運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-25 第19回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十五日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 稻村 順三君    理事 高瀬  傳君 理事 下川儀太郎君    理事 鈴木 義男君       江藤 夏雄君    永田 良吉君       長野 長廣君    船田  中君       山崎  巖君    粟山  博君       飛鳥田一雄君    冨吉 榮二君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         行政管理政務次         官       菊池 義郎君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         保安庁局長         (人事局長)  加藤 陽三君         海上保安庁長官 山口  伝君         郵政事務官         (郵務局長)  松井 一郎君  委員外出席者         専  門  員 亀卦川 浩君         専  門  員 小関 紹夫君     ――――――――――――― 二月二十四日  恩給法の一部改正に関する請願田中伊三次君  紹介)(第二二八二号)  同(赤澤正道紹介)(第二三四六号)  同(古屋菊男紹介)(第二三四七号)  同(櫻井奎夫君紹介)(第三二四八号)  軍人恩給支給額引上げに関する請願田中伊三  次君紹介)(第二二八三号)  恩給金庫復活に関する請願田中伊三次君紹  介)(第二二八四号)  戦犯者恩給支給に関する請願田中伊三次君  紹介)(第二二八五号)  旧軍人下級者公務扶助料引上げに関する請願  (田中伊三次君紹介)(第二二八六号)  恩給比例増額に関する請願永田亮一君紹  介)(第二二八七号)  同外一件(松崎朝治紹介)(第二二八八号)  伺(植木庚子郎君紹介)(第二二八九号)  同外一件(坪川信三紹介)(第二二九〇号)  同(森幸太郎紹介)(第二二九一号)  同外一件(天野公義紹介)(第二二九二号)  同(花村四郎紹介)(第二二九三号)  同外一件(田中久雄紹介)(第二二九四号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第二二九五号)  同(坪川信三紹介)(第二三三八号)  同(井谷正吉紹介)(第二三二九号)  同(鈴木茂三郎紹介)(第二三四〇号)  同(齋木重一君紹介)(第二三四一号)  同(池田清志紹介)(第二三四二号)  同(西尾末廣君紹介)(第二三四三号)  同外一件(青木正紹介)(第二三四四号)  同(増田甲子七君紹介)(第二三四五号)  琴似町の農林統計調査機構整備に関する請願(  椎熊三郎紹介)(第二三二八号)  農林省統計調査機構拡充強化に関する請願(  古屋貞雄紹介)(第二三二九号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第二四〇一号)  同(迫水久常紹介)(第二四〇二号)  同(金子與重郎紹介)(第二四〇三号)  同(中村時雄紹介)(第二四〇四号) の審査を本委員会に付託された。 同日  恩給金庫設立に関する陳情書  (第一〇五一  号)  同  (第一〇五二号)  戦犯関係者恩給及び扶助料に関する陳情書  (第一  〇五三号)  旧軍人に対する恩給及び扶助料に関する陳情書  (第一〇五四号)  農林行政機構に関する陳情書  (第一〇  七五号)  特定郵便局長恩給在職年数の通算に関する陳  情書外二件  (第一〇八一号)  中小企業庁廃止反対に関する陳情書  (第一〇  八二号)  同  (第一〇八三号)  同  (第一〇八四号)  防災庁設置に関する陳情書  (第一〇八五号)  北陸財務局存置に関する陳情書  (第一〇九〇号)  同(第一〇九一  号)  農林統計機構拡充強化に関する陳情書  (第一  一〇一号)  中小企業庁廃止反対に関する陳情書  (第一一一  二号)  同  (第一一一三号)  防災庁設置に関する陳情書  (第一一一四号)  南九州財務局及び熊本国税局存置に関する陳情  書(第一一二八号)  南九州財務局及び宮崎財務部存置に関する陳情  書外五件  (第一一二九号)  同(第一一  三〇号)  同外一件  (第一二二一号)  同(第一一三  二号)  同外一件  (第一一三三号)  同外一件  (第一一三四号)  同(第一  一三五号)  同  (第一一三六号)  厚生省薬務局存置に関する陳情書  (第一一三  九号)  同  (第一一四〇号)  同  (第一一四一号)  同  (第一一四二号)  同  (第一一四三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  統計法の一部を改正する法律案内閣提出第四  八号)(予)  保安隊及び警備隊に関する件     ―――――――――――――
  2. 稻村順三

    ○稻村委員長 これより開会いたします。  統計法の一部を改正する法律案を議題とし、その趣旨の説明を求めます。菊池政府委員。     —————————————   統計法の一部を改正する法律案    統計法の一部を改正する法律統計法昭和二十二年法律第十八号)の一部を次のように改正する。   第四条第二項中「五年」を「十年」に改め、同項に次の但書を加える。    但し、国勢調査行つた年から五年目に当る年には、簡易な方法により国勢調査を行うものとする。     附 則  1 この法律は、公布の日から施行する。  2 改正後の統計法第四条第二項但書の規定による最初国勢調査は、昭和三十年に行うものとする。     —————————————
  3. 菊池義郎

    菊池政府委員 統計法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  この法律案現行統計法で定めております国勢調査実施間隔を延長するとともに、国勢調査中間において簡易な国勢調査すなわち人口調査を行うように統計法の一部を改正いたそうとするものでございます。  昭和二十一年に統計法が公布されます以前の国勢調査は明治三十五年に公布されました「国勢調査二関スル法律」によつて行われて参りました。この「国勢調査二関スル法律」は、国勢調査は十年ごとに一回施行するほか、調査後五年目に当る年に簡易なる国勢調査を行うように定めていたのであります。そしてこの法律による十年ごと国勢調査は大正九年、昭和五年及び昭和十五年の三回にわたつて実施されて参りました。  昭和二十一年に新たに統計法を公布するに当りまして「国勢調査二関スル法律」を廃止いたしますとともに、統計法の第四条に国勢調査に関する一条を設けましたが、その当時は終戦に関連いたしまして、人口移動のはげしいときでありましたので、国勢調査を五年ごとに行うように定めるのが適当であると考えられたのであります。  統計法に基く最初国勢調査は、昭和二十二年に臨時の国勢調査が行われましたが、次いで前の「国勢調査ニ関スル法律」によつて行われました最後の国勢調査である昭和十五年の国勢調査から数えて、ちようど十年目に当る昭和二十五年に、国際連合加入諸国とともに、世界人口センサスとして統計法に基く国勢調査が行われているのでございます。従つて現行統計法によれば、次期国勢調査はそれから五年目に当る昭和三十年に行われることになるわけであります。  政府行政簡素化についてかねてから研究を続けて参りましたが、国勢調査実施間隔の点についても、その見地から検討を加えました結果、国勢調査次期国勢調査との間には、その中間をつなぐ標本調査が発達し、かつ終戦直後のようなはげしい人口移動も行われなくなつている今日でありまするから、厖大な金額に上る国費をもつて、五年ごと国勢調査を行うことを定めている現在の統計法を改めまして、前の「国勢調査ニ関スル法律」が定めていたように、国勢調査実施間隔を十年ごとに改めるとともに、国勢調査行つた年から五年目に当る年に、簡易な方法により国勢調査を行うよう統計法改正をいたすべきであると考えるに至つたわけでございまして、ここに統計法の一部を改正する法律案を提案いたしました次第であります。従いましてこの法律改正が成立いたしますときは、昭和三十年には簡易な国勢調査実施されることになるわけでございます。  なお近年統計国際比較性が重要視されるようになつておりますが、世界各国とも大規模の国勢調査は十年ごとに行われており、それらの大部分の国の実施年度は、この法律改正によりわが国において国勢調査を行うことになる年度と合致することになりますわけで、国際比較性の点にも何ら支障を生じないわけでございます。  以上本法律案提案理由並びに内容の大略を御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げる次第であります。     —————————————
  4. 稻村順三

    ○稻村委員長 次に保安隊及び警備隊に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。下川儀太郎君。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 昨年の暮れ、監察部保安庁監察を依頼したのですが、さきごろ中間報告が参つております。それによりますと、はなはだ簡単な報告でありますが、かような報告が来ております。一が繰越金を調整のための調達面の無理が見られる。第二は、仕様書業者につくらせている関係劣悪品が非常に多い。三は納期が非常に長いこと。四は前渡し金業者に渡す件。五が調達品の点検が不十分である。六は調達組織米式であるからはなはだ複雑である。七は食糧以外は地方調達にしていないが、従つて中央調達地方の需要に適合しない点が見られる。こういう七点にわたつて報告がなされております。そこで第一点の、繰越金が多い、そのために消化し切れないという点が出ておりまするが、現在調達面繰越金がどのくらいあるのか、それをひとつ明確に提示されたいと思います。
  6. 上村健太郎

    上村政府委員 二十八年度予算執行状況につきまして、御説明を申し上げたいと思います。本年度の当初予算は六百十三億でございまして、このほかに前年度から繰越して参りました額を加えますと、九百二億になるのでございます。そのうち今日まで支出負担行為の済んでおりまする額が六百五十億でございます。これは一月三十一日現在でございますが、一月三十一日現在におきまして支出負担行為が済んでおりません額が二百五十二億ございます。支出未済額は四百二十六億ございますが、支出負担行為が済んでおらない額が二百五十二億というふうになつております。非常に調達が遅れておるじやないかという監察部の方のお話がございますが、昨年度におきましては、何分にも調達になれておりませんので、ことに新しい車両、新しい機械等がございまして、仕様書を書きます上におきましても非常に困難がありました関係上、昨年は非常に遅れて、従いまして相当大きな額の繰越しを本年度にしたわけでございます。本年度調達の係官も事務になれまして、現在の程度におきましては、比較的順調に調達をしておるという状況であると存じております。
  7. 下川儀太郎

    下川委員 御説明はよくわかりまするが、たとえば今造船疑獄が非常に問題になつておりまするが、やはり二十八年度保安庁造船計画調査して参りますると、全然その計画実施されておらない。たとえば内容については、約百二十四億の予算で、警備船が一千六百トンが二隻、千トンが三隻、六十トンが六隻、それから補給工作船が、千トンが一隻、掃海艇六百トンが一隻、三百二十トンが三隻、合計十六隻であります。この造船計画が、やはり二十八年度実施して二十九年度にこれができ上るということになつておる。しかし全然これが手をつけておらない。こういう実際的な問題が、われわれの前に報告されておるのであります。しかも昨年の救農国会とか、非常な農村の災害状況とか、あるいはまた生活保障の問題とか、そういう急迫した現在の情勢下において、百二十四億もそのままになつておる。こういう実態を見て参りますると、一体保安庁は何しておるのだ、造船計画がなされておりながら、どういう理由でこれを実施しないのか。ある一部から仄聞するところによりますると、いわゆる造船計画伴つて政党あるいはいろんな業者が、そのぶんどり競争をやつておる。そのためにいろいろな面で支障を来して、そうして遅れておるということを伺つておる。あるいはまたこの造船計画伴つての、いわゆる内容的な技術面、そういう面でいろいろな問題がある。たとえば先ほどの報告にあつた仕様書業者につくらせるという問題、こういう問題がからんで、勢いやはり造船業者設計させるとか、あるいは業者のやりいいような方法仕様書をやつてもらう。そういうことがやはり汚職的な関係が出て来る。あるいはまた業者自身がいろいろな政党人使つて自分の社の方へこれを請負わしてもらおうというような、そういう根強い競争保安庁めぐつてなされている。そういう関係で容易に判定が下せない、あるいは技術の面においても、いろいろな技術者保安庁にあると思いますが、そういう保安庁技術者がありながら、その計画あるいは設計がなされておらないというようなことが、いろいろとわれわれの耳に入つておるのでありますが、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  8. 前田正男

    前田政府委員 この造船の問題につきましては、せつかく予算を認めていただいたのでありますから、われわれも早くかかりたい、こう思つているのでありますが、その中の一部の難船等は、すでに注文の出たものもあると思うのでありますが、大きな問題につきましては、実は船の設計の問題が非常に手間取つておりまして、現在まだ基本設計の最中であります。しかしながらこの基本設計がさらに詳細設計に移るまでの間にどういう契約を結ぶかということにつきまして、初めから随意契約で行くべきか、あるいは指名競争入札で行くべきかということにつきましても、いろいろな意見がありまして、あるいはまた各方面からの陳情等のあつたことも事実であります。しかしわれわれ当局といたしましては、この問題を適正に処理するため、特に国民の血税からいただいた予算でございますから、なるべく廉価な、しかもいいものをつくる、信頼のできるものをつくる、こういうことにしなければならぬのではないか、こういうような観点から、これの適正なる契約方法をいかなる方法でやつたらいいか、こういうことにつきまして、最近重ねてその利害得失検討中でございまして、そういう関係から多少遅れているような点もあるような次第でございますが、ひとつなるべく早く持つて行きたいと思つております。なお技術者の不足の点につきましては、われわれもこの点についても、一部試作注文等によりまして技術の応援を受けるというようなことにつきましても検討をいたしておりますが、まだ確定をいたしておりません。
  9. 下川儀太郎

    下川委員 今の御答弁理由にならないと思うのです。少くとももう二十九年度予算が今日爼上に上つている。そういう際に二十八年度予算の中のこの造船計画がほとんど実施されていないという状況である。これは今の答弁を聞いておりますと、いろいろな情勢が介在しているようでありますが、もつと私は明確にお聞きしたい。これは技術陣がないといつておりますが、しかし旧海軍時代における相当の技術者もまだ日本には現存しているはずであります。いろいろな形の技術者日本にはある。あるにもかかわらず、全然これが技術的には計画なされておらない。われわれはいわゆる再軍備反対的な立場に立つておりますが、しかしこの予算の面から見ますと、予算が決定されたらただちにこれを実施するような計画がなされなければならぬ。今日そういう造船に対する一つの具体的な実相が全然出ておらないということは、明らかに保安庁自身の責任だと思う。おそらくこれは与党の中においても問題だと思いますが、業者の強い、いわゆる利益追求の闘いでいろいろな面において保安庁に圧力が加わるとか、あるいはまた一部業者政党人使つて自分会社にこれを持つて行こうとする、そういう動きのために、造船計画がなされておつても、それを実施することができない、そのように私は考えるのであります。いわゆる雑船が多少できたかもしれないが、しかし多少できたとしても、そんなことは問題にならない。もつと大きな、たとえば十六隻のうちどの程度計画の中に載つて実施されておるのか。その設計が何隻できておるのか。何隻のうちどれくらいが進行しておるのか。その進行状態を具体的に伺いたい。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 一応概括的に私から御説明申し上げまする造船計画の遅れておることはこういう理由であります。御承知通り二十八年度予算に盛られました造船は、これは特殊船であります。普通の船舶じやないのであります。そこで私の考えといたしましては、とにかく多大の国費使つて建造するものであるから、十分に慎重にやらなければいかぬ。具体的に申しますと、価格が安くてりつぱなもの、これであります。価格が安くてもそまつなものじやいけない。りつぱなものでも普通より高くちやいけない。要は今申し上げましたように特殊船でありますから、念には念を入れなくちやいかぬ。これはモデル船であります。今後  それをモデルとして、多数またつくられることになるかと私は考えております。これは慎重にやります。そこでこの設計をいかにすべきかということに十分の考慮を払う。申すまでもなく、普通の船舶であれば設計はまず簡単であります。こういう日本で戦後初めてつくる特殊船については、設計に十分の注意を払います。しかし保安庁内部においては、それだけの人的要素は持つておりません。どうしても外部の設計者とつながりを持つてやらなければいかぬのであります。いわゆる船舶設計協会なんかの手を借りて綿密なる設計をやる。これはなかなか容易ならね仕事であります。基本設計はようやくでき上りつつありまして、詳細なる設計はまだできていない程度であります。これははつきり申し上げます。御承知通りこれには相当の武器も搭載しなくちやならぬ。その武器日本でできないのであります。アメリカから持つて来なければならぬ。しかもこれに載せるのは武器ばかりじやなしに、あるいはソーナー、あるいは通信機、いろいろなものを載せなければならない。それらのことから綿密に計画を立てて、詳細なる設計をしなければならぬ。これは容易な仕事じやない。この設計が仕上つて初めて具体的に造船にとりかからなくちやならぬのであります。そこでこれをつくらせる業者を選ぶにつきましても、これは随意契約にしてよろしいか、あるいは指名競争にしてよろしいか、ここに大きな疑問があります。まず基本的に申しますと、こういう特殊船については、昔のごとくある種の造船所を選んで、それに随意契約をさせるのがいいのじやないかという議論がある。これは有力な議論であります。それで随意契約にすると、価格の点で、いわゆる適正価格をどこに置くかという大きな問題が出て来る。ややもするとそういうところに疑惑の念が起つて来ます。基本線からいえば、随意契約にしてよろしいと私は考えております。そこで選ぶについては慎重に考慮しなくちやならぬ。一つの考え方としては、基本設計、詳細なる設計ができ上つた上で、これを指名競争入札にすべきだという議論も出ております。ある種の指定した有力な造船者を選んで、その中で競争させる。これも一つの案であります。こういう問題が出て来る。これらの点についてはなかなか容易ではありません。昔のように工廠があつてモデル船をつくらせて、そのモデル船に従つて普通の造船者に請負わせれば何でもないのであります。御承知通り今はそういう工廠も何もありませんから、それで一つの案としてある日本の優秀な、だれが見ても、完全無欠だと申すことはできなくても、りつぱな造船者モデル船をつくらせて、それに基いて指名入札をさせてはどうかという議論も出て来る。これは普通の船舶なら早くやれといつても何でもありません。私はこれは慎重にやれと言つておる。どこまでも慎重にやれと言つておる。国費をむだに使つてはいかぬ、りつばな船をつくれ、ここから私は出発しておる。基本設計は今まだできておりませんが、詳細なる設計もむろんもうできるだろうと思います。そこでこれをどうすべきかということを私結論づけて行こうと考えております。要は特殊船でありますから、りつぱな間違いのないものをつくることが一つ、しこうしてなるべくこれを安くすることであります。この方針のもとに今私は苦慮しておるのであります。さような事情であるのであります。
  11. 下川儀太郎

    下川委員 長官の言うことはよくわかりますが、大体二十八年度のこの造船計画の百二十四億の予算を提示するときには、どういう船をつくるかという内容的の面は検討されたと思います。従いまして予算をとるときにはすでにこれとこれと、こういう計画のもとにこういう船をつくるのだといつて予算化されて、いわゆる予算の面で出されるのだとして、予算が通ると、すぐこれが、技術員を動員して、具体的にどれくらいの金がいつて、どういう形になるかということは、すでに出されなければならぬと思います。従いまして予算をとるためにはいろいろ他の計画がなされる。そうして予算をとつてもうすでに一年近くもなつておるが、長官お話を聞くと考慮中だという。モデル的な、模範的な一つの船をつくるのであるから、いろいろ考慮を払われておるということを聞いております。しかし予算をとる前に一つ計画がなされ、これを提示するのであるから、予算化された場合においては当然これはもう実施立場に置かなければならぬと思います。それで先ほど私が前田君に聞いたのは、どのくらいで、どの程度これが具体的に進行されておるかということで、それを詳細に聞きたいのであります。要するに保安庁でこれを技術員計画をして、設計がどの程度でき上つておる。今は祕密はないのでありますから、内閣委員会にこの程度できたというくらいの提示はほしいと思います。その点が明らかにされておらない。この十六隻のいわゆる百二十四億の使途は、国民の税によつてなされておるのでありますから、これはオープンでわれわれの前に公開してほしいと思います。そうしないと、より以上に造船疑獄といううわさの飛んでおる折からでありますし、また一方においては、ある政党人保安庁圧迫を加えておれの会社によこせという運動をしておるのではないかということがいろいろ伝えられておる際でありますから、こういう席上でも、あるいはこの席でなくてもよいのでありますが、もつと的確に、もつと詳細に、具体的に御報告していただきたいのであります。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 簡単に私申し上げておきます。御承知通り予算の請求をしたのは今から半年ほど前であります。もちろん予算を提出する際には、どういう船だという目標を掲げてやるのが当然であります。千六百トン、千トン、これは大体昔の駆逐艦であります。その後御承知通り造船については非常に進歩しております。今は溶接船であります。そこで大体におきまして千六百トン、千トン、それから千トンの補給船、六百トンの補給船であります。こういうものをつくるというあらかじめの計画はちやんと立つておるわけであります。これの大体のめどはわれわれつけておりますが、いよいよということになりますと、今申し上げました通り、詳細なる設計を要する。この設計ということが先刻申し上げました通り、容易ならぬことで、つまらぬ設計をされては困る。念には念を入れてやつております。私は、建前として不正なことがあつては相ならぬ、国費をむだに使つちやならぬ、りつぱな船を安くつくれ、これでやつておるのであります。私はここにあらためて申し上げておきます。いかなる政党圧迫もありません。私はそういうことは断じてないと信じております。遅れているということは、決してさような点から遅れておるわけではありません。私は、慎重にやつてくれ、慎重にやらなければいかぬということを言つておる。少々遅れてもいいから慎重にやつてくれという建前であります。基本設計もできないのに請負に出すということであつては相済まぬ、そういうことがあつてはならぬ。遅れているのは一に私の責任と解してさしつかえないと思います。私はその責任を甘んじて受けます。早くやつても何にもならない。基本設計もできないのにやるということは——、やり得るのですから。しかし私はそれをやつてもらつちや困る。一に遅れている責任は私にある。甘受いたします。りつぱな船をつくれ、これでやつておるのであります。どうぞさように御了承願います。
  13. 稻村順三

    ○稻村委員長 下川君の質問に関連して、委員長として木村長官にちよつと御注意申し上げます。先ほど前田政務次官は、基本設計がないと申しましたが、ただいま木村長官説明では、基本設計がすでにでき上つているというお答えでございました。この間多少食い違いがあると存じますが、御説明を願いたいと思います。
  14. 前田正男

    前田政府委員 これは私から御説明申し上げます。八月ごろ、予算通りましてからただちに根本的な基本設計をお願いするということになりまして、われわれ造船協会に頼みまして、大体今でき上りつつあるわけでございます。大体はできておるのであります。しかし二月の末に——まだわれわれのところには渡つておりませんが、二月の末に大体渡ると思つております。八月からすでにそういうことにかかつております。またこれに積みますところの砲はどうするとか、主砲はどうするとか、どういうエンヂンにするとかいうことについては、すでに決定をいたしておるのであります。基本設計につきましては大体でき上つておるわけであります。もう二月の末には渡る、こう思つておるのであります。
  15. 稻村順三

    ○稻村委員長 それではもう一隻お伺いいたします。大体できておるというのでありまして、やはりできていないというのが——正式にはまだ発注したり何かする基礎になる基本設計ができていないとはつきり解釈してよろしゆうございますか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 本月末までにははつきりした基本設計が私の手元に参ると考えております。大体はできておると私は想像いたしておるのであります。
  17. 稻村順三

    ○稻村委員長 それでは基本設計ができておるから、あとはこまかい付属的な設計である、とかように言われる木村長官説明は、多少訂正を要すると思いますが、どうですか。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 訂正は、私はあえて異議はありません。
  19. 稻村順三

    ○稻村委員長 それでは基本設計がまだできていないので、発注をしたりなどするいろいろな手続ができていないのではないかという下川委員の質問に対して、先ほどの答弁と多少異なつ答弁が行われなければならないと思いますが、その点いかがですか。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 食違いがあれば訂正いたします。
  21. 下川儀太郎

    下川委員 ただいま長官からるるその経過を説明されたのですが、先ほど稻村委員長からも質問がありましたが、その具体的な実相をひとつ知らしていただきたい。要するに十六隻のうち何隻今月設計ができるとか、あるいは三月できるとかいうような、そういう具体的なものが数字的にほしいのであります。それから、たとえば前田君は、技術陣が不足とかいろいろなことを言われているので、そういつた面も十分加味して、技術陣が何名不足してこれこれこうだから遅れてしまつたということを具体的に提示されないと、やはりその理由にならないと思う。ただ抽象的に信念だけでもつて遅れた原因をいろいろ説明されても、これでは国民も納得が行かないし、われわれ予算を可決した手前上も納得が行かない。ですから、今言葉の行き違いがいろいろありましたけれども、そういうことは追究いたしません。問題は、やはり造船疑獄が爼上に載つておるときでありまして、この造船疑獄に関連していろいろとりさたされている。せつかくあなた方の熱情が、そういう形からいろいろな面に持つて行かれる。いつでもわれわれは視察に参ります。ですからどこの場所で——保安庁技術部なら技術部のどこの場所でこれがこの程度になされている、いつでも案内して内閣委員の前に提示ができるという明確な責任のある答弁をお願いしておきたい。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 実例を御指摘くださいますれば十分説明をいたします。
  23. 下川儀太郎

    下川委員 それではいずれ内閣委員で設計その他の実態を把握に参りますので、その質問はこの辺でとめておきます。  第二点は、仕様書業者につくらせる関係劣悪品が非常に多い。建前からすると、これは当然保安庁それ自体がつくらなければならぬ。それを何がゆえに業者につくらせているのか。仕様書業者につくらせると、第三者には、勢い保安庁業者がなれ合いの取引をしているというふうに見られるのであります。これは正規の監察部報告に従つての言葉でございますので、どのようなわけで仕様書業者につくらせているのか、その理由を明確にしていただきたい。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ちよつとわからぬのですが、どういうものについてのお話なのですか。全体ですか。
  25. 下川儀太郎

    下川委員 全体的だと思いますが、そういう報告が来ております。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いや、そういうことは、全体としてはないと私は考えております。
  27. 前田正男

    前田政府委員 私ちよつと説明さしていただきたいと思います。大体おもな仕様のもの、あるいは外国品のものはこちらで仕様書を出したりしていると思います。しかしながら詳細な仕様のわからないものは業者の仕様を使つたり、あるいはまた業者の特許品といいますか、特殊製造品というものは向うの仕様を使つているものもあるじやないかと思いますが、詳細のことは、実はこれはないとは言い切れないと思います。特許品といいますか、そこのメーカーだけがつくつているものはそこの仕様書使つているではないか、あるいはまた外国から入りましたものをコッピーさして仕様書をつくつている例もあるじやないかと思いますが、これは一応帰りまして調べてから御返事さしていただきたいと思います。
  28. 下川儀太郎

    下川委員 これは実際に今輿論でいろいろ言われている問題なんです。保安庁はいろいろな疑惑を持たれておる。先般あなたの方からいただいた入札の内訳がありますけれども、そのうちの仕様書がかなり業者によつてつくられておる。きよう私具体的な書面を持つておりませんけれども、あなたの方ではどれとどれを業者につくらしたのか。これはやむを得なくて業者につくらしたとか、これは確実に保安庁仕様書をつくつて向うに出したとか、そういう面を十分書いてわれわれの前に差出していただきたい。同時に、これは保安庁だけの問題ではなく、各省にまたがる問題でありますが、往々にして仕様書業者となれ合いでつくらせる。そうすると、業者は都合のいい仕様書をつくる。そこで、かりに不当な役人がいた場合は、その仕様書を通していろいろ醜悪な問題が出て来るのであります。われわれはあなた方から出されたデータによつて、この仕様書がやはり業者につくらしたものであるということならば、それはあくまで追究いたします。あなた方でどうしても技術的にできない仕様書の場合においては、業者に委嘱することもあるでしよう。しかし保安庁それ自体がつくれる仕様書、当然保安庁技術陣においてつくられる仕様書であるにもかかわらず、これを業者に頼んだという場合は、ここに大きな疑惑が持たれて来る。これはたくさんの仕様書が出ておるのでありまするから、一つ一つ追究すればわかることでありますから、うそ隠しのないようにあなた方にこれをしていただきたいと思います。これは次回の委員会までにつくつていただきたい。それによつてまた私たちがそれを十分調査して質問したいと思います。  それから第三点の、納期が非常に長い。どうして納期が非常に長いのか。およそ発注する場合においては、納期を制限してやるはずなんです。おそらく保安庁ごときは、木村長官が非常に熱心だから、そういうことは督励するでしようけれども、どうして納期が長いのか。現在いわゆる経済情勢を見ると、非常に仕事のない人が多い。あるいは中小企業の問題、いろいろな問題が今日叫ばれておる。そういう際に、あえて納期の長い業者にこれを注文しなくても、あらゆる角度から競争入札させれば、納期は簡単に早く納まつて来る。それをどうして納期を長くするのか。ここにもなれ合い取引という大きな疑惑を持たれて来るのであります。この点についてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  29. 前田正男

    前田政府委員 この問題につきましては、具体的にどうということはちよつとわかりませんけれども、私たちといたしましては、試作いたしましたりいたした場合は、特殊のものが相当あると思いまして、こういうものはやむを得ず相当納期の長いもの、また新たに日本でつくられるものも相当納期の長いものがあるのではないかと思うのであります。しかし一般的には入札でやつておりますので、もちろんなるべく安い、また納期の早いものを買うようにいたしております。しかし中には特殊のそういう新しく日本でつくつて行くというようなものにつきましては、納期の長い場合もあるのではないかと考えますが、また具体的によく調べてその理由は御説明さしてもらいたいと思います。  なお先ほどの仕様書の件につきましても、われわれの方でよく調べさしていただきますが、この点につきましては、われわれの方もさらにもう少しくこういう調達方面の陣容をこの際整備する考えでおりまして、いろいろとまたできるだけ、保安庁法の改正においてわれわれといたしましてもこの点については改善をいたすべく考えておりますので、いずれまた御審議を願いたい、こう思つておる次第であります。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ちよつと私一言だけ申し上げておきます。こまかいことは実は私存じません。しかし私が一番問題にしておるのは、大量に入れるもの、たとえて申しますると車両のようなもの、これも御承知通りつまらぬものを入れられては困るのです。そこで十分試作をする。その試作に相当時間がかかります。試作されてもさらにわれわれの気に入らぬものが出て来る、またやり直す。こういうことが車両あたりにあるのであります。ほかのことは私よくわかりません。この大きな金を使う車両などについて相当手間をかけてやつておるということは事実であります。その時日のかかつておるということは、今申し上げる通りりつぱなものをつくらせるという趣旨から試作品をつくる、その試作品がよくなければまたやり直す、そういうことから多少時間が遅れておるという事情もあることを御承知願いたい。
  31. 下川儀太郎

    下川委員 それは特殊的なもの以外のものも納期が非常に長いということが伝えられております。もちろん政務次官やあるいは長官の言うことはよくわかります。車両とかそういう重要な機械に対する納期が長いことは当然のことだと思いますが、その他の納品の納期が非常に長いということ、そこにも大きな疑惑、いわゆる担当官あるいは保安庁の内部の人とのいろいろな行きがかりがあるのじやないかというふうな一つの疑惑が持たれておる。  それから第四の前渡し金業者に渡しておるという点、これは保安庁の内規では前渡し金をどの程度に渡すのか、その内規その他についてお伺いしたいと思います。
  32. 上村健太郎

    上村政府委員 主務局長がおりませんので、内規等今すぐお答えできませんのですが、これは昨年だつたと思いますが、大蔵省と協議いたしまして、非常に長期にわたつて製作をしなければならないようなものについては、大蔵省と協議の上前渡金を出し得るということにいたしたはずでございます。詳細な点は経理局長が今院内におりますから呼びましてお答え申し上げることにいたします。
  33. 下川儀太郎

    下川委員 それは前と同じように、重要なものに対しては、これは一応長期を要するので前渡し金をしなければばらぬということは常識的にわかりまするが、その他のものにまでもやはり前渡し金がなされておる。これは通常納品をしたそのあとで支払われるのが常識なんですが、それがもしそういう重要な、長期を要する納品、いわゆる物品に対して前渡しするということが許されておるなら、これはやむを得ない、しかし一般的なものにまで前渡しをするということにやはり当然大きな疑惑が持たれて来るのであります。これはやはり前と同様に、どの程度にこれが前波しされておるか、その詳細をひとつ御報告願いたい。これはやはりプリントにして各委員に配付するように御用意願いたいと思います。  それから第五点の調達品の点検が不十分である。そのために非常に劣悪品が多い。これは機械類その他にはないかもしれませんが、たとえば一般的な雑物に対する点検、二年ほど前は要するに調度品など、たとえばいす、テーブルなどが三箇月、四箇月でくたくたにくずれてしまつたという事実も私たちは聞いておる。こういうことはやはり業者とのなれ合い仕様書、あるいはまたそういう——これは問題にもなりましたけれども、そういうために、点検が不十分だつた、それから発注のときの仕様書を向うに書かしておるということで、せつかく血税であがなわれるそういつたものが、いわゆる二割、三割劣悪品が納入される、そういうことを監察部が指摘されておるのでございます。この点についてどのような情勢ですか、それをひとつお伺いしたい。
  34. 上村健太郎

    上村政府委員 御質問の内容が抽象的なものでございますから、具体的にお答えを申し上げかねまするけれども、二年ほど以前までは、この納入品に対する検収と申しまするか、これが非常に不十分であつたことは事実でございます。一昨年の秋以来、特別に検収員の能率向上ということに力を入れまして、現在におきましては、検収等で不十分なものはないと私どもは確信いたしておりまするけれども、具体的にどういう品については、こういう不十分なことがあつたじやないかという仰せがありますれば、承りまして調査いたしまして御報告申し上げたいと思います。
  35. 下川儀太郎

    下川委員 抽象的かもしれませんが、しかしこれはいつも点検がこの調達関係では一番重要だと思う。これは先ほど木村保安庁長官が言われた最も安くて、しかも最も品位のあるもの、これがいいことである。ところがこれを点検する者がやはり業者となれ合いの場合は、劣悪品でもこれを納入さしてしまう。問題はやはり上の人々がいくらそういう気持を持つてつても、点検者、あるいはそれを十分調査をする人が業者とのいろいろな合作によつて今日でも今までもいろいろなあの保安庁の汚職事件が生れておる。幸いに上まで行きませんけれども、いわゆる各下僚がああいう実態をさらけ出しておる。その中にやはり点検者の立場とかあるいはまたこういう納品納期等の担当者がいろいろな犠牲となつて現われて来ておるのでありますから、やはりその品物が安かつた場合は安いだけに市井の品物と比較してどの程度のものであるかという、そこまでつつ込んで調査する必要がある。こういう具体的な面に対してもわれわれはやはり委員会の責任上十分調査にも参りますけれども、この点はどの程度立場でもつて、どの程度の責任を持つて、この点検をやつておられるのか、また点検の制度等についてもお伺いしたい。
  36. 上村健太郎

    上村政府委員 調達の方の機関の中にはいろいろな班がございまするが、その中の一つといたしまして検収を専門にしておる班がございます。そうして各品目別に、あるいは中間検査もやつておりまするし、それから納入の際にはほとんど主たるものが補給廠に入りますものですから、補給廠には特別の検収官がおりまして、責任を持つてつておるわけでございます。
  37. 下川儀太郎

    下川委員 その点についてはいずれわれわれは現地調査をやりたいと思うのですが、それまでに十分わかるようにしておいていただきたいと思うのです。  それから六点の、調達組織米式だからはなはだ複雑であるという監察部の答えが出ておるのですが、この点をひとつお教え願いたいと思うのです。
  38. 上村健太郎

    上村政府委員 調達の組織は米式であるというお話でございますが、私どもといたしまして非常に能率的になつておると思います。また不正等が行われないような組織になつておると存じておりますが、それは一人の手によりまして仕様書が書かれ、調達が行われ、検収が行われるという組織をとりませんで、仕様書を書く担当者と、それから契約をする者と、あるいはその契約をしていいかどうかという業態を調査する班と、また原価計算をいたしまする班と、検収をいたしまする班と、全然別個の責任系統でやらしておる次第でございまして、私どもといたしましては現在の調達のやり方で比較的うまく行つておるのではないか、組織としてはうまく行く組織ではないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  39. 下川儀太郎

    下川委員 これは非常に専門的な問題でありまするので、その実情によく通じた人たちの研究にまかすといたしまして、第七点として、現在食糧以外は地方調達していないが、従つて中央調達地方の需要に適合しない点が見られる、こういう点があげられておる。要するに食糧以外のものはほとんど中央で調達しておる。そういう関係地方の需要に適合しない、この点はいろいろな関係で辻委員からもかつて話されたと思いますが、こういう点は食糧以外のものはやはり中央でもつて集権的にこれを買つてつておるという関係で、おそらくもう地方の実情に応じ切れないという場面があるのじやないか、こういう点についてはどのように保安庁はお考えでございましようか。
  40. 上村健太郎

    上村政府委員 お話通り、現在のところは大体食糧以外は中央調達でまかなつております。従いまして地方の要求に沿わない点があるのじやないかというようなお話でございますが、一部そういう点があると存じております。従いまして今回の保安庁法の改正に伴いまして調達機構の改変をいたしまするのとあわせまして、できるだけ地方調達に適当なものは地方調達に移したいというふうに考えております。
  41. 下川儀太郎

    下川委員 この調達の面におきましても、やはり予算が中央集権化されておる場合において、勢いいろいろな形のボス的なものが現われて来る、あるいはまたこれは地方においての場合やはり地方ボスの一つの温床になる場合がある。問題は人間であります。しかしながらやはり現実的に地方に適応しないものを、中央においてある業者と担当官がこれを大量に買つて地方へ無理やりに押しつける、その結果がやはり地方にそういう形になつて反映して来るということも考えられるのであります。いろいろな面から私はこういう点を集権化よりもむしろ分散的にして、そうしてその監督と、あるいはまた誠実な人間というものが必要だと考えるのです。  要はこの七項目を次々と見て参りますと、やはり現在までの保安庁行政という中に非常に大きな矛盾あるいは疑惑が対外的に持たれることを感知するのであります。この際この七項目に対していろいろな角度から明細書をつくり、あるいは説明書を出して、造船疑獄あるいはその他の疑獄の盛んな折からでございますから、この際われわれ委員会及び大衆の前にあなた方のすつ裸の姿を見せていただきたい。これを最後につけ加えて今日の質問を打切ります。
  42. 稻村順三

    ○稻村委員長 辻政信君。
  43. 辻政信

    ○辻(政)委員 二月二十日の朝、李ラインにおきまして海上保安庁の巡視船の「さど丸」が韓国の警備船金星号に拿捕された事件が起つておるのであります。新聞によつて見ただけでございますから、その様子は的確であるかどうかはわかりませんが、その新聞によつて知り得た状況を見ましてもこれはきわめて重大であり、日本の国家の権威を失墜した重大な問題と考えますので、以下それに関連しまして海上保安庁長官の山口さんと、また防衛に関して木村長官に若干御質問したいと思います。  山口長官は、昨年の九月以降今日に至るまで半年たつておりますが、その間あなたは直接現場においでになつて、李ラインの状況を御視察になつたことだろうと思いますが、その結果どういう御所感をお持ちになりましたか、まずもつて承りたいと思います。
  44. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 九月七日以来、いわゆる李承晩ラインの不祥事件が頻発して参つたのでありますが、御質問の李ラインそのものの現場の視察はいたしておりません。昨年の十一月下旬であつたと思いますが、現場の基地、すなわち門司、下関、福岡等に参り、またその後、佐世保、長崎方面等に参りまして、こちらの地方の出先機関並びに水産業の方々と詳細懇談をいたして参りました。それだけでございます。
  45. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は十月にこの李ラインを見て参りまして、最も大きな欠陥と感ぜられたのは、最高責任者の首脳部が、志気高揚の点においても、現地指導の点においても、李ラインに乗り出して、巡視船にみずから乗つて、彼らのやつておることの現場を視察される必要があるということを痛切に申し上げておるわけです。にもかかわらずず、その最高責任者たるあなたが、この半年間身を挺してその現場を見てないというところに、この国家の権威を失墜した根本原因があるとお考えになりませんか。
  46. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 辻委員のおつしやる御意見もわかりますが、当時はわが日本政府の方針といたしましては、無用な刺激はしたくないという方針を一応立てまして、いろいろの手配をいたしたわけでありまして、あの緊迫した状態のときに私自身が第一線の海上に出ることは一応差控えたわけでございます。
  47. 辻政信

    ○辻(政)委員 それは非常な考え方の間違いではないかと思います。無用の刺激をしないためには、なおさらあなたが行かれて、その趣旨を現場に徹底しなければならぬはずであります。  以下具体的に御質問しますが、新聞の情報によりますと、二月二十日の夜、四百五十トンの日本の監視船「さど丸」が韓国の警備船金星号、これは二百二十トンであります。日本の船の半分しかないのです。この船によつて拿捕されておる。それは朝の六時にまず機関銃でもつて霧の中から撃たれた。六時半には停船を命ぜられて、七時に接舷、そうして船長と機関長が相手の船に乗り込んで行つて海上会談をやつております。それが約一時間半、八時半に自動小銃を持つた七名の韓国兵が日本の監視船に乗り込んで参りまして、こちらの船員十五名を人質にかつぱらつてつて、銃でもつて船長以下をおどして連行して行つた事実であります。この状態を見ましたときに、私はこれほどまでに無抵抗といいますか、無気力といいますか、無気魄といいますか、まことに恐るべき志気の弛緩、消極的態度であると見るのでありますが、こういう場合にあなたは、無抵抗で手をあげて捕虜になれというふうにふだんから指導されておるのか、それとも国家の権威を身をもつて守るようにふだんから指導されておるのか、その点を簡単に伺いたい。
  48. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 ただいまお話になりました事件当時の経過につきましては、大体そのようであります。私の方に詳細報告が入つておりますが、これは大綱は一致しておりますから省略いたします。かねがねわれわれの方といたしましては、巡視船の行動について、相手国の艦船が、最悪の場合、巡視船に対して実力をもつて臨検し、あるいは拿捕しようとしました場合には、実力で来られた場合でありますので、そのときの状況を判断いたしました上で、待避不可能のときは、その場合に実力でこれを拒否するということは避けるように一応言つてあります。しかしながら自己の生命等に危難が切迫する等、真にやむを得ない場合には、正当防衛の範囲におきまして実力を行使することはさしつかえないのでありますが、要は極力国際紛争を起さないよう自制する方針も一応頭の上に置いて慎重に対処してくれというように、かねがね指示をしてあつたわけであります。
  49. 辻政信

    ○辻(政)委員 そうしますと、小田原船長以下が相手の船の二倍の船を持つて、乗組員は相手の三十五名に対して三十九名おつた。その船をもつてあのような侮辱を受けたことは、あなたの御希望通りの行動とお考えになりますか。
  50. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 私はその当時の報告を受けて、従来からやつておりまする接触状況、並びに当時巡視船「さど」の近くに二隻の日本漁船らしいものの操業をレーダーでつかまえておりますので、これらの船が拿捕されるようなことがあつてはいけないので、これまでの通り一応そこで会談をしようという態度に船長は判断して出かけたものと思います。ところが、そこいらの判断についての御批評はいろいろあろうかと思いまするが、船長、機関長が金星号に乗り込んで折衝をしている間に、先方は計画的であつたかどうかわかりませんが、お話のように、七名の武装した先方の乗組員が「さど」に乗り込んで来、さらにこちらの方の乗組員の十五名を金星号に移乗を命じた。そういうような状態になりましたので、それでいろいろとその拿捕について交渉しましたが、事態がそういうふうな進展を見て、遂にこちらとしては、それに対処する実力を行使すると申しましても、持つておりまする拳銃等はその当時用意しておりませんので、そういう事態になりましたので、やむを得ずかような連行が行われ、済州島に行つて交渉するつもりであつたと思うのであります。
  51. 辻政信

    ○辻(政)委員 よけいな弁解はいりませんから、小田原船長以下のとつた態度があなたに満足なものか、不満足なものかということについてはつきりお答え願いたい。
  52. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 やむを得ない処置であつたと思います。
  53. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまのお話では、拳銃が間に合わなかつたというのですが、あの船には拳銃が何ちよう備えつけてあつて、どうしてあつたか。
  54. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 拳銃は二十ちよう持たしてありました。その拳銃は一定の箇所にしまい込んであつたわけであります。
  55. 辻政信

    ○辻(政)委員 私が直接見たところによると、二十ちようの拳銃は金庫に入れてかぎをかけて封印してある。しかもあなたは昨年十一月六日の本委員会の席上において、自由党の平井議員の、もし危険にさらされた場合に応戦していいのか、それとも逃げて帰れというのか、どう考えるかというこの質問に対して、あなたは、「うちの巡視船は警察船の性質でありますから、不法に向うから攻撃を受けて身に危険を感じ急迫状態になれば、正当防衛、緊急避難という範囲の応戦はむろんであります。こちらが積極的に撃つということいたしかねるのであります。」こう答えておりますね。その考え方は間違いありませんか。
  56. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 私はそのときの言葉を今……。(辻(政)委員「速記録です」と呼ぶ)ですから、それはその通り申上げたと思います。
  57. 辻政信

    ○辻(政)委員 私はそういうことを聞いているのではない。言葉の端くれを言つているのではない。精神はそれでいいかと言つているのです。
  58. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 その通りであります。
  59. 辻政信

    ○辻(政)委員 しからば、今度の場合も、拳銃二十ちようをサロンに置いて、金庫の中に入れてかぎをかけて封印をしておつたと私は判断する。そういう拳銃ならば、なぜ持たしておく必要があるか。まさかのときに正当防衛をやる自衛の武器であるから持たしてある。六時に撃たれて八時半です、向うが来たのは。その二時間半というものは、とつさの場合としても、三十九名のうちの二十名はその自衛の拳銃によつて自衛ができたはずです。そうすればあのようなぶざまな侮辱を受けずに済んでいる。あちらは自動小銃を持つているけれども七名です。こちらが二十名で拳銃を持つて自衛の態勢をとつたら、数において入つて来られません。あなたはそういうことを答えて、その気持でおりながら、その拳銃をかくのごとくしている。これは長官としての責任ではないか。
  60. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 警察官と違いまして、ふだん日常の業務をやる場合には、むろん拳銃は間違いがあつてはいけないので、わが巡視船におきましては金庫に格納していることはその通りであります。今回の場合におきましては、多少向うの出方について判断を誤つたと結果的に見れば見られるかもしれませんが、従来の通り会談に乗り込んで行き、そして話をつけて別れられるという判断でなかつたかと私は思うのであります。
  61. 辻政信

    ○辻(政)委員 そこの町のおまわりだつてふだん拳銃をつけているではないですか。李ラインに行く者は海賊のいるところに行くのですよ。それが拳銃を金庫に入れて封印をしている。そんな拳銃ならなぜ渡すか。渡してあるからには、応急の場合ただちにそれを持つて国の権威を守るように精神教育もやり、訓練もしなければならないのですが、あなたは先ほど小田原船長以下の行動は満足だと言い、今は状況判断を誤つたらしいと言つている。そこにすでに食い違いをいたしているではないですか。あらためて承りますが、もしあのときに日本の巡視船に、相手は機関銃二ちようしか持つていない、それに相当するように、こちらの方も自衛の機関銃なり機関砲なり備えつけてあつたとしたならば、おそらく私は二分の一の小さな船がいどんで来ないと思うのですが、それはどうでしよう。
  62. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 まず第一点の極力国際紛争を起さないようにかねがねその点は強調しておりますから、さようなことが船長の頭にあつたと思いますし、先ほどから申し上げますように食い違いでなくて、従来から洋上で会談をやつて成功した場合もありますし、向うの術中に陥るというような結果に思われるかもしれませんが、その点は多少判断を誤つたかもしれませんが、事態がそうなつた場合の船長の処置としては、やむを得たかつたと私は考えるわけであります。
  63. 辻政信

    ○辻(政)委員 じようだんじやないです。これは六時に機関銃で撃たれている。この前はそうでなかつた。平和裡に接舷をしてやつている。今度の場合は六時に機関銃で撃たれておるのですよ。それで判断を誤るの誤らぬの問題ではない。海上保安庁長官として部下を統率する、国家の権威を守るというしつかりした信念があなたにあつたならばこんなことは起らない。おそらく私の考えでは、あなたのそういう指導、どつちへやつていいかわからぬようなひようなまな、半年間もたつておるのに、みずから一回もその現場に飛び込んで行こうとする気魄のない長官、そういうあなたの気質と同じような気質が下まで行つている。そしてこの船員たちは、国家がはずかしめを受けて、船をとられても無抵抗で、二、三箇月の後には命を全うして帰れる、こういう気持を持つたら事ゆゆしい問題になる。  そこでお伺いするのは、あなたはそういう重要な任務におられるのですよ。そして部下は死地に投じておる。まる裸で、拳銃に封印をされて、あなたの指示によつて死地に行つているのですよ。そこへどうして一ぺんも行かぬかというのです。昨年の十一月六日の本委員会において私が次の質問をしておる。武装をなぜやらぬか、そうするとあなたはそれに対して、九十四隻のうち六十隻はすでに三インチ砲または二十ミリ機関銃を装備するための改装を終つておる。兵器はアメリカから借用するので、外務省にその促進方についてお願いしておる。こういう答弁があつた。それに対して私は、それでは間に合いませんぞ、現在持つておる警備隊保安隊武器を一時借用して、そして基礎工事が終つておるところに一日も早く自衛の兵器を備えつけなさい、それが向うに侮りを受けないで、紛争を解決する手段になりますぞ、こう申し上げたのに対し、あなたは、それは初めてわかつたことだ、こういうことを言つております。現在のいわゆる保安隊警備隊の兵器を流用し、日本の責任においてやるということは初めて知つた、ぜひ促進するという言葉をあなたは述べております。それからちようど事件が起つた日まで百六日たつておる。その答弁があつてから百六日です。その百六日の間あなたは、自分答弁に対していかに処置をされたか。保安庁長官に連繋し、それを交渉された事実があるかないか。
  64. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 火器のとりつけのための改装並びにとりつけ工事につきましては、昨年の秋にさような応答があつたことはその通りでありますが、私の方といたしましては、十一月十五日の韓国による拿捕が最後で、累計四十三隻になりまして、一応そこで事件そのものにつきましては小康を得たわけでありますが、それまでに私の方としては、火器をとりつけるという基本方針は前からあつたわけであります。鋭意進めて参りまして、今日までに四十九隻の改装工事は終つておるわけでありますが、火器そのものの積込み工事は、実は十一月十五日からとだえまして、一方いろいろ情報を総合いたしますと、日韓会談の再開につきましてアメリカその他の動きもありまして、水産関係についての会談による解決ができることなら、これが最上の方策であると考えまして、様子を注視しておつたわけであります。それともう一つ、海難は相当多うございますし、さしあたりはそれらの忙しい日常の業務はありますが、最大限の隻数を李承晩ラインあるいはそれから始まつた以西底びきのための東支那海に対するその目標として、二十四隻の巡視船を数においては配置しようという計画を立てて動員をいたしておつたわけであります。ところがただいま申し上げた会談の再開気配も当時確かにありましたので、この際ことさらに武器を積んで行くことは、それにいかなる影響を与えるかという点も配慮いたしまして、一方、しかし既定方針としてはとりつけるということで、アメリカ側あるいは大蔵省に予算等の折衝も続けまして、現在のところでは三月までに、二十八年度予算をもつて十隻程度は近く入札にも付し得るような状態に今日までなつて来ておるわけであります。保安庁から武器を借りることにつきましては、これまたアメリカとの交渉がいるわけでありまして、先方の話を聞きますと、警備隊の方のわれわれの巡視船にとりつけるべき種別の火器につきましては、余裕はないということでありましたので、また先ほど申し上げたように、しばらくは差控えようという気持がありまして、それが若干遅れたわけでございます。
  65. 辻政信

    ○辻(政)委員 役人の答弁は長過ぎて困ります。私はこの問題について保安庁当局に交渉なさつたかどうかということを端的に聞きたい。時間があまりないのです。もう一回はつきり答えてもらいたい。
  66. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 われわれの方の係から向うの様子を聞きに行かしたことはございます。
  67. 辻政信

    ○辻(政)委員 そういう要求に対して木村長官は、いつそういう要求をお入れになりましたか、それを伺いたい。
  68. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは下僚の方でやつておることと思います。私の手元へは参つておりません。
  69. 辻政信

    ○辻(政)委員 この重要な問題を下僚のだれにやらしたのか。あなたがこの大事なときに現場へ行かないその理由は、東京においてやる仕事が多い。兵器の搭載問題、身分保障の問題、だから行けなかつたというならば、私はまだあなたの怠慢を責めませんよ。この重要問題をなぜあなたは木村長官に直接その直後に言わないか。そのために東京が忙しくて離れられなかつたのじやないですか。またほかに宴会の方が忙しかつたのかな。(笑声)どうです、そこは。
  70. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ちよつと辻委員に申し上げます。私に交渉のなかつたことはまさに事実であります。但し交渉がありましても、保安庁といたしましてはこれを海上保安庁に転用させるだけの余裕がないということだけは事実であります。それだけ御承知おき願います。
  71. 辻政信

    ○辻(政)委員 今警備隊とか保安隊とかいうものは、これは別に外敵が来ておるわけでもなし、内乱が起つておるわけでもないのです。私は保安隊をたくさん見ております。演習用に使うものさえあれば、国内治安の維持はできる。今別に国内治安は悪化しておるわけではないのです。それが使われていない。格納庫をもつて兵器をみな格納していますよ。余裕がないということは、定数において余裕はないでしよう。けれども一時それを流用して、MSAができてアメリカがあの警備船に物を貸してくれるその暫定期間だけこちらのものをもつて国家の権威を守るということは当然じやないかと思うのです。どうしてそれができないのか。山口さんにその交渉の努力がないじやないですか。足りないとは言わせませんよ、見ておりますから…。
  72. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 交渉には私の方のその方の担当の課長が当つておるわけであります。それで先生からそういうお話がありましたから、むろんその聞合せはいたしておりますが、一方、先ほど申し上げたように当時は会談気構えもありましたし、それからまた、この問題につきましては水産委員会とか各方面の間にもいろいろの御意見がありまして、そのときとしてはさような緊急措置をとらなかつたのであります。
  73. 辻政信

    ○辻(政)委員 それならさらに間違つておるのは、あなたはその兵器を備えつける工事は急いでおるというのでしよう。それは明らかに兵器を備えつけなければならぬという意思があるから急いでおる。ほんとうの兵器はあとまわしにしよう。ことに心外なのは、十一月十五日から拿捕が中絶されたことから安心したというが、李承晩からこれから絶対やらぬという通告を受けたのか。その安心の基礎はどこにあるのか。
  74. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 それは私の判断であります。
  75. 辻政信

    ○辻(政)委員 そういう判断が今日の国威を失墜する根本原因になつた。その判断の誤りに対してあなたは責任を感じないのか。
  76. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 今日かような「さど」のような事件が起きましたので、今後の事態につきましてはむろん水産業界、関係官庁との連絡を密にして、ごく最近におきましては、門司における出先の機関の統合も実現いたしましたし…。
  77. 辻政信

    ○辻(政)委員 問に答えなさい。よけいなことを言わぬでいい。責任を感ずるか。
  78. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 私としてはできるだけのことをやつて来たつもりであります。
  79. 辻政信

    ○辻(政)委員 できるだけのことをやつていないのです。木村長官の耳にも入れておらない。現場に行つて指導しようという気魄もない。その結果がこうなつておるのですよ。  もう一つお伺いします。船員の志気が振わない。私はそう思うのですよ。国家がはずかしめを受けても、自分が死んだら家族をだれが救つてくれるかという不安が船員の中にはある。国家が補償しておらぬからです。そこで少々捕虜になつても、手を上げて朝鮮人にひつぱられて、三箇月臭い飯を食つて来れば、また家族に会えるという気持がある。この志気の振わない根本を是正するためには、遺族に対する国家の補償というものが大切である。安心して働かす、死んだらこうやつてやる、そういうことを強調した日に、あなたはこう言つています。大蔵省と折衝中であるから、近くぜひともそれを実現して一層志気高揚に資したいと考えております。こういう答弁です。それでこの百日間に、二十九年度予算が出るまでに、大蔵省にどのように交渉をし、万一の場合の、遺族に対して国家が補償する予算をどれほど獲得されたか。それを承ります。
  80. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 お示しの通り、巡視船の乗組員に対しての万一の場合の処分につきましてはむろんやりましたが、負傷した場合の賞恤制度につきましては、一般の者に対する災害補償のほかに賞恤規程、これは警察官にもあり、警備隊等にもあると思いますが……。
  81. 辻政信

    ○辻(政)委員 二十九年度予算に計上したかどうか
  82. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 そういう制度をつくりまして、また特別障害手当につきましては、六割程度の増額もいたしまして、それから下関に休養施設を増設いたしました。これだけは措置済みであります。
  83. 辻政信

    ○辻(政)委員 遺族はどうです。
  84. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 賞恤規程と申しますのは、百万円以内で、そのときの行為の内容いかんによつて、百万円、七十五万円、五十万円というような格差がございますが、こういうものが出されるわけであります。遺族に対しては一般の労災というものがふだんからございます。そのほかにこういうものを特につくつたわけでございます。
  85. 辻政信

    ○辻(政)委員 一般の労災というものは、汽車にひかれたとか、自動車にぶつかつてけがしたというもんでしよう。これはそうじやない。国家の最も重要な正面に身を挺してやつておる人たち、この人たちの遺族に対して国家が厚く報いるということは一般です。労災規程とは根本的に違うのですよ。その点をあなたは努力すると言いながら、百日間、やつておらぬじやないですか。
  86. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 ただいま申し上げたように、賞恤制度というものを一般の労災補償のほかに立てたと申し上げました。措置済みでございます。
  87. 辻政信

    ○辻(政)委員 その金額と予算の総わくを話してください。
  88. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 そういう事件が発生した場合に金が出て来るのでありまして、制度としてはつきり百万円以内で賞恤金を出されるわけであります。そういう制度ができたわけであります。
  89. 辻政信

    ○辻(政)委員 それは賞恤金として本人が死んだ場合に、一般の公務員の賞恤以外にプラス百万円ですか。
  90. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 その通りであります。負傷した場合にもそうであります。
  91. 辻政信

    ○辻(政)委員 それだけはこの百日間にやつたんですね。  あらためて承りますが、あなたのみならず、この委員会に出られた政府の委員の方は、何とかやりますとか、考えますとか、同意しますと言いながら、委員会が済み、国会が閉会すると、けろりと忘れて何にもやらない。これが実情ですよ。私はほんとうにたくさんの例を持つている。それでは国会をごまかすものです。国民をごまかすものです。もう少し真剣に取組まれると同時に、今からでもおそくはありませんから、この事件が起つたところの現場に飛んで行つて警備船に乗つて、もう一回東支那海を見ていらつしやい。それが長官の一番大きな直接な責務ですよ。木村長官は直接に関係はないが、あの直後フリゲートに乗つてつておる。それ以上にあなたは重大な責任を負わなければならない立場にあるのです。それができなければ、いさぎよく今の地位を譲るべきです。責任を明らかにして、この困難な時局はあなたの手によつては救われないということをみずから自覚することが官吏としての道ではないか。その答弁は求めません。  次いでこの問題に関連いたしまして保安庁長官にお伺いいたします。今申しましたような状態でありまして、事件が起きてから長官は一度も現場に行つてあの船長以下を鼓舞指導しておらぬという状態であります。でありますから、私は次から次と事件が頻発して来るものと予言する。これは予言です。遺憾ながらそういう悲しい予言をしなければならぬ。そこで問題は、東支那海における中共の海賊的行為、李承晩になめられて、みみずがありにひつぱられて行くような状態、こういう事態が頻発した場合において、李承晩ラインの問題なり、東支那海の正しい漁業権というものは、今のような気力のない警察船をもつてしてはとうてい負担し得ないということは、きわめて明瞭であります。船に拳銃があつても、封印がしてある。やられたときは手を上げてつかまつてよろしい。そういうようなことで絶対援護のできない状態に押し詰まつておる。木村長官は国全体の最高の責任者とされまして、この際フリゲート艦を訓練を兼ねて玄界灘方面に配置される御意思があるかどうか、それを承りたい。
  92. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知通りただいま警備隊におきましては、各方面にフリゲート艦あるいはLSを出して訓練的に回航させております。従いまして玄界灘方面におきましても相当数は時々出動しておるはずであります。
  93. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は李承晩ラインの問題、東支那海の問題、竹島の問題、こういう一連のものを見て感ずることは、日本政界が腐敗し、混濁し、内輪げんかをやつておる、それに対しての外の侮りというふうにも感ずるのであります。この次は対馬の番である。これは対馬にやつて来る。長官自身ごらんになつてわかつております。六万の島民がおるところに、朝鮮人が三千人、そのうち約半数が不正業者であつて、拳銃を持ち、ダイナマイトを手に入れる可能性はきわめて多い。しかるに日本の巡査はわずかに百人、まつたく裸で放置されておるのであります。こういうような過失があり、弱点があり、すきがあるから、李承晩になめられるのでありまして、これを過失がないように、すきがないようにすることが日韓紛争の拡大しない根本であると、私はかように考えるのであります。新聞を見ましても、長官もまた対馬を視察されてその感じを同様になすつたことと思うのでありますが、そこで問題は二十九年度予算において壱岐、対馬の防備強化について具体的にいかに盛り込んでおるかということであります。それを承りたい。
  94. 木村篤太郎

    木村国務大臣 二十九年度予算には具体的に予算を盛り込んでおりません。これは事実です。但し今辻委員も申しましたように、対馬はわが国にとつて重要なる要点であることは申すまでもないのであります。そこでわれわれはこの乏しき予算の範囲内でいかにこれを処置すべきかということについて今せつかく研究いたしております。その結果大体において、御承知通り佐世保に地方総監部が今度新設されましたので、佐世保の管轄に属し、または船隊群に属しますフリゲート、LSの若干分を終始対馬の方と連絡をとりまして、対馬の方には若干の連絡場所をさしあたり設置いたしまして、万違算なきようにいたしたいと考えております。徐々にわれわれはやつて行く。これはでき得るならば早急にやるべきでありますが、さように参らぬことをまことに遺憾に存じております。しかしできるだけやることはやりたいつもりであります。
  95. 辻政信

    ○辻(政)委員 これは徐々では間に合わないのであります。早急にやらなければならぬ問題であり、別に部隊をふやすわけではないのであります。あるところにおるものをそこへ持つて行けばいい。壱岐、対馬はバラツク建でけつこうであります。私の卑見を述べさせていただきますと、まずあそこにおいてなめられるすきをつくらないようにする最小限の要求というのがあるのですね。それを申し上げますと、厳原から鶏知のあの南対馬に一個大隊、北対馬の比田勝地方に一個大隊、それから警備隊の駐屯地を竹敷に置く、壱岐にはその予備兵力として一個大隊、ちようど普通科連隊一つを九州から抜いて向うへ持つで行く。この経費だけがあればこういう状態は未然に防げる。それから佐世保に地方総監部をおつくりになつて、その支所を竹敷におすえになるということは、大なる予算を伴わないで日韓紛争を未然に防ぎ日本の防衛を全うする道ではないか、こういうふうに実は考えるのであります。そうしてもう一つ見のがすことのできない対馬、壱岐の特徴というものは、これは木村長官よりもだれよりも防衛については対馬の島民が真剣です。自分の郷土、自分の生命線を守るのだ、遺憾ながら今武器もなければ何もない、消防団のとび口しか持つてない、相手は機関銃も拳銃も迫撃砲も、三時間で持つて来られる、それで何とかしてわれわれに自衛の訓練とその武器でも貸してくれという声が、ほうはいとして起つておる。ここにおいて金がかからないようにして、治安を確保する一つの道を講じますには、いわゆる民兵をあそこにおやりになることであります。普通科一個連隊、それは教育基幹要員にしておいて、そうして地方の消防団とかあるいはみずから守ろうという青年たちを志願させて、短期訓練をする。侵されたときにはすぐ武器を持たせて守るという、この民兵のモデル・ケースが対馬において理想的と思います。これは単に私が旧軍人なるがゆえに言うのではない。社会党の諸君としても、自分の郷土をみずから守ることが現在ある保安隊の配置がえによつてできるならば、御異存はないと私は信じます。これは決して拡大する意味ではないのであります。そういうことを考えますが、いかがでございますか。与えられた予算の範囲内で何とかやりくりされまして、この不安を解消される御意思はありませんか。
  96. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お説ごもつともであります。私も親しく対馬の島民諸君と接触いたしまして、その人々の切々たる様子を涙をもつて見て参りました。まことにもつともです。不幸にして、東京付近に住んでおる人たちはあの地方情勢を知らない、同情がないのです。私は不敏ながらかの島民たちの気持がまことによくわかつて参りました。そこで今辻委員の仰せになりましたような幾多の方法がありましよう。私はまずもつて道路の非常に悪いことを痛感した。ここは機動は非常に不十分であります。道路の改修なんかも、この間西岡知事と直接面会いたしまして県の方でも十分の用意をするように、また防備にしろ、知事は、あらゆる点についてわれわれに十分協力してもらいたい、これは知事も賛成の意を表しており、この人は熱心な人であります。おそらくわれわれの希望に沿うてある程度の援助はされるものと確信いたします。私は警備隊保安隊につきましても、今対馬に対してどう配置し、またどういうぐあいにすべきかということについて、幕僚と相談いたしまして、この問題の早急の解決をはかるように努力いたしたい、こう考えております。
  97. 辻政信

    ○辻(政)委員 長官はわざわざ行かれて現場の空気を親しく見て来られましたから、その島民に対する同情というものを単なる同情にせずに、それをただちに政治的に施策されまして、与えられた予算の範囲内において、北九州の第四管区から一部のものをすぐ配置転換するよう、これは演習も十分できますし、それから経費も大して伴わないのですから、ひとつ具体的にぜひ実現をお願いいたしたいと思います。  それから、きようは増原次長御欠席のようでありますので、次長に対する貿問はあとまわしにして、郵務局長が見えておられますから、それに関連して二、三この際承りたいと思うのですが……。
  98. 稻村順三

    ○稻村委員長 辻委員にちよつと申し上げますが、海上保安庁の問題に関して、江藤夏雄君、鈴木義男君、高瀬傳君から関連質問がありますので、その点御了承願いたいと思います。
  99. 辻政信

    ○辻(政)委員 それではどうぞ……。
  100. 稻村順三

    ○稻村委員長 江藤委員。
  101. 江藤夏雄

    ○江藤委員 私としてお尋ねしたいことは、今後の問題であります。ただいま辻委員も言われましたように、この問題はきわめて重要な問題なのでありまして、日本が今のようになつてしまつておらなかつたならば、ほんとうの厳たる独立国として国際間にあるというような時代でありましたならば、こういうようなことがあつた場合、これは両国間の非常に重大な危機にもなり、国交断絶にもなりかねないというような重要な問題なのであります。この問題の性質の重要性ということを十分お考えになつて、今後一体どうやつて行くかということに対する山口海上保安庁長官もしくは木村保安庁長官の御決意を承りたいと思うのであります。  山口長官は、今まで大体自分の部下を指導せられて来る場合において、やむを得ざる場合、いわゆる個人的な身体に危害が及ぶという場合のほかは、まあ逃げろ、待避しろというふうに指導して来たというようなお答えでございますが、しかし海上保安庁法の第二条にはつきりきめられておりますように、「海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海上における犯罪の予防及び鎮圧、」云々ということで、「鎮圧」というような非常に重大な言葉を使つておるのであります。それで海上保安庁としては、海上における集団的な犯罪——今度のような問題でも、これは厳格に言うならば一種の強盗行為です。海上におけるところの海賊行為であり、強盗行為である。こういうものに対してもあくまでも無抵抗で行かなければならないというふうな今までの御指導のやり方のように承る。ところがそういうやり方も、今日のような日本立場、国際的にも非常にデリケートな関係にある今日の日本立場ということを考えてみまして、今後そういう問題を起すことを回避する有利な方法であるというならば、いわゆる忍びがたきを忍んでそういうこともがまんして行くということも、一時的権宜の方法としてとられることは妥当であるかもしれません。しかしながら大体従来の経過を見ておりますと、そういうふうにこつちが無抵抗的な、非常に弱い、敗北主義的な態度に出れば出るほど、今後こういう問題が続発しはしないかというようなことが非常におそれられるのであります。でありますから、この際何とかひとつこの問題の重要性というようなことを深くお考えになりまして、今後も一体今までのような指導精神なり、指導方針なりでやつておいでになるつもりであるかどうか。あるいはこれではいけない、今後こういう問題を起さないようにするためには今までのやり方ではいけない、これをこういうふうに改めなければいけない、断固として、対する場合には対さなければいかぬ、そのことが、今後こういう問題を起すことを予防するのにはかえつて有効であるというふうにお考えになるかどうか。もう過ぎ去つたことはいたしかたがございませんので、今後の事態に対処しておいでになるお心構えなり、御決意なりを承つておきたい、こう存ずる次第でございます。
  102. 山口伝

    ○山口(伝)政府委員 今後の対策につきましては、今回の事件の内容等につきましても詳細分析しまして、それからまた関係委員会等、あるいはまた政府内の関係庁ともその結果によつて十分検討して参りたいと思つております。私ども今日までは、要するに国際情勢その他を背景としましていたずらに紛争を起しても——あの漁場における日本漁船の保護はどういう態度でやつた方が効果的かというような点も考えて、今日までいわゆる隠忍のような形であつたのは事実であります。しかし情勢がだんだんこういうふうになりましたので、各方面のいろいろの御意見があるわけなんでありまして、これらにつきまして十分検討し、今後の情勢も判断いたしまして、結局は政府としての方針をおきめいただくということになるわけであります。さように参りたいと思います。
  103. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは山口海上保安庁長官から御説明がありましたように、まことにデリケートな問題であると考えております。しかし私の方としましては、御承知通り保安庁法第六十五条に厳として書いてあります。とにかくわが国民の人命、財産また治安のやむを得ざる必要ある場合においては、警備隊は必要なる行動をとれる、これであります。そこでわれわれは、その情勢判断に基きまして、この規定を生かして万全の処置を将来とりたい、こう考えております。
  104. 稻村順三

    ○稻村委員長 高瀬傳君。
  105. 高瀬傳

    ○高瀬委員 ただいまの辻君の質問に関連いたしまして、私は一言所懐を述べたいと思うのであります。なるほど李ラインにおいて、フリゲート艦でありますか、巡視船でありますか知りませんが、それが何ら抵抗もせずに韓国の方に拿捕され、あるいは尋問を受けてほうぼうの体で帰つて来たということは、われわれ敗戦国といえども日本人としては非常に耐えがたいことです。これは一応私は国民的感情として十分わかりますし、私も辻君の先ほどの所見に対しては何も反対する理由はない。しかしながら十六国会からすでに問題になつておりますように、十七、十八と臨時国会がありましても、あの李ラインの撤廃すらいまだわが国の政府において主張できない。いまだ未解決の状態にある。岡崎外務大臣は、あの問題についてはぜひとも何かの具体的の解決の方法があるかということを野党から聞いたときに、何とかしてアメリカの圧力ででもこれを頼んで、あの李ラインの撤廃を頼むなどという寝ぼけたようなことを答弁しておる。その後一体どういうふうにするかと思つてわれわれが見ておると、少しも何もやつておらない。だからこういう問題が起るのは当然だと私は思う。これはまことに政府の怠慢であつて、われわれとしては根本的にあの李ラインの撤廃ということを政府側において善処して解決しない限り、今後幾らだつてああいう問題が起る。そのたびに、これは多少日本国民の生命、財産を危険にしても、断固武力をもつて抗争するというようなことをやつておつたのでは、きりがないと思う。それからいわんや辻君がちようど敗戦前に陸軍の参謀としてやつておられたような思想で、敗戦後の日本の国力の衰えた今日、いたずらに武力といいますか、一種の実力行為によつてこれらの国際問題を解決するということに相なりますと、日本の国際的立場はますます妙なことに相なり、それから国内はいたずらに実力行為というものに対する何というか、国民の眠つた感情がわき起つて、非常にその点問題であろう。私自身は改進党の一員として、この自衛軍の創設について非常に熱意を示している一員でありますけれども、いたずらにこれを武力の強化によつて、たとえば対馬を守る、あるいは武力の強化によつてああいう問題を直接行動に出て解決するというふうに行くのには、前提条件として私は政府の断固たる——たとえば李ラインに対する解決の問題、あるいはMSAの問題に関連しても、その内閣委員会で何ら保安庁長官からその後の経過の報告も受けていなければ、一体最近二週間くらいあとでMSAの締結問題について日本から頼んだ問題が、政府とアメリカ側において締結されるとかいうことを聞いておるけれども、われわれは一つも知らない。それから先ほども前田政務次官に聞けば、改進党と自由党と防衛折衝をやつておる。あれがきまらなければ、なかなか案もできない。しかしあんなものは政党間の相談であつて保安庁長官としては、当然自己の権威の上に立つてこの内閣委員会のわれわれに、日本の防衛方式、あるいはそういう問題をちやんと話されるべき立場におありになるあなたが、依然として何が何だかわからない。だから目前に起きたところの具体的事象をとらえて論議すれば、なるほど血沸き肉おどることにも相なりましよう。しかし私は辻君と多少立場を異にして、山口海上保安庁長官のとつた態度も私は了承する。それから対馬の現状についても、木村長官もごらんになつたが、おそらくそれは確かに涙なくして見られないでしよう。私は沖繩にも行つて見ました。それから奄美大島にも行つて見ました。しかしながら、やはりこれは戦争前のような考えで、いきなりすべてを武力をもつて解決するというような方法でやつて行くと、日本のはなはだ衰えたる国力、現状においては憂うべき結果になる。だからこの点については根本的に李ラインの解決を政府において努力されると同時に、木村保安庁長官もいわゆる直接侵略に対するところの最小限度の日本の国力に即応する自衛軍の創設ということについて早く具体案を出して邁進されたがいいじやありませんか。私はその点についていささか所感がありますから、この辻君の所論はごもつともでありますけれども、もう少しわれわれは内に深く蔵して考える必要があると思いましたので、一言関連して所懐を述べた次第であります。
  106. 木村篤太郎

    木村国務大臣 簡単に申し上げます。私も高瀬君の御議論には全幅とは言いませんが、大体において賛成であります。しかしながら、外交交渉によつてこれをすべて解決できる、これはまことにけつこうであります。しかし現段階において、李承晩大統領がああいう態度をとつておる、これは一体外交交渉で解決できると思われましようか。これは容易ならぬことである。いかに岡崎外務大臣がしやちこばつても、相手がああいう態度に出ておれば、これはなかなか容易ならぬことであります。現政府においても、この李ラインについては外交交渉によつて解決することにほんとうに努力しております。ただいまのところでは、これはおそらく解決のしようがありません。ここにおいてかアメリカが何とかこの間に立つて解決の道を見出そうとしておることは無理からぬことであると私は考えております。しからばこれをどうしていいか、このままでやつていてはいかぬ。われわれは絶対にこの李承晩ラインというものは、国際法規を無視した一方的の行為で承服できないと繰返して言つております。この問題を武力をもつて解決するということは毛頭われわれは考えておりません。またすべきものじやないと考えております。しかしながら、人命財産が危険に瀕する場合には、われわれはやむを得ず保護しなければならぬ。われわれはうつちやつておけません。そこで私は今申し上げました六十五条にあの厳とした規定があるのであるから、万一の場合においては、この規定を活用したい、こう考えておるのであります。  そこでこの自衛軍創設の問題でありまするが、われわれといたしましては、日本の自衛力の漸増をどのめどまで持つて行くか、これであります。これについてはなかなか容易ならぬことである。私は予算委員会でもしばしば繰返しておるのです。一国の防衛態勢を整えて行くということは容易ならぬ。ことに各方面から研究していただかなければならぬ、いわゆる一国の財政力、あるいは兵器の生産能力、あるいは人員の点、あるいは運輸の点、各方面から検討して、一国の防衛力をどこまで進めて行くかということを計画しなくてはならぬ。そういうことは、私は今まで立てていないのが本筋ではないかと考えておる。そこで、さしあたり二十九年度においてこれくらいを組むことは可能じやないか、しからば三十年度にはどうか、大体のめどを立てて、国際情勢の判断、そうしてことに兵器の進歩というものは著しいものがある、御承知通り、私が言うまでもなくアメリカにおいてもいわゆる戦術もかわつて来ておるのであります。そういうことをにらみ合せて何年先にどうあるべきか、どうするということは、これは行かぬのじやないかと考えております。情勢判断、それと兵器の進歩、一国の財政力、その他をにらみ合せて、各年ごとにこうして行こうということが、私は妥当なことだと考えておるのであります。何年先にどういう計画を立てるかということはちよつと無理じやないかと私は考えております。
  107. 高瀬傳

    ○高瀬委員 その問題については、別なときに私はゆつくり質問いたしますから、これだけでやめておきます。
  108. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私も辻君が質問すると立ち上りたくなる。なるたけ簡単に申しますが、ただ速記録などを見ると、勇敢な議論がここで行われて、日本の国会には他の意見を持つた者がないように残ることははなはだ残念でありますので、まさに正反対の意見を持つておる者もおるということを速記録にとどめておいていただきたいのであります。また木村長官も山口長官も、辻委員の質問につられて、だんだん憲法違反の答弁をされておるということは非常に間違つたことであると私は思いますので、よく確かめておきたいのであります。  憲法第九条は、御承知のように、何らの交戦権も認めないことになつておる。そこで、あちらが大砲を撃つて来たからこちらも大砲を撃つというならば、これは明らかに交戦権である。機関銃に対するに機関銃をもつてするのも同じことです。保安隊は軍隊なりや、戦力なき軍隊なりや問題でありますが、たとい保安隊でも、まさか魚をとることについて出動するとは私は信じておらない。日本の領土を侵略する、国民を奴隷にする、政府を転覆するというときにだけ出動するものと理解しておるのであります。李ライン問題は何か。魚をとるかとらぬかの問題である。朝鮮は、これはおれの方の魚だから価を出して持つて行けと言う、いや、これは公海の魚だからただでとる権利がある。これは見解の相違でありますが、これは確かに李承晩の言うことは十二歳の説であつて、めちやであることはわれわれも認めますけれども、その問題を中心にして、お互いに機関銃を撃ち合つたり、大砲を撃ち合つたりすることはもつてのほかであります。ただあちらが万が一日本の漁民を理由なく銃砲で殺戮した、監視船としてこれを保護するためにやむを得ず正当防衛として発砲するというようなことがありましたならば、私はこれを了といたしますが、本来武力で解決するのに適当でない問題なのである。李承晩は世界に定評のあるワン・マンである、吉田総理以上のワン・マンであることは御承知通りでありまして、そういう人を相手にして、武力で解決し得る問題と解決し得ない問題とがあるとすれば、これは国際司法裁判所の問題で、外交交渉の問題であり、国際連合に訴えるべき問題でありまして、それをわれわれはしきりに勧めておるけれども、外務大臣は、相手ががんこだからだめだと言う。われわれは相手ががんこだからこれに訴えるべきことを主張しておる。いわんや対馬に兵を派遣するとか、特に対馬を防衛して、保安隊をあそこにたくさん入れ込んで、やがて満州事変の直前と同じように、朝鮮を敵として戦うという態勢を見せることになるのはもつてのほかのことであります。そういうときが将来ないことを祈りますけれども、そういう事態が来るならば、憲法を改正し、日本の国家体制をかえて考えなければならぬ。そういう意味において、われわれは李ラインの問題は魚をとるかとらぬかの問題であると考えております。魚の命と人間の命を交換することはごめんをこうむります。アラフラ海のごとき、すでに国際司法裁判所へ訴えて解決しようとしている例もあるのであります。あれが解決されたときには、当然判例として李ラインにも及ぶはずであります。それまではただいるわけに行かぬから、できるだけとりに行く、そして相手が出て来たならばひつ込む。今言つたような場合に、私は国威を損傷したとは思いません。われわれは武力を用いないと約束している国なんでありますから、そうしてしばらくくつついていて一向さしつかえない、そしてまたもどつて来ればよろしいのであつて、もどさないならば、国際紛争の問題として、これはまた国際連合の問題になるのでありますから、ただちに武力でやろうとするところに非常な間違いがあると思うのでありまして、保安庁長官その他の指導の立て方というものが非常に大事でありますから、国会にはまさに反対の見解を持つている者もいるということをここに明らかにして、いま一度長官の御意見を承つておきたいのであります。
  109. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申し上げます。われわれも事を武力で解決しようとは毛頭考えておりません。高瀬議員に対する私の答弁、まさにその通りであります。しかし今鈴木君が言われたように、ただ魚の問題だけとは考えない。この魚の問題がたいへんなんです。一体これがために日本のいわゆる権利がどれだけ侵害されているか、これでどれだけ国家が損失をこうむつているか、あの方面の漁民がどれだけ生活が脅かされているかということを考えてもらわなければならない。ただ魚の問題と、簡単に片づけることはできぬと私は考えております。そこで、この大きな漁業権の問題をどうするか、この見地からわれわれはこの問題を取上げて検討しなければならぬ。事は大きいのであります。そこで、これは武力によつて解決すべきものでないことは当然でありまするが、その一歩手前においてわれわれはこれをどうするか。ことに漁民の生命が危険に瀕したときに、これをわれわれはうつちやつておくことができるか、これをわれわれは苦慮しているのであります。いたずらに実力で解決しようという考えは毛頭ないのであります。
  110. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 それは木村長官のお言葉とも見えないのであります。今まで帝国主義的戦争というものは、常に石油から起り、石炭から起り、鉄から起り、魚から起つているのであります。そういう経済的な利権を実力でとるかとらないかという問題が、戦争になるかならぬかの問題でありまして、われわれはそういう問題はできる限り世界輿論に訴え、あるいは外交交渉に訴えて解決するということを日本憲法の建前と思つているのであつて、そういうことを理由にして、魚の問題であろうが——これは漁民が非常に苦しんでいることはよく承知しております。生活上の問題は政府はこれに補助をしなければならぬし、救済もしなければならぬが、それをしつつ、どうしてこれを解決するか。その方には政府はあまりまじめな努力を払つている姿が見えない、そして勇敢な議論などがここで行われるということはもつてのほかだと考えている次第であります。
  111. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまの鈴木委員の発言に関連いたしまして、私の真意を簡単に……。
  112. 稻村順三

    ○稻村委員長 ちよつと申し上げますが、ここは討論の場所ではございませんので……。
  113. 辻政信

    ○辻(政)委員 ちよつと補足しておきます。ただいまの問題ですが、アラフラ海の問題は、これは国際司法裁判所に提出すべき理想的の問題だと思つております。なぜならば、濠州は機関銃で撃つて来ていないわけです。  それからもう一つお話ですが、対馬に保安隊を持つて行つたらたいへんだというが、対馬は日本の領土であります。韓国の領土に持つて行つたら問題ですけれども、日本の領土へ日本保安隊を持つて行くのに、だれに遠慮がいりますか。私が旧軍人なるがゆえに武力を連想されるかもしれませんが、武力を起させないためには、先にすきを与えてはいけない。この点を簡単につけ加えて申し上げておきます。
  114. 稻村順三

    ○稻村委員長 それでは、次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれをもつて散会いたします。     午後一時散会