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1954-05-14 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十四日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 福田  一君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    笹本 一雄君       柳原 三郎君    加藤 清二君       齋木 重一君    帆足  計君       中崎  敏君    川上 貫一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       古池 信三君         通商産業事務官         (重工業局長) 徳永 久次君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 五月十三日  国際見本市に関する陳情書  (第三〇六六号)  電気設備等復元反対陳情書  (第三〇六七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  航空機製造法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三八号)  有機合成化学に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず小委員会参考人招致の件についてお諮りいたします。次回の中小企業に関する小委員会において、福井、石川地方その他の織物及び染色業者代表参考人として招致いたしたいとの小委員長よりの申出がありますので、これを許可し、なお参考人の人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  4. 大西禎夫

    大西委員長 次に航空機製造法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますので順次これを許します。始関伊平君。
  5. 始関伊平

    始関委員 航空機製造法の一部改正案につきまして、簡単に二、三、お尋ねをいたします。  今回の改正案は、現行法は検査に主眼を置いた技術的な立法であり、航空機なりあるいは航空機器製造事業については届出制を採用することになつておるのであるが、今度はこれを改めて、許可制にする、これによつて航空機製造事業事業活動を国家的に調整して行きたいというのが主眼のようでありますが、このような改正を必要とする背景として、航空機製造事業現状がどうか。航空機生産そのものはまだほとんど見るべきものがないのであるけれども航空機工業というものは濫立の傾向があり、従つてこのままで行けば過剰投資というような心配も起つて来るというのでありますが、その辺の実情をまず最初に簡単に御説明を願いたいと思います。
  6. 徳永久次

    徳永政府委員 この法律案審議参考資料といたしまして、たとえば特需の関係がどうであるか、保安庁発注状況がどうであるか、あるいは試作状況がどうなつておるか、現行法によります届出会社一覧表等資料をお配りいたしておきましたが、これでごらんいただきますと、御承知のように戦争中におきまして日本は、航空機生産最高のときは年間二万三千機もつくつたというような実績があるわけであります。その実績からしまして、勢い業者数も相当まだ残つておるし、腕に覚えのある企業もたくさん残つておる。もちろんその中には戦後引続き生産をやろうという意欲をなくして、他の事業に転換したものも相当あるわけでございますが、それにいたしましても、参考資料に出しておりますように、現行法によりまして届出をすることにおいて、現在生産あるいは修理事業関係しております業者は非常にたくさんあるわけでございます。その数をかいつまんで申し上げますれば、機体につきまして十七社ございまするし、エンジンにつきまして五、六社というような状況に相なつておるわけであります。個々の需要がどの程度になるかということは総体的に考えなければならぬわけでありますが、要需がどの程度になるか、われわれにはまだ正確にはわかりませんが、非常に小さいものであろうということは考えられるわけであります。その面から見まして、全部の企業者が戦前のように相当程度に仕事ができるということはおよそ考え得ない環境にあるというのは、これは大局的に間違いなく想像できることでありまして、現状におきましても常に二十億程度投資が行われておりますが、今後のことを考えますと、現状において二十億程度投資が行われておるとはいえ、まだ本格的な航空機生産態勢の整つていない現状、この現状においてこそ許可制にしまして、過剰投資が行われないようにすることの意義が非常に大きいものであるというふうに私ども考えております。
  7. 始関伊平

    始関委員 航空機製造につきましては、戦後約八年間技術的な空白があつたわけであつて、この技術的な空白を補うために、外国優秀会社との間に技術援助契約を締結したい、あるいは航空機製造権を導入したいというようなことで、相当激しい争奪戦が行われておるというふうに聞いておるのでありますが、その辺の実情と、それから今回のこの法律改正案もそういつたような事態にも対処するという意味を持つておると思うのでありますが、その対策をどう考えておるかを明らかにしていただきたい。
  8. 徳永久次

    徳永政府委員 現在の航空機関係技術援助契約状況がどの程度に行つておりますかというと、配付資料の中の四の項目にあげておりますがこれをかいつまんで申し上げますと、川崎機械工業ベル・カンパニーとの間に小型ベルヘリコプター製造権取得しております。これはすでに生産を若干なしておるわけであります。次に東洋航空工業がフレツチヤーとの間に対地攻撃機製造権を得ております。これは御承知通り新聞にも出ましたように、会社が破産するというような経過をたどつたのでありますが、現実には一機の製造を済ませて、それを仏印の方に輸出いたしております。さらに三、四機の製造を行いつつあるという現状であります。それから富士重工がビーチクラフトとの間に三四型の練習機製造権を得まして、その生産に現在着手しております。これは本年度の予算の中に出ております保安庁発注にかかわる機体製造ということに相なつておるわけであります。それから新三菱重工がプラツト・アンド・ホイツトニー事業社との間にエンジン製造権を得ておるわけでございます。なおその他部品関係になりまして、航空用計器関係といたしまして、東京計器スペリー社との間に水平儀その他の計器類の話をつけておるわけであります。以上が現に成立しておりますものの概要でございますが、目下交渉中の問題になつておりますものに富士自動車がコンチネンタルのエンジン製造権話合いを進めておるわけであります。さらに横河電機、萱場工業その他が機器類についての話合いも進めておる点もあるわけであります。それからジエツト・エンジン修理及び製造権関係といたしまして、石川島重工がGEとの間に話を進めておりまするし、また新三菱が先ほど申し上げましたプラツト・アンド・ホイツトニーとの間に同じくジエツト・エンジン話合いを進めておるというようなことに相なつておるわけでありますが、お尋ねのございました技術提携の混乱の様相を呈しておるかどうかという点につきましては、今までにすでに成立しております限りのものにつきましては格別のことはないとも言い得るかと思うわけでありますが、それにしましても、先ほど申し上げましたように東洋航空のごとく経営的に成り立たなくて破産というような問題を起したものもあるわけでありますが、問題はむしろ今後の問題にあるわけでございまして、ジエツト・エンジン等について考えてみましても、数社の申請がございますが、これがうまく数社がそれぞれ企業系列として成り立つほどの需要があるものかどうかということを考えてみますと、そこに非常な疑問があるわけでありまして、この点につきましては事業家自身といたしましてもそれぞれ自分のつながりのある外国特許権取得ということに努力もしつつ、なおかつとうてい自分たちだけでもやり得ないので、これは場合によつて合同といいますか、どこかにまとめてやるというようなことでもしてもらわなければとてもやれない。一面自分たち特許権取得努力をしつつ、半面企業的に自分たちの力だけでやり抜け得るということに確信も持たない。がしかしぼやぼやしておつて手遅れになつても困る。業界自身がさような動きを呈しつつあるというが現状であるわけであります。
  9. 始関伊平

    始関委員 この法律によりまして航空機工業の秩序のある確立をはかりたいというのでありますが、これはさつき徳永局長がちよつと触れられたように、需要見通しというものが明らかでないとこれはできないのでありまして、これは現在判明しておる程度けつこうでありますが、保安庁需要なりあるいはMSA域外買付というようなもの、その他民間航空あるいは市場と需要の区分がいろいろあろうと思いますが、現在判明しておる程度でひとつ明らかにしていただきたいのであります。特にこの法律ではおそらく機種別にどの企業許可するということになると思いますので、機種別需要というものを明らかにする必要かありますので、その点を特にはつきりさせてもらいたいのであります。今度の改正案の第二条の五の二項によりますと、「その許可をすることによつて当該航空機又は特定機器製造又は修理の能力が著しく過大にならないこと。」とあるのでありまして、これは機種別に大体どの程度需要予想されるのかということがはつきりいたしませんと、法律ができましても運用はできないことになるわけでありますし、これは今後の審議にあたつてもかなり大事な事項だと思いますので、判明しておる程度けつこうでありますから需要見通しをひとつ聞かしていただきたい。
  10. 徳永久次

    徳永政府委員 需要を大ざつぱに申し上げますと、保安庁関係需要民間需要ということになろうかと思うわけであります。保安庁関係需要は、保安庁が直接購入いたしますものと、MSA援助といいますか、域外調達の形で発注されるかもしれないものと、この二つになろうかと思うわけでありますが、そのほかに民間国内需要あるいは輸出需要ということになるものと思うわけであります。現実の見通されまする需要は、目下状況では非常に少いわけでございまして、保安庁関係におきましては、保安庁予算から調達されますものではつきりいたしておりますものは練習機があるだけでございます。それは二十八年度におきまして四十四機、それから二十九年度におきまして三十機の発注が行われ、また予定されておるわけであります。これが間違いない、需要の—極端に申しますと唯一のものであるというのが現状でございます。そのほか民間需要といたしましては、ヘリコプター連絡機等に若干の需要がございますけれども輸出は、先ほどもちよつと触れました東洋航空がすでに一機輸出し、あと三、四機の組立てにとりかかつておる、これも輸出の引合いに基いてとりかかつておる、その程度段階でございます。残りまする大きな要素を占めるであろうと思われますのは、保安庁関係のものではございまするが、保安庁予算からではなしに、域外調達の形で発注されるものがあり得るということでございます。この点につきましては、実はまだ需要そのものはつきり固まつていないわけでありますが、同時に国内的にも需要がその程度にわからない関係もございまするが、先ほどお尋ねのございました業界の、生産に入りたいという動き準備といいますか、技術提携等準備というものは、若干の動きはなされておりまするが、まだ業界それ自身の方におきましても、生産そのもの準備といいますか、生産を意図した設備はまだとりかかられていない。従いましていわば国内的にも生産態勢がないので、域外発注しようにもしようがないというのが現状でございます。しかし国内的にある程度生産態勢が整えば、それに対して援助意味域外発注がなされるということは十分にあるものと私ども考えておるわけであります。ただ目下段階におきまして、どういう機種がどの程度保安庁関係の装備をして用意されると見るかということそれ自身が、まだ全然固まつてないという段階でございまして、いずれ固まるでありましようが、その固まる成り行きも待つて、そのうち国内技術レベルあるいは需要の大きさ等から見て生産企業ベースに乗り得るものを取上げることにいたしたい。その意味から申しますと、そういう需要の固まらない段階許可を出すのはあるいは見方によりますと早過ぎるという見方もありますが、その段階だからこそ意味があるというふうに私は考えておるのであります。
  11. 始関伊平

    始関委員 航空機需要見通しについては、おそらく他の委員からも相当質問があるだろうと思うのでありまして、これは国内生産態勢が整えば、国内で調達するということになるわけで、それとのにらみ合いの関係になりますが、いずれにいたしましても生産態勢が整えばこの程度需要があるだろうということがほぼ見当がつかなければ、逆に生産態勢も整い得ないわけであります。そこで具体的にお尋ねをいたしますが、保安庁需要としては練習機ではないが、千二百機程度というようなことが伝えられておるのでありますが、これについてはどう考えておるか。またこの千二百機を機種別にわけた数字を基礎にいたしまして、一応この法律許可条項運用する考えがあるのかどうか、その辺をもう一ぺんお答えを願いたい。
  12. 徳永久次

    徳永政府委員 保安庁がどの程度航空機を整備するようになるかということはまだ純然たる研究段階であるというふうに承知をいたしておるわけであります。従いましてそのスケールがどのくらいになるかもわからないのでございますけれども、私どもNATO方針におきます飛行機の勢力というのはNATO諸国全部含めて二千五百機程度と聞いておるわけでございまして、それから考えますと、日本の場合にはずつと少いものであるということが想像できるわけであります。それを機種別に組みかえしますれば全体がずつと小さいもの、それを分解すれば、われわれ生産業者を預かる立場から見ますと、生産企業ベースに乗るか乗らないかという見地から見ました場合に、乗りにくいものが大部分で、乗り得るものも非業に限られたことになるであろうということが漠然とながら今の段階で十分に予想できるわけでありまして、私ども現状ではそういう計画の固まるのを待つておる状況でございます。待つておりますが、同時にそれは今申しましたようなことからいつて、一般的な、漠然とではありますが、しかし大局の判断としてはとうてい一機種について数社の存在を許さぬくらいのスケールであろうということを想像し、その想像の環境に対しまして相応するためにといいますか、あり方というものを考えて、こういう改正案を用意したいというふうに考えておるわけであります。
  13. 始関伊平

    始関委員 今までの当局説明によつて航空機工業わが国で再出発しようという場合に、企業濫立を防止する、また合理的な生産態勢確立と、それから機種別生産分野の調整をはかりたいのだという改正案提出趣旨は、大体了解をするのでありますが、この許可制運用にあたつて、ただいまお話のように需要はつきりしないということは非常に困つた問題でありますが、それと同時に一方において、この許可制運用につきましては、企業経済単位というものをどう考えるかという問題が非常に重要だと思います。経済的な生産を行うためには、航空機工業の特性としては必ずしも大量生産でやる必要はないのだというような見解もあるようでありますが、それにいたしましても、大体一月に少くとも何機ぐらいの生産がなければ企業経済単位にならないのだということがあろうと思うのでありまして、その辺の御見解を、伺いたいのであります。それから一機種については、おそらく一企業しか認められないだろうというただいまの局長お話でありましたが、一機種について一企業しか認められないとしても、はたして経済単位に到達できるのかという点も疑問がありますので、その辺につきましても、はつきりしない要素ばかりで議論をするので質問する方も答える方も非常にむずかしいのでありますが、もう少しはつきりした見解を伺わせていただきたいという二点についてお答え願いたい。
  14. 徳永久次

    徳永政府委員 生産と、企業的にどの程度の大きさであれば企業的に成り立つかということにつきましては、これはこの航空機種類によりまして、その複雑さ、精密さ等の関係から、設備資金投資額が比較的少くて済むもの、それから比較的多くいるものというような関係も出て参るわけであります。たとえば練習機等の場合におきましては、設備資金が非常に少くて済む。従いましてその生産も欲を言えばきりがないのでございますが、最低のスケールといいますか、それをやれば、月産五機ぐらいのものも企業的に成り立つのではなかろうかというような感じをわれわれは持つておるわけでございます。ところがたとえばジエツト機になりますと、エンジン機体と違いますが、機体の場合においても、最小限一機ぐらいなければ企業ベースに乗りがたいのではないだろうかというふうに考えておるわけであります。そういう程度企業種別の大きさというものを考えているわけでありますが、需要そのものが、これはまた機種によりまして、類似のものでありますれば類似のものを——機種違つても二つ合せて、同じ生産工程に流し得るということも出て参るわけであります。そこらの点を生産立場から見ますれば、機種をなるべく集約して考えてもらいたいという要望が出て参るわけでございます。飛行機を使う方の立場から見ますれば、それぞれの目的に応じいろいろなものがあつた方がいいというような希望も出て来るかと思いますが、その辺が今後の日本の問題になるのではないかと考えているわけであります。
  15. 中崎敏

    中崎委員 議事進行について、局長にもう少し声を大きくしてもらわぬと十分に徹底しないから、御注意願いたい。
  16. 大西禎夫

    大西委員長 徳永君、大きい声で発言をしてください。
  17. 始関伊平

    始関委員 今度は古池政務次官お尋ねをいたしますが、ただいままでの徳永局長お話では、今述べられたようになるべく機種を制約する。あまりたくさんの種類のものをつくらないということにつきましても、目下確定している予想、並びに不確定ではあるがほぼ予想される需要というような方面から見まして、一機種について許可し得べき企業は一企業がせいぜいであろうというお話でありました。そうであるとしますと、これは完全な私的独占になるわけであります。私的な独占というものは、従来の実際上の経験から申しましても、必ずや何らかの形で弊害が起つて来るのであります。この点につきまして、当局ではそういう弊害が出て来る心配はないとお考えであるかどうか。また弊害が起つて来る心配があるとすれば、どういうような形で弊害が出て来るであろうか。またその起つて来ることが予想される弊害についてどういうふうに善処されるかということをお尋ねしたいのであります。なお私的独占禁止というものは法律もございますし、自由主義経済下における一番大事な原則だと私は考えているのでありますが、今回の法律によりまして、私的独占をねらいとしているのではないまでも、結果としては私的独占法律によつて保護し、保障をするという結果になるのであつて、このことは経済政策としては矛盾であります。非常に不都合な話だと私は思うのでありますが、この点どう考えるか、政務次官お尋ねをいたします。
  18. 古池信三

    古池政府委員 お答え申し上げます。ただいまのお尋ねによりますと、この航空機製造事業法の施行によつて機種一社ということに実際上なるであろう。そうすれば私的独占禁止法精神にも反することになりはせぬかということが主眼の点であつたと存ずるのでありますが、もともと私どもはこの航空機製造事業法改正によりまして、どうも独占禁止法違反することをやろうという精神のないことは申すまでもないのであります。ただ逆から申しますと、この際無制限に放任することは決してわが国航空機製造事業を健全に発達する軌道に乗せるものではない。これもおそらく議論の余地のないことであろうと思うのであります。すなわち航空機に関するわが国の現在の状態がきわめて程度の低い状態にありますがゆえに、この際この法律に規定されましたような基準従つて事業許可をやつて参ろうというわけでありますから、その結果としてあるいは一社になる。あるいはまた二社にたるようなことも将来生じて行くか、その辺のところは実際問題でありますから、法律問題とは別になりますけれども、現在経済力が弱く、また客観的情勢としましても、将来の予想の非常に困難な航空機につきまして、当分一機種一社になるであろうということは考えられるのでありますけれども政府としては決して初めからそれに限ろうという精神はないのでございますから、決して独占禁止法違反するものとは思つておりません。もちろん将来需要がふえ、またわが国製造事業についての力が増して参りますれば、一機種についても何社も存在して決してさしつかえはないであろう。要するにこの法律に掲げられた基準に合致しさえすれば、どんどん許可して参るつもりでありますから、その辺の心配はないと思います。  それからなおそういうことになると、自然競争が許されぬという関係から、技術進歩もかえつて劣りはせぬか。もつと自由にやらせれば、技術その他において進歩が早いではなかろうかということも考えられますが、これは御説明申し上げたであろうと存じますが、事業としてではなく、いろいろの技術の面において試作をすることは自由でありますから、その点についてどの機種についても技術進歩を阻害するというおそれはあるまい、かように私ども考えております。
  19. 始関伊平

    始関委員 ただいまの政務次官答弁では満足をいたさないのでありまして、動機は善意であるにきまつていると思うのでありますが、結果においては資本主義経済の建前として最もいむべき——これは何も独占禁止法違反であるとかなんとかいう形式論を離れまして、もつと深い原理の上から非常に避けなければならない、実際上私的独占の保護になるという点が問題なのであります。一方におきまして私的独占である。他方において買い上げるものは主として政府である。さらにこれはお尋ねをいたしませんでしたが、おそらくは航空機工業の必要な資金政府資金が流れて行く。広義の見返り資金ども出すんじやないかと思いますが、私的独占であり、買い上げるものは政府であり、金を出すものは政府である。こういつたことから申しますと、従来の実例から申しましても、どうしても経営の非能率化コスト高政府買上げ価格に転嫁する。戦時中にやりました親方日の丸式な弊がどうしても起つて来るのでありまして、それについてそういうねらいを持つていないんだ、また形式的に独占禁止法違反でないんだという程度の御答弁では、はなはだ不十分であり、与党の私としても納得ができないのでありまして、もう少し突き進んだ現実事態に即した御答弁を願いたいと思います。
  20. 古池信三

    古池政府委員 お尋ねの御趣旨もよく承知しているのでございますが、独占的になる心配はないか、これはあくまで事業あり方としてはおもしろくないではないかというお尋ねでありますが、問題は結局現在の段階におきまして、日本事業に対する力がきわめて弱い。この弱い現在において、多数の事業濫立するということは、ますますこれを弱まらしめるのみであつて、決して当を得たものではない。こういうところから出発しておるのでありまして、この事業需要がふえ、また内容に力がついて参りますならば、これは何社あつても決してさしつかえない、かように考えておるのであります。それからもう一つ航空機の買上げ等については、かような場合、事業者が甘やかされはせぬか、不当に高いものを政府で買い上げるような結果にはならぬかというお尋ねでございますが、この辺のところは、実際問題で今後起つて来ることでございますけれども、この発注の場合には値段等については、十分国際価格との関係を考慮いたしましてきめて行くことに当然なるだろうと思いますので、ただいまのような御心配はまずなかろうと私は思つておるのであります。御承知のように、ただいま保安庁発注しておりまする練習機につきましても、大体これは輸入価格並でなされておることは御承知の通りであろうと存じます。今後もそういう方針で政府はやつて参りたい、かように存じております。
  21. 始関伊平

    始関委員 私はまだ満足をいたしません。私の考えでは私的独占というものは必ず非常な弊害が起る。これは方面が違う例で恐縮ですが、帝石なんかうまくやるのもその一つの例であると考えておりますが、この点につきましては、いずれ他党の方でも問題としてお取上げになると思いますので、その程度にしておきます。  それから、ただいまの問題に関連をいたすのでありますが、これも政務次官お尋ねをいたします。この法律の施行の当時におきましてどういう企業許可するのであるか、その点を伺いたいのであります。先ほど徳永局長の御説明によりますと、機体で十七社、エンジンで五、六社のものが、現行法による事業届出をいたしておるそうであります。そこでもしこの届出をしておりますものが、今回の法律による許可の申請をいたしますならば、一体それは許可をすることになるのかならないのかという点であります。もし許可をしないのだということであれば、おそらく相当な摩擦があるであろうと思います。それからまたもしそうでなしに、いわば届出済みのものを一つの既得権と認めまして、これには全部許可をするのであるということであれば、いろいろな弊害があるにしても、とにかく一機種企業という最小限度の目的すら達しないことになるのでありまして、それでは立法の趣旨が完全に没却されると思うのであります。この点は私の考えではかなり重要な点だと思いますので、はつきりとひとつお答えを願いたいのであります。要するに十七社またはエンジンの六社というものは、最小限度として許可をするのか、あるいはこれは削るのかという点を明確に御答弁を願いたいと思います。
  22. 古池信三

    古池政府委員 具体的な問題として、何社を許可することになるかどうかというお尋ねでございますが、これは、ただいまの段階で私からお答え申し上げることは非常に困難であります。この法律が施行される段階になりまするならば、いずれ航空機生産審議会に許可の方針等についても御相談を申し上げて、大局的に見て妥当なる許可をして参りたいと考えておりまするので、今日のところは、具体的な問題についてお答えすることはお許しを願いたいと思います。
  23. 始関伊平

    始関委員 私は具体的にAという会社、あるいはBという会社を認めるかどうかということをお尋ねしておるのではございません。一機種企業だということでございますが、私の考えでは機種の数は十七などということでもないと思いますから、現在届出をされておりますものがさらに整理されて、許可の対象になると考えてよろしいかどうかということを、抽象的なお尋ねとしていたすのであります。
  24. 古池信三

    古池政府委員 これは今後の需要の見込みでありますとか、また業者許可基準はつきり合うかどうかということを考慮しながら許可をして参るのでありますから、抽象的に申せば大体それらに該当すれば許される、こうお考えになつてけつこうだと思います。
  25. 始関伊平

    始関委員 どうもはつきりいたしませんが、これはまたあとでどなたか取上げられると思いますから、他に移りたいと思います。私の最後の質問は、イギリスあたりでは航空機輸出というものを重視しておる。わが国でもプラント輸出とか船舶の輸出などは非常に有利であるように承知いたしておるのでありますが、航空機につきまして輸出ができるということであれば、これはわが国の産業あるいは貿易の上から行きまして、非常によいと思うのでありますが、通産当局としては航空機輸出の将来性をどう考えておられるか。これにつきましては市場をどこに求めるか、あるいは品質や機能の実際と、それに対する世間の信用、それからコストなんかが国際的に見ましてわが国はどうであるか、いろいろな問題がございますが、とにかく私は将来の日本輸出の非常におもしろい対象として航空機というものを考えてみるということであれば、これを助成をするということも大いに考究してみる必要があると思うのであります。現在のところ通産当局はどうお考えであるかという点をひとつお尋ねをいたします。それと似たような問題でありますが、今日まで日本がアメリカあたりから買い入れた飛行機というものは何台くらいあるのか、また外貨はどのくらい使つておるのかという点、それから輸出をする場合に、まず国内で使う飛行機、軍用ないしは民間用ともに国内飛行機でこれを代替し得るということは、当然われわれとして考えなければならない目標であるわけでありますが、こういう点につきまして、いろいろな角度から考えまして、それがいつごろになれば可能であると考えられるか、それによつて外貨なんかはどの程度獲得できると期待するのか。要するに民間輸出用として、また国内用の航空機として法律には書かれてございますが、その法律の内容をなすものとして民間航空機輸出用も含めまして、当局はどういう期待を持ちまたどういうふうにこれに対処されようとするのか、そういう点についてお示しを願いたいと思います。
  26. 古池信三

    古池政府委員 ただいまのお尋ね、私もまつたく同感でございます。今後日本航空機製造事業をほんとうに堅実に発達させようとするならば、必ず輸出の問題は考慮に入れなくてはならぬのでありまして、現在考えられまする輸出の相手先としましては、東南アジア諸国でございます。これに対しましては、むしろ日本としてこれらの国情に合つたような飛行機をできるだけ合理化された価格によつて送り出す。これに対しましてはおそらく東南アジア諸国においても日本輸出航空機の受入れをやつてくれるであろうと考えられるのであります。もとより他の諸機械と同様に、航空機につきましても十分今後は輸出の面のことを考えて行くつもりでおります。なおアメリカからの輸入航空機の数、金額等につきましては局長から御説明いたします。
  27. 徳永久次

    徳永政府委員 これまでの輸入の状況につきましては、二十七年度、八年度の実績参考資料でお届けいたしておりますが、これは主として国内民間航空、日航が国内航空を営業的にやつておりますほかに、各新聞社の関係等の飛行機があるわけでございまして、その数が二十七年度、二十八年度出ておるわけであります。部品を除きまして、航空機といたしましては二十七年度で八十七機、二十八年度で四十一機、合計百二十八機が輸入されておるわけであります。こういう状況でございますが、現在入つておりますものは、お説のようにプロペラ・エンジン飛行機でございまして、プロペラ・エンジン飛行機につきましては、日本の戦前におきます技術水準は国際的に見まして決して低かつたものではございません。今でこそ白紙にもどつておりますので、つくれないから輸入しておるということでございまするが、これは当然に航空機工業が再建されますならば、国産で国際的に値段及び性能において負けないものができ得るというような希望を私どもは持つておるわけであります。同時に日本の工業技術の点から行きまして、航空機工業というものは一つの機械工業の先端を行く事業でありますので、その意味からも、日本の工業全般の技術水準の向上という意味からも、日本航空機工業がある程度再建されるということの意味があると考えまして、私どもは大いに希望を持つておるわけであります。また輸出関係考えてみましても、先ほど政務次官からお話がありましたように、東南ア市場を考えてみました場合に、東南ア等におきましては、ジエツト・エンジンとかさような高級なものを考慮するよりも、——たとえば現にすでに注文が確定いたしましたフレツチヤー機というようなものにつきましては、技術特許権はアメリカにございまするが、アメリカでは現実には生産をされていないというものでありまして、この程度のものはむしろ日本でつくつた方が安くもできるというような事情があり、日本におきましてそれを生産しようということになつて現に出されておるというようなこともあるわけであります。日本の市場の関係考えても、先ほど申しました戦前の技術それから工業水準としても先端を行くということのほかに、日本航空機工業の育ち得る背景というものが十分にあり、また希望を持つておるというのが私ども考え方でございます。
  28. 大西禎夫

    大西委員長 時間の関係上他の質問は次会に譲ります。     —————————————
  29. 大西禎夫

    大西委員長 次に有機合成化学に関する件について調査を進めます。  右件について政府当局より発言を求められておりますのでこれを許します。中村軽工業局長
  30. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 今日わが国の産業構造の重化学工業化と申されることが非常に注目されているのでございますが、このうち特に重要な問題につきまして御説明申し上げたいと存じます。  重化学工業化の一つとして、すでにアンモニア工業の合理化の点につきましては、先般硫安に関します立法によりまして、五箇年計画の推進ということをねらつているわけでございますが、そのほか特に有機化学工業といたしまして、国際的にも非常に注目される新化学工業といたしまして、特に二つの基幹的な産業について御説明いたしたいと思います。  一つはすでに政府が非常に積極的に種々の施策をいたしております合成繊維工業の発展でございますが、これにつきましては、政府はすでに五箇年計画を作成いたしまして推進していることは御説明申し上げるまでもございません。資料について二、三この点に触れますと、合成繊維及び醋酸繊維原料工業の育成についてという資料がございますが、これの二枚目に合成繊維の生産計画並びに実績の進捗状況を示したグラフを載せてございます。グラフの方をごらん願います。ナイロン、ビニロンの計画並びに実績の表が左側にございますが、ナイロンにつきましてはすでに計画を上まわつている状況でございます。ビニロンにつきましてはいまだ計画の線に載つておりませんが、ナイロンにつきましては特に技術的な進歩需要面における開拓ということが非常に進捗いたしまして、昨今は輸出努力をいたす状況に相なつております。右の表はアセテート、ビニリデン関係の計画並びに実績でございますが、ビニリデンの方は実績が計画を上まわりつつあります。アセテートの方はいまだ計画に達しておらぬといと状態であります。しかしこれらの両グラフに示されております計画に対しまして、今日われわれの見通しといたしましては、業界努力によつてこの計画に漸次近づいて参るという期待を持つているのであります。もちろんナイロン等につきましては、基本的にこの計画を修正するというような問題も考え得られるのではなかろうかと思います。  合成繊維につきましての説明はこの程度にいたしまして、次に従来合成繊維ほど問題にされませんでしたが、しかも有機合成化学として非常に進歩しておりまする合成樹脂の計画につきまして御説明いたしたいと思います。この案文は説明の要はございませんので、数字について申し上げたいと思います。三枚日に、合成樹脂育成対策の対象とする樹脂の種類及びその生産目標という別表がございます。ここに五箇年後の生産目標という数字が示してあります。これを昭和二十八年の実績に対しまして、どの程度の進捗をいたしますか、グラフにいたしました。これは一番最後の表をごらん願いたいと思います。ここに二十五年以降の生産の伸び並びに計画を織り込んで、三十三年までの見通しをグラフにしてありますが、塩化ビニール樹脂のごときは生産が急速に伸びつつある。同時に新しい硬質ビニールでありますとか、食糧増産用、あるいは植林増殖用に使われる、従来バンド、バツグ等に示されたような身のまわり品でない、工業用と申しますか、建築資材といいますか、あるいは農林物資の生産増強用としての需要が開拓せられまして、このような進捗をいたしたのであります。尿素樹脂につきましても、非常な伸びを示しております。フエノール樹脂は、従来も相当ございましたが、これの品質改善その他によりまして、順次需要の増を見ております。その下にポリスチレン、ポリエチレンというような樹脂の名前が出ておりますが、これは今後の新合成樹脂ということに相なるのであります。  それから右の方の小さい表にもございますが、メタアクリル樹脂あるいはポリエステル樹脂、珪素樹脂、弗素樹脂、こういうものは、やはり先ほどのポリスチレン、ポリエチレン同様に、新製品として今後に期待し得る樹脂である、こういうぐあいに考えるのであります。  そこでこれらの合成樹脂、合成繊維が発達することによりまして、わが国産業の自給度の向上という点について次の説明いたしたいと思います。もちろんただいま申しましたような合成繊維あるいは合成樹脂は、石炭あるいはカーバイド等の国産原料の活用という点にございまするが、これらの自給度の上に貢献する点を、二、三申し上げたいと思います。合成繊維につきまして申し上げますと、これらの五箇年計画が実現いたしますと、これによりまして外貨の節約がどの程度に実現いたすかと申しますと、綿、羊毛、麻等の輸入の抑制という形を通じまして、一億六千万ドルの節減に相なります。合成樹脂の発達によりまして、食糧の増産によります輸入食糧の外貨の削減というような期待を考えまして、これが約四千三百万ドル、さらに鉄鋼原料でありますとか、非鉄金属その他の輸入原料の節約ということを考えまして、これが最終年度におきまして五千九百万ドル、合せて合成繊維、合成樹脂の外貨面に対するプラスが二億六千万ドル程度に達するものと考えるのであります。しかしこれは国内の輸入外貨の節約という点に貢献するだけでありまして、先ほど一言申し上げましたナイロンの輸出、あるいは合成樹脂製品の今後の輸出に対する貢献は数量的に計算しにくいのでありまして、ここでは申し上げにくいのでありますが、ただいま申し上げました外貨上のプラスに、さらにそれを加え得るということを一言申し上げたいと思います。  これらの合成樹脂、合成繊維のこのような発展に対しまして、原料供給上の問題に関連して特に今日国際的に問題になつております石油化学、あるいはレツペ反応によりまする合成化学、オキソ法反応によりまする有機合成化学について、問題点を二、三申し述べたいと考えます。以上申し上げた点で特にわが国の既存の原料、特に石炭というものについて考えますときに、石炭につきまして特に有機合成化学の見地から今後の問題点として、現にわが国事業家において検討もし、技術導入についても検討を加えた問題の一つとしてオキソ法がございます。オキソ法は石炭をオレフインガス化いたしまして、これに一酸化炭素と水素の添加をして合成するレツペ化学の姉妹編に属するものでございまして、これによりまして工業アルコールをつくりまして、これをもとといたしまして各種の化学製品に誘導するのでありますが、これが長い見通しの問題として、少し表現がとつぴな表現になりますが、石炭からバターをつくるというようなところにまで化学的に発展し得る新しい化学工業でございます。これにつきましては、先般三井化学が特に関係会社の低級炭をもとにしてこの事業をいたしたいということで計画もし、検討も進めておるという点でございます。  次に石油化学の点に触れますが、石油化学を日本で興す必要があるかどうかという問題でございますが、先ほど申し上げたナイロンの生産について、これを必要とする理由について申上げておきたいと思います。ナイロンの生産に絶対に必要でございます石炭酸の供給でございますが、この石酸の供給は、わが国の原料としましては鉄鋼業の生産規模、鉄鋼業の副産物としての化学製品、化学のタール製品、こういうものの量にデイペンドしておるのでございまして、今日以後のナイロンの生産を満たす石炭酸は、実は鉄鋼業の銑鉄生産が五百万トン程度現状から行きますると、合成繊維としてのナイロンの今後の伸びには対応し得られないのでございます。アメリカにおきましては鉄鋼業の伸びが大体累率三%ぐらい、合成繊維、合成樹脂等の部門におきまする需要増が一五%ぐらいのテンポで進んでおりまして、アメリカとしては戦時中この鉄鋼業の生産規模ではこれらの新化学工事を育成し得ないということで、石油化学というものが特に重要に相なつて参りまして、アメリカでは今も非常な石油化学というものの発達を見ておるのであります。有機化学工業のうちに占めます石油化学のウエートというものは、八三%に相なつておる状況でございます。わが国実情からいたしまして、ナイロンを例にとりましても、今申しましたようなことでございまするし、同時に他の合成樹脂、特に今後生産を増強しなければならぬと申し上げました合成樹脂の、たとえばポリエステル樹脂でありますとか、ポリスチレンといつたような関係につきましては、石油系の原料によつてこれを実現することが必要でございます。この点からいたしまして、今後の有機合成化学工業として合成樹脂、合成繊維というものを考えますときに、石油化学工業の必要が特に緊切になつておることを申し上げたいのであります。  石油精製の現状と石油化学との見合いの問題になりますが、現にアメリカ等でやつておりますシエル等の石油化学は、副生ガスを中心にしてこれを量産しておるという状況でございますが、この規模が日産十万バーレルあるいは二十万バーレル、こういつた大きな石油精製工業の副産物としてのガスを利用するところに、これらの化学工業の実態があるのであります。わが国におきましては不幸にしてそういつた大きな精製工場を持つておらないのであります。しかし現実に石油化学工業をやります方式として考え得られますことは、この副生ガスから参りませんで、重油とかあるいは中間の製品を抽出するとか、あるいは分解するとかいうことによりまして、適正規模の石油化学工業を興すということであります。そのような方途に従いまして、順次用途関係によります需要量に対応した石油化学工業を興して参りたい、こういうぐあいに考えておるのでございます。これに要します一つの——四千バーレル程度の日産でございますが、現にございます石油精製工場に、分解装置を加えることによりまして、これらの、先ほど申し上げた五箇年計画の推進にさしあたり必要な石油製品を生産することができるというぐあいに一応考えておるのでございます。この四千バーレル程度生産規模でやりました場合に、原油としての所要量は約四万トン程度でございまして、私たちが考えておりまする原油の現在の輸入状況等から見ますと、きわめて微々たるものでございます。もちろんこれだけでは先ほどの五箇年計画遂行上まだ少し不足いたしますので、これを倍加する程度の規模、すなわち年間十万トンあるいは十五万トン程度の原油をこの石油化学工業のために使うということで、先ほど申し上げたような五箇年計画の完全なる遂行ができるのではなかろうか、こういうぐあいに考えるのでございます。  なお石油化学のほかに、先ほどレツペ反応化学の問題について申し上げましたが、レツペ化学につきましては特に重要な四つのテーマがございます。ビニール化、エチニール化、カーボニール化及び環重合化反応、この四つのアイテイブがレツペ化学の中心でございますが、これにつきましては、すでにわが国の化学会社技術的に研究を加えておりまして、通産省としましても、これの試験研究の助成等について補助をいたしております。この四つのうちエチニール化は、合成繊維とかあるいは合成樹脂の面の技術的な基礎をなすものでありまして、私たちとして特に重要だと考えております。なおそれ以外カーボニール化あるいは環重合化反応というのは目下学者が非常な努力をして検討しておるものでありまして、特に環重合化反応としましては、最近問題を投げかけておりますニプロンの合成繊維製造の基礎をなすものでございまして、この点について私たちとしても積極的にその実現をはかりたいと考えているものであります。カーボニール化のうちで特に合成繊維に関係の深いものとしてアクリル酸エステルというものの生産とアセチレンとの化合という問題、これがやはりわが国の新合成繊維として将来伸びるであろうと考えます。オーロン系の合成繊維を実現したいということで、これにつきましても化学会社が積極的にその実現をはかりつつあるということになつておる状況でございまして、この技術の向上ないし導入を積極的に推進いたしたいと考えておる次第であります。
  31. 大西禎夫

    大西委員長 次会は十八日午後一時より理事会、一時半より委員会を開会する予定であります。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時八分散会