○
松前委員 非常に抽象的な御答弁でありまして、私の考えとは大分隔た
つております。要するに問題は、直接侵略は
——朝鮮の問題は南北のいわゆる民族解放という
目標に向
つて進んでおる戦争であ
つて、それを中共と
アメリカとがしり押しをした。インドシナは植民地解放と民族解放の二つでな
つていると思うのであります。こういうイデオロギーで同じ民族内においてやられておるものでありまして、直接侵略は私は起り得ない、もしそれが起つた場合には、
アメリカの援助等によりまして、
日本との共同作戦で戦おうとするならば原子力戦になる、原子力戦は起らないとおつしやるから、それならば戦争は起らぬ、すなわち直接侵略の問題に対しては考える必要はないではないか、そうしてわれわれはむしろ国内における間接侵略の問題についてここに準備をしておけばよろしいではないか、こういうような考え方を持つものであります。
でありまするから、今度は先ほどの国内における秩序の問題、すなわち間接侵略の問題についてお伺いしたいと思うのでありまするが、この間接侵略に対して多少の準備をするということに対して、私
どもは否定はしないのであります。けれ
ども、問題の中心は、いわゆろ国民生活の不安定の中に間接侵略は起り得るものであります。そうしてソ連が今までと
つて来た世界政策の中で最も注意しなければならない問題は、アジアにおける民族解放の動きの中にあの鉄の力ーテンを前進せしめたということが一つであると思います。第二の歴史的段階は、第二次世界大戦を経過いたしまして新しい段階に入
つておると思われるのであります。それは何であるかというと、平和攻勢という言葉で代表されております、いわゆる
アメリカが朝鮮やあるいはその他の地域に対しまして、世界戦争に発展するかもしれないという予想のもとに準備をしておつたところの
アメリカの経済を、いわゆる軍需工業にすべて動員いたしまして、そうして全力をあげて軍需品の生産に当
つておつたということは御承知の通りであります。この軍需品の生産に対しまして、ある程度、これが相当な生産力を持ち、相当な惰性を持
つて来たときに、土俵ぎわでうつちやりをくわせる、平和攻勢をやることによ
つてアメリカの資本主義経済を混乱に陥れる、そうしてつくつた軍需品の行き場所をどこに求めて、いいかわからなくさせる、すなわち
アメリカを不景気に陥れる、生産の転換をやらなくちやいかぬ、こういうようなことによ
つて新しい攻勢が起
つておると思うのであります。でありまするから、直接侵略によ
つて鉄砲やちやちなものでも
つて日本をやつつけに来るというようなローカルな現象は起り得ない、むしろもつと大きな全人類的な手をここに打
つておると見なければならないと思うのであります。すなわちこのような
アメリカの経済の混乱に乗じまして、そうして
アメリカの資本主義経済の混乱を通じまして、ここに
日本などにその影響力が与えられて参りまして、その影響力によ
つて日本のいわゆる間接侵略と申しまするか、
日本の経済が不安定になり、それでがちやがちやになりまして、その中に国民生活が混乱して、ここに
暴力革命の温床が起る、こういう作戦がほんとうのソ連の現在考えておる手であると同時に、彼らのと
つて来たいわゆる経済史観の中の最後の歴史の道をたど
つておる道であると私は思うのであります。この意味におきましていわゆる間接侵略に対する多少の準備は必要ではありましようけれ
ども、しかし根本問題は直接侵略の問題よりも、まずも
つて国内経済、国民生活の安定、ここにまことの侵略への備えがある、このような考え方を持つのでありまするが、
長官の御意見を承りたいと思います。