○
加藤(清)
委員 私はただいま提案されておりまする
硫安工業合理化及び
硫安輸出調整臨時措置法案につきまして、修正案におきましては
硫安が肥料とかわ
つたのでございますが、この二
法案に対しまして、社会党を代表いたしまして、遺憾ながら反対の意を表明せざるを得ないのでございます。
なぜならば、この
法律案が上程されるに至りましたそもそもの動機は、昭和二十七年の秋にさかのぼるのでございまするが、当時肥料
メーカーの方から、在庫品が急増した、これの解消のために打
つた手として、インドに
出血輸出をしたのだ、それについて今後この傾向が長く続くから、何とかひとつ手を打
つてもらいたいものだという希望が述べられたのでございます。私はそのときに、しからばお尋ねいたしますが、一体どういうわけで出血ということが行われましたか、近ごろはやりのたけのこ財政ですかと言
つたら、その
通りです。しからばたけのこなんだが、そのたけのこの皮は一体何でできましたかとお尋ねいたしましたら、業界の代表いわく、それは今までの利益の蓄積によります、今までの利益の蓄積は何によ
つてできましたかと言
つたら、内地へ売
つた肥料のおかげだ、こういうことでございました。当時私は
国会へ出て来たばかりでございまして、私が何党に所属しておるのやら、かに党やら業界の方はわからず、ただいなかから出て来たぼんぼんだということで気やすくものをおつしや
つたようでございますが、これによ
つてこれを判断すれば、当然これは内地のお百姓が高く肥料を買わされた犠牲において
出血輸出が行われたということでございます。そこで私はこれが出血でありやいなやということを当然ここで研究しなければならないと、そのときほぞを固めたわけでございます。ところで片や全国人口の大多数を占めますお百姓さんの身にな
つてみますと、これは皆さん郷里へお帰りに
なつたらよくおわかりでございましようけれ
ども、ひるに食いつかれながら、と
つた米は自分が値段をきめることができない。また来年の増産のために肥料を買おうとすると、三十年前私の子供のころもそうでございましたが、豆かすを買うにしても、あるいはにしんかすを買うにしても、これは相手がきめてくれる。蚕をねずみと競争して飼
つたところで、繭の値段はまた相手がきめてくれる。せめて一人の娘がお嫁入りするからというので、絹の着物を着せてやろうというので買いは行くと、これまた相手がきめてくれる。三十年の後の今日、
国家は民主化されたと言いまする。文化は発達したと言いまする。ところがお百姓さんの
現状を見ますと、やはり三十年前のお百姓さんと同じ苦しみをなめているのじやございませんか。もしそれほんとうに政治家にして心があるとするならば、これを救うてやるということがほんとうの政治家としての任務じやないか、私はさように心得る。そこで出血でありやいなやということを、その後私は苦心さんたん、自分自身でも調べました。機会あるごとに尋ねました。ところが妙なことに、場所がかわ
つたり環境がかわ
つたりしますと、その言葉がかわ
つて来る。業界の方もかわ
つて来る。私にある席で最初に述べた人が、今度は百姓の犠牲じやないとおつしやる、これは一体どういうことなんです。肥料を
輸出用のものにする、肥料対策
委員会できめられましたように、
硫安工業は操短すべきではない。積極的に
コスト切下げに努力して
輸出産業とした方がよろしい、もしそれこういう結論が出るとするならば、これは私も賛成なんです。何をか言わんやです。これは賢明な方針でございます。当然でございます。これだ
つたら私も賛成いたしましよう。今日
輸出振興は
日本経済の無上命法なんです。野党であろうと何であろうと、およそ
日本に籍を置くところの議員であるならば、これは、当然賛成しなければならないのです。にもかかわりませず、この目的を達成させるにあた
つて、はたして買取り
会社をつく
つてここで調節するということだけが
輸出振興になるのでございましようか。私にして具体策を述べよとおつしやいますならば、長期計画は別といたしましても、まず具体的な当面の問題として、しかも自由主義経済下における当面の問題といたしましては、
輸出振興のための融資の確保ということ、あるいは海外商務官の配置、これを私は再三申しました。しろうとを
出してお
つてはだめなんです。この商務官は通産省においてほんとうに経験を経た、修業をした人、あるいはそれで足りない場合は業界のエキスパートに商務官の代行権を与えるくらいのことをすること。第三には
輸出入
組合の強化から生ずる商社の世界的信用の増強、これも再三私述べて参りました。次には海外市場の開拓、またドイツその他の国がや
つておりますような啓蒙宣伝、あるいは肥料なら肥料について行
つて、その使い方までも教えてやるところの親切な指導の方法、と同時に、
輸出振興を口にするならば、まず
会社の内部における企業努力ということを怠
つては、当然
輸出振興はできないことと存じます。
会社の経理の節約、政党献金に対する節約、こういうとから、肥料
会社に例をとれば、西ドイツのような硫、硝安の研究という化学研究にまでも研究の領域を広めないことには、競争のはげしい海外市場における
輸出振興ということはから念仏に終るという心配は、専門家でなくても、私のようなしろうとでもよくわかる点でございます。ところで、その
輸出振興にあた
つてただ買取り
会社をつくるということだけになりますと、
先ほど同僚議員の帆足君も言いましたように、中共貿易などはかえ
つて逆に一層困難になるではないかと懸念が多分にあるのでございます。そこでもし買取り
会社をつく
つていろいろするということになりますと、これは一種の統制なんです。統制という言葉が悪ければ、計画経済なんです。計画経済に
政府が進んで来たということは、自由党が社会党に一歩近づいたということなんです。これはまことにけつこうなことなんで、乏しい
日本経済を円満にかつ平等に推進するには当然な径路であるといわなければならない。しかしながら資本主義経済下において、資本力に惑わされずに計画経済を行うにあた
つては、強力な実行意思と、国民と祖国を愛する信念がなければ、これはできることではないのです。必ずやこの買取り
会社は最高
価格をきめる、内地の値段と隔離すると言いますけれ
ども、やがて内地の値段をつり上げる原因にな
つてしまうことは、過去の統制経済が如実にそれを示しておるところなんです。これは国民がすべてきら
つているところです。それをあえてやろうとしておる。そこで私はこれを実行するにはよほど強力な信念がなければできないと思うて、それを行う信念ありやいなやということをお尋ねするために、
先ほどのような
質問を試みたわけでございます。今日この
法律はなくても、
会社の経理とかあるいは
コストは当然調べ得るよすがというものは、
政府の権限をも
つてしなくても、われわれ民間のものでもできるのでございます。それは市中銀行を調べるまでもなく、農林中金にいたしましても、あるいは税制の上からいたしましても、あるいは将来の市場の
状況から見ましても、当然に
調査し得る材料がいずこにもあるのでございます。ところがそれに対して十分な
調査をしてお答えいたしますと申しまして以来、今日まですでに一年を経過しておりますにもかかわらず、それが十分に行われていないことは、怠慢というよりも、何かむしろほかの力によ
つて、それを阻害されているからと断ぜざるを得ないのでございます。それもしほかの力によ
つて阻害されているということでありますならば、どのような
法律を
つくりましても——
法律は人の運用をま
つて初めてりつぱに効果を発揮するものでございまして、ほかの力によ
つて調査ができない。しかも
国会において約束したことが一年た
つてもなお実行に移せないというような意思の薄弱なことで、どうして自由主義経済下におけるもうけ主義一方の経済人を相手にして、ほんとうにこの
法律の精神が実行できるでありましようか。私はこの点を非常に憂えるものでございます。
次に企業
合理化の問題でございますが、この
法律は企業の
合理化に名をかりたところの
メーカーの保護政策に終るのではないか、苦しい苦しいというお百姓をそのままにしておいて、一部の
メーカーを保護することに終るのではないかという懸念が多分にあるのでございます。なぜならば自己の経理内容を発表せずに助けてくれということは、ま
つたくこれは封建的ではないでございましようか。ほんとうに
出血輸出だから助けてくれというならば、銀行に行
つたつてあからさまにその事情を述べなければならないはずでございます。ましていわんや、
政府に助けを求めるにあた
つては、これはすつぱだかにな
つて、かくかくの経理内容、かくかくの次第でございますから、ひとつお助けを願いたいというのが、人間の自然の道ではないかと思うのでございます。しかるに、このたびのこの審査の経過、
政府側の答弁から見まして、悲しいことに、これはまるで昔のお殿様のお姫様が、からだを見せずに糸脈で診断をして病気をなおしてくれというのと同じような気がしてならないのであります。外からなでただけではそれはわかりません。わからずに薬を盛れというのです。ところが世間一般が見ましたこの業界の状態は病気じやないのです。元気でぴんぴん働いているのです。それでも
つて病気だと言う。具体的な例を言うならば、配当はほかの
会社並にちやんとや
つているのです。十分やり過ぎている。倒産商社が続
出しているという今日、なお利益は軒並に数億を数えているではございませんか。これで出血だ、病気ですから助けてくださいと言う。一体どこをどう助けたらいいのですか。ほんとうに口先だけで出血だと言
つていても、これを病人扱いにして助けるという情が
政府にあるとするならば、すでに今日倒れて行く商社をなぜ助けないのでございますか。すでに今日倒産商社が続
出しておることは、
政府みずからがよく御存じのはずじやございませんか。これを助けるためになぜやらないのですか。頼まないからやらないのですか。片一方はぴんぴんしてお
つても、頼んだからやるというのですか。こういうことで政治が行われるところに、
国会の不信ということにな
つて、総理
大臣に対して、爆弾まで送られることになる。これは何も社会党が応援してや
つたことじやないのです。ほんとうに国鉄を愛する熱情と、政治をまともにや
つて行くほんとうの正義感によ
つて、もう少しその立場に立脚した政治が行われないことには、この腐り切
つた、すたれた政治を直すことはできないと思うのです。私は具体的に実例をあげますならば、この
法案に対する欠陥がたくさんございます。そこで申し上げたいのでございますけれ
ども、あまり時間をと
つてまたおしかりをこうむ
つても何でございますから、これでもうやめますが、ともかくもこの通産
委員会というところは、私は与党と野党が争うところじやないと思うのです。ほんとうに議員が一致結束して、この世界経済に圧迫されてまさに滅び行かんとするこの経済を、ほんとうにあからさまにすつぱだかにな
つて心を打明けて助けるという方向に向わなければならないのじやないか。こう思いまするがゆえに私の心情の一端を申し述べまして、遺憾ながら反対の意を表するわけでございます。