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加藤(清)委員 おとなしい
委員長の命令でございますから、なるべくその
委員長の仰せに従いまするが、大体この問題は与える影響が非常に大きい。そこでこれに対しては国会対策にしても、あるいは議運の方にいたしましても、しつぽりと
委員会でやるようにということで、本
会議にせつかく上げるべきものを、しつぽりやるためにここへ移されたのでございまするから、私はこれが各党一致してきまつたことでございまするので、しつぽりと聞きたいと思うわけでございます。
まず第一番に被害の問題でございまするが、もしこの
法律が通りましたならば、一体日本としてはどの
程度の被害をこうむるかという問題につきまして、
政府の御答弁では、大体三百四十万ドルから五百万ドルであるというお答えでございました。しかしながら日本商工
会議所の発表によりますると——もつともこれは対象とパーセンテージが違えば別になるのでございまするが、少くとも八百万ドル以上という
数字を出しておるのでございます。私はその
数字の相違を云々するわけではございません。いずれにいたしましても、この
数字は日本の軽目羽二重に対しては莫大な影響を及ぼすということでございます。そこで、この問題が事実このまま行われることになりますると、
政府の輸出振興ということは、絹においてはから念仏に終
つてしまうということでございます。それのみならず、
先ほど同僚委員からも
お話がありましたように、去年六十年来の霜害で苦しみました百姓、お蚕さんを涙とともに川へ流したお百姓さんは、今度また春蚕の掃立を前にいたしまして、これを見合わさなければならないという状況にな
つている。これに対して
農村では、
政府の対策に対して怨嗟の声が満ち満ちている。私は先般来郷里にも帰りましていろいろ聞いてみました。その後陳情も来ておりますが、これに対して一体
政府としてはどういう対策があるのか。さればこそ農林
大臣の出席を要求したわけでございます。幸いにして農林省から来ていらつしやるようですから、この点農林省としてはいかなる対策をも
つて臨まれるかを承りたい。
先ほどお話がありましたように、買いたたきが行われるのみならず、掃立をも見合わさなければならないというこの状況、これを一体どうするか。それからまた、軽目羽二重がほとんどいかれるということになりますと、ただでさえ自転車操業で苦しんでいる機場を一体どうしてくれるかということなんです。機場の機械が自転車操業であればこそ、待
つておればこそ動いておるのでございますが、これが売れないということになれば、勢いほかのものに転向しなければなりませんが、
繊維局長御存じの通り、軽目羽二重を織
つていたものを急に重目の羽二重にしなさいとか、あるいは八端や銘仙にかえなさいと言
つてもこれはちよつとできません。一体これをどうしてくれるのですか。それにこれを商
つておりましたところの商社でありますが、さなきだに不渡り手形とか倒産商社が続出し、それが
繊維に固ま
つて、倒産商社の約四〇%は
繊維を扱
つている連中である。これはよく御存じのはずでございます。これが遂に扱えない、材料を扱
つていてもなお倒れて行く。それが金も扱えなければ、材料も扱えないということに
なつたら、一体これはどうなるのです。さればこそ私は先般来何べんもこの倒産商社続出の折柄、これに対する対策を承
つておつたわけでございますが、こういう悪材料がプラスされた今日において、一体
政府としてはどのような対策をも
つて臨まれるのでございましようか。通産
大臣のインテイズブだけではこれはとうてい乗り切れないのじやないか。そこでいんぎん丁寧は私は賛成でございますが、ほんとうに熱意を込めてこれを救うという対策があるかないか、これについて承るわけでございます。
それから片やアメリカに対する態度を、われわれが云々してみても始まらぬことでございまする。降車に向うかまきりであるならば、これはやむを得ぬことでございますが、それでもアメリカ経済にべつたりと依存している日本であるということは、向うもよう知
つているはずなんです。ところがMSAでどれだけくれるかはつきりわかりませんが、絹で一千万ドル近い金がやられたということになりますと、これはついついにな
つてしまうのです。そこで私は実にふかしぎでかなわぬのでございますが、向う側は太平洋のまん中で火のついた灰を降らして、日本の若い青年の頭をやけどさしておきながら、長年使いなれた絹をきようこのごろにな
つてから、やけどをするからそれは困ると言
つて、いかにヤンキー・ガールが横暴をきわめるからとい
つて、これはちよつと行き過ぎじやないか、私はそう思えてかなわぬのですが、
大臣さんはこれをどう
考えていらつしやるか。そこでこれは
政府だけじやない。もうすでに国民の声にな
つている。だからこそ商工
会議所の会頭の藤山愛一郎さんまでが、何とかしてもらわなければ困るじやないかという抗議文を出しておられる。民間でさえもなおかつしかりです。ましてやその責にあり、
業界の
指導育成に当
つているあなたでございますから、アメリカに対してはもそつと図太く対処していただかなければならないじやないか、こう思うわけでございます。
次に、同じようなケースがインドネシアにあるということを御存じでございましよう。これに対して
繊維局は一体どう
考えているのか。ジヤカルタ電によれば、すでにインドネシアの
政府は、綿糸も、化繊糸も、毛糸も、これは自分の国の
業界を守るために、自給自足のために、国内の販売までも
政府が統制する、今後の買付というものも、
政府が一切一括して行う、こういうことに相な
つているようでございます。これは
政府の方へ打電があつたかなかつたかは知りませんが、私はこの問題を商社筋からいち早く聞いているわけでございますが、こうなりますと、ライセンスをと
つておつたところはよろしゆうございますが、そうでないところは、おそらくキヤンセルに相なるではないかということは、これはだれしも想像のつくところでございます。こういう問題に対して、一体
政府の方へ通知があつたのかなかつたのか、もしあつたとするならば、これに対してどう対処されようとしているのでございますか。
以上申し述べましたようなケースは、糸へんの輸出につきましては間々あつたことでございます。燃えるからというようなことは初めてでございますけれ
ども、かようなクレームだとか、あるいは買わないとかいうようなことは間々あつたことでございます。これについての対策でございますが、私は
先ほど同僚委員の笹本さんのおつしやいましたことは、しごく大賛成でございます。こういう問題に対する対策の第一に、在外公館の中に、商売の上の専門家がいないということは、これは大きな痛手であると思いますが、
大臣はこれに対して将来どうしようとお
考えにな
つていらつしやいますか。私もこの糸へんに関しまして、諸
外国をまわ
つて参りました。公館へも
行つて参りました。ところが悲しいことに、例をパキスタンにと
つてみれば、短
繊維の印綿を買いつけるにあた
つて、このことを知
つている人はほとんどおらぬ。私は公館の方々の努力は十分に買います。ところがその効果の上らないことを私は遺憾に思うわけでございます。そこで、一体それをあちらではどうや
つているかというと、日綿の柳川さんや東綿の広瀬さんたちが、えらい努力してこれをカバーしておられるけれ
ども、遺憾ながら肩書が悪い。商社という肩書はどうにもならない。そこで将来でございますが、
繊維局の卒業生、これをもつと在外公館に出して活躍させる意思ありやなしや、それから
業界の専門家をして、公館の肩書とまでは行かぬにしても、顧問とか何とかいう、それに似たものをつけて、そうして
政府のいうところの輸出振興、特に糸へんに限らず、機械に限らず、何に限らず、そのような
措置をとるということは、これはすでに
外国でや
つていることなんです。うそも隠しもありません。インドに
行つてごらんなさい、ドイツの機械なんかには、向うのエンジニアがちやんとついて来て、しろうとのインド人でも使いこなせるようになるまでサービスとして
技術家がついて来ている。だから向うのものはよう売れてしまう。こういう点について、ほんとうに輸出振興策を言う
政府だつたならば、一体どう海外市場で努力しようとするのか、いくら輸出振興と言
つても、処女地帯というものはございません。すでに荒されている。そこへ割込んで行かなければならない日本の輸出振興の将来に対して、
大臣の確固たる信念と、具体的方針を承りたいわけでございます。
最後に
繊維の
技術について申し上げたいと思いますが、これは私が通産委員にな
つてからじやなくても、その前からも再三再四言われていることでございますが、
大臣はこの間の答弁の中にも、この可燃性織物、絹が燃えるからいけないと言われたことは初耳であるというような御答弁でございましたが、私はこの
委員会において絹が燃えるからいけないのだということについては、すでにバイヤーからよく聞いておりますので、再三申し上げたことでございます。ちやんと記録に載
つておるはずでございます。とにかく絹だつたら絹はどうしたらいいかといえば、今後の研究は燃えないようにすることなんです。綿だつたら縮まないようにすることなんです。毛だつたならば虫の食わないようにすることなんです。化繊だつたならばどうして吸湿性を保たせるか、どうして色仕上げをするか、こういうことなんです。いわば最終仕上げの研究が日本においては戦後、戦争中の空白のおかげで十年遅れておる。この最終仕上げをうまくやらないことには、どんなに
繊維を輸出するするとあなたがおつしや
つてみたところで、これはほんとうのから念仏に終
つてしまうわけでございます。ところがこの最終仕上げの加工についてはパテントをとるだけでも大したことだし、
設備をするのでも数億の金を要しなければワン・セツトも買えないという状況なんだから、これについて日本
政府は集中的に何らかの手を打つ必要ありやなしや、やる意思はないかということを私は口のすつぱくなるほど再三、再四申し上げたはずなんです。ところがこれは野党の悲しさと申しましようか、私の心から
繊維業界の発展を祈るこの気持が取入れられてはおりますが、その進み方が遅々としておる。まるで春日遅々たる悲しい現況だと思うのであります。なぜ私はこのことをそんなに悲しまなければならないかという一例を申し上げて終りたいと思いますが、この研究が
不足のゆえに、日本製品の綿織物がさる国のバイヤーに買われて、向うへ
行つて仕上げ加工をしただけでも
つて、これがサンフオライズだのエヴアグレーズだのとな
つて銀座の店を飾
つているじやないですか。その利幅を一ぺん
考えてごらんなさい。日本が原綿から長い間かか
つて仕上げておるものの期間と金利と労力とその得た利益よりも、最終仕上げで化粧しただけの相手方の利益の方がはるかに上なんです。一体これはどうするのです。毛についていえば、やれ香港のバツクだとか、三角貿易のおかげで、メイド・イン・イングランドということにな
つてしまうのです。仕上げの問題だけなんだ。それがまた銀座を横行して、目のきかない銀座マンは、これはメイド・イン・イングランドだ、けつこうなものだと言
つて買
つている。
その利幅たるや——これが原毛から仕上げの織物に至るまでの日本の努力、その利益、向うの努力とこれの利益、あまりにも努力と利益が行き違いにな
つておる。これに対して対処するのにはどうしても
繊維の仕上げ加工に努力せざるを得ない、工業
技術院云云という御答弁がこの前ございましたけれ
ども、工業
技術院にまかしただけではこの空白を取返すにはあまりにも幼稚であり、あまりにも日が遠過ぎる。そんなことを言
つておつたら日本の
繊維は——特に文化とともに進みつつあるこの
繊維は遅れをと
つてしまう。文化とともに生活があり、生活とともに
繊維があるというのはこれはもういにしえのことわざであ
つて、今日は
繊維の進歩というものが国民の生活を引きずり、服装を引きずり、あのフアツシヨン・シヨーを引きず
つているのだ。デイオールを引きず
つているのは
繊維の
技術なんです。これに対して一体工業
技術院にまかせただけでよろしゆうございますか。私をして言わしむるならば、このことで子供のころから苦しんで指先が染料でもうどうにもならなくな
つてしま
つているこれらの連中に、ちよつと
指導をすればけつこうエヴアグレーズぐらいのところには追いつけます。日本のエヴアグレーズはビリだといいますけれ
ども、こんなものは簡単にやれます。ただ惜しむらくは
政府はかような目のつかない第二次、第三次の輸出振興には過去においてあまりにも援助の仕方が足りなかつたのじやないか。過去においては、それでもよかつたかもしれないけれ
ども、
繊維か
技術とともに進み、文化とともに進んでいる今日においてはそれでは足りないじやないか。そうしてここに
技術振興を加えることによ
つて初めて
政府のおつしやるところの輸出振興が実を結ぶのではないか。今日幸いにしてこういうことが起きた。私はあえて幸いと言いたい。必要は発明の母である。
先ほどおつしやつたように、禍いを転じて福となすのは、この時なんです。この時に手を打
つて、当面の問題において混乱を起さないようにすると同時に長き将来にわた
つて繊維の輸出振興を今の愛知
大臣の折に、ひとつ確立していただきたい、こう思うわけでございます。要望とあわせて質問をしたわけでございます。