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1954-03-16 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十六日(火曜日)     午後二時十一分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 首藤 新八君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    始関 伊平君       村上  勇君    笹本 一雄君       長谷川四郎君    柳原 三郎君       加藤 清二君    中崎  敏君       川上 貫一君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局長)  中場 信彦君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月十二日  委員田中伊三次君辞任につき、その補欠として  坪川信三君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  加藤清二君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  加藤鐐造君理事補欠当選した。     ――――――――――――― 三月十二日  石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改  正する法律案内閣提出第九八号)  石油資源探鉱促進臨時措置法案内閣提出第九  九号) 同日  イラン石油輸入促進に関する請願(稻葉修君紹  介)(第三四〇一号)  電力料金値上げ反対に関する請願只野直三郎  君紹介)(第三四九九号)  東北、北陸地方電力料金値上げに関する請願  (只野直三郎紹介)(第三五〇〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月十三日  国営小林アルコール工場存置に関する陳情書  (第一七五九号)  中小企業に対する金融等に関する陳情書  (第一七六三号)  同  (第一七六四号)  同  (第一七六五号)  同  (第一七六六号)  同  (第一七六七号)  同  (第一七六八  号)  同(第  一七六九号)  同  (第一七七〇号)  同  (第一七七一号)  同  (第一七七二号)  同  (第一七七三号)  同  (第一七七四号)  同  (第一七七五号)  同  (第一七七六号)  同  (第一七七七号)  同  (第一七七八号)  同  (第一七七九号)  同  (第一七八〇号)  同  (第一七八一号)  同  (第一七八二号)  同  (第一七八三号)  電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第一七八四号)  同  (第一七八五号)  同(第一七八六号)  同(第一七八七  号)  同(第一七  八八号)  同(第一七  八九号)  貿易振興に関する陳情書  (第一七九〇  号)  イラン石油輸入に関する陳情書  (第  一七九一号)  石炭鉱業対策に関する陳情書  (第一七九三号) 同月十五日  肥料輸出会社設立反対に関する陳情書  (第一八五一号)  日中貿易促進に関する陳情書  (第一  八五三号)  中小企業に対する金融等に関する陳情書  (第一八五四号)  同  (第一八五五号)  同  (第一八五六号)  同  (第一八五  七号)  同  (第一八五八号)  同  (第一八五九号)  同  (第一八六〇号)  同  (第一八六一号)  同  (第一八六二号)  同  (第一八六三号)  同  (第  一八六四号)  電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第一八六五号)  同  (第一八六六号)  同  (第一八六七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  連合審査会開会要求に関する件  参考人招致に関する件  石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改  正する法律案内閣提出第九八号)  石油資源探鉱促進臨時措置法案内閣提出第九  九号)  貿易に関する件     ―――――――――――――
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず理事及び小委員補欠選任につきお諮りいたします。去る三月十二日理事加藤鐐造君委員辞任せられて、同日再び委員に選任せられましたので、同君を再び理事に選任し、小委員については従前同様といたしたいと存じます。また翌十三日、委員佐々木更三君が辞任せられて、加藤清二君が補欠選任せられましたので、同君を再び総合燃料対策及び地下資源開発に関する小委員中小企業に関する小委員にそれぞれ選任いたしたいと存じます。以上、決定するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 それではそれぞれそのように決定いたします。     —————————————
  4. 大西禎夫

    大西委員長 次に連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。過日の理事会で各派の理事各位に御協議願つたのでありますが、目下日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の批准について承認を求めるの件外三件を審議中の外務委員会に対して、本委員会といたしまして右各件については重大な関係を持つておりますので、連合審査開会を申し入れたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大西禎夫

    大西委員長 それではそのように決定いたします。  なお開会の日時は明日午前十時よりといたしますから御了承を願つておきます。     —————————————
  6. 大西禎夫

    大西委員長 次に小委員会参考人の件についてお諮りいたします。明日午後開会中小企業に関する小委員会において、参考人として商工組合中央金庫理事門司正信君より意見を聴取いたしたいとの小委員長よりの申出がありますので、これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大西禎夫

    大西委員長 それではそのように決定いたします。     —————————————
  8. 大西禎夫

    大西委員長 次に三月十八日午後の総合燃料対策及び地下資源開発の小委員会において、日本石炭協会会長高木作太君、日本石炭鉱業連合会会長武内禮蔵君日本炭鉱労働組合委員長阿部竹松君、日本鉱山労働組合書記長重枝琢已君電気事業連合会会長堀新君、日本鉄鋼連盟会長渡邊義介君、以上六名、翌十九日午後の同小委員会において、帝国石油株式会社社長田代壽雄君、石油精製懇話会会長佐々木弥市君、出光興産株式会社社長出光佐三君、全国石油協会会長森平東一君、日本ガス協会会長井口竹次郎君、大日本水産会会長平塚常次郎君、以上六名をそれぞれ参考人とし意見を聴取いたしたいとの小委員長よりの申出があります。  また十八日午前開会木材利用に関する小委員会において、鋼材クラブ理事長セメント協会会長全国建設業協会会長をそれぞれ参考人として意見を聴取いたしたいとの小委員長の申出がありますので、これをそれぞれ許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  なお参考人にその後変更がありました場合、その補欠選定等に関しては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大西禎夫

    大西委員長 それではそのように御一任願つたものと決します。     —————————————
  11. 大西禎夫

    大西委員長 次に去る十二日本委員会に付託されました、石油資源探鉱促進臨時措置法案及び石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案議題とし、その提案理由説明を求めます。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま議題となりました石油資源探鉱促進臨時措置法案につきまして御説明申し上げます。  国産原油生産量は、現在年間三十四万キロリツトル程度わが国原油需要島里の一割にも満たないのでありますが、石油資源重要性と現在の外貨事情における石油輸入外貨節約必要性とを考えますとき、国内石油資源開発促進することは、今日最も緊急を要するものといわなければなりません。  しかも昨年九月の石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会の答申にも見られるように、わが国の地質は豊富な石油の産出が予想され、探鉱部門への投資を大幅に拡大しさえすれば、国産原油飛躍的増産は必ずしも難事ではないと考えられますので、過般石油資源総合開発五箇年計画を策定し、まず二十九年度予算において、財政規模縮小の折にもかかわらず、石油試掘等補助金として一億三千万円を計上いたしたのであります。  しかしながらこの五箇年計画の線に沿つて石油探鉱を急速に実施するためには、補助金交付もさることながら、民間石油鉱業者資金が最大限に探鉱部門に投入され、しかもそれが国としても最も急を要すると認める地域に向けられることが必要であります。しかし石油探鉱には長期にわたり多額資金を必要とし、しかも多大の危険を伴うものでありますから、これを私企業の自由意思に放任しておきましては、探鉱投資の大幅な拡大を期待することは困難であり、またよしんば石油探鉱実施する意思能力を有する者があつたといたしましても、鉱業権を持たなければ探鉱実施することはできないのであります。もとより現行鉱業法においても、権利の上に眠ることを許さないための各種の規定がありますし、石油及び可燃性天然ガス資源開発法によつて補助金交付によつて探鉱促進することはできるのでありますが、石油探鉱の量と質の二面に国の意思を直接かつ強力に反映させるためには、いずれも不十分なのであります。  以上の趣旨によりまして、政府といたしましては、先般来石油探鉱の急速な実施促進するために臨時措置を講ずる法律の制定を意図し、その立案に鋭意努力して参つたのでありますが、今ようやく成案を得るに至りましたので、ここに石油資源探鉱促進臨時措置法案として国会に提出し、十分な御審議を仰がんとする次第であります。  法案内容につきましては、御審議途上、逐次御説明申し上げる所存でございますが、以下その概要について申し述べますならば、この法案は、石油探鉱を急速に実施することによつて石油資源開発をはかるため、地域指定して石油目的とする試掘権に関する制度について臨時特例を設ける等の措置を講ずることを規定しております。  すなわち第一には、石油資源開発をはかるため、探鉱を急速に実施する必要があると認める地域指定について規定いたしたのであります。この地域指定は、きわめて、重要な意味を持ち、この法案のすべての規定は、指定地域についてのみ適用されることとなります。第二には、指定地域内に存する石油目的とする試掘権に係る試掘権者権利の上に眠ることを許さないために、施業案変更勧告及び命令存続期間試掘権譲渡等について鉱業法特例規定いたしたのであります。第三には、指定地域内に存する石油目的とする鉱業権に係る鉱業権者に対し、石油探鉱を急速に実施するため特に必要があると認めるときは、業務または経理改善について勧告をすることができる旨を規定いたしたのであります。第四に、指定地域内に存する石油目的とする鉱業権に係る鉱業権者に対する業務または経理に関する検査等この法案内容を円滑に運営するために必要な諸規定を掲げたのであります。なお最後に、この法案は十年以内に廃止する旨を規定し、臨時立法であることを明らかにいたしました。  以上がこの法案提案理由及びその概要でありますが、なお最後に一言申し上げたいことは、欧米各国とも国情に応じて石油開発については減耗控除石油関税探鉱国営等強力な助成案により多大の努力を払つておるのでありまして、この意味におきまして、わが国としましても事情の許す限り石油資源開発に関する施策を強力に推進する必要が痛感されるのであります。この法案が、御審議の結果幸い可決され、公布施行されますならば、必ずや石油探鉱の急速な実施促進され、その積極的な開発に資し、ひいてはわが国経済の自立、公共福祉増進に寄与すること多大なものがあると信ずる次第であります。  政府といたしましては、この法案の成立により、別途提出いたしました石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案と相まつて、充実せる石油行政実施に努力する所存でありまして、何とぞこの意図するところを了とせられ、この法案につき慎重御審議の上、御賛同あらんことを切に希望いたす次第であります。次にただいま議題となりました石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  石油及び可燃性天然ガス資源開発法は、石油及び可燃性天然ガス資源を合理的に開発することによつて公共福祉増進に寄与するため、石油及び可燃性天然ガスの特性に応ずる掘採の方法を定めるとともに、その探鉱及び掘採の促進をはかることを目的として制定され、昭和二十七年六月三十日から施行されたのでありますが、その後一年半余の経験から見まして、政府といたしましては、同法の一部を次の二点について改正する必要があることを痛感するに至つたのであります。  すなわち第一には、探鉱または二次採取法に対する補助金交付方法であります。現在これらに対する補助金は後払いすることになつておりますが、石油及び可燃性天然ガス探鉱または二次採取法実施には、長期にわたり多額資金を必要とし、しかも危険度が著しく大きいために、所要資金銀行等からの融資に依存することはほとんど不可能でありますので、探鉱または二次採取法の急速な実施促進するためには、これらに要する資金の融通を円滑にするために、補助金後払い制度を廃止することが必要であります。  第二には、探鉱または二次採取法に対する補助金交付に係る納付金限度であります。現行法では、補助金交付決定を受けた鉱業権者がその決定の対象となつ試掘工事によつて油層を発見し、または二次採取法実施によつて産油量の増加を見た場合に、国庫に納付する納付金はそのときまでにその鉱業権者に対して交付された補助金総額限度とすることになつておりますが、この納付金は、わが国全体を平均した探鉱または二次採取法成功率発見油層埋蔵量及び産油量等基礎として、交付した補助金総額相当する金額国庫に納付されるように算定されておりますので、鉱業権者ごと納付限度が存在する限り、結局国全体としては交付した補助金の一部に相当する金額しか納付されないことになります。このことは、貴重な国の財政資金によつて補助する趣旨に反することになりますので、この納付限度を廃止し、財政収支の均衡に寄与することが必要であります。  以上の趣旨によりまして、政府といたしましては、過般来同法の一部改正を意図し、今ようやく成案を得るに至りましたので、ここに石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案として国会に提出し、御審議を仰がんとする次第であります。  法案内容につきましては、御審議途上逐次御説明申し上げる所存でございますが、以下その概要について申し述べます。第一に、探鉱または二次採取法に対する補助金後払い制度を廃止したこと。第二に、探鉱または二次採取法補助金交付決定を受けた者の当該探鉱等を完了した場合の届出義務について規定し、これに対する違反について罰則を設けたこと。第三に、探鉱または二次採取法補助金交付に係る納付金限度を廃止したこと。第四に、補助金後払い制度の廃止に伴い、補助金の的確な使用を確保するために、補助金交付を受けた者に対しては経理状況についても報告を徴し、または立入り検査をすることができるものとしたこと等であります。  以上がこの法案提案理由及びその概要でありますが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことを切に希望いたすものであります。
  13. 大西禎夫

    大西委員長 本案に関して政府当局より補足説明の申出がありますのでこれを許します。川上政府委員
  14. 川上貫一

    川上政府委員 ただいま御説明がありました石油資源探鉱促進臨時措置法案の要綱につきまして簡単に御説明申し上げます。  先ほどお話がありましたように、現在石油利用につきましては、大体年間九百万キロリツター程度需要があるわけでございます。それに対しまして国内におきましては、大体三十四、五万キロリツター程度しか生産されておりません。外貨関係等からいたしまして、この際急速にこの開発をはかる必要があるのでありますが、その開発をいたしますには、事前におきまして探鉱関係調査なり、そういつたことをどうしてもしなければならないのでありまして、特に鉱物のうらで石油資源につきましては、調査とかあるいはその試掘とか、こういう探鉱面が最も大事でありまして、この点が解決されますならば、あとの採鉱とかそういうものはそれにつれて自然になし得ることでありますので、私どもの方としましては、この際探鉱に対しまして最重点的にこれを促進する必要があると考えたのでありまして、この法律も、その趣旨によりまして、探鉱関係促進というものを最重点的に取上げまして、これを早急に進めるという趣旨のものでございます。現在欧米におきましては、大体探鉱費というものは、その企業体の総収入の三割程度探鉱関係に使つておりますけれども、日本におきましては、たとえば帝国石油におきましても、一割くらいしか探鉱費資金をまわしておりません。従いまして、各企業体におきまして余裕がありますならば、極力欧米並に、少くとも三割くらいまでに資金をさいて、そうして探鉱を急速に進める必要があるんじやないかというふうに考えられるのであります。     〔委員長退席小平委員長代理着席〕 またわが国におきまして、実際どの程度石油資源があるかという問題につきましては、難い通産大臣諮問機関としまして石油開発審議会というのがございますが、これが大体一年にわたりましていろいろ調査をいたしました結果は、それ以前からも相当調査いたしておつたのでありますが、少くとも相当量のものが埋蔵されておりまして、これに対しまして相当資金をかけますならば、五箇年後におきまして百万キロリツトル程度増産がなし得るということに相なつておりますので、かたがたそういうようなことからこういう法律を出しまして、早急に試掘増進いたしたいと考えたわけでございます。  この法律内容といたしましては、先ほどお話がありましたように、第一は現在の鉱業法におきましては、たとえば試掘施業案等につきましては、変更勧告とかあるいは命令とか、そういうようなことがなし得ない状況なつておるのでございますが、この法律によりまして、そういう試掘施業案変更勧告に対しまして、従わない場合におきましては、命令によつて措置するというような措置を講じたいと考えておるのであります。すなわち通商産業大臣石油資源開発をはかるため、探鉱を急速に実施する必要があると認めて、指定しました地域内に存在します石油目的とする試掘権にかかる試掘権者の届け出ました施業案、要するに指定地域内における石油試掘権者が届け出ました施業案が、その鉱区の油層の状態を確認するため不適当でありますときは、通商産業局長がその施業案変更勧告または命令することができるものといたしまして、当該試掘権者施業案変更命令に従わない場合は、試掘権延長許可しないということにしたいということが一点であります。これは現在の一般鉱物あるいは石油についての鉱業法特例をなすわけであります。  第二は、試掘権存続期間短縮であります。現在試掘権につきましては、一般鉱物につきましては二年、その延長につきましても、一般鉱物は二回延長することができまして、その延長期限も一回につきまして二年ということになつております。石油につきましては、その延長の場合は三回ということになつておりますが、やはり石油試掘を早急に進めるというような関係から、この期限につきましても一年ということにいたしまして、これを一回ことにさらにまた一年というふうにしたいと考える次第であります。全延長期限につきましては、現在と同じように八年ということになりますけれども、結局その回数が非常に多くなるわけでありまして、それだけ試掘について期限的に非常に促進されて行くことに相なるわけであります。  第三に、試掘権譲渡に関する協議及びその決定規定を置いておるわけでありまして、指定地域におきまして試掘権者が三箇月以上事業に着手しない場合、または引続き三箇月以上事業を休止しておる場合には、その地域探鉱を的確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有する者は、通商産業局長許可を得て、試掘権譲渡について試掘権者協議することができるものとし、協議をすることができず、または協議がととのわないときは、通商産業局長決定を受けることができるものとすることということにいたしたいと思います。これは現在の鉱業法にはないのでありまして、要するに試掘権者が三箇月以上事業に着手しない場合、または引続いて三箇月以上事業を休止しておる場合におきましては、一定の能力、すなわち経理的な基礎及び技術的な能力を有する者は、通商産業局長許可を得まして、現在の試掘権者協議いたしまして、譲り受けをしてもらつて試掘増進しようというわけであります。もしその協議がととのわない場合におきましては、通商産業局長がその決定をするというわけでございます。これも今申し上げましたように、現在の鉱業法特例でございまして、試掘を急速に増進したいという建前から、こういう規定を置いたわけであります。  以上申し上げましたように、鉱業法特例としましては三点、すなわち試掘施業案変更勧告及び命令試掘権存続期間短縮、それから試掘権譲渡に関する協議及び決定、こういう新しい法律によりまして、石油試掘を早急にやりたいというわけでございます。  その次には、これも現在の鉱業法にはございませんが、現在実際問題としまして、石油試掘ができるにかかわらずやつていないというような場合におきまして、その業務または経理改善に関して勧告をすることができるという規定をいたしました。業務または経理改善に関する勧告をいたしまして、その結果勧告に従わないで、なおも試掘をやらないような場合におきましては、試掘権施業案変更とか、あるいは命令とか、あるいはその存続期間についての延長を認めないとか、あるいは譲渡させるとかいう措置を講じたいと考えておるわけであります。すなわち石油探鉱を急速に実施するために、特に必要がある場合におきましては、その指定地域内の石油鉱業権者に対しまして、業務または経理改善に関する勧告をしたいというわけでございます。これはたとい助成金をもらつていましようが、あるいはもらつていますまいが、そのいずれにかかわらず、少くとも指定地域内の鉱業権者に対しましては、この改善勧告をなすことができるというふうに考えておるわけでございます。  それからこれに関連しまして、現在の鉱業法におきましても、業務または経理に関する報告なり検査なり、そういうことはできない建前なつております。この法律によりましては、この法律の施行に必要な限度において、指定地域内における石油鉱業権者に対しまして業務あるいはその経理状況に関する報告をなさしめ、またはその職員に業務もしくは経理状況、もしくは帳簿書類検査させることができるものとするという、いわゆる業務あるいは経理監査を行い得る規定をつくつたわけであります。この規定先ほど申し上げましたように、勧告と同じものでありまして、たとい助成金をもらおうがあるいは助成金交付を受けまいが、いずれにしましても指定地域内における鉱業権者に対しましては、業務あるいは経理監査をなし得る規定を置いたわけでございます。  なおその他の規定といたしましては、この要綱にありますように、との法律規定によりましてなしました処分に不服のある者は、通産大臣に対しまして異義の申立てをすることができる制度を置いたとか、あるいは変更命令とか、あるいは報告を怠つたとか、虚偽の報告をしたとか、あるいは検査を拒んだとかいう場合におきましては、ほかの法律と同じように罰則を設けるわけでございます。  有効期限としましては、一応十年というふうと考えましたが、これは五箇年計画と大体見合いをいたして、十年くらいが適当ではないかと考えて、十年ということにいたしたわけであります。いずれにしましても、この法律につきましては、試掘だけを問題にしておるわけでありまして、あるいは採油とかそういう問題につきましては、別にこの法律におきましては、これを促進させるという法律にはなつていないわけでありますが、先ほども申し上げましたように、石油につきましては他の鉱物と違いまして、その重要性におきましてはどこまでも試掘がその大部分でありまして、試掘だけ成功すればあとはきわめて容易であるという観点から、この試掘に対しましてのみこれを強力に推進したいという考えでございます。  それからもう一つ、石油及び可燃性天然ガス資源開発法の一部を改正する法律案につきましては、先ほど提案理由説明でも十分尽きておるかと思うのでありまして、むしろ要綱の方は簡単に書いてありますが、現在助成金後払い制度なつておりますので、これを前払い制度にしたい。この前払いのときにおきましては概算払いということに結局なると思うのですけれども、現在石油探鉱地帯は主として非常に寒い雪国の方面が多くありますので、なるべく早く政府の金を出した方がそれだけ促進される。あるいは金融の面から見ましてもその方がいいんじやないかというふうにも考えられますので、前払い、概算払いという制度にしたいという考え方であります。  それからもう一つは納付金限度の廃止であります。現在成功した油田からは一定の歩合によりまして政府助成金の返却を求めているのでありますけれども、これが交付された助成金限度において、その鉱業権者だけにとどまつております。そういたしますと、成功しないものもひつくるめますと、結局政府が出した助成金は全部返つて来ないことになります。しかし一方におきましては、一ぺん当りますと非常にもうかるごとになりますので、そういう二回からいいましても、もうかる業者がある程度負担していた、たいて、政府の出しました助成金が大体全部返つて来るようにした方が、現在の財政の状況等からいいましてもいいんじやないかと考えまして、この納付金限度の廃止を一することにいたしたわけでございます。  以上きわめて簡単でございましたが、この法案内容につきまして御説明申し上げました。なお逐条説明につきましてはまたの機会にいたしたいと思います。
  15. 中崎敏

    ○中崎委員 この石油探鉱といいますか、試掘ですか、試掘に対する指定地域はどういうふうにされる考えであるか、承りたい。
  16. 川上貫一

    川上政府委員 この指定地域につきましては、今回の法律においては一条に載つているわけでありますが、告示によつて毎年々々行つて行きたいというふうに考えておりまして、その告示は何県何郡何村字どこどこというような書き方ではなくて、いわゆる鉱区図によつて発表して行きたいと考えております。これは手続の問題でありますけれども、その指定地域につきましては、現在石油及び可燃性天然ガス資源開発審議会というのが通産大臣諮問機関としてありますので、ここで技術的にいろいろ検討いたし、その上で決定いたしまして、先ほど申し上げたような手続によつて告示をしたいと考えております。
  17. 中崎敏

    ○中崎委員 大体予定されている地域はどういう点でありますか。今までずつとやつているものですか、これをまた新たに指定されることになるのですか。
  18. 川上貫一

    川上政府委員 大体ただいままでやつておりましたところも、あるいはその隣接地区も、あるいは新しい地域も全部ひつくるめて考えておりまして、これはいつかこの委員会にもお配りしたと思うのですが、石油五箇年計画の中に相当こまかくどこどこ県のどこどこ郡のどこ村のというのが入つておりますが、そういうところは大体指定して行きたいと考えております。先ほども申し上げましたように、五箇年のものを全部一ぺんに発表することもいろいろ問題が起きますので、一年ごとに追加して行くことにしたいと思つております。初年度におきましては、現在の助成金とか、あるいは企業体資金状況とか、いろいろなところを検討いたしまして、なるべく厳密に、また最大限度指定地域をきめて行きたいと考えております。
  19. 中崎敏

    ○中崎委員 次に助成金の事前払いといいますか、大体包括的に概算払いとしてやられるということですが、受けると予定されている相手先は大体どういうところか。金額的に見て、たとえば一番大きいものがわかつておりますれば、およその見通しを発表願いたい。
  20. 川上貫一

    川上政府委員 今の五箇年計画で行きますと、帝石関係がそのうちの八割程度になるんじやないだろうかと考えております。あとの二割くらいのものについては、件数はそうたくさんないと考えております。鉱業権者の数は五件か六件かの程度じやないだろうかと考えられますが、今日その資料を持つて来ておりませんので、他日詳細に御説明申し上げたいと思います。
  21. 中崎敏

    ○中崎委員 次に交付金に対しては、後日成功した場合には返還するというか、納付することになるという御説明ですが、うまく当てた者が納付する限度をどこに置かれるか、そこを説明していただきたい。
  22. 川上貫一

    川上政府委員 これは現在石油及び可燃性天然ガス資源開発法の中に一応の規定があるわけでありまして、その規定によつて一定の率がきまつておりますから、その率は生産量かけるの販売高の千分の幾らということになつていると思いますが、それを五箇年にわたつて毎年納付することになつておりますから、その規定によつてやることになつております。     〔小平委員長代理退席、委員長着席〕     —————————————
  23. 大西禎夫

    大西委員長 次に貿易に関する件について調査を進めます。質疑の通知がありますので、順次これを許します。川上貫一君。
  24. 川上貫一

    川上委員 大臣が見えておりませんから局長にお尋ねいたしたいのですが、外貨の問題です。外貨を外国銀行に預けてあるが、これは八割以上預かつておると思うのです。あれはどうして外国銀行に預けなければならないか、この点なるべく簡単にお答え願いたい。
  25. 中場信彦

    ○中場説明員 これは実は大蔵省の主管でございまして、私から申し上げるのもちよつと筋違いなのでございますが、私どもの聞いておりますところと、常識で考えまして、結局外貨を預けることによりきて、いろいろな点で日本にとつて便宜を得られるというような意味合いもありまして、現在外国銀行の方に相当多額の金が預けられておるということではないかと思います。
  26. 川上貫一

    川上委員 どういう便宜があるのですか。
  27. 中場信彦

    ○中場説明員 ただいまは日本の方で特別にその便宜を使つてはおりませんが、たとえば日本が預けました外貨を振替にいたしまして、向うで日本輸入に対しましてある程度短期の信用を供与してくれるというようなこともあるのでございます。これはただいまの国内金融なんかの関係日本側では現在それを利用いたしておりませんが、そういうようなこともできるわけであります。それからいろいろな点で日本の銀行が海外に支店を出すというような場合におきましても、一人立ちではなかなか仕事ができにくい、そういう場合に外国銀行と大体商売関係の契約を結んでおるのでありますが、そういう場合に外国銀行の世話になることもずいぶんあるわけであります。それからすべての日本輸入日本の銀行だけを通じてやることは現状ではなかなか無理でありまして、輸入につきましては信用状を開きますときに、五割なりあるいは三割なりの一種の保証金みたいなものを積まなければならない、外国銀行を一通じて商売を行います場合には、外国銀行にそれを積むということになりまして、そういうような関係から外銀の方に大部分の預金が行つておるということではないかと思います。
  28. 川上貫一

    川上委員 それは一つも理由にならぬのですが、実際それだけですか。それならそれについて次のことを聞きたい。あとでまた大臣に聞いてもいいのですが、外国銀行の為替業務は通産に関係がありますか、所管外だと言わぬようにひとつ返事をしてもらいたい。これは通産の問題です。大蔵省が妙なことをやつておつたら通産省で何とか言うたらいい。外国銀行の為替業務を、どういうような検査をするか、またどういう報告を外国銀行は提出しておるか、この点です。
  29. 中場信彦

    ○中場説明員 お尋ねの点はおそらく日本に支店を出しております外国銀行のことだと思いますが、これはやはり日本の普通の銀行法によりまして為替銀行としての認可を受けておりまして、従つて監督は全部大蔵省が行つておるわけです。報告されたもの全部について日本の為替銀行と同じような報告を徴しておりますし、検査等も普通日本の銀行に対してと同じ検査を行つておると聞いております。これは決して所管外だからと申し上げるわけではございませんが、実情は実は大蔵省の方にしかわかつておりませんので、詳しいことは大蔵省の方からお聞取り願いたいと思います。
  30. 川上貫一

    川上委員 所管外だからこれは知らぬと言うてはいけない、実際は検査していないのです。これは銀行局の調査部がしておりません。あなた方に御承知ないのですが。検査してない。詳しく言いますと、占領中にはこれを検査して妙なことが出てはいかぬというので検査しなかつた。ところがそこがそれなりになつても、今も実は検査しておりませんと言うておるのです。通産省が知らなかつたということは私はとんでもないと思う。どうなつておりますか。  それからその報告日本銀行並みの報告をしておるというのであるが、帳簿じりの報告なつておると思う。日本銀行の為替業務はそうではないと思う。件数ごとに報告しておると思う。私がなぜこういうことを聞くかというと、こういうことをしで、おつたらやみドルの抜け穴をつくることになるからである。それで通産行政に関係があると言うのです。金融統制を加えたと言つておりますけれども、こんな大きな穴を明けておいて、統制もドルの取締りもくそもないのじやないかということを私は聞いておるのであつて、通産関係の人が知らぬということになつてはちつと困ると思うのです。通産行政の根本に関する問題だと思いますので、ひとつ御答弁を願いたい。
  31. 中場信彦

    ○中場説明員 検査及びその報告の細目のことは実際私ども一々聞いておらぬ次第ですが、もちろんおつしやるような意味関係はありますので、そういう疑いがありますれば、大蔵省とも連絡して十分注意いたしまして、遺憾なきを期したいと存じます。
  32. 中崎敏

    ○中崎委員 関連して……。この問題は重要だと思うのです。そこで実際の所管は金融の関係から大蔵省だと思いますが、この問題はなかなか重大なのであります。そこで大蔵大臣なり責任者に出席してもらつてこの問題を明らかにしてもらいたい。われわれはこの問題については慎重に審議して行きたいと思つておるので、委員長のところにおいてそういうふうなおはからいを願いたい。
  33. 川上貫一

    川上委員 今中崎委員の言われた通り、これは大蔵大臣にも、通産大臣にも聞かなければならぬ。通商局長がこれを知らぬということが第一おかしい。今度緊縮財政をつくつて、金融統制の相談もして、そして日本の経済、貿易の問題について政府は重大な決心をしておるというのです。そして日本の国民生活、平和産業に対しては重大な打撃を与えるであろう政策を立てておる。そのときに外国銀行の検査もできておらぬし、外国銀行の報告日本銀行の為替業務報告と違つておる。こういうことをしますと、まつたく通産行政の面において大きな穴が明いておるのをほつておくことになると思う、そこでなぜ外国銀行にだけお預けになるかということ、また外国銀行の検査はいかに行われでおるかということを聞いたのですが、これを局長が知らぬというようなことではいかぬと思う。これは大きな問題でありまして、これをもう一ぺん問うても、所管外だから知らぬと言われるでしようからこれ以上聞きません。またほかの機会に聞きますけれども、これはひとつお考えおきを願いたい。こういうことは返事ができるようになつて、おらなければいかぬ。十分に検査ができておるなら、絶対検査しておるから通産行政上心配はない、こういう返事ができなければならぬと私は思う。  そうすると、これもおそらく知らぬと言われるだろうと思うのですが、非常にたくさんの円資金があるはずだ。この旧資金は主として外銀が持つておるが、検査しないのだからこれはわからぬ。これがわからなかつたら、どうして金融統制ができるか、金融統制ができないじやないか。通産行政上にこういう穴があつたら仕事はやれないと思う。そこで検査という問題が重要になつて来るのです。にこれついても何も御承知ありませんか、どうですか。
  34. 中場信彦

    ○中場説明員 外国銀行の円資金について私の知つておる範囲で申し上げますれば、外国銀行も現在日本の円の預金を扱つておりまして、円の預金をとることによつて資金が千、きる、それからある場合にはドルを売つて円を買うということもあり得ると思います。それからもしお尋ねの趣旨の中に、一種の封鎖円みたいなものがあるじやないかということでありましたならば、これは現在映画関係の収益の中で約三割くらいしか送金されておりませんから、残りは封鎖されておるわけです。これは用途がきまつておるわけで、これにつきましては、もちろん厳重に大蔵省において報告を徴しております。これは必ずしも外国銀行だけじやなくて、日本の銀行にも預けられておるのであります。
  35. 川上貫一

    川上委員 しかしこの蓄積円の外銀に預けてある分の調査を十分にしないということになると、どういう操作でもできる、また日本銀行の分は検査かありますからこれはわかるでしようけれども、外銀は十分に調査しないのだから、どのくらい預けてあるかわからぬ、そうなればこの蓄積円をどういうふうに使つておるか、これは報告ではわからぬ。帳簿じりの報告だけしたのでは、一々検査しなければ、何でもできることは御承知の通りなんです。検査せられないということを考えてみると何でもできる。これは日本の金融経済の政府の考え方の裏でも行けるし、混乱でもできると思うんですが、この点については、どうお考えになりますか。
  36. 中場信彦

    ○中場説明員 私ども銀行検査の結果につきまして、一々大蔵省から報告を聞いておるわけではございませんが、しかし大蔵省において万遺憾なく検査いたしておることと固く信じております。
  37. 中崎敏

    ○中崎委員 関連して……。映画関係の封鎖円ですが、これは報告をとつておるというわけですが、これについては三年くらい前からの資料がほしいんです。それから同時に大蔵省で処理されておるのか、あなたの方で処理されておるのか、その点をちよつと聞きたい。
  38. 中場信彦

    ○中場説明員 これはただいま大蔵省の主管になつておりますので、資料は私の方からそちらの方に連絡てし出させるようにいたします。
  39. 川上貫一

    川上委員 この問題はほかの機会にもう少し聞きたいと思います。  続いて外貨のことが非常に問題になつておるのですが、これは現在幾らありますか。
  40. 中場信彦

    ○中場説明員 ドルとポンドを合せまして、いわゆる現金として使い得る外貨は、今年の三月末で約七億ドルになるというふうにお考えになつてよいと存じます。それ以外に清算勘定におきまして約八十万ドルほどのプラスになつておる分がございます。但しこれは御存じの通り、ある程度焦げつきが懸念される債権も入つております。
  41. 川上貫一

    川上委員 約七億ドルといううちには、オープン・アカウントの勘定、あるいは焦げついておる分は入つておるんですか、入つていないんですか。たとえばインドネシアが一億四、五千万ドルあると思うんですが、これが入つておるのか入つていないのか。  いま一つついでに聞きますが、未決済の支払い債務は引いてあるのかどうか。
  42. 中場信彦

    ○中場説明員 約七億と申し上げる中には、焦げつぎ債権は入つておりません。未決済のものにつきましては、これは解釈の仕方にもよるのでありますが、綿花借款の分などが現在のところ約七千万ドルほど入つております。  それから国際通貨基金関係でありますが、これは必ずしも債務と見る必要はないと存じます。従いまして大体綿花借款の約七千万ドルがそのうちに含まれておるというようにお考え願つてよろしいと思います。
  43. 川上貫一

    川上委員 そうすると、実際に使える金は六億ドルしかないということになると解釈してよろしいのでしようか。
  44. 中場信彦

    ○中場説明員 綿花借款につきましては、まだはつきりと方針がきまつておるわけではございませんが、来年度におきましても引続いて借款を受けたいということを考えておるわけでありまして、それが受けられれば、引続いてその分の債務をすぐ払う必要はなくなるということになると思います。
  45. 川上貫一

    川上委員 六億、ドルとすると、政府の方で今外貨予算の問題をいろいろやつておられるでしようが、今年の予算をどのくらいに見積るつもりでおりますか。
  46. 中場信彦

    ○中場説明員 おそらく明年度の外貨予算のことだと存じますが、一番問題になりますのは、幾らくらいかせげるかという問題でありまして、これにつきましては、先般来国会には、輸出が十三億七千万ドル、それから特需の方で七億六千万ドルという数字をお出ししてあることは御承知の通りであります。ただこれはいわば理想的といいますか、努力目標でありまして、これを基礎にして外貨を使う方の計算をすることは幾分危険でありますので、それよりも収入を内輪に見積りまして、それで大体収支がほぼ合う。幾分の赤字が出ることは、昨年の秋の凶作の結果といたしまして、二億ドル余りの食糧の緊急輸入をいたしまして、まだその買付の済まない分が約七千万ドルほどございますので、これはやむを得ないと思うのでありますが、それを除きましては、大体においてバランスするところへ打つて行きたいと存じます。先般の閣僚審議会におきましては、明年度における外貨の実際の支払いを、二十億ドルを下らざる程度にしようというふうにいたしております。従いましてそれを基礎にして考えますと、外貨予算の規模と申しますものは、おそらく二十一億ドルないし二十二億ドルくらいにおちつくのではないか。これはもちろんわくを外の方からきめて来る考え方でありまして、それに対して物資別に、かつ産業別に需要を測定いたしまして、下から積み上げて行く作業をやつておりまして、それがうまく合いますかどうかがここしばらくのうちにわかつて来ると存じますが、大体の見当はその程度にいたしたいと考えております。
  47. 川上貫一

    川上委員 まず輸出の方と輸入の方との関係でありますが、輸出の方も今言われたのですが、輸出の状況がよくならなければ外貨は入つて来ない。外貨を押えれば問題が起つて来る。これはあとで聞きますが、輸出についてちよつと聞きたいのです。十三億ドルと言われておるのですが、去年は比較的ドル地域の方にある程度進出したと思う。しかしスターリング地域の方は、まず全般的に見てボイコツトされた。ところが今年は、日英協定の経過から見ましても、スターリング地域の方が好転するとは思えないのに加えて、ドル地域の方が今年はアメリカとの競合になるのじやないか。現にアメリカは鉄鋼生産にしましても、もう二〇%も下つておる。これはばどうしても外国へ出さなければならぬ。そうすると、去年比較的に進出したドル地域が今年は必ずアメリカとの競合になるのですが、そのことを計算しないで、輸出がうまく行くだろうというように考えておられるその根拠がわからないのですが、それはどういうぐあいになるのですか。
  48. 中場信彦

    ○中場説明員 御承知の通り昨年度のドル輸出は、一昨年度に比べまして約一億ドルくらい伸びまして、私どもとしても非常に喜んでおるのであります。大体におきまして四億五千万ドル程度つておるのでございますが、お示しの通り鉄鋼事情等大分かわりました。しかし昨年度といえども。鉄鋼がドル地域に出ましたのは非常に少いもので、むしろ一昨年多かつたのであります。日本の輸出の主力と申しますものは、農水産物あるいは雑貨類、生糸、それからミシンというような、農産物、水産物及び中小工業に基礎を持つ品物が多いのであります。こういうものは現在の日本状況をもつてしましても、非常に国際的に競争力が強く何しろ日本でなければできないものも相当あるのでありまして、アメリカに非常な不景気でも参れば別でありますが、現在程度状況でありましたならば、大体昨年程度の輸出は維持できるのじやないかというのが、われわれ関係各省間の考え方でございます。但し非常に慎重を期しまして、昨年は四億五千万ドルでありましたが、今年度はそれよりも二千万ドルほど減るのじやないかというふうにかたく見ております。それからオープン・アカウントにつきましても、大体協定をつくつてつておるのでありまして、大体の見通しは各省とも一致しておるところでございます。  そこで問題は、今お示しの通り、まつたくスターリング地域に対してどれほど出るかということでありまして、これは先般の日英協定の結果がどの程度実現できるか。この協定におきましてイギリス側が輸入制限緩和を約束いたしましたことは、大体においてその通り向うはすでに実施しておるようでありまして、あとはこちらの売込み努力ということにかからざるを得ないと思います。これもあの協定通り行きますれば、五億ドル以上輸出が出るはずでありますが、非常にかたく見積りまして四億二、三千万ドル程度で一応押えて予算を組んでおるわけでありまして、私どもといたしましては、これ以上伸びることを非常に強く期待しておるわけであります。
  49. 川上貫一

    川上委員 非常に伸びそうな答弁なんですが、それならば、耐乏生活だのデフレだの、国民が大騒ぎをしておるほどのこんなことはしないでもいいのだ。現在日本の輸出品は、国際価格に対して二割、場合によつては三割高い。これを去年通りに行くのだということを言つておられる。そうすると、輸出とデフレ政策との関係はどうなるのですか。
  50. 中場信彦

    ○中場説明員 輸出は昨年度が合計で十一億六千万ドル程度でありますが、これよりはもちろん伸びると私ども考えております。ただデフレ政策との関係いかんという点になりますと、問題はむしろ最近に至りまして、日本の内需の方が非常に急激に伸びておるという点にあるのであります。たとえば昨年の十月——十二月の産業活動を基礎にいたしまして、これを満足させるだけの物資の輸入をするといたしますと、約二十六億ドル以上の輸入をしなければならない。つまりそれほど日本国内の需要が旺盛になつたということなのであります。それを押えるごとになりますので、デフレ政策が必要になつて来ることになるのではないかと考えます。二十六億ドル程度のものを二十億ドルに圧縮するということは、約二割の圧縮でありまして、生産のピークを押えました場合には、やはり相当程度抑制しなければならない。しかし輸出の方が伸びれば、また道が開かれて参るわけでありますが、その伸び方が、現在のところでは割合口に慎重に見ておるということであります。
  51. 川上貫一

    川上委員 そこがわからないのです。今のレートをそのままにしておいて、輸入をしさえすれば、ばかにもうかるのですか。当然思惑輸入もありましようし、あるいは無為替輸入もどんどんやつておるのです。石油なんかもその通りやるのです。それですからデフレ政策をやると輸入が入つて来ないようになるからというのは、これはりくつにならぬと思う。輸出の競争力を増すというなら話になりますけれども、これは一向ならぬ。  その次には一体いつごろデフレの効果が現われるか。一体現わす気があるのか。今の状態でいつどうなるのか、それを全然考えないで、今年はこうなるのだ、ああなるのだというような、非常にのんきな御説明があるのですが、私はどうも理解できないのです。たとえばデフレの効果が、いつごろ効果となつて現われて来るか。それに伴つて輸出入の関係がどうなるかということがはつきりしませんと、観念的にいろいろ話をききましても納得することができないのです。これはどういうことなのですか。
  52. 中場信彦

    ○中場説明員 輸入の規模と、それから国内経済とか輸出の関係は、まことにお示しの通りでありまして、むやみに輸入ばかり押えれば、国内の物価をかえつて上げることになるおそれがあるわけです。私どもはむしろ国際収支というものは、結局国内の経済一般の反映であると考えるわけであります。ただ現状においては、そういう考えだけで輸入を自由にして行くことは、外貨事情から申してできない関係にございます。従つて一方にはやむを得ず締めながら、しかしながら輸出用原材料はできるだけ確保して行くということにいたしまして、その間国内のデフレの進行をまちまして、結局内外の貨幣価値が一致して行く方向になると思うのであります。  デフレの効果がいつごろ出るかという点につきましては、私から申し上げるのははなはだ僭越なのでありますが、私どもは少くとも、本年の下半期においては大分効果が出て来るということを期待しておるのであります。従つてもし来年度の外貨の収与上赤字が出るとしますれば、上半期においてむしろ赤字を出してしまつて、下半期は均衡に持つて行きたい。これは国内状況が立ち直るならば、必ずその均衡は達成できると考えておるわけであります。
  53. 川上貫一

    川上委員 大臣がまだおいでにならないのですが、これから先については大臣に意見を聞きたいと思います。
  54. 大西禎夫

    大西委員長 暫時休憩いたします。     午後三時十七分休憩      ————◇—————     午後三時二十六分開議
  55. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き開会いたします。  山手滿男君。
  56. 山手滿男

    ○山手委員 大臣に外貨関係でお尋ねをいたしたいと思います。先般大体のお話は承つておりますが、外貨引締めと並行して資金統制がされて、金融がうんと引締められております。そのために問屋あるいは小中企業者が非常に困難な状態に陥つて手持ちの滞貨を投売りする段階に来ている。滞貨を不当に安く投売りをするということは、その次に来ることは商社あるいは中小企業君の倒産なのであります。こういう外貨から火がついて来て、金融をむちやくちやに締めて行くだけで、とうてい物価は引下らない。ただ経済界が混乱をするだけだ。私はこういうふうに感じております。聞くところによると、政府の方では一部の品物については物的な直接統制をして、消費規制をして行こうという意図があつて、研究をされているようでありますが、そういう面について検討をしておられる現在の段階での政府の立場をこの際明らかにしておいていただきたい。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前回の当委員会においても申し上げましたように、物自体についての統制というところまでは現在考えておりません。ただ外貨の予算につきまして、これは非常に時間もかかりますし、慎重に措置することが必要でございますので、現在できるだけすみやかにと思い、外貨予算の編成に当つているのでありますが、まだ結論が出ていないのでありまして、この結論が出ることと相照応いたしまして、必ずしも統制と申せませんでも、ある物資については何らか考えなければならぬ点があるのではなかろうかと考えております。問題はいろいろの観点から整理をいたしまして、その一つ一つについて内部でもいろいろと論議を闘わしている、こういう実情が現在の偽わらざるところでございまして、いましばらくそれらの点につきましては時間の余裕をお与え願いたいと考えております。
  58. 山手滿男

    ○山手委員 金融を引締めて行くというお話でございますが、二、三前までは、たとえていえば、資本金が一千万円程度のものに対しても、輸入国内の商売について数千万円ぐらいまでの信用の拡張を許した。そういうことで政府が自由々々というて、そういう面についても比較的しにせや何かが金融もついて行くという建前で問屋などはいろいろな仕事して来た。人もふやしたし、設備もいろいろして来た。倉庫もつくつた。ところが今日の段階になつて自己資金が一千万円しかないものは、自己資金のわく、限度くらいまでに仕事を縮小せよ、こういうようなことを言わぬばかりの金融の引締めが行われております。そうすると、二、三年前政府が慫慂し、あるいは暗黙のうちに許したことによつて起きた大きな経営体というものは、一ペンにここでくずれてしまう、それが前提になつて行くわけであります。こういうことについて政府は手を打たないで、ただ金融を引締めて行く。それが外貨の不足につながつておるからだ、物価を引下げるのだ、こういう野放しの政治というものはあるベきものじやないと私は考えております。そこで単に金融だけで行くのでなしに、この効果があるように物的な規正の裏づけから行かれるのならまだまだでありますが、いきなり表向きの金融措置だけで物価を引下げて行こうと思われても、それは下るものじやないような気もするし、経済界に非常に大きな影響が来ると思う。今検討されておるものは、尚品別には何と何を中心にして、どういうふうにやろうとしておられるのか、もう少し具体的にお示しを願いたい。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まだ具体的に品目別についてお話申し上げる段階にまで、われわれの研究が済んでおらないのであります。ただこの前に大体の考え方をごひろう申し上げたのでありますが、たとえば現在二十億ドルあるいはその程度以上の外貨の支払いになるような外貨予算を編成することになりますと、大体二十八年度の下期くらいのところから見まして、各物資について相当の削減をやらなければならない、こういうことになると思います。同時に二十八年の前半期あるいは二十七年度を通じてのところから見ますると、さしてドライステイツクな削減をしなくても済むのじやなかろうか、そこでそういうようなわくの中で、先般も申し上げましたように、輸出その他にどうしても必要な原材料は確保いたしたい。それから民生の物資等について必要なもの、これらの点については十分な措置をして行きたい。不要不急のものは、協定によつて拘束されておるもの以外は徹底的に切つて参りたい。それから、考え方としましては、二十八年の下半期くらいに異常に伸びたと思われます輸入量は、これは品目の関係よりも、むしろ大体において、需要が多過ぎたのであるし、あるいは思惑の対象になつたものも相当あるように見受けられますから、これらについては相当の削減をいたしたい、こういうふうな考え方で、現在鋭意各物資等にわたりましての検討を進めておるわけでございます。
  60. 山手滿男

    ○山手委員 外貨に対処する道は、単に外貨をいきなり締めるということだけでは、私は非常に困難だと思う。たとえて言えば、先般来、合成繊維を政府も奨励しておられるし、相当に伸びて来ておるわけでありますが、国内の繊維消費量を抑制するためには、この際思い切つて合成繊維あるいはスフ等の混紡というようなところまで進んで行かなければ、とうていその目的は達成できないのじやないかという気がいたします。やはり統制といえば一種の統制であろうと思うのでありますが、合成繊維を中心とする繊維対策——やはり日本輸入の大宗は繊維原料でありますから、強制混紡をするという段階にまで進んで行く意図があるかどうか。またそういうような態度に出て行こうといたしますならば、今年度あたりの合成繊維に対する育成措置は、きわめて微温的なものであつて、恒久的に外貨に対処し、拡大均衡に持つて行くための政府の助成策ではない。頭から何万ポンド増産をするのだというようなことはおつしやつておられますけれども、本質的にそこまで手が下された措置ではないような気がいたします。こういうことについて、統制的に国内の消費については、洋服にしてもその他のものにしても混紡をせしめる、こういうようなことによつて国内での繊維原料の消費のむだ使いを少しでも省いて行くという処置に出るだけの御意図があるかどうか、まずその点をお伺いします。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 混紡の問題については、ただいま御指摘の通り、合成繊維の増産ということを一つの方針にいたしておりますから、一つの考え方であろうと思うのであります。ただ法律をもつてすべてこういうものは混紡をいたさなければならない、それに途、反すればこうだという式の、いわゆる統制というようなものについては、私どもまだ踏切りがつかないのであります。研究の課題としては、御指摘の通り一つの問題だろうと思いますが、政策の問題としては、そこまでの踏切りが現在のところはついておりません。
  62. 山手滿男

    ○山手委員 輸入品目のうちで、政策の立て方によつては、私は国内相当自給自足できると思う。自給自足できないまでも相当部分の外貨を節約し得る産業は、この際思い切つて処置をして育成をする必要があろうかと私は思います。たとえていえば、合成ゴムのごときものは、日本国内政府がやる気で踏切りさえして、四、五十億くらいの資金を投下しますならば、年間三万トン程度の合成ゴムが、農民のつくるいもからアルコールをつくることによつて得られる。それによつて一千万ドル以上のものが国内で十二分にまかなえて、外貨が切れる。今三千万ドルも四千万ドルも輸入しているのが、二年くらいたつと一千万ドルくらいは外貨の節約ができる。そういう計画をやりたいという人もありますし、ドイツにおいても、アメリカにおいて一も、そういうことはすでに実験済みであるのみならず、実際に自動車のタイヤなんかは今日全部合成ゴムでまかなわれておるという実情であります。私は単に政府外貨のわくを削るとか、金融で締めて行くというような考えだけでなしに、ゴムならゴム一つとつてみても、外貨を削るなら削る裏づけをしておくようにして行くことから出発しなければいかぬと思つております。合成ゴムについてだけでも、政府は今日どういう考え方をしておられるか、どういうように検討をしておられるか、御説明を承りたい。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前々から申し上げておりますように、私はしやにむに外貨を切りさえすればそれで能事終れりとは考えていないのであります。前回にも率直に申し上げたつもりなんでありますが、たとえば外貨のポジシヨンだけから考えて、理論的に行けば、二十九年度の輸入計画というものは、十九億ドルでもあるいは多過ぎるのかもしれません。そういう議論も出得ると思うのであります。それからまた二十九年度のしまいにおいてのドル、ポンド等の保有量が、一体幾らを割つてはいけないのかというようなことについても、いろいろ議論がある点だと思いますし、さらにそういうような点から、二十九年度中はしやにむに収支とんとんでやらなければならぬというような議論もあり得るわけであります。しかしそれに対して私は、一応輸入外貨の予算としては、大事をとつて二十億ドルを下らない程度において組むけれども、その根本になつておる輸出の数字、あるいは特需の数字等については、依然として、前々から申し上げておりますような輸出十三億七千万ドルとか、あるいは特需は七億六千万ドル以上というようなものは、あくまでいろいろの努力によつてこれを貫徹しよう。さすればさらに輸入のわくをふやすこともできるではないか。そこでこれは国内の円表示の予算の問題と違いまして、相当機動力があり、また国際情勢等によつても、いい意味でも悪い意味でも変動を受けるものでございますから、画一的、公式的に外貨の見積りをこうするからといつて、それが恒久的にどうしてもはねかえつて国内措置としてドラステイツクなことを、ほとんどあらゆる重要製品についてやらなければならないのだというふうには私は考えていないわけでございます。そこで先ほど来の御質疑でありますが、たとえば具体的に言えば、今話題になつております砂糖の問題とか、あるいは石油の問題とか、綿の問題、それからただいま御指摘のありました生ゴムの問題、合成ゴムの問題とか、こういう点は先ほど申しましたように、これらの物資を中心にして、どういうふうに柔軟性のある政策を打立てて行くべきかということにつきまして、現在鋭意検討しているわけでございます。外貨予算の方は三月の末までには見通しをつけなければなりませんし、それに照応しての国内措置というふうな問題についても、できればあわせて整理をいたしまして、こういうやり方で行くということを相当具体的に詰めた案をつくりたい。またそれに対しましていろいろの御意見を承りたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、合成ゴムの問題につきましては、価格の点その他についていろいろ考慮しておる要素もございますが、御意見の点はわれわれといたしましても従来も考えておるような点も多いのでございますが、今後の立案をいたします場合におきましても、十分参考にさせていただきたいと考えております。
  64. 山手滿男

    ○山手委員 私は日本貿易の前途が決して楽観できるものではないということについては、この委員会でもたびたび各委員からの発言のあつた通りで、楽観してよろしいものじやない、こういう考えを持つておりますし、それだけに外貨の問題はきわめて重要であると思います。それを単に足りなくなつたからということだけではなしに、そういう産業や何かを興すことは一朝一夕にできることでもないし、年次計画を立てて、一つ一つ早目に手まわしよく育成して行くということでなくては、今年度のようなきわめて醜い事態が起きる。外貨が非常に少くなつたというので、大騒ぎをして、緊縮財政だ、あるいは外貨の割当の削減だといつて大騒ぎをする。そのためにいろいろな商社が倒産をして行くというふうないろいろなとばつちりが起きて、醜い事態が繰返されて行くであろう、こういうふうな気がいたします。今お話のありました石油のごときものでも、戦前の最高は五、六百万トン、日本が連合艦隊を持ち、飛行機も一万機近い第一線機を飛ばしておつた軍隊を持つておつた当時の日本石油消費量は、五、六百万トンで、これも一番多かつたときでありますが、それが昭和二十九年度においては千百万トンもなければいかぬだろうというふうに政府側にたいても作業した結果見通しをつけておる、まつたく驚くべき数字が出ておるのであります。連合艦隊やあれだけの航空機を持つておつた当時の日本石油の消費量が、今日の半分以下であるなどというふうなことはしろうとはだれも知らない。ところが重油々々と言うのみならず、昨年あたりは政府は重油転換を極力奨励された。あの政策一つをとつてみましても、重油政策を政府が奨励したために重油転換に必要なタンカーをつくつたりいろいろな設備を中小企業や各産業がやつた。それを今日またぽつつと切られてしまうのでありますから、政府は非常に責任があると思う。小さな会社や産業でも五十万や百万その設備につぎ込んで遊休施設になつておるものがたくさんあります。そういうものについて利子補給くらいする責任が政府にはあると思います。これはやらなければいかぬ。ところが政府はほおかむりで、重油はここあたりであまり入れることはできませんというような態度に出ております。将来は石油はこの程度まで入れるのだ、これ以上は入れないのだ、設備は何と何は優先的にこういうふうに規制をして配給をしてやる、しかし自動車とかなんとかああいうような消費のなかなか押えられないものについては、これこれ以上は配給しませんというふうな、しつかりした見通しを立てて対処しておいでにならないと、千百万トンどころか、千二百万トンも三百万トンも一両年のうちに車がふえて来るし、いろいろな産業関係も重油を使えば非常に安上りになり、コストが切下つて行くのですからふえて行くばかりだと思う。今のお話のようなことでだめ押しをして一つ一つ穴をふさいでおるような政治をやられると、何をおやりになつても成功する道はないと思う。油一つ例にとつても、そういうふうにきちつとやつて行くべきなのに、すぐ驚いて物の面まで規制をするようなことは、私はお茶濁しだと思う。日本の自立経済の関係もありますし、もつとしつかりした御答弁を大臣からお願いいたします。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はきよう最初にお答えいたしました通り、私どもとしてのはつきりした見通しをもつて御理解願いたいという線でただいま鋭意作業いたしております。石油の問題につきましてもお話はよくわかるのでありまして、そういう線において御理解が願えるような案を不日御審議を願いたい、こういうふうに考えておりまして、もちろん急ぐごとではございますが、そうかといつて練れない案を責任者から申し上げることは、かえつていかがと思いましたので、つい答弁を申し上げることが抽象的になるのでありますが、その間の事情は最初に申し上げたように、いましばらくの時間の余裕をお願いいたしたい、こういうふうに申し上げておるのであり。
  66. 大西禎夫

  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 私に与えられた時間はきようは少いようでありますので、私は外貨割当の基本方針を大づかみに承りまして、あすから個々にわたつてその詳細について承りたいと思いますので、まずそのような御用意をしていただきたいと思います。  まず第一番に、外貨が二十億ドルと十二億ドルでバランスがとれない、そこでその開きがだんだん毎年ふえる一方である、困つたから削減しよう、こういうお話で、それまでは非常にごもつともでございますが、第一にこの審議ですが、予算の方はあれほどの日数とあれほどの員数をかけてやつさもつさとおやりになる国会が、それと同等の金額——二十億ドルということになりますと、どう考えてみても、マル公にしても七千二百億でございますが、こういう厖大な金額審議するにあたつて、ただいまの大臣の答弁でありますと、今調査研究しておるから、もうしばらく待つてくれと言う。こういうふうなことでは困る。こういう原案であるが、これはどうだというようなものを出されるべきだ。しかし今日の法律上から行けば、国家予算はああいうことにするけれども、外貨予算の割当は行政措置だということになつておれば、これはやむを得ないことかもしれませんけれども、少くとも外貨がだんだん食いつぶされて行き、これじや困るというので、ただいま同僚議員からお話のありましたように、せつかく設備させたその設備までも廃棄させなければならぬようなことが起つたり、あるいは片や外貨割当の方向間違いから、過剰投資が行われておつたというようなことで、国民経済に及ぼす影響どころか、国民経済の大半はこの外貨によつて握られておるはずでございますが、そういう見地に立つた場合に、大臣としては何か隠し事をしているように、これはもうしばらく研究さしてくれと言つて国会のおしまいぎわに、こういうふうだからしんぼうしてくれ、これじやほんとうの審議はできぬと思うのです。そこで大臣としては、かりの案でも何でもよろしゆうございますから、少くとも基本的な方針というものと、大ずかみの数字ぐらいは出して、予算委員会にかけなくても、少くとも専門の通産委員会にはかけるくらいの御用意がないものか。そういうことはやらぬでも、われわれの方針だけでけつこう、朝令暮改はいたしません、こうおつしやいますのか、どんなものでございましよう。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外貨予算という言葉は、法律上の用語にも最近なつておるわけでございますが、私は、先ほど御指摘の通り、これはいわゆる予算とは非常に性格が違うものだと思うのであります。それで実は昨日でしたか、本日でしたか、参議院の予算委員会でも、与党でない方からも、大体政府外貨予算などというものをみんな手の内をさらけ出してしまつているが、国際的な関係、あるいは貴重な外貨の使い方についてもつと効率をよくすることを考えたらどうかという御意見がありましたが、それらの御意見からそんたくいたしますと、たとえばその発表の方式その他についても、もう少し考えたらどうだという趣旨のように承れるような論議もあつたくらいでございます。これは国内の問題だけでなく、申すまでもなく貴重な外貨でありますから、たとえば価格等についてもできるだけ安く買いたいというようなことを考えますと、対外的の関係を一見ても先ほど申しましたように、拙速に、練れない案を早く御審議を願い、あるいは議題に上せるということが、かえつて大局的にどうかという点も配慮いたさなければならないと思うのであります。しかしながら私はそうかといつで、全然秘密、独善的にやろうというような考えは毛頭ないのでありまして、ただ十分にわれわれとしての考え方を整理いたしました上で、御説明を申し上げた方が適当であろうと現在考えておるわけであります。
  69. 永井勝次郎

    ○永井委員 関連して……。ただいまの大臣のお答えでありますが、大臣は今外貨予算についてのいろいろな作業は進めておる、これに大局的な見地に立つて考えておる、こういう御答弁のように了承したのでありますが、二十九年度の一兆円予算はもう衆議院を通つて、参議院にかかつてまさに成立しようとしておる。その国内の二十九年度予算というものとこの外貨予算というものは性質が違う、まつたく別個のものだ、これはこれで切り離して考えるのだ、こういうようなことで一体大局的な経済政策というものが生れて来るのか。物価の問題にしても、それから国内生産の諸態勢の問題にしても、産業構造の問題にいたしましても、国内予算と外貨予算とは二つであるが、こういうものが一体となつて大局的な一つの方針が、ちぐはぐでなく確立されて進められるところに、国内予算は国内予算としての効率を高め、外貨予算は外貨予算としての効率が高まつて行くのである、こういうふうにわれわれは了承している。そういうことが、大局的な見地に立つたところの政府の経済政策である、こう思うのですが、国内経済はそのままぶつ飛ばしてどんどん進んで行く、外貨予算はまだ作業中で方針がきまらないのだ、こういうようなことで一体大局的な政策というものが樹立できようはずがないじやないか。一体二十九年度国内予算の中に盛られているいろいろな問題というものは、外貨予算を切り離して、そうしてこれは独走できる内容であるかどうか、これを明確にしていただきたい。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは私の申し上げましたところが、少し足らなかつたように思いますけれども、もちろん国内の予算というものもそうでありますし、それから外貨計画もそうでございましようし、また国内の金融計画もそうでございましようし、その他の経済政策というものが、全部が総体的に、大局的に、総合的に考えられなければならないことは、私から申し上げるまでもないと思うのであります。ただそれぞれ性格の違うもの、これの扱い方、あるいは制度としての違い方というようなことがございますから、その扱い方なり取上げ方なとについては、おのずから違うこともあるということを申し上げたわけでございます。
  71. 永井勝次郎

    ○永井委員 それはよくわかるのですが、そうすると、外貨予算の問題にしても、二十九年度の予算についても、今7までのところは不完全なものである。しかもその一体でなければならない外貨予算の関係が、まだ考え方もきまつていないのだ、今作業中なんで、これからきめるのだ、こういうことであるならば、非常に二十九年度予算も不完全なものであるし、いかにも総合的な計画の立たない、総合性のない、企画性のない予算を編成して、まあ国内予算はこれで出した、外貨予算はゆつくりやろう、こういうような、いわば吉田首相が言つているように、計画性を持つということは自由党の党是でないというような、そういう思想に徹した経済政策だ、こういうふうにわれわれは了承していいかと思うのでありますが、先ほど山手委員からもお話がありました通り、現在外貨予算をやつて行こうとしている内容によりますと、石油関係においては、これはどうしても縮減して来れば消費の規正を行わなければならなくなつて来るだろう。それから羊毛関係その他については、何としてもこれは内需による物価の値上りの問題を措置しなければならない。こういう問題の所在点というものははつきりしていると思う。それに対して統制ではない、計画ではない、何らかの方法でというのですが、その何らかの方法ではわからないのでありまして、具体的に技術的な面はまた不整備であるとしても、考え方として、こういう石油関係は、消費の条件というものが非常に厖大にふくれた、それに対して油の輸入を縮減するのでありますから、そのアンバランスをどういうふうに措置するのであるか、こういうような一つの考え方、それから羊毛の関係においては、内需による値上りに対してどういう点が問題点であつて、この問題点をどういうふうにしようということが目下考えられているか、右すべきか左すべきか、いろいろな問題はあると思いますが、そういう点を、今作業の過程において起つておる考え方の問題は、これは結論が出ないでもここで表明できる問題ではないか、こういう問題は自由放任経済の中で十分にやつて行けるのだ、こういうふうにして措置できるのだ、そういうことに対してわれわれが納得できる程度説明をしていただきたいと思うのであります。われわれは今日こういうふうに手持ちの外貨が少くなつたことは、何としても今までの政府の悪政と秕政と失敗がこれをあらしめたものだと思う。そういう根本的な原因を明確に反省しないで、今日こういうように行き詰まつて、急に予算を、輸入を縮減しなければならないというような事態に立ち至らしめたその原因を糾明することなしに、ただこうなつたのだから今後に対してはこういうふうに措置するのだ、そして基本的な態度はかえないのだ、これでは今日七億ドル内外に外貨が少くなつたことに対して十分に問題をつかんでいないのではないかという心配があるので、この点を明確にしていただきたいと思います。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず最初の総合的の考え方の問題でありますが、これは一月に予算案を提案いたしましたときに、国際収支の見通しにつきましても申し上げた通りでございます。その後も常時情勢の転換を見ながらさらに計画をよりよくつくりたいということで、総体といたしましては先ほど来申し上げておりますように、大体輸出とか特需の伸びを手がたく見まして、その場合におきましても、収支の均衡ということは三十年度とあわせて考えるということにして、二十九年度ではあまり度はずれた均衡主義をとることはかえつて国内への影響もいかがかと思われますから、大体九千万ドルから一億ドルの赤字はやむを得ない、その範囲において輸入計画を立てる、同時に輸出一についても、特需についても、できるだけ努力を一方において払つてつて、できれば輸入計画の方をさらに増加するように考えたいということを基本的な考え方とし、かつ国内の、たとえば鉱工業生産等でいえば、総体としては二十八年度と同じくらいの規模においてやつて参りますために、所要の原材料の確保をはかりたいというようなことを基本的な考え方にしております。  それから前会にも御説明いたしたかと思いますが、大体外貨計画をつくります場合に、数点の基本的な方針について、まず政府部内で思想の統一をはかりたい。そこでこれは輸入だけではございませんが、輸出の振興ということをあわせて考えなければなりませんから、たとえば輸出のリンク制度というようなものについても改善の余地が相当あると思いますので、原材料と輸出品とのリンク制について改善、拡充をやりたい、加工貿易を拡充する、求償取引の促進をはかる、そして外貨の受取りを一方において増大するように努力しようということが第一点でございます。それから第二点は、輸出及び特需の原材料、合理化機械の輸入を確保するということを考えております。それから第三番目には、重要な民生物資については、国民生活の安定のための必要量は極力確保するように努める。それから第四には、通商協定上やむを得ない場合を除きまして不要不急物資の輸入は行わないという原則で、外貨予算を編成したいと思つております。それから第五番目には、自動承認制度については、日英協定といつたようなことから、約束したやむ々得ない場合を除きまして、思惑のおそれのある品目または金額の大きい品目等については、できるだけ自動承認制から割当品目にこれを切りかえるというようなことを考えております。それからこれはすでに実行いたしておるのでありますが、六番目には思惑の防止、輸入抑制のための担保率の引上げ、保証金の現金指定、日銀預託期日の延長というようなことを、これは外貨予算の編成と同時あるいは並行してやろうということにいたしたわけであります。次に具体的な品目についてのお尋ねでございますが、これは何べんも申しますように、まことに恐縮でありますが、はつきり二十九年度について、特にたとえば上期にどういうふうにしたい、下期にどういうふうにしたいというところまでまだできておらないのであります。一、二の例で申し上げますと、たとえば砂糖でございますが、砂糖の問題についてかりに二十七年度と二十八年度の現在の状態とを比べてみますと、二十八年度の供給量を約二割減るものと仮定しましても、二十七年度の消費量から見ればなおかつ一割以上上まわる量になるわけでございます。一般家庭で直接購入しておる量の約二倍以上は、二十七年度の一割以上上まわる量ならば確保ができると考えております。それから繊維原料である原毛等につきましては、同様に二十八年度の供給量をたとえば二割近く減つたといたしましても、二十七年度の供給量からいえば約二割の増加となるわけでございます。また石油等につきましても、二十八年度の平均と、かりに二十七年度と比べてみますならば、ガソリンでは三割強、重油ではさらにそれ以上の供給の増加になるというようなことになるのでありまして、私の方でもまだ漠然たるところで、具体的な数字を申し上げるに至りませんが、二十七年度に比べれば相当の量が増加をする。それから二十八年度のことで特に申し上げておきたいと思いますのは、たとえば昨年の十月—十二月というような期間は、各物資について実績がきちつとわかるわけでございます。特にその期間が非常にふえておりますので、この期間を延ばしてかりに一年間と考えた場合には、それに比べれば二十七年度の一割増しくらいのところでありますと、その差が非常に大きいので、直接最近のところと比べてみますればかなり大幅な削減になるのであつても、二十七年度に比べればまだ相当上まわるという程度のところでこの外貨の割当計画がつくられるのではなかろうか、それを基本にいたしまして、その場合、たとえば石油等については、農村、漁村方面のどうしても油がなければならないものについてはどういうふうな措置を講じたらいいだろうか、その場合におきましても、ただちに戦争中を思い出すような切符制というようなことはなるべくいたさないで、そのほかの措置で行きたいものだという気持で、いろいろと今案を考えておるような状況でございます。
  73. 加藤清二

    加藤(清)委員 きよう初めてこの外貨割当の基本にふれるようなことをやや詳細に承つたわけなんです。大臣の真摯な態度には敬意を表するわけなんですが、日本の総予算とほとんど同額に、マル公にすれば七千二百億でございますが、今日通用するところの実際の世の中の相場から行けば、外貨の二十億ドルというのはまさに一兆なんです。金額にしてすでに予算に匹敵する。これはまたあなたの今おつしやつた言葉の中にもありましたが、通商航海の外交との関係も非常に大きなものがございまして、こういうものを審議するにあたつて政府の方としてはただときどきお漏らし願えるだけだが、私はきちつとした基本骨子からある程度の大づかみの数字ぐらいはここへ出して審議なさつた方が、外貨予算を削りましようとか、耐乏生活をいたしましようとか、輸入を、削減しましようとかおつしやる政府の看板にはよく合うような気がいたします。そこで大臣はこれを早期に研究して出す出すと言つていらつしやるが、一体その目途はいつでございますか。この前もそのことを聞いたのですが、いよいよ国会が終りかけてから、こうきめたからこうしてくださいというやり方では困るのです。どうなりと審議してくださいというて出しなさつたとしても、会期末であつたとしたら何ともならぬ。没法子で、おつしやる通りまあまあということになる、幸い牛場通商局長のようなエキスパートがおつてつくられるのですから間違いはないでしようけれども、過去の外貨の予算から見まして、朝令暮改が非常に多かつた。そのおかげで業界が苦しめられる。業界が思惑をやるとおつしやるけれども、倒産商社続出の原因は、業界の思惑よりも外貨の問題で政府の態度が業界に及ぼす影響の重大さを考えていただかなければいかぬと思うのです。そこで原案を一体いつ御提出なさつて、われわれがそれを受取つて審議する期間に、大臣としてはどれくらいを御予定になつていらつしやるのか。この点ひとつ承りたい。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 予算案につきましては、法律というよりは制度の問題でございますから、両院の議決をいただくという筋のものではないのであります。しかしこの前私申し上げたのでありますが、前週の水曜日に法律によつて規定されておりまする閣僚審議会もございまして、このときにはいろいろ議論が出ただけで、思想統一をしたのでありますが、それにしても当日の当委員会に伺いまして、ただいま申し上げたほとんど全部を、こういう考え方で進んでおりますということを御報告申し上げたのであります。それでこれは私もほんとうに誠実に申し上げるのでありますが、問題は非常に重要であると思います。それで今週中あるいは来週に今の見通しではなろうかと思いますけれども、さらにまた閣僚査議会等をいたしまして、政府部内の思想統一をさらに詰めて行きたい、こういうスケジュールになつておりますので、それらの進行状況とも見合せて、中間的に御説明をいたして参りたいと思つております。それからプログラムといたしましては、従来は御承知のように半年ずつの外貨予算を編成しておりました。従つて従来の列で申しましても、四月から十月のものは三月のぎりぎり末にきめておりました。本年もどうしても大体の時期としてはそうならざるを得ないかと思うのであります。特に先ほどもちよつと触れた問題でありますけれども、国内措置の問題等もございますし、今回は財政金融政策も相当かわつておりますので、そういうような点と総合してうまくやつて参ろうといたしますと、どうしても三月のぎりぎりの末にならざるを得ない。今のところはこういうように見ております。しかし中間的に私どもといたしましては、できるだけわれわれの考え方を御説明いたして参りたいと思います。
  75. 川上貫一

    川上委員 関連して……。ちようど出て来たので伺うのですが、外貨予算というものをどんどん発表して行くのが従来の習慣だと思う。これをするのがいい悪いということを言つているのではないが、一体こんな外貨予算をつくつて、半年先、一年先の分も発表して、国内の商人にも明らかにして行く、そういうことをやつて行けるのですか。これは今問題にもなつているのですが、お話なつた通り、国家の予算とは違うのであつて日本貿易の政策に関する問題である。これは通常の予算というようなものじやない。政府の方ではいつまでも半年分、一年分というようにどんどん発表して行くつもりなんですか。こういうことをやつてつても一向さしつかえないというお考えなのですか。この点は何か考えがあるだろうと思うのですが、この際通産大臣の考え方を聞いておきたい。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はこの問題については、国内的に、国会を中心としたいろいろの御審議を願う予定で、ことに政策の御検討を願うような場合におきましては、できるだけ詳細に御説明をすべきものだと考えております。ただ前回もちよつと申し上げたと思いますが、従来通りの方式で地域、物資等を相当こまかく、この半年間にはこのものはこれだけだというようなことを中外に発表するというようなやり方をとることがいい、悪いかという点については、これも実は問題として現在検討しているのでありまして、ただいまのところは従来通りの方式で公表するのがいいか、あるいは公表の仕方を改正した方がいいか、この点につきましてはまだきめかねているような状態であります。
  77. 加藤清二

    加藤(清)委員 先ほど大臣が外貨割当の表街道の基本骨子を御説明なさいましたが、私は影に形が沿うごとき裏口街道の現状をどう把握し、これをどう改革しようとなさつていらつしやるかということを念頭に置いて、以下数項目にわたつてお伺いしたいと思うのであります。  まず第一番に、ただいまも発表の範囲とか方法とかについてお話がありましたが、これは私がすべにこの委員会で二度ばかりさきの大臣にもお尋ねしたことでございますけれども、政府外貨を発表なさいます場合に、時期というものが、国内市場にも、あるいは物資を外国で買い付ける場合にも、非常に大きな影響を及ぼしている。海外市場において量が少い場合はそれほどではありませんけれども、たとえば濠州の羊毛のごときものは大きな影響を及ぼす。綿においては米綿に及ぼす影響は大きい。それをあるときにはアルゼンチン羊毛に切りかえるというておいてからに、それではいけないということに気がついて濠州のメリノの買付にかわつた。このおかげで損したのが一体たれかといえば、やはり日本の業界なんです。それから国内におきましては、紡績と機場の糸の値ぎめを行うころになつて、外貨を少くするぞよ、少くするぞよというておいて、いよいよ値ぎめが行われてしまつてから、いや今度は十分にするんだというような発表がある。そうすると、外貨を少くするという声だけにおびえてこれは思惑じやない、理の当然です。需要と、供給の関係で、自由主義経済界においては自然の原理なんです。自然の原理に従つて高値が来た。高値が来たところで機屋は買い付けた。ところがそれでしばらくたつと、いやそうじやない、よけい割当てるんだ、こういうことなんです。そこで機場で織つたものが市場に売り出されるころになると、でんと安くなつてしまう。機場は原料高、製品安。紡績の方においては少いと思つて糸を少ししか引かない。そこへ原料がどんどん入つたから、日毛の倉庫に行つてごらんなさい。二年くらいの原毛がたくわえられておる。これは政府の方の責任です。そこでこういう点を勘案して、時期と量の発表を、あまり業界に苦しい目をさせないようにしてやつてもらいたいと思うのですが、その時期と範囲と方法についてどうお考えですか、お聞きしたい。
  78. 愛知揆一

    愛知国務大臣 時期と範囲、方法というようなところについて、今のところ具体的に明確なお答えができないのでありますけれども、今お述べになりましたようなことを十分考えて参りたいと思つておるのであります。
  79. 大西禎夫

    大西委員長 加藤君に申し上げますが、もうお約束の時間が来ております。
  80. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではあと一点だけお伺いいたします。  次に一番大事な問題をお尋ねしたいのですが、今日の自由党の政府は自由主義経済を標榜しておる。それは今日ここでの理論の対策にはなりません。しかしながら外貨予算をながめてみますと、もとは統制でございますね。しかも今度削減するということになれば、一層その統制を強化しなければならぬ、こういうことになつて、統制どころか、あるときには罰則をつけ加えねばならぬということになるのでございましようが、ところがここに妙ちくりんなことがあるのです。もとだけは統制しておいて、受ける人は統制かもしれぬけれども、そこから先、国内で販売したりあるいはこれを輸出に向ける場合にはどうかというと、これが統制になつていない。統制がいいとか悪いとかいうことは別なのです。こういうふうで片や統制、その末は全部野放しである、このおかげで一体今日日本の経済界に非常な大きな影響を与えておる。ここに思惑も起れば、三品市場の相場もかわるし、証券市場の相場もかわつて来る。こういうことが行われておるわけでございますが、これにつきまして特に考えなければならぬことは、外貨を受けた人は、外貨を受けたとたんに右から左に動かすだけで、どう考えても四割の利益がございます。これを機械にかけて、つくり上げて、いよいよ市場に出すというと、これはネットだけでも一千億ではございません。これはあなたの方が計算はよく御存じでしよう。もとを受ける方だけはそれ以上の余剰利益というものが行われておる。ところがこの材料を買つて、次に第二次、第三次の加工をしなければならない方は、原料高の製品安、自転車操業であり、やつているうちはいいけれどもということに相なつておるが、これについてこのまま放置しておいていいものか悪いものか。放置すれば中小企業の倒産は一層続出して、あなたたちがおつしやるところの物価引下げなんということは夢にこそ見られるかもしれないけれども、現実の姿としてはとうてい考えることはできない。さすれば今日の政府の言うところのコスト引下げ、続いて輸出振興ということはお題目に終り、二十と十二のバランスは一層離れて行く。こう私はしろうと考えに考えるのでございますが、大蔵関係の方で修業をなさつたくろうとのあなたは、一体この点をどうお考えでございますか。以下、まだ二、三、四、五、六とありますけれども、きようは皆さんがお疲れのようでございますので、この一点にとどめまして、あとはあす、あさつてに御指導いただきたいと思います。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今しろうというお話がございましたが、おつしやることは私はごもつともだと思うのです。だれが見てもそういう状況がありますから、そこでわれわれといたしましても非常に苦慮いたしておるわけでございます。そこで外貨の割当ということは、それ自体統制じやないかというお話でございますが、これはまさにそういうことだと思います。それで外貨の割当が今回いろいろと変更される、それに従つて、たとえば外貨の割当をもらつた商社が、本来の経済的な原因だけでなくて、そこで非常なもうけをするというようなことは、経済問題としてよりもむしろ社へ会的にもこの対策は相当考えなければならないと思います。私は先ほどからるる申し上げておりますように、それに対してこうこういたします、こういう方法をとりますということは、今日まだ申し上げるまでに行つておりませんけれども、今御指摘のような点は十分勘考いたしまして、われわれとしての対策を本日説明いたしたいと考えております。
  82. 大西禎夫

    大西委員長 次に川上貫一君。
  83. 川上貫一

    川上委員 さきに通商局長に伺つたのですが、もう一つだけお聞きしたいのは、外国銀行の為替業務について日本政府はどういう検査をしておるか、これが第一点。第二点は、どういう報告を外国銀行が為替業務について出しておるかということです。銀行局の検査部では検査をしておらないと言つてつたのです。この説明はいろいろありましたが、これでは為替管理の上に大きな穴が明いてしまう。またやみドルの横行を防ぐこともできないということになると思うのです。これは日本経済に非常に関係いたしますが、通産大臣はどうお考えになりますか。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 外国銀行の問題につきましては、御承知のように前の占領時代におきましては私はずいぶん苦労をいたしましたが、最近どういうふうな監督検査をやつておりますか、今つまびらかにいたしておりません。しかしながら私の承知しておりますことではこういうことになつておると思います。現在日本内地で店舗を開いております外国銀行については、銀行法、為替管理法その他の日本国内法が、日本の銀行に対すると同様に適用されておると考えます。従つて銀行法に基く検査は当然法律に基いてやることができます。それから為替管理法の関係で申せば、為替の取引等について為替管理法に規定されておるところの報告は、一切他の日本の銀行と同じように提出する義務がある、こういう制度なつておると思います。
  85. 川上貫一

    川上委員 これはこれ以上聞きませんが、規則はそうなつておるかもしれませんが、事際は検査しておらない。それから業務報告も帳じりの報告というような形になつておる。件数の報告にはなつておらぬはずだと思う。しかしこれは通産行政の方に非常に大きな関係を持つことであつて、これでは為理管理に穴が明きます上に、またドルの問題についてもどういう操作が行われているかわからない。しかも外銀に日本の為替の大部分を預けておりますから、この点について通産大臣が現在の法律以上には御研究になつておらぬというのは大きな穴だと思う。これはこの次でよろしゆうございますが、調べて通産行政としての意見を聞かしていただきたいと思います。  第二の問題に移ります。時間がありませんから簡単にお答えを願いたい。さきに局長にお伺いしたのですが、未決済を加えて約七億ドルというのでありますから、これを差引きますとまず六億少々と見なければならぬ。そうすると先ほどから大臣もいろいろ答えられたように、外貨の面からの抑制ということは、りくつはどこにあつても当然考えなければやつて行けない。これを抑制しますと、原材料の統制ということを考えなければ、外貨だけを抑制したところで手がつかない。原材料の統制を考えるということになりますと、これはさしあたつてリンク制を強化するというような方法をとらなければ、直接投資はなかなかできぬだろうと思う。そうすると、結局これは実質上の二重価格になる。その結果は必ず国内消費を圧迫することになることは明らかなんですが、その結果物価は下らぬだろう。むしろ物価はこの面からいえば上る。この点については、統制の問題はどう考えられておるか。原料統制、リンク制、それから物価の問題について、要点だけでけつこうでありますからお答えを願いたい。
  86. 愛知揆一

    愛知国務大臣 原料全体についての国家管理ということは考えておりません。しかし場合によつてある物資について異常なる事態でも起れば格別でございます。それからリンク制の強化と二重価格、これは簡単にお答えいたしますと、本筋としては私はやりたくないのであります。しかし何としても輸出努力をいたさなければなりませんから、国際的に納得してもらえるような程度の問題については、ある程度のリンク制ということは、臨時措置として考えなければなるまいと考えております。
  87. 川上貫一

    川上委員 そうだろうと思います。そういたしますと、さきに言いました通りに、輸入価格制の強化は好むと好まざるとにかかわらず必至だと思う。こうやらなければとても国際収支の問題を好転させる一歩を踏出すことができぬ。これが一つの条件になつておる。その結果は必ずやみドルを防げぬ。思惑輸入も防げぬ。無為替輸入も、たとえば石炭、石油のごときは必ず行われるに違いないのです。いま一つは密輸入がどうしても起つて来るのです。為替レートの問題がある。今のレートの問題をそのままにしておいて外貨を抑制することになれば、必ず無法な形をもつてしてでも持つて来なければならぬことは商行為上当然だと思う。そうなるといろいろ通産省で日本の経済の健全化についていくら苦労されましても、この形ではくずれてしまう。これが第一点。  第二点は、為替レートについては何か考えられておるのですか。平価切下げの問題についても考えておられるか、どうか。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一のお尋ねは相当広汎な問題になると思うのでございますが、私がさつき申しましたように、二重価格ということはなるべく避けるべきだと思つております。それから密輸入の問題ややみドルの問題等については、取締りを徹底的にやる以外に方法はないと思います。それから為替レートの問題は、そういうことを私が前段に申し上げましたゆえんのものも、為替レートを何とかして厳守して参りたい。日本のような材料を輸入しなければならぬ国においては、特にしかりであろうと考えております。
  89. 川上貫一

    川上委員 大臣の主観はよくわかりますが、為替レートに手を触れずしてこの国際収支を健全化する道があるのですか。場合によつては、これも考えなければならぬ状態が起るであろうとお考えになりますか。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現政府といたしましては、為替レートを徹底的に擁護して参りたいと考えております。
  91. 川上貫一

    川上委員 金融引締めの問題でありますが、金融引締めということが盛んに言われておる。また通産行政の上でもこれは考えられており、施政方針でも出ておると思いますが、今の金融の量的な統制は限度に来ておるのではないか。つまり思惑の投資は、たいてい引締めが行われたのではないか。これ以上量的統制をやろうと思えば、設備投資を削つて行かなければならぬが、これをやる決心があるかどうか。  第二点は、量的統制が限度に来ておりますから、これ以上の統制は必ず質的統制になるのほかはないと思います。つまり質的統制に金融がなると、事実上の生産統制になる。事実上の生産統制は、すなわち事実上の消費の統制になるわけです。金融面からする消費の統制、金融面からする生産の統制、これをどうしてもやらなければならぬことに落ち込んで行くと思いますが、この点についてどういうお考えがあるか。実は政府は本年の下半期からここに乗り出すつもりがあるのではないか。これを考えなければ、とても大臣が施政演説で述べられたような政府の政策はできぬのではないかと思いますが、この点のお考えを承つておきたい。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 第一の量的統制は限度であるというお話でございますが、そういう見方ももちろんできるかと思います。しかしこれは公式的に量的統制と質的統制とをわけてはつきり区別のできないものもあると私は思います。と申しますのは、たとえば財政投融資のごときは、量も今度は非常に減りましたし、それからこれを投融資いたします対象を厳選しなければならぬという意味におきまして、質的の統制がこの面においてはすでに実行されているといつてもよいのではないかと思います。  それから第二の質的統制等の問題については、実は過般衆議院で予算が成立いたしまする直前の三党協定の中の了解事項にもございますように、投融資委員会を設置するというようなことがありましたので、政府といたしましても、その問題もございますので、さらに検討いたしたいと思つております。ただ現在すぐに資金調整法的なものを考えるということは考えておりません。
  93. 川上貫一

    川上委員 お答えによつてわかりましたが、質的の統制に従つて行くと、それは産業の系列化を伴うのです。それから投融資、委員会でもそれをやらなければ基本は立たない。ところが一方においてMSAの援助を受けて、日本は本格的な再軍備に入つて行くわけだ。そうしますと、この量的の意味を持つ統制ということになつて来れば、軍需産業の系列化に向つての金融ということにならなければ、話にならぬわけだ。総花的なことで行くはずがない。これは一定の時期においてこの方向で行くならば、軍需生産の上でも系列化に対する重点的な融資ということになるわけだ。このほかに道はない。もしほかの道をとつたら融資は野放しになりますが、これはそういうふうにならざるを得ない。大臣はこの点どうお考えか。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は私はこう考えておるのであります。自由党には計画経済的な考えがないということの御批判を盛んに受けるのでありますが、たとえば電源の開発にいたしましても、合成繊維の問題にいたしましても、鉄鋼、石炭の合理化にいたしましても、これはもちろん第一義的に国民生活の充実と、将来長きにわたつて日本の経済自立の上に民需を中心としてぜひとも必要なことではないかと私は考えております。その方面に対して財政投融資は乏しいながらも重点的に配当して参りたいという考え方であります。  それから軍需産業のお話が出ましたけれども、私はこう考えるのであります。現在ここにはつきりした数字を持つておりませんけれども、最近におけるところの設備に対する投資、あるいは融資という面から見ましても、いわゆる防衛生産に対する金融というものは、全体から見ればまことに微々たるものでございます。  それからMSAのお話もございましたが、たとえば三十億円の問題にいたしましても、防衛関係の工業というものに原則的にこれが向けられるとは思いまするけれども、全体として見ますれば、防衛生産というものは現在の段階においては、まつたく微々たるものであつて、私は余談でございまするが、財界の人たちに言うておりますことは、この際日本としてこれからの行く道は、防衛産業をうんと拡充するというようなことを考えるのは間違いだと、私見としてはそう考えており、またそれを説いております。
  95. 川上貫一

    川上委員 それはりくつに合わぬと思うんです。民需に向けて傾斜して投資する、デフレ政策をやつて国内の消費を抑圧して、物価を下げようというのでしよう、それで民需投資を中心にする、これは話が合わないと思う。  第二の問題は、特需八億ということを考えておる。その上にMSAを受けまして、日本が再軍備をして、必ず近い将来に憲法の改正までやるという含みを持つておる。この含みを持つておらなければMSAは受けられるものじやないのです。アメリカのMSAの本法によると、予算、金融、産業を動員して、このMSA法の目的に合致するとアメリカの相互安全保障本部長官が認めない限り援助をしないとある。そのMSAをもらつておるんです。特需の点から言うても、再軍備の点から言うても、これはどうしても軍需系列に向つて質的統制の金融をする以外には、現在の政府の行き方では方法がないと私は思う。そこで通産大臣は、私見としてはという希望をお述べになりましたが、希望の意見によらず、今の行き方ではこうなるよりほかに道がないと思うんですが、この点は客観的に考えて、通産行政の立場から、主観でなしに、ほかに道がありますか、私はないと思うんですが、どうでしよう。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 国民の消費の問題をおあげになりましたけれども、御承知のように二十九年度の日本経済全体の見通しから申しましても、現在われわれが考えておるような日本経済の姿になつた場合においては、国民の消費水準は、二十九年度においてもやはり三%くらい上るということを見通しておるくらいでございまして、消費についてそんなに急角度に切られるというふうには、私は考えておらないのであります。  それから防衛生産の問題につきましては、先ほども申した通りでありまして、これは簡単に申し上げると、つい意を尽し得ないのでありまするが、いろいろ産業面に対してのわれわれの計画から申しますれば、根本はまず日本の国力を充実することが大事なのであります。そのためには、民需の基礎になる、たとえば電力にいたしましても、あるいは衣食住の改善の方面にいたしましても、輸出を伸ばして日本の経済の基礎をかたくするというために、重点と思われるところに資金の配分を行おうとしておるのでございますから、その点はどうも私の考えと、お述べになりました考え方とは違うのでありまして、この点はやむを得ないと思います。
  97. 川上貫一

    川上委員 これはもし時間がありましたら、私は通産大臣と徹底的に論議を闘わしてみたいと思う。これは非常に考え方が食い違つておる。たとえば電力を民需と言われますけれども、日本の電力飢饉というものは一体どこから来ておるか。今の電力量というものは戦前より多い。しかも電力の飢饉なんです。これは厖大な量をアメリカ占領軍が使つており、それから軍需生産に向けては特別な配電をしておる。こういうことから電力の飢饉になつておることは明らかである。だから電力を民需と言われますけれども、今の日本の電力の開発は民需じやありません。これは民需じやなしに、戦争経済の方向への意味を持つておる。これが一つ。  いま一つは、国内の民需を増して、考えようによると三%くらい国民の生活は上ると言われますけれども、一方においては物価を引下げると言うておる。輸出能力を高めると言うておる。耐乏生話を強要すると言うておる。そうすれば、どうして物価を引下げたり輸出を増大したりするのです。できないでしよう。できる道は、合理化をするということが一つある。通産大臣は産業の合理化のことなかなか言われませんが、これならばある程度話がわかる。ところが合理化はできない。合理化というのは、原料が安いこと、大量生産をすること、国内市場が豊かであつて経済に弾力性があるごと、自主的な貿易が行われること、合理化資金があること、この条件が伴わなければ合理化というものはできないのに、物価を引下げよう、輸出能力を高めよう、そして民需の投資をやろうと言つても、これはさつぱりいかぬと思う。そこで政府のやられる形ではどういうことになるかというたら、国民の消費を第一に圧迫すること、賃金をストップすること、米価をくぎづけにすること、税金を徴収すること、そうして国民の購買力を抑制して押えつけること、これ以外にはない。また言うてないのです。こういう、言葉で言うてないだけであつて、事実はこうなつておるのです。こういう政策をしておいて、一方では、金融の質的統制をするが、それは民需に向けるのだ、こういう経済論は成り立たぬ。これは時間があれば徹底的にひとつ質疑したいのですが、残念ながらその時間がありません。そこで私はとりあえず政府の今やりおる政策について言うが、耐乏生活、物価の引下げ、輸出の増進を考えること、これは合理化でもなく、民需の生産でもないということ、国民の消費を圧迫すること、賃金ストップ、米価のくぎづけ、税の徴収、中小企業の破滅もあえて意としないという形で購買力を押えつけることによつて、国民の生活を押えつけ、場合によつては出血することによつてだけできる政策になつておる。その際に民需に金融を系列化してしまわすのだというような御意見はどうも通らない。それよりか、はつきりと今の日本の状態では、民需にはまわさぬのだ、金融の質的統制は軍需生産に向つての傾斜である、こうはつきり言われたら筋が通る。いい悪いは別です。意見の違いはありましようが、筋ははつきり通る。しかしそうしませんと、大臣の筋は少しも通らぬと思うのですが、これはどうお考えになりますか。
  98. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは私簡単に申し上げましたから、何か一つのところだけをおとらえになつて、そういう御意見があるのだと思うのであります。これは私も先般来思つておるのでありますが、時間があれば徹底的に私の考えておるところもお話申し上げたいと思うのであります。ただ簡潔に申しますと、今回の予算あるいは経済政策の見通しといたしましては、くどいようでございますが、まず根本的に過剰な有効需要を切りたい。そのためには、諸外国の例などから申しましても、根本はまず財政であり、特に財政投資がだぶつくことを切りたいということで、これを財政の投融資で申しますれば、二十八年度に比べれば一〇%以上これを削減しておる。しかし一面において生産については二十八年度と大体同規模でやろう、そのためには生産の量、供給の量に落ちない。それに対して需要が少くなる。その面から物価が下る。しかしながら物価は下りましても、全体の雇用の状態なりあるいは賃金の状態なりを見て参りますると、先ほど申しましたように、大体CPIの下落であるとかいろいろなプラス、マイナスの要因を合せて、結果においては二十九年を通ずれば、消費水準が三%くらい上る。かくしてわれわれの申しておるところの耐乏というものは、国民の消費生活の上において外国品を買うことをやめようじやないか。それから物価が下るから、その下つたところが実質賃金の上昇になる。その部分を、できれば消費をできるだけやめて、資本の蓄積の方に向けてもらいたい、こういうことで、われわれとしてはわれわれなりのバランスのある一つのコースをつくつておるつもりであります。従つて電力は軍需だとおつしやいますけれども、具体的に考えてみても、私の記憶に誤りなければ、現在駐留軍が使つておりまする電力量は全体の一・五%程度だと思います。かような状況でございまして、民力を充実して国民生活の民需を充実するためにも、近代生活としては電力の拡充ということはどうしても必要だと思う。そこでその面には、これは一例でありますけれども、できるだけの金を投入して、できるだけ早く開発をして出力を増加させたい、こういうふうに考えておるのであります。
  99. 川上貫一

    川上委員 ちよつとお聞きしたいのですが、もう時間がないので非常に残念ですが、今の電力の問題にしましても、通産大臣の御意見は違うのです。一%の駐留軍だけの問題でない。軍需生産、硫安なんかもその典型でありますが、戦時体制のもとにおいてはあれは軍需生産で、すぐ火薬工場になる。これはすぐに使えるのです。一方だけ見ちやだめです。一方においてはMSAを受けて再軍備の道に入つてしまうし、特需でなければならぬと言うておる。特需というものは全部軍需生産。それからたとえば硫安なんかもまるで民需のように言いますけれども、国内の消費は圧迫して、そうして出血輸出でもつて朝鮮や台湾に送つておるのです。何でここへ送るか、戦争経済のもとでなければこんなことになるはずがない。中国へ送つたらよほどもうかる。ところがこれをしない。この全体を見ましてわれわれは考えなければ、政治を論ずることはできないと思う。硫安というものは平和経済なら肥料、戦争経済ならば、これは軍需生産のもとになる。これが大事な点です。こういう大きい目で政治的に見てごらんなさい。日本の電力は軍需的の方向に向つておるから危機に来ておるのです。これは間違いない。いま一つは、通産大臣の御答弁によると、物価を引下げ、日本の輸出を増進する道は国民の消費を圧迫する以外に何もない。ほかには何も計画を立つておられぬと思う。結局生産の圧迫なんです。国民の生活をこわすことによつて、しかたがない一つの貿易政策、自由党の経済政策を立てて行こうというのです。そのうしろに統制がある。リンク制の強化、それから金融の質的統制、外貨の抑制、これがあるのです。これは通産大臣は言われた。そうすると自由党の自由経済というものは一体どんなことになるか、もう崩壊してしもうたんじやないか、これが自由経済なのかどうか。今後自由経済で行けますか、自由経済はつぶれたんじやないですか、またつぶさなければやつて行けなくなつたんじやないか、これが第一点。  第二点は、それなら自由経済はつぶれおるが、つぶれたら何になるか、事実上の戦時統制経済になりつつあると私は思う。そういうことはないとおそらく言われるかもしれませんが、全体を考えてごらんなさい。この日本の窮乏しておるときに、MSAを受けて再軍備に踏み込んで行つて、近い将来には憲法も改正しようというくらいに行つてつて、しかも国際収支は悪いのです。国民の生活は非常に困難に陥つておる証拠には、中小企業のつぶれる時分に統制をするということになれば、国民生活がほんまに向上するような統制は、好むと好まざるとにかかわらずできないのです。ほかに方法はない。そうして最後にこれを救う道は、アメリカに助けてもらう以外にはない。貿易の上からいつても、外貨の面から見ても、これは戦時的な統制経済の様相である思う。いろいろそれは議論がありましよう、通産大臣としてはいろいろなことをまた答弁されると思いますけれども、静かに今の日本の経済と貿易の状態を考えたならば、こういう統制経済以外に行く道はないと私も思い、自由党の自由経済というものは実質的に崩壊しておると思う。これを崩壊させなければ日本貿易と経済は成り立たぬと思うが、この点はどういうようにお考えになるか、これでも自由党の自由経済であるとお考えになるかどうか。
  100. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうも答弁を予想されての御質問でありますが、私は常にまつたく静かにまじめに考えておりますけれども、自由党の自由主義経済というのは、野放しの自由経済でないということは、すでに為替の割当にしても、その他の面におきましても、いわゆる野放しの自由放任ではないということは、これは御理解が願えるだろうと思うのであります。そうして私どもとしては、総合的な見通しのもとに誤りなく国政を運営して参りたいと考えておるわけであります。
  101. 川上貫一

    川上委員 自由党の自由経済をちよつと説明してもらいたい。
  102. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の申します自由主義経済というのは、まず第一に、あらゆる企業ができるだけ創意くふうを伸び伸びと発揚し得るような経済ということが一口に言つて自由経済だと思います。但し国際的の環境なりあるいは外貨関係なりから、一つの活動のわくをつくるというようなことは、情勢の変化に応じて常に考えなければならないことだと思います。
  103. 川上貫一

    川上委員 それでは自由経済にはならないんじやないか。
  104. 愛知揆一

    愛知国務大臣 自由経済はそういうものが自由経済で、どこの世界に自由野放しの経済がございますか。これは賢明な川上さんがお考えになればおわかりと思います。
  105. 川上貫一

    川上委員 そうすればMSA経済も自由党の自由経済だと言われるのですか。今年の予算は民需はほとんど削減し、保安隊及び軍需には出しておる、これも自由経済、金融統制によつて軍需系列の金融をやる、これも自由経済、こう理解してよろしいのですか。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はその通りに考えております。但しその前提の要因になりました民需を全部切つて保安隊ばかり増強し云々のところは間違いでございます。私どものやつておりますのは自由党の政策でございます。
  107. 大西禎夫

    大西委員長 本日はこの程度にして散会いたします。  なお明日は午前十時より外務委員会との連合審査会を開くことになつておりますので念のため申し上げておきます。     午後五時散会