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1954-05-20 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 福田  一君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    田中 龍夫君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       柳原 三郎君    加藤 清二君       齋木 重一君    中崎  敏君       伊藤卯四郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         保安庁局長         (保安庁装備局         長)      久保 亀夫君         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務官         (重工業局長) 徳永 久次君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         議     員 小笠 公韶君         運 輸 技 官         (航空協技術部         長)      市川 清美君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 五月二十日  砂利採取法案大西禎夫君外十四名提出衆法  第三九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  中小企業安定法の一部を改正する法律案小笠  公韶君外二十七名提出衆法第三六号)  砂利採取法案大西禎夫君外十四名提出衆法  第三九号)  航空機製造法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三八号)     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず中小企業安定法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。加藤鐐造君
  3. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 今回の改正案は、従来通産委員会におきまして、大体各党意向中小企業安定法をさらに実情に適したように強化しなければいけないという意見に基いて、今回各党一致をもつて提案したわけですが、ここでなおこれがこうした一歩前進の形において改正が行われましても、残りまする問題は、いわゆる調整命令発動に非常な時間を要するということでございます。先般発動されたタオルマツチ等調整命令につきましても、国会において調整命令発動すべしという決議をいたしまして、政府がそれに同意をいたしましてから、なお五箇月を要したわけでございます。これは一体いかなる理由によるものであるかということを、この際明確に承りたいのでございます。十二月決議をいたしましたのに対して、政府同意をいたしましたが、はたして心から同意をしておつたかどうか。同意をしておらなかつたために、決議をして、政府手続をとるまでに非常に時間を要したのか、同意をして、ただちに手続をとる準備にかかつたけれども、いろいろなことで時間を要したのか、その間の事情をまず承りたい。
  4. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 お答え申し上げます。私どもこの通産委員会におきまして、直接決議の中に業種を御指定になつたわけではございませんけれども、当時問題になつておりましたのがマツチ並びにタオル関係でございましたので、結局はこの二つ業種に対しまして、すみやかに二十九条命令を出せというような決議趣旨と了解いたしまして、私の方もあの決議通りに実行いたしますということを申し上げたのでございます。いよいよ二十九条命令を出そうといたしますと、何分にも先例のないことでございますので、省令一つ書くにいたしましてもその書き方が非常にむずかしかつたのでございます。それからまたあれを出すということになりますと、初めてのことでありますので、この二つ業態が実際上法律に書いておる条件を具備しておるかどうかということも、ただ具備しておるであろうということでは出しがたいものでございますから、具体的に税務署の資料をとつて調べましたり、いろいろな点で、この二つ業態があそこに書いてありますようなぐあいに不況であるかどうか、あるいはその他関連産業の存立に及ぼす重大なる悪影響がどの程度に存在しておるかというふうなことの調査と、それからいよいよ出そうといたしました場合における法律上の手続等につきまして、研究すればするほど非常にむずかしい問題が次から次へと起きまして、それを解決いたしますのにいろいろくふうを要した。先例のないことでございましたので、いろいろと問題がむずかしかつたというのが、かなり時間をとりました理由でございまして、決議趣旨に沿うて、かつこの法律上の要件を満たしながら、あの二十九条命令を出すという点に苦労を要したのであります。これはみずから誠心誠意事務を進めて行く上にやむを得ず時間がかかつたというのが実情であります。
  5. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 先例がなかつたからいろいろ準備に手間がかかつたというお話でございますが、マツチタオル等について調整命令発動すべしという本国会決議提出するにつきましては、相当事態が悪化しまして、国会としては見かねて決議をしたものであると考えます。従つて業界情勢というものは通産省としても十分御承知になつてつたはずだと思います。そうすれば国会決議をまたなくても当然こういう法律ができておる以上、おやりにならなければならない問題ではなかろうかと思うのであります。政府はそういう認識と判断を持つておいでにならなかつたのかどうか。持つておいでになるとすれば、政府としては当然そういう用意は事前にしておらなければならなかつた問題であると思いますが、国会決議によつて、初めて政府はこの事態を認識して命令発動すべきものと考え準備にかかられたのかどうか、その間の事情をまず承りたい。
  6. 岡田秀男

    岡田(秀)政府委員 マツチとかタオルとかの業界から二十九条命令発動申請が出ましたのは、当委員会における決議相当前でございます。われわれはその申請を受理してからただちに調査にかかつてつたのでございます。いろいろ調査をしております過程において、当委員会における決議が行われたわけであります。われわれも大体この二つ業態に対しては、二十九条命令を出さねばならないような状態であろうということを、大体のところをつかみかけておつた状態でございます。そこでその決議が行われました場合に、われわれといたしましても、御趣旨に沿うて努力するという旨のお返事をいたしたと思うのでございます。その後やはり本式に出すといたしますれば、大体この程度でよろしかろうということではなかなか出しにくいというので、さらに的確なる調査をする。それから先ほど申しましたように、いよいよ出すといたしますれば、省令書き方とかなんとか法律技術上にもずいぶん解決を要する困難な問題もございましたので、それらの点を解決いたしますのに、その後ある程度の時間を要したというのが実情であります。
  7. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 私は、はつきり記憶しておりませんが、それぞれマツチタオル業者から調整命令発動について申請があつたのは大分前であつたと思います。そういう点からいろいろ判断いたしますと、通産省としては業界から申請をいたしましても、容易に命令を下す決意をしないのではないかということが考えられます。そうしますとこの法律というものは、せつかくできましても効果が薄いということになりますが、今後の方針として、業界から調整命令申請が出たならばただちに発動する決意を持たれるのかどうか、その点について大臣に承りたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 調整命令発動につきましては、ただいまお話がございましたように、非常に慎重に当局としても考究いたしましたため、あるいはまた所要の手続等に意外に日にちを要した等のために遅れました事実はございますが、これらの点につきましては、今後におきまして十分改善考えて参りたいと思つております。
  9. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 大臣答弁ははなはだあいまいです。十分考慮して実情に沿うようにするということは、いわゆる業者申請があつても慎重に検討した上でということになりますが、一体なぜこうした安定法というようなものができたか。これは最初は臨時立法でございまして、業界要望並びに私ども国会における多数の要望として、中小企業者を生かすためには協同組合法そのもの強化しなければいけないのだという意向が強かつたにもかかわらず、いわゆる独占禁止法等に抵触するということで、こうした臨時立法ができたわけであります。現在これは恒久法にかわつておりますけれども性格はやはり臨時立法であります。従つていわゆる業界要望あるいはわれわれの主張というものを、この法律によつて十分生かしてもらわなければならない。そうしますと、やはり業界からみずから申請いたしますれば、当然政府はただちにそれを取上げて行くべきものであると考える。ただアウトサイダーの問題がございます。アウトサイダーをこれによつて縛るということになりますので、その点について政府は慎重に考慮されるであろうと思いますけれども、この法律にあります通りアウトサイダー少数の場合にこれは適用されると明記されておりますので、業界全体を生かすためには少数の者は当然多数に従わなければならない、こういう考えのもとに政府は十分心して行くべきであると考えますので、なおこの際もう一応承つておきます。調整命令発動について申請がありましたならば、ただちに発動準備をせられるかどうか。慎重に考慮するとか検討するとかいうことなく、この法律の精神から生れて参つた経緯にかんがみてそういう態度をとつてもらわなければならないと私ども考えるのでございまするが、もう一応恐縮でございますが、明確にお答えを願いたい。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 申請がございましたならば、機械的に、自動的に、ただちにというまでは申し上げかねると思いますけれども、ただいまるるお述べになりましたような御趣旨に対しましてできるだけのはからいをいたしたいと考えます。
  11. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 それからこの際もう一点大臣に承つておきたい点は、今も申し上げました通り協同組合法を戦前のような、いわゆる一つの地域を限つて同一業種を営む者は当然加入しなければならないというような、すなわちアウトサイダーを許さない、こういうことにしなければ、今日のような中小企業者が非常な困難な状態に陥つておりまする情勢におきましては、この法律だけではとうてい中小企業者は救われないと私は考えます。一口に申しますると、そういういわゆる協同組合法強化、すなわち力を持たせる、あるいは資材の共同購入についても、あるいはまた製品の共同販売についても、組合がみずからの規定従つて強制力をある程度持つ、こういうふうにしなければならないのではないかというふうに考えまするが、従来私のこうした主張に対しまして、各大臣は、趣旨には賛成であるが、独禁法その他の関係でただちには実施できない、検討するとかいうようなことでございましたが、現大臣はこの点についてどういうふうにお考えになりまするか、伺いたい。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もやはりそのお考えには非常に同感に思う点が多いのでありますけれども、同時にこれは独禁法関係もさることながら、強制的な加入ということになりますると、憲法上の問題にもなるような大きな問題でございますので、それらの点につきましては、研究は十分いたしたいと思いますけれども、現在の法制の建前から申しますると、憲法等を勘考いたしました場合には、この実現がなかなかむずかしいのじやなかろうかと私は考える次第でございます。
  13. 加藤鐐造

    加藤鐐造委員 憲法上の疑義ということはしばしば承つておりまするが、業者に対して一つ規制をするということはすでに憲法上の問題であります。最もはなはだしい例は、現在この委員会に付託されておりまする航空機製造法のごときも、われわれから見ますればはなはだしい憲法上の疑義が生じて来る。私は中小企業者を生かす上において、規制することの疑義よりも、こうした大企業者を生かすための大きな規制、明確に独占を許すというようなこうした法律こそ大きな憲法上の疑義疑義というよりもこれは明らかに憲法違反なのです。吉田内閣の再軍備と同様に憲法違反なのです。しかしそういうところまで憲法の解釈をしたくないと私は考える。だから私は特に中小企業者を生かすためには、憲法上の疑義ということをたてにとつて、これに反対するということは私は納得できません。独禁法という法律があるからということならば納得できますが、独禁法の適用についても、これを除外するという規定である程度中小企業者を生かさなければならないと思います。だから私はこういう独禁法の運用の上において中小企業者を生かして行くということが今後必要である、こういうことを考えるものでありますが、いわゆる憲法上の疑義によつて中小企業協同組合法強化をすることができないというようなことは、これは私は納得できません。これ以上質問いたしましてもおそらく大臣答弁は同じであろうと思いまするが、この点はよく考えていただきたい。中小企業者のためのいろいろな法律ができております。金融の道も講じられております。しかしながら業者みずからが設備の増設であるとかあるいはダンピングであるとかいうような不当なる競争をしないで行けるように、組合の力で生きて行けるような方法を講じて行かないと、中小企業者はもはや生きて行かれない、この点は十分に認識していただきたい。従つて大臣がもし心から私の意見に賛成いたしますならば、この問題については等閑に付することなく、十分なる御調査の上にすみやかにこの問題の実現できるような努力をしていただきたいということを要望いたしておきます。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの協同組合法の問題でございますが、これは御承知と思いますが、改正につきまして積極的な研究を進めておるわけでございます。その際に、ものによりましてはできないこともあるのではなかろうかということを先ほど率直に申しましたのでありまして、なお組合法改正につきましては御趣旨にできるだけ近づけるようにするという意味におきましては、すみやかに成案を得るように積極的に努力いたしたいと思います。
  15. 大西禎夫

  16. 中崎敏

    中崎委員 通産大臣に伺います。通産大臣はかつてこの委員会の席上において不況カルテルは認めないというふうな考え方を言われましたが、その考え方に今日もかわりはないかどうか、お尋ねいたしたい。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 不況カルテルという言葉の意義その他につきましていろいろ問題があると思いますが、私が前に申しました意味不況カルテルにつきましてはできるだけ認めたくないという考え方にはかわりはございません。
  18. 中崎敏

    中崎委員 現在提案されておりますこの法律改正によつて不況に対する場合においても発動せなければならぬということがあり得ると思いますが、そういうような場合をお考えになりませんかどうか。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、いわゆる不況カルテルはできるだけ認めないというその考え方と、この法律改正案との間には矛盾はない、中小企業の自衛的な立場を強くして参りますものの考え方の間にはギヤツプはない、こういうふうに考えております。
  20. 中崎敏

    中崎委員 中小企業者不況にあえいで行き詰まつて価格とか数量等お互いに勘定をして実行する、まずそういうことをこの法案調整命令発動の場合においてはやるわけであります。そうすると、むしろ不況カルテルというものを助長奨励するといいますか、黙認、場合によつてはやれというような命令を出すことにもなる。そういうふうな場合においては不況カルテル発動になるのではないかということをお聞きしておるわけです。
  21. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、不況カルテルということの、私どもがやつてほしくないという考えておりまする不況カルテルとそれからこの法律改正案等において考えられておりますところとは、私は違うと思うのでありまして、中小企業が、要するに不況と申しますかデフレ経済の中において、円滑に自衛上のいろいろの対策を講じて行く、不況乗切りの対策をやつて行くという意味においては、不況対策一つであると思いますけれども、しかし自然に合理化されて価格が下る。それを不当に抑えるという意味においての不況カルテルというものを私どもは認めたくないと考えておるのでありまして、その間におきまして、考え方は先ほど申しましたようにギヤツプはないと私は考えます。
  22. 中崎敏

    中崎委員 この問題はあまり深入りしないことにいたします。  ところで最近、業界全般にそうでありますが、ことに中小企業が行き詰まつておるということは御案内の通りであります。ところがここに非常に問題にすべき点は、金融機関、ことに地方銀行などでありますが、今まで銀行がそういう事業にも貸付をしておる。ところがその事業相当に経常が困難である。そういうふうなのを見越しながら、これ以上この事業には金を出したくないというふうな場合においては、その事業に対して銀行管理であるというふうな形にしておいて、そうしてその間にどんどん一般の人からその事業に原料なり品物を買い付けさして、それを今度は商品担保か何かの形で押えつけておいて、言いかえれば取込み詐欺の形においてどんどん押えつけてしまつて、不渡りなんということでその事業が手をあげる。そうして銀行が一切の財産を全部押えて、自分だけは債権確保ができるが、そういうことはほかの多数の業者といいますかこれと取引のある関係者にはそれだけ大きな出血と迷惑をかけておる、こういう事例が相当あちらこちらの銀行にたくさんあるのであります。こういうふうなことについて大臣は聞かれたことがあるかどうか。あるいはこれに対する対策を何らか考えておるか。これはきわめて重要な問題であると思います。金融機関というものは、一面において大衆の金を預かつておる、そうしてこれを運用するのでありますが、しかし一面においてその運用した金が場合によつて方針を誤つておる、あるいはやむを得ない場合において、その事業が詰まる場合があります。そうすると今度は逆に大衆から、取引の相手からこれを取込みさしておいて、それをぽかつと押えつけて、自分だけが独占してとつて行くというような、こういう不合理、不道徳きわまるやり方を現に方々でやつておるということでありますが、これはわれわれとしては見のがすことのできない大きな問題であります。この点について通産大臣はどういうふうにお考えになつておられるかお聞きいたしたいのであります。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題につきましては、私もその事実の掌握にできるだけ努めておりますが、非常に極端な例と申しますか風評を申しますと、一つのうわさをまいておいて、そこで自分のところだけが債権確保すればいいのでありますから、自分だけがいい立場をとろうという向きがないでもないようでございます。これらにつきましては、結局金融機関の自主的な反省といいますか、ほんとうの公共機関としての使命に徹してもらうということが何より大事であると思います。しかしあながち金融機関のみを非難することはできないのでありまして、これも言うまでもございませんが、大衆預金を預かつておるという立場から、その立場においてできるだけ健全な経営をし、そうして債権が回収できないことにならないようにというその気持が、ときに小乗的になり過ぎると、ただいま御指摘のようなことになるのでありましようから、その辺のところは通産省としても金融機関側の協力を求めなければならぬところでありますが、監督官庁あるいは日銀その他の方面においても、大局的な指導をやつてもらいたいということで、要望もいたしておるようなわけでございます。なおこの問題と直接の関連は薄いかもしれませんが、しばしば申し上げておりますように、中小金融に対する貸倒れ準備金等について、税の取扱い上優遇措置を講ずるということも一つ対策を私は考えておるわけでございます。
  24. 中崎敏

    中崎委員 ちよつと今の大臣答弁に不満足なんですが、言いかえますと、銀行大衆預金を預かつて、これを貸し出すのを業としておる。これは言うまでもないことであります。ところがその貸出しがこげついた、それを回収するためには手段を選ばない、そういう行き方が問題なんです。言いかえればそれを回収する場合に、それを合法適正にやるということについては何ら異議をさしはさむものではないわけであります。ところが程度を越えて過度な、第三者を欺罔するような行き過ぎまでやつて、しかも手段を選ばずにやるというところに問題がある。たとえばここに一例を申し上げますが、横浜興信銀行というのがある。これが前橋の東邦工業という繊維をやつておる会社に対して長年相当のこげつきがあつたわけです。ところでそれについて、その横浜興信銀行東邦工業金融管理をやつた銀行管理自分のところの行員を出張させて、そうしてその社長の判を預かつて、手形から何から一切その出張行員判こを押す、一切の金融についても責任態勢のもとにやる。ところがここ二、三箇月前に、いつか知らぬ間に銀行管理を解いて行員引揚げた。ところが第三者はもちろんこれが銀行管理であるということを今に信じておつて、そうして安心して、銀行管理なら大丈夫だからあそこには品物を売れというようなことで相当品物を向うに売り込む。ところが銀行は一面引揚げると同時に、それまでの一切の何をみな、たとえばある先から三千万円くらいの羊毛を一ぺんに買い付けておいて、ぽかつとそれを押えてしまつた銀行自分管理をやつておる間にとるべきものを一切とつてしまつた。これから先は銀行は手をあげざるを得ないという状態になつてぽかつと行員引揚げてしまつた。これは今の羊毛だけではない、油にしてもあらゆるものがそれにひつかかつておる。それで銀行だけは涼しい顔をして抑えつけてしまつて、おれは知らぬぞという、そういう取込み詐欺みたいなことをやつていいかどうか、こういうことが問題である。そこでこうした具体的な問題が出たのでありますから、私は大蔵大臣にここに来てもらつて、こうした問題についても十分に調査を要求するのでありますが——ちようどこの席上においても、やはり中小企業等関係のある問題であり、産業行政全体に関係する大きな問題でもありますから、ひとつ大臣の方からさらに大蔵大臣の方にも今のような問題の実情調査を要求されまして、そうして手段を選ばないような不当な方法でなしに、大衆の納得の行くような方法においてこの問題が処理されることを善処願いたいということを要求しておきます。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御趣旨の点は十分承知いたしました。その債権回収確保ということにあまりに熱が入り過ぎて、かえつて公共的な立場から逸脱するような態度をとるということは、金融機関としてもおもしろくないことであると思いますので、さつそく関係当局等にもその趣旨を申し入れまして、今後一層の注意を喚起するようにいたしたいと思います。
  26. 大西禎夫

  27. 永井勝次郎

    永井委員 ただいま議員提案になつておるような内容における一つ統制経済、こういうやり方は、中小企業に対する究極の目標であるか、あるいはそこまで目標をもつて、その目標に至るまでの過程における便宜的な措置あるいは有効な措置として、こういう事柄が有効に作用するように発動するというような性格のものか、大臣はこれについてどのようにお考えになつておるか伺いたい。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この提案されておりまする案は、私が拝見いたしましたところではこれは臨時のとりあえずの措置ということに一応考えておられるように見受けるわけでありまして、政府といたしましても将来長い恒久対策として、はたしてこういう方法がいいか悪いかはいろいろ慎重に研究をしなければなりませんが、当面のところにおきましてまことに適切な案であるというふうに考えておるわけでございます。
  29. 永井勝次郎

    永井委員 今日中小企業は崩壊前夜である。この中小企業における危機というものは、広さにおいても深さにおいてもまたその発展性においても相当危機の段階にあるとわれわれは認めるわけであります。従つて今日の中小企業に対する対策の樹立の前提条件なるものは、この中小企業の危機の実態が何であるか、まずこれを明確にしなければ正確な対策は出て来ないと思うのでありますが、大臣は今日の中小企業の危機の実態は何であるとお考えになるのか、そうしてこの危機の実態に対してどのような措置政府として講ぜられるお考えであるのか、そうしてそういう対策の中におけるこの調整組合一つの統制というものがどういう役割を果すものであるとお考えになるのか、これらの点についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今日の中小企業の問題が非常に重大な立場にあるということは私どももつとに考え、かつその対策に腐心しておる次第でございますが、その原因なり、実情の把握はどういうふうにしておるかというお尋ねでありますが、一口に申せば、日本の経済全体が非常に零細で分散しておる。中小企業というものはほとんど数から申し、あるいは生産高等から申しましても非常に大きな割合を占めておる。そこでいわゆる底の浅い経済でありますから、いろいろの国際的な条件の変動その他が一番端的に直接に中小企業に波及をして来るのであるというところに根本の問題があると思います。それでそういうような事柄に対して、対策としては前々から申し上げておりますように、一つあるいは二つの手でもつて、いわゆるきめ手としてきれいな手というものは私はなかなか考えられないと思いますので、まことにいつも同じようなことで恐縮でありますが、いろいろの措置を、言い古されたことでありましても根気よく常に推進して参るよりほかに私は手はないだろうと思うのであります。そういう意味合いから今国会におきましてもあるいは協同組合関係、小口信用保険の関係あるいは中小金融の、特に小口の手当あるいはまた大企業の下請に対する代金支払いの促進といつたようなことをいろいろと手配をしておるわけでございますが、さらにただいま御提案のこの案も、やはりそういつた意味で今後さらに予想されますような中小企業の困難な状況に対処する一つのりつぱな手であるというふうに考えておるわけでございます。さような意味合いにおきまして、どの対策がどれだけの効果を上げるかということは、科学的にもなかなかはつきりと立証することは困難と思いまするが、全体が総合されて所期の目的を上げるようにこの上とも努めて行くべきものであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  31. 永井勝次郎

    永井委員 中小企業今日の危機というものは、一つ二つのきめ手によつてどうとかいうものじやなくて、日本経済の総合的な基盤の上に立つた一つの危機である、こういう認識においても、私も大臣と感を同じくするものであります。従つて今日中小企業の危機というものは、吉田自由党内閣五箇年の悪政の実を結んだものである、こういうふうにわれわれは考える。この五箇年間において吉田内閣中小企業に対して具体的な政策として何をやつたかといえば、私は寡聞にして具体的な政策を聞かないのであります。もし具体的な政策ありとするならば、池田元通産大臣が本会議においていみじくも宣言したように、五人や十人の中小企業者が死んだつてかまわないという、これは吉田内閣唯一の中小企業に対する具体的な政策の表現ではなかつたか、われわれはかように考えるのであります。その結果として今日このような中小企業の危機の段階が来ておるのであります。これをもし一つのイデオロギー的な立場で申しますならば、吉田自由党内閣の自由経済という実態に合わない政策のその実がこういう形によつて現われて来ているのだ、われわれはかように考えるのであります。そういうような観点に立ちますと、調整組合一つの統制をやるのだというような部分修正などではとても及ばない問題である、かように思うのでありまして、この調整組合は結局は吉田自由党内閣が独占資本の独占利潤を擁護するという立場において、独占企業の高価格を、たとえば鉄の面においてあるいは糸の面において、あるいは毛糸の面において、そういつた独占資本の独占価格を擁護するという立場をとつて中小企業を圧迫して来ておる。従つて国内においては原料高の製品安ということによつて中小企業が圧殺される。輸出の面においては外国に出血輸出をし、国内にそれを転嫁する二重価格という、こういう誤りを犯しておる。こういう本質的な非常な危機の段階に追い込まれておる、われわれはかように考えるのであります。従つて議員提出によるこの統制というものは、独占資本のカルテルに対する中小企業のせつぱ詰まつた一つの対抗策にすぎない、対症療法にすぎない、根本的な解決の道ではない、われわれはかように考えるのであります。従つてこの調整組合一つの統制の効果というものもほんとうに短かい、臨時的な措置である、一定の限られた期間において、応急に措置して、次の発展の段階への地盤固めと混乱を避けるところの一つ措置、この程度よりわれわれはこの効果を考えないのでありまして、これを効果あらしめるかどうかということは全体的な国の中小企業対策、ひいては国全体の経済政策の中の一つの部分としての中小企業対策というものが総合的に有機的に確立されなければ問題にはならない、かように考えるのであります。従つてこの案を一つぽつんと出して、これが唯一の中小企業の当面の対策であるというような考えに立つと大きな誤りであるとわれわれは考えるのであります。大臣は、現在の金融政策が中小企業からしぼり上げて、集中融資の形によつてあるいは系列融資、選別融資、財閥系統の融資に集中して、そうして中小企業を圧迫して来ている、この金融圧迫に対してどのようにお考えになるのか。また租税の関係にいたしましても、企業合理化促進法というような形によつて大企業だけを助けておる、あるいは租税特別措置法によつて大企業だけを助けて、その減税分を中小企業にぶつかけておる。自由党内閣の中小企業対策というものを端的に申しますならば、中小企業を大企業の犠牲にしておるという、こういう政策が一貫して行われておる。従つて中小企業対策としてわれわれがほんとうに現実を分析してこれの対策を立てるというからには、どうか中小企業に対する大企業への犠牲だけは取除いてもらいたい、平等に扱つてもらいたい、ほんとうに自由経済の立場中小企業を置いてもらいたい、こういう要求が切実な中小企業の叫びであります。今は大企業だけを助けておる。大企業をいかにして合理化し、これの利潤を安定するか、そのためには国際的な競争力がないから、国内でこれを掘り返す、国内の中小企業から資源を吸い上げる、こういうような形においてやつておるやり方を是正してもらいたい。こういう切実な要求を出さざるを得ない。従つて、カルテルの問題も、大企業のカルテルは広範囲に、しかも不公正な取引の形において今発展しておる。このカルテルのやり方というものは、国際市場における競争力を強化する性格と方向において行われておるものでは断じてありません。ただ国際経済から日本経済を遮断して、鎖国経済の中において大資本を擁護するという政策が行われておる。あるいは外貨の問題においても、基本的にはそういう政策がとられておる。こういうことは、困る困るという愛知通産大臣は、割合に良心的な自由党内閣の閣僚でありますから、こういう問題の所在については理論的にも実際的にもごまかすことができない。でありますから、問題にだけはちよつと一応触れておるのでありますが、しかし、この不公正な、不当な、悪辣な、陰険な経済政策というものに協力する立場をとつておることに対しては、われわれは断じて許容することができないのであります。これらの日本経済の独占資本と独占利潤の擁護をはかつておる金融の問題、財政経済の問題、租税の問題あるいは独占企業のカルテルの問題、外貨の問題、これらの問題に対して通産大臣はどういうふうに認識されて、そうしてこれらに対してどのように対処することが中小企業対策の出発点になるのだとお考えになるか。決してもう積極的に今の内閣に中小企業に対する対策を私は求める気持はありません。これは本質的に中小企業を搾取するという政策の立場にある性格の政党でありますから、積極的に中小企業対策を求めるというようなことを要求するものではありませんけれども、少くも大企業中心で中小企業を踏みつけて、するめみたいにのし上げて、そうして大企業だけが利益をとればよいのだ、こういう政策だけはやめてもらいたいと考えますがこれに対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。ひとつ信念的な立場において良心的な御答弁を求めたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 非常に広汎な御議論でございますから、詳細に各項目にわたつてお答えいたさなければならぬわけでございまするが、まずできるだけ簡潔に一応お答えいたしたいと思います。われわれが独占資本とか独占企業とか独占利潤とかだけを考え中小企業対策を全然やつてないという仰せでございますが、これは一々事例を申し上げる煩を省きますが、これはちよつと永井さんもお言い過ぎになつておられるのではなかろうかというふうに考えるのでありまして、金融の上において、あるいは税制の上においても、御承知のように勤労控除を引上げるとか、専従者控除を認めるとかあるいは少額の所得に対して事業税率を引下げるとか、そのほかいろいろの方策を累次講じて参つておるわけでございます。それから大企業と中小企業との関係において不平等であるという御指摘でございますが、これについては、たとえば大企業の中小企業関連企業に対する代金の支払い等がさような御非難を受けるようなことがあつてはいけないと思うので、過般も認定基準を公取と協力してつくりまして、これ以上のことをやつたならば独禁法の違反として厳重に処断するということで、現在摘発といいますか、調査もやつておる。それから外貨の割当等につきましても、最近も具体的な事例がいろいろ出て来ておりますけれども、必ずしも大企業だけに優先割当をするというようなことでは決してやつておりません。最近におきましても輸出加工については、特に中小のメーカーを優遇するというようなことも現実にやつておるようなわけでございますから、中小企業問題というものは、特に日本の現下の状況において大事な、また困難な問題であるということについては、私もまたまつたく同感でございますが、われわれはわれわれとして考え得る最善の努力をこの上とも続けたいと思つておるわけでございまして、決して独占資本とか、独占企業のことだけを考えておるわけではない。これは事実が証明してくれるのではなかろうかと私は考えております。
  33. 永井勝次郎

    永井委員 確かに中小企業に対して何かをしておるようなゼスチユアだけは示しておることは、私も認めます。たとえば、金融の面において中小企業金融公庫という公庫を開きましたことも認めます。しかしこれは看板だけであつて、中身はほとんどありません。貸出し原資が幾らあるか、もうとるに足りない、三百億内外であります。国民金融公庫も、これは中小企業に対する金融の窓口であるといいながら、その原資は幾らあるかというと、五百億に足りない。こういうような看板だけを下げて、いかにもこれだけ誠意を持つているのだというごまかしはするが、しかし実際に役立つような量的なあるいは質的な金融の数字的なものは通しておりません。二十八年におけるところの金融の貸出し残高を見ますと、全企業の九九・五%内外を占めておるこの中小企業に対しては一兆の貸出し残高の合計であり、そうして〇・五%というほんとうに一握りくらいよりない大企業に対する金融貸出しの合計が一兆七千億というようなこういう貸出しをやつておるのでありまして、これらの点から見ても、いかに金融の面から集中融資をし、濫用しているかということがよくわかりますし、金融におけるいろいろな刺激的な条件、あるいは三井銀行がどういうところにどういう金を貸している、あるいは三井信託がどういうふうにしている、保険会社がどういうふうにやつている、三井系列の金融機関が三井系列の産業関係に対してどのような金をどのくらい貸しておるという調査は、われわれはいたしておるのでありまして、そういうような点から見ると大臣がどのような抗弁をなさろうとも、抽象的な議論を展開されようとも、われわれは具体的にこれを反駁する材料を持つておるのであります。従つて金融の面から見て、現在は集中融資である、系列融資である財閥再建の金融政策が強力にとられ、これをあと押しをしているのが、駆使しているのが現吉田内閣である。従つてその方面からのリベートも多いであろうと想像するのでありますが、そういうような点から見まして、私は金融の面においては大臣の現在のお話には承服することができない。中小企業金融公庫、国民金融公庫は看板だけあることを認めます。あるいは税の関係から申しましても、たとえば企業合理化促進法によつて、一千五百万以上の機械購入に対しまして第一年次五割の控除を認める、残りを三箇年の控除にする、あるいは貸倒れの準備金をどうする、退職積立金をどうするというような、こういう損金に落しておる関係を拾い上げますと、二十八年の課税の中において一千四百二十九億というものを大企業の利益の中か損金に落しておりますことはもう明らかであります。税金の面においてもこのようなことをやつておる、租税特別措置法によりますと、中小企業は何らの控除がなくて、四二%の課率をかけられて、大企業は三〇%から二〇%の税率である、こういうばかげた事柄が中小企業対策であると口幅つたいことを現内閣に言わすほどわれわれはばかではありません、目明き盲でもありません。こういう具体的な事例はわれわれは数字的にも調べております。あるいはカルテルの関係における糸の関係、毛糸の関係あるいは鉄の関係、その他独占企業がどのようなことをやつておるかということはもう明らかなことでありまして、こういうことは保険会社の関係から見ましてもいろいろな諸多の一貫した一つの政策として打出されておることは、われわれは明らかに認めておるところでありますし、外貨の問題にいたしましても国際経済が物価の値下りを示して来た、朝鮮事変で日本の国内物価が非常に上つた政府は昭和二十六年の六月に為替管理をいたしたでありましよう、この為替管理の統制というものは、従来の自由経済を放擲してなぜこういう統制経済をやつたかというと国際経済の値下りから日本経済を遮断して、日本の高くなつた価格を、独占資本の利益をいかにして維持してやろうかという意味における、そういう性格における、また具体的にそのように示されて来たのでありますが、そういう為替管理が行われておる、あるいは二十七年の中期におきましては、綿糸関係その他が下つて来た。そのときに、日銀がこれにてこ入れをして下らないようにしておる。こういうような具体的な事例をあげましても、明らかに政府独占資本の独占利潤だけを対象にして、そして中小企業というものはそれのいけにえの材料として、ただ口だけで言つておるのであり、実際はしぼり上げておる。こういう悪辣な政策と非人情的なやり方をやつておる。その結果として、具体的に中小企業は、今日五箇年間の集約として崩壊の段階に来ておるということは、これはおおうことのできない事実であります。われわれは、大臣吉田内閣の中において良心的な大臣であると考えているのでありまして、そういう立場から、これらの現在行われておる中小企業に対する誤謬というものを率直にお認めになつて、もう少し血のあり、涙のある、そうして日本民族の同胞であるというような、血のつながりのある政策が、ここに打ち立てられなければならない。独占資本の側に立つて、骨までしやぶろうというような政策は、早く打切つてもらいたい、こういうささやかな願いを私たちは持つておるのでありますが、これに対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。独占資本擁護でないというならば、私はさらに具体的に事例をあげて論議をいたしたいと思うのであります。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、結局これは見方の相違と思われる点もあるわけでございまして、私どもとしては、現在の情勢下においてできる限りのことを考えておるつもりでありますから、決して中小企業の骨までしやぶろうというようなことを考えるどころか、何とかして中小企業に、特に最近のデフレ政策の余波が当ることが少かれかしと念じまたその余波に対してはできるだけこれを回避し得るようにするためには、どういう手があるかということについて、先ほど来るる申し上げておりますように、くふうをこらしておるわけでございます。その程度が足りないとか、あるいはもつとほかにこういう手があるではないかというような御意見に対しましては、十分私は誠意をもつて今後とも考えて参りたいと思つております。
  35. 大西禎夫

    大西委員長 他に御質疑はございませんか。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 関連して、中小企業の倒産続出に対する一点だけ……。中小企業に対する悪影響の少かれかしと祈つていらつしやる大臣に、具体的方策を示してもらいたいから、お尋ねするわけでございますが、大臣もすでに御承知通り中小企業関係の不渡りが日に五千枚ぐらいずつ毎日出ている。倒産商社は去年の今ごろからずつと倒産の数がふえまして、十二月に至つてちよつと政府の融資のおかけで下火にはなりましたものの、また一月からこちらにかけてずつとふえて来ている。少くとも表に現われているものだけで、日に二商社ずつは数えられるわけなんです。一体これがどこから来ているか。池田さんの言われましたように、思惑で倒れて行くのならこれは私もある程度認めます。ところが今日倒れて行く商社の状態、あるいは中小企業状態というものは、必ずしも自分の思惑ではないわけなんです。これに対して大臣は一体どのような手を打たれようとしているのか。金融引締めから来るところの高率適用の強化の問題について、私は昨年の十月ごろから、何べんもこの点について対処方を要求しているにもかかわりませず、これについては一層引締めて行くと言う。日本経済はそれに耐え得るかと尋ねたら、耐え得ると言うている。耐え得るということは、一体どれだけ倒れたら承知ができるのか。耐え得ないという限界はどれだけ倒れるともう耐え得られないというのか。金融引締めだけならばよろしゆうございますけれども、これが大企業の下請企業に対する遅払いというものが、一層金融難に拍車をかけている。五箇月や六箇月の遅払いならばよろしゆうございますけれども品物を納めてから二箇月、三箇月たつて、その後に五箇月先払いの手形を受けるというのが、もう普通の状況になつている。中小企業金融公庫で百億や二百億これに与えてみたところで、これは焼石に水なんです。むしろあの公庫や商工中金から与えられる二階から目薬程度の金額よりも、下請企業が大企業からすでにもらわなければならない債権の方が、はるかに上まわつている。これに対しても何ら手を打つていただくすべがない。この不渡りは今御承知通りでございます。あなたが金融関係の専門家であるから、私はその点だけで具体的に申し上げるわけでございますけれども大臣承知通り、この中小企業に対する金融的な圧迫が、不渡り手形の続出、倒産を招いて来ている。これはやがて一体どこに品物を納めていいのやら、どこに売つていいのやら、わからぬということになつて来ている。そこで心配だからというので、現金売りしかできません、手形はもうかないません、それがもうきようこのごろは通り越えて来て、どこへ売つても心配だ。前にも申し上げました通り、糸へんの商社のごときは、三百年来続いておりました春日井商事が倒れ、大阪の糸岡が倒れ、東京の織荘が倒れた。バランスシート十億程度のものがばたばた倒れて行くということになると、工場側としてはどこへ売つていいかわからぬという状況になつて来ている。そこでやむを得ず仕事を縮めるよりほかに手がない。縮めて、でき上つたものを工場にストツクさせておけば、資金の回転ができませんから、やがて操短になつて来る。そこでその操短ということは……、(「簡単」と呼ぶ者あり)簡単とあなたたちおつしやいますけれども自分の地元に行つてよう見てごらんなさい。こういうのがたくさんあるでしよう。それでこれが操業短縮のおがげで——自分から操業短縮がすきでやつているのではない。大企業の操業短縮は自分のコストを維持せんがための操短でございますけれども中小企業の操短というものは、これはそれと結果は同じかもしれませんけれども金融措置によつてやむを得ず自分の企業を縮小している状況なんです。そのために、操業率はもう五割以下に下つているのが普通なんです。もつとひどいのになりますと、三割以下なんです。三人で働いて十人を食わせなければならぬという状況になつて来ておる。だからますます内部的にも崩壊の原因をつくつている。これが、私前にも申し上げましたけれども、糸へんで言えば三、六、九の値がわりの時期、値ぎめの時期、それとかてて加えて四月、五月は何といつたつて、去年のインフレ予算の余韻と申しましようか、余波、影響がありまするからまだよろしいものの、今度のデフレ政策の影響がぽつぽつ六月、七月には現われて来るだろうと思う。そうなりますると、六月から九月にかけては、どうしてもゼネラル・パニツクが来るのではないかということが当然考えられる。そのはしりが糸へんに出て来ていることは、あなたよく御存じなんでしよう。二〇の短糸が一時二十六万も七万もしたものが、きようは八万台の大台を割つておる。四八の純毛の繰糸が千円台を割つておる。こんなことは日本始まつて以来、終戦後初めての状況なんであります。どうしてそうなつたかというと、これは何もデフレ予算の影響、効果がここに現われたというのではなくして、買い手がないからこうなつて来た。そうして中小機は操短から生じて来たところの値下り、この値下りは先行き不安が伴つておる。三品市場はすでにストツプ安なんです。きのう、きのうの新聞をごらんになればようかわる。繊糸だけでもポンドについて五十円も下つておる。人絹がそうなんだ。これは今にして手を打たなければ、この次に来るところのゼネラル・パニツクは、中小企業のみならず、その余波を受ける連関産業、連関する商社、連関する大企業まで痛手をこうむることは火を見るより明らかなんです。私は先ほどこれを流行性感冒だ、こう言いましたけれども、もうきようこのごろは流行性感冒を通り越えて、台風下における火事なんです。火の粉が、いつどこへ飛んで来るかわからない、こういう状況にかんがみて、なお大臣は、影響の少からんことを願うということを言つていらつしやるが——私がこういうことを言うと、ここでは皆さんそんなことを言うなんとおつしやいますけれども、地元へ行つて倒れつつある相手を見てそんなことが言えますか。大臣としてもそういうことが言えますか。今倒れつつあるのは具体的に倒れておるのです。私の考えからすれば、お百姓のところに台風が来たら救農国会をやつたではありませんか。これと同じように、目には見えないけれども、実際商売をやつておる連中が見れば、ようわかつておるのです。台風が来てばたばた倒れておるのです。私は中小企業を救うための救援国会臨時に開いてしかるべきだというくらいに思つておる。このままに放置せんか、必ずそういうときが来るから見ておつてごらんなさい。七月、八月には必ず来ます。もしそれが来ても放任しておくということであつたならば、日本経済は根底からくつがえつて来る。じようだんごとじやないのです。これに対して大臣としては一体具体的にどのような態度をとられようとするのか。まず具体的に遅払いをどうするかという問題だけでもけつこうです。それから不渡り手形の続出に対して一体どう対処するか、この二つだけでけつこうですから、空理空論でなくして、私はあくまで具体的にお尋ねしますから、二点だけでけつこうですから具体的にお答え願いたい。そうして最後に、この問題に対処して、救農国会を開いたと同じように、中小企業救援のための特別な議会を催す用意ありやいなや、衆知を結集してこれを救うだけの親心ありやいなや、これについてお尋ねいたします。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もあらゆる機会にみずからこの実情につきまして事態を掌握し、かつケース・バイ・ケースの処理について及ぶ限りの手を打つておるつもりでございます。ただいま具体的にお尋ねの不渡り手形の問題でございますが、三月、四月ごろにおきまして、東京手形交換所の不渡り手形は一日当り大体千五百枚程度、昨年が千枚足らずでございますから、東京手形交換所の不渡り数というものは、昨年の同期に比べまして五割程度ふえております。五月に入りましては一日平均二千二百枚くらいに相なつております。これらの点につきましては、毎日日表を見、また場合によりましては不渡り手形の問題について税法上あるいは徴税上のくふうをこらすというふうなことも必要ではなかろうかと考えておりますが、やはり根本的には、前々から申しておりますように、一つだけで的確なきめ手というものが遺憾ながらございませんから、先ほど来申し上げておりますような、総合的な考え方を具体的に進めるほかに、やはりケース・バイ・ケースに、優良なものであつて、かすに時日をもつてするならば再建の十分考えられるものが多いのでありますから、これらについては金融上の具体的な措置考えて参るというふうに進めて行くつもりでございます。  それから救農国会的な国会をやるかどうかというお尋ねでございますが、ただいまのところ必ずしもさようなことは考えておりません。と申しますのは、行政上の措置あるいは金融の実際の運営あるいは実際の徴税の問題というようなことにおいて打てる手が相当ございます。この国会におきましても相当の立法がなされたわけでございますから、この立法が具体的に行政上の問題として動いて参りますれば相当の効果を発揚するものと私は考えております。従つて、ただいまのところ国会を開くということは考えておりません。  それから遅払いの問題は、大企業と下請産業の関係が主たるものと思いますが、これにつきましては、先般来申し上げておりますように、認定の基準というものをつくりまして、その認定の基準は詳しくお配りした機会があつたかと思いますが、これをもとにいたしまして、独禁法の違反あるいはそれに基く審判というものを前提にした具体的な調査というか摘発というか、これを通産局並びに公正取引委員会の手において実施に移しているわけでございます。
  38. 永井勝次郎

    永井委員 議事進行……。中小企業の問題は非常に広汎であり、しかも議論しますときには問題の出発点、テーマをはつきりさせて一つずつ具体的に議論を進めませんと問題がはつきりして来ないと思うのであります。この委員会においてはそれらの問題が今までほとんど論議されていません。いつも三十分か四十分の中途半端な議論で、結局は水かけ論に終つてしまう。決して水かけ論ではなくして、そういう一つの理論的な見解から具体的事象で議論を進めて行かなければならないのに、そういう時間の余裕がない。従つてあいまいに口の先でどうにでもなされており、結局水かけ論ということになつてしまう。われわれはそんな中途半端なことをしておく段階ではないと思うのでありますが、きようは午前中にこれをあげたいということでありますから、いずれ近く午前と午後を通じて一日とりまして、中小企業に対する基本的な問題を追究しますためには、日本経済全体、国際経済という関連において、そういう基盤をまずはつきりさせなければいかぬという問題がありますから、これはそういう時間をとつていただきたい。そうしてこれらの問題の具体的な意見の相違はどこからわかれておるのか、認識の違いはどこにあるのか、こういうことを明確にする必要があると思いますから、私はもつと具体的に質問したいと思うのでありますが、本日は時間がないということでありますから、そういう時間をとつていただきたいということを要求いたしまして、一応私の質問を終ります。
  39. 大西禎夫

    大西委員長 承知いたしました。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 ただいま中小企業に対する親工場の遅払いの問題を尋ねましたところ、通産局でこれを適当に処理させるということを言うておられますが、そういう言葉を聞いてから、あるいは公取委で取調べさしてから何とかするという言葉を聞いてから、もう半年以上になつていますね。——それでは具体的に言いますが、たとえば東京に例をとりますと、東芝の遅払いなんというのはひどいですよ。愛知県の瀬戸から納めた電磁機の遅払いはもう八箇月の余になつていますね。だけれども何もくれません。ここへ電気器具の部分品を納めた連中は一年くらいになりますけれども、くれません。ところで、支払い計画というものがちやんとここにはできておつて、支払い総額の五分の一ぐらいずつしかあてがつていない。その支払い担当者は下請企業に何と言うかというと、おれにどれだけよこせ、おれにどれだけごちそうしろということを言つておる。それをやつて、いわゆる握らせる、飲ませる、抱かせるということをやらないと支払いの仲間に入れてやらないというのです。ところで、品物を納めたというても、東京の人が納めたならば、毎日電話もかけられるでございましようけれども、電磁機を納める連中はみんな愛知県の連中です。愛知県から長距離電話をかけるだけでもこれはえらいことです。おまけに手形ももらえないのです。だから、まわり手形をして資金計画を立てることもできない。納めても納めつぱなし、取上げられたと同じことなんです。資金計画どころか、これじや中小企業は生きて行けというたつてどんな合理化するというたつて——ここにうまいことが書いてある、技術の向上、合理化の促進、こんなうまいことを書いておつたつて、要は、納めた品代金がもらえなかつたらどんなりつぱな文句を並べたつてどうにもやつて行けません。一例として東芝をあげるとそういうふうでありますが、東芝以外でも、鉄工場にいたしましても、あるいはゴムの関係にいたしましても、あるいは糸の関係にいたしましても、もうみんなこれが日常茶飯事のように流行になつてしまつている。遅私いということが大企業の専売特許になり、流行になつて、これをやらなければ損じやということになつておる。中小企業の方としては、何とかしてもらいたいと思うて行つても、それをあまり請求し過ぎると、それじやこの次に注文をやらぬぞということになつて来る。ところが、今までは注分をもらえぬのが恐ろしさにあまりものを言わなかつたのですが、きようこのごろは、注文なんかもういらぬ、注文をもらつたつて、資金がなくて材料が買えないからつくれないのです。中小企業金融公庫に行つてみたつて、とても思うようには貸してもらえやせぬ、ここも半年か一年もお願いしないと窓口では融資してくれない。商工中金で貸してくれても、二箇月や三箇月じや、遅払いの期間の方が三倍も四倍も延びて来るからたまつたものじやござんせん、そんな注分はいりません、もう商売はやめます、こういうことなんです。だんだん締めるから、やむなく中小企業、下請企業で働いておつた労働者の首を切つて行かなければならぬ。切つて、切捨てごめんなんだ。ここから社会不安というものが醸成されて来ておる。今日の政府に対する不信の声というものは、ただ汚職だけではない、こういうところに抜き差しならない、身にしみじみと体験したところから不満の声が出て来ている。私は野党だから、それはけつこうだといつて拍手したいところでございましようけれども、私はそうじやないのだ。中小企業を救うためには、今日の政府、自由党が国民にどんなに評判がよくなろうとかまわない。どんなに与党が評判がよくなつてもよいから、中小企業のためにいいということをやつてもらいたいのだ。この遅払いを通産局でやめさせるというが、名古屋の通産局の松田君や大阪の通産局の桐山君がどんな権限を持つており、これにまかせておいて何ができるとお思いになりますか。大企業の中小企業に対する圧迫といい、あの横暴というものが、一通産局長くらいの指示や、あるいは企業局あたりの権限がほとんど剰奪されてしまつたあの官庁の勢いで、どうして減殺したり、なだめたりすることができますか。じようだんじやありませんよ。私はこの附帯決議に賛成いたします。通します。ところが、それ以前にもつと大事な中小企業要望していることがある。企業を削減することは、他に相談しなくても、自分みずからの気持と相談し、自分の店のバランス・シートと資金計画に相談してやつています。その原因を除去してやらなければ、中小企業は七月、八月にほとんど倒れますよ。あなたはこれを救い、保護し、指導し、育成する最高責任者でしよう。通産局長にやらせるだけで事が足りる、そんな気持だつたら、あなたはほんとうに血も涙もないと言いたいのですが、私は、大臣はほんとうに温厚篤実の人で、中小企業に対して血も涙もある人だと思う。ですから、そのほんとうのところをもう少し発揮していただいてもいいと思う。私は歴代の通産大臣の中であなたを一番信頼している。ほんとうですよ。前の岡野さんあたりとは段違いに私はあなたを信頼している。ほかの人なら別ですけれども、あなたは金融の専門家でしよう。この畑で育つて来た前の銀行局長なんでしよう。だからおわかりにならぬはずはない。これがわかつてもらえぬということだつたら——知恵はあるけれども、これを実行に移せぬということになりますと、それは涙がないといわなければならぬのですが、私は血も涙もある大臣だと心から信頼している。あなたの評判がよくなることなら大賛成ですから、この際ひとつ何とかやつてくださいよ。まさに倒れんとする中小企業の連中が、希望だけでいい、大臣の一言によつて明日から希望を持つて働けるような何とかいい救いの言葉など出してみてください。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御激励いただきまして、まことにどうも感謝にたえないのであります。先ほど私の申し上げましたことがちよつと足りなかつたために非常におしかりを受けたのでありますが、大企業と下請企業との関係は、普通の場合は、本来その企業間同士で解決すべきものであるというふうに私は思つておるのであります。ところがそれではいかぬから、公正取引委員会と何べんも何べんも相談をいたしまして、認定基準というものを法律上ひとつ完備いたしまして、それに基いて、こういう認定基準のもとにおいてこういう事例は明らかに不当であるというふうにして、そのもとにおいて全国の通産局を動員して調べる——これも本来公正取引委員会がやつてくれるべきものでしようが、それだけに頼つていることもできないので、それで通産局ということを先ほど申し上げましたので、私は、通産局にそういうことをやらせておいて涼しい顔をしているというような気持は毛頭なかつたのでありまして、この点は補足して申し上げるような次第でございます。しかるにその話を聞いてから半年以上たつというお話でございますが、認定基準をつくりましたのはずつと最近でございまして、ただいま遅れておりますことはまことに申訳ございませんが、決算期の関係その他で、調べて行くのになかなか手間がとれまして、ただいまのところ鋭意やつておりますので、この点も遅れておつて申訳はございませんが、決して誠意がないわけではございませんので、御了承願いたいと思います。
  42. 大西禎夫

    大西委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。  引続いて討論を省略して本案を採決いたします。本案に賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  43. 大西禎夫

    大西委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいま委員長の手元に山手滿男君外三名提出の本案に対する附帯決議案が提出されておりますので、この際提案者の趣旨弁明を求めます。山手滿男君。
  44. 山手滿男

    ○山手委員 各派の御了解を得て附帯決議案を提出をいたします。まず最初に案文を朗読いたします。    附帯決議   通商産業大臣が本法案に基く命令を発する場合は、特に左記事項に付き留意すべきである。   (一)当該中小企業の技術の向上、合理化の促進を積極的に推進すること。   (二)我が国の国民生活及び輸出産業に悪影響を及ぼさざること。   (三)申請のあつた場合は、すみやかに処置を講ずること。 以上であります。  一応附帯決議提出理由を説明申し上げますが、公取そのほかからも議論があつたようでございまするが、調整組合をつくつて業界が一致していろいろな本法に基く行動をいたしまするときにおいては、やはり安易に流れる傾向が必ずしもないことはないわけであつて業界全般の技術の向上をし、合理化を促進をいたしまして、国際的なレベルから業界の技術、企業の実態が低下をして行かないように措置をすることはきわめて必要であり、この一の裏には、そのためにはこの資金が必要である、そういうふうなことも含めまして政府が積極的に技術の向上あるいは合理化に指導、行政措置をとることが好ましいということでございます。  二は、我が国の国民生活及び輸出産業に悪影響を及ぼさざることというのは、先般調整命令発動されましたマツチ業界においても、その後輸出は順次進展をして行きつつあるし、業界もやはり国内市場のみならず積極的に輸出にもほこ先を向けて、一の技術の向上、合理化をはかつて行かなければいかぬというふうな意向であるそうでありますし、タオル業界においてもそういうことが見られるようでありますが、そのほか重要産業にしましても、やはり現下の日本の経済的な苦況を切り抜けて参りまするただ一つの方向は、国際的に日本の産業が太刀打ちできる、すなわち輸出を促進し得るという態勢を打立てるということが必要であるのでありますから、二の輸出産業をいよいよ育てて行き、悪影響を及ぼきない、助長して行くという点については十二分の配慮が好ましいのでございます。  それから三でございまするが、先般マツチタオル工業に対して調整命令発動を要請いたしましたときも非常に長くかかつておられます。半年もたつてようやく政府がみこしを上げたという事例があるのでございまして、こういうことになりますると、時期が過ぎてからのんべんだらりと、出すのか出さぬのかわからぬというふうな事態で非常に長い期間が過ぎて行くというようなことになると、業界も非常に混乱をすることがあるわけでありまするし、業界の方から申請があつた場合には、業界意見を十分に尊重をして、政府がすみやかに処置をされることが好ましい、ぜひ政府はそういうふうに御処置を願いたいということでございます。  以上簡単でございまするが、提案の理由を説明申し上げます。
  45. 大西禎夫

    大西委員長 以上で趣旨弁明は終りました。引続いて採決いたします。本決議案に御賛成の諸君は御起立を願います。     〔総員起立〕
  46. 大西禎夫

    大西委員長 起立総員。よつて本附帯決議案は可決せられました。  この際お諮りいたします。本案に対する委員会報告書作成の件につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。
  48. 古池信三

    ○古池政府委員 ただいま御決議になりました附帯決議の条項につきましては一々ごもつともしごくに存じます。従いまして政府といたしましては極力御趣旨に副うように努力を傾けて参りたいと存じます。
  49. 大西禎夫

    大西委員長 この際一時三十分まで暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩     —————————————
  50. 始関伊平

    始関委員 ただいま議題となりました砂利採取法案について御説明申し上げます。  砂利の重要性、すなわち、砂利が、道路や鉄道、港湾などの公共施設を初め、水力、地下資源などの開発、あるいは耐火建築工事など、種々の土木建築工事に絶対不可欠の要素であることは、あらためて申し上げるまでもありません。わが国における砂利の生産量は、現在、年間約五千万トン、金額にして約三百億円に上るのでありますが、これらの需要は、セメントの増産と相まつて、年とともに増加の一途をたどる趨勢にあるのであります。しかるに、すでに今日においてさえも、特に土木建築工事の集中する都会地方のごときは、その供給円滑を欠き、ために工事の進捗が阻害せられることも少くはないというのが実情であります。従つて、この重要な基礎物資の供給を確保するはもちろん、その適正なる価格を維持するがため、砂利採取業の安定並びに合理化をはかることは、経済自立の上からも、また民生安定の見地からも、当面緊急の要務であると申さなければなりません。しかしながら他方において、これら砂利採取のため、いやしくも河川を破損して洪水氾濫の原因をつくつたり、道路その他の公共施設に危害を及ぼしたり、あるいは農業その他の産業の利益をそこなうがごときことのないよう、厳重な監督を加えなければならないこともまた論議の余地のないところであります。  本法案提出は、砂利に関するこれらの要請にこたえんがためでありまして、その内容を申し上げまするならば、第一の点は、採取管理者を常置して現場における作業を監督させることであります。すなわち、砂利を採取するため他に累を及ぼすがごときことのないよう、不断の監督とこれに基く適切な処置を講ぜしめようとするものであります。  第二の点は、河川等における採取を許可する際には、業者の合理的経営を維持できるよう考慮すべき旨の規定を設けることであります。それと申しまするのも、従来河川等における砂利の採取は、もつぱら河川法等に基く都道府県令によるのでありますが、往々許可面積があまりにも狭かつたり、あるいは期間が著しく短かかつたり、また同一区域に重複して許可せられたりして、経営の安定はおろか、事業の継続さえも困難な場合が少くはないからであります。  第三の点は、河川等以外の土地における採取に対して、採石法を準用して砂利採取権を認め、また砂利を搬出する通路の敷設等について、必要最小限度の土地使用権を認めることであります。けだしこれら一般民有地における採取については、鉱業法や採石法のごとき専業法のよるべきものがなく、単に地主その他の権利者との契約によるのほかないため、その採取権たるやすこぶる薄弱不安定であり、常に紛争の絶え間がなく、従つてせつかく有望な事業場でありながら、運搬道路の開設が不可能なため、みすみすこれを放擲せなければならなかつたり、あるいはまた採取料の不当な値上げを強要せられて、結局採取契約の更新が不可能となるなどの事例が少くないからであります。  以上本法案提出理由並びにその内容に関する概要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上御賛同くださるよう御願い申し上げます。
  51. 大西禎夫

    大西委員長 以上で提案理由の説明は終りました。これに対する質疑は次回より行うことといたします。     —————————————     午後二時五十二分開議
  52. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  まず本日当委員会に付託となりました砂利採取法案を議題とし、提出者よりその提案理由の説明を求めます。始関伊平君。     —————————————
  53. 大西禎夫

    大西委員長 次に航空機製造法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。川上貫一君。
  54. 川上貫一

    ○川上委員 通産大臣にお聞きしたいのでありますが、この前の委員会航空機製造法について一部を質問し始めたのでありますけれども、休憩になりまして残つておるのでありますが、その際に私の第一に聞いたことは、今度の改正案で中心になるものは許可の制度を中心にしておる。助政ということについては、通産省の最初の考えではそういうことがあつたのではないか。ところがその助成措置については何も触れていない。これはどういうわけであるかということの質問に対して、大臣の方では、今のところ助成は必要がないと考える、こういう答弁であつたと思うのであります。そこで私はお聞きしたいのですが、こういう問題はただ当面の問題を糊塗するだけではなしに、日本の産業構造に関する問題でありますから、国際的の関係、日米の関係あるいは国民の危惧、要求、こういうような全体的の立場からいろいろ検討されて、その法案の可否を審議しなければならぬと思うのであります。そういうつもりで答弁願いたいと思うのでありますが、これらは言うまでもありませんけれども、MSAの援助を受けることをきめた。それは再軍備と二つ一つだということは、言うまでもないことであります。再軍備を約束しないようなMSAなどというものは、実質的にはありはしません。再軍備の目的は何か、これはどういう言い開きをしましても、いわゆる共産圏に対する武装ということ以外には、実際ありはしない。口の先ではどう言いましても、事実はそうだ。ところが今日アメリカの方の考えからすれば、単に日本の再軍備、武装ということだけではなしに、アジアにおいてだんだんと反共的な軍事同盟をつくる、もつとほかの言葉で言えば、西太平洋反共軍事同盟、これはもう日程に上つておる。これはアメリカの世界政策における基本的な考え方である。それゆえに、アメリカが日本の工業力を利用しようとしておること、日本の工業力を反共軍事同盟の兵器廠にしようとしておること、これは良識ある者はだれでも考えておることであつて通産大臣がこれを考えておられないというはずはない。特需というものがそのステツプであることも、良識のある国民ならばわかつておる。兵器に関するこの法案もその一つの柱であるということは、言うと言わざるとにかかわらず明らかなことだと思う。従つて、今度の法案関係するが、航空機産業でありますか、これも許可をするということだけのようであつて、助成はいらない。ところがアメリカの方の考えとしては、助成を要求しておる。この点を大臣は率直に答弁されるべきだと思う。そこで私は聞きますが、次の国会に助成措置を絶対に提案しない、またその次の国会にも助成措置などは絶対に提案しないということを、はつきりお答えくださるかどうか。必要がないという大臣答弁でありますから、私の前に言つた質問にあわせて、最後の私の質問にもお答えを願いたいと思います。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般来のお尋ねでございますが、航空機製造工業についての助成措置という問題は、さしあたりのところ私どもはその必要はないと認めておるのでありまして、今後の国会等においてさようなことが必要になつて来るかどうかということについては、今的確に申し上げる段階にないと思うのであります。なぜかと申しますと、これは前にも兵器産業、防衛産業等について申し上げたことがあると思いますけれども、私の考えといたしましては、現在航空機を含めまして防衛産業について考え得ることは、保安庁等が二十九年度予算で認められておるところの国内における発注あるいは修理をいたします場合、あるいはJPA等がいわゆる特需として発注したりあるいは修理をさせる場合に、これを受けとめるものがあれでいいのであつて、それ以上大きな計画というものは、さしむき不適当でもあろうと思いますので、過剰設備等にならないように、まず許可制度をとるということが、今日のところ必要にして十分な措置であると考えておるわけであります。
  56. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると答弁趣旨は、次に助成措置の必要があるかもしれない、それはその時分のことであつて、今のところはそうしないでもよいと思う、こういう答弁だと思う。これは非常に言いのがれではないか。やはり日本の産業、ことに兵器生産というようなものを考える場合には、通産省としては将来を考えて、これを計算のうちに入れて立法しなければならぬし、いろいろな産業政策を立てなければならぬと思う。今の大臣答弁では、ひよつとしたら次の国会に助成措置を出すようなことがあるかもしれぬという含みが残つておる。その時分にはその時分のことだというのではなく、やはりそういうことを考えなければならぬと思うが、さしあたつて国会ではそこまで行けなかつたから、許可のこの改正案だけ出したのだというように言われたら事ははつきりすると思う。非常にあいまいである。この点が一つ。  次に、それでは現在政府は兵器産業に対して、アメリカから助成措置をとれという要求をされておるのか、されておらぬのか。この点もあわせて聞いておきたいと思う。この二点であります。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その第一点は、結局言葉の言いまわしの問題になると思うのであります。先ほど申しましたように、私どもの兵器産業全体に対する考え方は、現実に、具体的に発注が確実である——御承知のように保安庁の計画のごときは、もつと大きい計画を望む人もございましよう。しかし国定経済全体とのつり合いからいつてこの程度にとどめたいというので、きわめて小規模のものになつておることは御承知通りでございます。それから外国から発注があることを予想される問題にいたしましても、現在は幾らでも需要があるけれども、将来はそういうふうに広げた経済にすることは、日本経済の全体の考え方からいつて、この際早計にきめるべきものではない。従つて当座確実と予想される発注に対しまして必要なものがあれば十分なんだ。それ以上はむしろ広げる必要はないのだということから、これは制限的、自制的に考えているのが私どもの現状の考え方でございます。しかしながら今後国際情勢の変転あるいは国内の経済自立がもつと進んだ場合に、もう少し航空機関係の幅を広げてもいいという状態になつた場合において、あるいはまたさらに積極的にそれを拡充した方がいいということになつた場合に、補助、助成というようなことがあり得るということは、これは私は考え得ることだと思うのでありまして、そのことを率直に申し上げただけでございます。  それからアメリカから航空機生産について補助、助成をすべしということの要請を受けておることはございませんし、他の兵器産業についても同様でございます。
  58. 川上貫一

    ○川上委員 そうするとちよつと聞きたいのですが、MSAの交渉に入つてからは特需はほとんど中絶されておつた。ところが本年の二月になつて、久しぶりに七・七ミリの銃弾一億二千四百万発の発注の意向をアメリカ側から示して来た。その時分に東洋精機その他の二社が見積書を出している。この見積書では一発が平均九・四セントで、これは通産省が行政指導をしたのではないかと思う。ところが四月二十三日になつて、この問題で日米防衛生産会議を開いておるとわれわれは考えておる。その席上でアメリカ側は、この見積書は二〇%ないし三〇%高い、これで引合わぬというのであれば、政府は助成措置を講じなければならぬ、こう言つておるはずですが、こういうことはありませんか。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はさようなことは聞いておりません。
  60. 川上貫一

    ○川上委員 通産大臣は聞いておりませんと言うのでありますが、そうすれば四月二十三日にこの問題で日米防衛生産会議を開いたことはありますか、ありませんか。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 さようなことは私は存じません。
  62. 川上貫一

    ○川上委員 本年二月に七・七ミリ銃弾一億二千四百万発発注の意向があつたことは、これはございませんか。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは承知いたしております。
  64. 川上貫一

    ○川上委員 その時分に、一発に対して九・四セントの見積書を出しておるが、これは通産省の行政指導によるものであると思うが、これに対してその後どうなつておるか。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、行政指導というようなことは実際やつていないのでありまして、私ども立場におきましてはある会社に対して引合いがあつて、その会社から何ミリのものについてどういうコスト計算になつて、これこれであるということを先方の当局と話合いを進めておる、その場合に、こちらからこういうことならばできますというようなことを返答をしておる、そういうものがわれわれの方に情報とし、あるいはその他の方法によつて十分緊密な連絡があることは事実でございますが、行政指導によつて、これはコストを幾ら幾らにせよとか、あるいは指示等をしておる事実はございません。
  66. 川上貫一

    ○川上委員 これは通産大臣は非常に逃げておられると私は思うのです。四月の二十三日に日米防衛生産会議があつたことを、そういうことはないと言われるのですが、そういう事実はないと言われるのでありますか。通産大臣はそれを知らぬと言われるのでありますか。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、知らないと申し上げているのは実際知らないからでございまして、あるいは事実上関係の人同士が今会談をしたというようなことはあるかもしれませんけれども、何らかの条約、その他の協定等に基きまして関係当局が両国を代表して会議をしたというようなことはない、そういうことは知りませんと申し上げておるわけであります。
  68. 川上貫一

    ○川上委員 日米防衛生産会議を開いておるはずなんです。その時分にアメリカ側は——これは具体的なのですが、二、三割高いんだ、それでは引合いができない、引合いができないならば政府は助成措置をとつたらどうか、こうアメリカは明らかに言つておるはずなんです。これを通産大臣は、そういうことはないとおつしやるのですか。大臣としてはそれはよう知らぬと言つておられるのですか。その点をはつきり聞いておきたい。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたような意味において、そういう会議があつたことは私は存じません。  それから具体的なこういう発注の品目等につきまして、価格の折合いがつかないとか、あるいはコストが高過ぎるから何らかの措置をしたらどうだとかいうようなことが、非公式な意見一つとして間々出ておることは私も承知いたしておりますが、反面、同時に前回の発注のときよりも高いコストで引合いが成立して、契約ができておるものもあるのでありまして、そういうものは逆に、コストがもつと高くても向うとしては必要であるということも事実ございます。さような場合においては、補助とか助成とかいうものは全然問題にならないわけでございます。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 これ以上通産大臣は答えぬだろうと思いますからこれは聞きませんが、実際には、通産省はこの問題を中心にして助成措置考えておるのです。しかしこれは通産省の省議としてきまつておるかどうかは例でありますが、実際においては事務当局においてかどこかで考えておる。それは、たとえば鉛や銅の輸入に保税措置をとる、この種の特需のために特別外貨の割当ということを考える、あるいはMSAの小麦資金で事業団というようなものを考える必要はないか、こういうことの研究、考慮が行われておると思うのですが、これはどうでございましようか。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今おあげになりましたようなことについての研究を、やつておることは事実でございます。それから御承知と思いますが、たとえば先ほども御指摘になつたように、特需の契約がある時期に大分とぎれておつた。これを進めるためには日本側としてはどういうことが必要であろうか、あるいはアメリカ側はどういうことを希望しておるであろうか、というようなことを情報や推測や研究に基いて、一つなり二つの仮定のもとにおいて、こういうことをやつてみたらどうだろうかというようなことで、研究をしておるということはございますが、しかし全体として、政府が助成措置をこうやらなければならないというようなことの結論を持つておるわけでは全然ございません。もしさようであるとするならば、予算なり法律なりにそういう姿が出て来ければならぬはずでございますが、そこまで結論を得ておるものはないわけであります。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 それは、大臣としてはそういう答弁になるであろうと思うのですけれども、実際において、やる気がなければ研究をしないと言うが、しかしやらなければならぬというようなアメリカ側からの申出があるのです。  そこでもう一つ私は聞いておきたいのですが、通産省関係では、極東空軍の航空機に対しては、ハロルドソンなる人物と非常に密接な連絡をしておられる。それで、極東空軍筋は日本に航空機の生産をさせてもよろしい、しかしアメリカ資本との提携ということが一つの条件であると考えておると思う。ところが国務省関係の方では、日本には低級火器をやらすのだ、航空機などをどんどんやらすことはどうかと思う、と言つておる。これは主として大蔵省関係が接触している問題で、今度の助成措置についても私は大蔵省が反対しはしなかつたかということを聞いておるのですが、そういうことはないと言われておるのですけれども、しておるはずなのです。そこで大臣は一体どつちの方を当てにしておられるのか。この空軍の問題については、国務省筋と極東空軍筋とはちよつと違うと思うのです。これが一つ。いま一つは、極東の空軍筋では現に助成措置と同時にアメリカの航空機メーカーとの提携、まあ日米合弁といいますか、こういうことを考えておる事実がある。これに対しては、私は通産大臣の率直なる答弁をもらいたいと思う。今日日本の産業も貿易も実際は日本政府の一存ではできておりません。それが事実なのです。私は今それがよいとか悪いとかいうことを論議しようと思つているのではありません。事実そうではないかということを言うておる。そういう状態になつておるのでありますから、これら一切の事情というものを、政府国会において明らかにされる必要がある。アメリカの意向はこうだ、こういう要請があるのだ、政府はこれに対してこう考えておる、こうしませんと、私は一つ法案でも、それをほんとうに審議する場合、どうしても形式論になつてしまうと思う。政府としましては困ることであろうと困らぬことであろうとも、国の産業と国民生活に関係のある問題は、それがアメリカに関係することであろうとイギリスに関係することであろうと、私は国会ではつきりとその態度を言うてもらいたいと思う。今の航空機の問題についても、アメリカの極東空軍筋と国務省筋とでは考え方が違うままに、それが日本側にまで来ておる。それで大蔵省の考え方と通産事務当局考え方に食い違いがある、こういう事実があるのです。しかし実際において日本の産業、特に航空機産業、兵器産業を進めて行く上において、アメリカの意向を無視することはできないという事実がある以上、この関係がはつきりしないとこういう法案がいいのか悪いのか審議ができない。これを少しも研究しないで審議をするからとんでもない審議になつてしまうのです。そういうことをするから、私は国会が国民から信を置かれないことになつてしまうと思うのです。一つ法案をつくるにしましても、これは法案が問題でもなければ政府の存続が問題でもないのです。日本の産業と国民生活が問題なのです。してみれば、私はこういう問題に対しても単に議論をしておるのではありません。これはやはり実際の状態を、通産大臣国会を通じて国民の前に明らかにされることが、正しいやり方であると考えるのでありますが、この点はどういうぐあいでありましようか。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はおつしやることは非常によくわかるのであります。もし何か私が意識的に隠し立てでもしておるのであれば、非常に良心に恥じるところがあると思いますけれども、私が今申し上げている通り、これが事実なのであります。  さてただいまの御質問にお答えいたしますが、最初にハロルドソンという人の名前をおあげになりましたが、これは大使館の何等書記官かで、私も会つたことはございますが、この人の意見とアメリカの軍隊の方の連中の意見とは違つておるのかどうか、これはわからないのでありまして、私どもは一国の政府として交渉事をやります場合には、向うの一致した意見をもとにして交渉するよりほかないと思うのであります。ただいま御指摘のように、実際問題として外国との関係が深い今日において、向うの考え方がわからなければ物事は運ばないという、その点はごもつともだと思いますが、しかし私の耳に入らないような、どこかであつたような話というようなことが尾ひれがついて、これがあたかもアメリカ一国を代表しての意見であるかのようにこれを資料として論議をすることは、これもまた私はあまり大して意味がないではないかと思うのでありまして、私は少くとも通産省をあずかつておるものの立場といたしまして、アメリカ側の意向というものがはつきり打出されて来ました場合は、これはアメリカ側はこう考えるが、私はこう考えるということを申し上げるのが筋合いだと思います。先ほどから申しておりますように、兵器の生産あるいは弾薬の製造等について補助助成の措置を講じたらよかろうとか、あるいはコストをもつと切り下げたらよかろうというような、おつしやられたようなことは私の耳に入るような取上げ方では、まだ私は聞いておりません。しかし先ほど申しましたように、日本側といたしましても、現在の態勢としては、先ほど御説明したような態勢で行くのがよろしいと思いますし、また特需などを当面のところをもつとドルの収入を日本として多くするためにはどういうことを計画し、くふうしたらいいだろうかということを、相手の意向などをそんたくしたり研究しながら、こちらが自主的な案を研究しておるということは、これは政府として当然やるべきことではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  74. 川上貫一

    ○川上委員 大臣はそう言われますが、私はアメリカの意向ははつきりしておると思う。さつき言いましたように、助成措置についてどんどんやつておる、それから日米の合弁措置を要求しておるのです。こういう点を私ははつきりさしてもらいたい。たとえば現に極東空軍からジエツト・エンジンの修理の特需が来ておるはずです。四月一日に新三菱重工外五社が見積書を出しておる。ところがアメリカはこれに対してどういう態度をとつて来ておるか、最近になりまして、三菱重工と川崎航空機と石川島重工の三社に対して、アメリカとの技術提携の内容を書いて出せというようなのが来ておる、これは一体どういうことですか。ここまで干渉して来ておる。つまり前の私の述べた例では政府は助成措置をここまでして来ておる、今度の私の言いました例では、アメリカと技術提携をどうやつておるか。この内容を書いて出せ、こういう要求が来ておるはずです。これは日米のいわゆる合弁、こういうものを前提として向うさんは考えておる、こういう具体的事実があるのでしよう、そうすれば向うの意思はわかるじやありませんか。ここのところを何月何日にアメリカは具体的に言つて来ぬから、向うの考えはそんたくできぬというようなことでは、私は政治はできぬと思う。政治というものはそんなものじやないと思う。向うさんがどういう考えを持つてつて来ておるかということは、私は通産大臣にはよくわかつておると思う。助成措置の問題でもそうだと思う。この合弁の問題でもそうだと思うのですが、さしあたり議論になりますからそれはしませんが、今私が言いました極東空軍からの修理の特需で、こういうことを言うて来ておる事実があるかないか、これについて大臣はどうお考えになるか、これをひとつ知らしていただきたい。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほども私は申しましたように、向うが一人の発注者として日本の業者に対して、こういうことをやつたらどうだろうかというのは、私は一つの商談であろうと思います。もちろん商談であるからと申しましても、こちらとしても重大な関心のあることでありますから、これもまた先ほど申し上げましたように、常に日本側の業者からも密接な連繋をとつて情報は収集に努めておるわけでございますが、そういうやり方をやつておりまして、われわれとして承知しておりますことは、たとえばジエツト・エンジンのオーバー・ホールの問題にしても、技術の提携として、こういうことをやつたならばよかろうではないかという申入れがあり、日本の受注会社の方ではそれは適当であると考えたものは一つの案件として外資審議会その他で政府側への許可を申請して来るわけでありますから、その際政府としてはその点を十分審査をする、こういうことになるわけでありまして、技術提携について話が各社で進んでおつたりあるいは現に許可が下りたりしていることは事実でございます。
  76. 川上貫一

    ○川上委員 どうもそれでは私は政治にならぬと思う、業者はいろいろ困ることがあるのでありますけれども、そこにあてがわれて来る問題の根本は政治にある、そうしなければ立ち行かぬような政治をしておいて、商談じや商談ぢやと言いますけれども、そういう商談に応じなければやつて行けなくなる、政府の方でアメリカの言うことをまるで聞くというような態度をとつておれば、それに反対するような態度業者としてはとれない、たとえば中国貿易の例でも中国との貿易はしたいのだ、ところが中国と貿易をしたいということを代表者が言い出すと、何か当て身が来はしないかという心配が多いので、中日貿易という問題を代表者がなかなか言い出さぬような状態である、商談だと言いますけれども、商談の裏には政治があるということをどうしても通産行政としては考えなくちやいかぬ。政府としては考えなくちやいかぬ、その商談をする時分に、日本の商人が有利な条件をとれるような政治条件をつくらなければだめだ、私はこれを聞いておる。そいつを商談だと言つて逃げてしまつたらこれは政治にならぬ。通産大臣というものはそんなことをするものとは違う。すなわち日本の国民がアメリカに対してであろうと、イギリスに対してであろうと、どしどし有利な条件がとつて行けるような条件をつくつてやるのが通産行政だ、これが政治です。私はこれを言うておる。だから商談であると言うて逃げられるのはたいへん困る。さらにその合弁の要求は極東空軍から三菱重工業その他に対して技術提携の内容を出せといつたような事実があるのかないのか、これを聞いておきたい、そういう事実があるのかないのか。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私が今まで申しておりますことを冷静にお聞き取りくだされば意見は完全に私は一致しておると思うのであります。商談だと言つて逃げておるわけではないので、どういう話があるのか、どういうことを先方は言うておるのかということを情報とし、あるいは憶測をしてそうして日本としてはどうすればよいかということを研究するのは日本として当然しなければならないことであると考えますということも申し上げておるのでございまして、これは繰返してただいまのお尋ねに対する御答弁といたしたいと思うのであります。  それから三菱その他に対しまして技術提携の話合いというようなことがありましたことは事実でありますし、その一部はすでに実験されたものもあろうと思います。これは事実あるということを申し上げておるのでございますが、どういう形でどういうものが話合いに上つてつたか、あるいはどういうものが具体的に進んだかということにつきましては、事務当局から御説明いたします。
  78. 徳永久次

    ○徳永政府委員 ただいまお話のありましたような航空機の製造メーカーに対して、日米合弁にしろとか、そういう要求はあつたということは私も聞いております。  それからなお技術提携の内容を出せという問題でございますが、これはオーバー・ホールの注文があるということで、応じたい人は希望を出せということになつておりまして、数社のメーカーが向うに対しまして申請書を出しておるわけであります。ところが修繕します仕事の内容というのは、御承知のように日本の技術だけではできないことでありまして、向うの特殊の技術によつてつくられておる航空機の修理でございますので、機種等によつて、その修理をやるためには、それをうまく修理ができるだけの技術というものを各社が身につけていなければ修理できないわけであります。従いまして各社としましては、それぞれ適当と思う外国の会社との技術提携を進めております。これまた全部でき上つてもおりませんけれども、それがうまく行きますれば、自分のところはこれだけの技術がありますから、オーバー・ホールの注文がありましても私の方で受けられますということで、申請書を出しておるわけであります。注文を出します方の立場からしますれば、入札には出ておるけれども、それに落したとして、相手方がうまく修理ができるかどうかということを調べなければならぬ立場にあるのは当然のことだと思うわけであります。そのうまくオーバー・ホールをやれるだけの技術を持つておるだろうかどうだろうかという意味におきまして、今お尋ねのようなお前の会社はどことどんな技術提携をしておるか、その内容を知らせよというふうに、すでに出たかどうか私正確に存じませんけれども、そういう問合せを、申請を出しておるメーカーに対して先方が要求することは、当然にあり得ることだと考えるわけであります。
  79. 川上貫一

    ○川上委員 だんだん明らかになつたと思います。そうするとこれは日本の産業の将来に対して、アメリカとの技術の提携、アメリカの要請を聞く、これをやらなければいかぬようになるのではないか。ほかに道がありますか。たとえば航空機のジエツト・エンジンについては、向うから精密な機械が来るんだから、向うとの技術の提携をしなければできぬだろう。それはそうでしよう。問題はそこじやないと思う。今後の日本の産業を進めて行く上において、こういう形でやつて行くならば、アメリカの言うことを聞かぬ限りは、産業はちつとも進まぬじやないかという点を私は聞いておる。その点についての通産大臣考えを聞きたい。今の枝葉末節の技術の問題と違う。いやともおうともアメリカとの技術提携、あるいは合弁、あるいはアメリカの要請に屈服して、そうやらぬことには、航空機であろうがその他の兵器であろうが、やれぬことに事実上なつておるのじやないか。これはそうなつておるならおるで、困るなら困るでけつこうだと思うから、それをはつきり言わぬことには私は行政にならぬと思う。そこがはつきりせぬと、国民としましても、この法案がよいか悪いかということは審議できない。私は国会の中でこういう審議が出ておらぬことは遺憾に思う。枝葉末節にとらわれて法文の文句ばかり見たり、場合によつては多数決をもつてめちやくちやに通される。そういうことをするから国会が国民の信義を失うのです。実際に国の産業の見地に立つてやるならば、そこまで考えて行かなければ、私はほんとうの国の行政はできないと思う。これについて通産大臣は、正直に言えば、いやともおうともかなわぬじやないかということを考えておると思うのです。これははつきり言う方がよいんだ。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私ははつきり何でも申し上げておるつもりなのでありまして、ただいま御指摘になつたようなケースで、たとえばジエツト・エンジンの問題などにつきましても、それこそいやともおうとも遺憾ながらこちらには技術がないのでありますから、この技術の提携なり、ある程度の機械の導入なり、パテントの導入なりをすることによりまして、できるだけ多くの注文をこなすことができる。その結果国際収支が改善され、ドルの所得が多くなるということであれば、それはけつこうなことだというふうに考えております。しかもそういつた技術の提携なり、あるいは機械の輸入なりについて、何もアメリカのそういう技術等を独占的にアメリカからしいられているわけではないのでありますから、これらの点については、日本側の自主的な態度で必要なものは入れる、必要でないものは断ればいいんじやないか、私はこう考えております。
  81. 川上貫一

    ○川上委員 それは特需を当てにしたり、再軍備をしたり、MSAを受けたり、自由国家と称するものにくつついてしまつたり、こんなことをしておるからいやともおうともなる。特需がふえ外貨がふえさえすればよいと言われるが、外貨がふえるに従つて日本は隷属するのです。これをやろうとすればするほど、日本は植民地化して来る。ここが政治じやないかと言うておるのです。通産大臣も正直に、ジエツト・エンジンの問題についてはいやともおうともアメリカのお慈悲をこうむらなければならぬということを言われた。慈悲という言葉がよいか悪いかということは別として、これが問題なんです。いやともおうともアメリカのさしがねを受けなければやつて行けぬという産業政策をなぜ立てるかということです。われわれの言うのは、ここから問題を考えて行かないとだめだということです。前提をちやんときめてしまつて、アメリカとくつつくのがよいと先にきめてしまうから、そんな議論が出て来ると思う。政治はそんなものではありますまい。アジアの全体の状態、世界の全体の状態を見ても、そういうことこそが日本の産業と国民生活をつぶすのではないか。この点についての通産大臣考えを聞きたい。これは政府側の答弁として委員会でうまく言えばよいという問題ではない。日本人としてどうお考えになるかという大きな問題ではないか。国会の論議を見ておるとはなはだ遺憾なんだ。こういう点についての論議がなぜ闘わされないかということです。これをはつきりせぬ限り、国民は動向を決することはできない。この点どうでしよう。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 わき道にちよつと入つて恐縮でありますが、あなたが共産圏ということを前提としての結論をすでにお持ちでない御議論ならば、いかに時間をかけても、ほんとうにとことんまで話合いをしてみたいのですが、私から申しますと、遺憾ながら一つの前提と結論をお持ちになつて、そこに人を導入することを目的としての御論議のようでありますから、いくら私が誠意を尽しても、議論が軌道に乗らないような感じがするのでありまして、この点は非常に遺憾に思います。私は何度も繰返しますが、私たちのやつておりますことが、アメリカの奴隷になるようなことをやつておるのではないということは申すまでもないことであります。先ほども、ドルを獲得することが悪いのだ、そうなればなるほど隷属するのだというお話でありますが、少くとも現実の問題として、ドルがたまれば、そのドルでソ連の物資であろうが、中国の物資であろうが買えるのであります。私は現実の日本の経済自立政策の基本として、現実に即して国際収支の改善、特にハード・カレンシーを獲得したいということを基本にしておるのでありまして、アメリカの奴隷になるなどということはとんでもない話だと思います。
  83. 川上貫一

    ○川上委員 前提が違うから議論ができぬと言われますが、これは私は間違いだと思う。前提を共産圏だとか何々だとかいうことに置いておらぬ。私は前提ということを日本の平和と自由と独立に置いておる。これをはつきりさせておきたいと思う。いやしくも政治をやるものが、そういうおかしな前提を持つはずはない。問題は国の産業の問題なんです。国の産業、国民生活の問題を前提としてやつておると思う。その点において私とどこが違うか。国民の生活をよくするために考えの違うことも出て来ましようが、根底となるところは国民の問題だ。その点を聞いておる。通産大臣にお聞きするが、今のような行き方で行つて、日本の産業、国民の生活をしてアメリカの支配と強要に落ち込ませてしまいはせぬとお考えになるか。そんな心配はないとお考えになりますか。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はそんな心配はないと思いますし、そんな心配のないようにして行くのが日本経済自立の終局の目標であると考えております。
  85. 川上貫一

    ○川上委員 現に六月末までの特需は一億だと政府まで宣伝しておつた。ところがMSAの交渉をしている間に、一億の特需が三千万ドルに下つてしまつた。これはMSAのえさだ、こう言われてもしかたがない。これはアメリカのさしがねだからこういうことになる。一億ドルというあの宣伝はMSAが通つたが最後三千万ドルに下つておる、これは明らかだと思う。こういうことをやられてごらんなさい。強力な買いたたきをやられることはきまつておる。一億ドルの特需が入ると思うていろいろやつておる。三千万ドルになつたらびつくりする。そうすると十分な買いたたきがなんぼでも行われる。ぐずぐず言うたら注文せぬぞといわれるにきまつている。これは何も共産圏に加担しているとかなんとかいう問題じやありません。日本の産業の死活問題です。こういうことがあつても、やはり発注によるところのアメリカの支配、強要は実質的にないと言われるのであるかどうか。また資本提携による支配、これは日米合弁を要求しておるのです。石油産業はどうです。日本の石油産業というものはアメリカにすつかり牛耳られておるじやありませんか。日本の国産石油の状態はどうなつておるか。手も足もつかぬことになつている。なぜこんなことになつたか。これは日本の石油産業が、アメリカ、並びにイギリスもこれに加わつておりますが、これの支配下に行われているからこうなつている。石油産業は国の産業の根本です。それから助成の要請がある。助成してごらんなさい。これは国民の税金で鉄砲だまをつくるのです。しかもその鉄砲だまは特需なんです。その特需はどこへ持つて行くか。東南アジアの反共軍事同盟にきまつている。これは国民の税金じやありませんか。こういう形になつてもなおかつ日本はアメリカの支配強要にはならぬ。許可制はどうだ。許可制をごらんなさい。どういうものを許可しますか。航空機産業のアメリカの特需工場以外には許可しやしません。これはきまつておる。そんなことはないと通産大臣答弁すると思うけれども、実際あとでばれてしまう。ほかのものを許可する心配はない。こういう形になつてつてアメリカの息のかからぬものはだめになつてしまうことはあたりまえなんです。またMSAの特別資金、あれはどうです。あれで支配されておる。あれは日本はかつてに使えぬでしよう。だから日本のジエツト・エンジン株式会社に対する資本の提供についても、MSAの金から出すことは、アメリカは首を振つているじやありませんか。日本の思う通りになりやせぬじやないか。政府はそれでも困るでしよう。十億ドルどこから出すのです。一事が万事アメリカのさしずを受けているじやないか。こういう条件のもとに航空機をつくろうというのです。こういう条件のもとに兵器産業を起そうというのです。これでアメリカにわれわれは隷属するじやないかということをはつきり言うておる。ところが通産大臣はしやせぬというておる。これは何もいわゆる自由圏を基礎にしておるとか、あるいはいわゆる共産圏を基礎にしておる議論だとか、こんなものと違うと思う。日本の産業を基礎としての議論だ。私は政府もこういう立場に立たなければならぬし、われわれも日本の立場に立つておるのだ。見地はちつとも違わぬと思う。ただ考え方が違うと思う。こういう事実があつても、通産大臣は日本の今後の軍需産業を中心とすする産業がアメリカの支配に属さぬ、隷属しないとはつきり言えますか。私は言えぬと思う。通産大臣のお考えを率直に述べる必要があると思う。
  86. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は先般からいつでもあなたに申し上げているのでありますが、一つの具体的な小さい都合のいいことだけを非常に拡大し、かつ過大にこれをお話になれば、あるいはそういう御議論が一応出るのかもしれませんが、大体日本の一年度間を通じて見て、日本の産業活動全体に対して、日本の国内において円の資金が一体どれだけ設備資金に投下されておるか、また運転資金が同様にどれだけ投下されておるか、それによつて日本の経済活動がどれだけ行われておるか、またそれに基いて貿易がどういう状態に伸びておるのかということを一々御検討くださいますならば、今の特需の問題などは、そんな大きな問題じやないのであります。たとえば昭和二十七年の五月から、昨年の六月までの間に七千三百万ドルのいわゆる域外調達ができておりますが、この七千三百万ドルの域外調達のために、やはり日本としてはある程度の円資金の設備資金を供給しておりますが、これは全体の産業に投下されたものから見ればきわめてわずかなものであります。こういうことで日本の経済の動きと、それに対する国民の努力が実つてそれによつてドルを獲得することができるのであります。先ほど申しましたように、また御指摘のような、たとえばジエツト・エンジンでありますとか、あるいは特殊のアメリカの技術を借りた方が、合理的にコストの切下げが、できるとかいうものについては、私は尊皇攘夷的な考え方をとるのみが能ではないと思うのであります。外国の進歩した技術を借り、あるいは外国で余剰の金を借りるということは、日本の経済を富ます上に何ら私は障害になるものではなくて、あなたの御指摘のように、それによつて日本の産業が封じられたり、日本経済が隷属されたり、そのことを厳重に防ぎ、あるいは将来そのおそれをなくするように努める限りにおいては、こういうことは一向さしつかえないことであると私は考えます。そこで現状において一体われわれは首の根つこを押えられておるのであろうか。遺憾ながら敗戦の結果いろいろの資源を喪失し、人口のみが多い、資本も乏しい、技術も非常に進歩が遅れたという場合において、外国の援助を仰がなければならないものが非常に多いのでありますけれども、しかしこれは立直りをするための経過的にわれわれとしてほしい援助なのであつて、しかもそれに対して、私先ほどからるる申し上げておりますように、兵器の受注を受けるにいたしましても、そんなにこちらが買いたたかれるようなことはやられたくない。そしてその態勢をよくするためにこそ、航空機にしても許可制度をしくのであつて、許可制度をなぜしくかといえば、これはいわば航空機の機種を集約化するというようなことで、合理的な態勢を日本側としてとりたい。許可制もなくて安値でどんどん出血受注をするような人がいると、日本人はお互いに血で血を洗うようなことになりますから、許可制をしいて機械を集約化して合理的にやつて行こう、こういう法律案考えること自体が、私は日本として自主的にあなたの御指摘のようなことにならないようにする一つの努力の現われと御理解を願いたいと思います。  さつき御指摘がありましたが、この許可制の問題について特需以外のものも許可することは当然なんでありまして、たとえば連絡機をつくる、ヘリコプターをつくる、平和的利用のものに対しても許可が与えられることは、私は当然だと思うのでありまして、そういう点も冷静にひとつ御理解願いたいと思います。
  87. 川上貫一

    ○川上委員 時間をとりますけれども、これは非常に重要な問題になつて来ておる。まず第一に、通産大臣は特需は大したものじやないと言つておる。これは驚くべき次第だ。特需で生きておるのと違いますか。今まで政府は特需がなかつたら日本の産業はいかぬと言つておる。ところが通産大臣は特需なんか大したものじやない、これはどういうことになる。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 特需は大したものではないというのは誤解でございます。先ほど申しましたように、特需の中には一年間に、たとえばわれわれの期待しております計画は、二十九年度においては七億一千万ドルないし七億六千万ドル、これが国際収支計画の上には非常に大きな要素を占めておる。しかしその特需をとるために、一体日本の設備資金や運転資金がどれだけ大きく動員されておるかといえば、これは大したことはない、こう申し上げておるのでありまして、その例として七千三百万ドルの武器の特需に対しまして、投下されたところの民間の資本というものは全部合計して二十億円なのであります。これは他の日本の基幹産業や、農地開発や、その他日本の経済自立のために国内において努力を払われ、投下されておる資本、これだけをとつてみれば大したことはない、こういうことを申し上げたのであります。
  89. 川上貫一

    ○川上委員 これは一つも政治にならぬ。そういうような説明をいつも政府はやつておる。これでごまかして、こういうことで国会が済んでおるのだから私は驚く。特需をもらうために日本になんぼ金がいるかということを聞いているのと違うのです。政治を論じておる。特需が日本の生き死に関係しておるのです。その特需の実権をアメリカが握つておるのです。日本に特需を出そうが出すまいが、アメリカの権利なんです。こういうものに日本はぶら下つておるのです。それで通産大臣は特需を日本の経済の唯一の柱にしておる、けれどもが支配を受けないということを言うておる。そこが大問題じやないか。それが問題なんです。特需を受けるために日本は何ぼ金を使うておるか、そういう計算をしておつたら話にならぬ。そうじやない。特需を受けるため日本の国民はどれだけの被害を受けておるかということが問題なんだ。政府が何ぼ予算の上でぜにを使うておるか、こんなことが問題じやない。特需を受けるようなことばかりにとりついておるから日本の国民生活も全産業もアメリカに隷属してしまわなければならないんじやないかということを言うておる。もし特需がなかつたらどうなる。政府の財政計画は立ちますか。立ちつこないじやありませんか。その実権をアメリカが握つておるのじやないですか。この政治が日本の平和と自由独立の基礎になるかならぬかという問題は、共産圏の問題とか自由諸国圏の問題とかいう問題じやない。私はそれを言うておる。そういう意味でも通産大臣は特需は大した問題はないとお考えになるわけはあるまいと思いますが、これはどうでありますか。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは私が今申し上げた通りなんでありまして、たとえば二十億ドルの輸入をするための七億数千万ドルの特需というものは、あなたの御指摘の通り国際収支の大きな柱です。しかしその特需をとるということによつて日本の経済がまつたくめちやめちやになるようなことをおつしやるから、一例として日本の民間資本がこれに投下されておる額はどのくらいかということを御参考までに申し上げたのです。
  91. 川上貫一

    ○川上委員 その特需という問題を中心にこういう政治をするからMSAを受けておる。こういう政治だから再軍備をしておるのでしよう。緊縮一兆予算というのは何ですか。あのために国民はめちやめちやになつておるじやないですか。特に最近においては一万田総裁はどう言つておりますか。金融引締めによつてデフレ政策をとるだけではない、産業の再編成をするのだということを言つておる。どういう再編成をするのでしようか。特需が日本の柱になつておる、軍備生産を産業構造の中心にしておるけれども、再編成をするといつたら軍需的な再編成以外に道はありますまい。これでも国民はめちやめちやにならないのですか。なりおるじやないですか。私はこういう意味のことを言うておるのです。私は政治を論じておるのです。その一つとしての特需なんです。だから特需というものがめちやめちやにするということをはつきり言うのです。通産大臣はそろばんばかりはじいておる。そろばんをはじくのは通産大臣の仕事と違う。これは経理局長がやつておればいい。通産大臣は政治をしなければならぬ。私はその政治論をしている。この意味がわかりますか。私はこういう問題については通産大臣は木で鼻をくくつたような答弁をするのではなくて、心胆を吐露して識見を話すべきだと思う。このことに対して徹底的に論議が行われなければ国会の論議じやないと思う。通産大臣考えを聞きたいのです。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどから私が申し上げている通りでありまして、私の言うことが何とか局長の答弁だとお思いになろうがなるまいが、あなたのおかつてでございまして、私は誠意を尽して、さつきも申し上げておるように前提を別にし、結論をあらかじめ予想しないで御議論なすつてくださればいいのにと私は心の中で思つておるのでありまして、それはそれとして、私は私の考えを率直に申し上げておるつもりであります、
  93. 川上貫一

    ○川上委員 これはこれ以上討論をしましても私は適当な答弁を得られないと思う。というのはほんとうに通産大臣は国民と日本産業の見地に立つて、いかなる困難があろうとも日本の国民の利益のためにやろうという見地に立つておりません。これはアメリカ側の代弁にすぎない。——ほほと笑つておる人がありますけれども、この速記録を日本国民全体に見せたらよろしい。私の言いおることがほんとうに政治の論議であるか、通産大臣答弁の方がほんとうに国民の利益の上に立つておるかということは国民大衆が知るでしよう。将来の歴史がこれを知るでしよう。われわれは恥かしくないのです。通産大臣はこういう答弁をしておられるが、おそらく後に至つて恥かしい状態が必ず私はあるということを申し上げてみたい。第一こういうことを私が言つておるのは、アメリカのやり方が倣慢不遜です。政府は少し腹が立つてもいいんじやないか。これに盲従するだけが能じやないんじやないですか。私はアメリカの日本に対するこのやり方は無遠慮という言葉を使いたいけれども、無遠慮ではありません。傲慢不遜である。一つの例を言いましよう。たとえば、ビキニの水爆の被害があつた。あの時分にアメリカはいかなる態度をとりましたか。一つのこれは例です。典型的な例です。三月二十四日に第五福龍丸についてアメリカ大使館は書記官を通じて竹内欧米一課長にメモを送つておる。このメモはどういうことが書いてあるか。その中に質問事項がある。その質問事項を見ると、第五福龍丸はなぜビキニを通つたか、これを調べろ。なぜこの船だけがビキニに近寄つたか。いつごろそこを通つたかどうか。一日に二回も本国と無線連絡をしているが、何であんなことをしたのか。普通そんなことしておらぬじやないか。被害を無電で報告しなかつたのはどういうわけか。船長はたつた二十才である。こんな若い船長がなぜ行つたか。職歴、この船長は中国におつたのとは違うか。政党に属しておるか属しておらぬか。家族や親戚まで聞いて出せ。こういうメモが来ておる。この傲慢不遜な態度をごらんなさい。こういう形をとつてつて日本の産業がアメリカの支配にならぬと思いますか。これは一つの例である。例だけれどもが、この第五福龍丸の船体に対しても、アメリカのアリソン大使は岡崎さんに三月二十四日申入れをしておる。どういう申入れをしておるか。この船体は政府管理せよと言つておる。政府ははつきり管理しておる。アメリカはここまで問題を押しつけて来ておるのです。私はこういう事例を述べろといつたら何ぼでも述べる。外務省のアジア局第五課長の鶴見さんは、アメリカ大使の呼び出しに応じなかつたといつて職がかえられておるじやないですか。これほど強い圧力が来ておるのです。通産大臣はのんきな話をしておられますけれども、日本の国民生活と産業状態、経済状態がアメリカの完全支配のもとに入りおることは疑うことのできない事実です。このことをはつきり考えなければ、日本の国民の利益になる政治はできないということを私は主張しておる。それに対して通産大臣は、木で鼻をくくつたような答弁をしておる。これは私はよくないと思う。こういう問題についてこそ、ほんとうにそうでないのならそうでないということを明らかにしなければいけないと思う。  最後に私は通産大臣に聞きたい。大臣は、今度吉田総理がアメリカに行く時分に通産大臣として日本の原子力利用審議会の副会長として、アメリカに水爆実験をやめてもらうよう吉田総理大臣にことずけるつもりがあるかどうか。通産大臣は、吉田総理大臣に、日本と中国、ソ同盟との国交の調整とこの貿易について強力なる申入れをことずけるつもりがあるかどうか。日本の産業経済に対して、アメリカの一方的な支配が強い、これに対して通産大臣通産大臣として吉田総理大臣にアメリカに行つて何を言うてもらおうと考えておるかどうか。これを私は聞いておきたい。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 吉田総理が外国に行くという場合におきまして、私がどういうことを聞いてもらいたいか、どういうことを説明をしてもらいたいかということにつきましては、先般来ひそかに用意をいたしておりますが、まだその詳しいことについて申し上げるだけの段階に至つておりません。
  95. 大西禎夫

    大西委員長 本日はこの程度といたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後四時一分散会