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横田政府委員 百貨店問題は、
昭和二十五年の
繊維品の
統制解除後急にいろいろ問題にな
つて参りまして、特に
問屋の
関係、あるいは今
お話のような
一般小売商を
圧迫するという問題が、世上いろいろうわさされるようになりまして、
公正取引委員会といたしましても、この
事態をこのままにしておくことはできませんので、
昭和二十六年の五月に
デパートの
実態調査を開始いたした次第でございます。
東京十五店、
大阪六店、
名古屋二店、
福岡三店の
百貨店に対しまして、いろいろ
取引の
実態を
調査いたしました結果、二十七年の五月になりまして、
日本デパートメント・ストアー協会を通じまして、
全国の
百貨店に対して、
調査の結果、あまりおもしろくないと思われました、
問屋に対する
返品問題、それから今
お話の
手伝い店員を強制するというような問題、当時非常に流行しておりましたいわゆる
展示即売会、あるいは特殊の人だけに
内覧というようなことをして、特に安く売るというような
内覧会の
問題等をめぐ
つて、
百貨店業界の一部に、
問屋との
取引並びに
一般小売商との
競争において、
独占禁止法の不公正な
競争方法に該当するおそれがある行為があるからとい
つて、その
自粛自戒を
警告いたした次第でございます。ただここでちよつとお断りいたしておきたいことは、実はこの当時の
独占禁止法で申しますると、これらの問題を
独禁法のどの
条項に当てはめて処理したらよいかという点になりますると、やや疑いのある点もございます。まず大体間違いないと思われまするものが、当時の
法律で申しますると、
利益、
不利益をも
つて顧客を
自己の方へ誘引するとか、あるいは
取引を強制するとかいう
条項がございましたので、それに当るものがあることは事実でございますが、これらの
調査の結果、一番われわれがおもしろくないと思われますものは、
デパートの
経済上の
地位の強さを利用いたしまして、
問屋なりその他のものに対しまして、不当な
圧迫を加える、不当な
条件で
取引をする、それに応じなければ今後の
取引を拒絶するというような
態度で臨みまするために、そういう
立場の弱い
問屋などがはなはだ
不利益をこうむる、この点が一番われわれとしましておもしろくないと
思つたのでございますが、この点はあいにく当時の
独占禁止法では、明白にこれを
独禁法上の
違反とする
条項に欠ける面があつたのでございます。ところが御
承知のように、昨年の国会におきまして、
独占禁止法の
改正法が成立いたしまして、九月一日から実施になりました。この
改正法におきまして、ただいま申しました不公正な
競争方法を、不公正な
取引方法という言葉に改めますると同時に、その
内容を
相当強化いたしまして、特にただいまのような
百貨店の
地位の濫用に対処するため、あるいは最近の御
承知の
下請業者に対する
親企業の、不当な
圧迫等に対処いたしまするために、
取引上の
地位の優越していることを不当に利用して
取引をすることというものを、一項不公正な
取引方法の中に加えまして、これに基きまして、これらの
事態に対処する態勢を一応整えた次第でございます。その上におきまして、昨年の七月から十二月にかけまして、先ほど申しました二十六年に
調査いたしました
百貨店のほかに、
東京、
大阪、
名古屋、
福岡にございまする百三十の
問屋を加えまして、大体二十七年のわれわれの
警告が遵守されておるかどうかという点を詳細に
調査いたした次第でございます。
この
内容はくだくだいたしますし、
長谷川さんは非常によく御
研究だそうでございますから、あまり詳しいことを申し上げる必要もないと存じますが、簡単にその最近の
調査の結果を申し上げますと、
問屋への
返品問題につきましては、
百貨店の
売れ残り品、売れ行きの悪かつた
商品というようなものを返すこが
相当ございます。しかも
季節末、
百貨店の
決算期などにそのことがございます。
季節が過ぎました場合に、その
季節の
品物を返されるということは、
問屋にとりましては非常に迷惑なことでございますが、そういうことが
相当あるようでございます。ただこれらの
返品はどの
百貨店も
行つておるわけではございませんが、一部の
百貨店におきましては、こういう
返品をいたしますことによ
つて、豊富な
良質商品はこれを確保したがら、
商品の
回転率を高め、資金の
効率化、利潤の増進というようなことをはか
つておる
事例が多いわけでございます。これは言うまでもなく、
問屋に対する非常な不当な
やり方でございますし、また間接的に
一般小売業者も
競争上において不利な
立場に立たされることになるわけでございます。
それから
手伝い店員につきましては、これはかなり
相当に
手伝い店員制度を利用しておるようでございまして、たとえばある
百貨店などにおきましては、
店員三人の中で一人、つまり三分の一が
手伝い店員であ
つて、
正規の
店員は大勢いる中で三分の二し
かいないというような
状態でございます。それから前のときの調べと比べまして、いわゆる
正規の
店員を大分減らしまして、それを
手伝い店員の
増加によ
つてまかな
つておるというようなものもあるわけでございます。この
手伝い店員につきましては、実は一概には申せないのでございますが、
問屋の
利益、
問屋が
自分の納めた
品物をできるだけ売りさばくということのために、
手伝い店員をむしろ
問屋の方から進んで出すという面もないではございませんが、しかし一部の
百貨店では、こういう
手伝い店員の供出を強制をしておるというような面もございまして、この点もはなはだおもしろくないことであろうと存じます。
それから
廉売会、これは最近におきましては、いわゆる
展示即売会ということはあまりないようでございますが、
廉売会というものが現在では
相当流行いたしておるわけで、つまり特別に安い品をつくることによりまして、他の
品物も安いかのごとく錯覚を起させるという底の
特別廉売会というようなものが、
百貨店に行われ、これがやはり
一般小売商いにいろいろな
意味において
影響を与えておることも事実のようでございます。一部
百貨店の
即売会商品の中には、
百貨店が
問屋に不当な要求をして、
問屋から買いたたき、またはすでに仕入れた
商品を値引きさして、そうして廉売しておるというようなものがかなりあるようでございます。こういう
廉売会が
問屋を
圧迫しまして、
一般小売商の
販売にかなり
影響を及ぼしていることも認められるわけでございます。大体昨年の暮れまでに調べました
状態のうちにつきまして、
百貨店が二十七年の
警告をよく守
つておるものもございまするが、全体を通じて申し上げますると、この
警告は
予期通りに遵守されておるとは言いがたいような実情でございます。
これに対しまして、それでは
独禁法をただちに発動してびしびし
取締るべきではないかという御
意見が十分おありのことと存じます。この点は実はわれわれとしましては昨年の募れの
調査以後、その今後の
やり方につきましては鋭意
検討中でございます。手ぬるいという御
批判もございましようが、なおこの問題につきましては今後大いに
検討いたしまして、しかるべき手段に出たいと
考えておるわけでございます。ただ二十七年の
警告、それから不当な
経済力による
弱小企業への
圧迫というような問題は、昨年の九月の
独禁法改正ではつきりいたしたような
関係もございますし、なお、二十七年の
警告が、
デパートの
首脳部の方には徹底してお
つても、下部の
職員、
従業員等にはあまり徹底しておらないというような面もまだございますので、今後は
公取といたしましては、この
調査の結果、並びに
小売業なり
問屋の方面から
公取に訴えて参りました場合には、
独占禁止法の線に沿いまして、問題になり得るものはどんどん取上げて参りたいと思います。
なおそういう個々の
違反の処理と並びまして、先ほど申しました
改正法による、「
自己の
取引上の
地位が
相手方に対して優越していることを利用して、正常な
商慣習に照して
相手方に不当に
不利益な
条件で
取引すること。」ということはきわめて抽象的でございますので、
デパートの場合にはどういうものがこれに該当するかということをもう少し具体化いたしまして、それに基いて
取締りの
方針を立てて行きたいというふうに、実は
考えております。この点はちようど
百貨店問題と並行いたしまして、昨年から
下請業者に対する
親企業の
圧迫を何とか是正いたしたいと
考えまして、やはりその問題を処理するのは同じ
法律の同じ規定でございますので、これにつきましても何らか具体的な
基準をきめてそれに基いて
取締りをして参りたいということで、その後着々や
つております。この
デパート問題につきましても、ただいま申しました
基準を、一種の
解釈基準というようなことで、
公正取引委員会の内規というようなことで定めますか、あるいは一歩進みまして
改正独禁法で認められました、いわゆる不公正な
取引方法の
特殊指定という
制度を通じまして正式にこれを
指定をいたしまして、官報に告示をいたすことによ
つて、
一般の
デパートその他の
業者にその
基準で
取引をしてもらうようにいたしますか、この点はなお
検討中でございます。先ほ
ども申したように、
公取もいろいろなことをや
つておりますもので、はなはだ歯がゆいというふうにお
考えであろうと思います。この点は私
どもといたしましても、まことに申訳ないと思
つておりますが、ただいまわれわれが
考えておりますのはそういうことでございますし、その
方針に基いて今後着々と問題を取上げて参りたいと
考えております。