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1954-08-13 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第63号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月十三日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長代理 理事 中村 幸八君    理事 福田  一君 理事 山手 滿男君       土倉 宗明君    笹本 一雄君       長谷川四郎君    柳原 三郎君       片島  港君    加藤 清二君       齋木 重一君    帆足  計君       伊藤卯四郎君    川上 貫一君  委員外出席者         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部長)    桑原 信雄君         通商産業事務官         (軽工業局長) 吉岡千代三君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         中小企業庁長官 記内 角一君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    秋山 武夫君         中小企業金融公         庫理事     中野 哲夫君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   加藤 八郎君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 八月十三日  委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として  片島港君が議長の指名で委員に選任された。 同 日  福田一君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  貿易及び中小企業に関する件     ―――――――――――――
  2. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 これより会議を開きます。  昨日に引続き電気事業貿易中小企業石炭鉱業、繊維などに関する件につき調査を進めます。  なおこの際理事補欠選任についてお諮りいたしますが、去る六月十二日理事福田一君が委員を辞任せられ、同月十四日委員に再選せられましたので、再び同君を理事に選任いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  3. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 それではさよう決定いたします。  次に中小企業に関し、商工組合中央金庫理事加藤八郎君を参考人として招致いしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  4. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 それではさよう決定いたします。これより質疑に入ります。帆足計君。
  5. 帆足計

    帆足委員 昨日愛知通産大臣中国との貿易増進につきましてるる要望いたしましたが、愛知通産大臣からはその趣旨従つて政府全力を尽すようになつておるから、従来行き届かぬ点があつたとするならば至急改めるように努力するという明快な御答弁がございました。従いましてその趣旨に基きまして現在問題となつております中国からの米の輸入並びに硫安輸出につきまして要望したいと思います。  まず第一に時間がございませんので、また軽工業局長のお時間の都合がありまして、同僚委員から時間を繰合わしていただきまして質問の次官をいただいた次第でありますから、なるべく簡単に、要を得て御答弁を願いたいのでございます。  まず第一に、今日中国からの米の輸入と、その見返り輸出状況は、現状でどうなつておるか。  それから、一括してお尋ねしておいたほうが時間の節約になりますから、第二にお尋ねしたいことは、中国向け輸出硫安においては値段の点においても三、四ドル得でありますし、米の輸入においては、品質においても値段においてもまた著しく有利でありますから、これは論議の余地はありません。その上昨今の天候状況から考えてみましても、明年の対策としてこの際中国から米を輸入しておくことは国民経済的に見ても必要であり、米と硫安との関係ならば国際連合諸国も十分に了解しておる問題でありますから、これは能率的に実現に移すべきものであると思います。従いまして、政府当局としては積極的にこの実現のためにご努力なさる意思ありや。  第三には、米の輸入見返りがどうしても必要でありますが、その見返り硫安輸出につきましては、朝鮮入札よりも先に、この三万九十トンの米の輸入、その見返りに約五万五、六千トンの硫安輸出ということが申し入れてあるのでありますが、朝鮮台湾のこととなるとすぐおやりになるが、中国のこととなるといつでもあとまわしになつておる。これは従来の行きがかりもありまして、多少考察するところもありますけれど、今日の段階でこういう行政をおやりになることは不当である。今日の段階では国によつて差別待遇をすべきではなくて、むしろその内容が米のような重要な問題を、きのうも斉木君から聞いたんですが硫安は安いところへ売るよりも高いところへ売つた方がいいではないか、これは真理でございます。そうしたら従来からの行きがかり輸入物資のことがあるというお話でしたが、輸入物資は米というものがあり、しかもそれが内地もち米であり、今日凶作におびえている社会情勢のもとでもありますゆえに、私はこれは中国貿易の中で何よりも一番摩擦のないものであると思いますから、硫安輸出朝鮮よりもいつもあとまわしになさるのはどういう理由であるか。  第四には、朝鮮の問題があるといたしましても、朝鮮を七、八万トンか十万トンぐらいにしまして、中国向けを少くとも十万トンぐらい捻出する方法を積極的に考えられたらどうであるか。大体今大きな輸出先といえば朝鮮台湾中国でありますから、台湾に二十五万トン送るならば中国には少くとも十万トンぐらいのわくをとつて朝鮮には七、八万トンなり十万トンのわくをとるというぐらいの総合的な見通しを勘案されることが至当ではないか。英国のイーデンが一体中国貿易をして、台湾をなくしたらどうするかということを英国の議会で開かれたときに、台湾焼きいも一つぐらい捨てたところで大英帝国は少しも困らぬという答をして満場を笑わしたことを聞きましたが、私もまつたく同感でございます。台湾焼きいも一つよりも中国六億の人口市場を失わない準備を今からせねばならぬ。水爆の時代で二つの世界の共存の状況は長く続く見通しであるということを通産大臣も言われておる。平和が続くとするなら貿易をする以外に残された道はないのでありますから、本格的に腹をすえて中国市場を拡大するという決心をしなければ、きようも中小炭鉱その他から陳情がありますが、一体日本はどうしてこの不景気を解決するか、連帯旗を立てて領土を取ることはできない、移民をする道などというものは幾らもありはしない、しかるに子供は以前たくさん生まれて、そうしてお年寄りは少しも死ななくなつてしまつて平均年齢は七十幾つになつてしまつた。こういうふうに人口はふえて国土は狭小でありますから、貿易以外に不景気打開方法はないのであります。石炭鉱業の方も中小企業の方も、もしこの不景気を打開しようとするならば、まず貿易の拡大のために全力を注いでくれということが掲げられない限り、からになつた冷蔵庫の中でお互いに論議しておるようなわびしい思いがする状況です。中国貿易というものを何か流行物か変なイデオロギーにかかり合つた問題かのように考えるこの国には錯覚がある。中国市場というものがどれほど大きく、歴史的にいかに宿命的に日本経済と結びついておるかということをもう少し私はまじめに考えてもらいたい。この点については私はそもそも小学校の地理の先生に責任があるじやないかと思つておりますが、中国ということを支那という呼び名で多少は知つておりますけれども、本当に日本中国との経済関係についての深い認識がイギリス以上にこの国に欠けておるということは非常に遺憾なことであると思います。従いまして、ただいまの問題について朝鮮台湾と、とにかく合理的なバランスをとつてもらいたい。人口六億を擁する中国と一塊の焼きいもほどの台湾を同じに取扱つたり、ましてや朝鮮李承晩韓国のような小さな場所と同じように取扱うことは間違つておるのであつて、今日のところはそれは相当の比重を台湾朝鮮にも持たせねばなりませんけれども、明日の見通し考えて二、三日の石を打つておくくらいの洞察力が必要であろう。それから第五には、台湾妨害ということが言われております。これは一昨日の新聞にも出ております。中国硫安輸出した会社に対して、以後は台湾は買わないという声明をしたということが一昨日の新聞に出ておりますが、それが本当であるかどうか。先日の愛知さんの答弁では、そういうことならば台湾外交折衝して改めてもらわねばならぬと言いましたが、私は台湾日本硫安を買いたくなければ一向買つていただかなくてもよろしい、中国の方からはとりあえず三十万トンの硫安を買うといつて来ておるわけでありますから、別に台湾から五十八ドルなどという安い値段で無理に買つてもらわなくてもいいのではないか、しかし買つていただければそれに越したことはないのですが、この問題に対して政府はどうお考えになつておるか。  まずこの各条項について簡単明瞭に正確な御答弁をいただいて、そうしてその御答弁によりましてあとのことを御相談したいと思います。
  6. 吉岡千代三

    吉岡説明員 お答えいたします。中共に対する硫安のお尋ねでございますが、見返り物資関係といたしましては、以前のことは私は詳しく招致いたしませんので、後ほど肥料部長からお答えいたします。最近の事例といたしましては、ご承知のように今年の六、七月に入荷いたしました五千四、五百トンの米の見返りといたしまして、昨日お答えいたしましたように、一万四千トンの硫安をこの八月に船積みすることになつております。これは昨日も申し上げましたように、契約といたしましては今年一ぱいということでございましたが、先方からぜひとも至急に、今月中に船積みをしてもらいたいという要請がございましたので、いろいろ手配いたしました結果、現在までに一万二千トンはすでに集荷を終わりまして、これは承認を与える手続きをいたしております。あと二千トンはただいま現物を手配中でございますが、大体今月中に船積みできるという見通しを持つておる次第でございます。それからそれに引続きまして、きわめて最近でございますが、中共から同様に米を一万四千トン輸入いたしまして、これの見返りといたしまして約四万五千トンの硫安輸出するという引合いがございました。これは輸入いたしました米に対するLC開設後十箇月後に船積みをする。従いまして輸入地並びに船積みの時期がどうなりますか。それによりまして時間的には若干の余裕があると思われます。それでこの点につきましては、昨日も申し上げましたように、ことし一ぱい国内需要が非常に旺盛でございまして、実は農林省通産省の予測を相当上まわる結果になりました関係で、年内といたしましては台湾に対する長期計画に基く予定量約十万五千トンを除きますと、五万トン足らずの輸出余力でございます。ただ来年に入りますと、相当余裕ができるのじやないかという考えを持つておりまして、ただいま申し上げました一万四千トンの米に対する見返り物資につきましては、いろいろ相談をいたしたのでございますが、何とか出そうじやないかということでこれは契約を進めるように通商局の方で手配をいたしております。ただどうしても国内需給関係肥料輸出できないという場合におきましては、これはストレートポンドで決済をすることになつております。ただいままで具体的に進んでおります契約といたしましては以上の通りでございます。  それから韓国につきましては、まだ入札が実行されておりません。入札は実施されたようでありますが、まだ結果は決定いたしておらないわけであります。ご承知FOA資金によりまして大体二万トン程度のものが年内船積みとして契約されるのじやなかろうか。従いまして、年内といたしましては、後はきわめて小口のものしか輸出余力がないという状況でございます。ただ先ほど申し上げたように来年に入りますと、内需関係に起きましても、相当輸出余力ができる。これにつきましてはご承知のように先般法律に基きまして発足いたしました輸出会社も、数日前に設立を完了いたしましたし、それらの専門家意見ならびに各地の価格、見返り物資状況その他通商政策上の関係をにらみ合せまして、できる限り輸出増進に努めて参りたい、かように考えております。以上のような状況でございまして、経済関係を越えて中国向けを不利益な扱いをするということは、私といたしましては考えておらないわけでございます。  それから台湾側からの中共向け輸出に対する妨害の事実という点でございますが、これにつきましては外務省からも答申を得ておりません。なお輸出につきまして積極的努力をすべきであるという点につきましては、まつたくお説の通りでありまして、五十万トン輸出をいたしましても、六十ドル平均といたしまして三千万ドルに達するわけでございます。もちろん内需の充足も重要でございますので、輸出につきましても極力増進に努めたいと考えておる次第でございます。
  7. 帆足計

    帆足委員 御熱意を持つて努力のほどもよくわかりまして、まことにけつこうだと思いますが、なお一万四千トンの第二回目の輸入はこれは常熟米ですか小站米のほうですか、両方まじつているのですか。ちよつと部長に伺いたい。
  8. 桑原信雄

    桑原説明員 食糧庁で扱つております状態を申し上げます。お話のありました特需の米の小站米の五千五百トンはすでに到着いたしました。その次の第二回の六千五百トンも今買い付けておりますが、これはまだ到着いたしておりません。これは両者とも内地港着CIF百六十二ドルでございますが、これは準内地米といたしましては一番安いものでございます。現場を拝見いたしますと、日本の北陸、東北筋の系統の米でありまして、品質もよろしゆうございます。ただ最初に入れました五千五百トンの中に、わずか七トンほどいたんだものがりますが、これはあまり追究するほどの品いたみとは考えておりません。なお入れてまいりました麻袋も新麻袋でございまして、非常にいいものを使つて出してきております。それから通産省の方でお話がありました一万四千トンの問題でありますが、これは常熟米であります。われわれ今中支方面というふうに考えておりますが、これは一万四千トンで計画いたしておりまして、さらにその後五千トン追加していただきまして、一万九千トンの買い付けを今いたしております。これは品物はまだ到着いたしませんからわからぬようなものでありますが、見本その他で見ますと、外米よりはややいいのではなかろうか、しかし北支の準内地米、きた支の日本系の米よりもやや劣るのではないかと見ておるのであります。これは百五十二ドル八十セントで買つております。これも安い方であります。なお運賃といたしましては五ドル十セントを見込んでおります。昨日お聞きをいたしておりましたところ、さらに約六万トンの売物があるというお話がございましたが、私の方といたしましては、確実な数字のお話を承つておりません。食糧庁としましては北支の米の入りましたぐあいから行きまして、もし売物があれば買つた方がよろしいのじやないかという考えを持つております。
  9. 帆足計

    帆足委員 ただいまのは、小站米が五千五百トン、それから六千五百トン、それからそのほかに一万四千トンと五千トンですか。
  10. 桑原信雄

    桑原説明員 さようでございます。
  11. 帆足計

    帆足委員 ただいま伺いまして政府当局の非常な御努力の跡もよくわかりました。このほかに松浦君からあと三万トンを向うが売る余力がある、最近の日本不作状況考えてというお話がありましたので、私どもの方では一つ具体案としてもつと確かめまして、また政府当局に御連絡いたします。  それからただいまの五千五百トンの最初中国米はどこにいつごろ配給になるでしようか。東京都に配給になるように、聞いておりますが、さようでございますか。
  12. 桑原信雄

    桑原説明員 芝浦に入つて東京都の政府指定倉庫に入つております。
  13. 帆足計

    帆足委員 いつごろ配給になりますか。
  14. 桑原信雄

    桑原説明員 配給はいつころとはつきりしたことにわかりませんが、麻袋も従来南方から来ておる麻袋ちよつと性質が違つているものでありますし、従いまして一見してわかることになると思いますけれども、まだいつ配給するということにきまつてはおりません。
  15. 帆足計

    帆足委員 五千五百トンの方の分はサンプルを見ました。われわれ試食会に呼ばれまして、たいへんおいしいすし米申分ないと思いました。それからあとの分もそういう見通しで、なおかつ不足のときはポンドストレート考えられるし、おそらくこれから半年ないし十箇月以内には輸出解除の問題も多少は解決つくと思いますし、為替操作上私は政府当局に御迷惑をかけるようなことはないと思うし、このくらいのことで御迷惑をかけるのでは、岡崎さんまでが中国貿易を少し拡大しようという国策とも矛盾するわけでありますから、政府のただいまのお取扱いの方針はまことに公正妥当なものとして大いに敬意を表する次第でございます。  もう一つ伺いたいのは、朝鮮への硫安輸出見通し、それから今後硫安増産をできるだけしていただきたいのですが、その見通し、今日は輸出非常事態ともいうべき事態でありますから、これは非常に私は重要なことだと思うのです。それから第三には、農林委員会をもう少し啓蒙する必要がある。今はもう国民経済がSOSの前夜であつて、昨日も申し上げましたように、外国為替資金が逼迫し始めて、重油の規制が始まる、ガソリンの規制が始まるということになれば、ゆゆしい状況を生むわけです。そこからやみとインフレが爆発するということになるわけですから、国際収支均衡維持輸出増進全力を注がねはならぬのに、農林委員会においてこういう問題についての理解がはたして十分であるかどうか、日本輸出が戦前に比べて今何パーセントで、世界貿易水準の何パーセントになつておるか御承知であるかどうかを、実は農林委員諸君にアンケートをとつていただきたいくらいの思いがするわけです。従いまして十七万五千トンの調整用のものは、全体のバランスを見ながら、ある部分は輸出が急ぐときには輸出にも立てかえ得るようにする。輸出というものは今日本国民にとつて死活の問題であるので、そのくらいの理解ある運用農林委員諸君が積極的に申し出るくらいの啓蒙教育が必要である。従いまして今後農林委員会の運営に関しましては、貿易状況がどうなつておるか、国際収支状況がどうなつておるかということを、軽工業局長なり通産大臣から一席ぶつて大いに啓蒙して、この問題を考えていただきたい。私はいつまでも百姓王国というような考え間違つてつて、農民も俸給生活者貿易業者も一体になつて進まねばならぬと思います。従いまして政府当局としては、この十七万五千トンの調整用運用をどうお考えになつておられるかということを伺い、われわれの申すことに多少の合理性があるとするならば、ぜひともわれわれの考え方をくみ入れていただきたいと思います。  それから最後に台湾妨害に対しては、一体現在正確な情報はどういうことが入つておるか、これは業界が非常に心配しておる問題であります。先日私が外務当局だつたか、通産大臣だつたかにお尋ねしたときには、そういうことがあるならばすぐ外交折衝をするし、そういう、不当な妨害に対してはお断りするということであつた。日本硫安を二十五万トン売つておりながら、中国にわずか売つたからといつてやきもちをやくような狭量な蒋介石では行く先が思いやられる。もしそういうヒステリーを起すならば、アメリカやイギリスに対してヒステリーを起せばよいのであつて日本国民が食糧にどれだけ困つておるか、貿易にどれだけ困つておるかを考えるならば、今中国日本貿易するのもやむを得ぬというくらいの理解力を持たなければ、まことにたよりない相手だと日本国民に逆にあざ笑われる結果になると思う。日本立場は微妙な立場ですから、蒋介石台湾だからといつて拒否することはありません。台湾と仲よくして行かなければならぬ。あまりヒステリーの度が強過ぎるのではないか。従いましてこれに対しては、これもやはり教育啓蒙の仕事でPTAの役割りかもしれませんが、政府当局としては、台湾をもう少し教育する必要があると思いますが、具体的にこの問題がどうなるかを伺いたいと思います。
  16. 吉岡千代三

    吉岡説明員 お答えいたします。韓国向け輸出につきましては、ただいまのところ具体的に承知いたしておりますのは、先ほどお答えいたしまして約二万トンでございます。その他はまだ具体的なオフアー等はありません。ただ御承のように、昨年度は韓国向けに約十六万トン輸出をいたしておりますので、おそらく今後相当引合いないし希望があるだろうと考えております。  次に硫安増産見通しについてでございますが、昨日お答え申し上げましたように、今肥料年度生産計画といたしましては、硫安換算二百四十万トンという計画を立てたのでございますが、これにつきまして、肥料審議会において昨年度の二百三十六万トンに比較してもう少し増産できるのではないかという御意見が強くあつたわけでございますが、われわれといたしましても極力増産に努めたい、また見通しといたしましてもいま少し多く見てはどうかという意見もあつたわけでございますが、やはり計画としてはできる限りかたいところを押えてたくのがよいのではないか。ことに申すまでもなく電力割当量の問題と料金の問題があるわけでございまして、昨年のような非常な豊水ということが今年度において期待できるかどうかという点についても問題があると思います。いわゆる平水ベース考えました場合には、まずこの辺が計画としても適正なところではないかという考えをもつて二百四十万トンとしたわけでございますが、同時に工場内におきましても、たとえば電解槽の設備を改善する等の措置をとりまして、同一の電力量によつてさらに増産をはかるということもやつております。また御承知のように、尿素の増産によりましてこれをふやすとか、あるいは開銀に対しましてただいま約十一億の資金を要請いたしておるわけでありますが、これらによりまして極力合理化を進めると同時に、今後の電力事情等によりましては、これを最小限度といたしましてできる限り増産に努めたい。その点は肥料審議会においても強く要望され、また業界側も、もちろん企業として増産努力することは当然でありますので、できる限りの増産に努めたいと考えております。  さらに調整用の十七万五千トンにつきましても、これは法律国内需要の約一割ということがきめられておるわけでありますが、メーカーの在庫等の関連におきまして、在庫の見積りがこれでも少いのではないかという御意見もあつたわけでありますが、いろいろな関係考えまして、これで御決定をされたわけでありますが、これの放出につきましては、昨日も申しましたように、国内需要見通しがつけば、これをいつまでもただいたずらに持つているわけでもないということは、農林当局とも打合せをしておる次第でございます。  次に農林関係につきましていろいろ御意見があつたわけでございますが、私もまだ就任早々でございますので詳しいことは承知いたしておりませんが、少くとも農林省に関する限りにおきましては、この増産なり輸出の問題につきましては、十分の御理解を得ておる。以前はどうか存じませんが、現在におきましては、これらの問題につきましてわれわれの方と意見が食い違うというような事実は、最近におきましては全然ございませんので、それはわれわれとしても十分御信頼申し上げておるような次第でございます。  それから台湾のの妨害等につきましては、先ほども申し上げましたように、まだわれわれとしては情報を得ておりませんので、至急外務省とも打合せをいたしまして、事情によつては適切な措置を講じていただくように努力いたしたいと考えておる次第であります。
  17. 帆足計

    帆足委員 時間がございませんので、一言だけお許しを願いたいと思います。ただいまの政府当局のなされた御報告はおむねわれわれ満足でございまして、食糧並びに肥料当局の努力を多とする次第でございます。満足でない点もあるのでありますが、それらの点については今後一層の御努力を願いまして、特に台湾政権からの苦情などの問題は、取上げ方によつてこじれたりしてはおとなげない点もありますから、そこらあたりもスマートにひとつ御解決のほどをお願いいたします。今後とも重要な問題ですし、私も議員連盟の一員でありますから、緊密な連絡をとつて御協力いたします。すでに与党の側におきましても、「中国貿易英国と並んで拡大するということは国策として取上げるという段階になりましたので、どうかごの問題には与党、野党の隔てなく御協力のほどお願いいたしたいと思います。御答弁まことにありがとうございました。
  18. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は山手君。
  19. 山手滿男

    ○山手委員 きようは少し各論的にいろいろお尋ねをしてみたいと思います。  まず中小企業庁の長官及び金融公庫、商工中金の皆さんにひとつお尋ねをいたします。まず記内長官にお伺いいたしますが、このデフレ経済下において中小企業が困るようになるということは、もう明らかに目に見えておることであつて、議論の余地はありませんが、現在中小企業の中で中小企業安定法について政府側の善処を要求している。たとえて言えば、調整命令の発動等について要望しておる組合が相当あるように聞いておりますが、それらについては今どういう段階になつておるか、まず御答弁願いたい。
  20. 記内角一

    ○記内説明員 中小企業安定法の調整命令の発動につきましては、さきにタオル織物業につきまして設備制限の命令を出しました。引続きましてマツチの製造業につきまして設備制限と出荷制限の二つの問題につきまして調整命令を出した次第でございます。その後いろいろな業界からいろいろな話合いも持つて来ておりますけれども、今特に議論になつておりまするのは、絹人絹織物業と綿、スフ織物業の二つが、設備制限並びに出荷制限という問題については、自分の調整規定によるだけでは十分ではない。従つてこれに対して調整命令を発動してほしいという要望が熾烈に出ておりまして、今広幅絹人絹織物並びに特殊の綿織物につきましては、設備制限というような点につきまして、出すのも大体やむを得ないのじやないかというふうな考え方のもとに作業をいろいろ進めておるという段階でございます。
  21. 山手滿男

    ○山手委員 絹人絹等について非常に要望があるのでありますが、最近政府の方でもいろいろ研究の上中小企業安定法二十九条の調整命令の発動については、機動的に自主的にさらに強力にやり得るように施策をむしろ推進をする、こういう方針に政府は最近――以前はほとんどよう踏み切らなかつたのですが、踏み切つて来られたように伺つておりますが、これを積極的に解決をするという腹であるのかどうか、もう少し準備をしておるという程度なのか、その点を伺つておきたい。  それから前の長官時代に私は輸出と関連のある小型の中小業界――業界が小型の中小企業については、まとまりのあるものはどんどん積極的に指導して、ことさらに無理な競争をして、高く売れるものを安く輸出をするということのないように積極的な指導をすべし、たとえて言えば双眼鏡の業界などはどうしても早く手を打たなければいかぬということで、大臣も積極的にやりますという約束であつたのでありますが、その後どうなつておるか、それもあわせてお伺いをいたします。
  22. 記内角一

    ○記内説明員 最近のデフレ下におきまして、一部の産業におきましては不当な混乱に陥つておる部門もあるように見受けられるものもございます。そういうものにつきましては、今までのような比較的消極的な態度でなくて、もつと進んだ考え方でもつて安定方策を講じて参りたいというふうに考えておる次第でございます。なお地方的な特殊産業、ある集団産業というふうな部門につきましては、従来もいろいろな手を打つてつておつたわけでありますが、いわゆる十七億輸出対策というふうなラインの際におきましても、特にこの方面に重点を置いて考えて参りたいと考えておる次第でございます。ただこの面におきましては、単に製造業者の点ばかりに手をつけたのではだめでございますので、製造業者と輸出業者が一体になつてそれぞれの手を打つてもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
  23. 山手滿男

    ○山手委員 さつき言いましたように、双眼鏡の業界のごときものは、みんな製造業者即輸出業者のようなかつこうになつてつて、向うの、バイヤーにまつたく買いたたかれてむちやくちやな競争をするのでありますが、むちやくちやな競争ができないように、十分な利潤を持つて品質に責任の持てるものを輸出できるように態勢を整えさしてやらなければいかぬのでありますが、私はあの当時約束をしておいたのがほとんどそのまま放擲されておるようなかつこうでありますから、これは長官の方で早急にお調べを願いたいと思う。絹人絹そのほかについてもいろいろの問題がありますので、掛声ばかりでなしに具体的に政府に御考慮を願いたいと思います。特にタオル業界のその後のいきさつ、あるいはマッチ工業界のいきさつなんかを私二、三聴取してみておりますが、タオル工業界等については非常に真剣に取組んで、比較的業界が安定をした。これは政府の方も踏み切られた関係もあつて、私は好影響があつたものと思います。最近それでもなおまだ脱落をする業者があるわけでありますが、その脱落する業者は全業界が団結をしてかかえて、今三割、四割と操短をしておるのは、そういう施設に操短の部分を集中してみんなが少しずつ操短をするというようなことは不利であるからというふうに、方針を立ててやつて来られているらしい。それにはやはり相当資金もいるわけでありますが、三割操短、四割操短といえば、全工場百台のうちの三十台とめる、四十台とめるというのであると非常に非能率になります。また商社の倒産から手をあげたような工場が現実には相当あるわけでありますが、そういう操短をする場合に、手をあげた工場を全部とめて、ほかの工場は業界が一致してフル運転をして、みんなで助け合つて行く、こういうふうな非常に好ましい措置がとられつつあるように私は聞いております。これは企業整備をして行くというか、業界が共同して立ち直るには私は非常にいいモデル・ケースであろうと思いますが、こういうものに対して通産省はどういうふうな態度で臨んでおられるか。御説明を願いたい。
  24. 記内角一

    ○記内説明員 企業の整備のやり方につきましては、大企業のようにあつちこつちにたくさんの工場を持つておるというような場合におきましては、一つの工場を閉鎖して他の工場に集中するというふうなこともよいのでございますが、一工場しか持つていないような中小企業にとりましてはそういうこともできかねる次第でございますから、今お話のような方法でもつて組合が相互に共同して、しかも能率の上る方法をとつて参ることは最も当を得たものでありまして、これこそ協同組合法でねらつておる趣旨にも合致するものというふうに考えておる次第でございます。従いまして、われわれとしてはできるだけこういう面を推進して参りたいというふうに考えるわけであります。ただ何分にもこういう考え方は望ましい一つ方法ではございますけれども、各業種、業態によつていろいろ変化もあり、また業者自身の考え方もいろいろ違つて参りますので、全面的にこれを推し進めるということにも若干の問題はあろうかとも思いますけれども、しかし考え方といたしましては、大体お説のような考え方で進めて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  25. 山手滿男

    ○山手委員 政府考え方はよくわかりますが、やはりそういうふうな施策を実際に行おうとする組合には、金融の裏づけというものがなければ動きがとれないということになつて来る。そこで商工中金あたりが本腰になつて政府の、今記内長官のお話のような立場に裏打ちをするように、積極的に機動的に動いていただかなければいかぬのでありますが、どうも私は最近政府通産省のものの考え方と、それから中小企業に対する特殊金融でありながら、商工中金あたりのものの考え方が、非常におつくうになつているのか、別に日銀の方からブレーキをかけられておられるのか、商工中金が今のような場合に、その能率化、調整を行おうとすれば相当長期にわたる資金がいる、その長期にわたる運転資金をどんどん出さなければ、今のような操短をやる工場を一工場に集中して、能率のいい工場を全部動かして、製品を安く合理的に仕上げさせるということはできないのでありまして、今のような事態が二、三起きてつつあるのでありますが、商工中金の方からどういうふうな態度で臨んでおられるのか、御説明を承りたいと思います。
  26. 加藤八郎

    加藤参考人 私たちのやつておりまする基本の方針としての考え方は、決してお説のような考え方を持つておりません。どこまでも政府の御方針を体しまして、それに沿うような方法において金融をするというふうに努めておるわけでございます。いろいろ至らぬ点もあろうと思いますけれども、基本方針については、どこまでもそのつもりでやつております。今ご質問のいろいろの点がございましたけれども、われわれの融資先と申しますのは、御承知のように中小企業等協同組合法による場合だけでございますので、調整組合という場合に、その組合に直接中金が御融資をするということはできませんので、それに調整組合と相対する協同組合というものが設立されておりますならば、それを通じてその調整の方針に合うような資金を流すというふうにやつておるのであります。昨年でしたか今年の春でしたか、タオルの生産制限というような場合には、相当その方針によりまして協同組合を通じて金融をしたというようなこともございまして、どこまでも政府の御方針に従つてつておるつもりであります。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  27. 中野哲夫

    ○中野説明員 調整組合等に対する調整資金、あるいはその結果による設備資金、長期運転資金の融資につきましては、公庫本来の任務が設備資金、長期運転資金の両方を貸し出すという建前でありますので、一定の長期運転資金の貸出し要領をきめまして、各代理金融機関に通達をいたしておるのでございます。ところがお手元に差上げました資料でもわかります通り、今日までの実績を見ますると、長期運転資金の全体の貸出額に対して占める比率が、件数、金額ともにきわめてまだ少い状況でございます。本年度、窓口機関とかあるいは他の関係方面からいろいろ業界の様子を伺いますと、合理化資金等の設備資金をこういうデフレの政策の滲透に伴いまして、見通し難というようなことから、設備資金の要請が、昨年公庫発足当時に比べますと、いささか気迷い状態のようなきざしも見えております。逆に今お話のような、業況もしつかりしているんだ、先の見通しもいいんだ、ただこの際勘定合つて銭足らず、金の手詰まりのためにみすみす休業あるいは倒産というような危険に陥るというような向きがだんだんふえて参りましたので、公庫といたしましても、さような見通しのしつかりした中小企業の振興のために長期運転資金も積極的に貸し出そうじやないか、こういうような考えを持つているのでございます。ただ長期等の運転資金については、その内容を把握します上において、受入れ側になかなか帳簿、組織その他が整つておらぬ、また代理銀行に対しましてもかなりこれは内部に立ち入つて綿密な審査をしなければいかぬというような関係でございまして、これらは今後私どもも代理銀行も受入れ側も一層努力いたしまして、公庫法の趣旨を生かすための長期運転資金の貸出しについて徹底的に努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  28. 山手滿男

    ○山手委員 この問題は協同組合法と中小企業安定法とのいろいろ根本的な問題にもなつて来るのですが、私は調整組合をつくつて中小企業が現実にあれだけ大騒動してやつているのに、調整組合には金が貸せぬ、協同組合には金が貸せるとか、いろいろそういうしちめんどうくさいことを言つて、それじや金の借り方は別の組合で行く、調整はこうで行くというようなことで混乱をしている。しかも現在のこのデフレ下におきましては強力に手取り早く、ややこしい話でなしに、わかりやすい話にして行かなければいかぬのに、今の加藤理事お話でありますと、調整組合には全然金が出て行かないということになるのでありますが、その点長官はどういうふうにお考えでありますか、ことに私は最近名古屋から京都、大阪、神戸とまわつてみて感ずることは、地方の府県がもう中央ばかりにたよつてはおれぬというわけで、県やなんかの商工課を通じて相当無理な金融をやつているようです。一種の商工業者のための質屋のような仕事をやつたり、いろいろやつております。大阪なんかは二百億も二百五十億も投入している、名古屋でも数十億投入してやつている。これだけ府県が財政の苦しいときにやつているのに、中央でやつているのは、商工中金のやり方なんかも見ておつて、もつと抜本的にやつてもらわなければ困る。ことに地方の商工行政でやつている金融あるいは中小企業の指導の仕方、見方というものと、中央の通産省中小企業行政というものが全然離れ離れになつているというか、ちぐはぐのかつこうでやられている。中小企業者は、どつちへどういうふうに行つたらいいのか、書類でもああ出せ、こう出せといつて、方々から書類だけはよけい提出を求められるが、具体的には今の話で金もなかなか出て来はしない。出せといわれるから門をたたいてみても、非常に手続がややこしくて、寄りつきがたいものになつているということです。そこで私は地方の実態をよく知つている府県の商工行政と通産省の方がもつとがつちり四つに組んでやる必要がある、そういうことを今度地方をまわつてみて痛感した者の一人であります。わずか百万か八十万くらいの金を県に中小企業振興費で渡しておつて、それで政府の方では非常に手が打たれたとも思つてはおられぬと思いますけれども、今のようにばらばらでは、下の方のものはどつちか迷つて、両方にそつぽを向いてしまうということになつて行きつつあると思う。その点についても長官はどういうふうにお考えか、伺いたい。
  29. 記内角一

    ○記内説明員 調整組合と中小企業協同組合とをどういうふうに持つて参るかという点は非常にむずかしい問題でございまして、御承知通り、協同組合はいわゆる共同事業中心にして参る組合であります。従いまして、どちらかと申しますと、比較的地域も小さく、人数も少いというものでございますが、調整組合はいわば統制的な色影の強く出ておる組合でございます。従いましてその性格上、いわゆる経済活動と申しますか、その範囲が地域において相当広範囲になり、組合員も多数かかえるということになる次第であります。従つて、統制の意味の事業と、いわゆる経済活動としての意味とが相互に相反するような方向に動いておるわけであります。ただたまたま広範囲の地域を持つた協同組合が、ほとんど二枚看板のような形で調整組合をつくつておるというふうな点はあるわけでございますけれども、大体の傾向としましては、今申し上げたようなことになつておるわけでございます。従いまして調整組合に、すぐ経済活動というふうな意味をかねて、この最も経済性をたつとんで参ります金融事業を行わせるということになりまして、はたしてその金融がついて参るかどうかという点に、われわれとしても相当検討を要する点があるのじやないか。ただ今までは協同組合と調整組合と載然と区別しておりますけれども、しかし先ほど申し上げましたように、広範囲な経済活動をやり、広範囲に業者を包含しておるような協同組合につきましては、簡易に調整組合を組織し得るような、それで形においては二枚看板のようなかつこうではありますけれども、両者一体になつて活動できるような態勢をつくることも必要ではないかということで、そういう面で目下検討を続けておる次第でございます。  なお地方と中央との関係でございますが、私ども中小企業庁は東京にその根拠を持つておりまして、出先には、通産省の出先としての通商産業局以外には、いわゆる法律的な出先は持つておらないわけですが、全国に散在しております中小企業者に手を差延ばすのに対しましてはこれでは不十分だ。従いましてこの問題はわれわれといたしましては、府県にわれわれの意を体して十分活動してもらうというふうに考えておるわけであります。従いましてわれわれの方針が府県と違うというふうなことは万々ない。ただわれわれの方は全国的な方針を一応立てる。それを個々の府県に、あるいは個個の府県のうちの個々の地方の業者に適用して参りますのにはそれぞれの進み方なり行き方なりがあろうかと思うのであります。従いましてわれわれは全国的な指導方針、また吃る業種についての全国的な行き方というようなことを考えますのを基本にいたしまして、個々の地方の実情に応じた具体的な適用ということは、地方の県庁あるいは通産局にまかして、そのよろしきに応じて判断していただくということに考えておる次第でございます。従いまして一部にはあるいは中央と地方の間に考え方が食い違つて来るというようなこともないとは申しませんけれども、しかし大体はそういう考え方でやつてつている次第でございます。もちろん県におきましては県独自の考え方で、たとえば県産振興というようなことで、全体的から見て必ずしもおもしろくない行き方をする面も間々あろうかと思います。これはまた具体的によく連絡いたしまして調整をはかつて参りたいというふうに考えておる次第であります。
  30. 山手滿男

    ○山手委員 中央の商工行政と地方の商工行政、これが必ずしも一体になつて現在の中小企業の金融難を打開するような態勢に今なつておらない。それから通産局あるいは地方の商工課の商工行政と、商工中金あるいは中小企業金融公庫の金融方針とが、これがまた一体になつて相結び、相からみ合つて中小企業を、ほんとうに救つてやるという態勢にななつておらない。これがばらばらであります。ばらばらであるから、相当に死金も使い、かつ皆がこの中小企業者に必要以上の焦慮を与え、困感を与えておる。私はそういうところにまだ手が打たれなければいかぬ余地がたくさんあると思う。その調整をして――大阪でも京都でも名古屋でも、皆さん御承知のように、それ自体が非常にたくさんな中小企業金融を独自の立場でやつている。ああいうふうな経済力のあるところはそうでありましようが、それ以下の府県でございますと、これはまたお手上げの状態になつている。地方財政の困窮、余裕のなくなりつつある現状においては、中央においてもつともつと地方の商工行政と結びついて、強力な中小企業振興対策がなされなければいかぬ、特に金融において私はしかりと思うのであります。  私はそこで方向をかえて伺いたいのですが、先般中小企業金融公庫の総裁がお見えになつたとき、中小企業金融の実態にかんがみて、乙方式による貸出しをうんとやつてもらう、もう五月ごろからは乙方式を三割くらいまで伸ばすというこの委員会でのお約束であつたのでありますが、その後中小企業金融公庫の方ではどの程度まで実績を上げられているか、御答弁を願います。
  31. 中野哲夫

    ○中野説明員 お答え申し上げます。乙方式の過去の貸出しの実績につきましては、七月末の現在で申し上げますと、貸付決定いたしましたものが十九件、一億一千四百万円でございます。このほか、三、四件、審査の結果、融資不適当という結論が出たのもあるのでございますが、御指摘のようにまだとても二割、三割という割合を占めるに至つておりません。乙方式については、御承知かと思いますが、銀行において予備審査をし、本店において本審査をして決定いたすのでございますが、この要員といたしまして、この五月から審査部を設けましたが、この人員が十五、六名の程度にすぎないのでございます。かつて乙方式につきましては、まだ代理店において実地調査を必要としない程度の十分な予備審査をするという向きが少いのでございまして、いろいろ予備審査の書類を見ただけでは、貸付決定を適当とするというふうな結論を得ないようなケースが非常に多いのでございまして、これを補完する意味において、現地に審査要員を派遣いたして調べておるというような現状でございます。だんだん代理店もなれて参り、また私の方もなれて参り、また今後適当な審査要員の増員をお願いすることによつて、だんだん乙方式として融資するにふさわしい案件の貸付数をふやして参りたい、かように考えております。
  32. 山手滿男

    ○山手委員 そんな答弁は、総裁がここへ出て来て、この委員会で約束したこととは全然違うのです。そういうことを今どきずけずけと答弁をするわけには参りません。あのときの速記録を見ればよくわかるのでありますが、三割ぐらいは必ずやりますと、あなたの方の坂口さんがここで確約をしておいでになつたことです。私も実は昨日ちよつとおじやまをして審査部に行つてみたら、人員がたつた十七人でこれではできませんというので、お手上げをしておつた。ところが今の御説明では人員が足らないからというお話であつたようでありますが、私はそれでは乙方式をやつておられるのではないように思う。中小企業金融公庫は政府の金融引締めによつて大きく融資の基準を引締められたのでしよう。私はそうだと思う。きのう私は実際に行つて、いろいろ話をつつ込んでしてみた。乙方式によるものは、輸出に直結をしたものか何かでなければ受付けられませんというのですが、そういうふうにいつなつたか、御答答弁をいただきたい。それでは金融公庫をつくつた趣旨はなくなつたのです。
  33. 中野哲夫

    ○中野説明員 お答えいたします。最近において融資の基準を引締めたという事実はないのでございます。乙方式につきましては、何と申しますか、窓口機関では審査能力がないだろう。たとえば鉱山、石炭等の開発とか、あるいは重要機械、その部品の製造業等につきましては、信用金庫とか相互銀行等においては審査能力が乏しいというようなものもございましようし、またきわめて地方的なサービス業、たとえば旅館業とかお医者さんの事業とか、こういうものにつきましては、地方の代理店において地方的な事情をおくみとり願つて、御融資を願いたい。中央に問題を移しまして、中央でいろいろな全国的な関係もにらみ、また通産省その他と御相談をして、審査を加える必要も少いのではないかというようなことを当初から考えまして、乙方式の融資については、しばらくの間は輸出に関連するような産業、あるいは重要基礎産業の関連産業、あるいは生活必需品に関係するような産業、あるいは通産省の奨励しておられまする新技術の工業化の事業とか、鉱山の開発とか、そういうものを優先的に乙方式で取上げていただきたい。そのためにわくの不足等がありますれば、本店からわくの追加は弾力的にやるから、こういうことで当初から出発いたしたようなわけでございます。それで先ほど申し落としたのでございますが、私どもの能力のいかんはさておきまして、今申し上げましたような心持ちに沿うような融資の案件が、もう少し活発に出て参つてけつこうじやないか、こういうふうに考えておるのでございまするが、窓口銀行からの申出件数も今日あまり期待以上の多きを見せておらぬというふうな実情にございます。ただいま申し上げたような結果に相なつておるのであります。
  34. 山手滿男

    ○山手委員 私は昨日行つて、あなたの方の管理部長さんや審査部長さんに皆会つて最近地方からいろいろ乙方式、甲方式というようなことがあるけれども、一向に窓口でも取扱わないし、一向に乙方式もやらない。どういうことでそうか。具体的に案件も私に言つて、それを聞いて来たのです。そうしたら、輸出を実際やるか、あるいは特定の重要なもの以外は乙方式はやらぬことになつております、そういうことです。そんな方針をいつ決定されたか。初め中小企業の特殊な困難な実態に即応して、中小企業金融公庫を特につくらなければいかぬというふうなみんなの熱意で、ああいうものができた当時の考え方とはがらつとかわつてしまつた。あなた方はそれでは一般市中銀行の金融方針に塗りかえられて、特殊金融機関であるという自分たちの根本的な性格も忘れておる。私はそういうふうにきのう思いました。こんなことだつたら、よけい人を使つて屋上屋を架するようなものであつて、ああいう中小企業金融公庫ならない方がいい、商工中金と一本にした方がいいと思う。乙方式なんかをやつて、地方の一般市中銀行なんかがいやがる金融でも、積極的に自分たちが熱意を込めてやりましようというのが、あの乙方式を積極的におやりなさいというときのみんなの考え方だつた。今お話を聞くと、人手が足りないからその後たつた十九件しか扱つておらない、こういうお話です。地方の方では審査もし、融資も受けたい、金融の多寡は別として、今までの取引銀行がわくがどうとかなんとか言つて一向に進捗をしないから、直接にでも訴えたいという気持がある。そういうものについてはもうすげなく断つてしまつて、そういう態度であなた方がおられるから、窓口銀行のもう冷淡な、ぶあいそうな態度で中小企業者に臨んでおる。われわれは国会でああいう特殊な金融機関をつくつて中小企業のために大いにやつてやる、努力すると言つて約束しておる。それをあなた方の方で何かわからないようなかつこうに変質をしてしまつておる。私は非常に遺憾に思う。今のような特殊の一、二のものばかりしか扱わないというふうなことだつたら、乙方式をむしろやめてしまつた方がいいと思う。これについて人がどれたけあればもつと積極的に行くのか、あるいはなぜ今日金融公庫の窓はあまり利用されずにほつたらかしにされておるのか、その点について中野理事から御答弁を願いたい。
  35. 中野哲夫

    ○中野説明員 乙方式はきわめて狭い範囲にしか窓を開いておらぬように思うがという御指摘でございますが、物品製造業等は、先ほど申し上げましたような私の方の基準から見ましても、ほとんど大半が入るというような状況でございまして、現実には地方的なサービス業というものについて、しばらく審査能力の関係上お待ちを願いたい、こういうことでございますので、具体的にお話の案件が、どういうものでございますか、私はまだ承つておらぬのですが、窓口は決して不当に狭い感じを与えていないつもりでございます。来年度どのくらいの人数が必要かというようなことにつきましては、ただいま監督官庁等のご意見も伺いながら、予算原案を準備中でありまして、確定的な数字をただいま持ち合せておりませんが、やはり所定の計画を遂行しますためには、数十名の人員の拡充を必要とするのではないか、かように考えております。
  36. 山手滿男

    ○山手委員 人員がたつた十七人だから十九件しかやれません、窓口は狭くしてはおりませんというふうな御答弁は、総裁以下が出て来てあれだけこの委員会で約束されておるのに、今どきそういうことでは答弁になつておらぬと思う。私どもは何もあなた方を怒つたりいじめたりするつもりでこういうことを言つておるのではないので、ああいう金融機関をつくつた趣旨がなくなつては困るのですから、実際に人がいるならいるで政府とも交渉し、国会でも大いに御協力を申し上げて、やることだけにやりたいと思う、現実に中小企業者は困つておるのだから、それに対して公庫をつくつてこういうふうにやつていますということをお題目だけに終らせないでもらいたいというのが私どもの考え方でありますが、残念ながら実情はそういうことです。一ぺん帰つてよく聞いてごらんなさい。今は輸出をやつているような事業あるいは特定の重要産業以外には受付けておりませんとこう言う。ところが全国に中小企業でそんなものがどこにありますか。独自でどんどん輸出をやつており、特に国家が育成しなければいかぬと思うような中小企業というものはほとんどないというてもいいのです。ないことはないけれども、特にそれだからというので取り上げてやれということには、地方の一般銀行の窓口に行くとならないのです。そこに問題があるので、私はやかましく言つておるわけであります。今の問題については長官はどういうふうにお考えか。もう少し金融公庫の貸出しの不活発なことを是正して、今日ほんとうに貸し出すべきものはすみやかに手を打つて行く必要があると思うのでありますが、関連して長官に御意見を承つておきたい。
  37. 記内角一

    ○記内説明員 いろいろご意見もあるようでございますが、私どもの感じといたしましては、乙方式があまり徹底をしておらない面は、もちろん公庫としての受入れの問題もありますが、それ以上にいわゆる出先と申しますか、第一線としての承る金融機関がそういう態勢と申しますか、気持と申しますか、まだそういうふうな扱いになれておらぬという面が多分にあるのじやないかというふうに考えております。従いまして公庫に直接出て参りまして、乙方式による、あるいは甲方式による貸付を要望いたしますれば、適当な金融機関に振り向けて参るということにもなろうかと思いますが、ただた公庫は御承知通り東京に本店、大阪に支店があるだけでございまして、従いまして何と申しても窓口の方で受付けてくれなければ、そういうことまで発展し得ないきらいが多分にあろうかと思うわけでございます。そこで私どもの考えといたしましては、今後銀行方面あるいは信用金庫、相互銀行というふうな方面と連絡して、各府県ごとに何か金融懇談会、金融協議会というふうなものを、特別に設けまして、この面から今後乙方式、甲方式、いずれを問いませず、公庫の資金をもつと活用してもらうようにそれぞれ働きかけをしたらどうかというふうに考えて、目下その構想を練つておるような次第でございます。そういうことで窓口がもつと積極的に動いて参りますと同時に、公庫自体といたしましても人員を充実いたしまして、支店を設けるということもできかねましようけれども、各府県に少くとも一箇所くらいの相談室というようなものを設けまして、専任の職員を置く。そこにおいてそれぞれ適当な受付をしまた適当な金融機関にあつせんをするということによりまして、いずれの方式を問いませず、積極的に融資できるような態勢に持つて参りたい。そこでそういう案件が乙方式として本所に集まつて参りまして、それが処理し切れないような態勢になりますれば、当然それを処理するだけの陣容は整備して行かなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  38. 柳原三郎

    ○柳原委員 関連してごく簡単に、中小企業金融公庫と商工中金の方にお尋ねをいたします。デフレがだんだん浸透して参りまして、各メーカーと申しますか生産者におきましては縮小生産の段階に入つて参りました。最近中小企業の公庫の資金を利用せんとするもの、借入れをしたいというものの性格が、設備資金からようやく運転資金を必要とする段階に入つて来たと思います。今後ますます中小企業におきましては、設備資金よりも運転資金の方が必要であるという傾向がはげしくなつて来ることは必至だろうと思います。そういうときにあたりまして、先ほど公庫の中野さんから、長期の運転資金についての解釈はなかなかむずかしいものであるが、最近ですか、各窓口に対して長期運転資金とはこういう解釈のもので、あるという通達を出されたように聞いたのでありますが、その通達の内容を聞かしてもらいたい。それから商工中金におかれましてもやはり長期の運転資金を貸し出されておりますが、その商工中金における長期の運転資金の解釈と今の公庫の長期の運転資金の解釈には統一性があるのか、それぞれ個々の立場においてそういう通牒とか指令というものを出されておるか。もちろん商工中金では各支所へでございますが、その関連性ありやなきや、こういう問題について両者にお伺いをしたいのであります。  それから最後に、これは中小企業の公庫の方でありますが、乙方式の申請が窓口を通じて少いというようなお話がございましたが、窓口で聞きますと、各窓口は当分一件以上の乙申請を受付けてはいけない、すなわち一件解決が済んだならばその次の乙申請の一件を審査に本部へ提出せよ、こういう通牒が出ておるようでございますが、そうすると窓口では甲、乙同じわくの中で、しかも手数料と申しますか利潤と申しますか、そういう面においては甲の方が便利である。そこで窓口では乙方式はどうしてもあとまわしにする、こういうような関係もありまして、甲を主として申請し、乙を公庫の本店に対して遠慮するというふうな傾向があるように見受けられるがどうか、この点について御答弁を願います。
  39. 中野哲夫

    ○中野説明員 お答えいたします。長期運転資金につきましては、実は公庫発足当時いろいろ内容の検討に、設備資金より少しむずかしいものでございますので、ひまがかかりまして、昨年の十一月から始めたのでございます。いろいろ書いてありますが、用は先ほど申しました通り企業の経営がしつかりしておる、ただ勘定合つて銭足らずだ、運転資金その他の借入れによる部分が大半であつて、自己資金がないために、借入金の返済々々に追われておる、売上金から借入金を返すというようなことで、長期性を持つて二、三年で利益から償却すべきような運転資金を、短期の形で借りておる、そういうことは経営が非常に不安定になるのではないか、ですから二、三年で償却できてあとは自己資金として運転資金をまかなえるというような状況に持つて行く、いわゆる根だまり安定資金と申しますか、そういうものについては公庫でお貸しいたそうではないか、こういう気持で通牒を出したのでございます。  なお公庫発足当時は、まだデフレ政策もございません。いわゆる一種のインフレ経済の延長というようなことでありましたので、設備資金に大きい圧迫を加えてもいかがかと考えまして、各方面と御相談の上、一件百万円まで、貸付期間は二年ぐらいまでを原則とする、それを越した場合には御相談によつてきめる、こういうことであつたのでございまするが、この六月にただいまお話のような全般的な設備資金に対する需要、長期運転資金に対する需要が大きい変化を遂げて参りましたので、私の方もそのわくを広げまして、三百万円までは自由に扱つていただいてけつこうである。また期間も三年まではこれまた窓口機関で審査決定されることは何らさしつかえない。それを越えるものは御相談を願いたいということで、相当程度のわくを広げました。それからまたこの六月以前までは今までの取引銀行の既存の債務の借りかえは絶対に認めなかつたのでございまするが、資金繰りの関係上、爾後の短期運転資金、購入資金等の融資を継続する。それによつて業況がうまく行くというような向きの場合は、一時形は何といいますか、今までの肩がわりになるものもやむを得ない。これも認めようというようなことで、御満足に得ないとは思いまするが、公庫としてはかなり長期運転資金の貸付要領の大幅な緩和をはかつて通牒を出しておるような次第でございます。  それから第二点の乙方式の問題につきましては、確かにさつき山手さんからお話通り、思うように出て来ないのは公庫がしぼつておるから出て来ないんじやないかというような逆の論理も成り立つわけだと思いまして、諸般の点から私どもも恐縮には存じておるのでございまするが、事務能力上一件一件に縛るというようなことは、ちよつと私今はつきり記憶していませんが、確かにお話通り多少抑制してもらいたい。実は私の方の職務能力の関係もございますが、御承知通り乙方式は窓口銀行が三割の保証で私の方が七割責任を負う、こういうことになつておりますので多数の窓口銀行の中には第一線の審査が不十分で、とにかく公庫が七割かぶるんだから少々事業の内容あるいは見通し等について審査が不十分でもどんどん出すというようなことに相なつても困ると思いますし、また内容のいいものでもどんどんお出し願いまして、案件が公庫の本店にあまりたまりまして、なかなかその処理がさばき切れない。かえつて申込人の方に不満をお与えするのもサービスのゆえんではないんじやないかということで、多少提出案件については調整をお願いいたしておることは事実でございますが、今申し上げたような趣旨でございまして、御了承願いたいと思います。
  40. 加藤八郎

    加藤参考人 商工中金の長期運転資金の点につきましてお答え申し上げます。御説のようにデフレ経済下におきましては……。
  41. 柳原三郎

    ○柳原委員 関連性があつたかなかつたかという点です。
  42. 加藤八郎

    加藤参考人 私の方が早くから長期運転資金の融資をやつておつたのでありますが、公庫さんの方でお取扱いになるときにもいろいろ公庫さんの方とお打合わせをいたしまして、長期運転資金はこういうものについて考えるんだというような協議をいたしてございます。その内容はどんなものかということを申しますと、中野さんからもいろいろお話がございましたので、重複を避けますが、要するに常時底だまり式の資金が不足いたしまして、経営する場合に非常に困る。御承知のように自己資金と借入金のアンバランスが終戦後非常に大きくなりまして、自己資金の不足のために常に借入金に追われて経営が非常に因るという場合に、常時底だまりの資金を長期運転資金としてお貸しする。それを、営業の利益をもつて返すという建前のものをさしておるのでございます。また形式的に、すでに事業家が金融機関の金を借りずに、自分の手で設備をを増設した、あるいは改良したというようなことが多くございまして、その結果設備は非常にできたけれども、それに伴う運転資金が手詰まりになつておるというような場合も多うございます。そういう場合にもそれを当初金融機関からほんとうは設備資金として長期のものを借りてやるべきであつたと思いますが、すでにやつてしまつた跡始末になると思いますけれども、そういうものでも形式的には長期運転資金としてそれを補完するというような融資もございます。それから最近のように事業家が手形をもらつた、その手形が不渡りだつたというようなことで、突然大きな穴が明くことがございます。その場合に赤字融資かと言つてこれを断つてはその事業は成り立ちませんから、再建の見通しのつく限りにおきましては、それは長期にわたつて返済して行くというような方法で貸し出しをする場合もあるのでございます。大体さような場合に、長期運転資金として貸しておるのでございまして、中金の方の長期運転資金は最近非常に伸びて参参つておりまして、六月末の残高では九十億ばかりになつております。簡単でありますが以上です。
  43. 柳原三郎

    ○柳原委員 中野さんにもう一点。一件一件より乙方式は受付けてはいけないというのはこれは指令が出ておりまして、私はその印刷物を見ましたが、こういうことは、ぼくらから見ればいかに乙をきらつておるかという証拠に見えるのです。今後注意して乙方式でやつてもらいたいということを希望しておきます。それから長期運転資金の議論にまたもどるわけですが、最近六月ごろでしたか、わくの限度は三百万、借入れ期限は大体三年くらいに延長した、こういうふうに拡大解釈をして、中小企業のために考慮した、こういう御説明ですが、たとえば三年と仮定して、三年でその運転資金が完全に返せる。そのときには相当の利潤で返していくという原則でしよう。そういうことになりますと、税金も払わなければならぬ。少くとも腰だめで見ても、中小企業で収益率年五割くらいの中小企業のケースでなければ、これは三年では返せつこないのです。今の中小企業をながめて、はたして三箇年でその運転資金を完全に返してしまつて、しかもそれのバランス・シートを見ますれば相当の利潤も上つておることになりますから、所得税その他の税金はかかつて来る。そうすると年五割、六割の収益率のない中小企業でないと、この金には手がつけられない。厳密に言うとそういうことになると思うのです。そんな企業はあるかと思うのです。ぼくたちはそんな中小企業はこのデフレ下においてないと思うのですが、そこらへんはどんなふうな御見解ですか。
  44. 中野哲夫

    ○中野説明員 お答えいたします。当分の間一件に限つてくれときちつと書いたかどうか、今ちよつとその通牒を持つて参りませんので詳しくないのですが、ご承知通り私の方が発足の時は、本店計算だけで代理店が四百あるのでございます。私の方の融資の取扱いをいたすという支店を加えますと、全国で二、三千の店舗に上るわけでございまして、発足当初は乙方式ははたしてたくさん出るだろうか、出ないだろうかというようなことで内部でかなり議論を重ねたのでございます。一期に一つの店へ一件くらい出るだろう。そういうことになれば、本店で一件出しても四百件くらい集まるのではないか、あるいはそれ以上になるかもわからぬ、それでは書類が山積するだけでございまして、乙方式の審査決定ができないのでかえつて非常に御迷惑をかけるのじやないか。こういうような気持で数の調整を代理店にお願いしたいわけでございます。ところがふたをあけてみますると、初めの予想と違つたわけでございます。初めの予想では、責任が軽いのだからたくさん出て来るのじやないかという議論と、いやそうじやないだろう、八割保証でも業界のしつかりした融資先ならばむしろ簡便に代理店が審査決定をして、そのかわり代理店としては八割保証をしてやるという甲方式が依然として多いのじやないか。逆に申しますと三割という軽減された保証であつても、やはり三割の責任は負わなければならないので、そこで窓口銀行として審査をおろそかにする、あるいは融資基準に達しないようなものを取上げるというようなことは、銀行として優秀な銀行ほど行わないのではないかというような見通しで、存外少いだろうというような予想と二つありましたので、中をとつて先ほど申し上げた数の調整をお願いしたのでございます。ところがふたをあけみますると、ただいま申し上げました通り数が少いのでございます。それでただいま御質問にありましたように、あれも必ず一件に限るという趣旨では毛頭ございませんので、私どもの方の処理能力をフルに動かしてやれるだけはやりたい、かように思つておりますから、出ない銀行は相手にしないで、出る銀行はもう少し案件をふやすというような処置を代理店と連絡をとつて行くことによつて積極的に研究してみたいと思います。それによつて結局中小企業界の御満足を得るような努力を払いたいと思います。それから第二点の、三年の期間について短すぎはしないか。利潤からそれを返して行くというような企業は少いのではないか、こういつたような御意見でございますが、ケースによつてお話のような場合もあるかと思いますが、実は今日運転資金の貸出しは御承知通り三箇月とか、六箇月とか、あるいは九箇月というような程度でありまして、設備資金に比べましてやはり回転が早いと考えてもさしつかえない。そうしますと運転資金が三年までということで、大体比例がとれるのではないか、かように考えておりますし、そういう三年という条件でなかなか償還がむずかしいというようなケースがございますれば、個々のケースに応じまして償還期間の延長をとりはかろうという考えも持つておりますので、しばらくはこの程度で長期運転資金の貸出しをふやすように努力して参りたい、こう思つております。
  45. 柳原三郎

    ○柳原委員 三年で返せると言つてちやんとバランス・シートも見せて銀行の了解を得て借りたのですよ。借りても実際完全に償還することは、収益が五割以上でなければ絶対できつこないのです。そうすると返すことは返しますよ。それがやはり高金利とか、いろいろな無理な面にまわつて来て、悪循環を起して、公庫そのものはひつかからないとして、あだ情に終つてしまうという危険性が非常にあるのです。従つて中小企業の収益率をよく検討してもらつて、長期というものについて少し拡大解釈をしてもらいたいということを希望しておきますから、よく御研究願います。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほど山手委員から中小企業の公庫の精神が没却されてしまつて、かえつて逆な結果を来しておるというお話がございました。私も自分の体験上それを実地に見ているわけでございますが、その大きな一つの理由に、公庫の本店の方々の意思というものが窓口において実行に移されていない。言いかえると親の心子知らずという点が多々見受けられるように思うのです。中野さんはこの法律を生むころから非常にこの問題について御熱心である方で、法律の精神はよく御存じのことと思いますが、遺憾なことに中野さんの精神というものが窓口の方々に徹底していない向きがたくさんある。この点につきまして、実は十九国会の折に岡田長官にもその調査方をお願いしておいたはずでございますが、その結果が一体どうなつているかを実はここで承りたい。実はあの折にこういうことをお願いしておいたはずです。第一、銀行は市中銀行、十一大銀行が最初のうちは除去されていたのですが、その理由の一つに、今までの貸出しのこげつきに肩がわりするのではないか、自分の過去の得意先だけをかわいがつて、新しい得意先にこれを向けない憂いがあるのじやないか、従つてこれは除去さるべきであるということで、十一大銀行は当初においては除かれていたはずなんです。ところがさようなことは絶対ございませんという岡田長官のお話でリザーブまでしておいて渡した。ところがやつぱりちやんとそれが行われている。特に名前は伏せますけれども、ある銀行のごときは、そんな三百万円以下なんというちつぽけなやつを相手にしてはおりません、中にはそういうわくとつくの昔になくなつてしまいまして、来期の分もすでにございません。こういうことを言われるのです。私は議員としてではなくして、その業界の一員としてわざと化けて借りに行つたことがある。そうすると幸いにして私の顔は知れておりませんのでそういうでたらめをおつしやる。同時にすぐに公庫の本部を調べてみたら、名前を言つてもらつては困るということであつたので言いませんけれども、いやまだあるはずですと言う。あそこに渡したのはまだ今期分もありますと言う。また今度は相互銀行でございますが、相互銀行あたりになるともつとひどいですね、自分の店の拡大強化の材料にこのいい玉を使つていらつしやる向きが非常に多い。ひどいのになりますと、これはぜひ調べてもらいたいと言うておいたけれども、どうなつたか知りませんが、リベートをとつて貸しておる。非常に有利で、長期にして低利である、こんないい玉はございませんというので、自分の今までかわいがつて育てたと申しましようか、お得意さんから特別の融資だというわけでリベートをとつて貸しておる。これは名前をあげてもよろしい。次に信用金庫でございまするが、信用金庫も、これまたそれにならつてひどいことをやつておる。どういうことをやつておるかというと、貸すには貸すけれども、あくる日から毎月々々支払いをさせておる。法律に一年間はすえ置きだということになつておるはずなんです。それをそのまま実行せずに、百万円貸したかわりにあくる月から十万円ずつとつておる。こうなりますと一年間はすえ置きだというあの法律の精神はすでに没却され、一年たたぬうちに元金よりもよけいな金が金庫に集まつてしまうということ、ところが先ほど柳原さんがおつしやいましたように、そんなに百万円くらい借りるような業界、特に運転資金に借りておるような業界が月々十万円ももうかるものじやないのですよ。とても払い切れない。そこで何とかしてこれを延ばしてもらいたいと言うて行きますると、ここにまた妙な条件をつけられる、こういう向きがある。今度は、せめて信用組合ならばと思つて行きますると、組合員になつてちようだい――これは無理のないことです。組合員になることはいいけれども、組合員になつてせめて月々五万円なり、十万円なりを半年から七、八箇月預けてちようだい、こう言うておる。半年くらいたつと、百万円くらい貸してあげましよう、こういことなんです。ところで、貸してもらつてやれうれしやと思つたら、あくる日からやはり同じように五万円なり十万円を徴発されて行く。それで、今日市中銀行が歩積みをして貸しておるが、おかげで非常に高利につく。これと同じケースが行われている。こういうことになりますると、先ほど山手委員のおつしやいましたように、この公庫をつくつた精神というものは、どの窓口でも完全没却されてしまつて、結局窓口の業務、窓口の成績、窓口の営業を助ける材料にはなつているけれども、ほんとうに気の毒だからというので中小企業を助けようと思うてつくつたその精神は、いつの間にやら消えてしまつて、親の心子知らずが、あちらでもこちらでも行われ、中小企業は依然として助けられていない、こういうことが行われているのであります。  そこで、こういうことだし、法律の中にもあるんだから、ぜひひとつ徹底的に調べてもらいたいということを十九国会ですでに申し上げたはずです。そうしたら、ああ、それはごもつともだからさつそく調べましようということだつた。そこできよう承りたいのは、お調べになつた結果、私の言うておることがうそなのか、ほんとうなのか。うそだつたら私はここでうその証言をしておるということになります。もし万一ほんとうだつたら、窓口がけしからんということになるのだが、一体調査の結果いかようなことが出ておりますか。もうあれから四箇月、五箇月にもなつておりますから、いいかげん結果が出たはずでございましよう。そこで中小企業庁長官にお願いしたことですから、長官から承りたいと思います。同時に、公庫の責任者からこの点を承りたいのでございます。  それからもう一つ、幸いにしてここへ商工中金の責任者が来ていらつしやいますから、商工中金は県の信保協会及び市中銀行とは、どのような連携をとつて貸出しをしていらつしやるのでございましようか、そういう市中銀行との協調ということがございますのか、ございませんのか、もしありとするならば、何の理由でそういうことをおやりになつていらつしやるのか、この点を承りたいのであります。御答弁のいかんにより追つて質問させていただきます。
  47. 記内角一

    ○記内説明員 御指摘のような点、われわれの方でもいろいろ調査いたしておるのですが、金融業務というのはいわゆる複雑怪奇でございまして、つかみにくい点がございます。御指摘のようなことは確かにあろうかと思うのであります。ただここでわれわれとしてこういう考え方もあるいはできるではないか、たとえば大銀行あたりになりますと、そういうふうな名目で、せつかく中小企業の出しておつた金を肩がわりして、余つた金を中小企業の方へもう一回まわして来れば、肩がわりは肩がわり、あるいはリベートで一ぺんとりましたが、もう一回中小企業へ出してくれる、こういうことになれば、結局はそのものずばりで、公庫の対象になつたところ全部には行かなかつたにしても、そのうちの一割なり二割なりリベートをとる、あるいは歩積みにしましても、中小企業にまた貸付ができたということもありまして、中小企業全体としては、やはり公庫の金が百パーセント使われたということになるのではないか。ただそれが、大企業の方に中小企業の方からせつかく貸したものを、中小企業にもう一度貸すのではなくして、これを大企業の方にまわして来るということになりますれば、これは本来の趣旨に根本的に背反することになるわけであります。従いまして、これが主として中小企業を対象にいたしております相互銀行とか、あるいは信用金庫とかいうようなものにつきましては、おもしろくないことではありますけれども、やはりそういう金がもう一回中小企業の方にまわつて来るということにもなろうかと思うのであります。しかし、いずれにしましても、そういうことによつて、せつかく低利で融資することにいたしておる資金が高利になり、また中小企業の負担がよけいになるということは決しておもしろくないことでございますので、われわれといたしましては、今後ともそういうことのないようにいたしたいと思いますし、またこの点につきましては、公庫自身におきましても監査部を置きまして、そういう面の監査をいたしております。また会計検査院等におきましても、この点についての調査を進めておる実情でございまして、かれこれ手を打ちましてできる限りそういう弊害のないように、ことに資金がおもしろくない方にまわることのないように努力して参りたい、かように考えている次第であります。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 公庫の方はどうですか。
  49. 中野哲夫

    ○中野説明員 ただいま長官から御答弁がありました通り、会計検査院におきましても、本店及び二、三の地域で会計検査をなされた。また私どもは本年度から予算をお認めいただきまして、監査部を設けまして、ただいままで六十くらいの代理店、及びそれに関連する貸付先の監査をいたしておるのであります。個々の一般の監査の結果は、長期融資としての債権の保全手続を怠つているという案件が一番多いのでありますが、中には肩がわりと疑われるような案件もございます。あるいは資金の流用をしたというような関係もございます。いろいろ場合々々によつて事情は違うのでございますが、これらはいずれも代理店あるいは借受人の事情を聴取しまして、それぞれ適切な是正措置を講ずる、こういうことをやつているような次第であります。
  50. 加藤八郎

    加藤参考人 商工中金に対するお尋ねの点につきましてお答えを申し上げます。地方銀行と損保協会との間に中金として協調的な融資をやつているかという御質問であつたかと存じますが、地方銀行並びに損害保険協会はわれわの方といたしまして、特に資金面で債券の消化をお願いしているという事情はございますが、内容的に融資面についてどうこう……。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 信用保証協会の方です。
  52. 加藤八郎

    加藤参考人 信用保証協会の点は、これは国の信用保険制度もございますけれども、中小企業に対する保証制度として非常に重要な制度でございます。債務者の信用の薄いというような場合に保証協会の信用保証をつけるということが非常にたくさんございます。それから地方銀行の関係でございますが、地方銀行は、先ほど申しましたように債券の消化、ことに利付債券でございますが、この消化の点につきましては、非常に大きな消化先でございます。そういう点についてつながりはございますけれども、特に融資面について格別深い関係はございません。ただ地方銀行は主として商業銀行でございまするから、長期の資金は出しにくいというような場合がございます。それで地方銀行として短期のものは自分の方で見ておるのだけれども、こういう場合には長期のものを利用されるから、ひとつめんどうを見てほしいという、お互いの紹介というようなことで紹介しあつて、それぞれ自分の固有の金融をやるということは相当ございます。  それからもう一つ、地方の相当大きなところでございますと、組合として中金からも融資を受けておるけれども、また一面地方の地元の銀行からも相当たくさん融資を受けておるというような、たいていの場合そういうような状況のものが多いのでございます。それで何かつまずきでもいたしました場合にそれをどうするか、どういうふうに今後の助け合う資金をお互いに出すのか、こういう意味での協調ということが最近はちよちよいあるような実情でございます。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 商工中金と市中銀行が協調して仕事をやられることを、私は悪いとかいいとか言うわけではございません。ただいまおつしやいましたように、確かに協調してやつていらつしやる向きがございます。その場合に銀行に借りに行きます。そうすると、いや私の方にはそういう金はないから中金の方を紹介してあげましよう、こう言う。で紹介してもらつて行きます。行きますというとそこから先が悪い。どう悪いかというと、借りる条件があたかも市中銀行から金を借りたと同じ条件によつて貸出しがされている向きがある。それを具体的に私知つておる。これはおかしなことだ。そうなりますと、今のように中小企業の公庫の精神が没却されたと同じように、商工中金の精神が市中銀行の精神に染まつちまつた、こういうことになる。これは借りる側にとつてはたいへん迷惑しごくなことであります。で、その理由をなぜそういうことにしなければなりませんかと尋ねてみますと、私の方は公債だだとか何だとかを紹介してもらつておる、やむを得ませんと、こういう答弁があるのでございます。そこでこの点は協調されることもよろしい、また借りる側が市中銀行から一部を借りて、商工中金から他の一部を借りるというケースもあるでしよう。協調融資をされることはけつこうなことでございますが、せつかく国家がつくつているこの金融機関の精神が、市中銀行の精神によつて染められてしまう。おかげで借り受ける側が困るというような不利をこうむることのないように、ひとつ今後御留意が願いたい。これは私空理空論ではなくして、具体的に体験をしました上に立つてお話するわけでございます。  次に中小企業の公庫のことでございますが、私思いますのに、いくらどんな指令を出されましようとも、窓口の審査の全責任を他の精神によつて営まれておる金融専門の金融機関にまかせれば、この公庫の精神が自然に没却されて行くということは、これは理の当然だと思う。そこで今日では一体どういうことになつておるかというと、借りる側では、せつかく中小企業の金融公庫といういいものをつくつていただいても、あれは画に描いたぼたもちだ、高ねの花だ、私らではとても手が届きません、こう言つてあきらめる。ある人たちはそれを恨みねたむ、こういう気持ちが業界に沸いているということをよくご留意の上で、これを何とか打開していただかないと、先ほど来先輩委員のおつしやつたように、せつかくつくり出した公庫の精神というものが、かえつて国民の怨嗟の的になつてしまうということをおそれるわけであります。特に悲しいことには、われわれがこの公庫の精神を今でも至るところで説いてまわります。その気持で借りに行かれます。すると窓口が、これは前にも申したのですが、娘一人にむこ百人ですから、何とか言つて断らなければならない。断ることはよろしいのでございますが、その折の断り方がおよそ法の精神とは、縁遠いことを言つて断られる。中には、こういうことを言う人があります。ひどいのになりますと、政治家は自分が人気を博するためにそういうばかなことをおつしやつたかもしれないけれども、そんなばかな、わしらは慈善事業じやありませんよ。あなたたちには貸すことはできません、こういうことなんです。現に、私は名前をあげてもいいのですが、私の方の名古屋の近くの小都市でございますが、その小都市なんかに貸せれる対象というのは一人もありません、こういう断りようなんです。そうなると、たださえも政治家が不信をくらつている今日、まるでうそを言つて歩いているように思われる。これは議会政治に対する不信の念を一層国民に抱かせる原因になりまして、まことに悲しむべき現象だと思います。私は中小企業の方々がほんとうに金融に困つていらつしやる今日は、公庫の方、商工中金の方の当事者はももろんでございますが、窓口の方々も、この法をつくりました議員の方々も、ほんとうに一致結束して、そうしてこの中小企業の危機を打開するように持つて行かなければうそだ。こういうことは、また与党と野党と争うべきことではなくして、そうして子の中小企業を救うという方向に向うべきがほんとうの行き方ではないか、こう思つているわけでございますが、悲しいことに窓口の頭のあり方がもうけ主義に傾いているおかげで、政治家も恨まれ、公庫も恨まれ、もう踏んだりけつたりというのはこのことでございます。そこで、こういうことのないようにするには一体どうしたらいいか、いろいろとつおいつ考えてみた結果思うことは、国民金融公庫が割合うまく行き、割合に信用を博しているゆえんは、自分らの手足を持つているということなんです。今ちようど来年度の予算折衝が行われているときでございましようから、この時期に当つて、ぜひ自分の手足をつくるために、思いつて予算を獲得されるようにしていただきたい。それが公庫の精神を普及徹底させる一番手取り早い話じやないか。けれどもそれが予算の関係上急にできない場合は、やむを得ませんから、法にある通り会計検査院をまわして調べられることもいいでしようが、その会計検査院が調べに行つたときに、料理屋ではほんとうの話はできませんよ。はつきり申し上げておます。もしほんとうに実態を知りたいとおつしやるならば、ここへ借りに行つて貸してもらえなかつた人を証人に呼んで、何々銀行に借りに行つたときに、いつの幾日にこう向うが答弁した、こういうふうにリベートを要求されたのであきらめて帰つて来た、こういうことをそこではつきりやられるようにすることが、やがて窓口を正常な道に返す一つ方法ではないかと思うわけでございます。だからこういうことを早急にやる意思があるかないか、この点をお尋ねするわけでございます。  最後に、預託金の引揚げの延期だとか何とかがいろいろ行われておりまして、たいへんけつこうのようでございますが、その際に政府が窓口に対する預託金の引揚げ延期をやつた場合において、今まで窓口で貸していた借主に対して期日の延期をはかられるかはかられないのか、あくまでぶつ倒れて行く中小企業から引揚げて、ほかの新しい希望者に貸そうとなされるのか。もしそういうことが行われると、隣の厚生委員会でやつておりますが、この間中の結核患者を早くうちへ帰して、新しい患者を入れてくださいというのと、同じ結果が生じて来ると思いますが、この点はいかように相なつておりますか、承りたいのでございます。
  54. 加藤八郎

    加藤参考人 商工中金にお尋ねがございました、地中銀行と協調してやる場合に、地方銀行と中金を同じ条件にすることについてご指摘のようでございますが、具体的な例をご存知でいらつしやるようでございますから、後刻詳しく承りまして善処したいと思います。方針といたしましては、そういう場合でも――それぞれたとえて申しますと、金利あるいは期間というようなものについて、地方銀行としてしかやれぬ点もございますし、またわれわれといたしましても、金利の点について、地方銀行と同じ率まで下げるというのはなかなかむずかしいような点が多いので、地方銀行に義理立てして、条件を曲げて行くようなことはないつもりでございますが、よく具体的なお話を承りまして、善処するようにさせていただきたいと思います。
  55. 中野哲夫

    ○中野説明員 ただいま各種の指令等を出しましても、なかなか営利銀行には浸透しがたい、また代理銀行は営利機関であるから、理解はしても実行となるとなかなかそうは行われぬのだというお話がございました。私どもの代理貸しと直接貸しというものとの矛盾については、日常業務をやりながらご同様な感じを抱くことが少くないのでございます。しかしながら昨年度百二十一億、本年度二百億、計画通りの融資の実行がとにもかくにもできるということは、全国に多数の代理店を擁し、その審査能力を利用したからできるのだということもいえると思うのでございまして、かりに公庫が公庫の方針を末端に曲りのないように伝えますために店を構え、直接貸しを実行いたすといたしますならば、とても月に五億、年に六十億の貸付も困難かと思われるのでございます。それで部分的にはいろいろ代理貸しの欠点もあるのでございますが、当面の仕事といたしましては、この代理店に公庫の方針を早くのみ込んでもらい、実行に移してもらうというような、啓蒙宣伝の運動を公庫としてもつと強力にやらなければならぬと考えております。多数の代理店のうちに、公庫の趣旨を没却して、木ではなをくくるような返事で追い帰したものがあるとすればまことに遺憾でございますが、私どもアンケート等を出して推定いたしますのに、年やはり六、七百億の資金需要が私の方に対してあるのじやないかと思います。(「もつとある」と呼ぶ者あり)あるいはもつと多く、一千億にも上るかもしれませんが、それに対しまして本年度二百億というような資金でございますので、五人に一人と申しますか、四人に一人しか御要望に沿いかねるというような事情もございます。その点お断りするにしてもいろいろ公庫の方針を述べ、遺憾ながら金の面で具合が悪いんだというように、丁重にお断り願うようにやつてもらえればありがたいと考えているのでございます。本店におきましてもさような心がけで私どもお客様に接しているわけでございます。もう一つは、それにいたしましても、東京の本店だけでは代理店の打ち合わせなどもなかなか困難でございますので、この五月から大阪支店を設けました。それから各ブロツクには商工中金の支所長以下若干の職員の方に公庫職員の兼務をお願いいたしまして、ただいま相談業務に当たつているのでございます。しかしこれも兼務で片手間でお願いしたので十分徹底を期せられないと思いまして、この十月からは本店職員をさきまして、とりあえず札幌と名古屋と福岡には私の方の中堅職員を二人常駐させまして、当該地方の相談あつせん、あるいは代理店との連絡に当たらせることにいたしております。  来年度の予算についてはいろいろ目下準備中でありますが、ぜひ大阪式の支店を今申し上げた三箇所には置いていただきたい。その他の通産局所在地ごとには専任の公庫職員をおきましていろいろ当該地方の代理店あるいは借受け業者の指導及び相談に当たるというような手足を持ちたいと思いまして、ただいま通産、大蔵両省にお願いをしているような状況でございますので、よろしくお願いいたします。
  56. 記内角一

    ○記内説明員 預託金は商工中金、相互銀行、信用金庫等に現在預けられておりますが、六月、七月分につきましては、すでにそれぞれ四箇月延期に決定いたしておりますし、また八月分についても大体そういうふうに決定いたしておりまして、今その手続をいたしているところでございます。ご承知通りたとえば商工中金につきましては、現在六、七、八、九月の四箇月に償還すべきものとして予定されておつたものが、いわゆる残高として二十七億の預託金を受けております。しかしこれがそれぞれ預託金だということで相手方に貸されているわけではございません。従いまして結局のところ二十七億の金を四箇月かかつてもし引揚げるといたしますれば、月八億引揚げる。ところが商工中金の現在の毎月の貸出しは、回収をしては貸し出すいうことをやつておりますのが大体百億から百十億の実績を持つております。その中から八億だけの貸付が減つて参ることになつて参りますので、今貸しつけてあるものからにわかに引揚げて来るということにはならないかと思うのでございます。ご承知通りそれぞれ信用機関は手形割引、手形貸付というような短期の貸付を相当つておりますので、従つて回収したものから貸付をいたして返済して参ることになるわけであります。ただその引揚げられた結果といたしましては、新たに貸し出す予定の分がそれだけ減つて参る。従いまして今まで借りる方面から参りますと、毎月五百万円の枠はあつたにもかかわらず、それが三百五十万になつたとか、四百万になつたとかいうことで、一部圧縮を受けるというようなことはあるかと思いますけれども、貸してあるものを特に取上げるというようなことは、個々のケースとしては具体的にないということを御承知願いたいと思います。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 金融機関がどんなことをやりましても、借りる側の身にのなつてみますと、何といつても首の根つ子をにぎられている、生殺与奪の権を握つているのは、今日何といつても金融機関なんです。そこでどんなひどい仕打ちを受けても、借りる側の身になつてみれば、あとのたたりがおそろしいので、ほんとうに声に出してよう言わない。ところがこの声なき声を聞くのがほんとうの政治だと言われておるとするならば、ほんとうにこれをよく聞いてやらなければならない。そこで聞く一つ方法として、ただいまも柳原さんからも御注意があつたことですが、肩がわりをして貸したり、今までの得意先に貸したりということがあつては、法の精神が没却されていけないということで始まつたことですから、そこで、ぜひお尋ねしたいのは、貸し出されたうちで、借りた方の側からいえば、今まで窓口と取引をしていなかつたけれども貸してもらえたという、窓口側からすれば、今まで取引先でなかつたけれども、この公庫ができたおかげでそれだけ融資のわくがふえたから新しいお客さんに貸した、こういうケースがどの程度ありますか。それは調べることができるのかできないのか。また調べなさつたことがあるのかないのか。こういうことが、ほんとうに窓口が法の精神を生かして実行に移しているかいないかの一つの証左になるではないか。その成績いかんによつては、預託金なりあるいはまかせる金を左右する権限を、今度は公庫それ自体がお持ちのはずなんです。業者の生殺与奪の権は窓口が持つているけれども、窓口のわくの増減は大体公庫がお持ちのはずです。この公庫がそういうふうに毅然とした態度でお臨みになれば、やがて下々もわかるときが来るだろうと思うわけでございますが、この点はいかがなものでございましようか。
  58. 中野哲夫

    ○中野説明員 私どもの気持といたしましては、中小企業の振興に役立つ貸付は、新規取引であろうが旧取引であろうが、無差別にやつていただきたいということを望んでおるわけでございますが、現実の問題にいたしますと、従来の取引先からの要望が非常に多い。そこに新規のお客さんが来るということになりますと、どういたしましても人情上長い取引のあるところを先に見なければいくまい。あるいは長い取引があるということは、それだけ日本銀行が取引先に対しで深い理解といいますか、信用を持つておるわけでございますので、そういう点の自然的な淘汰は、ある程度やむを得ないのじやないかと思います。御質問のように、それでは今までの貸付件数約七、八千件のうち、まつたく取引のないところに貸し付けた件数が幾ら、それ以外のものか幾らという統計は、まだとつておらないのでございますが、少くとも推定いたしますのに、公庫融資の貸付をいたしまして、それでそれきりだ、それは返せばいいだろう、あとは預金もしなけれげ借りないというようなことはないのでありまして、公庫の資金の借入をいたしますれば、それに引き続きいろいろな預金もいたしましよう。しかしそれは歩積み両建では困るのでありますが、それをきつかけにして取引を開始して預金もする、また短期資金も借りるというような取引関係が起つておるのがほとんど全部だと思います。むしろ私どもは補完金融を任務といたしておりますので、そういうことをきつかけにして、今後短期資金なども見てもらうというような好ましい信用関係が両方の間に成り立つことを希望しておるようなことであるわけでございます。なお代理銀行といたしましては、爾後三年、五年にわたりまして管理回収の責任を負うというような場合には、金融業務は私もしろうとでありますが、やはり何がしかの預金もしてもらう、あるいは何がしかの短期資金の融通もするということで、年に数回といいますか、そういう金の出し入れによつて当該企業の現在の運行状態がわかる、そういうようなことで管理回収の全きを得るのだというようなお話も聞いておる。これはある程度もつともであつて、一ぺん貸したらその企業がどういう進み方をしておるのか一向さたがないというようなことが、あるいは爾後の管理回収に不便だということもあるのではないかと思われますので、借受人に不当な負担をかけて、かえつて苦しめるような、程度を逸脱したことはいけませんが、それによつて長く両者の信用関係を築くような取引が結ばれるということは、むしろ場合によつては好ましいのではないかという考え方でおるのでございます。もつともこれをそういう美名に隠れて逆に利用されるということであつては非常に困るわけでございます。そこらは十分監査もいたしまして、できるだけ弊害の少いように努力いたしたいと思います。
  59. 山手滿男

    ○山手委員 これから別な委員会がありまして、半から始まることになつておるので時間がありませんので、結論的に中小企業対策について、特に金融の問題について一言申し上げておきたいと思います。  結論を申し上げておきたいと思いますが、いつになるかわかりませんが秋早急に臨時国会が開かれると、中小企業対策というものは非常な問題になる。今度の臨時国会あるいは通常国会の論議の中心点になるので、現実にはどんどん失業者が出る、そのために失業救済費みたいなものを何百億と支出しなければならぬ。かような事態を起こすことは絶対にわれわれは不賛成である。死に金を使う前に中小企業を救済せよ、日本の重要産業にかつこうをつけてやれ、こういう政治を私は要求したい。ところが残念ながら現在の実情では、現在の政治のやり方あるいは現在の商工金融については、それに期待することができない。なぜできないかというと、この間私どもは名古屋、京都、大阪、神戸、はては下関まで重要都市をずつと歩いて、商工関係の金融なりそのほかを調査してみると、それらの各府県はもう政府頼むに足らずということで、職員の給料も払えなくなりそうな府県までも、何十億、大きいところは二百億も、大阪市のごときは自分たちの地方財政の財政資金を投入して、中小企業対策を一生懸命ふん切つてつておる。それが現実の地方の実情なのです。それを金融公庫の中野さんの御答弁のように人がないから、いけなければ監査をしてようしますというようななまはんかなことでこれは乗り切れる事態ではないのです。地方の財政資金によるところの、質屋まで府県が始めかけておるあの事態は、私はゆゆしい事態だと思う。政府頼むに足らずということなのです。それが初めてああいうことになつたのであつて、今度の臨時国会においては抜本的な中小企業対策をわれわれも提唱しなければならぬし、政府考えてもらわなければいかぬと思う。さつき私が言いました地方行政と中央の商工行政との一体化、それから中小企業金融と中小企業行政との一体化、そういうものが抜本的に確立されなければいかぬということで、私は抽象的に初めに申し上げたのです。そこで今日の商工中金の一番大きながんは、組合金融資金ができぬということが一つのがんです。それから中金債を集めて、あるいは政府の短期資金の預託を頼み頼んで、短期のものをぐるぐるまわしをしておる。しかも金利が非常に高いということが商工中金の非常ながんです。しかし商工中金は今日地方府県に全部手足を持つてつて、歴史もあるし、非常にうまく行つておる。新しくつくつた金融公庫は何百億の金を融資して、融資をやつたじやないかというように今弁解しておられますが、これは大間違いです。私は今度抜本的に中小企業金融対策を立てるということになるならば、農林中金が十何億という金を動員してやつておるああいう強力な中小企業金融体系が確立されなければいかぬ。そのためには私は今日商工中金や金融公庫、こういうようなものはみなつぶしてしまつて、あるいは地方の何百億というふうな投資をしておるああいう地方財政による中小企業金融なんかもみな抜き上げて、強力な、国民の納得するような金融機関をつくるような方向に行く必要があろうと思う。きようの御答弁はいろいろ苦しい御弁解もあつたが、この前あれだけ総裁以下を呼んで、ここで直接貸しも徹底的にやりますとこう言う。なるほど審査部は十七名かもしれぬ、十五名かもしれぬ、それが半年もたつてどうです。わずかに十九件、十七名か十五名で十九件しか審査をしませんでは、私は言い訳にならぬと思う。積極的にやろう、書類がたまれば徹夜してでもやろう、あすは首をくくらなければならぬような中小企業者の立場からいうと、それは何でもない。当然そこまで中小企業庁の長官は今度はふん切つてもらわなければいかぬ。今日の中小企業の実態は重大で、いいかげんなことでは済まされない。今度臨時国会か通常国会でも開かれたら、これが論議の中心点になつて参ります。これは私はこの委員会がしなければいかぬと思う。おそらく私は社会党両派のさつきからの御意見を聞いても同感であろうと思う。自由党の諸君でもこれには反対できぬと思う。私は国会で抜本的な手を打つてもらうようにお願いをしたいのですが、しかしいきなりやぶから棒にそういうことを言い出しても無理です。これは中小企業庁の方、政府側においてわれわれがいかにも横車を押したようなかつこうでやる必要がないように、早く対策を確立してもらいたい。私はそれを要望して、きようは質問を打切つておきます。
  60. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 本日はこの程度にし、次会は明日午前十時から開会いたします。  これにて散会いたします。     午後一時三十三分散会