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1954-03-19 第19回国会 衆議院 通商産業委員会総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)     午後二時十八分開議  出席小委員    小委員長 中村 幸八君       小平 久雄君    田中 龍夫君       長谷川四郎君    山手 滿男君       加藤 清二君    伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君  小委員外出席者         議     員 始関 伊平君         議     員 笹本 一雄君         議     員 永井勝次郎君         参  考  人         (日本瓦斯協会         監事)     安西  浩君         参  考  人         (大日本水産会         常務理事)   吉田  隆君         参  考  人         (帝国石油株式         会社社長)   田代 寿雄君         参  考  人         (石油精製懇話         会理事長)   寺尾  進君         参  考  人         (出光興産株式         会社社長)   出光 佐三君         参  考  人         (全国石油協会         会長)     森平 東一君         専  門  員 谷崎  明君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  総合燃料対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 中村幸八

    中村委員長 それでは、これより会議を開きます。  本日は、総合燃料対策に関して調査を進めます。燃料資源としての重油石炭調整の問題は、現下の重要課題であります。小委員会といたしましては、昨日は石炭関係方々参考人として御意見を承つたのでございますが、本日は石油関係の各界の方々参考人として、御多忙中御出席願い、御意見を承ることといたしたのでございます。なお時間の関係もございますので、御発言の時間は約十五分程度にお願いいたします。  それでは、まず安西浩からお願いいたします。
  3. 安西浩

    安西参考人 ただいま御指名を受けました安西浩でございます。私は東京瓦斯の副社長並びに日本瓦斯協会の役員をしておるものでございますが、今回、国会におかれては、わが国燃料対策を確立することが、国家的にきわめて重要であり、国の重要施策として検討するためにこの委員会が設けられましたことは、われわれガス事業者として、また国民の一人として、まことに感謝にたえないところでございます。ことにこの重要なる委員会ガス事業者として皆様の御参考までに意見を述べさせていただく機会を与えられましたことを厚く御礼申し上げます。私はガス事業経営に当つております者でありますから、その見地から卑見を申し述べて、御参考に供したいと思います。  第一に、ガス事業使命とするところを要約して御説明いたします。ガス事業は、家庭用工業用商業用に必要なる高い効率の燃料供給し、他方、機械造船、造機、化学肥料製造に有用必須のコークス供給し、医薬、染料、爆薬、調味料等有機化学工業基本原料である石炭タール供給する石炭有効利用をはかる生産工業でありまして、ガス供給においては、重要なる公益的使命を帯びておると同時に、他面、有用な工業原料製造供給目的としておりますので、ガス事業に関する事項を論議する場合には、常によくこの二方面を考慮して検討することをゆるがせにしてはならぬのであります。公益的使命を果すためには、良質廉価ガスを豊富潤沢に供給し、需用者の欲するままに、停頓なく、連続に供給して、国民福祉増進に資することが要諦であります。コークスタールの面に関しては、わが国産業構造とその消長とを勘案し、適時適質製品を廉価に供給することを考究いたさねばならぬと考えております。ことにガス供給は、直接国民日常生活関係いたしますから、昼夜の区別なく、ガス供給を確保することが、公益事業至上命令と申しても過言ではないと私は思います。この使命を達成するためには、主要原料である石炭を常時確保することが最大の要件となる次第でございます。私どもは、あとう限り国内炭原料として、有効に利用することを念願いたしておるのであります。しかしながらわが国石炭鉱業の現状では、はなはだ遺憾でございますが、全面的にこれのみに依存することができないのでございます。一昨年十月ごろには、六十三日の長期にわたる炭労ストが行われまして、原料炭入荷は杜絶し、ガス製造がまの火は、まさに落ちんとする危機に直面いたしました。しかしガス事業者は、最後までその使命を果すために、筆紙に尽せぬ努力を傾けて、供給停止を防止し、供給の時間を制限するにとどめまして、需用者の期待に沿うことができたのでございます。これはひとえに、事業の多大なる犠牲のもとに、相当量外国炭輸入、貯蔵しておいたたまものにほかならぬのでございます。さらにこのたびの炭労ストにおきましては、本年二月にまた同じような輸送の停止にあつたのでございます。たとえば、東京瓦斯を例として申し上げますれば、二月に国内炭七万四千トンの入荷を予定しておつたのでございますが、実際に入手できましたのは、予定の約七〇%の四万八千トン強にすぎませんでした。しかるに気候の激変でガス需用は急増して、実際の石炭使用高は、二月に十万五千トンに達しました。手持ちの米国炭、これは昨年の秋に手配しておつたものですが、五万一千トン余を補充して、辛うじて危機を乗り切つた状態でございます。  私、思いますに、わが国経済状態では、労使の抗争は容易に解消し得ないのではなかろうかと想像されます。ことにストこそは、労務者権利擁護のために与えられた最後の牙城であり、唯一の武器であることを考えますと、罷業の絶対防止はなかなか困難な問題であると考えられます。このような情勢下で、ガス事業者といたしましては、ガス供給不能の責任を労務者ストに転嫁することはいさぎよしとしないのであります。みずから努力犠牲とによつて公益事業使命を果すよう、万全の防備を整えておく必要を痛感する次第でございます。過去の経験に徴して、相当量外国炭輸入し、不測の場合に備えることは絶対必要と信ずるのであります。しかも、かかる不慮の事態は、何時発生するか予測は困難でございます。従いまして、あらかじめ周到な計画立てまして、輸入いたさねばならないと思うものございます。単にこればかりでなく、日本石炭は強粘結性に乏しいので、良質堅硬なるコークス製造するには適当しないのであります。戦前戦時に、満州、中国、樺太等から強粘結炭を大量に移輸入いたしておりましたことは、各位のお記憶に今なお新たな事実でございます。不幸にして、これらの供給の道が杜絶されました現在といたしましては、これにかわる石炭米国その他から輸入して、補充いたしますことはやむを得ないことと存ずるのであります。従来においても、わが国ガス事業者は、化学工業用コークスの七五%余、鋳造用コークスの六五%を供給しているのでありますが、将来における化学肥料化学繊維工業の進展や、兵器工業の振興、造船計画推進等を考慮いたしまするときに、原料用鋳物用コークス需要は大幅に増加するものと考えねばなりません、しこうして、これらの用途に適する有用優良なコークス製造するには、遺憾ながら米国炭輸入して、国内炭に配合使用することは避け得られないのであります。精巧な機械鋳造に要するコークスは、国内炭だけではとうてい不可能でありますから、この点から考えましても、米国炭輸入は、ガス事業にとつて欠くことのできぬ重要な問題であります。  一般に、ガス事業は、良質で廉価なガス供給することを念願するものであります。石炭価格が値下りしたので、ガス原価相当に低下するだろうと速断されるのでありますが、石炭の値下りは一足先コークス値下げを誘発するのでありまして、これを埋合すためにも、あとうべくんば、優良コークスを重点的に生産したいのでありますから、一層米国炭輸入配合が望まれるわけであります。  ガス製造原価その他も他の製品と同様で、建設資材その他の騰貴によつて上昇傾向にあるのでありまして、料金の改訂をせねば、将来の拡張計画の実施にも支障を生ずるのではなかろうかと憂慮せられております。しかしながら私どもは、政府緊縮方針にかんがみて、なるべくそのようなことはいたしたくないので、各方面から原価の引下げを研究いたしておりますが、米国炭はCIFで国内炭よりも幾分割安となりますから、この面からも、多少でも原価上昇を抑制する一助といたしたいとも存ずるのであります。火力発電所や窯業その他で、重油をもつて石炭に代替する傾向が漸増するのも、同じような経済事情によるものと察せられるのでありまして、わが国石炭価格が、重油に対抗し得る程度値下げができない限りは、やむを得ないことだと思います。  日本ガス事業者は、近年重油原料として供給ガスの一部を製造する方法を採用しておりますが、これは重油を使う方が安いからというのではなくして、まつたく別の理由によるのでございます。ガス家庭商工業に熱源を供給するのでありますから、その消費量は夏と冬とでは非常な開きがありまして、厳寒期には、夏季に比して約二倍近くも増大いたすのであります。このピーク時のガスを円滑に供給するために、普通の石炭乾溜方法によりますと、その建設費が巨額に上ります。しかもその操業稼働期間が短いので、その結果としてガス原価は著しく高いものになるのであります。またわが国の気温は御承知のように変動常なく、季節的の寒暖ばかりでなく、一箇月のうちでも、いや一日のうちでも、予想外の変化が起るのは、各位も親しく御体験になつておられる通りでございます。これに伴いまして、ガス需用量もまた大幅に変化いたすのでありますから、この急激な需用変動に応ずるためには、容易に、迅速に稼働を開始し、あるいは操業を休止できるようなガス製造装置を準備することが必要となるのであります。このような目的には、普通の乾溜窯は不適当であり、石油ガス発生装置を除いては、他に適当な手段は見当らないのであります。石油原料としても、ガス原価は必ずしも安くはならないのですが、前に述ベましたような応急手段を講じて、供給の円滑を確保するために、大規模なガス消費地事業者にとつては、オイル・ガス装置は絶対に必要なのでございます。従いまして、ガス事業の経常には、一定量重油を確保することがはなはだ重要なのであります。  これを要しまするに、わが国ガス事業者米国炭輸入したり、重油原料として使用いたしまするのは、事業経営と安易、有利に導くためではなく、わが国石炭資源特異性公益事業たる使命を完遂しまして、国民生活を向上せしめ、産業の発展に寄与するためにやむを得ざるに出ている次第でありますから、この点に関し十分の御了解を賜わりまして、適切にして妥当なる総合対策を樹立されますよう切望いたしてやみません。以上で終ります。
  4. 中村幸八

    中村委員長 次は、吉田隆君。
  5. 吉田隆

    吉田参考人 大日本水産会常務理事をいたしております吉田隆でございます。こういうところで発言機会を得ましたことを、厚くお礼を申し上げます。これまでの経過において、どういうことが参考人から出ておりますのか、あるいはこれからどういう方々がお話になるのかよく応じませんので、あるいはこの委員会の欲しておられるところからはずれたものが出るかもしれないと存ずるのでありますけれども、われわれ水産業者といたしましての、重油ばかりではございませんが、石油類についての根本的な考え方をお聞き取り願いたいと存じます。もちろん水産業はどのような地位に置かれているかということにつきましては、皆様方よく御承知と存じますが、一つの例をあげてみますと、これは食糧面担当で――もちろんそれ以外の肥料の面の担当もございますが、食糧面担当におきまして、計画されております米の増産計画においては、米の増産に使われております非常に莫大な金額、しかもそれを完全に使つて二年計画で遂行いたしましても六十万石の増収がやつとこさであるということを伺つております。但し水産業界におきましては、今の総量の一〇%増産をしますと、これは三百万石に匹敵する蛋白量が補給できるというような地位にありますことを、あらためて御認識いただきたいと思います。しから水産業は現在どういう勢力にあるかと申しますと、戦時中、海洋に出ておりました船は、御承知のようにほとんど戦禍を受けておりますので、ゼロにひとしいものになつておりました。しかしそれから後、国策の援護を得まして、だんだん回復して参りました。現在の現有勢力と申しますと、二十六年度におきまして約四十七万隻の漁船を保有しております。それから二十七年度で四十四万、これは三万ばかり減つているじやないかというような疑問が出て来ると存じますが、これはことごとく船が大型になつており、トン数におきましては減つておりません。幾分か、ほんのわずかでございますが、ふえておるのであります。と申しますのは、漁船自体が大型化しておるということであります。漁船自体が大型化しておるということは、生産量がふえておるということでございます。つまり勢力がふえて参りますと、生産量がふえて行くということは、必然的に、物理的にも申し上げることができるのでございます。それなら現在どれくらいの生産をしておるかと申しますと、二十一年度には約五億三千万貫の生産量でございましたのが、二十七年度の年末になりますと、十一億五千貫、倍の生産量をあげておるような状態にまで進んで来ております。そうしてこれだけの生産量をあげておりますよつて来るところは、もちろん人的、物的のものがございますけれども、その中で一番大きな要素を占めておりますのは、動力でございます。現在あります船の中の八〇%は、動力使つておるものでございます。船としてはもつと隻数は多いのでございますが、それはほんの遊漁というか、遊び船というか、つり船のようなものであります。内水面で使うような船で、五トン未満の船は切捨てて、それから上の、動力を備えつけ得る資格を持つた漁船の数から申し上げた。パーセンテージでありますが、そのような漁船が動いております動力は、現在はことごとく石油類に依存しております。そして今度政府がお立てになつております地下資源開発というようなことから石炭と油との需給の調整をなさるということを承つております。われわれ国民としましては、そういう政策に全幅の協力をしなければならぬということは十分承知いたしております。しかし現実におきまして、漁船が油をたくのをやめて、石炭使つた方国策に沿うのであれば、そうやりたいと思つても、できないのであります。なぜできないか、近ごろ新聞紙上で非常ににぎわつておりますあのまぐろ船一つの例をとつてみます。あの船は九十九トンの船でございます。これが千海里から千八百海里の沖合いにあつて、往復四十日以上の操業をして帰つて来る船でございます。かりにそれだけのものの燃料転換ができ得たものとして、油のかわりに石炭を積んだらどこまで行けるかということを考えてみますと、沖合いへ走つて操業をしないで帰るまでの石炭を見ると、帰つたときには船艙がからになつておる。石炭庫からになつておると仮定いたしまして、魚の方は入つてないという数字的な説明ができるわけでございます。そのような小さな船で大きな行動半径を持つておるわけであります。しかもそれで今まで申し上げたような生産を上げようとするためには、油でないと、この生産は絶対にできないということであります。言えかえますれば、石炭転換することは絶対にできないということであります。そういうような状態にありますものを、今度の規制の場合にどうするかということを、まず第一にお考えおきを願いたいと存じます。私たち仄聞いたしますところによりますと、政府におかれましては、こういう原始産業、つまり絶対に転換のできないものについては、最低のものを確保する措置をとつてやらなければならぬというような結論をお出しになつているように伺います。しかしわれわれの心配いたしますことは、地下資源開発という一つの線に沿つた外貨の節約ということが考えられておるとわれわれは仄聞しております。外貨を倹約するために、一ぺん一律にこの石油輸入外貨をしぼられるということになりますと、何パーセントかわれわれもしわ寄せさせられるであろうという心配が、われわれの最も大きな心配になつておるのであります。しかも水産業と申しますものは、政治力もございませんし、財力もございません。もちろん大きな会社は二、三ございますけれども、今の日本漁村生活をごらんくださいますと、あの長い海岸線に、テープのようにへばりついておる漁民が中心をなしておる勢力なんであります。そういうようなところで、油の総量において抑制されるということになりますと、今政府考えておられるような成算があつたといたしましても、しわ寄せされるのは、おのずから弱い者でなければならぬということは、優勝劣敗の当然の理論でございます。そういう状態に置かれておりますときでありますので、もしこういう地下資源、それから外貨という両方からのお考えがある場合に、措置をされるということになりますならば、絶対にこの原始産業には不自由をかけないという厳重な措置をされないと、この重要な食糧面担当しております漁業に及ぼす影響は非常に大きいと存じます。現在はしからばどれくらいの油を使つておるかという疑問が出て来ると存じますが、これはわれわれまじめに、油業者販売量並び現有漁船勢力、それから稼働率、もう一つ馬力量というようなものを業者から出しまして、それから当面されております水産庁のエキスパートを集めてエステイメートいたしましたのが約百万トンでございます。そのうち重油が八十八万トンで、大部分が重油消費なのでございます。それでこの場合、石炭重油というような熱量の上からものを考えるのではなくて、その容積というものがわれわれの上に大きくかぶさつておるということをお考え願いたいのです。熱量は他からもとれるではないかというようなお考えもできると思いますけれども熱量についてまわります容積、量というものも、これは転換のできない二つの要素が伴つておるということをお考え願いたいのでございます。また、水産食糧面ばかりを担当しておるかというお考えも出ると思いますが、一つの例をとつてみますと、輸出量におきましては、水産は非常に大きな働きをしております。現在化学繊維の――生糸も入つておりますが、その輸出量の次に位しております。つまり一番多いのが他のものであつて、第二番目が水産貿易量であるということであります。そのうちでも最もわかりいい例をとつてみますと、先ほど申しましたまぐろですが、まぐろはそれなら年間どのくらい輸出しておるかと申しますと、ちよつと勘定してみますと、百億くらいの輸出をいたしております。そうしてこれに要しますものに、輸入をします漁業資材がございます。それはロープだとかいうようなものでありますが、そういうようなものを差引いたしましても、なおかつ八十二億というバランスあとへ残るのでございます。まぐろだけで八十二億というバランスが残るのであります。それなら重油は幾ら使つておるかと申しますと、先ほどの数量を概算いたしますと、五十八億になります。まぐろ漁業だけで、なお全水産で使います油をまかなつて余りありというような状態になつておるのでございます。そういうような働きを自慢して、外貨をこちらへ惜しむなというのではございません。要するにそれだけの働きをさせるためには最低量必要量を確保するように御処置をお願いいたしたいという次第でございます。  もう一つ最後に申し述べたいと存じますのは、われわれが使用しております重油は、しから日本原油輸入されたものでまかなつておるかと申しますと、決してそうじやないのであります。重油は、現在日本へ入つております原油から出ますものは、二十七年度におきましては七三・七%これが日本原油から出る油でございます。言いかえますれば、そのあとの二六・三%というものは製品輸入しておつたのでございます。二十八年度の予想は、それがまたずつと国内産が減りまして、五三・八%というものが国内生産される重油でございます。言いかえますと、四七%というものは製品輸入をしなければならぬということであります。その点の価格の差というようなものなども、一応の重要な要素となると思いますが、そういうところはわれわれは確かなデータを持つておりませんので、いたずらにここで混乱するようなことは申しません。ただ漁業用の油というものはそういうような状態に置かれておるということを御了承くださいまして、外貨の割当の際に、それに粗漏がないようにお考えをお願いしたいと存じます。制限の時間が参りましたので、これで終ります。
  6. 中村幸八

    中村委員長 次は田代寿雄君。
  7. 田代寿雄

    田代参考人 御指名をいただきました帝国石油田代寿雄でございます。お尋ねによりまして、国内原油の問題につきまして若干の見解を申し述べて、御参考にしていただきたいと思います。  石油需要がこの二、三年とみに増加して参りまして、二十八年度のごときは一千万トンにも及ぶだろうという驚くべき増加率を示しておるようでございます。これは石炭から転換したというような、過去の石炭方面のやり繰りのうまく行かなかつたというような点もあるかもしれませんが、しかし石油増加というものは世界的の大勢でございまして、国内産業、また国民生活の向上、こういう方面で、この傾向は将来総合燃料政策をお立てになられましても、その勢いというものは相当にまだまだ拡大して行くのではないかと考えられます。顧みまして、しからばその石油に対する国内原油の力はどうかと申しますると、はなはだ遺憾ながらきわめて微弱なものでありまして、一千万トンあるいは九百五十万トンに対しまして、二十八年度の生産見込みというものは三十四万トン内外で、四%にも至らない程度でございます。これに対しまして、かように少い油は価値がないのじやないか、もう少しよけい出るならば大事にしてもいいが、ごくわずかなものならば顧る必要もないじやないか、こういう議論が一、二年前までは大蔵省方面にもおありのように聞きまして、また国民の常識としましても、日本石油が出るのかというような考え方が多かつたように存じます。大体日本石油が振わなかつた原因というものは、むろん地下資源が豊富でない、またその勉強が足りなかつたという点がありましようが、戦争中に何でも南方の油ということで、総力を上げまして、調査試掘、採掘一切の機械技術南方へ持つて行きまして、敗戦後経済界は立直らず、かつ労働事情等によりまして、試掘調査というものが遅れておつた。これが非常な原因考えております。国内原油のほとんど全部を担当しておると申し上げてもよろしい帝国石油におきましても、なかなか自力をもつて、このむずかしい問題を打開することは困難である。非常に、いわば国内原油開発についてはピンチに追い込まれておりました。しかるところ昨年、通産御当局におかれまして、今日言われておりますように、石油開発の五箇年計画というものを御立案になられまして、われわれもその内示を受けけましが、われわれの会社の方で研究しておりまする線とまつたく一致しておりまして、その御計画のりつばであることにつきましては非常な敬意を払い、帝国石油といたしましては、経営者技術陣も、そろつて、打つて一丸となつて国策の線に沿つて行こう。平たく申しますると、裸になつてもその線について行こうと、かように考えておつたのであります。この点につきましては、議員各位にはしばしば政府御当局の御説明もあられましたでしようし、また私ども機会あるごとにお願いいたしまして、二十九年度の予算におかれまして、五箇年計画そのままは認められませんでしたけれども、まずもつてその道を開いてくださつたということで、一億三千万の助成が衆議院においてはすでに可決せられましたことを感謝いたす次第でございます。  石油鉱業が、内地でもつて少ければ少いほど、内地の資源を開発しなければならない、また一旦有事の――有事のというとはなはだ言葉が悪いかもしれませんが、国際情勢が非常に危険なときに、国内原油の用意をしておくというようなことも考えますれば、ぜひ開発をしなければならないという必要がありますので、われわれといたしましてはこの五箇年計画を、二十九年度はいたし方ありませんが、三十年度以降は非常な活発な勢いで、国家の助成のもとにやり遂げて行きたいと、かように念願してやまないのでございます。それにつきまして、国家の助成と相まちまして、また政府におかれましては石油資源探鉱促進臨時措置法というものを立法されまして、また業者の方の指導連絡をしていただくように目下御審議中のように伺つております。もとよりきゆうくつな監督を受けるということは普通喜ばぬところでございますけれども、大事な仕事をなし遂げる上におきましては、御監督ということもわれわれは喜んで受けまして、御指導に基いて完遂したいと思いますので、どうかその臨時措置法の一日もすみやかに国会で御成立するようにおとりはからい願つて、そうして開発が無事に進行するように御指導願いたいと思います。  なおまた、助成金の問題と表裏をなした一つの助成ということになりましようが、関税の問題につきましては、これは消費者の面、また精製業者の面、輸出入者の面というようにいろいろの御関係もありましようが、原油輸入につきまして関税の保護ということは、各国ともにやらないところはないと申し上げてもよろしいのじやないか、その立法ができておりまして、ただいま睡眠状態にありますのは、当時運賃がかなり高くて、輸入価額が相当にかさばる、そうしますと消費面についても影響が高いというようなことが考慮されて、順次施行が延引されておつたのではないかと、かように、事情をよく知りません私どもは推測しておるのであります。ただいまタンカー・レートの方は逆にUSMCをよほど下まわつておりまして、シフ価格というものは、あるいは精製上のコストというものは、その当時に比べてかなり下まわつておるのではないか。また販売価格につきましては、私どもその詳細を知る由もございませんけれども、格別タンカー・レートが下つたからどれだけ下つたというような点もはつきり伺つておらぬような気もいたします。従つてかかる機会には、関税問題ということも、無理な関税はむろんいけませんけれども、適当な関税というものをかける、そうして助成金と相まつて国内原油開発を保護するということは、今日におきましては考えられてしかるべき時期ではないかと存ずる次第でございます。国内原油の重要性につきましていろいろ教科書的に申し上げることはかえつて恐縮でございます。ただ私の念願とするところは、五箇年計画が一刻も早く達成しまして、五箇年後に百万キロリツターの生産を見、それから後は国内原油もコマーシヤル・ベースによつて、自力をもつてさらに百万キロが百二十万キロ、百五十万キロにも達するように、また厳格なコンサーべーシヨンを施行しておりますので、もしも必要の場合には国家の要請によつて、またコンザーべーシヨンを解けば、百五十万でも二百万でもできる、こういう態勢を整えさしていただいて、国内原油の採掘に従事しておるものの使命を完遂したいと思います。大体以上でございます。
  8. 中村幸八

    中村委員長 次は寺尾進君。
  9. 寺尾進

    ○寺尾参考人 ただいま御指名をいただきました寺尾進でございます。  それでは、これより、われわれ石油業に携わる者の所信を申し述べまして御参考に供することにいたしたいと思います。  まず第一に、石油の重要性について申し上げます。現代をもつて石油の時代と呼ぶことは、決して不当ではありません。かつて石炭の時代があり、また将来は原子力の時代が来るでありましようが、現代はまさに石油の時代と言えるのであります。それは近代産業の要求する迅速性、合理性、能率性、精密性等が、石油を利用することによつて、最も十分に満たされるからであります。すなわち航空機、自動車による迅速な輸送、重油ボイラーによる熱エネルギーの合理的使用、ガスタービン発電による動力エネルギーの高能率利用、機械潤滑の進歩による能率化と精密化等は、いずれも石油のすぐれた特性を活用して、初めて達成されるのであります。また、石油ストーブや石油コンロは生活の近代化、合理化を最も容易にもたらすものであります。さらに、近年の欧米における石油化学工業の発達は、薬品、肥料、溶剤、合成ゴム、合成樹脂、合成繊維等の多極多量の生産物をもたらし、現代の産業界に巨大な地位を占め、人類文化に多大の貢献をなすに至つております。  従つて、世界各国における石油の利用は最近著しく高まり、世界石油消費量は一九四一年の二億八千万トンから十年後の一九五〇年には五億四千万トンに倍増しております。この傾向は、米国のように石油資源を豊富に有する国のみにとどまらず、英、仏、伊のごとく石油資源に乏しい国においても、特に顕著であります。すなわち主要諸国の利用エネルギー中に石油の占める比率を見ますと、米国が一九二九年に石油と天然ガスを合せて二六%、一九四九年に五七%となつているのを別といたしましても、この間に英国は五%から一〇%に、フランスは三%から一〇%に、イタリアは四%から一一%、これに天然ガスを含めると一三%というように、おのおの二、三倍の増加を示しており、この傾向は今後ますます継続して、欧州経済協力機構事務局の予想によれば、一九七五年には、西欧全体として三二%に達するものと見られております。これに対してわが国は、この間に五%から四%弱に低落し、一九五二年においてようやく八O%強となりましたが、この比率は今後さらに高めらるべきものであります。  すなわち、これら欧米諸国は、戦後の経済復興の基盤として、石油を中心としたエネルギー政策を確立し、それに基き、多額の資金を投じて石油精製設備の拡充をはかり、乏しき外貨をもさいて原油輸入を確保し、それによつてエネルギー需要の増大に対応すると同時に、産業の近代化、合理化達成の有力な手段としているのであります。しかも英・独・仏のごとく石炭資源に恵まれた諸国においてすら、このような石油への依存傾向が著しいことは、特に注目を引くのであります。この事実こそ、最も雄弁に石油のすぐれたる特性、近代産業に占める重要性を物語るものであり、また産業の近代化、合理化が石油の利用増大によつてのみ促進され、かつ解決されていることを実証するものであります。  第二に、わが国石油消費の現状について申し上げます。  以上のような世界的趨勢の中にあつてわが国もまた好むと好まざるとにかかわらず、戦後の経済復興の進展に伴うエネルギー需要の増大に対応して、石油消費量は逐年増大しております。すなわち昭和二十年の二十六万キロリツターを底として、次第に上昇し、特に二十七年度は統制撤廃、精製設備の一応の整備によつて著しく増大して五百九十九万キロリツターとなり、さらに二十八年度は九百二十万キロリツターに達する見込みであります。なおこの趨勢は今後とも続くものと見られます。またわが国経済発展のためには、当然そうあるべきものであると思います。しかもこれらの石油は各方面において、それぞれきわめて、重要な役割を果しているのでありますが、その実情を昭和二十八年度の需要見込みによつて各種石油製品別に申し上げれば、次の通りであります。  揮発油については、二十八年度二百十四万キロリツターのうち、自動車用が二百万キロリツターで九三%を占め、しかもその七二%はトラツク、バス等の産業上、交通上、不可欠な用途に使われております。従つて都会における高級乗用車の増加を見て、ただちに石油消費を奢侈的とするがごときは、軽率のそしりを免れないのであります。  次に灯油は、二十八年度四十七万キロリツターのうち、煖厨房用に八〇%、農林、水産、船舶、鉱工業の産業部門に一四%で、特に煖厨房用の最近における増加は著しく、生活の改善、森林資源の愛護に大きな役割を果しております。  また軽油につきましては、二十八年度五十四万キロリツターの五五%はデイーゼル自動車用、三三%は水産、鉱工、農林用と見込まれており、いずれも国民経済上にきわめて重要な用途であります。  重油につきましては、二十八年度需要見込は五百五十万キロリツターであり、その六七%は鉱工部門用、二七%は船舶、水産用、その他が鉄道、農林部門等でありまして、いずれの部門においても石油のエネルギー源としての優秀性を発揮して、ますます生産の増強に貢献しております。  以上のほか、二十八年度には三十三万キロリツターの潤滑油、十二万トンのアスフアルト等の需要が見込まれ、これらも国民経済上、社会生活上、大きな貢献をするものと思われるのであります。  以上のように、わが国石油消費も最近著しく増大し、各方面でそれぞれ重要な役割を果しておりますが、しかしこれを世界各国の消費量と比較しますと、まだまだきわめて低い段階にあると申すほかありません。  すなわち人口について正確な資料の得られる一九五一年について、各国民一人当りの年間石油消費量を算出してみますと、米国の一六・六三バーレル、カナダの一〇・七二バーレルは別としても、英国の二・九三バーレル、フランスの二・一二バーレル等に比して日本は実に〇・二五バーレル、全世界平均一・九バーレルの八分の一強にすぎず、一九五三年にはかなり増加しましたが、なお〇・六一バーレルの低位にあります。  第三に、石油利用分野の拡大について申し上げます。以上申し上げました通り、近代機械文明の発達は、石油のすぐれた特性を利用することによつてのみ可能となつていると言い得るのでありますが、しかも石油の新しい利用範囲はますます拡大してやまず、従つて今後さらに消費量の増大が予想されるのであります。この間の事情を若干の具体的事例をあげて御紹介いたします。  航空機の発達についてはいまさら贅言を要しませんが、一例として航空旅客輸送の近況を見ますと、一九五二年、大西洋横断旅客の半数以上が空路により、また日本に来た外国旅客の約三分の二が東京空港を利用しているのであります。  さらに自動車輸送は最近署しく普及し、わが国においてもトラツクによる貨物輸送は年々増大して、昭和二十八年には実に四億三千五百万トンに達しました、これは国内の海陸貨物総輸送量の六一%であり、鉄道輸送の二億九百万トン、二九%をはかるに凌駕しております。また船舶輸送部門においては、一九五〇年世界船舶総トン数の八〇%が石油燃料とするに至つております。これらは石油を利用する輸送機関の発達が迅速、確実、経済的という要請に最もよく適応し得ることを物語つているのであります。さらに最近では鉄道のデイーゼル化、さらにデイーゼル電気化が著しく進み、一例として米国の一九五一年の国内用機関車発注台数を見ますと、総数四千百七台のうち四千七十一台がデイーゼル電気機関車であります。このような傾向は欧州でも顕著となりつつあり、わが国でも今後さらに石油の鉄道部門における需要増加が期待されす。また最近のガス・タービン機関の発達は、機関軍用、船舶用、発電用等に高能率を発揮し、広汎な利用を見るに至つております。  農業部門においても、石油の利用は広汎に進んでおります。すなわち米国の農業用トラクター使用台数は一九四五年の二百七万台から、五一年には四百二十七万台に倍増しており、わが国においても規模はまつたく異なりますが、農業機械計画の推進に伴つて、脱穀・耕耘等のため農家の所有する石油発動機の数は年々増加し、昭和二十二年八月の約三十一万台から二十六年二月には三十八万台となり、その後もさらに増加を続けております。水産部門もまた石油の重要な需要部門であり、昭和二十七年度には全国総計約十三万隻の漁船が約七十八万キロリツターの燃料油を使つておりますがこれにより多大に食糧の確保、外貨の獲得がなされたわけであります。  また家庭における石油コンロの普及は最近のわが国に見られた著しい現象の一つでありますが、現在約百三十万戸が利用しており、これによつて家庭の経済化、合理化がはかられるとともに、年間千三百万石の木材消費が節減され、森林資源の愛護、治山治水の改善に寄与しております。従つてこの傾向は、国土全方策の一環としても、大いに促進さるべきものと信じます。  以上のような幾つかの事例が示す通り、石油は多方面にわたつて重要性を増大しつつあり、従つてその需要は今後ますます増加せざるを得ないのであります。  第四は石油の有利性、経済性であります。石油がそのすぐれた特性によつて、利用分野を押し広げつつあることは以上のごとくでありますが、さらに従来わが国では統制によつて使用を抑圧されていた鉱工業の部門においても、その有利性、経済性のゆえに、著しい進出を示しております。これは最近のわが国において、重油転換の問題として注目を浴びておりますが、すでに同様の問題は一九二〇年代の米国において、また戦後の西欧諸国においても提起され、石油の優越のうちに解決されたところのものであり、わが国が現在この問題に直面しているのは、むしろおそきに失するとさえ言えるのであります。そして、これはとりもなおさず、わが国経済の復興の遅滞、国際経済水準への到達の立ち遅れを表現するものとも見られるのであります。  わが国における産業用エネルギー源の石炭より重油への転換は、昭和二十六年末ごろから活発となりこれに基く重油の新規需要増加は二十六年度二十九万キロリツター、二十七年度百十八万キロリツター、二十八年度百七十六万キロリツターと推定されております。しかも石油供給さえ確保されるならば、この趨勢は今後ますます著しくなるものと予想されます。これはまつた石油のエネルギー源としての有利性、経済性によるものであり、従つて、水の低きにつくがごとくに自然の勢いなのであります。今この間の事情を若干の数字をあげて示せば次の通りであります。  まず直接燃料費のみを見れば、石炭六千五百カロリーのもの一トン六千五百円、重油は一万五百カロリーのもの一キロリツター一万二千円とし、燃焼効率を石炭六〇、重油七五といたしますと、利用カロリー当りの価格比は石炭一〇〇に対し重油八八になります。しかもこれは電油の発熱量と燃焼効率をかなり内輪に押えた場合であります。さらに重油を利用する場合は、輸送、貯蔵が容易なこと、調節、後処理等の手数が省けること、品質が一定であること、ガス発生炉装置、微粉炭装置等の施設が不要となること等の大きな利点があり、これらによつて、あるいは人件費の面で、あるいは輸送費、設備費等の面で、多大の経費節減が行われ得るのであります。従つてこれらをも含めた燃料費全体としての有利性はきわめて大きく、これについては具体的に次のような事例があげられております。  軽工業関係でボイラーを重油たきに転換した場合の実例では、数工場を通じて、転換部分の石炭トン当り約一千六百円の燃料費節減となり、従つて転換施設はわずか一・八箇月で償却し得ることとなります。  鉄鋼業では平炉、加熱炉の転換が多く見られますが、この場合にもトン当り一千三百二十円の節減となり、二箇月で設備償却が可能ということになります。  火力発電の一例におきましては、わずかに二三%の重油混焼によつて、トン当り百九十円の節減が実現し、設備費は十七箇月で償却されることとなります。従つて混焼率の引上げ、専焼の増加は当然に考慮されるわけであります。  以上のように、重油の利用によつて、各産業部門において相当のコスト切下げが可能となるばかりでなく、特に金属精錬、金属圧延、ガラス、陶磁器、セメント製造等の部門においては、製品の品質向上により、絶大な効果を上げております。  なお、燃料の各産業原価構成に占める比率はきわめて区々であり、従つて重油によるコスト切下げの効果も業種により、企業により千差万別でありますが、これら各企業に直接的にもたらされる個別的な利益のみによつて石油の有利性、経済性を判断することはきわめて不十分であり、かつ正当な判断を誤らしめるものであります。けだし、これらの企業が利用する原材料、設備、資材動力等もまた、石油の利用によつてスト切下げがなされるのであり、これは各企業間、各事業場間における原材料、資材製品等の輸送が石油の利用によつてのみ容易かつ経済的たり得ることと相まつて、相互的、累積的にきわめて大きな利益となるからであります。さらにこれらの利益の累積によつて国民経済全体の総合的な活動力、競争力は、いわば相乗的に強められるわけであり、この意味から石油の各産業部門における利用は、わが国経済の自立と発展のために、ぜひとも促進さるべきものと信ずるのであります。  第五に石油確保の必要性について申し上げます。以上述べました通り、私どもわが国経済の自立と発展のためには、世界の大勢に従つて石油の利用増大をはかることが刻下の急務であると信ずるのであります。しかしながら、わが国石油資源はきわめて貧弱であり、現在は国内消費量のわずかに五%内外を充足し得るにすぎず、これが相当に育成強化されましても、おそらく一〇%を越えることは困難かと思われます。従つて大部分の原油は海外よりの輸入に依存するほかありませんが、この点は食糧、綿花、羊毛、鉄鉱石等と事情はまつたく同一なのであります。しかも世界の実情を見ますと、石油はきわめて豊富かつ安定した供給を約束されており、わが国が自由諸国と友好関係を続ける限り、その供給にはまつたく不安がないと言い得るのであります。ただ問題となりますのは、この石油輸入に必要な外貨の点でありますが、わが国輸入貿易額に占める石油の比率は、邦貨払いの運賃を含めても、昭和二十七年には七%、昭和二十八年には八%にすぎないのであります。  しかるに最近、石油外貨の削減、石油消費の抑制をはからんとするがごとき意見が一部にありますが、これはきわめて皮相的な見解といわざるを得ません。われわれは貿易の逆調、保有外貨の減少のみに目を奪われて、世界の大勢に逆行し、わが国経済の自立と発展の基盤を喪失し、悔いを後世に残すの愚を冒してはならないと思います。この重大な時期において、大局の判断を誤り、いたずらに消極に傾き、いわばじり貧の苦境に陥つてはなりません。何はともあれ、産業の合理化、健全化をはかり、国際競争力を強め、積極的に自立と発展とに立ち向うべきであります。それにはまず必要なだけの石油を確保することが、第一要件だと信ずるのであります。また上述のごとき石油の重要性が広く認識されますならば、これを達成することは、決して困難ではないと思うのであります。  もちろんこの外貨の使用に関しては、石油輸入原油輸入国内精製の根本方針を貫き、また邦船タンカーを増強して、運賃による外貨消費を可及的に節減し、それにより石油のために割愛される外貨を最も有効に活用することは当然の要請となるのであり、われわれもまたこの線に沿つて努力しているのであります。  しかも石油のために消費される外貨は、日本経済全般の合理化、能率化を促進することによつて、必ず輸出の増大となり、新しい外貨の獲得となつて、より大きく補われるものであります。また石油業といたしましても、かかる重大なる国家的任務を十分に担当するに足る責任と覚悟を持つております。しかもこのようにして日本石油業が確立されますならば、石油製品の東南アジア市場への輸出によつて、直接に外貨を獲得することも期待され、また遠からずして、わが国にも石油化学工業が樹立されて、その生産する化学原料肥料、合成繊維等によつて外貨獲得の上にも一層大きな力を発揮し得るに至ることを信じます。  以上、石油の問題について種々お話申し上げて参りましたが、世界の大勢と国家の将来とを広く考慮し、また各エネルギー資源の特性及び需給状態等を深く検討し、石油の重要性に対する十分なる認識を基礎とする総合エネルギー政策が確立されることを強く要望するものであります。われわれは石炭業が、わが国の基幹産業一つとして重要なる地位を占め、その消長が、わが国の社会問題としても大きな意味を有することを十分に認識しております。またわが国の自然的条件からして、水力発電が重要なエネルギー源の一つであることを当然と考えております。これらのエネルギー源につきましても、国家的見地に立つて、それぞれに適切な対策が講ぜられることは、当然かつ不可欠であると信じます。  しかしながら、それと同時に、一時の困難、一部の支障のために、世界の趨勢に逆行して、石油消費を抑制し、進展しつつある産業の合理化の芽をつみとるがごとき政策は、絶対に避けるべきであると確信いたします。いなむしろ、いやしくもわが国生産の増大、能率の向上、輸出の増進をはからんとする限り、その基盤たるエネルギー源の増強確保のため、石油の利用を増大せしめることが、唯一の合理的解決策なのであります。  この際、石油の重要性に対する十分なる認識の上に立つて、最も合理的、積極的なる総合エネルギー政策が強力に推進さるべきことを繰返し要望いたしますとともに、各位の公正にして強力なる御支援を期待するものであります。
  10. 中村幸八

    中村委員長 次は出光参考人
  11. 出光佐三

    ○出光参考人 私は出光佐三であります。国内資源については、今日はこれに触れることを避けまして、輸入石油について卑見を述べたいと思います。  時間がございませんから、言葉も簡単に率直に申し上げますが、まず結論から申し上げますと、わが国には石油政策はない、あつてもそれは間違つておる、こういうふうに極言するのであります。(笑声)それは多年の占領政策中にいろいろな政策が行われまして、非常に、力強くこれが遂行されて、日本政府としては、これに対して施す手がなかつたのであります。一昨年日本が独立しましたときに、これを少し再検討してやるべきはずでありましたが、過去の政策があまりに力強く根を張つておるために、日本としては理想的の政策を検討することが困難な事情になつてつたと想像いたします。ところで、今日のようなこういう国会の委員会においてこれが取上げられて、独立日本石油政策再検討の機会を与えられたことを私は非常に喜ぶのでございます。  それで石油というものがどういうものであるかということを考えるにつきましては、日本石油はほとんど輸入品にまつということが第一の要素でありますが、輸入品にまつ以上は、原油輸入して製造するか、あるいは製品製造されたものをそのまま輸入して、販売するか、そしてどちらがよくて、どちらが安いかということは、これをお使いになる方が選択されて、そこに初めてその結果、原油輸入製品輸入との数量が決定する。いわゆる消費者によつて石油輸入が決定される。これが私どもの言つておる消費者本位の石油政策というのであります。  その次に、第二番目には、この石油に関しては世界石油カルテルというものがありまして、非常な力を持つている。これを度外視することはできません。このカルテルは、往々にして悪口を言われておりますが、私はカルテルによつて世界の石油資源が開発され、用途が広まつて、今日の石油の殷盛を来しておるということを信ずるものでありまして、カルテルのほんとうの正しい道は、石油界の発展にあると思うのであります。ところが、ややもするとこれが市場を独占して、高く石油を売りつける。これをカルテルの邪道と私は申しておりますが、恐しい点であります。しかしカルテル本来の道は、さつき申しましたような石油界に貢献する開発にあるのでありますが、これを忘れてはなりません。  それから第三番目に、石油鉱業、製造工業というものが、ほかの工業とは全然違つた特質を持つております。それは、ほかの工業は、原料より高いものになつて行く。それだから原料をたくさん輸入して、そういう工業を起すことが国家の産業ということになりますが、石油類に限つては、原料よりも安い、原料の五、六割の値段、すなわち原料より四、五割安い燃料油というものができますから原料輸入して製品化する。原料のまま輸入することは、消費者に対して安い油を差上げるということになるのであります。従つて輸入した原料から、そういう安価なものは一切とらないで、ガソリン、ランプ・オイル、機械油というような高価なものをとつて、そこに初めてこれが工業化されるということであります。戦前においては完全にこういうことが行われておつて日本石油市場というものは、自由競争市場として、世界に誇つた市場でありました。この三つのことをいつも頭に置いて考えないわけには行かないのでございます。幸いにして、私は朝鮮、満州、支那方面で数十年石油業に携わつておりましたためにごの地方が石油カルテルの搾取にあつてつた非常に悪い場面を見せつけられておりましたから、これにかかつちやいけないと思いまして、その方法として実にあらゆる方法をとりました。たとえば、朝鮮であれば、金持ちを一番初めにつかまえた者が独占をしてしまう。満州は、満鉄とリベートの約束をした者が満州を押える。支那は陸揚げする危険地帯を押えた者が独占するというような、あらゆる方法がありますが、日本では、製油所を把握することによつて、この方法が行われつつあるのではないかという感じを持つておるのでございます。それで私の体験を申し上げて恐れ入りますが、戦前の日本石油業というものは、消費者に安いものを選ばせるという建前から日本の石油業者は全部独立の石油会社でありまして、太平洋岸に製油所を持つて、世界各国の安い原料を探した。そしてそれを輸入して製油しておる。それからカルテル会社としてはジエル会社で、スタンダードというのはあまり知られていませんでしたが、シエル会社製品としての揮発油や重油というものを安く持つて来たために、戦前においては、シエルが石油の王座を占めておつたようなわけであります。これは製品輸入の方が有利であるということを物語つてつたわけであります。しかも理想的な競争が行われたために、世界で最も安い油を使つておるということを言われておつた、うらやましい市場なんです。私はこの事情を見つつ海外に出て、搾取されておる海外の市場を見て、独占というものがいかに恐しいかということを感じまして、終戦後日本に帰つて参りましたときに、第一に私が政府に申し上げたことは、カルテルの独占にかかつてはいけませんということが第一でありました。第二番目には、太平洋沿岸の製油所を早く復興してもらいたいということでありました。太平洋沿岸の製油所は、一時GHQのESSから、スクラツプにせよという話が出たのであります。私どもはスクラツプになるのかと思つておりましたところが、それが立消えになつて、現在のようにカルテル会社日本石油会社とが昭和二十三年から四年にかけて、いろいろ提携ができまして、二十四年に太平洋沿岸の製油所を再開せよという許可が出ました。そこで初めて日本がドルをもつて、自分の外貨資金をもつて石油を買うことができるようになつたのでございます。それまではガリオアによつてもらつてつたのでありますが、製油所再開を機会といたしまして、日本外貨をもつて油を買うことになつたのであります。そのときに私どもは、消費者本位の石油政策を唱えて、外貨を与えるならば、原油製品とに公平に与えてもらいたい。そうしてどちらが安いか、いいか、消費者の方々に選んでもらいたいということを言いましたけれどもこれは採用されずに、原油のみが輸入されたのであります。それで私どもは、それならばESSの政策は、原油優先主義で、すなわち製油所を保護するのであるか、製油所は関税法によつて保護されておるのであるが、それを逸脱して、外貨の割当までも、外貨原油のみに与えて、いわゆる割当の方法によつて、製油所を保護するのであるかということをきつく質問したのでありますが、そういうことはないということを言われたのです。ところがそういうことが一年半も続きました。そうして二十六年の夏ごろ、重油が非常に外国で高くなりました。その理由は、朝鮮事変が起るとか、あるいはイランが封鎖されるとかいうようなことで重油が上つた。その機会重油輸入が認められたけれども、非常に利益の多い揮発油、機械油、ランプ・オイルというものは依然として外貨が割当てられない。それで私は、製油所保護主義でもない、原油優先主義でもないと言われておるのに、製油所を保護し、製品輸入を制限しておるということがありましたから、この事実から見まして、前に申し上げましたように、日本には石油政策はない、そうして、やつておることは間違つたことをやつておるというのです。それで何と申し上げても聞き入れられませんから日本が独立するまで待つよりしようがないというので、一昨年の独立まで待ちました。独立と同時に、今まで外貨を与えられなかつたガソリンにわずかばかりの外貨が与えられました。五千キロぐらいですが、それが輸入されるのを機会に、ガソリンは一キロ千五百円値が下ります。重油は五百円値が下り、機械油は五千円値が下る。これを総計しまして一箇年に割当てた消費量では八十億円くらいの値下がりとなつて、それだけ消費者の方は安い油を使われた。こんなことから見ても、原油と製油を自由に競争さすということが、いかに必要かということがわかるのであります。それから昨年私どもが行いましたイラン石油輸入をきつかけにしまして、あの船が入る前後にやはり揮発油が千五百円、重油が五百円下りまして、その年に揮発油は合計三千円下つておるわけでございますから、そういうことを通計しますと、百九十億円くらいの値下りになつておるということになります。それから昨年の秋、外貨が足りない、油が少くなるというような声が出ましたときに、逆に今度はガソリンが千円、重油が五百円上つておるわけであります。この理由は私どもいまだにわかりませんが、上つたことは確かでありまして、これを年間に通算しましても、七十億円くらいは上つておるということであります。こういうふうに外貨の作用が非常に石油価格に影響するのでありますから、この委員会におきましても、どうかこの外貨の取扱いに対しては、ひとつ御注意を願いたいと思うのです。たとえばかりに石炭石油についても、この間には私は早く線をお引きになつたがいいと思うのであります。そしてお引きになつたならば、かりにそこに千万トンという線が引かれるならば、千万トン以上の外貨をお充てになつておけば、少い外貨で千万トンの油が入ります。もし千万トンときめておいて九百五十万トンの外貨をお充てになつたならば、おそらく九百万トンも入らないようなことが起るだろうと思うのです。これは要するに世界の石油市価というものは、カルテルがもし邪道に入つたならば、あらゆる機会をつかまえて、値段を上げて、その市場を搾取するというようなことが往々にして行われるのでありますから、私は私の体験から見まして、外貨をお充てになるならば、十分にお充てになることが外貨の節約になると思うのであります。  それから先ほど申し上げました製品輸入によつて、百億、二百億と下つておりますが、この原油輸入がある程度を越えますと、非常に価格が高くなります。これはお手元に差上げておる表に載つておりますが、戦前、原油が三割くらい輸入されておりますときには、これが全部原油より高い機械油、ガソリン、ランプ・オイルというようなものになつておりますから、非常に価格も安く売られます。いわゆる会社の利益が多いわけですから安く売られます。これから四割も五割も安い重油をつくる。たくさんの原油輸入して、そういう安い重油をつくるというようなことをやれば、全体のコストは高くなります。従つて製品をそのまま輸入する場合と比較して、消費者は高い油を買わされる。これは非常に微妙な計算になるのでありまして、そのために内地の消費者が高く油を買わされるということは、少くもその半分はドルとなつて外国に流れて行く。時期は遅れるかもしれませんが、流れて行くということは疑いないのでございます。この点を十分にお考えつて、ドルに関しては石油カルテルというものをいつもお考えつて、そうして十分にドルを与えていただきたいと思うのであります。石炭との間に線をお引きになることは私はけつこうと思いますが、お願いしておきたいことは、政府の方針が再三ぐらぐらしておりますが、これを確立していただきたい。たしか占領中、二十二、三年ごろと思いますが、ESSのある若い役人が、重油をやめて石炭にかえよということを言うて、皆さんが設備をかえられたことがあります。ところがすぐ一年たつかたたないうちに、またそれを重油に切りかえよというようなことが起りまして、石炭に切りかえなかつた業者は非常な利益を得たというような実例もございます。それからまた昨年から一昨年、政府から重油に切りかえよ、石炭重油に切りかえて、重油消費を奨励せよという御内命がありまして、私ども業者としては各方面にこれを奨励して歩いたのでございます。ところが各方面とも、油というものはないもの、非常に少いものという欠乏感が慢性になつておりまして、そのためになかなかお使いにならなかつた。けれどもいろいろ使つてみると非常な利益があつて、三箇月くらいで設備をペイしてしまつてあと多大の利益があるというので、どんどんそれが知れ渡つて、設備をかえられたというのが昨年のことと思います。そうしてようやく設備を今盛んにかえておられるときに、突如として重油はまかりならぬ、石炭にかえよと言われて、何回かかわつております。これは国民の思想に非常に悪い影響を与えることと思いますから、これに対してはもう少し余裕を与えて、警告を与えられることが、これは私どもの責任上もぜひそうしていただきたいと思うのであります。  それからもう一つは、それでは今設備をかえておるものはいいが、かえないものには使わせないということになりますと、たとえど窯業なら窯業一つをつかまえてみまして、設備をかえておるところは非常な業績を上げる。立ち遅れたところは業績が悪化して、太刀打ちならないようなことが私は起ると思うのです。これも国民から見まして不公平な話でありますから、ほんとうはもう少し余裕を与えて、そうして線をお引きになるということが必要じやないかと思います。線をお引きになることは私ももつともと思いますが、そういう点をお考えつて、その親心をもつておかえ願いたいと思うのでございます。  それならば今後どういうふうに石油政策が行われたらいいかということでございますが、これはもう簡単なことでございます。ただ貿易管理法によつて与えられたところの為替を、原油に幾ら、重油に幾らというような品目別割当をやらずに、その為替をもらつたものは、それによつて自分の欲する油を、原油であろうが製品であろうが輸入するということにしていただけば、これはわれわれ専門家としまして、専門家の知恵を働かしまして、適当なるものを適当に輸入いたします。これは、われわれ業者政府が信頼していただかなければならないと思うのであります。ここにわれわれ業者が存在する価値があると思うのであります。為替を一本化していただけば、それでいいだけのことでありまして、実に簡単なことと思います。今まで政府としては、独立後これを一本化したいということは十分お考えになつておることと私は承知しておりますが、いろいろの事情のために、そう行かないということも私また承知しておりますから、どうかこういう委員会からプツシユしていただいて、そういうふうにやつていただきたいと思います。  最後にイランの問題でありますが、これはこのごろ議会で大分やかましいようでございますが、いつも政府の御答弁は、英国との貿易に悪影響があるからということでお答えになるようでございます。私はこれは実に心外千万と思うのであります。というのは、私が何か国際儀礼上悪いことをやつておるとか、あるいは国際法に触れておるとかいうようなことがあるならば、そういう英国との貿易に悪い影響を及ぼすと思われてもしようがないと思いますが、私はちやんと礼儀正しく国際信義を重んじてやつております。と申しますのは、この問題が起つたのは一昨年の春に英・イ紛争が起つた。そしてそれから後に、これは名前は申し上げられませんが、政府からも私にイランの油を輸入したらどうだということがありました。ありましたけれども、国際親善を無視してまでも私はそういうことはいたしませんと断つた。三、四回断りました。それが一年半続いておりますから、一年半私は英国に対して国際儀礼を重んじて来たわけです。じや、なぜやつたかということでありますが、それはイランは、その年の八月に、イランにいる英国の代理公使が公文書をもつてイランの外務大臣に、イランの石油国有化を認めておるということを言つておるのです。紛争が起つて三、四箇月日の八月に、国有化を認めますという公文書を出しておるのです。そうしてその翌年の夏に、今進行しておる、あの英国と米国とオランダ、フランスの販売会社が、あれが計画されまして、イランに油を買いに行くことになつたのです。それを私も耳に入れておるときに、一昨年の九月の初めに、朝日新聞にこの記事は出ております。向うが買いに行くならば私も買いに行つたつていいじやないかということで、十月に人をやつて、そうして翌年の二月に私の方の契約は調印ができた。向うが契約の調印ができなかつただけのことで、それは向うが悪いと私は思うのであります。それで日章丸事件が起ると同時に私は外務省に行つて、どうもこれからお手数をかけることが起つて申訳ございませんが、私はこういうふうに国際親善に対しては自分から積極的に礼儀を厚くして、かかつておりますから、もし英国大使館から何か悪い点があるということならば御注意くださいということを申し上げましたが、あれはどろぼう品であるということでした。では裁判が片づけばよろしいのでございますか、それはそうだということで済んだわけでございます。それから新聞記者その他も来ましたからそれを話しましたら、なるほどよくわかるということで、私は国際儀礼には決して反しておりません。また法律を侵したようなこともやつておりません。でありますから、今日まで私が待つた理由は、昨年皇太子殿下が英国においでになつたから、それに対して遠慮をしようということでしたのでありまして、もう一年遠慮しているわけなんです。それで日本としても、もう党々、出光のどこが悪いのか、悪くないならば許してやるとおつしやつていただきたいのです。それで私がかりに輸入しても、あの大国の英国が、筋の立たない貿易のほかの方でいじめるというようなことは私はやらないと思います。それでこのこともどうか御援助願いたいのですが、これは私のための援助じやありません。これが日本石油政策の全部を解決するかぎになると思います。私はイランそのものが目的じやなくて、日本石油政策の解決が目的でございますから、その点はどうぞお含みおき願いたいと思います。  それから、大体申し上げるようなことはそんなものでありますが、為替を一本化していただいて、自由競争の市場にしていただくということと、イランの問題を解決していただくことで、日本石油市場というものは非常に進歩して、外貨は非常な節約を見ると思います。イランだけでもバーターによつて非常な節約を来すのでありますから、この二つによつてすべては解決つくんじやないかと思います。  ありがとうございました。
  12. 中村幸八

    中村委員長 次は森平東一君。
  13. 森平東一

    ○森平参考人 私は全国石油協会の会長の森平東一であります。実はいろいろ御意見も申し上げたいのでございますが、石油に関しましては寺尾さん及びただいま出光さんから詳しくお話がございましたので、時間の関係もありまするから、簡単に私は一、二意見を申し上げたいと思います。  第一に、目下問題となつておるのは、石炭石油というものが対立関係になつておる。御承知のごとく石油がエネルギー源として最も優秀であるということは世界的に認められまして、商品そのものがとうとうとして石炭その他の燃料の分野に滲透しておる、これは世界の趨勢であります。それで、この傾向は現在始まつたのじやないのでございまして、古く戦争前を回顧いたしてみますると、第一次欧州大戦の後から重油などの販路拡張ということは、すなわち世界的に石油が余つて来た、重油生産が多くなつて来たということから日本へも外国会社あるいはその他輸入会社等がどんどん重油輸入して、販売しておりました。そのうちに、御承知のごとく日本でも例のデイーゼル・エンジンが非常に発達して来ました。また重油供給方面から見ましても、その当時蘭印産でございますが、蘭印産の南洋油田のミリ、タラカン、ここから出る油が非常に内燃機関に適当しておるというので、これが世界的に販売された。蘭印産の宝庫ともいわれておるくらいであります。そういうような関係で、日本の市場にも影響いたしまして、日本でもデイーゼル機関が非常に発達したというような関係で、デイーゼル機関に使うところの重油も非常に多かつたのでございます。またその当時鍛造用とか、あるいは鉄鋼用等の重油も、やはり石油の優秀性を認められまして、非常に多く使うような傾向になつて来た。また日本政府といたしましても、これが優秀性を認めて、鉄鋼業その他の営業部門を発展させるためには、どうしても重油を使わさなければならぬというので、その当時御承知のごとく重油に対して関税がかかつておりましたが、免税措置をとりまして非常に重油の奨励をはかつて来ました。ところが第二次世界大戦でございますか、これが始まる前から日本燃料政策というものがかわりまして、遂に重油その他の燃料について消費規正を行つたということになつたのが、回顧いたしますと昭和十三年のことと思うのであります。ところでただいま出光さんからのお話によると、重油を使い始めるとその味わいがいいものだから、三箇月間くらいの間にペイしてしまつて、ますます重油を使う傾向が多くなつて来た、まさしくその通りであります。ところが戦争前はどうかと申しますと、決してそんなような状態ではなかつたのです。なるほど重油の優秀性は認められておりましたが、価格の点において、石炭を使うのとあまり大差はなかつたのであります。私も第一線において重油の販路拡張に奔走しておりましたが、そのときにおきましては、要するに重油を使えば、鉄鋼にいたしましても、あるいは鍛造用にいたしましても、その製品が非常にいいものができるというところに重点を置いて重油の販売策を講じておつたのであります。それで現在のように、簡単に転換ができなかつた。ところが現在は、消費者みずからが進んで転換をして参るようになつたのでございます。ということは、何事であるかと申しますと、私は問題は石炭にあると思うのであります。御承知のごとく日本石炭は世界中で一番高いといつてもいい。アメリカの石炭と比較すると倍もする。また欧州方面石炭と比較いたしましても値段は倍しておる。これがすなわち非常なネツクになつておる。もし石炭価格というものが安くあつたならば、おそらく重油が非常に優秀性を持つておりましても、今日のように容易にその転換はできるものではないと思う。そこで重油石炭が競合しておるのでございますから、問題は石炭にある。よつて石炭産業というものに対してもう少し政府におかれても、また民間の経営者におかれても、十分これを研究して、石炭のコストを下げるということに重点を置かなければならぬ。御承知のごとく、日本においては石炭はまだ相当に埋蔵量がある。この石炭をわれわれが使うということは当然のことであります。またせつかく日本にあるものでありますから、これを使うということは当然であります。外国から高い金を出して重油を持つて来るまでもないということになるのであります。けれども要は石炭の値段が下らなければならぬ。安くならなければ使えないということになる。そこで私、せんだつてでございますが、経済審議庁の調査によりまする日本経済自立計画の中間報告の中に、燃料の問題があります。それを見ますると、日本石炭というものは年間四千万トン、これはすなわち経済点である。これ以上出すと、結局石炭の値段はますます高くなる、こういうことが書いてある。ところがこの間新聞で見ますると、石炭業者の方からのお話によると、この際ますます多く出す。ただいま四千五百万トン、あるいはそれ以上出せば値段が安くなるというのでありまするが、これはどちらがほんとうなのかどうかということは、私ども石炭業者の方はよくわからないのでありますが、そういうぐあいに考えて参りまして、はたして石炭の経済出炭量というものが四千万トンであるならば、そのくらいに石炭の出炭量を押えまして、そこに線を引いて、それで熱源として足りないものは、最も優秀なる石油を、外貨の事情の許す限りどんどん輸入されたらどうかと思うのであります。そうすれば、その結果として熱源のコストは安くなる。従つて輸出商品の値段も安くなる。すなわち輸出振興に非常に役立つという結果になるのだろうと思います。そこでこの燃料国策と申しますか、御承知のごとく終戦後熱エネルギーといたしまして石炭が足りないというようなことから重油の使用を非常に奨励して参つたのであります。そこで、ただいま申し上げたように、大分優秀性を認められてどんどん転換して、二十八年度においては石炭にして約五百五十万トンないし六百万トンくらいの転換があつた。こういうわけであります。そうしたところが日本政府におかれては、これは困つた石炭産業がつぶれてしまう、よつてこの際石油輸入を抑制して、そうして再び石炭に方向をかえろというようなお話があつた。これらを考えてみると、まことに日本政府のやり方は無定見ではないか、過去の世界的の石油の動き、それから日本外貨状態その他を見ると、これは明らかなのであります。われわれは二、三年前に経済安定本部で重油勧奨の問題があつたときに、おそらく今日あることを予期しておつた。実はこうなるだろうと思つた。われわれのごとき貧弱な人間がそう考えているのですから政府の要路にある方々はもう少しこういう問題を真剣に考えなければならぬと思う。実際、いまさら再転換するということはたいへんです。数十億の金を投下しておる。そこでこういう問題について私の意見を申し上げますと、日本国にいわゆる総合燃料国策というものの確立がないということです。まことに貧困である。そこで今回衆議院の通産委員会燃料総合対策に関して小委員会を開いて研究なさるということで、非常に私どもは喜んだ。どうかこういう会を強力に推進されまして、日本の総合燃料国策というものを一日も早く確立されんことを要望してやまない。こういうふうにいたしますれば、重油転換の勧奨をやつた、三年後には、今度また方向転換して行くということは、おそらくなかつたのではないか、いうこうことが非常に必要である。それからなお関連いたしまして思い起すことは、戦争中でございましたが、石油の問題がうまく行かないというので、岸さんが商工大臣であつたときでありましたが、石炭燃料研究会というものができた。その構成は、その当時の貴衆両院の議員各位、それから学者並びに業界、それから消費者の方の石油に関する権威者、液体燃料に関する権威者を集めまして、液体燃料研究会というものを結成して、そこで時々重要な問題を検討いたしまして、政府の方に建言をし、また政府の方からもそのときのいろいろな重要問題につきまして諮問があつた。それに対して研究して答申をいたしたのであります。こういう会があつて、初代の会長は俵孫一氏、二代目が左近司政三氏で、戦争中こういう研究会が政府の外郭団体といたしまして相当に役立つた。でありますから、こういう機会にそういうようなものをお立てになつて、そして衆議院のこの通産委員会燃料委員会等の補佐役を勤めるということも必要ではないかということを提言したいのであります。  それからもう一言申し上げたいことは、御承知のごとく石炭が大分問題になつておるのでありまするが、何しろ石炭日本の唯一の国内資源であります。この資源を活用するということは非常に大切である。御承知のごとく、昭和十二年でございましたが、人造石油国策五箇年計画というものが立てられまして、それで国費四億円を投じて人造石油の研究及び例のいろいろの人造石油会社を設立して、人造石油製造に邁進した。それで戦争の末期までには相当の成果を上げたのであります。それでガソリンまでできるようになつた重油相当にできる。各石油製品がこの人造石油によつてできたのであります。ところが終戦後はぱつたり声が絶えてしまつて、何もなくなつてしまつた。ところが御承知のごとくドイツにおいては人造石油相当に発展しておる。最近入つて参りまするところの自動車などを点検いたしますると、人造石油によるガソリンを使つた形跡がある。こういうようなわけでございまして、しかも四億円――戦争前の四億円といいますと、現在にすれば相当の金であります。その金を費していろいろ研究したそのデータがまだ残つておる。技術者も残つておる。こういうわけでありますから、あるいは人造石油に適当な石炭がないというようなこともあつたかもしれませんけれども、決して人造石油をつくることが不可能ではないのであります。しかも現在まだそのときの計画によるところの技術者も残つておる。また計画によるデータも残つておる。それを生かして、この人造石油の研究機関というものを設立することが必要ではないか。先ほど田代さんのお話によりますと、天然資源開発にあたつては、政府におかれまして一億三千万円の助成金を出されたことはまことにけつこうなことであります。これをますます推進し、地下にある石油資源を探求して役に立たせることも必要であると同時に、今問題になつておる石炭を浮び上らせるために、人造石油の研究機関を設立して研究して行くということも必要ではないかと思います。これだけを申し上げまして終ることにいたします。
  14. 中村幸八

    中村委員長 以上で各参考人よりの御発言は終りました。次いで質疑に入りますが、この際参考人各位に念のために一言申し上げておきます。御発言のときには、その都度委員長の許可を求めることに御了承願いたいと思います。なお速記の都合もございますから、御質疑はなるべく簡単にお願いしたいと思います。
  15. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 時間の都合で、かいつまんで御質問申し上げますから、ごく簡単にわかりやすくひとつ御答弁をお願い申し上げます。  まず寺尾さんにお尋ねを申し上げます。お話によりますると、石油というものは自由競争ができなくて統制されているというようなお話を承つておりますから、どういう意味をもつて統制されているのかということが一つと、またそれに伴つて、もし自由競争をするならば、どういうふうな方法をとつたならば自由競争が行われるであろうかということを伺いたいと思います。  それからもう一つ伺います。今度は出光さんに一点伺いたいのですが、石油外貨は、原油とか軽油とか重油とか、先ほどおつしやつた通りの五品目に分割統制をされている、こういうことです。これは石油外貨を一本化すれば、原油製品いずれとも自由に最も有利な方法になるのではないかとのお説でございます。そこで、原油製品というものを自分の選択によつてつて来れば自由選択ができるということは、少し私たちの考え方と違うようにも考えられるのですが、ここに自由競争が行われて、消費者は安くてよい石油が使われることになる。なお輸入業者石油輸入は認められないというようなお話を承りますし、製油業者には原油のほかに製品輸入が認められているという、製油業者原油とそのほかに精製したものを持つて来られる、但し輸入業者原油を持つて来ることはできない、こういうようなことを承つていますが、この点についてのお答えを願いたい。  まず寺尾さんからお願い申し上げます。
  16. 寺尾進

    ○寺尾参考人 ただいまのお尋ねにお答え申し上げますが、私が先ほどの説明の中で、何か石油が今統制されておるというようなことを……。
  17. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 いや、そういうふうに聞いていますが、どういう意味ですかとお聞きしたのです。
  18. 寺尾進

    ○寺尾参考人 それはおそらく石油が最近までほかの物資に遅れて、一昨年ごろまで統制をされておつたということを申し上げたのでありまして、現在統制されておるという意味で申し上げたのではないのであります。
  19. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 では出光さんにお願いします。
  20. 出光佐三

    ○出光参考人 製油所には原油が許可されるのは当然ですが、原油のみが許可されたときには、私ども製油所を持たない者は、競争相手である製油所に油を買いに行つた、そして買つて競争したというような、非常におかしい非常識なことが一年半ぐらい続いたのです。ガソリンに対しては終戦後、日本独立までそういう形が続いて、敵側である競争者から油をもらつてどもは競争者と競争しなければならぬというような不合理が続いたのです。それから製品輸入の場合は、それは私ども製品輸入しますが、今度は製造業者の方にもその割当があるわけです。従つて油業者の方からは、輸入業者は何ら買いに来られるチヤンスはないというように、非常にその当時は不公平があつたのです。それだから、これを言いかえてみますと、製品輸入輸入業者にまかす、原油輸入製造業者にまかす、こういうふうになつたらまだ幾らか公平かと思つております。
  21. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もう一点、石油外貨の一本化について伺いたい。
  22. 出光佐三

    ○出光参考人 これは私考えるのは、不法というようにも考えますけれども、不法というのは不適当かもしれませんが、不当とぐらいは言えると思います。というのは、占領政策中、物資調整令というようなものがあつたと思うのです。初め貿易管理令によつて石油にかりに一億ドル、米に何億ドルというふうな外貨が与えられておる。その石油に与えられた外貨というものは、これは製品に与えられたと思うのです。各省から集まつて来たものは製品の要求であつて、おそらく原油の要求は私はなかつたと思うのです。それだから、貿易管理令できまつておる外貨のもとは製品である。ところが占領中物資調整令によつて、さつき言われたように原油、揮発油、重油という品目別の割当が出た。それで初めは原油のみに外貨が与えられた。それから重油、揮発油と、こう与えられて来たのでありますが、その物資調整令というものは日本が独立すると同時に自然消滅しております。でありますから貿易管理令だけが残つているのでありますが、これは製品をもととするのではないかと思うのです。それでありますから製品をもととして割当てて、しかる後にこれを原油にどうかえるかということを二度やられなければならないのじやないかと思います。ところが貿易管理令の外貨の中に、原油そのものが割当の標準になつておるわけであります。このことを申し上げます。
  23. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 寺尾さんにもう一つ伺いますが、統制というと非常に言葉が聞きにくいでしようが、国際的カルテルというような方から、強力な価格によつて日本国内価格に圧迫を与えられているというようにも私は感じますが、その点についての私の先ほどの質問なんですが、要するにカルテルの方からそういうふうに強制的にやられているのじやないか、こういう問題が一つ。それから中東では原油が安くて、重油というものが割高になつているようだと聞きまして、安い原油輸入して精製した石油国内価格はどういうふうになつているかということ、中東から高い重油を買つて輸入した輸入業者の値段と同じで販売ができているかいなや、もし同じだとすれば、製油業者の利益というものはその価格の相違だけでも非常に莫大な利益を得るという計算になるのでございますが、そういう点について簡単でけつこうですからお答え願いたいと思います。
  24. 寺尾進

    ○寺尾参考人 最初のお尋ねにつきましては、お尋ねの趣意は何かカルテルというものが日本に存在している関係から、ある意味での値段その他について圧迫を受けていないかどうか、実質上統制価格のようなことになつておりはしないかというお尋ねだと思います。私どもの信じておりまするところでは、やはり各外資と提携しておる会社がありまして、それがおのおの自由競争の形で競争しておるのであつて、特にその間に申合せその他何か強制的の仕組みがあつて、自由に値段の決定をすることかできないというふうなことにはなつておらないと思います。
  25. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 中東からの高い油と重油と比較して、おわかりになりませんか。
  26. 寺尾進

    ○寺尾参考人 中東から入れております原油は、これは何と申すか、その他のアメリカあたりから買います原油に比べまして、お話の通り非常に安いのです。七千円程度のものであります。それが安く入るから、それから生産したものもあつたようでございますが、この点、現在の値段が高くつき過ぎていないかという御趣旨ですか。
  27. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 中東は、重油が高くて原油は安いのです。その高い重油を買つて来たものと、安い原油を買つて来て重油をつくつたものと、同じ値段で売られているやいなやということです。同じ値段で売られているということになると、たいへん問題があるわけですが、その点はどうですか。
  28. 寺尾進

    ○寺尾参考人 これは重油といいましても、その中でいろいろ種類その他がございますが、一番重油の中でも安いものがあるという、お尋ねの御趣旨はどこにあるのでしようか。
  29. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 こういうのです。実は中東の方面では原油は安い、重油は高い。その高い重油を買つて来るということになる。そこで中東から高い重油を買つて来たものと、安い原油を買つて来て、こちらで製油した重油との値段というものが、同じに売られているのか、こういうことです。同じように売られているとすると、製油会社はそこに莫大な利益が浮び上つて来るということになる。その利益はどのくらいか、あなたの会社の内容を調査するわけではございませんが、莫大な利益があるであろう、こういうわけであります。
  30. 寺尾進

    ○寺尾参考人 実は売値のいかんによつて会社が非常に莫大な利益を上げているかいないかという点につきましては、御承知のように、これは同じ原油から出ました製品について見ますと、いろいろの種類の製品があるわけです。そのときどきの品種別の製品によつて需要関係から、非常に高いものもあり、また安いものも出て来るわけであります。全体として、石油をどの程度に採算に合わして行くかという問題でございますから重油もしくはその他の一つの品種をつかまえて、それで全般的に高いとか安いとかいうことも、必ずしも言えないような関係ではないかと思うのであります。
  31. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 そこでもう一つ伺いますが、そうなつて来ると、中東の原油の値段が、たとえば一バーレル当り一ドル九十七セントとしますと、重油の値段は一バーレル当り一ドル八十五セントという国際標準価格というものがあります。そこで本国内重油の販売価格は、製油業者の値段も、輸入業者の値段も大体同じであろう、こういうふうに私は考えます。そこでこれは日本の製油業者のコストが――つまり安い原油を持つて来ても、高い重油を持つて来たのと同じ値段で売られるということになると、製油業者というものがコスト高になつているのか、それともよけいもうかつているのか、こういうことを伺いたかつたのでございます。もうかつたということを言うのはおいやでざごいましようが、いずれにしても、われわれの感覚から行くと、暴利と言うと言葉が過ぎますが、私たちのそろばんで行くと、もうかつておりはしないかという推測ができるわけでございます。これはまあ御答弁はよろしゆうざごいます。  そこでもう一つ伺わなければならないのですが、まず昨年の秋以来非常に安くなつていると私は思うのですが、原油そのものも安くなつているであろう。御承知のようにタンカーは二〇〇%から現在はただの六〇%に落ちている。こういうような点からいうと、原価計算というものは、石油原価は非常に安くなつておりはしないかと思う。ところが国内では、逆に昨年の十一月から安くなるのと反対に、あなた方の方が二回の値上げをした。二回の値上げをすると同時に、それ、持つて来いというので、小売業者が倍の価格にしてしまつた。こういうことです。みんなあなた方がもうかつているという意味ではございませんけれども、そういうような大暴騰をしている。そこに大きな矛盾を来します。先ほどあなたがおつしやる通り、石油というものは、日本というこの国全般から見ても、世界から見ても非常に重要物資でございます。この重要物資をかくのごとく高い値段で販売さしておくことがいいか悪いかというところに、私たちの役目があるわけでございます。それを政治の上に立つて、これをいかにさばくかというのがわれわれの役目でございます。あなた方は企業でありますから、企業が営利を目的とすることは、法律が認めておるのですから当然でございます。しかしこれが無法な事態になると、そこに制肘を加えなければならぬというのが、私たちの先ほど申し上げた役目なんです。こういうことになりますので、国内石油価格がかくのごとく暴騰している現実を見るときに、あなた方はどういうふうにお考えになるか。何ゆえにかくのごとく暴騰したかというその原因を明らかに、はつきりとひとつ、これだけは、簡単でよろしゆうございますから、お示しください。
  32. 寺尾進

    ○寺尾参考人 ただいまのお尋ねについてお答えいたしますが、石油という物資の性質から考えましてわれわれ精製業に携わつておるものといたしましては、これは仕事がきわめて公益的の性質を持つた仕事でありますから、今お話になりましたように、かりにわれわれが暴利をむさぼつておるということであつては、まことに相済まぬと思います。われわれといたしましては、平素十分自戒いたしまして、さようなことに反したような販売の値段をもつて消費者に売りつけるというようなことがないように、十分反省いたして行かなければならぬと思うのであります。ただ御了承願いたいことは、石油精興業といたしましては、これは御説明を申し上げるまでもなく、設備資金その他に非常に莫大な資金を要する産業であります。終戦後まだ幾らもたちませんけれども、その間にも、空襲ですつかりやられたものを建て直しまして、今日まで精製業を発展させて参りましたのにつきましては、相当な設備資金も必要であつたわけであります。昭和二十四年に再開いたしまして、二十六年までに復旧だけでも八十億くらいの資本投資と設備をいたしました。さらに昭和二十九年、来年度の終りまでには、大体三百二十五億くらいの相当莫大な資金を必要とする。これらのことをやりませんければ、海外の非常に進歩した精製業に負けないように、能率を上げ、合理化をして行くことができないのであります。ある程度の利益をいただくということは、その意味からつても、これは御了承を願わなければならぬことだと思つております。もちろん御趣意に沿うような点については、十分業界といたしましても、自制いたすのが当然のことと考えております。
  33. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 私たちは、そういうふうにもうけたのはいいのですが、大体三百二十五億というような金は、これは私たちの計算から言うと、いずれにしても浮いてしまうのです。ところが会社経営そのものの資本と設備の関係は、設備へ利益から充てるという、国民犠牲においてその設備に充てるということは許されません。これはまことにあなたに対しては申訳ないけれども国民に今のような価格で販売をしておいて、その利益からこれだけのものを設備に充てさせるということは許しがたいことでございます。資本は別でございます。資本形態というその中に、利益だけを取上げて、それをぶち込んで行くということは、これはまあ議論になりますからここではやめますが、これはちよつと認めるわけには参らないと思います。幾分なりとも、資本を設備の償却に充てるというならば、当然見なければなりませんが、新しい設備に莫大な利益を上げたものをかけるということは逆でございます。こういうことは、ちよつと私にしますと納得が行かないのであります。ところで出光さんにもう一回だけお伺いいたします。どうも出光さんのおつしやつていることと私はちよつと違うように思うのであります。現在日本の製油所は多過ぎるようにも私は思つております。  ところで出光さんが徳山製油所の計画ということを考えておるということを私は聞いておりますが、そうなつて来ると、出光さんの徳山の製油所の計画ということは、あなたのお考えと少し矛盾がありはしないかと思いますが、いかがですか。  それからもう一つは、出光さんは国際石油カルテル以外の安い石油類をどしどし輸入し得るように述べておられるわけですが、今日の世界の石油は、ほとんど国際カルテルの支配下にあると私は考えるわけでございます。この点について出光さんはどういうふうにお考えになつておられるのか、この二点をお伺いいたします。
  34. 出光佐三

    ○出光参考人 徳山製油所は、御説の通り、私としては非常に矛盾した行動をとつております。これは私が四日市に製油所を出願したときに、やはり呼び出されまして、私の意見を聞かれたとき申し上げたのですが、さつき申したように、製油所を持たないために、製油所側にわざわざ油をもらいに行かなければならなかつたのです。そして自分が売る。それではもう商売は成り立ちません。それでこれはどうしてもしようがない。原油のみが輸入されるならば、製油所をつくらなければならぬということで、自分の方針には反しますが、政府の方針として原油のみを輸入さすということであるから、製油所の計画を思い立つたわけであります。それともう一つの理由は、四日市のときに申し上げたのですが、製油所は全部外国資本が入つておる。それで私は国際カルテルと相反した行動をとつておりますから、製油所を日本のインデペンデントの会社として、外国資本に関係のない製油所を持つということは、国際カルテルと闘う意味において必要であるということを私は言つたのです。その二つの理由で、私が製油所を出願したわけなんです。  もう一つカルテル外から買えるかという問題ですが、これは先ほど申しますように、カルテルというのは悪いことをするんじやありません。戦前は、カルテルが世界水準の油を持つて日本供給して、日本石油市場を発達せしめたわけであります。それでありますから、カルテルからも今買つておりますし、カルテル外からも買つております。今のところでは、アメリカのカリフオルニアの油は朝鮮事変のために非常に値が上つておりましたけれども、朝鮮事変が下火になると同時に、どんどん下つております。今年あたりは相当値が下ると思います。それからまたメキシカンガルフの油、ヴエネズエラの油なども下りましたから、近くそれをとりに行こうと思つております。それからイランが出て来れば、カルテル外であります。カルテル以外から買うこともありますが、カルテル会社と提携して、日本に安い油、世界水準の油を持つて来たいというのが私の希望であります。
  35. 森平東一

    ○森平参考人 ただいま価格の問題につきまして大分きつい御質問でありますが、その中に、精製会社は大分もうけているんじやないか、またお言葉の中に、小売業者側は倍もの値段にしたというふうなお話があつたんですが、これはまことに心外千万なんです。御承知のごとく、それは今は自由経済でございますから、ないものは高いということは当然なわけであります。それで少し販売業者がもうけたというのは、昨年の十一月ごろからです。石油こんろの燈油が非常に少かつたために、仮需要というものが起つて、燈油がひつぱりだこになつた。それで幾分か業者がもうけたということはあるのです。でございますが、その値段が倍になつたなんということは全然ないのであります。かりに元売り業者が千円上げたならば、千円上げたその倍ぐらいはもうけたということは実際にあり得るのであります。そのくらいの倍なんです。それから小売業者がうんともうけておるという問題ですが、これはひとつ誤解を解いていただかなくちやならぬと思うのであります。要するにマル公時代があつたんですね。あの統制時代です。ところがマル公時代におきましては、要するに生産第一主義であります。物をつくればいいんだ、あとは統制によつて配給して行くんだから、自然に物はうまく流れて行くんだ、よつて配給の方面に対するエクスぺンスというものはできるだけ圧縮しろというのが、時の政府、物価庁の方針であります。今ここに川上さんもおいでになるようでありますが、私どもは常に適正なる販売方策を要求したのです。ところがいつも半分くらいに減らしてしまう。そうしてマル公だ、マル公だといつておつつけてしまう。そうして販売業者は実際泣いてしまつたんです。統制時代に実際もうからない。数量は少い。それで経営がやつと成り立つ程度の口銭を与えておつた。これが失敗すれば、価格も高くなり、低物価政策にも反するというので、大体半分ぐらい削つてしまつた。そういうような状態であつたのが、統制が撤廃された以後は、いわゆる自然主義によつて自由販売になつた。そこで需要供給関係によつて、自然価格というものが形成されたというわけです。そこで今、燈油のごときはそんなに足りなくなかつたのだけれども、足りない足りないとあまり騒ぐもんだから、新聞などもずいぶん書き立てた。ですから予期しない思惑が起つたのです。思惑によつて、ひつぱりだこだつたものだから、結局一カン千円もしたというところもあるだろうということは、実際にこれは認めます。認めますけれども、これは全部ではない、ほんの一部です。その一部をとらえて、そう誤解されては困ります。  なお、販売業者は非常に弱い立場にあるのです。それで販売するにあたつてつまりいろいろサービスをするところがあります。たとえば容器を貸すでしよう。ところがその容器の賃貸料をとれというけれども、なかなか消費からとれない。配達賃もとつていいというけれども、配達料もとれない。これはサービスになるのです。そういうものをサービスすると、結局口銭というものは幾らもない。それでなおかつ御存じのように現在のデフレ政策が滲透して来まして……。
  36. 中村幸八

    中村委員長 時間がございませんので、簡潔に願います。まだたくさん質問者がございますから
  37. 森平東一

    ○森平参考人 はい。タクシー業者なんか毎日倒れてしまつておる。そういうのが販売業者に毎日々々買いもどしとか何だかだといろいろ騒いでおる。おそらくこんな状態を継続したならば、販売業者はみんな倒れてしまう。こういうような状態ですから、小売業者がうんともうけておるという頭をひとつ切りかえてもらいたい。これはぜひお願いいたします。
  38. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 統制時代の悩みは、石油業者ばかりではございません。国民ひとしくそれは身にしみたことでございまして、石油業者だけに統制があつたということではございません。従つていろいろなお話もありましたけれども、そうとは思われません。ことに十月から十二月の状態について、もし御用であるならば受取証をごらんにいれます。倍の価格ではないとおつしやるあなたに、はつきりと、石油を売つた販売店の所をお示しします。まあこれは議論をしようと思いませんから、申し上げません。  そこで安西さんに伺いたいのは、私はこういう考え方を持つておるのでありますが、安西さんはどうだという判断を下していただきたい。私は今の通産省の案の、総合燃料対策というものには満足をいたしません。従つてこの重油あるいは石油という問題にも触れるでしようが、石油政策というものを大きな問題として見ると、今の政府考え方は、大体暖房とか、おふろとか、こういうものには規正をしようという考え方でございます。逆に私はこういうものは十分使わすベし、燃料政策の一環として考えるのであるならば、重要工業というか、廃業というか、こういうものには石油でなくて、石炭を使わすべし、そこで一般の小規模な家庭用というようなものには、全部重油を使わすべしというのが私の考え方でございます。燃料の総合エネルギーの対策というものは、かくして進むのがいいんじやないかと私は考えます。これにはまだ私たくさん言いたいこともありますが、時間もないし、あとたくさん控えておりますから申しませんが、そういう点を私は考えておりますが、あなたの御見解をひとつ示してもらいたい。あなたの瓦斯会社をそうしろというのでございませんが、社会全般を見たときにどうだという考えをお示し願いたい。
  39. 安西浩

    安西参考人 長谷川委員殿の御質問の要旨が、ちよつと私頸が悪いせいかわからなかつたのでありますが……。
  40. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 言い直しましよう。私は通産省で考えている燃料政策というものは、たとえば石油の面になりますと、石油を暖房用に使うとか、浴場に使うとかいうことを今度規正して使わせない。日本には重要産業があるから、その重要産業の上にそれを振り向けるという考え方なんです。私の考え方は逆で、重要産業と称するものには、国内にある安定した石炭を与えなさい、そして外国からつて来る石油は不安定だから、それを家庭全般に使うよう指導するのがいいんじやないか、こういう考えであります。これに対してどう考えられますか。
  41. 安西浩

    安西参考人 まつたく委員殿と同感でございます。
  42. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 関連して……。さつき私ちよつと中座しておりまして、どういう議論をされたか十分知らないで今入つて来たのですが、値段は高くない、もうけてもおらぬ、こういうようなお話をしておられたようです。実は払は非常に高いと思つているのです。というのは、御存じと思いますが、フランスでは原油関係には輸入関税を一〇〇%かけております。そして値段はトン九千円、イギリスも相当関税をかけておりますが、これが七千六百円。西ドイツは一四五%の輸入関税をかけておりますけれども日本よりなお安い。日本は無税で、税金を一銭もとつておらないのに一万一千六百円くらいから一万四千円、その間で大体売つております。これは日米合弁というか、外国資本の方がもうけておるのですか、日本の油屋さんの方がもうけているのですか、これをちよつと聞かしていただきたい。
  43. 森平東一

    ○森平参考人 ただいまのお話の一万一千六百円ないし一万四千円というのは、重油のことですか。
  44. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 重油です。原油も向うよりずつと高いのです。
  45. 森平東一

    ○森平参考人 ただいまあげられた価格は、重油の値段でございましようかと思いますが、大体それに当てはまるものは重油だと思うのですが、つまり非常に価格が違うんです。御参考に申し上げますと、現在の揮発油の売値は一万一千四百円くらいで、ガソリンのごときは二万五百円というのが元売り業者の販売値段になつております。というのは卸価格ですが、燈油は二万円、それから軽油が一万六千円、A重油が一万二千五百円、B重油が一万五百円というのが、現在の元売り会社の販売価格であります。すなわち小売業者の買値、仕入れ値段であります。この値段を平均してみるといいのですが、これもなかなかちよつと平均価格が出ないのであります。例にとつてみると、ただいまの御質問は、重油価格に該当しておるようでございますが、重油価格に御質問の値段を当てはめてみますと、御質問の点は若干当てはまつておるようでございます。現在の小売価格を見ますと、A重油が一万三千円ないし一万三千五百円、これが重油の小売価格でございます。B重油は一万八百円というのが小売価格でございます。この値段は、御指示になつた価格がどこに当てはまるのかわかりませんが、かりに重油といたしますれば、重油の値段がこれこれだということになりますと、若干日本の方が英米より高いということになります。かりに今お話の一万一千六百円というのがB重油であれば、日本では今小売価格は一万八百円、それから重油の方は一万三千円から一万三千五百円、そこで今のお話のが一万四千円くらいとすると、少し高いということでそんなに高くないのであります。
  46. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 小売価格ということになつて来ると、いろいろ今おつしやつたようなことも出て来るのですが、これはあなたよりも寺尾さんの方がおわかりでしようが、今私の質問に対しては、外国資本でやつている日本の方が、イギリスなり、フランスなり西ドイツよりずつと高い。しかも向うはそういう非常に高い輸入関税をとつておるのに、トン当りの値段は安い。日本の方は無税にしておるのに三割も四割も高い。そういう関係ですが、これは外国資本の方がもうけておるのか、どつちがもうけておるのか、その辺の調査はあなたの方でおわかりになつているのでしようか。おわかりであれば、ひとつ教えていただきたい。
  47. 寺尾進

    ○寺尾参考人 どうも私は値段の方ははつきりいたしておりませんが、今のお話の重油の値段というのは、それの比較は輸入重油ですか、輸入を含んだものでございますか。
  48. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もちろんそうです。
  49. 寺尾進

    ○寺尾参考人 そうすると、当然そこに運賃というものが加わつて来るはずだと思うのですが。
  50. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 運賃の関係は、あるいはフランスにしても西ドイツにしても、なるほど所によつて日本より運賃がずつと安いところがあるが、フランスのごときは一〇〇%、西ドイツは一四五%も輸入関係をとつておるのに、売値はなお今申し上げたように安い。しかし船賃を計算するとそれでもてんで問題になりませんが、どういう点にあるのでしようか。日本石炭が高いから、なお無税にしておるから日本には相当高く売つてもいい、日本燃料と比較すると相当高く売れるのだ、こういう考え方で暴利をとるつもりでそんなに高く売つておるのでしようか、どうでしよう。
  51. 出光佐三

    ○出光参考人 私の知つていることをちよつと御参考に申し上げます。アラビアの重油の値段を申し上げますと、戦争後二十四年ごろはバーレルードルだつたのです。それがあと一年くらいしまして六十八セントまで下つております。そのとき原油は一ドル七十セントだつたと思いますが、それだから五〇%程度で、六十八セントというのは三十数パーセントくらい下つておるのですね。ところが現在は、先ほどお話があつたそれじやないかと思うのですが、原油重油と同じくらいの値段になつて重油が一ドル八十五セントくらいになつているのです。それで六十八セントくらいの重油輸入したときは非常に安く売れたのですね。今は一ドル八十五セントになつていて、四、五百円高いということになる。それもありますが、今のアラビアの重油の値段が不合理に上つているということですね。それを日本が持つて来ておるということです。それだから日本重油は高いかもしれません。それから向うの値段が、あるいは前の一ドルくらいで売られているのではないかと思いますが、私の感ずるところでは、そういうわけで、日本では高く売られて、向うでは安く売られているのではないかと思うのです。
  52. 中村幸八

    中村委員長 通告順がありますから簡単に……。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 日本は御承知のように、昭和二十六年に原油につき一〇%関税をかけることが、補助燃料というような意味で停止になつているのですが、それがまた今度とつてもいいことになるのですね。これはまたわれわれの意見になりますが、一〇%くらい輸入関税をとつても、外国の税のとり方あるいは値段と比較すると、消費者にちつとも負担をかけないで販売され得るものだ、われわれはこういうふうに考えておるのですが、あなた方の方では、停止になつている一〇%の輸入関税をとられたら、ただちにそれが販売値段に影響するものだ、また影響するからつまりただちに値上げをせねばならぬというわけでしようか、どうでしよう。
  54. 寺尾進

    ○寺尾参考人 これは実は考え方の根本に触れて来ると思うのですが、日本の関税が現在どういうふうになつておるかということを申し上げてたいへん恐縮ですが、一般の原材料、たとえば石炭であるとか、鉄鉱石、燐鉱石、綿花、羊毛、ゴム、こういうふうな重要原材料は全部無税になつているのであります。先ほどからいろいろ説明の中でも申し上げました通り、今日石油はエネルギー源として最も重要なものでありまして、火力発電なりあるいは一般鉱工業なり、あるいは水産、農林業あるいはまた海陸の運輸関係なり、一切の基礎原料になるものでありますから、これに今関税をかけるということになりますれば、その負担は結局消費者に転嫁されざるを得ないと思います。今日内外ともできるだけ低物価政策で行かなければならないときに、こういうものに関税をかけるということはよほど問題ではなかろうかと私どもとしては考えております。御承知の通り日本原油生産量は、出光さんの御説明によれば、今後の増産に十分努められるではありましようが、現在の自給率はわずかに一〇%で、あとの九割というものは全部外国から入れて来なければならないわけでありますから、それに負担をかけるということはよほど慎重でなければならぬ。ことに御承知のように、ガソリン税というものがありまして、一キロリツトルについて現在一万一千円の課税がなされておりますが、これをさらにある程度税率を引上げるということになつております。これに対しては関係業界においてそういうことのないようにいろいろとお願いを申し上げておるのです。今大蔵省で二十九年度税収として二百三十七億というものを見込んでおられるのでありますが、その上に持つて参りましてさらに原油に課税をするということになりますと、さらにその上に六十億余りのものが加算されて、結局三百億ばかりのものが石油の方の負担になるわけでございます。これはなかなか容易ならぬ大きな負担でありまして、今日かような産業上及び国生活上きわめて重要なエネルギー源に対して、かくのごとき関税をかけられるこのないように私どもは切望いたします。従来の免税の措置は少くとも継続されるようにしていただきたい。これは単に精製業者のみならず、水産業関係におきましても、鉄鋼業の関係におきましても、あるいは自動車関係その他の関連産業におきましても非常なる負担になつて、全般的に産業関係者としては非常な不利益が起つて来ると私ども考えております。
  55. 中村幸八

    中村委員長 次は山手滿男君。
  56. 山手滿男

    ○山手委員 きようは多数参考人の方から貴重な御意見を承りまして、私ども非常に参考になつたような気がいたしますが、参考人としておいでいただいた方々の御発言の中で二、三疑問のある点をお尋ねし御説明を願いたいと存じます。  第一に寺尾さんと出光さんと御発言に矛盾がございます。寺尾さんの方は、外貨原油につけて日本国内原油を持つて来て精製する政策をとつてくれ、こういう御発言でございます。出光さんの御発言は、原油外貨をつけるのではなくて、むしろ製品外貨をつけるべし、製品輸入をすべし、こういうことでございまして、製品主義か原油主義か、これは石油政策の上において大きな両者の相反する御主張であつたと私は今拝聴したわけであります。これについて私は、従来数年間通産政策を見ております過程において、日本国内で太平洋岸に石油精製工場を認めることは、少しでも多く国内で雇用の機会をつくることにもなるし、また一般の産業レベルを引上げるためにというようないろいろな理由を聞かされておつて、私どもはこれを支持して参つてつたのでありますが、その過程におきましては原油を持つて来て日本で精製をすると、いわゆる石油コンロ用の燈油のような、あまり日本経済の自立には必要でないようなものが出て来て、よけいなものをつけたり奨励して消費する、こういうような事態が起きて来て、これは困るのだ、中国にでも燈油の輸出ができるのならばこういう政策はいいかもしれぬがというふうなことを心配をして来ておつたその矢先に、石油コンロなんかが奨励をされまして、これがさつきから一、二同僚委員から非難をされたような相当もうかる原因になつた、こういうことを思い起すのでございます。出光さんの主張はこれからよくお開きしたいと思うのですが、日本の経済自立に必要でないような石油コンロ用のものを貴重な外貨で買つて来て国内消費させるよりか、重要産業あるいは漁船やいろいろな運搬関係へ必要欠くベからざる製品を端的に持つて来た方が現在の日本外貨事情の悪化の現状からすれば適切であつて国民的、国家的にはその方が有利である、こういう御発言のように私は承りました。精製関係の方の寺尾さんと、製品輸入する代表である出光さんの方からそれぞれの立場に立つて、この際もう少し詳細に製品主義がいいのか原油輸入した方がいいか、はつきりした御説明を伺いたいと思います。
  57. 寺尾進

    ○寺尾参考人 現在の精製需要状態を申し上げますと、大体ガソリン・ベースと申しますか、貴重なるガソリンの需要というものを目標にして、それに必要なる原油を処理してガソリンをまかない、なおその他燈軽油をまかない、さらに重油をまかなうということにいたしておるわけですが、日本消費状態から申しまして、重油だけはどうしてもガソリン・べースの生産をしておる場合においては足りない。供給需要をまかなうのに足りないという意味から、ある程度輸入というものは必要になるわけであります。しかしその他の燈軽油等につきましては、大体ガソリン・べースで処理をする場合において自然に得られる。最近お話がありましたように、暖厨房用のコンロ用の消費が非常にふえて来ております。これは国民生活上の要求がたまたまそこへ来たと思いますが、そういう意味のほかに、昭和二十八年度としては燈油の消費のほとんど八〇%が暖厨房用になつておりますが、先ほど説明の中でも申し上げましたように、これが従来燈油のかわりに使われておつた木材消費の節約に非常に役に立つている。百三十万戸くらいが現在燈油を使つておる、コンロを使つておると推定されますが、その関係からいうと年千三百万石くらいの木材の消費が節約できる、こういうことは森林政策なりあるいは治山治水という関係からしても、相当この点を考慮して行くべきじやないかと私ども考えております。
  58. 出光佐三

    ○出光参考人 私の言葉が足りなかつたために御質問が出たと思いますが、私の申しましたのは必ずしも製品輸入せよという意味ではございません。輸入するについて、原油輸入してつくつたものがよくて安いか、あるいは製品をそのまま輸入した方がよくて安いか、これは消費者の方々が自由にお選びになり、いい安い物をお買いになる、そういう消費者本位の石油政策をおとりになれば、それで外貨を一本化しておやりになれば、原油輸入する人もあろうし、製品輸入する人もあろう、そうして日本の市場において競争の結果売れる方が勝ちでございます、そういうことでございます。あるいは原油のみになるかもしれませんし、製品のみになるかもしれませんが、戦前の実績から見まして、原油が三割入つて製品が七割入つたので、製油会社も非常に利益が上るから値段が安くなる、製品も値が安いということで日本に安い油を供給して消費者本位の理想的な自由市場ができておつたわけなんであります。戦後も、私の見ますところでは、やはりそういう形になるべきものだと思つております。戦前の形と違う理由をあまり認めておりません。ところが現在の状態はどうかと申しますと、原油が七割で製品が三割入つております、逆になつております。その結果私の見るところでは内地の油の値段が一年に何百億円だけ高くなつておりはせぬかという疑いを持つておる。それではどうしてそういうふうに日本に不利になつたかと申しますと、それは石油外貨を割当て、それによつて統制されておるから、できたものが高かろうが悪かろうが、外貨をもらつた者が勝ちだ、割当てられただけ輸入すればよいということで、原油にたくさん割当てられたから原油が入つておるということであります。私としては、製油所保護主義ですか、原油優先輸入主義ですかということをGHQに盛んに聞いたのですけれども、そういうことはない、自由にやるべきものだと言いつつ、実際は原油のみに割当てて原油優先主義をとられたわけであります。そこで為替の一本化をお願いしておるわけなんですが、二十六年の六月の参議院の委員会で小野哲委員から質問が出て大蔵省でこれを認めておられるが、ただ実施に至らなかつたわけで、政府当局――おそらくここにおられる川上局長も認めておられると思うのです。けれども大蔵省で実施ができなかつたのは、何かそこに事情があるらしいので今日まで行われ得ない。ただいま寺尾さんはガソリン・べースによつて原油輸入しておるということをおつしやつた。私は初めて聞いたのですが……。それでガソリンをできるだけ原油からつくつて行くということでありますが、それならば私としては賛成いたしがたいのでありまして、一昨年日本が独立したときに初めてガソリンを輸入しましたときには、実によいガソリンが安く入つたということで皆さんお驚きになつた。それほど日本でつくつてつたガソリンはオクタン価が低くて、自動車には使えない。しかもそれを製造しておる人は世界の大石油会社の人が来て製造しておる。それで初めてガソリンに外貨が与えられてガソリンが少量入りましたために、日本でもハイ・オクタン価のガソリンをつくらなければならないというので、それに刺激されて一昨年からその機械輸入されて昨今はその製品が出たようでありますが、そういうわけでございますから、ガソリンだけを日本で使う、そのために原油をそれだけ輸入するということは石油政策とすれば私はこれは賛成いたしがたい。どこまで行つて原油でつくつたものか、製品輸入した方がよいか、消費者に自由にやらしてよいものをお買いになる、そうしてそれによつて両方の分量をきめる消費者本位の自由市場を石油政策として私は希望するものであります。
  59. 山手滿男

    ○山手委員 戦前のこの輸入の実績が、原油が三割で製品が七割であつたという事実にかんがみ、これは非常に政府にもよくただして、私ども委員会ではこの問題を究明してはつきりさして行かなければいかぬと思います。と申しますのは、外貨は――外貨予算を今審議しておりますが、絶対量がもうきまつておる。さつきからお話のように、油の経済性というものはこれまた絶対的でありまして、限られた外貨予算のわく内で、国民に一滴でも多く使つてもらう、そういう政策立てなければいかぬので、今日一製油所をかばうとか何とかいう問題ではなくなつて来ておるわけでありまして、今日の日本産業の情勢からいいますると、貿易を振興しなければいかぬのでありまするから、経済自立に即応して、重要産業にはできるだけコストの切下げをさすために、最も効果的に安い動力資源を与えなければいかぬということでありまして、この原油が非常に不足をしておる――よけいなものまでつくつてつて不足をした原油だけ入れて、必ずしも使わなくてもいいような製品まで国内で奨励をして使わせる、さつきお話の木材対策ということももちろん私ども考えておりまするけれども、今日の喫緊な外貨事情から行きますると、これはいろいろ考える面がなければいかぬのじやないか、私はこういう気がいたします。それでこの重油原油の大体六割くらいの価格であるのが普通だというふうに私どもも聞いておつたのでありますが、日本の最近の実情は、原油重油との価格の開きはほとんどなくなつて来て接近しておる。そういうふうにお聞きもするのであります。これは重油は非常にほかの油に比べますと安いものだというふうに聞いておつたのでありますが、最近この最も需要の多い重油価格が引上げられ過ぎておる。それはどういうことか、これは製品輸入が比較的きゆうくつだから重油が非常に不足しておる。産業関係あるいは水産関係でも、必要な品物が不足をしておるから、引上げられても、なおかつ取引の対象になる、こういうことではあるまいかというふうな気が私はいたしますが、寺尾さんから御説明をお願いいたします。
  60. 寺尾進

    ○寺尾参考人 やはり今お話のように、必要なる需要を満たすだけの品物がないというふうなことが、価格に及ぼす影響は確かにあると思います。  それから、先ほどから議題になつております、原油で入れるがいいかあるいは製品で入れるがいいかという点についての簡単な意見を申し上げてようございますか。
  61. 中村幸八

    中村委員長 はい。
  62. 寺尾進

    ○寺尾参考人 なるほど出光さんが今お話になりました通り、戦前においては、製品輸入が非常に多くて、原油の方の輸入が少かつたということはお話の通りであります。戦前におきましては、何分にも外国会社が内地に対して相当過剰な石油を濫売と申しますか、割合に安く売つてつたということは確かにあるのであります。従いまして日本で製油所は戦前ぼつぼつできかけておりましたけれども、依然として外から輸入に押されておつたということの結果は、今のような製品原油との割合に現われておることと思うのであります。ただしかし、ここでしから日本としては安い製品を必要のために、適当なところから安いものを探して入れたらいいじやないかという考え方も確かに成り立ち得るのでありますが、戦前とただいまとは、その点についての事情が非常に異なりまして、原油供給相当豊富であり、しかもそれが安定しておりますけれども製品の点になりますと、いずれにしも供給力が十分でない、場合によつては安いものが製品として入つて来ることもありますが、しかし一つの国として石油政策を論ずる場合に、他国から輸出に全部依存するということがはたしてできるものであるかどうか。また日本のような国柄といたしまして、ことに外貨の面から考慮いたしましても、できるだけ先ほど申し上げましたようなエネルギー源としての優秀なる石油を、少い外貨で十分に需要を満たすように入れて来て、精製するということが、最もエネルギーを豊富に国内に入れるということの結果になるだろう。いつでも、どこからでも、安い製品を自由に入れて来るということができる時代、戦前のような時代とはまつたく趣を異にしておりまして、講釈を申し上げるようではなはだ恐縮でございますけれども、今世界の全体の態勢が、各消費地に製油所が設けられて、原油輸入して、消費地で精製するということが最も適切であり、そしてまたよく需要に投合した製品供給することができるという見地から、一般にそういう態勢になつておるのであります。もし製品をいつでもかつて輸入することができるということが将来保障されるならば、これはまた別でありますけれども一つの国の政策を樹立する場合には、まずその国の中にこういう重要な基礎物資に対する産業を確立するということが、私は非常に重大なことでなかろうかと思うのであります。その意味において、私どもは従来政府のとられて来た政策というものはどこまでも原油輸入して、これを精製して国内需要をまかなうというところに方針があつたものと考え、またそうなければならぬと考えております。
  63. 山手滿男

    ○山手委員 この議論は私はもう少ししてみたいと思うのですが、今寺尾さんの御説は一応もつともなような気がいたしますが、私どもはにわかにそれを承服することはできない。戦前はこの石油に対しては政府の見る目も違つてつて、外国資本が日本国内に来てどんどん石油の精製工場をつくるということはそう簡単ではなかつた。その場合には日本石油精製施設を持たせないということのために、日本国内製品のダンピングをやつた――日本の民族資本による精製施設を打ちこわすためにダンピングをやつた。ところが戦後はあの占領時代に、すでに既成事実として製油所をつくり上げた。その場合はもうほとんど日本石油産業製品が外国資本のひもつきになつておる。もう心配はないのであつて製品輸入はむしろ阻止する方向に動いて、原油で行くべし、一種の橋頭堡をそこに築いた。そういうことがさつきの出光さんのお話の断片にもうかがえるのである。私はなぜそういうことを言うかというと、さつきからお話の出た徳山の燃料蔽と四日市の海軍燃料蔽の問題についても、業界は誠意を持つて、熱意を持つて――四日市燃料蔽についても政府が断を下したならば、あすの日からでもやるというふうなお話があつた。これは私は業界のために解決しやすい方法で、解決してあげる方がいいという熱意を持つて、私どもはあの問題の解決に当つた。解決をしたところが、巷間伝えられるように、今度は自分たちの製油施設の拡張はやるけれども、この国家的にも少しは息のかかつた、息の残されておるところの四日市海軍燃料蔽については、ほとんど熱意を見せない、そういう状態をほつておいて、今の寺尾さんの説には私は必ずしも賛成することはできがたい。でありますから原油を優先的に入れるという政策をつくるのならば、政府はむしろ民族資本による製油施設をここでうんとふやして――世界的に見れば石油相当生産過剰になつてカルテル以外のものもなきにしもあらずでありますから、もう少し民族資本の製油施設あるいは精製会社を育成しつつ、外国資本とも競争して、消費者により安い製品供給するように政治的に配慮をしなければならぬ、私はこういうことを考えます。これは反駁したようでありますが、一言申し上げておきます。  そこで私は出光さん及び森平さんに伺いたいのでありますが、外貨がこういう事情になつて参りまして、政府は、昨年あたりまでは重油転換を奨励しておつたのを急に再転換をして、一種の統制的な石油政策を打出して行こうとしておる。現在のような情勢では行政指導というようなことで石油消費規正がよくできるかどうか、私は非常に疑問を持つております。そこで伺いたいのは、いわゆる切符制や配給統制のようなものなしで、水産や農林関係のようなところに重点的に石油を行き渡らすことができるかどうか、配給機構といいますか販売関係に従事しておられる方々の率直な、忌憚のない御意見を承りたいのでありますが、そういう法的な裏づけなしといいますか、行政指導によつて、必要部分に流すべきものは流すだけの手が尽されるかどうか、そういう点について、私は販売関係に従事しておる方から意見を承りたい。
  64. 森平東一

    ○森平参考人 山手さんの御質問はまことにごもつともな次第であります。私ども販売を担当しております者の立場から申しましても、非常に心配して考えております。外貨割当のいかんによつて需給関係がかわつて参るのでありますが、かりに昨年度と同じくらいの外貨あるいは多少昨年より外貨をふやすというような御決定を政府でなすつた場合において、その需給関係はどうなるかというような見通しでございます。ところで先ほどもちよつとこの問題に触れたのでございますが、十一月から値段が非常に暴騰したというのですが、さて実際の生産と販売その他二十八年度の統計によつて見ますと、絶対量というものは実際にはあまり不足していないのです。けれども世の中というものは、かりに不足する、足りないというような声を聞きますと、第一新聞というものが相当誇大に報道する、また販売人もうまくやつてもうけたい、また消費者は足りなくなるから、この際金があるならば二箇月分でも三箇月分でも買つておけという気持が起る。起りますと、実際に足りないのはでありますけれども、仮需要というものは五となり、十となるのです。それでわつと買い付けるものですから、不足の状態が非常に不足したような状態になつてしまうというのが、つまり十一月から十二月、一月に現われた。これは当然の現象であります。ところで現在の状態から申しますと、各石油元売り会社の販売の状態を見ますと、昨年の四月が、燈油で申し上げますと二万一千キロ月に売れた。ところか現在は約四万二千キロ、倍売つておるのです。それでありますので実際マーケツトの第一線から見ますと、現在は倍売つておるので余つてしまつておるですから価格のごときもただいま申し上げましたように、一カン――というのは五ガロン、十八リツトル入つておる、これが一カン千円もしたことがあります。これは一時ごく一部分ですがありました。それがだんだん下つて参りまして、今のところは五百円から六百五十円ぐらいまで下つておる。それは需給関係が非常に緩和されたということであります。この面から見ますと、燈油ばかりではありませんで、揮発油もそういうことが考えられる。揮発油も一月上旬には不足して大分大騒ぎした。ところが現在はすでに多少余つているような状態です。それから重油のごときも非常に足りない、足りないと思つたのですが、実際ふたをあけてみるとあまり足りないような状態ではない。というのは要するに私の第一線においての観察から申し上げますと、いわゆる需要というものが非常に減退して来た傾向があるのではないか。いわゆるデフレ政策の浸透というか、それでガソリンで申しますれば、タクシー業者が日に日に倒れておる。そこでタクシー業者は経済的の運動をしなければならぬというようなわけで、ガソリンの消費量も幾分か予想以上に減つておるようにも思われる。それから燈油に関しましては、一時石油コンロが非常な勢いで売れておつたのです。もうひつばりだこで売れておつた。ところが現在はまつたく売れなくなつてしまつた。これにも驚いてしまつた。要するに石油は足りないという声に恐れを抱いて、もう石油コンロという機械を買つても、これにたく燃料がなかつたならばしかたがないという空気が、日本全国をおおつておるということでなかなか売れない。このためにコンロ・メーカーはこれまた日に日に倒産しておるという状態でありまして、これまた燈油に関する消費量というものは減つておるのではないかと思われる。それでありまして、いわゆる消費量が多少減つておる。すなわちデフレ政策によつて本年度の消費量というものがそうふえるのじやないというような考えであります。そこで私は現在の方法、すなわち行政指導の方法によつて十分まかなつて行けると思います。そのかわりまたわれわれ販売業者といたしましては、御承知のごとく各県に石油販売業協同組合を結成しております。この協同組合の機能を十分発揮いたしまして、消費各位に迷惑をかけないように、完全に配給するという覚悟を持つて今邁進しておるわけであります。ですからどうぞ御心配のないように願いたい。
  65. 山手滿男

    ○山手委員 もう一つ田代さんに私はお伺いしてみたいと思うのです。帝国石油の方でいろいろ御配慮をいただいておることもよく知つておりますが、やはり私は東南アジア地方の石油田などについて、帝国石油その他関係会社が手をお打ちにならなければいけないし、打つていただきたい、こういうふうな気がいたしております。インドネシアの政情がああいうことであることを考えますと、向うではうまく行かないかもしれませんが、ビルマ、その他にもいろいろ石油の産地は相当あるのでありますが、いろいろ社内のごたごたをお繰返しになるよりも、もつと外に向けて勢力を伸ばしてもらいたいと思うのです。失礼でございますけれども、東南アジア方面についてプランをお持ちであるかどうか、この際むしろ御説明なり、御意見を承つておきたいと思います。
  66. 田代寿雄

    田代参考人 ただいまのお尋ねにつきましては、まことに適当な御質問をいただいたことを感謝いたします。帝国石油技術陣としまして、調査試掘、採掘、掘鑿の面では日本でただ一つ会社でございますので、海外に発展するということになりますれば、まずもつて帝国石油がそれに当る責務があると考えております。国内油田は幸いに五箇年計画というものに足を踏み込みましたが、それだけで満足するものでございません。このりつぱな技術陣をもちまして、東南アジアその他にでき得る限りの発展をして行きたい、かように考えまして、一、二の現在までの事情を申し上げて御参考にしていただきたいと思います。  インドネシアにつきましては、通産当局の御指導によりまして、石原さんの進出にいろいろの御相談にあずかりまして、石原さんの御成功の後には十分協力しようというお互いの好意的の了解に基いております。  そのほかにアチエの方につきまして、日本鉱業さんと共同いたしまして、アチエ・オイル・マイン・カンパニーですか、その方と連絡を密にいたしまして、国交の許す範囲内で、できるだけ早く進めたい、こういうことで個人的といいますか、そういう方面の交渉は、昨年の夏以来往復いたしまして進めております。何分にも御承知の通りの政情でありますので、こちらで投資をするとか、あるいは進んで機械を持つてつて掘るとかいう段階に至りませんが、外交関係、賠償関係というようなものの進行に伴いまして、極力その方に向いまして、原油の資源の確保をしたい、そういうふうに努力しております。  なおまた南米の方面におきまして、アルゼンチンが日本にたいへん好意的であります。偶然の機会でありますが、富士製鉄の永野社長があちらへ参りまして、大統領と会見いたしました。日本の協力を求める、こういう大きな線が打出されて参りました。その結果アルゼンチンの大使館と私も数回往復いたしまして、なお交渉を続けておりますが、向うの商務官も現地を見まして、帝国石油技術を認識いたしまして、参考書類を出しまして、向うの大統領に今提出しております。なお大使にも近日中に会いまして、よくその促進をはかりたい。向うは石油国策会社で、国営で行くという方針でありますけれども日本人が本気でやつてくれるならば、そこに一つの下請会社といいますか、あるいは協力会社といいますか、そういうようなものをつくり得る用意がある、こういうことで楽しみにしておるわけであります。  もう一つブラジルの方の話がありますけれども、これはまだちよつとぼんやりした話でありまして、そのほかにアラスカ方面につきましても、若干の研究を進めております。  御勧告通りいわゆる内紛なんというものは早く解消いたしまして、極力技術人を海外に派遣いたしまして、大発展したいと思いますので、どうぞこの上とも御指導をお願いしたいと思います。
  67. 中村幸八

    中村委員長 次は加藤君。時間もたちましたので、簡単に願います。
  68. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いつも私が時間をとるので、おしまいに追いやられて、簡単に簡単にということでありますので、ほんとうに簡単にお尋ねいたしまするから、お答えの方も簡単にお願いしたいと存じます。  まず私の方の社会党といたしましては、この法律がよつて来るところの原因については賛成です。これはもうこういう資源の乏しい折から、国家がひとつ腰を入れてこういうものを開発してやろう、そのために大きな資材を投じてやろうという、これはしごく賛成でございまするが、とかく政府の資金が民間に流れる場合におきましては、いろいろな問題が起りがちでございます。現に起つておる疑獄事件が、それがすでに元になつておる。そこでこれがそうだとは言いませんが、ぜひ田代さんに承りたいことは、この法律案が通りますと、ほとんど政府資金は田代さんのところへ行つてしまうと考えてもまあ大した相違はない。何も小売商だとか中間の販売業者のところへこの資金が行くわけではない。  そこでお尋ねしたいことは、今日この帝石の株の中で政府の持株は一体どのくらいあるか。今日の政府発言権というものはどの程度に認められておるのか。それから万一この五箇年計画なるものが実行に移されて、数億あるいは数十億の金が行くようになつた場合には、監督官庁の権限、あるいはこの事業があなたのところの独占であり、しかも公益性を帯びておるという点から政府の監督を快く受入れるだけの態勢が整つているのかいないのか、そういう点についてまずお尋ねいたします。
  69. 田代寿雄

    田代参考人 ただいまのお尋ねにつきましてお答え申し上げます。大切な国費を開発に向けられる。そのうちの大部分が帝国石油の方に実際的には向けられる。それにつきまして帝国石油といたしましては、その重大な使命をよく理解しまして、経営者も社員も一体となつて、その使途につきましては十分有効に使つて行く、こういうことにつきましては、取締役会もまた社員全体もまつたく一致した意見でございます。なおその臨時措置法の問題につきましては、私の考えといたしまして、それだけの国費を投ぜられる以上は相当の監督があるということはしかるべきことと考えております。  それでただいまお尋ねの政府の持株は四百六十万ちよつとと思います。約二割三分強と思います。それでその二割三分強の株を持つておられる立場といたしまして、従来慎重に御指導をいただいております。はなはだ遺憾なことでございますけれども、いろいろのごたごたが多少あつたのということにつきましては、政府としては株主としての発言というようなことでなく、今まで行政的に御指導をしていただいて参つております。加藤(清)委員将来監督官庁としての発言権と申しましようか、あるいは行政監督というものが一層累加されるではないかということをだれしも考えるわけでございますが、それについて会社の方としは受入れ態勢がとられているかということを私さつきお尋ねしたわけなんですが、その点お答えがなかつたようであります。
  70. 田代寿雄

    田代参考人 政府で二割三分強の株式を保有されておりまして、かつ多額の助成をなさる、こういうことでありますれば、監督権の強化並びに株主権の御発動があるということにつきましては、私ども少しもこれをいなむものではございません。むしろ政府が進んで株主権の発動をしていただいて、そうして強力にひつぱつてつていただくということにつきましてはけつこうだと思います。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではお尋ねしますが、伝え聞くところによりましても、またただいまの社長さんのお話によりましてもそうですが、とにかく帝石というところは社内に重役陣のごたごたがあるという話を聞いておりますが、これはもう解消したのでございましようか。もし解消していないとするならば、政府がこれの調停に乗り出して一日も早く解決してもらいたいということは、国民ひとしく考えるところだろうと思いますので、この解決のために政府が乗り出すことを社長さんとしては歓迎なさるのでございますか、それともそれは拒否なさるのでございますか。
  72. 田代寿雄

    田代参考人 御指摘のように若干の意見の相違がありまして、そのために相当にもてはやされたにぎやかな月日が若干たちました。しかしそういつまでそれがあるべきものじやございません。ことに五箇年計画がその緒につくというときには、われわれとしてもその計画を早くセツトルすることについては非常な責任を感じております。いろいろの関係でなかなか一致点が見出されないで、昨年の十二月から三月の初めまで参りましたが、幸いに通産省におかれまして大臣、次官、御心痛くださいまして、先般ごあつせんをいただきました。いろいろな点については私も希望なり意見なりを申し上げましたが、双方とも鉱山局長の川上さんに御一任願いまして、三月の十日に、ごあつせんによりまして一段落し、解決を見ることになりました。それでその解決に基きまして四月七日に臨時総会を開きまして、そうして懸案の日本石油、昭和石油の協力を得る態勢をつくるということにただいま運んでおりますが、その線で進みたい、かように考えております。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではこの法案が実行に移された場合に、あなたの会社はこれを全面的に受入れるだけの準備態勢が整つている、かように解釈してよろしうございますね――それでは申し上げておきますが、こういう法案が行われるにつきまして、半年先、一年先にまたぞろそういう問題で世間を騒がせることがあつては、これはまたたいへんでございますから、こういう問題は前も造船のときにはつきり言うておいたにもかかわらず、ああいうことが起きて来たのです。そこでそういうことのないように権益のつく法律というものについて、それが受益者が少数な人である場合には、必ずその間とかあるいは受ける方同士の間でいろいろなことが起きるものでございます。幸いにしてあなたのところに起きなければけつこうです。私の言うたことが二年先、三年先に笑い話で終るようにしていただきたいものだ、こう思いましてその点をお尋ねしたわけでございます。  次に主として出光さんにお願いしたいのでありますが、出光さんのお話によりますと、これは私石油のことは一向存じませんが、他の業界でございますと、原料輸入して製品をつくれば、当然そこに利潤があつて、その方が歓迎されるはずであるにもかかわりませず、出光さんは、石油に限つて事かわつて原料輸入するよりも製品輸入した方がよろしいというお話で、事こまかに数字をあげての御説明でございました。それはその通り受取ります。ところでそういう状況というものは将来も続くものでございましようか。過去はそうであつたが、将来かわるかかわらないかということが一点と、今日の状態でけつこうでございますが、製品輸入した場合に、日本消費者が利益を得るという率を、先ほどあなたはちよつと季節的におつしやいました。もしこれを年間に見積つたとしたならば、去年は製品輸入すれば一体どれだけの利益があつたかということを、想定でもけつこうでございますが、お知らせ願いたい。
  74. 出光佐三

    ○出光参考人 原油よりも、安い製品輸入できるということが長く続くかどうかという問題でありますが、これは世界の石油の建値と申しますものは、メキシカン・ガルフ、すなわちUSガルフ、テキサス州で建つておる。これが大体原油が一〇〇とすれば、重油は五九%、六〇%くらいの程度でいつも建つております。これは当分これで続くと思います。それからイランで私どもが買つたのはやはり大体このくらいですが、これは重油はあまり輸入は許されませんから、バンカーとして買つたのでありますが、やはりその程度であります。それからサウジ・アラビアのものも、初めはそうだつたのでありますが、どういうものか、この二、三年来重油の方が上つて来て、重油原油はほとんど同じ値――日本に持つて来れば運賃の差がありますから日本に着いて重油の値段と原油の値段とは同じ値段になつております。それからカリフオルニアでございますが、これは今朝鮮事変のために変化を来しておりますが、次第にそういうかつこうに近づきつつあります。今年は重油は非常に安くなりますから、たくさんカリフオルニアの油を買つてくれというような申込みが最近盛んに来ておるような状態であります。それから原油輸入するのと製品輸入するのとどちらがどのくらい利益があるかということでございますが、これは大体私どもの計算では、今のアラビア原油、それからどもの買つておるカリフオルニアの重油、揮発油、それからイランの揮発油――イランは別にしまして、べらぼうに安いのですから、アラビアの高い重油を買いましても、なお一キロ平均して千四百円くらい安くなります。それでかりに一千万キロといたしますと、百四十億円、そのくらいの差があります。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではもう一つお尋ねいたします。先ほど同僚議員の質問に対して、製油業者はたいへん利幅があるように思う、従つてこれに関税をかけたらどうかというのですね、関税をかければ、消費者にこれが転嫁されて、決して製油業者の利幅を縮めて関税を自分のところでとどめるということにはならないのだというお答えがあつたはずでございます。これについて私思うのですが、今もしこういう状況が続いて行つて、本年度この製品輸入したとしますれば、少くとも一千四百億くらいの利益があつた場合に、この利益は、あなたの方法で行つた場合においては、これはあなたの社内に保留されてしまうものか、それともこれが消費者に転嫁されて行つて消費者がそれだけ利益をこうむるということでございますか、いずれになりますか。向うの話で行きますと、関税をかけた場合は転嫁されて行く、おのれの利潤は決して動かさないのだ。こういうお話でしたが、あなたのところはそれだけ逆に利潤をとつた場合はどうなりますかということを聞きたい。
  76. 出光佐三

    ○出光参考人 私の方では大体消費者の皆様に直接納めております。中間に取扱い店を置かない方針でやつております。これは消費者に確実に供給することと、価格を安定するという、この二つが目的でございますから、口幅つたい言葉ですが、油のことは私におまかせになつてあなたは事業の方を専門におやりくださいということが私たちの会社のモツトーになつております。従つて合理的な利益は必ずちようだいします。それをまた私が損するような値段にめちやくちやに値切られる方には、私はお断りしておるのであります。従つて私のところに非常にたくさんの利益がある場合には、私はそういう利益は私しません。ただ一つ例外がある。それは今度のイランのガソリン、これは非常に安い値で買つたので、私はこの値が標準になつて油や揮発油の値段を下げたいのでありますけれども、これは外貨の制限があるためににらみがきかない。それで極端に私が安く売れば、それはそれだけ売らせておけということになる。あと続いて入ればそれが幾らか市価に影響を及ぼしますが、それがないために、これは現在のところでは私の会社の利益になつております。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう一、二問で終りますが、そうなりますと、おのずから輿論のおもむくところ、出光さんの考え方政府が実行した方が千四百億も得するのみならず、消費者もそれによつて恩恵をこうむるということならば、結論は明らかになると思うのです。そこでもう一つお尋ねしたいことは、今日外貨を受けるということは、石油業に限らず、綿に限らず、何に限らずでございますが、非常にこれは得することで、のどから手の出るほどほしいものなんです。私は紡績のことしか知りませんけれども、紡績の方ではそれを受けるために、幽霊銀行までつくつて外貨割当の筋をふやしているという現状を私はつぶさに知つておるのですが、これは砂糖にも、鉄鋼の圧延にも行われているようでございます。そこでこの問題を製油業者のお方に承りたいのですが、今日の石油外貨割当の基準というものは、やはり他の業界と同じようにその製造設備割当、こういうことになつておりますか、それともほかの割当になつておりますか、これを寺尾さんに、簡単でよろしゆうございますが、伺います。
  78. 寺尾進

    ○寺尾参考人 これは私ども精製業者としましては、ことしならことし、石油製品需要は大体どのくらいであろうということを慎重に検討いたしまして――これは今お話がありましたけれども外貨をよけいもらうためにふつかけてやるというふうなことは私どもとしてはいたさぬつもりで、慎重に計算しておるわけであります。その外貨のわくがきまると、これを各社に実績なりその他の基準で割当てるわけでございます。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうすると、これはほかの業界とかわつた、設備割当ではない、過去の実績その他業界でよく相談の上でこれが配当される、こういうことでございますね。しかしそれは何業に限らず、いずれにいたしましても外貨を受ければ受けたとたんに四割から五割有効に動かせることだけは事実なんです。そこで先ほどから聞いておりますと、私はわからぬことが出て来た。それはどういうことかと申しますと、お答えによりますと、高くなつた理由は需要供給関係のみに置かれているようでございます。ところで外貨というものは、これは一つの大きな権限であり、統制的な物資――物資というよりも統制されておるところの有価値的な非常に大きな物権なんです。そこでこれを国民を代表してもらつたこういう人が、あとでさてこれを販売をするというときには、需要供給関係でかつてに高くすることができる。おまけに内地の方の設備は国家が株をたくさん持ち、将来もなおここに国家資金を投入してやろうということになりまして、そうして一般市場価格を単なる需要供給関係で決定されては、そのもとの税金を出した国民は迷惑しごくであるし、また政策としてはこれはあまり当を得たものではないと私は考えるのでございます。先ほど来のお答えの通り、この市販価格というものが、単なる他の私企業の産物と同じように、需要供給関係だけできめられておるものがもしあるとするならば、それでよろしいとお考えでございますか。伝え聞くところによりますと、それのみならず、ただいまのお話で皆さんおわかりの通り、カルテルのおかげで一層その値がつり上げられて行く、日本国内だけ不当につり上げられて行くというようなお話でございます。もししつかりとするならば、これは国家として外貨を割当てる場合に、権限を与えるだけでなくて、何らかのひもつきでしなければならないことが生じて来るのではないか、すでにこういうケースは、バナナの場合においても行われておることでございます。あるいは絹の輸出の場合においても行われており、また毛織物の輸入の権限をもそのケースに当てはめようという方針が、政府の方で外貨割当の場合に行われておるようでございます。ただこれを現状のまま放任するということは、国民感情が許さなくなるのではないかと考えますが、この点について特に寺尾さんからお伺いしたいと思います。
  80. 寺尾進

    ○寺尾参考人 精製業界としては、今お話のようなカルテルというようなものの関係から一種の独占的の価格を実際に用いておるのではないかということでありますが、さような事実はないと存じております。また現実にそういうことは法令の許さざるところでもありますし、現実に多くの会社が自由競争の立場にあるのでございまして、その間の値段について不自然な独占的価格をつくつておるという事実は、私どもとしては考えられないのであります。  それから先ほど何か外貨の問題について、お役所が業界と相談して外貨を割当ててやつておるというようなお話でありましたが、外貨の割当を決定される権限は役所が持つておるわけでありまして、意見はわれわれの方からも申し上げますが、決定はあくまでも政府がやつておることであることは申すまでもないのであります。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 たいへんりつぱな御答弁をなさつておりますが、私先ほど来出光さんのお話とあなたのお話とを比較して開いておりました。あるいは同僚、先輩議員の伊藤さんのお話を聞いておつても、カルテルというものが今日の日本石油業界には間違えられて利用されておるように受取つておるのでございます。それは受取り方の違いであるとおつしやられればやむを得ません。そこで最後にお尋ねしたいことは、今日の石油業の会社の設備が、今日の需要から見てはたして正当であるかどうか。ほかの業界では二重投資とか過剰投資とかいうようなことが盛んに言われておりますが、あなたの業界ではそういうことがあるかないか、はたして全部稼働しておるかどうか、あるいは遊休施設ありやいなや、そういう問題がからんで、せつかくわれわれが前国会において国有財産処理委員会なるものをつくつて四日市の燃料廠払下げの促進方に努力したにもかかわらず、今日なおこれが手つかずにおられる理由の一つになるではないかと考えられるのでございますが、この点いかがでございますか。  それからもう一つ、せつかくカルテルによつて多くの利潤を得て、日本石油の使用者、消費から吸い上げられたその金が、どうも日本の国以外の資本を肥やすことになつて、ほんとうに日本国民の利益になつていないという現状から考えてみて、どうせ国家資本を投入するならば、もちろん原油を探したり搾油する方へ投資する方がいいでございましようが、当面の問題としてはそれが急に効力を発生して日本の内地の需要を満たすというところまではここ三、四年は行かないでございましようし、また将来といえども全部満たすことができないでございましようから、そこで製油会社にも国家資本を投入して、単独な会社なり何なりをつくらせて、先ほど出光さんがおつしやいましたように、世界カルテルに対抗するような方策がもしあつたとしたならば、それに対してあなたはどのようにお考えになりますか、あなたのお考えを承りたい。
  82. 寺尾進

    ○寺尾参考人 最初のお尋ねの現在の製油所が過剰設備という状態でないかということでありますが、現在のところではさようには考えておりません。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは四日市の燃料廠の進捗しない理由は……。
  84. 寺尾進

    ○寺尾参考人 四日市の点については私は全然触れておりません。四日市以外の現在の製油所の設備について申し上げるのであります。四日市のことにつきましては遺憾ながら私どもとしては発言のあれを持つておりません。第二の御提案、これは相当重要なる御提案であつて、今私どもはこれについていいとか悪いとかいうことを個人の意見として申し上げることは差控えたいと思います。
  85. 中村幸八

    中村委員長 次は伊藤卯四郎君。――簡単に願います。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう時間がございませんので簡単に伺います。田代先生御承知のように、今度国家予算で国内石油資源開発のために一億三千万円ほど補助金を出す、これを会社が受入れる場合には必ずその三倍なり四倍というものは自己資金を出す、そうして国家資金をよりよく生かすということが常識なのです。そこであなたのところにも多分一億三千万円に対しては三億なり四億なり五億なり、自分の会社の資金も用意してありますということだろうと思うのですが、その点はどうですか。
  87. 田代寿雄

    田代参考人 ただいま臨時措置法によりまして、指定地域をどこにおさしずがありますかはつきりいたしませんけれども、大体一億三千万円のうちの一億円、つまり八十パーセント程度は帝石の方の仕事になろうかと見当をつけております。そうしまして、助成の対象は試掘だけでございますので、この試掘というものは一億助成していただきますと、その方だけで二億の仕事をしなければなりません。そのほかにいろいろの準備、機械の購入とか手入れとか、道路掘鑿というようなもので、ほぼ二億近い金がいるわけであります。従いまして一億ないし一億三千万円助成をいただきますれば社内等におきまして三億ないし四億の金を都合する計算になるわけであります。その準備は、社内におきまして従来掘鑿も全然やらなかつたわけではありません。相当の掘鑿もしておりましたので、資金面におきましてこれが実行できる計算をただいま持つておりまずから、その点は御安心を願いたいと思います。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 実は重油原油輸入問題についてさつき寺尾さんのおつしやつたことについては意見があるのですけれども、おいでいただいたのにあまり引きとめて議論しては失礼だと思いまして実は差控えておつたわけであります。先ほどから重油なり原油なりそういう油というものは、日本生産品のコスト切下げに非常に貢献しておるというような意味のことを私は伺つたのですが、実はわれわれの調べの上にはそんなに出ておりません。大体セメントにしましても、板ガラスにしましても、製鉄その他ありとあらゆるものを調べてみまして、油を使つたの石炭を使つたのとを比較してみまして、油を使つたのが大体百分の一から百分の二くらいいい、中に百分の五近くのものがありますが、これは一つだけであります。これは時間の関係があるから一々例をあげて申しませんが、その程度しか貢献をしておりません。しかしそれでも貢献しておることはありがたいことですが、もつと貢献できるであろうことを――実は私はさつきからつていたのは、あなた方は専門家だから承知と思いますが、欧州の各国において、油のないところで重油なり原油なり輸入してそれで油を売つてつておりますが、そういうところの油と日本の油の値段を比較すると、大体において二割から四割、四割以上欧州各国の方が安うございます。しかも輸入関税をとつて安うございます。日本の場合は輸入関税をとらないでそのように高い。この高い理由というのは、重油原油、そういう油輸入会社が外国資本を五〇%から五五%持つてつて、外国油会社がそういう実力を持つておるので、日本石炭が高いから重油でも原油でも油は高くしてもよいのだということでやつておる。そのために外国の油よりも高い国内の油を使つておられることは皆さん十分御承知と思います。それなのになぜもつと安くさすことができないのか。それは外国資本から押えられて強い発言によつて値下げをさすことができないのか、あるいはまたこの際もうそういううるさいことを言わないで、利潤が相当あるのだから便乗して唯々諾々としておつた方がよいというようなお考えはおそらくなかろう、愛国的お立場から考えになつておるとは思いますけれども、われわれから考えるとどうもそういう気がするのです。そういう点について欧州各国並みに、無税で恩恵を受けて、なぜもつと安くしないのか、安くしようじやないかということについて強い発言をもつて国外資本との間に相当論争されておられるのだろうか、その辺について私は伺いたい。  それからさつき寺尾さんもカルテルはつくつておらないということをおつしやつておりますが、カルテルをつくつておられないのならば、油会社が四つ、五つありますから、その開きも相当あるだろうと思いますが、実は私が不勉強か知らないが、あまり開きのあることは知りません。もしそういうことであるならば、各社別の値段をひとつお開かせ願いたい、各油の点について私ここに資料がありますけれども、それを言うと長くなりますから、この問題はきよう伺つておいて、いずれ私どももまた国会としてまとめる上から十分そういう資料に基いてまとめようと思つておりますので、今のような点について率直にお聞かせ願いたい。参考人としてわざわざ来ていただいておるのでありますから、礼を失する意味において、反駁する意味において、攻撃する意味において聞いておるのじや決してございません。やはり国会議員として、いかにして日本産業経済の自立的に、国際的に闘える態勢をつくるかという点について、愛国的に深刻に考えておるので実はお伺いするわけですから、その点あしからずお聞かせ願いたいと思います。
  89. 寺尾進

    ○寺尾参考人 重ねてのお尋ねでありますけれども、私の承知しておる範囲内においては、石油精製会社がカルテルの関係において値段を強制されて高く売つておるという現状であるとは考えておりません。それから内外重油について値段の差が非常にあるじやないかとおつしやつたのですが、それも大体において日本に売られる値段は特別に高いというふうには考えておりません。おそらく運賃その他の関係からそういう現象が出ておるのじやないかと思いますが、実は私はその方のエキスパートでもありませんので、そういうようなことではないかというふうに考えておることを申し上げておきます。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 カルテルをおつくりになつていなければ、油会社が四つ五つあるのですから、競争もあるだろうと思いますが、その値段がそんなに開きがありません。ですからでき得れば、おれのところはこのくらい安くしておる。おれのところはこのくらい競争しておるぞという各社別の値段が多分あるだろうと思いますから、それをちよつとお聞かせ願いたいと思います。それでないと、どうもカルテル何か申合せがあるのじやないかという……。
  91. 寺尾進

    ○寺尾参考人 これは各社めいめいにそれぞれ販売をいたしておるのでありまして、私懇話会の人間でありますけれども、各社が幾らで売つておるかということは、実は私どもとしては一々承知しておりませんので、おそらく今お話のように一つの値段で売つておるとは考えておりません。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係がありますから、そういう点をあまり突き詰めてもどうかと思いますから、あまり申しません。大体私の方でわかつておらぬこともありませんので、きようはそういうことであまりお引きとめしても失礼だと思いますが、多分あなたのところでおわかりだろうと思いますから、後日、あなた方の機関においてでもよろしうございますが、大体各社別にどのような価格の差があるかということだけを何らかの形で私の方にお知らせを願いたいと思いますがいかがですか。委員長それがいただけるかどうか。
  93. 中村幸八

    中村委員長 資料がいただけますか。
  94. 寺尾進

    ○寺尾参考人 御注文のような資料がはたしてできるかどうか、私確信がございませんが、できるだけ考えてみることにいたします。
  95. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 まだ十分納得はできませんけれども……。
  96. 寺尾進

    ○寺尾参考人 ちよつと申し添えますが、今の価格というのはどういう種類のものについてでございましようか。それからその値段と申しますのは、どの段階においての値段でございましようか。そういうことも……。
  97. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 重油原油等について、これはそうこまかく売られていないようですから、そうこまかくはいりません。産業別というか、そういう程度でよろしゆうございます。それから出光さんのところから入れられておるのと、あるいは製油の方で扱われておるのと、これは開きもあろうと思いますから、そういう点もできればお知らせをいただきたい、こう思つております。
  98. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 製油業者の方の値段ということになると、これは却売の値段になるだろうと思いますが、私ぜひここでお願いしたいことは、幸いにして販売業者の代表の方も来ていらつしやいますので、恐れ入りますが、連合会の方で仕入れていらつしやる値段ですね、つまり小売とか問屋とかいう系統がございましようが、あなたの連合会の傘下のお店の方々がそれぞれ仕入れていらつしやる値段、これも恐れ入りますが、できましたら御提出願えればたいへんけつこうだと思います。この点委員長からお諮り願います。相なるベくはこの数字を提出していただきたいものだと思うわけです。
  99. 中村幸八

    中村委員長 森平君の方から資料が出ますか。
  100. 森平東一

    ○森平参考人 これは先ほどもちよつと申し上げたのですが、連合会の方といたしましては、各社別というよりか、むしろ元売業者の販売価格はみな違つております。決して同じではないのです。そこで平均仕入価格というものをつくつておる。それはすぐわかります。
  101. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それで幸い各社別に値段が違うとあなたがおつしやるならば、わざわざ平均していただかぬでもけつこうでございますから、それを提出願いたいと思います。
  102. 森平東一

    ○森平参考人 できるだけ御希望に沿うような資料をお出しいたします。  それからちよつと申し上げたいのですが、先ほどからお話を承つておると、何か元売会社が談合して値段を高く売つておるのだというふうに響いて来るのです。ところがそんなことは全然ないのであります。これは過去を振り返つてみればすぐわかるのですが、一昨年七月一日から統制撤廃されたでしよう。その後値段はどんどん安くなつてしまつておるのです。それで各社とも非常に困りまして、どうにかならないかというようなこともあつたわけです。その後実は外貨資金の割当が少いというようなことが昨年十月ごろわかつた。それを契機としてと申しますか、とにかくあまり値段が下つてしまつたものですから、そこで多少値を上げようという空気が起つて来て、日本石油あたりが第一に発表した。それが契機となつて、ほかの会社も順繰り順繰りに上げて来たわけです。それが何か相談して上げたように外部から見えるのですが、決してそうではないのです。ですから仕入れるのはみな違うのです。一キロについて五百円ないし千円ぐらい違う。そこでこの資料は調べてお届けいたします。
  103. 出光佐三

    ○出光参考人 今の価格の談合がありはしないか、これは日本では許されないことで、ございません。昨年秋に外貨不足ということで値が上りかけましたけれども、私のところとしては原価が上つておりませんし、運賃はむしろ下つておりますし、上げる理由を少しも認めませんでしたから、現在も上げておりません。従つて価格の談合がないということはこの一事でもおわかりだろうと思います。
  104. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 値段がたいへん下つたつたとおつしやるのですが、重油の方ですか、原油の方ですか。去年の募れごろたしか一キロリツトル五百円でしたか、上りましたね、そうして石油は去年の募れころからたしか一升二百円ぐらい、倍ぐらいに、私も石油使つておるのですが、上りましたが、あれはどういうわけでしようか。
  105. 森平東一

    ○森平参考人 一升二百円ですか。それはちよつと弁明いたしますが、あなたのお使いになつておるのはコンロ用の燈油じやないでしようか。(伊藤(卯)委員「ストーブ用」と呼ぶ)これはつまり先ほど来申し上げた通り、一時非常に不足の状態になつたのですが、同時に仮需要が起つたのです。それで不足の状態が十倍にも世間に響いた。事実そうなると仮需要が起るから、実際に不足した。そこで販売業者の一部には石油を、二百円というのはないのですけれども、百円くらいまで売つたということは聞いております。けれどもそれはごく一部分であります。決してその全部が全部二百円なんという高い値段で売られたわけじやないのです。大体標準値段がございまして、おそらく一升六十円というのがわれわれの見た大体公平な値段と思つております。ですから、中にはあるいは百円くらいに売つたものも多少あるかもしれない。しかし決して全部ではない。これは念のために申し上げておきます。
  106. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係がありますから、このくらいにしておきます。
  107. 中村幸八

    中村委員長 では本日はこれをもつて散会いたします。  各参考人の方には、長時間にわたり貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。     午後六時十二分散会