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1954-03-18 第19回国会 衆議院 地方行政委員会公聴会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十八日(木曜日)    午前十一時三分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 直延喜    理事 藤田 義光君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       濱地 文平君    前尾繁三郎君       山本 友一君    鈴木 幹男君       橋本 清吉君    阿部 五郎君       石村 英雄君    北山 愛郎君       伊瀬幸太郎君    大石ヨシエ君       大矢 省三君    中井徳次郎君  出席政府委員         自治政務次官  青木  正君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君  出席公述人         全国知事会代表         (茨城県知事) 友末 洋治君         全国市長会代表         (川崎市長) 金刺不二太朗君         全国町村会代表         (茨城石下町         長)      關井  仁君         全国事業税対策         協議会代表   國井 秀作君         一橋大学教授  井藤 半彌君         全国指導農業協         同組合代表   武正總一郎君         東京労働組合         連合会委員長  河井 平次君         全国料理飲食喫         茶業連盟代表  山本 宗平君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  地方税法の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより地方行政委員会公聴会を開きます。  本日は地方税法の一部を改正する法律案について、利害関係者及び学識経験者等より公述人として御意見を承ることとなりました。  本委員会におきましては、同案が付託されて以来、慎重に審査をいたして参りましたが、今回の改正案には、タバコ消費税道府県民税不動産取得税新税創設入場税国税移管及び附加価値税を廃止し、現行事業税及び特別所得税を統合して事業税とする等、重要なる問題を含んでおるのでありまして、巷間種々論議されておる現状にかんがみ、本日公聴会を開きまして、広く国民諸君の声を聞き、本法案審査を一層権威あらしめると同時に、その審査に遺憾なきを期したいと思う次第であります。  この際公述人各位にごあいさつ申し上げます。公述人の方々のうち、全国知事会代表茨城県知事友末洋治君、全国市長会代表川崎市長金刺不二太郎君、全国町村会代表茨城石下町長關井仁君、このお三人が午前における公述人として御陳述を願うことになつているのであります。本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会のため御出席くださいましたことに対し、委員会を代表し、厚く御礼申し上げますとともに、各位の率直なる御意見の御陳述を希望する次第であります。それでは議事の進行上、順次御意見を承ることといたしますが、その公述時間は各人約十五分ないし二十分の予定でありますので、その要旨を簡明にお述べくださるようお願いいたします。  なお陳述が終了いたしましたら、本委員会委員諸君から御質疑があると思いますからさよう御承知を願います。それではまず友末洋治君より御陳述を願います。友末君。
  3. 友末洋治

    友末公述人 今回政府国会に提出されておりまする地方税法の一部を改正する法律案等につきまして、意見を申し述べたいと存じます。  御承知通り現行地方税財政制度は、昭和二十五年にシヤウプ勧告基礎として大幅に改正をされたのでございますが、その結果は、少くとも府県にとりましては従来よりもはなはだしく改悪の状況に相なつて参っておるのでございます。これは制度そのものにも幾多の欠陥がございますが、またその後におきまする制度運営にも適正を欠くものがあつたことに基くものと考えられるのでございます。そこで、意見を申し上げる前に順序といたしまして、一応それらの実情の要点を一、二申し上げさせていただきたいと思います。  すなわち第一には、県の独立税源がきわめて少く、自律性が低いことでございまして、昭和二十八年度におきまするところの府県税収総額歳入総額のわずか二割五分にしか当つておらないのでございます。改正前の昭和二十四年度におきましては、これが約三割強を占めておつたのでございます。府県の中で最低は鳥取県の八分八厘というきわめて貧弱な状況を呈しておるのでございます。  第二には、府県税のほとんど全部と申してもよろしい九五・五%を占めておりまする税は、事業税入場税遊興飲食税、この三税でございますが、これらはすべて都市中心偏在した税種でございまして、普遍的な税をまつたく持たない府県におきましては、その行財政の面におきましても、勢い諸種弊害が生じておるのでございます。すなわち、府県納税者住民全体のわずか三ないし四%にすぎないのでございまして、しかも主として納税者都市民でありますが、財政投資の大部分は、例外の県はございますが、大多数の府県におきましては、府県税をほとんど負担しておりません農山漁村に振り向けられるのでございまして、納税を通じて府県自治行政に参加するというこの民主政治の実体が欠けておるのでございます。これにつきましては行政執行者の私どもはもちろん、住民といたしましてもはなはだしい矛盾を感じておるところでございまして、従来住民の側からも、納税というものと行政参加というものとを、何らかの形において実現してもらいたいという要望すら起つてつたのでございます。他面納税を多くいたしております都市方面におきましては、納税相当額財政投資すなわち仕事をやつてもらいたいという要求の声が強くなつて参る、しかし現実にはその納税事業との均衡をはかりますことは、とうてい不可能でございます関係から、勢い納税方面にも相当困難な事態を生じておつたのでございます。さらに府県税偏在性府県相互剛税源に、はなはだしい不均衡を生ぜしめておるのでございまして、府県税収総額全体の二分の一程度はいわゆる六大都府県で占められておるのでございます。これを税収総額人口一人当りの額で見ますと、富裕府県貧弱府県との間におきましては、約八倍程度の開きがあるのでございます。さらにこのことは国庫負担金制度の復活や増大に結びついて参つたのでありまして、御承知のように昭和二十五年にはこの国庫負担金制度が約三百億円程度整理されたのでございます〇二十八年度までにはこれがほとんど全部復活し、さらに増大をいたしておるのでございますが、ある程度整理されました昭和二十九年度の国庫補助負担金総額は約二千七百億円でございまして、歳入総額の全体の約二割七分を占めております。府県だけにとつてみますと三割四分、約三分の一程度国庫補助負担金が占めておる状況でございまして、この偏在いたしましたところの府県税国庫負担金制度が結びつきまして、府県閥財源の不均衡は一層激化しておるのでございます。これを何とか均衡化せしめなければならぬというので、御承知のように義務教育費国庫負担法特例法案というものも一時出て参つたのでございます。これは今日日の目を見ておらないのでございますが、かようにこの不均衡化是正するということは、かねてからの懸案問題にすらなつておるのでございます。  第三には、府県税収総額のうちその約三分の二を占めておりますものは事業税でございますが、この事業税は、ときどきの経済事情の変化が鋭敏に影響いたしますので、税全体の安定の度合いは低いものと申さなければならぬ次第でございます。従つて経営的経費あるいは義務的経費が大部分を占めております府県行政も勢い安定性を欠きやすい状態に置かれておると申さなければならぬのでございます。  第四には、府県間に避けられない税財源の不均衡を調整するために平衡交付金制度が設けられたのでございますが、その運営の実際は必ずしも円滑に参つておりません。年々国と地方との紛争を続け、政府の不完全な財源措置は、府県財政窮乏と混乱の原因をなしておりますことは争い得ない事実でございます。私どもは以上の各種の弊害をすみやかに是正される必要を痛感いたしまして、中央地方を通ずる税財源を公正適正に配分することによりまして、すみやかに府県税財政自主独立性を高め、その安定性を強められますことをしばしば要望いたして参つておることは、すでに御承知のところでございます。  今回いよいよこれが改善をはかりますために、諸種法案国会に提案されておるのでございますが、これら法案を貫きますところの基本的な方針は、地方制度調査会税制調査会答申を尊重され、われわれの要望をも取入れられており、特に府県民税創設されまして、負担分任の精神を実現いたしまして、一般の輿論にこたえるの方策をとられ、タバコ消費税不動産取得税償却資産税等独立税を設けられまして、府県自律性を強化するという方向をとられましたことは、大いに賛意を表するところでございます。ただその総額でございますが、この改正によつて府県に与えますところの税は、差引いて三百八十八億円の増となつておるのでございますが、既定財政規模の不合理是正というものがまだ不十分でございます。また警察制度改正につきましては、相当額経費を要するのでございますが、これらの問題をあわせ考えますと、総額につきましてはなお不満の点も多いのでございます。すなわちタバコ消費税は百十五分の五となつておりますが、その課税率ももつと引上げられる必要もあるのでございます。また私どもが従来強く要望いたしております酒税譲与税等の新設も考慮さるべきではないか、かように実は考えるのでございますが、ただタバコ消費税につきましては、御承知のように従来タバコ専売益金自分のものだと強く主張せられておりました大蔵省が折れて、この新税地方に認められたということにつきましては、まつた賛意を表するものでございます。さような状況にもございますので、まず現状における税制改正といたしましては、一応やむを得ない、これ以上の改善につきましては、できるだけすみやかなる今後の機会に期待するほかはないのではなかろうか、かように実は考えておる次第でございます。  次に入場税国税に移管して譲与税とすることにつきましては、府県独立財源を弱めます結果と相なりますので、その趣旨におきましては了解できがたいものがあるのでございます。しかし府県間の税源の不均衡是正いたしますために、義務教育費等国庫負担金制度特例をもつていたします方式が、実現し得る見通しのない今日におきましては、何らかの方法をもつてこれが実現を期するといたしますれば、入場税国税に移管して譲与税とする本法案方式をとりますか、または一部に最近唱えられておりまするタバコ消費税特例を設ける。すなわち超過財源を持つておりまする府県に対しては、タバコ消費税をその都道府県専売公社が納めないで、交付税特別会計にこれを納入して、交付税に準じてこれを取扱うという方式もあるのでございますが、まずこの二つの方法以外に適当な方法は現段階としては見つけ得ないのではなかろうかと考えているのでございます。この両者のうち、いずれを選ぶかということにつきましては、種々議論があることとは存じますが、後者税体系におきます非常な変態であり、かつて前例のないばかりでなく、納税者の面におきましても、かような変態事態は容易に了解できない点があるのではなかろうかと考えられるのであります。それに比しまして前者、すなわち入場税譲与税といたしまするものにつきましては、その内容一貫性をもつており、年度当初におきます府県歳入見通しも比較的つきやすいという関係に立ちますので、その筋におきましては一応すぐれておるのではなかろうか、かようにも考えられるのでございます。  次に揮発油譲与税でございますが、この法案は二十九年度限りの権威のきわめて薄い時限立法に相なつておるのでございますが、今後すみやかに道路整備五箇年計画はつきり樹立し、その計画の実施を保障いたしますのに足り得る中央地方を通ずる総合的な税財政計画を国の大方針として確立し、その上でこれに関しまする立法措置を、すみやかに講ぜらるべきであると考えておるのでございます。  最後に地方財政平衡交付金制度改正いたしまして、地方交付税制度に切りかえ、国税一定割合を交付いたしまして、その率を原則として今後変更しないということによつて地方財政安定性を与え、これを正常化方向に向わしめようとされておるのでございますが、一応その趣旨は了解できます。しかしその内容を検討いたしますときには、現在の地方財政窮乏化を恒久的ならしめるばかりでなく、一定率変更をめぐつて、従来通り中央地方紛争を継続せしめる結果におきましては、何ら改善されないおそれも出て来るのではなかろうか。これは非常に心配いたしておるのでございます。すなわち昭和二十九年度地方財政計画によります既定財政規模是正は百五十億円にすぎません。地方制度調査会はつきりと認められました三百六十億円の是正には、いまだ二百十億円足らないのでございまして、地方財政に恒久的なわくをはめる場合におきましては、将来のことは別問題といたしまして、まずもつて過去の姿を一応あるべき正しい姿に返して、これを行いますことが理の当然でなければならないと考えるのでございます。従つて昭和三十年度におきまする一定率を現在において定める場合におきましては、是正不足分二百十億円を増加し、これを基礎として決定されなければならないのでございます。原案に示されておりまする所得税法人税及び酒税のそれぞれ百分の二十は、これをさような計算の基礎に立つて考えますれば、百分の二十三程度に少くとも引上げられる必要があると考えます。さらにこの一定率変更は、普通交付税総額が引続き各地方団体ごとに算定いたしましたる財源不足額合算額と著しく異つたとき行うものとされておるのでございますが、「引続き」の解釈いかんによりましては、生きておりますところの地方行政に重大な支障を生ずることともなり、また「著しく異る」の限界がきわめて不明確でありますので、地方財政に常に不安を与える原因となるおそれがあると存ずるのでございます。これらの解釈政府の一方的な判断にゆだねますことは、本法案立法趣旨に反する結果となるので、むしろ前者の「引続き」は削除し、後者につきましては地方のくふうと努力によりまして調整し得る限界を何らかの方式をもつて法文に、はつきりと明示すべきであると考えるのでございます。  以上・地方税の一部改正法律案等について、率直にその意見を申し述べた次第でございます。
  4. 中井一夫

    中井委員長 次には全国市長会代表金刺不二太町君より御陳述を願います。
  5. 金刺不二太朗

    金刺公述人 地方税法の問題につきまして、市長立場から考えておることを申し上げたいと思います。  今回提案されております税は、御承知通り道府県民税事業税不動産取得税市町村民税固定資産税タバコ消費税であります。  まず府県民税について申し上げますが、府県民税を徴収する趣旨は、負担分任ということが主であります。なお今回のこの税法改正根本を貫いてお趣旨は、自治庁長官説明にもありますように三つ要素を持つております。ただいま申し上げましたように負担の分任ということ、税源偏在是正するということ、徴税簡素化をするということ、この三つの大きな要素をもつて改正されることになつておるわけであります。そして先ほど知事会からもお話がありましたように、この案を提案するに至つたまでの経過は、地方制度調査会答申を尊重して提案した——尊重して、というよりも、その答申によつて提案したということは、知事会意見をまつまでもなく、自治庁長官の提案の説明によく明示してあります。私どもも幸い地方制度調査会委員として、これらを審議したのでありまして、ここに皆さんに私ども意見を申し上げる上において非常に参考になり、また内容がわかつておりますので、有意義であると私は考えております。この府県民税の問題でありますが、府県民税創設は、負担分任を主としております。負担分任という点で、府県民税創設するということがいいか悪いかということは別問題といたしまして、ただいま申し上げました三大要素に一体適合しているかどうかということであります。徴税簡素化、もう一つの税の偏在是正という点と適合しているかどうかという問題であります。今日税の問題に対する国民の、いわゆる納税者考え方というものは、私が申し上げるでもなく、非常に税が重い、極端な言葉をもつて言いまするならば、税に対する恐怖病にかかつているのです。そういうときに、府県民税創設するということは、内容におきましては市町村の税をわけることであります。決して増徴するのではない——これは説明すればわかるのでありますが、末端の徴税をする場合、あるいは納税者の心理を考えますと、やはり府県民税は新たに加わつたような感じを受ける。これは政策上きわめて拙劣な考えであると私は考えるのであります。しかも市町村都道府県も、今地方団体財源が不足しておるのです。足りないのです。足りないのに、都道府県議会の非常な政治力によつて、これが地方制度調査会の一部の意見通りましてここに提案されたのでありますが、こういうような不合理を生んだ結果は、ただいま私が申し上げたことで明瞭であると思います。市町村の税も足りない、府県も足りないということであるならば、これは他に税源を求めなければいけないと私は思うのであります。市町村が余つている税を府県に与えるというならいいのであります。わけてやることはいいのでありますが、足りないのにそれを分取るというようなやり方は、いたずらにコツプの中で争つているにすぎないと私は思うのであります。こんなことは私が申し上げるまでもなく、はつきりわかつておることでありますが、私も市長になつて八年間、実際にこの問題と取組んで来ております。そして地方税については実際の面に当つておりますのでこういうことを申し上げるわけでありますので、御了承を願いたいと思います。そういう意味におきまして、この府県民税創設はまつたく無意味のものである。徴税簡素化の線に沿うでありましようか。一体地方税法の二十一条に何と書いてありますか。徴税市町村に委任してはいけないと書いてあるのではありませんか。今度法案が出ておりますが、ごまかして、但書を利用して書いてある。こういう無理をしてまでとるということは、はたして適当であるかどうかという問題であります。占領下におけるシヤウプ勧告による地方税法の制定に対する批判もあります。しかし占領下政策は、独立国なつた今日においてわれわれは好んでおりません。けれども民主主義というようないいことはとつてさしつかえないと思います。民主主義の根底をなすものは、やはり自治体の自治確立であります。その根本を貫いておるところのものがこの税法であります。財源がなかつたら、地方自治確立はないのです。その財源市町村から府県へ分取りするようなことが、はたして地方自治確立になるでありましようか。民主主義の強化になるでありましようか。占領政策是正ということが今よく言われておりますが、これは占領政策以上に悪い案ではないかと私は考えるのでおります。これに対する具体的の方法は、これ以上るる申し上げなくても、ただいま申し上げたことで大体わかると思います。税に対して非常な恐怖を感じておる一般納税者に対する考え方、それからもう一つは、繰返して申し上げますが、非常に徴税が複雑であつて税体系を乱しておる、複雑化しておる、しかもこれを市町村徴税して県に分与することになりますから、その点でまた非常に大きな問題をそこにはらんでいるということであります。一つ令書市民税府県税と並記してやるから簡単だ、こういうふうにいわゆる机上の論で言う方もあります。その数字を列記して行くとか、印刷するとかいうことは簡単なことですけれども、その数字を、県民税が幾らになるかといつて、個々に税金を調べるその複雑さと努力というものは容易ではないのです。今都道府県においても、市町村においても、国における税務署におきましても、この徴税事務がいかに容易でないかということがわかるのであつて、これが行政事務根本を貫く大きな問題であります。この技術を下手にやると、とんでもないことになつて納税者納税意欲をそぐことになるのであります。でありますから、簡単に考えて、令書府県民税と書けばいいのだというような考え方はとんでもない間違いであります。それは徴税事務内容ほんとうに知らない人の考えであります。これらの複雑なことをやらなければならいということであります。私は都道府県財源がないことはわかつております。私は都道府県が余つているなんということは断じて申し上げませんけれども、その財源都道府県に付与する方法は他にあるはずであります。こういう点で、特に都道府県民税に対しては考えてもらいたいということを、私は強く要請する次第であります。  次に固定資産税の問題でありますが、これは税の偏在是正を目的として制定されたものであります。先ほど申しましたように、都道府県民税負担の分任を意味しており、国定資産税は税の偏在是正するというのであります。これは私は非常に不可思議に感ずる。地方制度調査会遊興飲食税国税にして、人口割で分与するという答申をしたはずであります。これがいわゆる税の偏在是正するのでありまして、市町村の税を県に与えて何で是正ができますか。ものは大局に立つて考えなければならぬと私は思います。市町村と県の同じコツプの中の税を動かして、税の偏在是正ができますか。たとえば富裕府県と称しております東京、神奈川、大阪等でも、やはり市町村の納めた税がその都道府県に納まつているし、東北とか、北海道とか、その他鳥取県等の比較的税源のない県にはその財源は行かないのですよ。どうしてこれが税の偏在是正になりますか。ほんとうに小さい、発言力のない、弱い市町村をいじめて、これが税の改正であるなどということは、われわれ国民立場から容認できない。ぜひともこの点を冷静に考えてもらいたいと思います。私は今日市会を招集しておりまして、代表質問があるのだけれども、この点だけはぜひ皆さんに訴えたい。皆さん警察法であるとか、たくさんの法案がありますので、税の問題についてこまかいことはお知りにならないと思います。(「知つている」と呼ぶ者あり)それは非常にありがとうございます。それはありがとうございますが、非常にめんどうでありまして、ややもすると、この税の問題については等閑に付しがちになる、私自分が市におりまして、市会議員質問に対して、税の問題になりますと、ついいろいろと抽象的なことを言つて逃げなければならぬということになつております。しかし税の本質はよく御研究になつているということを聞きまして、非常に心強く感じたわけであります。さようにいたしまして、これは真剣に取組んでもらいたい。警察法も大事でありましようが、税の問題こそ私は非常に大きな問題であると思います。それでこの固定資産税の問題もそうでありますが、この法案に出ております内容は、ただいま申し上げましたように、税の偏在是正のためにやつたと称しますが、それは警察法改正によつて警察費が県にかかるから、それに財源を与えるための市町村から県への財源分与であります。これは税の偏在是正の使命を果しておりません。遊興飲食税そのものが国税になることは、実は私は地方制度調査会としても賛成でございませんでした。けれども、あれが答申されたのに、どうしてこれをやめたのですか。やめるなら全部をやめるべきです。ちつぽけな、弱い、発言力のないわれわれのようなところからとつて、大きい政治力によつて動かされるようなところはやめたということは——これは現に公表されております。こういうことは納得できるでしようか。こういうことは真剣に考えてもらいたい。(「邪推だ」と呼ぶ者あり)邪推じやないです。われわれは地方制度調査会で、遊興飲食税のことは賛成していないのですよ。賛成ではないのですが、答申があつた以上は、私は尊重すべきであると考えています。そんな大きな税の偏在是正をやめて、こんなちつぽけな町村から税を取上げる、こんな政治はないと思う。これは占領政策以上に悪い。こんなことをして一体日本の国が発展すると思いますか。(「発展せぬ」と呼ぶ者あり)まつたく共鳴のお言葉を聞きましたが、これは私は感情によつて自分の田へ水を引くために言つているのではない。市が財源がほしいために言つているのではない。ほんとう国民立場から、地方制度調査会において論議した立場から言つておるのですから、どうぞ誤解のないようにしてもらいたいと思います。政党には政党のいろいろな都合があるでしようから、党議には服さなければならぬでしよう。  そこで私はよけいなことを言つておしかりを受けることは避けますが、一体何でも議案というものはそのまま通せばいいというようなことであれば、これはたいへんな間違いである。たとえ与党であつても、悪いところは国民の声を聞いて直すのが当然じやないですか。政党のことをいえば、われわれは自由党のシンパなんです。決して自由党員でないのじやないのです。自由党そのものに対してどうというようなことは言いませんが、これは政党的に考えないで、少くともこの委員会における審議の内容というものは、ぼくは政党に作用されるべきじやないと思う。地方の問題はやはり超党派的に考える必要があるのではないか、そういう意味で申し上げるわけですから、どうか誤解とか憶測とか感情でないことを重ねて御了解を願いたいと思います。そういう意味におきまして、私はこの税の偏在是正による固定資産税の減税の改正法に対しては賛成できません。なおよく税の過去の経過を御承知願いたい。たとえば警察が市町村に移つた、そのときの財源入場税をよこした。それでわれわれは税が足りないために——今ここにおられる加藤さんも市長として経験があるでしよう。いろいろな点を申し上げて、まことに恐縮でありますが、ばかにやじを入れるから申し上げますが、自分市長なつたつもりで真剣に考えてもらいたい。あなたが鶴岡の市長としてどうであつたか、警察が市に移つたときに、入場税財源だというので、野球場をつくつたりいろいろなことをやつて入場税をとれるようにしたでしよう。ところがこれはいつのまにか府県に行つて今度は国税なつた。ねこの目のようにかわつて政策にちつとも一貫性がない。立法府にある人はぜびこれを監視して是正しなければいかぬと思う。こういうように年中ねこの目がかわるようにかわつては、地方は来年、再来年、永久の計画は立たないのです。しかしそれがいいのならいいのですが、内容がりくつに合わないのです。まつたくこんなばかなことをしておるから、現在地方ではだんだん税務吏員をふやして研究して、徴税努力しなければならないという現状をぜひ御推察願いたいと思います。これは隣に町村長の会長もいるので、今座談したのですが、この点に関しましては、今の全国の市町村の一致した意見なんです。今打合せしたのでありますから、間違いないのであります。一体市町村というものに対する観念が非常に違つているのじやないか、小さい団体だというのでばかにしている。けれども市町村というものがなければ国がない。市町村がどうなつてもいいというふうに考えていたら、とんでもない間違いです。市町村府県の問題は行政の問題ですから申し上げませんが、これこそが国の基礎をなしている。これに対して私は税をむやみによこせというのではない。合理的な世間のだれもが納得するような方法を講じてもらいたいというのが私の結論であります。  そこでその他タバコの消費税の問題もあるが、これは地方制度調査会答申はちつともとつてない。市町村が百十五分の十、府県が百十五分の五、これはプリントの間違いなら別ですが、これは委員長よく調べてもらいたいのです。都合のいいものは地方制度調査会答申だといつてとるのならば、そんな地方制度調査会なんかは効力がないと私は思つておる。遊興飲食税でも何でもみんな根本がかわつてしまつておるのです。私はこの資料によつて意見を述べろといつて来たので、あなた方が送付してくれた書類に基いて答申のことを言うのでありますから、どうぞ誤解のないようにしてもらいたいと思います。そこでタバコの消費税の問題はせつかく多年の要望が通つたわけでは財源がなくて困つておるから、ぜひそうしてもらいたい。  もう一つ考えてもらいたいことは、税の偏在是正ということは非常に大きな問題で、真剣に考えなければならぬ問題であります。東京とか神奈川、大阪あるいは兵庫県あるいは愛知県とか、この五大都市を持つておる府県はいかなる税法になつても多くなつておる。それは担税力の多い人が住居しておる。山形県のような東北の県とか鳥取県は、いかに税法をかえても担税力かないから、これは与えないのです。ですから税の偏在是正ということは、いたずらにそういうことをすることじやないのです。そこで平衡交付金制度がある。今度交付金制度というものが新たにできましたが、そういう足りない団体には税金以外にこの交付金でもつて支援する。(発言する者あり)私は市会を開いておるのに、時間を割いて来ておるのです。  〔私語する者多し〕
  6. 中井一夫

    中井委員長 委員諸君の私語を禁じます。公述人もあまり興奮せぬがいいと思います。ことに委員との間に言葉を上下することはお慎みを願いたい。
  7. 金刺不二太朗

    金刺公述人 委員長の御注意はよく了承しました。興奮せざるを得ない内容を持つておるということを御了承を願いたいと思います。地方自治をあずかつております市長として、いかに容易でないかというこれは血の叫びである、ほんとうに冗談や感情でなく言つておるのでありますから、どうか誤解のないようにしてもらいたいと思います。わずかに二十分以内で公述せよということですから、極端なことを申し上げて気にしたかもしれませんが、そういうような真情あふれて熱意を持つて話すのでありまして、その表現力は非常にしやベり下手で、うまくなかつたかもしれませんが、そういう趣旨であります。  そういう交付金制度もありますが、東北方面のような貧弱な県等には、いいかに税法改正されてもふえないし、やはり富裕県には多く行くようになつておることを、これは御承知でもありましようが申し上げたいのであります。  そこで私は結論として申し上げますが、昨日、一昨日は警察法の問題について御審議をなされ、公聴会をなさつたようでありますが、警察法とこの税法は不可分の関係を持つております。警察が県へ移るから、その財源のために税が市から移つておるわけであります。税を先にやつて警察法が審議未了になつたら大混乱になつてしまうということを御考慮になつていただきたいと思うのです。これはよけいなことかもしれませんが、相関連性がある。むしろ行政に関する問題を先にきめることがすべて順序だ。これを税を先にきめてあとで行政をきめるなんということは、とにかく国権の最高機関であります国会がやることはどうかと思います。私はやはり行政の問題を先にして、税の問題はそれに並行でいいと思います。税だけを四月一日からやらなければならぬということでこれを通すことは冒険じやないか。全国の一万の市町村は、現行法で予算を組んでおります。この改正案が通るか通らないか——私は通ると思つておりませんが、こういうような税法でありますならば、私は今までの方がいいと思うのです。財源が足りないからいろいろなことを陳情したり頼んだりしましたが、税が減るような税法改正で、税の偏在是正されない、しかも三大要素一つである徴税簡素化も実現されない、複雑化する、しかも税の体系を乱す、納税者というものの見当がつかない、こんなものはやらない方がいい。いかに占領下政策が悪いといいましても、独立してそれより悪い法律をつくる必要はないと思います。  そこで地方におきましては、今行政の問題については御承知通り町村合併を推進しております。そうして、この町村合併ができますれば、機構の問題その他について大変革がある。そのときに都道府県市町村との行政の配分がはつきりついたところで、根本的にそれに伴つて、それに正比例した税法を立てるべきである。部分的に毎国会ごとにこの税法改正が出ないことはないのでありますが、特に今回は大きく出来ましたが、これはこれでとどまつておりません。必ずこの法案は行政の配分等によつて、また来年違つて来るでしよう。いずれにしましても、たびたび税がかわるということは地方にとつては非常なことであります。これは賢明なる皆さんは御承知のことでありますので重ねて申し上げませんが、そういう点もぜひ御了承を願いたいと思います。  その他たくさん申し上げたいことがありますが、受持の時間もたいへん超過いたしました。地方財源の直接の任に当る者として、ほんとうに真情を申し上げたわけでありますので、たいへん失礼な言葉のあつた点については深くおわび申し上げます。
  8. 中井一夫

    中井委員長 ちよつとこの機会に金刺さんに申し上げますが、あなたの全国市町会議代表としての御陳述は、当委員会におきましても重く期待をいたしておつたところでございます。ただ時間等のことを申し上げたので、あるいはそのことに心をとられて十分御意見が尽せぬことがあつたであろうと思います。あなたの先に御陳述なつ友末全国知事会代表は、その陳述の要旨を各委員にお配りになつておりますが、これは非常に賢明な方法であつたと思います。願わくはあなたの御意見もただちによくまとめられて、そうして三十部ばかり各委員にお送りになりましたならば非常にけつこうかと思いますから、お忙しいと思いますが、そういうことにできればけつこうだと思いますので、このことを御注意申し上げておきます。  皆さんにお諮りをいたしますが、金刺君は本日市会を招集されておつて、ぜひ帰らねばならぬがというお話でありますので、特に順序をかえまして、金刺君のみに質問を集中していただく、こういうことにとりはかろうてよろしうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 中井一夫

    中井委員長 それではさように決定いたしました。右ようの次第でありますから、何とぞ質疑は簡明にお願いをしたいと思います。ことにあまり御意見にわたらぬように、質疑の程度でおとどめを願いたいと思います。
  10. 北山愛郎

    ○北山委員 大体公述によつて意見のあるところが想像されるわけでございますが、ひとつ大きな問題としまして、御承知のように昭和二十九年度における地方財政計画が立つておりまして、その基礎になるのがこの地方税法であります。ところでこの地方財政計画内容を見ますと、二十八年度に比べて二十九年度においては、地方税のいわゆる自然増収を四百十一億ここに見ておるわけであります。これは一〇%以上約一五%にも達するような大き地方税の自然増であります。こういうものが、現在の地方経済事情あるいは住民の担税力、そういうものから見ましてはたして期待されるかどうか、実際にやれるかどうか、そのお見込みを承りたいのであります。
  11. 金刺不二太朗

    金刺公述人 簡単にお答え申し上げます。自然増は見込むことは不可能であります。これは現在の経済情勢を観察すればはつきりすることでありまして、二十八年度は自然増を若干見込みましたが、二十九年度においてはむしろ二十八年度と同じようにとれるかどうかを私は心配しておる次第であります。
  12. 北山愛郎

    ○北山委員 もう一点簡単にお伺いしますが、先ほど道府県民税創設並びに道府県民税市町村が徴収するということについて、強い反対を表示されたわけであります。私もその点は同意見なのでありますが、現在、市町村の税の徴収事務そのものが非常に重い負担になつておる。固定資産税の評価であるとか、市町村民税その他におきましても非常に徴税事務がふえて、職員もふえておる、そこに持つて来てさらに県税の徴収まで委託されてやるということが一体できるかどうか、その見通し等、御意見をお聞きしたいと思うのです。  同時に、こういう市町村府県税の徴収をやらせるということは、お話のように地方税法第二十一条によつてつてはいかぬという原則があるわけなんです。この原則の例外を今度つくつたわけでありますが、従つて事前に市町村の団体に対して、これをこういうふうにしたいのだがどうだというようなことを政府の方から交渉というか、意見を聞くような措置をとられたかどうか、その点もあわせて承りたいのであります。
  13. 金刺不二太朗

    金刺公述人 先ほどは言葉も足りなかつたと思いますが、理想からいえばいわゆる地方自治の独立性ですね、酒税酒税一本にして、市が県の税をとるなんということは不合理きわまるものであります。地方自治・独立とは相反する傾向であります。従つて、私の考えといたしましてはただいま御質問の点は、これはとうてい不可能なことであります。先ほど申し上げましたように、机上でものを考えれば、印刷する活字の数字は簡単でありますが、出すまでがたいへんなんです。しかも一般納税者から摩擦が起きます。これは私は容易でないと思います。政府との関係につきましては、地方制度調査会を通しまして、またわれわれの会が、知事会市長会も町村会もありますので、これらについてはいろいろ折衝して、われわれはわれわれの意思をよく述べております。ただ問題は、地方制度調査会答申自治庁としては尊重して出すというこの一点に集中しているわけであります。都合の悪いことはみなそつちで逃げてしまつているようでありまして、かえたことは何も言わない、そういうようなことであります。
  14. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 金刺さんに二点だけお尋ねいたします。先ほどの府県民税の問題でありますが、市町村民税のピンをはねることは、私は反対であります。しかし、府県の側からいうならば必要であろうということもわかるのであります。あなたの御意見通りでありますが、しかし今出ております法案を見ますと、府県民税市町村がかわりにとりまして、その手数料が二・五%プラス・アルフアということになつているらしい。ところが一方入場税の方は、遊興飲食税とか、パチンコの入場税とか、非常にとりにくいものはみんな元通りということにして、劇場本位の簡単にとれる入場税は、国は一割手数料をとつておる。そこであなたの御体験からいつて県民税をもし市町村がとるとして、二・五%プラス・アルフア、こんなことでいいのかどうか、一体どの程度手数料をもらつたらいいか、ちよつとお聞かせ願いたい。
  15. 金刺不二太朗

    金刺公述人 府県民税の徴収の手数料と入場税との比較でありましたが、御承知通り入場税ほど徴税費がかからないものはない。入場税は税務署が判を押して、全然吏員がいらない。しかし税務署では一割では足りないということを言つております。間違いなくするには、二割ということを、地方制度調査会でも大蔵省の主税局長は言つておりました。そこで県民税に対しまして、二・五%というと二分五厘、非常に少いのです。とうてい印刷費、紙代にも足りない。今御承知通り紙代だけでもたいへんですが、府県民税と申しますと、非常に徴税が雰細なんです。市民一般にかかりますから、非常に小さい額を徴収するのです。でありますから、印刷費だけでも非常にたいへんであり、その徴税費が、現在入場税でさえも国は二割なければいけないと言つている。これは全然税務職員が必要ないのです。判を押すときに枚数でわかつてしまうのです。入場税はだれもほしがる。われわれがタバコの消費税を要望し、喜んでいるのもこれであります。これは専売局からもらえばいいのでありますから、金がかからない。けれども県民税について市町村がとります手数料というものは、私は計算が出ない。半分ぐらいかかつてしまうと思います。たいへんな手数です。でありますので、二・五%なんという数字は、ほとんど印刷代にも足りないものであると私は考えております。
  16. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点はもう少し事務的な御回答が実はいただきたかつたと思うのですが、市長さんのことでありますから、やむを得ません。  次に、ちよつと違うのですが、関連があつてちようどいい機会ですからお尋ねするのですが、競輪の問題であります。競輪とか、競馬とか、モーターボート、今全国の府県市町村がやつておられます。川崎市は競輪の収入が非常に多いということで、全国的にも有名でありますが、競輪、競馬、モーターボートなんというものは、ある意味では一種の賭博行為のようなものであつて、決して好ましいものではないという意見も非常に多いわけでありますが、この問題に対してあなたはどういう言うに考えておられるか、御経験者に伺つておきたいと思います。
  17. 金刺不二太朗

    金刺公述人 いやしくも公共団体が競輪、競馬、あるいはモーターボートのような賭博行為からの収入によつて財源をまかなうということは、まことに不健全であり、これは道義的にも教育上からも非常に悪い影響がありまして、これは私が申し上げるまでもないと思いますけれども、これもわれわれが主張したのではないのです。このもとは、国会の議員立法でこしらえてやるというので、われわれ財源がないから、やむを得ずやつたというわけでありまして、その精神においては、正当なる財源によつて地方公共団体をまかないたい、私はこういうものは一日も早くなくなつた方がいいと思つております。そういうことを簡単に申し上げておきます。
  18. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それでは、一日も早くなくしたいという希望なんですね。
  19. 金刺不二太朗

    金刺公述人 希望であります。但しそれにかわる正当な財源がなければ、今日全国で百六十の都道府県市町村でやつております戦災復興と、いわゆる生活の三大要素一つをなす住宅建築という非常に大きな役目を果しておりますから、この財源を別に付与するというようなことをお考えの上で、ぜひ措置してもらいたいと私は考えております。
  20. 門司亮

    ○門司委員 さつきの北山君の質問に関連してちよつと金刺君に聞いておきたいと思います。それは地方財政計画との関連性でありますが、今四百億ばかりの自然増収が地方財政計画において見積られている。これについては今の御答弁では、どうも自然増収の見込みが薄いように聞いている。全然ないかもしれない、こういうお話を聞いておる。そういたしますと、地方財政計画に非常に大きな穴があいて来ると思う。従つて地方財政計画から来るいわゆる今日の非常に少くなつておりますいろいろな問題の復活が一応要求されなければならない。第一番目に問題になるのは、いわゆる単独事業の抑制が国で行われておる。それがいわゆる市町村分が昭和二十八年度の三百七十六億の五・三%になつてつて、そうしてこれも国の公共事業に準ずるということになれば、勢いこれの抑制額は、約二十億くらいのものが抑制される形になつて出て来はしないか。その次には臨時事業の節減が行われるようになつている。これは最初一〇%程度、三十八億程度が予定されておつたが、最後五%になつて、十九億くらいものが大体抑制されはしないか。その次には市町村民税の第二方式の採用が行われるというようなことが一応考えられる。これについての問題として大体百三十八億くらいのものが必要になつて来はしないか。これはなおこの内訳をはつきり言うなら、第一方式でとる百八十九億くらいのものが、さらに第二方式でとれば三百二十七億くらいはとれることになるのですが、しかしこれをとらない場合には、やはり百三十八億くらいのものがどうしても必要になつて来る。その次には、雑収入の競馬あるいは競輪の問題が出て来るのでありますが、現行法を今改正するとかしないとかいつておりますが、もし改正されるということになりますと、二十億くらいのものがあるいは不足しはしないかというように考えられる。こうなつて参りますと、これの総計は大体二百億余になると思う。自然増収がないということになつて参しりますと政府地方財政計画から来る抑制される分だけは、地方が勢い背負わなければならぬ形が出て来はせぬかと思う。事業の抑制とかあるいは繰延べということを国は要求いたしておりますが、地方ではこれをなかなか繰延べたりあるいいは抑制するわけには行かない、やりかけた仕事はやらなければならぬので、どうしてもそこに二百億円内外の歳入欠陥ができはしないかというふうに私は考えるのであるが、この点についてもし市長さんの御意見でもありましたら、伺つておきたい。
  21. 金刺不二太朗

    金刺公述人 自然増のないことについては先ほど申し上げた通りであります。経済界の変動が非常に多いのであります。もしこの税法通りますと、府県民税という税が賦課されることによつて納税者に及ぼす影響は非常に多いのです。今いわゆる納税者の観念というものは非常にかわりつつあるのです。これは私はよけいなことは申し上げません。そういう傾向のときに、特に複雑な府県民税をここに賦課されるというようなことになると、先ほど申し上げましたように、いかにも税が増徴される、府県民税が別にプラスされたというような観念を納税者は持つ。それを持たないとしても、来年は増額になるだろう、こう考えるだろうと思います。といいますのは、今度はしの税法通りますれば、都道府県市町村はその条例によつて、徴収するこの金額を変更することができます。また少くすることもできますけれども、そういうことは不可能なことでありますから、増額することもできるというようなことを納税者は心配するでありましよう。そういう諸点から、二十八年度が比較的経済界が好調とは言いませんが、二十八年度よりも悪くなる。現在不渡り手形がいかに出ているかということは、皆さん承知通りです。中小企業はほとんど倒れようというのがたくさんあります。朝鮮の特需によつて息をついておつた人が非常に困つている。これらの人は納税どころではなくて、自分の雇つている人の給料さえも払えない。自分の処理ができずして、国民の生活から見ますと税金は第二になる。でありますから、皆さん承知のことをよけいなことを申し上げたようでありますが、そういう点から望めないということであります。  もう一つ競輪の国庫納付金の問題でありますが、地方制度調査会におきまして、またこの法律におきましても、納付金を廃止するということを非常によく考えてくれまして、私はたいへん喜んでおった。ところが、同じ国会における通産委員会を中心とする方面では、これを別の形においてまたとろうとしております。現に計画中であります。私もこの間意見を求められて来ましたが、これは自転車産業の振興のための納付金である、従ってこれは当然納付すべきであるというので、別の立法を今通産省が計画しておりますので、私はそれを心配しておるわけでありますが、実は先般呼ばれましたので、私も意見を述べたのですが、ぜひ地方行政委員会意見も聞いてもらいたいということを申し述べておきました。従ってこれらは全国では二十億でありますが、百六十の都道府県市町村がやっておりますから、この税法が通らないで、現在のままでそれが納付されるならば財源そのものはプラスになりますが、マイナス面もたくさんありますので、自然増というような形にはならない、さように考えておりますo
  22. 門司亮

    ○門司委員 今のことは私の質問とちょっと違ったようですが、それはそれとしておきまして、この間から心配している問題がありますから、これを聞いておきたいと思います。都道府県民税が百六十九億とられることになる。そういたしますと、この税金は現在の市町村民税で・そのままオプション・ワンでとっているところがたくさんあります。だからこのままの姿で移譲されるということになると、かなり多くの市町村財源が減るような形が出て来はしないか。市町村財源を県にとられる分だけを穴埋めしようとすれば、オプション・ツーにしなければならぬような状態が必ず出て来る。しかし今日の税法では、この前の税法改正で、オプション・ワンまではとっていいということになっておりますから、必ずオプション・ワン、オプション・ツーだという考え方ではないと思います。いずれにしても・前の税の考え方から言えば、オプション・ワンがオプション・ツーに移らざるを得ないことに私はなると思う。この点についてもしそういうことになるとすれば、納税をする市町村民としては・明らかに百三十億ないし百四十億の増徴をされざるを得ない結果が出て来る。従って政府の方では、市町村民税の中から府県民税を徴収するのであるから、税総額においてはかわりがないと言うが、納税者の方から言えば、やはり市町村が困って来れば、結局とる方の条例を改正して、百三十億くらいのものが勢い増徴されることになりはしないかと思うのだが、その辺の心配はありませんですか。
  23. 金刺不二太朗

    金刺公述人 お説の通り非常に憂慮しております。
  24. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 川崎の市長さんにお尋ねいたします。その前提として一言だけ申し上げたいのですが、地方行政員委会におきまして、数箇月前に全国を二班にわけまして、少数の県ではございましたけれども地方行政の実態調査をいたしました折の結論で、第一班、第二班の一致した見解として、府県財源が少いために府県市町村に非常に負担金をかける、そして地方財政は混乱する。そこで府県財源をもう少し十分にしなければいかぬじゃないか、シヤウプ勧告によって、市町村府県に比して比較的恵まれておる、そういう一つの結論が出たと私たち考えております。本日お二方の御意見を伺いますと、おのおの府県側、市町村側を土台にして議論しておられるようでありますが、そういう大局論から、この際はシャウプ勧告によって最もひどい目にあっている府県を援助しよう、こういうお気持が出てほしいと思うのでございます。そういう面から見て、先ほど府県民税のお話がございましたけれども、これは理論的にも非常一に欠陥はあるだろうと思います。ことに府県民税の標準税率以上の課税を認めておるというが、これは濱口大蔵大臣ですら家屋税の税率を上げないと言ったのが、あんなふうになったくらいのことでございますので、これはどうしても上げやすいので、標準外課税というものは、私たちは原案にはどうしても承服しかねるのですけれども、それを除けば、同じ自治団体同士でございますから、何とか御協力になるというお気持になっていただけないか、こういうことなんです。それからそれと同時に、府県民という一つの概念が新設されまして、そうして府県自治体の性格が何のかんのといわれながらも、自治体の住民の生活の上に府県というものがあるということも、大きな厳粛な現実なんです。そういう面から、市民は同時に府県民であるという観念を助長して行くという御努力を、市長さん側に持っていただけないかということの意味において、負担分任の精神を強化するために、府県民税の構想以上によりよい案がおありでしたら、その点をお聞きかせいただきたい。
  25. 金刺不二太朗

    金刺公述人 御承知通り、今の日本の行政は占領下において非常に膨脹しておる。これは地方ばかりではないことは統計が示しておる。大体平均して三倍も職員がふえております。これはいずれもただ遊んでおるわけではありますんで、いろいろの立法を国家でやるたびにふえて参ります。たとえば昔は生活保護なんかも民生委員がやっておったのだが、今は国会で立法化されて参りまして非常な人員がいるようになった。福祉事務所というようなものをつくってやれという法律がありますから職員がふえる。地方でいくら人員を少くしようとしても、毎日法律が出、今回でも二百数十件の法律が出てそれらがみな地方に影響がある。その根本皆さんぜひ考えていただきたいと思います。従って財政需要費というものは国ばかりでなく、地方でもどんどん膨脹しておるのです。大体今税金は給料です。今度市民の納めた税金が、何に使われておるかという白書を出しますが、まことに残念なことに、これが市の吏員の給料なんです。まことに嘆かわしい。私は決して吏員が全部市民のサービス機関でないとは申しません。たとえば人口十五万以上の都市には保健所を設けておりますが、これは予防医学のことでありまして、いわゆる病気にかからぬようなりっぱな仕事をしておりますからよいのですけれども、これには技術者、医者を頼まなければならない。これはみな立法措置によってやらなければならないことになっておる。これを忠実に実行するためにはどんどん人をふやさねばならぬ。その結果が今日の財政規模を非常に大きくしたわけであります。これを直すのにはもとを直さなければならぬ。ただ頭から行政整理で一割天引きをするというようなことをやってもだめです。それには法律を直して、ほんとうに現在の日本の国情に適応したような地方自治の行政の体系を整えなければだめであります。これはあなたが大局を言えとおっしゃったので、たいへんよけいなことで迷惑だったかもしれませんが、ちょっと参考に申し上げたわけであります。それで都道府県市町村との関係は、ややもすれば争いをしておるような状態であるが、これは何とかして協力する必要があるのではないか。シヤウプ勧告は、市町村を主にして都道府県を従にしておるような形があるということも、その通りであります。しかしこの内容をよく検討してもらいたい。地方自治基礎をなすものは市町村であるということはシヤウプ勧告にあるのであります。これは占領下のことでありますから、あまりそういうことを言うとしかられるかもしれませんが、しかしよいことはよいことであります。日本が民主主義で立とうとする場合に、地方自治というものが確立しなければ、民主主義というものはないのでありますから、それで市町村地方自治に関する仕事は何でもやれということで、シヤウプ勧告というものが出たのであります。ところが行政機構というものが勧告通りに行つていない。そこで府県財源が非常に足りないという面が起きて来ている。府県では戦前と今日とを比較して四倍の人員を擁しております。警察も消防もみな市に移つておるのであります。保健所も十五万以上のところには移つており、みな市町村がやつております。でありますにもかかわらず県の仕事が非常にふえて来たのです。国からの委任の事務が多いのです。これは県だつて別にいたずらにふやしたのではなくて、やむを得ざる仕事がありますからふえたのです。これは都道府県知事も非常に頭を悩ましていることだと思います。従つてこれらは財源ほんとうにまかなうだけありますならば、われわれは何も言わない。ところが府県側では——府県側が主張したのではないでありましようが、やはり財源が足りない分は、府県民税というような名前をつけて、市町村が多いからとろうとかかる。今やはり完全な自治体は町村であるということは重ねて言う必要はないと思います。府県の現在やつております仕事そのものが一つの法規行政であります。これは万人の認めるところであります。従つて私はなわ張り争いをするというようなそんなけちな考えではない。やむにやまれず実情を申し上げるわけでありまして、八年間も市長をしておりますと、いくらばかでも大体わかります。そういう関係上やむにやまれず私はそういうことを主張するわけでありまして、決して府県市町村というものが争うということはしておりません。ここに友末さんがおられますが、ここでは笑つておるけれども友末さんは友末さんとしての立場都道府県が足りないから主張するのですが、私はこれももつともだと思いますが、都道府県のただいま公述された主張は決して不合理であるとは私は申しておりません。私はただ市長立場で申しておるわけでありまして、あなたの御趣旨は万々承知の上でやつつておるわけであります。また府県の性格等については別の考えを持つておりますが、この席は税の問題でありますので、私はここでは省略させていただきます。
  26. 大石ヨシエ

    ○大石委員 川崎の市長さんにちよつとお尋ねしますが、あなたは先ほど都道府県民税をそんなにとらなくても、ほかにいくらでも税金の徴収方法があるではないかということをおつしやいましたが、それはどういうことでございますか、ちよつとお教え願います。
  27. 金刺不二太朗

    金刺公述人 私の申し上げましたことは、ほかの財源によつてまかなうべきところの、市町村の金があり余つておるのならばいいのですけれども市町村の現在足りないところから府県税としてとることは穏当でないと私は思つておる。従つてこれはどういう税をとれということではありません。そこで交付制度というものはその点にあるわけであります。これはくどく申し上げて申訳ありませんが、現在の都道府県内容は、つまりあるところには、東京だとか大阪とか神奈川には相当の財源があるということは万人が認めております。国会でも認めておりますけれども、東北方面の担税力のない県民を持つておるところには、いくら税法をかえてもしかたがないということを先ほど申し上げました。そこでこの方法はそういう足りないところには、やはり現在では平衡交付金、この出ております法律案では交付金となつておりますが、これでまかなう以外にはないと私は思いますが、他に方法があれば他の方法で徴収することも必要であると思いますが、今日の税金に対する国民感情から見ますと、他に、税種を設けるということは私は好んでおりません。
  28. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それから大蔵省の鳩山主計官が、タバコ消費税地方へ与えることにより、富裕な数府県を除く他の大多数の県は大いに自主財政が強化されて喜んでおるということをおつしやつておられますが、これは事実でございますか。
  29. 金刺不二太朗

    金刺公述人 タバコの消費税の問題につきましては質問が明瞭に私に把握できなかつたのでありますが、われわれの長年の主張であります。都道府県側でも主張しておつたことでありますが、これは先ほど申し上げましたように、徴税が非常に簡単でありまして、入場税と同じような性格を持つておりますので、この財源はぜひほしいというので、われわれ地方団体は一致して要望しておつたわけでありまして、しかもそれが地方制度調査会答申よりも半額になつておる。喜んではおりますけれども、これは非常にありがたいことではありますが、わずかに答申を尊重していない、半額だけをここに計出しておるということを先ほど申し上げたわけでありまして、喜んでおるという点につきましては双手をあげて、この制度地方財源の拡充のためにできたいということに対しては喜んでおりますが、これによつて非常なプラスになつて余るようなことにならぬのは、全体の数字をもつて御推察願えば、よく御明瞭のことと思います。
  30. 大石ヨシエ

    ○大石委員 今回の地方税法改正入場税国税に移管される。そうすると入場税の中の第三種入場税のダンスホール、麻雀、パチンコ、ゴルフ、スケートは大蔵省の反対で、国税に移管されなかつたということを、あなたは御承知でございますか。
  31. 金刺不二太朗

    金刺公述人 新聞で承知しております。これにも第三種と出ておりますが、これは非常に不合理だと思います。これは当然かけるべきだ、都道府県では財政がやはり足りなくて困つておりますから、第三種だけを除くということは非常に不合理である。ほんとうにこの性格をのみ込んでこれを除くのであるならば、むしろ軽減して、スポーツに対する入場税というようなものに考えるべきである。これはしかしいずれにしても、とることでなくて軽減すべきである、かように考えております。従つて質問の第三種の入場税に対しまして、これのみをはずすというようなことも、これも地方制度調査会が一年かかつて論議したことを変更したわけでありまして、これは趣旨一貫していないことでわかりません。私は内容は非常に不明朗だと思います。
  32. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そこでダンス、麻雀、パチンコ、ゴルフ、スケート、こういうようなものを第三種としてとつても、間接税ですから、これはみな業者がごまかすと思うのです。これをあなたはどういう言うにお考えになるかということを伺いたい。
  33. 金刺不二太朗

    金刺公述人 御説の通りであります。特に普通の入場税であれば、入場券によつてこれをやれますから、私はめんどうでも入場券を発行することが必要であると思います。この徴税を完全にしますには、これは御質問趣旨と別のことかもしれませんが、私は御負問の通りだと思います。その御質問に対しましては、その方法は入る人に簡単に入場券を発行すれば、それで明瞭になると思います。
  34. 中井一夫

    中井委員長 それでは金刺さんに対する質疑はこれをもつて終了いたしましたから、御退出くださつてよろしゆうございます。  この機会にちよつとごあいさつを申します。御多忙中を御出席くださいましたことを委員会を代表して厚くお礼を申します。地方自治確立のために、いよいよますます情熱を傾けられんことをお願いしてごあいさつといたします。  次には全国町村会代表茨城県石毛町長關井仁君御陳述を願います。
  35. 關井仁

    ○關井公述人 衆議院地方行政委員会におきまして地方税法一部改正法律案に関しまして、意見陳述の機会をお与えくださいましたことに対しまして、全国の町村を代表し中井委員長に深く御礼を申し上げます。  今回政府におきまして提案されております地方税法改正は、シヤウプ税制実施以来の大規模の変革でございます。その及ぼす影響は、きわめて広範囲にわたると存ぜられるのでございますが、結論を端的に申し上げまするならば、全国町村会といたしましては今次の改革については幾多の重大な不満を持つているのでございます。全体的に賛意を表しかねるものであることを表明せざるを得ないのでございます。われわれの憂慮いたしまする点は、かような税制改革がそのまま実施されます場合においては、町村はかえつて財政上不安定な要素が多く、国に対しまして依存度を強めまして、自治運営を弱体ならしめるのではないかということでございます。  まず私どもが今次税法改正の全般を通じまして、不満とし疑問としておりまする点は次の五点でございます。  第一は今次改正の大眼目でありまする市町村民税を減額いたしまして、普遍的の新税である府県民税創設するという点でございます。川崎市長が非常に力説せられた点でございますがこれは理念上実務上、また町村の財政収入上の理念から、われわれはこれに対して強い、反対の意見を有しておるのでございます。  第二は、かような府県民税創設のかわり財源といたしましてタバコの消費税を設けるということでありますが、この差引勘定は町村といたしまして実質的にはちつともプラスにならぬということでございます。すなわち固有財源充実という政府の基本方針は、何らその実を伴つていないということであります。  第三は税源偏在是正、これを強調するあまりかえつて税源所在または関係町村の課税自主権を不当に侵害する。財政上の自律性を弱体化して、かえつて中央依存の傾向を助長するおそれがあると認められる点でございます。  第四は固定資産税の一部に見られまするごとく、特定事業の減免税、非課税範囲の大幅な拡大がされておりますが、これらは国民経済的原則を過度に地方税体系に導入するものでありまして、所在市町村財政を不当に圧迫するものであるということでございます。  第五は政府は税務行政の簡易合理化ということを基本方針としながら、実態は市町村民税国定資産税のごとく同一課税客体を府県市町村でそれぞれ分割して賦課したり、または府県民税の実務を全面的に市町村に委任することなど、かえつて複雑めんどうな体系になつているという矛盾でございます。  以上の五点が今次地方税改正を通ずるわれわれの基本的の見解でございます。また地方制度調査会の審議以来の一貫した主張に基いているのでございます。かような基本的態度に基きまして、特に重要な事項につきまして、全国市町村会としての意見を申し上げます。都道府県民税につきましては端的に言つて道府県民税創設には反対であり、その中止を希望しているのでございます。さきに地方制度調査会におきましてこの問題が取上げられまして以来、市町村はこぞつてこれに反対して参つているのでありますが、全国町村会の意見は、府県が国家的性格を有する事務の処理を重要な機能としていることからしても、普遍的新税を有し、市町村と並立的な自治体として強化せしめる方向に向けることには、絶対に反対であります。従つて府県民税創設すべきではないという主張であつたのであります。かりにこの意見に論議の余地があるといたしましても、府県の性格は今日なお地方制度調査会におきまして引続き検討の途上にあるのでありまして、国内諸制度の再検討が議に上つております現在、特に急いで府県の性格を側面から規定づけるがごとき府県民税創設を、今次強行する必要はどこにもないと存ずるのでございます。今日府県財源を別途考慮する要ありとするならば、その事務処理の比重からいたしまして、これは当然国庫財源の移譲によつて処置すべきものでございます。  次に実務的な面で申し上げますれば、今次の府県民税は実務の一切を市町村に依存をし、府県としては他人の土俵で相撲をとりながら、一方委任された市町村はみずからの税収確保に苦慮しつつあります際、さらに府県民税についての賦課、徴収、滞納督促など一切をやらねばならないのでありまして、しかもかりに分割納入などのありました際は、按分して収納しなければならないのでありますが、このような煩雑さは、とうてい町村において耐え得るところではないのでございます。また本税は府県が町村に対して総額を割りつけて、町村が個々の税率をきめて住民に賦課するということで、実態はむしろ負担金であります。住民としては課税方式の相違から県民税負担率も異なり、特に所得割は居住地域によつて負担をしたりしなかつたり矛盾が生ずるのであります。すなわちこの第一方式の場合あるいは第二方式の場合、かわつて来るのであります。私どもはかような実態の伴わない名目的な税を住民より徴収するよりも、かりに県の財政需要をまかなうために、町村において負担する必要がありとするならば、町村よりの負担金として予算に計上納付をした方がはるかに合理的であり、事務的に簡便であり、住民納税感情からいつてもよいと、かように信じているのでございます。  第三は現実の問題でございますが、この改正の結果町村としての税収が増さないと見られることに問題があるのであります。言うまでもなく市町村民税は町村としては、最も安定確実な税源でございますが、これを一挙に平均二割も削減するとなりますと、かわり財源タバコ消費税の百十五分の十の税収では、補填できない町村がかなりに出て参るのであります。全体の数字では府県民税創設分百六十九億と、タバコ消費税市町村分百九十四億では、差引二十五億円のプラスが出る一応の計算でございますが、実際はタバコ売上高は都市と農村にはなはだしい差があり、町村は都市ほどの収入が見込めない。これは明らかであります。本会で抽出調査いたしました結果でも、調査町村百十七のうち、両税の差引で減収となるものが三十二、増収となるものが八十五箇町村で、三割近くは減収となる。かくて見ますと、減収分は一町村平均百二十万円、増収分は三十万円弱であります。減るところは大きく、ふえるところはまことに少いということは、一面地ならし的効果はありましても、結局は弱体な町村を多数生み出すのにすぎないのであります。しかも府県民税は将来増税に向うおそれなしとは保証しがたいのでありまして、両者の分割の割合は必ず将来に府県と町村の争いを残すものと存ずるのでございます。  以上の通り本税は税としての体裁におきまして、また現実の町村収入源の点におきまして、重大な疑問のあるものであります。よろしく本会主張のごとくこれを中止して、府県財源は別個に国庫より移譲するよう再考せられたいのでございます。  次に固定資産税について申し上げますならば、第一は大規模資産について市町村の課税権を制限し、府県をして課税せしめることとなつておることに対する反対でありますが、このような変更をあえて行う理由として、所在市町村税源偏在是正があげられておるのであります。御承知通り現行法でも地方税法第三百九十一条で、一定基準によりまして関係町村への配分がなされ、偏在の調整が行われて来たのであります。しかも発電施設などはその存在の影響が所在町村のみならず、近隣の関係町村に及ぼしておる現状から見まして、地方税の応益性から見ましても合理的な制度であつたのでありますが、今日突然府県市町村でこれを分割することは、府県財源としてもさして有力でもなく、課税事務のみ煩雑でありまして、実益の伴わざるのみならず、従来配分を受けておりました関係町村としましては、不意に固有財源を失うことでありまして、ますます交付金依存の弱小町村化の道を広げるものでございます。本点はよろしく現行地方税法の範囲で処置すべきものであり、かりに偏在是正上必要があるとするならば、配分範囲を拡大するなどの方法で処理し得ると存ずるのでございます。  第二に電源開発など特定事業につきまして、大幅に固定資産税の軽減を行つておるのでありますが、あまりに急激にはなはだしい減税を行いますことは、所在町村の歳入に欠陥を生ぜしめるのみならず、財政の計画運営にも支障となるものでございます。特に電力のごとく十年も過去にさかのぼつて軽減をしたり、昭和二十四年以来建設令は一挙に六分の一に評価するなどは、はなはだしい行き過ぎでございます。総合的に国の経済施策で処置すべきことを、地方税の分野に過度にしわ寄せをして解決しようとするもので、窮極は地方財政の犠牲において処置することにほかならないのであります。これはよろしく中止ないしは圧縮をいたしまして、必要な産業保護は国の財政政策で行うべしというのが、われわれの主張でございます、  次はタバコ消費税について申し上げますならば、府県民税の項で述べました通り町村財政の実情にかんがみて、地方制度調査会答申にもありますご溶く、税率を二〇%として創設すること、及び税源偏在を抑制するために従価税を従量税とされたいという二点が町村の要望でございます。特に従量税と従価税の差は、全町村について見まするならば、年間約十一億円内外の差異があると推定されるのでございます。財政力の低い農村といたしましては、消費量を課税対象とすることの差ははなはだ大きいのでございます。  以上町村として今次税法改正について、おもな点のみについて申し上げたのでございますが、さらに関連いたしまして考慮すべきことは、かりに今般交付税制度になりますれば、不足財源填補の役割は著しく後退をいたしまして、従来の平衡交付金の財政調整的の機能を完全に喪失をしてしまうのでございまして、町村はあてがい扶持で運営をしなければならぬということになりまして、この点からも今回の地方税制改革の持つ意味は重大でございます。町村が真に基礎的な自治団体として強化され得るかいなかの岐路に立つておるものと存ぜられるのでありまして、よろしく慎重に御討議をお願いする次第でございます。
  36. 中井一夫

    中井委員長 午前中における公述人諸氏の御陳述は、これをもつて終了いたしました。これより質疑に入ります。ただ御承知通りすでに一時十分前になりました。よつて質疑につきましては委員諸君におかれましては、その意見を申し述べられることをできまするならば省略せられ、ただちに質疑の中核につきお進めくださるようお願いをいたします。北山君。
  37. 北山愛郎

    ○北山委員 まず友末さんにお伺いしますが、地方財政の赤字に関する政府側の見解として、先だつて塚田国務大臣が地方財政の赤字というものは、知事公選にあるのだというようなことを表明されて相当物議になつたようでございます。またその他の機会におきましても、地方財政の赤字は国の責任というよりは、むしろその責任というものあるいは原因というものは、地方団体の内部にあるのだというような見解があるようでありまして、これは大蔵省方面におきましても、そのような見解があるようであります。この点について地方財政の赤字がはたして地方団体のやり方の中に主たる原因があるか、あるいは知事公選というものが赤字の原因になつておるか、それについて御見解を伺いたい。
  38. 友末洋治

    友末公述人 地方団体の赤字の原因でございますが、私ども冷静にまた公平に判断をいたしますれば、その大部分の責任は政府にある、かように考えております。御承知のように今日までの地方財政計画というものが適正に運営されておらない、すなわち地方が最も経費を多く負担いたしておりますところの義務教育費、あるいはまた給与費等の経常的経費に対しましては、給与費の単価の不当切下げの問題がかつてつたわけでございます。それも一つの大きな原因である。また各種多くの国庫補助負担金制度の単価はきわめて過少でございます。それに対しまして各府県といたしましては、義務費以上の大幅なる負担、超過負担をいたしておるわけでございます。かようなことが主として原因となり——すなわち財政需要額の不当過少な見積り、これが一つの大きな原因であり、また歳入につきましては税の過大見積りの問題もややございまするし、また税以外の雑収入の見積りにつきましても、地方にとりましては過大の見積りというものがあるわけでございます。なおまた年々歳々国の減税に伴いますところの悪影響は、地方にとりましてはいわゆる節約の形におきまして財政計画が策定されておるということも御承知のところでございます。この財政計画の不当なわくというものが、今日の赤字を来した重要なる原因であります。知事公選の結果地方運営が非常に乱れておるということもいわれておるのでございますが、地方々々において運営の巧拙という問題も、多少はこれはないということは否定できないかもしれませんが、大部分の責任は、かようにはつきりいたしました政府財源措置不十分によりますところの赤字と、私どもは判断いたしておる次第でございます。
  39. 北山愛郎

    ○北山委員 その問題はいろいろあると思いますが次に移りまして、ただいまの友末さんの公述の中で、府県に対して今度の税制改革によつて多少の独立財源が認められておる、府県財政の自主性が多少改善されておるというような点で、十分な満足ではないが、まあやむを得ないだろうというようなお話がございました。しかし一方におきましては、ただいまの塚田長官の知事官選論、あるいは今回における警察法の中央集権的な制度改正、あるいは地方事務官制度の設置というようなことで、府県というものが中央の出先機関化されるという傾向があるわけでございます。ところがその傾向と、府県というものを自治体として独立財源を与えるというような今回の地方税法改正とは、相矛盾するのじやないかと思うのでありますが、その点についてはいかにお考えでありましようか。要するに府県自治体として、今後このような独立財源をどんどん持つてつてやるのが府県側としては好ましいととであるか、あるいは中央の出先化する政府方針というものに追随して行く、屈従して行くのがやむを得ない方向であるか、それらの点について御見解を伺いたい。
  40. 友末洋治

    友末公述人 府県の性格とその地域的な規模を今後いかに考えて行くかということは、日本の政治行政の一つの大きな問題であるというようには実は考えております。しかしかような大きな問題は、そう簡単に解決できるものではないという言うに思つております。そこで府県の性格、地域というものがいかになりましようとも、やはり地域的な、住民に重大なる影響を持ちまするところの行政は存続すべきでございまして、国と市町村とが直結いたしますような行政の姿は、日本におきましては効率的な姿には私はならないというふうに思つておるわけでございます。従いましてこの府県の性格のいかんということは別問題にいたしまして、その府県内に住みますところの住民が行政に参加をするこの民主的な姿に即応いたしまするところの税体系というものは、やはり考えて行くべきである、かように思つておるわけでございます。今日各種の法案につきまして、中央集権化の色彩というものもいろいろ出て参つておりますことは、地方自治を真に育成強化する上におきまして、私どもといたしましては遺憾とする点も決してないことはないのでございます。
  41. 北山愛郎

    ○北山委員 それでは、先ほど友末さんはともかく府県の税収が三百八十八億ふえるような今度の制度改正であるというふうにおつしやつたわけです。ところが一方においては御承知通り平衡交付金においては多少ふえるようでありますが、府県の分は起債においては約百億減つておる。また事業税の減税が四十二億ある。さらに加えて警察制度改正によつて府県負担が三百十五億はえるわけであります。そうすると、これをプラスしますと三百八十億ばかりの財政需要の増加、あるいはその収入の減ということになるわけであります。それ以外に人件費のベース・アップの問題であるとか、その他の財政需要が二十八年に比べて相当大きいものがあるということは明らかでございますが、ともかく今申し上げただけでも、三百八十八価税源が与えても、一方においては三百八十億、おもにこれは警察制度改正によつて負担がふえて行くんだということをお考えなつた際に、はたして三百八十数億の税源の増加というものが、今年度の府県の財政をやる場合に、一体これで自信が持てるかどうかということなんです。私どもは、おそらくこのような府県の財政収支の面から見ますと、今年は市町村はもとより、府県といえどもつて行けないのじやないかと思います。ことに今申し上げた警察費の三百十五億の増加の財源として、市町村民税の方から一部のものをとつて来て、そうして道府県民税創設している。要するに中央実権的な警察制度府県に置いて、その財源というものを市町村から取上げたんだというような解釈すらも出て来ると思うのでありますが、はたして今年度の府県の財政というものは、今度の税制改革によつてつて行く見込みがおありになるかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  42. 友末洋治

    友末公述人 二十九年度の地方財政計画、特に府県分につきましては、相当の不足を私どもは予想いたしておりまして、これについて満足いたしておるものではございません。先ほども申し上げましたように、既定財政規模是正もきわめて過小であります。また一面大幅なる節約額というものも、はたして実行できるかどうか非常な疑問を持つております。また各種の財政需要につきましても、予定よりもさらにうhえるものもあるのでございますが、その中で一番大きな問題は警察費でございます。おそらくこの既定財政規模をもつていたしましては、とうてい府県警察をまかなうに足りないものと実は思つております。この方面につきましても、相当の不足額が予想されております。ところがこれで足る、足らぬと申しましても、現在の段階といたしましては水かけ論に実はなるわけでございます。そこで税法関係で一番困りますのは、現在の既定財政規模の百五十億というものの是正がよろしいのだ、そういうこと私どもとしてはとうてい望み得ないのであります。そこでこの問題は再検討をいただきまして、そして国税一定率の決定につきましては、相当慎重に願いたいというふうに考えております。さらに不足財源をすべて税でまかなうというようなことは、税全体の体系を整える上から申しまして相当困難でございます。率につきましてはなおより多きを期待したいものもあるのでございますが、この率を一面高めますと、一面におきましては、富裕団体に対しまする超過財源が、さらに多くなつて来るという非常にむづかしい問題も出て参るのでございます。税源の調整問題と独立税源の付与の問題、これをにらみ合せて考えまする上におきましては、相当不満足ではございますが、税制改正の面から考えますと、自治庁としてはよほど苦心された案のように私は判断をいたしております。これ以上の税率の変更は、税源偏在是正とにらみ合わして、今後できるだけすみやかなる機会において修正され、さらに独立税源の大幅な付与を期待いたしたいのであります。  そこで、一面赤字解消の問題もございますが、不足財源の問題は、恒久的問題といたしましては地方交付税一定割合の決定をした二〇%でなくして、これを適正な過去の姿に返して、それにわくをはめていただく、そのためにはどうしても少くとも二三%以上でなければならないだろう。それ以上の財政計画上の不足分が出ました場合におきましては、この現実を押えまして、一定率変更を、今後において政府に強く要請したいと考えておる次第であります。
  43. 北山愛郎

    ○北山委員 最後に、友末さんの先ほどおつしやる財政計画の水かけ論は、ほんとは盛んにやらなければならぬと思うのですが、ほかの質問者もありますので、次に移ります。  今度の財政計画なりあるいは地方税法改正によつて市町村府県も一番困ることは、仕事ができないのであります。というのは御承知通り災害等の臨時事業費あるいは既定経費の節約等におきまして、三百六十五億いうような節減になつておる。だから地方団体事業ができない。道路を直してくれといつてもなかなかできない。学校も建てられないということになり、一方においては税金はよけいとらなければならない。既定の税目の方は増収をはかり、さらに新税で取立てなければならぬというような非常に困難な立場に立つと思う。これらの困難はすでに今までにも出て来ている。これからそのように一方では税金をよけいとり、サービスの方は悪くしてしまうということで、はたして地方団体自治の機能を発揮できるかどうか、これらの点に一いて御両人から承りたいと思うのであります。  それからもう一つ、今度の税制改正についてはいろいろの御意見が各団体にあるようでありますが、ひとつ道府県民税というものをやめてしまう、そうして従来の市町村民税をそのままとる。今度の不動産取得税というものは、固定資産税にくつつけたものでありますから、これを市町村府県固定資産税に対する税をわけ合うということはよくない。だから、もしかりに、不動産取得税というものをやめないで、これを続けるとしたならば、これを市町村の方にやつて市町村の税について、固定資産税とのにらみ合せによつて適宜徴収して行く、その結果起こるところのものは、タバコの消費税の調整によつて、さらにでき得るならば五%ぐらいの財源を、国の方からタバコ消費税をふやしてもらつて補うというのが、一番簡単のように思うが、それがいいか悪いか、御意見を承りたいのであります。
  44. 友末洋治

    友末公述人 今後における府県住民の福祉を増進いたします各種の臨時または単独事業が、非常に少くなるのではなかろうかということにつきましては、私も非常に心配いたしておるのでございます。現在立てられておる二十九年度の財政計画を、今後におきまして補正願いませんと、必要最小限度の事業も保証できないというふうに思つております。  次に道府県民税をやめて、そのかわりに固定資産税あるいは不動産取得税等の調整によつてこれをまかない、さらに不足分をタバコ消費税の税率の引上げでやつたらどうかという御意見でございますが、そういうふうな案も一応考えられないことはないと思いますが、今月府県で最も必要とされておりますものは、先ほど申し上げましたように、県民の大多数が納税を通じて行政に参加する、この実態を整えるということでございます。もちろんタバコ消費税も、大多数の府県民が間接的に納税することにはなるのでございますが、住民税とは違いまして、納税を通じて直接参加するという形の上におきましては、きわめて大きな懸隔がございますので、私ども市町村の御了解をいただきまして、ともにともに手を携え、ともに苦労をいたしまして、この税というものを生かして行く、そうしてお互いに地方自治を育成強化して参りたいという、この根本精神に立つておるわけでございます。従いましてさような方向から、とにかく一応相当慎重に検討されました上での本案に対して、実は御賛成申し上げる次第であります。
  45. 關井仁

    ○關井公述人 府県財政の赤字は、国家的性格を持つ行政執行面が非常に多いのであります。それらのために相当赤字が出ておる、府県自治の問題に基因するものではない、こういうふうに考えております。それでわれわれに府県民税創設というようなことがしわ寄せされるということには、絶対反対を先ほど表明したわけであります。その処置といたしまして、国庫財源の委譲によりまして、御考慮のように処置されるということであれば、われわれは文句を言う筋合いのものではないのでありまして、そういう点について、議員議公におかれまして何とか御考慮を煩わしたい、かように考えておる次第でございます。
  46. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 重ねて府県民税のことについてお尋ねしたいのであります。關井仁さんにお願いしたいのであります。簡単に申し上げますが、私ただいままで府県民税についての論議をお聞きしておりますと、全国の県には、府県の政治がうまく行つてない府県が、ごく少数ながらあるんじやないか。そうしてこの府県民税創設に反対される方は、そういう府県の御出身じやないかという気が濃厚にするのでございます。私個人のことを申し上げて恐縮でございますが、山形県におきましては、特に終戦後名知事を迎えまして、これはまことに人格、手腕とも申分のない知事を今持つておるのでございまして、電源開発といい、あるいは地下資源の開発といい、あるいは観光開発といい、着尺実績を上げておるのでございます。   〔委員長退席、佐藤(親)委員長代理着席〕  知事は公選でございますけれども、この県下の理事者、議会、市町村長一体になつて、非常ないい地方行政を今やつておるわけでございます。かかる府県はおそらく全国に大多数だろうと思う。目下わが国は実に危急な時局に立ち至つておりますので、最も大事なととは、人の和であり、あるいは各団体間の意思の疏通であります。そういう際におきまして、シヤウプ勧告以来府県に比しては恵まれた財政を持つた——府県に比してはとあえて申し上げますが、市町村において、しかも今回の税制改革に財政と言わず、税制プロパーから言いますれば、むしろ府県よりもよほど財源に恵まれております市町村において、この府県の行政に協力し、府県と並んで両方の自治体をよくしたい、——住民市町村住民であると同時に、府県住民であるのでありますから、市町村理事者の方におかれましては、負担分任趣旨を通す課税方法に、よりよき方法が見出されない限り、——見出すことができましたら、公述人の方からでも委員の方からでも、その意見を言うていただきたいのですが、見出し得ない現状においては、市町村理事者の代表とせられまして、關井先生に、市町村理事者の方をまとめて、今回だけは協力してやろうというような、人間的な、国民的なお気持になつていただけないものかどうか。これはまことに痛切な質問でございますので、その点をお伺いいたしたいと思います。
  47. 關井仁

    ○關井公述人 お答えいたします。加藤先生のただいまの御質問につきましては、ある点私どもも同感をしておる点もあるのであります。しかしわれわれ町村の現実の問題といたしましては、たびたび申し上げますが、最初の、全国の町村におきましては、各府県の知事の行政権につきまして反感を持つておるところがあるのではないかというような点もあげられましたが、さような点は絶対にないと思うのであります。地方自治確立の問題につきましては、お互いに手を携えまして、またある面は県の協力あるいは御好意をもちようだいいたしまして、一緒にやつておるのでございます。そのような点はないと思うのであります。しかしシヤウプ勧告以来町村側が比較的税源に恵まれて、府県は非常にそれらの点において窮乏したというようなことでありまするけれども、今日の町村となりましては、これまた財政面で非常に窮境の立場に追い込まれまして、町村合併を控えまして、何とも言語に絶する苦労をしておるのであります。国あるいは県におきまして、ただ簡単に合併しろということでありますが、しかし町村長におきましては、何とも言語に絶する苦闘を続け、との合併を推進しようと、一身を犠牲にいたしまして推進をしておるのであります。それらの問題にからみまして、最近町村の経費というものが非常に莫大にかかつておるのでございまして、新たなる税種の設定ということにつきましては、町村民は非常な脅威を感ずるのではないかと思うのでございます。また地方税の面、あるいは府県の性格、すなわち現在のような過渡的な性格に側からこれを決定づける、自治体としての性格を決定づけるというような税の決定は、ごめんをこうむりたい。それから町村合併をして行くならば、町村の自治的の性格はますます強化されまして、完全独立自治体の性格がだんだん強くなつて来るのでありまして、県の自治体的の性格を持つておる行政事務が、市町村に相当委譲されなければならぬというようなことを予期しておるのであります。県において残るものは何かといいますと、これは国家的性格を持つ行政事務が非常に多くなるのでございます。二重行政の煩を省き、国家の経費を緊縮するという意味におきましても、これらの設定は根本的の問題にもなりますので、よくよくお考えを願いたい、かように考えております。  それから町村では昭和二十八年度におきまして、府県に対して予算に計上されたものを拾い上げましても、全国で約五十億の負担金を県に出しておるのであります。多いところでは一億五千万円、小さい府県におきましても市町村は約一億円程度負担金を府県に納めておるのであります。ですから私ども先ほど申し上げたのでありますが、これは当然県の財源不足の補填は国庫財源の委譲によるべきではないか。もしそれができないというならば、暫定的の問題として、私ども府県を応援する、府県市町村の総合組合的性格を持つておるというような意味合いで、たとえば負担金というようなことも考えられるということを申し上げた次第でございます。
  48. 門司亮

    ○門司委員 一言聞いておきますが、さつき友末さんの意見の中にはつきり言われておりますが、まだ財政が足りない、ことに警察委譲にはもつと経費がいるというようなお話でありますが、警察委譲についてどれくらい費用がいるような見通しでありますか。もし数字がわかつたら教えていただきたい。
  49. 友末洋治

    友末公述人 府県単位の警察が創設されました場合における、府県の警察所要経費の調査を今始めかけております。これがまとまりましてから、大体どのくらいになるだろうかという数字が出るのでございますが、ただいまのところ確定的な数字を持ち合せておりません。ただ一応の推定といたしましては、三百十六億程度見込んでおられると思うのでございますが、これがおそらく四百億程度は必要になつて来るのじやないか。これは基礎はございませんで、ほんの推定でございます。
  50. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員長代理 西村力弥君、時間が過ぎておりますから、なるべく簡単にお願いいたします。
  51. 西村力弥

    ○西村(力)委員 お二方にお伺いしたいのですが、先ほどの御公述をお聞きしまして、どちらでも自治体の財政基礎をつくつて自治体としての機能と姿とを確立して行きたいということは、これは間違いないのです。そうしますと、ただいま提案になつておる警察法案に対する賛成の態度と、そこに矛盾するところが出て来ないかということなんです。府県として警察を持つていますけれども、御承知のように公安委員の機能と職権というものは非常に弱体であつて、何らそこに確固たるものはない。隊長あるいは警視正以上を中央で任命する、こういうところまで承認せられる立場というものは、自治体というものの立場はつきりみずから低くせられておるのではないか、こういうぐあいに考えられるし、また町村会の方におきましても、自治体とは市町村基礎であるという強い立場をとられている限り、府県に形だけの警察が残つて、それが府県自治体警察であるから承認しようというようなことは、税に対する立場と警察に対する立場が矛盾するのではないかというふうに私としては考えられる、その点についてお考えをお聞かせ願いたい。
  52. 友末洋治

    友末公述人 府県警察はあくまでも府県自治体警察であるべきであるというふうに実は考えております。従いまして、公安委員会等の権限等につきましても、この府県自治体警察の趣旨従つて規定される必要がある。現在の法案につきましては、その面につきまして相当反対の意向を持つておりますところの箇所が多いわけでございます。
  53. 關井仁

    ○關井公述人 町村会の意見を申し上げます。警察法改正につきましては、町村会といたしましては、これは経過から見ますと五千人以上の町村は自治体警察を持ち得たわけであります。ところがこれはほとんど返上した。これは財政的の理由あるいは町村の自治行政に対する警察面の問題等につきまして、いろいろ手がまわらぬというような能力の点、人事の交流、その他の点から、主としては財政的事由によりまして返上したのであります。この改正につきましては、われわれははななだ消極的でございます。あまり発言力がないのではないかというふうに考えておつたのでごじます。しかし現在の警察制度の欠陥ということにつきましては、相当認識をしておるのでございます。今頃の敏正につきましては、特に自治体警察としての機能を圧縮しないようにというような条件をつけまして、一応府県警察一本ということに賛成をしたということで、非常に消極的でございます。
  54. 西村力弥

    ○西村(力)委員 きのう知事会の代表として赤間さんがおいでになつて、現在の警察法には賛成だというふうに言われまして、ただいま仰せられたようなことは一切発言なかつたので、私はさように申し上げたのでございますが、今の御発言で了解いたしました。  次に、京都府議会で事業税の問題について、自家労力を控除するというような決定をせられたということが、昨日だつたと思うのですが、新聞に見えておりました。こういうような決定に対しては、知事会として筋として賛成であるかどうか。  なお事業税の非課税の範囲が、去年非課税にしたものを今度は課税対象にされているのですが、そういう非課税の範囲が非常に狭められるということに対する御意見を伺いたいと思います。
  55. 友末洋治

    友末公述人 事業税につきましては、御承知のようにそのときどきの情勢によりまして、非課税規定がかなり与えて参つておるのでございます。私ども考えとしましては、事業のございます実体に対しては、やはり応分の税金の負担を願うという、この本筋で行くことが正しいのではないか。課税と非課税のこの境界線を引きますことは、実際上非常に困難であります。従いまして従来の経過もあると思うのでございますが、できるだけ非課税規定は漸次縮小してやめまして、そして事業は大体事業税がかかるという本筋を通していただきますことを希望、期待をいたしておる次第でございます。  次に事業税の場合に自家労力の面を控除するかどうかという問題は、各府県ごとにやるべきではないのではなかろうか、やはり一つ事業税体系に重大なる関係を持ちますので、自治庁等におきまして行政措置でできる範囲でございますれば一定の方針を立てられる。もし行政措置でできない、法律を改正しなければならぬ問題でありますれば、法の改正をなしてこれを行うのが正しい行き方ではなかろうか。今初めて実は京都府の問題を伺いましたので、この程度のお答えしかできない次第でございます。
  56. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは關井さんにお尋ねしたいのですが、現在市町村民税がだんだんと第二方式にかわりつつありますが、課税の状況負担状況を見ますと、給与所得者が一般負担が重い、こういうぐあいにわれわれとしては見られるが、關井さんの方ではそのように把握せられますかどうか。そうですとそれをどのようにして、地方自治体の立場で行政的に緩和する措置をとられるか、また法的に改正するならばどういう方法を望んでおられるか、そういう点についてお尋ねしたい。
  57. 關井仁

    ○關井公述人 市町村民税につきまして給与所得者の過重負担ということは、これは現実の問題として非常に声が大きくなつておりますし、実際面におきましてもこれは過重負担になつているのであります。何らかこれにつきまして軽減措置をしたいということで、目下検討中でございます。また国会方面に対しても陳情しているわけであります。町村側といたしましては現在これを明確に下げようということにつきまして非常に苦労しているので、なかなかむづかしい問題になつているわけであります。漸次そういう方面について努力をしているわけであります。
  58. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員長代理 西村君、あと中井さんがありますから、なるべく簡単にお願いします。
  59. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほど大石さんがおつしやつたように、第三種の入場税で麻雀とか玉突きとかあるいはパチンコですか、そういうものが除外されたということがありますが、これをこのままにすておくことが自治体の立場としていいかどうか、もしそのように法律が通つた場合に、法定外の税としてかけるとお気持がありますか、お聞きしたい。
  60. 友末洋治

    友末公述人 いわゆる第三種の入場税を特に除外されているわけでございますが、これは一括して国に移譲する場合においては移譲されることが正しいのではないかと思います。もし技術上その他の関係で、これだけは除外せざるを得ない、さように決定されました場合におきましては、おそらく各府県におきましては、法定外税としてこれに課税する予定でございます。さようにいたしませんと、いわゆる入場税の相互間の均衡を失うという問題もあろうかと実は考えております。
  61. 西村力弥

    ○西村(力)委員 揮発油譲与税の問題でございますが、七十九億のうち四十八億がひもつきで、三十一億が独自に使えるということになるわけでありますが、これは一年限りの時限立法なので、この金を一体どういうぐあいにお使いになるおつもりであるか。一年間で道路整備に使うのですから、相当計画的に使わなければならぬ性質の金を、そのあとはどうなるのかわからぬという状態にあつては、知事さん方においても使われるのに相当苦慮せられるのではないかと思う。そういう場合にどんなお考えがおありですか。
  62. 友末洋治

    友末公述人 大体七十九億であつたかと思いますが、そのうち四十八億は、道路整備五箇年計画地方負担分に充てるということになる予定のようでございます。残りの三十一億は、府県一般道路の維持修繕あるいは改築等に使用できるということになるわけでございます。従来各府県といたしましては、国道以下の維持修繕はすべて責任を負つてつておりましたが、財源不足の関係から、道路の維持修繕が困難になつております。従いまして、主として各府県におきましては、この国道あるいは地方道の重要路線等の維持修繕費または局部改良等に充てるようになろうかと、かように考えております。かような問題は、道路整備五箇年計画というものが、今日国で確立されていない際におきまして、ガソリン譲与税を取上げて考えられた関係から、さような臨時立法になつたのだと思います。どうかひとつ道路整備五箇年計画というものを早く確立していただいて、それにふさわしいところの税財政の体系を整えて、これも国ばかりでなく、国と地方財源負担いたしまして、実行できる方向でお考えを願う、その上に立つて税制改正でなければ実は意味をなさないのではないかというふうにも考えております。
  63. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 時間がたちましたので、たいへん御迷惑ですが、茨城県知事友末さんに簡単に伺つてみたいと思います。  入場税の問題であります。先ほどのあなたの御陳述では、入場税国税に移管して譲与税にすることについては、府県独立財源を弱める結末となりますので、その趣旨においては了承できないと、まあ反対であるというふうなことでございました。私ども考え方で申しますと……(「賛成なんだよ」と呼ぶ者あり)御賛成なんですか。——了解できないのでありますが、どうでありますか。
  64. 友末洋治

    友末公述人 私どもは、一面におきまして自主独立税源の付与を強く要請いたしております。また一面、国の要請といたしまして、税源偏在是正というものを肯定せざるを得ない。従いまして、趣旨としてはまだ納得できないものがありますが、現実の実態としてはやむを得ないであろう、かように考えております。   〔「賛成か、反対かはつきり言え」と呼ぶ者あり〕
  65. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員長代理 私語を禁じます。
  66. 友末洋治

    友末公述人 結論といたしましては、賛成です。
  67. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 どうも少しやかましくてわからなかつたのでありますが、私どもの調査によりますと、今回の改正によりまして、国は九十億ばかりの金を動かします。入場税に関する限り、十九億二千万円は国がとつちやつて、七十億を全国の府県にわけるわけでありますが、そのうち茨城県に一番よけいに行く、これまでは一億六百万円の収入でありましたものが、今回は四億二千万円になりまして、まことにけつこうなことだと思いますが、この問題については、私は必ずしも全国の府県知事が一致をして賛成しておるのでないように実は伺つておりますので、その辺のところをもう少し詳しく、知事会の内部の模様を伺つておきたい、かように思います。
  68. 友末洋治

    友末公述人 知事会におきましては、しばしばこの問題について論議を重ねたのでございますが、その結果、一応入場税を国に移譲いたしまする趣旨につきましては、地方制度調査会の場合においては反対をする。しかし地方制度調査会において破れました場合におきましては、この移管について積極的に反対をしないという態度を決定いたしておるのでございます。
  69. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 もうちよつとその問題についてお尋ねをするわけでありますが、そういたしますると、大体原則的に言いまして、入場税地方税から国税に委譲するという奥には、はなはだどうも取越苦労であるかもしれませんけれども地方にまかしておつては正確な税収入がない、従つて国が、ひとつおれの方が出て行つて、全国の税務署を動員してやれば、必ずやきちつと入るであろう、そんなに財源がないというなら、おれたちの方でやつてやろうかというような気持で、この問題が出たように思うのであります。そこで、そういうことではない、全国府県でも必死になつて入場税とつたんだけれども、との程度しか集まらないというのか、あるいは税率を厳格にやれば多少集まるけれども、しかし現在の日本の経済情勢から見て、実際そういうふうに百パーセントはとれないのである。現実の問題として、現場にありまする府県知事といたしましては、そこまでかつきりと入場税はとれないものであるというのか、このどちらであるか、その辺のところをちよつと伺つておきたいと思います。
  70. 友末洋治

    友末公述人 入場税徴税につきましては、各県とも最大限の努力をいたしまして、相当の徴税成績をあげております 徴税困難なるがゆえに国税に委譲してもらうという気持は毛頭ございません。ただ府県間におきまする税率の不均衡という問題は多少ございます。そこで、国税に移管した場合におきましては、地方の税率につきまして、できるだけ実情に適応いたしまするように、いま少し引下げて、そうして地域的な均衡をはかつて行こうということで練つておられるようでございます。この入場税国税に移管するという問題が起つて参りましたのは、御承知通り府県間の税財源の不均衡是正するという問題からでございます。大蔵省は御承知のように、義務教育費国庫負担法特例法案国会に提出いたしたのでございますが、これが審議もされないで、やみに葬られ続けて参つておるのでございます。この補助金制度税源偏在是正ができない以上、何とか税の方面でこれを行わなければ不均衡是正はできにくいということから、問題が起つたように私は拝承いたしておるのであります。
  71. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 入場税の手数料の問題なんですが、先ほどもちよつと私、川崎の市長さんにお聞きしたのですが、一割というのはいかにも高いように思うのでありますが、それに対するあなたのお考え、それからもう一つは今税源偏在をしておるからそれを調整するためであろうというふうなことでありましたが、この点は私どもはもう少し研究をしてもらいたいと思う。このたびの、あなた方が熱望されております府県民税においてさえ、資料によりますと、鳥取県は六千五百万円、大阪府は十六億五千万円という数字であります。しかしこういう比率からいえば、大阪府は四億五千万円程度でいいのでございます。ですから偏在の問題は入場税だけでは絶対にないと私は思う。これは非常に幅の広いものであるかもしれませんけれども、それは五十歩が百歩を笑うものである。私ども考え方から行けば、これはやはり府県に残しておかれて、そういう調節は調節で、まあ地方交付税その他の増額によつてやるべきものであるというふうに、私ども考えておるのでありますが、御意見を伺いたい。
  72. 友末洋治

    友末公述人 入場税を国に移管した場合に、譲与いたしますのは九割でございます。一割を国が手数料でとるという手数料の考え方ではないのじやないかというふうに私は思つております。従いまして国がとる場合において、徴税費はもちろんかかるのでありますが、おそらくその一割分を徴税費に充てておらないだろうというふうに思います。ただ徴税をいたします場合に、国がとる以上は、やはりある程度の国の収入にもなりませんと、徴税成績が上りにくいという実際の点から九割程度、これはもちろん実は八割でもよろしいという考え方が出るかもしれぬと思います。
  73. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 最後に、それは友末さん御研究をいただきたいと思いますが、二十九年度の政府一般予算書を見ますと、雑収入ということになつております。従つてほかに使うというふうなことでまるまる手数料とういことはない。私は皆さんのために、お尋ねしておる。なるべくそういうものを少くして還元をしたらということでお尋ねをしておるのですから、御遠慮なさらずにいいと思います。どうぞ、この程度で……。
  74. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 知事代表茨城県知事さんにお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど事業税の非課税条項の廃止のことについて、熱烈なる御議論を承つたのでございますが、問題は新聞事業でありますが、これは民主主義発揚、民主主義振興のための直截簡明強力なる手段である新聞に対して税金をかけるのはどうかという議論もありますが、どうも新聞もまた独占的な事業でございますし、国民に対して事業相当の負担をすべきだということを考えるのでございますが、その点について府県理事者のお考えはどうであるか、参考のために聞かせていただきたい。
  75. 友末洋治

    友末公述人 非課税規定は原則としてできるだけ全廃願いたいという気持を持つておりまするが、実は過去のいきさつもございますし、漸進的にこれを行つて行くことが、現実の問題としては適正妥当じやないかというふうに考えております。従いまして新聞事業及び新聞送達事業等が、なお非課税になつておりますことは、まず現段階としてはやむを得ないのじやないか。ただこれと密接不可分の関係を持ちます問題は、教科書を供給いたします事業、教科書を印刷いたしますところの事業には事業税がかからない案になつておりますが、これを供給いたしますのは臨時措置法によりまして義務づけられてるわけでございます。従いまして新聞の送達事業とそれから教科書の供給事業というものはやや似通つておりますので、同一に取扱いますことがまず必要じやないか、非課税にするならすべて非課税にする、あるいは課税対象にするなら同様に課税対象にする方針を統一することが必要なのじやないかというふうな考え方を持つております。
  76. 大矢省三

    ○大矢委員 二点だけお尋ねします。先ほど来いろいろ陳述を聞いておりますと、とることばかりを主張しておる。私は実に不愉快である。そこで私は最後にお聞きしますが、実際一線におられていろいろ経験を持たれておると思いますが、今度の税法改正によつて——従来不合理な税制が相当ある。終戦後ずつとそのまま来つたもので、経済状態も非常にかわつて参りまして、こういう点はこういうふうに改めれば納める方も納めよいということで、何か税制の不合理改正と、それからもつと軽減をする案を持つておられるか。まだこれでも二百二十億足らぬというて、先ほどから非常な御不満のようですが、その点を簡単に、あるかないか、あまりとるということよりも、どうして軽減するか、不合理なものをどうして改めるかということについて御意見があれば伺いたい。  それから負担を分任するという精神で、ともにともに苦労しようじやないかということで、市町村から府県民税を取上げる、こういうことですが、府県が今国の仕事を相当やつておるから、困難な府県財源の財政というものは国が負担しなければならぬ、これは当然のことである。従つて交付金その他でできるだけ按分してできると思いますが、この府県の仕事を町村がやつて、町村がこれほど困つておるのにまだこれからとる。それが分任の精神で行くのだということになりますと、こういう結果になると思う。すなわち国に依存して府県の人がやかましく平衡交付金を要求するように、今度は逆に府県に対して市町村が、おれも分任しておるのだ、おれも出しておるのだ、従つてここは道が悪い、ここの橋をかけろ、あるいはこういうふうにしろといつて今度は県に依存する、この精神は、府県が国家に依存したり、これに非常に期待を持つておると同じように、今度は逆に府県に向つて市町村が猛烈なあれがある、そういうところの弊害考えられぬかどうか。この二つについて御意見があつたらばお聞かせ願いたい。
  77. 友末洋治

    友末公述人 税制の合理化と申しますか、だんだん税を軽減して行くという方向は、ぜひ必要だと思います。それは中央地方を通じてやるべきである。今回の改正におきましても事業税、特に個人事業税につきましては、減税が行われる予定に相なつております。そこでこれ以上の減税を行つて行く場合におきましては、まずどうしても中央、地方を通じますところの財政規模を、もつと徹底的に圧縮する。それにふさわしいところの税財政というものを、確立するという順序でなけれだ、とうていできないのじやないかというふうに実は考えておるのでございます。  なおこの負担分任市町村並びに市町村民税要望の熾烈化でございます。これは私どもとしてはむしろ望ましいことである。税金を納めないで要求もできないというふうな姿というのは、民主主義ほんとうの姿じやない。税金を納むべきものは納めて、そしてその利益を受ける正しい要求は正々堂々とやつて行く、さようにいたしまして、ほんとう自治というものをお互いに育成強化できる、自治に対する愛情もまず一部の納税からというふうな気持を持つているわけであります。
  78. 大矢省三

    ○大矢委員 今御意見がありましたが、私どもはこういうことを考えている。これはぜひお考えを願いたい。一体税金というものは、納める人は一人で、相手方は国があり、県があり、市町村があり、幾通りもとられるようになつている、これはたまつたものじやない。そこで府県のあり方について先ほど来意見を聞いておりましたが、私はこういうふうに考えている、一体府県というものは国の出先機関である、一方町村は、町村合併はできるしするから、自体は町村だけでいい、府県というものがあるから絶えずめんどうが起る、これは先ほど来話を聞いておつてもみなそうだ。そこで府県のあり方は、道州制にするか、大きなものにする。今日は交通も、通信もよくなつて、明治初年の廃藩置県の時代と違うのです。それを府県はそのままでありたいというのが知事の要請であり、それにまた力を強くしたい、警察も持ちたい、今度は税もこつちへ引上げてしまうというふうなあなたの考え方は、私とは根本的に違う。しかしこれは今後の課題であつて、今すぐこれをやろうとしたら、大きな革命にもなりましようから、できないかもわかりません。しかしこのことによつて二重、三重の負担をさせられ、しかも事務的に複雑であるし、住民としてどれだけ迷惑しているかわからぬと私ども考えます。そこでこのことを改めなければ、国民負担は軽減できぬと私は考えている。従つて自治市町村府県は国の出先機関ということにすれば、しかもそれをもつと大きくして、いわゆる道州制度にしてやれば、これは簡単です。それを考えないならば、税負担や、あるいは予算の上にも、行政の上にも幾多の衝突を来し、地方を撹乱し、それらの対立が激化して、結局迷惑するのは住民であるということになります。この点は私の意見も入りましたが、この機会に、経験のあられる知事さんにひとつ十分御研究願いたいということをお願い申し上げておきます。
  79. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員長代理 他に御質疑はございませんか。——なければ、公述人に対する質疑はこれをもつて終了いたしたものと認めます。  この際、全国知事代表茨城県知事友末洋治君並びに全国町村会代表茨城石下町長關井仁君に対し厚く御礼申し上げます。本日は長時間にわたつて貴重なる御意見をお述べくださいまして実にありがとうございました。また午後の公述人の方々に申し上げます。一時からの予定でありましたが、午前中の会議が継続いたしましたので、ついては、午後は本会議もあることではありますし、暫時休憩いたしまして、午後二時半から公聴会を開くことにいたします。  暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時五十七分開議
  80. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続き地方税法の一部を改正する法律案についての公聴会を開きます。  この際公述人各位に申し上げますが、本日は午前の会議がおそくまで続けられましたために、非常にお待たせをいたしましたことについては、あしからず御了恕をお願い申し上げますとともに、御多忙中にもかかわらず御出席くださいまして貴重なる御意見をお述べくださることに対し、委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  議事の進行上まず順次公述人の方々より御意見を承り、そのあとで各委員の方々の質疑をお願いいたすことといたします。なお公述時間は各人大体十五分ないし二十分を予定いたしておりますので、その要旨は簡明にお述べくださるとともに、質疑応答も簡単明瞭にお願いしたいと存じます。  それではまず一橋大学教授井藤半彌君の御陳述をお願いいたします。
  81. 井藤半彌

    井藤公述人 一橋大学教授井藤半彌であります。御命令によつて地方税法の一部改正法律案に関する卑見を述べさせていただきます。  念のため申し上げておきますが、私がきよう申し上げままことは井藤個人の意見でございまして、何かの会の関係者とか何とかいうようなそういう代表的な意味はございませんから、御了承願います。  材料を次の二つにわけたい思います。まず一般的な事項について、これが第一、その次は各おのおの税目について、これが第二であります。  要点だけを申し上げます。まず一般的な事項でありますが、今度の地方税法改正に限らず、ここ一両年間の日本の税制改革の動向を見ますと、次の二つの著しい特徴があるのであります。資本蓄積を尊重するということが一つ、それから第二番目の特徴はシヤウプ税制の崩壊であります。崩壊という言葉は少し強過ぎるかもしれませんが、シヤウプ税制を捨てまして、昔の税制に返ろうとする動向がある、この二つであります。このうち資本蓄積を重んずる問題、これは各税目について申すことにいたしまして、シヤウプ税制の崩壊のことについて申します。私はここで皆さんに対しまして、シヤウプ税制がどういうふうに崩壊したかというようなことは、これは学校で学生に言えばいいことでありまして、こういうことを皆さんに申し上げますことは非常に失礼だと思いますので、具体的には申しません。ただここで私が強く言いたいことは、私はシヤウプ税制が全部いいと思つておりませんし、また悪いとも思っておりません。結論を申し上げますと、前から一部賛成、一部反対というずるい立場をとつてつたものでございますが、確かに制度としては、シヤウプ税制は、今度の地方税法改正が通過いたしますと、崩壊したものと考えていいのではないかと思います。しかし次の二つの点におきまして、これはかなり重大なる点だと私は思うのでありますが、シヤウプ税制の精神が、わが日本の租税制度に、国税及び地方税双方でありますが、残つておるように思うのであります。二つとはどういうことかと申しますと、その一つは、直接税中心主義というものが依然として残るということ、二番目は、地方財源の強化ということ、これはシヤウプが非常に強調したことがありますが、この二つのシヤウプ税制の精神は残つておると思うのであります。これを数字できわめて簡単に申し上げます。  まず直接税中心主義でございますが、昭和二十八年度及び二十九年度の直接税、間接税——これは井藤が計算いたしました。従つて大分怪しいのでございますから、さよう御了承願いたいのでありますが、資料によると、昭和二十八年度は地方税は合計三千百二億円であります。そのうち大体八〇%が直接税でありまして、間接税は二〇%であります。それから昭和二十九年度は三千四百七十四億円に上つております。これはもちろん今度の税制改革が通過しての話でありますが、それを直接税と間接税とにわけると、直接税が七六%で、間接税が二四%であります。そこで地方税だけについて見ますと、直接税が去年は八〇%であつたのが、今度の地方税法改正法律案国会を通過すると、七六%に減ります。間接税は二十八年度は二〇%、それが二十九年度は二四%、四%移るだけでございまして、直接税中心主義というものは、地方税においてはあまりかわりません。ところがわが日本においては、外国でも同様だと思うのでありますが、地方税というものは、地方税といふ税金の性質上、直接税が非常に多いのでありますが、ともかく四%だけ直接税が減つて、間接税が四%ふえるということは、地方税だけについて言えば言えるのであります。ところが国税地方税とを総合して計算いたしますと、ほとんどかわりません。国税地方税を総合して計算いたしますと——これも井藤の計算で、大蔵省の計算とはちよつと違いますが、昭和二十八年度は、直接税が六〇%で、間接税が四〇%であります。昭和二十九年度は直接税が五九%で、間接税が四一%、すなわち、昭和二十八年及び二十九年度の国税及び地方税を総合してみますと、わずかに一%だけ間接税がふえたことになつておりまして、直接税中心主義はほとんどかわつておられぬということを第一に指摘したいと思うのであります。もちろん、この直接税中心主義はシヤウプが強調したものでございますが、シヤウプ以前から、わが日本においては、今度の戦争中から行われておつたものでありまして、あえてシヤウプが初めて言つたのではない。しかし、シヤウプという人が直接税中心主義を唱えたが、今度の税制改革をやりましても、国税地方税を通算いたしてみますと、なお直接税中心主義の基本方針はかわつておらぬということであります。これが第一であります。  それかう第二は、地方財源の強化の問題であります。これはお手元の資料にもあることでありますから、きわめて簡単に申しますが、昭和二十八年度は地方税が三千百二億円、これは地方団体の総収入の三三%、ところが昭和二十九年度はどうかというと、譲与税を加算いたしますと、総収入の三九%になるのであります。昔は国税地方税を比べますと、地方税は非常に少かったのでございますが、昭和二十九年度は前年に比べまして金額から申しますと、六百二十四億円与えまして地方団体の総収入の三九%に地方税収入は与えるのであります。これは地方財源強化という、いわば地方自治の精神が相当に残つている。これは数字で申し上げたのでありますが、これが一般的な事項であります。  次にこれから個々の税目について申し上げます。これは問題が多いのでございますが、時間の関係で問題点と思いますものだけを簡単に申し上げます。まず府県税市町村税とわけますが、最初に都道府県民税であります。結論を先に申しますと、私は都道府県民税を新設することは反対であります。なぜ反対かと申しますと、国民の税負担を軽減しようとすることが輿論になつているときに、とかく新税を設けますと、現在はいいのでございますが、将来増税の原因をつくるということであります。今度は府県民税を設けるかわりに、市町村民税は減らすということになつておりますが、これまた数年たちますと、健忘症にかかりまして、またこれが上るというような危険がありはしないか。これが第一点であります。  それから第二点は、こまかな問題でちよつと恐縮でありますが、なぜ制度として変かと申しますと、かりに府県民税を設けるといたしまして、その場合のかけ方でありますが、皆さん御案内の通り、かけ方は府県民税の所得割をかける場合に、所得税を標準として府県の内部の市町村に金額を割当てる、割当を受けた市町村ではどうするかというと、今度は市町村民税の所得割を標準としてその市町村住民に割当てるということになつておるのであります。これは確かに市町村を単位として見ました場合には、市町村間の負担均衡ということは、これによつて望まれるのでございますが、しかし御案内の通り市町村民税のかけ方がこの前のオプション・ナンバー・ワン、ツー、スリと、もう一つつた形のものがあつて、合計で五つございますが、これが各市町村によつて違うのであります。その結果はどうなるかというと、同じ府県住民であつて、同じ収入所得の人でありながら、ある村と他の村との間を比べますと、府県民税が違うということが出来て来るのであります。これは制度としてはすこぶる変なものではないか、少くとも府県民税であれば同じ府県内では同額でなければならぬのではないかと思います。もちろん政府の原案にも特長はございます。それは徴税の便宜ということ、それから市町村を単位として見た場合には、その間には均衡がとれるのであります。しかし住民住民との間の関係から言うと、同じ府県住民でありながら、同じ収入所得のものでありながら、税額が違うということは、どうかと思うのであります。しかしこれは現状ではやむを得ないのかもわかりません。これを直すにはどうすればいいか、結局は市町村民税の課税標準の統一以外には道はないのであります。これは大きな問題でありますが、私は触れませんけれども、ここに一つの欠点がある。これが第二点であります。  それから第三点でありますが、府県民税を設けられた一つの大きな動機はどうかと申しますと、御案内の通り現在における日本の府県民税の中の三つの大きなもの。すなわち事業税遊興飲食税入場税は、大体都会で上るものであります。従つて農村地帯の人は府県から利益を受けながら府県税をあまり分担しないのはよくない。そういう建前でいわば府県民が府県経費は全部自分たちが分担するということでやるということであります。この精神は大賛成でありますが、その場合に今度の税制改革を見ますと、タバコの消費税、これは都会もいなかも行くのでありますが、タバコの消費税というものが新たにかけられるのであります。これはもちろん間接税であります。しかしながら府県税には違いない。これによつてある程度まで農村の人たちも府県税を分担するということがいえるのであります。それよりも私は、今申しました農村の人々に府県税を分担してもらうという目的その他を達成するには、私は次の案の方がよりいいのではないかと思うのであります。それはどういう案かと申しますれば、ちよつと空論を申しますので、実は政治的に見てはたして実行可能かどうかわかりませんが、私は数年前から言うておることでありますので、もう一回繰返さしていただきます。私はこうしたらいいと思う。それは固定資産税の全部——償却資産だけでなくして固定資産税の全部を、本税を府県税に移して、そうして市町村には附加税をとつてもらう。そうしてその場合、附加税というものはとかく本税よりは割合が少いのでありますが、私はそうでなく、本税を府県税に移しましても、市町村が附加税をとる場合、附加税は本税よりも多くしてもいいと考えております。そうすることによつて固定資産税府県税にいたしますと、農村の人たちも土地や家屋を持つておりますので、府県経費を分担することこなる。それからもう一つは、新税を避けるという長所があります。もう一つ私のこの案がいい——というのはちよつと背負つた物の言い方でありますが、私自身主観的にいいと思います根拠は、今申しました新税を避けて農村地帯の人々にも府県税を分担してもらうということが一番、二番は、財源偏在是正であります。ことに償却資産につきましては、小さな村にうんと集まつたりなんかしております。今度の税制改革案につきましては、償却資産につきまして、こういう財源偏在是正するための措置がとられておりますが、あれは何といつても一部のことでありまして、あれは非常にややこしいのです。非常に複雑でございますので、私は固定資産税全部を府県税に移してしまえば、財源偏在ということもある程度まで解決がつく、それから三番の特長は、評価の適正及び統一をはかるということであります。固定資産税というような重要な税金が、各市町村でばらばらに評価をされる、もちろん自治庁からこれを統一するために指導——ということはよくありませんが、通牒を出したりして、なるべく評価の統一をはかるように努力しておりますが、しかし何分市町村がやりますので、市町村間の評価の不統一ということがあります。それから市町村の場合には償却資産の精密なものについて、適当な評価が得られぬということがありますが、府県の場合には割合にそういうことがなくていいと思うのであります。私はそういう根拠で府県経費府県民が分担する手段として一番いいのは、固定資産税を本税を府県税に移すことだと思うのであります。これに対する反対論は、附加税はよくないということであります。なるほど附加税というものは、中央集権的なにおいはございますけれども、私は一つや二つ附加税ができても、日本の地方分権というものはくずれないと思うのであります。それからなぜ実行できないか、これはやはりいろいろ政治的にむずかしい問題があるのではないかと思います。これが府県民税であります。  二番は事業税の問題であります。事業税の問題について、はなはだ空論を申しますが、私は附加価値税廃止反対であります。これはもう輿論に逆らうので、竜車に向う蟷螂のおのか何か知りませんが、私は附加価値税というものはいいと思つております。なぜ事業税よりも附加価値税がいいと申すかということでありますが、それは中央政府府県市町村事業税体系を並べてみました場合に——すなわち事業に対しましては国家も税金をかけます。それから市町村も税金をかけます。府県も税金をかけます。その場合に利益主義というものをある程度加味すべきじやないか。ということは、事業というものは国家や府県市町村の行政施設から利益を受けているのであります。従つて、そのいわば反対給付というような意味で、利益に対する報償という意味をも加味して、事業というものは国家や地方団体経費を分担すべきものではなかろうか。そういう立場から申しますと、収益課税ではいけないのでありまして、収益がない場合は、これは税金がかかりません。しかしながら地方団体の行政施設から利益を受けている。だからどうしても外形標準またはこれに準ずるものは、どうしてもどこかの事業税、国でも府県でも市町村でもいいのでありますが、何か外形標準を加味した租税制度が必要でないかと思うのであります。そういう目的から申しますと、附加価値税というものはいいのであります。もちろん外形標準課税であり、利益主義の課税で、負担能力主義による課税でございませんので、税率は重くなつてはならないということは、申すまでもないことであります。  そこでこの附加価値税事業税との負担の違いを比べてみますと、昭和二十八年度の実情によつて、最近ある方面で計算されたものを私は読んだのでありますが、それによりますと法人の負担はふえるのです。そうして個人の負担が減るのであります。これは事業税を一二%、附加価値税の場合は大体四%となるのでありますが、その場合に全体として附加価値税をかけると六%ぐらいふえます。これを法人と個人にわけますと、法人は四八%負担が増加し、個人の場合は五〇%負担が減少するのであります。私は負担能力のある法人がやはり税金を重く負担するということは当然だと思いますので、そういう立場から申しましても、私は附加価値税が廃止されようとする運命にあるということは、私個人としては遺憾に存じます。ところが外国の情勢を見ますと、ドイツやフランスで附加価値税を実施しようという声が一両年来非常に強いのであります。それからアメリカのミシガンのステート・タツクスにおきまして、事業税附加価値税要素を取入れるという制度が、すでに一両年前に実施されているということを申し上げておきます。  三番、不動産取得税であります。これも新税はあまり感服しないという立場で、制度としては私はあまり賛成いたしません。もちろん今度の案は、昭和二十四年度までの案に比べるとずつといい案であります。昭和二十四年度の場合は、課税標準も売買価格であつた。ところが今度は売買価格によらないで台帳価格による。税率も、昭和二十四年度廃止するときは府県及び市町村おのおの一〇%ずつ合計二〇%であつたのが、今度はわずかに三%になつているとか、あるいは免税点が非常に高いとか、税率が低いとか、いろいろ昔のものに比べるといいのでありますが、しかしこれがまた、こういう新税を設けますと、将来増税をやる橋頭堡になる危険がありますので、私はそういう意味不動産取得税は反対であります。  今度は市町村税に移ります。きわめて簡単に申し上げます。まず市町村民税の引下げでありますが、これは当然のこと、そのかわりに府県民税がふえるのであります。私は両方合計してふえないようにするということが望ましいのでありますが、そういう意味市町村民税が下るということは当然のこと。それから固定資産税であります。固定資産税につきましては前に申し上げました。ただ今度の税制改革を見ますと、固定資産税のみならず、ほかの点も同様でありますが、資本の蓄積ということが税制上非常に尊重されているということ、たとえば固定資産税について申しますと、次のような産業に関係の固定資産につきましては、固定資産の評価を特に年数を限りまして三分の一に負けてやるとか、二分の一に負けてやるとか、三分の二に負けてやるということをやろうとしているのであります。それはどういうものかというと、概して大企業であります。大企業に対して減税する。それは御案内の通り発電施設について行うとか、地方鉄道や軌道について行う。あるいは所得税法人税が免除されている。重要物産の製造または採掘を業とする者は新たに買つた機械設備について何割引にするとか、あるいは企業合理化促進法の適用を受ける機械設備については割引をするとか、あるいは外航船舶についても三分の一とか何とかに負けてやるとか、あるいは航空機について負けるとか、私はこういう言うに例外を見ますと、今年はいい。これらのものはみな意味はあると思うので、これは一つ一つとりますと、みないいかげんなものじやありません。確かに意味はありますけれども、こういうふうに例外を認めますと、これはまた来年、再来年、さらにおれもおれもと追加要求が出て来るのではないかと思うのであります。  それからもう一つ申し上げたいことは、これはこの税法には直接関係はありませんが、今度資産再評価を政府は強制することになつておりますが、それを助長する一つの手段といたしまして、固定資産税の評価についてある程度の考慮をしようということになつておるのでありますが、これまた同様であります。こういうふうに大企業の資本蓄積という名のもとに、大企業の負担を軽減するということは、これは悪いことじやありませんが、しかしながらこれを軽減いたしますと、個人が所有しています土地及び家屋との間の負担均衡ということは一体どうなるのか、この点は私は相当問題があると思うのであります。私はきようの公述の一番初めに、一般的事項といたしまして、現在日本では国税地方税を通じて資本蓄積が重んじられておる。これは確かに重んぜられておるのでありまして、たとえば国税法人税につきましては、昭和二十八年度はいろいろの特別の措置をやつたために、減税額が五百億円といわれております。ところが昭和二十七年の法人税は幾らかといいますと、合計千七百億でありまして、五百億円の減税をやる、これはもちろん意味があるのであります。それのみか、租税経済というものは本来資本主義的なものでありまして、従つて資本主義を前提として考えなければならない。そういう点から言うならば民間資本の蓄積も必要でありますが、この場合に何とか限度があるのじやなかろうか。私は率直に申しますと少し限度を越えておるのではないかと思うのであります。税制調査会答申におきましても、こういう減税をやる場合に、一体どれだけの効果があがつておるか、効果をもう少し調べてからやつたらどうかという答申がございましたが、あの答申は私は賛成でございます。  それから電気ガス税でありますが、電気ガス税につきましても、昭和二十七年の国会でございましたか、あのときに大分減税がございまして補給金を受けておるところの産業で、生産原価のある割合以上を電気やガスの代金が占めているものについては免税にするとか、従来もそういうようなものは免税にしておつたのでありますが、昭和二十七年のときの改革によりまして免税課目がふえましたが、今度はさらにふえようとしておるのであります。これもそれだけを見ますと確かに意味がないわけではありませんが、こういうふうに引算をいたしまして、結局は電気ガス税を負担するのはだれかというと、われわれ家庭の消費者が負担をすることになつて来るのでありまして、ここにも私は考慮の余地があるのではないかと思います。  最後に入場税でありますが、私はこの入場税遊興飲食税は、税金の種類としては、地方税に過した租税の種類だと思つております。それを国税としてとる方がいいのか、地方税に残しておく方がいいのか、これはいろいろ問題があろうと思いますけれども、少くとも私は同一の扱いをすべき税種ではないかと思うのであります、そこでこの問題は別として入場税でありますが、それでは入場税国税に移すのにお前は賛成か反対かといえば、結論だけ申しますと私は賛成です、賛成ですが、しかしながら本来の税金の種類から申しますと、やはりこれは地方税に適するものでありますので、私はこれは地方税として何とか育てたいという気持があるのでございます。しかし日本の義務教育国庫負担金が東京、大阪その他に分配されるとかなんかいうような事情とか、それからその他いろいろな事情を考えまして、私は結論から申しますと、国税に移すのはいいのでありますが、しかし税金の性質としては地方税に適するものでありますので、やはり何とかして将来地方税にもどすように育成する必要があるのではないか、これにつきましては、もちろん地方団体徴税能力というものも強化することが必要でありますし、その他いろいろ問題はございますけれども、私は賛成と言いましても今言つたような意味の条件つき賛成であります。  これをもつて私の公述を終ります。
  82. 中井一夫

    中井委員長 井藤教授は学校の都合で長くおとどまりになることが困難だそうであります。つきましては、井藤教授に対しこの際特に御質問がありましたら、集中してこれを進めたいと思いますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 中井一夫

    中井委員長 異議の声を聞きませんから、さように決定をいたします。
  84. 門司亮

    ○門司委員 ごく簡単に。非常に重要な御意見を拝聴いたしましたので、その点についてお伺いしておきたいと思います。  それは第二番目に述べられましたいわゆる事業税の性格から来るいろいろな先生の御議論であります。先生の御蔵論を拝聴しておりますと、外形標準でかけることが必ずしもいいのではないが、しかしそういうものが加味されるべきではないか、こういう御議論であります。もとより税金が収益課税であるべきであるということは、私は税法の建前から言えば正しいと思います。しかし先生の御意見のように承つて参りますと、一応外形標準を加味した方がいいという御議論から発展して附加価値税の問題に触れられたのでありますが、附加価値税の問題がシヤウプ勧告によつて行われて参りました当時から、この税金にはいろいろな問題がございまして、とうとうそれから五、六年そのままの姿に置かれて、今度やつと廃止になる、こういうわけであります。この税金の中で私が最も恐れておりますのは税の作用であります。税はたとえ税法上の合法性があるといたしましても、それが税金を納めまする国民にどう作用するかということがきわめて大きな問題でなければならぬと思う。従いましてこの附加価値税くらい税の作用が国民に大きく反映する可能性を持つた税金は私は今までになかつたと思う。ここにおkの税金の今日までの運命があつたと私は思うのであります。それは先ほどの御説明によりますと、一応外形から見て参りますならば、大法人がたくさんかけられて個人が安くなるということは、私はいなめない事実だろうと思います。しかしそれは単に外形から見たものであつて、実際この税金を施行して参りますと、この税金の及ぼす作用というものは、物に必然的に税金がかからざるを得ない形をとつて参ります。従つて製造をする人から、さらに販売をする人、あるいは中間があれば中間というように、この税金は税がさらに税を生むという形を示して来る。従つてそれだけ物価に影響を持つ税金にならざるを得ない。この税の作用というものは、今日の日本の物価関係国民の収益関係から申し上げますと、そう簡単に片づける性質のものではなかつたと思う。これが今日までこの税金の施行を逡巡された一つの大きな原因だと思います。従つて先生の御意見はわかりますが、この場合、せつかくお話がございましたのでお伺いをしておきたいと思いますことは、そういう関係から来るいわゆる税の作用というものについて、もし先生の御意見等がございますれば、ひとつお聞かせを願つておきたいと思います。
  85. 井藤半彌

    井藤公述人 今の御意見ごもつともだと思います。この附加価値税が、税の性質として、はたして事業税であるか、あるいは売上税、あるいは日本では取引高税と言われておりますが、あれであるかということにつきましては、わが日本で問題になりました。アメリカでは事業税という概念がありませんので、なぜそんなことを言うかといつてアメリカの人には問題にならぬ。ところが日本人、ドイツ人が問題にしまして、実は一九一九年にドイツでもこういうことをやりかけたのです。そのとき、私はやはり最近発見したのですが、日本と同じように、はたしてこれは収益税の一種としての事業税であるか、あるいは流通税の一種としての売上税であるか、また同じことでありますが、取引高税であるかが問題になりました。それで私は今あなたのおつしやいましたような意味で、もしこれが流通税といたしますと、確かに消費者に転嫁されまして物価騰貴の危険はあるのですが、これは事業税の代表としてやるのでございますので、私はおもしろくないと思います。それで税はこの場合に附加価値税の計算方法といたしまして、これは御案内の通り初めは控除法一本でございましたが、それに加算法を設ける。ところが控除法を設けますと、附加価値税附加価値税たる本質は非常によく残るのであります。というのは流通税的な性格が強いからです。ところが加算法にいたしますと、ほとんど事業税に近くなりまして、流通税的な要素が少くなつて従つて転嫁の危険が非常に少くなります。私きよう公述いたしませんでしたけれども、二、三年前から私は、附加価値税をかけるのだつたら、むしろ事業税に近いようなものにしよう、それには控除法をやめて加算法にしたらどうか、こういうことを言つてつたのでございます。  それからもう一つは、やはり税金でございますので、負担能力というものも考えなければなりません。そこで加算法をとる場合に、利潤と地代、家賃と利子と支払い賃金を合計いたします。その場合に、利潤は、これは負担能力がありますから、税率が多少高くともいいが、あと三つは同じ割合ではいけない。現在日本の制度は一緒になつております。去年でしたか一昨年でしたか、日本政府部内で、利潤の加算法をとる、そして利潤の部分とそれ以外の部分とについてわけて、税率をかえる。利潤についてはたしか三%、利潤以外の部分については二%、但し急に租税負担がふえるのはよくないというので、暫定的にたしか利潤の部分を四%、外形標準の部分を一%として、外形標準の税率を軽く、利潤の税率を重くするということを考えておつたのでありますが、これは法案になるに至りませんでした。私はそういうやり方をいたしました場合には、今あなたがおつしやいました危険は非常に少くなるのじやないかと考えておるのでございます。
  86. 門司亮

    ○門司委員 もう一言お聞きしておきたいと思います。他の税目についてはほかの方からお聞きになると思いますが、私は主として今までわれわれが疑問にしておりました附加価値税に関する問題をもう一言聞いておきたい。  今先生のお話のように、控除法から加算法にかわつてつて、流通税的の性格がだんだん失われて来て、収益税的の性格に引きもどされて来るということになつて参りますと、実際上事業税とほとんどかわりのないようなものができなければならないと思います。事業税とかわりのないものができて参るということになると、現行事業税の中で私どもが非常に不可解に考えておりますと言うよりも、むしろ不均衡だと考えておることは、たびたび議論になつたのでありまするが、先生の先ほどの概論の中にもありましたように、シヤウプの勧告案で資本蓄積を主としたものの考え方から来る税制をしいたことも大きな影響はございますが、事業税自体の中について考えて参りますと、法人に対する割合が割に軽くなつておるということが一応言えると思います。従つて事業税は個人に割合に比重が重くなつて来ておる。これは主として収益課税だけをとるから、こういう結果になるのだということが一面言えるのであります。そこで附加価値税的の性格を持つ外形標準を入れればいいのだということに、私も一応なるとは思うのでありますが、しかし日本の現在の事情から行きますと、理論的には先生の御意見通りとは思いますが、実際的にものを見て参りますと、やはり事業税については、少くとも収益税であるという性格を非常に強く打出すべきではないか。従つて収益税の最も大きな国税である所得税との関連性が生れて来るのでありますが、この場合も、やはり事業税については、そういう観点から免税点の引上げというようなことが行わるべきではないかというように考えるわけでありますが、この点についての先生の御意見を承りたい。
  87. 井藤半彌

    井藤公述人 ごもつともだと思います。それで私は、附加価値税にいたしましても、収益税的な性格を強く残すために、同じ加算法でも利潤の部分の税率を重くして、ほかのものを軽くするというのは、そういう趣旨であります。それからそれ以外の外形標準を認めるということは、その反対給付を認めるということである。それから今の問題は、私は事業税だけを単独に切り離しては問題にできないと思うのでありまして、これは御案内の通り市町村民税もかかつておりまするし、法人税または所得税もかかつております。私は事業課税の問題は、単に府県事業税だけを切り離して問題にすべきでなく、日本の事業課税全体の問題として考えるべきではないかと思います。  私はこれについて、地方税を離れますが、関連がございますので、ちよつと申し上げます。現在の国税の体系を見ますと、法人所得に対する課税形態ほど現在日本で混乱しているものはないと思う。これは話がわき道にそれるので触れません。これは、学校教員の空論だと言われるかもしれませんが、私は法人を二つにわけたらいいと思う。法人で独立性の強いもの、そして株主が絶えず異動する大法人に対しては実財産的なかけ方をする、個人とは別個のものをかける。それから全部でないかもしれませんが、法人にすれば税金が軽くなるというので、本来だつたら個人経営のものが法人経営をとつているものがあることは事実ですが、こういうものにつきましては、課税においては個人経営と同じ見方をする方がいいのではないかと考えております。そこで問題は、それはどこで線を引くかということ。これは実は非常にむづかしい問題がございます。これはほかの場合も同様で、たとえば物品税でも、歯みがきにかけていいか悪いか、お茶はどうかと言われると、どうも困る。やむを得ず線を引くのでございますが、精神からいえば、そういうふうにする方がいいのではないかと考えております。  ちよつとわき道にそれましたが、要するに、申し上げたいことは、事業課税の問題は、府県事業税だけを切り離して問題とすべきではなく、日本の国税地方税全体を通じての事業課税というものを総合的に再検討する必要があるのではないかと考えております。
  88. 中井一夫

  89. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 たいへん系統だつた意見を伺つて、審議の上に参考になつたと思うのでありますが、私は二点ほどお尋ねいたしたいのであります。  実は終戦後シヤウプの税制が出まして、それについて、あなたの御説明のように、数次の改革があつて、今ほとんど崩壊に瀕しておるわけであります。実際の面で見ますと、府県市町村とも毎年々々税制がかわりまして、事務がたいへんなのであります。しかも全部が決して満足しておらない。いわんや国民にとつてはまつたく困る問題である。いくら悪税であつても、しばらく変更しないでおけば、一応それに対する対応策も考えられるが、こう毎年丸々かわつては、何ともならぬというのが実情だろうと思うのであります。そこで今の地方税の体系をどうしようかというふうなことを考えますると、結局税体系だけをいくらいじつても際限がないから、府県とか市町村の組織とか範囲とか、そういうものを一大変更して、国民負担を大きく軽減するとようようなところまで来ているのではないかと実は私は考えるのであります。そこでそういう意味から租税とか財政面から、現在の日本の地方制度を大改革しなければならぬじやないかというところまで来ているかどうか、お尋ねいたしたいのであります。
  90. 井藤半彌

    井藤公述人 お説の通りで、私は人間が保守的で、かわることはきらいなんです。ですが、必要があれば、ある程度かえる必要もあるのではないか。今のお説は、実は地方行政組織全体の問題だと思います。地方行政変革の問題となりますと、国家の行政全体になりまして、これは地方制度調査会やその他で御研究になつておることと思いますが、やはり税金の問題を税金の問題だけで取扱うことは、もちろん御説の通り、適切でないと思います。しかし現在の日本においては世の中が急角度にかわつておれば、それに対応して租税組織なんかもかえなければなりませんけれども程度問題だと考えております。租税組織も何かもかわらなければならないと思います。しかしこれは程度の問題だと思いますけれども、私は終戦後今までの実情を見ますと、ことに日本人の立場から申しますと、これはやむを得なかつた実情があつたと思います。しかしあまりにも実際の経済の変化以上にかわり過ぎたのじやないだろうかと思つております。それで今お説の通り、よく考えてもう少し安定性のあるものにしたらどうかというようなお説には私も賛成であります。具体的にはこれは先ほどもおつしやいました通りに行政機構の改革とも関連がございますので、今私これにつきましてすぐに結論を申し上げることはできません。
  91. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私も実はそこまで来ていると考えておるわけなのであります。この問題はこの程度にしまして、一言最後に御説明になられました入場税の問題についてお尋ねをいたしますが、結論として移管は賛成ということであります。政府のこれに対する説明は、入場税は非常に土地によつて偏在しておる、従つてこれをならすのが大きな目的であるということでありますが、それにはもちろん理由はあるのでありまするが、実はそれだけではない。府県のいわゆる徴税能力という面において入場税は非常に抜けておるのではないかというので、この間から質問を続けておるのでありますが、そういう説明はあまり聞かれなかつたのですが、きようは教授からそういうことに多少触れられたような御発言があつたのであります。この点について率直に、学者としての見方から徴税能力について入場税に関する限りどういうことであるかということを、もう少し御説明願いたいと思います。
  92. 井藤半彌

    井藤公述人 今の入場税の問題でございますが、私はどんな税金でも偏在ということはやむを得ないと思うのです。どんな場合でもこれは偏在程度のものでございます。その偏在是正するために平衡交付金、今度は交付税ですが、交付税がございますので、交付税さえうまく行けば、税金の偏在はこれは当然なんで、地方自治という点から行けば地方独立税をふやす、そのかわり偏在するのはあたりまえなんで、それを是正するために平衡交付金で何する。ところが平衡交付金が割合に地方の要求通り出ないということは、これはあえて中央集権が悪いとも言いきれないので、日本国全体が貧乏でございますので、そこでああいうことになるのだと思うのございます。そこで今の御質問の点でございますが、入場税の上り高でございます。これはもちろん日本の国民所得や物価の騰貴ということもございますが、あの資料から見ますと、地方団体がとるようになつてから必ずしも収入は減つておらない。むしろふえておるのではないか。従つて新たな見方からすると地方団体でもやつて行けるのだというような一応の数字的な説明もあるのであります。しかしまた一方から、私も実は調査したわけではございませんが、私の感じから申しますと、国家と地方団体と比べますと、徴税機構という点から行きますと、遺憾ながら日本では地方自治ということがまだ進んでおりませんので、徴税機構が弱い。だからして入場税をたくさんというか、合理的にとるという立場から申しますと、私は現在の実情では国税の方がいいのではないかと思つております。それからもう一つは先ちよつと申しました、これは一時の問題でございますが、義務教育国庫負担金の問題で、どちらかというと従来地方財政平衡交付金をもらつておらないようなところへも行くとか、そういうところはどちらかというと入場税がたくさん上るところでありますので、それを是正するというような意味も私はあるのではないかと思うのであります。現状から申しますと、私はそうだと思う。しかし税の性質から申しますとこういう直接消費税というものは、これは本来地方税に適するのだ。間接消費税が地方税に適するのですから、何とか地方の税務機構を育成いたしまして、そうして将来はやはりこれは地方団体がかけるべき税金ではないかと考えております。
  93. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういたしますると、教授とされましては入場税を国に移管するのは徴税能力というか、それが大きな理由なのでありますか、その点を伺いたい。
  94. 井藤半彌

    井藤公述人 簡単に申しまますとそれが一つ、それから先の義務教育費国庫負担金との関係が第二でございます。
  95. 大石ヨシエ

    ○大石委員 井藤先生にお尋ねいたしますがね、私はただいま中井先生がおつしやいました通り、この三府四十何県という、すなわちこの小さい国に各知事がおつて、こういうふうなことをすると地方民は非常に地方税が重なつて困る。それで、ステートですね、いわゆる近畿なら近畿、中国なら中国、九州なら九州、北海道、こういうふうなブロツクにわけたら、この小さい島はもつと税金が軽減されると思うのです。この点を一点お聞きしたい。  それから第二点、間接税というものをとることは非常に国民にごまかす精神を植えつけるものである。間接税はだれも直接見とる者はない。遊興飲食税でもごまかそうと思つたらごまかせる。こういうような間接税をとつて、おる国はみな滅びております。私は一月ほど前にイタリアとフランスへ行きましたが、フランス、イタリアは間接税をとつておる。間接税をとつておるから、こういう国はまさに滅びんとしておる。これは日本も同じである。この点について先生はどういうふうにお考えになるか。  それから第三点、先生は入場税国税に移管せよとおつしやいました。入場税国税に移管します。そうすると、それがために平衡交付金でも、われわれ代議士が非常に困るように地方からどんどん陳情に来ます。そうするとその陳情の費用と、そうして平衡交付金をもらうお金とプラス・マイナス・ゼロになつて行く。入場税国税に移管すると、どんどんと国会へこうして陳情が来て、そうしてわれわれは慎重審議することができぬ。これが日本の根本の政治の災いをなしておる。こういうようなものは地方税でやつてつて——遊興飲食税、こういうようなばかな税金をとる、これもいけない。間接税はいけぬ、絶対にいけぬと思う。それからこれを国税に移管するということも、これは運動をして、そこの奥野さん、官僚に頭を下げた者がたくさんその税金を交付される。これは交付税なつたというても同じことです。まいない、そでの下をした者、頭を下げた者がたくさん交付される。それで汚職事件ができる。こういうような、すなわち入場税国税に移管することについて先生は御賛成でございましたら、私は先生の頭を疑う。この点どうど御返事をいただきたい。
  96. 井藤半彌

    井藤公述人 三つの御質問でありますが、まず第一番の問題は簡単に申しますと道州制を実施するようにしたらどうか、こういう御趣旨だと思います。これは私地方税の機構の改革の問題で、今おつしやいましたように道州制でやるのがいいか悪いか、大いに問題だと思います。これについて私が賛成か反対かと申しますと、私は今研究中だとお答えいたします。結局は申し上げません。ですが、かりに道州制を実施いたしましても、その内容いかんによりましては、やはり道州税という税金をとるのでございましたら、府県税でも同じじやないかと思うのでございます。結局道州制度を実施いたしました場合に、道州の費用を全部国がまかなうとなれば、また話が別でございますが、やはりまた何かの意味でそれを負担分任ですか、何とかいう意味で都民税とか何とか税というものを設けるとなりますと、やはり問題は解決されないのではないか。これはしかし道州制の内容いかんによつてきまる問題でございますので、私はこれについては、このくらいにさしとめます。  それから第二番の問題は、入場税というものを国に移管すれば、陳情が多くなつて代議士の皆さんうるさくてしようがないし、またそれはよくない、それは私もごもつともであります。但しこの場合は平衡交付金と違つて入口を標準としてわけるのですね。ですから人口を標準にしてわけますので、税金をたくさんもらうために、子供をたくさんつくるというようなことはしないと思いますが、——ちよつとそれは表現が悪いかもしれませんが、とにかくこの平衡交付金の場合に、なぜああいうことが起るかといえば、やはり特別平衡交付金があつたり、それから計算の方法が非常にややこしいので、ああいうことがあるのですが、入場税の場合は、その心配は非常に少いと私は思います。  それから三番目に、間接税というものは悪いとおつしやいましたが、私は間接税は必ずしも悪いと思いません。悪い間接税もあるし、いい間接税もあると私は確信しておるのであります。それはどういうものかと申しますと、たとえばわかりやすい例で申しますと、私が学校で俸給をいくらもらつておるか、かりに五十万円なら五十万円と仮定をいたします。時は金なりで、私の年になりますと、五十万円くらいもらう。年ですよ、一月じやありません。(笑声)そこでとにかくその場合に、五十万円の勤労生活者は、所得税とか、市町村民税の場合は同じことでございますね。しかしながらそれを使う場合に、同じ勤労所得を五十万円なら五十万円もらつておる連中が、それをもつて遊興飲食をやつたり、くだらぬところに金を使う者もあるし、井藤のように書物ばかり買つて勉強もしない人間もありますし、いろいろなものがございますね。金の使い方を見ますと、社会的に見て価値の大きな方面に金を使う人もあれば、価値の少い方面に金を使う人もあります。その場合にやはり租税制度という立場から見まして、これを差別するということは当然のことであります。だからして、それは金の使い方で、結局は間接税、消費税になりますので、そこで奢侈品に重課し、生活必需品に対しては免税もしくは軽減するということは当然のことだと思います。但し現在の日本に行われておる間接税をお前うのみにするかといえば、私は決してうのみにいたしません。生活必需品に準ずるようなものはいけないのであります。しかしながら間接税はいけないというようなことは私は言えないのでありまして、たとえばドイツ社会民主党が一八九一年にエルフルト綱領というものを設けた。あれが世界における社会主義政党の一つのスローガンになつております。あの中で間接税は廃し、直接税は賛成だと言つておるのでありますが、しかしあれはあまりにも画一的であつた。それで二十世紀になりますと、当時としては世界の社会主義政党の指導的地位を持つておりましたドイツ社会民主党におきましても、間接税といえども、大衆の負担である間接税はいけないが、大衆でない金持が負担する間接税は賛成だ。直接税であつても大衆の負担になるような直接税は反対だ、こういうことを言つております。だからしてたとえば直接税でありますが、たとえば所得税というものは、これは典型的な直接税でありますが、現在日本の直接税には大衆課税的要素が多いのであります。従つて私は、直接税ではございますけれども、現在の日本の所得税なんかについては、もつと低額所得者は割引すべきじやないかと思つておるのでございます。
  97. 北山愛郎

    ○北山委員 先生も大分お忙しいようですから、私はまとめて二・三点お伺いします。  第一は、先ほどのお話、また今年度の地方税制の改革で地方財源が強化されたというお話でしたが、それにはいろいろ問題があるのではないかと思うのです。まず第一にはこの税収の見積り、つまり国税の見積りとそれから地方税の見積りですが、地方税の方においては相当大幅の、昨年に比べて一〇%以上の見積り増を見ておるというようなことを聞く。この原因となるのは、地方税ではその基準が昨年度の所得だというようなことから自然に、今年の経済事情のいかんにかかわらず、二十八年度の所得を基準にしますから、そこでふえて来るのだというような御説明ですが、しかしこのように大きくなつて来るからには、やはり地方税においても今年の経済事情というようなものを基礎にして、今年度の経済活動がどういう事態になるか、物価事情がどうなるかというようなことも考慮して、ただ今までのやり方でとれば自然にふえるのだというようなことでなく見積るべきでないかというのが一点。  それからもう一つは、この地方財源の強化ということが、ひいては担税力の少い者にかかる。税率がふえるのではないかということです。御承知通り地方税では物税というようなものが多いのです。その収益力あるいは担税力にかかわらず、自転車一台幾らとか、固定資産税でも同じことです。上も下も同じ率でとられる税金が多い。だからそういうような地方税をふやすということは、結局大衆課税になつて来ると思う。直接税であつても間接税であつても同じことだというふうに考えるのでありまして、ことに一つの例は固定資産税の農業用資産、本年度は固定資産税につきましては、百分の一・六というのを一・五に率を下げた。しかしこの固定資産の評価基準というものは逆に上げておるわけです。たとえば田について言えば、昨年は一反当り約二万二千円であつたが、今年はこれを二万八千円に見積つておる。約二割五分の見積り増をしておるわけだ。これは物価が上つたから田の価格もそういうふうに上つたのだということから来るのでありましようが、そういたしますと、五反歩の百姓と二町歩つくつておる百姓とでは固定資産税においては四倍しか違わない。ところが農家の現金収入を見ると、五反百姓と二町歩の百姓とでは何十倍の開きがあります。これは現実にもう資料が出ておる。そうしますと、そういうような能力においては非常な開きのあるものが、反別の比例によつてとられる固定資産税、これを多くするために小さい百姓はその負担が重くなるというふうな関係になるのではないか。こういうふうにその他のいろいろな地方税につきまして、そういう現象が出て来るのではないかというのが第二点であります。以上の二点について伺いたい。
  98. 井藤半彌

    井藤公述人 初めの税金の見積りのお話でございますが、私は地方団体の中央官庁であります自治庁や、あるいは地方財政審議会ですか、あれでもやはりある程度までいろいろの見通しをして、そうして評価をやつておられるのではないかと思います。この間この委員会から私の公述について書類をお送りくださいました。あれを見ましても、地方税の算定の標準などは私どもにはわからない。非常にこまかにいろいろな計算でやつておられまして、やはり私は相当苦労しておられるのだと思います。しかし過去におきまして増収があつた、予定よりも多かつた、しかしこれからはそうは行かないのではないだろうかという見通しでございますが、今度はいわゆる緊縮予算をとりまして、そうしてデフレかデイス・インフレか知りませんが、何とか国民所得の名目価値だけをふやすことをやめるという方針をとつておりますので、今年度は去年おととしに比べれば、あるいは自然増収は少いかもわかりません。しかしながら税制調査会があつたころは、やはり国民所得がたしか二十九年は六%ですかふえるという建前で、税収が非常にたくさん上るという評価を大蔵省でもやつておられたし、それから自治庁でもやつておられたようであります。ところが今度の予算に歩調をそろえましてうんと低くまたやつておる。ですから私は日本の経済の動きがどうなるかわからぬことでございますが、しかし日本の税務当局が、中央・地方を通じて、私はそうでたらめをやつているとは思つておりません。やはりできるだけの資料をそろえてやつておられるではないかと思つております。実は一々資料に当つたことがございませんので知りませんが、今までの感じから申しますと、そうでたらめではない。これは中央、地方同様ではないかと思つております。ただ小さな町村などで一体どういうような評価をやつておりますか、それは私知りませんが、大体の傾向から言うならば、できるだけ良心的にやつておるのではないかと思います。それが一番  二番目の問題でございますが、お説の通り地方税というものは確かに悪税が多いのです。どちらかと言えば、国家がよい税金をとつて、いわば残飯を地方にまわす、極端なことを申しますればそういう危険が多少あるのであります。しかし例のシヤウプ税制——私はこの点シヤウプ税制はよかつたと思うのでございますが、昔は御案内の通り、地租や家屋税は国税でございました。それを地方税におろすとか、固定資産税を設ける——固定資産税のときにはいろいろな問題がございましたが、とにかくああいうものを設けるとかで、地方団体の税金は、今から数年前に比べますと、達観いたしまして悪税は少くなつている。しかし、それではお前は悪税はないと思うかと言われると、私は確かにあると思います。それから、今あなたが御指摘になりましたような評価につきましてもいろいろあると思いますし、もう一つは、農民につきまして、とかく大農保護の傾向があるじやないだろうかということでございます。たとえば超過供出やなにかについてのいろいろな報奨金だとか、やはりそういうきらいもないわけではないと思います。やはり税制の上におきましても、場所によつてはそういうことがありはせぬかと思いますけれども、大体の傾向から言うとよい方に向つているではないか。ことに所得税基礎控除をだんだんと上げて参りました。現在の六万円というのが理想的とは決して思つておりませんが、それによつて農民の納税者が非常に減つておるのです。数から言いましてもそれだけ負担が少くなつておるじやないかと思います。しかし今あなたがおつしやいましたように、地方税にはとかく悪税が多い。だからしてもつと考えるべきじやないかとおつしやられますと、大体の御情神は私は賛成でございますけれども、しかしながら、昔に比べるとずつと進歩しているのではないかと思うのであります。
  99. 北山愛郎

    ○北山委員 今のお話、まだいろいろ申し上げたいこともあるのですが、その点はおきまして、次にもう一つ。  先ほど先生から徴税機構について、国の方が地方団体の機構よりいいじやないかというお話があつたわけであります。しかし私は、それに疑問を持つておるわけなんです。徴税能力ということと、国民負担を公平に、しかも納税義務が気持よく行われるというような趣旨を加味して考えれば、税務署の方が地方事務所やあるいは役場よりよいとは決して思わぬのです。ことに市町村民税、あれがシヤウプ税制によつて改革になりまして、税務署の決定する所得課税標準金額を基本としなければならぬということになつて以来、地方団体は非常に困つておるのです。現在事業税でも同じであります。あの税務署の調査というのは、文句のあるやつは割合によく当るのです。しかし、何しろ納税義務者の数が非常に多いものですから、文句を言わないこまかいようなやつはほつたらかしてしまうのです。だから今までは個々の異議を取上げて、個々について折衝して物事を解決しておる。しかし市町村役場とかそういうものは、源泉所得であろうが事業所得であろうが、そのものをずつと並べて順序をつける。そうして見ると、まさに公平そのものなんです。だれが見てもどうしても納得ができない順序が出ていて、それを基準としなければならぬというわけで、今市町村は非常に困つておるのです。だからそういう意味において、私は税務署のやり方がよいとは決して思わないのです。だからできれば一日も早くあのような税務署の決定したものを基準とするということから、市町村民税なり事業税が離脱する態勢がとられなければならぬと思うのですが、この点に対する先生のお考え。  もう一つ入場税の問題ですが、入場税が今度国税に移管になるという案が出ておる。これもまた今の問題に関連するのですが——国税地方税ともそうでありますが、税法を立てる上において、税金がとりやすいという技術、そういう規定だけが行き過ぎているじやないか。どろぼうを追つかけるような規定が非常に多いのです。たとえば入場税におきましては、何条であつたか忘れましたが、例のみなし課税というのがあるのです。たとい入場料金をとらなくても、主催者が何か催しをやつて経費をかける。そうすると、この経費を基準にして入場税をとることができるようになつている。これなどは私は憲法違反だと思うのです。入場料金をとらないということを認めておりながら、しかも経費課税をするというようなことは、これは憲法二十九条に違反するのである、かように考えておるのです。このような規定がまた今度の入場税法にもあります。同時にまた今度の入場税法では、映画館であるとかそういうところは、特別徴収義務者ではなくて、直接納税者のようになつているはずです。しかしそうなつても保全担保を出さなければならぬ。保全担保というものの提供を命ぜられている。私は、これなどは憲法違反ではないかと思うのです。国が徴収するものについて、その徴収を確保するために、担保を事前に提供させなければならぬというような制度、これは非常な行き過ぎじやないかと思うのです。その他所得税でもそうであります。地方税においても、今申し上げたような徴税上の行き過ぎがあるという点についての御意見を承りたいのです。
  100. 井藤半彌

    井藤公述人 初めの問題は何でしたかな。
  101. 北山愛郎

    ○北山委員 税務署の決定です。
  102. 井藤半彌

    井藤公述人 あなたのおつしやいますような事実も私はあると思うのです。それもあり得ますし、また私の言うようなところもあると思うのです。私の申します大体の達観というのは、ごまかしような言葉を使いましてはなはだ恐縮でありますが、私の大体の感じから言つておるのでございます、確かに、税務署がよいとは決して思つておりません。税務署も大いに反省してもらわなくちやならぬことがたくさんありまして、大いに困つておることもあるのでございます。日本の現在の税務機構、ことに国の機構が完全とは思つておりません。国も地方団体もともに税務機構については大いに努力すべきことがあるではないかと思つております。それと同時に、納税者たる国民も、税金を納める場合に、悪法また法でございますので——税務署の手代のようなことを申しますけれども、しかし国民もやはりつつしまなければならぬことがある。そうなると、政治のやり方が一体よいか悪いかといういろいろな問題が関連するのでございますが、これはやはり全体の広い意味の道徳の向上にまつ以外道はないと思うのであります。  あとの問題は……。どうも私健忘性で、これでは学校をやめなければならぬと思つているのですが……。
  103. 北山愛郎

    ○北山委員 入場税のみなし課税。
  104. 井藤半彌

    井藤公述人 それも、もしあなたのおつしやいますような事実が行われているといたしますならば、私はやはりそれはよくないことだと思います。税金をとる場合には、そんな便宜主義でとるのはよくないが、悪法もまた法でございます。できるだけ納税者の納得の行くようなとり方をしなければいけない。これもやはり広い意味国民道徳の向上とか、そういう問題に関連するのじやないかと思います。
  105. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 先生の御意見のうち一番著しいきようの御発表は、固定資産税府県税にした方がいいのじやないだろうかという点だろうと私は拝承したのであります。不動産取得税固定資産税は同じ課税主体が課税すべきじやないかと言われたように思いますが、いずれにしても固定資産税負担分任の精神を通すことの方が府県民税負担分任の精神を通すことよりも適当じやないかという御説明があつたと記憶します。それで二十年前に戸数割並びに戸数割附加税、地租家屋税と地租家屋税附加税と、こう併立しておる時代がございました。その際に各町村の戸数割の算定について、時々紛擾が起きておるということは、まざまざと体験して来たのであります。市町村というものはサービスに対しての税金をとるというような相関関係からいたしまして、この市町村は私は応益課税がいいのじやないかと思います。先生の御意見にどうも承服しかねるのですが、今度応益課税が本体ではないのですけれども、相当強力に固定資産税が入つて来たというこには、一面から見てそういう点で私は実際町村も楽になつたと思う。もう一つの面から見ますと、この償却資産税というものも、これは現在相当な税収になつておる。これは事業税との関係で将来どうしたらいいかということは、大きな問題だろうと思いますけれども、一応財政上の安定の原因になつている、こう思うのでありまして、一面この府県のやつております事務は、主として国の行政に関連したことが多いのでございますから、そういう意味で国の所得税に見合つた、この所得税的な系統の府県民税の方がよくはないか、私はどうもそう考えるのでございます。しかしながら、私も北川委員と同じ説なのでございまして、所得税を課税されるものは、都会地は別として一般地方の実際では非常に少いし、そんなことから住民関係の課税標準の決定は、どうしても市町村がやることが実情に合うので、これはオプシヨン・ワン・ツー・スリーになつていることは改善を要するとしても、そんなことから最も課税標準の決定に妥当性を持ち得るところの市町村で課税して、それに逆に附加税をかけても何でもないのじやないか、どうも政府の原案の方が先生のさつきのお説よりも正しいのじやないかというような気がしますので、その点もう一回教えていただきたいと思います。
  106. 井藤半彌

    井藤公述人 結局私は前と同じことを繰返すことになりますが、私は府県民が府県税を分担する、その手段として固定資産税の本税を府県に、それから市町村は附加税、これはさき申しましたように、一つの根拠は、新税はできるだけ避けたい。ということは新税を設けておきますと、今年はそれだけ……。(加藤(精)委員府県固定資産税新税じやないのですか」と呼ぶ)その場合に、固定資産税というもの自体は従来からあるのです。ただそれを評価したり課税したりすそ主体が、上るか下るか知りませんが、府県になるだけで、同じですね。それから市町村の場合は、附加税をかけますね。この場合にさきもお説がございましたが、市町村の非常に大きな財源になつておる——私さつきぼやかしました政治的に非常にむづかしいのじやないかということは、率直な言葉で申しますと、市町村シヤウプ勧告で非常なよい財源をもらつたことになるので、市町村がなかなか離さないだろう、これが私さつきぼやかして申し上げましたことであります。それで私はやはりそういうことを離れまして、新税は避ける方がいいのじやないか。それからさき申しましたように、府県民税の場合は、今は市町村民税をそれだけ減らすということになつておりますけれども、将来増税の危険もありはしないか。これは将来あらゆる税金についてそういうことが言えるのですから、あえて府県民税だけではありません、新しい税目ができるということは、とかくそういう危険があるのじやないかと思います。  それから評価の適正という問題、これは申し上げるまでもなく妥当なものだと思います。それから数町村にまたがるような固定資産について、今度の改正案ではそれを緩和するようでありますが、私のような考え方をすれば、そういうことの必要はなくなるじやないか。そういうような意味で少し現実離れをしておりますけれども、私がさきに申しましたようなことがよいのじやないかと考えております。
  107. 中井一夫

    中井委員長 この際井藤さんに申し上げます。本日はお忙しいところをわざわざ御出席いただきまして、貴重な御意見を拝聴することができまして、まことにありがたく存じます。委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げます。  次は全国事業税対策協議会代表國井秀作君に御公述を願います。
  108. 國井秀作

    ○國井公述人 ただいま井藤先生から租税制度全体のあり方等のお話があつたのでございますが、私は事業税の一題、ことに今回出ております地方税法改正法案の中の特に個人事業税の問題について、諸先生方にお訴えを申し上げたいと思う次第でございます。  事業税地方財政の上に大きな財源となつておりますことは、これは申し上げるまでもないことであります。この事業税の対象者というのは、御承知通り個人事業者が圧倒的に多いのであります。法人事業税の対象者の約八倍以上に当つておるわけでありまして、この圧倒的に多い個人事業者がここ数年以来非常に困つておる問題に対しまして、その問題点が今度の改正案でただ税率が下つたということ、それから基礎控除が二十九年度に一万円上つたということだけであつて、他の面について従来の不均衡と矛盾が少しも是正されておらぬのであります。これは法人と個人事業者のきわめて不均衡であるような点をいろいろ私が申し上げるまでもなく、諸先生方はすでに御承知のことではありますが、この圧倒的に多い個人事業者の水準を法人並みにすることによつて地方財政に大きな欠陥を来すことになると思うのです。しかしながら大きな欠陥を来すからというて、この数年来困つておりますところの個人事業者の苦しみに口をおおうて、それにはふたをしておいて、ただ単に税率の引下げということで、お茶を濁すようなことがあつてはならないと思います。私はこの事業税改正案が今回のごとくきわめて大幅に改正されるような場合におきましては、税率の問題や基礎控除の問題よりも、もつと本質的に今までしばしば問題になつておりますところの法人税の課税標準、個人の課税標準というものに大きな違いのある点、こうした本質的な問題を一番改正案の中に取上げなければならぬことだと思う。こういう本質論を一応除外して、ただ税率というようなものによつてこれを幾分カバーしようということが、今度の改正案であると私は思うのであります。私はこういう点で今までどういう問題が個人事業税に対して問題点となつてつたかと申しますれば、これは今も申し上げました通り、課税標準の問題が一つであります。それから国税まる写しに課税しておるところの違法が二つであります。さらに国税免税者に対して不当な事業税がかかつておるということが三点でありまして、私はこの三点の個人事業税の問題だけは、どうしてもこの改正の際に取上げていただきたいと思うのであります。  そこで私どもは先日渡されました今回の改正案を拝見いたしますと、おおむね今回の改正案は、従来の事業税特別所得税というものを統合しまして事業税にするということ、個人事業税基礎控除を二十九年に一万円引上げるということ、それから税率の軽減と業種分類の整理というような三つの点に、私は要約されると思うのであります。これは一応こうしたねらいを改正案に持たれたということはけつこうであります。そこで私どもは、この線に沿うて個人事業税の課税標準がどういうことになつておるかというところに問題点が残るのであります。ところが、この課税標準の問題に対しまして、過日自治庁をお伺いいたしまして、いろいろ御意見を承つたのでありますが、この課税標準は依然として従来の課税標準と少しもかわつておらないということであります。これでは実はたいへんなことであるのであります。この問題に対しましてはいまさら申し上げるまでもなく、法人は一つの収益課税になつております。完全に収益課税だと思います。さらにまた法人の事業税はいわゆる法人税の附加税的な体系になつております。個人の事業税は一体何になっているか、附加税にもなつておりませんし、あるいは所得税の附加税でないと同時に、別にこれをどういう基本でとつておるかということも不明瞭である。これをしていて私ども説明を求めますと、いわゆる応益課税である、法人と個人は性質が違うからしかたがない。こういうような御意見で、いつもごまかされておるのであります。しかしながら私どもがこの事業税の問題を自分らの力で研究して行けば行くほど、法人と個人が非常に差があるのであります。ことに東京の例を申し上げますならば、相当大規模な営業をしておる法人組織の業者が事業税を納めないで、その日暮しの、靴の修理をしておるような気の毒な人に、事業税がかかつておるというようなことは、巷に満ちておるのでございます。もしそういうことを私から申し上げることが間違つておるとするならば、いつでもその実例を私ども国会に提示することができるということをここに申し上げておきたいのであります。  それから次に、従来の税法で犯しておりましたところの、いわゆる事業税地方税として独立税であつて地方長官が独自の責任において課税さるべきものであるにかかわらず、二十六年以来ほとんど国税まる写しでこの事業税をかけておつたという違法に対しまして、現在東京都におきましては、六千二百余件の集団行政訴訟が東京都知事を相手として起きているのであります。さらに四国の愛媛県においても、近くこの訴訟を提起されるのであります。また三重県の一部においても、まさに提起されんとしているのでございます。こういうようなことで、今回の事業税改正は、私どもが今まで地方庁に向つていろいろと交渉をしたときに、いわゆる法人と個人は違うんだという、あるいはまだ個人の場合はこれは応益課税であるから控除するわけには行かないのだと、いろいろなことを言うて、国税まる写しの問題を言つても、これは偶然の一致であるとか、あるいは重要な参考資料であるというような言葉をもつて逃げているのであります。従つて本年度こそは、この個人事業税の問題が、おそらく全国二百数十万に及ぶところの個人事業者が、全部私は行政訴訟に入るけはいがあると思うのです。従つて今回のこの改正案は、そうなつたときにはたいへんであるというので、改正案は今度は国税まる写しを合理化して改正されているのでございます。これらは私どもは驚くべき改正案だと実は考えている次第であります。こういつたことは、今国会でも問題になつておりますように、MSAの問題でありますとか、あるいは保案隊の問題でありますとか。政府がとりつつあるところの一連の動かしがたいところの既成事実をつくつて、そうしてこれを将来憲法改正等の場合に、有利な環境をつくり出さんとする手段と一脈通ずるものがあるとさえ私には考えられるのであります。もし現在の改正案がこのまま通過するようなことがあつたといたしましたならば、地方庁はいわゆる徴税手続簡素化の義名に隠れまして、どしどし国税の決定額に事業税を附加することになるのであります。さらに今日まで全国の中小個人企業者が、ことに零細商工業者が、二十六年以来現在まで滞納になつているものは、いわゆる調定済み額の約四七%近いものであつて、金額にいたしましても四百億以上に上ると思うのであります。これが二十九年度の、いわゆる新しい事業税とからみつきまして、これが個人事業者に徴収にまわられるということになつたら、雪だるまのようになつて、私は絶対個人企業者は納税できない立場になつてしまうのではないかと思うのであります。従つてこの二十九年度の事業税が、この改正案によつて徴収されるということになれば、今年度の事業税が課税されるとき、いわゆる下半期において、全国の中小商工業者、ことに零細な商工業者は、まくらを並べて破産、倒産の悲惨事が私は必ず現出するであろうということを、ここに申し上げられると思うのであります。かような次第でありまして、個人事業税の問題は今日大きな政治問題であると同時に、私は社会問題として見のがすことのできない重要な問題に立ち至つていると思うのでございます。  さらに私どもがこの際申し上げたいのは、自家労賃の認め方について、今まで申し上げておつても、これは先ほども申し上げました通り言を左右にして、これらの問題を地方庁は取上げてくれなかつたのであります。しかし私はこうした事業関係を論ずる場合におきまして、個人であろうが法人であろうが、およそ事業の経営に対しまして人件費を無視したところの経費はあり得ないと思う。こういう点から申しますならば、当然これは個人であつてもこの自家労賃的な控除を認めるべきであると私は思うのであります。しかるに今回の改正案でも、この点について全然従来と同じように自家労賃を認めないという立場において改正案ができておると、私どもは伺つておるので、非常に困つたことを考えておる次第であります。  先ほど井藤先生からもお話のあつたように、今回の改正案は一体事業税地方独立税として存続して行くという方針でできておるでのあるか、あるいは国税の附加税になつたのであるか、まつたくその本質が今日はくずれておるといつてもさしつかえないと思うのであります。私どもがここに特に強調いたしたいと思いますことは、個人事業税のうちで、ことに零細で多数な家族を要するような企業者に重圧的に、この事業税がしわ寄せせられておるのでありまして、今回の改正案ではこのしわ寄せが絶対に直つておらぬのであります。たまたま法人といつても、先ほど井藤先生のお話の中にもありました大法人は別といたしまして、いわゆる一家族でこしらえているような法人を御想像願いたいと思うのであります。つまり自分の家族とただ名目的な株主をもつて法定の人員をそろえまして、主人が社長である、家内が専務、子供が常務であるというようなことによつて、これらの一家をもつてこしらえておる法人組織の商店があるといたしますならば、この商店は主人や細君や子供に手当、俸給を出すことによつて年間四、五十万円の金額をいわゆる損金として経費に落すことは可能であります。ところが個人である場合におきましては、それが絶対にできないというところに、この問題にきわめて無理があると私ども考えるのであります。  かような次第でありまして、私どもはこの機会にどうしても個人事業税法人税並になるように、決して法人事業税より安くしていただきたいということをお願いするのではありません。法人事業税とちようど同じように・見合うような税額で負担ができるようにしていただきたいということを、特にお願いを申し上げたいのでございます。私どもがこれに対しましていろいろとみんなで相談をいたしまして、かねて諸先生に御提出してありますように、全国事業税対策協議会の試案といたしまして三つの試案を先生方に差出してございます。私ども今ここで重ねて申し上げますならば、その第一案は、いわゆる所得税できめられておる基礎控除や扶養控除、その他の控除を差引いた残額を課税対象にしてもらいたいということが一点であります。それから第二点といたしましては、個人企業者で主人や家族の勤労部分に対しましては、地方の事情あるいは業種の実態等によりまして千差万別でありましようから、地方庁に適当なる条例あるいはまた政令をもつてその決定を与えるような措置をとつていただきまして、適当なる自家労賃を引くということが二点でございます。第三点といたしまして、現在一万円引上げていただくような改正案でありますが、決して自家労賃が五万円が六万円になつても、これは一箇月わずかに五千円の問題であります。五千円で自家労賃ができるわけがありません。また自家労賃をほんとうに認めないということが、絶対に正しく言えないという点から申しますと、個人の場合におきましては、自家労賃が認められないのですから、個人企業というものはすべて無人スタンドである。かつてに人が金を持つて来て、かつてに商品を持つてつていただくというようなことになつているわけですが、そういうことはあり得ないことである。であるから、自家労賃的に、第三案といたしましては、大体三十万円ぐらいを基礎控除として引いていただきたい、こういう三点を私ども対策協議会といたしましては、いろいろと意見はあつたのでございますが、事業税は悪税であるから撤廃すべきであるというのが、最終の目的ではありますけれども、暫定措置といたしまして、今申し上げたような、いわゆる所得税法によつて課税されるところの所得を、課税対象にするか、それでなければ、その業種、地方状況によつて勤労の部分を査定して差引いていただくか、それでなければ、基礎控除を一挙に三十万円にしていただくような、この三つの案をここに先生方にお願いするために、試案として御提出してあるような次第でございます。どうぞこれらの問題等も御勘案くださいまして、先ほども申し上げました通り、個人事業税を決して法人より安くしていただきたいということを言つておるわけではございません。ぜひともこれを法人並になるようにお願いいたしたいと思うのであります。  最後にお願いをいたしますことは、先ほど申し上げた国税免税者に事業税を課さないようにしてもらいたい、この点についてもう一つお願いをしておきたいと思うのであります。国税の免税者は大体において収益がきわめて少いか、あるいは扶養家族が非常に多いか、それでなければ不測の災害によつて大きな損害をこうむつたとか、一家のうちに長い間病人がおるために、療養費がかかつたとかいうようなことによつて、初めて免税されておるのであります。それは言いかえますならば、国家がこの人はもう担税力がないということを認めてくれているのだと私どもは思うのであります。ところがこうした人々にもどしどし事業税はかかるのであります。どうか私どもはこの国税免税者に事業税のかからぬように、今度の改正案の中にも免税に対する条文もあるのである。これはたしか改正案八十条だと思いますが、その中に国税免税者には事業税をかけないというくらいの一項は、ぜひ入れていただきたいということをお願いいたす次第であります。そうしていわゆる零細な個人企業の商工業者が、安んじて国税が免税になつてやれうれしやと思つておると、八月の十五日には、今度は東京都から、いわゆる事業税がとられたのでは、もうその商人はどうすることもできない。こうした零細な気の毒な企業者が安んじてその事業に従事できるように諸先生方の御考慮によつて国税免税者には事業税がかからぬようにしていただきたいと思うのであります。なお私どもはよくわからぬことでありますけれども、今回のこの地方税法改正法律案は、聞くところによりますと、地方制度調査会答申案に基いてできたとのことでありますが、この案の決定にあたりましては、地方団体から相当反対があつたということを聞いておるのであります。私はこのことが事実であるかどうかはわかりませんけれども、私どもが見ましても、また考えましても、今回の改正案は、まつたく企業の実体を把握しておらないところの官僚独善的な改悪案だとさえ私は思うのであります。ぜひひとつ諸先生方の良識に訴えまして、この矛盾に満ちておるところの今度の改正法律案を、ぜひとも根本的に改革していただきまして、先ほど来重ねてお願いいたしておりますように——個人企業者が法人並に税金を負担して行けるように、そして国税の免税になつておるような零細な気の毒な業者が、事業税を免税せられるように、切にお願いをいたす次第であります。
  109. 中井一夫

    中井委員長 次は全国指導農業協組合代表、武正総一郎君の御陳述をお願いいたします。
  110. 武正總一郎

    ○武正公述人 私ただいま御紹介にあずかりました全国指導連の武正でございます。農業者の一員といたしまして、素朴でありますが、意見を述べさせていただきます。  シヤウプ勧告に基きまして昭和二十五年制定されたのが現行地方税制でありますが、今般その法律の一部改正をされるそうでありますので、この問題については、やはりシヤウプ勧告現行地方税制の特長を一応考えたいのであります。  まずこの地方税制の特長は、第一には地方自治の根底を培養するということであつたわけであります。次に国民の租税負担合理化、均衡化を確保することが第二点でありました。さらに第三点といたしましては、地方団体間における地方税負担、及び地方行政間の質の均衡化の徹底をはかるということであつたと思うのであります。従つて地方自治の基盤を確立することが主眼であつたとするならば、この考え方に対しては、私もその観点から地方税制は正しいものと考えるのであります。この地方自治確立のために、今回の県方税法改正が妥当であるかどうか、まず検討される必要があろうと思うのであります。塚田国務大臣がこの法律の改正理由を述べられたことを、文書で拝読いたしましたが、改正の基本方針といたしましては、次の五点があげられておるわけであります。  一つは、地方団体の自立態勢強化のために、独立財源の充実をはかる。二といたしまして、地方団体相互間における税源配分の合理化をはかる。三といたしましては、地方税税種相互間における負担均衡化をはかる。四といたしまして、道府県に対して住民が広く負担を分担する税種を与える。五といたしましては、税務行政の簡素、合理化をはかるとともに、国、都道府県及び市町村の三者間に、徴税上の協力体制を確立する。この五点を改正の重点とされましたのは、まことにけつこうと存じますが、はたして改正案がこれらを十分満足させるかどうか、その趣旨を生かすことができるかどうかを検討いたしたいのであります。  まず第一には、地方団体の自立態勢強化をはかるための独立財源の充実の問題であります。今回の改正によりますと、タバコ消費税あるいは不動産取得税等の新設などにより、国民負担の自主的増加を避けながら、六百二十四億円の独立財源の増強をはかつた、そのことでありますが、この限りにおいては妥当と考えるのであります。一方、私は次のような点を深く心配いたすのであります。たとえば警察制度がいいかどうかは別といたしまして、警察制度改正とか、その他合理化の名目のために諸制度の中央への一元化が強化された場合、地方団体の事務分量が増加することが考えられるということであります。特に農村における地方自治体の事務におきましては先ほどもいろいろ御質問がありましたように、国政事務と固有事務との割合がますます大きく開くのではないかと思われるのであります。国家が当然行うべき事務を地方自治体が代行する、いわゆる国政事務は、地方自治体それ自体の事務、いわゆる固有事務を押しのけて行われはしないか、こういう点については、多くの心配があるわけであります。国政事務を行うために必要な費用を国政費といたしまして、地方自治体の固有事務を行うために必要な費用を固有費といたしますと、その割合は、農林省農業改良局がかつて調査されたのでありますが、それによりまして、昭和一十三年に例をとりますと、国政費といたしましては八、国有費といたしましては二の割合が必要であるのに、実際には国政事務を行うための費用のわずか半分を国家が負担いたしまして、あとの半分は村自体、地方自治体自体が、従つて農民がいろいろな名目で負担しているのが事実であるわけであります。従つて今後諸制度の一元化により、むしろそういうところが国政事務が増加いたしまして、今回の改正による独立財源が増加いたしたといたしましても、全体換算するならば——むしろこの際地方自治体、特に農村自治体の犠牲負担によつて行われております国政事務に対して、それに必要な経費を十分交付されることが、地方自治体の自立態勢の強化に資するのではないかと思うのであります。特にこの点を御配慮願いたいと思います。  第二に地方団体相互間における税源配分の合理化についてはかりたいとの御趣旨でありますが、富裕団体と目されております地方団体から、税源の一部をさいて、他の地方団体の自主財源の強化のために振り向ける措置は、現状においてはやむを得ないと考えるのであります。しかし今回の御措置以外に、たとえば遊興飲食税国税に移管してその譲与税化をはかることによつて、さらにその御趣旨を徹底される必要があつたのではないか。こういう点については、入場税だけにとどまつたのは、若干合点が行かないわけであります。  次に地方税税種相互間における負担均衡の問題であります。大臣の御説明要旨にありますように、経済情勢あるいは租税体系の変遷に伴い、税負担合理化、均衡化をはかることは絶対必要であろうと思うのでありますが、それでありますならば、特に固定資産税率の引下げを、なお一層御考慮願いたいのであります。これは言いやすく実行はまことに困難なことかもしれないのでありますが、総じて経済力の低い農村自治体においては、地方の自主性があまり尊重せられておらなかつた。戦前たとえば昭和十一年度、十二年度の例をとりましてもよくわかるのでありますが、農家の負担する租税総額に対する割合は、戦前と昭和二十六年以降と比較いたしました場合に、約倍増になつておると私は考えるのであります。そういう点から申しまして、これまた十分お考えおき願いたいのであります。  第四の、道府県に対して住民が広く負担を分担を分担する税種を与えるということは、そのために府県民税創設が、これまた現状においては必要であると思われます。タバコ消費税等において、このためにいろいろ措置を講ぜられるようでありますが、特にその分配融合等については、市町村団体の財源強化のために、さらに御高配をいただきたいのであります。  第五に、税務行政の簡素合理化と、国、道府県市町村の三者間の徴税上の協力体制の確保を期せられておるようであります。御趣旨には賛成はいたしますが、特にこの際御留意願いたいことは、租税財源の優先順位の確立ということであるわけであります。すなわち徴税にあたりまして、市町村及び道府県は、国より多くのわくを与えられなければならないし、また市町村は道府県より多くのわくを与えられる必要があるということを特にこの際強調いたしたいのであります。また地方税制の改正において一番御考慮をいただきたいのは、地方自治体特に市町村地方団体地方自治の根底を培養するという最初の考え方を、あくまでもやつていただきたいのであります。  さて次に、この際地方交付税について一言述べさせていただきたいのであります。地方財政の不均衡と赤字財政を中央集権的な国の支配的力を増強することなくして是正するこが、交付金制度のねらいと私は考えるのでありますが、そこで地方交付金制度の増強のために交付税制度といたしまして所得税法人税酒税一定割合を、地方平衡交付金の算定方法簡素化した方法で設定することには賛成はいたしますが、結論的に申し上げますと、やはり地方自治体が、特に農村自治体が、それ自体の固有事務よりも、上級自治体及び国の事務分量が増加し、しかもそれに比例した費用がないということであります。従つて農村自治体においては、依然農民自身の貧しい弾力性のないふところから、たとえば部落などの寄付金等の醵出によつて辛うじて農村自治体の機能を保つている現状でありますがゆえに、この点は特に御留意をいただきたいのであります。  さて次に主要税目について意見を述べさせていただきたいのでありますが、ここでは特に農協の立場から要望事項を申し上げたいのであります。すでに御承知のごとく農業協同組合は農村における信用金融機関として、あるいは販売・購売機関として、あるいは農業経営改善の指導機関といたしまして全国津々浦々に組織されておるわけであります。日本の全農民が加入組織しておるのでありまして、その数は約一万二千三百を数え、組合員は九百万人に及んでおるわけであります。この偉大なる盛観は、一方においては日本農業が零細かつ貧困であるために、協同化によりそれを克服しようという姿でもあるわけであります。そこで農協は公共的団体として常に取扱われ、往時の産業組合においては、非課税団体として十分認められておつたのであります。しからば現在はどうかというと、終戦後はいろいろないきさつがありましたが、現状においては党派を超越せられまして、諸先生のお力によりまして、協同組合の非課税原則の実現に近づいて参つたわけであります。だがこれがともすると打破られたり逆行いたしたりしまして、そうして協同組合の弱化が、ときに考えられるわけであります。事業税について申し上げますと、共済組合については現行では非課税団体として規定されておりますが、今度の改正案によると、収益事業所得については課税するということになつております。これもまた私は改悪ではないかと考えるのであります。また農業協同組合につきましては、現行では出資組合において法定準備金が出資総額の四分の一に達しない組合に対しましては、非課税として規定しておりますのに、今回の改正案によりますと、この恩典が削られて配当金課税とするようになつておるわけであります。その改正の理由は、いろいろお考えなつたかもしれないのでありますが、われわれはあくまでも農協の公共的事業団体である性格から、少くとも現行より改悪しないでいただきたいのであります。  なお蛇足ではありますが、改正案を実施したといたしましても、その税額はきわめて僅少なものであります。わずか二千万円足らずの税額であります。これはまた逆説的に申し上げますと、農協は、零細農業者により組織された貧困を防ぐための切実な社会的機関であるということが物語られておるわけであります。最近いろいろ汚職問題等がありまして、きわめて重大な国家資金が浪費されている現在、農民大衆をしてさらにこの改悪により悲嘆させないようにいたしてもらいたいのであります。  なおこの際同様の理由によりまして、次の諸点についてもさらに御高配をいただきたいのであります。一つ不動産取得税についてであります。農協の倉庫の場合、農林漁業金融公庫からの貸付額を控除した金額を課税標準とするというように、農協の農業倉庫の非営利性を認めながら、芸のこまかい徴税措置を講ぜられようとするのは解しかねるのであります。先ほども申し上げましたが、やみ金融やあるいは造船汚職の、そういう点ではきわめて寛大なおとりはからいがなされておるのでありますが、一方農協に対してはきわめてどうもそういう点からは酷であるようであります。私はこの点については十分御同情を願いまして、さらに改善方をお願い申し上げたいのであります。また農協事務所についても同様の趣旨から、さらに御高配を願いたいのであります。  次に農山漁村電気導入促進法がかつて成立いたしたのでありますが、これは農林漁業団体の発電、変電、送電施設を行いまして、これによりまして無点燈部落でありますとか、あるいはまだ電気が導入されておらない未開地に発電をいたすわけでありますが、この施設に対しまして、固定資産税については特別に優遇措置を講ぜられていただきたいのであります。  以上、いろいろ申し上げたいことがございますが、一応このくらいにとどめまして、陳述を終りたいと思うのであります。
  111. 中井一夫

    中井委員長 次は東京労働組合連合会委員長河野平次君。御陳述を願います。
  112. 河野平次

    ○河野公述人 私はただいま御紹介にあずかりましたように、東京労働組合連合会の委員長をやつております河野でございます。  この組合は、東京都の職員合計十三万人ほどございますが、このうち警察、消防など法律によつて労働組合に加入することのできない約三万五千名を除いた全部の職員をもつて構成されておる組合でございます。いわば東京都の職員ということですから、純然たる地方組織ということでございまして、そういう観点から、私ははなはだ恐縮ですが、東京都を中心としてこの問題をながめてみたいと思うのであります。  一般的に申しまして、今度の税制改正にあたりましては、私が申し上げるまでもなく、政府は今度一兆円の緊縮予算を組んで、そうしてインフレを押え、貿易を盛んにし、国際勘定のバランスを保つとともに、日本の自立経済を確立しよう、こういう意図から行われたようでありますが、そういう終戦後八年間引続いて参りましたインフレに対して、一つの終止符をここで打つて、健全財政、均衡財政というものを通じて、日本経済の確立をはかろうという、政策的に見て大きな転機であるということができ得るかと思います。そういう政策を徹底させるためには、単に消費を節約するとか、あるいは賃金を引上げないとか、そういう消極的な政策よりももつと進んで、今一番問題になつております過重なる税負担に対して、これを緩和してやるという政策もあわせとらなければならないのではないかと考えます。そういう観点から考えますと、前の公述人のお話もありましたように、日本の国民大衆、なかんずく中以下の勤労大衆が今一番困つている問題は、勤労所得税を中心とした大衆課税——大衆課税と申しましても、間接税と直接税との関係がありますが、私どもはなかんずく直接税による大衆課税を大幅に軽減する措置を講ぜられるべきではないかと思うのであります。そういう立場から申しますと、今度の勤労所得税のごときは国税に属する問題であつて、本委員会において申し上げることは適当を欠くかも存じませんが、私どもの基本的な考えといたしましては、そういう勤労所得税を中心とする勤労大衆の直接税を軽減すように、もつともつと努力を払つてほしかつたということを申し述べなければならぬのであります。  時間を制限されておりますので具体的な問題をメモして参りましたが、前の公述人の方も申されましたように、今度の塚田自治庁長官説明を拝見してみますと、一つには地方団体の自立態勢の強化に資するために、独立財源を充実するということをうたつております。私どもはこの問題について今までも問題点として対処して参つたのでありますが、去る二月十九日に入場税国税移管の問題と、警察制度改正反対、さらに今度の教員に対する政治的中立云々のいわゆる教育二法案に対する反対、この三つの案件について衆参両院の議長さんに請願書として提出しておるのでございます。そのようにして私どもは今度の入場税について強く反対の態度をとつているものでございます。入場税というものは一応譲与税という形において、国が徴収してその九〇%を地方自治体に返すのだ、揮発油税等の一部を含めて地方に返すのだという建前をとつて、総体的には今度の改正によつて六百二十三億の財源地方の方へ移譲されることになつて、相当財源的に強化されるということを言われているのでありますが、この説明に対して私どもが検討いたします場合に、必ずしもそうではないということを言いたいのであります。すなわち配付されたあの表によつてながめましても、来年度における地方税収の総額を三千五百三十億はかり見込んである。これが現行税制による場合の収入見込み額であつて、税制改革を完全に実施した場合における税収見込み額としては、三千七百二十六億円の税収を見込んでおります。現行税制で行つた場合と改正税法で行つた場合との関係においては、その差引が本年度の関係から言うとなるほど六百億円から違うのでありますけれども、これは何もそれだけの新しい税源を国の方から与える、あるいは地方に新しい税種を設けて、それだけ多くとるということではなく、経済事情との関連もありますが、むしろ自然増収によるものが約七〇%近く見込まれているわけであつて、実際に地方自治体においてうるおう金額はわずか二百億足らずのものであるということができようかと思うのであります。しかもかりに二百億であろうと、たとい幾らでも、多いほどいいのですが——地方財政を強化するという意味においては多い方がいいのでありますけれども入場税等を国でとつて自治体に配付するということになりますと——今度の法律ではその九〇%を人口比例によつて配付するということでありますけれども、私ども東京都民という立場から考えますと、ことしはまさにその通りであろうと存じますが、これが将来ともそういう形において永続するかどうかという可能性の問題について検討いたします場合には、これは非常は不安な財源である。百九十二億というのはむしろ全国での話であつて、損するところも得するところも出て来るわけでございますが、若干これによつて地方財政がうるおう府県があつたにしても、将来性の問題について大いに問題点が残る。そういう意味合いから申しますと、独立財源の充実と申しますけれども、これは決して厳格な意味における独立財源と称することは適当ではない。むしろ政府依存の不安定財源とでも言わなければならない性質のものになると思うのであります。先ほど申し上げた観点から、この入場税の問題について申し上げますならば、これは東京都ばかりではございません。これは主として六大都市が多いのであつて、この政府原案によりましても、六大都市だけが大きな犠牲負担を負つて、あとの全部の県は幾らかでもうるおうことになつているのでありますけれども、この入場税の問題については、それぞれの府県において今日のような状態に徴税事務一つの軌道に乗せるについては、かなりの努力もありますし、またその沿革もあるわけでありまして、簡単な理由によつてこれを国税に移管するについては容易に納得ができない。これと同時に政府の方においては、予算編成当初に遊興飲食税をもやはり国税に移管しようとする計画があつたごとくでありますけれども、その方は幸いにして思いとどまられたわけであります。これとほんとうに姉妹的関係というか、不可分でもありませんが、非常に似かよつた性格を持つた税金といたしまして、この遊興飲食税を残すということに御理解がいただけるならば、同時に入場税遊興飲食税とともに、地方税として存置していただきたいというのが私どもの念願であります。なお政府の方ではいわゆる六大都市をもつて富裕府県というようなことで、この偏在財源是正というようなことを盛んに主張されまして、財政的にはいろいろな角度で、この六大都市に圧迫を加えられているのが今日までの現状でございますが、しかしその見方に対しても、私どもは遺憾ながら納得をすることができない。言うまでもなく政府の方で基準財政需要額あるいは基準財政収入額というようなものを一方的にかつてなさしがねをつくつて、それをあててみてこつちが裕福である、こつちが裕福でないという措置をとつているわけですが、かなり先ほどの御質問にもありましたように、よほど政府の方へうまい政治的考慮を払つて、顔をよくしておかないことには、年中その面で締めつけられる。東京などははなはだひどいことになつておりますが、御案内のように義務教育費国庫負担法というものが去年の四月から実施されることになつた。ところが実施一、二箇月かのうちすでに法律改正計画されて、富裕府県に対しては減額またはこれを打切るという特例法案国会に出されたようなぐあいで、法律上一応そういう決定をされましても、国の方の財政の都合なり、あるいはちよつと役人の忌諱に触れるようなことにでもなると、いつ新しい法律案を制定して、それをくつがえされるようになるかわからぬ、義務教育国庫負担という問題は、これは言うまでもなく、一つの義務教育無償の原則という上に立つておる、これは財源があろうとなかろうと、国においてその面に関する限りは平等に交付し、もし財源偏在しておつて、これを是正しなければならぬという事情があるならば、他の方法においてその調整をはかるのが至当であると思われるにもかかわらず、このような問題に対してすら、手を加えて全然打切りまたはその減額をはかろうとするようなことを見せつけられるにつきましても、私どもは今度の譲与税という形において、国の方から交付される、こういう形ははなはだおもしろくない、きわめて不安定な財源で、自治体における恒久的な財政計画なり事業計画なりというものは、こういうことによつてはとうてい樹立し得ないことになろうかと思うのであります。  もう一つ御参考のために申し上げておきたいと存じますが、東京都は富裕府県だと申して、そういう措置をとられようとするのでありますが、東京都の税収入総額は二十八年度予算においては四百三十億でございます。職員が必死に徴税能率を高めようとして努力を払つておるわけでありますが、およそ決算に行つて見ると四百二十億程度というのが結論ではなかろうかと存ずるのであります。ところがこれを歳出面でながめますと、日本の首都という関係も大いに手伝つていようかと存じますが、警察費の一点だけを考えましても、これが一年間の東京都における警察費は百十八億円であります。あと教育関係、高等学校、中小も入れた学校、これの経費についても百七十億の財源を計上しておるのであります。さらにまた消防関係についても三十億あまりの金が必要ということで、この警察、消防、学校この三つの年間歳出予算だけをもつてしても、まさに三百二十億からの厖大な財源を要するのでありまして、税収かりに年間四百二十億あつたといたしましても、それから三百二十億がその方へ天引きされるということであれば、あと残るのはせいぜい二二%から二五%どまりでありまして、あとの一切の事業はその残りで行わなければならぬという状態にあるわけであつて、その事業経費との関連を具体的に申し上げる時間もございませんが、当然警察がいるからといつて、民衆のためにどれだけ具体的にプラスになるかといえば、これはもう何ということはない。消防の問題にしても火事がなければ何ということはない。学校は義務教育であつて日本国中至るところ全部対等の条件である、こういうふうに考えてみますと、東京都の事業税徴収の内容について、かなり御意見もあつたようでございいますが、そのように無理をして税金をとつて、その税金のうち七五%がこの三つ事業とも言えないような事業ですが、警察、消防、教育の関係において消費されてしまう。あと残り二五%をもつて東京都民の日常生活に結びついた一切の事業を行わなければならないということと、それと至上命令としての東京都の一般的な復興のために努力をしなければならぬという大きな責任を負わされておる。さればといつてこの財源を起債に求めようとして、政府の方へ認可を要請すればなかなか許されない、これも東京都は顔が悪いからなかなか許されない。年間予算において毎年四十数億から五十億の起債財源を予算に計上してあるわけでありますが、実際に許可される起債は僅々十億足らずということであつて、これは非常にみじめな状態です。これは余談になりますが、大正十二年の震災のときには府と市と二つの組織形態になつておりましたが、あのときに復興費として国から助成を受け、あるいは起債をされた金が七億一千万円であつたのでありますが、東京都七〇%の広域にわたつて被害を受けた今度の戦災に対する復興費として、国がどのように見てくれているかということになりますと、東京都全体建設事業等も含めて、わずかに百六十億の起債しか認めていないというのが現状であります。七億一千万円と百六十億ですから、これはたいへん数字的に違いますけれども、当時の東京府市の合計年間予算額というものは、両方合せてせいぜい一億円限度である。現在の東京都の財政というものが経営会計においても、六、七百億になつておるという事情から見ると、その貨幣価値において予算規模において換算いたしますと、実に問題にならないような状態であります。そのような中においてなおかつ東京都民というものはみずからの努力と創意工夫によつて生き、都民の施設の改善のために都の復興のために努力をして来ている、その努力は全然認めないで、富裕府県だというようなことで、簡単に取扱われてしまうということでは、これは地方自治体としてほんとうに創意とくふうの上に立つた長期計画に基く大きな事業を行う張合いもなければ、行おうとしてもできないことになるのであつて、今後の地方行政運営上大きな問題点となろうかと思うのであります。それが今警察の問題にしても、教育の問題にしても、あるいは財政の問題にしても、着々と中央集権的な傾向が強くなつておりまして、昔の内務省警保局といつたようなかつこうになるならば別でありますが、少くとも新憲法において規定された地方住民自治として発展し、育成さして行くという観点に立ちますならば、まことに地方自治行政の危機といわなければならぬと思うのであります。私税関係については専門家でも何でもなく、東京都の一職員という立場において、自分たちの考えておる点だけを無秩序に申し上げたので、はなはだどうも恐縮に存じておりますが、入場税移管反対ということを特に強調し、そのことによつてはこの紙に書いた筋通りには行われないことは明々白々である。それゆえになおさら反対であるということを強調いたしまして、公述にかえたいと存じます。
  113. 中井一夫

    中井委員長 最後に全国料理飲食喫茶業連合会代表山本宗平君から御陳述を願います。山本公述人
  114. 山本宗平

    山本公述人 ただいま御紹介にあずかりました全国料飲の、しかも大衆部門の、大衆消費者の食事をあずかつております代表の山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本本日この公聴会にわれわれ料飲組合を、しかも大衆部門の代表として参加させていただきましたことを、くれぐれも御礼を申し上げる次第でございます。  私は本席をかりましてお願いいたしたいことは、終戦後の今日におきましても、今もつてまだ大衆勤労者の方々の三度の食事に税がかかるというようなことは、ぜひともこの委員会にお願いをいたしまして、御配慮のほどを願いたいと思う次第でございます。これは決して全部と私は申すのではございません。少くとも今日の情勢下において——日銀の物価指数から見ましても、現在わずか百五十円に対して飲食税がかかるというふうなことは、まつたくわれわれは勤労大衆の方々に申訳がないのじやないか。勤労大衆の方々は、家庭で食事をとられる場合には飲食税はかからないわけでございます。それを食堂に来たために飲食税がかかるということは、皆さんは御存じないと思います。それをわれわれはお客様からいただくわけには行かない。しかし現在の法律では納める義務がある。ここにわれわれとしては非常に苦労をしておるわけであります。私どもは決して無理なことは申しませんから、どうかこの意味をお含みくださいまして、先生方の絶大なる御援助をいただきまして、法律を改正していただいたならば非常に幸いだと存ずる次第であります。  以上はなはだ簡単で恐縮でございますが、全国の業者を代表してお願い申し上げまして、公述にかえる次第でございます。
  115. 中井一夫

    中井委員長 これをもつて午後の公述は終つた次第であります。これから委員諸君の御質疑があればそれを進めるわけでありますが、時刻もはや五時半になつておりますので、できるだけ、御意見を省略願つて質疑だけいたしたいと思いますが、井藤教授の御説明の際になされた皆さんの御質疑で、大体済んでおるのではないかと思います。それに今の公述人皆さんの御陳述については、もう常に聞いておるところでありますから、もしできますならば、この程度でひとつ御終了願えればいかがかと思いますが、いかがでしようか。  それではこの程度で本日の公聴会を終つて御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 中井一夫

    中井委員長 それでは公聴会はこれをもつて無事終了いたしました。  なおこの機会に公述人の方々にごあいさつを申し上げます。本日は御遠方のところ、御多忙のところをわざわざおいでをいただきまして、貴重なる御意見をお述べいただきましたことを、厚く委員会を代表してお礼を申し上げます。どうぞ御自由に御退席くださつてけつこうであります。これをもつて公聴会は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十一分散会