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岡野参考人 あるいは抜けたところもあるかもしれませんが、メモの順序に御
質問にお答えいたします。まず
パテントのことからお答えいたします。
パテントの問題については、私どこかで実は発表したことがあると思いますが、
日本の
技術の水準が戦前には世界のレベルに、あるものはこれを凌駕したものがありましたが、その後十年間に
飛行機の
技術は、
日本の三十五年間の脅威的進歩を来したものをぴたりととめられたのであります。それで
パテントの問題でありますが、この急速な進歩をした陰には、いわゆる普通の、門外からは想像のできないほどの大きな研究費を要します。それで
日本が日清戦争以来造船、機械、電気器具その他が
外国の水準に参りましたのは、
パテントを利用したからだという
意味は、その方が国の財を多く使わずに済むからというような
考え方も
一つの
考え方なのであります。それから同時に、向うと同じレベルに
技術を早く生かす、わかりやすい言葉で申しますと、
日本独自の
考え方でむしろ戦前の
技術を基礎にして、今から
相当の金をつぎ込んで研究を始めたといたしますと、これは不可能ではありません。しかしできるものはたとえば先進国の
イギリス、
アメリカよりも非常に遅れたものしかできないということは断言できると思うのです。ですからあの特許料というようなものはいかにもむだのように見えますが、それはその効果いかんを
考えるのでありまして、永久に
日本は先進国に遅れておるということにがまんできるのならば、これはいいと思いますが、
日本独自のものでや
つて行く
——ところがおそらくトータルにしても、研究費よりも比較にならぬほどの少さな、しかも
日本のような貧乏な国で、機体をつくることの何パーセント、これはほとんどネグレクテイブルであります。
相当高いと見えますが、研究費に比較いたしますとネグレクテイブルであります。そういうことは
日本人は非常にりこうでありますから、向うの
飛行機がジヤンピング・アツプします。すると向うと同様に、ジヤンピング・アツプしたものを、
日本人はまねることが上手だといいますが、まねることだけじやない、たとえば零戦などは
アメリカの脅威の的であつた。こういうように
技術がレベルまでに行けば、あとはくふうのできる国民であります。しかしある時期はどうしてもさるまねしたと言われても甘んぜざるを得なかつた。今度は幸いにして一番大きいものが
飛行機。これも多くはまねみたいなものでありましよう。しかしトータルは研究費よりは非常に小さい。いわゆるなしくずしでも
つて月々あるいは年々に払
つて行ける。こういう世界的の
技術の本体があまり不利がない条件でも
つてや
つてくれるということであつたらば、私はぜひそういう方法をとるべきだと思う。ただしかしとるにしても、どこでもここでもというふうなことであれば、今の能力のない、経験のないところもやれるようなことになるのを放任すれば、これはウエイスト・オブ・マネーになるのであります。それは一
会社の問題でなくて、国の金をウエイストする。だからしてこれに対してもある
程度資格を判断する。これはきようの話とは別になりますが、資格を判断して、その能力ありや、あるいはウエイスト・オブ・マネーになるかならないか、こういうような方面は、どこかがニュートラルに、無色透明の体、あるいはコミツテイのシステム、必ずしも通産省とは言いませんが、あるいは議会でもいいと思います。中正的なところがあ
つて、挙国一致の、あるいは
国家の大目的の線に沿うようなところでこれを
許可して行く。こういうふうなことも関連した必要な点ではないかと思うのであります。
次に御
質問の
材料の問題でありますが、これは私は、今しからばと、こう言われると、かなりの
部分を
アメリカから輸入しなければならぬということは言い得ると思います。しかしそこが、先ほど申しました、
日本で独立で、何ら
外国の援助を受けずに、世界的の
飛行機ができた、世界最大の戦艦ができた、こういうようなことが可能であ
つたのであります。ただこれも
材料学において、あるいは
材料工業において、今は遺憾ながら非常に遅れております。これがむしろ完成品の
飛行機と比較して、より以上に
日本の現在の弱点であると言える
部分のものもあるように思います。しかしこれは前に達したと同じように、
日本にもし資材がなくてこれを輸入しても決して不利な
立場にならぬように、
相当の
部分は持
つて行けると私は確信いたします。ただ今、きよう、あしたどうであるか、こういうことを言われると、かなりの
部分を輸入にまつほかにないというようなものがあると思いますが、しかしもうすでに
相当のものは
日本でスタートを切
つております。これはあなたの御
心配なさるほどのものではない。ただ
日本に原料のないものがあります。これもある方法で、
ちようど製鉄が
日本では不可能だ、しかし国策上絶対に必要だというので輸入もや
つております。今少し高いですが、そういうように、そう杞憂とまで、あまりはげしい言葉は使いませんが、それほど
心配することはないじやないか。ある
程度御安心して、
日本の
技術者にまかしてくれていいんじやないか。将来も……。
それから、どうしても防衛
生産がもとになり、
民間はあまり大した期待ができない、これはしばらくそうであろうと思います。それから
アメリカは、防衛
生産が必要なく
なつた、それは閉鎖して、そうして、
民間需要に移
つておる
——けれども、あれは戦争中のという形容詞がその頭につくのであります。戦争中に陸海軍は天文学的数字、こういうふうに言われたほど大きく伸ばしたのであります。しかもそれは全部
政府の金でも
つて工場、機械を
設備したのであります。その伸ばしたものを平時はそれほどいらないから、その一
部分を一時閉鎖して、しかも機械その他、油をつけて実に完全に保存しております。それは一朝事あるときのためであります。またそういうことのできるように戦争中にスタートしたのであります。だからして予定の計画で閉鎖をした。そういうようなものが大
部分であると私は
考えます。あれは戦争中だけであります。
それから
日本はこういう
経済力の小さな国であるから、どうも
日本にそういう金のいる
——質問の要領はあるいは間違
つておるかもしれませんが、輸出なんかを当てにするというのはどうも少し大き過ぎはしないかというふうに私は解釈したのでありますが、先ほども申し上げましたように、
日本の将来の
航空機産業というものに対しては、民需
産業に重点を置いております。しかも輸出の面にまで国のためにこれを伸ばすべき性格の
産業である、こういうふうに申し上げたわけでありますが、それはいけない、だからそれほど力を入れる必要はないということならば万事終りと思います。しかし私はこれは国民の覚悟次第であると思います。とにかく挙国一致で重要だという判定がついたらば、これはほんとうにやらなければいけないのだ。先ほど
ちよつと触れましたが、
イギリスの
コメツト機のあの発明、
生産は
イギリス人の負けじ魂であります。
アメリカにいつまでもたよ
つておることはシエームである。かるがゆえに、あの社長が去年の初めの年次大会で初めて、
イギリスというものはそれまでは
アメリカの民需の大きな発達した
航空機をほとんど全部買
つておつた。それをここで初めてわれわれ英国人は独占して、
アメリカの世話にもならずに、自分の
飛行機で国際飛行が可能に
なつた。これは
皆さんとともに実に慶賀すべきことであると言
つております。これは挙国一致の
イギリスの不屈の魂が実
つて、そうしてああいうふうに来たものだと思います。
日本の
技術は今は
イギリスより非常に劣
つております。しかし永久に非常に劣
つておるということは信じなくてよろしい。だから国民の覚悟次第である。国としてぜひそういうふうに持
つて行つてもらいたい。こういうふうな
意味から軍需
産業だけに限りたくないし、また限る必要もない。これは必ず可能である。特に商船なんかでも最近は
相当輸出をしておりますが、商船なんかよりもこまかい精密
工業で、
ちようど時計
工業と同じように指先の器用さによる
産業であります。それで
材料は比較的少くて、
日本人には最も適した
産業であります。将来発展さすべき
産業である。しかもその
可能性のある
産業ではないかというふうに私は信じておるのであります。