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1954-04-19 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十九日(月曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君    理事 平井 義一君 理事 下川儀太郎君      岡村利右衞門君    永田 良吉君       長野 長廣君    船田  中君       山崎  巖君    粟山  博君       須磨吉郎君    飛鳥田一雄君       田中 稔男君    川島 金次君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ――――――――――――― 四月十九日  委員大久保武雄君及び早稻田柳右エ門君辞任に  つき、その補欠として岡村利右衞門君及び須磨  彌吉郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたしま  防衛庁設置法案及び自衛隊法案一括議題となし、質疑を続行します。質疑の通告がありますからこれを許します。下川儀太郎君。
  3. 下川儀太郎

    下川委員 きようは私の当番ではありませんけれども、せつかく長官がおいでになつたので、長官に二、三、今度の法案に関連して質問いたします。実は先般保安庁の方から保安庁直轄工事に関する資料をいただきました。その資料を一瞥いたしますとはなはだふかしぎな箇所が多いのであります。それに関連して若干質問申し上げたいと思います。  この保安庁直轄工事は約二十二億ばかりありますが、この工事内容を見てみますと、年度末に早急に発注したという箇所がずいぶんあるのであります。はなはだしきは三月三十一日に施工してその目に竣工しておるというようなのがずいぶんございます。これはまことにふしぎなことで、この内容を見て参りますと、非常にわずかな期間で竣工しておる、それが二百万あるいは三百万、そういう相当工事がわずか五日間にできておる、あるいは十日間でできておるというようなことが書いてある。これは一つ二つならば一応一ステークということができますけれども、相当数、三十何件が出て参ります。これは一体どういうわけなのか。いわゆる数字のミステークか、それとも実際的にわずか五日間とか十日間でできておるのか、これをひとつ御説明願いたいのであります。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま御質問の点につきましては、私は初めて伺うわけでありますので、詳細のことはまだ取調べておりません。従いまして今事務当局を呼びまして答弁いたしたいと考えております。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 念のために申し上げますが、たとえばこれは第一地方建設部であります。練馬診療所増改築工事、これが二百十二万円、それが二十八年の七月十八日に施工して、七日十八日に竣工になつておる。あるいはまたやはり練馬でありますが、踏切り工事が二十八年の十月八日に施工になつて、同じ二十八年の十月八日にこれが竣工されている。こうしたたとえば二百七十八万円の工事、あるいはまた二百十三万円の工事、これらが一日においてでき上るということは神わざなんです。こういうずさんな資料が出ておりますが、私は単に資料のずさんさということでは考えられない。これはやはりこの工事にからんで、何か大きな問題がひそんでおる、このようにわれわれは考えております。あるいはこの資料と対照して、担当の人が来たならば、よくつつ込んで聞けばわかることでございますが、どうしてこういうずさんな工事をやるのか。一日にして二百万、三百万の工事ができる。そこに今日保安庁が何か伏魔殿的な、汚職的なにおいをかもされる。これが重要な問題になつて来ますが、同時にまたまず考えなければならぬことは、建設省設置法の第三条二十六項の中には、百万円を越える工事建設省がやることになつておる。にもかかわらず保安庁がこれを直轄工事として百万円以上の工事をやつておる。一体いつそういう法令改正なつたのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それについてはいろいろ事情があるでありましようが、詳しいことは、事務当局から御説明いたします。しかし今お示しの点について、不在の点があるとは私は考えておりません。不正の点があれば、私は責任者として十分下僚に対してそのことを取調べた上で処置しなければならぬので、私は今お示しの点については、どういういきさつか存じませんが、不正のかどはないと考えております。いずれ事務当局が来た上、十分御説明申し上げたいと思います。
  7. 下川儀太郎

    下川委員 しかしただいまの建設省設置法との関連は、どういう理由で百万円以上の工事を――これは営繕に眠つておりますが、営繕工事保安庁直轄工事としてやつているのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点につきましては、どういういきさつで行つているかまだ存じませんから、事務当局の方かりお答えいたします。
  9. 下川儀太郎

    下川委員 これは事務当局に聞かなければわからぬということですが、しかしそうした法令がある以上は、やはり保安庁内閣の一省として、当然それに沿うて行かなければならぬ。もし保安庁がそういう法令にそむいてやつに場合は、保安庁長官は一体どのようしお考えでしようか。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今申し上げた通り、これらについてはいろいろ理由があることであろうと思います。その理由については事務当局から御説明申し上げる、こういうことであります。
  11. 下川儀太郎

    下川委員 しかし理由といつても、やはり厳然として国会通つた法令でありまするから、これは当然いかなる理由といえども、国会の承認を経ずして、いわゆる法令を改変するとか、そういう形でなければできないと私は思うのです。内部的な事情においてこれがとられるということは、はなはだけしからぬ、国会無視だと思うが、いかようにお考えでしようか。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点については、やはり法的根拠があつてつたことと考えておりまするから、事務当局の方から十分御説明申し上げます。
  13. 下川儀太郎

    下川委員 それでは事務当局を呼んで十分釈明を求めまするが、それとともにこの直轄工事の中に部隊がやつた工事がある。それを計算して参りますると、約五千六百万円、この厖大数字が各地方部隊あるいは建設部隊工事になつております。これは業者にあらずに部隊それ自体工事をやつておる。そうなつて来ると一体部隊請負あるいは引渡し等々に関して、保安庁とこの部隊工事とどういう関係、どういう方法をとつてやられたか、その点をひとつお伺いしたいのであります。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それもすべて法的根拠に基いてやつていることと考えております。私は詳細のことはわかりませんから、事務当局から十分御説明申し上げたいと思います。
  15. 下川儀太郎

    下川委員 どうも長官は知らぬ存ぜぬで、まあ長官のことでございますから、そう言わざるを得ないでしよう。しかし非常に不可解なのは、先般の防衛論争を聞いておると、いわゆる海外派兵公務員海外出張というように法制局長官が答えた。しかしこの五千六百万円余の部隊がやつた直轄工事、これは当然予算の中に盛られておる。そうするとこの五千六百万円の工事の費用というものは当然国から出ておる。一方においては、この五千六百万円を請負つた部隊それ自体給料というものは、これはやはり国家公務員として政府から出されておる。そうして国家公務員として給料をもらつておる人間が、今度は各地方々々の請負をやつておる。そうすると建設方面において五千六百万円の予算を出しておる。勢いその五千六百万円という金の行方は一体どうなるのか。公務員としてサラリーをもらつておる人間工事をやる場合、当然予算の上に載つた五千六百万円というものをその部隊それ自体受取つたのか、あるいはまた浮いているその金自体を一体どのように使用されたのか、私はその点をひとつ明確にしてほしいと思う。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 事務当局によつてその点は明白に御説明申し上げたいと考えております。
  17. 下川儀太郎

    下川委員 事務当局は一体きようは来ておりませんですか。――先般世田谷地区保安隊用地化反対運動が起きておる。これは元駒沢練兵場の一部約五万九千坪が保安隊用地としてとられたのでありますが、その中に保安庁東京病院が約七億で予算化されている。そのうちの三億五千万円がすでに契約済みになつておる。しかしこの契約済みになつた東京病院工事に対して、この資料の中には調査費も、あるいはまた設計費も全然載つておらない。だんだんこれを調べてみると、この三千五百万円の東京病院設計は、建設省に委託するのが当然なんです。しかし建設省に委託せずして、この設計が全然民間に委託されておる。しか弔建設省にこれを委託する場合は、一切の諸経費を合算して民間の半額に当る。それにもかかわらず、倍の国費使つて、そうして神田の山田守という設計士にこれを委託してあるということがはつきりされておるのでありますが、一体こういう厖大病院設計しあるいは建設する場合は、当然これは建設省に委託しなければならぬにもかかわらず、設計それ自体民間側に委託しておる。これは汚職事件とかあるいは不正なことはないと保安庁長官は言われるけれども、しかしそれならばなぜ国の方が安い、建設省の方が安いのに、どうして民間側にこれの設計をゆだねたか。聞くところによると、民間側の方は設計費が二千万円かかるという。しかし建設省側がこれをやれば一千万円だ。そこに一千万円程度の開きがある。しかもこれは国費でございます。国費関係のない民間側に委託するというところに私は非常に疑問がある。上の方に鎮座ましましておる保安庁長官はこれを御存じないかもしれない。しかしそういうところにやはり疑獄あるいは汚職の問題が私は展開して来ると思うが、いかがでございましようか。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これも詳細については事務当局から説明いたしますが、おそらく建設省あたり設計しておると時期的関係において非常に遅れて間に合わぬというような関係があつたことと私は推察いたします。必ずそこに正当な理由があるものと私は考えております。詳しいことは事務当局から答弁いたさせます。
  19. 下川儀太郎

    下川委員 事務当局が来ないと明確な答弁ができないようでありますから、至急呼んでいただきたいと思います。
  20. 稻村順三

  21. 平井義一

    平井委員 先般防衛庁設置法並び自衛隊法の審議の途上において六人の舞人を望ましているく意見を聴取したのであります。その六人の中の五人までが今日の保安隊ならいざ知らず、自衛隊になればこれは軍隊である、われわれが呼んだ野村元大将、軍事評論家斉藤忠さん、この二人は賛成意味でこれは軍隊なり国が独立すれば自衛ということは絶対必要である、生物の大原則である、その意味から賛成である、また社会党が呼んだ他のお二人は、再軍備反対意味から、防衛隊軍隊なり、こういうことで五人がほとんど自衛隊軍隊なりと確信を持つて述べておる。ただ一人易者が憲法には抵触しない、この程度のものは軍隊でないということを一人言うたのであります。そこで政府といたしましては、今日の自衛隊憲法に抵触する、せぬは学者の意見にゆだねますとして、時期来りなば憲法改正するということを木村長官から総理大臣に進言をして、当委員会において、その時期に到達すれば必ず憲法改正します、こういうて国民を安心させることが私は一番いいと思うが、それについて木村保安庁長官の心構えをお聞きしたいと思います。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。まず第一に先般の公述人が今の保安隊がまさしく軍隊なりと考えるという公述をされたように拝承しております。そこで私が常に申し上げる通り体軍隊とは何ぞやという定義でありますが、外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊をもつて軍隊なりと称するならば、保安隊は別に置きまして、今度の自衛隊外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊でありますから、これは軍隊と称してさしつかえないと考えます。ただ軍隊定義いかんによるのであります。これは世間一般軍隊と称して私は何らさしつかえないと考えております。  そこで憲法改正の問題でありまするが、憲法改正、これは申すまでもなく最後には国民がきめるべき問題であります。政府といたしましても、われわれはいずれかの時期において憲法改正されるべきものであろうという考えを持つております。従いまして自由党内においてもこの憲法改正調査委員会を設けられ、あるいは改進党においても設けられておるようにわれわれは考えておるのであります。ただその憲法改正の時期というものはいずれにおくかということについては、これはなかなかむずかしい問題考えおります。今後日本が国連に参加するような場合を予想いたしましても、あるいは憲法改正問題が当然これに付随的に起る問題であろうと考えております。われわれといたしましては、憲法改正の時期は今日はつきり申し上げることはできませんが、それについての調査研究というものはあらかじめなすことが必要であろうと思います。ただ申し上げるまでもなく憲法改正は九条に関する問題ばかりでなく、各面についてわれわれは十分これを検討して行かなければならぬ、こう考えておる次第であります。
  23. 平井義一

    平井委員 大体長官の気持もわかりましたが、自衛ということが生物の本能であり大原則であるとするならば、自衛のために憲法改正する、人間が死んでしまつた憲法が何ぼりつぱな憲法でもだめです。生きるための憲法でありますから、生きて行く上において、あるいは一国が独立を守る上において自衛が絶対必要であるとするなれば、私は憲法改正することは改進党が言うがごとく問題でないと思う。憲法調査会などで研究する必要はない。自衛の上においてこの憲法は芳ばしくない、われわれが生きて行く上において今日の新憲法は問題にならぬということになれば、憲法をかえる以外に手がない。それはもちろん国民に聞かなければならぬのでありますけれども、国民の大多数は、今日の憲法はやはりかえなきやなるまいと考えておると私は思うのでありますから、木村長官においては、憲法改正することに躊躇はいらぬと実は私は考える。国民の中には何人かりつぱな憲法だ、いい憲法アメリカはつくつてくれたと言つて喜ぶ人もありましようけれども、私は全体とは申し上げません、大部分はこの憲法には納得の行かぬ点があろう、もちろん日本を根こそぎに片づけようと思つてつくつた憲法でありますから、日本を殺そうとしてつくつた憲法だから、なかなかこれは嘉うくつな憲法ということはわかつておる。しかし一方国民の一部から見たら非常に都合のいい憲法かもしれぬ。そこで私は躊躇はいらぬと思うのでありますが、総理にしても副総理にしてもなかなか説明がはつきりしておらぬのです。つつ込まれればいつかかえましよう、つつ込まわなければ今日憲法改正せぬでもいい、こういうふうに言われておるが、この自衛の任に当るところの最高責任者である木村長官は、こういう憲法はすみやかにかえるべしと思われるか、まあうやむやにずつて行こうとされるのか、私は改進党にしても社会党にしてもいいことはいいと思う。これが真の自由主義であると私は思う。悪いことは自由党の中で叫んでも悪いのです。いいことはいいということで、もう何党が言うたから困るとか、どんな思想を持つた人が言うたからいかぬとかいうことでなく、木村長官は、私は大村益次郎とまでは言いませんけれども(笑声)やはり何十年後かあるいは何百年後には、国の柱として木村長官は立てられるかもしれない。われわれはそれを願つておりますが、木村長官信念をもう一ぺんお聞きしたい。  もう一つは、御承知のごとく今日の社会というものは国が独立して、一国は一国で守らなければならぬけれども、大きな意味集団保障というものを必要としている。幾ら日本独立したからといつて、経済的に、あるいは人口問題にせよ、日本だけで生きて行けない。しからばアメリカだけで生きて行けるか、あるいはインドネシアだけで生きて行けるか、あるいはフイリピンだけで生きて行けるか、これもできない。相互に助け合つて生きて行かなければならぬように世界は進んでいる。ソ連アメリカが仲よくしてくれれば、なお世界はいいのでありますけれども、この二つ世界において、ソ連に関する国とアメリカに関する国は、ともに手をつないで生きて行かなければならぬとしているのでありますから、日本独立に対するところの自衛のために集団保障を必要とし、日本が生きるためにはどうしても自由諸国と手を握つて行くのは、これは決して私はアメリカの家来になつたとかなんとかいうことじやないと思う。日本をほんとうにりつぱな平和な国にするという、即自由諸国と手を握ることであると思いますから、この集団保障という点において、日本がこれらの自由諸国と手をつないで、経済的にもあるいはいかなる点においてもともに行動するということは、私は決して自衛の範囲を飛び越した話じやない、やはり自衛である、こう実は考える。何かアメリカと手を握れば、アメリカ軍隊の手先になつて日本海外に出るようなことを言う人もありますけれども、それとこれとは私は違うと思う。日本が生きて行く上において提携をしているのでありますから、これは決してさしつかえないと思うが、この点木村長官はどう思われるか。また今日の原子爆弾世界は非常に心配している。水爆あるいはコバルト爆弾、これに対して人類は恐怖の念を抱いているが、この爆弾ができることによつて、ますます世界は平和になると思われるか、あるいはこのできることによつて二つ世界が衝突する機会が早くなると思うか、どう長官は思うか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。まず人類はいかなるものといえども、平和を望まないものはないと考えております。われわれも世界の平和を望むのであります。これは人間の悲願でありましよう。そこで現下の情勢において、さような平和を求め得るやいなやということになりますと、これは私は大きな疑問であろうと考えます。要するに、これは私見でありますが、ソビエト世界赤化政策を放棄しない限りにおいては、私は平和を招来することは不可能であろうと考えております。これが先決問題であると思う。そこでわれわれといたしましては、このソビエト世界赤化政策に対してどう対処するかということが、自由国家群としての最も大きな課題であります。これに対してはわれわれといたしましては、自由国家群の一員となつて対処して行く。日本アメリカとの間に相互安全保障条約を締結したのも、まつたくその意図に出でたるものにほかならぬと私は考えております。そこで日本アメリカとの間に相互安全保障条約を結んだという以上は、これに対してわれわれは十分寄与しなければならぬのであります。この条約を結んだからといつて、決してアメリカ従属国なつたわけでもありません。日本は独自の見解から、これを結ぶことによつて日本自衛を全うするのだという見解のもとに結んでおるのであります。決してアメリカ従属国なつたわけでもございません。対等の独立国家としてわれわれはこれを締結いたしているのであります。そこを私は国民が誤解のないように願いたいのであります。しこうして世間往々にして、アメリカ駐留軍日本に滞留することが、日本は何か独立を汚されたように考えておる向きもあるやに承るのでありますが、これは私は偏見と思つております。アメリカも好んで日本駐留しているわけではありません。日本防衛が即アジアの平和に通じ、アジアの平和は世界の平和に通ずるのであります。日本防衛の目的がそこにある以上は、日本アメリカ駐留によつて独立を汚されるというようなことは、全然ないはずと私は考えております。しかし日本といたしましては、ぜひとも国力を回復して、アメリカ駐留軍漸次引揚げんことをわれわれは期待いたしております。さればといつて日本は独力でもつて日本自衛を全うし得るかということになると、なかなか困難である。やはり今仰せなつたように、自由国家群と互いに手をつなぎ、いわゆる集団保障によつて日本自衛を全うして行くということは当然のことであろうと考えております。現在世界において、みずからの力によつてみずからの国を守り得る態勢を整えているのは、おそらくソビエトアメリカと二国より私はなかろうかと考えております。日本がこの小国でみずからの手によつてみずからを守る態勢を整えるということは、なかなか困難であります。さようなことは私は当分の間あり得ないと考えております。しからば今仰せなつたような、集団的に日本自衛の道を講ずるよりほかなかろうかと考えている次第であります。
  25. 平井義一

    平井委員 もう一点長官にお伺いいたしますが、今日世界ソ連アメリカ以外には、戦争する力のないことは全国民の知つているところであります。水爆あるいは原爆の今日において、日本戦争能力のないことは、これは全国民が知つているところであります。何百年たつて日本戦争などはできないということも、われわれは知つております。しからば日本自衛隊などはいらぬではないか、戦争がでさぬような日本ならばいらぬし、水爆の時代ならば、おもちやのような軍隊をつくつてもしようがないじやないか、こういう議論をする人もいろいろおるのであります。私どもは、自衛は一国が独立したならば当然なすべき義務であると思つて、この法案賛成をいたしているのでありますが、自衛隊、のものが婦女子を守る唯一の義務である、こう私は考えている。しかし今日の日本婦人は、あげて自衛隊に反対している。戦争中は防空演習をやると、日本婦人会というものは、バケツを持つて防空演習をさかんにやつた防空演習中に、われわれが散歩していると、国賊みたいに日本婦人会から言われたものであります。今度戦争に負けたら、絶対兵隊をつくるな、再軍備反対を唱えているのも婦人会でありますけれども、この婦人やあるいは子供を守るのが私は自衛隊本分であると思う。もし今日の自衛隊がいらんとするならば、たとえば人間は百年とは生きないのであるから勉強もすることはいらぬ、仕事もすることはいらぬ、医者もいらぬ、薬もいらぬというようなものである。どつち道人間はどんなりつぱな博士に見せても百年は生きません。しからば何にもいらぬ。それじや人間は勉強する必要もない、大学へ行く必要もありません。しかし人間は生きておる以上は後世のために何とかして道を開きたい。万物の霊長として死ぬるまで努力をし、りつぱに社会に貢献したいというのが私は人間本分であろうと思う。今日の自衛隊婦女子を守るためにつくろうとしておるのに、婦女子はきらつておる。戦争ではないサれども、もしも敬国争ら受入されたような場合には、まず婦女子を守るためにこの防衛隊というものがおるのである、こうお考えになるかどうか、木村長官にお尋ねを申し上げます。この自衛隊婦女子のためにつくるという信念長官はかわりはないかどうか。しからば日本婦人会長官はひとつ説明していただきたい。この点いかですか。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。自衛隊戦争防止の役割を果すものであろうと私は考えております。戦争をするためではありません。これによつてわれわれは日本の国を守って行くが、決してみずから進んで戦いをするなんというような考えは毛頭もありません。それで自衛隊というのは、結局日本自衛のために日本外部からの侵略に対処する。要するに日本国民生命財産を守るためである。一婦女子のためではありません。全日本国民のためにこれは設けられるもの、私はこう考えております。ここにおいて私は現在の保安隊から進んで自衛隊外部からの直接侵略に対処してわが国の安全を期そうということに任務、性格を持たせたことははつきりわかるわけであります。水爆、原爆の時代において自衛隊のようなものは用をなさぬじやないかという議論が一部にありますが、これはまことに行き過ぎだ。飛躍的の議論であろうと私は考えます。水爆、原爆によつて世界戦争にさらに巻き込まれるかどうかという問題に対しては、私は逆にこれによつてむしろ戦争防止の役割を果すのじやないかとひそかに考えておるのであります。しかし私は水爆、原爆は用いられるような時期がないと考えますが、しからば外部からの侵略がないかと申し上げると、私は決してさような安心はできぬと考えております。やはり外部からの侵略に対してはいずれの場合においても用意しておかなければならぬのであります。殷鑑遠からずであります。そこでわれわれはできる限りにおい日本外部からの侵略に対処し得ることをふだんから考慮する必要があろうということを考えておるのであります。このたびの自衛隊法において自衛隊を設置するというのも、いわゆる不時の外部からの侵略、あるいはこれに呼応する間接侵略に対処する、この意図をもつてつて行かなければならぬのであります。要するに日本国民全般の生命財産を守ろうという目的にほかならぬ、こう考えております。
  27. 平井義一

    平井委員 最後に一点お伺いいたします。今後防衛隊員を教育する上において精神訓練が必要であるということは、アメリカでも今日行われておるところであります。しからば精神訓練とはどういうことをやるか。昔のように非常に厳罰に処し、あるいは厳格に、むしろそれ以上にきびしく教育することが精神訓練であるかどうか。世界人類は平和を求めておる、すなわち理想に向つてつておる。それは終局においては人類の平和であります。戦争のない世界をつくりたい。ソ連アメリカも同様であると思う。その行き方がちよつと違うだけであります。その理想に向つて行く上においてはまことの一点であると私は思う。このまことということはソ連アメリカ日本もあるいは全世界国民に通ずることであると思うのであります。いいことならばソ連が見てもアメリカが見てもいいことである。このまことということに徹しなければならぬのであります。しからばそのまことということはどういうことがまことであるか。このまことを求めることにおいて意見は非常に食い違つておるが、まことということはすなわち人間が正しく生きて行くことであります。ソ連の言う理想あるいはアメリカの言うがごとき理想ならば、あるいはマホメットとかイエスキリストとか、釈迦とか、日本においては親鸞、法然、日蓮のごとき人ならばこれはけんかのない世界が生れることであろう。ものがなければ食わんでおろうというガンジーの気持ならば――。しかしそういうわけにはいかない。人間は欲がある。戦争は何から始まつたかと聞かれたならば、色と欲ということは定義であります。色と欲から昔の戦争は始まつておる。今もその通りである。そこで欲も得も捨ててほんとうに正しい神仏のごとき気持になつて行きたいと思うのが人間の理想であります。しかしなかなか凡夫というものはそうはなれない。なれないけれども、せめて自衛隊員はまことの道に徹するように行くことが――やはり長官以下幹部が口で言うてもつまらぬ。筆で言うてもつまらぬ。無言のうちにまことの道を教えて、そうして日本というものはこうなくてはならぬ。こう進まなければならぬ。これをそのまことの道を教えるために昔は軍隊で訓練しておつた。それが少し曲つただけであります。日清、日露のときの兵隊ならば間違いがなかつた。しかし軍人でも政治家でもあまりのぼせてはいかぬのです。のぼせないようにほんとうに人間の道を歩かせるということにおいて、長官ならば日常の生活でおそらく隊員は、よくなると思いますけれども、全隊員と一緒に寝泊りするわけにいかぬのでありますから、このまことの道を徹しさせるには長官はどういう方法をおとりになるか。そうして全日本人から、来るべき防衛隊員は非常にりつぱである。防衛隊員ならばお嫁にやろうか、これは何としても模範的青年である、こういうふうに言われなければ、実際親しみはないのであります。また守れない。外敵が侵入した場合においても信頼できない防衛隊ならば守り得ない。そこでそういうりつぱな青年を育てるのには、どういうことが一番いいと思うか、それは気にいらないものもいるでしよう。あなたの信念通りやることについては、気にいらぬ人もありましようけれども、真にりつぱな日本人をつくるためには、気にいらぬ人間に遠慮をしておつてはできませんから、おれはこういう方法でやつて行くのだという信念を聞かせていただいて、本日はこれで私の質疑を打切ります。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたしますしまことについての御意見を承りました。古人はまことは天の道なりと申しております。まことは私は人間のほんとうの道徳的中心点と考えております。そこで今後自衛隊の教育方針をどこに置くか、いわゆるまことの心を持つてわれわれは日本の国の自由と安全を守るのだ、この気魂と自覚を私は持たせたいと思います。人間に一番必要なことは、縁の下の力持ちになることであろうと私は思つております。とにかく人は自分だけいい子になつて、自分の出世、名誉を求めることに汲々とする、この心を捨てなければならない。私は、自衛隊員たる者はよろしく日本国民のために縁の下の力持ちたれ、黙々としてわれわれの任務にはせ参ぜよ、こういうことを常に申しておるのであります。そして私は、自衛隊員は将来決して上からこうしろ、ああしろという昔の命令的の押しつけた教育ではいけないと考えております。盛り上る自覚であります。われわれこそはほんとうにこういう任務を与えられておるのである、その任務にはせ参ずるのだという心からの目覚を持たなければならぬと考えております。日本国民のために縁の下の力持ちとなつてとうとき任務を与えられておる、任務をわれわれは実践に移すのだという気構えを常に持つように私は望んでおるのであります。それと同時に今お詰になりましたように、自衛隊員は国民の信頼と親愛を得なければならぬ。それにはどうしても一個の社会人として十分な教養を積んで、少くともたよりになる人であるということを思わせるような人柄になつてもらいたい。これについてはいろいろの行き方もありましようが、われわれは上下床となり、互いに手をとり合つて進みたい、こう考えておるのであります。要は自衛隊員たる自覚と、抱負を持つ、こういうことに私は教育の主眼を置いておる次第でございます。
  29. 下川儀太郎

    下川委員 議事進行……。先ほどの私の質疑に対して、まだ当局が十分同意しておらぬようでありまするので、次会にゆつくり質問いたしますから、きようは保留いたします。
  30. 川島金次

    ○川島(金)委員 議事進行……。先ほど下川君が述べられました質問の資料として持参しておられるものを拝見いたしたのですが、下川君の質問の通り、この資料はきわめて参考になるはもちろん、重要な資料だとわれわれは感じました。すなわち昭和二十八年度の保安庁直轄工事契約の一覧表、昭和二十九年三月三十一日現在のものと、同じく保安庁の昭和二十八年度委託工事契約一覧表、昭和二十九年三月三十一日現在、この二つ資料を、下川君に対する政府側からの答弁に先だちまして、本委員会の全員に配付されるよう、委員長においてお手配をお願いいたします。
  31. 稻村順三

    稻村委員長 今川島君の議事進行に関する発言を通じての資料の要求は、もつとものことだと存じますので、至急さようにお手配くださらんことを要求いたします。  本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします本日はこれにて散会いたします。     午後零時十五分散会