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1954-04-30 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月三十日(金曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 福田  一君 理事 山手 滿男君    理事 加藤 鐐造君    小川 平二君       小金 義照君    始関 伊平君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       柳原 三郎君    帆足  計君       伊藤卯四郎君    中崎  敏君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (軽工業局長) 中村辰五郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十八日  電気設備復元立法化反対に関する請願(只野  直三郎君紹介)(第四七〇七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案  (内閣提出、第十六回国会閣法第一六八号)     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  前回の理事会申合せにより、本日はまず硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案を議題といたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。中崎敏君。
  3. 中崎敏

    中崎委員 この法案肥料安定に関する法案とうらはらをなすものだというふうに考えておりますが、主として硫安工業合理化方面について質疑してみたいと思います。  最近の事情を見ますと、硫安輸出価格というものは、相当値段が高く売れるような状況であります。たとえば六十一ドルないし二ドルというふうな、そういうところで値段が決定されておる実情にあるようでありますが、われわれこの出血輸出というふうな問題で相当関心を持つておりましたのは、硫安価格が五十五ドルとか六ドルとか七ドルというような低い値段輸出されて、国内よりも逆に、むしろ安く外国へ売られる。従つて日本の農民に対する出血を要求するものである。いわゆる出血輸出というふうなことについて、相当大きな関心を持ち、輿論も喚起されておつたと思います。その後の状況によつて輸出価格相当引上げられておる。従つて出血とまでは行かないような状況になつて来ておる。そうするならば、それがために特別に会社をつくる必要がないのではないかというふうな気持もするのでありますが、その間におけるところの考え方をひとつ御説明願いたいと思います。
  4. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 御質問にお答えいたします。昨今輸出価格が、一昨年、あるいは昭和二十七肥料年度の上期におきます価格と比較しまして上昇して参つたことは御指摘通りでありますが、ただいまの御質問の中にございました六十一ドル前後の輸出価格と申しますのは、どちらかと申せば、スポツト輸出と申すようなものにおきます例でございまして、私たちが、肥料大量輸出を確保して参ります建前からいたしますと、台湾でございますとか、韓国でございますとか、大量の取引で、しかもわが国硫安工業の安定した輸出需要というような観点からいたしますと、そのような状況に相なつておりません。やはり五十七ドル前後、よくてその程度というのが大勢であろうと思います。私たちはもちろんこの合理化ということの効果を完全に発揮いたしますのは、あるいはもう二年程度かかると思いますが、西欧におきまして現に国内で売られております五十五、六ドル、これをささえております生産コストと対比いたしますと、どうしても合理化計画は一段と推進して行かなければならないということになると思います。東洋方面に出て来ております輸出は、幸いにして西欧その他における農村、特に食糧関係重点を移しました関係で、東洋に対する輸出力は幾分緩和の色を見せておりますが、これもきわめて過渡的な現象と考えられるのであります。そういうような全般的な状況を判断いたしますと、輸出会社をつくりまして、長期に安定した適正時における適正輸出、同時に一時の国際競争による打撃を穴埋めするということを実施いたしますことが、せつかくここ二年、四十万ないし五十万の輸出をしましたこの国際場裡における日本硫安輸出を今後継続するためには一層必要を加えて参つて、同時にこの方法を実施いたしますならば、この二年間の努力を実を結ばせることができると確信いたしておるのでございまして、国内におきます安定法と同時に、合理化並びに輸出会社中核とする、本委員会にかかつております法案の持つておる意義は決して薄らいでおらない、こういうぐあいに御答弁を申し上げたいのでございます。
  5. 中崎敏

    中崎委員 企業の合理化は、すべてわが国の現在の産業に要求される大きな要素であるというふうに考えます。従いまして、合理化の点から見れば、ただ硫安というような肥料に限らず、すべての点に課せられた大きな課題だというふうに考えておりますが、さてそうした合理化が必要であるということは、今申し上げますようにこれは十分に認めておるのであります。その線に沿うところの施策については、万般の協力を申し上げたいというふうに考えておるのでありますが、さてその合理化の面において、この輸出会社をつくるということが一番いいのかどうか、他に適当な方法があるのかどうかというふうな問題にも言及せざるを得ないということになると思うのであります。そこで現在の硫安輸出状況を見ますと、スポツト輸出の場合において六十一、二ドルというようなお話でありましたが、硫安について申し上げますと、日本の現在の状態においてさらに硫安輸出する余力があるのかどうか。言いかえますと、六十一、二ドルで今までスポツト輸出をして来たようでありますが、朝鮮、台湾あるいは少量中共にも輸出されたというふうに考えられるわけですが、さらに実際においてそのほかに硫安をそれ以上に輸出する余力は現在あるのかどうか。将来は一体どういうふうなのか、そして六十一ドル、六十二ドルで売れておるのは事実なんだが、今後またスポツト輸出に類するような形において、六十一ドル、六十二ドルで輸出し得るような見込みのものは、現在予定し得る範囲において一体どういうふうな程度であるか。さらに現在予定し得る生産の量によつて、さらにそれ以上、言いかえれば五十五ドル、五十六ドルというふうに下げてまでも出さなければならぬ、また出し得るというふうな数量は一体どういうふうになるのかということお聞きしたい。
  6. 柿手操六

    柿手説明員 今肥料年度のことを申しますと、去年の八月から今年の七月頃での需給関係から申しますと、先般資料で御説明を申し上げましたように、今年度はすでに台湾に対して二十五万トン、韓国に対して十六万五千トン、琉球とかフイリピンとか中共とかその他の方向に三万一千トンの輸出が大部分はされ、また契約されまして、今後幾分積出しが残つておるものもございまするが、そういうふうに一応きまつておりまするから、七月末までの余力は、今後の生産及び出荷の状況にもよりますが、そう大量はないと思うのでございまするが、来肥料年度、すなわち今年の八月から来年の七月までの予想は、これはまだ正確にはわかつておりませんけれども、大体国内需要がかりに今年度程度の百七十万程度といたしまして、生産が今年は約二百三十万トン程度と推定されますが、それが幾分増加いたすと見まして、二百四十万トンというふうに見ますと、需要が百七十万トンであれば、幾分の保留数量なんかを見込みましても、五—七十万トンの数量的な余力はあることになろうと思います。そこでその五—七十万トン程度輸出余力は量的にはあるのでありまするが、それがどのくらいの価格で売れるであろうかという見通しでございますが、一昨年日本国内に五十万トンの滞貨がございまして、そうして世界的にその秋には相当余つた状況がありまして、遂に四十六ドルとか四十七ドルというようなひどい値段で二、三万トン、インドに出したというようなことがございましたが、その後幾分世界的な需給関係も緩和しまして、御承知のように五十一、二ドルから五十五、六ドルというのが大体の日本のFOBの相場にまでなつて来ておるのであります。先ほど御指摘のように、六十ドル前後あるいは六十一ドルというのが、ちよいちよいその時期の突発的な引合いとしてございますけれども、大勢としては、そういう六十ドルとか六十一ドルとかいうような数量は、相当せつぱ詰まつた注文として断片的にある程度でございまして、大量の輸出価格というものはやはり五十数ドル、五十五、六ドル程度に行けばいい方じやないか。最近硫安業界で各国をまわつて来て、いろいろ合理化、工事の設計等に関して各社とも研究いたしているのでありますが、それらの人の会合で、日本硫安工業合理化目標価格目標をどこに置くべきかということにつきまして、たびたび研究会を開いておるのでございますが、まず五十ドルということを目標にして行かないと、将来世界的な競争には耐え得られないだろうということを本委員会でも申し上げましたし、われわれもそういうふうに考えておつたのでありますが、欧米をまわつて来た専門家お話では、五十ドルでは少し甘過ぎる、むしろ四十五ドル程度目標合理化をしなければあぶないのじやないかというような意見があるくらいでございまして、一昨年の四十六ドルといういうようなことに非常に驚きましたのよりは幾分ここ一年ばかり緩和いたしまして、一時のきからほつと胸をなでおろしているような点があるのでございますが、長い目で見て、やはり日本硫安工業目標は、少くとも五十ドル、あるいはもう少し奮発したところの四十五ドルないし五十ドルを目標にしなければいかぬだろうというのが専門家意見でございます。幸いここ数箇月はややよろしいのでございますが、それで安心はできないのではないかというふうに考えております。
  7. 中崎敏

    中崎委員 かりにこの法案が通過して、会社をつくることにして、それによる合理化目標はどこにあるか。言いかえますと、今お話の五十ドルということを将来の目標にしておるのだけれども、あるいは四十五ドル程度まで下げなければならぬというような情勢になるかもしれない。かりにこの会社をつくる、つくらぬにかかわらず、目標としては当然そういうところにあるべきだと思う。そういう際において、会社をつくらなければその目標が達せられないのか、つくればどの程度達せられるのか、そういうことについて見通しをお聞きしたい。
  8. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 会社合理化との給びつきでございますが、形の上でこれを結びつけて、合理化を推進する一つのてこにするというような意味合いにおいての、直接的な結合の帯でありますが、これにつきましては安定法とこの法律との総合的な運用ということに一つは相なるのでございますが、安定法は御承知通り公定価格一つの柱にいたしておる立法でございまして、その公定価格がどういう方式でどのようにきまるかということが、この法律でねらつております合理化の実際的な歩みを、制度として監視すると申しますか、合理化速度公定価格の面に強く反映せしむるというのが私たちが計画しております合理化促進一つの目途でございます。と申しますのは、公定価格に従来終戦後におきます生産拡充の当時実施いたしておつたのでございますが、この当時は、どちらかと申せば全体の生産コスト状況を平均化するというような思想で支配されておつたように記憶いたすのであります。今度の安定法におきましては、このようななまぬるい考え方を放棄いたしまして、むしろ今後順次合理化をいたして、安くなります工場の生産を強く織り込むという思想安定帯価格が現在ございますが、こういつたものでなくて安いものから積み上げまして、内需の総量を満たす程度までのところの生産をいたしております加重平均をとりまして、最高価格を設定するということにいたすのであります。これ以外に国際価格でございますとか、その他の経済事情を勘案いたすことはもちろんでございますが、コストそのもののにらみ方はそういつた点に重点を置いて価格形成をいたします。この価格形成のもとにできましたマル公価格というものを輸出価格買収価格に持つて参るということにいたしますと、そこに合理化速度輸出会社買収価格ということに持つて参りまして合理化促進する。合理化程度を強く反映させて輸出価格上におきます赤字の起ります限度を明確にするということができるのでございます。このような方式を総合的にいたしますことによりまして、輸出会社の存在がむしろ合理的なる輸出調整をいたす基礎として、合理化されたコストを中心に動かしめるというねらいがございますので、私は輸出会社合理化を遅らすということよりも、むしろ合理化促進するという方向に歩まし得る制度となし得る、こういうぐあいに考えております。
  9. 中崎敏

    中崎委員 大体この会社設置のねらいは、当初いわゆる出血輸出というようなことになることをここで調整するということが主たるねらいであつたようでありますが、現在の段階においては、それよりもむしろ輸出によるところの逆の価格調整というふうな意味にねらいがかわつて来ておる。これは客観情勢の変化とでも言いますか、そういうふうにウエートがかわつて来ているように感じられるのであります。そこで主として輸出等による価格調整ということを考えて行くということになれば、輸出組合というふうなものがあるのでありますから、むしろその輸出組合を十分活用して行けばねらいが達せられるのじやないか。言いかえますと、国内情勢はお互いに無用な競争をやつて行く、相手は大体一つというような場合が多い。たとえば韓国とか台湾とか、あるいは中共とかいう地区においてはもちろんそうでありますが、相手が単一である。従つてこちらがばらばらに値段等によつて競争すれば、国全体として不利益になるという考え方もある。それらを含めて、また値段を一本化するというような意味において輸出組合というものを活用して行つて、十分に目的は達せられるのではないかというふうに考えるのであります。もう一つには、こうした会社はややもすれば国策会社である、そうして勢いこれが、たとえばかつて——現在もそうでありますが、国などから強い政策的な意味においての制肘を受けて、そうして公正であるべき民間の純然たる商取引がいろいろゆがめられるというふうな心配があるんじやないかということさえもわれわれは気にするというのが、現在のわれわれの置かれてある日本の立場だというふうにも考えるのであります。そういうような意味において、むしろ輸出組合がいいんじやないかと最後に考えられるのでありますが、この点についてひとつ……。
  10. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質疑問題点赤字輸出、これを輸出会社の形におきまして長期調整するという機能が薄らいだのではないか、むしろそれはないんじやないかというような点に触れての御質問でございますが、これは私も先ほど答弁いたしましたように、また肥料部長からも数字的に詳しく国際情勢下説明を申し上げたのでございまするが、その点につきましては、やはり今後の硫安工業輸出長期に確保いたしまするためには、どうしても西欧生産コストであると考えております五十ドル、あるいはそれを下まわるようなものに対する根本対策ということをねらいとした合理化、これを制度として総合的に運営する輸出会社というものはどうしても必要であると私は考えるのであります。  また第二点の、輸出価格調整でありまするならば輸出組合ではどうかという御指摘でございまするが、もちろん輸出組合においてもある程度のことはできるかと思うのであります。しかし輸出組合は御承知のように自由加入でございます。同時に肥料輸出につきましては、御質問の中にも御指摘になられましたように、相手方は一元的機構のもとに、極端に言えば国家管理下に徹底したような輸入方式をせられておると考える国が大部分でございまして、このような見地とにらみ合せますると、わが国輸出組合というような色彩の団体統制方式では実は効果を奏しにくいのであります。むしろ進んでもつと強力な輸出会社、特にメーカー中核といたしました輸出会社をつくりまして、非常に数ある輸出業者のうちから適当なる人がこの輸出会社実務代行ということをいたすことの方が、これらの硫安輸出の現状からいたしまして特に必要と私は考えるのでございまして、この点はやはり現在の輸出組合運用では満たし得ない問題を根本的に含んでおる、私はこう考えるのでございます。
  11. 中崎敏

    中崎委員 この春でしたかの中共に対する硫安輸出の問題でありますが、これは六十二ドル見当で輸出できる、これは五万トン程度でしたが、そういうことで当時の調査団などでとりきめて来たようであるが、またこれを輸出全体の問題として考えてみても、それは望ましいことであるという考え方から私たちは強くそれを要望したのでありますが、これはある程度輸出したようでありますが、さらに今後においても継続的に——こうした六十二ドル程度なら値段としては非常に高い。普通五十五、六ドル程度でなければ見込めないというふうなものが、六十二ドル程度にまで売られるということになると、非常に有利な条件と思うのでありますが、それについて今後政府の方では一体どういうような努力をされるか、これをひとつ御説明願いたい。
  12. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 硫安中共輸出の問題につきましては、昨年の暮れ以来非常にその必要を私たちも認めているのでございますが、その当時問題になりました中共輸出につきましては、時期が一月——三月で、日本側としましては春肥を目の前に迎えましたときでもありましたので、三月までの輸出につきましては、その御要望に沿い得なかつたのでございますが、四月以降の輸出につきましては、これが輸出を認めるという建前で、先般五千トンの輸出を実施いたしたのでございます。今後におきまして、国内需要とのにらみを勘案いたしまして、適正時における輸出ということを、中共輸出についても考慮して参ることはもちろんでございます。
  13. 中崎敏

    中崎委員 かりにこの会社ができるとして、いつスタートするかわからないのですが、その年度内におけるこの会社の負う赤字を、一体どの程度に予定しておられるか、これをお聞きしたいのであります。
  14. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 本法案国会の御承認を得ますれば、本輸出会社運営と申しますか、肥料年度で申しますれば、二十九肥料年度というものが、本輸出会社の活動の時期となると思いますが、この期間における赤字がどの程度になるかということにつきまして、具体的には、一つマル公制度をきめます場合の生産コストが明らかになり、一方今日の輸出価格の推移がどうなるかという両面から、正確に判断いたさなければならぬ問題であるかと思いますが、これにつきましては、正確にわれわれとして算定できません。ただ考え得られますことは、昭和二十六肥料年度あるいは昭和二十七肥料年度の初期に、非常に安いといわれた輸出をいたしたことがありますが、今日の輸出価格を頭に置いて考えますと、当時考えられたような赤字は、幾分減少して参るということだけは申し上げられるのでございます。従つてたちといたしましては、合理化計画が三年目には相当効果が出ます関係もございまして、その面から、この間に生じます赤字がどの程度になるか、これをカバーするということは十分考え得られますので、私は輸出会社というものの長期における役割を果し得る、さしあたりの赤字というものを解消せしむる時期を、三年目あたりから実現し得る、こういうぐあいに考えているのでございます。
  15. 中崎敏

    中崎委員 いずれにしても、政府建前からいいますと、当然ある期間赤字が続くと思います。そうして累積された赤字処理は、最終的には、だんだん合理化された後においての収益等から埋合されるとしても、その間に相当資金の不足なり、あるいはまたそうした欠損の処分というふうなものもせざるを得ないような場合もあり得ると思いますが、そういうふうなものに対する資金計画等については、一体どういうことになるのであります。
  16. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 もちろん運転資金につきましては、この会社が成立いたしましたならば、輸出会社信用あるいは個々硫安会社が結局赤字を自主的に処理するというのが、本法輸出会社設立の実質的な運営の方針でございますので、この会社存立最後まで赤字を残すとは、私は考えておらないのであります。万が一赤字が起きました場合には、これは硫安会社の最終的な、自主的な処理で決定するということにいたすのでございます。その間の運転資金調達等につきましては、もちろんただいま申しましたように、最終的な責任を個々メーカーが持つております関係もございまして、個々メーカー信用というようなものも加味せられると思いますが、こういつた総合的な見地から運転資金についての調達、並びにわれわれとしまして、この会社運営のために必要な最小限度につきましては、できるだけのあつせんをして運営を円滑にして参りたい、こう考えておるのであります。
  17. 中崎敏

    中崎委員 この会社赤字等についての見通しの問題でありますが、これは国際的な肥料価格、あるいは日本肥料を買うと予想される相手国肥料需給状況、さらに国内における生産合理化とにらみ合せて、そしてその決定されるコストに関連したものが、結局において最後に集約されてどの程度赤字かという形になつて出て来ると思うのでありまして、相当複雑な要素を含んでおると思うのであります。そこでいろいろにわかに予定しにくい要素はたくさんあるのでありますが、少くともこういうことだけは政府の方で一応予定がついておるのではないかと思うのであります。それは合理化促進従つて、いわゆる年次計画従つて、本年度においては肥料合理化をどの程度にやつて従つて肥料コストはどの程度まで下げられる、来年度についてはさらにどの程度下げられる、その次においてはどの程度下げられるという目標を立てられて、そうして五十ドルなら五十ドルのところに行くのだと思うのでありますが、そうした見通しの上に立つて、いわゆる安定法等の発動によつて国内価格とのにらみ合せによつて輸出される数量、そのコストとの計算に基いて、一体どの程度赤字になるかということは、もちろん見込みがつくと思うのでありますが、国内合理化による、国内事情から見た輸出肥料価格の年次的な見通し、は一体どういうふうになつておるかをお聞きしたいと思います。
  18. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 国内硫安工業合理化目標は、硫安工業それ自体合理化問題、化学工業でございますので、合理化と申しましても、硫安それ自体をつくつている過程だけに限定されませんで、その際生じます副産物その他化学工業総合化といいますか、そういう観点をも含めまして、硫安工業として考慮しております合理化は、約八ドルであります。これ以外の電源開発あるいは石炭鉱業合理化というものも込めますと、少くも十ドルを越え得る、こういうぐあいに想定いたしております。今日国内安定帯価格改訂等のにらみから申しますと、大体五十ドルをちよつと上まわるか、その前後と考えていいと思います。ただ日本側硫安工業が有利であると考えます点は、このような状況以外に、日本輸出しております東南アジアで申しますと、もちろん輸出距離の長短で違いは起りますが、西欧ものと日本ものとの運賃の平常の場合における有利さというものを考え得るのでございます。これはときに多少の幅はもちろんございます。しかし四、五ドルの差は日本側に有利である、普通の場合における東南アジア、特に日本に近いマレー半島までの間では日本側はその程度有利であると考えます。従つて、そういう点を彼此勘案いたしますと、私の方の計画からいたしましても、今申しました硫安工業として八ドル前後、その他の関連企業の合理化をも考えれば十ドルを越し得る、こういう計画が具体的に成り立つと私は考えております。
  19. 中崎敏

    中崎委員 肥料メーカーである各会社の原価計算表といいますか、こういうものはなかなか手に入らないものかどうか。これは農林委員会等においても先般いろいろ議論されたようでありますが、この点についての資料が、政府の方でどの程度つておるか、それをお伺いしたいと思います。
  20. 柿手操六

    柿手説明員 硫安各社のコストの現状はどうであるかというお尋ねでございますが、これに関しましては、過般衆議院の農林委員会においても御質問がございました。各社各工場からの原価の調査は、現在はいたしておらないのでございますけれども、私の方で通産行政遂行上、各種のデータなりあるいは合理化の工事を、すでに開銀等を通じて推算をいたしておるものでございますのでそれらの工場につきましては、私どもで大体その工場の原価の現状はこのくらいになつておるだろうというものを推算いたしたものがございます。それを公表することは差控えたいと存じますが、秘密会等適当な機会に御説明をいたすというので、先般御説明をいたしております。これも私どもでできるだけの材料をもとにしまして、この程度コストであろうという推算をいたしたものがございますので、適当な機会をいただけば御説明を申し上げたい、かように考えております。
  21. 中崎敏

    中崎委員 肥料は食糧である米とうらはらをするような国民生活上の必需物資であると思います。従つて公益的な立場から考えてみて、それに対する政府の施策は相当強力に推進さるべきものだ。設備の合理化、近代化等のために強力に推進される必要があるとともに、その資金の調達等についても十分の考慮を払うべきものであると考えるのであります。その一面において、少くとも合理化建前とする価格形式の上において、その会社の帳薄といいますか、そうしたものについての調査も、強権といえばおかしいですが、必至な資料を正確に提出させるだけの要求をする根拠を持つ必要があると思うのであります。私至つて不勉強でわからないのですが、安定法並びに合理化法に基く資料の提出を、肥料会社に対して要求する根拠をどの程度つておられるか、それを説明してもらいたい。
  22. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 御質問の点でございますが、これは農林委員会の方に付託になりました安定法に根拠規定を置いております。従来肥料コストの問題が非常に問題になつたのでございます。そこで私たちといたしましても、できるだけ現状把握に努めて参りたいのでございますが、御承知のごとく今日の法制のもとにおきましては、御指摘のような点が実現いたしませんので、需給安定法の十三条にただいまの御指摘のようなことができますような規定を置いております。なお輸出会社運営に関しまして、もちろん今のコスト等の問題あるいは会社運営というような重要問題につきましても、安定法で規定を置いております硫安審議会におきしまして十分審議できますように規定いたされております。でございますから、御質問のような点につきましては、万遺憾のないような運営を期し得る、こう考えております。
  23. 中崎敏

    中崎委員 この法案によりますと、硫安工業合理化というようなことで、硫安に限定されておるのでありますが、農林委員会安定法の審議の経過を見ますと、これは相当に幅を広げられて、硫安のみに限らないというふうに進んでおるように見受けられるのであります。それとこれとは一体どういうふうな関連性において進めた方がいいのか、その御意見を承りたい。
  24. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質問につきましては、安定法につきまして、硫安に限らずその他の重要肥料につきましても、政令その他で規定いたしますると、安定法の必要箇条の適用ができ得るというように、修正案が出ております。本法との関係を考えますると、本法は輸出をいかに効果的に行うかという問題を中心として、特に硫安工業について輸出会社をつくる、こういうのが本法のねらいでございます。肥料輸出硫安以外にもございますが、私たちが国際性を強度に考えまして、輸出産業として強く積極的に育成して参るという必要等から勘案いたしますると、硫安工業に限定いたすことが適当かと考えておりまして、本法におきまして他の肥料に及ぼすという考えを持つておりません。
  25. 中崎敏

    中崎委員 かりに硫安の場合に限るとしても、最近硫酸が非常に払底しておるようであります。今後の見通しにおいても明るくない、そういうふうな要素において、一つの重要な阻害すべきものが出ておるようでありますが、これらについては一体どういうふうな考え方を持つておるかを聞きたいと思います。
  26. 柿手操六

    柿手説明員 硫酸の問題でございますが、現在特に硫酸が不足しておるというふうには私感じておりません。そういう意味ではなく、肥料といたしましてはできるだけ硫酸を使わない肥料の方が日本の土壌には適しますので、農林省においてもいわゆる無酸根肥料というものを奨励いたしておるような状況でありまして、私ども生産担当の側としましても、その線に沿いまして、燐酸でいいますと、過燐酸に対していわゆる熔成燐肥という方向にできるだけ進めて参るとか、あるいは硫安を尿素という肥料の方に転換して参りますとか、同じ窒素肥料でも燐酸をできるだけ使わない方向に消費者側としても希望いたしておりますので、その方向に進めて参りたいというふうに考えておりまして、硫酸の工業用の用途は漸次増して来ておりますけれども、肥料の用途は必ずしもそう増さないのじやないかというふうに考えておるのでございます。パイライトの増産が非常にできておりまして、原料的にはもう問題はございません。ただ硫酸の設備につきましては、今までの設備が旧態依然でございまして、シンダーの利用も、利用価値が非常に悪いというようなことから、今の旧式の硫酸設備を近代化するという方向に設備の転換をやつて参りたいということにつきましては、やはり硫安合理化の一環として、一つの大きな項目として考えておるのでございます。
  27. 中崎敏

    中崎委員 私の質問は一応この程度にいたしておきます。
  28. 大西禎夫

    大西委員長 それでは大臣が参りますまで、暫時休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ————◇—————     午前十一時五十四分開議
  29. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案を議題といたし、質疑を続行いたします。加藤鐐造君。
  30. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 資料を要求しておきたいと思います。資料の一つは、昭和二十八年一月より最近までの硫安輸出状況をなるべく詳細に資料を出していただきたい。価格輸出地、種類及び競争相手国の入札価格等について、できるだけ詳細に聞かしていただきたい。第二は、硫安工業合理化の最終目標はどの程度かということについて、硫安各社の合理化計画表、最近の各社の生産コスト、これをできるだけ詳細に出してもらいたい。
  31. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの資料でございますが、硫安各社のコストにつきましては、御提出困難かと思います。その他のものについては御提出申し上げます。
  32. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 農林委員会では硫安九社のコストを発表されたということですが、どういう形式で発表されたのですか。
  33. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 硫安各社のうち、二十八年度における開銀融資の際に当局において検討いたした六社のコストについて、秘密会の形式をもつて農林委員会に発表いたしました。
  34. 加藤鐐造

    ○加藤(鐐造)委員 それでは次会の委員会の劈頭に、秘密会でけつこうですから、御発表願いたいと思います。
  35. 大西禎夫

    大西委員長 それじやさよういたします。川上貫一君。
  36. 川上貫一

    ○川上委員 硫安の問題について、二、三点適産大臣にお聞きしたい。今度提案されている法案は、需給安定法輸出会社法と裏表のものであると思いますが、それを見ると、価格の決定をするということである。現在十四社は硫安協会をつくつてつて、事実上のカルテルをつくつている。この事実上のカルテルの独占価格法律によつて公認することになる。そういう点についてはどういうように考えておられるか。  第二点は、この輸出会社は何といつて国策会社である。国策会社をつくつて、事実上のカルテルである硫安協会の独占価格を一方においては公認しながら、一方においては輸出する国策会社をつくつて行く、硫安に対してこういう形になる。硫安に対してだけなぜこういうことをやるのか。そのほかの産業に対しても今後こういう方針をとつて行くつもりであるのかどうか、この点をまずお聞きしたい。
  37. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 現在硫安価格について十四社が実際上カルテルをつくつているというお話でございますが、私はカルテルあるいはそれに類するものをつくつているというふうには考えておりません。従つて今回の法律案によりまして、そういうものを公認するというふうなことは、私どもは考えておらぬところであります。  それからひとり硫安だけについてこういうことをやつて、将来ほかの物資についてもこういうことを考えるのかどうかというお話でございますが、肥料につきましては、日本国内の農村に対する非常に大きな問題でもあり、同時にまた輸出の面におきましても、輸出物資としての構成が百パーセントに考えられれるのでありますから、その両面からいつて非常に大きな問題でございます。特に硫安等につきましてこういう考え方をとつたのでありまして、他の物資等についてこういう考え方を押し広げて行くかどうかということは、ただいまのところは考えておりません。
  38. 川上貫一

    ○川上委員 そこのところがわからぬのですが、輸出の問題について、硫安の問題だけで国策会社あるいは国策会社類似のものをつくらなければならぬ、こういうこと、一つは農業にとつてそれは非常に重要な肥料でありますけれども、ほかの物資についても非常に重要でないということは言えない、そうするとこういう農業について非常に有利だからというので、大臣はカルテルはつくつておらぬと言いますけれども、実際上はカルテルをつくつておる、これはもう事実上の問題です。それのただ最高価格というものをきめてやる、これはカルテル独占価格で購入することになることは間違いない、この点私ははつきりしないのです。もしも全体の日本の今後の産業に対して、こういう態度を政府がとつて行くというのならこれはまた話が別になる。硫安にだけこういうことをしなければならぬ、こういうことは今の大臣の御答弁ではどうも理解ができない。輸出の問題にしましそも、鉄鋼の問題あるいは繊維の問題その他同じような問題があるのです。硫安だけなぜこういうことをしなければならぬのか、この点をもう少しはつきり政府考え方を聞かしていただきたいと思います。第一に、つけ加えて言いますけれども、出血輸出出血輸出と言うておるが、出血輸出じやなくこれは二重価格です。決して硫安協会、硫安会社出血してはおりません。この点はまたあとで私は質問したいと思いますけれども、それなのにこういう国策会社類似のものをつくつてやらなければならない、ここがはつきりわからない、この点はもう少し考え方をはつきり聞かしてもらいたい。
  39. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点につきましては、すでに政府側の意見相当詳細に申し上げた機会もあつたかと思うのでありますが、御承知のように、この二つの法案を考えまして、提案をいたしましたゆえんのものは、たとえば従来は、先ほど資料の御要求の点でもございましたが、コストの調査ということも十分には行われていなかつたのでありまして、自由になつておりましたので、いわゆる公の立場においてこれを検討するということができなかつたので、それらの点につきましては有権的なコストの調査を行うことにいたしたいというのが一つ、それからそのコストの調査を行つてからその結果によつて、たとえば輸出会社の設立の是非を考うべきであるというような考え方も私はあり得ると思いますけれども、コストについて見てみまするとたとえば石炭をとつて見ましても、大体西欧諸国に比すれば相当の高価にあるということは、もうこれは調査をしてみなくても事実上明らかであるわけでございますから、一方において有権的なコストの調査をすると同時に、先ほど申しましたような理由によりまして、輸出機構を確立するという必要性を同時に打出して参りたいというふうに考えておるわけでございます。ただいま二重価格云々のお話がございましたが、私は他の鉄鋼その他について同様な措置を考えるということは、今の段階では私どもとしてはそういう考え方をとつておりませんのであります。その点御了承願いたいと思います。
  40. 川上貫一

    ○川上委員 そこがわからぬ、鉄鋼その他で輸出会社なり国策会社類似の会社をつくるというのならばまだしも、なぜ肥料にだけこんなものをつくらなければならぬか、その点です。今御答弁によると、その他のものにはこれは何も考えていない。ところが肥料にだけはこれを考えなければならぬ。ここがはつきりしない。政府としてすべてのものに、こういう方向をとると言われるのなら、これはまた賛否は別としまして筋は通る。ところが硫安だけについてやるのは今の大臣の御答弁では少しも理解することができない。この点をもう一度ひとつ聞かしていただきたい。
  41. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点については、結局これは見解の相違ということになりましようが、私はさつきも申しましたように、この法案の必要性ということが考えられました約一年前の状況から経過的にお考えいただきますと、私どもが特に肥料につきまして、硫安についてこういう法律を必要とするということを考えました経過がおわかりいただけると思うのでありまして、先ほど申しましたように、肥料特に硫安というものの特殊な性格から申しまして、鉄などとは大分趣を異にするのではなかろうかと考えます。結論といたしまして、私は鉄等については現在そういうことは考えておりません。
  42. 川上貫一

    ○川上委員 この法案はもうずつと以前から出ておる、三回ぐらい国会に継続しているのではないか、その時分のりくつはこれはりくつだけは一つつた、たとえば二十七年の秋には西欧硫安、ドイツ、イギリスあるいはベルギー、イタリアにしましても、これはFOBで四十ないし四十五ドルであつた。これがたとえば東南アジアのCIFとしましても、五十一ドルないし五十二ドルくらいであつた。ところが現在ではこの西欧硫安が五十ドルCIFで五十七ドルから六十ドルになつていると思う。ところが日本のこの現在のこれでは少し開きがまだありますけれども、この法案が最初に出た時分の、それだけの開きはもうなくなつておる、その上に硫安五箇年計画によると、三十二年には三百五十万トンの生産をするような計画を進めておるわけです。今になつてもやはりこの硫安輸出会社というものを持ち出しておる、ほかの鉄鋼その他についてはこういう考えはない。そうすると最初に出された時分の必要性を説かれたあの問題は、相当程度解決をしておるのに、最初の理由はやはり出て来ておる。ほかの産業にはこれはやらぬ、こういうことになりますと、なぜ硫安にだけやらなければならぬかということは、やはり今の大臣の御答弁では私ははつきりしない。現在は一番最初に提案されたその時分の説明、理由、その問題はほとんど解決しているじやないか、また将来解決の方向へその問題だけならば行つておるのではないか、これはどういうことなんでしようか。この点もう一つお聞きしたい。
  43. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 価格のこまかい点等につきましては政府委員からお答えいたしますが、私は今御指摘の点については、一年前の事情と多少違つておる点も、これは見方の問題でございますが、あるかもしれませんが、根本的には私は特に日本のような農家経済というものが非常に大事な立場にある場合に、その農家経済に占める硫安の重要性ということ、それからまた硫安輸出物資といたしまして、特殊の非常に大切なものであるということ、この観点に立ちましてわれわれはやつて参りたいと思つております。根本的には自由主義経済の中で、必要の最小限度における調整措置をとりたい、それにはどうしてもこういう法律を必要とするということ、それからたとえばコストの問題などにいたしましても、こういう大事なものについて有権的にコストの調査ができていなかつたような点を是正をするということ、こういうような点についての、この法律案の持つ意味というものは、基本的にはちつともかわつていないと私は思うのであります。これが今日におきましても、依然として私どもがぜひこれら法案の成を期待いたしておるゆえんでございます。
  44. 川上貫一

    ○川上委員 二つの問題が出たのですが、農家経済の問題と輸出の問題の立場からこの法案が成立する必要がある、こういう御答弁ですが、だから私は二つにわけてお伺いしたいのですが、まず第一の農家の経済の問題でありますが、そのコストはちようど石炭の場合におけるようなもので、コストはなかなか明らかにならない。また実際においては明らかにしようとしないのです。ことに十四社が硫安協会をつくつてつてこういう問題は非常に秘密にしておるのです。ところがもし農家経済を助けるためにこういうものがいるというのであれば、二重価格をいつまでもやるというような前提でカルテル価格をきめたりするよりも、コストの引下げという問題で努力しなければならぬ。これが一番重要なのである。ところがこのコストについては、たとえば合化労連の二十七年秋から八年春にかけての調査によると、コストが平均五十ドルないし五十一ドルとなつておる。また二十七年の十二月から翌年五月にかけて朝鮮向けに二十二万五千トンを出しておる。この価格はたしか五十一ドル六十セントであつたと思う。しかしこれはほかの場合と違つて補償がついておりません。でもやはり会社は二割以上の配当をちやんとやつておるのです。この五十一ドル六十セントで出した分の国内価格は六十七ドル内外であつたと思う。ところがちやんと配当をしておるではありませんか。そうすると現在のコストコストと言つておるものが、石炭の場合と同じように、いかに怪しいものであるかということは明らかである。ここに手をつけなければならぬ、これが第一点。  第二点は、これは常識だと思うのですが、硫安工業は操業度が二割上ればコストは一割下るというのが業界の常識だと思う。ところが五箇年計画によると三十二年には三百五十万トン生産をするというふうにうたつておる。現在国内需要は百七十万トンくらいでありますが、今年の生産は二百四十万トンという、さきにも政府側の御答弁があつたのであるが、この順で行くとコストは下らなければならぬ。なお今言つておるコストでもこれは非常に怪しいコストであつて、調べ上げなければならぬ。今度できた安定法では調べ上げるといつておるが、あの形ではこれは調べ上げられはしません。石炭と同じことです。だからコストに手をつける気はないと私は思う。こういうことをほつておいて、一方では輸出会社をこしらえる、そうして業界は非常に助かるでありましようが、しかしこれは農家の利益には何らならぬ。ほんとうに農家の利益を考えてやつたというのであれば、輸出会社というようなものをつくることはないと私は思う。もつと五箇年計画なら五箇年計画の方向をどんどん推進させながら——コストが実際は低いのですからこれを十分に調べ上げる。価格を下げたら国内需要はどんどん増すのです。国内需要がうんと増すと同時に、二割の増産をしたらコストが一割下るのですから、これで農家は潤うのです。この点をほつておいて輸出会社のようなものをつくり上げて、カルテル価格を放任するようなことを硫安に限つてやるという点が私にはわからない。ほかの輸出産業はつぶれようとしておる。実にえらいことになつておる。ことに中小企業のごときは、倒産に次ぐに倒産をもつてして実にえらいことになつている時分に、硫安会社をこんなことをして助けなければならぬか。そこには何か理由がなければならぬ。今の政府の御答弁ではこの理由が出て来ないのです。どういうわけで硫安だけこういうことをしなければならぬか、その点をもつと明確にする必要がある。  第二の問題は、輸出が大切だということでありますが、輸出が大切だという問題は硫安に限つたことじやない。これはあとで、また質問しますが、硫安に限つてそれほど輸出が大切であるのか。ほかの産業はどうするのか。硫安だけが輸出が大事だという特殊な理由があればそれを御説明願いたい。これは輸出の面でありますが、この点についてはまた申しますけれども、今私の申しましたのは、第一点は、農家経済を考えるならばほかの考え方があるはずであります。輸出の面を言うならば、なぜ硫安だけにこれほどのことをしなければならぬ理由があるのか、この二点を伺いたい。
  45. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはよく御承知通り、たとえば昭和二十七肥料年度では大体硫安生産の実績は二百十万トンくらいだつたと思いますが、それに対しまして国内需要は百六十万トン程度でありますから、五十万トン程度輸出余力があるわけでございます。国内におきましては合理化をした価格でもつてできるだけ合理的に配給いたしたいということはもちろんでございますが、同時にまた輸出に充てられるものは——これもいまさら申し上げるまでもございませんが、原料である石炭、コークス、硫化鉱、電力というようなものを考えまして——すべて先ほど申しましたように百パーセントが外貨の獲得率になるというような点を考えますと、特に硫安につきましては、自由主義経済の中におきましても、ある種の調整措置を講じた方が全体のためになるのではなかろうかと考えたわけでございます。  それからコストにつきまして適正な利潤というようなものを考えたいというのが私どもの考え方でございますが、それはそれといたしまして、こんなことではコストの調べなどはできないとおつしやいますが、それができるかできないかは、幸いにしてこの法律案の成立を見ました場合のわれわれの実際上のやり方によつてひとつ御批判を仰ぎたいと思います。
  46. 川上貫一

    ○川上委員 どうもはつきりしない御答弁だと思うのです。さつき中崎委員の聞かれたことに対する政府の答弁は、この輸出会社赤字が出るかどうかわからない。万が一出ればというような御答弁があつた。万が一ということならば、それでは赤字は出ぬという御計画ですか。それならば輸出会社をつくる必要はない。そこのところにコスト問題の質問がやはり出て来る。運転資金のあつせんについても明確な答弁がない。これは硫安輸出会社の問題についてもはつきりとした基礎的な必要性があるのではなく、政治的なものがあるのだ。そうでなければもう少しはつきりした答弁ができるはずです。たとえば万が一赤字が出るならばというようなことを言われたのですが、それならば何でこんな輸出会社をつくる必要があるか、万が一赤字が出るのならばつくる必要はないじやないか。絶対に赤字が出てどうしても二重価格でなければならぬのだから、出血輸出になるのだからとはつきり言われるのなら、賛否は別として、これは政府の筋が通る。その筋も通らない。そこで聞きますが、大体硫安輸出につきましては従来アメリカが非常にさしずしておるのです。硫安輸出については最もひどい干渉をしておるということは事実なのです。どうしてこんなことをするか。それは昔からアジアを支配するものは米を支配すべきであるということを言われておる。アジアは穀物であります。米を支配するものは肥料である、日本ではその肥料硫安その他がなかなかできるのです。東南アジアに対しても、南朝鮮に対しても、台湾に対しても、アメリカがその民心を操作するのに一番都合のいいものは硫安です。ところが従来これが一本になつておりませんために、アメリカとしても、この操作にはいろいろスムーズに行かない点があつた。ところが硫安輸出会社をつくりますと一本になる。そうすれば命令一下です。そこのところさえ押えつければいいわけです。こういうものがあるのじやないかということを国民が考えたときに、政府の今の御答弁では私はこれをそうじやないということが言えない。というのはこういうものを今つくるという理由がはつきりしないのだ。外貨の問題、その他を言われますけれども、それは硫安に限りません。すべての輸出品がそうです。ところが硫安だけこれをやろうという。そうすると輸出面については政治的なものであるということを言わざるを得ないし、これに対して私は答弁できないと思う。この点について通産大臣のお考えを聞きたい。  いま一つは、百六十万トンから百七十万トンしか国内で消費されていないと言いますけれども、高いから消費しない。値段を安くすれば消費はふえる。なるほど窒素肥料過剰のところありますけれども、東北その他に行けば家が貧しいために、この高い肥料は買えないのです。これを下げたら国内需要というのはうんと増すのですが、そこのところを考えてないのです。百七十万トンの需要であつて五十万トン余つておると言われますけれども、これは高くて農家が買わぬから余つている。この価格をうんと下げる方針をとりさえすれば、国内需要はうんとふえるのです。その方向が、この法案ではとられていない。これはどうしても政治的なものである、こういうことしか言えないと思うのですが、今までの答弁ではこの点がはつきりしておらぬので、これをもう一度あらためてお聞きしたいと思うのでお答えを願いたい。
  47. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私先ほど昭和二十七肥料年度の数字をとりまして申し上げたのでありますが、私が国内需要百六十万トン程度と申しましたのは、これはどういう根拠でおつしやるのかわかりませんが、高いからこれ以上売れないというのではなくて、現在の日本の実情から申しますれば——多少ふえることはございましようが、国内需要がそんなに大幅に広がるというふうには考えておりません。輸出余力はあると私は確信をいたしております。  それから、なぜこういう輸出機構をつくるのかという点について再々のお尋ねでございまして、私も、御納得は行かないにしてもできるだけ私どもの考え方を申し上げることに努めなければならぬと思います。今まで申したことを繰返すことになつて恐縮でございますが、要するに硫安は食糧生産の基礎資材であるという点、それから日本の農民は消費者である立場において、この価格については、きわめて強い関心を持つておることは申すまでもないところでございます。それから輸出国内の損益と申しますか、それをプールいたしまして、輸出による損失を国内価格に含ませることについては、極端に日本の農民としては反対をする立場をとつておることは当然であると思うのであります。  さらに硫安はその性質上、輸出を断念して操短することははなはだしいコストの高騰を招来いたしますから、輸出量を維持拡大して行くことは、国内消費者にとつても好ましい影響を持つと私どもは考えておるわけでございます。  それから他方、輸出余力の点は先ほど申し上げましたが、硫安輸出市場としてはアジア地域に約百五十万トンという厖大な需要を持つておるわけでございます。それからこれも先ほど申し上げました通り輸出による外貨の獲得率は百パーセントである。また他の産業のごとく、相手国において輸入制限の措置がとられるなどということは全然考えられません。価格さえ低廉ならば十分に輸出量を増加し得るわけでございます。こういつた方面からの考え方を集約してみまして、私どもとしては特に硫安についてかくのごとき輸出機構をぜひつくりたいものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  48. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると通産大臣は百六十万トンないし百七十万トンは日本の食糧生産農家の経済にとつて、これだけくらいが必要な肥料の量である。これ以上増す必要はないという考えであるか、日本の食糧問題——米の問題は重大な問題である。肥料は百七十万トンくらいで国内需要はよろしいのだ、こういう考え方であるか。第二点は、アジア地域に百五十万トンと言われましたが、これはどこを入れられたか知らぬが、中華人民共和国の問題があるわけです。輸出しても出血する、出血すれば農家の経済にかかわる、こういうことを言われますが、それは中国に輸出しないからそんなことになる。これはアメリカの操作によつて妙なところにばかり出すからです。中国の需要量というものは非常に大きい。これをなぜどんどん出さないか。そんなことをするからいよいよますます出血と称するものがかかつて来るのです。これは明らかな道理だと思う。ここを解決せずしてこういうことをしましたら価格は下らぬ。これではアメリカの政策に同調するにすぎないのです。これでは価格は下りません。下らなければ農家の経済には好影響を与えはしません。こういう法律をつくつたり、こういう政策をするから硫安は下りはしない。いつまでたつても農家は困ります。こういう政策をとるから、いよいよもつて中国との国交の調整もできない、経済交流もできない、中国への輸出もできない、これは一体どうなるのです。私は政府の御答弁はロジツクが合わないと思う。もしも農家経済のことを考えるならば、こういうものをつくるべきじやない。また輸出の負担を農家経済に負わしてはいかぬから、やるというならば、なぜ中国に輸出しないか。あそこは厖大な需要があるし、この点は一体どうなんです。
  49. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国内需要量にたいへん論議が集中されるようでありますが、これは百六十万トンというものがさらに百万トンふえたり、値段を安くしさえすればさらに二百万トンふえたりする、そういうものじやないということを先ほどから申し上げておるのでありまして、食糧増産計画に照応して数万トンとか十万トンという程度にはもちろんふえるでございましよう。また価格を下げることによつて数万トンがさらに買われるということもございましよう。しかし程度としてはそのくらいの問題だということを申し上げておるのであります。それからアジア地域に約百五十万トンと言つたのは、どんなにしぼつて最低を考えてみても、百五十万トンであつて、これはただいまもお話がございましたように、どこへでもどんどん出せるようになれば、需要量はもつともつと厖大なものでございましよう。しかしながら国内生産量が二百十万トンなんでありますから、今すぐに出せるようなところを最小限度にしぼつてみたつて五十万トンくらいはあるのだということを例として申し上げたわけであります。  それから中共との貿易の問題につきましては、これは私が累次基本的な考え方を申し上げておるのでありまして、なおあなたからごらんになればまつたく微々たるものだという御批評はあるでありましようが、私が就任いたしまして以来におきましても実績は上つておるつもりでありますし、それから他のことでございますが、禁輸品目の解除も相当の件数に上つておることは御承知通りであります。
  50. 川上貫一

    ○川上委員 この議論を繰返しても同じような答弁を繰返されると思うので、次の質問をいたします。さきに政府側の御答弁では万一赤字が出たならば云々と言われましたが、この輸出会社赤字が出るつもりですか。
  51. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それは先ほどどういう御答弁を申し上げましたか、私はつい聞き漏らしたのでありますが、私はやはり国内需要に対する関係も、それから国外に対する輸出の増進も、根本は合理化にあるということは否定できない、またそれをぜひやらしていただきたいと思うわけでございます。それでそれが成績を上げるということであれば、輸出機構について赤字を起すことはないでありましよう。しかし万一あつた場合には、自主的にこれを処理するという趣旨を申し上げたのだろうと思いますし、私自身もさように考えております。
  52. 川上貫一

    ○川上委員 それでは何でこんな輸出会社をつくるのですか。赤字が出る憂えはないということを考えておるのに、なぜこういう会社をつくつてやらなければならないか。
  53. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 しかしながら先ほど言葉が足りなかつたかもしれませんが、経過的にはどうしても赤字が出ると思います。それを積み上げて累積した赤字というものは、一方進行する合理化によつて漸次解消して、そうしてこれを自主的に処理して行くということを申し上げたわけであります。それから根本的に輸出機構をどうしてつくるか、またどうして硫安のみに考えたかという点でございますならば、先ほど申し上げた通り考え方であるということを申し上げるわけでございます。
  54. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、今後何箇年くらいの間にどのくらいの赤字が出る予定でありますか。
  55. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 この点につきましては、先ほど中崎委員の御質問にもお答えいたしましたように、経過的に西欧等におきます国内の販売価格等から想定いたしますと、相当下まわつた生産コストのように見受ける。東南アに対する過去の経緯、これはごく近い経緯におきましても、非常に輸出価格が低く売られた。これに対しましてわが国としては、硫安工業の操業度維持並びに今後におきます東南アの輸出市場に対する輸出というものを考慮して、相当これらの西欧価格競争するような輸出価格による輸出をいたして、その後輸出価格もやや上昇の傾向をとつておりますが、この傾向は非常に安いコストの上に西欧輸出がされておるという根本的な点、並びに現在東南アに対する輸出量がやや少な目になつて来ておるということは、これは西欧における食糧増産等の観点から原因しているかと思うのでありますが、この傾向はここしばらくの間の傾向でございまして、硫安工業西欧状況等から判断いたしますと、相当価格の低下ということを考えねばならないのが常道でございます。そういうような見地からいたしますと、輸出会社として考えますことは、日本側におきます数年間の合理化政策の完遂いたし得ません関係における赤字をプールして合理化いたしまして、黒字を三年後あたりに期待する、この方向へ参りまして、究極輸出会社赤字を解消するというのが根本のねらいでございます。従つてその間における赤字その他の数字的なことは、今後の輸出価格の推移あるいはコスト状況からして、今日はつきり申し上げ得ない要素が多いのであります。根本の考え方は以上申した通りでございまして、この際輸出会社をつくることが、国内における価格の安定と計画的引下げということを実現する重要な柱であるということをるる申し上げたのであります。そういう見地に立ちます輸出会社でありまして、これはむしろこの二年間数量的に保持して参りました東南アに対するこの傾向を、この際確保する有力なしかも基本的な一つの支柱である。最近のここまで努力して参つた硫安輸出を将来にわたつて確保して、それを足場にして、さらに東南アにおける順次増大の傾向にあるこれらの需要に対応して参る外貨獲得率百パーセントというような要素等を勘案いたしますと、輸出会社の成立ということが最も願わしいことである、こういうぐあいに考えております。
  56. 川上貫一

    ○川上委員 何ぼ赤字か出るかわからない。どれだけ合理化ができるかわからない。輸出会社だけはつくる。そうするとこの赤字の出た分は、硫安会社はこの赤字を自分の力で絶対にとめなければならぬという義務は、法的にどういう根拠によつてありますか。
  57. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 この両法案を御提案申します前に、政府硫安に関する審議会をつくりまして、その審議会において慎重審議いたしまして、硫安会社輸出による赤字国内に転嫁せしめないという根本原則を立てました。この赤字を転嫁しないという原則を現実にいたすためには、合理化を推進するということがねらいでありまして、その合理化によりまして自主的に赤字を解消せしめるというのが審議会の一つの結論であります。もちろんこういつたものを国家の手においてというような方法で解決することは、産業政策としてとるべき筋合いのものではありませんので、硫安会社赤字を自主的に調整しなければならないということで、この法律輸出会社に対して国家補償をしておらぬということを明らかにしておつたのでございまして、この国家が補償するということを明記しない限りにおいては、硫安会社が株主の形においてこれの責任を持つということが当然でございます。そういう意味合いにおきまして、この肥料対策委員会で決定いたしました自主的赤字調整という基本原則を法律に貫いておる次第であります。
  58. 川上貫一

    ○川上委員 だからいよいよおかしくなつて来る。そういう答弁では、答弁にならぬと思う。本当のことをいつてしまいなさい。これは国家が補償すると書いておらぬから、あとは硫安会社がやる。国家が補償するという法律はすぐ出せますよ。この次の国会くらいまでに出せるかもしれない。こんなことはよくやる手だ。私の聞いておるのはそうではなくて、今ここにこの赤字がでれば硫安会社の債務であるということの法律があるかないかということを聞いておる。何も輸出会社赤字を出したら、この硫安会社が補償しなければならぬということはない。これはどうなるかということを聞いておる。顧みてほかのことを言うような答弁ではいけない。どうなんですか。
  59. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいま赤字がかりに出たらば別の法律改正あるいは新立法をして赤字を埋めるというようなことがあるのじやないか、こういうような御質問でありますが、政府としては本法提案の経緯並びに先般来御答弁申しました合理化政策の推進という問題において解決せしむるものでございまして、国家の補償ということを考えておるものではございません。従いまして硫安会社が自主的にこれを処理するということの根本原則につきましては、先ほど答弁申し上げた通りであります。
  60. 川上貫一

    ○川上委員 政府考え方を私は聞いておるのではなくて、客観的な法的な基礎と現実を聞いておるのです。政府が何と考えておろうとも、それは法律的には通用するかしないかわからぬ。そうではない。ここに赤字が出たならば必然的に硫安会社がこれを補償しなければならぬという義務は、どういう基礎で義務づけられておるのかということを聞いておる。今政府はどう考えておるということじやないのです。客観的な事実を聞いておる。というのはこういうことはかつてつた。石炭の時分にはどんどん何ぼでもやつた。補償しないということが書いてないのだから必ずやるに違いない。それはちやんとわかつておる。そこをねらつておるから硫安会社も喜んでおる。そこをねらつておるから政府原案をつくつておると思う。これは非常にはつきりしなければいかぬことであつて、さつきから私が、硫安にだけなぜこういうことをするのかということを繰返し質問したのは、一つはこの点にある。つまりこれは二重価格をいつまでも続けて、そうして硫安会社コストを調べる方法をあまりしない。国内の農家を助けるのではなくて、硫安会社を保護して実際投げ売りをやり赤字が出る。この赤字は究極のところ国家財政で埋めるという腹があるに違いないということを聞いておる。そうじやないというなら、こういう法的根拠があるからそうでないのだということを明らかにしてくれと質問しておる。
  61. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 ただいまの御質問でございますが、この法律に基きまして成立いたします輸出会社は、商法上の会社でございます。商法上の会社に対して赤字が出た場合、これを国家が補償しないということは当然でございます。もちろん特別の法律に損失を補償するという規定がなければ、こういつた商法上の会社に対して、一般の会社と同じように補償しないのが法律上当然でございまして、この法律はその当然のことを明らかにしておるのであります。私は行政の方針というものを説明しておるのではございません。法律の精神と申しますか、法律の規定というものから、商法上の会社でございますので、当然この法律をお読みになればそういう結論は出るのでございます。もちろん政府はこれを何か補償する腹がないかという腹の問題は、法律にはもちろん政府は補償しないという腹が現われておるのでございまして、この法律にこの会社赤字政府で補償しないということが書いてないから補償する腹じやないか、こういうようなお考えのようでありますが、これは商法上の会社でございますので、法律の概念のもとにおきまして当然補償しないということが十分現われておる、こう考えてしかるべきものと考えております。
  62. 川上貫一

    ○川上委員 私はそう言うておるのじやなくて逆なんです。硫安会社は、輸出会社の損失に対しては自己の債務としなければならぬという規定があるのか、ないのかを聞いておる。これがなかつた赤字を出したらどうするのです。硫安会社がそれを知らぬというたらどうするのです。
  63. 中村辰五郎

    中村(辰)政府委員 輸出会社を構成いたしますものは硫安業者でございます。そのつくりました商法上の会社赤字は、構成しております硫安会社が当然負うのが法律建前と考えます。そういう意味合いにおきまして、私がただいま御答弁申したように、商法上の会社ということで法律形成をいたしております本法を考えますならば、十分御納得が行くと思つております。
  64. 川上貫一

    ○川上委員 時間が大分たちましたが、もう少し聞いておきたい。この硫安というのは、輸出国内需要その他ありましたが、硫化鉄は日本にできるのであります。それに電気と水と空気があればできるものであります。さつき言いましたように、操業度を上げればコストが下る、コストが下れば国内需要にふえる、ふえるばかりでなしに、いつも安い価格にすることができる。焦点はここにあるということを私は繰返して言つておる。そこで一番重要なのは電力だ。これは硫安製造の基礎になると思いますが、通産大臣が見えておるので、電力について伺つておきたい点があるのですが、政府電源開発についてワールド・バンクから借款をする計画があるかどうか。これが第一点。  ワールド・バンクから、借款に応じてもいいというような何かのことがあつて、しかもそれが鉄鋼の合理化、石炭の縦坑、工作機械の輸入、電源開発というような示唆があつたかどうか。もしも電源開発にワールド・バンクから借款をするという考えになつておるとすれば、鉄鋼や石炭や工作機械というものでなしに、順位の一番下の電源開発になぜこういう形をしたか。鉄鋼や石炭には借り手がなかつたのかどうか、申請がなかつたのかどうか。この点が第二点。  第三点として、この借款の全部をアメリカから機械を輸入するという計画かどうか。  第四点として、この計画について通産省の重工業局はほとんど決定するまで知らなかつたという事実があるかどうか、公益事業局は多少知つてつたが、実際にはあまりタツチしておらなかつたという事実があるかどうか。  次に開発用のアメリカの機械は国内でできぬものかどうか。国産では間に合わないものであるかどうか。国産で間に合うとするならば、なぜ借款をしてこの機械を全部アメリカから入れようとしておるのか。この計画を通産省ではすでに著々と進めておるのではないかと考えられるが、そういうことがあるかないか。まとめて聞かせておいていただきたい。
  65. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 世界銀行の借款の関係につきましては、具体的に今御指摘のように進行しておるものはございません。従つて、今五つの点をあげて御質疑でありましたが、ちよつとお答えがまとはずれになるかもしれませんが、その点御了承願いたいと思います。  まず第一に、電源開発会社が世界銀行から借款を得ることにきまつたかどうかというお話でございますが、これは今申しましたように、そういう話がきまつたものはございません。ただ新聞にも報道されておりましたように、電源開発会社のある役員が渡米しておることは事実でございます。政府としてとりまとめて世界銀行に交渉したというようなことはないのでありますが、国内の資本蓄積の少い現状でございますから、それぞれ事業を担当しておる向きが、こういうところからもできれば融資を仰ぎたいということで、いわゆるサウンドするとか打診するとかいうことが行われておることは事実であります。しかし今申したように、政府としてこれを有権的にやつておるのではございませんし、また話がきまつたという事実もございません。それから従いまして重工業局は全然知らなくて、公益事業局は知つてつたということを言われましたが、通産省は申すまでもなく一体でございますから、そういう情報は関係の向きは十分掌握しておりますし、各局相互間で、どちらが知つてどちらが知つていなかつたというふうな事実はございません。  それから機械の問題でございますが、これは従つてお答えが抽象的になるのでありますが、原則論として、私どもは、日本でできる開発用の機械等の輸入のために外資の借款をするということは、おもしろくないことであると考えております。どうしても日本国内の開発のために、外国の機械なり技術なりでなければならない、これを入れることによつて、能率が非常によくなり合理化されるというものが最も望ましい次第でございます。それと同時に、できるならば、いわゆるインパクト・ローンというようなかつこうで、何にでも使える金、こちらが借款はするけれども、その借款のできました金は、機械等のみならず、そのほかの用途にもこちらが自主的に使えるようなものであることが最も望ましい。原則論、抽象諭としてはさように考えております。
  66. 川上貫一

    ○川上委員 この問題はほかの問題と兼ねてさらにお尋ねしたいと思つておりますが、きようの問題と直接関係しませんので、私の質問はきようはこれで打切つておいて、あらためて質問をしたいと思います。
  67. 帆足計

    ○帆足委員 関連して……。きようでこの審議は最後だということですから、一言だけお尋ねします。先般中国に硫安輸出が五千トンできまして、政府当局も国際収支の改善の見地から、この問題に対して善処されて、この点にまことに多とするものでありますが、硫安輸出会社ができました場合に、私しろうと考えで多少疑問にいたしております点は、先般中国向けの輸出に対しまして、今の国際情勢からいつて、西ヨーロツパ諸国が穏当としておることについて、われわれは何の遠慮もないというふうに、外務大臣からも通産大臣からも伺つておるのでありますが、中国向けの輸出に対しまして、一部の勢力なり、硫安輸出委員会等におきまして、多少これに対して圧力を加えたようなことがあるということを、ジヤーナリズムの方面その他から私はこまかく聞いておるのでございます。硫安輸出につきまして、国内の需給の関係とにらみ合せて総体のわくの調整をはかることは必要なことでありますし、また値段のよいところ、見返りの原料の獲得の有利なところなどにおいて、多少の優先順位等を考慮されることは了といたしますけれども、輸出会社ができまして、そこの輸出調整委員会が、たとえば中国向けの輸出に対して不当な差別待遇をするというようなことが行われ得る可能性があるかどうか。特定の会社が、これに非常に有利であるから、政治的に問題を考えずに、西ヨーロツパ並に公明正大に輸出したいというようなときに、輸出会社ができておるばかりに、その輸出会社の意向によつて押えられるようなことがありますならば、非常な不自由をいたすわけでありますから、念のためにその点を大臣から承つておきたいと思います。
  68. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その点につきましては、この法案の提案の理由として申上げ、またいろいろの御質疑にお答えいたしております通り、純粋に考えておるわけでございますから、この輸出会社をつくりましても、それによつて輸出先等を統制する、あるいは政治的な意図によつて阻止をするというようなことは、この法案の趣旨とするところではないわけでございまして、この会社が設立されましてから以降におきましても、十分そういうような御懸念のないように特に配慮いたしたいと考えます。
  69. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの通産大臣のお答えは、たいへん明確で、十分了といたしましたが、第二に、先ほど川上委員からの御質問の中で、たいへんいいことを言われた点もあると思うんです。硫安値段を下げまして、日本の農民諸君を楽にしまして、あわせて食糧の一般消費者に利益を与えますためには、何と申しても硫安を大量生産して、同時に価格を安くする生産の能率化から考えることが大事であつて、需給調整の問題も大事ですけれども、一番の根本はやはり生産合理化、そして大量生産ということにあると思うのです。しかるにややもすれば農村の声を近視眼的に考えて、そうして大量生産方向に向わずに、輸出をただとめようとするような傾向がある。これはやむを得ないことでありましようけれども、多少近視眼的過ぎる傾向がある。先ほど通産大臣の言われたように、硫安はまことに日本にふさわしい化学工業製品であり、アジア全般に非常に有利な輸出品でありますから、通産省としてはもう少し輸出産業としての面を農林省の諸君に理解してもらいたい。そうすることが実際は農民諸君に非常に有利であつて輸出産業と農村の利益とは矛盾しておるのでなくて、輸出産業としてやることが、コストの引下げからいつても、日本国民経済全体からいつても有利なことであるということを、もつと強く今後とも政策に打出してもらいたいと思うのです。それに関連しましても、私はイデオロギーを抜きにして、北アジア諸国、特に中国に対する硫安輸出についての従来の業界並びにその他の方面の消極的態度は、多少時勢を見る目に欠けておるのでないか。特に中国では治水の仕事が非常に進み、大きな農業国でありまするし、人口も五億を越している国でありますので、硫安輸出して、やがては食糧を輸入するということは、最も自然であり、日本国民にとつて有益なことであると思いますので、その点について一段と力を入れていただきたいと思いますが、それについての通産大臣の御意向をもう一度承つておきたいと思います。
  70. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまお話のございました点は、私も同感でございます。ともすると近年日本におきまして、硫安について行われました論議は、確かに御指摘のように少し近視眼的であつたのではないかと思うのであります。私は先ほど申しましたような硫安の特殊な性格から申しまして、いわゆる国際性のあるものとしてこの増産をやり、輸出を増進するということによつて、農民諸君の大きな期待にも沿い得ることであるというふうに考えますので、これらの点につきましては、さらに農林当局等とも今後緊密に連絡をし、また啓蒙というと失礼かもしれませんが、啓蒙をするというようなことに一段の努力を払いたいと考えます。  それから第二段の問題は、私はやはり純粋な経済問題として、要するに買つてくれるようなところ、有利に取引ができるようなところには、あまり政治的な意図を加えずに、経済的な問題として取上げて参るようにいたしたいものと考えるわけでございまして、これらの点につきましても、なるべく御趣旨に沿うようにやつて参りたいと考えます。
  71. 大西禎夫

    大西委員長 次会は五月六日午後一時より理事会、一時半より委員会を開会する予定であります。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時散会