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1954-02-04 第19回国会 衆議院 農林委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月四日(木曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 佐藤洋之助君    理事 福田 喜東君 理事 金子與重郎君    理事 芳賀  貢君 理事 川俣 清音君       小枝 一雄君    佐々木盛雄君       田子 一民君    松山 義雄君       吉川 久衛君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    井手 以誠君       中澤 茂一君    中村 時雄君       安藤  覺君  出席国務大臣         自治庁長官   塚田十一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林与三次君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房総務         課長)     奥田  孝君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    大沢  融君         農林事務官         (農林経済局農         業協同組合部農         業協同組合課         長)      保坂 信男君         農林事務官         (林野庁林政部         林政課長)   臼井 俊郎君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 二月三日  農地改革による犠牲者救済等に関する請願(山  本勝市紹介)(第五六一号)  同(船越弘紹介)(第五六二号)  同(降旗徳弥紹介)(第五六三号)  同(今井耕紹介)(第五六四号)  同(赤澤正道紹介)(第五六五号)  畑地かんがい事業国庫補助率引上げに関する  請願山中貞則紹介)(第五六六号)  農業共済制度合理化に関する請願山中貞則君  紹介)(第五六七号)  藤原ダム関係犠牲者藤原地内国有林野払下げ  に関する請願藤枝泉介紹介)(第五六八  号)  小友村地先公有水面干拓工事施行に関する請願  (小澤佐重喜紹介)(第五九九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  町村合併に伴う農業団体等の農政問題に関する  件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  過般町村合併促進法的措置がとられまして以来、町村統合機運相当に高まつているように考えられますが、この町村合併に伴いまして、農業団体その他地方における農政のあり方にいろいろの問題が起つているようでありますので、これよりこれらの問題について調査を進めることにいたします。  まず、自治庁小林行政部長より最近における町村合併促進状態その他について御説明を伺うことにいたします。小林行政部長
  3. 小林与三次

    小林(与)政府委員 町村合併の最近の概況をまず御説明申し上げます。  御承知通り町村合併促進法が昨年成立いたしまして、それに基きまして昨年の十月閣議町村合併促進基本計画というものを決定いたしたのであります。もつともその決定に先だちまして、町村合併はきわめて画期的な大事業でありまして、関係するところも非常に多いので、政府では特に町村合併推進本部というものを内閣に設けすして、関係各省並びに各団体その他民間の有識経験者方々に入つていただきまして、この問題についての基本方針の御審議を願うことになつたのでございます。その推進本部決定に基きまして、閣議ではこれを取上げまして、基本計画を昨年の十月三十日に決定いたしたのでございます。それによりますと、町村合併促進法時限法で三年間で期間が切れることになつておりますので、その三年の間に現在の町村、一万ちよつと欠けておりますが、それを三分の一に減少することを基本方針にして、その三年間における仕事を進める基本計画決定いたしたのでございます。それは小規模町村、これは大体人口八千未満ということに法律で押えておるのでございますが、それを合併することにいたしました。しかしそのうちには島だとか、山奥等動きのつかないものもありますので、五%あまりは困難であろう。それ以外の九五%を三年間に統合しよう、こういうことで二十八年度におきましてはその一五%、二十九年度に六五%、三十年度一〇%、三十一年度一〇%、本体ころいう計画で事を進める基本方針決定願つたのでございます。その意味は、法律は三年間でございますが、ちようど来年の春に大多数の町村で、町村長及び町村会議員選挙が行われますので、その選挙が事実上一つの山になろうという見通しで、その選挙までに大多数のものの合併を敢行する。しかしながら残るものも非常にあろうと思うので、そういうものはそれ以後において三十年、三十一年に跡始末をして行く、こういう考えでこの計画決定になつたのでございます。  それからその計画を達成するため、大体町村合併事柄考え方をきめるために、町村合併基本方針というものを推進本部で御研究を願いまして、その決定に基いてこれも閣議で御決定願つたのであります。そこで大体町村合併はどういう考え方できめて行くかという根本方針をきめていただいたのであります。それに基きまして現在各府県市町村におきましては、それぞれ具体的な計画を樹立することになつておりまして、現在はちようどその計画樹立段階にあるのが大多数の府県状況でありますが、個々具体的には着々と決定作業自身も進んでおるのでありまして、大体におきまして全国的に合併機運が盛り上つて作業が進められつつある、これが実情でございます。それで二十八年度中には、先ほども申しました通り、全体の計画の一五%をやるという考えでございますが、その実際の状況を申し上げますと、大体各府県によつて多少の違いがございますが、私の方で各府県から集めた情報によりますと、大体年度中にはその目的を達し得る。もつともその実施期日が四月一日になるものが相当に多いのでありますが、四月一日くらいを見れば大体においてその程度行くのじやないかという報告をもらつておるのでございます。  今までの状況を申し上げますと、合併促進法施行になりましたのは十月一日でございますが、十月一月から今日まで合併が行われましたものは百四十七になつております。全体の計画は、大体今九百という計画で進んでおるのでございます。これは今まで促進法ができる前に、昨年の正月から九月三十日までに百五十あまり実施されておりまして、その後百四十七という数の報告を受けておるのでございます。そのほかは今各県におきまして総合的な合併計画をつくつて、それに基いて事を運ぶという順序に相なつておるのでございます。そこで一つの問題は、われわれといたしましては、今度の合併弱小町村規模合理化して、町村自治体の能力を強くする、それに伴いましていろいろの行政上の能率的な合理的な施行を可能ならしめる、さらにそれを基礎にして、上部のいろいろな行政組織合理化して行くわけでありますので、まず全体的な計画府県ですみやかに立ててもらいたい、これか私たちの注文でございます。あまり個々ばらばらにやりましてちぐはぐが起つてもおもしろくない、そこで県の段階で、一応の計画というものをまず総合的に立ててもらつて、それを前提にして、この作業が進むことを期待いたしておるのでございます。この作業をやるために、これは促進法にもございますが、各府県町村合併促進審議会をつくることになつておりまして、これには町村長議長だけでなしに、各種団体町村その他に関係の深い経験者にも入つていただいて、御審議を願うことになつております。各府県状況は、審議会設置も終りまして、その計画審議しておられる段階でございます。  なお本委員会の方でも問題になつておると存ぜられますのは、この合併に伴ういろいろな各種団体等の問題でございますが、これにつきましては、実は町村合併促進法もその問題を予見いたしておりまして、町村統合して地域を再編成するということは、自治団体である町村をやつただけではこれは意味がないのでありまして、町村単位にする各種公共団体も、できるだけ新しい町村一体性を確立して、一体的な運営の実質的な基盤をつくる、こういうことのために、各団体におかれてもその趣旨に即応するように、すみやかに統合整備をはかるように考えてもらいたいという意味規定促進法に盛られておるのでございます。もつとも各団体それぞれ法律に基くものもあれば、基かないものもあるし、これはそれぞれ特殊の事情がありますので、法律的に強制とか、そういうことはもちろんできる筋のものでもないし、またすべきものでもないのであります。それからまた促進法そのものでそこまで規制することも行き過ぎでありますので、促進法としては、そうした合併町村区域内の公共的団体等は、合併町村一体性のすみやかな確立を期するため統合整備をはかるように努めなければならぬ、こういう勧奨的な規定を設けたのであります。その規定を受けまして、合併基本方針をつくるときに、農林省その他農業団体方々の御意見も聞きまして、その点を合併基本方針にも明らかにした方がよかろうというので、基本方針の一部に、関係町村区域内の公共団体は努めて統合するものとし、新町村一体性をすみやかに確立するものとすること。農業協同組合については、同組合農村経済の基幹としての機能を十分に果し得るよう可能な限り合併を行うものとし、合併不可能な場合においては連絡組織を結成すること、こういうふうな趣旨の答申をおきめ願つたのでございます。なおそれに関連いたしまして、農林省の方と協議をいたしまして、農林次官自治庁次長の連名で、町村合併に伴う農林水産業関係団体等統合について、という通牒を各府県に流しまして、この合併方針に即応して、できるだけ地方のそれぞれの具体的な実情に応じて——これはそれぞれ実情がございますからもちろん無理をしてはいけませんが、この一町村基礎にしてなるべく合理化をはかるようにという趣旨通牒を出したのでございます。  大体以上申し上げましたのが今日までの合併実情でございます。
  4. 井出一太郎

    井出委員長 質疑の通告があります。順次これを許します。金子與重郎君。
  5. 金子與重郎

    金子委員 本日この委員会で、地方行政の方で長らく審議されて施行することになつておりまして現在進行中の、市町村合併促進法の問題をなぜ取上げるかという点について、前もつてお話しておきますが、自治体というものが、ことに日本の農村のように自然発生的な古い歴史と因習を持つているところが、促進法ぐらいでこんなに大きく進展するとはゆめゆめ思わなかつたわけです。御承知通り、これは法律ではなくして、一つ促進法です。規制法ではなくて促進法なんです。それなのに、どうしてこういうふうに予想以上に進展したか。あずかつてあなた方部長あたり政治力の強いということかもしらぬのですが、私ども農林関係の者としては、非常に意外だつたわけです。しかしながら、これは意外であるだけに、あとに必ず禍根を残す。あなたの方は、ただ合併というので、数が少くなることを目標にしたのだから、それによつてこれだけの業績が上つたというただいまの御説明を聞いても、相当自信満々のようにお聞きできるのであります。しかし私どもは、その後に必ずこれは問題が起る、こういう見通しで、それならば問題が起らぬうちに、私ども立場から考えた問題について、この際一応検討する必要がありはせぬか、こういう意味でお聞きするわけです。最初に、できるだけ意見にわたることをやめまして、一応疑問点に対して、あつさりと一通り御質問したいと思つております。  第三条に、町村規模はおおむね八千人以上の住民を有することを標準にする、とありますが、しかも今度はあなたの方の原案でつくつたでしようが、閣議できめたその規模に対しても、なるべく大きくということで、大きさに対しては考えておらない。そうすると、これは数が少いということが原則であるならば、いつそのこと一郡を一町村にしてしまつた方がもつとすつきりと、地域も固まるし、数も非常に少くなるのですが、その点大きさというものに対して、どうして一つ考慮を持たなかつたのですか。
  6. 小林与三次

    小林(与)政府委員 それはごもつともでございまして、大体どれだけが一番合理的かということになれば、これはいろいろ議論があるるだろうと思います。それで八千というのも、どれだけの合理的根拠があるかということになれば、いろいろ問題がありますが、これは従来地方行政調査委員会その他でも研究になつております。大体現在町村経営しなくちやならない各種施設というものを基準考えまして、その施設を合理的に経営して行くためには、最低限度これくらいのものがいるではないか、こういう研究が従来出ておりましたので、おおむね八千ということに一応いたしたのでございます。しかしながら、これは具体的に町村によつて千差万別実情がございますので、一応のいわばめどというか、標準というか、こういうことでこの法律の表現をとられたものと思います。そこで問題は、しからばできるだけ多くと書いてあるが、一番上をどうするか、こういうことが問題になるのでございますが、これは、私の考えといたしましては、ただ大きければ大きいほどよいということにもならないのでありまして、自治体というものは、やはり自治体としての一体的なまとまりがなくちやいけない。そこで単に大きいのなら今おつしやいました通り地方事務所とか町村管轄区域単位にしてまとめられぬかということもありますが、あまりに大きくなれば、郡役所になるようになれば自治体としての一体的な運営が困難になると思つているのであります。そこでおのずから限度があるだろうということで、大体の基準だけで、各地方実情に合うようにという考えが、この促進法を立案せられた委員会の方のお考えのように聞いておるのでございます。われわれといたしましても、大体その方針によつてつたのでありまして、ただむやみやたらにというようなことになつてもいけない。しかし法律では八千人以上を標準にして、地勢人口密度経済事情その他の事情に照らして一番合理的になるように、できるだけ増大しろという趣旨のことを言つておりますので、その御趣旨従つてつておるのでございますが、考え方は、あくまでも自治体としての同一性というか一体性というか、そういうものを確保し得るということが一つ考え方標準基準と申しますか、そういうものだろうと思つております。
  7. 金子與重郎

    金子委員 この問題につきましては、あとで少し論議しますが、これはあなた方の方の魔術であります。そうして町村長や何かは、自主的にこの審議会によつてこういうふうなことをやるということを法律で指示はしてあるけれども、実際は天くだり式のものです。それでこうすれば平衡交付金をどうする——この法律に対して、一つ促進法としての恩恵がついていないならかまわない。しかし三箇年の時限法律として、その間にやればこういうことをしてやるということがついている以上は、こういうような法文の書き方というものはよほど慎重な態度をとらなければいけない。これは一つ町村として行くならば、おのずから町村としての適正規模というものがあると信じております。たとえばこれに対して三箇村を集めて、村長というものがただ一人になつても、学校の数も減らず、農業者団体とかすべての自治機関の数もちつとも減らないというのであれば、どこで一体経費節約ができるか。一つ経費節約になりはしない。町村長あるいは町村会議員という、あなたの方で見て一番自治体というものの表面に出たわずかの機関というものに対しては、節約ができるかもしれないけれども、それ以外に節約の点は絶対にないと私は考えております。それに対して規模を設けないということは、あなた方に一つの別な含みと考え方があると思うが、これは議論に入りますから後ほど申し上げます。  それから第三条によると、地勢人口密度経済事情その他の事情に照し、行政能率を高くすることを規定してあるが、今度の町村合併目的は、そういう点が重点であるというように法文通り解釈してよろしいでしようか。
  8. 小林与三次

    小林(与)政府委員 われわれはこの国会でおきめになつ法律通り動かして行きたいと思つております。地方でもこの方針基礎にして行つておるとは思いますが、ところどころいろいろな行き過ぎとかいろいろな批判があり得る問題があるかのように聞いております。
  9. 金子與重郎

    金子委員 それならばこの問題については、今の全国状態はあなたの方の手元にまとまつておるでしようが、私どももこの点は、従来自治体経営もし、同時に農業団体のような自治団体も経常していまして、しかも私個人にすれば、関東地帯の比較的雪も少いし便利のよい所ですが、それでも五百戸、六百戸の農村というものは、経済団体をやつて行く上においても、自治体をやつて行く上においてもやりにくい。もうちつと大きい規模でなければやり得ない、能率的でないということはよくわかつているのであります。従つてこの町村合併という考え方に対しては、考え方としては私も賛成です。しかしながら、この合併を契機にして、この町村合併法律に付随して出て来るところの大都市への併呑ということも、当然起り得るだろうと思う。私は大都市併呑というものをこの法律目的として入れたのではないと思うが、その点はどうですか。
  10. 小林与三次

    小林(与)政府委員 今お尋ね通りでありまして、これは町村町村として規模合理化して行こうというのがこの法律の本質でございます。でありますから、市の場合もこの法律で三万未満と書いてありますが、例外的に特殊な扱いをするという前提法律がきめられておるわけであります。
  11. 金子與重郎

    金子委員 そうなつて来ると、人口密度、あるいは産業経済風俗習慣等、そういうものが一体なつたところに自治の出発があると思うのでございますが、それをただ何万以上になれば市になるとかいうように、今の市町村制というものはただ頭数というものによつて制度の変化があり、しかも市の方が町より一段上の制度であるかのように、町の方が村よりも一段上の制度であるかのごとき錯覚が起されて、全国的にこういう傾向があるということに対して、あなた方はなぜもつとこの考え方に対して、何らかの形で意思表示をしなかつたか。こういう行き方はほんとうでないという意思表示をやつていることを、われわれは不幸にしてまだ見ていないのでありますが、その点はどうなんですか。
  12. 小林与三次

    小林(与)政府委員 今お尋ねの点はしごくごもつともでございます。そこで先ほどちよつと申しました町村合併基本方針も、市の問題をどう考えるかということで、もつぱら町村前提にして決定をいたしております。ただ弱小町村を解消するためにどうしても市に入れざるを得ないというような場合は、町村としての合併考慮すること、こういうふうな考え方基本方針もきめておりまして、これは資料が必要なら差上げます。それで推進本部でもきめ、閣議でもきめて、地方に流しておるわけでありますが、ただ今お尋ね通り、事実上今日市の設置という機運が、正直に申して全国的にきわめて大きいのであります。それと同時にもう一つは、市へ入ろう、市域拡張という空気もきわめて大きいのであります。私は正直に申しまして、そういうものを必ずしも希望もしなければ、勧めもしない、町村町村として合理化して行くという前提であくまでも事は進めなくてはならない、こういうふうに考えております。ただ市の問題は、片一方で御承知通り地方自治法で市の要件というものも一応きまつておるのでございますが、この運動を起因にして、従来の地元におきましてそれぞれ関係の深い町村が相合致して、自治法基準に合致しておるところが出て来て、これがどうしても市になりたいというふうなことになれば、自治法が許容する限りはわれわれとして認めざるを得ないのじやないか、こういう考え方でおるのでございます。しかしながら事柄根本は、あくまでも町村規模合理化して、町村基礎を固めるというところにあることはもちろんであるし、われわれはまたそういう考え方で進んで参つておるのであります。
  13. 金子與重郎

    金子委員 そうすると部長も、この法律の第三条にはつきりと書いてある一つ考え方というものと、現在の審議会なるものがきめて、今各県ともに起りつつある、多分に大都市併呑の形において町村数が減つて行くというこのあり方とが矛盾だということは、あなた御自体もお考えになつているわけですね。
  14. 小林与三次

    小林(与)政府委員 それで実は先ほど申しました通り、早く町村の全体的な計画というものをまず立ててかかる必要があるのであります。今日市の設置とか市域拡張への動きというものは、ばらばら市当局とか個々町村が突き進んで動くという動きが非常に頻繁であります。それで県全体の全体的な考慮に基く合理的な計画が一方で進められつつあるのでありまして、そういう計画前提にして個々合併が進まなければ、妙なちぐはぐなものになるおそれがありますので、そういう意味で、全体計画というものを早く立ててもらい、これがわれわれの希望であります。
  15. 金子與重郎

    金子委員 あなたの今の発言は、大臣発言としてよろしゆうございますな。責任を持ちますな。あなたはさつき劈頭に、大臣のかわりになつて説明すると言つたのだが、大臣意見としますぞ。それは非常に重大なことでありまして、そういうことがないから、今これとこれだ、これとこれだということで、附和雷同してあれだけの迷惑をしておる。もし今のようなやり方で進むならば、しまいには貧弱町村はひとり残されてだれも入れ手がない、ほんとうに必要を感ずるところの町村自体合併ができない。そうして今度は都市併呑の形において、むしろ自活体の性格というものを無視してしまつて自治体であるか、あるいは一つ機関であるかわけのわからない、最も不健全なる形の自治体というものをつくる方に協力してしまう。そうして最後になてそうした県なら県というものを見たときに、どうにも手がつかぬという傾向を今日見つつあるわけでありますから、あなたは大臣としてこの問題に対して急遽手を打つべきだ。そうでないと禍根を将来残しますから、それを私は御注意申し上げます。それが私どもは心配ですから、今こういう問題を取上げているわけです。  それから市町村規模の問題にまたもどるのでありますが、この規模の問題については、この法律行政庁の方から出ております。そうすると行政庁の方は、非常に広い範囲にわたつて農林省なりいろいろの方面から意見を聞いたというけれども、自己の感覚として、市町村産業その他の方面経営一体験を持たない。しかもこの審議会をごらんなさい。この審議会の実体というものがだれにあるか。よござんすか、一つ農村というものの中に入れば、その農村の実際の力を持つておるというものは、単なる公選されたる村長村会議員だけではないですぞ。それ以外のたくさんのいろいろな人間が持ち合つて地域的な一つの集団をなしておるのです。それを行政庁という立場から、町村長さんや議長の権限だとか、議長会だとか、町村会の決議というものだけでものを持つて行くかと、こういうものが出て来る。私はそう考えておる。だからこの法の立て方自体においても、自治庁で立つたのだからやむを得ないけれども、そういう考え方があるのじやないか。そこで問題は、具体的にこの規模の問題ですが、それならばこの規模について、地域というものの広さをどういうふうにお考えになつておるか。たとえば農村の場合、八千の人口を持つておるとして、これが八割の農民戸数を持つてつて、その八割の人たちが、全国平均の七反ないしは関東府県におけるごとき一町弱の耕地を持つて、それに道路、山林というものを含んだときに、その村は一体どれくらいの平方里になるか。それの基礎はどういうふうにお立てになつているか、それを承りたいと思います。
  16. 小林与三次

    小林(与)政府委員 実はこの法律立案の過程におきまして、われわれもお話を承つたのでありますが、その面積をどうするかということが終始議論になつたのでございます。やつぱり人口だけではわからぬので、面積というものがある程度合理化されなければ、町村の合理的な経営というものはできない。そこでその面積をどういうふうにここに表わすかというので、終始委員会議論になりまして、何か入れたいのだけれども、結局その面積ということになれば、地勢その他まつたく事情が違うじやないか。山の場合もあれば平地の場合もある。北海道とか内地もある。そういうことでさんざん議論なつたあげく、一応人口で押えようかということで結論が出たようです。最初は面積三十平方キロという一つの案があつたのでございます。そういうものと人口とを一応めどに置いてやつたらどうだろう、こういう考え方であつたわけです。それがなかなか規定の上に表しようがないということになりまして、あとからこの平均三箇町村とか四箇町村とかいう合併計画をつくるときに、全国のそういう面積なども照し合せまして、大体そういう基本ならばその程度になりやせぬかということを頭に入れて計画が立つたのでございまして、法律のときにまさしくお尋ねのような議論がずいぶん紛糾しておつたわけでございます。
  17. 金子與重郎

    金子委員 これは法律のときに論議され、どこできめられるかというけじめがつかなくて、とうとう入れなかつた。そして最後に行つて、今度はあなたの方の抽象的な一つ合併方針というものによつて下へ行つてまつた。だから一つの天くだり的な考え方になつている。地域なんというものは決して天くだり的に考えるべきものでない。たとえば一つの学校になつたときに、満六才の小学校の児輩は一体どこまでの距離が通えるか。今度は大人になつたときに、一つの協同組合なら協同組合、あるいは農業会なら農業会という行政ないしは行政に準ずる機関へ、一番遠い部落の人たちが用足しに行くのに、一体何キロまでが限度だ。それ以上の距離があつたらば、これは従たる事務所を置かなければならぬだろうし、事務所を置かなければならぬ。事務所を置くなり、従たる事務所を置くということならば、それは合併した意義を失つているのですよ。ただ長が一人あるというだけのことであつて、何もない。そういうふうな自治能率という点から行けば、距離というものは大きく制約する一つ限度であります。ことに都市のように、ここにおりまして、五里でも八里でも電話一本で通ずるところならば別ですよ。今全国農村自治制度においては、部落の制度というものは置いておりません。けれども、実質的に現在の全国農村から部落という自治体の姿をとれば、農村自治体は成り立つて行きませんぞ。そうすると部落というものと中心との距離というものが一番大きな問題であり、同時にその間において交通通信の何があるか。これは歩いて行くなり自転車以外にない。しかも電話がないというところがどれだけ多くあるかわからない。そういうところを、あなたは距離というものを念頭に置かないで、人口七千だとか八千だとかいうことによつてものを解決しようとしたら、これは大きな間違いだ。それとも政府がそういう自治機関運営に対して、別に電電公社や何かにおける政策で交通なりすべてのものをやるということならば別でありますが、こんなことはやるといつてみたところでできない相談であります。この問題について今相談が進行中でありますけれども、あらためて、私個人の意見でなしに、将来この問題をもう少しつき進めまして、この運営上途中でもおそくはないから、もう少し反省するようにお願いをする機会があるのではないかと思つております。ですからこの点は、そういう意味で、私はことさらに面積というものを強く考えるわけであります。  それから市町村行政費については、この書類の計画にもありましたが、これを合併して今の何分の一か——こうすることによつてどの点がどのくらい経費節約できるというそろばんの上から出ておるのですか。そういうそろばんの上に出ておるとすれば、どんなそろばんが出ておるのですか。これは今ここでなくてもいいですから、あとで書類で、この町村合併をするとどういう点にどれくらい市町村行政費というものが助かるか、国家は平衡交付金がどのくらい助かるのだということに対する具体的な調書を出していただきたいと思います。
  18. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 関連して……。今の第三条の問題で小林部長ちよつとお聞きしたい。今金子さんが言つておる、市を中心に周囲の農村併呑されるということは必ずしもよい傾向ではない。しかし今町村合併というものが燎原の火のごとき勢いで流行しておる。だからこれはよほど指導して行かないといかぬ。情勢の違うものが合併するということになつて来ると、将来非常に問題があると思う。いわんや市の付近の村落が合併されて、ほんとうにねらうべき食糧増産というものがおろそかになると非常に問題だと思う。農林委員会ではそういう意味もあつて取上げたわけです。今金子さんが第三条の問題を論究されたから、私は一点聞きたいのだ。「おおむね八千以上の住民を有するのを標準とし、他勢、人口密度経済事情その他の事情」ということがありますが、これは今金子さんが触れられたのだが、距離の観念、あるいは交通観念というような問題からいつて、ある市を中心に、あるいはある町村を中心に合併すればよいという、どうも今までの経済事情や何かからいつて非常に密接な関係にある、あるいは姻戚関係だとか学校とかいうものがあるが県違いだ、たとえば一足向うは県境だということになつて来ると、県域変更ということはなかなか困難なことだけれども、それを乗り越えてやれば運営上非常にうまく行くということがあるわけだ。一例を引いて申しますと、茨城県の古河市に隣接せる野木村は大きな村で、栃木県に属し、商業、姻戚等は古河市と関係が深い。また川を隔てた川辺、利島という両村は埼玉県だが、これの経済関係は古河市と密接である。二十二年の水害の場合において、救済は、埼玉県庁ができなくて古河市がこれを救済したという事実がある。こういうような意味地勢の上から考えて、あるいは経済事情の上からいつて、やはり古河市と一緒になることが非常によいのだ。電話もみな古河市に属しておる。こういう事情にある。しかし県域変更は非常に困難であるということは私どももよく知つておる。これに対して自治庁としてはどういう考えを持つておるかということをお聞きしたい。
  19. 小林与三次

    小林(与)政府委員 今のお尋ねはきわめてごもつともでありまして、これは県の境界にまたがる場合並びに郡の境界にまたがる場合において、似たような問題が起つておるのであります。それでわれわれといたしまして、今度の町村規模の再編成は、いわば基本的にどんでん返しに、従来のそうした行政区画とか地理的な名称とかいうものにかかわりなく、それぞれ地元の住民の福祉を前提にして、経済的文化的な実情基礎にして再編させるべきものである、これが基本の方針であります。ただそれにつきまして、たとえば郡の境界にまたがるというと、はつきり申せば県会議員の選挙区に関係があるとか、あるいはその他いろいろな従来の縁故がある。県の問題になると県会のそれぞれの考え方などがありまして、現地の住民がそうやりたいといつてつても、上の方の段階で話がつかぬという場合がしばしばあり得るのであります。部落の場合も似たようなことがありまして、一部落としては隣の村に行つた方がよいが、村全体としては話がまとまらぬということがしぱしばあります。これはわれわれといたしましてははなはだ遺憾なことでありまして、あくまでも現実の部落の住民の集落の形態とか、その他産業、交通の条件を基礎にして判断すべきでありますので、そこに何か道を開く必要がありはせぬか。これはこの前合併促進法ができましたそのあと、去年の十二月の臨時国会の場合にも、委員会の方でお考えになりまして、その場合の道を開こうというので、県界にわたる場合並びに郡界にわたる場合に、地元の市町村意見が一致すれば、かりに県の段階規定しても、さらに中央の段階において事をさばき得るような立法的な措置を講ずることに実はなつておるのでございます。それで、立法的に道を開きまして、われわれといたしましては、まあわれわれの方針といたしましても、そういうものにかかわりなく、ひとつ大乗的な見地で事を運んでもらいたいということを強く要望もいたしておるわけでございまして、そういう点をお含みおきの上、ひとつ御指導をお願いしたいと存ずるのでございます。
  20. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 今まで合併されたものが一五%ばかりあるわけですが、そのうちで、そういうような問題がひつかかつたものがありますか。
  21. 小林与三次

    小林(与)政府委員 実は、県界変更の例は、今までもあります。これは島根と広島でございますが、あそこは、御承知通り山でございますので、だれが考えても、山の尾根の向う側にある所とこつち側にある所というような問題で、きわめて常識的に話がつきやすいはずなんです。それでもやつぱり従来いろいろ縁故でありましたが、今度は正直に申しまして、あの場合はおあいこのような形でありましたが、こういう立法の考え方基礎になりまして円満に話がついたわけでございます。それ以外に、今お尋ねのような事例はわれわれもしばしば耳にいたしておるわけでありまして、何とかならぬものかという声を聞いている事例が全国相当ございます。できるだけ実際に合うように、われわれとして解決を促進したい、こういうふうに考えます。
  22. 井出一太郎

    井出委員長 この際申し上げますが、ただいま塚田自治庁長官が見えました。行革本部の会合がすぐ続いておありになるようで、ごく短時間だそうでありますが。この際むしろ、塚田長官に質問がございますならば、さようにお進めを願います。
  23. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 今第三条の問題で小林部長さんにお尋ねしたのですが、ちようど塚田長官が見えたから、ひとつあなたからも意見を聞きたいのですが、地勢人口密度経済事情というのが、大体の目標ですね。そこで、今申し上げたのですが、たとえば茨城県の古河市のごときは、隣村は栃木県の野木です。それから川のすぐ向うに二箇村があるが、これは埼玉県の川辺と利島です。それが、古河市と経済事情もみな同じである。婚姻関係もみな同じ、電話のごときもみな古河市の電話である。こういうような所は、ほんとうを言えば、地勢経済事情からいつて合併する方がいいのだが、これは県違いである。いわゆる県域変更というものは非常にむずかしい。これはかつて私が県会議員の時分に問題を起したことがあるので、非常に苦い経験を持つておる。あそこは、茨城県が七・五キロだけ東北本線に出ている。従つて、そのために、電化問題だとか四号国道の改修の問題だといつて、茨城県はどうしても閑却する、そこで古河市の者は県域変更というようなことを言つて、私どもも苦い経験をなめた。県域変更ということは非常にむずかしい。しかし合併という根本の問題をねらうときには、やはりそういう問題が起きて来る。これに対して自治庁長官としてはどういうような方針を持つて行くかというような問題であります。
  24. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 町村合併をやります基本の考え方は三条に示してある通りであり、そうしてさらに主観的には、当該関係町村考え方がどうなつておるかということを一応頭に置いて考えているわけであります。従つて、当該関係町村が、この第三条の考え方にのつとつてぜひ統合合併をしたいという考えであつて、それが県境にまたがつて、県同士の話合いがつかないというときには、第十一条の二によりまして、内閣総理大臣がその間の意見調整をして、まとめられるものはまとめて行くという考え方考えているわけであります。
  25. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 大臣がお見えになりましたから、根本方針を、佐藤さんの御意見に関連してちよつとお尋ねいたしたいと思いますが、私のところにちようどそれと似たような問題があるのです。大分県の中津市と、対岸の福岡県の築上郡の吉富町、これは経済関係まつたく中津市のものでございまして、電信電話、学校、その他店舗、銀行、金融関係等全部同じことであります。それで吉富町と中津市とは一緒になりたがつている。ところが、県当局において、いろいろな別個の段階において地元の意向とは違いまして、いろいろな複雑した関係があるわけです。私は法律の条文の規定はよくわかります。ただ、関係町村議会というものが一致した意見を持つているときに、これに対して県が、知事なりあるいは県議会というものが実際にどれくらいの発言権を有するか。反対した場合に対しては、自治庁はどういう考えで進んで行かれるか、こういう点について大臣の今後の根本の御方針を承つておきたいのであります。
  26. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、やはり一番基本に考えてやらなければならないのは当該関係町村立場であります。従つて、当該関係町村がそういう考えでぜひ合併したいという場合には、強力に府県側に勧告をいたしまして、それが実現するようにぜひとりはからいたい、こういうふうに考えます。
  27. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 おつしやる通りでございますが、そういうときに県当局というものは、あるいは財政交付金、あるいは補助金の問題、あるいは道路、橋梁、港湾等、いろいろな問題にからんで、いろいろな条件を持ち出して、必ず両方ともに難題をふつかけて来る。そういうふうな場合、この合併促進法趣旨から言えば、府県段階合併促進をじやましているということが言えるが、こういう場合について自治庁としてしつかり腹をきめてもらいたい。一切の経済情勢は同じなんですから、積極的に指導していただきたい。そういう点についてはつきりした御意見を承りたい。
  28. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 繰返して申し上げますが、腹ははつきりきまつております。今日の地方自治団体、ことに市町村団体の場合におきましては、できるだけ粒をそろえて数を少くするのでなければ、財政面だけでなしに、全体としてなかなか問題は解決できないというふうに強く考えておりますので、町村合併というものには非常な期待を持ち、かつ努力するつもりでおりますが……。(福田(喜)委員、「県の意向が反対であつてもよろしゆうございますね。」と呼ぶ)強方に法の規定しているところに従つて推進して参りたいと思います。
  29. 金子與重郎

    金子委員 長官が来たから、前もつて最初にお断りしたことを申し上げておきますが、なぜ私どもがこの町村合併の進行の過程において、ことさらに農林委員会でこの問題を出しておるかということは、最初部長が、あなたがいらつしやらないときに、あなたの責任において答弁するという前置きがありましたので始めたのでありますが、あなたがおいでになつたから、一言だけ断つておきます。町村規模が小さいということは、非常に非能率な面が多いし、またむだな経費も多い。また市町村自治体としての独立性が、規模が小さいためにいろいろな支障を来しておることは私どももわかつておる。しかしながら、市町村というものは、何も役場を中心にした行政だけが市町村自治じやない。そこにいろいろの産業、経済、風俗、習慣というふうなものが地域的に集団をして、一つ自治体の本質をなしておる、従つてその面を軽視した、いわゆる役場とか村会議員とかいうものを中心にした上かわの市町村行政という面だけで市町村自治体合併であるとか、そういうことを取上げるべきでない、それだけで考えてはいけない、その結果今実際進行されている状態を見ますと、われわれが予期した方向でない方向へ進んでおる面がたくさん見える。そこで先ほど数次にわたつて逐次質問を申し上げていたのですが、部長の御意見でも、たとえばそのときに、今のようにかつてなものとかつてなものだけが計画ができて、しまいに残つた一体どうなる、これはだれも取り場がなくなつてしまうというようなことで、今にしてもう一ぺん全体計画の上に立たさなければならぬという御意見もありまして、私まつたく同感であります。  それからもう一つは、面積というものに対してほとんど考慮されていない。しかしながら面積というものに対する考慮をもう少しして行かなかつたならば——町村の数が少くなるということは、町村長の数だけは少くなるかもしれぬ、村会議員の数だけは少くなるかもしれないが、実質的な自治経費というものは一体どれだけ合理化するか、これは非常な疑問である。  それから産業方面等に及ぼす影響、ことにこれは私ども考え方としては、今の農村における自治というものは単なる人たちの集まりではなくして、そこに風俗、習慣、経済、教育、そういうものが一体になつて利害関係を同じゆうする一つの隣保相助の精神を強く持つた自治機関というものを要望しておるわけで、ただ役場が一つつて村会議員選挙権が一緒だということが自治ではない、こういうように考えるがゆえに、この問題について私どもが、今進みつつある実態を調査しまして、あなた方の方の自治庁に御意見を申し上げて、そこに意見の一致するところがあつたならば、この法律の過程であつても改むべきは改め、方針をかえるべきところはかえたらどうか。そうでないと百年の計をあやまつ、こういう観点で問題を取上げておるのでありまして、もしそういうことで意見があなたと一致します問題は、今後町村合併の指導方針を、その合理的な方向へ持つて行くという御熱意とお考え方をお持ちだということで話を進めておるのでありますが、あなた、長官としてもそれでさしつかえありませんか。
  30. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御指摘の点はすべて私も同感であります。従つてどもとしましても、ただ数をまとめて少くしてしまえばよいというような考え方は毛頭持つておりませんので、この間にいろいろ考えなければならぬ問題、まず地元としても考えるでありましようし、それをさらに県段階において県全体として見、また国の段階においても国全体として見、百年の計を誤らないようにということは、私ども考えておるわけであります。しかし私どもの観点から見る考え方がすべて十分であるとは毛頭思つておりませんので、御意見があつてそれがなるほどと思われる面があれば、十分取入れまして善処いたしたい、こういうように考えております。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 長官がお急ぎのようでありますから二、三お尋ねいたしたいのでありますが、この法案は参議院から立案をされまして、会期間近に通過いたしまして、私どもとしましても、いろいろとあとになつて考えて問題があることを痛感したわけであります。  そこで一つお伺いいたしたいことは、町村数を少くして行政規模を適正化して行く、またそれに従つて財政的な裏づけも充実せしめて行くというお考え自体には、私ども何ら異存はないのであります。しかし問題は、現在の町村合併促進法通過後における進行状況は、予期に反して異常なる促進を示しております。私は選挙区は鳥取でありますが、たとえばその進行の方向が、人口八千を目途とした適正規模の村ずくりをする、こういう考え方よりも、その地域における中心都市を中心として付近の村落を合併をして行く、こういう形、あるいは町がその周辺の村を吸収して市制をしく、こういう方向に進んでおることは事実であります。これは私ども地方のみならず、各地の状況を聴取してみましても、そういう事態が相当大きくかつ広汎に行われておるように見受けられるのであります。従つて町村合併促進法の目途とする適正規模の村をつくつて行く、行政自治体をつくつて行くという考え方よりも、実態においてはむしろ逆に、都市が農村併呑をして行く、そうして、私ども地域はきわめて小さい県でありますが、今の勢いで行きますと、おそらく自治体が三十ないし四十になる。しかもその中でさらに進めば県を三つに区切つて市を三つつくれば最も簡単ではないかと思われるくらいの勢いであります。たとえば最も突端の兵庫県境にあります鳥取市のごときは、延長七里の距離を隔てたまつたくの山村の一寒村までもこれを統合し、昨年の十月一日に十五箇町村合併して、郡をほとんど三分の二近い合併をやつておる。これに準ずるような中部ないし西部にも空気が瀰漫をして来ておるのであります。その中にまた町村を吸収した町が市制をしく、こういうことでありまして、およそ町村合併促進法のうたつておられまする精神とはよほど逸脱した傾向が現実に現われておる。こういうことはおそらく予期されておつたのであろうと思いますが、そのよつて来るところの原因をいろいろと調べてみますると、今合併しておかないと平衡交付金に支障があるとか、あるいは将来の国の財政的な支援に非常に厚薄がつくとかいうような、その辺は何ら強制的なことを指導官が言うのではありませんが、いわゆる上位機関から町村人たちにそういうことを言いますから、町村の方はそういうふうに受けてしまうのであります。これは今のうちにやつておかないと、先に行つて非常な損をする、こういうように非常な利害打算の考え方から出発して、真に健全なる自治体をいかにしてつくるかということについての真摯なる検討を怠つておるのではないか、こういうことを私どもは案じておるのであります。  いま一つの問題は、市村合併の場合、あるいは町が周囲の町村を併合して市制をしく場合、その中心は常にいわゆる市の商工業者あるいは金融業者、あるいはその他農業とは何ら関係のない人が、ほとんどその市制を左右するのが従来の実例に徴して明らかであります。従つて現在の自治体が、いわゆる自治行政であるか産業行政であるか、産業自治行政自治かの問題については、いろいろ基本的な問題がある点ではありますが、とにもかくにも実際において私どもは、いわゆる国の委任行政よりも、むしろ産業政策に力を入れた産業自治を目途として行かなければならない点は明らかだろうと思う。そういう点から実際に農村実情というものが、新たに生まれた市制の上にはたして的確に反映し得るかという点につきましては、非常な疑念を私どもは持つておるのであります。そういつた実情について、長官は今後この町村合併促進法は、あれは参議院の議員立法でありますが、事実は自治庁で御立案になり、参議院の議員立法の形式で御提出になつたことは明らかでありまして、明らかにこれは政府の責任として重大な問題であろうと思うのでありますが、その点について、いわゆる法は法として、実際は市村合併あろいは町村合併による市制、そういう方向に異常に都市が農村を吸収し、異常なる膨脹を来しつつある現状にかんがみて、今後いかようなる施策を、また指導方針をもつて臨まれるか、この点について長官にお尋ねをしたいのであります。
  32. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この町村合併促進法考え方自体は、ただいま足鹿委員が御指摘になりました通りの、健全な町村をつくるということを頭に置いておるのであります。しかしこれを促進いたしましてから、ことに新しく、市のいろいろな条件を人口五万というようなことを考えておるというような空気がわかりましたせいか、最近になりまして、市がその周辺の町村合併して、町が周辺の町村合併する、もしくはすでにある小さな市が周辺の町村合併するという空気がかなり濃厚に出て参つておることも、確かに事実であります。ただ私どもといたしましては、現在一応市というものはどういうような内規に合致したならばこれを許すかというような内規をもつて、これに合致したものはなるべく許すという方針でやつてつておるのでありますが、今のそういう傾向も、こちらから促進をするという感じは、実はそういう形の場合はあまり持たないのでありまして、ただどういうものでありますか、最近そういう動きというものは、関係の地元の非常な熱心な要請がどの場合にもみなあるのです。中心になる町だけでなしに、それと一緒になろうと考える村なんかも、町村長がそろつてしばしば陳情にいらつしやる。そういう非常な熱望がありますのを、住民の意思というように考えて、しかしそうかと申しましても、その住民がそう考えられるから、本来のあり方というものを強く逸脱して、先ほどもお答え申し上げましたように、自治団体百年の計を誤るというような行き方をしてはならないということを、私ども十分理解はいたしておりますが、そういういろいろな観点から見て、この程度ならばいいのじやないかというものは、この機会には多少今までよりも許すという考え方で取扱つておることは事実なのであります。しかしいろいろ今御指摘になりましたように、検討しなければならぬ面は確かにあると思いますから、今後そういう点はなお十分に頭に置きまして、判断いたします場合の参考にいたしたい、こういうふうに考えます。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 いま一、二点お尋ねしたいのでありますが、現在区画の問題あるいは産業指導上の問題等については大分出ました。現在問題になつて来るのは財政上の問題であろうと思います。本日も塚田長官は、予算委員会において、形式上における赤字自治体と、実質的な面から見た赤字を出した自治体というものについて御発表になりましたが、これは相当大きな数に達しておる。形式上のものが千六十八箇市町村であり、実質的なものが二千六百五十三箇町村にわたつておると、あなたみずから今日御答弁になつておりましたが、これは容易ならぬ事態だと思う。しこうしてそれらの赤字財政に対する一つの施策の一端ともして、適正規模の問題を市町村合併促進法によつて取上げられておられることもよくわかります。しかし現在赤字の出たものが、必ずしも適正規模をつくるというより、私どもの今現状からする認識は、不適正なる地域をむしろ促進しておる。不適正なる市域あるいは町域というものを、あらゆる面から考えて無理な合併をやつておるというのが実情だと思うのでありますが、とにもかくにもやつたものに対して、今後どういう形においてその財政の裏づけ、自治体の財政の基礎を確立される御方針でありますか。現在衆参両院においていろいろと有志議員が寄つて検討を加えておりまする地方自治再建整備法の問題にいたしましても、これは当然おやりにならなければならない問題だと私どもは思う。しかるにこれがまだ日の目を見ず、その見通しについても、まだ十分なる見通しがつかないように承つておりまするが、問題は従来出たところの赤字を一応たな上げをする、農協の場合におきましてもいわゆる再建整備法があり、整備促進法があつて、そして今後の財政にその赤字のもたらす影響をなるべく少くする、こういうところに心気一転、新たなる自治体の財政の確立の基礎があるとも思われますが、政府としては、地方自治の赤字財政に対して、地方自治再建整備法、あるいはこれに類するところの基本的な法的措置、あるいは財政的、予算的措置について、いかようにお考えになつておられますか、その点を長官にお伺いしたいのであります。
  34. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この地方団体の赤字であるということは、実は私も非常に年来心配をしておる点なんでありまして、従つて今度のこの地方におけるいろいろな改革、制度財政面、両面の改革は、実はどうしたらこの赤字をなくすることができるだろうかということの一点に目標を置いて考えられたと申し上げてもさしつかえないほど、その点を重視しておるわけであります。この再建整備の問題については、その意味におきましては、今まで生じた赤字をどうするかという考え方であり、今度の制度の改革その他は、これからそういう赤字を生じないようにという考え方をしておるわけであります。私は今までの考え方では、今まで生じた赤字をこの機会に全部一応整理をして、新しくこれから赤字を生じないようにという構想でもつて考えを進めて参つたのでありますが、今度の予算を組んだ結果は、一応再建整備の面は見送りという形に実はなつておるのであります。どういうわけでそういう形になつたかは、多少金融上の問題もあつたのでありますが、それよりも本質的には、今度のいろいろな制度改革をやつてみた結果、今までの赤字の形と違つた形に、かりに赤字が出るにしても出て来るのじやないか。今まで赤字を出した町村府県が、今度の制度改革の結果は、必ずしも赤字になるというようにはならぬはずである。形が非常にかわつて来ると考えられますので、一応今度はこの制度の改革、それから、税制改革、そういうものをまずやつてみて、そうしてどんな形に過去の赤字がかわつて来るかという見通しをつけた上で、過去の分もその機会に何とか整理をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。そこでこれから赤字を生じないという考え方から、どういうものをいろいろ考えたかと申しますと、ただいま問題になつております町村合併ども、確かにその一つの有力な考え方でありまして、大きくすることによつて、財政の困難を救おうということ、それから機構の面のいろいろな簡素化というようなもの、人員整理も同じ目的から考えておるわけであります。それからいろいろ府県になかつた税を府県に新しく置きましたこと、あるいは府県の税でありましたものを国に取上げて、それを再配分する形をとりましたり、こういうようにいろいろしましたのは、偏在を是正することによつて、今まで赤字だつたところを赤字でないようにしようという努力もいたしたわけであります。この考え方は国と府県府県市町村というように、非常に広汎にわたつてやりましたので、今度の結果は従来の赤字町村府県もかなり救われると思います。私どもが、国の財政の今日の困難ということを頭に置いて、今度の税財政の制度でもつて府県町村自治団体運営をしていただくならば、十分とはもちろん申せませんけれども、何とか赤字を出さないでやつてつていただけるようになるのではないか、そういうように考えており、またそのように運用をして参りたいというように実は考えておるわけであります。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 いま一点私はお尋ね申し上げたいのでありますが、この合併促進法に基きまして、市町村が一番高い関心を寄せた点は、第十三条ないし十七条、この前後の地方財政法の特例、あるいは地方税法上の特例、地方財政平衡交付金法の特例、国有林野整備臨時措置法の特例等、こういうような法の精神が十分理解されることなくして、きわめて粗雑にこれらの条文を解釈し、さあ今やらなければたいへんだというような雰囲気をかもし出した面もなきにしもあらずと、私は思うのであります。そこで従来地方においていろいろ町村長意見等を聞いてみましても、昭和二十九年度においては、二百億程度の合併町村については財政的な相当厚い措置が講ぜられるそうだというふうなことを、昨年もずいぶん申しておつた町村長も私ども聞いておるのであります。ところが本年度の予算において見ますると、合併促進法の適用を受けたものに対するところの特別の経費というものは、二百億はおろか百億はおろかてんで問題にならない。従つてこの結果がいわゆる合併を実施しあるいは今後合併を実施せんとする場合におきまして、相当これは問題になつて来る点ではないかと私は思うのであります。従つて長官あたりは、ただいま行財政の改革の成行きを見届けた上でさらにまた検討したい、赤字財政なり健全財政の問題については考えたい、こういう御意思ではありますが、少くとも地方に与えている印象、それから来る合併町村の期待というものについては、何らかここに積極的な財政的裏づけを行い、あるいは他に施設上における特殊の一つの奨励施策を講ぜられないというと、おそらくこの合併というものについて、将来非常な暗影を来すのではないか。私はそういう点を特に心配をいたすものでありますが、その点について、特に長官としてはいかようにお考えになつておりますのか。  いま一つは、この市町村適正規模でないと同様に、府県の場合におきましても不適正なる区画を持ち、産業経済力のない府県があることは御存じの通りであります。私の出身地も日本一の貧弱県で、実に毎年々々苦しんでおるのでありますが、これは町村合併の問題とあわせて、都道府県のいわゆる行政区画の問題、あるいは産業規模の問題、あるいはその地方におけるところのその県の財政力の問題等を考えて、当然市町村合併を行われるならば、その一つにつながる一環の施策として道州制に発展するのではないか、こういうことも予想されるのでありますが、そういつた末端と上だけを一応今度の行政機構改革なり、合併促進法により一応整備し、その中間にある都道府県については、何らこれに対して措置が講ぜられないということでは、私は首尾一貫しないのではないか、こういう印象も持つのであります。実際において、市町村の場合も都道府県の場合も、その財政力の貧弱な地方におきましては、いわゆるいろいろな産業施設がある、あるいはその他のいろいろな施設をやつたために赤字を出しておるのと、全然その行政自治体が自活するためにすら赤字を出るのと、おのおの赤字によつてもその内容は著しくかわつていると私は思うのであります。私どもの現在直面しております点は、一つの大きな施策を行つたために、今のところは赤字ではあるが、先には大きな都道府県民の福祉が増進をされ、あるいは財政力が発達をする、こういうことではなくして、現実の自治体を維持するために、いわゆる消費的支出に基く赤字の累積ということになつておるところが、市町村のみならず府県においても非常に多いと思います。これに対するところの基本的な対策は、県の場合において今度地方交付税をお考えになつておるようでありますし、あるいはタバコ消費税あるいはガソリン譲与税の問題等お考えになつて、いろいろそこに対策を講じておられるようではありますが、結局において従来のように平衡交付金のごとく財政需要によつて積み上げて、そしてこれを合理的に平衡交付金と特別平衡交付金によつてまかなつて行く、こういう合理的な方向とは違つて、今度の交付税はあてがいぶちであります。国家が取上げたものを、地方から吸い上げた財源をあてがつて行く、こういうふうにわれわれにとられるのでありますが、そういうことになりますと、いわゆる自治体自体の存立のために赤字を出す、こういつた市町村あるいは都道府県というものに対しまして、非常に私はつらい結果になつて来るのではないかと思う。従つてこれは根本にもどりますならば、市町村適正規模考えられるならば、府県適正規模、それに通ずる道州制の問題、こういう一連の大きな問題に発展して来ると思うのでありますが、その点について、第一の今後の市町村合併を実施しあるいは今後実施せんとするものに対する財政的あるいはその他国の立場からこれに支援をする特別の措置を考えておられるかどうか。いま一つは、都道府県の場合におきましても、市町村合併促進に準ずる適正規模の問題につき、道州制の点については基本的な検討を開始しておられるかいなか。これに対する長官の基本的な方針を明らかにしていただきたい。
  36. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 町村合併をするところが二百億ぐらいことしはもらえるだろうという期待を持つておられたという話でありますか、どういう数字を指してそういう人たち考えておられたのか承知いたしませんが、とにかく今度の二十九年度の予算におきましては、合併推進のための予算が十分にもらえなかつたのでありますが、しかしとにかく二十九年度には再来年の選挙というものを前に控えておりますので、大部分の町村合併を完成してしまいたいという考え方で六五%という比率を実は考えているわけであります。この六五%の比率は少しも崩れておりませんので、ただ予算の関係上若干——そういう町村合併をいたしましたことにより国から出す費用が、来年の四月一日付になつたものは三十年度の予算でもつて支給するという考え方にして時期的なずれを見ておりますので、相当金額が減りましたけれども、当初予定をしておりました合併町村及び府県というものに交付できる最小限度の推進のための費用は、これは何とかまかなえる。もちろんこの費用のほかに若干交付税の方からも持出しをしなければならぬ面があると思いますが、この交付税の方から持ち出す部分と合併推進の費用として計上された部分を合せれば、そんなに大きな減額なしにまかなうことができるというように考えております。  それから合併したあと考え方で、合併をいたしますといろいろプラスの点があることは申すまでもないのでありますが、ただこの合併をすることによつてマイナスの面が出て来ると非常に困るということで、そのマイナスの面の起きないように、先ほど御指摘になつた十三条から十六条までのいろいろな特例どいうものが置かれている。従つて合併をする町村は、合併をしますときに必要な最小限の費用は国から経費として見て差上げる。そうして合併によつてつて来るマイナスは特例によつて救済をして差上げる。そうしてほんとうにプラスの面だけが新らしく合併された町村に出て来るようにという考え方になつているわけであります。  それから、同じ考え方府県についてもやつたらどうかという考え方も、私もまつたく同感なんでありまして、先般参議院の本会議におきましてもちよつと申し上げたように、今の県自体を今のような性格で置くかどうかという本質的な問題は別にあるのでありますが、かりにあれをああいうような形に置くといたしましても、町村合併が必要であると同じような考え方で、府県にも合併の必要が私は確かにある。非常に大きな府県と非常に小さな府県とがあるわけでありますから、これはある適正規模というものを考えて、合併できるものならば合併したいという考え方を持つているわけであります。先般、このことは閣議においてもちよつと座談的に発言したことがあるのでありますが、ただやはり当時の皆の者の考え方も、府県の場合には町村のようには簡単におそらく合併というものはできないだろう。と申しますことは、いろいろな伝統的な事情があつてそう簡単ではないだろうというような意見が強かつたので、私もおそらく現実にこの仕事にとりかかつた場合には、町村のようには府県の場合には簡単には行くまいと思うけれども考え方の筋としては、やはり府県合併というものも考えてしかるべきものであると考えておるわけであります。その府県合併というものをもし考えるとすれば、その次の段階には、さらにそういうものの幾つかをまとめた道州制というものもあるいは考えに上つて来るのではないか、こういうように段階を追うて考えておるわけであります。
  37. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 大臣お急ぎのようでありますから、ちよつと大臣意見をただ一点お尋ねいたしておきたいと思います。県域を越えて合併した先例というものをひとつ教えていただきたい。それから具体的な場合に、各県の状況を見ますと、県内において性格を同じゆうする町村並びにその地理的、経済的条件が合併に向いているとかいうことで、県当局も慫慂しておるわけでありまして、自主的な合併機運の醸成をはかつて勧奨的、指導的態度を続けたり、挙県一致で合併の援助、あつせんを行つておる、これが現在の実情でございます。こういうふうな県庁の態度、それから町村合併促進法の建前から言うならば、県内は私はあまり問題にならないだろうと考えるのでありますが、県域を越えた場合には態度ががらりとかわりまして、県のやり方が、関係両県あるいは三県ともまつたく態度が違つて来る。県外の場合には強引にそれに県がむしろ反対の態度をとつておる、こういうことがままあるわけでありますが、この場合に県域というものと合併促進法というものはどういう関係にあるか。私は合併促進法の建前から、ただ単に行政区画に過ぎないような県域というものは、さほど尊重すべきものではない、特に大臣閣議においての御発言趣旨から言うならば、こういうような場合にもどんどん促進していただきたいと思うのでありますが、それについて長官のお考えを承りたい。具体的な例によりますと、A県とB県があつて、ある市と隣県の町が、旧幕時代においては同一であつた、たまたま府県制が設けられて、しかも府県制の途中においてそれがわかれてしまつたような状況である、経済的にも、地理的にも町村の性格、市の性格まつたく同じものであるにもかかわらず、今申し上げたような事情であつて、これを合併する場合におきまして、県当局は必ずしも好意的でない。なぜならば、そのほかの地域において同じような規模合併機運が熟しているところでもないし、条件が類似のところでもありませんが、この場合においてA県がとるところの領地というものより、他の地域においてA県が失う領地が多いからというので、ちようど旧幕時代の領土の奪い合いのような観念から、これに対して非常に足踏み的な、むしろ反対的の態度をとる、こういう事例が見られて、府県当局なるものが、むしろこの合併促進法に反対しておるような結果が見られておりますが、これは合併促進法趣旨とするところであるまいと思いますが、長官いかがですか。そういう場合には、こういう両地域関係をむしろ遮断していただきたい。
  38. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは先ほどの県の統合の場合にも申し上げたように、どうも日本のいろいろな行政区画の状態を見ておりますと、行政区画の状態というものは本来的には大した意味のないものであるにかかわらず、現実になると非常にいろいろな意味を持つておる。郡なんかの場合には、県会の選挙なんか非常に影響しているという考え方が確かにあるようです。ただ県になると、やはり昔の旧幕時代のどこの藩であつたとか何だとかいうことがかなり障害になつて統合のじやまになつておるという場合もあると思うのですけれども、しかしただいま御指摘になつたものは、そういう意味のあれはないようであります。ただ県境があるというだけのことで、実質的には何もないようであります。しかし一つの県としてまとまつて、それを全体として見ておる者の立場からすると、御指摘のように確かに持つておるものをとられるという考えはあると思います。そういう理由のないところからそういう障害の出て参りましたような場合には、先ほど来申し上げておりますように、地元の町村が熱心にそれを希望しておられるならば、政府で両県の間の調整をとつて、それをまとめてやりたい、こういう考え方であります。
  39. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 長官はお急ぎのようでありますから、簡単に一つだけ伺つておきたいと思います。  最近吉田総理大臣は、盛んに知事の公選論をお唱えになつておいでになるのですが、あなたも閣僚の一人として、このことは十分御存じのことと思いますが、これに関連をいたしまして、一体府県自治体なのでございますか、その性格をこの際明らかにしていただきたい。
  40. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは本質的にどうなのか、実態の究明は非常にむずかしいと思うのであります。少くとも現在の国の法制の上では、県も自治体という考え方になつてつてあるわけであります。従つて自治体でありますから、憲法で自治体の首長は公選によるというあの考え方従つて公選によつてやらなければならないという考え方にもなつておるわけであります。
  41. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 そういたしますと、官選知事というようなことについては、全然お考えになつていないわけでございますね。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 それはそうでないのでありまして、私は府県というものは、本来のあり方として、今概念されておるようなああいう自治体でなくていいのじやないか、従つて首長は公選でなくつていいのではないかという、こういう本質に立つた物の考え方をいたしておるわけであります。
  43. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私は今逆な尋ね方をしたのでございますが、ほんとうは吉田総理大臣は官選論をやつておいでになるのであります。この官選論の出て来る根拠は、自治体ではないという考え方でなくてはならないのであります。ところが長官は、私の最初の問いに対して、その点は本質的にははつきりは言えないけれども自治体とみなされているので公選論というものが出て来るんだ、そうおつしやつたですね。そうすると、最初のお答えと今のお答えと全然逆になるのでございますが、その辺を、責任のあるあなたから、もう少し明確にお答えおきを願います。
  44. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 それは私の説明の仕方が悪かつたのかもしれませんが、私は、考え方としては、知事は官選しかるべしという考え方であります。総理がどういう考え方からそういう官選の考えを持つておられるか詳しくはまだ承つたことはないのでありますが、総理が官選がいいのじやないかと考えられていることは、私も考え方は同じであります。ただ私が官選しかるべしと考えておる考え方は、私は府県というものの本来の性格、あり方は、自治体でなくていいはずなんだということ、国の自治体というものを、ああいうぐあいに二段階に置くということ自体に、少し考え方の無理があるんじやないか、ただ今の段階で、府県というものの自治体制をなお全面的に否定できないのは、本来の基本の自治体であるべき市町村がまだ十分完全に育つておらない、従つてああいう二段階自治体制も一時的にはあり得るわけであります。そういう考え方から、今府県自治体と概念されておると思うのですが、私の考え方は、自治体であるべきものは、本来的には市町村であり、従つてこれにもつ統合その他によつて自治体としての本質を備えさせて、そうして自治体は一段階従つて府県というものの形は国の出先機関という形に持つて行く。従つて知事の公選制というものはなくていいのじやないか、こういうように考えておるわけであります。
  45. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 そういたしますと、長官は、府県知事は官選であるべきである、従つて府県自治体にあらず、そこで自治体の基本は町村に置かれなければならない、それが未熟なために過渡的に暫定的に府県自治体とみなす、こういうことでございますか。
  46. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 少し感じが違うのでありまして、私は現在ある府県というものを頭に置いて、そういう考え方をしておるのでありませんで、現在ある府県というものは、自治体としての府県でないというように概念をし直して、従つて現在自治体という形において持つているもののある部分は、将来市町村という自治体が育つて来ればそちらへ移してしまつて、そうして府県というものを本来の国の出先機関としたものにかえて行くのが正しい行き方なんだ。従つてその段階においては知事の公選というものはあり得ないはずなんだ、こういうぐあいに考える。従つて今の吉川委員のお尋ねは、現在の府県そのままを考えておるお尋ねのようでありましたが、そうではないのであります。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官が農林委員会に出席されるようなことは、珍しいことでありますので、私は町村合併促進の今後の運用の問題について、基本的な点を二、三お伺いしておきたいと思います。  町村合併が、今の段階において最も正常な形で合理的に促進されるということは、これはだれしも異論がないわけです。たとえば町村地域の広さの問題にいたしましても、五十年、百年前の交通機関とか通信機関を現在と比較した場合において、それらの規模相当時代的に広汎なものになつても、そこには大いなる妥当性があるというふうに考えられるわけであります。ただ問題は、法の三条にもうたつている通り、これは地元町村の固有の意思によつて合併を行うのだという場合において、先ほど金子委員も指摘されましたけれども、やはりこれらの画期的な、自治体の上に一つの変革を行うようなことを進める場合においては、やはり適正なる規模が一番問題になつて来ると思うのであります。そういう場合において、現在政府はこれらのことに対して、具体的に責任を持つてその指導性を持つておらぬというところに、今後非常に危険なものが包蔵されておるのではないかと思うのであります。もちろん合併をする場合においては、合併をする場合の一つの要素というものがそこにあるのであつて、たとえば産業、経済、文化とか、それらの一つ地域内において調和できる可能性の中において、合併促進されなければならぬという場合における適正規模というものは、その地域の中にそれぞれ固有の性格を持つておるのであつて、これらの適正規模の問題に対しては、政府としてももう少し責任を持つて、具体的な指導性をこれに加える必要があるのではないか。もちろん自治体自身の意思を束縛するがごとき行き過ぎではなくて、かくあらねばならぬという指導性を持つ必要がどうしてもあるというふうに考えるわけでありますが、これらの点に対しては、先ほどの部長のお話によつても、まつたくそういう点が欠けておるというふうにわれわれは感ずるわけです。だからそういう場合において、ただ算術的に二ないし三の町村が一緒になれば、それによつて自治体の方が確立されるのだということは、非常に皮相な考え方であるというふうに考えるわけであります。農林委員会として取上げておる問題は、今までの経過の報告の中にもありましたけれども合併後におけるところの、たとえば農業団体、経済機関等が、どういうような形で具体的な統一が行われておるかということになると、これらはまつたくそのまま放置されておる状態であります。農業協同組合のごとき場合においては、現存のまま当分置く、あるいは農業委員会のような場合においても、地区委員会のような形でこれを存置するということになると、その合併後における新しい町村の内部における生産、経済的な機構というものは、むしろ合併したことによつて混乱したり、その固有の機能を失うような場合もなきにしもあらずであり、それが原因になつて、再び元のようにわかれなければならぬような破綻がそこから生ずる場合もあると思うので、自治庁においては、そういう産業、経済あるいは農村問題等の関連に対しては、非常に勉強が足らぬということがわかりますけれども、これらの画期的な仕事を進める場合においては、十分それらの問題もあわせ考えて進められる必要があると思うわけでありますが、今後の運用の面に対して、もう少し責任のある、具体的な、一つ適正規模の上に立つた指導を加えるというような、明確な御意思があるかどうかということをお伺いしたい。  もう一つは、任意に地元町村合併を進めた場合においては、結局いろいろな事情によつて収残されるような地帯が出て来るわけです。そういうことになると、今後町村間における自治体の力の上において、非常にアンバランスが生じて来るということは、長官もお考えになつていると思いますが、そういうようなアンバランスが出た場合において、どういうような立場からこれらを均衡化して行くかという問題が、新しく発展して来ると思いますけれども、そういう点に対しては、どのような措置を講ぜられるかという問題が一つ。  第三点は、今も吉川委員の質問に対してお答えがありましたけれども自治体の根源はあくまでも町村に置くという場合においては、これは何としても自治体の主体性を確立する場合においては、その自治体の持つ経済的な要素というものが、自治体をささえ得るかどうかというところに問題があるわけでありますが、これらの問題は、単に町村合併をすればそれで解消せられるというほど安易な問題じやないと思う。問題は今の国の制度、特に現在の政府の方向というものは、自治体を育成したり強化するということよりも、むしろ権力の集中を行つて自治体自身がその機能を確立できないような方向に持つてつているような点が、非常に多いのじやないかと考えられるわけであります。この点は、たとえば現在地方税制の改革とか行革の問題が出ておりますけれども、その自治体自身の持つところの財政力を、どういうようにして培養するかという問題と、平衡交付金制度のようなものが非常にからみ合つて来るわけでありますが、現在の政府のやり方は、自治体に財政的な力を十分持たせないような形の行き方において、どうしても中央依存の度合いを高めさせているような傾向があるのであります。たとえば町村あるいは府県が公共事業費の予算をもらうとか、教育や厚生施設の予算をもらうとか、あるいは起債をやる場合においても、全部の町村長がそれぞれ東京へ来て、そして中央機関に卑屈にも懇願、懇請これ努めなければ予算がもらえぬというようなことは、これは一つの逆コースであるというふうに考えるわけでありますが、こういう点をいかに抜本的に改革されて地方自治体の確立をはかられるか、これらの三点に対して長官のお答えを願いたいのであります。
  48. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 中央に、合併に対する指導理念がなくてはならないという点は、御指摘の通りでありまして、私たちもそのように実は運営をいたしているわけであります。もちろん合併の基本のものの考え方は、合併促進法規定している通りでありますけれども、これの運営の面におきましては、やはりそれぞれの土地の固有の事情というもの、これは地元の事情考えなければなりませんけれども、全体を通して考えられる抽象的なものの考え方というものは、これはやはり中央できめてやらなければならないと思います。それを決定いたします機関として、御承知のように中央に合併推進本部というものを設けて、二十名の委員で、従つてその委員の中には各界、ことに農業関係の代表の方もお願いしております。(「そこが弱い」と呼ぶ者あり)そういうような面に不足があるということであれば、なお適当な人を御委嘱して、そこのところで各界の意見を頭において、各界の意見を総合して出て来た構想というものでもつて地方を指導して行く、さらに府県府県促進審議会というもので一応の構想を考える、それと地方の地元から出て来る考え方と、三段階に調整をしながら最終の結論を得るようにする、こういうような構想にいたしておるわけであります。もちろん十分でない面があるかもしれませんが、そういう面は今後また皆さん方の御意向を聞きながら是正して参りたいと思うわけでありますけれども、一応の考え方は、そういうぐあいにして誤りのないようにということを期しておるわけであります。  それから今の政府のものの考え方が、自治体を育成しない方向に行つておるのじやないかという点でありますが、これは実は多少私どもの感じと感じが違うのでありまして、私も基本の考え方として、民主政治の基本をなすものはどうしても自治行政であるというように考えておりますので、自治行政を何とかして育成して参りたいという強い考え方を持つておるのであります。ただずつと今の制度になつてからここ何年間かの経過を見まして、どうにもやはりこのままではいけないと思う面を逐次かえておるというのが、現在のものの考え方の基本であるわけであります。財政的にはむしろ私は今度の改革におきましては、なるべく地方の独自の財源をふやして、地方が国に財源的に依存をすることが少くなるように、非常に努力をいたしたつもりであります。独自の財源だけでも、ごく大ざつぱに見積りまして四百億くらいは今度はふえておると思います。しかしどんなにしましても、またどんな税を考えましても、どうも今の地方自治団体に付与できる税源で偏在を生じないものというのは、とうてい考えられないのであります。偏在をするような税源しか考えられない場合に、税源だけ与えてあとはとれるだけでやつてくれということになりますと、自治団体の間に非常な富裕なものと貧弱なものとの違いが出て参る、それもやはり自治体を育成する道ではないだろうかというので、多少妥協的な線になるのでありますけれども、なるべく独自の財源を与える。しかしその偏在は国の手でもつて是正をして行く、最小限度のものは国から与えるという考え方になつておるのが、今度の改革の構想であります。しかもその構想で同じように——終戦後の地方自治団体に対する財源付与の構想はそうでありますが、その今までの行き方であまりに国に依存し過ぎた部分は、今度大分地方に独自性を持たせるという方向に是正して参つておる、こういうように申し上げられると思うのであります。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほどの質問の中に、たとえば農業関係とかそういうような経済団体の統一的な方向をどうするかということをお伺いしておいたのですが、これは町村合併が進んだり、あるいは市に併呑されるという結果が出ると、どうしても非生産的な面が——ある程度形式的にははなやかになつて行く傾向がただちに出て来るわけですが、それと同時に、生産面におけるものがとかく閉却されるということは、これは否定できないのであります。そういう点は、新しい町村におけるところの議員の選出とかいろんな問題が出て来るわけでございますが、そういう点が力関係の中においてどうしても政策的にも閉却される。たとえば現在においても、各町村において農業振興計画とかいろいろな計画、その村の一つの特質の上に立つて組み上げられておるわけでありますが、そういうものが場合によつては崩壊されるようなこともないとも限らないわけなんです。そういう点に対して、もう少し内容的なものを十分検討されて進められる方針ですか、その点のお考えを聞いておつたわけです。
  50. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは先ほどの農業協同組合その他農業委員会というような、市町村の議会以外のそういういろいろなものが、実は当分はそのままにしておくという構想になつておるという点についての御意見であつたと思いますが、私もその点については、なおいろいろ考えなければならない問題が多々あると考えているわけであります。ただ何にいたしましても、こういうものを一気に、何でもかんでも新しい町村という構想の上に歩調を合せるということはなかなか困難なものでありますから、若干時間というものを貸してもらつて、その間に自然に統合して行くような形に指導して参りたいというのが、今の考え方の基本であります。しかしなお十分検討いたしまして、善処いたしたいと考えております。
  51. 井出一太郎

    井出委員長 川俣清音君。
  52. 川俣清音

    ○川俣委員 私三点ほどお尋ねしたいのですが、まず第一点は、国務大臣としての御答弁を願いたい。それは国会に法律案の発議権があり、予算の発議権が政府にあるというように憲法を割り切つてみるかどうかということはあとまわしにいたしましても、この町村合併促進法案が議員立法だということで出ております。しかしながらいずれにしても、国会側から出ました議員立法にいたしましても、政府が発議いたした法律にいたしましても、法律施行されましたからには、一般国民に与える力というものは同一でなければならぬとお考えになつているだろうと思うのであります。ところがとかく議員立法でありますると、予算の義務を負うような議員立法はけしからぬというようなことが宣伝せられておりますが、これに対する国務大臣としての長官のお考えを伺つておきたい、これが一点であります。  二点は、とかく町村合併というようなことは当然、これはほんとうからいえばいろいろな法律の発議権は、本来は国会にあるべきだと私は思います。しかしながら一歩譲歩いたしまして、憲法の解釈は別にいたしまして、行政機構に関するようなことは政府がある程度発議するのが至当ではないかとも考えられます。そういたしますと、こういう立法はむしろ政府が進んで責任をとるべきものであつたろうと思うのであります。それを都合によつてむしろ議会側にお願いをして、この法律を出したというのが、過去の歴史であり、曲げることのできない事実です。ところが実際出てみますと、予算の裏づけ等になりますると、これは議員立法であるから、その執行をする政府の責任は軽いのだというようなお考えが徐々に出て来るのではないかと思う。この二点についてのお考えをお開きしておきたい。
  53. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 議員立法がけしからぬという考え方は私は毛頭持つておらぬのでありますが、ただこういうことが、具体的な問題としてでなしに、一般的なものの考え方としては申し上げられるのじやないかと思うのであります。議員立法のできます過程というものを考えてみますと、国会の常任委員会においてものの考え方が生まれ、そうして発案される。そこでまとまつて行くという感じになると思うのであります。その場合には、やはり部分を見る考え方と全体を見る考え方の上に、その特殊の問題に対する重要度の判定に多少の違いがあると思うのであります。それからもう一つ考え方は、当該立法が行われました時分の財政全体の状態、それから今日の財政全体の状態と非常に事情がかわつて来ておるというようなことがあり得るわけであります。そこで今度財政状態も非常にかわつて来たというようなときに、財政全体を見る観点から、議員立法として予算の裏づけを要求された立法を見ますときに、なかなか国会の御意思通りに行かないという判断の出て来る場合が、具体的な問題として出て来る。今の財政状態では、なるほどその問題も重要だが、その問題にそれだけの予算の裏づけはできないという感じが、平たい言葉で申し上げると議員立法けしからぬという言葉になつて了解されておるのではないかと思うのでありますが、私は考え方としては、議員立法けしからぬという考え方は毛頭持つてはおりません。ただそれに対して、議員立法通りの予算の裏づけができないという事情は、概してそういう点から来ておるのではないか、こういうように了解をいたしておるわけであります。従つて合併促進法の場合におきましても、これは確かに国会で発案をしていただいたものでありますけれども、しかし私は、町村合併というものに対しましては、先ほども申しましたように、非常な熱意と努力と期待を持つておるわけであります。従つてそれが成就するために必要な予算の獲得にも非常な努力をしたわけであります。しかし先ほども申しましたように、十分な予算というものは得られませんでしたけれども政府計画しておる線が成就できるだけの予算はとにかく確保できておる、こういうふうに今感じておるわけであります。
  54. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで第三点をお尋ねする前に、一点についての御見解に対する私の見解を簡単に述べておきたいと思うのです。というのは、私どもは国会において法案の発議権を本来としては持つておるのだ。また政府は予算の発議権を持つておる。この二本建が本来の民主主義制度の憲法における建前であると私は思うのです。ことに現在の大臣は自由党から出ておられる大臣である。そうするとこの内閣というものは天くだりな内閣でなくして、やはり国会の総意のもとにおいてできておるわけであります。もし国会の発議が悪いというようなことになりますと、大臣の選出自体が悪いということにならなければならない。そんなものを選んだものが悪いということになる。これではやはり国会は不信任案を出して闘わなければならぬという事態になり、それに対して解散をもつて闘うということになるだろうと思う。これは本来の姿だと言われればそれまでだと思うのですが、ときどき国会法の改正等で、議員立法であるから予算を伴うような議員立法は悪いと言われるならば、現在政府の予算を編成しておられる中に法律の改正を必要とするような予算を平気で出しておられる。まだ法律もできもしない、審議もしない、閣議の決裁も経なければ、まだ閣議にかかつていないような法律に関するものをどんどん出しておる。予算は予算として出され、法律はまだ相談していない。これもまた私は、日本の今の憲法を無視したやり方をしておられるのじやないかと思うのです。その議論あとまわしにいたします。今この議論をすべきでないからあとまわしにいたしますが、この町村合併促進法につきましても、やはり本来であれば、当然この立法の執行者として政府は責任を持つておられるはずであります。これに対してあつちから持つて来る、こつちから持つて来るというやりくりでなくして、やはりこの立法に伴う当然な予算的措置をすることが、行政長官として当然な責務だと私は思うのです。国務大臣としては、全体から見て予算の振りわけがあるでありましよう。しかしながらあなたは、国務大臣と同時に行政府の長官です。法律を執行しなければならぬ責任者なんです。予算のことを考えられるならば、国務大臣として残つておられてもいいが、この法律を執行できないということになれば、長官だけやめて国務大臣にならなければならぬ、私は責任上そう思うのです。この点についていかがですか。
  55. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 その点は、私はこのように了解をしておるのであります。もちろんこういう基本の法律がありそれが予算の裏づけを必要とするという場合には、長官といたしましては、その目的が達成されるだけの予算は、とにかく確保しなければならない責任を持つておるということは、私も御指摘の通りだと思うのです。従つてそれが確保できないという場合には、おそらく当該長官としての責任問題が出て来ると思うのでありますが、しかし少くとも二十九年度予算におきましての私のものの判断は、町村合併促進法規定されておる要求の最小限度に、しかも国の今日の緊縮財政を組もうという別個の面の要請とも合致した線において、辛うじてではあるが予算をきめておるということでもつて、ことしの予算を編成いたした次第でありますので、その点は御了承を願いたい。
  56. 川俣清音

    ○川俣委員 第三にお尋ねいたしたいのですが、実際は、これは目的をある程度明らかにした法律ではありますけれども、私から言うと準備が足りなかつたのじやないかと思う。と申しますることは、日本の国全体に対する調査というようなものもまだ行われていないのです。一体山林原野がどのくらいあるかという正確な面積を把握していないしまた耕地も正確に面積を把握していない。また川の流れ等についても、あるいは森林の散布状態あるいは産業状態についても十分な把握をしておらないのですね。私から言えば、産業計画が描かれ、それによつて産業地域というものができ上つて、それに基いて、自治体の構成というものはこうあるべきじやないかという一定の指針が与えられるのが本来の姿であろうと私は思う。その姿が打出されたことによつて初めて自治体の発展が考えられ、そこの住民の一致した協力という態勢が生れてこそ、初めて自治体本来の能力を十分発揮することができると思うのです。そういうはつきりした打出し方をいたしまして、国費に依存する度合いをできるだけ縮減して行くということになりますれば、やはり本来の姿をたずねて行くということに主力を置かなければ、いつまでも国の援助にまたなければならないと思います。そこで予算がない、こういうことになる。本来一人前に立てるような計画が描かれないでおつて、そしてこつちは予算がないのだからあとまわしだ、これでは非常に不親切だと思う。産業計画が立てられて行つて、その上に自治体というものができ上つて行くという方向をとつて行く、これならあまり国費に依存しなくてもいいのですよ。国費に依存しなくても自治体というものは当然立つて行かれるような計画がたされなければならないと思う。それが計画がない。ただこれとこれとくつづけたらいいじやないかというような、非常に安易なものなんです。あなた方はむすこさんでも娘さんでも結婚させるときに、やはり相当計画を描かれて行かなければならないだろう。年ごろになつたらくれてやればいいという簡単なものではないと思う。自分のむすこや娘でさえ計画を立てるのに、町村合併させる場合に、一体予算もなく、そのくらいのことはあとでやるという。それなら合併促進考える場合に、国費がなければならないような合併考えなければならない。結婚の費用がなければないような結婚を考えなければならない。さも金のかかるような計画は立てる、さて結婚になつたら資金がないのだということは、むすこに対しても娘に対しても非常な失望落胆を与えるのではないかと思う。これは一つの卑近な例であるけれども、私はそう思うのです。予算がないならないように初めから考えておかなければならない。さもあるようなことを言つておいて、今度は予算がないから議員立法はならぬという。それはお前の方で責任を負え、こういうことであるのかないのか、この点をもう少しはつきりしておいてもらいたいと思う。
  57. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 それはなるほど理想的な町村合併というものは、川俣委員が御指摘になつたように、十分に各方面調査がそろつてということになると私も考えるのです。しかし今の調査段階、いろいろな統計資料その他の整備段階からいたしましても、一応今度計画をしておる二分の一程度に縮小するという程度のことは、まあ何とか成就できる、こういうような考え方を私の方はいたしておるわけでありまして、今の段階において、できるだけ一緒になるものの相性が合うようにひとつまとめてやろうという考え方で、先ほど来申し上げております国に推進本部府県促進協議会、それと地元の意向というものの三つをなるべく寄せ集めて、妥当な線を出すという構想でやれると思つておるのであります。  それから町村合併に対しての必要な費用が十分考えられていないということを繰返してお尋ねでありますけれども町村合併に対しての必要な経費というものは、今まで町村合併促進法ができます前に行われたいろいろな町村合併の際には、国が特別平衡交付金の面からめんどうを見ておつた先例がありますので、その線を頭に置きながら、新しく町村合併促進法によつて非常に大量に出て来る合併町村及び府県というものに対して、最小限の必要な費用を考えておるわけであります。従つて、繰返して申し上げますが、その程度の費用といたしましては、御満足は行かないでしようけれども、何とか必要な費用を償うだけのもの、また合併促進しなければならないといろいろいろな啓蒙宣伝、そういうことをする費用もこれでまかなえるという考え方になつておるわけであります。
  58. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点だけ……。今の状態を見ておりますと、国民に耐乏生活をしいておるときに、いたずらに運動費を使つて、飲んだり食つたりすることだけに力が入つておる。この費用は莫大だと私は見なければならぬ。一方耐乏生活をしい、緊縮予算をやつておるときに、一方は、今町村調査に行つてごらんなさい。料理屋の大半は町村合併のために飲み食いすることです。これは現実の姿です。私はこれをあえて悪いと言うわけではないが、現状はそうなつておる。これは計画が無計画に立てられておるからこういう結果を生むのだと私は思う。そこで産業計画というものができ上つて、それに基いて指導されなければ非常にむだな経費がかかる。この指針が与えられておらなければならぬ。ただ三千と五千が集まれば八千になるんだ、こういうような安易な合併考えておられたのではいけないのじやないか。国費がなければないように、もう少し有効なふうにして産業計画を立ててやるというようなところに経費が使われるならば、直接国費としての金をくれることが望ましいと必ずしも言つておるわけではない。むしろ経費が不足ならば、そういうところに重点的にものを考えてやることが必要じやないか、そのことが私は国民全体、住民全体に対して親切だと思う。今の町村当局に親切であつてほしいと私は言つておるのじやない。国民及び住民にもつと親切な、だれが見ても判断ができるようなぐあいに自治庁が指導されるのが至当ではないか。あなた方はどうもそうではない。今政府を受持つておるその首脳部のやりいいようにというお考えだからこういう結果になるのじやないか、とくとひとつお考えを願いたいのですが、いかがですか。
  59. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 合併推進のために国から出します費用がどうもいろいろ飲み食いに使われておる……。
  60. 川俣清音

    ○川俣委員 そうじやない。計画がないからそういうふうになるのじやないかと言つておるのです。
  61. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 そういうようには考えておりませんので、計画は十分立てて、指導の方針、それから啓蒙宣伝のものの考え方というようなものも、十分に基本の構想だけは国から立ててやりまして、そしてそれに従つて地方地方の具体的な事情をお互いの間に話合い、さらにまた適当な機会には、国からも啓蒙宣伝のための人も派遣したりしまして、十分周知徹底さして、理解の上に町村合併が推進されて行くことを期待してやつておるわけでありますが、あるいはまだ十分個々の面については、御指摘のような不徹底、不十分な面もあるかと思いますが、なお今後十分検討いたしてみたいと思います。
  62. 川俣清音

    ○川俣委員 もしも計画が立つておるならば、どことどこの町村とが合併することが産業が成り立つ方向だというような計画ができておりますならば、それをお示し願いたい。
  63. 中村時雄

    ○中村(時)委員 長官のお話を聞いておりますと、長官は非常に頭がいいので、いろいろな計画をしていらつしやるようにおつしやるが、私たちは頭が悪いから、わかつたようなわからぬようなことで困つておるのです。そこで概念的な問題だけを取上げて、長官に考え方としてお聞きしておきたい。たとえば地方自治の向上を願う、このことに関しましてはわれわれも賛成なんです。この内容を見てみますと、先ほど金子さんのおつしやつたように、第三条の点、たとえば面積を省いておいて人口度合いを標準にとつておる。そういうような問題、あるいは農村と都市におけるところの問題、いろいろな問題がありますが、たとえば地方財政平衡交付金の問題とか、あるいは税法、農地法、協同組合法、あるいは国民健康保険法、こういうようなものは関連性が全部違うのです。そういうところへもつて来て、加うるに農村の方におきましては、まだ社会機構において血縁ギルドとか地縁ギルドがある。都市の方ではある程度経済ギルドです。その関連性をはつきり明示しないでごちやまぜにしているために、非常に混乱を招いている。もう一歩深く追突しますと、その一つ一つの具体性が出て来ないためにこの問題は政治的に取上げられやすい。そこで今度は、たとえば都市の方に町村合併するためには、市会の決議がいる。そうすると市会の決議をするのに、来年度の予算を折衝しなければならぬから早急にやらなければならぬ。そこで早くやつてくれということで、内容の検討も何もしないで、決議をしてしまう。そこでたとえば町村における赤字財政の検討とか、あるいは税の滞納とかいうことはちつとも考えていない。そういうことでいきなりぽんとやられてしまう。だから初期に計画したものよりも多いものを逆にかかえ込む結果になる。ところが町村の方から行けば、自分の赤字の補填をよりよき方向に持つて行かんとして合併をする。市の方は悪いものを省いて行こうとする。こういうものが起つて来るときに、これを一体どう考えているかということを一点お伺いしたい。  それからもう一つは、そこまで考えて行きますと、たとえば政治的に自分の次の市長選挙をねらう。町村長選挙をねらう。そのために、今言つた血縁ギルドであるような農村においては、あなた方のお喜びになる保守政党が強いので、その上にまたがつて一つの方向を打出そうとする考え方が、次には警察法の改正とか、あるいは知事の官選とかいうものとからんで、中央集権的な基礎をなすおそれを持つて来るわけです。私たちはそういう意味では、民主主義的な上からいつても非常に疑義を持つわけです。これに対して長官はどういうふうに考えていらつしやるか、この点も第二点として聞いておきたい。  それから、そういうふうなことをあなたがもしも研究していらつしやる。たとえば都市の計画と今言つた農村経済の関連における合併だ、その上に基礎を置いてつくるものだ、こうおつしやるならば、その基礎をつくつてつた構成が問題だ。ただ数人の人間で、あなた方がほんとう農村を明確に知つていらつしやるといううぬぼれを持つてつていらつしやる。これは学理的な問題とは違うのです。だからそういう点を考えていただきたい。しかももう一つ言いたいことは、時限的にこれをやつているのです。時限的にやつた結果が、強制的になりやすいのです。だからそういう面とからみ合せて、今の三点をちよつとお答え願いたい。
  64. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御質問のようなものの考え方ということになると、こういう問題は自然発生的にそういう機運ほんとうに馴致されて、町村のそういう形がつぶれるというようなときにならないと、こういう現象は私は出て来ないと思います。しかしそれでは困りますので、やはりある機会をとらえて、ある基本の法律をつくり、またそれに従つたいろいろな機構を設けて、ある考え方に向つて推進して行こうというときには、御指摘のようなそれに伴う若干の副次的な弊害が出て来ることは、私はあり得ると思うのであります。ただそれから出て来る弊害を重視して、いつまでも自然発生的になつて来るまで待つかということが、私はこの場合においては価値判断の問題じやないかと考えているわけであります。私も自分の選挙区においていろいろ実例を見るのでありますけれども、近ごろは、市でも町村でもなかなかよく財政事情のことを知つておりまして、お互いに損になるようなとき、なかなか合併をおいそれとは言いませんし、従つて当該関係市町村の意思を十分尊重しておりますときには、私はそんな無理な合併というものはそう出て来ないのじやないかという感じを持つております。ですから国が指導しますにしても、地方考え方、その上に県の考え方、その上に国の考え方というようにして、その合致した点で出て来れば、一応納得のできる程度のものでないかという考え方を持つているわけであります。それから今政府考えておりますいろいろな構想に、中央集権的なという感じを非常に皆さん方がお持ちになつているようなのでありますけれども、私どもはそういう感じがしないのでありまして、ただ私どもとしましては、現在の機構でやつてみて、いろいろな面にとてもほおつておけないいろいろな欠陥が出て来ている。その面を是正する、占領政治の行き過ぎ是正という形で私どもは呼んでおるのでありますが、私ども考えておる考え方の基本はそこにあるわけであります。それが、今までの考え方が非常に地方分権的に行つておる、その形に若干の後退が出て来る、それを皆さんが中央集権という形でお呼びになつておるのだと思うのでありまして、政治の形を中央集権に持つて来なければならぬ、また意図して中央集権になるように考えておるというようなことは、私どもは毛頭ないのでありまして、ただいくらか欠陥を是正するために行き過ぎをもどすにしても、私ども考え方からしても、中央集権というような形にならないように警戒しながら、行き過ぎの是正を考えておる、こういうように御判断くださるのが正しいのじやないかと思います。
  65. 金子與重郎

    金子委員 これは私が質問をして、ずつと一わたり皆さんに関連質問でやつてもらつたのですが、これだけ皆さんの意見が出ているのです。長官のお考えは、言葉が非常にやわらかく出ておりますので、討論にはなりませんけれども、これは全体の意見と非常にピントが違います。ですから、あなたが中央集権的でないとか、あるいは今の市町村合併——私は法律そのものを言つているのではない。この法律が、あなた方の方で自治庁という立場から、自治を通して、審議会と称するああいう形をつくつて今進行されておる状態を見た場合、われわれとしては憂うべき状態が出ておるというところから、きようのこの質問が始まつたのであります。それが、あなたの方で憂うべき状態が出ておらない、あなたの選挙区の状態を見て、これがいいのだということになりますと、われわれの考え方自治庁考え方と非常に開きが出て参ります。ですから私は、最初に、これは進行の過程であるけれども、百年の計を誤るような傾向があつたら、この際是正する御意思があるかということを、念を押してかかつたのであります。役人の人たちは、結局国を離れた渡り鳥ですけれども、実際農村におります人たちの村に対する考え方は、何代も何代もの人たちが、自分の村のためにという長い歴史を持つている。そのために弊害も一応あるけれども、同時にそれだけの自治観念があつたからこそ、今日維持されておるのです。それならば一つ聞きますけれども、広義の意味自治、経済生活まで入つた自治精神は、東京と地方農村と、比べものになりますか。比べものにならないと思う。東京都においては、自治の観念はどこかにすつ飛んでおる。そういうふうにして、あなたが自治を中心に民主主義を発展させようとするならば、ほんとう自治を打立てなければいけないと思う。そういう点から行けば、今の都市と農村を端的に比べてみても、自分の村を思い、自分の町を思うという根本精神の強さに、どういう相違があるか。それを、あなたのお考えを率直に述べてもらえば、すぐわかると思います。それが今問題になつておるのは、役場、町村長議長を中心とした地方自治的なセンスで今の合併を進めておるから、そういうことになるのです。ことに農村的なセンスを、みなうつちやつているじやないか。農業協同組合法が占領後改正されて、地域関係ないから、農業協同組合法は関係がないとおつしやるが、なぜ漁業協同組合法を入れたか。それは旧法の通りになつていて、自治法律的関連性があるので、しかたがないからひつぱり出さなければならないというわけで入れた。しかしあれだけ入れてない。農業協同組合は、法律こそ今日アメチヤン式な法律になつているけれども、依然として一町村単位の村の経済機関として存立しておる。これに対して今度の法律は、一つも取上げていない。それはなぜかといえば、法律として関係していない形をとつているからです。しかももう一つ言うならば、国民健康保険一つ取上げてもそうです。今日大都市で、国民健康保険をやつておるのが幾都市でありますか。きわめて少数です。それに対して農村人たちは、約半分ぐらいが国民健康保険をやつておる。そういうものが合併したときの状態はどうなんですか。農村がそういう割の悪いことをやつておるところは、そこだけでおやりなさいという線です。そういうふうに、農民だけがそういう特殊な負担をしよつているところは、五箇年間そこでおやりなさい、一緒にしなくてもいい。今度は、農村部落の人が割の悪い仕事、農村経済機関を置くこと、あるいは国民健康保険を置くこと、それは全体の経済には関連なしで、当分お前たちだけでやれ、こういうことが、この法律の中にきまつておるのです。ほんとう合併するならば、なぜ機会均等になさらないか。国民健康保険一つでも、現に私は断言しますよ。今一年なら一年の間に合併したものに対しては、その町村は、国民健康保険に対しては機会均等にしなければならぬという法律をつくつてごらんなさい。合併は実質的には半分以下になります。市はそういうことはやらない。それ一つ見ても、あなた方のやつておることは、自治庁と役場と、そういう行政機関だけから見た一つ合併であつて、経済や思想を深く含んだ合併じやない。だからわれわれは、百年の計を誤るからこの際再検討してもらいたい、こういうところから来ておるわけです。そこで私はもつと深く、たくさんの箇条をあげて、一つずつこれから研究して、皆さんに質問して、その結果検討したいと思いますから、どうぞ長官もこれに協力していただきたい。  これは少々蛇足になるかもしれませんけれども、これから日本を再建して行くのには、こんな甘いことじやいかぬと思う。国民が相当塗炭の苦しみをしなければ、経済的にも、精神的にもならぬ。そういう過程を経るのじやないかと思うのです。そのとき日本の国民のうち、どの階層が思想的に大きなバツク・ボーンになれるか。困苦欠乏に耐える生活に対して、どの国民層が弾力を持つておるか。結局日本の都市のまん中にそれを依存するわけには行きません。堅実なる農村に大きく期待する以外に、私は日本再建の最低の線をしのいで行く弾力はないと思うのです。そのときに今のような形にして、大都市的なセンスで、農村をみなそこに入れてしまつたら、あとはどうなるか。これはゆゆしき問題です。そういうことは、日本再建のためにも、将来相当考えるべきだ。決して適正規模考えないのじやない。私どもも空論を言つておるのじやないのです。役人をやつたことがあるのでも何でもない。今日までは、みな農村自治の問題を、公人として取上げたのでありまして、私は決して役人としてものを言つておるのではないのです。そういう点からいつても、三百戸や五百戸の農村では、協同組合経営さしても、役場や学校の経営をさしても困難だ。どうしてもある一つ適正規模がほしいということは、上にいて支配される人よりも、実際やつた者がより以上感じております。しかしながら、経済環境も違う、地理的にも違う、電話一つないところで、役場に行くのに三里ある、五里あるというところを一つ町村にしたところで、町村の価値をなしません。そういうことを考えたときに、私どもは、これは地方行政の問題であるけれども農村建設の立場において、どうしてもこの問題を真剣に考えていただかなければならぬと考えるわけです。  委員長にお願いしますが、これは継続してもう少し掘り下げていただきたい。また長官もこれを真剣な問題として考えていただきたいということをお願いするわけです。
  66. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 基本に関する考え方は、先ほど申し上げた通りでありますけれども、この具体的な運営の仕方については、おそらく御指摘を受け、あるいは本日いろいろ御意見を伺つておいて、多分に考え直さなければならぬ点が多々あると思いますので、そういう点につきましては、決して今考えておる構想にとらわれることなく、是正すべきは十分是正して行きたいということは、先ほど申し上げた通りでありまして、今後いろいろ御意見を伺いながら、万遺漏なきを期して行きたいと考えます。
  67. 井出一太郎

    井出委員長 この際委員長からも申し上げますが、きようの本委員会の空気はお聞き及びの通りでございます。長官も、是正すべきは十分に是正したいという御意思でありますが、なお、本委員会として掘り下げました一つの結論的なものを、お手元に通達申し上げるようなことがあろうかと思うのであります。その際に、ぜひひとつ虚心坦懐にお聞き取りいただきまして、国家百年の大計のために御善処あらんことを希望申し上げるわけであります。  本日はこの程度で散会いたします。     午後四時散会