○
竹中参考人 ただいまより
日米石綿工業株式会社の
技術並びに
外資導入の問題について御
説明いたします。
この問題は非常に誤
つて伝えられておりまして、事実が伝えられておりません。これについてはあらかじめ
日本の
業界の方にも
説明したにもかかわらず、その
陳情書などを見ますと、まるで違つたことが書いてあります。それで、まず第一に私
どもは事実の
計画の実際を簡単に御
説明しておきます。
導入技術の内容を申し上げますと、米国の
ジヨンス・マンビル・コーポレーシヨン独得の
フレキシボードの
製造並びにその
応用加工の
技術であります。この
フレキシボードと申しますのは、今
石綿と
セメントでただつくる、こういうふうに
説明がありましたが、そうではございません。特殊の
混合材を使います。
日本ではこれはや
つておりません。この特殊の
混合材を使いますと、どう違うかと申しますと、材質がかわ
つて参ります。
製造の
技術もかわ
つて参ります。
用途も
市場もみなかわ
つて参ります。
日本では今までなかつたのであります。ところが
日本で一応外形的にこれをまね
つているものは従来の
スレート、すなわち
石綿と
セメントとを
主材にして、ただそれの強度を落しますことによ
つて曲げることができる。
石綿をよけい入れることによ
つて、釘を打つことができる。すなわち曲つたまま釘を打
つてるわけであります。これは
フレキシボードではありません。イミテーシヨンであります。
それから私
どもの
導入いたします
技術は日進月歩でどんどんかわ
つておりまして、十五箇年の
契約期間中引続きその進歩について追加して入ることにな
つております。それから
導入資本については
厖大なる
資本ということを言
つておりますが、これは四億六千八百万円の
最高資本であります。そしてそれ以上に何億にも広げるということが言われておりますが、そういう
計画はございません。ただそういうふうに拡大した場合にはこれこれするという点をあちらからは言
つて来ておりますが、私
どもにはその意思はございません。それから持株でございますが、
ジヨンス・マンビル・コーポレーシヨンは二五%、これに対して
日本側資本は七五%、そのうち
小野田セメント三五%、
東京興業貿易商会二七%、
一般公開一三%、合計七五%であります。なおこの
東京興業貿易商会と申しますのは、この
ジヨンス・マンビル・コーポレーシヨンの子
会社の、
ジヨンス・マンビル・インターナシヨナル・コーポレーシヨンというのがございます。そこの
日本代理店をや
つております。しかし
外国資本は入
つておりません。また
外人社員もおりません。
従つてこれは純然たる
日本資本であります。それからこの
計画が
日本の
経済界にどういう
影響を及ぼすか、まず第一には
木材の
輸入の大幅の
節約になります。その詳細についての数字は御必要ならば後ほど申し上げます。この
木材輸入の
節約によ
つてロイヤルテイ、あるいはあちらに
配当金を送る、あるいは必要な
機械の
輸入をする、あるいは
原料の
石綿を
輸入する費用は
外貨を
償つてあまりあるものだ。ざつと申し上げまして、十五箇年の
契約期間中、私
どもの
計算によりまして、九百四十三万二千五百ドル、これだけ差引
節約できるわけです。なおこのほかに
輸出の増進が見込まれます。この
輸出で特に注意していただきたいのは、現在の
ような
スレートを板のままで送るのではございません。全部
加工してやることになります。これを
加工した場合に、
日本の
模倣品と私
どもの
フレキシボードというものとの差が出るのでございます。たとえて申し上げますと、
日本は現在
漆器業界は不況に陥
つております。この
漆器の
技術を使いまして
輸出をする。この場合に、
漆器は湿度のかわるところ、
乾燥度のかわるところへ持
つて来ますと、みな生地がゆがんでしまうことになるのであります。ところがこれを
漆器に使いますと狂わないものができる。これに対しては具体的にアメリカの方でも
つて、これを使えということをどんどん言
つて来ておりまして、早くこれをやれということを言
つて来ております。これは大体一枚について
ロイヤルテイを五%払いますと、私
どもの
予定では一枚九百円で四
フイート・八
フイート・八分の一インチの
厚板ができるのであります。
ロイヤルテイ五%で四十五円でございます。この四十五円の
支払い価格に対して、一枚どうしても三千円見当には楽に売れます。そうしますと三千円を四十五円で割りますと、大体六十七分の一になります。すなわち一枚これが
輸出できれば六十七枚分です。
ロイヤルテイがも
うそこでも
つて相殺される。こういうふうに
輸出を伸ばす上において非常に重要な役割を勤めます。これはただ単に
スレートの板を
輸出するという
ような問題ではございません。その他いろいろな
加工の方法があります。たとえて申しますと、
東南アジア方面では民度が低い、鉄筋コンクリートの
輸入もできない、そういう場合には鉄骨で
フレキシボードを張る。この
技術が非常に
イギリスあたりでも進んでおりまして、
イギリスでは
東南アジア方面に年々五百万ポンドからの
組立て加工の
輸出をや
つております。これにもちろん食い込むこともできます。これは
一つの例でございます。それから
フレキシボードの
応用加工が発展して参りますと、
国内の
中小企業を育成する。新しい
中小企業ができます。雇用は増大いたします。こういう点に御注意願います。またこれによ
つて非常に安価な
防火建築を普及することができます。この
防火の問題は、
建築様式がすでにかわ
つて来るのでございます。こまかい点については時間の
関係上略します。
それから私
どもの
資本金が四億六千八百万円でも
厖大だ、こういう御説がございますが、私
どもの実際の
設備はどうかと申しますと、ただ
ワン・セツトでございます。最小限の
設備でございます。これに直接投ずる
設備費は一億六千二百万円、
あとの三億何がしはほとんど
運転資金に向ける
予定にな
つております。もちろん
運転資金といつても、このほかに
機械等が一億六千二百万円ありますから、これに若干の
設備資金、いろいろな動産的なものがありますから、もう少しふえるのでありまし
ようが、大体半分は
運転資金にな
つております。これはあちらの
企業は何も
ジヨンス・マンビルに限らず、事業のスタートから、
借入金では絶対にやらぬ。
日本の
スレート業においても資産の再評価をやり、また
借入金を
計算に入れてみますと、これは
厖大な
資金が運用されております。
従つてこれを
日本流に逆算いたしますと、四億六千八百万というのは、まず五、六千万の
会社にすぎないのでございます。実際
ワン・セツトでどれだけのものができるかと申しますと、
年間四・八で七十万枚、これが
最高でございます。これは
昼夜兼行で、二十四時間操業をや
つてそれだけしかできない。これは全然今までと違うものがわずかそれだけできる。それが
日本の
業界をひつくり返す
ような力があるかどうか、たとえて申しますと、
日本の
一流スレートメーカの
能力よりも、私
どもの
計画では低いのでございます。すなわち
日本の
業界をひつくり返す力を一社が持
つているという
ような話でございますが、事実はそうでございません。それから
日本の
スレート業というものは、九三%までは
波板と申しまして、
屋根、
下見等に張るものでございます。それから
あとの七%は
平板でございます。これも大体半分は
屋根に使
つております。
あとは
壁材に使
つております。これはもし
影響するところありとすれば、わずかその七%の部分にぶつつかります。この七%はどこでつくるかと申しますと、
中小企業ではほとんど例外的にしかつく
つておりません。
みな一流メーカーが、しかも副業としてや
つておる
程度でございます。以上の点がごく
ざつとした真実でございます。
従つてこれが二重
投資になるという
ような
意味はございません。
それから
技術の点については
あとから申し上げますが、今いろいろと
反対運動の御
説明がありまして、私
どもは
陳情書などを見せていただきましたが、一番大事だと思う点は、
反対運動の方は、私たちのことを、どつちが
ほんとうでどつちが
うそか、どつちが正しくてどつちが間違いかどうか、そこまで判定しなければできないと思います。それでは一体具体的にどういう点があるか、言
つていることに非常に
矛盾がありはしないか。私
どもはJ・
M社の
技術を
導入して、よいものを安
くつくり、そうして大いに
木材の
輸入を
節約し、
製品の
輸出を伸ばそうとするのでありますが、
反対運動の方は、
日本の
技術は
外国に劣らない、また
外国の
技術を
導入してもそう安くはできぬ、
輸出も伸びない、
国内の撹乱になる、こう言うのであります。それでは一体これを判断する
基準はどこにあるかというと、これは当然出て来ることは採算の問題であります。もし私
どもが
間違つた計算に基いてこれを主張した場合にどうなるかというと、
会社はつぶれてしまう。そこまで行きますと必ずつぶれてしまいます。そんなずさんな
計画をやりますと当然つぶれてしまいます。この損害はだれが負うかといいますと、私
どもが負います。
反対運動の方は負いません。そうしますと、
反対運動の方はどんなか
つてなことも言えますが、私
どもはか
つてなことや
うそは言えません。今度は、もし私
どもがそんなでたらめな
計算をや
つて、たちまちつぶれるならば、
反対運動をする必要もありません。
反対運動をやる以上は、私
どもの言
つていることの方が
ほんとうだということが前提にならなければ
反対運動の
意味がないのであります。この
ように主張の
虚偽性ということは、結局
矛盾の露呈とな
つてはつきりして参ります。もう
一つの
反対運動の
根本的矛盾は
日米石綿というものは今申しました通り、
国内の
一流既存スレート・
メーカーよりも小さいのであります。しかも
技術は同じだというならば、それでは
国内の
中小企業にどれくらいの
影響を与えるかと申しますと、
日米石綿よりも
既存一流メーカーの方が
国内の
中小企業に対しては圧迫することになります。私
どもは、もちろんそういう弊害があるならば、十分御検討くださ
つて、当然御制限していただくことはやむを得ないと思います。しかしそれと同時に、やはり
既存の
一流メーカーの方を制限する必要があるのではないか、こういうことになります。さらにこの
反対運動の主要なメンバーは、この
導入の話が起つたときに、
小野田セメントと同じ
ように、同時に
提携を申し込んだ。
技術は自分の方が遅れているから、お願いしますというので
提携を申し込んだ。
報告書も出す、工場も見せるということで
提携を申し込んだ。ところがその選に漏れたとたんに
反対運動が起つた。これは非常に事態の不明朗を
意味するものではないか。それから
反対陳情書を見ますと、
日米石綿の発足はJ・
M社の
石綿の
販売政策の現われであり、
国内の
石綿鉱山をつぶしてしまう、そういう
ようなことを大幅に主張しておる。また
北海道方面はこれを非常にや
つておりますが、これは非常な間違いだと思います。また
日米石綿の話が起りましたことは、
石綿が非常に不足している
時代で、しかも常に
日本の
国内の
石綿生産の絶対量は不足している。ある
程度はどうしても
輸入しなければならない。しかしこの
石綿輸入は
外貨の
割当という点で非常に制約されておる。ですから、
国内石綿は圧倒されるということはないのであります。しかも
国内石綿の
値段のきめ方を見ればわかりますが、これは
原価計算によ
つてきめておりません。
外国石綿の
輸入価格の
CIF値段を
基準にして、いつもきめております。これはいわゆる
独占価格であります。
生産コストから出さずに、ただそういう
関係から出しております。実際に
日本では
石綿の山というのは、
野沢石綿と
山部鉱山から入れている。経営が二つとも非常に大きな
会社でございます。
従つて弱小鉱山ではございません。これらのものが今言つた
ような
条件の中でつぶれるということもございません。また私
どもが
ジヨンス・マンビルから入れるという
石綿は、
自家消費用でございまして、
一般に転売されることはございません。
従つて、決てそれで
国内石綿をつぶすという
ようなこともございません。また私
どもの入れる
技術は、そういう
国内の
石綿は非常に
低質な
関係上、
低質石綿を利用できる
技術を入れるのでございます。
従つて為替割当の
関係で、非常に
割当がなければ、もちろん
国内石綿をどんどん使います。そういう
意味で逆な結果が出る。むしろ
国内石綿業にプラスする面もあるのであります。まだその他いろいろたくさんあります。必要に応じて、
陳情書の何ページの何行にこう書いてあるが、これは全然
うそじやないかという
ようなことを列挙するならば、何十の項目があります。なぜこんなでたらめなことを言うかといいますと、
一つはいわゆるマス・コミユニケーシヨン、間違えたことでもでたらめなことでもどんどん繰返し繰返しつぎ込めば、みんなそれを信じてしまいます。そういう方法でも
つてこれが宣伝されている。第二にはもうわかり切つたことを、非常に人身攻撃まで加えながら、こちらを怒らす
ように、怒らす
ようにも
つて来ています。そこでその結果がどういうことになるかというと、冷静な第三者に客観的に私
どもはこれを説得させる
ように
説明いたしますには、どうしても
技術のノーハウ、これは機密でございますが、これを発表しなければならない。その機密を引き出すために、こういう方法が使われているという
ように考えざるを得ません。また
従つてこれに対して私
どもはなかなかうつかり答えられなかつたのであります。それともう
一つは、私
どもはあくまで同じ
日本人同士でありますから、もちろん仲よくや
つて行きたい。そういう
意味で、最後的なけんかをしたくない、できるだけおちつかれるのを待つという形で、今までほとんどこれに対して、向うは六回も
反対陳情を出し、大いに新聞記者を呼び宣伝し、
業界新聞に書かしておりますが、私
どもとしてはできるだけそういうことに対しては避けております。
以上のほかに、特に御注意を願いたいのは
技術の点であります。J・M
技術というのはノーハウと申します。これは
技術が日進月歩いたしますと、特許という方法ではもはや保護するのに古いのであります。特許は一年なり二年なり前の
技術が保護されるわけであります。しかもこれを十年とか二十年とか期限を切
つておりますが、もはや古くな
つてしまう。そういう方法ではもはや保護できない。どんどんかわ
つておりますから、これをノーハウというもので秘密を守らすという形をと
つております。
従つてこのノーハウについては、
反対運動の方は知らないわけであります。もし知
つているとすれば、これは私
どもが原局にいろいろ御
説明申し上げます。そういう点から不幸にして漏れたのではないかと思います。しかしそういうことは私はないと信じております。それでまつたくわからないはずの
技術が比較されているのです。これはどういうことになるかと
いうと、結局でたらめの比較をや
つているということにならざるを得ない。私
どもの方から見ますと、
国内の
技術について、これもある
程度はわかりません。秘密にしておりますから、わからないのは当然であります。しかし私
どもでは、ある
程度はわかります。というのは、ある
程度の発表があるからであります。それからまたいろいろ私
どもの方でも研究しております。その結果はつきりしていることは、
石綿を普通の
スレートよりもたくさん入れている。
陳情書の中でも五〇%
程度は入れているというふうに書いてあります。それからまた国防
模倣品の
販売の
説明会などを見ますと、
石綿を半分も入れております。それから混合剤は使
つておりません。
従つて材質が違う。曲げを大きくするためには強度を落している。
従つて製品の歩どまりが非常に悪い。厳密な試験をすれば、非常に不合格品が出る。それから材料のロスが非常に多い。工場へ行きますと、材料かすが山の
ように積んでございます。養生期間も一月もかか
つている。こういうふうに総合的に見ますと、この
技術は、当然実験室的段階のものでございます。工業化するのにはまだ早い。これは当然なことで、
日本のフレキシブル・シートとかいうふうな
国内品は、J・Mの
提携が断わられてから急いでつ
くつたもので、わずか一年あたりの研究で売り出しております。これは研究の常識から申しまして、そんな短期間に
一つの商品が工業化することはあり得ないのでございます。実験室でできたものをパイロツト・プラントに移して、
ほんとうのマス・プロに移すまでというのは、そんなに半年や一年でできるものではない。これは常識でございます。