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1954-03-16 第19回国会 衆議院 地方行政委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十六日(火曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 藤田 義光君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       前尾繁三郎君    鈴木 幹雄君       橋本 清吉君    阿部 五郎君       石村 英雄君    北山 愛郎君       大石ヨシエ君    大矢 省三君       中井徳次郎君    松永  東君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  山口 喜雄君  出席公述人         大阪府知事   赤間 女三君         金沢市議会議長 徳田与吉郎君         日本弁護士協会         理事長     戸倉 嘉市君         大阪町村会長 広瀬  勝君         東京大学教授  鵜飼 信茂君         評  論  家 阿部真之助君         主婦連合会総務 藤田 孝子君         全国官公労働組         合協議会議長  横川 正市君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた事件  警察法案及び警察法施行に伴う関係法令の整  理に関する法律案について     ―――――――――――――
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより警察法案及び警察法施行に伴う関係法令の整理に関する法律案についての公聴会を開会いたします。  本委員会におきましては警察法案が去る二月一六日付託せられまして以来慎重に審査をいたして参つたのでありますが、委員会が特に本日より二日間公聴会を開きまして、警察法改正について真に利害関係を有する者及び学識経験者等より、広く意見を聞くことといたしましたゆえんのものは、申すまでもなく本法案国民生活に影響するところきわめてはなはだしく、従いまして一般国民諸君本案に関する関心もまことに大たるものがあるのでありまして、国民各層におきましても賛否の意見が活発に展開されている現状にかんがみ、本委員会警察法案審査にあたり国民諸君の声を聞き、広く国民の輿論を反映せしめ、本案審査を一層権威あらしめると同時に、その審査に遺憾なからしめんとするにほかならないのであります。  本委員会といたしましては、本日公述人各位より公正にして忌憚なき御意見を承ることができますことは、本委員会今後の法案審議の上に多大の参考になるものと深く期待する次第であります。私は本委員会を代表して、御多忙中のところ貴重なる時間をさかれまして御出席くださいました公述人各位に厚くお礼を申し上げますとともに、各位の率直なる御意見陳述を希望いたすものであります。なお陳述は各人約十五分ないし二十分間の予定、要を得てかつ明瞭にお述べを願います。また午前中は三人のお方の陳述を承ることとなつておりますが、その三人の方方の御陳述が終りましたならば、その後に委員諸君より公述人各位に対し質疑が行われるはずでございますから、さよう御承知を願います。  午前中に公述人として御陳述を願います方たは、全国知事会代表大阪府知事赤間文三君、全国市議会議長会代表金沢市議会議長徳田与吉郎君、日本弁護士協会理事長戸倉嘉市君、この三人であります。  それでは赤間文三君より、警察法に関する御意見の御開陳をお願いたすことにいたします。赤間文三君。
  3. 赤間女三

    赤間公述人 地方行政委員方々におかれましては、日夜地方自治充実進展に御努力を賜りまして、地方自治に携わる者の一人といたしまして、衷心から厚く感謝する次第でございます。ここに私は府県を代表いたしまして、警察法改正案につきまして、所信を申し述ぶる機会を与えていただきましたことを、非常に光栄と存ずるところであります。以下私の所信を簡明率直に申し上げ、本改正案審議の一端に供したいと存ずる次第でございます。  周知のように、現行警察法は、敗戦による占領政策一環としてこれが施行せられまして、戦前のわが国警察制度を根本的に改正をせられたものでありまして、考えまするに、民主警察の伸長という点につきましては、大きな役割を果したのであります。しかしながら他面警察設置電位があまりに細分化せられましたために、警察本来の機能発揮という点におきましては、はなはだ遺憾な点がある。また経費の面においても非常にむだがあつて、これが抜本的な改正はひとしく識者の望むところであると考えます。  警察法改正の根本的な方向といたしましては、わが国実情に適した民主的な保障のもとにおきまして、最も能率的にして、しかも経済的なものでなければならぬということは 私は論をまたないところであると信じます。今回の改正案はおおむねこの要件を具備しているものと認められるものでありまして、われわれといたしましては衷心から賛意を表する次第であります。今次の改正案警察設置単位府県一本とするという立場をとつておることは、われわれがかねてから強く主張し、心から熱望して来たところに合致するものでありまして、私は全幅的にこれを支持する次第であります。  今回の改正案の趣旨といたしまするところは、極度に細分化された警察を集約をして、その機能能率的なものに持つて行き、あわせて経費節約をはかろうとするところにあると思います。従来から国警自警の二本建という言葉が用いられておるのでございますが、自治体警察はそれぞれ個々の独立した警察でありまして、たとえば大阪府について申し上げますと、国警が一、市警が十七、町村警が八でありますから、私はこれは合せて二十六本建と言うことがむしろ正しい言い方であると存じます。従いましてこれを全国について申し上げますと、国警を別といたしましても、市警が二百七十、六、町村警が百三十、合計四百六にも上る警察がそれぞれここに独立して存在しておるということになるのであります。これを府県ごとに一本化した場合におきましては、第一に能率の面におきましても、また経費の面におきましても、いかに画期的な改善が期待できるか、論議の余地はないと私は思うのであります。従いまして一部において主張をされておるように、五大市警を存置するというようなことにいたしますならば、改正案の趣旨とするところはまつたく没却されると私は考えておるのであります。すなわち大都市を持ちまするところの府県実態は、大都市を頭として、その他の地域を胴体として、有機的なつながりを持つて一体となつておるのでありまして、大都市郡部とは、行政的にも、また経済的にも、また社会的にも、密接不可分関係にあるのであります。事実実際的にも周辺部との境界は存在しないのであります。  このことは、五府県共通の状態でありますが、例を大阪府にとりますと、大阪市を中心としてあらゆる交通網が放射状に伸びておりまして、日夜百五十万人を越えるおびただしいところの人々が流動しておるのであります。おそらく大阪市の人口は昼と夜とで六十万から七、八十万程度相過があるのであります。かくのごとく出入りが頻繁あでります。このことが、私は府民生活実態であると考えるのであります。私は警察行政についてはしろうとでございますが、しろうと常識論をもつていたしましても、犯罪には国境がないと言われております。また犯罪は時と所を問わず発生するものであります。管轄権には関係なく犯罪は行われると私は信じております。都市犯罪行つて郡部に逃げ込む、郡部での犯人が市内にひそむ、これが大都市を持つ府県犯罪実態であります。大阪府では、大阪市以外の国警とかあるいは自警で検挙した件数の三〇%までは、大阪市に関係を持つておるという事実があります。大阪市以外のところで検挙したものをよくよく調べてみると、その件数の三〇%は実に大阪市に関係を持つておるというこの実事を、われわれは深く考えなければならぬと考えております。  今日深刻な社会問題であるとして覚醒剤の事案について申し上げますと、国警すなわち郡部において取扱つた事件の中で、その密造元は五五%までは大阪市内にあつたのであります。郡部であげた事件が、市内にその根源を持つておる。しかもこういう事件は五五%まで大阪市内関係があるという事実、こういう点から見ましても、今日われわれの最も力を入れなければならぬ青少年の防犯対策につきましても、こういう実情から見まして、都市を含めた府県一体対策を必要とするということは、論をまたない。おのおのにおける警察では目的を達しないという事実を私は申し述べたのであります。犯罪交通機関の発達に伴いまして、最近ますますスピード化して参りました。また悪質化して参つたのであります。このように、大都市中心とした犯罪実態から考えまして、何と申しましても、当然に警察統一的一元的運営が今日におきまして何よりも必要である。なお今後におきましても、この警察統一的運営というものがなければ、治安は保てないものであると私は信じております。  一方警備方面からいろいろ考察をいたしますと、例の革命勢力組織態様は、中央を頂点といたしまして、都道府県及びその末端まできわめて統制のとれた完全なものであるように私は承知をいたしております。その活動におきましても、国警自警管轄関係なく行われております。いなむしろその国警自警管轄区域の盲点を突いてこれが行われておるということは、私は大阪府知事といたしまして七年間奉職をいたしておりますが、現実に身をもつて体験をいたしておるところであります。かの全国を震駭せしめました昭和二十七年六月二十五日の吹田事件がこの適例であると思います。また二十三年の四月における大阪府庁不法占拠事件、また兵庫県庁不法占拠事件、さらに日鋼、平、下関事件等、いずれも同種のものとしてわれわれの記憶に新しいものがあります。私は吹田事件その他につきまして、国警が悪いとか自警が悪いとかいうことは絶対に申し上げません。私の考えでは、こういう事件こそまさしく現行制度の欠陥を余すところなく露出したものであると確信をいたしております。あるいは小さなことかもしれませんが、私みずからが身をもつてしばしば体験したところを申し上げますと、デモ隊大阪府庁知事室の前の廊下や庁内を横行して、数千の者が不穏の動静を示した場合がありました。こういう非常災変の場合におきましても、私の部屋のすぐ隣室には国警隊長がおる、なおまた警察官もたくさんおりながら、その取締り市警所轄署に連絡をしなければかつこうがつかない、こういうことを考えてみましても、いかに不自然であり、私は実際に割り切れない感じを非常に感じたのであります。こういうことでは治安は保てないと、非常に情なく感じたのであります。また兵庫県庁におけるデモの場合におきましても、検事正、知事、市長、市の警察長等が一室にとじ込められまして、暴徒朝鮮人の解放という約束をなさつたことを私は記憶いたしております。こういう事案を見まして、いかに統一的なものでなければ治安が保ちにくいか、目的を達せぬかということを、現実に私は痛感をいたしました。このほかに交通取締り風俗取締りにつきましても、同じ府県内で経済的、行政的に統一であるべきものが、この警察の管区が違いますために、その統一と公平を欠く事例があるのであります。こういうことは、つまるところ住民の不安というものを起し、また住民に不利を与え、住民に不便を招くこととなるのであります。  以上申し述べましたように、警察運営の本質からいたしまして、警察は断じて府県一本でやるべきである。大都市警察を認めることは、百害あつて一利ないといわざるを得ないのであります。特に警察事犯の最も多い東京都が都警察に一本化されるのに、五大市を含む五府県のみが二元化されたような警察を持ちましたならば、そのために住民が不利益をこうむらなければならないというような理由はごうまつもないと私は信ずるのであります。  次に、経済的効率の問題についてでありますが、機構が簡素化せられた場合、現実本部要員を初めといたしまして、人員配置重複が避けられると私は考えている、また鑑識、通信、教養等の施設の重複が排除せられるのでありまして、経費がそれだけ節減せられることば明白であります。私の考えでは、五大市をそれぞれ府県警察に一本化した場合におきましては、経費節約は実に莫大なものがある、しかも能率は非常に上る、かように確信をいたしております。  次に、府県警察警察国家再現の道につながつているではないかという論があるかもしれませんが、これはいたずらに幻影におびえてなすところの論議であります。あるいは多分に政治的意図をもつて、ためにせんとするところの主張にほかならないのでありまして、まつたく独断的な観念論であると私は断言せざるを得ないのであります。新憲法のもとにおきまして、中央地方を通じ、議会中心政治形態が確立せられている今日、そういう心配は無用であると思うのであります。旧警察時代の罪科と称せられるものは、よく考えてみますと、必ずしも警察組織のみによつたものではありません。いわゆる行政執行法あるいは治安維持法あるいは治安警察法を初めとして、幾多の悪法があつたからにほかならないと私は考えております。国民の良識と民主的な監視及び議会の権威が、この種の悪法を再びつくるはずはない、かように私は信じているものであります。改正法は、民主的保障政治的中立性保持のために、地方公安委員会制度を強化して、従来の運営管理権のほかに行政管理権をもこれに与えて、中央統制の弊に陥ることを防ぐとともに、地方議会による審議を通じまして、民意の反映をはかつて行く、住民の批判と監視のもとに、警察民主化管理の十全を期せんとしているものであります。  これを要しまするに、府県地方自治法上普通の地方公共団体であります。府県警察は、議会公安委員会等による民主的な運営十分保障をされているのでありまして、一部論者の主張するがごとく、おいこら警察になるとか、警察国家になるとかの心配はごうもないのであります。今日はすでにすつかりと時勢がかわり、民主主義時代であります。  ただここで一言申し上げておきたいことは、警察制度改正のねらいというものが、警察機能能率化と、もう一つ責任明確化をはからんとするという点にある以上、府県警察に対するある程度の国家の関与は、やむを得ないものとしてこれを容認するところではございますが、同時にあくまでも私たち民主的保障を失わないように万全の措置が講ぜらるべきであると思うのであります。従いまして、こういう見地からいたしまして、府県警察管理する府県公安委員会が、府県警察本部長の任免については、十分な発言権を持つよう配意の要があるものと思うのであります。  現在わが国はきわめて重大な時局に直面をいたしております。私はこの重大な時局に際しまして、あらゆる不合理なもの、非能率なもの、不経済なもの、こういうものを含んでおるところの諸制度というものを一新いたしまして、真にわが国情に即応した施策というものを強力に推進して行かなければならぬ時期であると信じておるのであります。全国知事会、また都道府県議長会全国町村長会全国町村議長会等もみなひとしく府県警察の一本化を衷心から熱望をいたしております。大都市に特例を設くることは、今日の時代に合わないと決議をいたしておる次第でございます。  私は以上述べました意味におきまして、府県自治体警察に一本化せられんとする本案に対して賛意を表し、その成立の一日もすみやかならんことを衷心より念願を申し上げる次第であります。  御静聴を感謝申し上げまして、私の公述を終らせていただきます。ありがとうございました。
  4. 中井一夫

  5. 徳田与吉郎

    徳田公述人 私金沢市の議長徳田与吉郎でございます。今日地方行政委員会におきまして、警察法改正案に対しまして私ども意見をお聞きとりくださいます機会を与えていただきましたことを、深く感謝申し上げます。私は地方一議会の長をいたしておるものでありまして、一定の職業のかたわら地方政治に参画いたしておるのであります。従いまして、今日陳述いたしますにつきましても、専門的な問題は私の深く知らざるところであります。ただ私は従来から一市民でありまして、この一市民地方議会をおあずかりいたしまして、つくづくと今日まで実際に携わつて来ましたところの経験から割出しまして、どうしても今度の警察法改正には納得できない、こういうところから私どもはこの問題に対する考え方が出発いたしておるのでありまして、どうかさようにお聞きとりを願いたいと存じます。  結論から申し上げますと、ただいま申し上げましたように私どもはどうしても都市警察を、都市警察と申しますよりも、むしろ治安維持市町村固有事務である。これが今日の政治形態の根本問題であると私どもは思うのであります。従来私は政治には全然関心を持つておりませんでしたが、戦後こうした地方議会に携わつてみますと、どうしても地方仕事には、国家的な仕事よりもむしろ地方住民意思を反映しなければならないものがたくさんある。たとえてみますと、橋を一本かけまするにも道を一本直しますにも、それがいたみますと、附近の住民がその日から非常に困難をする。これは問題がそれるかもしれませんが、今日では橋一本かけるにも国の補助、県の補助がいる、だからその補助がきまらないとその橋が直せない。金沢市におきましては昨年大水害がありましたが、いまだに復旧ができないで橋がかけられない。橋がなくては住民が一日も耐えられないけれども、国と県の補助がなければ今日の地方財政ではどうしても直せない、こういう実態があるのであります。警察法も同じであります。犬養さんの提案理由には不経済である、非能率であるということが主眼のようでありましたが、その非能率の中には国家的な治安関係の問題を非常に誇大におつしやられたようであります。犬養さんのみならず、齊藤国警長官その他専門家方々も、誇大にこの国家治安の問題を取上げられておるようであります この点に対しまして、私ども納得が行かないのでありまして、今日地方自治警察の持つております仕事は、その大部分が風俗警察、あるいは防犯警察交通警察といつたふうな、国にあまり関係をしない地方住民と最も密着した事務が多いのでございます。ほとんどその九割まではこうした仕事であろうと考えております。私どもももちろん国民の一人でございますから、国が要請する治安維持に関しましては、反対する理由一つもないのであります。不経済であり、非能率である、こういう面に関しましても、私どもはその考え方には同調するのでございます。しかしながら今申し上げましたように、地方住民に最も関係の深い仕事が八割もある。そうして今誇大におつしやられるところの国家的治安事件はそのうちの一割か二割である。こうした専門的な問題につきましては、おそらく午後熊本の警察長あるいはその他専門的に仕事をしておられる方々から具体的に数字をあげてお話があると思いますので、しろうとの私は差控えますけれども、おそらく今日の国家的治安問題に対する情報でありますとか、取締りでありますとか、その他この問題にかかっておられる警察官というものは、おそらく一割にも満たない数ではないかと思います。いかに今日、国家的治安に不安を持たれるとは言いましても、その三倍も五倍も必要であるということは、警察を縮小することによつて経費を節減しようという考え方を持つておられる以上は、私は政府には毛頭そういう考え方はないと思います。そうといたしますれば、この都市警察が持つております大半の仕事というものが、先ほど申し上げましたように、最も住民と密着した仕事が多いのでございます。こういう観点からいたしますと、何としてもこれは一般市町村固有事務と同様に住民の利益を最も擁護し、住民意思によつて動くところの自治警であることが本旨であります。これが今日私どもがどうしてもこの法律をつくられるときにお考え願いたい一つの大きな問題点であります。先ほども申し上げましたように、不経済であるとか、あるいは非能率であるとかいう問題に関しましては、私どもといたしましても検討しなければならないことは十分考えております。しかしながら逆に考えますと、一体国は今日までこの自治警に対して、非能率であるとかあるいは経済的でないという問題について、何か改正をするとか改善をするとか、そういう方面に対して示唆を与えるとかあるいは指導するとかいうことが一ぺんもなかつた。こういうことは私どもにとつてはまことに奇怪であります。憲法の第八章においては明確に地方自治体の権限を認められておる。この本旨従つて地方自治法ができておる。地方自治法には公共治安維持市町村固有事務であるということが明確になつておる。私どものような一般住民は、そうした民主的な政治日本の基盤であると信じ込んでおつた。しかも経済の問題にいたしましても――私は金沢でありますが、金沢のことだけ申し上げて非常に恐縮でございますが、自己財源は、いわゆる税その他によつてまかなう私どもの予算は、十五億のうち七億ほどであります。そのうち一億五千万ほどを警察費にかけております。過去四年、五年私どもはこの警察というものがほんとうに住民を守るものであるという考え方で、苦しい中からこれを育成して来たのであります。ところが今日それを一ぺんも改善示唆あるいは指導も与えないでただちに取上げて行く、そういうことが一体住民自治の気持を植えつける足しになるかどうか、これは私どもの悲痛な叫びであります。もしどうしてもやらなければならぬのならば、地方のわれわれに、あるいは執行部に相談をして、こういうふうにしたらどうだ、ああいうふうにしたらどうだと言つた上で、それでもだめだということならば、私ども国民の一人として納得行くけれども、何らそういうことなしに突然これを国家警察にしてしまうということは、私どもとしてはどうしても納得が行かない、こういうふうに考えております。  それから、それでは都道府県もやはり憲法では市町村と並立した地方公共団体であるからこれは民主警察ではないか、それは私ども納得いたします。従いまして、私ども都市におるから都市警察を残さなければならないという考え方は毛頭持つておりません。これははつきり申し上げます。私ども住民に直接関係のある多くの仕事を持つておるんだから、当然住民意思によつて警察運営されればいいのであつて、もし都道府県市町村と並立した完全なる地方公共団体でありますならば、私どもは何ら異議はないのであります。ところが御承知の通り今日では地方制度改正をめぐりまして、私どもには都道府県というものの性格が明確でない。これははつきり申し上げます。都道府県性格一体どうなつて行くのかということが、私どもには心配でならない。たとえてみますと、警察法もその一環でありましようが、警察法現実に立法化されて、今皆様のお手元で御審議をされておるわけであります。ところが知事が官選になるといううわさが出ております。うわさをたてにとつてここで申し上げることは非常に恐縮でありますが、私どもは責任ある方から、お前たち意見はどうかということを再々聞かれます以上は、そういう考え方が確かにあるということは事実であると私ども思います。また責任ある方が、都道府県性格公共団体のほかに、たとえば大幅に国の事務を取扱わす性格を持たせなければならないということもはつきり言つておられます。都道府県が完全自治体のほかに国の事務を大幅に持つ、そして知事が官選になる、こういうことを聞かされ、さらに今警察都道府県に一本化されて行く。この性格はつきりしないうちにそこに持つて行かれることに対して、私ども大きな不安を持つておるのであります。かりに都道府県性格が大幅に国の事務を取扱うところになり、あるいは昔のような地方事務制度ができ、知事が官選になりますならば、市町村というものはまつたく昔のように都道府県の下風に立たなければならない。私ども都道府県市町村が下風とか上風とかいう考え方は全然持つておりません。しかしながら法の組織がそこに行きますと、当然そういう現象が出て来るのであります。私ども直接そのころはタツチしておりませんでしたが、戦前は明らかにそうでありまして、市町村というものはほとんど国と県の事務を取扱つてつた事務所にすぎなかつたのであります。それがようやく今日民衆の意思によつてある程度の行政権を与えられ、それを実行するようになつておるのに、今また元へもどるという不安があるときにこれを取上げるということは、私どもにはどうしても納得行かない。もしやつていただくならば、地方制度を全面的に改正して、これらの問題をはつきりさせたときにこれを一緒に取扱つてもらうことは――私どもとしては、そのときにはそのときの考え方で行きたい、こういうふうに考えております。  私どもは、はつきり都道府県自治警察を維持しようという考え方ではないので、与えられた民主政治――住民意思をなるべく大幅に取上げる政治というものが日本政治の根幹であるならば、今中途でその芽をつむような法案をつくつていただくことは、どうしても私どもには納得行かない。これは単に警察だけの問題でなしに、日本国民全体の自主的に政治をやるという意欲をもぎとる大きな原動力になるから、これは日本の将来のためにはどうしても考えていただかなければならぬところではないか、こういうふうに私ども考えざるを得ないのでございます。  もう一つ、そういうことを離れましても、今の法案は形は都道府県警察でありますけれども、その内容は、まつたくこれは中央でベルを押せば全国が一齊に立ち上るところの国家警察であるということは、専門家の皆さまの方で十分御了承のことと存じます。国家公安委員会の長は国務大臣である、警察庁の長官は内閣総理大臣が任免権の主体性を持つておる、地方の長は警察庁の長官が任免権の主体性を持つておる、こういう形におきましては、いかように仰せられましても、われわれ住民の側から見ますと、これはやはり中央でベルを押せば地方がそれによつて一齊に動く警察であると見るよりいたし方がない。しかし、私ども中央とか地方とかいう問題はさほど重要に考えておりません。中央はやはり私どもの選びました皆さんによつて運営されておりますので、それが民主化されれば同じく中央で出て来たものも民主的だと考えておりますけれども、何と申しましても任免権を持つと、その任免権を持つた人の考え方というものは現実には大きな力を持つて来る、これはあらゆる面において現実の問題であります。いかに言葉がきれいであり、形がきれいであつても、実際に動かされることによつて住民の利害問題は生れて来るのでありまして、ここらの点も良識ある皆様に十分御勘考を願いたいと思うのであります。  まだいろいろ申し上げたいこともありますが、専門的な、いわゆる不経済というような問題に対しましては、執行部でありますところの大阪市長がおそらく言及されると思いますし、また能率の問題に対しましては――今私が申しましたような実際に国にあまり大した関係を持たない、住民意思によつてその七、八割も行う警察行政の内容、あるいは国家治安警察におけるいろいろな問題、特に誇大に取上げられております吹田事件、平事件とか内灘問題とかいうようなものについても、それぞれその当局から説明があると思いますので、ただ一点、内灘の問題について申し上げたいと思います。私は金沢でありまして、内灘は私どもの近郊でございます。斎藤国警長官が私と一緒りある席で陳述をされました場合に、内灘の問題はどうも自治警があつたからああいうへまなことになつたのだとおつしやつたけれども、私がここで百万言を費すよりも、私ども地方にお出ましになつて、そのときの実情がどうであつたかを十分御調査くだされば、どつちの言い分が確かか明瞭になると思いますので、私はここで水かけ論はやめたいと存じます。  以上はなはだずさんでございますが、私は一住民として、この私どもに与えられた民主的な地方公共団体を預かるものとして、どうしても今度の警察法は――私どもは今の警察法が完全だとは申しておりませんので、不経済の点、あるいは非能率的な点、あるいは国家治安関係の問題に対してだれが責任を負うか、こういう問題に対しては、今の警察住民固有事務であるという考え方に根底を置いて、そしてそこに現状のいろいろなものを勘案した法案が、現在においては必要ではないか、そして、根本的に改正するならば、都道府県性格はつきりして、これが完全自治体ということに結着すれば、私どももまた考えを新たにして協力することにやぶさかでない、従いまして私どもはこの警察法を根本的に、今政府考えておられるように改正せられるならば、地方制度全般にわたつて抜本塞源に改革してもらいたい。ものの一部だけを改革して、全部をおろそかにするようでは、どうしても地方議会をあずかり、地方政治をお世話しようとする私どもにとつては、やつて行けない。こういうことをどうぞ御了承の上で、十分なる御審議の上私ども意思のあるところをおくみとりくださいまするよう、切にお願いを申し上げまして、私の陳述を終りたいと思います。
  6. 中井一夫

  7. 戸倉嘉市

    戸倉参考人 犬養国務大臣の警察法案提案理由説明という説明書を見ますれば、要約するに、現行の警察法は、戦後早々の間に占領政策一環として施行せられたもので、戦前のわが警察制度を根本的に改革して、民主警察の理想を高揚したものであるけれどもわが国の国情に適しない点が多く、運営の結果は非能率で不経済であるから、この警察制度を根本的に刷新しなければならないというのがこの理由であるのです。端的に申し上げれば、これは戦前の警察制度に復元しろというような意見であります。私はこの点において根本的に反対であります。  第一、われわれは第二次大戦争の結果におきまして、国民はあらゆるものをなくした。領土もなくし財産もなくした。ただ残されて、かつ得たものは民主主義だけであります。この民主主義というものを日本再建のための一枚看板といたしまして、これに基いて日本は再建しなければならないという基盤に立ち入つて、その基盤の上におきまして、日本再建のためのいろいろの行政制度が打立てられておる。その打立てられているいろいろの行政制度を、このごろになりまして、あれは占領政策の行き過ぎであつた。これは是正しなくちやならないからという名目のもとに、一つ一つそれをくずそうとされるのが、私は現今の政治趨勢のように感じられまするので、実にこれは悲しむべき現象ではないかと思つております。一体国民の生命、自由、財産を保護する重要なる任務が警察の責務である。この重要なる任務を、戦前の警察制度におきまして、はたして完全に全うせられましたでしようか。むしろかえつて人権蹂躪の事実が各所に勃発せられたのであります。その人権蹂躪の事実が起つた反対に、時の政府は、独善政治を行う上に非常なる力と便宜が与えられておつた。その弊害を除くために、国会は警察法を制定するにあたりまして、主権在民の憲法の精神に従い、地方自治の精神を推進する観点より、国民に属する民主的権威の組織法として、現行の警察法は制定せられたと警察法の前文に明記してあります。この信念、この理念というものを私は忘れてはならないと思います。もとより戦後早々の間に施行せられたものでありますから、その運営のいかんによつては、あるいはわが国の国情に適しないものもある。若干の不経済、非能率というものも、これは争うことのできない事実である。それだからといつて警察制度を復元しなければならないという理由は、私は成り立たないと思う。何となれば、わが国は御承知の通り数百年にわたる封建制度のもとに官僚の暗黒政治が行われておつた。そのため日本国民の感情というものは萎縮せられておつた。現在でもなお私は国民感情のうちには昔ながらの封建制度の残滓がからだにこびりついておる部分があると思います。われわれがほんとうに制度の上において民主主義を認み、民主的自治国民となつたのは、わずかに十年に足らないのであります。この間に民主主義のもとに立つたところのいろいろの制度が、国情に合うとか合わないとかいうのは、あまりに気が早過ぎはしないでしようか。国民感情というものは一朝にして是正せられるものではないと私は思う。時を経て、訓練によつて、教養によつて、初めて国民感情が変革せられるものである。ちようど春先きわれわれが種をまく。芽ばえがする。種をまいて芽ばえがしたから、すぐにそれに実がなるだろうというのは、少し無理ではないでしようか。実がなるには、一定の時期を待たなければならないと思う。ですらか、あまり早急にわが国の国情に適しないから、ただちに戦前の警察制度に変更しなければならないというのは、むしろこれは改悪法である。枝をためようとして幹を殺すようなものである。本末転倒もはなはだしいものである。むしろ現行の警察法を将来完成せんとするわれわれ民主国民のためにこれを培養維持しなければならない。その培養維持育成のために政府国民も協力して、不断の努力をこれに払うべきものではないでしようか。こういうような根本の立場から、現在の警察制度並びに警察法を見ますれば、日本全体のうちには財政的にきわめて貧弱なる町村があります。そして警察制度を維持できない、費用がないから国警にお願いしますといつて自治体警察を返上したところの町村が相当ありますけれども、それあるがゆえに自治体警察を放棄したものではない、民主主義を放棄したものでないと思う。それらの町村の住民というものは、その町村内における最低生活すら維持できなかつた。まことに窮迫なる現状に立つのであつて、われわれはそれに対しては同情しなければならないと思う。その状態は、あたかも一月日本が、何と言いますか、へんな言葉でありますけれども、独立国であつて、武力を持つていないというわけで、間接、直接の侵略に対しまして、これに備えるために国連にお願いしようじやないか、MSAにお願いしようじやないか、こういう気持と共通な観念があると私は思うのであります。でありますから、地方公共団体のうちにおきましても、みずから進んでわれわれは本質に従つて地方自治警察を維持しなければならない、ぜひとも盛り立てて行かなければならないという地方公共団体に対しましては、あくまでも政府はそのために協力しなければならない。その本質的自治体警察を維持しなければならないと私は思う。いわんやその自治体において、相当の財力も持つておる。その備えておるところの警察設備というものも完全なものである。何ら間違いがなかつた経験に徴してよかつたというものに対しては、当然その自治体警察というものを維持しなければならない。同時に、その育成に対しては大いに協力しなければならない。私はそう思う。すなわち、六大都市警察というものは、自治体警察をそのまま残さねばならないと私は思う。一体人口は都市から増加する。警察対象も都市中心であります。自分の生命、財産、自由等の保護というものを自分の手でやらなければならないという民主国家都市住民におきましては、その警察権を、自治体警察に対してのみほんとうに安心して托すことができる。私はそう思う。親しみという観念、つまり警察は自分の生活に直結していなくちやならない。日常生活と密接なる関係になければならないという自治の本義から見ますならば、自分の手で自分の財産を守るという観念からして、自治体警察というものはあくまで残さなければならない。同時にまた、ある人は、東京を除く五大都市自治体警察を解消した場合においては、約三万人かの人員が軽減せられ、二十五億の経費が節減せられるというが、まことにけつこうではないか。また、やめようじやないかというような議論もあります。これらの議論は、民主警察を維持しかつ育成しなければならないという建前からしますれば区々たる問題であつて、あえて論議の必要はないと思いますけれども、とにかく二十五億という金の問題でありますから、なぜそういうぐあいになるかということを一応考えてみたいと思うのです。そもそも現在の警察法ができました制定当時の状態というものは一体どうであつたでしようか。日本に事実上の武力はなかつた法律上の武力はむろんなく事実上の武力はなかつた当時でありますが、その当時におきまして、直接、間接の侵略が予想せられた場合に、警察法には非常事態宣言をするとなつておる。その非常事態宣言に対する対策のためには、一体何をしたらいいのかというので、これは警察力をもつてそれに対することを手段といたしておつた。すなわち、国防的な警察力というものがそこに設けられた。この国防的な警察人員というものは、本質的な警察人員に水増ししてつけ加えられておつて、包括的な警察人員ができていた。でありますから、一体国防的に使用せられる警察人員は平生はいらない。いつかはこれがなくならなくちやならない運命にあつたもので、この警察法改正するとかしないとかいうことには、何ら必然的な関係がない人員です。そうして、今みなさんが手元にお持ちのように、現実の事実として国会に国防関係の二法案というものが出ておりますが、これが通過したら一体どうなるのです。むろん通過するのでありましようが、これが通過した場合におきましては、自衛隊員というものが大量に募集せられ、それが採用せられる。一方警察人員というものは整理せられる。整理せられたところの警察人員というものは、それらの人々がハンマーを持つて工場に通う人は少い。くわを持つて農村に帰る人も少い。多くはやはり自衛隊員の制服に衣がえをする人でありましよう。しかる場合におきましては、国民の負担の面から見ますれば、警察費として出すのも自衛隊費として出すのも同じで、ただひきだしが違うだけだ。このひきだしから出すのと、このひきだしから出すのとの違いだ。かような関係から見ますれば、五大都市警察が解消したならば二十五億の金が節減せられるではないかというようなことは、議論としては私は顧みたくないのであります。この議論はとうてい顧みられない。  さらに改正案におきまするところの内容の骨子、犬養国務大臣のあげているところの骨子について申し上げますれば、第一は公安委員会の問題であります。第六条に「委員長は、国務大臣をもつて充てる。」とあり、第十六条には、警察庁の長官は、内閣総理大臣が国家公安委員会意見を聞いて任命するとあるが、この第六条というものがたいへんな問題である。政治上中正公平でなければならない公安委員会というものに、時の政府政治色が入つて充満してしまう、それによつて公安委員会の中立性というものはその本質的な意義がなくなつてしまう。その公安委員会に入る国務大臣は、多くの場合に政党員であります。また、政党員でない国務大臣がありといたしましても、そのときの政府の政策に同調するものであるということは間違いない。でありますから、政党政治に超然として、しかも無色中正でいなければならない公安委員会というものが、時の政府の政党色一色に塗りつぶされた一つの舞台が出て来る。この舞台装置の上に、第十六条によりまして、警察庁長官というものが全国警察長を引連れて颯爽として現われて来る。全国警察長警察長官の任命したものであつて、しかもこれは国家公務員であり、地方公務員ではない。それを引連れてちやんと舞台の上に入つて来る。そして、何でもできるような仕組みがそこにできるのであります。これは、時の政府――今の政府ではなく、時の政府の政策を実行するためにはきわめて便利で、同時に、自由自在に警察活動ができるような制度となるのであります。こういう場合を考えましたときに、一体どうなりましようか、これが私は心配である。むろん架空の議論ではありまするけれども、そうすれば、この間問題になつたような、いろいろな条件付の逮捕を許諾するとかたんとか、非常に苦心さんたんたるような行動をとらなくても済むような状態になるかもしれない。また、もしもその態勢のもとにおいて総選挙が行われました場合には一体どうなるでしようか。全国地方の選挙情勢というものは、警察庁を通じあるいは検察庁を通じ、自由自在に中央に正確な情報が集まつて来て、その正確な情報によつて時の政府が有利なる選挙をなし得るということが考えられるかもしれない。またそのかわりに、警察庁長官であるとか、警視総監であるとか、あるいは警察長というものが引責辞職しなければならないというような場合が起るかもわからない。往年の内務三役というものが、総選挙の結果引責退職したという例は皆さんが御存じの通りでありますが、かような状態が起るかもわからない。かように警察の権力というものを政府の手中に掌握するという制度は、政府が政策を実行するためには最大の便利であるが、しかし、警察に生命財産という基本的人権を託するところの国民大衆のためには、この上ない最大の不便である。でありまするから、われわれは国家公安委員会の中から国務大臣だけは締め出さなければならない。入れないということです。同時に、警察庁長官の任命権というものは公安委員会において掌握しなくてはならぬ。この二つの条件において初めて民主警察を維持することができると私は思う。これだけが民主警察を維持する一つの防波堤になる。都道府県等の公安委員等に関する議論も、これに準じてお考えになれば私はいいと思います。一体政府は戦前の警察制度が非常に悪弊があつたという点を御存じないかというと、十分熟知しておられる。知つているんですよ。知つている証拠にはこの法案にも現行法にも、公安委員を選任する場合に資格条件をきめておいて、公安委員たるべき者は警察官の前歴がある者にはさせないということがちやんと書いてある。警察官の前歴のある者は公安委員になれないということは、その前歴が非常に悪かつたということをみずから知つておるのじやないでしようか。そういうことを知つておりながら、なおかつこれをあえて行わんとするのは、要するに権力を集中したいという観念以外には私はないと思うのです。  このような建前より私は結論を申し上げますれば、政府警察法改正の企図は、市町村自治体警察制度を廃止し、府県単位の警察制度の創設に籍口し、一切の警察人事指導権をその手中に掌握し、もつて中央集権化せんとするものである。これは日本憲法地方自治法及び警察法に一貫せる主権在民の民主主義、これに基く地方分権の基本的原理に背反するのみならず、これが立法化されたあかつきには官僚主義の復活となり、人権軽視の思想を助長し、人権蹂躪事件を頻発せしむるや必至であると思いますので、これに反対いたします。
  8. 中井一夫

    中井委員長 赤間、徳田、戸倉公述人の御陳述は終りました。引続き委員諸君から三君に対し質疑を進められんことを願います。質疑は通告の順によりましてこれを許します。藤田義光君。
  9. 藤田義光

    藤田委員 ただいま三公述人の非常に有益なる公述を傾聴いたしたのでありますが、私は数点にわたりまして主として大阪府知事公述になる内容のうち、特に瞬間と考えます点に関しまして、きわめて簡単に質問してみたいと思います。申すまでもなく、大阪知事全国一万の自治体の最右翼の有力なる自治体の首長であります。従いまして国会における公述は全国民が非常な関心と注意を払つておることはもちろんであります。かかる観点からいたしまして、私は主として地方自治の基本の問題を中心にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、まず第一にお伺いいたしたいことは、今回の政府原案のいわゆる警察法改正案は、はたして自治体警察を是認したものであるかどうか。換言すれば都道府県警察という名前ではありますが、これは自治体警察であるかどうかに大きな疑問を抱いております。先ほどの知事公述によれば、この点に関しまして大体結論として国家のある程度の干渉はやむを得ない。しかし民主的保障のため本部長の人事権等を考慮してほしいというようなあなたの結びでありまして、結論としては政府原案に賛成されている。非常にこの点に関しまして有力なる自治体の首長が、今回の改正案自治警察を堅持したものであるという前提のもとに賛成されているかどうか大きな疑問を私は抱いておりますので、まずこの点に関する明快なるお答えをお願いします。
  10. 赤間女三

    赤間公述人 今回の警察案ははたしてこれが自治体警察であるかどうかという御趣旨に拝聴いたしましたが、私は自治体警察であるというように考えております。何となれば府県自治体であると、われわれは考えているのであります。将来これがいろいろかわるかどうかというような、将来のあやふやなことを根幹にわれわれはこれを申し上ぐるのでなくして、現在府県は何といいましても自治体である。知事は公選によつてなり、自治の体形を十二分にとつていると思う。ここに府県警察を置くということは、政府もわれわれもともに自治体警察である、かように考えているのであります。
  11. 藤田義光

    藤田委員 そこでお伺いしたいのでありますが、知事公述の中に、現行法では都道府県公安委員会運営管理しか与えられていない。今回の改正案においては行政管理までいただいた、というような御発言があつたのでありますが、行政管理の重点は人事と予算であります。知事が言われまする行政管理とは、都道府県警察の最高幹部、本部長以下警視正以上を中央に握られているところが行政管理地方に移したというふうに、地方に解釈されるゆえんを非常に私は疑問に思つております。次に新たに都道府県費をもつて非常な経費の負担が出て来るのでありまして、この予算と人事を中心とした行政管理というものを与えられたという知事公述の中に、私はどういうものを実質的に与えられておりますかを、この際率直にひとつお示し願いまして、審議の参考にしたいと思います。
  12. 赤間女三

    赤間公述人 地方の公安委員は、われわれの考えでは公安委員が警察行政管理をやり得、最高の機関だと私は考えております。警察長公安委員会の下にある。公安委員会の指揮監督によりまして警察運営行つている。こういう点を私は考えているのであります。もし警察長が公安委員の上におるならば、私は考えを異にします。責任者であり、一都道府県警察をうまく実際にやつて行くのは、公安委員会が最高の機関だと私は考えるのです。このもとに警察事務をやつて行くというのが警察長以下の職員である。私はこういう考えを持つている。部下に官吏がいるからこれが自治でないというような考えは全然持つておりません。現にわれわれがやつておりますのは、職業安定に関する事務をつかさどつているものは全部国の官吏で、これが各府県知事のもとにおいて指揮を受け、いろいろな業務をやつて、その責任は知事が現在負つているというわけであります。こういう意味におきまして私はこの運営管理その他は公安委員がが最高の責任者であると思う。なお申し上げますが、これが相当の権限を事実上並びに実際上によく持つということが、今後において私は望ましいことだと考えている。  それからもう一つ、予算をほとんど大部分府県の予算で持つということにつきましては、いろいろな面におきまして府会の関係もありまして、一々予算の審議をやり、また府会には常任委員会等の制度もありまして、これが行き過ぎないように民主的な線をはずれないように、十分な指導鞭撻ができて行くものと私は確信をいたしております。
  13. 藤田義光

    藤田委員 長年官吏をやられて、公選知事になられました大阪府知事のお考えとしては、私は非常に奇怪に存じます。御存じの通り今回の警察法改正案の軸心は、人事権と都市警察の廃止であります。その一本の大きな柱である人事権、これに対する知事考え方が、私は非常に甘いのじやないかと思います。私見をさしはさむことは本日の会議の席上適当でありませんが、国家から任命されました本部長が、たとえば大阪に駐在いたしましたら、公選された知事治安に関しましては何と申しましても浮き上つてしまう。これはもう吏僚組織の常識でありまして、こういう点におきまして単に都道府県公安委員会が最高の権限をその区域内においては持つということは、赤間さん個人の希望的観測だというように私はただいまの答弁からとつたのであります。現実の官僚組織は、そういうなまやさしいものではございません。中央から任命されました本部長が行きましたならば、赤間さんあなたは有力者ではございますが、浮いてしまうことは必至であります。私はその点がどうもはつきりわからぬのでありますが、この点をいま一度聞かせていただくということと、次いでお伺いいたしたいことは現在の自治法、これはあなた方が地方自治体の首長として金科玉条とされておる一番大事な法律であります。その第二条の第三項には、御存じの通り「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること。」が自治体固有の任務になつております。この点に関しましては、徳田さんがいみじくも先ほど明快に公述された通りであります。この重要なる規定に基きまして、例の有名なる幾多の波乱を巻き起しました公安条例が実施されております。私はこれは自治体の非常に尊い経験であると考えておりますが、もし本部長が国から参りましてやられるということになりますと、こういう自治法ないしそれに基く公安条例の運命というものに対しまして、非常な疑問を抱いておりますが、現在のままで本部長が任命され、あるいは国家警察庁の組織がきまり、国家公安委員が決定いたしましても、何ら運営に支障がないとお考えでありますかどうですか、この点も重ねてお伺いいたしておきます。
  14. 赤間女三

    赤間公述人 藤田委員も御承知のように、現在は国警自警の二本建になつておるのであります。これにつきましても大阪府に関する限りにおきましては関係者の努力によつて、いろいろな問題が起り、これを改善せねばならぬということを私は痛感いたしておるので、一本建でやることが何といつても、今日の時世に合うということは、りくつを抜いて私現地において痛感しておる問題であります。私は自治の面から見まして、先に公述いたしましたように、本部長については公安委員会意見を聞くというようなことが望ましいのじやないかということを私は申し上げておるのであります。しかしながら私の公述いたしましたように、今度の改正によりまして従来よりも、もつと警察機能もよくなり、能率も上つて行く、かように私は確信をいたしております
  15. 藤田義光

    藤田委員 そこでお伺いたしたいのでございますが、非常に警察機構の一元化を強調されております。能率的であり、経済的な、一本化されたる警察制度ということを強調されまして、現在の制度は四百六本建であるというようなことも極論されておるのであります。公述の中に市で犯罪を起した人が郡内に逃げる。従つて犯人逮捕の困難が非常に深刻化している、ごもつともであります。また現在の犯罪は非常にスピード化しておるということも強調されたのであります。一本警察の面からしますと、知事さんの公述をせんじ詰めて参れば中央に一本化いたしまして、何も府県の区域に分割する必要はないじやないか。郡と市の例をあげられましたが、今度は県と県の間も犯罪がスピード化いたしました今日において、何もこういう制約をつける必要はない。むしろ都道府県警察なんか廃止をいたしまして、都道府県のとりでによつて責任者を違えるような改正案ではなくて、全国を一元化したものがこの狭い国土において最も能率的であり、経済的であるという結論が出て来る危険があるのではないかと考えます。その点に関しましてどういう観点で府県という単位が最も能率的、経済的であり、またもし全国画一的な制度にするというようなことについて御意見がありましたならば、その点に関しましてもお伺いしたいのであります。管轄区域の盲点、あるいは施設の重複等に関しましては、先般参考人に来ていただきました名古屋の市警本部長の宮崎氏の意見とまつたく反対でありまして、われわれはいずれの意見が正しいかは、今後冷静に批判いたしたいと思いますので、この点に関しましては質問を省略いたしますが、もし郡と市の間における犯人逃走、あるいは犯罪の近代化に伴うスピード化、こういうものを是正するためには、全国一本の警察都道府県という名称を廃した方が、むしろ知事さんの言われる公述の趣旨に沿うのではないか、かように考えるものでありますが、その点に対するお考えをお伺いしたい。(発言する者あり)私は自治体の首長たる知事が――これはもう世間の常識で、二人の公述人公述されたように、今回の警察法改正自治警察を守つておらぬと極論されているのでありますが、自治体の有力な首長である人みずからが、この改正に全面的に賛成であるというところに非常に不可解なものを感じておるのでありまして、その点について重ねてお伺いいたしたいと存じます。  当委員会審議はきわめて公正でありまして、与党席から不規則発言がありますが、けしからぬ。委員長から注意をされたいと思います。
  16. 赤間女三

    赤間公述人 中央一本でやつた方がもつとぐあいがよくはないかという考えを持つていないかということでありますが、全然反対でございます。これは私が全力を尽して反対をしなければならぬ理由を持つております。御承知のように府県自治体である、府県警察自治体という根拠のもとに出ておるのであります。府県において警察だけをもし二本化させたとすると合わないのであります。先ほど申し上げましたように、文化の面においても、産業の面においても、われわれのやるいろいろな仕事府県単位に現在行われて、これが自治体である。ここに自治警察を持つて来る。しかしながら今回の時代に合うように国のいろいろな点も十分考えて、自治警察であるが、警察本来の目的も達する。こういう二つの考え方を根幹に考え、国一本に持つて来るような警察には死力を尽して反対しなければならぬ。あくまで自治警察をモツトーとして自治本旨を害しない範囲において、国のどうしても必要なる部分が入つて来るのは、地方の首長としてやむを得ない、こういうふうな考え方を持つております。
  17. 藤田義光

    藤田委員 私と非常に感覚が違つておりますので、これ以上質問を重複いたしませんが、知事さんが強調されました能率経済、あるいは犯人逮捕という面からしますと、そうなつて行くのではないか、世間の常識として今回の改正自治警察をしんしやくしていない。これは国家警察改正であるという世論が相当ありますので、お感じをお伺いしたのでありますが、知事さんはこれは自治警察であるという結論でありますから、これ以上お尋ねすることを省略いたします。  次に、ほかにたくさん質問者がありますから、簡単にお伺いしたいのでありますが、現在の日本法律体系は、抽象的な問題でありますが、重要でありますから、あえてお伺いしておきます。  明治憲法を初め、戦争前の幾多の法令、詔勅はすべて大陸系であつたことは、御存じの通りであります。ところがアメリカを中心とした占領軍の影響によりまして、現在の憲法以下法制万般が英米系になつておるのであります。従いまして、多少の欠陥、国情に合わざる点はわれわれもこれを認めるのにやぶさかでないのでありますが、今回権力行政を執行する警察法という、国民の基本的権利に非常な関連のある重要法制を改革するにあたりまして、自治の根幹をなす地方自治法あるいは憲法という問題を何ら考えずして、これらの法律改正を計画せずして、唐突としてむしろ大陸系の改正警察法を上程したというところに、非常に現在の法律体系上の無理がある。これは赤間さん、長年官吏として勉強されました結果をひとつお伺いしたいのでありますが、そういう点に関しまして、われわれはどうしてもこういう改正をやるならば、地方自治法改正も断行すべきであると考えておる一員でありまして、この点に関するお考えをひとつ率直にお伺いいたしておきたいと思うのであります。私にわたりますので御遠慮申し上げますが、赤間知事の自由党総務会における発言が、巷間非常に誤解を生んでおるようでありますが、これはいずれほかの委員から質問されると思いますので、私はここで省略いたしまして、今申し上げました法律体系の問題、なかんずく地方自治法を現状のままにして新警察法を提出したところに、法律体系を根底的にこわしてしまう、法制技術上も非常に冒険があるのじやないかということに対するお考えをお伺いしておきたいと思います。
  18. 赤間女三

    赤間公述人 私が常々考えておりますことは、占領政策の一還としてやられたもののうちで、日本実情に合わないものは、すみやかに改正する必要がある、かように考えておるのであります。全部を一度に改正するということは私は困難だと考えております。占領政策中行き過ぎたもの、また行き足らなあいものもあるかもしれませんが、日本の国情に合いにくいというものは、すみやかに改正をして行くことがいいのじやないか。一度に全部のものを改正するということは、この困難な時代において私は困難だと考えておる。重要なものから、よく間違いのないように、将来に悔いを残さぬように、着々と一つずつ改正して行くということが早道である、かように私は考えております。自治につきましても幾多われわれは意見を持つております。自治法の改正につきましてもいろいろな意見を私は持つておりますが、ここでそれを申し上げる時間もないと考えます。結論といたしましては、全部のものをすつかり調査して、全部を一度にやるというようなことは困難であり、至難であり、不可能であると私は考える。そこで今私が言いましたように、日本の国情に合わないもの、改正をやることが国民の利益になり、国家の復興に役立つというようなものは、個々に取上げてすみやかに改正してもらう、これが必要じやないか、これをぐずぐずして遅れるようなことがあれば、それだけ国家の進運を妨げるようなことになりはしないか、かように私は考えております。
  19. 中井一夫

    中井委員長 門司亮君。
  20. 門司亮

    ○門司委員 私はただいま公述されました方々についてまず最初にお伺いをいたしたいと思いますのは、戸倉先生にちよつとお伺いしておきたいと思います。  警察法改正についてはよくわかつたのでありますが、私ども考えて参りますと、この警察法政府原案のように、かりになるといたしますと、次に来るものは検察庁との関係であります。いわゆる今日の警察と検察官の関係の問題については、主として捜査権は警察に与え、検察権はこれまた当然検察庁が持つておるという建前で今日の警察法なり、刑事訴訟法なりができていると私は解釈している。従つてもし警察が先ほど先生のお話になりましたように国家警察になつて、これが政党警察にさらに発展して、そうして国民の基本的人権、さらに自由が非常に大きく阻害されるような事態ができないとはだれも保証できないのである。こうなつて参りますと、やはり今日の現状のままの警察の捜査権と検察庁との関係にある、先ほど申しました刑事訴訟法の状態ではいけないのではないか。やはりある程度検察庁が公正妥当なことのなし得るようなことをここにしておかないと、往々にして片寄つた捜査権の使用が行われるような危険性ができはしないかと私は思う。従つて刑事訴訟法の改正がどうしても必要にならざるを得ないように私は考えるのでありますが、この点についてもし先生の御意見等がございましたら、この機会にお聞かせを願いたいと思います。
  21. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私は検察庁と警察との関係というものは、一体のようであつて、ときに相反目するというのが実例のように思う。検察庁は全国一体であります。検事総長初め検事に至るまで一体の体系をなしておりますので、その職責でありますところの公訴の提起に関しましては、一体としてやる。警察の方は、刑事面の警察ばかりになりますが、犯罪の捜査の第一線にあります。その調和をどうするかということになりまして、これは昨年の国会において議論になつたものだと私は思つております。刑事訴訟法の一部を改正するという法案が通過した際における論議を見ましても、あまりに検察庁の方の権限が多いと、警察が困る。そこで検察官は警察官に対して、犯罪の捜査に関する一般的の準則の指示ができるというふうに、妥協的な改正ができたように私は思つている。この一般的の指示が、はたして文字通りの一般的の指示であるか、犯罪捜査に関する具体的な指示権までにも事実上及ぶのではないかということに、事実において考えが置かれるでしようが、それが調整できましたならば、犯罪の捜査というものは、全国一体の体系になつている検察庁が中心になつて公訴をやるのでありますから、その全国一体の検察庁が、個別の犯罪に対しまして総合的に一般的の準則を指示することにおいて、そこに検事と警察との間の調整がとれますから、犯罪の罪質が大きいものであるとか、たとえば商法の特別背任罪みたいな、罪質としてはすこぶる小さいけれども、社会的な影響が大きい、こういうような事件に対しましては、検察庁が中心にやるべきものだろう、またやるだろうと思う。また今度は犯罪の個別的に、本質上非常に重大犯罪というものも、これは国警と検察の方で、今の刑事訴訟法の連繋のもとにおいてやるのではないかと思う。そういうようにすればその考えから見たならば、何も特にこれ以上刑事訴訟法を改正しなくても、このままでやはり検察庁は公訴の提起に関する責任を持ち得ると私は思います。
  22. 門司亮

    ○門司委員 次に聞いておきたいと思いますことは、先ほど大阪府知事赤間さんの陳述については、いろいろ藤田君から聞かれておりますので、重複する点を避けてお聞きしたいと思うのです。第一にお考えを願つておきたいと思いますことは、先ほどの赤間さんの御意見というものは、現在提案されております警察法の内容なり、警察のあり方等については大して触れていないのであります。非常に私は感情的のように聞きました。それは警察法改正の中にも、またわれわれの議論いたしておりますものの中にも、大して出て来ておらない。あるいは社会のもう一つの問題として、五大市を残さなければならないという運動があることをわれわれも知つておる。しかしそのこと自体が警察法を左右するものでも決してありませんし、われわれは自治警を残すか、国警にするかということで議論をしておるのであつて五大市だけを残すとか残さぬとかいうことで議論はだれもしておらない。赤間さんの警察法陳述の中に非常に感情が入つてつて、私にはおかしく聞えるのです。従つて念のためにはつきり聞いておきたいと思いますことは、これについてはかつて赤間さんの書かれたものがあります。書かれた本を読んでみますと、こういうことが書いてある。「都市警察のなかでも人口十万未満程度の小規模なものにあつては、住民の批判、監視も充分に届き、民主的統制が行われやすいが、人口百万前後の大都市警察では、住民の批判監視もゆき届かず、民主的統制が行われ難い。したがつて、人口十万未満の小都市警察警察民主化のために存置せよというのであれば、筋の通る話であるが、大都市がこれを主張することは観念論議以外のなにものでもない。」これはあなたの名前で本が書いてあるから間違いないと思う。そういたしますと、先の赤間さんの議論とは非常にかけ離れておる。百万の市が住民監視ができないということになると、大阪の府のように三百万、四百万ではなお監視ができない。私は赤間さんの御意見はどうも筋が通らぬと思う。先ほどから伺つておるのでありますが、今もここに書かれておるのと同じ御心境でおありになるか、その点を聞いておきたいと思います。
  23. 赤間女三

    赤間公述人 書いたものには記憶はありません。私の名が出ておりますか。
  24. 門司亮

    ○門司委員 そうです。
  25. 中井一夫

    中井委員長 それは門司君、何という書物ですか。
  26. 門司亮

    ○門司委員 これは明確にしておきますが、本は日本週報でありまして、表題は「警察法改正に冷戦展開」と書いて「自治体警察は廃止すべきか」という大きな表題が出ております。そうしてその中に「府県自治警察一本化の正当性」と書いて、大阪府知事赤間文三と書いてあるから間違いないと思う。
  27. 赤間女三

    赤間公述人 私は先に公述しました通りに考えております。大であるとか小であるというような関係なく、府県一本でやることが、今日の時勢に合うものであると考えております。もし十万以内云々というところがあれば、それは私は記憶はありません。そういうことを私が申し上げた考えはないと思う。私の考えの骨子は、本日公述いたしましたように、府県はあくまでも大小を問わず一本となるべきものであるという信念を私は持つております。大小を論じません。  なおまた私は府知事といたしまして、何らの感情を持つておりません。感情は、どうすれば国がよく治まり、どうすればもつとよくなるかという感情は持つておりますが、個人的な感情は全然持つておりません。
  28. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと、ここに書かれておりまする趣旨は否定されることになると思うのです。私がこれを質問いたしましたのは、私ども警察法改正につきましては、特別の関心を持つておりますので、こういう書物をできるだけ読んでおるわけです。その中にこういうことがあなたの御意見として書いてあるのですが、今そのことと非常にかけ離れた公述がされましたので、一応念のためにお聞きしたのですが、それを否定されれば、私はきようはさしつかえないと思います。  それからもう一つ聞いておきたいことは、先ほどの公述の中で府県警察であると断定されたように私は聞き及んだのでありますが、府県警察であるか、国家警察であるかということは、この問題の非常に大きな一つの焦点であります。この警察法改正は私もかどら考えれば、どうしてもこれは自治警察とは受取れない。なぜ受取れないかというと、御存じのように公安委員会委員長が大臣であつて、これが公安委員会の外におつて、しかも総理大臣がこれの意見を聞いて、警察長を任命する。任命された警察長府県公安委員会意見を聞いて、さらに警察本部長を任命するということになれば、明らかに任免権というものは政府にあるということである。人事権が政府にあるということである。従つて任免権を持つておりまする以上は、ここに行政管理といたしておりまして、行政管理の範囲に、あるいは人事、組織、予算というようなものが入るかもしれない。しかし、その中で最も大きなものは人事でなければならない。このことは先ほど御意見を承つておりますと、県会の予算その他があつて住民監視があると言われておりますが、警察というものは、そういうなまやさしいものではございませんで、秘密を要し、迅速を尊び、かつ上下一体のまつたくの団体行動のとられる組織でなければ警察機能を十分に発揮することはできないはずである。そういたしますると、国家犯罪だけにこの法律では限られて、中央から指揮、命令、監督することができる。その他の犯罪については地方自治体でと、こういつておりますが、上の任免権者というものは、自治体犯罪であるからといつて自治体の任免権者がおるわけではない。さらに指導者がおるわけではない。これは同じ国家公務員であつて、同じ命令系統を受けた諸君がやつておるのであります。従つてこの行政管理がすでに人事権を向うに握られておるということで、一つくずれておるということである。  さらにこの次に大きな問題になつて来るのは、運営管理である。この運営管理をどこでしようかということである。改正法に欠けておることは、この点が書いてない。運営管理という言葉が使つてない、現行法にはちやんと運営管理という言葉が使つてつて、そして運営管理はここれくこれこれの犯罪あるいはその他の公共の秩序を維持するということが運営管理であるという明文が書いてある。今度の警察法案には、それが書いてない。そこで今度の警察法がそのまま使われるということになつて参りますと、運営管理は明らかに警察庁が握ると思う。私はそう考えざるを得ない。そう考えて参りますと、行政管理の面でわずかに予算の面は、あるいは都道府県できるかしらない。しかし最も重大な人事権はちやんと国が握つておる。さらに運営管理を国が握つてしまうということになれば、これはどこにも自治体のにおいはなくなるのであります。私はこれでは自治体警察とはいえないと思いますが、警察運営管理の面から、これがもし自治体警察といえる面があるならば、お教えを願つておきたいと思います。
  29. 赤間女三

    赤間公述人 私は都道府県における警察運営管理公安委員会がやる、かように考えております。現在におきましても、運営管理公安委員会がこれを施行しておる。この点につきましては、改正法においても、運営管理公安委員会がやる。最高の機関としては、都道府県においては公安委員会が最高である。これの指揮命令によつて警察というものが行われると私は考えておるのであります。それでわれわれの考えといたしましては、地方の本部長の任免については、都道府県公安委員会考えというものが相当織り込まるべきであるということを、私は公述いたしております。しかしながら、今度の警察法は、やはり都道府県自治というものを考慮に入れて、自治警察の管理運営の最高機関は公安委員会がやるのである、その公安委員は都道府県知事議会の承認を得て決定する、こういうふうな仕組みになつておる、私はかように考えて、国家警察とは考えておりません。やはり元は自治警察である。ただ国の要請をある程度までこれに織り込んだものである、かように考えておるのであります。
  30. 門司亮

    ○門司委員 どうも私はその点は納得が行かないのでありますが、都道府県公安委員会がこの運営管理に当る、こう言つておられますけれども、もし運営管理、行政管理に当るということになつて参りますと、やはり人事権というものははつきり持たなければならないと思う。私はそれが警察の組織だと思う。それでなければ完全な運営管理もできません。大体他人の命じたもの、他人のやつておるものについて運営管理をして行こうというのは、これは無理な話です。ほかの状態を先ほど例に引かれましたが、なるほど職安等については今のお話の通りであります。国家公務員に対して知事が責任を持つておる。ところがこれらの問題というものは、そう迅速、あるいは秘密、あるいは上下一致の団体の行動でなければならないというほどのむずかしい問題ではありませんので、これは委託されていてもいいと思う。しかし、少くとも警察行政に関する限りにおいては、住民のほんとうの利福を守つて行こうとするにはそういうなまやさしいものではないのである。組織自体が厳重でなければならないものである。それについて、人事権を中央に握られておつて、そうして中央公安委員会が、なるほどこれの運営をするということは法律に書いてある。しかし地方公安委員会に人事権も与えていなければ、運営の権利も与えていない。私は今の赤間さんの陳述は、もう一言つつ込んで聞いておきますが、もし赤間さんがそういうお考えなら、現行法には反対だ。今赤間さんは、公安委員会にもう少し何とか権限を持たしてもらいたいという希望的意見を述べられましたが、その希望的意見が、もし、先ほどからの府県警察運営管理公安委員会に握らしてもらいたいということなら、政府原案に明らかな反対であります。従つて赤間さんは政府原案に反対の立場をおとりになるのかどうか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  31. 赤間女三

    赤間公述人 私は政府原案に筋として賛成の意を表しております。ただ、地方警察本部長の任免については、地方公安委員会意思を相当入れるということを希望として申し上げておるのであります。筋においては私は賛成である。ただ一言われわれが申し上げたいのは、地方警察本部長の任免について地方公安委員会考え方を入れるようにしていただきたい、こういう趣旨を私は公述申し上げたわけであります。
  32. 門司亮

    ○門司委員 その点はそれではこう解釈してよろしゆうございますか。赤間さんはそういう希望を持たれておる。しかし原案には賛成であるということに解釈しておいてよろしゆうございますか。その通りだと私は思いますが、念を押しておきます。
  33. 赤間女三

    赤間公述人 私の公述申し上げた通りに御了解願いたいと思います。
  34. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ、次に私が聞いておきたいと思いますことは、先ほどから申し上げておりますように、警察本旨というものが――犯罪の面から見て参りましても、地方的な犯罪があり、国家的な犯罪があるということはわかりきつておる。そこでこれを統一することのためにどう苦労するかということが、今度の警察法一つの現われだと私は思つておる。これはさつき赤間さんの言われた通りだと思う。そこで、自治警察は存置したい、またこれを自治警察と目されておる。そうしますならば、今日の現行警察法というものは、この二本建を実ははつきりしておるわけであります。そこで、もし改正しようとするならば、かりに都市警察をなくするといたしましても、この現行法の中で都市警察をなくして、都市警察制度そのままを府県に移譲すれば、それで事足りるのではないかと私は考える。何を好んで中央の組織をかえなければならないかということであります。今日の状態にあつても、警察というものは、国家組織というものがなければ警察行政は行えないのであります。だれが何といつても、府県だけの警察というようなものでは行えないのであります。それは国家犯罪があるからである。従つて、もし今日のこまかい自治警察がいらないから府県自治警察にするというだけならば、現行警察法のそこだけを削除すればそれで事は足りるのではないかというふうに考えられる。私が赤間さんに言つておきたいと思いますことは、現行警察法をそういうふうに改正しないで、上から一本になつて来るところに今日の警察法の改悪があるのである。おわかりにくかつたと思いますが、それでぜんじ詰めて聞きまするならば、この現在提案せられておりまするような中央公安委員会の組織が、一体こういう状態でいいか悪いかということ、この警察の本質に触れて、もう一度聞いておきたいと思います。
  35. 赤間女三

    赤間公述人 私が公述いたしましたのは、私は、知事といたしまして、府県警察について申し上げておるのであります。府県警察につきましては、たびたび申し上げまするように、自治警察であつてほしいという考えを根幹に持つております。それから、それに必要なる国の要求というものはいれざるを得ない時勢である、こういうふうな考え方を私は持つておるのであります。私たち地方自治の長といたしましては、自治本旨に反しない範囲において国の要求は入れるべきものであるという根本の考え方を持つております。自治本旨に反しない限度において、国の政策を織り込まなければ警察はうまく行かない、こういうような根本観念を持つておるのであります。それで、先ほどお述べになりましたように、私は国家警察という考えは全然持つていない、あくまでもこれは府県自治体であり、府県警察というけれども、これは府県自治警察という解釈を私は持つているのであります。そういう限度におきまして、私は、この二つの要望がうまく調和する点にあるということを考えておるのであります。
  36. 門司亮

    ○門司委員 あとに質問者が多いようでありますからこれ一つだけ聞いておきます。私の聞いておりますことに誤解があれば困ると思いますが、きようおいでを願いいましたのは、警察法に対する意見を聞くためであります。むろん知事さんでありますから知事さんとしての立場から答えていただいてけつこうだと思うけれども、しかしわれわれは警察法審議しているのであります。従つて、われわれは、やはり陳述の中には警察法全体に対する御意見が承りたかつたのである。そこで、今の御答弁を聞いておりますると、警察法の本質に対してはわれわれは触れないのだ、ただ自治本旨に沿つてつてもらえばそれでいいのだというようなことに結論がなると思うのであります。そうだといたしますと多少議論がわかれて参りますのでひとつ聞いておきたいのでありますが、今日憲法の九十二条で言ういわゆる自治本旨というものは、日本においては市町村をもつてその基礎的団体にするということは間違いないと思う。その通りだと思う。そういたしますると、自治本旨に沿うような警察制度にしようとすれば、今日の市町村自治警察というものが正しい姿ではないかと私は考える。府県というものはその上にあつて――上にあるということは語弊があるかもしれませんか、たまたまいわゆる今日の市町村の区域と同じ区域内にある一つ自治体である。しかもその任務とするところは広域行政である、あるいは補完行政であるということは、しばしば議論されておつて間違いないところである。従つて自治本旨に徹した警察制度が必要だという議論になつて参りますならば、今日の市町村自治警察というものが私は正しい警察のあり方であると思う。私はそうしか考えられない。私はそういう議論はしたくはなかつたのでありますが、先ほど自治本旨だという言葉が出て参りましたので、自治本旨だということになれば、私は今日の府県というものは、必ずしも自治本旨に沿うものではないというようにわれわれは考える。いわゆる仕事自体というものの分野から行けば、先ほど申し上げておりますように広域行政であり、さらに補完行政であることに間違いはないのである。だから私は今の議論は一貫しないように受取れるのでございます。  それでこれは議論でございますから、あえて答弁は求めませんが、その次に、御存じのように自治警察と今日の国家警察があるから、二重に警察があるから犯罪捜査その他について非常に不便である、これを能率化しなければならないというようなお話がある。これも長くなりますからこれ以上は申し上げませんが、私は最後に知事としての立場から明確に聞いておきたいと思いますことは、いわゆる民主性の原理といいますか、人民のために人民の行う政治の原理というものは、あくまでもやはりその趣旨にのつとつた行政でなければならないと考える。従つて能率を上げることのために、この民主行政が侵されてはならないと私は考える。ただ単に能率がいいから、あるいは経費が多少省かれるからといつて、近視眼的に自治の原理を蹂躪するようなあり方については私は賛成できないのでありますが、自治体の長としての赤間さんのこの辺の御意見を、最後に私は承つておきたいと思います。
  37. 赤間女三

    赤間公述人 私は府県市町村と並んだ普通の自治団体であるという解釈を持つております。市町村の上にあるわけでもなし、市町村と同じ立場にある自治体考えておる。ここに能率が上るように最も合理的な今日の時勢に合うように府県自治警察ができるということに、非常な賛意を私は表しておるのであります。特殊な自治団体でない、今日の府県というものは市町村の上にあるのでもなく、並立した同じ自治体である、現に公選制で、すべての形は自治体として、われわれは運営をいたしておるのであります。それで同じ自治体であるという点を私はここに申し上げておきたい。  それから自治体能率だけではいけないのじやないかとおつしやいますが、私はただ能率だけでやるという考えは持つていない、能率もよくなり、経費節約され、しかも民主の本旨に反せぬという三つの限界を根幹にして考えておるのであります。ことにわれわれが七年も知事をやつた経験から考えてみますと、治安というものは驚くべき重大なものであると私は考えておる。私が七年やつてつて一番重大だと思うものは治安だ、治安が思うように行かなければ産業も民生の安定も根こそぎになつてしまう。この治安において能率を上げるということは、私としては日本民主主義を立てて行く上において、治安を確立するということが根底をなすのではないかと思う。口にいくら民主主義を言つて治安能率が上らずして、犯人もつかまらない、たいへんなしくじつた仕事を次から次へとやつて行くということになつたら、この国は立つて行かないのではないか、治安能率を上げるということは、民主主義の確立の上から一番大事なことである。私はさように考えておりまして、私の考えとすれば自治本旨に反せぬという項目、それから十分警察本来の機能がまつとうせられるという点、なお最小の費用でそれをやつて行けるというこの三つの点を私は常に考えておるのであります。
  38. 中井一夫

    中井委員長 もうこの程度でいかがでしよう。すでに時間が一時に近うなりました。昼からは多くのまだ公述人がおるのでございますし、本委員会におきましては三人の質問者があります。門司君、あなたの御質疑は他に譲られんことを希望いたします。
  39. 門司亮

    ○門司委員 誤解があるから言つておきます。
  40. 中井一夫

    中井委員長 三人の方、よろしゆうございますか。  〔「発言させてもいいじやないか」   と呼ぶ者あり〕
  41. 中井一夫

    中井委員長 それでは門司君。
  42. 門司亮

    ○門司委員 はつきり言つておきますが、私もあなたから教わらなくとも府県の状態がどうであるかということはよく知つておる。今日の自治法を読んでごらんなさい、何と書いてあるか。いかにも今のお話は御答弁から聞いてみますと、私が府県自治体でないと言つたような印象をあなたは強く持たれてその通りに答弁されておるが、私の言葉の中にどこに府県一体自治体でないということを申しましたか。どこに私はそういうことを言つたか。府県自治体ではあるが、憲法の九十二条にいう自治本旨とは、今日市町村がその最も基礎的団体であるということを私は申し上げておるのである。その通り私は先ほどもつておるのである。従つて自治本旨に徹するとするならば、この基礎的団体にそういうものの権限を与えるということが正しい行き方ではないかということを私は言つておる。府県が今日明らかに完全なる自治体と言えますか。私は府県仕事というものは自治体ではあろうが、補完行政であることには間違いがない。今日政令の市もございましようし、五大市等に対しては特に大きな知事の権限が委譲されておるでしよう。知事市町村全部の同じような行政を行つていないことはわかり切つておる。従つて同時に五大市等に対しても国から委譲されたものが知事と同じような権限を与えられておるか、明らかに広域行政と申し上げてもちつとも私はさしつかえないと思う。私の聞いておることが曲げられて、いかにもわれわれが幼稚な議論をしているような議論をされることははなはだ不愉快である。私どもは少くとも自治本旨というものが先ほどから申し上げておりますように市町村にあるとするならば、警察行政においてもやはりこれを主としてものを考えて行くことが正しい行き方である、こうではないかといつて聞いておるのである。府県のあり方をここで議論しておるのではない。同時に先ほどの議論では治安の問題が一番心配になつて、これが非常に大きな問題だと言われておりますが、治安の総合関係というのは警察権だけで治安が確保されるものではございません。警察行政というものは社会秩序を維持することのための一還であつて、社会秩序のすべては国の行政事務にきわめて大きな関連性を持つておるということはわかり切つておる。われわれはそういうことをここで議論しておるわけでも何でもない。もし知事が今日までの警察行政の中できわめて遺憾であるというような事例等がございますならばそれをはつきり示してもらつて、そうしてそういう犯罪の起るよつて来る原因はどこにあるかということを聞いておきたい。私はそういう政治的な答弁を要求したわけでは決してない。率直にそういうことを認められるかどうかということを私は聞いたのである。もし政治的にあなたがそういうことをお答えになるならば、国の今日の政治行政の上において、はたして完全なる治安の維持ができるかどうか、私は警察権力というものは先ほども申し上げましたように、どこまでも国の社会秩序を維持する一環であつて、その立場からこれを議論すべきである。従つてこれは住民警察にするというならば、住民監視のもとに行わるべきである、こう考えておる。私がもし知事が発言されるとするならば、冒頭に申し上げました府県というものが自治体であるかどうかというような議論については、この際私は訂正しておいてもらいたいと思う。同時にまたもし非常に遺憾としてこういう事犯があつた、ああいう事犯があつた、これらの問題は警察制度の欠陥であつたというようなことが御指摘できるならば、この機会に申し述べておいてもらいたい。
  43. 中井一夫

    中井委員長 どうですかね、この問題はこの程度でお預りをいたしましよう。西村力弥君。
  44. 西村力弥

    ○西村(力)委員 赤間さんの公述をお聞きしておりましたが、犬養法務大臣の提案理由説明を少し声を大にして再び聞くような気持がしたのでございます。今までいろいろ質問がございましたので、赤間さんに対する質問はやらないつもりでおつたのでございますが、全面的に政府が出しておる案に賛成だという立場、それから最後にただいまの門司さんの質問に答えまして、治安維持が最も緊急重大であるということを、声をより大にして叫ばれた点から、どうしても一つだけお聞きしなければならないという気持になつて来た。これは法案そのものにはあまり関係がございませんが、大阪府庁が不法に占拠をされた場合に、そばに国警隊長がおるにかかわらず、何ら手を下されなかつたということに非常な疑義を持たれた、こういう御発言がございましたが、そのときには市警側では何らの動きをしなかつたかどうかということなんです。  それからもう一つは、あなたの御発言をお聞きしますと、国警隊長がおればすぐあなたがそれをあごで使つてやれるようなぐあいになることを望んでおる。そのことがその心の底にあるがごとくに聞える。そういうことではよもやあるまいと思うのですが、その点ひとつ、その際の御心境やら市警の動きについてお話願いたい。
  45. 中井一夫

    中井委員長 赤間公述人、御答弁は簡明がよいと思います。
  46. 赤間女三

    赤間公述人 大阪府庁の占拠事件につきましては、府庁は管轄大阪市警管轄になつておるのであります。そういう点からいたしまして、われわれといたしましては管轄というものは重んずるという建前をとつておりまして、占拠された場合におきましては、市警の方にいち早く連絡をとつた、こういうふうな事実でございます。
  47. 西村力弥

    ○西村(力)委員 まあそれでいいのですけれども、それでは次に徳田さんにお尋ねします。自治警廃止の一つの世間的な理由としまして、自治警があればボスが跋扈する、こういうことを言うですね。国家警察なれば個々の小さい愛すべきボスなどよりももつと大きい大ボスが出てしまつて警察権力全部がそのボスのあごによつて左右されるということをおそれるのですが、そういうことはともかくとしまして、ボスが、小ボスにせよ何にせよ、そういうものが暗躍して、警察行政が明朗性を欠くということはよろしくないことなんですが、こういう実情、それからそういうものに対して、どういうふうにしてコントロールせられておるか、こういう点について……。
  48. 徳田与吉郎

    徳田公述人 お答えいたします。しばしば私どもそういうお尋ねをこうむるのであります。私はボスなるもののほんとうの意味はどういう意味でおつしやるのかよくわかりませんが、正当に行うべきものをだれかが来て曲げようとする者がボスだ、こういうふうにかりに解釈いたして、私は御返事をいたしたいと思います。今の自治警実情を知らない方が、そういう御意見を出されるのじやないか、またいろいろ今と昔とは違うというような御意見がありましたが、事実その通りでありまして、昔ならば警察が何か言うと、あとの者は恐しがつてものを言わなかつたけれども、今日では、かりに一つの事例をとらえまして、最も手近な皆さんにも関係があり、われわれにも関係がありますが、選挙違反という問題があります。今日ではだれかがそれを曲げようとしても、投書があり、直接申達があり、検察庁からお前は手ぬるいという話がある。あらゆる方面から、警察だけがいかに特定の人から横車を押されても、住民承知しない、これはもうはつきりと自警を持つておるところの方は、みな御承知だと思います。従いましてかりに警察吏員が五人か七人か十人くらいの場所であるならば、これはまた私の考えは違うかもしれませんが、少くとも今日考えられておりますような二万、三万以上の都市、そうしたところにおきましては、もうだれかが横車を押そうとしても住民が大きく反駁をしまして、そういう横車を押せない。これが今地方実情でございますから、そういう意味のボスの存在というものは、私は考える必要がないのじやないか、ただ私ども心配いたしますのは、もつと大きなボスだ。今言うだれかの考え方によつて横車を押されるということになり、法が厳然としておつてもその法が守られない、こういうことであるならば、住民は非常に大きな意味における、知らず知らずの間に圧力を加えられる、これは言わずと知れたことでございます。私は今の政府を攻撃する意思もなければ、今の国警を攻撃する意思も全然ございません。しかし私一つ不可解なことがありますのは、現在の国警というものは、これはみな地方警察であります。地方国家警察でありまして、それぞれ地方国家警察の持つております権限は――中央国家公安委員会の持つておりますものは、人事権と予算権であります。そうして警察行政に関しましては、これは地方公安委員会が持つておる。ところが今日実態はどうかということは、私の説明するまでもなく皆さんが十分御承知であります。一体人事権と予算権だけか。中央国家公安委員会、これに付属するところのいわゆる国警の長官というものは、一体人事権と予算権だけで満足しておるのか。私は地方一議会の長でありますが、この問題については皆さんの方がもつと詳しく御存じだと思います。権限を逸脱してこの警察行政にまで大きな発言をしておると思います。今の現状でさえもこういうことが行われておる。私どもは今中央に罷免権がつながり、あらゆるものが中央につながつたときには、そういうものが一体どうなるか、こういうことが先ほど申しましたように私どもの一番心配になるところであります。私ども先ほど申し上げましたように、都道府県とか市町村とか、そういう考え方は全然持つておりません。またりつぱに議会が私どもの代表によつて結ばれておりますから、民主主義ということも議会にあると思います。しかし私ども地方でできるものは地方でやる、中央でできるものは中央でやるというのがほんとうの民主政治だ、そういう建前においては、先ほど申し上げましたように、こんなに心配になるような大ボスがおつて、非常に大きな影響をこうむるというような――とかく今の法案はそれになるおそれが十分にあるので、もうしばらく、先ほど大阪知事さんは、漸次やる、一つずつやるとおつしやつたが、私も賛成であります。私も改正は賛成でありますが、やるときには大本からやつてもらわなければいかぬ。警察は下であります。私は都道府県というものの性格は、皆さんも十分御承知の通り、何か検討しなければならない。たとえば町村合併の促進をやつておられます。これは何のためか。これは今の市町村の行政能力ではだめだ、もう少し大きくしたい、というのが皆さんの考え方で、ああいうようにやつたならば、富山では三十六町村になります。市が八つほどになります。私のところの計画は三十四の町村と市が三つか四つになります。これくらいになつたら、一つの県というものは現状であつていいかどうか。そうすると地域の問題も一つの問題であります。予算の面からいいましても、三五%しか自己財源を持つていない都道府県が、いわゆる地方公共団体で自主性を持つたものだということは、予算の面からいつても、大阪の府知事さんでも、そういうことは考えておらぬだろう。六割五分は国につながつた予算である。こういう点もやはり考えてもらわなければならぬ問題じやないか。私どもはやはり都道府県は今の法律では公共団体としておりますので、私どもこういうものは大いに考えてもらわなければならぬ。こういうふうに都道府県性格はつきりしないときに、都道府県とい一つのスケールの自治警察というものを考えられることが時期尚早ではないか、しかも犬養さんは、これは根本的な改正であると言つておられます。根本的な改正をするならば、もう少しこの先に行つて考えなければならぬものを先にやつてもらつて、それからここのところへ来てもらつても、実は断じておそくない、こういう考え方を持つておりますので、このボスの問題は、私はさような考え方で、今の方がもつとわれわれ住民に直接影響して来る関係のものでは、ボスの存在が大きくなつて来る、こういう解釈を持つております。
  49. 西村力弥

    ○西村(力)委員 赤間さんにお尋ねしますが、先ほど、知事市警側に出動を要請せられた、それに対して市警側の動きが、実にあなたにとつては御不満でございますか、どうですか。
  50. 赤間女三

    赤間公述人 私は市警の動きが不満だとか非常によくできたというようなことは申し上げておりません。私はとにかく警察の単位が大きくなればなるほど、非常に非能率になる、連絡するのにしても、急ぐときに非常な難儀を感ずる、とにかく警察というものは機動性を多く持ち、連絡その他が密接に寸分のすきもないように行かなければ、警察本来の目的を達することに不十分である、こういうふうな考え方をもつて公述をいたしておる次第であります。
  51. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私はそれ以上追究しませんが、ボスの問題に関連しまして、やはりあなたの根底には、警察府県警察という立場になれば、直接的な命令で使用できるというようなぐあいに考えておられるように聞えましたので、お聞きしたのでございます。その点はむしろそういうことのないように、ひとつお願いしたいと思うのです。  次に戸倉さんにお尋ねしますが、公述の言葉の中に、現在の警察法には反対であるが、六大都市警察自治警察だけは残さなければならぬと、限定されて公述をなされたようでありますが、あなたのお話の趣旨からいいますと、自治体警察は可能な限り残せという結論になることは当然のように思うのですが、私の聞き違いであるかどうか、その点をひとつ明瞭にしていただきたい。
  52. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私は原則として自治体警察は残さなくちやならない、自治体警察でなければならない、しかしながら弱小町村においてみずからこれを維持し得ないという客観的な情勢のあるものは、これはやむを得ないんじやないか、しかるがゆえに自治体警察を放置するという意味ではない、これはむしろ気の毒な町村である。従つてみずから自治体警察を維持したいというものに対してはぜひとも残さなければならぬ、それには国も補助しなければならぬ。いわんや財政的な力もあり、かつ設備、装備、経験において満足しておるところの六大都市、これは絶対的に必要である、こういう意味なんであります。従つて自治体警察の本質上原則としては、国が持たなくちやならないということにはかわりはないのです。
  53. 中井一夫

  54. 大石ヨシエ

    ○大石委員 戸倉先生にお聞きしますが、私は現状のままの国警自治警警察制度はよいと思つております。そこで、先ほどあなたが六大都市警察を置いたならばこれは非常によい、それでほかの警察はやめたら二十五億の節減ができるとおつしやいましたが、そうおつしやつたのでございますか。
  55. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私はそういう人があると申しました。私の申し上げたのは、五大都市を解消すれば、その解消において約三万人の人員が整理せられ、それにおいて二十五億の経費が節減されるから、五大都市自治体警察を解消せよという議論が一部にあるが、それは無根の事実に立つ議論であるということを申し上げたのであります。従つて大都市といえども自治体警察を当然維持しなければならないということを、結論として申し上げておるのであります。
  56. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しからばほかの自治体警察はやむを得ずしてやめてもいいが、この六大都市警察を置いてもよいということでございますね。
  57. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 簡単に申し上げます。他の町村といえどもやめてもいいのではない、やめてはいけないが、気の毒だ。私の観念を申し上げたのです。理念的にはあくまでも自治体警察でなければならないが、しかしながら弱小町村で住民の生活すらできないものは警察を維持できないからやめるという事実は、やめたのがあるからこれはしかたがないじやないか。しかしみずから進んで維持したいという希望……。
  58. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それはわかつておる。
  59. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 それだから原則としては現行法を維持するというのです。
  60. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私も先生と同じでございます。ところが六大都市のみに警察を置くということになると、これはひがみかもわからないけれども、特別市制というものができる、これは裏街道からできる。そうすると京都、大阪、神戸、名古屋、横浜、この五つの市は消えてなくなる、こういう点はあなたはどういうふうにお考えはなつておるかということを聞かしていただきたい。
  61. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私が六大都市、五大都市と申し上げたのは、例を公共団体において財政的に余裕のある具体的例として申し上げたのであつて、六大都市であろうが十大都市であろうが、その都市が財政的に余裕があつて、かつ警察設備というもの、鑑識課その他の設備も十分持つておればひとり六大都市に限らず、八大都市に限らず、私は十分にこれは育成しなくちやならない。五大都市とか六大都市と申し上げたのはその例にすぎません。財政的に余裕があり、かつその設備、装備を十分に持つておるという都市の例を申し上げたのであつて、その都市は何も個別的にさすのではないのであります。十大都市でもよろしい、幾つでもよいと私は思う。多いほどいいと思う。全体としては町村でもそれでよろしい。
  62. 大石ヨシエ

    ○大石委員 あなたのお説は、六大都市、こういうようなところは警察を存置せなければならぬ、自治体警察を存置せなければならぬ、こういうことですね。それでは農村は非常に困るのではないか、こういう点を戸倉さんは都会に御住居遊ばしますから御承知ないと思うのです。それで私は現行法をもつてこれを理想としております。それで警察を六大都市のみに置いてもらつては困る、ゆえに現在の国警自治警とこれを二本建にして行くことを私は理想としておりますが、こういうふうに解釈してよろしゆうございますね、あなたと私と同じですね。
  63. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私は理念においては違わないと思います。弱小町村が現在の実績においてすでに自治体警察を解消して国警に返上しておる部分が数十ある。しかしこれはその事実があるがために自治体警察がいけないという理念はないと思うのです。それじや生活できないから、やむを得ずそうなつた、それがゆえに自治体警察がいけないというわけではないと思います。国の財政が許したならば、あくまでもそれを育成し、それを援助しなければならない、こういう建前から私は申し上げたわけです。
  64. 大石ヨシエ

    ○大石委員 もう一点赤間さんにお聞きしたいのですが、この法案に管区本部を設置するという点がありますが、私は管区本部はいらぬと思う。われわれは非常な血税で悩んでおるにもかかわらず管区本部を置くことになる。現在自治体警察国警があつて政府は非常に困るとおつしやつておられる。それだのに管区本部をお置きになつてもう一つめんどうなものができる。一体こういうものを置いてよろしゆうございますか、いかがでございますか、赤間さんのお考えを拝聴いたしたいと思います。
  65. 赤間女三

    赤間公述人 府県警察のことにつきましては私もでき得る限り研究をいたしましたが、管区本部の問題についてはまだ十分な研究をいたしておりませんので、御意見を申し上げることを差控えたいと考えます。
  66. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それでは戸倉先生にお聞きしたい。私は管区本部は必要がないと思う。あなたはどういうふうにお考えでございますか、どうぞお聞かせ願いたいと思います。
  67. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 私は原則としてこの警察法改正案に反対しておるのです。同時に趣旨においても根本的に反対しておるのです。従つて管区本部は必要ないのみならず、ちよつと目立つのは皇宮警察というものがある。この皇宮というものは、やはり警察の名称としては同じでなければならない。護衛官というもの、あの名称はどういうわけでこの皇宮護衛官という名称をおつけになつたのか。警察体系を統制して行く上においては皇宮というような文字でなくても、私は警察でいいのではないかという気がいたします。それと同じように管区本部というものは何かなくてはならない存在ではないような気がする。現在の立場でさしつかえないと思う。これはかりに改正案が通過いたしましても、管区本部がなくても、警察の体系というものはやつて行けるように思います。
  68. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私も同感です。そうしたら徳田さんにお聞きしますが、管区本部についての意見を言つてちようだい。あんなものはいらぬ。
  69. 徳田与吉郎

    徳田公述人 私も結論からいえば同感であります。ただ私はこの現在の改正法案の中にこれを残したということについて、もう一つ皆さんにお聞きを願いたい。私は先ほど申し上げましたように地方の議長でありまして、こういう専門的な問題については知りませんが、全国議長会の行政調査委員長をしておりますので、関心を持つてこの問題を研究いたしました。現在の国家地方警察にお聞きくださればわかるのは、現在の国家地方警察でさえも、今の管区本部はいらない、あれは無用なものだ、なくせと言つておる。それが先ほどからしばしば論議になつておりますような、都道府県自治警にさらに管区本部がいるということは、これは常識から考えてもいらない。いらないものをつくるところに私どものまた不安がある。私どもこれは実態をつかんでおりませんが、また不安が重なつて来る。私は少くとも国家政治というものは私ども納得したものをやつてもらいたい。そうして不安をなくしてやつてもらわないと、私どもはどうしても国のその政治について行けない。今日の日本のいろいろな問題は国民はどうも納得が行かないからついて行けないと思う。どうかものを明確にしてから私どもついて行かしてもらわないと、今の管区本部の問題でもそうであります。今の国家地方警察の一例においてでさえも、それ自体の中からこんなものはいらないということをはつきり言つておる。それが地方自治警察にまで管区本部がいるということは、これまた、私はどうも幽霊を見ておるのかもしれませんが、わからない。こういうことも十分この法案審議の際には御検討をお願いいたします。
  70. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私は戸倉先生にお聞きするのですが、管区本部は現行法では五つなんです。それを八つにしようとする、こういうことは姥捨山で、警察の古手をここへ持つて行く。私たち国民はたださえ血税にあえいでおるのに、これは私困ると思う。赤間さんもこの点よく御研究をお願いしたいと思うのですが、その点ちよつと戸倉先生おつしやつてください。
  71. 戸倉嘉市

    戸倉公述人 管区本部が無用であるということは前提でありますが、これができました場合の措置を考えますれば、その所在地をごらんになればよくわかる。どこに所在するようになるかということをお考えいただきたいと思います。いずれも高等検察庁の所在地が管区本部の所在地になつておる。すなわち高等検察庁の所在地を管区本部の所在地にしたということは、検事長と警察本部長との連絡をとるためである、私はそう考える。中央においては検事総長と警察庁長官とが連絡をとり、中間においては検事長と本部長が連絡をとる、こういう建前のようになつておりますが、これはやはり根本において警察法において中央集権というものを実現する具体的な現われなんです。一面においては検事総長は公訴に関する実権を握り、また一面においては警察庁長官が捜査に関する実権を握る、その段階が同様な歩みをもつてできておる。私はそこに実に恐るべき、われわれの何といいますか、自分の財産、生命というものは自分が守らなければならないという建前がくずされて、官僚によつてそれをやられる。むろんその官僚は決して悪いお方ではないでしようが、大体警察力というものは兵器と同じように凶器である。これは持つ人によつて非常にいい薬にもなるかわりに毒薬にもなるモルヒネのようなものである。だからそういうようなものは制度においてこれを制限する以外には人間の本性としてまことに防ぎにくい。一種の凶器であり、モルヒネである。従つてこの制度を何とかして人民のために人民の政治ができるような制度にするには、やはり公安委員が人事権をとり、公安委員会に国務大臣がおられないように締め出す。私はわれわれの生命財政を委託するに足る親しみのある警察制度をつくる道は、これ域外にないと考えているから、同じような理由において管区本部についても無用である、そしてさようにこれを増加したということも、同じような理念の現われであるということを申し上げる次第であります。
  72. 中井一夫

  73. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 大分時間もたちまして、公述人の皆さんにもたいへん御迷惑だと思いますが、私簡単にお三方に一件ずつお尋ねをいたしたいのであります。  まず最初に、私地方行政の一委員として実は非常にさびしく感じていることがあります。それを申し上げたいのでありますが、今日占領行政の行き過ぎの是正というふうなことで、各種の法令の改廃、あるいは各種の調査機関などができて研究をされております。地方制度調査会においても、全国自治団体からおのおの代表の委員をあげられまして、この間も一つの成案を得ました。ところがその中において――これは関連があるから申し上げるのでありますが、たとえば教育委員会をどうするというふうな問題になりますと、教育委員の皆さんは教育委員会は現状のまま存置をして、そうして相かわらず公選で行かねばならぬという主張をされます。全国市町村長は教育委員会はもう廃止して、あるいは存置をいたしましても現在の公安委員会のように議会の同意を得て、市町村長が任命するという形にかえてくれと言います。また県会議員は市町村の教育委員会はもういらないと言う。知事はどういう意見であつたか忘れましたが、大体それに似たようなもんだということでありまして、一つ改正について絶えず地方自治の各機関の代表の意見がまつたく食い違つている。今度の警察法改正につきましても、全国市町村長は――市長会は絶対残してくれと言い、県知事は今度の改正案は大賛成であると言う。国家機関であります政府はその間をとりまして、自分たちはうまいことこれを調節するのであると言うておりますが、裏から見るとことごとく中央集権の形にかえられている。そういうことを地方自治体の首脳部の人たちはほんとうに考え心配しておられるかどうか。皆さんはもちろん知事の代表であります。市の議会の代表であります。市町村長の代表でありますけれども、皆さんはとりもなおさず住民の代表である。どうした方が住民のためによくなるかということが根本でなければならぬのでありまして、知事が、これの改廃によつておれの仕事が都合がいい、これを改めた方がおれが仕事がしやすい、しかしそれが住民のためにならぬことであれば、いくら仕事がしやすくても、これはちよつと遠慮をせねばならぬ、住民のために苦労をするのは公選の知事の当然のことであるというふうな考え方から――これは一例であります。私はすべての地方行政における改革をたがめていただきたい。そうして地方自治体が一体となつて府県市町村議会一体となつて国家機関に当るという形が出て来ませんと、どうもだんだんと中央集権になるような心配があるのであります。私はこの点は非常に心配でたまらない。大阪府知事大阪市長がいがみ合いばかりしておつて、その間まん中をとられて全部中央集権になつてしまつたらどういたしますか。そういう面から私はお尋ねをいたしたい。本日公述をされました徳田さん、赤間さん、お二人ともそういうつもりで私はがんばつておられるとは考えませんでした。特に徳田さんの公述は非常に謙譲なお話を伺いまして、私は感銘いたしたのでありますが、赤間知事といえどもやはり同じ住民のために今の改正案の方がいいということで、公述なさつたことだと私は拝承いたしますけれども、その点から申しまして最後に一点だけ、先ほどからいろいろ議論がありました大阪府なら大阪府の警察隊長の任命権は公安委員会が任命するというのと、今の改正案のように国家機関が任命するというのと、住民のためにどちらがいいか、それをひとつお尋ねいたしたい。あなたは公述した通りであります。希望しますというふうなことでありましたが、どちらがいいか、われわれの審議の過程において、このことが非常に重要でありますので、その点だけを率直に、大阪府の住民の代表としてお答えをいただきたい、かように思います。
  74. 中井一夫

    中井委員長 もう一時二十分になりまして、午後の公述人も見えておるのであります。承ることはだんだん多くありまして、まことにけつこうだと思いますが、公述人もお疲れと思いますので、きわめて簡単にお願いをしたいと思います。
  75. 赤間女三

    赤間公述人 私たち自治に携わる者として、考えは今お述べになりましたと同じでありまして、府民全体、また県民全体の福利増進あるいは産業なり復興という府民の民生安定とその福利のために、われわれは日夜微力ながら全力を尽してやつておりまして、そのほかのことは何も考えていないのであります。われわれが申し上げることはあくまで府民を単位として、府民の気持を私は申し上げておる、こういうふうに私は考えております。自分だとか、あるいは機関の一部がどうなるかというようなことはささたることでありまして、そういうことは今まで毛頭考えたことはありません。あくまで住民の福利増進のためにわれわれは努力をいたしておるのでありますが、民主主義時代におきまして、機関々々においてときどき意見の違うのもやむを得ないのじやないか、かように考えておるのであります。
  76. 中井一夫

    中井委員長 よく了承いたしました。その程度でけつこうでございましよう。
  77. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 徳田さんにお尋ねをいたします。あなたは先ほど、石川県それから富山県あたりで町村の合併が非常に行われたといわれましたが、私は実は現在の警察制度はいいとは思つていない、二本建はいいとは思つていない。できたら最初に全部自治体警察にするのが当然であつたと思うのです。それができなかつたのは財政難だというようなお話で、これは徳田先生の公述とも関連があるのですが、私は財政難ではなくて財政源を与えられなかつたにすぎない、こう考えておるのでありますが、そういう見方からいつて町村が合併をして大きくなると、むしろ現在を直すなら一度全部自治体警察にしたらどうだ、こういう考え方なんですが、あなたの御見解を伺いたい。
  78. 徳田与吉郎

    徳田公述人 お答えいたします。仰せの通り市町村の中にも自治警を維持しないことを望んでおるところがあります。その大きな原因は地方財政の問題でございます。最初は大分自治警を返上した方がいいという意見がありましたが、過日新聞等で地方税制の改革の概要を耳にしまして、おのおの自分のことに関するからそろばんをはじいてみてびつくりして、先月の二十五日に大会をやりましたときには、ほとんどの都市が来て、今度は真剣に反対をしておる。これは何を意味するか、ほとんどが財政がないからやむを得ず警察を返上するのだという考え方以外に何ものもないのでありまして、先ほどからいろいろこれが節約できるというお話もありますが、これまた私が皆さんに申し上げるのは潜越しごくでありまして国家の二十九年度の予算の編成から見ましても、また昭和二十九年の地方財政規模の額から見ましても、今度の警察法改正によつて何ら国家的にも地方的にも経費が節減されておらない。また都道府県側といろいろ意見が食い違うようでありますが、都道府県側が経費節約できると仰せがありますが、私ははつきりこれは今念を押しておきます。将来もしかりにこの法案が通過したとして、府県知事さんかどうも警察の費用が足りないとおつしやられるようなことがあるかどうか、これはもう現実の問題であります。今の府県知事さんの中でも、警察をもらいたいがどうもという人が半分々々のように私は見ておりますが、これらの点もやはりどうして経費節減できるかという現実の必要からで、今出ております。昭和二十九年度の国家の予算、あるいは地方の財政規模等をごらんになれば明らかに節約ができるかできぬかということもおわかりになると思います。また最初に仰せになりましたことは、いろいろ意見が食い違つておりますが、私はこれはあたりまえだと思うのであります。なぜならば私が先ほど陳述いたしましたように、都道府県というものが、もはや今の市町村の希望とマッチしない段階に来ておる、だからこれを解決せざれば市町村都道府県意見が食い違うのは当然でありまして、ここのところを早く明確にしてもらわないと、地方自治本旨に従うという、この本旨一体どこが本筋かということが私どもにはわかりません。都道府県も今の自治法で行けば完全自治体だ、市町村も完全自治体だ、ところが今の地方の現状からいうと、どうも私どものような都市と、県とでは意見が食い違つてなかなか現実に動かない。ここに地方制度を早く改正してもらつてはつきりとしたものを住民に与えてもらわないと、私どもはつきりした答えが出ない、だからもう少しはつきりさせるものは、はつきりさせてからやつてもらいたい。それほど国家治安が急迫しておるということが、私どもにはどうしても信ぜられぬ、こういうことでございます。
  79. 中井一夫

    中井委員長 もう早一時半になりました。この程度で休憩をいたし、午後の部は正二時半に開会いたします。    午後一時二十九分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十三分開議
  80. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続き、警察法案ほか一件についての公聴会を開きます。  午後御出席の公述人諸君は、大阪町村会長広瀬勝君、評論家阿部真之助君、主婦連合会総務藤田孝子君、全国官公労働組合協議会議長横川正市君、東京大学教授鵜飼信成君、この五人の方々であります。但しそのうち鵜飼教授は大学に格別の所用があつて、ただいま大学の方に行つておられます。先ほど見えたのでありますが、この委員会の開会が遅れましたため、大学の方へ一時引取られました。迎えにただいま出ておりますから、間もなく御出席のことと存じます。  この際公述人各位に申し上げますが、本日は午前の会議がおそくまで続けられましたために、非常にお待たせをいたしましたことについては、深くおわびをいたしますとともに、御多忙中にもかかわらず御出席くだいまして、貴重なる御意見をお述べくださることに対し、委員会を代表して厚くお礼を申し上げる次第であります。  議事の進行しただちに公述人方々より御意見を承ることにいたしますが、まず各公述人意見陳述を順次承りまして、そのあとで各委員の方々の質疑をお願いすることといたします。なおその公述時間は大体十五分ないし二十分を予定しております。従いましてその要旨は簡明にお述べくださるようお願いをいたします。なお公述人公述が終りました後に、委員各位よりの御質疑、これに対する公述人よりの応答、いずれも簡明にお願いいたしたいと思います。  まず大阪町村会長広瀬勝君から御意見を承ります。広瀬君。
  81. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 ただいま御紹介にあずかりました私は大阪府の箕面町の町長で広瀬勝と申します。私は今回提案せられました警察法案に対しまして、町村の立場からいささか意見を申し上げたい、かように考えておるのであります。  現行の警察制度は、御承知のように占領下連合軍側の勧めによりまして、アメリカ合衆国の警察制度にならつて市町村自治体警察を主眼としておるのでございまして、旧憲法時代わが国の強力なる中央集権的国家警察とは、全然趣を異にいたしまして、地方分権に徹した民主警察を創立したところに、大きな意義があつた考えておるのであります。しかしこの警察制度が創設せられましたときに、非常にけつこうではあるけれども、あるいは能率の点に、あるいはまた経済の見地から、多大の欠陥を生ずるものではなかろうかと、われわれども貧弱ながら心配をいたしておつたのでございます。案の定、警察法施行せられまして、ことに小さい市町村にあまり大きな財政負担を負わされたものでありますから、まことに悲鳴をあげまして、また能率の点につきましてもいろいろと論議せられまして、いわゆる自治体警察返上論というものが起りましてその結果数次にわたり警察法改正せられまして、町村並びに町村から新たに市になつたところの自治体におきましては、住民の投票によつて自治体警察を置かないでもいいというようなことになつたことは、今さら私が喋々と申し上げるまでもなく、よく御了承のことと思うのでありますけれども、去る一月の十三日に、私ども全国一万有余の町村の代表者が集まりまして、一月十九日に全国町村会の定期総会を開いたのであります。この席上、近く改正せられるであろうという警察法案に対しまして、われわれどもの率直な意見を一応緊急決議といたしまして議決をいたしたのでございます。一応朗読いたします。「緊急決議都道府県自治体警察制度の確立を期す。理由政府は、今期国会において警察制度を改革し、市町村自治体警察を廃し、都道府県警察の設置を企図しているが、治安の確保警察経済運営等の見地から、原則としてその成立に賛意を表するが、過去の警察国家の再現に対しては厳にこれを警戒すべきものと考える。よつて今次の警察制度の改革は、自治本旨に即した都道府県自治体警察の本質、性格を具備すべきものと信ずるによるものである。」かような決議をいたしたのであります。私はこの決議の趣旨からこれからのお話を進めて行きたい、かように考えておるのであります。  私は今回の警察法改正法案の第一条、第二条を見ますときにおきまして、一応納得ができるように思うのでありますが、さらにこの条項を進めて行きました場合において、まことに納得ができないところのものがあります。それは何であるかと申しましたならば、申すまでもなく、この改正の意図は、はたして民主主義の理念に立つたところのものをまつたく完全に具現しておるかということについて、いささか疑念を持つものであります。何となれば、一番大事なところの都道府県警察長に対する任免権、さらに国家警察長に対するところの任免権の所在につきまして、納得が行かないのであります。これはこの法案の通りであれば、ややもすれば往年の国家警察の再現を招来しはしないか、かように考えるのであります。私ども公安委員会というものの性格を、もう少しはつきりと打出してもらいたいと思う。そうして国家公安委員会においては、委員長に国務大臣をもつて充てるとあるのでありままが、私は委員長に国務大臣をもつて充てる必要はごうもないと、かように考えておるのであります。なおまた都道府県警察の長の任免に対しましては、あくまでも都道府県公安委員会の決定によるべきである、かように考えておるのでございます。この法案につきまして私が最も主張したい点は、この点なのであります。  その次の問題でありますが、五大市とか、大都市には警察を置いていいとかいけないとかいうような議論が相当巷間に伝わつておるのでありまして、また私のところへも大都市側から相当浩瀚ないろいろな印刷物をお送りくださいまして、私もこれをつぶさに拝見いたしておるのでございますけれども、私は同じ日本の新憲法のもとにひとしく国民が生活しているのに対しまして、ある地域にはかわつた警察がやつており、ある地域にはかわつた警察がやつておるというようなことが、はたしていいかどうか。われわれは与えるものは平等に与えてもらいたい。またわれわれは差別的な待遇を要求はしておらない。この点は、私は専門家でないのでわかりませんけれども憲法の精神にも反するのじやないか、かように考えておるのでございます。こういう点を始終考えておるのでありまして、この点から見まして、どうしても警察は市町村警察というものを廃止いたしまして、都道府県一本の自治体警察を要望することが、やや現状に即しまして正しい行き方でないか、かように考えておるのでございます。いろいろ民主主義の理念に徹して、市町村が直接に警察力を持つということそれ自体が、すなわち民主主義であるという議論も、一応納得ができるのでありますけれども、いかんせん日本の国の市町村実態が、決して警察を養うて行くだけの力がない。これをやるならば、もう少し政府地方自治体に対して強力なる財政措置をする必要がある、かように考えるのであります。かような意味から、日本の一万有余の町村のうちにおいて、あるところは自治体警察を持ち、あるところは持つておらない。さらにまた金があるからおれのところは十分そういうことができるからと言つて、特別に五大都市自治体警察を許してやるという理由もない。私は、すべての人は憲法のもとで同じような権利を受けることもできるし、また同じような支配を受けることもできると考えておるのであります。これはなかなか議論のむずかしいところでありまして、皆さん非常に賢明な方々で、私どもがさようなことを言わなくとも実情はよく御承知だと思いますが、実際自治警管轄によるところの住民の声を聞きましても、これはもうそう別に痛痒を感じない人と、何かの因縁があつて特別に自治警でなければならないというような人もあります。しかし交番の巡査あたりに聞いてみますと、市も府も一体となつて一つ自治体警察でやつてくれても、これは私たちの感じの上から言うて何のかわりもないのであつて、むしろ一本化されて私どもが自由に活動できるところの方向に持つて行つてくれる方が非常にけつこうである、こういうふうに申しておるのであります。町村の中でも、自治体警察を実際やつておりましたところで、非常にいろいろな問題が起りましたことは、各位がよく御了承のことと思いますが、大阪府下におきましても、茨田町というところがありますが、ここにはたいへんなことができまして、これは自治体警察の非常な悪い面を露出いたしたものであつたと私は思うのでありますが、ここの警察がまつたく町会議員のボスに牛耳られまして、そうしていろいろなことをやつた。これは全府下の良識ある人たちから非常な指弾を受けまして、ごうごうたるいろいろな問題が起つたわけでありますけれども、こういうような事態は、たまたま茨田町に発生したことが新聞紙上その他で多く流布せられましたから、人々は自治体警察のあり方というものにつきまして、いまさらながら考えさせられたことと思いますが、日本の国の自治体警察の上には、こういうようなボスが存在いたしまして、そうしていろいろとこれに似たような事態があつて、善良なる国民の批判を受けておるということは決して想像するにかたくない、かように私は考えておるりでございます。  かような意味から申しまして、私は結論といたしましては、府県自治体警察の一本でひとつ考えを願いたい。しかしながら、この隊長の任免権に対しましては、あくまでも公安委員会中心となりまして、公安委員会に任免権を持たす、かような意味合いに考えていただきましたならば、たいへん仕合せだと私は考えておるのであります。  まことに簡単でありましたけれども、信ずるところを率直に申し上げまして、私の公述を終ります。
  82. 中井一夫

    中井委員長 皆さんにちよつとお諮りをいたしますが、本委員会の大体の予定におきましては、すべての公述人のお話を聞いた後質問を進めるということになつておりましたが、ただいま広瀬さんのお話では、ぜひ五時の飛行機で立たねばならぬ用事があるそうであります。従いまして広瀬さんに限つて、この際特に皆さんから御質問があればお進めいただきたいと思います。
  83. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 時間の関係で簡単にお尋ねいたします。たいへんけつこうなお話を伺いまして、私個人は大体首肯される面が多いのでありますが、おつしやるうちに大きな都市警察があつて、町村には警察がない、これは平等に与えて、差別すべきでないというお話、これは非常にけつこうだと思います。従つてそれを推し進めまして、今二本建になつておるものは非常にあいまいなものであるから、これを全国の町村にも与える。しかしそれは非常に貧弱で財政の面から困るとおつしやいます。これは国家的措置として財源がたいのではなくして、私ども考えでは現在の状況におきまして、国家が財源を与えないのだというふうな考え方もできると思うのであります。そういう形にある。ことに最近の傾向といたしまして、町村の合併の問題を御案内のように全国とも非常に盛んにやつております。こうなりますと小さな町村も逐次処理されて行くというふうな観点から見まして、占領政策の是正ということに名をかりて、ああいう中途半端なものを、もう一つ民主主義に徹する面からもやつてみたらどうかというふうなことについて、広瀬さんはどういうお考えであるか伺いたい。
  84. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 警察仕事についてはいろいろあると思うのでありますけれども、私は現在の状況に立つて考えますときにおきまして、治安の確保ということは非常に重大なものではないかと思うのであります。先ほどいろいろな陣述を聞いておりましたが、都市におけるところの犯罪人がいなかの方に逃げ込んで、両方の警察でやるのは非常に非能率的だというお話もありましたけれども、それよりももつと大規模ないろいろな治安上の問題が発生することを予想せられる今日におきまして、貧弱な市町村自治体警察ではとうてい間に合いません。これは私のすぐ付近に吹田というところがありますが、この吹田事件というものは非常に有名でありますから、私が申し上げるまでもなく御了承のことと思うのでありますけれども、いかに自治体警察機能というものがばらばらでありまして、統一がとれておらないかということは天下周知の事実なのです。この面をどういうふうに是正するかといいましたならば、やはり府県単位くらいの自治体警察にやつて行くことが、現況においては最も正しい行き方ではないか、常識的な行き方ではないか、かように考えております。御了承のほどをお願いいたします。
  85. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その辺のところの意見が私違うのですが、きようは申し上げません。県単位程度がいいということでありますけれども、町長さんを長くしておられまして、今の府県は完全な自治体であるというふうにお考えになりますか。
  86. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 これはいろいろ議論がありますので、私より先生方の方がよく御承知だと思いますが、これはやはり市町村自体が自治体の根幹でありまして、府県性格というものは一種の統治体というふうに私は解釈しておるのでありますが、しかし日本の現状から考えまして、あくまでも民主主義の理念に徹したすべてのことをやつて行くということが、実際においてできぬのではないか、かように考えておるのでありまして、私どもはすべてを奪われてせつかく残されたところの民主主義、この民主主義の理念というものはどこまでも堅持して、これを成長させて行きたいというところの気分は山々なのでありますけれども、現況に即してはちよつとむずかしいのではないかと思います。
  87. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 大阪関係の方は今朝も知事さん初め吹田事件の話がありました。ちようど吹田で起つたからそういうことですが、あれが尼崎で起つたらどうなりましようか。今度の改正案でうまく行きましようか。
  88. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 尼崎は兵庫県の管轄でありますから、兵庫県は全力をあげておやりになると思いますが、それはどうも……。
  89. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 どうも府県の単位でやれば経済的、能率的ということについて根本的に意見がわかれて来ましたが、確かにおつしやる面もあると思いますが、大阪のような交通の四通発達したところでは、能率とか経済とかいうことになりますと、むしろ大阪、京都、兵庫一本にした方が非常に能率的でよいと思うのであります。そういう面でけさほど大石さんからもお尋ねがありましたが、管区警察本部というものができるわけですけれども、いつそのことそういう一本のものにしたらどうかというふうな考え方も、能率の面からいえば出て来ると思うのであります。そういう点について何か御意見はありませんか。
  90. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 能率の点からいいましたならば、おつしやる通り一本建がよいのでありまして、どうぜ五大市の方は警察の装備もできておるし、いろいろなものができておるから、能率はおれの方がよけい上るのだというふうなことを、パンフレットにもお書きになつておりますが、これは自治体警察につきましてもやろうと思えばできることであります。それは同じような装備を持ち、同じようなことをやつて行けば、これは実際上能率がよいからという問題は成り立たないのであります。やつた後の将来のことは、現在の市がやつておりますところの能率というくらいのことは、府県一本になりますと、より以上できるのではないかということを考えております。もう一つ大阪府民としての感情から申しまして、これにあるいに神奈川県においても同様であろうと思うのでありますけれども郡部に住んでおります者も、市内へ住んでおります者も府民感情というものは一つじやないかと思うのであります。また府民感情というものは一つにすべくわれわれも努力して行かなければならぬと思うのですが、大阪市だという一つの区域的、ブロツク的な、そういう考え方こそ打破して行く必要があるのではないか、こういう見地からいたしまして、府県単位の警察にいたした方がよいと考えるわけであります。
  91. 門司亮

    ○門司委員 ちよつと今のお答えの中でふに落ちないことがあるので聞いておきますが、市町村警察を持たせるならみな一緒でよい、一部分だけ警察を持つておることが何だかおかしいようにお考えになつておるようでありますが、町村会の会長さんでありますから、現行法はよく御存じだと思います。自治本旨にのつとつた行政のあり方というものは、おのおの都市の能力によつて仕事が与えられておりまして、必ずしも一律一体でございません。この点は御存じでありましようね。だから警察一つの国の行政でありますから、自治本旨を重んずるなら、やはり自治能力に応じて持ち得るところに持たせるということの方が、一つの原則だと思うのですが、現在政令の市もありますし、たとえば都市の規格あるいは都市の大きさによつて何といいますか、労働基準監督署を持たなければならないとか、あるいは保健所を持たなければならないとかいうものを、ちやんと自治の能力に応じて、国が仕事を言いつけておるのであります。これから考えると今の御議論は――専門家ではないというお話のようでありますが、とにかく町村会の会長さんでありますから、私は専門家考えるのです。今日の現実には段階がある。警察だけはそのらち外だという理論が私にはわからないのでありますが、もしその点でおわかりでしたならばお答えを願いたい。
  92. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 門司先生のお話一応ごもつともと私は思います。しかしながらこれははなはだ失礼なことを申し上げるかもわかりませんが、政府並びに国会は一体市町村に対して、どういうような育成強化することを、今日まで運んで来てくれたか、こういうことを私はこの機会に申し上げたいのです。これはちよつと脱線かもわかりませんが、お許しを願いたい。何にも市町村に対して強力なるところの財政上の措置もしないで、かえつて市町村の財源を奪つて行くというのが現政府のやり方なんです。また今日の一般的な雰囲気が中央集権化して行きつつあるこの現況において、私どもにせつかく与えてくれたところが、決して自治体警察というものは成育ができない。成育ができないのであるから、現況においてはやむを得ない。そういうことを私は申しておるのであつて、財源の非常にたくさんあるところのものは、そのまま残しておいてもいいじやないかというような御議論ですが、私は大日本国民として――日本国民でもよろしいが、とにかくわれわれは憲法のもとにおいてひとしく与えてもらいたい、ひとしく保障してもらいたい。私ら大阪府におきましては、一方に国家警察があり、一方に自治体警察があり、そこらの住民から考えますと、一つ府県の中の警察だけが分立をいたしまして、妙な形に存在しておるということは、どうも私ども納得ができぬ、こういうことなんであります。
  93. 門司亮

    ○門司委員 その議論はそれくらいにしておきましよう。私はそういう議論から発展して行くと、一つ都市に、保健衛生だけはこの市でやれということもおかしい、労働基準監督署をこの市は持てという規定もおかしなものである。国がそういう規定を置いております。これは議論になりますから申しませんが、やはり自治能力に応じた行政をやらせて行くということが、「地方自治本旨に基いて」という憲法の九十二条に当てはまると思う。  それはそれとしてよろしゆうございますが、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、今の広瀬さんのお話では、この警察法の中で、国家公安委員会の組織をかえてもらいたい。同時に都道府県公安委員会の組織も必然的にかえてもらいたい。そういたしますと、これがこの改正案の骨子であります。そうすると、あなたは原案に反対だということをはつきり申し上げてもいいと思いますが、その通りですか。
  94. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 原案の、都道府県自治体警察というところの意味におきましては、賛成しておるのであります。しかしながら、任命権の問題につきましては、これはどうも承服しがたい。冒頭に申し上げました、でき得べくんば、国務大臣の委員長たるところの制度を廃止してもらいたい、さらにまた都道府県公安委員会が長の任命権を持つてもらう、こういうことです。
  95. 門司亮

    ○門司委員 私の質問がよくわからなかつたらしいが、この警察法改正の骨子はここにある。一方においては、警察の責任を負うということのために、国家の大臣がこれに参画するということは、責任性を明確にするということ、その次に、人事権を持つということは、警察能率化のためにこうする方がいいということが、人事権を把握するということの一つの原因であります。従いまして、その二つの骨子になつておるものについて改正を必要とするということになつて参りますと、おのずからこの警察法が全部だめになつてしまつて、とりかえなければならぬということになるのですが、それでもう一つ私は聞いておきたいが、府県警察、こう仰せられておりますが、実際の警察事務というものは、やはり国家警察的のものがなければ警察行政は行えない。それは国家犯罪があるからであります。そこで完全なる四十六にわけた警察行政というものは、私は日本の国ではこれは完全に行えないと思う。今日二つの警察があるといつておりますけれども、これは自治警察が本旨である。しかし自治警察を持つことのできぬところに対しましては、これを国家警察に委譲して、国家警察国家犯罪その他を取締つて行くという国家犯罪に対する一つ考え方が、ここ大きく国家地方警察という名前のもとに出て来ておるのであつて、ここに警察民主化国家的事犯に対する取締りとの調和を保つている。調和を保つているものが、完全に四十六の都道府県にばらばらになつて国家警察の任務がどこで遂行できるかということになると、これまた私は困つた問題になると思う。その点に対する自治警察ということはあまり議論いたしまんが、自治警察が四十六になつてしまいますと、国家犯罪その他に対する処置はだれが指揮命令、監督をして行くか、それに対してはどういう措置がとられるかというと、ただ上から、書いただけの、これこれのものを指揮命令するといいますけれども、それは指揮命令だけでばいけない。それを完全に遂行して行こうとするには手足が必要である。それらの問題が切り離されては、警察行政というものは完全に行えないと思うのです。
  96. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 御高説はよくわかりますが、しかし国務大臣が委員長になつてやらなければそれはできぬというようなお考えなんでしようが、私は国務大臣が委員長なつ国家公安委員会では、おもしろくないと考えておるのであります。
  97. 門司亮

    ○門司委員 そんなことを聞いているんじやない。私はこの警察法に、べらぼうだから反対ですけれども、あなたも、大臣が入ることはいかぬ。それから手取り早く言えば、現在の公安委員会制度でいい、こういうことなんですね。そうしてなおかつ府県自治体であるから、自治体警察にすれば、府県公安委員会府県の隊長の任命権を与えてもらいたい。いわゆる行政管理をこれにさせようということですね。そうなつて参りますと、これはこの原案に対して骨抜きにすることになる。だから反対ですかと聞いたのです。  それからもう一つは、頃に府県単位の自治警察ならよいというお話でありますが、府県単位の自治警察であれば、やはり一方においてはそういう国家犯罪というようなものが出て来る、そういうことに対する対処の方法をどうお考えになつているか、これだけなんです。
  98. 広瀬勝

    ○広瀬公述人 今日の国家警察におきましては、これはやはりそういうような事実上の機能のもとに処理せられている。自治体警察でも、自治体警察という名はあるけれども、国の警察事務につきまして処理せられているのであります。私はこういうように解釈しているのであります。それがこの任命権を骨抜きにしたならば、全然……というようなお話がありますけれども、任命権をそういうふうに解釈することによつて初めて、われわれが念願しているところの民主主義の理念の一つの橋頭堡になるのではないか、かように考えているのでありまして、いろいろ書かれておりますものを全面的に否定しているのではありません。その点につきましては私はそういう意見を持つておる。そのほかのことにつきましては、大体政府の原案につきまして、その精神さえ没却していただかなければけつこうである、かように考えているのであります。
  99. 中井一夫

    中井委員長 広瀬公述人におかれましては、遠方のところわざわざおいでいただいて、ありがとう存じました。お急ぎであるようですから、この際お引取りくださつてけつこうでございます。  次には阿部真之助君の御公述を願います。
  100. 阿部真之助

    阿部公述人 私はあまり警察のことはよく知らないので、ただ常識的に考えたことだけを申し上げることにいたしたいと思います。  これは内容には関係ないことですが、私の手元に配つていただいた書類を見ましたが、政府の説明というものがプリントしてある。これを見ておわかりでしようか。私なんか、あれば何のことやら、とてもわからぬ。説明のまた説明を非常に詳しくしていただかなければわからない。これは皆さんのような専門の方にはあるいはおわかりかもしれないけれども、少くとも国会で政府が説明するものは、それは国会だけでなしに、同時にこれは一般民衆に対して説明するというものでなければならぬ。あまりに事務的で、あまりにぶつきらぼうで、不親切である。こういう重大な法案を説明するのに、あんな不親切きわまる政府の説明なんというものはあるばずはない。だから政府の説明によつて私は意見陳述することはできない。こういうような心持でこの警察法改正するということだと、世間にまた警察国家になるんじやないかといういらざる心配を巻き起す原因になるだろう。これは内容には関係ないことですが、こういう意味合いのことは今後政府に厳重に警告していただきたい、かように思うのであります。  また内容をちよつと拝見したところでいろいろ問題があるように私は思うのですが、ただいまもいろいろ問題になつた一番の要点というものは、国家公安委員会、そこから第一に私たち一つの疑念を持つておる。法案の一番初めの方に、警察官は不偏不党で、あくまでもへんぱでない中正なものでなければならぬということを声を大きくしてうたつてあるのです。その不偏不党であるべき公安委員会の長であるものが一番片寄つて、党員であるところの国務大臣が長になつておる。しかもあれを見ますと、委員会を統率するようなことが書いてある。しかも代表するということになると、一体これが不偏不党であるかどうか疑わざるを得ない。私はここへ来る前に、政府の人じやないのですが、それに近い人たちにこの説明を聞いてみると、いやあれは委員会政府との間を連絡する、それだけの意味合いのもので、実に軽い意味のものだということをおつしやつている。ところが原文を見るとどうでしよう。これは委員会を代表し、委員会を統率する、こういう非常に重大な立場に立つているのです。そうするとこれは委員会そのものの不偏不党性というものをあの組織において害される。のみならずあの委員会の構成を見ますと五人になつておる。その中で同じ党の人間が三人以上任命されてはならぬということがあるのです。ところでこの議決をするのには、過半数が出席すればできるということになつている。そうすると同じ党の人間が二人出て、委員長が最後の決をとる場合には三人になる。そうすれば明らかに委員長によつて委員会の決議というものを動かすことができる。そうすると単なる取次ぐ役ではなくて、ここに重大なる落し穴があると思う。だからこの点はどうしても修正されなければならぬと私は思う。国務大臣が委員長になるということはよろしくない、私はかように断ぜざるを得ないのであります。  それから府県を単位にして自治体警察をこしらえるということは、現状から考えてみると大体あの程度のものだろうと私は考えております。原則論から言えば、各市町村がそれぞれの警察を持つということが最も望ましいことかもしれませんが、それはいわば一種の空想論と言つてもよいくらいで、そんなことをしたら国の財政も成り立たぬし、のみならず現状では警察能率を悪くする、不経済である。こんな貧乏国がそんなぜいたくな警察を持つ段階に達していないだろうと私は思う。のみならず先ほども御質問があつた通り、国家犯罪というようなものに対するわれわれの危惧が多くなつているとき、国の警察行政というものを市町村単位で寸断してしまう、そこで警察の活動というものを非常に微力にしてしまうということは、国家治安の上に非常におそれなきを得ないわけなんであります。この点においては府県単位の自治体という程度が、まずます適当だろうと私は考えるものであります。  いま一つ人事権の問題が問題になつているようであります。これは非常にむずかしい問題なんで、私ははつきりした結論を出すことはできないのですが、警察庁の長官というものは、国家公安委員の意見を聞き任命することになつておるのです。意見を聞くというのに一体どういうことなんですか。ただ聞きつぱなしでいいかどうかという問題、どの程度にこの公安委員の意見というものが尊重されるか。意見さえ聞けばいいのか、その手続のために意見を聞くので、あとは聞かなくていいかどうか。一体どの程度に意見を聞くのか。ここにどうも私はちよつとふに落ちないところがある。国務大臣というものを道徳的に考えれば、信用して考えれば、意見を聞く、それで公安委員がいけないと言えばそのまま道徳的にそれを素直に聞いてくれると考えたいのですが、現在の政治の基礎情勢を見ると、検察庁のなわつきが出なければ責任を負わぬというようなことで、政治的の責任とか道徳的の責任などは負わぬというような、そういう傾向がある折柄、ただ意見を聞くからそれを道徳的に尊重するだろうとかどうとかという信頼感をわれわれは持ち得ない。だから意見を聞くならばどの程度に聞くか、聞かなかつたらどうするかという点をいま少しはつきりしていただきたい。  それからまた罷免の場合もそうなんです。国家並びに地方公安委員会が、罷免の場合には勧告することができる。この勧告とは一体どういう程度の勧告であるか。その勧告に対して一体責任を負うべきものか、負うべからざるものか。聞きつばなしでいいかどうか、この点をはつきりされるならば、公安委員というものを信頼できる限りにおいては、まああの程度で人事権もしかたがないだろう。しかしこういう抜け穴があるような形において人事権をまかせてしまうというと、警察国家というような元に逆もどりする懸念が多い。だからできるだけこの公安委員会というものに強い力を与えて、警察の官僚化もしくは国家権力化というものを、ここでせきとめることが一番適当じやないか、かように考えるわけであります。  たいへん簡単でありますが、この程度で終ります。
  101. 中井一夫

    中井委員長 次には藤田公述人から御公述を願います。
  102. 藤田孝子

    藤田公述人 主婦連合会の藤田でございます。私は東京都という特別の地区に住む家庭の一主婦といたしまして、意見を述べさしていただきたいと思います。  昨年から出したりひつこめたりしていらつしやるところの改正警察法案の成案に対しまして、新聞論評は各社筆をそろえて時代の逆行であるとして非常な悪評でございます。従つて輿論も反対の声が高まりつつある現状でございます。ことに私が思いますことは、文化人といたしまして自他ともに許していらつしやるところの犬養大臣が、委員会におきまして本心から改正法案に賛成して提案説明をしていらしたかどうかということを疑つている者の一人でございます。私どもは戦後の占領下においてつくられましたところの諸制度が、民情に即した万全のものだとは思つておりません。従つて警察制度にも不備な点があることは認めるものでございますが、改正に際しては、少くともよい面と不適当な面をえりわけて、よい面は残して、ぜひ育て上げていただきたいのでございます。特に私ども改正法案の中で、地方の警視正以上の警察官の任免権を中央で握るという、いわゆる中央集権化にはまつこうから反対なのでございます。私が申し上げるまでもなく、警察というところは、他の行政部門と異なりまして、非常に階級的で上官の指揮命令に動く人たちの集団でございますから、警視正以上の上官の警察官の任免が中央でなされることによりまして、国家公務員である以上、部下の大部分の警察官地方公務員であるといたしましても、実際の活動にあたりましては、全警察あげて国家性格を発揮することは明らかであるように考えられるのでございます。私どもはそれをおそれるのでございます。そうなると表面警察は、形式的には自治体警察として存在するでしようが、実質的には国家警察と少しもかわらないのではないでございましようか。時の権力者に利用されやすく、昔の警察フアツシヨ再現の危険性が多分に考えられるのでございます。昔の警察はおいこらで民衆と非常にかけ離れたものでございました。子供がいたずらをしたり、言うことを聞かなかつたりすると、おまわりさんが来たと私どもはよく利用したものでございます。そのくらいに民衆からきらわれておりました。ところが今日の警察はどうでございましようか。子供には親しまれております。パトロールのおまわりさんによくつりさがつて歩いている子供の姿をごらんになることがあると存ずるのでございます。家庭からはなつかしがられ、犯罪捜査においても、困つている人の救援においても、秩序の点においても、常に民衆の心の中にぴつたりと溶け込んで成果をあげているように私には思えるのでございます。このことは単に警察官がサーベルをやめて、そうして警棒にかわつたからだけではないのではないでございましようか。その制度あるいは組織あるいは法律において、現在の自治体警察のあり方が民主的であり、それに警察官がマッチしているからでございます。さきにも申し上げましたように、今日の警察法は占領下のどさくさまぎれにつくられたものでございますから、必ずしも完璧とは申し上げられませんが、しかしこれを根本的にくつがえすような今度の政府案はまつたく無謀で、民衆の警察から再び権力者の警察になつて行つて、戦前の警察の悪い点ばかりが復元するのではないかと思われます。戦前どころではございません。阿部先生がおつしやいましたように、いろいろと任免権、公安委員会制度などによりまして、戦前よりはもつとくファッショ化されるおそれを私は非常に痛感するものでございます。警察官と民衆のつながりという点におきまして、十分にそういう意味合いからお考えになつていただきたいのでございます。  なお今度の改正案は、表面目標が機構の簡素化とそうしてまた人員整理に置かれているように、私はごまかされていると拝見したのでございますけれども、とにかくあの人員の整理と行政機構の改革、表面からだけ私は推察いたしまして発言を許していただきますが、もしそれがほんとうに国民経費の負担を少しでも軽くするような親心があるといたしましたならば、ここで私は意見を述べさせていただきたいのでございます。私は、これは地方に属するので、ここではそういう発言はどうかと思いますが、主婦でございますので、私の発言を許してくださいませ。だれが考えてもすぐ了承できるところの中央集権的なお考えはやめていただいて、すでにもう保安隊が増強しております今日、東京都の場合で申しますと、地方の予備隊の――東京都の予備隊の数は三千名ちよつとあるということを私は聞いているのでございます。これをただちに全部やめてほしいとは申しません。順に整理して行つていただきたいのでございます。その三千名の予備隊は約十二億円を使つているのでございますが、この経費節約は三千人を二千人に減らしたといたしましても、四億のお金がここに浮くのでございます。  それからもう一つ地方警察犯罪防止からこのごろとかく青少年の教育問題にまで乗り出している点を私は指摘するのでございます。青少年の不良化防止に力を注ぐということは非常にけつこうかのように見えますが、戦後の混乱しておりましたときのあの時代には、確かに必要であつたでございましようけれども、今日ではもう青少年の指導という面は――犯罪を頭に置かないそうしたほんとうに善導といつたような教育の一切は、文部省なり、東京都の場合でございましたならば教育庁なりに一本化して、予算化していただきたいのでございます。警察はほんとうの使命である治安の維持とか、犯罪の捜査検挙、交通、防犯といつた面に、全力をあげることが、私ども主婦連合会の母の願いでございます。私はこのことは今回の改正案にぜひ織り込んでいただいて、他の土地と異なつ性格を持つところの東京都といたしましては、都道府県単位の警察制度には賛成をいたします。但し私は警視総監及び上級警察官職員の任免は、従来通りに私どもが選んだ公安委員の手によつて任免をしていただくことを切望するのでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  103. 中井一夫

    中井委員長 次には横川正市君御公述を願います。
  104. 横川正市

    ○横川公述人 日本官公労働組合議長をやつております横川でございます。  たまたま地方行政委員会警察法改正に対する公述機会を得たわけでありますが、実際に私どもの生活をいたしております周囲の問題、それから自分の行つております組合の団体職員としての現状から考えてみましても、あまりこの警察法ないしはそういつた面にごやつかいになつたこと一ありませんし、また特別機会があつてこういう問題を検討するというようなことにもあまりめぐり合つておりませんので、公述を行うという立場から、いろいろ法をひもといてそれがいいか悪いかというような点については、そう一日、二日で簡単に私の結論は得られないというのが実情であります。しかし公述する場合に、やはり一番先に問題になりますのは、現在の警察法が悪いということを考えて、そうしてそれに対して意見を聞いて法文化して行く人たちと、それからそれを審議する国会の立場と一連のつながりの中に、一つだけ私はどうしても意見をはさまなければならない問題があると思うのであります。最近いろいろな法案が出て参りますが、その法案は一部の人たちがこれがあつて非常に都合が悪い、そういうようなことが出て来ると、これを改正しよう。そうしてその関係の人たちのところに、そういう法案を出したいのだけれども、これはどういうふうにして出したらいいか、こういうことでその必要な人たち意思を体して法案化されて、それが国会の中に出て来る、その出て来たときに、たまたまこういう公聴会がずいぶん前にも持たれているわけですが、新聞その他の報道によりますと、十人出て来て十人が反対をした。ところが国会はそれを原案のまま通してしまう。こういうことが今の国会の中にはほとんど日常茶飯事のようにやられておるわけです。しかし私はそういうようなことが自由なる意思できめられる民主的な場所でありますから、形式的であつてもそれは尊重いたしたいと思いますが、しかし現在の官庁機構の中でいわゆる高級官僚の頭の中にある法案に対する中立性というものの中には、非常に人間を殺した、機械的な、いわゆる実情を無視しておつても、その人間が命令者であつた場合には、これに迎合して法案をつくる、こういう傾向が非常に強いのです。たとえば先生方の前では頭を下げておつても、隠れるとベロを出しているのが高級官吏の日常茶飯事の行事のようです。それは先生方が官庁へ行つて上級の部局長に何か問題を出す、出したそのときにはよろしゆうございますと言つていても、その通りなるかどうかという問題については、おそらく経験されているだろうと思う。そしておれは官僚にこういうことをしてやつたけれども、官僚はおれの言うことを聞かぬということを、私はたまたま先生方の方から耳にするわけです。いわゆる一つの権力者に向つて最も忠実な歩みで、それが一般国民大衆にどれだけ利害害関係があるかということを研究しないで、非常に悪い冷たい形で出されて来るのが法案の内容じやないか。この点については法案が出たときにひとつじつくり考えていただいて、これはだれのためにつくられた法律であるか、先生方の良識で解明していただきたいと思うわけです。  第二点は、日本民主化された自治といいますか、あるいは憲法の中にうたわれた内容といいますか、こういつたものは連綿とした歴史の中で一つ一つ改善され、改良されてつくり上げて行つたものではないので、私ども経験いたしましたし、先生方も経験いたしたように、昭和二十年の八月の十五日という経験があつて生れて来たものなんです。この経験を積むまでには、私たちの兄弟やあるいは日本のあらゆる階層の青年が帰らない翼の操縦桿を握つて参加したという問題や、あるいは野原に散華し、そしてそういうようなとうとい血が、旧来の組織の中で、旧来の考え方の中で、旧来の思想の中でそういうものをつくり上げて行つた結果、二百万なり、三百万なりの犠牲者を出し、数多くの戦争未亡人を出した。そういう世界に比類のない苦いしかもとうとい経験をなめた結果として、今私どもには平和憲法の問題があり、あるいはこういう民主化された警察法の問題があるわけなんです。  そうすると、今ここで憲法の九十五条を見てみますと、今まではこの地方自治に関して警察法がいるかいらぬかということ、それを改正する大衆の意見というものは、住民投票によってきめておつた。その住民投票によつてきめておつたことが、今度は一片の法律案、いわゆるこの法律があつてはだれかが困る、ないしはこういうものがあつては都合が悪い、そういうふうな官僚の冷たい法律理論によつてつくり上げた法律案、そういうものをこの国会で審議している、こういうことなんです。私は少くともこういう法案、たとえば知事の官選の問題、教育の二法案警察法、こういうものがよつて出て来ている原因は、いろいろあると思いますけれども、もしもこういうようなものが審議されるとするならば、これはやはり大衆の意見をもつと尊重し、大衆の意見をもつと取上げて、その上で実際上法案改正に資さたければならぬだろう、かように考えているわけです。そういう意味でここに出されました警察法改正案について二、三意見を申し上げたいと思うわけです。  まず警察法の第三条によりますと、「日本憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする、」あるいは二条では、「不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本憲法保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」こういうようなことがうたわれておるのでありますが、これは法文上の問題としてぴんと来たことと、それからこういうことが実際上行われるかどうかという問題について、どこまで信用していいかという点は、私どもとしてはこれは文章の上では認められても、実際の運用にあたつては何としてもむずかしい問題であり、しかも困難な問題である、あるいはできないといつてしまつた方がいいかと思うような問題だ。すなわち一条、二条、三条でうたわれたこの総則は、以下の条文の中に一つ一つその疑いを深め、あるいはできないだろうという確信を大衆に持たせるような方向に持つて行つておるわけです。まず四条を見てみますと、「総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く。」ということになつておるわけです。いずれの場合においても、たいてい自分の権力機構ないしは名誉とかいうものがよりたくさんあつて、そうしてそれが自分の箔になり、きんきらきんになるということは、これはたしかに気持のいいことかもしれない。しかし一人の総理大臣が保安隊の指揮権限を持つて行く、あるいは警察も持つて行く、その他一切の国会の運営営ももちろん総理大臣の権限にあるというふうになりますと、一人の人間がいくら八面六臂の能力者であつても、これを行うことはおそらくできない、こういうふうに言つた方が私は適当だと思う。ことに国家公安委員会というのは、構成からいいますと、中央で五人の人たちが一年から五年までそれぞれの年限が違つて一つの政党から三人くらい出て来ると、一人は罷免されるという一つの形式上のことは整つておりましても、委員長は国務大臣がつくという形に六条では明確になつておる。そうなつておりますと、総理大臣のいわゆる意思があつてもできないものを国務大臣が受継いでやる。そうなりますと、たしか新聞の論調にあつたように、一つの政権が大体各末端までの人事権を握つておりますから、政変があるたびに警察庁から末端の長までの首のすげかえを、何とかかんとか言つていてもやらかしてしまつて、そうしてその人たちは野に下つてしまう。また二年か三年かたつて別な党になつたら、野に下つていた人が生きて来てポストが与えられる。そうすると自分たちが野に下つていた時代の苦しいことを、今度自分が権力を握つたから、その権力を使つて仕返ししないとも限らないような一つの系統が明確にできておる、こういうふうに言つていいのではないかと思われるわけです。  それからもちろんこの公安委員会の構成は、確かに自主性を持たされておるようなかつこうはとれておる。しかし実際に法案を見てみますと、そうではなしに、たとえば十一条の二項のように、成立する条件というのが過半数であつて、そうしてそれは主宰する国務大臣が委員長になつて採決をする最終的な責任者であり、しかも自分の一票は常に問題を決する権限を持つておるのですから、ここでもつて可否同数でどうこうされるということになれば、これは明らかに国務大臣の意思によつて、あるいはそのときの内閣を構成しておる総理大臣の意思によつて、公平無私であり、あるいは大衆から選ばれたと思われる公安委員会の秩序というものは大きく阻害される、あるいは委員会意思が生かされないというような結果になるだろう、かように思うわけです。もつとも小さな問題では、警察の現在のおまわりさんが腰にピストルを下げて歩いておるわけですが、ああいうような威厳といいますか、あるいは護身上の問題か、ないしは突発的な事件に即応して犯罪処理に当る治安維持に当る、おまわりさんが、常に心の武装と、それから携行の武器によつて、武装しておるだろうと思いますが、あれはたしか日本の場合には予算上その他の問題があつて、なかなか改装されないとはいいながら、非常に危険な単発のピストルです。あれはアメリカから持つて来たときにもいろいろ問題があつたように、アメリカのカウ・ボーイがぶら下げて歩いておる。こういうことになると、一七〇〇年代くらいの非常に昔のアメリカのあまり治安の確立しておらなかつた当時に携行されておつたと同じような式であり、装備であり、内容であるものを交通整理をするおまわりさんまでぶら下げておる。今明治に制定されました警察官の服装規定によりましてサーベルを下げた人が、銀座なんか歩いていればナンセンスなのです。しかし同じ近代国家にふさわしいおまわりさんの服装として見れば、あの古ぼけたいわゆるピストルをぶら下げておるということは、ほんとうはナンセンスでなければならない。私はそういう面から考えてみても、ああいうものは廃止すべきではなかろうか――もちろん廃止といつても何らかの事態が起つて出動するような場合にはあれを持つこともいいでしようし、日常の訓練の中にあつてもいいだろうけれども、日常携行としてはあれは必要でない、こういうふうに考えていいのではないかというふうに考えるわけです。  それから今までいろいろ言われた意見は、ほとんど地方自治関係のある方々意見を出しておられました。そしてその方々の最も根本的な問題になりましたのは、自治警察はいいのだけれども、財政上の理由によつてやむを得ないのだ、やむを得ないから都道府県にするのだ、あるいは五大都市にするのだ、こういう意見が大半を占めておるというふうに思われるわけですが、しかし財政上の理由ということが国の警察のあり方にあまりにも大きく響き過ぎるという点については、これはもう何としても国会の先生方の手によつて打開してもらわなければならぬ点ではないかというふうに考えるわけであります。ことに民主主義の根底をたすものは、これは何といつて地方自治の確立であります。個人の尊厳というもの、個人の自覚というもの、個人の意識というものが確立されて行つて、初めてりつぱな民主的な国家ができるということは、これはもうだれの意見を聞いてみてもその通りなのです。しかしそれがどうかすると大衆に対する意識というものが、あれは低いのだから、あれらにあまり意見を聞くことはいけないのだとか、あるいはそういうことをしないでもいいのだというような傾向になりがちな点については、私は何としても是正してもらわなければならないと思う。ことに財政上の問題から、新聞紙上で伝えられるように、町村等におけるところの地方自治警察が、国警にどんどんかわつて行つておる。そしてかわつてつた結果は、先ほど前の方が公述されたように警察と大衆との間に明らかに大きな壁ができておつて、もう親しめる警察というものはだんだん市町村から消えて行つておる。おそらく警察の人は下部に行つてみればおわかりになりますように、おまわりさんが来ればお百姓さんは頭に巻いた手ぬぐいをとつて丁寧にあいさつをして行く。これは礼儀として守られておるならいいけれども、いわゆる近寄りがたいものないしは非常に敬遠したものとして、こういう形が出ておる実情は、これは何としても地方自治の確立の上からいつても、民主化の問題からいつても、非常に危険な状態ではないかと思う。  それから先ほど能率化の問題、予算の問題がいろいろ論議されておりましたけれども能率という問題から行けば、今の警察制度の中で科学的な犯罪捜査の方法がどんどん進んで行く、こういう点が能率的なのであつて、機構をいじつて能率化しようなどという、こんなばかげたことをやるのは、日本の古い官僚の頭の中にある機構いじりの悪い癖であつて、機構をいくらいじつたつて、官庁機構の中でよくならない事例は、吉田内閣が何十回行政機構の改革をやつてみても、依然として判は三十幾つなければ許可がおりないという実態によつて明白なことです。そうではなしにもつと能率を上げるということになれば、科学的な捜査とか、そういうものがどんどん進歩して行くことと、もう一つは大衆の自覚した意識と、高揚された道徳というものが、警察にいかに協力するかということ、警察といかに密接に結びついて、こういう不正と闘うかという民衆の意識が起きない限り能率化などというものは、口で言つても実際上の問題としては出て来ない。かように考えるわけです。ですから機構をいじつて、しかも自分に都合の悪いことは官僚にやらせて行くこの法案は、実際は大衆を意気沮喪させて、地方自治というものを殺してしまう。そういう結果から、いかに言葉の上で三つの利得があるのだと言つてみても、結果的には大きなマイナスをこの改正の中から生むであろうことを私は懸念するわけです。しかもそれ以外に、これに関連してたくさんの問題があるわけですが、時間がありませんので申し上げることは差控えます。いずれにいたしましても、今度のこの案は、ここで公述した人たちの大半というか、ほとんどの人が反対をいたしておるのでありまして、民主的な、しかも権威ある国会では、この点を十分に生かしていただいて、御審議願うことを最後に申し添えて終りたいと思います。
  105. 中井一夫

    中井委員長 鵜飼教授は四時半を過ぎないと出席がむずかしいとのことであります。ただいま自動車を迎えにやつております実情でありますので、二の際ただいま御出席のお三人に対し質疑がありますならば、これを進めたいと思います。質疑の通告がございますから、これを許します。藤田義光君。
  106. 藤田義光

    藤田委員 言論界の長老であります阿部真之助先生から傾聴に値する公述がありまして、われわれの審議の参考に非常に役立つたことを喜んでおります。そこで私は阿部先生を初め、藤田、横川両公述人に、きわめて率直にお伺いしたいのであります。まず第一に阿部先生にお伺いしたいことは、現在の段階におきましては府県単位の自治警察が適当であろう、市町村警察を持たせるということは一応理想ではあるが、これは空論であると、非常に重大な御発言になつております。この法律は直接地方住民の福祉と申しますか、デモクラシーの基盤であります地方自治体の消長に関係する重大な法案でありますために、この際率直な御答弁をお伺いしたいのでありますが、市町村自治警察を持たせることは一応理想ではあるが、空論というその御解明をひとつ、この機会にしていただきたいと思います。
  107. 阿部真之助

    阿部公述人 この前の住民投票によつて市町村自治警を持つた方がよいか、持たぬ方がよいかというと、もう大部分の人が自治警を返上したという事実が証明しておることなんです。みなやつておるということは事実なんです。日本人というやつは悪い癖がありまして、変に原則論ばかり固執して、民主主義などというものを錦の御旗のようにして、実際はかえつて民主主義のありがたさを殺してしまつて民主主義に対する失望感を起させるという心配はあるだろうと思う。ほんとうに民主主義というものが大切なんだという民主主義のよさというものを現わして来ないで、ただ原則論ばかりを主張して、かえつてそのために民主主義が行われないというと、一般民衆は民主主義に失望すると思うのです。それを私はおそれておるのです。そういう意味で今の限度では、あまり村や町に財政的の負担をかけないようにして、まあ府県単位くらいでもつてしんぼうする時期じやないか、かように考えておるわけなんです。
  108. 藤田義光

    藤田委員 大体わかりました。阿部先生の言われるのは、要するに従来民主的な手続を経た住民投票によつて、合法的に廃止しておるではないか、こういう現実からして、空論を述べてもしようがないじやないかというお話でありますが、私のお伺いしたいのは、現在もなお自治警察を堅持いたしております。たとえば山梨県の一年間の予算はわずか五十億以下であります、ところが大阪市は年間予算は、実に五百億であります。財政的に見ましても、人口の配置状況から見ましても、府県という名を冠してはおりませんが、非常な強いものであります。そういうところが、自治体固有の権限として、自治警察を持つか持たぬかというのが、今回の法案で非常に重大な運命にさらされておるわけであります。私のお伺いするのは、そういういわゆる都市自治警察、こういうものに対する先生のお考えはいかがであるかということであります。
  109. 阿部真之助

    阿部公述人 私はこの問題について、御承知の通りことさらに公述をしなかつたのであります。というのは、これはいわば手続上の問題で、私にすればそう大きな問題じやないのです。ほんとうを言うと、どつちでもかまわぬ。だからどうおきめになろうと、私はちつともかまわないことなんで、そんなことは大体からいえば、小さな問題である、さように考えております。
  110. 藤田義光

    藤田委員 私はこれは評論家と申しますか、言論人の言論の自由を実にうらやましく存ずるのでありまして、(笑声)われわれ国会議員は、こういう法律案が出た以上は、白か黒か、はつきり結論を出さなければいかぬ。つきましては、先生のごとき老練なる評論家の意見を聞きたい。非常にこれは各政党で政策の一翼として重大な問題になつておる都市警察の存廃を、手続上の問題で簡単に処理されるところに、私はむしろ羨望を覚えるような次第であります。  そこでお伺いいたしたいのでありますが、人事権の問題、この人事権の問題で意見を聞く程度、範囲、深さ、あるいは罷免勧告の程度、範囲、こういうものに疑問を持たれておるようでございますが、この点に関しまして、こういう意見を聞く、あるいは罷免勧告という制度を存置したがよろしいか、それともその内容と、深さ、広さによつてはこういうものはなくてもよろしいという意見でございますかどうですか、お伺いしたい。
  111. 阿部真之助

    阿部公述人 私は前にも言つた通り、政治家がほんとうに道徳的であり、政治的にものを考えるならば、この原案でもいいだろうと思います。だが今のところ不安心なんです。だからもつとその点をはつきりさせたいということになります。
  112. 藤田義光

    藤田委員 次にお伺いしたいのは、犬養国務大臣の警察法改正提案理由の説明を読んでも、何もわからぬという非常に傾聴すべき御発言がございました。私も自治庁や国家警察の長官が起案しましたものを、犬養さんが文学的表現にかえまして、何が何やらわからぬようにしたのが提案理由の説明であつたと直感しただけに、阿部先生の御発言は非常に御同感でありますが、あの提案理由の説明を読むと、非常に粗末で、何も意見は言えないということを言われましたが、粗末な内容をこの際一、二御例示願えますと、非常に審議の参考になると思いますので、お伺いしたいと思います。
  113. 阿部真之助

    阿部公述人 あの全体がお粗末なんですな。(笑声)
  114. 藤田義光

    藤田委員 当代第一の評論家の阿部先生の辛辣なる御答弁で、私もあまり質問を続ける余地もございませんので、次に主婦連合会の総務の藤田孝子さんにお伺いしたいのであります。家庭の主婦として、われわれが従来等閑視しがちでありました点について、非常に有意義な公述をされまして、たとえば警視庁の予備隊を廃止せよ、あるいは少年の補導は都庁の一般行政でやれ、おもしろい御意見であります。つきましては、この予備隊を廃止して、保安隊との関連の何か御発言があつたのでございますが、いま少しく予備隊を廃止するその後の措置、あるいは廃止する理由、それから少年補導を一般行政、つまり都政に移せ、こういう点に関する理由を、もう少しくお聞かせ願いたいと思います。
  115. 藤田孝子

    藤田公述人 お答えいたします。私先ほど申し上げましたのは、実は今度の改正案を表面から拝見いたしますと、経費の点などがうたわれておりますので、そういう見地からいたしまして、私は東京都の場合をいろいろと勉強させていただいたのでございますけれども、その東京都の場合を伺いますと、これはちよつと話が横道にそれるかもわかりませんが、東京都の場合は私はこちらの政府案に対して大いに賛成なのでございます。変態的な三多摩地区を国警にまかしておいて、そうして東京都二十三区、その他三多摩も一体になつている東京都の警察行政を一本化する意味におきまして賛成なんでございまして、いろいろとその予算措置を伺つてみますと、今度はこの国警の警視正以上の方々、総監を国の方で国家公務員といたしますことによつて、その経費の方は国で負うことになりますし、その他いろいろとあの条文を拝見いたしますと、大体十億近い経費を国で負うということが明示されております。これは数は出ておりませんが、私調べさせてもらつて数字はいただいたわけであります。ところが三多摩の国警を東京地区の方に入れますことによつて、やはり十億の経費地方の方にかかつて来るのだそうでございます。そういう意味合いから、私どもの主婦連合会と申しますのは、家庭経済の暮しをほんとうに楽にする運動をしております見地から、従つてその経済問題に入つたわけでございますが、今日いろいろ経費が足りない、私どもがいろいろな面でもつて要望をいたしましても、教室も足りないとかいろいろな声のある今日、たとえば警察問題についてここで皆様が御審議あそばしていらつしやるので、一例として私は出したのでございますが、三千の予備隊に約十二億かかるというのですが、私は今度は三多摩の方の国警方々も東京都の方の地方公務員として一緒に活動をすることができれば、もつと連繋もとれると思いますので、この際ここでもつて一千人減らしていただくことによつて、四億の差が出るということで経費の負担が軽くなるという点を申し上げたわけでございます。  もう一つは青少年の教育でございますが、これはほんとうに母親の間で問題になつておるのでございます。とかく警視庁が青少年の不良化防止をいたしますと、犯罪という面をおつむに置きまして、そうして子供の指導をいたしますが、私ども母親といたしますと、犯罪という見地からでなくして、ほんとうに教育の善導をするという意味から、教育の一本化をお願いしておる次第でございます。関連いたしますので、警視庁の方のいろいろの言、経費を拝見いたしますと、青少年の教育費が多分に盛られております。多分と申しましても数字から言うと大したことはございませんが、しかしその大したことのない数字のその経費を教育長の方に一本化することによりまして、ほんとうに青少年を善導する見地から、また青少年を犯罪という面から離して教育できるという見地から、私は先ほど青少年の教育について発言させていただいたわけでございます。
  116. 藤田義光

    藤田委員 藤田さんの御意見は一々ごもつともでございまして、三多摩地区を現在の警視庁の管内に合併する、あるいは現在の警視庁の少年課の予算と仕事を都庁方面に移すという有力な御意見でございます。  次にお伺いしたいのは、この警察最高幹部の任免の問題、人事の問題でございます。御存じのごとく東京は約七百五十万、全国人口の約一割を擁しております。しかも阿部先生のごときうるさ型がたくさん東京に集中いたしております。こういう政治経済、教育、文化の中心地の東京からも、あるいは宮崎県その他の小県からも、同様な手続を経て、都道府県公安委員というものは選ばれるのであります。全国の一割の人口を擁する大東京から選ばれる公安委員は、今回の政府改正案によれば、警視総監の任免に対しましてはまつたくつんぼさじきであります。一般都道府県の権限すら与えられておらぬ。これは大東京市民を愚弄するもはなはだしいという意見も、あるやに拝聴いたしております。   〔委員長退席、加藤〔精)委員長代理着席〕 それで藤田さんにお伺いいたしたいのは、どういうふうに東京都公安委員の人事を、警視総監の人事に反映させられようとするのか、いま少しく具体的にお示し願いたいと思います。
  117. 藤田孝子

    藤田公述人 私は家庭の主婦でございますことを、一言前に申し上げておきます。私は現状の公安委員会のあり方に賛成するものでございます。なぜならば、現状の公安委員会は、私どもの選びました都知事が、都議会の議決を経まして公安委員を選出いたします。従いまして間接的ではございますが、私どもの選んだ公安委員でございます。そういう見地から、私は現状の通りの形態を願うものでございます。
  118. 藤田義光

    藤田委員 よくわかりました。次に横川さんに、一言非常に抽象的な質問になりまして恐縮でありますが、お伺いしておきます。先ほどの御証言われわれ傾聴する点が多いのでありますが、その中で、どうも国会は高級官僚の立案したものを審議しておるというふうな御意見があつたのでございます。議員立法の道が開かれておりまして、議員各自は法案提出の権限を持つておるのであります。おそらく横川さんの供述は、今回の警察法のことを言つておられると思うのであります。御参考に私は質問にかえて申し上げまするが、今回のこの案は、あなたのうしろに国家警察長官もすわつておられまするが、これは自由党の行政改革委員長増田甲子七さんという方が、数年前に斎藤国警長官を、自分は吉田内閣の官房長官としてやめさせようとしたことがあります。当時の新聞が盛んに報道しましたように、現行警察法が不偏不党、それこそ今度の警察法第二条のような精神を堅持したがために、官房長官の権勢をもつてしてもどうにもならなかつた。こういう生だしい思い出をわれわれは持つておる際におきまして、今回の改正案は、増田さんが苦杯をなめました数年前の思い出を、この法案でかたきをとつたのだと思う。これは増田さんが委員長でつくつたのです。私は夕べ日本テレビのテレビ放送に出たのでありますが、国警の幹部諸公は自由党の行革委員会に強姦された、これは表現が非常にまずいのでありますが、そういう極端な表現を使つたのでありますが、真相は決して国家警察本部の最高幹部が、自発的に立案したものでなくして、警察法という不偏不党の法律の立案にあたつて、もうすでに政党の圧力が強く反映しておる、こういうことを御承知願いたいと思いますが、何かその点に関連いたしまして、あなたが感じられました……。(発言する者あり)ここに副委員長が今不規則の発言をして反駁いたしておりますが、非常に痛いところを私はついておるのです。それで横川さんがこの問題に関連して何かお気づきになつた点があれば、具体的にお示し願つて、われわれの参考に供したい、かように考えます。
  119. 横川正市

    ○横川公述人 出て来た法案のつくられた経過ははつきりいたしましたので、私ども考えておつたことが適中したと思つたわけです。それは現在の自由党の党員の方々の中に、やはり日本の古い官僚を、代表する人たちが入つておるということなんです。これは各官庁、どこの官庁を見てもわかりますし、それから私どもの官公労という組織は、これは非常にそういう臭みがある組織でありまして、この中には司法も入つておりますし、税関も入つておるというふうに、もういわゆる官庁職員全部が組織の中に入つておるわけであります。しかし組合あるいは団体を組織しておる者の感じとして、第一にやはり官庁の民主化という問題は、組合の手でもつてつて行きたい、かように考えております。その中で一番問題になりますのは、この組織機構の中で、たとえば東大何期卒業生というと、これは大蔵省にも通産省にも、電通省にも郵政省にも、全部根が張つてあるわけです。そういうあれから行くと、もう実に意識の統一ということは、何期生ということではかられておる。こういうことが現在の官庁組織の中にある一つの大きな、いい面でもあるし、悪い面でもあつて、これは人事院ができて、そういう面を幾らかでも是正しようとしたことは、御案内の通りであります。しかしその人事院も今度は大体つぶれそうなんです。しかし新しいそういうものがどんどんつぶされて行つて、古い機構をそのまま存続して行こう、ないしは自分の後継者をやはり種にして置いておこう、あるいは国会の官僚の方々の中でも、自分の出身の官庁には発言権を持ちたいから、なるべく子分に該当するような末期の卒業生をできるだけ高い地位に持つて行こう、こういう努力が裏面で行われておことは、これははつきりいたしておるわけであります。ですから今御指摘になられたように、実はもう民主主義に一度なれた人は、あるいはそういう政策を非常にいいものだと考えた人は、これには確かに賛成する。だから今地方警察方々はおそらくそういう意味で賛成しておると思いますが、そういうものに反撥して意見を出しておるのが、すなわち古い官僚として今国会議員になつておられる方々、かように私ども考えるのであります。
  120. 藤田義光

    藤田委員 これは少し本日の横川さんの公述にあるいは適切でないかもしれませんが、お伺いいたしておきます。それは今回の警察法改正案の中に重要な一点として、大体三万人の警察官の整理という問題が出ております。これは経費節約という問題が中心の目標で、この計画が出ておるのであります。御存じのように、現在よりも四割五分も領土が広かつた敗戦前の日本においても、警察官が約七万、現在の半分強でありますが、それによつて一応治安は維持されておつたのであります。今回十二万以上の警察官をとりあえず三万減らすという計画が具体化しておるのであります。官公労の議長としてお伺いしたいのでありますが、警察官も同じ公務員として、その職によつて生活をまかなつておる。失業という重大な問題に、この警察法と関連して当面しておるのであります。あなた方ほかの官庁、公庁におきましては、緊密な横の連絡をとりまして、首切りの問題に対しまして、いろいろ研究され、具体的に行動されておるのでありますが、今回の三万の警察官の処理に対しまして、何か官公労として対策を立てておられますか、どうですか。もちろんあなた方の組織の中に警察官は入つておりませんが、同じ公務員の立場から、何らか今回のドラステイツクな警察法改正にあたり、順次減員されて行く三万名の失業問題その他に関しまして研究されておりますかどうですか、この機会にお聞かせ願いたいと思います。
  121. 横川正市

    ○横川公述人 組織の中に入つておらないから、入つておらないということで、その組織のつくれない警察官の方方の給与関係あるいは厚生福利関係、そういつた問題を私どもがかわつてつて行くというよう点、ことに自治団体の警察官方々には、非常な熱意を打つてつております。ことに東京の警視庁の職員の場合には、東京都の職員で組織されている都労連その他の人たちが、期末手当にいたしましても、年末手当にいたしましても、その他ベース一般の問題について、ほとんど同じような形でこれらを獲得し、そういつた面の維持向上を行つているということが言えると思います。しかし官公労という全国組織の形の中でこれをどうやつているかということは、私どもの闘争それ自体で獲得するものが、ほとんど警察官方々の給与の改善になつて行つておりますので、結果的にはそういう点で私どもの要求しておることが、警察官の給与の面に十分貢献している、かように考えております。たまたま三万人の整理の問題が出て参つたわけでありますが、これについて、私どもの方では対策としては立てておりません。しかし残念なことに、思想あるいは良識ないしは社会的に貢献する度合いにおいて、最も大きな影響力を持つ警察官が、現在実態はどうかというと、そのうちの何パーセントかは常に欠員であるということです。実際上出て来ております数字の中から見て、一年ないし一年半くらいの勤務者がほかに転職して行く、常にこういう事実があるわけであります。すなわちいわば現在の警察官として奉職しては見るけれども、その中に自分を生かして行くところの困難さを感じてやめて行くという人たちが非常に多いという点は大きな問題ではなかろうか。今度の行政整理の場合も三万人というふうに出ておりますけれども、大半はこの欠員の補充をさしとめれば、ほとんど実害は出て来ない、こういう状態であります。
  122. 生田宏一

    ○生田委員 今の公述人の発言についてちよつと聞いておきたいと思います。  きようは公述人としておいで願つたので、別にりくつを言うつもりはございません。この法案についてよいか悪いかという御意見を承ろうと思つていたのですが、委員会の委員のたれが賛成とか賛成でないとか、議論にわたりましたら、もう収拾がつかぬようになろうと思うのです。先ほどそういうことにお触れになりましたが、ちよつと耳にさわりますから、お取消し願つておけばよいと思いますが、いかがなものでございましようか。
  123. 横川正市

    ○横川公述人 私の公述で、先生方の心証を害した点があれば、お取消し願つてけつこうであります。
  124. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、阿部先生に一つお聞きをしたいと思います。先生は、今度の警察法改正案については、相当御不満なようではございますが、しかし、市町村のいわゆる自治体警察というものは、理想ではあるが空論だ、その証拠には、次々と町村がみずからの手で自治体警察を放棄して行つたんじやないか、こういうお話で、大体府県単位くらいの警察がいいんじやないかという御説であつたようであります。そこでお伺いしたい。警察権というものを地方分権にして、その権力を分散さして行くということが民主主義の原則ではございますが、これはいろいろな意味があるじやないか。その一つは、これは学説で見たというわけではございませんが、やはり国家権力というものの持つておる暴力性というものは、民衆の暴力と比べて決してそれに劣るものではない、むしろそれよりも偉大なる破壊性を持つたものだ、ことに戦争やらあるいは警察権の濫用、特高であるとか憲兵であるとか、そういうものによつてこの国家権力の持つておる暴力は、歴史的に見て相当悪いことを人類に対してやつておるわけなんです。その極端なものは原子爆弾のようなものだ、私はかように考えるのです。従つて合法性、非合法は別といたしまして、その国家権力の一部となつて、手段となつて使われる警察権というものはそれほどこわいものでございますから、そこでやはりこれが集中的に使われるということは、どういうふうな政治権力がやりましても危険である。だからして、これは極力分散しておかなければならぬのだというような趣旨が根本にあつて、それが民主主義の非常によいところ、長い間の経験によつてかち得たいわば人間の賢い知恵である、かように私は考えておるわけなんです。従つて先生がおつしやつた市町村自治体警察というものは理想であるが、まあ今の段階では空論であるから、それほど無理やりに守らなければならぬというほどの熱意をお持ちにならないという点については、若干意見が違うのです。今申し上げたような趣旨からすれば、これは理想としても、できればそれを実現しなければならないほど価値のあるものじやないか、こう考えるのですが、先生はいかが考えましようか。
  125. 阿部真之助

    阿部公述人 私は、国家権力がそんなに悪いとは思わない、悪用されたときにこわいだけの話で、もし権力のない国家があつたらどこやらの戦力のない軍隊のようなもので、国の統制も何もなくなつてしまう。そういう意味で、あまりに国家の権力を分散させて無力にしてしまうという点は、あなたと考えが違う。しかし国家の権力が非常に強いものだから、これを悪用したり、濫用したりしないように、特に注意をするということは、あなたと私とはおそらく一致できると思うのです。しかし分散してしまつて、国の権力は、ことに原子爆弾と同じようなものだから、こんなものはなくしてしまえというような考え方については、あなたと私と一致することはできない、かように考えております。
  126. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 阿部さんにお尋ねしたいのでありますが、先ほどあまり小さい自治体警察をやるとぐあいが悪い、それは空論のようなものだという質問をした張本人は私であります。私も大体阿部さんの意見がよくわかるのですが、質問をいたしました気持をもう一度申し上げて、誤解のないようにしたいと思います。非常にまわりくどいようでありますが、私は今の警察法改正は、占領政策の行き過ぎの是正であるということになつておりますけれども占領政策の中で、いろいろな改革がありましたけれども警察制度だけは実は中途半端な改革であつたというふうな考え方を持つているのであります。行き過ぎじやなくて、ある意味でば行き足らなかつた。それを徹底的にやつて、そうして今判断をするのでありましたら、まあそういう御意見も出て来るのでありましようけれども、私どもは貧弱な町村だけで警察を持てなどということは考えておりませんが、たとえば市単位とか郡単位とかいう程度のものにして、一度きれいにして、そうして欠陥があれば直すべきである。そういう意味で、実はこの警察制度占領政策のできそこないというふうな考え方を持つてつたものですから、そのようなことを私は先ほどの公述人にお尋ねをしたわけでありまして、そのことば、現状をどうするかというと実は済んだことであります。済んだことではありますけれども、そういう気持がわれわれの心の中にあるのです。従つてそういう形で、もしできておりましたならば、おそらくそれの国家的連合体その他ができまして、おそらく二重警察的なものができておつたであろう。アメリカの今の制度のようなものができておつたであろうと思います。そういう点からお尋ねいたしたわけでありまして、私の言葉が足らなくて申訳ないのですが、そういう意味で意見だけ申し上げておきます。
  127. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 公述人をお願いいたしておりまする鵜飼信成君が到着されましたので、ただちに公述をお願いすることにいたしたいと存じます。鵜飼信成君。
  128. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 たいへんおそくなりまして申訳ありません。私の意見を簡単に申し上げさせていただきます。  私はこの警察法案の原案に反対でございます。その理由はいろいろございますが、一番根本問題は、この法案が戦後の警察制度改革によつて樹立いたしました基本原則というものを、ほとんど完全に破壊してしまうことになる。そうして戦前の警察、あるいは考えようによりますと、戦前以上に権力的な警察制度をつくろうとするものであるというふうに思われるからであります。戦後の改革の問題点あるいは基本原則と申しますものは、幾つかあると思いますが、私はそのうちの一番重要なものとして二つをあげることができると思います。  一つ公安委員会制度というものを採用したいということでございます。もう一つ警察地方分権を実現しとたということでございます。公安委員会制度というものに、戦後の日本に広く採用されました行政委員会制度、すなわち行政機構というものを民主的な形にする、すなわち政府の手にあらゆる権限が集中しているという形から、政府から多かれ少なかれ独立いたしました機関に権限を与えるという形、そうしてその機関というのは普通の政府機関におけるような独任制の機関ではなくて、合議制の機関であるということ、そうしてその合議制の機関の構成員が、いわゆる職業的な公務員ではなくして、行政のしろうとあるいは行政の対象になつておる一般国民である、こういう意味での行政委員会制度を採用することが、日本の行政機構の民主化にたいへん役に立つという考え方から、これをいろいろな場合に採用いたしましたが、特に警察という、国民にとつてたいへんに重要な関係のある、国家の権力的な機構の中に、こういう行政委員会制度公安委員会という形で採用したものと考えます。   〔加藤(精)委員長代理退席、委員   長着席〕  もう一つは、警察における地方分権でありまして、警察に関する権限を国の中央政府に集中するということを避けまして、これを地方に分権するという方法であります。この地方分権ということが必ずしもただちに民主主義を意味するものではないということについては、これは総司令部の報告の中にも論じておりますが、私もこれには同感でありまして、民主主義であるから即地方分権でなければならないということはないと思うのであります。しかしながら、具体的な問題として、日本の過去における中央集権的な制度の持つておりました弊害というものを改めるという意味では、今日の日本において現在地方分権が持つておる意味というものは無視できないのでありまして、この地方分権の権利というものを捨て去るには、それだけの前提が確立していなければならない。私はその前提はまだ日本では確立していないと思います。その意味で警察における地方分権の権利を軽々に捨てることには賛成できないわけでございます。  以上のような一般的な観点に立ちまして、目下審議中の警察法案の持つておる問題点を二、三申し上げてみたいと思うのでありますが、その第一は、国家公安委員会委員長は国務大臣をもつてこれに充てるという第六条第一項の規定でございます。これはいろいろの理由があげられておるようでありますが、私は委員会制度には根本的に反するものではないかと思います。委員会制度の特色は先ほど申し上げましたようにいろいろございますが、その特色を生かすためには、行政委員会の委員というものは、身分上の保障があるのでありまして、これは現在の公安委員についても同じことであります。すなわち第九条第五項に「委員は、その意に反して罷免されることがない。」というふうに身分上の保障を与えております。これは裁判所の裁判官と同じではないにしても、それに近い身分上の保障を与えるということが、行政委員会というものを設けた趣旨に適するからでございまして、こういう方法は委員会制度一般に行われておる方法でございます。ところがもしもその委員会委員長を国務大臣にいたしますと、その国務大臣については、このような身分の保証はないことになるわけでありまして、しかもその委員長というものは、委員会の会議においてはたいへん重要な地位を占めております。第十一条の規定によりますと、委員長が出席しなければ会議は開けない。ほかの委員は五人の委員のうち三人以上出席しておれば会議を開くことができますが、委員長だけは必ずいる必要がある。もつとも故障がございますと、委員長の代理を置くことができますが、実際の場合には、まず委員長というものが非常な重要な役割を占めておるということを前提にして、こういう制度ができておると思います。その委員長が、普通の行政委員会の委員とは違つて、国務大臣として内閣とその進退をともにする、あるいは内閣総理大臣が自由に罷免することのできるようなそういう地位にあるということは、これは委員会制度をこわしてしまうことになるのではないか。名前は公安委員会という名前が残っておりますが、後にいろいろ申し上げますように、権限の点についても、問題がございますが、公選の点で委員会制度のご本質を害することになるのではないか、これが第一点でございます。  それから第二点は第六章に規定してございます緊急事態の規定でございますが、緊急事態の規定というものは現在の警察法でも国家非常事態の規定があるわけでありまして、これはそう大きな違いはないように見えますが、しかし私は必ずしもそうではないと思います。たとえば従来の警察法によりますと国家非常事態の布告を発した場合に、これを発した日から二十日以内に国会に付議して承認を求めなければならないわけでありますが、現在の警察法ではもしも衆議院が解散されておりますと、これは参議院の緊急集会で承認を求めることになつております。国家非常事態というふうなたいへんに強い権限を政府に与えた場合に、これができるだけ早く国会によつて承認されるということは、事理の当然だと私は思うのでありますが、今度の改正法案ではこれを参議院の緊急集会にかけませんで、それ以後の最初の国会において承認を求める、こういうことになつておりまして、その意味もその最初の国会というのがいつ開かれるか、緊急事態の布告を発した日からどれくらいの先になるかということが予想がつかないのであります。そういたしますと、その間かんじんの国民の代表機関である国会というものは、これについて何らの審議もすることができないということでありまして、これはやはり全体として今度の法案の持つておりまする、単に国の中央に権限を集中するだけでなくして、中央の内閣に権限を集中するという考え方が、たまたまこういうところにも現われているのではないか、その意味で今度の改正案全体の性質を示している一例ではないかというふうに考えるわけでございます。同時にこの緊急事態の規定の中では、緊急事態の布告が発せられますと、内閣総理大臣が警察統制するわけでありまして、これは現在でもその通りでありますが、しかしここに新しい第七十一条の後段の規定が入りまして、内閣総理大臣は警察庁長官を直接に指揮監督することができるという規定が入つております。これは直接にということは、国家公安委員会を経ないでという意味であろうと思いますが、このことは先ほど申しました国家公安委員会というものの重要性を無視しておる。すなわち上に申しましたような二つの緊急事態に関する規定から見ましても、内閣総理大臣の手にあまりに多くの権限を集中して、国家公安委員会なり、国会なり、そういう国民を代表するような民主的な機構を、無視するような意味があるのではないかというふうに憂えるわけでありまして、この点一つの問題と存じます。  第三点は、自治体警察というものが全廃されたことでありまして、これもしばしばいろいろなところで論ぜられておりますが、都道府県警察というものが残つておりますけれども、これは自治体警察ではないように思われます。一番大事な警視総監は内閣総理大臣が任免をする。それから都道府県警察本部長あるいは方面本部長というものは警察庁長官が任免をする。その場合に都道府県公安委員会については、何らの相談もしないで、わずかに国家公安委員会意見を聞くだけで任免をするということは、一番根本の人事を中央で、特に内閣総理大臣が握るということを意味しているわけでありますが、さらに都道府県警察の職員というものが警察官というものになるわけでありまして、警察官というものがどういう性質を持つているか、はなはだ不明確だと思います。警視正以上は国家公務員になるということが明記してありますが、警視正よりも下のつまり警視以下の警察官というものは一体どういう性質を持つているか、これはたいへん不明確でありまして、現在の警察法では都道府県警察官というものは、国家地方警察警察官でありますが、そういう性質を持つようになるのかどうか、いずれにしても都道府県警察というものには、自治体警察たる実質はほとんどないということはおそらく明確ではないかと思うのであります。都道府県自治体警察という文字は法案は注意深く避けておりますが、そういう実質はおそらくないということを認めておられるのかと思います。ただ人裏が中央に集中されるということが持つておる利点が全然ないということは、これはあるいは言い過ぎかとも思います。中央で広く国内を見渡して適材を適所に配置するということは、これはごく抽象的に答えますれば、人事行政の一つの方法であるかと思いますが、しかしこれは悪用される危険が当然にあるわけでありまして、かりに現在のこの法律を執行する責任者は悪用されることはないというふうに保障されましても、将来どういうふうに悪用されるかわからない。そういたしますと、中央で人事権をまとめて握つているということが、たいへん大きな意味を持つようになるのじやないか、かように考えます。  私の結論といたしましては、今度の警察法改正案が終戦直後の警察制度改正の二つの原則、すなわち一方においては自治体警察を持つという原則、一方においては公安委員会制度を置くという原則、この二つのどちらにもなるほどいろいろ弊害、欠点等が見えておりましたが、しかし単にそれを修正するというだけではなくして、根本的に廃棄するということはちよつと賛成しがたいのであります。アメリカの警察制度の研究家であるブルース・スミスという学者が公安委員会制度というものは、ちようど軍隊における文官優越の原則と同じ意味を持つているということを申しておりますが、私は同感でありまして、専門家によつて行われる権力的な行政の中に、こういう一つのこれをチエツクする機関が入るということが、その権力的な行政の国民に向つての権力行使をより国民の幸福を考えたものにする、そういう保障の意味を営んでおるということを考えますと、能率の原則等に基いて制度改正される場合に、このもう一つの原則をもう少しお考えいただいた方がいいのではないか、かように考える次第でございます。  これで私の公述を終ります。
  129. 北山愛郎

    ○北山委員 先ほどの阿部先生に対する質問その他いろいろお聞きをしたいこともあるのですが、時間もあまりないようですし、またほかの質問者もあるでしょうから、ひとつ私は非常に結論的に公述人の皆さんに、あるいは意見のある方だけにお伺いをしておきたいのです。今度の警察法がそのまま国会を通過して、そういう新しい制度なつたとかりにいたしまして、現在の国内あるいは国際的な政治情勢、経済情勢のもとで、一体どういうふうな事態になつて行くのであるか、この警察法がどういりふうに使われて、どういう影響を国民生活に及ぼすものであるかという予想を、どういうふうにお考えになつているか、これをお漏らしを願いたいと思うのです。私がこれをお伺いするのは、先ほど皆さんの中で戦前の警察国家のような事態になるおそれがあるというお話がありました。またわれわれも戦前のあの軍国主義的な警察国家の恐るべき姿というものを覚えておるわけです。ことに昭和の初めごろ、時の政友会の内閣、民政党の内閣という政党政治はなやかなりしころに、この保守政党が内部的には非常に腐敗をして、そうして当時の財閥と手を組み、官僚と結んで、一般国民大衆を圧迫した、国民の不満を警察権力なり、憲兵なりというもので押えつけた。一方では現在出ておるような汚職あるいは疑獄が、やはりあの当時の政党政治に続出をしたわけであります。その状況を考えてみて、国民は政党政治というものに信頼を失つてしまつた。そうして例の五・一五事件によつて、今度法務大臣として警察法の担当大臣である犬養さんのお父さんの、犬養首相の暗殺によつて、政党政治が終りを告げた。そうしてあとは軍人フアッシヨの道を日本が進んで行つたというようななまなましい過去の記憶があるわけなのです。従つてどもは現在と多少似ておる点があるのではないかと思いますので、この過去に復元するような警察法が実施されますと、現在の情勢においてどういうふうになつて行くかということを非常におそれるものでございますが、皆さん方のこれに対する見通しなり御意見を承りたいと思います。
  130. 阿部真之助

    阿部公述人 私は別に代表するわけではないのであります。私だけの意見を申し上げます。戦争前のフアッシヨが起つたころに逆行するのではないかという議論を最近盛んに聞くのですが、しかし私は、先ほど横川さんがおつしやつた通り、日本はそのことによつてえらい教訓を得て、えらい経験を経て来ておる。だから、もし政治家に良識があるならば、再びそんなばかげたところに逆もどりしないだろうと思います。しかし、とにかく民衆はえらい経験を経て来ておりますから、ともするとそういうふうなことを気にし過ぎるくらいまで心配しておる。しかし私はこの心配はばかにしてはならぬと思う。だからこういう案をこしらえる場合には、そういうおそれがないように努めて注意される必要があるだろう。それが政治だろうと思う。そこで実際の政治の運用を、そういう危惧がないように、また実際に合うようにするためには、できるだけそういう危惧のある部分だけはこの際取去つて、しかも、われわれ今の日本の社会情勢を見ていると、そんなに野放しに安心することはできないのだから、実情に即するだけのそういう準備はなさるべきものだろうと思います。そういう意味で、私は今日の公述された皆さんの御意見というものは、十分尊重されることを望むわけであります。
  131. 鈴木幹雄

    ○鈴木(幹)委員 鵜飼先生に私一、二点お伺いをいたしたいと思います。私も政府の原案に全面的に賛成のものでもございません、同時にまた現行法についてもそのまま全部が正しいと考えておるものでもないのであります。ただいまお話のありました中で、一つの問題は公安委員会の問題でございます。先生の御意見は、国務大臣を委員長にするということについて、公安委員会というものの機能が破壊をされる、こういうようなふうに承つたのであります。私も公安委員会というものが、政治からの中立を守るという警察民主化一つの重要な委員会であると了解しておるわけなのであります。ただ問題は、現行法におきまして、公安委員会の委員の選任を総理大臣がいたし、そしてこれに国会が承認を与えるのであります。しかしながら国家地方警察運営その他については、内閣はこれに対して関係をし得ない建前になつておる。政府は、現行の憲法の建前から申しますると、内閣責任制をとつております。内政について外交について全責任を持つべきものであると考えるのであります。しかしながら、国家治安という大きな問題につきまして、現在の国家公安委員制度のもとにおける政府の発言力というものは、公安委員の選任と罷免についてだけ――罷免については一定の条件がありますが――果すものであるが、その遂行途上においては、内閣責任制の建前から申しまする治安の責任というものをどうして果すか。この疑問を法理学的に考えまして、一体現行法の建前からあるいはまた改正法の建前から申しますと、どういう解釈をするのが妥当であるか。私はその意味から申しますと、政府の原案の公安委員に国務大臣を加える――国務大臣を委員長に置くか置かないかということは別問題として、加えるということは、その意味から申しますれば、内閣責任制の一端をそこにおいて果さんとするのが政府の意図ではないかと、きわめて私は善意に解釈しておるわけでありますが、これを法理学的に先生の御見解をひとつ承りたい。これが第一点であります。
  132. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 ただいまの行政委員会というものが、行政の全責任を負う機関との関係で、どういう地位を持つかということは、たいへんむずかしい問題だと存じます。しかしこれは建前かう申しますと、行政委員会というものに行政の内容については全責任を与えてしまつて、先ほどちよつとお話がありました、わずかに人事もしくは予算等について政府が責任を負う、これで法案に示されておるいわゆる所轄のもとに置くという趣旨が表われておるわけでありますが、そういうことが一体許されるかどうかということは、確かに大きな問題だと思います。しかし現在の戦後の建前は、それが憲法上許されるという建前から出て来ておるわけでありまして、法理的には、私は現にそれは許されるということを認めて置いておるのだと思います。ただ、法理的には許されるが、実際問題として行政内容について何ら関知できないものが責任だけを負うのはおかしい、こういう問題は確かに残ると思うのでありますが、しかしそれは、むしろそういう全責任を委員会に与えておいて、しかも責任を負うというその制度そのものの持つている妙味というものがあるのだと思うので、その妙味がいかに大切であるかということは、今度の改正案にある国務大臣が委員長として入つた場合には、その国務大臣は私は次の二つのジレンマに陥るのではないか。すなわち、一方でもしも内閣の考えている通りに公安委員会を動かそうとすれば、また動かさざるを得ない立場におそらくあると思うのでありますが、そうしますと、会議制の機関を持つということは、ほとんど意味をなさないわけであります。それかに逆に会議制の機関としての意味を大きく尊重しようと思うならば、その委員長が内閣の一員としてたいへん困つた立場に立つのではないか。そういう立場に立つということ自体が、今のような解決の方法はおかしいので、内閣がほんとうに責任を負つて全部やつてしまうか、もしくは委員会に一任をしておくという今の制度を認めるか、どちらかでなければならない。そういう意味でそのどちらがいいかということについては、多少政策上の問題があると思いますが、私は法理的には委員会にまかせるという方法で妥当であるし、正しいし、それを中途半ぱに解決しようとする法案のやり方は賛成できない、かように考えております。
  133. 鈴木幹雄

    ○鈴木(幹)委員 ただいまの鵜飼先生の御意見によりますると、大体委員会というものが全責任を持つて、内閣はこれに内閣の当然の持つておりまする責任を移管しておけばよろしい、こういう御意見のように承りますが、これは今の日本憲法なりあるいは国会法の建前から申しまして、公安委員会が国会にも責任を持つべき性質のものではないと私は思う。そういう事柄がはたして内閣責任制というこの三権分立の建前から申しまして、妥当であるかどうかということは政治的に大きな問題ではないかと思いますが、重ねてその点先生の御意見をもう一ぺん承りたいと思います。
  134. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 内閣が全責任を負うという制度のもとで、ああいう内閣から多かれ少かれ独立した委員会を認めることが法理上違憲であるか、違法であるかという問題と、妥当であるかどうかという問題の二つあると思うのでありますが、第一の違憲であるかという問題についてはああいう制度ができました当初から論議がございまして、これは違憲ではないということに大体おちついているものと思います。おちついていればこそ現在そういう制度があるのだと思います。  そこで政策論として妥当であるかどうかという御質問でありますが、私の考えているところでは、これはそれでもいいのではないか。つまり国会が立法されるわけでございますから違憲でない限りどういう立法をしてもいいわけですが、その国会が立法された中に、内閣は議院内閣制として国会の上に成り立つている、しかし同時に特定の行政については、内閣からは多かれ少かれ独立をした特定の機関を設けてそれに全責任を負わせる、その人事については国会も関与する、こういうことで国会がその政策をおとりになれば、これは責任のとり方としては一つのとり方である。必ずしも内閣だけが全責任を負うような制度にしなければならないものであるというようには考えないわけであります。
  135. 灘尾弘吉

    灘尾委員 関連ですが、ただいまの鵜飼先生の御意見を拝聴いたしまして、実は私ども現在の警察制度は違憲ではないかという若干の疑いを持つているわけでございます。ちようどいい機会でありますので、この疑いをひとつ解いていただきたいと思います。違憲でないということに大体おちついておるというふうな御意見でございますが、私どもどうも学問がございませんのでよくわからないのであります。いかなる理由によつて違憲でないかということについてお教えを賜わりたいと思います。
  136. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 私の方からむしろ何を根拠にして違憲とおつしやるのか、その根拠を伺いたいわけでありますが、それによつていろいろ……。
  137. 灘尾弘吉

    灘尾委員 無学のものか言うことてありますので御容赦願いたいと思います。私は先生の前で申し上げるのもいかがかと思いますけれども、行政権は内閣に帰属するということは憲法に規定してある。またすべて行政上の責任は国会に対しましては内閣が負うということになつておるわけでありますが、現行制度がはたしてこの憲法上の要請にこたえておるかどうかということについて、非常な疑いを持つておるのであります。その点につきましてお教えをいただきたいと思います。
  138. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 ただいまの点は国会でもたびたび御審議になりました点でありますが、その当時の――これは人事院ができますときに同じような問題がございまして、人事院の総裁の浅井さんがそのことを書いておられます。今おつしやいました「行政権は、内閣に属する。」という規定は、これはそういう解釈がはたして解釈の方法として妥当であるかどうか若干疑問はありますが、司法権及び立法権すなわち国会と裁判所の権限と違いまして、あの条文だけは「のみ」という字がないわけであります。司法権はすべて裁判所に属する、国会は唯一の立法機関である、しかし行政に関しては内閣が唯一ではない。これは何と申しますか、そういう解釈はちよつと条文解釈、条文にこだわり過ぎて必ずしも妥当ではないと私は思つておりますが、そういうふうな説明が普通にされております。しかしかりにそれにこだわらないにしても、私は憲法のこの国家の権力の三権分立の建前から言つて、行政権については、国会が最高の立法者として、内閣以外に特定の限られた行政たとえば警察というふうなものについて、内閣から完全に独立ではない、すなわち人事、予算等についてその所轄のもとには立つけれども、しかし行政の内容については自由を与えられておるそういう機関を、国会が法律によつて設けられても必ずしも違憲ではない、そういう意見でございます。
  139. 鈴木幹雄

    ○鈴木(幹)委員 先ほどの続きになりますが、妥当なりやいなやという問題につきまして重ねてお伺いをいたしたいと思います。それは治安という問題は警察だけが担当するというのは、おそらく私は最後の場面であろうと思う。問題が発生をいたし、事件が発生をいたしましてからが警察が担当するということになるのでございます。治安というものを広く解釈いたしますならばこれは政策の問題であり、経済の問題であり、国民生活の問題であり、国家財政の問題である、非常に広くならなければならないと思います。その警察の事項が、公安委員会という政府から独立の権限を委任され、もしくは国会によつて法律により付与された機関によつて内閣はこれの内容には関知しない、こういうような制度にしておくということが、はたして妥当であるかどうかということは、私は多大の疑問を持つておるのであります。従つてこれは内閣責任制の建前から申しましても、現行法における公安委員会制度というものは――公安委員会制度そのものには私は賛成であります、賛成でありますが、このまま放置しておくということはどうであろうか、この問題について重ねてもう一度、御見解を承りたいのであります。
  140. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 私も実際に内閣がいろいろな場合にお困りになることが、あるいはあり得るのではないかということは想像しております。しかし一方国民の側から申しますと、やはり現在のような公安委員会警察行政の内容について十分な責任を持つておやりになるならば、それでもその方向が政府のお考えになつておる方向と完全に背馳するということはあり得ないのではないか。むろん政府考えておられる方向に行くのがいいという場合に、それをあくまで無視することがあるかどうか問題でありますが、しかし一方から申しますと、政府が責任をお持ちになつた場合に、かえつて政党的な方向に警察がゆがめられるおそれがあるので、どちらが国民のためにより妥当であるかという判断の問題であると思いますので、今鈴木委員のおつしやつた意見を全然正面から否定するわけではありませんが、他の面もやはりお考えになつて国会では方向をおきめになつたらいいのではないか、かように考えております。
  141. 鈴木幹雄

    ○鈴木(幹)委員 もう一点お伺いいたします。それは、警察は元来自治体の基本単位である市町村固有自治事務というように解すべきものであるか、あるいは警察という仕事あるいはこういう事務は、すべて市町村固有事務と解すのには現在におきましてはもうあまりに複雑になり、多岐になつておる、もしくは現象的に発生的に論ずるならば、一体これをどういうように解すべきか、こういう点についての先生の御見解を、もう一ぺん承りたいと思います。
  142. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 この問題もなかなかめんどうな問題と存じますが、ことに市町村固有事務であるかどうかという点については、相当議論があると思います。ただ固有事務か委任事務かという二つの概念の区別については、これもいろいろ議論がございまして、それほど明確なものではないのでありまして、どちらにしても大した支障はない、むしろ実際には固有事務であつても、委任事務であつても、国の立法で認めるということになると私は思います。そこで政策的に、そういうふうに市町村事務にするということが、はたして現在の警察という作用の本質からいつて妥当であるかどうか、こういう問題は確かに残ると思います。しかしこれは警察事務の性質だけから私は行かないと思うのであります。それは警察事務の内容自体もいろいろかわつて来ておりますし、ことに現在の警察というものは、戦前の警察よりもその事務の内容がしぼられております。そこでそういう概念の内容、概念の範囲そのものがかわつて行くということと、それからもう一つは、そういう内容のかわつて行く警察について沿革的に見てみますと、過去の中央集権的な、つまり国家事務として警察行つていたときのいろいろな問題というものが、また再び同じように中央に権限を集中してもいいと国民納得するところまで行つているかどうかというところに疑問があり関係で、現在の段階では依然として自治体事務にする。これは必ずしも当然市町村事務にしなければならないというふうには私は考えませんが、もう少し大きい単位であつても、国が統一的に権限を持つよりも、むしろ自治体事務にするというふうな方法をとる方が、国民のためになろ警察が行われるやり方になるのではないか。そういう意味で抽象的絶対的な結論ではありませんが、現在の段階における方法としては、国に集中しないで、少くとも自治体事務にすることがよろしいのではないか、かように考えております。
  143. 鈴木幹雄

    ○鈴木(幹)委員 自治体事務にしておく方がよろしい、こういう御意見でございまして、自治体といいますと市町村自治体であり、府県公共団体であり、自治体であるということは、現行の建前から申しますならば言えると思います。ただその場合におきまして市町村が基本的の単位であろうし、府県は広域的な公共団体といたしまして、ある程度は自治体としましては不完全ということが言えましようが、ともに自治体であることは同一であろう。現行の警察法ができますときにも、大体市町村を単位にするところの都市警察といいますか、市町村警察というものの存置、あるいは府県を区域とするところの広域な自治警察というものにするかということにつきましては、問題があつたように仄聞をいたしております。ところが実際の問題といたしましては、相当な数の市町村警察ができたのでありますが、それが警察法改正によりまして住民の自由意思によつてだんだんと廃止をして、二千ばかりの自治体警察というものがなくなつて、今日におきましては非常に少く、ことにほとんど都市だけに残されておる、こういうような状況になつております。先生の御意見は今承りましたように、市町村にも残しておけ、こういうような御意見のように拝聴をいたしますか、府県を区域にする自治体警察であつてはいけないものかどうか。これは非常にデリケートな問題でありますが、私の意見は差控えまして、ひとつ先生の御意見としてはどこにあるのであろうか、こういう点を一点お伺いしておきたいのであります。
  144. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 私は原理的には自治体に置くべきであるという立場をとりまして、その自治体は、現在町村の警察というものはお話のように減つて来たのでありますが、これはそういうものを町村がささえるだけの能力がない。しかし同じ第一次地方公共団体であつても、市ならばそういう力はあるだろうという意味で、私は原理的には市の範囲、この市も現在では三万以上が市でありますから、たいへん小さいのもあるわけで、人口十五万になりますと警察職員が三百くらいおりますから、そのくらいの市ならば原理的には警察を持ち得る能力があるのではないかというふうに考えております。そこで一般的にはそういうふうに考えますが、しかしこれもいろいろの考え方が具体的な制度をつくる場合にはあるわけでありまして、たとえば完全に自治体的の、自治体警察たる実質を備えたものにする。しかしその自治体警察では人口十五万以上、三十万以上、五十万以上、あるいは都道府県だけ、いろいろ段階の切り方があるのでありまして、それはどれでなければならぬというふうに私は考えませんが、ただ自治体警察をぜひ認めてもらいたい。そういう意見であります。
  145. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの問題に関連して、実は鵜飼先生の御見解を伺いたいのであります。御存じの通り、現在の憲法の前文には国政の権威は国民に由来しておる。しかもその権力は国民の代表によつて行使する。その福利は国民が享受する。これは人類普遍の原理である私。はこれは憲法の大精神であると思うのであります。この憲法の前文に基きまして、自治法の第二条第三項には公共治安維持の規定があり、これは午前中にもちよつと申し上げましたが、厳然と地方公共団体というわくのもとにその固有事務にされております。この事務に基きまして、御存じの通り公安条例というものが各地で公布されておるのでありまして、ただいまの鵜飼さんのお説によれば、法律的の根拠よりも、むしろ原理的な御意見でございましたが、私は現行法体系から言いましても、当然治安維持警察というものは自治体固有事務である。従いまして市町村府県の区別なくして、当然固有しておるものだ、かように考えますが、この点に関してあらためていま一度簡単に御所見をお伺いしたいと思うのであります。  それから次にお伺いしたいのは、今回の警察改正法警察国家の再現であるということが盛んに言われております。ところが警察国家というデイフイニションにいたしましても、大陸系におきましては御承知の通り法治国家の以前が警察国家である。法律によつて国政が運営されることは、つまり法治国家である。その以前の時代警察国家であつて議会主義はなかつた。そういう意味の警察国家といわれております。ところが英米法系におきましては、警察国家とは治安維持の名のもとに自由を抑圧し、弾圧することが警察国家の本質である。こういうふうに定義までも英米流と大陸系ではかわつておるのであります。私は現在の日本憲法を初めとする法律体系が英米流である、これは行政委員制度を見ましても明らかで、一般国民の常識ではないかと思うのであります。ところが今回の警察法を見ますと、これはどうも大陸系の法制を唐突として出されておるのじやないか、かような気持がいたしまして、犬養大臣にも最初にお伺いしたのであります。今回の警察法改正というものは、これは現在のアメリカ流の法律体系下にある日本に、唐突として木に竹を継いだような大陸系の法律を制定したのじやないか、かような気持がいたしますので、この点に関して法律専門家である先生の御見解をひとつお伺いしておきたい。
  146. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 第一の警察市町村固有事務であるかどうか、これは私は先ほどちよつと申しましたように、固有事務という考え方は相当誤解を招きやすいので、もし固有事務を厳格に解釈いたしますれば、市町村のいわゆる固有権であつて、国の立法をもつても奪うことができないということになると思いますが、現在ではそこまでの強い考え方はないと考えております。そこで現在の建前では、地方公共団体が少くとも警察権を持つことが現在の憲法の精神であろうと思いますので、そういう広い意味で私は地方公共団体に持たせなければいけない、かように申したわけであります。  第二点の、現在の英米流の制度の中に突如としてドイツ流の考え方を持ち込んだのではないかという点、私もそれに近い印象を持つております。ただ外国の制度の継承と申しますか、ほかの国のそれを取入れる場合には、いろいろ考慮すべき点がありますので、ある一国の法律体系というものが、そつくりそのまま他の国に移植されて育つということはあり得ないので、それぞれの国の社会的な条件によつて考慮が加えらるべきであることは当然と思います。ただドイツにおいて、警察国家以後に生れて来た法治国というものは、言葉は法治国でありますが、英米におけるいわゆるルール・オブ・ローとはたいへん違つておりまして、むしろ権力的なものを法治国の名前のもとに残していた。そういう意味で警察国家を完全にまだ克服し得ていなかつたんじやなかつたか。そういう国に行われていたような考え方制度が具体的にどうであるかということは別に、その考え方が再び入つて来るようなおそれがある。すなわち警察取締りの権力を強くすることによつて、国の政治がうまく行くという考え方が入つて来ることは、私は賛成できないわけでありまして、その意味で御質問の御趣旨に賛成でございます。
  147. 藤田義光

    藤田委員 私は警察行政というものは、権力行使である。従つてその組織はあくまで民主主義的でなくてはならぬ。人間の基本的な権利に関係する行政でありますから、特にこの点は強調さるべきであると考える一員であります。この民主的組織運営の基本的な観念というものは、あくまで先ほど先生が言われましたチエック・バランスの原則をとおとぶこと、あるいは権力を分散させること、あるいは大衆のコントロールを受けること、その中に任務を完遂し、民主的な運営をしまして、しかも大衆の監視が届くわけであります。こういう観点からして、警察法というものは、あくまで考えなければならぬと考えなければならぬと考えております。そういう観点からしますると、先ほど先生が戦後の警察の特色として二つあげられた第二の点の、地方分権必ずしも民主的ならず民主主義、必ずしも地方分権を採用する必要はないという御説の点に関しまして、私はいろいろと解き得ない疑問を残しておるのでありまして、この点は現実警察も大衆のコントロールを受けながら権力を分散させるためには、むしろ地方に権力を分散させたがいいじやないかと考えておりまして、地方分権必ずしも民主主義ならずという意味を、いま少し御説明願いたいと思います。
  148. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 私の申しましたことが、ちよつと誤解を招いたのですが、原理的に申して、民主主義地方分権とは同一ではないということであります。これはいろいろの人が論じておりますが、たとえば中央政府が完全に国民のコントロールのもとに立つておれば、その中央意思が国々のすみずみまで行われるということは、これはむしろ原理的には当然でありまして、地方々々にこれと相対立する個別的地方意思ができるということは望ましくない。しかし現実の世界ではなかなか中央が完全に民主化されませんので、そこで地方々々に問題を限つて、その地方住民が、住民自治の方式でこれを行う、こういうことが望ましくなつて来るわけでありまして、現在の段階で警察がそれに該当するのではないかという点は、ただいま藤田さんの御質問の通りでございます。  それから全体としての警察法改正の方向について、第一条にありますこの法律目的というところが従来の警察法の前文とたいへんかわつておりまして、人間の価値を尊重するという大事な言葉を落しておる点に、これはやや邪推にすぎるかしりませんが、相当注意すべき点があると思うのでありまして、そういう考え方でなくして、藤田議員の御質問のように国民の個人としての尊厳、価値を尊重するという方向に警察はあくまで運用さるべきであり、制度は従つてその方向につくらるべきである。その意味で御意見に賛成でございます。
  149. 灘尾弘吉

    灘尾委員 万一誤解しておるといけませんので、ごく簡単にもう一度お尋ね申し上げたいと思います。先ほど現在の警察制度が違憲であるかどうかというふうなことについて、御教示を仰いだわけですが、先生の御意見によりますと、まず国会がこれをきめておる。それから予算あるいは人事等について、いわゆる内閣の所轄のもとにあるというふうな意味において違憲でないというふうに伺つたように思うのでありますが、それで間違いはございませんでしようか。
  150. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 そういう意味ではございません。違憲でないということのいろいろ理由がございますが、先ほど私が申し上げました非常に形式的な理由もございますが、実質的にも内閣に独占させないで、ある行政については委員会にまかせるという、そういう現在の行政の一つの方式でございますが、それを憲法が認めておるという建前から、国会もそれをお認めになつたのではないか。国会が認めておるから適憲である、そういうわけではございません。
  151. 灘尾弘吉

    灘尾委員 憲法が認めておるということについては、私は納得できないのであります。もう一点伺いたいのですが、治安の責任というものは、行政のうちでは最も重大な政府の責任ではないかと考えるわけですが、もし先生のお話のような方式によりまして、かりに現在の警察権に関する問題が、すべて公安委員会によつて取扱われるというふうなことがありといたしますならば、その場合においては、これは一体憲法違反でありましようか、どうでありましようか。
  152. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 これは現在国家非常事態というものは、現行法でも認めておりますので、多少問題が残りますが、しかしかりに国家公安委員会が全責任を負うような制度にしても、少くとも人事、予算について政府が権限を持つておる限り、つまり所轄の関係に立つておる限り、そういうふうになつてもさしつかえないのではないか。ただ治安の問題はたいへん重要であるということは、確かに私もそう思いますが、しかし重要であるという点からいえば、行政のもろもろの事項の中にさほど軽重はないのではないかと思います。また考えようによりますと、現在のような警察制度で十分に治安が維持できないものを補う方法は、ほかにもいろいろあると思うのであります。一番大事なのは、私はそういう治安上の問題が起らないような貿明な行政、つまり権力によつて抑圧するのではなくて、そういう不平が起らないような行政が一番大事だと思います。それはいろいろな方法を考えて、その中で行政委員会制というものは一つの行政方式として考えられると考えております。
  153. 灘尾弘吉

    灘尾委員 なるほど治安の問題は、ひとり警察だけの問題ではないと思います。むしろ国民全般にわたつての重大な配慮が必要であろうと考えるのであります。決して警察だけが治安の責任の問題ではないと考えますけれども しかしながら日常の国民生活における安全を維持する、国民の身体自由、生命の自由を守るということは、最も重大なる行政上の職責ではなかろうかと考える、その問題につきまして、政府が国会に対して責任が負えないような立場に置かれるということが、はたして現在の憲法の認めるところであるかどうか、この点実は私は疑いを持つておるのであります。重ねてお伺いするようですが、現在の制度のもとにおきまして、政府は国会に対しまして、十分なる責任を負い得るものとごらんになつていらつしやるでしようか、どうでありましようか。
  154. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 これはたいへんむずかしい問題であります。行政委員会の場合には、すべてそういうふうにならざるを得ないと思うのであります。たとえば人事院についても、内閣が責任を負わざるを得ないような関係になるのでありまして、そういう意味で、もしもこの警察だけでなくてあらゆる問題について、内閣の手にすべてを集中しなければならない、こういうことになつて来るとすれば、私はそれはあまりに権力の集中にすぎると思う。過去の経験にかんがみて、諸国で生れて参りました中央政府からある程度独立をした会議制の機関を設ける、そういう行政機構の一つの原則と申しますか、一つ考え方を全然否定することになるわけでありますが、現在の憲法が、積極的にそれをあらゆる方面に用いることを勧めていないまでも、必ずしも否定はしていないのではないか、そういう考えであります。
  155. 灘尾弘吉

    灘尾委員 時間をとりますので、この辺で終りたいと思います。私もこの警察権の行使というふうな問題につきまして、あるいはまた警察の責任というふうな問題につきまして、すべてを政府に集中したらよろしいということを、必ずしも申し上げておるわけではないのであります。ただ政府は国会に対して責任があるわけであります。現在のように、ただ内閣の所轄に属するというような、あるいは公安委員を国会の同意を得て任命するとか、予算をつくるということだけでは、日々の警察問題につきまして政府は責任を負い得ないのではないか。ことに現在犬養法務大臣が警察担当大臣としてここに今日おいでになりますが、犬養さんには何らの権限もない。何らの責任もない。これを相手にわれわれが論議をしておるということが今日の状態でありまして、こういうことではまことに国会としても困るのであります。そういう意味におきまして、もう少し政府がこの警察につきまして責任ありというところを明らかにする必要があるのじやなかろうかということを考える次第であります。しいて御答弁を要求するわけでもありませんけれども、もう一度先生の御所見をお話願えれば幸いだと存じます。
  156. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 御趣旨のところよくわかりましたから、少し自分でも考えてみたいと思います。
  157. 門司亮

    ○門司委員 ごく簡単にしろうとしろうとなりにお聞きするのでありますが、今問題になつておりますのは憲法の六十五条でありまして、「行政権は、内閣に属する」と書いてある。従つて行政のすべてが内閣に属さなければならないから、警察行政公安委員会のもとに置かれてあるということ自体が、行政委員会は内閣の責任でないかのような議論がされるのであります一が、私どもから考えて参りますと、警察法の中にも、やはり先ほどからお述べになつておりますように、「内閣総理大臣の所轄の下に」という字が使つてありまして、明らかに内閣から離れたものではないと私は思う。どこまでも内閣に所属しておるものに間違いはない。そうしてその内閣の組織というものは、大臣が全部含まれて内閣の組織というものが考えられておる。そう考えて参りますと、やはり大臣がないと言つておりますが、総理大臣の所轄のもとに行われる。公安委員会の所轄をする一つ事務分担として、担当の大臣が内閣総理大臣から命令をされておるか、委任をされておるかすれば、これは当然内閣の一連の一つのあり方であつて、その大臣に対して質疑をし、その大臣に対して答弁を求めるということは、何らさしつかえはないのであつて、私はこれが憲法上の違反であるとか、あるいは憲法上の疑義があるとかいうようなものでは決してないというふうに、実は解釈をするのでありますが、先生の御意見がもしおありでしたら、お聞かせ願いたいと思います。
  158. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 内閣が責任を負わなければならないということは、制度上自然だと思います。ただ責任を負うについて、内閣が公安委員会に対して職務上の指揮監督権を持たないということから、責任を負い得たくなるのではないかということが、灘尾委員の御質問の趣旨だろうと思うのであります。これは、職務上の指揮監督をしないでも責任を負え、そういう制度と解するほかに、ちよつと解しようがないのであります。ちよつと乱暴のようでありますが……。しかしそういう制度考えられていいのじくないか。つまりあらゆることを自分でしたから責任を負うというのではなくて、一般的に内閣が責任を負つていて、ただ特殊の事項については、内閣から完全に独立ではありませんが、先ほど申し上げたように、人事、予算について結びつきがある、そういうところで、職務上の内容については独立して行う、こういう建前、そういう新しい考え方が行政委員会制度として諸国に出て来たわけでありまして、私はそれに全然理由がないということはできない、そしてまたその制度日本憲法が禁止しているというふうにも言うことができないのではないか、かように考えております。
  159. 門司亮

    ○門司委員 それでもう一言聞いておきたいと思いますことは、行政委員会一つのあり方についてでありますが、今日までに行政委員会はいろいろありまして、たとえば地方に行くと教育委員会制度というものがあります。これも一つの行政委員会制度の形であります。それから中央にはやはり人事委員会という一つ制度を持つている。この行政委員会がこういう形を持つておりまするのと、それから警察に対する公安委員会制度、これも一つ行政委員会制度に間違いがない。私が先生にお伺いしたいと思いますのは、こういう行政委員会制度があるが、先ほど先生のお話のように、すべての行政というもの、ことに治安の問題に関しては、社会秩序を維持するということのその元は、少くとも地方自治体にその責任を持たせる。これはやはり民主主義の原則から言うならば、社会と個人が共同の責任の上に秩序を維持して行くという観点に立てば、私はその通りだと考える。ところが先ほどから灘尾委員の御質問になつておりまするように、その辺まではいいが、それなら憲法にいう責任制を一体どうするかということが、やはり議論になつておりますので、もう一歩進んでお聞きしておきたいと思いますことは、国の治安というものは、先ほど先生のお話のように、総合的な政治のあり方に非常に大きく左右されるものであつて、従つて治安全体はやはり国の施策、政策、あるいはその他の政治性によるものと解釈するのが正しいのか。従つて警察制度というものは秩序を保持することのための一つ制度にすぎないのだというように解釈すれば、憲法の違反にもならなければ、地方自治体に委任することもちつともさしつかえないというように解釈されるのですが、そういうように考えてよろしゆうございますか。
  160. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 同感でございます。
  161. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員 私があるいは耳が遠くて、承つたところが徹底しないような状態があつたならば、再び聞くことをお許し願いたいということをまず前提に申し上げます。  一番に横川先生にお願いしますが、第一に先ほど第一条と第二条と第三条の点についての御意見があつたようであります。第一条の「目的」というところにある「警察管理運営保障し、」という点、それから多分の責務の点については、第二条の「不偏不党且つ公平中正」という点についての御意見だと思うのです。それからいま一つ第三条の責任の点について、やはり同様な服務の性質についての御議論と思うのですが、御意見の趣旨はこう承つてよろしいでしようか。こういう条文は規定しておるけれども、実際はそういうふうに運用はできないのだ。今までにそういうおそれがあるから、運用はできないが危険な規定だ、こういうふうに承つてよろしいですかというのが、まず横川さんにお尋ねする第一であります。  そそれから今度は藤田先生に最後に一つ。それは現在藤田先生のおつしやるのは、家庭の経済上にあまり費用がかかるようなことはいけないから、その点において費用がかからないということからすれば、現在のこの改正案に対して反対をしないと了承してよろしいかどうか。その趣旨はこうであります。費用がかかるということについては、現在は三府四十三県にまたがつて府県ごと国家警察が存在する。そのほかに二百七十六の市警察があり、百三十の町村警察があつて、これはまつたく両方とも重複している。重複といつては悪いのですが、実際は殿様のように四百六の警察国家警察ときわめて連絡がとれないのです。これは商売上私はそういう実感を持つているのであります。その費用は要するに大体政府の予算では非常な額が出ておるようであります。だからして多分四人の先生方もその費用の点については、すでにこの法律案がもし通るということになり、そしてまたそれが一条、二条、三条のほんとうの民主的理念を基調とするような形になるならば、あえてさような多大の費用をかけて、いわゆる重複する警察を持たなくてもいいのではないかという仰せなのかどうか。それともわれわれ国民負担を増しても、国家警察をこしらえて人をふんじばる材料をたくさんつくるのだ、こういう仰せであれば別でありますが、そうでなく、すぐにそういうふうに持つて行つて、ただちにこの法律国家警察になつてしまうのだ。だから選挙のときには危険だ。それから悪いことをするとすぐふんじばられるという意見が、どうもそつちこつちにあるようですが、私個人としてこの法律が悪いというふうにも解せないのでありますけれども、要するにさような四百六の警察も存置しなければならない。そのほかに存在しておつた国家警察というものと両方とも必要だ。そうして先ほど阿部先生がおつしやつたように、民主主義に徹底するのならばこのくらいの県単位でまあまあよかろうというように拝承できた御意見に対して、それでもいいかどうか。またそれではいけないのだ、どこまでも徹底して、今度の改正法案は通してはいけないのだというふうに了承してよろしいかどうかについて御意見を承りたいと思います。まず横川先生からひとつ……。
  162. 横川正市

    ○横川公述人 私は前提条件としては現行の警察法に対してこれをつくられた歴史というものを簡単にかえるというようなことについて、反対意見を申し上げたいのであります。それからその次に警察法の成り立ちの中に、たとえば一条、二条、三条というのは言葉の上では非常に厳格な一つの規定ないしは方針を与えております。それから同じように公安委員の任免、それから公安委員の任期、それからその行うそれぞれの内容については一つ一つく抜け道のないように、なるほど文章上から見れば確かにうまく運営できるだろうという点が出ておるわけです。しかし実際上一番問題になる抜け道はどこかというと、これはやはり第六条の「委員長は、国務大臣をもつて充てる。」というところに問題があろうかというふうに考えております。そこで第一条、第二条、第三条のようなことが言葉の上では規定してあるけれども、実際上こういう抜け道があれば、これは守られない結果にならないか。たとえば新聞論調にあるように、時の政権がかわるたびに上の頭のすげかえが行われるというようなことが危険な問題として起つて来ないかどうかについて、一応これは抜け穴と見られる、こういうふうに私の方で申し上げたわけであります。
  163. 藤田孝子

    藤田公述人 私の言葉の表現の仕方が非常にまずいもので、御納得が行かなかつたと思いますが、私は県単位、ことに東京都の住民といたしまして、私は東京都の場合は都単位に大賛成なのでございます。それはなぜかと申しますと、現在すでに三多摩地区は地方公務員ではなくて国警がやつておりますから、それを都の方に編入することに大賛成でございます。同時に私はせつかく育て上げられて来た今の民主的な警察を、また元の国家警察にする、私はその点は反対なのでございますが、県単位には私は賛成なのでございます。どうぞよろしく。
  164. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 鵜飼教授にいい機会でございますのでお伺いしたいのでありますが、この世界の文明国というか、比載的大国の警察制度をいろいろお聞きしたり調べたりいたしましても、警察中央機関の運営について、行政委員会に責任を持たしておるというところは多くないように思うのでございますが、相当多いのでございましようかどうか。と申しますのは、いわゆる都市自治とかいろいろそういう方面から、都市警察制度について行政委員会管理しているようなところがあるようでございますが、それも実際は世界各国の事例から見れば、そういうところはきわめて少いように思つておるのでございます。そういうことから考えますと、この都市警察等において採用せられた行政委員会制度というものを、国の警察の中枢機関の方にも応用したというか、試験台みたいになつたの日本の現行法じやないかというような気がするのでございますが、その点についてお尋ねしたいのと、それから鵜飼先生の学問的な御研究については、私たち非常に頭の下ることばかりでございますけれども、ひるがえつて端的に実際問題に当てはめて考えますと、どうもはつきり私にわからないことがあるのでございます。現実に北海道のずつと僻陬の地域の町で炭鉱なんかございますと、人口五千以上になりまして自治警察ができる。そこは、社会党がいいとか、自由党がいいとか、そんなことは一切問題にしていないのですけれども、その社会党の住民が非常に多くて、社会党的に公安委員会が組織されておる。それは公安委員の政党所属は限定されてはおりますけれども、何といつてもそういうふうな比重になるような公安委員が責任をもつてつた警察の処分等に対しましても、これはどうも自由党の内閣におきまして何百里離れてそれに責任を持てといわれても、そうした思い切つたばかげたことはできないように思いますし、それからまたわれわれ国会議員としましても、そんな責任を内閣に追究もできないのじやないかと思うのですが、あまりにばかげたことのように思うのですが、どうもそれが学問的にずつと精緻な推論をして行くと、ちつともばかげないことになるのが、自分の耳を疑いたくなるようなんで、その点をお聞きしたいのでございます。  それからかれこれいつてもほとんど警察法論議は出るべき議論は尽したようでございますが、この辺で一代の知恵のあられる阿部先生に内閣責任とそれから警察政治的中立性の確保と、二つの間の何か名案というものを考えていただきたいと思います。具体的には理論の究明よりもその方が忙しいので、それをお願いしたいと思います。
  165. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 ただいまの御質問の趣旨はまことにごもつともでありまして、確かにそういう点があると思います。ただたとえばアメリカの地方警察制度において、委員会制度が設けられており、国で設けてないということは、国にそういう警察権を集中していないから、そうなるわけでございます。FBIは警察権の一部分を持つておりますが、全部を持つていない、部分的であるから、こういう制度を設けなくても私は済んでいると思う。それで地方公安委員会制度を持つているところが過去において多かつたわけですが、だんだんそれがそうでなくて、警察長のような制度にかえているところもありますが、その場合でも、警察長の選任について民主的な保障はしておるわけでありまして、中央からの任命ではなくして、選挙もしくは議会でやる。これは現在の日本憲法でも九十三条にありますように、長以外の吏員の中にも、住民の選挙によるものがあつてしかるべきだと思うのでありまして、もしも警察長がそういうふうになればこれも一つの行き方だと思います。  それから全体として警察における責任を中央で負うということと、地方に分散しておるというこの食い違いは、これは先ほど申しましたように、中央が完全に民主的な意思を表わしている場合には、そういうふうにすみずみまで行くのが当然でありますが、しかしいろいろ問題もございますので、むしろ違つた問題の処理の仕方が地方にあるということが、かえつて住民の福祉になるという考え方から、いわば一つ現実的な解決策というか、もつといい方法があれば、阿部先生にでも伺つて考え直したいと思います。
  166. 阿部真之助

    阿部公述人 私も別に名案を持つているわけじやないのです。しかしそれはものの考え方の違いだろうと思う。責任があるから、同じ分量だけますにはかつて権力を持たなければならぬ、こう考えるべきか。ますではかれば、多少権力の方が少くても、その方が一般民衆に安心感を与え、福利を与えるという場合には、政府はそんなに責任の分量だけ権力を主張しなくてもいいのじやないか。そんな損得というような取引関係じやなしに、やはり私どもは民衆を主体にしてものを考える。どうもあまりに責任だけ権力をよこせということは、取締りとか権力者を主体にした考え方で、これは考え方の違いで、ちようどうまいぐあいの方法なんというものはちよつとないだろうと思います。
  167. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 鵜飼先生にちよつと伺いたい。実は先ほどから同僚の鈴木さん、灘尾さんからお尋ねがありまして、私非常に傾聴いたしました。これはおそらく現在の保守党の人たち警察法改正しようという基本的な理念だろうと思つて、大いに拝聴したわけです。確かに一理があるように思うのであります。と言いますのは、ちよつと脱線いたしますが、本会議などにおきましても、緒方副総理は、反動立法なんかについて野党が質問をいたしますと、いつも、日本がフアッシヨになるとかそういうことになる心配はない。国会が国民から直接選挙をされた衆議院並びに参議院をもつて組織されておる限りは、そういうことになる心配はない。四年の任期満了あるいは解散によつて国民に信を問うのであるから、心配はない、こういう答弁がありまして、与党の人たちの拍手で終りということになるわけです。私は実はその思想がどうもおかしいおかしいと思つて聞いておりました。先ほどの御質問もやはりそのようなことでありました。責任を痛感されることはけつこうだと思うのでありますが、近代国家というものは、先ほど先生は、それでいい、下はどうでもいいという議論もあるだろうが、日本の現状においてはそこまで行きにくいというような御説明であつたように伺うのでありますが、私どもの解釈するところでは、自由国家群においてはますますそういう制限が実はふえて来ておるのではないか、委員会制度その他がふえて来ておるのではないかというふうにさえ感ずるわけであります。アメリカあたりにおきましては、共和党あるいは民主党の議員の質問その他でも、日本の政党なんかに比べて、個人の意見はどんどん言つてよろしいというところまで来ている。そういうふうに考えられるのであります。  それからもまた今の質問者の理論を推し進めて行きますると、私は憲法学者ではありませんから、よくわからないのでありますけれども地方の内政について内閣が行政上の責任を持つというならば、それじやほかにまだまだやらなければならぬことが、たとえば、教育の問題について、保健衛生の問題についてある。しかるに今の制度におきましては地方分権というものが認められております。たとえば今では府県知事に対して総理大臣は、国家事務に関すること以外においては、命令権はありません。大幅な権限を委譲している。市町村長についてもそうだろうと思います。従つて交通も通信もずいぶん発達し、新聞、ラジオも発展いたしましたので、私どもは、現在の町村はそのままでいい、あるいは府県はそのままでいいとは絶対考えておりません。これらは大きくして行くのでなければ、あるいは府県については統合して行かなければならぬと考えておりますけれども、一ぺん選挙すれば、四年間はそれにまかせつきりで、それでいいという考え方民主主義の根本から言つて、自分の村は自分で治める、自分の町は自分で治める、自分の県は自分で治める、自分のことはできるだけ自分でやるという素朴な考え方からいつて、非常に古いというか、後退しつつあるという考え方を持つているわけでありますが、どうでしようか。ソ連とか中共は徹底的な中央集権の国だと思いますが、それ以外の自由国家群では、そういうものが、今他の委員が御質問なさつたような傾向にあるか、それともそれを制限するような危険がふえて行くような傾向にあるか、ちよつとその辺をお願いしたい。
  168. 鵜飼信茂

    ○鵜飼公述人 全体の方向がどちらへ行くかということは、たいへんむずかしい問題だと思います。行政の集権化ということは、近代国家一つの方向でもあると思うのであります。しかし行政の集権化の傾向があるというところに、民意が十分現われるようにどういうチエツクの方法をとつたらいいかということが、行政技術の一番むずかしい問題でありまして、どちらの方向であるということは断定できないと思いますが、少くとも国民の権利が害されないように、行政の能率の見地から集中された権力を何らかの形で統制する、その統制の方法にいろいろな方式があるそういうふうに申したらよかろうかと思います。その意味で根本の考え方としては、今の御質問の御意見に賛成でありますが、断定的に中央集権の方向はないというふうには私は言えないと思います。
  169. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 どうもありがとうございました。
  170. 中井一夫

    中井委員長 皆さんの御質疑も終了いたしました。  なおこの機会公述人の皆様に申し上げます。本日はお忙しいところ、ことに遠路わざわざ御出席をいただきまして、おそくまで貴重なる御意見をお述べいただきましたことを、ありがたく厚くお礼を申し上げます。     ―――――――――――――
  171. 中井一夫

    中井委員長 この際公述人の選定につきましてお諮りをいたします。すなわち明十七日開会する公聴会公述人として、全国市長会代表の大阪市長中井光次君の出席を求めておりましたが、同市長は病気高熱のため出席し得ないので、神戸市長の原口忠次郎君を代表として出席し得るようにとりはからわれたいとの申出がありました。つきましては、右神戸市長原口忠次郎君を公述人として意見を聞くに御異議はございませんが。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 中井一夫

    中井委員長 御異議なしと認め、さように決定をいたします。  また朝日新聞社友関口泰君よりは、旅行のため出席し得ない旨の申出がありましたのでこの点御報告を申し上げておきます。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後六時三分散会