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1954-05-29 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十九日(土曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 首藤 新八君    理事 中村 幸八君 理事 福田  一君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小金 義照君    始関 伊平君       田中 龍夫君    土倉 宗明君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       柳原 三郎君    加藤 清二君       齋木 重一君    伊藤卯四郎君       中崎  敏君    川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁徴収部         徴収課長)   桃井 直造君         大蔵事務官         (国税庁税部         長心得)    村山 達雄君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長の選任  閉会中審査申出の件  委員派遣に関する件  木材利用及び中小企業に関する小委員長より報  告聴取  中小企業に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず木材利用に関する小委員長より発言を求められておりますので、この際これを許します。中崎敏君。
  3. 中崎敏

    中崎委員 木材利用に関する小委員会の第二回中間報告を申し上げます。  木材利用に関する小委員会におきましては、前回中間報告後昨二十七日まで前後二回会議を開催いたしまして、主として合理化推進具体的方策に関しまして検討をいたしました。その結果、第一に、閉会中も引続き本件に関する調査を継続すること。第二に、前回報告いたしました合理化推進協議会については、所期の目的を遺憾なく達成せしめるためには諸般の事情を考察いたしまして、結局法的根拠を持つた本格的審議会をつくるべきであるが、その立法措置についてはなお慎重に検討を要する点もあり、今や会期切迫の折からでもあり、かたがたとりあえず暫定的にお手元に配りましたような官庁関係協議会を設置すべきである。ついてはこのことを通産委員会において強く政府に要望すべきであるとのことに全員意見の一致を見た次第であります。  以上をもつて私の第二回の報告を終ります。
  4. 大西禎夫

    大西委員長 以上で木材利用に関する小委員長よりの発言は終りました。  次に中小企業に関する小委員長より発言を求められておりますのでこれを許します。永井勝次郎君。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 中小企業に関する小委員会審議の経過及び結論を申し上げます。  政府健全財政を標榜し、昭和二十九年度歳入歳出予算総額を一兆円のわく内に押え、国民生活の安定をはかり、あわせて国際収支均衡をはからんと企図しているのであります。申すまでもなく、自立経済確立の礎石としての耐乏、緊縮政策の必要と意義は十分認めなければならない。しかしながら財政を緊縮し、国際収支均衡をはかるための日銀の金融引締めは、日を追うて強化せられ、デフレ政策への不安は社会全体の上に暗影を投じていることもまたいなめない事実であります。ことに財政支出、金融引締めの強化は、ともすれば量的統制終つて、質的な施策緩急軽重その当を得ざる点があり、いわゆるそのしわ寄せは、中小企業の上に最も強く現われ、大企業企業経営の苦渋は、傘下下請企業への支払い手形不渡りとなつて現われ、中小並びに零細企業固有苦しみをさらに倍加しているのが現状であります。ために倒産商社閉鎖休廃業工場の続出は、国内全域に波及し、不渡り手形の激増は日を追うて累増し、今後の推移はいよいよ楽観を許さない形勢にあります。かてて加えて多数の労務者、従業員の失職を招来し、社会不安は著しく助長せられるものと思われるのであります。一方業種によつて企業者の濫立、設備の過剰、購買力激減等事情によつて自主的生産調整の方途に出なければならない業態も続出して来るでありましよう。  ここにおいて本小委員会は、これら中小企業の苦難の打開について、発足以来鋭意調査研究を続けて参つたのでありますが、二月二十日より五月二十八日に至るまで十一回にわたつて会議を開催し、関係政府委員及び関係業界代表者から、それぞれ、中小企業金融不渡り手形問題、代表業界状況等につき説明を聴取し、それらの意見参考資料として種々検討を加えて参りました。それによりますと、一、物価政策の基調を基礎物資の国際的割高の是正に置き、これを下まわる中小企業生産品については時宜に応じ価格安定の措置を講ずること。二、二重価格の解消及び物価国際的割高是正のため独禁法運用及び輸入為替管理の適正を期し、中小企業原料高より解放するの措置を講ずること。三、公正な市場秩序維持をはかるため協同組合を通じて中小企業相互の指導を徹底すること。四、大企業の行う不公正取引下請企業への不当支払い等の取締りを強化し、あわせて下請企業協同組合化を指導誘掖すること。五、金融機関中小企業向け融資源を確保するため、大口集中融資基準を明確にして、その検査を厳重にするとともに、進んで中小企業への融資を促進するため法人税法上の貸倒れ準備金損金算入限度を、中小企業向け融資限り引上げ措置を講ずること。六、財政資金による金融債引受け中小企業向け重点を置くとともに、政府指定預金引揚げ金融情勢の見きわめのつくまで猶予すること。七、財政投資計画実行を円滑にし、その遅滞による関連中小企業の破綻を回避すること。八、中小企業者の有する不良債権については、その法的実行能力に照し税法上の貸倒れ認定基準を緩和すること。九、原料価格独占による中小企業への圧迫に対処するため原料共同購入加工貿易等諸種の強力な措置を講ずること。  以上今日までの審議の結果をとりまとめて御報告いたします。
  6. 大西禎夫

    大西委員長 以上で小委員長よりの発言を終りました。これに対して政府当局より発言通告がありますのでこれを許します。愛知通商産業大臣
  7. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御報告がございました木材利用合理化に関する小委員長の御意見でございますが、小委員会におきまして御熱心に御討議いただきましたその結果につきましては、政府におきましても御同感でございまして、従来も意を用いて参つたつもりではございますが、この際あらためて政府側といたしましても努力を新たにいたしまして御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。  次に中小企業問題につきましての小委員長の御報告でございますが、これまた政府といたしましても全体の緊縮予算金融政策の浸透とともに、またそれに先んじて中小企業に対する対策につきましては非常に大切なことと考えまして、鋭意その措置を推進して参つておるつもりでございますが、これまた、ただいま詳細にわたりまして今後とるべき対策方向をお示しいただいた観があるのでありまして、これらの線に沿いまして、あとう限りの努力を今後も続けて参りたいと存じます。以上両小委員長の御報告に対しまして、政府の所見を申し述べた次第であります。     ―――――――――――――
  8. 大西禎夫

    大西委員長 次に中小企業に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。  なお委員各位に申し上げておきますが、時間の都合上各党一名、十五分ずつに厳守いたしたいと存じまするから、どうぞ御了承おき願います。福田一君。
  9. 福田一

    福田(一)委員 通産大臣にお伺いいたすのでありますが、実は今国会も終りに近づきましたので、休会中のことその他を考えまして、この際中小企業危機打開について決議案を本委員会でつくりまして、本会議において通そうということに相なつております。このことにつきましては参議院とも打合せがありまして、参議院もおそらく同様趣旨決議案が出ることになるだろうと思うのであります。そこで通産大臣と私は前々からの知合いでありまして、よく気持はわかつておるわけでありますが、しかし今回の決議案を出します以上は、政府としてもほんとうに何かやつてもらえるということでなければ、われわれは満足はいたしません。こういう意味合い政府の要職におありになられるのでありますが、この際万難を排しても通産大臣の責任において中小企業危機打開されるという御決意があるかどうか。ただ単に答弁とか、あるいは議会における行動等によるだけでは意味がないのであります。ちやんとそこに一つ決意を持つておやりを願うということが必要だと思うのであります。はなはだ言いにくいことでありますが、通産大臣はもともと大蔵省関係のお方でありますから、大蔵省に対してあまり強いことを言われるのは好ましくないというような面もありはしないかということをおそれる。そういうことは私は絶対ないと思いますけれども、一体大臣はこの問題について一般論的にどういう御決意を持つておいでになるか、お伺いいたします。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねに対しましては、私はこういうふうに考えておるのでございます。それは従来はともすると大きな政策をやつて、そ の結果はね返つて中小企業対策ということが考えられた。しかし今回いろいろの政策考えますときには、最初からむしろ全体の政策中心をなすものとして中小企業対策考えるべきものであるという考え方でおるつもりでございまして、ただいま御指摘もありましたように、具体的の対策については、政府部内において大蔵省関係するところが相当多いのでありますが、これにつきましてはむしろ逆に、そう申してはいかがかと思いますが、私といたしましては要請のしやすい、また効果も上げやすい点もあろうかと思いますので、なお一層の努力をいたしたいと考えます。
  11. 福田一

    福田(一)委員 御答弁を聞いて非常に安心をいたしたわけであります。そこでいろいろ項目がありまして多種多様にわたり、しかも中小企業救済などというものは、一般の政策から救済というか対策考えなければなりませんが、それはあまりにも時間を要しますので、さしあたり今われわれの考えておること、また可能な範囲であると思うことについて質問をいたしますから、簡単に御答弁を願いたいのであります。  第一点は、御承知のように下請企業が非常に困つておるという事情にありまして、これについてはしばしば当委員会においても論議が闘わされております。また政府からも答弁がありましたが、不公正な取引であるというような形において、そういう意味下請企業への不当な支払い遅延をやめさせるというような御決意があるかどうか。この点を承りたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 下請関係につきましては、不当なる支払い遅延とはいかなるものであるかということについての認定基準を詳細につくりまして、それを公表し、それの実施についてただいま鋭意措置を進めておる次第であります。
  13. 福田一

    福田(一)委員 次に中小企業向け融資源を確保することは非常に大事なことであると思います。これについては法案を今回提案されたやに聞いておりますが、これについては融資の限界を明らかにいたしまして、中小企業向け資金の確保をはかつていただかなければならないと思いますが、これについてはどういう御意見を持つておりますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお尋ねの点は資金源の問題と思いますが、これについては二つ考え方があります。一つは各金融機関等中小金融をやりたがらない気持がある。その気持を除去するために、貸倒れ準備金に対しまして、特に中小企業向けの場合における税法上の優遇措置考えたいということと、それから資金源全体の問題といたしましては、特に中央機関のない相互銀行、信用金庫以下の庶民金融機関に対しましては、今後においても資金源についてできるだけの考慮を払いたいと考えております。
  15. 福田一

    福田(一)委員 ただいま私が質問いたしましたことについて、特に貸倒れ準備金の問題にまで触れて御答弁がありました。これは非常に重要な問題でありまして、ぜひともこの際中小企業への貸倒れ準備金の問題は、何とかひとつ解決していただきたいという熱意を私たちは持つておるわけでありますから、ぜひともひとつ実現をするように、政府部内において調整をはかつていただきたいということを特に希望いたします。  次に資金運用部引受けによる金融債引受けということにつきましては、重点を商工中金に入れていただくことはもちろんでありますが、これについてはいろいろ資金源の問題もまた出て参りましようが、特に私がここで質問をいたしたいことは、大体五月の引揚げが終りますと、指定預金引揚げは六十五億円くらいになるわけであります。六、七月には大体合せて三十五億円くらいの引揚げが行われることになり、九月には全部引揚げが完了することになつております。この指定預金制度論議は別といたしまして、当面の問題としてこの季節の需要期に対する点を考慮し、さらにまた現在のごとき経済情勢から中小企業が非常な苦しみを受けておるという面を考えてみますと、このまま当初の計画通り指定預金引揚げて参りますことは、非常に心理的にも大きな影響を与え、さらにまた資金源もなくして行くことになりますので、この点はぜひともひとつ延期をするようにしなければならぬ。少くとも七月は延期ということを私たち考えておりますが、まずこの点を伺いたい。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この指定預金引揚げの問題については、通産省といたしましては、ぜひただいま御指摘通り延期をしてもらいたいという考えでおるのでございまして、所管の当局に対しましても、できるだけ私どもの希望が貫徹できますように今後とも努力いたしたいと考えます。
  17. 福田一

    福田(一)委員 次にわれわれとしては指定預金引揚げ延期してもらうだけでなくて、季節的でけつこうでありますが、六月、七月を目標にしてむしろこの際指定預金増加するようなくふうもぜひひとつしていただきたい、かように考えておるのでありますが、これについてはどのようにお考えですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は率直に申しまして、政府全体としての意向を申し上げるまでに至つておりませんが、通商産業省、中小企業庁の立場におきましては、私もさようにしたいものであるという考え方を持つておるのでございます。これはお盆などを目前にいたしておりまして、中小企業庶民企業金融難の実情から申しましても、私といたしましては実現努力いたしたい、かように考えております。
  19. 福田一

    福田(一)委員 実はまだまだいろいろの面において質問をいたしたいこともあるのでありますが、時間の関係もございます。また従来の当委員会における他の委員質問に対する答弁その他において、大体通産大臣意見も伺つておりますので、重複することは避けることといたしまして、最後に私が特に希望をいたしたいことは、冒頭に申し上げた通り、今中小企業は非常に深刻な状況になつておる。私は政府デフレ政策といいますか、金融引締め、ことに低物価政策というものは、われわれとしても全面的に支持をしなければならない、大局的な見地に立つてこれを支持しなければならないと思います。しかしそういうような一つの大きな政策実行いたして参ります場合においても、途中で思わざる事件が起きて来たりいたしますと、百八十度の転換をしなければならないというような事情が起きて、当初予想したことが結果において実現できないということを私は非常に心配いたしておるわけであります。たとえばここで。パニツクが起きた、あるいは取付が起きたということになりますと、これは大問題です。そういう意味からいつて一つ政策実行する場合にも、常に一本調子のやり方でやればその政策実行できるということは、私は非常な間違いであつて、そこにおのずから緩急よろしきを得て終局の目的を達するというのがすべての問題に処するわれわれの態度でなければならないと思います。こういう意味合いにおいて、私たちが今中小企業危機打開ということを非常に心配いたしておる。大きな政策を生かすためにぜひともこれは実現しなければならないという意味合いで、われわれが非常に心配をいたしておるということも特にお考え願つて、この際通産省としてできる限度において政府部内の意向をまとめて、中小企業危機打開する努力を払わなければならない。そうして大きな目的を達成するように政治の運営をやつていただきたいということを特に希望申し上げて私の質問を終ります。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 とくと了承いたしました。ただいままでにやりましたことにも、いろいろと足らざるところが多いと思いますが、緩急よろしきを得るようにという御注意がございましたが、まことにその通りでございまして、私は政策転換成否は、中小企業対策成否いかんにかかつておるというふうな認識のもとに各般の施策について総合的な努力を進めて参りたいと存じます。
  21. 大西禎夫

  22. 永井勝次郎

    永井委員 時間がありませんから簡単にお尋ねいたします。現政府は、従来の政策を本年度の財政政策の上で大きく転換し、これに合せて経済政策転換を試みようとしておるものとわれわれは了承するのでありますが、その理解の上に立ちまして、昨年まで政府がとつて来ました財政経済政策の上において、中小企業実態をどういうふうに把握されていたのか。そして本年度からの財政金融政策転換にあたつて、どういう点に重点を置いてこれを転換し、政策転換の以後においてどのような経済界のかわつた現象がここに起つて来ておるか、どういう問題に注意しなければならないか。すなわち政策転換前の実態転換後における状況、これについて大臣はどのようにこれを認識され、把握され、今後どのような政策を行われようとしておるのか、これらの点についてひとつ重点的に御説明を願いたいと存じます。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねに対しましては詳細に申し上げますと相当の時間がかかりますので、ごく簡潔に申し上げたいと存じます。  御承知のように昭和二十九年度の予算については、この四月から実施に移つたわけでございますから、その影響がまだ顕著に現われておりませんが、金融政策の引締めの方は、本年に入りましてから相当急速に実施されておりますので、その影響はかなり現われて来ておると思います。総体的に申しまして、いわばよい面と悪い面と申しますか、大きく二つにわけまして通俗的に申し上げると次のようになります。一つ通貨状況でございます。これは本年一月から三月までを見ましても、通貨量が約九百五十二億円減つております。この収縮率は一〇八%程度でございますから、いわゆるドツジ・ライン当時よりも通貨収縮量が多いといいますか、平常化したと申しますか、そういうことが言えるかと思います。それから鉱工業の生産増加でございますが、依然として増加傾向にはございますが、いわゆる過剰傾向がなくなつて参つたように見受けます。それから商品の在庫量でございますが、問屋在庫もふえておりますし、生産者在庫増加をいたしておるようでございます。物価状況は御案内の通り、一月初めから五月の上旬までにおきまして、卸売物価総合指数におきましては六・四%の下落を示しております。  それから次に貿易状況でございますが、輸入のLCの開設状況から見ますと、四月におきましては一億四千七百万ドル、輸出におきましては大体本年に入りましてから各月一億ドル以上というような状況でございます。  それから国際収支状況でございますが、赤字が一月には八千七百万ドルございました。それが二月、三月と急激に減少いたしまして、四月の国際収支赤字は八百万ドルに相なつております。もしこの四月の調子で参りますれば、年間の計画として九千万ドルないし一億ドルの赤字にとどめたいといつておつたわけでありますが、四月の状況で見ますると、大体その線に乗りつつあるのではないかということが考えられます。  次に先ほど申しましたように、懸念すべき状況の方を申し上げたいと思います。これは先ほど来御指摘がございまするように、不渡り手形増加、大体昨年に比べまして、五ないし七割の増加と申すことができるかと思います。それから繊維商社等中心にいたしまする商社倒産が、前年に比べまして相当ふえておるように見受けられます。大体前年の二倍くらいの件数になつておるようでございます。それから失業でございますが、これは失業保険離職票受付件数から見ますると、一月から三月までの期間におきまして、前年に比較して一ないし三割の増加というふうになつております。資本の蓄積の鈍化ということも指摘されるわけでございまして、全国銀行の貸出しと預金増加は非常に低調になつております。それから株式の払込み、社債の消化というようなこともかなり減少いたしております。この後段に申し述べましたことが懸念すべき状況でございまするので、先ほど来申しておりますように、今日までもできるだけの配意はして来たつもりでございますが、さらにこれらの面に対する対策というものが、これからほんとうに大きな努力を傾けなければならない問題であるというふうに私としては認識をいたしておるつもりでございます。
  24. 永井勝次郎

    永井委員 国際貿易の改善ということが自立経済の主たる方向でなければならないと考えるのでありますが、それならば現在国内に起つておる原料高製品安国際貿易に現われておる出血輸出国内における二重価格、こういうような一つ現象を通しまして、経済政策をどのようなねらいをもつて、具体的にどのように運ぼうとしておるのか。具体的に現われておる面は、いよいよ独占カルテルが強化する方向であり、操業短縮をして価格維持をはかるという逆な方向に動いておるように思われるのでありますが、そういう点に対して大臣はどのような政策をもつて、これらの現象を抑制しながら、正常な経済活動へのコースを開こうとしておるのであるか、具体的にお示しを願いたい。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これらの点につきましても、具体的に詳細に申し述べるべきでございますが、時間の関係上、簡潔に一、二の例を申し上げたいと存じます。  ただいま御指摘がありましたように、こういう際には原料高製品安ということが、えてして起るのでありますが、特に輸出振興努力しなければならない現状であると考えますので、中小企業対策ということを頭に置きながら、加工貿易制度ということも一つ対策として取上げたわけでございます。たとえばその加工方法としての保税工場制度を、中小企業が活用しやすいように大幅に簡易化する。それから輸出用原材料につきましては、正常輸出を阻害しない範囲において、ある程度自由に輸入を認めるというようなことも実行しておるわけでございまして、外貨予算の圧縮にもかかわりませず、前年度では千八百五十万ドルでございましたかの予算を、この加工貿易関係において六千万ドルに増加をいたしておるのでございまして、国内価格より割安な原材料輸入によりまして、国内産原材料価格引下げに対する一つの刺激ともなりまするし、単に国内価格引下げに資するばかりでなく、中小企業の不況の重大な原因であります原料高製品安是正に寄与いたしたい、こういうような配意からそのような措置もとつておるような次第でございます。
  26. 永井勝次郎

    永井委員 本日の日経に出ておる西ドイツエルハルト経済相シエフアー蔵相新聞記者との一問間一答に現われておりますが、西ドイツ経済政策のおもなる目標は、自由経済を正常な形において発展させるというところにねらいを置いて、国内市場であろうと国際市場であろうと、一切のカルテルを認めない、そうして自由な競争によつて一切を貫いて行くというところに目標が置かれているようであります。そうしてその前提条件は、過去の条件を一切切り捨てて、新たなる出発として出発しておる。こういうところに今日の西ドイツ経済再建の奇跡が原因しておると考えるのでありますが、吉田政府自由経済をもつて出発して、諸般の統制を解除して、自由経済方向へ進めるのだというふうに聞いていたのでありますが、最近特に経済政策転換にあたりまして、この自由経済から一つの統制経済というような方向で、いろいろな物の規制を漸次、総合的ではなしに現象面からとらまえて、一つ一つつてつておるようであります。そうしてさらに国内国際市場において、カルテルを相当大幅にやつて、これを認めて行く方向をとつておるようでございます。あるいは中小企業におけるところの安定法の一部を改正してアウトサイダーまでこれを押えて行くというような政策をとつているようでありますが、そういう転換というものは、今までの自由経済が間違つていたという考えに立つて転換であるのか、あるいはこのような現象面からだけ、たとえば国内の石炭が困つて来ると重油を規制して行くというような現象的な、そしてまたつけ焼刃的なやり方を通して日本の経済の再建、復興が可能であるというような考えに立つているのか。現在大臣のこれから行おうとする政策の基本的な態度というものがどこにあるのか。それをひとつ明確にしていただきたいと思うのであります。一般には、政府はどこまでもデフレ政策実行できる条件があるのか、腰くだけてしまうのではないかというように一方では見ておる。また一面においては、為替レートの三百六十円が堅持できるのかどうか。これが切下げされるということになれば、大きなインフレ要因になる。政府デフレ政策をとつているが、しかしいろいろな経済関係はインフレ要因を内包しているのだ。こういうふうないろいろな矛盾が、ばらばらの形で出て来て、国民はどつちの方向へ向つて行つたらいいかわけがわからないという混迷状態が来ておると思うのでありますが、これに対して大臣は基本的な経済政策というものをどこに置くか、これを明確にお示し願いたい。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の基本的な考え方といたしましては、一口に言えば、日本の経法力の充実発展と基盤の醸成ということにあると思うんです。従つてその観点から、国際経済の中において、いかにしたならば自立というか充実を達成し得るか、その根本は国際収支の改善にあるという考え方から一連の政策転換を行つたのであるというふうに認識をしておるのであります。その結果、先ほども一、二の例を申し上げましたように、たとえば国際収支の面においては、この新年度に入つた第一の月である四月におきましては、国際収支赤字が八百万ドルというような、数箇月以来見られなかつたような改善を示しました。それから物価につきましても、これは見方なりその原因なりについていろいろの御議論もありましようが、卸売り物価総合指数において一月以来六%以上下落したということも、数字の示すところでありまして、私は基本的に申しますなら、今やつておりますやり方というものが、相当所期の目的を具体的に現わしておると思うのであります。ただこれも先ほど詳しく申し上げましたように、中小企業関係等について相当憂慮すべき状態がございますから、ますますもつて中小企業をめぐる経済環境を是正しなければならない。中小企業に公正な活動の機会と公平な待遇を確保して行かなければならない。このことの成否が、これからの政策成否全体にかかるのである、こういうふうに私は考えておる次第でございます。それから統制の問題については、いろいろの機会で、何べんかここでも御議論がございましたが、自由経済と申しますものは、できるだけ企業の創意くふうを発揚することにある、公正な経済環境の中で十分に活動をしていただくというのがねらいであります。しかしその公正な十分な活動というものが行われるところの舞台と申しますか、あるいは運動場と申しますか、これの地ならしをよくする、あるいはその活動のわくを大きく設定するというようなことにおいて、計画性ということは常に忘れてはならないと私は考えております。それから情勢の変転によりまして、そのときどきによつて適当と思われる調整措置やその他が必要になるということは、当然考えなければならないことでありまして、エルハルトの説をお引きになりましたが、私もエルハルトのやりましたこと、あるいはシエフアー蔵相には直接意見をたたいたこともございますが、その基本的な考え方においては、私どもの考え方とかわるところはないように考えております。
  28. 大西禎夫

    大西委員長 永井君、もう時間ですから……。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 私はいろいろの問題をお尋ねしたいと思つたのでありますが、時間がないということでありますから、最後に一言だけお尋ねをいたしたいと思います。  金融問題にしろ、どういうふうな金融引締めをやつているかといえば、中小企業から吸い上げて大企業に集中融資をやつておる。しかも各金融機関例にこれを見ましても、全国の銀行の統計を見ましても、これは大企業にだけ一兆七千億から集中融資をしておる。あるいは中小企業専門の関係金融機関は、中小企業にわずか五千六百万円内外より融資してない。看板はあるけれども、内容はない。それから保険会社関係は、これは全部大企業向けで中小企業向けじやない。大企業に集中しておる。また資金運用部の金にいたしましても、郵便貯金であるとか、簡易保険であるとかいう零細な預金を集めて、これをやはり大企業に集中融資をしておる。こういうような形によつて、たとえば通貨量が減つたといいましても、その減り方が、量的な面から見れば確かに減つている、しかし質的な吟味から言うならば、中小企業から吸い上げて大企業へ集中しておる。そのために中小企業に特にこの金融難という現象が出て来、その面から来る恐慌状態が今日出ているのである、こう思うのであります。物価関係から見ましても、これは大企業の独占価格を高く維持するという政策政府はとつている。そうしてこれを中小企業にしわ寄せしているのであります。さらに下請関係から申しますと、大企業支払い遅延であるとか、そういつた関係もありますが、今日の大きな混乱は、やはり大企業の経営者に対する責任というものを、日本経済では、今の政府経済政策としてはほとんど問題にしていない。ドイツにおける自由経済は、政府経済政策を立てる、それの実踐面の責任は企業者に持たせる、こういうふうにその責任の所在が明確になつているのでありますが、政府経済政策というものは、その日その日のでき心でもう混乱している。そうしてこれを受けて立つ産業界はどうかというと、その責任の所在が明確でない。従つて少しもうかるとゴルフに何する、赤坂に何するというような、こういうことで、一旦困つて来ると税金をまけてくれ、補助金をくれということで、政府のそでにすがつて、こじきのような経済政策を立つている。そういう経済運行をやつている。そういうところに問題があるので、この関係においては、自由経済である以上、政策政府が明確に示さなければいけない。混乱のない状態に示さなければいけない。そうしてその大企業に対する責任というものは、これを明確にしなければならぬと思うのであります。施設の過剰であるとか何とかいういろいろな問題を、自然の状態というか、あまりに原始的な状態にまかせておいて、現在そういう面から来る混乱というものは、これは重大であると思うのでありますが、この点はどう考えるか。  それからカルテルの問題に対して、政府は今後どう対処するのか。それから貿易関係にいたしましても、ある一定の地域を限つて、それもアメリカから、こういう品物は売つてもよろしい、こういう地域には日本の商品は売つてもいいというようなさしずを受けてやるような、こういう貿易の状態であつては、日本の自立経済の確立というものはできるものじやございません。自主的な立場から、中共地域でもあるいはソ連地域でも、あるいは船の条件なんかは、日本が大海軍を持つておつた造船施設をそのまま持つてつて、これを維持しようというても維持する条件はないのでありますから、維持しようとするならば、やはりソ連地域に船を輸出するとかなんとかいう、こういう具体的な道を開きながらやつて行かなければならないと思うのでありますが、そういう点における具体的な政策はどうなのか。単に金融一般、物価一般、あるいは貿易一般、こういうような一般論では問題は解決できないのでありまして、その一般論ではなしに、具体的な政府政策として現われて来ているこういう誤謬に対しましては、どういうふうな形でどういうふうにこれを政府がつかんでいて、そうしてこれを是正しようとしているのか、その点を最後にお聞きいたしたいと存じます。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いずれも大きな問題でございますが、できるだけ簡潔に私の意見を申し上げたいと思います。第一の企業の経営者の責任感というようなことでございますが、ドイツと比べてのお話がありましたけれども、私も率直に言えば御同感でございます。しかしこれに対する具体的な対策として政府考えましたのは、今国会におきましても、たとえば再評価の強制的な措置、あるいは交際費等に対する税制上これを益金に算入するというような、つまり先ほど申し上げましたように、運動場なら運動場の地ならしと同時に、かきねを一定のルールに従つてつくり、その中で公正に責任を感じて、創意くふうを発揚してもらう、そういうようなことをつくることが政府としあるいは国会としての立場ではなかろうかと思います。そういう立法の意図というものを、経営者もあるいは従事員も十分理解されるならば、おのずから努力方向というものが明確になるであろうと考えます。  それからカルテルについてのお尋ねでございますが、これは実は私もこの正月に就任いたしまして以来、個人的にも相当深刻に研究をいたしてみましたが、一応私として結論としてただいま持つておりますことは、いわゆる私的独占禁止法について、あの法律をさらにかえる、さらに修正をする必要は、法律上の問題としてはさしあたりはないのではなかろうか。大体先般来の国会における修正案の御審議等におきまして、前国会までの間に大分日本の実情に沿うように直つておると思いますので、今後これの運営につきましては、公取委員会等とも十分連繋しながらやつて参りたい。考え方といたしましては、一律に具体的に申し上げかねることもおると思いますが、原則的に言えば、一応カルテルというものは認めたくない。今の法律のもとにおける通産省なり政府の立場として、さように考えておるわけでございます。  それから現在のような貿易ではいけないから、もつと範囲を広げろ―たとえば東西貿易のお話もございましたが、いい機会でございますから、この機会にちよつとつけ加えて申し上げたいと思います。いわゆる中共に対する禁輸の問題は、昨日告示を出しまして、ココムの線とまつたく同じ程度まで禁輸品目の解除をいたしました。従つて、かねて私どもが早くそういう状態にしたいと思つておりました一応の状態がここに完了いたしたわけでありまして、中共に対する日本貿易の姿は、西欧諸国とまつたく同様になりましたと申し上げても過言でない状態に相なりました。東西貿易等につきましても、経済的に話合いがつく限りにおいては、今後におきましても積極的に考えて参りたいと思つております。
  31. 大西禎夫

    大西委員長 次に中崎敏君。
  32. 中崎敏

    中崎委員 最近中小企業の状態がことに深刻になつて来ておるということを承るのであります。政府の方におきましては、二十九年度の予算一兆円のわくを打立てまして、さらにまたそうした目的達成のために、金融の面において相当の効果をねらつておられるようであります。また経済政策、ことに通商政策を含むところの経済政策につきましては、こうした事態に対処するだけの備えが十分でないのではないか、こういうふうに見ておるのであります。言いかえますと、財政並びに金融、そして経済政策の三つの点がマツチして、初めて円滑なる国の経済すべての推進ができると思うのでありますが、かんじんの経済政策については、これに対する十分な対策が練れていなかつたのではないか。現に一兆円の予算においても、本年度はたして五%ないし一〇%の物価引下げがうまく行くかどうかについては、いわば疑心暗鬼、おつかなびつくりの状態に置かれておつただろうと思いますが、金融の問題が先走りをして、相当強力に推進されて行つたのであります。ところが経済政策については、十分な対策が用意されていなかつた。現在においてもそうではないか。これにマツチする十分な対策を講ずるためには、われわれの言うような総合的な計画経済の線に沿つたところの、強力な長期金融というものを打立てて、その裏づけとしての実行がされなければならぬというように考えるのであります。この点については、政府の方においていまだに踏切りが十分行われていないというところから、中小企業者というものが不必要に大きな被害者になる。政治のしわ寄せが中小企業者に行くために、非常に困難な状態に追い込まれている。国全体の面から見ても、不必要な面に不必要な圧力が加わるために、経済的効果がより減殺されるというような結果になつて来ておるのだと思うのでありまして、この面においても、行き過ぎておるところの金融というものと経済政策をどうマツチさせるかということに、一つの大きなねらいがあると思うのであります。これについては、先ほど福田君からも、主として金融の面について、緩急よろしきを得る必要があると言われましたが、今言いましたように、行き過ぎた面をある程度是正して、ことに中小企業に対する助成策を講ずべきである。それには預託金がどうのこうのという問題があるが、さらに中小企業金融公庫、こういつたものに対して政府が投融資をさらによけいやるのだというような用意があるかどうか。この点をひとつお聞きしておきたいのであります。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、お尋ね中小金融の問題につきましては、一兆円予算当時におきましても、またその後の衆議院におきまする予算審議の際におきましても、中小企業金融公庫なり国民金融公庫なりには、乏しい中におきましても、相当の配意をいたしたつもりであります。ただいまのところは予算関係もございますので、これ以上政府側からの出資なり、その他の資金源の両公庫に対しての増加ということは、ただいまのところ考えておりません。しかしながら先ほど来申しておりまするように、また先ほど永井さんも御指摘だつたかと思いますが、最近私非常に関心を持つておりますことは、最近に至りまして各金融機関のいわゆる中小企業に出しております金が、全体の比率からいつて下降状態になつておりますので、これに対しまして具体的な政策をどうしても必要とする。そこで先般来私どもの持論でございましたが、貸倒れ準備金制度を早くやつてもらう、そういうことによつて信用を与える方の立場を楽にしてやる。それから借りる方の立場において、いわゆる小口保険というようなものを制度としても確立していただきましたので、これを積極的に利用して行く。あるいは商工中金の金融債について格段の配意をはかるというような、いろいろの面においての補強策を講じて参りたいと考えております。
  34. 中崎敏

    中崎委員 中小企業者の金融の現在の状態は、普通の金融機関預金が先ほど言われたようにあまりふえない。一方日銀の方から回収方を要求され、だんだんわくが狭くなつたために、今まで貸しておつたものからほとんど回収ができないし、新規の貸出しはできない。いわゆる中小企業者に対する貸出しはできないと見てもいいと思うのです。そうすると、それでなくても中小企業者は非常に行き詰まつておるのに、これから新しい資金はほとんど出せないということになれば、より以上深刻に参つて来ることは明らかです。そこで政府の側において、まず先ほど言つたように中小企業金融公庫なり、そうしたものに対して、新しい国家的資金をつぎ込まれる、あるいはそうでなければ、たとえば金融機関に対する回収をある程度緩和する、もう一つにはそのわく内において、中小企業についてはこれだけの範囲で余分に金をまわすような方法を講ずるような指導をされなければならない。普通の金融機関は、営利的な方向に動くのですから、そういうふうな場合については、政府で保証する――かつて中小企業に対する一般の金融機関について政府保証の制度があつたのでありますが、こういうふうなことによつて中小企業に対する新しい金融の道を考えるかどうか。この点をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところ、政府が直接に中金に対して保証するということは、制度として考えてはおらないのでありまして、先ほど申しましたように、税制等の面において、間接な効果を期待するというふうに考えております。それから信用保証協会の関係におきましては、いわゆる信用保証制度の再保険の率を六〇%から八〇%に上げるというような措置は講じておるわけでございます。
  36. 中崎敏

    中崎委員 信用保険の制度が相当に効果を発揮しつつあるということは私たちも認めるのでありますが、実際問題はこれとても依然として別の機関であつて、銀行自身が自主的に自分の金を貸すというふうなところまで行けないわけなのです。そうしてまたそこにおのずから限度もあつたりして、いわゆる信用保証協会そのものの信用保証の限度等もあつて、なかなかこれがうまく十分に発揮していないのでありまして、それを補う意味において別個に政府の方において再保の保証をするのだということをこの際考えてもらう。言いかえれば、本来から言えば政府が新しく五十億でも百億でも金融公庫等に対して金を出せば、それだけ道が開ける。ところが実際は財政等の事情でなかなかそうも行かない。その別の道を新しく切り開くのだ、言いかえれば百パーセント再保の保証をするのだということを考えて行かれることになれば、中小企業に対する金融というものもある程度道が開かれるのじやないか、というふうにも考えるのでありますが、この点ひとつ大臣の方においても検討してみていただきたいということを要望しておきます。  次に政府におきまして、行政指導の面におきましてやや統制とまでは行きませんけれども、相当にそうした措置考えておられると思う。ことに最近大きな問題となつております重油の問題についても、新聞の伝えるところによると組合をつくらして、そうして価格を協定させる。これをもし実行しないものに対しては、元会社から石油の供給を停止させるというような、そういう強権の発動にも近いような措置考えておるということであります。そうしますとこれはわれわれから見れば、現在の法規のもとにおいては明らかに行き過ぎだと思う。行政指導としては、もうほとんど法律の強権発動にまたなければならぬと同じようなことを、強制的にやられるようなことになるわけで、非常な行き過ぎだと思います。そこでこれはおのずからそこにも限度があるわけでありまして、こうしたような問題は、もう少し全般的に総合的な角度から検討をしていただきたい。そうして実際においてどの程度に、どういうふうにするのだということを、一つの大きなるわく内において検討して行くというふうな段階ではないかと考えております。過去の政策はどうであつたということは別として、現在の事態に処して、今後いかにこれに対処して行くかという段階において、検討しなければいかぬのではないかというふうに考えるのでありますが、この点についてもう少し大臣の方から具体的な意見をお開きしておきたいと思います。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一の問題は、先ほど申しましたように一般の金融機関等がなしまする融資について、政府としてなし得ることはやはり信用保険というようなものではないかと思うのであります。信用保険制度については相当改善を加えて参りましたが、なお今後におきましてもさらに一層の改善を加えるということは、研究をいたしたいと思います。それで、ただいま中崎さんのお話のようなことは、せんじ詰めますと、私どもの手でできるかできないかは別問題として、むしろこれは国民金融公庫なり、中小企業金融公庫なりの資金源をふやすということがもしできますならば、それによつて相当根本的に解決できるのじやないかと、私見でございますが、考えるような次第であります。  それから第二の法規と行政指導の問題でありますが、私の考え方といたしましては、できる限り関係業者間の納得づくの話合いで事を処理して参りたい。しかしそれがある程度に行つて、あるいはこれはいわゆる行政指導としては相当行き過ぎであるということになつたり、あるいは法規によらずしてさようなことが行政権でできるかどうかというようなことに疑義が持たれるようなことになりますと、これは相当な問題でございますから、そういう場合におきましては、必要な法制案を用意いたしまして御審議願つて、その上で実行するようにすべきものだと考えておりますが、ただいまのところは、実はいろいろの面から話合いを進めておるのでありまして、ただちにそれが、今私が指摘いたしましたような法規に違反したり、あるいは事実上の問題としても行政権逸脱であるという程度のものを考えているわけではないつもりでございます。
  38. 中崎敏

    中崎委員 もう一つ企業の系列化ということがしばしば言われておるのでありまして、中小企業者をいかに持つて行くか、中小企業者のあり方はいかにあるべきかということについても、やはり軽視できない問題だと思うのであります。たとえば繊維の場合においても、最近においては、相当紡績会社などが次から次へとできまして、それがためにこの繊維業界に不必要なといいますか、非常に大きな混乱を来しておる。それが一般の経済界に次から次へと影響を及ぼして、中小企業者に非常な迷惑をかけておるというようなわけであります。まず繊維業をいかに系列化するかということが一つの大きな問題だと思うのであります。ことにまた一面において、こうした総合的な経済というようなものが大きな系列のもとに置かれるということは、やがてはまた大きな財閥を育成するというような結果にもなりますので、そこを一体どういうふうにするかということは非常に困難ではあるが、またやらなければならぬ問題だと思うのでありますが、これについて通産大臣はどういうふうに考えておられるか、今後どういうふうにしようとするのか、ひとつお聞きしたいと思うのであります。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 企業の系列化の問題は、なかなかむずかしい問題と思うのでございまして、先ほどもちよつと申しましたが、本則的な考え方としては、中小企業に公正な活動の機会と公平な待遇を確保するということがあくまでも本則でございますから、公正で合理的に、また能率的に全体が動くような系列化はけつこうだと思いますけれども、しかしただいまもお話の中にこういう御気分があると思うのでありますが、たとえばいわゆる金融資本といいますか、それの重圧のもとに無理やりに他の圧力によつて一つの系列がつくらせられるというようなことは、私はいかぬことだと思うのでありまして、そういう意味合いで今後も事態を注視して参りたいと思います。
  40. 大西禎夫

    大西委員長 次に柳原三郎君。
  41. 柳原三郎

    ○柳原委員 簡単に質問いたしますが、中小企業の育成に関連いたしまして、最近の行き過ぎた広告宣伝に関しまして公正取引の問題について二、三質問をいたします。  最近われわれが歩くところ、昼夜の別なく広告と宣伝の氾濫であります。そうしてわれわれの目も耳もその広告宣伝のために疲れ果てると言つても過言ではない現在の情勢でございます。現在日本の国で広告について使われる金――広告宣伝費と言うてもよいかもわかりませんが、これがどのくらいだろうかという計算を、私はいろいろ興味を持つてつておるのであります。あなたの方でもいろいろの統計をとつておられますので、資料があると思いますが、この広告のためにどのくらい消費される金額があるかということをつかむことはなかなか困難でございます。それは広告とか、宣伝を行う主体がきわめて広範囲にわたると同時に、広告宣伝を行う方法も、新聞、雑誌、書籍、ラジオ、ポスター、看板、映画等の非常に多岐にわたつておりまして、これらのすべてを把握して正確にその費用をつかむということは不可能に近いことでございます。広告宣伝にかかわる税金というものをもとにする計算の方法もございます。  その税金の問題について最初に申し述べますが、先ほど中小企業金融公庫に財源がないから、今年度はこれよりいたし方がないのではないかという意見もございまして、財源については――私は野党としてこういうことを言うのもどうかと思いますが、広告税というものを国税としてとつてもよいと思つておるのであります。で、広告税は昭和十七年の増税のときに国税として創設されたのが始まりでございます。それから昭和二十一年の八月の税制改正で一時廃止されてしまいました。昭和二十二年の市町村税として再び日の目を見ることになつて昭和二十五年のシヤウプ税制改正後も存置されることになりました。しかしその後第十三国会においてその税額も少くかつ普遍的な税源でもないという理由で、漁業権税と接客人税とともに雑税整理のやり玉にあげられて、昭和二十七年七月一日以降は、法定普通税として廃止されました。現在では市町村の法定外普通税として広告税または宣伝広告税の名称で一部の市町村に施行されておる状態でございます。それでその税額等その他のことを考慮に入れまして、いろいろ研究いたしましたが、昭和二十二年には十五億円ぐらいのものが広告宣伝費として使われておる、二十三年では三十三億、二十四年では九十五億、二十五年では百五十億、二十六年では二百億、最近ではおそらく三百億を突破しておる。これと国民所得との比率から考えてみますと、二割以上というものが広告のためにむだに使われておる状態ではなかろうか、こういうことを考えるのであります。私の計算と、あなたの方は今資料を持つておられないと思いますが、あとからでもよろしいが、この宣伝広告のためにどれほどのものが使われておるか、こういうことがひとつ照し合してみたいと思うのであります。現在東京都においても新しい大きなネオンなどがつくられておりますが、三百万、五百万というものがざらにあるそうであります。はたしてこういうものが必要であるかどうか、私は現在広告宣伝というものが、日本のいわゆる非常にか弱い経済状態の上においては行き過ぎである、こう断定しておるものであります。この広告宣伝税は地方的に偏在して来るのでありますから、国税としても私はどんどんとつてもいい、こういうふうに思つておるのであります。そうしてこれを抑制しなければいかぬ、広告宣伝というものが行き過ぎておりまして、現在のいわゆるコスト高の一つの要素になつておることも間違いないのであります。こういう面にひとつ大いに考慮を払つてもらいたい、こういうことも申し添えておきます。  それからこの広告宣伝の行き過ぎと関連いたしまして、最近の不公正取引の問題でございますが、せんだつての白井とエスピノザの試合をラジオで聞いておりますと、どちらが勝つかを当てた方にはこの次の海外における選手権の試合に無料でサービスするというようなことを言つておつた、これは外国の資本が入つておりますから外貨の問題も関係ありませんけれども、こういうバヤリースの飲料水についての宣伝も完全なる行き過ぎでございます。その他もう数え上げれば枚挙にいとまがありません。キヤラメルの中に五百円とか千円が入つておるという話も聞いております。これのポスターがでかでかと書かれておる、こういう状態はこれは中小企業を共食いさせるものであり、また大企業の宣伝のための行き過ぎによつて圧迫しておるものであります。これも是正しなければいかぬ。現在みそとか、しようゆとか、ゴムのはきものについて、公正なる取引をしなければならぬという指定がされておるようでありますが、現在非常な広範囲にわたつてこの指定を行うべきである、こういうことを考えておりますが、これは公正取引委員会のやる仕事でありまして、あなたの方もひとつこれによく実際を話されまして、この指定の業種というものをどんどん追加されるように要望しておきたいのであります。そういう問題につきまして、ひとつ簡単でよろしいから御意見を伺つておきたいのでございます。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま広告宣伝の氾濫等について、柳原さんから非常に適切なる御意見を伺いまして、私も非常に感謝にたえないのでありますが、従来通産省としてとつて参りました態度は、御承知のように協同組合中心といたしまして、公正な取引を確保するということを本則として、その建前から広告宣伝等に対しましての指導ということもやることになつておるわけでございます。  それから不当なものについては独禁法で取締る、ただいま公正取引のお話もございましたが、通産省といたしましても、指定業種を大幅に広げるということにつきましては、御同感でございまして、公正取引委員会と連絡いたしまして、早急に手を打ちたいと考えます。  それから先ほどちよつと触れましたが、法人税によりまする交際費等の制限と申しますか、取扱いも、接待費その他等の関係におきまして、その面からも不当な宣伝費というようなものが相当是正されることになるであろうと考えます。  それから広告税の問題でございますが、これは今大蔵省の村山部長も見えたようでありますから、私からざつとしたところを申し上げますと、これが国税としてよろしいか、地方税としてよろしいかというような点については、いろいろの意見もあると思いますが、政府部内におきましても、寄り寄り話になり研究の課題になつておることは事実でございまして、ただいま御指摘がありましたように、現在の日本としては広告が行き過ぎである、あるいは小さなことから言えば、都会の美観を害するということに至るまで、相当の弊害が指摘されておるようでありますから、私は私見といたしまして、広告税は確かに一つの着想であつて、早い機会に実現したらいかがであろうかと、私見としては考えております。  なお申すまでもございませんが、独禁法その他で処理のできるもの以外に、たとえば現在金融機関の広告宣伝というものが非常に目につくわけでありますが、これは銀行法等によつて政府に監督権がございますし、また経理その他の内客について検査権もございますのでありますから、これも大蔵省その他当局から行き過ぎた広告等については、直接にこれを統制指導することが可能でもあり、また手は打つておるはずでございますが、なお一層この面に留意いたしますようにいたしたいと考えます。
  43. 永井勝次郎

    永井委員 さつきお尋ねいたしました為替管理法をどういうふうに考えるか、それから自由経済の原則に反するじやないか、それから国際的にもつと開放すべきではないか、輸入の制限をやつておるが、これについてはどう考えるか、この点について……。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども永井さんからお話がございましたが、私どものやつておることは野放しの自由経済でございません。いつも私は例に引くのでありますが、たとえば為替管理法をごらんいただきたい。これは見方によつては非常な統制経済であります。同時に各国におきましてもこれはやつておるわけでございまして、当今のような国際収支均衡維持ということが最大と言つてもよいくらいに政策の根幹である以上は、やはり為替管理法というものが、改善の余地はあるいはあるかと思いますが、ずつと続けて行くべきものである、こういうふうに考えております。
  45. 大西禎夫

    大西委員長 それでは今の柳原君の御質問に対して御答弁を願います。
  46. 村山達雄

    ○村山説明員 ただいまの広告税の問題でございますが、実は税制の問題は大蔵省の方がやつておりまして、国税庁の方は、実は執行の面を受持つておるわけでございます。従いまして、御質問に対しましては、私の知つております範囲内で私見を申し上げたいと思いますが、広告税の変遷につきましては、ただいま御指摘通りでございます。しかし、それは主として財源が多く望めないという観点からいたしまして、おそらく整理に相なつたものと承知しておりますが、ただいま御指摘のように、交際費、接待費の不当支出を抑制するという立場から、今回の租税措置法で、ある限度におきまして、損金に算入しないという規定が設けられましたので、対応いたしまして、御指摘のようにこの問題は相当大きな問題になり得るのではなかろうかというふうに考えておりますので、さつそく大蔵省関係当局の方に連絡をいたしまして、何とかわれわれの方といたしましても、実現方向努力いたしたい、かように考えております。
  47. 柳原三郎

    ○柳原委員 あなたの方では畑違いかもわかりませんが、その広告使用額というものは、統計的にあるのですか。やろうと思つておられるか、どんなところですか。
  48. 村山達雄

    ○村山説明員 広告使用額、広告料のようなものを特に統計をとつたことはありませんが、各会社についてとりますれば、このデータはとれます。全体の統計は早急には間に合いませんが、業種によりましてサンプルのようなものをとりますれば簡単にとれるのじやないかとも考えております。
  49. 柳原三郎

    ○柳原委員 御参考に申し上げておきますが、会社からとるよりも広告業者というのが全国にあるのですから、そういうものの売上げに基いてやつた方がいいと思うのですが、ひとつ大いに統計の正確さを期してもらいたいということを要望しておきます。
  50. 大西禎夫

    大西委員長 それじやサンプル程度のものをひとつお願いします。  次に小平久雄君。
  51. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は実は公取の方においでを願つて特に下請企業に対する不当なる支払いの認定基準に対して一、二伺いたいと思つたのですが、おいでがないようです。この基準をつくるまでには企業庁の方とも十分に連絡があつてきめられておる、こう思いますので、中小企業庁長官の方からとりあえず若干承つておきたいと思います。  まず第一に、先般当委員会で局長さんから、これの実施について目下調査をいたしておる、こういうお話があつたように記憶するのですが、実際問題として、どんな方法で調査を行つておるのか、いわばその中間報告ともいうべきものを、この際承つておきたい。
  52. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 先般公正取引委員会といたしまして、不当なる下請への支払いとはどういうものを言うかという認定基準を発表いたしたのであります。それを大ざつぱに申しますと、原則として製品を納めて十日以内に検収をいたしまして、検収後一箇月以内に、現金または現金に準ずるような方法で支払いをするのが、大体妥当な支払い方法であろう。それに合わない支払い方法は、原則として不当の支払い遅延であるというような意味の認定標準を発表いたしたのであります。これを一応の基準といたしまして、今回相当大がかりな調査を開始しようということにいたしまして、親工場といたしまして、大体全国で百四十一、それに関連のありまする下請といたしましておおむね二千の工場を選定いたしまして、親工場関係は公取が調査の担当をいたし、下請関係中小企業庁調査の衝に当るという建前で目下調査中でございまして、大体の目安としては六月の六日に一応の調査表が下請関係につきましては集まつて来ることになつておりますが、調査表を渡しただけで返事なかなかくれないというところもございますので、現に職員が足を運びまして、実地について聞取りをいたしておる点もございますし、さらに調査表が集まりましたあとで、集まつて来ない向きに対しましては必要に応じて個別に訪問をする等、さらにその方の整理をいたしまして六月の終りころまでには一応の結論を出して、公取の持つております調査の結果とわれわれの調査の結果をつき合せて、妥当でないものにつきましてはこれを公取の方で処理する。特にねらいといたしましては、お盆というものが目先に控えておりますので、お盆というものを一応念頭に置いた上で、この調査の結果を有効に活用して不当なものについての処置を講じたい、こういう段取りで運んでおるわけであります。
  53. 小平久雄

    ○小平(久)委員 ただいまもお話がありましたが、この基準を見ますと、納品を十日以内に検収する、検収後三十日以内に現金またはこれに準ずる確実な支払い手段で支払いをするのが原則である、こういうふうにうたつてありますが、これを見まして私はたいへんけつこうなことではあるが、あまりに世間離れしたような基準をきめたものだというような気がいたすのであります。当局としましても、現在行われておる支払い方法がこれほど確実に行われておるとはお考えではなかろうと思う。少くとも基準をきめるという以上は、現在通常行われておる方法の、いわば中間的な標準的なものをとつてこれが基準だというならばわかりますが、何かこれは世間離れした理想的なものを掲げておる。これを基準としておるというような気がするのでありますが、この点どういうところからこういう基準を定めたのか。その間おそらくは公取との間にいろいろ論議もあつたと思いますので、その間の事情をひとつお聞かせ願いたい。
  54. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 先ほど申し上げましたのは、機械、兵器等の製造工業に関しての面でありますが、さように行くのが理想型である、しかし――私ちよつとここに資料を持つておりませんので、詳しく申し上げかねるのでありますが、例外は相当いろいろな事態について書いてあると思うのであります。要するにこの標準で払つてもらうのが一番理想型であるということを一応認定して発表いたしまして、この線に沿うように努力をしてもらいたいというのが先ほど申しました認定基準でございます。しかしそれにつきましては、たとえば遅延をしておるにいたしましても、遅延をしておるのに相当の理由がございますれば、これは不当なる支払い遅延というものにはならぬわけであります。従つて個々の調査をいたしまして、下請に対してかなり支払いが遅れておるけれども、その支払いが遅れておるのは他の支払い状況と比べまして、特に下請の支払いだけを不当に遅らしておるのじやないということがわかりますれば、望ましき標準にははずれておりますけれども、不当な支払い遅延ということには認定しないのだというので、一方においては非常にいい標準型を示して、そこに支払いの形が従つて来ることを期待するという意味の標準を出しますとともに、不当支払いについては個々の事例を押えまして、不当なりやいなやを認定する、こういう建前を公正取引委員会としてはとつておるように承知いたしておるのであります。
  55. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私の伺いたいのは、そういう御趣旨であろうことはよくわかるのでありますが、少くとも一般に守らせようという以上は、現在の世の中において、大部分はそう行つておるのだ。特にはなはだしいものはこの公正取引委として罰するのだというならばわかりますが、初めから理想的なものを掲げて、しかもそこにも書いてあるようでありますが、ただいま申しました十日以内の検収、さらに検収から三十日以内の支払いというのが原則であるが、それを判断する前提としては親企業の経営の状況その他の事情より見た支払い能力からしてというようなことがうたつてあるようでありますが、結局そうなりますとこういつた前提をいかに判断するかということによつて、実質的にはどうにでもなつてしまう。なるほど高い理想を掲げておるようだが、実際の適用からいうと、これはあいまいになつてしまつて、本来企図しておるところが望み得ないのではないかということをわれわれはむしろ心配するのです。それよりも通常世間一般に行われておることをやらせるという建前から行つて、それをはずれたものは厳重に処断するという行き方の方が、むしろわれわれとしては望ましいのではないかという気がするのであります。この点はなお今後企業庁の方においても、公取とよく御研究願いたいと思います。  そこで親企業の支払い能力の判断すべき事項がそこに列挙してあるようでありますが、その中に株主の配当であるとか役員の賞与であるとか、あるいは従業員の俸給であるとか、あるいは賃金の状況とか、そういうものを勘案して総合的に支払い能力を判断するという一項があるようでありますが、この点についてはこれはどういうことになつておるのでありますか。配当なり賞与なり、あるいは従業員の俸給なり、そういうものの額そのものについてまで検討しようというのか。というのは、たとえば配当が何割以上あるいは賞与が幾ら幾らとか、従業員の給与ベースが幾らであるとか、そういうものは高過ぎるじやないかというような、内容にまで立ち入るという意味なのか。またそういうところまでは行かずに、むしろ親企業としてはその率いかんにかかわらず配当しておる、あるいは額のいかんにかかわらず役員の賞与も出しておる、従業員の給与もたつぷり出しておる、それはかまわぬのだ。ただ実際そういうものを出しながら、下請企業には遅払いをしておるのはけしからぬというのか、その辺はどういうふうに了解になつておりますか。
  56. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 前段の点でございますが、標準として三十日というのは実情に合わぬので、あるいは九十日くらいにした方がいいじやないかという御意見も成り立つかと思うのでありますが、そういうふうにかなり甘い線で標準を出しますと、公取がそういうのだからそれよりいい条件でやるのはばからしいからというので、どれもこれもだんだん延びる傾向があるとは認めぬのでありますが、いいものまでがぎりぎりぎりの線まで下つてしまうということを誘致してはいかぬのじやないかということを考えたように拝聴するのであります。実は不当支払い遅延に関する認定基準をつくるのに、公取の一番悩んだのはその辺のところであろうと思うのです。結局通常の状態ではその辺のところはやつてもらうのがあたりまえではなかろうか、また望ましいのではなかろうかという線を出しながら、個々の企業の実情というものは別途十分考慮して行こう。従つて今御指摘になりましたように、若干ぼけたようなきらいがするのもまたやむを得ない点ではなかろうかと思うのです。なお公取といたしましても、その他の企業つまり機械器具または武器の製造修理を行う事業以外の事業につきましても、目下認定基準を作成中であります。そういう場合におきましても、今の点が一番苦労を要する点であろうと思います。実情とそれから望ましき線との食い違いというものをどの辺まで認めるべきかということでございます。原則論としては、ある程度望ましき線を出しておいて、個別的に実情を見て行くということが限度ではないかと思う。その辺は御意見として拝聴いたすのでありますが、なかなかむずかしい点もあろうかと私は考えております。  なお親企業の経営の状況その他の事情から見た支払い能力の判定といたしまして、いろいろの事項を書いておるのであります。建前としては、ともかくこういうものはきちんきちんと払いながら、下請には払わないというところを第一義的に見るわけでございましようが、そのときにはあわせて額というものも、二義的には判定する場合の参考にはなるのではないかと思います。その支払い状況、しかもその大きな額を払つておるというような場合におきましては、なおさら下請の遅払いの不当性が強くなるという意味において、私は参考資料になると考えております。
  57. 小平久雄

    ○小平(久)委員 どうも直接公取から聞くのでなくて、隔靴掻痒の感があるのははなはだ遺憾でありますが、これらはあらためて公取に聞きたいと思います。  最後にお尋ねいたしますが、先ほど指摘した点でありますが、検収後三十日以内に現金またはこれに準ずる確実なる支払い手段、そんなふうだつたと思いますが、むしろ現在問題になつておるのは、そこにいう確実なる支払い手段というのは、手形でいえば割引でき得る手形ということでありましようが、むしろこの手形の期限そのものが問題になつて来ることは御承知通りであります。ですからせつかくそこまで言うならば、少くともそういつた公にきめる基準の中には、手形ならば少くも期限は最長六十日にするとか、九十日にするとか、一般に割引のできる可能のものを、そういつたものをこそ期限を切つてはつきりした基準をきめることがむしろ妥当ではないかという気がするのであります。ただ漠然と、現金にかわり得るものだという書き方はどうかと思うので、それじや三十日以内に手形を発行しておけばいい、手形を与えておけばいいというむしろ安易な道を選ばせるもとになるのではないかということを心配するのでありますが、そういう点について公取と何かお話合いがあつたかどうか。
  58. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 現金に準ずる確実な支払い手段と申しますものは、公取で予定いたしておりますのは、受領後ただちに銀行とか商工中金とか、その他正当なる金融機関におきまして割引き得る手形というものを予定いたしておるのであります。従いまして期限が長いために、手形をもらつたけれども、一定期間自分で抱いておかねばならぬというような手形は、ここで言う現金に準ずる確実な支払い手段と認めないということはつきりいたしておるのであります。
  59. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それでは最後に一点伺いますが、広い意味での支払い促進の意味において、従来から何らかの立法措置をしたらどうかというような意見もたまたま耳しておつたわけでありますが、また現に政府等の場合には、政府契約の支払遅延防止等に関する法律ですか、そういうものができておつたと思いますが、これらについての立法的な措置をとるということについては、当局として最近どんなふうに考えておりますか、それを最後に承つておきます。
  60. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 政府の支払いに関連いたしまして、私どもの方としては、たとえば下請に対して支払いの非常に悪い企業は、政府の入札に参加させぬというようなことが可能であるかどうかというふうな研究もいたしまして、大蔵省と若干話をしてみたこともあるのでありますが、立法技術その他の点につきましていまだ結論は得ておらぬのであります。一般的に、下請の支払いに関しまして何らかの基準をきめるような法律を出すことがいいか悪いかという問題でありますが、今公取の出しました不当なる支払い遅延に関する認定基準がすでに非常に書きにくい、書いてみましてもいろいろと御批判の余地があるというふうなわけでございまして、これを一般的立法で一つ基準をつくつてやろうということは非常に困難じやないのだろうか、それはむしろ弾力性のある現在の独禁法の不公正取引の線で取締つて行く方がいいんじやなかろうかというのが、現在の私どもの考えであります。     ―――――――――――――
  61. 大西禎夫

    大西委員長 この際、閉会中審査の件についてお諮りいたします。今国会において議長の承認を得ました国政調査事件及び中小企業協同組合法の一部を改正する法律案につきましては、審査を終了する見込みがなく、従つてこれを閉会中審査事件といたしまして、議院において本委員会に付託されたい旨の申出を議長に申し出たいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 大西禎夫

    大西委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  また現在設置してあります本委員会の小委員会につきましても、閉会中存続することとして、随時審議を続行するようにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  次にお諮りいたします。ただいま決定いたしました事件が付託されました場合には、その審査のため閉会中に委員派遣をいたしたい旨、議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  なお派遣委員の氏名、期間、派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 大西禎夫

    大西委員長 それではさようとりはからうことにいたします。  なおこの際、昨日設置いたしました化学工業振興に関する小委員会の小委員及び小委員長を御指名申し上げます。  化学工業振興に関する小委員    小川 平二君  小金 義照君    小平 久雄君  始関 伊平君    首藤 新八君  中村 幸八君    村上  勇君  笹本 一雄君    山手 滿男君  齋木 重一君    帆足  計君  加藤 鐐造君    中崎  敏君   以上十三名   小委員長 山手 滿男君  以上それぞれ御指名申し上げました。  本日はこの程度にし、散会後理事会を開会することといたします。  これにて散会いたします。     午後零時四十四分散会