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1954-05-11 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十一日(火曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 灘尾 弘吉君    理事 吉田 重延君 理事 鈴木 幹雄君    理事 西村 力弥君 理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       熊谷 憲一君    鈴木 善幸君       西村 直己君    保岡 武久君       山本 友一君    渡邊 良夫君       床次 徳二君    藤田 義光君       古井 喜實君    阿部 五郎君       猪俣 浩三君    北山 愛郎君       横路 節雄君    伊瀬幸太郎君       大石ヨシエ君    大矢 省三君       中井徳次郎君    松永  東君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚田十一郎君         国 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         国家地方警察本         部長官     齋藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警務部長)  石井 榮三君         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  中川 董治君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  山口 喜雄君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君  委員以外の出席者         専  門  員 有松  昇君     ————————————— 五月十一日  委員尾関義一君、佐藤親弘君、田渕光一君及び  横路節雄辞任につき、その補欠として保岡武  久君、渡邊良夫君、鈴木善幸君及び猪俣浩三君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員猪俣浩三辞任につき、その補欠として横  路節雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十日  千葉県志津村外五箇村の町村合併反対に関する  請願大石ヨシエ紹介)(第四七五四号)  選挙違反連座制強化に関する請願永田亮一  君紹介)(第四七九〇号)  同(江藤夏雄紹介)(第四八〇四号)  同(三池信紹介)(第四八〇五号)  同(堀川恭子紹介)(第四八一七号)  田野倉区及び小形山区の都留市合併反対に関す  る請願藤田義光紹介)(第四八四九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法案内閣提出第三二号)  警察法の施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第三二号)  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第一八七号)     —————————————
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  昨日に引続き警察関係法案を議題として質疑を続行いたします。本日は昨日の理事会申合せ通り、第五章、第六章、第七章及び附則を一括して質疑をお進め願うことにいたします。阿部五郎君。     〔委員長退席灘尾委員長代理着席
  3. 阿部五郎

    阿部委員 ごく簡単に国警長官にお尋ねいたしますが、皇宮護衛官階級のことであります。申すまでもなく、一般警察官と比べましたならば、皇宮護衛官人数ははなはだ少いのでありますから、その階級一般警察官と比べて、そうたくさんつくる必要はなかろうと常識的には思われますが、第六十八条に、一般警察官階級に対応して、上から下までずつとつくつてあるようであります。こういう必要はどういう点からあるのでありますか。
  4. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 皇宮警察護衛官といたしましては八百二十人程度でございますが、これもたびたび申し上げておりますように、小さな府県に十分相当するだけの人数でございまして、やはり部隊の編成というような面から考えまして、大体これは現在通りでございますが、こういつた階級がないと非常にぐあいが悪い。ただ六十八条の中の皇宮警視監皇宮警視長、これはおのおのこういうものを置くというのではございませんで、実際は皇宮警視監皇宮警視長皇宮警察本部長階級でありますが、この本部長経歴によりまして警視長になる場合とあるいは警視監になる場合がある。その必要がございますので、階級といたしましてはさように設けてございますが、これは二名おるわけでは実際はございません。その点は御了承願いたいと思います。
  5. 阿部五郎

    阿部委員 一番上の人の経歴によつてこういう必要があるということはわかりましたが、その下を人数に比例してこうたくさんわけねばならぬという理由が、ただいまの御説明では了解できかねるのでありますから、もう少しわかるような御説明をいただきたいと思います。  それとあわせて、この皇宮護衛官というのはやはり警察官の一部であります。従つてこの法律の第一条、第二条というようなところに定めてある使命をやはり持つておるもの、かように思つておるのでございますが、さようでございますか。
  6. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは警察官の中の種類ではございません。従いまして当然第二条の責務を行うものではないのでございます。警察職員の一種でございまして、司法警察につきましては、限定された司法警察職員指定はされておりまするけれども警察官ではないのございます。
  7. 阿部五郎

    阿部委員 これは警察官でないというお答えをいただきまして多少わかる点もあるのでありますが、そうすると、警察官としての職権であるところの犯人の捜査とか逮捕とか、犯罪の予防ということは皇宮護衛官使命でないということになるのでごさいましようか。
  8. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 ただいま長官からお答えがございましたように、皇宮護衛官警察職員の一種ではございますけれども、限定された目的を持つた職員でございます。その職権行使につきましても、一般警察職員一般司法警察職員ということに刑事訴訟法できまつておりますが、皇宮護衛官は、司法警察職員等指定応急措置法という特別の法律によりまして、「皇居御所離宮、御用邸、行在所若しくは御泊所における犯罪、陵墓若しくは皇室用財産に関する罪」というのが一つ、そういう皇居関係のような場所における犯罪、それから「行幸啓の際における天皇皇后、皇太后若しくは皇太子の生命身体若しくは財産に対する罪について、国家公安委員会の定めるところにより、刑事訴訟法規定による司法警察職員として職務を行う。」かようになつております。一言で申しますれば、皇室関係一定施設内における犯罪、それから皇室関係の人が行幸啓の際に外に出られた場合におきましても、その者に対する生命身体財産に対する犯罪、この二つの事項についてだけ警察官としての職権行使をする、こういうふうに規定されているのであります。
  9. 阿部五郎

    阿部委員 それでは一般警察官皇宮護衛官との間の人事の交流などというものは全然ないものと思つてさしつかえありませんか。
  10. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 一般職員としての交流はほとんどございません。皇宮警察本部長、それから皇宮警察本部部長くらいのところまでの交流は、大所高所から仕事をするという意味におきまして若干行われております。皇宮警察本部長のごときは、主として交流によつて行われているわけであります。
  11. 阿部五郎

    阿部委員 それで大体この条文に書いてある意味がわかつたのでありますが、しかしながらその御説明は、皇室国民との関係の現状に比較いたしましたならば、すでに時勢に合わないといいますか、多少ぴつたりしないものがそういうやり方ではできておるのではないかと思われるのであります。すなわち、ことしの正月でありましたか、皇居において事件が起りました。あのときなんかでも、皇宮警察がもつぱら皇室の御身辺護衛という使命を持つておるという観念で仕事をしておるということが、ああいう問題の起つた原因ではなかろうかと思われます。ところが、天皇国民との間の関係は、近ごろはよほど密接になつて来て、新聞などで見るところによると、皇居へは一般民衆が今後は頻繁に出入りができるような制度になるやに承つております。そういう時分に、わずかの御人数である皇室関係の御身辺を守るのにこれだけの多数がかかつておる、そしてその多数がもつぱらその方面にのみ関心を持つて、一方多人数国民が関連を持つにもかかわらず、その方面には無関心の態度でおつてよろしいかのごとき制度がこの法律によつてできておるということは、はたしていかがなものであろうかと思うのでありますが、大臣からこれらの点について御見解を承りたいと思います。これは国警長官とお二人から御説明を得たいと思います。
  12. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 皇宮護衛官は、ただいまも他の政府委員が申し上げましたように、皇居とかあるいは離宮とか、そういうところの警備天皇皇后、皇族の御警衛ももちろんでございますが、その警備を主たる任務といたしておるのでございます。ちようど国会の中に国会警備をつかさどられる人たちがおるのと同様でございます。天皇皇后の御身辺警備ということはもちろん大きな使命一つでありますが、それのみではございません。従いまして、たとえば皇居内の一切の警備、その中には人が混雑をいたします場合の整理というようなことももちろん含んでおるのでありまして、先般の二重橋事件につきまして、皇宮警察も必ずしも万全であつたとは考えませんが、当時の警備の状況も、御説明をいたしましたように、天皇皇后陛下の御身辺警備のみに気がとられておつて大衆整理注意を向けていなかつたという点はまつたくないのであります。その点はひとつ誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国警長官お答えいたしましたように、たとえば院内におきましても、国民の代表が集まつて、国憲の最高機関としての職能を果しまする上に必要な十分な環境を保つということから、護視諸君並びにその組織があるのであります。それと同様に、やはり国民統合の象徴としての天皇のおられる皇居は、あくまで国民のものとして静謐、静粛に保ち、清潔に保つということ、または御身辺護衛ということについての必要からいたしまして、こうした皇宮警察というものを置いているものと了解いたしております。
  14. 阿部五郎

    阿部委員 お話は一応承りましたが、そういう御趣旨でありましたならば、皇宮警察官も当然にこの法律第二条に定めている国民権利義務の保護、その安全の維持というような使命も帯びてよいものではなかろうかと思うのであります。またそうでなかつたならば、将来予想されている皇室国民との間の密接なる関係に処して、皇宮警察官が当然の使命を果すのに欠けるところがあるのではなかろうか。国警長官は、過般の事件はそういうところから起つたのではないと言いますけれども、第一に陛下の御安泰ということを頭に置いて、人民の安泰ということについて頭に置かないという平生の教育も、この条文から当然に引出されて来るもののごとくにも考えられるのであります。そしてその結果として、皇宮警察官の眼中に一般国民のことが多く浮ばないということが、いろいろな事件の起る隠れたる原因にならないとも限らぬのであります。そこで私は伺うのでありますが、さような一般警察官任務皇宮警察官に兼ねてもたすべきではなかろうかと思いますが、ご所見はいかがでありますか。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうした趣旨におきまして、警察学校もございますので、そうした考え方、心の持ち方、心構えというようなものにつきまして十分訓育を誤らざるようにいたしたいと考えております。
  16. 阿部五郎

    阿部委員 これ以上はもうお互いに意見を述べるにすぎませんから、このくらいにしておきます。  次に、第六十九条の警察職員礼式服制の点でありますが、これは私が知つておるところによりますと、あるいは間違つているかもしれませんけれども、警察官の正式の服装というものは、巡査と警部補、警部というふうに、その間には非常に大きな隔たりを持たせておるようであります。いわゆる金ピカの服装をするように一応なつておるようでありますが、今後もその通りに続けられて行かれるお考えでありますか、お伺いいたします。
  17. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 礼式服制についてのお尋ねでございましたが、これは六十九条にもございまするように、今後の国家公安委員会が、この法案成立国家公安委員会規則として定めることになつておりますが、終戦後におきまして、以前からの警察にございました礼式服制というものにつきましては相当の検討が加えられまして、新しい時代にふさわしいような警察職員としての規律を保つという見地に立ちまして、当時警察制度審議会等もございまして、そういうところでも十分御検討になりまして、現行法警察法ができました後において、国家地方警察におきましては、警察官礼式服制というものを国家公安委員会規則に基いて定めておるわけでございます。階級的に非常にはげしい差があつたり、大げさの階級的な差別があるように思われるというふうな御質問にも伺つたのでありますが、その検討の際におきましては、過去におきまして確かにそういう点が多少厳格に過ぎたという点を、新しい時代に沿うように相当思い切つてこれが改正されて現在に至つておるのが事実でございまして、たとえば服制におきましても、胸部のところにつけます階級章の星の数は、ただ一般がこれを識別するに足るところにおきまして階級差別を明瞭にする。それから腕のところに山型が一本あつたり、二本あつたりするというようなぐあいのものがございますが、これはむしろ警察部内におきましては一見してその階級差別がわかりにくいという文句があるくらいでございまして、大体六年の間、自治体警察の方もこれにならいましてきめておりますが、警察官一般としての秩序が相当保たれておりますので、おそらく今後におきましても、またさらに一くふうして新しいものをおきめになるという時代も来るかもわかりませんけれども、ただちにこれを思い切つた改正をするという措置はすぐなされるものではないであろうというふうに考える次第でございます。
  18. 阿部五郎

    阿部委員 その点は大体わかりましたが、威嚇的な服装とかあるいは権威づけるためのいかめしい服装なんということは、これは現在の警察のあり方にもそぐわないものがあろうと思いますから、願わくはただいまのお答えのごとくに、将来も再び過去のような威嚇的な服装の復活するがごときことのないように御注意を願いたいと思います。  それから、第六十七条の第二項でありますが、都道府県装備品都道府県警察警察官に貸すと、こういう定めになつております。ところがこの装備品というのは前に第三十七条の第六号では、この警備装備品というのは国が全体負担することになり、しかもその予算面も、都道府県予算面を通らないで、じかに国から出させるようになつておるにもかかわらず、こちらではあたかも都道府県一定装備品を所有しておつて、それを個々の警察官に貸すようなふうに定めてあるようでありますが、これは一体どういうぐあいになるのですか。
  19. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 三十七条の経費のところに書いてございます装備品は、警備装備品でございまして、大体こういうふうにお考えいただけばいいと思います。装備品と一口に申しましても、これは警備装備品個人装備品にわけていただきます。警備装備品と申します方は、警察官事件が起つて出動するといつたようなときに、一つの具体的な警備といたしましてまあいかめしいいろいろな、その事態のあれにふさわしいような警備をする場合のものでございます。それから個人装備品というのは平素いかなる場合におきましても警察官が携帯していなければならないようなものがあるのでございまして、警察手帳でございますとか、手錠の類、それから警笛、それから御承知の通り警棒、それから拳銃帯革、これも今までは必ず携帯しなければならないことになつておりますが、これは個人装備品でございます。それで第六十七条の二項におきまして府県警察官に対しまして貸与すると申しますのは、この個人装備品でございまして、その中の拳銃帯革につきましては、これは国費でまかないますけれども、後の第七章雑則の七十七条の規定によりまして、国費でもつて国が用意をいたしまするところの施設無償都道府県警察使用させることができるという規定があるのでございます。これは「警察用国有財産及び国有物品当該都道府県警察無償使用させることができる。」というのでございまして、物品を含むわけでございます。この国が国の経費で整備をいたしますところのものは、この七十七条の規定によりまして都道府県警察無償使用させまして、それを今度は借用者としての都道府県自己警察職員に貸与するという形になるのでございます。拳銃のごときものについてはさようでございます。それ以外の警備装備品につきましても同様でございます。それで先ほど申しました普通の手帳手錠、捕繩、警笛警棒という類は、これは三十七条の方の警備装備品に入つておりませんので、これにつきましては六十七条の一項をまさしく読んで字のごとく、府県がそのまま自己費用負担におきましてただちに府県警察官に貸与する。国費で支弁するようなものにつきましては、つまり借りておるものをまた貸与するというようなまた貸しのようなかつこうになるのでございます。
  20. 阿部五郎

    阿部委員 それからその一つ前の六十六条の小型武器でございますが、これについてはきのう門司委員からいろいろ御質疑がありましたが、そういうむずかしい問題に入らずして、そこの小型武器という言葉使つた意味、これはわれわれは当然拳銃と思うのでありますが、拳銃と言わずしてこれを小型武器、こう表わしたところには拳銃以外に何か武器を御用意なさるお考えがあるのかどうか、また現在所持されておるものの中で拳銃以外に何か小型武器があるのかどうか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  21. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは当初占領当時にできました言葉でございまして、他の拳銃を所持しております鉄道公安官、そういつた方もみなこの文字にならつておる次第でありますが、あるいは当時としては進駐軍の方から、場合によつたら拳銃以外の小型武器も持たせる必要がありはしないかという感じもあつたのではなかろうかと思いますが、現在としては拳銃以外には考えておりません。
  22. 阿部五郎

    阿部委員 拳銃以外をお考えになつていないといたしましたならば、元来武器というものは警察官にそうたくさん持たせることは好ましくない、これはだれもそう思うのではなかろうかと思うのであります。しからば、将来法律をかえずしていろいろな武器使用することができるようなこういう抽象的な広い施用の言葉を使うのははたしていかがなものかと思いますが、御所見いかがでございますか。
  23. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 拳銃というものでなくても、あるいは拳銃にかわるような軽微なものが何か考えられるというような場合に、これでも済むからという意味も入つておろうと思いますが、さしあたつてさような考えもございません。ただ今までの使い方、先ほども申しましたように他の特別司法警察官等が持ちます場合も同様に規定しておりますので、ただそれをそのままに踏襲したにすぎないのであります。
  24. 阿部五郎

    阿部委員 それでは、現在携帯しておりますところの警棒のごときもの、これは武器の中に入つておらないというお扱い方でございますか。  それからまた催涙弾というものを発する道具を使つておるそうでありますが、私は見たことはありませんが、これも武器以外というお扱い方でございますか。
  25. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警棒武器とは考えておりません。  それから催涙弾のごときは、これは武器であるかどうか非常に疑わしい点があるのでありますが、いずれにいたしましても、所持するものではありませんから、この中には入つておらないわけであります。(笑声)
  26. 阿部五郎

    阿部委員 こういうものは大体使うこと、所持することはもとよりでありますが、使用することはまことに好ましくないものでありますから、こういうことはひとつ法律によつてちやんと何々は使うことはできるというぐあいにして定めておいた方がいいのではないかと思うのであります。すなわち小型武器と呼称して内容を漠然としておいて将来は何を使うか法律によつては定められないというようなことよりも、現在やむを得ず、ときに使つておるところの催涙弾使用のときの道具とかいうような現在使つておるもの、将来もやむを得ず使うというようなものは、一応法律にあげておいた方がいいのではないか、そうしてそれをさらに拡張しようとするときには、国会にかけて国会の承認を得なければむやみにそれを拡張できないようにする、こういうふうにしておく方がいいのではないかと思うのですが、御所見を伺います。
  27. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この点は御所見の御趣旨もよくわかる点があると思うのでございますが、たとえば群衆を解散させる場合に、消防のようなホースを使つて水を出すというような解散のさせ方も、万やむを得ない場合には用いざるを得ないわけであります。催涙ガスのごときも特に人体にさしたる危害を加えるものではありませんので、万やむを得ない場合には、群衆が激昂しこれを解散させなければならぬという場合には、やむを得ず用いなければならないものだと思うのでありますがこういうものを何と申しますか、警察官等武器使用制限職務執行法でございまするが、それを越えるような場合にはこれはやはりいけないと思いますが、この限度内であるならば——まあわれわれといたしましては今日さような非常識な扱いもいたしておらぬわけでございまするから、しいて法律制限をしていただかなくてもよいのではないか、かように考えております。
  28. 阿部五郎

    阿部委員 非常識なことをなさらないということは、それは長官は常識ゆたかな方でありますからなさらないでありましよう。しかしたくさんの警官の中には、ことに地方などには非常識なことをやらぬとは必ずしも保障しがたい者があると思います。そこで一方民衆側にとつてみますと、警察官がどんなものを持ち出して来るか予測ができないという状態は好ましくないと思いますから、重ねて私はそういうことは、どういう種類のものを警察官が使うであろうかということを、あらかじめ国民が知つておく必要があろうと思うのでありまして、それを法律に定めておいて、国会の同意なしにはそれをむやみに拡張できないという状態が好ましいと思うわけであります。将来御考慮を願つておきます。  それから緊急事態の問題でありますが、緊急事態布告にあたつては、総理大臣国家公安委員会勧告に基いて行う、こういうことになつております。これだけで見ますと、イニシアチーヴはあくまでも公安委員会にあつて総理大臣の方からは進んで布告をすることはできないというふうにも見られるのでありますが、この点いかがでございますか。
  29. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 御所見通りであります。
  30. 阿部五郎

    阿部委員 そうするとたまたまある程度の治安の撹乱があるとして、総理大臣の方では緊急事態布告による措置を必要と思うても、国家公安委員会の方の勧告がなかつた場合、総理大臣とこの委員会委員長国務大臣とは一心同体と見ることができましようけれども、合議体としての国家公安委員会布告をせよというという勧告がない限りには、総理大臣はみずから進んで自己の創意に基いてやることはできない、かように承つてよろしゆうございますか。
  31. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 普通総理大臣その御意見をおそらく持つておられるであろう公安委員長がさように考えられても、公安委員会としてはまだ緊急事態布告する事態でない、こういうふうに決定をいたしまして勧告をいたさないということになれば、やはり総理大臣はその布告を発することはできないのでございます。
  32. 阿部五郎

    阿部委員 それでは自衛隊との関係でございますが、今度の自衛隊法案は私まだ十分見ておりませんけれども、従来の保安隊の方から行きますと、必要がある場合は総理大臣が保安隊の出動を命ずることができるということになつております。通常の場合においては、私は国内に出動を命ずるという事態においては、警察法関係においては緊急事態布告があるもの、かように思うのであります。そうなるかどうか私は知りませんけれども、おそらく通常の場合にはそうなるであろうかと思います。かりに先ほどのお答えによりますと、総理大臣緊急事態布告をしたいと思つてもできない場合があり得る。そういう場合に総理大臣はそれにかわるべきものとして、保安隊または自衛隊を出動させるというようなことも考えられるのであります。すなわち形式上緊急事態にもあらざるにかかわらず、国内に保安隊が出動する、こういうことも予想されるのでありますか。
  33. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 何と申しますか、大体は御所見のように自衛隊が出動いたします際には、おそらく緊急事態布告というものが伴うことが多いであろうと考えますが、自衛隊は出動をするという目的のために置かれたものでございます。警察はふだんの組織運営でやることを建前といたしておりますので、よほどの場合でありませんと、通常の組織運営をかえまして、総理のもとに統括して一定のもとに指揮をするという形は、厳に戒めなければならないのでございます。そういう意味から警察の方の緊急事態布告を特に慎重にしているのだ、かように考えるのでございます。ただたとえば東京都内に大事件が起つた、ここの警視庁では処理が十分できない、警備のために保安隊が、あるいは自衛隊が出動しなければならぬ。しかしながらこれは警察としてはこの警視庁の普通の運用でやれるという場合には、緊急事態布告をする必要がないのでありまして、必ずしも自衛隊が出動することは、この警察緊急事態布告がなければならないというものでもございませんので、事態によるわけでございます。しかも自衛隊が出動いたしますときには、国家公安委員会とあるいは警察長官と事前に緊密な連絡をとつて出動をするわけでございまして、大体この際は自衛隊が出動されても、警察としては緊急事態布告をしないで、通常の警察組織の運営でやれるという場合も十分予見され得るものだと考えているのであります。
  34. 阿部五郎

    阿部委員 お答えが私にはどうも納得いたしかねるのであります。警察法における緊急事態というようなことはめつたにあつてならないとは思いますけれども、必ずしも予想されないことではないと思います。しかしながら軍隊であるかないかはともかくとして、軍隊に近い、とにかく外見上軍隊そのものであり、しかも殺戮力においては問題にならない強いものを持つているところの保安隊とか自衛隊というものを国内に出動するということは、これは警察法にいうている緊急事態とは比較にならない重大な事態でなければならないと思う。しかるにその重大な方が総理大臣の権限によつて出動させようと思えばいつでもでき、一方緊急事態布告というものはなかなかそう簡単には行かないで、国家公安委員会の同意がなければならない、しかも公安安員会の発案があつて、それから勧告を受けなければできない、こういうことになつているのはまことに前後矛盾しているように思われるのであります。警察と比較にならないほど重大な方が総理大臣の権限ででき、一方それよりもはるかに軽いものが形式上は非常に慎重に扱われるということなのであります。そしてこういうような緊急事態でもないのに軍隊が出動するというような事態を想像することは、私たちにははなはだ困難なのでありますが、もう少しその間の関係を明確に御説明願いたいと思います。
  35. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 緊急事態と申しますのは、普通の警察の運用形式では、その事態の収拾ができないというような場合を予定をいたしておるのでございます。と申しますのは、たとえば東京に大事件が起る。この場合に関東地方一帯の警察をここに集めて、そして都道府県公安委員会あるいは国家公安委員会というものを通さないで、一元的にこれを運用しなければならぬという場合に、この緊急事態布告が発せられるのであります。事態が相当シリアスでありましても、そういつた運営をする必要がない、しかしながら普通の警察力で鎮圧ができない、それだけではいけないというような場合には、これは自衛隊の出勤、そして警察と一緒になつて事態の収拾に当るという場合が考え得られるという、このことを私は申し上げておるのでありまして、自衛隊が出動すればこれは事態が重要であるから、必ず都道府県公安委員会あるいは国家公安委員会を通さないでそして直接総理が指揮をし、しかも一つ都道府県警察だけでなしに、数警察を動員しなければならないという場合に必ずなるとは、考えられない場合もあるのであります。
  36. 阿部五郎

    阿部委員 どうもその間の関係は、御説明によりましても私には十分想像することができぬのでありますが、それはそれといたしまして、しからばこの保安隊または自衛隊が出動しました場合に——それは警察法並びに目術隊法のどこを見ましたところで、保安隊や自衛隊が警察権を行使するということは書かれておらないと思うのでありますが、その場合にたとえば暴徒の捜査とか逮捕とか、こういうふうな必要が当然起つて来るものと思うのであります。暴動を起した者は、現場においてはそれは何人といえども逮捕することができましよう。しかし一応それぞれ分散して家に帰つたというような場合においては、捜査をやる必要がある。また捜査して、発見した場合には逮捕する必要がある。しかもそれには実力を要する。こういうような場合に保安隊とか自衛隊とかには、そういうことをする権限は全然ないと思つておるのでありますが、その場合に警察との協力ということはもちろんあるでありましよう。しかしながら一方において緊急事態は発生しておらないという警察側の態度である場合に、その協力がいかになされるのであろうか。またかりに協力がある程度行われるとしましても、保安隊や自衛隊そのものは捜査や逮捕の権限はないのでありますから、協力といいましてもどういう協力ができ得るのであるか。この実力による協力があつた場合、そういうものが警察権を行使するということになるのでありますから、それは法律に反するということになると思います。その点どういう形を予想されるかお尋ねしたい。
  37. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 保安隊が出動いたしました場合に、警察権を行使できまするのは、御所見のように現行犯及び準現行犯の逮捕、これに伴う限りにおける司法警察権を持つておりますが、準現行犯を越えまして、そうでない一般の捜査というものは、これはできないのであります。従いましてその点は警察がいたすわけであります。逮捕関係とかあるいはそこに集まつて逃げ隠れしているというものは、警察が捜査いたすわけであります。その場合に出動している自衛隊と警察というものは、事定上緊密に連絡をとつて行う。一例をあげますると、ある武装した一団によつて国会が取巻かれてしまつたというような場合において、その暴徒の武装力、いろいろな点から、これは警察の武力をもつてしてはとうてい鎮圧ができない。この場合には予備隊に出動してもらつて事態の収拾をしてもらう。しかしそうかといつてこの警察官を他府県からいくら動員して来たつて何にもならないわけでありますから、それで自衛隊によつて事態の鎮圧をしてもらう。あとの捜査は、緊急事態布告しないで、普通の警察の捜査の方法で捜査ができる。さような場合が予想できると思つておるのであります。
  38. 北山愛郎

    ○北山委員 緊急事態措置について関連してお尋ねをしますが、緊急事態布告については、第七十三条で、緊急事態布告を発した場合には、二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならぬ。但し、国会が閉会中の場合、または衆議院が解散されておる場合には、その後最初に召集される国会において、その承認を求めなければならないということになつておりますが、ちよつと疑問に思いますのは、憲法の第五十四条のいわゆる衆議院の解散の場合の参議院の緊急集会であります。国の緊急の場合には、内閣は参議院の緊急集会を求めることができると書いてあるわけであります。従つてやはりこの第七十三条以外にそういう場合もあるということは、これは当然のこととして考えられるわけですが、この点をお尋ねいたします。
  39. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 緊急事態布告をやりました場合の事後承認の規定は、御指摘がありましたように、もし国会が閉会もしくは衆議院が解散されておる場合においては、その後最初に召集された国会において、すみやかに承認を求めなければならない。かようにいたしましたのは、実はこのような類似の事案といたしまして、現在は保宏庁法があるわけであります。それからさらに国会に提案中の自衛隊法がそれを改めている。さらに自衛隊として出動の場合が詳しい規定になつているのでございますが、これを勘案いたしまして、私どもがこれを審議いたしまして、法制局と調整をいたしました際におきまして、自衛隊の方におきましては、防衛出動と称しまして自衛隊法案にあるわけでありますが、いわゆる外部からの武力攻撃に対して防衛のための出動をした場合においては、非常に事態が重いので、これは国会の承認でありますけれども、もし衆議院が解散されているときは、今お話がありましたような憲法五十四条に規定する緊急集会によつて参議院の承認を得なければならない。いま一つの自衛隊の出動の場合でございますところの、いわゆる国内の間接侵略と申しておりますが、命令によります治安出動——防衛出動でなくて治安出動の場合におきましては、これはちようどこの警察法案の七十三条にございますように、緊急集会を求めることではなくして、その後最初に召集される国会で承認を必ず求めなければならない、こういうふうに規定いたしております。現在の保安庁法によりますと防衛出動、治安出動の区別はない、一本の出動でございますが、この場合におきましても、参議院の緊急集会でなくして、その後最初に召集される国会において承認を得なければならないというふうになつているのでございます。事案の重さと申しますか、そういうものを比較調整いたしまして、保安庁の方の、今回の自衛隊法案の方の治安出動の場合がこういうふうになつているので、警察の場合は、たびたびお話に出ますように警察の組織を改めるという、緊急事態には違いございませんが、そういう内容を持つものでございますので、保安隊ないし自衛隊の治安出動の場合以上に、急いで緊急の形で承認を求める形じやなくて、事後の国会において両院の承認を求めるということが適当であろう、こういうことで規定をいたしたのであります。従つて、お話のように五十四条の参議院の緊急集会をこれによつて求めることはできないというふうに解するのが至当であろうと存じます。
  40. 北山愛郎

    ○北山委員 この緊急事態布告というのは、国内的な問題としては、国会のなるべくすみやかなる事後承認を求めるという意味において、防衛出動とか治安出動とかいうふうに区別する必要は何も認められない。あらかじめ承認を得てからやるということになれば、それは確かに正規の、国会でやるか、あるいは衆議院解散の場合には参議院だけでやるかということは、その時間的な問題が出て来るでありましようが、しかし一応緊急事態布告を発しておるのですから、国会の立場から見れば、そういう異常な事態に対する政府の措置に対しての承認を与えるか与えないかということは、なるべくすみやかにやらなければならぬという意味においては、治安出動であろうが、武力攻撃を受けたような場合であろうが同じだと思うのです。ですから、私どもはただいまの御意見にはどうも納得しかねるのであり申す。同時にこれは憲法解釈の問題でありましようが、憲法第五十四条に「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」というふうに書いてありますので、内閣は緊急集会を求めても求めなくてもさしつかえないように一応表現上はなつております。しかし、これは国に緊急の必要があるという事態があれば、当然内閣の責任として緊急集会を求めなければならぬというふうに解すべきが当然じやないか。従つて、第五十四条がそのように解されるならば、この警察法案の七十三条によつてそれを排除することはできない、憲法に違反することじやないか、こう考えるわけであります。いかに警察法案の第七十三条で参議院の緊急集会を排除するというような意味合いに規定をいたしましても、憲法の五十四条そのものは生きておる、従つて、国に緊急の必要が生じたという場合には、内閣の責任として参議院の緊急集会をやらなければならぬ、憲法上そういう義務が内閣にあるというふうに解しなければ、むしろ憲法五十四条の趣旨に反することになるのではないか、こう考えられる。その間の関係が非常に微妙なんですが、政府としてはどういうふうにお考えになつておるか。五十四条二項の但書というものは、内閣の裁量でもつて緊急集会を開いても開かなくてもよいとお考えになつておるのか、あるいは「できる」とは書いてあるものの、国に緊急の必要があるという客観的な事態があれば、これは衆議院が解散されておるならば参議院の緊急集会を開かなければならぬ、こういう解釈であるのか、どちらなのか。もう少しその点をつつ込んでお答え願いたいわけであります。
  41. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 なるほど憲法五十四条には、内閣が緊急の必要があると認める場合には緊急集会を求めることができる、こうございますが、この法律がもし通過をいたすといたしますならば、「解散されている場合には、最初に召集される国会においてすみやかに承認を求めなければならない。」こうあるわけでありますから、この条文によりましてやはり両院の同意を要する。従つて内閣は緊急集会を求められない、かように解釈すべきが正当じやないか、政府はさよう考えております。
  42. 北山愛郎

    ○北山委員 ただいま内閣が国に緊急の必要があると認めるときはとお話になりましたが、そういうふうには表現されておらないのです。憲法の五十四条は、「内閣は、国に緊急の必要があるときは、」というのであつて、内閣がそれを認めるか認めないかということは問題でなく、むしろ客観的に見て必要があるような事態においてはという意味なんです。内閣が認めるのじやない、客観的にそういう事態が出ればやはり内閣としては緊急集会を開かなければならぬというふうに解釈するのが正当ではなかろうかと私どもは思うのです。但し、これは憲法解釈の問題ですからなお検討を要する点であろうと思いますが、そのように解釈するのが正しいのではないか。それからまた、衆議院が解散されておりますと、選挙にはまず四十日、それからあと三十日、両院のそろつた次の国会の召集されるまでには、最大限七十日、少くとも数十日というものを要するわけであります。その間にまずもつて参議院の緊急集会に承認を求める、それからあとで、今度は次の国会でまた衆議院の同意がなければ、その効力がないというふうに規定されておるものでありますから、私どもは、この七十三条というものは憲法五十四条の趣旨に基いて、この場合でもやはりまずもつて参議院の緊急集会に承認を求め、それから衆議院が成立をしてから衆議院の同意を求めるというのが正しい行き方じやないかと思うのであります。  なおその第二項の方に総理大臣緊急事態布告をして、まだ国会に付議する前に布告の必要がなくなつたときはこれを廃止しなければならぬと書いてありますが、国会に付議しないうちに内閣総理大臣が廃止をしたような場合には——これは元来が国会に付議してやる事項でありますから、かりに国会にかけられない、そういう時間的な余裕がないといううちに何十日か何日かたつて、その必要がなくなつたといつて一方的に廃止をしてしまう場合には、あとで国会の追認を求めるという手続をやはり加えて行く方が正しいのじやないかと思うのですが、これらの点はどうお考えでしようか。
  43. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 総理大臣がもはや緊急事態布告を廃止してもよろしいと考えて廃止をいたしましても、一度前に布告をいたしておりますから、やはり国会の承認は求めなければならない、かように解釈しております。
  44. 西村力弥

    西村(力)委員 関連して。今の点でありますが、私もこの点を非常に疑念に思つておつたんですが、不承認になつた場合の責任というのはどうなりますか。これはひとつ大臣から御答弁願いたい。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公安委員会勧告に基きまして緊急事態布告をした、これが後において国会の不承認を得た場合どうなるかということでありまするが、そのことに対しての政治的な責任はあります。
  46. 西村力弥

    西村(力)委員 それはそうだと思うのですが、緊急事態布告をやつた場合、ただいま解散中とかの問題が出まして、参議院の緊急集会をやるということを考えていないということになりますると、いろいろな政治的な動きが非常に急迫して参つた場合には、日本の時の政府も李承晩と同じようなこともやり得るということになると思う。解散の直前に、あるいは解散中に緊急事態布告をやつて、あとは解散中の選挙中にその緊急事態が継続して行く、そうすれば全警察というものは内閣総理大臣の指揮命令に服して、その間その活動を継続するということになる。そしてだれも不承認を与える機関というものが召集されないし、また議員側としても緊急集会の要請もできないだろうし、するとその間そういう警察運営というものは可能である。今のところそんなのは一笑に付する、こういうぐあいにお言いでございましようけれども、ほんとうにぎりぎりの段階に来ると、こういうところが非常に悪用されると思う。     〔灘尾委員長代理退席、委員長着席〕 しかし公安委員会があるんだから、そういう場合にむちやに緊急事態布告はできないと言うけれども、それはそうじやないのです。大臣は閣議の決定に基いて、特攻隊になつて公安委員会の議をその方にまとめるということになる。そういう事態に行けば、それは明らかに、検察法弟十四条によつて犬養大臣が特攻隊となつて自爆したというような事例をもつてしても、はつきり私たちはそういう場合があるということを予測せざるを得ない。ここはどうしても、布告した場合には、解散中であつたならば必ず緊急集会を二十日以内ですか、それをやる、こういうぐあいに規定を改めないとするならば、非常に危険な状態ということを将来において予想しなければならぬと思う。私のこういう見解に対する御所見をお伺いしたいと思う。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう懸念はないと思いますが、万一ありとすれば、そういうことがないためにはやはり両院の同意を得るということにしておく方が、さらにそういう懸念を消すのに強いことになる、こういうふうに思うのであります。
  48. 阿部五郎

    阿部委員 ただいまの北山委員の御質問でありましたが、緊急事態布告をしておいて、両院の同意を得るに至らない前に、その必要がなくなつたというので布告を廃止した場合でありますが、国警長官はそれを簡単に憲法上の解釈として、廃止してすでに布告がなくなつた場合においても、次の国会においてその承認を求めなければならない、かようにお答えになりました。ところが、さように国警長官が簡単にお答えになつて、それでよいかどうかという疑いが残ると思います。これは旧憲法時代によく問題になつた緊急勅令という問題でありまして、緊急勅令を出して来て、そうして国会にかける前に、その緊急勅令を緊急勅令でもつて廃止してしまつた場合においては、もうすでに同意を求める勅令がなくなつたのであるから国会にかけるべきではないというのが、その当時の政府の見解であつたと思つております。学説としてはいろいろありまして、それではならないという者がありましたけれども、しかしながら政府はいつもそういうような解釈をしておつたように私は思います。ところがそういうふうに簡単にお答えになつて布告を廃止した場合においても、やはり両院の同意を求める、議案として国会に提出なさるということを、あなたは確かに保証することができるのでありますか、お答えを願います。
  49. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この法律の法意は私が申し上げた通りでございまして、この緊急事態布告をしたという、そういう政治責任について国会でもう一度よかつたか悪かつたかということを批判する、それが緊急事態布告を濫用しない一つの防砦になる、こういう意味でこの条文ができているのでありまして、この点は現行法とかわりがないのでございます。これは現行法提案の際にもさように説明がしてあつたと、かように私は記憶しておるのであります。
  50. 阿部五郎

    阿部委員 意見といたしましては、私も国警長官と同意見でありますけれども、反面に国会の同意を求むべき対象であるところの緊急事態布告というものが、すでに存在しなくなつているにかかわらず、それをどうしてかけることができるかというような法律論が起り得るのであります。しかもそれは旧憲法時代においてはむしろ支配的な意見であつたのであります。そこで私たちは心配が残るのでありますが、国警長官はそれで少しも御心配はないのでございますか。ないといたしましたならば、国務大臣としての小坂さんは一体どう思つておられるか、その点もお伺いしたいと思います。
  51. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この国会の承認は、効力をあとで追認するというような趣旨よりは、こういうことをいたしましたということについて、国会に批判をしてもらつて、よろしいかよろしくないかという責任を解除してもらう、こういうことでございまして、国会布告が不承認あるいは廃止という決議になりましても、総理大臣はやはり自分でもう一ぺん廃止ということをしなければならぬ。従つて国会の承認がなければ、そのあとで追認をされなければ、この効果がない、不完全なものである、こういうものではないのであります。どこまでもこれはこの政治責任を国会において一度判断してもらう、こういう趣旨に立つているのでございますから、私は緊急勅令の場合とは解釈が違うのが当然だ、かように思うのでございます。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 緊急事態布告というような重大な問題につきましては、これは国民の名によつて行う、こういう意味で両院の同意を必要とするという考え方に立つているのでありまして、旧憲法時代の思想とは、思想の根底が違いますから、国警長官の答弁の通りである、かように考えております。
  53. 阿部五郎

    阿部委員 御意見はわかりました。私も同意でありますから、これ以上追究いたしませんけれども、旧憲法時代の緊急勅令とは違うのだという御解釈は大いに意見のあるところでありまして、旧憲法時代の緊急勅令においても幾たびか出て、法律効果を生じているものは、廃止してもその法律効果は依然として残るのであります。その点は同じことでありますから、これはこれ以上追究するのはやめましよう。  それからもう一つ聞きたいのは、この第七十一条には、総理大臣は「一時的に警察を統制する。」こういうむずかしい文句が出ております。またこの法律には、管理するとか、統括するとか、あるいは統監するとか、いろいろなものが出て来て、その間の意味の区別ははなはだ難解をきわめておる。何のためにこういう難解な字句を使い、おのおのその間に意味の相違があるがごとく、ないがごとく、はなはだわれわれを迷惑させておるのであります。何の必要があつてこういうふうにむずかしい文句をそれぞれ区別して使わなければならないのかという気持がするのであります。統帥と書きたかつたのではなかろうかと思うのでありますが、とにかく統制と書いてあります。これは一体どういう意味で、ほかの文字との意味差別は一体どうなつておるのか。
  54. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この七十一条におきましては、「本章の定めるところに従い、一時的に警察を統制する。」とあるのでありまして、「本章の定めるところに従い、」というところに非常に強い意味がある。しからば本章の定めるところとは何かと申しますならば、その次に出ているわけでありますが、この場合においては、総理大臣国家公安委員会というものを通さないで、直接に長官を指揮監督すること、それから長官または管区警察局長が府県警察本部長に対しまして必要な指揮命令をすること、それから長官緊急事態布告関係のない区域の警察に対しまして応援派遣を命ずることができること、この三つが本章の定める権限なのであります。総理大臣緊急事態布告をいたしましても、何ら新たに権限を付与されるところはないのでございます。そのことを示しますために、本章の定めるところにこの三つの権限ができるわけでありますが、それを統括というがよいか、統率というがよいか、あるいは統制というがよいかという問題になるわけでございますが、いわゆる一般的な統括とか総理するとかいつたような言葉を使います場合には、一般的に行政組織におきましてその首長というものが権限を持つような場合に使われる言葉にかえつてなりますので、本章の定めるような、限定された範囲において総理大臣が権限を持つ言葉を何と表現するかという意味におきまして、本章の定めるところに従つて、一時的に警察を統制するという言葉を用いたわけでございます。かたがた現行法も、一時的に全警察を統制する、こういうふうにありますので、その言集を踏襲いたしまして、「統制する。」という言葉を用いたわけでございます。この場合におきましては、統制という言集からどういう範囲が出て来るかというよりは、本章の定めているところが何であるかというところに御注目をいただきまして、統制という言葉はその範囲内であるということで御了承いただきたいと思うのであります。
  55. 阿部五郎

    阿部委員 御説明はわかりましたが、こういうむずかしい文字のみをもつて、内容を理解することの片鱗もできないような使い方をするのは、はなはだ私としては遺憾であります。  それからその次の第七十二条、これは一番重要な点でありますが、この規定があります反面、緊急事態布告がない平常時においては、警察長官あるいは管区局長ですか、そういうようなものが都道府県警察本部長あるいはその部下というようなものを指揮監督することは、たとい国の事案に関しても絶対にない、こういうことを表わしておると思わなければならないと思います。そんな場合においては、必ず国家公安委員会から都道府県公安委員会を通じて、その都道府県本部長以下を指揮監督するということになるのであつて、直接長官あるいは管区局長というようなものが都道府県警察を指揮することは絶対にない、こういうことがこの条文によつてうかがわれると思われますが、そういうことが平常時にあつた場合においては、当然それは職権の範囲を越えたものとして違法な行為である。たとい長官の行為であつても、それは違法なる行為であるということになると思いますが、その通りでございますか。
  56. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 長官が指揮監督の権限がないのに、その権限を行使したということになれば、これは違法であるのであります。職権の濫用でございます。
  57. 阿部五郎

    阿部委員 ないのにとおつしやいましたが、この規定の反面としては、平常時においては、長官その他の警察庁の警察官都道府県警察官を指揮命令することは、当然それは職権の範囲外である。たといその事案が国の事案に関するものであろうとも、それは職権の範囲外である、かように理解してよろしゆうございますか。
  58. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 さようでございます。
  59. 阿部五郎

    阿部委員 これは非常に重大な点でありまして、われわれとして最も関心が深いのみならず、国民警察という偉大な力の前におびえることをより少くするためには、この点が最も明確でなければならぬと思うのでありますが、それではそういう違法なる行為が実際に行われた場合に、それに対してそれを制圧するところの規定がいずこにも見当らないということは、はたしてどんなものでございましようか。そういう職権を越えた行為があつた場合に、それを防ぐための規定がどこにもないのでありますが、その必要はなぜ認めないのでございますか。
  60. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 いかなる場合におきましても、職権がないのに、あるがごとく行使をしたという場合の救済規定というものは——阿部委員のお考えは、おそらく警察においては特にそのことは大事だからという御趣旨だろうと存じます。その点はよくわかりますが、かような場合には、あるいは刑法等によつて職権の濫用罪なり、あるいは人権を毀損したというわけで人権擁護局からの訴追というようなことがあろうと思うのでありますが、それ以外には、長官を監督する公安委員会、あるいは都道府県公安委員会からの苦情というものによりまして、長官の身分上の監督権として総理大臣が行政処分をいたす、かような建前になつているのでございます。ここに特別にその場合の刑罰法令までも設ける必要はなかろうかと考えております。
  61. 阿部五郎

    阿部委員 御意思はわかりましたが、私の不安、並びに私の考えをもつてすれば、国民の不安は除去されない。しかしながらこれ以上は意見にわたりますから申し上げません。  もう一つ、第七十条の他の区域へ警察官を派遣する場合のことでありますが、布告のない場合においてもお互いに援助を求めることができる。その場合においては、その区域内において、援助に行つた警察官職権行使することができることになつておりますが、ことにまた当該区域内のいかなる地域においても職権を行うことができる、こういう規定があります。援助に行つた場合とどこが違うのであろうか、そこが一つと、それからその場合に、その指揮権は当然平常の場合でありましたならば、その援助を受けた方の都道府県本部長が指揮権を打ち、援助に行つたものはその指揮権に服するものと思いますが、この緊急事態の場合においては、一体どちらに指揮権があるのでありますか。
  62. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この場合は援助要求に基きまして、これを応諾して援助のために派遣するという規定によりまするところの派遣と区別をして考えておるのであります。緊急事態布告が発せられました場合だけは、援助を受ける方の側から援助を要求するという関係なくして、長官が全体から見まして、こちらの方は非常に手薄である、こちらの方にどうしても派遣命令を出す必要があるという認定に基きまして、長官が主体的に他の府県警察から別の府県警察の区域に派遣を命ずることができるということになつておりますので、第三項の方も、前の場合は援助要求を受けた場合にだけ職権行使ができるということに見合つた規定でありますので、このように援助要求の関係なくして出た場合におきましても、派遣された警察官職権行使することができるという旨を規定いたしたのでございます。従いまして、この場合におきましては、そのおもむいたところの公安委員会の管理下に職権行使するというわけではございません。
  63. 阿部五郎

    阿部委員 その点はよくわかりました。それから緊急事態布告があつた場合における公安委員会の機能でありますが、最後に七十四条の国家公安委員会総理大臣に対して必要な助言をするということになつておりますが、平常時であれば、国家公安委員会自身が指揮監督をするわけであろうと思いますが、その関係が転倒して総理大臣に移る、かように私は理解するのであります。ところが一方地方都道府県公安委員会のことにつきましては、どこにも規定がないようでありますが、一旦緊急事態布告があつた場合に、都道府県公安委員会はその機能を停止されるものと解釈すべきでありましようか、それともやはり警察に対して警察長官を初めとする上からの指揮命令はあるけれども、その指揮命令はやはり並行的に都道府県公安委員会も存在しておつて緊急事態布告のあつた場合においても、上からの指揮命令に牴触しない限りにおいて、都道府県公安委員会も指揮命令権を持つておるのでありましようか、その点お尋ねいたします。
  64. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 七十一条の方におきまして本章の定めるところに従いまして、総理大臣が権限を持ちます場合におきましても、内閣総理大臣はその緊急事態を収拾するため必要な限度において長官を指揮監督する、つまり緊急事態を収拾するために必要のない範囲におきましては、長官は直接指揮監督をするのではなくして、依然として国家公安委員会の権限があるわけであります。必要がある限度におきましては、直接に指揮監督をする。従いましてそれを受けまして七十四条は、内閣総理大臣が必要な限度内におきまして、公安委員会というものを指揮系統の上におきましてははずして、長官を直接に指揮監督する場合におきましても、それでは何の関係もなくなるのではなくして、今度はこの場合には位置がかわりまして、国家公安委員会はこの限度においてではありますけれども、その場合において総理大臣が主人公として警察を統制し、長官を指揮監督するわけでありますが、それに対して適切な助言をしなければならないという形になるのでございます、内閣総理大臣というものに職権がありますので、それに対して国家公安委員会は必要な助言をするという立場になるわけでありますが、府県公安委員会の方は、長官もしくは管区警察局長が、この事態の収拾のために必要な命令指揮をする限りにおきましては、警察本部長に対しまして直接指揮命令をするわけでございまして、ここのところが緊急事態の効果の一つであるのでありますので、その場合におきましては、事実上におきましては公安委員会府県におきましても協力をするということは非常に考えられることでありますし、また望ましいことであろうと思いますが、法律上の関係におきましては、その指揮命令に対しまして府県公安委員会は関与しないという関係になるのでございます。     —————————————
  65. 中井一夫

    中井委員長 この際委員各位にお諮りをいたします。政府から提出されて、すでにこの委員会に付託されております地方自治法の一部を改正する法律案、これをこの際議題として、大臣からその提案理由を聞くことに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 中井一夫

    中井委員長 それでは阿部さん、はなはだ恐縮でありますが、阿部さんの御質疑は午後にあらためてしていただくということでよろしゆうございますね。  塚田国務大臣
  67. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概略について御説明申し上げます。  御承知のように政府は、地方制度全般についての改革に関する意見を求めるため地方制度調査会を設置し、同調査会から昨年十月地方制度改革についてとりあえずとるべき措置に関して答申があつたのでありますが、地方公共団体の種類、性格等の根本的改革に関しては、なお今後の審議にまつべきものとされているのであります。爾来政府といたしましては、右の答申に関して慎重に検討を加え、成案を得たものについては逐次提案することとして参つたのでありますが、地方行政制度の改革に関する事項については、なお検討すべきものが少くなく、この際は、警察法の改正に伴う技術的規定の整備その他とりあえず必要と認められる最小限度の範囲において改正を行い、御審議を願うことといたしたのであります。  以下改正法案の要点について御説明申し上げます。  第一は、警察法の改正に伴う規定の整備に関する事項であります。警察法の改正に伴い関係法令規定を整備するため、警察法の施行に伴う関係法令整理に関する法律案が提案されておりますが、右法律案では地方自治法に関する規定整理が行われておりませんので、本法律案において関係規定を整備しようとするものでありまして、まつたくの技術的な改正であります。  第二は、市の人口要件に関する事項であります。現行法のもとにおきましては、市の人口要件は三万とされているのでありますが、これを五万に改めようとするものであります。市は町村と異なり、行政を高い水準において維持することが要求されるものでありますが、これに関し地方制度調査会の答申もございますので、この際改正を加えようとするものであります。最近町村合併の進捗に伴い、現行法の要件のもとにおいて市の設置されるものが少くないのでありますが、現に促進中の町村合併に伴う市制の施行については、本法律案の附則において必要な経過規定を設けることとし、この改正によつて特に支障がないようにするとともに、市の設置は、町村合併計画に基いて総合的な見地から行われるように配慮することといたしたいと存じます。  第三は、財産区に関する規定の整備に関する事項であります、昨年来、町村合併促進法の施行に伴い町村合併が進捗するにつれ、町村合併の際財産区を設置するものが逐次増加いたして来ているのでありますが、現行法財産区に関する規定は、関係住民の意思を反映するにいささか不十分のうらみがあり、町村合併の促進上も、この際規定を整備することが必要とされておりますので、財産区の財産または営造物の管理及び処分の適正を期し、関係住民に不安なからしめるとともに、一面において財産区がその属する市町村等の一体性をそこなうことのないような考慮をいたしたいと存じます。これがため、財産区の管理に関する簡素な審議機関である財産区管理会に関する規定財産又は営造物の処分に関する規定財産区をめぐる紛争の解決に関する規定等を整備することにいたしたのであります。  右のように財灘区の規定を整備することにより、町村合併はいよいよ促進されるものと考えております。  第四は、助役と教育長との兼職に関する事項であります。市町村の教育委員会の教育長につきましては、一般市町村の実情にかんがみ、市町村の助役が教育長を兼るね道を開いておくことが適当と認められるのでありますが、昨年御審議を願つた地方自治法の一部を改正する法律によりますと、その期間は本年三月三十一日までに限られておりますので、当分の間兼職できるようにいたしたいと存じます。  以上がこの法律案を提案いたします理由及び内容の概略であります。何とぞ慎重御審議のほどをお願いいたします。
  68. 中井一夫

    中井委員長 それではこれで休憩をいたしまして午後二時から始めます。     午後二時一分休憩      ————◇—————     午後二時五十七分開議
  69. 中井一夫

    中井委員長 午前に引続いて再開いたします。  警察関係の二法案についてこれを一括議題として逐条審議を続行いたします。  猪俣委員から発言を求められておりますが、この御発言は逐条審議に関するものでありますか。
  70. 猪俣浩三

    猪俣委員 いや特別の、警察法全体には関係がありますが、逐条審議ではありません。警察のあり方について緊急私が耳にした点がありますので、お尋ねしたいのであります。
  71. 中井一夫

    中井委員長 そうするといわゆる緊急質問と承知してよろしいのですね。
  72. 猪俣浩三

    猪俣委員 さようです。
  73. 中井一夫

    中井委員長 ただ御承知の通りこの委員会におきましては、先日来いろいろ行派申合せがありまして、各党脈持時間がきまつておるのであります。従つてあなたの御質問の時間もその持時間内に入れてよろしいと了承してよろしゆうございますか。
  74. 猪俣浩三

    猪俣委員 さようです。
  75. 中井一夫

    中井委員長 それならば特に許可いたします。猪俣浩三君。
  76. 猪俣浩三

    猪俣委員 長い間御審議を重ねられましたので、私は今あらためて法律的な質問は差控えたいと存じます。ただ先般この警察のあり方につきまして、私は憂慮のあまり齋藤国警長官に質問したことがあるのでありますが、いまだに釈然としておらない。今日終戦後できましたこの警察法を、改正と称しておりまするけれども、私から見まするならば、これは新しい警察法の創設であります。マツカーサー元帥の書簡の内容によつて示唆されてつくりました警察法の根本的思想はほとんどくずれておると考える。     〔委員長退席、加藤(精)委員長代理着席〕 そこで私は憂慮のあまり齋藤さんにお尋ねする。この警察を動かしますところの中堅幹部、これを訓練いたしております警察大学の訓練の内容につきまして、はなはだ疑惑があるのであります。その点について第一にお尋ねしたいことは、この警察大学に入学をする資格のある者はいかなる者であるか。自治体警察、国家警察警察官、あるいは公安調査庁の調査官も入学するのであるか、その入学者についてお尋ねしたいと思います。
  77. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警察大学に入学をいたします者は、国家地方警察警察官、それから自治体警察警察官でございまして、公安調査官というようなものは入つておりません。最近台湾その他からぜひ入れてもらいたいという要望がありまして、台湾及び沖繩から留学生が若干入つております。
  78. 猪俣浩三

    猪俣委員 今長官が申されました自治体警察、国家警察の、聞くところによれば大体警部並びに警部補階級地方の中堅であります。この連中を警察大学において学生として相当長期間訓練なさつておるが、その訓練の内容の中にまつたくの思想警察、昔の特高警察的訓練をしておるやに承つております。その件について先般も私は質問しております。たとえばかような訓練をしたことがあるのかないのか。疑わしい人からある人へ送られた手紙の内容をひそかにあけて見る方法、第二には何か会合の場所、ある個人の住宅へひそかに侵入して内部を調査する方法、なおまた金庫をあける方法、それから人に知られずしてひそかに写真を撮影する方法、かような訓練を長い間なさつておつたと承つておる。これをただ荒唐無稽なりとして拒否できないことは、どうも具体的事実が現われて来ておる。高知県の信書秘密を侵した事件、山梨県下に起つた事件、あるいは先般東大の助教授の宅へ巧みに警察官が本を見せてくれとやら称して上つて、結局いわゆる左翼系の本をずつと視察したというようなこともこの訓練の中に入つておつたのではないか。ちよつと本を見せてくれと言つてつてしまえという訓練をなさつておつたのではないか、かようなことをしておつたかどうか、しておつたとするならば、いかなる目的でかような訓練をなさつたか、その点について承りたいと思います。
  79. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいまの点は、これは警察大学の中における訓練というものには私はないと思つておるのでございますが、いわゆる警備情報と申しますか、率直に申しますと、共産党の地下秘密活動、ことにその軍事活動というものを、われわれ治安当局としてはどうしても知つておく必要があるわけであります。ところがこの共産党の秘密地下活動というものはきわめて秘密が厳守され、そして秘密裡に軍事組織をつくり、あるいは軍事活動を行うというきわめて危険な存在でありますので、われわれといたしましてはこの情報をどうして把握をするか、この秘密の活動をどうして捜査をするか、これにつきましては相当の技術、訓練というものが必要であるわけであります。従つてそういつた方面仕事を担当しておりまする国家地方警察及び自治体警察職員人たちを講習の形でときどき技術の講習をいたしております。そこで写真をたとえばひそかに写す方法とおつしやいましたが、あるいは大衆の集団暴力行為がある、この場合に写真機をよくわかるようなところでやつておると、かえつてたたき落されるおそれがある、あるいは潜行幹部と思える者が出入りをしておる、どうもそうらしいが、しかしさりとて何らかの証拠がはつきりしないと、逮捕をすれば人権の毀損になる、そこでこれをひそかに写真をとつて、はたして潜行幹部であるかどうかということを確かめる、そのためにはできるだけ人に気づかれないで写真をどうしてとるかというこの技術の訓練も必要であるわけであります。ただこれらをやるにいたしましても、今日の法律を侵すというようなことは絶対にあつてはならないのでありまして、何ゆえにこういうことをやるかと申しますと、人権を絶対に毀損をしない、法律に触れない、法律の許す範囲内においてわれわれの捜査技術の練達によりまして、今日の制限されたあるいは刑事訴訟法あるいは各種の法律というものを守りながら、われわれの使命をどうして果すか、従つてこれらの訓練と申しますか講習の根幹は、いかにしてわれわれは民主警察を守り通すかというまずその信念の涵養から始まりまして、その信念に基きまして法律を侵さないでやれるわれわれの限度、そうしてその限度内においていかに使命を果すかという講習をいたしておるのでございます。従つて家宅侵入を企てるとかあるいは窃盗を働くとか、そういうような法に触れるようなことは、これは厳に戒めておるのであります。先ほどおつしやいました警視庁のある警邏の巡査でありましたでしようが、家庭を訪問をして、そうして書籍を見せてくださいと言つて書籍を見たというようなことは、もしそれが事実であるとすれば、この実情は私は確かめておりませんが、私が想像をいたすのに、本人の誤つた何らかの考え方から、そういうようなことをしたのじやないだろうか。われわれといたしましてはだれがどんな本を読んでおるとかなんとかいうような事柄は問題になるのではありません。警視庁のその巡査もおそらくこういつた警備情報の収集に当る専任の使命を持つた者ではないと思うのであります。さようなあやまちを犯させないために、こういつた方に従事いたします者につきまして、そういうあやまちのないように、しかも使命を果すための講習をいたしておるのであります。金庫をあけるとかあるいは手紙をあけるとかいうことをおつしやいましたが、人の金庫を、しかも法律を犯してあけるというような指導は全然いたしておりません。手紙をあけるにいたしましても、信書の秘密を犯すというようなことは絶対にないように注意を加えておるのであります。しかしながらある協力者が封に封印せられた書類をひそかにわれわれに手渡してくれるというような場合に、その封印がはがれたというようなことがわかつては協力者に迷惑をかけるわけでありますから、これがわからないようにどうして明けるか、これはただそういつた場合だけでなしに、いろいろな意味におきまして、われわれ捜査に当る者といたしましては、必要な場合が多いのであります。あるいはトランクその他のかぎをあけるにいたしましても、一々かぎ屋を呼んで来なければあかないということでは因りますので、そういうような事柄も必要に応じて技術を身につけておく必要がある、かように思つておるのでありますが、これらの技術を具体的にいついかなる場合に行使するかということは、先ほど申しましたように、どこまでも法律を犯さない、そうして人権を損傷しないということを第一の前提といたしまして行使すべく指導いたしておるのであります。また現実にそういつた捜査に当る場合の個々の具体的な指導は、それぞれの府県あるいは自治体の公安委員会警察長が責任をもつてこれらの指導をいたしておるのであります。ちようどわれわれが犯人を逮捕したり、あるいは自己を防衛するために、拳銃の訓練をさせたり、あるいは逮捕術の訓練をさせたりしておるのと同様に考えておるのであります。
  80. 猪俣浩三

    猪俣委員 終戦前の特高警察、思想警察というものは必然としてあつたわけです。これは昭和二十二年の九月十六日に当時の管理者であつたマツカーサー元帥が、時の総理大臣にあてました手紙の文句でも、あなたはよく御存じだろうと思う。これは外国人が言つたことでありますけれども、われわれなおこれは真理だと思つておる。戦前十箇年間における日本の軍閥の最も強大なる武器は中央政府が都道府県庁をも含め行使した思想警察及び憲兵隊に対する絶対的な権力である。これらの手段を通じて軍は政治的スパイ網を張り、言論、集会の自由、さらに思想の自由まで弾圧し、しかして非道の圧制によつて個人の尊厳を堕落せしめるに至つたのである。日本はかくしてまつたく警察国家であつた。これが日本の壊滅した根本原因であることをマツカーサーは指摘した。この精神に基いて警察法はできて来たのであります。しかるに私は先般の法務委員会の質問において、今の国家警察が特高的訓練をしておるのじやないかと質問したときに、あなたはこれを否認した。しかしあなたの今の説明を聞きましても、どうも特高的においが十分にある。今のそういう訓練と、終戦前のいわゆる特高警察がやつた訓練とどこが違うか、法律に違反しないというようなことではわからない。人の信書の秘密を探つたり、いたずらに家屋の中に侵入したりしておる。金庫をあけるなどと言うが、その人の承諾を得てあければよいじやないか、ひそかに金庫をあけるなど、どろぼうでなければそんな必要はないのだ。さような訓練、しかもかようなことをモツトーにして訓練したということを言うのです。あたは否認するけれども、非合法の団体に対しては非合法の手段をもつてしなければならない、だからくよくよしないでやれといつた指示のもとに訓練した、かように私は聞いておる。またしかあるべきことだ。今あなたがおつしやるようなことならば、大して特別の訓練もへちまもない。われわれがおそれるのは昔の思想警察、特高警察のような傾向が徐々に出て来ておるのです。あらゆるものが復活して来ました。テロなどというものも復活して来た。大磯の吉田邸に乗り込んで来た。警察も特高化して来る。軍隊はできで来る。ことごとくが昔に帰つて来た。そこで警察も、またこういうふうに警察法を改正して、そうして特高的な働きをさせる、こういつたものじやないのかというのが、われわれの心配なんです。そこであなたに聞きたい。今あなたがやつておられるような訓練と、昔の国民の怨嗟の的となつた、そうしてマツカーサーから指摘されたような思想警察、特高警察の訓練とどこが違うか、違う点を指摘してもらいたい。
  81. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私もこの点は猪俣委員の御信念とまつたく一致をいたしておるのでありまして、日本の民主主義の推進のためには、思想、言論の弾圧はいささかもあつては相ならぬと、かたく信じておるのであります。従いまして大学における教養の根幹といたしましても、またただいま申しましたような講習会の根幹にいたしましても、これを最も大事な基底として、精神的に打込んでおるのでございます。かつての特高が非難されました中には、いろいろありましたでしよう。その一番大きな原因は、思想や言論そのものが収締りの対象であつたということだと私は思うのであります。これは行政執行法、治安警察法、あるいは治安維持法、国防保安法、ことに治安警察法、治安維持法、あるいは言論出版臨時取締法というようなものは、いわゆる言論、思想そのものが取締りの対象であつたわけであります。従つてこれが弾圧されたのは当然であると思います。今やさような法律は一切ございません。おそらくそういう法制も、自由主義国である日本としては、将来もつくられないであろうという信念を持つておるのであります。いま一つ前の特高の非難されましたのは、その法律できめられた職責を執行いたします場合に、みだりに人権を毀損するような取締り方法や調べ方をやつた。これは調べ方の問題でありまして、これには御承知のように行政執行法というものがあり、検束と称してたらいまわしで、幾日も検束をする。それからさらに取調べにあたりましては、あるいは伝えられるところによりますと、相当の人権蹂躙的な暴力を加えて自白を強要をした。この自白の強要、それから理由なしに逮捕、監禁したということが、特高警察の非難された一番大きな点であつたろうと思うのであります。今日の警察におきましてわれわれ最も留意をいたさなければなりませんのは、この取締りにあたりまして、さような人権の毀損いわゆる自白を強要する、そのために手段を選ばない。逮捕の理由なくしてこれを逮捕監禁をする。このことが最もわれわれといたしましては留意をしなければならない点でありまして、ことに自白を強要するということは、警察官あるいは検察官にいたしましても、ある犯罪ありと考えて逮捕いたしました場合に、できるだけ自分の思うように自白をさせたいという職務執行熱心の余りでありましようが、しかしいかなることがあつてもかようなことがあつては相ならぬのであります。われわれといたしましてはさようなことでなしに、的確な証拠をつかみ、その証拠によつて法の命ずる処断を要求するというのが、今日の警察職務であろうと思うのであります。さればこそわれわれといたしましてはそういつた捜査の手段といたしまして、今までにほとんどそういつた面においてきわめてなおざりにされておりました捜査技能の向上、推進、これがわれわれに課せられた民主警察の一番大事な点だ、かように考えておるのであります。これを身につけることなくして、今日の刑事訴訟法なり、人権を毀損しない、しかも治安の維持の任に当り、犯罪捜査に当り、そして国民の期待にこたえるということはできないと確信をいたしておるのであります。さような意味合いからいたしまして、写真をとるにいたしましても、人の見ている前で写真をとられましたら迷惑をするかもしれません。できるだけ知られないで写真をとる。しこうしてその写真は被疑事実と何も関係がないならばやみからやみへ消えて行くのであります。被疑事実に関係があつて初めて証拠として提出せられるのである。この間において何ら人権を毀損することはないと私は思う。従いましてこういつた手段方法というものをところきらわずやるということは、また人権の毀損のもとに相なりましよう。さような技能を身につけた者は、この技能をほんとうにその道のために生かすということが肝要であるのであります。そこでそのための講習といたしまして、最もやかましく訓練の基底に置いておりますのは、今申しました民主警察の確立、そのためには人権尊重、この面にほんとうに徹底している者でなければ、かような事柄を身につけさせるということも危険であると考えていたしておらぬのであります。ただいまおつしやいましたように、人の家屋にいわれなく侵入する、あるいは人の保管している金庫をいわれなくあける、さような事柄は指導はいたしておりません。
  82. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたはさつき警察大学ではさような訓練をしておらぬとおつしやつたが、その通りかね。
  83. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私はこの特殊技能の教養は、警察大学ではいたしておらぬと考えております。
  84. 猪俣浩三

    猪俣委員 それをはつきりしてください。おらぬと考えるというたけじやいけない。やつたのかやらぬのか。
  85. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 やつておりません。
  86. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 猪俣委員に御注意申し上げますが、発言は委員長の許可を得てからしてくださるようお願いいたします。
  87. 猪俣浩三

    猪俣委員 承知しました。今のいわゆる信書の秘密をなるべく法律に違反したなんて言われないようにしてうまくやる方法、家宅にうまく侵入する方法、こういうようなことを、警察大学あるいは警察大学の中において何らかの集会のときに訓練をしたことがあるのですかないのですか。そこをはつきりしてください。
  88. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいまおつしやいますように、写真をうまくとる方法おるいは封をしてあるものをその封をうまくはがす方法、これは講習をしております。     〔「あたりまえじやないか」と呼ぶ者あり〕
  89. 猪俣浩三

    猪俣委員 あたりまえじやないかとおつしやる御仁がいるのだ。
  90. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 議員さんの私語を禁じます。
  91. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう頭だから特高警察ができてしまう。あたりまえであるかないかは立証段階に入つて聞きましよう。そこでこの警察大学でそういう訓練を受けた警部補階級は、自治体警察もあれば国警もあるが、それが地方へ帰りますと、大体警備主任になると聞いておる。警察大学では、こういう指導は教材を使わないで口頭で訓練をし、その訓練を受けた者がおのおの地元に帰つて、その部下を集めてまた主任となつて訓練をする。かようなことを警察大学から地方に帰る際に口頭で言い渡されて帰つて来たということであるが、そういう警察大学で訓練したことを、文書によらず口頭で下に押し広めようとしたことがあるかないか、それをお尋ねいたしておきます。
  92. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいま申し上げまするように、こういう事柄を身につけまするためには、はたしてこういう訓練をやるのに適当な人であるかどうかということを見きわめませんと、これをみだりにやられますと、ただいまおつしやられましたような人権侵害をやらないとも限らないのであります。先ほど信書の秘密と申されましたが、決して信書のごときものの秘密をひそかに侵そうという考えはないのであります。印刷物その他信書でないもので封をされておる、そういうものを協力者が持つて来た場合、これの封を破つてしまつたのでは協力者が非常に困りますから、その場合に封を破つたか破らないか全然わからないようにして協力者に返すということ、そうしないと協力者はその使命が果せません。さような意味からそういつた信書の秘密を侵すことは、厳に注意を与えておるのであります。そこでだれにでも教えていいということでありますると、今申しますような、われわれの予期しない悪用というか、方法を誤る場合がありますから、これは教材にして一般に流すということもしておらぬのであります。自治体警察等からこの講習に来られる場合にも、そこの警察長に話をいたしまして、将来こういうことに従事するほんとうに適当な人を選んで、もし御希望ならば講習に差出してくださいということにいたしておるのであります。従つてその講習を受けた人たちが帰つて参りまして、そこの警察長が、それならだんだんこのことをさらに教えて、自分の方の捜査能力を充実させようという場合には、さようなこともあるであろうと思います。
  93. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとそういう訓練を受けて、地元へ帰つたら、地元でまた訓練せよという指令を受けて帰つて、そこで自治体警察の二、三の警察においてその講習を受けた人間がその旨を隊長に報告して、そういう訓練をやろうとしたら反対をせられた。そこで今聞くと自治体警察側では大体こういう意味の訓練には反対であつて、あまり一生懸命にやらない、それが今日自治体警察というのはわがままでしかたがない、やはり政府の方針によつて全国的にぴりつとするような警察にしなければならぬということが警察法改正の動機だと私は聞いておる。そこであなたにお尋ねしますが、こういう訓練を指導されて、指導された人が自治体警察へ帰つて、それに対して自治体警察から何か苦情を申し込まれたり、協力しないというようなことを言われたことはありませんか。
  94. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 さような例は断じてございません。むしろ自治体の方から進んでもつと数多く訓練をしてもらいたいというように要望を受けております。
  95. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 猪俣委員に御相談申し上げますが、実はただいま第五章以下の逐条質疑にあてた時間でございますので、もしおさしつかえなかつたら御質問はこの程度に願います。
  96. 猪俣浩三

    猪俣委員 それではいま一点、今私の質問に対しまして、齋藤国警長官は全面的に否認されておる、これは今警察法を改正せんとして、われわれから見るならば本来の自治体警察をなくして純然たる国家警察とする。そこでさような転換期に際しまして、もし伝えるがごとき訓練を警察大学において、おもに国家警察側が指導しておつたとするならば、これは容易ならざることだと存じます。私も無暴なる質問をしたのではないのであつて齋藤長官は責任をもつてここで否認されておる。そこでこれはどうしても証人によつて明らかにしなければなりません。ただいま申しましたようにこれは絶対文書はない、教材というものはつくらない、口から口へ伝わる訓練をしたのです。それではなはだけしからぬ訓練たと私は思うのです。そこで名古屋の警察隊長及び大阪の警察隊長及び名古屋、大阪の警察隊長を中心にするならばその講習を受けた講習員が多数出て来るだろう、そういう者を当委員会に喚問いたしまして、そうしていかなる訓練をしたかお尋ね願いたい。これは今日警察法改正の動機になつているという説をなす者がありまするがゆえに、この警察法審議に際しましては重大な事実だと思う。その意味におきまして大阪の警察隊長及び名古屋の警察隊長及び大阪の警察隊員の中、名古屋の警察隊員の中にこの講習を受けた人間が多数おります。それらを当委員会に呼び出しまして、かような訓練があつたかなかつたか、わが憲法政治下これはゆゆしい大問題である。われわれが昔ながらの戦慄すべき特高がまたできるじやないかと心配するやさき、かような訓練をせられておるということは民主警察のどころの騒ぎじやありません。私どもは当委員会が慎重に御考慮の上に必ずこの証人をお呼び立ていただかんことを、私も発言の責任上強く要望いたします。
  97. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 ただいまの猪俣委員の御発言に対しましては、理事会におきまして十分協議いたしまして善処いたしたいと思います。
  98. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいまの猪俣委員の発言及びそれに対する国警長官の答弁、これはまことに重大なのであります。その事実そのものも重大であるとともに、そういう事実があつたということになつたとしまして、それを否定されるという国警隊長の立場が存在する限りどうしても警察法そのものに対する、たとい組織法といいながら今までの答弁そのものにわれわれが信頼とか信用を置き得ないということになるわけなのでございまして、どうしてもこれはただちに今理事会を開いてこの証人の喚問を決定するように運んでいただきたい、かように提案する。
  99. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 次の通告者の質問に移ります。中井徳次郎君。     〔西村(力)委員委員長々々々」と   呼ぶ〕
  100. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 発言を許しません。     〔「そんなばかなことがあるもんじやない」と呼び、その他発言する者多し〕
  101. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 議事進行に関し藤田委員の発言を許します。
  102. 藤田義光

    藤田委員 先ほど来猪俣委員の御発言もありましてわれわれも傾聴したのでありますが、西村委員の動議もありますし、この際時間を限りまして——時間は委員長に御一任いたしますが、少時間理事会を開いてただちに再開されるよう、私も動議として提出いたします。
  103. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 皆さんにお諮りいたします。ただいまの藤田君の動議に御賛成の方の起立をお願いいたします。     〔総員起立〕
  104. 加藤精三

    ○加藤(精)委員長代理 起立総員。ただいまより時間十分間理事会を開会いたします。  暫時休憩いたします。     午後三時三十九分休憩      ————◇—————     午後四時十一分開議
  105. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続いて続行いたします。  中井徳次郎君。
  106. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 先ほどの理事会の報告を先にやつていただきたいと思います。——委員は知りません。
  107. 中井一夫

    中井委員長 それじや申し上げます。猪俣議員の御質問から、証人として数名の者を喚問するというお話が出たのであります。理事会の結果は、これを喚問すべしとの説もあり、喚問すべからずとの説もございました。ただしかし、委員長としての思いますならば、審議は各派の納得の上で、逐条審議すべてを本日をもつて終るということに了承を得たのであります。もし証人を喚問すべしということであり、しかもそれが重大なる問題についてということであるならば、百何十日の間にそういう手続があつてしかるべきであつたかとも思います。それがすでに各派了解ができました今日において、それを出されるということにつきましては、納得が行かないのであります。従いましてこの際は一応審議をお進めいただいて、そして初めに御相談になりました通り質疑の終了というところまで本日中に片をつけたいものと存じております。
  108. 門司亮

    門司委員 今せつかくの委員長のお言葉でございますが、百何十日もあつたんだから、そのうちに問題があれば出せばよいということであります。一つの新しい事態というものはいつも出て来るのであります。予測しがたい事態の出て来るのはあたりまえのことである。審議をいたしておる過程において、不審な点を解決するために必要があるということなら、当然のこの審議の過程のうちに解決すべきである。これは法案を審議する上に最も重大なことである。この委員会としては、前にずつとさかのぼつて考えてみますならば、最初の申合せのときには、自治警、国警を交互にここへ呼んでおいて、ここで質問するということを申し合せておるのである。今日それがそのまま実行されておるならば、こういう問題は起らぬのである。こういう申合せのあつたことである。しかし自治警、国警を並べておいていろいろ質疑をするということは、やはり審議の上において言いにくいことであり、困るからということで、一応その事態を別にここに議決してきめたわけではないのである。ないのであるが、おのおの暗黙の了解のもとに今日の状態なつた。従つてわれわれから考えれば、当初における申合せがそのまま生きておつて、いつでもここに自治警の人にも来ていただいて、御説明できるような段取りが委員長において明確にされておつたならば、こういう事態は起らぬ。私からはつきり言わせていただきますならば、大体ここに宮崎君なり、あるいは大阪の局長なり、あるいはまた自治体警察のそれらの責任者が大体来ておつて、そうしていつでもお互いの審議の過程の上において、参考人としてお話ができるような段階にしてもらいたいということを、最初にはつきり申し合せたはずである。また二、三日はその通り続行したのである。従つて今の委員長のお話のようなことには私は承服するわけには行きません。百五十何日もあつたから、そのうちに呼べばよかつたのだということは、きわめてけしからぬ話であつて事態は新しく出て来るのである。そういう経緯があつたのであります。だからわれわれとしては、一応そういうことを約束しておつたという上に立つて、何もきようの審議について一切打切るわけではありません。さらに審議日程というものは全然ないわけではない。いわゆる総括的質問と引続いて討論採決をする前には、一応当面の責任者である総理大臣に来ていただいて、そうしてお話しようということが大体きめられておるのである。従つて無理にその日程を延ばそうというわけでも何でもないのであります。その審議の過程の上において、いわゆる審議日数の中に含ませて、一応これを聞いたらどうかということを言つておるので、決して私は無理なことを言つておるのではありません。だから何も理事会は、これは別に採択をとる必要もありませんし、またとるべきものでもございませんが、一応不調に終つておりますので、私は不調に終つたということでよいと思います。ただ私がここで申し上げておきたいことは、委員長の言われた、いかにもきよう持ち出したことが不見識であるというような言葉は慎んでもらいたい。私は決して不見識なことを言つておるわけではない。そういうことになるならば、当初の約束通り、ひとつみな自治警の諸君も委員長のはからいでここに呼んでもらつて、われわれの審議にさしつかえのないようにぜひしていただきたい。
  109. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それだつたら大阪、名古屋——せんだつて名古屋に来てもらつたじやありませんか。そうしたらそれと同じように、田中警視総監を呼んでちようだい。これを呼ばなかつたら承知せぬ。呼ぶか呼ばないか。同じ自治警察じやありませんか。やはり田中をここへ呼び、すべてを平等に呼ぶのがあたりまえじやありませんか。宮崎、そして大阪、京都等、五大都市及び田中——田中を呼ばなかつたらためじやないか。不公平じやないか。どうですか。そんな片手落ちのことをしたら私は承知しませんよ、自治体警察なら自治体警察で田中警視総監も呼び、五大都市のそうした警察長すべてを呼ぶ。それだつたら片手落ちじやないけれども、同じ人がここへ来て同じことを言う。すべての者を呼んでちようだい。委員長の責任において呼んでください。田中を呼ばなかつたら承知せぬ。
  110. 中井一夫

    中井委員長 門司君にお答えをいたします。証人喚問についての御要求を委員長といたしまして決して不見識という意味には存じていないのであります。りつぱな一つの御見識であると思います。ただしかしながら、何分にも会期は本来のものは八日をもつてつております。特に延ばされた会期につきましても、参議院の審議の日取り等を思いまするならば、この重要法案はあるいは否決されるかもしれません。あるいは修正可決されるかもしれません。あるいは原案そのものが通過するようなことになるかもしれません。いずれにいたしましても、これだけ長い間の審議を重ねて来た今日でございますから、すなわち各派互いに納得の上で、本日をもつて一応質問終了の程度に達しようということになつたのであります。従いましてただいまの証人喚問の御要求については、りつぱな一つの御見識とは存じますけれども、この程度においてはその必要はないのではないか、惜しむらくはあまりにも時期を失しておるというような感じもいたします。またその人たちの証言がなくてはこの法案が審議できないとは考えられない事態でもありますし、一応この審議については、この程度で終了せられたいということをお願いいたす次第であります。
  111. 大矢省三

    ○大矢委員 これは証人として喚問するとか何とかいう大層なことをしなくてもいいのです。この法案審議の当初において、自治体警察あるいは公安委員、自警連ですか、そういう人たちに来てもらつて、その都度聞くということは承認されたことなんです。それでわざわざ呼ぶのではない、こういう新事態は非常に重大な問題なんです。だから明日ここへ来られたときに、まだ最終決定ではないのですし、きのうの理事会の決定をくつがえすとも何とも言つていない、だからあした来たときに前の申合せ通り聞いていただくことにして、最初の決定通りに実行してもらう、こういうことのほかに何もない。だから、わざわざ呼ぶということについては委員長の仰せの通りです。そういうことをやつたら大層だが、毎日開いているのですから、最初の通りここに来てもらつて、先ほどの質問に対して事実かどうか、これだけ聞くのです。その程度のことをいかぬとおつしやることはどうも困る。こういう問題が起きた、理事会まで開いた問題として、参考に来てもらつたときについでに聞く。最初の申合せとちよつともかわつていない。それを今度はいかぬと言われるが、私は前の通り承認を願つて、あとで来てもらつて聞いていただくということにしていただきたいと思います。
  112. 中井一夫

    中井委員長 一応いかがでしよう、本日の予定は夜おそくまででも質疑を終了することにいたしまして、そうしてその問題はその上で理事会でお諮りいただいて、あらためて理事会で決定を願う。先ほど来の理事会の様子は承りましたが、おのおの御意見も一致していないようでありますし、一応この申合せが達成せられましたあとにおきまして、それならば呼んでみようじやないかというような御意見も出るのではないか、これは皆さんの良識に訴えておとりきめを願うというのが適当かと思います。ただこの際これを入れれば、従つてお申合せの本日終了ということが時間の関係上むずかしくなる、そういうことになりますとまことに遺憾でございますから、それはそれとしていわゆる討論採決までにでもこういう機会をおつくりになるということは、理事会でおとりきめになりますならば、円満に運ばれるわけではないかと思います。ここのところはそういうことにおとりはからい願います。
  113. 大矢省三

    ○大矢委員 ちよつと、委員長は誤解しているのです。そういうことのために理事会の申合せを破るなどということは言つてはおりません。きようこれで質疑等割当てた時間が済めば、きよう打切ることには間違いない。そこで正式に呼ばなくてもよろしい。もつと具体的に言うと、こういう問題が起きているのがほんとうかどうかということで、来てもらうことを、もし私が言つて、来られなければいたし方がないが、明日これを聞くことを前の最初の申合せ通り実行してもらいたい、こういうのです。何も今度の審議について新しく出たわけでも何でもない。またそれを延ばそうという意思は毛頭ない。どうも誤解されておるのですが、そんなことはちつともない。
  114. 中井一夫

    中井委員長 あらためてお伺いいたしますが、本日の審議を進め、これを一応申合せ通り終結するということについては御異議はない、それと別問題に、この問題について討論終結までの間に呼んでもらたい、こういうわけですか。
  115. 大矢省三

    ○大矢委員 そういうことです。
  116. 中井一夫

    中井委員長 改進党の鈴木さんにお伺いいたしますが、ただいまの理事会におけるお話合いというものは、右のような趣旨では了承されていないのでありますか。それとも今申した、呼ぶことによつて質疑が延びるというようなことのために意見が対立したというのでありますか、この点をひとつ鈴木さんから皆さんの前で御披露願いたいと思います。
  117. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 ただいまの理事会では、この問題につきまして門司さん、西村さんの方から、明日にでも召喚をして証言を聞きたい、こういうような強力な発言がございました。それに対して自由党の灘尾委員から、時間も切迫しており、申合せもあることであるから、この問題を他日に延ばしたい、こういうようなこれまた強力な発言があつたのでございます。私はこの問題につきまして、喚問することにつきましては、警察の将来の問題から大きな考慮を払わなければならないことを申し上げまして、喚問することにつきましては原則的には承認いたします。しかしながら、これには若干の条件を付し、さらに喚問の時日に関しましては、次の理事会を開いたときに協議をしてきめたい、こういう提案をいたしたのでありますが、社会党の両理事の間におきましては御了承を得るまでに至らなかつたのであります。しかしながらこの問題につきましては、さらに理事会を開いて期日その他についてお打合せすることを適当と私は考えておるのであります。かように各理事から御了承願えればまことに仕合せであります。以上であります。
  118. 中井一夫

    中井委員長 それならば話がまとまらぬことはないじやありませんか。なぜ理事会でうまく行かなかつたのでしようか。灘尾理事の御意見を伺います。
  119. 灘尾弘吉

    灘尾委員 理事会の経過は、ただいま鈴木委員から申された通りであります。私といたしましては、本委員会警察法案に関する議事の進行方につきましては、昨日各会派の方々とお打合せもありますので、その通り御進行願いたいという趣旨から、本明日のうちに証人を喚問して云々ということについては賛成いたしがたい、この問題については別の機会に御相談申し上げたい、かように申し上げておる次第であります。
  120. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 先はどから聞いておりますと、非常にこの法案の打切りをお急ぎのようですが、私どもはことさらに審議を延ばそうというような考えは持つておりませんので、きのうの理事会申合せ通り、審議は審議として、逐条審議は持ち時間いつぱいで終る、しかし終つたからといつて、それで審議を全部打切つたわけではありません。なお総括質問もあとに残るし、きのうの各国の自治警察の資料もまだ出ておりません。それは十二日の朝出すということでございますから、その質問もまた保留されておりますから、従つてきようの猪俣委員の質問については、われわれは重大な新事実だと思いますので、この新事実に対して私どもは十分ひとつ資問してみたい、かように考えますので、委員会においてはひとつそういうふうにおとりはからい願いたい。
  121. 西村力弥

    西村(力)委員 委員長はこの段階においてそういう証人を呼ぶということは必要なしということを言われた。私ちよつと欠席しておりましたが、門司委員の発言を聞きますと、何か不見識きわまるというような印象を受けるような発言があつたようでありますが、そういうことは私たちの真意を解さない言葉であると思うのです。私の考え灘尾委員たちの考えの違う点は、この警察法を新しくかえて来たそもそものわけというのは、現在の組織では警察執行上うまく行かないということなんです。そういうところから組織法を出した。ところが組織法という場合になつて来ると、そういう執行上の一切の問題はもう関係ないのだ、こういうぐあいにしようという考え方に立つておるのです。しかしながら私たちがこの組織法を審議するのは、だれが命令するからこれは系統がいいとか、そういうところまで言うのではなくて、こういう仕組みにしたならば、政党警察的になる結果をどうするとか、秘密警察の方向にどう進むか、そこの執行がどういうふうに将来展開するか、そこを一番心配して、この組織を考えておる。これは絶対に切り離せないのです。しかも将来絶対起きるだろうと予想して、心配しながら、組織法を研究して審議している過程において、ただいま現実にそういう秘密警察の事例が行われておるということが判明した以上、もう将来の問題として危惧するばかりでなく、今の問題として危惧しなければならぬ問題になつて来たのです。だからその点はつきりと、証人を呼んでわれわれは調査して行かなければならない、こういう結論になつておるわけなんです。
  122. 藤田義光

    藤田委員 先ほど来いろいろ御発言がありましたが、どうも何のために理事会を開いたかわからぬというような印象を、われわれ委員は受けておるのであります。従いましてこの際ひとつ、先ほど鈴木理事から発言がありました線で話を打切つていただきまして、逐条の審議は続行するという方式を、委員長からお諮り願いたいと思います。これは私の動議であります。
  123. 中井一夫

    中井委員長 よくわかりました。そこでひとつ動議として、はつきりどういうことにしようということの御発議をいただきたい。改進党の側からお出しいただくことが一番適当かと思います。
  124. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 動議を提出いたします。この問題につきましては、次回の理事会におきまして、期日、方法等を協議することにいたし、本日は打合せ通り審議を進められんことを望みます。
  125. 中井一夫

    中井委員長 お伺いしますが、次回の理事会とはいつのことを言われるのですか。
  126. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 次回とは、今日ただいま以後におきまして開かれる理事会であります。
  127. 中井一夫

    中井委員長 やはりいつ理事会を開くということをおきめいただかぬと、またこの問題があとに残つては困ります。だからはつきりそこを言つていただきたい。
  128. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 私はこの問題につきまして、実は自分の気持といたしましては、この審議の過程におきまして、今日、明日においてただちに開かなければならないとは考えておりません。しかしながらこの問題を早急に決定するために、明日にでも理事会を開かれてけつこうであります。それですから先ほどの私の動議の次回のというのは、明日理事会を開くことに御了承願つてさしつかえございません。
  129. 中井一夫

    中井委員長 それじやあなたの御動議は、この証人を呼ぶとしての問題は、明日開会初めの理事会において、その日取りその他の詳しいことをきめる、こういう趣旨に了解してよろしゆうございますか。
  130. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 よろしゆうございます。
  131. 中井一夫

    中井委員長 わかりました。それではただいまの鈴木君の動議について各位の御意見をお伺いいたします。
  132. 灘尾弘吉

    灘尾委員 ただいまの動議の御趣旨について、一点お伺いしたいと思うのでありますが、証人を喚問する期日その他についての打合せという御趣旨でありましようか。それとも証人を喚問することそれ自体についての相談をするということを含んでおるものかどうか、そのことを伺いたいと思います。
  133. 鈴木幹雄

    鈴木(幹)委員 私の申し上げました趣旨は、このことにつきまして証人を喚問することは不必要なりとは考えておりません。従つて喚問をするという結論に到達いたしますならば、そのときに期日、方法等の御審議をして、決定をしていただきたい、こういう意味でございます。
  134. 中井一夫

    中井委員長 それでは採決いたします。鈴木君の動議に賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  135. 中井一夫

    中井委員長 起立多数。鈴木君の動議は決定いたしました。     —————————————
  136. 中井一夫

  137. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 社会党の持ち時間はあとどのくらいありますか。
  138. 中井一夫

    中井委員長 あと二時間二十八分であります。
  139. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私のお尋ねいたしますのは、簡単でありますから、時間はあまりとらぬと思います。今第五章で伺つておりますけれども、どうも昨日からいろいろ問題になつております第四章の三十七条の問題が、私しつくりと納得が行きませんので、その点だけを一つ前にもどつて、念のためにお尋ねをいたしたいと思います。おもに柴田総務部長にお尋ねをいたしたいと思います。  三十七条によりまして、一号から八号までというものは、おもに国が支弁をする、国庫支弁ということになりますが、そういたしますと、国庫の支弁ででき上りました、たとえば警察の教養施設などというものは、これは所有権がどういうふうになるのであるか、お尋ねをいたします。
  140. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 国庫の支弁によりまして経理をいたしますものは、所有権は国に属するのでございます。しこうしてそのものの現実の維持管理は、府県警察の用に供せられるものにつきましては、第七十七条によりまして、都道府県警察無償使用ということになりまして、現実の管理は府県警察使用者として管理をいたすことになるのでございます。
  141. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういたしますと、国が半額補助するとか、半額国庫支弁をするというような問題につきましては、所有権は共有ということになるのですか、どういうことになるのでありましようか。どうもこの点は今の地方自治体のあり方から見まして、国のものと都道府県のものと、はつきりと実は区別をされておると思いますが、その点ははつきりいたしておきませんと、将来非常に大きな問題が起きると思いますので、念のためにお尋ねいたします。
  142. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 都道府県警察が支弁することになつておりまして、それに対して国が補助をするということにつきましては、その所有権は府県に属します。
  143. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そうなりますると、その分だけでも、きのうあなたの御答弁では、国庫の支弁のものは府県の予算を通らないと言いまするけれども、やはり予算を通さないというと、財産台帳に計上する方法はないし、どういうことになりましようか、お伺いいたします。
  144. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 府県無償貸与いたしましても、国有財産法に基くところの国有財産としての帳簿を持つのでございまして同じことでございます。
  145. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 半額を県がやつて国がそれに助成をするというふうなものにつきまして、県は整理のしようがないと思う。やはり予算で上げなくちや私はできないと思うのですが、そういう点についてはどうでございますか。
  146. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 府県が支弁をいたしまして、国から補助金を受けるものも府県費であることにはかわりありませんので、この補助金はただ府県が予算の上において歳入として受入れるだけでございますので、純県費であるのと、補助金を受けておりましようが、予算上の性質といたしましてはまつたく同じことでございまして、純粋の府県財産として処理せられるのでございます。
  147. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういたしますると、国家が支弁するというのは半額負担というものはないのですか。
  148. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 三十七条の一号の、国庫支弁の方につきましては、国費として直接支出をするのでございまして、補助ではございませんので、半額というようなことはないのであります。ここに掲げてございます経費として府県から要求はいたすと思いますが、それに基きまして国費として国会の御審議を経ましてきまりました額につきましては、当然その額が全額国庫支弁になる、こういうものでございます。
  149. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 柴田総務部員が一番最初に説明をいたしましたときには三十七条の第八に掲げる経費について施設費等は半額やりたいというふうな説明をなさつておるのでありますが、これは補助金なのですか。国庫支弁なのですか。
  150. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 施設費は三項のところで御説明をしたのでありまして、三項の補助の対象となるものといたしまして、人件費や被服費や人当庁費のようなものを除きました、いわゆる通常職員の設置に要する経費を除いた、ここの八号までに掲げてあるこのような経費以外の経費、つまり犯罪の捜査の経費でありますとか、防犯、交通取締り、そのほか警察署その他の庁舎の施設費につきましては、第三項の補助金の対象になるという御説明をしたのでございます。第一項の方としては御説明いたしたわけではございませんでした。
  151. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 一項の八ではなかつたのですね。
  152. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 さようでございます。
  153. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そこでどうも三十七条を読んでみまして、それから都道府県警察というのを頭の中に描いてみますと、この間から人事の問題につきましては、国が直接首脳部は任命をするというのでありまして、この点で自治警察としてのあり方についてずいぶん論議されたのであります。その経費の面も三十七条の一項でこでいうふうになる。三十七条の二、三、四、これはおのおの都道府県の本部の最も重要なる施設であろうと思う。警察の教養施設の維持管理、警察学校における訓練、通信の施設犯罪の鑑識施設の維持管理、これは都道府県本部の最も重要なる施設なんですが、人事は首脳部だけそういうことになつておる。今度はまた施設のおもなるものは全部国有であるという形であります。私どもはせめて人事だけであろうと思つておりましたが、こういうふうに所有権も全部国が持つてつて、そして管理だけは人にまかすというふうな形では、ますますどうにも自治体警察といえなくなるのではないかと私どもは考えられるわけなんです。これ以外に大きな施設というものは都道府県にありません。あとは警察署の建物、派出所というようなことになる。どうも人的の面だけでなく財政的の面においても、非常に国家警察としての性格は、実際は強いというふうな形になつておると思うのであります。どうしてこういうふうにここまでやらなければならないのか。私は国庫支弁もけつこうだと思いますが、支弁をして出したものは、いいかげんに都道府県の所有にしてはどうですか。そういうことをしないと、いつまでたつても管理その他の面において、補修その他の面において、毎年毎年問題を起すのではないか。ことに公安委員仕事というものは、ほとんど事実上だんだんと宙に浮いてしまうではないか。公安委員会は、今度運営管理と行政管理ということになつて範囲が広くなつたが、公安委員会の性格というものは、現実に過去六年行われました国家公安委員あるいは全国の自治体の公安委員仕事というものは、これは運営管理といいましても、そのほとんどが法律間違いなく執行するというふうなことでありまして、具体的な内容になりまして、どこの殺人をどうせいというようなところまで、あまり公安委員として入れるものでもなし、また現実に入つてもおりません。公安委員のほんとうの仕事は、やはり行政管理であると思うのであります。その行政管理のうちで首脳部の人事はできない、おもなる財産はみんな国有である。予算は組もうとしても、それは国でやるのである。こういうふうなことになりますと、まつたく公安委員会というものは実質上は諮問機関になつて、たな上げみたようになつでしまう。人事の面だけだと思つておりましたが、財産もこういうようになつておる。こういう面についてどうお考えであるか。最近の府県と昔の政府とは、財産その他の関係においてはすつかりかわつております。官選の知事ではありません。県会の権限も昔と違つて非常に大きくなつておる。そういうものの中にどんどん国の施設が入つて来る。いつまでたつても国のもの、こういうような形で円満に全国の都道府県警察がうまく運営されて行きましようか。
  154. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 三十七条にございますお話の通信施設、鑑識施設、教養施設につきましては、現行の制度は御承知の通り市町村自治体警察国家地方警察にわかれておりますが、現行制度のもとにおきましても、通信施設国家地方警察がこれを全部やつておりまして、自治体警察がこれを利用することができる、かようになつております。それから犯罪鑑識施設につきましても、特に現行法は鑑識の条項を設けまして、国家地方警察本部及び都道府県国家地方警察本部に犯罪鑑識に関する施設を置く、こういうふうにいたしまして、ほかの事項につきましては市町村に対しまして国家地方警察は何ら指揮命令権はないのでございますが、鑑識につきましては、市町村警察長に、この鑑識施設をやつておりますところの国家地方警察本部長官に報告を要求しておるのであります。教養施設につきましても、各警察学校規定がございまして、これは国家地方警察及び要求のあつたときは自治体警察職員を教養するのだということを書きまして、国家地方警察が、これらの施設だけにつきましては、特別にこの基本的な施設国有財産として持つてつて、これを維持管理しており、そうして自治体警察についてもこれを共用せしめる、利用させておく制度をとつておるのでございます。この精神は、一般警察の運用につきましては、お話のように自治体警察といたしましては、できるだけ独立の活動を認めているわけでございますが、これらの三つの施設というものは、いずれも警察の活動の能率を維持し、かつこれを向上せしめて行くという上におきまして、非常に基本的な、しかも施設もやや組織的な大がかりなものでございます。これを国が全国一定の水準を保つために——一つの気持は共同施設のような気持でございましようが、それを国がかわつて管理するという立場から、国が管理する施設として認めておるのでございます。今度の法案におきましても、その範囲は現行法の範囲とまつたく同じでございまして、教養施設、通信施設、鑑識施設につきましては、現行制度と同じように国がこれを維持管理をして、そうしてその施設府県警察使用せしめ、実際の活動面においては、府県警察が全部これを活用して、大いに能率を高めて行く、こういう方式をとつている次第でございます。
  155. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁は、一応、まことにごもつとものような御答弁でありますが、しかしどうもこれは今回の改正案の根本の趣旨に非常に反すると私は思うのであります。この改正案の根本では、国家警察が国家本位に過ぎる、自治体警察が自治に過ぎるから、この折衷をとつてやるのだ、こういうことであります。従つて県の公安委員会というものは、これまで運営管理だけであつたのを、行政管理にする、こういうことであります。行政管理にするが、内容はどうか、ちつともかわつておりません。昔からこうでありましたというのでは、どうも大臣説明とあなたの説明とまつたく逆じやありませんか。私はこの内容のうちで、あるいは第三の警察通信施設につきましては、通信の持つ本来の性格からいつで、波長の関係だとか、あるいは機械器具の関係だとか、全国を統制する必要はあるかもしれません。しかしそれにしても、その所有権とかあるいは補修費とかいうものになつて参りますと、これまで通りでありますというのでは、国警はそのまま残つて、自治警だけでなくなる、こういう結論になりますが、どうですか。
  156. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 先ほど御説明いたしましたのも、これらの施設について、だれが経費を出すか、どこの所有権に属するかという点から、これは国が国庫支弁といたしまして、現行法と同じように、施設を維持管理して行くのだということを申し上げたのでございます。これは主として、所有権と経費関係から申し上げたのでございます。一方府県の行政管理権というものが縮まるじやないかというお尋ねでもございます。なるほど国庫支弁という経費の出し方について、そういうお考えもあるかと思いますけれども、現実にこの警察施設なり、犯罪鑑識施設なり、通信施設につきましても、府県警察の用に供する範囲において、現実にこれを維持管理しているものは、やはり府県警察にまかしておる。府県公安委員会が現実にこれを維持管理しております。また通信におきましても、これを使用するのは府県であります。教養施設につきましても、この教養施設の中で、どういう生徒を入れて、実際教養の任に当るものは、府県警察の方針に基きまして、——もちろん国の統轄を受けますけれども、現実にそれに当るのは各府県でございます。それらの実際の内容を警察活動に役立たしめて行く活動に関する限りは、府県公安委員会の行政管理権に属するのでございます。ただ経費のお尋ねでございましたので、所有権と経費は、これはこういう施設につきましては国が全国一定の水準を保つという意味から申しまして、現行制度でもそうなつており、今後もそれが適当であろうということからお答えいたしたわけであります。府県公安委員会は行政管理権として、これらについても全然何らの関与がないのだというわけでは決してないのであります。
  157. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁どうも納得できないのであります。所有権は国のものであるが、維持管理はやらせる。維持管理までやつてどうして所有権を都道府県に移さないかと思うのであります。そうでありませんと法律的にもいろいろな問題が起ると思う。この学校では貧弱だから、もう少し予算を追加しようということになりましても、一々中央の指示を受けなくてはなりません。またそんなぜいたくな学校はいらない、その経費を少しほかの方にまわそうといつたつて、これも全然できない。非常に不便なことが起ると思う。国有財産として国の台帳に載つてつて、それの変更はなかなかできないというふうなことになる。私は現在の国警当局がどうしてこういうものの所有権までがんばるのか、その意味がどうしてもわからないのでありますが、その点をお尋ねいたしているのであります。その辺について、今の国と都道府県関係におきましては、財産の区分その他はきわめて明確なのであります。これが誤解があつて将来紛争の的になつては困るというふうな気持で、私は尋ねている次第であります。またこういうことになりますと、いくら自治体警察といいましても、少し直すにしても全部国の経費ということになりまして、実質上から見て自治体警察とはどうも言えない、自然にすうつと考えて言えないように思うのでありますが、どうしてそうがんばられるのか、その辺のところの真意をもう一度お伺いしたい。
  158. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この点につきましては、ただいままで柴田政府委員がいろいろと御答弁申し上げている通りでございますが、しかし中井委員のおつしやいまする意味もよくわかるのでございます。われわれといたしましても、しいて国の所有権にしておかなければならないことはない。府県の所有に移してもさしつかえがないのでございます。また予算も府県の予算を通しても別にどうという支障はないと思うのでございますが、われわれといたしましてはこういう重要な経費はできるだけ中央で実際において獲得をいたしたい、そのためにはこれは府県の支弁だ、国の補助金だということになると、大きな声では言えませんが、実際十分な予算がとれない。所有権を全部府県に移すということになれば、府県も費用の一部を負担せいということになりますので、実は国費をよけいとつて地方の負担を軽くする、さようにいたしたいというので、重要なものは全部どうしても国費で全額負担してもらいたいというので、大蔵省もこの点については今の中井委員のおつしやるような点があつたのでありますが、われわれといたしましてはできるだけ警察活動に必要な費用は確保いたしたいという意味から、かようにいたした点が多いのでありますから、その点はひとつ御了承いただきたいと思うのであります。
  159. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の長官の御答弁で気持はわからないわけではないのでありますが、そういうことならば、私は法案を最初からそういう形でお出しになつた方がはつきりしてよかつたと思うのであります。行政管理を公安委員会がやるという内容をだんだんと質疑いたしますと非常に国家的な色彩が強い、それがこの三十七条にはしなくも出ている。そのうちにはもう府県の自治体たるの性格に変更があるかもしれない、そういつた場合にまたうるさいからというような、先の先まで考えているのではないかというようなことも疑われるようなことであります。常識的に言いますと、府県警察自治体警察であるならば、これはすつと府県の所有にするのが私は筋だと思う。大体柴田君なんかの御意見は、新しい憲法下の自治体の性格について、どうもまだ少し信用ができぬとか、これはおれたちの方でみなやつてやろうという親心は、善意に解釈してけつこうでありますが、実際はこんな形で行きますと、全国で毎年々々非常に問題が起るであろうことを、私はあらかじめ予言をいたしておきます。あまりこの問題ばかりでもなんですから次に移ります。  第五章につき逐条的にお尋ねをいたします。第六十一条でありますが、階級のことであります。けさほども阿部委員から皇宮警察のことについてお尋ねがありましたが、私ども警察行政についてはしろうとでありますけれども、いかにもどうもこの階級は多いと思うのですがどうですか。これは長官を除くとあるから長官がある。その次に警視総監、警視監警視長、警視正、この四つのものはだれがどういうものであるか一向われわれはわからない。さらに警視、警部、警部補、巡査部長、巡査と十の階級にわかれておりますが、最近の民主主義のあり方からいたしまして、国家公務員でもあるいは地方公務員でも、俸給、給料その他の区わけにつきましてはかなり詳細でありますけれども、こういう資格の問題はあまりだれもやかましく言いませんが、警察だけはどうしてもこういう階級がいるのかどうか、その辺のことをお尋ねいたしたいのであります。
  160. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 現在の国家地方警察のもとにおきましては、階級といたしましては長官と次長のほかには、上はこの警視長から始まつております。警視長、警視正、警視、こういうぐあいになつておりまして、御承知のように警視正は大体各府県警察隊長及びその本部の課長であります。そのうちで非常に古参な人々は警視長になつておるわけです。だから現在は、管区本部長とか、あるいは本部の部長とかいうのは警視長でございますが、それ以上の階級はありません。しかしながら今度自治体警察国家地方警察が一緒に相なりますと、やはり東京とか大阪とかいうところ警視総監というような階級の方が現におられて、それだけの階級に相当する重要な地位におられるわけでありますが、これが統括されましても、その地位の重要性、あるいは階級の必要性というものにはかわりがありませんので、警視総監、警視監というものを置くということになつて参ります。これは警視総監と警視監は大体似た階級で、そう大した上下の開きはございません。東京の現在の警視総監に相当するポストが警視総監ということになりますと、大阪も警視総監といい、神戸も警視総監というのも、今までも慣例からいたしましていかがであろうか。従いまして、大体警視総監に非常に近いのだが、それよりもちよつと下というのは警視監というように、非常に芸がこまかいのでありますが、そういうようなわけで、警視総監と警視監がふえたわけであります。その点は御了承願いたいと思います。
  161. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 御当局の苦労のほどはわかるのでありますが、巡査とか巡査部長、警部補、警部、警視、この辺のところまでは一般大衆に非常に親しまれておりますし、名前も知れております。それから以上の者につきましては、今長官から御答弁がありましたが、具体的の人間というものは現実に非常にわずかの者でありまして、警察の将来の首脳部を形成する人たちであります。この人たちは別に、おれは弊視総監でないと困るとか、おれは警視監でないと困るとかいうふうな、そういう人柄でないと私は思います。現にある人たちは、また将来なるような人たちでも、どうも警視長から一つつて警視監になるよりも、少しでも給料が上つた方がよいという人が多いのじやないかと思います。こういう合併の法案が出た機会に、こういうものこそ整理すべきものではなかろうかと私は思う。実に自治体警察におきまして、小さな自治体警察でも初め警部か警視で来た君が、かつてに今度は警視になります、今度は警視正になります、というふうなことで、公安委員会は給料に影響がありませんから、おうおうよいよい、肩章が一つふえるくらいなものだというような形がこういうところに出ておる、こういう問題について実に私は苦々しく考えておる。東京は警視総監だから大阪もひとつ警視総監にしようじやないか、別にかわりはしないというふうな考え方、あなた方がこわいものに触れてはいけないというのでそのまま置いておくというのは、あまりにも不見識だと思います。せいぜい警視正の上は警視総監か何か——警視総監というの監資格じやなくて一つの東京都の警察の大将、資格は警視はか警視長でよいというようなふうに直す意思はございませんか。
  162. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 御意見の点はわれわれももつともしごくに考えておる点もあるわけです。ただいまもおつしやいますように、まあ給料もいらない、別に金がかかるわけではない、しかし長い間勤めて階級でも上るということが一つの励みにもなるわけでありますし、また実際問題といたしまして、大きな部隊編成を通じて指揮をしなければならないというようなときには、警視総監と警視監警視長という隊編成をいたした場合の指揮監督の点を考えますと、この程度階級がありましても決して多過ぎるということはございません。御意見の点はまことに私も同感するところがあるわけでありますが、まあ現実にこういうことで階級がふえておるという事実をひとつお認め願いたいと思います。
  163. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 こういうような小さなことでいつまでもこだわるのもどうかと思いますが、こういうものの中にやはり警察官の官僚的な考え方というか、そういうものがはしなくも暴露されておるように私は思うのであります。それをこわいものにさわるようにしてそのままに置いておくということについては納得できませんが、しかしこの程度にいたしておきます。  次に六十二条に移りまするが、これは読んで字のごとくと思いまするけれども、上官というものの中に公安委員が入るのですか、入りませんでしようか、お伺いいたします。
  164. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この六十二条の場合におきましては、上官という中に公安委員は入りません。六十二条は六十一条を受けまして、警察職員の章でございます。六十一条に、今お話のございましたようにたくさんにわかれた階級がございますので、これの上下を言うのでありまして、警察官階級があります関係上——その階級というのはただ並べてあるだけではなくして、上官とその下という関係になるのでありまして、警察官同士の間におきましては、上官の指揮監督を受けて警察官をやるのだということで、職務上の関係を離れてのことでございます。従いまして、公安委員会警察本部長から見まするならば職務上の上司でございますが、階級といたしましては、公安委員は含んでおりません。
  165. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 もう一つお尋ねいたしまするが、この上官はすぐ上の上官ですか、ずつと上まで行くのでしようか。
  166. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 直接にはそのすぐ上になると考えますが、結局ずつと上までを含むものでございます。
  167. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういたしますると、警視総監が直接巡査を指揮監督するということもあり得ていいわけになりますね。
  168. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 ええ。
  169. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 わかりました。  次に六十三条であります。都道府県警察警察官は、当該都道府県警察の管轄区域内において職権を行う、当然の規定のようでありまするが、この場合ちよつと疑問になりまするのは、管区警察本部というのがありまするが、管区警察本部の警察官は直接民衆に向つてこういう警察活動をしないのでありましようか、するんでありましようか、する場合にはそれはどういうことになりましようか、お尋ねいたします。
  170. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 直接職権行使ができなのいでございます。警察庁の警察官はすべてできないのであります。それができます場合は、この法の緊急事態の場合、あるいは特に援助要求がありました場合、その範囲内に限られるわけでございます。
  171. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 現行犯の場合にはどうなるのでありましようか。
  172. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 現行法におきましては、自己の管轄区域でございませんと、職権行使はできないことになつておりますので、今回は六十四条の規定を設けまして、警察官はいかなる区域においても、つまり自己の管轄区域であるといなとを問わず、現行犯を目の前にすれば、この場合には職権行使ができるということになつておるのでございます。この六十四条の規定を設けました後におきましては、お話のように警察庁であろうと、管区警察局であろうと、警察官の身分を持ちまする以上は、いかなる地域においても現行犯についてだけは職権行使ができる、かように相なつております。
  173. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 わかりました。そこで六十四条の今御説明のあつた部分でありますが、現行犯の場合には警察官として職権を行うことができるとあります。これは警察官として職権を行う義務があるというふうに解釈すべきものでしようか、義務は必ずしもないのでしようか、その点をお伺いいたします。
  174. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この規定の書き方は、義務とまでは書いてないのでございます。従いまして、法律上の意味におきまして、必ず義務があるというわけには参らぬと思います。しかし警察官といたしまして、そういう職権を行うことができます以上、義務としてそれを行うべきたという考え方は、警察官一つの規律としてはあると思いますけれども、法律上義務があるということにはならないかと存じます。
  175. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点ははつきりと義務とやつておいた方が私はよいように思うのでありますが、どういうものでありますか、わからぬのですか。まあその程度にいたしておきます。  次に六十六条であります。小型武器につきまして先般来いろいろな質疑が行われました。ピストルのようなものは武器であるかいなかというような議論がいろいろ行われましたが、その際問題になりましたピストルであります。この際ピストルの使用方法につきましては、警察当局において必ず一定の基準を出しておられると思うのであります。そういうものについて、どういう場合にはどうするか、犯人逮捕の場合にはどうするのかというふうなことについて、関係の係の人から説明をいただきたい、かように思うのであります。
  176. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 法律におきましては、警察官武器使用といたしまして、警察官等職務執行法の第七条に「武器使用」という規定がございまして、職務使用といたしまして——これは拳銃に限つておりませんけれども、武器使用につきまして厳格な制限があるわけでございます。その事態に応じて合理的に必要と判断される限度において、そうして相当の理由がある場合でなければならないということが、さらに詳しく規定されているのでございます。この警察官等職務執行法武器使用規定が、警察官武器使用の金科玉条と申しますか、根本の規定でございまして、これを根本にいたしまして、さらに警察内部におきまして、拳銃につきましては拳銃使用取扱規程というようなものを国家公安委員会の方において設けておりまして、この警察官職務執行法の範囲内におきまして——これはこの法律に基かずして武器使用しますればまつたく不法なことになるのでございますが、ただ不法だということだけではなくして、不当かどうかという点につきまして、さらに内部的な規程によりまして、この法律以上に厳重に拳銃使用方法については規定を設けておりまして、拳銃を使うようになりまして以降相当の年数を経過いたしましたが、その間非常に厳格にこれの趣旨の徹底、その他訓練をいたしているような次第でございます。
  177. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私のお尋ねしておるのは、その使用の具体的な内容についてであります。たとえばどろぼうを追いかけるときに、すぐに心臓を撃つてしまつてはたいへんですから、空砲を撃てとか、あるいは足元をねらつて撃てとかいうふうなことが必ずあると思うのであります。そういうことについてひとつ開かしていただきたい。
  178. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 私から少し詳しく御説明申し上げます。先ほど総務部長が申し上げました預り、警察官等職務執行法の第七条の規定を受けまして、警察官けん銃使用及び取扱規程というのを内部訓令で定めておるのでございます。それにいろいろな、警察官として拳銃使用し、取扱う心得を規定いたしておるのであります。たとえば特に拳銃扱いにつきましては不祥の事故を起すことのないように、いわゆる安全を期するという意味におきまして、実際に使用するにあたつて、不必要な取扱い方によりまして人を殺傷するというようなことがないように厳に戒めておるのであります。たとえば安全について二、三申し上げてみますと、射撃する目標物以外に銃口を向けてはならない。人に拳銃を手渡しするときには、弾が装填してあるかどうかを確かめて、弾を抜いてからでなければ相手方に拳銃を渡してはならない、これはたとえば上司が点検等と称して拳銃を調べるというようなときにあたりましても、よく注意しておきませんと、お互いに内輪同士で爆発して事故を起すというようなことがあるものですから、そういう点きわめて慎重に扱うように、こまかい配慮のもとにいろいろ扱い上の注意規定をいたしてあります。
  179. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それは具体的になつていますか。
  180. 石井榮三

    ○石井政府委員 さようでございます。今申し上げましたのは一、二の例でございますが、そういう点を詳細に規定をいたしております。今ここでそれを一々御説明申し上げますと、とても煩にたえませんので、一、二の例を申し上げたのであります。そういう精神でこの警察官けん銃使用及び取扱規程で詳細にいろいろな注意規定がなされております。警察官はそれに従つて拳銃使用、取扱いについては、きわめて慎重にやるように平素十分訓練もいたしておるのであります。しかもなおかつ不幸にして若干の拳銃事故を起しておりますことは、まことに申訳ない次第でありますが、今後ともさらに一層指導訓練の面に留意いたしまして、事故の起ることを予防いたしたい、かように考えております。
  181. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今のような問題につきましては、実際扱つておりまするのは巡査、巡査部長などの下の方の人たちが非常に多いのでありますから、私はできるだけ詳細に具体的な事実を示さないと、実際の場合にあまり効果がないように考えるのでお尋ねをしたわけであります。犯人をおつかけるときには、どういうふうにしてどういうところを撃てとかいうようなところまでやはり指導すべきものだ、かように考えまするのでお尋ねをしたわけであります。  次は六十八条であります。皇宮警察につきまして、午前中に他の委員からも御質問がありましたが、これは先般も私お尋ねしたのでございますが、天皇の地位というものが終戦後かわりまして、そのかわつたことに即応した皇宮警察官の立場、それに応じた態度をとつておられるかどうか、これにつきましては、特に学校まであるというのでありますが、われわれはそういうものはむしろ必要はないと思うのですが、あるとすればそういうものに重点を置かれておるべきであると思うのであります。皇宮護衛官につきましては、全体の考え方をひとつ大臣から御答弁がいたたきたい、かように思います。
  182. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 皇宮護衛制度というものは、けさほどもちよつと申し上げましたように、国民統合の象徴としての天皇並びに皇后のお住居についてあくまでもこれを国民のために静謐、清潔に保つ、そうしたことが必要であろうと思いますので、そこでそうした考え方におきましての全体の警備をする、こういう考え方を持つておるのであります。と同時に天皇並びに皇后身辺護衛をする、こういうのでありますが、その護衛に当りましても、あくまでも皇室国民との間隔を広げないように、その間の親愛感といいますか、親密な気持というものを阻害しないような考え方であるべきものと思つております。皇宮警察学校等におきましても、そうした考え方を指導するということによつて訓育をしている、こういう事情でございます。
  183. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういうお気持であるというのでありまするが、現実の皇宮護衛官は残念ながら、私は必ずしもそういうものにうまくマツチをしておるとは言えないと思うのであります。国の象徴の天皇護衛をするという者につきましては、私はまた少し他の観点から、たとえば外交上の問題、あるいは儀礼上の問題、そういう面からも、この必要があるとするならば、皇宮護衛官に対する教養を高めて行くというふうなことが最も大事なことじやないかと思うのであります。諸外国におきましても、こういう元首とかなんとかいうものの護衛につきましては普通の警察官と違つている。どこが違うかと言えば、非常に態度がりつぱであるし、場合によりましては美的な要素までも含んでおる。ところが日本の護衛官は非常にごつごつといたしまして、一般のおまわりさんよりは多少きれいな服を着ておりますが、そういうことではほんとうの近代的な護衛官としての役割を果しているかどうかはなはだ疑問なんです。服装の点、教養の点、言語の点その他につきまして、こういうものを設ける以上は、他の警察官ともつともつとかわつた面がはつきりと出て来なければいけない、私はかように思のうでありまするが、そういう点についてひとつ御意見を伺いたい。
  184. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど私は、皇宮警察官というものが皇室国民との間を疎隔しないように、むしろ親しませるようにという目的をもつて教育をしておるということを申し上げたのでございますが、この考え方の中に、ただいま御指摘のございましたような、皇室そのものの尊厳というものを外国に対しましても十分保ち得るように、たとえば外国の大使が信任状を捧呈する際に立ち会いまするのも、この皇宮護衛官一つ仕事になつておりますが、立ち合うというのですか、その場所に居連なるということが仕事になつておりますので、そうした儀礼上の問題についても大いに考えておるわけであります。また儀仗官といいますか、あるいは音楽隊等も皇宮警察官には組織されておるのでありまして、できるだけ礼節を失わざる中に、しかもやわらかみを持つて教養を高めるという考え方をもつて指導しておる次第であります。
  185. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういう気持をどうぞ推し進めて行くように、国民と象徴の間にかきをつくるような警察官を養成してもらつては困ると私どもは考えるのであります。  次に第六章につきまして一般的にお尋ねいたしたいのであります。第六章の緊急事態の特別措置というのは現行法とどういう点がかわつておりますか。あまりかわつておらぬようにも思うのでありまするが、柴田さんから答弁を願いたいと思います。
  186. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 現行法の国家非常事態と申しておりますのを、名称は前にも御説明申しましたような気持でかえたわけでありますが、その実体はほとんど現行法とかわりがないのであります。ただ警察組織自体が今度の法案ではかわつて参ります関係上、同じような権限が総理大臣に与えられるといたしましても、そのかわり方がひどくなるようなかつこうになります。つまり現行法におきましては市町村警察が多数あるわけでございますが、普通の場合には、御承知の通り国家地方警察なり国家公安委員会なりは、総理大臣とは何も関係はないわけでございます。現行法の国家非常事態布告されますと、国家地方警察府県警察も、それから市町村警察も、みんな総理大臣のもとにおいて、この法律の定める条項に従つて行動し、全警察が統制される。現在で申しますならば四百幾つということになるわけでありますが、そういう非常にたくさんの警察というものが、ふだんは全然自主独立性を持つているにもかかわりませず、一挙に総理大臣のもとにおいて統制されるという効果にあつたわけであります。今度の法案におきまして、総理大臣がその必要な限度において一時的にこの規定の定めるところで警察を統制するということにはかわりがございませんけれども、組織自体が一応府県警察というところまではまとまつているわけでございますので、その府県警察につきましても、五条の二項に掲げてございますような事項につきましては指揮監督権があるわけでございます。その平時と緊急事態の場合との開きという相対的のものを見ますと、その程度は現行法よりは緩和されますが、組織上の形といたしましては、ますますそう現行法とかわりはないのでございます。今度の法案におきましては、主として公安委員会関係というものが、この緊急事態布告により、その事態の収拾のため必要な限度において、中央においては助言機関にかわる。それから指揮命令の関係も、公安委員会府県公安委員会も通ぜずしで指揮命令ができることになるのでございます。現行法におきましてはそういう効果もありますが、多数の警察がほとんど統制される点がむしろ非常に目立つておるのであります。
  187. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁は事実をそのままおつしやつたと思うのでありますが、これは私は基本的に非常に問題であろうと思うのであります。現行警察法が施行されましたときには、御案内の通り警察予備隊も保安隊もなかつたのであります。従つて警察が国の内乱について全部の責任を負うてやらねばならぬというのでもつて、特にこの規定をつくりまして、そうして詳細にわたつて規定をしておるのであります。その後警察予備隊ができ、保安隊ができ、さらに自衛隊というふうなことになつている。私はこの第六章の持つ意味というのは、先般も木村国務大臣にお尋ねをしたのでありますが、現在のような形態になつて参りますと、この必要が事実上ほとんどなくなつて、内容がすつかりかわつておると思うのであります。それに即応した法案でないといけない。しかるに皆さんは簡単に、現行法にあるからそれをずつと修正をされるというのでありますから、方々にボロが出て来ておる、かように私は思う。この第七十条でもつて公安委員会勧告があるまで総理大臣は手出しはできないとなつているのは、その当時の情勢から見てそうある。ところが今度の警察法改正の全体を通ずる空気は、総理大臣が何でもやれる。やれるように平生の場合にはチエツク機関として公安委員会を置いておく。こういう考え方ではわれわれにとりましては非常に行き過ぎだと思われるのであります。にもかかわらず、七十条におきましては公安委員会を非常に重く見ておる。これはまつたく矛盾だと思うのであります。こういうふうに第七十条で、公安委員会勧告がないと発動しないというほど、それほど公安委員会を重んずるならば、警察長官その他の任命につきましても、もちろん公安委員会を重要視しなければならぬのに、この間において全法筋が通らぬように思うのであります。しかも平生から、こういうことがあつたら困るというので、任命権を縦の線でずつと考えておる。そうして非常事態のときには、そういうふうな昔のままのものを使つておる。こういうところにきわめて矛盾がある。今の改正法案のような形でありましたならば、緊急事態の特別措置という問題を、特に一章を設けてやらなくても、一条くらいで簡単にやつつけておいて十分できると思うのでありますが、この点についてひとつ大臣意見を聞いておきたいと思います。
  188. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいまの御質問は私どもの考えと少し違いますので、私どもは、先般来種々御答弁申し上げております中で、この法案の中心を流れるものは公安委員会制度の活用であるということを申し上げておるのであります。そういうように公安委員会を非常に重く見ておるのでありますが、御承知のように新警察法におきましては、都道府県という区域に自治体警察を設けるという考え方であります。但しこの警察という職能が非常に国家的な性格をもあわせ持つておるものでありますから、第五条において特に任務及び権限というところに掲げておりますような、そうした範囲に限りまして国家的な介入をする。また第六章において掲げておりますような、緊急事態の特別措置において国家が全体を管理する。こういう考え方を述べておるのでありますが、そのいずれの場合におきましても、たとえば第五条におきましても、七十条におきましても、公安委員会の重要性を強く打出しておる。こういう点で首尾一貫いたしておると考えておる次第であります。
  189. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 ちつとも首尾一貫しておらぬと思います。こういう重大な事件に対して、公安委員会が発動する必要がないといえば、総理大臣は何もできないという意味条文でありますから、それほど公安委員会を重要視しておるならば、人事の面、あるいはその他の面におきましても、私ははつきりと筋を通していただきいと思います。  それで私この中で疑問に思いますのは、皆さんは地方自治体の知事とか、あるいは公安委員会をどういうふうに考えておられるかということなのであります。現在の府県知事はもちろん公選でありまして、その府県の代表であります。従いまして緊急事態におきまして、総理大臣がある地方にわたつて布告区域を設けまして、直接指揮監督するということはあり得るでありましようが、その場合におきましても、そういう事態なつたから府県知事はよろしい、公安委員会はもうよろしいというふうなものではなかろうと思うのであります。この七十四条に、「国家公安委員会は、内閣総理大臣に対し、本章に規定する内閣総理大臣職権行使について、常に必要な助言をしなければならない。」というように特に一条を設けてありますが、これと同じような精神において——一例を申します。長野県で非常な内乱がある。大きな事件が勃発する。そうして長野県知事を中心にしてがんばつても、やむを得ないので、こういう事態になる。その場合に、もうお前はいいというふうなことで、一体知事としての本来の職責が勤まるかどうか。長野県の代表としての知事の責任はそれでいいのかどうか。私は、地方分権の憲法の本質的な建前からいつて、そういう場合にこそ府県知事とかその地方の公安委員は身を挺して問題に参画をしなければならぬ。それが数府県にわたつていれば、数府県の知事が大いにがんばらねばならぬ。そういう問題について全然これは脱けておる。知事はそういうときには無責任で、責任をとらなくてもいい、そういうことであつては、私は、今の地方分権の建前からしても、憲法の根本精神からも、地方自治体にいいかげんなところまではやらすというふうな非常に簡単に考えておられるように思う。この指揮系統はけつこうでございますが、その場合に府県や各地方公安委員会がどうしておるか、どうすべきであるかということ、これはぜひこの中に一章を入れなければ、地方的な、部分的な騒乱というふうなものを頭の中で考えた場合に、どうも私は納得が行かないのであります。非常にその点皆さんのお考えは私は軽卒のように思うのでありますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  190. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 ごもつともな御説でございますが、お話にもございましたように、七十四条だけを特に設けましたのは、この場合の警察の指揮系統を出らかにするということから、指揮系統に関連する部分だけを書いたわけでございます。それで、府県公安委員会にもこの緊急事態布告が発せられておれば機能を失つておるというわけでは決してないのでございまして、中央から来るところの指揮命令、指揮の関係は、御説のように指揮系統といたしましては府県本部長に対して行われるようになつております。これは実際問題としてどういうわけかと申しますと、主としてこの七十二条にもございますように、この緊急事態の場合の効果は、国全体の立場から見て相当大きな事態が起つているわけでございます。県々ということにとらわれないで緊急事態布告指定した区域があるわけでございます。そこは相当治安が乱れておる。片方にも、布告の程度には達しないけれども相当派生的な治安の混乱があるという場合に、やはり公安委員会に一々やつておるということになりますと、公安委員会としてはやり地元の府県の治安というものが大事でございますので、そこで相談をするというようなところから、指揮系統というものがはつきりしない。その間に時期を失するというようなこともございますので、この指揮系統たけは、長官なり管区警察局長が、大所高所、全体から見まして、こちらの方が事態が重いのだから、そこへ行つてもらいたいというようなことを命令したならば躊躇なく行つてもらわなければならないという事態のものでありますのでこういう規定を設けているわけでございます。しかし公安委員会もすべての事項について機能を失つているわけではございません。従いまして、公安委員会としては、その機能に関しまする限り、もちろん知事の所轄のもとにあるのでございますので、知事と緊密な連絡をとるということは事実上お話の通りであります。
  191. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私はあげ足をとる意味で質問をしているのじやないのですが、実際の騒乱の場合を頭の中へ想定して考えてごらんなさい。その場合に、この関係府県知事、公安委員会、何も出て来ぬというので、円満な事態の収拾が実際できますか。おそらくそういう地方的な問題の場合には、知事に対していろいろな働きかけがありましようし、公安委員会に対してもありましよう。われわれはこういうようなことを望んではおりませんけれども、こういう事態が起りました場合の知事の立場、公安委員会の立場——平生では総理大臣がうしろにおりますが、この場合には表へ出て来る。地方においては、現在の知事は、制度の上からは大統領制度のようなものだ。その知事は除いておけ、これではどうも私は、こういう事態に対しての円満な解決はできるとは考えられない。なぜそれを入れなかつたのか。皆さんは、こういう問題に対してなぜもつと深く具体的に考えられなかつたか。あなたは実際問題としてタツチすると言いますが、どの程度タツチするか、そういうことが非常に問題になるのです。知事はちよつと温泉へ逃げておれというふうなことでは事態は収まらないと思いますが、どうですか。私は、今の憲法の建前、地方分権の建前からいつて、この第六章に府県知事や地方公安委員会が入つていないということについては非常に解せないものを感ずるのでありますが、長官からその点を伺いたい。
  192. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 まことにごもつともな御意見だと存じます。ただいま柴田政府委員からお答えいたしましたように、実際問題といたしましては、やはり事実上その府県では知事さんが中心になり、公安委員の方々も、助言と申しますか、相談相手になつて、そうして実際に事態収拾に当られると思うのでございますが、ただ、なぜそれじやそういうような事柄を表面に出さなかつたかという御不審でございまするが、実はこれは、まだ一度もこういつた緊急事態布告もございませんし、現在の法案は、大体この点では踏襲していいのではないか、府県一本にすることによつてこの点が何かかわつて来るだろうかという検討はいたしたのであります。しかし、現在の府県知事の立場、それから自治体警察を持つている場合の市町村長の立場というようなものが表面に現われておりませんので、事実上はおつしやる通りでございましようが、そこは現行法を大筋において踏襲をしたというためにここに取上げなかつたという次第でございます。
  193. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 齋藤長官は先ほど席をはずしておられたので、前に私が質問申し上げたことと同じことをまた言うことになりますが、大体現行法緊急事態の特別措置のこの条文ができたときは、自衛隊も警察予備隊もなかつた。従つてこの場合には警察はいわゆる軍隊的な役割をするのであるが、その後ああいうものがたくさんできて、今度の警察法案によるこの措置というものはまるで本質的に違つておる、従つてそういうものをまるのみにしてはいけないという話から、この質疑は行われているわけであります。またこの現行法によりますると、首長もたくさんおりますし、自治体警察もたくさんありまするから、一々そういう意見を聞くというようなことも煩雑になるから切つたのだと思うのでありますが、今度は府県単位である。従つて、知事はその場合にどうするか、あるいは県の公安委員会はどうするかということが当然考えられるべきものであつたと思うのであります。これをここへ入れておかないということは、現実を無視したところの、あまりに安易な考え方であると思いますが、この点につきましてはまた他の委員からも質疑があると思いますから、私は次に移ります。  非常に小さいことでありまするけれども、附則の四についてお尋ねしてみたいと思います。この法律の施行後最初に任命される国家公安委員会委員の任期の問題であります。これは一年、二年、三年、四年、五年、こうあつて、これについては総理大臣がきめる、こうあります。それでこのきめ方でありますが、どういうふうにおきめになるのか、この点ちよつとお尋ねしておきます。
  194. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは先般も御説明申し上げましたように、この法律が施行されますると、国家公安委員は新たに任命をされるわけでございます。従いまして現行法のごとく、最初に任命される公安委員の任期は抽籤できめるというきめ方もあるわけでございますが、現在の国家公安委員の方々の中に、さらに再任命される方が起るかもしれない。そういうような場合に、あと任期は一年あるいは二年しかないというような方が抽籤によつてまた五年にもどられるという場合もあり得るわけでございまするが、それはそれでもいいわけでありまするけれども、そういうような場合には、できるだけ残つている任期をここで任期ときめられるという方が適当ではなかろうか、かように考えた次第でございます。そこでこの任期のきめ方は、やはり総理大臣にきめていただくしがなかろうというのが考え方でございます。公安委員の任命は国会の同意を得られるわけでございますから、その際に任期も示してということは法律に書いてございませんが、当然に説明といたしまして何の何がし一年、何の何がしは二年ということにして説明づきで国会の同意を得られる、かように考えておるのでございます。
  195. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 非常にあちこち考えたむずかしいきめ方のようでありますが、この中でなぜ一年、二年というようにやられたのか、こういたしますると、六年目からは毎年一人ずつ公安委員を任命することができるというふうなことであるようでありますが、そういうことは非常に公正にいい人が得られるし、また経験者も持ち得ると思いますけれども、どうもその点につきまして私は疑問を持つておるのであります。五人のうち三人が三年とか、あるいはあとの二人を五年とかなんとか、三年に一回とか二年に一回とか、あるいは五年に一回にすつかりかえるという形の方がいいように思うのでありますが、どうしてこう一年に一人ずつかわつて行くのか。ちようど国務大臣が来ましたから国務大臣にお尋ねをするのでありますが、公安委員というのは国民の代表である、各界の代表でないといかぬ、たとえば操觚界からも一人、労働組合の代表の人も一人、あるいは昔の公務員の出身の人で経験のある人、そういつた人からも一人というふうなことになると思うのでありますが、一年一人ずつということでありますと、五年たつてみると非常に片寄つた人がずつと並んでおつたというふうな形に、現実においてはなるのではないかと私は思うのであります。     〔加藤(精)委員長代理退席、灘尾委員長代理着席〕 この点につきまして今教育委員会の選挙で問題になつておる。これについては二年に一回やるのは選挙の経費がかかるということで、非常に簡単なことを言つておりますけれども、私はどうもその裏にはいろいろなお考えがあるように思う。それとこれは同じような理由——これはまつたく逆であるかもしれませんが、同じような理由によつて一年一人ずつというようなことは、必ずしも公平でないように思うのでありますが、大臣の見解をひとつ伺つておきたい。
  196. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 毎年一人ずつ更新して行くという行き方は、公安委員会自身の運用に恒久性を持たせる、しかも政治的に中立性をできるだけ保たせる。一時に二人あるいは五人ということになりますと、たまたま任期の切れるときにその内閣の自由に——もちろん国会の同意はありますけれども、特殊な考えを持つた人だけを任命されるというようなことを避けなければならぬというような趣旨のことだと思うのでありまして、これも現行法のままを踏襲いたしたのであります。この現行法は御承知のようないきさつでできた法律でございまして、この裏には何らかそういう意図を秘めたというようなことはこれは絶対にないと考えております。ただ中井委員のおつしやいますように、これがはたして絶対唯一の正しい行き方であるか。今おつしやいますように、二年目に二人、三年目に三人というような行き方の方が適正な人が得られはしないかという御意見であありますが、これは現在おられる人、任期の切れた人、この関係を見ましてそう片寄らないような人選は十分できるもの、政府といたしましては毎年一人ずつ交替するという行き方の方が、この公安委員会の性格に合うものだというふうに考えておるのであります。
  197. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国警長官の答弁の通り考えております。
  198. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私はこの点は初めから五人なら五人すぱつと並べた方が、各属から人が得られるように思えてならないのであります。今年も財界の人、来年も財界の人、再来年も財界の人、毎年一人ずつであるから、そのときどきでまあまあよかろうというようなことになつては困ると思いますので、お尋ねをしておるわけであります。どうもそういうおそれなしとしないと思いますが、まあこの程度にいたしておきます。  それから十三、十四についてお尋ねいたしますが、この十三の場合には原則として財産の譲渡その他は無償ということになつておりますが、政令で定める特別の事情がある場合には相互の協議によつてとこういうことになつております。これについてはつきりいたしました政府の方針があるのかどうか、あればそれを今示しいただきたい、かように思うのであります。
  199. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 附則十三項の財産譲渡の問題でございますが、「政令で定める特別の事情がある場合」と書いてありますが、この政令はどういうふうにきめるかというお尋ねであります。この場合は、行政財産の譲渡の問題でございまして、行政財産でございますので、行政組織がかわりまして、そうして一つ地方団体の間におきましての権限がかわるということになりますると、新しい団体に当然財産権というものが移るということが原則であるということからいたしまして、この原則の無償ということを掲げたのでございます。しかし財産の取得の経過におきまして、そのまま無償という原則を適用するということでは非常に無理な場合があるのじやないか。前回の法案の場合におきまして、全面的に原則的でなしに無償ということも大分議論を巻き起したのでございます。今回の法案におきましては、例外といたしまして、その財産を取得するためにその市町村民が相当の負担を背負つたという場合におきましては、例外的に有償の措置を講ずる、こういう精神から始まつておりますので、ここにもちよつと例示がございますように、この政令で定めますのは「当該譲渡又は使用に係る財産に伴う負債がある場合」負債がある場合におきまして、その負債を承継するのも一つの方法でございますが、その負債を処理する方法といたしまして、ただ債務の名義だけをかえるという方法もございます。すでに負債の償還途上におきまして、過去におきましてはすでに負担をしておるという関係から、その一部なり全部なりを有償にしてしまうという場合もあるのであります。それからその財産が今度新しい団体に移りましても、その目的がその市町村から今度府県に移るといつたような場合におきまして、市町村だけの目的のためでなくて、広い区域に供与せられる。たとえば市の警察本部であつたものが府県警察本部の庁舎に利用されるというような場合には、なるほど行政財産として移転はしますけれども、その庁舎は府県全体に使われるわけでありますから、全部その利益に均霑するわけではない。ラジオ・カーにいたしましても、そのラジオ・カーをある市だけで運転をしておつたのが、今度は広い地域におきまして運転されるということになれば、その市としましてはその目的が非常に広くなるわけでございます。そういう場合でございますとか、さらに第三といたしましては、その財産を取得することにつきまして、その市町村が非常に多くの経費を無理をして支出したというような特別な事情がある場合、あるいはまたその財産が普通の状況よりは非常に金もかかつておるし、規模が大きい、こういうような場合におきましてこれを特別の事情があるものと認めまして、これも両方の当事者の協議によるわけでございますが、協議によりましてこれは有償にしてもらいたいということで協議がととのいますれば、負債の承継なり有償措置を講ずることができる、かように考えておる次第であります。
  200. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 もう時間がありませんので、私はこれについてはこれだけで終りますが、今の十三の御答弁としてはこれでいいのでありますが、その中にあなたは行政財産という言葉をお使いになつた。行政財産無償だ、そうなりますと、私が冒頭お尋ねいたしました三十七条の国有財産がまた問題になつて来るのであります。どうもあれは都道府県財産にするのは筋違いだと思う。どうもそういうふうに政府当局に非常に御都合のいいことがちらほらあちらこちらに出ておるわけであります。この十三項の精神から行きまして、三十七条に並べております国庫支弁のもの、あの所有権、これは長官はそうやつてもいいということでありますが、いつそのこと、そういうふうにはつきりと修正をなさつたらどうか、かように思います。  それから第十四につきまして、こういうことで争いのあるときには長官がその一方の相手方になつておるようでありますが、これはどうして公安委員会——公安委員会が行政管理をやつておりますので、当然の筋合いだと思う。できるだけ長官の権限を大きく考えるというふうな、平生皆さんの頭の中にあることがすつとこの文句に出たように私は思うのであります。ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  201. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 十四項をどうして長官にしたかというお尋ねでありますが、これは経費ないし財産上の問題でございますので、財産経費についての事務処理に当つておるところの長官が当事者になる場合には、長官がこの申立てをする機関になるのが適当であろう、ほかの職務の権限の関係から申しまして、警察庁を管理しております公安委員会というよりも、事務処理に当つております長官の方が適当であろうということでございます。多くの申立ては府県と市町村の間に起る場合が多いと思うのであります。ただ先ほどもお話がございましたような国有財産関係する場合にだけ長官が当事者になるということでございます。
  202. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁は答弁になつておらぬと思います。事務をやつておるからやらすというのでは全然答弁にならぬと思いますが、私の質問はこの程度で終ります。
  203. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  204. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 速記を始めて。  それでは午後七時から再開することとして暫時休憩いたします。     午後六時九分休憩      ————◇—————     午後七時十三分開議
  205. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続きまして審議を進めます。——床次徳二君。
  206. 床次徳二

    ○床次委員 主として昨日まで質疑がありましたことに関連いたしまして数点お伺いしたいと思います。  公安委員会警察庁との関係でございます。都道府県公安委員会につきましては、第二条の責務に任じておるわけでありますが、警察本部長と公安委員との間におきましては、どの程度までお互いに警察職務をわかち合つているか。国家的事務あるいは地方の治安維持等に関しまして、公安委員としましては、警察本部長の知つておりますことはことごとくこれを聞きただすことができるかどうかという点をお伺いしたいのであります。先ほどもちよつと緊急質問の発せられた問題がありますが、ああいうことに関しまして、公安委員が細大漏らさず知つておるかどうか、また公安委員会から尋ねられたときは、警察本部長はことごとく答えるべきものであるか、そういう義務を持つておるものであるかどうかを伺いたいのであります。
  207. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 公安委員会警察本部長との関係は、一言で申しますと、たとえば本省の大臣と外局の長のような関係だと思うのでございます。従いましでどの程度の事項まで公安委員会に報告し、どの襟度まで報告しないかというのは、これは公安委員会として自然に大局を把握し、公安委員会が方針を示した場合に、その方針に従つているかどうかということを十分監督し得るのに必要な程度は、警察本部長からも進んで報告すべきであると思います。大体警察の行き方というものは公安委員会には十分把握されていなければなりませんから、その程度はどうしても積極的に報告をすべきであると思つておりますし、また求められた場合には、いかに微細な事柄であつても、これは当然報告すべきである、かように考えております。
  208. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの関係につきましては、現在の都道府県公公委員会府県本部長との関係においても同様に考えられております。これはもちろん新しい警察法によるところの全面的なものではないと思いますが、その意思の疏通の程度におきまして、法律の予期したような円満な状態において運営せられておりますか。いわゆるロボツト化しておるとはお考えになつておらないというふうに考えてよろしゆうございますか。
  209. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 現在におきましても同様でございます。私は公安委員会から求められた場合には、隊長は事細大となく報告しておると承知をしております。この関係はまことに密接な関係でありまして、この間に何らみぞができておるというような状態ではございません。従いましてロボツト化しておるというような事柄は、これはまつたく私は正しい見方ではないと思つております。
  210. 床次徳二

    ○床次委員 次に都道府県経費の分担の問題でありますが、過般もここに列挙せられました事項については、国で負担するということになつておりまして、それ以外のものにつきましては国から府県の費用に対して、一定の割合をもつて補助をなすということになつておるようであります。定員に関しまして政令で定めました基準によりまして、これは条例でもつてきめるのでありますが、条例によりまして多少増減があることはもちろんであろうと思います。そうなつた場合におきまして、その経費に対してはやはりこれは国が一定の割合をもつて負担するものと思うのであります。この点はいかがでありますか。これは将来の財政計画等におきましては非常な問題となります。国の方においてこの増員になりましたものに対しまして、あるいは財政需要に見ないというようなこともあることと思うのであります。この点はいかように計上せられますか、伺いたいのであります。
  211. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 政令で定めまする基準は、一応条例で定める場合の目途になるわけでございますから、必ずしも基準通りでない場合が御所見のように起り得ると考えます。しかしながらこの場合に、都道府県の財政需要として財源の裏づけを考えまする際には、これは自治庁及び大蔵省でございますが、国の基準によつて策定をいたされてもやむを得ない、かように考えております。
  212. 床次徳二

    ○床次委員 そういたしますと、ただいまの経費に対しましては、一定の割合をもつて国が補助するというのに該当しないということになりましようか。
  213. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この一定の割合で補助をいたしまする中に——たまたまただいまの場合は人件費に相当すると思いますが、人件費それ自身は補助の対象にならないのであります。ただ人がふえますると個人装備だとか、いろいろなものもふえて参ります。従いまして人件費そのものでなしに、人が増すことによつて補助を受げる対象になる部分もふえようと思いますが、ここでいう「政令で定めるところにより、」という意味の中には、そういつた国で考える基準というものも入り得るのじやないだろうかと、かように考えております。
  214. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの問題は非常に将来紛糾を生ずる種になると思いますが、警察連帯支弁金のごとく、とにかく一定基準以上に府県が出しましたものに対しましては、一定歩合の補助を国が持つというようなお扱いになさつた方が便利だと思いますが、そういうお考えはありませんか。
  215. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 端的に申しまして、私どもといたしましては連帯支弁金のような考え方も一つの望ましい方法であると考えるのでございますけれども、大蔵省といたしましては、連帯支弁金、いわゆる清算補助という点につきましてはきわめて難色がありまして、私どもは大蔵省の意見に対しては財政上やむを得ないと考えております。
  216. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの問題は、すでに他の経費について質問があつたのでありまするが、三十七条に掲げられておりまする国が支弁すべきもので、しかも都道府県がその不足額と申しますか、所要額を補つた場合におきましては、当然これは補助をもらえるもの、かように解していいわけですか。
  217. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 三十七条に該当する、かように判断をいたしました以上は、国が必要と考えるものは全額国庫負担ということになつておりますから、それ以上は国としては必要なしと判定をいたすわけございますから、これは三項に入つて補助の対象になるということはないのでございます。ただ実際問題といたしまして、さような場合に多くは三十七条の各項に該当しない経費ということで、補助の対象に実際問題としては取扱い得ることになると思います。
  218. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま最後にお答えなつたような扱い方が、少くとも道が開けてないと、今後の地方財政において非常に困るのじやないかということを痛感するのでありまして、これは教育費におきましても同様でありますし、警察費におきましても、大蔵省の査定するときの標準が非常に苦しいと、結局そのしわ寄せが地方に影響が少くないという実例が過去においては往々あるのでありまして、特にこの点は、私どもといたしましても将来に遺憾のないような措置を講じておきたいと思う次第であります。  次に伺いたいのは附則の問題でありまするが、附則の十三項に、経過的に警察用財産の譲渡または使用という問題があるのでありまして、この場合にこれを無償とすることになつております。但し、但書がありまして、負債のある場合その他政令で定める特別の事情のある場合においては、協議によりまして、適当な措置を講ずることになつておるのでありますが、負債のない場合におきましても、今日の地方財政の事情から言うと、地方で非常に多額の犠牲を払つた財産が少くないと思うのでありまして、この点に対しましては、やはり財産に伴う負債がありまする場合と同様に、相当これは考慮をする必要があるのではないかと思うのであります。その点遺憾ながら現在の地方財政が非常に苦しいために、何とか地方団体の立場からこれを考慮してやることがよいのではないかという見解において質問いたすのでありますが、この点に対しまして、規定で見ますと、負債のある場合に限るようでありますが、この点あるいはその他の政令云々というところでもつて、多少の余裕が残されておるものかどうか、伺いたいのであります。
  219. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 先ほど政令でどういうものを定めるかという御質問に対しましてお答えいたしたのでありますが、今お説がございましたように、負債がある場合はもちろんでございますが、それ以外におきましても、事情がある場合ということを含んでおります。たとえて申しますと、その財産が本来の市町村の区域だけの用途に用いられるのじやなくて、さらに広い区域の用途に用いられる場合でございますが、今お話がありましたように、その財産を取得する経過におきまして、特別の事情があつて市町村民の負担があつたというような場合とか、あるいはその財産の規模が、普通のノルマルなものよりは規模が大きい、そして金がかかつている、こういうような事情やむを得ないと思われるような事情がある場合は、協議によりまして有償にする道がある、こういうように政令で規定いたしたいと考えております。
  220. 床次徳二

    ○床次委員 次に十五項の場合でありますが、移管になりました場合に、俸給額に差がありました場合には、調整のための手当を出す。これにつきましては、政令により基準があると思いますが、この手当をもらつておりまする間は、本人は昇給がありましても、本俸が上るだけでもつて、手当額は減少して、実収入においては変化がないというような状況が続くのではないかと思われる。こういう時間が実際面におきましては相当長く続くのではないかと思われるのでありますが、長い間の期間を実収入において影響なしに過させるということも、相当これは個人としての志気の上においていかがかと思う。この点は政令等において基準を定められます場合におきまして、ある程度まで成績によりまして、全然足踏みをさせられるようなことは考慮するというか、そういうような、多少でも色をつけることもよいと思うのでありますが、それだけの弾力性をこの中に考えておられるかどうか、伺いたい。
  221. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 まことにごもつともでございまして、たとえば国家地方警察の巡査と、市町村警察の巡査と平均いたしますると、大体二千円近く手当が違うということになつておりますが、しかし実際問題といたしましては、市町村の警察官の方が国家地方警察に比べますと長く勤務している人が多いわけでございます。さようでありますると、今度同一給与水準に格付をいたします際には、過去の経歴など長い人が多ければ、その経歴従つて高いところに格付するということになりまして、現在二千円の開きはおそらく一千円くらいの開きということになるかもしれません。のみならず、これは、給与水準は国の水準に従つてきめるとなつておりますけれども、結局これは都道府県の給与水準で都道府県の条例できまることになりまするから、それ自身若干高いところにきまるのではないかと思いますが、本人の経歴その他から考えまして、その都道府県の条例の許す範囲でできるだけ高いところにきめまして、ただいまおつしやいまするような、長い間足踏みをしなければならぬという状態をできるだけ避けるように運営をして行きたい、かように思つておるのでございます。
  222. 床次徳二

    ○床次委員 従来、大蔵省の予算の査定を見ておりますと、地方公務員と国家公務員との間におきまする増俸等におきましては、非常に問題が残されておるのであります。当然考慮しなければならないところの増俸財源というものが、地方団体においては無視されているために、増俸が困難であるという実情が今日訴えられておるのでありまするが、今度の警察官の処置の場合におきましては、特にその危険にさらされておると思うのであります。この点に対しては、国家において特別に考慮いたしまして地方財政を見てやらなければ、長い間苦労した人たち制度の改革によつてしばらくの間、冷飯を食わざるを得ないという状態になるのではないか、この点非常に憂えておるのであります。その他、機構の改正等によりまして、警察官の運営上において当分の間なかなかスムーズに行かない問題がある。特に、多数の警察官がある程度足踏み同様と申しますか、しばらくの間待遇の上においては不便を忍ばなければならぬという状態になりますと、警察官の精神上にも大きな摩擦があると思います。制度そのものが、円満に運営するにつきましてもかなりの摩擦があると思うのでありますが、この摩擦というものが、本年度におきましてわずかの期間において行われるわけでありまして、この点は日本の治安の上から見まして重大な問題ではないかと思うのであります。経済上の問題等から申しましても、本年なかなかこれは楽観できない状態でありまするが、かかる際に際しましてかかるドラスチツクな制度の改革並びに個人の一身上の変化があるということは、これは、重要なる警察任務にある者にとりましてできるならば避けたいことではないかと思うのです。政府が制度を出される以上は、いたしかたがないと思いまするが、この点において政府がかかる提案をされましても、はたして実施におきまして遺憾なき運営ができるか、また、能率を落さずして十分できるという自信を持つておられるかどうか、この点を最後の質問として、これは小坂大臣に伺いたいと思います。
  223. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国家公務員としてあるいは地方公務員として国民全体に奉仕する立場をとるか、あるいはその地方全体に対して奉仕する立場をとるか、その範囲は違いましても目的は同じなのであります。各公務員間において非常に給与の差があるということは、それ自体好ましいことではないと思うのであります。しかしこれをただちにさや寄せするということはいろいろな摩擦を生するのでおりまして、この間の調整をするということは、今後において非常に大きな問題となろうと私は考えるのであります。結局地方財政自体も非常にゆたかなわけではない。しかし給与がそれだけ差がある。このこと自体非常に問題があると思います。しかし政府としてこれが単独でできるかというと決してそうは思つておりません。そのことについては政府のみならず国会あるいは地方の執行部あるいは地方議会等におきましても、全体にこの問題は非常に大きな関心事であるということは取上げてもらいたいと考えておるのであります。ここに問題となつておりまする警察職員の場合は、これは附則にもありまするように、また長官も答弁申し上げましたように、できる限り、その間に摩擦を生じないような措置を講ずる考えでございまするが、私といたしましては附則十五項の運用によりまして摩擦を生じないようにできるだけはからい、また将来といえどもそうしたことのために職務能率が落ちるというようなことをできるだけ避けるような措置考えたいと思つております。このことは府県自体においても考えることであろうと期待している次第であります。
  224. 中井一夫

  225. 藤田義光

    藤田委員 逐条的にお伺いいたしたいと思いますが、まず第一に六十一条の階級の問題であります。この点に関しましては同僚中井委員からも質問があつたのでございますが、これは大体九つの階級に相応するポストと申しますか、どこどこだけを警視監にする、たとえば本部の部長以上はどうする、あるいは管区局長はどのポストに置くという御予定でもありましたら、この機会に伺つておきたいと思います。
  226. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 大体ただいま考えておりまするのは、警視総監は東京都だけ考えております。それから警視監は定員として九人を考えております。大阪それから北海道それからもう一つは兵庫になりますか、神奈川になりますか、愛知になりますか、そこらを警視監にいたしたい。それからあとは管区警察局長、この警視監都道府県本部長のおりますところの管区警察局長は三名程度警視監。それから本部の次長。それから部長の一名くらいは警視監。それから附属機関といたしまして、大体大学校長くらいを。こういうふうになるのではないかというように予定いたしております。大体九名でございます。それから警視長と警視正でございますが、これは各都道府県警察本部長、それから本部の部長、課長、管区の部長警視監でない管区の局長というようなものを警視正または警視長で充てるつもりをいたしております。警視長は約五十名、それから警視正がそのほかに各都道府県部長といたしまして、たとえば東京警視庁のごときは各部長の中にやはり警視長と警視正がいると考えております。これが十七人。各都道府県に隊長のほかにその補佐といたしまして全部で約二百名の警視正を考えております。それで警視正全体といたしましては二百三十六名。さように考えております。
  227. 藤田義光

    藤田委員 この六十一条だけを見ますと、階級としての警視総監、それから都警察本部長としての警視総監、これは別個に存在いたしまして、大体制服であるものの最高峰として警視総監というものが別に存在する。たとえば大阪あるいはその他のいわゆる長老級の第一線最高峰には警視総監をつくつてもよろしいような印象を受けるのでありますが、その点は都本部長としての警視総監とのけじめがどうも五十二条と六十一条とを対氏いたしますと判然しないのでありますが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  228. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警視総監は職名であると同時に官名でございます。そこで大阪の本部長も警視総監という官名をつけた方がいいかどうかという点が御指摘のようにあるわけでありますが、しかし何といたしましても警察官の数から言いましてもまた重要性から言いましても、大阪と東京との間には相当開きがございます。従いまして階級の上にも開きがあるのは当然ではなかろうか。緊急事態布告の場合に、指揮命令関係というようなものもやはり東京の警察総監の職務にある人が他の警視監等を指揮監督するという場合が起つて参る、かように考えております。
  229. 藤田義光

    藤田委員 次にお伺いいたしたいのは、「(長官を除く。)」というふうにありまして、これはいろいろ解釈ができるのでありますが、もちろん長官は最高峯でありますし、階級の対象にならないというのが一つの印象であります。次に長官というものの制服制度、ただいま齋藤長官国会にお見えのときはプレーンですが、官庁ではユニフオームのときもあります。これは昔の警保局長と対比するのは適当でありませんが、警保局長は御存じの通り制服はなかつたのであります。この点に関しましては、私は小坂大臣の言われる第一条の、いわゆる民主的理念を貫くためには、むしろ長官は制服でない方が大衆に対する印象がよろしいのじやないか、こういうような感じがするのでありますが、その点はどういうふうになつておりますか。
  230. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 御指摘のような点は確かにあるのでございます。しかしながらこの緊急事態布告の際には、やはり警察官として警察を指揮監督し、これはただ事務官が指揮監督するというのでなしに、第一線に立つて指揮をとるという場合がございまするので、現行法のように警察官としておいた方がいいのじやないか、かように考えております。
  231. 藤田義光

    藤田委員 実は長官小型武器を所持いたしまして、第一線に立つという事態は、これはちよつと想像できないのであります。ましてや防衛庁が発足いたしておりますし、かつての内務大臣も大演習等には制服的なものを持つておつたのでありまするが、これは制服でなくてはならぬという法律的根拠がありますか、どうですか。なければなるべくひとつこれはプレーンのままで執務され、長官が第一線に立たれて指揮をするような事態なつたら、これは第一線に立たれてもとても間に合わない事態でありまして、そういうことは何年に一回も想像できないような事態でありますから、この改正法案でそういう根拠が出てしまつているのだというような御説でありましようか、あるいは現実の運営上制服にされる予定でありますか、お伺いしたいと思います。
  232. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 長官警察官でございますから——しかし警察官の中にも私服の警察官もあるわけでございます。従いまして、長官は実際は私服の場合が非常に多いのでありますけれども、制服を着てはいけないということを書く必要もなかろうかと思います。そこは常識に従つて、今おつしやいますように、やわらかい感じを与えた方がいい場合の方が多いのでありまするから、ほとんど例外的な場合のほかは私服でというふうに考えております。
  233. 藤田義光

    藤田委員 私はこの法律をつくる場合におきましては、極力朝令暮改を避けたい。これは非常にとつぴな話題でありますが、これは社会党の方々とあるいは反対かもしれませんが、行く行くは憲法改正によりまして、参議院の全国区をわれわれは廃止したい。これは藤田委員個人の見解でありますが、そういう際におきまして、きようまでピストルを所持しておつた制服の長官を、明日から推薦の参諸院議員にするということは、これはなかなか国会におきましても、感覚的な飛躍があると思うんです。そういう際を想定いたしますると、この機会に一挙に服装の改革をやつておいた方が適当ではないか。私はよく存じませんが、この機会に諸外国の例、特にアメリカ、イギリス、ドイツ等の例、二、三御存じでありましたら、ひとつお示し願いたいと思います。長官と制服の問題について外国の実例を御存じであつたらお示し願いたい。
  234. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 どうも不幸にして私は外国の例は、制服につきましては承知いたしておらないのでございます。おそらくこの点はGHQできめられたものでございまするから、アメリカあたりの警察官も最高の者も制服を原則としては着る。ふだんは私服だけれども制服の警察官という建前になつておるのじやなかろうか、かように存じております。
  235. 藤田義光

    藤田委員 この服制のいかんによつて警察の民主化が阻害されるというように私は断定するわけではありません。現にソ連等におきましては相当異なつた制服ではないか、そのために非常にはげしい結果を示しておるというような実例もありますので、その点は大体意のあるところを了承いたしました。  次に緊急事態で一、二点お伺いしたいのでありますが、この第七十条に「内閣総理大臣は、」この次に従来の国家非常事態に際してなかつた表現を使つておられます。「大規模な災害、又は騒乱その他の緊急事態に際して、」という副詞が入つております。これは従来のごとく「今回は総理大臣は、」というふうに総理大臣を主語に持つて来られておりまするが、この形式はとにかくといたしまして、こういう例示的な表現を使われました理由が何か格別にありますかどうか。お伺いしたいと思います。
  236. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 これは現行法はお話のように国家非常事態に際して治安の維持のため云々、かようになるわけでありますが、国家非常事態という言葉自体が非常に大げさな言葉でありまして、いかにも実際の緊急事態の内容以上のものを予想いたしますような字句でもございますので、この布告の名前自体をかえますと同時に、国家非常事態に際してというようなわからない書き方ではなくして、第五条の二項によりましても、大体災害騒乱の場合に国が責任をわかつという意味においての単なる指揮監督等をいたしておるわけでありますので、そういうような大規模な災害騒乱その他の事態がさらに緊急化して来た、治安が相当乱れた、こういう場合だということを明らかにするために書きましただけのことであります。
  237. 藤田義光

    藤田委員 第六章の最後の質問は、先ほど西村委員からも質問があつたのでありますが、現行法の六十五条を改正されまして、参議院の緊急集会云々というところを削られました御答弁を聞き漏らしておりますので、いま一度お伺いしたいのでありますが、逐条解説の際におきましては、保安庁の出動の場合と同じ規定にしたというような御説明があつたように記憶いたしておりますが、どうして保安庁の出動の場合と同じにする必要があつたかどうか、その間のいきさつを御説明願いたいと思います。
  238. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは保安庁の出動の場合に、国会の承認を求めるというこの法律は、警察法よりも後にできた法律でありまして、この方は十分国会等においても私は審議をせられたものだとかように考えておるのでございます。と申しまするのは現行法警察法では衆議院の解散中は、参議院の承認でよろしいということになつておりますが、やはりこれは内閣があまりに独断専行をやつたんじやないかどうかという国会の批判を仰ぐわけでございますから、そういう意味から申しますと、衆議院と参議院とやはり両院の同意の方が望ましいのじやないか、かように思うのでございます。
  239. 藤田義光

    藤田委員 次に第七章に関してお伺いしたいのでありますが、第七章の最初の条文、第七十五条、これはたしか現行法の六十七条におきまして、「都道府県公安委員会、市町村公安委員会及び警察官又は警察吏員と検察官との関係は、刑に法律の定めるところによる。」というふうな抽象的な規定であります。法律指定していないのでありますが、今回は「刑事訴訟法の定めるところによる。」というふうに、一つ法律をはつきり指定されました根拠をお伺いいたしたいのであります。  それから第二項は現行法と同じ規定でありますが、あまりに漠然といたしておりまして、国家公安委員会及び長官は、検事総長と常に緊密な連絡を保つ、これは「国家公安委員会及び長官は」というふうに二つを並立的に掲げられまして、検事総長と常に緊密な連絡を保つということになりますと、その間、検察庁と国家公安委員会との連絡に紛淆を来すのじやないか、こういう事態も予想されるのでありますが、その点、従来の規定と同じではありますが、何か格別の理由がありましたら、ひとつお示し願いたいと思います。
  240. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 現行法のただ「別に法律の定めるところによる。」とありますのを、「刑事訴訟法の定めるところによる。」というのは、この関係を明記したわけであります。この警察法だけの関係からいいまして、刑事訴訟法、つまり検察官と警察官関係というものがどういう関係であるかという点は、非常に大事な問題であるということが一般にも論議せられて参つておりまして、刑事訴訟法の改正その他をめぐりましても、いろいろの問題がございましたので、この関係はただ刑事訴訟法がぴしやつと全部きめておるのだ。その他の法律で、また警察側が別な法律をつくる、またその特別法をつくるといつたようなことはなくして、刑事訴訟法でみなきめておるのだという点だけが、明記した関係ではつきりして来るということでございます。これを受けまして刑事訴訟法の方には検察官と公安委員会及び司法警察職員とは相互に協力しなければならないとか、その他御承知の規定があるわけであります。  二項の方は現行法国家公安委員会だけ書いてあるわけでありますが、今回は警察庁というものができまして、その警察庁の性格の際に御審議いただきましたように、単なる事務ではなくして、独立した公安委員会の管理のもとにおきまして執行の事務を扱うという機関になりましたので、国家公安委員会だけでは足らない。一項の方は、警察官と検察官というものの関係でございます。二項の方はそれらの行政組織をやつておる官庁間の緊密な連絡ということになるわけであります。その官庁の警察側の最高の機関は国家公安委員会であります。そのもとにおきます執行機関は長官ということでありまして、長官を加えまして丁寧にいたした、かような次第であります。
  241. 藤田義光

    藤田委員 次にお伺いいたしたいのは第七十七条でありますが、この中には「財政法第九条第一項の規定にかかわらず、」というような文句があります。この規定に関連してお伺いしたいのでありますが、この警察法の改正に伴いまして、いわゆる府県警察というものは地方財政法ではいろいろな規定をいたしております。たとえば第九条においては主として地方公共団体の利益に関係のある事業を行うために要する経費という規定があります。第十条には国と地方公共団体相互に利害関係のある事業に要する経費という規定があります。第十一条には主として国の利害に関係する事業に要する経費というふうに、事業に関連しまして相当丁重な規定をいたしておるのであります。しかもこれらの主として国、地方公共団体あるいは双方に利害関係のある事業を行うに要する経費の負担関係に非常に綿密な規定をいたしておりますが、今回の改正による都道府県警察というものはどの規定に該当するものであるか、御見解をお伺いしておきたいと思います。
  242. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 地方財政法の関係から何条に当るかというお話でございますが、これはたしか三十七条の経費の場合におきまして、三十七条の三項におきまして国が補助金を出すという場合に、この補助金の性格は何であるかというお尋ねのあつたことがございますが、同じ問題になるかと思うのでございます。三十七条全体を通じまして、お話のように府県警察地方財政法上の考え方といたしましては、府県警察の性格というものが団体委任で警察事務を原則的にまかしておるわけでございますが、しかしその事務の性格は、国の事務の性格を持ち、府県の事務の性格を持つという点におきまして、国と地方の両方の利害に関するという点につきましては、性格的には地方財政法に当てはめますれば、私ども専門ではございませんけれども、十条に当てはまるような負担金が出てしかるべき性格のものであろうと思うのであります。しかしながら今回三十七条の経費をきめますにあたりましては、この中の純粋の国家的あるいはむしろ府県に負担させることが無理だ、うまく行かないと考えるようなものを国費にいたしまして、そうしてそれ以外の経費につきましては、予算の定める範囲内において国が補助するということにいたしたのでございますが、この経緯は、連帯支弁金はどうかという先ほど床次先生からのお話もございましたように、連帯支弁金にして十条のような清算補助と申しますか、いつただけのものについての一定の割合を出すということも、一つのやり方であろうと考えますけれども、最近におきましては、実際負担金の方法をとりましても、現実の扱いはほとんど予算の範囲内で最高限が押えられてしまつておる。大蔵省としては結局こういう無条件の清算補助のような連帯支弁金のやり方は、負担なり補助の方式としてとりたくない、改めて行きたいという考え方でありましたので、今回の三項は、負掛金と同じような性格を持つものであろうと思いますけれども、書き方は非常に明瞭に、予算の範囲内において補助するということになりまして、一つの補助金のような形になつておるわけであります。しかしお話の筋にありましたような府県警察経費の面から見た見方というものは、やはり国の性格と府県の性格と事務自体が両方の性格を持つており、両方に利害関係があるというところから、総合的に見ましてこういう経費制度を立てたと考えております。
  243. 藤田義光

    藤田委員 その点に関しましては、門司委員や床次委員から詳細な質問をやつておりますから蛇足を加えませんが、最近の新たな地方税法——まだ通過いたしておりませんが、この実施のあかつきにおいては、都道府県は相当の増収を予定されたのであります。たとえば北山委員の出身地である岩手県におきましては、新たなる地方税法によりまして四億の増収であります。岩手県としては相当の増収を来すわけであります。ところが今度の警察法改正によりまして、この増収分をあげて警察費に、収奪されるといつては極端でありますが、充当されてしまう。そういう事態を生じておるのであります。そこで私はお伺いしたいのでありますが、ただいまの地方財政法の第二条の第二項には、御存じのごとく「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」、というような規定がありましで、今回のこの警察施設の接収その他新たなる警察費という問題に関連いたしまして、都道府県というものの観点からいたしまして、地方財政法第二条との問題が非常に重要になつて来るのじやないかと思います。大蔵省の都合によりまして、予算の範囲内において補助金を出すというようなことになりますと、これはまつたく第二条の精神が没却されてしまう。極論すれば地方財政法違反になるというような説も出て来ることをわれわれ憂慮するのでありますが、その点に関しましてはどういうふうな御見解でありますか、お伺いしたい。
  244. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 地方財政法二条の精神のお示しがあつたのでありますが、この精神に沿わなければならないことは、警察制度考える場合におきましても当然なことだと考えるわけでございます。それでこの経費の問題をきめるにあたりましでは、こういうふうに国費の支弁とそれから補助金の二本建で参ることにいたしたわけでございますが、この補助金につきましても、単なる今まで扱つているような地方財政法第十六条の補助金として予算の範囲内で、予算がなければやらない、予算があるからその範囲内でわずかでもやる、こういつたような考え方ではなくして、「予算の範囲内」という言葉を入れましたので、そこが非常に厳格に出まして、そういう御心配を招いているとは思いますけれども、「政令で定めるところにより、」というのを特に入れまして、この政令によりましてやはり一つの算定基準を設けまして、そうして一つの合理的な基礎のもとに算定基準を立てて、それに対しまして原則的に五割という率によりまして補助金を出す。で結局この十条の負担金ということになりましても、十一条でありますかによりまして、やはり算定基準なる費用の種目によりまして一定の率を出して、やつておるわけでございます。その実際の扱いが予算の範囲内にということで扱われる場合もあるということでございまして、実質はこの書き方によつては、負担するということを書いてもかわりがない、実際はほとんどかわりがないというような心持ちで、大蔵省と、それからこれは自治庁も非常に熱心に御主張になつたようでありますが、警察側の方でも協議いたしまして、負担金と同じような扱いで補助金になつているようなわけでございます。なお財政法の十八条というものによりましても、負担金や補助金というものは必要で、かつ十分な額を基礎として、これを算定しなければならない。という精神があるようでございまして、これが予算の範囲内であるから、ただちにもう地方財政を非常に無視するものであるということではないと、私どもの方としては考えております。なおしかし地方財政の実際をおあずかりになつている自治庁の方から、重ねてお話があれば補足をしていただくようにお願いいたしたいと考えます。
  245. 藤田義光

    藤田委員 大体、当委員会におきましては、年々歳々大蔵省のために地方財政法蹂躪の実績をわれわれは体験いたしておりまして、しかも国警まで右へならえされたことに対しまして、われわれは非常な不満を抱いておるわけであります。  次に附則に関してお伺いをしたいと思います。少し飛びますが、附則の十であります。附則の十におきまして、地方自治体警察職員は自動的に都道府県警察職員となるのであります。表現はこれだけでありますが、これについて階級の調整を現在進めておりますけれども、国家地方警察都道府県所在の職員と、自治体警察職員階級の調整ということは、生活権に直結した非常に深刻な問題であります。先ほど床次委員から質問しました給与の問題と併行いたしまして、とにかく警察官で一階級違えば非常な大問題であります。自治体警察の進級は非常に早かつたということもわれわれは承知いたしておりまするが、この調整をいかようにやられるつもりか。何か政令案あるいは規則案等がありましたら、簡単にお示しを願いたい。
  246. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 階級の調整は、御指摘の通り警察官にとつては相当重大な問題でございます。しかしながら、今まで、町村警察を廃止いたしまして国家地方警察になりました場合にも、相当多くの経験を持つておつたのでございますが、大体最近は警察官階級試験は、国家地方警察自治体警察とが共同で試験をやつておるという例の方が多くなつておるのであります。で、これらの合同昇格委員会できめてありまするものが、これはそのまま移り得るわけであります。そうでない場合におきまして問題でございますが、さようでない場合におきましても、今まで階級の問題で非常にごてついたということはあまり聞いていないのでございます。と申しまするのは、やはり国家地方警察自治体警察が一緒になつた場合に、過去の経験、経歴等から考えて、大体そう違わないところの階級になるのは当然でなかろうか、という気持が非常に進み過ぎたようにも思うのでありまして、これはむしろ階級だけが非常に高いままでは、国家地方警察と一緒になりました場合に、あとあとかえつてつて行くのにぐあいが悪いというようなことから、自然に適正な階級にきめられておるように思うのでございます。これは各都道府県ともその経験を持つておりますので、この点は大したトラブルが起らないで円満のうちに階級の調整ができるものと考えております。
  247. 藤田義光

    藤田委員 その点に関しましては、遺憾ながら私と見解が大分違うようであります。ここに資料がありますから簡単に例示いたしますと、全国の自治警におきましては、警視の平均俸給は三万三千円でございます。国警は二万円になつております。警部は二万六千円と一万七千円、警部補は二万三千円と一万四千円、巡査部長が一万八千円と一万二十円、巡査が一万三千円と九千円であります。これは今回の改正に伴う職員の転換の運用を誤りますと、非常な治安の弱体化を来すことは、必至の情勢だろうと思うのであります。これはおそらくこの俸給からしまして、その差額を手当で支給することになろうが、階級の調整と給与の手当制度というようなことによりまして、私は自治体警察の有能練達、特に永年勤続の職員は退職しろという結果になると思う。これは立案当局の気持はさようでなくても、結果においてはそういう事態が現われて来る。こういうことは必至の情勢ではないかと思うのであります。特に差額がありますために、自治体警察から来た人に対しまして本俸をすえ置きますと、国家地方警察から来た人との合理的な水準をつかむまでには、長年月を要することは必至の情勢であります。その間の退職者等に対しましては、警察制度がかわつたために、一回も昇給しない、そのままで長年第一線の警察官として苦労された諸君がそのまま職をしりぞいて行かれる、これは輿論の代表者といたしまして、この法案を審議する国会議員としては、非常に残酷な仕打ちであります。従いまして、私は給与の調整と階級の調整に関しましては、相長慎重、真剣でなくてはならぬと思うのでありますが、この点に関しまして、何らかの規則、政令等を用意される予定がありますかどうか。あるいは実際上の運用において、今までの町村警察の廃止に伴う措置と同じような方式でやられる予定でありますか。これは今回この法案が通るならば、規模も深さも違いますので、お伺いいたしておきます。
  248. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私が先ほどお答えいたしましたのは、階級の点だけについてお答えいたしまして、給与の点には触れなかつたのでございます。給与の点は、先ほど床次委員にもお答え申し上げましたように、またただいま藤田委員からお述べになりましたように、自治体には相当長年月勤務をせられ、有能、堪能な署長あるいは警視、警部がおられるわけでございまして、これらの人たち国家地方警察の警部、警視よりも年輩者で、長い経験を持つた人が相当多いのであります。従いましてそういう方々は、また警視や警部の年限の短い者よりも高いところに格付されるのは当然でございまして、この給与表に出ておるほどの相違はもちろん来さない、かように思うのでございます。しかしそれだからといつてもおのずからそれには限度がありまして、本俸のきめ方が、現在の規定でもらつておられる給与のところまで全部が全部きまるというわけにはとうてい行かないだろうと存じます。そこで今までの自治警廃止の場合の措置とは異なりまして、その差額だけは特別給与として出せるという道を法律に開いたのでございますが、この差額給与は、本給算定の基礎となるものではありませんので、その間においてただいま御指摘のような事態も起り得るのであります。しかしながらこれらの差額給与をなるべく早く本俸へ繰入れて参りますように、実際の運用といたしまして、特別昇給その他可能な限りの努力を払いまして、ただいま御指摘になりますようなことのないようにいたしたい、かように考えておるのでございます。ただ一面国家地方警察に動めておりました者の身になつて考えてみますと、また逆な結論も出て参りまして、長年の間同じ警察職務に従事しておつたにもかかわらず、たまたま勤務が国家地方警察であつたがゆえに、多年の間自治体警察に比べて薄給であつた。今度統合されてもなおかつその薄給がそのまま続いておつて、開きが将来残つて行くということでありましては、これは国家地方警察に勤めておりました者から考えますと、非常に大きな不平不満の種にも相なりますので、今日の警察制度の統合がありませんでも、制度が違つておりましても、何ゆえに地方自治警察に奉職する者と、国家地方警察に奉職する者との間に、しかも同じ地域においてかくも違うものかという不平が次第に高まりつつあります。従つてこれらの不平不満はここらでひとつお互いにその立場を認め合つて、がまんをしていただくということにしか解法点がないのではなかろうか。このことは警察全体として、やはり各個人にとつてみればそれぞれ言分がありましようが、考えようによりましては、自治体警察にあつたがために今まで非常によかつたという点でがまんをしていただくという、そういつた考え方も若干は織り込んでいただかないと、円満に将来の運営は行かないのではないか。これは制度の改正があるなしにかかわらず、その問題は起つて来る問題だと考えております。
  249. 藤田義光

    藤田委員 長官のお示しの通り、国警職員は、この改正法案が実施されれば非常な不平の種を新たに発見するわけであります。同じ年数同じ仕事をしながら、非常な薄給でわれわれは酷使されておつたということを、はつきりと身をもつて今回体験するわけであります。また自治体職員は実質上の大減俸をしいられる。これはお互に譲り合つてという御答弁でありますが、立案者といたしましては、こういう大法案考える際におきましては、やはり有利な方までこの機会に待遇を考えてやるというそのくらいの思い切つた措置は必要ではなかつたか。緊縮予算の際でありますが、その点の親心は、その際断固として大蔵当局に折衝すれば、法案の運命等にも相当影響を来しておつたのではないかと考えておる一人でありますが、現に予算は通過しておりますので、この点は将来の問題として保留いたしておきます。  次にあと小さい問題について一、二お伺いしたいのであります。この附則におきましては、大体警察職員の問題が規定されておりますが、現在地方自治体の警察吏員にして今回警視以上に就任する者、このいわゆる最高幹部の自治体吏員から今回都道府県警察官になる人の処遇の問題は、直接国家が取扱うべき問題でありますが、何か別個の措置、方法を考えておられるか、どうですか。私はこの法律案を数回通読いたしましたが、これはどこにも規定がないように記憶いたしておりますので、お伺いしておきます。
  250. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この自治体警察の警視正以上におられる人は、本人の御希望と申しますか、反対でない限りは国家公務員の警視正にして採用いたしたいと考えております。今日の自治体警察の中におられる警視正の方は約二百二十名くらいであろうと考えますが、国家公務員になることを希望される方は、できるだけ全部国家公務員として採用のできるようにいたしたいと考えております。
  251. 藤田義光

    藤田委員 そうしますと、先ほど六十一条の御説明で言われました警視正の定員の問題であります。現在自治体警察に二百二十名の警視正がおるということになりますと、国家地方警察から来る警視正のわくというのは十数名しかないということになります。現在の自治体の警視総監は二名でありますが、警視監警視長、警視正、この三階級に所属する肩書を持つておる方の人数だけをひとつお示し願いたい。
  252. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは警視正以上でございまするから、現在二百二十名くらいおられますが、今度の改正では、警視長が六十五名、それから警視正が二百三十六名、従つて警視正と警視長と合せまして三百一名、そのほかに自警から来られる人で、警視監、警視総監というのが十名ございますから、三百十一名と相なります。
  253. 藤田義光

    藤田委員 そうしますと、先ほど今回の警察官階級別定員として予定されておりまするのは、警視総監一名、それから警視監九名と言われたのであります。ところが、現在自治体に警視監相当以上の方が十名おられる。これは当然自治体警察の最高幹部の相当数の勇退を迫る必要になつて来るのであります。また警視長、警視正は二百二十名おると言われましたが、そうすると、今回の定員が三百一名であります。私はあまりに自治的に過ぎた自治警察、あまりに国家的であつた国家地方警察、これを調整するための今回の改正であるたらば、二百二十対八十一、この警視長、警視正のバランスというものが、はたして今回そのまま維持できるものかどうか、私はこれは絶対に不可能ではないかと思うのであります。この点に関しましては、今回の制度の推移を非常に注目しております全国自警連、あるいは自警の最高幹部、これは死活問題であります。私たちは丁重な審議をいたしまして、真相と、立案者当局のこれに対する対策をこの機会にはつきりさせておく必要がある。これが今回の改正案を注視される自治体首長にも非常に親切なゆえんでもあり、——またこの機会に自治体のはみ出しによつて勇退を迫られる国警の人たちも出るのではないか。こういう人たちの最大の関心事は人事であります。そういう観点からひとつなるべく具体的な数字で対策をお示し願いたいと思います。
  254. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 数字的にはつきり警視長から申し上げますが、もちろん国家地方警察の警視正以上にも勇退をしなければならない者が出て参ると考えております。今日警察官のみならず、一般の待命制度ができておりまするが、制度の改正までは待命を待つてもらいたいといつて、待つてもらつているのもございます。従いまして自治体警察に職を奉じておられた人に特にきつく、国家地方警察に職を奉じておる者に特にゆるく、そういつた待命その他を考えてはおらぬのでございます。あまり無理なしにやれるものだ、かように見当をつけておるのでございます。
  255. 藤田義光

    藤田委員 これだけの大改革を断行されるのでありまするから、人事の面にも相当無理を行われるということは一般に想像されておるのでありまするが、これは運用にあたりましては、よほど慎重にやらないと、治安強化というようなことをねらわれました今回の改正案が、かえつて逆効果になるということを私は憂慮する一人であるということを申し上げておきます。  最後に二つの点を一度にお伺いいたしておきます。この附則の第十の柴田総務部長説明におきまして「定員外とすることができる。」という規定は、行政機関の定員法の適用はされないのだというような御説明があつたのであります。その理由を簡単にお示しを願いたい。  それから第十三項、警察財産の処理の規定で譲渡、使用無償であるという規定があります。しかもその御説明では、これは原則であつて、例外もあるのだというような御説明があつたように記憶いたしております。これは町村財政が非常に苦しいために、この運用を誤りますと、相当大きな問題を引起す。特に新制中学などの問題に関連して町村有財産を激減した今日におきまして、町村公安有財産に対する町村民の愛着というものは想像以上のものがあります。従いまして原則として無償でこういうものを取上げてしまうという十三項の規定には、非常な危険があるのじやないかと思うのでありますが、その辺の調整はどういうふうにやられる予定でありますか。  以上二点を最後に質問いたしまして、私の質問を一応終ります。
  256. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 最初のお尋ねの附則の十項の方でございますが、この附則の十項は、府県警察職員の経過措置としての身分の切りかえを規定いたしておるのでございますので、府県警察職員府県警察というものの職員であります。国の行政機関の職員ではないということで、行政機関職員定員法は国の行政機関の定員を定める法律になつておりますので、定員法ではなくて、第五十六条の規定によりまして、府県警察職員のうちの地方警務官と称する警視正以上のものは、政令で定員を定めるようになつております。  十三項の無償譲渡を原則とするという問題でございますが、これは先ほど来お答えいたしましたように、有償の道も開いていることでございます。実際問題としてお話にございますように、この譲度関係を円滑にやるということは非常に大事な問題であると考えておりますが、中にはいろいろと協議の際に問題が起るような場合も予想されないわけではございませんけれども、そのうちの相当多くの部分は、かつての二十三年の制度の切りかえの際に、従来の府県から市町村に対しまして、当時の経過措置によりまして無償で行つている、前には府県で持つておつたのが市町村に行つたのだけれどもまた府県警察になるので、これは当然に無償で入手しているわけでございますから、無償でもどる。それからその際に若干の設備の創設の補助費というものを出しておるようなものもございますので、そういうものについて補助を受けておるというものにつきましては、この原則通り簡単に行くのが常道ではないかと思うのであります。しかし問題はこの但書にございますように、その後起債とかいろいろな事情によりまして、市町村が相当の負担をして財産を取得した、こういう経緯がありますようなものにつきましては、お話のようになかなか市町村も手放しがたいといつたような問題も起るかと思うのでありますが、それにつきましては一応政令で、先ほど来お答えいたしましたような特別な事情のあるものについては有償の道を開くということにいたしまして、まず協議におきまして良識をもつて円満に解法されることを第一次に期待いたしますけれども、それでなお協議がととのわないというような場合におきましては、十四項によりまして、争いの裁定の道も開いております。この裁定になお不足があるという場合には普通の民事手続によつて訴訟を起すことさえも可能であるということになつておりますので、法律的には解決される。しかし実際問題としてはこれが円満にこの規定に従いまして譲渡が行われるようなことを極力努めたい、かように考えておる次第であります。
  257. 藤田義光

    藤田委員 一つ忘れておりましたが、その次の十四項の総理大臣の裁定でありますが、これは実際上の執務を担当する官庁は、自治庁というふうに解釈してよろしゆうございますか。そうされることをわれわれは期待するのでありますが、これは地方財政の問題、起債の問題等に直接関係のある自治庁にやつてもらうことが最も妥当ではないか。交付税の配分あるいは起債というような問題を扱つておる地方財政の所轄官庁にやつてもらつた方が適当ではないか。今後政令で定めるということになりますが、ぜひともさようにきめていただきたいと思いますが、いかがでございます。
  258. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この内閣総理大臣の裁定にあたつての実務を担当する補佐機関と申しますか、その官庁は、これは一般のこういうような法規の扱いではその行政を担当するところということになりますので、やはり警察庁が主管になるのが原則でございますが、政令で定めます際に、この警察庁の長官自体が当事者になる場合に、警察庁が裁定の補佐をするというのはいかにもおかしいので、そのような場合におきましては内閣官房か何かそういうようなところで、警察庁以外の機関で、これは内閣の官房が最も適当ではないかというふうに考えますがそういうふうにいたしたいと考えております。
  259. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 先ほど長官は、新しい警察庁の警視正以上の者と都道府県の警視正以上の者と一緒にされて数字を申されましたので、ややおわかりにくかつたかと思いますから、この際私から新しい都道府県の警視正以上の者について申し上げます。その新定員はたびたび長官からもお話がありました通り、二百五十人ということになつておりますが、この新しい都道府県の警視正以上のポストに相当するものに現におられる方、国警、自警のすべての実員を調べました数字を御参考に申し上げますと、これも正確な数字ということはちよつと申し上げかねるのでありますけれども、昨年の秋に自治庁の方におかれまして、給与の実態調査の関係で現員現給をお調べになつたときの数字が、警視正以上が自治体関係二百二十二という数字が出ております。その後今日までに自警の警視正以上のポストにあられる方で、すでに勇退をされまして、その後任補充を制度改正等のこともあり、見合しておられる向きもかなりあるやに伺つておるのでありまして、私の承知しておるだけでも十数名あるようであります。従いまして、現在自治体警察の警視正以上のポストにおられる方がおおむね二百ちよつと、二百十数名内外ではなかろうか、かように推定をいたしておるのであります。従いまして、この数字と現に国家地方警察都道府県警察隊長をやつております者、これは警視正以上でありますので、この五十名を加えまして約二百六十名という数字になりまして、さらに現在札幌管区本部が御承知のように廃止されまして、北海道警察本部ということになりますので、ここで警視正以上の方が数名都道府県の新しい警視正以上のポストにつかれるという関係になりますので、これを加えますと、結局実員において二百六十五、六名ということに相なろうかと思うのであります。これを新定員の二百五十名と対比いたしますと、結局十数名の人がはみ出す、こういう関係になるのであります。ところがこのどうしてもはみ出す部分は、当分の間定員外で置くことができるということになつておりますので、実際にはそうむりに勇退していただくというようなことなしに、適当に適材が適所に配置されるということで、どうにか切りかえができるのではなかろうか、かように了承いたしておるのであります。
  260. 中井一夫

    中井委員長 藤田君、御質疑は終了としてよろしゆうございますね。  次は門司亮君。なお門司君の御質疑は自治庁長官及び自治庁の関係当局でよろしゆうございますね。
  261. 門司亮

    門司委員 しばらく休んでもらつてから、あとで警察大臣に聞きます。  それじや、これは法制局に聞いた方がいいと思いますが、この前の委員会で実は疑問の点を残したままでいるのであります。その問題は、逆に聞いて参りますと、附則の二十八に関連してであります。附則の二十八に関連してと申し上げるのは、実は齋藤国警長官の答弁は、古井委員の質問並びに私の質問に答えて、現在市町村にありまする公安条例を、附則の二十八項のその他必要なものは政令で定めるという条項に当てはめて、政令でこれを府県の条例と読みかえるようにするというような御答弁がなされているのであります。このことでまず自治庁長官に聞いておきたいと思いますことは、市町村の公安条例というのは、いわゆる警察制度の頂点にあります公安委員会の条例あるいは規則ではございませんで、この公安条例というのは市長発案に基く、あるいは町村長発案に基く市町村の議会の議決を経た条例であることに間違いはないのであります。その条例の執行その他が公安委員会に関連を持つておるだけであります。従つて警察制度がかわつて都道府県警察権を執行するようになるから、これを政令で読みかえるということは、私はこれはできないと思う。市町村の条例であります限りにおいては、市町村の条例を政令でとりかえることができるということは、私はどう考えても立法的の措置としては誤りであると考えるが、自治庁の長官はこれをどう考えるか。
  262. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいま自治庁長官に対するお尋ねでございますが、その前提となりまする私の答弁を誤解しておられるようでございますから、もう一度はつきり申し上げておきます。私はこの整理の政令で市町村の条例を府県の条例と読みかえる、かように申したのではございませんで、市町村の条例はあくまで市町村の条例でございます。従つて府県の条例に読みかえるのではございません。ただいまおつしやいましたように府県の条例に読みかえる、かように申したのではございませんから、その点は誤解のないように願います。
  263. 門司亮

    門司委員 塚田長官に聞いているのは、政令で条例がそういうようにできるかどうかということです。
  264. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの門司委員の御質疑の点でございますが、市町村の条例に、公安委員会にたとえば公安条例に基いて届出をするというようなことがきまつております場合、今回のこの改正案によります警察法が、かりに実施されるというような場合にどうなるかというお尋ねのようでございますが、この点につきましては、私どもは市町村の条例が、今御指摘のように、なるほど市町村長が提案をいたしましたものではございますけれども、しかしその市町村の条例が、すでに廃止されるべき市町村の公安委員会に届出を要求しているわけであります。そこでこのままでは、その条例は動きようがないわけであります。そこでそういう場合にどうするかということが結局経過措置ということになるわけであります。こういう経過措置について法律をもつて直接に何か規定をはつきりすることも一つの案かとも思いますけれども、しかし従来の地方自治法の改正等の際におきましては、相当広汎な事項に至りますまでさような事項を政令に委任をいたして、施行規程等において、いろいろと相当広汎な引継ぎの事項を規定いたしておるのでございます。そういうような例もございまするし、今回のこの附出第二十八項におきまして経過規定を設けておるわけでありまして、御指摘のような場合におきましては、一応私ども関係当局の間で相談をいたしておりますることは、もしもこの法律が施行になります場合におきましては、市町村の公安条例によつて市町村の公安委員会の権限に属する事務は、府県の条例あるいはその当該市町村の条例で特別の定めをいたしますまでの間は、都道府県公安委員会がこれを行う。要するに市町村公安委員会というものがなくなつてしまうわけでありますから、市町村の公安条例で届出を受理する権限を持つている機関がなくなる。そこで経過措置として、そういう受理権というものは府県公安委員会が行う、こういうことをとりあえずきめたい。しかし市町村の公安条例を廃止するとか、あるいは市町村長に届出をさせるようにするとか、あるいは都道府県公安委員会に、都道府県の統制条例と申しますか、都道府県の条例としてそういうふうな規定を設けまするならば、そのときからは本来の条例の姿あるいは本来の法律の姿で動いて行く。要するにそれまでの間は、都道府県公安委員会が従来の市町村の公安委員会の受理権というものを行使する、こういうような形の経過規定を政令において設けたい、こう考えておるのでございます。
  265. 門司亮

    門司委員 それは一つ法律のわくの中で、政令でこれを読みかえるとか、あるいは政令にこれをゆだねるということは一応従来の過程ではできるかと思うが、この場合は少くとも公安委員会がなくなるのである。しかし条例は残るかもしれない、あるいは条例を廃止してしまえば全然そういうものはなくなるのである。が、これを法律にあらずして、県条例にこれを読みかえるというわけでもない。要するに政令でそういうふうに定めるということである。むろん県条例にこれを読みかえるということは、齋藤君からさつきお話があつたができないはずだ。県の条例は県議会の議決を経なければならないのであつて、これが政令でどんなにでもなるということはたいへんな問題で、おそらく私はそういう非常識なことはできないと思うが、それと同じように、一本の政令で、そして県の条例にひとしいようなものが、たとい経過規定であるといつても、立法的には私は困難ではないかと思う。むしろやるならば、やはりこれは法律をもつて、一応新しい公安委員会ができるまでは、県の公安委員会も今度かわるわけでありまするし、いわゆる新しい警察に移行されるまでは法律でこれをかえるというような、やはり基本規定というものはどこかになければ、これをただちに政令でするということになると、少し政令の行き過ぎだと思う。この点について法制局はどういうふうにお考えになるか。
  266. 林修三

    ○林政府委員 今門司委員から仰せになりましたこの経過規定を、法律で書くかどうかという問題でありますが、これは法律にした方がいいではないかとおつしやる点まことにごもつともでございまして、今自治庁次長からお話がございましたような経過措置が、当然やはりこの警察法の施行に伴いまして、市町村の公安委員会の権限が都道府県公安委員会に移るという意味においては必要であろうと思う。それを法律で書くべきか、あるいは法律が政令に委任することは不可能かどうかという問題であります。これはいわゆる委任命令というものは法律で委任すれば、実は本来なら法律において書くべき事項も政令に委任できるという建前でございまして、この二十八項におきまして経過措置は政令で定めるということは、これは委任しているわけであります。その経過措置の範囲に入りますことは、これは私は法律的に可能だといわざるを得ないと考えるわけであります。そういうことを委任することが妥当かどうかということは、これは立法論としては問題のあるところだと存じますが、法律的に見れば不可能ではない、かように考えるわけであります。
  267. 門司亮

    門司委員 もとより法律でこさえれば、あるいは不可能でないかもしれない、何でもできるというのだから、できるかもしれない。しかし少くとも市町村の条例であり、同時に府県の条例にいたしましても、今日の自治体というものはやはり一つの独立した権限を持つているのであつて、それを政令で府県の条例と同じような効果を持たせる——府県条例にするとは書いてないが、実際上は府県条例と同じような効果を持つことになると思う。そうでなければこれを政令に移してみたところで何にもならぬと思う、同じような効果になると思う。そういうことが単に二十八項の、この法律の施行について必要な経過規定は政令で定めるというような漠然としたもので、一体いいか悪いかということです。法制局の答弁もありますが、私は立法論としてははなはだまずい行き方であつて、こういうものが癖になつて来ると地方の自治権というものはどうなるか、大体の考え方が国家に一切の権限を集中する考え方で、昔のような——昔は自治法はなかつたが、御承知のように府県制、市町村制という明治二十三年にきめたものを終戦まで使つておつた、こういう明治二十年代にきめられたものの範囲においては、あるいはこういうことがあり得たかもしれない。しかし今日の自治法、自治体と国との関係においては、少くとも国がかつてに——かつてにという言葉が当るかどうかしりませんが、かつて法律あるいは政令でこれを押しつけるということはできないはずだと思う。もしこういう規定が必要であるとするならば、やはり法律なら法律で明確に処理するように、本文の中に入れておくということが正しいのではないか、政令でこれをきめるというようなことは、私はどうしても納得が行かない、その点をひとつもう一度御答弁願つておきたい。
  268. 林修三

    ○林政府委員 結局附則の二十八項で委任しておりますものは経過措置でございます。経過措置は今仰せられましたように、たとえば市町村の条例を実質的に府県の条例にするということではないと思うのでございます。警察法の施行によりまして、ただいままで市町村の公安委員会というものがあり、これが警察に関する一定の権限を持つている、この仕事は実はこの法律によりまして、一般的には都道府県公安委員会に移るわけであります。従いまして大体市町村の公安委員会がやつております仕事の範囲が、大体そのままの範囲において都道府県公安委員会一般的に移る。従いまして市町村の条例で今まで自分のところにありました公安委員会が行つておつた権限が、都道府県公安委員会に、当然法律によりましてかわるわけであります。その範囲における経過措置ということに限定されるわけであります。それ以上のことを、先ほど自治庁からお話がございましたが、経過措置は書いてあるものでないと思うわけであります。そういう範囲におきましては、これは私は法律に基いて政令で委任すれば、もちろん法律的にも可能でございます。それほど不妥当なものでないのではないか、かように考えるわけであります。
  269. 門司亮

    門司委員 御答弁ではございますが、これは警察法の改正で、実際は公安委員会の持つておりまする権限を移すということには私はならないと思う。県に公安委員会がある、それから市町村の公安委員会がなくなる。その場合に市町村の条例が、たまたま公安条例というものがある。公安条例は全部あるわけではありません。県で持つているところは大体市町村に持つていない、県に持つていないところは市町村で自治警察を持つていたところは持つている、そういういきさつがある。従つて警察制度がかわるということが即公安条例に、県の条例のような効果を持たせることを政令できめることは私は行き過ぎではないかと思う。これは何もこの市町村の公安委員会の持つておる仕事を、全部都道府県公安委員会が継承するとかそれを引継ぐのだという本文でもあるというならば別ですよ。本文には何もそんなことは書いてない。たまたま警察制度がかわるというだけしかなく、公安委員会の問題についてはちつとも触れておらない。公安委員会の持つておる仕事がそのまま府県に移るということはどこにも書いてない。それを一本の政令でやるということは、私はどう考えても政令の行き過ぎだと思う。しかもこれは国の政令でありまして、国の政令で押しつけるということになる。この点は府県公安委員会に押しつけると申してもさしつかえないと思う。府県公安委員会がそれをほつするとかほつしないとか、あるいは府県がこういうものをこさえようとか、こさえまいとか考えているかいないかわからない、こういうものを府県知事が府県の議会に提案して、公安条例をつくるかつくらないかを考えているかいないかもわからないにもかかわらず、その仕事府県に押しつけられて来るということは、政令の押しつけ過ぎではないかと思う。こういうことが政令でできるかどうか、これはこういうようにしているのでありますから、その点は誤解のないように明らかにしておいてもらいたい。
  270. 林修三

    ○林政府委員 実はこの法律に基きまして具体的に政令を定めます際に、私の方でも十分検討いたすつもりでありますが、今一応実は自治庁の次長から御答弁がございましたところによりますれば、そういうお考えになつておられますところによりますれば、やはり実はきわめて暫定的な措置のものでございます。市町村が自分のところの条例を廃止することをもちろん何ら妨げるものでもございません。府県が条例をつくらなければならないということを押しつけているものでもないように考えられるわけであります。そしてこれは暫定的な措置として考えておられるわけであります。暫定的な範囲においては可能ではなかろうか、またさほど不妥当だとは、繰返すようでありますが、言えないのではないかと思います。
  271. 北山愛郎

    ○北山委員 ちよつと関連。これは私も門司さんの意見と同じなんです。要するに公安条例というのは直接には警察とは関係がないわけで、これは例の国に属せざる行政事務の範囲で、自治体が自主的につくれる条例なんです。だからしてあるところもあればないところもある。従つてもしも今度警察制度の改正によつて市町村の公安委員会がなくなつて都道府県公安委員会になるということになつた場合には、あるいは市町村でその公安条例をやめてしまうかもしれない。それはその市町村の自由な意思であるわけです。だからして経過規定だからといつて、当然直接に条例の内容を法律ないし政令でもつて読みかえるなんということは自治の本旨に反する。そういう意味で私は門司さんの意見に賛成なんですが、どうですか。
  272. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 従来から法律を改正いたします場合には経過規定があるわけでありますが、その経過規定に一体どの範囲のことが規定できるか。要するに経過規定と申しますのは、結局委任命令でございますから、どの範囲のことが一体委任されておるかということになりますれば、たとえば市町村の廃置分合をいたしました場合に、その場合の措置はやはり委任の根拠によつて地方自治法の施行令で一条以下に定めておるわけでありますが、一例をあげますれば、たとえば市町村長は、新しく数町村が合併して市ができたといたしますると、その市の市長というものは住民が直接選挙しなければきまらないわけであります。ところがこの法律にはそういうことが書いてないで、施行令という政令でもつて関係の町村の長が協議して、だれかを一人市長の仕事をやる者としてきめて、後任の市長が選挙されるまではその者が市長の仕事をやる、こういうことが政令で書いてあります。あるいは選挙管理委員につきましても同じように、従来何箇町村かの選挙管理委員会があつたのが、みな消えてなくなつてしまうわけでありますけれども、互選で定めた者が選挙管理委員として今度の新しい市長の選挙をやるというようなことは、全部政令の中に書いておるのであります。これらのそういう委任は広過ぎてはなはだ不適当ではないかという立法論は、先ほど法制局次長がおつしやいましたようにあろうかと思いますけれども、従来そういうふうな相当広汎な委任の取扱いをした命令がございますので、実は私ども事務屋といたしましてはさほど気にいたしませんで、こういうようなことを規定いたしたのでございますが、立法論といたしましてはいろいろ御意見のあるところとは存じますけれども、私どもは従来の例から考えますれば、この程度のことはさして支障はないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  273. 藤田義光

    藤田委員 関連でたいへん恐縮でありますが、この現行警察法の実際の立案者、現在保安庁の人事局長をやつておられる加藤陽三さんの著書、これは最も権威ある現行法をつくつた人の見解であります。ただいまの問題に関しましてこういうことを表現いたしてあります。非常に簡単でありますから朗読します。これは自治体警察という御答弁をされております小坂大臣以下、自治体警察であるという前提のものに聞いていただきたいと思います。「自治体警察地方自治法上の事務であるから、警察法の定める自治体警察制度地方自治法が対象としている地方自治制度の一環として理解されなければならない。従つて警察法地方自治法との関係は、すべて地方自治法規定によることはもちろん、警察法に特別に規定のある事項でも、これが真に地方自治法規定の適用を排除する趣旨のものでない限り、基本的に地方自治団体の組織及び運営について規定する地方自治法規定が優先して適用されるものと解さなくてはならない。」こういうことを現行法四十条に関連して書いておられるのであります。この趣旨からしますると、法制局の意見等もありまするが、私は無理な御答弁ではないかと思うのであります。特に地方自治法運営施行の事務最高責任者たる自治庁の次長の御答弁も同工異曲であるということを、私は非常に奇怪に考えております。この加藤説が私は正しいのではないかというふうに考えておりますが、いま一度くどいようでありますが、今の加藤説に対する御見解がありましたらお伺いしておきたい。
  274. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまの地方自治の組織及び運営に関する事項は、法律で定めるというのが憲法の大原則でございますので、原則から申しますならば委任の範囲をできるだけ狭くいたしまして、法律をもつて規定するというのがむろん原則であると思うのであります。しかし従来からさような新憲法下の制度といたしましても、経過措置に関しまして相当広範な事項を委任いたしまして、政令をもつて規定をしておるという例が先ほども一、二申し上げましたように、いろいろあるのでございます。そういうことがいいからというので大いに奨励するという気持はございませんけれども、しかし従来の例から申しますならば、その程度のことはさして目ざわりにはならないというくらいに、私どもは考えておるのであります。
  275. 阿部五郎

    阿部委員 その問題について先ほど来、鈴木次長や法制局でお答えになるのは、お答えになる範囲においては、私どもなるほどと思うのでありますけれども、その前提になるところの国家公安条例という問題に関連いたしましては、どうもお考えが適切ではないのではないかと思うのであります。といいますのは、これは例をあげて申し上げるのが一番明確であろうと思いますが、かりに兵庫県なら兵庫県において、神戸市だけは公安条例がある、こう仮定いたしました場合に、この法律が施行されると、その公安条例で、集会をする時分には四十八時間以前に神戸市の公安委員会に届出をしろ、こういう定めをしておきましても、その公安委員会がなくなつてしまうのでありますから、その条例も施行が不可能になつてしまいます。そうしてこの附則二十八項によつて、かりにその場合に経過措置をするところの政令を出して、神戸市の公安委員会というものを、兵庫県の公安委員会と読みかえるようにかりに定めたといたしますならば、その条例は神戸市の条例でありますから、神戸市の議会がそれを廃止する議決をするまでは、依然として有効であつて、それを施行するにあたつては、その経過措置によつて神戸市の公安委員会というところを、兵庫県の公安委員会に読みかえて施行することができると思います。それはしてよろしいでありましよう。しかしながら兵庫県においては、そういうことを行つたといたしましても、兵庫県においては神戸市の市の区域内においてのみ公安条例があるのであります。神戸市以外の兵庫県の範囲においては、初めから公安条例はないのですから、いくら経過措置をやつたところが、兵庫県全体の公安条例が行われるということは絶対あり得ない。そうしてそれが経過措置によつてそういうふうにこの法律が施行された後も、神戸市の公安条例が有効で働くようになりましても、その後において、その政令にかかわらず神戸市においてその条例を廃止する議決をかりにしたとしましたならば、かりに経過措置でそれを有効にしておいたところで、神戸市で廃止しようとすれば当然自由に廃止できるものである、こういうことになるものと私は思うのでありますが、法制局次長はいかがお考えになつておりますか。
  276. 林修三

    ○林政府委員 ただいま仰せになりましたことは、ただいまお考え通りだと思うのであります。神戸市の条例でございますから、これは神戸市以外の兵庫県の区域には、もちろんこれはいかに経過措置で書いても、入るわけはございません。また神戸市が後にその条例を廃止するということになりますれば、もちろんこれを廃止する権能は神戸市の議会は持つております。これはお説の通りだと思います。経過措置はその範囲においてのみ実は有効である、こういうことになると思います。
  277. 門司亮

    門司委員 私はもう一応聞いておきます。それはその通りだと思いますが、政令でもし定めるということになれば、私は少くとも府県公安委員会あるいは府県には条例を設けることができるとか、あるいは設けなければならないというようなことが法律の本文にあれば、その公安条例のできる間の一応の経過規定ということはわかるのであります、それは本文には何もない。従つて先ほどから申し上げておる、府県自体が公安条例を必要とするかしないかということも考えておらない。それを府県に押しつけようというが、本文は何もない。それをどこにも委任していない。さつき法制局では委任してあるというが、ちつとも委任していない。この警察法を読んでも、府県には公安条例を持たなければならないとか、持つことができるということは書いてない。そうすると法律で委任したということも言えない。明らかに政令で府県にこれを押しつけるものだというてもさしつかえない。従つてこれは政令でできないと考えておりますが、それでもできますか。
  278. 林修三

    ○林政府委員 私の申し上げたのは、委任の根拠は附則二十八項であります。その附則二十八項で、公安条例については委任できない。その範囲はおいては実は公安条例そのものは御承知の通り自治法に基く条例で、市町村なり府県なりが規定しておるものであります。この警察法自身としては、直接関係がないものであります。条例をつくることを委任したとか、しないとかいうことを私申した覚えはございません。現に市町村の条例があります場合、その市町村の条例を廃止しない限り、その市町村の公安委員会一定の権限を与えておる、その市町村の公安委員会がなくなり、それにかわるような機関として都道府県公安委員会ができる。その場合市町村になお有効に成立しておる市町村の条例、これを執行する権限を暫定的に——その条例自身が廃止される、あるいはそれにかわる都道府県の条例ができる、そういうまでの間、暫定的に公安委員会の権限を行うということを政令で書くということは、今おつしやつた公安条例そのものの問題とは直接関係していないと思います。
  279. 門司亮

    門司委員 委任の根拠は二十八項であるということはなおおかしいと思う。委任の根拠というものは、私ども常識から考えれば法律でなければならぬと思う。こういう法律があるから、この法律を施行するまでの暫定期間としては、こういう経過措置をとるということなら話がわかるが、法律は何もない。二十八項に法律まで包含しておるということになると、これは行き過ぎだと思う。どう考えても変な答弁です。私どもどうも納得できない、明らかに地方自治権の侵害と言えば侵害と言えるかもしれない。いわゆる府県の欲しないものである。法律に定めてある。しかしこの法律の施行までの間にポケツトができる。あるいは時間的穴があくということなら、いわゆる公安条例を府県は持たなければならない、あるいは待つことができるということが法律に書いてあるといたしますと、今度公安委員会が新しくできて参ります。そうすると当該府県の中にある全部の市町村の公安委員会がなくなりますので、新しく県会で議決しなければならぬ。県会で議決いたしますまでの間どうしてもピケツトができる。だからこの間、地域的ではあるが、市町村の持つておる公安条例があるとすれば、たとい地域的であつても、それが準用されるということはあるいは言えるかもしれない。しかし何もそういう委任した法律の元がないのに、全部二十八項の政令で、ものをきめてしまうというようなことについては、どうしても法律的にも都道府県には義務がないのであります。義務があればしようがない。公安条例をつくらなければならぬ、あるいはつくることができるというものがあれば別だが、都道府県は何もそれは束縛されておらぬ。きわめて自由な意思であるにもかかわらず、その区域にある公安条例はその府県がやらなければならぬということは、欲せざることを政令で押しつけようとすることは、確かに政令の行き過ぎだと思う。もう少しはつきり言えば、法律をこしらえるとき、そこまで考えていなかつたのじやないかと思う。はつきり言つた方がいい。あまりへんなことを言つてごまかすより、ミスならミスとはつきり言つた方がいいと思う。
  280. 林修三

    ○林政府委員 今おつしやつた点、私の申し上げた経過措置という意味は、要するに市町村の公安委員会がなくなり、都道府県公安委員会がこの法律によつて新たに設けられる。これに関する経過措置という意味であります。公安条例そのものをこの法律でつくれとか、つくるとかいうような問題とは直接関係がないと思います。公安条例を都道府県でつくれというようなことを政令で書くわけはもちろんありません。かりに市町村の公安条例がある、しかしその市町村の公安条例は、公安委員会というものがなくなつただけで、当然失効するものではなかろうと考える。従つて市町村の公安条例を失効させたければ、自分で条例を廃止することがいつでもできるわけであります。また都道府県がその区域に市町村条例があることを欲しなければ、都道府県が条例をつくることも可能であります。そういうものができるまでの経過措置として、市町村条例はなお残る。しかし権限を与えられておる公安委員会というものだけがこの法律によつてなくなつて都道府県になる。その公安委員会だけの点の経過措置であります。
  281. 門司亮

    門司委員 私どもどうも納得行きませんけれども、押問答はしませんが、今の答弁にしましても、きわめて私は詭弁だと思う。公安条例というものができておりますことは、公安委員会というものが大体対象になつていると思う。従つて公安委員会がなくなれば、公安条例がきまつておりましても、それは実際の問題として執行不能になると思う。たとえば公安委員会に届出をするということになつてつても、公安委員会がなくなれば届出をするところはない。従つてその条例の執行は全部困難になると思う。従つて私はこれを県に移そうという考え方だと思う。これはあなたのお話のように市町村の条例がきまつてつてそれが執行ができるなら、県に読みかえる必要はちつともない、そのまま残しておけばいい。しかし現実の問題としては執行ができなくなる。執行がでなくなつて来るが、警察行政の方で必要になつて来る。従つて市町村で執行ができなくなつて来るから、それを府県の方に移して行こうというものの考え方から、こういう答弁がなされておると思う。しかしやはり基本法として政令に委任するならば、その間だけの便宜的な経過措置として委任するならば、法律の中に明らかに都道府県は公安条例を設置することができるとか、あるいはしなければならないとか、一つ法律的な根拠を与えておけば、その間の経過的な措置としてはそういうことは私十分あり得ると思う。さつき鈴木君は村長の話をしましたけれども、これは村長さんを置かなければならないことになつておりますので、ちやんと法律で村長さんというものはきまつておるのだ。法律で与えられているからそういう便宜的な経過措置ができるのである。村長さんを置かくてもいいという規定ができているときに、政令で与えるということは困難だと思う。私はさつきの鈴木君の答弁は少しおかしいと思う。だから私の聞いているのは、法律的の委任事項というものがここに何も書かれておらないから、従つてこれは経過措置として政令で定めることは私は無理だと思う。  そこでもう一つつつ込んで聞いておきますが、たとえば都頂府県がいつまでたつても条例をこしらえないという場合があります。その場合にはいつまでたつてもこの政令が生きているということになる。たとえば一つの市の条例を廃止しない限りはそうなるのですね。そういつたおかしなものができると思うのですが、そういうことになるのですか。
  282. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、要するにこの警察法が施行になりますれば、警察の組織、執行に関する権能が市町村からなくなつて府県に移るだけであつて従つて市町村の公安委員会というもの、あるいは警察組織というものが、府県公安委員会府県警察組織に移るわけでございますから、御指摘のように、市町村の公安条例できめておりまして、市町村の公安委員会に届け出ろ、あるいは警察署長に届け出ろというものがどこへ行くか。そのままにしておいてはお話のようにわからないことになるわけであります。そこで府県公安委員会に届出をするのだということを書くことは、この法律の施行の結果として警察組織がかわるわけでございますから、それはやはり経過措置の範囲にぴつたり入ることになろうと思うのであります。そこでただいまお話のように、警察の組織、執行がかわるのでありますけれども、警察権それ自体、どういう警察秩序を維持するかということは、この警察法によつては何らかわらないわけであります。これは今法制局次長が言われましたように、自治法の根本規定によつて市町村なり府県というものが、一定の事項を罪として処罰することができるような、あるいは一定の事項の自由を制限するということができるような根本の権能があるわけであります。そこで今の市町村が公安条例をつくつておるということ自体は、この警察法によつては何らかわらない。そこでこの法律が施行になる際、現にそういう効力を有する、市町村の条例をどうするかという問題でありますが、やはり公安委員会の届出を要求する条例については、その切りかえの経過措置を政令で書くことは一向さしつかえないのではないか、こう思うのであります。
  283. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 関連して。私はこの論争が何回もむし返されるのを聞いておりますと、われわれ市町村長をやつた者といたしましては、まことにどうも侮辱されたような気がするのでありまして、どうせ一部分執行不能の条例をいつまでもいつまでも長くそのままにしておくような不勉強な市町村や、市町村議会は一つもないのでありまして、そんなことに長く時間をかけてやる必要もないと思うのでありますが、ただ条例制定権の侵害というような気持でおつしやつている面から見れば、なるほど政府がよけいなおせつかいをしたような気がするのです。(「そうですよ」と呼ぶ者あり)けれどもそのことは決して悪意じやないのがありまして、客観的に見て実益があるのでありますから、この程度にしてこの論争は終つて、最も大切な警察法の本筋の議論をしたらどうかという気がいたしますので、御当局はそう思いませんかということを申し上げたいと思います。法制局次長にお尋ねいたします。
  284. 中井一夫

    中井委員長 今加藤君から林次長に御意見の開陳があつて、そう思いませんかというお尋ねがありましたが、これはひとつ委員長が預つて門司さん、この論争はここらでひとつおやめになつたらいかがでしようか、なお大石さんの質疑も残つておりますから、いかがなものでしよう、そう思いませんかということを門司さんにお尋ねしたいのですが……。
  285. 門司亮

    門司委員 せつかく委員長注意もありますが、しかしこれは非常に大きな問題ですよ。政令で都道府県が欲するか欲しないかわからぬものをこしらえるということは、これは明らかな自治権の侵害というよりも、むしろ乱暴過ぎると思うのです。何にも基本法がないのだから、基本法のないものを、その基本法までもこの二十八項に入れられているのだという法制局の答弁に至つては、私はまつたくどうかと思う。これについては私は、こしらえた方は間違いでございましたということはなかなか言えないからだろうと思いますが、私としてはこういうばかげたことができるものではないというように一応解釈をいたしておきます。  その次に、これは自治庁関係でもありますし法制局の関係でもありまするが、聞いておきたいと思いますることは、実は自治庁から出て参りました警察法関係のある修正案が、きのう出て来てきよう説明があつたのであります。だからどうしてもこの警察法と同時に上らぬのであります。そうしますると、警察法だけは通つても、一部ではありまするが、万一自治法の改正が審議未了に終つた、そういうようなことを仮定した場合に、その部分の警察法の執行はどうなりますか。
  286. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これはまことにいろいろな事情がありまして提案が遅れて、警察法がもうすでに審議を終られる段階になつておりますのに、非常に歩調が合つておらないのは恐縮しごくに存ずるのでありますが、遅れました事情は、しばしば先般来私が当委員会において申し上げたような事情において遅れておりますので、何とぞ御了承いただきますと同時に、これは警察法に関連してぜひともこのように改正をいたしませんと、かつこうがつかなくなるものでありますから、当委員会におきましても御審議を促進していただいて、多少遅れましても警察法が執行せられる時期までには間に合うように自治法も必ずお上げ願えるものである、こういうように確信いたしておる次第であります。
  287. 門司亮

    門司委員 そうするとこう解釈してよろしゆうございますか。自治法の一部改正が通らなければ、その部分は警察法の執行は不能だということに解釈してよろしゆうございますか。
  288. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 事務的にはそのような解釈になると思いますが、そういうことは決して審議の上においては起らないものというように確信いたしております。
  289. 門司亮

    門司委員 一応は答弁を得ましたので、きようは時間もございませんから、一応その程度にいたしておきます。  次に、小坂さんは労働大臣を兼ねておいでになりますので、この際私ははつきり小坂さんに聞いておきますが、今までのいろいろな質疑応答を聞いておりますと、この附則に書かれておりまする給与の問題であります。従つて大臣から給与の問題についてひとつはつきり答弁をしておいていただきたいと思いますことは、この附則をずつと読んでみますと、先ほどからしばしば言われますように、給与のでこぼこがあるのを直さなければならない。そのための処置としては、給与の高いものについては、あるいは昇給がストツプされるようなことがあるかもしれない。あるいはこれを手当で是正して行こうということが経過措置として考えられておる。一体労働大臣として、警察大臣というよりも今度はむしろ労働大臣として、現在行われております都市の警察官の給与を高いとお考えになつているのか、安いとお考えになつているのか。その点をひとつはつきり伺つておきたいと思います。
  290. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 給与自体が高いか安いかということは、これはなかなかむずかしい問題でございまして、やはり国家公務員あるいは地方公務員の給与を定めまする場合には、一般民間賃金であるとか、あるいは同種の形態の職務内容を持つたものとの均衡をできるだけ考えて参る、こういうことで定めておるのであります。高い給与であるか安い給与であるかということよりも、今私が申し上げましたような点において全体の均衡を得ているかどうかということが問題でございまして、現実にそういう状態になつておるのでありますから、諸種の関係からそうなつておる現実の事態を認識する立場で、労働大臣としては考えておる次第であります。
  291. 門司亮

    門司委員 労働大臣としてはそうお考えになつておるとすると、警察大臣として聞いておきたいと思いますが、この附則を見てみますと、どうも高い方の諸君の昇給その他を押えて、そしてできるだけ低い方にならうように、経過処置としては書いてあるように解釈ができるのであります。これはさつきから聞いておるのでありますが、都市の警察官の給与が高いということがよくいわれておる。このためにこういう経過処置がこしらえられておる。もしこれが安ければ、都市と同じように、国家警察の今まで安かつた諸君の給与を上げて行けばいいのである。従つて警察大臣としては、現行の都市の警察官の給与を妥当と認められるかどうかということであります。
  292. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この警察法の附則十五におきましては、その調整措置考えられておるのであります。これを妥当と認めるかどうかということよりも、今申し上げましたように、全体との均衡をいかにしてはかるか、こういうことを中心にして考えるべきものだと思うのであります。先ほども申し上げましたように、公務員というものは国民全体に奉仕しあるいは地方民全体に奉仕する、こういう立場にあるのでありますが、これが中央、地方で非常に隔差があるということは、これは警察職員のみに限りませんので、国家全体といたしまして非常に大きな問題であると考えるのであります。かりに非常に高い給与を出しておる地方でございましても、それだけのものを出し得る財政的の余裕があるかどうかということになりますと、地方財政が非常に苦しいという現状から見まして、非常に余裕があつて出しておるというふうにも考えられない。そこで国家財政も苦しい、地方財政も苦しいのでありますから、その間においてそういう差等が出て来ることは那辺に原因があるかということにつきましては、政府といたしましても、国会といたしましても、あるいは府県側自体においても、あるいは府県議会においても、そういう点を真剣に考えまして、国家全体のためにその不均衡を是正するように、どちらを高くするとか低くするとかいう問題ではなくて、全体の財政問題ともにらみ合せて、全体の問題として考えるべきものであらう、私はそう思つております。
  293. 横路節雄

    横路委員 関連して長官にお尋ねしますが、今のは附則の十五の給与に関する経過規定なんです。これは非常に問題でして、これを読むといかにも現在の自治体警察は、都道府県警察に編入された場合に、現在受けておる給与をそのままもらえるようなかつこうになつておる。しかし問題は前の条文のところにありますように、いわゆる国家公務員であるところの警察職員の例にならつてやるわけですから、従つて自治体警察職員は従前の国家警察職員と同じように、大学を出て何年たつた者は同級何号ときめられるわけです。そこでいわゆる都道府県警察本部長が任命権者になつて、その都道府県警察職員を新たに何級何号俸と任命するわけであります。そこでこの経過規定の十五によりまして、これを「政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、手当を支給するものとする。」というふうに書いてありますが、こういうように規定しておきましても、都道府県では、いや金がないからやらない、お前はちやんと何級何号ときまつておるのだから、おれの県の政財ではどうもうまくないからやりませんぞと、こう言つて条例をつくらない。その支給する条例をつくらない場合に、この法文をたてにとつて都道府県である自治体に向つていわゆる掣肘を加える、そういう権能がございますか、今まで地方行政委員会において、地方自治体の職員の給与に関しては、政府としては地方自治体に対してとやかく指示することはできないというのが、われわれに対する政府側の答弁であつた。私はこういうことをきめてもできないと思うが、この点はどうですか。
  294. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 次長の方で法律的根拠を今探しておりますが、もちろん一般的の考え方といたしましては、法律でこのようにはつきりと自治体に義務づけておりますものを、自治体がその通り施行いたさない場合は、これは十分そのようにやるように監督さしずをすることができる。こういうことに私どもは了解いたしております。
  295. 横路節雄

    横路委員 それではもう一ぺん重ねて長官にお尋ねいたしますが、これは条例で定める、その条例は都道府県知事があるいはどうなりますか、公安委員会でありますか何になりますか、都道府県議会に出して、都道府県議会がこれをきめる。そのときに、だれが一体法律でこれをやらなかつたからといつて処罰するのですか。これはその対象は何ですか、知事であるとか公安委員会とかいうならともかく、これは都道府県議会が条例を設定をする。おれの方はできないとか、あるは都道府県議会で否決するかもしれない。その場合これをたてにとつて、この通りやらないからといつて、あなたの方では何と言うのか、まさか懲戒免職するわけにいかない。一体どうやるのですか。
  296. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この点は要するに手当を支給する条例で支給するものとする。法律上こう書いてあるわけでありますから、当該府県では、手当支給のための条例をつくらなければならぬということに、この法律によつて義務づけられることになるわけであります。そこでその場合に条例を提案する者は知事でありますから、知事が提案しない——あるいは議会がみずからこれを提案できないこともございませんが、原則は知事がやることになつております。その場合に、議会がそれを否決したという場合においては、結局この法律の定めることが行われないことになる。そうすると、その議会の議決というものを全然否決することは、十五号違反になると思うのであります。そこで違法の議決ということになりますと、これは自治法上の一般規定によつて、長は再議に付する。再議に付してなお改めない場合は裁判所に出て争う。そういうことは法律上できる。また知事としては法律上そういうふうにしなければならぬことになつておるわけであります。そうであるのにかかわらず、実際問題としては、何もこの問題だけではございませんが、法律上義務になつておる事項を、必ずしもその通りただちに行わないという例は、先般の給与の問題で申しますれば、例の三本建の問題などにつきましても、法律上は府県がやらなければならないにかかわらずその時期が遅れるというようなこともあるわけでございまして、これは一般的な行政指導である程度はできないことはないと思いますが、しかしそれを強制する手段というものは、現在の建前といたしましてはないわけであります。
  297. 横路節雄

    横路委員 今の次長のお答えの最後のところは非常に大事です。拘束するものは現在の法律上ないということになれば、私が指摘するように、市町村の自治体警察職員から都道府県警察職員にかわつた場合に不利益を伴つても何ともしようがないということになる。しかもこれは、たとえば、いわゆる国庫負担金とかいうものであればいいが、これは交付税である。交付税法の建前からいえばひもつきはできない。あなたがしよつゆう言うようにこの金についてはひもつきはできない。しかもその条例については、議会がこれを否定したという場合に、今の法律は何もできないということになれば、さあそれこそ大問題です。今の市町村の自治体警察職員は、都道府県警察職員に編入になつたときに、さあ一体おれの俸給はどうなるのかというわけで、これは大問題です。こういうことをきめて、しかもかりにこの通りやつたとしても、実質的にはこれは二年ないし三年間は昇給がストツプになるわけだ。これははつきり昇給がストツプになる。そのことが結局、十八年勤めて退職手当を最終的に都道府県からもらうときでも、十八年間勤務したけれども、昇給が三年間ストツプしておれば、実質的には最後の昇給額が十五年分ぐらいにしか相当しないということになる。現在の市町村の自治警の諸君が都道府県警察に編入されたときに、一体何が心配かというとこれが心配だ。今の御答弁では、全国十三万の警察職員の士気に及ぼす影響実に甚大ですよ。
  298. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今私がお答え申し上げました点は、法律論としては、要するに中央政府と地方団体との関係を律する現在の地方制度の建前から申しまして、何もこの問題だけではございませんで、法律地方団体が義務づけられております問題について、それを議会までが一緒になつてどうしても実施しないという場合は、特に法律で何か定めがあるならば別でありますが、何も動かす道はないのであります。国法として定められたものを地方団体が行わないということは、まことに遺憾でありますけれども、これを強制する法律上の道はない、これはいたしかたがないのであります。しかし現実の問題として今御指摘にりました点を考えまするならば、これはいわゆる財政計画におきましてこの関係経費を見込んでおりまするし、またこの法律がかりに施行せられるということになりまするならば、おそらく、この法律趣旨関係の機関からそれぞれの方面にそれぞれ詳細に連絡をされ、周知徹底をされることになると思いまするので、良識ある地方自治団体においてかようなことが行われることは、まず万々あるまいと固く信ずるものでございます。
  299. 横路節雄

    横路委員 それは万々あるまいというのですけれども、このごろの東京新聞に何が出ておるかというと、東京都庁の職員の俸給は高過ぎる、高過ぎて不届きではないかということを自治庁は発表している。そこで問題は、この附則十五の、「その調整のため、都道府県は、政令で定める基準に従い」ということ、これが問題なんだ。こういうことなしに、その前の、「その俸給月額がこの法律の施行前の日で政令で定める日現在におけるその者の俸給月額に達しないこととなる場合においては、」のあとに、「その差額を手当として支給する。」こういうふうになつているならばいい。それを、わざわざここへ「政令で定める基準に従い」ということを入れてあることは、今現に自治庁が東京都庁に対して、お前ら俸給が高いと言つているように、これは無制限に高い者に対してその差額をまるまる見るということではないのです。そうでなければわざわざここへ「政令で定める基準に従い」という一項を入れる必要がないのですから、やはりこれはこういうことではうまくないので、もしも、ほんとうに市町村の警察職員を安心して都道府県自治体警察に入れるというのであるならば、現在受けている級をそのまま何級何号で任命しておいて、経過措置としては、いわゆる国家公務員である警察職員がそれに達するまでは昇給は停止だぞという方がはるかに筋が通る。その方がはるかに筋が通る。これは与党の諸君がたくさんであるいは通すかもしれないが、疑義のある点だけははつきりしておかなければ、こういうことではうまくない。どうですかこれは、「政令で定める基準」というのは、無制限で認めるのではないでしよう。どうなんですかこれは。
  300. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 私の方からお答えいたしますが、この政令の基準は、大体先ほどお話がございましたように、現在の給与の差を比較いたします時期をいつにするかという問題と、それからその差額の全額を出すという問題、それからお話がございましたように、その給与が昇給いたしまして、手当と合せまして元の額に達するまでというようなこと、その辺のことを基準に定めており、それ以外のことは条例にまかす考えでございます。
  301. 門司亮

    門司委員 この附則の十五については横路君が聞きましたから一応省略してもいいのでありますが、一つだけ聞いておきたい。さきの鈴木君の答弁によりますと、公務員法の規定から行くと、当然昇給する者は昇給しなければならないように書いてある、しかしそれを行わなかつた場合の措置としては、行政訴訟の道が開けておるというのであるが、しかし問題はそういう処分を受ける本人の問題であります。だから、そういう昇給を当然すべき規定になつてつても、この規定で昇給ができなかつたというような場合、同時に、そういうことが県の条例あるいは県の議会で議決されなかつたというような場合については労働大臣としてはどうなんですか。個人の不利益処分の訴訟ができますか。
  302. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この十五項におきまする「政令で定める基準に従い」という字句の解釈は総務部長からお答えいたしました通りでありまして、不利益処分の取扱いがなされないという考え方で参つております。従いまして不利益処分の訴えというものはできません。こういうふうに思つております。
  303. 門司亮

    門司委員 そのことはちよつと違うのでありまして、今私が聞いたのは、たとえば昇給が三年なら三年、二年なら二年ストツプするというような場合、それは府県の条例などによつて俸給はいつ昇給しなければならないというふうなことが、大体書いてあるはずである。地方公務員法にも大体そういう規定が設けられておる。しかしそれらの問題が府県の財政その他で処置ができなかつた場合、またそれを上げて行けば、この法律で書いていあるように、いつまでも俸給の調整ができないというようなことになつて参つた場合に、それを府県がやらなくても府県を取締る規定はおそらくないと私は思いますが、そういう不利益を受けた個人は不利益処分の申請ができると私は考えているわけであります。これは地方公務員法によつてもはつきりできると思いますが、こういう処置ができるかどうか。
  304. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方公務員法に基きます不利益処分の審査請求というのは、結局、給与条例によつて定められておりまする処置、あるいはその他の公務員関係の法令、条例によつて定められております基準に基いて任命権者等が処分をいたします場合において、特にある者に対して不利益なる処置をした場合、たとえば懲戒処分によつて首を切つたとか、あるいは減給の処分をいたしたとか、こういうような場合に不利益処分の審査ということになるわけでございまして、条例それ自体によつて定められておりまする通りに任命権者が処置をいたしておりまするならば、その条例がたとえば適切な処置をしていなかつたという場合におきましては、その条例に基いてやつておりまする以上は、実質的に若干問題はあろうかもしれませんが、不利益処分ということにはどうもならぬのではないか。要するに不利益処分の審査は任命権者の行政措置に対する再審の要求でございますから、条例が不適当であるというようなことについて、それを理由として任命権者の不利益処分の審査ということは、どうも制度上困難ではないかというふうに考えるのであります。
  305. 門司亮

    門司委員 これは非常に重大な問題なんです、実際問題としては。私がなぜそういうことを聞いておくかと言いますと、この場合実際任命権者と、俸給の支給の場所が違うのです。任命権者というのは国家公務員である警察本部長が任命する。そしてその俸給の支払者は府県知事なんです。だから任命権者に対してという問題ではこれはなくなつて来る。個々の警察官だけは任命権者と俸給の支払い場所が違うのです。これははつきりそうなんですよ、警察法は。そこにこういう問題が出て来るのです。今の鈴木君の答弁では任命権者がそういうことをしなかつたらと言うけれども、府県は任命権者じやない。俸給さえ支給すればそれでいいのですから。任命権者はもう少し高いところにある。だからそういうところから来るそういう矛盾が私は出て来ると思う。だからそれらの調整はどこではかるかということ。そしてそれがもし本人の不利益になつた場合に不利益処分を申請してみても、申請のしようがない。任命権者が俸給を支払うわけじやないのですから。地方公務員にすること自身が大きな誤りです。これはたびたび議論しましたからきようは議論はしないのでありますけれども、そういう問題について一体どういうふうに解決して行くかということなんです。
  306. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 要するに都道府県警察に勤務いたします公務員は、国家公務員である本部長その他の若干のものと、地方公務員要するにその府県の公務員でありますものと二通りあるわけでありますが前者についは任命権者は国の方にあるわけでありまして、従つてこの不利益処分の問題は結局国家公務員法の規定の適用を受けることになるわけであります。府県の公務員である国家公務員でないところの都道府県警察職員の問題は、これは地方公務員法の適用を受けるわけであります。その場合に任命権者は都道府県本部長であります。都道府県本部長は要するに都道府県自治体警察の組織の構成員である。ただその身分が国家公務員になるということでございますから、その本部長は要するに地方公務員法上の任命権者としての権利と義務を地方公務員法によつてつているわけであります。そういうことでありますので、ただいま御質問のような問題については、具体的に減給の処置とか何とかございますれば、不利益処分の問題に地方公務員法上なつて来るわけであります。
  307. 門司亮

    門司委員 どうも今の答弁は実際は非常にわかつたようなわからぬ答弁であります。これは国家公務員でありますことに間違いがないのであります。地方のただ構成員というきわめて広汎な都合のいい言葉を今鈴木君は使つたのであります。あるいは自治体警察であるとするならば自治体警察の構成員であるかもしれない。しかも国家公務員であることに間違いはない。と同時にこれが任命をするのでありますから、いわゆる任命権者と給与の支払いの責任者とが違うわけであります。これはどんなに任命権者であります国家公務員である府県の隊長が、給与水準その他をきめて参りましてもこの基準にはよらないのであつて、やはり地方公務員である限りにおいては府県の条例による以外にはないと思う。そこに実にわれわれとしては割切れない問題が起つて来る。これはせつかくの今の答弁でございますが、われわれといたしましてはそういうものに納得するわけには参りません。その線はもう少し明確に任命権者と給与を支払う者との資格というものがはつきりしなければならない。知事は任命権者であると同時に給与を支払う責任を持つております。ところが警察本部長長官は任命する権限を持つているが、給与を支払う権限は持つておらない。これはやはり知事だと思う。そこで不利益処分の申請をしようと思つてもどつちにやつていいか見当がつかなくなる。こういうものが必ず出て来る。だからそういうものが地方公務員として認められるかどうか。
  308. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 任命権者と、給与の支払いの権限といいますか義務といいますか、これは通常御指摘のように府県、市町村等の事務局に働きます者は、任命権が府県、市町村長にあり、かつ給与の支給も市町村なり府県が負担をし支払うというのが原則でありますが、しかし今日市町村の公務員になつております教育公務員につきましては、給与負担は都道府県が負担する。従つて任命権者は市町村の教育委員会でございますが、給与の負担は都道府県が負担する。こういうことになつているわけであります。そういうふうに任命権と給与負担の義務とがわかれているということはないわけではないのでありまして、別にこの警察の問題につきましても一向おかしいことはないのじやないかと私は考えております。
  309. 門司亮

    門司委員 どうも学校の先生とは少しわけが違うのであつて、学校の先生の場合はやはり教育委員会その他で異動関係その他に全然関係しないわけでも何でもない。警察法ほどはつきりしていない。警察法ははつきりしている。従つて今の御答弁のような答弁では、私はどうも了承できない。従つてこの辺のことはもう少し明確にしていただきたいと思う。  一応私どもの受持ち時間があと二十分ぐらいしか残つておりませんので、あと大石君の質問もございますし、この辺で一応私は質問を打切りたいと思いまするが、この機会に委員長にひとつお話申し上げたいと思いますことは、先ほど自治庁長官の御答弁によりますと、自治法の一部改正も警察法の審議と同じように、国会を通過するように努力してもらいたいという話があつたのであります。従つて私はこの警察法をやはり衆議院が上げようとするならば、この警察法並びに警察法の施行に伴う関係法令整理に関する法律と同様、明日からただちに自治法の一部改正を審議して、この警察法と同時に衆議院を通過する処置をとられることが、今の大臣の御趣旨に沿うゆえんだと私は考えております。かようにぜひおとりはからいを願いたいと思います。
  310. 中井一夫

    中井委員長 お答えをいたします。ただいまの門司君の御要求につきましては、いずれ理事会を開きまして、理事会の御決定によつてとりきめたいと存じます。大石ヨシエ君。
  311. 大石ヨシエ

    ○大石委員 齋藤国警長官にお尋ねいたしますが、自治体警察を廃止するには住民投票によらなかつたら廃止することはできないのでございます。この人民投票をしもせずしてこの立法をつくり上げるということは、自治権の侵害であると思う。ゆえにまずこの法文をおつくりになる前に、どこか一条にそうした法文をなぜお加えにならなかつたか。賢明なる齋藤さんに非常に似合わないことであると思いますが、この点お聞きしたい。
  312. 中井一夫

    中井委員長 各委員諸君にお伺いをしますが、塚田自治庁長官に対する御質疑はもうございませんか。(「まだあります」と呼ぶ者あり)まだあるそうでありますから退席は許されません。  それからなお西村君にお断りいたしますが、質疑の順序は西村君であつたのであります。それが私誤つて大石ヨシエ君に許可いたしたのであります。そう長いこととは存じませんから、お譲りになりまするならば、そうしていただきたいと存じます。
  313. 西村力弥

    西村(力)委員 けつこうです。
  314. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 御意見通り、現在の警察法におきましては、自治体警察を廃止いたしまするには、住民投票を要することに相なつております。と申しまするのは、現在の法律におきましては、一応人口五千以上の市町村は自治体警察を持つ権利と義務を法律で与えているわけです。これをある町村においては廃止をする、ある町村においては廃止をしないで存続をするということに相なるわけでございますから、廃止をいたしまする際には、ただ町村会の議決だけで廃止するというのではなくて、住民全体の意見を聞いた方が丁重であるというので、住民投票という規定が設けられておるのでございます。ところが今度は法律によりまして、町村が警察を持たないで、今度は府県警察を持つ、こういうことにかえるわけでございまするから、この場合には住民投票がありませんでも、自治権の侵害とは言えないと考えておるのでございます。
  315. 大石ヨシエ

    ○大石委員 ただいま齋藤さんは自治権の侵害ではないとおつしやいました。しかし今回のこの府県警察というものは、先日あなたがおつしやいました通り、女か男かわからぬけれども、多分女が多くて男がちよびつとである、そういうふうにおつしやつた、しかしこれはほんとうは内閣総理大臣が権限を持つておる以上はこれは結局国警なんです。国警を私たちになしくずしにまづこうやつて、そうしてこれをだんだんと一本化すことである、つまりこれはごまかしの法案である、齋藤さんから私は聞きたい。これはほんとうは実は皆さんをごまかしておるのである。けれどもこれはほんとうは国警である。ゆえにどうかこの際、ここは四人も野党が多いのですから、何とかしてこの地方行政委員会を通してくれろとおつしやつた方が私はよいと思う。これはこつけいです。はなはだこつけいなことである、これはどういうふうにあなたは解釈なさいますか知りませんけれども、私はこれは国家警察であると信じておりますが、さように解釈いたしましてよろしゆうございますか。
  316. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この点はしばしば御答弁を申し上げておりますのに、今日までまだ十分御理解いただきませんことは非常に残念に存じます。この法案における都道府県警察警察の本来の性格に従いまして、国家的な性格も若干持つております。しかしながらこの法制の立て方といたしましては、自治体警察たるを失わないのでございまして、国が留保をいたしておりまする点を除きましては、自然警察、かように観念せざるを得ないのがございます。それはこの都道府県警察の組織あるいは人事構成、あるいは予算の関係等から考えましても、この法律で留保をされていない点は、すべて町村の条例あるいは町村の予算権というものによつて左右されるものでございますから、われわれといたしましては自治体警察、かように観念せざるを得ないというように申し上げておるのでございます。どうぞこの点御理解をいただきまして、一日もすみやかにお通しくださるように願いをいたします。
  317. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうしたら大都市の自治警に対しては一度住民投票をして住民に一度問うのが、私はほんとうの民主警察であると思う。あなたはどういうふうにお考えでございますか。それがほんとうです。
  318. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 特定のたとえば大阪市警察だけを廃止をしようというような特定のものに相なりますと、これは住民投票によらなければならないと考えまするが、いやしくも市町村というものが今度は警察を持たなくなる、そうして都道府県が持つというように法律でかえまする際には、住民投票の必要がない、かように考えておるのであります。
  319. 大石ヨシエ

    ○大石委員 このことはいつまで繰返しておつても同じでございますが、私は七十五条に「国家公安委員会及び長官は、検事総長と常に緊密な連絡を保つものとする。」こういうことがございます。今日でも警察フアツシヨになろうとしておるそのときに、もしこれが国会を通過いたしまして、そうして齋藤さんが長官におなりになりまして、始終総長と緊密なる連絡をおとりになりましたら、そうしたら一体日本の国は警察フアツシヨになる、この点いかがお考えでございますか、私は聞かしていただきたい。
  320. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これはもちろん国家公安委員会あるいは警察長官は自分の立場、自分の指揮権によつて警察行政を法律によつて運営しなければならないのでございます。しかしながらそうかといつて、検事総長としよつちゆう意見を異にしていがみ合つておるということでは、治安の運営がうまく参りませんので、緊密な連絡をとりながら、しかもそこで野合はしないで正しい立場を保つてつて行くというのが、この法案趣旨でございます。
  321. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しかし齋藤さん、ここにはつきりと「常に緊密な連絡を保つ」と書いてあります。あなたは緊密な連絡を常におとりにならなかつたら長官としての職務ができない、そうすると警察フアツシヨになる、ここは野党は四人多いのですから、この点削つてもよろしゆうございますか、齋藤さんいかがでございますか。
  322. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私はこの条文は決して無条件に検事総長の意見に同意をするとか、あるいは国家公安委員会意見に、検事総長に同意をせしめるというのではなくて、この間に意思の疏通が欠けて、そうしてお互いのてんでんばらばらなことにならないように、正しい意味において緊密な連絡をとるという意味でございますから、さような御心配はないものと考えております。
  323. 大石ヨシエ

    ○大石委員 いくら言つておりましても長官がもしこれに就任なさいましたら、これは警察フアツシヨになると私は信じて次の問題に移りますが、先ほどわが党の中井委員が警視総監という言葉を用いられました。警視総監は目下日本に大阪と東京にございます。一体この警視総監というのは英語で何と言うのでございますか。ちよつとお聞きしたいと思います。
  324. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 あるいは間違つたら御訂正をいただきたいと存じますが、私は警視総監というのは、インスペクター・ゼネラル・オブ・ザ・メトロポリタン・ポリスというふに言うと思います。
  325. 大石ヨシエ

    ○大石委員 警視総監というこんないかめしい名前、ことに日本人は非常に事大思想のはなはだしい国民でございますから、警視総監という名前は、この法文から削除する必要があると思う。警視総監言うたらとつてもいばつております。それがまたこの法案が通つたらもう一ついばります。ここは野党が四人多いから警視総監の名前を削りますよ、よろしゆうございますね、その点御承知を願いたい。  それからもう一つお尋ねしたいのですが、はなはだ齋藤さんに失礼でございますが、あなたは一体現在給料はいかほどおとりでございましようか、それを聞かしていただきたい。
  326. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 十五級三号俸でございます。
  327. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そういうことを言うてもらつてはわかりません。月に何百万円もらつておるか、それを聞かしてください。
  328. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 六万八千円でございます。
  329. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうすると私たち代議士よりずつと上でございますね。——代議士は七万八十円か、これはたいへん失礼いたしました。(笑声)実はあなたがそんなに安い月給とは知らなかつたのであります。十万円くらいもらつていらつしやると思つておつたのです。それから、月給が安いのにこういうことを聞きましてはなはだ何でございますが、一体機密費というものはどのくらいございますか。われわれちよつと好奇心を持つておりますので、お漏らしください。
  330. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 今日はわれわれの方には機密費というものはもうございません。新制度になりましてから機密費というものはなくなつてしまいました。
  331. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それでは交際費もないのですか、それを聞かしてください。四人ですからどうにでもなりますから……。
  332. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 交際費は全体といたしまして年額百二十万円、これは各省同じであります。
  333. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それは非常に少いから何とかしたいと思います。それからもう一つお聞きしたいのは、各府県の国警の隊長ですね。この人の給料は一体幾らくらいもらつておるのです。これを聞かしていただきたい。
  334. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 人によりまして違いますけれども、先輩の隊長、新進の隊長、いろいろありますので、新進の隊長がおおむね二万六千円ぐらいであります。古参の隊長になりまして三万五千円、大体そんなものであります。
  335. 大石ヨシエ

    ○大石委員 安いな。そうするとこれの交際費は一体幾らぐらいありますか。これをちよつと聞かしてください。
  336. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 交際費は全国で年額二百五十万円であります。
  337. 大石ヨシエ

    ○大石委員 全国で二百五十万円をわけるのですか。
  338. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 五十にわけるのですから五万円です。
  339. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それから長官の給料のお話は、税込みですか、どつちですか。こまかいところを聞いてえらいすみませんけれども……。
  340. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは本俸で税込みです。それからそのほかに地域給、家族手当、そういつたようなものがつくわけでありますが、税金その他差引かれますので、手取りは大体その本俸、結局六万八千円です。
  341. 大石ヨシエ

    ○大石委員 もう一点聞きます。先ほどわが党の中井委員がお聞きになりましたが、皇宮警察学校の訓練の内容をちよつと聞き漏らしましたので、もう一度聞かしてください。
  342. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 皇宮警察学校は皇宮護衛官の教養を担当いたすのであります。最初に採用いたしますときは、一般警察官としての基礎的訓練を施しまして、それから皇宮警察学校におきまして皇宮護衛官として必要な独自の教養いわゆるみがきをかけて、そうして職務につくことになつております。これは皇宮護衛官の初任者の教育であります。そうしてさらに皇宮護衛官として勤務しております者を、適時適当の数いわゆる再教育をやつております。教えております内容は、皇宮護衛官としての心構え、民主主義の理念に徹して、皇宮護衛宮としての責任を全うし得るように、職責の十分なる自覚を持たしめるということを基本といたしまし、同時に皇宮護衛官としての職務執行上必要なる実務をあわせ教えるわけであります。
  343. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私は簡単に質問を終りたいと思うのですが、昨年京都に天皇皇后さんがおいでになりました。そして私たちもそばに行きましたところが、どうしてもそばに皇宮警察の巡査がおつて寄せつけない。そういうふうな教育をなさつておるのでございますか。これではだんだん天皇民衆というものが離れて行く。主権在民であります。それがさかさまになつている。そうしてわれわれ代議士が、国民の代表者が天皇皇后さんのそばに寄ろうとしても、そうした皇宮警察の人がじやまをして、なかなか寄ることができない。皇宮警察学校というものはそういうような訓練をなさつておるのでございますか。その点齋藤さんにお聞きしたい。
  344. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 皇宮護衛官といたしましては、天皇皇后陛下国民の間をできるだけへだてなく接することのできますよう、こういう点をやはり常に念頭に置いておるのでございまして、この点は同時にまた天皇陛下のお心持でもあるわけでございます。従つて国民大衆と陛下とを隔てるようなことがありましては、これはまつたくその趣旨に反するのでございます。もし大石委員のおつしやりますようなことがございましたといたしますならば、よく調査をいたしまして、今後そういうことのないよう、さらに注意を加えたいと存じます。
  345. 大石ヨシエ

    ○大石委員 イギリスでもこういうものがありますけれども、イギリスはもつと非常に民主化した制度をもつて、そうして皇帝に仕えております。もし本案が通過いたしましたならば、齋藤さんにお願いいたしますが、もつとイギリスのように民主主義的に、どうぞこの人々を御教育くださることを、私は切にお願いいたします。  それからもう一つ国有財産について、この七十七条に「国有物品当該都道府県警察無償使用させることができる。」こうございますが、たとえて言うと私の郷里の舞鶴、その舞鶴の市民がこしらえた警察が今度は府警になつたら取上げられるが、これはだれが補償してくれるのでしようか、ちよつとお尋ねをいたします。
  346. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 舞鶴の市警は、京都府の警察になりました場合における舞鶴の市警の庁舎の移転の関係かと存じますが、これは実際舞鶴の市警は警察法施行後新しくそれがつくられたものであるかどうか、そのときの財源関係がどうであるかということによつて異なるわけでございますが、これを有償で買い上げるという場合には、これは京都の府費になります。でこの場合は国が半額補助をする、こういうことになります。
  347. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私はもう一つ聞きたいのですが、これは附則十六の前に「(休職、特別待命又は懲戒処分に関する経過規定)」とありますが、これはどういうことなのでございますか。ちよつと教えてください。
  348. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 これは、この法案によりまして職員の身分がかわるわけであります。その場合におきまして、従前の組織におきまして休職や、それから最近にありますような特別待命や懲戒処分を受けております者の考課というものは、そのまま新しく組織がかわりましても、その休職や、特別待命を受けておるということや、懲戒処分を受けておるということの考課が、残つて移るという旨を規定いたしたものでございます。
  349. 大石ヨシエ

    ○大石委員 わかりました。
  350. 中井一夫

    中井委員長 大石さんの御質疑は終了いたしました。よつて西村力弥君。
  351. 西村力弥

    西村(力)委員 時間も大分過ぎましたので、簡単にやりたいと思います。  きようは五章以下一括しての、質疑打切りということでありましたので、しばらくごしんぼうを願いたいのですが、第六十一条の警察官階級のところですけれども、これは旧法によりますと、この階級の中には長官も含められている。ところが今回の警察官階級の中には警察長官は除かれておる。ここに、この長官というものの存在に対する思想が、相当懸隔を来しておるのだというぐあいに私は見ざるを得ないのです。このため、こういうぐあいに改正せられた考え方、これを貫く思想、そういうことについてひとつ御意見を承りたいと思うのです。
  352. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 御質疑の中にも出ましたように、長官警察官職務を行う者になつておりまして、警察官の一人にはなつておるのでございますが、特に長官というものを階級名といたさなかつたのであります。長官長官という階級にして、この羅列のどこかに入れるとか、あるいは長官を、警視総監にするとかいう考え方をとりませんで、長官警察官としての地位は、長官の権限というものがこの組織の中でおのずから明らかになつておりますので、そういう地位を持つところの警察官であるということで、——特に警察官階級の中に長官というものを入れなくても、長官の地位というものはこの警察法の権限の中で、おのずからその地位はどういう指揮監督権を持つておるとか、どういう事項を所管しておるかということでわかる、こういう意味から、階級をあえて設けなかつたわけであります。
  353. 西村力弥

    西村(力)委員 この階級というものは、何も警察法そのものによつて権限や何かを明記されておるそのままの階級ではないとぼくは思うのです。しからば、警視総監ならわかるが、警視監というものはこの法律のどこに出ておるか、巡査部長というものはどこに出ておるか、その権限がわからない。そういう議論は私どもには受取れないのです。警視正とか警視とか警部とか——これは、警部はこれこれの権限を持つというぐあいに、すべてがそういうぐあいに権限によつてこの階級名がきまつておるのならば、今の答弁はそれでいいのですけれども、これでは少し受取れない答弁であると思うのです。もう一度御答弁を願いたい。     〔委員長退席灘尾委員長代理着席
  354. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 ここに階級として掲げておりますものは、階級名ということ以外には、権限は特に書いてないわけでございます。長官についてはすでに職務としての内容が明らかでございますので、ここの階級の中へ加えなかつた。「長官を除く。」ということで、長官階級の中から除いてあるわけでございます。長官がこの階級の頂点に立つという考え方をとらなかつたのでございます。
  355. 西村力弥

    西村(力)委員 しからば、前の警察法第十五条の中にこれを階級の中に入れておつて、その権限ははつきりとその警察法に示されておる。だからこの場合にも示されていいはずである。前とあととでは条件は同じなんです。法に現われている権限の明文化というか何かそういう点においては同じであるはずである。そういうぐあいに同じであるのに、このときだけ除いたのは何か別個の理由があるものと私たちは考えるのです。だからそういう理由づけではだめである。前の場合にはそう載せておいたために非常に不都合であつたとか、あるいはまつたく不要であつた、こういうような理由であるならばとにかく、今の理由ではとうてい私たちは納得できない。もう一度御答弁願いたいと思います。
  356. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 先ほどの御答弁を繰返すようになりますけれども、長官につきましては、もう一ぺん長官という階級をここに書いても、別段さしつかえないといえばさしつかえないわけでございますが、長官というものの地位は、国家公安委員会の管理のもとにおいて、こういう地位にあるということは、この法案の内容でおのずから明らかであるので、特にこの階級の頂点に長官が立つということによりまして、中央の警察庁の長官というものが、全国の警察官の頂点に立つのだ、そうして六十二条によりまして上官の指揮監督を受けて警察官が全部事務を執行するということでは、いかにも長官というものが全国の警察官の頂点に立つて全国的に指揮監督をするということは、この法案規定している趣旨と相違している点がございますので、長官は特に階級というもので羅列をいたさなかつたというだけでございまして、警察官であることについてはかわりがないのでございます。
  357. 西村力弥

    西村(力)委員 警察官であることにかわりがないが、そういう場合に、たつ一人が頂点に立つというぐあいに、一人だけだからといつてどうこうというならば、警視総監は何人ですか。これだつて一人じやないか。それならばこの権限もはつきり法律で示されておるのであるが、こういう階級もつくる必要はないということになるのではないか。これで思いますことは、旧軍隊においては、一体どこまでが階級であつたか。元帥まであつた。大元帥というものは階級から除かれておつた。こういう一連の思想を持つておる。齋藤長官はやがて警察長官になろうとする。それはかつて天皇と同じように、その地位というものが保障されるのであるから、これは一生懸命になつて、この法案の成立に努力するのもむべなるかなと思わざるを得ない。こういうぐあいに思われる。そういう思想がうかがえるような旧法をかえた扱い方は、私は決して正しいことではないと思う。やはり平巡査からとことこ上つて警察官の最高の地位である警察長官まで行けるという、この階段をこの警察長官でぽつんと切るということはやめた方がいい。大元帥になるということは不心得であるというふうに、警察長官だけ雲の上に置くようなぐあいに考えられるこの階級づけは、私はいけないと思う。こういうところにこの法律がベリヤに比類する警察長官の地位を確保するという疑いがここにはつきり現われて来るというぐあいに思われるのです。御所見を伺いたい。
  358. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 この点は今林法制局次長がおられると非常によかつたと思うのでございますが、事実はただいまの御所見とまつたく反対でございまして、われわれ原案といたしましては、現行法の十五条の二に、長官階級の中に入つておりますから、そのまま実は法文で書いておつたのであります。ところが法制局の御意向としてはとにかく最高でしかも一人しかないものを、ここにわざわざ階級へ入れることはおもしろくない。これは西村委員が御了解されるのに非常に困難であると同様に、われわれもこれを了解するのに非常に苦しんでおります。察するところ一人しかない長官というものをここに書いて、全国の最高位の者が長官だということをここにまたちらつかせることは、思想上おもしろくないのではないかというふうなお考えであつたのではなかろうかとわれわれ感じまして、法制局の御意見通り、それでは一人しかない最高の者は階級から除くという御意見に承服しましようということで承服をいたした次第であります。
  359. 西村力弥

    西村(力)委員 この点はそれで打切りますが、法制局の先ほどの答弁を三百代画以外の何ものでもないように私は聞いておつた。それにつきましてこの公安委員会関係する各都市なんかでつくつている条例は、公安条例以外にないのか。どういう条例がそのほかにあるのか。それをお知りの範囲でひとつ知らせていただきたい。
  360. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 各地方には、たとえば売春条例というのがございます。これはおそらく届出とかなんとかいう点はほとんどないだろうと考えます。従つてそのまま適用するのにさしつかえなかろうと考えます。ところが騒音防止条例をつくつておられるところがあります。おそらくある一定の騒音以上のものをある地域において出すためには、許可がなければ取締りの対象になるというような構成をとつている条例があると思います。従いまして公安条例のほかに、私の知つておるのでは騒音防止条例だけであると考えております。
  361. 西村力弥

    西村(力)委員 そのほかに都市清潔条例みたいなものはありませんか。
  362. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これはあるいは市の衛生局あたりで出しておる屎尿問題の条例があるかもしれませんが、警察はこれに関係しておりません。
  363. 西村力弥

    西村(力)委員 政令に委任するという七十八条ですか、こういう場合には、そういう公安委員会に関連ある条例すべてを、そのようなぐあいに政令で暫定的な効力の維持をはかる、こういうぐあいになるわけですか。
  364. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 これは先ほど自治庁あるいは法制局から御説明がありましたように、この法律の改正によりまして、今まで市町村公安委員会という文字を使つて、条例とかあるいは法律とかいうものにすでに書かれておる。ところがこの法律で市町村公安委員会あるいは市町村の警察組織というものをなくして、そのかわりに都道府県公安委員会都道府県警察組織ということにこれでかわるわけでありますから、これをすべてそれぞれの条例、それぞれの法令で一々さように改めるならばそれでよいわけであります。ところがもし改めなかつた場合、または改めるまでの間不便のないようにという意味で、市町村の公安委員会、こう書いてあるものは、都道府県公安委員会と書いてあるようにみなすというような政令をつくるわけであります。それ以外に何ら権限を与えたりあるいは減らしたりするものではございません。
  365. 西村力弥

    西村(力)委員 そうしますと公安条例だけを暫定措置でやるというわけではなくて、公安委員会関係するものは全部やるというわけでありますか。
  366. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 さようでおります。
  367. 西村力弥

    西村(力)委員 その件について先ほどから自治権の問題については論議が進められまして、われわれはどうしても納得せられないまま終結のような状態になつておるわけですが、それはそれでおしまいにしたいと思います。  それから齋藤長官が、昭和二十四年の何月かに訓示をやつたところをずつと興味深く拝見しておつたのでありますが、そのうちにこういうことが書いてある。「我が国家地方警察こそ国内治安確保の最後の備えであることの責務を銘肝し実力において国民の信頼をかち得るよう強固なる決意と不断の用意とを望んでやまない次第である。」、こういう訓示をなさつておるのですが、警察が治安確保の最後の備えであるという、こういう責務の自覚は、今もやはりかわりないかどうか、この通りにやはり考えられていらつしやるかどうか。
  368. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 どういう文句でありましたか、今ちよつと探しておりますが、そのときの考え方といたしましては、私は国内治安を基幹といたしまして、国家地方警察は、市町村警察からいろいろ応援要請があつた場合に、何時でもこの要請に応ずるだけの備えと実力がなければならない、かような意味からいたしまして、そういつた要請に十分こたえられるように、法律上応援の要請があつた場合に出かけて行つて、何らの力にならないというようなことであつては相ならない、こういう趣旨で申したと考えております。
  369. 西村力弥

    西村(力)委員 私の質問は、そういう趣旨で、かつて話ざれたのを、今もやはりそのようなぐあいに考えられておるか。この警察法立案の心境というか、そういうものはこういう自覚に立つてなされておるかどうかということなんです。
  370. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 私は警察国民のほんとうの信頼を博し、その負託にこたえなければならないという自覚はかえておりませんが、今度の警察法は、今までの自治体警察国家地方警察の二本建を廃止するという前提に立つておりますから、従いましてそういつた意味におきまして、この警察法の今後の施行の中心になるものは、現在の国家地方警察が中心になつてつて行くというような考えは毛頭ございません。国家地方警察自治体警察がなくなつて、ここにほんとうに新しい警察が生れ出て来るものだ、これをつくり出すものは、今日の自治体警察国家地方警察職員が新しい警察の根幹になる、かように考えております。
  371. 西村力弥

    西村(力)委員 治安確保の責に任じようという立場で、この十全を期しようとしてやられるという御答弁はその通りだろうと思うのですが、ただ昭和二十三年度においてこういう訓示をなされたのですが、現在は治安確保の最後の備えであるという、そういう思い詰めた立場はもうないのではないかと思うのです。そのときには軍隊はない。よろしい、私はその最後の備えとしての責任をとる、そうしてまた警察官一般に対してその備えであるという自覚を持てという訓示をなさつたと思う。そういう点から行きまして午前中阿部委員からもいろいろお話があつたのですが、この武器の所持ということは相当考慮すべき段階に来ておるのじやないかと思う。そのころは最後の備えという考え方に立つてのことでありましたが、現在は、先ほどありましたように緊急事態が発しなくても自衛隊の出動があり得ると長官自身が答弁なさつておるとするならば、警察武器の所持というものはもう少し考え直されてよい段階ではないか、かように思うのであります。少くとも小型武器というような武器の内容が明示されていない、ときによつて小型武器の名をかりてその所持武器の範囲が相当拡大されてもさしつかえないようなこういう言葉というものはやはり一考を要するものである、私はさように思うものでございますが、長官の御答弁をお願いしたいと思う。
  372. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 警察の所持しております小型武器すなわち拳銃を依然引続いて所持するのがよろしいかどうか、この点につきましては、昨日でしたか大矢委員からの御所見を交えた御質問もございまして、御答弁をいたしましたように、西村委員のお考えのような考え方ももつともな点もございます。今日といたしましては十分慎重に考えまして、はたしてこれをずつと将来も続けて行くかあるいはどうであろうかということをよく検討をしてみる必要がある、かように考えておることを申し上げます。これによつて御了承いただきたいと思います。
  373. 西村力弥

    西村(力)委員 この御答弁によりますと、現在所持する武器よりももつと拡大して武器を所持せしめる、こういうような意思は全然ない、こういうぐあいに受取つてよろしゆうございますか。
  374. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 ただいまの状況におきましてはさようでございます。
  375. 西村力弥

    西村(力)委員 ただいまの状況ですというと、ただいまのところ憲法を改正いたしませんという答弁と大体似ておる。あまりわれわれは信用できない。日本国民全体が、ただいまのところということはもう信用しなくなつて来ておる。われわれもとうてい信用できないような状態ですが、ゆめおそろかに——警察官が権力というものに興味を持つてというか、私が前から言つておることですが、権力を持つものは権力を行使する、次第にそれはもつと大きな権力を行使したい、あるいは権力によつて無理をすれば、その無理を正当化するために、その無理から来る反撃から自己防衛するために、ますます権力を強めようとするのが自然の行き方である。そういう点からいつてこの小型武器に関するただいまの御答弁は、ただいまのところばかりじやなくて将来とも確実にというぐあいに腹をきめてやつてもらいたいと思う。  次に先ほど朝鮮の李承晩の問題を申し上げましたときに、小坂大臣は簡単に、笑うべきことであるというようなぐあいに答弁なさつたようでございますが、しかしあの李承晩が大統領の座から追放されようといういわゆる政治情勢になつたときの彼の狂暴そのものは、彼を守ろうとするアメリカ自体でさえも、民主主義の名に表面的に恥じざるを得ないという立場をとるということになつているほど極端な行き方になつておる。この七十三条の緊急事態布告を発した場合、国会における承認とか、そういうものに対する扱いをもつと厳格にやつておかなければ、ほんとうに政治情勢が悪化した場合においては、このことは私たちにとつては非常に危険な状態を予想される、ここのところははつきり国会が閉会中の場合はただちに二十日以内に国会を召集する、あるいは衆議院が解散されておる場合には、参議院の緊急集会を求めてその承認を求めるというぐあいに、これは明瞭にしておいていただかなければならない、こういうぐあいに私は思う。この点に対して大臣の御所見を承りたい。
  376. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点に関しましては、先ほども申し上げましたが、私は気持においてはあなたと同じであるわけでおります。ただここにございます書き方は、両院の同意を得て承認すべきものであるという考え方でおりまして、一院の緊急集会というような手続よりも、緊急事態布告というようなものについてはもつと厳格に承認を得なければならぬという趣旨でございます。
  377. 西村力弥

    西村(力)委員 厳格であればこそやはり発動こそ厳格でなければならぬ。その厳格を保障をするのは、やはりいち早く国会の意思というものを問うという原則を貫かれて行かなければならないと思うのです。この承認を厳格にというような、そういうこと以前の布告そのものを厳格にという立場から、早く国会の意思を求めるという立場をとつておかなければならないと思う。この点は今後とも十分に研究を願いたいと思う。  あと次に塚田長官にお尋ねしたいのですが、一体地方自治という考え方からいいまして、国家公務員が地方公務員を任命するという、こういう警察の人事行政のあり方というもの、こいつは一体どうであるか。それから自治体の一つの機構である自治体警察というもの、その中にぽつりぽつりと国家公務員が入るというならばともかく、その一番の長が国家公務員であるというような姿、こういうものに対して、自治という本義からいいましてこういうことは正しいと思われるか、好ましいと思われるか、これは避けるべきものと思われるか、そういう点についての御見解を承りたいと思います。
  378. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは私も国家公務員、地方公務員、それから国、自治団体というような機構というものの本来のあり方からいいまするならば、なるべくはそうでない方が好ましいというように考えるわけでありますが、しかしそういうような考え方が、ある特殊な国の行政の運営の上に非常に問題点が多くあるということであれば、必ずしもそれに対する例外的なものの考え方が許されないというような性質のものでないと私も考えておりますので、警察の場合におきましてはこの警察行政というものの特殊性にかんがみてやむを得ないであろう、こういうように了解をいたしておるわけであります。
  379. 西村力弥

    西村(力)委員 私の質問は時間もございませんからこのくらいにいたしたいと思いますが、自治庁側としては、いやしくも憲法に地方自治というものが確立されておる、そういう精神というものを忠実に守つて行くという立場をとつていただきたいということを、われわれは常に念願とするのであります。それがやはり政府の政策の一環としてゆがめられており、しかも守り得ないで、それを何とか正当化するような答弁をしなければならないということを私は残念に思つておるわけです。それでそういう点はひとつはつきりとやつてもらいたいということを希望して、私の質疑を終りたいと思います。
  380. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 横路節雄君。     〔「簡単にやれ」と呼ぶ者あり〕
  381. 横路節雄

    横路委員 私は簡単にやります。非常に大事なところを聞きます。自治庁長官にお尋ねしたいのであります。齋藤国警長官にきのうから私は聞いておりますと、いわゆる都道府県の治安についての最終的な責任は知事にあるのだ、国の治安に対する最終的な責任は内閣総理大臣にあるのだ、こう言つている。ただいま西村君からもお話がありましたように、今度のこの警察法の中で、たとえば第六章の「緊急事態の特別措置」については、なるほど内閣総理大臣が非常な治安に対する責任を持つていると同時に強い権限を持つているわけです。なおこの点につきましては自衛隊法案の中の第六章の「自衛隊の行動」の中において、第七十八条、「命令による治安出動」というところに、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と規定しているわけで、非常に内閣総理大臣の権限を大にしている。ところが都道府県の治安の最終的な責任は知事だというが、一体知事はどうなつているかというと、この警察法の中には何もない。現行警察法においては第二十条の二に、「都道府県知事は、治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるときは、当該都道府県の区域内の市町村警察の管轄区域内における当該事案を国家地方警察に処理させることを当該都道府県公安委員会に要求することができる。」とあつて、最後に都道府県知事は「当該事案の処理が終了した後すみやかにその旨を都道府県の議会に報告しはければならない。」と、こういうように第二十条の二にうたつてあつたのを、これをまつたく削除してあるわけであります。削除して内閣総理大臣だけの権限を厖大にしている。こういうことでは都道府県の治安の最終的な責任は知事にあるということが一体どこで言えるか。この点は自治庁の長官として当然御相談になつたろうと思うのですが、都道府県知事が最終的ないわゆる治安についての責任を負うのだということが、現行警察法にはこれだけ規定してあつたにかかわらず、これを削除してあることについて、一体長官はどういう見解を持たれているか、その点を自治庁長官にお尋ねしたいと思うのです。     〔灘尾委員長代理退席、委員長着席〕
  382. 齋藤昇

    齋藤(昇)政府委員 自治庁長官お答えになられます前に、現在の二十条の二の都道府県知事の権限を削除いたしました理由だけを私から事務的にお答えいたします。これは条文にございますように、市町村警察が十分なすべきことをしない、このために都道府県の治安としては放置ができない、こういう場合に都道府県国家地方警察に対してこの事件を処理するようにという要請ができる規定でございます。ところが今度は都道府県の一本の警察に相なりまして——現行法の場合におきましても都道府県公安委員会はこういう場合に知事に勧告をするという規定もあるわけでございますが、ところが今度は一本の警察になりまして、都道府県知事の任命にかかる公安委員会都道府県の治安の責任に任ずるわけでございますから、従つて市町村警察がなくなることになりまして、当然この二十条の二がなくなつた、かような経過でございますから、その点だけをお答え申し上げておきます。
  383. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 きわめて特殊な問題でありますから、自治庁に関する答弁は次長からお答えすることを御了承いただきたいと思います。
  384. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 警察に関する事務を府県知事が直接行うか、あるいは他に委員会をもつて行わしめるかということは、いろいろ議論がありましようが、とにかく公安委員会を設けて府県警察に関する事務は公安委員会をして行わしめる、こういう建前をとつておるわけでございますから、従いまして知事といたしましては、他の各種の行政委員会の場合と同じように、その委員会を構成するにあたつて、いろいろ任免権を行使する、こういうことを定め、またこの公安委員会というものが知事の所轄のもとに置かれるという関係を定めておるわけでございまして、そういうようないわばひとつの組織上のつながりを持つ以外は、公安委員会警察のことはあげてまかせる、こういう建前をとつているわけでございますから、今の自衛隊法との関係でございますが、警察に直接関連をいたさない事項に相なりますれば、やはり知事が府県という自治団体の総合的な執行機関という建前でございますから、災害等の場合におきまして、あるいはその他の場合におきまして権限を持つということは、あつておかしくないのではないかと考えるのであります。要するに警察に関する特殊機関を設けたところだけは、知事の権限の中から抜けるわけでありますが、それ以外の一般的な事項として知事がある種の権限を自衛隊法によつて与えられるということは、建前として考えられることと思うのであります。
  385. 横路節雄

    横路委員 今の次長の説明で、警察に関しては都道府県知事の権限から除いたんだ、こういうことになると国警長官が何べんも答弁しているように、治安に関する最終的な責任は知事なんだということとは違つて来るのです。この点につきましては自衛隊法案の第八十一条に、要請による治安出動という中に、「都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、当該都道府県都道府県公安委員会と協議の上、内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。」こうなつている。そうなれば当然、内閣総理大臣が国の緊急事態の場合にやるように、なぜ一体警察に関してもそういうことがやり得るようにしないのかということを聞いている。だから私が聞いているのは、都道府県警察自治体警察でないのだ、だからこれは知事の権限の及ばないところだ、わずかに都道府県の公安委員を任命するという間接的なことなんですから、より国家的な性格なんだと言つてくれる方がいいのですが、それをどうも都道府県警察というものは自治体警察で、しかも最終的な責任は知事なんだという。それならなぜ一体警察に関して、この第四章の中にございます都道府県公安委員会が、他の都道府県公安委員会の要請を認めてやるということ、これは本州のように数府県にわたつているところは、当然私はそういう知事の最終的な責任であるならば、知事がやはり自衛隊法案のようにみずからが発動できるように、これを入れることによつて初めて私は知事の最終的な責任が負えるのではないか、そういうことは私は非常に矛盾だと思う。それで聞いているのです。矛盾ではありませんか。どうです。
  386. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 都道府県知事といたしましては、法律上たとえば公安委員会でございますとか、あるいは教育委員会でございますとか、そういうような特殊な独立の行政委員会を設けておりますもの以外は、一般的な権限を執行機関として持つているわけでございますが、しかし公安委員会の所管に属する警察事務につきましても、たとえば警察に関する条例の提案をする、あるいは警察に関する予算の発案をするというようなことは、やはりこれはいずれも知事の責任でございます。そういうふうに知事は総合的な一般的な執行機関としまして、警察事務につきましてもやはりそういう意味では最後の全般的な総括的な責任を持つているわけでございますから、従つて今の御指摘の自衛隊法において知事に御指摘のような権限を与えるということは、必ずしもこの公安委員会を認めた建前と矛盾するものではないと考えるのであります。この点は別に、それだからと申して、府県警察の性格が自治体警察でないということにはならないことではないかと考えるのであります。
  387. 横路節雄

    横路委員 時間が大分たつておりますので、私は齋藤国警長官に明日文書でお願いしたい点が一つある。それは北海道の今度の旋風、大暴風、季節はずれの積雪等のために死傷者や倒壊家屋等が出ているわけです。これは通信その他が杜絶しまして、全然情報がわからないわけであります。この点につきましては、やはり治安上重大な問題なんです。従つて私は、明日ぜひ本委員会において国警長官から北海道の今回の災害の全貌について明らかにしてもらいたい。  もう一つは、これは自治庁長官に、私はこの点もあわせてお願いしたい。二三日前からの雪で積雪一尺以上に上つている。これは本州方面におけるところの霜の害等の類ではないのでありますが、そういう意味における被害がどれくらい出ているか、こういう緊急事態に対処する対策は一体どうなつているのか、これは本地方行政委員会としても重大な案件でございますので、この点も明日ぜひここでひとつ御発表願いたい。この点は今これからお聞きしても、情報等おとりになるのに時間もかかると思いますので、明日お願いしたいと思います。(「明日でなくてもいいじやないか」と呼ぶ者あり)この点は委員長にお願いしたい。これは突発的な緊急事態なんですから、明日の委員会において御発表願うよう、おとりはからいいただきたいと思います。  次に私は小坂さんにお尋ねしますが、この経過規定の中で私の非常に大事だと思いますことは、今度のこの法律が施行された後におけるところの国家公安委員の任命の点です。この点につきましては、国会が休会中の場合においては、これは経過規定の附則の六のところでございますが、国家公安委員会委員の任命については、国会の閉会または衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、第七条第一項の規定にかかわらず、委員をまず任命しておいて、それから任命後最初の国会で、両議院の事後の承認を得なければならないと、こうあります。この点については、この警察法が通つて施行され、しかもこれによつて初めて組織上から行けば上から下まで一本に通つた警察制度ができる、その中核になる国家公安委員を、国会が閉会中だから内閣総理大臣が任命しておいて、あとで国会の同意を得るということは、この点は私は当然この分だけに関しても国会を召集して、国家公安委員の任命については同意を得るという、これだけは立てておかなければ、私はますますそのときの政府、今日からいえば自由党内閣が非常に警察権力を濫用するという危険がございますので、原案はこういうようになつておりますけれども、この点だけはぜひそういう用意があつてしかるべきだと私は思うし、与党の諸君といえどもこの点についてはやはり十分修正の用意がなければならぬと思うのですが、大臣どうですか、この点は。私は非常に危険だと思うのです。
  388. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見のほどはよくわかりますし、またこの警察法はぜひ通すべきものであるというお考えであとのことも御心配いただき、非常に感謝いたしております。それほど御好意がございましたらぜひひとつ早く御通過をはかられまして、この会期中にもおはかりできますようにお願いいたしたい。これは私のはなはだかつてな願いかもしれませんが、そういう気持でおります。
  389. 門司亮

    門司委員 関連して。今の大臣の答弁ですがおかしいですよ。なるほど法律の中には七月一日前に、事前に工作することができるという条文が入つております。入つておるけれども施行は七月一日なのです。だから国会の会期中にやろうつたつてそう簡単には行かない。事前にやれるということは書いてある。しかし親切なやり方とすれば、むしろ横路君が言うように経過規定の中に、次の国会を召集して国会の承認を得るまでは、現在の公安委員の諸君が在職しているということが行き方としては私は正しいと思う。法律が通つてしまえば公安委員を同時にみな首初つてつて総理大臣がかつてにきめるのだということは、きわめて一方的の独善的の物の考え方だと思う。そこに吉田内閣の性格が現われて来ておる。府県公安委員会つて同じことだ。警察行政が移らない前にちやんと準備ができるようになつている。前の委員を置いておいて準備することができる、こういう経過規定のあり方というものはおかしいと思う。一方においては、経過規定の中にはさつきからいろいろ議論のあるようなことが書いてあつて、公安委員のところには、当然次の国会の召集があつて国会の承認を得るまでは、さつき申し上げましたように現在おる公安委員がそのまま職務を執行して行くということが、現在の公安委員に対する儀礼でもあると思う。だからこの点については大臣はどうお考えになりますか、そういうことは一切おかまいなしで、とにかく法律が通ればみなやめさせて、自分の気に入つた者を任命する、お前たちはどこへでもかつてに行けというのは、きわめて人情味のない経過規定だと考えておりますが、大臣はどう考えておりますか。
  390. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 経過規定にこう書いてあるから、あとの運用も一切考えずにでたらめにやつてもいいのだというようには私どもまつたく考えておりませんので、やはり制度をつくる以上は、その制度が非常にうまく円滑に運営されることを期待するわけであります。無茶はいたしませんし、御趣旨のあるところは十分承知いたしました。
  391. 横路節雄

    横路委員 私は自治庁の鈴木次長にお尋ねしたいのですが、第六十七条に被服の支給ということがありまして、「国は、政令で定めるところにより、警察庁の警察官に対し、その職務遂行上必要な被服を支給し、」とあります。実は前に私は大蔵省に参りまして、今の事務次官である河野氏が主計局長時代に、こういう問題と関連してこれを聞いた。それは北海道の公務員に対する石炭手当は、ほんとうは現物支給であるべきで、現物支給であるべきものを金でやつたら税金を引かなくてもいいのではないか、もしも手当であつて、税金を引かなければならぬということになれば——石炭は現物支給だ。それでは被服についてそういう例があるのかということを言つたら、それは全部貸与だ、そして二年とか、三年とか勤務すればその被服は使用ができなくなつたというので廃棄処分にするのだ、だからそういうものとは意味が違うのだ、私はこういう説明を受けたのですが、これを見ると、「被服を支給し、」となつている。今ちよつとここの衛視の諸君にも、君たちの被服は一体どうなつているのだと聞いたら、これはやはり貸与なんだ、貸与をして二箇年たてば大ていぼろぼろになつて廃棄処分になるので、実際上は、支給であつても貸与なんだ、貸与であればこそ税金がかからないのである。これは支給なんですが、一体こういう問題について、こういうことがはたして前々から行われているのか、それからなお都道府県において、衛視、小使、そういでような人に対しても被服は貸与になつているのか、支給になつているのか、この点は将来の問題としてあなたにお聞きしておきたいのです。この問題はどうなつていますか。
  392. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この点は国家地方警察本部の方から具体的にどういうことでございますか、御説明を願つた方がいいと思いますが、ただ地方公務員法との関係から申しますると、いかなる有価物も条例に基かずしては職員に支給してはならないということが二十五条にあるわけであります。逆に申しますならば、法律なり条例に基いて職員に対して被服を支給するということは、地方公務員法も認めておるわけであります。ですからただいま御指摘の点は要するに現物として被服を支給いたしました場合に、その被服の対価に相当いたします金額を現実に金銭の給与が当該の職員に給付されたものとして、所得税なり市町村民税をその者からとるかどうかということになるのでありますが、これは少くとも私ども税法の関係のことにつきましては——国税のことは私いささか所轄外でございまするので、答弁申し上げるのはいかがかと存じますが、地方税に関しましてはかような被服として支給いたしましたものを、それが金銭が支給されたものとして、所得額として計算をして、税金をとるということはないと考えているのでございます。
  393. 横路節雄

    横路委員 今の点非常に重大なんです。そうすると次長の今の答弁は、被服として支給したものは、それが現金であつても税の対象にならないというのですね。これは非常に大事なんです。この点ばどうなんですか。もう一ぺん聞きます。貸与であればいいけれども、かし支給というときに税の対象にならないかどうか、私はこの点いろいろほかに問題があるから聞いておきたい。
  394. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今横路委員の仰せになりましたことは、被服手当というような意味で仰せになつたのでございますか。——そういうことでございますと、違うと思うのであります。先ほど来私が申し上げましたのは、現物の被服を支給いたしました場合に、その被服の対価をそれだけの所得があつたものとして税をかけることはない、こういうことを申し上げたのであります。しかし被服手当ということになりますと、これはその他の特殊の手当と同じような性格のものになりますので、税の上においてもやはり同様に扱われることになろうかと考えます。
  395. 横路節雄

    横路委員 それでは私は小坂さんにお尋ねしたい。それぞれの会社が現物支給をするわけですが、たとえば石炭手当でなしに、要求されたときに、石炭を三トン支給してある、四トン支給してある、何を支給してやつたというこの現物支給は、そうすると一体税の対象にならないわけですね。これは労働大臣として、民間給与等においても重大な影響を持つ。現物支給は税の対象にならないのだということがここで確認されれば、私はそれでもいいのです。だからその点さえはつきりされればいい。現物支給は税の対象にならないのですか。
  396. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その前に私、先ほど門司委員お答えいたしました言葉が足りなくて、あるいは誤解を生むといけないと思いますので、一言補足させていただきたいと思います。  私は門司委員の言われる趣旨はよくわかると申し上げたのでございますが、門司委員のお言葉の中に、この法律の施行の最初に、任命される国家公安委員会委員並びに都道府県公安委員会委員の任命は、七月一日以後でなければ任命ができぬというようなお話があつたのを伺つたのですが、私ちよつと取落しておりましたので、これはあなたのお考え違いでありまして、その前にできるのであります。でありますから国家公安委員会委員の任命は、国会の会期がいかようになるか存じませんが、いずれにいたしましても、会期中でありますれば、そのときにできるのでありますから、その点はひとつ御了承願つておきたいと思います。  それからただいまのお話でございますが、福利厚生施設として、たとえば会社等が現物支給という形でなくて、福利厚生のためにする支給といいますか、そういうものでありますれば、国税においてもかかつておりません。
  397. 横路節雄

    横路委員 今のお話はちよつとわかりかねるのですが、私は具体的に聞いているのです。今警察職員に対して被服を支給して、これは現物支給だから税の対象にならないというお話ですが、手当でなしに石炭を三トン支給してやつた、あるいは被服手当でなしに被服を支給してやつた、何を支給してやつた、こういう現物については税の対象にならないということに、政府としては一致した御答弁であるかどうかということを聞いておるのです。
  398. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは税の問題でございますから、私からお答えするのは適当でないかと思います。いずれ大蔵大臣からお答え申し上げるのが適当かと存じます。
  399. 横路節雄

    横路委員 それならばこの問題はあした大蔵大臣に出て来てもらつて答弁してもらわなければならぬ。これは非常に重大なんですから、明日ぜひ大蔵大臣に御出席をいただいて答弁してもらつて、政府の一致した見解を明らかにしてもらわなければならぬ。そうでなければ、今ここへ大蔵大臣に来てもらうか、それでなければいかに理事会の申合せということでも、この重大な問題を打切るわけに行かない、委員長どうしますか。委員長、重ねて申し上げますが、私はこれはたとえば小坂さんにしても塚田さんにしても非常に重大だと思うのです。なぜならば、現物支給については税の対象であるべきでないというのが私の主張なんです。だから皆さんの方でそういうふうにお認めになつて、これは政府部内の一致した見解であるということになれば、私はその方針に従つて——民間給与においてもその他においても、これは現物支給がどんどん来るので、これは非常に重大だから私は聞いておる。どうしてもここで今お答えできなければ、この分だけは恐縮ですが保留していただいて、明日大蔵大臣からこの点についての御答弁をぜひいただきたいと思います。
  400. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一般的な現物給与が税の対象になるかどうか、こういう御質疑でございますから、私はこれは大蔵大臣お答えするのが至当だと存じます。しかし横路さんの御質問は、この六十七条にございまする被服の支給がどうなるか、こういうことでございますれば、私からお答えしてもよろしゆうございます。私はただ一般的な問題についてここでお答え申し上げる権限を持ちませんので、実はそう申し上げておるわけでございます。
  401. 横路節雄

    横路委員 今鈴木自治庁次長から、被服を支給して行くことは現物支給なのだから税の対象になりませんというお話なんです。そうなれば現物支給は税の対象にならないのですか、そう聞いておる。
  402. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それでよくわかりました。この場合あなたの御質問は一般的な現物支給をおつしやるので、私はこれは私の権限外だと存じたのでありますが、この場合は必要な被服の支給なんであります。すなわちその職務を遂行するに欠くべからざるものを与えるわけでありまして、たとえばこの場合被服がないとこの職務が遂行できぬ、こういうことでありまして、その必要品なのであります。従つてその限度においての支給されるものについては、職務を遂行するに必要な品物なんでありますから、その限度において課税の対象にならぬ、こう私も思います。
  403. 横路節雄

    横路委員 それではもう一ぺん小坂さんにお尋ねしますが、職務遂行上必要な現物を支給した場合には税の対象にならぬ、こういうわけですね。
  404. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 警察官職務を遂行するに必要な被服——この場合の被服は現物でありまするが、その場合には課税対象になりません。
  405. 横路節雄

    横路委員 鈴木さんにお尋ねします。私はやはりこの問題は中央財政その他一般にずいぶん関係があると思う。今のお話は職務遂行上に必要なものを現物で支給した場合には税の対象にならぬというのですが、その点をあなたに聞いているのです。それでいいですか、職務遂行上に必要な現物を支給した場合には税の対象にならぬ、それが政府の見解であるというように承つていいですか。
  406. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 この六十七条の「被服の支給」ということは、ただいま大臣の言われましたように、職務遂行上に必要なものとしてこれを支給するということでございまするならば、そもそも給与でないということになるわけでありますから、従つて課税の問題は全然起らない、こういうことになろうかと存じます。
  407. 横路節雄

    横路委員 それでは今の点たけ明らかにしておきたいと思います。今のあなたの御答弁で職務遂行上必要な現場の支給については、税の対象にならないということですが、それでいいのですね。その点だけはつきりしておきます。
  408. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これは給与と認めない、要するに職務遂行上必要な支給である、こういうふうに考えておりますので、そういうことでございますならば、これは税の対象にならないというように考えております。
  409. 横路節雄

    横路委員 この点はもう少しお尋ねしたいと思うのです。柴田さんにお尋ねしますが、警察官の靴はどうなんですか。ここにはないのですが、これは貸与ですか、何になるのですか。
  410. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 この場合の被服は帽子、服、外套でございまして、靴は貸与になります。
  411. 横路節雄

    横路委員 その貸与につきましては、これは職務上必要かどうかということになると、まさかはだしで歩くわけに行きませんので、これは職務上ぜひ必要だと私は思つておりますが、それであればなぜもう一歩進めて帽子、外套、靴まで入れないのか、それこそ片手落ちです。
  412. 柴田達夫

    柴田(達)政府委員 そういうことにもなるかと思いますが、そこまで十分に至つておらないのであります。
  413. 横路節雄

    横路委員 私がこの点小坂さんにお尋ねしたのは、職務上必要だということになれば、炭鉱の坑夫は地下たびが必要なんです。地下たびがなくては中に入れないですから、その地下たびを現物支給してやる場合、これは税の対象にならないということになる。それから作業服です。これだつてまさか裸ではやれないのだということになれば、今鈴木さんから言われたように、職務上必要な現物支給については税の対象にならないということになれば、そういう意味でこれは政府の一致した見解として私はお尋ねしておる。だから皆さんが、政府の一致した意見がそれだと言うなら、きようのこの点は速記にもしつかり載つているし、自由党の方だつて了承しているのだから、私は支給その他については、この六十七条だけは一応これでやめておきます。
  414. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 質問を終りにされるそうでありますが、答えがなければしり切れとんぼになると思いますから、私もちよつとお答えを申し上げますが、六十七条にきめてございます場合は、「職務遂行上必要な被服を支給し、」ということを法律にうたつておるのでございまして、法律上この被服を支給することが必要なりと認めておるのであります。今御指摘の炭鉱その他の現場作業の場合の被服が、そういうことを認めるかどうかということは、これは税務署の認定にかかるものであると心得ております。
  415. 横路節雄

    横路委員 今何回も加藤さんから言われて、よくわかりませんでしたが、先ほどと何か特に重大な意見の食い違いがあるわけではないのですね。ただ法律にうたつてあるからいいのだというわけですか。
  416. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りでございます。従つて今事例をあげて御指摘になりましたような場合は、これは税務署が国の機関として、そういうものが必要であると認定するかどうかにかかつていると思います。
  417. 横路節雄

    横路委員 私は最後に塚田長官一つだけ聞いて終ります。それは都道府県に新しく自治体警察ができまして、これの一切の費用はやはり国庫が支弁する、それから交付金で行く、こういうことになつているのですが、昭和二十九年度において都道府県には、いわゆる自前のもので一体どれくらい財政上の負担がかかるのですか。かからなければかからないでもいいのですが、かかるならば一体どれくらいかかるか、その見通しをひとつはつきり伺いたいと思います。
  418. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 警察に関する費用の分担は三十七条に規定をしておりますので御了承いただいておると思うのでありますが、その国が負担する部分、都道府県が支弁する部分、それから三十七条第三項による国の一部補助の部分等の各金額の明細については、政府委員からお答え申させます。
  419. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 都道府県警察の所要経費は、市町村分と国からまわつて参りますのと両方合せまして、三百十六億でございます。そのうち国庫補助金が二十一億ありまして、別途府県の負担になりますものは八十数億と考えております。しかしこれは先般の地方税法の改正、あるいは地方交付税法等によつて財政計画上それぞれ措置をいたしておるのでございます。
  420. 横路節雄

    横路委員 今の点ですが、八十何億が今回の改正で全部負担できるのですか。私が聞いているのは、地方の税その他によつて国庫が支弁するもの、交付税で行くもの、それから補助金で行くもの、こうなつているのですが、そのほかに地方が税でもつて負担する額は何ぼか、それを聞いているのです。
  421. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今申し上げました三百十六億が、府県の財政計画上の警察費用でございますが、そのうち国から補助金として参りますものが二十一億でございますから、それを引きました二百八十億余りのものが、地方税及び地方交付税の支弁に属することになるわけでございます。
  422. 横路節雄

    横路委員 私が聞いてるのは、国庫の支弁、補助金、交付税を除いて、いわゆる地方がそれぞれの地方税で負担するのは何ぼかと聞いているのです。同じことを聞いている。
  423. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今の横路委員のお尋ねになりました点は、財政計画外の問題でございますか。
  424. 横路節雄

    横路委員 実際負担するのは幾らか、あなたのお見通しです。これは第三十七条には国庫の支弁金が四十八億だ、こうなつておる。今あなたは補助金は二十一億と言うが、それであなたの方の大体いのわゆる交付税の算定では何ぼいるのか。そのほかに地方として、地方の税で負担するのが幾らかということは、当然算定されておると思うが、それを聞いておるのです。
  425. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今まで市町村の自治体警察の負担に属しておりましたものが二百十億でございましたが、これが府県自治体警察の方に移つて来るわけであります。それから国の方から、要するに国家地方警察から府県の方に移つて参りますものは百五億でございますが、そのうち先ほど申し上げましたように、二十一億が補助金として参りますので、別途国の方から地方の負担に移つて参りますものは八十九億であります。市町村から府県に移つて参ります二百十億、国から府県に移つて参ります八十九億、この二つを合せたものが結局府県地方税及び地方交付税をもつて支弁されなければならない経費になるわけであります。さらにどう部分が地方税で、どの部分が交付税であるかということは、これは区分しがたいので、要するに府県一般財源、つまり地方税及び地方交付税をもつて支弁さるべきものが国庫補助金を除きました額ということになるのでございます。
  426. 横路節雄

    横路委員 鈴木さん、あなたは一つだけ抜かして答弁そしておる。交付税を配分してやる場合に、やはり一定の基準で、自治体の警察職員は何十万、何ぼ何ぼとやつているのですから、あなたの方でそういう概算に基いての数字はお持ちのはずです。それを合せて三百億ですと言われるが、それならば交付税に概算で大体どれくらいがその部分に充当されるかということになれば、その残つた分だけ地方がそれぞれ独自の財源で見るということです。その点が幾らかと聞いているのです。率直にお答えいただきたい。
  427. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 これはただいま提案いたしております地方交付税法の中に、警察職員一人当りの単位費用として約三十万の単位費用を計上したわけでございますが、それによつて計算をいたしますと、これは平年度の計算では二百九十億になるわけでございまして、その単位費用は要するに地方交付税、地方税の両方で支弁される。その経費として単位費用を出しておりますので、従つてどの部分が地方交付税、どの部分が地方税ということは出ないのであります。両方の一般財源をもつて支弁さるべき基準を、警察職員一人当り三十万円という単位費用で出しておるのであります。
  428. 横路節雄

    横路委員 私はこれでやめますが、先ほど委員長にお願いいたしましたように、明日ぜひ国警長官並びに自治庁長官から、北海道に関する被害状況等について当委員会に御発表願い、もしも自治庁長官の方でそれに対する対策がございましたら、あわせて御発表を願いたいと思います。これで終ります。
  429. 中井一夫

    中井委員長 皆さんの御質問も終了をいたしました。  この際各位に申し上げます。両案に対する御質疑を、連日夜おそくまで続行せられまして、御精励のほどまことに感激にたえません。きのうの理事会で申合せをいたしました質疑時間もお使いになり終りましたので、総理大臣に対する質疑及び外国立法例に関する資料関係だけを保留して、両案に対する質疑はこれをもつて一応終了いたします。  なお明日は午前十時半より理事会、十一時より委員会を開会いたしますから、何とぞ正刻に御出席くださるようお願いを申します。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後十一時三十一分散会