○阿部
委員 ただいまのお言葉は、私としてはなはだ意外に思います。過般来治安維持の
責任云々を問答されておりましたのは、治安維持に関する
政府の
責任の帰着点が明らかでないという点を
政府側においては主張せられておる、かように思うておるのでありまして、一管轄
区域と隣の管轄
区域とのその
責任のいかんなどというものは、あまり重大な問題としては扱われておらなかつたように思
つておりますし、私もそれらの点はあまり重大視しておらないのであります。かりにこれが
都道府県警察となりましても、その境において、あるいは両方に通ずる事件というようなものは、これは非常に多いのであります。
一つの詐欺事件あるいは強盗事件というような問題につきましても、両県にまたが
つてその証拠が存在したり、あるいは
犯罪の始まつた場所と終つた場所との間が両県にまたがつたり、あるいは犯人の所在が犯行の県とは異な
つておつたり、こういうような場合がいくらでもあるのであります。そしてそんな場合に、
犯罪を犯した場所の管轄
区域と、犯人の現在おるところで検挙する権能を持
つておる管轄
区域とが異な
つておるというようなことはいくらでもあるのである。また従来
警察署と
警察署との間の管轄の問題についても、どちらの署長が
責任を負うかということはいくらでも起るのでありまして、そんなことはあまり大した問題ではないのでありまして、その治安維持の
責任という場合においては、これは
政府の政治
責任が問題にな
つておつたものだと私は思
つておつたのであります。しかるにそういう区々たる
責任問題をおつしや
つておられるようでありますが、そんなことはどちらになりましたところで、片一方の
警察隊長が
責任を負うて、あるいは場合によつたならば、懲戒の原因になるくらいが関の山であります。そんなことはこの国会で重要視して取上げるほどの問題とは私は思うておらないのであります。
そこでこの際私は大臣に
お尋ねいたしたいと思いますが、今回のこの
警察法の改正は、
政府の治安維持の
責任を明らかにするためというのが、その理由の相当大きな部分を占めておるように御説明を聞いておるのであります。これは私はあなたからお聞きしたのではありませんけれども、前の犬養大臣から承
つておるのであ
つて、現大臣もその説明に限
つてはまつたく同
意見だという御発表もあつたのであります。一体その
政府の政治
責任を、
政府においてはいかにお
考えにな
つておられるか。かりに治安が乱れた場合に、
政府が政治
責任をとらなければならない、とるべきであるという場合はどういう場合であるか。またその
責任をとるためにはどういうことをするか。またそれはこの改正
警察法案に定めてあるがごとくに、何もかも
政府の意思が——すなわち
警察庁長官を任命するのは総理大臣である、その総理大臣から任命せられた
警察庁長官が
都道府県の
本部長を任命し、その
本部長は、
公安委員の意思は加わるとはいいながらも、末端の一巡査まで任命する、こういう上から下まで筋が通つた、しかも一線に当る
都道府県警察は、第五条に定めてある部分全部について——これは相当広い
範囲でありますが、
国家公安委員会の命令を受け、しかも本来入らない、
範囲外の
一般の
犯罪の予防や検挙というような部分、あるいは
犯罪の捜査というような部分についても、とにかく総理大臣が任命したところの
警察庁長官がさらに任命した
本部長は指揮命令に服する、こういうふうにあくまでも
政府と直結して筋が通
つておらなかつたならば、
政府は
責任を負えないものであるかどうか。元来東洋における政治思想においては、
政府の
責任、為政者の
責任というものは、そういうものではなくて、古い
考え方で言いましたならば、天災地変まで為政者がその
責任を負う、こういうように
考えられておるのでありますが、現在の憲法は西洋式の
考えでありますから、そういう極端な
責任まで問うておるわけではありません。それでも直接
政府が命令しなくても、あるいは直接
政府が任命した者が事に当らなくても、とにかく
政府は
全般の政治
責任をとるというふうに憲法はな
つておるように思いますが、そうでなくて、あくまで
政府の意思が末端までずつと通るようにしなければ
責任は負えないのでありますか。これらの点を大臣からお答え願いたいと思います。