しないから超過供出をやつてくれという督励が、きびしく昨年あつたのであります。従つて地方では、百何十パーセントという超過供出をいたしております。ところが当時から不作であつたことがわかつておるにもかかわらず、そういう督励をされたにもかかわらず、最近府県間の均衡であるとか、あるいは需給関係とかいうことで、生産地にも外米を押しつけられる。その中に秘密のうちに黄変米、いわゆる有毒米も入つておる、こういうけしからぬ事態が発生いたしたのであります。そこで先日の食糧庁長官答弁によりますと、どうしても供出量が少かつたから外米を配給した、こういう御答弁がありましたので、今生産されておる産米については、これが二千七百万石になるか三千万石になるか知りませんが、それだけの供出、それに近い供出がありますれば、生産地に対しては県内生産米だけということにまたもどるのが、私は農林省の今までの答弁から申しまして当然だと考えておりますが、そのように本年もうんと供出があれば外米は配給しない、こういう御答弁がほしいのであります。大臣のお考えというよりも、はつきりした態度を承りたいと思います。
  199. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは井手さん、お互い言うところの生産県におるわけでございますが、しかしただいまお話になりましたことは、私は、先般の当委員会食糧関係の諸問題について御研究をいただいた御決議の趣意にも合うと思つております。大体御承知のように、今東京、大阪等消費県におきましては、内地米はわずかに七日やつとのところを配給いたしておるわけなんです。生産県というところは、少くも十五日間の内地米の配給を確保いたしておるわけでございますし、それをまあ十八日あるいは二十日というところまで今日までやつて来ておつた。それはしかし国が食糧管理をして、そしてできるだけ乏しきをわかつという上から、この供給不足の内地米を公平に消費するようにという趣意が管理の眼目だと思うわけでございます。しかし生産県における消費者が、直接米の生産をしておられるというわけではむろんないわけです。たまたま生産県で暮しをしておられるというだけで、一方は七日、一方は二十日というような、しかもそれは生活上の大きな負担関係を生じて来るわけなんで、それはあまりに不公平じやないか。むろん供給を確保するという上で非常に困難を感じました点もございますけれども、やはり生産県、消費県のアンバランスを幾らかでも是正したいという趣意も入つておるわけでございますから、これはまた集荷上微妙な問題になつて参りまするし、やらぬと言えばまたそれをひつかかりに、それじや出さぬぞとおどかされても、これははなはだ困るわけなんで、何も農家の保有米を取上げるという問題じやございません。要するに生産県におられる消費者の方々と、消費県にいる消費者の方々とのあまりひどい差別というものは、調整しなければならぬじやないかということが当委員会の御決議の趣意であつたとも思つております。従いましてその点につきましては、今日のところは、井手委員お話のような考えは私持つておりません。
  200. 井手以誠

    ○井手委員 私先般の委員会に出ておりませんから、どういう決議があつたか承知しておりませんが、私が申しておりまするのは、うんと出してくれれば外米は配給しない、こういう約束で督励された、その約束を破つて外米を配給されたということに対する私の質問でございます。だから今度供出がたくさん出て、相当量確保できれば、また昔に復してもらえるのじやないかという期待を、生産県にある人は県民全部持つております。それについてできるかできないかということのお考えを聞いておるわけです。均衡の問題じやないのです。
  201. 保利茂

    ○保利国務大臣 私が両院で伺いました大多数の御意見は、生産県と消費県の配給を調整すべしという御意見であつたと存じております。従いましてそれに逆行するところの措置は私としてはとりがたいかように考えております。
  202. 井手以誠

    ○井手委員 委員会の決議が材料になつたようでございます。結局見込みがないようでありますので、これくらいで私は打切ります。次に簡単な問題ですが、大臣にもいろいろお世話になりました昨年水害の小災害について、一昨日かの官房長の答弁によりますと、今回通達したものをもつて全部打切るということが、官房長の口から言明されたのであります。ところが被害地の農地部長なんかの話によりますと、その金額は予定された国庫負担額の半額にも達しない、たとえば佐賀県においては一億七千万円いるにもかかわらず、七千四百万円で打切られている。こういうことになりますと、予算の都合で本年度は減るという意味ではなくして、これこれのものについては九割を補助するという法律にこれは明確に違反するのであります。あるいはこういうことが地方にわかりますと、補助をもらえない人から訴訟ということも予想されるところでございます。私は法律違反その他いろいろ申し上げたいことがありますが、ここに具体的に、これをもつて打切るという農林省の態度に対して非常に私は理解しかねるのであります。この点について大臣は、それは間違いであつた、やはり法律に基いてさらに追加して交付するというお考えであるかどうか、その点を承わりたいと存じます。
  203. 保利茂

    ○保利国務大臣 小災害の問題につきましては、これは何せ数が非常に多くて、ちよつと目が届かないといつてもさしつかえないと思うのです。従つて当初四億か四億五千万ぐらいでというようなことであつたことは御承知の通りである。それでも、とても話にならぬということで、結局財務当局も認識を改めてあそこまで出す。個々につきましては井手委員お話のようなことが起きているかもしれません。それはあり得ないことではないと思います。法律は九割じやないか、ここはどうだ、こう指摘されれば、そういうところが起り得るかと思いますが、実際問題といたしましては、そういうことになつて参りますと、一箇所々々々国が直接行つて、ここは幾ら、ここは幾らということをやらなければならぬ、これは三年や五年で査定だけでもできはしないということから、私はただ、心配しておつた四億が十一億か十二億になつたということで、それを早く執行するということだけ申しているようなことでございます。十分研究さしていただきます。
  204. 井手以誠

    ○井手委員 財務当局といいますか、大蔵省主計局関係が、頭が石のように化石してどうにもならぬことは、私もよく承知しております。その間において十一億を獲得された農林当局の努力は私は買いますけれども、やはり法律にはつきり補助するということがあれば、これをもつて打切るという線を引くことは、私は関係者に大きな不安を招くと思う。政府不信あるいは法律否認というような思想が起つて来ることを私は非常に心配しております。これは当初からわかつておりましたから、地方府県の申請を信用してやるというように話をまとめておつたと私どもは考えております。また先般当委員会で審議しました、農地等のあの災害復旧についての本法の改正についても、やはり府県を信用しなくてはならぬような改正でございます。今後の農地復旧の主体は府県にあるという改正でございましたが、もし一々調査ができないということであれば、これは昨年の地方災害ばかりでなくして、全面的にそういうことが起り得ると考えておりますがこの際そういう本法の解釈で将来に不安を起さないように、法がある以上は、あれは打切りじやないということを示達されて、今後努力されることが大臣としてのお務めじやないかと考えております。重ねて御方針を承りたい。
  205. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほども申しますように、研究はいたしてみますけれども、事の性質からいたしまして、府県の言うところを信用してやるのが建前だ。むろん今後農地復旧等につきましては、この間御制定をいただきました法律の運用によつて府県の責任が重くなるということになるわけですから、できるだけこれはそれでなければならぬとは存じますけれども、実際問題としてわからぬ。わからぬと言つたら、どうもぐあいが悪いのですけれども、扱いにつきましては今後少し研究してみなければここでどうこうということははつきり申し上げられません。
  206. 井手以誠

    ○井手委員 この問題については、先刻もちよつと触れましたように、訴訟その他の起きることをひとつ私は警告を申し上げますとともに、法律違反のこの態度に対しては、十分な考えを改められて、さらに努力されるように希望いたします。最後にお尋ねいたしますが、問題の追加払いでございます。二十八年産米の追加払いについて、大臣の所信をこの際承りたいと存じます。いろいろ申し上げなくてもいい問題だと思つております。当然二百三十二円かは払わねばならぬ。農民はそれを当然のこととして期待をいたしておりますし、そのいかんによつては二十九年産米の供出に非常な影響を与えますので、公約を誠実に実行するというお建前から、この際何回もお話があつたかもしれませんけれども、重ねて農林大臣の確たる所信をお尋ねしたいと存じます。あなたの談話にも新潟発でございますが、二十八年産米の追加払いはするが、パリテイ指数プラス・アルフアーが問題だ、額については何とも言えないということが発表されておる。それはやはり何か新聞社の方の聞き違いか、活字の間違いかとも考えます。おそらく大臣の意思ではなかろうと私は信じております。この際農民大会のあとでもありまするし、全国の農民が注視をいたしておりますから、農林省の最高責任者の立場において、明確なる御言明が願いたいのであります。
  207. 保利茂

    ○保利国務大臣 今御指摘の新聞記事はその通り申し上げたに違いはありません。その通りです。二十八年産米の追加払いをと申しますのは、新米価に織り込んで何かそういうふうな細工でやるという御説が新潟に非常に瀰漫しておる、それは一体どういうことであるか、こういうお話であつたわけですから、二十八年産米の追加払い米価は新米価でやる。ただしかし今日の米価パリテイ・オンリーだけできまつておれば、これはもう直線的な問題で何もない。しかしパリテイ・プラス・アルフアーという要素が非常に加わつておる。従つていろいろの議論がそこに出るわけです。食管会計の財源の関係もあるし、そういうところを事務当局検討いたしております。従いまして払うことはもう間違いなしに払う、こういう考えで、とにかくできるだけ早く仕上げてもらうようにということで、事務当局を督励しておるということであります。これはもうそのままであります。
  208. 井出一太郎

    井出委員長 久保田豊君。
  209. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 まず第一に私は三点ばかりお伺いしたいと思う。第一点は、追加払いの問題がいつも問題になります。払う払うはだれもおつしやる。大臣もおつしやるが、幾ら払うのか、もし払えなかつた場合にはどうするかということの御言明が一つもない。食糧庁長官も、払うつもりで今研究中だ。その財源は一般財源に求めるか、あるいは食管会計の余裕分に求めるか、いずれか研究している。そのうち払うつもりだ、払う意思は決定しているということであるが、これは農林省のお気持、農林大臣のお気持というだけでなく、これは閣議で、内閣としてはつきり払うということが決定しているのかいないのか、もし払わなければ農林大臣はどのような責任をおとりになるのか、この点を明確にここで御言明願いたい。
  210. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はあらためて閣議決定の必要はないと思つております。
  211. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それではあとはごく大きな問題について二点ばかりお伺いしたい。それは第一に食糧の問題あるいは農業全体に関する問題ですが、自由党でも、今度の新政策というふうなことを盛んに言われている。その中を見ると、食糧と化学繊維は大増産をするということが言われている。また日本の貿易全体あるいは外貨の需要からいつても、食糧自給、特に米麦の自給ということ、増産ということは、これはどんな政党でも、あるいはだれでも本気に考えるべき問題だと思う。問題はそういう抽象論ではないと思う。大臣がこれに対して、ただ口だけでこうだとかああだとか言うのではなくて、内閣なりあるいは国務大臣として、二十九年度においてどれだけ予算をやるつもりか、そういう点の見通しがはつきりついた上での食糧増産計画かどうかという点をお伺いしてみたい。それはどういうことかというと、昨年度あたりも、農林省の当初予算からいうと非常に多く削られている。少しばかり復活して来ましたけれども、それではとても増産の現状を維持することは困難である。また昨日官房当局からいろいろ資料をいただきましたが、当初予算では増産関係だけでも千七百七十八億というような厖大なものを出されている。私はこれぐらいのものは必要だと思う。必要だと思うが、こういう数字を見せられただけではちつとも信用できない。要するにこれだけのものを出すという以上は、財政全体の中で、どこをどう削つてどうやるということの全体の計画がなくちやならぬと思う。とにかく大きく全体としては千七百億——約千八百億ふつかけておいて、また前年度のようにこれがずつと小さくなつて、ことしもまたへつこむということでは、増産計画は何にもならぬと思う。増産をやる、あるいは食糧自給をするという以上は、国の全体の政策の中で、これをどういうふうにして、これの所要額なり何なりというものを幾ら出すかという基本の線がはつきりしなければ何にもならないと思う。私どもも非常に不勉強でよくわかりませんが、本年度各省から出ている要求を見ると、どこも厖大で、その中で特に現内閣の立場から考えれば、少くとも防衛費のふえるのは必至だと思う。片方において九千何億だということを出しておるが、本年度においてもこれより多くなることは明らかである。ことにことしは財政規模を九千億ないし九千五百億程度にとどめたいということを言つておられる。その際に、どこを削つてこれだけの、あるいはこれに近い計画を出されるつもりか。この点が明確にならぬ限り、出せるだけとにかく金を持つて来て、何とかつじつまを合せますと言つても、食糧増産も農業の自給態勢というものもこれは立たないと思う。この点について大臣としては、吉田内閣の一員として、全体の立場からどのように基本的に考えておられるか。この点をひとつはつきりお伺いいたしたい。特に一番問題は再軍備費あるいは防衛費、あるいは広義の意味での再軍備費との調整をどうするかという問題、この問題を片づけない限り、いくらここでもつてこまかい問題を論議してみても、金が出なければどうにもならない。この点で内閣の一員として今日の内外情勢ことに困難な経済事情、外貨の事情等とも組み合せてみて、ほんとうに食糧増産に幾ら金を出すか。それには再軍備その他の関係とどのような調整をして金を出すかという点についての、少くとも農林省当局として同時に内閣の一員としての保利さんのはつきりした御見解というものを聞きたいと思います。
  212. 保利茂

    ○保利国務大臣 なるほど大きい問題で私がいかに国務大臣とはいいながら、一存で答える問題でないように私は考えますが、私の考えといたしましては、やはり同様に、何と言いましても米麦その他食糧関係で、今日輸入をいたしておる総額は六億五千万ドルかに達するであろうと思います。それはまさに平常輸出総額の半ばに達しておるわけでございますから、かような状況のもとにおいて経済自立ということを申しましても、これはなかなか言うがごときいわゆる自立態勢というものは困難である。これを抜本的に解決して行くの道は、かかつて厖大なこの輸入物資になつております食糧の輸入をいかにして防止するか、そうして輸入するにしても栄養的にかつ食糧的に効果ある食糧を安く入れることを考えて行かなければならぬ。お話のように、そういう上から行きますと、私は今日やはりこの食糧増産と食糧確保ということが第一の急務であると考えております。そういう考えで私はただいまの職務に携わつておりますけれども、しかしながらただいまお話になりましたような、国全体の経営ということからもむろん考えなければなりませんし、その調整ということ、それがすなわち私は内閣の信、不信を問われる根本になると思いますから、まず以上申し上げた通りでございますけれども、どれだけのものをそれじや食糧増産に使い得るかというようなことは、各省とのバランス関係もございましよう。全体の関係を見なければ、これは今日私はどうこう申し上げ得られないことは、申し上げるまでもなく御理解いただけることと思います。
  213. 井出一太郎

    井出委員長 ちよいと久保田委員に申し上げますが、先ほどあなたの引用されました食糧増産関係の数字でございますが、これはきのうの資料にあるいは基かれたと思いますが、それはまだ農林省の最終的にコンフアームされた数字ではありませんから、その点御承知おきを願いたいと思います。
  214. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 ただいまの点は、農林大臣としては、自分はこう考えるが、内閣全体としてはまだこれは全体の調整を考えなければわからぬ、こういうお話でございますが、そういう関係から言つていては、いつまでたつても問題が片づかないと思う。そこで自由党の幹部として、また内閣の中心の一人に立たれる方として、内閣全体として、こういうような問題を今日予算を編成する直前において、どのように根本的に考えておられるか、あるいは考えるための作業をどのように進めておるかということが根本だと思う。そういう点についてお伺いしておるのであります。最後に、去年のような状況で各省から出て来た、特に農林省も相当厖大なものを出して来た。ところが最後にはこれが半分くらいに減らされて、そうしてあわてて復活要求をして、幾分のものが増して来た程度では今年は済まないと思う。これは財政規模もますます小さくしなければならぬということがあるし、ことにそのほかに再軍備をしなければならぬというような場合には、どうしてもほかの方に余裕がないのであります。どこかでこれについての調整を今のうちから内閣全体としてお考えにならぬ以上は、食糧増産だの、あるいは農業増産だのと言つても、画餅に帰すると思う。そういう点についてもう一つお伺いいたしたいのは、それらの点について、現に内閣としてはそういう作業といいますか、各省間におきましても基本的な政策検討というものをされておるのか、あるいは自由党の新政策ができ上るまで現在待たれておるのか、それらについての裏づけになる財政計画、あるいは財政計画の裏をなすところのさらに基本的な政策ということについての御検討が、内閣なり、あるいは自由党内で現に行われておるのかどうか。今委員長から御注意がありましたから、数字的のことは申し上げませんけれども、農林省の内部におきまする事務当局としてもいろいろ検討が行われておるのか。それでない限り、各省から厖大なものが出て来る。それが最後には大臣同士の、ざつくばらんに言つて顔なり何なりで数字的に調整してやるというふうなことでは、とてもこれからの国民経済、国民全体の自立計画というようなことはむずかしいと思う。少くとも本年だけでなく、数年にわたる間のしつかりした計画、政策というものがなければ、こういうことはむずかしいと思う。もちろん今のように政情が非常に不安定なときでありますから、今の内閣がいつまで続くかわからぬ。だから今年だけうまく間に合わして行けばいいというお考えならば別でありますが、おそらく保利国務大臣はそう考えておられぬと思う。今後長くやるお考えだろうが、そのお考えならばお考えのように、去年のような、少くとも増産計画が予算査定の過程において重点事項からはずされて、そうしてあとはしやにむにやつたということであつては、増産計画というようなものはうまく行かないと思います。そこでそういう点が今内閣で検討されておるのか、あるいは自由党の今のいわゆる新政策なるものにすべて内閣はおんぶしておるのか、この二点をはつきりお答えが願いたい。
  215. 保利茂

    ○保利国務大臣 どうもお答えをいたしたいのですけれども——むろん政党内閣でございますから、内閣の施策は常にその与党が批判を受けることになる、与党の自由党の実行政策の上に立つて施策を進めて行くことはもう当然のことでございます。従いまして私どもとしましては、これは申し上げることかどうか知りませんけれども、とにかく食糧増産、自給態勢の向上ということが、やはり国策の一つ基本でなければならぬという考え方においては、まつたく同様の線に立つておるわけでございます。新政策としてどういうものが出されるか、私は一党員でございますからむろん承知はいたしませんけれども、その問題を自由党でおろそかに扱われることはなかろうということを確信いたしておりますとともに、またそうしていただかなければならぬと私は考えております。なるだろうと思つております。しかしながら来年度の予算をどうあんばいするかということについて、今内閣で検討しておるかというお話でございますけれども、実際まだその段階には至つておりません。むろん予算編成にあたつては、これは政府及び与党の批判の直接対象となる問題でございますから、政府与党も同様の考えをもつて予算編成をしなければならぬことは当然でございます。この間に処して私どもとしては、ただいま申しますように、食糧増産、自給態勢の向上ということが非常に大切なことであるという考え方の上に立つて努力をいたしたいと考えております。
  216. 井出一太郎

    井出委員長 足鹿覺君。
  217. 足鹿覺

    足鹿委員 午前中に私肥料問題についてお尋ねをいたした際、大臣が午後になるというので一応留保いたしました点について、この際緊急にお尋ねをいたしたいと思います。すなわち第十九国会において肥料関係二法案が多年難航をきわめたにもかかわらず、一応成立をいたしまして、すでに施行になつておるのでありますが、この肥料需給安定法の運用に重要な関係を有しまする肥料審議会の問題について伺いたいのであります。すなわち法律によれば、大体肥料審議会委員は十五名ということに相なつておる。しかもその中にありまして、学識経験者の七名ということは、この法案審議の経過において、私どもがしばしば同僚諸君と折衝に折衝を重ね、遂に七名の学識経験者というものが了解点に達してできた。しかるにこの審議会の現在のメンバーを見まするのに、全部で十名を一応決定し、学識経験者七名中二名のみを任命して、あとの五名を未決定のまま発足しておることは、不当な措置と私は断ぜざるを得ない。大臣も御存じのごとく、これは先々国会においても難航し、流産になり、十九国会においては、最終段階において最大公約数的に妥結を見た。これは一方的な与党のみあるいは保守党のみにおいて成立せしめられたものではない。この農林委員会において幾多の難関があつたが、満場一致の決議によつて成立を見た経過は、よお御存じでありましよう。その経過から見ましても、国会代表の五名が全然欠如のまま審議会を発足せしめられることは妥当なやり方ではない、私はかように考える次第であります。 午前中もこの点農林事務当局質疑を行つたのでありますが、大臣はこの点について、いかように今後これを御処理になる方針でありますか、この際伺つておきたいのであります。
  218. 保利茂

    ○保利国務大臣 なるほど十五名の委員を一ぱい御委嘱できていない、十名で発足しておる、妥当じやないじやないか。まあそういう御意見も成り立とうかと思います。実際問題としては……。(「三分の一足りないですよ」と呼ぶ者あり)実際問題としまして、私は何も五名の方を国会議員とも考えておるわけじやございませんけれども……。(「違う」と呼ぶ者あり)いやそれは井手さん、そうりきまぬでも、あなた方の修正がされましたときにも、二、三人で事を済ますつもりじやないかというお尋ねもあつたわけであります。それで私としては、国会議員だからといつて学識経験者として排除するという考えは持ちませんということを申し上げた。しかしながら国会多数の意見として承つてさしつかえないと私が思いましたのは、二名の原案が七名にされた、その五名というものは、国会側の御意向としては、五名は国会議員の中からという意向であつたと、今日も私はそういうふうに思つておるわけです。従いまして本来言いますと、この学識経験者の関係にしましても、七名ということになつておりますから、一人でも多くの思いましたけれども、とにかくこれはやはり国会の御意向を尊重しなければならぬ。時間的にいつて、しからば国会議員の方に御委嘱する時間的な余裕はないじやないか、それじや次の国会が開かれるまで肥料審議会は開かれないのかということになりますれば、法自体の運用ができないということになつて参る。それでは法制定の趣旨を没却してしまうということになるわけでございますから、不完全で妥当を欠くということであれば、まことにその通りでありますけれども、次の国会が開かれるまで、この形でもつて肥料審議会の運営をやつて行くほかはない、これは実際問題でございます。そういう趣旨で審議会をやつておるわけでございまして、次の国会が召集せられましたならば、できるだけすみやかにこの空席になつております委員を御委嘱申し上げたい、かように考えております。
  219. 足鹿覺

    足鹿委員 次の国会が開かれるまで空席のままで行きたいということは、要するに大臣の御意図も、五名の者は国会議員中から学識経験者の資格で出て行くものだということを暗に肯定されたもののごとく私聞いたのでありますが、ただいまの御答弁があるなしを問わず、これはあなた方を支援しておる与党の諸君も、長い月日の間この肥料法案を審議する過程においてはつきりしておる。ただそれは形の上においてあなたがはつきり言わないだけのことであつて、全員がことごとく知つておることなんです。これはもう既定の事実であります。これを今となつてとやかく言われる意思はなかろうと思いますが、これに対して、まだ学識経験者は必ずしも国会議員のみではないとしらを切られるということは、私どもは了解できません。そういう運営を今後この肥料法についておやりになりまするならば、われわれはまた元の立場に立つて、大いにこれから闘うことをあえて申し上げておきたい。しかしながら私が言うのは、国会の閉会中にただちに国会議員を学識経験者として推薦決定することは国会法上できません。ですからそれをおやりになりますならば、今月初めにでも早々に臨時国会をお開きになればけつこうでありましようが、今のところ吉田内閣はそれをやる意思はないようであります。公約を無視して、十一月ごろだとか、いろいろなことを言つておられるようでありますから……。それはそれとして先般も同僚金子議員等から申入れがあつておりますように、暫定措置として、肩書は委員の肩書でなくても、当然国会から出るものと予想して、一応は五人の者をオブザーヴアーの形でも審議会に出席をし、その意見を徴し得る運営にされる意思はないか。米価審議会等におきましても、いろいろもめはいたします。もめはいたしますが、その結果として出て来ることは、必ずしも農民や国民のために迷惑は与えておらないと思う。時の政府にはあるいは都合の悪いことはあつたかもしれぬが、結果としては日本の農政の上に、あるいは国政の上にマイナスではなかつたと思う。肥料の問題についても、伝え聞くところによると、何か人ぎらいをしておられるというような話も仄聞しております。おそらくそういうことはなかろうと思うが、国会から出て来る人たちは、国会の意思に従い、またその基礎である各党派の意向によつて、すなおにお受けになれば、少々やかましいのがおることはかえつて会議の成果が上るのですよ。大臣は別に恐れることはない。むしろやかましいのがおらないとおもしろくない。そういう趣旨から何もこわがることもないし、あえて敬遠することもない。むしろあなたの気に入らないような人間が出て来ることが、実際上においては会議の運営効果が上つて行く、そういうように私は思いますが、ともかくも十一月、十二月までは待てない、今明日開かれておる審議会においては、特に事実上のマル公の最高限をきめる、消費者価格決定する重大な審議会だと聞いております。また先般はすでに需給計画について答申を発しております。こういう重大なことが次々と行われて参りますと、今度は十一月ごろにきまつたのでは、年を越したころでないと審議会の意味というものは明らかになつて来ないと思うのです。開催の時期もおそらくそのころになると思う。法運用の上で一番重大な初めての会合自体がこういう形で出発することは、私は遺憾だと思う。正式の委員としての御決定が、今述べられたような事情でできないとするならば、応急措置として、今私が述べたごとき臨時措置をおとりになる御意思はないでありましようか。
  220. 保利茂

    ○保利国務大臣 ごもつともな御意見だと思います。ただ五名云々という問題について、今ごろそんなしらを切るかというお話でございますが、立法過程についてはよく承知いたしておりますから、しらというわけではございませんけれども、私はそれだけしか申し上げていないのでございます。しかしその修正せられた立法精神はどこにあつたかということはよく承知をいたしておりますから、従いまして任命の過程におきましてもこういう形をとつておるわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。ただいまの学識経験者を得る段階において、国会からの代表者をどういう形かで入れておいた方がいいじやないか、たいへんごもつともな御意見だと思います。これこそ、また妙なしらを切ると言われるかもしれませんけれども、これは経審長官の主管に属しておる問題でございますので、経審長官にあなたの御意見をお伝えして御相談申し上げることにいたしたいと思います。
  221. 足鹿覺

    足鹿委員 経審長官によく相談をしてきめると申しますが、今明日審議会は開かれておるのです。ただちに結論が出るやいなやは、私どもあえて知るよしもないわけでありますが、少くともそう再々お開きになるよしもなかろう。また現に欠員のままお急ぎになつて開会しておられることは、適期にこの審議会の答申をまちたいという趣旨から開催をしておられると思う。その点から見ましても、そう便々と延べられるはずのものでもない。そうしますと、これは早急にやつていただかなければなりませんが、国会側の方はよりより話合うところによると、与党さんはどうか知りませんが、野党側は大体はきまつておるのです。野党はうまく行つておる。ですから早くあなた方与党の方で話をしてきめれば、いつでも今夜ただちにでもすぐ出られる。ですから経審長官と相談をすると言われるが、経審長官はこの法律をつくるときには何ら関係がなかつたので、この需給安定法は農林大臣の一番関係の深い農林委員会がこの審議に当つて、これを議決しておるのでありまして、そういう意味から、事実上はあなたが主管者であるというように私は見ておる。ですからそういう趣旨で、ただちに本日の審議会に間に合うようにやりますか、その点どうですか。
  222. 保利茂

    ○保利国務大臣 問題は少しやかましくなるかと存じますけれども、一体かりに五名全部を国会議員から御委嘱申し上げるという場合に、いろいろな委員会の構成の中に、三人であるとか五人であるとか七人であるとかという委員の場合に、国会議員が参加される委員の数がどういうふうにあんばいせられるかという問題が、一つ大きく横たわつておると思います。足鹿さんがひとりぎめされておるようなわけには行かぬ点があります。あるかと存じます。何かすでにきまつておるという話でございますが、そうしてあなたはすでにきまつておるように言われますけれども、それは私は各党本部間の話がなくてはならぬのじやないかと考えるわけでございます。それはどうせ次の国会なつた場合の問題であろうと思いますけれども、そういう問題もあろうかと思います。
  223. 足鹿覺

    足鹿委員 今の点もけしからぬことです。一人ぎめということを言われますが、自分の党に関する限りはきまつておるという趣旨ですよ。何もこれは政府にきめてもらわなくても政府に都合のいい人間をあなた方が期待されても、その通りになるかならぬかはわれわれの自由だということを言つておるのです。そんなところで答弁を逃げないで、今言つたことに対して答弁しなさい。今明日の審議会に、オブザーヴアーの形式においてでも意見を聴すべく、学識経験の五人に相当する人を参加せしめるやいなや、経審長官に相談をするという今のお話でありますが、ただちに相談をされて、時間的にいつてきようのにどうしても間に合わないとするならば、明日の審議会には間に合うべく手配をなさいますかどうか。そんな今のぼくの言つたことが一人ぎめなんということで答弁を横にそらしてしまつて、かんじんなことを逃げるというのはけしからぬ。
  224. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういう趣旨であれば、そういうことで伺つておきます。ただいまのお話も、紋切型で言えば、これは審議会ができて運営されておるわけで、そういう場合に、むろん審議会として参考意見を徴するとか何とかいうような議事方法もあるのでございますが、すでに会が構成されて運営されておるわけでございますから、従つて審議会において私どもが注意しなくても、できないという筋合いのものではないと思います。しかし、とにかく主管大臣である方と相談をして、間に合うか間に合わぬか、とにかく足鹿委員からそういう強い御意見のあるということを話をしてみたいと思います。
  225. 井出一太郎

  226. 川俣清音

    川俣委員 今の問題に関連して、ひとつ先にお尋ねしたいと思います。これは大臣よくお聞き願いたい。政務次官の問題にも関連して参りますので、十分お聞き取り願いたいと思います。この肥料法案について、本委員会を休みまして、別室においてたびたび妥協の工作が行われました。衆議院の委員部も専門員も公然と加わつて協議をいたしておるわけでございます。そこへ平野農林政務次官政府を代表いたしまして出席いたしております。この場合私が特に、平野君に農林政務次官か、または政府を代表しておるのかと聞いたのに対しまして、平野君は、政府を代表してという表現を使つて妥協にいろいろ苦労をされました。そのうちで最も難関になりましたのは、野党修正案として用意されました国会議員七名、学識経験者二名という点でございます。これはすでに印刷にいたしまして、政府も十分御承知の通りです。修正案の、ほかの案文につきましては妥結を見ましたけれども、これが最後までなかなか難点になつたのであります。自由党からは、あえて自分の方からは委員を出さなくてもいいという考え方をしておるから、国会議員はいらないという主張もその際述べられたこともあつたのであります。しかしながら最後に至りまして、どうして七名が必要かということについて、自由党三、緑風会一、改進党一、両派社会党一、一で七名になつて、これ以下には今の国会構成の上からは減らされないではないかという主張をいたしたのであります。ところが自由党としては、一名あつても足りるのであるから極力減らしたいという要望が出て来た。そこで五名となつたのであります。五名となつて自由党の政調会に持つてつたところが、国会議員五名という表現は困る、実際的に五名はのむけれども、学識経験者の中に加えて、学識経験者七名としたいという要望に従いまして、その結果妥結を見たのであります。これには平野農林政務次官政府自由党との間の折衝も行い、しかる後に妥結をいたしたことは、大臣の耳に確かに入つていなければならぬことだと思います。これは大臣というよりも国務大臣として当然聞き及んでおられるはずだと思います。また政府を代表してという表現の中には、経審も通産をも含めてあることだと思うのです。こういうことで第一においては国会議員五名となり、国会議員五名がさらに自由党の政務調査会との折衝の結果、学識経験者七名にするというふうにかわつて参りましたことは、これは足鹿君が表現するのでなくて、私が表現するのでなくて、委員部も加わり、専門員が加わつてその記録は明らかになつております。これはこの委員会の公式記録ではありませんけれども、懇談会の記録の中には日にちもありますし、場所も時間も明確になつてあるのでありますから、その意思を十分尊重せられるものだと私は信用いたしますけれども、この点についていかがでありますか。
  227. 保利茂

    ○保利国務大臣 当時の成立の過程についてのただいまのお話は、その通りであつたろうと思います。もし平野政務次官政府を代表してということで言つておるとすれば、これは当然私の考えでもあり、また政府全体の考えでもあるということは当然のことであります。従いまして立法の精神をはずれてならないのみならず、また信義の上から言いましても、信義に背くような処置は断じてとるべからざるものと考えております。
  228. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは、私のはきわめて漠然とした点でありますが、もう一つお伺いいたしたいのは、今度の黄変米の問題に連関いたしまして、政府の外米輸入に対する基本方針をどうしても明確にすべき段階に来ておると思うのであります。今までいろいろ御当局からお伺いした範囲においては、タイやビルマから来るいわゆる黄変米を根本的に入れないという施策は何もありません。はつきりしたものは一つもない。何とか技術的に研究してみようというだけであります。しかも入つて来た黄変米について、今までも責任をとるところは一つもなかつたが、今後においても責任をとるという明確な言明は一つもない。従つてこのままの外米輸入態勢が続くとすれば、今後においても国民は依然として黄変米の脅威にさらされ、しかもその結果は、片方においては、大きなロスをして輸入したところの外米が黄変米とからんでたくさんに配給辞退が出て来る。その米がどこへ行つたか、まだはつきりいたさない。そうしてその都度出た大きな損害についても、これに対して何ら具体的なものは何もない。もう一つ、今後国全体として考えられる問題は、外貨の手詰まりが非常にひどくなつて、このままではいけないという情勢になつておることは明らかであります。この点について政府もいろいろと苦慮されておる。特にタイやビルマや台湾、こういうところからの外米輸入ということが、はたして日本の全体の貿易政策、ことに外貨の節約という点で、どれだけの役に立つかという点からも、もう一回これは検討すべき段階に入つていると私は思う。特にもう一つ申し上げておきたいのは、タイなりビルマが今のような米の集荷方針をとつておる限り、単なる技術をもつて黄変米の問題は解決しないと思う。御承知の通りタイにしてもビルマにしても、あそこの百姓から買い上げる場合は、もみつきではありますけれども、一トン当り一万四千四百円ぐらいになつておるようです。それが日本の国内に入つて来るときには六万五千円ないし七万円になつている。そしてその間において、少くともタイ国政府は約六〇%の利潤をとつておる。それがしかもアメリカからのいわゆるMSA関係と結びついて、タイ国なりビルマの再軍備政策の財政的基礎になつておる。こういう機構の中で、日本の今の吉田内閣の性格からみて、黄変米の問題を技術的にだけ解決する道はないと思う。これはどういう外交交渉をされるかわかりませんが、その方針がはつきりしてないとすれば、はつきりしたそういう対策は今日立ち得ない実情にあると思う。特にタイ、ビルマから入れますいわゆる黄変米ないしはその危険のあるものは、準内地米でなくて、外米と称するもの約百万トンの計画の中の八十数万トンを占めておるという状況です。こういう状況を放置する限り、日本の国民の外米ないしは有毒米に対する不安はますます大きくなるだけ、国家が損になるだけであります。そこでタイなりあるいはビルマなり、そういうところについてもう少し根本的な施策を講じて、多少とも黄変米を少くする技術的な措置はもちろん今後やらなければならぬが、今日非常に大きく変換しつつあるアジア全体の観点からみて、もつと新しい外米の輸入の基本方針を立てなければならぬ段階に来ておると思う。これは国内のいろいろな事情からいつても、海外の事情からいつてもそうだと思う。そういう点について、同僚足鹿委員からもいろいろお話がありましたが、やはり一番注目すべきものは中国だと思う。中国では、米の生産は七億五千万石もある。これが増産計画でどんどん行けば、日本の必要とする百万ないし百五十万トンは、数年ならずして出し得る状態になることは明らかであります。しかも現に向うからすでに五万トンの申入れがある。そして向うはその見返りには硫安をくれといつておる。硫安は向うでは非常に少い。事実昨年私行つてみて痛感したのですが、食糧五箇年計画でも四十万トンくらいの増産計画しかない、まつたく足りないのであります。こういう状況からみても、国全体の経済からみても、どうしても中国からの米の輸入面については、もう少し本気に考えなければいかぬと思う。ところが今まで事務当局食糧庁長官等から聞いたところでは、米の方もよいものがあつた方針としては入れるつもりだけれども、まだ基本点はきまつておらない、要するにでたとこ勝負で、買うものは買うというだけの話だ。また向うからの硫安の要求に対しましても、日本の国内で余裕が出たならばやつてもよいが、今のところどうなるかわからぬという御返答であります。こういう消極的な、少しも先の見えない政策で行けば、日本全体の経済も外米輸入も必ず大きな困難にぶつかることは明らかであります。そこで中国のいろいろな事情を考えて、政府みずからがこれをもつと積極的に打開する方策をやる考えがあるかないか。私はぜひ必要だと思う。でたとこ勝負で、今のところ来だけはもらつて、こちらから出せるものだけは出そうという態度で、ああいう統制の強い国が、持つて来るはずがありません。また向うでもそう言つております。米の増産の余地はたくさんある。特に日本と同じような立場において、技術形態においてたくさん持つておるのであります。それで向うも要求しておる。そういう事実から見て、政府がもつと根本的な積極的な、ことしだけの政策でなくして、長い目で見た政策というものをこの際立てられる必要がぜひあるのです。それから、さらにソビエトについても同じことが言える。大臣は御承知と思いますが、ソビエトの方でも、前年大体十五万トンの米を東独へ出しておる。その余りが五万トンで、これは東邦物産を通じて農林省と交渉があつて、向うは入れると言つて米た。私は東邦物産から頼まれて、向うへ行つたときに一応物動計画に入れたけれども、日本がほんとうに米が足りないというならばやろう。同時に農林省がこれに対してはつきりした意思表示をしてくれれば、われわれの方はやろうということを向うは言つて来ております。そうして、こちらに帰つて来て東邦物産を通じて農林省の意向を聞くと、もうすでにほかから買つてしまつたから、ことしはいらないと言う。少くとも、十五万トンないし二十万トンの輸出余力は、ソビエトにあるのです。これは黄変米じやない。これは準内地米として食える米であります。そういう点も考えて、私はもう少し中国やソビエト、そういうところに対して——国民食糧の需給という観点からも、大きな貿易政策の点からも、あるいはさらに外貨のいろいろな関係から言つても、今のように出たとこ勝負で、政府は知らない、民間でやつてうまく行つたら、当つたところで勝負をつけようというような態度では、絶対にだめた。こういう点についての、政府の、あるいは特に食糧関係の担当者としての大臣基本的な政策なり考え方、ことしだけのごまかしで行こうというのではなくて、基本的な政策なり、態度なり、こういうものが——ほかの大蔵当局なりあるいは通産当局と打合せた上での全体の貿易政策、あるいは外貨政策、並びにアジア全体の食糧政策という点から見ての基本的な検討なり政策をやるお考えがあるのか。また現にやつておられるのか、この点を明確に大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。
  229. 保利茂

    ○保利国務大臣 久保田さんのお考えは、黄変米の危険性の少い中国米なりあるいはソ連米なりを、もつと入れる考えを持たなければいかぬじやないかというところに尽きるであろうと思います。ソ連の米に黄変米があるかないか、中国の米に黄変米があるかないか、これはだれしも断言はできないと思います。今日のような白色有菌米というようなことが問題にされる以上は、私はどこの米にもないということは言えぬと思う。そういう状態のものじやない。ただ有色黄変米については、これはだれが見てもわかることですから、防ぎ得る道はあると思いますけれども、とにかく通常の眼力をもつて見わけがつかないものが、今日問題になつているものでございます。外米自体の問題としましては、今後は私はこの外貨事情から行きましても、国際収支の面から見ましても、また自給態勢を向上して行く、すなわち生産力の向上、食生活の改善、これらと相まつて自給態勢を向上して行く上から行きましても、ことしは作が悪いから、外米をよけい入れなければならぬという考え方は、もはやとられないと思います。従いまして、できるだけひとつ外米の輸入は節約して行くという基本方針をとらざるを得ない。これは好むと好まざるとにかかわらず、そうなるべきものだ、そう思つております。ただ実際私どもとしましては、結局外米を入れるということは、単にその配給量を維持するとか、維持しないとかいう問題ではなしに、とにかく大衆の台所生活をどうして守つて行くかということに基調を置かなければならぬわけでございますから、従つて今日のごとく外米に対する一般的な不安が醸成されている状態においては、かりに政府がいくら入れましても、これを消費者が心配して食べられぬというような形では入れられぬと思う。しかしながら今日までの研究の段階——無論研究は今後も積まれると思いますけれども、たとえば先般の厚生省の新しい配給基準等に準拠しますればあれ以上の黄変米の配給ということは大体防ぎ得るのじやないか。また入りましても再搗精等によつてこれが不安のない供給ができるのじやないかと私どもは考えております。従いましてそういう見地から、さらに今後の衛生当局の研究の結果に待たなければなりませんけれども、ただ申せますことは、とにかく外米は、総量としてはどつちにしても節約して行かなければならぬ。しかし外米を入れるということは、先ほども申しますように、大衆消費を確保するということでございますから、できるだけ良質の安い米を買い入れるということに努力を払わなければならぬことは当然でございます。その間いろいろ久保田さん御承知のようでございまして、中共米ということを言われますけれども、中共米にしましても中南支の米は大体南方の米と同質だと言つてもさしつかえなかろうと思います。ただ非常に賞揚されて言われますのは、事変中日本から持つてつた日本種の米が普及されているそ。れが非常にいいわけで、現に五千五百トン輸入をいたしておる。その米は非常に良質のものであつたということは私どもも承知いたしております。そういう米をたくさん確保する道があれば、喜んで——私どもとしては消費者のために米を入れるわけですから、消費者の不利益になるような米の入れ方はなすべきでないという基本方針の上に立つて考えておるわけであります。しかしソ連の方にそういう米があるかどうかは私は存じません。中共につきましてはとにかく貿易の面を拠大して行くということは、私は政治的な調整がつかなくても大切なことではないかというような考えで当つて行きたい、こういうふうに考えております。
  230. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは大臣に伺つておくのですが、外米を入れなくても平年で六千五百万石はあるのですよ。麦はああいううそつぱちの価格決定をやらないで、あの増産態勢をくずさずに行けば九千万石はあるのですよ。そこで当委員会食糧会議のときにも言つたように、これは麦を入れて配給すべきだ。現在精麦技術が非常に進んでおるから、二割の麦を入れた飯を私は食つておるが、ちつともかわりはありませんよ。だから混麦配給をやればやみ米の取締りだつて厳重にできる。すし屋に行つたときでも、中に麦が入つていなかつたら、これはお前、どこから持つて来たのかということでやれるわけです。だから配給は必ず二割麦を入れる。これは国民保健の上から言つても、ビタミン欠乏症なんかなおつてしまうから非常にいいのです。脚気なんか麦をたくさん食えばなおるのですから、根本的に外米を入れるという食糧輸入の依存政策から脱却する段階に来ておるのですよ。そこであまりうそつぱちを言わないで、ちやんと公約通りの実行をやつて麦の増産をやつてもらいたい。そうしてここで二割ないし三割の混麦配給をやつて、できるだけ自給態勢を整えるんだ、こういうことに根本的に政策をかえる段階に来ておると私は思うのです。それに対してはどう思われるかという点が一つ。それから時間がありませんから最後に申し上げておきますが、どうも農林大臣は、農林委員会嫌悪症だが非常に御出席が悪いんです。まさか吉田総理のまねをするわけではないでしようが、総理がちつとも議会へ出て来ないように、委員長から一々連絡しなければ、農林大臣が農林委員会に来ないというのは私はどうかと思うんです。もちろん激職でありますから相当御用もあるでありましようが、しかしわれわれは、決してただ政府を攻撃するばかりを能にしているのじやありませんよ。どうして農村を農民を、よくして行くか。どうして日本全体をよくするかということをわれわれはいつも考えておるんですよ。御承知のように農林委員会は、決議をやろうが何をやろうが、ほとんど超党派的に与党まで加わつてつておるんですよ。そういう農林委員会であるから、何も大臣が出て来たからといつてわれわれはじめようとばかり思つていないんです。どこまでも協力するものは協力して、場合によれば、もし大臣の政治力が足りなければ、われわれ委員会としても、どこまでも大蔵省をたたいてひとつつてやろうじやないか、こういう態勢はできておるんです。ところが大臣出席は、この前の議会においても、私はおそらく三、四回だと思うんです。ほとんど御出席にならない。開会中はいろいろ用事があるでしようが、今後は農林委員会を開いたら、万障繰合せて出てもらいたい。とにかく大臣にお聞きしたいという人が一ぱいおるんですよ。きようも五時なんて時間を限定されたものだから、みな遠慮しているんです。問題は山積しておるんです。われわれはみな大臣協力してやるという気持はあるんですから、今後委員会出席はもつと熱心にやつてもらいたい。この二点について御答弁願いたいと思います。
  231. 保利茂

    ○保利国務大臣 あとの方から申し上げます。出席が悪いということでございますから十分注意をいたします。米麦混配の政策に持つて行くべきではないかということは、先般の当委員会の懇談会のときにも御意見があつたようでございますが、私はその節申し上げた通りの考えでございます。自由党政策がいかように樹立せられますか、むろんそれは党員でございますから、第一に従わなければならぬと考えておりますけれども、私個人といたしましては、麦の配給統制を復活するということは絶対に反対でございます。と申しますことは、供給力が不足をいたして、何人も得たいときに得られないという事情にあまりすならば仰せの通りだと思います。しかし何人も得たいときに自由に得られるという状況であるのに、ことさらに配給統制を復活するという考え方は私は絶対に反対です。これははつきり申し上げます。
  232. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは議論をやつていれば、大臣考え方と私の考え方が食い違つているんですから、議論をしてもむだだが、しかしほんとうに当路の責任にある人は、いついかなる事態が起つても、国民に餓死者を出さないという態勢をくずすということは許されないと思うんです。今平和が来たとかなんとか言つておりますが、どこで一触即発の危険があるかということをわれわれは考えたときに慄然とするんですよ。それこそもし火を吹いたように世界の平和が撹乱されたときには、絶対量が足りないんだから、おそらく日本の国民に何百万という餓死者を出すでしよう。ただ自由主義であるから自由というものにとらわれるのだという考え方でなくて、いついかなる事態が来ても、日本国民には一人も飢え死にを出させないぞという態勢は、いつの場合でも為政者においては必要だと思うんです。そういう意味において、面子にこだわるとかいついかなるところでも必要なものは買えるということじやなくして、もつともつと深刻にわれわれはこの問題を考えるべきじやないか。このことはいくら申しても議論になるからよしますが、とにかく出席の点は考えるということじやなくして、今後は必ず万障繰合せて出席するということを、いま一度御言明願いたい。
  233. 保利茂

    ○保利国務大臣 できるだけ努力いたします。
  234. 川俣清音

    川俣委員 一点だけお尋ねいたしますが、その前に中澤委員から混麦配給の問題を提起いたしましたことについて、大臣から麦の統制は絶対にいたさないというような答弁があつたことははなはだ遺憾であります。混麦配給自体についての理解が足りないのじやないかと思うんですが、きようは議論はやめておきます。統制するかしないかという問題と混麦配給という問題はちよつと違うのでありますが、その点の御研究が足りないのだと思いますから、その点はあとに譲ります。  ただこの際ちよつとお尋ねしておきたいのは、追払い金の問題ですが、これは先ほど久保田委員からの質問に対しまして大臣答弁があつたが、私もその通りだと思つております。これは御存じの通り昨年の米価決定いたしまして、基本米価プラス・アルフア、諸般のものが決定し、割当決定いたしましたときに、閣議で大臣が報告された場合に、追払い金を出すことを提言され、それに同意を得ておつた、私はそう理解いたしております。従いまして基本米価にプラス・アルフアというものも報告されたと同時に、追払い金も払うという閣議決定である、私どもはそう理解をいたしております。ただその後に特集制度等によつて幾分変更の行われたものはございまするから、それはあるいは含んでいないということは言い得ないわけではないと思いますけれども、決定後と申しますか、了解後にかわつて来た事態については、確かにそのうちに含まれないということだけは私どもも理解するに足るのであります。しかしながら基本米価にプラス・アルフア、そのアルフア全部が了解がついていなかつたんだとは私どもは理解しないのでありまして、当時米価決定の場合には、プラス・アルフアも当然含んで決定いたしたのでありまするし、それに基いて割当も行つたのでございまして、この割当に当つての内閣の声明でございまするから、その当時の事態において加わりました加算は、当然含まれておつての追払い金だ、私はそう理解をいたしておりまするし、また農業に関係ある者はみなそのように理解をいたしておるようでございますが、この理解は非常に誤つた理解でございますか。この点をお尋ねしたい。
  235. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういうふうに御理解をいただくということも決して私は無理でないというように考えております。そういう点も十分承知をいたしつつ善処いたしたいと考えております。
  236. 川俣清音

    川俣委員 その点は理解が一致でありますから、おそらく期待通りになるものとこう理解いたします。その後に起つた特集制度等については、これは例外だということはある程度認めよう、こういうことになると思います。その点非常によく了解いたしました。了解の信頼が失われないことを期待いたしておきます。  それから二十九年度米価でございますが、先ほどから大臣は、るる米価をめぐる自由党政策等に相当支配をされるのであるというような御意見もありますけれども、しかしながら農林行政の長官といたしましては、すでに早場米の供出の時期が迫り、新米価決定を急がなければならない状態になつておることは、私が申し上げるまでもない、ところがこの障害となるような問題が幾つも起つて来ております。たとえば自由党の統制撤廃あるいは廃止というようなこと、これが一応取消されたりいたしましても、この宣伝は相当きいております。こうし悪た条件あるいは食対の予約制度、または電力料金値上げ、またはルート以外のやみ流通量の増大、あるいは黄変米の配給をめぐるところの外米に対する不信、こういうような悪条件が重なつておる中に、ことしの集荷は非常に困難な条件を重ねつつある場合において、二十九年産米価につきましては、これは行政の長官として相当の辛苦を要すると思うのであります。ただ自由党の党員としてそのまま従うというわけには行かない地位に置かれておると思うのです。この両方を立てなければならぬ。行政の長官としての米の集荷、配給という任務と、党員の任務と、この二つをどう調和しなければならないかという苦慮もあることだと思いますけれども、何といいましても、当面二十九年産米価決定しなければならないときにあたつて、行政長官としての大臣のおおよその所見をお述べ願いたいと思います。
  237. 保利茂

    ○保利国務大臣 自由党政策と行政長官としての立場に苦慮しているということはございません。ただどちらにいたしましても今年産米をいかに集荷し得るかということは、これはもうだれが局に立ちましても当面する最大の問題だというように考えておるわけであります。統制等の問題にいたしましても、どつちにしても政府の手持ちなしに事をはかろうとしたつてそれはできることではございませんし、だからいかにして集荷を確保して行くかということを第一義として考えて行くべきであると思いますが、何せ米価問題はお察しの通り苦慮いたしておる最中でございますし、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  238. 川俣清音

    川俣委員 猶予ということでございますけれども、もう出まわり期が近づいておりますので、食糧長官は昨年度の手取り米価を下らない方針事務当局は案を練つておる、こういうことでございます。もちろん豊凶係数の分は別でございますが、その他の点については昨年度の米価を下らないということを事務当局は考えておるようでございますが、この事務当局の案に大臣は同意せられておるのでありますか。事務当局大臣との間に意見の相違がありますか。この点だけお尋ねしまして、私の質問は打切りたいと思います。
  239. 保利茂

    ○保利国務大臣 この米価決定いたしますにつきまして、生産者側の事情、消費者側の事情、どつちにしても、ある程度は生産者価格消費者価格との間に幅ができることは常識であろうと思います。まさか七百六十五円を還元して生産者価格というわけに行かぬことはわかり切つておると思う。それじやその幅に対してどの程度の財源の措置ができ得るかというようなところを事務当局に十分当らしておるつもりでございます。それらの要素が確定いたしまして態度をきめて行きたい、こういうふうに考えております。
  240. 井出一太郎

    井出委員長 一応質疑はこの程度をもつて打切りたいと思います。
  241. 井出一太郎

    井出委員長 なお続いて発言の通告がございますので、逐次これを許します。小枝一雄君。
  242. 小枝一雄

    ○小枝委員 今春以来全国的に電力料金値上げの問題が非常に強く視聴を集めておるのであります。政府におきましても、これが妥当であるかいなやということについては、相当に日子をもつて検討されたところでありますが、もしも近くこの電力料金の改定が行われるといたしますと、農業用電力にこれが影響いたし、さらにまた肥料の生産に要する電力に対して、影響いたしまして、その影響するところはきわめて広範囲であり、かつ重大でありまして、今日の農家に対して非常な重大なる結果を招来いたしまするとともに、さらにまた主要食糧でありますところの米価に対しても、価格の値上げを見ることは当然でございます。従いまして当農林委員会といたしましては、今春通常国会の開会当時におきまして、農業用電力料金値上げに反対の決意を明らかにいたしておるのでありますが、仄聞するところによりますと、近く電力料金値上げの問題が発表されるのではないかということでありますので、この際重ねて強く当委員会といたしまして、農業用電力料金値上げ反対の意思を表示いたしたいと思うのであります。以下決議の文案を朗読いたしますから、どうか委員各位の御賛成あらんことを切にお願い申し上げます。    農事用電力料金又び肥料製造用電力料金値上げに関する件   電気料金の値上げは、経済の脆弱な農家にあつては、その影響するところ多大で、直ちに農産物価格、就中米価の高騰となることは明瞭である、よつて政府電力料金の改訂については左記のごとき処置を講ずべきである。     記   一、農事用電力料金にすえ置くこと。   二、電力供給規定の農事用電力には従前の内容のほか新たに電気温床用を特掲すること。   三、肥料、特に硫安、石灰窒素製造用電力については特約制度をとり、かつ電力料金値上げ肥料価格の値上げ影響することのないよう特段の措置を講ずること。   右決議する。    昭和二十九年九月一日         衆議院農林委員会  以上であります。(拍手)
  243. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま小枝委員から御発言のありました農事用電力料金及び肥料製造用電力料金値上げに関する件は、小枝君発言通り委員会の決議とするに御異議ありませんか。
  244. 井手以誠

    ○井手委員 これは決議が逆用されると困るのです。そんなことはありますますが、改訂にあたつてはということは、値上げを前提としたようにも聞えるのであります。断じて反対であるということを織り込んでいただきたい。文章については発案者並びに委員長に一任申し上げますので、あくまでもわれわれは電力料金改訂については反対である。改訂ということは値上げ意味いたしまするので反対である。特に農村においてはこうだというふうにしなければ、せつかくの何でございますけれども、あとで君たちは改訂を前提とした決議をやつたじやないかというようなことを言われても困りますので、念のために申し上げておきたいと思います。
  245. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま井手委員からの御注意もありまするので、    農事用電力料金及び肥料製造用電力料金値上げに関する件   電気料金の値上げは、経済の脆弱な農家にあつては、その影響するところ多大で、直ちに農産物価格、就中米価の高騰となることは明瞭である。   政府は目下電力料金の改訂について検討中と伝えられるが、農事用及び肥料製造用電力料金については、左記の如き措置を講ずべきである。   一、農事用電力料金は据置くこと。   二、電力供給規程の農事用電力には、従前の内容のほか新たに電気温床用を加えること。   三、肥料特に硫安、石灰窒素製造用電力については、特約制度をとり、万一電力料金値上げを行う場合においても肥料価格の値上げ影響することのないよう特段の措置を講ずること。   右決議する。    昭和二十九年九月一日         衆議院農林委員会  以上のようにして本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定をいたします。
  247. 井出一太郎

    井出委員長 次に足鹿覺君。
  248. 足鹿覺

    足鹿委員 決議案を提出いたしたいと思います。すなわち酪農振興法の実施に関する件についてであります。一昨日来本日まで三日間にわたつて委員会において酪農問題が熱心に審議をされ、いろいろな審議の過程から問題が出て来ておるのでありますが、これを次のごとき案文に集約いたしましてお打合せをいたしましたので、同僚議員を代表しまして提案をいたした次第であります。以上のような趣旨から提案理由等については時間の関係もありますので全部省略をいたし、案文の朗読をいたしたいと存じます。    酪農振興法の実施に関する件   過般酪農振興法の成立をみたが、同法の施行直後、生乳の生産者価格が大巾に低落する等酪農振興に逆行し同法の目的が没却されるが如き傾向がある。   よつて政府は、同法の運営に当り、左記の諸点に留意し、万全を期すべきである。   一、酪農行政の基礎条件たる生乳および乳製品の生産費、取引実態等に関する政府調査は、極めて不充分である。     よつて政府は、すみやかに、これらの基礎資料の整備に邁進すること。   二、最近における乳価の急激な下落については、乳業者が独禁法に違反し、共同行為によつて農家へのしわ寄せを企てつつあるやの疑いがある。     よつて政府は、これが実態を究明し、酪農家に不当な損失を来さないよう、適切な措置を講ずること。   三、政府は、同法に基いて直ちに酪農審議会の設置を行い、専門家を網羅して対策を考究すること。   四、公正な価格形成を目的とする生乳取引契約の締結を促進するように、努めるとともに、すみやかに紛争斡旋を行うに必要な体制の整理を図ること。   五、政府は、生乳の集団的飲用を奨励するための食品衛生法の特例措置を速急に講ずるとともに、生乳および乳製品の農協組織による全国的販売組織の整備を図らしめる等中間経費の圧縮、酪農品の消費促進の措置を講ずること。   六、乳代の受授等については、信用事業を行う総合農協を通じて行わしめるよう強力に指導すること。   七、外国酪農製品の輸入により、国内酪農業に圧迫を加えることとならないよう厳重に注意すること。   右決議する。    昭和二十九年九月一日         衆議院農林委員会  以上であります。(拍手)
  249. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま足鹿委員提案にかかる酪農振興法の実施に関する件、これを本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
  251. 井出一太郎

  252. 金子與重郎

    ○金子委員 決議の問題が大分出たのでありますが、実はただいま足鹿委員を中心として肥料審議会の問題が非常に論議されたのでありますが、私はこの法律の修正の過程におきまして、最後に提案者といたしまして、数項目の修正がなされた、その中で重要なポイントとして学識経験者として国会議員を五名というような含みで審議なされました、その経過から見まして、ただいまの審議会のあり方についてここで問題になりましたように考えておりますので、これはやはりこの際再確認をしてしかるべき処置をとつていただきたいということから、全員の方々の決議の形をとつて委員長においてしかるべく善処していただきたい、こういうふうに考えるわけであります。そこで    肥料審議会に関する件   臨時肥料需給安定法に基いて設立された「肥料審議会」は、同法制定の経過中において明かにせられた如く、国会議員を学識経験者たる委員として選任せられることになつているにもかかわらず、「政府国会閉会中であるとの理由に藉口し、」実質的に審議に参与せしめるための誠意ある方法を講ずることなく、欠員のまま審議会を成立せしめ、今後一カ年間の肥料に関する重要事項を審議決定せんとしつつあることは、同法制定の精神に背馳し、立法者の意図を蹂躪するものであつて、きわめていかんとするものである。   よつて政府は、肥料審議会委員として国会議員を正式に任命しうるまでの間にあつても、同審議会において随時その意見を徴しうる措置を講じ、もつて審議に万遺憾なきを期すべきである。   右決議する。    昭和二十九年九月一日         衆議院農林委員会  以上のような案文でございます。  そこでこの問題は、諸君の御賛成を得まして決議になりましたあかつきには、この問題については、単に政府考え方を善処してもらうだけでなしに、現に肥料審議会というものが成立いたしまして組織化されて、もうすでに第一回の答申はなされ、ここでもし今月中に、きようあしたにきまるかきまらぬかわかりませんが、とにかく二十九肥料年度一箇年の価格をきめ、しかもこの第一回の価格がきまるということは、次の価格改訂に対しての一つの基準をつくります重要なるチヤンスでありますので、それを今の構成員の形で行くということに対しての考え方については、委員長から審議会の委員長に対しても、この決議のなされた趣旨を申し出て、そうして委員会委員長としての考え方もお聞き願いたい、こういうこともつけ加えまして一応提案する次第であります。
  253. 松岡俊三

    ○松岡委員 ただいま金子委員の御提案せられた決議案案文に対して賛成いたすものであります。必ず政府は善処せられんことを希望いたします。(拍手)
  254. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま金子委員より提案のありました肥料審議会に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。以上三つの決議案の取扱い方については、委員長に御一任を願いたいと存じます。
  256. 井出一太郎

    井出委員長 この際小委員補欠選任につきましてお諮りいたします。ただいま林業小委員及び小委員長が欠員となつておりますので、その補欠を委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、小委員佐藤善一郎綱島正興君松岡俊三君加藤高藏君足鹿覺君井谷正吉君川俣清音君中澤茂一君小委員長川俣清音君を指名いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十九分散会