運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-04-09 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月九日(金曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君    理事 平井 義一君 理事 高瀬  傳君    理事 下川儀太郎君 理事 鈴木 義男君       大久保武雄君    永田 良吉君       船田  中君    山崎  巖君       須磨彌吉郎君    粟山  博君     早稻田柳右エ門君    飛鳥田一雄君       田中 稔男君    中村 高一君       松前 重義君    中村 梅吉君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         外務政務次官  小滝  彬君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ————————————— 四月七日  委員山本正一辞任につき、その補欠として生  田宏一君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員生田宏一辞任につき、その補欠として山  本正一君が議長指名委員に選任された。 同月九日  山本正一君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     —————————————
  2. 稻村順三

    稻村委員長 これより開会いたします。  本日の議事に入ります前にお諮りいたします。理事でありました山本正一君が去る七日委員辞任され、昨八日再び委員に選任せられました。つきましては、山本正一君を再び理事に選任いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稻村順三

    稻村委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  4. 稻村順三

    稻村委員長 それではこれより防衛庁設置法案及び自衛隊法案の両案を一括議題とし質疑を続行いたします。松前重義君。
  5. 松前重義

    松前委員 私は事務当局の方からでけつこうでありますが、最初に自衛隊法案につきまして、その次に防衛庁設置法案につきまして質問いたしたいと思います。その質問に対しましては、一応この条文に従つて質問いたしますので、簡潔にお答え願いたいと思います。それが済みましてから総括的に質問をいたしたいと思うのであります。  自衛隊法案の第十条の3、これに「管区隊は、管区総監部及び連隊その他の直轄部隊から成る。」こういうことを書いてありますが、この連隊とか直轄部隊とかいうようなものの編成につきまして、簡単にお答えを願いたいと思います。
  6. 加藤陽三

    加藤政府委員 私からお答え申し上げます。管区隊には管区総監部のほか、普通科連隊それから特科連隊及び直轄部隊そのほか施設大隊衛生大隊補給中隊武器中隊通信中隊偵察中隊、こういうようなものからなつております。
  7. 松前重義

    松前委員 この普通科特科施設補給その他の部隊でありますが、大体普通科特科施設が中心になる思うのでありますが、これらの装備について簡単に御説明を願いたいと思います。
  8. 増原恵吉

    増原政府委員 普通科連隊連隊本部のほかに大隊が三つからなつております。特科の方は連隊本部のほかに大隊は五つが一般であります。装備の表を実はきよう持つてつておりませんので、後ほど資料として差上げろようにしたいと思います。
  9. 松前重義

    松前委員 大体のところは御説明願えるだろうと思うのですが、大体でようございますから、御説明願いたい。
  10. 増原恵吉

    増原政府委員 小銃その他を何ちよう持つておるということはちよつと今申し上げかねるのでありますが、普通科連隊で持つておりますものはいわゆる小銃であるカービン銃、ライフル銃、それからこれは日本のものでありますが、九九式の小銃自動小銃、軽機関銃、重機関銃、ロケツト・ランチユア、いわゆるバズーカ、迫撃砲そういうものを普通科部隊で持つておりまして、特科は百五ミリ、百五十五ミリの榴弾砲、これは一個中隊に今は六門持つておりますが、そういうものが主たるものであります。
  11. 松前重義

    松前委員 施設部隊はどういう装備でしようか。
  12. 増原恵吉

    増原政府委員 施設部隊は相当の重器材を持つております。たとえばブルトーザー、グレーダーレツカーダンプー・カー等、もとより普通の二トン半トラツクも持つております。これは六輪駆動のものを主として装備しております。そのほかぺーリー橋、あるいは浮嚢橋等の資材を持つております。
  13. 松前重義

    松前委員 昔のいわゆる戦車、今は特車と言つておりますが、あれは特科の中にはないのですか。
  14. 増原恵吉

    増原政府委員 何といいますか、軽戦車というべきものが、普通科連隊偵察中隊にあります。そのほかは方面隊直轄特車群戦車を持つております。普通管区隊普通科連隊特車隊に持つております。  なお続いて御説明申し上げます。保安隊装備品の主要なるものとしては、これは一管区隊ごとにわけてありませんが、全体として自動拳銃が九千五百、カービン、いわゆる騎銃が七万三百、小銃が二万二千三百、自動小銃三千、短機関銃千六百、軽機関銃八百、重機関銃千五百、四十ミリ高射機関銃二十、二・三六インチのロケツト発射筒五千、三・五インチのもの三百四十、五十七ミリの無反動砲が十、七十五ミリの無反動砲が十、六十ミリ迫撃砲が三百八十、八十一ミリ迫撃砲が四百七十、七十五ミリ榴弾砲が四十五、百五ミリ榴弾砲が五十七、百五十五ミリが七十、八インチ榴弾砲が二十七、百五十五ミリの砲、いわゆるカノンが十二、ハーフ・トラツク、これは高射機関銃を持つておりますが四百、特車、軽中合わせまして三百四十、軽飛行機五十、以上であります。これは後ほど印刷物として差上げます。
  15. 松前重義

    松前委員 そのほかレーダー等地上施設はありませんか。そういう部隊通信部隊に入つておるのですか。
  16. 増原恵吉

    増原政府委員 通信器材としては御質問外でありますが、野外無線機が購入貸与合わせまして六十二。なお先ほど申し上げたものはみな貸与であります。それから車載無線機千二百六十、野外電話機が八千七百八十余りであります。現在はレーダーは陸においてはまだ持つておりません。
  17. 松前重義

    松前委員 レーダーは当然ある程度必要だと思つて、このような自衛隊をおつくりになると思うのであります。そうであるならば当然必要になるだろうと思うのですが、これはアメリカのものをお使いになるおつもりですか、それともアメリカのごやつかいになつて、その情報によつて作戦その他をおやりになるおつもりですか。
  18. 増原恵吉

    増原政府委員 レーダーにつきましては、現在さしあたり考えられますものは、高射砲に付随するレーダー沿岸等に配置するレーダーがあります。レーダーを付随する高射砲は、そうした大体九十ミリ以上の高射砲になりますが、一そろいとして貸与を受ける期待をいたしておりまして、十分見込みを持つておるわけであります。これが参りますと、これを操作をするようになります。沿岸等に配置するレーダーは、二十九年度予算で千五百名の制服隊員をお願いして予算は通過したわけでありますが、法案で人員の増加をお願いしてあるわけであります。これをもつて二十九年度からレーダー操作を始めて行くようにしたい、こういう予定であります。
  19. 松前重義

    松前委員 次に、三十八条に移ります。三十八条の第四号に「日本国憲法又はその下に成立した政府暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」とありますが、このうちで「政府暴力で破壊することを主張する政党」というのは何であるか、「その他の団体」とは何であるか、これを御説明願いたいと思います。
  20. 加藤陽三

    加藤政府委員 この三十八条の規定は、一般職につきましての国家公務員法規定してあります事項と同じことを規定してあるのでありまして、第四号につきましては「日本国憲法又はその下に成立した政府暴力で破壊することを主張する政党その他の団体」、こういうふうに解しております。「その他の団体」とありますのは政党以外の団体というふうに解釈いたしております。
  21. 松前重義

    松前委員 具体的にはたとえばどういう政党団体でありますか。
  22. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは政府の権限のある機関で認定するものでありますけれども、ただいまのところ具体的な団体等については承知いたしておりません。
  23. 松前重義

    松前委員 その次には六十一条であります。六十一条の第一項の「隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、政令で定める政治的行為をしてはならない。」という中で、政治的行為というのはどういうふうに政令でお定めになるつもりであるが伺いたいのであります。
  24. 加藤陽三

    加藤政府委員 これも国家公務員法の第百二条に平仄を合せて規定した条項でございまして、この「政令で定める政治的行為」とありますのは、一般職国家公務員につきましては人事院規則の十四の七というのできめておるのであります。私どもの方の職員一般職職員でありませんので人事院規則適用がありませんから、特に人事院規則にかわるべきものとして政令で定めるという建前をとつております。今具体的に考えておりますことは、保安庁施行令の第六十五条に規定しておるようなことであります。
  25. 松前重義

    松前委員 この政治的行為の問題については、あと罰則を設けてあるようでありますが、それと関連性があるのか、もし関連性があるとするならば、人事院規則とは別個なものでなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  26. 加藤陽三

    加藤政府委員 この条項違反に対する罰則関係は、国家公務員法におけると同様に考えております。
  27. 松前重義

    松前委員 一応伺うだけ伺つてあとで申し上げることにして、次には予備自衛官、この予備自衛官につきましては政治的行為は自由でありますか。別に規定もないようでありますので、多分自由であるかとも思われるのですが、いかがですか。
  28. 加藤陽三

    加藤政府委員 予備自衛官に関する政治的行為の点につきましては、第七十五条に書いてあるのでありまして、第七十五条の第一項におきまして、第六十一条の規定予備自衛官には適用しないとしております。但し同項に但書がございまして、「但し、第六十一条第一項の規定は、第七十一条第一項の規定による訓練招集命令により招集されている予備自衛官については、適用があるものとする。」すなわち一般的には予備自衛官には政治的行為制限規定適用されないのでありますが、その者が訓練招集命令を受けまして、訓練のため自衛隊部隊に入つております間は、六十一条の第一項の規定適用する、こういう趣旨であります。
  29. 松前重義

    松前委員 その次は六十八条の第三項、その一番最後のところに「一年以の期間を限り、その者の任用期間を延長することができる。」と書いてあります。この一年以内の期間限つてその者の任用期間を延長するということは、これは強制的に延長されるのであるか、本人の希望によつて延長されるのであるか、このことを伺いたい。
  30. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは前会増原次長からもお答えがありました通り、特に自衛隊の任務の遂行に重大な支障を及ぼすと認めますときに、一年以内の期間を限りまして、その者の意思にかかわらず任用期間を延長するという趣旨でございます。
  31. 松前重義

    松前委員 この規定は、場合によつて憲法第二十二条の職業の自由という条章に抵触するおそれがあると思うのでありますが、いかがでありますか。
  32. 加藤陽三

    加藤政府委員 これも前会増原次長から御説明があつたのでございますが、私ども憲法違反とは考えておりません。公共の福祉のためにする制限憲法も認めておるところでありまして、たとえば船員法に、何条でありましたか忘れましたけれども船員任用期間が満了する際におきまして、たまたま外国の港を航海中であるというふうな場合におきましては、当然その任用期間をある程度延長するということがあるのでありまして、自衛隊はこういうふうな必要な場合に行動するために設けられておるものでありますから、かような規定を置くことは憲法違反ではない。また予備自衛官はこういう条件を承知した上で予備自衛官になるのでありますから、そういう点から申し上げまして、憲法に抵触しない、かように考えております。
  33. 松前重義

    松前委員 第百条「長官は、自衛隊訓練目的に適合する場合には、国、地方公共団体その他政令で定めるものの土木工事通信工事その他政令で定める事業施行委託を受け、及びこれを実施することができる。」このことを伺いたい。そうして、その第二項には「前項の事業の受託に関し必要な事項は、政令で定める。」要するにこの項では、自衛隊訓練目的に適合する場合においてのみ、国あるいは地方公共団体のしかるべき工事に対して、その委託を受けて実施する、こういうことであり、その内容政令で定める、こういうふうに書いてありまするが、これらの工事目的自衛隊訓練目的に適合する場合に限つてのみおやりになるのであつて、国として必要な場合においては土木工事通信工事、その他の工事をやる、このようには書いてないのでありますが、これは狭義に解釈して、自衛隊訓練目的だけを目標としておやりになるのであるかどうかを伺いたいと思うのであります。
  34. 増原恵吉

    増原政府委員 これは解釈の問題としましては、現在必ずしも狭義に解釈するという方針を長官としてはとつておりませんで、訓練目的を阻害しない場合は、というふうなつもりで長官としては運用をいたしたいと考えておるわけであります。但し自衛隊はそれぞれの訓練計画を持ちまして、どの期間どの期間をもつて一応どの程度の訓練目標を達成するという目途をもつて国のためにやつておりますので、その計画を全然達成できないような形において、こうした事業を引受けるわけには参らないのであります。従いましてこの「目的に適合する」というのは、きわめて狭義に解釈するという趣旨長官としてはとつておらないわけであります。
  35. 松前重義

    松前委員 百一条について伺います。「自衛隊海上保安庁航空保安事務所気象官署地理調査所日本国有鉄道及び日本電信電話公社(以下本条中「海上保安庁等」という。」は、相互に常に緊密な連絡を保たなければならない。」、これは何か委員会か、あるいはまた何らかの常置機関——機関と申しますか、そのような会議体のようなものを設置して、それによつて運営して行こうとされるのかどうかを伺いたいと思います。
  36. 増原恵吉

    増原政府委員 ただいまのところ、特に常設の会議体のようなものを持つというふうには考えておりませんで、時々密接な連絡を保つということで参りたいと考えております。
  37. 松前重義

    松前委員 密接な連絡は当然のことだろうと思いますが、一応書いてありますから異議をはさむものではありません。  百十二条の「電波法第百四条の規定にかかわらず、同法の規定のうち、無線局の免許及び検査並びに無線従事者に関するものは、自衛隊がそのレーダー及び移動体無線設備を使用する場合については、適用しない。」、すなわち電波法百四条の規定がどうであつても、自衛隊レーダー及び移動無線などに対しては、これを適用しない、こういうふうに書いてありまするが、電波監理局の方はおいでになりませんか。——これは電波監理局との話合いはどういうふうになつておるのでありましようか。
  38. 加藤陽三

    加藤政府委員 この法律の作成につきましては、電波監理局の方とも十分な話合い済みでございます。規定内容といたしましては、現在の保安庁法におきまして、移動無線局については、すでにこの百四条の規定にかかわらず適用しないということをきめておりますので、今回はさらに固定のレーダーにつきましても、電波法適用除外を追加いたしたい。これは先ほども増原次長から御答弁がありましたが、レーダー関係設備が加わりますにつれまして改正追加いたしたいと思うのであります。
  39. 松前重義

    松前委員 第九章の罰則、百十八条、百十九条に書いてあります。内容は読み上げません。このような罰則が設けられてありますが、このようないわゆる秘密を漏らした者とか、違反した者とか、こういうふうな行為に対してこれを認定する機関、しかるべき軍法会議というようなものが昔はありましたが、こういう具体的な何らかの機関をお持ちになるつもりであるかどうか、伺いたいと思います。
  40. 増原恵吉

    増原政府委員 これらの罰則は、すべて他の罰則の捜査、訴追、裁判等と同様でありまして、通常刑事訴訟法に従いまして訴追され、裁判によつて裁判をされる。保安庁にこのためにいわゆる軍法会議式のものを設けるという趣旨は持つておりません。
  41. 松前重義

    松前委員 次は日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、これはこの委員会にかかつておらぬかと思いますけれども内容について関連しておりますから伺いたいと思います。その第一条の第三項に「この法律において「防衛秘密」とは、左に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画又は物件で、公になつていないものをいう。」と書いてあります。「公になつていない」ということはどういうことでありましようか。これは非常に重大なところでありまして、この範囲を明確にしなければ非常に迷惑をする者がたくさん出て来ると思いますから、承つておきたいと思います。
  42. 増原恵吉

    増原政府委員 「公になつていない」と申しますのは、一般的に言いますと、通常の概念で御判定を願うほかないのでありますが、不特定多数の者に知られておる場合には公になつておる。業務上こういう秘密を知る地位にあります者が相当多数これを知つてつても、これは公になつておるとは申せませんが、不特定多数の者に知れわたつておる場合には、公になつておるということになります。そうしてこれはこの条文だけではありません。他の条文関係をいたしますが、公になつているということは、それが正当な手段によつて公になつておる場合のみでなく、違法、不当の手段によつて公になりましてもこの場合防衛秘密とは言わないという建前で、この「公になつていない」という言葉を入れておるわけであります。公の認定は、不特定多数の者に知れ渡つていないということでありまして、通常健全な常識によつて判断するほかはないかと思います。そうしてこの防衛秘密保護しまするための措置としましては、第二条に「防衛秘密を取り扱う国の行政機関の長は、政令で定めるところにより、防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密保護上必要な措置を講ずるものとする。」ということで、秘密でないものは秘密でないという措置をとるように法律において規定を置いておるわけであります。
  43. 松前重義

    松前委員 たとえばアメリカにおいて雑誌その他に出て、日本では雑誌なんかに出ていない。こういうような場合、たとえば武器の科学的な秘密というようなものは、これは公になつておると断定されるのでありますか、なつていないと断定されますか。
  44. 増原恵吉

    増原政府委員 アメリカ雑誌においてそういう公になつておりますものは、この法律におきましては公になつているものであります。
  45. 松前重義

    松前委員 次にはやはり第三項の一のイに「構造または性能」と書いてあります。性能というものは非常に範囲が広いのでありますが、性能というものはどういうものであるか。それから二の項目で「品目及び数量」と書いてある。品目の名前を知つているということもまた秘密漏洩になるか、こういう内容について御説明願いたいと思います。何となれば、「構造又は性能」と書いてありますが、この性能というものは非常に広汎なものでありますから、こうなると学者などは論文一つ書けなくなつてしまうおそれがある。論文を書いたら必ず秘密保護法でやられる、こういうことに相なるのであります。品目の問題また同じであります。こういう点について御説明を願いたい。
  46. 増原恵吉

    増原政府委員 性能というのはいわゆる性能でありまして、能力というふうにも見ていいと思うのでありますが、一例を砲にとつて言いますならば、初速が何千メートルで有効射程が何千メートルであるというふうなもの、これは一つの性能に相なるわけであります。しかしこれは構造または性能で公になつていないもの、すなわち秘密とすることを必要として秘匿する措置を講じていないものは、この秘密には該当いたさないわけであります。およそアメリカからMSA協定船舶貸借協定で借りたもの全部の構造性能というわけでございませんので、そのうちで国の安全あるいは国の防衛のために必要なものというものを、いわゆる秘匿をするわけであります。その他のものはこれを秘匿する必要なしとして公にするわけでありますから、何でもそれに触れて書いたらこの法律に当てはまるというものでは全然ございません。品目の場合は品目及び数量、両者であります。品目のみではこの条項に当てはまりません。数量のみでも当てはまりません。品目及び数量両者そろつて当てはまる場合がありますが、これももとより防衛秘密として秘匿を必要とするものについてのみであります。一般雑誌その他によりいろいろそういう資料を収集して勉強をされて論文を書かれるというよなものは、全然この法律には該当いたしません。
  47. 松前重義

    松前委員 第二条の二行目に書いてあります「関係者に通知する等防衛秘密保護上必要な措置を講ずるものとする。」この関係者というのは、どういう人でありますか。保安庁の人だけであるか、それとも外部にまでも及ぶのであるかということを伺いたい。
  48. 増原恵吉

    増原政府委員 関係者といいますのは、保安庁においてこういう秘密いろいろ装備品等を扱います者はもとより、いろいろの製造業者等でこうした装備品等修繕をするというふうなことを請負いました者等に対しましては、関係者としてこれに通知するということに相なります。単に保安庁関係者のみではございません。
  49. 松前重義

    松前委員 具体的に申しますれば、関係各省関係者あるいはまたその武器をつくつている製造会社従業員の諸君、こういうものも含むのでありましようか。
  50. 増原恵吉

    増原政府委員 関係各省におきまして、この防衛秘密に職務として関係のあるものはこの関係者になりますし、製造業者、その関係の工員でこうした装備品をたとえど修繕をするとか、あるいは新しい情報に基いてこれを製造するとかというふうなことを業として行います者は、この関係者に該当をいたします。
  51. 松前重義

    松前委員 非常に広いわけでありまして、たいへんなことになるような感じがするのでありますが、その次に第三条の第一項に「又は不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」とあるが、この「不当な方法」というのはどういう方法であるか、非常に漠然とした表現でありますが、どういうことでありますか。
  52. 増原恵吉

    増原政府委員 「不当な方法」ということは、終極は健全な常識によつて裁判所が判断いたすことと思いまするが、これは不法な方法をもとより含みます。不法な方法も不当な方法の中に含みまするが、金銭をもつて誘惑をするとか、欺罔手段を講ずるとか、あるいは柵その他があつて人の明瞭に監視してる中に、いわゆる家宅侵入方法で入つて来て、そうした秘密を探るような方法は、例示として申し上げられる不当な方法であります。
  53. 松前重義

    松前委員 その第二項に「通常不当な方法によらなければ探知し又は収集することのできないようなものを他人に漏らした者」、こういうように「通常不当な方法」ということが書いてあります。前の方は「不当な方法」と書いてあるが、どういうふうに違うのでありますか。
  54. 増原恵吉

    増原政府委員 前の方は、秘密を探知し、収集する者について規定いたしたものであります。これは探知し収集しただけでこの罪に該当するわけであります。第二号は秘密を漏らした罪であります。秘密を漏らします場合には、通常不当な方法によらなければ探知し、または収集することができないようなものを漏らした場合にのみ罰するという趣旨であります。通常不当な方法に上らなければ探知し収集できないというようなものは、たとえて申しますれば、この秘密を取扱つております公務員が、故意にあるいは過失をもちまして秘密を漏らす、これは通常は、その公務員故意、過失がないような場合には探知収集できないようなものである、そうしてもとよりそれを漏らした公務員は、三号その他によりまして業務上の秘密漏泄として処罰されるわけでありますが、その場合それを聞いた方は、すなわち探知収集しただけでは罪になりません。その場合には方法が一応平穏な方法でありますから。しかしながら、その知りました秘密通常不当な方法によらなければ探知できないような秘密であるわけでありますので、これを他人に漏らしました場合には、その人はこの法条に触れる。単に聞いて自分の頭の中にしまつておる時分には、一号には全然該当いたしません。漏らした場合には第二号に該当する。さらにはまた公務員がこうした秘密の書類を持つてつて、たとえば酩酊をして電車の中にカバンを忘れて来た、これを拾得した人は一応不当な方法ではないわけでありますが、拾得をして中をあけて見て、秘密なものがあつたことを知つた、そうしてそれが通常不当な方法によらなければ探知、収集できないようなものであるという認識をその人が持つた場合で、その秘密を漏らした場合にこの第二号に該当する、こういう趣旨条文であります。
  55. 松前重義

    松前委員 この問題は非常に重要だと思います。限界点が非常にあいまいでありますので、あとでまた論議することといたします。  次は防衛庁設置法案についてお尋ねいたします。第一条に「国防会議の設置」とあります。これはしばしば質問も出たようでありまするけれども、この国防会議とは、今まで戦時中にも使われておりましたような、いわゆる広義の国防、すなわち国際情勢その他から、あるいはまた国力、平和産業を通じての生産力とか、こういう面を背景にした広義国防の意味であるか、あるいはまた単なる、狭義の作戦会議の意味であるか、お伺いしたいと思います。
  56. 増原恵吉

    増原政府委員 国防会議につきましては、「第三章、国防会議」とし、四十二条以降に規定をいたしておりまして、国防に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、国防会議を置きまして、内閣総理大臣は、次の事項についてこれに諮る。その諮る事項は、「一、国防の基本方針、二、防衛計画の大綱、三、前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱、四、防衛出動の可否、五、その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、こうしたものを審議しまして、総理大臣の諮問に答えるという趣旨のものであります。
  57. 松前重義

    松前委員 国防会議の構成要素ですが、これを構成する人々の資格と申しまするか条件は、特別の条件を考えておられるのかどうか。どうしてこういうことを承るかと申しますと、この前の保安庁法においては、従来の武官は保安庁の課長以上にはなれないということが規定してある。今度これは除いてあります。すなわち文武とわけるならば、大体武によつて占領——占領というとちよつと語弊がありますが、構成されるかつこうになるので、国防会議のメンバー選定の条件に、特別な考えがおありであるかどうか承りたいと思います。
  58. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 国防会議の構成メンバー、権限その他につきましては、別に法律をもつて定めたい、こう考えております。今その内容については慎重考慮中であります。ただわれわれ考えておりますところは、主として内閣における関係各大臣、それを考えておるのであります。はたして民間人を入れるかどうか、また入れるとしてどういう制限を置くべきかということについては、ただいま考慮中であります。いずれ成案を得ました上において十分な御検討を願いたいと考えておるのであります。
  59. 松前重義

    松前委員 防衛庁と保安庁との相違点。第四条におきましては、「防衛庁は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的とし」、と書いてあります。保安庁の方では、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、」こういうふうに書いてあります。これは憲法の問題にも当然触れるのでありますが、「国の安全を保つことを目的とし、」という中には、保安庁法の第四条の中に書いてあります「秩序を維持し、人命及び財産を保護する」こういう意味のことが含まれておるのかどうか、そうしてまた外部からの侵略あるいは国内における暴力革命、こういうようなものに対して総合的に、防衛庁は国の安全を保つことを目的とするという意味において代表されて書かれているのであるか、この点を伺いたいと思います。
  60. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安庁法におきましては、第四条で、わが国の平和と秩序を維持することを任務とする規定を設けているのであります。要するに国内秩序を守ることを主とした規定であります。今度の防衛庁設置法案におきましては、それと同時に、外部からの不当な武力攻撃に対してもこれを排除するように両面から規定したものであります。これがすなわち国の安全を守るゆえんであります。
  61. 松前重義

    松前委員 第九条。「防衛庁に、参事官八人以内を置く。」と書いてあります。この参事官というのはまことにあいまいものたる存在の、ごとくに見えるのでありますが、一体どういうことをやるのでありましようか。ここに書いてあるのは五局であります。ですから八人となれば、局長を全部やらしても三人は余るのであります。局長が全部参事官であるというのか、あるいはまたその他の任務を持つておるのであるかどうかを伺いたいと思います。
  62. 増原恵吉

    増原政府委員 防衛庁に置きます局は五局でありますが、そのほかに官房というのがありまして、官房長と局長合せて六人でございます。官房長、局長は参事官をもつて充てるというふうになつておりまして、参事官のうちで官房長、局長になりませんものは二人でございます。この二人の参事官につきましてはなお長官のところでいろいろ検討をしていただいておりますが、参事官の本来の任務は、基本的方針の策定について長官を補佐するということでありまして、個人としてやる場合ももとよりありますが、参事官の集まる会議において官房各局の所掌に必ずしも拘泥しないで、基本的事項について長官を補佐するというふうな仕事をやるわけであります。そうした場合、官房長、局長でありません二人の参事官は、自由な立場に立つて基本的事項につき長官を助ける。しかしその二人が平素全然何らの事務に参画しないということは、かえつて参事官としての仕事をやる上に適当でないとも考えられますので、この二人の参事官は、衛生関係あるいは渉外関係あるいは技術関係等についての仕事に参画させる、平素はそういう仕事に参画をさせ、必ずしも所掌にとらわれないで基本的方針の策定について長官を補佐する仕事をさせる、こういうふうに考えておるわけであります。
  63. 松前重義

    松前委員 参事官制度というものは、保安庁でおつくりになつた最初の案にはなかつたと伺つております。その後において挿入されたということでありますが、この参事官は、局長になる人は、現在の陣容でおいでになるとすれば、旧軍人の方はおいでにならぬと思うのでありますが、二人の残りの参事官については、旧軍人の方を御考慮になつておられるかどうかを伺いたいと思います。
  64. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その点につきましては、われわれは旧軍人のこと考えておりません。適当な人材をわれわれはこのポストにつけたい、こう考えております。
  65. 松前重義

    松前委員 第十条に教育局というのがあります。昔は教育総監部というのが陸軍にありましたが、これは大体アメリカ武器を持つて来て、それを操縦することを教える人は何か顧問団が来てやるそうでありまするが、また日本の人たちも多少お手伝いをするかと思うのでありますが、そういうふうなことであつて、この教育局というものは一局として必要であるかどうか。行政整理をやらなくちやならぬと言つているときに、どうも防衛庁だけがえらいめちやくちやに太つてしまうというふうにも見受けられるのでありまするが、この点についてはどういうお考えを持つておられるか。
  66. 増原恵吉

    増原政府委員 教育局の所掌は第十三条にありまするが、職員の教育訓練の基本に関すること、防衛研修所及び防衛大学校に関すること、そういうことをつかさどるわけであります。ただいま旧軍における教育総監部というふうなものを引合いにお出しになりましたが、教育の関係はきわめて重大なものでありまするが、これは何も教育局だけでやるわけではございません。これは防衛庁の組織全体に共通する問題でありまするが、このいわゆる教育局は、十三条にも書いてありまするように、教育訓練の基本に関することをやるのみでありまして、これの具体化、実際化あるいは実施というものは各部隊において行うわけであります。陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊においてそれぞれ行う。現状で申しますると、第一幕僚監部、第二幕僚監部の統括を受けます各部隊において行うわけでありまして、たとえば第一幕僚監部においては第三部において教育訓練のごとを所管いたしております。この自衛隊の発足にあたりましては、現在の第一幕僚監部、将来の陸上自衛隊におきましても、教育訓練の部門は、長官の裁決を受けまして、これを強化拡大いたしたいと考えておるのでありまして、教育局において昔の教育総監部の仕事を全部する、教育局が教育総監部に当るというふうな考え方をいたして設けたわけではございません。各幕僚監部においてそれぞれ現在の一幕、二幕におけるものよりは相当に拡充して教育訓練のことをやつて参りたい。ただ教育局を設けましたのは、もとより教育のことが自衛隊にとりまして基本的に重要なものでありまするので、内局におきましても教育局を設けましてここで教育の基本のことについて長官を助ける所掌を設けるという趣旨にほかならないわけでございます。
  67. 松前重義

    松前委員 これで大体条文については終ります。まず第十八条でありますが、保安庁法においては課長以上はかつて武官でなかつた者という条項がありまするが、今回はこれが全然省かれているのはどういうわけでありますか。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現在の保安庁法においては課長以上の者にはかつて制服を着た者はなれない建前になつておるのであります。しかし旧軍人がなれないとは規定していません。今度の防衛庁設置法でこの条文を削除したゆえんは、一たび制服を着た者がそれによつて内局へ入つて課長以上の職につくことができないということになりますると、人材を求める点からも、また制服との間の関係におきましても非常な摩擦を生ずるおそれがあるのであります。これは制服も平服もともに手をとつてわが国の防衛の任に当らなければならぬ。しかるに一たび制服を着た者は内局へ入つて課長以上の職につくことができぬというようなことがあつては、この間にはなはだ差別をつけるので、よくない。また平服を着た者でも制服を着ることができるわけでありますから、人事の交流の点から見ましても、かような禁札を掲げることはよくないという意味から、現在の保安庁法の方の規定をとりやめたわけであります。主として目的とするところは、あまねく人材を求める点、もう一つは、制服と平服との軋轢摩擦のない、いわゆる互いに手をとり合つて日本防衛の任に当りたい、この趣旨にほかならないのであります。
  69. 松前重義

    松前委員 大体条文について疑問は一応伺つたのでありますけれども、私は、これらを基礎として自衛隊防衛庁のあり方についての質疑を行おうと考えるのであります。  まず第一に、先ほど長官の御説明によりまして、またしばしば前からの御説明によりまして、国の安全を維持するために自衛隊を設けるということであります。すなわち間接侵略に対処するという保安庁の場合より一歩前進して、直接侵略に対処するということであります。今日はこの直接侵略の問題についてこれから少しばかり御質問を申し上げたいと思うのであります。私どもが体験いたしました、そして悲惨な敗戦を見ましたせんだつての太平洋戦争のときに私どもが初めから、日本は負けるであろう、また必ず負けるということを考えておつたところのゆえんはどこにあるかと言えば、それは生産力にあつたのであります。すなわち自衛隊武器はほとんど全部MSAによつてアメリカより補給されるもでのあります。もしも直接侵略に対処する場合に、この武器補給をどこに求めるかという、問題が起つて参るのでありますが、この武器補給はどこに求りようとお考えになつておられるかを伺いたい。
  70. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り、現在の生産力並びに経済力をもつていたしましては、とうていわれわれが満足すべき武器というものは自衛隊に持たすことはできないのであります。まことに残念に思います。やむを得ずアメリカの協力を得なければならない。これがMS援助協定を結んでアメリカから武器をもらい受けることになつた次第であります。しかしわれわれといたしましてはいつまでもかようなことであつてはならぬ。日本を外部からの侵略に対して守る手段といたしましては、どうしてもみずからの手によつてみずからを守る態勢を立て、自衛隊員に持たせる武器日本でつくつたものを持たせたいと終始考えているのであります。しかし現段階においてはやむを得ません。一日も早く日本の国力を回復いたしまして、少くとも日本自衛隊の持つ武器だけは日本自体でこれを補給いたしたいとこう考えております。
  71. 松前重義

    松前委員 大体アメリカ補給にまつよりほかに道がないという結論のようでありまするが、そうなりますると結局これは、どういう国が仮装敵国であるかは存じませんが、たとえば外部の侵略があつたという場合におきまして、アメリカ武器にたよらなければこの侵略は防止することができないということになりますれば、アメリカ補給が必要となる。MSAの協定は現在のところ武器補給についての一定限度しか協定されてないようでありますけれども、その一定限度の倉庫にある武器をもつてはてしない消耗である直接侵略に対処できるとお考えになつているかどうかをお伺いいたしたい。
  72. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 将来外部からの侵略がどの程度に参るかは予測できないのであります。しかもわれわれは時々刻々それらの点について当らなければならぬと考えております。日本防衛はすなわちアジアの防衛であり、世界の平和に通ずるのであります。何としても日本防衛はしなければならぬ。アメリカにおいてもまた日本防衛は世界平和のためにやらなくちやならぬという考えをもつて、日米安全保障条約ができたわけと考えております。従いましてアメリカがアジアの防衛ひいては世界の平和のために、日本防衛力を強化することに一段の努力をそそいでいることは御承知の通りであります。それと同時にアメリカの駐留軍が日本の地域において駐留いたしまして、日本のために防衛をするということになつているのであります。そこで外部からの侵略に対しては、むろんアメリカの駐留軍もこれを阻止することに全力をそそぐであろうし、またこれと同時に日本自身もあげて日本の安全のため外部からの侵略に対処する、両々相まつて日本防衛の任にあたろというわけであります。しかしながらわれわれ今申し上げました通り、いつまでもアメリカの手にまつということは、これは日本の国民感情からもすべての事情からも許すことができませんから、一日も早く国力を回復して日本の手によつて日本を守る体制を立てて行きたい、こういうふうに考えている次第であります。
  73. 松前重義

    松前委員 そこでただいまの御説明ではアメリカ日本と共同作戦のもとにここに直接侵略に対処して行くということであります。     〔委員長退席、下川委員長代理着席〕 共同作戦のもとに直接侵略に対処するというならば、私は当然これは全面的な第三次の世界大戦になるのではないかと思います。ローカルな戦争ではあり得ないと思います。しかしこういうことになると仮定いたしますと、全面的な戦争の前途にはこの間からわれわれが問題にいたしておりますいわゆる原子力戦というものが待つているのであります。それで原子力の前には人類が全滅するのでありますから、戦争が起らないであろうということもまた有力な考え方であろうと思うのでありますが、しかしこれらの事態に当面いたしましたときに、またそのような歴史の過程をたどつたときに、長官はどういう事態がここに起るであろうか、そして自衛隊はどのような意味において出動されるものであるか、これらの見解を少し伺いたいと思います。
  74. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御質問は、要するに将来原子力を用いるような大きな戦争が起つた場合に、日本自衛隊がどうなるかということでありますが、私は不幸にして将来第三次大戦が起つて原子力を双方で用いるようなことになると、これは人類の破滅であろうと思います。そういうことがあつてはならぬ。万一そういうことがあるようなことでは、私はむろん日本も巻き込まれる。あるいはとうていわれわれの国防ということもこれは成り立たぬわけであります。しかし私はさような原子力を用いるような大きな戦争はあつてはならぬし、また私個人の考えではないと考えております。しかしながら局部的のいろいろな争いは生ずる。現に各所で起つているのであります。インドシナの戦いにおいてはジエツト機は用いていない。ああいう戦いが起つている。日本においては——どこか名前を指すことは別といたしまして、かりに第三国から不当な侵略がありとしても、必ずしも原子力をもつてつて来るというようなことは私は考えておりません。原子力以前のいわゆる局部の武力攻撃というものはあり得ると考えております。そういう場合にどうしていいか。いわゆる原子戦争以前のそういう事故発生の余地は十分あると考えております。それに対してわれわれは終始目を向けて日本の安全をはかつて行かなけれならぬ。これが根本の考え方であります。私は原子力戦争というようなことは考えておりません。またそういうものはおそらく私はないものと考えております。この原子力の出たことによつてむしろ第三次の大戦争が行われないのじやないだろうかと私は考えております。
  75. 松前重義

    松前委員 この問題は非常に防衛庁なりその他の重要な中心問題であろうと思います。しかし私は長官とは見解を多少異にするものであります。それはいわゆるあの朝鮮戦乱なるものはどういう意味を持つているかと言えば、朝鮮民族のある意味における解放運動であつたと私は思う。すなわち朝鮮の北と南の相互間に起つた一つの動きであります。それを中共とアメリカとがお互にうしろだてをしてやつた戦争であつたと考えます。またインドシナの問題は、植民地であります。フランス軍に対する、ある意味においては、これは共産軍ではありますけれども民族解放の意味を持つておるのであります。そういうふうな民族解放のうしろだてをするいろいろな国家群がある場合において、今のようなこぜり合いというものが方々に起つて来るのであつて日本のような国では、またここに民族解放、すなわち暴力革命のようなものが起つたといたしますならば、これは当然私どもはこれに対処しなければならないと思う。けれどもこれ以上外から日本に攻め込んで来るというような動きは今後の世界には起り得ない。もしそういうことが起つたとするならば、アメリカ日本を援助し、またそのうしろだてと何かするとするたらば、当然第三次世界大戦にならざるを得ない、こうい解釈を持つておるのであります。従つてこの直接侵略という問題に対しましては、世界戦争が起らない。第三次世界戦争は原子力戦争であるというならば、これは起り得ないという仮定のもとに立つならば、この自衛隊の創設において、あのつまらない、先ほど伺いましたようないろいろ武器戦車なんかにも私は乗つてみたのでありますが、あんな戦車で今後あの原子力戦争に対処できぬことはもう火を見るよりも明らかであります。原子力戦争といいもまして、何もビキニで爆発したような大爆発だけが考えられるのでありません。今後は小さな原子弾というものが落ちて来る。そうしてそれがうんと落ちて来れば、まんべんなくやられるのです。しかしその被害の範囲はそう大きくはないが、数が多い、こういうような原子兵器ができつつあるかのごとくに聞いておるのであります。こういう時代に、私はもしも人類が理性を回復しないならば、場合によつては、このような戦争も起らないとは仮定できないと思うのでありますが、今大臣からお話のありましたように、戦争が起らないという前提のもとに私どもが現在のアジアの状態などを見るときは、日本自体の民族解放運動ならば、これは起る可能性がある。朝鮮で起りました。インドシナでも起りました。しかもあれは植民地解放の意味をもつてつておる。でありますが、これを国際間の紛争と見るのは私は間違いだと思います。そういうふうな現状において、この自衛隊のちやちな武器をもつてそとに対抗しようなどということを考えるということが、いかにもどうも時代遅れである。ことにアメリカのごときは、今やあの装備を完全に切りかえつつあります。大体工業などにいたしましても、アメリカはいつも自分の国で使わなくなつてから日本に売りつけて来ておる。あとばかり追つて歩いておるのは日本であります。かつて満州、中国の動乱に対して日本からいわゆる村田銃あるいはまた三八式の銃などを送つた。ああいう歴史のあとを見ましても、大体現在はそれに類しておるのではないかと思う。そんなもので一体アメリカの言うことを聞いて、ここにこのような軍備をやりまして、はたして何の役に立つだろうかということを、私は技術屋として非常に疑いを持つておるものでありますが、長官の御見解を承りたい。
  76. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 不幸にして私は意見を異にしております。アメリカからもらい受ける武器はいかにもちやちなもののように仰せになりましたが、われわれはそうは考えておりません。もつとも現在アメリカから借り受けております武器の中には、お説の通りわれわれはなはだ不満なものがありますが、漸次これは改善しております。従いまして、今度MSA協定によつてもらい受けます武器につきましては、十分に役に立つものが手入ろうかと考えております。これによりまして一応われわれといたしましては、外部からの不当侵略に対して対処できるものと考えておるのであります。
  77. 松前重義

    松前委員 私は今の長官のお話とは大分考え方が違うのでありまして、大体朝鮮戦線で不要になつたものがこちらに来ておるのではないか、これは邪推ではないのではないかと思つております。そういうものをありがたくちようだいして三拝九拝して、日本防衛ができるか、私はできないと思う。直接侵略があると仮定してもそれはできないと思う。そうしてその直接侵略たるや、今後の歴史においては起り得ない、こういうふうな考え方のもとに立ちまして、ことにこの原子力時代に対処して、世界の大戦が起らないとするならば、私はこぜり合いの戦争は起らぬ、こういうふうな見方のもとに、しかもこのちやちな武器をもつては、もし直接侵略があつた場合、大戦になつた場合においてはとうてい対処し得ない、こういうふうに私は考えるのであります。そこで生産力の問題を先ほど申し上げましたけれども、もしこれが直接侵略に対処し得るというならば、このくらいの程度の武器ならば日本でできるのであります。つくればできる。できない点も多少あります。得意な点も得意でない点もありますから、それはできる点もできない点もあります。すなわち他国にその生産力を求めて、はたして自衛という目的が達せられるのであるかどうか、この点につきましては、先ほども御答弁はありましたけれども、私としてはまことに不満足であります。大東亜戦争のときに、アメリカの鉄鋼の生産力は大体一億トンでありました。日本の製鋼能力は当時は二百五十万トンでありました。四十分の一の実力をもつてしては勝てないということは初めからわかつておりました。にもかかわらず勇敢なる方々は三八式の銃をかついで戦争におもむいたのであります。そうしてあのような敗戦を見たのであります。私どもはここにつまらない武装をし、しかもアメリカのセコハンの武装をいたしまして、しかも第三次大戦は予定できない、起らないであろうと確信するという長官のお考え、これらを正しいとするならば、まつたく無意味な武装ではないかと私どもは考えるのであります。そこでもし侵略があつたと仮定いたしまして、一体自国に生産力を持たないで防衛ができるかどうか、いろいろ言い訳もありましようが、この問題について所見をお伺いしたいと思います。
  78. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本アメリカ駐留軍といわゆるタイアツプをして防衛しておることが、すなわち大きな戦争を防止するゆえんであろうと私は考えております。アメリカ駐留軍が引揚げ、日本保安隊なりまた将来できる自衛隊なりというものがない場合においてどうなるかと考えてみると、むしろ私はこれが第三次戦争を誘発することになりはしないか、こう考えております。そこで今申し上げます通り、日本防衛体制をしつかり整えて行くこと自体が大きな戦争を引起させない、これであろうと私は考えております。しこうして日本自体で日本防衛をするということは、私はもう繰返して申し上げましたように、現段階においてはできません。生産力も、財政面からいつてもできないのであります。従いましてアメリカと互いに協力して日本の国防体制を整えて行こうということであります。この間においてわれわれは、国民互いに手をとつて日本の経済力の復興を目ざして、そうして徐々に日本自体において生産力を回復して、日本自衛隊なりが持ち得る武器をまかなうということにならなければいかぬと考えております。もちろん今仰せになりましたように、一刻も早く日本でつくつた武器をもつて日本防衛をするということにならなければいかぬのは、これは当然である。しかし現段階においてはさように参らぬということは、御承知の通りであります。
  79. 松前重義

    松前委員 ただいまのお言葉を拝承いたしますと、アメリカの駐留軍が日本に滞在しない限り、駐屯しない限り、世界の平和は確保できない、アジアの平和は確保できない、こういうふうに受取ることができるのでありますが、まことに日本人としては遺憾千万なお言葉であると私は思うのです。このような植民地的な、いわゆるアメリカに占領されたような形の方が平和のためによろしいという論理は、われわれ日本人としてはとりたくないのでありますが、この点について大臣の御意見を承りたい。
  80. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はそうは考えておりません。アメリカ日本と手をとつて日本防衛体制を整えて行くことは、決して日本アメリカの植民地となるわけじやありません。日本の自主的考えからアメリカと手を握つて日本防衛体制を整えて行こう、しこうしてその間において日本が国力を回復してできるだけ早く日本自体において体制を整えて行きたいということを私は申したのであります。
  81. 松前重義

    松前委員 アメリカの援助を得て、アメリカ武器を使うであろうところのわが国の自衛隊は、アメリカ武器秘密知つている。従つてそれを漏洩いたしましたときはいろいろな罰則がある、こういうことであります。しからば現在のところアメリカ秘密武器日本に供与いたしましたり、貸与いたしておりますものがございますか、伺いたいと思います。
  82. 増原恵吉

    増原政府委員 現在受けております武器は、いわゆる保安隊におきましては、まだ正式な協定ができませんで、事実上米軍の武器を使用するというような形をとつておりますものと、もう一つは国会の御承認を得ました船舶貸借協定によつてPF十八隻とLSSL五十隻を借りておるのであります。ただいま御審議を願つておりまする防衛秘密保護法は、いわゆるMSA協定によつてこれから貸与される——まだ貸与されておりませんが、MSA協定つてもらうものと、船舶貸借協定によつて借りておるものとのうちで、秘密のものを保護するというのであります。そうして現在事実上使つておる形でやつておりまする保安隊武器には、まだ正式の問合せをいたす段階に至つておりませんが、非公式に話合いしましたところでは、秘密区分のあるものはございません。船舶貸借協定によりますものは、PFのレーダーその他通信機械の若干について秘の区分のあるものがあるということに相なつておるのであります。
  83. 辻政信

    ○辻(政)委員 現在保安隊の持つておる兵器の中に、アメリカのいわゆる秘密兵器はないというような御答弁でしたが、火炎放射器はどうですか。これは確かに秘密兵器であり、われわれにも参観させないはずであります。それでも、ないと言われますか。
  84. 増原恵吉

    増原政府委員 先ほど申したように、正式な交換はMSA協定成立後行うつもりでございますが、非公式の話合いでは、秘密の区分のあるものは保安隊の方に手渡していない、手渡しておるものについては秘密区分はない、そう向うで申しております。
  85. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は実は見せていただきたかつたのです、火炎放射器の性能を。そうしたら、これはアメリカ側が言つておるから見せられない、秘密であつて見せられないというのが、富士のすそ野の演習場における私に対する答弁でありました。どうですか、その点は。
  86. 増原恵吉

    増原政府委員 向うから借りておりますものについては秘密区分のものはないという、一応非公式な口頭の話合いということであります。これはこの法律施行になりますまでに明確な確かめをするつもりあります。今仰せになりましたことは、もう少しくよく事情を取調べましてお答え申し上げたいと思います。
  87. 辻政信

    ○辻(政)委員 これは私が視察に行つたときに確かに拒まれたのです。ですからまさか間違いじやなかろう。保安隊の人が意地悪くて拒んだか、それでなければ確実にこれはアメリカの兵器だから見せてくれるなというような……。実はあの性能にちよつと疑問があつたのです。それで実はつつ込んで見たかつたのですが断られた経験があるから、そこもう一ぺん調べてもらいたい。
  88. 松前重義

    松前委員 秘密の問題でありますが、アメリカ秘密と称するものを関係者けに打明けて、それ以外の者に漏らすということは違反である、こういうようなものであるとするならば、これら秘密内容については、ただいま辻委員のお話のように国会議員にさえも見せることができないとすれば、アメリカの規格とアメリカの生産力と、これに将来永遠にこれらの武器は依存しなければならないということに私はならざるを得ないと思う。先ほど木村長官はわが国で早くつくりたい——どもあんなつまらぬものをうんとつつてみたつて大したことはないと思うのでありますが、とにかく日本でつくりたいとおつしやる。しかし私はそのようなことであるならば、少し上等な武器日本では絶対につくつてはならないというようなことになると思うのであります。この秘密の問題を通じてアメリカにおいて生産しなければこの品物はできないのだという結論に到達する必然性を持つておると私は見るのでありますが、いかがでございますか。
  89. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知の通り、MSA協定においては技術援助があるのであります。アメリカで新しく秘密兵器をつくつて日本にそれに対するいろいろな指導もできるわけであります。われわれはできる限りにおいて新しい兵器の秘密区分についてアメリカの指導並びに技術援助を得て、日本においてより以上将来発達をさして行きたい、こう考えております。
  90. 松前重義

    松前委員 MSA協定の中には規格の統一と、アメリカの規格によらなければならないという条文があつたと記憶しております。私が申し上げておる問題に関連することであり、非常に重要な問題であると思うのであります。そうなれば、どうしてもアメリカに、永遠に生産を依存しなければならない、こういうことに相なるはずであります。この点につきまして、アメリカの生産力に依存するわが国の自衛隊が、もし何かの直接危害に働くと仮定いたしまするならば、その場合においては、当然アメリカの言いなりほうだいにならなければならぬ、いわゆるアメリカの軍隊の前線部隊にすぎない、たまよけにすぎないというような結論になると思うのでありまするが、長官の御見解を承りたい。
  91. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は、さように考えておりません。将来日本においても、アメリカより以上に兵器の進歩が望み得ると考えております。松前さんのようなりつぱな技術者もいられるし、私の知つておる技術者にも、相当りつぱな人がおります。決してアメリカに負けない技術者がおります。これは、従来日本があまりにけちで研研費も出さなかつたが、設備その他の点について十分働かせることになりますればりつぱなものができる、こう私は確信しております。
  92. 辻政信

    ○辻(政)委員 今の松前委員の、いわゆる自主的な、日本の科学技術を主体にした独特の兵器をつくれということに、私は非常に賛成するのであります。(松前委員「私はそう言わないですよ。」と呼ぶ。笑声)こういう問題があるのです。イギリスの議会におきまして、アメリカが欧州軍の小銃の口径を統一しようといたしました。弾薬の補充をアメリカの兵器協会においてしようとした。それに対しまして、イギリスが非常に反対したことがある。それはイギリスの兵器工業を締め出すものであり、アメリカの兵器業者のマーケツトにするんだというので、国会の大問題になつたことがあります。そういう意味において日本防衛兵器は、日本人の体格と、日本の地形と、日本のすぐれた技術を生かして、みずからの手でつくる体制を一日も早くおつくりになるように、アメリカの兵器の秘密を守ることに汲々とせずに、日本で独創的な防衛兵器を考案して、それの秘密を守る法令というものを絶えず頭に置いてもらいたい、これだけつけ加えておきます。
  93. 松前重義

    松前委員 何度も申し上げますが、この秘密の問題——生産力の問題を通じまして、米国にこれらの補給を依存するというような体制では、もしも自衛力を発動しなくちやならないようなケースが起つたと仮定して、しかも原子力戦争でなくて、長官のおつしやるような戦争が起つたと仮定して——私は起らないと思うが、起つたと仮定した場合においては何らの意味もなさないで、アメリカの言うなりになつて、結局全面的な第三次世界大戦になる可能性が十分あると思うのであります。その場合においては、原子力というものが物を言う。もし戦争がないというならば、直接侵略というものはそう強く解釈すべきものではないと私は考えるのであります。  次に、ビキニのような灰の粉が降つて来て防衛をやる場合を想定してみます。このようなときにほんとうの防衛というものはどこにあるか、自衛というものはどこにあるかというと、これは国民生活の防衛にあると思う。あるいは稲の穂についてみたり、あるいはまた菜つぱについたり、大根についたりいたしまして、われわれの食糧資源に放射能を与えられたといたしますときには——今まぐろに放射能がうんとついて大騒動をいたしておりますが、あのような問題、あるいはまた水源地にこれが降つて来て水道の水が放射能を持つている——けさ新聞で見てみますと、私がこの間シベリアから灰が降つて来ていると言つたらみんなびつくりしておつたようでありますが、もうすでに北海道では雪の中に放射能を見出しております。このような新しい時代がここに訪れている。私はこれを防ぐことがほんとうの自衛であると思うのです。防衛の概念が昔の鉄砲やその他によつてぱんぱんやつておつた時代とはかわつて来た。これは辻さんにも実は一ぺん申し上げたいと思うのでありますけれども、新しい原子力時代において私どもは自衛の概念を根本的にかえなければならない。いまさらこの案のような明治末期時代程度のものをここに持つて来るというのは、一体どういうことであろうかというふうに考えるのであります。すなわちビキニの灰のような、非常に薄いごみのようなものではありますが、それが降つたことによつて国民生活に脅威を与え、生命に脅威を与える、こういうことを防ぐのが私は今日の自衛の一番重要な問題であると思うのであります。何も直接大砲を撃つたり日本の上に降下したりしなくても、そういう現象は遠い海のかなたから起し得ると思う。鉄砲を持つたり大砲を持つたりして日本に船に乗つてつて来るというようなことは考えられない。こういうプリミテイヴな考え方で自衛の概念の基礎とするということは非常に危険であると思うのでありますが、これに対して保安庁長官の御意見を承りたい。
  94. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのお話よくわかりました。つまり外部からビキニの灰のようなものを降らせて日本を困らせるような場合、これに日本が対処する、これが自衛の方法でありましよう。将来どういう科学の発達によつてわれわれが考えている以上のものをもつて日本を侵すかもわかりません。科学の進歩発達が著しいときに、さようなわれわれの目に見えぬところから攻撃して来るかもわかりません。それに対して対処することは、やはり今仰せになりましたように、自衛にほかならないのであります。しかしながら、現段階におきましては、まだわれわれはさようなことを予想し得ない、たまたまビキニの灰のようなものがあつたわけでありますが、灰を降らせて日本をどうする、それに対してどう防く、これらのことは考えてよいと思いますが、それ以上の点については、まだ考えは進んでおりません。ただわれわれといたしましては、それと同時に、従来のような外部からの不当な武力攻撃のこともまた考えて行かなければならぬ。そこで従来最も普通に行われたような外部からの不当な攻撃に対して日本の安全を期するために、防衛体制を整えて行くということが必要であると考えているのであります。
  95. 松前重義

    松前委員 非常に抽象的な御答弁でありまして、私の考えとは大分隔たつております。要するに問題は、直接侵略は——朝鮮の問題は南北のいわゆる民族解放という目標に向つて進んでおる戦争であつて、それを中共とアメリカとがしり押しをした。インドシナは植民地解放と民族解放の二つでなつていると思うのであります。こういうイデオロギーで同じ民族内においてやられておるものでありまして、直接侵略は私は起り得ない、もしそれが起つた場合には、アメリカの援助等によりまして、日本との共同作戦で戦おうとするならば原子力戦になる、原子力戦は起らないとおつしやるから、それならば戦争は起らぬ、すなわち直接侵略の問題に対しては考える必要はないではないか、そうしてわれわれはむしろ国内における間接侵略の問題についてここに準備をしておけばよろしいではないか、こういうような考え方を持つものであります。  でありまするから、今度は先ほどの国内における秩序の問題、すなわち間接侵略の問題についてお伺いしたいと思うのでありまするが、この間接侵略に対して多少の準備をするということに対して、私どもは否定はしないのであります。けれども、問題の中心は、いわゆろ国民生活の不安定の中に間接侵略は起り得るものであります。そうしてソ連が今までとつて来た世界政策の中で最も注意しなければならない問題は、アジアにおける民族解放の動きの中にあの鉄の力ーテンを前進せしめたということが一つであると思います。第二の歴史的段階は、第二次世界大戦を経過いたしまして新しい段階に入つておると思われるのであります。それは何であるかというと、平和攻勢という言葉で代表されております、いわゆるアメリカが朝鮮やあるいはその他の地域に対しまして、世界戦争に発展するかもしれないという予想のもとに準備をしておつたところのアメリカの経済を、いわゆる軍需工業にすべて動員いたしまして、そうして全力をあげて軍需品の生産に当つておつたということは御承知の通りであります。この軍需品の生産に対しまして、ある程度、これが相当な生産力を持ち、相当な惰性を持つて来たときに、土俵ぎわでうつちやりをくわせる、平和攻勢をやることによつてアメリカの資本主義経済を混乱に陥れる、そうしてつくつた軍需品の行き場所をどこに求めて、いいかわからなくさせる、すなわちアメリカを不景気に陥れる、生産の転換をやらなくちやいかぬ、こういうようなことによつて新しい攻勢が起つておると思うのであります。でありまするから、直接侵略によつて鉄砲やちやちなものでもつて日本をやつつけに来るというようなローカルな現象は起り得ない、むしろもつと大きな全人類的な手をここに打つておると見なければならないと思うのであります。すなわちこのようなアメリカの経済の混乱に乗じまして、そうしてアメリカの資本主義経済の混乱を通じまして、ここに日本などにその影響力が与えられて参りまして、その影響力によつて日本のいわゆる間接侵略と申しまするか、日本の経済が不安定になり、それでがちやがちやになりまして、その中に国民生活が混乱して、ここに暴力革命の温床が起る、こういう作戦がほんとうのソ連の現在考えておる手であると同時に、彼らのとつて来たいわゆる経済史観の中の最後の歴史の道をたどつておる道であると私は思うのであります。この意味におきましていわゆる間接侵略に対する多少の準備は必要ではありましようけれども、しかし根本問題は直接侵略の問題よりも、まずもつて国内経済、国民生活の安定、ここにまことの侵略への備えがある、このような考え方を持つのでありまするが、長官の御意見を承りたいと思います。
  96. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 国民生活が窮迫になる、そこにいわゆる共産主義の攻勢が出て来る、私も同感であります。ソビエトが世界政策をどういう方向に持つてつておるか、いわゆるアメリカを一度は軍需生産に切りかえさして、そうしてさらに平和攻勢によつてこれを平時生産に切りかえさせ、その間に資本主義経済に混乱を生じさせる、これがねらいである、私も一面においてその議論には大いに賛意を表するのであります。しかしそれとても全面的にそういうことになつて行くかどうか私は疑問があろうと考えております。われわれといたしましては、終始ソビエトなり、いかなる国を問わず、国際情勢というものを十分把握してそれに対処して行かなければならぬと考えております。ごもつともな次第は、日本の国民経済を潤沢ならしめる、これが間接侵略を防く唯一の道じやないか、私はごもつともと考えております。どこまでも国民の生活をゆたかにして行かなければならぬ。しかしそれと同時に、またわれわれは不時の外部からの侵略に対しても十分の用意を持たなければならぬ。ここにわれわれとして非常な苦しみがあるのであります。少くとも国民経済をゆたかにするような手段を講ずるとともに、それと相まつてやはり不時の外部からの侵略に対する一応の防衛体制は立てて行かなくちやいかぬ、私はこう考えておる次第であります。
  97. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 関連して。今インドシナ戦争の話が出ましたが、インドシナ戦争は非常に深刻な段階に入つておる。しかもこのインドシナの極東における戦略的な重要性というものは、地図を開けばすぐわかる。日本アメリカとの戦争が起りました際にも、日本軍の仏印進駐というものがアメリカに大きな衡撃を与えたということは、当時の歴史からわかるところであります。インドシナ戦争の本質はただいま松前委員から申されましたように、私はこれは革命的な民族運動の軍事的な様相を帯びたものだと思うのであります。ところがアメリカとしましては、遠いインドシナに対しまして、どういう事情か、非常な深い関心を持つておる。そうしてフランスはもうたいがいで手をあげようとしております。また何かホー・チミン軍との間で話合いで解決するものならば早く解決したい、こういうふうな考えを持つておるようでありますがアメリカは逆にむしろフランスにかわつてインドシナ戦争に乗り出そうか、こういうふうな態勢に見える。しかし今ただちに軍事的な介入をするという決意はまだ持つていないようでありまして、当面イギリス、フランス、オーストラリア、ニユージランド、蒋介石、フイリピン、それにヴエトナム、ラオス、力ンボジア、そういうふうなものを誘つてまず中華人民共和国に対して警告を発する。中華人民共和国がホーチミン軍に対してどういう種類の援助をどの程度やつておるかということは、私は知らないし、私はその程度もアメリカが言うように、はたして非常に重大なものかどうかわかりませんが、とにかくそういう援助が行われるにおいては、その結果はたいへんなことになるというような意味で警告を発しよう、こういうふうな計画があるようであります。このことにつきまして、まず外務政務次官が見えておりますが、一体そういう情報は確かであるかどうか、お尋ねしたい。
  98. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 ただいま外務省でも在外公館からいろいろ電報を受けております。これについてはフランス、イギリスの方からその内容はどういうものであるかということをアメリカの方に照会しているという報道もありますし、英国といたしましてはジユネーヴ会議の前はおいてこういう共同宣言というようなものを行うことがはたして有利であるかどうか、のつぴきならない立場に置かれるからそういうことはしない方がいいのじやないかという趣旨のことをイーデン外相が述べたようにも報ぜられております。またフランスの方は何らかの形で共同宣言が行われるということは望ましいというような意向もあるようでございますが、現在のところ相互間にはつきりとした詳細にわたつた打合せはまだ行われておらないというのが現状のように私どもは把握をいたしております。
  99. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 共同宣言については今御答弁がありましたように、少しイギリスやフランスは気乗り薄という状態にある。ところが今私が申し上げました十箇国以外で、たとえば韓国あたりは呼びかけられもしないのに自分からひとつインドシナ戦争の方に出て行こうかというような発言があつたようである。それからまたタイなんかもイギリスの方で共同宣言に協力するなら同調しよう、こういうことを言つていると新聞に書いてありますが、私はこの共同宣言はなかなか簡単には行かぬと思う。そういう警告を発しましてもそれによつて中華人民共和国が態度を改めるとは私は予想できない。そうだつた場合はやはりこの警告からさらに軍事的な行動に発展する可能性が十分にあると思う。ところがその軍事的行動に行くことは別といたしまして、当面日本の外務省に対しまして共同宣言あるいは統一行動というようなことにつきましてアメリカ政府から何らかの申入れがあつたかどうか。外務省に伺いたい。
  100. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 将来のことは存じませんが、少くとも現在まで絶対にそういう申入れはありません。
  101. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 現在はなくても今後そういう申入れがもしあつた場合には、一体外務省としてどういう態度をとるか。
  102. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 田中さんからそういう質問を受けるのは私不思議に思うのですが、結局共同宣言というようなものの内容によるのだろうと思います。
  103. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 内容はわかつている。中華人民共和国を相手にインドシナ戦争に対する援助なりあるいは介入についてひとつ警告を発しよう。大よそ内容は予想できろ。そういうような内容の共同宣言を発するということについて日本が誘引された場合、その誘引に一体乗るかどうか。
  104. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 私どもは現在のところそういう誘いを受けることはないというように一応観測いたしております。しかし田中さんは内容はきまつているとおつしやいましたけれども、先ほど披露いたしましたようにこの内容についてもいろいろアメリカだけの考えでは参りませんので、今後の相談の経緯をたどつてもどうなるかもわからないはずでございます。その上でないとただちにこれに賛成するとか反対するとかいうことは申し上げにくいと思います。
  105. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 内容によつてとおつしやるがこのインドシナの戦争に関していかなる内容にせよ、日本が何かアアメリカの誘引によつて同一行動なりあるいは共同宣言に参加するというようなことが一体あり得るだろうか。私はこういうことは日本として非常に危険なことだと思うのであります。内容によつては話に乗つてもいいのじやないかというような御答弁のように聞いたのでありますが、私としては内容いかんにかかわらず絶対にそんなことにかかわつてはいかぬと思いますが、一体外務次官は内容いかんによつては話に乗つていいというお考えであるか。
  106. 小滝彬

    ○小瀧政府委員 仏印におけるこうした動乱が一日も早く終熄するようにということは、私どものひとしく望んでやまないところであります。従いましてそうした終熄させるための軍事行動などというものを離れた、たとえば世界の輿論に呼びかけるものでありとすれば、それは必ずしも排撃すべきものでなかろうと思います。
  107. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 関連質問ですから、最後に一言木村長官にお伺いします。この共同宣言は私は一種のおどかしだと思うのでありますが、これで中華人民共和国がひつ込まなかつた場合、アメリカはあるいは軍事的な行動というものを考えているかもしれない。すでに航空機はどんどん送つており、爆撃機、輸送機をどんどん送つている。そうしてアメリカの上院の議員の中には、こういうことを続けているとこれはたいへんなことになる、海空軍を送つてその結果中国の方をいきり立たせて、結局は地上軍まで送らなければならぬようになる。こういうことをアメリカの上院議員の何とかいう人が言つているのですが、こういうことになりました場合に、共同宣言に参加した国は必然に軍事行動においても共同動作をとらなければならぬようになる。そういう場合に、今度日本自衛隊ができてひとつその手を少し借りたいというような話が——これはないとは思いますけれども、万一起つた場合は、木村長官は一体どういう態度をとるつもりであるか、これは取越し苦労といえば取越し苦労でありますが、私どもはどうもMSA再軍備の必然的な結果はやはり海外派兵という事態も起り得るということは、わが党としてあらゆる機会に論じているのでありますし国民に実は訴えているところでありますが、そういう場合に日本自衛隊はいかなる事由があろうとも、いかなる場合に際しても、絶対にインドシナ戦争には送らないということをひとつここで御確認願いたいと思いまもが、いかがでありますか。
  108. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まさかアメリカ初めどこの国からも将来日本自衛隊をインドシナへまで派遣してくれとは言つて来ないとは思います。万々一かようなことを言つて来たといたしましても、われわれはかようなものに応ずることはできません。
  109. 松前重義

    松前委員 私も実はその問題を田中君に横取りされたようなかつこうでありますが、とにかく長官のお言葉でけつこうであります。もし出動されるようなことになれば、これは自衛隊でなくて他衛隊になるのでありますから、それはあり得ないと思いますから、これは確認されまして非常にけつこうであります。ただここに申し上げて参りました論旨は、大体において日本の工業力というものはアメリカに比しても共産陣営に比しましても非常に乏しいものであると私は思う。ドイツを半分にわけまして大体工業力を半分に分割しております。それは何も工業施設だけでなくしてその頭脳も入ると思うのであります。こういう工業力を自分の陣営に入れるということが非常に両陣営における重大なる問題であると私は思う。ドイツは半分でありますから日本をどうしてとるかということが問題であると思います。いかにして日本の工業力を自国に協力せしめるかということになると、直接侵略をしてその辺から飛行機やあるいは爆弾などを持つて来てぼんぼんやりましたら工業力を破壊するのでありますから、せつかくある工業力も、自分の陣営に入れても結局役に立たないものになつてしまう。そういうばかなことは両方ともなかなかいたしません。これはやはりそつくりとりたい。そつくりとるのにはどうしても国内の政治的矛盾あるいは経済的矛盾の中にここに暴力革命の温床をつくり、そこから誘発するところの爆発によつて、みずからの革命によつてこれを自分の手に納めるというのが、ソ連の考えておる考え方であろうと思うのであります。こういうような考え方をいたしますときに、外から攻めて来れば必ず日本の工業力はやつけられてしまつて破壊されるというのでありまするから、工業力がほしい——日本の国土のような産物の少い、いわゆる鉱物の少いようなところをとつてみても大して役に立ちません。ほしいのは工業力でありますので、破壊しないでとるのにはどうするか。もし侵略というものが何らかの形で起るといたしまするならば、私はこのような形をとつて来ると思う。昔からの、明治時代の軍人さんたちが考えておつたように、何かその辺を元冠のように船でもつて来て、軍艦や大砲でもつてどんどんやつて来る、飛行機で援護してやつて来るというような形を想定しての直接侵略への準備であるというならば、まことにこの自衛隊の存在は無意味なものであると私は思うのであります。こういう意味におきまして、この問題に対しまして保安庁長官は、特に日本の工業力を中心にいたしました今後における直接侵略あるいは間接侵略の姿について、どのような御見解をお持ちであるか伺いたい。
  110. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今お話になりましたような、いわゆる間接侵略によつて日本の工業力を手に入れよう、そういうことを考えておるかもしれません。一面の大きな考え方であろうと私は思う。しかし一面において私はまた外部からの武力によつて日本のある場所を侵して、それを基礎にして日本の工業力を手に入れようとする動きも予想されるわけであります。われわれは両々相まつて双方のために防衛しなければならぬと思います。
  111. 松前重義

    松前委員 私は最後に申し上げます。先ほど長官は原子力の全面戦争になる場合について、原子力戦争は起り得ない、言いかえると全面戦争も起らない、こういうような御想定であります。それは私どもそのように希望し、また信じておるものであります。世界は少くとも平和に向う、いやでもおうでも平和に向う、長い間人類が戦争はしないしない、平和々々といつも口に唱えながら、この自衛隊の中にも平和ということが必ず書いてある、戦争しようという目的自衛隊の中に書いてある。そのように平和を唱えながら、その裏には必ずやいばをといで戦争の準備をして来て、そして必ず戦争をして来た。これは私は人類の悲劇であつたと思うのです。それがようやく原子力というものができて初めて、自分が人だけを殺して、相手国だけをやつつけて自分の国だけはやつつけられないで生きておろうということが戦争の目的であるとしても、それはできないのであります。必ずこれは人類の全滅になるということは、もうすでにビキニの洗礼を受けてここに明らかになつてつておるのであります。こういう点から見まして、戦争というものはなかなかそう簡単には起らぬと同時に、大体起らぬだろう、平和の方向に向うだろうと双方考えでおるし、しかもアメリカ日本を援助する形、共同作戦のもとにおける自衛隊のあり方というものは全面戦争を意味するのであります。意味するのであるならば、なかなかこの戦争というものは起りがたいものであるということを長官は是認なすつたのであろうと私は思うのであります。それと同時に、ただいまの国民生活の問題にいたしましても、あるいは日本の工業力の問題を中心として考えてみましても、あるいはまたインド支那の戦争が植民地解放運動であり、解放の戦争である、あるいはまた共産主義の解放運動であり、同じ民族の中に起つているものであると解釈される。朝鮮もまた同じである。こういうふうに考えますときに、そういう小ぜり合いの起るところは大体において同じ民族の中において起る。日本におきましても日本の工業を中心として起る。こういう世界情勢の中にあつてわれわれが想定し得るものは、工業力を無事に傷つけないで自分の陣営に入れるためのいわゆる革命への道であると私どもは信ずるのであります。どうしてもやはり何らか外から起るような気がするのは、私は明治、せいぜい大正までの遺物の考え方であつて、現代におけるこの新しい歴史の姿を正しく是認した考え方ではないと思うのであります。私はここで質問を終るにあたりまして保安長官以下政府の皆さんの考え方を、新しい現代に立ち帰つて、ちよんまげとは申しませんが、とにかくいわゆる「道は六百」時代の考え方を一応洗い去りまして、新しい現代の認識の上に立つてもう一ぺん考え直していただきたいということを希望いたします。
  112. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私も最後にお答えいたしておきたいと思います。私はこの日本防衛力を強化する第三次戦争の勃発を防止する手段になる、こう考えております。すなわち今お話のように、ソビエトにしても日本の工業力というものを非常に重視している。これを手に入れるということを考えているということはもつともな次第であります。そこでわれわれといたしましては、アメリカと今手を握つて日本防衛をしつかりしておく、これがソビエトその他の日本に野心を持つている国の進出を防ぐゆえんである。これなければかえつて逆に日本がえじきとなつて、その結果世界第三次戦争のきつかけになりはしないかとわれわれは考えている。日本防衛を全からしめることにおいて、さような大きな戦争を防ぎ得る一つの手段となり得るものであろう、この意味からしてわれわれは日本防衛をしつかりやらなければいかぬ、こう考えているのであります。
  113. 松前重義

    松前委員 もう一回、私はどうも遺憾ながら長官と意見の一致をいたしません。私は日本防衛アメリカの生産力にぶら下り、アメリカのへその緒が切れたら生命がすでに断たれるというような行き方における防衛力を幾らふやしても何にもならないというのが一つの考え方であります。もう一つは、ただいま申し上げた世界情勢の考え方であります。こういう二点から考えまして、この防衛庁を中心とするもろもろの現在の政府の努力は、私は歴史的には批判されるときが必ず来るということを確信いたしているものであります。この点をもう一ぺんお考え直していただきたいということをお願いしておきます。
  114. 中村高一

    中村(高)委員 ちよつと関連して。その生産力の問題でありますけれども、今当分の間はおそらくアメリカに頼つてアメリカに兵器をつくつてもらつて、それを日本貸与かあるいは贈与を受けてやつて行こうという方針のように聞えるのであります。将来は日本の兵器産業を増強して、そうして自給自足し得るような態勢をとろうということが一つのねらいだ、こういうふうな長官の考えのようであります。しかしわれわれはいかに日本の工業力を発展をさしてみましても限度がある。たとえば原子兵器とかあるいは水爆のような、ああいうものがそう簡単に、日本で工業力を増進してもできるとは考えられないのであります。しかしまた一面において、日本は今後日本の経済を樹立するためには、どうしても平和産業を発展させて、そうして日本の製品を海外に輸出して外貨を獲得するという、いわゆる正常な形で行こうというような行き方に対して、もしも日本自衛隊の持ち得る兵器を全部日本の工業力でやつて行くということになれば、国内の平和産業というものはその兵器産業のために非常な圧迫を受けるということもわれわれは考えなければならぬのであります。あの大戦争のときにおきまして、日本はあれだけ全力をあげて軍需産業に突入した、それでも及ばなかつたのでありますが、もしもそういうような状態になつて来れば、再びまた日本の平和産業方面に対して大きな圧迫を加えて来ると思うのであります。そういうう場合が生じても、それでも日本の兵器産業というものをどんどん増強させて行かなければならぬのか。それともそこまでは考えておらぬのであつて、依然としてアメリカの兵器産業というようなものにぶら下りながら行くのか。その辺のところは、これは日本の将来の平和産業というものにも関連をして来ますので、日本の軍需産業というものをどういう形に伸ばして行こうとするのか。たとえば戦争中、民間の平和産業をどんどんつぶして軍需産業にして行つた、至るところの平和産業は、町工場に至るまで軍需工場にしてしまつたというようなことがあつたのでありますが、こんなことをしたならば、日本の産業は、正常な貿易の発展というものは阻害されると思うのであります。今の長官説明か行くと、将来はどんどん日本の兵器産業というものを発展させて行くようにも見えるのでありますが、どんなところで調整をして行こうというのでありますか。これは保安大臣としてでなく、日本の内閣の大きな意味においてひとつ考えてもらいたいと思うのであります。
  115. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私は将来においても、日本が一国だけですべてのことをやつて行くということは無理だろうと思います。いわゆる防衛にいたしましても、集団保障的のものを必ずわれわれは考えなくちやならぬ。将来においては、国連参加のことも考えなくちやならぬ。一国だけで日本防衛態勢を全部整えるということは、私は無理だろうら考えております。自由諸国家群がお互いに手を取合つて助け合つて行くというところに初めて世界の防衛体制が整い、これがひいては世界の平和をもたらすゆえんであると考えております。しかし日本といたしましても、日本の国情、ことに経済力の許す範囲内におてい、やはり体制を整えて行かなければならぬ。今中村君の仰せになりましたように、日本の平和産業を破壊してまでやるべきものじやないと考えております。われわれといたしましては、平和産業と相マツチして、徐々に日本防衛体制を整えて行きたい。それがいかなる程度に及ぶかということについては、なかなか問題があるので、われわれは慎重に考慮しなければならぬと考えております。
  116. 大久保武雄

    ○大久保委員 一点お尋ねいたしますが、先ほどの秘密保護問題とも関係がありますが、以前の海軍工廠でありますとか、航空工廠でありますとか、あるいは砲兵工廠でありますとか、昔の施設で現在残つておりまして、中には機械その他の施設が使えるものもございますが、こういうものについて将来何かお考えがありますかどうか、この点お尋ねいたしたい。
  117. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのところは、旧軍工廠を政府の手に収めてこれを活用するということは考えておりません。現在は各工廠が大体みな払い下げておりまして、民間においてこれを使つおるのであります。われわれは将来におきましても民間の産業を助長するという考えをもちまして、兵器生産にいたしましても、政府みずからの手で行わずに、なるだけ民間においてこれを行いたい、こう考えております。
  118. 大久保武雄

    ○大久保委員 先ほど日本側における秘密保護をやつて行くというような御答弁もありましたが、なかなかむずかしい問題と思います。民間の工場を使つて日本の新しい兵器類の造成をして行くか、あるいは若干ある程度のものは自分でもつて造成をして行くか、その辺はかなり機微な問題があると思いますが、その点はどんな御方針をお持ちでございますか。
  119. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 われわれの方で技術研究所というのがありますが、これで根本理論を十分研究させて、試作なんかもそこでやります。そこで御承知の通り、一つの兵器にいたしましても、部分品が非常にたくさんある。各工場においてもそれぞれ特長がありますが、その特長を生かして、それを総合的に技術研究所においていろいろ研究して行きたい、こう考えております。
  120. 下川儀太郎

    ○下川委員長代理 これにて散会いたし、次会は明日午後一時より開会いたします。     午後四時七分散会