○増原
政府委員 防衛庁設置法案につきまして、その
内容を順序を追
つて御
説明いたします。
この
法律案は
保安庁法の全部を
改正するものでありまして、本文は三章、四十二箇条、
附則十六項からな
つております。
第一章は総則でありまして、この
法律の
目的として
防衛庁の
所掌事務の範囲及び権限を定め、か
つての
任務を能率的に遂行するに足る組織を定めるとともに、
国防会議の設置について定める旨を
規定しております。
第二章は
防衛庁に関する
規定であります。
その第一節は通則でありまして、
防衛庁は
総理府の外局として置かれ、その
長官は国務大臣をも
つて充てることとしております。この
長官の権限については
保安庁法の場合と同様に定めております。
防衛庁の
任務については、ただいま
提案理由の
説明に述べられた通りであります。
次に
防衛庁の
職員の
定員は十六万四千五百三十八人で、これは現在の
保安庁の
職員の
定員に比しまして、四万一千三百八十六人の増加とな
つております。この増加のうち、自衛官の増加は三万千七百九十二人で、その他の
職員の増加が九千五百九十四人であります。
その他本節においては、
防衛庁の権限、次長の
任務等について、おおむね
保安庁法の例になら
つて規定しておりますが、ただ新たに、
長官の命を受け
防衛庁の
所掌事務に関する
基本的方針の策定について
長官を補佐する参事官八人以内を置くことといたしました。また第六条においては、
自衛隊の
任務、
自衛隊の部隊及び
機関の組織及び編成、
自衛隊に関する指揮監督、
自衛隊の
行動及び権限等については、
自衛隊法で定めることを
規定しております。
第二節は
内部部局に関する
規定であります。
内部部局については、
保安庁における官房及び四局に新たに
教育局を加え、官房長及び局長は参事官をも
つて充てることにいたしました。官房及び各局の分掌
事務、
内部部局の
職員、
内部部局における自衛官の勤務、官房長及び局長と幕僚長等との
関係については、おおむね
保安庁法におけると同様の
規定をしておりますが、ただ現行の課長以上の職への幹部自衛官の
経歴者の任用の制限は、これを
規定しないことにいたしました。
第三節は
幕僚監部に関する
規定でありまして、
陸上自衛隊についての
陸上幕僚監部、
海上自衛隊についての
海上幕僚監部のほかに、
航空自衛隊の
新設によりこれについての
長官の
幕僚機関として、新たに
航空幕僚監部を設けましたことは、すでに述べられた通りであります。
幕僚監部の
所掌事務及び
幕僚監部の
職員に関する
規定等は、すべて
保安庁法になら
つております。ただ、新たに、各
幕僚監部にその
所掌事務のほか、
事務運営の便宜をはか
つて、司他の
幕僚監部の
事務の部を処理させることができる旨の
規定を設けてあります。
第四節は
新設いたしました
統合幕僚会議に関する
規定であります。
統合幕僚会議の設置の
趣旨は
提案理由においてすでに述べられた通りでありまして、これが所掌
事項は、(一)統合
防衛計画の作成及び
幕僚監部の作成する
防衛計画の
調整に関すること、(二)統合
後方補給計画の作成及び
幕僚監部の作成する
後方補給計画の
調整に関すること、(三)統合
訓練計画の
方針の作成及び
幕僚監部の作成する
訓練計画の
方針の
調整に関すること、(四)
出動時における
自衛隊に対する
指揮命令の統合
調整に関すること、(五)
防衛に関する情報の収集及び調査に関すること等であります。
統合幕僚会議は、
議長並びに
陸上幕僚長、
海上幕僚長及び
航空幕僚長をも
つて構成し、
議長がこの
会議の会務を総理いたします。
議長は専任とし、自衛官をも
つて充て、
議長たる自衛官は自衛官の最上位にあるものと定めたのであります。
会議の議事の
運営については
長官が定めることといたしておりますが、この
会議の
事務をつかさどらせるため
統合幕僚会議に
事務局を置き、その
職員等について
規定いたしました。
第五節は部隊及び
機関に関する
規定でありますが、本節においては
陸上自衛隊、
海上自衛隊及び
航空自衛隊の部隊及び
機関並びにその
職員についての根拠的な
事項を
規定するにとどめ、部隊及び
機関の組織、編成及び
所掌事務その他の
事項は、すべて
自衛隊法において定めることといたしております。
第六節は
附属機関に関する
規定であります。
保安庁の
附属機関は保安研修所、保安大学校及び技術研究所でありますが、本法においては、これにかわる
防衛研修所、
防衛大学校及び技術研究所のほか、新たに
附属機関として、
建設本部及び
調達実施本部を設けることとしております、
建設本部は、施設に関する業務を一元化して、これが
運営を能率的ならしめるため、現在第一幕僚長の監督下にある中央建設部を母体として創設し、
自衛隊を通じての施設の取得、建設工事の
実施及び一定の
行政財産の
管理を行わせるものであります。
調達実施本部は、
陸上、
海上、
航空の各
自衛隊を通じての必要な一定の装備品等及び役務の
調達を行う
機関として設けるものでありまして、これによ
つて、
防衛庁の
調達実施事務について、発注の統一、経費の節減等、
調達実施事務の合理化、経済化を実現せんとするものであります。
防衛研修所、
防衛大学校及び技術研究所の
所掌事務等についてはおおむね現在の
保安庁法の例になら
つて規定してあります。
第七節は
職員に関する
規定でありますが、本節では、
保安庁法になら
つて職員の職務について
規定するほかは、
職員の任免、分限懲戒、服務その他人事
管理に関する
事項並びに階級及び服制については、すべて
自衛隊法で定めるものとしておるのであります。
第三章は
国防会議に関する
規定であります。
国防会議については、
提案理由の
説明ですでに述べられたのでありますが、これは、
内閣に置かれ、
国防に関する
重要事項を審議する
機関であります。
内閣総理大臣は、(一)
国防の
基本方針、(二)
防衛計画の
大綱及び(三)この計画に関連する
産業等の
調整計画の
大綱、(四)
防衛出動の可否、(五)その他
内閣総理大臣が必要と認める
国防に関する
重要事項については、
国防会議に諮らなければならず、また、
国防会議は
国防に関する
重要事項につき必要に応じ、
内閣総理大臣に対し意見を述べることができることを
規定し、おります。なお
国防会議の構成その他
国防会議に関し必要な
事項は、別に
法律で定めることといたしております。
附則におきましては、この
法律は公布の日から起算して月を越えない範囲内において政令で定める日から施行することを
規定するほか、この
法律の施行に伴う必要な経過
措置、この
法律施行に伴
つて必要な
関係法律の
改正等を
規定しております。
以上をもちまして本
法案の
内容についての御
説明を終ります。
次に
自衛隊法案につきまして以下その
内容を順次御
説明いたします。この律案は、
自衛隊の
任務、
自衛隊の部隊の組織及び編成、
自衛隊の
行動及び権限、隊員の
身分取扱い等を
規定することを
目的としたものでありまして、本文九章、百二十二条、
附則三十六項からな
つております。
第一章は総則として、この
法律の
目的のほかに、定義や
任務等を
規定しております。
〔
委員長退席、下川
委員長代理着席〕
自衛隊の
任務については、前に
提案理由の
説明で述べられました通りであります。
次に本
法案で
自衛隊とは、「
長官及び政務次官並びに次長、参事官、
内部部局、
統合幕僚会議及び
附属機関並びに
陸上自衛隊、
海上自衛隊及び
航空自衛隊を含むもの」、
陸上自衛隊とは、「
陸上幕僚監部並びに
陸上幕僚長の監督を受ける部隊及び
機関を含むもの」、
海上自衛隊とは、「
海上幕僚監部並びに
海上幕僚長の監督を受ける部隊及び
機関を含むもの」、
航空自衛隊とは、「
航空幕僚監部並びに
航空幕僚長の監督を受ける部隊及び
機関を含むもの」と定義をしております。
自衛隊の旗については、政令で
自衛隊旗及び自衛艦旗の制式を定め、
内閣総理大臣が一定の部隊及び自衛艦に交付することにいたしました。その他第一章においては、表彰及び礼式について
規定しております。
第二章は
自衛隊の指揮監督に関する
事項であります。
内閣総理大臣は、
内閣を代表して
自衛隊の最高の指揮監督権を有することを
規定いたしました。
長官が
内閣総理大臣の指揮監督を受けて
自衛隊の隊務を統括すること、この場合の部隊等に対する
長官の指揮監督はそれぞれ
陸上自衛隊、
海上自衛隊及び
航空自衛隊の当該幕僚長を通ずること、また各幕僚長は
長官の指揮監督を受けてそれぞれの
自衛隊の隊務及び所部の
職員の服務を監督し、
陸上自衛隊、
海上自衛隊及び
航空自衛隊の隊務に関する最高の専門的助言者として
長官を補佐すること、及び
長官の命令を執行すること等は、
保安庁法におけると同様でおります。
第三章は部隊に関する
事項でありまして、現在政令に
規定されているものを
法律で
規定することとしたものであります。
まず
陸上自衛隊の部隊は、現在の
保安隊と同じくこれを方面隊、管区隊その他の
長官直轄部隊とし、それぞれ方面総監、管区総監及びその他の直轄部隊の長が隊務を統括することにしております。この方面隊及び管区隊の名称並びに方面総監部及び管区総監部の名称及び所在地は
法律に
規定することにいたしました。
海上自衛隊の部隊は、自衛艦隊、地方隊その他の
長官直轄部隊とし、それぞれ自衛艦隊司令、地方総監及びその他の直轄部隊の長が隊務を統括することにいたしました。地方隊の名称並びに地方総監部の所在地は、
陸上自衛隊におけると同じく
法律で定めることにしております。
航空自衛隊の部隊は、
航空教育隊その他の
長官直轄部隊とし、それぞれの長が隊務を統括することにしております。
航空教育隊の名称及び所在地は政令で定めることにいたしました。
以上のほか、
内閣総理大臣は、
防衛出動、治安
出動の場合において特別の部隊を編成することができるものとし、
長官は、
海上における警備
行動、災害派遣、
訓練その他の事由により必要がある場合に、臨時に特別の部隊を編成することができることとしております。
第四章は
陸上自衛隊、
海上自衛隊及び
航空自衛隊の
機関に関する
規定でありまして、前章の部隊に関する
事項と同様、現在政令に
規定しておる
事項であります。
機関の種類としては、学校、補給処、病院及び地方連絡部を定めております。学校、補給処及び病院の
所掌事務に関してはおおむね現在と同様でありますが、地方連絡部は今回新たに設けんとするもので、自衛官の募集その他
長官の定める
事務を行うものとし、長出目の定めるところによ
つて方面総監または管区総監の指揮監督を受けることとしました。
その他本章においては、
長官が必要と認めるとき、校長、処長または病院長に、校務、処務または院務以外の
事務を処理させることができること、また
機関の名称、位置等について政令で定めること等を
規定いたしております。
第五章は隊員に関する
事項を
規定したものであります。
第一節は通則で、任命権者及び服制について
保安庁法と同様の
規定を置いてありますが、新たに非常勤の者の
身分取扱い等について特例が設けられることとしたほか、自衛官の階級を、
陸上自衛隊の自衛官にあ
つては、陸将、陸将補、一等陸佐、二等陸佐、三等陸佐、一等陸尉、二等陸尉、三等陸尉、一等陸曹、二等陸曹、三等陸曹、陸士長、一等陸士、二等陸士及び三等陸士とし、
海上自衛隊の自衛官については海の字を冠し、
航空自衛隊については空の字を冠することといたしました。
第二節は任免に関する
事項であります。隊員の採用、昇任、欠格条項、人事に関する不正行為の禁止及び条件附採用の
事項は、おおむね現在の
保安庁法の当該
規定になら
つて定めておりますが、陸士長等の隊員について、
従前の
規定による二年の任用
期間のもののほか、特殊の技術を必要とする職務を担当する陸士長等については三年の任用
期間のものを認めることとし、また任用
期間を定めて任用されている陸士長等が任用
期間の満了により退職することが
自衛隊の
任務の遂行に重大な支障を及ぼすと認める場合には、
防衛出動を命ぜられている場合は一年以内、その他の場合は六箇月以内任用
期間を延長することができることにいたしました。また隊員の退職については、その者が退職することが
自衛隊の
任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用
期間の定めがある陸士長等についてはその任用
期間内において必要な
期間、その他の隊員にあ
つては
自衛隊の
任務を遂行するため最少
限度必要とされる
期間に限りその退職を
承認しないことができることを
規定いたしました。
第三節は分限、懲戒及び保障に関する
規定でありまして、本節においては、停年に達した自衛官の退職が
自衛隊の
任務の遂行に重大な支障を及ぼすと認めるとき、
防衛出動を命ぜられている場合には一年以内、その他の場合には六箇月以内を限り引続いて自衛官として勤務させることができることとしたほかは、
身分保障、休職の効果、停年、懲戒処分、懲戒の効果、学生の分限及び懲戒の特例、公正審査会その他おおむね
保安庁法の当該
規定の例になら
つて規定いたしております。
第四節は服務に関する
事項であります。本節においては、服務の宣誓、勤勝態勢、勤務時間、指定場所に居住する義務、職務遂行の義務、服従の義務ての他の義務、政治的行為の制限、私企業からの隔離、他の職または事業の関与制限、団体の結成等の禁止等、おおむね
保安庁法の
規定になら
つて規定しておりますが、特に第五十二条において、隊員の守るべき服務の本旨を明確に
規定することにしたのであります。
〔下川
委員長代理退席、
委員長着席〕
第五節は
予備自衛官に関する
事項を
規定しております。本
制度の
趣旨及び
内容の
概略は
提案理由の
説明で述べられたごとくであります。
予備自衛官は
定員一万五千名で、自衛官、保安官、
警察予備隊の警察官、警備官、
海上警備官であつた者の
志願に基き、三年を
期間として任用されるものでありまして、この任用
期間は、
防衛招集時においてこの時期を経過することにより退職することが
自衛隊の
任務の遂行に重大な支障を及ぼすと認められるときは一年以内これを延長することができる、こととしております。平素においては、
予備自衛官は年二回以内、各回ごとに
期間を定めて招集され、通じて二十日以内の
訓練を受けることにいたしております。
本節においては、そのほか、予備自制官の性格にかんがみ、分限、懲戒等の
規定、政治的行為の制限、私企業からの隔離、他の職または事業の関与制限等について必要な除外
規定または特例を設け、また
予備自衛官に対する不利益取扱いの禁止について定める等、必要な
規定を設けてあります。
第六章は
自衛隊の
行動に関する
事項を
規定したものであります。
自衛隊の
行動としては、新たに
自衛隊の
任務に即応して
防衛出動の
規定を設け、また、領空侵犯に対する
措置を
規定いたしました。その他の
行動に関する
事項は、おおむね現在の
保安庁法の
規定になら
つて規定し、
保安庁法の命令
出動と要請
出動とをそれぞれ命令による治安
出動と要請による治安
出動とに改めましたほか、
保安庁法におけると同じく、
海上における警備
行動と災害派遣の
規定を置いておるのであります。以下その
内容について申し述べます。
まず
防衛出動についてでありますが、
外部からの
武力攻撃及びそのおそれのある場合に際して
わが国を
防衛するため必要があると認める場合には、
内閣総理大臣はあらかじめ国会の
承認を得て、
自衛隊の全部または一部に
出動を命ずることができるものとしております。特に緊急の必要があるときは国会の
承認を得ないで
出動を命ずることができますが、この場合は
出動後ただちに国会の
承認を求めることを要するのであります。
内閣総理大臣は、国会において不
承認の議決があつたときまたは
出動の必要がなく
なつたときは、ただちに
自衛隊の撤収を命じなければならないものとしております。なお、衆議院が解散されている場合における国会の
承認とは、日本国憲法第五十四条に
規定する緊急集会による参議院の
承認であります。また、
事態が緊迫し
防衛出動命令が発せられることが予想される場合においてこれに対処するため必要があると認めるときは、
長官は
内閣総理大臣の
承認を得て、
自衛隊の全部または一部に対し
出動待機命令を発することができるものといたしました。
次に治安
出動は、公共の
秩序を維持するための
自衛隊の
行動でありまして、これには前述したことく
内閣総理大臣の命令による場合と、
都道府県知事の要請による場合とがあります。命令による治安
出動は、
間接侵略その他の緊急
事態に際して、一般の警察力をも
つては治安を維持することができないと認められる場合に、
内閣総理大臣が
自衛隊の全部または一部に
出動を命ずることであり、要請による治安
出動は、治安維持上重大な
事態につき、やむを得ない必要があると認められる場合において、
都道府県知事が都道府県公安
委員会と協議の上行う要請に基き、
内閣総理大臣が
事態やむを得ないと認める場合に部隊等の
出動を命ずる場合でありまして、この場合の要件等はいずれも
保安庁法における命令
出動または要請
出動の場合と同様であります。命令による治安
出動について
出動待機命令を
長官が発し得ることも、
保安庁法におけると同様でありますが、この場合においては
長官は国家公安
委員会と緊密な連絡を保つものといたしました。
防衛出動または命令による治安
出動の場合において、
内閣総理大臣が特別の必要があると認めたときは、
海上保安庁の全部または一部をその統制下に入れ、これを
長官に指揮させる
規定を設けましたが、これもおおむね
保安庁法におけると同様の
趣旨のものであります。また
海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合に、
長官が
内閣総理大臣の
承認を得て、
自衛隊の部隊に
海上において必要な警備
行動を行わせる
規定を置きましたが、これも
保安庁法の
規定の場合と同様であります。
天災地変その他の災害に際して、
人命財産の保護のため必要があるとき、
都道府県知事等の要請に基き部隊を派遣する、いわゆる災害派遣に関する
規定も、
保安庁法の当該
規定になら
つて規定しましたが、ただ本法においては、この種の災害において、
事態に照し特に緊急を要し、
都道府県知事等の要請を待ついとまがないと認められるときは、その要請を待たないで部隊等を派遣することができることといたしました。
領空侵犯に対する
措置といたしましては、外国の
航空機が
国際法規または
航空法その他の法令の
規定に違反して、わが領域の上空に侵入したとき、
長官は
自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、または
わが国の領域の上空から退去させるため必要な
措置を講じさせることができるものと
規定いたしたのであります。
その他
出動時の部隊等と
都道府県知事、市町村長、警察消防
機関その他の国または地方公共団体の
機関との連絡及び協力に関しても、
保安庁法におけると同様の
規定を設けましたが、治安
出動命令が発せられるに際しては、新たに
長官が国家公安
委員会と緊密な連絡を保つべきものと
規定をいたしました。
第七章は
自衛隊の権限に関する
事項を
規定したものであります。本章においては、前章の
自衛隊の
行動の場合に照応して、それぞれ
防衛出動、治安
出動、
海上における警備
行動、災害派遣時の権限について
規定するほか、
保安庁法の例になら
つて自衛隊の武器、弾薬等の防護のための武器使用並びに部内の
秩序維持に専従する者の権限についてそれぞれ必要な
規定を設けました。
以下その
内容を申し上げますと、
防衛出動に際しては、
出動を命ぜられた
自衛隊は、
わが国を
防衛するため必要な武力を行使することかできることといたしました。この武力の行使に参際しては
国際の法規及び慣例によるべき場合にあ
つてはこれを遵守し、かつ
事態に応じ合理的に必要と判断される
限度を越えてはならないものと
規定しております。またこの場合には、当該
自衛隊は必要に応じ公共の
秩序を維持するため
行動することができるものとし、この場合においては次に述べる治安
出動の場合と同様の権限を行使することができるものといたしております
治安
出動時における
自衛隊の権限は、
保安庁法における命令
出動時の
保安隊、
警備隊の権限と同様に
規定しております。すなわち自衛官は警察官職務執行法の
規定により、武器の使用その他の権限の行使ができるほか、職務上警護する人、施設または物件に対する暴行または侵害の排除または多衆集合して行う暴行もしくは脅迫の鎮圧、防止またはこれら暴行、侵害または脅迫の明白な危険があり、武器を使用するほか他に適当な手段がないときには、
事態に応じ合理的に必要と判断される
限度で武器を使用することができるものとし、さらに
海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官については、
保安庁法における命令
出動の場合、
警備隊の三等警備士補以上の警備官に認められていると同様の権限を認めることといたしました。
災害派遣の場合においては派遣を命ぜられた部隊等の自衛官について、警察官がその場にいない場合に限り、警察官職務執行法第四条並びに第六条第一項、第三項及び第四項の権限、すなわち
人命財産に危険がある場合の避難等の
措置、土地、建物等への立入りを認めることといたしましたほか、
海上自衛隊の自衛官について、
保安庁法においてこの場合警備官に認めていると同様の権限を認めることといたしました。
次に
海上における警備
行動時の自衛官の権限及び部内の
秩序維持の職務に専従する自衛官の司法
警察職員としての権限については、おおむね
保安庁法の例になら
つて規定いたしましたが、
従前の武器庫、弾薬庫または火薬庫についての武器使用の胡定を改めて、
自衛隊の武器、弾薬、火薬、
航空機、車両または液体燃料を職務上警護するにあたり、これを防護するため必要があると認める場合に一定の
限度において武器の使用ができることといたしました。
第八章は雑則に関する
事項を
規定したものであります。雑則としては新たに学資金貸与の
制度、
防衛出動時における施設の
管理、物資等の使用、収用及び公衆電気通信設備の優先利用、並びに
訓練のための漁船の操業の制限及びこの場合の補償について
規定いたしました。その他の
事項はおおむね
保安庁法の当該
規定の例になら
つて規定しましたが、これに必要な
整備を加えました。以下その
内容について申し上げます。
先ず医官等必要な技術者を
職員として確保するため、政令で定める学術を専攻する大学または大学院の学生で修学後
防衛庁勤務を
志願する者に対しては、選考により学資金を貸与することができるものといたしました。
防衛出動時における物資の収用等については二つの場合を
規定いたしました。その一の場合は、
出動を命ぜられた部隊の
行動にかかる地域において、
自衛隊の
任務遂行上必要があると認められる場合に、
都道府県知事が
長官または政令で定める者の要請に基き、病院等の施設を
管理し、土地、家屋または物資等を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管もしくは輸送を業とする者に対して、その取扱う物資の保管を命じ、または物資を収用することができることであります。但しこの場合は
事態に照し緊急を要すると認めるときは、
長官または政令で定めるものが郡道府県知事に通知した上で、みずからこの権限を行うことができるものといたしました。その二の場合は同じく
防衛出動時において
自衛隊の
任務遂行上特に必要があると認めるときは、当該
自衛隊の
行動にかかる地域以外の地域において、
内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限り、
都道府県知事が
長官または政令で定める者の要請に基き、その一の場合と同様、施設の
管理、土地等の使用、物資の収用または取扱物資の保管命令を発するほか、さらに当該地域内にある医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事または輸送の業務と同種の業務で、
長官または政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができるものとしたことであります。以上のいづれの場合においても、その手続等は災害救助法の当該
規定によることとし、また同法によ
つて必要な補償を行うことといたしております。
防衛出動時における
自衛隊の
任務遂行上必要があると認める場合に、緊急を要する通信を確保するため公衆電気通信設備の利用等について
長官が郵政大臣に要求を行い、郵政大臣はこの要求に沿うように適当の
措置をとるものと
規定したことも新しい
事項であります。
自衛隊の
訓練のため水面を使用する必要があるときは、
内閣総理大臣は、農林大臣及び
関係都道府県知事の意見を聞いた上、一定の区域及び
期間を定めて漁船の操業を制限しまたは禁止することができるものとし、この場合においては、所定の手続に
従つて漁業経営者が経営上にこうむつに通常損失を補償することといたしました。
その他、
都道府県知事、市町村長等への募集
事務の一部委任、機雷等の除去、土木工事等の受託、
海上保安庁その他の官署との
関係、
自衛隊の船舶及び
航空機の掲げる旗等については、
保安庁法における当該
規定とおおむね同様な
規定を設けましたが、土木工事等の受託につきましては、この
法律においてはその事業及び委託者の範囲を広げることとしております。
他の法令の
適用除外または特例については、
保安庁法におけるとおおむね同様でありますが、新たに道路運送法、道路運送車輌法、麻薬取締法、船舶法及び船舶積量測度法について必要な除外
規定を設けましたほか、船舶安全法、
航空法及び電波法について一部
適用除外の
規定を追加
整備いたしました。
第九章は罰則に関する
規定であります。本章においては、新たに
自衛隊の所有しまたは使用する武器、弾薬、
航空機その他の
防衛の用に供するものの損壊または傷害について罰則を
規定しました。また
自衛隊の
行動として
防衛出動が
規定されましたことに伴い、
防衛出動命令を受けた者について
保安庁法による命令
出動を受けた者に対すると同様の態様の行為についての罰則を
規定し、またこの場合における警戒勤務中の職務怠慢、及び
予備自衛官が正当の
理由がなく
防衛招集命令に応じて出頭しなかつたことについての罰則の
規定を設けました。その他の
規定は、おおむね
保安庁法の罰則の例になら
つて規定したものであります。
最後に
附則に関する
事項について御
説明申し上げます。
附則に
規定する
事項は大別して三つになります。
第一は経過的
措置に関する
事項であります。この
法律は
防衛庁設置法施行の日から施行するのでありますが、ただ
保安庁に現に勤務する
職員は、この
法律の施行前においても服務の宣誓ができることとし、この服務の宣誓をした者が
防衛庁のそれぞれの
職員となるものといたしております。その他この
事項に属するものとしては、
従前の
規定に基いてなされた任用上の決定その他の手続の効力、この
規定により陸士長、一等陸士、二等陸士となる者の二年の任用
期間の算定方法、公正審査会に係属する事案の処理、司法
警察職員たる保安官及び警備官の職務権限についての経過
措置等であります。
第二は
職員給与法の
改正であります。ここでは在名、官名等の変更に基く字句の
改正を行いましたほか、新たに
統合幕僚会議の
議長たる自衛官及び
新設の参事官の俸給を定め、
航空機搭乗員についての
航空手当を
規定しました。また
予備自衛官について月額千円の手当及び
訓練招集中の
訓練招集手当並びに
訓練招集中における
予備自衛官の死傷の場合の
給与上の
措置について必要な
規定を設けました。また陸士長以下の自衛官について三年の任用
期間のものを認めたことに伴い必要な特別退職手当を定め、さらに
出動を命ぜられた
職員に対する
出動手当の
支給等の必要な特別
措置を別に
法律で定めること、その他若干の必要な
改正を
行つております。
第三はこの
法律に伴う
関係法律の
改正でありまして、庁名、官名等の
改正に伴い、
恩給法、
国家公務員法に対する寒冷地手当及び石炭手当の
支給に関する
法律、地方税等について必要な
改正をいたしました。
以上をもちましてこの
法案内容についての
説明を終ります。