○帆足
委員 輸出の振興の相手先としまして、私は、生糸が全滅した今日、
アメリカとの
関係は、やはり客観的に非常に重要ではありますけれ
ども、ある限界があると思います。特に
アメリカの鉄鋼は一億トンをはるかに越えておりまして、
日本の鉄は四百数十万トンでしようが、
アメリカに不景気並びに恐慌の前兆が見えております今日、これは容易ならざる課題であると思います。
経済関係からいいますと、やはり
アメリカは軍事外交的見地から、
日本を主として見ておりまして、
アメリカの前線基地、補修基地、中継ぎ基地、利用基地というような観点から、
経済関係が両者の間に生れておる部分の方が比重が大きい。これは正常な貿易
関係ではないと思います。しかし
日本がメキシコかカナダのような地位ならば、それと
経済関係かぴ
つたり合うわけでありますが、地理的には、
日本はカナダでも、カリフオルニアでも、サンサルヴアドル島でもなくて、アジアのがけの下にあり、六千海里も隔た
つておりますので、
従つて経済的に言いますならば、
日本と
アメリカとの
経済関係が、
日本の
経済の三〇%を越えることは、客観的に見て困難てある。東南アジア諸国に御協力を集中なさることは、われわれも全面的に賛成ですが、ここは特に英国との間の国交調整が必要であり、また各民族独立の勢いを示しておりますために、非常にいろいろな課題を持
つておりまして、たやすく貿易が拡大することは望みがたいと思います。しかし非常に重要であります。そこで
大臣は、今北アジアのことにお触れにならなか
つたけれ
ども、それはまあ内閣にと
つては鬼門でありましよう。確かに北側の方にあ
つて鬼門の方角でありましようけれ
ども、鬼門などというものは迷信であ
つて、決して解き得ない課題というものはないと思う。元来
経済外交とか、外交とかいうものは、解きがたい課題を解き、そして理解しがたいなぞを理解して行くことが、理性と努力の近代外交の方向でなくてはならぬと思う。この面についても非常な努力が必要だと思うのです。現にランドル
委員会でも、また英国でも努力しているわけです。そこで私
どもは中共貿易のことをいつも申しますが、これですべてが解決するなどというようなやぼなことを申しておるのではなくして、この問題を零にし空にして、昔、東条さんが言
つたように、蒋介石を相手とせず、今は毛沢東を相手とせず、こういうような単純な理論では、どうもうまく行かぬのではないか。そこで
国際収支が非常事態であ
つて、下手をしますると、各国ともまだ貿易は何とかや
つておりますが、
日本とビルマが世界中で一番苦しいと思います。そこで
国際収支の点から言えば、非常事態宣言を出してもよいくらい重要な時期であ
つて、奢侈品禁止のような問題よりも、
輸出振興を中心として、
輸出振興どういうふうに全国民の生活を合せればよいか、当然満州を失い、朝鮮を失い、台湾を失い、国土の四割を失い、人口が二千万もふえておるんですから、か
つてはそれを戦争と植民政策でや
つたわけですが、今それが全然ない。できない以上は、結婚禁止令でも出さない限りは、私は
輸出振興を第一義とし、そしてそれに国民生活と政治のすべてを合せねば、とにかく当面や
つて行けないのではないか、それをやらなければ国家財政は破綻です。そうだとすれば、
輸出振興に対して、外交も政治も国交調整も、それにバランスを合せる必要がある。そのために私は北アジアとの貿易、中国との貿易、ソ連との貿易を零にして、
日本経済が成立つかといえば、それは不可能であると思う。三割とは行かないまでも、せめて一割でもいい、五%でもいいから、やはり、安全弁をそこに求めておく必要がある。ところが通産当局は非常に御熱心でありますが、外務省当局に至
つては、もうそれを犯罪扱いをしておるように思われる。現に私
どもか中国と話合いでもして来れば、通産
大臣でも、
外務大臣でも、あのときはちよつと旅券で失礼なことをしたけれ
ども、やはりだれかがやらねばならぬとであるのに、よくや
つてくれた、さぞかし御苦労であ
つたろうというようなことで、一席くらい懇談会でも設けて、その労をねぎらうのか、私はエチケツトというものだと思う。現に私はモスクワに行
つたときに、あのときはガスコン大使かたしかおられたときたと思いますが、英国労働党系の左派の方が見えておられましたが、あの大使館で非常に丁重にもてなされております。私
どもも、あそこで
アメリカ大使館の方から非常にエンタテイメントに扱われた。
アメリカの大使館や英国の大使館でも、われわれの労をそうしてねぎらうのに、いまだか
つて日本政府がわれわれの労をねぎら
つたことがない。私は、こういう問題をもう少し明朗に考えて、現に中国との間に七百億円の貿易協定が結ばれ、できないできないと政府当局は言われますけれ
ども実は非常にできているんです。人絹もすでに数千万ポンド約束ができておりますし、ミシンも
輸出される、塩も十三万トン
輸入される。そうして最近は苛性ソーダも
輸出される。現にロンドンの値段か二十五ポンド前後でしよう。香港着で三十ポンドか二十八ポンドくらいです。
日本の苛性ソーダは四十ポンド以上ですから、非常な開きがありますけれ
ども、合理化すれば、塩を
輸入するために三十一、二。ポンドくらいで
輸出することは、工場原価て不可能でない。それは必ずしも出血ではない。それによ
つて中国側ては四十シリングの塩を三十六シリングに下げましたから、大体苛性ソーダを
輸出すれば、それで
日本は安い塩をまかなえる。ただ中間に専売公社がおりまして、プールしておりますので原料が高くなる。そうい
つた関係もあるし、ヨーロツパの塩の工場を私も見ましたが、あれは岩塩の上にできておりまして、水を入れて溶かしてとい
つたようなことで、優良な原料がそのままできる。ちようど
日本の人絹工業における水のように、コストはただなんです。ところが、私
どもは高い塩を使
つていて、この塩の上にソーダ工業が立ち、繊維工業が立
つておるのでありますから、繊業工業自身が、もう人絹がぼつぼつイタリアよりも割高になり始めております。これを下げますためには、塩を下げ、苛性ソーダの値段を下げなければならぬ。下げるとい
つても、業者をただ苦しめて下げたのではなくして、そこに合理性がなくてはならぬ。そのために一番政治的摩擦の少い中共からの塩
——青島の塩とか太沽の塩は
日本の技術者がつく
つた塩の設備でございます。こういう問題はすでに
アメリカの
委員会も認め、英国も認めているのですから、摩擦のないこういう問題から逐次解決していただきたい。実は塩の問題は、西ヨーロツパから買わなければならぬから、数日中にキヤンセルすると向こうが言
つているのです。そこできようも
繊維局長にお願いしましたが、苛性ソーダの問題は、今の政府当月もこれを指導してもらいたい。もし通産
大臣の言われるごとく、
ぜいたく品を禁止してまで今
輸出の振興を第一義に置いて、国民が緊張して合理化への努力を続けなければならぬということを号令されるならば、同時に今のように、もはや摩擦のなくな
つている安い塩の
輸入などについては、政府が人をさき、時間をさいてその
輸入を促進する。そのために
アメリカと摩擦が起る段階はもうすでに過ぎているのです。従いましてこの問題などは、きようお帰りになりましたら、即刻
大臣から
軽工業局長に御相談をしていただきたいと思います。
硫安の問題につきましては、たびたびここで議題になりましたが、国内の農民の需要との間の調整をいたさなければならぬことは非常に重要な問題です。それにもかかわらず多少の余力はもちろんあるわけです。これは御
承知のように開らん炭との見返りにな
つております。開らん炭に対しまして、従来は製鉄業者はドルないしポンドの割当を受けて、
アメリカの優良炭を非常に簡素な方法て買うことができ、並びに重油等をふんだんに使えましたので実はそれになれておりました。しばらく近くの開らん炭を使う機会を持ちませんでした。そのほかに北支の開らん炭は、われわれの技術から離れましたために、われわれの意に沿わない品質のようなものにいつの間にかな
つております。それが啓明貿易その他の商社の努力によりまして、一回入り二回入るうちに品質が改良されまして、今度私
どもが向うに参りまして見ました、また得ました資料による品質は、どうやらこうやら合格点にこぎつけました。そこで年間に開らん炭をどのくらいお買いになる意向なのか、またバーターをいたしますために
アメリカもこれを認めているような摩擦のない物資の場合に、一体どの
程度できるのか、こういうことをやはり真剣に行政当局で検討して、メーカーに対して指示を与えなければ
——せつかく開らん炭を今
輸入し得る状況にな
つているのですが、政府は
国際収支に対する
計画として何十万トンの開らん炭を入れるつもりか、じつは五大メーカーもわからないというのです。そこでせつかく
アメリカ炭をくれておるものを、何を好んでわれわれが今切りかえをする必要があるのか、現場の技術者はそのために非常に苦労しなければならぬのであるから、その場の思いつきの買いではメーカとしては断りたい。入れるならば苦しいことであつでも、
計画的に入れるならばある
程度まで中国の石炭を使うことには賛成である。それならば、やはり政府が
国際収支を握
つているのですから、政府の
経済政策の裏づけが必要である、こう言
つているわけです。この問題について一体どういうお考えであるか。一方で
国際収支に火がついた、奢侈品まで税金を課さなければならぬと言
つておりながら、他方においてはできる努力を怠
つているのではないかと思います。たとえば自転車四万台の
輸出の契約が、できましたのが、三百五十台だけです。
あとの自転車の
輸出ができないのは、苛性ソーダの
輸出、硫安の
輸出を一トンといえ
どもしないからで、向うの進出口公司が契約違反を怒
つて、まだキヤンセルにはな
つていないが、結局四万台の待望の自転車の
輸出がいまだに停滞しております。われわれは中小業者の
陳情攻めにあ
つて弱
つております。従いまして硫安の問題も、誠意さえあれば一万トンやそこらの
輸出ができないはずはない。苛性ソーダにしましても、五千トンや二千五百トンの
輸出ができないはずはないと思う。もちろん現在この問題が保守政党のもとにおいて取上げられ、また
アメリカとか自由世界との、
二つの世界の対立の諸
関係の間に行われておりますから、実際問題として御苦労があることも知
つておりますが、それにしても保守合理主義の範囲でやり得るべきことをおやりにな
つていない。そして
国際収支は破産状況にな
つている。苦しむ者は国民大衆である。すべての労働組合も、中小企業者も、私が今申し上げた
程度のことには政党政派の別なく一致しているにかかわらず、特に外務省が熱心でないのと、通産省といえ
ども外務省の威力に多少恐れをなして、やはり北方との貿易を鬼門だというふうにお考えにな
つている。またソ連から木材を
輸入する仕事が今進んでおりますことも御
承知でしよう。木材は今までカナダの木材もあまり入
つてなか
つたのが入り始めたのは、国内の木材が高いので、カナダの高い木材ですら引き合うのです。そういう好ましかりざる状況のもとに外国の木材が入
つているのですが、沿海州の木材を入れることができたならば
——沿海州の木材が入
つたからとい
つて、それに伴うて思想が入るわけでもない。材木と思想が抱合せになるはずはないと想います。(笑声)国内では資本論も共産党宣言も大ぴらに売られているし、学校の教科書にすらな
つているのですから、問題は国内の不合理と貧困のみが社会思想の基礎であ
つて、思想は、プロテスタントの思想であろうと、カトリツクの思想であろうと、自由であるべきはずです。思想と材木と何の
関係があるか。むしろ家がたくさん建てば、思想は健全とな
つて、国内は安定するでしよう。ところがどこに隘路かあるかというと、御
承知のように笠臣造船というところで船の修繕をしております。そこに来ておりますソ連の技術者が、旅行も全然禁止されて、東京にすら来ることができない。こういうような状況のもとでは、われわれは人類であ
つて爬虫類てはないから、そういう国には行きたくない、こう先方が言
つて相手にせぬという状況です。この問題を解決すれば、木材の
輸入の問題が進捗する。材木業者も助かるし、住宅営団も助かる。住宅がふえれば思想の問題もよくなる。むしろ自由党の投票者の数がだんだんふえて来るでしよう。生活が安定すれば、自由党のためにもたいへんいいことです。
そこでこういう問題の
根本は、われわれが望むところの平和と国交調整の問題にもかかるのですが、何しろ水爆の時代である。昔の小銃、機関銃の時代なら、もう一億総進軍の準備をせねばならぬでしよう。しかし水爆の時代でありますから、私はヨーロツパの状況を見てお
つて、話合いで平和を、話合いで……。