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1954-08-12 第19回国会 衆議院 農林委員会 第64号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月十二日(木曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 佐藤洋之助君 理事 綱島 正興君    理事 金子與重郎君 理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    田子 一民君       松岡 俊三君    並木 芳雄君       本名  武君    足鹿  覺君       淡谷 悠藏君    稻富 稜人君       中澤 茂一君    久保田 豊君       安藤  覺君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鈴木 喜治君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         食糧庁長官   前谷 重夫君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 八月十二日  委員加藤高藏君及び齋木重一君辞任につき、そ  の補欠として本名武君及び芳賀貢君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員本名武辞任につき、その補欠として加藤  高藏君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  稲作病虫害防除対策に関する件  北海道における降雹による農作物被害対策に関  する件  食糧の輸入、管理等に関する件  黄変米禍に伴う食糧対策改定に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  食糧問題及び農業災害対策について調査を進めます。昨日の委員会におきまして統計調査部より水稲の成育計画並びにいもち発生状況について報告を承りましたが、ただいま塩見農業改良局長も見えておりますので、これより質疑を行います。金子與重郎君。
  3. 金子與重郎

    金子委員 先月の本委員会で本年度稲作の作柄を、気候的な立場と、それから来ます病虫害発生を予測いたしまして、本年度当初予算において非常に削減されております病虫害の駆除に対する農薬助成等予算措置が非常に減額されておりましたので、委員会といたしましてこれはゆゆしき問題であることを指摘して、政府に対して、本年度も少くとも昨年度予算を下らざる範囲においてこれが対策を講じ、同時に予算措置をすべきだということを決議いたしまして政府に申し入れたのであります。改良局は当時からその作業は熱心におやりになつておりましたが、その後に参議院農林委員会においても、特定な地帯におけるいもち発生に対して、その一回分を助成するというようなことを発表しております。その具体的内容あるいは予算、それからその後出て参りましたところの、最近になつて問題になつております関東以西二化螟虫発生、それらに対して今後どういうふうな処置をとろうとしておるか、今までの、農林委員会におきまして決議いたしました後の経過と今後の見通しに対して、改良局立場から具体的に御説明願いたいと思います。
  4. 塩見友之助

    塩見説明員 お答え申し上げます。衆議院及び参議院の方において、文句は別々でございますが、大体焦点は、まず冷害のおそれが顕著であるから、冷害対策として病虫害防除に格段の措置をするようにという決議をいただきまして、われわれも大蔵省の方と専心交渉したわけであります。大蔵省の方の立場としましては、異常発生だということが明瞭でないし、面積等についての押え方も十分にできない、今後の状態にまつほかない、こういう状態であるからということで、初めは農薬備蓄強化一本で来たわけですけれども、最後的な段階になりまして、七月三十日に農薬代について補助するというようなことをきめたわけです。ただその場合に、額を幾らというふうなことは、発生状態を見た上でないときめられないというような関係から、どういうものを対象面積として補助するかというのと、それからどの程度防除をやつたものに対して補助するかということと、それから補助単価幾らでやるか、そういう三つがきまつておれば、あと発生状態によつてあとから数字ははじけるというふうな形でもつてつて行きたい。それは、実際発生面積天候動き方相当変化がございまするので、こちらの方としても最後的な確定数字は持てないわけですから、昨年と違いまして、発生前にそういう処置をするなれば、やはり政府として決定をしておいて、農民に約束しておくというふうな形で決定せざるを得たいということになりまして、それで「冷害対策の実施について」という今お手元にお配りしたような閣議決定をいたした次第でございます。内容を御説明いたしますと、第一が、これは「冷害対策特別措置として」やるということであります。それから「稲熱病防除を促進するため」と、一応いもち病に限定しております。それから、冷害対策でございますので、「冷害激甚のおそれのある地方に対し」ということになつておりまして、その範囲につきましては、前もつて明定する、こういうこと、われわれの方大蔵省折衝いたしまして、冷害激甚のおそれある地方というのは、北海道東北六県、それから北陸四県、山梨、長野、この冷害激甚のおそれのある県一道十二県は全県を対象といたしまして、それから茨城、栃木、群馬、埼玉、岐阜の五県は、大体山寄り地帯冷害がひどいという危険のある地区を、県と打合せの上指定いたしました。そういうふうな形になつております。それから「異常発生面積のみを対象として農薬代につき補助する。」本年度予算としましては、備蓄制度がありまして、平常発生の問題は大体備蓄制度でまかなえるような農薬の量的な関係のはなつておるわけでございまするので、対象としましては、その後に起つて来る異常発生面積ということになつております。この異常発生面積は、最近数箇年間の平均数値と今年度発生面積との差をもつて充てる。これは県別ではなくてもう少し低い範囲郡別で大体充てて行く。郡別町村別異常発生面積の差は、大した差は、今まで調査したところではございませんので、そういうところで大体やつて行くということに大蔵省と協議しております。  それから第二でございますが、「本件による補助は、該当地域農家病害防除のため農薬撒布を実施した場合、一回撒布をこえる部分につき」と、一回だけは自分でやる、その後のやつたものは、数回やつても一回分を限度として農薬代について補助するということであります。昨年しまでも大体面積については一回分だけの補助に限界を置いておりますので、その点は昨年と変化はございませんが、一回撒布分だけは自分でやるという建前なつておるところが昨年度とは幾ら違つております。それから「本年度予算(実行)による補助単価により行う。」ということになつております。本年度予算単価というのは、一割削減を受けまして千二百余円となつております。前年度硫酸銅だけでやるという建前でおりましたので、八百七円となつておりますが、この大体五割だけ単価が上つております。本年度硫酸銅セレサン石灰と、大体実態に応じて半々に使つておるような状態でありますので単価はそういうふうな意味で大体五割上げた、こういうふうな形になつておるわけであります。それで、こういう冷害特別措置をやつた冷害以外の土地でやはり異常発生というのが相当激しくて、それで同じような対策を講じた方が食糧増産確保上、日本の経済の現状から見て必要だというふうなことになつたならばどうするかというような御質問等参議院でもございましたそれに対してわれわれとしましては、これは大臣も明言されておりますが、同じような状態であるならばやはりこれは同じように扱うべきだ、こう考えておる、そういうふうに努力する、こういうふうな建前で進んでおるわけでございます。それでこの当時におきましては、まだ螟虫は平年の発生に行くか行かないかという程度でございましたが、お手元に「本年度稲熱病二化螟虫発生概況」というのをお配りしてございまするが、これにもございますように、葉いもちの方は、現在まだ非常に低温と、それから肥料の手控えを、これは農家の方でもかなりことしはやつております。おそらくおまわりになつ地帯でお気づきと思いますが、そういうふうな関係からして、かなり押えております。しかしその後の気温上昇とともに病斑進行性の型を持つて来ているというふうな状態でございまして、県からの報告は、まだ現在平年発生面積にわずかに足りないという状態なつておりまするが、逐次毎日々々県の方から電報等でもつて増加状況等報告が入つて来ておりまして、もう近いうちにやはり平年発生をオーバーするような状態になるであろう、こう考えられる状態に立ち至つております。全体といたしまして、うしろから二枚目に気温偏差表というのがございますが、これを見ると、五月の下旬から七月中旬まで大体二箇月にわたりましての気温状態は、大体において冷害地区のみでなくて全国的に低温でございます。黒く刷つてあります部分低温程度であります。こういう状態でございましたために、冷害地帯の方はかなり田植えの時期が早いわけですから、この影響は非常に多く来たわけですけれども、その他の地帯においても、やはりこういう低温相当稲の生育影響を及ぼしておりまして、その前に、八月一日から五日現在稲生育状況平年比較というのがございますが、全体として見まして、表東北の一部については草たけも足らず、茎数も足らずというひどい形をとつておりまするが、その他の地帯におきましては、やはり短稈多蘖という全体に低温あるいは冷害というふうな状態から来るところの生育状況を示しておる、こういう状態でございまして、生体重等もやはり平年に比べまして相当少いという状態でございます。天候次第でいもち発生いたしますれば、抵抗力が非常に少いわけでございますので、その影響は非常に強く来るのじやないかというところが憂慮される状態でございます。そこらいもち病のところに一と二と書いてございまするが、大体そういう状態なつております。全体といたしましては晩植と同じようないもちに対する弱い状態生育をしております。あちらこちらで窒素肥料を農民がよく手控えてくれておりますので、そういう点で発生相当押えておる。それから初期防除相当努力してくれているというふうなことで、発生は昨年と違つてかなり押えられているというふうな見方をしております。  それから二化螟虫につきましては、第一化期発生状態を見ますと、昨年度は大体百十万町歩余りなつております。平年の発生面積は大体七十八万六千町歩ぐらいになつておるのでございますが、ことしのはすでに昨年のを八万町歩上まわつておる。これもこの前の委員会当時においてはもちろん平均発生面積には至つておらない状況でございましたが、その後ぐいぐいふえまして、もうすでに昨年の発生面積をオーバーしておる状態でございます。地域別に見ますると、大体東海、近畿から瀬戸内海沿岸及び九州は特にひどい状態なつておるわけでございます。  第二化期発生予想といたしましては、第一化期二化螟虫相当多く出ますというふうなこと、ことに本田に多く出ますということは、当然この第二化期螟虫発生量が多いというふうな過去における実験数字なつておりまするので、第二化期発生をこれから準備して十分押える必要があるのではないか、こう考えられるような状態でありますので、われわれといたしましてはそういう点で、こういうふうに天候の異常と関連を持ちまして、異常発生の現実の数字が出ておりまするから、冷害において行つたと同じような措置をこういうはなはだしい異常発生に対してはとるのが至当ではないか、こういうふうに考えまして、大蔵省の方にはこの数字をもちまして前の冷害対策決定というものを螟虫にも全国的に広げてもらいたいという申入れをしておる状態でございます。  それから天候の点について、お手元にお配りしました七月中旬までの気温経過表がございまするが、大体七月の中旬まではひどく悪かつたということは申せます。それから七月の下旬に至りまして割合に回復をいたしまして、これは気象台の方の予報よりも七月下旬から八月上旬については大体よく行つております。これはやはり太平洋高気圧の強さというものが気象台予想よりも強くなつたのだというふうなことを気象台の方では言つております。それで八月中旬が異常低温であるという予報をやつてつたわけで、われわれとしましては冷害について非常に心配しておつて、こうなれば昨年どころではないと心配しておりましたのですけれども、そういう関係からして八月中旬低温は来るけれどもその低温程度異常低温というほどの形では来まい、こういう状態でおりまするのでかなりの程度冷害の様相は軽減されるのではないか。しかしながら九月上旬、ことに九月下旬にはしつかりした低温が来る、幾らか秋が早いというふうな予報なつておりますので、引続き警戒を怠らないので、できるだけの対策を打つてみたい、こういうふうに考えておる次第であります。以上大体お答え申し上げます。
  5. 金子與重郎

    金子委員 ここに問題になつております点は、七月三十日の閣議できめました冷害対策措置として、いもち病防除を促進するためということから、まず一点としては「冷害激甚のおそれのある地方」という地域指定の問題と、それから「異常発生面積のみを対象として」というその異常という問題であります。これらの問題に将来いろいろの問題が残つて来ると思いますが、それはあとから質問するといたしまして、現在のあなたの方の調査によつて、かりにこの七月三十日の条件単価千二百余円というものを助成したとすれば、これに要する経費は、現在の立場で見たときにどの程度になる予想ですか。
  6. 塩見友之助

    塩見説明員 現在のものでは判定がちよつとつきにくいのでありますけれどもいもち病につきましては、昨年程度に出ますれば私の方では大体昨年程度になると見ております。
  7. 金子與重郎

    金子委員 昨年程度というのは金額にしてどれくらいですか。
  8. 塩見友之助

    塩見説明員 この地帯いもち病だけで三億ちよつとぐらいのところだと思います。
  9. 金子與重郎

    金子委員 そこで異常発生という言葉でありますが、上から見た異常発生というものは、その地帯における平均一つ数字が出て、その平均よりも上に一行けば異常であるとか、下に行けば異常でないとかいう見解なのでありますが、その小さな町村なり部落なりというふうな末端に参りますと、耕作しておる小さい面積農民立場から言うと、非常に異常な発生の出る結果が来て、そのために消毒を数回やつた、しかしながらそれが指定をされた地帯でありながら異常発生という数字が上には上つて来なかつたということになると、農民の期待というものと上から行くものとは非常に食い違いがあるのではないか。またそのときに、その異常発生がそう数多くあるはずはないとかあるとかいうことで、また大蔵省一流金額でしぼつてしまつて、そうして結果はなけなしのさいふをわけて使うという結果が出て来はしないか、こういうことが心配されますが、それはどうお考えになりますか。
  10. 塩見友之助

    塩見説明員 私どももその点がおつしやる通り一番問題だと思いまして、これを決定するにあたりましてそれを一番詰めたわけでありまして、全国数字で見ますと、現在なんかでもいもち病異常発生と言えない数字なつているのですけれども、これは県別で見ますると相当の県が異常発生になります。郡別に見ればさらにそれが上まわるというふうな形になります。大体のところは、県としましては、郡別統計町村別統計というものとは、われわれの方で調べましたところそう差がない。一応腹組みとしましては、郡別統計ぐらいを大体整理して参りますと、それは防除所別数字になります。それでもつて大蔵省の方との折衝はやるということにしておりますが、これは県の方としては当然町村対象ということで考えられると思います。そこら食い違いがございますれば、この問題については数字が明らかになつた上で大蔵省折衝する、こういうことで、全国とか県別とかいうことでやらないことだけははつきりしております。一応数字としましては、過去の平年発生面積数字等は県において持つておりますので、大体防除所別のものを見ます。町村別のものは不明なところもございましたので、確たる数字は、郡別が一番確かではないか、かように考えております。郡別町村別には大体数県とつて、そういう点を押えてみたのでございますけれどもあまり差がございません。
  11. 金子與重郎

    金子委員 その問題は、耕作している農民立場と、それから上から見た見方というものとの食い違いが来て、将来いろいろ複雑な問題を起す患いますので、私どもは今割切つて考えられないのでありますが、今後の大蔵省との折衝に対して非常な問題点が残ると思います。  それは一応それといたしまして、地帯の問題でありますが、この地帯も、一道十三県と全県と、五県のうちの一部と、こういうことで一応地帯指定というものをなしたわけですが、かりに、この間も千葉県の方から参りまして、どうしてわれわれの方を抜くのだということで非常に問題が起つておりますし、これはまた抜くということに対してはつきりした理由も立たない。千葉県だから冷害はないのだ、その隣りの県境なら冷害と認めるのだ、こういうようなことになつて参りますのですが、これは将来問題が出たらどうするつもりです。
  12. 塩見友之助

    塩見説明員 大体冷害激甚のおそれのある地帯というので大蔵省打合せをやつたわけでございますが、大体当時においてまず一番危険でありますのは、やはり冷害激甚地帯のわせが穂首にかかつて来る前にぜひ急速にやりたいということで、時間的にはそれにやつと間に合つたという形なんでございます。これは県々等の希望を伺いますと、やはり積寒法指定区域をみな入れろということもございます。しかしながら積寒法区域は必ずしも冷害とは同じではないのでありまして、表東北等におきましては、やはりどうしても表の方から、気象台も申します通り偏東風が吹いて冷害を起しますので、大体太平洋岸被害は大きいわけです。その次が東山山間というような形になつて、それから北陸というような順序で大体冷害は来るわけであります。昭和九年、十年のときあたりの冷害は、大体東北六県に限られたようでございますけれども、その当時の状態はその後気象から見ると、どうしても表の方がひどい。東山関東山間部はやはりひどいのではないかという点で調べてみますと、やはり相当ひどかつたようでございまして、おそらくその地方の人々はその当時においては、東北の方がおれたちよりはもつと寒いのだという先入主があつて相当冷害食つてつたけれども、割合納まつていた、こういうふうな状態に見られるわけです。気象台等もその点は相当検討したのですけれども、どうしても表の方にひどくなつて来る、こういう関係もありましたので、大体積寒法地帯を全部含めるという形ではやらないで、大体そういう関係からいたしまして、関東の方の山間部の方を入れまして、そうして西の方は除いた。時間的にいつても、またその当時の状態から言うと、穂首にかかつて来るというのに相当余裕があつたわけでございますので、そうしたわけでございます。それから千葉の方に接続した地帯指定しておりません。茨城県で大体四〇%足らずというところで、北の方半分以下というところに限つておるわけでございます。一部の意見といたしましては、その西南暖地栽培でやつているところは早いのだからというような御意見もございましたけれども、それを考えますと、高知とか鹿児島とか、その他早植え栽培をやつているところといいますと、今度は非常に逆な方面に広まつて参るわけでございまして、それでそういうふうな形のものを、あるはげしい冷害の型があれば、それはそういうところも冷害相当受けるということも考えられないわけでもないかと思いますが、一応その範囲といたしましては、現在でのいろいろな資料等によりますところの冷害範囲というもの等を見まして、その中でひどいところというふうに大体限つたわけでございまして、ただこの問題を非常にこまかくやつておりますと、単作法のときも、地区がやはり一年にわたりまして追加、され、指定されたという形になつておりまして、そういう形の仕事を大蔵省折衝しながらぐずぐずしているというような形になりますと、もう適期を失つて、大事な地区でやれない危険もございますし、その問題はもし地区指定等がまずければまたあらためて考えるとしても、とにかく一応は早くやるという必要がございましたし、またあるいはこういうふうな気象状態は、その当時の特態から見ましても、この地区だけでとどまるかどうかという点ついては、われわれは当初から危惧を持つておりました。そういう点は時間的な関係等もございましたし、いろいろ地区指定や、いろいろな冷害統計、それから病虫害統計等もいろいろ検討してみた上で、一応急速を要するためにこういうふうな指定なつたわけでございます。県々によりましては確かに御不満もおありになることとは思いますけれども、そういう関係からして、一応この地区の方はこれとしてやつていただくように県々の方にはお話してある、こういう状態でございます。
  13. 安藤覺

    安藤(覺)委員 金子委員に関連して一言お尋ねしたいと存じます。ただいま金子委員からお話がありました千葉県の場合のことですが、これはただに千葉県にとどまらず、東京都におきましても、神奈川県におきましても同様なお扱いをいただいております。ここにいただきました気象概況についての資料から拝見いたしましても、また私が県の統計課から受取つておりますデータにいたしましても、神奈川県におけるところの冷害予想というものは、何ら他の指定県に異なるところがございません。ほとんど同一な条件下に置かれております。わけても東京の秩父連峰寄り、並びに神奈川県下の丹沢山塊寄り、これらの地帯におきましては極端な冷害的現象を持つております。御承知のこととは存じますけれども、養蚕のごときも、この初秋蚕は例年の三分の一しか掃立ができません。それは桑葉の伸びが悪いからであります。こういつた一つ冷害的傾向は顕著に出ております。稲においてましていわんやである。そこに加えて病虫害発生というものが十分に懸念せられている。現にどしどしとこれらの病虫害発生防除薬品散布をやつておるわけであります。これに対してどうして神奈川県並びに東京都、千葉県というものだけが除外せられねばならぬか。条件がまつたく同じであるというのに除かれたという理由を承りたいと思います。
  14. 塩見友之助

    塩見説明員 その点については、こまかく郡、町村を当りますれば、前の積寒法における地区指定と同じように、これは冷害についてになりますけれども、その稲の品種とか、早いものか、おそいものか、その他いろいろな検討をやつた上で相当な時間がかかるというような関係もございましたので、われわれの方といたしましては、なるべく広げたい気持はございましたが、大蔵省と協議の上で地区をきめる関係もございまして、非常に取急ぎましたので、こういうふうな結果になつておるわけでございます。おつしやるような状態は、おそらく静岡県の山間部とか、愛知県とか、それから滋賀県、その他山を持つておる地帯は、同様な状態地域は狭いけれどもずつとあるのではないか、こう思つておるわけです。しかしながらそれを一々こまかくやるということになりますと、時間的にも間に合わないという危険も予想されましたので、一応こういうふうなところでとどめたという形でございますから、問題としましては、同様な状態があれば、例外であろうとそうでなかろうと、同様な措置をしたいというのが、われわれの腹の底の気持ちとしてはあつたわけでございます。そういう点については、そう長時間をかけてそれで、間に合わなくなるような心配のあるような協議をやつたのではどうか、こう考えたので、こういうふうなところでとどめたわけです。こういう状態で、あるいはそれはその地帯農民から見れば御不満もあることでしようが、そういう点について十分な資料等を仔細に検討するという時間的な余裕はなかつたわけでございまして、農林省にあるデータによつてできるだけのことは検討してみたわけですけれども、この地区指定というのは、単作法のときでも一年にわたつたものですから、非常にむずかしい問題で、そういうふうな意味で幾らかのアンバランスということはあると思いまするが、一応その問題ではなくて、一方異常発生というものが全面的に広がりつつあるという状態でございますので、問題としては、冷害地帯に限るかどうかというふうな問題として考えるべきじやないかというふうに、現在私どもは考えておる次第であります。
  15. 安藤覺

    安藤(覺)委員 非常に取急いだから、そのために東京千葉神奈川等が落された、こういうお話でありますけれども、私今の場合神奈川県下にのみ限りますが、私の承知いたしておりまする範囲内においては、神奈川県も決して立ち遅れたり、あるいはあなた方の方の最後の御調査に間に合いかねるような時間においてデータを出しておるということはないはずであります。十分間に合うように出しておるはずであります。しかも単に山間地帯のみならず、この病虫害発生は、たとえば足柄下郡のあの広大な耕地、並びに中郡の伊勢原を中心とした地帯、並びに高座郡の南部地帯、これらにおきまして相当の大がかりな害虫の発生を見ております。そうして消毒をいたしております。こうしたものに対して特別な地域指定からはずされておるということは、あの地方農民にとつては、どうしてもうなずけない。もしこれが県当局からの報告が間に合つていなかつたということであるなら、その点をはつきりさして聞かしていただきたい。また先ほどおつしやつた異常発生ということは、単に冷害ということではなしに扱いたいという御希望であられるそうですが、それはまことにけつこうであります。できればそれを一瞬お力添えくださつて、そして全国的なる姿においてあなたのお考えを御実現願いたいと存じます。またもう一つには、とりあえず間にあわなかつたからこうしておいたというお話でありますが、それならあとからでたデータの分については、何らか特別ごくふうくださいますか、この点お尋ねいたしたいと思います。
  16. 塩見友之助

    塩見説明員 神奈川県の方のデータが出し遅れたというようなことは別にございません。この問題は、大蔵省の方と農林省の方といろいろな資料をもとにしまして、それで私の方で原案を出して決定した、こういう形でございまして、個別々々に県を呼んで聞いてはおりません。県を呼びましたのは、県の一部指定のやり方について相互間の均衡を失しないようにということで、打合せをいたしました。県は呼んではおりません。そういう関係で、この冷害激甚のおそれのある地方というのも、指定の仕方を科学的にやるとなれば相当な長期間を要しますし、資料等積寒法のときの指定と同じようにむずかしい問題がありまして、いろいろと検討はいたしましたが、それを厳密に各県を呼んでやつておりますと、積寒法の初めのときの指定でも数箇月要したのでございます。その後の修正ではおそらく一年ぐらいかかつておるのでございます。そういう問題もありますから、この際は急いで地区指定をやつてしまわないと間に合わない。そういうふうな点を県と打合せて、データをそろえて大蔵省折衝するということでは、間に合わないという危険があつたものですから、こういうふうに私の判断において決定したわけでございます。一応今のところは、指定大蔵省との話合いはそういうところで確定しておるわけであります。
  17. 安藤覺

    安藤(覺)委員 お話を承つておると、大蔵省との御相談の結果という言葉がたびたびでるのでありますが、私はまことに不勉強で、こういつた事情をわきまえておりませんが、こうしたものをおきめになるときに、きめる内容として意見を主張せられる分野、それは大蔵省はどういうことを主張せられるのでありますか。原案はあなた方がおつくりになつておる。そうして大蔵省との御相談の結果だと言う。そうすると、大蔵省金額についてのみやるのであるか、あるいはデータを見てこれはいいとかいけないとかいうことまで御発言が、大蔵省においてあるのですか。
  18. 塩見友之助

    塩見説明員 それは閣議決定冷害激甚のおそれある地方というふうにきまつておりますし、この閣議決定を下相談をこまかい点についてやりましたときにも、やはりその地区の方は指定しませんと、予算的な大体の腹組みができませんから、積寒法地帯全体に広げるということになると、腹組み等も相当違つて来ますし、一応冷害対策特別措置としてきめたわけでございますので、冷害激甚のおそれある地方という抽象的な文句ではございますが、それで話合いをする必要があるわけでございます。
  19. 安藤覺

    安藤(覺)委員 そういたしますと、局長の原案は、神奈川県、東京並びに千葉県というものは、山嶽地帯等においてあの桑葉の伸び方、稲の伸び方が他県とちつとも違わないような姿になつておるにかかわらず、冷害激甚のおそれありという原案ではなかつたわけですか。あなたのおつくりになつた原案はさように解釈してよろしゆうございますか。
  20. 塩見友之助

    塩見説明員 さようでございます。
  21. 安藤覺

    安藤(覺)委員 わかりました。いずれまた他の機会に……。
  22. 金子與重郎

    金子委員 大臣がおいでになりましたから、大臣にお伺いしたいのですが、今塩見局長と安藤委員の質疑応答の中にも出ておりますが、この間七月三十日にあなたが努力なさいまして、大蔵省折衝案を、閣議においてきめました冷害対策の実施についてという形で、病虫害防除農薬に対する助成の問題をおきめになつたようであります。そこで事ここまで来ることについて、今の段階において相当御苦心なさつたということは、私どもにわかるのであります。しかしながら今安藤委員から問題が指摘されておるように、冷害激甚のおそれある地方というものは、地帯指定ということがそうはつきりとでき得る性質のものでもないし、単作積寒地帯というようなものであれば、温度や何かを押さえてできるのでありますけれども冷害というものは、そういう温度ということだけで全部を解決つけるわけに行かない特殊事情がございますし、それからまた異常発生という言葉を使つてありますけれども、その異常発生も個々の農家立場から見れば異常発生の場合でも、その村から見れば何でもない。その村としては異常発生の場合でも、郡の統計がら見れば異常発生にはならないという場合もあるのであります。そうしますと、この異常発生というものは、統計から見た異常発生というものと、農民個々の立場から見た異常発生とは大分違う。ここにも耕作者との食い違いが出て参ります、こういうようなことを幾つもの条件をつけて、そうして閣議できめなければならないということに対して、これは私の臆測になりますけれども、こうでもして持つて行かなければ大蔵省がのみつこない。大蔵省をのませるためには何とかりくつをつけて、すみの方からそつと持つて行くよりほか、あの頑強な大蔵省がとてものみつこないというような、一つの方法論が、この中に入つていると私は思うのです。そういうふうな方法論を用いなければならないほど、大蔵省というものは農政に対する認識が足らないということはよくわかるのであります。だけれども、実際に今度はこうきめて行くと、今の委員からの質疑にあるように、いろいろな矛盾が出て参ります。ことに病虫害の問題は、異常発生をいたしましたとか、あるいは平年よりも非常に病虫害発生激甚をきわめたときには、これに対する処置として幾ら幾らの助成をするということよりも、病虫害問題を完全に解決しようとするならば、むしろ発生をすることが予測された程度のときに、実際に予防、防除という形において実施することが、病虫害防除の一番上等な策なんでありまして、病斑や何か被害が実際にわれわれの目によく見えるようになつてから、被害調査として対象になるようになつてから、それから薬をまくというようなことは、最も下手なやり方であり、最も不経済なやり方なんです。今改良局長から穂首いもちの問題が出ましたけれども穂首いもちといいましても、そこにいもち菌があるから出ますので、それが集いもち状態のときに完全に消毒をされていれば、当然穂首いもちの害の出方も、同じ気候であつても少いということは常識でわかつておるはずです。でありますから、病虫害防除につきましては、水害その他の災害の助成と同じように、川が氾濫したり、あるいは山がくずれたりしたその姿を見て、それを回復するのにどのくらいの金がいるから、その何割を助成するというような考え方はここの地帯指定とか、異常なるという言葉を使うのは、そういう場合には当てはまるのでありますが、しかしながら病虫害防除などは、病気が出ないうちに、ほとんど出ない、目に見える程度のときから、第一回、第二回としてやるべきだ。現にことしあたりの二化螟虫防除なんかを見ますと、各地とも田植えの七日後というので、ほとんど共同防除をやつておる。そういうことを考えたときに、この問題はせつかく閣議できめましたけれども、これは将来いろいろな問題が出て来ると思います。でありますからして、この防除問題につきましては、ことにこれの防除に対する助成問題に対しましては、この地帯指定とかいうような言葉にとらわれることなしに、やはり作物の病虫害防除が、今たつた一つ残された減産防止の方策でありますので、一方農民は依然として食管法によるところの強制、権力で供出をいたしておりますし、また価格も一方的に決定しておるような事情のときに、この問題に対しては、政府はそう莫大な予算がいるわけではないのでありますからして、こういうふうなことで一歩前進しておりますけれども、こういうふうな問題について狭くして入つて行く一つの方法としてはとつたけれども、その方法を実施する面においていろいろの問題を今後起して来る。また先ほど申し上げたように、病虫害防除というものは、ほかの天災地変のように、被害を受けてからそれを救済するという性格のものでなしに、被害のないうちに防除に努めるということが最上の策なんであります。それを考えましたときに、農林大臣は、技術者とすればこういうふうな行き方で、大蔵省に側面から、何とかして行かなければならないというような消極的な考え方になることはよくわかりますが、大臣としては大上段に振りかぶつて農薬問題のすつきりした解決に努力していただきたいと思いますが、大臣はどういう御所信を持つておりますか。
  23. 保利茂

    ○保利国務大臣 実際この事情は金子さんのお話の通りだと私も思つております。この問題についての経過はよく御承知だと思いますから繰返して申し上げるまでもございませんが、今年度予算編成の当時から、この問題に関する大蔵省側の見解と私どもの見解とは根本的に食い違つております。従つてこの前の委員会でも申し上げておりますように、この六、七月の異常天候回復後に予想される冷害地帯いもち異常発生等に対してどうするかという具体的の事実をとらえまして、見解は見解として、とにかく国民経済上から行きましても、昨年あれだけの冷害に襲われておる地帯が再び冷害に見舞われんとしておるのを、いかにして減産防止するかということについては、りくつを抜きにして、国としてできるだけのことをしなければならないのじやないかということで、実は事務当局間でかなり折衝を続けたわけでございますけれども、らちが明かない。結局閣議に持ち出して、そうして一応今年度の処理の原則を打立てまして、それによつてひとつ事務当局で処理してもらいたいというわけで、下からずつとそれができ上つて上でこうきまつたという話ではなしに、下できまらないものですから上できめて、これでひとつやれ、こういう形になつているものですから、ただいま質疑応答がありましたように、いろいろの苦難に事務当局はぶつかつておると思うわけでございます。根本の考え方といたしましては、私は一から十まで国がめんどうを見ろということは無理だと思います。その点は金子さんも同じだと思います。そこで通常起る、平常発生といいますか、これに対しては、御承知のように種類によつて発生予察の措置を強化して参るとか、あるいは防除機具を完備するとか、あるいは農薬の備蓄を増強して参るとかいうような処置は、ひとつ今後といえども強く打出して行かなければならない。問題は、農家予想し得ざる天候等の異変によつて、広汎に激甚発生した場合の措置についてどうするかということが、私は一番かんじんなところだろうと思います。今の防除機具を整備いたしますとか、備蓄をいたしますとか、それについての措置を講ずるとか、できるだけひとつ早期に防除措置を講ずるように発生予察の制度を強化して行くとか、そういうようなことだけで行きたいというのが大蔵省側の見解でありまして、それはそれでよろしいが、農家予想し得ざる気象状況によつて異常の発生をした場合には、国として特別のめんどうを見なければならぬと思います。そこで実はこういう措置をとらなければできないということで、これは自動的にできるように何とかひとつ努力をしなければならない、私はそういうふうに考えております。従つて事務当局で今大蔵省と相談しておるかどうかというようなところで、いろいろ不満の点があろうかと思いますが、そういうふうないきさつから生じておることだということで御了解を願いたい。農林当局としましては、絶対に実情に沿うてやるようにいたしたいと考えております。
  24. 金子與重郎

    金子委員 どうも大臣のお話を聞いておりますと、一応大蔵省の力と農林省の力、またここまで進んで来た経路だけを現実の上で見ますと、そういうお話が納得が行くのでありますが、しかし私に考えさせますと、今のお話を聞いておりますと、少しまだ弱いのじやないか、もつと本質的な、方便というやり方でなく、基本的に考え方を、一大蔵省の問題でなく、政府として一体どうするのだということを閣議できめていただきたい、私どもの考え方ではこう考えております。大蔵省の見解は、農薬というものは生産の一つの資材である、農業は企業だ、企業に対する生産資材というものは企業家が持つのがあたりまえだ、それを国家が助成するということになつたら際限がない、こういうことに出ておるのではないかと私は思うのですが、しかしながら基本的に考えれば、農業は企業の形態はなしているかもしれぬけれども、はたして企業価値のある産業であるかどうか。それから今の農業といいましても、私は果樹、園芸や特殊な一つの作物栽培に対して農薬補助をしろということを言つているのではない。国家が最も大きな食糧問題の基礎である米麦に対して――その米麦の麦は一応直接統制はとれているけれども、米は国家管理しておる。そういうふうな自由な立場に置かれてない。しかも農業の特殊性から見たときに、百歩譲つて、農業は一つの企業だから助成の対象にしない、生産資材に対して対象としないというようなことであつたとしても、その資材たるや、作物の防除は、いつも申し上げるように、伝染病と一般の病気との相違と同じであつて、伝染病の場合は個人の自由にしておけない。自分は死んでもいいのだから隔離病舎に入らぬということは許されない。なぜならそれはほかの人に惑い影響を及ぼす。病気の場合も、あるいは虫害の場合も、発生したらそのまま個人意思にまかせておけないのだ。実際問題は、結局結果としてはある程度まで強制的な全体的な共同防除をしなければ実績はあがらないという特殊性があるわけです。公共性があるわけです。でありますから、その一部を農民自体が負担するのは当然としても、国家も食糧増産を農民に対する要請の立場からいつて責任づけておるのでありますから、必ず農薬というものがほかの農業資材、肥料その他のものと性格が違うということをこの際強く認識していた、たいて、そうしてたとえば今回のそれを最小限度に私が考えましても、農民が何回かの防除をやりましたときに、その何分の一は国家の食糧生産の一つの責任として持つてやる。それが予算上国費が厖大になつて許されぬというのなら別として、最近も非常にやかましく言われているような黄変米のごとく、ちよつとした輸入の手違いからその程度の金はいつ率損する機会はほかにもたくさんあるわけであります。それならばいつそのこと、こういうふうな問題に対して十億や二十億足らずの金を、こういうふうな大きな騒ぎをやらずと、農民の生産意欲を強めてやるためにも、また国家の責任としてもある程度の恒久的な一つの考え方を施策の上に出すべきだ、こういうふうに考えておるのですが、それに対して今後大臣は努力願えますか。
  25. 保利茂

    ○保利国務大臣 私もまつたくそう考えております。その通りでございます。ことしの予想せられました措置については、そういう強い考え方の上に立つて私としては努力をいたしておるわけでございますけれども、先ほど来申し上げますように、根本的にはかなり大蔵、農林両当局は見解を異にいたしております。これはどうしても私は、ただいまお話のような線において国の方針としてとりきめる必要がある。農薬問題というのは、積極的な増産はともあれ、消極的な減産防止というものに対しては、やはりこれがきめ手じやないかというのが定説でございますし、病虫害防除の性質というものに対する見解は、私はまつたく金子さんと同じでございます。
  26. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して大臣にお尋ねしたいのです。この前の委員会でも私の所見を明らかにいたしておきましたが、この農薬問題についての農林省と大蔵省の見解の相違の点は、二つあると思つております。一つは昨年度農薬代を末端に配付せられた効果についていろいろ疑義が出ておるということだと思います。これは今日の農業団体のあり方からいたしまして、そういう疑義が出て来ましたことについては、これは将来是正できない問題ではない、この点は解決がつくと思います。もう一つの問題は、私は大蔵省の見解が必ずしも不当であるとは思わない。ただ問題は、この大蔵省の、農民が当然負うべき投資である、それは価格形成の上に十分織り込むのであるから、国が一様に持つべきものではないという見解なんだ。これは確かに理論的には、金子さんの理論は別にいたしまして、一応筋が通ると思うのです。ただ問題は、そういうような農薬代をある程度まで価格形成の中に織り込むことができましても、異常な場合であるとか、あるいはたびたび投薬しなければならないというような部面を、はたして一本価格の中に織り込めるかどうかということになりますと、織り込み得るのだといいましても、米価のように一本価格の場合におきましては、生産費から見ましてやはり平均生産費でなければならないというような価格形成方式をとつておる以上は、特殊な農薬の投下量の増大に対して、価格形成の上にこれを織り込むことが一現在の米価決定の上からは不可能なんです。一方から言えば可能だという説を出しておりながら、実際は不可能に終つておるわけですが、この点が私は問題だと思うのです。価格形成の上に織り込めない農薬代というものは、これはやはり補助で行くより方法がないのだという解決の方法を今日見出さなければならないと思う。もちろん農業構成の上から行きまして、はたして農業が企業であるかどうかということは問題であります。私どもも必ずしも企業であるとは思いませんが、一応企業であると見ましても、その企業から生れて来るところの生産費というものを算定するときに、このような異常のでこぼこの農薬代がはたして価格形成の上に見れるのかどうかということは、これは見れないことが定説であります。従つて見れるのだというのはここだけの答弁でありまして、見れないものを見るのだということの方が私は誤りであるということを、農林省が強く打出さなければならない段階に来ておるのじやないかと思う。ここで農薬代の問題が大蔵省の案に引きずられるとしますれば、価格形成の場合、米価設定の場合に、全体の日本の投下した農薬代というものはわかるでありましようが、個々の農薬代、投資というものがはたして算定できるか。算定しておのおの異なつた生産価格で一体買い取れるかというと、買い取れない事情にあるときに、個々の投薬は農民個人の責任において果すべきだという議論は、机上論として、あるいは予算削減の便法としては論じられましても、具体的には片づかない論法であるということを、この際私は明瞭にすべきではないかと思いますが、大臣いかがにお考えになりますか、この点に対しての御答弁を願いたいと思います。
  27. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまの現実の米価のきめ方と農薬関係についての御所見につきましては、確かに実際問題としてなかなかむずかしいものだろうと私も思います。ただだんだん農業技術が進歩して、農業における農薬の占める地位というものはかなりウエートが大きくなつて来ておる。それに対しては、そのときの政府の方針に従つて、またそれの背景をなす政党にそれぞれのやはり根本方策が打立てられなければならぬ段階にあると私は思います。そのときまぐれに事務当局の折衝で問題を片づけるような性質のものから、もうかなり問題が大きくなつて来ておるのではないかという意味において、今日は何と申しましても政党内閣でございますから、やはり政党が基本的にこの問題を大きく取上げていただく段階に来ておる。政府はもとより最善を尽して行きますけれども、ただいまの御意見は私は承らしていただくというところで御容赦を願いたいと思います。
  28. 井出一太郎

    井出委員長 淡谷悠藏
  29. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 塩見局長にお尋ねしたいのですが……。
  30. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと淡谷さん、大臣はほかの委員会との関連もございますので、ここで大臣にまだ残つておる質問がありましたらそれを集約して片づけたいと思うのですが……。
  31. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは大臣の方がなおよろしいのでございますけれども、たいへんな努力をしての八月一日現在の作柄の調査も一応受取りましたが、この調査によりますと、この後天候が回復しましてもとうてい回復し得ないという冷害、凶作の事実があつちこつちにあるようでございますが、大体そういう地方をどこと押えておられますか、伺いたいのであります。
  32. 保利茂

    ○保利国務大臣 稲作全体の専門的、技術的な調査については御報告申し上げておると思いますが、しかしそれも必ずしも完全なものではございますまい。おそらくそうだろうと思います。私どもしろうとから言いますと、どこがどのくらいで、どの辺がどのくらいかと言われましても、この天候が続く場合と続かない場合どういうふうな変化が起きて来るか。これは極端な例でございますけれどもちようど昨年の十三号台風のあとでございますか、裏日本の新潟から山形、秋田方面が非常な冷害、凶作で、平地に至るまで心配をされておつた。ところが実際はあれはほぼ勝負がついてしまつたのだと言つてつた。いつでございましたか、たしか十三号台風のあと非常な好天候が二、三週間続きました。そうするともうある県のごとき一日の照り込みで十万石取返したと俗に申しますように、平地の作況は著しい最返しをして、相当の収穫を上げているということでございまして、それはたしか九月の下旬から十月にかけてと思うわけでございますが、そういうわけでございますから、どこがどうだとまで的確には申されぬと思いますけれども、ただ私が報告をいただいておるところでは、北海道の一部及び南部地帯でございますか、この辺は全体的に非常な不利益を受けている。今後の天候によりまして回復するといつてもたかが知れておるのではないかというように心配をいたしておる。私の今頭にあるところはそういうところでございます。
  33. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣がしろうとだという御謙遜なら、私はなおしろうとでありますが、私の見ましたところでは、おつしやる通り北海道と青森県の南部地帯及び岩手県の一部はとてもむずかしいだろうというたいこ判が押されるようであります。この間の委員会あとで、私は帰つて確かめて参りましたが、やはり成長しておりません。私心配いたしますのは、こういうふうなはつきりきまつた凶作地帯に対する当面の措置、これは農薬その他ではどうにも納まりがつかない問題であります。救農土木工事その他に対するいろいろな対策もございましようが、その点がどうなつているかという点が一点。もう一つは、今年の食糧の見通しでございますが、この形で押して参りますと、楽観と悲観と両方ございましようけれども、少くとも幾らか手当をしなければならない数というものがもうそろそろわかり始めてきたと思いますが、そういう点のお話を伺いたいと思います。
  34. 保利茂

    ○保利国務大臣 とにかく食べることが何といつても第一でございますから、食べるに事欠かないようには万全の措置を講ずるように食糧庁にも命じておるわけであります。その点は御懸念なかろうと思います。ただ極端な災害地帯ができますれば、これはまた十分考えて行かなければならぬ、その考えは持つております。しかし今具体的にどうこうということまでは行つておりません。
  35. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 この前の委員会でも、大臣から、食糧については絶対困らぬような施策をとるという御答弁がございました。実は気を強くしておつたのでございますが、ただいま世間で問題になつております黄変米などの配給によつて食糧の点では心配がないというお考えでございましたらたいへんな問題が起るのではないか。黄変米は昨年入れましたのがまだ手持があると言う。あれをどう配給するか、あるいはまた新しい黄変米をお入れになるつもりか、その点もう少し具体的にお話願いたいのであります。
  36. 保利茂

    ○保利国務大臣 始末に困る黄変米をそういう食に困るところにまわして事済ますのではないかという、さような不届きな考えは私は毛頭持ちません。いわんや黄変米をまだ入れるかというような――入れないために食糧庁も関係業者も、苦心のできる限りの苦心はいたしておるわけであります。それでここ両三年来問題になつておりました黄変米、黄色く色のかわつている黄変米が入り込んでおる。これはビルマ政府なりあるいはタイ国政府なりを承知せしめるためには、外交的にかなり困難がありました。と申しますのは、そういうものが有害、有毒であるという観念が現地においてはないようでございますから、従つてそんなものは日本は買えないということを外交的に納得させるためには相当努力を払つて来ておる。それで色のかわつたものが一%以上ある場合には日本は買わないということで、色のついた黄変米というものは事実まだ配給しておらないのでございます。ただ従来黄変米と言つて騒いでおりました厚生省の食品衛生官でございますか、それは黄色く色のついておるものを探しておつたわけですから、白いものを、だれも初めから疑つている者はない。肉眼で見てわからないものをだれも疑つてはいなかつたわけです。ところが私が思いますのに、色のついたものが入つて来なかつた。しかし輸入食糧は食品衛生法の発動で検査をするということになつておりますから、あの去年の十二月ですか、十一月ですか、今年の一月ですか、そのころから白い米を培養実験をするようになつた。そうなると白い米にいわゆる有菌米がある。それが今問題になつております黄変米の問題であります。これは外国米を一切入れないという方針をとればこれは別であります。そうでありませんければ、今日の実際の取引から申しますと、だれが見ましても、――私この間誤解を受けまして、非常に政府に迷惑をかけましたわけですが、閣僚諸公にもこれがいわゆる不適格の米である、これが適格の米である、こうやつて出しましてもわからないのです。全然わからない。それは通常の顕微鏡で見てもわからないというものでございまして、それじやその米は去年の十一月から入つて来たのか、外国米はいつからわれわれは食べているか、終戦後ずつと食べて来ております。それはその有菌米というものは今年率然として現われているかというと、そうでなしに、実際問題としてはただ発見をしなかつたということになるのではなかろうか。(「それでみんな肝臓を悪くしているんだ」と呼ぶ者あり)そこでまあ言うごとくんばそうなるかと思いますが、そこで私どもとしては、今後外米をある程度入れる、入れざるを得ないということになりますならば、これは淡谷さんが言われるように黄変米をまだ入れるつもりか、黄変米を入れるつもりなどとはとんでもない、そういう考えは持ちませんので、入れないために右申しますような苦心を払つて来ているわけであります。実際問題として、私はそれは確かに有毒性のものであろうと思います。しかし有毒性のものであるからすべて人畜に害がある、こういうふうには、――そこらは専門家の研究になるわけでございましようが、そこで厚生省のそれは毒があつて有害であるとか無害であるとかいうような、私どもしろとうにはそれを判断し得る能力はございません。国としてもそういうものを研究判断するのが厚生省の職能になつているわけでございますから、従つて厚生省の職能に基いて研究成果せられたところに私どもとしては従つてこれを処理して参るという以外にはなかろうかと、私は考えているわけでございます。決して毒が無害であるとか有害であるというところに私は立入つて議論をする資格は持つておりません。またそういうことを申し上げることは、私が申し上げると何か無害だと言えば、いや配給に困つているからしようと思つているんだろうからというので、かえつて誤解を生むことでございますから、その点については私は一切弁解をする資格は持ちませんけれども、従つてそれは国の権威ある機関の、いわゆる食品衛生法の管理運用をいたしているその機関の指示に従うほかはない。その機関の指示を逸脱した措置は私どもとしては絶対にとるべからざることである、かように考えているわけであります。
  37. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 もちろん私は大臣が有毒米であるということをわかつていて輸入したとは思いませんけれども、今年の全国的な兇作不作に対応して、食糧問題を解決するためには、やはりそこではつきりただいまおつしやいました通り、外米によらないで立てられるのか。あるいはもしも外米によらなければならないとしたならば、今後どのような方法で外米を輸入をすると、こうした今起つておりますような問題を起さずに済むか。これは来年の話でなくて、今年の秋からの話でございますから、もうそれくれぐれはつきりした対策も立つておられるだろうと思います。一体外米によるのかよらないのか。あるいはよるとしたならばどういう具体的な輸入方法によつて今まで起つたようなさまざまの欠点をなくすのか。これは非常に残念な話なんであります。もの有毒な米が人体に害があるかないかということは問題にならない。有毒なものは人体に害があるということがはつきりしているのであります。これははつきり配給をさしとめられているようでありますから一応安心いたしましたが、非常に食糧不足が心配されております今年の作柄に対して、具体的にはどういう対策を立てられるのかという、その点をお聞きしたいのであります。
  38. 保利茂

    ○保利国務大臣 結局食べもののことでございますから、これは何も政府だけが食べるわけじやございませんし、とにかく国民全体の食べものでございますから、国民がそれならば食べよう、それならやめだということになれば、いくら政府がさか立ちまして食べてくれと言つたつて、国民の皆さんが、いやそんなものは食べられないと言われればそれまでのことでございます。食べもののことですから、どういう方針でやれと言いましても、押しつけて行くわけに参らぬと思います。私は率直に申し上げますれば、ただいま厚生省で研究判断せられて私どもに指示せられている範囲内で、国民の各位が御安心になつて消費をされるということであれば、外米の問題というものはその面からはあらためて検討をし直す必要はなかろうと思いますが、しかしそうはいかぬということになりますればまた別途の考えを持たなければならぬと思います。しかしどつちにしても結局食べるものは食べなければならぬ。しかも日本にあるだけのものでは足らぬ。そうするとおのずから、これは国際供給力と見合つて結論の行くところに行かざるを得ない。しかしこの間、私は決して行き過ぎだとは申しませんけれども相当不安を消費者が持つておられるわけでありますから、研究機関でこれなら大丈夫だ、それを消費者の方によく納得をいただく。納得をいただくことができなければ、これはもう外米を入れてみたところでしようがない。それで政府が需給計画が立ちましたと申し上げてみたところで、そんなことはばかにした話で、そんな考えは持ちません。ただ問題は、十分に科学研究機関の成果を皆が尊重して、それならばまあよかろうということになりますれば――なるほど私は希望いたしておりますけれども、それがどういうふうになりますか。とにかくきよう言うたからきようどうなるものでもなかろうと私は思います。従つて厚生大臣にも、われわれの方に、こういうところなら配給してよろしいというその指示については、よく消費大衆に徹底するように、私どもから申し上げると、何か配給したいから、困つているから責任を問われるからというので弁解がましくなりますから、それは当然食品衛生を守つておられる当局においてその趣旨を徹底していただいて、どこまで国民各位の御納得をいただき得るか御努力を願いたいと、私の方から強く要請をいたしているわけでありまして、彼此勘案して今後の処置をきめて行きたい、私はそう考えております。
  39. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 要約して申し上げますが、いわゆる黄変米なるものの現在手持ちしておりますものを、配給できるだろうという考えに立たないで、何かもつと適確に処置するような方法かないかどうか、これが一つ。もう一つは、現在外米によらなければならないとした場合に、入れられる可能性のありますところはどこの米であるか。非常に有毒菌の乏しい米もあるように聞いておりますが、そういう点でざつくばらんにひとつお答えを願いたいのが一つ。それからもしも国内の米が間に合えば、むろん外米のようなものはいらないというのですが、どうやら大臣は間に合わないという前提のもとに立つておられるし、私たちもそう思つておりますが、それにいたしましても原則は、国内における食糧の自給ということが大きくとり上げられております。今日、外米などに費やす金を、思い切つて農業施策の上に使つて、たとえばことしのような凶作な場合は、思い切つた救済施策を行つて、それで増産意欲を刺激し、全部できないまでもこれ以上国内における食糧自給の線を強めるような御意思はないかどうか。この三点だけお答え願いたいと思います。
  40. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは一体どこの米に菌がないかということは、私はそういう研究は全然知りませんから、存じません。しかし大多数輸入をいたしている国々の中には、含まれていないという保証は何人もできないだろうと思います。発見し得るか発見し得ないかということが問題であつて、それが含まれていないということは何人も、専門家といえどもよう言い切らぬところではないか、私はそういうふうに思つております。  淡谷さんの言われる、外国から食糧を買つて来てもつたいないじやないか、それを国内の増産の方にまわせばそういう愚かなことにならぬで済むのじやないか。これは感情的にはまつたくその通りです。しかしそれは食糧増産だから、かりにことし千億の金、二千億の金を注ぎ込んだからというて、一体国民はことし何を食べるか。すき腹でおるか、それは承知なさらぬでしよう。どうしても食糧の増産を急がなければならぬということは当然のことでありますけれども、しかし一年や二年で食糧増産の実が上るなんという妙手があろうはずは私はないと思います。やはり民族がしんぼう強く、こつこつと増産に打ち込んで行くほかはないと思います。そこでできるだけ淡谷さんの考えておられる根本の考え方に基いて、現実をどう調整して行くかということが、私は実際の問題ではないか、かように考えております。
  41. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どこどこから輸入し得るのか……。
  42. 保利茂

    ○保利国務大臣 現在は、私の承知しておるところでは、十八箇国から入つて来ております。
  43. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 その十八箇国の名前を聞きたいのです。
  44. 保利茂

    ○保利国務大臣 一番大きいのはビルマ、タイ、それにアメリカ、台湾、イタリアあるいは近東地方でございますが、スぺインからも入つておると思います。しかし大量的にはタイ、ビルマ、アメリカ、台湾、こういうところから入つております。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 今輸入米の問題が淡谷君から出ておりますので、一点だけ関連してお尋ねしておきたいと思います。今年度の輸入計画は、米において百十四万五千トン、大麦において百三万三千トン、小麦が百九十六万三千トン、合せて約四百万トンの輸入が計画されておる。今の場合で行きますと、必ず減収は免れないという八月一日現在の大体の作況である。われわれは別に不作を望んでおるわけでもございません。これが豊作になることはもちろん期待しておるわけですが、科学的な調査に基いてみますと、不作と断定はできませんが、必ずしも平年作だという断定もついていない。しかも中央気象台の長期予報は、八月下旬から九月に及んで、開花期あるいは乳熟期における障害型の冷害がまた来はしないかという懸念が強い、こういう発表をいたしておるわけであります。そこで現在問題になつております黄変米の輸入の問題は、非常に国内でも沸騰しております。黄変米の混入率の最も多い地帯は、大臣は御存じないかもしれませんが、これはもう大体わかつておるのです。これはあえて具体的に申し上げる必要もなかろうと思うのでありますが、事務当局はよくわかつておるはずなんです。そうなりますと勢い黄変米の混入率の多いものの輸入は、何らかの措置に出てこれを抑止する、あるいは輸入計画を改訂する、こういうことに必ずなろうかと思うのです。そうなつた場合に、国内には凶作気構えが濃厚である。一方輸入米の百十四万五千トンは黄変米異変によつてここに新たなる輸入上の障害が出て来ている。二つの要素があるわけなんです。そこで一体これの対策というものは、国内における病虫害その他の異常発生を未然に防止し、今後あらゆる総合的手段を講じて増産を確保するとともに、なお足らざるところの対策いかんということが、突き詰めて来ると問題になると思うのです。そこで最近中共貿易の場合に準内地米――現在日本に輸入しております米のうち、過般来も少しばかり入つたといわれる中国米は、ほとんど内地米と差異がない。アメリカのカリフォルニア米と質は違うでしようが、今いわれているような黄変米を混入しているような話も聞いておりませんし、準内地米としてぱりぱりの米であるということは大体はつきりしている。ところがこれには向うとしては見返りを盛つている。これに対して農林省としてはいかような考え方を持つておられるか。黄変米の混入が多い地帯からの輸入については、これは決算、厚生、当委員会も非常に熱心に論議しておりますから、このままでは手放しでそのまま入れて来るということはなかるまい、何らかの対策がそこになければならぬと思う。そうすると、この輸入計画に改訂を加えて行かなければならぬ。とするならば、その改訂を必要とした場合には、新たに向うが希望している、しかも準内地米であるところの中共米を入れることは、私は思想の問題とかそういうことは別としてきわめて必要ではないか、また中共米に限らず、他の優良な黄変米混入の疑いのないところから入れて来るということが必要であろうと思うが、一体大臣としては、百十四万五千トンの輸入計画の改訂にあたり最近ジユネーブ会議以後の情勢としても、日本の国内の貿易関係者も、中共貿易に対するところの熱意は非常に高揚しております。ところが現内閣は対中共貿易問題については、必ずしも熱意を持つておられないようであります。特に中共の希望しているのは、三十万トン程度の米は楽々出せるというふうに言つているというふうに私どもは仄聞しておりますが、これは硫安を初めいろいろ向うの希望するものがいる。ところがこの問題に対して一歩進まして行こうという御意思があるのかないのか、はつきりわかりません。黄変米問題を考え、内地米の不作予想を考えた場合に、輸入数量を改訂して、減じたままでいいというわけには今の大臣の答弁から行かないわけです。どこかからその補填をして行かなければならない実情に迫られている。そうした場合に、大臣としてはどういうふうに本年度当初計画の百十四万五千トンの確保について対策を講ぜられて、国内食糧の不安なからしめる御所存であるか、この点ひとつはつきりとしたことを聞かしておいていただきたい。
  46. 保利茂

    ○保利国務大臣 足鹿さん、御承知の上でお話でございますから、承りますけれども、タイやビルマや、今入れているところを中共に振りかえて、しかも百十四万トンの輸入を確保しろと言われましても、これはできる相談ではございません。そこで中共の方の関係、これは私どもは、日本が支那政策をしているときに、あそこで日本の当事者が植栽をされた日本の種でございますが、日本の品種が相当今日発展普及をして来ているのではないかと考えております。それでは一体どのくらいの余剰力があるか、三十万トンというお話はどういう根拠か存じませんけれども、私どもとしましては、とにかく南方米に何も毒があるとかないとかいうことでなくても、国民の食嗜好にあまり歓迎せられないというこの事実はもう大前提であるわけでございますから、従つて内地米に近いような米を、いくらか割高でありましても買い込みたいというのは偽らざる私どもの考えでございます。従いましてあるいは加州米あるいは台湾米、昨年来南鮮の余剰米の買付についてもかなり苦労を重ねて来ておりますけれども、しかしいくら重ねて来ましても相手がありますから、相手がやはり日本と相提携して行こうということになつてくれないと、たとえば朝鮮米にしましても、遂に表向きには一粒も今日まで入つていない、裏向きには入つているかどうか知りませんけれども、とにかく入つてないというような実情でございます。中共米について何かこだわつた考えを持つて政府間の国交回復がしていないから、こだわつて考えておるんじやないかというような御懸念は、この問題に関する限りはございません。現に五千五百トンの一船を中共から入ていただいておるわけでございます。さらに輸出余力が二万トンあるか三万トンあるか、それにどういうふうなバーターを仕組むかというような話は私も聞いております。しかしそれは私どもとしては、できます限り良質の米を提供いたしたいということが念願でございますから、そういうことを促進して参るのに私はやぶさかではございません。ただ一方におきましては、この中共米にしましても、足鹿さん御心配の硫安とのバーターとなつて参りますと、そこにまた今年の輸出力は四十七万トンしかない、その四十七万トンのうちはこういうふうになつておる、それではその振りかえで中共に持つてつて輸出計画をかえてやるかというようなところにも問題が出て来るし、まさか内需を切つてそれをバーターに持つて来ることも、これはまたその面からむずかしかろう。しかしいずれにいたしましても私どもとしては良質の米を得る、どれだけのものを得得るか存じませんけれども、とにかく最善の努力を払いたい。ただタイとかビルマとかの取引買付の改善が、りくつの上ではどうでも考えられると思いますけれども、実際の問題としてどこが改善し得るかということを早急に考えてみなければならぬ、その上に立つて年度以降の需給計画を立てたいと考えておるわけであります。
  47. 井出一太郎

  48. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 私はこの際先般からずつと継続になつておる問題につきまして、特に大臣の御考慮、御答弁を得たいと思います。問題は三つでございます。  われわれ委員会は七月二十三日に農薬の決議をいたしまして、その決議によつてただいま大体一部分処置行つたようでありますが、それは一道十二県とそれからほか五県に対する県指定地域に対して手当をするというのでございます。これらに対しても私どもは、不十分だと思うのであります。さきに安藤委員からもお話があつたように、冷害全国的である。従つてあまり区域を拡げるということも非常に困難だと言われますが、ごもつともだと思います。これらの処置が私はまだ徹底を欠いておると思うのですし、なお二化螟虫がありますし、われわれの決議の中にはひめはもぐりがあるのですが、これには備蓄を使うといたしましても、今後これらに対する徹底した対策を講じていただきたい。これを一段と要望しておきます。  それからこの問題に対しまして、実は八月一日現在の作況及び稲熱病被害状況について、特に委員会で要請をいたしまして、調査をお願いいたしましたところが、まことにりつぱな、実に手数のかかつた調査が出て参りました。大臣ごらんになつたと思うのですが、われわれはこれに対しまして、今年の稲作に対する心構え及び今後の食糧政策に対する本委員会としての腹構えの一つができて来たわけでありまして、これらに対しましては、私は経済統計局に対しまして厚く敬意を表します。そこでわれわれ委員会でこの調査をお願いをいたしたのでありますが、実は私もきのうよく聞きましたところが、約一千万よけいな費用を使つておるのでございます。こまかに申し上げますると、大体はこれは職員の旅費、人件費ですが、九百九十万ばかりつかつております。これは大蔵省では範囲内の予算において処置しようというようなことでありますが、こういう点はやはり冷害に伴う問題でありますから、これらの予算措置も特にお考え置きを願いたい。これは委員会の要請でありまするから、特に大臣にお願いをしておきたいと思うのです。  それから第二点は、例の六等麦でございます。あれは実は先月の月末に大臣告示となると思つてわれわれは待つてつたのですが、九州各地からの非常に熱烈な陳情もありまするし、あまり時期を失すると証文の出し遅れになります。大体事務的な措置はできておるようでございますから、この際至急に大臣告示を出されるように、これができるかどうか、どのくらいのお見通しであるかということを、ひとつお答え願いたい。
  49. 保利茂

    ○保利国務大臣 前二点につきましては、御意見、御要請を承りました。その線に努力いたします。いわゆる格外麦の処置につきましては、大体当委員会で申し上げておりました通りでございます。私も実は気になつておりまして、事務当局を督促いたしております。昨日も督促をいたして事務当局の話を聞きますと、事務当局の話も大体最終的につき得るようでございますから、これはつき次第機械的に告示いたすつもりでございます。
  50. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 確かに今お話の等外麦の問題は、大臣のかなりはつきりした御答弁でありますから、それを信じまして、できるだけすみやかに告示を出していただきたい。これは向うは鶴首して待つているのです、ひとつお願いしたいと思います。  最後にお願いするのは、さきに私が九州視察をしておりましたときに、農林十八号の創始者に対する表彰方をお願いしておいたのですが、さらに詳細なる写真つきの佐藤健吉君という九州農林試験場長からの調査が参つておりますから、至急にこれをお願いしたいのです。実はこの点について、今まで農林十八号の育成者でありました福島信知君に対して農林省がどういうことをしたかというと、あまりしていないのです。ただこういうことがあつたのです。福島信知君が昨年十二月十日に農業技術の研究並びに普及のためというので農林大臣より表彰されているが、この表彰は農林省自身が、同氏の功績を認識して、かような措置をとつたものではなく、民間機関である農業技術協会が、毎年農業技術の改良普及に功労のあつた技術者を数名ずつ表彰し、その際同協会から、機材大臣に申請して、農林大臣から表彰状と記念品を授与することとしている。昨年福島氏に対しても、同協会の申請によつて、いわば形式的に授与されたにすぎないのでありまして、聞くところによれば、農業技術協会からの申請は秘書課長限りをもつて決裁し得るもので、おそらくはあなたは御存じがないと私は思うのです。従つてこの表彰は藤枝五号の育成者田中稔君に対する場合とはまつたく異なる。田中氏に対しては、政府自体が同氏の功績を十分に認めて表彰したものである。福島氏の功績は、同氏の事績に明らかなごとく田中氏に優るとも劣らないもので、藤枝五号の作付面積が現在九千町歩程度でありますのに対して、農林士八号は十六万三千町歩、農林十二号もやはり同君の育成でありまして、三万三千町歩に達しているという事例に徴しましても明らかであります。従つてこれはぜひ早急に田中氏より以上の表彰をお願いしたいと思うのです。かつて蓬来米を創始いたしました人に対しまして勲二等を贈られておることがあるのです。あれはだれの時代ですか、後藤新平さんかもしれません、勲二等を贈つておる。こういうように重く用いておるという点から考えまして、この点だけはひとつ特にお考えを願つて、速急に適当な表彰をお願いしたいと思うのであります。これだけお願いして、これに対する御答弁をひとつお聞きしたいと思います。
  51. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは先日もお話を承りまして、そういう方を国が表彰するということこそ最も大切であるという考え方で、私ども取進めたいと考えて求るわけて友ります。全体としましてはまだ新憲法下における栄典法ができていない。そこに私は一つのなにがあると思いますが、栄典法の原案にはそういう方々に重く表彰をするという精神が盛り込まれておると思うのであります。できる限り新栄典法がすみやかに制定せられることを希望しておるわけであります。しかし現在私どもの考えておるあるいは現行制度でやれる表彰方式があるわけでございますから、できるだけ御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  52. 井出一太郎

    井出委員長 並木芳雄君。
  53. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣に黄変米のことで質問しておきたいと思うのです。それは先ほどお伺いしておりまして、ただ黄色くなつた米だけでなく、見わけがわからないということになりますと、今までの外米全部というものに対して国民が非常な不安を抱くわけであります。ですから、今後ただちに黄変米の配給拒否のみならず、外米全般に対しての配給拒否ということが起つて来るのじやないかということを心配しております。現にある府県においては知事、議長が黄変米は配給しないという言明をしております。われわれ家庭においても、大臣のきようの答弁を聞いておりますと心配になつてしまつて、外米は当分とても食べられない。どうも考えてみると、私なんか心臓や肝臓が終戦以来少し弱くなつているような気がするのです。ずつと今まで外米を食べているのが積り積つて今日心臓、肝臓を害しておるのじやないか。こういうような大きな調査もやはり必要になつて来る。それで拒否が出て来るのは当然でありますけれども、拒否されて来た場合に農林大臣としてはどういう処置をとられるか。私はこれにかわるべき内地米その他の主食をもつて、配給にあたつていやしくも混乱を生じないようにすべきであると思いますけれども、配給拒否に対する農林大臣の態度、方針を承つておきたいと思います。
  54. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほども申し上げますように、食べもののことでございますから押しつけるわけにはむろん参らないわけでございます。拒否されたものを押しつけて、どうでもこうでも食つてくれと言うようなことができるはずはございません。またされる性質のものでもなかろうと思います。ただ並木さんに申し上げたいのは、私がそれは無害でございますと言うても御信用にはならぬだろうと思う。結局それを信用するかしないか、そのよりどころはどこにあるか。私は厚生省の研究判断にまつほかはないと思う。従つてそれなれば今厚生省の研究判断をせられて私どもに指示せられておるところは、これは少しも人体に障害を及ぼさないという成果の上に立つてのことでございますから、いろいろこういう妻三つありますというと、非常に不安はさらに不安を呼ぶというようなことになりがちのものでございますけれども、そこ以外にはよるべきところはないのじやないか。しかし私はそれをいいとか悪いとかいうことは申し上げません。少くとも科学的に、技術的にここまでは配給していいのだと言われる以上は、食品衛生をつかさどつておられる行政機関がそう言われるわけでございますからそれを御信頼いただく、私も信頼して参るということ以外には処置はなかろうかと考えております。
  55. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると今まで通り配給を続けて行くというふうに受取れますが、その通りですか。一昨日の閣議で配給は中止するという決定をしたのじやないですか。今の大臣の答弁だと厚生省の検査の結果というものに依存して行く以外にしかたがないので、それによれば今まで通り外米の配給を続けて行くというふうにもとれるのですけれども、そこのところはどうなのですか。
  56. 保利茂

    ○保利国務大臣 どうも並木さん、私は閣議が配給を中止するとか――中止するという方はできるだろうと思います。配給をするとかなんとかいうことは閣議できめるべき問題でございませんので、これはまつたく一方に食品衛生法を運用管理しておる行政機関があり、一方は食糧を確保して行く行政機関があつてそれぞれの責任者がおるわけでございますから、従つてその責任は一面厚生大臣であり、一面農林大臣である。ただ閣議で、これは人間でございますからやはりもう世間話も出ます。黄変米の騒ぎも出るわけでございますから、黄変米というものはこういうものだ、今騒がれているものはこういうものだというお話もございました。それからまた厚生省で一つの許容指示をしておる一%以下なら幾ら、二%半以下ならば幾らというふうに指示しておるから、それで農林省はそれをたてにとつてしやにむにやろうという考えも持ちません。と申しますのは、先ほど来申しますように、結局これは消費者の方が御納得されなければ配給しようとしてもできないわけでございますから、従つてどもとしましては、厚生省の許容限度は二%半となつておりますけれども、それをもう一ぺん再搗精等をいたしまして、どこまでかさらに減らすだけの手段があれば減らす手段を講じまして、国の経費もその辺は惜しみなく、多少の経費はかけましても、減らせるだけには減らした上で、できるだけ厚生省の許容限度以下に持つてつて、消費者が御納得が行くならば配給をいたしたい、かように考えておるのであります。
  57. 井出一太郎

    井出委員長 並木君に申し上げますが、黄変米の問題は午後つつ込んでやりますから午後にお願いいたします。金子與重郎君。
  58. 金子與重郎

    金子委員 昨日の委員会大臣の御出席を願いまして、当委員会で時節柄一方には冷害予想される要素もありますし、たまたま黄変米のような――これがどこまで発展するかわかりませんが、日本の食糧をまかなう上にとにかく憂慮される一つの問題も出て参ります、こういつたやさきに、政府も先年来食糧管理の制度が行き詰まつておる、そこで食対の委員会をあなたの方でつくりまして、その食対の委員会の方からいろいろの意見を聴取されたようでありますが、当時から本委員会におきましても、食糧管理をめぐつてときどき問題になつたのであります。それを今回食糧の小委員会でいろいろ練りまして、昨日の委員会で決議の形をもちましてあなたの方へ申入れしたのであります。この全体に対して説明することは長くなりますから、省略いたすことにいたしまして、ただそのうち枢要な二、三の点をこの際御説明しておきますと、まず第一に、食糧管理制度というものが現在実施されておるけれども食糧管理に対する考え方が政府は間違つておりやせぬか。と申しますのは、政府食糧管理の考え方は、単に一つ食糧の需給を国家が管理するというだけであり、しかもそれはあくまで独立採算の上に立つて行くというような無機的な考え方を持つておるのでありますけれども食糧というものの大部分が内地の農業生産である以上は、その農業政策なり、その生産政策というものと関連性を持たない管理制度というのは、たとえば価格の面におきましても、集荷の面におきましても、それは矛盾だらけになつて来る。現にこれだけ食糧問題がやかましくなつている中にも、その増産の基本であるところの土地改良だとか、防災あるいは生産物の価格問題に対しては退却しておる。政策が後退しておる。そうして供出の面になると、例の食管法を前に置きまして、食確法をやめたというけれども、食管法の第三条によつて、食確法と同じ効果をなすような政令を出しまして、農民に対しては供出を強制しておる。けれども一方一般の消費者大衆に対しては、やみは公然の秘密のような形になつておる。そうして外国食糧が入るから、もう食糧管理はじきに解かれるのじやないかというような、非常に安易な考え方を国民の間に馴致して来た。こういうことが食糧管理制度の行き詰まつた一番の原因だ。決して日本の今の状態において、食糧管理を野放しにして行けるなどということは考えられないというのが、当委員会のこの決議にありますところの基本的な考え方であります。  そこで具体的な問題として二、三の問題を申し上げておきますが、さしあたりここに迫つております問題で、あなたの方でも各県の部長会議に係を呼びまして、本年度の集荷対策に対する意見を聞かれたようでありますが、何か食対の方からの二十九年度の集荷方式として、予約制度という新しい考え方を供出制度と併用しよう、割当制度と併用しようというような考え方を持つたかのように思つております。これは必ず失敗する。単に超過供出という一番やりにくい面を、農業団体その他の集荷団体に押しつけてみたところで、これはとうていものになるものではない。集荷団体の立場から言うならば、その予約制度をするならば、予約としての価格の上に特殊な取扱いがなされなくちやならぬだろう。そうするならば、予約に対してかりに超過供出の奨励金と同じようなものを出したとしても、それでは予約以上に出た場合に、その予約されない部分に対しては、一体価格をどうするのだ。それに差別をつけて、あとから出した人は価格が安いんだということも、実際上やり得ないのであります。といつて、予約したものだけが価格が高いということにすれば、予約の効果はあるかもしれぬけれども、実際上はそれはないし、価格が同じだということになれば、予約して本予約しなくても同じだというように、今年度の行き方として予約制度を併用するということは、まつたく失敗に終ると私どもは思う。ことに本委員会の考え方として本、来年度においては、今の一方的な割当のようなものをなしにして、あくまで門以外には売れないという原則は設けないが、但しその売渡しの契約というものは、農民の自主的な立場から契約して、今の割当のような非常に政治的に不公平のあるようなやり方を再検討しろということを決議しておりますので、その方向へ持つて行くためにも、本年度のなまじつかな弥縫策で、農業団体が生産者から不信を買うような方式はやめた方がいいのじやないか、こういうことであります。これはさしあたりの問題でありますので、特に御説明申し上げたわけであります。  それから政府が、ややともすると統制撤廃というような、昔掲げたようなことがいまだに低迷しております。大蔵省立場からいえば、あの食糧管理を農業政策的に考えると、ますます金かいるということから、統制撤廃をしたりどうかという意見も一部にあるようでありますが、私どもはそういうような安易な事態だとは考えておりませんので、従つて今年の集荷が思うように行かなかつた場合に、また窮余の策として、今まで行われておつたような、特集制度のような便法制度はやつてはいけない。そういうことをやると、国民全体にまた統制が解けるのじやないかという考え方が強く出て来る。従つて先年においてもこの特集制度に対してはやめるべきだという決議をしておるのであります。昨日の決議の中にも条項としてそれが入つておるわけであります。  それから配給の問題につきましては、今各県ごとに配給基準が非常に違う。これが違うには違う理由もありまして、今日まで来たのでありますが、しかしこれはあくまで均等化させる方向へ努力してほしい。そのためには米の生産地に対して、代替食であるところの政府手持ちの精麦等の特殊の消費をする上において、特殊の政策をとつてもらいたい。また加配米についてもできるだけ節約をする方向へ持つてつてもらいたい。こういう考え方であります。またこまかいことは書類を見ていただくことにいたしまして、バツク・ペイの問題につきましては、これは先年の閣議においてもきまつたことであり、ますし、農民は当然約束されたこととして信じておりますから、これをうやむやにすることは、今年度の供出の上に悪い影響を及ぼします。これらのわずかな予算のために大事な供出が阻害されることがないように、大臣としては骨折られることと思いますが、せつかくの努力をしてほしいということもこれには記載してあるわけであります。  それから消費者価格の問題につきましては、やはり国家管理をする以上は、あくまで独立採算の上に立つのだという見解でなしに、消費者価格というものがやかましく言われておる今日、一方においては生産者価格を上げろという問題が強く出されておりますので、これはどうしても国家が管理費の一部を負担するという考え方になつていただかなければいけない。実際はそうなつておりますが、建前は依然としてくずしておらぬようでありますから、あつさりと建前もそう考えたらどうか。  もう一つは、生産者米価をきめる場合には、やはり農業労働というものの自家労力というものを非常に安く見過ぎておる。従つて工場における労働者の賃金水準と農民の労働賃金水準とが同じような程度の労働力、同じような程度の人的条件であるものを比較いたしまして、やはり均等にとつて行くという考え方について、だんだん米価は生産費方式の方向に進んで行きますから、その点特に御留意していただきたい。  最後に一点、ただいま各委員から問題にされております外米輸入の問題につきましては、輸入の品目なり、あるいは品種、数量、価格ないしは買付先、買付方法というような一つ一つの項目を、これから新たに輸入ということも始まるというような見解の上に立つて、考え方を根本的に一ぺん立て直してみたらどうか。そうして可能の面、不可能の血ももちろんありますが、これらの対策を早急にひとつ考究してほしい。  以上のようなところが昨日の決議のおもなるものでありますが、こまかい点についてはまだ大臣は御研究になつておらないと思いますので、あえてそれに対する逐条的な御見解を御披瀝願わなくてもよろしいのでありますが、とにもかくにも本委員会の総括した食糧に対する考え方は、今の三百万トンからの輸入食糧を持ち、そうして今まで幸いにして恵まれた順調な天候で来ましたけれども、昨年以来天候の点からいつても、またたまたま出ております黄変米の輸入食糧に対する問題につきましても、日本の食糧が自由に手放しになれるという事態ではない。そうだとするならば、この食糧管理というものが単なる食糧を管理するということだけでなしに、農業の基本的な増産あるいは価格政策等も同時に考えて、そうして自給度を向上させて国民生活の安定の方向へ持つて行くべきだ。単に農民に対する一般的な補助政策だけに農民を甘やかせるという意味でなく、国家的な自立の立場から食糧問題を改めて考え出すことは政府の責任じやないかということは、大多数の意見決定したところであります。どうぞこの面を十分研究願いまして、近き機会にこの決議に対するあなたの御所見をお聞きする機会を得たいと存ずる次第であります。
  59. 保利茂

    ○保利国務大臣 昨日、先般来御熱心に食糧管理制度の各般にわたつて御検討をいただきました当委員会の最終意見を拝見いたしました。私としてはしさいに検討いたし、たまたま本年産米の処置を行政府として決定しなければならないところに参りつつございますから、非常に浩瀚な意思表示をいただきましたことは、私どもとしてはまことに感謝にたえないところでございます。一面政府内に設けました食糧対策協議会の方針もございますし、十分検討いたして最善の措置を講じてみたいと考えておるわけでございます。ありがとうございました。
  60. 井出一太郎

    井出委員長 引続き北海道におけるひよう害の問題について調査を進めます。これに関して発言の通告がありますのでこれを許します。本名武君。
  61. 本名武

    本名委員 渡辺官房長にただいま委員長から御指摘のありました北海道のひよう害などについての御意見を一、二承りたいと思います。それに先だつて官房長として大体今次の北海道のひよう害についてどの程度報告を受けておられるか、どういう御認識に立つておられるか、現況を簡単に御説明願いたいと思います。
  62. 渡部伍良

    ○渡部説明員 本日の朝電報で報告を農林省の統計調査部に受けました。それによりますと、大体御承知のような時期でありますので、麦類、豆類、ビート等の被害が多く、そのほか一切の作物がやられておるのであります。現在までの被害面積報告は三千二百町歩あまりということになつております。麦類で四百五十町歩、燕麦がやはりその程度であります。それから大豆が七百町歩そのほかの豆類で六百町歩ないし七百町歩、おもなものを申し上げますと大体そういうようになつております。
  63. 本名武

    本名委員 大体私ども調査いたしましたところでは、現在なお調査中ではございますが、今の渡部さんの報告数字とは若干違つております。と申しますのは、それぞれ立場が違うということでなしに、時間的な関係があると思いますが、面積といたしましては、四千八百町歩というように考えております。そこでまず一応ただいまお話の調査を基礎といたしてけつこうでございますが、もちろんこれからさらに増大されるという見込みは私ども十分持つておりますが、二、三の点について御意見を承つておきたいと思います。  申し上げるまでもなく、ことしの天候の不順から特に今次の被害を受けました東北海道十勝地方は、低温、旱魃などによつて単なる冷害でなくして、まつたくの凶作型を呈して、農民初めわれわれひとしく憂えていたものでございますが、この地帯は昨年の水害あるいは暴風害に重ねて今回のひよう害を受けたという土地でございます。そしてその被害作物は今御指摘のようなものでありますが、一番困つた問題は、これを救済する資金の問題でございます。時期的に申しましてこれから再播いたしましても、御承知の通り大根を植えても、大根が半分くらい育つか育たないかというところである。麦を植えましても、燕麦を植えましても青がりをしなければならない。あげて収入を見られない家畜の飼料程度にしかならないというような実情であります。さらにこれを救うといたしましても、営農長資金は先ほど申しましたように、重なる災害によりまして枯渇いたしております。協同組合にいたしましても、ほとんどこれを救済する力はございません。さらにこれら累次の災害、特に一昨年の十勝沖震災によるところの災害以来、地方財政も非常に困窮を来しておる。これらの町村に対して、国といたしましても、従来用いられました災害救済の手段を強力にとつていただかなければならないことは当然であります。そこでまずこれを救済するについては、営農資金、経済資金の融通を急速にはかつていただかなければならない。閉会中でございますから、法律的な措置はできないといたしましても、少くとも近く開かれるであろうところの臨時国会において、ただいま参議院に参つておりますところの凍霜害に関係する特別措置法にこれを乗せていただくことがまず第一であります。さらにその間におきますつなぎ資金、これらについても特別の行政措置によつて急速に取運びを願わなければならないというような段階に立ち至つております。それにつけ加えて申し上げたいことは、この病害に重ねまして豪雨がございまして、このために農家の浸水家屋さえも見ておるという始末でございます。さらに運の悪いことには、大たつ巻が起りまして、家屋の一部、農家の一部あるいは畜舎等、が相当破壊されております。それに、これは別の問題でありますが、立木なども相当被害を受けております。このような状態にあります地方の実情を考えますときに、これはどうしても一刻も早く救済の処置をとらなければならないと痛感いたしております。道初め町村においては、それぞれ苦しい中にも処置はとると思いますが、政府として一体どういう処置を緊急にとり得るかを伺つておきたいと思います。
  64. 渡部伍良

    ○渡部説明員 被害状況が道庁から東京事務所あての電報によつておるようでありますが、その程度しかわかりませんので、現在とつておる制度以上にどの程度やるかということについては、なお道庁ともよく相談したいと思います。今までその他の地方に対してとつておる対策につきまして、特に営農資金等につきまして、この前の法律では、四月、五月の分だけが法律化されておるのでありまして、その後の分につきましては、法律はまだできておりませんが、現在法律があると同様の処置をとるということで、営農資金の配分等について県と協議を進めております。それと同様の措置を本件についてもとることにいたしたいと思います。それ以上の処置につきましては、もう少し被害状況、現地の状況、道の意見等をよく伺いまして検討したい、このように考えております。
  65. 本名武

    本名委員 大体御意見ははわかりました。そこで現在の被害状況からいいまして、私どもの知るところでは、今までの災害に比較して被害金額はそう大きくないというふうにお考えになられると思いますが、これは特に申し上げておきますが、先ほど申し上げましたような累次の災害と、しかも気候的、地理的に非常に片寄つたところでございますので、御処置だけは速急におとり願いたい。さらに融資の額といたしまして、損害約三千六百万円という総額が出ております。さらに融資をお願いしたいのは現在四千万円という段階であります。私どもこれ以上ふえないことを望んでおりますが、万一ふえても、それを十分御理解の上御処置あらんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  66. 渡部伍良

    ○渡部説明員 実情をよく調査いたしまして遺憾のないように処置したいと思います。
  67. 足鹿覺

    足鹿委員 いまの本名委員の御質問で大体尽きたと思うのですが、緊急心の処置をするというお話でありますが、被災地の数字によりますと、あなたの言われたものと少し違うのです。電報その他の照会ですから、なかなか詳細なことはわからなと思いますが、達観的に見て融資所要金額四千万円と言つているのです。これがそとになるかあるいは内輪でとどまるかはわかりますまい。今茨城その他におけるひよう害に準ずる処置をするという御答弁でありますが、その際の資金わくその他について十分余裕がありますか。
  68. 渡部伍良

    ○渡部説明員 これはこの前御説明申し上げたと思いますが、昨年度の水害、冷害営農資金のわくが、特に水害等については定まつたのであります。従つてわくの問題は心配ないと思います。それから現金の問題も、これは御承知のように、麦の供出その他で中金の方も大分目鼻がついたようでありますので、あとは道庁あるいは道の信連に、先ほどお話がありましたように、ほんとうに本腰を入れてやつていただかないと、問題が早急に片づかないのではないか、そういう点もよく道庁の方に相談したいと思います。
  69. 井出一太郎

    井出委員長 午前中の会議はこの程度をもつて打切り、暫時休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十六分開議
  70. 井出一太郎

    井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際委員長より各位にお諮りいたしたい問題がございます。それは去る七月二十三日、折からの冷害を危惧いたしましていもち病の大発生予想されておりました関係から、冷害に伴ういもち病の緊急防除対策に関する件を全会一致御決議願つたことは御承知の通りであります。しかるに最近関東以西において二化螟虫の顕著なる発生が出て参りました。さきの決議は、御承知のごとく政府もこれを取上げて、閣議決定をいたして一部実施を見る段階になつているわけでございますが、これだけでは減産防止対策として不十分でありますので、これを二化螟虫の分まで拡大をいたしまして、いわば再決議の形をとつて政府に申入れをしたい、こう考えます。そこで委員長手元にございます案文を御披露いたしまして、御賛成を願いたいわけであります。    稲作病虫害防除に関する件   七月二十三日、当委員会は、「冷害に伴ういもち病の緊急防除対策に関する件」を決議したが、政府はこの要請に基き、冷害対策の実施についての閣議決定を行い、特定地方対象とし、一部助成の方針を明かにした。勿論これだけをもつてしては不充分であつて、今や関東以西において二化螟虫発生顕著なるものがあり、病虫害の全面的防除を必要とする状況に相成つている。   よつて政府は、稲熱病防除薬剤についての助成措置を増強するとともに、病虫害全般の防除対策として大幅な農薬費の助成を行うべきである。  これが文案でございますが、よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、本委員会の決議とすることにいたします。よつて政府へ伝達をいたしまする方法その他については、委員長に第一任願いたいと思います。     ―――――――――――――
  72. 井出一太郎

    井出委員長 引続いて黄変米の問題を中心として調査を進めます。御承知の通り黄変米の問題は、国会におきましても、他の厚生委員会あるいは決算委員会においてそれぞれの立場から取上げて検討いたしておりますが、わが国食糧問題の解明について主管委員会でありますところのこの農林委員会におきましては、もつぱら食糧管理あるいは輸入措置、その他の観点から取上げて究明をいたしたいと考えます。質疑の通告がありますので、逐次これを許します。川俣清音君。
  73. 川俣清音

    ○川俣委員 厚生委員会あるいは決算委員会におきまして黄変米の問題が急速に取上げられ、その審査に入つているようであります。また一般の家庭におきましても、この黄変米の配給をめぐりましていたずらなる不安を起しておるようであります。本委員会におきましても、これらについて無関心ではおられないので質問を展開いたしたいと存じます。  大体外米の中でいわゆる有毒病変米として、いわゆる黄変米として、タイ黄変米、普通黄変米、イスランデイア黄変米、この三種類の病菌があることが、今日明らかになつておるようであります。その他のいわゆる病変米というものもあるようでございますが、有毒なものとして今指摘されておるのはこの三種類であるようであります。これにつきまして、政府のあえて配給をするという態度は、世間から非難を受けておるようであります。特にこの黄変米は、水分を十四、五パーセント含んでおりますと、船中においても、また日本へ参りましても、消毒前におきましては、さらに繁殖をいたすものでありますし、船積みしてからもその病菌というものの発生率は相当高いようであります。ことに船中における蔓延率というものは相当高いものがあるともいわれておるのであります。これだけの非難のあるものを、これだけの不安のあるものを、押しつけて配給をするということは、非常に不安を増大するものであるばかりでなくて、食糧庁の今後の食糧配給の上に非常な不信をもたらすものであると思います。第一、食糧庁一はなお国民の不安を除き得ない今日において、依然として配給を続けられるのであるかどうか、この点をまず第一にお伺いしておきます。
  74. 前谷重夫

    ○前谷説明員 黄変米につきまして、現在のようにいろいろ消費者の方に不安を与えるということは申訳ないと考えております。蛇足でございますが経過を申し上げたいと思います。二十六年、二十七年におきまして、黄変いたしました米のうちに、ただいまお話のございました三種類の有毒菌が発見されました。これにつきましていろいろな衛生当局とも協議をいたしまして、また学者間の意見も求めまして、黄色になりましたものにつきまして、一%以内は主食にまわしてもよろしい、それ以上四%まではみそ、しようゆ等の方面にまわす、それ以上は工業用アルコール原料としてまわす、こういう形になつて実施いたして参つたわけであります。その間われわれといたしきても、多く発生いたしますビルマ米につき政府とも交渉いたしまして、わが国のみにおきます特例といたしまして、黄色粒一%以上はこれを拒否するということが、昨年の十月にビルマ政府との間に話合いができまして、それに基いて実施をして参つたわけであります。従いまして、本年度においては、この黄変いたしましたものの輸入はほとんど行われてないわけであります。ただその後、国内におきます研究が進みますにつれまして、外見的には全然かわりがなくて、しかも細菌培養の結果によつて菌が発見されるという場合か生じたのであります。これにつきまして、厚生当局とも協議いたしまして、従来黄色につきまして一%以内ならば月に三十日配給してもよろしい、かようになつておつたわけでありますが、さらに慎重を期しまして、〇・二%以内のものについては月間配給してもよろしい、〇・三%から一%までは五日、一%から一・五%までは三日、一・五%から二・五%までは一日、こういう基準でもつて配給してもらいたい、こういうふうな要請がありますので、われわれとしてはそれに従つて配給いたしたい。ただ、今川俣さん御指摘のように、消費者に対して非常に不安感を与えておりますので、厚生当局とも連絡をとりまして、消費者の不安感をなくするように努力いたしたい。同時にわれわれといたしましても、現在のものにつきまして、燻蒸、再搗精等をいたしまして、できる限りその含有量を下げて配給いたしたい、かように考えているわけであります。
  75. 川俣清音

    ○川俣委員 食糧管理法から行きまして、配給の責任を負つておるということは事実でありますが、有毒なものを配給するという責任もなければ権利もない、これは明らかだと思います。そこで有毒か無毒かという問題がおそらく起つておるのだろうと思います。有毒だというところに不安があると思います。この不安を除く方法があるかないかという問題でありますが、もしもこれを無害であるというならば、これは実験されたらいいと思います。ところが有害のおそれがあるために、いわゆる人間的な実験はなかなか不可能だということになつておるので、動物試験によつて試験しておる。動物試験の結果有害であるという判、定が出ておる。これが人間に及ぼす場合において、一体どれだけの障害率を出すかということについては、まだ実験が十分でないことになつております。そこでもしも厚生省と農林省に、それが無害である、障害を与えないという自信があるならば、まず農林省と厚生省の首脳部、これを決定された人が試験台になつて実験してみる、それらの人たちが実験台になつて初めて国民の不安も一掃できると思います。これを決定された人々が、みずから進んでこの障害があるかないかという実験台に立つ用意があるかないか、その点をお尋ねいたします。
  76. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この結果は、ただいま川俣さんのお話のように、動物実験によつておりますが、御承知のように動物実験の場合におきましては、純粋培養によつてつておるわけであります。これは学者間でも異論のないところでありますが、現実のものと純粋培養をいたしたものと、その間に毒量の差がある、これは当然のことだろうと存じております。従いまして、動物実験のいろいろおいろなデータからいたしまして、人体に影響のない許容限度は幾らか、こういうことからいたしまして、今回の決定を見たわけでございまして、われわれといたしましは、その点につきましては人体に影響がないと信じております。従いまして、国民の誤解がそれによつて解けて行くなら。ば、われわれとしては、そういうことは当然にやつてもさしつかえないと考えております。
  77. 川俣清音

    ○川俣委員 これはみずから実験台に立つて、しこうして障害がなかつたということになりますならば、国民の不安はなくなると思います。従つて閣議決定されたからには、総理も当然責任があるので、総理以下閣僚及び農林省、厚生省の投入が、みずから実験台に立つのだということを声明できますか。これは声明できれば非常に不安を除き得ると思います。少くともそれだけの信念を持つて配給をしなければならぬと思います。国民全体に配給してみて、あとでそれを試験するというようなことは、まことに不届きな考え方だと思う。閣議で配給してさしつかえない。外務大臣はみんな食つておるの、だと言うからには、みずから実験台に立つて、少しくらい量の多いやつをやつても、それでさしつかえないのだということを言うならこれは別だと思う。それだけの、実験台に立つだけの用意がありますか。立つという声明ができるかどうか、この点について明らかな見解を御表明願いたい。
  78. 前谷重夫

    ○前谷説明員 まず第一にお答えしますが、この前閣議でそういう話が、農林省からは現物を示しまして、こういうものであるということを御説明したわけでございます。厚生省からは、従来の経過を御説明いたしたわけでございまして、特に閣議決定というふうな形をとつたわけではないことを御了承願いたいと思います。私といたしまして、これは厚生省とも協議いたしまして、人体に影響がないということを考えておりますので、その許容限度内で当然私は食べてやるつもりがございます。
  79. 川俣清音

    ○川俣委員 これは長官だけでは不安が除けない。閣議できめたわけではないにいたしましても、人造米のごときは奨励のために、これも閣議できめたわけではないでしようが、懇談の席に、閣議が終つたあとに人造米の試食をやつておる、そうしてまで奨励をした。黄変米も試食会というか、実験会を吉田みずからやつてごらんなさい。それだけの誠意を持つてものに当らなければならぬのに、ただ無害か有害か、この程度ならば大丈夫だろう、こういうことだけではこれは政治にならないのです。こういう態度を長官から閣僚に申し出て、あるいは懇談会の席上でもけつこうですが、農林省の首脳部及び厚生省の首脳部が、これらの試食会を三日間にわたつて実験するという声明ができるかできないか、またそれだけの熱意が持てるかどうか、この点だけひとつ御答弁願いたい。
  80. 前谷重夫

    ○前谷説明員 まだ私たちはほかの方の御意見を伺つておりません。私としましてはこういう決定をしてやつておりますから、試食会をして国民が納得できるなら、私としてはそういうことは考えておりす。
  81. 川俣清音

    ○川俣委員 ほかの人の意見を聞かれないというなら、国民全体が反対だと言つておるのです。だから賛成しておる人の試食会、障害実験会というようなものを催せられるはずなんです。あなたは無害だと信ずるならば、まず吉田に食わすことができると思う。ことに黄変米になりますと、これは神経作用に相当影響するそうでありますから、あるいは総理の病気がそれによつて急変するかもしれませんが、これはほんとうに実験をみずから、あなたが信ずるならば、また閣僚懇談会においてそれを信ぜられたならば、その信ぜられた人々はこの実験台になつてしかるべきではないか。信じない者に無理に押しつけるところに問題があると思う。一体食糧を配給しなければならぬということは、食えるものを配給する責任と義務を持つておるのです。これは配給を受けても食えないで捨てたり、またはその他に売らなければならないようなものを配給したということによつて責任は免れないのです。たとい無毒でありましても、恐れて食わないものは、これは配給したことにならないのです。配給ということは食糧を確保することなのであつて、食うことを確保することが配給であつて、これは食糧配給確保ですから、食えるものを材料として提供しなければならない。食えないものを配給いたしましても、これは食糧の確保にはならないということは、私が説明するまでもないことである。ですから、これは食えるのであるということを、どうしても実験されなければならないと思う。そうでなければ現在の不安のままにおいては食糧の用に供されない、捨てられるかもしれない、他に売られるかもしれないものを配給したということによつて責任は免れないと思うから、いずれかの処置をとらなければならぬ。あなたはどつちをとりますか。みずから実験台になる方をとるか、あるいは配給をとめる方をとるか、この二つよりほかないので、どつちをとるか。
  82. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この問題につきましては、現在厚生省といかにして国民に納得していただけるか、その納得していただける方法の中には、ただいまお話になつた点もあろうかと思いますが、厚生省といたしましては、早急にそういう点について検討いたしておりますので、それをわれわれといたしましても待ちまして、国民に十分納得のできるような措置をとりたい、かように考えております。
  83. 川俣清音

    ○川俣委員 今にわかに厚生省と御相談になつて、この程度ならばよかろう、この程度ならば不安であるということを決定されておりますが、前の黄変米のときには、それまでも実験せられないでおりながら、これは配給辞退があるものとして、特に広川農林大臣のときだと思いますが、格別なる値段で払下げをいたしましたり、あるいは競争入札でいたしました場合においても、あるいは有毒米であるからということでアルコール用にするとか、あるいは他の加工品にするのだということで、ときの相場、輸入価格を割り、配給価格を割つてこれを処分せられておる。まだ明らかにならないうちにも、不安だということで、しかも価格を下げて売られておる。ところが今日におきましては、この程度ならばよかろうということで、進歩して相当研究が積んだにもかかわらず、あえてこれを配給に移そうとされますことはどこにあるのです。前の方が失敗だつたのですか。べらぼうな安い価格で処分されたことがある。おそらくトン二万円を割つたこともあるのじやないかと思いますが、二万数千円、入札の場合は二万三千円、あるいは特別払下げのときは二万五、六千円のときもあつたと思いますが、今日よりももつと高い値段、おそらく五万円、六万円の価格で輸入されておつたときに、その半額にも満たない価格で処分されて、しかもこれは黄変米として、全部黄変米ではない、黄変米が幾らか入つておることを確認したというだけで、恐ろしいということで、こんな格安な特別な恩恵を与えてあえて処分をいたしておる。これはどういうことなんですか。
  84. 前谷重夫

    ○前谷説明員 先ほど申しましたように、大体この菌の性質は、菌自体には毒素はございません。菌から分泌いたしますものに毒素があるのでございまして、これが黄色くなるということは御承知の通りでございます。この点は従来からわかつていたのであります。従いまして一%以内は安全だということで配給いたしまして、それ以上のものについては他の用途に処分をいたしたのであります。今回におきましても、今度は全然変色いたしておらない菌があるということでもつて、さらにその基準を検討いたしまして、そうして考え方といたしましては、従来と同じ考え方でございまして、一定量以上のものはもちろんこれは配給いたさないわけでございます。ただ先般の変色いたしました――考えてみますと、大体変色したものの方が毒素が多いわけでございます。この基準を再検討いたしまして、ただいまのような基準にいたしたのであります。建前からいたしますと、この基準が従来の基準よりは厳格になつておるという形になつております。ただ御承知のように、一定の毒というものは、許容限度と申しますか、限度によつて毒作用が起るかどうかという問題でございますので、その限度をいかにするかということであつたのでございますが、いろいろ非常に不安な状態を生じておりますので、この点につきましては、そういう不安を解消するように、ぜひ何らかの措置をとりたいということを考えておるわけでございます。
  85. 川俣清音

    ○川俣委員 まだ安全感が証明されないときに、不完全な調査のままに配給するということは慎まなければならないことは、これは私が申し上げるまでもなく御承知のことだと思う。従いまして、今日の不安の中においては配給をしないということが大体表明されておるようでありますが、そのように理解してよろしゆうございますか。
  86. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この点につきましては、厚生省の方では、一応基準と申しますか、これは確実であるということであの線を出されたわけでありますが、ただこの出した線が国民に十分御納得願えないという状態でございますので、御納得願えるようにやりたい、かように考えております。
  87. 川俣清音

    ○川俣委員 さつきから同じことを繰返すのですが、納得の行かないという事態じやないか。納得行かせるには前に言われたような処置をとるのか、それとも配給停止をするのか、どつちをとるのだということをあなたに問うておるのです。一般は何といつても納得はしないのです。納得しないから非常に大きな不安を持つ。納得しないために今問題になつておる。納得すれば何にもこれは問題になつておりません。あえてこの暑いときに厚生委員会が開かれたり、あるいは決算委員会が開かれたり、あなたが汗だくだくになつて弁明をしなければならないような事態にはならないのです。不安がいつまでも解消されない、そこに問題が起きておる。納得どころじやない、それ以上に攻撃が出て来ておるわけです。納得や了解どころじやない、攻撃の矢が食糧庁に向けられておるわけです。これを納得させるには先ほど申し上げたような方法をとるのか、それとも配給をしばらく停止するのか、どつちをとるのかということを、再三あなたにお尋ねしておる。どつちかという御答弁があればそれでよろしい、次に移ります。
  88. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ただいま申し上げましたように、納得していただく措置をとりたい、それにはいろいろ方法があろうと思います。その方法につきまして今厚生省と具体的にいろいろ協議いたしておる次第であります。
  89. 川俣清音

    ○川俣委員 あなた方は納得すると言いましても、一般は納得しない。納得させる方法は、先ほど言つたみずから実験台に立つということになりますならば、これはかなりに納得する。あの一番食いものの、ぜいたくをする吉田ですらこれを食つた、しかも三日間くらい実験台に立つた、こうなれば、そんならおれも食つてみようかということになる。これは了解を求めるには何よりも一番いい方法なんです。ところがそれもやらない。ほかの方法でやるといつても、なかなかこれは了解つきませんよ。食糧庁長官くらい犠牲になつつて一般国民は納得しません。だからほかのものを食わせないでこれだけを実験台に出してみる。これをほかのものとまぜて食わせなければならぬということになりますと、一般の貧民層あるいは下級層におきましては、それ事態を食わなければならぬ事態もあるわけです。まぜて食うとかあるいはやわらかくして水分を多くして食うというわけには行かない事態もあるのですから、最悪の状態においてこれを試食してこの実験に立つてみる。しかも量を少し多くしてみて実験に立つ。これの覚悟がありますならば、これは百万べんの説明することよりも、ここでどんな弁明をすることよりも最も有効な方法だと思うのです。それをやらない限りにおいては、どんなに弁解いたしましたり、いまさら厚生省と試験の結果このくらいにになつたと言つてみたつて、おそらく国民は納得しないと思う。配給のあつたものは捨てるか、あるいはどこかに横流しして売るということになつて、あなたは一日配給したと言つても、実際は有効な食糧にならない。個人経済からいつても、社会経済からいつても、非常に不経済ではないか。国の経済をまかなうために個人の不経済をあえてやらせるというようなことは、これは政府の誤りであることは私が申し上げるまでもない。従つて不安のない形でどうしても配給しなければならない。それにはそれだけの実験をしなければならない。先ほどからくどくこれは申し上げておる。だからたつた一つの方法でけつこうです。役に立たないあらゆる方法より、有効な一つの方法でやつてみるお考えはありませんか。役に立たないあらゆる方法なんて、何も役に立たない。九十九の方法よりも、一つの方法でこの問題は解決する。これならばいいのです。その自信がありますか。その自信がなければおやめになつた方がよろしい。
  90. 前谷重夫

    ○前谷説明員 試験の方法としては、いろいろあろうと思います。その点ついては、私たちといたしましては納得行くようないろいろな方法があろうと思います。これは専門的にも方法があるわけでありますので、そういう点を検討いたしておる次第でありまして、私自身は試験台に立つ覚悟を持つております。
  91. 川俣清音

    ○川俣委員 それではおそらくこれは吉田にも食わせて、そのあとにおいて配給するというふうに私は了解いたしますから、そうでない限りにおいては、了解されないものと思つて処置願わなければならぬと思う。  そこで、午前中の当委員会における質問に対して、大臣は――これは私は決して言葉じりをとらえるわけじやございませんが、まだ確かめなかつたので、念を押すべきだつたと思いますが、時間がなかつたのであえて念を押さなかつたのですけれども、初めから黄変米とわかつているものを輸入するようなことは断じてやらない、こういう答弁であつた。初めから黄変米とわかつているようなものを輸入するような考え方は毛頭ない、黄変米と思わないのに、こちらへ来て試験した結果黄変米になつた、こういうふうに聞き取れるのでありますが、はたしてそのようでございますか。初めから黄変米であることを全然知らずに輸入して来たものであるか、どうか。あるいはこの程度の黄変米が入つてつてもさしつかえないと考えて輸入されたものであるかどうか、それとも今日の買付方法、輸入方法からいつて、これらのものが幾分入ることはやむを得ないというつもりの輸入方法であるか、断固入らない方式のもとに輸入されて来るのであるけれども、国内において試験の結果たまたま起つた、こういうのでありますか。いずれかであるのだろうと思いますから、御答弁願いたいと思います。
  92. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この問題は、先ほども申し上げましたように、私たちは、着色いたしましたものはこれは毒性を含んでおる、従来の許容限度が一%でございますので、これはタイ、ビルマにも適用いたしまして、それ以内のものにつきましては認めておりますが、それ以上のものについては認めておらないわけであります。ただ、全然かわりのない、変色のないものについて細菌培養の結果菌があるということが、昨年の暮れから、研究の結果生じて参つたのでございますが、その場合におきましても、その限度をいかにするかというふうな問題がまた検討されておらないわけでございましたので、契約は大体におきまして、タイ、ビルマともに、昨年の九月十月でやつたわけでございまして、一年間の契約としてそれを実施しておるわけでございまして、契約当初におきましては、私たちは変色したものはいけない、変色していないものには菌がない、こういう考え方で進んで参つたわけであります。
  93. 川俣清音

    ○川俣委員 これは重大な発言です。長官は変色したものは絶体輸入しない方針をとつておるのだ、こういう言明のようですが、商社あたりの意見によりますと、少々変色したものでも買わなければなかなか買いつけ得られない状態である、また買い取らなければならない状態である、こういうふうに説明しておる。非常な食い違いですね。商社はみずからが、この程度の着色のものは了解できると思つて輸入したということになります。あなたの方は断固としてこいうものは輸入させないということであつたということになりますと、これは商社の責任になつて参りますが、さように理解してよろしゆうございますか。商社は、あなたの言明と大分違うのです。少々そういうものも買いつけなければならないような状態のもとに置かれておるという弁解のようなんです。ただ程度を越すと困ると言われたというような弁明のようです。あなたの今の言明によりますと、または大臣の説明によりますと、そういう着色したようなものは断固買わない方針であつた。ところがあなたの方の委託を受けておる業者は、少々のものはさしつかえないと思つて輸入したということになつておりますが、これは非常に大きな食い違いです。責任は非常に重大なものになつて参りますから、明確にひとつ御答弁願いたい。
  94. 前谷重夫

    ○前谷説明員 その点は時間的な関係を御考え願いたいと思います。従来は御承知のように二十六年、二十七年におきましては、そういう契約も相手方ととりかわしておりませんし、また国際的に輸出割当の状態でございましたので、そういう事態もあつたかと思います。二十八年の十月から、つまり二十九米穀年度に入りましてからの状態は、私が申し上げましたように相手国政府との間にも一%以上のものは除去するということにいたしまして拒絶して、一袋々々検査しておりますからそのものは入つておらないわけでございます。ただその前の状態は、ただいま川俣さんがおつしやつたようにそういう事態があつた、これは私も従来から認めておるわけであります。
  95. 川俣清音

    ○川俣委員 今の長官の言葉も、また前と違うのです。大臣も黄変米の入つているものは断固買わない方針である、そういうのを買うわけはないじやないか、こういう御答弁だつた。長官はまた今までるる説明されたところによりますと、着色していなかつたものだから――変色していなかつたものであるからこれを入れた、たまたま実験したところがそういうものが発見された、こういう答弁だつた。ところが今の答弁になりますと一%までは認めて輸入した、こういうことでしよう、大分先ほどの答弁と違うのです。全然入つていないものを輸入する方針である。これは一%までよろしいという方針とは大分違う。一体どつちがほんとうなんですか。大臣やあなたのさきに答弁されたところによると、入つていないものを入れたがたまたま出て来た、こういう答弁なんです。ところが今のあとの答弁になると、一%までは認めておる。商社の方は大体そういう意向なんです。あなたの方は断回そういうものは入れない方針だと前に言われた。たいへんな違いなんです。
  96. 前谷重夫

    ○前谷説明員 私の言葉の足らざる点があつたかと思いますが、先ほど申しましたように、昨年の十月までにおきましては、黄変粒の規格につきましての協定はなかつたのであります。昨年の十月から一%以上のものについて拒絶するという相手国とのとりきめができたわけでありまして、その方針に従つてつておる。従いまして変色いたしました一%以上は配給しない、こういう建前で限度をきめておりますので、その限度によつてつておるわけであります。ただ現実の問題といたしましてはさらにそれを努力いたしまして、ほとんど変色したものは来ていないということを申し上げておるので、あります。
  97. 川俣清音

    ○川俣委員 これはまつたくないものと一%あるものとは非常な違いなのです。なぜかというと、私より長官の方が詳しいはずなのですが、船中においてもこの病変米が拡大することはあなたはお認めになつておるのです。商社はまた拡大することの了承求めておると思つておる。そう理解しておるようです。積んでからの変化食糧庁も認めておる、こう言つておるのです。従つて全然無菌な場合においては、そう急激に船中において、発生するとは考えられない。一%あつた場合において、船中の湿度または温度等によつて蔓延するといいますか、拡大することは、今までの例でも十分御承知のはずです。だからまつたく無菌のものを持つて来なければならぬ。黄変しておるものは菌を付近に伝染させるわけですから、そうすると拡大されて来るわけである、量がふえて来るわけである。だから一%持つて来ると船中において二%になり、あるいは三%になるかもしれない。あるいは量がもつとふえて来るかもしれない。環境によつて条件によつて拡大されるおそれがあるものである。従つてこれは一%あるならそれをむしろ隔離しなければならぬはずである。これは普通の食品衛生の上からいつても、ある品物において一点ありまするとすぐ隔離を命ずる、あるいは廃棄を命ずるわけです。全体に伝染するおそれがあれば全部まで廃棄を命ずる。これは御承知の通り、食品衛生法に基いて無菌のものまで廃棄させております。この中に何パーセントがあつたということによつて、すでにあるいは伝染する事態が起つたかもしれない、あるいはするおそれがあるのだということで全部廃棄させておる。これはあなたも御存じの通りである。すなわち一%あつたということになりますと、それが拡大されて来るということは十分あなたは御承知のはずです。だらか全然ないものを持つて来るのと、あるものを持つて来るのとたいへんな違いです。そこでそういう態度をもつて臨んでおるから商社に言い逃げされるおそれが出て来る。言い逃げの余地を好意的に与えておるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  98. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ただいまのお話でございますが、これはわれわれが意識的にに商社に便益を与えるためにそういうことをしたわけではないのでございます。つまり従来の黄変粒に対する許容限度が一%以内なれば主食としてさしつかえない、こういうことになつておりましたので、これは川俣さんも御承知の通り、相手国政府に対して交渉するのには、相当の苦労があつたわけです。二十八年度におきまして、大体半年以上かかりまして、十月に至りましてようやく先方の約束をとりつけ得た。こういう事情でございまして、これにつきましては、われわれとしましても外務省を通じまして、強力に交渉して、ようやくそういう了解をとりつけ得たわけでありまして、この点は御了承を願いたいと思います。
  99. 川俣清音

    ○川俣委員 私は了解はできないのです。向うで一%でありましても、来る途中において拡大することをあなたはお認めになつておるでしよう。商社はそう信じておる。だからそう信じさせた者が悪いのか、信じておる者が悪いのか、どつちかと聞いておるのです。どつちなのですか。
  100. 前谷重夫

    ○前谷説明員 その商社の話でございますが、これは時間的に、先ほど申し上げましたように、昨年の十月後と十月前とは取扱いが違つております。それで菌の問題でございますが、御承知のように本年度におきましては、ビルマからの買付は雨期の関係を避けまして、六月までに全部積み取るという措置をとつたわけであります。従いまして米の乾燥度も大体一四%以下ぐらいになつております。大体一五%以上でないと菌が活動状態に入りません。厳密に着地検査をいたしましても、その基準を越えておらないということになつております。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 小さいことはあまり質問したくないのですがね。それは確かに六月前の湿度や水分は一五%以下であろうと思われますが、船中の湿度は必ずしもそうではない。ことにばら積みなどをいたしておきました場合に、あるいはばら積みいたしました船底、あるいは麻袋等によつて包まれた場合におきましての置き場所等によりましては、変色がある、こう言うのです。向うがそう言わなければ別です。そういうのをあなた方がそのまま受取つているから問題にしておるのです。十月前と十月以後と違うのは明瞭なのです。あなたは今白い変色しないものから発生したと言つておりますが、変色したものもあるのです。ないと否定するのですか。現にあるのです。ただその率がかつての率よりも低いということは言えると思います。そういう変色したものがあるために、変色していないものにまで菌がうつつている、こういうことになつておるのです。これなどはあなたが否定できない現実の姿です。私はそういう詳しいことを今ここで問題にするわけではないのですけれども、どこに責任があるかというために、この問題を提起しておるのです。だからそれほど厳格にあなたは入れられておるのか、あるいは商社は、その厳格度をもつて一%まではいいということで入れておるのかという問題なのです。問題はむしろその点にあるのです。あなたが厳重に、あるいは大臣が言うように、一%で切つておるけれどもほとんど無色のもの、病害の起つていないもの、変質していないものを入れる、こういう方針なのか、一%という約束があるからして、一%まではいいという輸入方式をとつておるのか、どつちなんですか、こう聞いているのです。
  102. 前谷重夫

    ○前谷説明員 これは先ほども申し上げましたように、一%の範囲内においては相手国政府に対して認めているわけでございます。現実に着地検査をいたしております。着地検査においてもそれ以上のものは出ておりません。またかりに今後そういうものが出ましても、これは契約によつて賠償をとります。これは当然そういう契約をいたしているわけであります。現在着地におきましても毎回検査をいたしております。南方の米は、御承知のように麻袋で入つて参りますので、ばら積みはございません。船の関係におきましても、通風関係等を十分注意いたしておりまして、現在までのところそのわくを越えて入つて来ておるということはないわけでございます。
  103. 川俣清音

    ○川俣委員 了承いたしましたが、もしも一%以上変色したものがあつた場合においては、これに対して商社に対する賠償、または検査員が輸入港において黙過したような場合においてはどのような処分をなさるつもりですか。われわれが聞くところによりますと、ときには一%を越えておるようでございます。これはある程度船の中の変色として認めておるような状態なんです。もしもさような事実があつた場合においては、あなたはないと言うのだから、あつた場合においては、当然その処分をされると思いますが、ないならない、あつた場合にはどうする、ここをはつきりしておいてください。
  104. 前谷重夫

    ○前谷説明員 御承知のように、これは従来からも申し上げておりますように、一%を積地においてリジエクトするということになつております。現在の状態におきましては一%以上のものは来ておりません。ただこの点で問題になりますのは、現実に、お話のように、船中その他の事故として生ずるかどうかという問題でありますが、現在までのところは出ておりません。取引の形態からいいますと、規格の問題はロンドン・コントラクトその他からいたしまして、積地フアイナルとなつております。
  105. 川俣清音

    ○川俣委員 出ていないという言明でございますが、出た場合には適当な処置をとる、こういう了解のもとに次に話を進めて参ります。  この黄変米の買取りについては、商社は委託輸入――これは輸入先にもよると思いますが、ことに黄変米地帯のビルマにおいては政府取引でありますので、政府間の取引を委託しておるのであります。しかも手数料がわずか五%であつて、商社自体に言わせると、利益の少いものだ、こういうふうに言われておりますし、また食糧庁も非常に利益の薄い手数料で輸入業を行わせておるというふうに信じておるようであります。これは商取引からいいまして、五%のようなわずかな手数料であつて利益がないならば、この入札についてそんなに競争が行われるはずがないのです。ときには損害があるというのですから、損するようなことを商売人がやるわけがないのです。一体なぜこれをやり、このために相当運動費を使つてまで、あるいはいろいろ相当の人を頼んで食糧庁に運動するのか。これはあなたはずいぶん運動を聞いておられるはずです。あなたが長官になつた最初のころにおいて、相当の運動が行われたことは現に私どもつておる。一体これはなぜこんなわずかな手数料にかかわらず、運動してまで輸入業者になりたいのですか。あなたはどういうふうな見解を持つておられますか。
  106. 前谷重夫

    ○前谷説明員 結局におきまして、政府間の場合におきましては、価格、品質等がきまつて参るわけであります。それを一定の予定価格でもつて入札をいたしておるわけであります。これにはそれぞれののフレートの関係、その他の関係を見ておるわけでありまして、これは大量取引でございますので――ただいま手数量の問題がございまして、五%ということがございましたが、大体われわれが見ておりますのは〇・五%を手数料として見ております。そのほかに金利でございますとか、現実の実費はもちろん見ておるわけであります。これはフレートの関係等によりまして多少いい船を使うかどうかという点もありますが、大量取引でございますので、これはトン当りの問題といたしまして、私たちの見方によりますと、特に大きな利益があるとは考えられませんが、全然ペイしないということにはならないのではないか。ただ高いフレートのものを使うということがあります場合には、そういうことも起りましようし、また全然政府間の取引の価格で決定していないもの等につきましては、そのときの市価の変動というようなことがあるわけであります。そういう点は商社の方でどういうふうにとつているか、われわれとしては非常にシビヤーなつもりでやつているわけでございます。
  107. 川俣清音

    ○川俣委員 そこに問題があると思うのです。あなたは大いにシビヤーなつもりでやつておられる。そうしたら何も運動してまで、ことに〇・五%だということになりますとなおさらのことです。相当な人を使つてあなたのところに運動しなくても、またあなたのところばかりでなく、大臣のところまで運動して、かつて相当この中に入れてくれといつて運動されている。それほど厳格な利の薄いものであれば、三菱、三井なんかが、今度合同するときかわつたのだから、継続してくれといつて、あなたのところに頭を下げて行かなければならぬほどのことはない。ところが、これは米の輸入それ自体については、あるいはあなたが考えているように利のごく薄いものでありましても、これは他の輸出との関連において大いに利益が上る。あるいはかつてのようなこちらが売手市場だつた場合においては、買付の特別費用というものもあなたの方で出された。今度売手市場から買手市場にかわつて参りますと、リベートが考えられるが、このリベートは金のリベートでなくて、他の雑品の輸出というリベートで考えられているのであります。従つて日本の輸出業者、輸出量の多い商社ほどこの米の輸入に執着をいたしているのが現実の姿だと思います。これは何といつても否定できない。あなたが指定されております指定商社はこの方面における大きな輸出業者です。米が全体の輸出業の取扱量の何。パーセントに当るか、もちろん金額は大きいでありましようが、こういうことになる。利益から行くと赤字になるかもしれないが、それを十分カバーいたしている。従つて運動がはげしくなると思うのです。問題はここからなんです。無理にこんな黄変米を入れなければならないことはないし、あるいは日本で食糧が不足だといいましても、食えないものを入れて参りましても食糧緩和にはならない。不安を伴うようなものを入れて参りましても、これは食糧緩和にならない。そうすれば入れない方がかえつてよろしい。入れなければよろしいのにむしろわざわざ商社のために、商社を指定したために輸入しなければならないというような結果的なことになることは、好ましくないと思うのです。私はそう思いますけれども、長官はどのようにお考えになりますか。やめたらいいのじやないか。どうせ食えないもの、非難を受けるものであつて、配給したつて辞退をするものである。それなら何も輸入しなくてもいいのではないか。やはり何か商社の商業権というものを守つてやるために輸入をしておるのではないかという誤解を生じておるようであります。
  108. 前谷重夫

    ○前谷説明員 これは川俣さん御承知のように、昨年の不作のときに、実はわれわれ輸入計画を立てまする場合に、平年の百万トンに対しまして本年度百五十万トン、この輸入計画がはたしてできるかどうかということを、いろいろ御論議もあつたわけでございまして、大体御承知のように輸入計画といたしましては、そのときの内地の集荷量、生産量からいたしまして、集荷量に対する配給量の関係におきまして輸入計画を立てるわけでありまして、内地の作柄が順調であり、増産ができますれば、輸入量が減つて参るという形にいたしておるわけでございまして、特に商社のためというよりも、われわれといたしましては、想定した需給計画を遂行するために入れておることは御了承願えておると思います。
  109. 川俣清音

    ○川俣委員 食糧事情緩和のために入れている、これは食糧庁の持つております当然の義務であります。それは私は認めます。食えないものを入れなければならぬという責任も義務もあなたは負つていないと思うのです。食えるものを輸入して来いということを国から命ぜられていると思うのです。入れて来たならば食えないような、国民の食生活に不安を起すようなものを持つて来いということをだれも命じていない。食えるものを何か持つて来い、こういうことなんです。必ずしも米を持つて来いとかビルマから持つて来いということではないのです。タイから持つて来いということでもないのです。黄変米地域から持つて来いという指定を受けているわけでもない、指定したのは食糧庁長官であつて、国の要請は食えるものを持つて来いということを命じておるには違いないのです。あなたはそう理解していないのですか。タイからかビルマからどうしても持つて来なければならないと考えておられるのですか。食えなくても持つて来れば責任を果せると思つておられるわけではないけれども、そういう誤解があると思いますから、この際明らかに御答弁願いたい。
  110. 前谷重夫

    ○前谷説明員 輸入計画は、従来は御承知のように、その国の供給力と見合せまして国別に計画を立てておるわけでございまして、われわれはこれが毒素を含んでおる、こういうつもりで持つて来たわけでは毛頭ございません。つまり従来は白色で、肉眼をもつてしては全然どうにも見わけがつかなかつた、こういうようになつて、その中に研究の結果、いろいろ試験培養の結果、菌がある、こういうことを発見いたした次第でございまして、実はすでにビルマの点については買付が終つておりますが、タイには少量残つております。この買付は現在控えておる次第でございます。
  111. 中澤茂一

    ○中澤委員 ちよつとお先に失礼しますが、この前前谷氏に聞いた点を明らかにしておきたい。あなたはこの前、私のどのくらいあるのだという質問に対して、現在黄変米の手持ちは二百四十トンであるという答弁をしておる。そうすると、この際決算、厚生でやつておる新聞のあれを見ると、十一万三千トンある、そのち三万何千トンは配給してしまつてあと八万何千トンある、こういうのです。そうするとあなたが私に答弁した二百四十トンというのは一体何を基準にして答弁したのです。
  112. 前谷重夫

    ○前谷説明員 先ほど申し上げましたように、変色いたして黄色になつておりますものがその程度つたように私は申し上げたわけであります。つまり現在肉眼でもつて規格に合つて、しかも全然普通のものとかわりないものが、昨年の暮れからその中に菌培の結果出て来た、こういう形でございますので、そういう趣旨で現在十一万五千トンが細菌培養の結果今出て参つたのであります。この中には程度にそれぞれ違つたものがありますが、そのうち配給をいたしましたものが三万数千トンで、現在八万余トンが残つておる、こういう状態でございます。これはこの前もサンプルをお目にかけましたように、全然肉眼でもつては区別し得ないものでございます。
  113. 中澤茂一

    ○中澤委員 とにかくあと八万何千トンある、それはまだ食つていいか悪いか、結果的には何も証明していない、そういうものを配給するということは、これは国民が総反撃しているのは遺憾なことでありますが、前に私があれだけ言つたように一体責任をどうするのだ、責任の問題が全然解決していない。要するに黄変米を持つて来て国家に損害を与えた責任は、農林大臣がとつてやめるのか、あなたがとつて辞職なさるのか、とにかく四十何億という損害を国家に与えている、この現実は国民は承知できませんよ。この苦しい中の税金を、四十億も五十億もそういうことをやつて、その責任態勢ができていないから、あなた方のやることは全部でたらめなんだ。私に言わせれば全部といいますよ。だからはつきりと契約条項の中に、いけなかつたら商社が全部キヤンセルして、それを引取るだけの責任を持たせろというのです。その点については、あなたはいろいろな輸入方式の検討を目下しているというが、今どの程度まで輸入方式の検討が進んでいるか、この前の委員会のとき、あなたは目下検討していると言つたのだから、もう概要でも成案ができたと思うが、どういうような方式にしたらこのようなものか入つて来ないかという輸入方式の検討は、どういうふうにやつておりますか。
  114. 前谷重夫

    ○前谷説明員 この前申し上げました輸入方式の検討といたしましては、われわれとしましては、買付を着地検査基準という方式で、つまり日本に着いてからの問題で解決いたしたいということで検討いたしております。ただこの問題は、肉眼をもつてしては全然見わけ得ないわけでございますので、この場合におきまして新しい問題として、どういう方法でもつて菌の検査をやるか、こういうことを実は検討いたしておるわけでございます。と申しますのは、一つは菌は培養いたしまして、それによつて顕微鏡検査するわけであります。しろうとではなかなか見つけ得ないものでございますし、相当の設備なり技術者を擁して初めてやれるわけでございまして、従来われわれが穀物取引といたしまして検査いたしております、簡単に申しますれば、農産物検査という面からは全然発見し得ないものでございます。何か新しい科学的な方法で簡易にするか、あるいはまた現地でそういうような細菌培養をやるか、あるいはまたサンプルをとつて、サンプルによつてあらかじめ検査をしまして、そうしてそれによつて買うか、こういう問題を検討いたしております。実際問題としまして、現地におきましてそういう施設が持ち得るかどうか、また現実にそういう技術者を得られるかどうかという問題もございますし、それからサンプルの問題につきましては、御承知のように大体相当の準備期間がいるわけでございます。倉庫も予定いたしまして、買付数量の数倍の買しつける品物を特定いたしまして、それからサンプルをとつてこちらで細菌培養して、その結果買う、その場合におきまする相手国政府との交渉については相当問題があると思います。そういういろいろな方法によつて何とかできないだろうかという方法を今検討いたしておる次第であります。
  115. 中澤茂一

    ○中澤委員 この際委員長にお願いしておきますが、今後もこういうタイ・ビルマの米がずつと入つて来て、毎年国家に三十億なり四十億の損害を与えるということは、委員諸君のどなたもとうていこれは承知できないことだと思う。そこでこれは一体実際どういう方式でやつているのかという具体的な現地調査を、当委員会としてやる必要がある。精米はどういうふうにやつているとか、それから受渡しはどういうふうにやつているとか、買付商社はどういう方法で買いつけているとか、それから向うの集荷機関はどういう方法でやつている。場合によれば当農林委員会から現地に派遣して、向うの政府と、こういうことは困るという折衝も一応やる必要がある。そんな経費はおそらく大した経費じやないと思う。国家の大きな損害からいうならば大したものではないのですから、この際委員長におまかせいたしますが、ひとつ現地に派遣して、実情を調査する。場合によれば現地に日本の試験機関を設けることも考えなければならないだろうし、倉庫設備をつくることも、現地に行つてみればこれは明らかになる、だろうと思うのです。そういう点については、ひとつ委員長において善処されるよう希望いたして質問を終ります。
  116. 井出一太郎

    井出委員長 中澤委員の御要望は承りました。
  117. 川俣清音

    ○川俣委員 いずれにいたしましても国民の中に不安があるこれらの黄変米については、輸入いたしましても食糧の方に何ら寄与いたさないということだけは明らかになつて来ております。そこで食糧緩和のためには役立たないということが明らかであります。食糧緩和のために役立たないならば、多くの犠牲を払いまして、あるいはとうてい不可能な検査あるいは非常な日時を要するような検査、あるいは持つて参りましても培養試験をしなければ確定しないというような、金利、倉敷のかかるようなものは、輸入しない方がよろしいのではないか。これを持つて参りましても食糧確保の上に何も寄与しないのです。ただ損害が生じて来るだけです。赤字が出た場合において、これは国が負担をしないで、むしろ一般の消費者がこれを負担しなければならないような状態においては、輸入されない方がいいのではないか。この輸入をやめることによつて需給の上に非常な不都合が来るとは想定できないのです。現にこういうものを配給されないで、八万トンもある。しかもあるいは三万トンはすでに配給した。こういうような状態におきましては、無理をして配給しなければならない。拒絶にあうようなものを、しかも食糧にならないで他に転売されなければならないという、安く払い下げなければならないようなものを食糧として輸入しても、利益はひとつもないと思う。商社のためには寄与するかもしれないが、食糧緩和の上には何も寄与しない。これを現に買いつけておるものはいざ知らず、今後は買いつけない方針であるのかどうか、この点を承つておきたい。すでに買いつけられたものは幾ら、予定の中で残つておるものは幾ら地域別に明確にしていただきたい。
  118. 前谷重夫

    ○前谷説明員 本年度におきまする輸入計画は、具体的には二十九米穀年度の期間として出ております。従いまして二十九米穀年度といたしましては、いわゆる準内地米が約六万トン程度つております。あと部分は大体買付を了したわけであります。ただいまの川俣さんのお話のように、何らかの簡易なる検定方法、あるいはまた現地におきまする検査によりまして菌の検定ができないといたしますと、この買付につきましては、相当われわれとしても再検討しなければならない、こういうことになるわけであります。ただ御承知のように、大体現在までに百三十六万トン程度つておるわけでありまして、一応菌検定をやりまして出たものが十一万トン余で、総量から行きますと、約八%程度なつております。ただ問題は、いいものがこちらへ来て検査した結果はあるわけであります。いいか悪いかの判定が非常につきにくいということになるわけでございまして、この場合におきまして、全体的に輸入をやめるということになりますると、これはやはり全体の供給量が十一万五千トンじやなくして、総体の輸入量との関係でございます。米の需給問題としては相当まだ問題があるわけであります。そういう点がありますので、実はわれわれとしても、非常にその点について悩んでおるというのが現状でございますし、何かこれが打開についての方策を考えなければならない、かように考えておるわけであります。
  119. 川俣清音

    ○川俣委員 できるだけはしよつてお尋ねいたしますが、そうすると、すでにこの黄変米発生地域の分は買付を完了されたのですか。今の御答弁では完了された。そうすると、完了されたというところから積込みになつて全部入荷しておるのですか。私どもはそうは聞いていなかつたのですが、そうなると、非常に問題になるのですね。というのは、六月前に買いつけてこちらに来ておるというなら別ですが、まだ来ていないということになると、すでに雨季に入つておる。そこであなたの説明だというと、この六月までにみんな着いておれば問題はないわけです。向うを出発しておるならば問題はないわけです。買いつけておるということと、日本に入荷したということとは違うのです。その差がどのくらいあるのですか。この黄変米発生地域です。
  120. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ビルマにつきましては、契約でもちまして、六月までに積み出すということで、これは積出しを完了しております。雨季は入つておりません。タイにつきましては、ビルマとは大分雨季、乾季の関係は違います。これは大体九月から八月までの一年間でございます。買付は了しておりません。スリツプ・ペイの関係で数万トン買付を残しております。これはこういう問題がございますので、今買付を控えておるという現状でございます。このほかに、大体本米穀年度といたしましては、先ほど申し上げましたように、準内地米を除いては買付が完了しておるということになるわけでございます。ただ積込みの関係、到着の関係は、タイにおきましては買いつけてまだ到着していないものが残つておるということでございます。
  121. 川俣清音

    ○川俣委員 ビルマは全部完了したが、しかしタイは買いつけたけれどもまだ積込みが残つておるというふうにも答弁され、さらにまだ二十九米穀年度において、買付のわくはあるけれども買いつけていないというようなこともあなたは御答弁になつておる。これは速記録を見るとそうなつておるのですが、一体どつちがほんとうですか。
  122. 前谷重夫

    ○前谷説明員 説明があるいは足りなかつたかとも思いますが、米穀年度といたしましては、いわゆる需給の面では到着を中心にいたしております。しかし外貨予算の面では来米穀年度に多少スリツプ・ペイするものがあるというわけでございます。私が申し上げましたのは、二十九米穀年度関係におきましては、準内地米六万トン余りを残しまして買付が完了しております。ビルマにつきましては、六月までで積出しは完了しております。ただタイにつきましては、買付は行つておりますが、まだ積み出してないもの、到着していないものがあります。
  123. 川俣清音

    ○川俣委員 どのくらいありますか。
  124. 前谷重夫

    ○前谷説明員 大体七万トン余りはまだ到着していないのではないかと思います。
  125. 川俣清音

    ○川俣委員 普通に買いつけてから船積みするまでの間どのくらいの期間を置いておるのですか。かつて相当長い期間を置いておつた。いわゆるあなたの方では買いつけたと思いましても、商社の方ではすでに買いつけたとは思いましても、実際は買いつけておらなかつたこともかつてはあつた。これは明瞭なんだ。あなたの方ではすでに買いつけたということでいわゆる金融上の手当あるいは買取りの手当をいたしておりながら、実際は買いつけていなかつた。これをあとでキヤンセルされたとかいろいろな口実をつけておりますけれども、実際は買いつけていなかつたという場合はあると思うのですが、それはあなたの方の予算上の措置として買いつけたというのですか。実際商社がもう買つておる、こういう意味ですか。どつちなんですか。
  126. 前谷重夫

    ○前谷説明員 買付を完了したと申しますのは、われわれの予算上の措置としてテンダーによつて契約をした、こういうことでございます。
  127. 川俣清音

    ○川俣委員 そうしますと、どこに幾らということが明瞭になつておるのですか。どうもこれはタイでもビルマでもただ買いつけたということだけで、どこにあるのかということが明らかでないようであります。日本のようにどこの倉庫に幾ら、どこの倉庫に幾ら、こういうような買付方でないわけですね。従つて品物を見ての買付方でないのです。そこでいわゆる積込みの検査をするときに、すでに買つたものだ、持つて行け、こういう問題になつて、かなり無理な押しつけ方が行われておるということも聞くのです。これは現にあつたようでございます。そこであなたは買いつけたと言うから、国の財産として買いつけたというのは、どこにあるかということが明瞭になつていなければならぬりくつだ。明瞭になつておるのですか。実際はなつていないと思うのですが……。
  128. 前谷重夫

    ○前谷説明員 買付と申しますのは、買付契約をいたしまして外貨の割当をした。つまり政府としては買付の手配をした、こういうことであります。現実にはお話のように船積み前一週間に、タイでございますと相手国の財政部がどの精米所から幾ら、こういうアロケーンヨンになるわけであります。われわれは大体需給計画としては、外貨予算でございますとC級でございますが、同時に到着の関係を考えなければいけませんから、到着月を指定する、こういう形をとつております。ただビルマにつきましては、契約でもつて雨季をはずすという関係におきまして、六月までに船積みを完了するということを政府間の契約としてとりかわしておるわけでございます。これは実行いたしております。
  129. 川俣清音

    ○川俣委員 それで大体一わかつたと思うのです。結局ビルマ、タイのような黄変米危険地域からは将来買わないということはできると思うのです。それくらいのものは、国内で米でこれを補うということは非常に困難だと思いますけれども、今日の黄変米の不安を起した結果、消費者自身におきましては、こういう危険なものよりも、こういう不安なものよりも、あとでいつ身体に障害が起るかもしれないような危険なものを食うよりも、麦の方がいいという意見相当有力に出て来ておる。婦人会、主婦会あたりからもその意見が有力に出て来ている。そうなつて参りますと、確かに米としての供給は減るでありましようが、日本の麦は、これは長官専門じやないでしようけれども、去年の二十八、二十九麦の年度におきましても、三百万石以上の増産が可能なんです。日本の麦作からいいまして、五、六百万石の増産は手当いかんによりましては可能なんです。米の代用となる粒食麦としての大麦、裸麦はことに増産の余地があるのであります。米になりますると、土地改良をいたしましても、増産までには相当の年月を要しまするけれども、麦でありまするとただちに増産が可能なわけです。ことに副食物といわれておりまする野菜類は、相当値段が安くなつて参りますと、麦に転向しようという素地はすでにできておるのですから、そのときに施策がよろしければ、大麦と裸麦の増産は可能なのであります。また日本の気候、風土、土質からいいまして、大麦、裸麦は比較的危険のない農作物であります。それと違いまして小麦は、年々危険な作柄であるのであります。小麦はむしろ外国へ依存し、米代用の大麦、裸麦は国内増産で、この黄変米にかわるに大麦と裸麦で増産することは、決して不可能ではない。むしろ黄変米の処置のために苦労いたしましたり、あるいは向うに倉庫をつくつたり、試験場を設けたりする費用を節して、国内の麦の増産に力を入れまするならば、優に効果が上るのです。こんな不安の状態のものに対するいろいろな施策、いろいろな研究、いろいろな施設を要するよりも、この経費をあげて大麦、裸麦の増産に力を入れ、しかもちよつと手当をいたしまして、価格等の手入れをいたしまするならば、増産は期してまつべきものがあると思う。これは私の私見だけではない、おそらく農業に関係する者が一様に認めるところでありますが、長官は、このような見解に対していかなる御見解を持つておるのですか、この点をお伺いいたします。
  130. 前谷重夫

    ○前谷説明員 川俣さんも御承知のように、米のみをもつてしては、とうてい食糧の需給はできないわけであります。実はわれわれも麦が消費者に消費され、それがだんだん米にかわつて行くということは、もちろん方向としては望ましいことと考えております。ただわれわれ直接食糧の需給の面に当たります場合におきましては、どうしても増産計画なり、増産施策とその年度の需給との間に時間的なずれがあります。その年度における需給をどうするか、方向として増産計画をどうするか、これとの調整の問題もあるわけでありますが、麦が増産され、そして消費が増進されまして米にかわるということは、われわれも方向としてやつて行かなければならぬのじやないかと思つております。
  131. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますると、長官はほんとうに私と同じような見解を持つておられますならば、三十米穀年度まで長官がその位置におられるかどうか非常に疑問なのですが、といいますることは、この黄変米で相当責任が追究されておりまするので、率直に申し上げまして三十米穀年度までその地位におられるかどうかわかりませんが、食糧庁の建前としては、こういういわゆる黄変米発生地域の不安な米に依存しないという態度をとるべきものだと私は思う。かわられても当然引継ぎをされてしかるべきものだと思いますが、長官はいかようにお考えになりますか。私はあなたがおやめになるということを前提に申しましたが、やめなければなおのこと、かような処置をとらるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  132. 前谷重夫

    ○前谷説明員 あとの問題でどういう政策をとられるかということは、私が言うべきことじやないと思います。御承知のように、先ほど申し上げましたように、方向といたしまして、麦でもつて米にだんだん代替して行くと申すことは当然でございますが、また消費の傾向というものと、増産に対しまする時期的なその当該年度におきます食糧の需給というものとは、時間的なずれもありますので、やはり両面を考えて行かなければならぬというふうに考えるのであります。ただ国全体としてこれを考える場合におきましては、やはり貿易の問題等もいろいろな問題として、またこれに関連して起るだろうというふうに考えます。
  133. 川俣清音

    ○川俣委員 一体現在の配給が、一箇力において三十日あるいは三十一日を完全に確保しておりますならば、この外米も非常に有力な、食糧確保の上から、食生活の上から重要なものだと思うのです。今せいぜい大消費地においては十五日より配給してない、そのうちで黄変米のおそれのあるものは、全地域を見ても三日ないし三日半なのです。一体十五日以下ということになると、食糧を確保しておるなんて大きなことは言えない、十五日で、しかもそのうちの三日か三日半というものは危険なものを食わせるということになつて、それで食糧確保でございますなどということは言えないと思うのです。それならむしろ一歩進んで、来米穀年度から実施のできるような、確保のできるような麦の増産をはかつて、日本の米は、長官概算してごらんなさい、米で六千五百万と麦二千五百万、計九千万なんです。これに外国から小麦を入れて来て、パン、粉食の資源を確保いたしますならば、日本の食生活必ずしも不安ではない、そうなつて参りますと、あえて危険なこの地域からの米の輸入というようなものはおやめになつても、さほど食生活に不安を与えると思わない、三日食わせるよりも食わせない方が、むしろ現在においては不安感がないのです。こういうものを食わせられるほど不安感が非常に大きいのですよ。三日確保してやるというよりも、三日間あぶないものを食わせられる心配の方が今よほど大きくなつておる。そうなつて参りますと、こういう地域から買わないということに日本で決定いたしますと、もつといいものを横浜まで持つて来て、買つてくれないかという事態が起らぬとも限らない。その場合は検査して適当に買つてもよろしいだろうし、とにかく買わないということが必要ではない、だろうか、それだけの勇気を持てないのですか。これは勇気じやないと思うのです。どんなまずい政策にしたつて、不安なものを買つて来る以上のまずい政策はないのですから、それよりも一歩進んだということになりますならば、こういうことが考えられると思うのですが、長官いかようにお考えになりますか。
  134. 前谷重夫

    ○前谷説明員 食糧の管理の面からいたしますと、現在、米を配給いたしておりますときの全体の需給といたしましては、米麦合せて一月間の供給を確保しよう、ただ米につきましては統制をいたしまして、その半月分を確保しておるわけであります。この面におきまするわれわれとしての配給確保の責任はあろうと思います。ただ御指摘のように、そういう危険性のあるものについてどうするかという問題につきましては、本年度は大体買付を了しておりまするが、今後の問題としましては、外交交渉その他の面からいたしまして、慎重にこれに対処しなければならぬというふうに考えております。
  135. 川俣清音

    ○川俣委員 それは問題なんです。来年三十年度は買わないということをきめるならば、これに対して当然大麦、裸麦の増産対策を今ただちに講じなければならぬ。そうして三十米穀年度においては、米麦合わした完全配給ということをやる方針を立てることが必要でないかと思います。私はこの際米麦混食完全配給ということを打出すべきではないかと思います。これを打出さないで、内地米の配給だけを変更しようと思いましても、これは非常にやりにくくて反対のあることなんです。実行の不可能なことなんです。この実行の不可能なことよりも、実効をあげてしかも消費者に喜ばれる方法というものは、やはり米麦混合の完全配給ということが最も日本の実情に合う方法だと思うのです。一体一箇月のうち半分しか確保しておらないで、完全な食生活の確保なんということは言えないのです。あとは任意だ。しかも米の供出は生産県におきましては二十日の配給でありますけれども、これに外米を割当てるなんといいましても、これは拒否にあうことは明瞭なんです。ただ運賃をかけて向うへ持つて行く、また持つて帰らなければならないというような煩雑な、事務経費を要すると同時に、また輸送費をかける。日本通運を喜ばしたり、運輸の業者を喜ばせるだけであつて、何らプラスの面にならないのです。それならむしろ公平に、米麦混食一箇月を確保するということになりますと、これはむしろ米の生産県におきましても、全国的に米麦混食を遂行されるならば、この米の配給もまた同一であつても不平は出て来ないと思うのです。これをやらないで、ただ今の配給日数だけを均衡にするといいましても、生産県はこれに応じ得ないと思います。応じないで何になるかというと、結局は供米拒否になりまして、全体の需給のバランスがこわれると思うのです。私は今年度の米の集荷の面からいいまして、こういう食えないような外米を無理に押しつけるということになりますると、生産者であるところの農民にも不安が出て参りまして、いよいよ米を供出したあとにはこういう危険な外米を食わなければならないということになりますると、おそらく供米の実績も上らない結果になるのじやないかと思うのです。単に黄変米の拒否でなくして、外米全体に対する不信というものが内地米の高価となつて、貴重品となつて現れて、いよいよもつて供出に熱が入らない、こういう結果になることを恐れておるのです。今農林委員会で黄変米を取扱つておるのは、単にあなた方を糾弾するだけじやないのです。冷害の危険のありますることしの稲作について、どのような集荷対策を講ずるかということを真剣に考えなければならぬ。この一番大きな障害を与えておるのは黄変米なんです。今農村に行つてごらんない。黄変米というようなものがわれわれのところに来たらたいへんだという不安が、非常に大きいです。この精神的な障害を与えておりながら、本年の供米を完遂させるということはとうてい不可能ですよ。ところが日本の食糧事情から見まして、もつと多く供米をさせなければならない事態に追い込まれておるにかかわらず、大きな打撃あるいは障害を与えるようなことをみずからなぜやられるのです。この黄変米は単に都会の消費者ばかりではないのです。生産者にも大きな影響を与えておるのだから、すみやかなる処置をとらなければならないと思うのです。あなた方は供米と黄変米とは違うというふうな考え方をしておられるのですが、とんだ間違いです。これに対する御答弁を願いたい。
  136. 前谷重夫

    ○前谷説明員 第一点の米麦完全配給の問題でございますが、御承知のように麦につきましては、二十七年から自由配給制をとつております。これは全体の供給力の関係でそういうふうに移つてつたわけでございまして、米麦完全配給制をとるという考え方は現在いたしておりません。二十九年産米の集荷につきましては、御指摘の点もございますので、われわれとしましても作柄等を勘案いたしまして、目下これが集荷につきましていかなる対策を講ずるかということを検討いたしておる次第でございます。
  137. 川俣清音

    ○川俣委員 最後にあと一点で終りたいと思いますが、ほかの委員会の答弁を聞いておりますというと、黄変米と今年の供出とは無関係だというような態度で御答弁になつておるようです。これは厚生省が、この程度ならばよろしいと言うたとかあるいはこれは害がないと思う、そういうことで答弁されておる。この問題が生産者にどんな影響を与えてるかということを全然考えないで、ただ弁解すれば消費者が食つてくれるのではないかというような考え方の御答弁のようです。たとい都会の消費者がこれを押しつけられて消費いたしたにいたしましても、生産者はおそらくそれには同意しないと思う。それは自分の手近に、自分の身の近所に内地米が存在いたしておる。それをわざわざ売つて、しかも安く売つて、割高な、危険のあるものを買いなさいと言つたつて、これは常識ではとうてい考えられないことです。その影響を目下与えつつあるのです。しかも値段は、危険な黄変米でありましてもそう安くはない。それから考えるというと、内地米などは安いものである。貴重品じやないか、比較にならないじやないかという考え方が、生産者の中に出て来ております。これは非常に恐ろしい勢いで生産者の頭の中にしみ込みつつある問題です。こうなりますと、普通の方法、今までの法律の背景を帯び、強権のだんびらを振りまわしてもなお困難な集荷について、さらに一段大きな障害を与えておることを考えますと、すみやかに黄変米に対して処置をされなければならない。あなたはそのことを痛感されなければならぬと思うのですが、依然として厚生省はこう言つたとか、この前は厚生省に対してなかなか頑固だつたのが、いつの間にかくどかれて配給することに妥協した。国の財政の上から妥協させられたのだと思うのですが、閣議できまつたからやむを得ないというような答弁をしたり、しどろもどろですが、いずれにしても国民から見ますと、そんなものは弁解のようにしか受取れない。生産者に与える影響は甚大でありまして、集荷対策というものは非常に困難になりつつある。これを十分考えなければならないと思いますので、あとで本委員会がこれらに対する決議をまとめて、農林省へ要請することになろうと思いますから、十分御考慮あらんことをお願いして私の質問を終りたいと思います。
  138. 井出一太郎

    井出委員長 綱島正興君。
  139. 綱島正興

    ○綱島委員 長官にちよつとお伺いしておきたいのは、生産県の生産量の事情で配給における米麦の割合が、あまりに違い過ぎるようですが、これに対してはどういう措置をされようという考えをしておられるか、大体の方針を伺いたいと思います。
  140. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ただいま御質問の趣旨は、生産県における消費者の配給量の違い、こういうことでございますか。
  141. 綱島正興

    ○綱島委員 生産県と消費県の配給率ということです。
  142. 前谷重夫

    ○前谷説明員 これは米麦を統制いたしました時代におきましては、その県の生産高、不足率等考えまして、両方合せて三十日ということになるわけであります。従いまして従来から米と麦との割合、特に単作地帯でございますが、単作地帯においては全部米を食つてつた、こういう状態でございますが、米麦両方合せました統制の時代におきまして、だんだんその差を縮めて参りました。現在二十日、十五日と、こういう差になつておるわけであります。これは同じ消費者でございまするから、だんだんにその差を縮めて行くということは、方向として至当であると思います。ただ現実の問題といたしましては、食習慣等もございますし、また集荷問題で、現在県内におきまする関係において相当集荷上に影響するということも考えられますので、漸進的にやつて行きたい、そのために本年度におきましては、内地米の二十日ということを十五日というふうに切りかえて参つたわけであります。これは方向としてはだんだんに調整して参らなければならないというふうに考えておりますが、急激にこれを一挙に均一化するということも、また集荷の面その他の関係で考えて行かなければならないと思つております。
  143. 綱島正興

    ○綱島委員 この点は大分久しい日にちがかかつておりますので、私は均一にしていただかないと――米麦双方の配給関係等も多少は関係があるかもしれませんが、これはそうしていただかなければならぬ。今の漸進的にこれをやろうというお考え方には全面的に反対も申しませんが、なるべく急速に均一化していただきたいと思います。こういう希望を申し上げておきます。  さらに、今の外米の買付、ことに今度黄変米の入つて来た地域の買付については、これはいま少しやはり考慮されなければいかぬのじやないか。そうして今まで大体ABCの米の階級のうちの、Aの優秀米のワンツー、普通米のワンツー、Bの優秀米のワンツー、普通米のワンツーというものを除いたほかのものを買いつけておられるので、Cのワンツーだつたと私は思う。ここにちよつといろいろ困る問題が起つて来る原因があるように思う。そこでこれは少しかえて、やはり優秀米を買われる方がいいのじやないか。それから買付方も、今のような内地であらかじめ入札をしておかれるというようなやり方では、やはりどうも、役所自身は買付については賄賂をとつたのでも何でもないんだ、この通りだということには都合がいいかもしれぬけれども、国民経済から言えば、これはもうこれくらいばからしいことはない。こつちで入札されればその電報は向うに入つている。しかもタイにしましても、ビルマにしましても、大体米穀は国家管理になつておりますし、特にタイのごときは、聞けば多くは陸軍の機密費捻出の米を日本は買つておるのだから、そこにはいろいろな政策が行われると思うので、この負担を全部国民がするということは耐え得ざるところである。役所から言えば、この通り自分はきれいにやつておるのだというりくつになるけれども、損にはなるので、その点自信ある官庁の態度と公正な態度で、やはり有利になるような線で買付をするようにやらなければならぬ。この点については先ほど中澤委員からの希望等がございましたが、私もこれはやはり委員会からも出て行つて、一応調べて来なくちやいけないのじやないかという考えもしております。従つて血の通つた調査というか、もう少し内実に深い調査をしなければいかぬ。第一目的が、おれの方は賄賂をとるのではないということを立証する範囲調査ではどうも心もとない。いわゆる役人商売の一番の欠点、いい欠点のようでもあるけれども自分が傷つかざるためというようなことでは、どうもいかぬのではないか。この点はもつと長官は太つ腹に、不正は絶対にやらないが、しかしながらもう少し有効な方法で買付をする、こういうことでやつてもらわなければいかぬと思うのです。実は食糧問題というものは、これは非常に重要な問題で、今名前はちよつとわすれましたが、享保の飢饉のときにおつた老中が、あれは四年も続いてどうにもならない、そこで幾らかでも剰余米があつた藩はのろしを打ち継ぎをして江戸に知らせろということを言明しておつた。ところが九州地方が初めて豊作になつた。それで江戸にのろしが上つて、一体それはどこから上つて来たかということで、老中が早かごを飛ばして大阪まで行つたら、米がたくさんある。それを見て、もうこんなに米が集まつたのかと言つたら、いや、これは悪商人が今まで買いだめをして売り惜しみをしておつたのですよということを聞いて、実はこれは自分の政治力が弱くて、日本の内地にある米を食わせずに餓死者を出したことは申訳ないということで、その日から職をやめた。職をやめたばかりではない、殿様も老中もやめて、そうして剃髪をして坊主になつたのです。あの当時老中が坊主になつたということは、今ならばたいしたことはないと考えるが、昔はああいう大名などが坊主になつたということは、親子の対面もできないし、夫婦の対面もできない。これは自殺に次ぐものです。今あなたはちようど享保年間の老中みたような職にあると思つてつてもらわなければいかぬ。食糧というものについては本気で――あなたはうそ気ではないと思いますが、自分たちがなるべく非難の出ないような、どうしても非難を受けぬでいいような方法で、多少損になつてもかまわないということではなしに、多少の非難と誤解はあつても、国民に健全な米を当てがい、安い米を当てがつて、場合によつては職をなげうつてもいいというくらいの――そういう役目を引受けたのは因果なんだから、ちようど戦時中の歩哨に立つたようなものだから、ひとつそういう考え方で、これは食糧買付方法の――麦に対するものはそれほど問題はないようでありますけれども、米に関する限りは買付方法の大改革をやられなければいかぬのではないか、こういう考えをしておるのです。ここらで食糧庁は考え方をかえてやられなければならぬし、ことに川俣委員が先ほど言われた大麦、裸麦のいわゆる食糧麦の生産増強をはかるための用意をする、こういうことが非常に必要なことです。私実は去るほどの米価審議会に出て来ることができずに、八丈島で交通を持たなくなつて、あそこでとうとう延留しまして、帰ることができなかつたことを非常に遺憾としておるのですが、裸麦、大麦の対小麦比率というものを加算することができなかつたということは、実は昨年度の政策の結果、裸麦、大麦の生産増強、植付面積拡大になつた事情等を顧みない、実にこのたびの麦価決定に対しては、失当なる処置であつたと思つている、ほんとうに遺憾なことと思つております。実は私は池田氏にやかましく言つて、大体あれはあなたががんばつて政調会の方を整えてくれるならば自分は異議はないと言つたものを、私がとうとうあつちから帰つて来ることができずに、非常に残念なことと思つているのでありますが、どうも大蔵省もこの麦価決定等について、ほんとうの実態を握り得ずに、ただ変なことばかりやつておられるようですが、やはり食糧長官が熱意がないとかなんとかいうのではありませんが、しかし今後はその非難とかなんとかいうことを、なるべくよけようというような考え方で事に当たらずに、やはり自分が日本の食糧問題を解決するのだ、そうしてどうしてもこれはこの際やらなければいけない。ことにただいまございますような、日本の食糧輸入を拡大することによつて国際経済バランスの破綻を来しつつある事情等にかんがみて、特に食糧増産については至大なる考え方を持たなければならないし、増産の政策については、米麦価の決定というものがこの線とマツチして行かない限りは、決して食糧増産というものはできるものではない。これは当然この価格決定と関連しておるのでございますから、この点については特に私は食糧庁長官の一層の御努力を願いたい。あるいは一応決定した麦価の改訂とか、あるいはさらに来るべき本年度の米価決定等についても、一段の御努力を願わなければならない。これはひとり黄変米の処置だけでなく、十分にこの食糧事情を総括して、そうして水も漏らさぬような考え方と、それこそ堅忍不抜な努力と、国民の食糧に対する責任の遂行、これは上代以来今日に至るまで、諸般の政治はございますけれども食糧確保こそは実は庶政の根本をなすものである。これはだれが何と言おうが、あなたのお役目が、実は人類的に見ると一番重要でありますから、決して属僚であるとかなんとかいうことを考えないで、これはやりそこなえば坊主になるというようなつもりで、このことに当つていただかなければならぬ。先ほどからの御説明を伺つておりますると、なかなかいろいろ御説明になつてますけれども、問題は、国民が腹の中で聞いてみて、ほんとうに納得する線を答えるという決心をされる、そうして政策もそういう線から出してこられるということが第一番の必要事と思うのです。これは政党の関係とかあるいは朝野の関係とかいうようなことで律するには、あまりに重大な食糧問題でございまして、それこそ一家は主人より主婦に至るまで、地方は消費者より生産者に至るまで連なる、実に国民経済の基本をなす問題でございます。わけても今日では、日本の赤字輸入の根源をなし、輸出入バランスの破壊の根源をなす問題にまで発展しておりますので、この点についても、そういう意味で実は日本の置かれている非常な重大問題たることを自覚されて処理いたされんことを、希望するわけであります。特にこの際ほんとうに長官の腹にすえられておるところの御説明を、そういう点について願えればまことにけつこうだと思うわけであります。
  144. 前谷重夫

    ○前谷説明員 ただいまの綱島先生のお話は身にしみて私は拝承いたしました。ただその中で輸入の問題については、われわれもいろいろ考えております。ただ従来とは異なりまして、われわれが現在買つておりますのは、決して低級品ではございません。大体タイにつきましては、ブロークン五%から二五%までございますが、改訂いたしまして一五%以内の上級品を買つておりまして、下級品は買つておらないわけでございます。ただビルマにつきましては、ナツセンSMSというのが大体標準に相なつておりますが、それ以上のものを買つております。これは数量なり価格というものは全部ビルマ政府と大体協定しております。セイロン、インド等は標準品を買つておりますが、それ以上を買うように努力しております。輸入の点につきましては、いろいろと御注意がございましたが、われわれとしても十分検討いたしております。
  145. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。今綱島委員から、内地米の配給基準をなるべく均衡にするということに対して、長官は漸次そのような方向をとるということでしたが、これは無条件にそのままのむわけには行かないと思うのです。と申しますのは、おもに米の供出県は全国的に見ると単作地帯が多いのです。これは生産県になつておりますが、この単作地帯は麦の生産が少くて米の生産が多いところであります。だから安い米を出して、比較的不便なところから高い輸送費をかけて麦を食わねばならないということになる。そこで米麦完全配給ということになりまするとこの綱島説も私受取れる。私もそういう意味における均衡なら賛成なんですが、あるいは米麦完全配給に至らなければどうして一体代替の麦の値段を下げて米を供出させるか、あるいは配給させるか。配給基準を下げて行く場合においては、代替麦をどうして安くするかということを考えて行きませんと、手近な米があまり、高いやみでないのに入るなら、高いやみでない米と経費のかかつた麦では開きがなくなる。そこでむしろやみの米を消費して麦を食わない結果になりますると、供出に非常な影響が来るのです。麦を食わそうと思いますならば、やみ米と麦の時価との開きにおいて生産県においてはあまり開きがないということを念頭に置いてこの配給基準を変更しなければ、供米に大きな影響があることを一考慮していただかなければならぬということで決議も租の趣旨になつておりまするから、長官も御了承願いたいし網島委員も御了承願つておきたいと思う。
  146. 綱島正興

    ○綱島委員 実は麦と米との値段の開きでございますが、従来統計をとつてみますと、大体麦は米の七掛でございます。そして非常に凶年になると、米の値段の八掛くらいになつて来る。それから非常に豊作の年は大体六掛半くらいまで麦の値段が落ちて参りまして、大体において、豊年のときは麦の価段は米の値段よりずつと落ちて参ります。それから凶年になると麦の値段が割合に上つて来るのでありますが、ただいま供出の関係から申しますと、米は、昨年度はプールいたしますと一万四百円でございます。麦は、五千五百円でございます。有史以来の麦安、米高でございます。そこで開きがないなんていうことは、これはちよつと単作地帯の御意見のように受取れるので、もしそういう決議であるなら私は決議をかえてもらわなければならぬ。これは私にはちよつと受取れない御議論のように思えるのです。これはいずれ研究をしましよう。
  147. 井出一太郎

    井出委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  148. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めてください。  以上をもつて質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  149. 井出一太郎

    井出委員長 この際金子與重郎君より発言を求められております。これを許します。
  150. 金子與重郎

    金子委員 先ほど黄変米の問題をめぐり種々論議がなされたのでありますが、なお昨日の食料対策に関する決議と相まちまして、この際黄変米禍に伴う食糧対策改定に関する件について決議をいたしたいと存ずるのであります。以下その文案を朗読いたします。    黄変米禍に伴う食糧対策改定に関する件   本委員会は、八月十一日付をもつて、「食糧管理制度改正に関する件」を決議し、今日および将来に亘る食糧管理制度の在り方について意志を表明し、これを政府に送付したのであるが、黄変米に対する国民の不安も漸く熾烈化し、政治問題として重大化するに至つた。   よつて政府は、食糧農業政策上、左記の措置を講じ、もつて黄変米禍の絶滅を期すべきである。     記  一、一定基準以上の黄変菌の付着する外米は一切配給しないようにすること。右の「一定基準」については、改めて、学者の協力を得、すみやかにこれを決定すること。  二、主食として配給するに適しないと決定した外米を加工用に売払う場合には、国損を来さないよう、買付価格に近い価格で払下げるよう努めること。  三、外米による日配給基準量を逐次削減することとし、これに伴つて外米輸入数量を相当量削減すること。  四、右により減少する配給基準量は、主として飯用麦(大裸麦)をもつて代替することとし、混麦配給に移行しうるよう速かに検討に着手すること。これがため、大裸麦の供給力を増強するに必要な次の措置を講ずること。  (イ)廿八年産麦の価格改訂を速急に行うとともに、明年産麦価格に対する適切な措置を早急に明定し、増産意欲の増進にいかんなからしむること。  (ロ)土地改良、病虫害防除等増産施策を積極的に推進すること。  五、外米の買付方式について、このさい抜本的に再検討すること。  以上であります。何とぞ御賛成の上、本決議として政府に強く委員長から申し出、当委員会各位の意思が施策の上に実行されるよう要望するものであります。
  151. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま金子委員より提出されました黄変米禍に伴う食糧対策改定に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よつて本件は本委員会の総意をもつて決定せられましたので、委員長においてそれぞれ政府に伝達をいたす所存でございます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十九分散会