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1954-03-12 第19回国会 衆議院 農林委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十二日(金曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 綱島 正興君 理事 福田 喜東君    理事 吉川 久衛君 理事 芳賀  貢君    理事 川俣 清音君       秋山 利恭君    小枝 一雄君       佐々木盛雄君    今井  耕君       足鹿  覺君    井谷 正吉君       佐藤觀次郎君    中澤 茂一君       中村 時雄君    河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    松岡  亮君         農林事務官         (農林経済局肥         料課長)    林田悠紀夫君         農林事務官         (農地局管理部         営農課長)   丸山 文雄君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      新澤  寧君         農林事務官         (食糧庁総務部         検査課長)   松岡寅治郎君         通商産業技官         (軽工業局化学         肥料部化学肥料         第二課長)   原間 新作君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ――――――――――――― 三月十二日  委員佐々木盛雄君及び中村梅吉辞任につき、  その補欠として三浦寅之助君及び河野一郎君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員三浦寅之助辞任につき、その補欠として  佐々木盛雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十日  家畜保健衛生所法廃止反対に関する請願佐竹  新市君紹介)(第三一九九号)  同(船越弘紹介)(第三二二六号)  同外十五件(本名武紹介)(第三二七九号)  獣医師法の一部改正反対に関する請願佐竹新  市君紹介)(第三二〇〇号)  獣医師法の一部改正反対等に関する請願(只野  直三郎君紹介)(第三二〇一号)  小粟田原地帯開田のための現地測量実施に関す  る請願亘四郎紹介)(第三二〇二号)  両筑平地かんがい施設実地調査に関する請願  (熊谷憲一紹介)(第三二八〇号)  昭和二十九年度農林関係予算減額反対等に関す  る請願櫻井奎夫君紹介)(第三二八一号)  同(原茂紹介)(第三二八二号)  農業改良普及事業費国庫補助等に関する請願外  一件(片島港君紹介)(第三二八四号)  同(井谷正吉君外二名紹介)(第三二八五号)  同外一件(大石ヨシエ紹介)(第三三二九  号)  地方農地事務局事務所労働条件改善に関する  請願大久保武雄紹介)(第三三二五号)  災害復旧事業に従事する農地局定員増加に関  する請願大久保武雄紹介)(第三三二六  号)  食糧事務所機構縮小反対に関する請願井谷  正吉君外二名紹介)(第三三二八号) の審査を本委員会に付託された。 同日  農林予算に関する陳情書  (第一六一  八号)  農林予算確保に関する陳情書  (第一六一九号)  食糧増産関係費予算大幅増額に関する陳情書  (第一六二〇号)  農業改良普及事業に対する補助金に関する陳情  書  (第一六二一号)  農地災害対策に関する陳情書  (第一六二二号)  消費者米価等に関する陳情書  (第一六二三号)  獣医師法の一部改正反対陳情書  (第一六二四号)  装蹄師免許制度の存置に関する陳情書  (第一六二五号)  小清水町に営林署設置に関する陳情書  (第一六二六号)  熊本農地事務局存続に関する陳情書  (第一六二七号)  食糧事務所機構縮小反対に関する陳情書  (第一六四七号)  同  (第一六四八号)  同  (第一六四九号)  同(第  一六五〇号)  農産物検査法廃止並びに食糧事務所の減員反  対に関する陳情書  (第一六五一号)  家畜保健衛生所廃止反対に関する陳情書  (第一六五  二号)  同  (第一六五三号)  同  (第一六五四号)  同  (第一六五五号)  同(第一六五  六号)  同(  第一六五七号)  同(第一六五八  号)  同(第一六五  九号)  同  (第一六六〇号)  同  (第一六六一号)  同  (第一六六二号)  同  (第一六六三号)  同(第  一六六四号)  同  (第一六六五号)  同外一件  (第一六  六六号)  同  (第一六六七号)  同(第一  六六八号)  同(第一六  六九号)  同  (第一六七〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四四号)  開拓融資保証法の一部を改正する法律案内閣  提出第四五号)  肥料取締法の一部を改正する法律案綱島正興  君外二十四名提出衆法第一一号)  農業用電力に関する件     ―――――――――――――
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び開拓融資保証法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたし、前会に引続き質疑を行います。質疑の通告がございます。順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 農林漁業金融公庫についてお尋ねします。実は日本農業は非常に遅れておりまして、アメリカのカリフオルニアの農業や西独の農業についてみますと、農業一つの企画的なものがありますけれども日本では全然そういうことがないわけであります。戦争のために日本農業は十年間打捨てられておりまして、土地改良とかその他のことがほとんどできておらないので、そういうためにも農林漁業金融公庫というものは活用されるわけでありますけれども、本年度の九十五億くらいの金額で実際の要求額に応ずることができるかどうか、そういう点について政府見解を承りたいと思います。
  4. 平野三郎

    平野政府委員 お話のように、日本農業が遅れておると申しまするか、これは日本農業土地状況が極端な零細農の形になつておりますために、ある程度制約されておるわけでありますが、従つてアメリカ農業のように近代的な経営が困難である、こういう事情にありますので、何としても日本農業をさらに近代的に発展させる必要があるということにつきましては、御意見通りと存じます。そのために農林漁業金融公庫資金が少額に過ぎるのではないかということでございますが、これはお話通りでありまして、政府といたしましては、極力これの拡充強化努力をいたしておるわけであります。九十五億というお話でありましたけれども、これは本年度の繰入れの金でありまして、公庫全体といたしましては、本年度二百億以上のわくをもつて要望に応じたい、こういうことにいたしておるわけでございます。政府といたしましては、極力農林漁業金融公庫拡大強化努力をいたしておるわけであります。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 平野政務次官は私の隣の岐阜県でありまして、農業事情がどんなに悪いかということはよく御存じだと思います。私ども考えるところでは、日本農業保護政策をやらなければ成り立たない。特に零細農の多いわが国でありますから、そういう点でもつと保護政策をやらなければ、かつて農業恐慌があつたような段階が来るのではないか。特に愛知県のような事情ですと、私どもは木曽川の下流にありまして特殊的な事情でございますけれども米麦を主としてつくつておるが、だんだん農家経済的に惠まれなくなつて来ている実情であります。そこで土地改良耕地整理問題等については、農家自体が金を持つておらぬ関係上、どうしても農林漁業金融公庫あるいは補助金方法をとらなければ成り立たないというような現状であります。特に米価が安い関係上、そういう点について非常に不満を持つておりますけれども、やはり百姓のことでございますから、毎年々々、今年は今年はといつておる間に、だんだん悲惨な状態に追いやられて参ります。先日の足鹿君から農林漁業金融公庫金利の問題ついていろいろ質問がございました。金利が今の農家経済では非常に高過ぎるというのは、これは実際がそうでありまして、そういう点で、何らかの方法でもう少し金利を下げる方法はないかということと、それから御承知のように、今のような実情だと結局安い米を供出して、一番ばかをみるのは米をつくる百姓だけという結果になるわけでありますが、こういう問題について、何らかの調整をする御意思があるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  6. 平野三郎

    平野政府委員 お話通り日本農業は国が助成をする必要があることはまつたく同感でございまして、政府といたしましても、他の産業にまつたく類例を見ないような日本農業に対するところの保護政策を伝統的にやつておるわけでございます。お話土地改良につきましても、国営につきましては全額国庫負担、つまり五百町歩以上のものにつきましてはそういう措置をとつておりますし、また三百町歩以上の県営、これにつきましては国が五割、県が二割五分、すなわち七割五分の大幅の助成をいたしておるわけであります。その他小規模土地改良団体営等につきましても、やはり相当助成をいたしておるわけでありまして、しかも地元負担金の分につきましては、この農林漁業金融公庫を通じまして融資の形で助成をする、こういうふうにして政府といたしましては、日本農業につきましてはまつたく特別の保護をやつておるわけでございます。しかしもとより、さらにもつとやるべきである、こういうふうに考えておるわけでありまして、ただいまお話農業金利引下げにつきましても、政府といたしましては、日本金融政策全般を通じまして金利引下げ努力しておるわけでございます。特に農林金融につきましては、その趣旨から政策金融をいたしておるわけでございます。その政策金融の具体的な現われとして、この農林漁業金融公庫をつくりましてこれによつて特に低廉なるところの資金の供給をいたしておるのでありまして、さらにもつとこの金利引下げるべきであるという考えのもとに、本年は特にこの金融公庫のコストの引下げ、こういう趣旨から、信連に対しますところの業務委託という新しい方途を講じまして、これによつてさらに金利の低下をはかつて行きたいと考えておるわけでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先日も予算委員会分科会で問題になりましたが、日本林業につきましても、戦争中非常に濫伐されて、その後政府計画——吉田首相以下計画性がきらいなのであまりやつておらないと思いますが、スエーデンのような国に行きますと、林業や何かの問題につきましては、百年計画でやつておるわけであります。ところが日本実情行きあたりばつたりで、そういうような長期的な対策もない。それだからスエーデンなんかには百年間ほとんど水害というようなことがないと聞きましたが、日本ではちよつと風が吹いても河川が氾濫して悲惨な状態になるわけであります。一体林業などという仕事は、むしろ国営でやるべきだと思いますが、農林漁業公庫の中で林業融資を受ける金がどんな比率になつておるのか、政府の方からひとつお知らせ願いたいと思います。
  8. 小倉武一

    小倉政府委員 すでに御配付いたしました法案の関係資料の中に、二十九年度の予定、前年度及び本年度の申込み状況貸付決定状況も出ておりますので、それによつて承知願いたいと思います。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 戦争に敗れて土地が非常に少いので日本農林行政というものは非常に重大な役割を持つておるわけであります。ところがこれは言いにくい話でございますけれども、自由党の農林大臣はどうもやつつけ仕事が多い。農業漁業とも恒久対策を立てない。私たち非常にこれを残念に思うのであります。そこで例の漁業協定の問題とか、あるいは戦前持つておりました千島、樺太方面漁業問題とか、あるいは九州の西の方の中国とのいろいろ問題がありますが、以前は世界的にも日本漁業の地位は相当高かつたのでありますが、その漁場をなくしまして、今近海漁業は非常に悲惨な状態になつておることは御承知通りでございます。そういう点について農林当局はどんな対策をお持ちになつておるのか。また最近遠洋漁業が非常に盛んになりまして、これは莫大な資金を食うと思うのでありますが、そういう点についてもつと積極的な方法をとらなければ、このままではおそらく漁業というものはだめになつてしまうような考えを持つわけでありますが、そういう点について御見解を承りたい。
  10. 平野三郎

    平野政府委員 お話通り日本戦争によりまして幾多の水産資源を失いましたために、ただいま極力新たなる水産資源拡充努力をいたしておるわけでありまして、さようにいたしまして、最近におきましては、遠洋方面におきましては、南氷洋の捕鯨でありますとか、あるいは本年は特に北洋のさけ、ます漁場の獲得という方面につきましても、相当進展をいたしておるわけであります。昨年は三船団出漁を見たわけでありますが本年は独航船だけでも百七十隻というふうに非常に増加をいたし、また船団も七船団を許可いたしまして、昨年の倍以上の出漁を見ておるわけであります。あるいはまた遠く南方のアラフラ海方面につきましても、一そう進出をいたしておるというふうに、遠洋漁業につきましては、国際的にも漁業条約を締結いたしまして進んでおるようなわけでございます。近海漁業につきましても、お話のように非常に資源が枯渇をいたしておりますので、特に本年はこの水産の増殖のために、格段の措置を講じておるわけであります。詳細につきましては水産長官出席を求めまして、必要なる御説明を申し上げたいと思います。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後にもう一点伺います。国民公庫というのは非常にうまく行つておりまして、回収成績も非常によくなつております。長期に借りられる農林漁業金融公庫の方の回収状況がどんなふうになつておりますか。またこういう問題について、将来どういう方法をやつたならば、もつと農民の金融ができるかという二点を、最後にお尋ねしたい。
  12. 小倉武一

    小倉政府委員 公庫資金回収でございますが、御承知通り特別会計、それから公庫に返すようになりまして以来、発足になりましてから、長期資金ということから比べれば、まだそう年月を経ておりませんので、本格的な回収は実はこれからになるわけでございます。ただいまのところはむしろ予想よりも、契約上の償還期限よりも繰上げて償還をして来る、こういつたものが補助金関係もありますが相当多いようでございまして、焦げつきといつたような事態は、ただいまのところ見当りません。それから次の点でありますが、農家なり農村実情に沿うように金融のやり方をくふうして参るという点につきましては、一つはこの公庫長期資金関係、もう一つ組合金融関係、これを通じまして普通の短期の資金から中期まで、必要な措置を漸次拡充して参りたい、かように存じます。
  13. 井出一太郎

  14. 足鹿覺

    足鹿委員 簡単でありますが、この間の続きを二、三お尋ねいたしたいと思います。本日私の要求しました信連に対する業務委託方針なる文書をいただいたわけでありますが、その(1)の土地改良事業であります。「都道府県営でなく、且つ市町村の区域を超えないもの」、こういうふうになつておりまして、先日も経済局長はこの運営について御答弁なつたわけでありますが、こういうふうに切られましたのは、どういう理由でこういうふうになつておるのでありますか、それを一つ。それから私がこの間しつこくお尋ねをいたしました畜産共同利用施設ということについてであります。(6)にありますが、ことさらにここに畜産共同利用施設というふうに畜産の文字が冠してあるのですが、これは現行法でそうなつておるからそのものを引用されたにすぎないと思いますが、私がこの間から言つておりましたのは、タバコ乾燥場の例を引用し、かつ今度議員提案をいたしております肥料小規模配合等に対しても、当然この対象にしてもらいたい。こういう要望を込めた質問をいたし、その趣旨はよく御了承になつておると私は思うのでありますが、この中の畜産という言葉をとつて共同利用施設として、その内容に、農家経営上あるいは農業生産力増強食糧増産というものに関連する内容を、これに含めて行くというふうにならぬものでありますかどうか。ただ畜産共同利用施設ということであると、これは畜産というふうに限定されておるので、その点非常に範囲が制約されておる。こういう点ですが、この点をまず伺いたい。
  15. 小倉武一

    小倉政府委員 初めの土地改良事業についての問題でございますが、御承知通り土地改良規模につきましては、大小さまざまございまして、これが団体ということになりましても、なおかつさまざまございます。従いまして信連にやつていただくのは、そう大規模なものについてはいかがかと存じまして、あるところで線を引かなければなりませんが、一つ考え方は、事業金額で引くということもあると思います。そういう考え方もございますが、金額でいたしますと、事業計画の仕方によつては、同じ事業でありましても、金額を適宜増減するということになりまして、困る事情が生ずるのではないかと思うのであります。と申しますのは、信連委託する場合に、信連委託したものは、中金はそういう事業は取扱わない、そういうことで画然と線を引きませんと、いろいろ不都合が生ずると思いますので、できるだけ明確なところで一線を引けという要請も一方にあるのであります。従つて金額で引くよりも、むしろ土地改良区の大きさといつたような、簡単明瞭に把握できるところで線を引く方が、申請をする側にとりましても、またそれを審査する側にとりましても、便利だろうというふうに考えたのであります。ちようど一般協同組合につきましても、町村を越えるような大きな組合、あるいは連合会というものを省いて考える方が適当じやないかという考え方と、歩調を合せたのであります。それから共同施設でございますが、いわゆる共同施設というふうに公庫資金貸付上申しておりますのは、ここであげております(4)から(7)までを全部含んでおります。なおその他も入つておりますが、これを全部合せて共同利用施設、こう呼んでいるのでありますが、この共同利用施設の中にも、若干種類の違いがございます。たとえば電気導入施設ども、いわゆる共同利用施設の中に入つておりますが、これからは除いております。それから御指摘の、ここに列挙してあるもの以外の一般農業生産共同施設についてでありますが、これもただ共同施設ということでは非常に広汎なものが入つて参ります。各種農村工業に至るまで入つて参るのであります。従つてはつきりいたしますものとして、従来公庫資金貸付計画で特掲してある事業を、なるべくここにあげたのであります。ところで御指摘のように、肥料小規模配合であるとか、葉タバコ乾燥施設というようなことは、このバランスから申すと、むしろ信連委託した方が適当かと存じます。ただここに包括的にあげましたのは、ほかの各種の大きな工場施設というようなものも入つて参るおそれがありますので除いてあるが、御指摘の点はなお実施検討して参りたいと存じます。ただここに入つておりませんのは、従来公庫の具体的に列挙した項目に応じてあげましたので、その他に入つておりますのは、各種のものが入つておりますが、まだ具体的な資金計画と申しますか、わくもできておりませんので、省いているような次第であります。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御答弁中に、信連委託云々といろお言葉もありました。もちろんこれが信連固有仕事であるには相違ない。単位農協でも信連でも、これは当然資金さえあればやれるわけですが、やはりこういう相当長期にわたる資金については、先日も申しましたように、葉タバコ乾燥場の問題にしましても、単協の手に負えない、また信連に行くまでに、金融機関等が有利な条件で食い込んで来るというような点は、先般申し上げたので繰返しませんが、そういう意味で、この方針に拘泥するわけじやありませんが、共同利用施設の中に、いわゆるある程度金額の最高をきめて、そして今小倉さんが指摘されたように、何百万の工場とか、そういうものはまた別な措置をとればいいのであつて、実際単協で当然やらなければならぬことではあるが、必ずしも単協で間に合わない。なかなかそこら辺が運営上問題があるところなんで、私も現実にそういう問題にぶつかつてしみじみ感じているので、これはしつこいようですが申し上げているのですが、そういうふうに肥料共同施設といいましても、配合機の大きいのをつけたりいろいろ施設をすれば、これは相当金額になるが、簡単なものであれば、五、六十万か百万程度でやれるでしよう。そういつたふうにちやんと一つの標準をつけて、無限大にそれが伸びて行かないようにさえすれば、私は間違いなくやれるのじやないかと思います。そういう意味でここに——なるほど造林にしましても、あるいは牧野の改良事業にしましても、倉庫にしても、畜産共同施設にしても、これは共同施設には相違ありません。これは従来からもなつておるわけでありますが、私の言うのは範囲拡大、しかもある程度共同利用という今後の農村共同化なり復旧対策としていろいろ思いついて来ると思います。そういうものに対してやはり中長期の安い資金を貸してやるということは、大きな農村対策になると私は思います。その点はせつかく御検討中であると言われますから、あえてこれ以上は申し上げませんが、先日も言われたように、モデル地区的にでもやつてみたいという御意向もありました。これはまことにけつこうであります。そういつた点を十分に真剣に御検討になつて共同利用設備範囲拡大一定限度の貸出し条件のもとにおける範囲拡大という方向で御検討をお願いいたしたい。これはこれ以上お尋ねする余地もないと思いますから、強く要望しておきたいと思います。  最後に、この方針の三項に「信連右業務を受託するに当つて必要な機構要員等受入態勢の整備を図るものとする。」ということになつておりますが、この問題が論議されて附帯決議となり、政府が成案を急がれて今日一年間を経過しておる。この間相当の時間がたつておるのでありますが、まだ受入態勢に不十分な点がありますか、必要な機構ということは、何か具体的な方針をきめて信連にそれを指示され、その条件に満たなければ委託しないというふうにお考えになつておるのでありますか。そこら辺の受入態勢との関係における当局のお考えを承りたいと思います。
  17. 平野三郎

    平野政府委員 足鹿さんのお気持はよくわかるわけでございまして、そのお気持に基きまして、来年度からこの信連に対して業務委託をやらんとしておるわけでございます。さらにこれをもつと徹底的にやるように、こういう御意見で、政府もその点はまつたく同感でございますが、何分にも最初のことでありますので、とりあえずこの程度をもつて一応発足をいたしたいと思つておるわけでございます。やはり委託と申しましても、原則としては中央農林漁業金融公庫があつて、これが従来やつておつたわけでありますから、大きなものについてはやはり中央で取扱うことの方が、監査の面でありますとかいろいろな関係から適当であらう、従つて委託してもさしつかえないというような比較的軽微なものを委託してやる、こういうふうに考えておるわけでありまして、何としてもやはり適当なところで線を引くということが必要であると思うわけでございます。こういう趣旨でこの案をもつて出発をいたそう、かように思つておるわけで言いますが、これをだんだん実行して行く上におきまして、さらにもつと委託を進めて行く方が適当であると考えますので、漸次そういうふうに進みたいと思つておるわけでございます。この点は足鹿委員の御意見を十分尊重いたしまして、さらに検討を加えて参りたいと思つております。  なお信連業務委託にあたりましての必要な機構の整備ということにつきましては、やはりこういうことを新しく始めます以上はその必要を生ずることと思いますが、詳細は、これは事務的なことになりますので、経済局長から御説明申し上げます。
  18. 小倉武一

    小倉政府委員 御承知通り農協の信用組合連合会につきましては、従来こういう長期資金の取扱いは必ずしもなれておりません。一部もちろんやつておるものもございますが、そう大きく貸し出すということもやつておりませんので、この程度のことをやるにいたしましても、やはり長期資金を扱うといつた専門の係なり、課なりあるいは人材なりを養成して行くということがどうしても必要になつて参りますので、そういう趣旨をうたつてあるのであります。しかしたとえば何人の課でもつてどういう課をつくらなければいかぬ、こういつたことを形式的に条件づけるという趣旨はございません。こういう新しい仕事がふえるわけでございますので、これに必要な組織なり人員の拡充なり養成に努めてもらいたい、こういう趣旨であります。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 大体私の質疑はこれで終りますが、最後にこの信連への業務委託にあたりまして、一つの画期的な農林金融の方向がここで打出されることになるわけでありますが、従来ややもすればあまりにも堅実を旨とせられる結果、実際の資金を必要とする面に流れない傾向がある。これは農業手形の場合にも同様でありますし、特に貧しい農家がその対象になつておりまして、とても市中銀行では相手にしてくれない。それに対する一つの救済の手を延べて行くことでありまして、これがあまりにも厳に失することは、この業務委託の精神にもとることになろうかと私は思うのであります。現在の信連の運営を見ておりましても、ややそういう傾向が強い。先日も他の委員からも指摘されましたように、どちらかと申しますと、自分たちの系統機関であるにもかかわらず、預金者の保護という大義名分に隠れていたずらに貸出しを厳にする、また貸出しにあたつて自分の意に満たぬときには、暗にいろいろとサゼスチヨン程度ではなくして、もつと域を越えた行き過ぎも相当私はあるように思います。それは一つ金融機関の特権のごとく、やや常識化されておるような傾向もあるのでありまして、こういう傾向に対しましては、農村の枯渇した金融に対して、真に救いの手を延べて行くという精神に合致するような運営をするように、一段と指導に重点を置いていただきたい。暗示をする程度ではなくして、この間も福田君からもお話がありましたが、事業管理のような形になる。人事管理のような思想、何か金融関係の特権であるかのごとき行き過ぎが相当見えるのです。これに事業の性質上やむを得ぬ面もあるのでありましようが、しかし金を借りる者は常に弱味を持つており、もみ手をして行かなければならぬ立場にありますから、そういう行き過ぎでも諾々として応じなければ運営がつかない、こういう点で、何かそれが通常の行為のごとく常識化されておるという傾向が相当あるようでありますので、その点については特にこのたびの信連委託を契機として、従来のそういう弊風と言うと語弊がありますが、行き過ぎあるいは必要以上の干渉がましいことなしに、やはり借主の自主性を尊重して、民主的な、実情に即した運営になるように一段と考慮を払われて、慎重なる指導を加えていただきたい。これを特に要望いたしまして、私はこの農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する質疑を終ります。
  20. 井出一太郎

    井出委員長 他に御質疑はありませんか。——ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  21. 井出一太郎

    井出委員長 速記を始めて……。  他に質疑はありませんか。——質疑もなければ、この際討論を省略してただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。それでは農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び開拓融資保証法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  23. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決すべきものと決しました。  この際足鹿君より、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の提案がなされておりますので、発言を許します。足鹿覺君。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま議決されました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案につき、附帯決議を付するの動議を提出いたしたいと存じます。案文を朗読いたします。    農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議  一、農林漁業金融公庫に対する資金需要に備えて、資金運用部からの借入等により、相当額の資金源の増額を図ること。  二、農林漁業金融公庫業務を、都道府県信用農業協同組合連合会委託する場合、共同利用施設に関して信用農業協同組合連合会の行う資金貸付業務の対象を拡大すること。  三、農林漁業金融公庫、農林中央金庫の資金貸付に関連して、農林漁業組合、同連合会の人事、業務等に対し不当に干渉するが如きことを排除し、運用の適正を期すること。以上であります。提案の理由は別に要せないと思います。今までの質疑なり皆さんの御議論によつて、大体総意をここに結集いたしたので省略し、各位の御賛同をいただきたいと思います。
  25. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの足鹿君の提案に対しまして、御意見があれば発言を許します。——他に発言もなければ採決いたします。ただいまの附帯決議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よつてただいまの附帯決議を付することに決しました。  この際本件に関し政府の所信を求めます。平野農林政務次官
  27. 平野三郎

    平野政府委員 ただいまは、政府から出しておりますこの両法案につきまして御議決を賜わり、感謝にたえない次第でございます。なお附帯決議も拝承いたした次第でございますが、政府といたしましても、農林産業金融公庫わくがこれをもつて足れりと考えておるわけではないのでありまして、さらに一層これの拡大強化に努めたい所存でございますので、御意見を尊重いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと存じておる次第でございます。なおまた御決議の第二であります各地方信連等の運営につきまして、政府が不当なる干渉をなすというような考えは毛頭持つておらぬわけでありまして、従来も厳正、公正にやつて参つたつもりではございますが、一部政府の意のあるところを理解しない者に、あやまつてさような遺憾な点がなきにしもあらずということも考えますので、今後はこういう点につきまして一層監督を厳重にいたしまして、法律の適正なる運用に努力いたしたい所存でございます。     —————————————
  28. 井出一太郎

    井出委員長 次に肥料取締法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑に入ります。質疑の通告があります。河野一郎君。
  29. 河野一郎

    河野(一)委員 簡単に二、三の点についてお尋ねいたしたいと思います。最初に、為替のわくが非常にきゆうくつになろうと想定されますことは御承知通りでありますが、農林省は大体燐鉱石もしくはカリ等の輸入に対して、どの程度資金の割当を受けられる予定でおられるか、これは通産省にお尋ねするのが本旨と思いますけれども、農林省におかれても当然これらの点については御相談を受けられることもあろうし、御意見もあると思いますから、この際御説明を願いたいと思います。
  30. 小倉武一

    小倉政府委員 御指摘の外貨の事情からカリ塩なり燐鉱石の輸入について不安がないかということでございますが、私どもその点について、外貨の事情から肥料の輸入が減つて、その需給が不安になつて参りましては困りますので、本年度計画並びに実績等も参酌いたしまして、来年度の輸入につきましてもほぼ本年度程度のものが確保できるように、すなわち燐酸、肥料につきましては百七十五万トン程度生産量を確保するに必要な燐鉱石、カリにつきましては六十八万トン程度のものを確保するように、ただいま通産省と交渉中であります。
  31. 河野一郎

    河野(一)委員 交渉中はけつこうですが、われわれ新聞を拝見しましても、少くとも数億ドルのドル資金をチエツクするということにしておるようですが、肥料に関する限りはそういうことなしに行けるという確信がおありなんですか。
  32. 小倉武一

    小倉政府委員 農林省といたしましては、そういうことで最大の努力をいたしたいと思います。
  33. 河野一郎

    河野(一)委員 私は努力を伺つておるのじやないのでありまして、この際私の伺おうとするのは、たとえば砂糖も足りなくなる、油脂も足りなくなる、極端に言えば、外米の輸入でもこの際ある程度削減しなければならぬだろうという情勢にあることを、われわれ非常に憂慮するものであります。これも今のドル資金関係からすればやむを得ないのじやなかろうか、政府またこれを意図しておるということをわれわれは了承するのであります。そのときに、今お話のように燐鉱石とカリだけは行くというような考え方を、一体その通り受取つていいか悪いか。これは農林大臣がおられれば農林大臣から責任ある御答弁を承つておきたいのですが、一体それは間違いなくそれでよろしゆうございますかどうですか。それが行かぬというならば行くようなことを考えなければならぬし、いいならいいという建前でこれからの肥料問題を考えるのです。それが根本ですがいかがですか。
  34. 平野三郎

    平野政府委員 お話通り年度の外貨予算につきましては、全般として圧縮せざるを得ないということでございますけれどもしかしながら例外的に絶対確保しなければならない必要量のあるものもあるわけでありまして、今お話のものにつきましてはこれを確保いたしたいということで、ただいま検討を進めておる次第でございます。
  35. 河野一郎

    河野(一)委員 しかしもう検討の時期が過ぎて、第一回の閣僚懇談会もおやりになつたようでありますが、それらの見通しからして、今の答弁のような段階ではなくなつているんじやないかと私は思う。国会はまだ五月まであるのですから、きよう言うたことがこの国会中に、この間ははなはだ相済まなかつたというような答弁にならぬように——何もくだらぬやりとりをしてもしようがないのだから、実はこうならこうだということを言つていただいた方がいいと思う。これはできるならたいへんけつこうで、それならそのような質問をするのですが、この点いかがですか、もう一ぺん。
  36. 平野三郎

    平野政府委員 お話のようにもう時期も切迫いたしておるわけであります。昨日も外貨予算につきまして閣僚懇談会を開き、基本方針を決定いたしたわけでございます。この詳細の内容を発表するということは対外的の関係からいかがであろうかということで、まだ詳細の発表をするということは差控えておりますけれども、この中におきまして、お話のカリと燐鉱石につきましては、大体ただいま申し上げましたような線が確保できるという確信を持つておる次第でございます。
  37. 河野一郎

    河野(一)委員 わかりました。それならばたいへんけつこうです。非常に貴重なドルの中から、大体前年度通りのカリと燐鉱石を確保しようということですが、それは非常にけつこうだと思います。そこで次にお尋ねするのですが、今年度通りと申しますか、今年度通りのものをもつていたしましても、カリと過燐酸が必ずしも農村に安く配給されるとは考えられません。むしろ硫安については、比較的妥当ではないかと思われるのに、カリと過燐酸については、海外から相当に安く入つて来ておりながら、カリのごときは輸入の価格と地方の農村の実際の入手価格との間に非常に開きがある。それから過燐酸におきましては、燐鉱石の輸入については相当のドル資金の割当をしておるにもかかわらず、過燐酸の農家の入手価格は決して妥当ではないということは、肥料関係しておられるお役人さんは全部お認めなると私には思う。これを要するに、どうしてそういうことになつておるかということは、すべて農林省の責任でありまして、こういうふうに資金が得られて、そうしてそれが生産過程に移つて品物ができておるにもかかわらず、この配給がうまく行つておらぬということは、全部これは農林当局の責任を負わなければならぬところだと思う。しからばそれはどこに悪い点があるかというと、第一に一番いかぬことは、配合肥料の製造を手放しにしておくことだと私は思う。化成肥料に化けさせて、そうして貴重なカリや過燐酸を不当な価格で農村に配給されておる、売買しておるということが、一番大きな点であることはいまさら私が申し上げるまでもない。今ここに配合に関する肥料取締法の一部を議員提出で改正しようとすることは、これらの点についてもわれわれとして大いに考える点があるからであります。ただ営利のみを目的として、その利益も妥当な、公正な利益ならばよろしいのでありますけれども、化成の名によつて農村をいたずらにごまかして、そうして不当な価格で販売しておる。今日肥料といえば、むやみに化成だ化成だということで、三要素をでたらめに化けさせて、そうして価格も、成分においてもちつとも違わぬものを高いようなことを言つてつておる。この事実について一体農林当局はどういうお考えを持つておられるか承りたい。
  38. 小倉武一

    小倉政府委員 お話のように、カリ肥料それから化成肥料等につきまして、他の硫安等と比べまして、そこに若干妥当でない価格が形成されておるのであります。その点については、私ども同感でございます。
  39. 河野一郎

    河野(一)委員 通産省の当局が、今のような御答弁ならば幾らか了承できる。しかしいやしくも肥料を共管にしたのは、農村の利益を擁護するために、農村に不利益な、不当な肥料が販売されないために、農林省が重大な肥料に対する発言権を持ち、関心を持つているのです。にもかかわらずただいまの御答弁のように、若干遺憾の点があるというようなお答弁で、そのままで了承するわけには参らぬ。若干遺憾な点があるならば、その遺憾の点については、これからどういうふうなことをして行かれようとする意図があられるか、一体その点について、どのくらい不当、不公正に販売されているかということの御調査があるか。その調査の点については、今ただちに承らぬでも、後日書面をもつてわれわれに資料を配布してもらえばけつこうです。すなわち化成肥料として、どの程度の貴重なカリや過燐酸がその方面に使われているかしかもそのカリや過燐酸が使われた化成肥料が、どのくらいの数量とどのくらいの価格で農村に販売されているか、そのために単味でこれが地方に流れて行き——今回われわれが意図しております改正のように、地方の土壤に即応するような配合にしてこれが販売されるのに比べて、一体どのくらい農村に一年に不当な価格で売られ、従つて逆に申せば、農村からどのくらい不当な搾取をしているかという点等についての資料を、後刻いただきたいと思います。資料はそれだけでよろしゆうございますが、この際これらに対してどういうお考えか伺いたい。先般来私伺つておりますと、肥料についてこの際いろいろ法律をつくつて行こうという政府お話ですが、その中にも、一番大事なこの配合であるとか、化成であるとか、カリであるとか、過燐酸であるとかいうものについては、さしあたり政府は全然お考えないようである。かえつて今日の現状から見れば、硫安のように、むしろ不当と言えない価格で販売されているものについてのみ汲々として、そして農村の側、国家から見れば一番大事な、今お話のように、ドルの資金の足らないときでも、これは重要なものだから、これだけは前年度通り割当てたという、それだけ一生懸命になつて割当てるそれがしり抜けになつてしまつて、いよいよこれを加工しもしくはこれを農村に販売して農村が入手するときには、カリのごときは、一体輸入価格と農家の入手価格との間の開きがどのくらいあるとあなた方は考えておられるか。むろん御調査があられると思う。これだけドルを使つて輸入したカリが、現在のようなでたらめの値段で農村に販売されておつて、これに対して何らの手をつけようとなさらない。しかもこれの相当の部分が化成の原料になつて、とんでもない方に化けて行つても、とんでもない価格で農村に売られていることについても、何らのお考えがない。今日の農林省の肥料行政に至つては、実に私は心外にたえないと思つている。一体農林省は何をしているか、いまだかつてこれほど肥料行政が低調で、これほど業者の専横な状態にまかせている時代はなかつたと私は思う。これに対して一体どうお考えになつておられるか、この際当局の御所見を承りたい。
  40. 平野三郎

    平野政府委員 お話肥料全般にわたる根本問題でございまして、御意見よく政府としても承知いたしているわけであります。今御要求の資料につきましては、詳細後ほど提出いたすわけでございますが、政府といたしましては、肥料問題につきましては、国会におきましても、先般来いろいろ御議論のございました硫安については、これの調整を期するべく、すでに四国会にわたつて臨時硫安需給安定法案を御審議願つておるのであります。ただいまお話のカリ肥料等につきましても、何らかの方法を講じなければならぬということで、先ほど申し上げましたように、まず第一にこれの輸入を確保するということで、この点に努力をいたしておりますが、さらにこれの適正標準価格というものを算定し、あわせてこれの販売の段階別価格も推定いたし、これを指示いたしまして、適正な運用を期するように努力いたしているわけでございますが、ただいまのところこれを基本的に、配給統制をするといとところまで考えておりませんが、一部遺憾な点もあることは承知いたしておりますので、これらの点について何らかの善処方を検討しているわけでございます。
  41. 河野一郎

    河野(一)委員 私は配給統制をやれという議論を絶対しているのではない。しているのではありませんが、相当のドルを貴重なドルの中からさいて、こういうふうに輸入する、この量は決して少い量ではありません。相当の量であります。この少い量でないものが、どうしてあなた方が指示される価格で販売されないかという原因は、一体おわかりになつておりますか。平野さんはおそらく御承知ではないかもしれませんが、ほかの事務当局はわかつておいでになるはずなんです。具体的に申せば、化成にとられ過ぎるから単味が高くなり過ぎる。一旦単味として流れて行つたものを、また東京まで持つて来て、化成の原料にする、配合の原料にすることは、事務当局はおそらく御承知でしよう。そういう実情にあるのだから、なぜ徹底的にこれに対する対策をお立てにならないのか。たとえば過燐酸にしてもそうです。過燐酸を配合用の原料と化成の原料に使い過ぎるから、もうかる方に肥料製造業者が持つて行き過ぎるから、単味が高くなつて農村が今日困窮しておる。こういう実情をおわかりになつておりながら、なぜおやりにならないのか。簡単にできることです。どうすればできるか。配合について押えればいい。化成について押えればいい。なぜ手放しに化成や配合をでたらめに許して、でたらめにやらせるのか。あえて統制ういうめんどうなことをやる必要は毛頭ない。もう一つ進んで申せば、業者に為替の割当をなさることが第一悪い。あなた方はメーカーをあまり助け過ぎる。メーカーとの線が深くなり過ぎる。私に言わせれば、役人とメーカーの線が強過ぎる。せつかく割当てた為替だから、どんどん輸入して、どんどんつくればいいけれども、つくらないからいけない。そして実績によつて業者割当をするものだから、業者が手かげんをして、足りなくなるころにこしらえて出してやる。いつでも足りない状態にして、一年間を通すというようなことをして、業者によるところの配給統制を行うようなかつこうをしておるということに欠点があることは、私が申し上げるまでもないことです。業者の結合、業者の組合だけが強くて、われわれ農民の側からのこれに対して要求する発言権が従来弱かつた。それで今日のような状態になつている。こういうことを一つ一つわれわれが申さなくても、そのために農林省が肥料の共管をして、あなた方の先輩が十数年来もしくは数十年来苦労して、通産省だけにまかせておいてはいけない、肥料については農林省が厳重に発言しなければいけない、農村のためになるようにしなければいけないということで、厳重にやつて来られた。その従来の肥料に関する政策、肥料に関する態度、肥料に関する歴史を、今日の農林当局は汚しておられると申し上げて私は過言でないと思う。今日ほど業者が横暴、かつて、わがままで、もうけるだけのものをもうけて、農村に高い肥料を売つておる時代はないと私は思う。あなた方が苦労して為替をとられても、このとつた為替は全部農村のためにならずして、結論的には一部生産業者の利益を擁するためにとつておることになつておると申し上げても過言でないと思う。これに対してすみやかに適当な処置を講ずる御意図があるかどうか。この点を承りたい。
  42. 小倉武一

    小倉政府委員 主として過燐酸についての御質問でありますが、これが化成の関係においてせり上げになつておるという実情も、経済的な問題としてあろうかと思います。御指摘のような実情でもつて、カリなり燐酸の肥料が高くなつておるということも、ごもつともだと存ずるのであります。私どもといたしましては、ただいま行政的にできる範囲のことを実はやつておりまして、化成につきましては、昨年来業界の自粛を促しております。最近の調査によりますと、若干は値下りしておるのではないかと認められます。カリにつきましては、先ほど政務次官からお話のありましたように、一種の行政的な指導価格を公表いたしまして、これ以上にならぬように指導的な措置を講じております。こういつた措置によりますだけでは、あるいはなお不十分でないかというふうにも考えられます。従つてなおこれらの措置の実績も考えまして、今後の推移とあわせた上で、御指摘のように外貨の割当との関連において必要な措置を講じて参りたいと存ずるのであります。
  43. 河野一郎

    河野(一)委員 今後の推移を見る段階じやないのじやないですか。過去の実績によつてとかくそういうふうな苦杯をなめておることは御承知だろうと思う。これをこういう法律を新しくつくつてこう取締つて行くとか、こういうふうに指導して行くというなら、その推移を見てしばらく待ちましようと私は言う。しかしこの議会に今議員から提出した、地方で配合をやらして、利益を決して中央に奪われないようにして行こうという法律案以外に、あなた方に何か適当な措置があるのですか。何もなしに、従来のことは万全を期してやつておるので、もう少し推移を見るというのは了承できない。従来悪いということは認めておられる。そうして従来は万全を期してやつて来たんだ、万全を期してやつておつたが従来悪かつた、それじやこれから推移を見ようといつたつて、見ようがないじやありませんか。この取締り規則を一部改正して、これで万全の処置が講ぜられるとは私は思わない。こういうふうなものを議会の賛成を得てやるということならよろしい。せつかく為替をこれだけとつたところで、さつき申し上げたように化成肥料をつくつている。化成肥料をつくるというが、化成肥料はそんなすぐれたりつぱな肥料だとお考えになつておるかどうか。化成にすることによつて肥効率が上るとお考えになつておるかどうか。化成肥料はなければならぬものとお考えになつておるかどうか。そういうふうにして、今のように単味で行くよりも肥効率が非常によくなつて、これによつて収穫率が上るとお考えになつておるのかどうか。私はそういうふうに思わない。しかしこれは私の独断かもしれないが、化成にしてあれだけの値幅があつても、なおかつそれを農村が負担をするだけの肥効率があるのかどうかということについては、むろんおわかりでしよう。あなた方はこれがけつこうなことだとは考えておられないと思う。それならそういうものは、ある程度チエツクするだけの処置を講ぜられたかどうか。全然講じようとしておられぬじやないか。自粛というようなことではだめです。自粛でいいくらいなら、業会ではあらゆる点についてもつと自粛するはずなんだ。ところが自粛しておらぬじやないですか。現に燐鉱石のごときも、今日硫安業者に化成の原料としてどんどん買い込まれておるじやありませんか。過燐酸の製造原料にさえ事欠くほどに、どんどん買い込んで行つておることは、あなた方は御承知じやありませんて。そういうことで地方の山村に行けば、過燐酸は足りない、過燐酸は高いというのが全国の声じやありませんか。そういうときに、現状のままでしばらくの間は様子を見たいというようなことでは、私はあまりにゆうちよう過ぎはせぬかと思う。この際断固としてこういうふうにして行くということでなければいかぬと思うのですが、これは農林大臣出席の際にあらためて承ることにして、きようはこれ以上伺いません。ひとつよく御相談の上、次会適当な機会に農林大臣出席までに、役所の中で意見をまとめて御答弁を願いたい。
  44. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連して……。私はただいま河野委員から御質疑がございましたが、ただいまの肥料行政から見まして、また需給状況等から見まして、非常に同感を覚えるものでございます。ただいま硫安の需給安定法が本委員会に上程になつておりますが、硫安の需給安定ということだけではなくて、ただいまの御説にありましたように、過燐酸なりその他の肥料も加えたところの需給安定ということでなければならぬと思つております。そういう点について政府はどういうようにお考えでございましようか。
  45. 平野三郎

    平野政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、政府といたしましては、硫安については、これは最近の輸出の関係から申しまして、必要なりという観点から、法案を提出して御審議をいただいておるわけでありますが、その他の肥料につきましては、行政指導をもつてこれの適正なる運用を期して行きたい、こういうことで、法的措置をとるということまでは考えておらない次第でございますが、先ほど河野委員からもお尋ねがございましたような、輸入によるところのカリであるとかあるいは過燐酸というようなものにつきましては、輸入量の確保をはかるということと同時に、価格の新政策を行いまして、これの適正を期するということに努めておるわけでございますが、しかしただいま御指摘がございましたように、この新政策あるいは単なる行政指導では不十分であるという点が認められるわけであります。従いましてこれらにつきましては、特に本年は外貨予算の全般的な縮減によりまして、必要な種目につきましてはある程度の調整措置を講ずるということも必要であるということで、ただいま政府全体としていろいろと検討を加えておるわけでありまして、その中で肥料の一部のものにつきましても、必要がありますならばできるだけの措置を講じたい、かように思つて研究をいたしておるわけであります。
  46. 井出一太郎

    井出委員長 他に質疑はありませんか。——他に御質疑もなければ、この際討論を省略して、ただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。それでは肥料取締法の一部を改正する法律案について採決を行います。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  48. 井出一太郎

    井出委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。なおお諮りいたします。本日議決されました三法案につきましては、衆議院規則第八十六条の規定による報告書の作成につきまして、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
  49. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、さように決しました。     —————————————
  50. 井出一太郎

    井出委員長 引続き、これより農業用電力の問題について調査を進めます。質疑の通告がありますので、逐次これを許します。佐藤洋之助君。
  51. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 私はこの際電気料金値上げの問題につきまして、むしろ当局とわれわれとこの場合質疑するというのではなくて、力を合せて電気料金を値上げしないように、電気会社に対してある程度方法を講じてやる、こういうことでひとつ協力して行きたいと思つておりますが、その意味で中島局長及び小倉経済局長に御答弁をお願いいたします。  実は今回の値上げ案に対して電気事業連合会から一つのパンフレツトが来ておるのであります。これを拝見いたしますと——最近は電力が相当不足を告げており、需給が不円滑になつておるので、日本産業に及ぼす影響が非常に大きいことは、私が申し上げるまでもないのであります。私も実は国策として、いわゆる治山治水から利水の道を講ずる多目的ダムを建設し、電源開発をして行くという、国土総会開発審議会の委員を仰せつかつておる一人でありますが、そういう意味において今日電力会社とともに、二十七年度以来電源開発に対しての五箇年計画を企図し、本年度末には百十五万キロワツト、二十九年度には八十二万キロワツトの開発をめざしてやつておるわけでありまして、これはわが国産業の進展上まことに喜びにたえないことであります。ところが今回の電力料金の一割四分四厘の値上げということは、非常に大きな影響をわが国産業界に及ぼすわけで、ことに食糧増産の面における灌漑、排水用の電力は、その特殊性にかんがみ、及ぼす影響は非常に大きいと思うのであります。そこで私は、この電気事業連合会の印刷物について、いわゆる値上げをする理由がどこにあるかということを詳細に検討いたしたのでありますが、最近の開発にかかる発電所建設工事費が非常に高い。一キロ当りの建設費が、戦前は三百円から四百円程度であつたものが、最近は十万円から十二万円の高値である。そこでどうしても新設の発電所から出る電気の原価が高くなるりくつになる。つまりこの建設費が三、四百円の時代ならいいが、現在は十万円以上もかかるのでありますから、それに関連して金利とか償却費とかいうものが非常に多くなり、結局資本に対する負担が大きくなる、いわゆる資本費が莫大にかさむというのが理由のようであります。従来の発電所は、水力の場合でありますと発電原価は一円そこそこであつたのだが、それが最近は三円七十銭くらいかかるそうであります。だから原価のうちの資本費が、一円のときは二二%くらいでしたのが、最近の新設発電所においては大体六五%ぐらいの資本費になるわけです。また金額としては二百六十四億の赤字で、これが一四%に当ると言つておる。こういう点がどうしても値上げをしなければならない理由のように私は拝見したのです、そこで、これは電力会社としても言い分はあるだろうと思うので、われわれ国政に参与する意味からいつても、これらの電力会社に対して、国策的にある手をやはり打つてやつた方がいいと考える。しかし一面において今の二十九年度予算の編成方針を見ても、いわゆるデフレ政策であるとか低物価政策であるとかいう際において、こういう原動力である電力料金を上げるということになると、今河野君が言われた肥料の問題にしても、硫安のごときものも電解法では百六十何円、ガス法では百八十何円、平均して一かます六、七十円も上るということになり、これのあとに及ぼす影響が非常に大きいと見なければならないわけです。これらに対して通産当局あるいは農林当局として、どういうふうな考えを持つておいでになるか。あるいはこの問題が出て来まして、いかなる手を打つたか、また今後どういう手を打とうかということについてのひとつ御見解を、伺つておきたいと思います。そこでまず中島局長さんから、これについてひとつ御説明願いたい。
  52. 中島征帆

    ○中島政府委員 電気料金の値上げにつきましては、一月の二十日に申請が出まして、現在なお検討を続けておるわけでございますが、この電源開発の進捗に伴いまして、逐次電力の原価が高騰しつつある、従つて早晩この料金の引上げは免れまいということは、すでに昨年以来われわれも予想しておりました。昨年の夏ごろから、できるだけこの引上げを抑制いたしますために、いろいろ努力をして来ております。それはお話通りに、この原価の増高ということは、主として資本費の値上りということになります。従つて金利あるいは諸税といつたようなものが、新しい水力発電費につきましては全体のコストの九〇%以上を占めているという現状にかんがみまして、金利引下げ、また税金を減免するという方向につきまして、いろいろ折衝をいたして参つたのであります。なかなかいずれも容易に進行いたしませんでしたが、最近予算の編成前後におきまして、ようやくある程度の数字が出ておりますが、それだけではまだ十分ではございません。ただいま出ておりますのは法人税、事業税、固定資産税この三つの税制につきまして、ある程度の減税の措置をいたし、それから金利につきましては、開銀の貸付金の七分五厘という金利を二月一日から六分五厘に一分引下げております。これはすでに決定いたしております。この減税措置等も法案が通りました場合におきまして、この金利とあわせまして、全体でいわゆる一割四分四厘という値上率から二分六厘程度がその面だけで引下げられる、こういうところまで来ております。従つてその残りのものはこれはもし今のような考え方がさらに一層進められるか、あるいはまたもう少し違つた税種につきましても考えられるということであればいいわけでありますが、現在のわれわれの努力によつて、今のところはその程度で、これ以上は今すぐ急速に何らかの方法が実現できるというふうには、遺憾ながらわれわれは期待できないわけであります。しかしほつておきますと、将来もだんだんに電力の原価が上つて参りますので、今後の問題としては、むろん税金につきましても、さらに一層の減免措置を講ずるようにいたしたいと思つております。  それから税金あるいは金利を除きましたその他のいわゆるコストの問題でございますが、それが、実際に業者の申請しておりますものがどの程度まで認められるかということは、目下検討の段階でございます。いわゆる低物価政策あるいは石炭に対します炭価の引下げの政策というふうなものを考えます場合に、ある程度経費の面におきましても将来引下げを期得できるものがある、これはできるだけ考慮いたしまして、たとえば石炭費等は、現在でも申請の根拠になつております昨年の上期の実際の炭価に比べて、すでにかなり低落いたしております。この傾向が将来ずつと続くとすれば、相当大幅に発電費においては原価が下るということになつております。それやこれやほかの点につきましても十分検討を加えまして、最終的に結論を得たいと思つております。もちろんわれわれといたしましても、できるだけ値上げを抑制いたしたいという考えでありますので、やはり電源開発というものは将来もなお続けて行かなければなりませんし、それにつきましては、自己資本というものを調達しなければならないという見地から、もし何らかの方策を講じないで、しかもある程度認めらるべき値上げが認められぬということになりますと、これは電気事業にとつては、将来の発展政策のために非常に憂うべきことでありますので、そういうことがないように、しかもできるだけ値上の幅を抑制するようにというつもりで努力しておるわけであります。  それから特に各事業者に対します影響をそれぞれ調べておりますが、御指摘になりましたような肥料あるいは農事用電力というものにつきまして、現在申請されておりますままの制度で行きますと、かなり大幅な値上りになります。その理由は特に肥料につきましては、従来割当制でもつて比較的他のものに比べまして、安い電力が割合に多く割当てられておつた関係上、従来はほかのものに比べて比較的に電気が安かつた、それが今度は一律の方式によつて料金が計算されます結果、非常に値上りが大きくなるということになるわけでありますが、これでは非常に困りますので、特に電気炉については、いわゆる負荷調整をするということにしまして、できるだけ安い電気を使つてもらう、料金の特約と申しておりますが、工場別にそういう特約をいたしまして、大幅な値上りにならないようにということを各社では考えております。またわれわれの方でも、もし実施する場合にはそういうふうにということを指示しております。従いまして、それはむろん現在のところは、各電力会社と折衝いたしておりますのは、今申請されております制度及び料金をベースにしていろいろ相談をいたしておるわけでありますが、これはかりに認可されるにいたしましても、内容的には相当の修正が行われますので、最終的に特約の結果どの程度の料金になるかということはまだ出ておるわけではございませんが、現在の申請の制度を基礎にいたしまして、その点について一応そういうふうなことを考えておるわけであります。  それから農事用につましても、これは特に地方によつても違いますけれども、三割から五割、あるいは八割以上の値上りになるというふうな意見も出ておる、なるほど相当高くなるところもあるようであります。これは特殊な使い方をいたしまして、いわばどちらかといいますと、比較的水の多い豊水期に農事用電力というものは一番多く使われるわけであります。そういう意味からいたしまして、現在電力業者が申請いたしておりますものも、ある程度の割引きはいたしておりますけれども、それをもう少しその点で大幅に考える必要があるのではないか、まだ結論は出ておりませんが、考え方といたしまして、そういうふうなことを考えております。
  53. 小倉武一

    小倉政府委員 電力料金の値上げにつきまして、農林省といたしまして関連する点につきましては、肥料の価格でございますとか、あるいは灌漑用排水の電力料でございますとか、その他農事用の電力がございますが、まず肥料用の電力につきまして、電力会社の方からの申し出によりますれば、おはなしのように相当硫安、石灰窒素等の価格に響きますので、この点についての考慮方を通産省の方に申し出ております。それからまた灌漑用排水につきましても、これもお話のように相当値上りがする、また月によつて違いますが、農地局の計算によりますと、四割あるいは高ければ八割程度にも上るようなことになりますので、従来のような特別の料金制度でもつて、これまでの支払つた金額を著しく上らぬようにという措置ができないかということを依頼をいたしております。その他の農事用につきましても、同様なことで依頼をいたしております。
  54. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 今の考え方はわれわれと同感なんですが、小倉さんひとつ、農林省としては重大問題ですから真剣にお考えつて、できるだけの手を打つていただかなければならないと思うのです。農林省が通産省に出した通達を拝見いたしましたが、きわめて微温的で、こんなことではいかぬと思うのです。上げられたらたいへんですから、もう少ししつかりしたい意味で、私はきようは主として灌漑排水用の電力について、上つた場合の実例を少し申し上げたい。それからあと同僚議員が、肥料の問題とかその他の問題をお話になると思うのですが、私は主として灌漑排水用の問題について申し上げたいと思うのです。  実は灌漑排水用の電力の問題は、私は年来主張しておりまして、何らかの方法をもつて政府がこれに対して補助したらいいだろう、あるいはまた相当額を国家が持つべきものだという理論を私は持つておつた。これは東畑君とも何とかしないかということで、しばしば相談したのですが、今日に至つている。今度の一割四分四厘の値上げは、一応見ると会社は一割四分四厘であるが、この灌漑排水用の電力というものは、非常に計算が複雑である。その結果は結局最終段階に至る、八割六分程度に上るのです。これは農林省からもらつた資料ですが、これを拝見してみても、東京地区が一番上つて、灌漑排水用としては、一割八分九厘上る。それから中部地区が一割八分七厘、東北方面は三割の値引きなんです。関東は二割です。その差はありますけれども、東北方面は比較的軽いのです。  そこで私は、幸いに通通産省の局長さんもおられるので、灌漑排水用電力がどんなにややこしい計算でどういうふうに上つて行くかという実例を少しお知らせします。かりに茨城に例をとつてみます。茨城は現在地区数が三百八十二地区あります。それから排水用機械の台数が九百四十七台、契約キロ数が二万四千二百二十八キロあるわけです。支払いの料金が二十七年度で七千六百万円であります。このために受益面積は四万六千町歩、茨城県としては非常に大きい。私も試みに茨城の農地委員に依頼して、利根川を中心としたる排水灌漑の調査をいたして、台数及び馬力数を出してみたところが、全部茨城は御承知のように利根川を持つている。利根川水系は鬼怒川、小貝川、あるいは渡良瀬川というものを持つてつて、結局霞ケ浦から千葉県の銚子に抜けております。地形の上から栃木県方面の水を全部引受けておるために、排水の面に非常な困難を生じており、また他の県に比較して非常に多い。排水に要する電力料のトータルは、全国でおそらく七、八億じやないかと思うのです。どうですか、小倉さんの方で調査ができていますか。農地局の方はわかつておるのですが、あなたの方ではできておらぬかもしれませんが、私の記憶では七、八億と思う。その一割を持つているという状況であるから、いかに排水灌漑用の電力料金が大きなものであるかということは想像にかたくないのであります。たとえば私の住まつております近くに五所沼という干拓がある。これは県営干拓であつたのを五所沼の水利組合に委譲したのですが、わずか七十五戸で、一箇年電力料を八十五万円払つておる。一反歩当りの組合員の費用が三千二百円だ。そこで五所沼における今回の電力料値上げを見ると、やはり八割程度の値上げになるわけです。そうなると、さらに倍加した費用負担になつて一反歩四千円がらみ、ちようど米一俵という莫大な負担になつて、とうてい組合の運営が耐えられないという実例に逢着するわけです。今度はその隣りの釈迦水海の耕地整理組合もしかり、長井沼の耕地整理組合もしかり、飯沼の耕地整理組合もしかりであります。そこでこの算定方法ですが、会社としては一割四分四厘ということになつておる。これは基本料金ですが、言いかえれば需用料金である。その上に使用料金を二割引きとして一円四十五銭というものを支払うわけです。さらにまた超過に対して一〇%の超過料金をとりますから、それが八円八十銭の割となり、非常に高率な料金となります。そうしますと、飯沼村の耕地整理の馬力負担というものは莫大になつて来る。これは単に一箇所の実例でありますけれども、この会社の一割四分四厘という表面の値上げは、簡単に言うと一割四分四厘だが、実質的にはこういうふうに八割何分も上つて来る。というような実情になつて来るとうていこれでは負担に耐えられない。この会社の料金の算出法というものは、私は当局者から聞いたのですが、しろうとにはなかなかよくのみ込めない。のみ込めないところに料金徴収の魔術がある。そこで莫大になつて来てしまう。こういうような情勢であると、灌漑排水用の性格からいつて非常に重大なことになつて来はせぬかと思うのでありまして、これについてひとつ中島さんや小倉さんの御意見を承つておきたいと思います。
  55. 中島征帆

    ○中島政府委員 実際の値上率が一割四分四厘よりもつと上るということは各方面で言われておりますし、それも事実でございます。電気事業者が言つております値上げの比較をします場合のベースは、二十九年度の需給の想定をいたしまして、それの需用がこの程度行くだろうという量を一応推定するわけでございます。現実の実績を離れて、二十九年度の需給計画に基いて、その需用者がどのくらい使うか、そして現在の料金制度をかえない場合に、標準料金と追加料金がどれくれいか、これも過去の実績その他から推定して、一定の想定をしておられるわけです。結局料金制度あるいは料率を全然かえませんでも、その需用者は来年度においてはどの程度の料金が値上げになるか——これはたとえば二十七年あるいは二十八年の実績に比べますと、若干それがすでに上つております。その上つたものと、今度出して来ております申請の値段で行つた場合と比べますので、従つてその値幅が一割四分とかあるいは一割七分という数字になる。しかし需用家の方では、現実にたとえば二十八年度において支払つておる電力料というものが頭にある、また来年度は同じ電力量を使つた場合にどうなるか、こういう比較をしますので、従つて電力会社の言つておりますものと需用家が考えます場合とでは、その基礎が違います。従つてそこに開きができる。これは非常に誤解を招いております。私どもの方でそれをもう少し簡単に考えやすいように別の計算をしてみたのであります。それは二十七年五月に現在の料金制度が認可されておりますが、これによりましてこのときに想定されました電力の総原価を二十七年に予定しておりました総収入で割りまして、結局一キロワツトアワー当りの料金が幾ら、これは全体で平均いたしますと四円七十四銭ということになります。それから今度全体の総原価が幾らになるか。二千百億ということを言つておりますが、その全体の原価を、二十九年度に予定されております総供給量で割りまして、それでキロワツト・アワーの単価を出しております。そうしますと二十七年のものと二十九年の開きが一割八分六厘、つまり電気事業者の一割四分四厘というものは、位取りがすでに上つておるという関係から支出はかなり低くなつておりますが、しかし現在の料金ベースと比べますと一割八分六厘の開きがある。原価の問題ではそうでありますが、収入を想定いたしますと、これは御承知のように、電燈あるいは小口電燈等が二段料金制度をとる場合には、追加がよけいに入つて来ると収入がふえる。収入をどういうふうに想定するかということによりまして、もし高い電力がよけい売れるということであれば、必ずしも大きく値上げをしなくても、それだけ原価の総合がふえて行く。従つて実際の値上率と原価の値上率とは必ずしも一致いたしませんが、現在の料金制度と比べれば一割八分くらい申請通りだと上つておる。そこに非常に食い違いが出て来るわけであります。そこで農業用のもの等につきましても、お話のように料金のはじき方が非常にめんどうで、われわれにも簡単にわからぬような仕組みになつておるわけです。もう少し明瞭に単純化したいという気持は持つております。たとえば需用電力料金の定め方、あるいはその追加の取り方、こういうようなものをもう少し合理化して、全体で払います料金は、需用電力料金とそれから電力量に対しまして取るアワー料金というものの比率をどうするかによつてかわつて来ます。それをできるだけ合理化して、一般の負担のかからぬようにしたいということもいろいろ検討いたしております。農業用のもの等につきましては、現在すでにある程度割引をいたしておりますけれども、さらに今のような見地から、一般の値上りがかりに一割五分とか二割であるのに、三割とか五割とか上る場合には非常におもしろくないので、そういう点につきましてできるだけ是正するように、制度上あるいは料率の方につきましても検討して、できるだけ上り方を少くしたいと考えております。
  56. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 お話のように、表面は一割四分四厘でも、実際はじいて行くと非常に上つて行く。実例をお話いたしますが、茨城県猿島郡の沓掛村というところにあつたのですが、飯沼町、反町水除堤水害予防組合は、今度の改正でどれくらい払うかということの実例を申し上げますと、昭和二十八年度は、御承知のように馬力は九百六十馬力の排水機ですが、使用電力量は五十一万四千七百二十キロワツト使つて、百二十七万四千百八十二円の料金を支払つておりますが、今度申請されました新料金制度によりますと、同じ使用料で標準料金のみで支払うとしても百八十三万九百八十五円ほどになり、約四割四分の値上りになるのです。また割当制を適用されるとすると二百十一万七千百三円となり、六割六分の値上りになるのです。この地形を申しますと、栃木県から流れて来る水の捨て場所で、実に気の毒な排水なんです。三年に一ぺんとればいいという地形なんですが、莫大な費用をかけて用排水池をつくつて、栃木県あたりから流れて来る水を引受ける、こういう実情にあるのです。だからどうも生産意欲を阻害されますし、御承知のように灌漑用水電力の特殊性は今中島局長さんがお話なつ通りでありますが、実際その用途は主食生産だけなんです。だからそういうふうに考えて参りますと、どうしても政府の低米価政策による公定価格では供出ができなくなつてしまう。ここは非常に協力しているところなんです。使用の方法は天候のいかんによるわけですね。ですから使用の時期は限定されておる。五月から九月中旬くらいの三箇月くらいに限定されておる。電力をうんと使うときには収穫量がない。収入があるときには電力を使わないというような逆な情勢にある用排水ですから、まことに実情から言つて気の毒なんです。それから地域的にこれは利根川の一番端ですから、水田の状況ども末端なんです。建設費や何かも非常にかかるという情勢におかれておりますから、従来とも特殊な料金を支払つていたことは申し上げるまでもない。この特殊性を大いに生かしてもらわなければなりません。経済局としてもこの特殊性を強調して、大いにこれを生かしていただかないと、これはほんとうに四万六千町歩にわたるんですから、茨城としては大きな問題です、全国的にも灌漑用排水の料金の特殊性を考慮願つて、われわれもやりますが、大がかりでやつて、一面電気会社の合理的な運営を促して、国政的に、国策的に何らかの手を打つてやるということで行きたいと私は思う。今灌漑用水に対する特殊性のものをいろいろ聞いて来たのですが、これはいまさらこの席で申し上げるまでもない。よく認識しておられると思うので私はやらぬ。けれどもこの成行きについて平野さん、あなたからお考えを述べていただきたいと思います。
  57. 平野三郎

    平野政府委員 電力料金の値上げの問題につきましては、農林省としても重大な関係があるわけでありまして、政府としてもまた大問題であるので、今検討いたしておるわけでありますが、政府としては極力値上げを避けたいという方針のもとに進んでおる次第でございます。ただ電力会社の電源開発等の進展状況によりまして、ある程度保護政策と申しますか、そういうことも必要でありますが、しかしながらこれは電力料値上げに求むべきものでないということで、法人税あるいは事業税の減免並びに電源開発事業に対しまする金利引下げというような方途をもつてこの問題を解決するということに、大体進んでおるわけであります。特に農林省としては、肥料の価格あるいは灌漑排水用、農事用電力等に対する重大な関係があるわけである。ことに硫安につきましては、従来特にやつておりましたアルケーシヨンを廃止するということのために、非常な値上りになりまして、従つて肥料が上れば当然米価に影響を及ぼす、米価が上れば賃金ベースの引上げを起す。すなわち日本経済の根幹をゆすぶるということになるから、絶対に電力料の値上げはやらないということは通産省の方と申合せをしましたし、ことに先般来愛知通産大臣にこの問題につきまして厳重な申入れをいたしますとともに、しばしば懇談を重ねておるわけであります。愛知通産大臣としても、絶対に値上げはしないということにほぼ固まつておるわけでございます。ただいまは佐藤先生から該博なる資料による御研究と、また高邁なる立場からの御意見を拝聴したしまして、私どもとしてはいよいよその信念を固めたわけでございますし、特に茨城県の詳細なる御事情を承りまして、一層電力料の値上げ不可能ということを痛感する次第であります。御意見を尊重いたしまして必ず御期待に沿うように努力する所存でございます。
  58. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 平野政務次官は最近推進力がなかなかありまして、予算の獲得といい、非常な御努力ありまして、今確信ある御答弁で、愛知通産大臣もこの問題については非常な関心を持つておる、むしろ値上げをしないという線で行きたいという今のお話を聞いて、私も意を強うしたのですが、今後ひとつそれを忘れないように、大いに推進して行つて、値上げをしないように願いたい。電力問題は、農業用といつても、たとえば水稲電気温床の問題であるとか、あるいは誘蛾燈の問題であるとか、いろいろありますから、この電力値上げというものは、そういうものに非常に大きな範囲において影響するところが多いと思うんです。なお他の問題につきましては、他の委員諸君からそれに関するお話がありますから、私はこの程度にしておきますが、要するに委員会としては、ひとつ何か強い意思表示をしておきたいと思うんです。それは適当な機会に御相談の上でやりたいと思うんですが、結論として、この問題が与うる影響は大きいということを強調いたしまして、一応私はこの程度で終りたいと思います。
  59. 吉川久衛

    ○吉川委員長代理 芳賀貢君。
  60. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会に通産当局に簡単な質疑を行いたいと思います。今度の電力料金の改訂の会社側の要求というものは、結局原価主義を採用して行きたいというところに一つの表現が見受けられるわけでありますが、この場合問題になるのは、農事用の電力料金が、一四%程度の値上りに比べて非常に値上りの幅が多いというところに問題がある。特に農事用の電力料金が値上りした場合に、農家の生産面あるいは経済面に対して、さらに国民生活全般に対して及ぼす影響が大きいわけでありますが、ただいま農林次官の御言明によつても、電力料金の値上げは極力押えて、特に農事用の電力料金は現行通りの線に抑止して行きたいというような御意思が明確に表明されたわけでありますが、ここでその可能性の問題について若干お伺いしたいわけであります。現在におけるところの国内の電力の消費量はおおよそ三百十億キロワツト・アワーというように承知しておるわけでありまするが、そのうち農事用の電力消費は四億七千万キロワツト・アワー程度でありまして、これは全体の消費量から言うと一・二%くらいにしかならぬわけであります。そういうように一・二%くらいの消費量であるという場合においては、特に農事用電力の持つ一つの意義というものを十分検討した場合において、これをすえ置いても、全体の面に対してはそれほど影響がないということが、おおよそ察知できるわけでありますが、かかる点から通産当局においても、農事用電力に対してはこの線で押える、特別な扱いをするといような明確なお考えがあるかどうか、その点を確認しておきたいのであります。
  61. 中島征帆

    ○中島政府委員 電力料金は原価主義できめるというが原則になつておりまして、この線をくずして、いわゆる政策料金の考え方を入れて来ますと、次次にそういつたような特殊な取扱いをしなければならぬものができて、残されたものはその影響を受けて、かなり高い電気を使わなければならぬということになります。また全面的に料金体制がくずれますので、原価主義というものはあくまで今後も続けて行きたいと思つております。そこで今お話のような農事用その他特殊な用途につきましては、その原価主義を崩さないで、結局電気の使い方その他において、どういう点で合理的に、たとえば値引きすることが認められるということにつきまして、いろいろこちらで苦労しておるわけでありますが、何らかの理由を見つけまして、それに応じて料金をできるだけ低く押えるというようなこと、しかしその場合におきましても、原価主義を全然放擲するということはいたしたくないのであります。
  62. 芳賀貢

    ○芳賀委員 原価主義を採用する場合においても、御承知通り農事用電力は主として季節的な需用が非常に多いわけであります。そういう場合においては、表面はいかにも原価主義を打ち出しておるわけですが、実際の内面に入ると、そのコスト主義というものははたして妥当性を持つているかどうかという点に多分の疑点があるわけであります。たとえば受電施設にしても、ほとんどこれは農家自身の費用によつてつておるという点がありますし、さらに季節的な電力に対しては、一定量の基本的なものを計算して行つておるのであつて、定額制の分を見ると、電力の消費量に比べて非常に料率が高いということになつておるわけであります。特に臨時消費の場合においては、料金の前納というようなことを強引に行つておる地方もあることは御承知通りであります。また定時制で使用しておる場合でも、農家の需用の場合においては、季節的に電力の消費が非常に多い時と、ほとんど用いない時とあるわけでありますが、こういう場合においても、定時制のもとに一定の料金をとるようになつておるというような点をしさいに分析した場合においては、同じ原価主義の場合においても、これを十分に分析し圧縮して行つたならば、かかる料率の値上げを行わなくても、今言われたような原価主義のわく内においても、あるいは押え得るのじやないかというふうにも考えますが、そのようなお考えで、原価主義は一応認めて、その建前の中において実質的な値上げがされないというふうな指導を行う御所存であるかどうか、その点であります。
  63. 中島征帆

    ○中島政府委員 ただいま御指摘通りであります。結局原価主義の線を離れないで、そういつたような面をとらえまして、そこで料金の値引きをするという方向に持つて行きたいと思つております。しかし上げるか上げないか、あるいはどの程度上げるかという結論はまだ全然出ておりませんので、特にただいま、たとえば農事用の電力を上げないですえ置くためにそういうことをするということでなくて、できるだけ押える、そこでりくつのつく範囲内で押えるということでありまして、もしいかにくふうしても全般的に上るという結論が出ました場合には、その場合に農事用だけをすえ置くという前提のもとに今のような工作をするということは、ちよつと困難であります。しかし御指摘のような趣旨のもとにおきまして、できるだけ抑制する道を考え出すということにつきましては、われわれとしてもできるだけの努力をしたいと思います。     〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 井出一太郎

    井出委員長 川俣君。
  65. 川俣清音

    ○川俣委員 中島局長にちよつとお尋ねしておきたいのですが、これは質問というよりも、あとで資料をお出し願いたいという意味質問しておくのですが、一体原価主義をとられるということですが、電気料金の原価主義というものを局長のところで正確に把握できるというお考え方でおられるかどうか。その内容をもつと申し上げますと、あとで電柱のことが問題になりますが、電力会社の帳簿は、自分が立つております電柱の敷地さえ不明確な帳簿です。また資産につきましても、これは会社が投資した資産でなくて、消費者に負担させた資産も出て来る。それらもみんな自己投資のようなかつこうで原価計算がされておるのじやないかという懸念がある。懸念がないとすれば、そういうものを区別したものを、一体正確に把握されておるのかどうか、現在までは把握してなかつたはずだと思うのです。電力会社自体が正確に把握していないのに、あなたのところで正確に把握できるはずがないと思うのです。電力会社は不明確であるが、局長の手元においては正確に把握されておるというなら、その通り御説明願いたい。そういうデータをしつかりつかみ得ないのに、原価主義をとるのだと言つてもそれは空論になりはせぬか。学問的には原価主義をとるのだという説明はできるでしようけれども、把握できなないものをもつて把握できたごとく装うことは、本来の原価主義に反するのではないかと思うが、この点どうです。
  66. 中島征帆

    ○中島政府委員 公益事業局としては、電力会社の原価は十分把握しているつもりであります。たとえばただいま御指摘のありましたような、需用家の方で設備をしたが、今度電気会社の所有になつたというようなケースは、会計規定上あるわけであります。もしその工事費を電気需用者に負担させまして、当然自分の設備として入れるということであるならば、それはそのように見るわけでありますけれども、それをいたしますと、たとえば非常にへんぴなところに新しく電気を引くという場合におきまして、かなり大きな施設がいるわけですが、それを全部需用家にかけなければならぬということにもなりますが、そういう場合には特殊な施設をする需用家の負担にするのであります。従つてその場合にはそういうものは料金の原価の中に入つておりません。それから施設しましたものが、電気事業者の所有になるということは、これは保安上の見地からそういう立場をとつておりますが、その場合にはその資産は電気事業者の資産として上りますけれども、これに対しまして償却等はいたしておりません。従つてこれも原価に入つておりません。それから電柱の場合は大体使用料を払つておりまして、電柱の敷地は多分電気事業者の所有じやないと思いますが、大体詳細な会計規定等がございまして、相当な陣容をもつて逐次監査をやつておりますから、電気に関しましては、他のいずれの産業に対しますよりも、内容につきましては一番はつきりつかんでおるのではないか、かように考えております。
  67. 川俣清音

    ○川俣委員 これは中島局長にもう一度御反省願わなければならぬ。というのは、ほかの産業よりも電気が原価主義をとる場合に一番把握しやすい状態にあることは、これは、これはまことに明瞭です。この最もつかみやすい原価主義すら十分つかんでいないのではないかというところに問題がある。今あなたは電柱については十分把握しておるということを申されておりますが、先般東京電力を呼びましたときに、敷地などが一体だれの敷地を借りておるのかわからない、従つて料金も払えないでおるという状態だということです。会社自体が十分把握できないのに、あなたのところで把握しておるという話ですが、どういう方法で把握できるのですか。それは会社の内容を検査されて把握するのだと思いますが、会社が把握できないのにあなたの方で把握できるということはどういうことですか、どういう調査によるのですか。
  68. 中島征帆

    ○中島政府委員 電柱につきましては、先ほど十分把握しておるとは申しておりませんが電柱の敷地は会社が使用料を払つて借りておるのであります。従つて会社の資産になつていないのじやないかというふうに申し上げたわけであります。もし会社の敷地であれば、当然帳簿に出るわけであります。
  69. 川俣清音

    ○川俣委員 そうじやないのです。逆に当然支払わなければならない電柱敷地料金を支払つていないということなんです。これは当然コストに入らなければならないでしよう。だから支払つているのかいないのか、払つていない金額相当数に及んでおるわけです。それは相手が不明であるために支払えないという答弁なんです。日本の国土の中で、相手の所有者が不明だということはあり得ないはずじやないですか、日本領土の中において係争中のもののあることは認めますけれども、所有者が不明だなんということはあり得ないじやないですか。そのような動かない明瞭なものさえ把握できないのに、あなたのところで把握しておると言われるから質問しておる。
  70. 中島征帆

    ○中島政府委員 そういうケースもあるかと思いますが、これは直接原価には関係しないと思います。それから電柱の敷地料につきましては、当然支払わなければならぬ金額と、それから実際支払われている金額との間に開きがありまして、従つてまだ支払つていないものがかなりあるようです。これは取立て債務になつている関係上、電気会社の方でも一々支払いに行かない、権利者の方からもとりに来ないという関係で、そのままほつて置かれるということでありますが、そういう事実は若干あるようです。
  71. 川俣清音

    ○川俣委員 若干あるというようなことじやない。東京電力だけでも相当数に上ると思います。今どのくらいあるかということを正確に調査を求めておりますが、約三月になるけれども、まだデータさえ出して来ない。簡単なものであればもうとつくに出て来なければならぬはずです。出せないという状態は若干じやないはずです。ごくわずかなものであれば、出て来なければならぬはずです。非常に件数が多いために、待つてくれと言うのです。これは大分あなたの答弁と違います。ごく僅少なものであれば即時出せるのじやないかと思うが、相当数あるために出せないと思う。そこで、これは原価に関係ないと言いますけれども、敷地料金など当然これは原価に関係があると思いますが、あなたの方の原価主義の中には、この敷地料金あるいは敷地料金賃貸料というようなものは、コストに入らないという見解ですか。これは非常に違うと思いますが、どうですか。
  72. 中島征帆

    ○中島政府委員 関係ないと申しましたのは、支払つておらない場合に、それが支払つておらぬから、それだけ原価を安くするというような性質のものじやないということを申し上げたのであります。むろん原価の中には、賃貸敷地料というものは入つて来ると思います。従つて今度は、若干これも引上げた率でもつて計算しております。
  73. 川俣清音

    ○川俣委員 それではお聞ききしますが、支払つていない額が相当金額に上るなら、この金利はどう見ますか。原価に入るべきですか入らないべきですか。当然義務を持つているものを義務を怠つている。普通から言えば、原価主義から行きますれば、義務を怠つたところのものは原価に入らないという計算もできないことはない。しかしながら資金の運用の面からいつて、それだけ資金運用をしておりますから、またそれだけ借入れをせずに済むのでありますから、当然原価に入らなければならぬという面も出て来なければならぬ。それでは一体どのくらい借入れをせずに済んでいるかというふうにあなた方は計算しているか、あるいはこれらの金利を、どのくらい原価の中に見積られておられますか、一つの会社の例をあげてもけつこうです。
  74. 中島征帆

    ○中島政府委員 ちよつと手元にそういう数字はございませんけれども、しかし今のように、支払わない敷地料がかなりたまつておりまして、それで金利がかせがれているという場合には、これは過去の実績といたしまして雑収入に上つて来るわけです。そういうものが今後続けば、将来もそういうものが入るということで、それだけは収入として控除されますから、それだけ原価は安くなる。従つて払わないからといつて、全然除いてしまうことは——一方に義務はあるのでありますから、義務を免除するわけに行きませんから、敷地料として払うべきものはやはり払う。しかしその支払いが遅れたために金利をかせいだということになつたら、それは当然別の雑収入として差引かれる、こういうことになるのであります。
  75. 川俣清音

    ○川俣委員 それで明瞭になりました。あなたの計算で行きますと、正確なものを把握した場合においてはその通りになる。それでは、一体会社自体がどのくらいな債務を負うているか不明確だという場合はどうなる。問題はそこにあるのです。原価計算が出るのは、当然そこに基磯がなければならぬはずです。それが正確なものは期し得られない、今調査中であるというものが、原価計算の中に入るわけがない。一体どれだけの債務を負つているのか正確じやない、こう言つているのです。それはいろいろ個々によつて条件が違うために、平均このくらいであろうということは言えるけれども、正確なものはつかみ得ないという説明なんです。この点はどうですか。
  76. 中島征帆

    ○中島政府委員 電柱はいろいろな工事によりまして場所がかわることもあります。あるいは条件もございますから、実際がしよつちゆうかわつておるというふうな実情にあると思いますが、そういう関係からすぐに調べがつかぬということになることはあるかもしれませんけれども、しかし当然に原価を出す場合におきましては、電柱の本数はこれだけであるということを基礎にいたしまして出しておるわけであります。それを本数を数えるところまでは、どうもわれわれとしてはできません。
  77. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは各電力会社ごとの電気料金の原価の資料を提供してほしいと思います。
  78. 井出一太郎

    井出委員長 ただいま資料に関する要求が川俣委員からございましたが、この際委員長からも一言申し上げたい点は、電気料金の値上げが農業関係に非常な影響を及ぼしておりますことは、本日委員諸君が指摘された通りであります。ことに硫安工業に対する影響というふうなものを少し知りたいわけであります。こういうことは今われわれ肥料法案を本委員会で扱つておりますので、その資料にもいたしたいので、これはひとつ農林経済局の方も、それから通産省の軽工業局からも提出を願いたいと思います。佐藤洋之助君。
  79. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 この際本委員会におきまして農業用並びに肥料用電気料金の値上げに関する件につきまして決議をいたしたいと思います。  その案文を朗読いたします。    農業用並びに肥料用電気料金値上問題に関する件   今般全国九電力会社は、電気料金改訂を政府に申請し、現行料金に比し平均一割四分四里の値上げを意図しているが、この改訂案によれば農業用電気料金は、一般に比し特に大巾な値上げとなり、最高は二倍以上に達するものと推定される。又硫安工業についても料金の値上げを理由に相当程度の値上りが予想され、これらが経済力脆弱な農業生産者に及ぼす影響は洵に軽視し難いものがある。   現下における我が国内外の経済状況を顧みるとき、電気事業の公益的性格に徴し、会社経営の合理化を更に強化せしむると共に、その他総括原価軽減上必要な措置を行つて、料金値上げを中止するようつとむべきであり、特に政府は、左記につき万遺憾ない措置を講ずべきである。     記  一、灌排水用、脱穀調整用及び誘蛾燈の農業用電気料金は、一般の料金と切り離し別建てとして、現行制度通りとすること。  二、契約期間中と雖も使用しない月は、需用料金を免除すること。  三、水稲、養蚕用等の電熱利用及び誘蛾燈に類する電灯利用については、これを農業用として前項同様の特別扱いとすること。  四、肥料工業については、電気料金の値上げを理由に肥料価格の高騰をもたらすことなきよう格段の留意を払うこと。  右決議する。   昭和二十九年三月十二日         衆議院農林委員会
  80. 井出一太郎

    井出委員長 ただいまの佐藤君の提案に対しまして、御意見があれば発言を許します。——他に御意見もなければ採決いたします。ただいまの佐藤君の御発言通り委員会の決議とすることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。よつてただいまの決議は決定いたしました。     —————————————
  82. 井出一太郎

    井出委員長 次にお諮りいたします。中澤茂一君より林業に関する小委員辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認めます。つきましてはその補欠委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 井出一太郎

    井出委員長 御異議なしと認め、中村時雄君を林業に関する小委員指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十五分散会      ————◇—————