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1954-04-20 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君    理事 平井 義一君 理事 高瀬  傳君    理事 下川儀太郎君 理事 鈴木 義男君       永田 良吉君    長野 長廣君       船田  中君    八木 一郎君       山崎  巖君    須磨彌吉郎君       中曽根康弘君    粟山  博君       飛鳥田一雄君    田中 稔男君       川島 金次君    中村 高一君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         保安庁局長         (経理局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 四月二十日  委員岡村利右衞門君辞任につき、その補欠とし  て大久保武雄君が議長の指名で委員に選任され  た。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたします。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案一括議題となし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。下川儀太郎君。
  3. 下川儀太郎

    下川委員 昨日、質問申し上げました保安庁直轄工事についての疑問点につきまして、当局答弁を求めます。
  4. 稻村順三

    稻村委員長 保安庁関係の方がまだ来ていないそうですから……。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 それではあとにまわします。
  6. 稻村順三

    稻村委員長 それでは川島金次君。  なお副総理は所用のため十一時二十分に退席されるとのことでありますので、その旨お含みの上御質疑願います。
  7. 川島金次

    川島(金)委員 私はこの委員会で初めて発言をいたすものであるが、これは防衛法案に直接関係はございません。たまたま副総理が見えられておりますので、当面の重要な政局の問題について、若干参考のために承つておきたい、かように思うものでございます。  まず最初にお伺いいたしたいことは、たまたま昨日吉田首相犬養法相を招致いたしまして、犬養法相の当然の責任であり、所管事項でありまする警察法の問題についての解任を行い、これにかわるに小坂労相をもつて当らせ、法相法務省の直接の仕事に専念をさせるということが、新聞に報道されておるのでありますが、この事柄は、一体どのような事情においてかようなことがなされたか、この点をまず副総理からお伺いをしておきたいと思います。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 従来法務大臣国警担当ということになつておりましたが、御承知のように今度の会期、休会明け以来いろいろな重要法案が輻湊しておるからでもありまするが、警察法審議がだんだんに遅れまして、その理由一つには、法務大臣法務省事務に追われて出席いたしかねるために遅れおる場合もたびたびあるやに聞きますので、この際警察担当を別にこしらえた方がいいと考えまして、小坂労働大臣担当ということにいたした次第であります。別にそれ以上の意味はございまもん。
  9. 川島金次

    川島(金)委員 警察法改正案は、犬養法相が、立案担当されて来た当面の最高責任者であると私ども考えております。しかるにその最高責任者犬養氏が、国会審議にあたつて、当然責任をとるべき立場にあるにかかわらず、突如として小坂労相をこれにかえた、小坂労相警察法の問題について、なるほど若干の理解知識は当然持つておるのではないかと思うのでありますが、この法案の立法の立場においても、最高責任者犬養法相であるということは間違いのない事実であります。この重要な責任を持つておる犬養法相が突如その面に限つて解任をされた。そうして立案の当初以来あまり関係のない、この法案自体に対しても犬養法相と比較すれば専門的な理解知識もいささか劣るであろうとわれわれが推察しております労働大臣をもつてこれに充てるということは、政府がこの法案に対する責任重要性について、いかなる考え方を持つて来ておつたのかということについて、われわれは多大の疑問を持たざるを得ないと思うのでございます。今緒方総理から、これは単なる議会審議上の都合だけであつて、ことさらに他意はないという答弁があつたのでございます。けれども、これを国民の側から眺めておりますと、非常に深い疑問を持たざるを得ないのでございます。ことに現下の政局は、疑獄事件中心としてうずを巻き、その疑獄事件進展のいかんによりましては、吉田内閣運命にかかわるのではないかとさえいわれております今日の現実の場面を見ております国民にとりましては、何か突如としてこのような措置を政府がとつたという裏面に、犬養法相をして法務省事務に直接専念せしめるという名のもとにおいて、検察当局に対して何らかの圧力を加えるのではないかという疑問が、国民の一部にはわいておりますこともいなめない事実であります。われわれといたしましてもこの問題については非常な疑問を抱かざるを得ないのでございますが、一体このような事柄について、政府は何らかの配慮を持つてこのことがなされたのではないかとわれわれ見るのでありますけれども、これに関する緒方総理責任のある明確な見解を、この際ただしておきたいと思うのでございます。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国警担当をかえたのではなくて、法務大臣の突如とした更送というようなことでももしあれは、あるいはそういう疑問が浮ぶことがあるかもしれませんが、法務大臣の更送ではなくて、国警担当を、国会の運営上の必要、また議案審議が急速に運ぶように考えて、かえただけでございます。今お話にあつたようなここは全然ございません。政府としまし、は、ひたすら警察法改正法案審議を早くしたいと思つております。小坂労働大臣も、従来所管は違つておりまりけれども警察につきまして相当研究もいたしておりますし、それから従来、事情は違いますが、国会開会中に担当大臣がかわつたという前例もありますので、いろいろお話がありましたが、政府としては今御推測のような意図は少しも持つておりませんから、御了承をお願いしたいと考えます。
  11. 川島金次

    川島(金)委員 それでは念のために重ねて伺つておきたいのでありますが、犬養法相立場から申します場合に、かりに当面の紙上にうわさをされておりますいわゆる政党重要人物に何らかの疑惑がかけられ、しかもその疑惑に基いて逮捕許諾請求すべきかべからざるかという重大な段階において、今や検察当局は重要な審議を昨日来続けておることわれわれは新聞承知いたしておるのであります。しかもこの場合において、もし新聞に報道されておるような事柄が事実となつて現われますときには、政府にとつてもきわめて重大な事柄であろうと考えるのでございます。しかもこの場合犬養法相内閣の一員の立場において、あるいはまた法相という最高責任者立場において、これらのことが実現することはすなわち即時内閣運命にもかかわるような重大な事件であるがゆえに、逮捕請求等のごとき処理は若干の延期をすべきであるという、いわゆる法務大臣検事総長に対する指揮監督立場において、そのような事柄ができるかどうか。これは副総理直接の責任の問題ではございませんが、総理大臣代理者としての緒方さんでありますので、この点を私は参考のためにこの機会に伺つておきたいと思うのであります。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 検察庁法によりまして、法務大臣検察当局を指揮することができることにはなつておりますけれども、これは非常な場合でありまして、今法務大臣国警担当を離れたことについて何か関連があるような御意味と思いますが、そういう関連は全然ございません。
  13. 川島金次

    川島(金)委員 その事柄ではなくして、私のお尋ねいたしたのは、法務大臣がその責任の地位において、検事総長に対して重要な人物逮捕請求のごときをすることは、ただちによつてつて政局に重大深刻な影響を与える等の理由をもつて法務大臣検事総長に対して、そのような逮捕許諾等のごとき請求をすることを猶予せしめるような指揮命令ができるかどうか、この点でございます。
  14. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 検察庁法第十何条でありましたか、条項をよくそらんじておりませんが、その指揮権がどこまで及ぶかということにつきましては、私ここで十分申し上げるだけの用意を持つておりません。おりませんが、法務大臣警察から離れたことが、何かそれに関連があつて、うわさされております重要人物取調べにつきまして、何か干渉とか圧迫とかいうようなことをしたということは、私の承知する範囲では全然ないのであります。
  15. 川島金次

    川島(金)委員 世間では何か犬養法相警察関係解任をめぐつて、時が時でありますので、とかくの疑惑を深めておりますことはまぎれもない事実でありますので、私は重ね重ね緒方総理にお伺いしておる次第であります。  そこでさらに進んでお伺いいたしますが、もし新聞紙上において明瞭に伝えられておりますがごとき――氏名を申し上げることは同僚議員としてまことに心外ではございますが、いわゆる自由党の党内における最高責任者にひとしい立場を持つております幹事長あるいは政務調査会会長、これらの重要な人々が万が一かりに、新聞紙上に伝えるがごとき逮捕請求をされるような事態が起りました場合において、政党総裁である吉田茂氏は、それがただちに内閣最高責任者でありますところ総理大臣――政党総裁内閣首班とは表裏一体、不即不離の立場にあります方でありますので、このような事態が万一発生をいたしました場合には、政党責任者といたしましてもきわめて重大な問題ではありますけれども、さらに内閣首班者として一層きわめて重大な責任ではないかという考えをわれわれは持つのでありますが、このようなことがかりに今明日中にでも実現をしたといたしますならば、一体内閣はこれに対していかなる態度をもつて臨むべきであるか。これについては今や国民あげて注目の焦点となつております重大な問題でありますので、この機会緒方総理にこれに対する所信と見解を承つておきたいと思います。     〔「そんなことは関係のないことだ」と呼ぶ者あり〕
  16. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 御暗示されました人物逮捕要求というようなことは、私どもここで問題に取上げたくないのであります。でありまするが、かりにそういう場合が起りましたならば、これは政府にとりましても政党にとりましても重大な事件であります。従いまして政府としては深刻な考慮をいたさなければならぬと考えまするが、今申し上げましたように、これはすべて今のところ仮定段階にありまするので、それについてのことは申し上げません。
  17. 川島金次

    川島(金)委員 今与党の席から、私の質問は何かまつたくこの法案関連のないような事柄だと言われておりまするが、少くとも当面起つておりまする政局事態というものは、必ずや内閣進退に及ぶ重大な問題である。この内閣運命にもかかわり合いのあるであろうという当面の重大な段階において、そのことと政局、その政局議会、その議会の中で取扱われておるところの重要なる議案、これはいわゆる政局進行表裏一体のものでなければならない。そういう形において、われわれが今ここで審議いたしておりまするところ防衛関係法案も、政局進展とからみ合つて表裏一体不可分関係にあるといわなければならない。もし内閣がその運命が行き詰つて投げ出すようなことがありますれば、われわれが目下審議いたしておりまするところの重要な法案審議も水泡に帰するというおそれなきにしもあらずであります。従つてこの重要な段階における政局と、われわれが議を続けておりまする法案との関係においては、きわめて密接不可分関係ありとの立場をもつて、私はこの問題を質疑いたしておりますので、御了承願いたいと思うのであります。  そこでさらにお伺いをいたすのでありますが、一昨日の新聞紙上によりますれば、佐藤幹事長は、たまたま自分の問題に関しての新聞記者質問に対しまして――政府は従来、この疑獄事件の発展するところ、かりそめにも閣僚級に波及するような事態になれば、それはきわめて重大な事柄であると言明をいたしておるが、この事柄関連して、もしあなたがこのような不幸な事態になるといたしますれば、一体どういうことになるというような意味新聞記者質問をいたしたようであります。それに対しまして佐藤幹事長は、閣僚級と言うけれども、われわれの立場はむしろ閣僚級以上のものである。従つてぼくの身辺にそのような事柄が起るならば、それは当然内閣進退に及ぶであろうという意味のことを新聞記者に漏らしたと、新聞は報じておるのであります。これは私ども予算委員会において、あるいはその他の委員会において、しばしば吉田総理もしくは副総理質問して参つたことと偶然にも符節を一にするものがあると私どもはこの記事を拝見いたしたのでございます。従つてこれらのことを考え合せまするときに、もしこのような重大な事態が発生いたしまする場合においては、内閣国民道義的な最高責任者という立場からいたしましても、おのずからその進退を決しなければならぬことになるのではないかということは、国民のひとしく認めるところであるのでございまするが、その点について私は、緒方総理の言う仮定の問題とはいいながら、きわめて政局の上において切迫した――緒方総理の言葉をもつて言いますならば、実に欄爛頭の問題でございます。この具体的な切迫した問題について、かりそめにも総理大臣を代理いたしまする緒方総理にとつては、事態見通し、そしてそれに対するところの対処、こういつたことにつきまして、責任ある立場において総理ともそれぞれ懇談をいたしておることではないかと当然に私ども考えておりますので、くどいようでありまするが、この点について重ねて副総理見解見通しなどを伺つておきたいと思うのであります。
  18. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたしますが、今御引用になりました新聞記事、これは事柄もきわめて重大でありまするし、かつまたその問題のさ中に立つておる佐藤幹事長がした話、それを新聞記事によつてお述べになつたので、これは私それだけによつて私の感想を述べ批判を言うことは差控えたいと考えます。しからば政府はそういう場合に、今の新聞に出ているようなことと同様に考えているかということにつきましては、政府政治上の責任国会に対する責任国民に対する責任ということは、常に最も真剣に考えておるところであります。従いまして政府進退は、いかなる場合にも国民の納得の行くようにいたすつもりであります。
  19. 川島金次

    川島(金)委員 それでは重ねてしつこいようでありますがお尋ねいたします。この事態進展に相伴いまして、われわれ左右両派社会党が協議の結果、大体予定といたしましては本日内閣不信任案を上程する手続をとり、場合によりますれば、二十二日の本会議にこれを上程するという予定になつておるのであります。この不信任案内容について申し上げることは、この場合省略をいたしまするけれども、この不信任案がかりに本会議において改進党その他の同調が求められて成立するような場合が起つたといたしましたときに、はたして内閣解散か総辞職かという問題が当然に起つて来るのでございますが、その場合において内閣はいかなる態度をもつてこれに臨むか。この問題についても内閣は、政治家立場において、また責任ある内閣立場において、今後の情勢、あるいはその情勢に基くところの諸般の検討を続けておるのではないかと当然に私どもは思いますので、その問題に対するところ内閣としての責任ある見通し見解をこの際重ねて聞いておきたいと思うのであります。
  20. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今の政局段階におきまして不信任案が通過するという場合を政府として考えておりませんが、もし今お述べになりましたように、不信任案が通過する場合がありましたならば、政府は自由に判断をいたして進退をいたしたいと考えております。
  21. 川島金次

    川島(金)委員 不信任案がかりに上程をされまして可決されるような場合がありましても、従来の情勢とは違いまして、今度の不信任案が上程されますところの重大なる根拠、理由というものは、いわゆる疑獄汚職の問題が中心であります。政治道義の問題、それに関する政府責任を追究することが、いわゆる不信任案の重大なる理由となるであろうということは自明な事柄であります。そうした場合において、このような政府の重大なる責任上の問題が発生いたしまして、しかも院内において不信任案成立をいたしまする場合には、当然に内閣は総辞職すべきであるということがわれわれには当然に考えられるのであつて解散という問題はこれは問題でないとわれわれは考えるのでございますが、そうした場合において一体吉田内閣というものは、この不信任案成立をいたしました場合に、解散か総辞職かというその二途の一つを選ぶという考慮の余地があると考えておるのかどうか、それについての重ねてのお答えを願いたい。
  22. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 予定されております不信任案内容については、今言うことを控えると言われましただけにどういう内容不信任案であるか、私どもとしてもわかりません。もしそれが汚職関係することであるといたしますならば、政府といたしましては、まだ汚職問題の全貌をつかんでいないのでありまして、そのことにつきまして、政府不信任案通過のあかつきにどう進退するかということは、政府立場から自由に判断をいたしたいつもりであります。
  23. 川島金次

    川島(金)委員 政府が当然に責任を負うべき当面の政局に対し、政府がいささかの責任も感じておらぬかのごとき印象をもつて受取れるような答弁が先般来繰返されておりますことは、お互い責任政治道義政治を強調いたして参つておりまする立場上、まことに心から遺憾に思うものでございます。この問題について論議をいたしますことは、お互い仮定の問題だという立場、名分のもとに水かけ論のような形になりますので、一応とどめておきます。  そこでさらにこの際お伺いしておきたいのは、緒方氏におかれましては、保守新党の大構想を持たれておりまして、これに対して先般来積極的な働きかけを行つたかのごとき印象をもつてわれわれは見ておるのであります。その後保守新党の問題について、新聞紙上から見ておりますと、ほとんど一頓挫の状態にあるのでありますが、この保守新党の問題について、その後におけるところ緒方さんの考え方、また保守新党進行の状況、これはきわめて政局にも重大な関係のある事柄でございますので、この際一応さらに伺つておきたいと思います。
  24. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私が何か特殊の構想を持つておるようにお話になりましたが、私ももちろん政局の将来、政党の将来ということについて常に考えておりますが、今保守新党と言われておりますものは、すでに自由党としましては、党議としてこれを決定し、天下に声明書を発表しておりますので、この保守新党構想がいかに進められつつあるかということは、今川島君も御承知だろうと考えまするが、これは現在どういう程度ということよりも、あの声明書を発表以来の一般の反響からみまして、これは大勢でありまして、今日どうということでなしに、私は大勢から見まして、必ずこれは成り立つもの、実現するものと深く信じております。
  25. 川島金次

    川島(金)委員 保守新党の問題につきましても私はいささかの見解を持つておりますので、その見解についてさらに副総理見解をただしたいと思うのでありますが、時間もあまりありませんので、法案に直接に関係のある問題の質疑に移りたいと思います。
  26. 中村高一

    中村(高)委員 関連して……。二十分で緒方総理は帰るそうですが、あと五分ありますので、きわめて重要問題ですから……。(発言する者あり)
  27. 稻村順三

    稻村委員長 私語を禁じます。
  28. 中村高一

    中村(高)委員 今川島君から質問がありましたが、これはまことに重大であつて、場合によつて、また木村長官が変更されるというような場合が起きるとたいへんである。これはとにかく法務大臣がきのうのように警察関係からやめさせられるような例もあるのですから、時局の進展によつては、木村大臣があるいは担当をおやめになるかもしれぬのでありまして、これは重要なんです。先ほど川島君も質問をしましたが、自由党佐藤池田両氏逮捕の問題について検察会議が開かれて、それに対して犬養法務大臣から、何か慎重に取扱いをせよということを検事総長に伝達をされていることが伝えられておるのでありますが、これは一体閣議でそういう方針をきめたのか、あるいは犬養法務大臣が、大臣としての個人の責任でそういうことをやつているのか。特に犬養法務大臣はわざわざ総理にも会見をして、今度の佐藤池田両氏逮捕について重要な会議を行つているようでありまするが、検事総長に対して慎重にせよということは、一体内閣方針ですか。その点をはつきりしていただきたいと思います。
  29. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は今御引用になりました新聞紙を見ておりませんが、法務大臣が、検事総長に対して、今回の汚職取調べを慎重にしろと、昨日あるいは一昨日特に申し入れたということは何も聞いておりません。
  30. 中村高一

    中村(高)委員 副総理がそういう重大なことを聞いておらぬということは、まことに納得することはできないのでありまするが、おそらくこの内閣が倒れるかどうかわからぬというほどの重要な問題について、副総理が知らぬというようなことはないと思いますけれども、しかしそういう答弁でありまするから、一応これはやむを得ないといたしまして、一体ここまで問題が展開をいたして参りました以上は、法務大臣としてブレーキをかけるような指揮監督をすべきものでは断じてないとわれわれは思うのであります。むしろこれは法務大臣としても問題を徹底的に調べて、そして疑獄を決するという重要な立場に立つておりますことは明らかであります。検察庁法におきましても、検事総長指揮監督することのできる規定は確かにありますが、先ほど緒方さんの答弁によりますと、犬養法務大臣が最近非常に多忙であるから警察関係の任務を解いたんだということでありまするけれども検察庁法によりますならば、法務大臣は直接何も一つ事件関係しているのではないのですから、事務に追われてはいないと思う。人を検挙することに対して事務なんぞをとるのが法務大臣の役目ではありません。これは法務大臣としては、ただ検事総長に対して最高指揮監督をするだけであるのに、事務に追われて忙しいなどというところを見ると、これは一々逮捕についてせわしいのだということにならなければならぬのでありまするが、これはまことに間違つた考えでございまして、事務に追われるまどということはないはずであります。最近この疑獄事件が起きたために、法務大臣は一体なぜ事務に追われているのか。それは検察庁法の精神にも反すると思うのでありますが、一体どんな事務に追われて警察関係をやめなければならぬのか、もう一度お尋ねいたします。
  31. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えいたします。検察庁法に基いて法務大臣常住べつたり検察指揮監督しているということは、今お話のように、もちろんございません。今度法務大臣国警担当を解除いたしましたことは、これは事務がふえた云々ということでなくて、今までの国会の実績を見ましても、法務大臣がその方に手をとられて、法務大臣の欠席によつて議事が渋滞している場合がたびたびありますので、この際これが重要な法案であると政府として考えておりますだけに、御審議を急いでいただく関係法務大臣国警担当を解いただけのことであります。
  32. 中村高一

    中村(高)委員 大臣の変更をせられたことについて、われわれは納得はできないのでありまするけれども、さきに前例もあるというようなことをおつしやいました。確かにこれは前例はあるのでありますが、大体これは病気であるとか、あるいは外国に旅行しておつて、どうしても事務をとれないとかいうような場合は確かに副総理の言われるような前例がありまして、大臣事務の変更はありましようが、今度の場合などは、犬養法務大臣は毎日国会に来ておるし、直接検察の指揮に関係しておるわけでもなし、これはおそらく何か別の意味を含んだものとしかわれわれには解釈できないのです。別に病気でもなければ、旅存してるわけでも何でもないのでありますのに、ことさらに、警察法というものが委員会でもここまで来ておるのに法務大臣をとりかえて、しかも出て来たのは労働大臣である。労働は警察に直接の関係も何もないのであつて、おそらくは、この前の労働立法のときに相当弾圧を加えてやや成功したので、またあの例をとつて、そうして警察法を押えつけようというのであるいは小坂君を出したのかもしれない。あるいは犬養法務大臣が中にはさまつてしまつて佐藤あるいは池田君の検挙に対して板ばさみになつてどうにもならぬ実情でありまするので、ここでそういう方面に専念をさして、場合によつたならば犬養大臣に圧迫を加える役目をやらせるんだと世間では見ておるのであります。与党の諸君はそうでないといつても、大体世間では全部そう見ておるのであります。今まで大臣をとりかえた前例があるとかいつておりまするけれども、今度のような場合に、責任のある大臣をそう簡単に変更させるというようなことは私は異例だと思いまするけれども、どう思いますか。
  33. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 前に、現在の木村保安庁長官が法務総裁時代に行政管理庁長官を兼ねておりまして、国会中に行政管理庁長官をはずした前例がございますが、これは別に珍しいことじやないのであります。今犬養法務大臣が困つておるとか圧迫するとかいろいろお話がありましたが、それは犬養法務大臣をかえるとかなんとかいうならばそういう理論も通ると思いまするけれども犬養法務大臣国警担当をはずしたということにつきましては、今お延べになりましたことは、どうも私の判断では当てはまらぬように思うのであります。
  34. 川島金次

    川島(金)委員 議案に直接関係のありまする事柄について保安庁長官に若干のお尋ねをいたしたいと思います。この委員会はもちろん、本会議その他の委員会でもしばしば問題になつ事柄でありますので、若干重複のきらいがあろうかと思いまするけれども、私は、その問題について、少しく角度をかえた立場において大臣の所見を伺つておきたいと思うのであります。それは、今、ビキニ環礁において行われました水爆の実験を契機といたしまして、おそらく世界人類をあげて重大な問題として焦点とされておりまする事柄関連することでございます。  私が申し上げるまでもなく、大臣もすでに御承知のことと思いますが、原子力の科学的、無限的な発展は、遂に水爆を発明させ、しかもコバルト、リチューム等の爆弾に至りましては、おもむろに目下実験をされ、あるいは科学的な分析がされておるところでございますが、その実験と科学的推定に基いて発表されたところだけによりましても、一発のコバルト爆弾あるいは一粒のリチウム爆弾の破壊威力は、もはやわれわれ人類が今日まで考えておつたところの限界をはるかに越えた実に驚くべき破壊力を持つておるということは言うまでもございません。ことに、先般のビキニ環礁において実験をされました一発の爆弾の破壊力、あるいは破壊力のみならず、いわゆるデス・アッシュ、死の灰と申されるものの人類に及ぼす脅威、これも人類未曽有空前の脅威であるということが今日判明をいたしたのであります。このような驚くべき人類全体にとつての脅威とされる原爆の発展は、やがて来るべき戦争時においては、一瞬にしてある地域の文明と生物はことごとく消滅し去るであろうという、きわめて重大な、人類にとつて脅威的な発明がされたわけであります。このような脅威的な兵器が発明されました段階において、われわれが今日まで考えておりましたいわゆる国の独立、平和、安全、こういう基本的な考え方に基くところ防衛の処置、守る処置、こういう事柄についても基本的に考えをかえなければならないのではないかという感じをわれわれはいたすのでございます。こういう意味において、この防衛法案のねらうところは、言うまでもなくわが日本の平和、独立、安全、さらに要すれば緊急事態の国内の擾乱に対処しようということであり、そういう法案ではございまするけれども、一体、この法案に基くところのいわゆる再軍備をもつていたしまして、しかも世紀の発明ともいわれ、人類最大の脅威とも感じられておりまする現前の水爆時代にあつて、なおかつわれわれが旧套依然として考えて参りましたところの一国の防衛、一国の安全、一国の平和を守ることができるか。その基礎条件として、この種のような再軍備的な軍備によつてはたしてその目的が今日達成できるという基本的な考え方をいまなお長官は持つておるのかどうか、これについての基本的な考え方について、私は、この際明確にあなたの見解を伺つておきたいと思うのであります。
  35. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。原子爆弾、水素爆弾、あるいはコバルト爆弾等の発明によりまして、むしろ、世界が戦争の悲劇を再び繰返すようなことがあるいはなくなるのじやないかと私は考えております。かような脅威的な兵器が使われるようになりますると、仰せのごとく、私は、おそらく人類の破滅を来すのではなかろうか、恐るべきごとであろうと思います。しかし、あるいはまた、兵器の進歩によりまして、かような脅威的な兵器に対抗する兵器ができぬとも限りません。いわゆる電波兵器であります。かような水素爆弾、原子爆弾、あるいはコバルト爆弾は、爆弾それ自体が効力をそのまま発揮するのではなくして、これを運ぶべき航空機その他誘導兵器というものによつて初めて効果が発生するのでありますから、あるいはこれに対抗すべき電波兵器というものがまたできるかもしれません。しかしこれは将来のことでありまして、現段階においては、原子爆弾その他の脅威的兵器がいずれかの形において使われるということになりますとたいへんなことでありますが、さようなことはおそらくなかろうと私は想像いたしておるのであります。従いまして、将来の戦争のあり方は非常にかわつて来る。これは想像できるのであります。しかし原子爆弾その他もろもろの脅威的兵器が使われたからといつて、私はそれ以前のいわゆる各種の争いが全部なくなるわけではなかろうと考えております。つまりかような兵器を用いる以前における紛争というものが出て来る。いわゆる武力による直接侵略というものは、必ずしもこれによつてなくなるわけではなかろうと考えております。現に数多の国においてさようなことがあるのであります。従いましてわれわれといたしましては、一国独立国家たる以上は、さような兵器の使われる以前における外部的の侵略に対して対処し得るだけの手は講じなければならぬ。しからざれば独立国家としての体をなさないのであります。従いましてわれわれといたしましては、国情の許す限りにおいて、さような国の攻撃に対処する手段として自衛隊を持つことが最も緊急なことと考えている次第でございます。
  36. 川島金次

    川島(金)委員 私がこの基本的な問題を質問いたしたい気持になつたのは、ほかでもなく、最近ビキニ環礁における水爆の実験がもたらした人類空前の脅威から、教訓を受けました世界の人たちはもちろんでございましようが、ことに再軍備途上にありと見られておりまする日本の国内の大衆の中に、それでなくても再軍備よりも国民の生活だと考え、また今日の世界的な戦力の規模等から勘案いたしまして、何も無理を重ねてまでも、B29に対する竹やりにもおとるような軍備を必要としないという意見もある。その上に、ビキニ環礁における水爆の実験がもたらした教訓に基きまして、今や国内の大衆の中に、さらに一層いわゆる再軍備反対の空気が高まつて来たように感ずるのでございます。その再軍備反対の空気が高まつて来た根拠というものは、私が前段に申し上げましたごとく、人類空前の脅威的な兵器が発明されたときに、このようなちつぽけな軍備、しかもそれは日本の国民生活、経済を脅威する上に立たなければ成り立たない軍備、こういつた軍備をして、なおかつこの事態に、これで日本の平和、日本の真の意味の独立、日本の真の意味の安全が保たれるものであるかどうかということは、もはや常識外であると深く感じたからにほかならないのである。その意味において私は長官にお尋ねいたしますが、長官も常に閣僚の一人として、あるいは責任ある政治家の一人として、ことにまたこういう防衛関係のあるところ最高責任者立場といたしまして、すでに国民のこれらの問題に対する輿論、動向というものを、詳細に知悉するだけの努力を払われておると私は想像をいたすのでございます。この想像に基きまして、ビキニ環礁の水爆実験以来の国内における軍備、国の安全、平和、独立を守る問題に対して輿論も非常な変貌をもたらされておるのではないかという考え方を私は持つておるのでありますが、長官においては、ビキニ環礁における水爆実験以後急速にかわつておりまする国民的輿論の動向をどのように洞察されておりますか、この機会に伺つておきたい。
  37. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。まず申し上げたいのは、この威力ある原子爆弾、水素爆弾の発見によりまして、世界いずれの国におきましても、これがために軍備をゆるがせにしておる国は一国もないのであります。私前のある機会においても申し上げたのでありますが、イギリスのチャーチル首相も言つております。五四年度の新予算すなわち国防予算についての審議の際に言つたのでありますが、いずれの国においても多少は平和に向つておるが、この間においても防衛はゆるがせにすることはできないのである。この間においてわれわれもできる限り国の防衛力を補わなければならぬのだ。従つて新予算はどうしても必要であるといつて、現にイギリスの国会審議で予算が可決になつておるようなことであります。かような脅威的の武器の発見によつて、いずれの国においても国防というものをゆるがせにする国はありません。従いましてわれわれといたしましても、できる限りの力を尽して日本の外部からの侵略に対する防衛ということをふだんから考えなくてはならぬ、これは私は国民も同感であろうと考えます。今ビキニにおける水素爆弾の実験によつて国民の気持が全部かわつたということを仰せでありますが、むろん日本の全国民は、平和を愛することにおいて各国に劣るわけではありません。むしろ私は、日本の国民は非常に平和を愛する国民であろうと思う。平和を愛するだけに、日本の平和を守るだけの手段はどこまでも尽す必要があるということは、国民も万々承知であろうと考えます。一部において国防は必要ないということをいう人たちもあるようでありますが、私はこれは全部ということはできぬと考えます。大多数の人はむしろ日本の平和と自由、独立を守るために、ある程度の国防力を持たなくてはならぬということを考えておるのじやないか、こう考えております。
  38. 川島金次

    川島(金)委員 長官の答弁は、少し苦しいところがあるように私は感ずるのである、私のようなしろうとが申し上げるまでもなく、防衛力あるいは自衛力、その自衛力の点を考えてみましても、これは国と国との相対的な関係にあるものであろう、一国の自主的な経済力だけの上に立つて、今日の世界の軍備の実情から申し上げますれば、それだけで足りるものではない、少くとも相手方に、かりにいつどこのだれがどうするということがないにいたしましても、世界の進歩いたしました自衛力の発動であるところの武力あるいは軍備、そういつた兵器に対する相対的なものの備えというものがこちらにもない限りは、それは完全な防衛態勢とはいえないのではないか、いわんや今回のごとき水爆が発見されあるいはわが国以外の諸国においては、若干の例外があるでありましようが、わが国におけるいわゆる防衛武力、この立場から申し上げますれば、相手方の諸国においては何十倍、何百倍という保有をしておる、そういう世界の現情に即して、日本がこの小さな国、しかも乏しい貧しい国において、一ぺん平和を宣言いたしました。そうして武力を一切放棄をいたしました日本において、ちよろちよろと水のささやかに流れ出るような、ほんとうに文字通りささやかな備えをする、これがはたして世界的な常識にのつとつた国の平和と安全を目的といたしたものであるか、それにふさわしいものであるかということは、きわめて重大な疑問が私はあるのでありますが、私の長官に問いたいのは、一体そのようなことであつても日本の平和、日本の独立と安全とが保たれるものであるという、この考え方に立つておるのかどうか、その点を、くどいようでありますが重ねて伺つておきたいと思う。
  39. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたしたします。申すまでもなく日本自体でもつて、ただいまのところ残念ながら完全な防衛力は持たないということは御承知万通りであります。そこでわれわれといたしましては、アメリカとの間に日米安全保障条約を結んで、アメリカの駐留軍と日本のただいまの保安隊、今御審議つております将来における自衛隊と、お互いに手を組んで日本の安全を守り、これがすなわち極東の平和と安全に通じるということの構想のもとにやつているわけであります。日本が自力でもつて完全に日本の国を守るという態勢は、ただいまのところ残念ながらとることはできません。しかしアメリカの手にいつまでもやつかいになつているということは、われわれとしてはこれは許すことのできない点でありますから、日本の国力に応じて漸増して、やがて来るべきときに、日本が独力でもつて日本の国を守つて行くだけの態勢をとりたい、こう考えているわけであります。
  40. 川島金次

    川島(金)委員 それではさらに進んで角度をかえてお尋ねいたすのでありますが、私はしろうとでよくわかりませんけれども、日本は今の段階においては、まさにアメリカを中心とした自由主義諸国圏に立つておる。いわゆる自由主義陣営に立たされておる。その反対にソ連を中心とする反自由主義陣営というものがある。その日本の立場からいたしまして、かりに防衛の備えをいたそうといたしまする場合において、言うまでもなく日本の自力だけでは現段階では十分なことはできない。従つてアメリカとの関係において、いわゆる日米安全保障条約あるいはMSA協定の段階を含めましての立場において、アメリカに依存いたしまして、日本の平和と安全を守ろうという立場に今の吉田内閣は立つておるということも、まぎれもない事実でございます。そこで申し上げたいのでございますが、一体日本がアメリカを中心とする自由主義諸国陣営内にあつて、そのアメリカの勢力をたてといたしまして、できれば日本の平和と安全を保ちたいと吉田内閣考えておるのでありましようけれども、しからば一体自由主義諸国陣営以外において、端的に言えばソ連あるいは中共あるいは北鮮、これらの諸国が日本に敵対し、日本に対していつの日か敵対的あるいは侵略的な態度をとるであろうという不安あるいはそういつた脅威というものが現実にあり、もしくは将来にありと一体吉田内閣考えておるのかどうか、この事柄もきわめて重要だと思いますので、この機会に長官の見解をひとつあらためて聞いておきたい。
  41. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いわゆるソ連圏に属する国から、日本に対して侵略行為が現実にあることを予想しておるかどうかという御質問でありますが、私は現段階においては、さようなことはないとは考えておりますが、しかしこの情勢の変化によつて、何どきどういうことがあるかもしれぬ、これは川島委員も御承知の通りでありますが、事の勃発ということは予測ができないのであります。われわれの周辺における軍事情勢あるいは今日の配置を見ましたときに、われわれといたしましてもふだんからわが国を守るだけの防衛態勢は整えておく必要があると確信しておる次第であります。
  42. 川島金次

    川島(金)委員 それではさらに進んでお尋ねいたしますが、一体アメリカを中心とする自由主義諸国陣営というものは、いわゆる平和的な立場を堅持するものであるが、それ以外のソ連を中心とする諸国においては、必ずしもそうでないという認識に吉田内閣は立つているのかどうか、この点を伺いたい。
  43. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ソ連も必ずしも戦いを好むものじやなかろうと考えております。しかしただいまはいわゆるバランス・オブ・パワーの上に立つて一応の平和が維持されているものと考えます。われわれはソ連がいわゆる世界赤化政策を放棄しない限りにおいては、どういうことがあるかもしれぬ、これは私はみずから考えているところであります。日本の国といたしましても、不時の用意のために防衛態勢をとることは当然であろうと考えます。
  44. 川島金次

    川島(金)委員 私は、基本的には独立国には自衛権があり、自衛権のあるところ必ず自衛力を表徴するところの軍備を持たなければならぬという、いわゆる前世紀的な俗説の三段論法的な軍備論には必ずしも賛成しておらない立場でありますが、この立場はしばらくおくといたしまして、今の長官の話を聞いておりますと、アメリカを中心とする自由主義諸国陣営、それに加わつておりさえすればこれは一方の安全地帯におるのだ、それ以外の国はどうも怪しい、端的に言えばそういう考え方を、吉田内閣は、あるいはあなたは持つているように受取つたのでございます。そこでさらに進んでお伺いいたすのでありますが、一体世界における、あるいはアジアにおける日本の位置というものが、アメリカにとつてはもちろんソ連にとつても戦略的な重要性と申しますか、こういつた問題に対しまして一体長官はどのように考えておりますか。具体的に申し上げますれば、アメリカはもはや日本のこの地勢というもの、この位置というものをきわめて重要に考えており、戦略的にも同様に考えておるようでありますが、ソ連も、あるいはソ連圏の諸国も日本の地位というものを戦略的にきわめて重要なものだと考えているのかどうか、この点についての調査もあろうと思いますが、その辺の調査の結果を説明してもらいたいと考えます。
  45. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ソビエトはどう考えているかわかりませんが、われわれはソビエトにとつても日本は重要な地点であろうと考えておるとは想像いたします。
  46. 川島金次

    川島(金)委員 長官が率直にそういうことを答弁されたのでありますから、そこで承るのでありますが、日本がアメリカからもきわめて戦略的に重要な立場にあるという認識の上に日本を扱つている。またこれに反しましてソ連もまたアジアにおけるところの日本の位置というものを、あるいは日本の一切の総合的な力、こういつたものに対しても、戦略的にも、きわめて重要な日本であると考えておる。そうすると、アメリカとソ連が同様に日本に対するところ重要性を認識しているということになれば、かりにソ連が日本に対して直接侵略を、長官が心配されているように、したということを仮定いたしましたときに、そこにいかなる世界的な事態が起るかということは想像にかたくないと私は考えるのであります。これを端的に申し上げますれば、かりにもしソ連もしくはソ連を中心とした諸勢力が日本に直接侵略を敢行いたすような場合があつたといたしますれば、アメリカにとつても日本が戦略的にきわめて重要な位置でありますし、ソ連にとつてももちろん日本が戦略的に重要な位置であるとするならば、ソ連圏が日本に直接侵略を敢行した場合には、アメリカは日本の重要性にかんがみましてその全力を上げるであろう、また日本の戦略性を認識するソ連圏も、直接侵略した以上はその全力をあげるであろうということも想像にかたくないのであります。そうした場合に、日本という戦場に巻き込まれた国が、一体いかなる事態になるかということもこれまた想像に絶えたものが起るのではないかという感じが私はいたすのでございますけれども、その辺の事柄について長官はどのような御認識でおりまするかを承つておきたい。
  47. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ソ連はどういう出方をするかわかりませんが、さような場合があつては日本を破滅に陥れる危険があるから、ふだんから用意をしてさようなことのないようにわれわれは努力しなければならぬ、いわゆる日本の防衛がしつかりしておれば、いかなる国といえども日本に対して侵略するような野望を捨てるであろう、こう私は考えておるのであります。
  48. 川島金次

    川島(金)委員 さようなことがあつてはという、これまた長官も仮定のことでございますから、しつこく言うのではございませんが、さようなことがあると仮定した日本の立場に立つてわれわれが考えてみたときに、日本の今の国力、今の経済力、それからまた世界の兵器に関するところの諸情勢の一変、こういつた総合的な考え方に立つたときに、一体これから――何もなかつた日本、しかも経済的にも世界的にきわめて劣る日本、この日本がその仮定の上ではあつても侵略を受けるであろうということに対抗する、すなわち防衛する、こういつた防衛力というものを全うする、いわゆるほんとうの防衛力を持つということはきわめて重大なことであり、しかもそれは今日の日本の状況においては、不可能ではないといつても、きわめて困難であるとは断言できると思うのでございます。そのような実情にある日本が、これからぽちぽち子供の歩くようなかつこうで再軍備するかのごとく、せざるかのごときあいまいな、いわゆる弱体な武力を持つて、それがソ連圏のかりにあるであろうところの侵略に対して防衛できるものであるという考え方を持つということは、私は非常に疑問を持つておるのでありますが、そのようなことで、しかもなおかつあるであろうところの侵略に対して防衛ができるのだと一体根本的にあなたは考えておられるのかどうか、その点はいかがでございましようか。
  49. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま川島委員のお説をお伺いしておると、日本はさような小さい防衛力を持つて何にもならぬじやないかというように受取れるのであります。そうするとソビエトがかりに進駐して来た場合には、日本が手をあげてもよろしいというように受取れるのであります。われわれといたしましてはいずれの国の侵略たるとを問わず、これに対しては防衛をしなければならぬ。しかし日本は独力でもつて国の安全と平和を守るだけの力はただいまあり得ない。従つて日米の間に相互安全保障条約を締結して、アメリカの駐留軍と日本の部隊と互いに手をとり合つて、この安全と平和を保つて行こう、しかしいずれかの時期においては日本も国力を回復して自力でやつて行かなければならぬ。それには国民が緊褌一番ぜひとも国力を回復して、さような時の早からんことを期さなければならぬ、こう私は考えておる次第あります。
  50. 川島金次

    川島(金)委員 今長官はちよつとおかしなことを申されたようでありますが、私の尋ねております事柄をさらに進めて参ります。先ほどちよつと私はお尋ねをする端緒に入つたのでありますが、アメリカにとつても、ソ連にとりましても日本はアジアの中におるところ立場として、両国にとつて戦略的にもきわめて重要な位置にある、そういう認識に両国は立つておる。そこでかりにソ連が、あるいはソ連勢力が強力な力をもつて日本に直接侵略を行つた場合に、当然日本にはアメリカとの防衛協定があります。従つてアメリカがこれに相呼応するということも想像にかたくないことは言うまでもございません。そういつた場合に、アメリカの強力な兵力と、ソ連の強力な兵力とが日本の国土の中において正面衝突をいたしたというような事態があつたとわれわれが仮定いたしましたときに、一体日本が劣弱な兵力だけを持つてつて、しかもそれで日本の安全と平和を守るに足りるだけの防衛力を発揮できるものかどうか。われわれはそういうことに重大な疑問を持つておりますと同時に、もう一つは、アメリカとソ連が日本の国土において正面衝突をいたした場合において、日本はいかなる事態になつてしまうか、こういうことを考えてみたいのであります。そういうことを考えたときに、日本がわずかながらの兵力程度を持つてつて、しかもそれで日本の平和と安全を保つことができると考えておるということは、当然そこに非常に重大な疑義があるのではないか。私はその事柄を深く考えておる一人でありますので、そういつた場合が起つたときに一体日本はどのようなことになるか。かりにアメリカにおいて、あるいはソ連においても、ただちに爆弾を使わぬにいたしましても、想像に絶する状態に置かれるということはあり得るのであります。しかもその上に爆弾などがどちらかの国において使用されるという段階に至りますれば、日本の状態がいかなることになるかということも想像に余りある事柄になるのではないかと思うのであります。そういう立場において、はたして日本がそれでもなおかつ軍備にあらざるがごとき、軍備のごとき、いずれともとれるような、いわゆる吉田内閣の軍備を進めるということは、それだけの価値があるものか、値打があるものかどうか、そういつた事柄について国民のずいぶん多くは非常な疑問を実は持つておりますので、さらに重ねてその点についての長官の見解を尋ねておきたい。
  51. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたしますが、ただいまお話を承つておりますと、外部からの侵略行為があつた場合に、日本がこれに立ち向えば日本が戦場のちまたになるから、もう手をあげて侵入を迎えろというように聞える。われわれといたしましては、ぜひとも日本の安全と独立を守りたいという考えを持つておるのであります。そこでわれわれといたしましては、アメリカ駐留軍と手を合せて日本の防衛をして行こう、この防衛をすることによつて、日本に対する外部からの侵略を防げるのだ、またさような危険も未然に防ぎ得るとわれわれは考えて、ぜひともアメリカと手を握つて日本の防衛力の漸増をやろう、こういう考えのもとに今計画を進めておるわけであります。
  52. 川島金次

    川島(金)委員 今日の水爆という世紀的な兵器が発明されて、その発明のもたらした教訓によつて、少くとも世界全人類が、このような兵器が発明された段階において、今後一国と一国、あるいは集団的な国と国とのいわゆる世界戦争、こういつたことはもはや絶対に避くべきである、こういう考え方が非常に高まつて来たと認識しておるものであります。従つてそういうときに、今日の米ソ間におきましても原子力の問題について国際的な管理あるいは軍備の縮小、こういつた事柄にまで最近においては積極的に話合いが進んでおるような兆候を呈しておる。その事柄がただちに、今日、明日に成立を遂げるとはわれわれは必ずしも見てはおりませんけれども、とにもかくにも世界の力を代表するところの米ソ間において、話合いで何とか世界の平和、世界の秩序というものを保つて行こうではないかという考え方にかわつて来おるということだけは、われわれは認めておるのであります。長官の考え方はどうであるかわかりませんけれども、少くともわれわれはそういう世界情勢の分析の上に立つておるわけであります。従つて日本の現状においてしいて軍備を急がぬでも、世界の情勢というものが話合いのもとに平和を保ち、軍備を縮少し、新たなる世界の秩序と安全をお互いに保つて行こうではないかという今日の段階をまずわれわれは頭に置いてかかるべきではないかと思う。そういう場合に一体だれが日本に直接侵略するのであろうか、そして日本に直接侵略するならば、その影響のもたらすところは必ず世界大戦に入るであろうということも、これまた想像にかたくないのであります。何となれば、先ほど来長官も認めておりますように、日本が世界の中にあつて、ことにアジアの中にあつて米ソ両陣営からきわめて重大な戦略的な位置にあるという認識がありといたしますならば、もし不幸にして一方の国が何らかのきつかけで日本に直接侵略をするようなことがあれば、それがきわめて重大な段階に入るのはもちろんである。しかしそういうばかげたことを今日はソ連といえども考えておらずに、アメリカと話合いの上で何らかの平和を求めて行こうではないかという方向に向つて来ておるのではないか、こういう考え方の基礎において考えたときに、日本のような貧乏の極に達しておるところの経済の底の浅い国が、好んで軍備を進めて行く必要がどこにあるかということを、相当疑問にせざるを得ない立場にわれわれはあるので、そういうことをくどく尋ねるのであります。一体このような世界情勢に対して長官はどのような考え方、ことにソ連が平和を求めるという問題に対してどういう認識を持たれておるかを事のついでに承つておきたいと思います。
  53. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 世界各国がむしろ軍備全撤廃、こういう時期の一日も早く来らんことを私はこいねがうのであります。さようにして漸次世界の全人類が平和な生活を営み得れば、これは人類のまつたくの理想であります。しかしこれは至難と申してもよかろうかと思うのであります。ことにソビエトのことを今お話になりましたが、ソビエトは決して軍備を縮小しておりません。われわれの見るところでは、拡張こそすれ縮小はしておりません。しかしマレンコフ政権以後において、国内政治の必要上国民生活向上のために力を尽しておる。しこうして一面においていわゆる平和攻勢をやつておる、これは事実であります。しかしソ連自体が軍備撤廃はおろか、縮小も何もやつていないということが現実の状態であります。アメリカも御承知の通りニュー・ルック戦略というものを考えておるのでありまして、いわゆる作戦の方法をかえているというだけのことでありまして、これを軍備の縮小とは見るべきものではないと私は考えております。これも先ほど申しましたバランス・オブ・パワーの思想から来ておるのだろうと思います。このもとにおいて一時平和がもたらされておるのではなかろうか、この平均がくずれたときにどういう事態が発生するか、予測は私はできぬと思う。そこで日本といたしましても、不時の侵略に対してはどこまでもこれを防衛して行かなければならない。それでなくしては日本の独立もなく、安全もなく、自由もないのであります。従つてわれわれといたしましては、国力の許す限りにおいて自衛力を漸増し、アメリカの駐留軍と手を携えて日本の国を守つて行くということが、現段階において最も妥当な方法と考えておるのであります。しかしわれわれといたしましては、どこまでも全人類の平和を祈願いたします。世界の各国がことごとく軍備を撤廃して、そうしてほんとうに平和な生活のできる時期の一日も早く来らんことをこいねがつておる次第であります。
  54. 稻村順三

    稻村委員長 午前の会議はこの程度にいたし、午後一時まで休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十六分開議
  55. 稻村順三

    稻村委員長 休憩前に引続きまして会議を開きます。  質疑を続行いたします。下川儀太郎君。
  56. 下川儀太郎

    下川委員 昨日保留になりました保安庁直轄工事につきましてもう一度質問いたします。  最初、きのうお尋ねしたのは、保安庁直轄工事が百万円以上のが相当あります。総額約二十二億ほどありますが、これは建設省の設置法三条のうちの二十六号の中で、いろいろとこの工事について規定せられております。それらによりますと、「国費の支弁に属する建物の営繕」それは郵政事業特別会計及び簡易生命保険及び郵便年金特別会計に属する現業関係の建物、あるいは受刑者を使用して実施する刑務所の営繕あるいは学校の復旧整備、それらの営繕はこれを認めております。それから保安庁の特殊な建物の営繕、これは一件百万円以下のものは認めておりますけれども、その他は全然除外しておる。しかるにこの保安庁直轄工事で、百万円以上の工事が相当数ありますが、これはどういう法令の根拠に基いてやつたのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  57. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。下川委員のお示しになりましたように、建設省設置法には今お読上げになりましたような規定があるわけでありますが、ちよつと御注意までに申し上げておきますが、百万円以下と申しますのは、修繕で百万円以下のものはこれは各省を通じまして建設省の所管外で、「保安庁の特殊な建物の営繕」は「百万円」という言葉にかかつておりません。保安庁の特殊な建物の営繕というのは、お読みになつた郵便年金でありますとか、学校の復旧工事でありますとか、刑務所の囚人を使つてやりますそれと同じように根元からはずれております。この点をちよつと申し上げます。今下川委員のお読みになりましたような建設省の営繕に関する事項の規定がありまして、またこれに対応いたしまして保安庁法の第六条第三号に「所掌事務の遂行に直接必要な庁舎、営舎、演習場等の施設を設置し、及び管理すること。」という規定があります。この「庁舎、営舎」云々につきましては、これはちよつと特殊でありまするが、条文の趣旨におきましては、これとまつたく同趣旨のものが各省の設置法にございます。そこで下川委員の御指摘になりました条文と、この条文とをどういうふうに読むかという問題になつて参ります。結論から申し上げますと、両方とも権限があるのじやないか、実際は営繕統一という考え方から、普通の官庁におけるものは建設省において一括して百万円以上のものはできるだけ工事をいたすということは御承知の通りであります。ただやや大きな工事量を持つております、たとえば文部省あるいは厚生省あるいはそれ以外のやや現業に属しますところの官庁、こういうようなものにおきましては、各省にございます所管の所掌事務を遂行するための不動産の取得というような条文によりまして、自分の方でやつております。この点は建設省と人員の関係あるいは場所の関係、そういうものがございますので、保安庁において十分建設省と実行上相談をいたしまして、どういう部分を保安庁がやり、どういう部分を建設省にお願いいたすかということをやつております。二十八年度におきましてどういうことを保安庁がやつておるかと申しますれば、大体は学校及び病院のうちでやや大規模なもの、従いまして特殊な関係がそこに多うございます。あるいは弾薬庫、燃料庫、それから営舎などで地方の建設分がございます。地理的にもそのあります場所ですぐにできるというようなものにおいては保安庁がやる。それ以外については建設省がやるというようなことでやつているわけであります。
  58. 下川儀太郎

    下川委員 そうするとあなたの方の御見解は、今御説明になつた点でこれは法令と何らさしつかえないということでございますか。
  59. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 何らさしつかえありません。
  60. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると営繕関係以外にいろいろ道路関係その他土木工事等がありますが、この関係はどのように考えておられますか。
  61. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 土木の関係につきましては、先ほどお読みになりました建設省の条文は国費の支弁に属する建物の営繕とございまして、営繕の統一は建設省で先ほど申し上げましたような限界におきましてやつておりますが、そういう土木につきましてはこれは各省がおのおの自分のところにあります部分をやつております。従いまして保安庁の方は保安庁が全部やつておりまして、これは建設省にお願いしておりません。
  62. 下川儀太郎

    下川委員 そうするとこの建設省の設置法に、たとえば土木工事等は触れないということであります。あるいはまた百万円以上のものはやつてはいけないことになつている。これは土木工事もそうでございましようけれども、土木工事はこういう建設省の設置法の法令に何ら触れなくても保安庁自身でやつてもいいということになつているのでありますか。
  63. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 ちよつと申し上げておきますが、先ほどお読みになりました建設省の設置法の条文は、建設省営繕局に関連いたす部分でございます。従いまして営繕の関係におきましては、今申し上げましたような建設省が相当幅の広い権限を持ち、条文上は各省もまたこれといささか重複するような規定を持つております。その具体的なわけ方は閣議なりあるいは各省の相談でやつている、こういうことであります。それに対しまして土木の方は、これは一般の公共事業に属しますところの土木は、これは御承知のように建設省でやつております。しかしながら保安庁のやります仕事で、土木の仕事に属しますものは、先ほど申し上げました直接必要な庁舎、営舎、演習場等の施設を設置し、というここだけありまして、これ一本で読み切るわけでございますから、建設省の方がそういう土木の方の仕事にあらざる保安庁プロパーの仕事につきましては何ら権限を持つていないということであります。
  64. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると保安庁自身の直轄工事は、これは土木関係には権限を持つておらないということに認定していいわけですね。
  65. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 建設省の方がそういうような権限を持つていない。保安庁の方は今申し上げましたような条文で当然自分の仕事をいたす権限があるということであります。
  66. 下川儀太郎

    下川委員 そうなつて来ると、この直轄工事全体は何らこの建設省の法令には触れておらないと認定していいわけでございますか。
  67. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 差上げました直轄工事の資料は、保安庁が本来全面的にその権限を持つております土木の仕事、それから営繕工事につきましては、先ほど申し上げましたような趣旨におきまして建設省と仕事の分界をきめまして、この部分は保安庁でいたす、この部分は建設省にお願いをいたす、こういう相談をいたしてきめました保安庁に属します部分、その両方の数字が差上げました直轄工事の内訳でございます。
  68. 下川儀太郎

    下川委員 この件は建設省当局と両方来ていただいてよく調査しなければ判定できないと思います。  そこで次に問題になつて来るのは、これはきのうも私はお話申し上げたのですが、この直轄工事の中で非常に神わざでなければてきなしような一日にして二百万三百万の工事が竣工されている。あるいはまた短日月においてこの工事ができている。こういうことはわれわれの一般常識で考えても想像できないことである。しかも昨日いただいたこの直轄工事の資料ときよういただきました直轄工事の資料を比較して参りますと、一夜にしてこの数字が全然書きかえられている。しかも四十一箇所書きかえられている。これはあまりにおかしい。きのうまではこれはもう歴然とした事実として、いわゆる公文書にひとしい、こういうものをもらつて、そうしてあなたの方に追究した。そうすると一夜にして今度は、きよういただいた直轄工事の資料は四十箇所いろいろと訂正れている。こういう具体的な事実を見ますと、われわれは一体保安庁の建設工事なんというものは何をやつてるんだというようにより以上に疑問を持つわけであります。これを具体的に申し上げますと、たとえばお手元にあると思いますが、中央建設部の横須賀の油糟移改設工事、これが三千百二十三万五千円、これが二十九年の二月五日から二十九年の三月三十一日、約五十四日間でこれが建設されている。三千百二十三万の厖大な工事がわずか二箇月足らずで建設されている。あるいはまた保安大学の官舎が三百一万六千八百円、これが二十八年の九月十五日から十一月の三十日、約四十日間で建設されている。あるいはその次の越中島の統幕庁舎、これが四百五十五万、これは二十九年二月十八日から三月三十一日、これも四十一日間。このようにこの期日を見て参りますと非常に短日月にできている。もちろん突貫工事をするとかいろいろなことをしているでございましようが、しかしはなはだしいのになりますと、きのうも申し上げましたが、たとえば練馬の診療所の増改築工事が二百十三万で二十八年七月十八日から七月十八日、わずかに一日でできている。あるいはまた練馬の踏切工事はわずか二十七万でありますが、これが一日でできている。あるいはまた青森の汚水排水工事、これが百五万、これは二十八年六月十三日かう二十八年六月三十日、わずか十七日間でできている。あるいはまた相馬原の浴場の工事が二百三十万、これが二十九年の一月五日から一月十日まで、わずか五日間で二百三十万の工事ができている。あるいはまた福島の道路改修工事、この二百四十万の工事が二十九年の二月二十三日から三月三十一日、わずかに三十八日間でできておる。このように具体的な数字が出ております。まつたく神わざで、こういうことは常識上われわれは考えられない。これをきのう私は強く追究したのです。どうしてこんなわずかな日数でできるのか。一日でできるような工事はどんなところで、一日でどんな宿舎ができたのだ。あるいは三月、四月かかるそういう宿舎とか、あるいはまた庁舎等がわずかに四十日とか、二十日間でできておる。これは一体どういう科学的な操作でできたのか、そういうのをわれわれ内閣委員一同そろつて見学したくなる。こういう一つの資料を見て参りますると、ほとんどこれはでたらめなんで、それをきのう追究したのであります。そうするときようになつてこの数字が皆さんに渡つた。この直轄工事の資料をよく検討してみまてると、四十一箇所、これが矯正されている。これが一つや二つだと一応これはミスプリントだという言い訳も立つでしよう。しかし四十一箇所も一夜にしてこの数字を改めて来るなんて、これははなはだけしからぬと思つている。きのう出したこの資料をわれわれはまともに考えて、そうしてあなたに質問した。しかも内閣委員会において私がこの資料を要求したのは三月の半ばころであります。今日まで約一箇月たつている。一箇月たつている間にこれは当然完全な資料が出せるはずだ。それを今日まで一箇月延ばしておいて、そうして今度は、その中にそういう不純な箇所をわれわれが見出して追求すると、一夜にしてこれがかわつて来ておる。私はそういう議員を小ばかにしたような、なめてかかつたような態度ははなはだけしからぬと思つている。私は、ミスプリントということも、それはあるいは三日、四日でつくられたそういう資料ならば、これは納得できる。しかし要求してから約一箇月間、十分日数を与えてある。与えてある日数の中でそういうミスをやることは私はあり得ないと思う。指摘されて初めてそれを読んで、その数字はこれはちよつと時間的にできないじやないかという考え方で訂正したというふうに私は考える。それに対する明確な説明を願いたいと思います。
  69. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答え申し上げます。ただいま下川委員の御指摘に相なりましたように、本日お配りをいたしました資料は非常にたくさんの個所におきまして修正をいたしております。これはその理由を申し上げまするが、非常に申し訳ないと思つてあらかじめおわびを申し上げます。こういうような工事の進行状況を毎月一体どういうふうに中央が把握しておるかという点から申し上げます。これは私どもの方にはこの直轄工事と、それから別にお配りしております建設省に委託しておりますもつと厚い表があります、その両方に工事がわかれております。これにつきましては私どもの方の保安隊の直轄の仕事について申し上げますれば、これは地方建設部というものがございまして地方建設部が実際に施工の責任に当る、その内訳はこの裏にあります通りであります。地方におきましては別に建設省に委託をしております方につきましては、これはおのおの建設省に地建がございまして、そこに営繕があつて、そこで仕事をする。これがまた建設省を通じまして月報をこちらへ届ける、その月報を受けまして、私どもの方で一つの帳簿をつくつて、それから抜き書きをいたしまして、写して差上げたものであります。ただ毎月向うから送つて参りまする月報、これに誤謬訂正が参ります。私どもの方の部内におきまする誤謬訂正の状況が不十分でございましたために、三月分の月報が来ましてからその前の誤謬の十分な訂正ができておりませんので、私どもが写しました原簿におきまして、まだ十分な誤謬訂正の結果が出ていないという点が一点。それからもう一つはたくさんのものを写しております間に誤記をいたしまして、これはまさにミスそのものでありまするが、最初に申し上げましたようなことがあつたのでありますから、これも十分事務が不行き届きな点はおわび申し上げなければなりません。そういうようなことのありましたために、御指摘のような非常にたくさんの箇所の訂正をいたしまして、まことに申訳ないと思つております。十分今後気をつけたいと思います。御指摘のありました各個の工事につきまして、今すぐにお答えをいたすだけの準備をいたしておりませんが、ただ一つこの訂正後におきまして即日と申しますか、工程が一日であるというものがございます。それは先ほど御指摘になりましたもののうちにございます第一地方建設部の踏切り工事二十七万八千円、十月の八日であります。これは練馬の部隊の中にございます私鉄がございますが、そこの踏切りの部分が部隊の内部にあります。それがこわれまして、これは東武鉄道と思いますが、東武鉄道との間の契約で、直しますときには向うが工事をいたす、その資材を部隊側で提供するということになつております。この契約をいたしますには前の日に現場を見せまして、これは金額が小さいものでありますからそのような見積り書によるところの推計でございます。三社ほどのものを見せまして、当日見積り合せをいたしまして、この東港木材というのが一番安い、そこでまくら木にいたしまして二百四十本だと思いますが、それをこの八日に納めまして、この工事としては終つております。それから具体的工事は東武鉄道でやりまして、この場合には非常な例外的なケースでございますが、即日その契約の履行が終つておる、こういうことに相なつております。それ以外の御指摘のいろいろな点につきましては、昨年度の予算成立が相当遅れました関係、あるいは部隊移動が施設の完成の遅延のために足踏みをいたしておりましたような状態から、相当急いでやつた分がございますので、普通の場合に比べますれば相当早目にできておるものがちよいちよいあります。具体的な点につきましてはあるいは必要とありますればさらに調べてお答え申し上げます。
  70. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると、きのういただいた直轄工事の資料とそれからきよう皆さんにお配りになつ直轄工事の資料と、この数字をいろいろと訂正されたところはやはりミスプリントだ、それでしかもこれを出すには、たとえば中央の建設部隊はともかくとして、地方の部隊の分は結局地方の報告に基いてつくられたものだと思う。そうすると、その地方からの報告に基いてつくられた資料というものはとうにできているはずなのだと思いますが、これがきのうときようと相違しておるということになると、一夜にしてそれらの地方の部隊のいろいろな報告が間違つている点はいろいろと調査をして、そうしてきようの数字を改めるということになつたのですか、これを一つ伺いしたい。
  71. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 先ほど申し上げましたように、地方の部局から毎月月報をもらつておりますが、その月報にしばしば誤謬がございますので、オートマティックに向う側から誤謬の訂正が参ります。その誤謬訂正をこちらの帳簿におきましてさらに訂正をいたす、その中途の段階におきまして、まだ間に合つておらなかつたというところで誤記をいたしたということが一つであります。
  72. 下川儀太郎

    下川委員 これははなはだけしからぬことでありまして、こういう間違つた一つの資料を出す場合において、あとでそれをわれわれがつつ込むとこれはミスプリントだ、こういう簡単なことで私は逃げられないと思う。しかも国会にこれが提出されるのでありますから、十分これは慎重審議の上で出されると思う。それを追究されたからといつて、これはミスプリントだと言つて逃げるということははなはだよろしくないと思います。しかも先ほど説明になつた練馬の踏切りの工事、これはなるほど一日でできるでしよう。しかしきのういただいた資料を見ますと、三百万、四百万あるいは六百万の工事が十五日とか二十日というようにはなはだ短縮されてできておる。いかに突貫工事ができようとも、これはもう神わざでなければ私はできないと思う。私もいろいろと友人に土木関係の人がありますので聞きますけれども、こういうでたらめな資料というものは、これが現実的に正しければ出せるはずはないと思う。もしこれが訂正されるならば――これは二十日間でできる工事というのは、常識的に判断してどうしても二月かかる。だからこれは要するに、年度末だから急いで工事を入札させるとか、あるいはまた竣工が遅れたから、こういう理由でこれは日数を延ばさなければならぬという理由が立てられて、このきよう配付された訂正されたところ一つの資料が出されるならいい。それが単に数字の上だけで、これはもう時間を延ばしておるとか、あるいはまた適当なぐあいにこれをしておるということは机の上でつくられたものである。私はあくまでもこの最初に出された資料というものが本質だと思う。本質に基いたあなたの答弁でなくして、やはりこの短縮した日数においてつくられた工事それ自体に非常に不明朗なものがある。しかもその不明朗なものを隠すために、いかにもこの日数を引延ばして訂正されて書かれたように私は考えるのです。こういう問題が、ただ単にミスプリントだといつてのがれられればこれははなはだけつこうでありますが、しかしわれわれはもつとこの真相を突きとめたい。これがはたしてその期間でできたかどうか、あるいはまたこの直轄工事は実際的にはまだできていないものがあるかもれない、現実にわれわれが調査に行つた場合、当然これはまだ柱のままだとか、あるいは半分しかできておらないというようなことが非常に多いと思う。この現実を私たちはもつと把握しなければやはりあなたに対する追究もできませんけれども、これは当然内閣委員会においても取上げて、この工事の真相、この報告書の真実をわれわれは今後要求する必要があると思う。はたして昨日出された訂正されないこの資料が正しいのか、あるいはまたきよう出されたこの資料が正しいのか、その点もわれわれ十分調査しなければならないし、またこの一日あるいは五日、あるいは二十日というようなわずかな期間で何百万円の工事ができるということはあり得ないとわれわれは考えるので、この点についても、やはり現在非常に汚職とか、あるいはまたなれ合い工事ということがうたわれておる今日でございますから、その真相を突きとめなければならないとわれわれは思う。この訂正された資料が真実なのか、あるいはまたきのうの資料が真実なのか、これをもう一度明確に答えていただきたい。
  73. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 先ほど申し上げたように、本日差上げましたものの前の資料との違いは二点ございまして、一つはほんとうのミスプリントでございます。それからもう一つは、先ほど申し上げましたような、地方から上つて参りました誤謬訂正の報告に基きまして訂正をいたしたものでございます。ミスプリントであります分につきましては、これはもう明らかに今申し上げたような経緯でございます。それから誤謬訂正であります分につきましては、これは地方から参りました報告は間違つておつた、これが正しいのだという報告がありまして、それに基いてやつておるわけでありますから、私どもとしては当然そのあとの方の訂正になつた分が正しいだろうということで本日これを出したわけであります。ただこれをもつと審査する前に十分チェックをいたして、そういうような間違いの起らないように十分やるべきじやなかつたかという点につきましては、これは重ねておわびを申し上げます。
  74. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると、今後われわれとしては監査も要求いたしますし、あるいは検査も要求いたしますが、しかしそうされた場合にこのプリントは間違いでございませんな。その点をひとつ伺いたい。
  75. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 当然誤謬訂正の地方の報告に基きまして修正いたしておりますので、それが私どもの方におきまする現在の正しい数字になつております。
  76. 下川儀太郎

    下川委員 それからもう一つ、きのう質問したのは、この直轄工事の中で部隊がやつた工事が五千六百万ございます。これは道路工事とかそういつた土木工事が多いのでありますが、これは保安隊員の人件費になつておると思う。しかし人件費に加算される約五千六百万の数字というものは、これはもう保安隊それ自体は国家で俸給を出しておるから、そうするとこの五千六百万、これは総括してでありますが、その受取人は一体どういうことになつておるか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  77. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 部隊直轄工事につきましては、御指摘のように、人件費は保安隊の方で給与を払つておりますから、この金額には載つておりません。この金額に載つておるものはどういうものか申し上げますと、これは工事を直轄でいたしまするときに買いまする材料でございます。それからあとは、いろいろ工事に使う車両類がございますので、あるいは車両を現場にまで持つて参ります場合の燃料、あるいは多少人の土地に立ち入つたりしますので、その場合の借料、それから施設を人から借りたりしますものがありますので、そういう場合の施設の借料、そういうものがございまして、そういうものがここに載つておるわけでございます。従いまして、人件費そのものは、この直轄の中で部隊施工の分には載つていないということを御承知願いたいと思います。一例といたしまして、富士敷地造成の百三十三万一千円という工事が一番最初に部隊直轄工事の中に載つておりますが、これはガソリン代が百十万八千円であります。それから潤滑油が四万三千円、それからあとは電気資材の借料が三万円、そのほかは雑材料費、こういうことになつておりまして、内訳は今申し上げたようなものであるというふうに御了承願いたいと思います。
  78. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると、この五千六百万の直轄工事の部隊の経費の中には隊員の人件費は全然載つておらない、こう解釈してよろしいわけですね。
  79. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 さようであります。
  80. 下川儀太郎

    下川委員 これも今後監察部の慎重な調査を要求いたします。もう一つは、保安庁の東京病院に関してでありますが、これが約七億の予算をとつておる。そうしてそのうち三億五千万円がすでに契約済みなのであります。この三億五千万円のきめられたこの契約がこの直轄工事の中に載つておらない。同時にまたそれに対する調査費あるいは設計費等々も全然この中に載つておらないように見受けますが、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  81. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。これは、設計の方を保安庁責任にいたしまして、工事の方は建設省でやつております。そこで保安庁の方として設計の金が行つているわけであります。これは工事の事務費に相なりますので、差上げてありますものには事務費が入つておりませんから、従いまして、差上げたものの中に入つていないわけであります。
  82. 下川儀太郎

    下川委員 それをひとつ数字その他を明細に御説明願いたい。
  83. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お答えを申し上げます。今委託工事、すなわち建設省の方へ委託をいたしました方の数字につきましては、ちよつと調べて申し上げますが、こちら側の設計自身がどうなつておるかということを申し上げますと、これは工事費の大体一%ということを見まして四百九十九万八千円、これが設計を担当いたしました山田守という建築事務所がありますが、そこに委託しておりますので、そこに対する委託費になつております。これは設計だけでございます。それからその後の施工の方は、先ほど申し上げましたように、建設省がこれを行いまして、これに対しまして保安庁側といたしましては工事の施行に関します旅費その他事務費、それをわれわれの方から建設省の方に出すことになつております。
  84. 下川儀太郎

    下川委員 そうするとこの三億五千万のいわゆる最近契約された数字はどこに載つておりますか、参考までにお聞きしておきます。
  85. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 お手元に差上げてあります二十八年度委託工事契約一覧表という方の十二ページに三宿というのがございます。その三宿地区の二番目の欄、A地区第一回(病院)建築、三億四千六百七十万円、これが三億五千万円と大ざつぱに申しております。これは建築だけの方でございます。設備以下につきましては今後の入札になります。
  86. 下川儀太郎

    下川委員 そうするとこの建設関係に関するいわゆる設計でありますが、これは建設省に当然建築を委託してある以上は、もちろんこれは建設省でできることなんです。それがどういうわけで民間側に委託されたのでございましようか。
  87. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 これを民間に委託いたしました理由は、東京中央病院というのが五百床の施設を持つております。これは相当大きいものであります。しかもこの三宿地区と申しますのは都市計画の関係がございまして、建物の高さを制限せられております。そういたしますと、ある建物の高さの制限のもとにおきまして、若干保安庁としてこの特殊な要求もあるのでありますから、それをある高さの中に収めるということに相なりますと、五百床というベツドになりますとなかなかむずかしい問題であります。従いましてこれは建設省あるいは保安庁自身にも建築の専門家を持つておりますが、病院建築というものは、またそういう大きなものになりますと、一つの特殊性を持つておりますので、いろいろ考えました結果民間のものに委託をした方がいいのではないか、これは大きさはやや小さいのでありまして、よけいなことでありますが、厚生省が厚生年金病院というのを建てておりますが、あれもやはり民間に委託をして設計をしてもらつたというふうに承知をしております。
  88. 下川儀太郎

    下川委員 これは私は答弁にならぬと思う。少くとも日本の建設省でございますから、その中には当然あらゆる技術人あるいはあらゆる科学的な操作によつてりつぱな設計ができると思う。それがあなたのおつしやるような理由でこれを民間に委託したということは、これははなはだけしからぬと思う。しかも表面上四百九十九万八千円という設計委託費になつておりますけれども、これが事実かどうかということも私は問題になつて来ると思う。これは当然建設省に一括委託すべきものです。それが今あなたがおつしやつたような原因で民間に委託したということになつて参りますと、これは建設省それ自体の威信にかかわつて来る。現に私建設省のいろいろな方々に会うのですが、こういうことは実にけしからぬと言つておる、ですから理由にならない理由でもつて民間側にこれを委託するということ、そこにやはり大きな疑惑を持たれるので、やはり一本で行くべきではないか。それを何ら関係のない民間へに委託するということ自身が私は非常な間違いだと思う。もちろんあなたがおつしやるような理由があるかもしれませんけれども、一応従来の工事というものは建設省関係と連関をとつてつておるので、これだけは建設省に委託すべきである。先般の造船計画のときに、いろいろ設計士のないために民間の方に頼んだということはわかるけれども、こういう建築物は常識的には建設省でできることなんです。病院だつてそうであります。それをわざわざ建設省を省いて民間側に委託したということ、ここにやはり大きな疑惑を皆さんに持たれる。私のところにもいろいろな投書が来ておる、あるいはまた建設省の役人も非常に憤慨しておる人もある。そういう一例が、単にこれはいわゆる病院の問題でなくして、いろいろな問題にまで私は発展して来ると思う。この建設関係のいわゆる建設省の委託と直轄工事とこの二つをいろいろと今後監察あるいは検査院等々の厳重な審査を願つた場合において、一体どういうようなものが出て来るか非常に疑問に感じておる、こういう小さなことからそういう問題が発生して来るのであります。もう一歩明確に建設省が信頼できないからやつたのだ、何がゆえに建設省を省いて民間にやらなければいけないか、その確実な根拠をもう一ぺんひとつ述べていただきたい。
  89. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 委託をいたしました理由は先ほど申し上げたところでございますが、これを委託を決定いたしますまでの間におきまして、また委託をいたしましてから具体的な設計を審査をする過程におきまして、常に建設省とは密接な連絡をとりまして、建設省といたしましてもこういう程度の規模のものになりますると、それはちよつと特殊なものに相なるという判断であります。これは建設省の責任者をお呼びくださつても同じようなことを答えるかと思う。現に私どもこれの委員会をしばらくやつておつたのでありますが、その席上に建設省の代表者は終始参つておりまして、どういうようにやつたらいいかということの議に常に参画しておつたのであります。申し上げておきまするが、同時に北海道と福岡におきまして二百床、三百床の病院をやつております。この方は、その程度のものでありますれば非常に専門的な技能を必要としないものでありまするから、これは内部でやつております。従いましてその程度の規模の病院でございますれば、これは建設省でもあるいはできるかもしれませんし、実は私どもの方でもやつておるわけであります。ただある建物の高さの制限、そういうようなむずかしい制限のもとにおきまして五百床の病院を十分に運営できるということに相なりますると――これは一体二百床と四、五百床とどれだけ違うのだということに相なると思いますが、そこのところはある限界に参ると非常にむずかしい問題が出て参る。そういう点につきましては建設省とも十分に相談いたしました上で、これはやはりどこかよその知恵にたよつた方がいいのじやないかということでやつております。  ついでに申し上げておきますが、先ほど申し上げたように、設計委託費は約一%、建設省に設計と工事の施工と両方委託します場合には、旅費事務費合せまして二・三%というのが大体事務費の率になつております。設計と別別にやりました場合にどうなるかということにつきましては、今後の場合におきまして相談をするわけであります。大体一%に非常に近いたとえば〇・八とか九とかいうことに相なつております。従いましてこの具体的な金額の問題におきましても、両者の間におきましてはほとんど違いがないのじやないかというふうに考えます。
  90. 下川儀太郎

    下川委員 私が聞いたところによりますと相当違つております。もちろんこれは建設省の責任者とあなたの方と御相談なさつたかもしれない。しかしやはり責任者同士というものは往々にして政治的な配慮がそこに出て来る。私の聞いたのはいわゆる建設省の技術人でありまするが、技術人自身はそう言つておらない、建設省でできるのだ、それをどうして民間側に渡したと言つておる、しかも今日の設計料等々の問題を比較しても、建設省の方が非常に安くできるのじやないかということまで言われておる。今手元に数字を持ちませんが、しかしそういう形が建設省自身の技術人から言われておるということになると、やはり私たちとしては疑問を持たざるを得ないのです。責任者々々々と言われますが、そこには往々にして技術人でなくして、いわゆる政治的な配慮を持つた人々がいつも立ち会つて相談をする、そこにまた大きな疑惑が出て来るのであります。従いましてあなたはそういう見解に立つかもしれませんが、これからいえばやはり建設省関係の技術人も呼び、十分調査の結果これをやらないと、やはり対外的には大きな疑惑を持つと私は思います。  それともう一つ、特別の工事は保安庁の直轄でできるということになつておる。しかしこれを見ると、委託工事の中に弾薬庫とかあるいはまた火薬庫とか、そういう今後武器、兵器等を貯蔵するようなもののほとんどが建設省関係の委託工事の中に入つておる。そうして特別につくらなければならない工事というものは直轄工事の中に入つておらない、これはどういう考えですか。
  91. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 先ほど申し上げました営舎、キヤンプ、これは建設部の所在地の分におきましては大体こちら側でやつております。それ以外につきましては、建設省側にお願いをいたすという大体の原則を立てております。ただこれは向うとこちらの両方の人間の能力なり、そういう関係もございますので、必ずしもそれで百パーセント割切つておりませんが、そういう趣旨であります。そのうち営舎の建築を建設省にお願いいたします場合に、営舎に付属いたしまして弾薬庫がある、あるいは燃料庫がある、こういうものにつきましては建設省に一緒にお願いをいたしております。独立の弾薬庫、衣料庫につきましては、これはこちら側がもつぱらやるということになつております。
  92. 下川儀太郎

    下川委員 そこで木村長官にお伺いをいたしますが、火薬あるいは弾薬庫、そういつたものが一括して建設省の方で委託建築をされております。そうしますと一番重要に関連して来るのは、今後MSAの援助等々によつてアメリカから武器が貸与される、そうすると勢い各地に弾薬庫あるいは武器の倉庫等ができて来る。結局この火薬庫をつくる、あるいは武器の倉庫をつくる場合、われわれは国会でいろいろと予算の審議をしなければならぬ。そういう場合に、そこに入れられる武器あるいは弾薬がもしアメリカの手によつた武器あるいは弾薬であつた場合においては、その倉庫あるいは火薬庫等々をつくる予算関係審議すらも――どこそこの町に、どこそこの兵舎の中にこれこれこういうもの建設する、弾薬庫を建設する、火薬庫を建設するということは明確に予算の審議の中でされて来るわけである。そうするとわれわれはその問題を論議することすらも、もしその中に入れられるものがMSAによつて与えられた武器あるいは弾薬であつた場合には、当然秘密保護法にひつかかつて来る。工事する請負師も、あるいは審議する国会議員も秘密保護法にひつかかつて来る。今後この武器、弾薬の倉庫を建設するそういう建設省の仕事、あるいはその請負をする人、あるいは国会でその予算を審議する場合、そういうものと関連して長官は秘密保護法をどのように適用するのか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  93. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。アメリカから供与を受けた武器そのものが全部秘密保護法の対象になるもの像するところによりますと、そのうちのごく一小部分であると考えます。従いまして今お示しの武器あるいは弾薬庫に入れるようなものは、おそらく秘密保護法の対象とならないものが大部分であろう。秘密保護法の対象となるものについてはそれが明らかに秘密保護法の対象となるものである、秘密に属するものであるということを十分外部にわかるように表示いたしますから、決して一般人に迷惑をかけるようなことは起らないと私は考えております。
  94. 下川儀太郎

    下川委員 しかし秘密になるようなものが入れられる倉庫をつくる場合、大体その場所それ自体が秘密に属して来ると私は思います。対象にならないものならいいけれども、対象になるものが来て、そうしてその倉庫をつくるあるいは貯蔵するものをつくるという場合、これはそれ自身がねらわれるという一つの観点に立つならば、その場所、倉庫それ自体がやはり秘密という言葉で守られるかもしれない。そうなると勢い予算審議の中に場所も言われないし、数字もまた持つて来れない、そういうことが今後あり得ると私は思うのだが、その点はいかがですか。
  95. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。かりに秘密の武器を収容する場所でありましても、その場所をどこに置くかということは秘密にいたしません。そこに入つておるものが秘密であるぞということだけは明らかにいたすわけでありまして、今お話のようなことはないと考えております。
  96. 下川儀太郎

    下川委員 そうするとその場所あるいは倉庫をつくる場合においても、これは絶対に秘密保護法には触れないと解釈していいわけですか。
  97. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申し上げました通り、その場所を秘密にするわけではない。秘密のものを入れる場合において、そこに秘密のものが入つておるということはわかるようにする、こう申すのであります。
  98. 下川儀太郎

    下川委員 そうすると武器そのものが秘密であつて、場所あるいは倉庫等等はこの秘密保護法に触れない、かように解釈していいわけですか。
  99. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さようであります。
  100. 下川儀太郎

    下川委員 この辺にして、あとは検査院あるいはまた監察部の調査にお願いして、一応きようはこれで保留いたしておきます。
  101. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまの質問関連いたしまして簡単に承ります。この表によりますと、越中島の統幕庁舎が四百五十五万で四十日間で完成しております。しかもそれが三月三十一日に完成することになつておりますが、統幕の庁舎の予算は二十八年度に計上されておつたのかどうか、それを承りたい。
  102. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 ここに統幕という言葉が書いてございまするのは、これはでき上りました場合の予定だというふうにごらんを願いたいと思います。統幕ができませんでも、現在非常に手挾でございます。これは辻委員は御承知であろうと思いますが、事務所のスペースといたしますれば今一人一坪にならないのであります。従いまして統幕ができました場合に非常にきゆうくつな中を差繰りましてこの部分に充てなければならぬと考えておりましたのが、ここに出しましたときに統幕という言葉が入つたということに御了解を願いたい。それから短い期間でできたのではないかという点につきましては、これは私どもの方の元の商船大学の、木造建物であろうと思いますが焼けたものがございまして、そこに全部基礎が残つております。その基礎の上に建てましたので、基礎工事を必要としない。従いまして非常に早くこれができまして、現在すでに建つております。もう大部前から使つております。
  103. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいま意外なことをお答えになりました。事務をしている人の数に比較して庁舎が非常に狭い。北海道のあの辺陬における古い庁舎に勤務しておる保安隊員の不自由さと、東京に住んでおられて机の上で仕事をなさつておるあなた方の不自由さを比較してごらんなさい。どつちが優先的にやられなければならないのか。ただいまの言葉は不謹慎ですよ。私は長い間軍隊におりましたが、第一線は非常に悪いバラックの中でやつておるので、中央部の職員は極力自粛して行かなければならぬはずです。あなた方が、北海道の沿岸の庁舎のごときは、昔の古い馬小屋を改造して馬と同様の生活をさせておきながら、東京における事務機構が不便である、そういう頭でおられたら大間違いです。ただいまの下川委員の話を聞いておるといろいろ疑惑が多い。これはこの席上における数字のごまかしではきかないわけであります。われわれは他日機会集めて、この工事の現場を見せていただきたいということをつけ加えておきます。
  104. 稻村順三

    稻村委員長 なお委員長から保安庁当局に要求いたしますが、下川委員並びに辻委員の発言は事きわめて重要なものでありますから、資料訂正に関する理由を明瞭にした資料を本委員会に御提出を願います。  次に川島金次君。
  105. 川島金次

    川島(金)委員 午前中に引続いて長官にお尋ねを申し上げます。元来私どもは、必ずしも非武装、無抵抗主義を主張するものではありませんが、しかし今の政府のやつておりますのを見ておりますと、どうもわれわれ国民には納得しかねる点が多いのでいろいろお尋ねいたしておるわけであります。ことに世界の現実の情勢と、さらにまた世界各国における現段階の高度に発達をいたしました軍備、この世界的な規模の中にあつて、さらにまた前段に申し上げました世界情勢の現実を見て、はたして日本に外部から来る直接侵略に対抗しなければならない有力なかつ強力な軍備を、今日の情勢に即応して必要かどうか。こういう問題もわれわれは非常に研究の余地があると考えておるものであります。但しさればといつて共産主義のいわゆる武装蜂起を目途といたします間接侵略、この問題については長官ならずといえども、われわれもまたきわめて重大な関心を持つことは言うまでもございません。従つてどもはこの間接侵略に対する国内の治安の機構を適正に固めるという事柄自体に対しましては異議を持つておるものではございませんが、さればといつて直接侵略に対抗する軍備が現実において必要であるかどうか。それからまたかりに軍備を持つても、世界的な軍備の規模のもとにおいて、ことに午前中繰返し繰返し申し上げましたいわゆる人類未踏の、しかも最高の水爆などが兵器として発明されております今日において、そのような段階のもとで、日本の劣弱な経済力の中で、その条件のもとにおいてつくり上げられる軍備が、はたして日本の真の意味における平和と独立と安全とを保つ目的を達成し得るかどうかという点において、きわめて重大な疑問を国民の大多数は持つておるのではないかと思うのであります。そこで結論としてお伺いいたしますが、直接侵略に対する防衛の問題について私どもも異議はございません。しかし直接侵略という問題に対して、それほどわれわれは今日の段階において深い関心を国民とともに持たなければならぬのか、そういう実情というものが、あるいは根拠が、今日の段階において、また近い将来においてもあるという見通しを持つておるのかどうか。これはきわめて基本的な軍備に対する重要な問題でございますので、あらためて重ねてこの点長官の見解を承つておきたいと思います。
  106. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 水爆、原爆ができたからといつて、世界各国どこの国においても防備をゆるがせにする国は一つもないのであります。独立国家である以上は、いずれの国たるを問わず、みずからの手によつて、みずからの国を守るという体制を整えんとしつつあることは現状の示す通りであります。わが国におきましても、もとよりふだんから外部の不法侵略に対処すべき体制を整えることは、独立国家として当然であります。しからば今ただちにどつからか外部侵略のおそれがあるかと申しますると、具体的にいつどこからあるということは申すことはできませんが、われわれは終始国際情勢並びにわが国周辺の軍事配置その他を研究いたしまして、わが国の防衛体制を整える必要があろうと考えて、自衛隊等を創設いたしたいと考えておるわけであります。
  107. 川島金次

    川島(金)委員 先般の本委員会の公聴会に、公述人として出席されました元中将の遠藤三郎氏の公述を聞いておりますと、遠藤氏はこういうことを言つております。これは私も午前中に若干触れたのでありますが、もし日本が直接侵略をかりに受けた場合、この直接侵略は米国を中心とする自由陣営ではなく、反対側の、すなわち露骨に言えばソ連その他こういう国の直接侵略のことですが、こういう国が直接侵略をいたした場合に、現実においては日本は日米防衛協定を結んで、現にアメリカの駐留軍が国内に数百箇所にわたるところの基地を持つておる。こういうところに直接侵略があつたとすれば、もはや日本は全国くまなく戦場のちまたになる、そういうことであつて、かりに少しくらいの軍備をいたしましても、そういう事態が起つたとすれば、もはや日本の自力をもつてしては、とうていいかんともいたし方ないことはもちろんでありますけれども、日本の国土は米ソ両国の戦力の衝突によつて蹂躙され、そして結局において、端的にいえば、日本がいずれの側に立つといたしましても、日本全体が荒廃してしまう。そして平和も独立もあつたものではない実情にやむなく置かれてしまうであろう。従つてなまじつかな軍備を持つということは、逆に日本の平和と安全を求めるという理想に遠ざかる。かえつて逆に他国の侵略を誘発するおそれが十分にあるから、この際日本はなまじつかな軍備をせずして、このままにあつた方がむしろ日本の平和と安全を保つゆえんのものでなかろうか。こう多年の戦略の経験者でありました遠藤元中将はずばりと割切つてつておるのでありますが、こういう多年の経験者の言つておりまする意見についても、さだめし長官は直接か間接かに聞いたりあるいは見たりしておるのではなかろうかと思いますが、この種遠藤元中将らの主張しておるような意見に対して、長官はどのような見解を持たれておりますか。この点を承つておきたいと思います。
  108. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 遠藤某中将の公述、私は聞きませんが、ただいまのお話によりますと、私は遠藤某中将の言うことは、はなはだ不可思議と考えるのであります。日本がアメリカ駐留軍と手を合せて日本の防衛に当つておることが――ソビエトと遠藤元中将は言つたそうでありますが、刺激するとかなんとかいうことはとんでもないことであります。これはむしろそれによつて外部からの侵略を防ぐ一つの手段であります。われわれ議案するためにやるのではない。戦争を防止するためにアメリカ駐留軍と日本の国を守つて行こうとするのであります。これがあるからわれわれは外部からの侵略がないと考えております。これをはずせば、ただちに外部からの侵略が来るものとわれわれ見なければならぬ。遠藤元中将がそういうことを言われれば、結局アメリカ駐留軍も撤退しろ、日本の保安隊もやめろ、自衛隊を置くこともいらぬということになる。そうするととうなるか。必ずや外部からの侵略があつて、日本の平和と独立と自由とは蹂躙されてしまう結果になると思う。そういうことがあつてはいかぬから、われわれは何とかして防衛体制を整える。防衛体制を整えることによつて、むしろ外部の侵略を防ぎ、結局戦争を防止する手段になると思うのであります。遠藤元中将の言うことには私は絶対に反対であります。
  109. 川島金次

    川島(金)委員 遠藤元中将は、多年の経験者といたしましては、きわめて割切つた、むしろわれわれから見れば意外に感ずるほど割切つた考え方を持つております。いずれ長官は参考のために委員会公聴会の議事録などをお読みになつてしかるべきではないかと思うのであります。  そこで伺いますが、長官は、日本の独立と平和、そして安全を保つためには、絶対にいわゆる防衛軍備が必要だ、こういう考え方であることは明らかであります。そこでしからばお伺いいたしますが、日本の安全と独立と平和とを守り得る防衛力というものは、必ずそれが軍備であり、しかも戦力を持たざるものでなければ、その目的を達成するに足るだけの防衛力ではないと考えるのでありますが、その点はいかがでございましようか。たとえばその戦力なくしても、あるいは防衛の力があつても軍備ではないという見解が立つ場合もあるのかどうか、その辺の見解について一ぺん伺つておきたいと思います。
  110. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。日本が完全にみずからの手によつて守り得るような大きな実力部隊、繰返して申しますると、アメリカ駐留軍にかわるような実力部隊を持つということになれば、これは戦力に至るものとわれわれは考えざるを得ない。さような場合にはもちろん憲法を改正すべきであろうと考えております。しかるに今の程度においてアメリカ駐留軍と手を合せて行くようなものであれば、私はまだ戦力に至るものではない、こう考えております。
  111. 川島金次

    川島(金)委員 長官は、日本の独力をもつて他国の侵略に対して防衛のできるようなものであるならば、それは十分の戦力であり、いわゆる憲法において禁止されておる軍備だ、こう言うのであります。しからばお伺いいたしますけれども、はたして日本が独力で他国の侵略に対して防衛できるという条件の整つた防衛力というものは、一体陸海空を通じてどのくらいの規模になつたときをもつて、はたして独力もつて他国の侵略に対抗のできる軍備だと言われるのか、その点のことを明確にこの際示してもらいたい。
  112. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それはそのときどきの情勢いかんによるのであります。厳格に具体的に、どこまでの程度になれば戦力に至るかということは、今申し上げることはできません。
  113. 川島金次

    川島(金)委員 情勢によつてということではございまするけれども、たとえば今の世界情勢段階、今の世界におけるところの高度兵器の発明された現代、そして今日の世界各国が持つておりまするところの軍備力、こういつたものを基礎として考えた場合に、しからば日本が独力で他国の侵略を受けとめるに足るだけの軍備というものはどのくらいであるか。将来のことはいざ知らず、現段階の世界情勢下においての日本における独力の防衛力というものは、どの程度の見通しであるか、それを伺つておきたい。
  114. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その問題は具体的に数字をあげて申し上げることはできません。要するに戦力に至るかどうかということは、裏を返せば安保条約に規定されておりまする外部に攻撃的脅威を感ぜしめるような実力、またわれわれが常に言うように、近代戦を有効的確に遂行して行く力、こういうことをわれわれは考えておるのであります。今の程度においては、決して外国に対して攻撃的脅威を感ぜしめるような実力ではありませんから、戦力に至らぬ、こういうのであります。
  115. 川島金次

    川島(金)委員 長官に申し上げますが、いやしくも日本が日本自体の防衛を必要とする建前のもとにおいて、この種防衛法案が提案され、しかもそれに伴う予算が衆参両院を通過いたしまして成立しておるのですが、その予算というものは全国民の負担であります。従つてこの種問題について、当面のことはこれであるけれども、将来のことはわからないということであつては、必ずしも国民の了承するところではないと思う。少くとも政府が日本の安全と平和とを目途といたしますために、現実においては経済力との総合的観点に立つて、今日においてはこの程度の防衛力を持つ、しかし明三十年、三十一年、三十二年と年代を経た将来においては、日本はどのくらいの防衛力を持つべきか。むろんアメリカ駐留軍といえども永久に日本に駐留するはずはないと思う。またできるだけ早くこういうものは帰つてもらいたいというのは国民感情であります。従つて政府においては、国民とともに政治を行い、国民とともにかりに必要なる再軍備を強行して行こうという底意であるといたしますれば、国民に常に納得の行く方針を示し、あるいは計画というものを示して審議に当らせるということが、民主政治の常道でなければならないと思うのでありますが、私の聞くところによりますれば、議会において、あるいは国民の代表たるわれわれがあらゆる機会において、政府防衛上の問題についてのいわゆる長期的な計画、その長期的な計画がなければ、最小短期間でもよろしいが、その計画があつてしかるべきではないかということについて、政府質問をし、あるいは要求をしておるにかかわらず、それに対する具体的な答弁というものは、私は寡聞でありまするけれども、いまだかつて聞いたことがない。このような態度というものは、民主政治家として絶対にとらざるとろであり、そのようなことであつては、政府一つの方方針に対して国民全体の心からなる情熱を傾けたところの協力を得るということは、これまた断じて不可能であろうと私は考えておるのであります。そこで私どもが厦次要求をして来たのでありますが、一体政府においては、そういう計画を持たずして国民審議させることがいいと考えるか、あるいはまた政府は何らかの計画を今日持つておるのか、あるいは持つておるけれども、その発表の段階でないのか。あるいはアメリカにある程度の計画を漏らしたけれども、国内におきましてはその漏らすことをはばからなければならないような何らかの理由というものがあるのか、その辺のいきさつをこの際ひとつ重ねて聞いておきたいと思います。
  116. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御質問の要旨は、政府は長期計画を立てておるのか、立てておるにかかわらずこれを示さないのであるかというように受取られるのでありますが、もちろん長期計画は立てられれば立てるに越したことはないと考えております。われわれも研究しております。しかし一国の長期防衛計画を立てるにつきましては、あらゆる観点から総合して研究を進めなければならぬ、たとえて申しますると、人員の点、経済力の点、輸送の点あるいは兵器の進歩の点、兵器の製造能力、あらゆる観点から総合してこれらの計画を立てるべきであろうと考えておるのであります。しかしこれは容易に立ち得るものではないということはしばしば申し上げた通りであります。しかも私が常に考えるのは、国際情勢はもとよりでありまするが、兵器の進歩は著しいのであります。われわれ電波兵器の進歩について非常な関心を寄せておるのでありまするが、これらによつて将来長期計画の様相がかわつて来るのではないかと思つております。今なまじつか確定的のものを立てて、国民を迷わすようなことがあつてはいけません。従いまして計画はわれわれ研究すべきでありますが、そういうものを確定的なものとして国民に示すということは、私はどうかと考えております。よつて政府といたしましては二十九年度においてさしあたりこれだけのものを漸増するのであり、三十年度においてはどれくらいのめどを立てるかということでただいま研究しております。それとてもいわゆる国家の財政計画とマッチさせて、しかも御承知の通り財政計画というものはなかなか立たぬのであります。従いまして確定的な長期計画は、研究はしておりますが、まだ十分に立つまでには至つていない、こう申し上げるよりいたし方ありません。
  117. 川島金次

    川島(金)委員 これは私がある方面で調べた資料でありますが、保安庁長官は当面の最小の計画範囲だけでも、可能なれば、陸上二十一万、艦艇十四万五千トン、航空機一千四百機、これが保安庁書としてギリギリの最小限度の当面の計画であるという事柄を、当初予算の編成事前の当時においては、強くこの種の計画を持つておつた。そういうことをわれわれは――これは私の調査によつてある筋からわかつたのでありますが、はたして保安庁長官は当面このようなものが最小ギリギリの必要限度であるという考え方でおられるかどうか、その点をお聞きいたしますと同時に、さらに可能なれば明年あたりこの程度のものをつくろうという何らかの方針があるのかどうか、この点について伺つておきたいと思うのです。
  118. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。今お示しになりましたような計画は、私の案として何人にも示した事実はありません。ただ私は、日本の財政力、国情が許す限りにおいては漸増をして行くべきであると考えております。その漸増をどの程度にとどめるべきかということは、なかなか容易ならぬ問題であります。あらゆる角度から研究しなくちやならぬと私は考えております。ただ三十年度においてどれくらいのめどを置いてやるべきかということの一応の案は今研究しておりまするけれども、これとても御承知の通り、日本の現在の実情から申しますると、財政面において特にわれわれは考慮を払わなければならぬ点がありますから、確定的の計画というものはまだなかなか容易に立ちにくいということを申し上げておきたいと存じます。
  119. 川島金次

    川島(金)委員 これは変なものの聞き方でありますが、若干気がかりでありますので、ついでに聞いておきますが、先般繰返して申し上げておりますビキニ環礁における水爆の実験によつて、その人類に与えますところの破壊力、被害の甚大なることが公にされました事柄からいたしまして、保安庁に今日働いております隊員あるいは職員、こうした人々の中に保安隊というもの、日本の自衛隊というものに対していささかの動揺を来しておる、こういう向きがあるという話を私はある方面から聞いておるのでありますが、はたしてそういうことがあるのかどうか。あるいはこれは私の想像でありますが、そのような事柄が判明いたしまして、日本の現状におけるところの自衛力の条件を比較いたしましたときに、さだめしそういう心境上の動揺、確信に対する動揺、そういつたものを起す人必ずしもないではなかろうと私自身も想像いたしたような次第でありますが、それについて何らかの事情を聞いておりますれば、この際長官から承つておきたい。
  120. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのお話のビキニの原子爆弾の成果によつて日本の保安隊員に動揺を来しておるかどうか、さような動揺を来した事実はございません。
  121. 川島金次

    川島(金)委員 これは私の聞き及んだことでありますので、真偽のほどを一応伺つておきたいと思つたので尋ねたのであります。そこでさらにお伺いいたしまするが、保安隊員に対しましてそれぞれ訓練はいたしまするが、さらに学科などもつておるのではないかと思います。保安隊員に対しましては一面隊員であると同時に、りつぱな国民でなければならぬという立場もとつての教育もされておるのではないかと想像いたすのでありますが、その場合に保安隊員に対して学科講習の際に、公民として当然持つべき憲法などに対する問題等に対しても保安隊員に教育をされておるかどうか、その点はいかがでありますか。
  122. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り保安隊員は訓練にいそしんでなかなか勉強をするひまがないのであります。しかし中には篤志の者もありまして、新制高等学校の資格だけはとりたいというような希望者が相当数あります。これは各部隊地方の団体の協力を得まして、新制高等学校程度の学科を修得、夜学にやつておる者は相当数あると聞いております。これらの教育は全部外部にまかしておるのであります。隊内においては、むろん各方面からいろいろな点において人間としての修養はさせておるのでありますが、また学校におきまして、ことに保安大学におきましては憲法の講習なんかはむろんやらしております。従いまして一般市民としての教養は十分身につき得ることとわれわれは考えておるのであります。
  123. 川島金次

    川島(金)委員 今の長官のお話によると、一部においては保安隊内において憲法の講義などもいたしておるというお話でありますが、しからばその場合におけるいわゆる憲法、問題の第九条の点などについてはいかなる理論といかなる解釈をもちまして教育をされておりますか、その点において知つておりますればこの際明らかにしていただきたい。
  124. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。長官は教授の内容には触れておりません。教授の教えるところにまかせております。どういう解釈をしておるか、それは私は存じません。
  125. 川島金次

    川島(金)委員 それでは増原次長にお尋ねいたしますが、次長は多分その方のことについて若干の――若干どころではない、責任を持つておられると思うのですが、憲法の講義をいたします場合に、その講義がどういう形において行われておるか、その点について御承知ならば承つておきたい。
  126. 増原恵吉

    ○増原政府委員 ただいま長官から申しましたように、憲法の講義の内容についてどういうふうな教え方をしておるかは、私のところではつまびらかにいたしておりません。
  127. 川島金次

    川島(金)委員 もちろんこの種学科、ことに学問については、自由が最も尊重されなければならないと思うのであります。従つてかりに憲法の講義を隊内において行いまする場合におきましても、その憲法を担当いたしまする教授といいますか講師に対して、政府みずからが憲法解釈について左右をするということは絶対に避くべきだと思うのであります。従つてこの平和憲法に対する講義の仕方というものは、政府がその講義をする者に対して、いやしくも考え方について干渉などがあるようなことであつては、憲法の純粋な意味におけるところの講義ではないと私は思うのであります。私の聞いたところによりますれば、何らか政府がこれに対して重大な関心を持つておるようにさえ伝えられておりますので、この際尋ねたわけでございます。そこで私はそういうことがあるかないかは、またいずれかの機会に調べておいていただいてお伺いをいたすことにいたしまして、さらに続いてお伺いいたすのでありますが、一体この憲法の全体というものについて、言うまでもなく各委員会や本会議等で今日まで繰返して同僚議員から質問されておりますので、あえて私が蛇足を加えようとするわけではございませんが、何か政府はことさらに第九条に抵触するいわゆる再軍備を、現実の問題として国民に押しつけて来る本心は、憲法第九条に抵触するというおそれがあることを十分に承知しながら、しかも言を設けてこれを回避しながら、現実においては国民並びに憲法の欲せざる軍備を、着実に、巧妙に、しかも老獪に現実を積み重ねて行くという方針であるようにわれわれは受取つておるのでございます。本来の憲法の純粋な解釈から申し上げますれば、今日の段階におけるところ政府のやつておりまするいわゆる防衛の実態というものは、憲法の第九条に背反することが明らかでございます。にもかかわらず、政府はこの現実を無視しながら、しかも言を左右にして現実の事態を強引につくり上げて行く、こういうことであつては私はならないと思う。かりにわれわれは再軍備には反対の立場を明確に持つておるものでございまするけれども国民の一部には軍備に賛成をしておる者がある。従つてかりに政府が再軍備を行うといたしますれば、少くともいわゆるわが国に築き上げられた民主的な立場、そうして民主的憲法のもとにおいて民主的にこれを押し進めて行く、こういう立場をとらなければならない。端的に言うならば、明らかに政府は軍備を強行したいという意図がありまするならば、まず国民に問う、いわゆる憲法改正を国民に問うて、しかる後において正々堂々と軍備をやる意図があれば、それをやるということこそが、すなわち民主内閣、民主政治家のとるべき当然の態度ではないかと思うにもかかわらず、政府は現実の問題に、明らかに困難な問題には取組もうとすることを回避して、そうして老獪なやり方で軍備を着実に巧妙に押し進めて行こうとするような意図が、明らかにわれわれにはくみとれるのでありますが、このようなことで、はたして長官は厳然たる確信を持つておるのかどうか、憲法に対していささかの背反の点もないという実に厳然たる確信を寺つてつておられるのかどうか、その点についてこの際さらに私も承つておきたいと思う。
  128. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は確信を持つてつて行くつもりであります。今の程度のものであれば、決して憲法の第九条第二項の戦力に至らず、いわゆる憲法の範囲内であると確信いたします。これ以上のもの、いわゆる戦力に至るものを持とうとすれば、もちろん憲法を改正してやるべきであろうと私は確信しておる次第であります。
  129. 川島金次

    川島(金)委員 この質問もまたのれんに棒押しみたいなことになるのであろうと思うのでありますが、一体憲法を改正しなければならないということになる限度というものはどり辺にあるか。これは国民のほんとうに聞きたいところであり、ことにわれわれが最も関心を持つて政府の所信を聞いておきたいところでありますが、なかなかこの問題について政府は明確な答弁責任ある回答というものを国民の前に示しておりませんが、この憲法を改正しなければならぬところのいわゆる兵力、戦力を持つ限界というものはどの辺にあるのか、そのくらいの事柄について、いやしくも責任ある内閣といたしましては、国民の前に明らかにするところ責任があろうと私は思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  130. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その問題についてはしばく私は申し上げておるのであります。要するに近代戦を有効的確に遂行し得る大きな実力、裏を返せば、外国に対して攻撃的脅威を与えるような武力、かようなものを持とうとするならば、これは憲法を改正しなければならぬと考えております。今の程度においてはまだ実力はそこまで行きませんから、憲法を改正する必要はないと、こう確信しております。
  131. 川島金次

    川島(金)委員 そういう抽象的な、近代戦を遂行する能力、あるいはまた外国から見て日本が侵略をするであろうという脅威を持つに足る戦力、これはきわめて抽象的で、われわれにはよくわかりません。もつと私は責任ある政府として、そういう問題はきわめて重大な事柄でありますので、この際もつと明確に責任ある立場において国民の前に明らかにする必要があろうかと思いますので、必要なことでありますから、重ねて尋ねておきたいと思う。
  132. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 しばしば申し上げましたように、具体的に数字をあげて申しかねます。さように私は抽象的に申すよりほかに道がないのであります。これがいかぬとするならば、国会において十分御審議を願つて、憲法違反なら、憲法違反であるから予算は認められないということになろうと私はこう考えております。
  133. 川島金次

    川島(金)委員 今同僚からの連絡によりますと、長官は参議院の方に呼ばれておるそうですが、私の質問はまだ三時間くらいあるので、委員長に議事の運営についてお伺いをいたしたいと思う。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)何時まで長官はおるのか。
  134. 稻村順三

    稻村委員長 四時半までよろしい。
  135. 川島金次

    川島(金)委員 この問題は先般の委員会でも、他の同僚から若干伺つた点でありますが、例の問題になつておる艦艇の貸与のことであります。四月七日の読売新聞紙上によりますと、すでに艦艇貸借協定、これはもちろん試案でありましようが、案文が九条明確に具体的に掲げられて報道されておりまするけれども、この読売新聞に出ました九条の案文が、いわゆる今後協定されるであろうところの艦艇の貸借協定の具体的な案文であるかどうか。これも私は読んだのでありますが、あの報道の記事が具体的なものであるかどうか、この点についてまず伺つておきたい。
  136. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 読売新聞に出ておりまする記事のような協定はまだできておりません。今折衝中であります。これはどういう形でなるか、しきりに今検討しております。
  137. 川島金次

    川島(金)委員 最近新聞等の報道するところによりますると、実はなかなかこの艦艇協定が思うように進んでおらない。しかも場合によりますると、ことにどんな艦艇が何隻貸与されるかということも、なかなか急速にはめどがつきかねる実情にあるので、そこで政府は目下国会開会中のことであるので、かりにできるとすれば、艦艇の種類とか隻数などはさしおいて、いわゆる貸借協定の原文だけはとつて協定をしておきたい、そうしていずれかの日において現実において艦艇の種類とか隻数がきまつたときにさらに協定の中に捜入をいたしまして協定を完結せしめる、こういう一つの便法もあるではないか、こういつた考え方で話も進んでおるということが伝えられておるのでありますが、その点のいきさつはいかなることになつておりますか、お尋ねいたします。
  138. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま川島委員にいい便法を教わりましてまことに私はありがたいと考えておりますが、実はこの隻数についてはただいま交渉中であります。私はこれは近くきまるものではないか、こう考えております。
  139. 川島金次

    川島(金)委員 それではお尋ねいたしますが、その艦艇の政府が期待いたしておりまする種類あるいは隻数、総トン数、そういつたものはどのくらいのことを期待しておるのか、この際聞いておきたいと思う。
  140. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今具体的にどれだけのトン数になるか、内容はどうかということはちよつと申しかねますが、隻数いたしましてわれわれの希望するのは約十七隻であります。しかしこれが全部一時に来るかどうかということは非常に疑問になつております。まずそのうちのある一部分が先に供与を受けることになるのじやないか、これは第二段、第三段になるのじやないかと考えておるのであります。
  141. 川島金次

    川島(金)委員 さらにお尋ねをいたしますが、この問題もしばしば繰返されたのではないかと私は思いますので簡単にお尋ねしたいと思いますのは、いわゆる原案の七十六条の防衛出勤の問題でございます。これは原文によりますれば直接侵略のおそれある場合、この場合におきましてもいわゆる自衛隊が出動をする可能性があるわけにあります。そこで直接侵略のおそれがある場合というこのおそれがあるという判断をいかなるところで下しますか、またこの判断によつてはきわめて重大なる事態が招来されるのではないかと思うのでありますが、この直接侵略のおそれがあるということを最終的に決定をいたしまするのはだれであるか。つまり具体的にまず評議をするものはどういう機関か、そうして最終的に決定するのはだれであるか、その点はどういうことになりますか。
  142. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 防衛出動の最終的な判断、決定は総理大臣であります。総理大臣保安庁長官、今度の防衛庁長官その他幕僚の全部の補助を受けてやるのであります。  なお国防会議ができますと、国防会議において防衛出動の可否を決定することになつております。これらの助言、補助によつて総理大臣がすべての決定をすることになつておるのであります。
  143. 川島金次

    川島(金)委員 現実においてかりに直接侵略があつたときには問題はないと思うのですが、直接侵略のおそれある場合、これはきわめて重大な事柄であろうと思う。そのときの総理大臣あるいは国防会議を構成するメンバーあるいはその周囲の雰囲気あるいは系統、こういつたものを、昔の日本に軍がありました当時のことを思い返してみましたときに、直接侵略のおそれがある場合においても防衛出動はできる、これはきわめて重大なことでありまして、こういうことがありますることは、ときによつては日本にとつて非常に重大な危険を招く、むしろ逆の事態が起るような懸念をわれわれは持つのでありますけれども、この直接侵略のおそれある場合というこの事柄に対しての判断というものはよほど慎重でなければならない。従つてあらゆる総合的な判断がなされるような、一切の条件を整うべき仕組みにしなければならないと私は思うのでありますが、今の条件程度では、案文程度ではこの点非常な危険を感ずるのでありますが、この点長官は一体どういうふうに考えておりますか。長官の見解なり所信なりをひとつ聞いておきたいと思う。
  144. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの防衛出動命令を発するときには、原則として国会の承認を得ることになつております。これでいわゆる大きな制約を受けておるのであります。もちろん国会の承認を得ることのいとまのないときには総理大臣が出動命令をただちに出すことができましても、これはまた事後において国会の承認を得なければならない。事後において承認を得なければこれを撤収することになつておりますので、この面において私はきわめて民主的に事が運ぶだろうと思います。
  145. 川島金次

    川島(金)委員 もちろん私は後段の、国会開会中の問題ではなしに、国会が開会されておらないときの問題を前提としてお尋ねをいたしたのであります。この国会が開かれていない場合におきましても、一国が日本に対して直接の侵略をするおそれがある、こういつた問題の判断をいたしますことは、問題が非常に多いことだと思うのであります。従つてそれだけに国会閉会中におけるところの直接侵略のおそれある場合というこの場合の判断というものが、私は極端にまで慎重にさるべきものだと思う。それがまた場合によつては、日本の運命自体をかけるようなことに逆にならぬとも限らない重要な防衛出動であろうと思うのでありますが、日本の側におけるところの主観的な単なる観察において、あるいは判断において、相手国がそういう実態でないにかかわらず直接侵略をするであろうという独断を下すような場合がかりにもないとは断言できない。こういう事柄を想像いたしまする場合におきまして、この問題の判定というものは実に重大だと重ね重ね思うのでございまして、この法案の全体にわれわれは必ずしも賛成ではありませんから、どちらでもよいと思うのでありますが、この法案が多数をもつて通ります場合において、この法律の運営いかんによりましてはきわめて重大な結果を招来するのではないかと思うのでありまして、こういう点をもつと政府というものは考え直す必要があるのではないかと私は思うのでありますが、その点はこの程度でお尋ねを打切つておきます。  そこでさらに続いてお伺いを申し上げるのでございますが、この自衛隊法の第六十一条、政治的行為の制限であります。案文によりますれば、「隊員は、公選による公職の候補者となることができない。」とか、あるいは「隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。」これはもちろん問題ではないと思うのでありますが、かりにこれは案文によりますと、私の解釈の仕方の相違かもわかりませんが、間違つておつたならば訂正いたしまするけれども、どの政党の党員になるということについては何ら制約がされておりません。従つてかりに共産党員が隊員になること、あるいは隊員であつたものがあらためて共産党員の党籍を持つ、こういつたような事柄が発生いたした場合、そういうことで共産党員であるがために、あるいは共産党の党籍を持つたという理由でもつて隊員を除名といいますか、解職されるというようなことは絶対にしないという建前で政府はおるのか、その点はどういうことになりますか。政府方針を聞いておきたい。
  146. 増原恵吉

    ○増原政府委員 一般隊員は、お読み上げになりました六十一条で、単に政党の党員になつただけでは隊員たる資格を喪失いたしません。従いまして現在合法政党である共産党の党員になつたというだけの理由によつては隊員たる資格を喪失することはございません。隊員が隊員たることをやめさせられまする場合には、隊員として不適当な、不適格であるというふうな理由によつてやめさせるということがあり得るということであります。
  147. 川島金次

    川島(金)委員 しからば共産党員であつても、隊員たることを政府はこれを歓迎し、あるいはまた以前に共産党員ではなくても、入隊しましてから共産党に入党することも大いにこれを了承する、こういう方針をもつて臨むつもりであるか。その点はいかがですか。
  148. 増原恵吉

    ○増原政府委員 五十何条か、服務の本旨というところに「わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、強い責任感をもつて専心その職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に努め、もつて国民の負託にこたえる」ということを服務の本旨といたしております。従いましてこれは隊員たることを本務とし、専心これに従うことを歓迎するわけでありまして、いろいろ他の政党その他の党員になるということは趣旨としては歓迎はいたしません。しかし隊員たるの仕事を尽す上に支障がないという程度のものについては、そのことで隊員を免職するということではないということでありまして、そういう政党の党員その他を歓迎するという趣旨はこの服務の本旨からいいましてもないわけでございます。
  149. 川島金次

    川島(金)委員 たとえば共産党員が隊員であることも、この案文によれば可能であります。従つて共産党員の隊員がアカハタその他共産党の機関紙を手に入れまして、それを隊内において自分の友人たち周囲に頒布する、あるいは宿舎においてこれを回覧せしめる、こういつたことは日中の服務中にやるならば別でありますが、休暇のときとか、あるいは休み時間、あるいは何と申しますか、日中の勤務を終えてすでに自由なからだになつたときに、それを行うといつた事柄は、今の趣旨からいえば当然に見のがさるべき事柄になりますが、そういうふうに理解してよろしいかどうか、その点はいかがですか。
  150. 増原恵吉

    ○増原政府委員 第三十八条の「左の各号の一に該当する者は、隊員となることができない。」という欠格条項がございます。その中の第四号に「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」というような項目がございます。こういう事項に触れるようになりますと、その者は隊員たる資格を喪失することに相なります。
  151. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 ただいまの次長の御答弁に補足して申し上げたいと思います。六十一条にあります政治的行為は政令できめることになつております。これは一般職の公務員につきましての人事院規則の一四一七というのがございますが、それと同じようなことを現在の保安庁法の施行令でもきめておりまするし、今後自衛隊法が成立をいたしますれば、施行規則においてきめるつもりでございます。その政治的行為にはただいまお示しがありましたようなことが実は入るのでございます。たとえば現在の保安庁法施行令の六十五条に保安庁法第五十六条第一項に規定する政治的行為の定義を規定しております。その中で「政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し、若しくは配付し、又は多数の人に対して朗読し、若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し、又は編集すること。」その他十七項目にわたりまして一般職の公務員について規定してありまする政治的行為の制限と同様なことを政令で規定しておりますので、お示しのようなことはこの点で該当すると思います。そうしてこのことによつて解任できると思います。
  152. 川島金次

    川島(金)委員 この案文でなしにそういつた方面での適用を当然やるのだということになれば、また問題は別になりますが、私はこの案文だけを見てお尋ねしたわけであります。かりに三十八条を次長は読まれましたけれども「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党」これは目下共産党といえども、合法政党として承認されておる政党であります。従つてその合法政党と認められておりますところ政党に隊員が入党したり、あるいはすでに入党しておつた者が隊員になる。これはこの案文によりますれば、何らさしつかえない。その事情だけによつてはその隊員を解職したり、あるいは離籍するようなことはできないことになつている。従つてことさらに今のような、かりに文書、図画等を頒布すること自体の行為というものが法文に抵触して、それがいわゆる完全なる隊員でないという認定をするところの条件になるというものが別にあるのだということでありますれば、何をかいわんやでありますが、この案文を見まして、ちよつとその点をきづきましたので、一応承つておいたような次第でございます。  さらに百三条の問題もどなたかすでに論議になつたのではないかと思うのでありますが、防衛出動時における物資の収用であります。この物資の収用は、昔でいえばちようど国内において戒厳令でもしいたときのような形になつて、そのもとで一切の施設、一切の必要な物資の製造、委託、販売、保管等について、いわゆる一つの総動員的な法律になるわけでございますが、たとえば病院、診療所の施設を管理したり、土地、家屋、物資などを使用する場合には、都道府県知事がやるようでありますけれども、この場合において、前もつてそれらに対するきちんとした、両者合意によるところの補償の契約が成立して、そのあとにおいて初めて行うのかどうか、そういうことでなしにいきなりこの法律に基いてやつてしまつてあとで補償の問題は解決するというような収用の仕方をするのかどうか、その点はいかがなことになりますか。
  153. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 第百三条の規定についてのお尋ねでございますが、これは私ども考え方といたしましては、災害救助法の災害の場合につきまして、物資の使用、収用等についての規定がございますが、その規定の趣旨にならいまして、かような防衛出動の場合においては同様なことが必要であろうという建前から、第百三条を規定しておるのであります。従いまして、その収用のやり方及び補償のやり方等につきましても、災害救助法の当該規定を第三項において準用することにいたしておるのであります。災害救助法の十二条等の規定がその補償の規定でありますが、これによりますと、収用等の処分を行う場合においては、「その処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない。」通常生ずべき損失を保償する、こういうふうに書いてあるのでございます。でありますから、この適用の実際について、いろいろあろうと思うのでありますが、おそらく大多数の場合におきましては、事後において補償するということになろうかと考えております。
  154. 川島金次

    川島(金)委員 どうもそのことが私は非常に危険を感ずるのであります。防衛出動において、この百三条を注意をして扱いますれば別でございますけれども、この百三条と今の災害補償ですか、そういつたものをごつちやにして強行いたします場合には、国民が憲法で保障されておりますところの所有権あるいは処分権あるいは財産権、こういつたものが根底から蹂躙されるおそれが十分にあります。特に「物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又は物資を収用することができる。」こういうことが書いてありまして、これは人間の動員まで強制的にできるように書いてあると私は感ずるのでありますが、人間については強制徴用的なことができるように百三条は解釈して行くのかどうか、その点はいかがですか。     〔委員長退席、下川委員長代理着席〕
  155. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 特に人の従事命令の点についてお尋ねがあつたようでございますが、実はこの規定も災害救助法の中にはあるのでございます。ただ私どもといたしましては、災害救助の場合と防衛出動の場合とは若干事態が違うであろう、違つて考えなければならないであろうという考慮からいたしまして、特に百三条におきましては第一項と第二項と書きわけておるのであります。すなわち第一項の方は、当該自衛隊の行動にかかる地域における収用、使用等のことを書き、第二項におきまして、それ以外の地域において人の従事命令が発し得るというようなことを書いておるのであります。この趣旨は、人の従事命令を発し得る場合は、自衛隊の行動にかかる地域においてはこれを認めない、すなわち一番危険なる地域においては、特にある種の業者に対しまして、他の国民以上の負担を求めるということは適当であるまいという趣旨からいたしまして、第一項の前線と申すことになりましようが、そういう地域においては人の従事命令は認めない、その後方の地域におきまして、特に必要のあります場合におきまして、現に土木建築工事、医療、輸送等に従事しておる方々について、つまり平生やつておる仕事と同じような仕事を総理大臣の指定する地域において認めようという趣旨でございます。またこれにつきましては、別に命令に従わない場合における強制方法は規定しておらないのでございます。
  156. 川島金次

    川島(金)委員 この命令に従わないからといつて、別に刑罰など強制する規定はないと言いますけれども、この法律が成立いたしまして、実際に適用されるということになりますと、その出先のものの考え方あるいは行動の仕方によつては、きわめて重大なことになるのじやないかということが懸念されるのであります。ことに人間まで動員をされるということに明らかになつておりまして、その一定地域が昔のいわゆる戒厳令下に属する、こういつたかつこうになります。しかも、施設や品物等についてもこれが行われるのでありますから、そのやる立場の方の考え方いかんによつては、その地域における物資の問題、ことに食糧等に問題が及んで来て、その地域における一般の国民の生活の上にまでさらに重大な影響をもたらして行く、こういうこともわれわれこの案によると想像されるのでありますが、当然そういつた事柄についての配慮をされなければならないと思うのであります。この百三条を広汎に実施いたします場合についての、物資、人的資源、そういつた各般の総合的な調整をどういつたことでやるのか、何らかの機関を設けてこの百三条の実施をするという心構えで行くのか、その点についての準備をどういつた形式でやるのか、内容をひとつ聞かせてもらいたいと思います。
  157. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 百三条の運用につきまして慎重を要することは仰せの通りでございます。私ども災害救助法の制定の経緯を調べた際におきましても、衆議院の委員会におきまして、特にこの法律の運用につきましては慎重を期すべきものであるというふうな決議のなされておることを承知しておるのでありまして、この防衛出動の場合においても同様の、いなそれ以上の配慮をなさるべきものであろうと実は考えております。運用の問題は別としまして、この点についてどういう配慮を法律上においてしたかという御質問でございますが、戒厳等の場合におきましては、昔は司令官がやつておつた、しかしこの法律におきましては、そういう建前をとらないで、その地方の実情について一番通暁しており、物事が公平に、しかも無理がなく行われ得るような判断力を持つておると認められます一般行政官庁である府県知事というものを前面に出して来ておりまして、府県知事にやらせるということを建前としておりまして、これは昔の戒厳令等とは非常に違つておると私は思うのであります。知事にやらせることのできない特に緊急を要する場合においてのみ、長官または政令で定める者がやるというふうに規定いたしております。機関等については、ただいまのところはどういう機関を設けるということは考えておりませんけれども、先ほど申し上げました衆議院の委員会における決議の趣旨等から考えまして、災害救助法の適用の実際を十分に調査研究いたしまして、運用には万遺憾のないように慎重を期さなければならないものと考えております。
  158. 川島金次

    川島(金)委員 さらにその防衛出動のほかに、問題は現実になつておる問題でありますが、演習等の場合におけるところの地方に与えまする被害、この演習地の被害補償という問題については相当の件教に上つてつて、いろいろ地方的には問題になつておるところが多くあるのではないかと想像いたしております。現在保安庁におきましてはこの演習地のいわゆる被害補償について一体どのような処置をとつておるか。すべて地方民との円満な話合いの上において当然なされなければならぬと思うのでありますが、かりそめにも政府が一方的にこの問題の解決を強制するということは、絶対に避けなければならぬと思います。私の聞き及んでおるところによりますと相当な被害が各地で頻発しておりまして、大きな被害件教をあげてみても全国的には相当な数に上つておりまして、通常地方の人たちから言われておりまする補償要求額を総合いたしますと、十数億にも上つておるということが伝えられておるのでありますが、現実において保安庁政府が認めておりまするところの著しく目立つた地方への被害の補償についてどのくらいに今日はなつておるか、そしてその補償の支払いについてどういう事情になつておるか、この点をひとつ参考のために聞いておきたいと思う。
  159. 増原恵吉

    ○増原政府委員 演習等によつて与えまする損害について、警察予備隊の当初はいろいろ組織なり、また構成員等が不十分、ふなれ等のために迅速に手のまわらないようなうらみがございましたのは遺憾でありまするが、ただいまではそうした方面の組織もでき、人もなれて参りました。大体において演習をやります際には、現在私どもの専属の演習場というものはほとんどございませんので、一般の民間、国有その他の土地を使つて演習をやるということが多いわけでありますが、事前にわかり得る損害等は使用料という言葉で言う方が適当でありましようが、そういう形で事前に支払いをして演習をやる場合もありますし、事後において生じました損害を補償するというふうなこともやつております。これは大体各部隊において地方の市町村その他関係の住民の人々と円滑な話合いのもとに行つており、昭和二十八年中の事故発生は総計三十六件、補償の支払い金額は五百六十八万八千六百円ばかりになつておるのであります。現在のところはよく話合いをいたしまして、遺憾のないように十分留意をいたしておるのでございます。
  160. 川島金次

    川島(金)委員 この演習等において地方に不測に与えました損害の補償については、それぞれの地方によつてスムーズに行つたところもあるし、なかなかスムーズに行かないで、保安庁がいわば地方民から言えば非常にわけのわからぬことを言つておる、こういつた事件もかなりあるようであります。今後も演習等が大いにやられるのでありましようが、その場合における地方に与えました被害等の補償につきましてはもつと親切に、しかも迅速に地方民の納得の行く限度においてこの問題の処理に当る熱意を政府は示すべきであるということを私は強く要求をいたしておくものであります。  それから話は前後になつてまことに恐縮なのでありまするが、もう一、二お尋ねをいたしたいと思うのであります。これは第八十四条の問題であります。「外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。」、なるほど案文といたしましてはもつともな案文でありますが、やり方といたしましては、これまた非常に危険を内包しておる案文であると私は痛感をいたしたのであります。たとえばこれによりますと自衛隊の部隊に対し、侵犯して来た飛行機を着陸させる、この着陸させる場合に一体しなかつたらどうするか。それから領域の上空から退去させるために必要な措置をとる、必要な措置というのは、場合によつたら領域内かすかすなところにおつてなかなか出て行かない、そういつた場合にはこつちの自衛隊の飛行機でもつて撃墜させる、あるいは射撃をさせるということもあり得るような気がいたすのでありますが、そういうことを予想してこの八十四条かつくられたのかどうか、その点はどうなのですか。
  161. 増原恵吉

    ○増原政府委員 領空侵犯に対する措置というのは、いわば警察措置と考えることがまず適当な分野であります。但し一般警察は、こういう領空侵犯を行いました航空機を取締り、適当な措置をすることができませんので、特に自衛隊の部隊がこれに当るという趣旨で八十四条ができておるわけであります。そうして領空侵犯航空機というもりに対する措置は、ここに一、二の例が書いてありますように、これを着陸させるということも一つの方法であります、あるいは信号その他の方法によつて領域の上空から退去させるということも一つの方法である。しかしそういうことに応じないでなお領空侵犯を継続するというような場合には、現在の国際法における通常の慣例その他に従いまして、場合によりましてはこれを射撃するというようなこともあり得るというふうに考えております。
  162. 川島金次

    川島(金)委員 そうすると場合によれば侵入して来た相手方の航空機に対して射撃をし、そして撃墜をするといつたことが想定されることになるのでありますが、ここにもきわめて重大な問題が場合によつては内包されて行くのではないかということを、私はきわめて深く懸念いたすのであります。この領空の判定といつたようなことについては、私は専門家でありませんからわかりませんが、これまた実に微妙なものがあろうと思います。その微妙な明空の限界等について、こちらの自衛隊側の航空部隊が場合によつては相手方の航空機を射撃し、そして最後には撃墜をせしめる、そういつたことがかりに誤まつて、あるいはまた軽卒に行れるようなことになりますと、これがすなわち発火点となりましてその国との重大な紛争の端を発して、そうして両国戦端を開かなければならないような事態を起すこともあり得るのではないかということがわれわれには想像されるのでありまして、この問題の処置はきわめて重大な事柄ではないかと思うのであります。こういうことについて単なるこの程度のことで出動させるのか、それともそういつた重大な事柄の招来をあらかじめ予想いたしまして、できるだけこの種の措置について厳重な注意と慎重な態度を求めるために、単なる八十四条の条文だけではなしに、他の何らかの形においての規制的なものが必要ではないか、こういうふうに思うのでありますけれども、そういつたことについての他の何らかの措置というものが行われるのかどうか、ただこの八十四条だけで一切の領空問題を解決して行こうという単純な考えで臨んで行こうとするのか、その点はいかがでございますか。
  163. 増原恵吉

    ○増原政府委員 領空侵犯のいけないということはもう明瞭な国際的な事実でありまして、領空侵犯をやつて来たものに対しましては、犯された方で適当な措置をするのは万国に共通して認められた当然の措置でございます、但しこれを行いますに慎重を要することは、川島委員仰せになりました通りであります。誤まつて領空を侵犯しておらないものを領空侵犯扱いをするということの許されないことは――領空のみではありません。ほかの場合でも同じでありまして、慎重に事を処すべきことは当然であると思います。また通常常識的に考えまして、一回領空侵犯があつたというときに、ただちにこちらの飛行機でこれを射撃するということは適当でない。そういう場合には通常は領空侵犯をやらないように、相手国に対して抗議をするとか、注意を喚起するとかいうような方法とか、国際慣例に従つて適当な措置をとることもまた当然なすべきことである。慎重に処すべきことは仰せの通り十分やるつもりでございます。
  164. 川島金次

    川島(金)委員 大分時間もたつて来まして、同僚の諸君もお疲れのようですから、私もそれを考慮して私の質問はそろそろ終ろうと思います。  これも前後いたしまして恐縮でありますが、保安庁長官に一つ重要なことを聞いておきたいと思うのであります。それは、政府のこの防衛法案を基礎とする今後の大方針、伝えられるところによりますれば、極東の軍事情勢を見込んで、国土防衛の力点をまず北海道に置く、これが一つの大方針、第二に、海上の問題ですが、沿岸警備の地点として津軽海峡、あるいは関門海峡が中心である。第三点には、憲法改正は当分行わない、その範囲内で陸海空三軍の均衡した体制をできるだけ確立して行こう、第四点には日本の財政と見合う必要から、直接当面の問題として増強の中心を陸上部隊において、海空はしばらく日米の安全保障にゆだねる、こういうことが政府のいわゆる保安防衛の当面の原則的な大方針である、こういうふうに伝えておる向きがあるのでありますが、この点の真相はいかがでありますか、保安庁長官から承つておきたいと思います。
  165. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。北海道が重要な地点であることは申すまでもありません。これに対してわれわれが相当の関心を持ち、防備を固めて行くことは当然であろうと思います。津軽海峡またしかりであります。ただ今三軍方式とおつしやいましたが、三軍がすべてバランスのとれた体制を整えるということは、これはなかなか容易な仕事ではありません。御承知の通り船をつくるにいたしましても、飛行機をつくるにいたしましても相当な費用がかかるのでありますから、これは日本の財政力とにらみ合わして国民の生活を脅かさない範囲においてやるべきが当然であります。その点について十分注意を払つてやりたいと思います。  地上部隊に特に重点を置くかということでありますが、必ずしも重点をそこに置くとは限りません。ただアメリカの方で地上部隊の幾らかが撤退いたしたいという希望は十分にあるのであります。それと見合いまして、二十九年度においても二万の部隊を増加すべく、予算において御審議を願つている次第でございます。要は各般の情勢から十分判断して、日本の防衛態勢の確立を期して行きたい、こう考えております。
  166. 川島金次

    川島(金)委員 最後に、これは念のために聞いておくのでありますが、私がだんだんと申し上げておりますように、世界の戦争危機と申しますか、また日本の直接侵略の危機、こういつたものはアジアの情勢から見ましても、また世界的な情勢判断から見ましても、非常に緩和をされて、世界全体は今や平和の一遂に向つて、全人類があげて関心を持ちながら、その方向に向つておるのが現状ではないかと思うのであります。それからまた翻りまして、日本の国内の現状を見ましても、間接侵略に対するある程度の治安威力というものを整備しておくということには、私どもといえども反対ではございません。しかし国内の経済実情あるいは国民生活の現実の問題等を勘案いたしました場合に、さらにまた政府の今とつておるところのデフレ経済政策、こういつたものの遂行から来るところの、さらに深刻になろうと想像されるところ国民経済の実体等、こういつたものを勘案しながら政府は――私はこれは私見として伺つておくのでありますが、防衛隊の増強は一応二十九年度の現状でとどめておいて、今後の世界情勢がさらに平和への段階に進むという具体的な曙光が現われ、しかもまた日本の国内における経済実情というものが、急速によい方面に展開しないという現実をたどるようなことでありますならば、少くとも政府はこれらの点を総合的に考え防衛力の増強は、二十九年度程度でもつて一応打切る、このくらいの考え方も必要ではないのか、私見といたしましてはこういうふうに私は考えられるのでございますけれども、一体政府は、あるいは長官は、そういつた事柄について何か考えておるかどうか。これを最後に伺つて、私の長時間の質問を一応打切りたいと思うわけであります。
  167. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。世界はだんだん平和に向つて行きつつあるのじやないか、一応さように見られるのであります。御承知の通りチャーチルも言つておるのであります。平和に向つておるような様相はしておるが、決してこれは永久的のものであると考えてはいない、一時的のものであろうと判断して、この間にわれわれといたしては防衛力を漸増して行かなくちやならぬというようなことも言つておるような次第であります。恒久平和が成立つて行くということになれば、まことに人類の仕合せこれに過ぐるものはないのであります。これはわれわれとして必ずしも恒久的のものであるという判断はできません。何としても、一国としては外国からの外部侵略に対処し得るようにふだんから準備をする必要があろうと私は確信いたします。そこでこの漸増計画も国民の生活を圧迫してやるということは私はなすべきじやないと思う、どこまでも日本の財政力に見合つてやるべきである。御承知の通り今年度においてはなかなかデフレでもつて国民の生活も容易じやありません。無理な漸増計画はわれわれはすべきではないと考えるのであります。ここで最も注意を要することは、いずれのときにおいても物よりも人であつて、われわれの部隊においても一番必要な人員の養成である。これは結局短時日においてはできない。長日月を要するのでありますから、この点についてわれわれは十分の考慮を払つて、まず何よりも人員をふだんから養成しなければならぬ、こう考えているのであります。三十年度においてはどうなるか、これは一般情勢、ことに日本の財政力と勘案して計画を立てたい、こう考えております。
  168. 下川儀太郎

    下川委員長代理 本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十一分散会