運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-07 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月七日(金曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 福田  一君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    坪川 信三君       馬場 元治君    村上  勇君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       柳原 三郎君    加藤 清二君       齋木 重一君    帆足  計君       伊藤卯四郎君    中崎  敏君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         通商産業技官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案  (内閣提出、第十六回国会閣法第一六八号)     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議開きます。  まず硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案を議題といたします。  この際お諮りいたしますが、硫安価格問題その他につきまして、昨日に引続き秘密会開きたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 それでさよう決定いたします。委員関係政府当局議院事務局関係職員を除き、退場を願います。      ————◇—————     〔午前十一時三十一分秘密会に入る〕
  4. 大西禎夫

    大西委員長 これより秘密会開きます。硫安価格について、政府当局より説明を求めます。柿手部長
  5. 柿手操六

    柿手説明員 昨日硫安原価に関します資料で、私どもの持参いたしましたものを御説明いたしたのでございますが、そのうち硫安原価試算という方の平均的原価につきまして、現在の操業度つまり生産数量原材料価格等をもとにして、現状では大体どういう程度原価になつておるだろうかということにつきまして御説明をいたしたのでございます。これに関しまして、しからばこの法案を第十六国会政府が提案した昨年の七月当時には、どんな原価になつてつただろうかということについての御質問があつたのでありますが、これに関しましては、私ども当時原価についての調査をいたしておらなかつたので、お答えができなかつたのでございますが、大よその見当でもいいからという御質問でございましたので、大よその見当を昨日お答えいたしたわけでございます。さらにそれを、主要原材料についていま少し詳しく計算したものを提出するようにということが昨日の委員会でございましたので、あれから帰りまして、関係担当の者といろいろ相談いたしまして、大体現状原料炭コークス硫化鉱燃料炭等は、大体の見当はついておるのでございますけれども、昨年の七月当時にはどの程度であつたろうかということにつきまして、これは各社によつて石炭もあるいはコークス硫化鉱等につきましても相違がございますので、平均的にはなかなか困難でありますが、お手元に差上げましたように、大体原料炭につきましては、現在は昨年の七月当時に比べて━━くらい下つておるというふうに推定をいたしたのでございます。コークスにつきましては現在は去年の七月に比べて━━、硫化鉱につきましてはいろいろ相違があるのでございますが、一応名目上の山の建値としては、S一パーセントあたり七十二、三円というのであまりかわつておりませんが、品位を非常に勉強して品位上昇あるいは実際上の受出しについての目方を励行する等の取引条件が、非常にサービスがよくなりましたが、実質的には去年の夏ごろより現状━━程度安くなつておるだろうという推定を下しておるのであります。燃料炭は自分の山で自給しておるもの等もありまして非常に困難でございますが、これも━━は安くなつておるであろうという想定をいたしまして、それらからして各費目は、そと次のCにありますように、それぞれ現在より高くなつておりまして、その主要原材料は現在よりも、去年の夏ごろには硫安トン当り━━━━━━程度は高かつたであろうという推定をいたしたのであります。さらに生産量増加認められますので、生産量増加を、私どもとしては昨年の七月だけをとるわけにも参りませんので、昨年の七月当時の生産量を年に直しまして、大体年間二百二十五万トンというふうに見ますと、現状として推定いたしております生産ベースが二百三十四万トンでございますから、四%程度上昇をいたしたものと見込んでおります。現状原価の中に、昨日配付いたしました━━━━━━━━━の中に含まれております固定費が━━━━━━━でございますので、それに対して二百二十五万トン・ベースの場合における固定費━━━━━━でありまして、生産操業度現状は、昨年の七月に比べてコストが安くなつておる分が━━━━でございますので、当時はその━━━━━━━━━━原材料費の合計した価格である━━━━━━というものが、現状コストよりも当時の状況で言えば高かつたであろう。これを現在の取引のべースであるオン・レールの一かます当りに直しますと、━━━━━━━━に当るのです。これもそれぞれの取引の個々について調べたものでないのでありまして、私ども担当官が、いろいろな仕事をいたしておりますところから、勘を相当働かせまして推算をいたしたものでございます。
  6. 大西禎夫

    大西委員長 以上で説明は終りました。それではそれではこれをもつて秘密会をとじます。     〔午前十一時四十一分秘密会を終る〕      ————◇—————
  7. 大西禎夫

    大西委員長 昨日及びただいまの秘密会におきまして、会議録委員長において特に秘密を要するものと認めた部分については、これを印刷に付さないことといたしたいと思いますが、御異議がございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 大西禎夫

    大西委員長 それではさようとりはからうことといたします。  御質疑はございませんか。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 苦心をなされておつくりなつたのかどうか知りませんけれども、私が昨日からだんだん御相談をしておりました資料としては、どうもまことにあまりおそまつたような気がいたします。これではだれが見てもなかなかわからないのではないかと私は思うのです。別に無理を言うわけじやありませんが、もう少しふだんから用意をされておく必要があつたろうと私は思うのです。そこで私は、この問題についてあまりつつ込んで言うと、また意地が悪いように誤解されてもどうかと思うから、資料の問題についてはあまりつつ込んで申しません。これは政府もわからないから、従つて推定しておつくりになるよりしようがないのでしようから、これ以上言えば、だんだん政府を苦しめるのみであろうと思いますので、私はあまりつつ込んで申しません。  そこで一、二点関連してお伺いをいたします。現在の輸出価格の件についてですが、大体依然として出血輸出になつておるのであるかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  10. 柿手操六

    柿手説明員 この問題に関しましては、この前の委員会におきまして「硫安輸出実績」及び「二十八年一月以降の硫安国際入札価格の推移」という資料の要求がありまして、お手元に配付いたしておるのでございますが、私どもといたしましては、現在各社別のこまかい原価につきましては調査をいたしておりませんけれども、昨日来御説明申し上げますように、この原価につきましては、二万一千八百七十円を大体予定いたしておるのでございまして、それは別表にもございます通りに、税金、配当金等の利潤を含んでおらないのでございますから、そういうものをある程度織り込みますと、現在の水準は大体六十四、五ドル程度には相なつておるように思うのでございます。それに対しまして、国際価格で一昨年四十六ドルというようなひどい価格がございましたが、それに比べれば、最近は正式のきまつた入札等で五十五、六ドルという相当いい値、さらにごく最近では朝鮮の復興特需のごとく、六十ドル前後で落札したものもございますが、配付いたしました資料国際入札状況等からごらんいただきましても、西欧あたりはやはり依然として、五十一、二ドルあるいは四十六、七ドルという相当低い入札をいたしておるのであります。最近硫安業者が、ひんぴんとして海外に視察に参つておりますが、向うのコストはなかなかつかみにくいけれども、やはり四十五ドルないし五十ドル程度ではないだろうかという見通しを、帰朝した者が報告いたしておるのであります。現状ではそうでありますが、生産量各国ともきそつてふえております。需要関係も、だんだんに生産がふえておりますので、なお将来この価格というものは、わが国でも相当コストを下げて参らないと、やはり出血輸出を免れないのじやないかと考えておるのでございます。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 国内販売価格と、国際市場も所によつて相当違う数字が私ども手元でもわかるのですが、市場別に違うということはめんどうだろうと思いますから、その差は求めません。が、大体において国内に販売する価格国際市場——市場別に違いますけれども平均したところの大体の見当との間において、その価格差がどのくらいになつておるかを、ちよつとお知らせ願います。
  12. 柿手操六

    柿手説明員 国内価格は、本年の春肥を例にとりますと、一かます当り八百四十数円というところでございますので、それをドルに換算いたしますと、六十三ドル五十セント見当でございます。輸出価格は、平均で申しますと、最近の平均は五十六ドル程度と記憶しております。従いまして相当の差があるのでございますが、これは韓国復興特需等、あるいは台湾との貿易協定により特別に有利な価格輸出された分も含んでおるのでありまして、将来のことを考えますと、この程度価格でずつと輸出ができると考えるのは少し甘いのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうも数字をあげられましても雲をつかむような点でまつたはつきりいたしません。それというのは生産原価が正確にわからないからだろう、こう思うのでありまして、従つて昨日から答弁されましたように、そのために需給安定の法律をつくつて、それらを十分確かめるのだということだろうと思うのでございます。ところがその点がはつきりわからないのに輸出会社法等をつくつて、そうして国家がこれに相当の便益を与える、あるいは協力をするということは、どうも根拠が薄弱なのに、そういうことを一体やれる自信があるのかどうかという点に疑問を持たざるを得ないのでございます。従つて需給安定法をつくられて、原価の点が正確にわかり、そして国内国際市場等における点の差額どもつと科学的な数字の上に立つて、正確なものがわかつてから輸出会社のようなものを必要があればつくる、あるいは必要がなければもはやそういうものをつくる必要もないと思う。政府は今日金融引締めを極度にやつておられるときにあたつて、こういういまだ不正確なものに対して、そのような会社をつくらして援助協力をしなければならぬということは、正確を期さなければならない政府仕事としては私ははなはだ遺憾であると思うのであるが、これらの点について大臣自信を持つておられるかどうか。科学的な生産原価、及び国内、国際的なそういう価格差などについて十分自信を持つてやろうとしておられるかどうか。どうもだんだん突き詰めて行くと疑わざるを得なくなつて来ておるのであるが、この点についてひとつ大臣からわれわれの納得の行くような御説明を願いたい。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨日も申し上げましたように、硫安原価についてのコストの計算がなかなか困難であり、また従来権限をもつてこれを調べることができなかつたということから、資料等につきまして、なかなか御納得の行くようなものが調製できませんでしたことは非常に遺憾に存ずる点でございます。昨日も申しましたように、アメリカあるいは西欧諸国等コストについて、あるいはこれらの国においても国内販売価格というものを見てみますれば、わが国輸出価格はそれらに比べて合理化を必要とする余地が非常に多くあることはもう常識的に確かなことであると断定しても私はさしつかえないのではなかろうかと思うのであります。しかも、これも昨日るる申上げたつもりでございますが、日本硫安につきましては、操短というようなことは許されもしませんし、また考えるべきでもないのじやなかろうか。それで国内需要を充たす以外のものにつきましては輸出に向けて、しかもこの輸出につきましては、百パーセントに外貨取得率があるという特殊の物資であつて、大いに輸出に努力しなければならないと思うのであります。この輸出分については、今申しましたように、合理化が煙成されて、コストの引下げが実施されるというまでの間においては損失をこうむることも予想されるわけであります。しかもその損失というものは、国内消費者に転嫁することは許されないことであると考えるのでありまして、硫安日本農業基礎資材としての特殊の性格から申しましても、また農家経済に対する重要性から申しましても、こういうことは許されない。そこで内需と外需とは数量的にも経理的にも明確に区分して処理をする必要があるのじやなかろうかと考えるのでございまして、こういう点から輸出機構の設立というものは、私はぜひとも必要である、こういうふうに考えるわけでございます。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣どうでしよう。その生産原価が十分わからないし、つかめないということは昨日からしばしばおつしやつておる。だからはなはだ不正確だが推定だと思つてくれということはしばしばもう政府側から答弁があつた。そういう原価がわからないのに、これこれは損失だ、だから損失を与えてはならぬから援助協力をしなければならぬ。原価というものがはつきり出て、これこれで売つておるから、だからこれだけの損失差額があるということは、原価が出てから始めて言えるのではないかと思うのであつて損失というものを仮定されてこの輸出法のようなものをつくられるというところに、われわれの疑問の去らないものがある。だからむしろ私はその原価の正確さを得るために、今の需給安定法のようなものをもつてして十分に確かめられて、その上に立つて各国との間において、わが国硫安がこのくらい高いという、もつと正確なものをおつかみになつてから、こういう輸出法のようなものをお出しになる方が最も良心的だと思うが、大臣この点についてどのようにお考えですか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点はまことにごもつともなお尋ねでございますが、しかし現実の実情先ほど申しましたように、これが、たとえば一例をあげますと、西独で国内価格が最近において一番安いときにおきましては、四十六ドル二十セントというようなものが出ておるのでありまして、先ほどから申しておりますように、常識的にその開きは非常に大きいのであります。これがたとえばこちら側では四十八、九ドルあるいは五十ドルで行けるかもしれないというような程度に差が近接しておるというような場合におきましては、ただいま御指摘のような御疑問もごもつともと思うのでありますが、先ほど申しましたように、常識的に申しまして、西欧硫安価格日本硫安価格、特に輸出価格については、相当開きがあるということはこれは料学的な国内原価調査が私どものところにございませんから、数字はつきりした自信をもつて十ドル違うとか、十一ドル五十セント違うということは申し上げられませんけれども、常識的に見て非常な差がある。しかもこれはるる申し上げますように、国内農家の負担に帰すべきものではないのでありますから、従つて機構としてはこういう機構をぜひつくらせていただきたい、こういうふうに申し上げておるわけであります。     〔「了承々々」と呼ぶ者あり〕
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 了承できません。どのくらいの開きがあるかということはこれはわからないのです。大臣のおつしやるのも漠然として大まかに開きがあるように思われるのでありまして、どのくらいの開きがあるかということはわからないのです。私が昨日も申し上げたのであるが、それに基いて今資料をお出しになつておりますけれども、あの資料も実はなつていなのです。というのは、すでに硫化鉱にしても、石炭にしても、あるいは操業度、能率においてそれぞれ相当原価が安くなつて来ておるのです。その上に立つてどのくらいの開きがあるかという正確なものはわからないのです。正確なものがあるとおつしやるなら、それを私は見せていただきたい。ところがそれはない。ないから私はそれを無理に求めようとせない。だからこれははつきり言えないのです。だからそういうことが不正確なのに、国家援助協力をしなければならぬような輸出会社のようなものをつくらしめて、そのために今度は組合員というか、参加しておるところのそれぞれの会社が、赤字が出て来る、あるいは経営上に不利が起つて来る、そういういろいろな問題をそこに持ち込んで、肩がわりの問題のようなこともなきにしもあらず。あるいはまたその機関を私的に利用してやるということ従来しばしばあつたことです。そういうところにいろいろな汚職やら疑獄の問題も従来から起つて来ておることなんです。だから不正確なところに無理してやるところにそういう事件が起るのでございます。私はそれがないことをこいねがうけれども、不正確なところにそのおそれがある。だから私はそれをおそれるがゆえにさつきから質問をしたのであるが、無理をしてつくるということをせないで、どうしても何かそういう共食い、共倒れのようなことをやらしておいてはいけないとお考えなら、むしろ任意的に輸出協同組合のようなものをつくらして、そうして一面には需給安定法によつて原価を確かめて行く、一面には任意的な輸出組合のようなものをつくらして、その辺を見守りながらその正確さを期して、国家的に大いに輸出促進のできるような方途を講じて行くということを、私はむしろ政治としてとるべき態度ではないかと思うが、この点について大臣はどうお考えですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも十分に御承知のことと思いますが、今回のこの輸出機構考え方というものは、従来考えられておりますような輸出組合とも違いますし、それからまた援助協力ということをおあげになるのでありますが、実は政府からするところの援助協力法律上どういう点が確保されているかといいますと、これは割合に少いのであります。御承知のごとく、この輸出によつてさしあたり生ずるであろうと予想される損失を、メーカーが自主的にこれを処理をするということのためにこの輸出会社をつくろうという考え方でございますから、たとえば輸出組合法における組合のごとく、損失処理まで考えるということから見れば非常に前進をしておる。輸出組合ではできないことをこれによつてやろうというのでありますから、他方から申しますと、政府が財政的な援助を財政によつてやりますとか、あるいはその損失処理について補償をするとかいうようなことは考えられていないのでございます。この輸出会社考え方というものは、かなりいろいろの要素を考え合せて、実情に即した中道を行く考え方であるという点において、特色のある考え方であるかと考えるわけでございます。
  19. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 そういう内容に入つた点になつて来ますと、大臣は不正確な上に立つてつておられますので水かけ論のようなことになりますから私はあまり追究いたしませんが、お尋ねしたいのは、現在でもなお硫安輸出には独占禁止法特別除外特権認めて、本法案に規定されている輸出会社制度をもつてやらなければならぬと思つておられるのかどうか。最近の輸出状況は、だんだん議論をされて来ておりますようにきわめて順調であります。非常によくなつておるとわれわれは見ておる、それに不正確な中においてこういう特別の恩恵を与えるがごときものを何ゆえにやらなければならぬかという点にも疑問があるのですが、この点どうでしようか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどから繰返して申し上げることになつてまことに恐縮なのでありますが、私は特別な非常な恩恵がこの輸出機構によつて与えられるものとは考えないのであります。と申しますのは、ただいまも申しましたように、損失が生ずるか生じないかというところを問題にされるならば、これはまた別問題だと思うのでありまして、さしあたり先ほど申しまするように的確な数字でもつて何ぼと何ぼということをはつきり比較をして申し上げられませんことはまことに遺憾がございますが、しかし非常な開きがあることは事実であると私は信じますから、さしあたり輸出については損失が起る。その損失メーカー以外のもので処理させるということは不当であると考えますから、メーカー自身にこの一、二年あるいは数年の間に処理ができるようにやりたいというのがこの輸出会社考え方でございますから、従来いわゆる特殊会社等によつて認められ、あるいは従来金融機関等によつて認められ、あるいは従来の補償制度等によつて認められたような特権とは違う、ここに一つの特色があるんだということを申し上げておるわけであります。
  21. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 大臣はさのみ特権はないとおつしやつておりますけれども、今の政府の金融引締めによつて、中小というか、あるいはみずから傍糸銀行関係金融機関を持たないところなどは、おそらく将棋倒しのようになつて行くときにあたつて、その点から見れば、私は相当これが制定されるということになれば特権的な待遇を与えられるものであると断言してもいいと思う。そこで私はそれならばなおお尋ねいたしますが、現在国内価格輸出価格の差は、何も硫安のみにとどまつたものじやないということは御承知でしよう。たとえば鉄鋼なんかも相当輸出をしなければにつちもさつちも行かなくなつておることは御承知でしよう。従つて二重価格の傾向も漸次拡大して来ておるということもお認めになるでしよう。それならば、そういうものはさておいて硫安だけにそのような処置をお認めになるということ、これを私が特別の待遇を与えておると言うのでございます。特別の待遇を与えないのならば、鉄鋼なりその他のものについても二重価格の明らかになつておるものに対してはそういうようなことをお認めになるかどうか、これも重ねて伺つておきます。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは硫安につきましては、先ほども申したつもりでございますが、輸出物資といたしましては百パーセントの外貨取得率がある。それから硫安価格なり輸出なりは日本農家経済として非常に重大なものであるというような点から申しまして、私は特殊の取扱いをいたすべきものじやなかろうかというふうに考えるわけであります。そういつたような点から、特に硫安を中心といたしましてかような制度考えたい。これは先ほど具体的に申しました通り特権と言えば言える点があるかもしれない。しかしこれは従来の特殊会社のような考え方ではないということを申し上げたのでありまして、何らの保護助成というものがないのではない、その程度が従来の特殊なものとは違うのだということを申し上げたつもりでございます。
  23. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 私がお尋ねしました点を大臣はお忘れになつておるようですが、硫安のみが出血輸出、二重価格というか、そういうものではない。硫安は特に外貨かせぎのために国際市場にたくさん売らなければならないからだと大臣がおつしやるのは、私は認めます。そこで、二重価格出血輸出だということは硫安のみでないということも、大臣はお認めになるでしよう。そうすれば、やはり鉄鋼ども硫安と同じように——より以上に外貨かせぎをしなければならぬことも、お認めになつておるでしよう。しかもこれのごときは、原料を外国から輸入して、外貨を使つてつて、そしてやつておる。それで、それに見合うところの外貨かせぎをしなければならぬこともお認めになるでしよう。ところが五百万トン以上もつくる鉄鋼が、二十七年は百何十万トン輸出、二十八年はそれが半減して来ておる、今の状態であれば、さらにこれが半減して参りましよう。そういう状態が起つて来ておるが、外貨かせぎのために二重価格出血輸出をカバーして保護してやらなければならないというお考えならば、硫安だけでなくて、鉄鋼とかそういうようなもに対しても、やはりそのような処置をおとりになるお考えであるかどうかということをお尋ねしておるのでございます。この点どうでしようか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、詳しく申し上げますと切りがないのでありますが、私はまず二重価格の問題について、二重価格制度というものは本来とるべき制度ではないと考えるのであります。従つて硫安の場合におきましても、先ほど来申し上げておりますように、食糧生産基礎資材として、消費者である農家が非常に大きな関心を持つております。しかし輸出によつて受けるであろうところの損失は、そういうところに転嫁すべきものではない、そこで遮断をして、かすに時日をもつてしていただいて、その間にメーカーの手によつてその損失処理したいというのでありますから、これはいわゆる二重価格ではないと思います。それから、もし二重価格制度というものを他の物資についても制度として大幅に取上げるということになれば、それは私どもが基本的に考えております最も大事な円の価値の問題にも触れて参ります。それからまた、対外的にも問題がなかなかむずかしくなつて参ります。そういう点から申しまして、他の物資につきましては、さしあたりこういうような態勢をとることは考えておりません。なおそれらの点につきましては、十分にいろいろの要素をかみ合せまして、慎重に検討する必要があるだろうと思います。
  25. 永井勝次郎

    ○永井委員 関連して……。ただいまの二重価格の問題について大臣にお尋ねいたしたいと思います。硫安の場合は、出血分を輸出会社に積み上げておいて、それをやがてもうけた場合なしくずしに削つて行く、こういうのでありますから、普通にいう意味における二重価格ではないと思いますが、日本硫安工業というものを、単にいろいろな経済的な基盤から切り離して、硫安だけの合理化をはかつても、これはできるものではないと思うのであります。従つて硫安工業の基盤となる日本産業が現在どういうふうになつておるかということについて、大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、御承知のように外貨為替の問題によつて日本の経済を国際経済から遮断しております。そして国内に三百六十円で入れて、国内ではこれをあけつぱなし、自由放任にまかせておる、こういうことでいろいろな輸入関係の物資が非常に高くなつておる。その高くなつておるうちで、特に独占企業に対する価格に対しては、下げる政策をとるのではなくて、いかにして現在高くなつ価格を維持するかという政策を政府はとつておる。鉄に対してもあるいは毛糸に対しても、綿糸に対しましても、そういうように原料の価格を高く維持するという政策を政府はとつております。従つて国内においては原料高の製品安というような事態ができておる。従つて高い原料を入手して、奴隷的な賃金で加工してこれを輸出する場合に、輸入の面においては国際経済から遮断して日本の独占企業の利潤を擁護しながら、輸出の面においては国際経済の中でたたかれます。従つてこれは出血輸出した分を国内に転嫁いたします。従つて国内においては二重価、輸出貿易の面においては出血輸出、二重価格、こういう非常に不合理な状態に現在すべてのものが動いておることは、大臣もすでに御承知であろうと存じます。従つて国内においては原料高の製品安、輸出の面においては出血輸出、二重価格、こういう関係になつて参りますから、硫安産業においても、その生産の原料となるもろもろの問題、賃金の問題あるいは石炭の問題、鉄の問題、そういうような問題が間接的に影響して、二重価格制、原料高の製品安、こういうような影響のもとに硫安というものの原価計算が非常に高くなつて来ることは明らかであります。従つてほんとうに硫安合理化をはかるというならば、今日このような不合理な日本の産業のよつてつておる基盤を根本的に是正する方向、修正する方向、国際経済の中でほんとうに闘える日本の経済を確立する方向に持つて行かなければならない。硫安だけをこんなごまかしな方法によつて、幼稚な農民をごまかして、そうして硫安製造業者の独占利潤を擁護するというような案はおかしいではないか。この二重価格の問題につきまして、外貨の問題と国内価格の問題、輸出面における二重価格の問題、そういうものが硫安にどういうふうに影響するか。そういう計算ができておるのかできておらないのか。全然これは違うのだというような大臣の答弁はわれわれは了承しがたいのでありまして、この点について御答弁を煩わしたい。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりまするように、硫安につきましては、この六社の原価の試算の表でもごらんいただきますように、硫安についてはその原料とするものもあるいは動力とするものも、あるいは労力はもちろんでございますが、私はすべて百パーセントに国内産のものであるということを確信いたします。従つて先ほど来るる申し上げておりますように、国内農家にとりましてもまことに大切なものでございますが、同時に輸出に向けるものとすれば、東亜の市場をごらんいただきましても、輸入制限をくらうようなものでもなければ、また百パーセントに外貨の獲得にもなるものでありますから、そこにおいて硫安というものの非常な特殊性があるのであつて、この場合においては、原料高の製品安というような、他の輸入原料によつて輸出をするものに起りますような問題とは違つた性格の問題であるというふうに私は考えておるわけでございます。従いまして先ほど御指摘のございましたように、総合的な立場で考えなければならぬという点については私はまつたく同感でございます。たとえば先ほど伊藤さんの御指摘のように、原料炭においてもここ数箇月の間においても値下がりがあり、コークスについても同様というように、あるいはその他の原料品におきましても、総合的に日本経済全体の立場から、硫安に関係するものについてできるだけコストの引下げについての努力をしなければならぬことは当然のことだと思います。しかしいわゆる二重価格の問題として硫安をお取上げになりましたのは、ちよつと問題の性質が違うのじやなかろうかと私は考える次第であります。  それから一般的に他の二重価格の問題あるいは原料高の製品安にならないようにしなければならないという点につきましては、私も同感でございまして、それらの点につきましては、前々から申し上げておりますように、この上ともいろいろの面で努力を続けなければならない、こういうふうに考えておるのであります。
  27. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この輸出会社の問題についてでありますが、こういうものをおつくりになるということは、独禁法との関係において私はちよつとどうかと思う点があるが、これらの点についてはどのようにお考えになつておられますか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在の独禁法によりますと、生産業者は不況カルテルあるいは合理化カルテルによります共同行為をなし得ることとなるわけでございますが、その点は硫安業界についても——これはそういうことで許可がいりますが、そういうことがなし得るわけでありますが、許可をするならばそれで十分でなかろうかというお尋ねかと思うのでありますけれども、独禁法の不況カルテル等の問題は主として国内の販売または国内価格に関する問題でございまして、輸出と関連しての共同行為ではないように私は考えております。
  29. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この硫安輸出による外貨のかせぎの問題が非常に重要だと大臣はおつしやつています。私もその点は認めるのであります。ところが聞くところによると硫安輸出によつて——たとえば従来からしばしば政治問題、外交問題としても起つておるのであるが、硫安を台湾以外の地区に輸出するということについては、蒋介石政権が相当悋気をしていろいろアメリカなどにも頼んだりして横やりを入れておる。それでよそにやらせないようにしようとしていることはわれわれにも想像されるのです。台湾に輸出をする、そうするとその代償としてバナナを日本が輸入しろ、そういう交換条件のようなことがある。これは外貨かせぎになるのではなくて、貴重な硫安輸出してバナナを日本に入れて来る、そういうことを蒋政権がやるために、ほかにやることをいろいろ干渉しておるようなことを聞くが、そういう点についてのわれわれの疑問を解く意味において、政府としての考え方をひとつ十分お聞かせ願いたい。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 硫安は現在考え得るだけでもアジア地域だけで、どんなに少くても百五十万トンは日本硫安を買つてくれる市場があるわけでございます。そのうちの一つが台湾でございましようが、その台湾につきましては、御承知のように通商協定を締結いたしましたときに、台湾から日本の欲する米を買います場合に、若干の砂糖を買つてくれないと困るということで、通商協定の上である程度の砂糖を入れるということを約束しておるのであります。従つてこれは貴重なる硫安とのリンクと申しますよりも、日台間の貿易協定上から来ておる一つの問題でありまして、この問題は純粋に経済的に見れば、——私も率直に申しまして砂糖などはほしくないのでありますけれども、この場合においては貴重な主食の輸入をするために、ギブ・アンド・テークとしてある程度の砂糖を入れざるを得ないというふうな今日の実情でございます。ただいまその問題の数字を持つて参りませんでしたので、必要があれば後刻政府委員から申し上げさせたいと思います。
  31. 帆足計

    ○帆足委員 関連して。台湾への輸出の見返り物資のことにつきまして、今砂糖のことについて大臣から御言明がありましたが、輸入によつて穴埋めをしておりますけれども、輸入物資そのものが非常に貴重なわけでなくて、金銭上のつじつまが合つておるというようなな状況なんです。先ほど永井委員から御要望がありましたように、合理化はやはり日本経済全体が脆弱な状況になつておりますので、これは全体としての筋道の通つた合理化考えなければこの危機は私は突破できないと思う。しかるにかかわらず、硫安の問題が取上げられておるのに、昨年の暮れのことでも、たとえば硫安を中国にもう少し輸出すれば粘結炭と工業塩が相当買えたのです。そうすればソーダ工業の方も値が安くなるし、将来鉄鋼業にも潤うようになるのに、適切な対策がとられなかつた。もし合理化という点から言うならば、私は硫安も必要ですけれども、ソーダ工業のごとき実に言語道断の状況であつて、ロンドンで二十五ポンドくらいなものが、こつちで四十何ポンドもするというような状況であるのに、これに対してまだ適切な準備がとられていない。こういう点もお考えになつて、単に一硫安産業だけでなくて、化学工業及び基礎工業全体にわたつて合理化への準備をしていただきたいと思うのです。私どもが従来経験したところによりますと、この前も大臣質問したのですが、われわれは中国との貿易だけが合理化の基礎とは思いません。しかし原料関係においては中国は東南アジアと並んで非常に重要な要因で、こういう問題を勘案することなくしては、日本経済の自立的合理化は不可能であるということが明確なのです。硫安の販売会社ができたために、かえつて政治的圧力が簡単に加わつて、中国大陸との貿易も逆に阻害される。先般日産が思い切つてやりましたので輸出ができましたけれども、一手買取り会社ができてやるようになれば、かえつて困難になるのじやないかということを中日貿易の同業団体あたりで心配して昨日も私の方に注意があつたような次第もありましたので、今の伊藤さんの質問の点は非常に重要な点と思いますし、関連してこの際大臣のお考えを承つておきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の苛性ソーダ等のソーダ工業製品の問題でございますが、この点については私としては少くともこれらの原材料についての価格上の措置の問題、その他中共への輸出についてはバーターで塩の問題等も考えられておるわけでありますので、これらの点をもう少し積極的に推進して行きたいと考えておるわけであります。  第二の御懸念の点は、従来ともすると起りがちであつたような現象から申しますと、私も率直に言つてそういう御懸念があることはわかりますけれども、私は逆にこういう輸出機構ができることによりまして、もつといい意味の政治的に新しい市場を開拓するというふうに持つて行きたいと考えておるのでありまして、いわんやこれをつくることによつて中共等に対しての輸出を阻止するというようなことは私は考えておりません。
  33. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 先ほど大臣は、台湾を中心にする東南アジア地区におけるわが国からの硫安輸出、あるいはそれがまたバーター制にどのようになつておるかということについての数字をあとで知らすと答弁されておりますが、この点は非常に重要な点があるわけでございますから、至急その数字等をお示し願いたいと思います。この点どうでしようか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいますぐ御説明いたします。
  35. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それではその数字を先にお伺いいたします。
  36. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 台湾との通商協定の数字でございますが、輸出、輸入ともに五千万ドルでございます。台湾からの輸出、つまり日本側の輸入は、米、砂糖、塩、ラミー、紅茶等でございます。日本からの輸出は食糧、肥料、繊維製品、機械製品、この中で特定の品目について幾らということは、その都度協議してきめるのがございます。あるいは貿易の成行きにまかせておるのもございます。
  37. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 私がお尋ねしたのは、その台湾だけの問題じやなくて聞いているのでございます。たとえばすでに御承知のように、東南アジア地区においても、ベルギーなりその他西ドイツなどだんだん進出して来て、わが国輸出が押されて来ておることは明らかなんです。先般南朝鮮においても、わずか手の届くところであるが、欧州各国輸出に負けて来ておる。そういうことで、隣同士の間の貿易の関係においてさえも、はるかに一月もかかつて来る欧州地区に負けて来ておるのである。なおまた中共地区とのバーター制の問題は、わが国から硫安輸出しようとしても、なかなか政府がこれを許さないで思うように行かないでおることもしばしば国会で議論になつた点である。そういう点からあわせて、東南アジア地区にどのように輸出をされつつあるか、それをお知らせ願いたいと思います。
  38. 柿手操六

    柿手説明員 最近一箇年間の状況を申しますと、台湾に対しまして二十五万トン、朝鮮に復興特需といたしまして、全部まだ積み出しておりませんが、十六万五千トン、それからフイリピンその他近郊の諸国に対しまして、数量は少しずつでございますが、約三万トン、東南アジア地区としては、最近の契約状況はそういうものでございます。さらにハワイ、アメリカ、パキスタン等に対しても数万トンの輸出が行われておるという状況でございます。
  39. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 この程度では決して明るい数字じやございません。まことに悲観すべき状態でありまして、欧州各国から圧倒されて来ておるということは御存じの通りまことに遺憾でございます。そういうことは別問題といたしまして、なおこの輸出会社を中心にして非常に議論がございます。私がだんだんさつきからお尋ねして来たように疑問があつて、なかなかわれわれは納得できないものがございます。しかしこれは議論にもなるし、考え方相違にもなりますから、私はこれをあえてこれ以上追究しようとは思いません。従つて同僚議員からもなお質問相当あるようでありますから、私は疑問のまま質問を一応留保したいと思います。  ただ最後にいま一点伺つておきたいのは、この需給安定法なりあるいは輸出会社法なり、こういうものをつくろうとしております。そこで先ほどからお尋ねするように、一体原価も十分わからぬ、まつたくすべてを想像推定のもとにこの法律をつくつてやろうとしておるわけでございますから、まことに遺憾でございます。従つて私がお尋ねしようという点もまた疑問の一つになつてしまうと思うのであるが、たとえば今度こういう法律をつくろうとされるのであるが、この減価償却なりあるいは適正利潤なり、そういうものをこの法律をつくつた以後においてどの程度を妥当として見ようとされるか、その点お知らせ願いたい。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点につきましては、法律上規定されております審議会におきまして十分検討いたすことにいたしております。
  41. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうも次から次に質問をいたしましても、政府が確信を持つて、この法律に対するかくのごとき上に立つてかくするという信念を御発表になり得ないのでございます。これはまことに遺憾でございますが、同僚議員との関係もございますから、私の質疑は一応この程度にとどめておきまして、なお同僚の質疑の後に機会があればまた委員長のお許しを得て質疑をいたしたいと思います。
  42. 大西禎夫

    大西委員長 加藤清二君。
  43. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間も大分迫つておるようでありますから、私は簡単に要点をかいつまんでお尋ねしたいと思いますので、恐れ入りますがお答えの方も簡単明瞭にお願いしたいと存じます。  第一に、きのうせつかく御提出いただきました原価計算書でございますが、これがきわめてずさんでございます。ところで大臣の御答弁も局長の答弁も、これを調査することが不可能であるというお答えでありましたが、思い起せば去年の十五国会から十六国会にわたりましての私の質疑に対して藤山愛一郎さんもそのように答えていらつしやいません。それからまた農林大臣保利さんも私の質問に対してこういうふうに答えておられます。先ほどお答えいたしましたように農林、通産の共管をもつてできるだけ正確な生産費を調べあげたい云々として、最後に、そのように努力して早急にお答えします、こう言つておるのです。うそじやありません。ところがそれから今日まですでに約一年の日時を経ておりますが、それがいまだに出ておらないのでございます。そこで大臣に私がぜひお尋ねしたいことは、きのうも一会社でもつて二十億も金を借りている会社があるというお話でございました。一体肥料会社は総体でどのくらい銀行から融資を受けておるのでございましようか。これをまず、概算でけつこうです。わからなければあとでけつこうです。
  44. 柿手操六

    柿手説明員 それにつきましてはかねて資料を配付いたしておると思いますが、政府資金としては設備資金で約六十億……。
  45. 加藤清二

    加藤(清)委員 今政府資金のお答えでございましたが、市中銀行からあるいはその他の銀行からどの程度借りているのでございましようか。
  46. 柿手操六

    柿手説明員 現在の残高は、今正確に最近のものを調査しておりませんが、その当時調べたものでは、あるいは政府資金よりも多かつたかというふうに記憶いたしております。それも先般資料に差上げた中にあると思います。今調べてお答えいたします。
  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや、けつこうです。私の調べたところによりますと——これは先方から詳細に調査をして提示してくれたものでございます。しかもこれは政府の手を通つて来ているものでございますが、農林中金だけでもつて、貸出しの残が去年の三月三十一日で三十二億何がし、それから五月末日で二十二億何がし、それから二十八年七月で十六億何がしあることになつておりますが、これは政府の手を通じてもらつたのですから、間違いありませんね。
  48. 柿手操六

    柿手説明員 それはおそらく設備資金の長期融資でなくて、全購連を通ずる肥料売却代金の前貸しをしたものの残高であろう、いわゆる運転資金に属する金融であろうと思います。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうです。そこでぜひお尋ねしなければならない問題が出て来るわけでございます。今日われわれが市中銀行へ金を借りに行きます。出血して損をしておると言うて行つた場合に、はたして銀行は金を貸してくれるか、くれないか。政府が親心をもつてつくりました中小企業の金融公庫や商工中金にいたしましても、金を貸す場合にはなお徹底的にこれを調査をいたすようでございます。調査をしただけで足りないで、こちらの要求額を要求の期日に貸してくれたというためしはまず少いのでございます。ほんとうに肥料会社が言うところでは、出血しているのだ、損しているのだ、しかも去年のように荷物がストツクしてしまつて、インドへあれは投売りしたのだ、こういうことになつておりますが、もしそれが事実そうであつたとしたならば、市中銀行ははたしてそういうところへ金を貸すのでございましようか。これは大臣はその畠でお育ちでございますからよくおわかりのはずでございます。一体そういうところへ金を貸すとお考えになりましようか。もし金を貸す場合におきましては、銀行としては徹底的に会社の経理内容を調べるはずでございます。その調査資料が入手できないとあなたはおつしやるかもしれませんが、もしそれ百歩を譲つても、農林中金という銀行は、これは成り立ちから見て、どう考えてみても政府がそこの材料はとれる筋合いでございます。なぜならば農林中金の自己資本は八億であります。ところが児返り資金が二十億も行つて二十八億、集めた金はお百姓さんの金なんです。今柿手さんがおつしやいましたように、全購連の手形が担保になつているというお話でございますけれども、いずれにいたしましてもこれはお百姓さんから集めた金なんです。愛知県の信連から来た金だけでも最高の場合は七十億ぐらい、最低の場合で四十億、これはもう農林中金で一番成績がいいということになつておる。これはお百姓さんの金なんです。お百姓さんがここへ金を借りに行きます場合に、一体どのように農手を割つてくれるか。ことし七俵とれるはずのたんぼを担保に入れましても、なお三俵分ぐらいしか貸さない。それほど厳密にやつているところでございます。それじやなぜ筋道違いの肥料会社に金を貸すか。これは筋道違いなんです。その場合において、そんな経理内容がずさんであつたり、あるいは出血をしておつたり、あるいは投売りをしておつたり、そのようなところへ事実はたして金を貸すのでございましようか。もしそうだつたとするならば、これはこの際農林中金を呼んで、ここでひとつ参考供述をしてもらわなければならぬことになりますが、ここへ提出された肥料会社の経理内容というものが政府側でとれないはずはない。農林大臣であつたらとれないはずはない。通産大臣が見返り資金二十億もやつておるところの銀行の調書がとれないはずがない。これに対して御努力なさつたのですか、なさいませんか、その点お尋ねいたします。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その資料につきましては、先般来詳しく申し上げておりますように、権限的に、私どもとしては会社から資料をとることは、現在のところ遺憾ながらできないのであります。しかしながらこれは、たとえば柿手化学肥料部長のような、非常に練達なその道の専門の人がおりますから、これが会社の連中などを呼びまして、いろいろな面から聴取したり、あるいはいろいろな面から推測をすることによつて、こういう調書を通産省としてはつつておるわけなんです。会社金融機関にどういう資料出し金融機関がどういうことによつて納得をして融資をいたしましたか、これについては私は存じません。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや、私はこれについて努力をなさつたかなさらないか。つまりわれわれの要求というものは、一年越しに正確な資料出してもらいたい、正確な会社の経理内容が知りたい。それに対して会社側、肥料委員会の代表でもあり、メーカーのまた会長でもあるとこの藤山さんは、提出すると言つておられる。それから要求した場合に、これに対して農林大臣も、あなたの言うことはもつともだから、通産省と共管の問題だから、早急に調査をして答える、こう言つておきながら、今日なおその正確な資料が届けられていない。いないままに早うこの法律を上げろ上げろ、こういうことなので、われわれとしてもそれは上げることに協力はいたしますけれども、こつちが要求して、はい、さようにいたしますと言われた資料だけは出していただきたいわけなんで、それが出ていないから、私がわからぬわからぬとおつしやるあなたに、わかる方法があるではないかとお尋ねしておるわけなんで、そのわかる方法であるところの農林中金から資料の提出方を要求なさつたことがあるかないかということをお尋ねしておるわけでございます。それだけでけつこうです。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 できるだけの努力はいたしました。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 ところで、ではその農林中金の方ヘは要求なさつたのでございまするか、なさいませんのですか。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 要求はいたしません。と申しますのは、要求する根拠が通産省にはございません。従つてお願いはいたしましたが、要請はいたしません。
  55. 加藤清二

    加藤(清)委員 これは異なことを聞くものでございます。ここは国家が管理できる銀行でございます。市中銀行にこれを求めるということは無理かもしれませんが、国家が管理でき、おまけに国家の金が相手方の資本よりもたくさん、三倍余の二十億も行つておる。その二十億は見返り資金なんです。見返り資金は国民が余分に出した金なんです。集まつて来た預金というものは、お百姓さんの金なんです。しかもその金がお百姓さんに貸すときには厳重をきわめて割引いて貸されている。これほどにも審査部は正確を期しておられる。筋道違いのところへ、しかも相手は出血だ出血だというのですから、そこへ貸す場合にはよほど個々の審査を厳重にされたはずです。もしそれ審査が厳重にされていないということならば、筋道に貸す場合には厳重をきわめて、筋道以外の大企業に貸す場合にのみは目をおおつて貸した、こういうことになるわけでございます。これがほかのお方ならいざ知らず、その道でずつと育つてみえた大臣さんでございますから、これはよくおわかりだと思うわけなんです。そんなことは要求しなくても電話一本でとれるはずでございますが、それをあえてやつていらつしやらないということになりますと、あなたではございませんけれども、ほかの農林大臣や前の通産大臣が私に出すとお答えになりましたことはうそである、こういうことになりまするが、それでもよろしゆうございますでしようか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今のお尋ねは、農林中金から貸し出しておるものについての資料を農林大臣なり私の前任者が差上げるということをお約束したのではないと思います。それから農林中金の方の関係は、私が調べましたところ、あるいはお願いをしたところに対する農林中金としての態度、これはもう御承知通り、農林中金としては担保をとつて短期の運転資金を貸し付けたものであつて従つて設備その他の原価の計算等について十分審査をする必要はなかつたのである、従つてそういうところまで調べて、またそれを公にお出しするだけのものはございません、こういうのが農林中金の態度であつたということを申し上げておきます。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣の力をもつてしても、国家の管理下における銀行の内容が調べられないということだつたらおかしな話で、私は再三農林中金に行つております。聞いております。出るはずでございます。いかに短期であろうとも、いかにその全購連の手形の担保であろうとも、そんな国家のお金や農民のお金をよそに出す場合にあたつていいかげんに貸すはずはございません。そのようには答えておりません。それを論議しておりましたら、また時間が来たというてしかられますから先へ急ぎますけれども、とにかくこれは失礼な言い分かもしれませんけれども、当然調査し得る場所がありながらそこを調査しなかつたという結果がここに出て来ていると考えざるを得ないわけでございまして、もしそれそういう気持で今後この法律が成立した後に輸出会社なるものがつくられたとするならば、遺憾なことに、今度この法律つくりさえすれば会社の経理内容は調べる調べるとおつしやいますけれども、現にすでに調べ得る場所がありながら調べていないということになりますと、いかにこの法律が完成して実行に移されたからというてみても、なお相手が大きいからとか、会社が人さまのものだからということで、経理内容の審査が行われずに済んで行つたという場合には、今度の法律によつて最高価格をきめられます場合に、はたして肥料が安くなるかならないか、五年計画の後に業界では少くとも価格については十ドルくらいは安くしよう、いや百ドルも安くしようと言うておるようでございますけれども、そんなことのできるはずのものじやないと思いますが、はたしてこの法律を実行に移した場合に、内地で買う百姓の方が安くなるかならないか、買いやすくなるかならないか、これについて大臣の所見を伺いたい。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 少し誤解があるようで非常に私遺憾に存ずるのでありますが、私が先ほど御答弁申し上げたのは、通産省として農林中金がどういうところにどういう調べをした上で貸したかということは、職権をもつてその書類をとることはできないから、要請あるいは要求をしたことはございませんが、十分調べるようにお願いをいたしましたということを申し上げたのでありまして、私は自分が当然やるべきことを怠けてやらなかつたり、国会から一年にわたつて御要求があつたことをサボつたり、あるいは他の意図をもつて故意にそういうことをやらなかつたというようなことは断じてございません。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はあなたがどうこうと言うておるんじやありません。名前をあげて言うております。保利農林大臣とさきの大臣がさようにお答えになつておりますと言うておるのであります。だからあなたが事務引継ぎの場合にそのことを聞いていらつしやらなければ、これはあなたの責任云々を言うておるわけではございません。が現に役はかわられましても今日の政府にはかわりないわけなんです。そのお方が一年先にお答えになつて、共管だからしつかり調査をしてお答えします、あなたの言うことはもつともだからさようにいたしますると言われたことが、いまだに正確なものとしてここに現われていないということを言うておるわけなんです。  それじや次にもう一つお尋ねいたしまするが、個々の肥料会社の税金の徴収の場合は一体どうなつておるのでございましようか。税金を徴収する場合に、いわゆる公認計理士ですか、それの言われた通りを額面通り受取つて、はいこれで出血でございます、これでこの会社は試しております、ああさようでございますか、こういうことできまつておるのでございまするか、それとも中小企業がどんなに申告をやり直し、もみ手すりで頼んでもなおぴしやり更正決定で来ると同じような行き方になつておりますか、この点をお尋ねいたします。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 肥料会社は御承知のように十六社でありますかございますが、それに対して国税庁の徴税のやり方が他の事業と違うなどということはあろうはずがございません。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねいたしますが、そうなれば肥料会社の経理内容というものは徴税の面からもある程度はつきりして来るではないかと思いますが、これははつきりしないままに税額の決定が行われるのでございまするか、そこからわれわれが要求しているところの経理内容のデータをとることができなかつたのでございまするか、先ほどのように要求はなさらなかつたというのでございますか。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国税庁の徴税のやり方はいまさら申すまでもございませんが、徴税という特殊の立場に立つて徴収をいたしておるのでありまして、必ずしもこれが常識的にいわゆる原価の計算というようなこととマツチするかどうか、これは当然マツチすべきものでありますけれども、肥料のときにはそうでない場合も実際上の問題としては多々あると思うのであります。それから国税庁のやり方がどういうやり方であるかということについては、国税庁の当局の方からお聞き願いたいと思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 きよう上げるというから私は協力して、その畑でずつとエキスパートとして育つて見えた大臣に代理でお答えを願つているわけなんであります。よくおわかりだろうから……。それでそちらの方へ聞けとおつしやいますと、いま一ぺんこの会をば延してもらつて、農林省なり国税庁なりから会社の経理内容をたださなければならぬということになつて、これはかえつて政府側のこの法案をきよう通そうという意図には反するじやないかと思うのです。そこで私の言うておることは、今の銀行といい、徴税の庁の方といい、会社の経理内容を調べ得る方法は、調べようと思えば幾らでもあるんじやございませかんということを言うておるのです。にもかかわりませずこれを調べることができない、正確にすることができない、推察である。それも二日や三日のことならいざ知らず、私が尋ねておりますのは十五国会の二月二十七日でございます。その二月二十七日の材料を私ここへ持つて来ております。そのときにお尋ねしたら、必ず出す、こういう話でありました。これはもうすでに一年余になつているわけなんであります。それがその正確なものが出ていない。これほどこういうことに熱心でないということになると、頭が悪い皆さんじやないんだから、何かあるじやないか、こう疑わざるを得ない。何か大きな別な力によつて調査し得るものを調査せずにおる、そういう気持、そういう状態においてこの法律が実行に移された場合におきましては、どのような法律をつくつても運用するのは皆さんなんですから、はたして調査し得るやいなや、目的通り内地の肥料を安くすることができるかできないかということを懸念するからでございます。そもそもこの法律がなぜこんなに騒ぎ立てられたかというのは、肥料会社の方があのストツクを投売りしたことから始まるのです。出血だ出血だ、援助してもらいたい。お百姓さんの方が、いやそうじやない、おれらの犠牲において投売りしたのだろう。これが争いのそもそもの初めなんです。これを解決するために法律が三つもでき上ろうとしているわけなんです。ところがその途中の審議の過程において、当然とり得る材料がとれないということでありますと、法律ができた後といえども、はたしてこの目的通りに行くやいなやということをだれしも懸念せざるを得ない。特にお百姓さんやその代表である全購連のごときは一層ここに心配をかけるというのは、これは理の当然だろうと思う。そこでこの際、どうせもうきよう上げるのですから、大臣としてはお百姓さんが安心して肥料が買えるような言葉をはつきりとここで述べてもいらたいものだ。そうすればわれわれもこの法律に賛成するのにやぶさかでないわけなんです。しかしながらそれがはつきりできない、うやむやのうちに済んで行くということになりますと、何か調べ得る力がありながら調べずに放任されたということになりますと、これは何かしら別な力によつて、圧迫を受けておるのじやないか、そのような力で圧迫されたならば、とうていこの法律の精神は生かされないことになるではないかという結論を下さざるを得ないわけなんであります。この点ひとつ大臣さんの確信ある御答弁が願いたいわけでございます。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど私はちよつと申し足りなかつたのでありますが、ここはひとつ率直に聞いていただきたいのであります。お前は農林中金からどうやつて貸したか、それは調べることはできるじやないか、お前は国税庁を通して、御承知のように二期も三期も前の徴税をやつておるのを調べ上げればわかるはずじやないかとおつしやるのでありますが、これは先ほどから申しておりますように、通産省としては権限をもつて直接に調べるところへ入つて行けない。従つてそういういろいろの機構がありますが、どうしてもそういうところへお願いをして調査をしなければならない、こういう非常なうらみがあるために通産省として責任をもつてこういう原価計算でありますということを各社別にオープンにお出しするだけの自信がございません。またそういう資料がつくれなかつたことは非常に遺憾でございますから、秘密会においてこの説明をさしていただきまして、われわれとしては十分の日時をかけてつくりました試算によつて御審議を進めていただきたいということをお願いしておるのであります。それで今度今御審議を願つておりますこの両案が、幸いにして法律になれば直接私どもはこの法律によつて権限をちようだいいたしますから、肥料会社に対しまして、権限によつて直接に原価調査を実施することができるわけでございます。そうなれば、今ここでこういう質疑応答を繰返しているようなよけいな手数が省けまして、なぜお前ら調べぬか、こう言われれば、まことに相済みません、すぐ調べます、その結果はこうでありますというふうにわれわれの立場がなるわけでございますから、従来と今後この法律ができてからあとのわれわれの立場はまつたくかわるのです。従つて従来お前らは調べることができたのに調べなかつたから、今度こういう法律ができて権限をやつても調べぬだろうとおつしやることは、違うものを比較して、私どもをお責めになつておるのでありまして、この点はこの法律案の各条章をお読みくださいまして、私どもがこれからはつきりこうやりますということをあげていただくよりほかはない。私は率直に申しまして、こういうふうに考えます。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは現在の政府機構から行けば、大臣のおつしやる通りかもしれませんが、これは調べようと思えば調べられる材料がここにもここにもありますという例を二、三あげただけであります。時間があれば幾つか例をあげてみたいと思いますけれども、問題は、これは、調べようという意思があるかないか、その意思があるかないかよりも、意思の程度の問題であつて、これを調べようと思えば、一年もかかれば私一人だつて調べます。一週間ひまをもらつたらちやんと調べて来ます。まだ別な方面から材料をとつております。経営してつくつている連中をよく知つていますから調べられると思います。あなたの今日の権限をもつてすれば、調べられないということはない。しかしほかの仕事があまりにも多忙であつてできなかつたと言われれば、これは人間は限りがありますからやむを得ない。しかしいずれにしても私としてはこの法律がなくても会社の経営内容は調べることができると思うのです。もしそれ大臣のおつしやるように、こういう法律をつくらなければ、会社の経理内容は調べることができないと断定を下されるならば、他の業界は一体どうしたらいいかということになる。他の企業——政府資金を持つてつてやる、財政投融資を持つてつてやる。あるいは市中銀行の金を持つてつてやる、あるいは日銀ないしは政府の監督下にあるところの銀行から金を融資する場合に、一体何を基準に調べるか、こう言わなければならぬ。大体過去においてそういうところがあまりにもずさんに行われ過ぎておつた。だから、復金や開銀の融資がこげついてしまつて、それがオーバー・ローンの原因の最も大きいものとなり、それの引締めが、それに関係のなかつた中小企業へ来てしまつて、今倒産商社がばたばた出ている、こういう状況に相なつているわけなんで、こういう法律をつくらなければ実際に経理的内容を調べる権限はないかもしれませんけれども、権限を持たなくても、誠意があれば幾らでも調べる方法はあるはずです。だから私のようなしろうとが大臣のようなそういう畑でお育ちになつたお方に言うことはまことに恐れ入る次第でありますけれども、今までの政府の融資といい、あるいは政府の投資といい、それがあまりにもずさんであつたではないか、それがために、今日のようなこういう経済の混乱を来しておる原因の大きな一つになつておるではないかと思うわけです。だから法律があろうがなかろうが、そういう権限を持とうが持つまいが、とにかく業界の指導育成強化に当るという本省は、当然会社の経理内容くらいは聴取しなければ、ほんとうに指導育成の地についた実行はできないと思うのです。それを法律がなければできないというようなことを言うておられるようでは心もとないわけなんで、私一般国民、特に中小企業者にかわつてお願いしたわけでございます。
  66. 大西禎夫

    大西委員長 加藤鐐造君。
  67. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 私はきわめて簡単に質問をいたしますが、この法案に関して質問をいたしますのは私としては初めてでございますので、そのつもりで私当然わかつておる点を知らないで御質問するかもしれませんが、御答弁願いたいと存じます。  この法律が提案されました動機は、先ほどどなたかも言つておられました通り、一昨年秋以年硫安輸出がはなはだしい二重価格で行われておる、その出血輸出の負担を消費者である農民にかけられておるという点に対する農民の猛烈な反対運動が起りまして、これを何とか解決しなければならないという考えのもとにこういうものが考えられたものであることは間違いないわけです。そこで現在二重価格の幅は相当狭まつてつておるようですが、しかし政府の御答弁によりましても、二重価格が続けられておることは間違い、ないところでございます。そこでまず第一にお伺いしたいことは、輸出会社が買い取る価格の問題でございます。メーカーが赤字を出さない建前において買い取られるのか、あるいはメーカーがある程度赤字を背負つて売り渡すのかという問題ですが、これはおそらくメーカーが赤字を出さないという建前において買い取られるものであろうと思いますが、この点まず第一に承りたい。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この法律ができますと、マル公がきまるわけでございますから、そのマル公で買い上げることになるわけでございます。
  69. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 私は何もいまさらマル公で買い上げるということを聞いておるわけではございません。その場合に輸出会社が買い取る価格を決定するマル公は、あくまでも会社が赤字を出さない建前の価格になるであろうと思いますが、それを念を押して聞いておるわけです。
  70. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 輸出会社が買い取ります価格は、安定法に基きます国内の公定価格できめますので、これに基いて買い取るということにいたしたいと思います。と申します理由は、国内の公定価格は、法律にもございますように、国内の需要を満たします数量に達しますコストの安い生産量の、いわば限界生産コストと申しますか、そういうものによつて買い取る。従いまして、国内需要数量を満たす工場のコストの積数加重平均できめますので、ある会社、ある工場によりましてはこのマル公価格は赤字と申しますか、適正利潤をカバーし得ないような場合も起り得ると考えるのであります。従いまして、輸出会社が買い取る場合におきましても、そういつたような事態が起り得るということが考えられるのであります。と申しますことは、輸出会社が買い取る価格、なかんずく国内で販売される最高公定価格がすべての会社の赤字を埋めるような価格ということで考えますならば、これは本法で考えております合理化の促進をむしろ弱める、合理化を遅らすというような傾向を生む一つの制度になり得ますので、その点を回避する意味合いで、国内マル公価格をもとにいたしました価格で買い取る、こういう方針でございます。
  71. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 そこでおおむね赤字を出さない価格ということになるわけでありますが、そうすると、輸出会社が二重価格輸出される場合には、当然赤字を背負い込まなければならぬ。当分そういうことになろうと思います。この輸出会社が二重価格によつて背負い込んだ赤字の補填はどうして行われるか、出資者である硫安メーカーが将来これを必ず補填するものであるか、あるいは何らか直接か間接の形において国が負担することになるか、この点を承りたい。
  72. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 輸出会社ができました後の運営につきましては、基本の原則についてすでに大臣からも御答弁申し上げましたように、さしあたり生ずるであろうと考えられる赤字については、輸出会社においてたな上げいたしまして、一方合理化いたしました計画的な低コストの計画に伴いまして、この赤字を数年後に解消するという建前にいたしておるのであります。従いまして、この会社設立前、今日まで台湾のバナナあるいは砂糖の問題等でさしあたり補填というような暫定的な措置はいたしましたが、輸出会社ができました今後におきましては、このような暫定措置はかえつて合理化の促進を阻害するという遺憾の点がございますので、今後の方針といたしましてはこういう暫定的な措置をとらないという建前で進めたいと思います。
  73. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 くどいことを承るわけですけれども、この点は非常に重要な問題ですから承つたわけですが、そうすると将来はバナナ、砂糖その他のいわゆるリンク制の輸入によつて補填するということは、この会社には絶対にさせないということですか。
  74. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 御質問の趣旨の通りであります。そういう暫定措置は合理化を阻害するという一つの大きな問題がありますので、行政方針としてそういう方法をとりたいと考えております。
  75. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 次に輸出会社が、ときには買取り会社的な性格を持ちはしないかということを懸念するものですが、輸出の当てがあつて、それを買い取つて多少の赤字の負担をして輸出するというだけではなく、非常なストツクの出た場合に、その会社にプールするために、輸出の見込みのないものを相当数量買い取るというようなことは、この会社は絶対にしないのかどうか、その点を承りたい。
  76. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 硫安需要関係、特に国内需結関係というものが非常に重要でございますので、輸出に対します数量的な、全体的な計画というものを立てまして、この需給関係のうちできめられました数量に基いて買い取る、こういう建前でございます。
  77. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 それからこの会社の資金の面ですが、これの出資金に単にこの会社を構成するところの株主である硫安生産業者が持つということになるであろうと思いますが、その他の運転資金についてはどうなつて、どういう御計画ですか。あるいはこの点ほかの委員から質問があつたかもしれませんが、お答え願いたい。
  78. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 運転資金につきましては、財政的な資金の供給ということを考えておりません。輸出会社の組織、運営が、先般来ず答え申し上げておりますように自主的なる調整機関でございますので、従いましててこの会社が買い取ります肥料の運転資金等につきましては、輸出会社の資本金に基く借入金が活用されることはもちろんでありますが、その他の所要資金につきましては個々のメーカーの信用というものもあわせ考えまして、あつせんいたすということになると思います。
  79. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 それから硫安工業の合理化の問題ですが、この硫安工業の合理化ということはやはり設備の改善、技術の近代化、また企業形態の改善というようなことが一応この法律によつて見込まれておるようですが、その他にいろいろ多角経営によつてコストを下げるという方法もあろうと思います。そういう点についての政府考え方はどうですか。
  80. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 当委員会に御配付申し上げました硫安五箇年計画の中におきましては、硫安以外の尿素でございますとか、その他の肥料の生産あるいは拡充計画というものを含んでおりまして、もちろんこの硫安五箇年計画以外に、たとえて申しますと合成繊維、合成樹脂、こういつたような化学工業の原料として従来捨てられておつたもの、あるいは効果的でない用途に使われておつたものが活用せられる面が相当ございます。また製鉄関係に関連を持ちます酸素の供給等においても、総合的に肥料工業がその意味におきまして合理化され、近代化されるという面が相当ございます。この面につきましては、法律等によりまして財政投融資を考えておるものもございます。また会社の自己調達によりましてこれが実施をはかつておるものもございます。
  81. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 それから硫安の原料としての硫酸工業あるいはソーダ工業等の合理化の必要もあると思いますが、その点については政府はどういう考えを持つておられるか。
  82. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ソーダ工業につきましては、わが国硫安工業はアンモニア工業として今日まで成長して参りましたが、これが本格的な合理化という見地から考えますと、他のソーダ工業あるいは合成繊維工業というものを総合的に経営せられることが非常に理想的な形態でございますので、従来ソーダ工業との関連におきましては、塩安の生産、これはもちろん肥料として供給されておるものでありますが、塩安の生産につきましては、関銀融資等で促進いたしたものもございます。今日自己調達でこれらの計画を拡充しつつある状況でございます。
  83. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 それからこの法律の三条ですか、大体政府合理化を推進するについての権限というようなものが出ておりますが、これは単に工場の設備、技術、企業形態等の改善について勧告することができるということになつておりますが、生産についての指示をする必要はないと考えられるかどうか。
  84. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 法の三条におきましては生産設備及び技術の近代化あるいは企業形態の改善という見地から、生産それ自体の増強あるいは合理的な生産関係の確立という方向の指導はできるのでございますが、直接どれだけの生産をしろ、あるいはこういう肥料についてこれだけの生産をしろ、こういうような意味合いについての指示はここには明らかにいたしておりません。ただ念のために申し上げますが、先般衆議院の農林委員会におきまして臨時硫安需給安定法案に対する修正案が可決せられておりまして、そのうち、通商産業大臣は、肥料の需給の適正化をはかるため必要があると認めるときは、肥料審議会の意見を聞いて、生産業者に対して肥料の種類、数量及び品質を定めてその生産を指示することができるものとすること、こういう修正ができております。もちろんこの修正案が国会の最終的な可決がありまして運営される場合におきましては、通産省といたしましては御指摘のような点についてやるわけであります。
  85. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 その点は私ども肥料生産業者の数が非常に少いので、ときとしては価格を維持するために不当な申合せ等をして生産の制限をするという場合がありはしないかという心配をするわけです。もちろん公取委員会の発動によつて、そういうことはできないという考えだろうと思いますが、こういうふうに輸出も一本になつてできる。いろいろな面において業者が協定をする機会が非常に多くなつて参りますと、そういう心配がありますが、そういう点については、私は十分通産省が監督しなければならないものであると考えるわけですが、農林委員会の修正意見によつて、そういう点が十分に考慮されるということになりますならば、それでけつこうだと思います。そこでもう一つの問題は、非常に多額な政府資金の融資も行われるわけですが、政府の直接、間接の援助を受けるところの企業がそのほかにもたくさんあるわけです。こういう企業の利潤というものにはおのずから限度がなければならないと思うわけですが、この肥料会社の利潤については、いわゆる適正なる利潤というものはどの程度が適当であるとお考えになりますか。現在二十七年度の配当を見ましても、おおむね二割以上の配当になつておりますが、そうした高率の配当をしておるものに対して、政府相当多額の援助的な融資をしなければならないということは、われわれとして納得のできない問題ですが、その点についてどうお考えになりますか。
  86. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの適正利潤の程度の問題でございますが、これにつきましては、国内公定価格をきめます場合に、安定法に、これが生産コストあるいはその他の経済事情、あるいは国際価格状況というものを参酌してきめるということに相なつておるのでございまして、その際農家経済状況でございますとか、他の関連産業の状況でございますとか、そういつた客観的な条件を十分勘案して適正利潤というものをきめて参るということが法の建前でございます。これが具体的にいかほどがいいかという問題になりますと、先ほど申し上げましたが、硫安審議会におきまして十分審議いたしてきめるという建前でございますので、この線を十分検討いたしまして、ただいまの適正利潤はいかほどがよろしいかということをきめて参りたい、こう考えております。
  87. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 将来そういうことになるわけでしようが、しかし政府としては、間接にしてもこういう政府援助的な融資を受けておる会社の適正利潤というものは、一体どの程度でなければならないかということについてのお考えがあろうと思いますのが、大臣はどうお考えになりますか。二割以上の配当が適正であるとお考えになりますか、その点ひとつ明確なお考えを承りたい。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま局長からも申しましたように、この問題はなかなか微妙な問題がございます。と申しますのは、いわゆる財政投融資の対象になるというだけの理由で配当の制限等を考えるということは、多少無理な点が私はあるというふうに率直に考えるのであります。と申しますのは、理想としては私は資産の再評価を筒一ぱいまでやりまして、その資本に対して適正な配当を考えるべきであるという点から、この問題を考えなければならぬと思います。またそれに至ります場合に、増資をどうやつて円滑に進めるか、また将来におきましても、自己資金の充実ということが健全な企業体として最も望ましいことでございますから、証券市場を通じてどの程度の配当であれば最もそういうことがやりやすくなるかという点と考えあわせてみる必要があると考えるわけであります。従つて一律に財政投融資の対象がきまつておるからといつて、一割以上が適当であるとか、一割五分以上は適当でないということは、今的確に申し上げることはできないのでございますが、一般的に申しまして、二割の配当は高率に過ぎるものではないかというふうに考えておるわけでございます。現に公共的な事業あるいは財政投融資だけに依存しておるというような面につきましては、最近においてはほかにもいろいろ例がございますが、大体今申しましたような心組みで行政指導その他をやつて参りたいと考えております。
  89. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 もちろん今大臣のおつしやつたように、資産の再評価がどの程度に行われておるかという点も関連がありますので、必ずしも一律に押えるわけには参らぬと思いますが、しかし国の税金やその他の零細なる国民の醵金によるところの資金が投ぜられる場合に、はなはだしい高率の配当をしておるというようなことは、国民の側から見ても相当異論のあるところであろうと思うわけでございます。従つて再評価の問題があるから、あるいはその他いろいろな配慮があるからということで高率配当を許すということはいけないのではないかと思うわけでございまして、その点いろいろな再評価の問題等につきましても、その他の点についても、こうした政府援助を与え、合理化をやらなければならないという会社に対しては、総合的な指導方針をもつて臨まれることが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。  もう一つ承りたいことは、十六社ある硫安メーカーのうちにも、相当能率の上らない会社もあろうと思います。きのう秘密会で発表になりました六社は、比較的優秀な能率的な会社であろうと思いますが、それを見ましても、コストの上に大きな開きが出ております。そうしますと非常に非能率的な会社があつて、はなはだしくコストが高くなる会社もあろうと思いますが、そういうものに対しても、救済的な意味において高く買取るというような建前に立つての公定価格がきめられはしないかということを心配するわけでございます。はなはだしく能率の上らない会社はどうするか。これもなお合理化の対象として相当の資金の融通もするのかどうか、その点承りたい。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは結論から申しますと、せつかくやつておるものを切り捨てて行くことはやりたくないというふうに考えておりますが、全部あらためて慎重に検討いたしまして、結論を出したい。また審議会等においてもその点を十分に御審議願いたい、こうういふうに考えております。
  91. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 質問は終りますが、私どもがこの輸出会社の構想に対しまして非常に不安の念を持つておりますものは、考え方としては必ずしも悪くはないと思いますが、将来この会社相当の赤字を背負い込んだ場合に、はたして生産業者が合理化によつて得た利潤によつてこれを負担して行くかどうかという問題に非常な危惧の念を持つておるわけでございます。従来の例を見ますと、そういう場合には政府はなさらないけれども、いわゆる議員提出の法案によつて国に背負わしてしまうというようなことを簡単になさつた例がしばしばある。わたしどもはそういう不安の念を持つておりますがゆえに、この会社の構想に対しまして非常に批判的であり、またやり方についてもこれをやるとするならば相当いろいろな厳重なわくを設けなければならないというふうに考えておりますが、その点についての質問の時間がございませんでしたので、もしあとで適当な機会があれば質問いたしますが、この法律を実施しようとするところの政府におかれましても、こういう点について、この法律が決定される前に深甚なる考慮をめぐらしていただきたいということを申し上げて私の質問を終ります。
  92. 大西禎夫

    大西委員長 中崎君。
  93. 中崎敏

    ○中崎委員 簡単に質問したいと思いますが、この輸出会社を別に法律で書かないで、単なる商事会社として、これらの肥料業者が任意につくるということにしたらどうですか。言いかえますと、法律でいろいろの問題もあるようでありますが、それでなしに、任意に商事会社としてつくつた場合にはどうなのか、またそうした方がいいんじやないかとも考えられるわけでありますが、その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は先ほどお尋ねがあつた点に関連するのでありますが、実は輸出取引法による輸出組合の案も考えましたし、また任意の会社の設立も過程において考えたようでございますが、輸出組合については先ほど申しましたような難点がございます。それから任意の会社の方は、実は独禁法が現在の独禁法であり、またその解釈が現在の解釈でありますと、任意の会社ということでありますと相当の疑義と難点があるというふうに考えましたので、法律による輸出会社ということにいたしたような次第であります。
  95. 大西禎夫

    大西委員長 永井君。
  96. 永井勝次郎

    ○永井委員 質問をいたしたい事項がたくさんあるのでありますが、休んでいて、あとから来てわがままを言つてもいけませんし、きわめて要点だけ簡単にお尋ねをいたしたいと思います。もし前の委員会においてだれかが質疑し、答弁がありましたら、それは速記録にあるであろう、こういうふうに簡単にお答え願つてもけつこうであります。  私は硫安工業については一つは国内食糧増産の対策として、一つは重要なる輸出産業として、これは二つの異なつた性格を持つて発展させなければいかぬ。これを経営の上においてどういうふうに合理化して行くかということが一つの課題である、こう思うのでありまして、これを合理化し、増産して行く。そうして輸出を増強して行く、貿易を振興させて行くという面においては、これは国が大きく力を入れて行かなければいけない基本的な問題であります。その立場から申しますと、今度の硫安工業合理化というのは、現在ある硫安工業全部を網羅して増産して行くというのでありますから、これは合理化でなくて硫安増産計画であります。この今度の法案の中に合理化の内容が具体的に一体どういう方向において合理化されるのか、増産が合理化になるのかどうか。それから今回の硫安合理化については、これは過剰な国内消費以上のものは、国際市場において闘つて行かなければならない。その闘う場合においては、価格の面において当然まつ正面から取組んで闘つて市場獲得できるという、そういう方向をとることが合理化の目標ではないか、かように考えるのでありますが、硫安工業合理化というのは、これは現在の硫安工場の全部の救済案なのか、増産計画なのか。また質的に合理化するというのならば、どういう方向をとつてどういう性格の合理化をやるのか、これを明確にひとつ伺いたい。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 本法の趣旨につきましてはるる申し上げておるのであります。ただいま御指摘の増産と合理化の関係でありますが、私はやはりただいまも御指摘になりましたような性格のものでありますから、硫安については輸出の増進、合理化、そのためには増産ということがやはり大きな要素であろうと考えます。従いまして増産をやつて国内の消費以外のものはできるだけ外国に出す、外国におきましてもこれを受入れることに何らの制限がないのみならず、喜んで受入れてくれる多くの市場を持つておるわけでありますから、増産を大いにやつて参りたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、現在の肥料会社の救済というような、言つてみれば小さなその場当りのことを対象に考えておるわけではないつもりであります。
  98. 永井勝次郎

    ○永井委員 先ほど加藤委員から弱小企業はある程度削り落して、国際市場において急速に闘える態勢を確立するためには、一定の適正規模の基準を設けてけて、それ以下のものは削る、それ以上のものはどんどん増強して行く、こういうことが急速に国際市場に闘う日本経済の態勢の整備ではないか、こう思うのでありまして、先ほど加藤委員質問に対しましては、その合理化のやり方については、大臣は審議会その他において考えて行きたいこういうことでありましたが、ただいまのお話ですとそうではなくして、増産計画であるのだ、こういうことで内容が違うと思うのですが、その食い違いはどういうわけでありますか。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は食い違つておるつもりはないのであります。と申しますのは、合理化がうまく行つて価格の問題さえ解決をすれば、相当大きな市場を持つておるから、増産ということについてはもちろん質的な改善という面をあわせて考えているのでありますが、その考え方で行きたいと考えております。
  100. 永井勝次郎

    ○永井委員 合理化においては、ガス法ではコツパース方式をなさつた。これには相当の多額のパテント代を払わなければならぬ。これは生産コストにかかつて来ることは明らかである。さらにガス方式でなく重油化をはかつて行くというのでありますが、重油については現在の五百三十七万トンというものを押えて、それ以上は増強しない。そうするとこの硫安の関係における重油化ということは、この点において障害になつて来る。こういう関係は、現在われわれのところに資料出し政府の方から出した計画の内容というものは今後相当つて来るのではないか。あるいは電解法の関係におきましては、当然これは議会が終れば大臣がどのようなことを言おうと、これは電力料金の値上げという形で消費者に転嫁されて来る。電力会社の利益を擁護するという形になつて参るでありましようし、従つてその面からするコスト高というものは、これは不可避な条件になつて来る。さらに現在各企業においてコスト高で悩んでおる原因は、施設の固定化、近代化が進み、それによつて資金の固定が行われ、金利高であるということがコストに大きな影響を与えておる。こういうふうにガス法をとりましても、あるいは電解法の関係をとりましても、あるいは施設を近代化するという面からいたしましても、コストが引下がるという条件は現在あまり考えられない。現実にコストが高くなるという諸条件がここにあるわけでありますが、これらの増産計画をし、合理化を進めることによつてコストを引下げるという確約に対して、具体的にこれをお示し願いたい。今後は責任政治を確立して行かなければいけない。この問題が出たときだけは、こうやりますと言つて、そのときになつて、またいろいろな条件が違つて来たから、これはやむを得ないのだというふうに、現在は吉田首相初め、吉田内閣の閣僚はうそを言うこと、巧みな答弁をすることが答弁であるように心得て、責任というものは全然感じていない。こういうことでありますので、この問題については、将来コストを引下げ、国際競争力を強化し、闘えるのだという根拠をこの際明確にしておいていただきたい。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は昨日の御論議や資料の御要求にもありましたように、現に本日お配りいたしました資料は、非常にずさんなものとおしかりを受けたわけでございますが、二十八年の七月当時から今日に至りまするまでの間におきましては、相当の変化があるということがありますと同じように、これから将来に対しても、かなりの変化が予想されると思うのであります。その中には、ただいま御指摘がございましたが、あるいはコストの要素として高くなるものもございましようが、私どもは全体の物価の引下げということに努力しておりますことは御承知通りでございます。たとえば炭価の問題、あるいはコークスの問題等におきましても、ざらにある程度の低下も予想されましよう。またその他の点につきましても、上るものというのはむしろ非常に寥々たるものではないかと思うのでありまして、私どもといたしましては、先ほど申しましたような点とあわせて、全般的な合理化の推進ということは相当の効果があるものと期待をいたしております。  なお価格の決定等につきましては、先ほど説明いたしましたように、審議会等の十分なる検討を願つてマル公をつくつて参る。そのマル公の決定の方法等につきましても、合理化ということを単に実績の上で見て行くだけではなくて、将来の合理化に対する努力ということをも、あわせて考えていただくような方向に行くものと私は考えるのであります。
  102. 永井勝次郎

    ○永井委員 硫安価格のマル公決定については、今後審議会その他それぞれの機関を通して決定されることでありましようが、一体価格決定はどういう方式によつてやるのか。今後これを審議せられるでありましようけれども先ほど資料が出た幾つかの甲乙丙丁、これらのものを全部プール価格を出すのか。あるいは合理化を促進するという意味において、標準以上の価格を中心としてきめて、そうして下のものをそれにつり上げて行く。そこまで合理化を促進させて行く。そういう方式をとるのか。あるいは最低の価格をマル公の基準として、最低のものでも企業が十分に成り立つのだ、こういう方式をとるのか。大体でよろしいですから、価格公定の方式についての構想を伺いたい。
  103. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 国内価格のマル公決定の方式でございますが、調べ方につきましては、安定法の十三条に基いて臨検検査もいたし得るということになつております。この実地監査の結果、工場別のコストはつきりいたしまして、安いコストから順次積み上げまして、国内の需要量に、国内の調整量の保有量を含めました数字に達するまでの限界生産費と申しますか、その加重平均を積みまして国内マル公をきめます。従いましてこの国内重要量及び国内調整長を異常に越えますコストに該当するものにつきましては、考慮いたさぬということに相なるのでございまして、合理化の促進に従いまして、順次工場別のコストは下るのでありますが、それをこのマル公の決定方式に基きまして、合理化の効率をマル公の価格制度の中に溶け込ませまして、合理化から生ずる価格低下を計画的に保障する、こういう方式でございます。
  104. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれのところに配布されましたコスト資料でありますが、これは業者から出し資料であるか、あるいは政府がみずからの責任において、これが正しい、現在の政府の力において把握し得る最善のものである——最善のものであるというよりは、政府がこの資料については責任を持つという形の資料であるか、この資料の性質をひとつ伺いたい。
  105. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 昨日の秘密会におきまして、当委員会に御配付して御説明いたしました資料は、一つは全体のコストも達観いたしたものでございますが、もう一つの六社につきましては、二十八年度におきます開銀融資の際に、当局の担当官が検討して、必要な範囲におきまして推定等も加えて得ました資料でございまして、その限りにおきましては、通産省のわれわれが責任をもつて提出いたしたものでございます。
  106. 永井勝次郎

    ○永井委員 合理化促進の過程においては、現在のような出血輸出がある期間続くであろう。その出血輸出が続く期間は大体どのくらいと予想を立てておるのか。それから輸出会社がここに損失を重ねて行くというのでありますが、大体どのくらいの積み重ねが行われるのか。ずつと先のことはわかりませんが、さしあたつて二十九年、三十年においてはどのくらいの赤字がここに蓄積されるか。そしてその赤字を会社みずからの運営の中でこれを落して行くというのでありますから、合理化が促進したらもうかつて来る。そのもうけをこの中で振り向けて落して行く。こういう構想であろうと思うのでありますが、そういう関係をひとつ合理的に、われわれが納得できるように、ただ口先で抽象論でそういうごまかし方をされては、われわれが何のために審議したかわからぬのでありますから、赤字をどのくらい積み重ねるのか、そうしてもうけがどうなつて、そのもうけの中からどういうふうに削つて行くのか、それをひとつ明確にしておいていただきたい。
  107. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 会社運営の収支の見通しということに相なると思いますが、この点につきましては、ただいま抽象的の答弁ではごまかしだというような御説でございました。私の申し上げたい点は、硫安輸出価格の推移ということが的確に見通せないことが一つ、それからもう一つは、国内コスト、今後輸出会社が購入すべき価格というものがはつきりいたしません関係で、具体的な数字として、この年度においては幾らといつたような点を申し上げられないのは非常に残念であり、同時に遺憾でございますが、今日までの推移、たとえば一昨年におきます国際価格が、東南アジアなどは非常な割安でしたが、その後順次改善されておる傾向がございますから、この傾向が続くものであるというぐあいには考え得られないのでありまして、合理化によります生産コストの低下というものの見通しから申しますと、肥料工業で五年後においては八ドル、あるいはその他の関連企業の合理化を含めて十ドル以上の合理化ができますので、本輸出会社の五年後の全体的な見通しといたしましては赤字を解消し得る、こういうぐあいに考えます。
  108. 永井勝次郎

    ○永井委員 一昨年以来この委員会において、肥料の問題を審議して来た限りにおきましては、二十七年、二十八年は非常な出血輸出であつて、それが肥料会社においては経営の上において大きな打撃を受け、赤字であるというふうにわれわれは了承し、そういうことを政府答弁として承つて来たのであります。先般伺いましたときには、局長のお話では、輸出会社は現在の状態では、二十八年度においては大体十五億くらいの赤字がここに生れるであろう、こういうお話でありましたので、相当大きな赤字である、こう思つていたのでありますが、この会社の経理内容を調べてみますと、昭和二十七年の三月には、東洋高圧では二億七千万円の利益を上げております。二十七年の九月から二十八年の三月を見ますと、政府がこの委員会において、赤字が一番ひどかつたというときの利益の方がずつと多いのであります。それから日東化学においても、二十七年の三月には二億一千万円の利益、二十八年三月には一億五千万円の利益、昭和電工は二十七年の六月は五億七千九百万円の利益、その翌期の十二月は四億四千万円、それから二十八年の六月は三億八千万円というふうに、大体市場の状況がよくなつて来て、出血はそう多くないであろうと予想された場合が利益が少くて、大きな出血輸出によつて経営は非常な困難な状態にあるのだと説明し、その赤字が非常に多いといつたときの方が、この会社から出している計算によると非常に黒字が多くなつている。これはどういう理由によるのか、少くともこの資料については、政府は責任を持つてわれわれ委員会にこれをお出しなつたのでありますから、その間の事情はよくおわかりだろうと思うのでありますが、われわれの常識で出血が多い、会社損失をしたであろうと、こう予想される年に大きな利益が上つて、大体貿易が改善されたであろうと予想されておる場合の方が利益が少くなつている。これはいかなる理由によるのか、その辺をひとつ数字的に御説明を願いたいと思う。
  109. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの会社の利益の数字でございますが、個々の会社についての収支関係について、的確な数字を持ち合せておりませんが、もちろん硫安会社は総合経営でございます。あるいは一昨年の出血の赤字につきましては、その会計年度で処理せずに、次の会計年度等においてなしくずしたような点もございます。ただそういつた過去の経理の状況等から、御指摘にもございますように、輸出の赤字を国内に転嫁したのじやないか、従つて国内価格が利益を生んだために、そういつた結果が起つたのじやないかというようなこともあり得るかと思います。そこで私たちは、出血輸出の問題と国内価格との影響ということを、制度として分離させたいというのがねらいでありまして、今後におきます輸出上の収支関係は、国内販売価格というものが制度として明らかになりますので、ただいま御指摘のような問題に対する権威ある御答弁もできるようになると思います。過去の実例からいたしまして、それがどのようなことでそのような結果を見たか、明確な御答弁はできませんが、具体的な今後の問題といたしましては、肥料の特異性から考えまして、輸出会社つくりますと同時に、国内価格については公定価格制の措置を講じまして、会社企業における明朗性というものを、十分制度の上に反映して参りたいと考えております。
  110. 永井勝次郎

    ○永井委員 化学工業は単一な製品でなく、いろいろなものが出て来るから、必ずしも肥料の価格だけで、会社の経営はわからないであろう、こういうような御答弁がきつとあるだろうと思いました。それでは東洋高圧における生産状況がどうかといえば、これは硫安、肥料用尿素、これがほとんど大部分でありまして、そのほかにはメタノール・ホルマリンが若干収入としてあげられているだけであつて会社の損益計算の因子としては非常に弱い。とるに足らないものである。昭和電工の場合はどうかといえば、硫安、石灰窒素、アルミニウム、人造黒鉛、電源、こういつたものが生産の内容であつて、とるに足らないものである。われわれは、出血輸出というものが問題になつた当時、それは国内の農民に転嫁されているのだ、転嫁されているならいるでよろしいから、これをいかに処理するかということを政治的な問題とし、行政的な面でこれを正しく農民が納得できるように、その事実を明らかにして処置しなければならない、こういうことで、その事実がどうであるかということがわれわれの問題であつた。転嫁しているとかいないとか、そういう問題じやなしに、転嫁しておればその価格差はどうなのか、こういう事実を明確にしろと言つたにかかわらず、最低価格と最高価格の安定帯価格をきめて、決して出血輸出は転嫁しておりませんと、政府当局もここで明確に答弁され、また関係者を呼びましても、みな転嫁しておりませんと答弁した。しかしこの損益計算から見ても、転嫁しないでこの黒字が出るわけがないのであります。こういうところから見て、当時あれほど大きな問題になつたときにおいても、経営者がいかに国会においてうそを言い、農民をごまかしたか、そしてまたその結果からいいますならば、この業者のごまかしのつつかい棒をしたのは政府みずからである、こういうことを断言してもわれわれははばからないと思う。今も、非常に不確実な資料で有権的に調査することができないから、その事実をつかむことができないのだと言われるが、これはまことに当然なことであると思います。しかしながら、少くとも政府がこういう案によつて合理化して、これを国策としてこういうふうにやるのだと言つて国民に公約し、責任を持つ限りにおいては、もつと責任の持てるような資料に基いて提案すべきである。もし責任を持てるような資料を明確につかむことができないというならば、あらゆる努力をもつて、一年で足りなければ二年の努力によつて正確な資料をもつてこの国会に提出をするということが妥当であります。不明確な資料のままに、そうして将来の問題だけこういうふうにして、これだけ下げてドイツ、ベルギーその他の肥料と闘つて、現在こんなに開きのある問題をちよこちよこと小手先で合理化すればすぐ大きな黒字が出るのだというような、価格に対する非常な安易な考え価格に対するごまかし、こういうものでこの法案を本委員会において通そうという、そういう口先だけの答弁でこれをごまかし去ろうという態度に対しては、われわれは責任政治という立場においてこれは許すことができない、こう思うのであります。従つて少くも政府が現在まで説明した限りにおいては、われわれは自信のある案によつて——われわれに示された案そのものが正確である、現在の段階においてなし得る最善の正確な資料であるというようには了承しがたいのであります。従つて汚職なりいろいろな問題というものは決して法案が通つてその執行の面において出て来るのではなくて、いろいろなことが黒幕で計画されて、それが一つの案として出て来て、それが全部一貫した一つの汚職なり何なりの筋道である、それが一つの計画的なものである、こういうふうにわれわれは了解せざるを得ないのであります。(「ひがむなよ」と呼ぶ者あり)われわれはこういうことをひがむとかなんとか言いますが、たとえば政治献金が政党に出されておる、肥料会社から自由党にたくさん献金された、おれらの方が少いからというようなそんなけちな考えで言うのではないのでありまして、これはまた正しく言うならば、われわれが極言するならば、今後は造船でできなくなつた、今度は肥料で汚職の店開きをする、こういうふうにわれわれは了解せざるを得ないのでありまして、その意味において時間があればこれらの問題をもつと徹底的に論議をいたしたいと存ざます。コストの問題、生産原価の内容の問題、今後の合理化の情勢、国際価格におけるいろいろな問題、外貨の問題、国内における経済政策の問題、優秀である愛知通産大臣と、ひとつ大いに蘊蓄を傾倒して、答弁をしていただきたいと考えておるのでありますが、時間がありませんからこの程度をもつて終り、この案は、こういうごまかしの上に立つているのだ、地盤がはつきりしていないのだという見地に立ちまして質問を打切ります。
  111. 大西禎夫

    大西委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。ただいま委員長手元に小川平二君外十六名より、本案に対する修正案が提出されておりますので、この際提出者の趣旨弁明を許します。小川平二君。
  112. 小川平二

    ○小川(平)委員 硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案に対する修正案につきまして提出者を代表いたしまして趣旨の弁明をいたします。  この法律案はさきに農林委員会並びに本会議において可決されました臨時肥料需給安定法と内容において密接不可離の関係にありますことは申すまでもないのであります。しかるところ臨時肥料需給安定法は、当初その適用対象をもつぱら硫安に限定をいたしておつたのでございますが、この対象を拡大いたしまして、硫安並びに政令で定めるその他の重要肥料とすることになつたのでございます。これに伴つて法律案の題名も、臨時肥料需給安定法と改められ硫安審議会が肥料審議会と改められることになつたのでございます。ここに提出いたしまする修正案は、これに対応する、いわばまつたく機械的技術的の修正でございます。さらに法律案の審議が次第に遷延をいたしました結果として、合理化計画が当初の予定よりは一箇年これを繰延べる必要が生じましたので、これに伴う修正をも行うことが必要となつた次第でございます。  修正の点は四点ございます。これは配付されております資料についてごらんを願うことといたしまして、朗読は省略をさしていただきたいと思います。  以上でありますから、御了承を願います。
  113. 大西禎夫

    大西委員長 以上で趣旨弁明は終りました。引続いて修正案及び原案を一括して討論に付します。討論は通告の順に従つてこれを許します。福田一君。
  114. 福田一

    ○福田(一)委員 私は自由党を代表いたしまして本案に賛成の理由を述べさしていただきたいと思います。  まず本法の目的とするところは、硫安工業の合理化が第一でありますが、合理化をして悪いということは、どなたもお考えになつておられない。問題は合理化をするときに、弱小である、あるいはまたあまり将来合理化をしてもうまく行かないようなものがありはしないか、そんなものにまで政府の金を入れては意味がないという点にあるようであります。しかしおよそ今の経済状態におきまして、とにかく仕事をいたしておりますものが、合理化をしようという意欲をもつて、何とかして安い硫安をつくろう、そうして食糧増産に寄与しようというような考え、あるいはまたそういうような意味において努力をいたしておるのにかかわらず、これを単に統制的なお考えでもつてやるような考え方で切り捨ててしまうというようなことは、私はどうしても行き過ぎであろうと思う。従つてやはりこれはそういう意欲を持つております以上は、できるだけ合理化をすることに、われわれとしても骨を折つてやる必要があろうと存ずるのであります。しかもその硫安価格合理化されないということになりますと、一方の臨時肥料需給安定法に基きましてできますところの公定価格というものが、国内産のものを対象といたしまして、それの平均価でもつてきまるのでありますから、それ以上の分につきましては、どうしても百八十万トンくらいの国内の必要量があれば、あと四十万トンとか五十万トンをつくつておる会社というものが、もしうまく合理化ができないということになりますと、これは海外に輸出する場合は別といたしましても、国内において非常な損をいたすということになりますから、自然とうまく行かなくなるのでありまして、そうなれば自然的にそこに淘汰が行われて来る。努力をしてみた上でなおかついけないということならばわかりますけれども、しかし努力をさせないということでは少し無理が起きると思いますので、そこで一応企業努力というものを認めて、これに努力をさしてやるというような方向で、この合理化をはかつて行くことがけつこうなことであると私は考えておるのであります。さらにまた輸出会社というものをつくりまして、これに対して損失補償してやるというようなことにいたします、あるいは将来損失補償するというようなことにいたしますと、この合理化の意欲というものは、どうしても薄くなつて参りますから、やはりこれは輸出会社というようなものをつくつた場合におきましても、これには損失補償をしないということによつて、肥料会社が自主的に何とかして自分の経営でもつて損をしないように努力させる、こういう意味においても私は効果があるものである、かように考えておるわけであります。一方輸出会社につくることの可否の問題でございますが、これはもうすでにお話のごとく、国際価格日本価格との間に非常な開きがあるということは明瞭であります。その点がどれだけであるか、十ドルであるか、十五ドルであるかということは別問題であります。またその数字が明らかにならないということによつて、そういうものが必要ないということにはならないと思います。それは程度の差であります。そうするとどうしてもその赤字が出て参りますから、従つてその赤字を農家に転嫁するというようなことがあつてはいけませんので、一方臨時肥料需給安定法に基きましてできた公定価に基いて、そうして輸出会社が買上げまして、海外に輸出をする。しかも輸出をする場合に、一社でやりますのと、今までのように個々別々にやるのとでは、非常な相違ができまして、割に高い値段で海外に輸出ができるということになれば、肥料会社全体も損は少くて済み、ひいては日本硫安工業が漸次うまく発展、経営されて行くということになるのであります。従つてやはりこういうようなものをつくりまして、そこで買い取つて海外に輸出し、できるだけドルをかせぐ、あるいは外貨をかせぐというような一方向に持つて行くべきものであると考えます。従つて政府がこれに対しまして、損失があつて補償しないということは当然なことでありまして、もしこれに損失があつた補償するということにいたしますと、先ほども御議論がありましたように、そこにいろいろなリベートといういやな問題も出て来るでありましようが、これは肥料会社の自主的な努力を促進するという意味、しかも彼らが海外にばらばらに起つて損をしないようにするというような意味において、非常に効果があろうと私たちは考えておるわけであります。  その他理由を述べますればいろいろございますけれども、本法律案というものは決して一部の人がお考えになつておるような変な動機に基いて、あるいはまた一部の企業を助けるというような考えではなくて、できるだけ安い肥料を農家にも供給し、さらにまた日本の資源のみをもつてつくれるところの硫安を海外に輸出して、ドルをかせぐ、それを最もうまくやる方法として、この法律案が一番よい方法であるという意味合いにおきまして、私は本法案に賛成をいたすものでございます。
  115. 大西禎夫

    大西委員長 次に川手滿男君。
  116. 山手滿男

    ○山手委員 私は改進党を代表いたしまして、本法案及び修正案に対して強い希望意見を申し述べて、賛成の態度を表明したいと思います。  硫安工業のような重要産業におきまして、国内価格輸出価格とが大きな開きがある、しかも諸外国の売り出しておる値段と日本輸出価格とに非常に大きな相違があつて、絶えず出血輸出だとか、あるいはその赤字を一農民に背負わせておるというような、いろいろな難問題を提起して、はてしがないということは、きわめて悲しいことであつて、どうしてもこれは早急に解決して行かなければならないわけであります。この法案もまた、私はそれらの問題を解決する一つの道でもあろうと思う次第でありますが、この法案の大きなポイントは、第三条の通産大臣合理化を促進するためにメーカー合理化のための勧告をする、そしてもう一つのポイントは、第四条の、必要があると認めるときに融資のあつせんをもするということが、この法案の大きなねらいであります。いろいろ小さな日本硫安工業の不手ぎわもありましようけれども、たとえて言えば、西ドイツの硫安価格わが国硫安輸出価格とに大きな開きがある原因の一つは、やはり私は経営形態そのものが根本的に違つておる点などにあろうと思う。日本のように大多数の肥料会社が、いわば肥料プロパーで、肥料だけを目標にして会社を立てておるというような経営のやり方と違つて、西ドイツなどのようなところは、総合経営の一環として、その中の製品の一つとして硫安をつくつており、日本合理化をして十ドル輸出価格を引下げることに成功するならば、向うはまだまだ十五ドルも下げて行き得るだけの対抗力を持つておる、そういうふうなところに、私は非常に大きな原因があると思つております。そういうようなことでありまして、どうしても政府が積極的に業者を督励して、合理化を推進するように、企業意欲を減退させないような方法で鞭撻をして行く、そのためにいろいろな勧告を徹底的にやつて行くことは必ずしも不当なことではない。そしてそれに必要な資金を出して行く、国家の重要産業に必要な資金を出して行くということは決して不当なことではないのみならば、単にこれは硫安工業だけでなしに、そのほかいろいろ二重価格制をしいております鉄鋼そのほかの重要産業においても、こういう一つの行き方は現在の輸出不振を切り抜けて行くモデル・ケースと考えてもいい。私ども政府のいろいろな御答弁を聞いておりますと、何かこれは反対をされてはいかぬというので、硫安以外のものにはこういう方法なんかは考えませんというような、きわめて消極的なお考えでありますが、日本の経済を立て直して行き、もつと計画的に日本の経済を復興さすためには、こういう方法も一つの手段であろうかと考えておる次第でございます。私はこの法案にまつこうから反対をすることは、必ずしも筋が通つておらぬような気がいたします。ただ私ども考えますのは、漫然と勧告をして、勧告のしつぱなし、あるいはいいかげんな勧告をして、それに必要な資金を出すというようなことでは、そこにいろいろな問題が起きて来るわけであります。この法案が通れば、農林委員会通りましたところの臨時硫安需給安定法の裏づけもありまして、メーカーの方から定期的に報告を求めることもできるし、さらに立入り検査をするようなことも政府はできるようになるのであります。先般来この委員会において政府が提出をされておりますような、コスト推定とか、あるいは確信がどうも持てないような報告などというようななまけたものではなく、今後は国会が要求をすれば立ち入つて正確な資料も出せるようになるだろう。そういう正確な資料に基いて、合理化をきちきちと推進さすような方途を講じ、勧告すべきものは厳重に勧告をし、そして国家資金をつぎ込むべきものは惜しげもなくつぎ込んで、こういう重要産業は国家のために大いに今後振興して行くような行政措置が望ましいと思う。それをいいかげんなことで、いいかげんな勧告をし、いいかげんな資金を出すというようなことになると、両派社会党の諸君が御指摘になりますような、いろいろな問題が起きるわけでございますから、そういう点については、政府は重大な決意をもつて、この局に臨んでいただかなければならない。  私はそういうことを強く要望いたしまして、改進党を代表いたしましてこの法案には賛成をいたします。
  117. 大西禎夫

    大西委員長 次に加藤清二君。
  118. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はただいま提案されておりまする硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案につきまして、修正案におきましては硫安が肥料とかわつたのでございますが、この二法案に対しまして、社会党を代表いたしまして、遺憾ながら反対の意を表明せざるを得ないのでございます。  なぜならば、この法律案が上程されるに至りましたそもそもの動機は、昭和二十七年の秋にさかのぼるのでございまするが、当時肥料メーカーの方から、在庫品が急増した、これの解消のために打つた手として、インドに出血輸出をしたのだ、それについて今後この傾向が長く続くから、何とかひとつ手を打つてもらいたいものだという希望が述べられたのでございます。私はそのときに、しからばお尋ねいたしますが、一体どういうわけで出血ということが行われましたか、近ごろはやりのたけのこ財政ですかと言つたら、その通りです。しからばたけのこなんだが、そのたけのこの皮は一体何でできましたかとお尋ねいたしましたら、業界の代表いわく、それは今までの利益の蓄積によります、今までの利益の蓄積は何によつてできましたかと言つたら、内地へ売つた肥料のおかげだ、こういうことでございました。当時私は国会へ出て来たばかりでございまして、私が何党に所属しておるのやら、かに党やら業界の方はわからず、ただいなかから出て来たぼんぼんだということで気やすくものをおつしやつたようでございますが、これによつてこれを判断すれば、当然これは内地のお百姓が高く肥料を買わされた犠牲において出血輸出が行われたということでございます。そこで私はこれが出血でありやいなやということを当然ここで研究しなければならないと、そのときほぞを固めたわけでございます。ところで片や全国人口の大多数を占めますお百姓さんの身になつてみますと、これは皆さん郷里へお帰りになつたらよくおわかりでございましようけれども、ひるに食いつかれながら、とつた米は自分が値段をきめることができない。また来年の増産のために肥料を買おうとすると、三十年前私の子供のころもそうでございましたが、豆かすを買うにしても、あるいはにしんかすを買うにしても、これは相手がきめてくれる。蚕をねずみと競争して飼つたところで、繭の値段はまた相手がきめてくれる。せめて一人の娘がお嫁入りするからというので、絹の着物を着せてやろうというので買いは行くと、これまた相手がきめてくれる。三十年の後の今日、国家は民主化されたと言いまする。文化は発達したと言いまする。ところがお百姓さんの現状を見ますと、やはり三十年前のお百姓さんと同じ苦しみをなめているのじやございませんか。もしそれほんとうに政治家にして心があるとするならば、これを救うてやるということがほんとうの政治家としての任務じやないか、私はさように心得る。そこで出血でありやいなやということを、その後私は苦心さんたん、自分自身でも調べました。機会あるごとに尋ねました。ところが妙なことに、場所がかわつたり環境がかわつたりしますと、その言葉がかわつて来る。業界の方もかわつて来る。私にある席で最初に述べた人が、今度は百姓の犠牲じやないとおつしやる、これは一体どういうことなんです。肥料を輸出用のものにする、肥料対策委員会できめられましたように、硫安工業は操短すべきではない。積極的にコスト切下げに努力して輸出産業とした方がよろしい、もしそれこういう結論が出るとするならば、これは私も賛成なんです。何をか言わんやです。これは賢明な方針でございます。当然でございます。これだつたら私も賛成いたしましよう。今日輸出振興は日本経済の無上命法なんです。野党であろうと何であろうと、およそ日本に籍を置くところの議員であるならば、これは、当然賛成しなければならないのです。にもかかわりませず、この目的を達成させるにあたつて、はたして買取り会社をつくつてここで調節するということだけが輸出振興になるのでございましようか。私にして具体策を述べよとおつしやいますならば、長期計画は別といたしましても、まず具体的な当面の問題として、しかも自由主義経済下における当面の問題といたしましては、輸出振興のための融資の確保ということ、あるいは海外商務官の配置、これを私は再三申しました。しろうとを出しておつてはだめなんです。この商務官は通産省においてほんとうに経験を経た、修業をした人、あるいはそれで足りない場合は業界のエキスパートに商務官の代行権を与えるくらいのことをすること。第三には輸出組合の強化から生ずる商社の世界的信用の増強、これも再三私述べて参りました。次には海外市場の開拓、またドイツその他の国がやつておりますような啓蒙宣伝、あるいは肥料なら肥料について行つて、その使い方までも教えてやるところの親切な指導の方法、と同時に、輸出振興を口にするならば、まず会社の内部における企業努力ということを怠つては、当然輸出振興はできないことと存じます。会社の経理の節約、政党献金に対する節約、こういうとから、肥料会社に例をとれば、西ドイツのような硫、硝安の研究という化学研究にまでも研究の領域を広めないことには、競争のはげしい海外市場における輸出振興ということはから念仏に終るという心配は、専門家でなくても、私のようなしろうとでもよくわかる点でございます。ところで、その輸出振興にあたつてただ買取り会社をつくるということだけになりますと、先ほど同僚議員の帆足君も言いましたように、中共貿易などはかえつて逆に一層困難になるではないかと懸念が多分にあるのでございます。そこでもし買取り会社をつくつていろいろするということになりますと、これは一種の統制なんです。統制という言葉が悪ければ、計画経済なんです。計画経済に政府が進んで来たということは、自由党が社会党に一歩近づいたということなんです。これはまことにけつこうなことなんで、乏しい日本経済を円満にかつ平等に推進するには当然な径路であるといわなければならない。しかしながら資本主義経済下において、資本力に惑わされずに計画経済を行うにあたつては、強力な実行意思と、国民と祖国を愛する信念がなければ、これはできることではないのです。必ずやこの買取り会社は最高価格をきめる、内地の値段と隔離すると言いますけれども、やがて内地の値段をつり上げる原因になつてしまうことは、過去の統制経済が如実にそれを示しておるところなんです。これは国民がすべてきらつているところです。それをあえてやろうとしておる。そこで私はこれを実行するにはよほど強力な信念がなければできないと思うて、それを行う信念ありやいなやということをお尋ねするために、先ほどのような質問を試みたわけでございます。今日この法律はなくても、会社の経理とかあるいはコストは当然調べ得るよすがというものは、政府の権限をもつてしなくても、われわれ民間のものでもできるのでございます。それは市中銀行を調べるまでもなく、農林中金にいたしましても、あるいは税制の上からいたしましても、あるいは将来の市場の状況から見ましても、当然に調査し得る材料がいずこにもあるのでございます。ところがそれに対して十分な調査をしてお答えいたしますと申しまして以来、今日まですでに一年を経過しておりますにもかかわらず、それが十分に行われていないことは、怠慢というよりも、何かむしろほかの力によつて、それを阻害されているからと断ぜざるを得ないのでございます。それもしほかの力によつて阻害されているということでありますならば、どのような法律つくりましても——法律は人の運用をまつて初めてりつぱに効果を発揮するものでございまして、ほかの力によつて調査ができない。しかも国会において約束したことが一年たつてもなお実行に移せないというような意思の薄弱なことで、どうして自由主義経済下におけるもうけ主義一方の経済人を相手にして、ほんとうにこの法律の精神が実行できるでありましようか。私はこの点を非常に憂えるものでございます。  次に企業合理化の問題でございますが、この法律は企業の合理化に名をかりたところのメーカーの保護政策に終るのではないか、苦しい苦しいというお百姓をそのままにしておいて、一部のメーカーを保護することに終るのではないかという懸念が多分にあるのでございます。なぜならば自己の経理内容を発表せずに助けてくれということは、まつたくこれは封建的ではないでございましようか。ほんとうに出血輸出だから助けてくれというならば、銀行に行つたつてあからさまにその事情を述べなければならないはずでございます。ましていわんや、政府に助けを求めるにあたつては、これはすつぱだかになつて、かくかくの経理内容、かくかくの次第でございますから、ひとつお助けを願いたいというのが、人間の自然の道ではないかと思うのでございます。しかるに、このたびのこの審査の経過、政府側の答弁から見まして、悲しいことに、これはまるで昔のお殿様のお姫様が、からだを見せずに糸脈で診断をして病気をなおしてくれというのと同じような気がしてならないのであります。外からなでただけではそれはわかりません。わからずに薬を盛れというのです。ところが世間一般が見ましたこの業界の状態は病気じやないのです。元気でぴんぴん働いているのです。それでもつて病気だと言う。具体的な例を言うならば、配当はほかの会社並にちやんとやつているのです。十分やり過ぎている。倒産商社が続出しているという今日、なお利益は軒並に数億を数えているではございませんか。これで出血だ、病気ですから助けてくださいと言う。一体どこをどう助けたらいいのですか。ほんとうに口先だけで出血だと言つていても、これを病人扱いにして助けるという情が政府にあるとするならば、すでに今日倒れて行く商社をなぜ助けないのでございますか。すでに今日倒産商社が続出しておることは、政府みずからがよく御存じのはずじやございませんか。これを助けるためになぜやらないのですか。頼まないからやらないのですか。片一方はぴんぴんしておつても、頼んだからやるというのですか。こういうことで政治が行われるところに、国会の不信ということになつて、総理大臣に対して、爆弾まで送られることになる。これは何も社会党が応援してやつたことじやないのです。ほんとうに国鉄を愛する熱情と、政治をまともにやつて行くほんとうの正義感によつて、もう少しその立場に立脚した政治が行われないことには、この腐り切つた、すたれた政治を直すことはできないと思うのです。私は具体的に実例をあげますならば、この法案に対する欠陥がたくさんございます。そこで申し上げたいのでございますけれども、あまり時間をとつてまたおしかりをこうむつても何でございますから、これでもうやめますが、ともかくもこの通産委員会というところは、私は与党と野党が争うところじやないと思うのです。ほんとうに議員が一致結束して、この世界経済に圧迫されてまさに滅び行かんとするこの経済を、ほんとうにあからさまにすつぱだかになつて心を打明けて助けるという方向に向わなければならないのじやないか。こう思いまするがゆえに私の心情の一端を申し述べまして、遺憾ながら反対の意を表するわけでございます。
  119. 大西禎夫

    大西委員長 次に加藤鐐造君。
  120. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 私は日本社会党を代表して討論をいたしたいと思います。  まずこの法案は二つの目的をもつて構成されております。一つは硫安工業の合理化の問題、一つは硫安輸出会社をつくつて自由価格の問題を解決しようというわけでございます。そこで私ども社会党といたしましては、合理化の問題につきましてはいろいろ条件はございますけれども、賛成をいたしたいと存じますが、輸出会社の問題につきましては遺憾ながら反対せざるを得ないのでございます。硫安工業の合理化は他の基礎産業とともに当然今までに行われておらなければならない問題でございまして、吉田内閣は五箇年以上も政局を担当して日本の経済を指導して参りましたが、今日あらゆる企業がいわゆるコスト高のために、輸出の面においては二重価格輸出しなければならない状態になつておることは、当然この問題を朝鮮動乱勃発の当時から取上げて、すでにこの目的を達しておらなければならなかつたのでございます。朝鮮動乱勃発以来の日本の経済は、これを行うのに絶好のチヤンスであつたのに、これを野放しにしておいて、あらゆる企業をもうけさせて合理化を推進することを怠つて来たというところに、今日あわててこの問題を取上げなければならぬことになつた原因があるわけでございます。しかもこの問題が取上げられた動機というものは、先ほど質問の際にも申しました通り、一昨年の秋以来いわゆる二重価格輸出による負担を、消費者である農民にかけられるということに対する反対の声が強くなつて参りまして、これの反対運動が相当猛烈になつて来て、政府もこれには動かされざるを得ないことになつて来たというところにあるわけでございます。そういうわけで当然今までにやらなければならない問題を怠つていて、今やろうというところにわれわれは強く政府の怠慢を責めなければならないのでございますけれども、これは自由党の政策が自由主義経済という、一つの自由という言葉にあこがれる国民の気持をたくみにつかんで、今日まで日本の経済を破滅に陥れつつ、承知の上でやつて来た、その責任というものは重大であると考えるものでございます。しかし今日おそまきながらこの問題を取上げて、特に硫安工業の合理化を推進しようということに対しましては、われわれは反対するものではございません。ただ本法の施行によつて推進しようといたします場合に気をつけなければならない問題は、硫安製造業者がはたして正直にこれをやるかどうかという問題でございます。たとえば利潤をできるだけ隠して、いつまでも二重価格輸出を続けて行くということであつたならば、いたずらに貴重なる資金をここに投ずるのみで、その目的を煙成することができないということになるわけでございます。そこで政府といたし壊しては、十分にこれを監督する必要がある。そしてあくまでもその目的を急速に達成させるところの誠意と努力を払わなければならないということでございます。ことにその際考えなければならないことは、公定価格の決定にあたりましても十分に調査が行われ、その法律によつて持たれる立入り検査の権限を十分に行使して、正確なるコストを割出して決定されなければならないということ。また利潤についても、公益産業の立場から、あるいはまた政府援助を受ける企業としての立場から、制限が行われなければならないという点、そうしてあくまでもその点において国民の納得し得る方法をとらなければならないということ。またこれが硫安工業に対する救済法となつてはならないということでございます。能率の上らない企業に対しまして、それにいつまでも救済の手を延べるというようなことであつてはならないということでございます。  それからもう一つ硫安工業の合理化を推進いたしますためには、これに関係いたしますあらゆる関連産業の合理化をはからなければならないということでございます。そういう点につきましても、政府は今度総合的な計画を立てて、それを推進する。単に融資をするとか、あるいは援助を与えるというようなことだけではなくして、ほんとうに日本の経済の自立化という建前に立つて、あらゆる産業、持に硫安合理化については関連産業の合理化を推進する構想を立てて、それを強力に推進しなければならないということでございます。本法を施行するといたしますならば、われわれはあくまでもれを政府に希望いたさなければならない点でございます。  それから輸出会社の問題につきましては、昨日以来わが党の各委員から質問に際して主張いたしました通り、今日硫安が二重価格をもつて輸出されておるという根拠が明確でないという点でございます。政府は私企業に入つて調査する権限がないと言われますけれども、しかしこれは当然こうした構想を立て、これを国会に提案するに至りますならば、当然その基礎となる明確なる資料が整えられていなければならない。ただ腰だめで常識的に二重価格になつておるということでは、われわれは納得することができないのであります、これは努力をすればある程度のものはできると考える。昨日出された資料についても、私どもこれを察するに、おおむね推定数字があるのではないかと思われる節があるのでございます。これも農林委員会においても本委員会においてもしばしば要求されたために、やむを得ず急にこういうものをつくり上げて出したのではないかと思われる節は、昨日以来の質問に対する政府の答弁によつてもほぼ想像できるのでございます。政府のこういう計画は、すなわち先ほど加藤清二君が申されましたように、一つの計画経済の中に足を踏み入れたものだ。計画経済の基礎をなすものは、正確なる数字資料を持たなければならないということであります。それを持たないで、腰だめでこういう計画を立てることは危険であり、邪道であるといわざるを得ないのでございます。私どもは、今日の肥料行政の根本的な行き方について、今の政府の行き方に対して反対でございます。しかし現在の生産状態において輸出機関を持つということは必要であると思いますが、しかし国内に食糧の生産という一つの大きな需要者を背後に控えておるという非常に公的な企業でありまするがゆえに、特にわれわれがあげなければならないことは、この肥料の輸出を扱う機関をつくるといたしますならば、当然これは公益法人的な性格でなければならないということでございます。これを単に将来私営会社である硫安業者が赤字を補填するからということで、硫安製造業者にこの会社をつくらせて、私益会社としてこれをやつて行くという点にいろいろわれわれは危惧の念を持つものであります。将来だれがこの赤字を背負わなければならないか、また将来これをどういうふうに結末をつけようとしておられるか。特に従来自由党の諸君がこういうものの扱いについて、およそ国民の納得のしがたい方法をもつて処理して来られた点を思い起しますならば、私どもは、この輸出会社の構想、運営につきましては大きな疑問を持たざるを得ない。この点について十分なる考察の機会も与えられなかつたという点におきまして、私どもは今日反対せざるを得ないのでございます。  以上簡単でございましたが、日本社会党の態度を申し上げまして終ります。
  121. 大西禎夫

    大西委員長 以上で討論は終りました。引続いて修正案を採決いたします。本修正案に御賛成の諸君は御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  122. 大西禎夫

    大西委員長 起立多数。よつて本修正案は可決せられました。  次に修正部分を除く原案について採決いたします。修正部分を除く原案について御賛成の諸君は御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  123. 大西禎夫

    大西委員長 起立多数。よつて本案は、小川平二君外十六名提出の修正案の通り修正議決すべきものと決しました。  この際お諮りいたしますが、本案に対する委員会報告書作成の件につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  次会は来る十一日午後一時より開会し、付託法案について審議を行う予定といたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時一分散会