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1954-04-07 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月七日(水曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長代理 理事 下川儀太郎君    理事 江藤 夏雄君 理事 平井 義一君    理事 山本 正一君 理事 高瀬  傳君    理事 鈴木 義男君       大久保武雄君    永田 良吉君       船田  中君    八木 一郎君       山崎  巖君    須磨彌吉郎君       粟山  博君  早稻田柳右エ門君       飛鳥田一雄君    田中 稔男君       川島 金次君    中村 高一君       松前 重義君    中村 梅吉君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  防衛庁設置法案内閣提出第九四号)  自衛隊法案内閣提出第九五号)     —————————————
  2. 下川儀太郎

    ○下川委員長代理 これより開会いたします。  委員長が所用のため、理事であります私が委員長の職務を行います。  本日は昨日に引続きまして、防衛庁設置法案及び自衛隊法案の両案を一括議題といたし、質疑を続行いたします。中村高一君。
  3. 中村高一

    中村(高)委員 木村保安庁長官に、今度の防衛庁法並び自衛隊の本質的な問題を先に二、三質問をいたしまして、あと内容についても質問したいと思うのでありますが、従来の政府のいわゆる保安隊漸増方針というものの説明につきましては、憲法範囲内において保安隊漸増して行くという方針は、首相のしばしば言明並び木村長官から説明をされて来たことでありまするが、特に今度の自衛隊法を見まするというと、まつたく従来の保安隊とは性格をかえておるのであります。従来政府説明をして来ておりまするところはいわゆる漸増方針でありまして、あくまでそれは憲法に従つたその範囲内における漸増であるということでありました。従つてその任務というようなものにつきましても、保安庁法にありまするように、従来保安庁任務が、人命及び財産を保護するというような、一つ国内治安維持というようなものに主力が置かれておりましたことは明らかであります。しかるに今回の自衛隊法によりまするならば、その点については明確に「直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務とし、」ということになりまして、従来保安隊の持つておりました任務というものはそのあとにつけ加えられるというような形になつて、「必要に応じ、公共の秩序維持に当るものとする。」という、こういう形にかわつて来ているのは大きな特徴であります。従つて従来の保安隊を、われわれが説明を受けておりましたいわゆる漸増方針というものから考えまするならば、これは漸増ではなくして、まつた内容を一変いたしておるのでありまして、ここまで来ればわれわれは憲法戦力に抵触するものであることは明らかであると思うのであります。先日も与党の平井義一君から男であるか女であるかわからぬというような質問でありましたが、確かに今度の自衛隊法は、もう露骨な再軍備でありますることは、直接侵略並びに間接侵略に対してわが国防衛するというこの任務を明確に規定した点からも明らかであると思うのであります。これが一体従来の政府漸増方針に抵触するものではないかどうか、これをまずお聞きしたいのであります。今までは一つわくの中における漸増方針であつたものが、まつたく今度は目的をかえておるのでありますが、この従来の方針と今回のとは明らかに相反するものでありまして、この点については、われわれは憲法上許されない範囲まで進んでいると思うのでありますが、この点に関します長官の御意見と、さらにこういう方針にかわつて来たそのことをさらに答弁を願いたいのでありますが、最初から政府説明している漸増方針というものが、こういうところまで持つて行つて、そうして最後にはどこかで切りかえをやるという、その線まで持つて行こうということが最初計画であつたのか、それともその後の情勢の変化によりまして、たとえばMSA協定をするとか、あるいは国際情勢がかわつて来ているとか、そういう外部的な事情によつて、こういうような任務を変更するというような進み方をしているのか、これは今までの政府方針説明と明らかに反しますし、おそらく今までの速記録などを比較対照いたしますれば、政府説明とは至るところで食い違いをしていることは明らかでありまするが、これにつきまして長官から御説明を願いたいと思うのであります。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。政府漸増計画は終始一貫かわりございません。今度の保安庁法改正によりましても、その方針はかわつていないのであります。申すまでもなく一国が独立国家といたしまして自衛権を持つていることは当然であります。自衛権の裏づけでありまする自衛力を持つことも、これまた当然な事由であります。そこで従来の保安庁法によつて見ますると、その保安隊任務わが国内の平和と秩序維持することを主たる任務としたものであります。しかしながら日本は、独立国家となつた以上は、わが国防衛についてもみずからの手で徐々にやつて行かなければならぬ、これまた当然な事実であります。よつてこのたびの保安庁法改正によりまして、みずからの手によつてみずからの国を守る体制を整える、これは一挙には行けないが、いわゆる漸増方針によつてつて行こうというのがその趣旨であります。従いまして、改正防衛庁設置法案並びに自衛隊法案において、自衛隊任務を明らかにして、すなわちわが国の平和と独立守つて国の安全を保つため、これと同時にまたわが国秩序維持するために自衛隊は行動をなすものである、これをはつきりさせたわけであります。決して政府漸増方式をかえたものではありません。しかも憲法においては決して自衛力は否認されておるわけではありませんから、いわゆる憲法第九条第二項の戦力に至らざる程度においてこれを持つことにいたしたのであります。  次に、かような計画は、初めから知つてつてつたのじやないかということでありますが、もちろん警察予備隊をつくりますときには、国内の平和と秩序維持するための任務を負わしたのでありますが、その後日本防衛体制を立てて行く上において、アメリカ駐留軍の手にいつまでもたよるということはいかぬ、徐々に日本においてもみずからの手による体制を整えて行くべきであるという観点からいたしまして、今申し上げました通り防衛庁設置法案並びに自衛隊法案を御審議願つて、これに基いてわが国体制を徐々に整えて行きたい、こういう趣旨にほかならないのであります。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 従来の政府漸増方針というものに何らかわりがないというのでありまするが、これは長官委員会などで質問を今まで受けて、それに対します答弁などは、過去におきましては、たとえば直接侵略を受けた場合に、日本保安隊で戦うのかどうかというようなことに対しまして、当初は、日本保安隊の持つております武器、装備、あるいは航空方面の力、あるいは海上におきまする装備、こういうようなものから考えて、とうてい直接侵略などには対抗できるものでもなければ、そんなことができるはずはないというような答弁で今まで主としてやつて参りましたが、MSA協定が近づいて来てからその方針がだんだんかわつて参りまして、直接侵略にも対抗しなければならぬというような方針に漸次かわつて参つておりますことは長官自身もそれは認めざるを得ない事実であります。われわれもしばしばそういう発言を聞いて来たのでありますが、そうしますると、さらに重ねてわれわれのお尋ねしたいのは、今後一体どこまでこの方針をやつて行くのか。たとえば憲法範囲内において従来の漸増方式をそのままやつて行くのか、あるいは適当な時期には憲法改正してさらにやつて行こうとするのか、こういう問題になるのでありまするが、これも長官自身が、国民全体が憲法改正しろという時期が来ればやる、こういう趣旨答弁をせられているのでありますが、今までのたとえば保安隊人数も十一万でありますものが今度十五万になるのであります。これは自衛隊ができますと、ただちに十五万の実行にかかるものと思うのでありますが、政府考えております漸増方式というものは、憲法改正に至らないといたしまして、それはまだ次の問題といたしまして、現状においてはどういう程度までこの自衛隊漸増して行こうというのか。昨年でありましたか、海陸空の大体どの程度計画があるかというようなことを長官が漏らしたとか漏らさないとかいうて大分問題になりましたああいう計画実行を順次して行こうというのか。あるいはこの十五万という人数はここ当分のものであるのか、いつごろまでこの十五万でやつて行こうとするのか、将来はどのくらいまで漸増して行こうとするのか、おそらく政府にも相当の見通しがなければならぬはずでありまして、具体的なものがあるかどうかは別といたしまして、その点についてどういう見通しでやつておられるのか。これは政府自衛隊の将来の予算等にも関係して参りますし、その規模などは、今度の自衛隊法によりますならば、直接侵略を受けたときには、武力行使までもせなければならぬということになつているのでありますから、どの程度が大体目標であるか明らかにしていただきたいと思います。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。自衛力漸増最終目的いかんという御質疑でありますが、われわれといたしましては、どこまでもみずからの手によつてみずからを守り得るだけの体制は整えて行きたい、これは終始かわらぬのであります。しかしながら、今ただちに駐留軍が全部引揚げてそれにかわるような大きな力を持つということは、日本国情といたしましてはとうてい許すことはできないのであります。残念ながらアメリカ駐留軍と手を携えて日本の国を防衛するほか道がない。しかしいつまでもアメリカの力によるということは、われわれとしては国民感情その他もろもろの点からして行くべきじやないと考えております。そこで日本国情の許す限り、端正に申しますれば、日本財政力の許す範囲内においてわれわれは徐々に日本自衛力を増して行きたい、これが考え方であります。そこでまずさしあたりの問題といたしまして、二十九年度におきましては、今申されましたように、十一万の保安隊員を十三万に増員し、また警備隊においても若干の増加をいたす次第であります。これはすべて財政力その他人員募集の点、いろいろの点からして考慮した結果にほかなりません。そこで三十年度、三十一年度はどうあるべきかということについては、われわれは今せつかく検討いたしております。しかしながらこれとても最終の結論を出すのは容易でないのでありまして、いわんや、日本がみずからの手によつてみずからの国を守る、アメリカ駐留軍の手によらずして守り得るだけの体制をいかにして整えるか、その計画なんかについては、なかなか容易に見通しはつきません。せつかくわれわれはさしあたりの三十年度がいかにあるべきかということについて慎重に検討しているような次第であります。
  7. 中村高一

    中村(高)委員 自衛隊の隊の数とかあるいは内容とかいうようなものについては、おそらく政府ではもつと大きなものを構想しておることは明らかだと思うのであります。将来のことをあまり明確にされないのは、問題を起してはならぬという用意から、おそらくわかつておるとは思うけれども、言わないのだろうと思うのであります。しかし現状においても直接侵略と戦い、あるいは場合によりますならば、自衛隊の全部または一部が直接侵略を防ぐために出動をしなければならないというのでありまして、結局自衛隊出動するということになれば交戦をすること、これは予想せられるのであります。しかしここにも憲法のいわゆる交戦権との問題が出て来るのでありまするが、今度はいよいよ自衛隊法で明確に出動をするという規定はつきりされまして、今までの保安隊のような消極的な規定ではなくして、今度は堂堂ととにかく内閣総理大臣武力を行使するということでありまして、見方によれば、昔の天皇制時代天皇宣戦布告と同じようなものが総理大臣から出るのでありまして、全部または一部の出動でありますからして、これは全部の出動を命ずるということになれば、宣戦布告と同じほどの力を持つものだと思うのでありまするが、こういうことまでも憲法改正せずにやろうというのでありますからして、法律専門家であります木村長官が、内心悩まなければならぬはずであります。戦争ができるという、こういう規定を置きながら、憲法範囲内などと言うことは、法律専門家としてはまつたくむちやなことであります。おそらくそういう点については、もうすべてを覚悟してかかつておる仕事と思うのであります。ドイツにおきまして、御承知のように憲法改正して再軍備に乗り出しておるというようなことは、われわれはある意味においては法律を守るという行き方でありますからして、りつぱだと思うのでありまするが、日本のは、こういうドイツのやつておるような国会承認を経て、堂々と憲法改正するというようなこともいたしておらぬのであります。おそらくできるならばやろうという気持は長官も持つておるのだろうと思うのでありますが、何ゆえに一体これまで露骨な規定を置きながら、なおかつ憲法に抵触しないと言うのか、私は理解できないのでありますが、この点について政府はなぜ憲法改正して堂々とやつて行こうという、そういう決心と努力をせないで、法律をまるで空文化するようなこういうやり方をするのか、やつてあるいは勝ち目がないということも予想されるのだと思うのでありますが、あるいは現在の国会情勢からして、三分の二の提案権というものが必ずしも得られないから、保守合同でもやつたあとにそういうことをやろうという、そういう見方であるのか、それともなあに憲法改正しなくても、もう自衛のためならばどこまで行つたつていいのだ、こういう方針なのか、これもひとつはつきりしていただきたいと思います。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。憲法改正すべきかどうかという御質疑であります。申すまでもなく憲法は一国の基本法であります。これを軽々に改正するということはよくないことと私は考えております。しかし憲法ももちろん不動のものではありません。改正すべき時期が来れば改正すべきであろうと考えます。その時期については、申すまでもなく私は、国民が真に憲法改正すべきであるという意図がはつきりした上にやるべきではないかと考えております。みだりに憲法改正するというようなことを申し上げることは私はできません。そこでわれわれといたしましては、現憲法下において日本防衛をいかにすべきかということについて思いをいたしておるのでありますが、申すまでもなく国家はいわゆる自衛権を持つていることは当然であります。他国から不当の武力攻撃があつた場合に、おめおめ手を上げてその蹂躙にまかせるということがあつてはならぬ、さような場合にはもちろん全国民が立つて国防に当るでありましようが、一国としてはやはりふだんからさような不当な国外からの武力攻撃に対しては、これを阻止するだけの力を持つことは、国家として当然の事理であろうと考えます。憲法においてもこの自衛力を持つことを否定していないのは、まさにそれに起因すると考えます。これを要するに個人として正当防衛権あると同じく、憲法以上のものであろうと考えます。国の存立の本来のあり方がそうであると私は考えております。そこでわれわれといたしましては、憲法わく内において自衛力を持つて、不当な国外からの武力攻撃に対してこれを阻止するだけの力をふだんから持つ、その意味合からして今後の法律改正をするということになつた次第であります。中村君もりつぱな法律家でいられるのでありますから、よくその点は御了解を願えるであろうと考えます。
  9. 中村高一

    中村(高)委員 私の聞いているのは、こういうふうに交戦権まで得て、軍隊が出動し、自衛艦隊が出て行つて、現実に戦争のできる規定までも置いて、それでも憲法改正しないで順次増強して行くのか。きようの新聞を見ますと駆逐艦を十七隻とか、アメリカから借りる協定をすると伝えられておりますが、駆逐艦まで来て、いざという場合に出動する、そして防衛のために交戦もするという、ここまで来てもなお憲法改正せずしてやつて行けるのだということになれば、おそらくもう際限なく、この次は駆逐艦でなくてどんな大きな軍艦も、あるいは爆撃機も自由自在にやつても、防衛のためならば憲法改正しなくてもいいという、そこまでお考えなのかどうか、これは将来のために明確に速記録にあなたは残しておく必要があると思うのであります。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今アメリカから駆逐艦貸与を受ける交渉中であります。まだどこまで実現するかわかりませんが、確かにそれを借り受けるということを考えております。ただ隻数あるいは艦種もろもろの点から考えてみましても、さようなものを日本防衛庁で持つたからといつて、ただちに再軍備ということは、私は言うことができぬと考えております。いわゆる憲法第九条第二項の「戦力」の定義でありまするが、これは要するに非常な総合戦力をさしておるものでありまして、われわれはどこまでこの戦力に至らざる程度において——繰返して申しますると、憲法わく内において日本防衛体制を立てて行きたい、それでもつてわれわれはいろいろな計画を進めている次第であります。
  11. 中村高一

    中村(高)委員 駆逐艦の問題が出ましたから、もう一つこの点をはつきりしておきたいのでありまするが、近いうちに、新聞によると九日の閣議で決定をせられるというところまで進んでおるそうでありまするが、さように具体化しておるのかどうか。それからこの前のフリゲート艦のときには日米船舶貸与協定というのでありまして、あのときにもわれわれは、フリゲート艦というのはアメリカの海軍の使つてつた一種軍艦ではないか、それをなぜ船舶なんという名前でやるのか、初めから今度のように艦艇というような文字を使わないかという質問をしたのに対しては、それは軍艦じやないのだ、フリゲート艦というものは軍艦じやない、あるいは上陸支援艇などというものは軍艦じやない。だから艦という名前には当らない、船舶だというので、この前のときは日米船舶協定という名前で、一応いくさ船ではないというようなごまかしの説明をして押し切つて今日に至つておるのでありまするが、駆逐艦となると船舶貸与とはおそらく言われないだろうと思うのでありまして、今度はどういう名前使つて協定をせられるか。伝えられるような日米艦艇貸与協定か、それとも今までのようにまた船舶協定というような形で来るのか、この点もはつきりしておく必要があると思います。なお今度の駆逐艦は十七隻とありまするが、その内容MSAで制限をされておりまして、千五百トン以上のものは借りることができないので、どうしてもやむを得ず新しい協定をつくらなければならぬというのだそうでありまするが、この駆逐艦の一番大きなものは今度は何トンくらいのものが借りられるのか、もう内容新聞にも発表されておりますから、この点はここではつきりしていただきたいと思います。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まず最初に御質問新聞記事の点でありますが、さような協定がすでにでき上つてもう閣議で了承を得たのではないかというような点であります。それは断じてさようなことはありません。われわれといたしましては今下相談をやつておるわけであります。申すまでもなくMSA協定によつてもらい受ける船は千五百トン以内であります。千五百トン以上については別の協定を結ぶ必要があるのであります。従いましてわれわれが考えておりまする千五百トン以上の船については、あらためて協定を結んで国会承認を得たいと思つております。ただいまの構想では二千トンくらいの駆逐艦を数隻借り受けたいと考えております。きまりましたら国会の御承認を得たい、こう考えておる次第であります。  次に、フリゲートアメリカ軍艦であつたにかかわらず、日本では船舶協定という名を用いたのはどうかということでありますが、御承知通り船舶と言えば大きい意味なんです。広い意味でありまして、船舶の中に船も入り軍艦も入るのです。ウオーシップです。(「新説だな」「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)ことにわれわれは、保安庁においてフリゲートを借り受けますときには、もちろん保安隊任務国内の平和と秩序維持することにあるので、主としてその方面任務を持つための借受けであります。それで貸借協定船舶と申したのであります。今度もらい受けまする千五百トン以上のアメリカ使つてつたいわゆる駆逐艦を、どういう形の名前をもつて協定を取結ぶかということについては、まだはつきりしたことを申すことはできません。どういう文字を使うかということは今後の問題であります。しかし私はこれは艦艇貸借協定と言つたところでさしつかえないと考えております。それらの点については、どういう文字を使うかということは、実はまだ確定いたしておりません。
  13. 中村高一

    中村(高)委員 まことに長官新説でありまして、日本人の常識からは軍艦も全部船舶だなどという言葉は使う人はないのでありまするが、長官の説から行きますならば、戦闘艦も巡洋艦も航空母艦も、何でもみんな船舶だと言うかもしれません。浅薄な知識で問題にならぬのでありまするけれども、この点については、いずれ国会に提議されて来ると存じまするから、そのときにまたお目にかかることといたします。  次に自衛隊出動についてお尋ねしておきたいのであります。今度は外部から武力攻撃あるいは外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含むとあるのでありまして、そういう場合には内閣総理大臣国会承認を経て部隊出動させることができることになるのでありまするが、これはさきにも申し上げましたように、言葉をかえて言いますならば、宣戦布告というような解釈もとれるまことに重大なことでありまして、日本の戦後の法律といたしまして、ここまではつきり部隊出動ができるというような法案が出たのは初めてであります。しかもこれが外部からの武力攻撃というのでありまするか、外部からの武力攻撃のおそれのある場合も含むということになりますると、きわめてこれは広汎でありまするし、解釈内閣総理大臣が自由にやり得る危険もあるし、またどういう機会に出動を命ぜられるのか、一朝これを誤りまするならばまことにたいへんな問題になり得る規定でありまするが、国会承認を経てやるというこの規定は確かにありますけれども、おそらく具体的な問題の起つた場合に一々国会承認を経て部隊出動を命ずるなんということは、実際の場合はなかなかできないことだと思うのであります。そうするとそこの但書にあるように、特に緊急の必要がある場合には国会承認を経なくてもいいということでありますから、大体部隊出動を命ずるような場合は、ことに一部の出動のときなどはおそらく緊急の必要がある場合であつて国会承認は経なくてもいいということになつてしまつて、ますます危険な場合が予想せられるのでありますが、一体この国会承認内閣総理大臣出動命令権との関係はどのようにして調整をせられるお考えでありますか。まことに重大な規定でありますから、いかに国会との調整をはかつて行くつもりであるかをもつと明確に説明を願いたいと思うのであります。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。民主主義国家においては国会が国権の最高機関でありますので、こういう場合においてもすべて国会において処置をして行くという建前をとつておるのであります。しかしながら国外から不当な武力攻撃があつた場合には、一刻も許すことができないのであります。そこで行政府の最高の長であります総理大臣が、すべての情勢判断からして出動命令を出す。出すが、民主国家の建前として、原則として国会承認を後る、これが本法案の意図するところであるのであります。すべて国会においてそれを決しよう、ただ緊急やむを得ない場合においては国会承認を得ることなくして出し得る。しかしそれとても事後においてただちに国会承認を経なくちやならぬ。国会においてさような出動をする必要がないと認めれば、それを承認することを拒否する。その場合にはただちに出動部隊を撤収させるということになるのであります。要は国会においてすべて出動の可否を決する建前をとつておる次第であります。
  15. 中村高一

    中村(高)委員 規定の上では確かに長官の言われまする通り国会承認を得る、こうあつて、いかにも民主国家法律だという説明はできるのでありますが、しかし外部から武力攻撃のあるような場合、それに応ずるのは緊急な場合が大部分だと思います。そうすると国会承認を得るという規定はあるけれども、緊急の場合は得なくてもいいということになるのでありますから、大体において緊急だということになれば、ほとんど国会承認は事後承認になるのではないか。幾日か前から向うが宣戦布告して、そしてさあ行くぞというような場合はおそらくないだろうと思う。この出動の場合も、「全部又は一部の出動」とありますが、武力攻撃などというものはいつ、どこへ向うの飛行機が来るか、あるいは艦艇が攻撃して来るかわからないような、突発的な場合が多いと思います。そうすると国会承認というようなものは、原則的にはここに書かれておるけれども、おそらく実際の場合においては、内閣総理大臣出動の命令を緊急の場合だとかいうのでしてしまう。ここではいかにも民主的に国会承認を経て出動するというふうには書かれておるけれども、事実は国会承認は事後承認になつてしまつて、結局これは時の内閣総理大臣の専権になつてしまうおそれがあるのではないかということを私は聞きたいのであります。その点が一番重要でありますから、そういう点で国会承認を得るというこの規定を一体尊重せられるかどうか、これを聞きたいと存じます。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。もとより総理大臣出動命令を出さなければならぬような場合は緊急やむを得ないときであろうと考えます。今のお説の通り国会を開いて承認を得ておるひまのない場合が多かろうと思います。それであるから一たび総理大臣出動命令を出した後において、ただちに国会を召集して国会承認を求めなければならぬ。国会で不承認の議決があつた場合にはこの出動をとりやめさせる。ここで調節ができると考えております。
  17. 中村高一

    中村(高)委員 これは今長官も言われるように、おそらくこういう場合は事後承認が多くなつてしまつて、事前に承認を得るというようなことは事実問題としてはないと思うのでありますが、われわれの心配いたしますことは、内閣総理大臣がそういう出動の命令をする場合において国会承認を得るひまもないという場合に、一体どういう機関にはかつて出動を命令するのか。防衛庁法によりますと、国防会議というのがあるのであります。しかもこの国防会議によりますと、出動規定がこれにもあるのであります。内閣総理大臣が国防会議にはからなければならないというものの中に、防衛出動の可否というものがありますが、こういう出動をする場合にはこの国防会議というようなものにかけるのかどうか。国防会議で諮問をして、可否とありますから、よろしいということになればそこで初めて出動するものか、それとも幕僚あるいは長官がその自衛隊の機関の意思をまとめて内閣総理大臣に助言をするとかいう形で行くのか、この点を伺いたいのであります。なお国防会議の性格、構成は、何か政令とか法律で別に定めるというのでありますが、国防会議というものは、どういうふうに今構成して行こうというのか、あらかじめその用意をされておるものをお尋ねしたいと思うのであります。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。出動の可否を国防会議にはからなければならない。まず出動については国防会議にかけることが条件になつております。もちろん総理大臣防衛庁長官初め各幕僚の意見をつぶさに聞いて、情勢判断のもとに出動の可否をきめるのでありますが、さらに国防会議にかけましてその可否をどうするかということを諮問するわけであります。従いまして総理大臣がみずから専断をもつてやるということはないはずでありますし。こうして国防会議の構成、内容いかんという問題でありますが、これはただいまわれわれはこの機構なり構成なりについて十分検討を加えております。ただ、今のところでは結論に達していないのであります。結論に達しますると、これを法案に作成いたしまして、国会の審議を願いたい、こう考えております。
  19. 中村高一

    中村(高)委員 国防会議にかけて出動をするということになる、そうすると、国会承認というものは緊急やむを得ない場合には事後承認でいいという、国防会議には出動する場合にはどうしてもかけるということになると、国会というものはまるで——あと承認を経ればいいのだが、国防会議というものは出動については国会以上はるかに強力な権利を持つて、もし国防会議でだめということになれば出動できないという結果にあるいはなるかと思うのでありまするが、場合によれば国防会議も国会と同じに事後でやるという場合もあるのか、それとも国防会議だけは防衛出勤の可否を問うとありますから、どうしてもこれだけは通さなければ、内閣総理大臣出動を命ずることができないのかどうか、ここはまことに重要でありまするから当意即妙でなくていいですから、よく専門家に聞いて答えていただきたい。あまり出たとこ勝負をやられては困りますから…。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。国防会議は内閣総理大臣の諮問機関であります。決定機関ではありません。そこでこの出動させるやいなやということ——国家の重大事でありますから、国防会議に出動すべきであるやいなやということを諮問して、国防会議の意見を聞くわけであります。  そこで今お話の国防会議の方が、国会よりはるかに力を持つているのじやないか、そうじやないのであります。国会出動の可否の決定権を持つておるのであります。そこで時間的に申せば、おそらく国会を開いて国会においてその可否を決すべき時期はむずかしかろう、これは私も想像しております。そこで一旦出動総理大臣が命じておつても、ただちに国会においてその可否をはからなければならない。国会において不承認の決議があれば、ただちにこれを撤収しなければならぬということになるのでありますから、要は国会出動の可否を決することになるものと御了承をお願いしたいと思います。
  21. 中村高一

    中村(高)委員 ところがこの規定によれば、内閣総理大臣は国防会議にはからなければならない。「左の事項については、国防会議にはからなければならない。」と書いてあるのですよ。そうして第四に「防衛出動の可否」とある。はからなければならないのだから、国防会議にどうしてもはからなければならない。ところが国会の方は、緊急の場合には事後承認でよろしい、あとになつて国会承認を経て、いけないといつたらもどつてくればいい、こう書いてあるのですね。これでは国会の方がいけないと言つたらもどつて来ればいいので、あとどういうことも書いてない、ただちに自衛隊の撤収を命じなければならぬ、帰つて来ればいいというだけで、そうすると国防会議の方にも緊急やむを得ない場合には国防会議にはからなくてもいいということを書くならば、ややわからないこともないが、片方は「国防会議にはからなければならない。」とありながら、片方国会の方は、あなたは民主国会だなどといつて、ばかにそこに力を入れておりながら、内容においては、あとになつてかけて、だめだつたら帰つて来ればいいでは、国会承認というものはまるで軽視されておる。なぜ国防会議の方にも緊急の場合にははからなくてもいいということを書かないか、これはどうですか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。国防会議のときには、緊急の場合にははかることを要しない、それでは国防会議でも何でもない。国防会議には、いわゆる総理大臣の諮問機関としてはかるのである。これは可否を決定して、そのまま決定になるのではない。国会が決定権を持つておる。一ぺん出動してあとでもつて国会において不承認の決議をすればこれは撤収しなければならぬ。これは大きな意味の相違があるのであります。これは全然問題外と私は考えております。
  23. 中村高一

    中村(高)委員 それはおかしい。「防衛出動の可否」とあるから可と出ればいいが、国防会議にはかつたら否と出たらどうなりますか。国防会議に相談してみたら出動してはいけないというときはどうするか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国防会議は諮問機関であります。決定機関じやありません。国会は決定機関であります。その相違があります。
  25. 中村高一

    中村(高)委員 これはどうもはつきりしないし、まことに重要な規定であつて、場合によつたならば、国会承認というものはまるで形式的なごまかしのようにわれわれには見えるので、この点はさらにわれわれも研究したいと思つておりまするが、国防会議というものに、諮問機関であるからはかるというのでありまするがそうするとその国防会議の内容も、また構成も重要になつて来るのでありまするが、この法案をつくる以上、これだけ国防会議を重要視して書かれております以上、考えておらぬはずはないと思いまするが、おそらくその中には出動に関係のある大臣は入るのだと思う。たとえば通産大臣であるとか、あるいは直接出動に関係のある外務大臣とか、そういうようなものが参加するのだと思いますが、この国防会議の中には、専門の旧軍人が入るのではないかということも言われておりまするが、昔の軍人の専門家がこの国防会議に参加するかどうか、あるいは民間の軍需工場というようなものの代表者も入るのだと思いまするが、一体そういう点についてはどの程度まで発表できますか、この点もお尋ねいたしておきます。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国防会議の構成メンバーの中に民間人を入れるかどうか、その点はわれわれといたしまして、各種の方面から検討中であります。まだ結論には達しておりません。
  27. 中村高一

    中村(高)委員 結論には達していないから、まだ法律ができていないというのでありましようが、大体の構想くらい考えておらないとは考えられないのでありますが、たとえば旧軍人などを国防会議に採用するかどうか、そういうようなこともまだきまつておりませんかどうか。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま検討中でありまして、まだ申し上げる段階までは進んでおりません。
  29. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 関連質問。この国防会議というものは非常に重要なものと考えますが、それに関する法律がこの防衛庁設置法案と同時に国会に提出あつてしかるべきだと思いますが、なぜ同時に提案しなかつたか。それからまた提案の遅れている事情を少し詳しく御説明願いたいと思います。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お説の通りであります。ほんとうなればこれを法案と同時に提出すべきであろうと考えておりますが、しかしいろいろ事情がありましてその構成をどうするか、内容いかんということについてはまだ結論に到達しておりませんから、残念ながら同時に提出することができなかつたわけであります。
  31. 中村高一

    中村(高)委員 国防会議のことはいずれ別にまたあらためて議論するといたしまして、今度は武力行使に関する規定についてお尋ねをしたいのであります。  何か武力行使をいよいよするというような場合においては戦闘が行われるのでありますから、おそらくどちらにいたしましても、どういう結果になろうともそれは交戦をされるのでありますから、双方とも全力を出して敵をやつつけるということは、これは武力行使の場合には当然出て来ると思うのでありますが、その武力行使についてわれわれが理解することのできないのは、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」という規定があるのでありますが、これはどういう趣旨なのか。いやしくも武力を行使する場合に、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を越えないということはだれが一体判断をするのか。おそらくこれは第一線で武力行使をするものが判断をしなければならない。それが幾らも出て来ると思うのでありますが、どういう意味で、武力を行使する場合には必要の限度を越えないという規定が置かれておるのか。たとえば現在問題になつております原爆、水爆などを使うというようなことは、いかなる場合でも必要と判断される限度を越えておるものだと思うのでありますが、使用する武力行使の武器あるいは爆弾のようなものについての考えがこういう規定になつておるのかどうか。まことにむずかしい規定でありまして、必要の限度というのはどこにあるのか御説明願いたいと思います。
  32. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 お答え申し上げます。八十八条の武力行使規定につきまして、第二項で事態に応じ必要な限度を越えてはならないという規定を設けましたのは、一つには八十八条の武力行使というものが、あくまでも自衛権の行使として行われるものであるという趣旨に出るものでございます。国際の法規慣例等によりますと、そういう点の考慮が必ずしもないのであります。わが国の今度の自衛隊法案に盛られておる権限の行使というものは、自衛権の行使である、その範囲におのずから限界があるべきであるというところに一つの理由があるのであります。それから事態に応じ必要な限度の判断は、これは全体としてやはりなさるべきものであろうと思うのでありまして、相手方の武力攻撃程度、やり方等に応じまして必要な、合理的な限度というものがおのずから出て参るこういうふうに考えるのでございます。
  33. 中村高一

    中村(高)委員 そうしますとあいまいであつて、必要な限度というものは全体を考慮するという意味と言うのでありますが、実際に武力行使をやつているものは前線でありまして、どの程度が必要の限度であるかなどというようなことを後方におつて考えておつたつて、なかなかそれは判定ができるものではないし、やつている最中限度を越えてしまうのがあたりまえだと思うのでありますが、それならばかりに敵機が日本の上空に来たという場合に、これを自衛するために武力を行使する。向うが逃げたらどこまでも追つて行くというような場合を想像してみて、逃げてしまつたらもう追つて行かないのが必要の限度だ、それから先まで追いかけて行つて落すなどというようなことは防衛の限度を越えるというのか、それともそんなものはかまわず追いかけて行つてぶち落してもこれは必要な限度なのか、これは実戦になつてなかなかむずかしいと思うのであります。あるいは海の方においても向うから発砲をして来るこつちが出かけて行つたときに向うが向きをかえたならば、もう逃げるのだからやらぬのがいいじやないか、必要な限度はこの程度引揚げるというのか、あるいは追いかけて行つてまた発砲もできるのかどうか、これはなかなかむずかしい規定でありますが、こんなことはおそらく必要のない規定だと思うのでありますが、具体的に言つたならばどうなりますか、今言つたような例、たとえば敵機が来たというような場合に必要な限度はどの程度ですか。
  34. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 具体的な場合と申しますけれども、それだけの事態を考えるということは、はなはだ困難であろうと思うのでありまして、一方面の局部だけとらえまして必要な限度かどうかということの判定はむずかしいと思います。全般の状況を考えてみた上で、どこまでの行為が相手国の急迫の、不正なる侵害であり、わが国防衛するために必要やむを得ざる手段であるということの判断によつてきまるものだろうと思うのであります。
  35. 中村高一

    中村(高)委員 どうもあまりはつきりいたしませんが、初めからこの法律自体があいまいなんでありますから、これに明確な答弁をするということになればうそを答弁する以外に方法はないのであります。法律があいまいなものでありますから、これは別に考えるよりしかたがないと思うのでありますが、もう一つ予備自衛官の規定がありますが、わからないのは予備に編入をされております者がやめようとする場合にも、やめてはならないという規定があるようであります。これはどういう点でやめさせないのか、ちよつと理解できないのであります。今の自衛隊は志願兵であります。一ぺん予備になつたとしても憲法で職業選択の自由もあるのでありまして、どういう職につくもその人の自由でありますが、予備自衛官で規定をされた年限を通つても必要に応じたならばやめてはならないというような規定があるようでありますが、志願兵制度である現在の自衛隊としては——徴兵ならば別であります、徴兵ならばあるいは初めからやめてはならぬということもできるかもしれませんが、こういう志願兵制度であるときに、予備隊に編入されて、もう自分はやめてほかの職につくというような場合でもやめてはならないという。そうすると、いろいろ職業に支障を来す場合などもあると思います。これは憲法違反の規定だと思いますが、この点についてはどう思われるか。  それからもう一つ、予備自衛官の人数は一万五千人とするとありますが、これは一体何を目標にして一万五千人を予備自衛官にせられるのでありますか、この二つを御答弁願います。
  36. 増原恵吉

    ○増原政府委員 特別の場合に、予備自衛官の任期が参りましても、やめることを認めないというふうな規定を置いておりますが、これは予備自衛官に限りません。一般の二年もしくは三年の任期のある自衛官につきましても、特定の場合にはやめることを認めない。特別の事由がある場合にはもちろん認めまするが、特別の事由がない場合にはやめさせない。その最も代表的な場合は、防衛出動命令がありまして出て行つておる場合、そこで二年の任期が切れたり、三年の任期が切れたからやめると言われたのでは防衛を全うすることができないということになりますので、そういう場合にはそれぞれ延ばし得る、期間には事態に応じて区別がございますが、必要な期間これを延ばすことができるというふうにしたわけであります。そうしてこれはそういう条件のついた形において公務員としての公契約を結んで応募して来るわけでありまして、これは憲法に違反するものではないと考えられるわけであります。  予備自衛官の定数を一万五千といたしましたのは、本年、二十九年度でありますが、陸上自衛隊における隊員にはみな二年の任期が参るわけでありますが、このうちで続いて自衛官として勤務しようという者が、もとよりあるわけであります。やめようという者もあるわけであります。このやめる人のうちから予備自衛官を募集するわけであります。すると現在までにすでに警察予備隊以来やめて行きました者が三万数千あります。それと今度やめまする者の推定が実は非常に困難でありますが、一応二万数千、三万弱というふうにつかんでおりまして、そうした者のうちで約一万五千の者を予備自衛官に採用できるであろうという推定に基きましたものが主たる理由であります。もとよりたくさんとれるから幾らでもとるという趣旨ではありませんで、現在この法律によつて増員されまする予備自衛官は、陸上自衛隊が現在のところ主たるものとして考えております。制服十三万になる陸上自衛隊防衛出動時等におきまする若干の充実増員ということを考え合せまして、一応一万五千という数を定めたわけであります。
  37. 中村高一

    中村(高)委員 一万五千という数字には大した根拠はないのですね。
  38. 増原恵吉

    ○増原政府委員 それくらいのものがとれるであろうという募集上の関係と、一応防衛出動時等を考慮した場合の補充とを考えたわけでありまして、きわめて正確に昔の軍の持つておりましたような予備動員、後備動員というようなものを考えたわけではありません。
  39. 中村高一

    中村(高)委員 それではもう一つだけで私は一応おしまいにしますが、今度のこの自衛隊法案の中にも、隊の秘密を守るという規定がありまして、その規定に違反すると処罰をされるという規定が五十九条にあります。現在外務委員会で審議をいたしております秘密保護法というのがありますが、この二つの関係について了解することのできない点がありますのでお尋ねしておきます。このMSA協定に附帯する秘密保護法にも武器あるいは情報などの秘密を漏らすと処罰されるという規定があります。ところがこちらの自衛隊法案の方にも同じような規定がありまして、「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」こういうことになつておるのであります。やはり同じ秘密を漏らしてはならないというのでありますが、片方の秘密保護法の方では十年以下だと思いましたが、ところが自衛隊の方では一年以下の懲役とあるのであります。片方は秘密を漏らすと十年、片方は秘密を漏らすと一年であります。一体これはどういうわけでこういう刑の均衡を失するのか、了解できないのであります。秘密保護法によりまするものも、結局アメリカから供与されるところの武器について秘密を漏洩した者が罰せられる。ところが現在自衛隊の持つております武器は、おそらく日本製のものではないと思うのであります。おそらく全部アメリカから供与される武器だと思うのですが、そうするとアメリカから供与された武器の秘密を漏らしたときにはどつちの法律で一体処罰をするのか、十年の方でやるのか、一年の方でやるのか。
  40. 増原恵吉

    ○増原政府委員 防衛秘密保護法によつて保護されます秘密は、法案にありますように、MSA協定なり船舶貸借協定によつて貸与、供与されます装備品等の高性能のものであつて、いわゆる防衛上秘密にしなければならぬという、平易な言葉でいえば、高度の秘密のものを守ろうということであります。そうして現在陸上自衛隊が米軍の方から事実上貸与を受けて使つておりますものには、この防衛秘密に当るものはございません。将来MSA協定によつてもらいますものの中にそういうものが出て来るという見込みであります。現在陸上で使つておるものにはないわけであります。いわば高度の秘密でありまして、防衛上その秘密が外部等に漏れますことがわが国防衛上支障がある、わが国の安全に害があるというような、平易な言葉でいう高度の秘密を守るために防衛秘密保護法案を提出しておるわけであります。第五十九条にあります秘密を守る規定、これに関する罰則は一般公務員法にあるものと同様でありまして、隊員が職務をとる上において秘密の事項を扱う場合に、それを漏らしてはならない。漏らした者は罰則がある。その罰則は一般公務員法によるものと同様でありまして、一般公務執行上の秘密保護であります。防衛秘密保護法案は、漏れることによつて日本の安全に害のあるおそれのあるようないわゆる高度の防衛秘密を保護するのであります。隊員が現在部隊で持つておりまするものには秘密はないわけでありまするから、武器等には秘密はございませんので、これを漏らすということはありませんが、隊員の漏らしました秘密が一般服務上のものであれば、五十九条によつて、これに基く罰則によつて処罰をされまするし、防衛秘密を業務務上漏らしたということになりますると、防衛秘密保護法によつて処罰をされる、こういうことになります。
  41. 中村高一

    中村(高)委員 別に次長の言うような隊員の服務上のなんというようなことは書いてないのです。自衛隊法には職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとあつて、それには服務上のものもあるいは別のことでも何でも含むことに解釈ができるのでありまして、次長の言うような解釈はこの法律からはとうていできない。それからアメリカから、これからMSAで武器が日本自衛隊に来る、これは高度の秘密だといわれる武器が来ると思うのであります。そうすると、たとえばこれから駆逐艦などが来るとして、おそらくその内部の構造などは高度の秘密という部類に属するかもしれませんが、そういうものを漏らせば、この秘密保護法で十年で処罰をされるという非常に厳重な処罰をされるのでありまするが、そういう場合にはすべて秘密保護法の方でひつかけて——職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとあるのですから、すべてをこれに含んでおりますけれども、それを重い方で罰するということになると、はなはだどうも隊員に気の毒だという場合がこれは必ず出て来ると思うのであります。そうなれば一体どこまでが高度の秘密か、どこから先が高度でないかということは非常な問題になつて来るのでありますが、隊員などに対して、そういうむずかしいどこからが高度の秘密だなんということを、今後秘密の武器が入つて来たならば一々知らせてやろうということですか。
  42. 増原恵吉

    ○増原政府委員 もとより隊員が扱いますような武器で、それに秘密がありまするような場合には、必ず隊員にわかりますように標記をしておくとか、標記のできない場合には、これは秘密の兵器であるということを明確に知らせるつもりであります。防衛秘密保護法におきまして心配をされておりまするのは、隊員よりもむしろ一般の人でありますが、一般の人に対しましては政令をもちまして標記その他のことを行うようにしまして、知らずして防衛秘密保護法にかかるというふうなことのないようにいたしまするとともに——これは行政措置になりまするが、一方法案の中にも、防衛秘密であるという認識がなければもとよりその人は処罰を受けないのでありまして、そういう犯意があることを犯罪構成要件にしておるわけであります。
  43. 中村高一

    中村(高)委員 過失によつても処罰されるというのですから、認識がなくても処罰されるのではないですか。今度の秘密保護法では過失によつても処罰されますよ。
  44. 増原恵吉

    ○増原政府委員 過失を規定しておりますのは、業務上知得をした者が過失によつて漏らしたという場合だけであります。知ることは何と申しますか、業務上正々堂々と知つて、それを過失によつて漏らした者だけで、一般の人には過失罪を設けておりません。
  45. 中村高一

    中村(高)委員 隊員のことであります。
  46. 増原恵吉

    ○増原政府委員 隊員はもとより業務上知るわけでありますから、その者が過失でこれを漏らしたときには処罰されます。
  47. 下川儀太郎

    ○下川委員長代理 江藤夏雄君。
  48. 江藤夏雄

    ○江藤委員 私はただいま上程になつておりまする自衛庁設置法案、それから自衛隊法案、この二法案についてでございます。この法案自体は今まで本委員会の各委員からいろいろ申し述べられました通り、特にきのうあたりは辻委員あたりから大分いろいろ批評を聞いたのでございますが、まことにこの法案それ自体は、何といいますか世界各国にほとんどその類例を見ないというようなことを辻委員が言われましたが、私はまことにそうだろうと思う。れそは日本の現在置かれている立場、位置そのものがほとんど世界にあまり例のない立場にある、そういうところから生てれ来たものでありますから、その点やむを得ないものであろうと思います。そういう意味において、露骨に言うならば、この法案はいわば私は過渡的なものであろうと思う。それでこういう法案政府としてどうしても出さなければならないようになられて出されたわけでございますが、この法案を出された政府の根本的な考え方、これを数点にわたつてお尋ねをしておきたいと思うわけであります。  まず第一は、これは先ほどもいろいろ御質問になつておりましたが、憲法第九条のいわゆる非武装という問題との関係であります。この関係につきまして、従来政府側の説明といたしましては、ただいまも保安長官が申しておられましたが、いわゆる戦力に至らざるところの武力、この程度自衛力というものは設けても憲法に抵触するものではない。それでは戦力に至らざる武力というが、戦力というものは一体何かということであります。それに対しましては、これは別にきようの委員会保安庁長官から発言があつたわけではありませんが、これまでの国会等における政府側の答弁をいろいろ聞いておりますと、要するに戦力とはいわゆる今日普通にいわれている近代戦を行い得るだけの力、武力をさして戦力と言つておらるるようであります。それで私はここでお伺いをしたいのは、この近代戦という概念を政府側はどういうふうにお考えになつているかということであります。この近代戦という概念は、戦史の上においてはおそらく私はナポレオン時代から始まるだろうと思うのでありますが、その後いろいろの径路を経まして第一次欧州大戦、第一次欧州大戦後ルーデンドルフの総力戦という一つの概念が出て来たわけであります。そうして今回の第二次大戦になつたわけでありますが、この第二次大戦を経過しまして、近代戦と一口に申しますが、近代戦という概念が非常にかわつて来たように思うのです。それはたとえば今まで普通これは戦時もしくは平時の国際法規というものによつて、これが正しいことである、これが正しくないことである、やつてはならないことであるというふうに規定され、考えられて来たようなことも、ほとんどもうそういうことはナンセンスになつてしまつたというようなことが、たとえば兵器の進歩とかそういうようなことと関連しまして、非常に起つて来ておる。たとえば通商破壊戦というようなものにおきますところの潜水艦の無警告撃沈というようなものなんかも、今日においては潜水艦そのものの持つておる非常な攻撃力の進歩、それからまたそれに対する防禦力の進歩というようなものがマッチして、そうして今までの一つの法規というようなものを、ほとんどナンセンスに化しておる。特に原子爆弾の発明ということは、たとえばダムダム弾であるとかあるいは毒ガス弾であるとかいりふうなものを禁止するというような、これも一つの国際法というようなものをほとんどナンセンスにしてしまつております。それからまた戦争の結末にしましても、たとえば占領軍は長期間にわたつて、被占領国いわゆる戦争に破れた国に駐留をする。そうしててこにおいて徹底的に絶対の権力を持つて、内政の改革を実行するというようなこと、あるいはまた戦争裁判、戦犯裁判というようなものを設けて、いわゆる裁判という名のもとに、勝つたものが負けたものに対する復讐心を満足させるというようなことも行われておる。すなわち今までの戦時国際法等の問題もいろいろここで問題になりましたが、必ずしもそういうことだけにかかわつて考えておつたのでは、近代戦というものの、特に第二次大戦後の戦争というものの概念を把握することができないのじやないかと思うのです。特にまた第二次大戦後の世界は、御承知のように東西両陣営というものにわかれましてそうしていわゆる宣言せられた戦争というものはありませんが、しかし局部的な戦闘行為というものは世界中至るところで行われておる。たとえばインド・チャイナあたりにおいては今日でも行われておる。朝鮮事変は幸いにして一応しずまつておりますが、とにかく局部的な戦闘というものは行われておる、こういう現状であります。こういう際において、政府側として近代戦、戦力というものをいかにお考えになつておるか、この点のひとつしつかりした答弁を承つておきたい、こう思うわけであります。
  49. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。まずこの点についての御質疑に対して申し上げたいことは、結局日本憲法第九条に戦力の保持を禁止したのは、いかなる理由に基くか、これから出発しなければいかぬ、こう私は考えております。そこで憲法第九条第一項におきましては、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇と、武力の行使は、国際紛争解決の手段としてはこれを欲しない、これであります。要は国際紛争解決の手段としては、武力の行使も武力による威嚇もいかぬ、こういう規定をまず原則としておる。しかしこの裏から見ては、決して一国の自衛権を否定したものでもないのであります。自衛権を持つ以上は、自衛力を持つことは当然であります。もちろん一独立国家たる以上は国家の安全を期するために、自衛力を持つことは、これは私は憲法以前の問題であると思う。人間本質的に防衛権を持つと同じ意味において、国家も持つということ、これは何ら憲法において否定していないのであります。しかしながら第二項において、自衛権あるいは自衛力の名のもとに、これがあるいは運用されるおそれがあつてはいかぬ、要するに自衛権の名のもとに、また他国の侵略を志すようなことを繰返しては相ならぬ。それを防ぐ意味において、さような大きな、他国を侵略し得るような力を持たせることを禁止するということが、結局戦力保持の禁止の規定であろう、こう私は考えております。繰返して申しますが、自衛力自衛権の行使のもとに、再び侵略戦争のような愚を繰返すことがあつてはならぬ。それは自衛権自衛力の名のもとに、さようなことを繰返すような大きな力を持つてはいかぬ、これが戦力保持の禁止の精神であろうと私は考えております。そこでこの戦力とは、概念的に申すならば、そういうような大きな戦争に役立つような力、裏から申しますると、ただいまお説のように近代戦を遂行し得るような力、これであります。しからば近代戦遂行の力はどんなものか、これは具体的になかなか容易に決する問題ではありません。私の知る限りにおいては、日本の学者においてもこの問題を解決した人は一人もないのであります。そこで政府といたしましては、これをどの点に置くかということを考えなくてはならぬ。私は日米安保条約を読めば、この点が多少明瞭になるだろうと思う。安保条約第一条には、日本はやはり集団的、個別的自衛権を持つておるのだ、これはもう当然のことである。従つてこの自衛権のために日本はいわゆる漸増的に自衛力を強化して行かなければならぬ、これは認める。但し他国に脅威を与えるような、いわゆる攻撃的脅威を与えるような軍備を持つことはいかぬぞ、こう規定してある。他国に攻撃的脅威を与えるような軍備を持つてはいかぬ、ここに私は非常な含みがあるだろうと思う。つまり他国を侵略する具に使われるような力を持つては相ならぬ、これがいわゆる近代戦遂行の力と私は解しております。今お説の通り近代戦の様相は非常にかわつております。もう原子爆弾も実際に使われるような時期になつておるのであります。不幸にして第三次戦争が起るような場合においては、原子爆弾が使われるようなことがあるかもしれません。こんなことがあつてはならぬのであります。さように近代戦の様相はかわつておるのでありますから、大きな意味においてそんなものを持つようなことはわれわれは当然予想もできない。日本といたしましては少くとも日本の国を守る、外部からの不当な武力攻撃に対しては一応守り得るだけの力は持たなくてはならぬ。ここに限界があるかどうか、これを越すと、ややともするとれはまた他国侵略の具に使われるようなおそれなきにしもあらず、ここに限界を持つておるのであります。そこでわれわれは終始この点に注意をいたしまして、いわゆる他国に攻撃的脅威を与えるような力に達しない範囲において日本自衛力漸増して行こう、ここに限界を設けてやつておる次第であります。
  50. 江藤夏雄

    ○江藤委員 次に私は、ただいま日本国内で非常な勢いをもつて行われておりますところのいわゆる非武装中立論、この非武装中立論に対する政府の態度なり見解なりというものを明らかにしておいていただきたいと思うわけであります。この非武装中立論は、われわれから見るとまるで夢のような話でありますが、こういうことが非常に行われておるということについては、私は政府も一端の責任があると思うのです。今日特にこの勢いがはなはだしくなつたのは、いわゆるソ連圏を中心としますところの平和攻勢、こういうものが大きな働きをなしておると思います。現に社会党右派あたりの諸君で、今までは再軍備論者であつたような方々が、もう今日では非武装中立論に賛成をするというような方々も見受けられるような勢いであります。もつともこの非武装中立論というものが非常な夢物語りみたようなものであることは、そういう方々も実は腹の中ではお認めになつておるかもわかりません。それはたとえば明治御一新の志士が尊皇攘夷、幕府を倒すのには尊皇だけでは力が弱いから尊皇攘夷で行つたが倒してしまつたあとではすぐ開国になつてしまつたというようなぐあいで、非武装中立論というのも、今吉田内閣がアメリカとタイアップしてやつておる。これには反対である。しかしわれわれが天下をとつたならばソ連とタイアップをして武装をするのだという、腹の中はそういうお考えであるかもわかりません。現に私たちここにおられる中村君なり左派の田中君なんかと一緒に去年中共に参りましたときに、郭沫若氏がわれわれにはつきり言つたのです。非武装中立論というようなことが日本で行われておるが、そういうことができますか。日本は今アメリカの手の中にしつかり握られておるじやありませんか、こう言いました。それは現実はその通りなんであります。左派の諸君が非武装中立論を言われても、腹の中はちやんとそういうふうにおきめになつておるかもわかりませんが、とにかく一応夢のような非武装中立論というものが非常に今横行しておる。これに対して政府はもう少し今日日本の極東において置かれておる立場というものがいかなるものであるかということをはつきりもつと国民に訴えられる必要があると思うのです。そうして日本国民である以上は、日本の国を自分の手で守りたいという気持はみんな国民は持つております。しかしながら国民というものは、よく知らせてもらわない以上は、自分の環境のこともよくわかりません。であるから極東において日本がどういういう立場にあるかということをもつと国民はつきり政府としては知らせていただきたい。そういう意味においてソ連あるいは新中国あるいは北鮮、南鮮等々が、今極東においてどれだけの兵力を持つておるか。そうしてソ連のごときは第二次大戦後航空機においても潜水艦においても非常な発達をいたしております。恐るべき性能を持つた航空機、特に航空機なんかにおきましても戦闘機の性能の優秀なことは、北鮮事変でもつてアメリカのものが負けてしまつておることによつてはつきりわかつております。そのくらい優秀なものをつくり出しておる。それからまた潜水艦なんかにおきましても、航続力あるいは潜水中のスピードあるいは攻撃力というふうな点において非常に発達を遂げておる。しかも中ソ友好条約によりまして、太平洋の西岸におきましていわゆる潜水艦基地と称せられるものが至るところにあるということもわれわれは情報によつて知つておるくらいのものでありまして、こういう点をこの際少しはつきり政府から明らかにしていただきたいと思う。こういう点を一つ発表していただくわけには行きませんか。
  51. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私も江藤君のお説の通り非武装中立論というのは一片の観念論にすぎないと思います。現実を離れた議論にすぎない。さようなことができれば、まことに仕合せでありますが、今の国際情勢を勘案いたしますと、さようなことは一種の観念論にすぎないと思う。そこで日本の置かれた立場としてどういう方法をとつて日本の国を守つて行くか。共産国家群陣営に入るか、あるいは自由国家群陣営に入るか、あるいは今のような観念論でありまする非武装中立論をとつて行くかということになりますると、今申し上げました通り非武装中立というようなことは観念論にすぎないと思う。そこで何といたしましてもわれわれはいわゆる自由国家群の一員として世界の平和に寄与しなければならない。この建前をとつておるからして、アメリカ駐留軍と手を握つて日本の国防の全きを期したいというように現段階においてはなつておる次第であります。そこで繰返して申しまするが、もちろんわれわれはただいまの段階においてはアメリカ駐留軍と手を握つて日本の国防の全きを期して行かなければならないのでありますが、これはやはりいつまでも日本としてはさように参らない。一日も早く国力の回復をしてみずからの手によつてみずからの国を守る体制をとつて行かなければならない。これは私の信念であります。そこで日本が万一アメリカ駐留軍の手を離れた場合にどうなるか、こういうことになります。今お説の通り日本の周辺におきまする軍事情勢というものは、なかなか容易ならぬものがあると私は率直に認めます。しかしこれはわれわれの判断におきまして、御承知通りなかなか的確なる資料が得られません。あるいは沿海州にどれくらいの兵力の配置があり、あるいはサガレンにどれくらいの兵力の配置があり、あるいは千島にどれくらいの配置があり、満鮮国境にどれくらいの配置があるというようなことについての的確なる資料は、なかなか容易に手に入れることはできません。少い資料において配置その他兵力量の推定は、われわれ大体できておりますが、しかしここでそれを発表しろということは、私は差控えたいと思う。いずれさような時期は参ろうかと考えております。  そこでさような情勢判断のもとにおいて、日本の国防をどう立てて行くか、これについてわれわれは日夜苦慮しておるわけであります。率直に申すと、一刻もゆだんがならない。これが当面われわれとしては考えなくちやならない点であろうと思つております。しかし繰返して申すようでありますが、ただいまの段階におきましては、アメリカ駐留軍と手を握つて行くよりほか道はないのであります。これは私は率直に認めざるを得ない。しからばいつまで駐留軍日本の国防のためにやつてくれるか。これはわれわれは当てにならないと考えております。それからわれわれといたしましては、どこまでも日本自衛力漸増をはかつて行かなければならない。しかし情勢がなかなか容易でありませんから、どこまでもある程度アメリカとのタイアップをして行つて、世界情勢に応ずるように、そして日本の平和を守つて行くようにということについて力を尽さなければならないと考えております。
  52. 江藤夏雄

    ○江藤委員 ただいまは諸般の事情から、ただいま私が申し上げました日本を取巻く軍事情勢の具体的な説明の発表は差接えたいということでありましたが、今すぐここで御発表にならなくてもよろしい。しかしやはり国民にほんとうの国防思想を涵養せしめようと思うならば、お前たちはこういう環境のもとに置かれておるのだということをはつきり認識せしめる必要があると思うのです。そういう意味において、時期を見て、ひとつ御発表ありたいということを希望しておきます。  次に、私は集団安全保障ということがお言葉にもございましたが、この問題について、ちよつとお尋ねしたいと思います。それは安保条約、それからまた今回のMSA条約にも、いわゆる国連憲章の原則に従つて云々というふうにあり、国連憲章の原則なり精神というものを日本側としては受入れておるわけであります。ところが国連加入の問題について、説をなす人は、いずれそのうちには加入もいたしますというふうに言つておるが、御承知のように、常任理事国は全部ヴエトー権を持つておるのでありまして、私は今のような情勢では日本の国連加入がそう容易に実現するものではないと思うので、そういう点に関するもう少しつつ込んだ外務省側の御説明が願いたい、こう思うのです。
  53. 下川儀太郎

    ○下川委員長代理 江藤君に申し上げます。まだ来ておりませんそうですから、答弁あとにまわしてください。
  54. 江藤夏雄

    ○江藤委員 次に海外派兵の問題であります。この問題につきましては、今ここでただちに考弁はいりません。しかし攻勢防禦という場合——ある場合においてはどうしても攻勢をとらなければならぬということは兵学上の常識なんです。その攻勢防禦を全然否定するような国防というものが一体成り立ち得るかどうかという問題、私は実際問題としては成り立たぬと思う。今答弁はできないでしようから求めませんが、そういうちよつと常識に反したような苦しい説明をしなくてもいいようなぐあいに政府側としてもひとつ早く処置をせられるように希望いたしておきます。この問題は希望だけにとどめておきます。  次に保安隊——これから自衛隊になるわけでありまするが、自衛隊の諸君、特に地上部隊の連中のことです。それから特科隊の連中のことになるわけでありますが、これはきのう辻委員からも御発言がありました。これを訓練の目的に役立つ場合においては、国もしくは公共団体の土木工事もしくは通信工事等に使うことができるという規定がありまするが、訓練の目的に役立つためということが、どうもあまりに狭義に解釈され過ぎているうらみがあるのです。災害出動の場合などにおいて、保安隊が非常に功労を立ててくれたことはわれわれ災害県の代議士として感謝しているところなのであります。引続いてその後の復旧工事かれこれにわれわれの県あたりでも、県知事からいろいろ要請をしたのでございまするが、非常に狭義に解釈されているために、なかなか出動してもらえない。この点は根本的にお考え直しになつたらどうかと思うのです。これは経済的という、いわゆる軍隊の生産化というような面もありまするが、それとともに、今日の日本の政界、財界、官界一面をおおうておる汚職の空気、これが地方の工事などにもはなはだしいのです。災害復旧工事などを見てみましても、至るところてんぷら工事あるいは不正工事というものが続出する現況でありまして、国をあげて今日では、極端に言えば汚職組織というか、リベート・システムといいますか、実にひどい現状になつておる。であるから、そういうようなことばかりやつてつたのでは、どうしても国土再建ができないわけであります。だからこういう際こそほんとうに筋金の通つた自衛隊が、こういう公共の土木工事もしくは通信工事といつたようなものに積極的に出動し、協力をされる体制に改めてもらうよういろいろな角度から私非常に念願するわけですが、長官の御見解を承りたい。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御議論まことにごもつともであります。私もさような考えを持つておるのであります。従いまして、最近においてはでき得る限り地方公共団体その他の施設について出動さしております。現に最近におきましても、この近辺において数箇所出動させて地ならし工事その他をやらしております。ただ出動する場合におきまして、地方の失業者救済事業とどうなるかというところに相当難点がありますが、それらの調節をうまくとりまして、今後はでき得る限り国土の回復、ことに道路の改修等について寄与いたしたい、こう考えております。
  56. 江藤夏雄

    ○江藤委員 ぜひひとつそういうふうにしていただきます。  次にMSA協定の第七条に規定せられております米国から参ります軍事援助顧問団、これについてどういうふうにお考えになつておられるか。その配属は一体どうなるか、その期間はどうか。また第七条に米国の供与する装備、資材及び役務に関する米国側の責務を遂行し、また援助の進捗状況を観察するというようにわかりにくい言葉で書いてあるのでございますが——これは配属された各部隊の諸般の活動を指揮ということではないでしようが、ある意味において監督するとかいうふうな関係がそこに出て来るのかどうか、そういう点に関する保安庁自体の見解をはつきりさしておいていただきたい。
  57. 増原恵吉

    ○増原政府委員 MSA協定が施行になりましてできまする軍事援助顧問団は、実体的には現在保安庁に対して顧問団としてやつております連中が移行して参るものと考えますが、顧問団の任務は、今協定の条文でお読み上げになりましたようなことをやるわけであります。現在のところはわれわれの陸上部隊において使つております武器が、まだ明確な協定ができておりませんで、事実上米軍の武器を使つておるというふうな不明確な形をとつており、これの管理の責任者は米軍にあるわけであります。従つて、顧問団将校が管理責任者であります。われわれの方で過失がありまして、機関銃が一ちようなくなつたというようなことがあつたのでありますが、その場合も、顧問団将校が賠償金を出して措置を済ましたというふうな形をとつておる。従いまして、この武器の管理ということが現在は顧問団の相当大きい任務になつておる。そうして一面は、そうした武器の使用方法等を保安隊に教えてくれるということが任務であります。新しくMSA協定によつてできます顧問団も、現在の武器及び将来新しくくれます武器の使用方法等を自衛隊に教えてくれるということが一つ任務であります。一つ任務MSA協定によつて自衛隊に渡しました武器が適当に使われ、援助の目的が達成せられておるかどうかということを観察するということであります。ただいまのところは正確な人数はまだちよつとわかりませんが、将校、下士官、そうして米人としてのシヴィリアンを合して約六百五十名ばかりの者があるわけであります。従前は各部隊に将校が一名、下士官が三名くらいはおつたわけでありますが、MSA協定に移行するとともにこれを各部隊から引揚げまして、中央及び各管区に若干の者を配置をする、そのほかは大体中央に持つておりまして、保安隊の学校関係等に順次出かけて行つて技術的な面についての処置の問題についてアドヴアイスをしてくれるということが主たる任務になります。この六百五十名を二十九年度末には三百名を目途として減少して行く。月平均は四百二十五名ということにいたしまして、年度末には三百名、できればさらにそれ以上減らすことも努力しようというふうなことに相なつておるわけであります。
  58. 江藤夏雄

    ○江藤委員 次に自衛隊の精神訓育といいますか、精神教育というような面についてお尋ねをいたしまして私の質問を終ることにいたします。  昨日大久保委員からの御質問で、いわゆる人命尊重ということについて長官質問されて、それに関連して保安隊の精神教育という面にずつと触れて行つたのでありまするが、あのとき大久保委員は、武士道とは死ぬことと見つけたりという葉隠れの言葉を引いて言われましたが、大久保君は熊本県の人で、私は佐賀県の葉隠れの本場であります。これは余談でありますが、武士道とは死ぬことと見つけたりじやないので、死ぬこと見つけたりなのです。ただ死にさえすればいいのが武士道であるというふうに言うのは、これは葉隠れをよく研究していない人が言うのであつて、実は武士道とは死ぬこと見つけたりです。いわゆる死ぬこと見つけたりというのは何であるか。人間の命というものはもちろん至高な価値を持つものである。しかしてその至高な価値を持つた人間の命をそれ以上のものに帰一せんとするものであります。すなわち死ぬこと見つけたり、これが葉隠れの精神なのであります。この死を越えて、至高の価値、こういうものにほんとうに献身をする気持、こういう気持が国民の間にほうはいとしてみなぎつて来る。そうして今日の国防というものは、私が申し上げるまでもなく、一専門の軍というようなものの手によつて守られるものではないのでありまして、全国民が一体となつて国を守るということにならなくちやならぬ。すなわち全国民自身の間に、命を投げ出しても国を守るのだという強い気持がほうはいとして起つて来るということにならなければ、国防の完璧を期するということはとうていできません。先ほどもお話申し上げましたが、私は昨年の秋中共に参りまして非常に感心したことがあります。それは今中国共産党政府の副主席をしております劉少奇という人の、共産党員的修養を論ずという本があります。これはりつぱな本です。この本において彼はどういうことを説いておるか。中国共産党員に対して実に切々として、その操持を厳格にして国民の儀表にならなければならぬということを教えております。そうして中国共産党員たる者は、天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに遅れて楽しむというだけの気持を持たなければいかぬ。そうして遂には生を捨てて義をとれ、身を殺して仁をなせというふうな教え方をやつておる、これは実に厳重な訓育であります。すなわち身を殺しても仁をなせ、生を捨てても義をとれ、いわゆる至高の人間の生命といわれるそのものより以上のものをここに見出して国民に訴えておるわけなんであります。こういう精神をもつて今日の中国がやつておることはいわば富国強兵策です。これは非常な強力な政治力に物を言わせる一つの独裁政治をやつておるのであつて、富国強兵策をやつて、孜々営々としてあの中国の五億の民が一丸となつて偉大なる中国の建設運動をやつておるわけであります。そこでこの日本においても当然それくらいのほうはいたる興国の精神というものが起つて来るということがもちろん前提であるのでありますがしかしその精神の中核体になるべきものは保安隊であり自衛隊でなければならぬ、こう思うわけであります。長官はしばしば愛国心ということを言われましたが、この愛国心もとより必要なんであります。しかし昔から愛国の名によつて非常な罪悪がよく行われて来たというようなことわざもあります通りに、ただ愛国というだけでは足りないのであつて、いわゆる義を見てせざるは勇なきなりで、正義の観念というものによつて保安隊それ自体が強く貫かれていなければならないと思う。この正義というものをほんとうに強く隊員に教え込むというようなことに関して、また愛国心を涵養するということを言われましたが、そういうことに関して、何か具体的な、たとえばこういうふうな教科書みたいなものでも配つておられるかどうか。そういうふうな点についてちよつとお尋ねいたしておきます。
  59. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことに切々たるお言葉を拝聴いたしました。自衛隊員はわが国の国土防衛の重任を負つておるのであります。ここに精神的の支柱を与えることが何よりも必要であろうと考えます。そこでこれをいかに教育すべきかということについてはなかなか容易ならぬものがあります。私は常に憂えておりますが、終戦直後日本の青年といわず少年といわず勇気がなくなつた、敢然としてわれ行かんという勇気が欠けておる、あるいは左へ行き、右へ行き、もうおちつくところは知らぬというような状態がうかがわれるのであります。これでは日本はとうてい浮ばれない、何よりもまずしつかりした人をつくらなければならぬ、勇気のある人をつくる。今申されました正義確立のもとにはどこまでも人は進んで行くのだという一つの勇気を出さなければならぬ、これであります。そこでこれをいかに教育すべきかということについてはいろいろ方法はありましよう。上からこういうぐあいにしろということで指示するのはいかぬ。各青年がほうとうに自発的にこうあるべきだということで盛り上つた精神をここにつくり上げなければいかぬ、それに皆思いをいたしてくれと私は申しておる。容易なことではありませんが、私は長い目で見れば徐々に行つておるのじやないかと考えます。先ほど書物のお話が出ましたが、われわれも一応ある精神的のものを刊行して隊員に配つたらどうかという考えも出たことはあるのでありますが、しかしそれでは一面に偏するきらいがあるから、今そういうことをやる時期ではない。もうしばらく隊員の様子を見ようじやないかということで、そういうことをやることは差控えております。しかし必ずしもやらぬというわけじやありません。われわれといたしましては、今申し上げましたように、隊員と起居をともにするいわゆる指導者、指揮者にまずよく精神的に修養してもらつて、この人たちの行動自体によつて隊員を教育して行く、こういう方針をとつて行きたい、こう考えておる次第であります。
  60. 江藤夏雄

    ○江藤委員 長官は、ただいま敗戦後の日本にみなぎつている非常に憂うべき一つの現象として、勇気がみなになくなつてしまつたということを言われました。まことにその通りであります。そこで、長官もひとつ大いに勇気を出して、この際精神訓育、教育ということには、あまりあつちを見たり、こつちを見たりしないで、勇敢にやつていただきたい、かように希望いたしまして、私の質問を終ります。
  61. 下川儀太郎

    ○下川委員長代理 本日はこの程度にいたし、次会は明日午後一時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十一分散会