○
記内政府委員 商品取引所法の
提案理由につきましては先般御
説明申し上げた次第でございまして、その際もごく概略の御
説明は申し上げてあるのでございますが、
商品取引所法は、何と申しますか、なかなかわかりにくい
法律にな
つておりますので、この機会に、
商品取引所自体の実体、それから今回の
改正につきましてのおもな
要点を御
説明申し上げまして、御理解に資したいと考える次第でございます。
商品取引所と申しますのは、古く明治の時代から行われておりまして、いわゆる
株式取引所と並びまして、日本の
取引所の主要な部門を占めてお
つたわけでございます。
商品取引所は、いわゆる
特定の
商品を指定しまして、それの
売買の
便宜をはかるということが目的でございまして、
特定の
商品の
生産者及び
販売業者その
利用者が集りまして、
会員組織によ
つて取引所を
設立し、その
会員もしくは
仲買人によ
つて取引所で指定された
商品を
売買するということに相な
つております。
一般の
会員もしくは
仲買人以外の者でありましても、
仲買人を通じまして
取引所においてその
商品を
売買することもできるということに相な
つておる次第でございます。これによりまして、本来ならば、たとえば
綿糸でありますれば、
綿糸の
売つた買つたというものは
相対売買でやるということになるのが普通でありますが、
取引所に上場されておるものにつきましては、その
取引所においてその
売買を実施いたしまして、
大勢集つて大きな
取引を全部
取引所において行うということによ
つて、その
相場というものが刻々にわかるというふうな状態におきまして、
一般の
現物の
商売につきましても、それを目安に置いて
取引ができる、今の
相場というものがどの
程度のものであるかということを頭に置いて、それ以外のものにつきましても
取引ができるというふうな
一種の公の
相場ができますと同時に、それを中心としまして、
商売をいたします者が安心して、
自分がごまかされたのではないか、あるいは高く買い過ぎやしないか、安く売り過ぎやしないかというふうなことの懸念を除くような
機能を持
つておるわけでございます。さらにまた
商品取引所の
売買は即座に
受渡しするものばかりではございませんで、六箇月先のものまで
売買ができることが
原則に相な
つております。従いまして現在の
売買におきまして、六箇月先の
受渡しができる
商品についても
売買をいたしまして、その六箇月先の
相場というものを予測できるような
態勢に相な
つております。従いましてこの
長期の
相場というものを利用いたしまして、その間における
価格の
変動、
相場の
変動というものを逃れることができることにも相な
つております。従いまして、たとえば
綿糸を買いまして、これを織物に織り上げまして販売する
機屋さんが、現在の
相場で糸を買いましても、それを織り上げて販売する時期はこれまた五箇月先、六箇月先になるわけですから、その際にはその五箇月先、六箇月先の
相場というものはま
つたく不明であります。そこで今日
買つた糸がたとえば一ポンド二百円しておりましたものが、先に参りまして百五十円に下りますと、たちまち五十円の損をすることになるわけであります。ところがこの
取引所を利用いたしまして、今日二百円の
相場のものを買
つておきまして、これを六箇月先のものとして百九十五円という
相場で売
つておきますと、大体
現物の
相場と
取引所の
相場とは並行しておるわけでございまして、今日予想したのが百九十五円でありましても、六箇月先には
現物の
相場と相なるのでありまして、百五十円ないし百四十五円というふうな
相場にな
つておりますから、従いましてこれをそのときの
相場の百五十円で買いもどしましても、ここに
取引所の
売買におきましては五十円ないし四十五円の
利益ができるわけであります。
商品の
現物の方におきましては五十円の損をいたしますが、
取引所においては五十円の
利益を得るということによ
つて、この
機屋さんは糸の
相場の点においては損益はなくなる。従いまして、
あとは
加工賃だけが
利益を得ることに相なるわけであります。いわゆる掛けつなぎの問題でございまして、
一種の保険的な
作用を営んでおるわけであります。
こういうふうな
仕事を
商品取引所というものがいたしておるわけでありますが、こういう公の
機能を持
つておりますだけに、この
商品取引所の
仕事自体につきましては、非常に
信用を重んずる仕組みにな
つておらなければならないのでありまして、現在の
法律のもとにおきましても、
商品取引所の
信用を維持するために必要ないろいろの
規定を置いておるわけであります。と同時に、そういうふうな
作用を営む
売買でありますので、いろいろな手続きにおいて相当複雑な
組織なり
運営なりがいたされておるわけでございまして、相当
法律の上におきましても、厳密な
規定が設けられておる次第でございます。御
承知の
通り、この
商品取引所法は三年前に制定に相な
つたのでございますが、当時はいわゆる
占領中でございまして、いろいろその方面の指示によりまして、現在から見れば相当不適当なような
規定が多分にあり、また不便なような
規定も相当ございました。そこで三年間の
取引所法の施行の実績にかんがみまして、この
法律を
改正して現在の国情に
合つた、また
経済事情に
合つた法律にいたしたいというのが、今回の
改正の根本の
趣旨でございます。
改正の
要点は、大体
三つにわけられるかと存ずるのでありますが、第一は
現行の
取引所の取締りを強化するという
関係でございまして、お手元に配付いたしました
要綱におきまして、第一、第二の点がそれでございます。現在におきます
商品取引所法の
設立が、自由にな
つておりますのを
許可制にする、また
定款、
業務規程の
改正が自由にな
つておりましたのを、これを
認可制にするということによ
つて、この
監督を厳重にするというのが第一点でございます。
それから
あとの
相当部分、ことに
要綱におきましては第三から第十一までは、
取引所内におきますいろいろな手続あるいは
組織等につきまして、
事務を簡素化したり、あるいは便利にしたりということで、
取引所を
運営して参りますのに都合のいいような
改正をいたした次第でございます。この点におきましては、
取引所側ともいろいろ相談をいたしまして、
取引所の
運営のやりやすいようにみんなの意見を徴しまして、十分な検討を加えて
改正し、
取引所の
業務のやりやすいような方向に持
つて参
つた次第でございます。
第三の点は、十三以下にあります点でありまして、いわゆる
占領中でありましたので、いろいろ煩瑣な
規定あるいは不必要な
規定、道徳的な
規定というふうなものが相当ございました。また今日の法制の
建前から申しますと、いろいろ感心しない
規定なども相当ございましたので、それらの条章を整理いたしまして、近代的な、現在行われております
一般的な
法律の形に改めて参るというような、単なる条文の整理の問題、この
三つになるかと思うのであります。なお
罰則の問題も若干ございますが、これは現在の
罰則、
価格の
変動に応じまして
罰金刑を若干
引上げたという点でございます。
まず
要綱の第一について御
説明申し上げますと、現在の
商品取引所法は、いわゆる
自由設立を
建前といたしておりまして、ただ
政府の
登録を受けなければならないということにな
つておりますが、最初に申し上げましたような、
取引所の
公共的機能と性格とにかんがみまして、これが投機の市場にならないように、また健全な
取引ができないというふうなおそれのないように、
設立について
許可制にいたしたということでございます。もちろん現在まで
商品取引所は、全国では二十の
取引所が設けられておりますが、大体歴史的に見まして、昔からあ
つたところにできたのが大部分でございます。中には必ずしもそういう歴史を持たない地帯においても、
取引所ができたものも若干ございます。大体
取引所としては現在で出尽しておるわけでありまして、これから出て参るものは、いろいろ問題を含んでおる
取引所が多かろうと考えるわけであります。そういう
意味におきましてこの
許可制をしきましても、特にこれによ
つて不都合を生ずるというふうなこともないものと考えておる次第でございます。
要綱の第二は、
定款及び
業務規程——業務規程と申しますのは、
取引所における
売買取引に関する
準則、どういう
方法で
売買をするかというふうなことを定めているわけでございます。また
受託契約準則、
一般の
得意先と
仲買人との
売買取引に関する
準則でございますが、これらの
変更は、ま
つたく
取引所の自由にまかさられてお
つたわけでございますが、先般来申し上げておりますような
取引所の公共的な性格にかんがみまして、公正な
相場ができるように、また
過当取引が行われないように、また
受託者が安心して
売買ができるようにという見地から申しますと、こういうふうにま
つたく
自由放任にまかされておる
——当初
設立の際には、いろいろ指導をいたしまして、これのある
程度の
監督もできるわけでありますが、爾後においてこれを
変更する場合には、ま
つたくこれを阻止する手段もございませんので、
必要最小限度の
監督規定を整備いたしますために、
定款の
変更につきましては、全部これを
認可制にいたします。
業務規程の中では、特に
政令で指定する
重要事項の
変更については、
主務大臣の
認可を受けるようにというふうに改める次第でございます。
定款と申しますのは、いわゆる
取引所の憲法に類するものでありまして、そうたびたび
変更するものではないと存じます。従いまして、これが
変更の
許可制度になりましても、重要な問題にはそう支障はないじやないかというふうに考えておりますし、
業務規程については、いわゆる
政令で指定するような
重要事項だけを
認可制にいたしたいというふうに考えているわけでございます。最初に
政令で指定しよりとするものは、
売買取引の種類の
変更、これはいわゆる
格付取引か
銘柄別清算取引であるかというふうな、
売買方法の
変更を
認可制にいたしたい。また
売買取引の
期限の
変更、すなわち
原則としては六箇月までの先物を
売買できることに相な
つておりますが、場合によりその
取引所の
商品あるいは種類、
数量等のいかん、また
過当取引のおそれがあるというふうにつきましては、その
期限を若干短縮して、あまり
長期のものを
売買させるのはおもしろくないという場合もあるわけであります。従いまして、そういう
意味において
売買取引の
期限の
変更を
認可制度にしたい。また
現物を受渡すこともできるのでありますが、その
受渡し場所を設置する地域を
変更するという場合に、
認可制度にしたいということでございます。
要綱の第三以下は、先ほど申し上げましたように、
取引所内部でのいろいろな
組織、あるいは
運営の
方法についての、
取引所の
便宜をはか
つた規定でございます。
現行法では
会員、
仲買人は
一定金額以上の
純資産を持
つておらなければ、
会員、
仲買人になることができないということにな
つておりますが、この場合におきまして、
最低純資産額は、いわゆる
会員、
仲買人とな
つて売買する際の
取引の
信用を測定する基準とな
つてお
つたのでございますけれども、さらにこれを
取引の担保として活用したいという
意味合いを考えまして、同じ
取引所の
会員でありまして、たとえば
綿糸と
毛糸がありました場合に、二つ以上の
商品を取扱
つたり、あるいは東京と大阪の両方の
取引所に
関係するというような場合におきましては、その
最低純資産額を
一般の
会員よりは
引上げる。それによ
つて両方で問題が起きた際に担保に引当てることができるようにというふうに、
定款で定めることができるようにいたしたいというのが
改正点であります。
要綱の第四にありますのは、
会員が死亡いたしました際に、その
相続人がはたして死亡した
会員の
権利義務を受継ぐのかどうかが、現在の
相続法のもとにおきましては、不明確でございます。そこでこの相続によ
つて権利義務を受継いだ場合におきましては、当然死亡した
会員の
権利義務を承継するということにいたした次第でございます。
第五の点は、
会員が脱退する場合に、従来六十日以上の
予告期間を置かなければならないということにな
つておりましたが、今度は三十日に短縮してさしつかえないということで、これを三十日に改めようといたしました。
第六においては、
現行法では脱退した場合の
仲買人は、その
売買の
取引が残
つておりましても、
自分で始末ができないのでございますが、これは
委託者の面から見ますと、非常に不便でございます。従
つて脱退した
仲買人でも、なお未決済の
売買取引があります際には、その分を処理する
範囲内では、従来
通り仲買人としての
仕事ができるということにいたした次第でございます。
次に第七では、
会員の
信認金、いわゆる
一種の
保証金でございますが、
会員の
信認金、
仲買保証金及び
売買証拠金といたしましては、
原則は現金を
取引所に供託することになるわけでありますけれども、そのほかに
有価証券をこれに提供してもさしつかえないということにな
つておりまして、国債、
地方債、
証券取引所に上場されている社債または株券のうちで
主務大臣の承認を受けて指定したものは、従来これに充でることができることにな
つておりました。しかしこれでは
範囲が狭いので、さらにこれを拡張いたしまして、特別の
法律によ
つて法人の発行する
債券、たとえば
割引興業債券、
割引農業債権、
商工中金債権というような
債券、あるいはまた
政令で定めます、たとえば
銀行法に基づく銀行の株券は、
商品取引所に上場されておりませんでも、
信用力も相当ありますので、
有価証券として供託できるというふうにいたして、
範囲を拡大しようという
趣旨でございます。
第八は、
売買証拠金につきましては、従来から
倉荷証券の代用が認められておりましたが、その
範囲を拡大いたしまして、たとえば
綿糸と
毛糸が上場されております場合に、
綿糸の
倉荷証券ばかりでなくて、
毛糸の
倉荷証券も
綿糸の際の
売買証拠金にすることができるというふうにいたしたいという考えであります。
第九は、
現行法では
議決権の
代理行使をすることができる者は、
会員に限られてお
つて、
会員の代理、親戚、あるいは法人でありました場合には
特定の者以外は、
代理議決ができなか
つたわけでありますが、今度はその
代理議決を書面もしくは代理人によ
つて拡張してもさしつかえないということにいたして、簡便にいたした次第であります。
第十は、
現行法では
商品市場、たとえば
綿糸市場において
売買取引ができる者は、通産省あるいは農林省に備えつけてあります
登録簿に
登録してある者でなければならないということにな
つておりましたが、今回は
登録制度が全部廃止になりまして、簡素化いたしましたのに応じまして、
会員であればだれでも
売買できるというふうにいたした次第であります。
第十一は、
仲買人が
一般の顧客から
委託手数料、
委託証拠金を取立てますのは
売買取引の
委託の際ということにな
つておりますが、
委託の後であ
つても、決済が済んでからでもこれは取立ててさしつかえないということにいたした
規定でございます。
第十二は、先ほど申し上げましたように、
罰則について金高を
引上げるというふうにいたしまして、
証券取引所法との権衡をと
つた次第でございます。
第十三は、先ほど申しました条文の整理の問題。
第十四は、いわゆる附則におきまして現在
設立されております二十の
商品取引所は、この
改正法律になりまして
許可制を実施いたしました際におきまして、当然
許可を受けなくても
商品取引所としての
機能を持つ、
認可を受けたものと同一の扱いをするという
経過規定とな
つておる次第であります。
この
法律はここまで提案するに至りますまでには、各
取引所ともよく相談をいたしまして、その連絡を緊密にいたしまして研究いたしました結果、こういうふうに提案した次第でございますが、なおこれと相似た
法律といたしましては、御
承知の、大蔵省の所管にな
つております
証券取引所法がございますが、これにつきましては昨年の春の国会におきまして、すでにほぼこれと似たような
制度におきまして
改正が行われております。あるいは
監査規定等におきましてもこれよりも厳重にな
つておる面があろうかと思うのであります。業界の
取引所と
一般大衆の
取引所との間に若干の違いもあろうかと思うのでありますが、
証券取引所法ほどの厳重な
監督をいたしておりませんけれども、まずまずこの
程度の
監督であれば十分その適正を期せられるのじやないかというふうに考えておる次第でございます。
以上、いささか内容を御
説明申し上げた次第であります。