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1954-02-02 第19回国会 衆議院 通商産業委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二日(火曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 大西 禎夫君    理事 小平 久雄君 理事 首藤 新八君    理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君    理事 永井勝次郎君 理事 加藤 鐐造君       小川 平二君    小金 義照君       始関 伊平君    田中 龍夫君       土倉 宗明君    坪川 信三君       笹本 一雄君    長谷川四郎君       柳原 三郎君    加藤 清二君       齋木 重一君    帆足  計君       伊藤卯四郎君    中崎  敏君  出席国務大臣         通商産業大臣  愛知 揆一君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  記内 角一君         通商産業事務官          (軽工業局長) 中村辰五郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君         中小企業庁長官 岡田 秀男君  委員外出席者         通商産業事務官         (特許庁総務部         長)      正木  崇君         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月二日  理事伊藤卯四郎君の補欠として加藤鐐造君が理  事に当選した。     ————————————— 二月一日  御母衣発電所計画変更に関する請願(岡村利  右衞門君紹介)(第三九六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  通商産業政策基本方針に関する件     —————————————
  2. 大西禎夫

    大西委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任につきお諮りいたします。昨日理事伊藤卯四郎君から理事を辞任いたしたい旨の申出がありましたので、その補欠として加藤鐐造君理事に選任いたしたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大西禎夫

    大西委員長 それではさよう決定いたします。  次に昨日に引続き通商産業政策基本方針に関する件について調査を進めます。質疑を続行いたします。山手滿男君。
  4. 山手滿男

    山手委員 私は少し大臣にお聞きをしてみたいと思うのですが、先般の本会議における施政方針演説で、新大臣は、新しい事態に即応するために国際収支均衡を回復し、正常な、均整のとれた経済を確立することが非常に急務である。こういうことを中心にいろいろなことを強調をされたのでありますが、このことは緊縮財政まで飛火をし、これからの日本の政界、財界方面に非常に深刻な影響を与えることであつて、きわめて重要と思うのでありますが、今のお説は抽象論としては私どももまつた賛成であります。しかし具体的な個々の問題についてはいろいろ御説明を聞かなければならないと考えるのであります。  まず第一に、国際収支均衡を回復するというお話でありますが、日本の現在の経済情勢から行きまして、なかなかこれは困難であろう。その目標をどこに置くか、どの程度目標均衡を得させるかということが、きわめて私は重大な問題になつて来ると思うのでありますが、均衡せしめる額はどの程度均衡せしめるのか、まずその点につて説明を願います。
  5. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御質疑に対しまして、ちよつと長くなるかと思いますが、国際収支の問題につきまして、大体の私の見通しを簡単にお話いたしたいと思います。  まず国際収支見通しについては、諸般の経済状況を総合した結論国際収支のところに現われると思いますので、そういつた意味で前提を申し上げますと、二十九年度予算案に関連いたしまして、第一に国内需要がどういう姿になろうかということでございますが、これは御案内のように、財政投融資計画におきまして、昨年度よりも五百八十億円の削減が行われます。これはパーセンテージで申しますと、大体一割三分くらいの減少。それからその次に公共事業関係食糧増産関係、あるいは災害復旧関係といつたような点で、大体前年度に比べると九%くらい減少になります。国内投資需要としては、前年度に比べて一割程度減少になる。これを一番初めの基礎前提にいたしております。  それに対しまして消費需要関係でございます。この点はこまかいことは省略いたしますけれども、いわゆる緊縮予算ではございますが、たとえば賃金で申しますと、やはり年度間を通ずれば三%くらいは上るかつこうになると思うのであります。従つて年度よりもある程度上昇する部面もございます。同時に消費者側におきてましても、将来の経済見通しからいつて、いわゆる買控えとでも申しますか、そういうふうな傾向が現われて来る。これが消費購買力の減退ということになつて参りまする関係で、消費購買力自体とすれば、二十八年度とほぼ同様になりはしないか、これを第二の想定にいたしております。これは国内関係において変化があるといたしました場合です。  その次に、ただいまお尋ね輸出その他の関係でございます。まず輸出につきましては、昨日も申し上げましたように、米国経済がやや景気後退状況と見受けられますので、対ドル輸出については二十八年度と同様というよりは、むしろ若干落ちるのではないかと見ております。しかしながら日英会談の結果に基きまして、対英輸出が相当伸びるものと思われます。また伸ばさなければいけないと思いますので、これを全体として見ますれば、ドル換算いたしまして十三億七千万ドルという輸出の姿になろう。これは二十八年度に比べますると、約一億五千万ドルの増加に相なります。それから特需につきてましては七億六千万ドルくらいと見込んでおります。これは昨年に比べまして五千万ドル程度減少というふうに見ておるわけでございます。  それからこれに対して今度は、国内産業活動がどうなるかということを見ますと、輸入の方の見込みがつくわけだと思うのでありますが、国内生産活動の方は、先般来しばしば申し上げておりますように、二十九年度の上半期においてはそんなに減退することはなかろう。しかし下期においては相当減退する結果、年度間を通ずれば、二十八年度と同様の一五二程度水準になるであろう。  それから農林水産関係を考えますると、これは申すまでもございませんが、二十八年度凶作でございましたので、二十八年度全体を通じて見ますると、二十七年度に比べて約一割生産が落ちております。これは二十九年度が平年作であるということにいたしますれば、二十七年度程度あるいはそれをある程度上まわるような生産になるのではないかと思われます。  そういつたような国内生産活動を頭に置きまして、これを二十九年度輸入必要量ということに結びつけて考えますると、御承知のように、二十八年度には今申しました凶作影響を受けまして、食糧輸入は一億三千六百万ドルというような緊急輸入がございました。それから二十九年度に入りましても、収穫の時期までには輸入増加をある程度はからなければならないと思うのでありまして、その間米の輸入を減らして、麦にかえるとか、あるいは米価、麦価の下落というようなこともございましようが、この関係は二十九年度にはある程度つて来るわけでございますが、一方二十九年度鉱工業生産の規模を、先ほど申しましたように、二十八年度とほぼかわらない状況で進めて行くということにいたしますれば、その活動を期待するためのには、輸入必要品というものはあまり切ることはできないと思うのであります。もちろん高級の、たとえば自動車を初めとしていろいろの奢侈品その他は徹底的に抑制して参らなのければならないのでありますが、これは実は全体の数字から見れば、あまり大した額になりません関係で、輸入の方は私は国内産業の維持あるいは国内で見越しの物価つり上げが起らないように配意するためには、急激に輸入外貨の割当を削減するということはむしろとるべきではない、大体こういうふうに考えまして、結局昨日お手元に差上げておきました書類の中に数字が出ておりますが、二十一億四千万ドルでしたか、それから輸出が十三億六千万ドルというところに国際収支の最後のしりを持つて来るようにやつてみたいと考えるわけであります。  なおその輸出入の関係におきましては、詳細な各物資別についての見込みを申し上げるには、これはまだ外貨予算の編成ができませんので、申し上げられませんが、一応ドル地域ポンド地域、オープン・アカウント地域に対しまして、これくらいになるであろうというような見通しは、昨日お配りいたしました書類の中に一応つけておいたような次第でございます。大体こういうような姿にして参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  6. 山手滿男

    山手委員 大体今年度外貨予算に対する大臣考え方、構想というものは一応それでわかるのですが、大蔵大臣も言つているように、今年から緊縮財政を強行するんだ、耐乏生活を国民にしてもらわなければいかぬというふうに、大きく自由党内閣政策転換をして参りまする以上は、このもとが国際収支の悪化から来ておるのでありまするから、日本の貿易はどういう点で均衡をさすのだ。今お話輸出が十三億ドル、輸入が二十一億ドル、あと特需というふうな、一応今年度のさしあたつて見通し説明というよりも、日本経済は二十億ドルなら二十億ドルで均衡さして、この線まで生産を上げて行くというのか。もつともつと輸入はどんどん切つて行つて輸出が出ないのなら十五億ドルぐらいで均衡さすというのか、そういう点の見通しを伺わなければ、われわれは議論ができないと思う。その点を私は承りたい。
  7. 愛知揆一

    愛知国務大臣 だたいま申し上げましたのは、ざつとしました見方基礎を申し上げたわけでございまして、ただいま御指摘の点につきましては、国際物価日本物価をできるだけ近づけたい。かくすることによつて輸出努力をやつて国際収支全体としての均衡を得たい、こういうことを基礎に考えておりまするので、それをやりまするためには、国内の内需をどういうふうに考えたらいいか、また生産をどう考えたらいいかということと相関連して、しかもいわゆる角をためんとして牛を殺すことのなのいようにということを配慮いたしましたために、いわば徹底的に輸出努力をする、徹底的に輸入を切るというのも一つの行き方でございましようが、一つの基本的な考え方のもとにできるだけ着実なやり方をやりたいということから申しますと、方々から総合して見た姿として、今申したものを目標にいたしまして、そしてそれに対してこの目標が狂いのないように総合的に各般の政策を実行して行く、また適時適切に調節をして行くというふうに考えておるわけでございます。
  8. 山手滿男

    山手委員 それでは少し産業政策がまずいのでありまして、もつぱら内地需要に充てなければならない、しかしその内地需要に充てるものをおろそかにすることによつて、さらにインフレに拍車をかけるというような物資がずいぶんたくさんある。ところが片一方ではほとんど輸出のみを目標生産をして行くものもある。今後どういうものが押えられて行くのか、どういうものがどこまで設備を拡張してよろしいのか、業者、業界にいたしましても、財界にいたしましても、金融をつける場合でも、これは混乱を来すのであつて輸出努力をもう少しこの点まではやつて、この点まではどうしても輸出をして行く、輸入もこれはどうしても今の日本経済情勢からすると多過ぎるから、これを思い切つて早急に切るのだ、そしてこの点でバランスを合す、こういうことに対する見通しが鮮明されておらないと、今後の通産行政というものはやつて行けないだろう、混乱が必要以上に起きるのだろうと思うのでありますが、その点において、まだ御就任早々でいろいろ問題があろうと思いますから、きよう御答弁を願わなくてもよろしいのでありますが、大体何十億でこの輸入輸出バランスを合すつもりであるか、あとからでもよろしゆうございますから、御説明をお願いしたいと思います。  今国際外貨収入見通しを承つたのでありますが、日英会談は比較的新聞紙上に伝えられるところによると、好結果に終つたというふうに聞えるのでありますが、私は決してこれは楽観を許すことはできない、こう思つている。英本国に対するいろいろな輸出にいたしましても、属領に対するものにいたしましても、これは問題をただ今後に残したというふうなことではないかと思うのであります。それから最近のアメリカ産業政策転換にいたしましても、これは決して甘く考えてよろしいとは私は考えない。特に特需については、今日予算委員会でも二、三議論がかわされたはずでありますが、七億六千万ドル程度のことを予想しておつて、大体今年度もそう大差ないよう特需を見込んでおりましても、朝鮮復興特需にしても、これは今年は相当苦しい事態に追い込められるのじやないか、私はこういうことを考えざるを得ない。そこで今日も予算委員会議論があつたので大臣もお聞きだろうと思うのでありますが、朝鮮復興特需というふうなものを日本に注文しないで、わざわざドイツや英国から物資を買いつけるというふうな事態に対して、通産省としてはどういうふうな態度で臨んで来られたか、また今後どういうふうな交渉をされるのか、この際御説明を承つておきたい。
  9. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの前段の御質疑に対しましては、私は結局各基幹産業についての大体二十九年度生産目標と申しますか、これがはつきりすればお答えができると思うのでありまして、この点はさつそく次会にでもさらに御説明をいたすことにさせていただきたいと思います。  それから第二段の特需の問題でございますが、実はこれはなかなかむずかしい問題でございまして、ただいまお尋ね朝鮮特需が今後どういうふうな形態で行われるであろうかということについて、日韓間あるいは米韓間、日米間等においてどういうふうな交渉が行われたかどうかということにつきましては、これは外務大臣の所管でもあり、その点についてただいま予算委員会でも御承知のような状況になつておりますので、この点は私から申し上げることはできないのでありますが、しかし私どもが調べたところによりましても、たとえば昨年中あるいは一昨年度特需の内訳の実績から見てみましても、米国陸軍予算で調達せられたものが圧倒的に多いわけであります。そのほかに朝鮮復興関係では御承知アンクラがございます。しかしこれは国際連合朝鮮復興の機構でございますから、必ずしも今問題になつておりますところの朝鮮特需の全部ではございません。その一部にすぎないのであります。そこで一体いわゆる朝鮮特需というものが、その実績の中でもどれとどれを朝鮮特需と見るべきかということについては、なかなかこれを明確にすることが困難なものもございます。ただアンクラだけで申しますれば、これは昨年の一月から十月までの実績を見ましても、たしか二百四、五十万ドル、さらにその前年度は六十万ドルくらい、これは先ほど申しましたように、もちろんこれだけが朝鮮特需でないことは御承知通りでありますが、アメリカ予算でもつて日本国内ドル価で調達したもののうちで、どれだけがいわゆる朝鮮復興特需であつたかと見ることは非常に困難でございます。従つてこれは非常に率直に申し上げるのでありますが、われわれが二十九年に七億六千万ドルと見込んでおりますのも、大体総体として前年度ほどには行くまい、大事をとりまして一割弱ぐらい減るものと思つてこの計算の基礎をつくつておるわけでございまして、この詳細な内容ということは実は私はわからないわけなのであります。
  10. 山手滿男

    山手委員 その点については外交折衝の問題でもありまするし、多くは申し上げませんが、実際は産業界にいろいろな影響を深刻に与えるわけでありますから、今後大臣の強力な善処を私どもは要望をしておきたいと思います。
  11. 大西禎夫

    大西委員長 今予算委員会の方から大臣に対する答弁を要求しておりますので、最初からそういう話合いでありましたので、十分間ほどでありまするが、暫時休憩をいたします。     午後二時十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  12. 大西禎夫

    大西委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山手滿男君。
  13. 山手滿男

    山手委員 さつき少しくお聞きしたのでありますが、続けてお聞きいたします。消費水準生産上昇を停滞さしても、国際収支均衡をはからなければいかぬというお話でありますが、さつきからのお話を聞いておりますと、少くとも二十九年度においては、二十八年度に比べて消費水準を引き下げるとか、生産指数を下まわらすとかいうふうな事態にはあまりなつて行かないというように私は感ずるのでございますが、たいこは相当大きくたたいておられるけれども、その点についてもう少し御説明を願いたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど簡単に申し上げたのでありますが、私ども考え方といたしましては、たとい消費水準上昇生産水準上昇は停滞しても、この際物価の引下げ、国際収支の改善に尽したいということを言つておるのであります。今度はその具体的内容数字的にその根拠なり見通しを申し上げますと、生産につきましては累次申し上げております通りに、全年度間を通ずれば一五二の鉱工業生産指数になるのであります。これはまた私の想像でございますが、たとえば現在の段階において生産水準鉱工業について幾らであろうかと申しますと、これはおそらく一六〇を越えているのではなかろうか。そういう状況に対しましていわゆるデフレ的要因の非常に強い政策を打出して参ります場合におきまして、たとえば二十九年度の第一・四半期等におきましては、いきなりこれを一五二に落すというようなことは私はできないと思うのであります。従いまして昭和二十九年度の、概して申しますならば、後半期におきまして、このデフレ的な要因が作用して参ります。そのときに生産指数等も落ちて参りまして、そうして年度間を通ずれば大体昭和二十八年度と同じになる、こういうふうに考えますから、ある時期と時期を比べますと、相当の生産水準の低下になるというふうに考えております。  それから農林水産物関係などにおきましては、去年が凶作であつて、平年の一割以上の減産でありますから、これが平年度にもどるとかりに仮定いたしますれば、その後の農林業関係などは昨年よりは生産数字が上る、こういうことになります。  それからただいま消費水準お話がございましたが、消費水準見通しをざつと見てみますと、都市勤労者につきましては、賃金上昇は、やはり年度間を通ずれば三%ぐらいはあると思うのであります。これはしかしながらもし昭和二十八年度と同様のような、いわば水ぶくれの政策をとつて参りました場合においては、名目的にはもつとこの賃金水準上つたでありましよう。その上り方が三%にとどまるということであります。それからCPIの下落が三・六%ぐらいになるので、合計して、消費水準の上がる方の要因だけをとれば、六・六くらいの消費水準プラス要因が考えられると思うのであります。  ところがこれに対しまして雇用の方は、これは先ほど申しました鉱工業生産関係などから申しまして、一%程度減少するのではなかろうか。同時にまた人口の増加を一・三%は見なければなりませんから、その方で二・三%ぐらいのいわばマイナスの要因が出て参ります。これをプラス要因から引かなければならない。こういうことになりまするので、全体を通じて見れば、ある程度二十八年より上まわるということになる。なおくどいようでございますが、そのほかの要因を考えてみますと、たとえば社会保障関係費のある程度増額でありますとか、あるいは軍人恩給等増額でありますとか、これがまたどちらかというと消費に向う方の要因になりますが、逆に全体の物価を下げて行こうという機運が出て参りますと、買い控え等関係消費が抑制されて、逆に貯蓄性向増加をして来る、こういうことになつて参ります。従つてどもの申します消費についてのいわゆる耐乏という問題については、この物価の値下りと相照応して、非常に俗な言葉で言えば、実質賃金上昇をはかつて、その上昇した部分をもつて、できるならばこれを国全体としての資本蓄積の方に向わせていただきたい。要するによけいな消費をするよりは、俗な言葉でありますが、貯蓄の方にこれが向つてくれれば非常にありがたい結果になるのではなかろうか。大体こういうのような見通しをいたしております。
  15. 山手滿男

    山手委員 私は今おやりになつておるような状態では、そう大して消費水準や何か切り下つて行くというふうには考えられないような気がいたします。そこで私はここでもう一つ聞いておきたいことは、それでは年度末における日銀券は何億ぐらいに押えて行くつもりか。その流通速度や何かいろいろな関係もあろうと思うのでありますが、今の見通しでは、大臣大蔵次官もしておられたのでありますから、そういう関係を十分勘案しておやりになつたことと思いますけれども日銀券をどの程度に押えてそういうふうな数をはじき出して行こうとされておるのか、その点をもう少し御説明願いたいと思います。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 通貨見通しは、非常にこれもむずかしいのでありますが、結論的に申しますと、ただいままでに御説明いたしましたようないろいろの総合的な見通しを勘考いたしまして、三十年の三月の末、すなわち二十九年度末の日銀券残高は、大体五千五十億円ぐらいではなかろうか、こういうふうに見通しておるのでございます。これは現在私どもが考えておりまするように、物が動いて参りますことが前提でございますし、同時にその結果が見通しているような結果になる相関関係からいつて、むしろこれは一つの研究の結論でございますが、大体五千五十億円ぐらい。しからばそれは二十八年度とどういう関係になるかと申しますと、二十八年度末の通貨残高、すなわち今年の三月末の通貨残高は、各方面見通しを総合いたしますと、五千三百五十億円ぐらいと想定されておりますから、それよりある程度つたところでおちつくのではなかろうか、こういうふうに見ております。なお年末を比較しますことは多少どうかと思いまするので、年度末を基準にしてとつてみたわけでございます。
  17. 山手滿男

    山手委員 金融の引締めということが、これから先の大きな課題になつて行くだろうと思うのでありますが、私は十ぱ一からげの金融の引締めというふうなものには、決して賛成することはできない。産業界では伸ばさなければいかぬ面がずいぶんあるし、また切らなければいかぬ面がたくさんある。私は日本経済は必ずしもインフレではないと思う。もつと端的に言うならば、今日本の置かれている状態は、インフレーシヨンでデフレーシヨンである。ということは、産業界には必要なところに資金が流れておらない。必要なもの以外のところに資金が流れておる。こういうのが現在の日本経済界の実態であつて金融の引締めを十ぱ一からげにとにかくやるのだ、消費水準をとにかく引締めるのだ、生産上昇をはばむようなことがあつてもこれはしようがない、こういうものの考え方に対しては、私どもはどうも賛成をすることができないのであります。日銀券年度末において三百億ぐらい収縮させるというお話でありますが、こういう単に金融引締めを頭から天引きでおやりになることについて、非常に産業界では問題になつて来るだろうと思いますが、もう少しその辺の見通しのことについて、大臣から承りたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちよつと私誤解をお招きしたのではないかと思うのであります。今申しました二十九年度末、すなわち三十年三月末の通貨量はこのくらいであろうと申しましたのは、今まで申しておりましたような政策がずつと円滑に施行されて行つて、その場合の結果がこうなるであろうという見通しでございまして、私どもは決して通貨数量説的な意見持つておるわけではございませんので、これを一つのわくにいたしまして、その中で引締めをやろうという考え方ではないのでございまして、念のためにその点はさらに補足させていただきたいと思います。  それから今御指摘の、インフレであつてデフレであるというようなお話がございましたが、この点は私もごもつともな点が多いと思うのでありまして、要するに生産も伸びておるにかかのわらず、輸出が伸びない、国際収支が逆調になるというのが、今日の日本経済のおかしな点になつて来ておるのであります。そこで私どもとしては、いわゆる過剰な有効需要と言うと言葉が当らないかもしれませんが、過剰な有効需要を抑制をして、これを投資の方で言えば、二重投資とか、あるいは不急不要の投資とかいう面を切ることによつて、全体としての傾向をデフレ的に引締めて参りたい、こういう考えでございます。それから同時に、たとえば財政投融資にいたしましても、約五百八十億というような総額で、相当に緊縮になりましたけれども、その中で必要な設備の拡充資金でも、あるいは合理化資金でありましても、資金をできるだけ大事に使つていただくと同時に、どうしても必要な向きに対しては、重点的にこれを配分するということが、絶対に必要だと考えておるわけであります。
  19. 山手滿男

    山手委員 その御説はよくわかるのでありますが、予算措置にいたしましても、これを検討してみると、今大臣の御説明通りに行つておらない。施政方針演説の中で大臣は、現在の国際収支の帳じりの関係もあるし、どうしても合成繊維を千五百万ポンド本年度は増産するというふうなことを、大きく打出して御説明になつておられるのでありますが、それではどうしてこの資金はまかなうのか、財政資金からどれだけ出すのか。提出された予算を見ましても、昨年度よりか減つて行くのじやないか、こういうふうなことさえ言われておるのであります。あるいは縦坑の開発についても、助成金を二十億円通産省は要求した、それがゼロになつた。そういう面はどういうふうに考えておられるのであるか。ただいま大臣から御説明のこととは、現実は逆に逆に動いて行つておるようであつて、そこがわれわれがインフレであつて、デフレになつておるのだ、こういうふうに指摘するポイントでもあるわけであります。御説明をお願いいたします。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 金額の上から見れば、まさしく減つておることは、歴然と現われておるわけでございまして、この点は私もまことにごもつともな御意見だと思います。ただ、これは財政投融資の資金計画の面を言うておるのでありまして、資金計画をいたします場合におきましても、たとえば企業としての他の資金調達の方法もございまするし、それから自己資本の増資というような場合、あるいは再評価を促進するような点についての税制上の考慮もいたしたいと思いまするし、しかしてまたその資金自体を、財政資金であるからということで、効率を考えないで使われておる向きも、率直にいつて過去においてあるように思いますので、これは資金計画と企業努力、あるいはその企業努力がもう少し円滑に発揚されるような基礎的な基盤として、税制その他においても考慮を加えて行く。いろいろこれは総合的に知恵を出し合いまして、金の足らざるところを補つて参りたいと思つておるわけでございます。
  21. 山手滿男

    山手委員 どうも私は合成繊維一つつてみましても——昨年この問題をこの委員会でも問題にいたしました当時は、二十九年度は二十八年度の倍以上資金がいるだろう、少くても三倍くらいはつけてほしいのだ、と申しますのは、二十八年度においては設備の拡充計画が緒についたばかりであつて、実際にそれだけの資金がこなせないのである、しかし二十九年度においてはどうしてもこれをうんとふやして、決定的に仕上げて行く年にしなければいかぬ、こういうのが政府からの御説明であつたと思います。ところが今のお話でございますと、財政投資はうんと減しても——むしろ総体的にはうんと減つて行くわけですが、減つたにしても自己資金の調達や何かでまかなつて行けるというふうなお話でありましたが、合成繊維なんかをやるような新規の会社が多いのでありますが、そういうものの増資が簡単に行くとは私は思わない。あるいは再評価がそう簡単に行くとは思わないのであつて、どうしても、ほかのことは別として、ここで合成繊維に対しても初めの計画通りに事業を遂行さすようにして行かなければ、三年でできるものを四年に延ばし、五年に延ばすようなことにするならば、工場の建設計画は金利を食うばかりであつて、いよいよコストの高いものになる。早く片づけるものは片づけさすということを念頭に置いて考えていただかなければいかぬと私は思う。私は大臣がいまだに大蔵次官のような気持で、通産省に来て消費水準の引き下げであるとか、あるいは生産上昇を停滞せしめるというふうなことばかりで、価格の点にばかりとらわれておつてはちよつと困ると思うのでありますが、合成繊維の例を一つつてみてもそういうことでありますから、この点についてもう少し大臣からお聞きをいたしたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点はごもつともでございまして、私は何も金融の方の引き締めだけをやればすべてうまく行くというふうには毛頭考えていないのでありますが、しかし先般来るる申し上げておりますように、この際としてよほど企業の方も産業の計画の方も引締めるというか、堅実な計画の上に立つて参りたいというようなことを考えておるだけでございまして、ことに合成繊維の問題のごときは、あるいはまた石油の問題のごとき、その他の問題についてはできるだけ積極的にやりたいと考えておるのであります。たとえば金融の問題につきましても、こういうむずかしいときになりましたので、たとえば市中の金融の問題等につきましても大蔵大臣においてもある程度具体的な案を現在考えておるものと私は思いまするし、またそれと歩調を合せましてこの財政投融資の足らざるところは何とか補うくふうをして参りたいと考えております。
  23. 山手滿男

    山手委員 それからこれも大臣にお開きをしたいと思うのでありますが、大臣は旅先でこういうことを言つておられるようであります。今、日本産業界にとつて注意しなければいかぬことは、コストの引下げということよりか、やはり価格を不当につり上げておるカルテルを打破ることの方が大切である、こういうことを言つておられるようでありますが、これは事実であるかどうか。コストの引下げよりも価格協定をしておるのをやめなければいかぬ、こういうことは一応もつともなことのように聞えるのでありますが、現在日本産業界においては製品安の原料高、こういう事態が慢性的に横行しておる。カルテルが単にいわゆる不況カルテルとして、製品をつり上げることのためにのみやつておるようなことは、今日はおおむね許されておらない。輸出の振興にとつても、今日産業界で熱望をしておることは、たとい利潤は少くとも、製品が変動するということよりか、むしろ安定をするということであつて、安定をさせなければ物価上つたり下つたりする。自分の会社でつくつておる製品が上つたり下つたりすることが非常にあぶない。それは現実に終戦後二、三べんその体験をしたところであつて、これは国内的にだけでなしに、貿易の上においても日本が現実に非常に痛手をこうむつた苦い経験があつて、もうけるということよりか、製品を高く格付するということよりか、安定をということでいろいろな、あるいは独禁法をくぐつておるかもわかりませんけれども、申合せをしたり何かして、市場の価格安定をやろうということを非常に熱望しておるように私は考えておる。しかしそれを打破つて行くというお話である。しかしコストよりも、この価格協定を打破つて行く、こういう大臣のお考えが実際にあるのなら、この際もう少し御説明をしておいていただきたい。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の就任早々のときの新聞の記事を御指摘になりまして、まことに恐縮に存ずるわけでございます。私はこの際決して新聞記事がどうこうと申すわけではございませんが、あまり理詰めで申しませんことがいろいろに伝えられましたので、この点は私も非常に遺憾に思つておるのでありますが、大体ただいま山手さんの言われましたような気持を私持つておるのでありまして、問題の根本は需給の安定であるということは、私もそのつもりでございます。従つて重要物資等につきましては、特にその配意が大事だと思うのであります。ただこのカルテルの問題に触れましたのは、経済演説に織り込みましたように、価格が自然の成行きあるいは政府の政策に基いて下つて行くというときに、単に価格が下るということだけを中心にしてこれを下げまいとするような不況カルテルは安易に認めるべきものではなかろう。しかしながら独占禁止法の改正が必要なものであるかどうかば別問題でありまして、これは大体現行法のもとでもできることではないかと思います。要するに私が言いたかつたことは、経済演説の中に申し上げましたことと同様のことでありますので、この点この機会に釈明いたしたいと思います。
  25. 山手滿男

    山手委員 よくわかりました。そこで、合理化カルテルならよろしいけれども不況カルテルは困るということで、単に今のお説のように、製品がどんどん下つて行く状態にあるのに、これを不当につり上げて、自分たちだけがふところ手をして行くというふうなカルテルを認めるわけに行かぬ、これは私どももまつたく同意見でございます。同意見でありますが、現実には不況カルテルというものと合理化カルテルというものは紙一重であつて、区別しにくいだろうと私は思う。合理化カルテルというのはどういうのですか、学問的なむずかしいことは私はよく知りませんけれども、結局はうんと高くついて困るからということで、申合せをして一定のところに価格を安定させようという努力だろうと思うのでありますが、こういうことは、あるいは輸出カルテルという問題を審議したこともあるのでありますが、私はむずかしかろうと思うのです。これをどういうふうにわけて行くつもりか。私は今法案を持つて、おりますが、現実には例の硫安の需給調整の問題にいたしましても、あの会社をつくることはやはり一種のカルテルをつくつて行くことになります。それからいろいろ鉄鋼にしても、繊維関係にしても、石油にしても、あれはやはり一種のカルテルをつくつておる、こういうふうにみな考えておる。これらに対して大臣は今後どういうふうに対処されるのか、これは非常に重要なことでありますから承つておきたい。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、第一には物価の引下げを促進したいということ、それからその次には輸出振興に寄与するというようなことで、独占禁止法の運用にあたりまして条件の認定を厳重にする。それから価格の引下げに逆行するような共同行為については、独禁法に定める認定を与えることを差控えたい、これが一つでございます。それから商品の輸出入につきましては、関係業者間の不当な競争のため、不利な条件で輸出入契約を行い、または契約の機会を失する等の結果を生じておることが現状だと思うのであります。それを防止いたしまして、輸出をいたしまするため、輸出入取引法におきましては、御承知のように私的独占禁止法の例外として一定の条件のもとに輸出または輸入組合を設立するとか、あるいは組合の調整規定をつくるとかあるいは輸出入業者間の輸出入に関する共同行為を認めておるわけでございます。私どもといたしましては、輸出の振興や、有利な条件によつて輸入を確保いたしますため、それらの組合が設置されることや、あるいは調整規定または協定の制定をし、これを遵守するというようなことについてはむしろこれを勧奨する方がいいのではないか、こういうふうに考えております。それからたとえば硫安に関する法律案における日本硫安輸出株式会社も、またこの趣旨に出た輸出カルテルの変形的なものと認めるべきものであるのではなかろうか。いわゆるわれわれの困ると思いますようなカルテルとは、全然その性質が違うのではなかろうか、大体こういうふうに考えております。
  27. 山手滿男

    山手委員 るる御説明がありましたが、私は国内消費輸出と両方につながつておるものは非常に区別がむずかしいと思う。ただ単に輸出をする場合に輸出組合をつくつてこうやるのだ、こういうふうなことでいろいろやつて参りますと、それがすぐ内需に響いて来ます。従つてその辺のところにいろいろ問題があろうと思うのでありまして、きようは多くは申し上げませんけれども、まだカルテルの問題は十分慎重に御考慮が願いたい。軽率にこれをやつていただくと業界が非常な混乱を起すのではないか、こういうふうな気がいたします。  それから私がもう一つここでお尋ねを申しておきたいことは、プラント輸出の問題なんかがいろいろ議論の対象になつたことがあるのでありますが、最近プラント輸出についてはあまり大きな声が起きておらない。なぜ起きておらないかというと、実際にそれだけの実績が上つておらないからだということであろうと思うのです。今日輸出入銀行は二百十億の資本金を持つておりますが、昭和二十五年の暮れに開店をいたしまして、昨年まで満三箇年経過いたした今日、大体五、六十億ぐらいしかこの資本金を活用しておらない。年末においても六、七十億ぐらいしか貸出残はないのであります。そうすると、この輸出入銀行の資本金の百五十億ぐらいはそれだけで三年間遊んでいびきをかいて寝ておつたということになります。ところが二十九年度予算の構想について私が昨年末お聞きをしたときに、輸出入銀行に対して二十億の資本金の増額を要求するのだというお話があつた。しかしこれは削られておりますが、プラント輸出の問題とこの輸銀の資本金の問題とはどういうふうにお考えになるか、この際承りたい。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これもまことにごもつともな御質疑でございまして、実は私も就任の直前からこれを知つて研究しておつたのであります。輸出入銀行が屡次にわたりまして法律を改正して資本金を増しておるにかかわらず、その金が使われないということで、これも率直に申し上げるのでありますが、大蔵省的な立場からいえば、こういうものはむしろしばらくそのままにしておくか、あるいはさらに進んで減資ということまでも考えたらどうかというようなことも実は考えたことがあるのであります。ところが、その後に至りましても、いろいろ調べて参りますると、最近におきましては、プラント輸出の商談が非常に進みつつあるようでございます。このこまかい見通しにつきましては、場合によりまして政府委員から御説明いたしますが、ようやくプラント輸出が特に東南アジア方面等に伸びる、ようやく今度こそは具体的だという見通しがきわめて顕著になつて参りました。そういう関係から、今年度はどうしても従前の資金計画では間に合わないというので、当時通産省としては、少くとも二十億円の増資ということを考えたようでありました。これは私もその見通し並びに状況を検討いたしましてもつともだと思いましたので、実は予算の復活の要求のときにも、前任者からの引継ぎ通り一応これを踏襲して、復活要求をしたような経緯がございます。それほどこのプラント輸出状況は、最近好望になつて来ておりますので、これからもますますこの方面に力を入れて行きたい。自然今度は予算の上では新規の増額は削られましたけれども、現在の輸出入銀行の資金繰りでは、現在見通されておる程度のプラント輸出ができますと金が足りなくなる、むしろの年度中にそういう事態が起つたらばどうしようかということを実は悩んでおるくらいの状況であります。
  29. 山手滿男

    山手委員 大臣の御説明でありますが、私は納得行きません。と申しますのは、二十六年度、二十七年度、二十八年度、これを通観しまして、二百十億もの厖大な資本金を擁しておりながら、貸出残高はわずか五十億か六十億、貸出件数にしても数十件しか出しておらないようなこの輸銀が、突然本年度において二百十億を全部使い切つてしまうというふうな事態に展開をして行くならば、これは私どもは喜ばしい限りでありますが、残念ながらそういうふうなことは万々あるまい。それはなるほど七十数億ぐらいの貸出残になつてつたのが、百億か百二、三十億せいぜい百五十億ぐらいに伸びたというふうなことでも大したことでありますが、そう奇跡が天から降つて来るわけではありませんから、私は期待はできないのではないかと思うのでありますが、もし、いやそうではない、断じて今年は二百十億も足りないぐらいだというのだつたら、その理由を明確にここで御説明を願いたい。  それからもう一点は、どうも輸銀というところは金持ちのところで、以前、二十七年ですか、何年か忘れましたが、見返り資金から三十億さらにこれに出すことになつてつたのが、どうも宙ぶらりんになつておるように私は考えておりますが、見返り資金からの三十億は、あの予算措置後どういうふうに処理をされておつたのか、私は御説明をお願いしたい。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まずプラント輸出見通しでございますが、二十八年度で申しますると、四月から十一月までの実績がはつきりいたしております。それから十二月から三月の間は、その四月から十一月までの実績通りで行くといたしまして、七千万ドル程度見込まれるわけでございます。これに現在諸外国からいろいろ引合いがあるようでございまして、この内容は政府委員から御説明しますが、その引合いの状況や、諸種の当方からのプラント輸出の積極的な輸出措置というものの効果とをあわせ考えますると、今後一年間に約一億ドル、来年度におきましては一億二、三千万ドル程度のプラント輸出は、まずほとんど絶対に確実ではなかろうか、輸出の契約ができそうだというような見込みを現在持つておるわけでございます。従つて現在の程度でも、これが見込み通り行くならば資金が足りなくなるのではなかろうかということをむしろおそれておる次第でございます。  見返り資金からの三十億円というのは、ちよつと私も今はつきりお答えでませんので、場合によりまして、別にお答えいたしたいと思います。
  31. 山手滿男

    山手委員 二十五年の終りに輸銀ができて、プラント輸出を大いにやるんだということで、増資をして二百億まで資本金が行つた。それが三分の一しかよう使わない状態で、忽然とことしそれだけプラント輸出が伸びて行くということは、どうしても私は考えられないような気がするので、あとから少し具体的に私は御説明を聞きたい。プラント輸出はパキスタンなんかのようなところに、船あるいは紡績機械というふうなものが相当多く出て行くのだろうと思うのでありますがパキスタンなんかの紡績機械の買付といいますか、プラントの買付にいたしましても、現在パキスタン自体の財政状況が極端に悪化しておりまして、日本からの買付をそう易々としてやるとは私にはどうも考えられない。あるいはユーゴスラビアに数十億のプラントが出て行くのだというふうないろいろな放送もされておるようでありますが、あの近くにはドイツや英国なんかが控えておるのに、日本からユーゴスラビアにまでプラントが堂々と大手を振つて行くということは、少し宣伝が先に行つているのじやないか、こういうふうな気がいたします。しかし行けばけつこうでありますが、今のところでは私には納得できない。ことに大臣は今どうなつているか知らぬというお話でありましたが、三十億ばかり見返り資金から輸銀に入れることになつてつた資金が、輸銀に入つたのか入らぬのか、どういうことになつているのか、宙ぶらりんになつておるような気がいたします。これはどうしてもはつきりしていただきたい。もしも輸銀の金が今年程度のプラント輸出が少々増になつても大した相違がないということであり、見返り資金の三十億も輸銀がかかえておるということになると、二百四十億の資金を持つておるということです。そうすると、今の場合になつて百五十億になつても、百億近い資金が今年度年度末において完全に遊金として輸銀にかかえられるということになる。そうすると私はここで問題にもし、大臣からも答弁を聞きたいのでありますが、商工中金の預金部資金は三月までにどんどん引揚げると言つている。そのために零細な業者の資金が非常に枯渇をして行く。そこへ持つて来て消費水準を引下げるとか何とかというふうなことが起ると、商工中金なんかのごやつかいになつておる中小企業者はみんな首をくくるというような、極端な言葉で言えば事態になるわけで、輸銀の百億くらい商工中金の増資に繰りかえたらいい、私はそういうことを先般来考えております。なぜ中金に出しているわずかなこの預金部資金の預託をそんなに早急に、強引に引揚げなければいかぬのか。片一方では輸銀なんかの資金はこうして遊ばしておる。そうして緊縮財政々々々々と言つている。そういうふうなところをもつと合理的に数字を押えて大臣に善処してもらいたいと思うのでありますが、御答弁をお願いいたします。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどの見返り資金の問題は、こういうわけでございましたから、追加して御答弁いたします。  これはまた実行していなかつたそうでございます。そうして資金運用部からその三十億を輸銀に貸し付けることになつておるようでございます。従つてこれはまだ現実に三十億の金が輸銀に入つておらない、これが現状のようでございます。  それから実は商工中金の資金繰り並びに例の国庫預託金、これは一月、二月、三月にそれぞれ期限が切れて、国庫に返還をすべきものが数百億あるのでありますが、これの引揚げにつきましては、ただいまお話通り状況でございますから、私としては極力努力をいたすつもりでございます。急速な引揚げはやらないつもりでおります。
  33. 山手滿男

    山手委員 今の三十億の行方というものは、預金部資金からまた振り込んでおらぬというようなお話でございますが二十八年度予算で計上したわけではないので、過年度予算で予定をしたものがまだそういうふうになつておるということは、予算の執行上どういうふうなことであるか、その点をもう一点お尋ねをいたしておきます。  それから私は時間がありませんから、当面の問題を一、二お尋ねをしておきたいと思うのですが、昨日私が関連質問をいたしました中小企業安定法の二十九条の発動の問題でありますが、どうもきようの新聞を見てみると、各新聞に出ておりますのは、通産省の方で発動することに昨夜決定をされたようなふうであります。ところがその発動の内容、仕方でありますが、タオル工業については設備の制限をやる、それからマツチ工業については生産制限まで行く、こういうことになつてつたが、マツチの方も設備制限だけにとどめるというふうなことにきまつたように新聞で報道しておりました。しかしマツチ工業はマツチ工業自体の特殊性もあつて、私は何も画一的にこれはやらなくても、やるならマツチ工業については私は生産制限、出荷制限まで行つても問題は全然ないと思う。タオル工業は設備制限程度でよかろう、絹、人絹、などについては行政指導でこれは解決する。それをむしろ通産省の方で画一的に何でもかんでも設備制限措置に頭を並べるとか並べないとかいうふうなことで考えられることは、むしろ統制的な考え方であつて、私はその業界々々に即応したように、強度にやるべきものについては強度にやる、それほどやらなくても行政指導で十分行けるところについてはその行政指導でやる。そういうふうなことで私は行かれることが現内閣としては好ましいことではあるまいか、こういうふうに考えておりますが、あの新聞の報道を見ますると、設備制限に頭を並べるとかいうふうな御決意をされたやに伺うのでありますが、その点について大臣でも事務当局からでもよろしゆうございますから、御説明をお願いしておきます。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は昨日率直にそのおわびを申し上げましたように、私どもの決心が固まりませんので、延び延びになつております。昨日当委員会でも御指摘がございましたので、さつそくこれはきようあす中に決意しなければならないと思いまして、あらためて事務方の意見もとりまとめてもらうように指示をいたしました。その結果の研究は、実は今日国会等の関係でまだ十分事務当局からの報告を聞いておりませんが、とにかく私といたしましては、昨日のお話もございましたから、至急に処理をいたすつもりでございます。ただいまの御意見は十分私も参酌させていただきたいと思います。(「三十億はどうしたのだ」と呼ぶ者あり)  ちよつと私はその記憶がぼけておりましたので、たいへん失礼いたしましたが、これは資金運用部資金の計画の中に三十億円を輸出入銀行に貸し付けるという資金運用部資金運用審議会の決議がありまして、それをまだ実行していないというのが今日の実情でございます。なおこれは予算案に計上されているものではございませんので、資金運用部資金運用審議会の決議通りのにいまだ現実に行われてなかつた、これが現状でございます。
  35. 山手滿男

    山手委員 それから……。
  36. 大西禎夫

    大西委員長 山手君に申し上げますが、時間がもう大分切迫して、まだあと二人ありますから、そのおつもりで……。
  37. 山手滿男

    山手委員 それではきようはこの程度でやめます。
  38. 大西禎夫

    大西委員長 それでは次に齋木重一君。
  39. 齋木重一

    ○齋木委員 私は簡単にして、同僚先輩諸君から御質問があつたので、重複はなるべく避けたいと思つております。  第一番に、産業経済振興の基本的な政策としての中小企業に対するところの対策を具体的にお示しを願いたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨日も大体の考え方につきまして御説明を申し上げたわけでございますが、まず金融の問題といたしましては、御承知のごとく、中小企業金融公庫が昨年設立せられまして、これに対しましては、何としても政府資金を充実しなければならないと考えて参つたのであります。ところが予算の方の関係からなかなか思うにまかせなかつたのであります。しかしながら乏しい中ではございまするけれども資金計画といたしましては、五十億円昨年より増しまして、百七十億円にすることにいたした次第でございます。(「百三十億と言つたじやないか」と呼ぶ者あり)これは資金の運用計画といたしましては、出資は百三十億でございますが、運用の計画としては、回収とか利子収入もございますから、百七十億円が年間の運用計画ということに考えておるわけでございまして、これは昨年に比べますと、大体五、六十億の増額ということになるわけでございます。  それから国民金融公庫は、所管は違いますけれども、率直に申しますと、こういう政策転換と申しますか、こういう場合に最も影響を受ける人は、むしろ国民金融公庫の資金を期待しておるような向きの方が相当多いわけでありますので、これもまた予算の折衝に際しまして、特に通産省側からも主張いたしまして、増額をしてもらつたような次第でございます。  それから商工中金につきましては、実は多年問題がありまして、拡充方策がなかなか意に満たなかつたのであります。特に、これは率直に申しますが、今回いわゆる金融債の引受けが三百億円から二百億円に減らされました結果、商工中金として、そのうちどのくらいのものが商工中金の分としてとれるかということが、今一生懸命努力いたしておりまするがまだ未決定でございます。商工中金につきましては、資金運用部からの資金を、金融債を通して何とかできるだけ多くのものを期待いたして参らなければならぬわけでございまして、ちようどこういう時期に際会いたしましたので、いま一段の努力をいたさなければならぬと考えておりまして、この点はまだ結論を生み出すまでの折衝が終つておらないわけでございます。  それから国庫預託金、いわゆる指定預金につきましては、先ほども申し上げましたごとく、すでに期限の切れているものもあり、また間もなく期限の来るものもございますが、これらは、現在の状況にかんがみまして、その引揚げをできるだけ延期するように、これはぜひひとつ努力いたしたいと考えているわけでございます。  それからその次に、中小企業対策につきましては、いまさら申し上げるまでもないようなわけでございまして、いろいろの方策がございまするが、いずれも十分の効果を上げていないように思いますので、従来考えられておりましたことではありまするけれども、あらためてできるだけの努力を新たにいたしたいと考えます。そのために、まず今申しました金融関係でも、財政資金だけにたよらないで、小規模の企業自体が銀行、相互銀行、金融公庫等からのもつと金を借りやすくするということのためには、信用保険の制度の樹立がぜひ必要であろう、こういうふうに考えまして、小口信用保険というものをやつてみたならばいかがかと思います。これは法律の改正を必要とのいたしますので、準備のでき次第御審議をお願いするようにいたしたいと思うのであります。  それから全体としての中小企業の組織化の問題でございますが、組合を質的に充実するということに重点を置いて参りたいと思います。そしてたとえば組合診断制度の普及徹底、それから組合としての指導要領、計理基準等の作成によりまする組合からの指導、それから組合指導者の育成というようなことが、組織化につきましての一つの方法ではなかろうかと考えるわけでございます。  それから今度は組合自体の事業の問題でございますが、これは一口に申しますと、共同施設の問題と思うのであります。これはよく御承知のように、たしか昭和二十二年度から実施されておりまして、二十八年度まで国庫からの補助制度を行つてつたのでありますが、二十二年度から二十八年度までの間に補助の対象になりましたものが千二百五十七組合、金額にいたしまして七億円であつたのでありますが、昭和二十九年度の今回の予算におきましては、この補助金を三億円に増額いたしました。従つて二十二年度から二十八年度までの七億円に対しまして、二十九年度が三億円ということは、乏しい予算措置の中では相当のものではなかつたかと思うのでありまして、これを有効に活用いたしますために、従来の組合の共同施設の補助方式のほかに、新規に特定の事業者をもつて組織されました組合に対しまして、その組合員の設備の近代化についての補助方式を創設することが適当ではなかろうかと考えまして、細部の具体案を現在練つているわけでございます。それから同時に、私どもといたしましては、国だけではなかなか手の及ばないところもございますので、地方公共団体におきましても同様の助成措置について一段の努力をしてもらうように要請をいたしたいと考えております。すでに要請もいたしておりまするが、ひとつ組織的な要請を展開して参りたい、こういうふうに考えているわけでございます。それから組合の全体の総意によりまして、全国的な協同組合の指導機関を育成することが適当ではなかろうかと思うのであります。全国的なそういう機関ができて、自治的に組合の指導や監査を行うことが、実は御承知のように各方面から要望されておるのであります。かくのごとき組織をつくりますることは、やはり私は法律を要するかと思うのでありまして、これはできるだけすみやかに各方面の御意見を集めまして、できれば法律案として作成して御審議を願うようにいたしたいと考えております。  大体以上が組合としての組織の強化、ことにいろいろデフレ的な波が寄せて参りまするときには、こういつた相互扶助の一つの自治団体と申しますか、こういう組織によつてその波を切り抜けて行くということが一つの行き方ではなかろうかと考えております。  それから次は合理化の対策でございましてこの点は先ほどもちよつと申しましたが、企業の診断制度というものもひとつできるだけ進めて参りたいと思うのであります。従来企業診断の実績といたしましては、工業についていわゆる工業診断をいたしましたものが一万一千百六十五件に達しております。それから商業の方は三万七千件余に達しておるのであります。すでに系列診断、産地診断といつたようなもの、あるいは中小炭鉱診断等におきましては相当実質上の効果も上つておるやに見受けられるのでありまして、こういう点につきましては引続きいろいろと対策を進めて参りたいと思つております。  それから御承知の国有財産特別措置法によつて、機械の交換というようなこともやつておるわけでございますが、これなどもある程度におきましては中小企業の合理化、近代化ということに貢献ができるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。これは従来進んでいなかつた点があるのでありますが、こういう点を促進しその代金の決済の問題その他にくふうをこらして参りますれば、ある程度の効果が将来期待できるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 齋木重一

    ○齋木委員 ただいまいろいろ羅列いたしまして、なかなか能書はうまく羅列したけれども、その実行においては私どもは実に心細く感じて、過去の歴史から対照いたしまして遺憾の点があるのじやないかと思う。特に金融引締めの方策の強引によりまして、中小企業家、特に繊維産業界等においては原料高の製品安、こういうことが今現出しておる。私どもの知るところによりますると、人絹一疋現在生産いたしまして、一疋に原糸よりも二百円も金をつけてやらなければならないというような窮境に追い込まれております。これらは先ほど山手委員が言われましたカルテル化の問題ですが、独占資本によるところのカルテル化、これを打破せなければいけないのじやないか。これをやらずして生産業者や小さい中小商工業者に全部しわ寄せをやる。この六社のこれを打破しなければならないのじやないか、こういうことを私どもは考えておる。これらに対するところの問題に対して大臣はどう考えていらつしやるか。それから中小企業の安定法第二十九条を発動する云々のことは、今山手さんも言われましたが、これはアウト・サイダーをどうするとかこうするとか、生産条件を調節するというようなことにおいてやる、こういうことになるのだろうと私ども思つております。しかしこれらも結論的に言いますると、人絹会社などにおきましても、価格を二重価格制にせよとかいろいろなことを言うておりますが、輸出を増進するための国内価格と輸出価格の点で二重価格を行う、こんなばかげたことはない。一本に価格を制定してやるならば、国際価格にしわ寄せできていい結果が生れる。それをただ 六社の大資本の人絹会社の事実上のカルテルに対応して行くようなことになつておるので、こういうばかげたことが現出しておる。ですから、これらの問題に対して、輸出振興というけれども、逆効果を来すのではないか。輸入製品の、人絹の原料であるところのパルプや何かを無制限に輸入しておる。これは輸入製品に対しては、イタリア等の安い人絹を輸入して——ただ輸入制限をして輸出を振興しようということだけがねらいだということは、私は児戯にひとしいと思う。こういうものは調節して、中小企業者に一定の資本を与えて、人絹六社に対してはもう少し反省を促してやりさえすれば人絹などというものは安くなる。それをやらずして、ただ生産業者の中小企業者だけにしわ寄せをやつて行こうということは、頭の切りかえが足らぬと思う。こういうものに対してはいかなる考えを行つておいでになりますか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中小企業にしわ寄せをしないようにということを私どもは念願にしておるわけでございまして、これがどうやつたらうまく行くかということにつきましては、なおいろいろと真剣に取組んで参りたいと思います。  それからただいまお尋ねの人絹糸の問題でございますが、これは現実にはカルテルはございませんが、価格が最近非常に高騰いたしましたのは、むしろ需要増加で価格が非常に高くなつたのではないかと思いまして、何らかの糸の入手のあつせん機関をつくるというようなことが相当の効果がありはしないかと考えまして、研究をいたしておる次第でございます。
  43. 齋木重一

    ○齋木委員 それはカルテルとか、そういうことはないと思うのですが、実際には六社に対しては十分与えておる。それらに対しては独禁法の第十七条を適用して、徹底的にやつたらよい。そういつたものをぶちこわさなければ絶対に輸出振興も何もできやしない。その決意があるかどうかということをお尋ねしておる。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こういう点が、私も書生論なのでありますが、そういうことは好ましくないことであるというような気持が新聞等にも出たような次第でございますので、その気持はひとつおくみとり願いたいと思うのであります。ただこれをどういうように措置するか、また事態がどういうふうなところまで行つておるかというようなことについては、公正取引委員会の所管になるわけでございますが、ざつくばらんに申しまして、私もそういうことは思わしくないという気持を持つておりますことだけを申し上げます。
  45. 齋木重一

    ○齋木委員 気持ではだめだ、気持を改めてもらわなければだめだ。そういつたあいまいなことをやつて、今の人絹六社寺に対するこび、醜態をやつて、そうして輸出振興だの、価格安定だの、通貨安定だの、こんなことはイデオロギーの問題ではない、いかにして中小企業を救済し、また輸出振興をはかり、通貨の安定を期するか、物価の引下げを行うか、これは国民生活に対するところの重大な問題だと思う。こういう問題に対して、ただ気持だけなんていうようなこと——気持で政治ができるものではない。実行に移さなければいかぬ、気持だけではなくて、もう少し腹を割つてもらいたい。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はまじめに申し上げておるのでありまして、しかしこれは気持といいましても、結局気持が政策に反映するものだと考えるわけでございます。ですから私は真剣にその中小企業の問題と取組んで参りたいということは、もう就任以来の私の信条でございますから御了承願いたいと思います。
  47. 齋木重一

    ○齋木委員 大臣はまた新米だから、先般の本会議においてはどなたか知らぬが、大臣が出ているのに、局長が出よというような不見識なやじが飛ぶのですから、もう少し勉強していただきたいと私ども思つております。同時にこの通産省というものは日本におけるところの相当重要な部分を占めているところでありますから、これは真剣に考えていただきたいと思います。たとえばこの課税の問題にいたしましても、今大蔵省でやつておるような繊維課税の問題です。これは国民生活に対しては重大な影響をもたらすものである。それを大きい会社の方の原毛分は掛売りにして、小売商店の方へは洋服の仕立賃にまで課税しなければならぬというような方針になつている。これらに対してもあなたが大蔵次官をやつていらつしやつたときの立案であろうと思うが、これをどう考えておられるか。これは気持の問題ではない。実際に予算に八十五億計上をしているのであります。  それからもう一点は、国民生活ないし物価切下げの面から、輸入、すなわち外貨の減ることを敬遠しておりますけれども、砂糖、バターのごときものは適宜な輸入をやらないと、物価上昇して行き、国民生活は窮迫してどん底に追い込まれて来ているのが現実です。これは先般の十七国会か、十八国会だかに強く言つたが、これらに対しても考慮するとか、その気持であるとか、あなたのおつしやるようなことをさきの通産大臣も言つておる。だからどんどん砂糖は上つて行く、バターは上つて行く。そうして一方においては吉田さんは耐乏生活々々々々と言う。何を考えておるかわからぬ。肥料問題もその通り。実にどうもずさんな、また不誠意な施策ではないか。だから今度は大臣は心機一転いたしまして、中小企業等に対しては十分なる施策と熱意を持つてやられることを私どもは期待しておる。しかし予算面その他を見ますと、実に残念しごくに思う。まず繊維製品に対する税金にしても、原料高の織物安という点から考えまして、この独占資本の金融機構を打破し、そのカルテル化を破る決意を——これは気持ではなく、断固としてやつていただいて、輸出振興をはからなければならぬと考えるのであります。それに対して砂糖、バター等いろいろな問題がありますが、繊維課税等も妥当なりと大臣は考えていらつしやるかどうか伺いたい。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず輸入の問題でございますが、これは先ほどもちよつと申し上げたかと思いますが、急激に何でもいいから切ればいいということになれば物価が逆に思惑でつり上りますし、その影響を受けるところの国民生活を考えなければなりません。従つてこれに対しましては慎重でかつ円滑に行くように処理したいと思つております。いずれ今外貨予算の編成等について新しい考え方を寄り寄り練つておりまするので、そういうものが政府の意見としてきまりましたならば、また御説明いたしたいと思います。  それから課税の問題でございますが、これは経過はよく御承知通りだと思いますが、私は織物消費税を立案はいたしませんでしたが、しかしすでに閣議決定となり、これが予算案に反映をいたしておりまするので、従つて私はただいま御指摘のように、この織物消費税のねらいとしておりますところがそのまま貫徹できるように、すなわち高級の織物、反物、洋服というようなものの消費を抑制するというそのねらいがそのまま貫徹できるように、裏から言えばこれが中小業者にしわ寄せになつて、その影響が中小企業に向うのだということにならないように、たとえば免税点の問題、それから徴税方法の問題、それらについて今一生懸命関係の向きと折衝いたしておるようなわけでございます。
  49. 齋木重一

    ○齋木委員 繊維課税に対する徴税方法の問題でございますが、いよいよ実施するという命令が中央から末端に行くと、これが千波万波となつて非常に苛酷な、また矛盾した徴税方法が行われることが往々にしてある。また税務官吏その他がその間に乗じていろいろな疑惑を招く行動をとるようなことがありますので、この課税問題、先ほど私が申し上げました仕立賃にまでかかるというような仕組みも税務官吏は考えているということでありますから、これは重大な問題だと思う。繊維品も高級品といつても、幾らも段階がある。幾らから幾らのものは免税にするということもしなければならないと思います。これらに対して大臣は大蔵当局ではないから知らないと言われれば、それまでありますが、しかしながら閣議等において十分これは考慮するように申し入れていただきたい。われわれはこんなものは絶対反対です。これは悪税です。われわれが賛成するようなことは絶対にあり得ない。けれども数において押し切つてやるということになればしかたがない。われわれは今後も反対の行動は持続するつもりでありますが、念のために申し上げておくのであります。  それから中小企業金融公庫の政府資金等に対しては、十六、十七、十八国会等におきまして、当局は来年は二百億なり、三百億は獲得して堂々とやるんだ、今年は発足早々だからしかたがなかつた。しかし来年からは徹底的にやりますと、岡田長官もそこにおつて大ぼらを吹いた。ところが今年は一般会計においては百三十億くらいしかない。これで中小商工業者に対する金融措置をやろうとしても、ますます窮乏のどん底に陥れられると思うのでありますが、こういうものは二百億も、三百億もなければならぬ。岡田長官もこれで救済できるかどうか、大臣とともに岡田さんからも御答弁願いたい。
  50. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 昨年来中小企業金融公庫のことにつきましていろいろと当委員会で御審議をいただきましたときに、二十九年度予算といたしましては、私どもとしては二百億の予算要求をいたしまして、毎月二十億程度の貸出しの線まで持つて行きたい、この線は懸命な努力をもつて実現をはかりたいということを確かに申し上げたのでございます。新しく愛知大臣が来られまして、私どものこの要求につきましては十分御理解をいただきまして、大臣を筆頭にいたしまして、われわれといたしましても大蔵省方面と懸命の努力をいたしたのでございますが、いろいろ財政上の都合の関係もございまして、政府から出します新規な金は、出資並びに貸付を含めまして百三十億ということにおちついたのであります。これを基礎といたしまして来年度の公庫の資金の運用総量を計算いたしますと、回収金が六十億ございますから、百九十億ということに相なるのでございますが、日本開発銀行へ借銭が約二十億ございますのを返しますと、百七十億円ということに相なるのでございます。これを二十八年度の中小企業金融公庫の金繰りと比べてみますと、二十八年度におきましては、表向き百五十億ということでございましたが、商工中金に出資した分が二十億ございまして、実際は百三十億でございます。そのほかに回収金が十億ございまして百四十億に相なつたのでございますが、これもまた開発銀行に借銭が合計で約四十億ございましたうちの半分をこのうちから払いまして、公庫として自分で金を運用いたしました量は百二十億に相なるのであります。従いましてこの百二十億と来年度の百七十億と比べますと、先ほど大臣が申しましたように、五十億の増ということに相なるのであります。これをもう一つ見方をかえまして、公庫が昨年の九月から店開きをしまして、この三月三十一日までに百二十億を出すということになりますと、月割りにいたしますと十八億六千万円程度に相なるのでございますが、百七十億を月割りにいたしますと十四億くらいに相なるのでございます。その月割りから言いますと、減つたように見えますけれどもともかくも年間中小企業に流れる総量としては五十億ほどふえる。この辺でひとつ資金の貸し方その他に一段とくふうをこらしまして、効率的な運用をはかるというふうなことによりまして、せめて中小企業の苦しい立場をこの公庫の運用で応援をして参りたい、さような考えをいたしておるわけであります。
  51. 齋木重一

    ○齋木委員 中小企業に対しては企業診断といいますか、工業に対しては診断が一万一千件、商業に対しては三万七千件やつておる。しかしこの診断をやつたたけじや何にもならない。医者も診断をやつただけではだめなんで、その病人に施薬するということを考えなければならぬ、手術をしなければならぬ。診断だけやつたのでは官吏の出張旅費をかせぐにすぎない。その診断をやつたら、診断の結果をどう持つて行くかということを明示されたいのであります。
  52. 岡田秀男

    ○岡田(秀)政府委員 診断のことにつきましては、これも屡次にわたりまして御検討願つておりまして、その都度私もるる申し上げたのでございますが、確かに御説の通りに、診断制度がうまく行くか行かぬかという点につきましては、まず第一にその診断に当る、つまりお医者に相当する診断員がやぶ医者でなくていい医者であるかどうかということが問題であります。そうして、できましたこの診断が中小企業者に提示されました場合に、中小企業者がこれを十分に咀嚼して実行していただく、その場合に一番問題になりますのは、診断の結果を実行に移す上において金がいるという場合に、金がつくかつかぬかということが従来からの問題点なのであります。実際問題といたしまして、この診断を金融と強制的に結びつけるということは、これは金融の本質から申しまして不適当であろうと思いますので、公庫ができましても診断をしたものには必ず金を貸せというふうにはいたしておらぬのでございますけれども、過去の実績を見ますと、診断を受けた結果金融のルートが開けたという事例は相当多いのであります。また今度公庫ができましてからは、公庫の代理店におきまして金融の申込みを受付けております際には、診断を受けた相手方でございますならば、診断の結果を参考資料として添付して来るように連絡をつけておるのでございます。それによつて公庫ないしその代理店といたしますれば、診断を受けた相手方に対しては相当好意を持つてこれを見るという建前で現在は運用をさせておるのでございます。その辺のところが診断の現段階と金融との結びつけといたしましてはまずまず妥当な点ではなかろうか。そのうちに診断の医者も充実して来るし、診断の権威も逐次高まつて来る、また受けた中小企業者のこれを利用する態度もだんだんとよくなつて来るということになりますれば、金融と診断の結合ということも非常に円滑になつて来るであろうと考えておるのであります。処方箋を渡しつぱなしにせずにやつて行きたいという趣旨から、昨年度におきまして地方庁に巡回指導員という制度を置いてもらいまして、その人件費の半額を国から補助いたしましたのも、つまりたとえば保健所におきまして巡回看護婦が家庭で療養しております結核患者を見まわつて行きまして、爾後の処置をとるというふうなことを多少見ならつたのであります。かような制度を今後ますます充実させて行くことによりまして、ただ診断の処方箋を渡すのだということでないように、実効の上るように持つて行きたい、かように考えております。
  53. 齋木重一

    ○齋木委員 相当の好意を持つてやるというけれども、実際に末端の窓口等においては、中小企業が金融の申込みをやる場合に、やはり旧来のままの金融機関としての本能を発揮していて、政府なりわれわれの心を心とした考え方によつて取扱いをしない窓口が往々にして——全体といつてもしかるべきほどあるのであります。だから診断書が無意味になつて処方箋もきかないという結果を生じて来ていると私は思います。またただいまの言葉じりをとるのじやありませんけれども、今まで三万なり一万なりの診断をやつた博士がまだまだよくなるということですと、先にやつた者は悪い、やぶ医者で診断をしたということになつて、これからあとの方がだんだんよくなるということにも考えられる。診断そのものが悪いとわれわれは言うのではございませんが、それに対する裏づけの問題としての公庫の窓口その他に対しては十分なる考慮を払われたいということを私は強く要求しておるのであります。これは十分な戒心と、徹底をはかつていただきたいと思うのであります。  それから砂糖とバターの問題に対して、また人絹にいたしましても、イタリアなり安いところの人絹を入れる考えがあるかどうか、端的に御答弁を伺いたいと思います。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは数量等ではつきり申し上げるまでの考えはまだ熟していないのでありますが、外貨の問題は非常に思惑の対象にもなりますので、お気持はよくわかりますけれども、何月から何は幾らに切るとか、あるいはふやすとかいうことをあまり準備なしに申し上げることはいかがかと思いますので、その御趣旨はよくわかつておりますが、いましばらく猶予を与えていただきたいと思います。
  55. 大西禎夫

    大西委員長 次に中崎敏君。
  56. 中崎敏

    ○中崎委員 きのうに引続いての御質問でございます。今年度における、並びに近い将来における目標として物価の引下げ、貨幣価値の安定、ことに国際価格にさや寄せした状態において安定させるということは、私たちは賛成であります。ただ実際的にこれをどういうふうにするかということについては、いろいろ問題があろうかと思うのでありますが、ことに一番大きな、いわゆる基礎物資といいますか、基礎産業といいますか、そういうふうなものを中心として、一体どういうふうに進むかということについて、少しく具体的にいろいろ質問してみたいと思うのであります。何といいましても鉄、石炭、石油それから労賃といいますか、運賃、こうしたようなものが総合的に関連しまして物価というものは形づくられ、これがだんだん引下げられるというような方向にも進むと思うのであります。  その基礎業の中で、二、三の点について聞いてみたいと思うのでありますが、まず第一に電力についてであります。この電力については政府の方でも三十二年度までの計画を立てておられまして、漸次その方向に進んで参つておるというのであります。二十二年度にまず五百十万キロの開発を目標として進んでおる。そうして二十七年度におきまして、三百五十二万キロの開発の継続をやつておる。二十八年度は、新規に九十二万キロの目標に進めておるということでありますが、こういうように漸次電力というものが増強の方向に行つておるのであります。ただここに問題は、それらにもかかわらず、電気料金というものが漸次引上げられておつて、またぞろ電力料が引上げになり、あるいは電燈料が引上げになるというので、相当輿論を騒がし、私たちを悩ましておるのでありますが、これについてまず電気料金の値上げに対する政府の用意、態度はどういうものであるかということを承りたい。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この電気料金の問題につきましては、去る二十日に、御承知のように九電力会社から値上げの申請案が出て参りまして、その基本とする考え方は、電源開発が相当促進して参りまして、一口に申しますと資本比が非常に増高した。これで五箇年計画を遂行して、五百十万キロワツトの開発を完遂いたしまするためには、全体の経理の状況から申しまして、平約して約一割四分四厘であつたかと思いますが値上げをしたいというのが電力会社の申請案でございました。  まず形式的に申しますと、われわれといたしましても、政府としてこれに対して慎重な検討をしなければならぬことはもちろんでございますが、そういうものが出ました以上は、公聴会にかけなければなりません。公聴会でもいろいろと論議は沸騰するだろうと思います。それから一方におきまして、私どものこれの取扱い方の態度でございますが、会社側の申請をして参りました論拠にも相当考慮を加えなければならないと思うのでありますが、同時にこれは産業界一般に対して非常な影響のある問題であります。それから先般来るる申し上げておりますように、政府としては物価引下げをやりたいということで、実は消費者米価等の問題につきましても、当初考えられたコスト主義よりは安いところに押えたつもりなんでありまして、そういう点から申しますと、何とかしてあまり引上げをやりたくないという気持もありますことは御了解願えるかと思うのでありますが、要するに諸般の情勢を慎重に科学的に検討いたしますと同時に、政治的に、あるいは社会的な判断をも加えまして、結論を出したいと考えておるわけでございます。
  58. 中崎敏

    ○中崎委員 ただいま申し上げますように、三十二年度までにはまた相当資金を要するということになると思うのであります。その際においては電力も相当ふやされるとは思いますけれども、電力の量がふやされて電気料金が下るというのなら納得ができる。国家のとうとい資金まで出して、大いに助長しなから画期的な電力量の増産をはかる。ところがその増産の結果が次から次へと固定資産がふえるというので料金が上つて行くということになれば、何のことだか私たちにはよくわからないわけでありまして、この間における設備の増強、設備に投資することが料金の値上げとどういう関連性を持つのか、数学的にある程度納得の行くようにひとつ説明していただきませんと、いわゆる自由主義の原則というものがこの面においてわれわれは納得行かないということにもなりますので、この点特にひとつお伺いしたいと思います。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、私といたしましてはまつたく客観的に今これを取上げておりますので、電力会社の値上げをしたいという理由をそのまま認めておるわけではございません。     〔委員長退席、中村委員長代理着席〕 それこそ昨日も大いに追究されまして、私は個人としては上げたくないということを予算委員会でも申し上げましたようなわけで、そういうふうな客観的な気持でやつておるのでありますが、たた御質疑がございました点を電力会社側の立場に立つてと申しますか、主としてそういう方面を見て考えますと、最も大きな問題は、電源開発の進捗に伴いまして、新規発電所の減価償却と金利負担の増高ということであると思うのであります。これはなおこの電力の需給計画ともあわせて考えてみなければならないわけでございまして、私どもといたしましても結論を出すのはまだ早いと思いますが、二十九年度において一例を申し上げますと、新たに運転を開始いたしますコストの高い新設の設備は約二百万キロワツトでございます。資産額として約二千億円に及ぶものであります。これは二十七年度の設備九百万キロワツトに対しますると二二%になるのであります。全体の資産額三千八百億円に対して五三%に当る。こういうようなウエートを持つておるわけでありまして、このように開発の進展に伴いまして、減価償却なり固定資産税、金利負担等による資本比の増加は避けられないわけでございまして、さらに第三次再評価による償却増を考えますと、石炭価格の低落による燃料費を考慮してもなおかつ二十九年度の総括原価は、計算上は現行料金に対して約一割五分前後の増加になる。こういうのが大体会社側が値上げを必要としておる根拠なのであります。  そこで政府側といたしましては、先ほど申しましたように何とかこれに対しては政策としても、あるいは社会的な考慮からいたしましても考えなければならぬと思つておりますので、たとえば税の方面において若干の調整ができないかどうか、それから金利負担をある程度下げることができないか。政府の方でも、ほかならぬこれは公共事業であり、国民の最後の一人にまで影響する問題でございますから、できるだけひとつ、たとえば財政資金の融資などの名において金利の負担の軽減ができないかどうか、あるいは国税、地方税両方にわたりますが、税の軽減ができないかというようなことも今実は真剣に検討しておるわけでございます。もちろんそれには限度がございますから、いくらやつてみましてもこれが一割四、五分をカバーする程度には参りません。しかし政府も公共の利益の立場に立つてできるだけのことはやる。それから会計側も大乗的な立場に立つて、もう少し会社としての努力の余地が出て来るはずではないかということが一つ。それからさらにその上においてでき得る限り科学的に合理的に、この根拠になる計算自体を圧縮するとかいろいろな方法を考え合わせて、そして聴聞会あるいは輿論の動向を十分参酌して、最後に結論を出したいと思うのでありまして、私どもとしては結論を急ぎたいのではありますが、同時にこれは大きな問題でありますから、きわめて慎重な態度で取組んで参りたいと思つております。
  60. 中崎敏

    ○中崎委員 ことにこの電気料金の問題については、大衆の生活に密接な関係があり、さらに生活を安定する、あるいは物価引下げという政府の努力とも相いれないものがある。大臣の方では非常に苦慮しておられるようでありますが、とにかく値段を上げない他の方法によつてこの問題を解決するというふうに、最善の努力を要望しておきます。  次は、石油の問題ですが、石油の問題につきましては、これは元来国産では間に合わない。全体の一割程度しか間に合わぬという状態のものであります。由来政府の方でも石油の増産についてはいろいろ政策もやつておられるようでありますが、何といいましても、やはり天然資源がそう日本には多くないというのが常識的だと思うのです。そこでいろいろ考えるべき問題があるのであります。まず第一に、輸入の問題と関連いたしまして、先般来イランからの石油輸入の問題が一時朝野を騒がしたといいますか、非常な関心を持つてわれわれはその経過を見守つてつたのでありますが、何だか火が消えたような感じでありますが、その後どういうふうな経過になつておりますか、さらにこれをどういうふうにしようとするつもりなのかお聞きしておきたいと思います。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その当時の経過等を私まだつまびらかにいたしませんので、鉱山局長からお答えいたさせます。
  62. 川上為治

    ○川上政府委員 イランの石油につきましては、イランの石油がある程度安いということ、それからまたああいう地方からそういうルートをつけるということは非常にいいことではないかというふうに私どもは考えておるのでありますが、一ぺん出光興産会社が若干の油を引いたのでありますけれども、その後英国との関係が、いろいろ国際的な問題がありまして、その辺がまだはつきりいたしておりませんので、今中止をいたしておるわけでありまして、この関係がはつきりいたしまして、イランから油を引いてもよろしいというような国際情勢になりますれば、私どもの方としましては、極力引きたいというふうに考えております。
  63. 中崎敏

    ○中崎委員 記憶しておるところによりますと、何だかこの問題は日本でも裁判の結果出光興産側が勝つたと申しますか、言いかえれば、自由にイランの手から買うということについては適法であるというふうな判断が下されたように記憶しておるのでありますが、その問題と、今言われておることとの関係がどういうふうなものであるか、ひとつ伺います。
  64. 川上為治

    ○川上政府委員 法律的には、裁判におきまして一応勝つたということになつておりますが、しかし英国との国際的な関係がありますので、もしこれを強行しました場合におきまして、ほかのいろいろな貿易の方面に問題が起きましては、そうしてそれを差引きしましてマイナスということになりますと、かえつてつまらないということになりますので、英国との関係が十分調整されました上で、ぜひともイランの油を引くように私どもとしては持つて行きたいと考えております。
  65. 中崎敏

    ○中崎委員 次に国内資源の開発に関する問題に返りますが、われわれは狭い知識からではありますが、大体日本の石油地帯は、東北、北海道、新潟方面と聞いておるのでありますが、この方面については、民間の石油会社によつて長年にわたつて開発をされておるようでありますが、どうもわれわれの聞いておる範囲では、そう目ぼしい結果にはなつていない。そこで政府の方では、今度試掘について前年度の約四倍の一億三千万の助成金を計上して強力に推進するのだというふうにいわれているのでありますが、これによつてどの程度従前よりも鉱脈を発見して、そうしてその鉱量がどの程度これによつて将来ふえる見込みなのか、それらの計画について伺いたい。
  66. 川上為治

    ○川上政府委員 私どもの方といたしましては、この前の委員会におきましても御説明申し上げましたように、五箇年後におきまして少くとも百万キロリツターの油を出したい、それには大体六十億くらいの助成金を出した方がいいのではないだろうか。従いまして年に大体十億くらいの予算を計上して助成金として出したならば、先ほど申し上げました約百万キロリツターの油を五箇年後に出し得るのではないかというふうに考えまして、またそれに応ずるような答申案も石油資源の開発審議会の方から出ておるわけであります。ところが今回の予算におきましては一億三千万程度なつたわけでありますが、この一億三千万円程度の助成金を出しまして、従来帝石なりあるいはその他の会社がやつておりました試掘に対しましてどの程度ふえるかという問題でありますが、これは量的には、現在いろいろ検討をいたしておりますけれども、大体従来の倍くらいというふうにお考えになつたらいいんじやないだろうかというふうに考えております。と申しますのは、帝石にいたしましても、ほかのものを全部入れまして大体年間三億程度の金を使いまして試掘あるいは探査、そういうことをやつておりますので、一億三千万円助成金を出しますと、大体五億五千万か六億近いものに総額がなるんじやないかというようにも考えられますので、これは会社といろいろ相談しましてつぶさに当らないとわかりませんけれども、一応従来の倍程度の調査なり試掘ができるんじやないかというように考えております。それによりましてそれではどの程度見つかるかという点につきましては、これはもつと具体的によく当りませんとはつきりした数字はわからないと思うのですが、そういうふうに一応考えております。
  67. 中崎敏

    ○中崎委員 日本の石油の量というものは、だれが見ても非常に少い。それが割合浅いというか、量が少いだけにそう深くもないとも思うのですが、非常に浅いところにあるというのですが、これをさらに深く掘り込んでそうしてどの程度のものになるかというふうな見通しについてはどうですか。
  68. 川上為治

    ○川上政府委員 これはところによつて違いますけれども、現在平均八百メートル程度つております。もつと深く掘りますと、油はその下の方にも相当量あるわけであります。従いまして五箇年計画といたしましては、その深度を深くするということが一つであります。もう一つは、従来石油資源がそれほどないと思つてつたところに相当あるという事実が最近方々においてわかつて来ているわけであります。たとえば山形県の堀内といいますか、庄内でありまして、これは内陸油田と申しますが、この地方におきましては、前からどうもあるんじやないかというようなことを言われておりましたけれども、技術の点とか、あるいはお金の点とか、いろいろな点からいたしましてなかなか手がつけられなかつたのですが、最近やつてみましたところが、五本のうち四本が当つて、相当すばらしい油田が、しかも内陸地方に見つかつたという状況にありますので、今申し上げましたように、そういう新しいところを開拓するという問題と、それから新潟地方のごとく、今度は深く掘つてみる、そういうようなことを全部入れまして、先ほど申し上げましたように全国百六十五箇所、一箇所平均三本程度試掘いたしまして、先ほど申し上げました五箇年後におきましては百万キロリツター程度出したいというようなわけであります。
  69. 中崎敏

    ○中崎委員 今度はガスでありますが、燃料としても、たとえばメタンガスのごとき、こういうようなものも相当有効に利用すれば石油にかわる一つの資源となり、その他の資源ともなると思うのであります。これの助成についてはどういうふうな考えを持つておられますか。
  70. 川上為治

    ○川上政府委員 メタンガス関係につきましても、従来石油資源の開発と同様に、ガス関係につきましてもある程度の助成金を出しまして、これが開発を促進して参つて来ております。この石油五箇年計画におきましても、やはりある程度のガスについても開発助成をしたいという考えでこの助成金もこの中に組み入れておるわけであります。ただ問題は何と申しましてもやはり石油の方が早急にやらなければならぬというように考えておりますので、ガスの方は若干遅れてはおりますけれども、今後大きな問題として私どもの方は取上げて行きたいというように考えております。
  71. 中崎敏

    ○中崎委員 これらのガスは比較的手近かな場所にある場合が多いのです。しかもこれは設備等について相当に融資等の道が講じられれば、ある程度実用化がさらに進むのではないかという面もあるので、これらの点も考えながら石油行政を進めてもらいたいということを要望するわけであります。  それから石油の価格の問題でありますが、昨年の暮れ前から石油の価格が相当に上つて参りました。ことにガソリンのごときは一時売りどめだという時代もあつて相当運輸界においても混乱を来して来た。ことに潤滑油の場合においても相当に品物が払底した上に、これはある意味において大手筋で売りどめしているんじやないかということも言われておつたのですが、現実には品物が払底して、しかも値段が上つた。しかもこれらのものは潤滑油なりあるいは直接燃料の原動力でありますから、これらのものが上ればただちに今度は他の一般の物価影響するようなこともありますので、これらの値段があまり上らないように要望するのでありますが、これにはやはり大部分を輸入に仰いでいるのでありますから、輸入の手配はどういうようになつておるのか。今後におけるところの石油に対する輸入見通し、石油に対する全体の需給計画について、あわせて価格に関連する面において御説明願いたいと思います。
  72. 川上為治

    ○川上政府委員 石油の価格につきましては、昨年の暮れころから私どもが計画しておりました以上に石油の需要がふえて参りました。特に燈油、これは石油こんろの普及が最も大きな原因をなしておりますが、この燈油の需要が非常にふえて参りましたし、また軽油につきましても最近におきましては長距離のトラツクあるいはまた大型のバスというような関係、そういつたような方面で相当これがふえて参つております。また重油につきましては、最近におきまして、特に著しくこの需要が重油転換等によりましてふえて参つておるわけでありまして、たとえばこの重油につきまして申上げますと、二十七年度におきましては、年間三百三十万キロリツターくらいでありましたものが、本年度におきましては五百万キロリツターというような状態になつております。このように二、三年前と比べてみますと、外貨の関係からいいましても非常にふえて参つておるわけであります。  石油の価格が上りましたのは、やはりその需要に対しまして十分供給の方がまかない得ない状態にあるということ、そして先行きを見越して小売業者等が値段を上げておるのではないかというふうに考えられますが、私どもの方といたしましては、特に精製業者なり大口の販売業者なり、特約店といつたものに対しまして極力値段を上げないようにという指導をいたして参つておりますが、何分地方のすみずみまでそういう行政的な指導が十分に行きわたり得ませんので、ある程度値段が上つておりますことは、先ほど申しました需給関係から、これはやむを得ない状況ではないかというふうに考えております。  ところで需給関係なんですが、今申しましたように非常にきゆうくつになつておりますが、私どもの方としましては外貨の面からいいまして、これを野放しにふやして行くということがいいかどうか、これは相当検討しなければならないのではないか。それからまた一面におきましては、重油の供給が非常にふえますと、結局石炭に対しまして非常に響いて参りますので、たとえば重油一トンに対しまして大体石炭二トンというような状態でありますから、五十万トン重油がふえますと、百万トンの石炭に食い込むということでありますので、やはり石炭の需要関係、石炭企業に対するいろいろな問題を考えますれば、この重油の伸びということをそのままほつたらかしていいかどうかということは、相当疑問があると思うのであります。特に最近におきましてはビルとかあるいはホテルとか、そういう方面で重油を使つておるようにも聞いておりますので、こうした方面はやはり私は石炭等を使うべきではないかというように考えます。それで今申しましたように外貨の事情、それから石炭企業との関係、こういうような問題を勘案して、今後石油をどういうふうにやつて行くか、石油の輸入をどういうふうに持つて行くかということを現在いろいろ検討いたしておる次第であります。
  73. 中崎敏

    ○中崎委員 石油の問題について、まだ意見はたくさんあるのですが、一応大臣を中心とする質問にかえまして、ごく簡単に二項目ばかりお聞きしておきたいと思います。  輸出入の調整といいますか、貿易を適時調整するということについてでありますが、まず第一に輸出の振興ということは、これは当然でありまして、この問題についてはあまり触れません。それで輸入の問題についてでありますが、輸入をやたらに制限するということになれば、また勢い国内物価が間接に引上げられる結果になりますので、これは当然適正に行わるべきものと思うのであります。ところがまず科学の面から行きますと、最近日本の科学技術も漸次進んで参りまして、一時的には非常に諸外国に比べて遅れておつたためにどんどん外国の原料、製品というようなものが輸入される傾向があつたのですが、最近においては国内の科学技術が漸次進んで参りまして、国内製品でまかなつて行けるというようなものが相当にあると思うのであります。ところが実際に、たとえば輸入商社にいたしましても、あるいは需要家にいたしましても、従前の惰性になれまして、どうもこれは使いつけておるのだから、やはり従前のものがいいとか、あるいはまた価段がある程度安いから輸入の方がいいとか、これは無理からぬことではありますが、そういうふうなマンネリズムといいますか、考え方を改めない限りにおいては、いつまでもこの輸入は、しかもそれはわれわれの目から見れば必要でないと思われる程度に達した場合においても、これを押えることはできない。ところが実際においてこれにタツチしておられるところの通商局の方では、非常に品目が多い。新しい種類のものもあるために、なかなかちよつとどういうものかわからないというものがあるのですが、どうも手がまわらないままに習慣的にといいますか、そういうことで扱われるということが非常に多いために不必要な輸入がどんどん行われておるという事実をたくさん私どもは知つておるわけです。これが場合によれば、やはり不正が伴うといいますか、そうした面もあるし、またそうではなく良心的にはやつておるけれども、そこまで手がまわらない、あるいは実際に思い及ばないというような結果によつて、不必要な輸入が相当されておる面があると思う。それでもう少し輸入の事務の取扱いをこれから検討されて、たとえば少くとも原局などについても意見を十分に聞く、今までも一応聞くという場合もあつたようでありますが、しかしそれは一応聞きおくという程度であつて、しまいにはその係の方でやるというような場合もあるのであつて、これはいかに実情に即した運用をするかということが大きな問題だと思いますので、この点についてまず無理のない運用をされることを要望しておきたい。  それからしばしば問題になるのでありますが、高級品の中で、外国の高級自動車というものは、われわれ都内を歩いてみても、毎日々々おびただしく数がふえて来る感じで、高級車が氾濫しておるというような状態てす。これはこの高級車ばかりじやありませんが、一体どういうふうな方法においてこういうふうなものを今後押えて行くか、そうして必要以上の外貨を出さないようにするかということについての考え方を、ひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  74. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもつともな御意見でございまして、私も実はこの輸入外貨の計画と割当の問題につきましては、寄り寄り考究いたしておるのでありますが、一つは現在御承知のように、年に二回外貨予算の編成をやつておる。長期計画ももちろん必要でございますが、やはり時々刻々の情勢をよく把握することが必要じやなかろうか、もう少し機動性を持たせたやり方をいたしたい、それにつきましては、各物資別について通産省内部はもちろんでございますし、私はまずこれが一番大事な仕事の一つであると思いまするので、場合によりましては、外貨の問題については——たとえば閣僚審議会というものも制度としてはあるのでありますが、これは毎月あるいは隔月ありますが、率直に申しましてあまりよく活用されていなかつたのではなかろうか。それで政策としても、閣議のレベルでこれを検討する、同時に実際の実務については、世界のいろいろな市場の状況やあるいは国内の事情等に即応するようなやり方をいたしたいということで、今その方法論をいろいろ考えておるのであります。  それからいま一つは、先般本会議での御意見にも出たかと思うのでありますが、これが士族の商法になるようであつてはいかぬのではないか、これは立場々々いろいろイデオロギーの問題はあろうかと思いますが、国際的にもいろいろ手ぎわよく、入れるものは入れなければなりませんし、できれば安く買いたいというようなこともあると思いますので、今の点については、できるだけ研究を積みました上で、方法論を考えて行きたいと思うのであります。そしてこれをもう少しほんとうに真剣に政策として皆さんに取組んでいただきたいという気持でおります。  それから高級自動車につきましては、実は最近外貨の方で新しく入れるものは全部押えるような方法をとつたはずでございますが、同時に駐留軍その他外国側の協力を求めまして、外国人が日本へ持つて来た車を新しいうちに日本人に転売するというようなことについては原則的に禁止する、非常に制限をするという措置をとりましたので、これからおそらく相当減つて来るだろうとは思いますが、なおその他のぜいたく品等につきましては問題なく輸入を抑制して参るように外貨の割当の方針をかえたいと考えております。これは金額としては、全部押えたところで総体の金額はそう大したことはないにいたしましても、やはり新しい経済政策に即応し、また日本人がきりつとするという意味におきまして、政治的、社会的効果も非常に大きいものだと思いますので、せひそういうふうにやつて行きたいと思います。
  75. 中崎敏

    ○中崎委員 次に治山治水対策の一環としての問題でもありますけれども、水害亡国だと言われるくらい年々歳々日本は水害によつて大きな損害を受け、政府の側においても非常に腐心しておられると思います。そこで根本的にこれに対する恒久対策を講ずることももちろん必要でありますが、その中でやはり一つの大きな原因としては、長い間のいわゆる木材の濫伐にあるということは衆目の認むるところであります。そこで実際の木材の需給状況を見ますと、年間を通して三千万石不足だということであります。でありますから、毎年々々小さい木が成長して行き、それがだんだん大きくなつて切取られて、年々三千万石ずつ実際国内で不足しておるという実情であるのであります。これをこのままにほつておいたのでは、年々その災害はますますはげしくなり、木材が不足するから、今度はいやがおうでも木材の値段が上るということで、二重三重に国家国民に大きな圧力をかけるのだと思うのであります。そこでこれに対する対策を一体いかにするかということが大きな問題でありますが、旧年来通産委員会においても、まずこの通産行政の範囲内においてやれることをひとつ検討してみようじやないかということで、いろいろ軽工業局長の方からも意見を聞きました。相当具体的なポイントとして取上げるべきものもここにおよそ方向づけられておるわけなんであります。これを今度はどういうふうにするかということで、通産委員会においても小委員会を開いて、強力にこの問題を具体的に取上げ、そして何らか国策といいますか、国家百年の計に役立つ道を選んで行こうじやないかということで、近く小委員会を持つという方向に行つておるのであります。大臣の方でも、この問題は実際大きな問題でありまして、どろぼうを見てあとを追つかけてなわをなうという考え方でなしに、治山治水の問題を事前に解決して行くという積極的な熱意を持つていただきたい。しかも比較的わずかな犠牲をもつて大きな経済効果を得るというねらいでありますから、決してこの問題はそうばかばかしいつまらぬ問題でないと信じておりますので、大臣の方でもひとつ十分に検討していただいて、そしてわれわれとともにこの通産行政の部面において、この問題を大きく解決してやるという心構えを持つていただきたいことを要望しておきたいと思うのであります。大臣に対しての質問は私はこれだけでありますが、引続き政府委員にありますから……。
  76. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまの木材の問題は、私も非常に重要であるということをかねがね承つておるのであります。たとえばこれは余談になりますけれども、昨年一年を顧みてみましても、物価が多少上つたというのは、ほとんど木材の値上りの関係でございまして、もし木材の値上りがなければ、去年物価はある程度下降状態なつたのであります。木材はそれほど日本の国民経済の中に占める比重が大きいものであるということは、その面からも私は承知しておるわけでございます。なおただいまの御趣旨に沿いまして私もひとつできるだけの努力をいたしたいと思います。何しろ坑木から電柱、まくら木、パルプあるいはまきに至りますまで、非常に広汎な問題であると思いますので、できるだけすみやかな機会に通産委員会のなお一層の御協力を得て適宜の処置をとるようにいたしたいと考えます。
  77. 中崎敏

    ○中崎委員 次に特許のことについて少しお聞きしたいと思います。遅れておる日本が進んで行くためには、特許というものが非常に大事であるということは申すまでもないことなんですが、実際の運用にあたつて、現在の特許法の中に検討を要するのではないかと思われる点がありますので、この点についてちよつとお聞きしておきたいのであります。  現在の特許法は、まず先願主義にのつとつておるものであり、そしてまた発明者に対して特許権を与えるものであるという原則の上に立つておることは、よく承知しておるわけであります。ところがここに実際の問題といたしまして、われわれのちよつとふしぎに思いますのは、たとえば、私なら私の会社において、化学肥料をつくる目的を持つて、会社がそういう方向で実際に仕事をしておる、従つてそこに雇われておる技術者も使用人も、みな会社の指示に従つて肥料の生産をやつておる、その技術者が、仕事を研究しておる過程において、肥料に関する一つの発明といたした、こういうふうな場合においても、その人が届出をすれば、当然特許権はその人に与えられるというふうに解釈をしておるのであります。その際において、その人を使つてつた工場については、実施権だけは与えられる。しかし聞くところによると、その実施権も、実際にこれは自分のところで、こういう径路でこういうふうにやつておるのだということの説明をして、十分に立証しないと、実施権さえも与えられない。これはもつとも発明者を保護するということから行けば、一応筋は立つておると思うのでありますが、さてその際における発明者は一体だれかということが問題になると私は思います。たとえば一つの企業体において、技術者を呼んで来て、給料を払つて、会社の施設、資材を提供して、一切会社の指示に従つて仕事をやつておる。それがたまたまその仕事の範囲内において、仕事をやつておる過程においてそれをやつた。そうすれば、ほかの事務員がほかの仕事をやつて成績を上げたのと何ら違いがない。それにもかかわらず、そういうふうにして雇つておるところのいわゆる企業体については、何ら今の権利がない。その発明者といつても、いろいろあるのです。たとえば、五人なら五人で引受けて、上の方の部長なり課長なりがその指導をして、試験管だけをただ振つてつただけである、ところがやはり振つているのだから、一つ結論は出て来る。言われた通りにやつたところが、こういう結果になつた、これが発明だと言つて、自分だけが何か手続をして、先願主義でその人だけが保護される。そういうことになれば、結局企業体の安全というものははかり得ないという結果になるのだが、その際において、たとえばその企業体が使つてつて、その目的の範囲内のりつぱな仕事であるならば、その範囲内においてやつておる仕事だということがはつきりすれば、ただ実施権というような不徹底なものでなしに、あるいは共同権利を持ち得るものである、あるいは当然これは会社に帰属する、そのかわりに発明した者に対しては、何らかの褒賞を与えるべきものであるというふうな、別に保護の規定を設けることによつて、そういうふうな企業体本来の使命を果すような方向にこの特許法が持つて行けないものかどうか。現在の会社はどうかということについて、お聞きしたいと思います。
  78. 正木崇

    ○正木説明員 ただいまの勤務者発明の問題でありますが、これは現行の特許法の十四条に規定がありまして、一応の解決をいたしておるわけでありますが、御説のようにいろいろ問題がございまして、なお改正すべき点があります。もちろんこのほかにもいろいろ問題がございますので、昭和二十六年の六月から工業所有権制度改正審議会という委員会を持ちまして、工業所有権制度全般の改正に着手いたしておりまして、ただいまの見込みでは、おそらく今年の末には答申が出そろうものと考えられます。この委員会におきましても問題の研究をいたしておりますが、ただいまのところまだ結論を出しておりません。いろいろ意見がございまして、なお研究を続けることになつておる次第でございます。
  79. 中崎敏

    ○中崎委員 念のために申し上げておきますが、この問題がどういうふうな研究をされて、どういうふうになつておるかということは知りませんが、少くともこれは特許権の本質、根本に関する問題だと思います。たとえば、五人なら五人でやつておるその中のだれかが、人のやつておることをひよつと見て——物事は勘ですから、ほんとうの発明ならむずかしいことですが、そういうものばかりじやなく、きわめて簡単なことがあるので、そういうものをひよつと見て、ああいうことをやつておるなと思つて、すぐに書類を持つてつて手続さえすれば、それで権利があるというのですから、同時にこれは悪者を保護する規定でもあるのです。しかしそれはなかなか説明ができないんですよ。工場の中で試験管をあれこれ振つてつて、だれがどういう径路でどういうことをやるかということはなかなか説明がつかない。それをその人だけで説明をしたて、かつてなことを言うでしよう。こういう先願で届出をした者だけが九九%の大きな権利を持つのだというような行き方は、私は間違つておると思います。そこでこれは十分に検討してもらいたいと思いますが、やはり発明した者が堂々と保護を受けるような方向に持つてつていただくことをお願いしたい。特に企業体においては、自分のところで仕事をやりながら発明することを一つ目標として研究費などいろいろ犠牲を払つてつておるのだから、それをたまたま見つけた、ぶつかつたというので、書類を持つてつた人が全部の権利を持つということは、あまりに常識をはずれた一方的なものだと考えます。この点を十分に検討していただいて、すみやかな機会に国会に改正案を提案されることを希望する次第であります。
  80. 中村幸八

    中村委員長代理 本日はこの程度で散会いたします。次会は五日午前十時といたしておきます。     午後四時五十九分散会