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1954-08-12 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月十二日(木曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長代理理事 中村 幸八君    理事 首藤 新八君 理事 山手 滿男君       小金 義照君    土倉 宗明君       福田  一君    長谷川四郎君       笹本 一雄君    帆足  計君       齋木 重一君    加藤 清二君       伊藤卯四郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君         労 働 大 臣 小坂善太郎君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局渡航課         長)      針谷 正之君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    白石 正雄君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      大月  高君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部長)    桑原 信雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         通商産業事務官         (企業局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      小山 雄二君         通商産業事務官         (軽工業局長) 吉岡千代三君         通商産業事務官         (繊維局長)  永山 時雄君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         中小企業庁長官 記内 角一君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働基準局監督         官         (労働基準局         長)      龜井  光君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  村上 茂利君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 六月十二日  委員福田一辞任につき、その補欠として鍛冶  良作君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員鍛冶良作辞任につき、その補欠として福  田一君が議長指名委員に選任された。 八月十一日  委員齋木重一君辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として齋木  重一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月三日  中小企業等協同組合法の一部を改正する法律案  (山手滿男君外十一名提出、第十六回国会衆法  第一七号)  電気事業及びガス事業に関する事項  貿易に関する事項  中小企業に関する事項  鉱業採石業鉄鋼業繊維工業化学工業、  機械工業その他一般工業及び特許に関する事項 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気事業貿易中小企業石炭鉱業及び繊維  等に関する件     —————————————
  2. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は電気事業貿易中小企業石炭鉱業繊維等通商産業行政一般の重要問題について調査を進めます。なお発言は先ほどの理事会で決定いたしました順序に従つてこれを許します。山手滿男君。
  3. 山手滿男

    山手委員 久方ぶりの委員会でありますから、いろいろ国会終了後に起きている事態に即して質問したいと思いますが、まず第一に大臣にお伺いしたいことは、その後政府金融統制デフレ政策が順次滲透して参りまして、新聞紙上そのほかでいろいろ伝えられておりますけれども政府はどういう見通しを持つておられるのか、物価は今どういうふうに成果を収めて引締まつてつているのか、あるいは生産指数はどういうふうに動いているのか、貿易は実際にはどういう見通しが得られたか、そういうことについてまず大臣から御説明を伺いたい。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねに対しまして、最近の状況中心にしてお話申し上げたいと思いますが、いわゆる緊縮政策の影響は、流通部門中心とする、いわゆる在庫の調整といつたようなことから、まず御承知のように、卸売物価の顕著な低落を招いて来ておりまして、二月以来で大体先月七%余下つているようでございます。また不渡り手形の発生、商社の倒産というようなことも、七月に入りましてからは一ころより減つて参つたように見受けるわけでございます。なおまた物価につきましては、七月に入りましてからはようやく下げ渋りの兆候を見せているというように申し上げたらよろしいかと存ずるのであります。それから鉱工業生産につきましては、五月までのところでは減少するに至つておりませんが、一部には操短の実績も現われておりますし、さらに六月以降において、鉄鋼、一部の機械、スフなどの部門におきましては、生産縮小態勢に入つているように見受けられます。  次に外国為替収支でございますが、これは御承知のように、六月におきましては一千百万ドル黒字を記録いたしております。また七月に入りましてからも黒字が続いておるのでありますが、この詳細な数字はまだ集計されておりません。概略ただいまのお尋ねと対しましての状況はかようになつております。
  5. 山手滿男

    山手委員 物価が七%下落をした、こういうように言われておりますが、この数字が出たその内容を見てみますと、繊維等の非常に極端に下落をした、非常に変動の多かつたものがそのウエートを多く占めておつて、いかにも順調に物価下つたようなかつこうに見えておるわけです。ただ七%下つたというふうなことだけで政府施策が順調に物価を引下げ、それが輸出の振興に役立つというふうな方向に、楽観的に行つておると見るのは早計なように私は考えるのです。それから今生産指数縮小方向には行つておるけれども、大して生産縮小しておらないような口吻でざざいましたが、私は各業界が全部操短態勢に入つたと見ております。一、二の紡機などがパキスタンそのほかに出たりした面もあります。そういうことのために一、二生産縮小されておらないような見せかけは実質的にありますが、全体的には非常な生産縮小態勢に今どんどん移りつつあると私どもは見ておる。  そこでこのことが非常に重大なんでありますが、政府が今日までとつて来た政策は、いわば高物価政策であつて、高物価政策中心にして生産力拡充をやつて、非常な生産力上昇を誇示して来た。今日、物価を引締めて低物価政策政府は転換して来た。そして今まで誇示をして来た生産力上昇がそれに従つてぐんぐん下つて行くということになると、これは縮小均衡であつて、その結論は失業者増大であり、国内社会不安の増大であつて、私どもはむしろそういうふうなデフレ経済ならやらぬ方がよろしい、こう思うのです。私どもデフレ経済に賛成をするゆえんのものは、物値を引下げることによつて輸出がうんと増大をし、また需要が増進をして、それに伴つてむしろ生産力増強される、物価引下つて生産力は少くとも落ちない、この政策でなければいかぬと考えておるのでありますが、実際の生産指数下降線をたどつてずんずん下つてつているということに対する大臣見通しなり、現在の実情をもう少し具体的に説明してもらいたい。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねに対しまして、まず具体的に鉱工業生産指数等で申しますと、三月ごろが今年におきましての最高のピークになつておるようでありまして、たとえば三月が一七九・四、四月に一六八、五月に一六七・三と大体の足取りはその後におきましても下降状況になつておるものと想像いたしております。それからただいまの御説でございますが、私はもともと一月以来この緊縮政策の地固めの時代におきましては縮小均衡やむを得ない、その過程を通つて拡大均衡ほんとう基礎が確立されるものであつて、一時的にはむしろたとえば輸入減少輸入金融の引締めといつたようなことにも関連いたしまするが、むしろ下るものは早く下つて、がつちりした基礎ができることが望ましいと思つてつたのでございまして、こういう程度生産指数がむしろ縮まる、暫定的には縮小するということはやむを得ないことであり、見通しといたしましても、こういうことは見通しておつたわけでございます。
  7. 山手滿男

    山手委員 生産指数が下るということを私は簡単にデフレ経済反作用として承認するわけには行かない。なぜかというと、この大部分というものは社会不安の原因に転嫁をして行き、非常な政情の不安を引起すのであつて、その反作用がさらに経済界悪影響を及ぼして来て、デフレの効果以上に、この悪影響の方が大きくなると見られる要素があるのであります。私はやはり生産力はむしろ増強するという線が片一方に打出されておつて片一方物価の引締め、物価下落を来すような政策がとられることが必要じやないか。いわば一種総合政策というようなものが、要望されるゆえんでありますが、実際には政府は、そういう生産指数——国民雇用の場を縮小しないような手が実際に打たれておるのかどうか。現在少し吉田内閣の方でも、計画的に経済を建直して行く、今までのやり方はかえるというようなお説のようでございますが、そういうことについてどういうお考えか、むしろここで御説明を願いたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、もちろん理想といたしましては、お話のように生産も拡大する、それから、その拡大されるほとんど大部分輸出に向うということでありますならば、これは最もけつこうなことでございますが、段階を追うてやつて参りますためには、一時的にはどうしてもある程度生産縮小ということはやむを得ないと思つております。しかも先ほど申し上げましたように、最近の輸出相当好調を示しておりますし、物価卸売物価については相当下落を見ておる、こういう現象でございますので、私は大体当初から考えて参りましたような大綱は、この筋で動いておると思つております。  そこで就業の問題でございますが、これは一月以来十九国会の会期中るる申し上げておりましたように、一方において物価の問題を一つつてみましても、もしりくつ通りに、ドラステイツクにやるというならば、一年間に二割もあるいはそれ以上に物価の引締めを強行しなければなるまいが、そうなれば非常な縮小均衡になつて、非常な失業者が出るであろう、これを回避しながら漸を追うてやつて参りますためには、相当見通しを立てて、あまりひどいことにならないような度合いにおいて進めて参りたい、こういうふうに考えまして、大体失業なりあるいは就業なりの見通しを立てて参つたのでありますが、御承知のように五月におきましては、五十八万人程度が、労働省調査による完全失業者でありまして、今後におきましてさらにこの政策の滲透に伴つて、この数が若干ふえることもあろうかとも思いますが、それらにつきましては政府といたしましても、たとえば機構といたしましても経済審議庁労働協議会というものを持ちまして、また総合的な立場からこれらの予想され得る事態に対処した適切な手を打とうということで、この新たなる機関が発足いたしております。たとえば失業が顕著に現われるおそれのあるような地帯に隣接した地帯における公共事業を、あるいは一部繰上げて施工するとか、当該復旧事業の実施を促進いたしますとか、その他のいろいろな手を行うことにいたしておりまするし、また労働省におきましてもそれぞれの立場から適時適切に手を打つことに心がけておるような次第でございます。
  9. 山手滿男

    山手委員 私どもが言おうとするところは、正常な意味での日本生産指数を引下げない、むしろ増強をする形において国際物価水準にまで日本物価を引下げて行くということが好ましいと思うのでありますが、最近政府の行われておる施策は、必ずしもこういう方向に頭をそろえてうまく運営されているとわれわれが了解がいかない問題が私は多いと思うのです。たとえて言えば、余剰農産物売却代金による域外買付だとか、あるいはそういう借款によるところの円資金によつていろいろな道路をつけるとかいうような施策が打たれようとしておりますが、これは片一方においてデフレ政策を押し進めながら、片一方ではインフレの要素を持つておる。しかも日本生産力を恒常的に増強をするような手ではなくして、異常な一時的な雇用増大や何かで当面の問題を糊塗して行こうとするような傾向が見られるのじやないか。この際日本がやらなければいかぬことは、ほんとうはやはり物価を引下げて世界市場にうんと強力に進出するための市場を獲得するように全力をあげて行くことであろう。そういう意味基礎的な生産力拡充をやり、企業合理化をどんどん押し進めて行くということが非常に必要だと思うのでありまするが、吉田内閣の今日の政策は、極端に言えば借款政策以外には私はないように感ぜられる。金がなくなつたからというのですぐ借款をしてこの事態を収拾して行くというふうなことでは、日本自立経済には百害あつて一利ない。ほんとう日本でこれを受入れる態勢ができ、生産力はこれとこれとを拡充する、そうして生産力を下げない、生産指数を下げないという確固たる方針がきまつて、その上に借款をして、ほんとう意味での生産力を強めるということなら話はわかるのでありますが、どうも新聞紙上などで見ておりますると、域外買付に走るとか、あるいは防衛道路を建設するとか、そういうふうなことにのみこの借款による円資金が使われていて、そのために片一方では倒産者を続出させておきながら、片一方では恒久的に日本生産力ががつちり立ち上り、そうして将来正常な貿易日本が立ち向つて行けるというふうな基礎が今できつつあるのじやないか。あまりにも出血の犠牲が大き過ぎる。ほんとう日本経済自立経済に向わせるということならば犠牲もある程度覚悟しなければいかぬと思うのですが、どうもそうじやないように見受けられるのであります。そういう点はどうなんですか。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお話のように見受けられておるといたしますれば、私ども考えておりますことと相当の違いがあるのでありまして、私ども考え方といたしましては、何としても日本経済自立を正常な姿の上で確立して参りたい、これはお話と同じような考え方を持つておるつもりでございます。そのためにはまずやはり何と申しましても国際収支の改善ということが最大の眼目であろうと思うのでありまして、輸出計画的に推進したいということを第一の念願に考えております。またそれと相照応して国内自給度を向上して、できるだけ輸入の防遏の努力をしなければならない。しかしそれもこれもただいまお話通りでございまして、まず必要とする基幹産業なりあるいは食料の増産なりということにできるだけの力を注がなければならない、こういうふうに考えております。  それから外資の問題でありますが、この外資も、いわゆるインパクト・ローンというようなかつこうで、物を伴わない、ただドルが円にかわるというだけで国内で放出されることは、基本的な正常政策とは趣が異なることになりますから、そういうことを考えないで、緊縮政策のわくの中で外資導入する場合におきましては、原則としてその外資には、外国でなければなかなか調達しにくい合理化のための所要の機械なり、あるいは技術なりの対価を払いますために必要な外貨導入したいということを考えるわけでございまして、その際におきましては、十分国内資金計画等と照応して考えなければならない、そういう根本の考え方のもとにおきまして具体的な計画を調整し、あるいはこれを外国側と折衝するというような段階に出るべきものであるというふうな考えを持つておるわけであります。
  11. 山手滿男

    山手委員 最近はアメリカ側日本経済界を非常に心配してくれて、吉田総理渡米をされなくても積極的に日本援助の手を差延ベよう、要はドル資金がないんだから、ドルも貸してやろう、借款を許してやろうというふうな方向に向うが出て来ている。これはうなずけることであるし、事実のように私は思います。これをいかにわれわれが受入れて有効適切に手を打つて行くかということは、今日より重要なときはないと思つております。へまをすると日本経済は頭をぶつつけるんじやないかと思う。そこで今の国際的な余剰小麦日本が受入れるような場合でも、あれは世界経済界の中では一種の国際的な見切り品です。そんな見切り品国際価格で比載的高く買つて、そうして日本でこれを買いつける、そういうことになると、アルゼンチンとかカナダあたりから日本が入れておつた小麦は当然減少をして来る。そうするとカナダ市場アルゼンチン市場あたりへは日本からの輸出があるいは阻害をされる。しかもそうやつて受入れられた関係ででき上る円資金は何に使われたかわからぬ。日本の将来の自立経済達成貿易増強ほんとうに役立つように、納得できるように、これはこれに使つたというふうに使述が明示されなければ、今の借款なんかに国民は必ずしも同意をしないんじやないか、吉田理総渡米をされても、これに対して納得するわけにいかぬと思う。私はここで通産省生産力ほんとう増強するんだ、物価を押えて生産力をこれとこれとをこういうふうに計画的に増強をして、政治の上に具体的に手を打つて行く、それによつて日本は何年先にはこうなるんだ、こういうことを明示をされて事態を収拾されることが好ましいと私は思います。ただ単に借款を得るんだ、ただ単に散発的に銀行からこの援助を受けるんだというふうなことでは、私は手がなさ過ぎるんじやないか、こういうふうな気がいたします。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず問題を二つにわけまして、いわゆる外資導入につきましては、先ほど申しましたように、日本経済全体を通覧して、たとえば自給度を向上するということからいえば、何としても農地の開発食糧増産というようなものがまず一つ取上げられると思うのであります。それから基幹的な日本産業基礎を充実するためには、たとえば電源の開発ということがやはり計画通り推進されなければならないと思う。さらにただいまも御指摘のような、たとえば石炭なりあるいは機械なりあるいは製鉄なりといつたような基本的なものがもつとできるだけ早く合理化されなければならない。これらについては相当長い目で見たそれぞれの一つ計画というものを持つておりますが、同時にこれをさらに補強した計画で、長い目で見た計画というものを考えなければなりませんが、それを推進するために必要な外貨を、この際導入することが一つの適当な政策だと私は考えております。  それからいま一つの問題で、ただいま余剰農産物の話が出ましたが、これらの点につきましては十九国会で御説明いたしましたような、前の五千五百万ドルの分につきましては、すでに大鋼がきまつておるわけでございますが、今後どれだけの余剰農産物買つてくれという話があるか、あるいはそれに対してどういうものならばどういう程度において買つたらよろしいかというようなことは、まだ全然話合いをいたしておらないのでありまして、これらの点につきましても、これは今後だんだんと話が出て参りましようが、その際におきましても今外貨導入について申しましたと同じように、われわれの日本産業経済をどうやつて自立して行くことが最も適当であるか、その線に沿うての諸般の計画が具体的にあるわけでありますから、それに照応したようなところで、有利かつ適当と思われる使述があります場合、その使途においてこれらを運営いたしたいというふうに考えておるわけであります。  なお通産省として計画的にというお話がございましたが、これはまことに適切なる御注意でございまして、われわれといたしましても、最初に申しましたように、通産省の現在の立場においては何としても、ある程度長い目で見ての輸出努力ということ、同時に国内自給度の向上ということを結び合せまして、できるならばこの二、三年の間で正常な貿易中心として、これで大体の基幹的な自立計画が立つようにいたしたいという計画を鋭意つくつておる次第でございます。
  13. 山手滿男

    山手委員 大臣努力をしておられることはよく承知しておるのですが、承るところによると、二、三年後には通産省の方で輸出を十七億ドル前後まで引伸ばすというふうな計画を推し進める、こういう構想でおやりになつておられるようです。しかし私は残念ながら、今のようなやり方をしておつてはとうてい十七億ドルまで行くことは困難ではなかろうかと思う。新しいいい要素もありますが、新しい悪い要素もたくさんある。たとえて言えば仏印事態がああいうふうになりまして、仏印の特需を当てにしていた向きもありましたが、そんなことがなくなつた以上に、私は莫大な戦費を負担しておつたフランスが、今後日本の正面の貿易競争国となつてカム・バツクして来るおそれがあると思う。そうすると東南アジア市場からアフリカ方面にかけての日本の新しい敵がまたもう一つ現われて来るわけです。英国においてもドイツにおいてもさらに新しい事態に即応して非常な努力をしておるのであつて、現在の日本のような軽工業中心——雑貨工業繊維工業中心としての輸出努力では、とうてい私は正常貿易によつてこの十七億ものドルがかせげるようになるとは、これは奇跡が起らない限りなかなかそういうふうには行かないと思うのであります。大臣はそういう構想をお持ちのようでありますが、どういう方法で十七億まで伸ばして行かれるのか、御説明を願いたい。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは御説のように非常にむずかしい仕事であると考えるのであります。私の大体の考え方は、しかし同時にこれはどうしてもやらなければならないことでありますから、国民的な御協力の上に何とかしてこういう目標を達成いたしたいと考えておるのであります。たとえば一例を申し上げますると、本年に入りましてから、特に二十九年度になつて四月以降の状態を見ますと、御承知のように輸出が最近におきましては昨年に比べましてずつとふえておるようであります。たとえばごく端的に申しますと、昨年の平均輸出が毎月一億ドルに足りませんで、九千六百万ドルでありました。それに対しまして、本年の三月、四月、五月、六月はいずれも一億二千万ドルあるいは一億三千万ドル、少いときでも五月の一億千二百万ドルというふうに常に大体一億二、三千万ドルのところを前後いたしておるのでございまして、昨年の平均に比べますと、相当の躍進であると考えるのであります。もちろんこの内容もしさいに検討いたしますれば、まだまだ問題は多うございます。たとえばポンド地域に対しましては相当顕著な、非常に堅実な伸び方をいたしておりますが、ドル地域に対しましてはそれほどではないということ、あるいはオープン、アカウント地域に対しましては、せつかく輸出をしましても決済が思うように得られないので、輸出をある程度制約をしなければならないというような意味におきまして、いろいろの問題は中にございますが、しかし大局的に見ますれば相当顕著に伸びておると私は思うのであります。また一方輸入方面におきましても昨年の平均は一億七千五百万ドルが毎月の平均でございましたが、一億七千万ドル程度——毎月五、六百万ドルがすでに減少を見ておる、こういうような点から見ましても、今後いろいろの面で努力をいたしますれば、ただいま御指摘のような国際的にもいろいろの悪い現象もございますが、同時にまたいい面を期待されるかと思いますので、これはここ三年間ぐらいで、少し乱暴でございますが、何とかして二十億ドル輸出計画ができないものかということを命題にして研究いたしたのでありますが、大体十七億ドル余りまでは行けそうだという目標ができたような次第でございます。しかもこの目標はいわゆる補助金、補給金といつたような財政的な人為的な手を用いませんところの正常な輸出努力でそこまでは行けるのではないかというように思つております。それに対して、それならば具体的にどういうふうに考えておるのかというお尋ねでございますが、これらの点はでき得るならば今月中あるいは来月早早ぐらいまでの間にさらに一層市場別、物資別に、具体的な見通しと、これに対する裏づけの具体措置を考えて参りたいと思つておりますが、ごく大綱だけを申し上げますと、一つは、私は輸出計画的な推進のためには何らかの意味輸出目標別といつたようなものを採用いたしたいと考えておるわけでございます。それから輸出を伸ばし得ることが期待できる産業を発見するということ、それからそれに対していろいろの対策が考えられると思いますので、これは特に中小企業方面の育成策とあわせた対策を考えたいと思います。それから生産業者と輸出業者とを一貫いたしました輸出のための協定等によりますいわゆる生産輸出体制を強化いたしたい、というようなことを考えておるわけでございます。それからそういうような計画を推進いたしますために、あるいは各品目別に具体的な輸出推進機関をつくるというようなことも、推進策としては一つ考え方かと思つております。  なおまたすでに方針としては発表いたしておりまして、いろいろ具体策をただいま考えておるのでありますが、貿易商社の強化というようなことも、これらについては必要な措置かと考えます。海外市場の開拓あるいは調査といつたようなこと、あるいは公正な競争について外国と協力しなければならぬというような点についての方策というようなことも、もちろん必要な措置であると思います。先ほど申しましたように、輸出商品目別に国内でなすべきいろいろな措置について、この計画の裏打ちになるような具体策を漸次考えて参りたいと思つております。
  15. 山手滿男

    山手委員 大臣輸出が非常に伸びたように説明されておりますが、その内容を立ち入つて検討してみると、私はこれは必ずしも満足できる輸出の増進じやないと思つております。と申しますのは、たとえて言えば、ことしの初めから輸銀は二百億ばかりの輸銀の資金を使い切つている。そして足らぬと言つている。輸銀のプラント輸出なんというものが非常に大きく輸出実績の中に入れてあるんだと私は思います。これはひどいのになると、ユーゴのように七年とか、五年、六年くらいの長期にわたる延べ払いを了承させられて無理な輸出をしている、こういうふうに私どもは見ている。これは国内的に言うと、輸出をするために非常なインフレ要素を提供して、七年間の延べ払いとか六年の延べ払いとかいうような輸出の増進のし方をしている。これは日本経済界にとつていい面もあるが、反面いろいろ問題があろうと思う。そういうふうな無理をして、毎月一千万ドルか二千万ドル伸びたからというので、手放しに輸出増強されたというふうには私どもは了解ができない。どうしてももつとまじめな、正常な取引によつて、具体的に一千万ドルずつでも毎月伸びて行くのであれば非常にけつこうでありますが、必ずしもそういうことでもないように私は考えます。ことに最近政府のとつて来たリンク制そのほか貿易の伸張のためにやらなければいかぬというようないろいろな施策が、国内にはむしろ非常な悪影響産業界に及ぼしている。何とか割当をとらなければいかぬというので、むちやくちやに設備を増強する。砂糖の施設なんかを見てみると、割当をとらなければいかぬというので、今日八十万トンの輸入しか許さないところに三百万トンの施設をつくつている。しかもこの三百万トンの施設というものは莫大な施設でありまして、これの設齪に要した資金の金利だけでも非常なものである。それをすぐ国内の消費者にはね返らせて転嫁している。こういう経済情勢が国内随所に見られる。繊維も同様であります。それを消費者の方に転嫁できないような物資の生産者は今日どんどん倒れる。転嫁し得る業者のみが、今日あえぎあえぎでも存続をしてやつて行ける。国民にどういう形で転嫁をして行くか、あるいは転嫁をようしないかということが、今日勝負のわかれ目になつているのですが、この本をただすと、貿易を伸張しなければいかぬということでいろいろ政府が芸をこまかくやろうとしたことから、こういう問題が随所に起つて来ていると思う。それですから抜本的な手が打たれて、こういうふうに十七億ドルまで行けるというならけつこうですけれども、今までの副作用の方が大きかつたような薬はこの程度でやめてしまうというのか、それを私はお聞きしておきたい。  それからもう一つお聞きしておきたいのは、政府は今までの態度を大きく修正して、中共地区に対する貿易をうんとやろう——これは池田幹事長も言明をしているところであつて、中共貿易をうんとやろうという方向政府考え方を改めて行こう、こういうふうになりつつあるようであります。中共貿易も過大に評価をしてもいかぬでしようが、しかし私はお隣の中国大陸と日本との関係をあまり変なものにしない意味からも、日本経済界を救う意味からも、これはけつこうな話であろうと思うのでありますが、中共貿易に対してどういうふうに増強をして行かれるつもりか、御答弁を願いたい。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の点でございますが、輸出の伸張について過去においていわゆるリンク制その他の制度がとられておりましたことは、いまさら申し上げるまでもないことでございますが、これは主として国際物価日本輸出価格とがあまりにも差が大き過ぎるというところから、やむを得ざる臨時的の措置としてやつてつたのでありまして、第十九国会におきましても私が申しましたごとく、できるだけすみやかにこういう制度はやめたいのでございます。今回考えている十七億ドル程度輸出計画におきましては、こういうことを考えずに、先ほど申しましたように人為的と申しますか、小手先の人為的な手を用いずして、堂々と正常貿易として伸ばし得る限界というふうに考えているのでありまして、私はできるだけすみやかにリンク制はやめて参りたい。たまたま物価相当つて参りましたので、これを必要とした基本的な原因が芟除されつつあることは、まことに御同慶にたえないところである、こういうふうに私は考えております。  それから中共あるいはソ連圏の貿易の問題でございますが、私は自由諸国との協力ということを堅持しながらも、戦前の大市場である中共地域を初め、これらの地域との間の貿易が伸びることは、経済的に望ましいことであると考えているわけでございます。過去におきましても、この一月以来対中共の禁輸品目は機会あるごとに削除いたして参りまして、今日ではまつたくココムと同様の線になつていると申しても過言ではないと思います。今後とも各国と協力いたしながらその努力を続けたいと思つております。しかし申すまでもなく中共の市場においても、あるいはソ連圏の市場におきましても、いわゆる国際競争が今後ますます激甚を予想されますので、良質にして廉価なる輸出品でない限りは、なかなか実績を上げることはできないと思いますので、この制限を漸次緩和するとともに、一般の他の市場に対する努力と同じように、良質廉価なものをつくることについての輸出努力があらためて要請されると考えております。
  17. 山手滿男

    山手委員 中共、ソ連地区との貿易の問題は、政府も最近大分踏み切つておられるようでございまして、私はけつこうなことと思います。英国がやつているように政治は政治、貿易貿易という考え方でやつてけつこうだと思いますが、昨日、一昨日あたり、ソビエト、中共へ行つてつて来た議員団の話を聞きましても、向うの連中が言つていることは、日本の実情がわからない。こつちもわからぬが、向うもわからない。そのために実際は困つている。日本の議員団は二へんもこうやつてつて来ているのに一向に日本は約束したことでも履行しようとしないし、中公なら中共の通商団の招待をするというふうなことも一向に消極的であつて、やろうとしない。これは商売だけを目標として行くような、通商使節団のようなものでも招待しないか。李徳全さんの招聘については、議員団が向うに滞在しておるときに、最後の晩餐会の二、三時間前にそのニユースが入つて、非常に向うも好感を持つて迎えておつたようでありますが、そのときの話ぶりからいたしましても、君たちも来たのだから、中共の通商使節団くらいをもつと日本国会政府が動いて招待してくれなければ困るんだ、招待をしてくれれば日本の実情もよくわかつて、自分たちも中共と日本との通商が円滑に行くように思うんだが、赤十字の関係だけでなしに、そういう関係を入れて招待をしたらどうだというような話も出たようであります。アメリカ側の方も非常に神経質になつておると思いますが、少しここで踏み切つて行くことが、やはり日本がアジアの経済から、アジアの政界から孤立しないことにもなると私は思いますので、その点大臣はもつと積極的にやるような段取りがついておるのかどうか、ココムの方で最近品目の緩和を相当大幅にして来ておるときでありますから、何も英国あたりの線以下に日本が遠慮してとどまる必要はないのじやないか、こういうふうに私は考えますが、この点について大臣から御答弁を願います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、貿易の拡大均衡をはかるという点から申しまして、できるだけ制限が緩和されるようにこの上とも努力をいたしたいと思います。その方法論やその他につきましては、諸般の情勢から慎重な、誠実な態度でもつて考究をして参りたいと思います。
  19. 山手滿男

    山手委員 時間がありませんので、私はこの際電力料金の問題について一言大臣にお伺いをしておきたいと思います。大臣は電力料金の解決の問題については非常に苦労し、努力をされたと思います。ところがこの間指示をされたあの案は一向に私どもにもわかりません。通産省の方で言つておるところによると、どうも五%くらいの引上げになるというふうなお考えのようだが、電力会社に言わせると、十%くらいの引上げになる、そういうふうに見ておる。ことに大口電力については実際には非常な引上げが起るように言われておるのでありますが、この点について私どもはさつぱりあの電力料金の引上げの結論がわからない。一ぺんこの際大臣からお聞きしたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 電力料金の問題につきましては、十九国会開会当時の当委員会におきましても、非常にご熱心な御論議がかわされたのでありますが、結論といたしましてただいま到達いたしております点は次のような点でございます。それは来年の三月末までは電力料金は全国平均としては現行の料金べースにすえ置くということが第一点でございます。それから本年の十月以降におきましては、現行の割当制度が廃止されることになりますので、これに伴いまして料金制度のある程度合理的な改正がこれに伴つて行われることになると思うのでありますが、その影響につきましては、基本の考えを全国平均として現行料金べースにすえ置くのでございますから、この影響については十分調整措置を考慮するというように考えております。それから来年四月以降の料金につきましては、電力会社側に一層の企業努力を要請いたしたいと考えておりますが、同時に政府といたしましても成案を得ました上は、来年の四月までの間におきまして、国税あるいは地方税等について適当と思われます税制の軽減案を提案いたしまして御審議を願いたいと思つております。なおまた開発銀行の金利引下げ等につきましても、これと相照応して適当な措置を講じたいと考えておるわけでございます。
  21. 山手滿男

    山手委員 それがわからないのです。来年三月までは現行通りにすえ置くということ、それから十月には割当制度を廃止されるから調整をするということになる。そうするとすえ置くということと、割当制が改正をされるから調整をされるということは引上げということだが、結局政府側はこう言おうとしておるのじやないか。料金はできるだけ引上げない、片方は電力会社に増収があるようにさせてやろうというような一種の遁辞を設けられておるのじやないかという気がする。しかしこれは需用者側というか、国民側から言うとやはり持ち出しが多くなる。ひとつここで聞いてみたいことは、大口の電力の需用者から言うと、たとえていえば硫安は何パーセントよけい持ち出しになるのか、あるいは小口の電力は何パーセント持ち出しが多くなるのか、その点を私は聞いてみたい。会社の方の収入からばかり言わないで、国民の側からは何ぼ持ち出しが多くなるのか、それをはつきりしてもらわないと、どうも遁辞を設けられておるような気がいたしてなりません。特に石炭条項の廃止の問題から起きて来ることは、大口電力は当然十月からは五%くらい引上げられることになるであろうと思う。電力割当の廃止や何かでどうもわからない点が多いのですが、御説明願いたい。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはごもつともでございまして、私が先ほど申しましたように、ただいまのところ到達いたしました結論は、非常に基本的な考え方だけでありますから、これは具体的な各社の各料率をきちつとはじき出しまして、その数字につきまして御批判をいただかなければなりませんのに、その具体的な料率表がまだできないわけでございます。  それからただいま遁辞を設けてというお言葉がありましたが、決してこれは遁辞を設けておるわけではございませんので、非常に長いこといろいろの点から考えまして、こういう考え方に結論をおちつけたわけでありますが、本年十月以降におきまして割当制度の改正がございますが、それに伴つて具体的な料率をきめます場合、上るときめられるわけではございませんで、下るものももちろんでございます。たとえば家庭用の電燈のごときはすえ置く、もしくは若干下るであろうと考えておるのでございますが、また硫安等につきましても、いろいろただいま検討を加えておりますから、これはいま少し時間をおかしいただきまして、具体的の料率が合理にこういうふうに調整されますということを、具体的の数字につきまして御説明申し上げたいと思うのでありますが、またその準備ができておりませんので、いましばらくのご猶予をお願いいたしたいと思います。
  23. 山手滿男

    山手委員 大臣が非常に苦労をしておられることは私も了解できるのであります。私は今電力料金をこういうふうにいじることが悪いといつて大臣を責めようとしておるわけではない。問題は日本産業と金融との関係が非常に不自然になつておるから、電力料金をこんなに無理をしていじらなければならぬようなことになつておると思う。というのは今日電源を開発して、いわば増産をして、そのものを数多くつくればつくるほど高く売り出さなければ引合わぬということなんです。それから電力だけじやない、一般産業においても、合理化資金を投じて合理化をして、いいものを安くつくるために、資金を投下すればするほど金利や何かに食われて高いものになる。合理化をしたのかしないのかわからぬような状態に追い込まれる。その典型的なものが電源の開発による電力料金の問題だと私は思う。これでは日本経済界の中で金融が産業に奉仕をしているのか、産業が金融に奉仕をしているのかわからない。多くつくればつくるほど安くなるというのならわかる。合理化して行けば行くほど安くなるような金融体系ができており、産業の体系が整然とできておるというのならわかります。大臣がさつきから言われるように大いに輸出を増進をしなければならぬ。そのためには抜本的ないろいろな手を使つて行かなければならぬのでありますが、手を下して生産力増強し、電源を開発して行けば行くほど高くしなければならぬ。今度の電力料金の引上げは、さつぱりわけがわからぬようなことで、そのうちになしくずし的に既成事実が盛り上げられて行くことになつてつてごまかされるかもわからぬが、これは一年か二年行つて、もう少し電源開発が進んで行くと、あるいはもう一ぺん電力料金の問題で、デフレ経済と電力料金の引上げという問題が起る。電力料金だけじやない。ほかの重化学工業においても同様の事態が起る。これは金融がほんとう産業に奉仕をし、産業のために金融がうまく動いているかどうかというところに問題があると私は思う。今日日本は世界で例を見ることのできないような高金利の国である。こんなことをやつて大蔵省が通産省政策を金融で支配をしようとしておる。そういう現象こそが日本のあらゆる産業界に悪影響を及ぼして、増産をすればするほど物が高くなるという現象日本に起きつつある。これはどうしても解消をして行かなければいかぬと私は思う。この電力料金の問題というのはその一つの現われであつて、私は大して問題じやないと思う。根本の問題を解決して行かなければ日本輸出の増進にも何にも役立たない。小手先の細工ばかりやつておるようにしか見受けられぬ。大臣は大蔵省関係の御出身でもありまするし、何かここで手を打つて行かなければ、今後増産をやろうにも合理化をやろうにも、デフレ経済を遂行しようにもあらゆる面で、金融の金利や何かと衝突をする。いつも向うにたたかれて、こつちがしようがないということで料金を上げる、製品の価格を上げる、それで妥協して行くということでは日本自立経済は達成されません。電力料金を上げたらいいか悪いかという問題じやない。コスト的に当然そうなるものなら上げてやらなければならぬと私は思う。日本基幹産業がくずれるような料金にすえ置くことには私は必ずしも賛成をするものじやない。しかしもう一つここで根本的にこの問題を大臣に解決をしてもらわなければ、輸出増強なんかできやしません。こんな電力料金になつて、大口の中部あたりは二割以上電力料金が上ると考えておる。そうすればあそこ付近にある硫安工業、化学工業なんかは電力料金が安いというので中部あるいは北陸方面に集中した。北陸方面つて一三%上ると見られている。大口の電力需用者が、こういうことによつて輸出ができるどころか、いよいよたいへんなことになる。そこらあたりに今日の日本経済界のかぎがあると私は思うのですが、大臣はどうですか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この電力の問題につきましては、ただいまも御指摘通り、現状におきましては開発すればするほど資本費が御承知のように増高いたしますので、原価主義の建前をくずさないで合理的に考えて行こうといたしますれば、どうしても料金の問題にはね返つて来るわけであります。そこで私は一面においてその必要を非常に痛感しなければならないと思いますが、同時に現状において他にもつと考えなければならない要素がたくさんありますので、その間、いわば二律背反な要請があるとも思いますが、その間をとりまして、この点は大蔵省の非常な協力を得まして、とにかく平たく申せばこういうことになると思うのであります。来年の四月以降ほつておけばと言うと、言葉は悪いのでありますが、何らかの措置を積極的に加えなければ、いわゆる夏料金というものはやめて冬料金一本、あるいは冬料金に近い程度のものにしなければこの原価主義の要請は充足できない、こういう考え方にまとめたわけであります。しかしほつておくわけには行かないであろうと私は信ずるのであります。従つてその間において、先ほども申し上げましたように、これは電力会社にも非常な努力を要請しなければなりませんし、同時に資本費の増高という理論的な要素に対しまして、これをできるだけ引下げる努力を税制の上において、あるいは金融の上において考えてもらわなければならぬということで、大蔵省側の了承をとりまして、この点については今後さらに検討を続けて、できるだけ低物価政策の趣旨に即応するように迫つて解決案を見出そう、こういうふうな考え方になつておるわけであります。  それから一般的に産業と金融の問題につきましてはいろいろの説がございます。ただいまもお話のございました点はごもつともの点も多々あると思うのでありますが、私見といたしましては、遺憾ながら日本においては資本の蓄積が非常に微々たるものである。私はこの際何とかして日本国内の資金源を動員して豊富にすることが何よりも必要なことではなかろうか、これによつて金利の引下げもなされましようし、あるいはまたいろいろな資金を質的に若干調整するような配慮を加える場合におきましても、今より何がしかでも資金の源泉がふえなければ問題にならないと思うのでありまして、これらの点については私は私見ではございますが、資金の蓄積を画期的にいたしますためには、税制その他においてこれまた画期的な施策が必要じやなかろうかと考えておるのでありまして、いろいろの産業樹立計画の根本は、一つ日本国内資本の蓄積充実にある、こう信じておるわけであります。
  25. 山手滿男

    山手委員 今のお話でありますが、資本がないことはよく私ども承知をいたしております。資本の蓄積をやらなければいかぬのでありますが、片一方では金利を非常に高くする、そういうことによつて資本蓄積へてこを入れることがやられておりながら、一方ではその金利にまた課税がされておる。ああいうものでも私は積極的にこの際早く取払つて、金利や何かの負担が産業界にはね返らないようにもう少し抜本的な手が打たれて行かなければいかぬと思うのでありますが、今日では資本が少いということで大蔵省あるいは金融資本の言いなりに産業界が振りまわされているというのが実態であろうと私は思うのであります。この際最も重視をして行かなければいかぬことは、それですから、導入されたあるいは借款によるところの資金なんかは、いろいろな変な高金利で集められた資金とも違うし、非常に貴重なものでもあるし、これを湯水のように使うということになるとたいへんなことでありますから、こういうものこそほんとう自立経済の基幹になるものに注入をして、しかも安く注入をして、電力料金のごときものも今後また再び上げることのないような手が早日に打たれなければいかぬと私は思う。特に金利の問題が産業界におぶさつて来ておるのでありますから、オーバー・ローンの解消問題もいろいろ検討されておるようでありますが、抜本的に産業資本が金融資本に対決をして行くような解決がここでつくり出されるかどうか。これにかかつて日本経済が立つて行けるかどうか、こういうことの結論が出るのだと思います。大臣はこの際そういう面に積極的に動いてもらいたいことをお願いして、私の質問はこれで終ります。
  26. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は帆足計君。
  27. 帆足計

    ○帆足委員 日本経済の現状は戦争後の復興期が一段落しまして、当然のことでありますけれども、今非常な不景気が進行しつつあるわけであります。ことしの暮れから来年にかけては、私はゆゆしい事態になるのではないかと思います。しかしかくなることは当然のことであつて、今日あわてて対策を講ずるということ自体がはなはだ時期遅れで、最初から敗戦日本の人口や国土の狭小さで貿易の重要性などを勘案してむだな投資を省き、ぜいたく品の輸入などは控えて、労使の筋道を立て、企業が能率化するように全国民が真剣になつて努力せねばならなかつたのに、自由という言葉が、何もかもえてかつてにすることが自由経済であり、放埓にふるまうことが自由主義の道徳であるかのごとく錯覚されて、国をあげてパチンコに象徴されているような風景を呈しました。従いましてここにして革新、保守両陣営とも粛然としてえりを正して、世界に伍して平和な国として建設に進んで行くという自覚を新たにしなければ、私は容易ならざる事態が迫つてるおように思います。その中でそれでは何がかぎであるかといえば、日本は島国といわれますけれども、島国ということは海の国ということであつて、結局貿易の振興というこが重要なるかぎであることは火を見るより明らかだと思います。国民生活が一割向上しようとするならば、何百億円の輸出がそれに伴わねばならぬ。極端にいえば私は今日の事態では、輸出一トンについて国民に一回接吻することを許すというくらいの自覚と警告が発せられてしかるべきほどの深刻な事態ではないかと思うのです。輸出のための努力は大してしていないで、外貨はだんだん減つてきて、そうして接吻の自由だけがあまねしというのでは、私はどうしてもこれは日本の人口と生産力の間にアンバランスが起つて来て、国内状況は悪化して、国運を担当する貧困階級の成熟がまだ遅々たる現状においては、やがてフアツシヨ的空気すら起つて来ることを憂慮する次第であります。従いまして輸出振興ということが今日の野党、与党を問わず、国民として共通の課題である。政治的にいえば、どうして国を平和ならしめて行くか。疲れ果てた日本が今戦争の準備の雲行きの中にからだを入れて、一番損をするのは日本であることは言うまでもないし、同時に日本経済が復興して行くためには、平和な輸出の振興なくしては絶対にやつて行けないので、通産省では輸出参謀本部のような——参謀本部という言葉はまことに不愉快な言葉ですが、輸出振興の緊急本部のようなものでもつくつて、各省のセクシヨナリズムを押えて、統一的な意思をもつて果敢に輸出を円滑化するような事態をつくらなければならぬと思うのです。吉田総理経済のことを全然御存じない。日本の歴代の総理大臣は、非常に聰明であつた近衛さんでも、非常にばかであつた東條さんでも、それから今日皆さんが御存じの通りの吉田さんでも、すべて経済を知らないということが共通の弱点であつて、そのために自由経済とか、やれ経済計画性を与えるとかいうような論議があつても、その意味がわからないのですから、愛知さんのような聰明な通産大臣をかかえておりながら、なお経済計画性を持たすなんていうことはけしからぬというような、七十の御老人のおつしやることに対しそは、寛容の精神をもつては対処すべきであるが、無知ほど恐しいものはないという言葉をこの際も痛感する次第であります。知らざるを知らざるとして、総理がもう少し通産省当局の意見を聞けば、もう少しは経済政策も合理的になつたであろうものを、老いの一徹から、日本の最大の課題であるところの経済の問題についてまつたく無知である。この点については、通産省当局としても、啓蒙教育の努力において多少事欠く点がなかつたか、総理に対しても、もう少し正確な資料を示して、閣議全体として輸出振興について国民が喜ぶような手を打つべきではなかつたかと思いますが、経済計画性ということについて、通産大臣はどのようなお考えであるか。また輸出の振興について、かなめの点がどういう点にあつて、どういうふうに今後努力されようとしておるか、まずこの二つの点について通産大臣の所見を伺いたい。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一点の問題でございますが、やはり今後の日本経済政策の大綱は、輸出振興対策にあらゆるものを凝集いたすべきであると考えております。従つてまず輸出についての一つ見通しをある程度長い目で持つことが第一であると思います。それからまたただいまも御指摘がございましたが、まだこれは通産省内の案でございまして、政府全体の案というわけには参りませんけれども、ただいまお話のございましたように、これは政府としても、最高の取扱い方として、閣内全体が非常な重点を持つてこの輸出計画的な推進に当つてもらうというような機構ができればほしいものであると考えております。これはしかし形式的な問題であるかもしれませんので、むしろ実質的に閣議全体がそういうことで運営されれば、それでもけつこうなことでございますが、ともかくも国をあげてということが、この輸出計画的推進に加味されて行きたいものであると考えます。同時に各産業別について輸出の推進機構をつくる。政府はもちろんでございますが、生産業者及び輸出業者を一貫した輸出のための努力をして、政府と相協力して機構的にも打ち立てて参つたならば、相当の効果を上げるのではなかろうかと考えておるようなわけであります。そうしていろいろの御批判はございましたけれども、現在の私ども輸出振興を中心対策として、ある程度長い目で経済政策を合理的また計画的に推進して行きたいということについては、現在の政府の中で異論はないと私は確信いたしております。  それから具体的にどういうふうな物資について、どういう方策を考えて行くのかということにつきましては、先ほどもお断りいたしましたように、もう少し積上げ作業や関連の作業をやりたいと思つておりますので、その進行とともに具体的に御説明する機会がいただけるようになりましたならば、後日適当な機会に御説明をいたしまして、御批判を仰ぎたいと考えております。
  29. 川上貫一

    川上委員 ちよつと議事進行で一つだけ……。ちよつと意見なんですが、これから各委員の質問が続くと思うのですが、通産大臣にちよつとお願いしておきたいのです。もう少し腹を割つて答えてもらいたいのです。たとえば山手委員なんかの質問は私は非常に大きい質問をされると思う。第一は貿易を十七億ドルに上げるというが、これの基本的な考えはどうかということを言うておる。それから第二には電気料金の値上げの問題、これは通産大臣のお考えを聞いておるのです。これは非常に二つとも大きいと思う。ところが大臣のお答えを聞いておると、いろいろ申されましたけれども貿易上の国際政策というものを一つも言われないのです。しかしこれを言われないと、私は貿易問題なんというのはこんにやく問答になつて何にもならぬと思う。具体的に言いましても特需の問題がある。それから借款貿易政策の関係がある。それからガツト問題がある。ココムの問題がある。ココムには日本の代表が大分出ておる。それから東南アジアの貿易というものが、これは政策を変更しなくちやならぬことになつておる。それから中近東の貿易の問題が政府では取上げられておるに違いない。台湾の貿易問題は中国の問題と非常に摩擦を起しておる事実がある。これに対してどう考えるかという問題、もちろん中、ソ貿易の問題、これら山積しておるのです。ここのところの政府考え方をはつきりとおつしやらぬと、どうも私は十七億予測というようなものが何にもならぬのと、いま一つはここで問答しても一向つまらぬような気がする。それで吉田さんでも腹にあることは支部長会議でもなかなかほんとうのことを言うておるのですから、やはり通産大臣も私ははつきり言うてもらわなければどうも意味がなさぬ。それから電気料金、これも通産大臣は値上げの必要ありと考えておられることは明らかです。ところが閣議の方じやこれはどうなつておるかわかりません。こういうことがあるなら通産省としてはこうなんだ、——山手委員も上げるということには反対しておるのじやないと言うておる。内容を聞きたいと言うておる。これははつきり言われる必要がある。自分としてはこう考えるのだ、こうしないとこれはいくら問答しましても何だかこんにやく問答のようなことでいい意味に解すればいいということになつて実につまらぬ。堂々とひとつ大臣はここで所見を明らかにしていただきたい。今後質問が続くのでありますから、この点を特に委員長の方もそれをひとつ政府当局の方へ要望していただきたいと思います。
  30. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの川上委員の御忠言はわれわれもまつたく同感でありまして、ひとつ率直大胆にお答えを願いたいと思います。そこで今日貿易は十七億ドルという目標がありましても、これは先ほど来通産大臣指摘されたように、幾多の困難があるわけですから、容易なことでなく、外貨減つて参りますと、現在重油の規正が始まつて、重油の割当のために陳情引きも切らずという状況ですが、次々といろいろな重要物資、ひいては国民生活を維持する根幹的な諸原料の輸入にも事欠くような事態が毎年来ることを私はおそれるわけです。従いまして、今日外国から入りました、特にアメリカから入りました外資の金利として海外に送金しておるものが、米貨に換算して毎年三千五百万ドルに及ぶと書いてありますが、すでに相当の金額になつております。後ほど今後の外資導入の方法についてもお尋ねしたいのですが、昨年までは相当潤沢にありました外国為替資金が、現在どの程度に減つてつておりますか、その点をお伺いしたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  32. 帆足計

    ○帆足委員 それでは質問を続けますから、資料を整えてから御発言があつてけつこうです。同時にぜいたく品と目せられるようなものを、なおどの程度輸入されておられるか。本日貿易のことが議題になることはあらかじめ御了承を得ておるわけでありますが、昨今コカ・コーラなどというようなものを、まさか輸入してはおらないだろうと思いますが、日本では現在トマトも豊富ですし、オレンジも豊富ですが、ときどき外国のマークの入つておりますオレンジ・ジュースなど飲まされまして、あまり愉快な気持がいたさないのでありますが、そういうようなぜいたく品の輸入が現在どういうふうになつておるか、こういう点もついでに伺つておきたいと思います。これは事務的な問題でありますから、後ほど資料を取寄せて御報告願いたいのです。先ほど川上委員も御指摘になりましたように、国際情勢は大きくかわつて来ました。貿易の問題は国内産業問題であると同時に、半ばは外交の問題でありまして、外交は外務省のリンガフオン・レコードの諸君にのみまかすべきではなく、外交とは経済外交といわれるくらいに、また国際情勢の分析は、経済諸関係の分析から始まらなければ、問題の本質を理解できないのであります。従いまして外交の領域において、通産省の発言をもつと権威あるものにしていただきたいと私は思います。ゼネヴアの平和会議が成功いたしましたあとに、国際情勢は大転換を見せております。これに対しまして部分的な摩擦もありますが、たとえば隣邦の李承晩氏はわざわざアメリカに出かけまして、上下両院においてはつたり演説をいたしまして、即刻北進するから助けてもらいたいというような、世界のもの笑いになるような発言をいたしまして、さすがの上下両院議員も唖然といたしました。上には上があるということでありましよう。さすがのダレス氏も、どうも李承晩氏の発言は、ニユーヨークは当日気温が三十五度にもなつていたようでありますので、これは気温のせいじやなかろうかと、ダレスさんも言つたそうですが、それに対して李承晩は、人をおだてるときはおだててと言つて憤慨しておる由だということが朝日新聞に詳細に出ておりまして、私は唖然たる感じをしてこの記事を読みました。しかし最近の吉田総理の御発言を拝承しますと、これまた暑さのせいでしようが、隣邦と相通ずる点があつて、まことに寒心のきわみで、バオダイ、李承晩、蒋介石、吉田総理と一流の人物をよくもこうアメリカは結集されたものなるかなと大いに驚く次第です。とにかく私は国民の感情を代表して申し上げておるのですが、国民一般も最近はそのように考えて、よその国のことならばどうでもよいですけれども、自分の国のことでありますから、保守政党は保守政党なりに、うちのおじい様もしつかりひとつりつぱにやつてもらいたい。進歩政党は進歩政党なりにかしこくふるまうということを国民は希望しているものだと思うのです。その期待に沿い得ていない現状は、大いに政府としても考えていただかねばならないと思いますが、この国際情勢の変化と見通しを通産大臣はどのようにお考えになつておられるか。最近岡崎総領事——と申すとこれは失言でありまして、一応外務大臣でありますが、しかし選挙演説などに参りますと、岡崎外務大臣と言うともう選挙民は承知しない。従つてわれわれは総領事と言いますと、いや、総領事でない、副総領事と言つてもらいたいというような声が、自由党の方の中からかかるような昨今の状況。または池田さんに対しては、池田税務署長というようなことを言われる。まことに私は保守政党のため遺憾なことだと思います。これはどうしても名誉挽回いたさなければならないそのためか、これほど中共貿易に対して妨害に妨害を加えて来られた岡崎さんが、中共貿易は必要なりということを青天の霹靂のごとく言われて、われわれをびつくりさせる。そして池田さんがまた今度は責任ある地位に立たれまして、中国との貿易は大いに考慮しなければならぬことになつたと言われる。私たちはまつたく去就に苦しむわけであります。しかし平素お近づきの愛知通産大臣は、前から、いろいろな困難はあるけれども、誠実に、せめて英国の例にならつて中国貿易を進展せしめたいと御努力されておつた心境のほどは、われわれも十分了承しておるわけですが、一体今日の政府としての統一的意見は那辺にあるか、そのことを私は伺いたい。と申しますのは、朝日でありましたか毎日でありましたか、権威ある新聞にこの問題の解説が出ておりました。政府はもはや与論に抗し得なくなつて、さすがの岡崎さんも池田さんも、中国との貿易を是認するかのごときゼスチユアだけを国民に示して、実は依然としてシヤツト・アウトする大体の腹組みである、少くともこれが外務省当局の今日一貫した主流をなしておるということを、新聞解説は書いておりました。私どもよりも這般の消息に通じておられる経済政治記者が書かれたことでありますので、また私たち日ごろの状況から観察いたしまして、あるいはそういうこともあるのではないか、それでは困ると思つておるのでございます。と申しますのは、今日日本貿易は戦前のわずか三五%程度、世界の平均は、国際連合の統計を見ましても一六〇をまさに越えようとしておる。チヤーチル英国首相が今度アイゼンハウアーに会いましたときは、以前と打つてかわつた態度で、四十数分にわたつて諄々乎として世界の大勢をアイゼンハウアーに説いた、そうしてそのときのチヤーチル首相の葉巻のくわえ方は、すでに戦前の悠然たる態度をとりもどしていたとニユーヨーク・タイムズは書いておりましたが、その背後には、すでに英国のポンドが黒字になつて、英国の貿易が戦前水準の一六〇を越えるような安定度を示しておる。私はやはりこういう国力が背景になつて英国が英国らしく振舞うようになつたと思うのです。イギリスは東南アジア諸国に悪しき植民地を持つていた国であつて、現在どの程度英国の保守党が民主政治に対して改心したかしないか知りませんけれども、その英国が今でも香港をかかえ、シンガポールを持ち、そしてインドをかかえておる。こういう政策の広さと弾力性には、さすがにわれわれ革新陣営に属しておる者といえども感嘆する。私はこれが歴史の事実であつて、保守政党の内閣も、さすがに敵ながらあつぱれだとわれわれから感嘆されるものであつたならば、われわれももつと勉強しなければならぬというので、学習の気風が社会党にもみなぎつて、社会党も私はもつとよくなると思う。ところが相手たる自由党がぐうたらであるために、われわれの方も遂にふんどしがゆるんで勉強を怠る。これは国家全体として私は大きな損失だと思うのです。  こういうふうにあれこれ考え、さらに東西貿易について一言言いますと、私は先日大阪に行つて驚きました。一体東西貿易の額がどのくらいあると考えておられるかと商工会議所の理事諸公に聞いてみたが、一人として知らないのです。中国と日本との貿易が幾らになつて、英国との貿易が幾らになる、そういう比率はどういうようにお考えになるかと聞きましたら、経済のことはわれわれ商人にまかせろと平素言つている大阪商人の方が、まつたく無知の皮だ、無学の皮だ、まつたく驚くべきことであります。大東亜戦争のときに日本の鉄の自給力は三百万トンを切れております。アメリカの鉄はまさに一億トンにほぼ近づいておりました。一億トンと三百万トンの鉄の闘いというのが、過去二十年間にわたる国民総進軍の悲劇と喜劇の物的基礎であります。今平和の闘いにおいて、外交の基礎として考えねばならぬものは、原子科学の発展の水準とそのスピードとその見通しと、同時に超音航空機の性能とその見通しだと思います。同時に純経済の問題として考えるならば、貿易の伸張速度だと思います。その貿易が、日本が戦前のわずか三五%、世界の水準は一六〇を越えようとしておるということは、まさに平和の闘いにおけるガダルカナルを思わすものであつて、慄然として肌に粟を生ずる。もし為替を切下げなければならぬとか、または為替が不足で重要原料の統制をやらねばならぬような事態になつたならば——今日われわれは正直者は損をするという哲学を満喫するほど学んでおります。すべて日本国民ヤミのエキスパートになつておりますから、この国に秩序整然たる、合理的、国民的統制が行い得るはずもありません。そういう物的諸関係のもとにおいて物資の欠乏が起つたならば、かつてつていたころの、豚のような状態であつた古い支那と同じように、統制はできず、助け合うこともできず、弱肉強食は続き、たくさんの失業者、半失業者はちまたに溢れ、知らない間に水虫が広まつて行くように、民族の根幹が冒されてしまつて、気がついたときには取りかえしもできないような状況になることは必至でありますから、私は今のうちにしつかりした対策を講じてもらいたいと思います。  東西貿易の額を見ましても、アメリカが発表している金額は、東西貿易の総額は十三億ドル半、輸出入合計するとして約三十億ドル、十三億ドル半の輸出——共産圏に対する輸出をチヤーチルはその倍額ぐらいに持つて行きたいと豪語しておる。そうするとその額は三十億ドル輸出入合計すると六十億ドルというのが東四貿易の目標額であるとするならば、私たちは安閑としておれないと思います。十三億ドル半の内訳は、ソ連に対して四億ドル、東欧諸国に対して六億ドル、中国に対してたしか三億ドル近くであつたと思いますが、その三億ドル近くのうちの日本の占める地位はわずかに四百五十万ドル。その中で、香港を入れて大英帝国は一億二千万ドルに達し、そうして西ドイツですらたしか二千五百万ドルぐらいに達したと思いますが、しかも下半期にはそれがずつとふえつつある。こういうことを考えますと、中共貿易は、帆足君、あれはイデオロギーの問題である。または日本の外交政策において、革新政党が平和と中立を主張して、インドのネールと肝胆照らすような外交政策も必要ではないかと叫んだときに、保守政党としては、それも一理のあること、自分たちは今日アメリカの重圧下におるから、君たちのような率直な発言はできないけれども、野党としてはやはり所信を貫くことも、国全体の流れから言えば大いに利益であろうというような理解力を持つてよいのに、これまでの岡崎さんたちのやり方はめちやくちやであつて、私は言うべき言葉もない。私は野党としても与党に対しては多少の友情を感ずべきであり、与党としては、野党の少数意見に対して耳を傾けるということが最も必要なことであつて、それが民主政治の要諦だと思うのです。しかるにこのゼネヴア平和会議が成功するまでは、われわれの主張というものはまるで女学生の思想だというふうに取扱われ、何を空理空論を抜かしておるか。約四箇年の間、われわれは涙を流し、歯を食いしばつて今日に至りました。今や水爆の時代に移りまして、超音航空機はもう香港から東京までの間を五十五分で飛べるようになつた。音速の二倍に達したという情報すらわれわれは耳にしております。広島に投げられた原爆は六千度の温度であつたのに、今度ビキニに投げられたものは十億度に達すると言われておる。もう戸締りどころか、床柱どころか、大地もゆるぎ、地上数十メートルにわたつて十億度に沸騰するときに、経済を所管している人といえども、国の防衛についてやはり一定の哲学と戦略は持つていなければならぬ。というのは愛知さんがどのように貿易振興を叫ばれようとも、そのために努力してもらうのは経営者と労働者です。そこに一定の均衡も必要であり、社会生活安定も必要である。結局バター、パンと大砲との均衡、軍事費と貿易振興費との均衡というような問題に来るわけですから、こういう困難な時勢におけるときの政治家というものは、通産大臣であつても軍略も心得、外交も心得ており、時には職を賭してまで発言するだけの勇気と責任も必要だと思うんです。こういうような状況を背景にして英国は動き、マンデス・フランス首相は動いたわけです。マンデスさんの顔を見て、あれは顔がまんまるくてぼんぼんで、お坊ちやんじやなかろうかと批評した方がおりますが、その批評した方の方がはるかにお坊ちやんで、彼が聰明並びなき秀才であつたということは彼の略歴の伝えるところであります。私は最近のイーデン外務大臣の動きやマンデス・フランス首相の動きに対しては、理性の勝利として満腔の敬意を表する次第です。この点については通産大臣も外務大臣も確かに保守政党は目前の事務に追われて、アメリカの圧力に追われて時勢を見る目がなかつた。もう少し社会党の諸君の言うことを耳をすまして聞けば、もう少し早く手も打てたようなこともなかつたかという述懐を漏らすくらいの率直さがあつてけつこうだと思う。明らかに今次世界情勢の転換は原子科学の力に押され、そして二つの世界が一方の世界を地球から抹消することができなくなつて来た。何とか合理的共存の道を考えねばならなくなつたという大きな客観的事実に基くものであつて、この問題は今後長きにわたる歴史の課題であるとともに、二つの世界の間にはさまれている日本としては、私は切実な課題としてこの問題は続く問題だと思うんです。  鉄のカーテンという言葉がありますが、鉄のカーテンよりも恐ろしいのは無知のカーテンであります。日本民族が今日のような状況になつたのは、ひとえに鉄のカーテンのせいでなくて、私は無学のカーテン、無知のカーテン、独断のカーテンのために今日の失敗を犯したものだと思います。こういうように考えて、今後中国との貿易を大いにイデオロギーと別にして奨励すると政府当局は言われますけれども、それならばその実を上げるために今日どういう点が困つておるか、後ほど一つ一つ申し上げますが、たとえば中国に商用をもつて出かける。また国民経済外交として私たちが参ろうと思つても、旅券をくれない。それから中国に対する輸出の禁止をヨーロツパ並にすると言われますけれども、アメリカのバトル法の委員会が正式に発表した文書を見ますると、英国、西ドイツ、フランスから共産圏への輸出物資の中に、われわれが禁止されておると思つている鉄鋼、工作機械、電気機械などというものが公式の文書の中にちやんと書き込まれておると思うんです。これは一体どういう理由であるかということをお尋ねしたい。  第二にココムの解除といいますけれども、何もわずかばかりの援助をアメリカからもらつて、そして一々アメリカに解除を哀訴嘆願して、アメリカの主導権のみで解除されるということは不合理だ。日本もまた自存、自立のために、みずからこういうものは解除してしかるべきものでないか。たとえば中国向けのトラツクから自動車の部品まで禁止されておりますけれども、こんなものは一向さしつかえないじやないか。わずか二年前にはDDTまでが禁止されておりました。理由を聞くと、DDTが普及すると、中国解放軍のしらみやのみがなくなる。しらみやのみがなくなると、大いに元気を出すおそれがある。こういうことで二年も前は禁止されておる。やつと去年その禁止が解かれ、解かれたときには上海でもうDDTの大量生産ができている。西ドイツから大量に買つて、もうその必要がないということを言つておる。待望のDDT輸出はほとんど中国に時期遅れになつている。先日外務省の文化情報部長さんとかが、中国の五箇年計画はあまり成功していないと言われたが、行つたこともない、見たこともないくせに、そして大して勉強するひまがあるはずがない。この諸君が何を資料になさつたかそういうことを言われておる。私たちはすでに二回行つて見て来ました。最近見て来た人たちの状況を聞きましても、非常な熱意のもとに、あの日本より百年も遅れた後進国が今努力しておることは事実である。決してことさらに過小評価すべき段階でない。むしろ過重評価し過ぎて、国民よ奮起せよ、隣邦中国、眠れる豚と言われた国が今や目をさまして、拮据経営しているではないかというふうに行く方が、文化情報部というのに多少のPTA的役割があるとするならば、そういう態度をとるべきである。アメリカに対して警告を発するためにも、そのくらいの気概を示す方がいいのではないか。  今日中国の建設は第一期をまさに終ろうとしまして、すべての資材または設備等に補修を必要としておるわけです。現代の諸設備を補修し復旧して進みたいという熱望に燃えておりますが、それらのトラツク、車両または機械設備等の非常に多くの部分はかつて日本製品です。従いまして今にしてこれらのものを解除しなければもう一年時期が遅れますと、日本製品の進出の絶好のチヤンスを失つてしまう。一体日本の外交政策というものは、われわれの税金でわれわれの政府でやつておるわけであつて、アメリカが日本に多少の援助をしてくれておると言いますけれども、それはわれわれがアメリカに軍事基地を貸してやつて、その地代をもらつているだけのことであつて、大家さんのところにアメリカは頭を下げて来ればいいのであつて、気に食わなければ、貸さないぞと言えば地代は幾らでも上るわけです。アメリカが援助しなければ日本の国防が今日すぐ不安になるかというと、必ずしもそうでない。インドのごときもどれほどの武力を持つておるか知りませんけれども、ネール外交の道徳的威力というものが世界にどれほどの大きな発言力を示しておるかというようなこともあわせて考えねばならぬ。またアメリカが日本を守つてくださると言つて、かりに北京や満州やウラジオに水爆を投げたとするならば、その水爆のために日本は放射能の灰を受けて全滅せねばならぬ。こういうような戦略も一応検討してみる必要がある。また私は、日本の安全保障と言いますけれども、アメリカが日本を侵略したときに、どういうふうにして防衛すればいいかということをこの前アメリカの将校に聞いてみましたら、コツプのビールがこぼれるくらい笑つておりました。しかしこれはわれわれ野党から言えば笑いごとでないのであつて、私たちが新憲法を守り、従来の安全保障条約を国民の総意によつてやめたいというときに、アメリカが暴力を働いたとしたら、これに対して適当なことも考えねばならぬ。国の安全保障という以上は、何よりもまず水爆時代における総合的な意味の国の安全を考えねばならぬので、もう少し与党と野党とは歩み寄る必要がある。国の重大な問題に対しては多少は話し合つて、十分に了解し合つた上で、しかし自分の方はこの程度のことを正しいと信ずるからやるが、君たちの言わんと欲するところも国民の五割くらいは賛成しておる、ましてや青年のほとんどすべてが賛成しておるのであるから、十分参考にしようというくらいの気持がなければならぬ。再軍備してみたところで青年たちは一人も戦争に行かないでしよう。それどころでなくて、政府がもし憲法を改悪して再軍備しようというときには、私の方から再軍備法案を出そうと思つている。その再軍備法案とは、兵隊に行く者は大体六十才以上の年寄りが行けばよろしい。今日年寄りというものはなかなか丈夫です。生き長らえただけあつて丈夫です。そして機械化部隊でも再教育をするならば役に立つ。御家族やお嬢様たちは一番近い野戦病院に行かれたらいい。アメリカの兵隊さんがさびしければ、その人たちが慰安婦志願をしたらよいでしよう。しかしわが日本社会党が背景に持つておる勤労者や青年たちは、断じてわれわれは戦争に行かしたくない。しかしこの気持が笑いごとでない証拠には、たとい再軍備しても日本の青年たちを海外に送らないという決議をわれわれが御相談しましたときに、改進党も自由党も社会党も一致して、日本の武力を海外に送らないということが、一人だけ例外がおりましたが、まず満場一致国会を通過した。私は話合つてみればそこに共通性があると思う。中国貿易の問題でも、自由党の諸君が一緒に入つて満場一致可決したし、水爆の実験禁止に対する警告の決議案も、案外自由党の諸君一人残らず賛成したのであります。ですから私はマンデス・フランス首相の努力によつて、国際的に二つの世界が話合いによつて水爆の脅威、人類殺滅の戦争から人類を守つて行こうというような国際零囲気ができたと同じように、国内においても保守と革新の関係ももう少し話合つて、そして国民は今塗炭の苦しみにおるわけですから、中国貿易などは、中国貿易を促進するための官民懇談会というくらいのものを開いて、私などは当面座長にでも選んでいただいてやれば、これは非常に円満に行くし、われわれ通産大臣を助けるつもりです。しかるに中国貿易はやるやると言いながら、今度は帆足君だけはまた旅券をやらぬというようなことをわざと言つてみましたり、やるやると言いながら、社会党でまた向うに行こうといえば、英国の労働党が向うに行つておるときに社会党の人たちが行くなら旅券はやらぬというようなやぼなことを言われる。こういう国内の問題は話合いで解決することが私は五割くらいあるのではないかと思うのです。こういう観点から御質問するわけですが、中国貿易をよくすると言いながら、今日まで私どもが経験しておるところによると、大体通産省輸出阻害省と言うてよいのでないかという思いがする。硫安の問題で私が関係官庁に五十八回足を運んだという話が新聞に出て有名になつてしまいましたが、まつた一つのところに行つて解決がつかないのです。そこで通産大臣が言われたように、輸出振興のための中心的な局のようなものでもこの際つくらなければ、業界の諸君が手続で、また窓口で苦労していることは、もう想像に余りある状況だ。そういうふうにしていただきたい。現に今日一番大きな問題としては、中国から米が来るようになつていることはたびたび通産大臣のお耳に入れた通りです。これは東畑農林次官などがかつて御苦労なさつた品種が芽をふいて、揚子江の沿岸、黄河の沿岸でとれる米は、日本でとれる越後のすし米よりもおいしい米で、先日試食会をいたしましたが、まことにうまい米で、それにまぐろのとろでものせて食べたらどれほどうまいかと思いましたが、とろの方はビキニの灰で御遠慮しなければならないさんたんたる状況です。
  33. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 帆足君に御注意申し上げますが、時間がなくなりますから簡潔に願います。
  34. 帆足計

    ○帆足委員 まだ二十五分あります。  そこで中国の米を向うは三万五千トン売るという。さらに松浦君が帰つての話では、もう三万トンくらい売つてもいい——これは実は去年日本が非常に凶作のおそれがあつて、やみ米が三百円にもなつときに、池田正之輔君とわれわれと一緒に中国銀行総裁に会いまして頼んだわけです。日本国民は米なしでは生きて行けない国民である、中国では食糧が余つて来たというので、ぜひとも内地米を売つてくださらぬかということをわれわれ議員団としても頼んでおる。そし中国では昨年の秋から食糧管理法が出まして、食糧を全面的に把握し得るようになつた。ことしの四月になつて大体の結論が出て、去年は御承知のように中国は凶作であつた。しかし国が広いから豊作のところもあつて平均したらば多少の余力ができたから売つてあげよう、こう向うから言つて来たわけであつて、そういういきさつのあるものを、今日黄変米で苦しんでおるわれわれ、そしてことしの作柄は最近暑くなつてやや盛り返したものの、全体として作柄がよくないことは明らかであります。そういう状況のときに、なぜこの米の輸入に対してもう少し強い熱意を政府当局は示されないか。黄変米であれほど悪口を言われ、国民を恐怖に陥れているときに、新潟のすし米以上のものが、しかもアメリカのカリフオルニアの米はFOBで百七十五ドルとか聞いておりますが、こちらの米は百四十五ドルから百五十八ドルぐらいの間だと思うのです。しかもFOBですから船賃がさらに安くなるわけです。私はぜひともこの三万五千トンのほかに追加される三万トンも含めて気持よく輸入されたらよいと思う。今までのようにアメリカから弾圧されておつたときに通産大臣が遠慮されるのなら、私も話がわかるわけです。しかし岡崎外務大臣ですらが、もう中国との貿易をやろう。池田さんですらが、あの貧乏人は麦飯を食えと言つて、米と麦の対立を明らかにして有名になつた方が、なお中国貿易はもうせねばならぬ、こう叫んでいるときですから、中国から米が六万何千トンも——石にすればそれの七倍ですから相当の分量です。それだけのものを売ろうというときに、なぜ手続などでごたごたなさるか。もう入れることにきめましようといつて、吉田さんの名前でこの点は礼状を向うに出すくらいの寛容というか、良識があつていいものではないか。見返りは、御承知のように米を買うのに従来はストレートでも相当買つていたのだから、見返りのことはあとで心配していいのではないか。見返りとしては向うは硫安を希望し、その他鉄鋼とか、漁船とか、今ココムで特別免許で許されておるものを要求しておるわけですから、話はあとでできないはずはないのです。とりあえずは本日の委員会のあとで通産大臣はただちに関係者をお呼びになつて、六万五千トンをただちに買うという態度を示されて、見返りのことはあとで御相談なさつたらいいのではないか。この見返りの問題について私はまことに不見識だと思うのは、業者に道徳的協力を求めるのはけつこうですけれども機械的に業者に必ず見返りのものを輸出せよと言われる。ところが輸出するか輸出しないかということは、官庁の許可認可制度に大部分がひつかかつておるのであつて輸出したくない貿易業者というものは一人もないわけですから、こういうことは官庁と業者と協力し合つて輸出努力するという一札を入れさせれば、その方が実情に即しておるのではないか。見返りの硫安は、御承知のように中国の方では見返りとして十万トンくらいの硫安を買うでしよう。最初日産から五千トン出しましたときに、中国に聞いてやりますと、とりあえずは三十万トン買いましようということでした。中国向けの値段はFOBにして六十一ドル、台湾向けのは御承知のように前は五十六ドルでしたが今度は少し値上げをして五十八ドルです。台湾向けのは二十五万トン大体きまつておるのですから、この程度でとどめて、あとは中国向けにしてもらいたい。しこうして見返りはそういうよい米である。こういう申入れをした以上は、韓国向けよりも優先順位は先だと思う。しかしあえて韓国向けのものはゼロにしろとは言いませんけれども、韓国向けと中国向けと二つの問題があつたときは、今の米の問題などを勘案して、両方とも、十万トンずつにするとか、または約三万トンばかりのスウイングが台湾向けの方について、弾力性があるそうですから、それを少しばかり削るとか、そういうふうにして中国貿易を振興するという約束をされた以上は、振興するようなふうにしていただきたい。しかも中国は六億というような人口の国ですから、一韓国などとはとても比較にならぬわけです。もう少し政府当局としてはしやんとしてもらつて、戦時経済のあの愚かさの二の舞を繰返さないように、常に合理性と数字をもつて仕事をしていただきたい。まずこの米と硫安のことにつきまして、通産大臣としての御見識を伺いたい。幸いにして食糧庁の部長もお見えになつておりますし、硫安担当の軽工業局長もお見えになつておりますし、また韓国の特需の関係を多少は考慮せねばならぬ立場にあります企業局長もお見えになつておるし、通商局長もお見えになつておることですから、通産大臣としては大臣の見識において、この問題のお取扱いについての御所信を伺いたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に広汎にわたつての御説でございまして、どこからお答えしていいか、また非常に長い時間をいただかないと十分お答えができないと思いますが、最後にとりまとめて具体的なお尋ねがございましたので、その点に関連して私の所信を申し上げたいと思います。  先ほど川上さんからお話がございましたが、今の世界情勢に対する私どもの判断といたしましては、ジユネーヴ会議がああいう結果になり、またインドシナの休戦というものが成立した。この状態のもとにおいて、一口に言えば、大勢は漸次動乱からいわば安定へ移行しつつある、私はこういうふうに考えます。ところがこれを経済的な問題から申しますならば、世界各地域におけるいわゆる貿易競争というものは、そのゆえにこそ次第にはげしさを加えんとしておると私は判断いたします。それから一方において経済基盤の強化を完了したと申しますか、たとえばイギリスとか西ドイツとかの方面におきましては、きわめて近い機会に通貨の自由交換制を回復したいということで、来月末に予想される国際通貨基金の総会等におきましては、この問題が世界の注目を浴びる一つの焦点になるかと考えます。そういうときにおいて、わが国の経済情勢というものをつらつら考えます場合におきまして、私は先ほど来申し上げたような政策を、この際打出して参りますことが適当なことだと考えるのでありまして、考え方の筋書において、私は何ら鬼面人を驚かすような新しい政策というものはないと思いますが、今年一月以来とつて参りました緊縮政策のもとにおいて、こういつた考え方を推進して参りたいということが私の所信でございます。  その次に経済外交のお話がございましたが、せんじ詰めて申しますならば、私はまず米国なりあるいは英連邦の諸国なりに対しましては、一つの具体的な問題は、たとえば関税の引下げの要請ということであろうかと思います。ガツトヘの正式の加入ということを一日も早く実現いたしたいのでありますが、単にガツトに加入するということだけでなく、関税の協定において日本としてできるだけ有利な態勢を確保するということが、これらの諸国に対する一つの構え方でなければならないと思います。それから東南アジアの諸国との経済協力を積極的に推進する、この点につきましては、日本輸入品の買付を極力同地域に指向するということが、一つの新しく特に筋金を入れなければならぬ点かと考えるわけでございます。  その次に、ただいまるる御指摘のございました中共に対する関係でございますが、これは私は十九国会の開会中にも随時申し上げておりますがごとく、本年一月私が通産省に参りましてから、輸出の禁止品目がありましたものを、ココムの線までほとんど全部数回にわたつて撤廃いたしましたことは、ひそかに私の喜びといたしておるところでございます。今後どうするかということにつきましては、先ほどお答えいたしましたような気持でございます。それからこの問題については、やはり今後におきましても、一つは禁輸品目をできるだけ解除するということの努力であり、いま一つは、具体的な問題についてただいま御指摘がございましたが、もし従来通産省の取扱方が迅速を欠いたり、あるいは阻害したりすることがあつたとすれば、これはまことに遺憾でございますが、私は具体的な信ずべき筋の情報でありますならば、百パーセントにこれを取上げて、具体的にバーター取引その他の実現をはかるということが適当なことかと考えるのであります。そういうような基本的な考え方から、ただいまおあげになつた具体的な米の輸入の問題、あるいは硫安の輸出の問題等につきましては、この上ともに私といたしましては誠実に対処し、かつ迅速に結論を出すようにいたしたいと考えます。  それから中南米でありますとかあるいはアラブ諸国といつたようなところは、いわゆる日本としては戦後においての新しい市場として期待されるところかと思いますが、この方面の開拓のためには、一層の外交的な努力が必要であると思うのでありまして、これらの点につきましては、従来よりもなお一層外務当局とも緊密に連携をとりまして、公館の開設、人員の配置、あるいは旅商団の派遣等々といつたような点について、できるだけの努力を払つて参りたいと考えております。
  36. 川上貫一

    川上委員 関連して一つだけ……。今の御答弁の中で、これはあとで詳しく答弁してもらつてもいいのですが、禁輸品目の解除、あの解除は、実際は役に立たぬものが非常にたくさん解除してあるのじやないかということが一つ。あの解除品目で、その後何ぼ中国への輸出があつたか、解除品目でありはしないじやないか。あれは中国のいらぬものばかりじやないか。具体的な内容は時間をとりますから言いませんけれども、この点。いま一つは、ココムの線までと言うのだが、日本の代表がどういう形でココムの会議に行つているかということ、それからココムの会議日本の代表は、イギリスやフランスからココムの緩和についての提案があつた時分に反対している事実があるが、こういうことがあるかないか。ココムの会議に出たのは、川村参事官かどうか、この点だけひとつ……。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段につきましては、数字の最近の傾向につきましては、後刻お答えいたします。  それから第二段のお尋ねでございますが、川村参事官という人のことは私は存じませんが、御承知のようにココムの会議は、非常に多くの物資につきまして、関係各国で非常に専門的なこまかい論議が行われておりますから、そのときの論議の一つ二つを取上げて、あるいはそういう点が問題にされているのかと思いますが、この点は調べてみます。私ここですぐお答えするだけの資料を持つておりません。
  38. 帆足計

    ○帆足委員 時間も経過しましたので、私はもう一つだけお尋ねしますが、今川上君から関連質問がありましたと同じ趣旨で、一言だけ加藤委員から、同じ問題で関連質問があるので、お許し願います。やはり中共向けの輸出のことです。  渡航課長がお見えになつておりますから、ついでにお尋ねしますが、旅券法が今曲げて運用されております。旅券法では、共産圏への旅行を許可制度にするという規則はないと思うのです。生命、財産に異常ありということは、もう異常ないことで明確になりましたし、また政府自身が公用旅券を発給しておりますことによつて、これは生物学的に解決がつきましたので、残つたものは国益阻害であります。そこで二つお尋ねしたいのです。  一つは、共産圏への出入が日本では許可制度になつていないのです。これは政府が旅券法違反をいたしておりますから、いずれ裁判所から叱られる日が来ると思いますが、よくひとつ旅券法を読んでいただきたい。  第二には、国益阻害という意味は、これは通産大臣もよく聞いていただきたいのです。公共福祉を守らねばならぬ。公共福祉は野党でも与党でも守らねばならぬ。従つて国益または公共福祉という言葉の意味は野党、与党それから性別、年寄り、若い者またイデオロギーの相違にかかわらず、国民のほとんど九〇%が、それはなるほど悪いという理由のあることを公共福祉というのです。高文の試験は通過されておることと思いますから申し上げるまでもないと思いますけれども、これを破つておる。それで公共福祉、国益というのは野党、与党共通してそれは悪いということを言うのです。もしそうでなくて一党のそのときの権力や政府政策のみが善であつて、野党の政策は悪である、国益阻害であるというならば、野党のすることはことごとく公共福祉の名のもとにいろいろ悪用される。現に私どもが将来内閣をつくつたときには、岡崎さんがワシントンにたびたび行かれるというようなことは、多少国益を阻害するとわれわれは思うのですけれども、それはわれわれが政治的見解としてそう言うのであつて国民の九〇%が思うというわけではないのでありますから、ワシントン行きの旅券を私は外務大臣として発給してあげようという親切心を持つているわけです。それとちようど正反対の問題でありますから、もう少し渡航課長はよく勉強して——勉強しても上官から叱られればそれまでですから、勉強した結果を上官に報告して、ここでもまた大いにPTAの役割を果していただきたい。問題が大分明確になつて来ましたから、その後の渡航課長また外務省の心境の変化はどうなつたか、一応お尋ねしておきたい。  もう一つは、一度私は、池田正之輔さんや与党の同僚諸君のように政府のお許しを得ずに世界一周旅行をしたガリバーの仲間たちは二度と海外に行く旅券をくれぬ、こう言うのです。この前私が二度目に行こうとしたら、やらない。西園寺君にもやらないのです。ところが旅券法を見たら、旅券法違反によつて刑に処せられた者は差別待遇ができる。あとは国務大臣や外務大臣の趣味によつて旅券を遅らしたり、やらなかつたりすることはできないのです。法というものは普遍的なもので、一党一派の利害によつてこれをもてあそぶべきものではないのですから、今のような旅券法の取扱いをされておると、やがて法律違反として逮捕、監禁されるようなことになりはしないかと私は必配するわけですから、そのことを後ほど御答弁願いたい。  それからもう一つ、さつき外資導入のことを伺いましたが、外資に対する金利の払いがいつしか非常に大きなものになつております。従つて今後は一層慎重にしてもらいたい。今スレートのことが問題になつておりますが、最近はシンガーミシンのことが大問題になつております。御承知のようにシンガーミシンは私も五、六年前はまだ日本のミシンなんというものは安心できぬ。古でもシンガーミシンを買つた方がいいと思つておりましたが、二、三年前からミシン工場を見て参りまして、日本の家庭用ミシンの進歩のあとの著しいのには驚きました。今では年額八十億円の外貨をかせぐ日本の最大の輸出工業になつております。そして全世界からこれをほめられております。それがいまさらシンガーミシンの風下に立つようなことをするならば、日本のミシン工業はやはりアメリカのミシンよりも下だつた、今またあのシンガーミシンをあの乏しい国が輸入しているというような情勢にもなります。かたがたこれはむだなことでありますから、こういう問題については、はつきりした態度をとつていただきたい。私はこの問題が起つたの日本の家庭用ミシンが世界にひいでておるということ、シンガーミシンの技術提携はもうお断りしてもさしつかえない、少しも困らないということを各界の技術者の人たちが証言することと思いますから、国産愛用のチヤンスにむしろこれを業界がお使いになつたならば、禍を転じて福とし得るようにもなると思いますから、スレート問題のように政治問題などになさらずに、これを純経済政策としてお取上げになつて、国産愛用の契機にひとつ御括用願いたいと思います。先ほどのぜいたく品の輸入額や外貨の手持の状況などはまた後ほどついでのときに御報告のほどを願います。  なおこの問題について時間がありませんから、簡単に中共輸出の問題につきまして、ひとつ緊切な問題で、加藤君から二、三の質問がありますから、委員長においてそれだけお許しを願います。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねの問題、その他外貨の問題でございますが、このミシンの問題については私まだ十分検討するだけの余裕を持ちませんので、ひとつ特に慎重に研究さしていただきたいと思います。それから外資一般につきましては、先ほどおあげになりました利払いの数字がちよつと多いのではないかと思いますが、それはどちらでもよろしいのですが、この点は一般問題としても非常に頭を悩ましている問題であります。と申しますのは、一方企業合理化ということ、経済自立を積極的に促進したいということから申しますと、私は適当な外国の技術なりあるいは機械なりは大らかな気持で入れるべきだと思います。その方が日本経済自立を促進すると思います。しかしただそれはあくまでその機械なり技術なりが、ほんとうに尊敬すべきものであるという場合に限ることは論をまたないわけでございまして、そこの判定は、行政上の措置といたしましても非常にむずかしいところでありますが、今後とも慎重の上にも慎重を期して判断をすることにいたしたいと考えております。
  40. 針谷正之

    ○針谷説明員 お答えします。ただいま帆足さんから仰せになつた件は、もう大分長い間方々で論議された点であります。まず第一に、国の利益に反するということをもつて、共産圏へ行くのを禁止することはないかといいますと、これは共産圏に限らず、もし国の利益に反するようなものでありましたら、外務大臣がこれを判断して禁止するものと考えられます。それから第二の御質問の点の与党もしくは、野党の区別をするということは、少くとも事務当局ではやつておりません。それでただいまどういう方針にあるかというと、依然として従来通り——一応原則といたしましては、国の利益に反するかどうかということで判断して、多くの場合、共産圏へ行く者はそれにひつかかるという実際的の結果が出ておるわけでありまして、私たち事務当局といたしましては、根本的に国の方針がもし今のように、中共もしくはソ連ともつと接近をするのだという外交の転換などがございますれば、それに従つて、旅券の発給もおのずからそれに応ずるようにいたして行くのは当然のことだと思います。
  41. 帆足計

    ○帆足委員 一度行つたことのある者は旅券を出さないという点はどうですか。
  42. 針谷正之

    ○針谷説明員 いやそういうことはありません。そのそれぞれの目的によつて判断して参ります。
  43. 帆足計

    ○帆足委員 政府の意向に反して、一度行先をかえたら、懲罰の意味で今後は、私どもがインドでもビルマにでも今度行くときには旅券を出さぬ、こういうことをなす御意向があるか、御意向があれば、何の法律に基いてそういうことをなさるのか、またそういう御意向がないかそれを伺いたい。
  44. 針谷正之

    ○針谷説明員 そういうことはございません。今までも中共へ入つた方などでも、二度目に出ておる方はかなりございます。要するにその都度の旅行がいいかどうかということで、それが国の利益に反するという場合には、お断りしているだけでありまして、今帆足さんがおつしやつたような原則はございません。
  45. 帆足計

    ○帆足委員 渡航課長にあまり申し上げてもた気の毒ですし、いい方ですからあまり申しません。ただわれわれが政権を握つたときに、今度は、ワシントンに行くのは国益に反するといつて自由党の方をやらぬ、こういうことがあなたの論旨で言えばできることになるのだけれども、それはたいへん悪いことです。しかしこれ以上はいいお人柄のようですから申し上げませんが、今後なるべく事情の許す範囲で御注意願いたいと思います。
  46. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 質問に入る前にちよつと議事進行についてお尋ねしたいのですが、先ほどの理事会で一人一時間ずつきよう熱心にやる、それができない場合にはあさつてもう一度やる、こういうことで皆さん御納得の上でこの順序がきめられたわけですね。ところが話に聞きますと、どうも途中からそれがかわつた、こういうことのようでございます。そうなりますと、最初の人は一時間ずつやれたが、最後の人は竜頭蛇尾で、十分か五分しかできない。十分か五分しか与えられないから、そこでがんばつてやると、あいつはいつでも長い時間やるじやないかというふうに言われなければならないのですが、私がいつも長くやるわけではなくして、あまり謙譲の美徳を発揮し過ぎますので、私がいつもいつもしまいの方に追いやられて、そのとどのしわ寄せが、結局私が心臓が強いということになりそうでございます。従つて、この際もし万やむを得ない事情によつて時間を短縮しなければならないということがございますれば、恐れ入りますが、時間を短かくするという不利益を全般的に平等に与えていただきたい、こう思うわけなんですが、その点いかがでございましようか。
  47. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 先ほどの理事会では、一人一時間ずつということになつておりました。これは必ずしも大臣がいる、いないという問題ではなかつたわけです。一人一時間というきめなんです。ところで、大臣には本日三時まで出てもらうということはきまつておりましたが、どうしても大臣でなければならないという方もありましようから、それは明後日あたりにあらためて大臣に来てもらつたらどうか、こういうことだつたのです。ところが大臣に聞きますると、どうしても明後日は都合が悪い、こういう話で、しからば何とかきようの時間をもう少し、延ばせないかということで交渉しました結果が、きようの四時半ごろまではここにおろう、こういうことになりましたので、どうしても大臣でなければならぬという方は四時半までの間にやつていただきたい、かように考えます。
  48. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 議事進行で大臣お尋ねしますが、実はきようから向う二日間にわたつて委員会が設けられる。特に中小企業倒産のきびしい折から、各委員が閉会中であるにもかかわりませず、全国をまわつて調査をして、それを審議の議題にしようということできようあす開かれるということは、大臣よく御存じのはずなのです。もう一つ、この前七月の終りでしたか、通産委員会が開かれました折にも、ぜひ大臣に来てもらいたいという希望が各委員から行われたわけであります。ところが何かの都合でできぬが、この次の折にはぜひというお話つた。きようだけはいいけれども、あしたあさつては都合が悪いということになりますと、一月前からの約束ごと——あるいは休み中に地方を各委員がまわられてそれを持ち寄つて熱心に討議をして、今日のこの経済危機の打開をはかろうじやないかというこの熱意、これは重要な問題だと思いまするが、それ以上に大臣としては重要度の高いことがほかにあると仰せられるのでございますか。もしありとすればそれを承らせていただきたい。私どもとしては、先ほど一時間と区切られたときも、やむなく一時間でしんぼうしたわけです。ほんとうは一時間も二時間も一人でやりたいわけです。そうでないと、いつも話が空理空論に終つてしまつてほんとうにかゆいところに手の届くような話合いができずに終つて、十九国会で行われた決議でさえも実行に移されずに延び延びになつてしまう、こういうことでございまするから、ぜひひとつ、大臣の時間の許す限り出ていただきたいと思いまするが、今申し上げましたように、国家的に見てそれ以上重要なことがございますか。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は今お話がございました通りできるだけこちらに伺いまして、御質疑にお答えいたしたいと思つております。ちよつと速記をとめていただきたい。
  50. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  51. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 私は石油の問題と繊維の問題に対しましてお伺いいたします。川上局長おいでのようですから、まず先にお聞きいたします。  川上局長が七月十二日に自由党の政調会へみずから出張をして、重油の抑制というものは単なる行政処置ではむずかしいから、どうしてもこれを国際稀少物資云々のこの法律を活用してもらいたい、そういうようなことを川上局長が申し入れた。その結果はどうなつているか。従つて自由党では結局暖厨房用というか、これらの重油の特別規正ということも考えているとか、あるいは税制改革という名前にかえて、これら重油、石油全般にもつと税金をかけようじやないか、こういうようなことを考えておつたと称するが、はたしてその当時自由党はそういうことを明言したかどうか。また政府としてそういう考え方を持つているかいなやということをまず川上局長からお伺いいたします。
  52. 川上為治

    川上説明員 ただいま長谷川先生からお話がありましたように、重油の規正の問題につきまして自由党の政調会に参りまして御相談を申し上げましたことは事実でございます。ただこれは全般的な、いわゆる法的な統制というのではなくて、暖厨房につきましては先ほど話がありました法律に基いて法的な統制をした方がよくはないかということを申し上げたわけでございまして、全般的に法的な統制をするというような相談に参つたことはないわけであります。その際いろいろな御意見がありまして、結局もう一ぺん相談しようじやないかということに相なつております。私どもの方の考えとしましては、この通産委員会におきましても、前の国会におきまして決議をされましたいわゆる暖厨房につきましては、要綱統制または法的な統制ということになつておりますがその線に沿いましてやはりやらなければならぬというふうに考えておるのですが、暖厨房の統制につきましては、私どもといたしましては要綱統制ではなかなかむずかしいのではないかというふうに考えておりますので、やはり法的な規制をやるべきじやないかというふうに現在のところは考えておるわけでございます。
  53. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 重油の規正、こういう面が中小企業というものの生産を非常に圧迫をして来ている。こういう点について大臣はお気づきであろうと思うのですが、幸いにして六月ないし七月という月は前の手持ちが幾分かあつた。たとえばそういうような行政強化をされて行くから幾らかずつ買いだめをしておきたいというような考え方があつたと思う。そういう面から考えて、むろんあなた方が考えたその数字によつてどうやらまかなうことができたのではないかと思いますが、八月に入つて以来というものは、その手持ちも切れて、そうして今後どういうふうな処置をとるであろうかというふうな恐怖的な心理に持つて行かれ、そのために産業をどういうふうに今後やつてつたらいいかということでたくさんの人たちが相談に来られます。こういう点から考えて、政府考え方、たとえば八月はすでに終るから九月以降というものに対して政府はどういうような考え方を持つているのか。依然として大企業中心とした重油の配給を行う考え方なのか、それとも中小企業をもう一歩進ませてその育成に当つてやろうという考え方を持つているのか、どういう考えであるか、これをはつきりと示してもらわなければならないと思うのでありまして、これは不肖長谷川が大臣にお聞きするのではなくして、全中小企業全般がこれをあなたに問いたいのでございますから、明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この重油の問題につきましては、国会開会中におきまして、当通産委員会におかれましての特に小委員会を設定せられまして非常に御熱心に御論議を願い、またその結論が当委員会におきましても御採択になりました。この結論をわれわれといたしましては全面に取上げて行政的に実行に移すということをはつきり私どもの態度として申し上げたのでありまして、ただいまでも私のその考え方は全然かわつておりません。すなわち形式的には当委員会において御決議になりましたものを、その線に沿うて実行いたして参りたいということでございます。それから内容的に申しますれば、重油の消費の規正と申しますか、できるだけこれはやつて参りたい、こういう基本的な気持にかわりはございません。しかしながらその次に、お言葉を返すようでありますが、これは見方にもよりましようが、大企業に偏重して重油の割当をやつて中小企業は顧みないというような気持で、過去においても行政指導はやらなかつたつもりでございますが、これからの問題につきましては、いろいろ時期がたつにつれまして需要者側あるいは販売業者、輸入業者、その他の間にも相当の不安があるようでございますから、できるだけ実情の掌握に努めまして、なるべく中小企業への波及ということは、できるだけその程度を少くとどめるようなくふうをこらした上で具体的な措置を打出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  55. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 国会においておきめになつた通りだというお話でございます。しからば振り返つて石炭はそれだけの能率を上げているかいなや、この点はどうなるのですか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申し上げましたのは石油の方の関係について申し上げたのでありまして、石炭の方につきましては、採掘の数量その他につきまして当時私どもが予想した、あるいは御審議をいただいておりました当時より多少情勢がかわつて、その通りに行つていないことは事実でございますが、しかし考え方なり具体的な措置なりについては、おきめになりました方針そのままを今もつて実行に努めておるつもりでございます。
  57. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 それは大臣おかしいじやないか。一方の石油は手つ取り早くやれるから行つて行くんだ、一方石炭はなかなかむずかしいからきめた通りにはやれない。片一方はきめたからきめた通りにやつているんだ、それは大臣の手前かつてというので、そういうことではなかなか行政というものはうまく行かないんじやないか。一方だけは手つ取り早くやれるからやつて行くという、そういう手はおそらくないだろうと思う。そういうような点も考慮しなければならないし、石炭においてもその通り、価格の点においてもわれわれの折衝したときの価格がはたして維持されているか。より以上安くなつていやしないかという点にも大いに疑問を持つじやありませんか。あの場合は、要するに言葉に書いてある通り、総合という名前のもとに立ててあるのであつて、一方がそういうように変則的なものになつてつた場合には一方はゆるめてやる、一方が変則で片一方はそのまま押えて行くというところに矛盾が生じて来るんじやないか、こういうふうに考えます。いずれにいたしましても石油の問題は非常に大きな問題だと思つているわけですが、現在中小企業と称する方々から大臣のテーブルの上にどのくらいの陳情書があるか、私は想像にかたくないと思うのであります。そういうふうにたくさん来ているので、そういう人たちに一つの安定感というか、気持の上においてもあなた方にあれだけのものを節約してもらえれば、しいてこれだけあなた方を抑制はしないのだというくらいのことは、新聞にきめられもしないことをかつてに、やたらに出しているのだから、そのくらいのことは新聞につけ加えてもむだではないのじやないか。いたずらに人心をそういうところに導いて行くことはいけないのじやないか。こういうふうに考えるから私は申し上げているのであつて、これは大臣の責任において、いずれにしてもお前たちはそう心配しなくても、責任は政府がある程度持つのだ。しかしそれには限度があるのだから、少しくらい犠牲を払つても、なるべくむだにしないように使つてもらいたいというくらいのことは、やはりはつきりと現わしておくべきであつて、私はそれこそ親切みのある行政ではないかというふうに考えます。  もう一つ求償貿易の問題でありますが、インド向けのつまり鉄鋼だとかでいろいろ問題がたくさん起こつているようでございます。こういう問題に対して大臣はどのようにお考えになつているか。大臣のお考え方をまず伺いたいのであります。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねの前段は、私もごもつともだと思うのでございまして、先ほどの言い方が足りなかつたかもしれませんが、片方はむずかしいからやらない、片方は簡単だからやるというのではないので、私もやはりあのきめ方は総合的に運営をして行かなければならないので、場合によつたならば片方がうまく行かなければ、片方はもつときゆうくつにやらなければならぬということも出て来るくらいの問題かと思うのでありますが、それはしかしそうは行かないので、ただいまお話がございましたような、これは政府の非常に大きな責任の問題でございますから、できるだけ御心配をかけないように善処して参りたいということで、ただいま各工場別だけではなくして、用途別等にまでわたりまして、石炭と重油の需要先を検討して、具体的に措置をやらなければならないというふうに考えて、いろいろ頭を悩ましておるような状況であります。  それから求償貿易の問題でございますが、実は求償貿易という点からあるいは離れるかもしれませんが、求償貿易だとかバーター取引だとかリンク制度だとか申しましても、いろいろの種類がございますが、私は幾らかでも価格調整的な意味の入つたリンク的、あるいはバーター的なものは、相当今後において考慮しなければならぬのではなかろうかと思う。価格調整的な意味を含まない正常な姿に返すのがこれからの本筋の貿易の行き方ではなかろうか、こう考えておる次第でございますが、あるいはただいまの御質問を私取違えたかもしれませんが、そういうふうに考えております。
  59. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 たとえばイランの問題等を考えましても、繊維なら繊維というものがほしいから、繊維とバーターしてくれないか、これは私は大いに歓迎すべきものだと思います。従つて今度のインド向けのような問題というものは、一つ鉄鋼業界を犠牲にするということ——私は犠牲にするということがいけないと言うのではない、すなわちそれがあなた方のとらんとする国策であるならば、私は犠牲にするということがいけないと言うのではないのです。しかしそういうような犠牲的な営業をさせた上においては、これは一つのわく外に置くべきではないか。そうでなければつまり業界のチーム・ワークというものはうまくとれて行かぬのじやないか、こう考えるわけです。であるからつまりそういうことは大いに奨励すべきことであり、またそれは明年度新しくあなた方の政策を御決定になる場合には、どういうことを織り込んでもいいということになると思うのです。それを急にそういうようなかわつた政策を行つて行くということになると、そうでなくても吉田さんの内閣というものはあまり信頼がない上に、信頼がよけいなくなりはしないか、こういうふうに私は考えます。これは別に吉田さんの信頼がないとは思つていないので、この間も支部長会議ともなれば、御本人はえらく大したことを言つておられるわけで、これも私はりつぱなものだと思うが、いずれにしましてもそういう余談は別として、もう少しこれらを考えてみる必要があるのじやないか。私はこういうような特別処罰をとつて、国策として行うのであるとすれば、これはわく外に置くべきである、こういう考え方であります。ところが今行われんとしているものに対しては、これはわく内で処理して行くんだということになりますと、一方他の業者はそれだけ食い込まれて行くということになる。それだけ原油の高いものを買うということになるわけなんで、そういう点について何かお考え方をあらためて持つておりませんか、こういうことを大臣にお聞きするわけでございます。
  60. 川上為治

    川上説明員 石油を使いましての求償貿易について、これをわく外にするという問題につきましては、わく外にしますと、結局重油について申し上げますと五百三十七万キロリツターをオーバーするということになる。また原油につきましてもあるいはその他のものにつきましても現在一応きめられております年間の計画よりもオーバ一して組まれるということになりますと、重油と石炭との調整とか、あるいは外貨の問題とかいろいろな問題からそれはどうかと思いますので、これはやはりわく内として、われわれの方としましては扱いたいというふうに考えておりますが、わく内にしましてもそのわく内において一定のわくを設けてやつたらいいじやないかというふうに現在考えましていろいろ検討をいたしております。  なお石油につきまして求償貿易の対象にすべきかどうかという問題につきましても、これはいろいろ議論がありましてわれわれのほうでも現在検討中でございます。
  61. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 この一件のほかに五、六件新たにそういうことを御許可なさつておるようなお話がありますが、これらは新規に割当をしようというお考えであろうと思うが、これらもそのわくの中に統一する考えですか。わかりにくければ、たとえば日鉱、三井物産、伊藤忠、三菱商事、こういうところに新たにそういうことをお許しになつて奨励をなさつておるというお話ですが、こういうのはどういうようなお考えですか。
  62. 川上為治

    川上説明員 別に奨励はいたしておりませんけれども、そういう会社の方からそれぞれ申入れはございますが、私どもの方としましては先ほども申し上げましたように、やはり石炭との調整の問題とか、あるいは外貨の問題とかいろいろな問題がありますので、全体のことしのわく、すなわち計画の範囲内において求償貿易は取扱いたいというふうに考えております。
  63. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 こういうことをやつて行くと、局長のお考えではどうか知らないけれども、今のようなたくさんの何をやつて行くと業界というものは混乱しはしないか、業界自体というものが血で血を洗うような闘争というか、つまり営業の上の闘争が行われ過ぎはしないかというような考え方もいたしますが、そういう点について局長は御自信があるかどうか、そういうようなことをひとつ伺つてみたいと思うのでございます。従つて先ほども大臣お話になつたように世界銀行の調査団というような問題、またガツト加入だとかいうような問題が目の前に現われて来ているわけですが、こういうことをやつてもそういう外交問題というものには何らかわりがあるかないか、影響がないかどうかということを私は一応心配するわけでございますが、そういう問題に対して大臣は御自信があるかいなかをお伺いしたいのであります。つまりこういうな考え方を今後なお継続する考え考えでないか、その点を承りたいと思います。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもちよつと申しましたが、これは率直に申しましてやり方いかんによつては問題になるものがあろうかと思いますので、そういう問題を起さないように事前に十分納得のできるような条件で双方で話合いを結ぶということが私は最も着実な行き方であろうと考えます。
  65. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 どうもそのくらいのことでは納得できない。大臣はどうお考えになつているか知らないけれども、石油の問題はそんな簡単な問題ではないと思う。ですからこういうようにむやみに変更されては業者の方も困るということを言つております。許可の基準というのは何かこういうふうなものという基準をつくつているのか、申請すればどなたにでも許可をするという考え方を持つているのか。金額はどんなに大きくても小さくてもかまわずに許可をするのか。これは局長答弁しなさい。
  66. 川上為治

    川上説明員 石油を使つての求償貿易につきましては、先ほど長谷川先生からもお話がありましたように、大体石油の精製業者あるいは輸入業者には外国資本の入つているものもありますし、また外国の石油会社とのつながりがそれぞれ固定されているというような関係もありますので、石油について求償貿易を広くやるということは相当問題ではないかという点につきましては、長谷川先生のおつしやる通りども考えているわけでございまして、なるべく求償貿易の対象としましては、狭く、数量も金額も、どうしてもやらなければならぬという場合であればなるべく少くしてやりたいという考えを持つているわけであります。ただしかしこの問題につきましてはいろいろ全般的な問題がありますので、現在この石油問題につきましてもこれと関連していろいろ検討いたしております。しかしどうしてもやらなければならぬというような場合、たとえばルーマニアとの貿易をやるとかあるいはイランとの貿易をやるとか、そういう特別な地域、あるいはきわめて特別などうしてもやらなければならぬ場合には、私はやむを得ないと考えまして、そういう場合に許可するのは、きわめて限定された、全般的にこれが及ばないような趣旨でやりたいと考えております。
  67. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 たとえば二〇%のメリツトの問題を石油外貨のわく外にすべきだと私は主張している。ところがそれはわく外にすべきでないというのが皆さんのお考え方であります。そうなつて来ると、石油外貨が一定で、全部がおのおの求償貿易をやつたということになりますと、これは元の木阿弥ということになるのですが、こうなつた場合はどういうふうにお考えになるか。大臣考え方、つまり物々交換をするんだというような考え方ではないのでございまして、石油業者一切にその損害を与えて、鉄鋼業者は生きて行こうという考え方——これは憲法にも触れやしないかという大きな問題があると思うのです。しかしながらこういうことが国策で行われて行くというのならやむを得ないことですが、行うのなら行うような方法をもう少し考えてやつて行かなければ、協力せよといつても現在の人たちはなかなか協力しない。協力しなければ新しいものを設けてやらせるんだということではいたずらに混乱を招く。いたずらに混乱を招くと、結論として響いて来るのは日本の石油に対する信頼だと思うのです。そういう点を心配するわけですが、そういう点に対する心配はないかどうかをまず伺つておかなければならぬと思うのでございます。そこでサウヂ・アラビアという国で、アラビア原油を全部——王様みずからがこの協定に乗り出して、外国のタンカーは使つていけない。全部その国でチヤーターして送り出すんだ、こういうことを新聞が発表しております。そうなりますと、日本で計算をしますと、原油の運賃一キロにつき大体二ドル相違があるということになり、大体七千万ドルの相違が生じて来るわけでございます。そういう点について大臣は何か特別なお考えがあるかどうか。こういう問題を事前に何とか御交渉をなさつているかどうか。また聞くところによると、アメリカにおいても英国においてもすでにサウヂ・アラビアに行つて交渉済みだというような話も聞いているわけですが、とにかく国をあげて騒ぎをやるほどの石油の問題ですから、そういう点は手を打つてあるだろうと思う。その結果を伺いたいのであります。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はその点についてはまだ確たる手を打つに至つておりませんし、ただいまお話になりました情報等についてもまだ確認はいたしておりません。
  69. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 いたしておりませんのではなくして、ひとつ大臣はこういう点について外務省あたりと協力をして何とか考えてもらわなければならないのですが、特にこの点はお願いを申し上げます。
  70. 川上為治

    川上説明員 私らの方としましては、日本のタンカーを使うことがどうしても必要だと考えておりまして、石油業界に対しても極力日本船を使うようにということを慫慂しておりまして、石油業界の中でも極力日本船を使いたいということでやつているところも相当あるのでございます。ただ今おつしやいましたアラビアの原油について何か外船を全部使うようにというニユースは、実は私の方も全然聞いておりませんし、またその問題についていろいろ話合いをしたこともないのですが、これは十分調べた上で極力日本船を使うようにということで進めて行きたいと考えます。
  71. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 長くいろいろの紛擾をしていたイランの石油問題がいよいよ解決したことが新聞で報道されておりますが、これが日本のわれわれに対する影響はどういうことになるか、大臣の知つている範囲内で話を承りたい。
  72. 川上為治

    川上説明員 これはこの委員会においてもわれわれしばしば申し上げたのですが、外交問題があつて今までうまく行かなかつた。その問題が解決されましてイランの油が入つて来ることは、まことにけつこうなことではないかと考えております。ただイランの油が入ります場合に、値段がほかの国の油と同じだということになりますと、ほかの油とまつたく同じだということになりますので、やはりイランから入れますときは、ある程度値段がほかの地域よりも安いということでなければいけないと思うのですが、もし値段がある程度安いということになれば、国内市場の価格に対しても非常にいい影響があるのではないかと考えまして、もしそうであれば大いに歓迎したいと考えます。
  73. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 ここが大臣が先ほどお答えになつた問題なんですが、イランから一二・五%自由のものが与えられている。これを日本に出す場合には全部バーター制でよろしいと言つて来ているようでございますが、もしバーター制でよろしいということであつたならば、大臣は進んでこれを行わしめる考え方があるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点について全部バーター制でよろしいという話はまだ具体的に出ておりませんが、これは国際的な一つの焦点になつた問題でありますから、それだけにまた逆にバーターでよろしいということであれば、喜んでこの話に応ずべきであるということで寄り寄り心構えをいたしております。
  75. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 もう一つ伺いますが、シエルと三菱化成が日本で石油化学をやるんだという一つ計画があるそうでございまして、すでに申請書も提出になつていると思うのですが、四日市の三菱化成の工場内においてやる、資本金十億円でやるんだというお話でございました。今から二月くらい前新聞で報道しておりますが、この点について大臣はどういう考え方を持つておるか、またこれに対して局長としてはどういう考え方を持つておるか。もしこれをお許しになるということになるならば、日本の石油化学の将来の発達に大いにがんになるだろうと私は思う。何も中間体のものを持つて来て日本でつくらなくても、日本は原油をこれだけ持つて来ておるのだ、その原油廃液から大いにその化学まで行くべきだという私は長い間の考え方を持つているわけでございますが、政府はどういう考え方を持つておるか、これを伺いたいのであります。これはひとつ御丁寧にやつていただきたい。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかいことは鉱山局長から御説明いたします。実は御指摘通り二月くらい前だつたかと思いますが、そういう話を内意として通産省に受付けておりますが、まだ正式の申請書としては受理しておりません。それからこの問題についてどういう態度を政府としてとるべきかということにつきましては、ただいまのお話もございましたような意見も一方にございますし、また積極的にこれをやるべきであるという意見もあるわけでありまして、これは技術的その他の諸般の条件を十分勘考いたしました上で結論を出したいと思つておりますが、ただいままだ結論は出すにいたつておらないのでございまして、なお今後慎重に検討をいたしたいと思つております。
  77. 川上為治

    川上説明員 石油化学の問題は、これは実は軽工業局の所管でありまして、私から申し上げるのはどうかと思いますので差控えたいと思うのですが、石油化学と石油の精製設備との関係におきましては、私どもの方としましては、現在国内の精製設備は相当多くなつておりますし、この際精製設備を増強するということは、特別な事情がない限りちよつと考えものであるというふうに考えておりますので、やはりわれわれの方としましては精製設備を増強しないで、そして現在の設備において石油化学を何かにやれたらというような考え方で、根本的にはいろいろ検討をいたしております。
  78. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 これは慎重にも慎重を私は期さなければならない問題であると思うのでございまして、現在の日本で石油化学をやりたいということで、あなた方の方面に申請をなさつておる会社が相当数あると思う。こういうようなものがあるときに、何もこのたとえばシエルにしても三菱化成にいたしましても、これが原油そのものからの化学をやるのだというなら私は大いに奨励しなければならないと思う。しかし中間体を持つて来てやるというところに——日本の技術がそれまでのことはないのじやないかというような考え方もあるわけでございますから、この点はあとで軽工業局長等を呼んでまたゆつくり質問をいたしたいと思うのでございまして、石油に対しての質問は以上をもつて終ります。  繊維についてお伺いいたします。繊維業界というものが他産業に比較して非常な不況に陥つておるということはよく局長初め大臣はわかつておると思うのでございますが、これらに対して繊維業界に何らか政府として考えたことがあるかどうか。またどのような救済の手を伸ばしたことがあるかどうか。こういう点をひとつ御説明願います。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 詳細につきましてはあとで申し上げることにいたしまして、ごく概略のところを申し上げたいと思いますが、先ほども申したと思いますが、この一月以来のいろいろの物価の足取りを見ましても、繊維関係につきましては一割五分以上の下落を示しておる。従つてまたすでに国際価格に近づいたというよりは、むしろ下まわつて来たというような点におきまして、最近の繊維の問題というものはある意味で特殊の様相を呈しておるのであると思つております。しかしながらごく最近の状態におきましては、相場は御承知のようにやや回復の状態を示しております。従つてコスト割れのものはかなり少くなつたように見受けております。  そこで今後の問題でございますが、大体こういうふうな考え方で対処して参りたいと思います。すなわち価格等については今申しましたような状況でございますから、大体この程度で安定をする必要がある。また輸出価格には行き過ぎのないように輸出態勢の整備をはかることが必要である。それから繊維の全体としての自給度の向上策をさらに促進する必要がある。また中小企業の自主的な調整というものを補強する必要がある。これらに関連いたしまして中小企業安定法の運営の問題等につきましても改善といいますか、ある程度措置をしなければならないのじやなかろうか、大体こんなふうに考えるのでありますが、なお各繊維別に対しての考え方等につきましては繊維局長からお話し申し上げたいと思います。
  80. 永山時雄

    ○永山説明員 ただいま大臣から繊維の問題につきまして概括的な御説明がありましたが、今大臣お話のような状況で、その線に従つていろいろ方策を練つておるのでございますが、御承知のように日本繊維、ことに一番その中心である綿あるいは化繊、そういうようなものについて見ますと、何といいましても輸出の問題が非常に大きなウエートを占めております。現在におきましては国内の価格の不安定の問題が手伝いまして、輸出相当海外に割安に売られておるという状況でございます。しかも輸出業者の競争というものが相当過度にわたつておるというような現象も往々にして見られますので、従つてこれらの点につきまして国の利益という面から行きましても、もう少し輸出価格を適正なところで輸出をさせるというような方策が必要だと考えますので、その具体的な方策を目下研究中でございます。  それから国内価格の安定の問題はただいま大臣からもお話がございましたように、現在一般的にはだんだんと回復をして来ているというような状況でございまして、今後の原料輸入の問題、それからデフレ政策の今後の進行というような問題をにらみ合せいたしまして、われわれの方では十分注意をして事態を見守つて行きたい。そうして再び不安定の事態が出て参りますようなおそれがあります場合には、それに対する必要な方策をそのときの具体的な事情に応じてとつて参りたい、かように存じております。  なお特に当面の問題といたしましては、絹、人絹、あるいは綿、スフ業者の企業関係につきまして、御承知中小企業安定法の二十九条の発動問題があるのでございます。これは機屋の現在の能力なり産業のあり方というものが、当面のデフレ政策の余波を受けまして、苦境に立つているというばかりでなく、大体ノーマルな状態において考えてみましても、もつとこの産業合理化する恒久策の必要を感じました。従つて安定法二十九条の問題は絹、人絹、あるいは綿、スフ、これらのものに対しては適用をする方針のもとにただいま検討を進めております。これによつて相当な効果が出て来ることをわれわれは期待いたしております。以上でございます。
  81. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 合理化の問題でございますが、合理化をどういうふうにしなければならないか。また終戦後最高の輸出高を示した繊維製品は、どこに原因があつて最高の輸出ができたか、申し上げなくも、原糸が下つたから最高の輸出価格まで持つて行くことができた、これは明らかな事実でございます。ところがまた大分原糸が上つて来ておるようでございまして、またそうなつて来ると幾分か不安を来しているようでございます。そこでどうしても合理化をやらなければならない。合理化をやるのにはどうやるか、現在の織機を制限する意思があるかないかということにもなつて行くし、輸出の原糸の価格を安定する行政を行うことができるかできないかという問題が先決問題でなければならない。従つて最も合理化で必要とするところの高能率の機械と入れかえさせることである。こういう場合に制限をした機械はスクラツプとして政府が買上げて、新しく高能率の機械を入れる場合に、これに金融を与えるということに持つて行くならば、合理化の線が出ると思うのでありますが、二十九条によつて合理化ができるだろうなどという甘い考えを持つたらたいへん大きな間違いじやないかと私は思うのでございますが、そういう点はどういうふうになさつているか。機械の制限をする意思があるかないか、原糸の安定策を考えているかいないか。並行してそれをやれるかやれないかというようなことをわれわれは希望するのでございますが、その点はいかがでございましようか。
  82. 永山時雄

    ○永山説明員 お話のように原糸の価格の安定ということが、機や糸の業態についきましても非常に必要であるということは全然われわれも同感でございます。従つて先ほど大臣からお話申し上げましたように、繊維の関係、特に原糸の関係等につきましても、現在は値段を下げるというよりも、むしろ安定ということが必要であります。従つてわれわれとしては、やや小康状態を得て参りました現在の市況をしばらく静観をいたしまして、これに対し事態の推移によつて必要な安定策を講じたいということで、ただいまその方策をせつかく研究中でございますので、しばらく時期をいただきたい、かように思います。  それから合理化の問題は、お話のような設備の制限をし、あるいは古い機械に対して能率的な機械を入れかえることが最も理想的だと思います。従つてその趣旨におきまして、二十九条の適用をいたしまして、新しくむやみに競争者がふえるという不安定な原因を一応押えまして、しこうしてさらにその現在の企業の内部におきまして、合理化方向に進むというものに対しては、積極的にそのための資金の援助その他の必要な方策も考えまして、二十九条適用のわくの中で、さらに合理化を進めるように、われわれとしても誘導策を考慮して行きたい、かように考えております。
  83. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 原糸の値段を下げればそれで輸出が大きくなつて行くのだ、また一般の繊維業者が楽になるのだという問題ではないのであつて、年間を通じて安定した取引をさせるのだ、こういうことが一番大事なのであつて、要は国際価格がこの水準をオーバ一するようなことがあつてはならないのであつて、いずれにしても新繊維局長の手腕にまつよりほかないのでございますが、大いに御努力していただきたいということを申し添えておきます。  大臣もお忙しいようだから、最後にもう一つお聞きして私はやめますが、それは金融の問題です、今たとえば中金があり、信用組合があり、公庫があり、たくさんあるのですが、これを一本化して中小企業専門のものをつくつて行かなければ、結局何ぼやつてみても容易でない問題だと思うのです。そういうようなことも大臣はお考えになつておると思うのですが、そういう点を伺つてみたいと思うし、それから手形法ですが、今の手形というやつは借用証をとつたのと同じことで何もならぬのです。それで中小企業が一番参つておるので、この手形法を何とかかえなければならぬと思うのですが、こういう点について大臣のお考えがあるならば明らかにしてもらつて、われわれもその方向に向つて進んで行きたいと考えておりますので、お願いいたします。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段の中小企業金融の機構の簡素化という問題は、これはそういう考え方もあるわけでございますが、私はむしろこれは相当いわゆるヴアライエテイーがある方がよいのではなかろうかと考えております。すなわち商工中金は組合中心にして行く行き方であるし、中小企業金融公庫は、特に最近のようなデフレ下におきましては、私は長期の運転資金を積極的に貸し出すという面に重点を置くべきであると考えますが、中小企業金融公庫は直接貸しをいたしませんで、代理貸しをやつておる。この代理貸しが問題の点でございますので、直接貸しまでは至らないけれども、ほとんどそれと同様の効果を期待し得るような運営上の改善を最近に試みてみたいと考えておるわけでございます。しかもこれは中小企業金融公庫の方は一件の平均貸出し金額にいたしましても、相当多額なものでございますが、それに反して国民金融公庫は非常に庶民的なものであつて、一件の貸出し金額には五万とか十万というものが非常に多い、それだけ手数も多いから、直接貸出しで全国各県庁所在地には少くとも一箇所の支店を置くというようなやり方でやつておるわけでございます。しかしこれ以上にこういうような特殊金融機関がふえることは、もちろんこれはその度を過ぎるものだと思いますし、また別に民間の金融機関の側におきましても、信用金庫並びに信用協同組合法等におきましては相当改善の余地もあろうかと思われますが、それらの点については、ただいまお述べになりましたような御趣旨のものに今後考えて参りたいと思います。  それから手形の点についてはまことにごもつともでございまするので、特に最近のような状態下におきましてあらためて考えさせられる問題が多いようでございます。これは商法上の問題等もいろいろあるようでありますが、寄り寄り研究をいたしたいと思つております。
  85. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は伊藤卯四郎君。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほどから同僚委員から輸出問題については相当広汎にわたつて質問をいたしておりましたから、私はもうその点は繰返すまいと思いますが、ただ大臣の答弁をされておられます中に理解できない点がありますから、この点をひとつお尋ねして明らかにしていただきたいと思います。それは大臣の答弁の中に、輸出貿易は伸びて来たということを相当自信を持つて答弁されていたようでありますが、その内容にわたつて大事な点が説明されてありません。というのは、その転出しておることが外国から原料、材料というものを輸入せないで国内の原料、材料でつくつて、それが相当黒字の上に転出をされてあるならこれはまことに喜ぶべきである。ところが本年は外貨割当を制約することにいろいろ苦心をしておられるようであるが、過年度の転入については、御承知のように相当大きく入れておるのでございます。これをもつて本年度の転出商品としてつくられてあることは言うまでもないのであります。そこで、昨年入れた原料、材料等の価格とそれを生産した価格とにおいて、いわゆるその上に立つ転出というものが相当黒字になつて転出されてあるかどうか、この点が大事な点でございます。この点を大臣の答弁の中で明らかにおつしやつておりません。  それから輸出相当投売りをやつておるのが明らかである。たとえば鉄鋼の一例をとつてみても、前期より今期は一万二、三千円くらい、とにかく一万円以上安く売つております。その安く売つておるということをもつて、大体国際市場鉄鋼競争というものもやや諸外国との間に同じような価格になつて来つつあるようであります。ところがその日本鉄鋼の一トン当り一万円以上前期より安く売つておるというのは、相当赤字になつております。そこでその赤字をもつてしてなお競争するということは、これは経営体自身がとうていこれにたえて行けません。同時にまたその出血を国内の消費者に相当転嫁しております。だからそのようにして出血輸出というものは、国民の負担の上から見ても、経営者の負担の上から見ても、長続きするものではありません。そういう投売り競争をもつてしておるということは、やがてこれは破産せざるを得ないということになるのであります。そういう点に対して、通産省の方では、鉄あるいは繊維等のおもなる輸出品において、上期より今期はどのくらい大体安くなつておるか。それが生産費との関係においてどれくらい赤字の輸出をしておつたか。これは大事な点と思うから、明らかにしていただきたい。  それから生産費が私どもの見るところでは下つておりません。鉄にしても石炭にしても、その他おもなる日本生産費を見ますと、生産費自体のコストは下つておりません。ところが先ほどから大臣の答弁を伺つておると、物価下つた下つたということを鬼の首でもとつたように答弁しておられるようでありますが、大臣がここで自信を持つていばつて答弁をされるというなら、それは生産費が下つて、その商品が安く国民に売られておるということで初めて政府の低物価政策は成功するものである。ところが生産費は下つておらぬし、生産品を倉庫の中に詰めて手持をかかえておるということではたえられないので、そこで金融操作の上から見、あるいは他の会社との競争関係から見、いろいろ複雑な困難な事情にあつて、背に腹はかえられぬとして投売りしていることは事実である。この生産費が下つておるということをおつしやるなら、鉄あるいは石炭その他のものがどのように下つておるかということをひとつお教えを願いたい。私の見るところでは下つておらぬ。そこで今安くなるというのは要するに投売りである。投売りというものは、輸出においても国内においても、長続きするものではない。やがてはたこが自分の足を食つてしまつて自滅するほかはないのであります。そういう点に対して、どのようにお考えになつておるのか、これらに対する方針等について、先にひとつお伺いしておきたい。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 個々の輸出価格等につきましてそのコストの分析をすることは、率直に申しまして非常にむずかしいことでございますが、それにしても大体生産費がどのくらいの見当であろうかという見当はもちろんつきますけれども、詳細にどこの会社の鉄鋼の何製品のコストがこうこうこうであるということを的確に申し上げることは、政府においても困難であると考えます。しかしながら御承知のように昨年度と現在と比べてみましても、各種の重要物資のメーカーの立場にある企業体から申しましても、利益率が相当下つたり、その他いろいろの現象を起しておりますが、全部が全部輸出が伸びたのは、役売りで出血であるということにはとうていならないのでありまして、いわんや鉄鋼輸出価格についてはこれを投げ売りをして国内の消費者に転嫁しておるというようなことはございません。御承知のように国内価格も低落をいたしておるわけであります。端的に申しますと、最近の私の見ておりますところでは、できるだけ国外に売る努力を各メーカーも商社もやる、そうして国内でむしろ購買力が少くなりまた現実に売れる量も少くなるので、何とかしてその販路を海外に求めようというような努力相当奏功して来ておるのではなかろうか、こういうふうに考えるのでありまして、数字的な資料等につきましては、別にとりそろえまして御説明いたしたいと思います。
  88. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それじやあとで御提出願うということであればここで別段それを追究いたしませんが、私が今お尋ねした問題は非常に大事な点じやないかと私は思うのであつて、これらの点については政府の方では絶えず寒暖計を見るように見て対策を立てらるべきじやないかと思うのです。そこできよう今ここで資料を提出できなければ無理を言いませんが、それはひとつできるだけ早く御提出を願いたい。  それから、その点について非常に疑問がありますけれども、もうこれは追究いたしませんが、問題は大体昭和二十七年は生産輸出国内消費とがちようど調和されてあつた年ではないかとわれわれは思つておるのです。ところがその後政府の自由放任主義のやり方の結果は設備の方が非常に過剰して来ておる。従つて生産も過剰して来ております。そういう点から輸出計画通り伸びない。それから国内消費においてもおのずから限度があります。こういう点から従つて先ほど申し上げた投げ売りという問題が起つて、いわゆる弱いところの中小企業は破産倒産という問題が起り、不渡り手形というのは今日の金融に影響するものじやない。不渡り手形の起るのは政府の責任だということに今日もう考えられるようになつてしまつておるのでございます。こういうようにつまり設備と生産とが過剰しておる、そういう点から今申し上げるような投げ売り問題が起つておるのですが、政府はそこでこの過剰設備と過剰生産品とを一体どのようにしてこれを調節をはかられるつもりであるか、あるいは調和をはかられるつもりであるか。この点も私非常に大事な点ではないかと思う。いわゆる自主独立の健全な産業経済態勢を確立する上については、まず私はこれが一番基礎でなければならぬと思う。政府はこの点はよく認めておられると思う。そこでこの苦しいのをどうするか。これはやはりアメリカの援助協力にあまりに私は期待され過ぎておりはせぬか、それでは日本の健全な産業経済の自主独立の態勢は私はできないと思うが、こういう点に対する政府の根本的な方針というか、通産大臣の根本的な一つ考え方を、通産大臣経済安定の最高責任者でもあるのでありますから、そういう点についてはつきりした方針をひとつ明示してもらいたい。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点につきましては、午前中にも申し上げましたように、これからの一つ考え方といたしましては、私はやはり輸出計画というものを基礎にして考えて参りたい。たとえば昭和三十二年度において十七億数千万ドル輸出が可能目標として設定されるといたしますと、それから翻つて国内のいろいろの基幹産業等について、大体の生産目標というものも当然そこから割出されて参るわけでございます。この点はたとえば石炭にしてもなかなかうまく参りませんけれども、やはり経済自立計画の根幹としての適正出炭規模というものを定めることが根幹として必要であることは、前前から私も念願としておることであります。それからたとえば繊維等につきましても、やはり同様の配意が必要であろうと思うのでありまして、先ほどもお話が出ましたが、当面の問題といたしましても、中小企業安定法の第二十九条の発動問題等の場合にいたしましても、大体のそういう目標というものを頭に置いてやつて行かなければならないのじやあるまいか、こういうように考える。それから積極的に設備の拡張というものもございましようが、同時に合理化した、近代化した操業ができるように、企業合理化をするという必要も大いに各方面にあると思います。それを組織的に分析いたしまして、計画的に、たとえば外資導入をいたします場合におきましても、もちろん自主的な計画のもとにおいて、必要の最小限度と思われる、しかもその条件等についてもできるだけ有利に考えて、これによつていやしくも逆に設備の過剰が生じたり、あるいはそれによつて不当なる条件が付与されたりするということは万々ないように配意しなければならないと思います。さような考え方から、現在の外資導入計画も立てておるわけでありますし、また今後来年度の予算なり、財政資金投融資計画等についても、もちろんそういう基本的な考えのもとに立案せられるものと考えておるわけであります。
  90. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣の今の説明されるような点では、われわれ理解、納得はもちろんできません。またあるいは自由党というか、政府の方針というか、そういうものが明らかにされなければ、大臣の答弁も従つて明らかにされないのだろう、こう思います。そこでこれは新聞やその地で伝えるところでありますが、政府の方でももう従来のような自由放任的な投げつぱなしではいかぬ。そこで消費というか、生産需給の調整というか、そういう意味における一つ計画というものを立ててやらなければならぬであろう。そういう点について、今度幹事長になられた池田氏を中心にして、そういう方針が出されるのだということもそれぞれ伝えられておるようであるが、従来の通り政府は民間の金融はどんなに非生産的なものに流れて行こうとも、これをなお投げつぱなしにされてやられるのであるか。この点についてはさきの国会で私はこの点を大臣に質問したときに、民間金融のそういう野放し的な点に対しては、何らかの調整を加えなければならぬと思つております。自分はそうやりたいと思つておりますというようなことを言われたようであるが、私はこれを大いに期待していたのであるが、それが今なお何ら具体的な成果をわれわれは聞くこともできません。それらの点についても、どのようにその後処置しようとしておられるのか。あるいは何もかも従来のように自由放任で、政府はこれに対して何らの調整も干渉も加えないというやり方であるか。今私がお尋ねしておるように、政府は何らかの自由党の政策に基いて、そういう生産需給の調整というか、あるいはまた金融に対するそういう一つの規制というか、何かそういうようなものを国家計画の上に立ててやろうとしておられるかどうか、この点をもう少し具体的におつしやつていただきたい。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず最初のお尋ねでありますが、これは申し上げるまでもないと思いますが、十九回国会中にもしばしば私の考えを申し上げた通りでありまして、およそ経済というものを考えます場合、あるいは具体的にこれを運営いたします場合に、ある見通し計画性を持つて実行いたしますことは申すまでもないことでございまして、あらためて計画的な経済の運営ということがここで初めて考えられなければならないというふうな考え方に立つものではございません。  それから金融の問題でございますが、御承知のように現在は資金調整法というようなものがございません。従つて統一的にいわゆる金融の質的な調整をするということは今やつておりません。しかしたとえば前国会終了後におきましても、転出関係の手形の融通その他のいわゆる転出金融の改善措置を講じたというがごときは、私は一つの質的な調整の問題であると思うのであります。それから今後におきましても、さような性資のものについては適時適切な手が考えられることと思います。  それからこの点も先ほど申したことかと思いますが、何を申しましても、私は資本の蓄積をここで急速にできるだけ獲得するような積極的な手が打たれてほしいものである。これはまだ私の個人的な見解ではございますが、どうかして政府全体の意見ともし、あるいはこれは法律を必要とする問題でもございますから、追つて政府考え方をいろいろととりまとめました場合には御審議も願いたいと思いますが、暫時、たとえば預金等に対しての税金等は減免をするというような相当積極的な手を講ずることによつて、まず金融機関に集中する資金源を豊富にいたしたい。それと照応いたしまして、場合によりましては質的な調整に一歩を進めるか、あるいは政府が具体的に運営の衡に責任を持つておりますたとえば特殊の金融機関等についての、特に資金源を豊富にするという措置を講ずることによつて同様の目的を達するか、その方法論はいろいろあると思いますが、その方面に対して前進した措置をとりたいと考えておるようなわけであります。
  92. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その問題についても非常に意見がありますけれども、これは議論になつてもどうかと思うから私はこれ以上つつ込んで質問しようとは思いませんが、先ほどお尋ねした民間金融の動きの問題であるが、依然として非生産的なものは御存じのようにとめどもなく拡大して行きつつある。それから、そういう状態であるから従つて民間の各大企業体においても、自己資金の何倍という厖大な融資を受ける。そこには相当遺憾の取引のあるようなこともときどき現われて来ておる。そういうようなことを野放しにしておいて、一体日本生産費を下げることがはたしてできるか。健全経営体の実力をはたして確立さすことができるか、私はそれはとうていできないと思う。やはり自己資金の何倍というものにあるいは厖大な株を募集して、それに対する配当の問題、あるいは他の会社との間の対立、陣容等の関係、そういう状態を見ると、それは言語道断という言葉に尽きる今日の状態であると言えると思うのです。これらを野放し的にしておいて、政府生産費を下げて物価を下げる、そして国際市場において打ち勝てる実力態勢をつくる、生産と消費の調和を確立する、こういうことはまつたくもう夢物語であると思う。だからそういう民間資本の動きについて、この前も私はお尋ねしたのであるが、大臣はこれらについてもつと生産大臣とし、あるいは経済長官として信念を持つて当られなければ、政府国民に訴えておるような健全な体制を確立することはとうていできないと信じておるが、一体民間の金融の動きという問題に対して、ただのらくらとして、きようはもう伊藤君の質問時間は一時間だから、それさえ過ぎたらいいというようなことだけでは私は済まされないと思う。私への答弁はそれで済まされたつて国民に対する刻下の重大なる危機を救うことはできないと思います。そういう点でいま一言、金融関係において非生産的なものに無限大にするか、あるいは会社が自己資金の何倍というものを水ぶくれさすか、もつと引締めてしまうか、その調整をどうするか、統制をどう加えるか、一番大事な点であると思うから、ひとつこの点はいま一回、あなたの信念に立つて御答弁を願いたい。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはもう私はこの一月以来一貫した考え方で進んでおるつもりでありまして、ひとり金融の問題だけではないのでありまして、たとえば資産の再評価の問題にいたしましても、まず企業が自己の資本を適正に合理的にこれを大きくするということが、企業形態の問題としてはまず一番大きな問題であると思います。それからその次に金融の問題にしても、お話のように野放しに不生産的なものにばかり貸出しが出ておるかどうかということについては、これは数字の上で具体的に御検討を願わなければならぬと思うのでありますが、少くとも十九国会から今日にかけての間におきましても、たとえば日本銀行の高率適用の度合いを引上げる、日本銀行からオーバー・ローンで借りさえすれば、また貸してそれによつて利益を受けるというようなことは、制度の上でまず抜本的にこれを是正するというようなことを初めといたしまして、いろいろの措置を具体的に講じて来ております。しかもなおかつ、これでは資金の源泉が十分でないというところからいろいろの弊害も出て来るのでありますから、それをさらに根本的に大きくすることにもこれからあらためて努力をしなければならないと思います。それからオーバー・ローンの解消策、オーバ一・ボローイングの解消策ということについても、前々から考えておりますことを漸次一つ一つ取り上げて、具体的な実を結ぶようにして参りたいと考えておるのであります。私は今御議論のようなことがあるからといつて、法律を一本つくつて、何会社には何を貸せ、何を貸すなと言われましても、それは生きものの経済を動かして参ります上にはかえつていかがと思う点もございますので、これは行政運営の妙味と制度の改善と適宜にない合せまして、時宜によつて善処して行くことが最も実際的であるというふうに考えておる次第であります。
  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 これもここであなたと議論しておつてもとめどもありませんからやめますが、大臣の答弁を伺つておると、民間の事業家なり関係の者の道義心にだけ訴えてやろうとしておられるようでありますが、自由競争の世の中において政府の方針を道義心に訴えて行われるということは、これまた夢物語の一つでございます。これは申し上げるまでもないが、もう少し政府は高度の見地に立つて、そうして日本産業経済の実力をどのようにして築かすか、国内消費をどの程度にして行くか、その上に立つて国際競争にどのようにして打勝てるようにして行くか、これが私は敗戦日本の再建の上に忘れてならない一番大事な点であると思うのであります。こういう点についてはひとつ十分お考えになつて、できるだけ早い機会に御方針を御明示願いたい。  今度は具体的な問題について少しお尋ねをいたしますが、さきの国会において、例の石炭の問題については、大臣も御存じのように、昭和二十九年度は国内石炭を四千八百万トン消費をする。重油、外国炭等はこれに見合う程度輸入するという決議になつておる。さらに大臣はその後いろいろ苦心されておつたことを私も伺つてつておるが、四千八百万トンは無理であると思うが、しかし四千六百万トンは必ず国内炭を使うことができるだろう、また自分はそうする決意だ、こういうことをそれとなしにおつしやつたことを私はしばしば聞いておるのであるが、それが具体的に一向なつて行かないから、一応どのように日本石炭が動きつつあるかという問題等について少し数字をここで申し上げておきます。重油は二十六年下期から鉱工業用として輸入が始まつたことは御存じの通り石炭の需要が重油に侵蝕された数量は、昭和二十六年度が百二十五万トン、二十七年度は三百五十万トン、二十八年度は六百九十三万トンに急増をいたしております。それから外国炭の輸入は、昭和二十六年度は二百五十万トン、二十七年度は三百五十万トン、二十八年度は四百五十万トンに、これも急増をいたしております。そこで外国炭をもつてまかなわなければならぬという、いわゆる強粘結炭の原料炭、これは大体日本で今二百万トンくらいあれば足りるということになつております。これ以外のいわゆる弱粘結炭、一般炭というものが大体において二百五十万トンくらい入つておりはしないか、ところが弱粘結炭、一般炭は大臣も御存じのように、日本の至るところに今や貯炭の山になつておる。しかるに外国からそういうように輸入されて国内炭を圧迫しておる。それから二十六年度以後の燃料、いわゆる総消費といいますか、国内炭、重油、外国炭等を合せますと、二十六年度は四千八百四十万トン、二十七年度は四千八百九十万トン、二十八年度は五千四百二十万トンに伸びて来ておる。ところが国内炭の方はどのくらい消費されてあるかというと、これとは生産は逆です。二十六年度は四千六百五十万トン、二十七年度は四千三百七十万トン、二十八年度は四千三百五十万トンに減少しておる。総合燃料としてはそのように漸次増加をして行くのに、国内石炭の方は今申し上げるようにだんだん減少しつつある。これがいわゆる重油と外国炭によつて侵蝕されておることは申し上げるまでもありません。さきの国会においてわれわれが決議をいたしましたのは、大臣も御存じのように国内の総合燃料対策の見地から、いわゆる石炭、電力等の燃料を主体として、そうして不足分を補う意味において日本に対してこれを見合う程度輸入するということが国会の議決の精神である。大臣もこれは百も御存じで、これに対して私は相当苦心をされたろうと思うが、その苦心の結果が具体的になりません。いな逆になりつつどんどん進んでおります。まず先にこれらの点について、どうして国会決議が尊重されないのか、それから大臣がわれわれに約束されたこと等の国会議決に対する大臣の政治的責任、そういう点をどうお考えになつておるか、あるいは尊重したいけれども、それに沿い得ない諸般の事情があるなら、それを具体的にひとつここにお述べを願いたい。責任をとらぬでもいい、そう尊重せぬでもいい、国会が過ぎたらそれで済んだというような非常に軽い意味においてお考えになるのか、また苦心をしておるけれどもやれないんだ、やれない苦心の事情はこれとこれがあるんだということであるならば、そういう点を大臣の政治的責任においてまず先にひとつ御答弁願いたい。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申しましたごとく、総合燃料対策につきましては、当委員会におきましても十九国会中非常に御熱心に御討議いただきまして御決議ができております。これは私ども考え方と一致しておりまするし、私どもとしてはこの決議の通りにできるだけ行政を推進して参りたいと考えて今日に至りましたことは御承知通りと思うのであります。ただ特に石炭の出炭の問題でございますが、これはその当時諸般の状況見通しまして、できるならばこの程度のものを出炭規模とすれば諸般のむずかしい問題が相当解決するということで考えましたが、すでに十九国会の会期中におきましても、大体二十九年度中の出炭の見込みは、そこまでは遺憾ながら行かない。経済自立計画の基幹計画といたしましては、私はやはり今でも四千八百万トンは、ぜひ適正の規模として、ほかの燃料対策の総合調整をこの点にひとつ基準を置いて今後ともやつて参りたいと考えておるのでございますが、御承知のように一々例をあげるまでもないと思いまするが、私どもとしても誠意を尽くしていろいろの努力をして参つておるのでありますが、遺憾ながら所期のような成績は上げておりませんので、この点は私もまつたく遺憾に考えておる点でございます。しかしながらこの上ともに恒久的あるいは当面の対策と両方あることは申すまでもございませんが、その両対策につきましてできるだけの誠意を尽したい、努力を重ねて参りたいと思つております。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも成果が現われぬと努力されたことを認めることは遺憾ながら、できないのであります。御存じのように、成果どころじやない、今おつしやつた当直の対策、恒久対策で、大臣がおれの苦心が現われたぞとおつしやることがあつたらひとつここでお伺いしたい。何もありません。のみならずむしろ逆に、おそらく大臣生産関係の係官から伺つておられるだろうと存じますが、今の調子であれば四千八百万トンどころじやない、四千万トン割るのじやなかろうかという危惧です。そういう方向に今減少しつつあることは、多分お聞きになつておると思う。そういう現状であることを深くお考えを願いたい。私は決して大臣をいじめるつもりでここで言つておるのじやありませんから、その点ひとつ深く対策をお考え願いたい。  それから重油等が、聞くところによると、今年度さらに四十万キロリツター入れてもらいたいということで、相当政府に要請されておるということを聞きますが、そういう具体的なことがありますか。もしそういうことがあるとするなら、それをどのように扱おうとしておられるか。それから国会の決議に基いて、昨年度の五百三十七万キロリツターをどの程度圧縮されたのか、この圧縮されたという点と、逆に四十万キロリツター入れろということの要請、これに対する扱い方、これらの点について大臣で何ならば川上局長でもよろしいが、ひとつはつきりお述べ願いたい。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 数字の詳細につきましては、川上君から申し上げますが、この点につきましては、重油の消費の希望が非常に多いことは事実でございます。現在月に四十万キロリツターというような具体的な数字を付しこの業界等の要望があるかどうかはつまびらかでございませんが、おそらくそういうこともあろうかと思います。それから実績におきましては、最近六月、七月等におきましては三十八、九万キロリツターのところで押えているつもりでございます。従つてこれを来年三月までの全年間を通じてみますれば、大体所期の通り五百三十七万キロリツターに近いところで終るのではなかろうかというふうに考えております。しかし午前中にも申し上げましたごとく、これは抽象的にぶつつけに申しますことは、過去の経験に徴しても非常に危険でございますので、事業別はもちろんでございますが、工場別、用途別にわけまして、この燃料の具体的な消費量、需要量、あるいはこれの削減可能量というようなことに、非常に細分いたしましてただいま数字を検討いたしておるような次第でございます。
  98. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 労働大臣が急がれるそうですから、川上局長はあとで御答弁願いたい。今の問題に関連してはなおあとで質問いたします。これは労働大臣と通産大臣に関連するわけでございますが、主として労働大臣に関係するものでお尋ねいたします。今私が通産大臣と質疑応答しておるこの炭鉱の問題等で、炭鉱がたんだん圧迫されて押しつぶされて来ましたために、大臣も御存じのように全日本の炭連で炭鉱危機突破労働者大会というような悲壮な大会が開かれておる。そこで今廃山、休山になつてつぶれた炭鉱が、私の調査によれば二百九十四炭鉱ございます。そこで私どもの大体見るところでは、昨年五万人近くの炭鉱労働者が、いわゆる首を切られて失業者になつていることしも今のような進行状態から推すと、大体三万から四万ないし四万五千くらい失業者が出て来はしないだろうかと考える。そこでこれに対する対策は、政府は具体的に何もおやりになつておりません。おそらく通産大臣も労働大臣も、こんなやつかいな問題はあまり触れたくないから、そのまま野放しにしているだろうと私は思つている。さらにもつと悲惨な問題は、賃金の未払いをしている炭鉱が、私の調べによれば大体百三十五炭鉱あります。それから労働者が大体四万くらいあるように私は一応調ベおります。賃金をもらつていない、いわゆる不払額が六億を突破しているように私は見ている。なおかつその上に、これは大臣も開いておられるだろうが、五十ほどの炭鉱が出札、いわゆる金券というものを発行している。これは法律上から見ても非常に問題のあることです。こういう金券は、賃金が払えないから、結局物の引きかえ券みたいなもので、これは特定な指定した品物屋から、この金券で買うのであるが、現金引きかえをしてくれないから、指定された商店もありがた迷惑で、しまいには自分のところで金券に引きかえる品物を問屋から買うことができないから、店はからつぽになつてしまつて、金券を持つてつたところで、店屋はこの通り何もありませんということで、金券をもらつても使い道がない。使い道がないということは、生活必需品が買えないから生活ができない。そういうところから漸次廃山、休山になつて山がつぶれて行く。この金券をもらつておれば賃金と引きかえられぬから、もうそのままである。そういうところは予告手当も退職手当も何もありません。そういう悲惨なことでどんどん失業者になりつつあることは、小坂大臣も多分聞いておられると思う。佐賀県のごときも多分お聞きになつていると思うが、そういうところは至るところにある。いわゆるどうすることもできない。立ちのくにも汽車賃がないから立ちのけないというので、附近の町村から町村費をもつていろいろ救済するとか、あるいは附近の炭鉱から、特に米一握り運動ということで救援をはかるとか、ありとあらゆるところの救援策を講じつつあるが、そういう数多いものをとうてい救い得るものじやありません。また警察官なども中に入つて行くと、いろいろ刺激するからということで、物騒で入つて行けない。そういう気のすさんだところが各地にあることも御存じだと思います。一体こういうことについて労働大臣は、報告を聞かれるだけではなくて、これらに対する具体的な解決策として一体どういうことをお考えになつているのか、私もあまり目ぼしい解決策というものはまだ伺つておらぬが、今まではともかくとして、これからやろうとしておられるなら、それをひとつ率直にお聞かせ願いたい。
  99. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話のごとく、石炭鉱業の最近の状況というものは、労働問題と関連してまことに憂うべきものがあると考えております。統計的に申し上げますと、企業整備によります人員整理が、昨年の八月、九月に相当大手筋の整理がございまして、八月に一万五百人、九月に一万五千七百人ばかりの整理がございましたが、最近になりまして、四月に四千五百人、五月に二千五百人、主として中小炭鉱を中心とした企業整備による失職者が出て参つておるのでございます。通産省のお調べによるものでありますが、実働労務者数はただいまお話のごとく五万人弱——昨年の六月が三十四万六千人でございましたのが、本年の六月になりますと二十九万三千人、その間の一年間に四万七千人の減少を見ておるのでございます。一方ただいまお示しのごとく賃金不払いの事案も非常に多くなつてつたのでございまして、二十九年の五月には石炭鉱業におきましては六億五千三百万円の賃金の遅欠配があつたのでございますが、六月になりますとさらにこれが上昇いたしまして七億二千万円となつておるのでございます。またいわゆる金券の問題につきましても、これまた非常に増額いたしておるのでございまして、これは全国で見まして、北海道、山口、福岡、佐賀、長崎で六億七千余万円の多きに上つておるのでございます。私どもこれに対しましてはまことに頭を痛めておるのでございまして、まことにお気の毒な状況であり、何とかしなければならぬと考えまして、従来より種々対策を講じておるのでございますが、今までいたしました対策としては、御承知のごとく帰休制というものを考えてみたのでございます。これは現在、御承知のごとく失業保険制度があるのでございますが、これにつきまして、もう少し何とか経済情勢の好転によりましては再開ができるという山がある、しかし現在はいかんともしがたいというような場合におきましては、その状況によりまして帰休制ということをとりまして、労使双方の話合いによりまして実際は休山しない、再開するのであるが、当分の間帰休制をとつて、再開したら必ず来てもらう、こういうことを考えてみたらどうかというので、かような制度を実施することにいたしておるのでございます。しかしながらこの失業保険金総額につきましてもわくがございますし、私は石炭、造船ということを対象にして当初考えてみたのでございますが、にわかにこの二部門だけについて失業保険金の運用の特別措置をすることもいかがかと思われるというような御要望もございましたので、全産業に適用することにいたしたのであります。そういたしますと、今申し上げましたような事情がございますので、さしあたり全体の数の二割を限つて三箇月間帰休をする、そうするとさらに三箇月たつたあとには再雇用されるという条件で帰休をする、その間失業保険の給付を受ける、こういうのであります。失業保険でございますから免税でございますので、実際の給与の七割二、三分のものはもらえるというようなことになりますので、この制度の運用をひとつ考えてみよう、こういうことでいたしております。ただこれは全体の二割でありまして、そういうことで再雇用が必ずできるということなら、そんなに困つていないのだというような御意見もあります。まことにその通りであります。二割ではすずめの涙だという話もあります。これもまたわかるのであります。さらにこの全体のいわゆるたらいまわし的な運用といいますか、さらに帰つて来たらその二割に帰休制を適用してくれというようなお話もあるのであります。そういうことをいかにするかという点につきましては、失業保険制度そのものの検討をしてみる必要があるということを考えまして、これとにらみ合せてこの帰休制の有機的運用につきましてはさらに検討を進めたいと考えております。  さらに失対事業費でございますが、これを増額するということは手取り早いのでございます。しかしこれにつきましては本年の労働事情は、御承知のごとく一・四半期におきましてはやや平穏でありまして、四月以降金融引締めの影響が顕著に現われて来たというような状況でありますので、一・四半期分にはかなり繰越し得るものもあつたのでございますが、二・四半期につきましては若干増額をいたしましたが、さらにこの失業対策費の増額につきましては今後において十分検討いたしたいと考えております。いずれにいたしましても昨年の六月には、いわゆる完全失業者というものが統計上六十一万人というふうに非常に大きな数をもつて現われております。しかしこれが漸減いたしまして十二月には三十一万人という戦後最低の記録を示しました。その後一月、二月、三月と若干の増加をしておりますものの、さほどに顕著な影響もなかつたというような事情で、今申し上げましたような若干の失業対策費の繰りまわしができますので、その分につきましてはすでに手当をいたしております。さらに今後の問題につきましては、これは財政上の見地もございますから財政当局とも十分打合せいたしまして、何とか措置いたしますように努力いたしたいと思つております。  さらに鉱害復旧事業があるのでございますが、この鉱害復旧事業をできるだけたくさんやつてもらいますれば、その分において働く場ができるのでございます。そこでこの鉱害復旧事業を繰上げ実施いたしますように、通産当局に対しましても、できるだけ連絡を密にいたしまして、やつてもらうように要望しております。今までのところでは概算でございますが、一万五千人程度のものは、そこで吸収ができるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。  さらに各府県に中央の出先機関があるわけでございます。大蔵省もあるいは労働省も出先機関を持つております。さらに日銀の出張所、支店もございます。そこで金融、通産、労働各部面におきまして十分話合つて、有機的にかつ敏速なる対策を講じ得るような態勢をつくる必要があろうというので、五月二十一日であつたかと記憶いたしますが、各府県に知事を中心といたしますところの出先機関の協議体をつくるように、労働対策連絡協議会というものをつくつてもらいたいということで、次官通牒を出した次第でございますが、中央におきましても失業対策事業と公共事業をいかに結びつけ、いかにそこに人員を吸収して行くかということについて連絡協議会をつくるようにいたしまして、経審長官を中心といたしまして各省で協議会つくつた次第でございます。  なお労働金庫からの融資を得たいという御要望もございまして、まことにもつともなことと存じまして努力はいたしておるのでございますが、何分にも金融でございますから、いわゆる金融ベースに乗るということが、金庫自身からいたしましても必要なことであるということで、私としましてはそういう問題を乗せますのに比較的便利なのは造船である。造船は御承知のように十次造船対策ができれば、この企業の活況が予想されるわけでございますから、まず造船にそういう形でもつて労金からの融資をすべく、政府から預託するようにということを交渉いたしまして、多分二億五千万円程度になることと存じますが、さようなことにほぼ話合いができるようになつて参りました。そこで石炭でございますが、石炭にはいかにも見通しというものが必要なのでございますが、これが今伊藤さんの御質問の中にもありましたように、なかなか見通しがつかない。たとえば四千八百万トン掘れたとすればそのうち四千何百万トンかは必ず国内において需要が見通せるということになつて参りますれば、その需要に基いて、この山はこれだけの需要があるから復旧するであろうというような見通しが立ちまして、いわゆる金融べースに乗るのでございますが、現在のところその見通しがなかなか困難であるということで、通産当局とも鋭意御相談を申し上げておる次第でございますが、現在のところはいまだその見面しがはつきりいたしませんので、労金からの融資ということは現在のところはまだ実現しておりません。さような対策をもつてできる限り——まことに金融引締め政策の端的な現われを受けておられる炭鉱労務者の諸君に対しまして、何とかこれ以上悪化することのないような措置を講じたいものと思いまして、また従来からそういう苦汁をなめておられる方に対しまして、何とか救済の手を差延べるということで努力をいたしておる次第でございます。
  100. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 自由党吉田内閣の中に、小坂労働大臣はごみために鶴が降りておるというのは少し言い過ぎかもしれませんが、とにかく非常に期待されておることだけは間違いないだろうと思います。そこでいろいろ苦心されておることは私もお察しをいたしますが、今大臣がるるおつしやつたようなことは、今まではまだ現われておらないので、今後いつ現われて来るかということがお手並拝見というわけでございます。私はあなたを非常に誠実な人と信じていますから、部下の係官を督励して、この次にこの前の約束はどうしましたかと言われないように、きようおつしやつたようなことを必ず責任を持つて実施を願いたい。  失業者が御承知のように各炭鉱ともに全体的に非常に増加して来た、従つて失業保険金のわくというものも当然広げられなければこの処理はできない。すみやかに、このわくを広げる問題について、どのように努力をされておるかお伺いしておきたい。  それから、さきに大臣がいろいろ言われたけれども失業者は炭鉱ばかりではありませんで、非常にあふれてしまつておりますから、並たいていではやれないが、ただあなたがおつしやつた中で、私がお尋ねしようと思つていた炭鉱地区の失業者の問題については、政府がやろうと思えばすぐ職を与えることができるものは、私は鉱害復旧事業だと思います。御存知のように特別鉱害というものは、期間を二年間延長しておる。二年間のうちに五十八億円の工事費を使つて完成させようとしておるわけであるから、これを繰上げてやれば、相当吸収ができると私は信じておる。ただここで一つの問題は、これは政府鉱業権者との負担によるものですから、政府の方からは、割当てられてある負担額は財政支出をいたしましよう。ところが鉱業権者の方の負担です。これを繰上げると、繰上げた工事の量によつて金額が大きく出て来る。その場合に、鉱業権者が負担分の繰上げ増額分を負担するかどうかという点が、非常に疑問であります。というのは、通産大臣も御存じであるが、昨年度の分において、あの鉱害における耕地と住宅との二億七千万円でありましたか、業者負担分を業者が負担しないので、工事がやれないから、ぜひ国の資金を貸してもらいたいということで、非常に問題が起つたのです。いろいろ私ども努力し、被害者および被害地の町村長なども非常に真剣になりました。それで、当時岡野大臣であつたかと思いますが、大臣相当法律的な権能もあるのであるから、とにかく二億七千万円国家資金を立てかえ払いにして貸してやれ、そして取立ての方法はこういうようにしてとつたらいいじやないかということであつたけれども、最後に耕地の分に対する一部をほんのすずめの涙程度を大蔵省が資金部から貸したようなことであつて、ここに鉱害復旧を十億とか二十億とか三十億とか相当繰上げてやるということになれば、従つて業者負担も相当大きな額が出てくる。いまの炭界の現状において、はたして業者が自分に割当てられる負担額を負担し得るかどうか。この負担をしなければ、大蔵省が政府負担分を負担しないというのでございます。今小坂大臣が言われても、業者が特別負担をしなければ政府資金は出されないのじやないかというのが大蔵省の建前ですから、業者が負担できないということになつて来ると、通産大臣と労働大臣が話し合つて、炭鉱失業者救済のために鉱害復旧事業をやろうとしてもやれなくなる。その場合には、業者が負担しない部分の特別負担を政府資金の中から、いよいよしかたのないものは出してやるかどうか。これを貸してやらなければできない。この点をひとつはつきりしておいていたたきたい。いくらやれと言つたつて、業者が負担をいたさなければ大蔵大蔵省が国の負担分を出さぬというのが原則ですから、もしそういう事態が起こつた場合に、業者の特別負担分を国家資金の中から貸して、その工事をやり得るようにするかどうか。この点に対して多分お調べになつておると思います。またせつかく大臣もおつしやることであるから、通産大臣お話合いの上だろうと思うから、その点に対してどのようにお考えになつておるかお聞かせを願いたい。
  101. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 失業保険の給付につきましては、現在失業保険の受給者も非常にふえて来ておるのでございます。昨日の同期に比較いたしまして、一月は三十五万五千人、本年の一月には四十一万八千人、三月には三十五万六千人の支給者でありましたのが四十四万七千人とだんだんふえております。この受給者は年々四、五と月が進むに従いまして漸次減つておるのが従来の趨勢でございますが、本年はこの点遺憾ながら逆になりまして、六月には四十五万七千人と、この受給者は二十五年ドツジ・ラインの終末期の当時の実績をやや上まわつて、戦後の最高を示しておるのであります。これに対しましては、もちろん私どもとして万全の策を講じなければならぬと思うのであります。大体概算いたしまして、二十六億程度政府負担と考えておる次第でございます。この点につきましては、予備費もございますし、適切に処置し得ると考えておる次第でございます。なおただいまお示しの鉱害復旧事業費の繰上が出資の問題については、御指摘のように非常にむずかしい。所有権と国家が事業を行う場合との問題があるようでございまして、この点につきましては非常に技術的な問題になりまして、通産、大蔵御当局も種々御検討になつておると思いますが、私どもの方といたしましてもそういう特殊事情にあることも考慮に入れて、あくまで善処したいということで、目下交渉いたしております。
  102. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 鉱害復旧事業とともに、炭鉱失業者を救うことについて私が今質問しました点、大臣はどのようにお考えになりますか。
  103. 齋藤正年

    ○齋藤説明員 今伊藤委員からお話のように、炭鉱が現在非常に不況でございます。従つて本年度の既定の負担分につきましても、若干延納が出ておるような状況でございます。従つて来年度の分を大幅に繰上げいたします場合には、当然それにつきまして何らかの措置を講じなければならないとわれわれも思つております。われわれといたしましては、低利の政府資金をどういう形でやりますか、公共企業態の施行する事業には公共団体を通じて政府資金が出るように、また鉱業者の施工いたしますものについては、何らかの形で金融的な政府援助ができるようにしたい、この鉱害復旧事業の繰上げをいたしますならば、そういうことができるという前提でやりたいというふうに考えて、今せつかく事務的調査なり研究なりをいたしておるような次第であります。
  104. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 労働大臣お急ぎになるようでありますから、もう一、二点ありますが、これ以上質問するのはどうかと思いますので、この程度にしておきます。それから私の時間が参つておりますので、もうきようはこれでお約束通りということになります。中小企業その他の問題について、なお大臣に対して質問の残つておる問題がありますが、これはあすでもやることといたします。  ただ私は一言両大臣に申し上げておきたいのは、今の鉱害復旧事業に炭鉱の失業者を使うということは、地理的関係から見ても、同じところにあるのですから、いろいろな意味で非常に便宜で、能率的だと思います。ただ問題は、先ほど私がお尋ねした、いざという場合に資金部の運用資金を出すかどうか、そういう問題が残るわけですから、この問題について、この委員会はあすもしくはあさつてまでも多分延長されるようになるのじやなかろうかと想像されますが、この鉱害復旧事業で何万人かの炭鉱労働失業者を使われるということは大きな失業対策の一つになると思います。そういう非常に意義あるものであるから、大蔵大臣との間において、通産大臣なり労働大臣との関係で、復旧事業に炭鉱失業者を使うということについて、ほんとうにそういう特別負担者の困難があろうとなかろうと、とにかく事業をやるということについて、もう少し確約的な答弁のできるようなお打合せをしておいていただきたいと思います。そうしないと、どうもここでやるのだと言つても、いや特別負担者が負担する、いや資金運用部資金を大蔵省が出さぬというようなことに、この前もしばしばなつたことがありますから、そういうことになるとしり切れとんぼになります。あさつてまでに、もう一回ここで私が伺いますから、ひとつ両大臣もしくは大蔵大臣との間で——これはさつき答弁されたけれども、事務的折衝だけでは困難であることを多分御存じだろうと思います。事務的だけではなかなかできませんから、ひとつ三大臣の政治的な話合いの上で、もう一回この問題について答弁していただくことを申し上げておいて、きようの質問をこれで終ります。
  105. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は加藤清二君。加藤君にちよつと申し上げますが、労働大臣は三時半までの約束でありましたが、時間が来ておりますので、五分だけでお願いします。
  106. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは委員長の仰せに従いまして簡単にお尋ねいたします。私この休会中に糸へんの工場を全国ずつとまわつてみました。大工業だけでなくして、特に機場を中心としてまわつてみたのでございますが、御承知政府政策のおかげで、どこの機場も操短ということが行われております。操短だけでなくして、すでに小幅ものあたりは休止の状態に追いやられているところがたくさんございます。ところで、小さな機場では雇用関係におきまして常日ごろから大紡あたりとは大きな相違がございますけれども、これが操短になりました場合には、今あなたがおつしやいました失業保険とか帰郷制度とか再雇用というような恩恵すらも受けられずに、首切りされて切捨てごめん、こういうことで、この女工さんの多くが泣きの涙で郷里へ帰つてつておる。ところが郷里へ帰つた人たちは、田地田畑がふえたわけじやありません。そこで再び舞いもどつて来て、ただでもいいから置いといてもらいたい、食わしてもらいさえすればいいからということでございますが、機場ではただで食わせるわけには参りませんので、ついにそれが——聞いてくださいよ、皆さん方にはこれは縁なき衆生のことかもしれませんけれども、首を切られた人々にとつてはたいへんなことです。それでその方々はやむなくパチンコ屋に雇われておる。パチンコ屋にも雇われなかつた人はどうしておるかというと、梅田駅、名古屋駅あたりで夜な夜な体を売つて、最後のものを売つて郷里へ金の仕送りをしておる。もう社会不安を来しておるという状況でございます。これはいずれあとで聞くつもりでございますが、今後この傾向が一層増大して行くのではないかと思われる向きがたくさんございます。すなわち、さつき通産大臣のお答えの中にも、需給のバランスあるいはコストのバランスでやむなく操短しなければならないという言葉がございましたけれども操短すれは必ずここに失業者が出て来るということは当然なことなんです。今金融引締めからだけでもこういう社会不安が増大して来ておりますが、今後一層これが度を加えるという見通しが立つわけでございますが、これにつきまして労働大臣としてはどのような緊急措置を立てようとしておるのか、あるいは長い将来にわたつてどう対処されようとしておるのか、これについてお伺いしたいと思います。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 非常に御勉強になりまして実情る把握しての御質問でございます。私どももさような状況につきましては、できる限り気の毒な方の出ないようにと思つて政府としては努力をいたしておるつもりではございますが、そうした実情もあろうかと、まことに遺憾に存じておる次第でございます。しかし私どもの方の立場から申しますと、やはり失業保険というものはそういうときのためにあるのでございますから、失業保険をおかけになつていただくことが最も望ましいので、できる限り事業者に対しましてもそうした問題を真剣に取上げて、政府として離職の場合の措置を講ずるにはこういうふうになつておるのだから、さような機関を利用されたいということを、職安等において十分に指導いたしますように今後においても努力いたしたいと考えております。一つは職業安定機構でございますが、これがやはり従来比較的窓口が少いのでございまして、最近の失業状況は、従来非常に大量の失業者があつたところにその型のごとく出て来ておるという事情ではなく、今まであまり問題にされていなかつた場所に非常に失業者が出ておるという点もございますから、そういう場所につきましては職業安定所の出張所の窓口をできるだけふやして、今回予算の特別予備費の流用を大蔵省に折衝いたしまして原則的な許諾を得ておる状況でございます。そういうような機業地におきまして女工さんたちの失業が特におびただしい発生を現に見、あるいは今後においても予想されますような場所におきましては、職安の窓口をふやすようにしております。  なお一般の女子の労務でございますが、男子と同等に憲法に保障されておる地位におきまして当然のことだと思いますけれども、工場なり事業場なりに来て働くということは職業なりという社会通念がことに終戦後あるわけでありますが、別の観点から家事労働という方面につきましてもやはり重要な一つの社会的な重要性を持つた職業であると私ども考えられる面もございますので、こういう点につきまして婦人少年局というのが労働省にございますが、ここで最近非常に研究をいたしておるのでございまして、職業補導施設の中におきましても、特にそうした家庭のハウス・キーピングというようなものにつきまして、もつと指導をして、この人に頼んだら十分はハウス・キープをやつてもらうということを指導してもらつたらどうか、そういうようなことも考えておる次第でございます。なお一般的に職業補導機関、これは御承知のようにあそこを出ますと九十七、八パーセントの就職率になつておりまして、そうしたような事情の女工さん方には、でき得る限り職業補導所を御利用願つて、やはり違つた意味の何か職業を見つけていただく、またただいま申しました職業安定所の窓口を通じて、別の方に御紹介願つて、そしてきまつた職業を見つけていただく、こういうような補導をいたしたいと考えておる次第でございます。何と申しましても全般的な政策というものがございまして、そのしわがとかく失業面にも現われて参りますので、私どもはそのしわを延ばす係でございまして、この全体のしわがそういうふうに寄つて来ないような財政金融上の諸施策というものにつきましても、私ども労働問題を扱います役所といたしまして、私ども立場からこういう問題についてはかくかくの問題があるから、その点がこうならぬように御善処を願いたいということを常々申しておる次第でございますが、ただいま出て参りましたような問題につきましては、さような処置をできるだけ講じて行きたい、かように考えておる次第でございます。
  108. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いずれこの具体策につきましては、労働委員会で具体策をつくつて申し上げたいと思つておりますけれども、さしあたつての問題である職安の補導ということでございますが、それはなるほど一つの生きた方法であるには違いございませんけれどもほんとう大臣さん、あなたは、あのたくさんの首切られた女工さんたちが職安にわあつと押しかけて行つて、はたしてそれを全部引受けてくれると思つていらつしやるかどうか。あなたはそれを具体的に歩いてごらんになつたのですか。続いてお尋ねいたしますが、私は私どもの党のやりようが空理空論と言われることの悲しさに、今度は自分の足でずつと職安にも行つてみたのです。ところがあそこの職員の能力に限りがある、それから受ける員数に限りがあるのです。これではとてもやり切れたものではない。だから、私は将来この傾向がもつと大きくなると予想されるが、それに対する対策はいかがでございましようかとお尋ねしたわけでございます。そういう場合の失業保険だ、こういうお話もありましたが、これもけつこうなお話でございすけれども、今日小さい二十人から三十人くらいの機場をあなたが歩いてごらんになると、それはとても及びもつかないことだということに必ずお気づきになるでしよう。岡谷でつくつた製糸でも岡谷でつくつた製糸だけでしたらそれは問題じやないでしようが、ところがあなたのお近くの北陸の機場に行きましてもあるいは北関東の機場に行きましても、あるいは愛知県知多郡の東浦の機場に行きましても、五台、十台、二十台と持つて仕事をしているところが、今倒れているわけでございます。そこらあたりはもう労働組合以前の問題で困つている。近江絹糸の相似形があちらにもこちらにもある。いや、あれよりももつとひどいような問題が幾らもあります。従つて失業保険どころの騒ぎではないのです。これと相似たものとして、糸へんに連なるところの機場の下請企業、紡機の下請企業が大工場の賃金遅払い、手形の不渡りということから、支払いが延期になつているおかげで、賃金のストツプどころの騒ぎじやございませんで、これはもう賃金の遅払いから首切りがどしどし今行われている状態ですが、政府の今の政策がずつと行われて行くならば職安で補導し得る能力以上の失業者がここに殺到するということは、これは日を見るよりも明らかであります。そこで引締められるのもよろしい、やむを得ません、首を切られてもこれはやむを得ないのですが、切られた者の行方を何とか受入れ態勢をつくつておかれないと、ここに社会不安が醸成され、現在の内閣を一層不信に導いて行き、やがてこれらの方々はあなたたちの好みなさらぬ赤色の方へ広がつて行く、こういう状況が目に見えているわけなんです。うそだとお思いなさるなら今休会中もう一度私も一緒に歩いて見てよろしゆうございます。私は機場の状態、下請企業の状態ばかりでなく商工会議所へもたずねました。職安へも行きました。足でかせぎました。どこへ行つても今同じようなことが行われておるわけなんです。私はこの間泉南から帰つて来たわけですが、自分一人で、足でかせぎまして実態を調べているわけでございますけれども、これは事実でございます。もし時間がありとすれば私がどこでどれだけの材料を持つて来たかということを、これはみな持つておりますから申し上げてもいいのですが、時間がないので……。こういう状況にかんがみまして、労相としてはこの対策を早期に打立てられないと社会不安を一層増大する結果になる、こういうことを申し上げるわけでございます。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本経済基盤と申しますか、置かれている条件というものはまことにみじめなものなんであります。御承知のごとく貧弱な資源、この狭い土地に八千六百万人からの人口があるわけでありますが、これが二十万人ずつふえておるのであります。私の担当いたしております労働関係におまきしても毎年八十万人から九十万人の労働力人口というものがふえておる。昨年などは失業者が三月に六十一万人から三十一万人に減つた。これは世界的な驚異だと思うのですが、八十万人もふえて行くものがむしろこれから見ますと百十万人消化されたというような事態がなぜ起きたかと申しますと、結局これはインフレーシヨンであります。インフレーシヨンが高進いたしますればいわゆるサービス業が非常に殷賑を呈する。物をあちらからこちらへ動かすだけで一つの職業になる。しかし一体そういうことをやつつてつて国が立つかというと、見る見るうちに国の状況というものは悪化してしまう。国の持つておりまする正貨というものは減つてしまう、ドル資金が減つてしまう。こういうことをやつてつたのではどうにもならぬというので、経済の建直し政策、地固め政策をやつておるわけでありますが、これをやつて参りますと、どうしても今申しましたようなブームで食つておるという仕事はその場で行き詰まつて来る。それからまた一方お話のように生産費の関係から見ましてつらいという仕事も出て来る。だからそこが私どもの非常な悩みなんでありますが、この過程を通りませんと地についた経済の繁栄というものが得られない。何とかして経済の繁栄を得るためにつらいところを切り抜けよう、こういうわけであります。そういうことを全然考慮に入れないとそれじや今お話のようにしやくにさわるから赤くなつてしまえということになるということですが、しかし赤くなつたからといつて国が救われるか、救われないであろう、そういうことになるわけで……。
  110. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ほおつておくとそういうことになるというのです。
  111. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうことになるかもしれませんが、そうなればいいかというと、そういうことになつてもよくならぬわけです。そこでどうしたらこれをうまく切り抜けて行くかというと、先ほど申しましたような財政金融全般の、いわゆる経済政策というものが機に臨み変に応じて打たれるかどうかということでありますが、労働政策というものはむしろその間の谷間のペースをきれいにならして行くということだろうと思います。私どもはそういう立場から全体の経済政策に対しても必要な献言はいたしておりますが、出て参りました失業者というものに対しましては、今申しましたような線で、こうやればすぐによくなるということは申せませんが、これは非常な苦痛があり、困難があるということも承知いたしておりますけれども、でき得る限りの誠意を尽してその間の摩擦を少くするように努力いたしたい、かように思つておる次第であります。
  112. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは本論に入りまして、通産省はこのたび人事の大異動をおやりになつたようでございますが、新進気鋭のお方が重要ポストにつかれまして、まことにけつこうなことでございます。何かこれについて政策の転換が行われますか行われませんか、まずそれを承りたい。
  113. 愛知揆一

    愛知国務大臣 七月の早々に人事の異動をいたしましたが、これは政策の転換を目ざしたものではございませんで、政策のより一層の進展と補強をはかりたいという存念で人事異動をいたしました。たとえば九州方面石炭の問題というようなものが非常に深刻でございますし、その他地方的に随時中央の意向を体して従来企画に当つていたような人が第一線の責任者になつてくれることが望ましいと思いましたのが一点、それから新進気鋭の人を大いに登用いたしたいと思いましたのが第二点。総じて清新の気を省の中央地方を通じて注入いたしたいということを考えてこの移動を行つたのであります。
  114. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 十九国会以前からずつと継続の仕事がございますが、それがいろいろの都合でいまだに決着を見ない点が多々あると思います。具体的に申し上げますと、中小企業対策の緊急決議に対してどのような具体策が打たれましたか、お尋ねしたいのでございますが、これはあすにまわしまして、大臣とお約束をいたしました点についてまずお尋ねしたいと存じます。  これは前に再三お話した例の日英会談から生ずる毛製品輸入、これの跡始末の具体策につきましては、大臣も前の次官の古池さんも、あなたのおつしやる通りだから早急にその対策を立てますとおつしやつたわけでありますが、その後いかように相なりましたか。これについては繊維局長がかわられましたので無理もないと思つていますが、業界としては当然急いでいる問題でございますので、どうなつたか、あるいはもし将来結着を見るものならそれはいつごろ発表されるのか、この点をお尋ねいたします。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については国会中のお約束もございますし、私どもといたしましては十分に新繊維局長にも引継ぎをいたしまして、その後の経過について明確にいたしたいと存じます。そのときのお話通りに百パーセントに軌道に乗つているとは思いませんけれども、その後の経過、数字等につきまして、永山局長から御説明いたします。
  116. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 局長さんのお話はあとで伺うことにして、新進気鋭、特に以前から令名嘖々たる永山局長を迎えたので、繊維業界としてはみな歓迎しているのですけれども、前からの継続事業だけは、いかにお忙しい中といえども、早急に何とかしてもらわなければ困ると思うのです。特にさきほど大臣お話にもありましたが、自立経済をするためには輸出努力をするというお話でございました。まことにけつこうなお話です。私どもも及ばずながら輸出努力をさせておつていただくわけでございますけれども、毛製品の輸出につきましては、必ずしも輸出が進展される材料が着々とただいま構成されているとのみは言えない。むしろ輸出意欲を減退させるような部面があるわけなんです。これはかつて徳永繊維局長が英断をもつて臨まれました別の輸出報奨のリンクの問題、これがこの十月に半減されることに相なつているようでございます。上期において毛製品の輸出相当実績を上げた。従つて将来もこの傾向で行けるであろうという考え方がかつてここで行われたことがあつたのですが、それは大間違いだと思う。数字に現われた実績はきようの努力じやないのです。過去の努力が集積されて、そこへ数字となつて現れた。今日いろいろなこういう条件を削減していけば、その結果はやがて半年先、一年先に現われて来る。これは当然のことなんです。これを非常に憂慮しているわけでありますが、大臣としては将来とも繊維製品、特に毛製品の輸出については、先ほどおつしやいましたように輸出努力をなさるお考えでありますか、いや今日このくらいの態勢でけつこうだ、だんだんその制度のいい部分は削つて行けばいいんだ、業界から希望されている部分は削つて行けばいいんだ、かようにお考えでございますか。その点をお伺いいたします。
  117. 愛知揆一

    愛知国務大臣 原則的に輸出努力は続けなければならないと思いますが、なおただいまの御質疑に対して全部その通りにやるとはちよつと申し切れませんので、相当見当を要すると思います。
  118. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 詳細についてはあす局長さんから具体的に承りたいと思いますが、御承知通りすべての国が平和になり、輸出競争が盛んになつて来ております。特に繊維についてはイギリスがあの手この手でわれわれの出先において、われわれの過去の勢いを夢見てじやまをしている向きがたくさんある。ガツト加入が非常に困難性をきわめているのも、そういうところに一つの原因があるんではないかと思われるわけでございますが、特に繊維製品についてはイギリスが大きな注目と努力を払つているわけでございます。これの競争場裡に立ちまして、ただでさえも弱い弱いといわれている日本の業界がここへ出てほんとう輸出を伸ばそうというには、よほどの努力がいるわけでです。二百万ドルが去年千七百万ドルに、今年は通産省計画では四千二百万ドルに伸ばそう、こういうことでございますけれども、はたしてそれができるかできないか。上期の状況から行けばできるでございましよう。しかし上期までは前からの余燼が残つていた。ところが今度十月からはストツプになり、あるいは半分になる。これはたいへんなことでございます。この点は去年の暖冬異変のおかげでおまけに二百万ドルに及ぶ在庫品があり、業界はおかげで投売りを始め、大きな業者までが投売りをやつた。おかげでバイヤーは心配でたまらない。政府としては、口を開けば日本輸出ができないのはコストが高いからだとおつしやるようでございますけれども、必ずしもそうじやない。コストの高いことよりもコストの不安定の方が一層輸出を妨げておるというのが糸へん業界の実態ではないかと思う。こういう状況下にありまして、輸出を進展するならばどこを一体開いたならばいいか、輸出努力をなさるならば、一体市場開拓はどこをおやりになろうとしておるのか、あるいはまた去年開いた市場をどのように継続ないし発展させようとしていらつしやるのか、この点について、これは具体的に承つておかぬと、あすからの仕事に関係がございますから、御質問申し上げたいと思います。
  119. 愛知揆一

    愛知国務大臣 全般的にはけさほども申し上げましたように、それぞれの地域に対しまして日本商品の販路の拡充をしなければならないことは当然でございますが、やはり私は繊維品については米国、英連邦、東南アジア、あるいは中南米、そしてまたアラブ諸国、中共方面というようなことが具体的に考えられるところだと思います。
  120. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 アラブ諸国の地方は非常に魅力的な土地ではないかと思うわけでございますが、特にこの地方は英国への依存度が今までは強かつたのでございますけれども、あのアングロ・イラニアンの石油の問題が起る以前ごろから英国依存度を徐々に削減して、そしてなろうことならば他の勢力圏との交易を始めより、こういう空気が現われて来ております。これは一九五二年から一九五四年に至る輸出実績をごらんになればよくおわかりの点でございます。去年の一年間の実績はことしの三月の一箇月に匹敵するという状況でございます。非常な進展度を示しておるわけでございます。そこでこの際こういう地方への輸出振興のために何らかの具体策をとられるということはぜひ必要なことではないか、いわば波に乗るといいましようか、いやだいやだというところへ行くよりも、迎え水をもつて迎えておるところへということが手取り早く実績を上げるにはいいじやないか、こう思われるわけでございます。次に満、韓、支の貿易でございますが、糸へんの業界が特に苦しんでいるのは、何と申しましても、毛にすれば羊毛製品が余つておるということである。綿にすれば太番手の糸の輸出がインドとの関係において先見込み薄であるという点であり、それからかつてのスフ人絹、これが満、韓、支にほとんど輸出されておつたにもかかわりませず、これが思わしく行かない。このおかげで戦前総輸出の六〇%以上を占めておりました糸へんが、今日ではその半分にも三分の一にも満たないという原因なんです。そこで満、韓、支の輸出について一体どのような御計画がございますか、これについて承りたいと思います。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 満、韓、支についての輸出ということは、いわゆる今の言葉で言えば中共向けの貿易の問題ということになると思うのでございますが、これらに対しましては、先ほども申しましたようにできるだけ引合いの品目等を確めました上、この拡大をはかりたいという考え方でおるわけでございますが、私見をもつていたしますと、これは政治は政治経済経済とは申しますけれども、やはり何と申しますか、世界全体に対して日本としては貿易の拡大をやりたいということを終局の理想にしておりますから、その理想に対しまして今日の状態においてできるだけ摩擦を少く広げて行きたいということのついて、いろいろの配慮と具体的な措置が必要であろう、こういうふうに考えております。
  122. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 抽象的なお答えでは実際の数字の上に効果を上げることはできないと思います。中共貿易については、いつの大臣の御答弁も、わくを広げた、わくを広げた、こういうお話でございますが、せつかくわくを広げていただいても、具体的にさてこれを行おうとすると、いつも外務省の方で禁止をくらつちやう。その点が先ほど帆足君も言いましたけれども、硫安の輸出でよく御存じのはずでございます。かつて外務大臣もここに来ていただいて私がお尋ねいたしましたところ、台湾でさえも二十万トンから二十五万トンの硫安を買つてくれるといつておる。それよりももつと広大な土地を擁している中共との貿易をすれば、硫安業界が五十万トンの硫安を抱きかかえて困つておるといつておるが、これは早期に解決できるじやないか、これに対して外務大臣はどうお考えになりますかとお尋ねしたところ、何と言われたかというと、それはあなたの私見であつて、あそこはちつとも買つてくれやしない。それならどのくらいが目安でございますかとこつちは知つていてわざと聞いてやつたら、何と言つたかというと、せいぜい五千トンも出たら最高でしよう、中共のお百姓は決して硫安を使いません、こういうお話でした。私はあのときにトンデモハツプンだと思つた。この人はインドの灌漑農業と間違えているのじやないかと思つたことがあるのですが、とかくこういううそがあつてかなわぬ。その後すでに引合いは五万トンの余出て、これだけでも十分ではない、もつとほしい、もつとほしいという話なんだ。通産大臣のここでの御発言と外務大臣の御発言との間に食い違いがあるようでございますが、この食い違いは一体どこから出て来るのでございましようか。ただお世辞のために、ここで何とか言いのがれしておけばいいわというところから出て来るのか、あるいは根本的に省内において意見の対立があるのか、いずれでございますか。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今お尋ねの点はおそらく外務大臣の記憶違いか、あるいはあまり事情をつまびらかにせず、不用意に申し上げた数字だと私は思つております。それで私は先ほど申し上げましたように、実績の数字は明日でもお届けすることに川上さんにもお約束申し上げたわけでありますが、少くとも私の申し上げておる通りの実行はしておるつもりでございまして、それは過去半年間の禁輸出品目の解除、これはあんなものはやらぬでもいいのだとおつしやればそれまででありますけれども、とにかくそれだけ大きな品目を解除して今日に至つておりますし、なお先ほど申し上げましたように、この上とも禁輸品目の解除をすることが何よりも実際的な問題である。それから引合いがあつた場合に、できるだけそれを成り立たせるよう政府としても協力をするのが私どもの務めである、私はそう考えております。従つて少くとも私の耳に入り、あるいは国会方面から具体的な御要請があつたものにつきましては、私は誠意を尽してお世話をしたつもりでございまして、たまたまそういう問題の処理にあたりまして、あるいは政府部門でもいろいろの意見がありましたために遅れたり、御希望通りの数量にならなかつたことがありまして、遺憾に思つておりますけれども、今後ともその考え方で押し進めて参りたい、こう思つております。
  124. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは承りたいのですが、中共向けの硫安の申出は朝鮮向けよりもずつと先に申し出たはずですけれども、これはあとまわしにされちやつたですね。これは今の大臣のお考え方から行くと、そのような結果が生ずるというのは、これはふしぎなことでなければならないわけでございますが、一体どういうことでございましようか。
  125. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、全部が全部私がこうやりたいと思うようには参つておりませんので、それは今お断りした通りでございます。ともかくも私は気持においては政府部内にも意見の食い違いはないと思いますし、それから最近の状況でございますれば、ますます一致して推進できると考えております。
  126. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それではお尋ねします。大臣が外務大臣も兼任でいらつしやるならば、それはスムーズに行くかもしれぬと思いますけれども、私は具体的な実例をもつて申し上げますが、現に毛製品の輸出につきましては、硫安と同様に、業界はこれについて非常に熱意を入れているわけなんです。なぜならば御承知通り紡績の錘がたくさんふえました。外貨の割当もありまして、盛んに糸ができるわけでございまするが、悲しいことにいい糸ばかりできないわけなんです。特に政府の方針によりまして、アルゼンチン羊毛のような悪い糸を入れていただきますと、必ずしもこれで梳毛品をつくるというわけには行かない。紡毛品をつくらなければならない。紡毛糸をつくるためにまぜてつくる。これは政府のおかげでそういうことをやるわけなんです。ところが、このものをいよいよ輸出する段になりますと、朝鮮特需があつたときのように、ああいう毛布など買つてくれたら行けるかもしれませんが、そういうことになつていない。そこでどうなるかというと、去年も暖冬異変で二百億も抱きかかえて困つている。糸ヘンの工場がぶつ倒れて、糸ヘンの商社がいち早くあの金融引締めのために倒れて行つた原因の一つには、こういう遠因があつたわけです。そこでこの業界としては、ここで働く労働組合に限らず個々の投資家に限らず、すべてが中共貿易をこいねがつているわけです。きようの新聞でも御存じの通り日紡の社長がああいうことを述べている。あれはきのうきよう始まつた意見じやない。アメリカに行かれたときも向うであの意見を述べて来たわけです。これは大阪の業界といわず、あるいは名古屋の業界といわず、あるいは北関東の業界といわず、日本国民あげて中共貿易を促進したい、特にあちらの方へ糸ヘンの輸出をしてもらいたい、こういうことを言つているわけなんです。ところが、商社の連中が無理さんだんをして金をつくつて向うに行こうとすると許すかというと許していないのです。許さないものだからどういうことになるかというと、無理してスイスへ渡つてつてみたり、インドへ行つて、あそこから内緒で入つてみたり、まるで帆足さんや高良さんがやられたときと同じようなことをやつている。私はふしぎでかなわぬと思うのです。三年先に帆足さんが向うに行かれたら罪人扱いだ。ところが三年後に宇都宮徳馬君や西村君がやられると英雄扱いだ。それでもまだ足らぬで、この間福永一臣君が行つた。今度通産省がまだ足らぬというわけで官房長が行こうとしておる。きようの新聞に出ておる。これは一体どういうことですか、さつきもちよつと質問に出たのですが、野党の連中が行こうともるといかぬのであつて、与党の人が行こうとすると英雄というのは何ですか。平家にあらざる者は人にあらずという感じがするのですが、これはどうなんですか。先ほど大臣のおつしやつたような気持がほんとうにあまねく一般国民に押し及ぼされ、その気持が一般業界にも押し及んでいるとするならば、時計も買いもせぬのに、何もこそこそスイスまで行く必要はないじやないですか。ほんとう政府が、今あなたがおつしやつたような考え方でいるとするならば、このようなことはしなくても天下晴れて堂々と行けるはずなんです。パリ・リストと同じもので行こうとしておる。いや、許された品目のものをやろうとしておるのです。ココムで許されたものをやろうとしておるにもかかわらず、外務省は何やかやと言つていろいろな制限を加えておる。これに対して通産省はどういう態度をとつておられますか。通産省考え方はわかりました。しかし外務省との考え方の相違はお認めになるだろうと思いますが、その相違を克服するために、通産省としてはどのような態度をとつておられますか。それが承りたいのでございます。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私のこの問題に対する考え方は累次申し上げておりますから、つけ加えることはないと思います。私はさらに政府部内におきまして——現在においてもそうであると思いますが、今後においてはますます思想が統一されて具体的にそういう方向が出て来るように私といたしましてもさらに一層努力いたしたいと考えております。
  128. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう一つ輸出努力につきましてお尋ねしたいのでございますが、これも十九国会ですでに陳情もされ、この委員会で話合いも行われたことでございますが、いまだに結着を見ておりませんのでお尋ねするわけでございます。陶器の輸出につきましては、いろいろここでも論議がかわされたことでございますが、輸出総合対策を立てて打つて来ないと相手にしないということでございましたので、輸出陶業連盟の方から輸出の総合対策が出されて、ここで委員会が設けられましてるる述べられましたその折に、まことにごもつともなことであるということで、これはすでに実行に移されることに相なつておるわけでございますが、それは一体今どうなつておりますか。私の承るところによりますと、どうもこれも大蔵省が反対しているからいけない、こういうことがあるようでございます。その一例を申し上げますと、これは私はあとへ引けないから申し上げますが、業界が輸出努力をしまして、金にして三十七トン分くらいの輸出をするわけでございます。ところで日本の産金業界は二トンくらいしか産金をしていない。それに金管理法なるものを与えて、政府援助資金を与えて一部自由販売にさせて、それでもなお一トン半くらいしか増産はできなかつたはずでございます。それの約十倍の外貨を獲得しておりますこの業界が、これに必要な金液をぜひ輸入してもらいたい、この金液はえびたいになる、そのお蔭で輸出が振興できるということで再三再四これは話があつたはずです、前の大臣のときから——前の大臣承知して見える。今度またそれが十九国会で行われまして、その通りだということになつておる。ところがその通り実行に移しますと言われて、今日それが行われていない、ところでこの輸入先は中共であるのとは違うのです。あなたたちの一番お好きな日米経済協力のアメリカが、売つてやりたい、売つてあげますという相手なんです。そこから金液を買つて、それに日本の土と技術を加えてアメリカの市場に売り出す品物なんです。ほかに使うわけではありません。金歯に使うわけでもなければ、万年筆に使うわけでもなければ、ぜいたく品に使うわけでもありません。全部向うに輸出され、向うの国もぜひにというのに、それがどうして今日までできないのか。ことに私奇怪しごくに思いますのは、この点で私は非常に不信を買つている。私個人的なことを言うてはまことに済まぬのですけれども、おもしろくない、なぜかならば、去年は総体で六百キロしか入れない。そのうちの百キロは入れたから、もうあとここで何も言わぬでおいてくれという政府側の注文だつた。そこで私は何もその後言わぬことにした。ところがその百キロはどこで消えてなくなつたのか入つていない。私はうそを言つた結果になる。これは一体どういうことなんですか。だからこの前もそれが問題になつて、そういうこともあつたから今度は気をつけまして早急にこれは片づけます、こういうお話でございました。ところがいまだに片づいていない。これが早急に実施できない原因を承りたい。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この陶磁器の金紛あるいは金液の問題につきましては、ずいぶん長いこと懸案で、私も通産省に来る前からつぶさに承知しております。私もできるだけの努力をいたしまして、非常にこれは関係者が多くて、また利害が相反するのと、政府側におきましても関係の向きが多いので、なかなか話がまとまらぬ。まとまつたかと思うとまた異論が出るというわけで、話合いに非常に長い時間かかりましたが、大体のところの結論は私はもう出たと思つております。その数量、金額等につきましては、事務当局から御説明いたしたいと思いますが、私の理解しておりますところは、大体基本線はきまつたつもりでおります。
  130. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 きまつたとおつしやつても実行に移してもらわなければ何ともなりません。私今社会党で申し上げておりますが、これは社会党の委員だけでございません。自由党の方も改進党の方も社会党の方も、みんなそろつての話ですよ。つまり大臣のおつしやいます輸出努力のうちで、陶器のごとき物の輸出が一番まるまる外貨を獲得するには都合のいいものなんです。ほかに何の材料がいりますか。日本の土と日本の技術がまるまる外貨になるでしよう。獲得した外貨こそは少いかもしれませんけれども、ほかのもののように材料を差引いてみたら、残りは陶器が一番多いはずなんです。こういうものを輸出振興の対象として政府は当然これに努力を注がれてもしかるべきだと思う。しかも平和産業である。おまけにアメリカもイギリスももらいたい、ほしいと言つておる、こんなけつこうなものはないじやないですか。あなたたちの言うところの日米経済協力に一番ぴつたりだ。どん、ぴしやりと思うんですよ。それがなかなか遅々として進まない。この意味が私にはわからないわけなんですが、決定を見たということであるならば、恐れ入りますけれども早急にその発表をしていただいて、そうして一日も早くこの輸出振興ができまするように、ひとつ御努力が願いたいと思うわけでございます。  もう一つどうしても私承つておかなければならぬことは、前々から何度も申し上げたことでございますが、金融の問題でございます。今日私が非常にふしぎに思いますことは、政府デフレ政策から来るところの金融引締の政策が独走しておる。その点も知恵のない人が集まつてやればやむを得ぬとあきらめてみましても、どう考えてもふしぎでならないことがある、この解決をあなたは専門家ですから、ぜひひとつしていただきたいと思います。それはほかでもございませんが、金融を引締めすると言うて政府の代行をこれ承つておるのは銀行の窓口でございます。この窓口は一体資本をどのくらい持つておるかというと、せいぜい十億か二十億です。これがべらぼうな利益をあげておる。東海地方でも、十億の東海銀行が、上期だけで六億五千万円余の利益をあげておる。こんないい率のものは銀行以外にはありません。それはけつこうです。その点が悪いというのではない。もうけられることならけつこうだ。ところが一ぺんためしに大阪の御堂筋を歩いてみてごらんなさい。二キロの間に九十八の銀行がありますよ。それがかどというかどのよいところをみなとつておる。名古屋の広小路を歩いてごらんなさい。りつぱなところはみな銀行がとつておるが、まだ足りなくてどんどんふえていますよ。あの銀行は一体どういうことです。自己資金だけであれができるというならば、これはとんでもないことですよ。あの土地の権利だけでもえらいことですよ。建物の投資だけでも、自己資金をはるかに上まわつておる。土地の権利だけでも、また自己資金をはるかに上まわつておる。何ゆえああいうことをさせなければならぬのですか。おまけにこれがきようこのごろは何をやるかというと、デパートと結託して、鉄道の駅々にデパートをつくつておる。うそじやないですよ。名古屋駅でもつて今名鉄がつくつていますよ。東京駅でもつくつていますよ。至るところでつくつていますよ。これが中小企業を圧迫しておる。だからデパート法をかえなければならぬという話が出て来るわけですけれども、一体政府はあの銀行の横暴をどこまで許しておるのですか。ほんとうに資金がなく、政府の言うように遊休投資、過重投資をやめましようというならば、なぜ銀行はあんなところに投資をしなければならぬのですか。国会には扇風機もなければ冷房装置もないが、これは非常にはけつこうなことだと思う。今日見てごらんなさい。冷房装置のあるところは、デパートか映画館かパチンコ屋だ。みなこれ消費の面なんです。ところが紡績工場に入つてごらんなさい。今日この炎暑といえども、百二十度のところで女の子が九時間働いていますよ。うそじやない。住宅にも消費だからだめだといつて投資をされずにおいて、銀行だけは、だれのおかげですか。自己資金だけであんなことができますか。政府の預託された金を有効に使つておらぬから、結局そうなつておる。今度政府の方針では、中小企業金融公庫についていろいろ考慮するということが出ておるようでありますけれども中小企業金融公庫の預託されたその金さえも、ああでもない、こうでもないと言つて、半年も延ばして中小企業をいじめているというのが今日の銀行の実態ではないですか。これに対して銀行出のあなたはこういう傾向が生れているのをなぜ黙つて見ていらつしやるのですか、将来これに対してどうしようとおつしやるのですか、このままでけつこうですか。はたしてしかくさよう、このままにしておきまするならば、消費生活の面だけはそのように冷房装置や暖房装置、りつぱなものができてまことにけつこうかもしれぬけれども、みんな国民の遊ぶ方へ行つてほんとうに喜んで生産をしない、いや喜んでするどころか、資本家といえども金を借りて仕事をしようと思つても、金を貸してくれないのだから仕事ができない。こういう状況に相なつておるのですけれども、これを一体どうするつもりですか。ほんとう中小企業の指導育成の立場に立つていらつしやる大臣の御高説を承りたい。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在銀行の店舗の問題については、まず結論から申しますが、これ以上ふえることはございません。それから……。
  132. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これ以上というのはいつからですか。
  133. 愛知揆一

    愛知国務大臣 きよう現在から原則的に店舗がもうこれ以上ふえるということはございません。というのは、これはあえて先ほどもいろいろご議論が出ましたが、資金調整というような法律上の規制ができませんでも、金融機関に対する政府の監督権は非常に厳重でございますから、店舗の増設については政府の行政上の認可がいるわけであります。私の理解しておりますところでは、大蔵省では特に大都市についての店舗の増設は認めないという方針を確立したはずであります。これは念のためにあるいは大蔵当局からお聞取りいただきたいと思います。私はそういうふうに理解いたしております。それからさらに移転あるいは従来の店舗の増新築等の場合におきましても、本店のみならず支店もあわせてであろうと思いますが、金融機関の自己資本に対しまして、一定のわくを設けて、それ以上の金を自己の用に供する不動産に投資してはならないことに、これもまた監督規定によりましてそういう規定が実施に移されておるはずでございます。従つて従来、ここ一、二年の間に非常に店舗がふえたという点についての御批判はごもつともと思いますけれども、今後は少くともこれ以上ふえないと私は思つております。
  134. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間のようでございますから、爾余の問題はあすに移しますが、今の問題に関連して申し上げますが、以後ふやさないというお話は私はこれで三度承つたわけでございます。それは十九国会の折に中崎さんが再三この問題について質問をされました。と同時に私も承つた。そのときにやはりもう以後ふえないと、こういうお話でございました。ところがその後大阪において、東京においても、名古屋おいてもどんどんふえております。その後土地を買つた銀行があります。うそだというならば私は見せます。但しそれまでにあの十九国会の始まるまでに、その土地が売買契約が行われておつたというならこれはいざしらず、ところが広小路でもあれ以後大きな銀行が三つふえておる。今申し上げました御堂筋のごときは九十八行です。百行でしよう。まさに百鬼夜行の感がしてならない。これは横暴といわざるを得ない。この横暴がほかの業界もあるいはほかの住宅もこのようにふえて行くというならば、これはめでたしめでたしです。ところがこつちだけふえて、ほかの方がふえないものだから、恨みはみんなここへ集まつて来る。うそじやないですよ。腹を割つて話してごらんなさい。今銀行をほめている業界、銀行をほめている労働者、銀行をほめているお役所さんは一人でもございますか。一人もございません。おかげで法王を葬るべし、こういうことで一萬田法王、恨み骨髄に徹している。吉田さんの次にきらいなのは一萬田法王だ。こういうことを平気で言つております。それはそのはずです。ほんとう経済が健全であるならば産業界が実権を握らなければならぬのに、産業の代弁をするところの銀行が一番権限を握つておるのだから、こんなおかしな話はない。これでは幾ら業界の方々がどれだけ働いてみても、金利と税金のために御奉公するようなもので、さいの河原の石積みだと言われてもしようがない。そこでせつかくいろいろな法規によつてふやさないということがあるならば、これはほんとうに実行に移してもらいたい。今ごろからふやさないと言われてもそれは当然のことで、御堂筋二キロのうちに九十八行もできたのは、これは自然に分量だけでも統制して行かなければならぬ。これ以上ふえた日には、仲間同士が兄弟かきに相はんで倒れて行かなければならぬ。デパートもそういう傾向にあるのではないか。そういう意味におきまして、今後こういうことを厳重に監視されるだけでなくして、銀行の店舗というものは限度以上に来ているのだから、そんな金があつたならばぜひこれを民間の業界にほんとうに有効に、ほんとう生産のために経済にプラスになるところへ貸し出されるよう御努力が願いたい、こう思うわけでございます。爾余の問題については、まだたくさんありますけれども、明日に移します。
  135. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は齋木重一君。
  136. 齋木重一

    齋木委員 私は簡単に御質問いたしたいと思います。それは今先輩各位の貿易に関するいろいろな貴重な御意見を拝聴いたしたのですが、その一環といたしまして、私は硫安の輸出の諸状況と、日本の今国内におけるところの生産数量、それらの問題を具体的に一応承りたいと思いますので、硫安の生産状況はいかになつておるかということを御説明願いたい。
  137. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 二十九肥料年度の硫安の生産計画につきましては、先月の末に御承知の肥料関係の法律に基きます肥料審議会によつて御審議をお願いいたしまして、硫安に換算いたしまして二百四十万トンということで御決定を見たような次第でございます。
  138. 齋木重一

    齋木委員 肥料審議会において二百四十万トンと今御説明になりましたが、私どもの記録をもつて見ますと、そういつた点が二百四十九万四千トンということになつておると覚えておりますが、それに対する輸出、特に中共向けが強く要請されておりますにもかかわりませず、政府においてはいかなる対策を持つておるか。また朝鮮よりは中共の方が先約いたしまして要請をされておるにもかかわりませず、その順位を誤つて、朝鮮を先にして中共の方をあとにするというようなことも聞いておるのでありますが、それは実際であるかどうか。
  139. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 二十九肥料年度の輸出計画につきましては、政府原案といたしましては五十万トンの計画をもつて審議会に御審議を願つたわけでございますが、内需の見込みにつきまして種種御意見がございまして、結論といたしましてはこの輸出見込み量から三万トンを内需の方に振りかえまして、四十七万トンということに御決定を見たわけであります。ただ実はこの点につきましてはもちろん輸出も大いにやるべきだ。それでは生産計画をもう少し大きくできないかということの御意見がいろいろあつたわけでございますが、御承知のように電力量並びに料金の関係等もありまして、われわれの目標といたしましてはこれ以上に増産をいたしまして、従つて輸出についてもできるだけ多くいたしたい——ただ計画といたしましてはこれはやはり固いところを押えて立てるべきであろうという考えのもとに、結論といたしましては、ただいまのところ四十七万トンということになつております。この点につきましては、実は最近の内需の見込みが、関係の専門家の予想を非常に越えまして、非常に旺盛な需要を示しておりますので、その関係で、何といたしましてもことし一ぱいは非常に輸出余力の苦しい実情でございます。ただこの点につきましても農林省の方も非常に協力していただきまして、極力輸出余力をひねり出すという考え方計画を組んでおります。本歴年といたしましては、台湾向けにすでに長期の契約をいたしました分が十万五千トンであると思いますが、これを除きまして残り約五万トン足らずの輸出余力が残つております。それで来歴年になりますと相当輸出余力ができるのではなかろうか、かように考えております。  それから中共向けの輸出につきまして何か差別をしておるんじやないかというお話でございますが、私も実は最近軽工業局に参りましたけれども、少くとも私の承知しておる範囲におきましてはさようなことはいたしておりません。一例を申し上げますと、先般入りました中共米の五千五百トンの見返りとしての一万四千トンの硫安の輸出でございますが、これも契約面ではことし一ぱいという契約をしておつたわけでございますが、中国側から実は非常に急いでほしい、ぜひとも八月中に船積みをしてもらいたいという御希望がございまして、この点につきましても、契約は契約であるけれども、今後のこともあるので、でき得る限り協力すべきであろうという考えのもとに、農林省もいろいろ打合せをいたしまして、この分は今月船積みをするというふうに考えております。まあこれは一例でございますが、今後とも極力増産に努めますとともに、輸出につきましてはできる限り努力をいたして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  140. 齋木重一

    齋木委員 輸出をし、貿易をするということについての価格の点であるが、台湾、朝鮮向け、中共向けとの価格の点についてどういう契約をしてやつておるか、外貨獲得という意味合いからいつてどちらが高いのでありますか、まずお聞きいたしたいのであります。
  141. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 昨年度の実績におきましては、台湾向けの二十五万トンが五十六ドル八十セント、韓国向けの十六万四千トンが五十八ドルないし六十ドル、中国向けは、昨年度は数量がわずかでありまして、約一万トンが船積みされておりますが、六十ドルないし六十一ドル、その他大体六十ドルから六十二ドルまでの間でございます。御承知のように最近市況も逐次よくなつて参りまして、今年度の台湾向けの輸出契約分につきましても、種々折衝の過程がございましたが、結論といたしましては五十八ドル四十セントというところで折合つております。これはまあいろいろ契約の時期とか数量等にも関連するかと思いますが、市況としては逐次よくなつておるということを申し上げたいと思います。
  142. 齋木重一

    齋木委員 商売をするには高い方へよけい売つて、安い方へは少く売るというのが商法の原則だと思うが、どうなんですか。
  143. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 もちろん他の条件が同じであればさように考えるべきであると思います。
  144. 齋木重一

    齋木委員 さようなれば高い方の六十一ドル、六十二ドルという方へこれはまだ要求があるにかかわらず、これに対しては消極的であり、安い方へは積極的であるということは、外貨獲得と貿易の面からいたしまして、非常な矛盾があると思うのでありますが、矛盾がないと思うのでありますか、いかがでありますか。
  145. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 具体的の問題となりますと、これは最後は商取引の関係になるかと思いますが、しかし、もちろん御説のように、同じ条件であれば高いところへ売るということが原則と存じますけれども、やはり一定の数量をまとまつて、長期にわたつて買つてくれる一つの継続した市場を持つということも必要かと存じます。また従来から引続き買つてくれておるというふうな関係等も、これはある程度商取引上の、何と申しますか、信義と誠実の原則という関係も考慮すべきかと存じます。実は台湾向けの輸出につきましては、数量におきましても先方は今年度たしか三十一万トンを要望されておつたように承知いたしております。これはわが国の輸出余力との関係等もにらみ合せまして数量はこちらの出し得るぎりぎりのところで話合いをしておるわけであります。また値段につきましても、買手はなるべく安くと考えますし、売る方は高くということでございますが、結局折合いましたのがさつき申し上げました五十八ドル四十セントということになつております。ただしかし一般的の国際価格が逐次そういうふうに上昇して参るということになりますれば、今後におきましては価格についても逐次それにさや寄せと申しますか、その値段に近づいて来るのではなかろうか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  146. 齋木重一

    齋木委員 商法にはそういうことはない、高い方へ売るのが当然だ、こう言うが、それは実際においては行われていないということと、もう一つは、肥料審議会というものが輸出の問題に対して、国内消費または調整用というようなことも勘案して、いろいろやつておるように存じておりますが、この十七万五千トンの調整用だけでも、これだけ寝かしておくということについては私どもは納得が行かない点があると思うのであります。これはやはり国内の需給に不安を抱かない程度において、調整用のものを優先的にどんどんと高い方へ輸出するということが当然じやないかと思う。こんな十七万五千トンのものを一年間も倉庫に寝かせておくということは間違いじやないかと思う。一体審議会のそういつたものに対する権限は誰が与えたのであるか、そういうことはないと私ども思つております。審議会が貿易面に制肘を加えるとかなんとかいうことがあつてはならぬと私どもは存じておる。これらの点に対してはどのようなお考えでおるか。
  147. 吉岡千代三

    ○吉岡説明員 ただいまお話通り、一応国内需要の約一割程度を調整用として持つ建前になつておりますが、御承知のように肥料の方は需要期があるわけでございまして、その状況の推移を見ておりまして、さしつかえないという場合にはこれを輸出等に振り向けるというように御了解を願つておきます。
  148. 齋木重一

    齋木委員 私どもは硫安工場その他を実施において調査して来たのでありますが、生産の過程において現在においては設備その他の点からいたしましても、もう一割や二割は増産をいたしましても十分な余力があると私ども考えております。審議会がこういうことをきめて押えておくということでなくして、やはり生産さしてどんどんと輸出をし、貿易をして行くということは、外貨獲得の上において重要なことであると私は考える。そうして高い方へ早く売る。また約束をしたら約束した順位において早くやる。おそい契約はおそい契約、早い約束でやるということで迅速にやることが私は当然であろうと考えております。これらに対する早急な善処を私どもは要求するとともに、腹構えといたしましては通産当局はどうお考えになりますか。
  149. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この審議会の関係は、前国会で御審議を願いましたように、年間を通じての肥料の需給計画の策定について政府委員会に諮問するわけであります。諮問された委員会が答申を出しまして、それを政府が採択するかどうかは、また政府の別個の立場で行うわけでありますし、変更を要すると思われる場合には何どきでもまた変更を諮問することができることになつておりますから、審議会として拘束云々ということは私はないと思います。  それからただいまのいろいろ御意見の趣旨は十分尊重いたしまして、今後善処をいたすつもりでございます。
  150. 齋木重一

    齋木委員 それでは中共向けの問題といたしまして私は念のために申し上げておきますが、年間の契約が締結できたならば、これに即応して輸出ができ得るかどうか、また契約ができるという確信があるかどうか。そうすれば私ども考えがあるのであります。いかがなお考えでありましようか。
  151. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はこういうふうに考えておるのでありますが、だんだん将来の問題としてはそういうふうになつて行くと思います。ただいまのところはかりに年間を通ずる契約ができたといたしましても、御承知のように直接決済の方法がなかつたり、あるいは見返り物資がどういうふうに入つて来るかというような点などもございますから、かりに年間を通じましての肥料だけの約束が一応できましても、個々の取引についてはやはりそのときどきについての具体的な措置が今のところはまだひつようではなかろうか、こういうふうに考えております。
  152. 齋木重一

    齋木委員 見返り物資、それはごもつともだと思います。見返り物資等においても、今盛んにやかましく問題になつておる黄変米というような、あちらさんの日本国民を病人にするようなお米を買わなくても、五万トンでも十万トンでも、先ほどどなたかの御意見のあつた通り、りつぱな内地米に劣らない米を、これらの近いところかがらどんどんバーター制でお買いになることが当然じやなかろうかというふうに私ども考えております。そういうバーター制でやつたつて少しもさしつかえはない。それと同時に審議会の問題についてはそういうこともありますけれども、農林委員会では大臣の言うようなことは言いません。農林委員会の方は審議会々々々といつて、審議会に一つの防波堤をつくつて答弁をあいまいにいたしておるということを聞いております。間違いじやないかと思います。
  153. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その審議会の問題は法律文に明瞭でございまして、私は今諮問と申しましたが、審議会の意見を聞いて需給計画を策定する、こういうふうな表現になつておるはずでございます。その通りに運営しなければならぬものだと思つております。
  154. 齋木重一

    齋木委員 大臣はそうおつしやるが、ちようど粗糖を原材料であるというのと、食糧であるというのと、農林省と通産省とで意見が一致しないことがある。輸入粗糖は原材料であると言う方と、食糧であると言う方とあつて、いまだに通産省と農林省との間において明確になつていないではないか。そこをよく調整していただかなければならぬ。またそれを明確にしておかぬと、あなたはそうおつしやつても、農林省はそういつたようなことは言わないと思いますが、どういうふうな調整をおとりになるお考えでありますか。
  155. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうも砂糖、粗糖の問題のお話、まことに恐縮なんでありますが、今の審議会なるものは、今申しましたように法律の文言の上に明文で規定されておりますから、私の申しますことは農林省もまつたく同じ考えであろうと信じます。
  156. 齋木重一

    齋木委員 あとはまた後日に伺うことにいたします。
  157. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 次は川上貫一君
  158. 川上貫一

    川上委員 これは言うまでもないことでありますが、本日通産大臣からもいろいろ御答弁がありましたけれども、実際今の産業貿易国民生活上これはたいへんな問題だと思う。通産大臣はいろいろ答弁されましたけれども、これは部分的に一つのうまい手を何か講じようとか、こうやつたらすぐこうなるとかいうような、そういう簡単な問題ではなくなつて来ておると思うのです。  そこで私は部分的なことは問いませんが、第一にこういうことを考えるのです。今後日本経済自立と、自立貿易と、それから日本日本として立つて行くということを考えるためには、政治をするのにもつと国民と相談をしてやらなければとても解決せぬのじやないか。そのほかにもありますけれども、どうも国民の方にはあまり相談をせぬような形になつておるように思います。この点について私も聞いておきたいし、国民も聞いておきたいと思う二、三の点をお尋ねしたいと思います。まず第一に今の悪い状態、これは何といつたつて悪い。これは国際収支の関係から申しましても、あるいは日本の今の産業の経営の点からいつても、労働者の点からいつても、たいへんなことになつておるが、これは政治の上における根本的の問題です。日本の国際的な条件のもとにおける特殊な一つの悲しむべき状態であつて、通産大臣がいろいろそのわくの中で何とか考えてやろうと思つても、実際はできやせぬのじやないか。この点について大臣はどうお考えになつておるか。一口に申しますと、いろいろな言葉がありますけれども、終戦以来の方向、平和条約以来の方向、それから今日の国際的関係のもとにおける日本とアメリカとの関係、この具体的な現実の上でなかなかやれないことになつておるのじやないかと思うのですが、私見でけつこうですが通産大臣はそこをどうお考えになつておりますか。
  159. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も率直に申し上げますが、今日の日本経済をこれからどういうふうに持つてつたらいいかということについては、これはまつたく心痛にたえない、楽観を許さないことであります。非常にむずかしい条件がたくさんありますから、特に政府の中をわけるわけでもございませんけれども、通商産業省という役所におきましては、これは現在最もむずかしい段階であるというふうに考まして、私としても日夜非常な苦労をいたしておるつもりであります。
  160. 川上貫一

    川上委員 言外に一つの問題が現れておると思うのですが、まつたくそうだろうと思う。そこで今までの例によるとなかなか具体的な表現がなかつた例があるのですが、今度アメリカからFOAなり世銀の調査団が来て、これを契機として政府の方では三十年から三十四年くらいにわたる経済五箇年計画といいますか、何かそういうものをつくられて、これを調査団に出しておられると思うが、この計画内容というものは、この委員会に発表なさるのがほんとうだ私とは思う。この点をどうお考えになりますか。
  161. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外国調査団でありますFOA調査団に、政府として将来の計画などについて出したものがありと仮定すれば、当委員会に出すことはあるいは当然かと思いますが、前提が違つておりますので、私の方はそういうものは出しておりません。従つてここにお出しすべきものもございません。なお念のために申し上げておきますが、これは今のところではまだ私見でございますが、十七億ドル余りの輸出計画を三十二年度を目標としてつくつて、それから翻つて国内産業経済対策を長い目で計画的にやつて行きたいという考え方を、私といたしましては持つておりますが、これは私が就任以来そういうことをぜひ打出したい考えで、今年の一月以来研究いたしました結論でございまして、FOA調査団が七月上旬に来ましても、それとこれとは私には関係はないわけでございます。
  162. 川上貫一

    川上委員 これは長い議論になつて悪いですから私は言いませんが、そうすると、これは私がいろいろ聞き及んだだけではなしに、商業新聞に非常にたくさん書いてあるのですが、あれはまつたくうそである、こう通産大臣からこの席で言われる意味になりますね。全部うそだ、いわゆるデマだということになるのですか、これをはつきりしてください。
  163. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は新聞がどういうふうに報道しておりますかは概略知つておりますけれども、真相でないものもずいぶんございます。長くなつて恐縮でございますが、FOA調査団のマイヤー氏の到着以来数回会談しておりますけれども、徹頭徹尾先方としては日本の現状の調査をいたしたいのであつて、ネゴシエートする性格を持つていないというのがこの調査団の性格でございますから、従つて私の説明の大要あるいは質疑応答の大要は、昨年度のものにつきましては経済白書に尽きております。それからその後は、毎月経済審議庁中心で発表いたしております経済の月例報告を中心にして、現状の説明をいたしておるわけでございます。
  164. 川上貫一

    川上委員 そうすると、これは通産の関係ではありませんが、防衛道路計画というものが伝えられておるのですが、これもアメリカ側と折衝したことはありませんか。というのは、大臣が言われるいわゆる経済自立計画というものに関係があるからこれを聞くのですが、これもまつたくうそですか。
  165. 愛知揆一

    愛知国務大臣 防衛道路計画につきましては、私からFOA調査団に説明をいたしたことはございません。
  166. 川上貫一

    川上委員 はなかなかうまく逃げるのですが、あなたからでなくてもよろしい、閣議で了承して、そうしてアメリカ側日本政府から、だれがどうということはありませんけどれも了解を求めた、こういう事実があるのですかないのですか。
  167. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもFOAの調査団とは関係ないと私は思います。アメリカの方と日本のその方の担当者との間で、共同研究してみようじやないかという話があるようでございます。
  168. 川上貫一

    川上委員 これで長くとつてもいかぬが、そうでなくて、やはりほんとうのことを知りたいのです。六月十五日に閣議できめたんじやないですか。六月二十四日に木村さんはハルと会つている。七月十四日には、日本側とボーグマン准将と折衡した。それでボーグマン准将などは、援助もするし、大いにやつてくれということで、これは相当つていると思うのですが、それもあるのかないのかということになりますと、これは通産大臣ははつきり言えぬのだろうと思う。それはよろしい。しかしこういう問題があるのですが、こういうものと通産大臣の言われる——きよう言われたことじやありませんが、経済自立計画というものとどういう関係になるものでありますか。
  169. 愛知揆一

    愛知国務大臣 平たい言葉で申しますと、これは別格に考えております。
  170. 川上貫一

    川上委員 そうするとこういうことになりますか。経済自立計画は立てなければならぬ、これはあたりまえの話です。それから貿易も十七億ドルに伸張しなくちやいかぬ。ところが実際に日本国内の状態を見ますと、けさからいろいろ御質問もあつたように、たいへんな経済の状態になつている。その上に一方から言いますと、これは土木でありますけれども、仕事は一向進んでおらぬ。たとえて言えば、災害復興にしましても、一々内容は言いませんけれども、建設白書を見ればわかる。建設白書ではたいへんなことなんです。それは災害復旧も、都市の戦災復旧も、それから河川も砂防工事もほとんどできておらぬ。自立経済基礎はやはりここにあるわけです。一方においては愛知用水などの研究もやつてつて増産もしなければならぬというようなことも言われている時分に、九千キロ、三千数百億円をかける防衛道路というようなものが自立経済と合うのですか。これは別問題で、われわれの方とは一向関係なしに別格じや、こういうことになるのでしようか。そういうように受取りましたが……。
  171. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その通りと申し上げてさしつかえないと思うのであります。もう少し敷衍して申しますと、経済自立計画については、国内でいたします場合も、これは相当いわばコマーシヤル・ベースで考えなければならない。それから国内の災害復旧その他に対しましては、建設白書の指摘しておりますように、ずいぶん問題はございますが、これは私は原則的に国内資金でまかなうべきものであるというふうに考えるわけでございます。
  172. 川上貫一

    川上委員 そうすると、そういうものは国内資金でまかなう。それから防衛道路とかあるいは防衛計画、自衛隊の拡充、これなんかはとにかくアメリカにやつてもらう、これは別問題なんだ、こういうことになるわけでありましようか。どうもそれでは日本自立経済としては非常に片ちんばなものになると思うのですが、そう理解していいでしようか。
  173. 愛知揆一

    愛知国務大臣 防衛道路と別格と申し上げたのでありまして、そのほかの計画は、総合的に円資金計画中心にし、経済自立計画中心にして検討し、組み立てつつあるわけであります。防衛計画ももちろんその中に入るものと私は考えております。
  174. 川上貫一

    川上委員 しかし通産大臣はそう言われますが、実際そういうことはできぬのじやないですか。つまり防衛道路計画とかあるいは日本の自衛隊の拡充、自衛隊のみならず再軍備という言葉でもいいのですが、いわゆる国防力の充実、こういうものと兼ね合せて考えないで、別格というように考えたら、第一向うさんが許さぬじやありませんか。ここで私は通産大臣も困つておられるのじやないかということを前に聞いたわけです。そう簡単に援助援助としてやつて、通産関係の産業自立計画はお前の方でやれ、こういつたようなかつこうには決してなつておらぬのじやないか。第一に調査団を機としてアメリカ側からは日本の防衛推進態勢の確立基本方針というようなものが来ているはずである。それは内容が多少違うか知れませんけれども、一口に言うと、第一に重工業を初めとして日本産業構造をどうしても軍需生産、すなわち自由諸国の防衛という見地に立つて速急にその線に乗せなければいけない。こういういろいろな言い方はありましようが、もつと具体的に言えば、一朝事があつた時分にはその態勢がぐんとすぐ強化されるという態勢考える必要があつて、そのためにはある程度採算需給というものも場合によつては第二義的に考えなければやむを得ないというようなところまで来ておると思うのです。その具体的内容もあるのですが、こういうことになつておるのでありますから、防衛道路とかそういうものは別格だ、通産行政は独自にやるのだというたところで、これはできぬのじやないですか。こういう点で大臣はいろいろ困つておられるのじやないかと思うので、逃げ口上でなしに、そこのところをこういう事情があつて通産省としてもここは困るのだということを国民に明らかにされることが、実際にこの窮状を打開して行く一つの道だとわれわれは思う。国民とともに考えようじやないか。この点はどうですか。
  175. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一番最初の御質問が多分外資導入問題あるいはFOA調査団の関係で御質問でありましたから、防衛道路は別格である、こう申し上げたのであります。しかし同時に日本経済自立——防衛計画をも含めたその計画は総合的でなければならないということは御指摘を待つまでもなく私もそう考えております。そこでちよつとくどくなるかもしれませんが、筋書を申し上げますと、実は昭和三十年度の財政計画というようなものが少しきちんと想定ができるといいますか、これはまだ研究中でございまして、まだ全体のフレームが出ておりません。しかしながらおそらく想像されることは、私も再々言つておりますように、少くとも来年度一ぱいくらいは二十九年度と同じようないわゆる地がための時期であろうと考えるのであります。そこでたとえば財政計画にいたしましても、ただ単に一兆という数字の羅列に膠着する必要はあるまいかと思いますけれども、いわゆる均衡の完全にとれた財政計画でなけらねばならない。しかりとすれば、この点から一般会計の歳出の多くの総額を期待することはできませんし、財政投融資も多くを期待することはできない。両々相まつて従つて緊縮財政を来年はとらざるを得ないと思います。それから金融政策については、いろいろの考え方を積極的に考えて行かなければなりますまいが、これとてインフレ的な金融政策をとることはできないと思います。そうすればそのわくの中で産業合理化をするにしても、あるいは防衛生産計画をするにしても、そのわくの中で考えることが私は望ましいと思います。ただ防衛計画などの場合において、MSAの援助でエンド・アイテムで入つて来るものはございましよう。しかしこれとてもエンド・アイテムが入つて来るからというてそれにマツチする円資金が今のわくよりも越えてはならない。いわんや外貨を借り入れる場合におきましても、借り入れるからといつて国内円資金計画がインフレ的であつてはなるまいと私は思います。そういうわくの中で私は自主的な計画を立てるべきであると思いますし、現に世界銀行に話合いを進めております。外資導入の大体六、七千万ドル計画も私はそのわくの中で考えるものだと思つております。それから防衛生産については、十九国会のときに川上さんにお答えしたと思いますけれども、そのときの気持と私は全然かえておりません。これは自衛隊の漸増に伴つて、この自衛隊が必要とする装備を将来日本の現在のポテンシヤルな工業力によつてつくり上げとるいうことが終局の目標だと思つております。ところがこの中においては御案内のようにたとえば鉄砲のたまをつくるものであるとか、あるいは火薬であるとかあるいは艦船をつくるとかいうようなものについては、すでに相当の設備があるのでございます。これに若干の補強の資金を注ぎ込めばその程度の装備は私は充足できると思つております。問題は今後起るであろうところの航空機の需要あるいはそれに伴う燃料、あるいはそのほかの原子兵器であるとかいうような将来高度のものが必要になつて来た場合にそれをどうやつて行くかという研究施策の問題が現在のところあるわけであります。これによつて国内の他の民需産業が圧迫されるというような程度のものではないし、またそうあつてはいけない、またそのためにだけ外資あるいはそれに類するものが入つて来るのでは困る、私は大ざつぱに申しましてそういうふうな筋書のもとに自立経済考えて参りたいと思います。
  176. 川上貫一

    川上委員 大体そういうことになつて来ると、ここで結論を得ることはなかなかできませんが、今通産大臣が言われたような、そこのところに大きな問題があるのであります。つまり軍事力の強化も認める、再軍備もしなければならぬ、防衛道路もつくるのだ、外資導入もどんどんするのだと言う、そのわくの中で日本経済自立考えておるのだということになるのですが、そういうわくといいましても、そういうことを前提とした、一つの仕事とした大きなわくです。この中で自立経済をやるといつてもそんなことやれるものじやない。それを通産大臣は困つておるのでしよう。やれますか。そこが困つておるなら困つておると言つたらどうですか。困つておるということは言えぬかもしれない。というのは借款をしましても、この借款は必ず軍事力の強化と取引です。これなくして借款は来やしません。それからデフレの問題にしても向うの条件です。それから軍用道路防衛道路といいますか、こういうものもやはり借款あるいはアメリカの援助というものとの、——形はどういう形になりましても、事実上の交換条件になるのです。そうしてみると、別ものでも何でもないので、それを全部ひつくるめて通産行政というものを立てなければならぬのです。そうするとやれつこないというのが、通産大臣の結論にならなければならぬと思うのですが、そこのところをたいへん濁しておられる。そこでこういうことを一つ聞いてみましよう。防衛道路のようなものをやることは、通産大臣は賛成か不賛成かということです。通産大臣産業発展のためにいいと思いますか、どうですか。
  177. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえば防衛道路にだけしか使えないものが、借りられるかもらえる場合においては、これは防衛道路をつくることが非常にプラスだとおもいます。特にいろいろこれについては研究室があるようでありますが、いわゆる中央道案というような本土の中央を縦断、横断するような、未開のところで、非常に近代的な大きな道路ができるというようなことは、ひいて就業問題の解決の一助になるのみならず、未開発資源の開発ということにも相当の予期せざるプラスもあると思いますので、私はそういう意味においてこれはけつこうなことだと思つております。
  178. 川上貫一

    川上委員 そう言われると問題になつて来るのですが、借りられるか、もらえるかしたらよろしいというのでありますが、もらえる見込みがありますか。通産大臣としてはもらえそうだということがなければ、青年団の演説会のようなものだ。それから借りられるかというのですが、いま一つの質問は、今度世銀に要求しておるというお話が今もあつた。その条件はわかつておるか、どういう条件で借りるのですか。それから政府はどのくらい期待しておるか。これは開銀だけではなしに、ほかのものもあると思います。この三点を伺いたい。
  179. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は防衛道路に使う以外には使えない金であつて、もらえるか借りる金があるならば、それに使うことは適当であると思いますと申し上げたのでありまして、これであなたの御質問は私としては全部カバーしておると思います。
  180. 川上貫一

    川上委員 ちつともカバーしないのです。そうじやないのです。たとい借りるといつても、借りたら返さなければならない。借りるということは借金であります。借金をして、貸してくれさえすれば何でもやる、貸してくれさえすれば戦争でもやるというものではないと思う。経済自立考えておる以上は、無用なことにかけるというならばいらないというのが、一家の経済つて同じだと思います。だから借りるかもらえるかというような抽象論を言いまして、そうすればつくつてもいいということになれば、これは防衛道路すなわち軍事的な道路をつくつてもいいということになる。そういう考えと通産行政の自立考えるこの形と、両立するかということを私は聞いておるのです。全部言つておらないと思う。
  181. 愛知揆一

    愛知国務大臣 もちろん借りるという言葉の中には、条件ということはありますから、条件はできるだけ日本に有利であることが望ましいことは申すまでもないことであります。私はこう思うのです。
  182. 川上貫一

    川上委員 そのことじやないのです。それならば、世銀から借款しようとしておる条件は、昨年の火力発電の条件と違うのか違わないのか。それより苛酷なのかどうか。もつとゆるいのかどうか。それはどうでしよう。
  183. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはきまつておりません。
  184. 川上貫一

    川上委員 そうすれば、政府は条件も何もわからないのに借りることだけ考えているのですか。それはむちやである。借りるというならば返すのだ。そういう答弁は私はひどいと思う。条件が何かわからない、どういうひもがつくかわからないのに借りることに一生懸命になつて努力する、報告書も出そう、これで日本産業自立計画を立てる、こういうことをしなければならない通産大臣は、たいへん困つておるというならば話はわかる。そうじやない。あたりまえのように言われると私も聞かなければならない。条件が少しもわからないのに借りようとしておるのです。通産大臣としては、火力発電の条件以上の条件で借りる方がいいと考えておられるか。
  185. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そうむきにおなりになりますけれども、世界銀行から何を何ぼ借りるかということもまだきまらない。調査団が来、上農業開発の関係を、南は九州から北は北海道まで、いわゆるエンジニアリング・サーヴエーを今やつておる段階であります。従つてどういうものに対して借りたい、どういうものに対して貸したい、条件はどうかというような話には、まだ全然入つておりません。従つて未定だとお答えしたのであります。あとは私見でございますが、もちろん火力借款の条件についてはいろいろな御議論もありましたから、それを十分その後の輿論に聞いて、日本にとつて一番有利と思うところに借りられるとすれば、条件の話をしたいと考えております。
  186. 川上貫一

    川上委員 それだから国民とともにやろうとしておらないというのです。今この借款ができなかつたならば、政府としてはたいへんなことです。一厘も外資導入ができないということになつたら、第一に吉田内閣は持ちますか。これでは政策まるつぶれじやないか。今一番力を注いでおるのは、私は善悪を言つておるのではないが、事実上の借款の問題ではないか。条件がよかつたら借りるとか借りぬとか、そういう問題ではない。長い間日本とアメリカの間では、この借款問題で交渉が行われておるのです。条件はちつともわからないが、借りさえすればいいのだというようなことを通産大臣が言われなければならぬこと、ここに非常に困難な問題が通産省としてはあるんだということを、ひとつ率直に明らかにされたらどうかと私は聞いておるのです。
  187. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は借りさえすればいいとは全然言つておりません。防衛道路については別格だということを申しただけでありまして、世界銀行との関係はないのであります。FOAとの関係もおそらくないと思います。そのほかの点において扱われておりますから別格だと申したのであります。世界銀行からの借款については、先ほど的確に私としては申し上げたつもりでありますが、日本経済自立、特に来年度の大体の見通しのもとにおいては、世界銀行の借款をするからといつて日本がインフレになつても困るというような点から考えて、着実に考えて行きたいというのであります。もし借りさえすればいいんだというならば、インパクト・ローンでも借りて事業を起せばいいでしよう。しかしそうすればインフレになるからそれはいやだという態勢をわれわれはとつておるのでありまして、その点はお聞き違いのないようにお願いしたいと思います。  それから国民とともに考えるということ、まことにその通りなのでありますが、一党一派に偏せず私は考えるのに、合理的に国民に批判していただきたい。大体話が詰まつて来て、たとえば愛知用水なら愛知用水というものは、何年の期限で何分の利子で、担保はこういうことで借りることになりますということを、具体的な話になつてからすべきであつて、今そこまで話が行つていないのでありますから抽象的でありますが、われわれが一番日本のためになるような条件で、しかもべらぼうな何十億という金を借りようと言つているわけではなく、償還計画も十分考えて、そうしてこれから具体的な話合いに行こうとしておるのでありますから、率直にそれを申し上げておきたい。
  188. 川上貫一

    川上委員 およそわかりましたから、これはこれでおきます。とにかく条件はわからないが借りることに間違いはない。そこでこれにつけて聞きますが、MSAの小麦粉三十六億円がある。あれは日本政府の勘定に払い込まれましたかどうか。
  189. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の理解しておりますのは、あるいは違うかもしれませんが、十億円程度日本の特別会計に振り込まれることになつたと思います。これはきよう現在振り込まれておるかどうかは、私の所管でございませんからちよつと的確でございませんが、これはただいま振り込まれんとしておる状態だと思います。
  190. 川上貫一

    川上委員 それは使途を指定してありますか。全然指定せずに、十億円ぽんと開銀に払い込まれたのかどうか。
  191. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その使途と特例会計への払込みとは別でございまして、今後使途がきまるに応じて開銀を通して融資先に融資されることになると思います。その細目はまだきまつておりませんが、大体の大綱だけは、関係者同士の打合せは済んだはずであります。
  192. 川上貫一

    川上委員 使途がきまらなければ開銀に払込みをしないのでしよう。こういう方向に使うということを日本政府アメリカ側と折衝して、使途についての意見が調整できなければ払込みしないはずなのですから、これは調整はできたのだ、つまり使途は形式的にはどうか知りませんが、実質的にはきまつておると考えてよいのだと思うのですが、それでよろしいですか。
  193. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は明確でございません。事務的に別途にお答え申し上げます。
  194. 川上貫一

    川上委員 そうすると、そこで指定されましたら、開銀はどうしてもこれは出さなければならぬことになるのですか。開銀の規則で貸されない場合には貸されないことになるのですか。これはどういうぐあいになるのですか。
  195. 愛知揆一

    愛知国務大臣 開銀の本来の自己資金と違いますから、その融資のやり方等につきましては、国有の資金の貸し方とはおのずから扱い方が違うのではなかろうかと思います。
  196. 川上貫一

    川上委員 そうすると私はこれらは贈与じやないと思う。ひもがついておつて、それが下まできめられてしまつてつては、これは三十六億円もらつたことじやない。これは一つの条件の問題なのでも。条件がわからずしてやるからこういうことになるのです。条件がわかつてからと言いますけれども、そうでない。無条件に買うこと、もらうことを先にきめてしまつて、それからあとからその条件とかいろいろなことをきめて行きますからどうにもかつこうのつかぬことになつてしまう。火力借款でもその通りなのであります。そこで私が聞いたのは、世銀からの借款の条件がわかつているかと聞いたのですが、条件はわからぬ、こういうことでありますから、これはこれ以上聞きません。MSAの小麦の代金で、アメリカの所有に属するもの、これは特需の代金として支払われることになるのですか。
  197. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちよつと言い足りないことがあるようでありますから補足して申し上げますが、火力借款のときに、条件がわからぬで調印をするようなぶざまなことはいたしておりません。その調印された条件が苛酷であるかどうかこれは別の批評がありましようが、事前に条件がわからずに借りたなどという、そんなむちやな話はございません。それから三十六億円の問題につきましては、ここに今条約と法律を持つておりませんから正確な表現はできませんが、日米双方の合意によつてその使途をきめるというような文言があるのでございまして、その両者の合意ということは、およそこういうカテゴリーのものに対して融資をするということについて合意をしたいということが別に了解されておるわけでございます。従つて事前にはやみくもであつたということは、この点についてはございません。  それからただいまのお尋ねでございますが、御承知のように昨年の秋から話になりましたいわゆるMSA五百五十条によるところの五千ドルの小麦粉の贈与につきましては、すでに話合いがきまつた通り、そのうち一千万ドルは両国政府の合意のもとに使えるようにして日本政府に贈与したというたとになつております。それからあとの四千万ドル相当分の円資金については、小麦が入つて日本で円で支払われるに従つてできるものを二割ずつ三十六億の方に払い込まれて、残りの四十万ドル相当分として米国は政府の勘定に振り込まれるわけでありますから、この方はいわゆるオフ・シヨアー・パーチエスの代金として充当をされるということに相なつておりますことは、前国会でも再々質疑応答申し上げたところであります。
  198. 川上貫一

    川上委員 アメリカが持つておりますMSAの二割以外の八割の小麦代は。
  199. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ですから、それは今申しましたように、五千万ドルのうちの二割の千万ドルはグランドになつておる。残りの四千万ドル相当分は、従来日本で発注することになつていたもの以外のオフ・シヨアーの代金の支払いにアメリカとして充当する、こういうことになります。
  200. 川上貫一

    川上委員 それが従来の特需の形になつてつたものです。このものにその小麦代を支払いをする、こういう問題が出ているんじやないか。
  201. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは域外発注といいますか、これは特需の中の一項目になるわけでありますが、それの中のどういう形でこれが使われるかということについては、はつきりした具体的な措置はまだきまつていないわけであります。しかしそれが発注の代金に充当されるということは初めからきまつてつたのであります。
  202. 川上貫一

    川上委員 初めからきまつておるおらぬはどつちでもいいのですが、そうするとそれだけ特需あるいは域外発注によるところのドル貨の収獲はなくなる、こう考えていいわけですか。——そうすると小麦の三十六億にしましても、それは初めからきまつておる、日本とアメリカとの合意の上云々と言いますけれども、これは対等のものじやない。私は繰返して通産大臣立場に立つてつておるのですが、通産大臣も困るんじやないかということを言つておるのは、これは対等じやないのであります。実際は植民地になつておるのです。それだから合意の上でやると言いますけれども、強引にアメリカから言われたら、どうしても実際問題としてそれが通るのです。そこで国民との相談をしてやらなきやいかぬのじやないかということを言つておるのです。というのは、政府立場とアメリカの立場は、アメリカが強い。そうして非常な支配力を持つておるのです。これを政府だけの力で当ろうとするからやれないのです。これを国民と力を合せて、相談をしてやらなきや打開できないんじやないか。それがいかぬから通産大臣は非常に困つておるんじやないかということを、私は大臣立場に立つて聞いておるのです。ところがどうも困つておるとも言わぬし、困らぬとも言わないのですけれども、とにかく言い抜ければいいというようなことがいつも繰返されるので、この小麦の三十六億円にいたしましても、これは国民はもらつたものだというような考えを持つておる。もらつたものはかつてに使えるのであるというように国民考えておる。またそれ以外の八割に相当するアメリカが所有権を持つておる円にしましても、これを持つておるために、域外発注があつてもそれはドル貨の収穫にならぬようになつておる。そういうことは国民は知つておらぬ。何かしら援助を受けてしまつておるような感じを持つておる。政府の方でも来年度もつと小麦でもたくさん受けるというように考えておるらしい。そうすると、これでどんどん円貨で払われたら、域外買付は特需に入らぬ。それから一方二割もらつた三十六億円では、形式には合意だが、実質上向うさんの言う通りに使わなければならぬ、こうなつてしまうと、これに援助でももらつたものでもないということに実質上なるのです。だから私は援助問題も条件の問題も繰返して言つたわけです。これがはつきりしておらぬと、ただ合意でやるとか、そこは何とかやるというような形でやつておるから、実際問題として通産大臣としても困る問題ができるのでしよう。火力借款の問題にしましても、何もぱつと判こを押してそれから条件がきまつたというようなな子供らしいことを言つておるのじやない。あれは実際問題としてのまなければならぬというところに追い込まれておる。こんなことではもう借りませんということは言われないところまで来ておるのが事実なんです。それを借りておる。その条件はきわめて苛酷であつたのです。このことを国民にはつきりと言うて、国民と力を合せて、そしてやはり経済外交あるいは経済自立計画を立てる、この決心を通産大臣は立てなければ、中日貿易なんということもできつこない。この日本の疲弊した状態をとても打開することはできない、こう思うのですが、これに対して通産大臣はそうお考えになりませんか。
  203. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はさつきから言つておるように、国民的な納得の上に立つて経済外交をやらなければならぬということは、あなたのお考えとその点はまつたく同一なんです。今あなたは何か言いのがればかりしておるというようなことをおつしやるけれども、それならば前国会における速記録をここへ持つて来ていただいて、私の言つておることが少くとも筋がはずれていないということを確認してもらいたいと思うくらいです。私はうそは申しておりません。
  204. 川上貫一

    川上委員 通産大臣がうそを言つておるというわけではない。それは形式論であるのです。実質的にはそういう大臣の言われるようなぐあいに行つておらぬのです。実質的には合意でやるといつても、対等の合意はできないのだ、事実がそうなんです。そうだから、条件なしに、条件を考えないで借款するのが第一だというような態度、それ自身が大きな問題じやないかというのです。言いかえれば、日本政府全体、政府それ自体が日本経済自立と国の独立ということに対して本腰になつておらぬのじやないか。その中で通産行政を大臣がやろうとするのだから非常に困るのじやないかということを聞いておる。しかしこれはこれ以上聞きますまい。  そうすると、すべて通産大臣の御答弁によると、第一に損の行くようなことは一つもやらない、借款をしてもこれは一々日本とアメリカの合議の上でやるのだから、こつちの気にいらぬようなことは全然やらぬ、そういう心配はない、こういう結論になるのです。そこでその問題をいつまでやつてつてもいけませんから、ひとつこういうことを聞いておきたいのですが、さきに聞きましたように、ココムの会議日本の代表が行つてつたのか、行つておらなかつたのか。これは通産大臣も中国との貿易はぜひやらなければならぬということをたびたびここで言つておられるのですが、ところが実際においては日本通産省やあるいはある一部の政府関係が主観的にどう思うとも、客観的にやることはできぬ、そういうことになつておるのじやないかということを私は全体を通じて言つておるのです。そこでこれは例として言うのですが、ココムの会議日本の代表は行つてつたのか、また行つてつたとすればどういう資格で行つてつたのか。そのココムの会議に出ておる日本の代表者が、ココムの会議で共産圏に対する禁輸項目の緩和という問題で、イギリスその他が提出したその案に反対しているという事実がありはしないか。これは一体だれのさしずなのか。私は、こういうことをしなければならぬところに、やはり一つの問題点を見出すのです。大臣にはその意味がわかりますか。これは一つの例として私は聞いておるわけですが。どうでしようか。
  205. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、率直にお答えいたしますが、午前中にもお話がございましたが、率直に言つて私は知らないのです。知らないから知らないと申し上げるのでありまして、知らないことがお前の責任だとおつしやられればそれきりですが、事実知りませんので、ただいまのところ知らないと申し上げたい。いずは調べてみることにいたします。
  206. 川上貫一

    川上委員 代表は出ておるのですか。
  207. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは御承知のようにフランス大使館に従前——今は帰朝いたしまして、そのかわりがだれになつたはかちよつと忘れましたが、大使館の参事官の湯川君がこの連繋に常時当つておりまして、これは非常に苦労をしております。と申しますのは、私も昨年の秋にその苦心を目のあたり見たのでありますが、各国では各物資の専門の非常ないいスタツフをたくさんそろえている。私もできれば日本側にそういうスタツフがそろつて、そしてもつと発言権を強め、堂々とやれないものかということを感じたくらいでございまして、かなり一生懸命に従来やつておりましたその事実は知つております。
  208. 川上貫一

    川上委員 通産大臣がそれを知らぬというはずはないのであつて、これはもうおかしいように思うのですが、知らぬと言われればこれはやむを得ません。やむを得ませんが、中国貿易の問題というものはココムと非常に重大な関係がある。日本の代表者が出ておるのか出ておらぬのか。どういう資格で行つたのか。それは何という人なのか。しかも向うでそれに反対しておるのだから、なぜそういうことをするのか。これを、中国の貿易、世界の貿易を担当している通産大臣がやはり知らぬはずがないと思う。こういう点がやはり問題なのです。これは重大な問題です。私は何も通産大臣は責任をとつておらぬじやないか、抜けておるのだということを、言つておるのじやない。こういうことになるからくりがこの中にあるであろうということを言つておる。このために実際の自立経済とかなんとか言つても、通産大臣がいくらがんばつても、やれぬ問題があるのじやないかと私は繰返し言つておる。その根本の問題はやはり終戦以来の日本の国際的政治関係の問題、それから単独講和に基くところの問題、その後世界の情勢の変化に伴つて日本の軍事化がどんどんアメリカによつて進められておるという問題、この中にあつてこれをやらなければ政府としては立つて行かぬし、それと日本経済自立とは両立をするわけではない、こういう形で通産行政はますます行き詰まりにあるのじやないか。これを通産大臣もおそらく感じておるであろうと思う。だからたびたび中国貿易をやると言われても事実できない。たとえて言えば中国と貿易をすると、台湾などは中国と貿易をした商社に対してどんどんボイコツトをやつて、君のところとは契約をせぬと言つておる。こんなことは国際商慣習上慣例がないのです。政府としては蒋介石政府に対して外交上の交渉をする余地があるのです。このようなことは信義に反するのじやないか。だがそれができない。なぜできないかというと、うしろにアメリカがおるのです。ここが問題なんだ。朝鮮に硫安を出すという問題もおそらく通産大臣個人の考えとすれば、李承晩を助けなければならぬと思つておられることと思うのだ。けれどもどうしてもこれはやらなければいかぬ。そうして中国はあとまわしにしなければならぬ実情がある。これは私があなたのことをいい悪いと言つておるのじやない。このような状態に日本の政治がなつておるのじやないか。ここのところは非常に困難な状態になつておるということを通産大臣みずからが先頭に立つて事実を明らかにして国民とともに闘わなければならぬのじやないかということを私は繰返の言つておるのです。その点通産大臣のお考えはどうでしようか。
  209. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今川上さんの言われましたような点は、根本のねらいは別といたしまして、私はまつたく御同感です。これは非常にむずかしいところだということは冒頭にも申し上げました通りで、私のむずかしいところだと言つておるのはあなたのおつしやるような意味では必ずしもないと思いますが、通産省なり経済審議庁というところは、まつたく容易ならぬところであつて、私も常々これはますます努力しなければならないということを痛感しておるのであります。そういう点におきましてはまつたく御同感でございますが、どうぞこの上ともよろしく御鞭韃を願いたいと思います。
  210. 川上貫一

    川上委員 私はいろいろなことを聞いたようですけれども、何もあげ足をとつてどうこうしようという考えで私は聞いておるつもりはない。実際に今の日本の状態というものは通産大臣がいくら努力をされてみても、小手先である一部分をつつついてみてもこれがりつぱに開けるという問題じやないと思う。これは国際収支の問題にしましても、ここのところをちよつとこうやりさえすれば今のわくの中で開けるんだ、こういうことはないのだ。こういうことがないのにそこに落ち込んでおりますから、一兆円予算とかあるいはデフレとかいつても、形は非常にいいのですけれども、結果においては国民が非常に困難をするというところへ落ち込んでしまうと思うのです。  そこで私は最後に聞きたいのですが、通産大臣の個人の考えでもよろしい、何でもよろしいが、中日貿易にしてもその他の貿易にしても日本経済自立にしましても、アジアにおいて日本が五億五千万の中国、それからヴエトナムにおける民族解放の戦い、独立の希望、こういうものを無視して日本経済がどうしても立つはずはないと思う。ところがここのところは日本の再軍備の問題で、その問題とは矛盾するのです。これを解決する道はなぜ矛盾するかといえば領土の主権の尊重とか、お互いに侵略はし合うまい、政体のいかんということはおのおのの自由にしようじやないか、これはお互いに認めようじやないか、他国の政治に対しては干渉すまいじやないか、平和に経済の交流をやり、文化の交流をやり、お互いに平和的に立つて行く方法を話合いで進めて行こうじやないかという原期があるのです。この原則の上に立たぬ限りは、今のような状態では、いくら努力をしていろいろなことをしてみても経済自立計画なんというものは立たぬのじやないか、こういうことなんです。これは何も政党政派の問題じやないと私は思うのです。通産大臣としてもおそらく腹の中ではいろいろ考えておられるとは思うのですが、こういうような世界全体に対する共存の原理、この政治を日本において打立てなければならぬとお考えになるか、それともそんなことは今の状態のもとではなかなかできないとお考えになるか、簡単でけつこうですから率直に意見を聞かしていただきたい。
  211. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は今朝も申したと思いますが、最近のジユネーヴ会議やインドシナの休戦後における国際情勢からいえば、幸いにして世界はますますもつて対立よりも安定の傾向に向いつつあるのじやないかと私は想像いたします。そのもとにおいて日本立場というものは、あるいはアジアに対し、あるいは西欧諸国に対し、あるいは共産圏に対しどういうふうにやつて行くかということで、新しい環境が開けて来たような感じがするのであります。しかしこれを私の受持ちの経済問題からすれば、先ほども申しましたように、この面において明るさを感ずるけれども、それだけでだらだらしていればむしろ逆に政治的な対立が緩和されるということは、それだけ経済競争が実に深刻な状態になつて来るのであるから、ここでやはり緊褌一番、自立経済と良質廉価な輸出努力しなければならない。この覚悟を新たにしなければ再び立つことはできないであろう、こういう感じがいたしますので、そこから逆に出発して参るべきだと考えております。
  212. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 それでは本日はこの程度にて散会し、明日は午前十時から開会いたします。     午後六時一分散会