○江藤
委員 私はただいま上程にな
つておりまする
自衛庁設置
法案、それから
自衛隊法案、この二
法案についてでございます。この
法案自体は今まで本
委員会の各
委員からいろいろ申し述べられました
通り、特にきのうあたりは辻
委員あたりから大分いろいろ批評を聞いたのでございますが、まことにこの
法案それ自体は、何といいますか世界各国にほとんどその類例を見ないというようなことを辻
委員が言われましたが、私はまことにそうだろうと思う。れそは
日本の現在置かれている立場、位置そのものがほとんど世界にあまり例のない立場にある、そういうところから生てれ来たものでありますから、その点やむを得ないものであろうと思います。そういう
意味において、露骨に言うならば、この
法案はいわば私は過渡的なものであろうと思う。それでこういう
法案を
政府としてどうしても出さなければならないようになられて出されたわけでございますが、この
法案を出された
政府の根本的な
考え方、これを数点にわた
つてお尋ねをしておきたいと思うわけであります。
まず第一は、これは先ほどもいろいろ御
質問にな
つておりましたが、
憲法第九条のいわゆる非武装という問題との関係であります。この関係につきまして、従来
政府側の
説明といたしましては、ただいまも保安
長官が申しておられましたが、いわゆる
戦力に至らざるところの
武力、この
程度の
自衛力というものは設けても
憲法に抵触するものではない。それでは
戦力に至らざる
武力というが、
戦力というものは一体何かということであります。それに対しましては、これは別にきようの
委員会で
保安庁長官から発言があ
つたわけではありませんが、これまでの
国会等における
政府側の
答弁をいろいろ聞いておりますと、要するに
戦力とはいわゆる今日普通にいわれている近代戦を行い得るだけの力、
武力をさして
戦力と言
つておらるるようであります。それで私はここでお伺いをしたいのは、この近代戦という概念を
政府側はどういうふうにお
考えにな
つているかということであります。この近代戦という概念は、戦史の上においてはおそらく私はナポレオン時代から始まるだろうと思うのでありますが、その後いろいろの径路を経まして第一次欧州大戦、第一次欧州大戦後ルーデンドルフの総力戦という
一つの概念が出て来たわけであります。そうして今回の第二次大戦にな
つたわけでありますが、この第二次大戦を経過しまして、近代戦と一口に申しますが、近代戦という概念が非常にかわ
つて来たように思うのです。それはたとえば今まで普通これは戦時もしくは平時の国際法規というものによ
つて、これが正しいことである、これが正しくないことである、や
つてはならないことであるというふうに
規定され、
考えられて来たようなことも、ほとんどもうそういうことはナンセンスにな
つてしま
つたというようなことが、たとえば兵器の進歩とかそういうようなことと関連しまして、非常に起
つて来ておる。たとえば通商破壊戦というようなものにおきますところの潜水艦の無警告撃沈というようなものなんかも、今日においては潜水艦そのものの持
つておる非常な攻撃力の進歩、それからまたそれに対する防禦力の進歩というようなものがマッチして、そうして今までの
一つの法規というようなものを、ほとんどナンセンスに化しておる。特に原子爆弾の発明ということは、たとえばダムダム弾であるとかあるいは毒ガス弾であるとかいりふうなものを禁止するというような、これも
一つの国際法というようなものをほとんどナンセンスにしてしま
つております。それからまた
戦争の結末にしましても、たとえば占領軍は長期間にわた
つて、被占領国いわゆる
戦争に破れた国に駐留をする。そうしててこにおいて徹底的に絶対の権力を持
つて、内政の改革を
実行するというようなこと、あるいはまた
戦争裁判、戦犯裁判というようなものを設けて、いわゆる裁判という名のもとに、勝
つたものが負けたものに対する復讐心を満足させるというようなことも行われておる。すなわち今までの戦時国際法等の問題もいろいろここで問題になりましたが、必ずしもそういうことだけにかかわ
つて考えてお
つたのでは、近代戦というものの、特に第二次大戦後の
戦争というものの概念を把握することができないのじやないかと思うのです。特にまた第二次大戦後の世界は、御
承知のように東西両陣営というものにわかれましてそうしていわゆる宣言せられた
戦争というものはありませんが、しかし局部的な戦闘行為というものは世界中至るところで行われておる。たとえばインド・チャイナあたりにおいては今日でも行われておる。朝鮮事変は幸いにして一応しずま
つておりますが、とにかく局部的な戦闘というものは行われておる、こういう
現状であります。こういう際において、
政府側として近代戦、
戦力というものをいかにお
考えにな
つておるか、この点のひとつしつかりした
答弁を承
つておきたい、こう思うわけであります。