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1954-03-19 第19回国会 衆議院 電気通信委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)     午後一時二十二分開議  出席委員    委員長 成田 知巳君    理事 岩川 與助君 理事 塩原時三郎君   理事 橋本登美三郎君 理事 原   茂君    理事 甲斐 政治君       玉置 信一君    齋藤 憲三君       中曽根康弘君    廣瀬 正雄君       片島  港君    松井 政吉君       三宅 正一君  委員外出席者         参  考  人 飯田 静江君         参  考  人         (評論家)   石垣 綾子君         参  考  人         (日本民間放送         連盟事務局長) 酒井 三郎君         参  考  人         (東京大学教         授)      千葉雄次郎君         参  考  人         (日本放送労働         組合中央執行委         員長)     中塚 昌胤君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     古垣 鉄郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     岡部 重信君         専  門  員 吉田 弘苗君         専  門  員 中村 寅市君     ————————————— 三月十八日  委員松前重義君辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会の  承認を求めるの件について参考人より意見聴取     —————————————
  2. 成田知巳

    成田委員長 ただいまより開会いたします。  本日は、放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件について、参考人方々より御意見を伺うことといたします。  参考人方々に一言であいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず御出席くださいまして、まことにありがとうございます。本日御意見を伺うことになつております放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件は、日本放送協会昭和二十九年度収支予算事業計画資金計画について国会承認を求めるの件に関するものでありまして、特にただいま問題となつております昭和二十九年度の受信料につきましては、この収支予算によつて決定されることになつております。世上、この問題にからんで、協会あり方あるいは受信料に対する本質的な考え方についても、種々論議がかわされております。本委員会はあらゆる角度から検討して参りたいと存じておりますが、収支予算内容には、老朽施設の改廃、職員の給与改善費出演者謝金等の問題、研究部門経費増額等、重要問題も含まれており、また一方、多数聴取者に及ぼす影響重大性にかんがみ、慎重に審査いたしておるのでありますが、この際広く国民の輿論を反映せしむるため、皆様方の御出席をお願いいたした次第であります。参考人各位におかれましては、あらゆる角度から忌憚のない御意見をお聞かせくださるようお願い申し上げます。  御発言は自席からお願いいたしまして、その時間は一人約二十分程度とし、御発言の順序につきましては、かつてながら委員長におまかせ願いたいと存じます。なお御意見の発表の後、委員から質疑があると存じますので、これにつきましても率直にお答え願いたいと存じます。  では最初に、東京大学新聞研究所長千葉雄次郎君にお願いいたします。
  3. 千葉雄次郎

    千葉参考人 今日放送はほとんどどこの家でも聞いていると言つていいほど普及しておるのでございますから、われわれの生活に欠くべからざる精神のかてと言つていいと存じます。こういうものでございますから、その受信料——聴取料金というものは、できるだけ安いことが望ましいということは当然言えることと思います。しかしNHK放送は、ほかに財源があるわけではなく、公共放送建前といたしまして、ほかに財源を求めることは好ましくない影響を持つことが考えられますから、聴取者がそのサービスを受ける代償を支払うことは当然のことと私は考えるのでございます。  そこでNHKサービスを受ける対価として、今回問題になつております三箇月二百円が適当であるかどうかという問題でございますが、率直に申しますと、NHK公共企業体として現在の内容をさらに改善し、その施設全国的普及を一層はかり、地域別放送を行い、番組充実して行くために、ある程度経費がかかることは当然のことであります。放送法に定められております放送使命を達成するためには、公共企業体としてのNHK相当の設備はもちろんのこと、相当の人員をも擁せなければ仕事はできないわけでありまして、それらの仕事に従事する人々が、社会的に無理がないと思われる給与を受けることもまた当然であると思うのでございます。また出演者にいたしましても、社会的に認められておるその才能に応じた謝金を支払われることも、また当然であると考えられます。それらのNHKのスタツフに対する給与、またタレントに対する謝金等現状を見ますと、NHKは不当に高いと考えることは決してできない。少きに失するという世間の声の方が多いように思われるのであります。しかも公共企業体の性質として、またNHKの経理の現状としまして、ある程度までその経営を合理的に、放漫に流れないようにするという必要があることは申すまでもありません。給与にいたしましても、謝金にいたしましても、ほかの同種企業競争的な立場に立つて従事をますます増大するということは、慎まなければならないものと私は考えるのでございます。  こういつた目で今回のNHK予算を拝見いたしますと、この前昭和二十六年に聴取料が改められましてから今日までのほかの諸物価、ことに新聞代とか、ガス代電気代などの値上り、その間における公共企業体に従事する人人の給与の移りかわり、そういうものを比較して考えてみますと、今回のNHKの三箇月二百円という聴取料は、これはやむを得ないものと私は考えるのでございます。ただ放送聴取料についてだれでも考えますことは、今日においては戦前と違いまして民間放送というものがございます。これがただサービスをされている以上、放送聴取料NHKだけがとるという点に、これは出す側からいうとでありますが、むだなような感じがいたすのであります。アメリカのように商業放送一本、あるいはイギリスのラジオのように公共企業体一本という場合には、こういう問題はないのでありますが、わが国制度ではどうしてもこういう感じを持つのでございます。今日ラジオ聴取者であれば、NHKを聞いても聞かなくても、NHK聴取料を支払わなくちやならぬ、ここにNHKとの契約に基く聴取料という現在の考え方に、聴取者にとつて何か割切れない感じを持たせる理由があると思うのでございます。新聞には、努めて客観的で公平であろうとする一定の職業的水準で書かれるところの記事、雑報あるいまた厳正公平を建前としておる論説というようなものがあり、そして料金をとつてスペースを売つているところ広告があつて、その両者が一つ新聞に含まれていて、新聞料金というものを生産費以下に販売することを可能にしておるのであります。ラジオにも一台の受信機から流れるサービス全体に対する対価としてそれを考えることができるならば、新聞と同じだということが言えると思うのでございますが、公共放送民間放送とは別個の企業体に属しております。そして民間放送でもサス・プロというようなものがあつて広告主と直接関係のない報道あるいは解説というようなものが行われております。そこでNHKを聞いた分にだけ金をとられるという点に、何か割切れないものが感じられるのだろうと思います。現在の放送制度の二本建を維持しようとするならば、この問題はもつと一般聴取者にこういつたふうな感じを持たせないようなものとする必要がありはしないかということが考えられるのでございます。公共放送聴取料なしでやつて行くことができないことは、これはわかり切つたことなのであります。そしてまた公共放送放送法にうたつているような目的を達成するために必要であるということも、私は異存がないのであります。ラジオ新聞よりも普及度も現在一層高くなつており、その影響力、ことに知識の程度の比較的に低い人々がこれに接することが多いというようなところから、これらの人々文化的向上をはかるということが必要でございます。民間放送だけではこれは保証されないのであります。娯楽番組などについて、あるいは何も公共企業体で行わなくても、民間放送だけでたくさんだというような意見もございますが、放送が一国の文化を堕落させることなく向上させる必要から申しまするならば、娯楽番組こそ、スポンサーのつきにくいほど金のかかる、安直でない、清潔な大衆的なあるいは文化的な番組というものこそ、公共放送に期待されるのでございます。そしてそれによつて一般文化程度向上すれば、おのずから民間放送の質も向上することが期待されるのでございます。このように見ますと、現行制度のまま放送内容を改善して行くためには、公共放送充実を期することは当然必要だと思うのでございます。また放送の最大限の普及全国津々浦々へ普及させるというような点、こういう点も商業放送だけに期待されるかどうかということは非常に疑問なのであつて公共放送充実にまたなければならぬと私は存じます。  しかし現行放送制度には、いろいろの解決をはからなければならない問題があるように存じます。今その二、三について少しく私の所見を申し述べたいと思うのであります。その一つ公共放送民間放送関係であります。現行法建前NHKが主であり、民間放送が従の建前でございます。民間放送が漸増していよいよ盛況を見るに至つておる今日の実情というものは、法の建前に沿わないものが出て来ておるというふうに私には思われるのであります。今述べました聴取料に対する国民の割切れないような感情というものも、ここから胚胎して来ておるのではないかと思うのであります。つまり民間放送は従の立場ではなくして、公共放送と対立したものとして登場して来ておるのであります。東京では近く民間放送が三本になりますが、そうなりますと、電波の上でも民間放送が三に対してNHKが二となります。NHK標準であるとすると、この標準に準ずる水準を維持する措置が講ぜられませんと、公共放送によつてわが国文化向上をはかるという趣旨は、非常に達成しにくくなるのではないかということを、私はおそれるのであります。時日の推移にまかせておくということになりますと、文化的に堕落する危険は非常に大きいのであります。民間放送三本建になつてお互い競争する。これは新聞と違いまして、一つの時間には一つしか聞けない。そこで当然非常な競争が行われることになるのでございましようが、その競争の結果が質の向上を来すならば、これはけつこうであります。しかしながらこの種の競争は、えてして国民の低劣な趣味に迎合する危険の方が多いということも考えなければならないと思います。  第二の問題といたしまして、そのような内容の低下を防ぎ、文化向上のために、政府監督権強化してはどうかという問題が考えられます。NHKを時の政府影響から独立させて、憲法表現の自由とも抵触しないようにするために、細心の注意を払つてつくられておるのが、今日の公共的企業体としてのNHKあり方であろうと思います。私はこの精神はやはりあくまでも守られなければならないものと思うのであります。民間放送公共放送を圧倒するような勢いとなつたときに、国家が介入すべきものであるかどうか。電波がその割当を受けたものの所有とされて、まつたく自由使用にまかされておるものでないことは、電波国民共有物とされておる今の法律建前から明らかでございます。しからば割当てられた電波利用の仕方について、国家が干渉することも許さるべきではないかということも一応の理由となるようであります。しかし電波利用、そこに盛られる表現内容判定者として、国家最良判定者であるかどうか。もしそうであるとするならば、何も公共企業体などというものをつくらずとも、国営でやればよいのであります。独裁主義国家以外では、こういつたラジオ国営というものは好ましくないとされていることは、国営にすると時の政府によつて不当に干渉されるおそれがあるからでございます。政府がその使用を認めた後の電波利用の仕方にまで干渉するということは、程度の差こそあれ、国営が不可とされたと同じ好ましくない理由が存在すると思います。つまり国家、具体的には時の政府というものは、この意味電波利用の仕方についての最良判定者であることはできないということであります。電波利用する表現ばかりでなしに、表現一般について政府はその利害の観点からの判定を離れることはできないのでありますから、国民基本的権利にまで立ち入る危険性というものは、常に存在すると言わなければなりません。これが表現について憲法国家はみずからを迎制して、これに干渉しないということを国民に誓つている理由であります。そこで国家の干渉は絶対に表現の自由を拘束するものであつてはならないのであります。しからば国家放送使命を達成させるために、電波利用に干渉できる限度はどこにあるかといえば、電波割当及び放送が行われた後になさるべきものであつて放送内容そのもの国家考えるところの放送にふさわしい番組を入れさせることは、非常に害が大きいと存ずるのであります。事前に国家監督するのは、電波割当の基準によつて、そうして割当をすればよろしい。事後における政府監督は、免許、再免許のときにこれは行えばよろしいのであります。これ以外の場合に国家が干渉することは、私は好ましくないと存じます。  第三には、電波法目的にもうたつてございますように、放送の健全な発達という観念から、今後民間放送の数を制限することが望ましいのではないかという問題であります。これは技術的に周波数使用可能の限界点に来ているかどうかという問題、これは別といたしまして、民間放送の健全な発達のためには、経営的に弱体では健全になり得ない。事業経営を健全化せしめるために、割当を今後制限してはどうかという問題であります。割当獲得やつきになつてその必要性を力説しておられる申請者も、一たびこれが認可になりますと、君子豹変していずれも割当制限論者になるようであります。電波管理行政の範囲にそのような政策的な考慮までを入れるということは、私はこれはすこぶる問題であると思うのであります。現在の経済機構は、御承知のように自由企業体制であります。自由競争によるということが根本原則であります。公共性の高い、独占を必要とする電気ガス、水道、そういうものについては独占が認められておりますが、しかし今日ラジオ公共放送というものが現に存在しておるのでありまして、民間放送というものはもうかるところへもうかると思う人が申請して、事業をやればいいのであります。そしてまたそれは表現の自由という点からも、技術的に可能である限り、電波利用の機会を公平に与えるということが、私は妥当であると思うのであります。政府による電波割当ということによつて表現の自由のある程度の拘束というものが認められておりますのは、これは電波特質として各人が自由にこれを使用することができないから、やむを得ずこういうように割当が行われておるわけなのでありまして、電波特質以外の、事業経営のやさしいとかむずかしいとかいうような要素を加味して、割当をかげんする権限を政府が持つということは、これは私はかなり問題であると思うのでございます。この同じ論理を推し進めて行きますと、出版社の濫立、新聞雑誌の過剰というものは、新聞雑誌出版の健全な発達に害があるから、新聞雑誌出版統制するもまた可なりという議論になります。新聞雑誌にいたしましても放送にいたしましても、選択は国民にまかさるべきものでございます。その事業の成功するかいなかは、経営者の責任にあるべきものであると私は思います。  第四の問題としましては、新聞放送関係であります。今日ほとんど民間放送は、新聞社と資本的のつながりを持つております。これが一つには公共企業体であるところのNHKに対する批判が、必ずしも公正ではないと思われる一つ理由であります。放送法改正、これはいろいろ世間でもいわれておりますが、近い将来にこういう問題が必ず起ると思うのでありますが、放送法改正というような場合に、公正な第三者ということができずに、むしろ利害関係者立場に立つ新聞というものから公正な意見が期待できるかどうか、この点私は非常に不安を抱くものであります。アメリカのような自由な国でもFCC、連邦通信委員会では、新聞ラジオを兼営することに免許を与えることには、非常に消極的でございます。ことに新聞ラジオ地域的独占になる場合、これはことに警戒されております。私の知つている例でも、なかなか許可はされないのであります。この点についてわが国ではあまり考慮は払われていないのではないかという感じがするのでありますが、将来のマス・コミユニケーシヨンというもののあり方考えますと、それは相当考えなければならぬ問題じやないかと思うのです。将来大新聞社プラス大ネット・ワークというもののコンビが資本的にできて、いわゆるマス・コミユニケーシヨン・エンパイアといつたようなものが出現することになりますと、表現の自由に対してこれは一つの脅威となることが考えられるのであります。放送表現一つの強力な媒体でありまして、国家がその内容に非常な関心を示すのは、これは当然といえば当然でございますが、国家が真に国民の民主的な発達をもつて今後の日本の進むべき目標とするならば、民主主義制度を擁護し、民主主義完成目標とした政策が立てられなければならないと存じます。国家監督行政も、統制強化あるいは取締りの強化等による監督のみに心を奪われることなく、民主主義制度的な完成を目ざして、民主主義弊害を除き、民主的運営が積極的にうまく行くための監督行政を行うことに、最大の眼目を置いていただきたいというふうに考えるのでございます。現行基本法精神従つた行政当局あり方としては、これ以外の方法は私はあり得ないものと考えるのであります。
  4. 成田知巳

    成田委員長 千葉参考人はお急ぎのようでございますので、この際千葉参考人に御質問がございましたら、これを許します。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 千葉さんに一点だけお伺いしたいと思うのですが、ただいまお述べになりました中に、民間放送ただ放送しておる、協会は有料であるという御説があつたわけですが、一応表面上そう考えることは妥当だと思いますが、ある角度から考えますと、民間放送ただということに疑念が生じて来はしないか。と申しますのは、スポンサーがつきまして、スポンサー民放との間で、その広告料金というものが二者によつて適宜に決定される。その広告主自分の販売する品物にその広告料を乗せて一般市民に販売する。従つてラジオを聞こうとする意思があるないにかかわらず、あるいはラジオの一部料金を負担しておるのだという意識を全然持たない市民が、実は肩がわりをされた商品の中から、その聴取料にひとしいものを民放の場合はとられておるのだ、こういうふうな解釈も一応成り立つのではないかと考えられます。そこで私どものそういう一応の考えに対する先生の御見解を具体的に伺いたいのと、同時に今後もこういうような状態で民放スポンサーとの間に、二者がかつてにその放送広告料というものをとりきめて行くことが、先ほど申し上げた前段の理由からいつて、ある種の制限といいますか、何か妥当な審議機関なりを通じて、この広告料の決定をしないことには、どうもある品物限つて市民が不当によけいこの聴取料を払わされるという弊害を生じて来るのではないか、これが一つ。もう一点は、全然別の問題ですが、民間放送にかつて保全経済会のような、非常に高金利の商売をするスポンサーがついた場合にも、これを堂々放送し、その放送に対する国民信頼性というものがうまく利用されて、相当大きく広範囲に僻村に至るまでこのやみ金融機関といいますか、ある種の金融機関利用するところとなつたということを考えますと、やはり民間放送に対しても相当大きくラジオ綱領と申しますか、もう少し詳細なものをつくつて、将来はこれを適用して行くような、何らかの措置を講じなければいけないのではないか、これは付随的な問題ですが、同時に先生の御意見をお伺いしておきたい、かように考えます。
  6. 千葉雄次郎

    千葉参考人 ただいま御質問になりました第一点の、民間放送ただではないというお話でございますが、私の申し上げたのは要するにラジオ受信機から流れて来るものを、対価を払わずに聞いておるという意味で申し上げたので、その裏に今おつしやつたような意味で、聴取者でなしに、商品購買者がある程度の負担をさせられておるということは、お説の通りであります。  それから第二点の放送広告の濫用のケースがある、これに対して何らかの制限措置が必要ではないだろうかというお話でございますが、これはあらゆるマス・コミユニケーシヨン——新聞についても言えるところなので、新聞でも倫理綱領というものをつくつておりますし、他面映画でもそれぞれに倫理綱領を持つております。しかしこれは強制力がないのでありますから、その濫用する人に対して制裁をすることは、どのエリアの場合でも非常にむずかしいのであります。ただこれが社会的に非常に不当な場合には、法律制限もございます。御承知のように誇大広告で薬などを売りつける、これは薬事法に触れるわけであります。この種の非常に不当なケースが起つた場合に、立法を可とするかどうかということも当然考えられなければならない次第でありますが、私の考えとしましては、まずそれぞれの業種別倫理綱領というものをつくつて、自発的に抑制して行くことが必要ではないか。それでどうしてもいけないという場合には、もつと強力な法的統制を加えられても、自分が自発的に抑制することができないのであるから、これはやむを得ないと思うのでありますが、まず第一段には業者の自発的な抑制、その綱領をつくるということがまず必要だと存じます。
  7. 松井政吉

    松井(政)委員 千葉参考人からいろいろと参考になることをお伺いいたしましてありがとうございました。一点だけお伺いいたしたいのであります。ただいまわれわれの間で議論になつておりますものは、受信料ははたして放送対価であるかどうかということが議論になつているのであります。先生のお考えからすれば、ただいまとつております受信料システム、それから受信料そのもの放送対価であるのか、それともやはり放送文化全体から見て、別の意味に該当すると考えられるのか、その考え方についてお伺いいたしたいと思います。
  8. 千葉雄次郎

    千葉参考人 それはなかなかむずかしい問題でありますが、私は今の法律建前から申しますれば、これは放送法言つてあるように、放送協会サービスに対する対価というふうに考えます。これに対して聴取者放送協会と契約して対価を払つておるものと思うのでございますが、先ほど申しましたように、将来もこの考え方でよいかどうかということは、これはかなり問題になると思うのです。でありますから日本放送協会でどうしても経費がいるという場合に、どういう考え方に基いてその必要な経費聴取者からとつて行くかという問題については、私もう少し考えてもらわなければならぬ点があると存じます。
  9. 片島港

    片島委員 一点だけ千葉参考人にお伺いしたいのであります。先ほどからもお話がありましたように、民間放送ただいま無制限のように認可を与えているような状態であります。現在もまたこの制度下においてどこまでを認可を与えて、それから先は認可を与えないということも事実上できないために、ほとんど各府県に広がるくらいに認可を与えているのでありますが、しかしお話がありましたように、これは一定の限度がありまして、やはり民間放送の発展する限度というものは、その国民経済全般の経済力に対応してしか発展はし得ないと思うのであります。今日私どもが承知している範囲においては、民間放送経営状態——大きいところはよいのでありますが、多くのところが経営的に非常に困難を来しているように聞いているのでありますが、将来のことはいざ知らずといたしましても、やはり日本全体の経済力に対応してしか発展はいたさないのでありますから、今のように非常にたくさんの民間放送がある場合に、しかも経営が成り立たぬというようなものは、そのまま自然消滅して行けばいいじやないかというようなことでは、やはり電波全体に対して国としても多少無責任な点があるのではないか。一、二の新聞を出した、あるいは出版をして、それがつぶれたというような問題でなく、電波についてはもう少し考慮すべき点があるのではないか。そういたしますと、この民間放送経営については、何らかの統制といいますか、何らかの調整をする必要があるのではないかと考えるのでありますが、その調整の方法といいますか、たとえばどういうふうな形においてこの経営が成り立つて行くように持つて行くか。これはやはり今後いろいろな検討がなされなければならぬのでありますが、先ほどから先生は、やはり民間放送についてはある程度制限が必要であろう、こういうお話もありましたので、もし御意見がありますならば、承つておきたいと思います。
  10. 千葉雄次郎

    千葉参考人 私の申し上げたのは、実は民間放送国家的な統制を加えるということは、好ましくないという意見を申し上げたのです。その理由は先ほど申し上げた通りなんでございますが、事実今日地方の小さな局などをつくるには、電波さえあれば、そう大して金はかからない。しかし電波国民共有物でありますから、そういつた電波の性質に応じないような使い方をされたのでは困るということが考えられるのでございますが、それはやはり期限を限つて免許を与えておる以上、その更改期に、基準に当てはまらないものを省く、これを厳格にやつてただきたいのです。それからその途中で成り立たないラジオ局がどうやるかというと、合同したり、ネット・ワークを買つたり買われたり、やはり株式会社でありますから、いろいろなことをして、ともかく経営が立つて行くようなことを考えるわけでございます。これに対して国家が干渉するということは、現在の制度建前からいつて、もう一つには表現自由の建前からいつて、私は好ましくないのじやないかというふうに考えているのでございます。
  11. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 ちよつと一点だけお聞きしたいと思うのですが、先ほど千葉参考人から表現の自由というか、言論の自由はできるだけ確保せらるべきである。この点についてはわれわれも同感でありまして、当委員会においても、その問題についてはかねがねいろいろ問題になつて、論議を尽されておるのであります。これを是正する方法としては、次の免許の機会にこれを取消したならばよろしいじやないか、こういうような御意見のようですが、この放送法の中には、第五十五条でしたか、いわゆるラジオ・コードというものがあります。このラジオ・コードは民間放送も適用を受けておる。これに対して先だつての郵政大臣の見解としては、このラジオ・コードに違反しておると思われるような場合においては、政府はこれに対して注意を与えることができる、こういうふうに自分たちは考えているという政府当局の答弁であります。この点、放送法をどういうぐあいに千葉参考人がお読みになつているかどうかということが一つと、もう一つは、いわゆる番組内容問題について事前にこれを干渉することは、もちろん表現の自由を害するから不適当であり、なすべきでないのでありますけれども、ただ免許の切りかえのときにおいてこれを決定する、こういう考え方になりますと、相当の資金が投下せられ、かつまたすべてに行われたものに対して、はたしてそういうような極端な措置がとれるかどうか、こういうこともあります。かつまた、一応番組編成の自由といいますか、表現の自由は確保せられているが、それに対して監督官庁が最小限度の注意を与え得る権限すらもないかどうか、こういう点についてひとつ意見を承りたい。
  12. 千葉雄次郎

    千葉参考人 私は憲法にうたつている表現の自由というものは、あくまでも尊重されなければならぬという考えでございます。今ラジオ・コードに違反した場合に注意してはどうかというお話でございますが、そうすると、ラジオ・コードそのものの解釈はだれがするかという問題、これは政府がするのだということになりますと、これはかなり考えなくちやならぬ問題があると思うのです。その解釈を、たとえば政府とも業者とも関係のない第三者の委員会というようなもので、これはラジオ・コードに違反していると思うというその答申を待つて政府が注意を喚起するというようなことでありますと、今申しましたような弊害はある程度除けると存じますけれども、そうでなしに、政府ラジオ・コードの文面を見て、そうして自分で解釈を下して注意をするということになると、これは表現の自由を拘束する懸念がかなり濃いというふうに考えるのでございます。
  13. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 もう一つこの収支予算に関してのことですが、ちよつと触れておらなかつたようでありますけれども、今度の収支予算の、いわゆる料金改訂のおもなる項目の中に、いわゆるベース・アップの問題が含まれております。そこで千葉参考人は欧米をよく歩いておられますので、参考にお聞きしたいのでありますが、大体今度のベース・アップの内容は、昭和二十八年度の状態からいえば大体一般公務員並であります。ほとんどそれに近い金額でベースがきめられておりますが、今度の予算で約一六%が基準給料の中に加えられるのでありますが、欧米、ことに公共企業体放送体であるイギリスのような国の事業において、どの程度他の公務員とベースが違つているか、それをひとつ参考にお聞きしたい。
  14. 千葉雄次郎

    千葉参考人 これはせつかくの御質問でございますけれども、私そこまで調べておりませんので、具体的なお答えはできません。
  15. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 それでは、謝金等の問題について何か御経験があれば、お伺いしたい。
  16. 千葉雄次郎

    千葉参考人 私外国へ出ましたのはかなり前でございますが、ただ一度BBCから放送したことがございます。それから帰つて来て、NHKでも放送したことがございますが、率直に申しますと、謝金は雲泥の差と申していいかと存じます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 二点だけ簡単にお伺いしたいと思います。先ほどの御説明の中に、新聞公共放送利害相反するというお言葉がございましたが、一概に新聞公共放送、いわゆるNHK立場とが、利害相反するとは私ども考えられないように考えるわけですが、もし利害相反するという何か事例でもございましたら、もう少し具体的な御説明をいただきたいのが、第一点でございます。  第二点としましては、これは常識問題としてお伺いしたいのですが、いわゆる鉄道運賃、あるいは電気料、お米などのように、特に今政府が気を使つて緊縮財政をうたい、悪性インフレ化を防ごうといたしております中におきましては、逆行するような値上げのケースと、今度のラジオ料金値上げというものが、同一視さるべきものとお考えか。あるいは一つの例をあげますと、税金というようなものにラジオ聴取料を当てはめる方がより妥当であると考えられるか。この料金値上げをされる場合の影響というものが、いずれのケースにより多く敷衍して行くか。この二点を参考にお伺いしたいと思います。
  18. 千葉雄次郎

    千葉参考人 私ははつきりと新聞公共放送利害相反すると申し上げたわけではないのでございます。私が申し上げたのは、現在の新聞社というものが、非常にたくさんラジオに資本的に関係を持つておる。それで一地域において有力新聞社であれば、同時にラジオも持つ。会社は別でありますけれども、要するに非常に濃厚な関係を持つておるということです。そういうわけで、対NHK関係では、民間放送利害関係者であると同じ程度とは申し上げませんが、やはり関連を持つて利害関係者的な立場に立つておるというのが、私の申し上げたい点なんです。その例とおつしやいますと、これは実例を申し上げると名前を出さなければなりませんが、大体東京にお住まいの方は御存じであろうと思います。それで私は名前をあげることは差控えさしていただきますけれども、たとえば今回のようなNHK受信料値上げというような問題が起つた場合の新聞の態度、あるいはテレビの認可というような問題に対する新聞の扱い、こういうものを見ますと、やはり利害関係的な考慮が、その紙面に現われているということを私は感じるのであります。これがいわゆる厳正公平であることを旨としなければならぬ新聞として、それでいいかどうかという問題なんです。この点はことに今後放送法改正の問題を私は非常に懸念するのでございますが、輿論が一方の意見ばかりを注入されるというおそれはないのであろうかということを考えるのです。  それからもう一つ聴取料の方でございますが、それが現在の緊縮政策のときに、何らかの悪影響がありはしないかということであります。これは実際は緊縮政策の建前を及ぼすならば、値上げしない方がいいでありましよう。ただしかし電気とかガスとかのように、ほかの産業にその影響が非常に広汎に及ぶものに比べますると、私はNHK聴取料の値上げというものは、それほど響かないのじやないかというふうに考えております。それからまたもう一つ、二十六年以後ずつと値上げをしていない。そういう点から考えますと、現在の聴取料というものは、ほかの値上りの趨勢から言えば、今までおいてけぼりを食つておるというふうに考えますので、まあこの程度はやむを得ないのじやなかろうかというふうに考えるのであります。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 もう一点お伺いしたいと思います。先ほど民間放送の場合に言われたわけですが、たとえば大資本を擁する新聞社はおおむね民間放送に大きな出資をし、その経営に当つておるものが多い。事実その通りでございますが、その場合、その民間放送から出されるニユースというものは、やはり一方的にその最も近いところにある新聞社の提供するニユースが、必ずそこからは出やすいように考えますので、今後放送法の改正などにもこれは関連しますが、今の先生の御意見ですと、こういう点にもわれわれは大きく留意して、今後のニユースが公正なものになるようにという点に、相当大きな関心を持たなければいけないように考えるのですが、この点御意見を伺いたい。
  20. 千葉雄次郎

    千葉参考人 お説まつたく同感でございますが、現在民間放送はそれでは非常に片寄つたニユースを流しておるかと申しますと、私はそれはないと思います。今申し上げたのは、むしろ新聞の紙面の方にそういつた弊害が現われて来ておるというふうに見られるのです。放送の方はこれは非常に法律の制約がございます。新聞には何もございません。その関係もありますし、また民間放送方々が、民間放送といえどもやはり公共性があるということで、かなり自省しておられるのだと思います。その点一言つけ加えさしていただきます。
  21. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 本日の御意見を伺いました最も重大なポイントは、ただいまこの委員会に提案になつておりますNHK聴取料の値上げ問題にからんでおりますから、その点に対しまして一点だけ御意見を承つておきたいと思うのであります。それはただいま原委員からの御質問に対してお答えになつた中でありますが、この聴取料の値上げは、金額にしてはごくわずかでございますが、現在の日本の情勢から申し上げますれば、緊縮政策の世の中でありましてこれはあくまても日本の財政経済を建て直す意味において、遂行して行かなければならない金科玉条のものであると思うのであります。ここで料金の値上げをするということになりますと、平面的な解釈から行きますれば、これは絶対阻止しなければならぬという意見もあるのであります。しかしあくまでも、緊縮政策の中においても、文化、教育、産業あるいは娯楽というものは、国民にますますこれを与えて行かなければならぬ。そういう建前からのいわゆる耐乏生活に持つて行くということが、政治の面においていい政治だと考えておるのであります。そういう点から考えて参りますれば、今のわれわれの家庭生活において、どうしたならば一番経済的に文化、経済、あるいは産業施設、あるいは娯楽を求めて行つて、そこに国民としての安住的な気持を持ち得るか、こういう観点から考えて行きますと、これはやはりどうしても電波というものに大きな国民的、国家的なウエートをかけて行かなければならない。こういうようにも考えられるのであります。そういう意味から申しますと、われわれ国民といたしましては、どうしても今日のごとき電波であつては心もとない。もつとこれを徹底した充実したものにして、家庭においてそのスイツチを一つひねることによつて、一家団欒、あるいは教育の面においても、産業の指導の面においても、ここに国民の安住を求めつつかつ耐乏生活をやつて行く、こういうふうにも考えられるのであります。われわれは今この二つの面のいずれをとつたらいいかという岐路に立つて悩んでおるのであります。そのために参考人の御意見を極度に尊重して、それを決定する一つの重大なウエートとしたいと考えておるのでありますが、どうかこの点について重ねて御高見をお漏らし願いたいと思います。
  22. 千葉雄次郎

    千葉参考人 私この予算を拝見して、さらに放送充実をはかるという点が出ておると存じますので、賛成の意見を述べたわけでありますが、もつと充実したらいいじやないかという御意見であるとしますと、これは私のきよう申し上げた範囲以上の問題でございます。また実際問題として、そうするとさらにもつと聴取料を引上げなくちやならぬ。それでもその方がいいかどうかということになりますと、実は具体的にNHK当局でそういう場合にどういう案を持つておられるかということも私つまびらかにいたしませんし、私のお答えは、この示されたものの範囲で賛成したというふうに御了解をお願いしたいと思うのでございます。
  23. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質疑はございませんか。——ないようでしたら、私から一言お聞きします。今の原委員なり齋藤委員質問に関連してですが、今度の値上げが緊縮財政の方針と食い違つているのじやないか、これに対する千葉参考人の御答弁では、この程度の値上げではそう物価にも影響しないだろう、だから値上げには賛成だという御意見なんです。そこでこの聴取料の性格の問題なんですが、これは千葉参考人もお認めになりましたように、物価にはそう影響しないというのですが、それは額の問題ではなしに、聴取という性格からいつて、一種の税金的なもので、もののコストに直接影響する性質のものじやないのではないか。たとえば電力料金の値上げとかあるいは電信料を上げる、運賃を上げるとか、すぐ他物価に転嫁されるものじやない。電波を買うと申しますか、放送を聞くということは、一種の物品税的な性質のもので、むしろ緊縮財政の趣旨からいつたら、税金をとるという点で趣旨が一致しているのじやないかと思う。税金を上げることがいいか悪いかということが問題になりました場合、普通の税金ならば、一般会計に入りますから、それが再軍備に使われるというような問題もありますが、これはすぐNHKの財政収入になりまして、放送内容がよくなつて聴取者に返つて来るものであります。そういう意味で、額の問題ではなしに、性質からいつてこれは緊縮財政には矛盾しないものだ、こういうように解釈できないかどうか、ひとつお尋ねしたい。
  24. 千葉雄次郎

    千葉参考人 先ほど申し上げましたように、私もこの程度の値上りでは、緊縮予算を脅かすような影響はないものと考えておりますが、これがはたして税金と同じに考えていいかどうかということになりますと、多少問題があると思うのでございます。しかし電気代ガス代のように、その値上げが諸物価に影響するという性質のものではないという点では、今おつしやつたことに私は同感でございます。そういうわけでこの値上げによつてNHK放送内容充実され、そしてスタッフ及びタレントに対する給与謝金というものも多少よくなるということでありますならば、この程度のものは、大体今おつしやつたと似たような意味で、賛成する次第でございます。
  25. 成田知巳

    成田委員長 では次に飯田静江君にお願いいたします。
  26. 飯田静江

    ○飯田参考人 私なんかにはNHKの遠大な御計画も、それについてのいろいろなこまかい計算なんかも、まつたく不案内でありますが、ただ私自身のきわめて手近に感じた二、三のことを申し上げるならば、まず第一に、今の聴取料がほかのいろいろの物価などに比較いたしまして、私は安いと思うのでございます。ものの見方にはいろいろございまして、電波を送り出す方は一つで、これを受ける方は何百万人、何千万人でも、その元の経費の方は影響がないのだから、聴取者がふえればふえるだけ値下げできるりくつだとおつしやる方もございますけれども、私にはこれはどうしてもうなずけないのでございます。聴取者立場から申しますと、料金は高いより安い方がいいにはきまつておりますけれども、その安い料金のままで、いうところの放送文化を高めることもでき、全国津々浦浦に公共放送の役割を完全に果すこともでき、また従業員の方々が代表的な新聞社民間放送局の方々に負けないだけの待遇を受けられるものでしようか。NHKの皆さん方が料金値上げの根拠として主張しておられるのを私伺いますと、どうしてもこれらの一切をまかなつて行くには、値上げ以外に道はないもののようでございます。  今日五十円のお金は、喫茶店のコーヒー一ぱいにも当らないほどでございます。政府が緊縮政策をとつておりますときに、大衆の生活に深く食い入つているラジオ聴取料のようなものを値上げするということは、その他の物価にいろいろ影響があるように聞いておりますけれども、これはどんなものでしようか、確かに今は時期が悪いと思うのです。ほかのいろいろの物価の値上げにつれて、もつと早く値上げしなければならなかつたものが、いろいろの事情で押えられていたような気がいたします。一番卑近な例を申しますと、芸能放送出演者謝金でございますが、私はまだ民間放送には出たことがございませんから、的確なことは申し上げられませんけれども、お友達の話をいろいろ伺いましたりいたしますと、民間放送NHKとでは非常な開きがあるということを聞いております。芸術的良心を持つている出演者といたしましては、そういう莫大なお金をいただくことよりも、何か文化的な価値のある放送をするということを第一義に考えておりますけれども、やはりこの考え方にも限度がございまして、たとえばスポンサーが百の価値として歓迎されているものを、NHKでは二十の価値としてしか取扱わないといたしましたならば、いくら芸術的良心に徹しようとしましても、あまりにその差額の大きいのに自然と不平も起り、熱意も欠ける者が出て来るのではないでしようか。この問題は非常に重大な問題だと思います。政府当局やほかの皆様には、こういう点をあまり簡単にお見のがしにならないようにお願いしたいのでございます。  それからよく聞くお話といたしましては、民間放送発達して、そのためにふえた聴取者の数は大きいというその理由から、その自然増収があるのにこの上また値上げをするというのは、たいへん虫がよ過ぎるということをしばしば聞くのでありますが、確かにそれは一理あると思います。しかしこれは性格を異にするNHKと民間局との共存共栄を物語るもので、NHKではなるほど民間局のお陰で聴取者を何割かふやしたには違いございませんけれども、一方民間放送局の方は、NHKが二十何年もかかつて何百万の聴取者を開発されたそのしにせの上にお店を開いたのですから、あのようにすみやかに発展しておるということを考えますと、やはりそれを見失うことはできないと思います。つまりNHKと民間局とは、性格の違つたお友だちとして仲よく手をとつて進んで行つてただきたいと私は思うのでございます。そうしてNHKは、いろいろな番組に、また放送施設なんかにますますいいものをつくり上げて、公共放送としての権威をますます高めて行つてただきたいし、それとともに、民間放送も理解あるスポンサーを大いに獲得して、そうしてNHK番組をしのぐような名番組をつくつてただきたい。そのために聴取料を値上げするということは、それはやむを得ないことだと思います。またスポンサーの数がだんだんに増して行くことも当然じやないかと考えるのでございます。
  27. 成田知巳

    成田委員長 飯田参考人もお急ぎのようでありますので、御質疑がございましたらどうぞ……。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 一点だけ、これは参考にお伺いしたいのですが、今のお説はよくわかりましたが、謝金の大小というものは、やはり多少の不平不満が芸に対する熱意の欠如という形で現われる心配もある、かようなお説でございましたが、しかし同時に、芸術的良心のもとにこれを押えて行かれるという御発言もあつたわけです。そこでお伺いしたいのは、NHKから放送される場合と、民間放送スポンサーによる依頼を受けて放送される場合とでは、同じ芸術家として、やはりどつちかというと何となくNHKから依頼されて出演する方が、何かプライドが持てるような、ある意味では誇らかな気持になる。その意味では芸に対する評価に大小がある。不満があつても、やはり多少安くても、NHKなら民間放送に出るよりもがまんができるといつたようなことがおありになるかどうか、ひとつ参考までにお聞きしておきたい。
  29. 飯田静江

    ○飯田参考人 それはNHKの何か文化的なプライドと申しますか、そういつたことはございます。少々謝金が少くてもという気持が今までみんなあつたのでございますが、あまり開きが大きいので、だんだんにそういう良心を持つている人がなくなつてしまうのです。
  30. 成田知巳

    成田委員長 ほかに御質問はございませんか。——それでは次に日本放送労働組合中央執行委員長中塚昌胤君にお願いいたします。
  31. 中塚昌胤

    ○中塚参考人 本日は、ただいま当委員会において審議されております日本放送協会昭和二十九年度収支予算事業計画及び資金計画について意見を述べる機会を与えていただきましたことにつきまして、心から感謝いたしたいと思います。  昭和二十五年六月に放送法が施行せられまして、公共放送といわゆる商業放送との並立ということになりましてから、約四年近くなるわけでございますが、その間全国には三十数社のいわゆる商業放送会社が設立され、今日各方面においてわが国における放送事業あり方というものについて、いろいろ論議されておるのでございますが、私はわが国の経済的、社会的及び地理的状況から見まして、いわゆる公共放送必要性というものはきわめて大きい、そうしてこれを維持発展させなければならない、この意味から申しまして、公共放送使命というものはきわめて重大であるというふうに思うわけでございます。従いましてわれわれ日本放送労働組合の八千の組合員は、このような自覚のもとに日夜公共放送使命達成のために努力いたしておるわけでございます。私はこの八千の組合員を代表いたしまして、公共放送に従事する者の立場に立ちまして、これから意見を申し述べたい、このように思うわけでございます。  そもそもNHKは、放送法規定されております通り、公共の福祉のためにあまねく日本全国において受信できるように放送を行うという使命を有しております。そうしてこの使命を達成するためになすべき業務といたしまして、次のように放送法の第九条には定められておるわけでございます。「一 全国的及び地方的放送を行うため、放送局を設置し、維持し、及び運用すること。二 国際放送を行うため、放送局を設置し、維持し、及び運用し、又は政府施設使用すること。三 放送番組を編集すること。四 放送の進歩発達に必要な研究施設を設置すること。」かように規定されております。そうして協会事業計画収支予算というものは、この協会使命を達成することを目的として立てられ、編成されたものというふうに考えるわけでございます。NHKに課せられました業務の第一は、先ほども申し上げましたように「全国的及び地方的放送を行うため、放送局を設置し、維持し、及び運用すること。」ということでありますが、われわれか最初に承知いたしましたところによりますと、放送債券というものを二億円発行する、そうして全国必要な場所にいわゆる中継放送局を新しく設け、また第二放送施設を増設し、また放送電力の増加を行うということになつておつたようでございますが、手元にいただきました予算書によりますと、ラジオ関係放送債券の発行は一切行わない。従つて二十九年度は中継局の新設その他は一切とりやめるという方針のようでございます。これは先ほども申し上げましたように、全国あまねく受信できるように放送を行うという日本放送協会使命から見ましても、全国の山間僻地にありますラジオ受信者への便宜をはかるために、またいまだ放送電波が完全に届かない地域に対して、サービス・エリアを広げるというために、いま一度考え直す必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに前述いたしましたほかに、いわゆる老朽施設の改善関係経費約三億五千万円程度が、やはり最初伺いましたより削減されているようでございます。現在協会の地方の放送局の大部分のものは、十数年前にできたもので、すでに老朽しておりまして、そのほとんど大半が改修を必要とし、また増築を必要とする状況でございます。また今日の放送技術というものは日進月歩でございまして、公共放送使命を達成するためには、常に最も新しい技術を取入れ、放送の機動性というものを十分に発揮して、放送内容充実をはかることが何より必要でございます。この点から見まして、この経費の復活をも考慮する必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  次にNHKの業務の重要な一つでございます放送番組の編集という点から見まするならば、放送法第四十四条には、「協会は、放送番組の編集について、公衆の要望を満たすとともに文化水準向上に寄与するように、最大の努力を払わなければならない。」というふうに定めてございます。この二十九年度の事業計画におきましては、「特に教育及び産業放送、地域的社会生活に直結する放送、並びに文化向上目的とする高度の芸術的及び教養的放送充実を図る。」という方針を重点とするというふうにいたしておりますが、この点は協会目的、公衆の要望などからいたしまして、総括的にはきわめて妥当というふうに考えられますが、この際特に考慮されなければならない点を一、二申し上げてみたいと思うわけでございます。  まず放送番組の編集権のあり方でございますが、最近NHK放送番組内容について、いろいろの批判を受けているようでございます。放送番組は、何人からも干渉または規律されることがあつては絶対にならないというふうに考えおります。われわれは今までも、特に放送番組の編集にあたつては、慎重な判断と毅然たる態度をとるべきであるということを、協会当局にたびたび要望して参つたわけでございますが、今後におきましてもわれわれは、労働組合という立場は違いますが、組合という立場には立つておりますが、公共放送の重要使命というものを達成するために、放送番組の編集の自由というものをあくまでも確保して行きたい、このように考えているわけでございます。  次に放送番組内容を、現在以上に充実をはからなければならないというふうに考えるわけでございます。すなわち番組経費に重点を置いて、公共放送として国民に健全な教養、娯楽、そうして正確迅速なニユースというものを提供すべきだというふうに考えるわけでございます。  こういう点から見まして、今回の予算書で見ますと、二十八年度に比べまして、増収になる受信料収入の約三三%程度がこの放送費、いわゆる番組関係の費用に充てられておるということで、こういう点も十分とは申せませんでしようが、現在以上により充実されるのではないか、われわれとしても一層この点に留意して行きたいというふうに考えるわけでございます。  次に地域社会に奉仕するいわゆるローカル放送の拡充についてでございますが、現在すでに全国には約四十局のいわゆる中継放送局というものが設置されまして、中継放送の業務を行つておるわけでございます。しかしこれらの中継放送局の所在地におきまするいわゆる地域社会の発展のために、受信者の要望としまして、単にそこから中継の放送をするだけじやなしに、ローカル放送が実施できる施設充実と業務態勢をとることを、われわれはすでに前年度あるいは前々年度から、この国会において予算審議が行われます際に再々切望して来たことでございますが、今ただちに施設の大幅な拡充というものは、財政的な見地から見てむずかしいといたしましても、少くとも日常のニユースの放送程度はそれぞれの中継放送局から提供できる、その程度の計画と予算措置がとられることか望ましのではないかというふうに考えております。なおこれに要しまする経費というものは、われわれの判断ではそう大きなものではない、少額のものででき得るというふうに考えておるわけでございます。  それから前にも申し上げました協会の業務、すなわち全国的、地方的放送を行うため、放送局を設置し、維持し、運用すること、及び放送番組の編集をすることという二つの業務と並びまして、協会の重要な業務といたしまして、放送の進歩発達に必要な研究施設を設置することということがあるわけでございますが、NHKにおきまする技術研究というものは、昭和五年以来二十四年にわたりまして、わが国電波技術の発展に寄与して参つたわけでございますが、今日世界におきまする電波技術というものは、驚異的な発展を遂げております。わが国の産業及び学界に寄与するために、放送技術の研究をさらに積極的に推し進めて行かなければならない。特に昨年二月にテレビジヨン放送が開始されまして、いわゆるマイクロウエーブの研究を中心といたしました電波技術の研究というものは、国家的な見地からいたしましてきわめて重要な研究課題でございます。なおまたテレビジヨン放送を大衆化するためには、低廉な受像機が売り出されるようにならなければ、その普及というものは望み得ない状況でございます。このために受像機の研究というものを重点としなければならないというふうに考えるわけでございますが、現在はきわめて乏しい研究費にとどまつて、十分なる研究成果が得られないという状態にあるわけで、特にこの技術研究費の増額というものを考慮する必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  以上申し述べました協会のいろいろな目的を達成するために、今日協会には約八千四百五十名の従業員がラジオ、テレビジヨン、それから国際放送等に従事いたしておりますが、これらの職員の給与というものは、現在ではきわめて低い水準にあるわけでございます。現に給与が低いために、われわれの同僚の相当数の者は、商業放送会社あるいは商業テレビジヨン会社に転出しておる状況でございます。NHK放送が真に公共の福祉に寄与するために、最もよい放送を提供するというためには、優秀な人材を必要とすることは申すまでもございませんが、最近二、三年、特に昨年テレビジヨン放送が開始されまして以来、いわゆる専門教育を受けた職員の数が非常に多くなりまして、現在NHK従業員の中で、いわゆる新制大学及び旧制の専門学校以上の卒業者が、全職員のうちで約三七・五%というものを占めておるわけでございます。このように職員の平均学歴がきわめて高いことは、ほかのいかなる民間会社も、またいろいろな官庁にも、その例はございません。かかる見地からいたしまして、われわれは昨年末協会当局に対して、二十九年度の賃金要求を行つたわけでございまして、それ以来たび重なる団体交渉を行つてつて、今日に来たわけでございますが、この二十九年度の協会予算に編成されました給与総額を見ますと、従業員にこれを配分しましても、われわれが謙虚な立場考えております最低の要求額というものには、なお相当の隔たりがあるわけでございます。この点国会で本委員会におきまして、この予算を審議されます場合に、ぜひとも御考慮願いたい。われわれ職員の給与向上に対して、われわれの希望が達成できますように御協力を願いたい、このように思うわけでございます。  最後に、二十九年度予算によりますと、二十九年度におきましては、受信料が引上げられるということになつております。この点は、現在の協会受信料以外の収入源というものは認められておりません。そして公共放送として課せられている使命を完全に達成しなければならないといたしますならば、現在の受信料のままでは不可能ではないか。従つてある程度受信料の引上げは、どうしてもやむを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。その点につきまして、最近きわめて活発に論議されておりまして、先ほどもお話に出ましたように、商業放送は無料であるのにNHKは有料で、しかも受信料を引上げるということはけしからぬという意見や、あるいはこの受信料の引上げが現在の緊縮財政下において逆行しておる、これがインフレ助長の突破口になるというふうな意見もあるようでございます。前の方の意見につきましては、先ほども千葉参考人の方からお話が出ましたように、商業放送というものは電波料をとつておりまして、この電波料は各スポンサーの売り出します商品価格に含まれておるということで、結局消費者大衆に負担させられているということを、もつと一般に理解してもらう必要があるとともに、近い将来に予想されます放送法の改正の際には、公共放送の性格及びその使命というものをさらに明確化して、十分国民に納得してもらうという必要があろうというふうに考えるわけでございます。あとの方の意見につきましては、これも先ほどお話に出ましたように、受信料というものは、電気料金や、あるいは運賃、あるいは石炭の価格というふうなものと違いまして、直接他の物価に影響を及ぼすものでないというふうに考えるわけで、従つてこれがインフレ助長の橋頭堡になるというふうには考えられないわけでございます。しかしながらいずれにいたしましても、国民大衆の負担を増すということは決して望ましいことではございませんので、この点協会当局において、業務の合理化、経費の節約をはかり、また経費の支出にあたつては、重点的に放送目的達成のために効果のある使い方を考慮し、できるだけ国民大衆の負担を軽くするよう、受信料の引上げは最小限度にとどむべきものであるというふうに考えるわけでございます。なおわれわれが過去におきまして、協会に対して主張して参りました、いわゆる生活保護法の適用を受けている人たちに対する受信料の免除措置を、今回とられるようになつた。そして郵政当局がこれを認められたということにつきましては、われわれとしても賛意を表したい、このように思うわけでございます。  以上公共放送に従事いたします組合員の立場から、意見を申し述べたわけでございますが、われわれは経営に参加は認められておりません。また経理の公開も受けておりませんので、十分な検討の結果に基く意見を申し述べ得なかつたことを残念に思うわけでございますが、協会のようないわゆる営利を目的としない企業体の労働組合のあり方というものについては、われわれも真剣に検討いたしたいというふうに考えておりますが、やはりこれも来るべき放送法の改正等々と関連いたしまして、当委員会におかれましても十分御検討願いたい、このように思うわけでございます。簡単でございますが、私の意見をこれで終りたいと思います。
  32. 成田知巳

    成田委員長 次は石垣綾子君にお願いいたします。
  33. 石垣綾子

    ○石垣参考人 NHKはこれをたいへん平たい言葉で申し上げれば、私たち国民の一人々々が聴取料を払つて、そうして運営し、経営しておるものであると考えるのでございます。それを言いかえますれば、ここにいらつしやる皆様方、また私たち一人々々が、NHKスポンサーであると私は考えております。このNHK聴取料値上げ問題を検討するにあたりまして、NHKははたしてスポンサーである私たち国民の要望に沿うた奉仕をしておるか公共機関としてその役割を一般に果しておるかいなかという立場から、問題を進めて行きたいと私は考えております。  値上げ問題がやかましくなつて参りましたとき、皆様御承知の通り監督立場におありになります塚田郵政大臣は、NHK政府をからかい過ぎるというようなことをおつしやいました。そういたしますと、それからすぐに、あたかもその批判を受入れるかのごとく、去る十四日のユーモア劇場は突然に内容をかえまして、その筋のねらいでございましたところのじようだん音楽、また諷刺のコントが姿を消した次第でございます。塚田大臣のこういう批判を受けたNHKは、案外もろくもその批判を受入れたというような感じを、私は聴取者として受けたのでございます。もちろんNHKの当局者でいらつしやいます方々、特に古垣会長のお答えでは、あれは政府の干渉ではなかつたということをおつしやいますけれども、前後の関係からいろいろ考えてみますと、あのユーモア劇場からあれがなくなつたのは、政府の干渉でなくなつたのではないかと私たちは考えておる次第でございます。これまで自由党もまた政府の方でも、NHKたるものが政府を批判するような番組を出しているのはけしからぬじやないかということを、たびたび言つていらつしやいました。そのときに塚田郵政大臣がそういうようなことをおつしやつたのでございますから、この疑いは相当に根拠があると考えられるのでございます。もちろんNHKのこの材料を見ますと、放送番組はどこまでも中正を保ち、国民の要望に沿わなければならないと書いてございます。にもかかわらず、ちよつと政府の方からそういうふうにつつかれますと、ひよつと首をひつ込めてしまうようなことは、このNHKの本来の精神に反しているのじやないかしらという感じがするのでございます。もちろんこのNHKは私たち国民スポンサーの声を伝えてもらわなければならない、政府の御用機関であつてはならないのでございますけれども、近ごろだんだん政府の御用機関になるような傾向が出て来たのじやないか。先ほど申し上げましたユーモア劇場のユーモアがなくなつたこともその一つでございますし、その前には日曜娯楽版がなくなつたということも、その一つの形ではないかしらと思うのでございます。NHKが公共の放送機関であるということを口にしながら、なぜああいう圧力が来ましたときに、それをはねのけないのかということを私はたいへん不満に感じております。今度聴取料を上げるという問題が出ましたときに、お金を出すのは私たちのふところでございますにもかかわらず、そのお金を出す人々の要求の方はちよつとひつ込めまして、そうでない政府の方の要求を入れて上げてくれというのは、これはちよつと虫がよ過ぎるのじやないかしらという気がいたしました。  私はNHK政府のやり方を批判する権利があると思つております。それは自由党の政府であつても、社会党の政庁であつても、その政府を批判するということは民主主義あり方であり、それによつてこそ国がよくなると思うのでございますから、NHK公共放送の役割といたしまして、政府批判をどしどしていただくべきじやないかしらと思います。ところがそのユーモア劇場の二、三日後に、MSA援助をめぐるという街頭録音がございました。これまでNHKは街頭録音をいたしますときには、政府の方の立場をおとりになる方、それから野党の方、それからまたもう一人中間の立場に立つような方を加えて、二人か三人が街頭録音のゲストとして呼ばれるような習慣になつておりました。ところが十六日でございました、MSA援助をめぐる街頭録音のときには、たつたお一人外務政務次官がおいでになつただけでございます。MSAは国民みんなが今議論しております。賛成論者もございますれば、反対論者もある。このときにこういう重大な問題をとらえて街頭録音をいたしますには、やはりこれまで通り各立場に立つ方々をゲストとして呼ぶのが、当然ではないかと思うのでございますけれども、たつた一人の政府の方の立場をおとりになる方をゲストとして呼んだということが、NHK公共放送機関としの役割を、どこかだんだんと痛められて来ているという感じをふやさせたのでございます。  NHKがその精神として立てております通り、国民のすべての意見を代表してくれますならば、その放送番組の審査委員という方々も、国民のすべての層を代表したものを集めなければならないと思うのでございますが、この材料によりますと、ここに番組委員会というのがいろいろございます。その中のおもなものといたしまして、放送番組審議会というのができております。この審議会は会長の諮問に応じて、いろいろの方々がそこに呼ばれて審議会をこしらえていらつしやるのでございます。ここに十九名の名前が並んでおります。それを拝見いたしますと、その中には会社の社長のような方方、また大学教授、評論家、また新聞の方の代表者の方も入つていらつしやいます。それから官僚が入つております。その顔ぶれを見ますと、会社の社長が三人入つていらつしやるわけでございます。会社の社長の方が三人の代表者を送つておるとすれば、国民の大きな部分を占めております労働組合の代表者も、当然それに一人くらいは参加すべきものじやないかしらと考えますが、労働組合がそこに入つていないということ、これはやはりNHKとして大いに考えていただかなければならない問題じやないかと思います。また評論家、大学教授、その他の方々の思想も一つに片寄らず、いつも両方の立場を持つていらつしやる方をお呼びしなければならないということを、もう一ぺんここで再検討していただきたいと私は願うのでございます。最近のNHKの動きを見ますと、だんだん政府の方に片寄つてつているのじやないかしら、現に私もNHK放送したこともございますが、そのときの経験によりましても、政府を批判するということになりますと、係りの方が神経質におなりになつて、その資料はどこから出たかということをたいへんに気になさいます。私もそれを知つておりますから、何々新聞のいついつということをいつも申し上げて参りましたがそういう一事を見ましても、NHK政府批判にたいへん遠慮していらつしやるというようなことを感じました。NHKがほんとうに国民の声を代表してくださるものならば、私は聴取料を値上げしてもいいと考えるのでございます。先ほどから緊縮予算でやつておる際に、値上げをするのは悪いというようなことをたびたび言つていらつしやいましたが、またある方はそう言うにもかかわらず、いい放送番組を出してくれれはそれでいいじやないかということを言つておりました。私たち国民の声を伝えてくれるものならば、これはほんとうに値上げしてもいいと考えるのでございます。しかしもし値上げするようなときにあたりまして、政府の方は要求に折れてしまい、国民の声をほんとうに代表しなくなるようならば、私はこの値上げはわずかな額ではございますけれども、それに反対をしなければならないと考えるのでございます。NHKの方の値上げ理由を見ますれば、いろいろと理由はそこにございます。もちろんいい放送をしようという意気はわかるのでございますが、そのよい放送という意味は単に技術的な面ではなしに、その内容いかん、その内容と申すものは国民の声をほんとうに代表しておるか、すべての人の意見を代表しておるものを放送番組に出しておるか、そこに観点を置いてこの問題をきめたいと思うのであります。
  34. 成田知巳

    成田委員長 石垣さんはお急ぎのようでありますから、御質疑がございましたらこの際お願いいたします。
  35. 原茂

    ○原(茂)委員 石垣さんに一つだけお伺いいたします。今盛んにユーモア劇場あるいはMSAをめぐる街頭録音等を通じて、あるいは石垣さん自身が御出演されたときにも——ただいま相当詳しく協会の神経質な様子をお話ただいて非常に参考になりましたが、こういうような傾向というものは最近の傾向でございましようか、石垣さんの御存じの範囲でお話願いたいと思います。実は前々からもこういうことがありたが、最近は特によくあばかれるというか、われわれの目や耳に入りやすくなつて、報道機関が相当おもしろ半分にこういうことをよくわれわれに知らせてくれるのだ、そうではないかもしれませんが、そういうふうにお考えなのでしようか。これは最近の特に顧著な傾向で、ずつと前にはこういう干渉がましい傾向を見たことはなかつたかどうかをお聞きいたしたい。
  36. 石垣綾子

    ○石垣参考人 ずつと前とおつしやいますと、私はその当時はこちらにおりませんので、申し上げられないのでございますが、過去三年間のことについて申し上げたいと思うのでございます。そういうふうになつて参りました傾向は、この三年間の中で申せば特に過去一年また一年半くらいの間に、とみにそういう傾向が強くなつて来たと考えております。
  37. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 ちよつと一つ石垣さんにお聞きすること、もう一つは先ほど参考人の御意見の中に、政府、自由党が圧迫をしてユーモア劇場からユーモアをなくしたとこうお話になりましたが、この政府のことについては私政府の当路者でありませんから、お答え申し上げませんが、自由党に関しましては、このユーモア劇場の番組変更については、責任をもつてそういうような申入れをしなかつたということを申し上げておきたいと思います。個人的な意見か、あるいは座談であつたかもしれませんけれども、自由党としてはいかなる機関においても、また正式の個人的代表の意味においても、ユーモア劇場の番組変更についての申入れはしなかつたということを、御了承おき願います。  それからもう一つお話を承つておりますと、大体において値上げについては反対ではない、国民の声を代表し得るものであるならば賛成である、しかし国民の声を代表しないような放送をするものならば、値上げをする必要はない。こういう考え方を推し進めて参りますと、政府のいわゆる宣伝機関のような仕事になるならば、政府国営でやつた方がいいのじやないかというようにとれるのでありますが、言論機関であるこういうものの国営を奨励する方がいいものかどうかをお伺いいたします。
  38. 石垣綾子

    ○石垣参考人 最初のことにつきましてちよつと私は申し上げたいのでありますが、自由党が正式にそういうことをしなかつたとおつしやることは、私も事実だと考えております。しかしこのごろの世の中は、正式にそういうことを言わなくても、いろいろと雰囲気でもつてそういうことができ得る時代であるということを申し上げたいと思います。  それからただいま国営でそういう放送機関を持つことに対する私の考えをお聞きになつたと思うのでございますが、私は国で、政府の御用機関としてプロパガンダをする、そういう放送機関を持つことには反対でございます。反対でございますから、NHK国民から聴取料をとつて、それによつてまかなうことに賛成しておるわけでございます。もしそれが足りなくて、政府の方から補助金をもらわなければならないとなると、これはますます政府の御用機関になる危険が非常に多くなるのではないか。そこのところをよく検討しなければならない問題だと私は考えております。
  39. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 そういたしますと、石垣さんはこの参考書類をごらんになつたと思うのでありますが、この参考書類に盛られてあるような事業をまじめに達成するためには、この程度の値上げはやむを得ない、こういうお考えのもとに先ほどの話があつたかどうかをお聞きしたい。
  40. 石垣綾子

    ○石垣参考人 事業を拡張し、それから経費を顧みず山間の僻地にもそういう放送機関をつくりたいというような善意の考えは、私よくわかるのであります。ただ先ほどから申し上げますように、その内容政府のちようちん持ちをするようになりますならば、これは必要じやないと私は考えるので、そこがデリケートな、またむずかしい問題であるのでありますが、そのことを私は国民自身も厳正に批判をし、NHK内部の当局の方々もそれをはつきりと考えていただいて、外部からの権力による圧迫というものをしりぞけていただきたいと考えます。
  41. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 最後に一つ、石垣さんのお話はよくわかりました。実はいわゆる政府の権力の浸透なりあるいは干渉等を避けるために、こういうふうに放送法ができておるのでありますが、なお運用についてもほとんど全会一致をもつて、言論機関であるNHKに対しては政府の干渉を排除すべきである。従つて最小限度のいわゆる監督権もこれを排除しなければならぬ。こういう方針に基いて、国会においては数次にわたつてこの問題は論議をされて参つております。なおまたいろいろ参考になりましたことをお聞きいたしまして、将来の放送法の改正については御意見を十分取入れたいと考えております。
  42. 甲斐政治

    ○甲斐委員 参考人の御意見よくわかりましたが、一、二お尋ねをいたしたいと思います。NHK国民のものでなければならないという立場から、経営委員会がその構成において片寄つておるという御意見でございましたが、なるほど御指摘の通りにそのきらいがあるのではないかと思います。経営委員会NHKの最高責任をとるところでありますが、この経営委員会の働きが、経営委員会として与えられた職責を十分果しておるであろうかどうであろうか、この点についてどうお考えになつておりますか、伺いたいと存じます。
  43. 石垣綾子

    ○石垣参考人 私は内部の者でございませんので、その審議会というものが名前だけのものであるか、それとも実際にどれだけの力を持つているかということは、ここではつきり申し上げられないのでございます。ただそこにやはり審議会という名前がある以上、外部の者の立場からいたしますときには、それが実権を握つているにしろ、しないにしろ、ある程度のアドヴアイスを与えるものとみなして、論議を進めなければならぬと考えております。
  44. 甲斐政治

    ○甲斐委員 現在のNHKあり方が、はたして国民電波国民NHKとして十分にその使命を果しておるかどうかという点が、これは経営委員会がその責めに当るべきものだと思うのでありますが、その意味においていかがであるかということをお尋ねしておるわけです。
  45. 成田知巳

    成田委員長 ちよつと私から申し上げたいのですが、先ほど石垣さんの言われたのは審議会のことを言われておつたように思うのです。今の御質問経営委員会のことなんですが、そこに食い違いがあると思うのです。
  46. 石垣綾子

    ○石垣参考人 私が申し上げましたのは、放送番組審議会でございます。
  47. 甲斐政治

    ○甲斐委員 それでは経営委員会についてはどういう御意見か、承つておきたいと思います。
  48. 石垣綾子

    ○石垣参考人 経営委員会については、私ははつきりした資料もまた知識も持つておりませんので、申し上げられないのでございますが、経営委員会の方向も、あるいは放送番組審議会と同じような方向を持つているのではないかという気がいたします。それにつきましては私ここではつきりした御返答はできません。
  49. 甲斐政治

    ○甲斐委員 政府の圧迫か、あるいは政党の無言の影響力を受けておるのじやないかというお話が先ほどございましたが、そういうような意味で現在もNHK放送あるいはその他のあり方が、石垣さんがお考えになつて国民電波としてうまく運用されておるかどうかということについて、御返答をいただきたいと存じます。
  50. 石垣綾子

    ○石垣参考人 理想的に運営をされておるとは私は考えておりません。その一例といたしまして、ニユース解説あたり、ときどき公平な立場とは思えないようなものもございますし、もちろんニユース解説でございますから、その解説に当つていらつしやる方の御意見がそこに出るのは当然なことだと思うのでありますが、もし一人の方の御意見が出るというのでございましたならば、その他の方の反対の御意見も出なければならぬはずのものだと考えております。またあまり自分意見を出すのを遠慮され過ぎて、結局何を言つていらつしやるのかわからないようなものも、たまにはあるのじやないかしらんと思うのでございます。そういうところに今のNHKが、何か周囲の圧迫を感じているというようなことを、聴取者として感じるのであります。
  51. 甲斐政治

    ○甲斐委員 もう一つお尋ねいたしますが、国民電波として、国民NHKとして、十分にその働きをしておるのであれば、値上げも一応了承できるというお話でございましたが、現在はたしてそうであるかどうか。現在は値上げをしてもよろしいという御認識の上に立つておられるかということを伺いたい。
  52. 石垣綾子

    ○石垣参考人 現在私はNHK国民の声をほんとうに代表しておるとは考えられないのでございますが、そうしますと、私の先ほどからの論議によりまして聴取料値上げ反対ということに、結論が出て来るわけでございます。そこで私はもう一度NHKの方に反省していただきたいということを考えております。NHK聴取料をどうしても値上げをしなければならないのであるならば、そのならない理由とともに、これからこういうような方針で、国民の声をほんとうに伝えたいということを発表していただきたい、ということを私は申し上げたいのでございます。
  53. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ただいまいろいろ女性評論家としてのお立場から御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。この委員会は御承知の通り国家最高の電波に対する意思を決定するところでございまして、これに対しましては、当該委員の私たちは常に国家的な立場に立つて慎重を期し、電波の公正を念願といたしておるのであります。第一に考えておりますことは、お話の中にもございました通り、電波はすべて国民のものである、従つてこれは国際的に見ても、国内的に見ても、国家の宝であるという観点から、この公正を期して、常にその中道を歩まなければならぬということを考えておるのであります。そういたしますと、この放送法の中には、その放送法の中核を縫う精神といたしまして、あくまでも公共の福祉を達成するということのおきてがあるのであります。この公共の福祉をいかにして達成するかということになりますと、国民の最大公約数をつかんで行かなければならぬ。人おのおのその立場々々におきましていろいろな感覚があり、思想があり、また主観がまじわるのでございまして、この公共の福祉というものをあくまでも最大公約数をつかんで、中正をはかつて行かなければならぬということを考えておるのであります。その立場に立つ者はNHK放送を聞きますと、常にこれは政府の肩を持つておると、こう言います。また政府の方から言うと、これは野党的色彩が横溢しておるという意見もあるのであります。この間に処してNHKはいかなる中正の道を歩むか、またわれわれとしては歩ませるかということが、私どものこの委員会における大きな課題であるのでございます。  そこで私は参考としてお伺いいたしたいのは、今日のNHKに対する批判というものはいろいろございます。私なども常にNHK当局に対して、辛辣なる批評を加えておる一人でございますが、この内容を検討いたしてみますると、実にこれは国家の代表たる放送機関としては薄弱なんであります。これはあらゆる面からそうなんです。人材的においてもあるいはそうかもしれぬ、またその設備あるいはその放送するところの、責任を持つところの人々の生活その他から検討を加えて行つても、私はこれはどうしてもまだ国家を代表する、いわゆる国民のすべてを代表して、国際的な立場に立つて放送をやるところの資格がNHKに私はないと思う。そこで問題が起きるのであります。今これは資格がないから、このままにひねりつぶしてしまうか、あるいはこれは国民電波であるから、もつと国民はこれを応援して、国民のためにりつぱなものに仕上げるかどうかというところに、今回の聴取料の問題が出て来ておるのであります。あたは一体今NHKは信頼するに足らないから、あんな料金を値上げする必要はないと、こういう御意見にお立ちになるのか。そうじやない、電波国民のものであり、国家を代表するNHKであるから、われわれは相当の負担を負うても、これをあくまでも国民の力において育成して行かなければならぬ、こういうお立場にお立ちになるのでありますか、どちらでございますか、これを参考のために伺いたいと思います。
  54. 石垣綾子

    ○石垣参考人 先ほど電波国民のものであるから、NHKはいかにしてその中道を歩んで行かなければならないか、その方法はどこにあるかということをおつしやいました。これは非常にむずかしい問題でございまして、おつしやいました通り政府の方から見ると野党の肩ばかり持つている、また国民のある一部の方から見ると、政府の肩ばかり持つておるというふうなことをおつしやいました。ここで私が中道をとるということについて、はつきりともう一度申し上げたいと思うのでございます。国民の中にはいろいろな意見を持つております。先ほど最大の公約数が国民の福祉であるというようなことをおつしやつた。私はこう考えるのでございます。大部分の意見一つございます。またその中にマイノリテイーの意見がございます。民主主義の国におきましては、いつもそのマイノリテイーの意見を尊重しなければならないものだと考えるのでございます。イギリスにおきましてあれだけ民主主義が実行されるのも、私はマイノリテイーの意見がいつも尊重されて聞けるからだろうと思うのでございます。NHKも公平な報道をするという立場に立ちますときに、やはりマイノリテイーの意見を忘れてはならないということを、私はここで強調したいと思うのでございます。そのマイノリテイーの意見に対しまして、大多数の人たちがそれに批判を持ち、そうしてもう一度反省する機会を与えられるのでございますから、そのマイノリテイーの意見を無視してはならないということが、やはり報道の中道を行くという一つのかぎになるのではないかと思うのでございます。  それからその最後の御意見国民の応援によつてNHKをほんとうに国民のものにするか、それとももうこんなものはほうつてしまえというのかという、その御質問に対してお答え申し上げます。私はこうした公共の放送機関は、非常に大切であると考えております。民間放送でございますれば、そこにスポンサーがあるとすれば、やはりスポンサーによつていろいろと左右されますが、もしこれがNHKでその本来の精神に沿うて放送番組がこしらえられますならば、それは一つのものによつて左右されるのでなしに、国民全体の意見によつて左右されなければならないものである。で私は国民全体が、このNHK国民の声を代表するものとして行かなければならないと考えておる立場でございます。これでお答えしたと思いますが、破壊するよりも私はこれをもり育てて行くべきものであると考えております。
  55. 成田知巳

    成田委員長 ほかにございませんか。——今の斎藤委員の御質問に関連してお尋したいのですが、言論、放送の自由といつても、公正あるいは中立性というものを失つてはいけないと、こういうお話があつたのですが、公正とか中性というのは非常に解釈がむずかしいと思うのです。それで民主主義社会における憲法で保障されている言論あるいは表現の自由というものも、やはり政府批判の自由ではないかと思うのです。そこでむしろ政府批判があるから中正をなくしておるとか、公正を失つておるとか、こういうことは言論自由の本質を私ははき違えているのではないかと思う。むしろ野党の攻撃なんかやるべきじやなしに、政府の攻撃をやることが、これが言論の自由の本質じやないかと思うのですが、それが一点です。  もう一つは、先ほど千葉参考人の御意見がありましたが、英国は御承知のように公共放送アメリカは、石垣さんもアメリカヘおいでになつたでしようが、民間放送一本ですが、日本はちようどその混合形態になつておるのですが、英国は公共放送一本である、アメリカ民間放送一本であるということは、やはり社会的な歴史的な背景というものがあると思うのですが、日本のような国情では、現在のような混合形態がよいのか、あるいは公共放送一本がよいのか、あるいは民間放送一本がよいのか、これについての石垣さんの御意見を伺いたいと思います。
  56. 石垣綾子

    ○石垣参考人 その最初におつしやいました政府を批判することこそ厳正な中立なものじやないか、自由を守ることじやないかとおつしやいました。私もその御意見に対して賛成いたします。先ほど申し上げたマイノリテイーの意見と申しますのは、これはやはりいろいろのものを批判する意見だと思うのでございます。時の権力、時の大きな力に対して流れて行く意見というものは、どこの国でも一番大きなものになるものでございます。その一つ意見が流れて行きますときに、それを牽制し、そうして正しい道へ横に曲らないように持つて行くことこそ、それがマイノリテイーの意見だと思います。そのマイノリテイーの意見というものは、やはり時の権力その他いろいろのその時代に受け入れられておる意見を批判して行くものが、私はマイノリテイーの意見になるものと考えておりますから、先ほどおつしやいました言論の自由というものは、やはり批判するところに自由というものがあるのではないか、そのように考えております。  それからその次にイギリス、アメリカの例をおあげになりまして、日本はどうするべきかということをおつしやいました。それに対して私はどうしたらよいかということは、今のところちよつとむずかしくてお答えしがたいことなのでございます。かりに日本といたしまして、民間放送ができましたことによつて、私はやはりNHK民間放送にいろいろ刺激された面があると考えますので、日本のような行き方は必ずしもこれはイギリスとも違い、アメリカとも違い、そこにまたよいことがあるじやないかしらんと考えておりますから、日本の現在のような行き方に私は必ずしも反対はしていないのでございますが、これに対するはつきりしたお答えはちよつとまだもう少し考えさせてもらわなければお答えできないと思います。
  57. 甲斐政治

    ○甲斐委員 石垣さんはアメリカ放送のみならず、各国の放送についても詳しく御存じでいらつしやいますので、御意見を伺うわけなんですが、NHKの今の放送網、番組内容が、民間放送ができたために刺激されてよくなつた点もあるようでございます。また民間放送は先達であるNHKに学ぶところもきわめて大きい、そういう相互関係にございますが、現在の放送内容について、NHKがしいてやらなくとも、民間放送がやつてよろしいと思われるような番組内容がないかどうかということを伺いたい。NHKは独自の性格を持つておりますから、その性格において放送内容についても独自の分野を開拓して行き、たとえば娯楽放送のごときは、民間放送にある程度移してもよいのじやないかというような意見もあるわけでございますが、そういう点について御意見を承りたい。
  58. 石垣綾子

    ○石垣参考人 確かにただいまおつしやいましたように、NHK民間放送とが両方とも競つて、同じようなものを出してむだをしておるということは、たいへんに多いと思います。それは何も放送機関に限つたことでなしに、日本の生活全体が、非常にそういうむだを多くしておることは事実だと思うのでございます。合理化ということがもつと私たちの生活に考えられなくちやならないことでありまして、NHKと数多くできました民間放送との合理化ということは、来るべき課題としてその任に当つていらつしやる方が、お考えくださらなければならない問題だと考えます。それから娯楽放送をHNKから全部とるべきではないかという御意見に対しまして、娯楽を全部とるということはちよつと疑問でございます。いなかの方に参りますと、民間放送はあまり届いておりませんで、NHKだけが聞かれておるというところがかなり多いのでございます。それを考えますときに、娯楽放送を全部とつてしまうとなると、NHKだけにたよつておるいなかの方の聴取者に、不便を与えるのじやないかと思うのでございます。しかしながらそれもあるいはこれまで民間放送がなくて、ただNHK放送だけを習慣的にあけておつたために、NHK放送を聞いておるのかもしれないというところも、——これは調査をしてみなければ何とも申し上げかねるのでございますが、現状におきましては、NHKだけにたよつておる聴取者がかなり多いということを頭に入れまして、番組を組まなければならない問題ではないかと思います。ただこのごろの傾向といたしまして、NHK民間放送競争するような意味で、娯楽放送が非常に多くなり過ぎてておる、その行き過ぎを是正していただきたいと考えております。
  59. 成田知巳

    成田委員長 次に日本民間放送連盟事務局長酒井三郎君にお願いいたします。
  60. 酒井三郎

    ○酒井参考人 私は日本民間放送連盟事務局におりますが、連盟としての意見をまとめるひまもございませんでしたので、私の申し上げる意見は個人的なものであるということを、あらかじめ御了承願いたいと思います。  結論から先に申しますと、今回の受信料の値上げを含む予算と、受信料の値上げというものに、頭から反対だというものではないのでありますが、しかし今度の値上げがはたして必要であるかどうか、NHK経営国民全体の立場から合理的に行われているかどうか、そういうことが納得できればわれわれ必ずしも反対しないのでありますけれども、それについてNHKの現在の経営委員会というようなもの、これがほんとうに国民立場からそういう機能を十分に果しているかどうか、これはわれわれ疑問を持つておところであります。先ほど石垣さんが、聴取者スポンサーである、スポンサー立場から放送内容に対して、国民の意思というか、それを発言するのでなければならないと言われましたが、受信料を支払うから、聴取者は会社でいえばいわば株主であるということも言えるのだと思います。そうすればNHK聴取者に対して、経理内容をもつとはつきり公開すべきではないか、そういう点が、私ははたして値上げが妥当であるかどうかという判断をする場合に、十分になされていないと思われます。わずかに十七円の値上げであるから、大したことではないということが言われますけれども、率にすると三四%という大幅な値上げでありますし、月額にすれば一億九千万円以上、年額にして二十三億の増収になるわけでございます。総額は九十二億三千万円という相当な巨額になるわけでありますから、この使い方については国民として無関心ではおられないわけであります。先ほどほかの物価に比較して安いじやないかというようなことが言われましたけれども、すでに論議の中に出ておりますように、ほかの物価と同じような性質と考えられるかどうか、またほかのものは、たとえば新聞代が高いと思えば、三種とつておるところを二種にすることもできる、買わないでいることもできる。そういうものとは性質が違うのであります。そういう点からも受信料を検討する必要があると思います。  そういう経理内容がはつきりして、それが納得されるということと、もう一つは、NHK使命といいますか、役割がまだほんとうにはつきりしない。このことがやはり一つ大きな問題であろうと思います。民間放送は幸いに順調に進みまして、全国的に発展し、能力におきまして対等の姿となつて参りました。この間から新聞紙上にNHK受信料について、いろいろの意見聴取者その他からあげられております。どうも両者の放送番組内容にあまり差異がないじやないか。ところが民間放送ただで聞かせている。従つてNHKを聞いていない者でも受信料をとるのはおかしいじやないかというような議論があるわけでございます。従つてNHKあり方をこのままにしておいて、聴取料をとる現在の聴取料制度は何といつても不合理である、そういう不合理をそのままにしておいて、その値上げを含んだ予算あるいはその値上げというものを承認することは、不合理をさらに拡大することではないか、そういうことになるのかどうか、これをよく検討する必要があるのじやないかと思うわけであります。放送法民間放送が今日のような発展を予想されないで立法されたもので、聴取料制度もまた今日のように民間放送全国的になるという状態を予見せずしてきめられたわけです。そのために放送法の改正問題が皆さんの間でも今問題になつておるわけですが、その核心をなすものは聴取料の問題が一つあると思います。そこでこういう改正の問題を切り離して、聴取料の値上げを行うのが妥当であるかどうか。私はNHK使命というものが全聴取者にほんとうに了解され、そして経理内容が明らかにされて納得される場合には、NHK聴取料をとるということ、また場合によつて聴取料を値上げするということを否定するものではありません。しかしいずれにしても、そういうような値上げの問題をきめる場合には、NHKあり方使命というものを明確にする。それに基いて放送法を改正するということがそこになければ、私は妥当ではないのではないかと思います。大体の結論的なことをそういうところにおきまして、ここにあります放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認をを求めるの件、この三十五ページから以下に郵政大臣が意見書を出しております。私はこの意見書についてごく簡単に意見を述べて、私の考えを述べてみたいと思います。  最初の事業計画でございますが、この二十九年度の事業計画の主眼とするものをここに幾つかあげられております。いずれももつともなことだと思いますが、この事業計画そのものについても、NHKあり方使命というものがどうであるか、民間放送と一緒に長短相補つて行く場合にはどうあるべきかということによつて、この事業計画の重点も違つて来るのではないか。たとえば地域別放送充実であるとか、地方放送局の建設というようなことがありますが、この一つをとつてみますれば、ローカル放送というようなものは民間放送にまかせるがよろしいという結論がもし出るならば、こういう点はまた違つて来るわけであります。  第二の収支予算、この内容について私どもはむしろ聴取者としてもいろいろ聞きたい点もありますが、それは省きまして、三十八ページの増加額のおもなる内容を検討すれば次の通りであるというようなことで、第一に諸物価の値上りまたは業務量の増による増額、この二つがあげてございます。聴取料というものは物価が値上りすれば上げるものであるかどうか、ここに一つの問題があると思うのでございます。同じくここに各種公定料金対戦前倍率という資料が出ておりまして、昭和八年を基準として二十八年十二月現在の倍率調査、日銀の統計局の調べというのがありますが、これで見ますと、電灯料金は百十六倍になつております。ガス料金は二百四十七倍、その他ずつとあげておりまして、新聞料金が二百八十四倍、ラジオ料金は六十七倍だ、こういうように、ほかのものに比較して非常に少いというようなことが上つております。しかしさかのぼつて昭和八年を見ますと、昭和八年に聴取者の数が百七十一万四千二百二十三人であつたというふうに記録にございます。二十八年の十二月になりますと、これが千百四十五万二千二百九十九人、つまり聴取者の受信戸数といいますか、その数を見ますと七倍というようになつておるわけです。金額にしますと莫大な数字でありまして、四百五十倍になります。しかも民間放送が二十八年の十二月には相当出ておりますので、かりにこれが半分とすれば、さらにそれが倍になるというようなことでありまして、こういうような数字の上だけでは、これが非常に弱いのだ、伸びていないのだということは言えないのじやないか。それからまた過去のNHKの例を見ましても、大正十四年には聴取料が二円でありました。十五年にはそれを半額にして一円にしております。それから昭和七年には七十五銭に下げる。十年には五十銭に下げるというようなことで、聴取者がふえればふえるほど下つていいという例があるのであります。それからここに新聞購読料の例もございますが、新聞紙とラジオというようなものも、これも相当の違いがある。ここにあります昭和二十六年四月と昭和二十八年三月、新聞の方では七十五円から二百八十円というふうになつておりますが、この間にNHKの方では聴取者は九百七十一万から千百四十五万になつておる。月額にして片方は四億八千五百万、片方は五億七千五百万というようなことで、月額九千万円増加しておる。そういうような点でありますので、単にこの表だけで判断するということは、われわれとしてはできないのではないか。各国の比較では、最後にありますイギリスが八十四円、日本が五十円で三十四円安いというわけには行かない。イギリスの個人の生活、日本人のわれわれの生活というもの全体を見なければ、簡単に三十四円安いということは言えないのじやないか。  それから次に給与の問題が出ております。給与の増額及び定員というところに、この給与によりまして四億五千五百万円以上ふえる。このべース・アツプについて私どもは決して反対するものではありません。ただ民間放送のべースが非常に高い、NHKはそれに比較して低いのだというようなことが言われているのは、これは必ずしも当つていないと思うのであります。前国会でありましたかべースの問題が出ましたときに、日本放送協会の組合では二万二千円を目標にしておる、そして暫定的には一万八千円ベースを要求するというようなお話があつたことを御承知だと思いますが、そのときに民間放送の方の労組の連合会でも、ほぼ同時期に大都市は二万二千円ベース、地方都市は一万八千円ベースというふうに、ほとんどNHKと同じような要求をいたしているのであります。このことは当時民間放送の方は二万二千円だというようなお話もございましたけれども、そうでないということをはつきりと現わしていることであつて民間放送のベースがNHKより必ずしも高くないのだということを示しておると思います。なおNHKの方は、これは北から南まで地方の全体すべてを含んだベースだと思いますが、民間放送の地方の局というものは、まだ生れたばかりでありますし、非常に大都市の民間放送の局員に比べますと給与のベースは低いわけです。しかもNHKさんの方は福利厚生施設、住宅、医療施設等、その他いろいろな点で問題にならないほど整つていると思うのです。もちろん民間放送としてもできるだけ早い機会に、いろいろの施設充実をして行かなければならないわけですが、そして民間放送ももちろん職員の待遇を能力に応じ、会社の実績に応じてどんどん講ずべきであると思いますけれども、NHKが今申しましたように、民間放送に比較して非常に低いというようなことで言われておるのは、必ずしも私たちの方はそれを妥当といたしません。むしろこの点も協会の今定めておられる職種でありますとか、階級によりまして、また男女別によりまして、どういう人がどういうふうなものをとつているかというようなものを、明らかにしていただきたというふうに考えます。  それから先ほどちよつと問題になりました出演謝金の増額、これが四億円近いわけですが、これはNHK使命とも関連しまして、すでに娯楽放送の問題が出ました。NHK文化の高揚を目的とする高度の教養的放送充実、そこに主眼を置くということは非常にけつこうであります。NHKは娯楽放送を全然廃止すべきであるとは必ずしも私たちは考えませんけれども、同じ場面で争うということは、電波の効率から考えました場合に、できるだけ避けるべきである。むしろある程度娯楽放送というようなものも少くすれば、謝金も高くできる、また値上げというものもまた別の面が出て来るのではないかと思います。民間放送が高いといわれるのは、東京でかりにテープ録音いたしますと、これをあるものは地方へ持つて行くのであります。そうしますとNHKの場合は東京でやつたものが全国中継されるわけでありますけれども、かりにラジオ東京でやつたものを大阪に持つて行く、九州に持つて行く、そういう場合の割増し料金というものを出演者が要求するのであります。それで、これは会社によりましてはほかの方にまわすということで謝礼を払つたものを、まわせないというようなことが起りまして損失をする場合もあるわけですが、しかしそういう割増しを含んでおりますために、高いという事情もあるわけでございます。これは先ほど夏川さんがおいでになられましたが、夏川さん自身が民間放送には一ぺんも出たことがないと言われておる。これは民間放送の実情などもよくおわかりの芸能人の方であれば、また違つた観点も出て来るのではないかと思います。もちろん放送謝金というものは、日本の芸術の向上、その他の面からいつてこれを不当に抑制するとか、そういうことは考えるべきではないと思いますけれども、むしろ著作権使用料とか、そういうものについては、現在はNHK民間放送との間には非常に差別待遇があると言つてもいいのであります。  それは余事なことになりますから抜かしまして、その五のところに地域別放送、これに一億幾らの金がございます。これは先ほどもちよつと申し上げましたが、ローカル放送というものは民間放送にまかせる、民間放送というものは、人といい、資本といい、その土地に密着した要素が強いものでありますから、その地域々々に即応した放送NHKよりもよけいにできるわけでございます。これはすべての聴取者の要求というものを、NHKが全部満たすということはできない。また民間放送がすべてを満たすということもできない。両者が長短相補い、両方で全体の要求を満たして行くというように、非常な協力関係にあるべきだろうと思うわけでありまして、ローカル放送はかりに民間放送にまかせる、それからまたそのような維持施設というようなものもそういう点で考えるということになりますと、また違つた予算の面も出て来る。もちろん全中においてローカル色を盛るということはできるわけでありまして、北海道のことを九州に伝えるというようなことはもちろんできる。そういう意味で地方色というものは、全中においてNHKは大いに取上げたらいいだろう。このこともできないことではないだろう。ただここにありますように、今まで三時間のものを三時間三十分にする、そういうような行き方がいいのか悪いのか、これはやはりNHK使命とか役割とかをきめる場合に、問題になる一つの点ではないかと思います。  それから先ほどちよつと落しましたが、定員はNHKが八千三百四十五名、二十九年度が八千三百十二十名というふうになつております。これは私どもの方から考えて冗員が多いかどうかという点が、まだ納得がいかないといいますか、たとえばNHKの仙台中央放送局、民間放送の仙台にある東北放送というようなものの従業員の数を比較しますと、NHKは二百三十名、民間放送は百一名であります。NHKは、御承知の通り地方局の放送番組は、大部分は中央からの中継番組であります。民間放送の方は大部分が自社の編成の番組であります。それにもかかわらず二百三十名と百一名というような点は、さらに合理化する点ができるのではないか。おそらく加入事務とか、そういうようなものがあるのだろうと思いますので、この内訳などにもよりましようけれども、その定員に冗員があるかないかというような点は、さらに検討さるべきではないか。  結局結論になりますが、先ほど申しました通り、そういうような状態を見ますると、経営を合理化することによつて必ずしも値上げを必要としないのではないか、そういう点があるのかないのか、これをはつきりさせるために、もう少し経営委員会ないしは国民の前、あるいはこの国民の代表である国会の電通委員会に対して、もつとはつきり明示する必要があるのじやないか。またNHK使命をもつと明確にする必要があるのじやないか。そうしてNHK使命がほんとうに了解され、経理内容が明らかにされ、納得し得るならば、われわれはこの値上げに反対ではない、そういうことを一応結論として申し上げます。
  61. 成田知巳

    成田委員長 中塚参考人、酒井参考人に対する質疑に入ります。
  62. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 酒井参考人にお伺いいたします。ただいま拝聴いたしました御意見に対していろいろ申し上げたいこともございますが、それは本日は論議の対象にはならぬので、ただ参考意見として拝聴いたしておくにとどめておきます。問題は毎度申し上げます通り、NHK料金の値上げが適当であるか適当でないかということの決定に対する参考として、御意見を伺つておるのでありますので、そのために概括的に参考のために二、三お伺いいたしておきたいと思うのであります。それは民間放送として、——私民間放送のことはよく存じませんが、従来しばしば電波料の値上げが行われたというのでございますが、この電波料値上げはどういうふうに行われたか、概略をひとつお答え願いたい。
  63. 酒井三郎

    ○酒井参考人 これは各社によつて違いますし、出発した時期にもよりますけれども、出発してから値上げをしていないところもございます。ただ民間放送が始まりましたときに、電波料を幾らにきめるかという点については、非常に問題があつたわけであります。そうしてこれはその当時も言われましたし、今でも言われておることですが、新聞に比較しますと非常に安い。これはもつと初めから高くすべきであつた。たとえばラジオ東京のごときは、四月一日から一時間三十万円になるわけですが、最初から三十万円にすべきであるという議論が、新聞広告料と比較して出て来たわけであります。これは安い。私の方は営業にそれぞれ深くタツチしておりませんので、放送に直接責任のある会社の者からお聞き願えるといいわけですが、そういう点があつたと思います。それから今のお話と関連いたしまして、電波料全体の総額がどのくらいになるかといえば、NHKの九十二億に比較して、非常に少い、半分以下であるということが言えると思います。
  64. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 ラジオ東京は一時間三十万円にするということですが、現在は幾らですか。
  65. 酒井三郎

    ○酒井参考人 現在は二十万であります。
  66. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 それから芸能人の謝金の問題が出ておるのであります。私は謝礼金に対してどうのこうのと言いませんが、芸能人、番組出演者、その他に支払う謝礼金は、放送会社が持つのでありますか。スポンサーが持つのでありますか。あるいは両者が持つ場合があるのでありますか。参考までに伺つておきたい。
  67. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点は大体スポンサーが持つようになつております。しかし当然地方に流れるものとして、スポンサーからは、その中の全部ではなくて、大体東京なら東京における出演料を支払う。そして芸能人の方には、さらに地方に流れるものとして、それを放送局がプラスして払う。そして中央から地方にそのテープを出す場合に、その中に幾らか含めてもらう場合とか、スポンサーが全部つくつてスポンサーが全都払うものとか、これはまちまちであります。
  68. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 お手元に参考資料がないかもしれませんが、ラジオ東京ないし文化放送というものは、一体年間どのくらいの収入があるのですか。
  69. 酒井三郎

    ○酒井参考人 これは今ちよつと資料の持合せがありませんので、後ほど調べましてお答えいたしたいと思いますが、大体昭和二十八年度前半期で、民間放送十八社の全事業収入は二十二億くらいです。
  70. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 それではまことにお手数ですが、一度お調べを願つて、われわれの参考のためにお与えくださいますと、たいへん幸福だと思います。  なおこの際伺つておきたいことは、今従業員のベース・アツプが問題になつておりますが、NHKと相対する民間放送のレベルをとらえて参れば、ラジオ東京、文化放送だと思いますが、このラジオ東京及び文化放送の基準ベース、あるいは基準外給与と申しますか、賞与というものは、一体どのくらいのものであるか、御想像がつきませんか。
  71. 酒井三郎

    ○酒井参考人 連盟は大体各社の経営内容とか、営業政策とかいうものにはタツチして来ない建前でありましたので、手元に十分な資料がございません。ただ昨今総務部長会議を私どものかで開くに至りまして、各社の総務部長から報告をしてもらつているわけです。そういうところで聞きました二十九年の二月末の現在でありますと、ベースが、これは本給、家族手当、能率給、地域手当、その他オーバータイムを除いた全部の数字を含んだものを申しますと、ラジオ東京が一万九千九百円、文化放送が一万八千百円くらい、それから大阪の方が大体一万七千円くらい、名古屋も大体そのくらいだと思います。オーバータイムは部によりまして、職種によりましてほとんどつかないところもあり、それから製作、報道などで相当多いところもあり非常に不公平だという問題があります。それから地方の局になりますと、一万円を前後するところももちろんあります。
  72. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 もう一つ、これはまだお手元には届いておらぬと思いますが、郵政大臣が電波行政についてのいわゆる白書ともいうべきものをきのう発表いたしたのであります。その中に「国民共有の電波は、決して個人の所有物ではないはずであります。従いまして電波法は私人の電波利用を認めはいたしましたが、特定人にこの貴重資源の利用を認めるということは、その者に対する大きな利益、大きな特権の設定でありまして、その場合には共有者たる国民による全国民的見地からする選択の意思が働くべきは当然であります。」こういうことを申されておるのであります。われわれは本問題に対しましては、基本的観念として賛成いたしておるのでありますが、そういうところからこの放送法の根本的改正ということも出て参るのであります。現行放送法によりますと、第一条から第六条までの規定は、放送全部に適用せられる規定であり、第一条には「公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。」また「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて放送による表現の自由を確保すること。」こういうふうに書いてあるのであります。今日民放はいかなる制度、いかなる建前でもつて、この放送法の第一条に準拠しようとする実質的な行動を現わしておられますか。これをひとつ参考のために伺つておきたい。
  73. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点は民間放送連盟ができました年でございますが、昭和二十六年七月二十一日連盟ができましたそのときに、まだどこも開業してなかつたわけでございますが、公共の福祉と公共的使命を発揮するために、連盟で自主的に放送基準というものをつくる必要があるということで、幾つかの委員会を設けましたが、まつ先に放送基準委員会というものを設けまして、数回の会合を持ちまして、十月十二日に連盟基準をつくつたわけでございます。そうしてあとの理事会その他でそういう問題を決定して、番組の編成、運営などについていろいろ意見を闘わして来た。当初においてもそういう放送基準を適用していいのじやないかという問題が一、二度起つたこともございました。そういうことで、各社はそれに基いてさらに細則的なものを設けておりまして、レコードならレコードについてはこうだというような、さらに詳しいものをつくつている社もございます。二十八年の七月に放送基準審議委員会というものをつくりまして、これは毎月一回放送基準を再検討する。それから細則の研究に入り、現在までに放送基準を適用した例にどういうものがあるか、その適否はどうだろうかというような問題をずつとやつて来たわけでございます。それですから毎月そういう理事会、放送基準審議会によつてつて参りました。その後考査部会というものを設けまして、各社の考査部の担当者が集まつて放送基準及び考査基準というようなものをつくる。今月ほぼそういうものができ上ることになつております。それから外国のいろいろの基準とか規定、条件、そういうものはみな送つて参りました。一局でどうしても不適当だと思われるものがある場合には、連盟が、どこどこの局はこういうものを拒否した、ですからほかの局もこれにならつてもらいたいということを各社に通告した例もございます。そういう状態であります。
  74. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 基本的観点から申しますと、NHK電波だろうが、民間放送電波だろうが、国民電波にはかわりがないのであります。NHKについては、公共的な建前から、放送法電波法の範疇に属して、相当の規律が加えられている。民間放送においても、公共的な建前から福祉増進ということに対しては留意せられていると私は思うのであります。これはただ私一個の感じでございますから、さして重要なものではございませんが、——NHKもえてしてそういう批判を加える余地があると思うが、純粋な国家的公共福祉という建前から、顰蹙すべき放送もたまにはあるという点、これは放送法の根本的改正という建前から、民間放送を対象として大いに論議を重ねる必要が十分あると私は思つている。郵政大臣が言われたが、特定の人が電波を持つということは、国家的な特典なんです。しかもそれを商売に用いているという観点において、多少なりとも公共の福祉を害するものがあるとするならば、国民として許すべからざるものと私は思つているのであります。きようはこういう論議はやめますが、最後に念のために伺つておきたい。これは私が聞いたことで、その真偽はわかりませんが、過去において民間放送番組内容に対する要望書を、局長から受取つたことがあるということを聞いたのであります。それはほんとうでありましようか。
  75. 酒井三郎

    ○酒井参考人 それは電波監理局長の名前で、今国会放送番組内容広告主についていろいろ論議されているから、注意せられたいというような事項の文書を各放送会社が受取りました。それに関連して写しを連盟の方にもらつた事実がございます。
  76. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 たとえば保全経済会などがべらぼうな金を出して、放送を依頼するということに対する注意みたいなこともあつたのじやないでしようか。
  77. 酒井三郎

    ○酒井参考人 私は連盟に写しが参りましたときに、すぐ郵政省に尋ねたわけです。これは番組内容についてであるか、あるいは保全経済会のようなものについてであるかと尋ねたのですが、郵政省の方では、これはごく軽い意味で出したので、保全経済会のような問題がある。それについて注意せられたいということである。私の方ではそれに対していろいろの申入れをしまして、これは番組内容に対する圧迫にもなり、それから放送法精神にももとる場合がある。むしろこういう問題は連盟と懇談的に——今の放送基準審議会というようなものがあるわけですから、そういうところで懇談的に話合いをしてもらいたい。これは郵政省の方でも非常に軽い意味で出したので、むしろそういうことは懇談的に話し合おうというようなことがございました。なおこの席上に長谷局長がおいでのようですから、お聞きになつてただいたらと思います。
  78. 原茂

    ○原(茂)委員 直接間接に必要だと思いますことを端的にお伺いいたしますが、先ほどの齋藤委員質問ではつきりいたしましたが、もう一度確認申し上げたいのは、たとえばラジオ東京などは電波料などを約二〇〇%引上げをしようとしている、こういうふうに聞いたのですが、その通りでございますか。
  79. 酒井三郎

    ○酒井参考人 先ほど申し上げましたように、ラジオ東京は現在ゴールデン・アワー一時間二十万円、これを三十万円に値上げしようとしております。それからデイ・タイムその他は逆にこれを下げているということであります。
  80. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、ゴールデン・アワーに対しては約五〇%の値上げになりますが、その他を下げて、大体平均どれくらい上げる予定でいるのでしようか。
  81. 酒井三郎

    ○酒井参考人 それは資料がございませんので、後ほど……。
  82. 原茂

    ○原(茂)委員 今度の料金値上げは相当重要な問題ですから、非常に参考になる御意見を伺つてありがたく思つております。この料金値上げは大体三七%、先ほど御指摘の通りですが、民間放送においてもここである程度値上げをしなければいけない状況になつているようです。そこでどうして値上げを必要とするような状況になつているのか。いずれ協会における値上げは後の資料によることとしても、値上げを必要としている民放の特定の会社——あるいは全体的にそうかどうか知りませんが、今の一つの例からいつても、値上げをしなければならないという状況になつておりますが、一体その値上げを必要とする骨子がどんなところにあるのかを、簡単にお話願います。
  83. 酒井三郎

    ○酒井参考人 これは先ほどちよつと申し上げましたけれども、電波料の料金の立て方が、最初において非常に低くきめられていた。そして御承知のように各社ともほとんど放送局の設備というようなものは——ラジオ東京が最大でございますけれども、ほとんど間借りであります。そして大阪において最も大きい放送局で、全体で二百五十坪ぐらいしかないというような状態であります。これは経営者が初め考える場合に、非常に困難であるということはもちろんありましたでしよう。そのためにできるだけ節約したということもございますが、普通の放送局を経営して行く場合に、いろいろな点で非常に設備が足りないわけであります。そういうような点と、聴取者がだんだんふえて来て、広告の力といいますか、宣伝効果というようなものが、当初考えたよりはるかにある。新聞の一ページとあるいはゴールデン・アワーの一時間くらいの効果があるのではないかということがいわれておりまして、ゴールデン・アワー一時間のタイムというものは、十キロ局で新聞一段ぐらいの値段にしか当つていない。こういう点は正常な形といいますか、初め遠慮していたのを正常な形に直そうというような意向もむしろあるのです。  それからもう一つは、製作費というものがございますが、この製作費と電波料というものの割合が、アメリカなんかではほぼ同額のような状態ですが、日本では著しく電波料が安いわけです。むしろ電波料を合理化して、製作全体の節約をして行こうというような考え方があると思います。これは全然値上げをしない社も多いわけですから、それぞれ各社の編成方針や何かにもよることと思います。それからNHKの方と比較するのも実はおかしいわけですが、NHKの今の聴取料というようなものをかりに電波料に換算しますと、九十二億ですから、一箇月八億くらいの電波料になる。そうしますと、一日の電波料金が三千万円くらいにNHKの方ではなるのじやないか。そういうことから考えますると、今の民間放送五十局の電波料の総額は、NHKの今の聴取料に比較して、半分よりはるかに低いということが言えるのではないかと思います。
  84. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 討論するつもりじやないのですが、NHK全体の聴取料と今の民放電波料との比較をするとなると、違つた点がたくさん問題になつて来ると思うのです。先ほどもちよつと飯田さんが言いましたように、何といつてNHKというものは、最初に長い間日本ラジオの基礎をつくつて来た。その基盤の上にぽつこりと民放が乗つかつて、今日相当ぜいたくなことを言えるような状態になつている。今日のように普及させるその苦労、今までのつぎ込んで来た努力というものを考えると、ただ一概に今のレベルだけでこれを批判することは相当疑念があると思いますが、これは別の問題でございます。  そこでお伺いしたいのは、電波が広く国民のものであるという観点から、民間放送におきましても、むしろ協会に対して対等な立場を強く主張される傾向が最近ある。進んでは公共放送であると規定せよという民放からの強い声もあると聞いております。そこで協会料金値上げについてこういうような公聴会を開くなり、広く国民の声を大きく取入れようとする努力と同じように、民間放送においても、やはり電波料を上げようとするならば、公共放送という性格を強く打出している建前からいつて、当然みずから進んで一般大衆のこれに対する輿論を聞く、あるいは公聴会なりを聞いて、その国民的な声の上で、むしろ先ほども酒井さんがおつしやつたように、率先その会計の内容協会よりももつとこまかに国民に知らせて、しかる後にこの国民の声を聞いた上で、この電波料の値上げを考えるというような、民主的な、公正な態度を先にとる御意思があるかどうか。そうすることこそが至当ではないかと思うのですが、そういう意思が民放におありになるかどうか。
  85. 酒井三郎

    ○酒井参考人 最初に民間放送公共放送であるということを規定せよということは、法的にであるかどうか知りませんが、そういうことをまだこちらから監督官庁に言つたようなことはございません。ただわれわれは放送法の第一条及びそれ以下の条文によりまして、民間放送ももちろん公共的性格を持つておる。公共的な性格を持つているばかりでなく、公共的な番組相当多いわけです。これは労働とか社会とか教養とか宗教の番組を、全体の放送時間から見ますると、四〇%くらいはそういうものをとつております。そういう点では演芸、娯楽というようなものは二二%くらいであります。これは昨年の四月の一箇月の平均であります。そういう点では私は民間放送NHKも、経営の形態は違いますけれども、公共的性格という点では何ら違いがないだろう。しかし先ほど申したように著作権使用料などでは、NHKは東京のAKならAKの著作権使用料で全国放送できるわけです。ところが同じものを全国民間放送が中継するというような場合には、各局々々の著作権使用料として全部プラスされるのです。そうしますと、同じ一局のものを民間放送全国に中継する、それからNHK全国に中継するという場合に、民間放送が十二倍ぐらいのよけいなものを払わなければならぬというような現状です。そういうところで先ほどの芸能料金とか著作権使用料というものを、われわれは高く払いたくないわけです。同額とまで行かなくても、何とかしてもう少上割増しを安くすべきだということで、先ほどのNHK民間放送放送謝金の例がございましたが、そういう点ではいろいろ実情はわかつてただけると、こつちが何も好んでよけい出しているのではない。企業が別々であるために全部がプラスされるという例があつて、これを極力縮めていただいてNHKとほとんど同じようにしたらというのがわれわれの念願です、それから電波料の値上げについては、もちろんスポンサーその他とはとつくり懇談してきめて行くべきだろうと思つております。
  86. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 それはその程度でけつこうです。それから次にお伺いしたいのは、私は協会がやつている放送と、民放のやつている放送とを内容的に比較してみますと、技術の面、その他あらゆる経営上の面を含めて民間放送ではとてもできないということ、あるいは今できていないということ、もう一つ民放にないいいところが協会の側にあるといつたような三点についてお伺いしたい。
  87. 酒井三郎

    ○酒井参考人 先ほど電波料のお話がありましたが、たとえば民間放送ではサステイニングの時間がありまして、この番組もできるだけ向上させよう、その費用はどこからも出て来ないので、どうしても電波料から出して行かなければならない。そういう点がわれわれの方では苦心するところであります。ものによりまして、少数特定のものにどうしても必要だというような放送内容番組内容のものがある。そういうものは必要であつてやらなければならない。これはサステイニングの自主番組でそれぞれやつております。また非常に理解のあるスポンサーは、漫然と非常に多くの人に聞かれるよりは、少数でも固定した聴取者を得ればいいというスポンサーもあるわけですが、しかしおおむね売るという商品の性質によつては、多くの人に聞かれなければならない。それから長時間これを買うことはできない。たとえばNHK全国中継するようなものを買うことなんか、とても今のスポンサーにはそうたくさんないわけです。これはスポンサーが出しそうもない。たとえばイギリスならイギリスでシエクスピヤの劇を一晩やるということがあります。こういうものは芸術的な点から言えば、民間放送ではスポンサーがほとんどつかない。しかしそういうことをやることも意議はあると思います。そういうような面とか、あるいは教育の面で、通信教育のようなことが言われておりますけれども、これは農村やその他の勤労者の者が、学校へ行かなくても相当の学力をつける、また資格を与えられるというようなこと、そういうようなことも、第二放送か何かでNHKがやる余地があるのじやないか。これは民間放送スポンサーがつけばいろいろやりたいこともあるわけですが、そういうような一、二の例を見ましても、なかなかできない点があるわけです。そういう点、私の方はちつともNHKと対立するつもりはなくて、両方の編成当局者がざつくばらんに話し合つて、お互いにおれの方でできないことはあなたの方でやつてくれ、あるいは逆な場合もあるでしよう。そういうふうに行つて両方が相協力して日本文化充実向上をはかる、こういうふうに私どもは行きたいと思つておるわけです。
  88. 原茂

    ○原(茂)委員 次にお伺いしたいのは、雑音防止とか、あるいは巡回相談といいますか、今協会が巡回相談をやつておりますが、これに対する考え方、雑音防止なんかにどんな手を一体民放としては打たれておるか、この二点をお聞きしたい。
  89. 酒井三郎

    ○酒井参考人 雑音防止の問題は、私の方で技術部会というのがありまして、技術部会の方でそういう問題を取上げているわけですが、こういう問題はNHKさんの方で相当研究が進んでおられるので、NHKさんの方と一緒に合同の会議をやりましたり、また技術の交流というようなこともあつたりして、そういう点は割合に円満にやつていると思うのです。それから東京都なら東京都で雑音防止の運動をやるというような場合に、NHKさんもお入りになり、われわれの方も入る。それからほかのいろいろの団体とも協力するというようなことでやつております。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで本論の一部に入るわけですが、今回のこの値上げは、協会立場から言うと、現状のままでは反対だといつたような先ほどの御意向だつたと思うのですが、条件をつけて、そういう条件が満たされるなり、放送法の改正が一部できるなり、いろいろな条件を出されたわけですが、しかしそういうことは急速には不可能なんです。四月一日から実施する予算について、今から放送法内容をかえるということは、実際問題としてわれわれとしても審議ができませんので、そこでもし協会の要求する料金値上げというものが実際に認められないということになりますと、実は協会の運営というものがある面ではストップして、その内容向上が不可能になるわけですが、もつと極端に、先ほどの参考人から話があつたように、現状のような内容ではとにかく協会の値上げはまかりならんし、協会なんかつぶしてしまえ、やめてしまえといつたような考え方になることは、民放としては不賛成だろうと思います。というのは、今酒井さんから話されたように、やはり民放ではできない面もあるし、現状ではやはり非常にいい特質を持つているので、協会の存続ということに対しては民放が根本的には賛成するし、今後も協会にあつてほしい、運営て行つてもらいたい、こういうお考えだと思うのですが、そう解釈してよろしゆうございますかどうか。
  91. 酒井三郎

    ○酒井参考人 NHKの形をどういうふうにするか、これは極端にいえば国営にすることだと思います。一つはまた全部民間放送にするということだろうと思いますが、これは先ほども申しましたように私個人の意見なんですが、NHKの今までの歴史とか伝統、それから今まで果して来た役割、これは何人も否定しないし、大いに認めなければならぬ、それで私どもは今のその中間の形で、NHKの特色をもつとはつきりする。それをはつきりすることは、要するにまた民間放送の方をもつとはつきりする、充実する点がきまつて来るのじやないか。両者の力点をはつきりすることによつて国民全体の要望にこたえる、そういうことができるのじやないかと思うので、そういう方向へわれわれは先生方にも日本電波界のあり方というものを第三者の公平な立場日本全体の立場で見ていただきたいと思います。同時にNHKと私の方も、そういう点でざつくばらんに話し合うという方向をむしろとりたいということを希望しております。そういうことが隔意なく話されて、そういう方向に進むということであれば、私どもは最初から申しましたように、何でもこれを値上げするなとか、あるいはNHKはこれはいらないとか、そういうことは毛頭考えておりません。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 今お話のようなことは、放送法の改正を通じて、われわれが真剣に取組んで行こうという段階ですから、今後民放の御期待にもある程度沿い得るような研究をして行く予定であります。従つて民間放送協会とは、先ほど千葉先生がちよつと話されたように、これは強い意味ではなかつたのですが、利害相反するものだといつたような発言も多少ありましたが、今の酒井さんの方からも、利害相反するところのものが相提携し、相互に刺激されてよくなつて行こう、こうお考えになつておるように解釈しておいてよろしい、かように考えます。  そこで次にお伺いしたいのは、これは先ほどの私の質問に関連するわけですが、民間放送を聞こうとしない者からも、実は広告料を通じ、電波料を通じて、民放もやはりある種の聴取料をとつておるのと同じじやないかと思つておりますが、この点はおそらく同感じやないか、確認いたしたいと思いますが。
  93. 酒井三郎

    ○酒井参考人 先ほど千葉さんに原先生から御質問があつたと思いますが、これは率直に言いましてそういう面も多少ありましよう。しかし私はそれよりもスポンサー広告することによつて、大量生産になるというようなことで、むしろコストが下る、安くいいものを大量に出す。それからラジオ東京の例にもありますが、品質でも虚偽のことを言うことはできないわけで、たとえば今までの例でも、ある製菓会社のキヤラメルを宣伝した。しかしこれを買つてみたらあまりうまくなかつたというので、民間放送の始まつた当初にそういうようなことがあつて、むしろ品質が向上されたというような点もあつて広告することによつて品物が高くなる、あるいは一般大衆にそれが転嫁される、こういうことばかりではなくて、品質がよくなる、また大量生産によつて非常に安くなるということも相当あるのではないか、また現実にそういう面が非常にあると思います。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 その点は一部確信されたから私と同意見だと思いますが、大量生産ができることも、大衆の責任において、ある一部に責任を負わせて大量生産の手段にした、こういう解釈もできると思います。どつちにしても聴取料を払つたと同じ形を、私ども聴取者感じるという空気のあることも、ひとつ参考までに申し上げておきたいのです。  次にお伺いしたいのは、先ほども局長から敷衍されたようですが、保全経済会その他勧業経済会といいますか、こういう種類の広告を今まで民放が取上げたことが、国民にあの種の犠牲を払わした一部の原因にはなつていると私は思うのですが、これに対して民間解送としてのあり方について相当研究もされ、今後の対処もきめたと思うのですが、今後どういうふうに対処されるか。この種の内容の依頼に対してどういうふうなお考えを持つて臨んで行かれようとしているか、この点もお伺いしておきたい。
  95. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点は先ほどちよつと申し上げましたように、放送基準審議会というものをつくりまして、ここで検討中であつたわけです。保全経済会の問題も、その審議会の理事会の問題になつておりました。しかしこれをもう少し事前に調査すればよかつたのですが、いろいろ調査する必要があるのじやないかというところへ、十一月だつたと思いますが、そういうことになつたものですから、そのときに急に理事会などを開きまして、保全経済会の休業に伴つて民放はどういうふうにすべきかというような態度をとりまして、決定やいろいろしたわけです。そうしてただちに類似の機関の殖産その他の金融金庫というようなものは、大体各社が理事会を開くまでの間に契約を取消すところは取消した。そうしてどうしても取消されないところは、月に利子が何分というようなことを除きまして、ただ何々金庫の提供でありますと言うだけにして、やむを得ない場合にはそういうふうにして大体取消したということが、われわれがその協議をするときに集まつた各社の報告でございました。それは審議半ばにしてそういうことになつたので、それに対してはわれわれは社会責任、道義的責任を大いに感じまして、そういうことがありますとほかのスポンサーにも非常に影響する、また経営自体にも影響するわけですから、そういうことでさらに放送基準審議会の下部機構というよなものでその前からやつておりましたが、考査部会——放送基準小委員会ともいうもので、各社の担当者を集めましてずつと検討して参りました。そうして放送基準、考査基準とか、さらに細則にわたるものをつくつておりました。ほぼここで完成しまして、これを理事会、それから全国総会が今月ありますが、そういうもので決定しまして、これを各社が遵守するということをきめるわけでございます。その間に十二月でございましたか、小委員会の結果、その他いろいろございまして、全国経営者が集まりまして総会がありましたときに申合せをしたわけであります。これは公共事業の公共的使命を達成することの必要を痛感し、今後放送基準の一層の遵守を誓うというような申合せをしたことがございます。ただその保全経済会を拒否しようとする的確な権威ある資料がなかつた。国家的にも認められているような形でもありましたし、それから国民の代表である議員の方々で顧問をされていたというようなこともあつて、いわば政府が認めていたようなことを何で断るかという場合に、断る権威ある資料がなかつたというような点が当時あつたわけです。そうして論議されて何とかしようと思つているところに、そういう事態が起つた。こういう点では、われわれの方は事前にもう少し調査すべきであつたということで、今非常に責任を痛感しておるわけです。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 中塚さんに対する質問はあとに譲ります。酒井さんの発言に関連して中塚さんに二点だけお伺いしたいのですが、先ほど酒井さんが協会の定員に対して多過ぎるという発言があつたのですが、一体組合の委員長としての中塚さんは、多過ぎるという御意見に対してどういうふうな御意見を持つておるか、これを聞かしていただきたい。これが第一点。  第二は、先ほど酒井さんが参考に言われた他の民間放送給与ベースですが、大体ラジオ東京では一万九千九百円、あるいはその次が一万八千百十円、大阪あたりでは一万七千円といつたような発表がありました。何が時間外か何かを除いた全給与だそうですが、それと同じようなものを含めた場合、今協会の要求しているべースとどんな関係にあるか、計数的な説明を伺いたい。
  97. 中塚昌胤

    ○中塚参考人 第一点の御質問の定員の問題でございますが、先ほど酒井参考人の方から仙台の問題が例に出されまして、仙台のJOHK、私の方の中央放送局の人間が二百三十名で、向うの民間放送が百一名であるというお話があつたわけでありますが、その際に酒井さんの方からも、内容をよく検討しないと多過ぎるのかどうかという点は疑問であるがというお言葉があつたわけですが、御承知のように仙台の私の方の放送局は、第一放送、第二放送という二つの電波を出しております。それから仙台の中央放送局は、東北の六県の各地方放送局を統括しておるといいますか、それの親局になつておる。それから、これはお話がありましたが、集金人がおる。それからニユース関係放送記者、そういうものは民間放送の方ではなくて、新聞社の方からニユースをもらつておる。そういう点からこれだけの人間がおるということは当然じやないかというふうに考えます。全体の定員といたしましては、現在地方にあります中継放送局は、今までは定員四名でやつておつたところが、最近ではそれを三人というふうに人員の不足を来しておる。これは全般的にいつて定員が足りないために、その地方へそういうしわ寄せが来ておるということ、それからテレビジョン関係等におきましては、あるいは放送記者等におきまして、一箇月の基準外労働時間が二百時間をオーバーしておるものもできて来ておる。基準労働時間が週四十三時間でございますから大体百七十時間、これに対して基準外労働時間が二百時間をオーバーする、そういう状態が出て来ておる場所もあるということで、われわれ再三にわたつて協会経営当局に対して、定員の充足というものを常に要求しておるというふうな状況で、定員はだぶついておる、人間がだぶついておるということは、われわれとしては考えられないというふうに考えております。  それからベースの問題でございますが、これは民間放送の方は基準外賃金あるいは賞与、ボーナス等が入つておらないだろう思います。われわれの方の現在の基準賃金が一万五千八百円、これに対して基準外賃金が二五%、そのほかに賞与と申しますか、臨時給与というものが二〇%、合計四五%あるわけでございます。従つてそういうものを全部入れれば一万五千八百円にプラスそれの四五%ということになるわけでございます。
  98. 甲斐政治

    ○甲斐委員 酒井参考人にお尋ねします。NHK聴取料民間放送電波料が同じ性質のものではないかという原委員質問に対してのお答えが、少し明確を欠くので押してお尋ねをするのですが、これはその性格において明瞭に違うのじやないかと思うのです。NHK聴取料は、法律に基くところの、聴取者から言えば納めなければならないという義務づけをせられておる。NHKとしてはこれを徴収する権限を与えられておる。しかるに民間放送電波料は、そうした法律上の権限あるいは義務に基くのではなくして、まつたくスポンサー放送局との自由契約に基く、こういうはつきりした性格上の相違があるように思われるのです。このことは、実は今後民間放送を根本的に改正しなければならないという時期に達しておるときに、どう規定した方が民間放送の利益であるか、不利益であるかという問題ではなくして、わが国電波放送界のあり方についての根本的な問題ですから、あらためてお考えの上、御返答を願いたいと思います。
  99. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点は、今お話があつたように、まつたく性質が違うものであります。聴取料は、先ほども私ちよつと触れましたが、ほかの物価と比較して高い安いというものではなしに、片方は高ければ買わないでよいが、今のものはそういうものではない。先ほども委員長からお話がありましたが、民間放送NHK、いずれの放送を聞いているかという実績というようなものは確認することなくして、聴取料をとることが可能であるという、一方的なきめ方でありますから、電波料とは根本的に性質の違うものであると思います。
  100. 片島港

    片島委員 酒井参考人に一、二お伺いいたします。民間放送公共性を持つておるというお話でありますが、電波という関係からいつた場合に、公共性を持つておることは当然だと思います。しかしながら日本国民全体の生活に、経済的にも政治的にも社会的にも文化的にも、いろいろな面でやはり大きな関連性を持つておる事業は、すべて公共性はある。民間の一般産業、いろいろな工業にせよ商業にせよ、公共性がないとは言えない。やはり、公共性はあるのでありますが、この民間放送公共性があるというのは、一般の商売と公共性においてどういうような違いがあるのか。この点を私は一つお伺いしたい。  もう一つ番組などのことが先ほどから問題になつたのでありますが、NHK公共性があると言いながら、やはり、民間放送でやつてもいいようなものを非常にたくさんな番組に盛り込んでおる。民間放送もまた、公共的な放送を非常にたくさん盛り込んでおるということになりますと、そこに重複をした部面が相当出て参ると思います。その重複が非常にはなはだしくなりますと、民間放送においてもある程度国家的な特権を与えて行くことも考慮しなければならないであろうし、また公共放送一本やりで行つておるNHK相当なり下つて来ることになれば、今度は逆にある程度スポンサーをとつてもよろしい、私はこういうようなことになるかもしれないと思います。そこにはやはり明確な線があるからこそ、一方には六十七円という聴取料をとり、一方はそういうことに関係しないで、スポンサーだけでやつておると思うのであります。この点においてNHK当局も相当検討しなければならないのでありますが、同時に民間放送としても、先ほどから酒井参考人が言われた力点と申しますか、境界線と申しますか、そういう点を相当程度明らかに検討しなればならぬと思います。この二点について、酒井参考人考えておられる私見でもけつこうでありますから御意見を承りたい。
  101. 酒井三郎

    ○酒井参考人 第一点は、放送事業放送法第一条でもきめられておりますように、「放送を公共の福祉に適合するように」云々ということにあるごとく、ほかの営利会社と違つたはつきりしたものがあつて、それにのつとられて免許の申請を出して、それによつて免許されてやつていることでもあります。またこれは簡単にいえば官立大学、私立大学というふうに考えられてもいいのであつて、普通の営利会社で営利を目的として、もうけるのを目的としてやる事業と違う。マス・コミユニケーシヨンの新聞やなんかもそうでありますけれども、これを営利会社とはだれも見ない。そういうふうにもちろんいずれの事業でも、われわれ国民生活に関係しないものはないわけですが、その中でも特にそういう点では、ほかの普通の事業会社と違う点がはつきりしているだろうと思います。  第二の点は、こまかいことは申す時間もありませんし、また具体的にもそういうことは考えておりませんけれども、ともかく電波というものは国民のものであるということは、先ほどもしばしば論議が出ました。また波も限られておるわけですから、NHK民間放送は何から何まで同じものをやつていけないというわけではなくして、もちろんダブる点もありましようけれども、どうしても経営立場から民間放送でできないものがあるし、今までのNHK受信料による特殊な形態からして、それをやつた方が適当なものはあると思います。そういう線は先ほどもちよつと触れましたけれども、ある程度はつきり出るのじやないか。もちろんその中間でダブるところはできるわけですが、そこのところは、たとえばローカル放送は民間にまかせる——今ほとんど大部分の県にできておりますから、その土地に密接した、生活に密接したいろいろのニユースであるとか、放送であるとかいうものは、民間にまかせてもいいというような結論が出るか出ないか。あるいは娯楽放送の場合も、全然なくするということはないけれども、ほとんど大部分は民間にまかせる。それから長時間にわたる放送とか、あるいは非常に高度な学術的なものであるとか、あるいは国会であるとか学術の大学講座であるとか、そういうものは、第二なら第二でもいいわけですが、そういうものをどんどんやつたらいいじやないか。これは民間でもやりたいのですが、民間の力としてはやり得ないところがあるわけです。そういう大衆がほんとうに要求しているものを、民間放送NHKと両方で満たして行く。そういうことを、日本の限られた波をもつと有効に使うという意味から、もつと考えられていいのじやないか。同じ場面でただ競争するということであれば、NHK民間放送も同じだということになる。片方が一方的な聴取料を強制的に、聞いても聞かなくてもとられるということは非常に不合理である。しかしそういうようなことをやるとすれば、あるいはそのためには聴取料を倍額にしてもいいということも出て来るのじやないか、私は基本的にはそういうふうに考えるわけです。
  102. 片島港

    片島委員 もう一つお伺いいたします。各都道府県ほとんど漏れなく民間放送が設立せられておるわけであります。先ほどから千葉参考人の言われました通りでありますと、一つの申請をやつたところが、認可を受けるとただちに今度は認可制限論者に豹変する、こういうことでありまして、多く設立されればされるほど、それぞれ競争もはげしくなり、経営もなかなか困難になるかと思うのであります。そういたしますと現在、民間放送の連盟といたしましてお調べになつた範囲で、現在何社あるうちで、何社ぐらいが大体経営状態がよろしい、またどのくらいが現在赤字経営をやつておる状態であるか。その赤字経営をやつておる中にも、さらにこれらを検討して行くとすれば、今は赤字であるが、十分これは黒字になる見込みがあるというのはどのくらいであるか。そういう点を御調査なり研究になつたことがあれば、お伺いしておきたいと思います。
  103. 酒井三郎

    ○酒井参考人 民間放送が申請をされまして免許を取けますると、ただちに今度は抑制の方にまわるというようなお話が出ましたけれども、そういう事実はまずないと私どもは考えます。少くとも民間放送というものは、先ほど言つたようにNHKと車の両輪のごとくして行きたいということであれば、放送局の数でも対等の姿まであつていいのじやないか。もちろんこれは経営の問題もありますけれども、これはそれぞれ自由企業として、経営者の方でいろいろ考えられるべき問題は多々あるでありましよう。しかしそれを抑制するというよりは、少くとも両者が両立して、そうしてすべての国民電波を出し得るという姿までは行くべきではないかと私としては考えているわけですが、各社としても受けたらすぐ今度は反対するというようなことはないだろうと思います。  それからこれは日本の経済の変動にもよりましようけれども、昨年の九月までに出ておりましたのが十九社でありました。そのうちの一、二を除いては、大体成績は良好であるそうであります。十月からは大分ふえまして、現在では三十幾つかになつておりますけれども、民間放送が出たてのころは、二つとか三つとか順々に発足して行つたのです。ところが周波数の全国的な割当がきまりまして、各県がこぞつて申請をして、それが一齊に許可されたために——昨年の十月、十一月というころは一齊に各地で開局をした。今までですと、二つとか一つとか出て、一つ免許を与えられて、それがほぼスポンサーがつき始めるころに、次のものが認可されるというようなことで、経営の点ではまだよかつたのですが、新設局が一ぺんに大量に許可されたために、まだそれから今日まで四箇月かそこらですし、まだ一箇月に足らないところもあります。そういうところはまだ非常に四苦八苦しておるところだと思います。しかし私どもの方はいろいろの点から、現在の民間放送の数をさらに幾つか認可されても、十分成り立つて行くと考えます。
  104. 片島港

    片島委員 それから次にお伺いしておきたいのは、スポンサーの選択といいますか、決定なさる場合に、ゴールデン・アワーなんかには非常に競争が多いと思います。非常に競争のはげしい時間などにスポンサーを決定されるという場合には、たとえば申込順にやるとか、あるいは抽籤とか、あるいはその他の、金をよけい出すものをスポンサーにきめるとか、何かいろいろな方法を講じなければ解決がつかぬと思いますが、そういう場合にどういうふうな方法を講じておられるか。
  105. 酒井三郎

    ○酒井参考人 これは各社の状況を一一私は存じませんけれども、民間放送が始まりましてこれは非常に経営が困難だといわれたときにいち早く、ある意味では協力といいますか、宣伝効果もわからないのに、スポンサーなつたというようなところが幾つかあつたわけです。そういうところは会社としても、やはりどうも優先的に認めざるを得ないというような事情もありましよう。しかし今の電波料は大体きまつているわけですから、それ以上高いものをとつてやるということはございません。ただ番組の点で、たとえばいくら音楽なら音楽で軽音楽が受けるからといつて、軽音楽をずつと並べたら意味がないので、そういう点で、番組の点は放送局で一定の方針があります。でありますから、これは非常にいいスポンサーであつても、すでにそういう音楽番組があれば、その上また続けてやるというのは困るというような場合もありましよう。そういうような点でスポンサーを断るというようなことは、いろいろな事情からあると思います。
  106. 松井政吉

    松井(政)委員 酒井参考人には長い時間にわたつて、非常に貴重な御意見を拝聴させていただきましてありがとうございました。そこで時間もおそくなつてはなはだ恐縮に存じますが、二、三質問を申し上げます。私たちが放送の問題を論議する場合に、やはり民間放送公共放送NHK、両方を対象として、電波行政の一環として常に審議をいたすのであります。その場合にただいまNHKの方は、われわれが審議をしなければならない料金値上げに伴う予算案を審議中でございますから、HNK当局には毎日のごとくわれわれは質疑を行つておるわけです。酒井さんは民間関係放送連盟の事務局を担当されておりまして、本日初めておいでになつたのであります。そこで皆さん非常に長時間質問をするので、私も非常に恐縮に存じておりますが、そういう意味でお伺いをいたしたいと思います。  お述べになりました中で、やはり今度の受信料の値上げ等についても、民間放送発達をして参りました現状においては、放送法の根本的改正の方向がきまり、それと並行して考えることが望ましいということについては、私同意見であります。そのために、ことしの予算案の提出されるまでの間に、放送法の改正に関する大綱ぐらいは示せということを、政府に幾たびも要求した一人でありますから、その点については意見が一致するのであります。私はやはりそういう放送法の根本的な改正とにらみ合せて、第一点にお伺いいたしたいのは、要するにアメリカ民間放送一本である、イギリスは公共放送一本である、日本の場合は両方取入れて今日まで発展をして来ておる。こういう場合において日本の経済的、政治的、あらゆる角度からの立地条件においてアメリカ・システムでもない、イギリス・システムでもない。その間において、放送国民に対する貢献をしようとする場合に、基本的に一体どのように考えて行つたらよろしいか。やがて放送法の改正等が出て来た場合には、また参考人として民放関係のお方に多く出席を願わなければなりませんけれども、大体そういう放送そのものに対する基本的な見解、日本立場でどう考えるかということを、最初にお伺いしたいと思います。
  107. 酒井三郎

    ○酒井参考人 今の両建の問題をどういうふうに考えるかということだと思いますが、やはりこのNHKの今までの功績というものは、私どもは大いに認めるところですが、どうしても独占事業というものは思想的にも単一化される、その他いろいろの弊害が出ているわけで、当事者としてはそういう気持はもちろんありませんでしようけれども、国民の自由の意思を発現する、そうして多彩な文化向上させ、充実させるという意味では不適当ではないか。イギリスはBBC一本でございますけれども、イギリスの地理的条件というようなものは、東洋の日本というような地域と非常に異なつております。東洋は東洋といいながら、東洋という観念はあつても、文化的にはそういう点では非常に連関がない。ヨーロツパにおけるイギリスというようなところは、ヨーロツパと切り離せないところでありまして、イギリスはああいうようにヨーロツパ大陸にくつついていて、そうしてヨーロツパ各国の放送を聞けるということも一つあるのじやないか、私はそういう点からして、皆さんのお考え民間放送一本という形がよいかどうか、これも審議の対象になるでしようけれども、少くとも今までの歴史というものは、あるいは伝統というものは尊重しなければならない。それから日本の置かれている地理的条件その他ももちろんありますが、一つ聴取料によりますと、どうしても聴取料の上にあぐらをかくというようなことになつてはならないので、民間放送があることによつてNHK相当刺激を受ける、それからNHKのあることによつて民間放送というものも多大の恩恵を受けているわけです。両者はどういうあり方がよいか、両者を私はやはり認めまして、どういうあり方がよいかということを日本の政治として、文化あり方として考えて行くべきではないか、ちよつと御質問にはずれた点があるかと思います。それから私は実はこういう席に出るのは不適当であつて、むしろ放送会社直接の責任者が出れば、さらにいろいろ具体的に皆様に実質的なお答えができたのじやないかと思いますので、また機会があれば放送会社直接の担当者で、全体のことを考えておる者もお呼びくださることを希望しておきます。
  108. 松井政吉

    松井(政)委員 御意見だけを伺つておけばよろしいのでございますが、御意見だけ述べていただけばわれわれの立場においてはまた考え方がありますから、時間も過ぎておりますから、いろいろやりとりにわたる点を避けて行きたいと思います。御意見だけ拝聴したいと思います。ただいまの問題に対する考え方が出て来ないと、受信料の性格をわれわれ判断するのに苦しむから最初にお伺いしたのでありますが、そこで御意見はわかりましたの下、そうすれば先ほど私は千葉参考人にもお伺いしましたけれども、ただいまはやはり受信料の性格については、NHK放送サービスを行う対価であるという考え方のものと、そうではなくて受信料受信機設置税と思われる性格を持つておる一つのやはり税に該当するものだという議論とがあるのでございます。この場合、酒井さんのお考えでは受信料の性格をどのようにお考えなつたらよろしいか、この点についてお伺いをいたしたい。
  109. 酒井三郎

    ○酒井参考人 今の放送法でも、民間放送受信料をとれないというふうにはなつていないじやないか、これをかえ方によつて民間放送もわけ前を出すというふうにもできないことはないと思います。受信料というものは放送対価で、受信する者が払うということであつて民間放送を受信すればこれに当然負担が来てもよいと思われるのであります。しかし私はこれはむしろ受信機設置税といいますか、むしろ普通のあれから考えると相当違うのであつて、むしろこれは税金にひとしいものだというふうに考えられる。これは私の個人的の意見でございます。
  110. 松井政吉

    松井(政)委員 わかりました。それではその次にお伺いいたしたいのでございますが、民間放送番組編成等について、私詳しく存じておりませんけれども、かりに番組を編成する場合に、ただいまのようなNHKの性格と、受信料の性格と、公共放送であるという立場から編成する場合には、たとえば出演者の場合にも、いかなる者からも注文をつけられないで、番組の編成をすることが絶対条件でなければならない一つの制約を持つていると思う。ところが民間放送の場合におきましては、たとえばニユースのような、あるいはニユース解説と思われるようなものでありましても、「本日のニユースは大正製薬提供」ということで、やはりある一定の会社が広告として提供された中で行われる放送がほとんど全部だと言つても過言でないのであります。その場合に、ニユース等に類似するものは別として、たとえば娯楽放送の場合、浪花節等を提供する、こういう場合に、何の太郎兵衛でなければいかぬというような出演者に対する注文をつけられる場合があるかどうか、そういうことについてお伺いをいたしたいと思います。
  111. 酒井三郎

    ○酒井参考人 それは番組の編成に、スポンサー放送局ないしはそこに代理店が入りまして、いろいろ話し合うことになるわけです。大体番組全体の朝から晩までを通じての一つのバランスというか、それの公共性といいますか、そういうものは局として考えるわけでございます。そこでスポンサーはどうしてもこういう人でなくちやいかぬ、この時間にこういうものをくれと言つても、たとえばNHKでその時間に何を出しているとか、あるいは同じ民間放送でどこで何を出しているかということによりまして、スポンサーの要求もいれられないこともあるわけです。そこで初めはスポンサーの持つて来たものをどうしても聞かなければならぬ、あるいは放送局の方であくまでこれは自分の方に主体性があるのだということでやつつけるというような、多少これも営業の編成といいますか、それとスポンサーの編成とがやや対立の形があつた時代もありますけれども、今日そういうようなことはなくて、ざつくばらんに相互間の判断において決定する。ただスポンサーの方で、今松井先生の言われるがごとき場合があるとすれば、私の方ではできるだけ今の出演料その他からいつて、新人を抜擢して行きたいという点があるわけです。ところがやはりスポンサー立場でいいますと、出演者の方であるいは名前の売れた人、あるいは人気のある人を選びたがるという点は免れがたいと思います。こういうような点で編成の方でいろいろ苦心をしております。
  112. 松井政吉

    松井(政)委員 そこで先ほど来多くの参考人と同僚議員の間で質疑が行われました娯楽放送の問題でありますが、たとえば公共放送は娯楽放送を何も民間と対抗してやるように考えなくてもよいじやないか、そうして民間に娯楽放送をまかしてよくない面も多くあるではないかという御意見もあつたようでありますが、そこでわれわれ考える場合に問題になるのは、たとえばスポンサー側の方で、これはこういう顔ぶれでやつてほしい、それから浪花節はこの人でやつてくれ、この人に歌を歌わしてくれ、こういう場合がやはりあるし、そういう場合にもやはり実際上スポンサー側と編集側あるいは放送側で、そんなわがままを言うなというような折衝は、これは商業上の取引でございますから当然ございますでしようが、そういうところだけに娯楽放送をまかしておけないところに、公共放送に娯楽放送を求めなければならないと考えるわけです。そうしてNHKの娯楽放送の場合には、そういう意味において国民の側からは、ああいう出演者にああいうことを言わしていかぬじやないかという批判を受けて、その輿論にこたえることは当然でありまして、特定の商事会社、特定の営利会社、特定の企業体から注文をつけられた演出者によつて、あるいは演技者によつて娯楽放送はやらぬでもいい、自由な立場において番組編成ができるというところに、公共放送としての娯楽をわれわれは尊重しなければならない問題が存在するのではないかと思う。従いまして私は、どの程度の娯楽を公共放送にやつて、どの程度の娯楽を民間放送にまかすという区別はできないと思う。これは一昨日も大臣に質問いたしたのでありますけれども、要するに民間の放送であろうと公共放送であろうとも、やはり一つの規律と監督は国が行わなければなりません。けれども番組の編成等は自由に、やはり国民にこたえるために切瑳琢磨する。たとえば民間放送ならばただいまの方法によつて番組の編成をする、そして娯楽の問題についても編成をする。公共放送の場合には、NHK出演者との契約で自由に番組を編成することができる、こういう建前で行くわけで、もちろん番組の自由は民間放送公共放送を問わず、自由に確保して行くべきである。次に出て来ると思われる放送法の根本的改正でもそう考えることが正しいと思つておりますが、参考人の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  113. 酒井三郎

    ○酒井参考人 民間放送スポンサーの意向によつて番組をつくる、あるいは出演者をきめるということであつては、聴取者からの声は聞かれないわけでありますが、スポンサー聴取者の意向に、あるいは国民大衆の要望に最も敏感なのであります。私は今松井先生が言われるごとく、放送番組の自由ということが、公共放送といわれるNHKにあつて民間放送にないか、こういう点に私は疑問を持ちます。むしろ公共的放送といわれるNHKの方よりも、民間にあるという面もあるのじやないかというように思われる。そこがまた自由企業のいい一つ精神ではないかと思う。ただこれを法律的にどうする、こうするというよりも、私が先ほどもちよつと申しましたけれども、大体皆様方の基本線のお考え方というものは、日本電波界をどうするか、民放NHKとのあり方をどうするかということでおきめになつていいと思いますが、むしろ私自身の気持としては、NHKとわれわれ両者の間でざつくばらんに話し合つてきめて行きたいという気さえするわけです。そういう点ではNHK民放とも、あくまで番組の自由という線は確保して行きたい、これはもちろんでたらめでなくて、スポンサーのいろいろの希望のある場合でも、あるいはその他の場合でも、ラジオ・コードというものはあります。放送事業というものは、もともと公共的な性格で組まれているものであるのですから、自由であるといつてもそうでたらめのことをするわけがないわけです。その点はあくまで確保して行きたい気持であります。
  114. 松井政吉

    松井(政)委員 最後に、今回の料金値上げについて私の立場を明らかにして、料金の問題の一点だけお伺いしておしまいにいたしますが、料金の値上げについて軽々に無条件に賛成する立場を私はとつておらない、この点をはつきりしてお伺いいたします。たとえば民間の放送においても、あるいは民間の経営に属する新聞社等の報道機関においても公共性が存在する。公共の福祉を目的としなければならないということ、公正でなければならないということは、われわれ幾たびか議論をして参つたところであります。ところがさてそれならば、先ほど来同僚議員が質問いたしておりましたが、民間の放送における電波料金の値上げ、すなわち広告料金の値上げ等は、法律上当然国会のわれわれの審議もいらない、それから社会的、経済的事情を考えておるにしても、そういうことにはこだわらずに新聞料金等を上げることができる。けれども国の立場から見れば、新聞社等には公正なる報道をしてもらわなければならない、公共性を持つてもらわなければならないということで、私企業をやりましても、いろいろな恩典をわれわれは法律においてあるいは規則においてこれをきめております。それから民間放送に対しましても、経営困難であつてはならないということで、地方税の免税等をわれわれはこの委員会において決定して防止策を立てておるわけであります。ところがNHK料金だけが、法律建前から国会承認を経なければならない、予算国会で審議をしなければならない、あるいは承認しなければならない、こういう形になつておるのは公共放送であるからであります。従いましてそういう点から考えると、一般の国民の人たちは、新聞料金などの値上げのときには困るということは言うけれども、何らかの抗議を持つたり、批判したりする機会を得ないので、あまり世間には問題にならぬうちにいつの間にか二百何十円になつておる。ところが放送料金は二十六年以来上げないで今日までやつて来たが、さて十七円程度でも上げようとなれば、われわれも真剣に取組まなければならぬし、国民大衆全体の負担がふえることでありますから、軽々にきめるわけに行かぬ、その使い方の内容等についても十分に検討しなければならないという問題にぶつかつておるわけであります。こういう形における一種の矛盾といいますか、こういうことは現在の法律では解決できないのでありますけれども、たとえば放送法の根本的改正等の場合に、こういう問題をそういうややこしい形でなくて解決される方法がおありになると思われるかどうか、料金だけに限つてよろしゆうございますが、御意見がございましたら、お伺いしておきたいと思います。
  115. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点はなかなかむずかしい問題でございますが、今の新聞の方は自由契約であつて高くなる、やめたいと思えばやめてもいい、しかし片方はいわば強制的なものであつて、聞いても聞かなくてもとられるし、また必要でもあるわけでありますから、ほんとうはすつきりした形を言えば、聞かない者からはとらない、強制力をなくして、そのかわり聞きたいと思う者には値上げするということも一つの方法だろうと思います。そうでなければ今の聴取料はむしろ税金のような形にする、そして予算に応じた額を交付して行く。そして自然増収や何かの点はまたそこで考えて行くわけですが、もしそれができなければ、NHK放送を聞かない者からは聴取料をとらない、これは一つの方法だろうと私は個人的に考えております。
  116. 松井政吉

    松井(政)委員 そういたしますと、これは仮定の御議論でございましようから、私も仮定の意見だということでひとつ意見を吐いてもらえばけつこうでございますが、かりにNHK放送を聞かない者からはとらないことにして、新聞のように自由契約にする、こういうことになりますならば、公共放送としてNHKはもり立てて行かなければならないし、日本の国としては必要である。アメリカ・システム一辺倒にも行かない、イギリス・システムで発達して来たが、途中で民間放送ができて、アメリカとイギリスの混合の形で今日本放送をやつておりますから、この現実を無視して片方をどうするということもとうてい不可能でございますから、二本両建したままどうするかということをわれわれは考えなければならない、これが現実だと思う。そういう場合に聞かない者からは自由契約にして聴取料をとらない、こういうことになつた場合に、それならばNHKとしての経営財源をどういうような形に、どういう方法でお求めになつて公共放送を維持したらよろしいか。これは仮定の議論でございますから、仮定の意見でけつこうでございますが、その場合にはどうしたらいいかということをお考えになつておるか。
  117. 酒井三郎

    ○酒井参考人 私ちよつと言葉が足りなかつたのですが、むしろすつきりした形で言えば、聞かない者からとらなければよろしい。しかし私は前から言つておるように、NHKの今までの伝統や何かからいえば、今強制的なあれであるから、普通の受信料あるいは聴取料としての性質と違うのじやないか。聞いても聞かなくてもとられるということであれば、それから公共的使命に即応するかどうかということであれば、値上げの場合に新聞みたいに自由に行かない。あるいは国民の代表である国会承認を受けなければならない。これはやはり当然だろうと思います。そういう方法が一つだと私は思います。それでなければむしろとれるところからとる、場合によつて国家の補助金を出してもいいと思いますが、私の言う本旨は、そういう行き方よりは現状のあれを認める、あるいはむしろ税金というような形にしたらどうか、こういうような気持でございます。
  118. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 時間もおそいようですから、私も簡潔にお聞きいたしますから、簡潔にお答え願いたいと思います。特に先ほど参考人の方で、今回の値上げの問題を考慮するのには、放送法の改正を同時に考慮すべきではなかつたか、こういうようなお話があつたのですが、その点先ほどどなたかの委員からありましたように間に合いません。しかし一応関連することもありますから、ちよつとお聞きいたします。きのう郵政大臣は電波行政に関する重要な白書を初めて出したわけであります。大体お読みになつておると思いますが、非常に重要な白書を出しております。その中に放送関係のことに触れておるのですが、その放送関係の中で、特に民間放送の方に関係のある面で出て参つておりますのは、民間放送の場合に、放送時間のすべてを商業番組として売つてよろしいものかどうか、こういうものが一つ提示になつております。一応箇条書的に申しますが、なおネツト・ワークを構成する場合に、何らかの法的な制限を行う必要があるかどうか、こういう点を言うておりますので、ごく簡潔でけつこうですからお答え願いたい。
  119. 酒井三郎

    ○酒井参考人 第一のすべての時間売つていいかどうか。これは売り方に問題があつて、現在のところはサステイニングという時間で、売れなくてもやらなければならぬという各社独自の番組を立てているところもあります。またそういうものが売れる場合もあるわけでありますが、今の現状からいえば大体すべてが売れるということはあり得ないわけです。一番多くても三分の二くらい、地方に行けば半分も売れないという点であります。公共的な番組であるために、そういうものはスポンサーがついて、売れたら売れてもいいじやないかというふうに私自身は考えております。必ずしも公共性番組という性質のものをサスでとつておかなければならぬということはなくて、そういうものでも売れた場合にはやつていいのではないか、従つてある一つの全体の番組のバランスがあつて、そのバランスによつてどうしても一般の識者なり、あるいは放送局が必要だというものは、その番組をこわして浪花節が売れるから浪花節にするということでなくて、気象通報というものも売れたら売つてよろしい、あるいは赤十字に関係するような公共的なものも、売れたら売つていいというふうに考えております。お答えになりますかどうですか。  それから今のネツト・ワークについての制限というのは、私その内容をどういうことを言われておるのかよくわからないので、ちよつとお答えしかねるのであります。
  120. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 ちよつと前の方が回答がはつきりしないのですが、売れたらいいのではなくて、売つてよろしいという原則に立つておるかどうかということなんです。というのは、先ほど松井委員から質問がありましたが、前回の国会で、いわゆる一般放送事業に対しましても事業税の免税ということを行つたわけです。そのときに番組の中では、スポンサーのつかない自分の費用において放送会社が行つておるものもある。従つて新聞同様に事業税の免税を行うべきものであるという見解からあれはやつたのですが、もし原則として、売れれば全部売つてもよろしいという建前に立てば、少し事情がかわつて来ると思う。その点を次の放送法の改正で目下考えており、しかも私が改正の委員長ということになつておるものですから、お聞きいたしたわけであります。  ネツト・ワークの問題は、最近大分そういう傾向があるようですが、これは経費の節減及び全国にその番組を流すという建前からして、ネツト・ワークをつくりつつあるようでありますから、これはもちろん娯楽番組のような問題であれば問題はありませんけれども、政治的な問題あるいは社会思想的な問題になりますと、大きな影響もあるのみならず、娯楽番組といたしましてもスポンサーに対して独占的な傾向になるのでありますから、その点において目下問題になつておるのですが、そういう点についての御見解を承りたい。
  121. 酒井三郎

    ○酒井参考人 最初の問題は最近の理事会において、大体一番最初のときはスポンサー影響もあるから、そういう場合にどうしてもほぼ三分の一くらいはあくまで残しておくべきではないか。すべてスポンサーに売つてしまつて、臨時的にいろいろかえるようなことも多く起るわけであります。それからどうしてもスポンサーがつかなくてもやらなければならぬというものもあるわけです。そういうわけでやはりある程度は残すべきではないかという意見はあつたわけですが、これは私事務局として責任をもなて今すぐ答えられないので、いずれ理事会でさらに各地の責任者から答えていただくようにします。少くとも放送のときに全然自由にならない時間を持つていないということはあり得ないで、ある程度売らないで持つていなければならない。しかしこの場合も公共放送でも売つていいのじやないかという考え方はあるのです。  それからネツト・ワークの問題は、民間放送のものは非常に入り乱れておりまして、各社相互のいろいろのむずかしい関係もありますし、スポンサー自体も、たとえばデパートならデパートで広告放送する場合に、各地に支店がある。そういうところに自分としては希望するわけです。支店のないところにやつて意味がないという考え方があつて、ある一定のネツト・ワークをつくつてそれに全部がするというふうには、民間放送ではなかなか行かないわけで、いろいろ地方局の要求、あるいは東京なりキー・ステーションの要求、あるいはスポンサーの要求というものが入り乱れて、単一なネツト・ワークはなかなかできないのじやないか。もう一つは専用線というものが完備しておりませんから、放送用のそういうものはまだ当分先のことであつて、単一のNHKと同じようなネツト・ワークができるということであるならば、またNHKと同じ形のものができるということであまり好ましくない、これは一応民間放送の各社の間では強い意見だと思います。ネツト・ワークの問題はまだ非常にむずかしくて、これから連盟なんかで今年度の課題として取上げる問題ですが、今言つたスポンサーの要求、地方局の要求、いろいろ錯綜しておりまして、なかなか一本の単一化したネツト・ワークというものはできないであろう。そのときどきで違つたネツトが組まれることが多いのじやないか、こういうふうに考えられるわけです。
  122. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 ネツト・ワークの問題は、完全なものは将来の問題でありましようから、ただちには問題にもなりますまいが、ここで言うネツト・ワークというものは、大体東京のラジオ会社と地方の会社とが契約を結んで同一系統に立つ、こういう意味ですが、これがもし完全に行われると、大体放送が二大系列にわかれることになるだろうと思うのです。そういう問題が出て来るので、その場合に、言論機関といいますか、そういうような使命を帯びているこういうような会社がそうした契約を結んで、完全なネツト・ワークをやつて行くよとがいいか悪いかという問題になるだろう、こういう見解から大臣が問題点として出したと思うのです。次には、先ほど千葉参考人からいわゆる民間放送の認可の問題について、当局は周波数の問題だけに限つて許可すればいいので、自由企業であるからしてこれを他の理由によつて制限すべきではない。そういうことをすると結局は政府の圧力がかかつて自由の精神が失われる、こういう見解のもとに意見が述べられたようでありますが、私個人はそれとは違つた見解を持つております、大臣もこの間の意見ではそれとは違つた見解のようですが、私はやはりこれらの許可問題については、もちろん既設会社を擁護する結果になつても、今日の日本国民経済から考えて、ただむやみに周波数があるからという理由で、いわゆる自由企業としてこれの成立を認めということは、再建日本国民経済に悪い影響を与えはしないか。次には、せつかくでき上つた放送会社が困難な状況になる場合もあるだろうと思うのですが、大きく国民経済の面からそういう点が起きはしないか。従つて日本の場合は、自由経済とは言つてつても、こういうような資源の少い国では、ある程度計画的経済あるいは統制的経済というものが必要だ、その面からも商業放送の認可の問題についても、波長の割当があるからこれを許すというのではなくて、国家経済の全般からにらみ合せてこれを行つて行かなければならぬ、こういうふうに考えるのですが、民間放送の責任者としてどういうふうにお考えになりますか。
  123. 酒井三郎

    ○酒井参考人 私は事務局といたしまして、理事会でそういう大綱方針がきめられて、それを遂行するだけのものであつて、どうも責任あるお答えができないのです。それですから最初に私か申し上げたように、私の個人的な意見になると言わざるを得ないわけですか、ともかく私自身の考え方からすれば、周波数の割当とか放送局開設の根本基準というものがあるわけです。あれに合致すれば免許がおりるということであれば、それでいいじやないか。もつともこれは国民経済全般のことを考えなければならぬわけです。ならないけれども、とにかく民間放送が東京に一つ成り立つか成り立たないかというようなことが言われまして、そしてラジオ東京というものが統合してできたわけです。大阪でも二社成り立つか成り立たぬかということが問題であつたけれども、二社できて案外順調に行つているということで、私は日本経済の進行状態、これからの発展というものを、もちろん放送会社を経営する場合には十分認識し、検討しなければならぬと思うのでありますが、どうもそれがどういうことになるかということをどこが判定する。かそれは私は郵政省の今の電波監理局だけではできないのじやないかと思うわけであります。そうすればむしろ開設の根本基準に合致すればいい、それから審議会や何かで総合的なそういう判断をされることも非常にけつこうだと思います。
  124. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 先ほど受信料の問題で松井委員からも質疑があつたようですが、私は受信料の法の上からの解釈は、松井委員と解釈を異にしておりまして、いわゆる税金と同じような強制力を持つておるけれども、税金的性格でなくして、やはり千葉参考人の言つたようにサービス料的なものである、こう私は考えるのです。というのは、これは法律をお読みになつてわかつておると思いますが、第三十二条に「協会放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、」といつて、特定の条件をつけているのです。従つて先ほど来お話があつたように、聞いても聞かなくても金をとられるというのは、放送協会放送を受信し得る設備を持つ人はそういうことになるのです。しかし受信し得る設備を持つていない者は料金はとられません。だから聞いているとか聞いていないとか、現実の問題ではそうですが、法律建前から言うと、NHK放送を聞かない者は受信料をとられないわけです。法律はそういうふうにはつきりと明記してあるのですから。ただ実際問題としてNHK標準放送を聞く機械を持つておる場合、聞いておるか聞いていたいかはだれも証明のしようがないから、この法律に従つてとられる、こういうことであつて、もちろん高くなつても、ラジオを聞く必要はないのだという人はおやめになれば料金はとられない、こういうことになるのですから、やはり受信料の性格はNHKサービス料を基準としたものであり、それの対象であるというふうに私は考えるのです。あなたの方では税金的性格というようなお話がありましたが、私のこの解釈に誤りがあるかどうか、もう一度御意見を伺いたい。
  125. 酒井三郎

    ○酒井参考人 その点は、私の考えは先ほど申し上げたのですが、連盟としては今放送法の改正の研究会をやつておりますから、連盟としての一つの態度といいますか、案といいますか、そういうものが近くできるだろうと思います。私として今それ以上に責任あるお答えは残念ながらできません。
  126. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 なお先ほど表現の自由といいますか、編集の自由の問題で、あなたの方で民放には編集の自由がないのかというような御疑問のお話があつたようですが、そういうことはないのですからどうぞ……。放送法の第三条に「法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」とはつきり出ております。民放NHKもこの法律によつて動かされております。そこで、先ほど他の委員からいわゆる長谷通牒というようなことを言われておりましたが、私は長谷通牒というものの内容を読んでいませんからわかりませんが、あれはこの放送番組の編成の自由というものに、触れておるというお考えか。私の方では局長の方からは聞いておりませんが、おそらく局長の方では懇談程度考え方で出したものであろう、こう解釈しまして、あえて問題にしておらないのですが、あなたの方はあの通牒をこの第三条から見てどうお受取りになつたか、お聞きしたい。
  127. 酒井三郎

    ○酒井参考人 私は先ほど、今橋本先生が冒頭に言われたように民間放送には自由がないのじやないかというような言い方をしたとは思いませんが、もしそういうふうにとられたとすれば誤りであつて、今先生の御指摘になつたように考えております。民間放送も、放送法にきまつたごとく、番組の自由が厳存しているというふうに考えます。それから今の長谷局長の通告の問題ですが、これはごく軽く懇談的に言われたというふうに、私はいろいろの申入れの結果受取つたのであります。そこであれがもし番組の自由に関するのであつたら、私どもは長谷さんの首を切るところまでやろうと実は決心をしておつたわけであります。しかし話し合つてみますと非常になごやかなことがわかりまして、ごく軽い意味の懇談的なことであれば、今後も私の方へ、何かの問題があれば懇談的にお話くださるだろう、またくださるということで実はおわかれしておりまして、それ以上は追究しないことにしたわけであります。
  128. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 大体前提はそのくらいにいたしまして、こまかい問題といいますか、提出された問題について一、二お聞きしたいのですが、その前に、ともすれば民放NHKが何か犬猿の間柄のようによく言われるのですが——言われるといいますか、私たちはそういうふうに考えておらない。私どもはNHKの人にもよく知合いがあるし、また新聞社出身でありますから民放の諸君にも非常に知合いが多い。これは当事者同士で考えておるかどうか知りませんが、われわれ第三者から考えると非常におかしなくらいに、多少感情的になり過ぎる傾向がありはしないか。最近は大分その点が少いようですが、特にこの前のテレビジョンの問題やら、その前の放送法の改正のときにはたいへんにそういう空気が強くて、われわれ委員も迷惑しておる。きようもあとから椎熊委員がおいでになりましたが、お互いに迷惑をした間柄であります。私はそう思わないのであります。これは性格が違つておるのでありますから、相協力し合い、相共同して進んで行くように、また進んで行つてもらわなければならぬと考えておるのです。そこでたとえば放送番組の問題でも同様ですが、私はNHKであるから娯楽番組をできるだけ少くするとか、あるいは民放の方はできるだけ娯楽番組をやつて行く、こういう考え方はとらないのです。というのは、たとい娯楽番組にいたしましても、NHKの編成する方針と民放諸君の編成する方針は違わなければならぬ。事実違つておるのです。ことにスポンサーがありますから、いろいろな制約といいますか、注文もある場合もあると思うのです。のみならずこれはテレビジヨンで、いわゆる現場ニユースをとる場合は違つておらない。これはまつたく同じですが、娯楽番組はいろいろな角度からいろいろな考え方でつくられますから、これはある程度違つた内容ができるのでありますから、必ずしも娯楽番組NHKからできるだけ取去ることが公共放送であるとは考えておらないし、また先ほどの酒井さんのお話でも必ずしもそういうふうではありませんけれども、どうも娯楽番組の問題にお互いにとらわれ過ぎはしないか、こういうふうに考えておるのであります。しかし何といつてNHKは教養番組といいますか、そういうものに相当力を入れる必要があるということは論をまちません。私は放送座談会においてその点を強調したことがあります。従つて現実の編成方針があれでいいかどうかということは一応問題はありますけれども、私は必ずしも娯楽番組をできるだけ少くすることが公共放送使命じやない、こう考えておるのですが、酒井さんの御意見をひとつ伺いたい。
  129. 酒井三郎

    ○酒井参考人 第一のNHK民間放送が対立しているように考えられるということは、私どもの気持としてはちつともそういうことはないのですが、どうもそういうふうにとられるとすると私ども申訳ないと思う。この席に古垣会長さん初め皆さんおいでになりますが、そういう気持がないばかりか、向うの事務局と私の事務局とは一月に一回ずつ懇談していろいろやつております。できるだけそういうことで両者が腹を打明けて、ざつくばらんに話し合つて進んで行きたいというふうには考えております。  それから第二の点の娯楽放送の問題ですが、これは今も申し上げましたように、放送法改正の研究会をこちらでやつておりまして、ある一つの案ができると思いますが、そのときにはつきりしたものは出ると思いますが、私としては全然娯楽放送NHKがやめるべきだというふうには思つておりません。ただ多少ウエートの引き方が違うということ、それから同じ娯楽といつても、娯楽の内容の点も違う点があるように思います。お答えにならぬかもしれませんがちよつとそれだけ……。
  130. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 今の問題はちようど値上げ問題にからんでおりますからお聞きしたいのですが、なお参考人はこれをお読みになつておるようでありますから、これについてちよつとお聞きしたいのですが、減価償却が、昭和二十九年度の予算では昭和二十八年度に比べて倍以上に増加されております。これはかねてからわれわれ委員会といたしましては、放送事業のように日進月歩の設備を要するところは、できるだけ償却を多くして、常に時勢に遅れないように設備の改善を行うべきだ、こういう見解を持つておるわけなのです。二、三年この方は、普通の減価償却が一〇〇%できないとして七五%に切り下げておつた、こういう状態でははなはだ困る、こういうことからして積極的な減価償却を行うて、常にこの設備の改善を行うべきだ、こういうことからして今度の予算にはこれが入れられて、大体倍以上になるような減価償却の金が組まれております。この金額が相当の金額に上つております。これとべース・アツプの問題、この点につきましては参考人も先ほどお話がありましたが、ベース・アツプの問題は、われわれはこの案においてもなお十分じやない、放送事業に関与する特殊な事業の従業員としては、この予算案に盛られたベース・アツプだけでは不十分である、何らか考慮しなければならない、こういうふうに考えておるのですが、値上げのおもなるものは、この減価償却費の増額、べース・アツプの基本的増額及び番組編成等でありますが、この番組の問題につきましては、先ほど参考人は、半期に電波料が大体二十二、三億である、一箇年では約四十何億になるわけであります。しかし電波料だけであつて、これ以外にいわゆる製作費といいましようか、スポンサーが出す謝礼金等を加えれば、私は八、九億円になると考えておりますが、これはどうでしようか。
  131. 酒井三郎

    ○酒井参考人 減価償却の問題については、私個人としては、橋本先生と同じように考えております。先ほどの二十二億と言いましたのは、全事業収入か電波料でありますか、なお調べましてお答えしたいと思います。
  132. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 なおこまかい点につきましてお聞きしたいところもありますが、たいへん遅れておりますから最後に一点だけお聞きします。これはわれわれも近いうちに放送法等の改正を行いたいと考えておるのですが、この問題に関して前々からわれわれ聞いておるところでは、NHKの持つておる第二放送の波長を開放すべしという議論があつたようですが、最近ではあまり聞きませんけれども、先ほど来からの参考人お話を聞いておりますと、ある程度の娯楽はもちろんNHKがやるべきだ、かつまた教養を十分にやつて行けということになると、やはり第一、第二の波長を与えておかなければ、それだけの使命公共企業体として達成できぬように考えておりますが、その点についての参考人の御意見をお伺いしたい。
  133. 酒井三郎

    ○酒井参考人 民間放送の内部では、NHKは第一放送だけでいいじやないか、そうして今の第二放送の性格といいますか、番組内容というものをさらに充実したものを第一放送でやる。第二放送はなくしてこれを民間に開放したらというような意見もあります。これは私どもの方の放送の研究会ではいろいろ意見が出て、まだそういうところまでまとまつておりません。少くとも大都市においては民法も第二放送、あるいは新聞の方でいいますと紙の増ページができるわけなんですが、しかし放送の方では時間が夜なら夜、ゴールデン・アワーは三時間なり四時間ときめられますと、それをどうすることもできないので、もう少し波の均等というような点からいつて、第二の全部ではないけれども、あるものを民間に開放してもいいのじやないか。そうすることによつてNHKがまた冗費も節約でき、人員も節約できるという、聴取料の問題とも関連するわけですが、そういう意見もあるわけです。ですが大体は今の第一、第二放送の性格を明確にしたらいいだろう、あるいは第二のあれをもつと第一放送内容に加味したらいいだろうという方が、今のところ多いように思ております。ただ決定的な意見になつておりません。
  134. 橋本登美三郎

    ○橋本(登)委員 実はこの放送法ですが、四十四条の政治的公平とか、公安を害してはいけないとか、この規定放送協会に与えられた規定ですが、実は議院修正で、国会でこれを五十三条に持つて来て、一般放送事業者、すなわち民放もこれに適用せられるというぐあいになつたのです。議院修正でなつた以上は、これは法律ですから守らなければいけませんが、しかし私個人になつて考えてみると、これはあまりけつこうな修正ではなかつたのじやないか。というのは、これは非常に幅が広くなつておりまして、たとえば政治的に公平であること、こういうことをいつていますが、私は民放としては、たとえば社会党なら社会党がある時間を買つてある程度の主張を行う、こういうことはやつてもいいのじやないかと思う。あるいは自由党の政調会がそういうことをやつてもいいのじやないかと思う。ところがこれがあるために実際民放ではなくなつてしまう、これが第二です。それから公安を害していけないということも、これは番組のつくり方で、多少お色気のあるものをつくつたつていいだろうと思う。これは軽犯罪法で罰せられなければいい。こういうことがあるために強くとられて、何か民放自体が特に公共性をみずからやかましく考えなければならないような結果になつたのは、この四十四条の影響も多少あるのではないかと思うのです。もちろんわれわれとしては、当時はラジオというものが大衆に与える力が非常に強い、従つて野放しにすべきではないというとこから入つたのでありますけれども、次の放送の改正の点については、なお各方面からこの意見を聞いてみたいと思うのですか、このことのために民放としてはスポンサーをとる上において、あるいは他の上において何らかの障害があつたかどうか、あるいはこの問題についての考え方をひとつお聞きいたしたいと思います。
  135. 酒井三郎

    ○酒井参考人 これも実は選挙のときに際しまして、その前からも政党が時間を買うか買わないか、選挙放送の場合に民間放送が選挙をやるかやらないかということについて、非常に問題でありました。あのとき私どもの方の意見も自治庁の意見も多少そういうことだつたと思いますが、ある人が選挙をやる場合に、公定費用の範囲内で自分ラジオならラジオを使う、あんまりほかのことには使わないのだ、街頭宣伝や何かやらなければやらないで、自分ラジオを使うということだつたら、ラジオを買つてつていいのじやないか、そういうような意見民間放送としては非常に強かつたわけであります。政党も国民に対して政策をほんとうに知らせるという意味なら、ラジオをどんどん使つてよろしい。そのためにある党が買つてある党は買わないという場合は、これはその党の選挙の方針とか、そういう方針のやり方であつて、それが多少不公平になつてもしかたがないのではないか、こういう見解があつたわけです。ただ事実上そういうことがいろいろの点で制約を受けたわけですが、これは私どもの方でも研究題目といたしたいと思います。先生方の方においても研究をしていただきたいと思います。
  136. 原茂

    ○原(茂)委員 最後に中塚参考人にちよつとお伺いしておきたい。一々お伺いすると長くなりますので、簡単にお聞きいたしますから、端的にお答え願いたいと思います。三点お伺いいたします。  最初にお伺いしたいのは、この予算案の中にベース・アツプに対しては、組合の要求するものから見ると、非常に低いものが織り込まれている。ところが先ほど酒井さんの話の中に、厚生施設は、NHKの場合は十分にあるという話があつたわけですが、厚生施設そのものもまだ非常に私ども現地を見て不十分きわまるものだ、特に局舎内における職員の厚生施設などにおきましては、まつたく皆無といつていい状況だと思いますが、この予算の中に、これらに対してほとんど見るべきものがありませんが、これに対して組合はこれでよろしいとお考えか、この点が第一点。  第二点としましては、二万二千円べースにほど遠い予算が提案されて参りましたが、組合の立場からすれば長い間の要求でもあり、実質上からいつて、この予算では不満足である、こうお考えだと思うのですが、一体この予算が提出された範囲において、この範囲で組合側とすればどういうふうな処置を講じ、せめてこの二万二千円ベースに実質的になるようにしてもらいたい、こういう要求があるかどうか、こういうお考えがあるならばその考え一つ率直に述べていただきたい。  第三点としましては、今日までこのべース・アツプを中心にしまして経協が一、二回持たれたと聞いておりますし、団体交渉も十数回持たれたように聞いておりますが、この交渉の過程において、協会の側から組合の要求の三八%はとうてい不可能だ、なおさら二五%にしようとしても、とてもこれは郵政当局が承知しまい、おそらく当局の承認するところとならないから不可能だと思う、こういつたような発言があつたかどうかをお聞きしておきたい。
  137. 中塚昌胤

    ○中塚参考人 第一点の厚生施設の問題でございますが、先ほど酒井参考人の方から、協会の厚生施設は非常に完備しておるというふうなお話がございましたが、設立されてから三年余りの各商業放送会社と、すでに二十九年の歴史を持つております放送協会と、厚生施設の面においても差があるというのは当然だろうと思います。それで現在の厚生施設は、われわれとして満足すべきものであるかどうか、これは原先生からも御指摘の通り、地方へ参りましたら厚生施設というものはほとんどございません。局舎内の厚生施設も非常に不完全でございます。たとえば宿泊、宿直の設備というふうなものも、地方の放送局へ行けばない。アナウンサーあるいは技術者なんかも、宿直勤務者が机の上に寝ているというふうなところもずいぶん多いわけであります。われわれとしてもこの厚生施設充実について協会当局に年々要求をし、今日まで来ておりますが、今回の予算を見ましても、予算に盛られております金額だけで、はたしてわれわれの要求が完全に実施できるかどうかということは、非常に疑問であろうと思います。  それからベース・アツプにつきましては、先ほども申し上げましたように、この予算に盛られました給与の総勢は、われわれの要求には遠く隔たつておる。この間からの当委員会におきまして、国会予算の修正権があるかどうかという点が非常に問題になつております。もし修正権があるという結論が出ますならば、われわれとしては人件費を増額するという修正を行つてただきたい。もし修正権がないということになりますならば、この人件費では足りないのだ、ではどういうふうにしてわれわれの要求に近づけて行くか。われわれとして考えておりますのは、今回提出されましたこの予算と一緒に提出されております予算総則第七条に、いわゆる弾力条項というものが入つております。これによりまして、予算に見積られた以上の増収分があつた場合、これを給与分の方にまわし得るという条項が入つておりますので、この点において当委員会においても十分御検討願つて、そういう窓口をこの委員会の決議としてはつきり明けていただきたいということ、それから予備金の使途でございますが、先日の委員会におきましても、予見しがたい状況が起きた場合には予備金も給与に充当できるということが言われておりますし、昨年二十八年度予算の審議の際にもそういうことがはつきり言われております。昨年はこの委員会におきまして予備金を給与の方にまわし得るということは言われておりましたけれども、しかし何分にも予備金が五千万円しかなかつた。電信電話料金の値上げあるいは九州の水害等の突発的な支出のために、予備金がその方へ全部まわされて、しかもなお足りないというような状況が起つた。われわれとしても公共放送というものを維持運営して行かなければならないということは十分考えておりますので、予備金から給与へまわすということよりも、公共放送を維持して行くというものの方をやはり優先させなくてはならない、われわれとしてがまんしなければならないときもあるということで、昨年度は見送つたのであります。この予算で行きますと、来年度におきまして二億五千万という予備金が組まれておる。例年から申せば全部これを使い切るということもまずなかろう。従つて年度末において予備金からそういう給与の方へまわし得るという余裕も相当あるのじやないか。従つてそういう予備金から給与の方へ充当し得るということを、これもはつきり窓口を明けていただきたい、そういうことによつて、われわれとしてまた協会内部の問題として、交渉を続けて行きたいというふうに考えておるわけでございます。  それから今までの協会との交渉過程において協会経営者の方から、協会経営者は幾ら幾らのべース・アツプを考えておるが、郵政省の方に反対があるというような発言があつたかどうかという御質問でございますが、そういう回答と申しますか、経営者発言はございました。それは協会経営者が二五%のべース・アツプ、額にいたしますと約一万九千八百円くらいになると思いますが、そういうものを考えておる、しかし郵政省の事務当局の方では、指数の上昇等から見て、二五%程度ならば賛成できるという話である、そこで郵政省の方といろいろ話し合つておるのだという発言はございました。
  138. 成田知巳

    成田委員長 最後に私の方から酒井参考人に簡単にお聞きしたいのですが、それは民放における電波料値上げとNHK受信料値上げの関係なんです。先ほど酒井委員からも、NHK受信料は半強制的である、民放電波材は自由契約によつて性格が違う、こういう御指摘があつたと思うのですが、確かにそうだと思うのです。しかしそれは収入の入つて来る形式が違うというわけなんで、電波料にしろ受信料にしろ、NHKあるいは民放会社の収入の根幹をなしておることは間違いがないと思うのです。今回NHKの方で受信料の値上げをするというのは、この受信料の収入では経営がやつて行けない、こういう意味での値上げだというのですが、民放の方でも電波料の相当値上げをお考えになつておる。その理由については酒井参考人は今の電波料は安過ぎた、だから元に返すのだ、こういう御意見だつたのですが、今そういう電波料の値上げを考えておる民放経営状態は大体どうなつているか。具体的に申しますと、赤字の会社がやつておにれるのか、あるいは黒字の会社でもそういう計画をしていらつしやるのか、これをお尋ねしておきたい。
  139. 酒井三郎

    ○酒井参考人 お答え申し上げます。今の電波料の値上げの問題は、先ほども申しましたように、単に初めが低かつたということだけじやなく、聴取者の数の増加というようなこともありますし、それから施設ラジオ東京を初めほとんど全部間借りの状態であつて、狭いところに三人で一つの机を使うというような状況が、ほとんどの民間の放送会社の状態であります。それともう一つは、売らない時間というか、サスの番組の時間がございます。スポンサー番組——電波料はそこへ売れたものをとるわけですが、そのほかに相当の部分を占めておるサス・プロの時間、これをやはり民間放送がここまで発展しました以上さらに充実しなければならぬ、その方面に相当これをさく必要があるということが理由なんでございます。
  140. 成田知巳

    成田委員長 黒字の会社でも電波料の値上げをお考えになつておるところがあるかどうか、これをお伺いしたい。  それからもう一つサス・プロの問題は別なんですが、局舎が非常に狭隘だ、間借りをやつておるところがある、だから値上げをするのだと言われたのですが、局舎の問題はどちらかといえば資本的な支出に当るもので、資本金でまかなうべきものじやないかと私は思うのです。今度のNHKの場合も十七円の値上げでありますが、設備の新設は全然やつてないのです。借入金でやつておるのです。それでこういうものを値上げでまかなうべきでなしに、局舎の新設は資本金を増額されるとか、そういう資本勘定でおまかないになるのがほんとうじやないかと思うのですが、その点を伺いたい。
  141. 酒井三郎

    ○酒井参考人 根本的にはその通りでございます。それで聴取者数がふえたということが一つあります。それともう一つは、番組内容スポンサーが出す分でございますが、さつきも出演料の問題でちよつと触れましたけれども、プログラムをつくるのに一つ番組相当の金がかかるわけです。それを全部スポンサーからもらわないで、局が負担していたような場合があつて、それを地方に送るというようなことがあつたわけです。そういうこともありますし、それから一番根本は、今のサス・プロの充実で、聴取者が聞かれる場合に、スポンサー・プロだけではなく、そのほかの時間も聞かれなければならないし、そこが非常に手薄であつたから、そういう方面に相当の金をかけなければならない。そういう番組全体の充実がやはり重点である。それに比例して、聴取率がかなり上つて来た、従つて宣伝効果がそれだけよけい出て来た、こういう点が一つの重点だと思います。
  142. 成田知巳

    成田委員長 参考人にごあいさつ申し上げます。本日は長時間にわたりまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、本件審査のために非常に参考なつたことを厚くお礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十三分散会